1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○請願法案
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委員氏名
委員長 子爵 北小路三郎君
副委員長 男爵 沖貞男君
侯爵 佐竹義榮君
伯爵 南部利英君
子爵 松平銑之助君
子爵 井上勝英君
佐々木惣一君
村上恭一君
渡部信君
男爵 高崎弓彦君
男爵 斯波正夫君
飯沼一省君
松尾國松君
名古屋三吉君
長島銀藏君
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昭和二十二年二月十八日(火曜日)午前十時二十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=0
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001・北小路三郎
○委員長(子爵北小路三郎君) それでは是より委員會を開催致します、開會に先立ちまして一言御挨拶申上げます、此の度私圖らずも委員長に御推擧に預りまして、甚だ不敏なものでごさいますが、皆樣の御協力御援助に依りまして、審議を完うして參りたいと存じます、何卒宜しく御願ひ申上げます、初にちよつと審査のことに付きまして御諮り申上げたいと存じますが、此の審査の順序と方法でございますが、本法案は條文も餘り多くないやうに見られますので、御質疑に際しましては、總括的の御質疑と條文の御質疑とは相並行致しまして進行して參りたいと存じますが、御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=1
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002・北小路三郎
○委員長(子爵北小路三郎君) 御異議ないものと認めます、尚御質疑に當りましては、成るべく簡易に御願ひ致しまして重複のないやうに御願ひ申上げたいと存じます、それでは是より國務大臣の御説明を先づ御伺ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=2
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003・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 請願法案の提案の理由に付きましては、本會議に於きましてあらかた御説明を申上げましたが、尚此の際詳細に亙りまして御參考に供する爲に御説明を申上げたいと存じて居ります、此の法案は、憲法第十六條に依りまして國民に保障されました請願の權利を實現する上に、種々の必要な具體的規定を設けようと致した譯でございます、現行憲法の場合に於きましては、請願に關しまする實體の權利は憲法の中に出來ながらも、現實の請願手續、即ち請願令が出來ましたのは可なり遲れた譯なんでございまするが、結局是は請願と云ふ廣い一般的な國民の權利を尊重する上に於きましては、實體規定が遲れると云ふことは甚だ面白くないことであります、今囘は先づ憲法施行と同時に斯樣な具體的な規定を設けることが適當と斯う考へて居る譯でございます、内容は、先づ第一條に於きまして、此の法律の性質と申しまするか、まあそれに近いやうなことを明かに致しました譯でありますが、第二條と第三條に於きましては、國民が請願をすることに付きましての種々なる手續を示しましたもので、第四條と第五條に於きましては、官公署に提出されました所の請願の取扱ひ方を定めました、最後に第六條に於きましては、何人も、請願をした爲にいかなる差別待遇も受けないと云ふことを定めて居る譯であります、先づ第一に此の法律は請願に關する一般法であると云ふ趣旨を以て規定を致して居ります、從つて恐らくは進行するであらうと考へて居ります所の國會法のやうな別の法律で特に規定を設けて居りまするやうな場合は格別として、左樣な特例がないやうな場合は、總て此の請願法に準據しなければならぬと云ふ風に考へて居りまして、そこで第一條で斯樣な原則的規定であることの趣旨を明かに致して居ります、次に請願の手續に關しましては、先づ第二條にありまするやうに、文書に記載し、請願者の氏名、住所を明かにすると云ふことを示して居りまするが、是は請願者の責任を明かに致しまして、請願に秩序あらしめむとすると云ふことが主眼點である譯であります、現在の請願令に於きましては、記載事項に付きまして色々詳細なことが掲げてありまするけれども、實際の結果から考へまして、左樣な細かい條件を附けますることは必ずしも必要がないのでありまして、之を出來るだけ簡略にすることが、此の請願權と云ふものの内容を尊重することに合體する、斯樣に考へて居ります、次に其の請願書は請願の事項を所管する官公署に之を提出すべきものと云ふのが、第三條に定めて居る所の原則であります、天皇に對する請願書は、是は内閣に提出すべきものと云ふ風になり、第二項に於きまして、請願の事項を所管する官公署が明かでない時は、請願書は之を内閣に提出することが出來ると云ふ風になつて居ります、現行の請願令から申しますると、幾分此の點に於て變つて居る點があるのでありまして、其の顯著なる點は、天皇に對する請願書は之を特別に扱つて居ると云ふやうな規定、それから郵便に依らなければならないと云ふやうな規定が變つて居る譯であります、第二項にあります「請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは」、と云ふ此の規定は、是も亦新しい趣旨の規定でありまするが、實際行政組織が複雜でありまする爲に、一般人民の立場から考へますると、何處に其の所管官廳があるのか容易に分りませぬ、それが分らない爲に請願權が實際に於て制限をされると云ふ虞もありますので、斯樣な包括的な規定を置きまして、そこの便宜の途を圖つた譯であります、次に請願を受けまする官公署に關しましての規定でありまするが、適法に請願を受けました官公署は必ず之を受理を致しまして、誠實に處理しなければならないと云ふ風に規定を致して居ります、或意味から申しますれば、是は餘りにも當然なことであるやうに見られないことはございませぬけれども、併し官公署の側に於きまして、其の請願書の處理に對する心構へをはつきり定めて置く、之に依つて關係者の精神の上に間違ひの起らないやうにすると云ふことが適當であると考へまして特に之を法律上の義務として規定致しました次第であります、次に又萬一請願者が提出先を誤りまして、提出せられました場合、詰り甲の官廳に提出すべき筈のものを其の人の不明其の他の理由に依りまして乙の官署に提出をしたと云ふ場合にどうするかと申しますると、是も亦國民が、斯樣なことに付て知識が不足して居るであらうと云ふことを豫想致しますると、何かそれに對して便宜を與へる規定が必要である譯でございますので、そこで其の受けました官公署は二つの途を採ることが出來る、一つは請願者に正當なる官公署を指し示しまして、請願者の知識を補充すると云ふ方法であります、今一つは正當なる官公署に其の請願書を轉送すると云ふ方法であります、其のやうな二つの途を設けまして、請願の上に便宜の期待せらるるやうに致した譯であります、それから最後に何人も請願をした爲に如何なる差別待遇も受けないと云ふことを規定して居りまするが是は既に日本國憲法第十六條の上に斯樣な條文がある譯でありまして、之を茲に重ねて規定すると云ふことは、一つの見方から申しますれば、重復する規定であると云ふやうな風にも考へられますけれども、併し其のやうな重要なる規定を憲法以外に、請願と云ふことを眼目にして居りまする一つの法律の中に集めて置きまして、國民の認識を深く致しますることは適當であらうと思ひまして、重復であるにも拘らず斯樣な規定を設けました、斯樣な重復の書き方と云ふものは、既に内閣法等に於きましても御審議を經て居りまする事柄であります、以上此の法案は極めて簡單ではございますけれども、新憲法の精神に則りまして、國民の基本的權利の一つたる重大なる請願權の保障に遺憾なきを期した趣旨でありまして、著想の根本は、出來るだけ煩瑣なる規定を省きまして、實質上最も必要にして缺くべからざる規定に留めたと云ふことが一つ、それから國の側と致しましては、其の請願に對しては出來るだけ深切な態度を取るべきものであると云ふ趣旨を明かにする、此の二點が眼目になつて居る次第であります、何分宜しく御審議を御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=3
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004・村上恭一
