1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
○日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に関する法律案
○日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律案
○日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律案
―――――――――――――――――――――
昭和二十二年三月三十日(日曜日)
午前十時十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=0
-
001・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) それでは「日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に関する法律案」、「日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律案」、及び「日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律案」此の三案が本委員會に昨日併託をされましたので、是より此の委員會を開くことに致します、就きましては先づ最初に「日本國憲法の施行に伴ふ民法の應急的措置に関する法律案」を議題として審議を致します、御質問がありましたら御願を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=1
-
002・村上恭一
○村上恭一君 私は此の種の立法が此の三件だけで宜しいのでありますかどうか、と言ひますのは、刑法に付きましても何等か應急的措置に關する立法を要するのではないかと云ふことを感じます、茲に民法あり、民事訴訟法あり、刑事訴訟法あり、獨り刑法がないのは如何な次第でありませうか、是も改正憲法の精神に忠實に即應するに於ては相當の改正を要するのではありますまいか、一時世間に傳へられて居ります所もあります、其の一端を申しますれば、所謂男女同權と云ふ思想に基きまして、現行刑法に於ける姦通の罪、それが女子だけに適用があり、男子には適用がないと云ふことは、改正憲法の精神に即應しない、そこで男子にも姦通の罪を認めるか、或は男女を通じて姦通の罪を認めない、世間に傳はる所では、後者の説が有力であつたやうであります、是は一例でありまするが、此の樣に改正憲法の精神に即應すべく刑法にも何等か應急的措置に關する立法を要するのではないかと思ひます、此の三件の審議に入りまする前、此のことを御尋ねする次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=2
-
003・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 改正憲法の實施に即應致しますやうに、仰せのやうに刑法に付きましても、多分に改廢を要すべき部分がありますので、先般來法制審議會の要綱に基きまして、鋭意立案に努力を致して居つたのでありまするが、提案の間際になりまして、實は「皇室に對する罪」の章に付て色々意見がありまして、早急に刑法の改正案を提出して御審議を願ふ運びに至らなかつたのであります、議會閉會後は早速刑法の全面的改正に付ての委員會を開きまして、私共の試案を再に再檢討して、さうして立派なものを立案して、成るべく近い機會に議會に提出致したいと、斯樣に考へて居るのであります、併しながら現行刑法を此の儘にして居つては、新憲法の實施の曉にどうも其の儘適用することに付て、色色問題が起きまするので、其の點をどうしようかと云ふことに付て、事務當局としても苦心致して居るのでありまするが、刑法の改正に至る迄の間は、公訴權の行使に付て、愼重な態度を以て之に臨む、詰り運用の上に於て十分憲法違反のやうなことの起きないやうに心懸けたいと思つて居るのであります、例へば只今御示しの姦通罪の規定でありますが、現行刑法は妻に對する姦通罪だけを認めて、夫に對する姦通罪を認めて居りませぬので、新憲法の所謂夫婦平等の原則にも反しますので此の姦通罪の現行刑法の規定が新憲法實施の曉には、一體效力があるものであるかどうが、適用が出來るかどうかと云ふ點に付て、甚だ疑問がありますので、差當り姦通の事實が起きましても、檢察當局に於ては之を起訴決定するに付て愼重な態度を以て之を解決したい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=3
-
004・村上恭一
○村上恭一君 茲に改正憲法の條文を持つて居りませぬが、改正憲法の中に此の憲法の規定に違反する法律、さう云つたものは總て效力を失ふ、斯う云ふ極めて概括的な規定があつたと思ひます、其の規定を遠慮なく活かしますれば、刑法の規定の中で、改正憲法の規定に牴觸するものは、當然效力を失つてしまふ、それで今の姦通の罪に付きましても、さう云ふ見解で夫の姦通を罪とせず、妻の姦通のみを罪とする斯樣な規定は改正憲法の規定に牴觸するものであるから效力を失ふ、斯う云つたやうな解釋を御執りになる御意思はないでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=4
-
005・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 刑法の規定でありましても、明かに新憲法の明文と牴觸致しまするものは、效力が當然なくなるのではないかと云ふ風に考へられるのでありますが、只今御示しの姦通罪の規定に付きましても、然らば現行刑法の姦通罪の規定が直ちに效力を失ふものであるか、或は男女平等と云ふ精神に立脚して、夫も妻と同じやうに罰すべきものではないかと云ふやうな意見も立ちまするので、現行刑法の姦通罪の規定が直ちに效力を失ふんだと云ふ風に即斷する迄には至つて居りませぬので、其の點に付て色々意見もありまするので、當局と致しましては、公訴權の行使に付て、起訴、不起訴を決定するに付て、愼重な態度を以て解決して行きたいと、斯樣に考へて居るのであります、併しながら若し裁判の問題になりますれば、裁判に於て姦通の規定が既に效力がないものとして、裁判されるかどうか、其の點は分りませぬが、現在若し繋屬して居るやうな事件があれば、成るべく五月三日の新憲法實施前に事件を處理してしまひたいと云ふ風な考の上に大體の打合せは致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=5
-
006・村上恭一
○村上恭一君 刑法に關する限りは、此の新憲法施行と同時に、適當な改正を加へることが事實上間に合はなかつた、だから刑法は暫く現行規定の儘に存置する、唯之を運用するに當つて、公訴權の行使、即ち起訴に付て、關係當局が愼重な考慮を加へる、碎いて申しますれば、其の間に手心を用ひると云ふ御答辯と了承致します、其のやうなことが一體許されるものでありませうか、法律に於ては斯く斯くの行爲を罪とすると規定して居る、現に其の行爲がある、然るにそれを罪としない處罰しない、それでは其の法律、現行法律の威力が地を拂つて空しきものとなります、斯樣な事態が生じまして、尚且我々の國家が立憲政治を行つて居るもの、國民は立憲生活を行つて居るものと言ふことが出來ませうか、それは差支ないと云ふ迄の御決意を司法當局は御持ちでございませうか、此の點をはつきり伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=6
-
007・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 成る程、現行刊法が明文で現存して居るのでありまするから、起訴、不起訴に當つて、斯樣な規定を適用しないやうに取扱ふと云ふことは、法治國の政治の運用としてどうかと云ふ御質問でございまするが、只今の、例へば姦通罪の規定に付きましても、其の規定が憲法の明文に直ちに牴觸しないとしても、憲法に示して居る夫婦平等の原則、其の精神に牴觸すると云ふ考の下に、公訴權の行使に當つて此の點は十分斟酌されて起訴、不起訴を決定すると云ふことは、是は何等差支ないものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=7
-
008・牧野英一
○牧野英一君 民法に關する點に付て御伺ひ致したいのでありますが、昨日我妻君が本會議に於て、此の法案に對する色々細かい批評がありました中に此の法律案全體としては、家族生活に付て世の中に誤解を生ずる虞がある、又現に憲法二十四條に付ては遺憾ながら世の中に誤解があつた次第であります、政府の説明に依れば、それは明かに誤解であるやうでありますけれども世の中にさう云ふ誤解があると云ふことはどうも間違ひないやうに思はれまするが、さう云ふ誤解が行はれて居ると云ふ事實を、政府としては御認めになるのかどうか、御認めになると致しますれば、それに付てどう云ふ風に御考になつて居るか御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=8
-
009・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 世間がどう云ふ風に誤解して居りますかと云ふ點に付きましては、少くとも此の法律が成立致しました曉には、例へば戸籍關係のもの、或は實務に當つて居る裁判所關係のものは勿論のことでありますが、其の外に一般國民に對して文書なり、或はラジオ等の方法に依りまして誤解のないやうに、而も此の民法改正の趣旨を徹底するやうに努めたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=9
-
010・牧野英一
○牧野英一君 此の誤解のことは、此の憲法の時にも私が本會議に於て申上げて置いたことであります、只今の御答では、其の誤解に付ては、特に御調査がおありにならぬのではないかと思はれまするが、私共の耳にして居る所では、意外に廣く此の誤解が行はれて居るのであります、さうして其の事實は、昨日我妻君が本會議に於ても述べられたのであります、純粹の法律論として、其の誤解は誤解に違ひないにしても、矢張り相當に是は當局としては御考を願ひたいと、斯う思ひます、昨日の我妻君の議論では、色々細かく説明がありまして、かるが故に文部大臣に對して特に質問する、斯う云ふことでございましたが、文部大臣だけで宜くはないので、現に今政府委員の説明では、司法當局としても出來るだけの方法を講ずると云ふ御考でおありになるやうですが、其の外に立法上、矢張り何か御考慮になると云ふやうなことがおありにならぬものかどうか、立法上は一向さう云ふことは考慮して居らぬと云ふ御考でおありになるか、それを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=10
-
011・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 只今申上げましたやうに、此の暫定應急措置に關する法律の周知徹底を圖りますと同時に、次に致します民法の本格的改正でありますが、其の點に付きましては、成案が出來次第、例へば之を一般に公表して、實施迄の間に十分一般人の意見を聽き、或は一般に周知せしむるやうな手續を執つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=11
-
012・牧野英一
○牧野英一君 此の一般に周知せしむると仰しやいますのは、民法の改正の要綱をですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=12
-
013・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 要綱ではなく、條文の形に成案が出來ました場合に、成るべく早く之を公表しまして、一般の意見を聽くなり、周知をせしむる方法を執りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=13
-
014・牧野英一
○牧野英一君 實は私、此の法案を見ました時には、是は個人の尊嚴と兩性の本質的平等と云ふことだけの法案であるので、極く最小限度の應急的のものであると云ふことに承知致して居りましたのでございますが、それが昨日我妻君の質問を伺ひまして、それがそれだけでは濟まぬ影響のあることであると云ふことで、特に文部大臣に強く質問になつたことに、格別注意を促された次第でございます、此の參考の爲に御廻しになりましたのも一應拜見しましたが、それが成立致しますれば、又自ら事情も變ることもございませうが是だけのものが法律になりまして、あとは民法通りと云ふことになりますると、例へば此の扶養の義務、單純な思想的の問題に止まらないで、扶養の義務と云ふやうなことを考へますと、憲法の規定と、此の法律に依つて、夫婦の間には協力の義務があるが、併し親子の間には民法の規定する扶養の義務しかない、斯う云ふことになる譯であります、是は正しく世の中に疑を生ずる一つの點であらうと思ひます、さう云ふやうなことに付ては、政府としてはどう云ふ風に御考になつて居るのでございませう、それで差支ないものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=14
-
015・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 此の暫定の應急措置に關しましては、扶養の義務の點に付て別段規定を致して居りませぬので、現行法通りと致して參りまして、夫婦も親子も同じく相互に扶養の義務のあるのは現行法通りであります是は、牧野委員の御質問は、或は將來成立すべき民法の改正案に於て、どう云ふことになるかと云ふことでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=15
-
016・牧野英一
