1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
内閣法案(政府提出)(第一號)
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昭和二十一年十二月十七日(火曜日)午前十時四十四分開議
出席委員
委員長 高橋泰雄君
理事 安部俊吾君 理事 小野眞次君
理事 三浦寅之助君 理事 江部順治君
理事 大久保傳藏君 理事 淺沼稻次郎君
飯國壯三郎君 栗原大島太郎君
夏堀源三郎君 綿貫佐民君
苫米地義三君 橘直治君
山下春江君 宮前進君
最上英子君 八木佐太治君
清澤俊英君 山崎道子君
平川篤雄君 疋田敏男君
丸山修一郎君
十二月十七日委員林田正治君及び保利茂君辭任につき其の補闕として橘直治君及び山下春江君を議長において選定した
出席國務大臣
國務大臣 植原悦二郎君
出席政府委員
法制局次長 佐藤 達夫君
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本日の會議に付した議案
内閣法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=0
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001・高橋泰雄
○高橋委員長 これより會議を開きます、内閣法を議題として討論に付します、討論は通告順によつてこれを許します、安部俊吾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=1
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002・安部俊吾
○安部委員 私は本案の政府原案に贊成の意を表するものであります、もとより本案は三權分立に根據を置きまする所の、行政權の機構に關する法案でありまして、そのだいたいに關しましては、憲法第五章において論議し盡くされた感があるのであります、從つてこの法案に關しては、多くの論議をする點はないようにも考えられるのでありますが、憲法第七十三條第三號の、條約を締結する點に關しましては、「時宜によつては事後に國會の承認を經ることを必要とする。」という點につきまして委員より質問がありました、それは條約締結には、事前に國會の承認を經べきものではないかということでありましたが、しかし條約締結は、或る場合においては、國際情勢の變化によりまして、必ずしもそれを國會の承認を經るという手續きをふむことは、國政の運營においても支障を來す恐れがないとも限らぬのであります、この點に關しましては政府の答辯もありまして、私はこの點を諒とするものであります
本案の第二條の「内閣は、首長たる内閣總理大臣及び國務大臣十六人以内を以て、これを組織する。」という條項につきましても、何故に國務大臣は十六人を限定するやとの質問もありましたが、この點につきましても、きわめて明確なる政府の答辯がありました、また必ずしも十六人以上でなければならぬというような必要も認めぬのでありまして、私は原案の通りにして差支えないと信ずるものであります
第四條の「内閣がその職權を行うのは、閣議による」という點に關しましても、或はまた閣僚の不統一を來すような恐れがないか、或る閣僚が自分の政見を固執して、他の閣僚を相一致することのできない政見を發表した場合には、どうなるかというような質疑もありましたが、この點に關しましても、もとより民主政治は政黨政治でありまして、その政黨が議會における多數を擁した場合において、その政黨の首領が内閣を組織するのは、これは當然の順序でありまして、しかもその政黨には確乎たる主義主張があるはずでありまして、その閣僚が他の閣僚と全然異つた政策政見を固執するような場合はないと信ずるものでありますが、若しかりにそういうことがありましても、既に政府の答辯がありましたごとく、だいたいにおいて總理大臣がそれをまとめることができる、またどうしてもそういうことができない場合には、その閣僚が勇退するというようなことがなければならぬということでありまして、この點に關しましても、私は何らの反對する根據を認めないのであります
第十二條の「内閣に、内閣官房及び法制局を置く」というほかに、補助機關といたしまして勞働廳を置いてはどうか、或は内閣直屬の豫算局を設置してはどうか、統計局を設置してはどうか、こういうような希望的質問もありましたけれども、豫算と睨み合わせて、これは政府の方におきましても贊意を表する、この點につきましては、將來その趣旨に贊成いたしまして、最善を盡くそうというようなお話もありました、この點に關しましても、私はもとより現在におきまして、資本の蓄積なくして決して産業というものは發達するものではない、また勞働力を認めずして産業復興がはたし得ないということも認めるものでありまするが、しかし必ずしも内閣直屬の勞働廳というものを今設置しなくても、追い追い情勢の變化によりまして、そういうようなことを内閣の方で注意をされて、そうして適當な公正妥當な方法によつて、そういうような問題を解決するという方法もありますれば、この點に關しましても、必ずしも私はその希望に固執するものではないのであります、その他教育の振興、或は中央終戰連絡事務局の擴大とか、文官任用令に關する質疑もありましたが、この點に關しましても政府の答辯に滿足するものであります