○村上恭一君 私は本案の審議に入りまする前に、一二の資料を政府から提供されることを希望致します、其の一つは現行の請願令の條文でございます、是は簡單なものでありまして、六法全書などにも採入れてはありますが、皆樣に御配り下すつても宜しうございませぬか、是は殆んど當然のことなんでございます、申上げる迄もなく、政府側で此の位のものは御用意下すつて宜いんぢやないかと思ひます、御願ひ致します、それともう一つは、從來請願の實績がどう云ふ風でありまするか、最初からのことは申しませぬが、最近數年間でも宜しうございます、凡そ請願の件數が何件位あつたか、其の内容を事項に依つて區別すると云ふやうなことが出來ますれば尚結構であります、それから又政府側に於きまして、天皇に對するものもありませうし、請願を受けました側に於てどう云ふ風に處理されましたか、それが分れば尚結構であります、之を要するに既往數年間の請願の實績、此の一覽表のやうなものを作つて御示しになることが出來ますれば誠に結構と思ひます、何等か左樣な内容に於ける請願の實績の關係調査を出來れば至急に御提供願ひたいと思ひます、取敢ず私は此の二つのものを本案の審査に必要な資料として政府から御提出になることを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=4
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005・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 只今の資料の御請求の點でございますが、請願令の條文は早速作りまして御配りを致したいと存じて居ります、それから第二の請願の實績に關しまするものは、帝國議會に關係する請願の實績の數字等は、それは比較的容易に作成が出來ることと存じて居りますが、各官廳の請願は、是は非常に廣汎なものでありまして、之を急に計數に纏めますることは或は困難かと存じて居りますが、早速そちらの方の調査を致しまして、出來るだけ材料を差出したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=5
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006・村上恭一
○村上恭一君 天皇に對するものも御調査を願へれば……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=6
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007・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 是は恐らく私の考から申しますれば、數字等は整理せられて居るものと考へて居りまして、其の出し得る程度に付きまして研究して見ます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=7
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008・渡部信
○渡部信君 質疑に入つて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=8
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009・北小路三郎
○委員長(子爵北小路三郎君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=9
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010・渡部信
○渡部信君 簡單に御伺ひ致しますが、今御話になつた現在の請願令であります、是は今度新しい憲法施行の際に何時でも廢止せられるのでせうか、或は自然消滅になるでせうか、是は調査の參考迄に伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=10
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011・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 現在の請願令は、謂はば切替と申しまするか、此の請願法が施行せらるる其の切替の時に效力を失ふやうに廢止の手續を執りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=11
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012・渡部信
○渡部信君 次に請願の内容に付ては、先程大體現行の請願令には制限があるのですけれども、餘り制限を設けないやうな風にしたと云ふ御話もありましたのですが、例へば憲法の改正の請願が出來るかと云ふ、今日の請願令ではそれを許して居らないのですが、それは何でも改正憲法審議の時に佐々木さんの御質問に對して憲法の改正も出來ることだと云ふ風な金森國務大臣の御話もあつたやうでありますが、どうも此の十六條を見ますると、「法律、命令又は規則の制定、廢止又は改正その他の事項」之に憲法の改正も入ると御解釋になつたやうに承つて居りますが、それが文字としてどうであらうかと云ふ疑問もありまするし、憲法の改正或は此の外に皇位繼承の順序も變更して貰ひたいとか、攝政を免職して貰ひたい、さう云ふ風な色々の事柄、攝政が公務員かどうか能く分りませぬが、公務員なら公務員の罷免と云ふこともありませうけれども、序に攝政が公務員であるかどうかと云ふことの御見解も伺ひたいのですが、尚憲法の改正とか皇位繼承の順序とか、さう云ふやうなことも其の他の事項として請願を御許になる意味なのでせうか、念の爲に伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=12
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013・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 只今の御尋の點は憲法第十六條の請願を爲し得る事項の範圍の問題と云ふ風に了解して居りまするが、是は御説の通り憲法の改正に關する請願が出來るか出來ないかと云ふことは、憲法の案を作りまする時に若干論議を致しました、最初の案に於きましてはさう云ふことが入らないと云ふ風に讀める文字を用ひて居つた時期があると考へて居ります、處がどう考へて見ましても、今後の日本の政治の組方に於きましては苟くも請願と云ふ思想が中味に入り得さうな事柄に付きましては、之に特別な制限を附すると云ふことは面白くないと云ふ意見が強くなりまして、そこで「その他の事項」と云ふ言葉を第十六條の中に加へまして、憲法の改正等も請願が出來ると云ふ風に考へつつ起案を致しました次第でございます、唯左樣に請願は出來るには相違ありませぬけれども、併しそれを驀らに文字に表はしまして憲法の改正の請願が出來ると書きますことも色々な角度から見まして餘り好ましくないと云ふ譯で、表面の文字の中には直接に現れて居ない、斯樣な風に考へて居ります、斯樣な考へ方でありまするが故に、今の攝政其の他のことに關しましても、國として變更し得るやうな範圍の事柄に付きましては固より請願が出來るものと考へて居ります、それから攝政を公務員と考ふるかどうかと云ふやうな點でありまするが、是は非常に公務員と云ふ言葉の使ひ方に付きまして能く注意をしなければならぬ點と考へて居りまするが、或見方からすれば國の公務を擔任せらるると云ふ點に於きましては是は疑ひないと思つて居ります、併し此の憲法が公務員と云ふ言葉の中に嵌めて之を扱つて居るかと云ふことになりますると、此の憲法では左樣な點は公務員と云ふ言葉の具體的の用ひ方の中には入れない趣旨である譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=13
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014・渡部信
○渡部信君 それから序に裁判に關する事、此の判決は不都合であるから斯う云ふ判決を覆して貰ひたい、控訴、上告、再審迄行つて尚いけなかつた判決に對して、あの判決は不都合だからと云ふやうなことも最高裁判所なり何なりに請願が出來る譯でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=14
