1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年十二月二十一日(土曜日)
午後一時四十四分開議
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議事日程 第十五號
昭和二十一年十二月二十一日
午後一時開議
第一 國會法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 議院法の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 政府の契約の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 連合國最高司令官に對する感謝決議案(大野伴睦君外五名提出)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次ぎの通りである。
政府の契約の特例に關する法律案
(以上十二月二十日提出)
一、議員から提出された議案は次ぎの通りである。
連合國最高司令官に對する感謝決議案
提出者
大野伴睦君 田中萬逸君
西尾末廣君 松本六太郎君
岡田勢一君 徳田球一君
(以上十二月二十日提出)
一、昨二十日吉田内閣總理大臣から次ぎの通り發令があつた旨の通牒を受領した。
司法事務官 石田富平
第九十一囘帝國議會司法省所管事務政府委員
大藏事務官 伊原隆
同 酒井俊彦
第九十一囘帝國議會大藏省所管事務政府委員
一、昨二十日常任委員補闕選擧の結果次ぎの通り當選した。
第二部選出
建議委員 疋田敏男君(大島多藏君補闕)
第八部選出
建議委員 宮前進君(松岡運君補闕)
一、昨二十日議長において次ぎの通り常任委員辭任の許可があつた。
第八部選出請願委員 細田忠治郎君
一、昨二十日委員長理事互選の結果次ぎの通り當選した。
參議院議員選擧法案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 犬養健君
理事 北令吉君 理事 原藤右門君
理事 山本正一君 理事 大島定吉君
理事 原健三郎君 理事 鈴木義男君
理事 玉井潤次君 理事 大原博夫君
一、昨二十日次ぎの通り特別委員の異動があつた。
増加所得税法案(政府提出)委員
辭任島田晋作君 補闕稻村順三君
辭任松本淳造君 補闕大澤喜代一君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより會議を開きます。諸君、今二十一日早曉、近畿地方を中心として、四國、中國地方にわたる大地震があり、これに海嘯も伴い、ために同地方民が不測の慘禍を蒙りましたことは、まことに同情に堪えません。家屋の倒壞及び死者も相當にあるように報ぜられております。これらの人々に對しては、ここに深くお見舞と哀悼の意を表する次第であります。(拍手)それに對しては、國民とともにわれわれも何らかの慰藉の途を講じたいと考えております。(拍手)この際内務大臣及び運輸大臣より、本件につき報告のため發言を求められております。これを許します。大村内務大臣。
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近畿地方を中心とする震災の被害状況に關する大村、平塚兩國務大臣の報告
〔國務大臣大村清一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=1
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002・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 本日午前四時二十分、西日本地方一帶にわたりまして大地震が起りました。震源地は、和歌山縣潮岬南方の海上にあるものと報ぜられております。各地に海嘯竝びに高潮が發生いたし、被害範圍は、東は靜岡縣から九州地方までの廣範圍に及んでおる模樣であります。最も被害の甚大なる地方は、和歌山縣及び四國地方であると思われるのでありますが、四國よりは未だ何らの報告に接しておりません。鐵道も、地盤沈下等によりまして、相當の不通箇所がある模樣でありますが、目下の所、山陽線の一部の不通が報ぜられておるほか、具體的には内務省ではわかつておりません。以上のような次第で、ここに全般的の被害状況を詳しく申し上げる材料はございませんが、御參考のために一、二の地方の報告をここで御紹介申し上げます。
まず第一に和歌山縣でございますが、その第一報によりますと、震源地は紀伊水道熊野灘附近、倒壞家屋は目下判明せるものは少いが、高潮によつて被害が多く、海南市において床上三尺全市に及び、日高郡由良市においては約三百戸二階にまで浸水す。人畜に相當の被害ある見込み。海岸線において相當被害あるものと認められるが、目下調査中。和歌山縣の第二報によりますと、その後震災状況は、交通通信杜絶のため、田邊市内の状況不明につき、あらゆる手段により目下調査を進めつつあり。取りあえず判明せる被害地、海南市附近に對し、被害なき各警察署より警官四十、警防團員百、醫師五、看護婦五應援せしむ。罹災者約二萬に達する食糧の準應完了、その他萬般の手配進捗中なり。その第三報によりますと、人家の被害田邊市附近において死者十三、行方不明二十四、負傷一、海南市、田邊市附近において家屋全壞三百五十、半壞四、流失二百九十、床上浸水六千百、交通關係、各所において線路流失、沈下障碍のため、紀勢西線御坊驛以南は不通となり、復舊見込不明、橋の流失二、漁船流失四百十、通信關係、警察電話全線不通、遞信、鐵道電話は御坊驛以南は不通、このような次第でありまして、和歌山縣の被害は相當大なるものがあるようであります。
次ぎに大阪府の被害状況を簡單に申し上げます。近畿地方に相當大なる地震が發生いたしました。その被害状況は左の通り。震源地は熊野灘潮岬東方約四十キロ附近の見込みにして和歌山、三重兩縣南部は相當大なる被害ある見込み。大阪の被害は、七時現在、全壞六十一、半壞二十八、小破二、死者十一、重傷一、輕傷十。大阪府の第二報によりますと、本朝發生の地震被害その後判明せる状況左の通り。震源地和歌山縣とは電話不通にして被害状況は判明しないが、同縣と當府との境界附近に相當被害ある所よりして、和歌山縣には相當の披害ある見込み、震災後港區、大正區方面に三囘高潮ありたるも、床上一尺程度なり。警察官を非常配備し救出救護に努めたり。全壞七十、半壞五十、小破二十四、死者十五、重傷二、輕傷十七。大阪府の第三報、十時現在によりますと、和歌山縣における被害は第二報の通りにして、その後連絡中、當府管内の被害はたいして擴大の模樣なきも、現在全壞七十四、半壞六十一、小破三十七、死者十五、重傷二、輕傷十二。機帆船大阪大川間、桑名四日市富田間係船全部不通なり。このような次第でありまして、大阪府の被害はお聽きの通りさほどたいしたものではないようであります。
なお愛知縣から報告が參つております。死者七名、負傷者十二名、住家全壞五十六、住家半壞二十、非住家全壞十八、非住家半壞五、工場全壞十三、工場半壞一、火災一戸。おもなる被害都市、一宮市、津島町、彌富町、稻澤町。名古屋市内では被害たいしたことなし。