○牧野英一君 結局は、今村上君からも御注意のあつた通り、憲法が實施になりますれば、民法も自ら憲法に反する程度に於ては、所謂憲法前文にある通り排除される譯になりまするので、夫婦の扶養の義務と云ふやうなことは憲法の規定に依つて自ら改正を要することになるものと私心配を致して居ります、結局憲法第二十四條の「協力」と云ふことは、民法で規定してある所の夫婦間の扶養の義務とは程度が違ふことになりはしないか、さうすると此の法律だけが世の中に出ますると云ふと夫婦には協力の義務があるが、例へば其の他の親族全體ですけれども、親子の間には協力も何もない、もう少し言葉を強く言ひますれば、夫婦よりも親子の關係を輕んじて居ると云ふ形になる譯であります、それが自ら私は民法第七百九十條、第九百五十四條等の適用にも影響を及すことになりはしないかと思ひます、第三者が親族の一人に對して損害を與へた場合に、賠償額を計算する、扶養の義務を本にして計算をするか、協力の義務を本にして計算するかと云ふことでは、自ら其處に違ひが生ずる譯であらうと思ひます、是は思想としても大切なことでありまするが、差當り氣附いた所でも、さう云ふ適用上の問題もある譯でありまして從つて此の問題を或程度に於て早急に明かにして戴かぬと、どうしても誤解が兔れないと云ふことを私は心配を致します、それでこの問題は我妻君が昨日御話になつた通り、憲法の問題として私は非常に心配に堪へませぬ、修正案を提出致しました處が、幸に過半數を得ましたけれども、憲法改正の修正案としては成立することが出來ませぬでした、其の我妻君は私に反對であると言はれましたが、それは法律問題ではない、是は純粹の道徳上の問題であつて、法律問題ではないと云ふ風に御説明になつたかのやうに承りましたが私は其の道徳の問題が法律に採入れられて然るべき問題であるのみならず、改正の模樣に依つては扶養の義務との關係で法律の運用に付ても、どれ位影響を及すことでありはしないかと、斯う心配をするのであります、少くとも法律では夫婦と親子の間に差別を設けさうして文部省に於ては、家と云ふ家族生活と云ふものは、道徳で經營して行かなければならぬと云ふのでは、果してそれでうまく行くか、現に憲法は信義、誠實の原則を明かに致して居りますので、して見ますと云ふと、家族生活に付ても世の中の誤解のないやうに取急いで、適當に方法を講じて戴きたいと、斯う云ふ風に私は考へて居るのであります、そこで例へば先達て裁判所法案を討議致しました時に、裁判所法案の中に、此の法律は陪審の施行を妨げないと云ふ規定があります、えらい規定であります、我々は陪審のことは、裁判所法案に何も謳つて居ないから、イエスともノーとも言はない陪審法を特に規定する必要はないではないかと云ふ質問を致した時に、矢張り陪審を妨げないと云ふ所に、思想的な大きい意味がある、斯う云ふことの政府の説明でありまして、一應納得致しました次第であります、毒にも藥にもならぬ規定ぢやないかと云ふ批評もありましたが、さうではない、矢張り政府の説明の通り陪審と云ふものを、裁判所法で認めて居ると云ふ所に、思想的な大きな意味がある、それと同じやうに民法の此の規定は、成る程「個人の尊嚴と兩性の本質的平等」と云ふことが、憲法に掲げてあるけれども、それだけで萬事濟んだと云ふ積りではない更に敬愛、協力と云ふ精神を、民法には明かにしなければならぬ、敬愛、協力の精神と云ふことは、我妻君が昨日本會議に於て述べられた所であります其の言葉は、私が先に修正案の時に用ひた言葉であり、又憲法の委員會に於て私の提出致しました修正意見の中にも明かにした點であります、如何にも「個人の尊嚴と兩性の本質的平等」と云ふだけでは、エマンシペーシヨンと云ふことは出來るでございませうが、更に進んで融和する、統合すると云ふ考が薄いのであります、此の意味に於て尊嚴、平等と云ふだけでは、憲法が十九世紀の憲法であることを免れないので、二十世紀の憲法としては、もう一歩進まねばならぬと云ふ議論を我々が繰返し繰返し強くしたのでありましたが、不幸にしてそれは容れられませぬでした、併し其の時に金森國務大臣は、其の事は憲法では關係しないのだ民法で然るべく御定めを願へれば宜いので、其の事は關係をしないのだと云ふのが、私の主張に對する答辯でありました、昨日我妻君が衆議院に於ける總理と金森國務大臣との答辯を引用になつて御話になりましたが、衆議院に於ける總理と金森君の答、貴族院に於ける我々の主張に對する金森君の答とは、大分又違ひがあるのであります。さうして憲法の方では、兎に角さう云ふ家族生活の事は全く關係しないのであると云ふのが、私共に對する答の最後でありまして、さうして更に司法大臣にも伺ひ、司法大臣は其の點は考慮して居ると云ふやうな御答であつたと記憶致して居りまするが、文部大臣は十分其の點に付ては努力すると云ふ積極的な御答であつたのであります、さう云ふ次第で私は昨日我妻君の話を伺つて居つて、我妻君の申されることは十分理由があると思ひました、理由がありまするから、文部大臣にばかり迫られることではないので、司法當局でも民法の改正案には矢張り考慮を願ひたい、それで思想的の問題としては、裁判所法案に斯くの如き陪審のことが謳つてある程度に於てでも、矢張り此の個人の尊嚴と兩性の本質的平等と云ふことを論ずるに付ては、同時に敬愛協力の精神と云ふものを忘れて居らぬと云ふことを明かにして置いて戴きたい、斯う云ふ風に私は思ひまするし、更にそれは思想的な問題に止まりませぬので純粹の法律論を致しますれば、今申上げました通り扶養の義務に影響を及すことで、さうしてそれは御示しの參考書類にも或程度迄御趣旨の點が上つて居ります、それで若し御許しが願へれば、私は此の法案の何處かに裁判所法案の例に倣つて此の法律は家族生活に於ける敬愛、協力の精神を妨げないと云ふやうな一箇條を置きたい、斯う思ふ位でありますが、政府としてはさう云ふ意見に付てはどう云ふ風に御考でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=16
-
017・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御話のやうに、牧野委員から此の臨時法制調査會の總會に於きまして、直系血族及び同居の親族が互に協力、扶助すべきものであると云ふことの規定を民法の中に挿入をして貰ひたいと云ふ御提案がありまして、其の調査會に於きましてもそれを採擇されて居ります、其の結果只今御手許に配付して居ります現段階に於ける改正案に於きましても、其の七百三十一條かと思ひますが「直系血族及ビ同居ノ親族ハ互ニ協力スヘキモノトス」と云ふ趣旨の規定を一應置いてある譯であります、それでありますから、此の點は尚關係方面と能く審議を盡さなければなりませぬが、現在司法當局に於ける現段階に於ける改正案にはさう云ふことを明かに規定して居りまするので、此の應急措置の中にさう云ふことを謳はなかつたのは、是は其の民法改正との間の暫定的措置であつて、何等手離しで憲法施行に移りますと、憲法に牴觸する諸諸の民法の規定がどう云ふ風に運營されるかと云ふことが非常に不明でありまして、一般國民生活が混亂を來します、それが故に憲法の要求する最小限度に於て民法に其の暫定的な繋ぎを附けると云ふ意味で此の暫定法が立案されましたので此の暫定的法案にはさう云ふことに付ては觸れて居りませぬのですが、此の次に御審議を願ふ民法の改正案、現在の草案に於きましては、さう云ふ規定を設けて居ります、此の點が若し關係方面等に於ても了解されると云ふことであれば、それが恐らく成文になるかと思ひますので、暫定的の此の民法應急措置法には色々審議期間の關係もありますし、是から若し修正されると云ふことになりますと、其の點に付て關係方面とも更に折衝を重ねなければなりませぬので、時間的の關係もありますので、此の暫定措置法には此の儘にして戴きまして、將來の本格的改正の中に其のことを出來るだけ規定するやうに努力致したい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=17
-
018・牧野英一
○牧野英一君 尚ちよつと、今の扶養の義務に關する所の色々の御苦心の樣子が見えまするが、一應御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=18
-
019・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 扶養の義務の關係に付きましては、現行の民法に於きましては、自已の收入ではどうしても生活が出來ないと云ふ場合に、始めて扶養を請求することが出來るやうになつて居りますが、今考へて居ります民法改正草案に於きましては、此の點は非常に大幅、寧ろ其の範圍をさう云ふ風に限定しないで、具體的に家事審判所に於きまして、どの程度、扶養の程度、方法、さう云つた扶養をすべきかどうかと云ふやうな事柄も、一切の事情を斟酌して家事審判所が之を決めると云ふことに致して行きたいと云ふ風に考へて居ります、此の點は御手許に差上げて居ります案の九百五十六條と思ひますが、之に扶養の程度又は方法に付て先づ當事者に於て協議してそれで協議が調はない時には扶養權利者の需要、扶養義務者の資力、其の他一切の事情を斟酌して家事審判所之を定むと云ふことにして居るのでありまして、其の爲に扶養の關係に付きましては、家事審判所と云ふものが出來て家庭の關係に付て深くタツチすると云ふことになりますれば、さう云ふ具體的な事情々々に應じて、適當に家事審判所に委せて宜いのぢやないかと云ふ風に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=19
-
020・牧野英一
○牧野英一君 さう致しますと、斯う云ふ風に伺つて宜しうございませうか此の法律は憲法第二十四條との關係上全く必要な最小限度に於ての應急的な規定であるに過ぎないから、是だけの規定を設けたに過ぎないのであるが、併しながら貴族院に於て曩に成立はしなかつたけれども、過半數を得た所の此の修正の案、家族生活を尊重すると云ふ趣旨の精神は、矢張り今後の民法に於て十分立法上考慮をする、斯う云ふ御趣旨と伺つて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=20
-
021・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=21
-
022・牧野英一
○牧野英一君 私が斯樣に色々申上げまするのは、昨日我妻君の本會議に於ける質問に於ては、要するに家族生活に關しても個人の尊嚴と兩性の本質的平等と云ふことが法律問題として大切なので、敬愛、協力のことは道徳の問題であつて、文部大臣に特に質問する、それだけで宜いのであると云ふやうな趣旨であつたかのやうに私は伺つたのであります、敬愛、協力の精神が家族生活に必要であると云ふ我妻君の述べられた理由は全然私は同感でありました、最後に至つて併しそれは法律の問題でないので、文部省の問題、教育の問題に止まる、斯う言はれた所に私は聊か疑を持つ、斯樣な理由があるならば、立法上、行政上、廣く一般に亘つて政府は考慮せられるべきであるのだ、斯う思つた次第なのであります九十五パーセント迄は我妻君と私とは歩調を同じく致して、最後の土壇場に至つて、我妻君が純粹の法律問題でないとされるものを、私は法律に於ても十分それは取り上げて戴きたい、是は教育基本法だけの問題ではないので、而も其の教育基本法と雖も矢張り法律でありまするが、民法、刑法に於ても考慮して戴きたい、例へば民法ばかりでない、刑法の方に於きましても、家族益の問題と云ふものがあるのでありまするが、併し今政府委員から伺ひますると云ふと、敬愛、協力の精神と云ふ問題は單純な教育だけの問題ではないので、司法當局としても法律の改正上十分考慮する、斯う云ふ答であつたと心得まするので、矢張り立法上も法律問題として何處迄も輕くは見ない、斯う云ふ御考と二度駄目を押すやうですが、さう云ふことで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=22
-
023・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=23
-
024・牧野英一
○牧野英一君 それでは此の點は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=24
-
025・我妻榮
○我妻榮君 民法の應急措置法に付て二、三伺ひたいと思ひますが、第一點は此の法律には經過的な措置が少しも出て居りませぬですが、斯う云ふ思ひ切つた法律を、直ちに施行しては經過的な問題に非常に混亂を生ずる虞があるだろうと思はれるのであります、取り分け家督相續がなくなつて遺産相續になると云ふことになりますと、從來家督相續になると云ふことが前提されて一應收つて居ると云ふ問題が、今度は家督相續にならないことになる、例へば入夫が入夫婚姻をしてそこに家の財産を全部相續して居たと云ふ所に、此の法律が施行になつて、其の後で入夫が離婚しますと、全財産を持つて夫婦別れをしてしまふ、現行法に依りますと、之が家督相續になりますから、其の財産を其の家に置いて行く譯であります、今度は夫婦別れをして全財産を持つて行つてしまふ、是はちよつと氣の付く一番大きな點でありますが、さうした經過的な問題が非常に澤山生ずるだらうと思ひますが、其の點に付ては何か政令か何かで經過的な措置を講ずることが出來ると云ふ御考なんですか、それともそれは出來ないと云ふ御考ですか、其の點伺ひたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=25
-
026・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 實は此の暫定措置の法律が法律となりました場合に於きましては、例へば戸籍法等其の他の各法律に付て、之を色々手を入れなければならない問題が澤山あるのであります、それでさう云ふ小經過的な事柄及び他の法律の改正等に付て總て政令でやることが出來るやうな規定を入れたかつたのでありますが、此の點は關係方面との折衝の結果、結局それが出來ないことになつた譯であります、そこで一般法律の施行に付きましては、憲法にありますやうに、政令で以て施行規定を設けることが出來ると考へて居りますが、是は純粹に施行に關する事柄で、其の施行の政令に於て非常に實質的な只今仰せのやうな事柄を迄も規定して宜いかどうか、是は餘程研究致さなければならない問題で、其處まで施行の政令でやり得るかどうか、是は相當問題ではないかと考へます、併しながら私共の考と致しましては、此の民法の應急措置法と云ふものは、將來民法の本格的改正に移行する橋渡しとして、大體將來の改正の方針或は方向は、斯う云つたやうな方向で進むのだと云ふ、一つの指針を與へたと云ふ風な考もありますので、而も此の法律は出來れば今度の特別議會に提出致して御審議を願ひたいと云ふ風に考へて居りますので、結局三箇月か二箇月かの間の暫定的な法律でありまするが故に、今度の本格的な改正法の經過規定或は附則等に於きまして、それ等の點に付て相當規定を設けて、其の經過的な不合理を是正することが出來ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=26
-
027・我妻榮
○我妻榮君 さうすると此の後で本格的な民法改正をなさる時に、今私が申しましたやうな點の經過的な規定は、簡單に言へば此の應急措置法のことにも遡及させて辻褄を合せて行かうと云ふ御考でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=27
-
028・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さう云ふことに出來得るかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=28
-
029・我妻榮