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015・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 先程申しましたやうに請願と申しまするのは、國の方で爲し得る、詰り右するか左するかと云ふことに付きまして、國の方で爲し得る範圍のことに付て請願をする、それの不可能なることを請願をすると云ふことは意味をなさないものと思つて居ります、そこで裁判に對して請願が出來るかと云ふことは、國の方でそれが或特定人の願に依つて變更することが可能であるかと云ふことに依つて決るものと考へます、裁判と云ふものは裁判に關する所定の手續に依つて變更されて行くものでありまして、それを其の方法に依らずして裁判を現實に變更すると云ふことを願ひ出ましても、それは成立しないことと考へて居ります、ですからさう云ふ場合に實體法規を變更する請願であるとか、或は裁判の進行に關しまする謂はば行政的な範圍に於ての請願、斯う云うことは意味をなしまするけれども、どうも裁判自身に付て具體的な變更を企つることは裁判手續以外では出來ないことではないかと思つて居りますが、斯樣なことは形式的に請願の形は持ち得るにしても、實質的に成立しないものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=15
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016・渡部信
○渡部信君 尚不法な請願と言ひますか、不法な請願とか、或は不穩當な請願と云ふ風なものは許さるべきものでないのでありまするが、今日の請願令は色々不都合な點はあると思ひますけれども、今度は何も書いてないのでありますから、憲法の十二條と十三條に公共の福祉の爲にしなければいけないとか、公共の福祉に反しない限りに於てと云ふ風な制約がありますし、又平穩に請願しなければならないと云ふことがありますから、暴力を用ひて請願すると云ふことはいけないと云ふことは分りますが、さう云ふ不法な、不穩當な、秩序を紊るとか、風俗を紊ると云ふ風な請願をした者があるとしますと……それから今の判決を覆して呉れとか、さう云ふことは行政廳の所管外であるから請願は成立しないと云ふ風な請願を致しました場合に、それはどうなるのでありますか、それを受理しないと云ふか、却下すると云ふことが出來るのですか、どうですか、其の點をちよつと伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=16
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017・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 不法なる請願と云ふことの範圍が遽かに豫言は出來ませぬけれども、起案を致して居りまする考へ方からすれば、平穩なる請願は總て適法である、斯樣に考へて居ります、そこで平穩と云ふことの意味は、解釋問題になりまするけれども、自ら一定の範圍があるのでありまして、單に請願をするのではなくて、之に力、暴力と云ふものを伴つて行ひまするものは、是は許されないことと考へて居ります、憲法は平穩にあらざる請願は許して居りませぬ、此の請願法は憲法十六條に基いて居るのでありまするから、斯樣な方法に依る請願は憲法の保護を受けない、從つて此の施行法たる請願法の保護を受けないと云ふことにならうと思ひます、それだけで結局請願にならないと云ふことにならうと考へます、請願にならない文書をそこに提出したと云ふことになつてそれから先の處置は一般の法規に從つて解決して行くと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=17
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018・渡部信
○渡部信君 一般の法規と仰しやると、却下とか、返すとかと云ふ處置を御執りになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=18
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019・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) それは其の時の自由だと考へます、却下するのも宜しいし、持つて居つて其の儘にして置くと云ふのも宜いと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=19
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020・渡部信
○渡部信君 例へば風俗を害すると云ふ風な請願があつたと致しますれば、さう云ふのは平穩にあらずと御覽になるのでせうか、極く穩かに出すのは出して居るけれども、内容が風俗を紊ると云ふやうな場合にはどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=20
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021・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) さう云ふ風に出しましたのは形式的には平穩でありまするが、其の點に付きましては、請願の規定に該當すると云ふ風に存じて居ります、中味はどう云ふ場合にどうなるかと云ふことは、ちよつと私は今の所は見當が付きませぬけれども、國家に對して或希望を述べると云ふのでありまするから、其の中に容易に風俗を害すると云ふやうなことは起つて來ないものぢやないかと思ひます、請願と云ふことの趣旨から考へまして、さう云ふ場合はちよつと具體的に豫想出來ませぬけれども、唯其の請願を致しまする言葉或は内容の中に、一般の眼から見れば風俗を害すると云ふものもあり得るかとは存じまするけれども、併し是は國家に對してするのでありますから、公衆に披瀝する譯でも何でもございませぬ、非常に正確に見極めが付きませぬけれども、通常の場合であれば、矢張り請願として受理して、其の内容に依つて總て處置することにならうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=21
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022・渡部信
○渡部信君 代理人に依つて請願することも、法定代理人でなく、能力者が他人に頼んで代理人として請願をすると云ふことも許されるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=22
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023・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 是はもう代理でも、まあ代表でもでございますけれども、社會の許して居る風俗に從ひまして代理關係がはつきり致しますれば、是は許すと云ふ態度であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=23
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024・渡部信
○渡部信君 次に此の請願の内容なり、事件と請願との間の期間を設けなくても宜しいか、例へば何十年、何百年前のことでも請願が出來るのでありますか、訴願法に制限がありまするが、是は一般法に時效の規定もあるものでありますから、餘りに古いことを請願されると云ふのは非常に困るのでありますが、其の中此處には制限がありませぬから、それも自由のやうに解釋されますが、實際問題としては矢張りさう云ふ請願はないやうに思ひますが、解釋上もさうなるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=24
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025・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 其の點は御説の通り制限をしない積りでございます、何故かと申しますると、請願と云ふことは、大事な權利ではありますけれども、其の效果が謂はば薄いと云ふことになりまするが、誠實に之を處理しなければならぬと云ふだけでございますので、事柄の範圍を細かく制限を致しますることは矢張り請願の趣旨から見まして、適當ではないと存じまして、憲法十六條も矢張り其の樣な氣持だらうと云ふ譯で、何等制限を付けなかつた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=25