なお西部で岡山縣の報告がございます。午前八時現在で死者六名、傷者二十名程度、倒壞家屋四、五十戸の見込み。次ぎに奈良縣におきましては、午前六時現在、倒壞家屋八。滋賀縣におきましては、午前五時三十分現在、倒壞家屋二、京都府におきましては、午前八時現在で被害なしという報告であります。
だいたい只今の所、この程度しか被害報告はございません。目下極力連絡策を講じておりまするが、以上御報告申し上げましたものは、大部分無電によつて連絡のあつたものであります。
このような次第で、状況が十分はつきりいたしませんので、内務省におきましては、各省とも連絡をいたしまして、直ちに連絡班を現地に派遣いたしまして、今後の措置に遺憾なからしめる手配を講じつつある次第であります。突如このような震災が年末に當りまして起りましたことは、私どもといたしましても、罹災地、罹災者に對しましてまことに同情に堪えざる所でありまして、政府といたしましても、事情を十分早く把握いたしまして、適切なる善後措置を講ずる考えであります。以上簡單ながら御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 平塚運輸大臣。
〔國務大臣平塚常次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=3
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004・平塚常次郎
○國務大臣(平塚常次郎君) 中央氣象臺の情報を申し述べます。二十一日午前四時十九分、紀州南方海中に大地震が起り、この地震は一昨年熊野灘に起つた大地震よりは規模大なるものがあります。本邦附近における大地震の第一級のものであります。震央が海中にありましたために、直接地震動による被害が少いのは不幸中の幸いであります。但し相當大なる海嘯を伴つたことは重要で、四國南部及び和歌山の海岸地方は所により相當の被害、すなわち家屋の流失や若干の犧牲者を生じた見込みであります。この地震に伴うた海嘯は、四國、紀伊の屈曲の少い外洋に面した海岸では、海嘯の高さは約二メートル、九州及び東海道においては一メートル程度であります。海嘯は海岸の屈曲によつて高さが甚だしく異なるものでありまするから、條件の惡い灣内においては四・五メートルに及ぶものもあつたようであります。
次ぎに鐵道の被害の状況を申し上げます。被害の範圍は名古屋、大阪、廣島鐵道局に跨がり、東海道本線、山陽本線、紀勢線、關西線、山陰線、參宮線等にわたり、四國鐵道局にも被害があるものと判斷されますが、運轉中の列車の被害はない模樣であります。
現在被害の件數を申し上げますと、十二時までに左の報告が參つております。名古屋管内では線路沈下、これが八、大阪が三、廣島が二、このうち大阪の一線は不通になつております。廣島では二線が不通になつております。橋梁の沈下が名古屋において二件、大阪において三件、廣島において一件、このうち大阪一件が不通になつておりますし、廣島が一件不通になつております。四國は連絡が杜絶しておりまして不明であります。十二時までの報告の概要を申し上げた次第であります。(拍手)
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005・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際日程第四を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=5
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006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=6
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007・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議ないと認めます。――政府はこの議事日程變更に同意せられました。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第四、連合國最高司令官に對する感謝決議案を議題といたします。趣旨辯明を許します。石井光次郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=7
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008・会議録情報2
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連合國最高司令官に對する感謝決議案大野伴睦君外五名提出)
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連合國最高司令官に對する感謝決議案
連合國最高司令官に對する感謝決議
終戰後既に一年有半を経過せるも産業の再建は遲々として進まず、國民生活の不安は漸く深刻ならんとす。この時に方り連合國最高司令官は、製鋼用重油及び無煙炭の輸入と、物資輸送に必要なるトラツク、トレーラー等の賣渡しを許可せられ、又塩の輸入についてもその数量の増加方を取計われたり。
これら物資の輸入が生産基礎物資の最も缺乏せる現在において、わが國産業の再建と國民生活の安定に與える好影響は、けだし測り知られざるものあり、全國民の齊しく感謝感激措く能わざるところなり。
われらは産業の再建を措いて他にわが國現時の窮状を眞に打開し得るの根本方策なきを思い、この機会に更に決意を新たにして、一致協力産業の再建に全力を傾注し、以て最高司令官の厚意に報いんことを期す。
衆議院はここに全國民を代表し、特に院議を以て連合國最高司令官に対し深甚なる感謝の意を表す。
右決議す。
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〔石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=8
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009・石井光次郎
○石井光次郎君 只今議題となりました連合國最高司令官に對する感謝決議案の趣旨を辯明いたしたいと存じます。まず決議案文を朗讀いたします。
連合國最高司令官に對する感謝決議
終戰後既に一年有半を經過せるも産業の再建は遲々として進まず、國民生活の不安は漸く深刻ならんとす。この時に方り連合軍最高司令官は、製鋼用重油及び無煙炭の輸入と、物資輸送に必要なるトラツク、トレーラー等の賣渡しを許可せられ、又鹽の輸入についてもその數量の増加方を取計われたり。
これら物資の輸入が生産基礎物資の最も缺乏せる現在において、わが國産業の再建と國民生活の安定に與える好影響は、けだし測り知られざるものあり、全國民の齊しく感謝感激措く能わざるところなり。
われらは産業の再建を措いて他にわが國現時の窮状を眞に打開し得るの根本方策なきを思い、この機會に更に決意を新たにして、一致協力産業の再建に全力を傾注し、以て最高司令官の厚意に報いんことを期す。
衆議院はここに全國民を代表し、特に院議を以て連合國最高司令官に對し深甚なる感謝の意を表す。
