1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十二月十二日(木曜日)
午後一時四十一分開議
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議事日程 第八號
昭和二十一年十二月十二日
午後一時開議
第一 皇室経済法案(政府提出) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次ぎの通りである。
皇室経済法案
(以上十二月十日提出)
(改第一號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案
(改特第一號)昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案
(以上十二月十一日提出)
一、議員から提出された議案は次ぎの通りである。
國立觀光院設置に關する建議案
提出者 吉田セイ君
外務省内に國際婦人親善協會設置に關する建議案
提出者 吉田セイ君
保健託兒所設置に關する建議案
提出者 吉田セイ君
志布志線北郷驛、宮崎間鐵道建設即時着工に關する建議案
提出者
伊東岩男君 鹿島透君
川越博君 大橋喜美君
森由己雄君 川野芳滿君
宮崎縣兒湯郡川南村に宮崎農林專門學校綜合農場設置に關する建議案
提出者
鹿島透君 伊東岩男君
大橋喜美君 川越博君
川野芳滿君 森由己雄君
宮崎農林專門學校の大學昇格に關する建議案
提出者
鹿島透君 伊東岩男君
大橋喜美君 川越博君
川野芳滿君 森由己雄君
宮崎縣に國立開拓研究所設置に關する建議案
提出者
鹿島透君 伊東岩男君
大橋喜美君 川越博君
川野芳滿君 森由己雄君
宮崎縣内國有林野拂下に關する建議案
提出者
伊東岩男君 鹿島透君
大橋喜美君 川野芳滿君
川越博君 森由己雄君
日ノ影、高森間省營バス運行に關する建議案
提出者
伊東岩男君 鹿島透君
大橋喜美君 川越博君
川野芳滿君 森由己雄君
宮崎高等女學校に女子專門學校併設に關する建議案
提出者
大橋喜美君 伊東岩男君
鹿島透君
内務省の直營により小丸川改修工事速成に關する建議案
提出者
伊東岩男君 大橋喜美君
鹿島透君
富島、椎葉、南郷間省營バス運行に關する建議案
提出者
伊東岩男君 鹿島透君
川越博君 大橋喜美君
川野芳滿君 森由己雄君
東京、山形間の準急行列車を秋田迄延長に關する建議案
提出者
和崎ハル君 丸山修一郎君
大井直之助君 島田晋作君
老幼婦女子に下着用綿布類及び縫糸の特配要望に關する建議案
提出者
和崎ハル君 菅原エン君
森山ヨネ君 大石ヨシエ君
本多花子君
(以上十二月十日提出)
一、農漁村電話建設國策促進に關する建議案
提出者
伊東岩男君 鹿島透君
大橋喜美君 川越博君
森由己雄君 川野芳滿君
國鐵宮崎、小林線建設促進に関する建議案
提出者
川野芳滿君 伊東岩男君
大橋喜美君 川越博君
森由己雄君 鹿島透君
(以上十二月十一日提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=0
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001・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) これより會議を開きます。日程第一、皇室経済法案の第一讀會を開きます。吉田内閣總理大臣。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 皇室経済法案(政府提出) 第一讀會
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皇室経済法案
皇室経済法
第一條 皇室の公用に供し、又は供するものと決定した國有財産(以下皇室用財産という。)は、これを國有財産法の公用財産とし、これに関する事務は、宮内府で、これを掌る。
國有財産を皇室の公用に供し、又は供するものと決定しようとするときは、皇室経済会議の議を経ることを要する。皇室用財産の用途を廃止し、又は変更するときも同樣とする。
皇室用財産は、收益を目的とするものであつてはならない。
皇室経済会議は、五年を超えない期間ごとに皇室用財産に関し、必要な調査を行い、これを内閣に報告しなければならない。
前項の報告があつたときは、内閣は、その内容を國会に報告しなければならない。
第二條 相当の対價による賣買等通常の私的経済行爲に係る場合その他左の各号の一に該当する場合においては、その度ごとに國会の議決を経なくても、皇室に財産を讓り渡し、又は皇室が、財産を讓り受け、若しくは賜與することができる。
一 別に法律で定める一定價額を超えない財産の授受に係る場合
二 前号の一定價額を超え、別に法律で定める一定價額を超えない財産の授受で、皇室経済会議の議を経たものに係る場合
前項各号の規定は、同一の者の間において、一年以内に、二囘以上財産の授受が行われる場合には、その價額を通計したものについて、これを適用する。
一年に滿たない期間内に、第一項第一号又は第二号の規定により皇室に属する同一の者のなす賜與又は讓受に係る財産の價額が、別に法律で定める一定價額に達するに至つたときは、一年の期間が滿了するまでのその後の期間において、その者のなす財産の賜與又は讓受については、これらの規定を適用しない。
第三條 予算に計上する皇室の費用は、これを内廷費、宮廷費及び皇族費とする。
第四條 内廷費は、天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるものとし、別に法律で定める定額を、毎年支出するものとする。
内廷費として支出されたものは、御手元金となるものとし、宮内府の経理に属する公金としない。
皇室経済会議は第一項の定額について、変更の必要があると認めるときは、これに関する意見を内閣に提出しなければならない。
前項の意見の提出があつたときは、内閣は、その内容をなるべく速かに國会に報告しなければならない。
第五條 宮廷費は、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるものとし、宮内府で、これを経理する。
第六條 皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、一時金額により皇族の身分を離れる際に支出するものとする。その年額又は一時金額は、別に法律で定める定額に基いて、これを算出する。
年額による皇族費は、左の各号及び第三項から第五項までの規定により算出する額とし、第四條に規定する皇族以外の各皇族に対し、毎年これを支出するものとする。
一 親王に対しては、左の金額とする。
既婚者 定額相当額
成年未婚者 定額の二分の一に相当する額
未成年未婚者 定額の四分の一に相当する額
二 親王妃に対しては、定額の二分の一に相当する金額とする。
三 内親王に対しては、左の金額とする。
成年者 定額の二分の一に相当する額
未成年者 定額の四分の一に相当する額
四 王、王妃及び女王に対しては、夫夫親王、親王妃及び内親王に準じて算出した金額の十分の七に相当する金額とする。
既婚の親王及び王に対しては、婚姻が解消した後においても、從前と同額とする。
攝政たる皇族に対しては、その在任中は、定額の五倍に相当する金額とする。
同一人が二以上の身分を有するときは、その年額中の多額のものによる。
