1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○会計檢査院法を改正する法律案
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委員氏名
委員長 伯爵 柳澤保承君
副委員長 男爵 三須精一君
侯爵 前田利建君
大谷正男君
子爵 森俊成君
子爵 藤井兼誼君
子爵 牧野忠永君
男爵 徳川誠君
男爵 岡俊二君
市來乙彦君
中村藤兵衞君
木下謙次郎君
戸口米次郎君
岸本彦衞君
上野喜左衞門君
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昭和二十二年三月十八日(火曜日)午後二時十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=0
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001・柳澤保承
○委員長(伯爵柳澤保承君) それでは是から會計檢査院法を改正する法律案特別委員會を開會致します、最初に先づ金森國務大臣より本案提出の理由を御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=1
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002・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 會計檢査院法を改正致しまする法律案に付きまして、内容の御説明を申上げたいと思ひます、現在の會計檢査院法は明治二十二年に、日本國憲法とは違つた角度に於て、帝國憲法の其の精神の下に制定されたのでありまして、今迄の状態に於きましては、特に大きな改正をすることもなく、今日に至つたのでありまするが、今日憲法が根本的に改正せられましたに付きましては、會計檢査院の持つて居りまする持味が非常に變はるのでありまして、規定の上で特に憲法が會計檢査院の性質を變へて居ると云ふことはございませぬが、併し根本の精神が民主的であり、從つて官僚的でないと云ふ立場を取つて居りまするが爲に、檢査院法自體も其の精神に依つて改正刷新する必要を生じた譯であります、改正の中味は、之を組織と權根とのあらかた二つに分けて申上げる方が適當だと存じて居ります、組織の面に付て申上げますると、會計檢査院は今迄は「天皇ニ直隸シ國務大臣ニ對シ、特立ノ地位ヲ有ス」と云ふ風になつて居りますけれども、憲法改正に伴ひまして之を「内閣に對し獨立の地位を有する。」と云ふことに改正を致しました、さうして又此の會計檢査院の本體は三人の檢査官で構成する檢査官會議と事務總局との二つを以て形造ることと致しましたが、從來重要事項は總て會計檢査官十數人の總會議で決定をして居りましたのでありましたが、之を右の檢査官會議、即ち三人の會議で決定することに致した次第であります、又檢査官は國會の兩議院の同意を經まして内閣が之を任命し、天皇の御認證を受けると云ふことになつて居ります、三人の檢査官が互選を、御互に選び合ひまして、其の一人を會計檢査院の長と致して居ります、檢査官の任期は七年でありまして、さうして一囘に限り再任されることが出來る、さう云ふ制限を加へて居ります、又滿六十五歳に達した時は退官し、又「他の檢査官の合議により、心身の故障のため職務の執行ができない」、斯う決定され、「又は職務上の義務に違反する事實がある」と決定せられました場合に、其の上に兩議院の決議があつた時は退官を致します、是等の場合を除きまして、檢査官は自己の意思に反して官を失ふと云ふことがないのでありまして、即ち身分上の保障が非常に嚴重に與へられて居るのであります、此の身分の保障は從來は、十數人の會計檢査官全部にあつたのでありまするが、今囘の改正で唯三人の檢査官だけが受けることに改めた譯であります、次に事務總局に於きましては、官房の外に檢査の爲に四つの局を設けまして、職員と致しましては事務總長、事務總局次長各一人の外に祕書官、事務官及び技官を置きまして、其の中事務總長、次長などの一級の官吏は檢査官の合議で決めた所に依り内閣で其の任免、進退を取圖らひます、尚會計檢査院は事務總局の支局を必要なる地方に置くことが出來ることになつて居ります、以上が組織の面の御説明であります、次に權限に付て申上げるのでありまするが、會計檢査院が憲法及び法律の規定に基きまして會計檢査を行ふことは、是は其の本質的のものでありまして、從來と異る所はございませぬ、併し今囘は之を常に、常時に行ふ、絶えず行つて行くと云ふことを法文の上に明らかに致しました、さうして檢査の範圍の中に於きまして、國が資本金を出資して居りまする法人の會計と云ふものを加へまして、又會計檢査院が必要と認める時及び内閣が請求を致しました場合に於きましては、國の工事の請負人及び國に對する物品の納入者の契約に關する會計なども檢査することが出來るやうに改められました、それから從來官廳の中に於きまして、一部に屬する計算の檢査及び責任の解除を其の廳に委託すると云ふことが出來る所謂委託檢査の制度が設けられて居りましたけれども、是は檢査院の働きを充實致しまする見地から取止めました、全部會計檢査院が直接檢査をすると云ふことにした譯であります、又此の會計檢査院は、現在の法に於きましては、各年度の會計檢査の成績を上奏し、其の成績に付て法律又は行政上の改正を必要とすべき事項がありと認めまする時は、併せて其の意見を上奏することが出來ると云ふ風になつて居りまするが、此の上奏の點は、憲法の改正に伴ひまして廢止致しました、さうして之を檢査の進行に伴ひ、法令に違反したり、不當と認める事項がある場合及び檢査の結果、法令、制度又は行政に關し改善を必要とする事項があると認める場合に於きましては、直ぐに本屬長官又は主務官廳などに意見を示しましたり、或は適宜の處置を要求し、是正改善をさせることと致しました、且其の事柄を國會に提出致しまする所の檢査報告の中に掲げると云ふことに改めました、檢査報告には、此の外に法律、政令、豫算に違反をしましたり、又は不當と認めた事項を掲げるのであります、そして又此の檢査報告に關しましては、國會に出席して説明をする必要が起ることが想像せらるるのでありまするが、斯樣な場合には、檢査官を出席させ、文書面で之を説明することが、出來ることに致しました、從來議會と外の一般官廳との間の直接交渉と云ふものは認められて居なかつたのでありまするが、ここに檢査官出席と云ふ新しい制度を認めた譯であります、次に會計事務職員の責任と云ふ點に付きましての規定の改正があるのであります、現在の制度に於きましては、會計事務を致して居りまする職員の中で、出納官吏及び出納員と云ふものに付きましては、會計法の規定に依りまして、其の出納保管する現金及び物品に付き一切の責任を負ひ、總て會計檢査院の檢査を受けて無責任の判決がなければ責任を解除せられない、詰り原則としては責任がある、斯う云ふ風で特に無責任の判決を待つて責任が解除せられる、斯う云ふことに致しました、又亡失、毀損の場合に於きまして、出納官吏又は出納員に於きまして、善良な管理者の注意義務を怠らなかつたことを證明し、責任解除の判決を受けるのでなければ其の辨償責任を免がれることが出來ないと云ふ風になつて居りまして、斯樣な謂はば窮屈な制度を改めまして、出納職員が現金又は物品を亡失、毀損致しました時に限つて、會計檢査院で善良な管理者の注意を怠つた爲、國に損害を與へた事實があるかどうかを審理致しまして、辨償責任の有無を檢定することにしたのであります、又現行制度の下に於きましては、會計檢査院の判決に依り辨償の責を負ふ者は、天皇の恩赦に依る外は之を減免することが出來ないと云ふ規定がありまして、此の判決は、恰も裁判に例へますると、終審の性質を持つのでありまするが、憲法の改正に伴ひまして之を改めました、又右の出納職員以外の會計事務職員の責任に付きましては、是迄は規定がなかつたのであります、其處で今囘新たに會計檢査院の檢査の結果、國の會計事務を處理する職員が、故意又は重大な過失に依り著しく國に損害を與へたと認めまする時は、本屬長官等に懲戒の處分を要求することが出來るやうに致しました、又今囘の改正に依りまして、新たに會計檢査院は國の會計事務を處理する職員の會計經理の取扱に關しまして、利害關係人から請求があつた時は、之を審査する、是はちよつと今迄から見ますれば毛色の違つたことでありまするが、會計經理職員の扱ひ振りに付て、外部の利害關係人から請求がありましたら、之を審査し、其の結果是正を要するものがありと認めまする時は、其の意見を主務官廳などに通知を致しまして、又之を受けた官廳は會計檢査院の意見に基いて、適當な措置を執らなければならないと云ふことに致しました、尚色々細かい點が規定の中にありまするが、要するに會計檢査院の制度に付きまして、根本的な改正を行ひまして、民主政治の實質に合せ、會計と云ふものが今迄此較的輕く視られた所に付きまして、根本的な改正を加へようと云ふ、斯う云ふ譯で立案致しました次第であります、宜しく御審議を御願ひ致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=2
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003・柳澤保承
○委員長(伯爵柳澤保承君) 是より御質疑のおありになる方は御質疑を遊ばして戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=3
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004・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 誤植がございます、何れ後で正式の修正手續をすることと思ひますが、念の爲に初めちよつと申上げて置きたいと思ひます、第四頁の所の第九條「又は國會議員、」と云ふのがありまして、其の次のボツが變つて「若しくは」、斯う云ふ風に誤植を訂正を致したいと思つて居ります、「國會議員若しくは地方公共團體」斯うなります、次に第十五頁……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=4