右決議す。
〔拍手〕
さきにわが國の食糧事情が逼迫いたしまして、まさに飢餓に瀕せんとする時に當り、連合國最高司令官がわが國に寄せられましたる同情ある處置に對し、本院は心からなる感謝の決議をなしたのでありまするが、このたびは生産の危機に直面せる今日、數々の生産基礎資材の輸入を許可せられたのでありまして、まことに感激にたえない次第であります。(拍手)ここに厚く感謝の意を表するものでございます。
數々の輸入のうち、第一に重油について少しく申し上げてみたいと存じます。今囘毎月一萬三千キロリツトルの輸入が許可せられたのでありまするが、これによりまして、わが國の鋼材の生産量は月三萬トンの増加となり得ることになりまして、一躍現在の二倍以上の生産額をもつこととなつたのであります。最近極度の石炭不足のために、鐵鋼業は次第に弱體化して參りまして、鐵鋼業の弱體化は鋼材の不足となり、これはやがて、同じく重要資材である石炭の増産をも阻むこととなりまして、惡循環の傾向はここにも現われて來たのであります。この時重油の輸入が認められましたことは、星島商工大臣の報告に言うがごとく、まさにわが國民にとつて、この夏の食糧の輸入に次ぐ朗報であります。
石炭と鐵の關係からだけみましても、重油の輸入により鋼材の生産が増加することになりますれば、戰時中の濫掘のあとをうけまして、資材の破損補修等多量の鋼材を必要とする炭礦に、その一部が當然供給せられることになりまして、増産の途はそこにも開かれて來るのであります。本年度に入りまして鋼材が炭礦に渡されまする割當は次第に減少いたしまして、このままこの傾向が續いて參りますれば、來年度石炭月産二百五十萬トン確保を期待しておりまする政府の計畫に達することの不可能なるは勿論、月産二百萬トンの現状維持さえ困難であつたと想像されるのであります。幸いにいたしまして重油の輸入がありまするために、鋼材の確保とともに石炭の増産をも期待し得ることとなつたのであります。石炭と鐵鋼との増産が産業復興の基本をなすことは、今さら申し上げるまでもないことであります。この二つの増産に重點をおいた思い切つた政策が、この鐵鋼増産の機會に採用せられんことを切に希望いたす次第でございます。
次ぎに無煙炭の輸入によりまして、重要肥料の一つであります石炭窒素の製造が盛んになるでありましよう。これが引續き毎月輸入し得られることとなりますれば、米の増産は期してまつべきものがあると、大きな希望を抱いておるものでございます。
また工業鹽の輸入數量の増加によりまして、化學工業は復興し、同時に食糧鹽の供給も相當緩和することになると思われるのでございます。
さらにトラツク及びトレーラーおのおの八千數百臺の賣渡しの許可を受けたのでありますが、今日最も不足しておるものの一つである小運送が、これによつて多少とも補われ、食糧、特に生鮮食料の輸送等が圓滿に行われまする端緒を開くことになることを、私どもは希望してやまない次第でございます。
以上輸入を許可されましたものの數量は、日本産業再建の必要量からすれば、勿論十分とは申せないのでありまするが、この産業再建に大きな刺戟となつたことは勿論、もしこれがなかつたならば、産業の再建はとうてい期し得なかつたのであります。この際特にわれわれ國民のとらねばならぬ態度は、第一にこれを契機として、これを差し水といたしまして、日本産業の復興をはからねばならぬということであります。乏しき物、乏しき量の中にも光明を見出しつつ、熱意をもつて、與えられたものを漫然と消費することなく、これによつて第二、第三の産業を興さねばならぬと思うものでございます。
第二に、産業復興のためには、國民擧つて力を合わせ、小異を捨てて大同につき、協力一致して進まなければ、何ものもでき上らないと思うのであります。經營者も勞務者も一體となつて、スクラムを組んで進まなかつたならば、日本の産業は破滅に陷り、國民生活は破綻の憂目をみることは、火を見るより明らかな事實だと思うのであります。(拍手)
日本産業の危機に當り、連合國最高司令官が與えられました厚意に對し、衆議院が全國民とともに感謝するの道は、この決議文そのものだけではなく、これに盛られました精神を、國民各自がしつかりと胸に抱いて、謙虚な心持をもつて、以上述べました二つの點に留意し、産業の復興をはかるにあることを強調いたしたいのであります。(拍手)何とぞ滿場の諸君の御贊成をお願いしたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 採決いたします。本案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=10
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011・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立總員
〔拍手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=11
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012・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案は全會一致可決いたしました。
この際政府より發言を求められております。幣原國務大臣。
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=12
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013・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今、基礎資材の輸入等につきまして、連合國最高司令官に對しまして、厚く謝意を表する意味の決議案を可決されたのであります。つきましては、私より政府側に代つて一言御挨拶を申し上げたいのであります。
この決議案の趣旨とする所は、政府におきましても、もとより同感であります。今囘の重油、無煙炭、鹽、トラツク、トレーラー等の輸入によつて、わが國の産業經濟の再興に大いなる曉の光を與えられたものであることは、これは申すまでもありません。わが國が現に直面しております經濟危局を切り拔けて、國民生活の安定を期するのには、生産の増強、産業の再興、このほかには有力なる手段はないのであります。政府といたしましては、連合國の今囘の措置に對しまして、深く感謝の意を表するとともに、かかる連合國の好意に對しましては、これに報いんがために、これらの輸入物資を最も效果的に活用して、そうして眞劍に生産の増強、産業の再興に邁進いたしたい決心でおります。この目的の遂行につきましては、要するに全國民の一致の努力にまつしか仕方がないのでありまするから、諸君におかれましてもこの目的のために御協力下さいますことを信じて疑いません。これだけのことを一言この際申し上げたいのであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=13
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014・山崎猛