一時金額による皇族費は、皇室典範の定めるところにより皇族の身分を離れる皇族に対し、一時にこれを支出するものとし、その皇族について第二項、第三項及び前項の規定により算出する年額の十五倍に相当する金額を超えない範囲内において、皇室経済会議の議を経て定める金額による。
前項の規定による一時金額の算出に関しては、未婚又は未成年の親王又は王は、既婚の親王又は王の例に、未成年の内親王又は女王は、成年の内親王又は女王の例によるものとする。
第四條第二項の規定は、皇族費として支出されたものに、これを準用する。
第四條第三項及び第四項の規定は、第一項の定額に、これを準用する。
第七條 皇位とともに傳わるべき由緒ある者は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。
第八條 皇室経済会議は、議員八人でこれを組織する。
議員は、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、大藏大臣、宮内府の長並びに会計檢査院の長を以て、これに充てる。
第九條 皇室経済会議に、予備議員八人を置く。
第十條 皇室経済会議は、五人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
皇室経済会議の議事は、過半数でこれを決する。可否同数のときは、議長の決するところによる。
第十一條 皇室典範第二十九條、第三十條第三項から第七項まで、第三十一條、第三十三條第一項、第三十六條及び第三十七條の規定は、皇室経済会議に、これを準用する。
大藏大臣たる議員の予備議員は、大藏次官を以て、これに充て、会計檢査院の長たる議員の予備議員は、内閣総理大臣の指定する会計檢査院の官吏を以て、これに充てる。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律施行の際、現に皇室の用に供せられている從前の皇室財産で、國有財産法の國有財産となつたものは、第一條第二項の規定にかかわらず、皇室経済会議の議を経ることなく、これを皇室用財産とする。
この法律施行の際、從前の皇室会計に所属する権利義務で國に引き継がるべきものの経過的処理に関し、必要な事項は、政令でこれを定める。
この法律施行の日の属する年度における内廷費及び皇族費の年額は、月割による。
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〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=2
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003・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 皇室經濟法案につきまして提案の理由を説明いたします。この皇室經濟法案も、臨時法制調査會の答申を基礎といたしまして立案いたしたものであります。その内容は、主として日本國憲法第八條及び第八十八條に基づいて規定することを要する事項を中心といたしまして、皇室の經濟關係に關する事項を取りまとめて規定いたしたものであります。
その主要な點は、第一、皇室の公用に供する國有財産を皇室用財産といたしまして、これに必要な事項を規定いたしております。第二に、日本國憲法第八條によりまして、皇室に關する財産の授受等は國會の議決を要するのでありまするが、その授受の性質、または財産の價額如何等によりましては、その都度一々國會の議決を經ることを要しない旨を定めております。第三、日本國憲法第八十八條によりまして豫算に計上する皇室經費を、内廷費、宮廷費、皇族費との三つにいたしまして、そのおのおのにつきまして必要な規定を設けております。第四、皇位に特に由緒の深いものは、一般の財産相續の原則によることなく、皇位とともに皇嗣がこれを受けらるべき旨を規定いたしております。第五、この法律を運營するために必要な事項の審議機關といたしまして、皇室經濟會議を設けておる等のことであります。御審議の上御協贊を願います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=3
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004・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 質疑の通告があります。順次これを許します。森三樹二君
〔森三樹二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=4
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005・森三樹二
○森三樹二君 私は日本社會黨を代表いたしまして、皇室經濟法に對し政府に質問をいたすものであります。本法は、憲法第八條竝びに第八十八條に基づきまして提案せられたものでありますが、第九十議會におきましても、この皇室財産に關しましてはいくたの問題が提起されましたことは、各位の御存じのことであります。從來わが皇室の立場よりいたしまして、わが日本の國土竝びに國民は皇室の私有であつたかのごとき觀念も存在いたしたのでありますが、新憲法の公布によりまして、今や皇室財産は國有に歸屬するということが、憲法の明文に明瞭に謳われることになつたのであります。この意味におきまして、國民全體はこの皇室財産がいかなる形において國有に移され、皇室の經濟がいかなる形態になるかということに關しましては、多大なる所の關心を持つておるのであります。私はこの意味におきまして、今後皇室財産が國有に歸屬することにつきまして、現在皇室財産が國有に移管せられますまでの過程におきまして、既に國有に移管せられましてからは、その殘つた皇室の御自身の財産につきましては、皇室經濟會議の議を經て決せられるのでありますが、その移管する過程を決定する所の機關は、未だ設置するの運びになつておらないのであります。政府はこの機關の設置に當りまして、いかなる所の審議機關を設置する意思ありや否や。われわれは、皇室財産から國有に移るその財産の範圍を決定すべき所の審議機關をつくるに當りまして、單なる官僚のみの機關をもつてしてこれを決定することには反對せざるを得ないのであります。すべからく民主的な機關を設けまして、貴族院、衆議院を構成する所の人々をその機關の中に入れまして、民主的な機關によつてこの限界を確定しなければならないと考えるのでありますが、これにつきまして政府としてはいかなるお考えを持つておられるか、吉田總理竝びに金森國務大臣に對して御質問する次第であります。