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005・大谷正男
○大谷正男君 ちよつと、今の「國會議員若しくは」とすると「地方公共團體の吏員若しくは」と又ありますが、それは竝ぶのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=5
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006・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 「若しくは」は二つ竝びます、さう云ふ風になります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=6
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007・大谷正男
○大谷正男君 ああさうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=7
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008・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 第十五頁の三十五條、其の終りから三行目の、上から六、七字目の所に「その意見を」とありますが、其の「意見」と云ふのを「判定」と御改めを願ひます、又其の次の行の、其の下の方に「その通知された意見に基いて」とあります所の「意見」を「判定」と御改めを願ひます、それだけでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=8
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009・大谷正男
○大谷正男君 此の大體の組織、權限に付て、詳しい御説明がございましたので、大體了承は致しまするけれども、今迄の所と大變變つたと云ふ要點の一つとしまして、檢査官と事務總局の方面とが相對して檢査の仕事をして居ると云ふやうに了解せられるのであります、相對してと云ふことは少し語弊があるか知れませぬが、事務總長の方では、ずつと或程度の檢査を完了してしまふ、上に院長は居る譯でありますが、それで完了し、檢査官の方は茲に特掲されてあることだけをする、斯う云ふ風に變つたやうでありますが、さうすると、重要なことは、檢査官の會議に掛けよ、さう云ふことになりますが、大低のことは事務總局の方でしてしまふ、さう云ふ風になりまして、其の間檢査官と事務總局の方と意見の色々違ふ點、其の他、謂はば今迄一元的であつたのが二元的になつたやうな感じがするのでありますけれども、檢査の效果を擧げる上に於きまして、其の仕事が複雜になり、仕事がやりづらいと云ふやうなことはないものでありませうか、斯樣に變つたのは、從來ではどうも十分でない、斯くの如くするのでなければ、どうしても今後完全に檢査の實を擧げる譯に行かないと云ふ御見透しの上から斯う變つたのでございませうか、其の改正の理由と云ふやうなことをもう少し御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=9
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010・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 是は多くの人が集つて一つの組織體を成して居ります官廳全般に付ても言ひ得ることと思ひます、行政部局であれ、司法部局であれ言ひ得ることと思ひまするが、人間が最も適正に活動して行きまする爲には、どうしても權能を分配しなければならないと云ふことにならうと思ひます、詰り適材が適所に於て働き、各各權能を區別して、判斷の仕方が、價値判斷と云ふやうな點に於て主力を盡す者と、それから或標準にぴつたり當るかどうかと云ふ點に付て判斷をする者と、二組に分けて行くことは、自然能率を發揮致しまする上に付きましても已むを得ないことと考へて居ります、下らぬ言葉でありまするが、私共聞いて居ります言葉に、馬に代つて走る勿れと云ふ言葉がありまして、人間が馬に代つて走つて居りましては人間の任務が盡されない、偶然に惡い所の例が飛出しましたが、日本の多くの部局に於きまして、實際責任が、値打を判斷して、實質的に大事な事をやつて行かうと云ふ人が、自然に細かいことに沒頭されて行く、斯う云ふ嫌ひがございまするし、又實質的な事務を正確に、何等の裁量を加へないで調べて行くと云ふ立場の人が、時々自分で價値判斷をして、謂はば一つの方針を受理すると云ふやうなことがありまして、其の結果權限の紛糾が起り、或は下剋上と云ふやうなことが起つて來て居るのであります、さう云ふ點を考へて行きますと、正確に物を確かめて調査して行くと云ふ人々と、それを基本に致しまして、之に對して是非善惡の判斷を稍稍高い地位から加へて行く者とは分業になる方が宜いのではないか、こんな風に考へて居ります、是は裁判所などの今度の新しい組立にも多少其の氣持が用ひられて居ります、會計檢査院の面に於きましては、謂はば調査をする面に於きまして事務總局、即ち會計檢査の執行事務、斯う言つたら宜いかも知れませぬ、それから今度檢査官の方には其の決定事務と云ふものを認めて、此の二つを分けて、さうして其の決定事務を行ふ所の檢査官會義が全體を導いて行く、さうして其の事務の中心には事務總長を置いて行く、斯う云ふ風な稍稍新しい構想を加へたのでありまして、此の道を採つて行きますると、恐らくは好い結果が出來るであらうと思ふのです、今迄多數の茲に檢査官が居られ、さうして大體各檢査官が同じやうに兩方面の事務を擔任せられて居つたと云ふことは、或意味から申しますると、決定と普通の執行事務との間が有機的に結び著く、斯う云ふ利益はありますけれども、他の面から申しますと敏活を缺き、又其の判斷の一つの活きた面が失はれて行く、ルーテイーンの考が中心になつて闊達を面が缺けて行くと云ふ虞があつたと思はれのであります、會計檢査と云ふのは非常に緻密な判斷の要らない事務のやうに思はれて居ますけれども、さうぢやないのでありまして、是等の色々な道行きが、斯う云ふ審査事務の中にも創設的な事務があらうと思ひますから、今度の構想の方がそこは好い結果を得るだらうと確信致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=10
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011・大谷正男
○大谷正男君 さう云ふ風になりますと、今度此の檢査決定と云ふ方面の檢査の徹底と云ふと言葉は惡うございますが、それは總て檢査官の合議で決める、事前總局では其の下拵へをする、決定權はそこにはないと云ふ風に大體了解して宜いのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=11
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012・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=12
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013・大谷正男
○大谷正男君 さう致しますと第十一條に檢査官會議で決定する事項が全部此處へ掲げて居るのでありますが、まだ詳細は實は調査する遑がないのでありますが、此の外に檢査官の考で尚意見を述べたい、或は色々聽きたいとか、其の他決定事項、其の權限はもう是で決つてしまふのであるから、其の以上院長の考で以て此の議に付すると云ふやうなことは出來ないのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=13
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014・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 大體主なる問題は此の十一條で完備せられて居ると思ひます、併し其の一つ一つの具體的な問題になりますると、結局三十八條に「會計檢査に關し必要な規則」と云ふものがありまして、或程度の方針は是で具體化させて決めることが出來ようと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=14
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015・大谷正男
○大谷正男君 それは第三十八條は「會計檢査に關し必要な規則は、會計檢査院がこれを決める。」と云ふのでありまして、是は恐らくは檢査の方法とか其の他手續に關するやうなことが主ではないかと思ふのであります、現在の會計檢査院法の第十條第五號には「其ノ他院長ニ於テ總會議ニ付スルノ必要アリト認メタルトキ」と斯う云ふので、總會議で以て議決する事項をここで引つ括めて、院長が必要だと思つたものは會議に付し得ると云ふやうに規定はなつて居るやうでありますが、今度の改正法に依ると、斯う云ふ裕りがないやうに思ふのでありますが、其の點は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=15
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016・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 大體今囘の會計檢査院と云ふものは或意味に於て裁判所のやうな風になつて行くのでありまして、はつきりした權限を之に與へて、某の範圍に於きましては絶對公正な、運用の上に於きましては何人も其の人を動かすことも、意見を變へさせることも出來ない、斯う云ふ立場を採つて居りまする爲に、きちんと列記して、是だけを會計檢査官會議に於て實行することと致しまして、其の本體は、會計檢査官會議をやるべき本體は之を以て盡きるものと思つて居ります、若しそれ以外に事務がありますれば、事務總局で扱ふと云ふことにならうと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=16