○議長(山崎猛君) 日程第一及び第二は、同一委員に付託した議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=14
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015・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。
日程第一、國會法案、日程第二、議院法の特例に關する法律案、右兩案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長井上知治君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=15
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016・会議録情報3
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第一 國會法案(大野伴睦君外十九名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 議院法の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 國会法案(大野伴睦君外十九名提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十一年十二月二十日
委員長 井上 知治
衆議院議長山崎猛殿
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報告書
一 議院法の特例に関する法律案(政府提出、貴族院送付)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十一年十二月二十日
委員長 井上 知治
衆議院議長山崎猛殿
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〔井上知治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=16
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017・井上知治
○井上知治君 只今議題となりました兩法案のうち、まず各派の共同提出にかかる國會法案の、委員會における審議の經過竝びに結果について御報告申し上げます。
本案は十二月十八日の本會議におきまして、三十六名の委員に付託せられ、翌十九日委員長及び理事の互選を行い、引續きまして會議を開き、提案者の中村委員から提案の理由を聽きまして、なお本案の條文の整理に當られました大池書記官長より、逐條的の説明を聽取いたした次第でありまして、直ちに質疑にはいつたのであります。
諸君も御承知の通り、本案は來るべき國會の地位に鑑み、議員みずからがその使命を自覺し、さきにわれわれが審議確定いたしました新憲法にふさわしい國會法たらしむべく、各黨各派を網羅しました議院法規調査委員會におきまして、研究に研究を重ね、練りに練つた法案でありまして、その提案の理由及びその内容につきましては、重ねてここに逐一御報告申上げることは差し控えます。ただ一言申し上げなければならないことは、委員の熱心なる質疑に對しまして、始終答辯の任に當られました中村委員竝びに坂東委員は、實に立派な態度をもつて、明確なる説明を與えられ、今後における立法機關としての國會のあり方を如實に表現いたしまして、あます所がなかつたことは、本委員會に權威を添えるものといたしまして、ここに深甚の敬意を表する次第でございます。(拍手)
次ぎに委員會における質疑の大要を御紹介申し上げますると、まずだいたいこれを二つに分けることができるのであります。一つは新憲法に關連する問題であり、他は本案の運用に關する問題でございます。すなわち第一は、本法案第十六條の役員に、事務總長を包含してある點であります。これは新憲法第四十三條に、「兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。」とありまして、議院の構成員は議員に限りますのに拘らず、その構成員でない事務總長を、本法案において役員としたことは、憲法違反ではないかというのであります。これに對しましては、提案の説明に當られました委員諸君からは勿論のこと、委員會に出席中の植原國務大臣竝びに入江法制局長官からも、事務總長は、いわゆる議院を組織する實質上の構成員ではないけれどもが、國會運用の重要な職にある事務總長を役員とすることは、たとえその構成員でなくても差支えがなく、また新憲法第五十八條に、「兩議院は、各各その議長その他の役員を選任する。」と言つておる點から考えまして、これを國會法に規定しましても、決して新憲法に背反するものではないとの答辯がありました。
次ぎに、本法案第五十一條について申し上げますが、國民代表の府たる議院が、さらに公聽會を開いて、必ず代議士でない人々の意見を聽かねばならぬということは、一見進歩的のようにも考えられるが、その基盤をなすイデオロギーは、議員の蔑視であり、自己否定ではないか。また新憲法第四十三條に矛盾してはいないか。それのみでなく、議院の權威のためにも、なおいくた研究の餘地があるのではないかとの質疑がありました。これに對しまして、公聽會は、直ちに議院の意見が決定されるのではなくて、專門的の知識と利害關係者の意見をも斟酌して、議院の審議を一層公平、妥當ならしめるに役立つものであるからして、決して憲法に反するものではないとのことでありまして、その運用につきまして、まことに深味のある答辯があつた次第であります。
なお本法案第十一章の規定につきまして、簡單に申し上げます。兩院法規委員會は、新憲法の認めた二院制度と矛盾しないかとの論に對しては、これは單なる勸告機關であるから、憲法に牴觸しないのみならず、今後における立法機關としての調和をはかり、かつその權威を重からしむるものであるとの答辯があつた次第であります。
次ぎに、本法案における第二の運用に關する點でありまして、最も問題となりましたのは、すなわち常任委員會の制度であります。本法案の第四十三條に、各常任委員會には少くとも二人の專門的知識を有する職員を置くとありますが、かくすることは、畢竟議員を蔑視することになつて、遂には官僚の古手をば專門委員に迎えることによりまして、漸次常任委員會が官僚化される恐れはないか。また本法案第百三條の、議員を審査のために、または調査のために派遣することは、弊害があるのではないかとの問いに對しては、これらは、一にかかつて今後におけるわれわれ議員の國會運用の問題に歸することであり、かつ本法の細則ともいうべき議院規則の定め方如何によることであるから、さして心配する必要はないとの答辯であつたのであります。
また本法案の立案に當りまして、常置委員會の制度を設けなかつたことは、いかなる理由によるのかとの質疑に對しましては、國會の立法機關たる本質と、なお一定の會期を設けた趣旨に鑑みまして、年中行政機關を拘束することになつて、延いては行政と立法との紛淆を來す恐れがあると考えたからである、との答辯があつた次第であります。しかし常置委員會を設けなくとも常置委員會のもつ特徴は、十分に常任委員會に移行されて、特に院議をもつて付託されましたものにつきましては、閉會中といえどもこれを審査することができるのでありますからして、實際的見地から言つても、常置委員會を設ける必要がないとの答辯であつたのであります。このほかいくたの適切にして重要なる質疑應答が重ねられたのでありまするが、その詳細は速記録に讓ります。
かくて質疑を終了しまして、直ちに討論にはいり、日本自由黨より廣川弘禪君、日本進歩黨より荊木一久君、日本社會黨より細野三千雄君、協同民主黨より宇田國榮君、國民黨より久保猛夫君、日本共産黨より高倉輝君、これらの人々が、それぞれ黨を代表されまして本案に贊成の意見を述べられ、次いで採決に入りまして、全會一致をもつて、この劃期的法案を可決いたした次第であります。(拍手)
次ぎに、本委員會に併託になりました議院法の特例に關する法律案について申し上げます。本法律案は、今期議會と次ぎの通常議會との間に時日の餘裕がほとんどありませんので、今期議會において兩院を通過しました議案につきましては、議院法第三十二條の規定を適用しないというのでありまして、字義もまことに明瞭であり、何ら論議の餘地を認めないので、質疑討論を省略いたしまして直ちに採決に入り、全會一致可決いたした次第であります。何とぞ滿場諸君の御贊成をお願いしまして、兩案の御報告を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=17
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018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 兩案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて兩案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=19
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020・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに兩案の第二讀會を開かれんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=20
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021・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに兩案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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國會法案 第二讀會
議院法の特例に關する法律案 第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 採決いたします。兩案の委員長報告は可決であります。兩案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=23
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024・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立總員。(拍手)兩案とも委員長報告の通り全會一致可決いたしました。これにて兩案の第二讀會は終了いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=24
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025・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに兩案の第三讀會を開かれんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=25
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026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=26
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027・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに兩案の第三讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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國會法案 第三讀會
議院法の特例に關する法律案 第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=27
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028・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發言もありませんから、兩案とも第二讀會議決の通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=28
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029・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、政府提出衆議院議員選擧法第十二條の特例等に關する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=30
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031・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。
衆議院議員選擧法第十二條の特例等に關する法律案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長犬養健君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=31
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032・会議録情報4
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衆議院議員選擧法第十二條の特例等に關する法律案 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 衆議院議員選擧法第十二條の特例等に關する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十一年十二月二十一日
委員長 犬養 健
衆議院議長山崎猛殿
