1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十二月七日(土曜日)
午後一時十一分開議
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議事日程 第六號
昭和二十一年十二月七日
午後一時開議
第一 内閣法案(政府提出) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、議員から提出された議案は次ぎの通りである。
戰時補償特別措置法の一部を改正する法律案
提出者
左藤義詮君 地崎宇三郎君
杉本勝次君 井上徳命君
早川崇君
(以上十二月六日提出)
一、去る五日吉田内閣總理大臣から次ぎの通り發令があつた旨の通牒を受領した。
内務事務官 鈴木俊一
第九十一囘帝國議會内務省所管事務政府委員被仰付
外務事務官 與謝野秀
第九十一囘帝國議會外務省所管事務政府委員被仰付
一、昨六日委員長理事互選の結果次ぎの通り當選した。
皇室典範案(政府提出)委員
委員長 樋貝詮三君
理事 加藤宗平君
理事 北浦圭太郎君
理事 小島徹三君
理事 武藤常介君
理事 吉田安君
理事 菊地養之輔君
理事 黒田壽男君
理事 酒井俊雄君
一、去る五日議長において次ぎの委員を選定した。
皇室典範案(政府提出)委員
井上卓一君 稻葉道意君
大塚甚之助君 加藤宗平君
北浦圭太郎君 小島徹三君
齋藤行藏君 田中善内君
竹内茂代君 殿田孝次君
苫米地英俊君 樋貝詮三君
三ツ林幸三君 藥師神岩太郎君
池村平太郎君 馬越晃君
神戸眞君 菅又薫君
津島文治君 長尾達生君
平野増吉君 星一君
堀川恭平君 武藤常介君
森山ヨネ君 吉田安君
井伊誠一君 及川規君
加藤シヅエ君 菊地養之輔君
黒田壽男君 島田晋作君
中原健次君 松本七郎君
武藤運十郎君 森三樹二君
今井耕君 川野芳滿君
越原はる君 酒井俊雄君
藤本虎喜君 井上赳君
久芳庄二郎君 野本品吉君
大石ヨシエ君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) 是より會議を開きます。日程第一内閣法案の第一讀會を開きます。吉田内閣總理大臣。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 内閣法案(政府提出) 第一讀會
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内閣法案
内閣法
第一條 内閣は、日本國憲法第七十三條その他日本國憲法に定める職権を行う。
第二條 内閣は、首長たる内閣総理大臣及び國務大臣十六人以内を以て、これを組織する。
内閣は、行政権の行使について、國会に対し連帶して責任を負う。
第三條 各大臣は、別に法律に定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。
前項の規定は、行政事務を分担管理しない大臣の存することを妨げるものではない。
第四條 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。
各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。
第五條 内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を國会に提出し、一般國務及び外交関係について國会に報告する。
第六條 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。
第七條 主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、これを裁定する。
第八條 内閣総理大臣は、行政各部の処分又は命令を中止せしめ、内閣の処置を待つことができる。
第九條 内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する國務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。
第十條 主任の國務大臣に事故のあるとき、又は主任の國務大臣が欠けたときは、内閣総理大臣又はその指定する國務大臣が、臨時に、その主任の國務大臣の職務を行う。
第十一條 政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。
第十二條 内閣に、内閣官房及び法制局を置く。
内閣官房は、閣議事項の整理その他内閣の庶務を掌る。
法制局は、内閣提出の法律案及び政令案の審議立案並びに、條約案の審議その他法制一般に関することを掌る。
前二項の外、内閣官房及び法制局は、政令の定めるところにより、内閣の事務を助ける。
内閣官房及び法制局の組織は、別に法律の定めるところによる。
内閣官房及び法制局の外、内閣に、別に法律の定めるところにより、必要な機関を置き、内閣の事務を助けしめることができる。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
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〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=2
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003・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 今日上程いたしました内閣法案について、提案の理由を説明いたします。
御承知の通り新憲法では、行政權は内閣に屬するものと定め、かつ内閣の組織運營等に關する根本を定めておるのでありまして、その詳細は法律の定むる所にまつているのであります。よつてこの内閣法案は、新憲法の趣旨とする所を受けまして、内閣の組織運營等に關し必要なる事項を定めているのであります。
この法案の内容といたしましては、まず内閣は、日本國憲法第七十三條、その他日本國憲法に定める職權を行うこと、次に内閣は、首長たる内閣總理大臣と國務大臣十六人以内をもつてこれを組織すること、さらに内閣がその職務を行うのは、閣議によること、閣議は内閣總理大臣がこれを主宰する等、内閣の職權、組織、運用等に關する基本的規定を設けるほか、行政各部との關係、内閣總理大臣の職權、政令の規律範圍輔佐部局に關する事項等を規定しているのであります。
以上は本案の内容でありまするが、概ね臨時法制調査會の答申の趣意に則つて立案いたしたものであります。何とぞ御審議の上御協贊を願います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 質疑の通告があります。順次これを許します。安部俊吾君。
〔安部俊吾君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=4
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005・安部俊吾
○安部俊吾君 本日ここに上程されました内閣法案につきまして、私は日本自由黨を代表いたしまして、左の六點に關し質疑をいたすものであります。
第一に内閣の責任問題であります。内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決した時は、十日以内に衆議院が解散されない限り、總辭職をしなければならないのでありますが、本案第二條第二項に、「内閣は、行政權の行使について、國會に對し連帶して責任を負う。」とあるのは、内閣は國會、すなわち主權者たる國民の代表者たる國會議員によつて組織されましたる所の國會だけに責任を負うものであるか否や、その他に對しては責任を負はぬという意味であるか、この點を明瞭にいたしたいのであります。米國におきましては、行政の首班たる大統領の任期は四箇年とあるということは、憲法に明記されておるのであります。從つてたとえ與黨が少數黨に轉落いたしました場合におきましても、なおその職に留まることができ得るのであります。また英國におきましては、内閣の生命は他の諸國に比較いたしまして長命であります。その與黨が多數黨たる場合は、六箇年或は八箇年の長日月にわたつて内閣を維持した例は多かつたのであります。しかるに政治的訓練に乏しく、徒らに附和雷同する國民性の國家におきましては、憲政の常道を無視し、議會以外において倒閣運動を起し、内閣を暗殺せんとする企てが行われやすかつたのであります。故に民主主義政治の意義が徹底し、議會政治が圓滿に運營される國家におきましては、常に政局の安定があり、内閣は國政の經綸に全力を注ぎ得たのでありまするが、これに反しまして、議會以外に騷然たる政治運動が激しく、或はまた暴力に愬えても憲法政治を蹂躙せんとしたる國家におきましては、政局が安定されない、内閣が短命に終り、國策の實行に支障を來したる實例は枚擧に遑がないのであります。新日本の建設には、前途容易ならざる難關が横わつておるのであります。敗戰による經濟の混亂を克服すること、平和産業の復興、國民生活の安定、失業者の救濟、惡性インフレーシヨンの防止、實にその責任の地位に當る者は、強大なる意力と、何者にも屈せざる所の大信念をもつて勇往邁進せねば、この政局を、或はまた來らんとする政局を擔當し得ないのであることは勿論であります。(拍手)「謗するものは他に任す。非する者は他に任す。火を把つて天を燒く。徒に自ら疲る。我聞いて恰かも甘露を飮むが如し」ということがありますが、かくのごとき心境をもつて、すなわち上を恐れ、人を恐れず、千萬人といえどもわれ行かんという衝天の志氣をもつて、その抱懷する政策と主義主張のために、身命を賭して國家の經綸を行わざれば、國家の危機を突破することはでき得ないのであります。(拍手)内閣總理大臣及び國務大臣は、國會に對しては責任を負う。すなわち内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案が否決された時は、十日以内に衆議院が解散されない限り、總辭職をするか、または衆議院議員選擧の後に初めて國會の召集のあつた時に總辭職をするが、それ以外に單に攻撃せんがための攻撃や、或は一部不平分子の策動や暗躍に對しては、微動だにするものでないという意味において、この條項が特に第二條第二項に明記されたるものであるや否や。この點におきまして、總理大臣のこの條項に關する解釋をはつきり伺いたいものであります。(拍手)