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017・大谷正男
○大谷正男君 別に此の會計檢査の實體に付て能く承知して居りませぬのでございますので、實はさう云ふ必要がないかも知れませぬが、現在の法律には何か裕りが付いて居つて、必要の場合には院長の裁量に依つて會議に掛けることが出來ると云ふことになつて居るに拘らず、大變今度は、今御説明のあつたやうに、裁判所の權限の如くになつて、非常に嚴格に限定されて居ると云ふ御話ではございますけれども、さつきの御説明のやうに、總ての決定權は檢査官會議にあり、事務總局に於ては、謂はば下拵へをすると云ふ風に、御説明であると、さうしますと、會計檢査の外に對する決定と云ふことが限定されて居ると云ふことで果して宜いのであるか、もう少し裕りが必要ではないかと云ふ氣がするのでありますが、まあ其の必要がないと云ふ御話でありますれば何ですが、其の點は多少どうかと云ふ風に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=17
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018・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 大體御覽下さいますと分りますけれども、會計檢査院の仕事の主たる點は、憲法に掲げてあります所の檢査報告の作成でありまして、さうしてそれに又附隨致しますものは、此の檢査院法に掲げてある所でありまして、此處にある所で實質は網羅されて居ると考へて居ります、若しも此の規定だけで行かないやうな新しい問題が起つて來ますれば、其の時は遠慮なくそれ等の法律を變へることに依つて、それをはつきりさせたいと云ふ風に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=18
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019・大谷正男
○大谷正男君 他の事柄に移りますが、其の第六條に依りますと、退官の場合に付て規定されて居りますが、現在の規則に依りますと、懲戒處分に付するのは、特別懲戒裁判所の組織があつて、それに依つて免官と云ふやうなことがあつたりするやうであります、此の六條に規定されてあります所に依りますと、他の檢査官の合議に依つて、心身の故障の爲に職務の執行が出來ない、或は義務に違反すると云ふやうな、さう云ふ事實があることを決定された時は、兩院の議決があれば退官にすると云ふことがありますが、茲で合議でありますが、單に三人であるのでありますか、細かいことを云ふやうでありますけれども、此の心身の故障の爲に仕事が出來ないと云ふのが、一人であれば、さうすれば他の二人の合議に依つて其のことが決定されれば兩院の議決を經て退官すると云ふやうな手續になるのであります、それが偶偶二人であれば合議と云ふことは事實は出來ないやうになる、現在に於ては懲戒令の規定もあるし、さうして檢査官は數も大變多いので、色々其の點心配することはないだらうと思ひますが、是は非常に少いのでありますし、是が要件でありますから、此の合議と云ふことが要件であると、さう云ふことが成立しない場合には全然此の適用がないことになる、其の點は何か窮屈になりさうな氣が致しますが、懲戒令は之に依つて廢止せられることになりますが、さうすると懲戒免官と云ふやうな規定は、他の文官の懲戒免官と云ふやうな、あのやうな規定はないのでありますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=19
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020・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 懲戒に關しまする特別なる法律は作りませぬ、此の考へ方が今迄の流儀と非常に違つて居ります爲に、御凝の起るのは尤もと思ひますが、根本の考は、會計檢査院は自然内閣に隷屬し易い、内閣が其の人事を動し易いと云ふことになりまして、行政部の手足になると云ふことを極力避けたのであります、理論的な考から言へば會計檢査院も一つの行政部局の姿を取つて居る、詰り國會でない、裁判所でない、斯う云ふ意味になつて居りますが、併し實質の面から申しますと、是は全く獨立して居るものであります、公正なるものであります、公正なる意見を立てるものと云ふ風に考へて居ります、從つて其の人事に關しましては、最も獨立を保障しなければならぬと云ふ考が根本になつて居ります、此の人事は任期を七年とする、斯う云ふ風にして一應の最大限を決めて置きまして、年齡の六十五歳と云ふやうな制限も付けてはありますが、其の外の點に付きましては、一度任命した限りは之を動かさないと云ふ根本の建前を取りました、併しそれにしましても、どうしても心身の故障とか、職務上の義務違反や、後段は矢張り懲戒に當るやうな場合と思ひまするが、さう云ふ場合、それから刑罰に觸れた場合、此の三つの場合はどうしても身分を動かす原因にならうと思ひます、そこで刑罰で行く場合、是は裁判所で禁錮以上の刑に處せられますれば官を失ふ、是で公正は保たれる、處が心身の故障とか、職務上の義務に違反となる點になりますと、茲に非常に獨立を脅す種が蒔かれないとも限らないのでありまして、そこで先づ第一に自分達の仲間に依る裁きを受けると云ふのが「他の檢査官の合議により、」と云ふ所になつて居るのであります、さう云ふことに依りまして、結局三人の中で一人が問題を起しますと、二人の人が合議で決めると云ふことになります、非常に危つかしいと云ふやうなことが想像されますけれども、併し二人の合議に依つて決めると云ふことは、二人が贊成しなければ其の方向には行かないのでありまして、一人が反對し、一人が贊成をすると云ふことになれば問題が進行しないと云ふことになります、その意味は其の檢査官の身分を極めて安定ならしむると云ふ結果になるのでありますから、まあ大體に於きまして身分を保障する方法は、斯樣な途が一番正しいのではないかと云ふ風に思つて居ります、尚兩議院の議決と云ふものが更に加はりまして、假令仲間の者がそれを退官すべきものと定めました場合でも、兩議院が之を又議決を以て確認致しませぬければ、退官しないことになりますから、金城鐵壁の中に是が入れられて居ると云ふ風な建前になつて居ります、此の方法は普通の行政官に當嵌めますと、是はなかなかうまく出來ないと思ひますけれども、檢査官と云ふ者の本質が一種特別なものでありますから、こんな風に強く身分を保障することに依つて實は自分達の、或意味に可なり反對する立場にある政府の會計事務を正確に調べることが出來ようと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=20
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021・大谷正男
○大谷正男君 さう云ふ意味で是は實際上此の規定に依りまして、仲間の中に心身の故障の爲に職務の執行が出來ないと云ふやうなことを判斷すると云ふことは、甚だ實際問題から言ふとむづかしいことであり、又したくない事柄であります、それから此の規定に該當して退官を要求すると云ふことは、事實に於てはまあ多くはないと云ふことを大凡御想像になつての規定のやうに考へられる譯であります、現在の規定に依ると職務を怠つた時と云ふやうな規定もあるやうであります、職務を怠つたる時と云ふのは、此の職務上の義務に違反すると云ふことにも包含されるかと思ひますが、さう云ふ風で非常に職務を極端に言へば曠職の責があると云ふやうな場合にもどうすることも出來ない、さう云ふ風になるかと存ずるのでありますが、滿六十五歳に達する時は、是はまあ別でありますが、それもないと云ふと、殆ど手を着けられないやうな位置にして置くと云ふ趣旨に寧ろ考へらるるのでありますね今の御説明に依ると……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=21
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022・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) それは覺悟をして手を着けられないやうな立場に置いておくと云ふ意味を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=22
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023・大谷正男
○大谷正男君 尚此の第四條に「年額五萬圓の俸給を受ける。」と云ふ規定があるのでありますが、是は外の處にもまあ實例はないのではないかと存じますけれども、此の俸給額を法律に掲げると云ふことに此の方が宜いのでありませうか、是は特に他の規定に依りて差支ないと思ふのでありますが、又給與と云ふものは時に依つて動く性質のものでありますが、此處は明記しなければならぬのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=23
