1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○所得税法を改正する法律案
○法人税法を改正する法律案
○特別法人税法の一部を改正する等の法律案
○土地臺帳法案
○家屋臺帳法案
○地方税法の一部を改正する法律案
○地方分與税法を改正する法律案
○相續税法を改正する法律案
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委員氏名
委員長 黒田英雄君
副委員長 子爵 綾小路護君
公爵 二條弼基君
侯爵 中山輔親君
伯爵 東久世通忠君
子爵 富小路隆直君
子爵 稻垣長賢君
子爵 日野西資忠君
白澤保美君
白根竹介君
長谷川赳夫君
男爵 長基連君
男爵 鶴殿家勝君
男爵 毛利元良君
男爵 島津忠彦君
三浦新七君
奧村嘉藏君
小山完吾君
徳田昂平君
中島徳太郎君
近藤銕次君
片岡直方君
原田讓二君
呉文炳君
佐藤助九郎君
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昭和二十二年三月二十九日(土曜日)
午後一時十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=0
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001・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) それでは是から開會を致します、先づ所得税法を改正する法律案其の他本委員會に付託されて居りまする全部の法案に付きまして、政府の詳しい御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=1
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002・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 本委員會に付託になりました所得税法を改正する法律案外五法律案に付きまして、提案の理由を御説明申上げます、先程本會議に於きましても申上げました通りに、政府は最近の國民經濟の状況、國民生活の實情、竝に中央地方の財政事情等に顧みまして、現行の税制に相當根本的改正を加へる必要を認めまして、其の方策に付き、昨年末發足を見ました税制調査會に對しましても諮問を致し、當局に於ても色々研究を致しまして、其の調査會の答申も先般提出されましたので、是等に基きまして關係法律案を作成し、提案を致した譯であります、今囘の税制改正に當りましては、多額に上ります財政需要の現状に對應して、其の收支の均衡を圖る爲に、租税收入を是非とも確保することが必要でありますので、其の觀點から歳入の増加を圖ると共に、國民生活の實情に即應して、負擔の公正を期し、租税の民主化竝に税制の簡易平明化を圖る、斯樣な觀點から今囘の税制を樹立立案致した次第であります、斯樣な趣旨に基きまして、所得税は矢張り之を租税體系の中樞と致しまして、一定額以上の所得を有する個人に對しまして、其の負擔力に應じて適當な課税を行ふ、さうして之に依つて租税收入の根幹を形成せしむることに致したのであります、又法人税及び特別法人税に付きましては、個人に對する課税との權衡上必要な改正を行ふのであります、又相續税に付きましては、相續制度改正の大勢、其の他現下の諸情勢の推移に顧みまして、相續財産に對する課税の整備及び強化を圖りますと共に、贈與財産に對する課税を強化する爲、贈與税を創設する等の必要な改正を行ふのであります、而して酒税其の他の消費税及び流通税に付きましては、物價事情の變動、其の他諸情勢の推移に即應して、各税に亙り相當の増徴を行ふこととする一方、物品税に付きましては、現在課税上不適當と認められる一部の税率の引下げを行ひます等、所要の改正を加へたのであります、其の外、地方自治制度の改正に關聯して、地方財政の確立及び適切なる地方應益負擔の實現に資する等の爲、地租、家屋税、營業税、鑛區税及び遊興飮食税は、之を地方に委讓することと致しました、次に各税に關する改正に付て申上げますが、先づ所得税は、只今申上げました如く租税の大宗として、國民所得の現状、國民生活の實情及び財政需要の現況に於て、全國民が各各其の分に應じて之を負擔する趣旨の下に、有らゆる所得を綜合し、一定額以上の所得を有する者に對し、累進税率に依り課税をすることと致したのであります、之に伴ひ、現行の分類所得税及び綜合所得税を兩建とする課税は之を廢止することに致しました、所得税に付きましては、先づ課税所得の範圍は大體現行に依つて居るのでありますが、今囘新たに株式等の有價證券の賣買讓渡に依る差益等に付きましても課税することに致しました、但し、有らゆる所得を綜合して累進税率に依り課税する爲、山林所得、讓渡所得、退職所得等、長期間に亙る所得の累積とも目し得べき一時的所得に付きましては、其の所得の二分の一を控除して課税すると云ふことに致しました、次に税率でありますが、所得税改正の根本の狙ひの一つは、納税者の負擔を現下の實情と如何に適合させるかと云ふことであります、此のことに付きましては所得及生計費の實情竝に財政の需要等、各般の事情に付き愼重に考慮を致しました結果、其の年一年間を通じて計算した課税收入金額に對し、最低百分の二十乃至最高百分の七十五の税率に依りまして其の税額を定めることと致したのであります、基礎控除及び扶養家族控除に付きましては、先般御審議を願ひました勤勞所得に對する分類所得税の控除額に見合ひまして、之を引上げることと致しました、先づ基礎控除の金額は、原則として年四千八百圓に引上げることと致しました、勤勞所得者に付きましては、其の擔税力を考慮し、其の給與として受ける金額の中年三萬圓迄の金額に付ては、其の二割を控除して課税することと致したのであります、從つて此の基礎控除の金額は年に六千圓となる次第であります、次に扶養家族を有する者に對しましては、家族一人毎に税額で年二百四十圓の控除な認めます、以上に依りまして、少額所得者及び多數の扶養家族を擁する者、特に勤勞所得者の實際負擔は相當緩和されることとなるのであります、之を實例に付て申上げますれば、妻及子女三人を有する勤勞所得者は、年收一萬圓の時は課税を受けませぬ、年收二萬圓の時は税額が千三百四十圓となり、年收三萬圓の時は税額が三千五百五十圓となるのであります、之を營業の所得者に付きまして申上げますれば、年收一萬圓の時は税額が八十圓、年收二萬圓の時は税額が二千三百五十圓、三萬圓の時は税額が五千六百十圓、十萬圓の時は税額が三萬九千六百五十圓となるのであります、所得税の納税に付きましては、原則として豫算申告納税の方法に依ることと致しました、即ち現在の納税方法が、前年の所得に依つて税額を定め、政府が其の税額を告知することになつて居るのを改めまして、今囘は課税の年の所得に依つて税額を定め、納税者が其の申告した所得に依つて自ら税額を計算して納税することと致したのであります、之に依りまして、所得を生ずる時期と納税の時期とが近接することに相成りまして、負擔の均衡適正を圖る上からも、納税者の納税上の便宜からも、國庫收入の的確を期する上に於きましても、適當と認められるのであります、其の内容に付て申上げますると、一定の勤勞所得者以外の納税者は、毎年四月に自ら其の年の收入を豫算し、其の豫定税額の四分の一宛を毎年四月、七月、十月及び翌年一月に分納することと致しました、年の中途に於て所得の見積額に増減がありました時は、次の申告期に於て修正申告を行ふと同時に納税額を調整することと致して居ります、尚其の年の經過後、其の年の確定所得に依り確定税額を計算致し、豫定税額との差額は、不足額に付ては之を翌年一月に納付することとし、過納額は之を還付することと致したのであります、又勤勞所得及び配當利子所得等に付きましては、現在通り支拂の都度源泉に於て支拂者が一定の税額を徴收することと致して居るのでありますが、此の源泉で徴收された税額は申告納税の税額からは之を差引くことと致して居ります、次に申告納税及び源泉徴收上の便益に資する爲、特定の税表に依る納税の制度を設けることと致しました、其の一は所得金額が年五萬圓以下のものに付ての簡易税表であります、其の二は給與所得及び退職所得に對する源泉徴收額表であります、是等税表には所得金額又は給與の金額を相當數に區分し、一定の金額に對し一定の税額が定められて居り、税額計算の手數が全然省略されるのでありまして、納税上頗る有益であると存じて居る次第であります、尚改正所得税の初年度であります本年に於きましては、申告事項、申告期限及び納期等に付きまして、一部の特例を設け、申告及び納税の圓滿なる實施を圖ることと致して居るのであります、次に法人税に付て申上げます、法人の各事業年度の超過所得に對する課税は、最近に於ける經濟界の急激な變動に伴ひ、其の負擔が實状に即せず、産業の再建に必要な法人の企業活動の促進を期し難い憾みがありますので、今囘其の税率を、資本金額の一割を超える部分の所得に對し、百分の十、同二割を超える部分の所得に對し百分の二十、同三割を超える部分の所得に對し百分の三十にそれぞれ引下げることと致しました、又清算所得に對する税率に付きましては、改正後に於ける所得税の負擔との權衡上、積立金から成る金額等に付ては現行百分の三十五を百分の二十に、其の他の金額に付ては現行百分の五十を百分の四十五に引下げることと致しました、尚各事業年度の資本に對する課税に付きましては、最近に於ける法人の負擔力等を考慮致しまして、現行の税率千分の三を千分の五に引上げることと致したのであります、法人税に付きましても全面的に申告納税制度を採用し、法人は事業年度終了の日から二箇月以内に、自分から所得等の申告をなすと同時に、自から其の税金を計算して之を納付することと致したのであります、又事業年度が六箇月を超える時は、六箇月の實績に依り其の税金を概定して、申告納税をなすこととする等、個人の豫算申告納税制度に對應し、所得發生の時期と課税の時期との近接を圖ることに致したのであります、特別法人税に付きましても、改正後に於ける所得税の負擔との權衡上、清算剩餘金に對する税率を、積立金から成る金額に付ては百分の二十、其の他の金額に付ては百分の四十に引下げる等の改正を行ふことと致しました、又新に申告納税制度を採用することと致したのでありますが、一般の法人とは其の事情を異にして居りますので、各事業年度の剩餘金に付ての申告納税の期限は、決算確定後一箇月と致したのであります、次に相續税に付きましては、先づ日本國憲法の施行に伴ふ民法の應急的措置に即應し、現行の家督相續と遺産相續との別に依る税率の區分は之を廢止することとし、被相續人と相續人、受遺者等との親疎の別に從ひ、新に三本建の税率に依り課税することと致したのであります、即ち相續人が配偶者又は直系卑屬の場合には、第一種の税率最低二萬圓以下の金額百分の十から最高五百萬圓超の金額百分の六十に至る税率を適用して、最も輕