第二點は、衆議院解散の内閣の權能に關してであります。天皇は、内閣の助言と承認によりまして衆議院を解散するのでありまするが、實質的には、内閣が衆議院を解散する權能を有するのであります。すなわち衆議院が内閣不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決した時に、内閣が總辭職をしない場合は、信を國民に問うために、衆議院を十日以内に解散することができるのでありまするが、かかる場合以外、すなわち不信任の決議案を可決した場合以外は、内閣が衆議院を解散する權能は、憲法においても、また本案においても規定されていないのであります。從つて内閣不信任の決議案が可決され、または信任の決議案が否決された場合以外に、内閣は議會を解散する權能を有するや否や、この點を明瞭にいたしたいのであります。いやしくも主權在民の憲法治下におきまして、國民の代表者によつて構成されたる國會を、内閣がみだりに解散することは、許さるべからざるものであります。しかるに内閣が、その欲する時期において、その欲する場合において、議會を解散し得るがごとく考うるものが多いのでありまするが、將來においても種々の流言蜚語が飛び、國民を迷わすことがないとも限らないと思いますからして、この點について重ねて總理大臣の御所見を伺いたいものであります。(拍手)
第三に、内閣の職權と閣議の關係について伺いたいのであります。本案第四條に、「内閣がその職權を行うのは、閣議によるものとする。」とありまするが、これによつて見れば、内閣は合議制のようであります。すなわち各大臣は、案件の如何を問わず、内閣總理大臣に提出いたしまして閣議を求め、各大臣の意見に從つて閣議が決定するのでありまするが、この場合におきまして、各大臣の意見が一致しない場合は、いかにするものでありませうか。或は多數決によつて閣議を決定するものなりや。或はまた一閣僚の反對意見を固持する場合におきましては、閣議は決定しない。かかる場合においては、内閣の職權を行うことができないものでありませうか。連帶責任を有する内閣は、いかなる處置をとるのでありませうか。さらにまた内閣總理大臣は閣議を主宰するとあるのであります。總理大臣は單に閣議の議長たるに止まるものであるか、或はまた總理大臣の發言は、閣議をまとめる點において決定的となるものであるや否や、この點を明らかにしたいのであります。内閣總理大臣は、國會が指名して選定するのである。しかも國務大臣を指名することも、國務大臣を罷免することもできるものでありまするが、合議制の閣議の議長たるに止まるというに至つては、總理大臣の實質的權能はあまりにも縮小されたものではないかと思うのであります。しかしてまた國務大臣は十六人以内というのでありまするが、憲法の規定によれば、過半數は國會議員の中から選ばれなければならないのでありまするが、かりに十六人の閣僚がありとすれば、七人は必ずしも國會議員たらざるもよいのであります。總理大臣は内閣の首班であるから、國會議員でなければならない。内閣においても、國會議員たる閣僚は勢い重きをなす傾向になると思うのでありまするが、國會議員たる閣僚も、國會議員たらざる少數の閣僚も、閣議において同等の發言權があるというのは、そこに何らか矛盾があるのではないかと考えられるのであります。この點につきましても、金森國務大臣の御所見を伺いたいものであります。
第四に、内閣の官吏に關する事務處理に關聯いたしまして、司法官任免の問題でありまするが、憲法においては三權分立の精神に照らし、司法權が立法、行政と同等の重要性をもつことになつたのであります。天皇は、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長たる裁判官を任命するというのでありまするが、最高裁判所長は、あたかも内閣總理大臣と同樣の地位を占めるに至つたのであります。されば最高裁判所以下の裁判官は、いかにしてこれを任命するかという問題に逢著するのでありまするが、最高裁判所長が裁判官を任命するものであるか、或はまた行政官たる司法大臣が裁判官を任命するものであるか。行政官たる司法大臣が裁判官の獨立を認められたる場合において、裁判官の任命或は罷免の權を掌握することは、一種の矛盾ではないかとも思われるのであります。この點につきまして木村司法大臣の御所見を伺いたいのであります。甚だ簡單でありまするが、以上をもつて私の質疑を終ります。(拍手)
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=5
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006・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 安部君の御質問に對してお答えをいたします。内閣は國會に對してのみ責任を負うかというお尋ねでありますが、國會に對して責任を負うという意味合は、國會及び國會を通じて國民全體に對し内閣が責任を負う、こういう意味に私は解しております。また憲法の定める場合以外にも解散が行はれるかというお尋ねと承知いたしますが、政府は、民意を問はんとする場合にはいつでも解散し得るものである、こう私は解するのであります。また官吏の任命等の場合に、内閣において少數の大臣が反對した時にはどうするかというお尋ねでありまするが、これは内閣總理大臣の政治的統轄力によりまして自然解決せられつつあるのが今日の現状でありまして、閣議は全會一致を要するのであります。その他細かいことについては、金森國務大臣からお答えいたします。(拍手)
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=6
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007・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 安部君よりして、内閣のいろいろな制度につきまして種々お尋ねがありましたが、私に與へられました範圍の問題をお答えいたしたいと存じております。一つの根本の問題は、内閣が職權を行使いたしまする場合に閣議を經るのでありまするが、その閣議のやり方は多數できめるか、全員の一致できめるか、さような規定が内閣法の中にないが、どう解すべきものであるかという點でございました。これは憲法の改正に際しまして御説明を申し上げたこともありまするが、内閣というものは國會に對して連帶の責任を負うということは、憲法に明らかになつておりまするが、この趣旨は、全體の者が運命をともにする立場において責任を負うということであります。既に運命をともにするという立場でありますならば、おのずから各人の自己の判斷に從つた行動によつて責任を負うのでありますが故に、全體一致しなければ閣議は成立しないと解することが正當であるというふうに御説明を申し上げておきました。すなわち多數決ではなくて、すべての人の一致ということになるわけであります。そこでそれにつきまして次ぎの問題となりますのは、先ほど總理大臣からお答えになりましたが、もしも或る閣僚が意見の不統一を導き來つた時に、いかにするのであるかということであります。それは先ほど總理大臣から答えられましたように、内閣のもつておる政治力によりまして、かようなことの起らないようにすべきものであることは勿論であります。ただ憲法の上におきまして、さような場合が起りました時に、内閣總理大臣はその國務大臣を罷免するところの權能をもつておりまするが故に、その方法がこの場合に意味をもつて來ることと考えておるわけであります。
次ぎに國會に資格をもつておる國務大臣と、しからざる國務大臣というものが、何ら權能の上に差がないというのはおかしいではないか、こういう點であります。これは國務大臣たる資格は今申しましたように二色ありますけれども、働きの上におきましては、別段の差は制度上設けてございません。と申しますのは、いづれにいたしましても、全員が一致しなければ閣議は完全に成立いたさないのでありますからして、その働きの上に差を設けまする必要は全然ないものでありまするし、またさようなことは實情に適しないものと思うのであります。なお總理大臣は閣議を導くについてどういう權能があるかという點についてお尋ねになりましたが、それも先ほど總理大臣から答えられた所でありまするが、閣議を主宰するということは、閣議を開くということ、或は議案を提出するということ、そのほか閣議進行の上に必要なる措置をするという點を、當面の規定の内容としておりまするけれども、その含蓄の中には、閣議を或る方向に導くべき政治的なる效力を豫想しておる次第でございます。私の問題としてはそれだけと考えております。(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=7
