1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○裁判所法案
○裁判所法施行法案
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委員氏名
委員長 伯爵 黒田清君
副委員長 男爵 奧田剛郎君
公爵 岩倉具榮君
公爵 三條實春君
子爵 大河内輝耕君
子爵 高木正得君
子爵 松平親義君
牧野英一君
吉田久君
霜山精一君
川村竹治君
高柳賢三君
男爵 毛利元良君
男爵 村田保定君
野村嘉六君
三橋四郎次君
山隈康君
有馬忠三郎君
作間耕逸君
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昭和二十二年三月二十日(木曜日)午前十時五十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=0
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001・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 是から委員會を開きます、それでは司法大臣の御説明を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=1
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002・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御審議を願ひまする裁判所法案に付きまして御説明申上げます、日本國憲法は其の第六章に「司法」と致しまして最高裁判所に關する事項を初め其の他司法權に關する事項に付きまして重要なる規定を設け、現行憲法の司法に關する規定に著しき改正を加へましたことは、各位の御承知の通りであります、從ひまして現行憲法の下に裁判所構成法に依つて定めて居りまする裁判制度も、之に依りまして改正の必要を生じて參つたのでありまして、政府に於きましては改正憲法制定後の短期間内に最大の努力を拂ひまして、國民の期待と國際的關心とを十分に考慮の上に、本法案を立案致した次第であります、次に本法案の内容に付きまして重要な諸點の概略を御説明申上げます、其の第一は、裁判所の設置に付きましては、最高裁判所のことは改正憲法の第七十六條で直接之を定めて居りまするので、本法案に於きましては、下級裁判所に付てのみ之を定め、之を高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所と致しました、個々の下級裁判所の設立廢止及び管轄區域に付きましては、別に法律で定めることと致してありまして、是等の法律案も軈て提案致すことと相成つて居るのであります、第二に裁判權に付きましては、裁判所は從來裁判所構成法に依りまして、民事、刑事の裁判を致すことと定めて居つたのでありまするが、本法案に於きましては民事、刑事の他所謂行政事件にも亙りまして、一切の法律上の爭訟を裁判することを明かにして居ります、是は改正憲法第三十二條に於て、何人も裁判所に於て裁判を受ける權利を奪はれないと云ふことを規定致し、其の第七十六條に於て特別裁判所の設置及び行政機關が終審として裁判することを禁じて居りまする趣旨に從つて居るのであります、固より行政機關が行政處分の當否に付て審判を致し又は訴願を扱ふことを禁ずる趣旨ではないのであります、從ひまして行政機關が審判をする場合にも、尚其の結果に對して必ず裁判所に出訴する道があることを明かに致しましたが、此の場合にも例へば特許審判、海事審判のやうに特別に愼重なる手續を經て爲された行政機關の審判に對する不服の訴へに付きましては、第一審を特に高等裁判所と致しまして、事實上一審級を省略致すことも考慮致して居るのであります、又改正憲法が、直接規定を致して居りまする兩院議員の資格に關する爭訟及び裁判官の彈劾の裁判が、裁判所の權限に屬しないことは申す迄もないことでありまして、本法案に於きましても其の趣旨を明かに致して居るのであります、第三に、最高裁判所に付きましては、改正憲法が廣範圍の權限を與へ、且極めて高い權威を期待致して居りますることは、是亦各位御承知の通りでありまして、此の趣旨に從ひまして、其の構成及び事件の取扱等に付きましては、特別の考慮を致して居るのであります、特に其の裁判官に付きましては、長官の外判事十四名、合計十五人と致しまして、其の任命資格は十五人の中少くとも十人に付きましては、所謂法曹又は法律學者として二十年の經驗を有することを必要と致し、老練にして識見の高い法律家を以て之に充てることと致したのであります、併しながら更に經歴等に囚はれず、眞に識見ある國家第一流の人材を廣く求め得られる道を開きまして、最高裁判所は眞に權威ある最高の司法機關たらしめることを期待致して居るのであります、第四に、下級裁判所の中高等裁判所は、大體現在の控訴院に相當致すものでありまするが、第二審事件の外、特別の事件の第一審及び簡易裁判所事件の上告をも扱ふことと致して居るのであります、地方裁判所は、是亦大體現在の地方裁判所の權限と區裁判所の權限の一部を有することと致し、一般の第一審事件の外に、簡易裁判所事件の控訴を取扱ひ、其の事件の取扱は從來の合議制のみである點を改めまして、特殊の事件を除いては、事件の性質に從ひまして合議體又は一人の裁判官で行ふことが出來るやうに致して居るのであります、簡易裁判所は民事、刑事の輕微な事件のみを取扱ふのでありまして、今囘新たに設けられるものであるのであります、此の種輕微な事件を處理致しまする爲に、全國に數多くの裁判所を設けまして、簡易な手續に依つて爭議の實情に即した裁判をするやう特に工夫をして居るのであります、此の制度は司法の民主化にも貢獻する所が少なからざるものがあると期待して居るのであります、第五に、裁判官に付きましては前述の最高裁判所の外に、下級裁判所の裁判官と致しまして、高等裁判所長官、判事、判事補及び簡易裁判所判事の四種を設けまして、それぞれに付きまして其の地位に相應はしい任命資格を規定致して居るのであります、特に簡易裁判所判事に付きましては、所謂法曹の經歴のない者でも、選考委員會の選考を經まして之に任命し得る道を開きまして、廣く人格識見の秀れた徳望ある人を簡易裁判所の裁判官に迎へまして、之に依つて此の制度の妙味を一層發揮することを期待致して居るのであります、裁判官の定年に付きましては、最高裁判所の裁判官は總て七十歳、下級裁判所の裁判官は六十五歳と致し、裁判官の身分の保障に付きましては、現行の制度以上に之を厚く致しまして、司法權の獨立の全きを期して居るのであります、第六に、司法行政に付きましては、從來裁判所は司法大臣の監督の下にあつたのでありまするが、改正憲法の施行と共に、裁判所は司法大臣の監督から離れて、全く獨立致すのでありまして、本法案に於きましても、最高裁判所を最高の監督官とすることを明かに致すと共に、簡易裁判所以外の裁判所に事務局制度を設けまして、所要の職員を置きまして、司法行政の運用にも支障なきことを期して居るのであります、第七に、裁判所の經費に付きましては、獨立して國の豫算に計上することと致し、一般行政の經費とは別個に取扱はるべきことを明かに致して居るのでありまして、此の點に付きましても裁判所の獨立を考慮したのであります、最後に、現行の裁判所構成法に於きましては、裁判所に檢事局を附置するものと致し、檢事局及び檢事に付きましても、裁判所構成法中に定めて居るのでありますが、今囘憲法が改正せられました機會に、檢事局を裁判所から分離致しまして別に檢察廳法を設けまして、檢察廳及び檢察官に關することを定めることに致したのであります、從ひまして檢察官に關しましては本法案中には規定を設けて居らないのであります、檢察廳法案は本法案に引續きまして本議會に提出致し御審議を願ふことと致して居るのであります、尚本法案の立案に付きましては、政府に於きましては昨年内閣に設けました臨時法制調査會竝に司法省に設けました司法法制審議會に之を諮りまして、委員各位の極めて熱心な討議を經たのでありまして、本法案は其の答申に基きまして立案致されましたものであります、甚だ簡單でありまするが、本法案の概略を御説明申上げた次第であります、次に裁判所法施行法案に付きまして其の概要を御説明申上げます、裁判所法の施行に伴ひまして裁判所構成法及び行政裁判所法に依り定められて居ります現在の裁判機構が著しく改められますことは、先に只今本法案説明の際申上げた通りであります、而して裁判所法の施行に關しましては尚經過的な措置其の他若干の事項を定めて置く必要がありまするので、本法案は是等の事項に付きまして規定致したものであります、以下本法案の主要な點を御説明申上げます、先づ第一に裁判所構成法及び行政裁判所法の廢止に伴ひまして不要となりまする裁判所管轄區域に關する法律、行政廳の違法處分に關する行政裁判の件等若干の法律を廢止致しますると共に、違警罪即決例も之を廢止することと致しました、違警罪即決例は御承知の通り警察署長に依る即決處分の制度を定めて居りまするが、裁判所法に依りまして簡易裁判所を多數各地に設けまして是等事件を取扱ふことと致し、違警罪即決例は之を廢止することに致したのであります、第二に事件の引繼等の關係に付きましては、現在の通常裁判所に於てなされました各種の手續は裁判所法に定める各裁判所に於てなされたものと看做しますと共に、現在の行政裁判所になされました行政訴訟の提起は、之を東京高等裁判所になされました訴の提起と看做すことと致したのであります、第三に現職の裁判官の地位に付きましては、現在の通常裁判の判事は、裁判所法に定める各裁判所の判事に補せられたものと看做し、改正憲法の規定に依り其の後任者が任命される迄其の地位にあるものと致したのであります、尤も最高裁判所及び簡易裁判所には斯かる經過的な裁判官を置かず、其の裁判官は總て新たに任命される者を以て充てることと致して居るのであります、第四に裁判所法に依りますると、裁判官任命諮問委員會に付きましては政令で定めることとなつて居りまする關係上、最高裁判所の裁判官の任命は、改正憲法の施行と同時には之を行ひ得ないこととなりまするので、此の點に付きまして裁判所法の規定の特則を設けまして、裁判所法の施行前に閣令に依る諮間委員會を設置致しまして、改正憲法の施行と同時に最高裁判所の裁判官の任命を行ひ得るやう處置致したのであります。第五に此の法律に定めて居りますものの外に、裁判所法及び此の法律の施行に關しまして必要な事項は、政令で之を定めることと致したのであります、甚だ簡單ではありますが、以上裁判所法施行法案の御説明を申上げました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=2
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003・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 本委員會は裁判所法案の審議に當りまして、裁判所法施行法案が併託されて居ります、先づ裁判所法案の御審議から願ひたいと思ひます、只今司法大臣の御説明を伺ひました、是から質疑に入りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=3
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004・川村竹治
○川村竹治君 此の審議はどう云ふことになりますか、全體の質問をしてから、更に逐條に御入りなりますか、どう云ふ風に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=4
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005・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 如何でございませう、全體的な……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=5
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006・川村竹治
○川村竹治君 全體的な質問を……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=6
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007・霜山精一
○霜山精一君 次に逐條をやつたらどうでせうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=7
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008・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 大體全體的な御質問をお願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=8
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009・川村竹治
○川村竹治君 私の質問したいのは、此の裁判の監督權と云ふものは、大體裁判所に移されてある、其の他人事の方面に於ても大變變つて居る、從つて從來の司法省との關係はどう云ふ風になるのであるか、餘程司法省と云ふものは變つて來るのではないか、變るとすればどう云ふ風に變るのでありますか、其の點を御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=9
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010・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、申す迄もなく裁判所は司法省とは全然關係はなくなるのであります、尤も最高裁判所の判事の任命等に付きましては、是は内閣でやるのであります、内閣の閣僚の一人として司法大臣がそれに關與すると云ふことは當然でありますが、併し全般的の監督と云ふやうなことは司法省から全然離れて居ります、併しながら司法省と致しましては、何れ御審議を願ひます檢察廳法で檢察事務に關する監督と云ふものは矢張り司法大臣が之をやります、それから行政關係、保護關係それから司法に關する法案の立案等に關しましては、依然司法省で之をやることになります、尚其の外に將來色々司法省に關係の事務が多くなつて來ることを豫想して居ります、只今の所で的確に申上げることは出來ませぬが……從ひまして裁判所とは全然分離致しましても、司法省の在り方、性格等に付ては大體に於て大きくなるとも小さくなると云ふやうなことはないものと考へて居るのであります、尚之に附帶致しまして、特に戸籍それから登記事務、斯う云ふやうな多少司法と關聯のある事柄に付ては、或は司法省で之を取扱ふことになるかとも考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=10
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011・川村竹治
○川村竹治君 大體分りましたが、現在では此の法律が施行後の司法省の職務規程と云ふか、分掌規程と云ふやうなものの御交渉はまだ完全に出來て居らないと承知して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=11
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012・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 申す迄もなく、裁判所のルール、實際上の手續規定なるものは、是は最高裁判所で定めることになつて居ります、尤も國民の權利義務に直接ある手續は、是は法律を以て定められるのでありますが、それ以外の實際上の裁判手續と云ふものは、最高裁判所で之を定めることになるのであります、併し現在の處では、司法省に於きまして臨時企畫部と云ふものを設けて居ります、さうしてそれに於て今後の最高裁判所で定められべき是等のルール其の他萬般のことに付ての準備的の處置を致して居るのであります、是は其の儘最高裁判所で取上げると云ふことになるまいかと思ひまするが、少くとも直ちに今度憲法實施と共に、出發すべき最高裁判所に不便を來してはいかぬと思ひまするので、其の點に付ての今研究を進めて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=12
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013・山隈康
○山隈康君 只今川村議員の質問に關聯を有して居ることでありまするが、此の法案自體から觀察を致しますると、裁判所は裁判に關する限りに於ては獨立の機關として何人よりも掣肘を受けないと云ふ立場に立つて居るやうであります、裁判官、事務局書記、或は技官、調査官、斯う云ふものを任免及び處罰に關すること、裁判の實際取扱ひに關する、規定の制定、之に要する一切の豫算、是も皆裁判所に於て獨立をして決定し、旦之を施行すると云ふことに相成つて居りまするから、私の疑ひは裁判所は司法省の一分局、機關と見るべきものであるか、或は純然たる獨立をしたる裁判機關であると斯う見るのであるかどうかに付て疑ひがあります、司法省の一部門であるか、或は裁判に關する限りに於ては獨立したる機關、さう致しますると、司法省と裁判所との關係がもつと明白に承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=13