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026・渡部信
○渡部信君 次に直願、直訴と云ひますか、是は現在の請願では矢張りそれは許して居らないのでありますが、天皇に直接に請願をする、今後は憲法の改正に伴ひまして、直訴とか、直願と云ふことは段々減るかと想像せられますけれども、今後も無いとは申せませぬが、是は本人は別に天皇に不敬罪を働く意味ではないのでありますから、必ずしも不敬とは言へませぬが、さう云ふ直訴、直願と云ふ風なことが今後あればどうなるのでありますか、現在はさう云ふ罰則がありますが、さう云つたやうなことをした場合には何か制裁があるのでありますか、其の點を御伺を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=26
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027・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 天皇に對する直訴と云ふ點に付きましては、固より現行の制度に於きまして之を規律致して居りまするが、今囘の請願法に於きましては、第三條にありまするやうに、「天皇に對する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。」と云ふことになつて居りますから、直訴を致しますれば、此の請願法に於ては適法ならざることは、是は一點の疑はございませぬ、從つて左樣な請願と云ふものに付きましては、此の請願法に依る處置をすべき限りでないことは固よりでありまするが、唯行幸の途中を御妨げをしましたり、其の外紛擾を惹き起しまする、斯う云ふものをどう扱ふかと云ふことになりますれば、此の請願法はそれに觸れて居りませぬ、一般の取締と同じ立場になる譯であります、從つて文書を差出す爲に行幸を紊つた場合、其の外の考から行幸を紊りました場合と同じ扱ひにならうと存じて居ります、又現實にそれが如何に處理されて行くかと云ふことは、其の時々の情勢に依りまして、之に當て嵌る一般法規で臨むと云ふ風になります、左樣な法規があるかと云ふことに今度はなりまするけれども、其の點は今の處まだはつきりは致して居りませぬ、不敬罪になりますればそれはなりまするし、公務妨害と云ふことになりますればなりまするし、其の外一般的に處置するより外に別段の考を致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=27
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028・渡部信
○渡部信君 只今の御話のことですが、必ずしも不敬とも言へないやうに思はれますけれども、刑法にも當るかどうか存じませぬが、其の點は別に御研究を願ふことに致したいと存じます、それから第一條の「別に法律の定める場合を除いては、」とありまするが、是は先程御話の通り國會法などに別の規定がありまするが、例へば訴願法と云ふものがありますが、ああ云ふ風なものは、是も憲法の時に多少議論があつたやうに承つて居りますが、訴願のことも請願の一種と御覽になるのでありますか、或は是は訴願法と云ふものも今後どうなるか存じませぬが、其の訴願と請願との關係をちよつと伺ひたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=28
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029・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 請願と訴願と云ふものは同じ種類のものである、請願の中に訴願が含まれて居ると云ふのも、學問的に言へば一つの立派な考へ方であらうと存じて居ります、併し此の憲法の建前から、勿論文字の上にはつきりした證據はございませぬけれども、解釋の上から請願と申しまするのは、唯國家が、或は公務署が誠實に請願の處置をすれば宜いと云ふだけであつて、具體的に明確な法律的な效果を要求しないものと、初から斯う斷定を致して居ります、從つて訴願は初から請願の外に置いたものと解釋して宜からうと存じて居ります、從つて此處では訴願のことは觸れて居ない、斯樣に存じて居ります、訴願に關しますることは、今後法律的に現在の儘ではいけませぬので、適當に法律の變更を致しまして、議會の御協贊を經るやうに今進行中であります、何時になりまするか、それは明言出來ませぬけれども、左樣な態度を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=29
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030・渡部信
○渡部信君 それから此の請願に付ては、是は一般法であると云ふ先程の御話がありましたが、例へば國會法に請願の規定がありまするが、其の國會法の請願に關して規定がない事柄は、此の請願法が一般法として國會に對する請願にも適用されることになるのでせうか、例へば六條なら六條の「いかなる差別待遇も受けない。」と云ふことになつて、あちらにないと云ふ場合に、外の規定もさうでありますが、是が一般法として外の請願に關する特別の法律にも適用されることになるのでせうか、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=30
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031・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 此の法律の書き方から申しますると左樣なことにならうと存じて居ります、實際の立法の道行きを考へて見ますると、國會法に關する請願は、國會法のあの規定が全部を蔽うて居るやうに思つて居ります、けれども理論的に議論を致しますれば、今仰せになつたやうなことにならうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=31
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032・渡部信
○渡部信君 次に第二條に「請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名稱)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。」とありまするが、其の外請願の理由だとか、本人の職業、年齡、其の請願書に年月日を書くとか、署名捺印すると云ふやうなことは一切之に書いてないのですが、從つて全く自由になるものと思ひます、さう云ふことは實際に必要がないのでありませうか、請願の規正上どうであるかと云ふ點を伺ひたい、それから序でに法人は、ここに名稱を掲げてありますが、民法の規定に依りますると、法人は法令の規定に從つて定款又は寄附行爲に依つて定まつた目的の範圍内に於て權利及義務を有すると云ふことになつて居るのですが、是では其の目的遂行に關係ない事柄でも法人が矢張り請願して宜しいのでせうか、其の點を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=32
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033・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 請願書に付きまして色々細かいことを書かせると云ふことは、是は一つの建前でありまして、それに依つて請願と云ふものが秩序整然たる體形の中に納まつて來ると云ふ利益はあらうと存じて居りますけれども、實際の今迄の樣子を見て居りますると、なかなか請願をする場合に事細かに要件を書くと云ふことはないのでありまして、色々なものが缺けて居りまして、族稱が書いてないとか、職業が書いてないとか、年齡が書いてないとか云ふことがもう殆ど、或は過半數にもなるやうなことではなからうかと存じて居ります、さう云ふことを一々今度規則に照し合せまして、良いとか惡いとか批判を致しますることは、結局事が煩瑣になるだけでありまして、實際請願者の目的を達する上から申しますると、大した效果はないもののやうに思つて居ります、萬一さう云ふ詳細なことが知りたい場合は、請願を處理します上に於きまして、實際又調査の内容として、年齡はどうであるか、職業はどうであるか、第二次の調査として調べれば略略目的を達すると思つて居ります、從つてここにはそんな煩瑣な條件を全部省いた譯であります、次に法人の問題になりまするが、請願は結局人間がする、又は人が請願をするのでありまして、人の活動能力を超えた請願をし得ないことは當然だと思つて居ります、でありますから法人が其の法人として爲し能はざる程の請願を致しましても是は請願としての效果のないものでありまして、出來ないことをやつて居ると云ふ風にならうと思つて居ります、理論は正にさうだらうと思つて居りますが、實際はまあ法人がどこ迄働けるかと云ふことは一つ一つ相當面倒な解釋が起りませうけれども、併し其の點は請願と云ふものが割合にぼんやりした效果のものでありまして、大した紛糾もないと思ひまして、さう云ふ所は餘り詳しく書かなかつた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=33