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008・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 裁判官の任命に關しての、安部君の私に對する御質疑に對してお答えいたします。司法權の獨立による裁判官の特殊性に鑑みまして、改正憲法第六條によりますると、最高裁判所の長官は、内閣の指名によつて天皇が任命されることに相なつておるのであります。最高裁判所の長官以外の裁判官、これにつきましては、改正憲法第七十九條によりまして、最高裁判所の指名によりまして、内閣がこれを任命することになつております。また下級裁判所の裁判官の任命につきましては、最高裁判所の作成に基づく名簿によつて、内閣が任命することに相なつておるのであります。從いまして一司法大臣が裁判官の任命はしないことになつております。これによりまして裁判官の獨立性が保持されることと相なつておると考えるのであります。繰り返して申します。司法大臣は、裁判官の任命については、その權限を個人としては有していないということに相なつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=8
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009・安部俊吾
○安部俊吾君 只今の御説明によりまして明らかになりました。本員の質問はこれをもつて打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 吉川兼光君。
〔吉川兼光君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=10
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011・吉川兼光
○吉川兼光君 私は日本社會黨を代表する見地におきまして、内閣法に對する質問をいたします。質疑に入ります前に、現代の政治組織における内閣について、私の見解を簡單に申し述べることをお許し願いたいのであります。
新憲法の規定によりまして、内閣は行政權を行う所となつたのであります。そもそも今日の觀念におきましては、政治は從來の消極的な域を既に逸脱しておるのであります。そのことは、ただ單に個人の自由なる行動を保護するために、これを妨げる者に對して國家は權力をもつてこれを支配し、或はこれを取締るというような、さういうふうな消極的の政治は、既にとつくにその域を越えておると思うのであります。すなわち今日の政治の原則は、さらに進んで一般國民の生活を維持するとか、保障するとかいうことのために、努力が拂われなければならないのであります。言葉を換えて申し上げまするならば、民生の安定のために、政府自らが各種の文化的、或は社會的な施設を經營するとか、或は公共事業を起すとか、或は産業の助長、奬勵をはかるとか、乃至は失業問題を救濟するとか、或は勞働問題の解決に當るとか、さういうふうな國民に對する各般のサービスをなすことが、現代政治の今日の姿となつておると思うのであります。これは、英國勞勳黨の幹事長でありまして、しかもロンドン大學の政治學の教授でありまするハロルド・ラスキー氏が、現代の政治は十九世紀の警察政治から、二十世紀のサービス政治に變つておるのである、移行しておるのであるということを唱えておることにおいても明瞭であります。またアメリカにおける著名なるジヤーナリストであります所のウオルター・リツプマン氏が、「自由の方法」といいまする最近の著述の中におきまして、このことを指摘しておるのである。すなわちその著書によりますると、單なる個人的な自由の保障のみをもつてしては、眞の民主主義というものは成功し得るものではない。今日の民主主義は、或る程度まで團體主義、すなわち社會主義を加味しなければならないのであつて、現代國家の使命は、國民の各個に對し、一定標準の生活を保障するにあるということが述べてあるのであります。このことは、いわゆるラスキー教授の先刻の言葉と揆を同じうするものではないかと思うのであります、これを要するに現代の政治は、過去における、いわゆる國民生活の秩序を紊す所のものに對する警察的な取締りであるとか、或は處罰であるとか、そういうような消極的な面を越えまして、そうして國民生活の安定と向上と充足のために、政府はあらゆるサービスをしなければならないという積極政治に移行してゐるということの、何よりの證據でなければなりません。要するにこのことは、好むと好まざるとに拘らず、わが社會黨の主張いたしております所の社會主義への方向を、現在の政治は一路邁進しているというにほかならないのであります。(拍手)皆さん、かくのごとく政治が積極的な意味をもつて參りますると、必然的に行政權は非常な膨脹を來たし、複雜多岐をきわめて來ることは、免れがたい歸結でございます。これがすなわち現代國家を指して、一名行政國家であるなどと唱えられる所以が、そこに存するのであります。かかる情勢の下において、行政權行使の元締めでありまする所の内閣の任務が、いかなる意義と重要性をもつものであるかということは、おのずから明らかな所であります。すなわち内閣は、一方においては國權の最高機關でありまする國會に對して責任を負うと同時に、他方においては、直接國民大衆に接して行政事務を行う所の政府諸官廳の總元締めとなつて、眞に國政の中樞機關たるの地位を占むるわけであります。いかに國會におきましてよき決定をいたしましても、行政の總元締めたる所の内閣が、行政の執行もしくはその運營によろしきを得なかつたならば、國民生活の立場より見まする場合に、それは決してよき政治が行われているということにはならないのであります。(拍手)
このような觀點に立ちまして、今囘上程の内閣法を見る場合に、私は二つのことが言えると考えるのであります。その一つは、これをただ單に政府の組織機構の方面から見るのみでなく、國民生活の安定向上充足をはかる立場において見なければならないということであります。しかしていま一つは本法に關係する所の深い中央行政官廳法であるとか、官吏法であるとか、財政法であるとか、或は地方公共團體法等の關連においてこれを見るにあらざれば、とうてい内閣法に對する正確なる把握はでき難いものであるということであります。從つて内閣法を議會に上程する場合におきましては、すベからくこれら關係法案と同時に出されるか、もしくは少くとも相前後して提出してもらわなければ、しこうして關係法案とこもごも對比研究しながら審議することが最も望ましく感ずるのであります。それでなければ本當の正確なる把握ができないと申し上げるのであります。しかるに内閣法以外の關係法案は、何れも法案の作成がはかばかしく進まないという理由の下に、この議會への上程は困難であるということであります。從つて私がこれからここに試みまする所の内閣法に對する質疑も、何人よりもまず私自らが、甚だしく隔靴掻痒の感を抱くものであるということを申し添へておかなければならないのであります。本日の私の質問の要點は、内閣法全十二條の中で、只今の安部君の質問の中にありました所を除きまして、第一、第二、第三、第六、第十二の五箇條について申し述べたいと思うのであります。從つて殘餘の質疑は委員會に讓りたいと考へます。
さて本法案を一瞥しまして直感いたしますことは、これは單に在來の内閣官制の燒き直しに過ぎないものでありまして、何等の新しみがなく、また積極性も認められないということであります。政府はこの法案の作成に當りまして、私が先刻來申し述べておりますような民生の安定について、特に考慮したことがございましようか。恐らくは全くひたすらに政府組織の面のみを正視して、専門にその方面ばかりを見て、揚げ足をとられぬことに重點をおき、官僚一流の、きわめて消極的に内閣法を規定したのではないかと思うのであります。私はそれを非常に遺憾に思いますとともに、いうところの作文法案というものは、これではないかと思うのである。
皆さん、初めに本法構成の形式上について御尋ね申し上げたいと思うのであります。この種の法律案の例に徴しまするに、まず第一條には組織を規定しなければならぬ。そうして第二條以後におきまして、權限であるとか、責任であるとかいうものをきめるのが、普通のきめ方のように思いまするが、本法はどういうわけでありまするか、第一條にまず内閣の權限を取り上げて、第二條に組織と責任をもつて來ておりまするのは、甚だしく異例に屬するものと考えまするが、どういう理由に基づくかということをお尋ねしたい。もし外國等にそういう例があるというのでありまするならば、その例も伺つておきたいと思うのであります。それから第一條に、「内閣は、日本國憲法第七十三條その他日本國憲法に定める職權を行う。」と規定いたしてございまするが、何故にわざわざ日本國憲法第七十三條ということを特に加えなければならないかということであります。これはむしろ單に、内閣は日本國憲法の定める所の職權を行うとした方が簡潔ではないかと思いまするが、そのこともちよつとお尋ね申し上げておきたいのであります。
それから第二條の一項に、總理大臣及び國務大臣の數を十六人以内に限定してございますが、この十六人という數字の根據は那邊に存するのであるかということをお伺ひしたいのであります。先日の某新聞によりますと、その數字の出所といたしましては、吉田現内閣が現在十六人の閣員によつて構成されておるからであると報じておりましたが、はたしてそうでございますか。もしその新聞の報道することが事實といたしますならば、實にこれはおかしな話であり、また不眞面目な話であると言わざるを得ないのでございます。新憲法による内閣構成の重要性につきましては、既に申し述べた所でございますが、この重大なる行政權の總本部の機構を規定するに當りまして、たまたまその時の閣員が十六人であつたから、國務大臣の數を十六人以内ときめて置こうなどということは、實に無定見も甚だしいものではないかと考えます。また無定見なだけに止まらず、こういう大事な法律をつくる建前といたしまして、いわゆる不謹愼な態度と言わなければならぬと思うのであります。現行の行政機構については、しばしば改革の輿論が聞かれるのでありますが、その中においても勞働省、保健省、水産省等の設置の問題は、いずれも焦眉の急のように存じておるのでございますが、特に勞働省の設置問題につきましては、前の議會におきまして、同僚松岡駒吉君の質問に對して、總理大臣は確約的な答辯をいたしておるのでございますが、政府は本法の立案に當りまして、かくのごとき新世代の行政機構に對する切實なる要請について、十分なる調査研究を加え、また十分なる考慮を拂つておるかどうかということを伺いたいのであります。(「總理大臣はいない」と呼ぶ者あり)總理大臣がいない場合は、この勞働者、保健省の問題については、厚生大臣に御答辯を願いたい。また水産省の問題については農林大臣に伺いたいのでありますが、いなければやむを得ないから、政府委員で我慢いたしましよう。