これを要するに私は新憲法附屬としての内閣法たる本案は、何らの修正を要することなく、原案をそのままにいたしまして、本會議の討論に付すべきものと信ずるものであります、ここに簡單ではありまするが贊成の意を表するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=2
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003・高橋泰雄
○高橋委員長 苫米地義三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=3
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004・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私は日本進歩黨を代表いたしまして、本案に對し原案のまま贊意を表するものであります、本法は新憲法の施行に伴いまして、當然制定されなければならぬ法律でありまして、その條文はわずか十二條に過ぎない、きわめて簡單なものでございますけれども、その内容に包藏する所の意義は、きわめて廣汎であり、かつ重大なものでございます、すなわち國民の信託による國政運用の大部分というものは、實に内閣にあるのでありまして、憲法の目的とする國民の福利を招來し得るや否や、また憲法擁護の重責をはたし得るや否やは、懸つて内閣の構成如何と、その運營の巧拙によるものでございます
從來わが國行政の跡を見まするのに、上級官廳から下級官廳に至るまで、いわゆる官僚式の弊害に流れ、一般大衆と遊離して官吏獨善の風があります、事務につきましても、いわゆる官廳割據主義に墮し、その不親切と非能率に對しましては、國民の齊しく非難し來つた所でございます、本法第六條には「内閣總理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する、」とありますが、從來の弊害は行政部面の末端に至るまで、牢固として浸潤いたしておりますから、ただ一片の法律改正や、上官の訓示だけでは、容易に改善されるべきものではないと存じます、政府はこの際よろしく從來の行政機構に對して根本的檢討を加え、適切なる改編を斷行しまして、言われる所の割據主義の弊害を防ぎ、一般公務員に對しては眞に民主的時代思想に徹しまして、社會の公僕たる態度と實踐とを期するよう官吏の再教育が必要かと存ずるのであります、今、政府は行政調査部を設置して、行政機構の檢討を行いつつあるということでありますが、私はわが國の現状に鑑みまして、特に産業行政と文教行政の重大性を痛感するものであります、産業行政につきましては、現在農林商工の兩省に分離されておりますけれども、既に國情は著しく變化しております、中小工業と農村工業というものは、ともに發達交錯の趨勢にありまして、今後農工業の關係というものは、密接不可分の緊密性をもつものであると思いますから、産業復興の立場から見ましても、この際産業行政の一元化ということは望ましいことであると思うのであります
また新憲法に示すわが國の高遠なる理想、すなわち世界の公正、信義に基ずく恒久平和を招來せんとするためには、まずわれわれ國民各自が公正、信義に徹しなければならぬと思うのであります、人格の向上と教養に努め、かつ科學、文化の知識を體得することが必要であると存じます、從つて祖國再建の根本的一大要件は、實に教育、宗教の振興普及であり、道義の實踐と科學的文化生活の實現を期することであると存ずる次第であります、これがためには、政府はよろしく文教行政に力を注ぎ、われわれ國民が他日許さるべき國際連合へ參加の場合、崇高なる人格と豐富なる知識、常識を具えた民族として、彼等の間に伍することのできるよう、今より最善の方途を講ずべきだと思うのであります、もしそれ現在のわが國状を直視しますならば、その經濟面においても、産業面においても、はたまた國民生活の上にも、治安の上にも、さらにまた財政金融の面におきましても、まことに容易ならぬ緊迫感を覺えるものであります、内閣はよろしく各行政部を綜合緊密化し、適切なる施策の樹立と、敏速果敢なる實行を期せられまして、この敗戰後に現われる所の動亂期の難關突破に邁進されんことを希望して、本案に贊成する次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=4