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034・渡部信
○渡部信君 次に文書でしなければいけない、是は實際文書でなければそれこそ請願の規正上はつきりしないで困るのでせうが、唯憲法には何人も平穩に請願する權利を有する、斯う書いてあります、然るに自分は字が書けない爲に平穩に請願したくても出來ないと云ふ者は、代筆させれば宜いと云ふことになるけれども、其のやうな字が出來ない爲に請願が出來ないと云ふことは、何か憲法の精神に反するやうな、實際の規正上は必要かと思ひまするけれども、其の點が憲法の精神上如何であらうかと云ふ疑問を一つ持つのです、序でに電話は無論文書でありませぬが、電報なぞはまあ文書に入るのでせうが、それから盲人の點字だとか云ふやうなもの、それから外國語でも宜しいのか、外國人も請願出來るのでありませうか、それは憲法には「國民」とある場合と、「何人も」とありまして、是は國民であつてもなくても入るのかも知れませぬが、外國語で出しても宜しいか、外國人が外國語で書いても宜しいか、それから圖書などで、圖書などの例はないでありませうけれども、さう云ふものも文書と見るのでありませうか、一番伺ひたいのは、何人も平穩に請願する權利を持つて居る、文書と云ふことを前提として居ないのですが、文章の一丁字のない者は困る、其の點はどう御解釋になるか、或は電報とか、點字とか、外國語とか、圖畫とか云ふやうなものは、所謂文書と見て戴けるかと云ふことを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=34
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035・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 憲法の十六條は非常に簡單に規定したのでありまして、謂はば請願權の骨子となるべき要點だけを規定して居ります、從つて之が現實に行はれて行きます場合に、法律等を以て其の内容を實際動くやうにして行く、詰り枠の中に置きまして、具體的なる制度を編込むと云ふことは一般の場合と同じやうに、或範圍の自由が許されて居るものと考へて居るのであります、詰り施行法律と云ふものとして書き得る事項は相當に幅のあるものと考へて居ります、そこで憲法は國民の願を國家に申出ると云ふ所に重點がありますので、其の願を申出る時に、社會の一般の通念に照しまして妥當と認めらるる方法を選ばせると云ふことは、是は施行法律で出來ることと考へて居ります、さう致しますると、文字其の他の文書に依らなければならない、それとも口頭を以てすることを絶對に許さなければならないなと云ふ問題になつて參りまするけれども、請願の内容たる願望を國家に申出るのに、今の世間の通念から申しますれば、之を口頭の方は制限して、文書に依るべきものであると致しますことは、實質上の權利を害すると云ふことにはならないのであつて、具體的なる形式をここに規律したと云ふ範圍にならうと存じて居ります、其の點に於きまして文書に依ると云ふことは憲法上支障がないと斯樣に考へて居ります、それから外國の請願に關しまする規定等を見ましても、さう一つ一つ全部を見た譯ではありませぬけれども、大體文書に依ると云ふことは殆ど自明の理のやうに扱つて居りまして、日本の制度に於きまして文書に依るものとすることは、實質上此の憲法上の權利を制限したと云ふことには、此の角度から見ましても疑なく許されたことのやうに存じて居るのであります、そこで次に文書と云ふものは、それではどう云ものであるかと云ふ點でありますが、今後色々な新しいケースが起りませうからして、一概に此の際論定は出來ぬと思いますが、要するに形のあるもので以て思想を表明するもの、斯う云ふ風に考へて居りますから、相當廣く取つて宜いものではなからうか、日本の一般通念に於きまして、日本人が思想を表す所の有形的なる姿のもの、斯う理解致しますれば、點字を以てするも宜からうと思ひますし、或は圖畫を非常に多く用ひる、今後圖畫ばかりで意思が表明出來る時になりますれば、圖畫だけでも宜いと思ひます、可なり是は廣く取つて宜いものと思つて居ります、外國文で出した場合どうなるかと云ふことになりますと、是は一つの問題になりまして、日本で扱ふ上に於きましては、外國の文書が一般に認めらるる文書であり得るには、如何なる條件を備へなければならないかと云ふことになり、個々の場合に判定をしなければならぬと考へて居ります、外國人が請願を爲し得るかと云ふ點でありますが、是は憲法の場合に御説明を申上げました、憲法の中で「何人も、」と斯う書いてありまする所は、權利の性質上は誰も持つて居ると考へる權利である、斯う云ふ風に申上げました、併し憲法が保障してある範圍はどうであるかと言へば、日本の憲法が通常支配すると思はれる人々の範圍、言ひ換へますれば外國に於ける外國人迄此の中には、憲法としては含んで居ない、期樣な風に考へて居つたのであります、處で此の請願法になりますとどうなるかと云ふことになりますが、憲法の方ではやかましく「何人も、」と云ふことに若干の制限を認めましたけれども、請願法の方になりますと、請願法は憲法に基く法律であることは固よりでありますけれども、併し或意味に於きましては、又請願法と云ふものが獨立の存在を持つて居りまして、一國の法律として斯樣に文字に書いて意思を表明すれば、何處迄此の意思力が及ぶかと云ふ點に付きましては、憲法の範圍を超えて、稍稍ゆとりのある解釋をしても宜しいと考へて居ります、そこ迄は理論的の問題でありまして、そこで外國人に請願が出來るかと云ふ時に、請願法に依りますと、はつきりした表明がないと云へばないやうなものでありますが、外國人でも請願が出來るものと實は考へて居ります、或は間違いましたら御注意を願いたいと思ひますが、憲法のやうな特殊な深い理論的な背景を持つて居りませぬ一般的な日本國法が何を規律するかと云ふことになりますれば、外國人が出しても、其の請願を之に依つて受理すべきものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=35
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036・渡部信
○渡部信君 皇族に對しては請願が出來るのでありませうか、出來るとすればどう云ふ風に……皇族は一個人のやうでもありますが、皇族に對しての……皇族及び天皇兩方に係つて居る場合には、是は宮内府に出すのかも知れませぬが、それから序に、二つの省あたりに關係して居るやうな事柄は、一つの事柄が二つの省に關係して居る事柄は、二つの省に別々に出すことになりますか、皇族のことと是と……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=36
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037・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 皇族に對しまする考へ方を先づ檢討して見なければなりませぬ、それから更に進みまして、現行制度に於きましての請願令に依つて、天皇に對する請願と云ふ途が認められて居りますが、其の中味を考へて見ますれば、現行の請願令では、何處迄請願を爲し得る所の範圍があるかはちよつと解釋問題になりますが、事實としては、皇室御一家のことに對しまする請願も出來るかの如く一つの解釋が成立すると思はれます、處が此の日本國憲法の下に於きましては、此の請願と云ふのは、公の權力に對する請願、斯樣な風に考へて居りますので、皇族に對する請願が出來るか出來ないかと云ふ問題は、皇族が公の權能を、公の働きを爲し得る立場に於て御持ちになるかどうかと云ふことに依つて決まるものと存じて居ります、皇族の中で、日本の國法體系で、當然に公の權力を行はせられるのは、結局天皇と、それから攝政と、此の二つの場合しかないものと考へて居ります、そこで天皇に對しまする請願は、請願法第三條に依つて解決して居ります、攝政に對する公の意味の請願と云ふものは、茲にはつきりと書いて居りませぬけれども、矢張り第三條の天皇に對する請願として扱はれて行つて宜からうと思ひます、何となれば、其の働きの面に於きまして、代理其のものであるからと存じて居ります、斯う云ふ風に考へて行きますと、此の皇族に對しまする請願は、結局此の皇族が他の別の條件に依つて、例へば國の官廳公署の當事者であると云ふやうな地位を御持ちになつた場合にしか考へられないやうに思ひます、さうしたら一番分け得るものであらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=37