次ぎは最も私の質問の重點といたしたい點でありますが、第二條の第二項に、「内閣は、行政權の行使について、國會に對し連帶して責任を負う。」とあります所であります。これは新憲法の第六十六條第三項の規定を、そつくりそのままここに引用したようでありますが、憲法の如き大法典の場合は、この文句で差し支えはありません。しかしながらこれが内閣法として見る場合には、この文句だけを竝べて見たのでは、甚だしく不備、不十分であり、意を盡さぬ點があるというよりは、かえつて誤解を招くような恐れもないとしないのであります。今本法案におけるこの條項を文字通りに解釋いたしまする場合に、「連帶して責任を負う」というのは、多分に法律上の責任のことを意味しておるように受取られるのであります。しかるに憲法第六十六條に規定してあります所の、「内閣は、行政權の行使について、國會に對し連帶して責任を負ふ。」とありまするのは、かくのごとき區々たる法律上の責任だけを對象とするものではなかろうと私は解釋しております。すなわち新憲法に定める所の行政權の行使について、内閣が全體として連帶して責任を負いまするということの意味は、内閣は常にその政治的責任を明らかにするということに重點をおかなければならぬという解釋を私はもつのである。しからばその政治的責任を明らかにするには、どんな方法がとられるかと言いますれば、それは政府はその重要な政策に對して、一つ一つ國會に對し信任を問うという形をもつて表わさるべきものであると思うのであります。このようなやり方につきましては、イギリスにおいて既に早くから現實に行われている所であります。これこそいわゆる政治民主主義の原則に立つ所の、責任内閣の眞の姿であると確信する次第であります。そこで私は内閣法第二條第二項は、政府の政治的責任を明らかならしめるためには、甚だ不備なようでありまするから、もつとはつきりした文句を挿入して、内閣の眞のあり方を規定するということに、政府は考慮を拂つておるかどうかということを承知しておきたいのであります。新憲法第六十九條には、衆議院の不信任により内閣の辭職すべきことは規定されてあります。しかしながら政府は重要な政策や法律案について、國會の信任を問うというような考えは、新憲法のどこにも全然規定されてありません。從つて私は、内閣法の中に、政府の政治的責任を明らかにする所の規定が第二條にいま少しく具體化さるべきではないかと考えるのであります。(拍手)この點につきましては、金森大臣のほかに、代議政治の大先輩であります齋藤國務大臣の御所見を伺ひたいと思うのであります。
第三條に、「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分擔管理する。」といふことが規定されてあります。別に定める所の法律と言いまするのは、目下政府において成案を急ぎつつありまする所の、中央行政官廳法を指すことであつて、すなはち同法によりまして、國務大臣は行政官廳としての各省大臣になることを意味いたします。しかしてまた各省大臣は、内閣においては、いわゆる行政事務に關する主任の大臣として、分擔管理することになるわけであると思うのでありまするが、ここで一つ尋ねたいことは、しからば金森國務大臣のような場合はどうなるかということであります。金森國務大臣は、各省大臣ではありません。しかし現内閣におきましては、憲法の改正であるとか、それに付隨する所の法律の制定であるとか、重要なる行政事務を分擔しておるのであります。かかる場合、將來は一々法律をつくつてきめるというのでありまするかどうか。これは金森大臣御自身から御説明を願いたいのであります。
第六條には、總理大臣は、閣議の決定した方針に基づき行政各部を指揮監督すると規定してあります。この規定は、私をして言わしめれば、非常に弱過ぎると思うのでございます。すなわち官僚の事勿れ主義的な考え方がまる出しになつておるのが、この條項であると考えるのであります。こんな弱いことでは、行政各部の間に多年にわたつて蟠つております所の積弊を、根本的に拂拭することはとうてい思いもよらぬと思ふのであります。政府は行政各省間における繩張り爭いから來ます所の事務の重複、食い違い等を隨所に露呈したのでありまして、國民生活が非常な損害、非常な迷惑を蒙つておりまするということに對して、この條項によつて一刀兩斷的に解決するような、強い規定に改める意思はないかということを尋ねたいのであります。内閣はこの際行政機關を根本的に調整いたしまして、そうして各省に巣食う所のセクト主義を一掃して、生々躍動するような高能率の行政官廳たらしめなければならないと思いまするが故に、ここにこの條項に對していま少しくこれを強くするの意思があるか、積極的な、現代政治に即應するように改める意思はないかということをお尋ねしたいのであります。
さらに私は、内閣に豫算局を直屬してつくる意思はないかということをお伺いしたいのであります。私は、内閣は一方におきまして法律案や政令を取扱う所の法制局があるに對しまして、他方には豫算を扱う所の豫算局というものがぜひなければならないということを考えるものでございます。新憲法におきましては、第七十三條、第八十六條におきまして、豫算の作成は、政令の制定などとともに、内閣の重要なる事務であるということが明瞭に規定されておるのであります。また國政上における所の豫算の重要性は、斷じて法律に劣るものではありません。それはフランスにおきましては、豫算を豫算法という法律として扱つておりまする所の例に見まするも、これは明瞭であります。しかるに法律案、政令等をつくりまする法制局を閣内に置いておきながら、豫算だけは大藏省というような一行政官廳の編成に委しておくということは、どうしても私は間違いでなければならないと思う。非常な變則な状態であると思ふのでございます。新憲法におきましては、豫算は閣議を通るから、これで内閣の責任というような御答辯があるかも知れませんけれども、憲法の規定しまする所は、豫算の作成が内閣の仕事であるといふことをきめております關係上、どうしましても豫算の作成のために、豫算局というものが、内閣の中に法制局と兩々相まつて、設置されなければならないものであると考えまするが、この點に對する政府の御所見を伺いたいのであります。
さらに私は、やはりこれは憲法にきめる所に從いまして、内閣に人事廳、いわゆる人事局、乃至は英米等で行われております所の官吏委員會というようなものを設置なさる必要はないかということをお伺いしたいのであります。官吏の試驗であるとか、採用であるとか、昇進であるとか、待遇であるというような一切の人事行政は、行政權の中におきましても、最も重要なるものの一つでございます。新憲法で、行政權が内閣に屬するということがはつきりきまりました以上、内閣によりまして統一的な人事行政を行うべきことは、當然過ぎるほど當然でなければなりません。このことあるによりまして、多年わが國の行政を毒しました所の、各省の勢力爭いというものがなくなる。セクト主義というものが清算されて行きます。これこそ一石二鳥ということに考えられるのでございますから、内閣に人事廳を設けることの可否につきましては、幣原國務大臣或は大村内務大臣から御答辯を聽くならば幸いであります。
最後にお尋ね申上げたいことは、終戰連絡中央事務局についてでございますが、現在は終戰連絡中央事務局は外務省の中に設置されてありまして、そこの總裁は外務大臣が兼務しておるのでございますが、これは私は甚だしき變則ではないかと考えるのであります。今日のわが國政治の現段階における終戰連絡中央事務局の役割というものは、いかに重大であるかということは、多く説明の要はない所と存じまするが、この終戰連絡中央事務局を、單なる外務省の中の一つの局のごとく扱い、しかしてその總裁は外務大臣が兼任するというやうになつておりますことは、非常な間違いではありますまいか。終戰連絡中央事務局が初めて設けられました、昨年の十月の最初の官制におきましては、總裁は專任となつておつたのであります。それが本年の四月に官制を改めまして、わざわざ終戰連絡中央事務局の總裁は、外務大臣が必ず兼務するというふうになつておりまする所の、その眞意はどういう所にあるかといふことを承りたいのであります。これにつきましては、いろいろ説をなす者がありまするが、私はここでは申し上げますまい。委員會においてはいま少しく追究申し上げたいと思うのでありまするが、要するに終戰連絡中央事務局の總裁のような重要なる仕事を、一外務大臣が兼務するように改めた。しかも最初は專任になつておつたものを、わざわざ改めたということにつきましては、どういう所にその意味があるかということを、總理大臣がいないようでありますから、幣原國務大臣から伺いたいと思ひます。大體私の質問はこの程度に止めまして、なお質問の足らない所は、委員會におきまして十分に討論いたしたいと存ずる次第であります。
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=11
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012・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 吉川君よりお尋ね下さいました澤山の問題のうちで、だいたい私からお答え申し上げまするのが便利のように思われまする點だけをより拔きまして、お答えをいたします。