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005・高橋泰雄
○高橋委員長 淺沼稻次郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=5
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006・淺沼稻次郎
○淺沼委員 私は曰本社會黨を代表いたしまして、只今議題に供せられておりまする内閣法案について、政府原案に贊成をするものであります
内閣組織に關しましては、明治憲法の下においては、憲法の規定と勅令による内閣官制によつて組織されて參つたのであります、今囘の新憲法によりますれば、内閣の組織に關する規定というものは詳細をきわめており、さらに今まで勅令でありました内閣官制は内閣法に變更されて、すべて議會の議を經ることになつたのであります、これは非常なる前進であると私は考えておるのであります、現行の内閣官制は、明治十八年に制定されて以來、六十有餘年、その間いくたびか改正され、變更はされておるのでありますけれども、一貫せる方向というものは、官僚閥の政治勢力を扶植するために利用せられたことは事實であります、これは申すまでもなく、憲法の規定が詳細でなかつたということ、簡單であつたということと、もう一つは内閣官制が勅令によつてきめられておりまして、議會がこれに關與することができなかつたという所に、大きな弊害があつたと思うのであります、それが法律に規定されるようになつたのでありまして、民主主義體制を確立する上において當然なこととは言いながら、非常なる進歩と考えるのであります
さらに内閣の組織につきましては、議院内閣制と單一合議體の二原則を採用せられております、すなわち議會中心責任内閣制が樹立されておるのであります、この原則の下に内閣法においては、内閣は總理大臣竝びに十六人の國務大臣をもつて構成される規定があるのであります、この十六人の規定につきましては、本會議における私どもの黨に所屬しております吉川兼光君の質問に對して、金森國務大臣は、何等の理由があるわけではなく、現内閣の現状をそのまま法文化したと答辯されておるのであります、しかも本法規定のうちにも、行政大臣を兼ねることになつておるのであります、從いまして内閣が眞に能率的であり、單一合議體としての實を擧げるためには、中央行政官廳組織がいかように行われるか、そこで働く官吏はいかなる職務權限をもつて働くのであるか、こういうことと非常な關係をもつのであります、從つて中央行政官廳法、官吏法とも稱すべきものが本案と竝行して論議されて、内閣法というものは眞實に生きて行くのではなかろうかと思うのであります、しかし今議會には提案はございません、これは來るべき通常議會に、政府においては必ずや完全なる中央行政官廳法、官吏法の提案をされるものであるということを期待しておる次第であります
次に單一合議體として、内閣は首長として總理大臣が當り、國務大臣の任免を總理大臣の權限とし、總理大臣に行政各部の指揮監督が與えられておるのであります、しかしこれが實踐される場合におきましては、本會議でも、またこの委員會でも議論になりました通り、總理大臣の政治力によることは議論の存せざる所であります、しかしながら制度から申し上げましても、その政治力を強化することが、私は必要ではなかろうかと思うのであります、本法案によりまするならば、内閣には官房竝びに法制局を置くことになつてそれ以外のものにつきましては考慮を拂われておらないのであります、内閣自體が政治力を強化し、さらに各省の割據對立の弊害を除去いたしましてやる場合におきましては、どうしても内閣に豫算局、人事局といつたようなものを設置いたしまして、制度の上から申し上げましても單一合議體として強化を加えなければならぬと思うのでありまして、これは希望といたしまして強く要求をしておく次第であります
さらに中央行政權に關しまして一言申し上げておきたいと思うのでありますが、これは本會議か、或は豫算委員會の席上であつたかも知れませんが、この前の議會でわが黨の松岡駒吉君から勞働問題の重要性に鑑みまして、勞働省の設置を要望いたしまして、總理大臣はこれに對しまして、御意見の通り準備中であるといふ御答辯をなしておるのであります、しかるに過日本會議に本内閣法が上程された時に、吉川君が質問をいたしました際に、厚生大臣は今勞働省にするか、勞働總局にするか考慮中であるといふ意味合の答辯があつたのであります、またこの委員會の席上におきましても、植原國務大臣よりいたしまして、大いに考慮を要するということが言われておるのでありまするが、これはもう考慮すべき問題ではないのでありまして、内閣が單一合議體として總理大臣が首長としてその地位にあられる憲法の精神を酌んで申し上げまするならば、總理大臣が豫算委員會の席上において設置するということに贊成をして、今準備中であるということを答えたということになりますれば、當然各省からの意見があるべき筈はないと私は思うのでありまして、これは既定の事實として政府が實行されてしかるべきであると思うのであります、これが實現化の早きことを希望してやみません