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024・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 俸給を斯樣な場合に正確に書く書かないかと云ふことは、矢張り日本の斯う云ふ立法制度の上の一つの新しい行き方と考へて居ります、國會議員の俸給は國會法の中に間接に規定せられて居りまするけれども、其の他の法律で特に注意して決めて居ります、官吏に付きましては裁判官の俸給の如き矢張り上の方の者は正確に決めて居るのであります、さうしてそれ等の人は任期中は俸給の増額も得られないと云ふ固定給にして居りまして、官吏ではありましても、一種特別な地位を之に認むると云ふ態度を執つて居るのであります、身分保障を致しまする場合に俸給の方がぼんやりして居りますと云ふと、理窟は固より身分と俸給と違ふと言ひ得るのでありませうけれども、結局身分に其の俸給額が影響を齎すことになりまするから、矢張り何等かの方法で書かなければならないと存じて居ります、さうして從來の建前でありますれば、俸給は命令で決めると云ふことになつて居りまするけれども、改正憲法の建前から申しますると、矢張り法律に書くと云ふことになりまするから、結局基の法律の中に書いて置く方が宜からうと云ふことになりまして、若し物價の變動等に依つて之を變更する必要がありますれば、其の時の改正問題にして解決しやうと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=24
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025・大谷正男
○大谷正男君 少々飛びますのですが、二十三條の會計經理の場合の規定でございますが、第五號に「國が資本金を出資したものが更に出資しているものの會計」と云ふ、是は從來から見れば非常に擴張されたやうに思ふのでありますが、「國が資本金を出資したものが更に出資しているものの會計」と云ふことになると、非常に廣く隨分諸方にそれがある、それはまあ會計檢査をし得ると云ふだけでありまするから、實際すると云ふことはなくても、そこ迄し得ると云ふ、爲し得ると云ふ力だけ與へて居つて、實際上そこ迄行かないと云ふ趣旨であるかも知れませぬですが、少し廣過ぎるかと云ふ感じがしますが、其の點は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=25
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026・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 仰せの通り、今迄は是ははつきり書いてなかつた制度でありまするけれども、今囘特に之を加へたと云ふことは、其の大きな理由は、近頃斯う云ふ場合が非常に多くなつたと云ふ其の理由に基いて居るのでありまして、前の號に書いてありまする四號の「國が資本金の一部を出資しているものの會計」、斯う云ふのが一つそこに書いてありまするが、此の範圍なども今迄と遙かに程度の違ふ位に、斯う云ふ状況が殖えて來て居るのであります、さうして其の出資した者が更に出資すると云ふやうなことも最近實際に事例が多くなつて、詳しいことは存じませぬが、各種營團とか産業復興金庫と云ふものが、斯樣な方向に既に存在して居りますし、又今後とても公團とか云ふ名前の下に一種特別な經營體が出來るのでありますが、さう云ふものに對して、資金を外の國の出資して居る財團から出すと云ふ傾きになりまして、非常に重大な問題に是がなつて來るのです、そこで斯樣な規定を置いて、運用の上に於きましては適當な注意を以て處置して行くと云ふ考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=26
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027・大谷正男
○大谷正男君 一應私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=27
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028・柳澤保承
○委員長(伯爵柳澤保承君) それでは今日は此の程度で終りまして、明日又開きたいと思ひますが、如何でございますか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=28
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029・柳澤保承
○委員長(伯爵柳澤保承君) それでは本日は是にて散會致します
午後三時三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=29
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030・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 伯爵 柳澤保承君
副委員長 男爵 三須精一君
委員
大谷正男君
子爵 藤井兼誼君
子爵 牧野忠永君
男爵 岡俊二君
中村藤兵衞君
木下謙次郎君
戸口米次郎君
岸本彦衞君
國務大臣
國務大臣 金森徳次郎君
政府委員
法制局次長 佐藤達夫君
法制局事務官 宮内乾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200231X00119470318&spkNum=30
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