いろいろ仰せになりましたが、第一に伺いましたのは、この内閣法はいわば内閣官制の燒直しであつて、積極性がない。もう少し民生安定を考慮して、しつかりしたものをつくつたならばどうかというお尋ねでありました。實は今囘の内閣法は、内閣官制の燒直しと申しまするよりも、むしろ實質におきましては、それを踏襲したものに近いような氣持が多いのであります。内閣の本質は、これは憲法において根本的に建直されておりまするが故に、その實體として現われまするものは、今までと同じような形をもつておりましても、その働きにおきましては雲泥の差を生じまするので、この部分におきまして從來の形をとつておりましても、精神が變つているということを申し上げておきたいと存じます。
次に民生の安定について考慮していないというのでありまするが、これはこの内閣法自身の問題と申しまするよりも、恐らく次ぎに適當な時期に現われまする所の行政官廳法という方面の、もう少し具體化された面に問題が生じ得るのでありまして、これはいわば基本的な概括的なものでありまするが故に、その點まで明白にする餘地が乏しいわけであります。
次ぎに技術の面におきまして、この内閣法は、第一條には權限を書いて、第二條に組織が書いてある。これはどういうわけかというお話がありましたが、組織を先に書きますのも、權限を先に書きますのも、いずれのやり方もあると思つております。ただ普通の考へ方から申しまして、この官廳は何をするものかということを第一に考えまして、次ぎにさういう仕事をするには、どういう組立てがいいか、こう考えるのが普通の順序でありまするが故に、かような趣旨に則つたわけであります。それから第一條で、憲法の第七十三條を呼び出して、そうしてそのほかに日本國憲法に定める職權を行うとあるが、七十三條をわざわざ書かなくともよいじやないかというお話でありましたが、七十三條と書きませんでも、十分意味はわかるのであります。しかし意味がわかるから簡單でよいという建前が、從來の日本の立法の根本的な缺點でありまして、多少の字は加えましても、早くわからせる方がよい。こういう趣旨からして、代表的に七十三條を掲げたわけであります。
次ぎに第二條で、十六人の數字の根據ということでありましたが、これは實際的に特別なる根據はございません。御指摘の通りであります。現在のこの姿をまず基本に致しまして、そうして内閣法を定めるのでありまして、將來の變化に應じまして、もとよりその數は變つて行くべき當然のものと存じております。
次ぎに國會に對して連帶の責任を負うという規定が、憲法とは違つて法律で書くのであるが故に、意味をもつとはつきりさせるように、強く書いてしかるべきものではないかという御趣旨でありました。これは確かに一つのお考えと存じております。しかし内閣が國會に對して連帶責任を負うという言葉には、おのずから世間一定の意義がありまするが故に、憲法に書いてありましても、法律に書いてありましても、同じことでありまして、ただ憲法に書いた上に、さらに内閣法に書くのはどういうわけか、こういう疑問がむしろ起つて來るのでありまするが、これも前に申しましたように、内閣法に書かなくとも、憲法で十分でありまするけれども、かような重要な規定は、内閣法に書いて、見る人にすぐわかるというふうにしたわけであります。さらに積極的に國會に對して責任を負うという原則に基づいて、或は或る場合には信任を問うとかいうようなことを、もつとはつきり書いたならばどうかというのでありまして、これも一つの御意見と考えておりまするが、しかし國會の働きにつきまして、それと内閣との關係におきましての複雜なる問題は、なんといつても法律で規律するというよりも、政治の運用にまつべきものでありまして、その政治の運用は、時代と事柄とに應じまして、千變萬化でありまするが故に、あらかじめこういう場合にはこうというように規定をつくることは、かえつて政治の堅實なる發展を伸ばすに不適當ではなかろうかというわけで、その點には觸れておりません。
次ぎに第三條で、主任の大臣という場合と、なんにも仕事をもつていない國務大臣と兩方ある。その場合に、私自身のような仕事をする者は、將來法律に行政事務の分擔管理を書くのか、こういうお尋ねでありましたが、これはおのおのの立場が、外に向つて何らの行政事務の擔任をしておりませんで、いわば國會と内閣との間の、或る意味において内輪の御相談として、私がかような立場をもつておるわけでございまするが故に、將來とも法律に書いて行政事務を分擔するということにはならないものと考えているわけであります。
次ぎに内閣はもつと強いものにならなければならない。にもかかわらず、この法律の第六條に示すがごとく、閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督するというふうの規定、或はまたその次ぎの規定等におきましても、なんとなく微力であつて面白くないのじやないか、こういう御趣旨であつたと思つておりまするが、それはさようではございませんので、内閣は鞏固でなければならぬということは、確定不動の原則であります。ここにありまするのは、内閣が行政各部を指揮監督するという時に、それは閣議そのもので實質を決定してやるのだ、こういう一つの手續きのような、つまり閣議そのものが指揮監督するのだ、個々の國務大臣、内閣總理大臣が監督するのではないということに伴つての規定でありまして、内閣が強いということとは、全然これは關係がないものと思つております。
次ぎに豫算局をつくる考えはないか、法制局を置くくらいならば、豫算局も當然あるべきものである。これも多年の懸案でありまして、將來とも十分考えなければならない問題と存じておりますが、ただ只今の段階の考えといたしましては、法制局でやつておりまするような法律事務は、ものによりましては蟲眼鏡で覗くようなこまかい仕事でありまして、閣議の直接の議論には不適當であります。しかしながら豫算の根本を決定するということは、そういう蟲眼鏡的のものではない。實に太い筋をもつて描かるべき構想のものでありまするが故に、これはそういう部局をつくらないで、むしろ閣僚みずからの判斷と努力とによつて、直接にこの問題を論議するがいい。こういう趣旨をもつて現在の内閣法は起案しているのでありますが、さらにそれに基づきまして、こまかい點までも内閣において十分研究するために、附屬の部局を置くがいいかどうかという問題は、今後において研究すべき問題と考えておるわけであります。
それから人事廳或は官吏廳とでもいうべき點の話がありまして、これは私に對する御質疑ではございませんが、ただ或る意味におきまして、さようなものも少しは現在の内閣――内閣そのものではありませんが、總理大臣の附屬の所に、そういう仕事をする部局があるということだけを申上げておきたいと存じます。だいたいこれだけと思つております。
〔國務大臣齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=12
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013・齋藤隆夫
○國務大臣(齋藤隆夫君) 吉川君からして内閣の責任についてお尋ねがございましたが、これはきわめて簡單なことでありまするが、一言お答えしておきます。つまり内閣の責任につきましては、憲法に規定がありまして、この憲法の規定から流れ出て、只今提案せられましたところの内閣法と相なつておるのであります。内閣の責任は、つまり内閣が辭職することであります。内閣が責任をとるというのは、すなわち内閣が辭職する。これよりほかに責任のとり方はないのでございますが、いかなる場合において内閣が辭職するものであるか。原則といたしましては、議會において多數の與黨を控えておりまする以上は、内閣は辭職すべきものではありません。けれどももし不信任案が提案されまして、それが可決した場合、この不信任案の可決が國論を代表しておるものである、こう見たならば、解散をせずしてすぐに辭職すべきものである。國論を代表しておるか否やわからぬという場合におきましては、一たび衆議院を解散して、國民の裁判を求める。すなわち解散後の總選擧は、政治に對する國民の裁判でありまするからして、その選擧の結果、與黨が勝ちましたならば、國民は政府を支持するのである。政府信任の判決を國民が下すのであります。もし與黨が負けましたならば、政府不信任の判決をば國民が下すのでありまするから、その時においては辭職をしなければならぬ。これよりほかに、政治に關して内閣は責任をとる所の方法はないと思います。私がお答えをいたしますることはこれ以上にはないと思いまするから、さように御通知を願います。(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=13
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014・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 私に御質問になつた點は、第一に内閣の中に豫算局竝びに人事局といつたようなものをおいて、そうしてこれらの行政の統一を密にする方がよかろうという御意見でありました。御意見のほどは、いかにも私もよく了解できまするが、その利害得失につきましては、十分調査を要する點もあるのでありまして、只今ちようど内閣に行政調査部というものを設けておりまして、これが内閣總理大臣の指揮の下に、いろいろこういつた行政上の機構の改革というようなものを、ここで研究いたしておるのであります。從つてこの問題は、これらの行政調査部において研究をさらに遂げることになろうと思います。
それから終戰連絡事務局というものを、何故に外務大臣の兼任にしたのであるか、こういうお話であります。今日の實際上の行政の事實を見てみますると、終戰連絡事務局の事務というものは、外務大臣の事務というものとは實は非常に密接なる關係をもつておりまして、これは一人でその兩方の任務をとるということが便宜であると考えておりましたから、これは分けない方がよろしい。外務大臣の兼任とする方が便宜であろうということで、かようにきめたのであります。そのほかに別に意味はありません。(拍手)