い負擔に止めることとし、相續人が直系尊屬又は兄弟姉妹である場合には、第二種の税率を適用致しまして次に輕い負擔を受けしめ、それから相續人が以上の外の者であります場合には第三種の税率を適用致しまして、最も重い負擔をかけることに致しました、從前の相續税法に依る負擔に比較しますと、總じて現行家督相續税の場合に比し若干重くなりました、又遺産相續税の場合に比し若干輕くなつて居ります、又相續税の課税に當つて相續財産と見做すべきものの範圍を擴張整備致しまして、現行法に於ては相續開始前一年以内に被相續人がなした贈與に對して相續税を課税して居るのでありますが、今囘之を相續開始前二年以内になした贈與に迄及ぼすことに改めることに致しました、又被相續人の死亡に因り相續人其の他の者が取得する生命保險金、退職手當金の外、新たに定期金の給付に關する權利を相續財産と見做すの改正を行ふと共に、現行法に於ては總て課税外に置いてあります公益事業に對する贈與財産及び遺贈財産に付て限度を設けました、今囘は其の相手方を限定し、府縣市町村等に對する分は全部課税外と致しましたが、一般の公益事業に對する分は一定額以下の金額だけを課税外に置くことと致したのであります、他面被相續人の死亡に因り相續人其の他の者が取得する生命保險金及び退職手當金等に付きましては、從來は各別に五千圓迄の金額を課税外に置きましたが、今囘は之を改めまして、被相續人の死亡に因り相續人其の他の者が取得する郵便年金等をも含めて、總額三萬圓迄の金額に付ては課税致さないことにしたのであります、又現行法に於きましては、家督相續に付ては二萬圓、遺産相續に付ては三千圓の免税を致して居つたのでありますが、今囘之を改めまして、一律に五萬圓の基礎控除を認めることに致しました外、扶養家族控除の制度を廢止することに致したのであります、次に相次相續に對する相續税免除の規定に付きましては、現行法に於ては、最初の相續開始後七年以内に第二相續が開始した場合には前の相續に對する相續税相當額を全額免除し、第二の相續が七年を超え十年以内に開始した場合には、前の相續に對する相續税相當額の半額を免除することとなつて居るのでありますが、相續制度改正の大勢等にも鑑みまして、今囘之を改めまして、第二の相續が最初の相續開始後五年以内に開始した場合に限り、前の相續に對する相續税相當額を全免することと致しました、尚延納の制度を合理化すると共に、物納の制度を擴張することと致しました、即ち延納に付きましては、現行法は其の税額が千圓以上である場合に一律に七年間の年賦延納を認め、相續財産中不動産の價額が二分の一以上を占めて居る場合には、更に十年迄延納期間の延長を認めて居るのでありますが、之を改めまして、相續税額が一萬圓以上の場合に限り五年間の延納を認めることと致しました、又延納を認める範圍は金錢で一時に納付することを困難とする金額を限度と致したのであります、又物納に付きましては、現行法は不動産の價額が相續財産價額の二分の一以上を占め、且つ税額が千圓以上である場合に限り、之を認めて居たのでありますが、之を今囘改めまして、其の制限を撤廢し、金錢で納付することが困難である税額に付ては廣く相續財産に依る物納を認めることと致したのであります、次に今囘創設されました贈與税に付て申上げます、贈與税に付ては、現行の贈與に對する課税と相當異なる内容を持つことに致したのであります、先づ、贈與財産に對する課税を擴張致したことでありますが、現行法に於きましては、贈與財産に對する課税は、親族等に對して贈與した場合に限り遺産相續が開始したものと看做して、相續税を課税して參つたのでありますが、今囘は之を改正致しまして、相手方が親族であると他人であるとを問はず、又個人であるとを問はず、總ての贈與に對して贈與税を課税すると共に、納税義務者を受贈者から贈與者に改めることと致したのであります、以て相續税の補完税たる機能を十分果させることと致したのであります、次に非課税財産の範圍に付き、概ね相續税と同樣の改正を行いますと共に、後に述べます申告納税制度の採用等とも關聯致しまして、暦年課税と致したのであります、又贈與税が相續税の補完税たる點に鑑みまして、其の課税標準を一囘毎の贈與財産の價格とせず、贈與者の一生を通じての贈與財産の累積額とし、之に對し五萬圓の基礎控除を行ひ、殘額に付て相續税の第三種税率と同一の超過累進税率を適用し、之に依り算出した金額から前年度分迄の贈與財産の合計額に對する贈與税相當額を控除して、其の税額を算出することと致したのであります、尚相續税及び贈與税を通じて財産の評價に關する規定を整理致しますと共に、兩税を通じて申告税制度を採用することとし、現在及び將來に於ける諸情勢の推移に即應して、自主的な納税制度を導入することと致したのであります、有價證券移轉税に付きましては、其の負擔の實情其の他諸般の事情を考慮致しまして、税率を現在の二倍に引上げることとしたのであります、酒税に付きましては、財政の現状及び酒類消費の状況等に照しまして、此の際各種酒類に付て相當大幅の税率の引上げ等を行ふことに致しました、即ち清酒に付きましては、一升壜詰の小賣價格第一級酒現行四十三圓を百二十圓程度に、第二級酒現行三十三圓を九十圓程度に、麥酒に付きましては、大壜一本の小賣價格現行七圓を二十圓程度に引上げる爲に相當の増徴を行ひますと共に、其の他の酒類に付きましても、品質に應じ、税負擔に差等を設けて、之に準ずることと致しました、増税額に於て二十四割程度の増收を圖る次第であります、尚料理店、酒場等に於て販賣する業務用の酒類に付きましては、其の消費の性質等を考慮し、一般の酒税の外に清酒第一級酒及び第二級酒の一升壜詰一本に付て二百圓程度、麥酒大壜一本に付て四十圓程度の酒税を加算して徴收することとし、其の他の酒類に付ては同程度の酒税を加算し、是等に依り相當多額の國庫收入の増加を圖ることと致したのであります、清凉飮料税に付きましては、酒税増徴の權衡等から考へまして、第二種サイダーの税率を一石に付て現行五百五十圓を二千三百圓に引上げ、其の他の清凉飮料に付ても同程度の税率の引上げを行ふことと致しました、砂糖消費税に付きましては、他の消費税の増徴の權衡等から、分蜜白糖の税率を現行百斤に付て三百六十圓を千八十圓に引上げ、其の他の砂糖に付ても同程度の税率の引上げを行ふ等の改正をすることと致しました、織物消費税に付きましては、抄纖織物等は其の負擔を綿織物と同程度とするのが適當と認められましたので、現行の税率百分の四十を百分の十に引下げることと致しました、物品税に付きましては、最近に於ける物價及各種消費の状況等に鑑みまして、從價課税に屬するものに付きましては、一部奢侈的性質の特に濃厚なものを除きまして、其の他の物品に付き税率の引下げ等を行ふことと致しました、甲類物品の中化粧品等數品目に對する税率百分の百を百分の八十に乙類物品に對する税率百分の六十を百分の五十に、丙類物品に對する税率百分の四十を百分の三十に引下げると共に、丁類物品の中折箱、割箸、防虫劑等の課税を廢止することと致しました、他方從量課税に屬する税率を引上げることと致しまして、燐寸に對する税率現行千本に付き二十五錢を一圓五十錢に引上げると共に、飴類等に對しましては砂糖に準ずる程度の税率の引上げを行ふことと致しました、入場税に付きましては、最近に於ける映畫館、劇場等の利用の状況に鑑みまして、現行の税率の階級區分を廢止することと致しました、之に依り入場料等が三圓五十錢未滿の場合に於きましても、其の税率は入場税に付ては百分の五十が百分の百、特別入場税に付ては百分の二十が百分の四十となりまして、相當の増徴となるのであります、取引所税に付きましては、有價證券移轉税の増徴其の他諸般の事情を考慮致しまして、取引所に於ける有價證券の賣買取引に對する取引税の税率を改正致しまして、決濟期間の長短に拘らず、地方債證券、又は社債券に付ては萬分の一、其の他の有價證券に付ては萬分の十と致したのであります、以上の諸税の改正に伴ひ、登録税の中定額で課税して居るもの、印紙税、骨牌税及び狩獵免許税に付きましてもそれぞれ相當の増徴を行ふことと致しました、尚今囘別途實施致される筈であります地方税制度の改正に對應致しまして、地租、家屋税、營業税、鑛區税及び遊興飮食税の五税は此の際地方に之を委讓することと致しました、但し地方税として課税する地租及び家屋税の課税標準であります賃貸價格に付ては、其の均衡、適正を圖りますと共に、土地及び家屋の状況を國に於て明確に把握する必要がありますので、此の際土地臺帳法及家屋臺帳法を制定致しまして、現在通り税務署に土地臺帳及び家屋臺帳を備へ、土地及び家屋に關し必要な事項の登録を行ふことと致したのであります、土地臺帳法に於きましては、國有地以外の土地を第一種地及び第二種地に區分致して居ります、第一種地は賃貸價格を定める土地でありまして、概ね現在の有租地が之に該當致します、第二種地は賃貸價格を定めない土地でありまして、概ね現在の無租地が之に該當致すのであります、土地臺帳に登録すべき事項及び土地の異動に關する整理等に付きましては、概ね地租法に準じて規定を設けまして、税務署に於て其の事務を取扱ふことと致して居りますが、地租の免除又は輕減の爲認められて居た各種年期地の制度は概ね之を廢止することと致しました、是等の從前の年期地に付きましては新に賃貸價格を設定し、又は修正することとなりますが、都道府縣に於て課税を致しまする際には、當該地方に於て實情に即し、適宜課税の輕減、又は免除を行ふこととなる次第であります、又土地臺帳に登録すべき賃貸價格は、差當り地租法に依る現行賃貸價格を其の儘引繼ぐことと致しました、今度は十年毎に一般的に之を改定することと致しましたが、第一囘の一般的改定は昭和二十五年に於て之を行ふことと致しまして、現行の規定に依るものよりも一年延期する次第であります、尚耕地整理地に付きましては、負擔の適正及び事務の簡素化等を圖ります爲、各種の年期を一年に統合致しまして、耕地整理年期とし、其の年期を三十年に改めることとし、又耕地整理に付て換地處分があつた場合の賃貸價格の配賦等に關し、現在の複雜な手續を簡捷化致します等の爲、耕地整理法に付き所要の改正を行ふことと致したのであります、家屋臺帳法に於きましては、國有家屋以外の家屋に付ての規定を設けて居るのでありまするが、現行の非課税家屋等に付きましては、概ね賃貸價格を定めないことと致しました、家屋臺帳に登録すべき事項及び家屋の異動に關する整理等に付きましては、概ね家屋税法に準じて規定を設け、税務署に於て其の事務を取扱ふことと致して居るのであります、又家屋臺帳に登録すべき賃貸價格は、差當り家屋税法に依る現行賃貸價格を其の儘引繼ぎます、さうして今後は五年毎に一般的に之を改定することと致しましたが、第一囘の一般的改定は昭和二十七年に於て之を行ひます、現行の規定に依るものよりも二年延期することになる譯であります、以上各税法の改正其の他の必要に應じ、租税特別措置法、酒類業團體法、國税徴收法、納税施設法、間接國税犯則者處分法及び關税法等に付きましても、所要の改正を行ふことと致しました、先づ租税特別措置法に付きましては、相續財産の中に終戰後著しく其の價格の下落した株式等又は在外財産が含まれて居る場合の相續税の課税の輕減又は徴收の猶豫に付て、必要な規定を設ける等の改正を行ふのであります、酒類業團體法に付きましては、最近に於ける情勢に對應し、構成員の強制加入制の廢止、統制規程に關する規定の改正等を行ふことと致しました、尚日本國憲法の施行に即應致しまして、政府の爲した租税の賦課徴收に關する處分及び滯納處分に對して不服があります者には、廣く政府に對して審査の請求の手續の途を開いて、其の決定を經た後訴願又は訴訟を爲し得ることとなりました、又間接國税及び關税に關する犯則事件に付きましては、其の調査上の手續を整備する爲、所要の改正を行つて居るのであります、今囘の税制改正に依りまして、租税及び印紙收入の國庫收入額は、平年度に於て約六百七十二億四千三百萬圓、初年度たる昭和二十二年度に於て約六百九十五億千四百萬圓に達する見込であります、其の各税に付きまして初年度の收入額で申上げますれば、直接税は約四百六十六億八千三百萬圓でありまして、全體の六割七分二厘に當り、間接税は約百九十一億七千萬圓でありまして、全體の二割七分六厘に當り、其の他の諸税は約三十六億六千百萬圓でありまして、全體の五分二厘に當るのであります、而して直接税の中、所得税の收入額は、初年度に於て約四百十三億四千八百萬圓に達し、租税收入總額の五割九分四厘に當る見込でありまして、國税にかかつて居るのであります、又間接税の中、酒税の收入額は、初年度に於て約百四十一億五百萬圓の見込でありまして、租税收入總額の二割二厘に當るのであります、今囘直接税の各税に亙りまして、畫期的な申告納税制度を採用したのでありますが、是は先程本會議でも申上げましたやうに、其の成否は一に懸つて全國民の協力に依る次第でありまして、どうか之が十分成功して本改正案の目的を達しますやうに是非共御協力を願ひたいのであります、尚本案の提案に付きましては種々已むを得ない事情に依りまして、議會提出の時期が遲れ、會期切迫の際甚だ御迷惑のことと存じて、政府としても遺憾に堪へない次第でありますが、事情御了承の上、何卒御審議御協贊下さらむことを切に御願ひする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=2
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003・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 次に内務省の方から……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=3
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004・林連
○政府委員(林連君) 本日内務大臣が參つて説明致すべきでございますが、只今衆議院の方で選擧法の改正委員會に出席致して居りまする爲に、私より代つて御説明申上げます、本委員會に付託となりました地方税法の一部を改正する法律案及び地方分與税法を改正する法律案に付きまして、其の概要を御説明申上げたいと存じます、現行地方税制は、昭和十五年の國税地方税を通ずる税制の根本改正の結果制定されたものに、其の後毎年若干づつの小改正が加へられて來たものでありますが、之を、新憲法の精神とする地方自治強化の趣旨に副ひ、且は地方財政の現況に即應するものとする爲には、再び國税、地方税を通ずる税制の根本改正を必要とするものとなつたのであります、之が爲め今囘地方所要財源の充足、自主的地方財政の確立、税種間負擔不均衡の是正、地方財政調整の適正化の四つを目標と致しまして、地方税法の根本に觸れて、其の一部を改正すると共に、地方分與税法の全文を改正することと致した次第でございます、先づ地方税法中の改正事項に付て御説明を申上げます、改正の第一は、還付税制度の廢止と國税の地方委讓に關する事項であります、其の一つは地租及び家屋税の委讓を受けんとすることであります、即ち地方財政自主性確立の見地から、地租及び家屋税に付て還付税制度を廢止して、之を都道府縣の獨立税とすると共に、市町村に於て附加税を課するものとするのであります、併し地方税と雖も齊しく國民の負擔になるものでありますし、この兩税は分與税分與の基準にも用ひて居るものでありますので、其の課税標準に付ては現行法定賃貸價格制度を踏襲致しまして、其の決定は國の手に於て行ふことと致したのであります、賦課率に付きましては、課税標準たる賃貸價格は相當長い間据え置かれて居るものでありまして、現在の經濟事情に即しない點がありますし、他面經濟界の安定を見ない際に、賃貸價格補整の措置を講じましても、勞多くして、而も公正を期し難い點もありますので、現行賃貸價格を改定又は補整する代りに、暫定的に税率を引上げることとし、地租に付ては現行の三倍以内、家屋税に付ては現行の二倍以内で、命令を以て別段の定めを爲すことが出來るものと致したのであります、其の二は營業税の委讓を受けむとすることであります、營業税に付きましても、地租及び家屋税に付て申述べましたと同じ理由で、還付税制度を廢止致しまして、之を都道府縣の獨立税とすると共に、市町村に於て附加税を課するものとせむとするのであります、課税標準は、差當つては原則として現行純益制度を踏襲し、府縣が自ら決定することと致して居りますが、所得税や法人税の申告納税の事績を資料として用ひることに依りまして、地域的にも負擔の衡平を期することが出來ると考へて居るのであります、尚、數都道府縣に營業所を有する納税義務者に付きましては、主たる營業所所在の都道府縣に於て總純益額を決定すると共に、關係都道府縣に其の課税標準となるべき純益額を通知することと致しまして、課税標準分割事務の迅速を期することと致しました、賦課率は現行と全く同じであります、其の三は鑛區税の委讓を受けむとすることであります、鑛産地帶の財政状況に鑑み、且つは地租に準じまして國税鑛區税を都道府縣の獨立税として委讓を受け、市町村に於て之に附加税を課するものとせむとするのであります、賦課率に付きましては、此の税の特質から見まして、全國的に均衡を得て居る必要がありますので、三收益税に付てと同樣、法定することと致しましたが、國税其の他諸税の増税の程度とも睨み合せ、現行の倍額に引上げることと致しました、市町村の附加税も本税と同額を徴收するものと致して居りますので、本税、附加税を合せますと、鑛區の租税負擔は三倍強に増額に相成るのであります、其の四は遊興飮食税の委讓を受けむとすることであります、遊興飮食税に付きましては、其の沿革竝に此の税の地方團體の施設との關聯性の深い點に鑑みまして、之を都道府縣の獨立税として委讓を受け、市町村に於て之に附加税を課するものとせむとするのであります、併し特に遊興とは言へないやうな飮食や宿泊に對しまして迄も課税することは穩當ではありませぬので、國税の場合と同樣、特定の場所に於ける遊興飮食及び宿泊に對し課税するものとは致して居りますが、之を遊興税として地方獨立税に採入れることと致して居るのであります、改正の第二は、法定獨立税目の擴張に關する事項であります、現行税制の下に於きましては、地方團體が法定税目以外の獨立税を設けようと致します時には、一々主務大臣の許可を受けねばならないのでありますが、餘り無理のない税に付きましては、此の煩瑣な手續を不要とすることが適當であると考へまして、法定獨立税目は可及的に之を擴張することと致したのであります、而して新に都道府縣の法定獨立税目として電話加入權税、軌道税、入湯税を追加すると共に、現行自動車税及び船舶税の内容を擴張して、自動車及び船舶の取得に對しても課税し得るものと致しました、新に市町村の法定獨立税目としては、廣告税を追加すると共に、現行舟税の内容を擴張して、舟の取得に對しても課税し得るものと致しました、改正の第三は住民税の増税に關する事項であります、地方財政の現況、經濟事情變化の状況等に鑑みまして、住民税に付きましても之を倍額に増税することと致しまして、一納税義務者當り平均の賦課額を、府縣民税に於ては百二十圓、市町村民税に於ては八十圓に改正せむとするものであります、改正の第四は、目的税の整備に關する事項であります、其の一は、府縣の目的税を市町村と同樣水利地益税に擴張せむとするものであります、其の二は、國税附加税制度が廢止せられましたので、都市計畫税は、府縣税獨立税割及び市町村税獨立税割の二本建と致しました、税率も之を同率に改正せむとするものであります、次に地方分與税法中の改正事項に付て御説明申上げます、改正の第一は分與税制全體に關する事項であります、其の一は還付税制度を廢止すると共に、遊興飮食税を分與税財源から除外せむとすることであります、其の二は繰入率及び分與率を改訂せむとすることであります、明年度に於て増額を要すべき地方所要財源の總額は、一應二百十二億六千萬圓と概算致して居るのでありまして、其の内譯は地方職員待遇改善費が七十八億四千六百萬圓、地方議會議員費用辨償の増加二億九千八百萬圓、地方制度改正に伴ふ所要經費の増加十三億一千百萬圓、物價の騰貴に伴ふ物件費、工事費等の増加百八億四千六百萬圓、國費、地方費の負擔區分改正に伴ふ地方負擔の増加三億二千百萬圓、學制改革即ち六・三制に伴ふ地方費の増加三億四千五百萬圓、税制改革に伴ふ徴税費の増加二億九千三百萬圓であります、之に對し税制改正に依るものと所謂自然増收に屬するものとを合算致しまして、地方財源の増加致します額は、住民税の増收が十六億四千四百萬圓、三收益税、同附加税の増收が八十三億九千二百萬圓、其の他の獨立税、同附加税の増收が二十一億六千三百萬圓、使用料、手數料等の増收が二億四千八百萬圓、分與税の増收が六十二億三千萬圓、合計百八十六億七千七百萬圓でありますが、尚二十五億八千三百萬圓の不足を生じますので、之を分與税の増額に求めることと致します爲に、所得税、法人税及び入湯税の徴收額から地方分與税分與金特別會計へ操入れるべき分與税の繰入割合を増率する必要が生じたのであります、其の三は、分與税の道府縣分と市町村分との割振りを改め、市町村分から百分の二を道府縣分に移讓せむとすることであります、明年度に於て増額を要すべき地方財源の總額中、道府縣分は百二十三億九百萬圓、市町村分は八十九億五千百萬圓となるのでありますが、之に對する財源として分與税に於て増額する額は、道府縣分五十九億七千九百萬圓、市町村分二十八億三千四百萬圓となるのでありまして、既定の額である所の道府縣分十四億三千六百萬圓、市町村分七億七千三百萬圓を合算致しますと、道府縣分七十四億千五百萬圓、市町村分三十六億七百萬圓となるのであります、其の割合を取つて見ますと、道府縣分百分の六十七・二八、市町村分三十二・七二となるのでありますが、市町村財政の彈力性の少い點を考慮致しまして、之を道府縣分百分の六十七、市町村分百分の三十三に定めむとするものであります、改正の第二は、道府縣分與税に關する事項でありまして、其の一は、課税力を標準とする分與基準を一種類追加せむとすることであります、道府縣の獨立税目を擴張致しました結果、三收益税以外の獨立税の税收入も相當の額に上ることになつた譯であります、從ひまして從前のやうに、三收益税のみを以て課税力を算定し、それだけで課税力を標準とする分與税分與額の算定基準とすることは、穩當ではなくなつたのであります、併し三收益税以外の獨立税は、三收益税程普遍的に存在するものではありませぬし、賦課率は概ね團體に一任されて居る譯でありますので、是等の獨立税を三收益税と同じウエイトを以て分與基準に用ひることも適當ではありませぬ、從つて三收益税と三收益税以外の普通税とは別個の分與基準として採用することと致したのであります、而してそれぞれの道府縣分與税總額に對する割合は、三收益税を用ひて分與する額は原則としては百分の四十五、其の他の普通税を用ひて分與する額は百分の五と致しましたが、是は兩者の税額の割合を基準として若干三收益税の方にウエイトを付けて定めることと致したからであります、尚、法定外獨立税は全く團體の特殊な事情に依つて設定されるものでありますし、住民税は團體の規模に應じて與へられて居る財源でもありますので、此の兩者は分與基準の算定からは除外することと致して居るのであります、其の二は、分與税分與額の制限基準を改正せむとすることであります、課税力を標準とする分與基準を追加致しましたと同樣の理由に依りまして、三收益税のみならず住民税と法定外獨立税以外の普通税の全體を見て、それと分與税分與額との合算額の人口一人當りが全道府縣のそれより著しく高い團體には、分與税の分與額を制限することに致したのであります、改正の第三は、市町村分與税に關する事項でありまして、其の一は、市町村分與税を大都市分與税、都市分與税、町村分與税の三ブロツクに分割する際、竝に大都市分與税、都市分與税及び町村分與税を各大都市、都市、町村に分與する際、課税力を標準として分割又は分與する基準を一種類追加せむとすることであります、其の課税力には三收益税附加税、住民税及び法定外獨立税及び同附加税以外の普通税を用ひること、其の總額は市町村分與税の百分の五とすること、及びそれ等の事由は、何れも道府縣分與税に付て申述べたと同じであります、其の二は、市町村分與税を三ブロツクに分割する際も、課税力の著しく高いブロツクには、分與税の分與額を制限することとせむとすることであります、此の度獨立税目を多數追加致しましたが、其の中には地域的に相當偏在すると考えられるものもありますので、市町村分與税を三ブロツクへ分割する際にも、或程度の制限規定を設けて置きませぬと、大都市などで獨立税の收入が多いのに、分與税の分與額も相當多く、不必要に澤山の財源が集中すると云ふことになる虞もありまするからであります、其の三は、分與税分與額の制限基準を改正せむとすることでありますが 其の内容は、道府縣分與税に付て申述べたと同樣であります、以上地方税法の一部を改正する法律案及び地方分與税法を改正する法律案の概要に付て御説明申上げた次第であります、何卒宜しく御審議御願ひ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=4
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005・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) それでは是から質問に入ることに致しますが、時間が餘りないのでありますから、各税どれでも御隨意に御質問をして戴くと云ふことにしては如何でせうか
「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=5
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006・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) それでは、委員會に付託されて居る法案に付きまして、どれからでも御質問を願ひたいと思ひます、尚總括的の御質問があれば、無論宜しいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=6
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007・片岡直方
○片岡直方君 先程も委員長から御注意がありまして、切迫して居るから成るたけ短くやれと云ふことでありますから、出來るだけ短くやる積りであります、エツセンスだけ御質問しますから、御許しを願ひたいのでありますが、一番始めに御質問したいことは、今年の歳入が一千百四十五億、其の中で租税が六百八十七億、斯う云ふことであります、昨年の租税の收入から較べると、非常な大きな額になつて居りまして、昨年は百五十一億と、斯う云ふことになつて居るから、差引五百三十六億の大きな増加になつて居る、是はまあ只今御説明の通り直接税、間接税の大きな増收と云ふのが實現する、斯う云ふ御見込であると思ふのであります、是が其の財政經濟にどう云ふ影響を及ぼすかと云ふ點に付て御伺ひしたいのであります、大藏大臣の御説明に依れば、本年度は租税收入と云ふことに付て健全財政で行く、從つて四十八億だけ公債を發行すると云ふ、斯う云ふ御説明で、一應さう云ふことになるのでありますが、併し一方に於て鐵道の運賃を上げるとか、郵便料金を上げるとか、其の他煙草の値を上げ、官業の收入を上げると云ふやうなことで、まあ私が考へますのに、果して是だけ國民に税を掛けられて、是だけの負擔力があるかどうかと云ふ點は、まあ議論は分れると思ひますが、相當に大きな問題と思ふのであります、まあ去年でも國民が生活出來ぬと云ふので、段段と窮乏になつて來て、官界方面でも待遇改善の問題が起りまして、官吏の待遇改善の要求が出て、それぞれ御考慮になつたやうな次第であります、結局斯う云ふ問題が起るのぢやないか、と斯う云ふ風に思はれます、でありますから、一應是で辻褄が合つたやうなことになつて居るのでありまするけれども、どうも私の考では、是ではうまく行かぬのぢやないか、まあ議論であるかどうかは知りませぬが、さう思ひます、さうして結局追加豫算が出るのぢやないかと云ふやうな風に懸念されるのであります、結局さう云ふ點からインフレの惡循環になつて行くやうな氣が致します、此の點を御伺ひ致したいのであります、それから石炭の問題と關聯して、私も昨年の豫算總會に於きましては、始終機會ある毎に石炭問題に觸れたので、草臥れて質問するだけの勇氣がない位に弱つて居るのであります、實際問題と致しまして石炭は三千萬トン出る見込はないのであります、誠に殘念に思ひますが、現状では石炭が増加して居りませぬ、それはどう云ふ譯かと云ふと、又しても同じことになりまして食糧が足らぬ、斯う云ふことでありまして、誠に私殘念に思ひます、丁度大藏大臣も御出席でありますので、大藏大臣の御持論としても、石炭だけはどうしても重點を置いて、徹底的に増産さすと云ふのであります、又私も石炭問題は生命であつて、一生懸命やつて論議を盡したのでありますが、どうも現状では石炭と云ふものは増産にならぬ、是はどうしたら宜いか、矢張り是は根本的なことに無論なるので、どうするかと言へば、何と申しまするか、機構の改革と云ふことが大變邪魔になつて居ると思ひます、機構の改革ではない、寧ろ現状に於きましては、石炭廳なら石炭廳を一體置くのか、止めるのか能く分らぬのであります、假に石炭廳に重點を置いて資材などを與へる、例へば船も付ける、食糧問題も全部權限を與へる、斯う云ふ風になされれば石炭は立ち所に私は出ると思ひます、どうも管轄が、食糧は農林省、船は運輸省と云ふことになつて居りまして、どうもうまく行かない、是は何遍論議しても同じことを繰返して行くのであります、さう云ふことが石炭問題の大きな癌であるから、企業の再建はなかなか計れない、斯う云ふことになるのであります、それから企業の整理の問題でありますが、段々と企業が整理されて參ります、失業問題も起つて參ります、一方に於て獨占禁止法案、是が實施されますと、あの法案を拜見致しますと誠に恐ろしい法案でありまして、是は其の方の關係筋の何とも思ひまするが、詳しく拜見致しますと、實に恐ろしい法案であります、まだ國民が知りませぬけれども、段々分つて來たら實に戰慄するだらうと思ひます、それは問題外でありますが、さう云ふやうなことでありまして、私は租税を御取りになることは、是で宜い譯で、其の筋とも御了解があつたのだらうと思ふのでありまして、宜いと思ふのでありますが、どうも先程一番初めに申上げた通りに、負擔力がないと思はれて仕樣がないのは、只今申上げた色々な要素がこんがらかつて、容易ならぬことと思ふのであります、さう云ふことでありますので、結局又追加豫算を御出しになると云ふことになるのではないかと云ふ點、是は私非常に懸念に堪へませぬ、從つて失業者も段々殖えて參ります、斯う云ふ風に考へて參りますので、此の點に付きまして一番初めに、豫算との關係になつて參りますが、租税の點からもう一遍繰返して御尋ねするのでありますが、インフレの關係と、來年度の豫算はどう云ふ風になつて行くのか、本年度は追加豫算は出るのか出ないのか、此の點に付て大藏大臣の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=7
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008・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 