○我妻榮君 其の點御承知の通り、相續のやうな關係を、假令二箇月でも三箇月でも遡及させると云ふことは、法律的に非常な困難を生ずることは申す迄もないのでありますが、今政府委員が仰しやるやうな理由が御ありになるとすれば、是も亦已むを得ないかと存じます、併しもう一つ、運用上の問題となりますと、戸籍の記載と云ふやうなことは、假令二、三箇月でも、其の間に戸籍の記載が來た時に、それをどう取扱つて置くのか、一應取扱つて置いて、後に遡及的に直すと云ふことも、是は非常に困難なことになると思ひますが、其の實體法的な經過の問題と、又更に別に手續上の問題があるだらうと思ひますが、それ等の手續的なこと、例へば戸籍の記載に關するやうなことまで、政令や何かでは規定し得ない事情にあるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=29
-
030・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 戸籍法の改正と云ふ風なことも、矢張り政令ではむづかしいんぢやないかと考へて居ります、そこで此の民法の應急措置に伴ふ戸籍の取扱に關しては、大體方針を實は決めて居りまして、此の民法の應急措置に關する法律に依りまして、戸籍法に掲げて居る例へば戸主であるとか、或は家とある所とか、或は家族、或は一家創立と云つたやうなことに付て、それをどう云ふ風に扱つて行くべきかと云ふことに付ての方針を決めて、是は取扱上の司法省の訓令と云ふ風なことに依つて、取扱方針を一定して行きたいと考へて居ります、唯大體の考と致しましては、現在の戸籍は一應其の儘にして行く、唯實質に於きまして、婚姻の屆出に付て父母の同意がないとか、戸主の同意がないと云ふ風な場合に、さう云ふ風な同意がなくても受附けて行くべきだと云ふ風なこと、或は又實質上此の民法の應急的措置に依つて適用をしないとされた條文に關する事柄は、戸籍法の部面に於ても、是は此の法律の規定に反する他の規定と云ふことになりまするから、矢張り適用しないことになりますが、それ以外の點に付ては、大體今の戸籍其の儘にして置いて、例へば戸主とあるのを戸籍の筆頭に記載して居るものを指すのだとか或は夫婦は矢張り同じ戸籍に見て同一氏を稱するものであるとか、或は又出生に依つて父の戸籍に入るとか、母の戸籍に入るとか、或は養子になると養親の戸籍に入るとか、離婚、離縁になると前の戸籍に還るとか云ふやうな事柄に付て、大體今迄の取扱と同じやうな方針で行くやうにと云ふことを、是は行政指導に於て出來るかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=30
-
031・我妻榮
○我妻榮君 今政府委員の言はれましたやうに、戸主、家族と云ふやうな記載は、謂はば無視して取扱つて行かう、それから親の同意や戸主の同意のない婚姻、縁組の屆出は受理しよう、さう云ふ意味では無論仰しやる通りであり、又さう考へるべきものだらうと思ふのでありますが、唯私の心配するのは現行法で無い事柄を今度は要求するやうになる、例へば此の法案の第六條あたりで離婚の場合の親權者と云ふやうなものが從來と違つて、氏の違ふ親と子供とが親權の關係に立つ場合があると云ふやうな時に、それを屆出させたい、現行法でやつて居ないことを此の應急措置法でやらせたいと云ふやうな問題を生ずる場合があるのぢやないか、さう云ふ場合には今政府委員の御答辯のことから、もう一歩出たことをやらないと、辻褄が合はなくなるのぢやないかと云ふやうに懸念するのでありますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=31
-
032・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな點でありまして、實は今度六條に關する限りに於て、親權は誰が行ふかと云ふことを屆出でさせて、戸籍に記入させたいのでありますが、此の應急措置に關する期間に於ては、其處迄或は一般國民に屆出をせしむるとか、或は戸籍に記入せしむると云ふことは出來兼ねるやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=32
-
033・我妻榮
○我妻榮君 問題が大變細かくなりましたから、それはそれで仕舞ひますが、もう二つばかり伺ひたいと思ひます、一つは此の均分相續の原則を適用して居ることは、色々な點で誤解を生ずることにならうと思ひます、取分け農地の相續の場合に小さく分れて行くと云ふことが我が國の農業の上で非常に困ると云ふこと、是は申す迄もないことであります、それで其の點に付てだけは特別の法律を作つて、農地が細分化して行かないやうに、それから又農地を現物で分けない場合でも、農業を承繼して行く子供が相續に依つて重い負擔を受けないやうに、特別の考慮をすると云ふ政府の御方針と、さうして或程度迄それに付て特別の法律を作ると云ふ御案がおありになることを新聞で拜見したのでありますが、さうして私はそれは最小限度に必要なことだと考へて居つたのでありますが、此の度其の特別の立法は議會に提出にならないやうに見えますので、其の點どう云ふ事情にあるのか御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=33
-
034・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説のやうに均分相續の結果、農地の細分化と云ふことになりますと、日本の農業政策の上に於て或色々な支障を來すことと存じまして、實は政府部内に於きましては、農業資産に關しては相續の特例を設けたいと云ふ考で鋭意立案を致し、或成案を得まして實は此の議會に提出したい考で居つたのでありますが、色々の關係からそれが間に合ひませぬので、恐らく將來矢張りさう云ふ方針で進んで行くやうに農林當局に於て努力されることと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=34
-
035・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=35
-
036・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 速記を始めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=36
-
037・我妻榮
○我妻榮君 最後に家事審判所のことを伺ひたいのでありますが、日本家族生活に倫理道徳の面を積極的に入れて行かなければならならぬと云ふことは、昨日本會議で申しましたことでありまして、其の方法に付て色々意見が分れると云ふことを、先程牧野委員からも色々仰しやいましたのですが、大分私の説に對して御批評がありましたのですが、今討論の時期でありませぬから、其の點は何も申しませぬ、唯私も家事審判所と云ふものがさうした倫理の積極的な昂揚に向つて非常に大きな働きをすると云ふことも考へて居りまして、今度の民法改正に當つては、同時に家事審判所と云ふ制度を設けて、さうしてそれが重要な作用を營んで行くと云ふことに非常に大きな望みを囑して居つたのであります、御承知の通り家事審判所制度は非常に古い歴史がありまして、それを實現することが、社會的一般の要望であるにも拘らず、豫算其の他の關係で今日迄出來なかつた制度でございますが、今度の憲法改正に伴ふ民法の改正と云ふ、此の機會に思切つて此の大事業をやる必要があるだらうと思て居るのであります、御承知の通り臨時法制調査會、司法制度調査會で答申を出して居るのでありますがそれは今度の議會に提案にならないのでありまして、恐らくは是は、非常に緊急なものだけを立法する此の議會では、やつて居られないと云ふ理由だらうと思ひますが、併し實質的に財政其の他の方面から云つて、此の制度を近く實現する見込がある、又政府はどう云ふ御考を持つて居られるのか、其の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=37
-
038・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説のやうに家庭生活の維持、それから其の他家庭上の紛爭等の解決の爲に家事審判所制度と云ふものは必要缺くべからざるものであると考へます、そこで政府に於ても既に成案を得まして、此の議會に出したいと云ふ意向でありましたが色色の事情に依りまして、遂に出すことが出來なかつたのでありますが、此の次の民法の本格的改正と同時に、是は是非提出して御審議を願ひたいと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=38
-
039・牧野英一
○牧野英一君 それでは私、我妻君の今の質問に關聯して矢張二點伺つて置きたいと思います、第一點は農地の問題でございまするが、此の問題は農地ばかりではなく一般商工業にも適用のある考へ方ではないかと思ひます、即ち家業と云ふものを矢張り國家は相當に保護すると云ふことを考へねばならぬと思ひます、其の爲に憲法の場合に於ては、國は中産階級を特に保護すると云ふことを考へねばならぬと云ふ修正意見を私は提出致しましたのでありますが、不幸にしてそれは成立致しませぬでしたけれども、斯う云ふ風に階級鬪爭がやかましくなると云ふと、中産階級問題と云ふものが餘程重きを置いて考へられなければなりませぬ、それで家業の保護を相續の關係に於て全うしなければならぬと云ふことは、農地の問題と同じやうな重さで考へて戴きたいと云ふのが、憲法の場合に於ける、憲法の改正當時の私の考へ方であつたのてございますが、それに付ては當局としてはどう云ふ風に御考で御ありになりますか、一應伺つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=39
-
040・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 遺産の分割に付きましては、御手許に配付申上げて居る案に於きましても其の分割をしない、所謂分割の禁止等の方法も考へ、且又分割をするにしても其の分割は遺産のもの、或は權利の種類とか性質とか、或は各相續人の職業其の他一切の事情を斟酌して之を致すことになつて居りまして、是等の點は家事審判所が出來れば家事審判所が之に干與することに致したいと考へて居るのでありまして、尚又其の分割と致しましても、現物を現實に分割するのではなくて、相續人の中の適當な者の一人にそれ等のものを承繼せしめて、他の相續人に對しては債務を負擔する、其の全部承繼した者から他の相續人に對して債務を負擔をすると云ふ風な方法に依つても、所謂現實の分割に代へる方法も認めて行きたいと思ふのでありまして、さう云ふ關係から致しまして、必ず均分相續となるからと云つて、總ての商業なり其の他のものが現實的に分れて行くと云ふ方法を採らなければならないものではない、そう云ふ意味で民法の範圍内に於きましても、さう云つたやうな細分化と云ふことが或程度防ぎ得るやうな仕組を考へて居る譯でありますが、併しながら只今農地に付て問題になりましたと同じやうに、商業と工業とか云ふやうなことに付て、さう云う必要があると云ふことになりますれば、更に特別法等に依つてそれ等の點を考へて行つた方が尚妥當ではないかと云ふ風に考へて居りますが、それ等の點は各所管の當局に於て尚研究致すことと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=40
-
041・牧野英一
○牧野英一君 第二點は家事審判所に關する事柄でございますが、今度愈々簡易裁判所と云ふものが出來るやうになりまして、そこで簡易裁判所と家事審判所と調停制度との關係に付ては、政府としてはどう云ふ風に御考になつて居るかと云ふことを一應伺つて置きたいのであります、簡易裁判所に付ては司法大臣も餘程大きな抱負を持つておいでになつたやうで、裁判所法案の時に説明がありました、それに付て私は、それならば何故此の簡易裁判所の理念的な規定を御除きになつたか、内閣に於ける臨時法制調査會に於ては、簡易裁判所と云ふものは地方裁判所の小さいものではない、全く一つの新たなる理念の下に出來て居るものであるに拘らず、裁判所法の上には一向それが現れて居らぬと云ふのは殘念なことであると云ふことで、質問もし意見も述べたのでございましたが、若し此の司法大臣が御話になつたやうな簡易裁判所の理念と云ふものが實現出來まするならば簡易裁判所が萬事何も彼も出來ることであつて、家事審判所と云ふものを特に置く必要はないことになるのではないか、矢張り司法大臣の仰しやつたやうな簡易裁判所の理念の外に又別に家事審判所の理念と云ふものがあつて、別々に是は制度として御設けになる御趣旨か、そこへ調停と云ふものがどう云ふ風になるか、是は應急措置法としては大分離れたことになりますけれども、我妻君の質問に關聯して、一應伺つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=41
-
042・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 人事調停に付きましては、若し家事審判制度が出來て、家事審判所が總ての家庭上の紛爭の解決、或は人事訴訟等に付て所管すると云ふことに致しますならば、人事調停に付きましても、矢張り家事審判所に之を管轄せしむるのが適當であるかと考へます、尚現在小作調停の調停事件は、必ず地方裁判所と云ふものに管轄が決つて居りますので、小作調停と只今申しました人事調停は、是は小作調停の方は地方裁判所に、人事調停の方は家事審判所に管轄せしめて、それ以外の調停は、即ち金錢調停であるとか或は借地借家調停でありますとか、さう云つたやうな、それ以外の調停は、簡易裁判所の管轄と致す豫定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=42
-
043・村田保定
○男爵村田保定君 只今均分相續の何が出ましたから、それに關聯して伺つて置きたいと思ふのですが、最近に於ける外國の相續編の立法例に付て承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=43
-
044・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 其の點に付きましては、後刻各國の民法、殊に相續に關する立法例を集めて居りますから、それを後刻差上げることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=44
-
045・霜山精一