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〔犬養健君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=32
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033・犬養健
○犬養健君 衆議院議員選擧法第十二條の特例等に關する法律案につきまして、委員會における審議の經過竝びに結果を御報告いたしたいと存じます。
委員會におきましては、不肖私が委員長に選任せられました後に、昨二十日及び本日の兩日にわたりまして、本案に關する審議を行つたのであります。この法律案の最も重要な特色は、選擧人名簿の調製に關する現在の定時名簿主義を、いわゆる隨時名簿主義に改めた點であります。この改正によりまして、從來における種々なる缺陷は根本的に是正せられまして、いやしくも選擧權を有するものは、すべてその權利を完全に用いることができるのでありまして、去る四月の衆議院議員の選擧の際に、全國的な問題を惹起いたしました所の、名簿の脱漏による不都合のごときは、根本的に是正せられることとなつたのであります。(拍手)
第二の重要な點は、國家の海外引揚同胞に對する尊重の念の現われたことであります。海外同胞が異郷より、寒暑の苦痛に耐え、飢えを忍び、ようやくにして祖國に歸還せられまして、われわれとともに相携えて祖國の再建に力をいたさんとしておられるのでありますが、現在の諸般の事情よりいたしまして、それらの人々のお住いはなお安定を期しがたい状態にあることは、諸君御承知の通りでございますが、これらの人に對しまして、一般國民と同樣に選擧權に關する居住期間六箇月の條件を付することといたしましては、いかにも當を失しますので、今度の改正はきわめて適當に行われたものと信ずるのであります。
以上のほか、わが國の陸海軍がもはや解消いたしました今日、今なお兵役法の惰性的な適用を受けております、いわゆる現役中或は召集中の軍人に對しまして、衆議院議員の選擧權と被選擧權を有しないこととする理由がなくなりましたので、その規定を整理するなどの措置を講じてあるのでございます。
委員會は本日討論を行いまして、この法律案の趣旨において、全く同感の意を表しまして、全會一致をもつて可決いたされたのであります。以上、本委員會におきまする審議の結果を御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=33
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034・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=34
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035・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=35
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036・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會が省略して委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=36
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037・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=37
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038・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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衆議議員選擧法第十二條の特例等に關する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=38
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039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
日程第三、政府の契約の特例に關する法律案の第一讀會を開きます。上塚大藏政務次官。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=39
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040・会議録情報5
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第三 政府の契約の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
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政府の契約の特例に關する法律案
第一條 政府を当事者とする契約で勅令で定めるもの(以下特定契約という。)で、政府の支拂金額の確定していないものについて、命令の定める期限内に、政府が適正と認める支拂金額を指定したときは、その指定金額を以て確定支拂金額とする。支拂金額の一部が確定していない場合において、その確定していない部分についても、また同樣とする。
前項の規定による支拂金額の指定は、相手方に対する通知を以てこれをなす。
特定契約の相手方は、特定契約に係る政府の支拂金額に関しては、第一項に規定する期限内は、通常裁判所に出訴することができない。前項の規定による指定金額の通知があつた場合においては、第二條第三項の規定による通知を受けるまでも、また同樣とする。
第二條 前條の規定による指定金額に不服のある相手方は、命令の定めるところにより、政府に対して指定金額の改定を申請することができる。
前項の規定により申請のあつたときは、政府は、特定契約委員会に諮問して、これを決定する。
前項の決定をしたときは、政府は、直ちに、相手方に対してこれを通知する。
特定契約委員会に関する規程は、勅令でこれを定める。
第三條 前條第二項の規定による政府の決定に不服のある相手方は同條第三項の通知を受けた日から三箇月以内に、通常裁判所に出訴することができる。
第四條 特定契約の相手方は、命令の定めるところにより、特別の帳簿書類を備え、これに特定契約の履行に関する金銭、物品の出納その他必要な事項を記載して置かなければならない。
第五條 政府は、特定契約について、調査のため必要があるときは、当該官吏をして、特定契約の相手方若しくは下請人その他特定契約に関連して特定契約の相手方と取引をした者(下請人の下請人その他これに準ずる者を含む。)に対して質問し、報告を徴し、これらの者の營業所、作業場若しくはその他の場所に臨檢し、帳簿書類その他の物件を檢査し、又は参考人について質問させることができる。