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014・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答致します、裁判所に關する限りに於きましては、全然司法省とは分離致す譯であります、從ひまして裁判事務一切は司法省とは關係がなくなることになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=14
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015・山隈康
○山隈康君 此の法案に依りますると、高等裁判所を八箇所御設けになるやうに想達せられますが、高等裁判所の設置は一箇所ですか、何箇所御設置になるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=15
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016・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 八箇所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=16
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017・山隈康
○山隈康君 次いで伺ひますが、元來上告審に當る裁判所は法律統一と云ふことを主たる目的として、從來の大審院一箇所で、之を審理して居る、是は上告に關する高等裁判所が八箇所と云ふことになりますると、戰時特例の構成法ですか、あれに依りますると、上告を扱ふ各控訴院の判決が互ひに矛盾する場合に於ては、決定を以て大審院の裁決を仰ぐ、斯う云ふ規定があつたやうに記憶致して居ります、さうすると今度裁判所に依りまして八箇所の高等裁判所が上告事件を取扱ひ、其の間法律に對する見解の相違があつた場合にはどう云ふ風な取扱になつて法律統一を御圖りになる御趣意であるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=17
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018・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 私からお答へ申上げます、御尤もな御質疑でございまして、其の點に付きましては今度御審議願ひます民事訴訟法の應急的措置に關する法律案竝に刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案に於きまして「高等裁判所が上告裁判所である場合に、最高裁判所の定める事由があるときは、決定で事件を最高裁判所に移送しなければならない」と云ふ規定を置くのでありまして、此の「最高裁判所の定める事由があるときは」と云ふ中には、今御指摘のやうな所謂判例牴觸のやうな場合、其の他にも例へば違憲問題が問題になつて居る場合であるとか、新しい重要な法律解釋をする必要があるやうな場合であるとか、さう云つたやうな場合を豫想して居りますが、さう云ふ最高裁判所の定める事由があるときには最高裁判所に移送すると云ふことに依りまして、只今御指摘のやうな判例の統一と云ふことを圖つて參る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=18
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019・山隈康
○山隈康君 高等裁判所八箇所を御設置になる御設置の箇所は御決めになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=19
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020・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 現在の七箇所の他に、高松に四國全體を管轄する高等裁判所を置く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=20
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021・山隈康
○山隈康君 調査は從來の控訴院を其の儘利用されると云ふ御趣旨でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=21
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022・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=22
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023・川村竹治
○川村竹治君 最高裁判所を初め高等裁判所、地方裁判所共に事務局が出來る、是は職員の數も相當の數に上る譯でありますが、それだけ司法省の事務が減る譯になると思ひます、然るに司法大臣は從來の司法省の事務と今度新たになる司法省の事務と云ふものは大した變りはないのみならず寧ろ殖えるだらうと云ふ御話でありましたが、それはちよつと私に理解し兼ねるのですが、どう云ふ爲に殖えるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=23
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024・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 最高裁判所竝に高等裁判所、地方裁判所には只今御指摘のやうな事務局と云ふものが出來まして、そこには裁判所事務官と云ふものが新しく任命されることになりまして、其の裁判所事務官の中から所謂事務局に勤務する者或は現在の裁判所書記に補せられる者が其の中から任命される譯であります、さう云ふ譯でありまして、裁判所の方はさう云ふ事務局が殖えると云ふやうな關係から定員が増加して參るのでありますが、從ひまして少くとも裁判所の監督等の關係が司法省から離れて裁判所に移る關係上、それだけ司法省の仕事も少くなると云ふ風に考へるのが普通であるのでありますが、實際裁判所の監督の爲に司法省に只今必要とする職員と云ふ者は割合に實は少いのでありまして、大體司法省に於きましては、現在でも裁判所の裁判それ自體の監督と云ふことは事實上殆ど行つて居ないのでありまして、主に民事局、刑事局等に於ては民事、刑事に關する法律の立案と云ふ風なものを主に致して居ります、それで今後も司法省に於きましては、民事、刑事、其の他司法關係一般に關する法律の立案と云ふことは矢張り司法省が行つて參ることになるのでありますが、今後其の立案が寧ろ殖えると雖も是は減らないと云ふ風に考へて居ります、殊に是から、民法或は民事訴訟法、或は家事審判法、其の他各種の豫想されて居る法律の立案の事業も非常に殖えて參る關係上、さう云つたやうな關係から致しまして、大藏省との豫算の折衝等に於きましても、大體豫算方面に於きましては、寧ろ司法省の豫算は大體從前通りと云ふことに相成るのでありまして、大體裁判所方面に於きまして、事務局等の關係で豫算が殖えると云ふ風な關係になると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=24
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025・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 大體先程伺つて居りましたのではつきり致しませぬのですが、裁判所が離れるので、司法省の仕事が從來よりも減ると云ふことになるが、減ると云ふことは具體的に言ふとどう云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=25
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026・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 例へば人事課に於きましては、現在は判事と檢事との人事のことをやつて居りますが、判事の方の人事は最高裁判所に行きまして、檢察官關係は司法省本省の人事と云ふものになると考へます、それから會計に付きましても、會計豫算は裁判所が獨立致します結果、現在の會計課の仕事は裁判所、檢察それから行刑、保護及び司法本省の會計を受持つて居りますから、其の中から裁判所に關する限りに於て仕事が少くなる譯でありますが、會計の仕事等はそれだけ少くなつたからと言つても人手はそれだけ、それに應じて――例へば金額に應じて人手が減ると云ふものではないと云ふことでありまして、色々な關係から大藏省もさう云ふことを認めて、大體に於て司法省の豫算關係等は現状の儘にと云ふことに相成りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=26
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027・山隈康
○山隈康君 只今全國司法部職員組合中央執行委員長平本東平の請願書といふのを接受致しましたが、是は司法省にも本案制定以前に請願書が出て居つて、御覽になつたものと思ひます、此の請願の御採用にならなかつた點を、此の機會を通じて御説明を伺へれば結構だと思ひます、即ち第一の裁判官の任用を、高等試驗司法科試驗合格者を對象とする其の偏重を改めて貰ひたい、結局廣く人格高潔なる者であつて、健全なる社會常識を有する者を任用して貰ひたいと云ふのが、第一の請願の趣旨のやうであります、第二には一般判事と簡易裁判所判事との區別を撤廢する、同じく國法の審判に當る者であるから、殊更簡易裁判所の判事と云ふ者の採用資格等も、極く他の裁判官に較べると、低く見て居らるるから、是は裁判官の威信を保つ所以でなからうと云ふやうな趣旨のやうで、其の次は最高裁判所事務總長を、高等試驗合格者のみから任用する制度を改めて貰ひたいと云ふこと、此の外にもう一つ裁判所の書記の名稱を廢して、裁判所事務官一本のものにして貰ひたい、是は多少理由があるやうに考へられるのですが、事務の簡捷の上から云つても、事務官一本と云ふ方が宜くはないかと考へるのでありますが、此の點に對する政府の御説明を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=27
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028・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 山隈委員にちよつと申上げますけれども、只今の御質問のことは、此の裁判所法に關した御質問ではございますけれども、…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=28
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029・山隈康
○山隈康君 何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=29
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030・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 今の御質問でございますね、あれは正式に配布されたものではございませぬので、此の裁判所法案に多少は關係は致して居りますけれども、委員會の御質疑としては如何かと思ひますが………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=30
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031・山隈康
○山隈康君 唯私は……公に配布されたものでないと云ふことは御説の通りでありますが、私委員として此の請願書を受けまして、之に對する政府の御所見を伺つて置きたいと……只今のは皆此の裁判所法に關係あるものであるのですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=31
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032・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) ちよつと速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=32
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033・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を始めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=33
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034・山隈康
○山隈康君 御尤ものことですから、私の意見として一つ御尋ねすることに致します、大體以上の點に付て政府の御所信を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=34
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035・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 只今の御質問は、第一點は裁判官の任用を、高等試驗司法科合格者を對象とすることを改めてはどうかと云ふ御意見が第一と考へます、大體に於きまして國家が高等試驗制度を採用致して、其の高等試驗に合格したる者から判事に採用して行くと云ふ方針を取つて居ります以上、全然さう云ふ制度を無視すると云ふことは出來ないやうに考へて居ります、尚併しながら此の裁判所法案は必ずしも高等試驗合格者でなければ裁判官になれないと云ふ風な窮屈な制度を取つて居る譯ではありませぬのでありまして、先程大臣の御説明にもありましたやうに、最高裁判所の裁判官の中五人は識見の高い者から特に任用が出來る途を開いても居ります、又簡易裁判所の判事に付きましては、矢張りさう云ふ資格がなくても、學識經驗のある者に付て選考委員會の選考を經て自由任用が出來る規定を第四十五條で規定して居ります通りでありまして、必ずしも司法科試驗合格者のみを對象として居ると云ふことではないのであります、次に一般判事と簡易裁判所判事の區別を撤廢してはどうかと云ふ御意見に承りました、簡易裁判所の判事の任用に付きましては、今御説明申しましたやうに、特別任用のものと、さうでない所謂法曹出身のものとの二つの途を開いて居ります、法曹出身の所謂判事補、檢察官、辯護士其の他の職員から、三年以上の經驗者から簡易裁判所の判事が任命せられます、それ等のものは勿論其の後中央裁判所なり或は高等裁判所なり、最高裁判所の裁判官となつて行く途はある譯でありまして、此の點は簡易裁判所の判事と一般判事とを區別して居る譯ではない譯であります、唯特別任用の所謂四十五條にある選考委員會の選考を經た簡易裁判所の判事に付きましては、別段資格を制限して居りませぬ、學識經驗のあるものであれば何人と雖も選考委員會の選考を經れば任命されることになつて居る譯でありまして、是は多く各地方地方に於て多年教育の方面とか、或は社會事業の方面とか、或は調停委員であるとか、或は又裁判所書記等にあつて長くさう云ふ方面に功勞のあつた人々から、選任されることを豫想して居るのでありまして、さう云ふ人々が更に地方裁判所等に行つて判事になつて裁判事務に携はると云ふことより、寧ろ各郷里、各地方に於てさう云つたやうな人格の高邁な人々が簡易裁判所判事として其の郷里なり、其の各地方地方に於て十分司法の事務に貢獻して戴くことを豫想して居りまする關係上、地方裁判所の判事と云ふのとは其の點各各行き方が違ふやうに考へて居りますのでありまして、其の點は矢張りさう云ふ職業的と申しますか、さう云ふ專門の判事と、さう云ふ特任の簡易裁判所の判事とを矢張り區別することが寧ろ相當ではなからうかと云ふ風に考へて居る譯であります、其の次は、最高裁判所の事務總長を高等試驗合格者のみより任用する制度を改めてはどうかと云ふ御意見のやうでありますが、此の點は裁判所法案では別段資格を限定して居りませぬ、唯最高裁判所事務總長は一級官とすると云ふことでありまして、一般一級官に任命される資格のあるものであれば、他の一般官吏と同樣に見て居る譯であります、次は裁判所書記の名稱を廢めてはどうかと云ふのでありますが、是は先程もちよつと觸れましたやうに、裁判所書記と云ふのは、裁判所事務官の中から補職することになつて居ります、是は其の案の六十條であります、でありますから矢張り其の人は裁判所事務官であることは變りはないので、裁判所事務官で裁判所書記に補せられると云ふことになります關係上、依然として裁判所事務官であることには變りはありませぬからして、是も矢張り依然として裁判所事務官と云ふ名稱を使つて居れば宜いのでありますから、此の點は裁判所事務官、是は……裁判所書記と云ふのは民事訴訟法なり、刑事訴訟法なりに特に規定されて居る、判事と同樣裁判に重要なる役割を持つものでありまして、其の本官と云ひますか、身分としては裁判所事務官であつて、其の仕事の方面に於て裁判所書記に補せられて、法廷の立會或は書類の調整をすると云ふことになるだけでありまして、身分は此の法案の建前では裁判所事務官と云ふことになるので、裁判所書記と云ふ名稱を別に使はなくても、裁判所事務官と云ふことにして置けば宜いと考へまするので、本案に於きましては、裁判所事務官から書記が補せられると云ふ建前を執つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=35
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036・山隈康
○山隈康君 檢察廳に奉職をして居る書記は、一定の條件を備へれば判事となり、或は司法省で御起草中の辯護士法に依つて辯護士になることが出來るのに、同じく裁判所に奉職する他の書記に對しては其の途が開けてないと云ふのは稍稍不均衡のやうに考へて居る譯であります、此の點に對する司法省の御考を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=36
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037・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 其の點を考慮致しまして、簡易裁判所の裁判官に書記から採用し得る途を、只今申しましたやうに開いて居るのでありまして、其の案の四十五條に多年司法事務に携り、其の他簡易裁判所判事の職務に必要な學識經驗ある者は簡易裁判所判事に任命せらるると云ふ、多年司法事務に携はると云ふ風な要件を特に付けましたのは、長らく書記等に依つて司法事務の經驗を積んだものから簡易裁判所の裁判官に任命し得る途を特に開くと云ふ意味で斯う云ふ文字を入れた譯でありまして、其の點も十分考慮して案を作つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=37
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038・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 ちよつと伺ひますが、此の四十五條は簡易裁判所判事に任命せられることが出來ると云ふことですが、此の人は簡易裁判所の判事以上には行かれないものでせうか、是で御終ひと云ふ譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=38
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039・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 一般的に申しますと、簡易裁判所の判事に、先程申しましたやうに、判事補からなる者とさうでない者とありますが、此の所謂特別任用に依る選考を經て簡易裁判所の判事に任命される人々に付ては、地方裁判所なり、高等裁判所に行く途を考へて居ない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=39
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040・川村竹治
○川村竹治君 私は一つ御願をしたいですが、今度の憲法に伴ふ色々の法律の改正に依つて司法省の事務がどれだけの分量が減つて、又どれだけの分量が殖えるかと云ふことに付て簡單な御調べを願ふことが出來ますまいか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=40
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041・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 先程もちよつと申しましたやうに、減ると思はれまするのは、人事の中で裁判官に關する人事の部分と、會計の事務の中で裁判所關係の俸給、其の他營繕等の會計事務が減るのでありまして、其の外、例へば民事局、刑事局の仕事と申しますのは、主に法律の立案等でありまするので、殆ど減らないと申しても宜いと思ふ位のものでありまして、御手許に配布致して居りまする司法大臣の裁判所構成法に定められた裁判所に關する司法大臣の權限と云ふ風な印刷を御配り致してありますが、斯う云ふ權限もなくなる譯でありますが、事務の上に於ては殆ど減らないやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=41
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042・川村竹治
○川村竹治君 私は持論として日本の官省あたりの仕事が多過ぎる、總て司法と言はず、總ての官省を通じて多過ぎる、是が爲に却て事務の澁滯を來すと云ふやうな虞があると云ふことを此の間行政調査部の顧問會に於ても私は申した、寧ろ人を少くして待遇を良くして、さうして事務の能率を擧げて行くことが今日必要ではないか、何故か官制其の他が變ると云ふと必ず人員の増加が伴ふと云ふことでは國費が益益膨脹すると云ふことは將來餘程愼まなければならないのではないかと私は常に考へて居る、私が執拗こく此の問題を申すのはさう云ふ懸念から出發して居るのでありまして、成るべく減せるものは減して、さうして是迄の通りで行けるものはそれで行く、又人員を減して宜しいなら人員を減すと云ふ心組みで以て各省の人事と云ふことに付て頭を使はれたらどうかと云ふ考を持つて居るのであります、併し實際に於て事務が殖えると云ふことであれば、強ひて之を減らせと云ふ考ではありませぬが、出來るならばさう云ふ心持を以て各省、其の他官省の人事などは然るべく調整して行きたい、斯う云ふ意見を持つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=42
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043・山隈康
○山隈康君 是は全部に亙つて質疑をして宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=43
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044・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=44
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045・山隈康
○山隈康君 第五十七條の裁判所の調査官の權限を明かにしたいと思ふ、「事件の審理及び裁判に關して必要な調査を掌る。」さうすると例へば證人を調べるとか、參考人を調べるとか、若くは鑑定をさせる、當事者本人を調べると云ふこと迄も出來るのでありませうか、調査官の即ち調査を爲す權限の範圍……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=45
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046・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 證人を訊問したり、審理に關與すると云ふことは出來ないのでありまして、唯所謂助手的な意味で、例へば學説なり、先例なり、外國の例とか、さう云つたやうなものの調査と云ふやうな意味でありまして、苟も裁判或は審理自體に關係をすると云ふことは出來ない考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=46
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047・山隈康
○山隈康君 此の法で見ますと、唯「事件の審理」と云ふことを書いて「及び裁判に關して必要な調査を掌る。」、今御話になりまする裁判の取扱に直接に參加出來ないと云ふことはです、何か規定だけでは事件の審理に關しては必要なる調査は何でも出來ると云ふやうに一應解釋出來るのでありますが、何かこれは別に事務規定でも設けられる御趣意でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=47
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048・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 審理裁判に關係して必要な調査を掌ると云ふので、審理裁判に對して直接之に關與出來ないことは恐らく是で十分明かであると考へたのですが、尚是等の點は裁判所の事務處理の方法に付て規定するルールで明かにすることも結構と思ひますが、大體是で審理又は裁判には關係しないと云ふことは、大體明かであるかと云ふ風に考へて居つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=48
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049・山隈康
○山隈康君 是は公判に立會ふやうなことはなくして、公判外に於ける審理に止まるだけと解して差支ありませぬか、或は公判にも立會ふことが出來る譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=49
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050・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 公判の審理には無論立會へませぬし、又公判外の審理等にも之に關與は出來ない考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=50
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051・山隈康
○山隈康君 此の採用資格は六十六條の試驗を受けた合格した者の外に、一般官吏となる資格の者が、當然調査官に任命することが出來ると云ふのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=51
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052・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は嚴密に申しますと、裁判官ではありませぬから、一般行政官である譯で、さうして是は二級の行政官であると云ふことになる譯であります、是は裁判所の職員であります關係上、必ずしも行政科の高等試驗を通らなくとも、所謂六十六條の司法科の高等試驗を通つた者に付ても任命出來る、其の外に一般行政官としての任用資格があれば任命出來ると云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=52
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053・山隈康
○山隈康君 大體分つたやうでありますが、更に此の法案に依つて裁判所に技官と云ふものを設けると云ふ趣旨になつて居るやうでありますが、是は技術官であらうと思ひまするが、大體どう云ふことを主として其の任務とするのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=53
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054・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は豫算が司法省の豫算と獨立致します關係上、營繕等の仕事も裁判所の仕事に相成りまするので、さう云ふ技師等が必要になります、さう云ふものを大體豫想して技官を置く必要があると考へるのでありますが、將來は或は速記とか、或は録音等に關係する技官と云ふ風なものも考へられるのではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=54
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055・山隈康
○山隈康君 第三條の「別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない、是は陪審を設けると云ふだけの趣旨でありませうか、或は從來の陪審制度を變更して、新たなる陪審制度を設けることが出來ると云ふ趣旨でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=55
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056・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は唯將來陪審の制度を設けることを妨げるものではないと云ふ途を拓いただけの積りでありまして、之に依つて積極的に陪審の制度を設けるとか、或は從來通りの陪審をするかと云ふやうなことに付ては、直接には規定をしたのでありませぬで、陪審制度を採入れることの妨げにはならないと云ふ、將來のさう云ふ場合を豫想して途を拓いて置くと云ふ用意に過ぎない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=56
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057・山隈康
○山隈康君 將來陪審の新たな制度を設くることが出來ると云ふ趣旨に拜聽致しましたが、さう致しますると、現在の陪審制度は其の施行を停止してはありまするけれども、陪審制度それ自體はまだ廢止して居ないのでありますから、是はどう解釋したら宜しいのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=57
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058・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 現在停止されて居りますので、之を何時此の停止を解くか、或は停止を復活するに致しましても、從來通りの儘の陪審制度を採用するかと云ふことは、現在司法省の刑事局に於きまして研究中であります、尚多く陪審の法廷等が戰災に依りまして無くなつて居る箇所が相當ありまするので、さう云ふ方面からも、今急に陪審制度を復活すると云ふことは、實際上困難な状態にある譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=58
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059・山隈康
○山隈康君 私は能く調べて居りませぬが、陪審制度の停止と云ふのは戰時に限つたと云ふ譯ではなかつたのでせうか、若し戰時に限つたものであると云ふことならば、此の陪審制度それ自身は今日生きて居る譯であると解して宜しうございませうか……さうすると此の規定はちよつと矛盾しはしないか、現に陪審制度が今日迄廢止されずに生きて居るとするならば、別に陪審制度を設ける必要はないやうに思ひますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=59
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060・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 陪審に關する法律は停止されて居るので、必ずしも戰時に限つた譯ではない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=60
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061・山隈康
○山隈康君 戰時に限つて居ない……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=61
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062・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さう考へて居ります、是は實は唯陪審の制度を、之を妨げるものではないと云ふ意味でありまして、結局世界の各文明國に於きましては、多く陪審の制度を採用して居るやうでありますし、日本に於きましても、斯う云ふ風に何等裁判所法では陪審のことに觸れて居りませぬ、此の點に付ても、まあ國際的に考へましても、陪審の制度を別に排斥しないんだと云ふことを此處に掲げることが國際的に非常に意味を持つと云ふ風に考へまして、此處に其の途を將來拓き得ると云ふ用意を表はしたに過ぎない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=62
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063・山隈康
○山隈康君 尚私は疑を持つ譯でありまするが、現在の陪審制度が廢止でなくして、施行を停止して居ると云ふならば、陪審制度は日本の法律では現存を致して居る譯でありまするから、「別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない」と云ふ規定を設くる必要はないやうに考へ、現に法律にはある譯ですから、其の間の見解は御説明を戴けばはつきり致すと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=63
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064・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) ちよつと速記を止めさせて戴きたいと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=64
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065・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=65
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066・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を始めて、それでは是で午前の委員會を閉ぢまして、午後は一時から開きたいと思ひます
午後零時六分休憩
――――◇―――――
午後一時二十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=66
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067・奧田剛郎
○副委員長(男爵奧田剛郎君) 午前に引續きまして裁判所法案、裁判所法施行法案の委員會を開きます、御斷り致しますが、委員長が參議院議員の選擧管理人としてちよつと會合があつて出席出來兼ねるさうでありますから、私が委員長の席に著きます、御質問の方は御繼續を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=67
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068・霜山精一
○霜山精一君 新憲法の施行と共に裁判所關係に於きまして、まだ外に色々法律で決めなければならぬものがあるやうに憲法上から見えるのですが、例へば裁判官の彈劾に關する裁判官の彈劾法とか云ふやうなもの、或は最高裁判所の判事の國民審査に關する法律、さう云ふやうなものが矢張り新憲法の施行と共に出來なければならぬ必要の法律ぢやないかと思ひますが、さう云ふものに關する法律はどう云ふ風になつて居るのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=68
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069・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御説御尤もであります、當局と致しましては、それ等の一聯の法案に付きまして用意をして居つたのでありますが、色々關係筋との關係がありまして、本議會には提出する運びに至らなかつたのであります、來るべき次の議會にそれ等を提出することになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=69
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070・霜山精一
○霜山精一君 それから今判事の懲戒法と云ふものがあります、是も矢張り改正しなければならぬことにならうと思ふのですが、此の懲戒法の改正の法律に付ても結局此の議會には間に合はないと云ふことになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=70
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071・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 左樣でございます、今整備を致しまして次の議會に矢張り出したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=71
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072・霜山精一
○霜山精一君 それから今大審院に特許法關係の上告が參ることになつて居りますが、先程の司法大臣の御説明では何か特許關係の上告は高等裁判所の方に持つて行くやうに御話があつたやうにちよつと伺つたのですが、若しさうであるならば特許法の方の改正の問題も起るのではないかと思ふのでございますが、其の方も矢張り間に合はないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=72
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073・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、御説御尤もであります、それは政令で改正することになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=73
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074・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) ちよつと其の點御説明申上げます、實は裁判所法の施行法に於きまして、さう云つた特別法の大審院等と云ふ字句の改正をしたい積りで用意して居つたのでございまするが、實は矢張り關係方面で色色なあれから、施行法を非常に簡單なものに致します爲に、さう云つた整理を政令に讓ることに致しました、從つて特許法の大審院の字句も政令で甦へるやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=74
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075・霜山精一
○霜山精一君 何か特別の法律が出て、さう云ふ風に特許法の改正を政令でやられると云ふやうな特別法でも出されるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=75
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076・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) それは裁判所施行法案の第七條でさう云ふ政令に讓ることを規定した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=76
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077・霜山精一
○霜山精一君 もう一つ、現在大審院にある色々な特許法の特許關係の上告事件、是は施行法に依りますと、最高裁判所に受理されたものとして最高裁判所で判斷するやうになつて居りまするが、之を斯う云ふ種類の事件を高等裁判所で將來やられるのであれば、現在大審院にある特許關係の事件を高等裁判所の方に移すとか何とか云ふことの方が相當ではないかと思ふのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=77
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078・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 誠に御尤もな御尋ねでございまして、現在大審院で致して居ります事件、現に今繋屬して居ります事件は、經過法に依りまして東京高等裁判所が受理するやうに處置致した方が宜しいんぢやないかと私共考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=78
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079・霜山精一
○霜山精一君 それは何か規定でさうなつて居るのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=79
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080・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 其の點も實は施行法に規定を置く豫定であつたのでございますけれども、先程申上げたやうな事情で、矢張り是も政令で決める、それは施行法案の第二條を御覽戴きますと、政令の定めるところによりこれを最高裁判所又は下級裁判所においてした事件の受理その他の手續とみなす」、斯う云ふ風に此處にございます、「政令の定めるところにより」、それが内容を規定する政令でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=80
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081・牧野英一
○牧野英一君 裁判所の法令審査權の事柄に付て伺ひたいのですが、下級裁判所も矢張り是は法令審査權を持つて居ることになるのでございますか、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=81
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082・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 憲法には最高裁判所の權限として規定はございますけれども、下級裁判所も亦其の法令に違憲の判斷が出來ると云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=82
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083・牧野英一
○牧野英一君 さうして此の憲法違反であると云ふことの裁判がありました時に、其の判決の效力の範圍はどう云ふことになりませうか、結局其の範圍に付て政府の御考を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=83
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084・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 其の點に付きましては色々説もあらうかと思ふのでございますけれども、最高裁判所が裁判を致しました場合には、其の事件に付て其の當事者を拘束することは勿論でございます、又其の判決が將來同樣な解釋の下に判決を爲されるだらうと云ふ期待を一般に持たさすことから致しまして、まあ法令の違憲性に付きまして一般にさう云ふ期待が持たれると云ふことになる譯でございます、併し最高裁判所が違憲だと云ふ判斷をしたからと云つて、法律が全然法律としてその存在を失つてしまふと云ふ譯ではなくて、矢張り形式上法律としては存在して居ると云ふ風に考へられるのぢやないかと存じて居ります、それから下級裁判所の場合には、又最高裁判所の場合と違ひまして、それ程力を持たない、單に其の事件に付て、其の當事者を拘束する、普通の下級裁判所の判決と同樣に考へて宜しいのぢやないかと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=84
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085・牧野英一
○牧野英一君 遡及的に效力を持ちますかどうでありますか、他の裁判所の判決に依つて判決を受けた者が、新しい憲法違反で認めた判決に依つて救濟されるのでございますか、何かさう云ふやうなことに付てはどう云ふやうなことになるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=85
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086・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 前に爲された判決を適用した法律が其の後の判決で憲法違反と云ふ判斷を受けました場合にも、既に受けました判決に付きましては、其の效力を左右することはないのではなからうか、今日其の救濟規定に付て別に設けてございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=86
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087・牧野英一
○牧野英一君 例へば行政裁判のやうなものでございますと云ふと、税法に付て行政裁判所の判決はありますけれども、現に租税を納めた者は返還を求めることが出來るやうなことになつて居るのでありますが、其のやうなことが行政事件に付ては無論、民事にも刑事にも自らあり得る譯でありますが、さう云ふことに付て他に爲されたる裁判は影響を受けないと云ふことになると、實際上救濟をしてやると云ふ必要が起るかも知れぬと思ひますが、さう云ふことに付ては政府の御考はどう云ふことになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=87
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088・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 現在は司法裁判所に於て爲された確定判決と云ふものは、其の事件に付て確定的な拘束力を持つと云ふ見解に立ちまして、一度確定判決があれば、それはもう絶對に動かせないと云ふ見解に立つて居ります、從ひまして今御尋のやうな問題は確かに其處にございますけれども、其の確定判決を更に變へる、再審の制度はございますし、それから又刑事に於て非常上告の制度はございますが、併し其の外に現在に於てはさう云つた救濟の制度は考へて居らない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=88
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089・牧野英一
○牧野英一君 刑事の方でございますと、其の外に恩赦と云ふこともございますし、或程度救濟する途が考へられませうが、民事になりますと相當に不公平な結果が起きはしないかと思ひますが、理論として前の判決は、無論それで有效に成立するのでありますけれども、國家全體としてはさう云ふ場合に於て何か救済の途を考へると云ふ必要はないものでございませうか、それに付て御用意があるのかどうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=89
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090・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 誠に御尤もな御説だと思ひます、今後訴訟法に又全面的の改正を致さなければなりませぬので、其の點に付ては十分研究して參りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=90
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091・霜山精一
○霜山精一君 今、牧野委員から御質問になりました法律命令等が憲法に違反する場合の裁判の問題で、第十條を見ますと、大法廷で事件を審理しなければならない場合に、當事者の主張に基いて、憲法に違反するかどうかを判斷するときと、第二號に、前號の場合を除いて、憲法に適合しないと認めるときとか云ふやうに、一號と二號と當事者の主張に依つてやる場合と、基かないでやる場合と分けて居るやうですが、是はどう云ふ區別なんでせうか、之を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=91