○霜山精一君 此の法律は應急的措置を講ずるものでありまして、僅かに十箇條を以て此の民法全體に適當な改正を加へようとするのでありまして、之を民法全體に當つて見ると、頗る内容的にも疑問が澤山出るのぢやないかと思ひまするが、まあ私は一々研究して見た譯ではないので、恐らく是だけの規定では、民法の解釋適用の上に非常な困難な状態に陷ることは間違ひないと私は考へて居りまするが、まあ内容的なことは、又後に御尋ねしたいのですが、先程我妻委員から御話の經過的の規定がちつとも無いと云ふのも、是も非常に困つた問題ではないかと思ふのですが、配付してありまする民法の草案には、多數の經過的規定が列べてありまして、あれだけの規定が少くともなければ動けないものを、何等の經過的規定なしに之をやつて行くと云ふことになると、裁判所で此の法律を適用する時に、非常に困るのではないかと思ふのであります、是はまあ我妻君の質問と同じであります、尚其の外に親族相續に關する色々な訴訟が現在起つて居るだらうと思ひます、或は戸主權とか家に關する訴訟とか、或は相續なら相續に關する訴訟、さう云う現に起つて居る訴訟がどうなるのかと云ふことが、ちよつと私にもはつきり分らないのですが、民法の家に關する規定を適用しないと云ふのですから、戸主、家族、家に關する訴訟に付ては全然法律が、民法の規定が適用されないから裁判の仕樣がないぢやないかと思ふ、それから例へば家督相續囘復の訴でも起つて居るとすれば、家督相續に關する規定を適用しないと云ふことになるから、家督相續と云ふ規定がないと云ふことになると、現在ある家督相續に關する訴訟と云ふものの運命はどうなるのかと云ふことが、どうも非常に裁判所で裁判出來ないやうなことになつてしまふんぢやないかと云ふやうな氣がするのですが、さう云ふ點に何か御考がありましたら承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=45
-
046・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は本法施行前に既に生じた效力に付ては妨げない積りであるのであります、さう云ふ程度のことは、勿論施行の政令で書き得るものと考へて居ります、從つてもう既に家督相續が開始されて居るものは、勿論是は既に生じた效力として效力を持つて行く譯であります、從つて其の前に生じた家督相續が惡かつたかどうか、自分が家督相續者であつたかどうかと云ふやうな訴訟は、矢張り其の點に付て舊令に依つて處理して行くべきものであらうと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=46
-
047・霜山精一
○霜山精一君 さう云ふ問題は政令で果して決めて宜いことかどうか多少疑へるのぢやないかと思ふのですが政令で決められるにしても、さう云ふ規定が出來れば、無論それに依つて裁判して行くことが出來るのですから結構なことですけれども、此の儘にしてあると、家督相續に關する規定は適用しないと云ふのですから、今家督相續囘復の訴が起きて居る場合に、全然裁判が出來ぬと云ふことになつてしまふ虞があるのですが、若し政令でさう云ふことを規定が出來るのであれば、私としてはそれでも差支ないと思つて居るのです、さう云ふ風な施行の規定が政令で若し出來るのであれば、此の配布してある新民法の草案のやうな澤山の經過規定を其の政令の中に全部織込んでしまへば、是は極めて簡單に行くのではないかと思ふのですが、先程の御説明では、何か政令でさう云ふものを、實質的なものに付ては政令では規定出來ないやうな御話でありましたが、どう云う風な程度になるのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=47
-
048・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 只今申しましたやうに、本法施行前既に生じた效力を妨げないとか、さう云ふやうな種類の施行の爲の政令は、是は憲法に依つて委任されて居ります、所謂此の憲法の七十三條の六號、「法律の規定を實施するために、政令を制定すること」と云ふことの範圍に於て、さう云ふことは出來ると考へますが、實體的に法律事項と思はれるやうな事柄に付て、此の施行の政令に依つて其處迄は書き得ないのではないかと云ふ風に考へて居ることを申上げたのでありまして、此の施行の爲の政令に於て、どの程度のことを書き得るかと云ふことは、尚研究の餘地があると思ひますが、要するに内容が實質的な法律の事項に付て、政令で新しいことを規定すると云ふことは、ちよつと無理ではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=48
-
049・霜山精一
○霜山精一君 別の問題でありますが、憲法の十七條に、公務員の不法行爲に依つて損害を受けた者は賠償が認められると云ふ規定があるのであります、是は民法にも關係する規定でありまして、憲法の施行に伴つて、此の第十七條みたいな規定が、矢張り民法にも必要になるのぢやないか、應急的の措置であれば、斯う云ふものが矢張り憲法の施行に伴ふ法律的措置として民法に規定されなければならぬのではないかと思ふのであります、其の點はどう云ふことですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=49
-
050・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 其の點に付きましては、御手許に御配布申してあります改正法案の七百二十四條の二と云ふので「國又ハ公共團體ノ損害賠償ノ責任ニ付テハ本法ノ」是は不法行爲の章です、「規定ニ依ルノ外、國家賠償法ニ定ムル所ニ依ル」と云ふので、實は此の憲法十七條にありまする、「法律の定めるところにより」と云ふ、それを承けまして、國家賠償法と云ふものを制定致したいと考へて居りまして、既に其の成案を得て居るのでありますが、矢張り色々な事情から、今期議會に提案の運びにならなかつたのでありますが、次の議會には必ず國家賠償法案と云ふものを提出致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=50
-
051・霜山精一
○霜山精一君 法案の内容に關する二三の問題に付て伺ひたいのですが、第二條の、「妻又は母であることに基いて、法律上の能力その他を制限する規定は、これを適用しない。」斯う云ふ規定がありまするが、此の母の中には繼母、それから嫡母と云ふものが矢張り母の一つの種類であります、繼母、嫡母のことに付きましては、民法の各所に、其の能力を色々な方面から制限する規定があります、是は特殊の制限でありまして、繼母であると云ふ、或は繼しい關係であると云ふことの爲に、其の能力を制限せられ、女であるから能力を制限して居るのではないのであります、此處で「母であることに基いて、」と云ふのは母が女性であると云ふことに基いて制限されたと云ふことを意味するのか、或は母であつて繼しい關係であるから、制限されたと云ふものをも、此の中に包含するのであるかどうかと云ふことは、一つの疑問ではないかと考へて居るのであります、其の點を先づ第一に御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=51
-
052・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は母が女性であると云ふことに基いて居る制限でありまして、親族會の同意がなければ、母たる親權者が子に代つて法律行爲をやる、或は此の法律行爲に同意を與へる場合に、親族會の同意が必要であると云ふ風な制限を適用しないと云ふ意味であります、是等の繼親子關係、或は嫡母、庶子關係と云ふことが、どう云ふことになるかと云ふ問題に關係致すのでありますが、是は現行法に於ては親子關係を認めて居りまするが、現行法に於ける解釋としまして繼父母、繼子と云ふ關係は、家を同じくすることを要件として居ると解釋しなければならないと思ふのでありますが、此處で此の三條に依り、家に關する規定は適用されないことになりまする結果、繼親子關係、嫡母庶子關係と云ふ、親子關係と云ふものはなくなつてしまふものであると云ふ風に解釋して居るのでありまして、從ひまして二條の、母であると云ふことに付ての法律上の能力、其の他の制限規定と申しますものは、實母或は養母が親權を行ふ場合に限ることになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=52
-
053・霜山精一
○霜山精一君 もう一度御伺ひ致しますが、さうすると繼親子關係、嫡母庶子の關係と云ふものは全然第三條の規定に依つて認めない、斯う云ふ解釋で宜しうございますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=53
-
054・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 單に姻族一親等の親族關係になると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=54
-
055・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) ちよつと霜山委員に申上げますが、御質問の中途のやうでありますが、午前中は此の程度にして午後に繼續したいと思ひますが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=55
-
056・霜山精一
○霜山精一君 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=56
-
057・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) それでは午前中は此の程度で休憩致します、午後は二時から開會致します
午前十一時五十五分休憩
――――◇―――――
午後二時十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=57
-
058・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 休憩前に引續いて委員會を開きます、先程の霜山君の御質問がまだ殘つて居るやうに存じまするので、御繼續を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=58
-
059・霜山精一
○霜山精一君 繼父母と繼子の關係、嫡母と庶子との關係に付きまして、先程の御説明では、第三條の家に關する規定になるのだから、之を適用しない即ち繼父子と繼子との關係も認めなければ、嫡母と庶子との親族關係も之を認めない、即ちさう云ふ關係は全然なくなるのである、斯う云ふ御説明でありました、私も大體此の繼父子關係、嫡母庶子の關係がなくなることには賛成なのであります、唯家に關する規定は適用しないと云ふことだけで、其の點が明かになるかどうかと云ふことに疑問を持つて居るのであります、民法の第七百二十八條を見ますと、「繼父母ト繼子ト又嫡母ト庶子トノ間ニ於テハ親子間ニ於ケルト同一ノ親族關係ヲ生ス」と云ふ風に規定して居りまして是が家に關する規定であると云ふことを解釋することは、ひよつとすると困難ではないかと思ふのです、此の七百二十八條には家と云ふことは少しも現れて居りませぬ、唯事實上繼父母と繼子とが同一の家に居るとか、嫡母と庶子とが同一の家に居ると云ふことが事實上の状態としてあるものでありまするからして、其の關係から家と云ふことを想像することは出來るのですけれども、七百二十八條其のものを見ると何も家と云ふことに付ては規定して居らないのであります、民法の第七百二十七條には、養子と養親との關係が規定してありまして、矢張り是も「同一ノ親族關係ヲ生ズ」と云ふことになつて居りまして、是も家のことは何も規定して居りませぬが、養子は養親の家に入ると云ふ規定がありますから、是も同一の家であると云ふことに、七百二十七條の養子の場合もなるのですが、併し養子の場合は、同じ同一の家でも家に關する規定は適用しないと言つて七百二十七條を抹殺する譯にはいかぬと思ふのですけれども、さう云ふ論理から行くと、七百二十八條の家に關する規定は、之を適用しないと云ふことにすると云ふのは少し無理で寧ろ此の規定を、此の繼父子關係を認めないならば、何か特別の規定を設けた方が宜いのではないかと云ふ風に私は考へるのでありまするが、其の點はどう云ふ風に御考へでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=59
-
060・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御承知のやうに、七百二十八條の表面上の文字からは、家を同じくすると云ふことを要件に致しては居りませぬが、是は現行法の解釋上、本來ならば姻族一親等の關係だけであるけれども、家を同じくする關係から親子關係を認めたものと云ふ風に解釋致して居る關係上、家を廢した結果繼親子關係はなくなつて、單に本來の姻族一親等の關係として殘るだけだと云ふ風に解釋致したのでありまする、然らば養子と養親との關係はどうであるかと云ふ御尋でありますが、是は七百三十條、七百二十七條と云ふものには、養子と養親及び血族との間の親族關係のことを規定して居るので、其の養親と養子との親子關係に付きましては、別に第四章親子と云ふ章に實子と養子と云ふことに付て設けて居りまする關係上、是は家に拘らず養親と養子との間に於て親子の關係の生ずることは明かと思ふのでありまして、其の點は二者異なることに解釋し得るものと、斯う考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=60
-
061・霜山精一
○霜山精一君 もう一點、此の「家に關する規定」と云ふ、非常に漠然たる文句が使つてありまするから、どの程度迄が家に關する規定であるかどうかと云ふことは解釋上非常な疑はしい問題になるだらうと思ひます、今の繼親子關係、嫡母庶子の關係なんかも其の一例に過ぎないのでありますが、其の外も家に關する規定なりや否やと云ふ點に付て疑を生ずるものが澤山出るのではないかと思ひまするが、民法の八百三十九條を見ますと「法定ノ推定家督相續人タル男子アル者ハ男子ヲ養子ト爲スコトヲ得ス但女婿ト爲ス爲メニスル場合ハ此限ニ在ラス」と云ふ規定がありますが、此の規定の適用に付きましても、法定の推定家督相續人と云ふものは今の家督相續の規定を適用しないと云ふのですから、さう云ふ法定の推定家督相續人と云ふものはなくなる譯であります、さうすると此の八百三十九條は「法定ノ推定家督相續人タル」と云ふ所は除けて、「男子アル者ハ男子ヲ養子ト爲スコトヲ得ス」と讀むのか「但女婿ト爲ス爲メニスル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」と、斯う云ふ風に「法定ノ推定家督相續人タル」と云ふことを適用しないのですから、それを除けて讀むのか、或は此の規定は家督相續と云ふものを前提として居る規定なんですからして、此の八百三十九條其のものが、全面的に適用しない、斯う云ふことになるのかちよつと疑問ではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=61
-