さらに國土省、水産省等の獨立についても、考慮さるべきであります、今、日本の國におきましては、八千萬の人口を小さくなつた國土において養つて行かなければならぬのであります、國土の隅から隅まで、これを全幅的に活用して參らなければなりません、しかも各地域に國策というものがどんどん滲透をして參らなければならぬのでありまして、なんといたしましても、國土計畫というものが立てられなければならぬのであります、しかも國土計畫が立てられる以上、それと關連いたしまして行政機構の上におきましても、内務省で扱つております所の國土局の仕事を中心といたしまして、國土省の成立ということは當然だと考へるのであります、また食糧問題の解決の上からいたしましても、水産省の獨立のごときも考慮されてしかるべきと思うのでありまして、これらの點につきましては、政府におきまして内閣が一つ單一合議體として國民生活安定のため、行政能率が百パーセントに發揮されるように、中央行政官廳というものの機構をお考え願いたいと思うのであります
最後に申し上げたいと思いますことは、憲法は改正されまして、十一月三日に公布になりました、新憲法は五月三日より效力を發することになります、この憲法の精神徹底のために、政府におきましては何か普及會というようなものを設けられまして、國民の中に教育、宣傳をされるということを承つておるのであります、しかしながら憲法の精神の徹底ということは、ただ單に宣傳、教育というようなことよりかも、私は政府みずから身近かなものはこれを實施して、範を國民に垂れるということが、私は最も徹底せしむる方策ではなからうかと考えるのであります、そういう意味から申し上げまするならば、少くとも議會の構成につきましても、一應私は議會を解散いたしまして、新たなる議會の構成を作られる、さらにそればかりでありません、現に内閣の構成につきまして新憲法によれば内閣の首班たる總理大臣は國會に議席を置かなければならぬことになつておるのでありまするが、現總理大臣はまだ國會に席をもつておらないのであります、また他の閣僚にいたしましても、規定から申しますならば、半分ということになつておるのでありますけれども、私は成べくならば議席をもつた人がそれぞれ國務大臣になられることが一番妥當だと考えるのでありまして、議席をもたれることにされることが、私は一つの實踐の方法として當然ではなかろうかと考えるのでありまして、そういう點に深甚なる考慮を拂われんことを切望いたしまして、贊成の意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=6
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007・高橋泰雄
○高橋委員長 平川篤雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=7
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008・平川篤雄
○平川委員 私は協同民主黨を代表して、一、二の希望を加えて本案に贊成の意を表したいと思います、本案上程の際、わが黨の竹山君より政府にお尋ねいたしましたように、われわれが最も危惧いたしておりますことは、内閣とその命令によつて行政事務を扱います下部の官僚陣との關係が、圓滿に保たれるかどうかという點であります、竹山君の申したごとく、陛下の官吏として命令系統が確立し、上官の命令が或る種の權威に裏づけられているように、感情的にも信ぜられていた舊來の事情とは、只今政黨内閣を原則とする時となりましては、全くこれは變化してしまつておると思うのであります、ここにややもすると内閣が官僚陣から遊離する危險を孕んでおることを憂えずにはおられません、從いましてわが黨としては政府において提出を、豫想しておられる行政官廳法、公務員法と一緒に本法案を審議いたすべきものと、最初から考えておつた次第であります、即ち内閣法がどんなものであるにいたしましても、むしろこの法の死命を制するものは、これら行政官廳法、公務員法というようなものでなければならないと信じておるからであります