二十二年度の租税收入が二十一年度に比較しまして著しく殖えて居ると云ふことは、是は事實であります、併し是は所得税等に於きましては明白に税率を下げて居るのでありますし、基礎控除も殖やして居るのですから、國民各自の負擔、納税者の負擔と云ふものは減じて居る譯であります、唯租税の中で著しく割合が殖えます分は酒であります、其の他のものは大體主として、減税になつて居る譯であります、二割からの税收が斯樣に殖えますのは、即ち酒の税が著しく殖えると云ふこと、それから又其の他の所得税等に於きましても實際の國民の金錢所得が著しく昨年二十一年度に比較して殖えて居ると云ふことに依るものであります、でありますから税額は非常に殖えて居るが、國民の負擔が、それに從つて増税が是だけ行はれて居ると見ることは當らないと思ひます、無論酒の値段が上る、其の他に煙草の値段も上るのでありますが、それが口實になつて賃金、俸給の引上と云ふやうなことになつて、賃金、俸給が又どんどん上つて行くと云ふことになるならば、又所謂ピシヤウス・サークルを畫いて行くことになる譯であります、是は今朝の新聞に發表されましたマツカーサー元帥が吉田總理に對する手紙の中にも謳つてあつたと思ひますが、賃金と物價との適切な規正を行ふと云ふことは、是は現在の日本の經濟としては矢張り至上命令だと思ひます、現在給與審議會の方は停頓して居りますが、近く再開するでありませう、官公職員に付ては待遇改善委員會準備會なるものがあつて、既に勞資と言ふとをかしいですが、官公職員の組合の代表者と官廳側とが集つて給與の體系或は水準に付て檢討を加へて居りますので、結果がどうなるかと云ふことはまだ結論には到達致しませぬが、無闇に金錢的の給與を上げて、さうしてそれが物價騰貴の原因となり、更に給與が上る、斯樣なことには致さないやうに、勤勞者、賃金俸給生活者、又雇傭者も努めなければならぬと思ひますし、大體の社會の空氣は其の方向へ大分進んで居る、此の點に付て皆考へ直して居ると私は信じます、まだ全部安定したと云ふ譯には行かぬかも知れませぬけれども、昨年の春あたりに比較しますと、國民全般の考へ方が非常に堅實になつて居ると私は思ひますので、御懸念の如き事態が發生すると云ふことはないものと私は信じて居ります、それで、若しも此の豫算が或は租税收入の負擔を國民がし切れないと云ふのであれば、それは普通歳入が足りなくて國債迄發行しなければならぬと云ふことになる、況や更に追加豫算が起つて來ると云ふことになれば益益左樣なことになるのでありますから、左樣な事態には致さないやうに極力努力する決心であります、又努力致せば左樣な事態は喰ひ止め得るものと考へます、追加豫算のことは本會議に於ける豫算の説明の時にも申上げましたやうに、追加豫算は出さない、斯う云ふ方針で今囘の豫算は編成致しました、但し非常に事態の變化が起るが如きこと、まあ只今の所で豫想されることは賠償でありますとか云ふやうなことに於て、現在豫想する以上に大きな變化がありますれば、是は追加豫算が出ないとは限りませぬが、其の場合には又財政全體に付て根本的に考へ直さなければならぬと存じます、其の場合でも、日本の財政經濟をインフレに導いて賠償が支拂へる譯でありませぬ、又聯合國の志とする所でもありませぬから、私は左樣な事態にはならぬと思ひます、それから石炭に付ての御話がありましたが、是は如何にも喰べ物が無いと云ふことは石炭増産の非常な妨げであります、併し此の三月の初まりに、二月以來懸案でありました炭鑛の勞賃の問題が一應決定致しまして、勞資双方が共同聲明を發して、國民待望の石炭三千萬トンを必ず實現すると云ふことに勞資双方が協力をすると云ふ熱意ある共同聲明を其の際して呉れましたが、其の場合に、石井商工大臣と私は三月十一日でありましたが、双方の代表者に總理官邸に集つて貰ひまして、其所で三月九日に行はれました共同聲明を再確認して貰ひますと同時に、私は前から申して居るのでありますが、無論政府は炭鑛或は農村に對して必要なる物の供給を圖ると云ふことには全力を實は盡して居るのであるけれども、過去の實績を顧みると全力を盡して居りながら實際はなかなか計畫通りにはならないと云ふことは事實でありまして、是は誠に遺憾な次第であるけれども事實であると認めざるを得ない、今後に於ては一層今迄よりも強力にやる積りであるけれども、物のことに付てはどうも實は約束がし切れない、今、日本に於て是だけの物を呉れれば是だけ増産すると云ふことでは、是は増産出來ないのである、であるから、炭鑛の方も現在の有樣でそれで三千萬トン出して貰はなければならない、さう云ふ風な決意を持つて貰ふのでなければ、是は三千萬トン出ない、物は出したいが、それを當てにして貰ひたくないと云ふことで、是も勞資双方が私の言を了承して呉れました、併し其の代り出來るだけのことは政府はやる、第一次にやることは賃金の今度の改定に依りまして、一月から三月迄に於て約十五億圓の支拂が増加する、是は今日の炭鑛には負擔する力がないのでありますから、必然に國家が之を負擔してやらなければならぬ、是は只今の計畫では、今般議會を通過致しました二十二年度の豫算の中から支出する積りでありますが、差詰め其の當時豫算もまだ成立して居りませぬしするので、金融を炭鑛に與へまして、それに依つて賃金を支拂ふことに致しまして、是は色々關係方面との關係もあるのでありますが、兎に角至急にやらなければ、同じ拂ふ金が死んでしまふ、今迄でも幾らも例がある、拂ふものならば拂つてやることでなければ死んでしまひますので、私は私の責任を以て百五十億圓の融資を行ひました、さう云ふことで炭鑛の方面は大分氣分を良くして居て呉れますが、唯、最近食糧の炭鑛に對する供給が確かに良くないと云ふことは、是は事實であります、是も今度は今迄と違つて強力にやります、農林省などの無論世話にはならなければなりませぬけれども、炭鑛は別に取扱つて、寧ろ農林省から離れてでもやる積りであります、商工關係も同樣であります、現地へ特別の者を置いてやらうと決意致して居ります、是は物に付ても色々計畫を立てて、何々はやる、是はやると云ふ計畫はして居りますが、是はわざと發表致しませぬ、是は私は不言實行して行きたい、どうも先に發表して一月も經つてやつたのでは何もならない、端から端からやるものはやる、今直ぐやれますものは、炭鑛の方は新圓拂ひと云ふことも問題になつて居ります、是もなかなか實行が色々な關係で出來ませぬが、今度は十五億圓全部新圓拂ひに致しました、それから直ちに實行致しますことは、炭鑛で勞務者に分けます食物、煙草などは全部封鎖拂ひを許します、普通ならば新圓で拂はなければならぬものでありますけれども、左樣に政府若しくは私の權限でやれることは端からやると云ふので、實は今安定本部長官でなくなりましたから筋違ひでありますが、私も全責任を以てやると云ふことを言つて居りますから、何とかやらなければならぬのでありますが、まあやる積りであります、どうも先のことでありますので、やる積りであつても思ふやうに行かぬことがないとは言へませぬけれども、そんな所で石炭の方は何とか目鼻が付けられるのではないかと思つて居ります、それから獨占禁止法のことで、是は何れ御審議を煩はすのでありますが、非常に恐ろしい法律だと仰しやいましたが、私は恐ろしいとは思つて居りませぬ、是は前から恐ろしがられて居つたのですが、ちつとも恐ろしいとは思つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=8
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009・片岡直方
○片岡直方君 一應了承致しましたが只今の御説明の中で、今度の法人税の超過所得に對する課税は、其の税率を資本金額の一割を超える部分の所得に對して百分の十といふやうに引下げた、斯ういう御話でありますが、一應さう云ふことになつて居りまするが、根本問題に付て御尋ねしたいのでありますが、此の資本金と税金との關係であります、是はどう云ふことかと申しますと、現在の日本の商法、それから税法では、物價の變動……物價が始終變化して參ります、變動して參ります其の變動に依つて資本を修正すると云ふことは認めて居りませぬのであります、ヴアリエーシヨンを認めない、斯う云ふ現状であります、インフレが段段昂進して參つて居る状態に於きまして、物の値打と云ふものの基準になりまする、貨幣價値と云ふものは段々下つて行くから、企業の利益と云ふものはあるけれども、是は所謂本當の利益でなくして名目の利益と云ふことになりはせぬか、實質的には利益は本當に増加して居ない、唯名目だけ利益が増加して居る、斯う云ふことの場合が非常に多いやうに思ふのであります、ですから、形に於て名目的に利益が増大したやうに見えて居つても、それと物價の變動とのバランスが取れなくなつて居るやうに、まあなつて居ると思ふのであります、それが今度の改正案の御趣意であると思ふのでありますが、私は現在の状況が、生産が先程も申した通り實質上うまく參つて居りませぬので、何か只今申した通りに之を救濟する具體的の對策といふものがありやしないか、まあ私案として申上げるならば、物價の指數の變動などを參考に致しまして、固定資産償却率を大幅に引上げるとか、それから又課税されない所の貨幣價値平均の積立金を設置するとか、斯う云つたやうなことが色々あると思ひますが、斯う云ふやうなことを一つ御考になる御考を政府は持つて居られるかどうか、此の點を伺ひたいのであります、それからもう一つ伺ひたいことは、資本金とインフレの關係は只今御尋ね致しましたが、又別の見地で申したいと思ふのでありますが、企業再建整備法に依りまして相當の會社が段々と整備されて參りまして、資本をまあ減少して行く譯でありますが、それから先程も御尋ねしました獨占禁止法其の他で是から資本が増大すると云ふことはちよつと認められぬと思います、さう致しますと、寧ろ壓縮と云ふ形になつて來ると思ふのであります、さうすると、資本と毎年の事業年度の利益金とのパランスが破れて來やしないかと云ふ風に思ひます、そこで法人税の超過所得との關係に付て特例を認めて戴くことは出來ぬだらうか、詰り今度の改正で一割になつて居りますが、斯う云ふバランスが取れて行かぬやうになりますから、之を三割にするとか、或は五割にするとか云ふやうなことが出來ないか、或は税率をもつと引下げることは出來ぬか、是は一つの考へ方でありますが、さう云ふやうなことに付て御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=9
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010・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 斯う云ふ風に貨幣價値が急激に變動するのでありますから、資本金と利益とのアンバランスと云ふことは確かにあり得ると思ひます、現在に於てはそれに對して別段の特別の考慮を拂つて居りませぬが、尚まあさう云ふ問題に付て少し研究して見たいと思います、其の他御説の償却率の問題、貨幣價値に付ての積立金の御話がありましたが、斯う云ふことは只今考へて居りませぬ、考へて居りませぬが、是は一つ眞面目に研究する價値があると思ひます、研究さして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=10
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011・片岡直方