第二點といたしまして、この皇室經濟法を通觀いたしますと、國有財産に歸屬した殘りの皇室の私有財産に關しましては、皇室經濟會議の議を經ることになつておるのでありますが、皇室經濟會議の議を經ましたことは國會に報告することに規定せられておる面もございます。すなわち本法の第一條末項には、國會に報告することを規定し、また第四條の末項にも、國會に報告することを規定してあるのであります。これは國會が國民の代表機關であるという當然の規定であると私は思うのでありますが、しかしながらこの草案の内容を檢討いたしますと、未だもつて國會に報告すべき點が多々あるように私は考えるのであります。たとえて申せば、本法案の第一條の第二項には、皇室財産から國有財産になつたその中から、さらに皇室の用に供する所の公用財産を決定し、またこれを廢止し、變更することにつきまして、皇室經濟會議の議決を經ることになつておるのでありますが、これらにつきましては、私は一層國會に報告する所の必要があるということを痛感してやまないものであります。第一條の四項の規定に對しましては、國會に報告することを規定しておるのでありますが、それならばなおさら第一條第二項の公用財産の決定に對しましても、皇室經濟會議の議を經ましたことは、國會に報告することが當然であると私は考えるのであります。すなわち私は原則といたしましては、皇室經濟會議の議を經ましたる所の事項は、國會に報告することが必要であると考えるものであります。政府は、皇室經濟會議の議を經たることを一々國會に報告するということは事務の煩雜が生ずるために、かかる規定をしなかつたのだというようなお考えもあるかも知れませんが、私は民主化された明朗なる皇室の經濟に關しましては、すべからく國民の代表機關であります所の國會には、でき得る限りこれを報告することが必要であると考えるものでありまするが故に、私は皇室經濟會議を經ました所の事項は、國會に報告することを必要とする所の條文を規定しなければならないと、かように考えるのでありまするが、これに對し、吉田首相竝びに金森國務大臣はいかなる御所見があるのでございますか、お伺いいたしたいのであります。
次ぎに私は、皇室財産がこの法案によりまして國有に歸屬することになつておるのでありますが、國有に歸屬すべき財産と、しからざる財産との限界は、いかなる點によつて區別するのであるかということをお伺いしたいのであります。抽象的なる所の概念では、容易に決定することはできない。これに對しまして政府はいかなる所の限界を確定することをお考えになつておられるのでありましようか。萬一この限界が明瞭にされない場合には、新しい憲法によつて、皇室財産はすべて國庫に歸屬するという民主的なる規定ができましても、實際の效果を上げ得ないということになるのでありまして、これに對しましては、政府は周到なる所のお考えめぐらさなければならないと私は考えるのでありますが、政府の御所見はいかがなものでありましようか、關係大臣の御答辯をお願いする次第であります。
第四點といたしまして、皇室財産が相當厖大なるものであるということが一般國民に考えられているのでありますが、その内容はいかなるものであるかということを、この本會議の議場を通じて政府よりお伺いしたいのであります。國民は、從來皇室が厖大なる所の財産を擁せられ、財閥地主的存在であるというような從來の觀念があつたのでありますが、新しい民主的な皇室は、こうした財閥的立場より解放せられて、全く明朗化された所の皇室であるのでありまして、その經費は擧げて國民の租税によつて賄うのでありまして、皇室が厖大なる財産を擁する必要は何ら認めないのであります。從來皇室は、皇室自律主義の建前によりまして厖大なる財産を擁せられ、その財産によつて天皇を家長とした所の皇族の御生活を賄つて參つたのでありますが、今や國家が皇室の財産を移管し、皇室の御生活は國會によつて規定された所の豫算によつて決定せられるのであります。從來皇室がもつておられました所の財産が、いかなる程度のものであるかということは、國民全體が非常な關心をもつておるのでありまして、單なる委員會の立場でなく、本會議を通しまして、皇室がもつておられる所の山林、田畑、未開地、多數の株式、社債、公債等の有價證券、これらはその專門的立場において評價いたした數額はいろいろあるのでありますが、それはかなり相違の點もありますので、この際皇室經濟法案を議定するに當りまして、政府より明細なる所の内容を私はお尋ねいたしたいのであります。かくすることによりまして、われわれはその皇室財産より國庫に歸屬しまする所の財産の利用等につきましても、またその運營につきましても、十分なる考慮をめぐらすことができるものであると考えるものでありまするが故に、關係大臣よりその内容を詳細にお答えあらんことを希望いたしてやまない次第であります。
最後に私は、只今申上げました所の皇室財産に屬するもののうち、その不動産でありまする所の山林は、いかなる程度において過去現在におきまして利用されておるのであるか。皇室財産に屬しておる所のこれらの山林は、一日も早くこれを伐り出しまして、戰災に惱める者、引揚げによつて住宅に惱める者、これらに對し一刻も早く住宅を建設することは、急務中の急務であると考えるのであります。(拍手)万一政府が、皇室財産が國有に歸することが目捷の間にあるという前提から、もしもこれらに對し山林の林業政策を等閑に附することがあるならば、われわれはこれを放任することは絶對できないのでありまして、明確なる所の林業政策を依然として確立し、これを繼續しなければならないものであると考えるのであります。
また未開地の點につきましても、皇室財産であります所の未開地の利用というものは、いかなる程度に利用されておるか。これにつきましても今後五六箇月の間に國有財産になるのであるから、現在はこれに手をつけない方がいいというようなお考えがあるならば、これは重大なる間違いでありまして、たとえ皇室財産は國有財産に歸屬するにいたしましても、未開地の開發は一刻も等閑視すべきものではなく、これに對しましては、政府は速やかに開發の計畫を立てられ、皇室財産から國有財産にこれらの未開地が移轉せらるるにいたしましても、繼續的に開墾地を開發して行く所の計畫をお立てにならなければならないと考えるのでありまするが、これに對して政府は、過去現在におきまして、いかなる程度に山林、原野等の利用をされておるのでありますか。關係大臣より明確なる御答辯をお願いしてやまない次第であります。
以上五點につきまして、簡單でありますが、私の政府に對する所の質問の諸點を述べまして、御答辯を希望し、私の質問を終る次第であります。(拍手)
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=5
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006・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 森君の御質疑の點について、五つの項目を順次お答えいたしたいと存じます。
第一にこの皇室財産が國有に移るその過渡期において、何か必要なる機關を設けて、公正にこれに關する審議をせしめるかどうか。こういう御質疑でありました。御覽のごとく今囘提出の法律案におきましては、その過渡期のことをなすべき機關は設けられてございません。これは經常的なる皇室財産の管理につきまして、必要なる機關を法律の中に加へたから、さような結果になつております。五月三日にこの憲法が施行せられまする以前におきまして、皇室關係の財産が國の方に移ります關係の個々の調査は、相當周到なる研究を必要とするものがあると存じまして、これは目下その研究を進めてはおりますけれども、なおこれに對しまして何らか適切なる機關を設くることが必要ではなかろうかと考えておりまするが、この法律直接の問題ではないのであります。
それから第二に、皇室經濟會議がその議に付します多くの事項について、國會に報告する途を廣く定むべきものではないかという御意見でありました。それは確かに左樣な面もあると思ひますが、この法律自身は、皇室經濟會議が絶對的に政府に報告しなければならぬという範圍を規定したのであります。それ以外の面におきましても、皇室の財産に關係いたしまする重要な問題につきましては、國會に何らかの連繋をとることは、もとより必要なることと思うのでありまして、事の大小樣々ありまするために、原則的にはこれを否定することができないのでありまするが、報告を必要としまする事項は、政府より國會に對してこれを報告いたすことにしたいと考えております。