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038・渡部信
○渡部信君 さう致しますと、皇族一個人に對する請願はない、請願權はない公の地位を御持ちにならない場合には……、それから一つの事柄が二つの職名に關係した場合は別々に出すのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=38
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039・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 皇族個人に對する請願は成立しないと考へて居ります、それから請願書が、權能が二つの官廳にある場合には、一つの官廳に請願書を出した場合にはどうかと云ふ問題でありますが、是は實際の扱ひとしては、請願法第四條の規定の適用に依つて、一つの官廳が之を受け、さうして外の官廳と相談して、權限ある官廳が兩方で見ると云ふことにするのが常識であらうと思ひます、併し或は此の四條を特殊の場合に嚴格に適用して、さう云ふ面倒をしないで、請願者に、正式の官公署にもう一つ出せと云ふことを指示することもあると思ひますが、實際は適當な方法を取ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=39
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040・渡部信
○渡部信君 第五條で、「これを受理し誠實に處理しなければならない。」とありますが、是は非常に、民主的と言ふか何と言ふか知りませぬが、此の請願に指令を與へる義務がないのでせうか、誠實なる處理と云ふことが、指令もする義務があるかの如くにも思はれますが、必ずしもさうでないやうに思はれますが、指令を與へるかどうかと云ふことに付て伺いたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=40
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041・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 此の第五條はぼんやりした文字が使つてありまするが、實は之に依りまして請願權の内容を半面から明確にする、左樣な趣旨を盛つて居る譯であります、そこで請願と云ふものを誠實に處理すると云ふ見地から申しますると、希望に應じて、國家として考ふべき總ての點を考へると云ふことが請願の中味であらうと思ひます、そこ迄に中味が確定致しますれば、指令を與へるか與へざるかは、その官廳のその時その時の適當な判斷に依れば宜い譯で、概括的に言へば、指令を與へる義務は含まれて居ないと云ふことにならうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=41
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042・渡部信
○渡部信君 最後に、第六條の規定、是は先程も言はれたやうに、憲法にあるにも拘らず、此の法案にあると云ふことは、外にも係ることがあるから茲にはつきり入れた、斯う仰しやるでせうが、どうも憲法第十六條に此の通りありますので必要ないやうな規定に思はれるばかりでなく、是がある爲に本法第一條に依つて、別に法律に定める場合などは、本法に依らない場合は差別待遇があり得るやうに解釋出來るやうな虞もありまして、昔憲法の時に問題になつたやうに、不利益を受けないと云ふやうに書けばはつきり致しますけれども、同じ文句を書きますると、別に法律に定めた場合には差別待遇があるやうに見えますし、先程大分御趣旨は伺つたのでありますけれども、此の點はまあ如何であらうかと思はれますので、もう一應……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=42
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043・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 成る程御説の通り第六條は第一條の特別の規定と云ふものを豫想して居りますけれども、論理的には左樣な疑が一應非難的批判として起り得る餘地はあらうと存じて居ります、けれども第六條は、是は請願の内容を規定するものではありませぬで、謂はば請願と云ふものの持つて居る一般的性質を表したものでありますが故に、露骨に言へば是があつても請願の中味が特に明かになる譯ではないし、是がなくつたつて請願の中味に特別の變化があるものではない、斯樣な風の規定になる譯であります、斯樣な謂はば無味淡泊に近いやうな、極めて常識的な規定を何の爲に置いたかと云ふ、此の立法の理由になりますると、正しく考へれば、是は實に無味淡泊な規定であるが、世間の或錯覺を持つた人々に對する意味に於きましては、是は決して無味淡泊なる規定でなくして、是あることに依つて初めて請願が世の中に正しく行はれて行くであらう、斯う云ふ風の意味で、理論的には要らない規定であるが、實際的には是があると、請願が公正に行はれて行く價値が多い譯であります、そこで憲法の中にある規定ではありまするけれども、矢張り一遍茲にはつきりして、昔佐倉宗五郎が磔になつた、さういふやうなをかしい思想は徹底的に日本の法律書から掃除されると云ふことを明かにする意味合を持たせたい、斯う云ふ意味で規定した譯であります、もう少し微妙な言葉を使ふと或は意味もあらうかと思ひますけれども、矢張り憲法に斯樣な規定がありますので、それと違つた言葉を使ひますると又別の意味がそこに含まれて來る虞もありまするので、斯樣な極く廣い意味を有つて居る言葉を使つた譯であります、此の差別待遇と云ふことは、當時も御説明申上げましたやうに、稍稍解釋を要する言葉でありますが、結局何等の不利益をも受けないと云ふことに歸著するものと存じて居ります、併し變へると又法律的な精密な區別論の起る危險性もあらうと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=43
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044・渡部信
○渡部信君 色々詳細に有難うございました、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=44
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045・村上恭一
○村上恭一君 續いて私も若干の點に付て質問したいと思ひます、成るべく渡部委員の質問と重復しないやうにする積りでありまするが、時に多少關聯することがありまするのは御許しを願ひたうございます、先づ最初に御尋ねしますることは、此の請願法は先刻金森國務大臣の御説明にもありました通り、憲法第十六條の規定に基くと言ひますか、之に歸屬すると言ひますか、ここから流れ出て來るものと思ひます、其の憲法第十六條は、本條に歸屬する規定の形式が法律であることを要求しては居らぬやうに私には思はれます、果して然りとすれば、其の規定の形式は命令即ち政令で宜しい筈であります、是れ即ち學者の言ふ所の憲法に於ける法律命令共同の範圍に屬するものであると思ひます、而して今囘政府に於て之を政令とせず法律とせられたと云ふことは如何なる理據に基くものでありませうか、此のことは憲法の他の多くの條文に關聯すると思ひます、即ち今申しました法律命令共同の範圍に於ける規定は本則として法律に依るのであるか、必ずしもさうではないのか、そこの區別の立つ所であります、將來憲法の運用の一つの重要なる問題に該當するものと思ひますが、此の點に付きまして政府の御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=45