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092・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 御尋の第一號の方は當事者の主張のあつた場合には、法令其の他が憲法に適合すると云ふ裁判をする場合にも、又しないと云ふ裁判をする場合にも、兎に角主張があれば大法廷を開かなければならない、第二號の方は當事者の主張がない場合でありまして、是は憲法に適合しないと云ふ裁判をする場合を申して居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=92
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093・霜山精一
○霜山精一君 最高裁判所の場合は知りませぬが、從來の大審院のやつて居つた考から言へば、當事者の主張に依つて論旨の判斷をするのですね、當事者の主張しない事實は職權調査か何かの場合に限定する譯であります、此の第二號に當るやつは何か憲法に違反するかどうか、違反ではないと認めると云ふやうなことを職權で調査をしなければならないと云ふやうな御説なんでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=93
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094・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 法令の違憲なりや否やの問題は憲法乃至其の法律の解釋の問題でございまして、當然職權で判斷すべきものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=94
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095・霜山精一
○霜山精一君 主張があつてもなくてもですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=95
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096・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=96
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097・村田保定
○男爵村田保定君 先程牧野博士から御質問がありました際に、裁判所が憲法違反の法律を扱ふ場合に違反と云ふことになつて、其の法律又は命令が違反と云ふことに決定されました場合に、先程當然に其の法律が效果が無くなるのではないと云ふやうな御意見だつたと思ひますが、さうしますと、何か新しい立法手續をしない間はそれはどう云ふ工合に扱はれるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=97
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098・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 先程申上げましたやうに、其の法律は恐らくは今後の裁判所に於ても無效と云ふ裁判をされるであらうと云ふ状態の下に形式上は存在して居る譯でありまして、さう云つた形式上の存在する限り、さう云ふ意味で不都合な状態にある譯でありまして、從つて其の廢止の手續を執られることが望ましいことだと云ふ風に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=98
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099・村田保定
○男爵村田保定君 さうしますと、最高裁判所の裁判の内容には其の法律の廢止の手續と云ふやうなことは含まれない譯でございますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=99
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100・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 裁判の内容にはさう云ふことは含まれませぬと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=100
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101・霜山精一
○霜山精一君 新憲法の實施も間近に迫つて居りまして、其の間に今度の新しい裁判所が作られなければならない譯なのであります、最高裁判所と高等裁判所と地方裁判所と云ふものは大體從前からあるものでありますが、簡易裁判所と云ふのは今度全國に數百箇所設けられる豫定になつて居ります、其の簡易裁判所の裁判官も特別に任命しなければならぬ關係になつて居る、此の全國數百箇所に新しい簡易裁判所を作り、其の設備をして、さうしてそれに適當な裁判官を配すると云ふやうな簡易裁判所を開設することが新憲法の施行の期日迄に十分用意が出來るかどうか、非常に問題ぢやないかと思ふのでございますが、其の點はどう云ふものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=101
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102・横田正俊
○政府委員(横田正俊君) 只今御質問の簡易裁判所に付きましては、それが今囘の裁判所法に基きまする全く新しい裁判所でございますだけに、其の準備に付きましては我々も非常に考へて居る次第でございます、大體今仰せになりましたやうに、全國五百箇所以上設けられる豫定でございまして、其の物的設備等に付きましても御承知のやうな状態でございまして、果して五月三日に完全なものが出來て、間に合ひますかどうか、正直なことを申しますと、甚だ憂慮に堪へない點がございます、唯御承知の現在區裁判所のございます箇所が全國二百七十八箇所、之には既に判事も居りますし、甚だ不完全でございますが、區裁判所の建物もございますので、最小限度と致しまして、此の二百七十八箇所に簡易裁判所を兼ねて置きまして、其處に現在あります判事の人で差當り簡易裁判所の權限に屬する事務をやつて貰ふことは出來ると思ひます、唯今囘の刑事訴訟法の改正に於きまして檢察官に強制權を與へられませぬ關係から今申しました區裁判所のない所にも早く物的竝に人的の施設の手當を致す必要がございますので、只今司法省に於ては其の物的施設の方に付きましては、現地の所長、檢事正と緊密な連絡をとりまして、著々準備を進めて居りますが、物的の施設に付きましても、地方裁判所單位に簡易裁判所の設立準備委員會と云ふものを實は設けて、近々發足を致すことになつて居りまして、此の委員會に於きまして、大體簡易裁判所判事として適當な人を其の地方々々に於きまして選定を致しまして、選考致しまして、それを中央の方へ連絡をして貰ふ、其の中から今度出來まする最高裁判所へ正式の手續を了して、簡易裁判所の判事を任命する、さう云ふ風に致したいと、現在著々準備中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=102
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103・牧野英一
○牧野英一君 今簡易裁判所の御話がありましたから、それに關聯して伺つて置きたいのでありますが、簡易裁判所と云ふ名稱は先づ第一にどう云ふ御趣旨のもので御ありになりませうか、檢察廳法案の方を見ますと云ふと、區檢察廳と云ふやうな言葉が使つてありまして、現在の裁判所の檢事局を直ぐ想ひ浮べるやうになつて居りまするが、簡易裁判所と云ふことになりますと云ふと、現在の區裁判所と云ふ考へ方とはまるで違ふものでございませうか、特に簡易と云ふ名稱を御用ひになつた御趣旨をちよつと伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=103
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104・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 其の點の經緯を簡單に申上げます、實は此の裁判所の名稱に付きましては色々問題があつたのであります、最初アメリカ式に治安裁判所としたらどうか、大體治安裁判所が宜からうぢやないかと云ふ意見で以て原案が起案された譯になつて居つたのであります、併し各方面の意嚮を段々聽いて見ますると、なかなか治安裁判所と云ふと刑事事件ばかりやるやうにも見えるし、どうも感じが良くないのではないかと云ふやうな議論が出たのであります、或は大衆裁判所とか、色々な名稱が問題になつたのでありまするが、結局各方面の意見を聽取致しました結果、簡易裁判所が最も親しみ易い名稱ではないかと云ふことで、左樣に決つた譯であります、實の處、閣議でも其の點は問題になつたのでありまして、大多數の閣僚の意見もさうでありまするし、又實際方面の人達の意見も徴しました結果、左樣な所へ落著いた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=104
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105・牧野英一
○牧野英一君 簡易裁判所と云ふ名稱が誤解を生ずる虞がありはしないかと云ふことを憂へるのであります、それは如何にも此の簡易裁判所に繋屬すべき事件は、何と申しまするか、甚だ手輕に扱つても宜いと云ふやうな感じを與へるやうに思ひまするので、從つて其の誤解を解く必要がありはしないか、それが第一であります、同時に又此の簡易裁判所と云ふものは、恐らくは單に地方裁判所の下にある小さいもので、矢張り一種獨得の機能を營むべき使命を持つて居るものでなからうか、殊に民事訴訟法の煩瑣な手續等には依らないで、餘程健全なる常識の働きが許されると云ふやうな性質のものではありますまいか、斯う云ふやうなことを考へて此の簡易裁判所に付ては本質もさう云ふ特質があり、又單純な片付け主義の裁判所でないと云ふことを示す爲に、簡易裁判所の爲に特別な規定、今度の議會に出ました各法案にもさう云ふ精神的な、思想的は、訓示的な法律がありまするが、さう云ふものを設けることが宜くはないかと云ふことを、司法大臣が先程御話になつた臨時法制調査會に於ても亦司法制度審議會に於ても、私個人としては申出て置きましたが、それが此の案には見えて居りませぬ、從つて此の簡易裁判所と云ふものは、實體から言ふと地方裁判所の小さいものであるやうであり、而も名稱が簡易裁判所であると云ふことになると云ふと、そこに不幸なる誤解もありはしないか、斯う云ふ心配があるのでございますが、特にあの臨時法制調査會及び司法制度審議會に於てのあの箇條を御削りになつた御趣旨はどう云ふ所に御ありになりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=105
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106・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御説誠に御尤もであります、簡易と云ふのは、簡單にものを取扱はれるやうな感を與へると云ことにも聞えるのでありますが、一般民衆に極く親しみ易いと云ふ感を持たせることが必要でなからうかと云ふ考で、斯樣な名稱に結局落著いたことであります、其の簡易裁判所の本質に付きましては、今御話になつたことは御尤もでありますから、其のことに付きましては來るべき民事訴訟改正の際に於て十分其の御趣旨を盛つて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=106
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107・霜山精一
○霜山精一君 今度の新憲法に於きまして、裁判所の機構を新しくする譯でありますけれども、其の中で最高裁判所の問題が矢張り一番重要な問題に當然なると思ふ、從つて此の最高裁判所をどう云ふ風にするかと云ふことは、國民一般が目を欹てて見て居る譯であります、此の點に付きましては、餘程愼重なる考慮を拂はなければならぬのぢやないかと考へます、先づ第一に最高裁判所と云ふものが、裁判所の非常な最高な力を持つて居つて、是が國會、或は内閣と對峙する程の有力なものであると云ふ點から見まして、最高裁判所の物的施設と云ふものをどう云ふ風にするかと云ふことを考へて見なければならぬと思ふのですが、現在大審院と云ふものがございまして、極く貧弱な建物の中に、而もそれは借りて居る建物ですが、法曹會から建物を借りまして、それに入つて居る、極めて貪弱な状態なんです、最高裁判所と云ふことになりますと、今の大審院でやつて居るやうな建物では、どうも最高裁判所の威信を發揮する所以でないと思ふのですが、何かさう云ふ物的施設に付ての、どう云ふ風にするかと云ふやうな御見込は御ありになるのですか、一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=107
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108・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 只今の御質疑誠に御尤もであります、私は此の最高裁判所の性格に鑑み、其の威容を示すと云ふ一面から考へて見ましても、將來相當な物的設備をしなければならぬと考へて居ります、現に是は私個人の構想でありまするが、實は此の國會議事堂に隣り合せて居りまする元の陸軍省、參謀本部、あの土地へ將來建てることが一番望ましいことでないかと考へまして、内々大藏大臣とも交渉致しまして、あの土地を敷地として使用すべきことの了解を求めて居るのでありまして、恐らくそれは實現するのぢやなからうかと考へて居ります、併し差當りの問題と致しましてどうするかと云ふことに付きましては、折角今考究中であります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=108
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109・霜山精一
○霜山精一君 最高裁判所の建物の問題の外に、最高裁判所には非常に良い圖書館が私は必要なんではないかと考へるのであります、前の大審院にも圖書館がございましたが、戰災でやられてしまひまして、今圖書館と云ふものはないやうでありまするけれども、是は非常に完備した圖書館がどうしてもなくちやならぬものではないかと思ふのであります、此の國會に於きましても、今度國會の圖書館と云ふものが非常に擴張され、大きな圖書館が出來ると云ふ風なことになるさうでありまするが、國會の圖書館に寧ろ讓らない位な立派な最高裁判所に附屬した圖書館を持つと云ふことは、是はもう絶對に大審院の性格から見て必要なことではないかと思ふのでありまするが、此の點に關して何か特別に御考が御ありでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=109
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110・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 實に御尤もな御意見でありまして、私も既に其の點に付て考慮を拂つて居るのであります、裁判所に立派な圖書館を持ち、又司法部に於てもそれ相當の圖書館を持つと云ふことは、今後の司法權運用に於て缺くべからざるものと考へて居ります、二十二年度の豫算に於きましても私は其の點を十分に主張致しまして、相當の豫算を取つて居る筈であります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=110
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111・牧野英一
○牧野英一君 又私簡易裁判所のことを、少し小さい問題になるかも知れませぬけれども、序に伺つて置きたい、先程の御話の趣旨で、簡易裁判所と云ふものは所謂民衆に對する親しみと云ふことを主にしての名稱であり、實體もさうであると云ふやうな御説明であつたかと思ひまして、私共もそれを誠に御尤もと思ひまするのでありまするが、そこで簡易裁判所の判事と云ふものの人選に付ての根本的な御方針はどう云ふ所に御ありになりませうか、今日現に御案内の通り、區裁判所の判事に行けと斯う言はれると云ふと、今迄出來るならば若い者にして貰ひたいと云ふやうに言ふ年取つた人があるやうにも私伺つて居りまするが、簡易裁判所の判事の地位を輕んずるやうなことがあつて誠に殘念なことであると思ふ、簡易裁判所の判事の地位を相當上の所迄引上げて戴きたいと思ひます、御廻しになりました參考書に依りますると云ふと、俸給などの點が相當低いやうに思ひまするが、もつと簡易裁判所には高い地位の者でも行かれるやうな方法を御考へ下さると云ふ譯にはいかぬものでせうか、其の點を一つ伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=111