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=14
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015・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 人事の管理につきましてお答え申し上げます。官吏及び公吏を含めましての、所謂公務員の人事の管理は、新しい政治を打建てます上におきまして、甚だ重大な問題でございますので、この點につきましては、政府として十分なる研究を遂げまして、次ぎの機會に公務員法ともいうベきものを立案いたしまして、國會の御審議を得て、適當なるものの決定を得なければならないと考えておる次第であります。なかんづく内務省の所管いたしておりまする公吏の人事に關しましても、この趣旨におきまして多大の關心をもつて只今考究中であります。或は地方制度調査會の審議をまちまして、そこに適當なる案を得たいと努力をいたしております。いずれこれらの研究は、内閣の行政調査部におきまして統合的に調査を遂げ、先に申し上げましたような公務員法として、各位の審議を仰ぐ時期が、遠からずあるものと考えておる次第であります。(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=15
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016・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 勞働省及び社會保健省設置の問題についてお尋ねがありましたが、この勞働行政をもつと強化し、一元化するという問題につきましては、何とかしなければならぬということで、もう少し研究さしていただきとうございます。それから社會保健省の方は、勞働省なり勞働行政が別になりますれば、その殘つたものは實質上社會保健省的の仕事になる。しかし社會保健省的の仕事ばかりとはここに申し上げませんが、殘りがだいたい社會保健省的の仕事になる。しかしそれはどういう名稱にするか、どういう範圍にするかということは、まだはつきりきめておりません。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=16
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017・吉川兼光
○吉川兼光君 御答辯は私の質疑と多少食違つた點があると思いまするけれども、いずれ委員會におきまして詳細を盡くしたいと思いますから、これをもつて打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=17
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018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 竹山祐太郎君。
〔竹山祐太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=18
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019・竹山祐太郎
○竹山祐太郎君 私は協同民主黨を代表いたしまして、内閣法に關し三點簡單に質疑を行いたいと思います。この法律案は金森さんの言はれたように、憲法をだらだらと長く伸ばしただけで、たいした變りばえのした法律ではありません。從つて私はやはり金森さんの言はれたように、問題はこの法律の條文にあるのではなくて、これを總理大臣以下各大臣がいかに運用をするかという政治問題だと思います。從つてさような見地から――總理大臣はおられませんから、問題によつて幣原、金森兩國務大臣から御答辯をいただきたいと思うのであります。
第一點は、内閣が國會に對して責任を負うということでありますが、總理大臣以下大臣は、よく事柄は御存じだと思いますが、問題は今までの憲法がまるきり變つて、天皇陛下に屬しておつた官吏が、内閣の下で、國會に對する責任の下で行政權を行うのでありますが、この官吏の全體がはたしてよくこの憲法、また内閣法の下において、國民の滿足するように、ほんとうに活動ができるかどうかということが問題であります。一體官吏制度については、いかなる用意をもつておるか。これがしつかりしなければ、この法律の運用はできないと思うのであります。今までのように、國民と離れて、天皇陛下の官吏として、國民の上に立つて支配をして來た官吏は、これからはすべて内閣の下にあつて、國會に對して行政權を行うのであります。今日小さな日本になつてから、官吏はますます殖えて行く。いかに國務が複雜であるか知らないけれども、ちつとも減りそうにない。役所はますます殖えて行く。そうして國民は官吏のおかげでどれだけ生活が安定したのか、さつぱりわからない。こういうことで、國民がほんとうに官吏を信頼し得るかどうか。國民はほんとうに官吏を信頼できるような政治を求めておるのであります。でありますから、そのためには官吏の待遇の問題のごときも思いきつてやられたらよいじやないか。これは議會も、内閣の行政權を行うために必要なる官吏の優遇については、責任を感じて考えなくちやならぬ重大問題であることは勿論であります。一體官吏の優遇に對しては――優遇というよりは待遇に對しては、内閣はいかなる考えをもつておられるのか。教員また同樣であります。これをしつかりして、必要なる官吏は十分に働けるようなことにしなければ、内閣法をきめてみた所で、國民の期待は裏切られるのであります。次ぎは行政機構の問題について、大臣を十六人にきめてしまつたということも、まことに輕率だと思う。もつと根本にわたつて日本の行政機構をどう建て直すかということについて、政府はこの裏にどれだけの用意があるのか、これを伺いたいのであります。
第二點は、最近政府は各種の委員會を澤山つくり出して來ておる。これは從來とてもあつたのでありまするが、殊にこのごろの傾向としては、衆議院議員を――また或は貴族院議員もはいつておるかも知れませんが――主にした委員會をつくることが目立つて參つておる。これは國會法の中でも考慮をされておらないようであるし、内閣法においても考えられておらないが、政府はこれの性格についてはどう考えておるのか。國會に對して責任を負う内閣の行政の運用に當つて、衆議院議員を主とする委員會を、今後數限りなくつくつて行くということについては、從來の憲法ならばいざ知らず、新憲法の下においてこれをいかに考えて處理をするか。これは議會そのものも考えなくちやならぬ問題だと思いますが、第一に官僚が衆議院議員を行政の運用に使つて行くという行き方について、政府はどういう考えをもつておるか。この政府の委員會については、いくた今後十分なる檢討を加えなくてはならぬ問題があると思う。安定本部のごとき、公共事業の重大なる――前議會において論議をされた運用をはかる公共事業の委員會のごときが、これはまた逆に衆議院議員は一人も加えておらない。その代はりにというか、數名の請負の親方がはいつておる。事業を直接やらなくちやならぬ、またその豫算を審議決定をする委員會に、直接關係をもつような事業請負者を入れておる安定本部の長官の考え方がわからない。こういうことは、或る意味においては、官紀紊亂じやないかと思う。政府全體のこの委員會制度の組織運用については、十分に内閣法と國會法との關連を考えて、しつかりとやつて行かなくちやならぬと思ひますが、政府はこれに對していかなる所信をもつておられるか。(拍手)
第三は、今度の内閣法の第五條には、國會に對して總理大臣は國務及び外交に關して報告を行うということがはいつている。これは一體この運用をいかにされる考えであるか。今までの議會と内閣との關係とは違う。從つてこの報告は、總理大臣が一議會一囘の施政方針を述べるということだけで濟ませるとは考えられない。國家及び國民に對して責任を負うならば、國民が心配をしておる問題については、國會を通じて常時報告をすべきであると思う。今までの議會の状態を見ておつても、議會中に大臣及び政府委員は、聽かれたならば答辯をして、なんとかその場を切拔けて行けばよいというような答辯としか考えられない場合もある。また前議會において答辯をして約束をした問題を、できるだけ近い機會においてその結果について報告すべき義務は、當然政治的にあると思うが、さようなことはまだ聞いたことがない。この内閣法に明らかに入れられておる所の報告ということを、もつともつと重大に運用をすることが、眞に今度の新しい憲法の議會に對する内閣の大きな仕事ではないかと思う。(拍手)その代表的なものとして、まず今日直面をしておる日本の賠償の問題、國民はほんとうに日夜これに深憂をしている。新聞に傳えること以外には、國民は知ることができない。新聞に傳える賠償をそのままにやられるようなことになつたならば、われわれはどうなるかということが、國民の最も心配をしていることである。かくのごときことは、こと全部の完結をしない間においても時時報告をすべきことは、この内閣法の精神からいつても當然なことだと考えるが、これらに關しては、一體内閣はどういう考えをもつておられるか。これを一例として申し上げて、以上三點について主として内閣法の運用に關して伺いたいのでありまして、殘餘の法律の細かい點については委員會に讓つて、私はこれで質問を打切ります。(拍手)
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=19