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046・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 改正憲法の下に於きましては、法律と云ふもので以て苟くも權利義務に關係致しますることの全部を規定すると云ふ建前を採つて居ります、從つて官廳の組織權限も根本的には矢張り法律を以て規定をすると云ふ考を持つて居ります、行政官廳法と云ふものを政府で現に考へて居りまするが、其の考の建前は全く其の線に沿つて居る譯であります、と申しまするのは、國家のどの窓口がどう云ふ道順を以て國民と權利義務に關することを連絡するかと云ふことは、結局多くの場合にそれが國民の權利義務其のものに影響するものでありまして、矢張り法律を以て規定することが正しいもののやうに考へて居ります、其の點を念頭に置きまする時に、此の請願法の中に於きまして官公署の權利等を定めまする點に於きましては議論の餘地は多少殘ります、けれども法律を以てすることが正當であらうと存じて居ります、議論の餘地が多少殘ると申しましたのは、それは行政官廳法等の規定に依りまして權限を幾分政令に任すやうな規定がありと致しますればそれに依つて適法になつて行くと云ふこともありまするけれども、と云ふことを含んだ譯でありますが、結局さう云ふ特殊な委任がない限りは官廳の權限を決めますることは矢張り法律に依ることが適當と思ふのであります、從つて請願法も左樣な規定を法律的に決めることが適當であらうと云ふ風に存じて居ります、尚此の司法行政に亙りまする點に於きましては、裁判所に關しまする點が多いのでありまして、其の點から言へは、矢張り法律を以て決めることが避くべからざる必要ではなからうかと考へて居ります、尚此の文書の色々な記載事項の要件等に付きましては、是は勿論政令を以て規定し得る場面が相當あると思ひまして、一々の眼界はなかなか面倒でありますけれども、兎に角政令事項も含まれて居ります、結局さう云ふものが集つて居りまする時に、妥當な道行きと云ふものは其の重き方の法律を以て決めると云ふことが正當であらうと考へて居る譯であります、其の點の考へ方は、現在の憲法の下に於ける考へ方と本質的に於ては違ひませぬけれども、併し法律に多くのことが規定せられなければならぬと云ふ新しい事態になりますると、自然此の道より外に別な道はないと、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=46
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047・村上恭一
○村上恭一君 只今の御答辯は、簡單に申しますれば、本則として法律を以てすると云ふことは改正憲法の何れかの條文に基くものでありませうか、或はさうではなくして、其の憲法の精神に依ると云ふのでありませうか、即ち改正憲法の文理解釋から出て來ることでありませうか、論解解釋から出て來ることでありませうか、其の點を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=47
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048・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 其の一つの根據は何と云ひますか、論理解釋と云ふ風に考へて宜からうと思ふのであります、憲法の新しい條文第四十一條に於きまして國會は、國の唯一の立法機關であると云ふ言葉がありまするが、此の唯一の立法機關と云ふことを申しまする爲には、どうしても法と云ふものの内容が何であるかと云ふことが決つて居なれけば此の言葉は意味を成しませぬ、そこで斯樣な憲法の建前に法律と云ふことを考へますると、如何なる事項が、若し定むるとすれば、法律を以てしなければならぬと云ふことが理論的に考へられて居なければなりませぬ、そこで此の憲法で考へて居りまする國會に依つて定めなければならぬ法律の範圍と云ふものが此の憲法の前提問題として含まれて居る譯であります、其の前提問題として含まれて居りまする立法の範圍を如何に考ふるかと云ふ問題になつて參ります、そこで此の憲法を御審議願つて居りまする場合に、私は或機會に於て説明を致しましたが、それは貴族院でなかつたかも知れませぬけれども、衆議院の委員會だと確か思つて居りますが、或程度の所見を述べましたが、結局國民の權利義務に關する問題と、其の外に此の國家機關が外部との關係を持つ意味に於て成立つ場合の諸般の組織規定と云ふものは矢張り法律でなければならぬと云ふやうな、斯樣な風の見解を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=48
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049・村上恭一
○村上恭一君 それは簡單に言へば、憲法の精神解釋と云ふことにならうと思ひます、それで了承して置きます、次に此の本法第三條に「官公署」とあります、是は官廳公署と云ふことであらうと思ひます、官廳とは國の政治機關であり、公署とは地方團體の政治機關であると、斯う言うて宜からうかと思ひまする、そこで此の請願の内容たる事項に觸れまするが、此の裁判に付て請願を爲すことが出來るかどうか、是は先刻渡部委員の質問に對して金森國務大臣の御答辯がありましたが、現行の請願令では確か「裁判ニ干預スル事項」とあつたかと思ひますが、之に付ては請願することを得ないとあります、此の法案にはそれはありませぬ、基く所の憲法には「その他の事項」と云ふ廣い表現を用ひて居りますが、そこをすらつと解しますると、裁判に關しても請願を爲すことが出來ると云ふやうに取れます、私は大體に於てそれで宜いのぢやないかと思ひます、刑事なり、民事なりの特定の事件に付きまして、其の事件を成るべく早く審理して貰ひたいとか、或は又證人調や何か鄭重に取扱つて貰ひたいとか、斯う云つたやうな訴訟の取扱ひ方に付ては請願が出來る、是は疑ひないと思ひます、先刻金森國務大臣も此の點は肯定せられたやうに私は聽取りました、そこで一歩進みまして、特定の刑事の事件に付きまして、其の被告人には斯樣な酌量すべき状況がある、係の裁判官に於ては之を了承して貰ひたい、斯う云つたやうなこと、又特定の民事の訴訟に付きましても、原告の主張には無理がある、彼は有名な高利貸で、始終強慾なことをして居るのだ、さう云ふ事情を係の裁判官に於て了承して貰ひたい、斯う云つたやうなこと、それは結局其の刑事被告人を無罪にする、或は其の刑を輕くする、又は其の民事の訴訟に於ては原告の主張を排斥する、斯う云ふ裁判をして欲しいと云ふことになりまして、裁判其のもの、裁判の實質に觸れるものとも言へますが、併し係の裁判官の心證の參考とする爲に斯樣な請願をすることは許して宜いのぢやないか、斯う思ひます、此の點に付きまして重ねて政府の、御見解を伺います、是は第三條の「官公署」と云ふ中に裁判所を含むか含まないかと云ふことに觸れまするが、是は此の條項に於て只今申しました點を質問する次第でございます、併せて其の「官公署」の「公署」に付てでありますが、話が少し細かくなりますけれども、是は一應地方團體の政治機關と云ふ風に解釋したいと思ひます、公法人には地方團體の外に公共組合と稱するものがございます、是は大分私の立場に近寄つたものでありますけれども、併し矢張り公の機關であります、廣い意味に於ては國の政治機關とも言へませう、處で公共組合の機關、之に對して請願をすることが出來るかどうか、此處に謂ふ「官公署」の「公署」の中に公共組合の機關を含むかどうかと云ふことを併せて伺ひたいと思ひます、それから本條に關聯しますから序に申しますが、此處に「内閣」とあります、此處の「内閣」と云ふ言葉は、行政上專門に亙ることではありますが、二つの意味に用ひられて居ります、一つは、内閣總理大臣を長官とする官廳の意味であります、一つは、國務大臣全員を以て構成する合議體の意味であります、此處に謂ふ「内閣」は恐らく前者の、即ち内閣總理大臣を長とする官廳と云ふ意味であらうと思ひますが、是も念の爲に併せて御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=49