○片岡直方君 是非御研究願ひます、次に密告制度に付て伺ひたいのでございますが、財産税法の出ました時から密告と云ふ制度を執られまして、今度の改正の一聯の税法にも全部密告制度と云ふことになつて居りますが、皆共通のものになつて居りますが、それに付きまして、密告と云ふ問題が、是は已むを得ぬ譯で、致し方ない譯でありますが、もう一遍一つ此の際具體的に御伺ひしたいのでございますが、是も論議が盡されたのでありますが、ちよつと伺ひたいのでありますが、今度の所得税法を法人税、相續税法に於ける今度の密告と云ふのは、どう云ふ程度の具體的の證據があつたら御採用になるのかどうかと云ふやうなこと、唯、人から聞込みだと云つたやうなことだけで効力があるのかどうかと云ふこと、又密告者が聯合して聯合でやります數人があつた時には、報償金は團體に關係した者に矢張り分けて行くのかどうなのかと云ふこと、それから法文を見ますと、官吏又は待遇官吏は自分では報償金は取れないと、斯う云ふ風に書いてありますが、其の官吏の親友とか友人とか言つたやうな者が其の官吏から聽いて密告した場合には、どう云ふ風になるのか、是は相當にあると思ひます、官吏にはさう云ふことはないが、關係者がそれを聽いて密告すると云ふことはあり得ることと思ひます、税務署の方は相當にそんなことがあるやうに聞いて居りますし、ちよつと懸念があるのであります、それから其の場合に官吏若しくは待遇官吏の知り得た事實に基くと云ふのは、どうして知り得るのか、是もちよつと分りませぬ、それから法文に依りますと、五十四條でありましたか、不法行爲と云ふことが書いてありますが、不法行爲の要件と云ふのは、暴行とか脅迫とか、家宅侵入とか、詐欺とか、背任とか、さう云つた刑法上に規定する犯意を有する犯罪行爲を指して稱して居るのかどうか、それから故意、過失なる一般の刑法上の場合も指して居るのかどうか、斯う云ふことも承りたい、それから其の次に伺ひたいのは、今日迄民間で非常に惱んで居りますのは、一株主所謂會社ゴロであります、是がかなり跋扈して參りまして、一時戰爭中はピタツと止つて居つたのでありますが、最近は非常に殖えまして、なかなかうるさくなつたのでありますが、之に相當障碍が付き纏つて居りまして、大藏大臣も御承知と思ひますが、會社ゴロと云ふ者が居りまして、實に民間は困るのでありますが、是は今後こんなことを噛りまして段々と跋扈して參りますと、之を種にして總會で暴露します、之をどう云ふ風に政府は取締ると云ふ御考であるかどうかと云ふやうなこと、之を少し私は神經質に考へるのでありますが、實際豫想することは豫想して知りたいと思ふので、政府の方で茲で御分りになりましたら、さう云ふやうなことも、密告制の内容及び今後の方針と云ふものはどうすると云ふことを具體的に伺ひたいのであります、政府委員で結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=11
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012・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 事務的のことは政府委員から御答へ致させます、大體密告制は此の前財産税の時に始めたので、あの時には政府の中にも異論が非常に多かつたのであります、併し私は結局是はあつた方が宜いと云ふのが、其の當時も申上げたと思ひますけれども、又一部の人達が種々なる風説を立てて、例へば財産税に對しましても、所得税に對しましても、或者は非常に之を隱して居る、それを政府がどうするかと云ふやうなことも、色々の風説を立てられる、是はどうも手の付けようがないので、却て非常に社會的にも不安を増すのでありますが、斯樣な密告制と申しますか、通報制が正式に出來て居りますれば、さう云ふ事實があるのなら、通報をしてはどうか、通報せずに於て唯ぎやあぎやあ騷ぐとはいかんと云ふことは言へるのでありまして、さう云ふ法制のある方が宜いと思ひます、で、事實これからどれほどさう云ふ通報が行はれるか、まだ分らないのでありますが、唯それに依つて納税者を脅迫するとか云ふやうなことがあれば、無論嚴重に處罰する、それから官吏がやつた場合には役に立たぬのみならず、官吏が知り得た事實に基くと云ふのは、是は認定でありますから、特に或る通告があつた、其の通告が一體どうして行はれたかと云ふことの、調べた結果でありますが、それが官吏などから出たものだと云ふことが明かになれば、此の規定は適用しないとか、それから報償金も是は交付することが出來るといふのでありまして、必ずしも交付しなければならぬと云ふ譯でありませぬので、財産税の場合にも左樣にして置いたのでありますが、政府は報償して適當と認めるものに限つて、適當な報償をする、斯樣な建前であります、まあ斯う云ふ如何なる法律でも惡用する者があるのは、世の中の常でありますから、此の條項なども何か惡用する者がないとは限りませぬが、政府としては左樣な惡用の行はれることは、極力之を防止するやうに運用したいと思ひます、會社ゴロなどが斯う云ふ通報をすると云ふのは、大體政府に於て報償はしない方へ屬するのぢやないかと思ひます、もうさう云ふ常習の者がやつたのは、一一取上げると云ふことはない積りであります、尚事務的に何かありましたら政府委員から答へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=12
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013・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 大臣の仰しやられたので大體盡きて居ると思ひます、「唯不法の行爲に因り知り得た事實に基く」、是は不法即ち違法でございまして、民法上、刑法上法律に反すると云ふ位の意味でございます、それから第三者の通報致します場合に、それが現實に合つて居ない場合に、即ち虚僞の通報に對しましては、七十三條で三年以下の懲役、一萬圓以下の罰金、此の罰則が餘りに強過ぎるぢやないかと云ふ、衆議院ではさう云ふ非難がございましたが、或は只今の御話のやうに、會社ゴロとかさう云ふやうな問題を惹起しますので、只今の處、強過ぎる位の罰則で、虚僞の報告に對して取締つて居ると云ふことでございますが、只今の御懸念は先づないと私は信じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=13
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014・片岡直方
○片岡直方君 もう一つ御伺ひしたいのでこざいますが、所得金額の算定に關する損害があつた場合、損失の差引通算と云ふ問題で、是は今度の改正の所得税法の第九條の二項に依りますと、「前項の規定により所得金額を計算する場合において、配當所得又は事業等所得の計算上損失があるときは、これを山林所得及び讓渡所得以外の所得の金額から差し引いて計算する」と云ふことがあります、それから三項に「山林所得の計算上損失があるときは、之を讓渡所得の金額から差し引いて計算し、讓渡所得の計算上損失があるときは、これを山林所得の金額から差し引いて計算する」と云ふ風に規定してあります、詰り所得の計算の差し引き通算と云ふ規定でありますが、此の點でありますが、どう云ふ譯で斯う云ふ風にされたかと云ふこと、もう一つは現行法でも法文上は實際はつきり書いてありませぬけれども、解釋上、運用上通算をして居る事實があるのであります、だからして斯う云ふ風に明記されますと宜いやうであるが、却つて窮屈になりはせぬか、斯う云ふことに私は考へますので、此の點改正された趣旨に付て御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=14
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015・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 此の一時の所得に付きましては大體に於て通算しないと云ふ考へ方でございます、一時の所得の中で、只今申上げましたやうに讓渡所得と山林所得が即ち一時の所得でございます、其の一時の所得の中では差引き通算する、今囘は五割の控除を認めて居ると云ふやうな行き方を致して居ります關係と、實際申しますと、之を區分致しますのは、今囘はまた讓渡所得に付きましては非常に大雜把な規定を致して居ります、前年からの繰越と云ふやうな場合の通算を或る程度考へなくちやならぬと云ふやうな問題もございまするが、只今の所、半額で、他の所得と合せまして、さうして累進税率を適用すると云ふことになりますと其の負擔が非常に輕いのでございまして、殊に山林所得、讓渡所得に付きましても非常に負擔が輕うございます、從ひまして他の所得と通算致しますことは、餘りにも、何と申しますか、そこ迄行く必要はないのぢやないかと云ふやうな考へで、斯う云ふ規定を區別して考へたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=15
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016・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 内務省の方も居られるやうですから、地方税の方のことも御質問願ひたいと思ひます、先程も申上げましたやうに、政府としては是は明日中位に成立しませぬと後の勅令等の手續に非常に支障があると云ふので、若し茲で可決されるものでありますれば、明日午後の本會議にでも上程されるやうにして貰ひたいと云ふ希望があるものでありますから、甚だ時間が遲くなつて御迷惑ですが、御質問がございますれば御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=16
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017・毛利元良
○男爵毛利元良君 二、三御伺致したいと思ひます、最初に所得税の改正でございますが、從來の所得税は勤勞所得税に致しましても、事業所得税に致しましても、前年度の所得に對しまして、今年度の所得の中から税金を拂つて居つたのでありますが、是からは總て豫算課税になりまして、之を自から税金を拂ふと云ふ建前に改正されたのでございますが、此の點に付きまして、現在の經濟状態、國民の經濟から考へまして御伺をしたいのであります、勤勞所得税に對しましては、毎月戴きます俸給其の他の給與と云ふものが分つて居りますので、一年間の豫算も立てられます、併しながら中小商工業を致します者は、此のインフレの時代に於きまして一年間を見透して所得の計算は出來ない、一年間の所得を豫想することがなかなか困難な事情があるのであります、と同時に、又前年度は事業所得は増加所得税で納めまして一月から四月迄の間の増加所得税を此の四月から納める、是が二重になつて參りますそこで一例を申しますと、出版を致す者でありますが、是が紙が配給では殆どないので、闇の紙を買つて出版をするのでありますが、雜誌に致しましても、四月號は出せたが、五月號になると一體紙があるのかどうか、又其の紙が現在よりどの位高くなるのか豫想が付かない、それからさう云ふ材料の値段が此の前より此の次は二倍にも三倍にも騰つた場合に、出來たものをそれだけの割合で高く賣れば宜いぢやないかと云ふことは普通考へますが、それに伴つての購買力が進んで居りませぬので、そんなに高く掛けても品物が賣れない、資本を投じたものの、囘收と云ふものは見込が立たないのでありまして、一年先どころか一月、二月先の豫定も立たない状況にあるのであります、最後の問題は石炭と食糧の問題に總ての問題が逢着するのでありますが、出版に限らず色々の原料、材料と云ふものが所謂三月危機から急に減つて參りました、同時に材料の値段と云ふものが相當な勢で騰つて來る、さう云ふ高い物を買つて果して仕事になるか、又商賣になるかと云ふ懸念が大變あるのでございまして、寧ろ中には、さう云ふものは止めてじつとして居つた方が安全であると云ふ考を持つ業者が大分出て來たのであります、そこで、斯う云ふ點に付きまして、事業所得税と云ふものを相當御見込になつて居られると思ひますが、事業する者は先が分りませぬので、最少限度の所得に對しましての申告はするでありませうが、實際は思ひがけなくもつと所得があつたかも知れませぬが、それは結果に於て分ることで、最初から之を豫想することは出來ない、そこで全體と致しまして、豫算申告の際には最少限度の豫算を立てるのぢやないか、其の爲に豫定の政府の税收入が少くなりはせぬかと云ふことを懸念する者であります、さう云ふことに付きまして當局がどう云ふ風に御考へになつて居られますか伺ひたいのであります、先程石炭の問題が出まして、私も此の所得税法の一部を改正する法律案の委員會で大藏大臣にも御伺ひを申上げました中に、ソ聯のレーニンは、ロシヤの疲弊を救ふ爲に有らゆるものを石炭の増産に打ち込んだ、大藏大臣はあれは實に亂暴な政策であると申されましたが、其の時に御伺ひしたことは、炭坑勞務者に對する勤勞所得税を撤廢されてはどうかと云ふ私の意見でありました、是は其の中の一つであつて、有らゆるものを犧牲にされて……インフレも起きましたが、最後に生産が増強されて來たと云ふのでありまして、現在は總ての物資が石炭の爲に出て來ない、其の爲に中小工業の見込が立たないのでありますが、只今大藏大臣から不言實行で石炭増産に御盡力を戴いて居ると云ふことを伺ひまして、私は非常に心強く思ふのでございます、尚一歩進めまして、炭鑛地區にコロニーと云ふ特別地帶でも御作りになつて、給料の新圓拂ばかりでなく、もつと強力な措置も御執り戴けば、三千萬トンとは行かなくても石炭は相當出廻るのではないかと思ふのであります、石炭の御話が出ましたので、私の所見をちよつと申上げまして、次のことを御伺ひ致します、次は地方税の一部を改正する法律案の中で一つ御伺ひを致したいのであります、是は此の法律案の第七頁にでございますが、「獨立税トシテ課スルコトヲ得ベキ府縣税左ノ如シ」、其の中に十七入湯税と云ふものがございますが、是は錢湯に行きました場合にも、温泉に入つた場合にも税金を御課しになるのでございませうか、御伺ひをしたいのであります、それからもう一つ遊興税の中に遊戯税を含んで居りますかどうかも御伺ひ致したいのであります、遊戯と云ひますのは、麻雀をするとか、或は色々射的とか云ふやうな遊戯的施設をしたものを利用する料金に對する税金でありますが、是は遊興税の中に含むのでございませうか、御伺を致したいのであります、それからもう一つ伺いたいのは、家屋臺帳法案、土地臺帳法案の中に、兩方共「第二章賃貸價格の調査及び決定」の所でありますが、條目が違ひますけれども家屋の臺帳の方では、「賃貸價格は、五年ごとに、一般にこれを改定する」、土地臺帳の方では「賃貸價格は、十年ごとに、一般にこれを改定する」と云ふことが規定されてございます、今日の經濟状態は物價の變動が非常に激しいのでありまして、斯う云ふ賃貸價格が五年とか或は十年とか長い期間に改定をされるのは不適當ではないか、まあ常識的に考へますならば、一年毎に改定をする、尤も物價及び家賃、地代の賃貸價格又は價格がそれ程變化しなければ其の儘据え置くことも出來まするが、規定と致しまして、一年毎に之を改定すると云ふやうな御考はないでございませうか、又五年とか十年とか云ふ期限をお採りになりました理由も伺ひたいと思ひます、以上御伺ひ致しましたことに付きまして簡單に御答辯を戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=17
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018・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 申告納税制度は、最近の財産税以後、初めて日本で採つた制度でありますから、なかなか此の運用は、納税者も又税務官廳の方でも相當の訓練の時間を經ないと色々の支障もあらうかと思ひます、併しそれを心配して居つたらいつになつてもやれませんので、思切つて今囘やることに致したのであります、併し御説のやうに、少く見積つて申告すると云ふことはあり得ることであります、併し是は其の後三箇月毎に訂正される譯でありますから、實際に前に豫想した豫算よりも所得が殖えた場合は殖やすやうに訂正致さなければなりませんし、減つたら減らすやうに訂正しなければなりませぬ、相當煩雜な感はありますけれども、結局翌年の一月末に於て、其の誤差がありましたら、其の誤差だけの納税を余計する、或は納め過ぎたら拂戻しするとか、斯う云ふ風に計算を致す譯であります、それから殊に今のやうに變動が激しい場合には、御説のやうに申告等には手數がかかりますが、同時に是は納税者にとつても政府にとつても非常にいいことであります、今迄は前年度の實收で税をかけると云ふことでありますから、云う云ふ風に物價が高くなる場合には、政府の歳入が物價の騰貴等に伴はない、從つて歳入欠陷がそれだけ出ると云ふことで、前のドイツの例は少し違ひますけれども、ドイツの場合のやうに、いつでも歳入の方がインフレよりも遲れると云ふやうな點を生ずる譯であります、納税者にとつては、是から若し不景氣になつて收入が減る場合には、前年度の多い所得に對して不景氣になつてから莫大な課税をされる、是で今迄隨分苦しんだのでありますから、矢張り變動期には努めて斯う云ふ制度にやるべきものだと考へまして、實情に於てはかなり困難があると思ひましたけれども、斷然採用致した次第であります、それから増加所得税に付ては四月からと云ふ御話でありますが、今年二十二年度豫算に三十億圓の増加所得税の計上がありますが、是は二十一年度の税の尻尾が殘つて居るのであります、四月から増加所得税と云ふものはなくなるのであります、それから土地、家屋の評價の件は、事務的に何か理由がありますれば政府委員から御答へ致しますが、結局理想は年々調査すべきものでありますけれども、此の調査が非常に大變な仕事であつて、費用もかかりますので、迚も年々歳々と云ふ譯には行かぬ、是は研究する餘地はあらうかとも思ひますけれども、今迄の考へ方では出來ない、殊に土地は餘計に大變だと云ふので、それで土地は十年、家屋は五年と云ふ風になつて居るのであります、併し課税を、其の評價に對して、例へば今度の財産税等でもさうでありますが、倍率を掛けて行く、假りに其の評價基準よりも現在の土地の價格がずつと上つて居ると見れば、それに對して倍率を掛けて行く、或は税率を變へると云ふことになりますから、其の五年なり十年の間、税其のものが据置きになると云ふ譯ではございませぬ、それで調節が取れると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=18
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019・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 申告納税の豫算課税に付きまして、もう少し事務的に申上げますと、五月號なら五月號が出て、六月號が出るか出ないか分らない、さう云ふやうな本年の特殊の事情は考へずにやつて戴くことになるのであります、是は豫算課税と申しますが、其の時其の時の、本年度の實績課税と云ふ風に御考へ願つた方が宜いと思ふのでございまして、第一期の申告でありますと、四月末にする場合には一月、二月、三月の實績が分つて居る譯であります、さうして一月、二月、三月の實績で、前年の實情に應じまして季節的變動なんかを織込んで、三箇月の實績から推して、本年度はどの位になるかと云ふことを推定して戴く、是は累進率の關係でございますから、一年間の所得で累進税率を適用して戴く、さうして其の四分の一を税金として納めて戴くのでありまして、是は丁度給與の場合の源泉課税と同じやうな觀念になつて來る譯でございます、其の次に又第二期の申告に於きましては、半年の實績が分つて居る譯でありますので、半年の實績から推して其の一年を豫算して戴く、其の半分を掴む、前の一期の時の推定と、二期の時の推定の差額に對する税金は、二期、三期、最終の申告と此の三期に分けて納めて戴く、其の年の實績課税と云ふ風に御考へ願ひますと、單なる推定と云ふやうな、豫算と云ふやうなものでなしに、もう少し合理的に割合に推定がし易いのではないかと考へられますので補充致した次第であります、又大臣も言はれましたやうに、最終の申告では、翌年の一月末でございますから、其の時には一年の實績がちやんと分つて居る譯であります、それに依つて最終的には調整されると云ふことに相成るのでございます、それから増加所得税に付きましては、是は昨年の所得に對する課税でございます、本年の所得は四月以降に於きまする所得税法に依つて課税になりますので、重複は致して居ないのでございます、又賃貸價格の問題に付きましては大臣の仰しやつた通りでございまするが、現在でも土地の賃貸價格或は家屋の賃貸價格を全國一齊にやりますので、二年間調査に日數を要するのでございます、さう云ふやうな點から申しましても、又不動産でございますので、さう餘り全般的の情勢は變りませぬで、過渡的にはそれ程違つて參りませぬので、又其の中途に例へば家が建つとか何とか云ふ場合には、新に賃貸價格を設定する譯でございますけれども、事務的から申しましても、理窟から申しましても、毎年訂正すると云ふのぢやなしに、十分に現在の制度で賄つて行けるのではないかと考へるのでございます、唯家と土地との關係は、家に付きましては、償却なり何なりが變化が割合早いのでございますから、五年に致して居りますし、土地に付てはさう云ふやうな變化が割合遲いので、十年に致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=19
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020・柏村信雄
○政府委員(柏村信雄君) 地方税關係の御尋に御答へ致します、御尋の入湯税は鑛泉浴場に於ける入湯に對して、入湯額に之を課することに致して居りまして、御質問の一般の錢湯等に對するものは考へて居らない譯であります、それから遊興税でありますが、是は料理店、貸席、カフエー、パー、其の他之に類する場所に於ける遊興であります、遊興と申しますのは、藝妓等を侍らしてする遊興であります、遊興的な飮食、宿泊に對して課する譯であります、御尋ねの遊技場等に入る者に對してのことは考へて居らぬ譯であります、之に付きましては、國税の入場税が課せられるものでありまして、別個のものであります、遊興税としては考へて居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=20