政府は、必要があるときは、命令の定めるところにより、都道府縣の吏員をして、前項の事務に從事させることができる。
第六條 左の場合においては、特定契約の相手方又は下請人その他特定契約の相手方と取引をした者(下請人の下請人その他これに準ずる者を含む。)は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 前條の規定による質問に対し、答弁をしないとき又は虚僞の答弁をしたとき
二 前條の規定による報告を怠り又は虚僞の報告をしたとき
三 前條の規定による檢査を拒み、妨げ又は忌避したとき
四 前條の帳簿書類で虚僞の記載をしたものを呈示したとき
第七條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務に関して前條第一号、第二号又は第四号の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、同條の罰金刑を科する。
附 則
この法律施行の期日は、各規定につき、勅令でこれを定める。
第一條の規定は、同條の規定施行の際現に政府の支拂金額に関し訴訟が裁判所にかかつている特定契約については、これを適用しない。
第四條の規定は、同條の規定施行の際現に存する特定契約については、これを適用しない。
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〔政府委員上塚司君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=40
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041・上塚司
○政府委員(上塚司君) 政府の契約の特例に關する法律案の提案の理由を説明申し上げます。
連合國軍の命令、または要求に基づき國家が支出いたさねばならない經費は、相當厖大な額に上つておりまするが、その大部分は、兵舍、宿舍その他の設營工事に關するものであります。このように國が負擔する巨額の工事費の支出に對し、その適正をはかりますることは、財政經濟の上からきわめて大切であることは申すまでもありません。政府はこのために政府の契約の特例に關する事項を定める必要を認め、本法律案を提出した次第であります。
この法律案の内容は、第一、特定の工事契約について、政府の相手方となるものに對して、一定の場合、適正な契約金額を指定してこれを確定契約金額とすること。第二、右の指定に對し不服のある相手方がある場合は、これが救濟を求める途を設けたこと。第三、特定契約に關して調査のため必要があるときは、政府は官吏をして契約の相手方、その他特定の者に對して質問し、これらの者から報告をとり、またその營業所、作業場等を臨檢し、帳簿書類その他の物件の檢査をすることを骨子とするのであります。
政府は、從來の連合國軍關係の諸工事については、漸次監督の機構を強化し、これが經費の支出の適正を期して參つたのであります。しかし本法律が成立いたしまする上は、一層その遺憾なきを期し得る次第であります。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御協贊あらんことをお願い申します。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=41
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042・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についておはかりいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=42
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043・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出増加所得税法案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=43
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044・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=44
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045・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議の如く決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=45
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046・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際政府提出開拓者資金融通法案及び開拓者資金融通特別會計法案の兩案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=46
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047・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=47
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048・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。開拓者資金融通法案、開拓者資金融通特別會計法案、右兩案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長稻田直道君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=48
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049・会議録情報6
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開拓者資金融通法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
開拓者資金融通特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 開拓者資金融通法案(政府提出)右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十一年十二月二十一日
委員長 稻田 直道
衆議院議長山崎猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 開拓者資金融通特別會計法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十一年十二月二十一日
委員長 稻田 直道
衆議院議長山崎猛殿