062・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説のやうに是は家督相續と云ふことを前提として法定の推定家督相續にある者は云々と云ふことでありますから、家督相續を廢めました結果、此の全體が效力を失つてしまつて、自由に男があつても男子の養子が出來ると云ふ風に讀む積りであります、尚其の外に御手許に御配付申上げて居るかと思ひますが、此の第二條はどう云ふ民法の條文と關係があると云ふ、條文を全部書き拔いて差し上げてございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=62
-
063・霜山精一
○霜山精一君 もう一つ家督相續の效力の規定が結局なくなる譯でありまするが、民法の第九百八十七條に「系譜祭具及ビ墳墓ノ所有權ハ家督相續ノ特權ニ屬ス」と云ふ規定も、從つて適用されないことになるのでありますが、斯う云ふ種類の所有權に付ても、矢張り共同相續、從つて斯う云ふものを分割することが出來ると云ふ風に解釋されるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=63
-
064・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 實は其の點は稍々疑問があるのでありますが、勿論家督相續がなくなりますから、家督相續人の特權に屬する權利としては認められないと云ふことになります、さうしますと一般遺産相續に依つて、それ等のものも均分相續になると云ふことも一つ考へられるのでありますが、是等の系譜でありますとか、祭具と云ふやうなものは、家の祭祀と云ふ關係で、所謂財産的な家督相續の財産の中に入れないものだと云ふ思想のやうに思はれます、此の點は遺留分の場合に於きましても、是は遺留分の計算の外に致して規定されて、第千百三十二條の末項に、遺留分の計算の場合の算定價額の中には入れないと云ふことになつて居りまするから、矢張り是は遺産相續の寧ろ對象たる相續財産と云ふことに入らないのではないか、それは其の何人が承繼するかと云ふことは、我が國の慣習に委して宜いのではないかと云ふ風に現在の處、解釋して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=64
-
065・霜山精一
○霜山精一君 又外の問題ですが、民法の第七百四十六條に依ると「戸主及ビ家族ハ其ノ家ノ氏ヲ稱ス」と云ふことになつて居りまするが、是は戸主及び家族に關する規定であり、又家に關する規定でありますから、適用されないことになると思ふのであります、此の規定の適用がないと云ふことになると、其の家の氏と云ふものもまあなくなる譯ですが、さうすると、如何なる氏を稱するも、今後は自由であると云ふ風に解釋して宜しうございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=65
-
066・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 家の制度が法律上なくなりますから、家の氏と云ふことはありませぬが、それは同時に各個人の氏と云ふことにならうかと考へて居ります、從つて各個人々々が氏名を持つて居る譯であります、そこで元來氏名と云ふものは、民法に依つて初めて出來るものではなく、例へば戸籍法等に於て、新しく一家を創立すると云ふやうな場合に市町村長が氏を決めて手續をすると云ふやうなことに今迄なつて居る譯で、氏は、必ずしも民法から當然に來るのではなく、各自に氏と云ふものがあると考へる譯でありますから、そこで專ら氏に關しましては、戸籍法の關係に於て、今後と雖も戸籍の取扱は從前と變らないやうな取扱を致す考でありまするので、苟も同一戸籍にある者は、氏を異にすると云ふことは許されぬ譯でありますから、此の氏は、既に定つて居るものであることを、當然の前提と致して居る譯であります、即ち民法の家と云ふものをなくしたからと言つて、各人の氏名、即ち氏と云ふものが當然なくなるものとは考へて居りませぬ、從つて是等の規定は結局日本の慣習なり、習俗なりに依つて決定されて居るものと云ふ風に考へて居る譯でありまして、而も其の關係は戸籍の上に於ても同一戸籍にある者は、同一氏を稱さなければならないと云ふ取扱に致し、又、氏の變更に付きましても、養子縁組、婚姻、或は認知と云ふやうな場合には、從前通り同一戸籍に入る譯でありますから、同一戸籍内に於ては氏を異にすると云ふことは許されないと云ふことでありますから、さう云ふ場合には氏が當然變更されるものであると云ふやうに考へて、戸籍の上に於て、氏を同じくするなり、或は氏が變更されるなりと云ふことを考へて行きたいと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=66
-
067・霜山精一
○霜山精一君 養子縁組は認められる譯でありますが、例へば養子が養親と養子縁組をした場合は、養親と同じ氏に變更すると、斯う云ふ風にして行くと、矢張り同じやうになる譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=67
-
068・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=68
-
069・霜山精一
○霜山精一君 第五條に付て少し伺ひたいのであります、夫婦の同居の義務はある譯であります、「夫婦は、その協議で定める場所に同居する」と云ふことは結構でありますが、時としては此の協議で決められない場合も起ると思ふ、夫は甲地に居り、婦は乙地に生活したいと云ふやうな協議の調はない場合もあり得ると思ふ、さう云ふ場合には互に別の所に住むのも已むを得ないと云ふことになるのか、或は何か其の間を調停して一定の場所を決める方法があるのか、さう云ふことがはつきりしないのでありますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=69
-
070・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 夫婦の間の事柄でありまするから、若し協議が調はなければ、夫の方の場所と云ふ譯にも參りませぬので、寧ろ夫婦の間の情誼に委す方が適當ではないかと考へまして、ぎりぎり協議が出來なかつた場合は、裁判所が決めると云ふやうな規定を置かなかつた譯であります、さう云ふ譯で此の夫婦の話合で決まらなかつた時、同居の請求權と云ふやうなものは、具體的には出て來ないと思ひます、それで結局協議が調つても同居しなかつた場合、初めて、法律的に言へば同居請求權が出て來るので、協議の調はない時は、抽象的な同居義務は是でありますが、具體的の同居義務は出て來ないので、さう云ふ場合、結局どうするかと云ふ問題になつて來る譯でありますが、矢張り是は其の場合に裁判所が決めることに致しましても、色色意思に副はない決め方をやつても、實際の運用は望み得ないのでありまするから此の點稍稍不徹底ではありますが協議で定める場所に同居すると云ふことに致しまして、其處は夫婦の情誼に任せる、唯現在のやうに、夫の住所に同居する義務があると云ふ風に言ひ切つてしまふことは、夫婦平等の原則に反しまする關係上、協議で決めると云ふことに致しただけの次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=70
-
071・霜山精一
○霜山精一君 第六條の親權を父母が共同行使する場合に付ては、協議が調はない時は裁判所が決めると云ふことになつて居りますが、是との釣合から見ても、協議の成立しない場合には、何かそれを適當な所に調停して決める方法が定められて居らないと、夫婦喧嘩をした時は、勝手な所に御互に住んで居つても宜い、而も其の場合は互に同居を請求する權利はないと云ふやうな、非常な不安定な状態が其處に出來るのぢやないかと思ふのでありまするが矢張り六條で父母の協議の調はない場合と、同樣の取扱をするのが、相當ではないかと私は考へるのでありますそれから五條の第二項の「夫婦の財産關係に關する規定で兩性の本質的平等に反するものは、これを適用しない。」と云ふ風になつて居りますが、是は具體的にはどう云ふ規定を指すのでありませうか、例へば妻は日常の家事に付ては、夫の代理權を持つて居ると云ふやうな規定がありまするが、斯う云ふ規定も矢張り本質的平等に反するものとして適用されないと云ふことになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=71
-
072・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 最初の御尋でありますが、此の六條の親權の行使に付て「父母が共同して、これを行う。」と云ふことになつて居りまして、此の場合も、結局共同して、協議しながら行ふのでありまして、協議が整はなかつたならばどうするかと云ふことに付ては、親權行使の場合に於ては規定を設けなかつたのであります、唯二項に於て夫婦別れ、離婚する場合、父が子を認知して、父と母が同一戸籍に入つて居らない場合、さう云つたやうに別れる場合には協議して、協議が調はない時に裁判所が決めると云ふことになつて居りますが、父母の所に居る場合に、親權行使の協議が調はなかつた場合は、御承知の通りにスイス民法では其の場合は父の意見に從ふと云ふことになつて居りますが、それでは矢張り結局夫婦の間が面白くないと云ふことで、此の場合も共同して親權を行ふがぎりぎりの所、意見が纏まらなければどうするかと云ふことは、矢張り夫婦間の情誼に任して居る譯であります、それから第五條の夫婦の財産關係に關する兩性の本質的平等に反する規定と申しますのは、例へば七百九十八條で婚姻より生ずる一切の費用は夫が負擔すると云ふ風なことは、夫婦平等の原則から言つて適當ではない、それから又夫が、妻の財産を使用し收益する權利を有すると云ふやうな、七百九十九條の規定でありますとか、それから又夫は妻の財産を管理すると云ふ八百一條の規定でありまするとか、其の他七百九十九條から八百三條迄の規定は、是は夫婦平等の原則に反するものとして適用しないと考へて居ります、御指摘の八百四條の「日常ノ家事ニ付テハ妻ハ夫ノ代理人ト看做ス」と云ふ規定は、是は本質的平等に反しないと考へて居る譯で、是は消滅しないことに考へて居ります、次に八百五條でありまするとか、又夫婦の孰れに屬するか分明でない場合には夫の財産と推定すると云ふ八百七條の末項の如き規定は、孰れも是は適用しないと云ふことになると考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=72
-
073・霜山精一
○霜山精一君 八百四條の規定は、本質的平等に反しないものだと云ふ御考のやうでありますが、妻の方にだけ夫の代理權を認めて、日常の家事に付て夫に妻を代理する權限を認めないことは、本質的平等に反するものではないかと思ふのでございますが、妻の方に代理權を認めて、夫はさう云ふ代理權を持たないと云ふことは、平等の取扱とはちよつと思へないと思ふのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=73
-
074・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は民法の全面的な改正の場合に付きましては、此の點も全く平等に致しまして、夫婦の一方が日常の家事に關して第三者と法律行爲をした場合は、他の一方は之に依つて生じた債務に付て連帶して其の責に任ずると云ふ風な規定を設けたいと思ふのでありますが、取敢ず八百四條の場合に、然らば夫も亦妻の代理人と看做すと云ふ風に積極的には寧ろ解釋出來ないやうに考へます、だからと云つて、逆に妻が夫の代理權がないと云ふことに致しますと、寧ろ困るのは、其の取引の相手方である第三者が困ると云ふことになると考へる譯であります、此の規定は寧ろ第三者の保護の爲の規定でありまして、夫婦間に於ける不平等な取扱と云ふ風に寧ろ見るべきものではなく、日常の家事に付ての相手方に對する保護の規定と見られるのでありますから、此の點は矢張り本質的な平等に反しないものと云ふ風に認める譯であります、理想から言ひますと、積極的に夫婦の一方がやつた場合には、他の一方を代理人とするとか、或は連帶して債務に對すると云ふ風に規定すべきが相當であると思ひますが、解釋上としては、夫婦の平等と云ふことからして、積極的に夫が矢張り妻の代理人と見做すと云ふ所迄は解釋し切れないと思ひますが故に、先程申しました通り、此の規定は第三者の保護を目的としたもので、夫婦の平等に反しないと云ふ風に申上げた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=74
-
075・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 霜山委員に申上げますが、又御質問の中途で恐縮でありますが、農林省の政府委員がが先程から見えて居りますので、ここで一應其の方を先に致したいと思ひます、御異議ございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=75
-
076・霜山精一
○霜山精一君 宜しうございます、中止して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=76
-
077・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 農林省の政府委員が見えて居りますので、御質問がありましたならば、御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=77
-
078・我妻榮
○我妻榮君 午前中にちよつと質問致したのでありますが、今度の民法改正の中で、家督相續を廢めて、所謂庶子均分の相續と云ふ制度を執つたことは憲法の趣旨から見て至當なことだと思ひますが、唯それを實際に行なつて行く上に於て、我が國の農業家族に取つて非常に重大な問題を生ずるだらうと云ふことが考へられるのであります、それで此の改正民法の解釋でも、成るたけ現物を分けない、現在は實物としての土地を分けないと云ふことを或程度迄は實現し得るかも知れぬと思ひますけれども、併し終局的には矢張り何か特別の法律的措置がないと、現物たる土地を相續に依つて分けないやうにすると云ふことは不可能だらうと思はれると云ふことが一つと、それからもう一つ、現物を分けないで、或一人の子供が農業資産を全部承繼して、他の子供達は金で分けて貰ふと云ふことにしましても、今度は農業を承繼する子供が、借金を脊負はなくちやならぬと云ふ、非常に大きな負擔を負ふことになる、其の點に付ては又農業を承繼する子供には、多少相續の分け前を多くすると云ふこと迄考へなくちやならぬぢやないかと云ふやうな風に思へますので、結局現物を分けないと云ふ點と農業を承繼する者に多少餘計やると云ふことを考へると云ふ二點が考へられるのであります、さうして其の二點と云ふことは、どうしても特別の法律を作らなければ出來ないことだらうと思つて居りました、さうして過日新聞で其の點に付て、政府當局が特別の立法をなさると云ふやうなことでありましたので、大變御尤もなことであると思つて居つたのですが、此の議會で、其の後提案されないと云ふことに承りましたのでどう云ふ事情でさうなつたのか、さうして又政府當局が、それに付てどう御考になつて居るのかと云ふことを率直に聽かせて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=78