第三に、國有に移るものと、國有に移らざるものとの標準如何ということであります。これは憲法におきまして既にその内容が文字の上にはつきりしておりまして、解釋上きわめて明瞭になつておるのでありますが、だいたいの筋を申しますれば、現に皇室に屬しておりまする財産は、純粹の皇室各員の方々の私有財産と見るべきものはこれを殘す。しかして國に移しまするものは、皇室財産の中におきまして、公の面をもつておるもの、すなわち國家の働きのために用いられ、またはそれの財源として管理せられたものを國に移すだけであります。その國に移しました國有財産の中におきまして、また二つの區分をつくりまして、皇室が國の象徴として現實にお使いになるものを、この法律案が豫定しておりまするような皇室公用財産として、その他のものは、完全に國にその管理も所有もともに移る所の國有財産として、その標準はきわめてはつきりしておるわけであります。
第四に、皇室財産は相當厖大であるから、その内容を議會を通して表明せよという御主張でありました。元來皇室の財産の内容が祕密であるという理窟はございません。それが世間にわかりませんことは、いろいろな臆測を招くのであつて、決して好ましいことではないと思うわけであります。これは何らかの方法をもつて世に明らかにすることが正當と思われますけれども、現在財産税施行規則等との關係におきまして、財産について評價を進めておりますために、それらの結果を取りまとめまして、近い時期に發表ができるものと思つておりますが、ただ一口に現在の財産がどのくらいあるかということを申しますると、これは計算方法がいろいろありまするから、もとより確たるものではありませんけれども、だいたいとして十五億六千萬圓程度というふうに、今の所では計算をいたしております。
それから第五に、皇室財産が國へ移管された後の措置如何というふうの御主張でありましたが、皇室に屬しておりまする不動産、殊に山林、原野の類につきましては、これが國有に移りますれば、國の一般のかような財産の管理と同樣に、もとより從前の經過をも念頭にはおきまするけれども、また新しき觀察をも加えまして、國の管理の目的に合うように處置して行かなければなりませんので、これに對しましての開發、運營ということにつきまして最善の努力をいたしますることはもとよりのことでありまして、私はそれを直接所管する職權をもつておりませんので、具體的にお答えはできませんけれども、ものの筋として當然に考えておる事柄でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=6
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007・森三樹二
○森三樹二君 只今の御答辯によりまして大體はわかつたのでありますが、なお詳細なる質問は委員會においていたすことにいたしまして、私の質問はこれをもつて打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=7
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008・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 酒井俊雄君
〔酒井俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=8
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009・酒井俊雄
○酒井俊雄君 私は協同民主黨を代表いたしまして、本皇室經濟法案について政府に對し質問をいたします。
質問の第一點は、憲法第八十八條によりまして、皇室財産はすべて國に移るのでありまするが、その皇室財産の内容如何ということについてお尋ねをしたいと思います。但し先ほど社會黨の森代議士から質問がございましたので、重複する部分を省きましてお尋ねをしようと思います。皇室財産は、現在の規則によりますると、皇室財産令なるものによりまして主として規定されておるのでありまするが、その皇室財産世傳御料と普通の御料とにわかつておりまするが、世傳御料にいたしましても、普通の御料財産にいたしましても、不動産はもとより、動産につきましても、一々臺帳乃至は目録がございまして、世傳御料に關する臺帳は圖書寮においてこれを尚藏しておるはずでありまするし、普通御料に屬する所の財産は、帳簿または目録を設けまして、主管部局がこれを保管しておるはずであります。先ほど金森國務相の御答辯によりますると、これらの厖大なる財産をにわかにここに國民の前に表示するには、相當な困難がある、期間的に困難があるというような意味の御答辯でありましたけれども、或はその財産の評價につきましては、いろいろな評價基準のとり方があり、全體の價格の見積りを出すというような計算は困難かもわかりませんが、財産そのものの内容を示しますることは、これらの帳簿を出しますれば、直ちに明らかとなる事實であるのでございます。しかもそれらの帳簿には、財産の種目は勿論、その内容に關する大要、或はこの財産を皇室が取得いたしました原因、由緒ある物件につきましては、その由緒の點まで書いてあるはずでございます。だから政府にして清明なる心をもち、眞に國民の前に一刻も早く明らかにしようという意思さえあるならば、いつだつてこの臺帳竝びに目録は國民の前に示すことができるはずだと私は思うのであります。だから、こうした雲の上にかつてとざされておりました皇室財産、中には疑惑の目をもつて、これを眺めておつた國民もあるはずでありますから、今これを直ちに出されることはわけのないことであると思う。しかも國民の誤解をここに解いて清明に進むことは、眞に政府のふむべき義務であると私は考えるのであります。そういう意味におきまして、世傳御料に屬する財産、なお普通御料に屬する財産の臺帳乃至目録を提出される意思ありやなしやということを質問いたします。
次ぎに、皇室財産が國家に歸屬いたしまして後は、この財産をいかなる方途にこれを用い、いかなる處分をする構想をもたるるかということをお尋ねしたいのであります。皇室財産の中には、實に厖大なる御料林あり、鑛區あり、耕作可能の原野あり、或はその他多くの林野――資源開發の點から申しましても、失業救濟事業を起す對象としてのものという立場から考えましても、これらの皇室財産が國有に移りましてからの、將來のその處分の仕方というものは、實に重大なる影響のあるものだと考えるのであります。
かかる立場におきまして、國家はこれを死藏するというようなことになりまするならば、實にその國有に移した意義の大半は、ここに拭い去られるものだと思うのでありまするから、今からその計畫に對して大體の方向、方針をお示し願いたいと思うのであります。