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020・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 竹山君の御質疑についてお答えをいたします。ただ事柄が非常に政治的な性質を帶びておりまして、私の立場からお答えを申し上げますることの不適當であり、不十分であろうと思う點もありますので、それはまたしかるべき方法によつて、ほかの大臣からお答えをしていただきたいと考えております。
まず第一の御質疑は、内閣は國會に對して責任を負うのだ。その見地からいたしまして、官吏の制度或は行政機構ということについて、ほんとうに建て直しの考えがなくてはならない、こういう御趣旨でありまして、それは全く私はその通りであると考えております。もしも現在の官吏の制度及び行政機構の制度の下におきまして、これをもつて足れりとする人がありますならば、私は全く反對をしたい、かように考えておる次第であります。しかしながらこの官吏制度というものにつきましても、今までいろいろな手が加えられましても、ほんとうの改善は一つも行われておりません。極く彌縫的な、ほんの片隅なことの改善はありますけれども、それによつて國民の期待するやうな官吏制度が生まれたことを、未だかつて聞きませぬ。と申しますのは、官吏制度というものは非常に大きな澤山の人にも關係し、各種の團體の人々にも關係をいたしまして、なかなか一言、二言でもつて解決のできるものではありませんで、これは系統的な、根本的な考え方によつて補正しませんければ、實益の生じがたきものと考えておるのであります。行政機構またかようでありまして、甲の役所の所管を乙の役所の所管に置きましても、その瞬間に何か新しい氣持は起きますけれども、結局はだいたい同じような結果になつて行きやすいのであります。こういうふうな問題は、小手先ですべきものではなくて、ほんとうに本質的に考えなくてはならぬという立場におきまして、現に行政調査部をおきまして、それによつて確固たる成案を得たい、かように考えておる次第であります。
また委員會に關しますることにおきまして、重要なる問題を提供になりまして、國會に對して責任を負うその内閣の仕事に、國會議員等を主として含んでおるものをもつてそういう委員會を拵えては、おかしいではないかというふうの點からお尋ねになりましたが、或る意味におきまして、さような意味はあり得ると思うのでありますが、この委員會にも――一つに委員會とは申しまするけれども、いろいろ性質に差がありまして、或る委員會は、いわば國會の代行機關のような意味をもつておるのでありまして、今後政府が國會に對して特に責任を負いまする場合に、殊に委任立法などがあつて、命令をもつて諸般の事項をきめましたり、或は命令はなくても廣汎なる行政權に多くのことが委任せられまする場合には、國會の議員たる方々が、そういう行政に委任せられたる事項を監視せらるるということが必要になりまするので、その意味におきましての委員會に國會議員の方々がおはいりになることは、これくらい理の當然のことはないと思うわけであります。次ぎにまた政府が行政方針を立てようとする時に、大きな方針を立てるために、議員の方に御參加を願ふということも、これまたあるのでありまするけれども、これとても種々なる方面の知識を綜合して原案を立てるという立場からは、各方面の方々の知識が必要であり、その一つとして、國會に代表せられたる國民の聲をここに活用するということは、理由あると思うのであります。しかしその所定の限度を超えていたしまする所におきましては、大いなる疑問があるのでありまして、今後それらのものは最も合理的に整理をしなければならぬと考えておるのであります。具體的のものについてお尋ねになりましたけれども、この點は私はお答えをする資格が少し缺けております。
それから次ぎに一般國務及び外交等の關係におきまして、内閣は總理大臣が代表となつて國會に對して報告をしなければならぬという觀點からお尋ねがありましたが、これも憲法の豫期する所でもあり、また當然のことでありまして、今後の國會は、今まで漫然と申しました立法機關という意味ではないのであります。立法機關には相違ありませんけれども、それよりももつと根本的に、政府全體を監督するという見地があるのでありまして、その見地におきまして、必要なる報告を國會に對して政府がすることは當然でありまするので、もとより時期をよく見はからつて御報告をしなければならぬことと考えております。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=20
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021・山崎猛
○議長(山崎猛君) 竹山君、質問はございませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=21
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022・竹山祐太郎
○竹山祐太郎君 幣原國務大臣の御答辯を‥‥‥。
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=22
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023・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 私に御質問になつた點は、實は金森國務大臣から全部答えてくれておられたと私は思つておりまして、私は別にこちらで特別に御答辯を申し上げるつもりでなかつたのでありますが、その中に特に私が注意いたして承つておつたことは、外交關係について、隨時なるべく詳細に議會に報告すべきであるという點があります。これは今金森國務大臣よりも既に一應はお答えがあつたのでありますが、御承知のごとく今日におきましては、わが國はまだどの國とも外交關係は確立いたしておりません。これは他日再び必らず確立することになるべきであります。しかしながら‥‥‥。(「渉外關係」と呼ぶ者あり)今日におきましては渉外關係の問題は殘つております。これも政府といたしましては、できるだけ隨時發表し得る範圍内においては發表いたしたい積りでおります。從來もそのつもりでおつたのであります。(發言する者あり)何か特別の問題についてこういうことを言えという御註文でありますならば、これはまた別に御答辯の方法はありますけれども、今日におきまして、原則といたしましては、これはできるだけ國務について、及び外交關係について、御報告のできる範圍内においてはいたしておるつもりであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=23
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024・竹山祐太郎
○竹山祐太郎君 幣原國務大臣には、官吏の優遇問題を總理大臣に代つて伺いたかつたのでありますが、これは後にいたします。なお賠償の問題については、商工大臣はお見えでありますが、各派交渉會のお話もありますから、この際答辯は求めません。殘餘は委員會に讓ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=24
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025・山崎猛
○議長(山崎猛君) 吉田セイ君
〔吉田セイ君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=25
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026・吉田セイ
○吉田セイ君 このたび上程になりました政府提出の内閣法案に對し、既に同僚議員より質疑がありましたので、私は國民黨を代表いたしまして、次ぎの數點につき簡單に質疑を行いまして、關係閣僚の御答辯を得たいと存じます。
まず日本が敗戰によりまして朝鮮、臺灣、樺太を失い、國土が狹小となりました今日、地方分權の叫ばれております折、省の廢置分合を行つて中央集權の弊を打破し、行政權の大幅な地方委讓と、専務の簡素化竝びに經費の縮減をはかる意思が政府にありますかどうかをお伺いしたいと思います。
次ぎに第一にお伺いしたいことは、内閣の責任規定に關する事項であります。第二は決算案提出に關する事項、第三は條約締結に關する事項、第四は請願の取扱いに關する事項であります。本法案を總括的に見ますれば、明治憲法に伴つて出されました内閣官制に比して、大いに變革されたように見えますけれども、本法案をもつてしましても、なお未だ新憲法の示す民主主義の高き理想を完全に具現するに、缺くる所なきやを疑うのであります。
第一は内閣の責任規定につき缺くる所なきやを思うのであります。すなわち新憲法においては、内閣を組織する國務大臣においては、この憲法を尊重し、擁護する義務を負うものとせられてありますが、政府はこの法案作成に當り、内閣の責任感につき、いかほどの誠意熱情をもつて成文化せられたか、お尋ねしたいのであります。それと申しますのは、本法案の冒頭の第一條に、「内閣は、日本國憲法第七十三條その他日本國憲法に定める職權を行う。」とありますが、責任を負うとは書いてありません。これを他の民主主義國の行政の首班たる大統領の職務執行の場合に見まするに、至誠をもつて職務を行い、力の及ぶ限り憲法を擁護し、保全をすることと、厳肅に宣誓してあるのが例であります。しかるに本法案の第一には、憲法に定める職權のみを規定してありまして、責任を負うということを示してありませんのは、職權のみを振りかざして、責任を囘避せんとするにあらずとするも、その誠意において缺くる所なきや否やを指摘して、答辯を求むるものであります。これに對し、或は第二條に、「内閣は、行政權の行使について、國会に對し連帶して責任を負う。」と、責任を明らかにしておると言はれるかも知れませんが、しかしながらそれは新憲法第六十六條に照らしてのことでありまして、そのほかにも、内閣は天皇の國事に關する行為について、助言と承認をなす責任を負うものであるのに、何故にこの重要なる責任規定をも設けなかつたか。私はその理由につき金森國務大臣の御答辯を求めたいと思います。