-
079・山添利作
○政府委員(山添利作君) 只今我妻委員から御述になりましたやうに、農業方面に於ては均分相續に對して例外的な立法を必要と致すのでありまして、それに付きましては準備を致し、又議會に提案致します爲に、閣議の決定を願つたのでありますが……ちよつと速記を止めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=79
-
080・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 速記を止めて
午後二時五十二分速記中止
――――◇―――――
午後三時十五分速記開始発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=80
-
081・奧田剛郎
○委員長(奧田剛郎君) 速記を始めて……他に農林省の政府委員に對して御質問はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=81
-
082・大谷正男
○大谷正男君 先刻我妻委員から御話がありまして、農林省政府委員から御説明があつた特別立法のことですが、それは大變結構なことだと賛成して居るのですが、暫定の此の規定が施行されまして、相續が廢止されて、成るべく急いで其の立法が出來ましても、其の間に多數の相續が開始せられて、農村の農地の細分化が或程度實現せられると云ふことになつても、それは今度特別の立法に依つて遡及して、それの適當なる措置を講ずると云ふやうな點に付ての御考はどんな風でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=82
-
083・山添利作
○政府委員(山添利作君) 此の細分化の問題には、二つの面がある譯でありまして、一つは經營自體が細分化するかどうかと云ふ點と、それから經營は細分化しないでも、今の農業經營に非常な負擔が殘るかと云ふ問題であります、此の經營自體が細分化すると云ふ點に付きましては、假に分割になりまして、所有權が異なりましても經營自體は是は續いて行くと申しまするか農地委員會等の統制下にあるのでありまするし、同時に又事實問題として續いて行くと考へて居ります、問題の要點は、今迄自作地でありましたのが、自分の兄弟に對して小作の關係に立つと云ふ負擔の問題である、此の負擔關係は矢張り殘つて行くのではないかと云ふ風に思ひます、そこで之を次の機會にやります場合に、果して遡つて解決出來るかどうかと云ふことは、是は法律上、餘程研究を要することでありまして、是は希望としましては兎も角遡及的にやるかどうかと云ふことは餘程むづかしいのではないかと云ふ風に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=83
-
084・大谷正男
○大谷正男君 其の遡及のことに付きましては御尤ものことで、困難かと思ひましたが、念の爲に御伺ひしたのでありますが、兎も角特別の立法と云ふことは此の際必要であらうと思ひますので、此の審議を進められるに付きまして、どうか出來ればさう云ふ希望を附すると云ふやうなことにしたが宜いと存じて居ります、之で私の質問は打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=84
-
085・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 今の法の遡及效に付きましての御話でありますが、此の非常時局に對處する爲に、租税規定なんかでは、最近では遡及效を持たした立法例は多々あるやうに私記憶するのでありますが、法に遡及效を持たせることがむづかしいのではないかと仰せられるならば、方面は違つても、此の非常時局に對處するには、さう云ふ從來の立法例にないやうな效果を持たした例もあつたやうに思ひますが、其の點如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=85
-
086・山添利作
○政府委員(山添利作君) 尚是は、具體的に立法致します場合に、研究致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=86
-
087・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 どうぞ、成るべくスムースに立法出來ますやうに、御努力を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=87
-
088・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 他に御尋ございますまいか……御尋もありませぬやうですから、續いて霜山委員の御質問を御繼續願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=88
-
089・霜山精一
○霜山精一君 第六條に付て御伺ひ致します、「親權は、父母が共同してこれを行う」と云ふことは結構でありますが、唯孰れか一方が行へないと云ふ風な場合も起り得ると思ふのです、さう云ふ時には共同して行へないのですから、親權を行へないと云ふことになつても困るが何かさう云ふ場合に對處する規定が要るのではないかと思ふのですが、其の點は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=89
-
090・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 一方がどうしても、例へば心身の故障とかの理由に依つて共同して行へない場合は、單獨で行つて差支ないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=90
-
091・霜山精一
○霜山精一君 單獨で行へるとすれば何か規定が要るのではないかと私は思ひますが、其の點は規定なくして、さう解釋出來るのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=91
-
092・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 一方が行へない時は、解釋上當然さうし得るのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=92
-
093・霜山精一
○霜山精一君 父母が共同して行はなければならぬと云ふことになつて居りまするが、協議をして、是は父が子を代表してやる、或は又母の方が子を代表してやる、斯う云ふ風に一方だけで共同はするけれども、實際の親權の行使は一方でやると云ふことを決めた場合に、それが矢張り一方で行へるのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=93
-
094・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 共同で行ふ形式としては、多くは夫婦兩名の名義共同の名義で行ふことにならうかと思ひますが、併し只今の仰せのやうに、共同して父のみが行ふやうに話合附きで、父のみがやると云ふ場合、是も矢張り共同行使の一つの形式として、さう云ふ行使の方法もやり得るものと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=94
-
095・霜山精一
○霜山精一君 會社の取締役が共同して代表權を持つて居るやうな場合に、或一人が代表取締役と云ふ風に、一人を代表させることがあり得るやうな場合には、其のことを明かにする爲に登記をするとか云ふやうな色々公示方法を必要とすることになつて居りまするが、此の點に付て、此の父母が共同して親權を行ふ場合に、代表者を決めたと云ふやうな場合に、之を公示する必要はないのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=95
-
096・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 先程も申しましたやうに、實は親權のこと等に付きましては、其の親權を受ける子供の戸籍に其のことを記載するのが適當であるかと考へて居りますが、此の應急措置の關係上、さう言つた戸籍の手續の變更と云ふことは、ちよつと出來兼ねる次第でありましたので、戸籍の關係は一應現在の儘の取扱で行くと云ふことになりましたので、積極的にさう云ふことを記入する手續は、此の應急措置法ではないことになつて居りますが、何れ民法の改正の際には、それ等の點も考慮致して戸籍法等の改正を致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=96
-
097・霜山精一
○霜山精一君 さう云ふ場合に付きましては、第三者に非常に取引上影響のある事柄ですから、出來るだけ速かに戸籍に書くとか云ふ風な公示の方法を執られないと云ふと、代表權のない者と第三者が取引した爲に、意外な損失を受けると云ふやうなことがあり得ると思ふのであります、其の點は十分に速かにさう云ふ公示方法を講ぜられたいと考へます、私の質問は終りです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=97
-
098・村田保定
○男爵村田保定君 「家に關する規定」と云ふものは、先程から御質問がありましたけれども、非常に漠然として居りますので、民法第七百二十九條の第二項に、「夫婦ノ一方ガ死亡シタル場合ニ於テ生存配偶者カ其ノ家ヲ去リタルトキ亦同シ」、是なども其の「家に關する規定」かと考へられますが、又扶養の義務の規定、第九百五十四條二項、是等の規定は、其の第二項だけが此の適用のないやうなことになるのでありませうか、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=98
-
099・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さうであります、二項だけが適用のないことになる譯でありまして、即ち七百二十九條の第二項に依りまして家を去ると云ふことがありませぬから、夫婦の一方が死亡した場合に於て、矢張り生前の配偶者、前の配偶者の親族との間に於ての親族關係は止まないと云ふ風になる譯であります、唯扶養の關係の九百五十四條の第二項の關係に於きましては矢張り家にある者との間に於て初めて扶養の關係が出來ると云ふことになつて居りますのを、家の關係を認めないと云ふことになりまするから、此の點に付ては扶養の義務がないと云ふことに解釋せらるるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=99
-
100・村田保定
○男爵村田保定君 それから「家に關する規定」の適用がなくなり、それから個人の尊嚴を重んずる精神に依つて考へて見ますると、相續の場合の直系卑屬は其の家に在ると否とを問はないで、同等の相續分を有するものと考へて宜いのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=100
-
101・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=101
-
102・村田保定
○男爵村田保定君 それから又相續の順位に付ても區別はないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=102
-
103・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=103
-
104・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 六條の末項でありますが、「裁判所は、子の利益のために親權者を變更することができる。」此の關係をちよつと御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=104
-
105・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 父母の離婚をした場合に、或は協議で父が親權を行ふと云ふ風に、當事者で協議して決めて居つた場合、さう云ふ場合に後から實際の親權の行使の在り方等を眺めて見まして、どうも父では子の利益の爲に親權の行使がうまく行つて居ないと云ふ場合には、例へば母の申立て等に依つて、裁判所の方へ親權者の變更を申立てて來た場合に、裁判所は子の利益を考へて、其の親權者を母親にすると云ふ風に、變更が出來ると云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=105
-
106・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 原則としては、父母各各の親權の内容に優劣がございませうか、母も親權者で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=106
-
107・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は夫婦平等の原則で、共同して平等な力で以て普通の場合は親權を行ふと云ふことに六條の一項に致して置きましたが、夫婦別れした場合に、どつちかに決めなければ、共同と云ふことはうまく行きませぬから、始めて其の場合にどつちかに協議で決めなければ裁判所が決める、更に子の利益の爲に變更の必要がありと認むる場合に、どつちか逆に又決め得ると云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=107
-
108・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 さう致しますと、第一項の原則に對する例外と見て宜しいのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=108
-
109・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=109
-
110・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 それからもう一點御伺ひを致して見たいのでありますが第五條でありますが、五條の第三項でありますが「配偶者の一方に著しい不貞の行爲があつたときは、」と云ふことがございまして、此の關係條文は八百十三條の第二號及び第三號と云ふことにこちらの參考資料に指定してございますが、第一號の如きも、あれぢやありませぬか、「重婚ヲ爲シタルトキ」重婚を爲したる時は、是は矢張り姦通に該當することもあるかと思ひますが、さう云ふ場合は、矢張り二號の方に行く譯でせうか、重婚其のものでも、著しい不貞行爲とは認められないのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=110