次ぎに、憲法第八條の條文から見まして、なおまた本法案第二條の條文から見まして、皇室は權利義務の主體となり得る立場が規定されており、はつきりしておるのであります。かかる見地に立ちますと、皇室は一つの法人格を有せらるるものだということになるのでありまするが、今までの皇室自治の立場から皇室が運營されて來ました過去の構成を見ますると、皇室の法人格、皇室の構成というものは、まことに特殊の立場のものでありましたが、將來この皇室が權利義務の主體として立ちまする所の法人格のその性質、公法人なりや、私法人なりや、或はいかなる特殊的意味をもつ法人なりやということによりまして、本法案の皇室、公用に供する所の國有財産の取扱い、國有財産に對する皇室の權利義務の關係というようなものが、ここにその性質が明らかになつて來ると思うのでありまするから、かかる意味において、權利義務の主體であるこの皇室の法律上の構成、その本質はいかなるものであるかということを、ここにはつきりお示しを願いたいと思うのであります。(「概念法學は廳かれぬ」と呼ぶ者あり)只今概念法學は聽かれぬといふ私語がありましたが、皇室の公用に供する財産は、申すまでもなくこれは國有のものでありまするのて、この皇室の法律的構成によりまして、その公用に供する所の關係がいかなる關係であるか、使用權であるか、賃貸借であるか、或は法律上特別な構成をもつ所の法律關係に立つものかというようなことが變つて來るわけであります。大いに意義のあるわけであると思いますから、御答辯を願いたいと思ひます。
次ぎにお尋ねいたしたいのは、皇族費についてでありまするが、この法案を見ますると、皇族御個人に對しまして、御個人を標準といたしまして、この皇族支給費なるものが算定される建前になつておるのでありまするが、皇族の御生活の立場から申しまして、また皇族の御一家の御地位を保たれる立場から申しまするならば、その支給額の基本のとり方は、各皇族の御家庭を基本といたしまして、御家庭に對して基本額を支給し奉る、そうして人數の多い御家庭に對しましては、御人數によつてこれに増し金を奉るという立場に行きませんと、皇族の地位を保つ上から、皇族の經濟をお立てになる建前から、これがぴつたりとそぐわない感じがするのでありまするが、政府におきましては、その基本なる基準を皇族の家庭にもつて行かれる意思ありやなしやということをお伺いしたいのであります。と同時に、この支給金なるものの目的、これはだいたいこの法案によりまして明らかでありますが、皇族には、一般國民と違いまして特に皇族たる品位をお保ちになる必要があり、これは當然なる皇族の御身分に附着した事柄でございまするから、この品位を保たれるためにかかる支給金を差し上げるというのが本旨になつておるのであります。この本旨から考えてみますると皇族の生活費をここに奉るということが本質じやないと私は考えております。だから民主主義のあの憲法の大原則の立場から申しましても、皇族といえどもやはり國民の御一人でございます。だから生活の基本としての經濟關係は、あくまで皇族の方々が、國民として、經濟人として、普通の法規に從い、普通の經濟關係を營んで行かれるということが原則でなければならないと私は考えるものであります。勿論皇位繼承をなさるお方とか、皇后陛下とかいう特別な御立場にお立ちになる方は別でありますが、普通の皇族につきましては、あくまで國民とともにある、國民とともに經濟生活を營むという立場にお立ちになることが、將來の皇族としての經濟上のあられ方だと私は考えるものであります。そういう立場からいたしまして、皇族に關する種々なる自由の制限は、ここに撤廢をしなければならないと思うものであります。御存じの通り、皇族に對しては東京に住居をもたなければならぬというような制限を設け、或は商業を營んではならぬ、營利法人の社員となつてはならぬ、任官によるほか報酬を受くる職に就いてはならない、公共團體の吏員、議員になつてはならないというような、現在から考えまするならば、全く人間の本質的なる權利を束縛されたごとき多くの拘束があるのでありますが、これらのすべての拘束は、ここに全部一掃いたしまして、皇族に對しましても、あくまで自由なる國民としてその經濟生活を營まれることの御立場をもつていただかなければならないものと思うのであります。でありますから、かかる特權に對しては、根こそぎこれを拭い去る用意ありや否や、これをお尋ねするのであります。
次ぎに皇族に對しまして、今申しました種々なる經濟關係における拘束を打破するとともに、皇族特權、いわゆる財産上におきまする皇族に認められた特權も、ここに打破しなければならないと思うのであります。皇族に對する治産能力、民間で申しまする禁治産、準禁治産というような宣告に對しましても、過去の皇室におきましては、皇室自治なる建前を原則といたしまして、樞密顧問あたりへ諮詢いたしまして、天皇がこれをなさるという立場でありました。あらゆる點におきまして、皇族は皇室自治の枠の中に收められ、雲の中にとざされておられた立場でありましたが、かかる經濟上における、或は個人の身分上における立場につきましても、皇族をかかる拘束から除きまして、自由人として立派にお立ちになる立場をおつくり申し上げなければならぬと思います。從つて禁治産或は準禁治産というような、經濟上と身分上と交錯しておるような拘束につきましても、一般民法その他普通法に從うべき用意ありや否やということを政府に伺いたいと思うのであります。
それと同時に皇族の家督相續皇室財産令で申しますると、遺留財産と稱しておりましたが、いわゆる皇族の家督相續、遺産相續、これらの點につきましても、あえて國民と區別をしてお取扱い申し上げる理由が少しも認められないのであります。そういう點につきましても、民法に從い、或はその他の一般法に從つて、ここに皇族も一定の規律を受けるという立場にならなければならないと思うのであります。そういう點につきましての政府のお考えも伺いたいと思います。
最後にお伺いいたしたいのは、この法案の中で、三種の神器は單なる財産相續というような意味にとられる表示の仕方がしてございまするが、かつての皇位繼承には、この三種の神器は皇位繼承の要件であつたといわれておりまするから、財産相續の意味のほかに、何らかここに法律或はその他の制度をもつて、皇位繼承に關する必要條件であるというような考えをもたれるかどうか、そういう構想の下におられるかどうかという御意思を承りたいと思ひます。簡單でありますが、以上を質問條項といたします。(拍手)
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=9
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010・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 酒井君の御質疑に對しましてお答えをいたしまするが、第一は皇室財産の内容を明白に發表すべきものでないか、急にはそういうものの發表ができぬといつたように思うということでありましたが、私は近くその皇室財産に關しまするこの見積りが、財産税の關係によつて十分公表し得る時期があるということを申し上げただけでありまして、皇室財産の内容をいろいろ原本についてお示しすることはできませんけれども、この法律審議の委員會等におきまして、各種の財産についてあらかたの表のごときものは、御覽に入れることができようと存じております。
第二に國有財産の處置についての御質疑がありましたが、今囘皇室にある所の諸種の財産が、一般の國有財産となり、或は營林財産に、或は雜種財産にとり入れられまする場合におきましては、それらは他の同樣の國有財産と合わせて適當なる企畫の下に運用すべきことは、もとより當然のことでありまして、その財産についてのみ特別なる考慮を全面的に用いることは、必要がないと考えております。