第二は決算の提出に關してであります。新憲法の第九十條に、内閣の責任として、決算を國會に提出すべきことを規定してあり、また内閣官制には豫算の次ぎに決算も示されてありまするにも拘らず、本法案の第五條に決算を示さなかつた理由は何でありますか。決算の提出は豫算とともに重要であるのに、近來これを輕視する傾きがなくはないのではありますまいか。内閣の決算に對する責任を一層明確にする必要を感じ、この二字を省いた點を指摘いたしまして、その理由を大藏政務次官にお尋ねいたします。
第三は條約締結に關する事項であります。本法案の第五條の終りに、「外交關係について國会に報告する。」とあります。しかるに憲法第七十三條の第三号には、内閣の行う事務として、「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に國會の承認を經ることを必要とする。」とあります。普通一般の條約締結の承認は、或は事前たると、事後たると、その時の事情に任してもよろしかろうが、しかしながら全國民の死生興亡に關する重大な條約は、全國民の目の前において、きわめて愼重に、しかも公平に取扱われなければならないと思ひます。私ども國民は、近き將來において、當然とは申しながら、大きな戰爭の賠償のために、また永久平和確立のために、やがて締結せらるべき條約を前にいたしておりまして、わが民族の歴史の上に未だかつて味わつたことのない運命の宣告を受けんとしております今日、かくのごとき重大な條約を、内閣が事前に專斷的に處理して、事後に國會に報告して、その承認を求めるべきものではないと考えるのであります。(拍手)日本が締結する特に重要なる條約を、全國民に誠實に遵守せしめるためには、その締結に先だつて國會の承認を經べきことを本法案に規定することなくして、はたして内閣がその責任を完全に遂げ得るや否や、幣原國務相の御所見を伺いたいと存じます。
第四に、國民の請願の取扱いに關する事項であります。政治の最も重要なことは、聲なき民の聲を聽くことであります。にも拘らず、請願を受領し、これを審査する規定がないのは何故でございませうか。特に國民の聲を、首相竝びに行政官廳が、廣く、少しでも多く聽くことにつとめるのは、これは眞に民主主義の政治をいよいよ明朗化ならしむるに忠實な所以であると考えますにも拘らず、この請願に關することが書いてございませんのは、どうしたことでございませうか。
以上甚だ簡單でございますけれども、四點につきまして關係閣僚の御答辯を煩わしたいと存じます。(拍手)
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=26
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027・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 吉田君のお尋ねについてお答えを申し上げます。第一におきまして、内閣は中央集權を止めて、地方分權の精神に則つて、その働きを縮めて行くべき方向にあるべきである。領土の縮小その他に伴つて、行政全般についても縮小の考えをもつべきではなかろうか。こういうふうの御質疑であつたと一應考えておりまするが、お説のような意味は十分あると思うのであります。今後中央集權は次第に減少するでありましよう、しかして地方分權がはつきりして來るでありましようし、いろいろな行き道をとつて行くのでありまするが、内閣の制度それ自身はそういうことに關係なく、やはり中心の大綱をそこに集めて來るような意味におきまして存在しておりますので、この内閣法自身はそういう具體的なことに關係なく、大きさということを考えませんで、制度そのものとしてできておりまするが故に、御趣旨の點ははつきり現われておりませんけれども、精神におきましては、そういう方向に必要に應じて實現せられて行くものと考えておるわけであります。
次ぎにその點ではなかつたですが、責任を負うという意味の規定がはつきり書いてないというふうの御趣旨でありましたが、これは憲法の九十九條に、内閣がこの憲法を擁護する責任がはつきり書いてあるのでありまして、それを一々繰返しますということも、あまりにも煩瑣であるが故に、この内閣法はさような規定を盛つていないのでありますが、精神におきましては、内閣を構成すべき者は、必死の力をもつて、あらゆる努力をその職責の遂行に注ぐべきことは當然のことと考えております。
次ぎに、決算の問題として、内閣が提出すべき議案の中に法律、豫算は掲げてあるけれども、決算のことは書いてない。それは決算を輕視したものではないか。こういうふうのお尋ねでありましたが、別に決算を輕視する趣旨ではないのでありまして、憲法の規定の示す所によつて、これを國會に提出することはもとよりのことでありますけれども、條文に必らずしも全部を擧げるということは必要がありませんので、その主なるものを掲げたために、決算の文字をここに現わす餘地がなかつたわけであります。
次ぎに條約につきまして、條約の締結については、あらかじめ國會において十分論議する機會を與うべきものであり、外交上の事後の報告というような方法をもつてすることは、責任を盡くす所ではない、こういうふうの御趣旨でありましたが、その通りと考えております。從つて條約の締結につきましては、憲法の示しまするがごとく、これを國會の承諾に付するのであり、原則としてそれは事前に國會の議に付せらるるのでありますが故に、お尋ねの點はほぼ支障なく動くものと思うのであります。ただ稀に、きわめて稀有なこととして、條約につきまして國會の事後承認と場合があるのでありますが、これは國交關係と國内關係とが錯綜しております間に、やむをえざるさような場合もあることを免れないことと考えております。
次ぎに請願につきまして、憲法は請願の權利を認めておるに拘らず、この内閣法にはそれに關する規定がないという點について御質疑になりました。それも確かに理由ある所と一應は考えるのでありますけれども、國會に對する請願の關係は、これは多分國會法の面におきまして適當な規定が設けらるると思いますが、そのほかの場面におきましての請願につきましては、それは内閣と直接に關係があることではございませんので、請願に關しましては、別にこれを解決する所の法律が將來起案せられまして、國會の、或は議會の議を經ることになろうかと考えておるわけであります。(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=27
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028・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 内閣が條約を締結するについては、事前に、また場合によつては事後に國會の承認を經ることを要するとあるが、重大な問題については、なるべく事前に承認を求めるようにしてもらいたいという御希望であります。この點につきましても、只今金森大臣よりお話がありましたので、それで趣旨は御諒解下さつたことと思います。要するに原則の問題としては、事前に承認を經るようにいたしたいのであります。しかし場合によりましては、どうしてもそのいつたようなことをしていると機宜を失するというような場合もあり得るのであります。從つてこの事前及び事後という二つの場合があり得ることを、この新憲法には規定いたしてあるのであります。要するにこれは憲法の運營の問題でありまして、何も内閣法の中に規定すべき問題ではないのであります。内閣が事務を行つて行く上におきましては、この憲法の趣旨によつて行つて行くということは、もとより明瞭なことであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=28
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029・吉田セイ
○吉田セイ君 殘餘の質疑は委員會に讓りまして、私の質疑はこれをもつて終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についておはかりいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=30
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031・鈴木仙八
○鈴木仙八君 本案は議長指名三十六名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=31
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032・山崎猛
○議長(山崎猛君) 鈴木君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=32
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033・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
これにて議事日程は議了いたしました。次會の議事日程は公報をもつて通知いたします、本日はこれにて散會いたします。
午後二時五十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00719461207&spkNum=33
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