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021・片岡直方
○片岡直方君 私、御許しを戴きましてちよつと御伺ひ致したいのですが、此の法人税の申告納税の期間の問題でありますが、今度急に斯う云ふ風になりまして、仕事をやつて居る者は非常に混亂を來す譯であります、今迄は會社に依りますと、支店を澤山持つて居つて、急に色々の材料が集つて、來ないのであります、それで決算表を作りましても、なかなか時間が掛りまして、今迄は實際問題としては、五百萬以上の會社であれば、決算の確定の日から二箇月以内に申告して且納税しなければならぬ、斯う云ふことになつて居ります、今度の場合では、事業年度終了の日から二箇月以内に申告納税と云ふ風に變更されたのでありますが、是で非常に仕事の方が混亂を來しまして、なかなか急にうまく行かぬのでありますが、斯う云ふ今度のやうな場合だけでも、過渡規定と云ひますか、何か特別の場合を御考へ下さらないとうまく參りませぬのでありますが、此の點を先にちよつと御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=21
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022・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 法人の申告納税を事業年度終了後二箇月間に申告納税させますことに變へましたのは、もう既に先程申上げました個人の申告納税が四期に分けられて、所得の發生時期と税金徴收の時期を近接させると云ふことが特に必要でございますので、個人でさへさう云ふやうな四期に分けてやる、從ひまして法人の場合でございますと、四期と云ふのも餘りでございますので、此の六箇月と云ふことで考へて參つた次第でございます、從來の例から考へますと、大體に於て決算確定致しますのが、普通の法人でありますと、大體に於て二箇月内でございます、又それで確定しないものに付きましては、概算の申告、概定の申告を認めて、さうして其の後で確定した場合に、確定後二十日以内に申告納税して、其の間に調整して戴くと云ふ風になつて居りますので、其の概定が餘り御慣れにならない爲にうまく概定し得ないと云ふやうな場合が起るかと考へるのでありますが、それに付きましては、まあ税務署でさう云ふやうな事情も酌み入れて、其の確定申告の時に調整すれば、加算税とかさう云まやうな問題の時に能く考へて行けば何等支障がないと云ふ風に考へて居るのでございまして、特に本年に限つて特例を認める必要は、私はないと考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=22
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023・片岡直方
○片岡直方君 さうすると、此の法人税の場合と、それから特別法人税の場合がちよつと違つて居りますが、是はどう云ふ意味ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=23
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024・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 特別法人は御承知のやうに、所謂まあインフレなり或はさう云ふやうな關係で特に大きな所得を得て居ると云ふやうな性質のものではございませぬ、又是も半年に納税させると云ふやうな程のこともございませぬ、別に大した理由もないのでございまするが、個人の營業者に對して四期に分納させると云ふ考へ方は、特に營業者に付て必要な譯でございまして、例へば純農家と云ふやうな場合で、所得が年末に片寄つて居ると云ふやうなものに付きましては、特例を認めて居る次第でありまして、それ等と考へ合せましても、特に特別法人に付ては概定申告或は六箇月に區切つて申告させると云ふ程の必要もないと云ふ點から。特に區別した譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=24
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025・片岡直方
○片岡直方君 理論的には一貫性はない譯ですね、別に是でなければ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=25
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026・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 理論的から考へても其の必要がないんぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=26
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027・片岡直方
○片岡直方君 又もう一つ別のことで伺ひたいのでありますけれども、大體富の再分配と云ふことが段々言はれて參つて居るのでありますが、今度問題になつて居ります新興所得階級からどうして巧く税金をとるかと云ふ問題であります、是が累進税率を設けた所以だと斯う云ふ御説明でありますが、新興所得の收入をはつきり把握すると云ふことが、實際問題として、地方の状況を聽きましても、なかなか税務署も困つて居るやうであります、唯此の點は累進税率だけを以て巧く行けるかどうか、私はまだはつきり分らぬのでありますが、此の點に付て御所見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=27
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028・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 累進税率と云ふことと、新興所得階層に對する關係とは別に關係がある譯ではございませぬ、若しさう云ふ關係があると申しまするならば、我々は寧ろ最高税率を引下げて居る、と云ふのは結局所得自體をしつかり捕捉致しませぬと、却つて税率の高いことに依つて、負擔の不均衡を倍加すると云ふ虞もございます、又今度は申告納税でございますので、餘り高い税率で申告させると、殆ど百パーセントとられるやうな申告を出すと云ふことでは、なかなか申告も出しにくいので、それで最高税率を七十五パーセントに致しましたのは、所得の四分の一は殘ると云ふやうな觀測で、七十五パーセントを最高税率に致した譯であります、併し新圓階級に對する所得の捕捉と云ふことに付きましては、御話の通り非常に困難でございます、併し我々としては、勿論闇所得でございますので、それを的確に捕捉すると云ふことは困難でありますが、一つは、結局何等かの形でそれが表現されて參ります、まあ例へて申しますと、直ぐバラツクを建てるなり、不動産を買入れるなり、大抵のことに、此の都市の新圓階級は直ちに何等かの形で商品にするなり、表現された財産になつて現れて參つて居ります、それからもう一つは、此の消費生活に現れて參りますので、是は近所の探聞其の他に依りまして、どの位の消費をして居るかと云ふことから調べましても、此の程度の收入はあるに違ひないと云ふことが推定されるのでございます、それからもう一つは、色々な殊に土建關係其の他に於きましても、所得の契約者との資料から致しまして調査して參りますと、大體に於て全貌が分ると云ふやうな關係に相成つて居りますので、此のまあ三つの方向からやつて參りますと、大體に捕捉される、殊に財産税との關係がございますので、例へば相當の商品を持つて居ると云ふことになりますと、財産税の申告が出て居ないとすれば、結局其の者に其の商品が殖えたのだと云ふことがまあ推定される譯であります、増加所得税なり、今後の所得税なり、或は財産税なり、此の三つの關聯から致しますと、必ずや何所かに申告しなければならぬと云ふ位の種類になつて居りますので、増加所得税或は此の所得税其の他に依つて御覽になれば、私は十分新圓所得階層に對する課税が或程度御滿足戴ける所迄やることに付て、期待して戴いて結構ぢやないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=28
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029・片岡直方
○片岡直方君 有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=29
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030・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) 如何でせうか、只今御質問がなければ此の程度に致しまして、明日午前十時から開會致したらどうかと思ひますが……
〔「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=30
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031・黒田英雄
○委員長(黒田英雄君) それでは明日十時から開會致すことに致します、本日は是で散會致します
午後三時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=31
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032・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 黒田英雄君
副委員長 子爵 綾小路護君
委員
公爵 二條弼基君
侯爵 中山輔親君
子爵 富小路隆直君
子爵 日野西資忠君
白澤保美君
長谷川赳夫君
男爵 長基連君
男爵 鶴殿家勝君
男爵 毛利元良君
男爵 島津忠彦君
小山完吾君
徳田昂平君
片岡直方君
佐藤助九郎君
國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
政府委員
内務政務次官 林連君
内務事務官 柏村信雄君
大藏事務官 前尾繁三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201578X00119470329&spkNum=32
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