-
111・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さう云ふ場合も著しい不貞行爲に當然なるかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=111
-
112・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 さう致しますと、重婚として、矢張り著しい不貞行爲になりますな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=112
-
113・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 重婚と云ふものは認められない譯でありますから此の現行法が生きて居る關係上、是は重婚としても、此の現行法の規定に依つて離婚の請求が出來ませうし、又同時にそれが此の五條の三項に該當するものと云ふ理由に依つても、離婚の訴を提起することが出來やうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=113
-
114・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 さう致しますと、只今の御説明に依りますと、此の參考資料に戴きました八百十三條の二號、三號と認定して此處に例示してありますが、是以外の項目でも、矢張り此の離婚の原因として考へることが出來る譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=114
-
115・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さうでございます、八百十三條の中の二號、三號が少くとも夫婦の平等と云ふ原則に違反するものであると考へますので、是等にまあ代る意味で、夫婦の一方に不貞の行爲があれば、どちらも離婚の請求が出來ると云ふ意味で、二號、三號に代る趣旨で、此の五條の末項が出來た譯でありまするが、それが同時に一號のやうな場合も、カバーする場合もあらうかと思ひますが、立案の精神としては二號、三號が、男女の本質的平等に反するから、それに代る意味で、五條の末項が出來た譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=115
-
116・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 只今の御説明で能く分りました、さう致しますと、從來の現行法では姦通罪、それから姦淫罪に付ては、夫と妻との取扱が幾らか優劣があつたと思ひますが、それを平等にした、斯う云う風に考へて宜しいのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=116
-
117・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=117
-
118・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 是は先程の霜山委員の御質疑の第六條でございますが、「父母が共同してこれを行う」、私は能く法律關係を存じませぬが、共同行爲には代理權と云ふものは働く餘地はございませぬでせうか、共同することを父か母か一方に其の權限を代理させると云ふことは、觀念上考へられませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=118
-
119・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 先程申しましたやうに夫婦協議して行ふのでありますが、其の共同行使の方法は、多くは共同名義でやる場合が多いだらうと思ひますが、一方に他方が委任して行ふのも、矢張り共同行使の一つのやり方であると云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=119
-
120・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 今のさう致しますと、代表關係でなく代理行爲として見ても、宜いのですか、さう云ふことも考えられますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=120
-
121・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さう云ふことも考えられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=121
-
122・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 私は相續のことは誠に暗いのでございますが、假に兄弟に生前に財産を親から分けて、それで兄には三を與へ弟には二を與へて居る、今後財産均分の原則で愈愈父が死にます時には、生前に貰つた財産の部分も死後の分配の時には考慮さるべきものでありませうか、例へば長子には三を與へてあるから、殘りの財産を加へる、弟にはそれより多いものを與へる、結局は皆同數を與へると斯う云ふやうな結果を生ずるものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=122
-
123・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 現行法の千七條に規定を設けて居りまして、「共同相續人中被相續人ヨリ遺贈ヲ受ケ又ハ婚姻、養子縁組、分家、廢絶家再興ノ爲メ若クハ生計ノ資本トシテ贈與ヲ受ケタル者アルトキハ被相續人カ相續開始ノ時ニ於テ有セシ財産ノ價額ニ其贈與ノ價額ヲ加ヘタルモノヲ相續財産ト看做シ」云々と云ふことになつて居りますから、生計の資本と云ふやうなことでもう既に贈與してある場合には、それを加へて相續財産と看做して、均分にさう云ふものを分けて行くのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=123
-
124・村田保定
○男爵村田保定君 先程の所謂私生子に對しても、同じやうに財産を分けてやらなくちやならぬと云ふことは如何でありませうか、それから是は少し飛躍するかも知れませぬけれども、刑法の方で妻の姦通の問題に付て、斯う云うやうなことを、今迄の所謂淳風美俗とは相當に相反するやうな規定が出て居るやうですが、それは一體國民思想の上に對して、どう云ふ影響があるか、さう云ふことは寧ろ新しい傾向として、進んで國としては採用しても宜いと云ふ、さう云ふ御考から出て居るのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=124
-
125・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 第一の相續分に關して、所謂私生子と嫡出子との關係に付きましては、矢張り現行法の千四條の規定が働きまして「嫡出ニ非サル子ノ相續分ハ嫡出子ノ相續分ノ二分ノ一」と云ふことになつて居る部分は、千四條が生きて居ります關係上、さう云ふことになります、後段の姦通に關する事柄に於きましては、民法に關する限りに於きましては、八百十三條の二號、三號と云ふことで、妻のみが姦通罪に問はれて、それを離婚の原因にして居ると云ふことは、どうしても憲法二十四條の兩性の本質的平等の思想から言つて、憲法に違反する法律規定と考へますので、是は平等に致さなければならぬと云ふ風に考へまして、斯う云ふ規定を設けた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=125
-
126・村田保定
○男爵村田保定君 さうしますと、寧ろ後の方の點は、積極的に姦通罪を兩方に設けるとか、或はさう言つた方向に參つた方が宜いぢやないかと思ひますけれども、さう云ふ點の御考慮は先程承つた所に於ても、寧ろ兩方無くすると云ふことは考へられても、其の規定を設ける御考はないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=126
-
127・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説のやうに、兩性の本質的平等と云ふことから申しますと、兩方姦通罪として罰すると云ふことでも是は不平等の取扱ではありませぬから、此の憲法の趣旨から行けばそれでも宜い、或は場合に依つては兩方とも罰しなければならぬと云ふ方向に進むのも宜いと考へますが、當初に刑事局長から御話がありましたやうに、此の次の議會に刑法の改正を行ふ豫定でありますので、現在の考では兩方罰するのではなく、兩方とも寧ろ罰しないことにしてはどうかと云ふ一應の法制調査會の答申等が出て居る譯で、或はさう云ふやうな方向に行くのではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=127
-
128・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 他に御質疑はございませぬか、速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=128
-
129・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 速記を始めて……御質問はございませぬでせうか、ございませぬければ「日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案」に付ての質問は、一應此の程度にして置きまして、次に「日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案」を議題として御質問を願ひます、御質問はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=129
-
130・大谷正男
○大谷正男君 第二條の「憲法及び裁判所法の制定の趣旨に適合するようにこれを解釋しなければならない」と云ふ此の廣い規定でありますが、是は憲法の趣旨に適合するやうに解釋しなければならぬと云ふことは當然でありまするし、まあ斯う云ふ規定がなくても、運用上さうなるのではないだらうかと思ふのでありますが、特に斯う云ふ規定がなければならぬのか、又此の規定があるが故に、何か法文を讀み替へるとかと云ふやうな、さう云ふことの具體的の問題に迄行くのでありませうか、其の邊をもう少し御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=130
-
131・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は一般的な精神と竝に具體的に、矢張り相當讀み替へる必要があるのがあります、例へば民事訴訟法の二百七十四條に「貴族院」と云ふ風なのがありますが、是は「參議院」と讀み替へて戴くとか、或は軍人軍屬等の色々な特別な規定がありますが、さう云ふ軍に關する規定と云ふ風なものは、總て無いものと云ふ風に考へて戴かなければならぬと思ひまして、斯う云ふ規定を置いた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=131
-
132・大谷正男
○大谷正男君 それでは其の個々の場合に付きまして、相當讀み替へる規定が澤山あると云ふことに御考になつて居られる譯でございませうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=132
-
133・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります、一例を申しますと、先程言ひました外に、例へば三十五條等に、判事が法律上其の職務の執行から除斥せられる場合に、「判事又ハ其ノ妻若ハ妻タリシ者カ事件ノ當事者」である場合と云ふ風なことがありますが、是なんかは大體の考は、判事は男で、其の妻と云ふので、女はちよつと判事になれないやうなことになつて居りますが、斯う云ふやうな場合は、「配偶者」と云ふやうなことに讀み替へますとか、或は其の他、戸主とか、色々出て參ります、或は又二百七十四條で先程申しましたやうに、「貴族院」と云ふ風なものが出て參るのと、それから二百七十三條で色々、「國務大臣、宮内大臣、内大臣、樞密院議長、樞密院副議長」とか、それから「海軍軍令部長」云々と云ふやうな規定があります、それから「元帥」とか云ふやうなものがありますが、さう云ふものは大體適當に憲法の趣旨に依つて、無いものと看做される場合が多いと思ひます、それから又それ等の者を證人とする場合には勅許を受けなければならないことになつて居りますが、是は天皇の憲法上に於ける國務の權限が決つて居りまするので、勅許を必要としないと云ふことにならうかと思ひます、此の點は民事訴訟法の全般的改正の際には、斯う言つたやうな人々を證人として喚ぶ時には、内閣の承認を經ると云ふことに致したいと考へて居りますが、取敢ずは勅許と云ふ風なことは當然無くなると云ふ風に讀んで戴きたいと云ふ意味で、「適合するようにこれを解釋しなければならない。」斯う書いた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=133
-
134・大谷正男
○大谷正男君 了解致しました、此の適合するやうに解釋しなければならぬ、今の字を讀み替へると云ふことに付きましては、他の法案に澤山讀み替へると云ふことが出て居りますのですが、何かさう云ふ讀み替へると云ふ文字が必要ではないのでありませうか、「解釋」と云ふ文字では少し足りないやうに思ひますのですが、其の點に付て、是で宜しいものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=134
-
135・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 實は讀み替への規定を置くことになりますと、非常に澤山の箇所がありますので、大體此の次の民事訴訟法の一般改正の際迄、大したこともありませぬから、此の繋ぎの間はさう正確にやらなくても宜いかと考へまして、斯うしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=135
-