第三に、皇室は法人格を有するか、權利義務の關係におきましての皇室の組立てはどうであるかというお尋ねでありましたが、皇室が財産の關係において法人格を有するものとは考えておりません、これは一般の私法の規定する所によつての、個人的な財産關係が起るものと考えております。世間誤つて皇室に法人格ありとするがごとき議論がないでもありませんけれども、それは皇室が從來多くの使用人を包含したる一つの體形をなされておりましたがために、さような誤解もできたことと思いまするけれども、正しくいえば法人格ではございません。
次ぎに皇室において皇室財産を御使用になる場合の關係は、賃貸借であるか、使用權の關係であるかというようなお尋ねでありましたが、これは國に屬する所の財産を、皇室が國の公用の目的にお使いになるのでありまするから、民法關係等におきましての賃貸借等のことは起りません。たとえば内閣總理大臣が官邸を使うというような時にさような關係がないと同じでありまして、直接に公の關係において使用せらることと存じております。
第四に、皇族費の關係におきまして、一人々々その皇族に對して金額を支出するのか、それともその皇族を或る範圍によつて御家庭として考えて計算するのか、こういうような御質疑でありましたが、この法律は、皇族がおのおの御品位を維持せられるということに顧みまてし、各皇族の方々の一人々々を基本として金額を計算することになつております。そうして實際の支給は、もとよりしかるべき單位において、ほどよき手續きをとるには相違ありませんけれども、考えの根本は個別的であるわけであります。かようにしてできましたる金額が使用されまする時は、恐らくは御家庭を單位とする適切なる方法を選ばるるものと考えております。
第五に、皇族はいろいろな個人的の經濟關係を行われることができる、換言すれば職業的自由をおもちになるかどうかという點であります。これは憲法改正の際に御説明を申し上げました通り、皇族は皇位繼承及び攝政就任ということと密接に關係する限度において特殊なる地位をおもちになるのでありまして、それらと直接の關係のない面におきましては、一般人と同じようであらせらるべき筋のものと考えております。從つてかような公の關係と矛盾を生ぜざる範圍におきましては、職業選擇の自由をもたせらるべきものであると考えております。現在かようなことは皇室身位令によつて定まつておりますけれども、その身位令は皇室面の現在の規定でありまするが、憲法施行後におきましては、これに該當すべき規定が設けられることはないものであらうという考えの下に進行をいたしております。
次ぎに他面皇族の身分上、たとえば禁治産、準禁治産その他の關係において、一般民法の規定と同じであるかというお尋ねでありましたが、前に述べましたと同じような意味におきまして、皇位繼承及び攝政就任というようなことと密接な關係をもたざる範圍におきましては、民法その他私法の定むる所によられることと考えております。從つて財産の相續等の關係におきましても、一般國民の準據する原則と異なるものが生れて來る理由はないと考えております。
次ぎに三種の神器というものについてお尋ねになりましたが、この皇室經濟法におきましては、三種の神器のことを直接には規定はいたしておりません。しかしその第七條におきまして、特に皇位と由緒深き關係にある所の財産については、特別規定を設けております。さような規定が三種の神器にも當てはまり得ることは豫想しておる所でありまするが、三種の神器の本質はいかように考えるかということは、この皇室經濟法は直接には觸れておりません。ただ私どもの信ずる所は、皇位のある所に、由緒深きこの三種の神器は移つて行くであらうということを前提として、この規定を設けました次第であります。(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=10
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011・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の御質問中、皇室財産が國有に移りまして後の利用方針についてのお尋ねの部分に對してお答え申し上げます。皇室財産が國有に移りまして後の利用ということは、非常な愼重な態度をとる必要があると考えております。たとえば山林がそのためににわかに濫伐されるというようなことが萬々一にもありましては相ならぬと考えております。しかしながら國有財産としての利用は、無論十二分にはからなければならないのでありまして、そのためには實は皇室財産と必らずしも關係なしに、國有財産全般の處分及び利用について只今考究をいたしておりまして、從來も相當やつておるつもりでありますが、今後なお一層その處分と利用について效果あらしめるようにいたしたいと考えておる次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=11
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012・酒井俊雄
○酒井俊雄君 ただ一點のみ、先ほどの質問に對して御答辯が漏れておるような感じがいたしますので、皇族に對して支給せられまするその金額なるものは、生活費という意味が含まれておるかどうか、品位をお保ちになる‥‥。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=12
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013・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 酒井君、登壇を願います。
〔酒井俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=13
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014・酒井俊雄
○酒井俊雄君 只今質問いたしましたその中に、答辯が漏れておると思う點がありますので、その點だけさらに質問をいたします。それは皇族に對しまして支給をいたすその金の目的は、皇族の御地位、御身分をお保ちになる必要のみの目的で定められるものか、或は生活をお立てになる資として差し上げるものか、この點を御答辯願いたいと思います。
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=14
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015・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 皇族費は、皇族として品位を御維持になるための經費と考えております。皇族としての品位を御維持になるということは、基本的なる意味におきましての生活費を含んでおるものと考えております。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=15
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016・酒井俊雄
○酒井俊雄君 これでもつて私の質疑を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=16
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017・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 久芳庄二郎君。