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〔稻田直道君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=49
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050・稻田直道
○稻田直道君 只今議題と相なりました開拓者資金融通法案と、開拓者資金融通特別會計法案の二法案の委員會における審議の經過竝びに結果につきまして、簡單に御報告申し上げます。
さてこの二法案は、かの増加所得税法案の委員會に、昨二十日の本會議において併託に相なりましたものでありまするが、この二法案は、委員會においては緊急を要するものと認めましたので、他の法案より切り離しまして、特に審議を早めましてこれを議了し、他に先んじてこれを御報告申し上げることといたしました次第であります。
しかしてこの委員會は、去る十九日に増加所得税法案の委員會としてその第一囘の委員會を開會し、委員長、理事の互選を行いまして、委員長には不肖私が、理事には井田友平君、神田博君、西村久之君、小池新太郎君、舟崎由之君、佐竹晴記君、松永義雄君、赤澤正道君が當選せられたのであります。
しかして只今議題となつておりまする二法案の趣旨は、現在開拓者の最も渇望しておりまする營農資金と住宅資金を、政府の手でもつて融通しようとするものでありまして、融通の條件は、開拓者の經營を安定せしめまするように、できるだけ取扱いを寛大にしようとするものであります。すなわち五箇年間無利子で据え置きまして、六年目から十五箇年の均等年賦償還といたしまして、利率は國債の平均利廻りであります三分六厘五毛に止め、しかも償還は年々の物價の變動に應じまして減免の措置を講ずることになつており、また災害等の場合におきましては、支拂猶豫の途も開いてあるのであります。
しかしてこの法案に對するおもなる質疑は、次ぎのようなものであつたのであります。すなわちその第一點は住宅資金に關するものでありまして、現在の物價の状況におきましては、政府の豫定しておりまする一戸當り七千圓の融通では、はたして完全な住宅ができるであろうかというのでありまするが、政府からは、住宅に對しては、この資金のほかに一戸當り三千圓の補助金が別途に考えられており、合計一萬圓となるによつて、この程度でもつてできるだけ簡素な住宅を設計して行きたい。しかして勿論地方によつてはこれでは不滿足の場合もあろうが、國家財政の現状からして、この程度でもつてやむを得ない事情もあり、かつは開拓者自身の自立心による工夫も期待したいからして、一應この程度でやつて行きたいという旨の答辯があつたのであります。
しかして質疑の第二點は、開拓者に對する醫療と教育施設に關するものでありましたが、これに對しまして政府といたしましては、醫療については巡囘醫療班と囑託醫の設備をなし、また教育については分教場の設置等を考慮して、極力質疑の趣旨に副つて努力する旨の答辯があつたのであります。
質疑の第三點は、開拓者の生活資金を考える必要があると思うがどうかというのでありましたが、これに對しまして政府よりは、開拓者の生活資金は、開墾による勞賃收入もあり、また開拓地の農産物の販賈と藁工品、竹細工等の副業の收入なり、或はまた新炭生産等による收入もあるので、極力これらでもつて賄つて行くように指導して行く方針であるが、さらにこれでもなおかつやつて行けない場合においては、開拓者に對しては、別途厚生施設による救濟の途もある旨の答辯があつたのであります。
その他開拓地の割當につきましては、實情に即するように行い、開拓不適當な地をも無理に開墾するというようなことのないようにという注意もあり、また滿洲に送つた分村移民の引揚者に對しましては、集團的に開拓地に入植させまして、十分なる保護を與える必要がある旨の意見等がありました。その他は速記録によつて御參照を願いたいと思うのであります。
かくして討論に入りまして、川島金次君、井出一太郎君より希望附きの贊成意見の開陳がありまして、討論を終結し、採決をいたしました結果、全員一致でこの兩法案を可決いたした次第であります。何とぞ各位の御贊成を願います。これをもつて委員長の報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=50
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051・山崎猛
○議長(山崎猛君) 兩案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=51
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052・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて兩案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=52
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053・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに兩案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=53
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054・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=54
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055・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに兩案の第二讀會を開き議案全部を議題といたします。
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開拓者資金融通法案 第二讀會(確定議)
開拓者資金融通特別會計法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=55
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056・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、兩案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
これにて議事日程は議了いたしました。明二十二日は午後二時より特に本會議を開きます。次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後二時四十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009113242X01519461221&spkNum=56
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