136・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 外に御質問はございませぬか、御質問もないやうでありますから、一應此の程度にして、次に「日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案」を議題と致して、御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=136
-
137・牧野英一
○牧野英一君 第八條の第二號に付て御伺ひ致したいのでありますが、此の規定を置きました趣旨は、憲法の司法官憲と云ふことに、檢察官及び司法警察官吏が含むものと云ふ御解釋の下に出ましたものと思ひますが、其處はどう云ふ工合のことになりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=137
-
138・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 新憲法第三十三條に、現行犯以外に付ては、司法官憲の發する令状に依らなければ、逮捕されないと云ふことが規定されて居りますが、此の司法官憲の意義に付きましては、過般憲法御審議の際にも屡屡問題になつたのであります、之に付きましては、政府と致しましては、司法官憲は裁判所竝に裁判官の外に、檢察官及び司法警察官も含むと云ふ廣い解釋を致して居るのであります、併しながら、之に對しましては、憲法の三十三條竝に其の他の規定は、國民の基本的人權を尊重する爲に、特に規定された事項であるから、成るべく狹く解釋すべきではないかと思ひます、此の司法官憲と云ふのも、裁判所竝に裁判官だけに限らなければならぬと云ふやうな強い意見もありまするので、此の刑事訴訟法の暫定的な措置を講ずるに當りましても、愼重を期しまして、此の際には、司法官憲と云ふものに對する解釋を一應狹い意義に解釋致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=138
-
139・牧野英一
○牧野英一君 今度は其の次に、「直ちに裁判官の逮捕状を求める手續をしなければならない。」、「直ちに」と云ふことになつて、別に時間を限つてありませぬが、それは後の規定で自ら制限を受けると云ふ趣旨のものでございませうか、どう云ふものなのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=139
-
140・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 仰せのやうに逮捕行爲に付きましては、第八條の第三號に依つて、現行刑事訴訟法の第百二十七條及び第百二十九條の制限を受けまするので、其の制限された時間の中に、逮捕状の請求をして令状を得なければ、それは正當な令状に依る逮捕と云ふことにはなりませぬので、自ら「直ちに」と云ふことは、時間的にも制限を受けて來ることと解釋して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=140
-
141・牧野英一
○牧野英一君 さう致しますと、刑事訴訟法の第百二十七條、第百二十九條の勾留に關する規定の制限の爲に自ら制限を受ける、斯う解して宜しいのですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=141
-
142・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=142
-
143・牧野英一
○牧野英一君 そこで今度は第三號に付て伺ひますが、三行目の所に、「この制限された時間は、逮捕の時からこれを起算する。」、斯う云ふことになつて居ります、刑事訴訟法百二十七條に依りますと云ふと、司法警察官が受取つた時から計算をすることになつて居りまするが、さうしますと、百二十七條の時間の制限内と云ふのと、起算點との關係は、どう云ふ風に心得たら宜いものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=143
-
144・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 此の措置法第八條第三號に於きまして、極力逮捕の時間を制限致しましたのは、申す迄もなく人身を拘束する時間を出來るだけ短くして、さうして聊かも人權蹂躙のやうな惡弊をなくするやうにと云ふ用意から、斯樣な制限を設けたのでありまして、刑事訴訟法の百二十七條は、御説のやうに四十八時間、それから百二十九條は二十四時間と云ふ制限になりますので、此の制限は現實被疑者が逮捕せられて、肉體的な逮捕を受けた其の時から二十四時間乃至四十八時間、斯う云ふ起算點を考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=144
-
145・牧野英一
○牧野英一君 それから第十條に付て伺つて置きたいと思ひます、是は憲法の規定を何かもう一遍出したやうなことになつて居りまするが、斯う云ふものを特に此處へ出す必要が一體あるものでせうか、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=145
-
146・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 此の措置法の第十條に規定致しました事項は、仰せの如く新憲法第三十八條の規定を其の儘繰返したのでございまして、一面考へますると、憲法の規定を態々繰返す必要もないではないか、と云ふやうな御意見もあらうかと存ずるのでありまするが、從來犯罪搜査の過程に於て、動もすれば人權蹂躙の非難があつたのでありまして、此の人權蹂躙の非難の起きる元は、結局搜査官憲の教養の足りないこと、又科學的な搜査に力を入れないで自白偏重の結果、人權蹂躙の弊が絶たなかつたのではないかと云ふ風に私共は考へて居るのであります、此の人權蹂躙の弊を根絶する爲には、どうしても一面に於て搜査官憲の教養を高めると同時に、搜査方法を改善し、謂はば科學的な搜査に力を入れて、自白偏重の弊を絶たなければならぬと云ふことを痛感致して居るのでありまして、其の意味に於て新憲法の三十八條も恐らく規定されたことと思ふのでありますが、刑事訴訟法を改正するに當りまして、是は暫定的な法規ではありまするけれども、搜査官憲の最も金科玉條としなければならぬ心掛けでありまするから、特に憲法の規定を措置法に於ても繰返したやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=146
-
147・牧野英一
○牧野英一君 此の憲法には、「抑留」又は「拘禁」と云ふ文字が使つてありまして、是は一體刑事訴訟法の逮捕、勾引、勾留とはどう云ふ風に違ふものでせうか、同じものでせうかと云ふことに付て憲法の時には、司法大臣に御伺を立てて居つたこともありまするが、外の規定では逮捕、勾留、さう云ふ風に刑事訴訟法の普通の言葉が使つてありまするのに拘らず、此の第十條に於ては憲法其の儘を持つて來て「抑留」、「拘禁」と云ふ文字になつて居りまするが、憲法其の儘と仰しやればそれ迄でございますけれども、そこの釣合と申しまするか、或は何か差異があるのでございませうか、一つ御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=147
-
148・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 人身を拘束する其の時間の長短に依りまして、恐らく憲法に於ては「抑留」、「拘禁」と云ふ觀念を用ひたことと思ふのでありまして、現行刑事訴訟法に所謂「勾留」と云ふのは、抑留、拘禁總てを含むものと考へて居ります、然らば刑訴の措置法に於ても「勾留」だけで十分ではないかと云ふ風にも考へられるのでありまするが、憲法に於て刑事訴訟法に用ひられて居る「勾留」と云ふ言葉を使はないで、「抑留」、「拘禁」と云ふ言葉を用ひましたのは、是は刑事手續に於ける「勾留」の外、刑事手續以外の身體の拘束を含むと云ふ意味で、「抑留」、「拘禁」と云ふ用語が用ひられたものと解釋致しまして、措置法の第十條に於ても、憲法の言葉を其の儘引用致しまして、刑事手續に於ける勾留以外の拘留の場合も含むやうに解釋して、規定致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=148
-
149・牧野英一
○牧野英一君 憲法に付ても若干其處に疑があるのでございますが、刑事訴訟法の勾留以外の抑留又は拘禁、斯う云ふことになりますと云ふと、例へば私人が擅まに抑留、拘禁したやうな場合も之に入ると云ふ御趣旨なんでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=149
-
150・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 御尋の私人が何等の權限に基かず、抑留、拘禁をしたと云ふ場合には、是は普通の逮捕監禁罪が成立致しますので、憲法にも恐らく左樣なこと迄豫定して居るのではなからうと思ふのでありまして、唯考へられますることは、拘留以外に、例へば鑑定の爲に留置する、或は精神病者を精神病者監護法に基いて一定の期間留置すると云ふやうな場合が當然含まれて來るのではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=150
-
151・牧野英一
○牧野英一君 さう致しますと、矢張り公の手續で身體の自由を拘束された者、斯う云ふ意味になる譯でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=151
-
152・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=152
-
153・牧野英一
○牧野英一君 一應了解致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=153
-
154・霜山精一
○霜山精一君 豫審を廢止せられることになつたやうでありますが、處が今迄、豫審で色々取調をして居るのですが、其の取調の效力と云ふものは、豫審がなくなると、どう云ふ譯になるのでございませうか、證據力を失ふことになるのでせうか、豫審で調べた結果が無駄になつてしまふと云ふのも面白くないと思ふのでありますが、其の點はどう云ふ風になるのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=154
-
155・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 現行刑事訴訟法の下に於て、適法に證據調をした豫審調書は、其の儘證據力を保持するやうに、附則の第三項で其の點を規定致した積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=155
-
156・霜山精一
○霜山精一君 其の附則の第三項に依りますと、「その審級に限り、これを適用しない」と云ふことになつて居りまするが、さうすると其の審級を越えると、效力を失ふと云ふことに承知して宜しいのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=156
-
157・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 從來、豫審に繋屬して居る事件は、其の儘當該地方裁判所に起訴された事件として公判に繋屬するのでありまするから公判に於て其の豫審に於て調べた證據を判決の資料にしようとする時には、どうしても公判に於て又書證としての證據調は當然しなければならぬものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=157
-
158・霜山精一
○霜山精一君 十二條の規定は、「その審級に限り、これを適用しない」と云ふのですから、其の審級では、十二條の規定の適用を排除して居りますから、十二條のやうなことをしなくても證據とすることが出來るのですが、「その審級に限り」と云ふ意味は、控訴審になつても、矢張り十二條の規定を適用しないと云ふことになるのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=158
-
159・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 其の點に付きましては審級が變つた場合には、前審に於て調べた證據書類であつても、又被告人に對して十分訊問の機會を與へようと云ふ憲法の精神に則りまして、更に書證としての證據調を仕直さなければならぬ、斯う云ふ考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=159
-
160・霜山精一
○霜山精一君 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=160
-
161・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) 他に御質問ございませぬか……御諮りを致しますが、本日は此の程度に致して、明日午前十時より繼續、開會致したいと思ひますが、如何でございますか、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり」〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=161
-
162・奧田剛郎
○委員長(男爵奧田剛郎君) それでは本日は此の程度に致して置きます、明日は午前十時から開會致します、本日は散會致します
午後四時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=162
-
163・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 男爵 奧田剛郎君
副委員長 子爵 高木正得君
委員
公爵 九條道秀君
侯爵 淺野長武君
伯爵 橋本實斐君
子爵 秋月種英君
大谷正男君
子爵 清岡長言君
牧野英一君
村上恭一君
渡部信君
霜山精一君
男爵 内海勝二君
男爵 村田保定君
我妻榮君
山隈康君
有馬忠三郎君
國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
政務委員
司法參與官 吉田安君
司法事務官 佐藤藤佐君
同 奧野健一君
同 横田正俊君
同 小澤文雄君
同 内藤頼博君
同 野木新一君
農林事務官 山添利作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009200818X00319470330&spkNum=163
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。