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112・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 誠に御尤もの御意見と存じます、此の簡易裁判所は申す迄もなく一般民衆と最も親しみあるものでなくちやならぬ、又最も國民に信頼されなければならぬのでありまして、實は私の構想と致しましては、此の簡易裁判所の判事に重點を置きたいと、斯う考へて居つたのでございます、斯るが故に、唯法律技術に通曉した人ではなしに、所謂世故に馴れて其の土地の信頼を受けた徳望ある人で、而も法律の心得のある人が最も望ましいのでありまして、露骨に申しますると、裁判所に長年勤められまして辭された方、或は相當の教育家で其の土地で引退された方と云ふやうな人に此の簡易裁判所の判事になつて戴くことが最も望ましいことであらうと考へて居るのであります、さうするには矢張り俸給、或は地位の問題が絡まつて來るのでありまするが、是は私は將來相當に考慮致したい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=112
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113・牧野英一
○牧野英一君 今御話のやうな方を簡易裁判所の判事に頼むやうにして戴くやうに私も御願ひ致したいと思ひますが、さう致しますと、現に引退をして恩給を貰つて居る人が、簡易裁判所の判事の仕事をする爲に大變損になると云ふやうなことがあつては殘念なことで、出來るなら、今御示しの參考書では俸給が貰へるのですが、其の外に恩給も貰へると云ふやうなことになれば、餘程話が付き易いかと思ひますが、是は一つ十分御考を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=113
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114・村田保定
○男爵村田保定君 今御話がちよつと出ましたので伺つて置きたいのですが、四十四條の「簡易裁判所判事は、高等裁判所長官若しくは判事の職に在つた者云々」とありますが、高等裁判所長官を簡易裁判所の判事に任命すると云ふことは、私は之を見た時にちよつと疑問に思つて印を付けて置いたのですが、今の大臣の御説明は、高等裁判所の長官が簡易裁判所の判事になると云ふやうなことは、さう云つたやうな先程御説明のやうな御趣旨から特に盛られたものでありませうかどうか、其の點だけをちよつと伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=114
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115・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 最高裁判所長官の經歴を持つた方なんです、現任の方を此處に何すると云ふ意味ではないのであります、さう云ふ昔高等裁判所長官であつて辭められて、さうして田舍にでも居られると云ふやうな方であれば、矢張り進んでなつて戴くやうなことにもならうかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=115
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116・村田保定
○男爵村田保定君 それは判事の職に在つた者で當然含まれる譯でありますが、特に高等裁判所長官と御擧げになつた御趣旨は其處にあるのかと云ふことを伺つて居るのであります、特に簡易裁判所の判事を重く見ると云ふ趣旨から斯う云ふものを擧げたと云ふ意味が加つて居るのか加つて居らないのかと云ふことを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=116
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117・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 別に重きを示す爲と云ふ意味ぢやないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=117
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118・霜山精一
○霜山精一君 最高裁判所の問題をもう少し御伺ひしたいと思ひます、最高裁判所は十五名、一名の長官と十四名の判事で構成されて居るのであります、現在の大審院に於きましては三十數名、三十五六名の定員になつて居るのでありまするが、それが最高裁判所になると十四五名に減る譯であります、仕事の分量が現在の半分位であれば無論是だけの人數でもいいと思ふのでありますが、現在三十數名で以てやつて居る事件を十四五名で處理し得るかどうかと云ふことは、多少疑問ではないかと考へるのでありますが、現在に於きましては其の三十數名でも足りないので、控訴院の判事を數名代理判事として大審院で使つて居る位なものであります、此の十四五名の定員で以て十分處理し得るかどうかと云ふ點は非常に疑問なんですが、今度の案に依りますと、非常に手不足になつた時に下級裁判所詰り高等裁判所から判事を借りて來て一時代理判事として使ふと云ふやうな途が開けて居らないやうに讀んで見て思つたのですが、さう云ふ必要はないと云ふ御見込なんでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=118
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119・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御承知の通り、最高裁判所は國會、内閣と併立した非常に重きをなす一つの機構であります、其の構成に付きましては餘程愼重に處理しなければならぬ、最高裁判所の判事は所謂認證官であります、今の親任官に當る人であります、餘りに人數を増すと云ふやうなことでありますると、一種の平たい言葉で言ひますれば、重きを爲さぬ、所謂權威がなくなりはせぬかと云ふ心配もあります、出來るだけ優秀な徳望のある、信望のある人を集めるには大體十五名を以て相當とするのぢやないかと云ふ考を持つて居るのであります、現にアメリカに於きましても最高裁判所の判事は九名であります、唯事件の取扱方に付て不都合を生じはしないかと云ふ説も一應御尤もでありまするが、併しながら簡易裁判所の上告事件は最高裁判所で取扱ひませぬ、それから刑事事件に付ては、今のやうに事實審理は行ひませぬ、それともう一つは、調査官と云ふものを設けまして色々の調査の任に當らせると云ふことになりますると、大體今の處十五名位で宜いのぢやないかと云ふことを考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=119
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120・霜山精一
○霜山精一君 事件の數のことは能く分りませぬが、施行法に依りますると、今大審院に繋屬して居る事件は、大體最高裁判所に引繼がれることになるやうであります、斯う云ふ切り替への際に、どうせ是は最高裁判所に任してしまへと云ふやうな意味から、今の大審院でむづかしい事件はどんどん溜めて行きはしまいかと云ふ風にも私邪推ですけれども思ひますのですが、引繼がれる事件がどの位の程度になるのでせうか、其の點を一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=120
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121・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 現在大審院に繋屬して居りまする事件は、實は先程申しました政令の定める所に依りと云ふ、其の政令に依りまして東京高等裁判所で處理するやうに取計らふ考でございます、それから其の際に一體大審院の事件として何件位が引繼がれることになるだらうかと云ふ御話でございますが、今日事件の統計を手許に持ちませぬので、其の點を調べまして御返事申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=121
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122・霜山精一
○霜山精一君 大審院の特別權限の事件は、現行法では色々大逆事件とか、内亂罪と云ふやうなものが特別事件として認められて居つたのでありまするが、今度は大逆事件と云ふやうなものに付ては規定がないやうに思ひますが、是はどう云ふ風な御考なのでございませうか
〔副委員長退席委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=122
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123・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) ちよつと速記を止めて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=123
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124・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=124
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125・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を始めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=125
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126・牧野英一
○牧野英一君 最高裁判所の御話の序にちよつと御伺ひして置きたいのは第九條でありますが、第九條の第二項で「大法廷は、全員の裁判官の、小法廷は、最高裁判所の定める員數の裁判官の合議體とする。」とありまして、其の但書に「三人以上でなければならない。」と云ふことがありまして、さうして最後の項へ行つて「最高裁判所の定める員數の裁判官が出席すれば、」と云ふ規定になつて居ります、「三人以上」と云ふやうなことは最後の第何項になりますか、四項ですか、四項でも排除することが出來ない譯でせうな、さう云ふ風に私讀んだのですが、さうすると云ふと第二項の言出しの「全員の」とあります、「全員の」と云ふのも何だか第四項を拘束するやうな形になつて行くやうになりまして、二項と四項との關係に少しばかり惑ひを生じまして、之に付ては是は文章の話になるかも知れませぬですが、例へば斯う云ふやうに但書を御置きになる位ならば、全員を以て組織する場合には「ミニマム」が九名でなくちやならぬ、十名でなくちやならぬと云ふことがなければバランスが取れないやうな氣が致しますが、其の點はどう云ふ御趣旨でおやりになつたのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=126
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127・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 誠に御尤もな御質問であると存じます、第二項に依りまして大法廷は全員の裁判官の合議體であり、小法廷は三人以上、最高裁判所の定める員數の裁判官の合議體となつて居ります、末項に於きまして所謂定足數でございますが、是は最高裁判所の定める數と云ふことに致しました、從ひまして文章の面で假に合議體を三人と定めて、而も定足數が二人とすると云ふ定め方も出來ると云ふやうに文章上ではなつて居ります、唯實際上の問題と致しまして、さう云ふ不都合なことがあつてはならない筈でございまして、實は末項は大法廷だけに付ての規定で、主に大法廷に働く規定であると云ふ風に御解釋を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=127
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128・牧野英一
○牧野英一君 それで小さい問題ですが、小法廷を矢張り規則で三人の小法廷、五人の小法廷、七人の小法廷と云ふものを拵へても宜い譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=128
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129・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=129
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130・牧野英一
○牧野英一君 此の部分は五人の小法廷であるが、併しながら判事の都合に依つて三人を定足數とすると云ふことも言へる譯でせうね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=130
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131・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=131
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132・牧野英一
○牧野英一君 三人以下にはどうしても下ることを得ぬと云ふ趣旨に讀んだのでありますが、如何に定足數を決めることが出來ると云つても、最高裁判所が一人や二人でやつたと云ふのでは申譯が立たぬので、そこで三人以上でなければならぬと云ふやうになつたのぢやないかと讀んだのですが、今政府委員の御話では、言葉の上だけでは矢張り二人でもそれ等のことになると云ふことを仰しやつたのでありますが、私は反對で、但書は第四項をも拘束する規定と讀んだのであります、それでありますから、寧ろ全員の大法廷の場合にも、此の法律で九名とか、七名とか矢張り決めて置いた方が宜しくないかと云ふことを申上げたのが私の質問の趣旨であつたのでありますが、實際は問題になることもないでありませうが、どうでございませうかと思ひますので……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=132
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133・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 末項を小法廷に適用致します場合には、今仰せのやうな解釋を取られると云ふことも然るべきことだと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=133
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134・牧野英一
○牧野英一君 まあそれ位で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=134
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135・霜山精一
○霜山精一君 裁判官の政治干與の禁止に關する規定が現行法にあるのであります、今度の裁判所法に於きましても、五十二條ですか、現行法と大部違ふやうなのがありますが、主な所は政黨の黨員となれるかどうかと云ふことですが、現行法ではなれないと云ふことになつて居りまするが、此の法律では黨員になると云ふことに付ては何も規定が設けてないのでありまするが、是は政黨の黨員になると云ふことは政治運動、政治の干與ではないと云ふ見解の下に立案されたのではないかと想像しますけれども、其の點を一つはつきり……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=135
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136・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 其の點誠に仰せの通りの見解でございまして、改正憲法の二十一條に依りまして「集會、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と云ふ規定がございます、之に依りまして裁判官と雖も政黨の黨員となり、又は政見を發表すると云ふことは許される、唯積極的に政治運動、或政治目的の爲に積極的に活動すると云ふ點を禁止すると云ふことにしてございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=136