傳えられる所によりますと、全國教員の待遇政善要求に關して、文部大臣の提案が閣議において諒承決定を見たにも拘らず、今もつて豫算に計上されない、こういう事實の裏に大藏事務當局の強烈な抵抗があるというふうに、私どもは傳え聞いておるのであります、しかも十四日には教員組合全國連盟のデモに對して、文部大臣は職を賭して實現に努力すると、實に悲壯な聲明を發しておられる、はたしてしからば、現内閣の閣議の權威の失墜であります、文部、大藏兩大臣は、財政に對する見透しなくして諒解し合つたのか、或は事務當局が不當なる越權を行わんとしているのか、われわれは甚だ奇怪至極という感を深うしておるのであります、かような事態が現實に存すればこそ、繰返しわが黨は政府に對してこの點を追究いたしました次第でありますが、未だ滿足という域には到達しておりません、ここにおいてわが黨は政府がこの内閣法の成立を機に官吏の民主化、すなわち頭の切り替えを徹底的に行われんことを切に要望いたします、殊に屡次の追放令は、遂に下層町村吏員にまで及びましたにも拘らず、その命令を出して指導いたしておりました官僚の陣營は、微動だにしていないという點に、國民の不滿が高まりつつあり、また官廳のサボタージュともいうべき事勢の澁滯や特權の濫用などは、ますます國民の信を失いつつあるのであります、官公廳の職員はその命を奉じている吉田内閣打倒の全國大會に參加するというような皮肉な事態と相なつておる、政府はこれは對して職務放棄を禁ずるというような通達を出されたということを聞き及んでおります、この下部の行政官廳から愛想をつかされたという事實は、ともかくといたしまして、國民は官吏が日々の生活を委ねる信託に應へるものであつて欲しいと念願いたしておるのであります、從つて教員には貧窮に追われることのない最低生活の保障と、更に教育力を向上さすべき研究に必要な資金を與へ、また官吏も同樣、眞に國民の生活を握つておる重責があるのでありますから、能う限り高き待遇をなさることが必要であると考えるのであります、そのためには信賞必罰の方針を確立いたしまして、先づ官僚陣よりも眞實の戰爭責任者を追放し、惡質の官吏を罷免いたしまして、事務の繁閑を考慮し、合理的な配置を行つて、失業者群より人材を求めてこれらと交替せしめ、失われた行政官廳の信頼を取戻していただきたいのであります、某省におきましては、最近職員が省内で麻雀大會を行い、一等には洋服地一着分、最下等でも地下足袋二足ずつの賞品を出して、盛大に一日を樂しんだそうであります、また官廳のブローカーなるものが存在いたしまして、公益の事業として官廳より配給せられるものを闇に流して巨利を征しておるものがあるという、キヤラコであるとか、毛布であるとか、そういうふうなものは、只今國民全部が手を差し伸べまして要求をしておる品物でありますが、かようなものを官廳が特權をほしいままにして壟斷するということは、實に許し難いことなのであります、かような事實は枚擧に遑がないのでありまして、こういういわゆる國民の租税によつて生活をしておる官公吏としては、當然責任を問われるべきものでありまして、不當な馘首の範疇の中にははいらないと思うのでありますから、一日も早く職員組合の手によつてでも摘發せしめて、同時に正しい者には正當な待遇を與えまして、安んじて内閣の命を奉じて國民の公僕たらしめる體制を整えていただきたい、内閣の手足ともいうべき行政官廳の職員が、直接間接に内閣を倒壞に導くというようなことでは、内閣の威信はともかく、國民は全くたまつたものではないと思うのであります、かような憂うべき事實が眼前にあるのでありますから、わが黨としては、行政官廳法、公務員法等を檢討した上でなければ、容易に本法案に贊成の意を表し難いのであります、政府はさきに商工協同組合法を成立させましたが、その補償打切や財閥解體などに伴うて、巷にはますます失職状態に喘ぐ人人が滿ちて來ておりますにも拘らず、この法は全く效力を發生しておりません、國民のものであります庶民金庫からの不安定な融資を閣議で決定をいたされましたが、これは動いておらない、この態度はまことに非民主的な横暴だと思うのでありますけれども、それはともかくといたしまして、何にせよ、われわれこの法律を成立させた者まで、まことに國民にどう詫びてよいかわからぬというような心持であります、農地政革は斷行せられ、農林大臣はしきりに協同組合でやれと勸めて歩いておられる、所がその肝腎な協同組合法案は今議會にも提出せられない、農村の工場化ということも喫緊の要務でありますけれども、一體どこから手をつけるのか、やろうと思えば、闇でなければ何もできないというような實情であります、また勞調法の通過の際に、わが黨は勞働基準法の早急提出を條件といたしておりましたまた、供米の強權發動についても、農機具、肥料等の供出に對する善處と、適當なる米價其の他農産物價の決定を條件附きで承諾いたしたのであります、しかるにその公約はいずれもはたされていない、これではわれわれは國民に對して顔向けができないのであります、ここにおいて政府にお願いいたしたいのでありますが、國民の生活というものは斷片々々が集積しているものではないのであつて、切れば血の出る生き物なのであります、渾然たる國民の一體的な生活のためには、やはり綜合的な法律が宛てがわれなければならない、どんな立派な法律でも、綜合性を失つたら最後、國民の生活を破壞してしまうのであります、これまでのやり口からすれば、私共はこの點を特に政府に希望いたしたい、そしてこの内閣法におきましてもその運用を誤らない、より細かい規則を早急に定めていただきまして、もつてわれわれの危惧を晴らしていただきたいと存ずるのであります、今一度政府を信じまして、官僚陣の徹底的教育と肅正、關係法規の早急上程を條件にいたしまして、私どもは本法案に對して贊成の意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=8
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009・高橋泰雄
○高橋委員長 丸山修一郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=9
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010・丸山修一郎
○丸山委員 國民黨を代表いたしまして、一、二希望を申し上げまして、本案に贊成の意を表したいと存ずるものであります、由來官僚政治として國民から指彈された點は、權力を笠に著て獨善的な施策が多かつたといふこと、次ぎは割據的であつて、繩張り爭いをして、一つの事件に對して甲と乙と官廳を異にする、基だしきは課を異にするといふ時において摩擦相剋がある、第三にはその手續きが非常に煩瑣であるといふような點が指摘されておりますが、新憲法の精神によつて本法案の成立を見て、内閣は行政機關の中核としてその運營をされるのでありますから、以上のような缺點を拂拭せらるることを第一に望むのであります
次ぎは行政に科學性というものを多分にもたせて行かなければ、政治、行政が末端にまで徹底しない、かように思うのであります、その例は只今平川委員からも述べられましたが、七月に官吏、教員の待遇改善案を發表して、それがもう既に生活を保障せられないといつて、いろいろな面から増額請求の熾烈な欲求が起つて國民運動に展開し、政治的に内閣倒壞の運動にまで展開しているといふ事實は、待遇の改善案にしましても、何ら客觀的に納得せしむるという科學性をもたないからであります、さように考えなければならぬと思うのでありまして、今後の行政においては、その點十分の施策、留意を願いたいと思うのであります
次ぎは、從來の官僚行政においては、上から下への壓力が強過ぎて、下部においては、ただ命これ從うといふことが強かつたのに拘らず、今後は、ややもすれば屬僚、下僚の反撥性が強くなり、いわゆる民主主義という輕率な上ばしりをするために、ややもすれば上司の方針、命令は下部に徹底しないで、その施策を阻むことが起らないともいへない杞憂がないではありません、その點只今平川委員から指摘された通りであります、この點に對しても深甚の考慮を拂われたいと思うのであります、以上のような希望を申し上げまして、本員は本案に贊成の意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=10
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011・高橋泰雄
○高橋委員長 討論は終局いたしました、これより採決をいたします、原案に贊成の諸君は御起立を願います
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=11
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012・高橋泰雄
○高橋委員長 起立總員、よつて本案は原案通り可決いたしました
この際一言御挨拶を申し上げたいと存じます、去る九日に内閣法案が本委員會に付託せられまして以來、各位におかせられましては、終始熱心に審議に當られまして、本日をもつて法案の審議を終了いたしましたことは、各位御協力の賜ものでありまして、まことに感謝に堪えません、本日ここに法案の審議を終るに當りまして、各位連日の御協力、御勞苦に對しまして深甚の敬意を表します、(拍手)本日はこれにて散會いたします
午前十一時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009112806X00619461217&spkNum=12
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