〔久芳庄二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=17
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018・久芳庄二郎
○久芳庄二郎君 私は國民黨を代表いたしまして、前同僚二君が質問せられました事項を省いて、四項目ほど簡單に質問いたしたいと思うのであります。
民の富めるは朕の富めるなりという仁徳天皇の故事が歴史に傳わつているごとく、元來わが國の皇室財産は、無財産であらせられたのが本體であつたのでありますが、それが今囘の新憲法によつて規定せられたということは、皇室の純粹性を保ち、御安泰を保つ點から申してまことに喜ばしいことでありますが、さらに皇室の御費用は全部國會の議決によるということは、皇室即國家という立場から、皇室と國民とを直結するという立場から、まことに喜ばしく存じます。ついては本法案の第四條内廷費の問題は、國民が最も多くの關心をもつておる所でございます。法律による所の一定の費用を支出するということになつておりますが、從來の四百五十萬圓、これは少額であることは申し上げるまでもありません。從來は皇室財産がありましたので、その收益によつて大部分が償われて來たのでありますが、今後これがなくなり、なおこの物價騰貴の時、この支出額をいかなる算定基準において政府は見當づけておられるかということは、國民のひとしく聽きたい所であります。私はまず第一にこの問題をお尋ねしたいのである。
次ぎにこの法案を見ますと、第二條にも、別に法律で定める一定價額ということがある。第四條にも、別に法律で定める定額ということがある。第六條にも、別に法律で定める定額ということがありまして、いろいろほかの法律の定めによつて規定するということが出ておるのでありますが、これはこの經濟法一本で行くことはできぬものであるかという質問であります。元來法律としては、一本の法律ですべての解釋がつき、運用ができることが一番望ましいことであることは申し上げるまでもありません。ほかに二つも三つも合わせなければ解釋がつかぬということでは、よいとは申されぬのでありますが、この問題は、今指摘した所の、別に法律で定める定額というものをきめておくならば、それで全部解決するのではないか。これを何が故にかくせられなかつたかということであります。恐らくまだ研究調査が不十分である、こういうことであるかも知れぬのである。なお經濟上の變動がひどいということかもわかりませんけれども、少くともこの法案は、明年の五月三日以後は實施せられなければならぬのであります。少くとも來る議會には、いわゆる別の法案が出なければならぬものであるが、いかなる理由で別の法律によることになつたか、それが聽きたいのであります。
第三に、從來皇室の御保護の下にありまして、その下で保存せられ、傳承せられている所の、わが國の貴重な文獻、文化財、藝術品等が澤山あるのでありますが、最も著しい例は正倉院でございます。これらは實に日本の歴史上貴重というだけでなく、わが國が文化國家として世界に認識せられ、世界に紹介する點から言うても、實に貴重なものでございます。この貴重な品は、正倉院の例をとつてみましても、千百或は二百年、微瑾だも受けずして完全に今日まで保存せられて來ている。これはひとえに勅封であつたということを考えなければならぬ。兵火の巷にあつても、御物なるが故に一指も染めてはおらないのである。これ國民の皇室尊崇の一つの現われでありまして、そのために傳わつている所の日本の貴重な文獻、文化財、藝術品が澤山あると思うのでありますが、今度の國有移管について、この點を愼重に考慮しなければならぬと思うのであるが、それについて政府の用意如何ということであります。
最後に、第二條に連關いたしまして、私は献上品のことについて一、二お尋ねしたいのである。第二條を見るというと、献上品のごときはだいたいここに該當するものと考えられるのでありますが、これにつきまして、實は從來の取扱いにつき、遺憾がなかつたかどうかということである。先般の新聞に寫眞入りで出ていて、皆樣も御存じでありましようが、岡山縣の青年團が、新穀獻上のために、はるばるとわざわざ宮内省に出かけて來たのであつたが、その時の宮内省の扱いはまことに緩漫であり、かつ形式的であつて、非常な時日を要し、しかも青年の眞情を汲むに不十分である、遺憾であつたということは、新聞にも傳えられ、なお論説として出ておる新聞もあつたのであります。赤子としての國民が、至情よりほとばしる所の献上品の手續き、取扱いについて、はたしてそれでよいのであるか、かえつてかくのごときことがあるならば、皇室と國民との親しみ、直結を阻碍することになる。こういう點について政府はいかように考えられておるか。この第二條に關連しておりますので、あえてお尋ねする所以であります。(拍手)
〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=18
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019・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 皇室の經費、特に内廷費の金額をいかようにするつもりであるかというお尋ねであります。御承知のごとく現在皇室の經費は、國から年々支出いたしまする所の四百五十萬圓と、それから皇室の財産の運營から生じます所の、つまり營林事業から起る收益その他等合算をいたしまして、その全體の額が皇室の一般の經費を賄つておるものと考えております。しかるに今囘それらの經費は、この皇室經濟法に示しまするごとく、三つの費目に分れ、なおそのほかに宮内府というような部面に屬する費用、大略四つに分れるわけでありまして、その四つの一部分であります所の内廷費と、現在出しておりまする政府の支出の四百五十萬圓とは、直接の關係はございません。そこで今後内廷費にいくばくの金額が適當であろうかということは、目下研究中でありまして、實際の必要というものと組み合わせて、しかるべき調査の上、その詰果を國會の御承認に愬えたいと存じております。
第二にこの法律の中に、別に法律をもつて定むるとかいうふうに、いくつもいわば委任のようなものがある。しかしこれはもとより法律が法律に任せておりまするので、普通の委任とは違いますが、そんなふうに一つの事柄をいくつもの法律に分けないで、法律一本主義がいいのではないかという點についてお尋ねになりましたが、私も法律一本主義が正しいのである、或る關係のことを、いくつもの法律を見なければわからないというような立法の仕方には、反省すべきものが多かろうと存じております。しかしながらこの經濟法は、だいたい相當長い間基準として用いられて行く所のものでありまして、その中に現われて來まする所の個個の、たとえば献納品の金額の制限とかいうようなものは、これは年々の情勢、また物價の趨勢というものを元にして、始終工夫をして行かなければなりませんので、これを合わせて一つの法律にいたしますると、結局この基準法が常に變更せられる恐れがありまして、原則としては奇妙でありますけれども、實際面から言えば、やはり動きやすき金額をきめまするのには、別の法律に任した方が適當と考えておるわけであります。