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137・霜山精一
○霜山精一君 現行の裁判所構成法第三十八條に依りますと、皇族に對する民事訴訟に付ては東京控訴院が管轄權を持つて居る、斯う云ふ規定があるのでありますが、今度の裁判所法に付きましては、斯う云ふ趣旨の規定が見當らないが、皇族の民事訴訟に付ては斯う云ふ規定の必要はなくなつたのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=137
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138・内藤頼博
○政府委員(内藤頼博君) 御話のやうに、現行法の三十八條のやうな規定を此の度の裁判所法に設けて居りませぬ、從ひまして皇族に對する民事訴訟も亦一般の訴訟と同樣になる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=138
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139・霜山精一
○霜山精一君 現行法の百十四條に依りますと法服に關する規定があるのですが、判事、檢事、裁判所書記或は辯護士は公開した法廷では一定の法服を着なければならぬと云ふ規定があるのであります、今度の法案には法服のことに關する規定がないやうでありまするが、此の點は何か最高裁判所の規則の制定權か何かで規定せられる趣旨なのでありませうか、或は法服と云ふものは全然使はない、要らないのだと云ふことにする御趣旨なのでありませうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=139
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140・横田正俊
○政府委員(横田正俊君) 此の法服のことに付きましては、只今仰せの通り、憲法の七十七條の所謂最高裁判所の規則制定權に基きまして適當と認める規則が設けられることとなります、實は其の點に付きまして施行準備を致します我々の立場から、形式は現在のやうなものを其の儘採用致しますかどうかは別と致しまして、法廷の威嚴を保ちます意味に於きまして、何等かの形式の法服が矢張り必要ではないかと考へて居ります、唯簡易裁判所に付きましては、其の裁判所の性質上、或はさう云ふ形式を省略して、極めて人民の親しみ易い形で裁判をすると云ふことが、考へられて宜いのではないかと考へて居ります、是は何れ最高裁判所で適當な規則が制定せられることと期待して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=140
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141・霜山精一
○霜山精一君 もう一つ裁判所構成法百三十六條に相當する規定が見當らないのですが、監督權の内容を規定したものですが、裁判所構成法の第百三十六條は司法行政の監督權は斯う云ふことが出來ると云ふ、不適當又は不十分に取扱ひたる事務に付ては其の注意を促し、竝に適當に其の事務を取扱ふことを訓令するとか、或は其の地位に不相應なる行状に付ては諭告するやうな斯う云ふことに關する規定を削除せられた理由を……何か外に斯う云ふ規定を設ける考なのですか、或は斯う云ふことは要らないと云ふ御趣旨なんでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=141
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142・横田正俊
○政府委員(横田正俊君) 只今御質問の點も、先程の憲法の七十七條の最高裁判所は内部規律に關しまして、規則を定める權限がございますので、そちらに讓ることに致しましたので、斯う云ふ規則を作ることは不必要だと云ふ見解で裁判所法から取つた次第ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=142
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143・作間耕逸
○作間耕逸君 只今政府委員の御答辯の中にもありました新憲法第七十七條の最高裁判所の定め得べきルールの點に關係してでありますが、是も既に憲法委員會、其の他の關係委員會に於て論議を盡されたかと思つて居りまするし、又此の委員會に於きましても、私は近頃健康を害して居りますので、つい朝早くよう參りませぬで、遲刻したり致しましたが、其の間に斯う云ふ御質問なり、之に對する御答辯があつたかと察せられますが、若しありましたらば委員長から御遠慮なく仰しやつて戴けば差控へまして、後で速記録を拜見致すことに致します、訴訟は民刑共、竝に辯護士に關する事項に付ては最高裁判所が規則として獨自に制定し得る、制定したものは關係當局は、檢察廳も同樣でございますが、之に從はなければならないと云ふことに相成つて居ります、處で之に對して憲法にございまする權限を、幾ら左樣に認められて居つても、苟くも國民の權利義務に直接關する事柄は、矢張り立法議會を經て、其の協贊を得べきものである、最高裁判所が勝手にルールとして定むべきものでない、其の立法を要する事項を、立法に依らずとも可なりとする事項の程度、範圍をどう定められますか、是は何れ其の限界が明かにされることであらうと思ひまするが、現在は司法省側に於ては矢張り法律とルールと、其の事柄に依つて兩方で行くべきものであると云ふ見解を取つて居られるやうでありまするが、大審院の方に於ては一部には、全部ではございませぬ、一部には全部ルールで決めて然るべきものであると云ふ意見を持つて居る人もあるやうに存じます、是は英米法案の學者の説と、さうでない方の御説と、自ら見解が分れて居るのでありませうか、此の機會に司法當局の、是は政府委員で結構であります、現在此の問題はどう云ふやうに扱はれて居りまするか、又どう云ふやうに現れて居りまするか、と云ふことを御聽かせ願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=143
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144・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 其の點に付て私から御答へ申上げます、是は日本國憲法御審議の際にも問題になつたのでありまするが、最高裁判所で定められる規則と云ふものは、所謂プラクチカル・ルールで、裁判其の他實際の事務的に關する規則でありまして、事苟も國民の權利義務に關係のある事柄に付ては、是は總て法律を以て定めることが至當である、斯う考へて居ります、只今司法省の企畫部内に於きましても、其の原則に沿つて總て研究を致して居るやうな次第であります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=144
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145・作間耕逸
○作間耕逸君 分りました、私も大臣の見解と同樣でありまするが、唯大審院に於ても、現在矢張り最高裁判所設立に付ての準備を進められて居るやうであります、皆それぞれ研究調査せられることは、是は別に差支へのあることでもありませぬけれども、唯大審院側の一部に、全的にルール説を支持される人があるとしますると、此の當面緊急の準備を要する時期に於て、學説として主張されるのは、それは御自由でありますが、政府或は裁判所の施設として、さう云ふ意見が混ると云ふことは、總ての準備を圓滑に進むるの上に於て、矢張り面白くないことであらうと思ひまするから、是は大審院側の一部の説が、學説としては別ですけれども、それ以外に於ては、實際面に於ては、司法省側の只今の大臣の御意見と成るべく速かに一致して御進行になるやうに、一つ司法當局側に於ても善處せられたいと云ふことを希望申上げて置きます、是は希望に止めて置きませう、それから各裁判所を通じて判事の任命資格でありまするが、是はまあ大臣初め司法當局も能く御承知の通り、民間法曹の場合に於ては、他に法曹一元論と云ふものが殆ど輿論的に主張せられて居るのであります、私は個人と致しましては、近來此の法曹一元論に稍稍懷疑的考を生ずるやうになつたのでありまするけれども、是は一個人の考に過ぎなくて、在野法曹の一般的の多數の意嚮は、今尚法曹一元論を堅持致して居る次第でありまして、私と雖も少くとも本格的判事、本當の判事、裁判官たる者は矢張り社會の生きた經驗と法律學の修養、兩方を兼ね備へたるものから任命せられるものである、さうして法律學の修養に付ては國家試驗に合格したる者に限られる、處が此の兩面の資格を兼ね備へて居る者は、どうしても先づ辯護士の外にはない、此の故に辯護士が優先的、本格的判事に任命選任せられて然るべきものと考へます、此の場合に私共はもう辯護士の徳義上、社會上、或は法制上の義務として、半強制せられても然るべきものであるとさへ考へて居るのでありまするが、現在實際に於て問題になるのは、御承知の通り經濟上の待遇、俸給の點であります、處が是は矢張り辯護士の中でも、任官を希望して居りませぬ者でも、實際任官して幾ら俸給が戴けるであらうか、實收があるであらうかと云ふことに明るくない人が多い、それで自然遲疑する、是は事苟くも俸給、報酬に關する、金錢に關する經濟問題ですから、矢張り紳士として、殊に裁判官になるやうな人として、此の點をどうも色々確め、或はそれに重きを置いて考へるなんと云ふことは、從來はどうも餘り潔しとされなかつた所で、自然斯う云ふ關係が此の法曹一元、辯護士任用の妨げをなすのであります、處が進駐軍關係で南方へ辯護人を派遣せられるやうな場合に、司法省を經ての通達に依りますと、俸給は幾ら拂ふ、旅費は幾ら出す、仕度料は幾ら出すと言つて公然掲示されて居ります、我々の從來の考からしますと云ふと、どうも問題が露骨過ぎて、ぎごちなく考へますけれども、近來は大分慣れました、矢張り辯護士を選任されるに當つても、十年の者は幾ら、十五年の者は幾ら、二十年の者は幾ら、大體其の俸給の標準を明示せられれば、此の問題が幾らか圓滑味を加へることと思ひます、まさかどうも公然掲示することも面白くないと云ふ御考であれば、司法省人事局等に原簿を備へて置かれて、志望者が行つて拜見すれば直ぐ自分は幾ら貰へる、幾らの收入があると云ふことが分るやうな施設でも講じられたならば一層結構ではないかと考へまするが、此の點に付て政府委員でも結構であります、御考を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=145
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146・横田正俊
○政府委員(横田正俊君) 在野法曹の方が裁判所に御入りになりますことは、色々な面から考へまして極めて結構なことでございます、殊に今度の新しい憲法竝に裁判所法の下に於きまする裁判所は、さう云ふことを非常に要求致して居ると私は考へます、今日も衆議院に於きまして、何れこちらで御審議を御願ひ致します裁判官の報酬に關する法律の時別委員會に於きまして、黒田委員から矢張り同樣の強い御意見がございました、此の際は在朝在野を打つて一丸として寧ろ大々的に入換へてはどうかと云ふやうな御話もございました、それに付きましては具體的な問題と致しまして、只今作間委員から仰せになりました通り、裁判所に入りまして、どう云ふ待遇を受けるかと云ふことは一番非常に大事なことでございまして、之を迎へまする裁判所側と致しましては、矢張り或程度の條件を御示しを致しまして、御迎へをすると云ふことが寧ろ當然のことだと存ずるのでございます、只今迄或は人事課のやり方等に於きまして、さう云ふ點に非常に缺ける所があつたのではないかと存じますが、今後私の方の人事のやり方も餘程變つて來ることを期待して居りますので、只今御質疑にございましたやうな、もつと具體的な方法を御示しをしながら御迎をすると云ふことに司法省としても今後格段の努力を致したいと存ずる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=146
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147・作間耕逸
○作間耕逸君 それから此の簡易裁判所の判事のことに付きましては、只今牧野博士、霜山さん邊りからも御質問がありましたが、是は地位、年齡等の關係はどうなるのでありますか、年齡は一般判事の年齡の最高限のものを採るのでありませうか、先刻大臣の御説明になりましたやうな御趣意から言へば、老熟、練達、堪能以上、世故に長けた人が期待される、私共左樣に思ふ、さう云ふ人こそ簡易裁判所の判事としては適任だと思ひます、尤もさう云ふ人ばかりだと又多少何でありますが、主にさう云ふ人にして、さうして其の間に若手青年のちやきちやきな判事をも交じえると云ふこの配置が望ましいことと考へますが、此の場合に於ける俸給の經濟的待遇問題、或は高等裁判所の判事なるが故に、常に俸給が地方裁判所の判事よりも高く、又地方裁判所の判事なるが故に、簡易裁判所の判事よりも高くと云ふ現在の制度と言ひますか、しきたりは矢張り此の際變ることであらうと存じて居りますが、將來は簡易裁判所の判事で年も多い、地位も高い、場合に依つては最高裁判所の裁判官位の收入はあるのだ、報酬があるのだ、唯勤めが簡易裁判所の判事たるに過ぎない、内部的の經濟上の地位、待遇に付ては人にも依りますけれども、中に最も優良上席の人邊りは其の地位が高等裁判所の判事、或は最高裁判所の判事にも敢へて下らない、斯う云ふやうな待遇を現實に示して戴きたい、又示されることであらうと存じ上げまするが、其の點に付ては如何な御方針でありませうか、是は一つ大臣に御伺ひ致しませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=147
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148・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 地位と其の俸給との兼ね合がなかなかむづかしい問題でありまして、裁判所の裁判官に付きましては特に憲法に於て相當の俸給を支給すると云ふことになつて居りますので、少くとも其の當時々々の生活に即した俸給だけは最小限度給與しなければならぬと云ふことは當然でありまして、此の裁判官に對する俸給に付きましては、別に法律を特に定めると云ふことに相成る次第であります、そこで簡易裁判所あたりには申す迄もなく第一線に民衆と接觸する最も肝要な判事でありますから、其の待遇に付ても相當考慮しなければならぬかと考へて居ります、併し御承知の通り此の簡易裁判所の判事と云ふものは非常に全國に多數置かれますもので、色色他の判事との均衡問題が生ずることと、又國家財政の關係上、思ふやうに是等の人の俸給と云ふものはいかないのであります、今の段階では只今提出致しました所で御了承を御願ひ致したいと考へて居りますが、將來の行き方と致しましては、今作間委員も仰せになりましたやうに、特に簡易裁判所の判事なんかに付ては考慮を拂はなければならぬ、又拂ふべきものと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=148
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149・作間耕逸
○作間耕逸君 分りました、次は判事の身分保障でありますが、此の點に付きまして現在法曹界竝に社會の一部で問題になつて居りますのは、判事から司法行政官に轉任した場合、今度更に其の司法行政官から判事に轉任する場合に、其の人の承諾を法律上必要とするか、或は法律上でなくとも、先例としてそれは必要なことになつて居ると云ふことであるのか、此の點に付ては遂に一部事が公の問題になつて、大審院の或判事は新聞に自分の意見を發表して居られるやうであります、其の人等の意見に依れば、其の場合に矢張り本人の承諾を要するのである、若しさうでないと、將來判事から司法行政官に轉任して來る者が無くなるであらう、殊に優秀の人を裁判所から司法本省に引上げるやうな場合に其の安心を與へて置く必要があるのではないかと云ふやうな意見を明かにされて居るやうであります、定めし之に對して司法本省側に於ても御意見があることだと思ひますけれども、司法省の御意見は新聞に發表して、之を國民に愬へると云ふことは立場上出來ないことでありまするから、此の問題に對してはどう云ふやうな御考を持つて居られるのでありますか、之を大臣に伺ふのは少し差控へませう、政府委員は法律上、それから從來の慣例上、どう云ふやうに此の問題に對して司法省側の御見解を持つて御いでになるか、此の機會に伺つて置きたいと思ふのであります、本會議の問題にするには餘り問題が大きくありませぬから、丁度此の委員會に於て矢張り司法省側の御見解を明かにして伺つて置きませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=149
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150・横田正俊