第三に從來皇室擁護の下にあつた所の文化財ともいうべきもの、殊に正倉院の御物のごときものは、いかになるかというお尋ねでありましたが、正倉院の御物の本質につきましては、なお今後とも研究をしなければならぬ場面が多かろうと存じております。第一にはそれが國有財産として移るべきものであるか、或は皇室の私有財産として殘るべきものであるか、これが第一の點であります。そして皇室の私有財産に殘つたという考えをとりました場合に、それが皇位と縁故深いものとして、この法律に規定しておりまするやうな特殊の相續關係を認むるか、それとも一般の皇室財産として、民法全般の適用をみるものであろうか、こういうふうに二段の分れとして研究をしなければなりません。現在或る程度まで結論を得ておりまするけれども、これはいろいろな事情がありまして、今日ここで申し上げかぬる事情がありますが、萬全の方法を盡くしまして、文化財の管理面、つまり適當に管理せられて、本來の使命をはたし得るようなふうに工夫をいたしたいと考えております。
それから第四に、皇室に對する献上品について、とかくの噂があるということでお尋ねがありましたが、現在といたしましては、それは全く皇室の事務になつておりまして、政府は皇室についてのこれらの献上品事務につきましては、發言權はございませんので、そこで今日それらのことについて、格別なる意見を申し述ぶる餘地がないのでありまして、今囘この法律が通過し、しかして憲法が施行せられた場合におきましては、御心配のごとき懸念のないように扱いたいと存じております。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=19
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020・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 久芳君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=20
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021・久芳庄二郎
○久芳庄二郎君 あとは委員會に讓ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=21
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022・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についておはかりいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=22
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023・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は、政府提出皇室典範委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=23
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024・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=24
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025・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。これにて議事日程は議了いたしました。
この際重油その他の物資輸入に關し報告のため、商工大臣より發言を求められております。これを許します。星島商工大臣
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重油その他の物資輸入に關する星島國務大臣の報告
〔國務大臣星島二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=25
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026・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 今囘司令部の斡旋によりまして、今後において世界の市況の變動や船腹の便宜等が特別の支障を與えない限り、製鋼用の重油及び佛印無煙炭の輸入が認められることになりました。(拍手)これはわが國民にとつても、この夏の食糧輸入に次ぐ朗らかな報告でございます。重油につきましては、製鋼用として差し當り月約一萬三千キロリツトルの輸入が許可せられ、(拍手)即刻引渡しが開始せられることになりました。この數量の重油の輸入によりまして、月約三萬トンの鋼材が新たに生産可能となりますので、わが國の鋼材生産は、現在三萬トン足らずでありますから、今囘の重油の輸入によりまして、鋼材生産は一擧に倍加することになるわけであります。その結果、石炭生産に要する鋼材については、ほぼ必要量を充足する可能性が生まれ、今後の石炭生産に好影響を與えることとなり、わが國經濟の現状におきまして石炭の占める地位を考えてみますると、これがいかに重要であるかが明白であると存ぜられます。勿論右の數量の鋼材をもつてしても、未だわが國の平時經濟に必要な量の十數パーセントを充たすに過ぎないのでありまして、鐵道その他一般産業に對しましては、十分な鋼材の供給はなし得ないのでありますが、とにかく重油の輸入は、現下のわが國經濟の窮状を打開するために、一つの重要な手掛りを與えたものであります。なおまた今囘の輸入は、國内における石炭増産に對する刺戟の意味をもつて許可せられたものと見るのでありまして、わが國といたしまして、この機會にさらに總力を擧げて石炭の増産に邁進しなければなりません。
無煙炭につきましては、今月の配船によつて佛印からまず二萬五千トンの輸入が實現し、わが方よりはこれと引替えに、八千トンの瀝青炭の供給を行うこととなつたのであります。なお今後引續き輸入が行われる見込みでありまして、無煙炭はカーバイド工業、コークス工業等の化學工業に主として使用されるものでありまして、今囘の輸入は、數量から見れば必ずしも大きくはありませんけれども、優良炭生産の極端に缺乏せるわが國の現状から鑑みまして、質的に大きな效果があり、從つて無煙炭の輸入開始は、重油の輸入と合わせて、基礎的生産の増強に相當の效果を期待し得ると思ふのであります。
以上のごとき次第でありますから、わが國民は司令部の今囘の措置に對し感謝の意を表するとともに、輸入物資を生産の囘復に最も有效に使用することによつて、司令部の厚意に應えねばなりません。生産の囘復により輸出能力を増大することは、今囘のごとき緊要物資の輸入に對して、支拂能力を確保する點から申しましても、絶對に必要な條件であります。重ねて連合軍司令部の御厚意に感謝する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=26
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027・木村小左衞門
○副議長(木村小左衞門君) 次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後三時四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X00919461212&spkNum=27
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