○政府委員(横田正俊君) 只今作間委員からの御話の裁判官から司法省の司法事務官、行政官に變りました者の身分に關する御質疑でございます、司法省に入りました者を更に裁判所に轉任せしむる、此の點に付て、法律上格別の承諾が要るかどうかと云ふ點は、法律問題としまして解釋上多少の議論も存し得る所でございますが、現在の政府の考と致しましては、法律上の承諾は要らないと云ふやうな解釋を採つて居る次第でございます、但し仰せの如く裁判官から司法省に入りました者は、假にそれが一時行政官になりましても、結局は又裁判所に歸りますことを殆ど總ての人が豫期して入つて居りまするし、又之を迎えまする司法省の側もそれを十分豫期して迎えて居るのでございまして、其の者を更に裁判所に歸します場合には、其の人の意嚮を十分に尊重致しまして、無理のないやうに致すと云ふのが、普通の場合に於て司法省のなすべき處置であらうと存ずるのでございます、尚其の點は司法省の行政官とは申しますが、結局司法省の致します立法の仕事に致しましても其の他法律上のことは總て裁判所なり、檢察廳なり現場の色々な知識を非常に必要と致しますので、其の人選を判事、檢事の中から求めますことは固より當然のことでございまして、其の觀點から致しまして、只今申しましたやうな人々の意向を十分に尊重して人事を取扱ふと云ふことは司法省が永年採り來つた方針でございまして、現在と雖も其の方針は決して變つて居らない積りでございます、唯極めて特殊な場合に多少外觀から見た所は從來の行き方と違つたと云ふやうな誤解を生ずるやうな場合もあるかと存じますが、其の根本に於きましては決して司法省の今迄の方針を毫も變へて居りませぬことを特に申上げて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=150
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151・作間耕逸
○作間耕逸君 私の意見を申述べることは差控へますが、只今の御答辯で、司法省側が今日抱いて居られる御見解、御取扱の趣旨は分りました、私から別に御尋ね申上げませぬけれども、若し大臣の方で何か進んで聽かして置きたいと云ふ御意見があれば承りたいと存じます、別段にございませぬければ私の方からは申上げませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=151
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152・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 此の際最近の人事課長更迭の經緯に付て極く簡單に申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=152
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153・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=153
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154・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を始めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=154
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155・作間耕逸
○作間耕逸君 私は司法研修所に付て御尋ねしたいことがありますが、餘り私一人續けて質問するのは非常に恐縮に存じますので、若し皆樣に御質問があれば、今日は私是で止めますが、若しないやうなればもう少し續けて伺ひたいと存じますが、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=155
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156・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=156
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157・作間耕逸
○作間耕逸君 此の司法研修所でございますが、私共の主張から申せば、先刻も申上げました通り、判事は原則として辯護士から相當年數研修した者、さうして實際實務を事件として扱つて来た經驗を有する者から任用すべきものである、只今政府委員の御話では、衆議院ぢや現在の在朝の方と在野の人と寧ろ入替へることを考慮したら宜からうと云ふ話が出たと云ふことを伺つたのでありますが、私共は現在の方は現在の方其の儘で宜しい、現在の在朝の方は現在の御資格で就任されて宜しいが、唯將來増員の場合、缺員補充の場合、新に判事の任用を必要とする場合に於ては、法曹一元の趣旨に則られて任官せしめられて然るべきものである、斯う考へる譯でありますが、さうなつて來ますると、此の司法研修所は主に現在判事であり、又將來判事になつた人の再教育若しくは補修的の教育又は社會的研學、實習等には必要なんでありまするけれども、司法官試補を養成して此の研修所を卒業した者を判事に任命されると云ふことは、其の意味に於ては司法研修所は在野の輿論として主張致しまする法曹一元性と兩立致さない、それならば國家は寧ろ辯護士界に於ける辯護士試補の養成に重きを置かれて協力せられた方が宜しい、之を司法研修所で司法官試補を養成し、さうして之を一定の間修習を終へた者は判事に任用すると云ふことでは、全く法曹一元の趣旨は否定されることになる、此の點がどうも私共到底承服することは出來ない、司法研修所其のものは結構である、是は判事になられた人の補修に必要なものであるから、さう云ふ性格として益益重きを置いて戴きたいと斯樣に考へるのでありますが、當局の御意見は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=157
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158・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、此の司法研修所は将來裁判官、檢察官になる人のみならず、辯護士となる人も總て此處で一定期間修習させようと云ふ制度であります、其の狙ひは行く途は違つて居つても、其の修習の基礎に於ては全く同一であると云ふ理由から來て居るのであります、此の研修所に於きまして、將來裁判官となり、檢察官となり、辯護士となる者が、日夜切磋琢磨すると云ふことになりますると、將來各方面に途を異にして居つても、非常に其の間に於ける人の氣持と云ふものが和やかに行くのぢやないか、又一面から申しますると、此處で有らゆる詰り法律的の學問のみならず、人としての修行もして行くと云ふ點に於て、便宜ぢやないか、例へば法律學のみならず或は他面に於て、經濟方面、政治的方面、或は文化的方面と云ふやうな方面から研鑽をすることに付て、講師に來て戴いて話をすると云ふことは、誠に便利ぢやないか、殊に從來は司法官修習に付ては、殆ど辯護士の優秀な人が來てそこで講演すると云ふやうなことはなかつたのでありますが、今後は辯護士の長老に其の中に入つて戴いて、修習生に色々な經驗談をして貰つたりすれば、非常に圓滿に行くのぢやないかと云ふ考を持つて居るのでありまして、現在でも司法研修所に於きましてはさう云ふことも加味してやつて居る次第であります、將來はもう少し制度を擴張致しまして、世の中の經驗に富んだ各層の人に此の講師に入つて戴いて、十分な研究をさしたいと考へて居るのであります、それから判事、檢事の再教育、是も此の研究所でやりたいと思つて居ります、現に既に判事、檢事に就職致しまして五六年經つ人もここへ入りまして、三箇月なり四箇月なり各地から參りまして研鑽をして居るやうな次第であります、將來は此の研究所の組織、機構を擴大致しまして、十分の運用を圖りたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=158
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159・作間耕逸
○作間耕逸君 大臣の御答辯の中後段の司法官の再教育の爲にも主力を注いで將來司法研究機關を擴大される、此の御趣旨は結構でありまして、私も同感であります、けれども前段の辯護士たるべき者も此の司法研究所で試補として養成すると云ふ御見解に對しては、先程も申上げた通り、矢張り辯護士試補の修習と云ふものは、大臣自ら辯護士として多年御經驗になつて居る通り、辯護士會が自治的に、自主的に之に當る方が何としても適當である、どうも司法部内の一機關たる研修所へ收容されましては、どうしても何と申しても官僚性、封建性に馴染んで、在野の法曹人、社會人、市井の人、市民と云ふことには縁遠いことになるのはどうも餘儀ないことであります、私共は更に進んで辯護士になる試驗も第一次試驗、第二次考試共に獨自に辯護士會が責任を持つてやれる位に致したいと考へて居る、是は主として辯護士法の問題ですから、それ以上は此の場合申上げませぬけれども、承れば今度の辯護士法案の要綱には、辯護士に對する懲戒さへも原則として自治的、自主的にやらせられることになるやうだと云ふことを聞いて居ります、さうして見ると、辯護士の教育と云ふことは、それ以上辯護士會が獨自にやつて、司法官とは寧ろ異なる性格を養成して行つた方が法曹一元の趣旨に適ふのでないか、斯樣に考へて居るのであります、是以上は見解の相違になりまするから彼此れ申上げぬことに致しまして、今度は法廷の席次であります、是は只今霜山委員は法服のことを仰せられました、法服も全く法廷の威信を整ふる上に於て必要なんですが、專ら大衆を對象とする簡易裁判所あたりは却て法服がない方が人民が親しみを感じ易いのではないか、是は大臣の仰せられる通りです、處が此の法廷の席次でありまするが、是は承れば、今度も日比谷公園の一角に立ちまする新裁判所が今建築中で近く落成致すでせうが、其の法廷に於ては刑事裁判の檢事の席を辯護人の席と對等にして彈劾主義を現實の形の上に現はされる、何もアメリカ裁判の眞似をされた譯でも決してない、けれども長年さう云ふやうな希望を持つて居りまして、それを現はして戴いて、時偶偶アメリカ裁判ではさう云ふ風にやつて居るので期せずしてそれが一致した、まあ斯う云ふことに私共は考へて居る、處が是は獨り東京のみならず全國の裁判所に亙つて此の新憲法施行、新裁判所法施行の時機に於て、矢張り刑事裁判に付ては檢事の席を辯護人と同等、同樣に爲される施設をそれぞれ講じられまするか、承れば議會に於ても國務大臣の席を下されて議員と同樣な地位に置かれるさうです、もう直きに其の工事に著手されると云ふことですが、果してどんな地位にどんな風に置かれるか、それは我々には分りませぬけれども、あの多年の傳統でありました大臣の雛壇さへ下される時節になつたのでありまするから、此の刑事裁判の檢察官、辯護人の席は矢張り同等になるべきものと思料致しますが、實際此の場合全國各裁判所に亙つて一齊に御實行爲さる思召でありますがどうか、一應承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=159
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160・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 將來改造になるべき或は再建すべき裁判所に付きましては、無論日比谷で今造つて居りまする法廷と同じやうな模樣になるのでありまして、現在では司法省内に法廷改造準備委員會と云ふものを設けて、其處で案を練りましてそれを實行に移して居る譯であります、現在燒け殘りの裁判所はどうなるかと云ふ問題、是は御承知の通り相當の費用が掛りまして、之を一擧にやると云ふことはなかなか財政上許されないのでありまして、是は時機を見まして追々に改造して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=160
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161・作間耕逸
○作間耕逸君 最後にもう一點、此の國民裁判の殆ど眞髓とも申され得る陪審制度は憲法にも現はれなかつたのです、今度の裁判所法にもちよつと現はれて居るやうでありますが、是は具體的に詳しい規定がない、恐らく是は刑事訴訟法又は獨立した陪審法等で御決めになることかとも存じまするが、全く裁判の民主化と云へば、私共は國民が裁判の事實の認定に關與し得る陪審制度を以て最も之が適切なるものであると思料致すのであります、處が現行の陪審法みたいなあんな中途半端な不徹底な鵺的の、陪審員が多數を以て表決しても裁判所は必ずしもそれに服從しない、或は陪審を第一審として掛けた場合は控訴を許さない、或は陪審はほんの事實の有無、有罪無罪の有無の事實點にのみなにして、其の他は情状や刑の量定には關與させない、おまけに陪審に要した實費は被告人の負擔とする、大凡是等の色々の缺點がありまする爲に、陪審が期待された程振はない、一つは日本の裁判官の信用の高い爲でもありますけれども、今のやうな色々の缺陷を備へて居つたのぢや、誰も陪審を願ふ氣になれないのが普通であります、是が憲法委員會の時に野村議員が態態御出席になつて、陪審に付て御質問があつた、是は速記録で拜見致しましたのですが、其の時大臣の木村さんの御答辯は、陪審は振興すべきものである、唯何としても現在の施設に於て、裁判所は陪審法廷に充つべき法廷が燒けて、今なかなか設備の上に於て間に合ひ兼ぬるので、それに苦心した、殊に陪審員の宿舍等に付て最も不自由を感じて居るやうでありますが、其の邊も考へて欲しいと云ふ趣旨の御答辯があつたやうに、是は唯朧氣に記憶致して居ります、仰せの通り肝腎な法廷が燒けた所も全國各地隨所にありまするが、燒けない所もある、燒けた所でも、學校や寺、斯う云ふものを活用すれば、相當間に合ふのであります、それから陪審員の宿舍ですが、陪審員はどうしても軟禁的罐詰にして、公判の續いて居る間、一切他の外部と接觸させない、ああ云ふことは其の當時に於ては必要があつたかも知れませぬけれども、今日に於ては、國民も陪審の意義は能く理解して居りませうし、裁判が公正でなければならぬと云ふことも分つて居りませうし、若し少しでも情實や或は利害に依つて曲つたことをすれば、重き制裁を科せられると云ふ知識も進んで居ることでありませうから、どうも監禁的にもう一切交通遮斷して、其の間外部と總ての交渉を斷つ、あれ程の設備は、私は要らぬと思ふ、能く陪審の意義を理解させて、さうして制裁の重きを御知らせになれば、通はしても間に合ふのぢやないか、斯樣にさへ考へて居る次第であります、何れ陪審に付ては訴訟法か或は更に陪審法を改正して御制定になりまするか、兎に角陪審に付ての司法當局の將來の御方針、それから施設に對する實際の問題等を此の際伺つて置きたい、是で私の質問を一應止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=161
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162・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 昨日の衆議院の特別委員會に於きましても、陪審制度が問題になつたのでありますが、政府と致しましては、國民の輿論に基きまして、陪審制度の一日も速かに實施されむことを望んで居るのでありまするが、此の陪審法は現在停止になつて居りますが、まだ生きて居るのであります、是等の内容を能く檢討致しまして、根本的に研究する必要があるのぢやなからうかと思ひます、どう云ふ方法でやるかと云ふこと、それ等の點に付きまして、十分檢討を加へまして進めたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=162
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163・作間耕逸
○作間耕逸君 是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=163
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164・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは今日は是で散會を致したいと思ひます、明後日二十二日午前十時から委員會を續行致します
午後三時三十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=164
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165・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 伯爵 黒田清君
副委員長 男爵 奧田剛郎君
委員
公爵 岩倉具榮君
子爵 大河内輝耕君
子爵 松平親義君
牧野英一君
霜山精一君
川村竹治君
高柳賢三君
男爵 村田保定君
山隈康君
作間耕逸君
國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
政府委員
司法事務官 奧野健一君
同 横田正俊君
同 内藤頼博君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201136X00119470320&spkNum=165
4. 会議録のPDFを表示
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