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050・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 先づ第一に、「官公署」の中に裁判所が入るかと云ふ點でありまするが、是は裁判所は入ると考へて居ります、何等特別なる制限を設けませぬからして、裁判所も亦官廳の一つである譯であります、次に、裁判に干預する事項の請願が出來るかと云ふことは、先程渡部委員に對しまして御答を申しました通り、國家の機關が、或處置を執り得る範圍に於きましては請願は出來る、從つて裁判に付きましても、其の裁判が何等かそれを聞いて、利用して措置の出來る範圍に付きましては請願は出來ると考へて居ります、でありますから裁判が遲いから急いでくれと云ふ請願は固より成立するものと思ふ譯であります、或は裁判所に對して何等かの參考の意見を述べると云ふならば、それは裁判所が、其の參考意見を聞いて置くと云ふことも請願の中に入らうと思ひます、併し法律的に或方法でなければ動かないものを、法律に依らずして動かしてくれと云ふやうな趣旨を以て居る事項、例へば裁判を法定の手續に依らずして變更して貰ひたいと云ふやうなものになりますると、是は裁判所として爲し能はざる事實法律上不能の範圍に屬しまするが故に、さう云ふ面に於きましては、請願は實質的には働きを持たないものと斯樣な風に考へて居ります、次に、公共組合等も此處に謂ふ所の「公署」の中に入るかと云ふ御尋でありましたが、是は入ると斯樣に考へて居ります、其の理由は御示しになつた所と同じであります、それから「内閣」と云ふ言葉が、第三條の中にあるが、此の「内閣」は、總理大臣を長とする其の官廳を言ふのかと云ふ御尋でありましたが、是は今囘の日本國憲法の規定と致しまして、内閣と云ふものにははつきりした、從來と少し違つたと申しまするか、一種の單一體の内閣と云ふものを正確に考へて居る譯であります、それが天皇の多くの働きに付きまして助言と承認とをすると云ふ風になつて居ります、此の請願法に申しまする「内閣」も亦其の内閣でなければ筋は通りませぬ、從つて此處に考へて居りまする内閣は合議體たる一つの機關を指して居るのでありまして、恐らく今仰せになりましたものとは別の狙ひを持つて居ると存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=50
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051・村上恭一
○村上恭一君 其の内閣と云ふことに付て更に伺ひますが、さうしますると、内閣總理大臣を長とする官廳其のものを、何等かの文字を以て指さし示す必要のある場合もあるに違ひありませぬが、之には如何なる表現を御用ひになる御見込でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=51
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052・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 今仰せになりましたやうに、本當の意味の内閣、それから總理大臣を頭とする所謂總理大臣廳と云ふものとは區別せらるべきものでありまして、今研究致して居りまする行政官廳法の中に於きましても多少それをはつきりさせるやうな工夫を致して居ります、まだ熟成は致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=52
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053・村上恭一
○村上恭一君 先刻御尋ねしました裁判に關する請願でありまするが、金森國務大臣の御答辯に依りますと、要するに國法上不能なる事項に關する請願は成立しないのだ、斯う云ふことに歸著すると思ひまするが、國法上可能なるものかどうかと云ふことは、一般民衆には容易に分ることではないと思ひます、さう云ふことを以て請願が成立するかしないかと云ふことを區別せられますと、請願の實際の效果が可なり傷つけられることになりはせぬかと思ひます、此の點に付きまして重ねて御考慮を煩したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=53
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054・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 實際の點に付きますと、此の請願法には特別に明瞭なる制限を加へて居りませぬ、請願書が平穩に提出せられますれば、其の官廳は之を一應は受取るのであります、受取りまして之を研究し適當な措置をすると云ふことになりますから、實際の點から考へますると、大した支障はないものと思つて居ります、唯理論的に考へますと、今のやうに法律的に不能なことの請願と云ふものが果して有效に成立するかどうかと云ふ問題が起つて來ますが、實際はもう論議すべきことは起らないやうな考で以て、此の規定が何等の制限を設けずに規律せられて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=54
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055・村上恭一
○村上恭一君 只今の御答辯は滿足致しました、どうぞ此の平穩に行はれた請願は、國法上可能な事項を内容とするかどうかと云ふ理論的な檢索は姑く後にして、兎も角も之を受理する、さうして一應考慮には付すると云ふやうに即ち此の請願を受ける側に於て之を深切に取扱ふ、さうして請願者に少くとも精神的の滿足を與へると云ふ所に行政の實際をし向けて戴きたいと云ふことを私は強く強く希望致します、其のことに關聯するのでございますが、第五條に「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠實に處理しなければならない。」この誠實の處理と云ふ所が眼目であります、どう云ふ風に處理せられるか、是は一概には言へない、是は結局誠實と云ふやうなまあ道徳的な表現で一應局を結んで置く外はないのでありませうが、どう云ふ風に官公署に於て此の請願を取扱はれるか、就中考へられる要點は此の請願に對して解答を與へるかどうか、指令と云ひますと其の請願を受理するとか受理しないとか或處分になります、又其の請願に基いて或行政行爲をする、是も一つの處分になりませうが、其の處分を決定し、之を通知する、是が指令、其の指令はむづかしいでありませう、現行の請願令でも請願に對しては指令を與へないと云ふことが殊更規定してある位であります、ですから此の請願に付きまして一々指令を與へることは出來ますまいが、併じ何等かの解答を與へると云ふことが出來れば是は請願者としては、非常な滿足です、自分の請願は顧みられないのではない、兎も角採上げられて考慮に付されて居る、有難いことだと云ふ風に感じまして、請願者に無上の滿足を與へるに違ひありませぬ、さう云ふことは出來ないものでせうか、それが出來れば誠實に處理すると云ふことを忠實に實現することが出來るでありませう、私の質問の要點は、誠實の處理と云ふのはどう云ふ風になさる御積りであるか、就中何等か解答を與へると云ふことを考へて居られるかどうか、其の點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=55
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056・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 請願と云ふものは御説の通り、どうしても今迄の實情を本にして判斷致しますると處理の仕方が不深切になり易いのでありまして、現在の多くの請願の扱ひ方に付きましても、私は一々之を知つて居る譯ではありませぬが、議會を經由しての請願に付きましては相當愼重な考慮が拂はれて居りますけれども、其の外の請願に付きましては、必ずしも徹底した十分な措置は講ぜられて居ない虞があらうと存じて居ります、今囘の憲法の改正に際會致しまして、此の點は請願に付て徹底したる考を持つて名實共に憲法上に保障して居ります所の權利を茲に明かにしなければならない、斯う云ふ風な考から第五條に於きまして誠實に處理すると云ふ所に重點を置いて居る譯であります、處でそれでは一々指令を與ふべきものとするかどうかと云ふことになりますと、是は請願と云ふことの一般的な考へ方と申しまするか、諸國の立法の經過等を見ましても、必ずしも指令を與ふるものではないのでありますし、それから實際の上に於きまして指令を與ふる方が好い結果を齎すか、惡い結果を齎すかと云ふ點に付て疑のある場合も恐らくは存在すると思ひます、そこで此の請願の處理のやり方は、結局事情に最も適切な方法、言ひ換ふれば變化自由と云ふ途でなければならないやうに思つて居ります、今囘此の第五條の誠實に處理すると云ふことの中には、如何にあるべきかと云ふことは、具體的にはまだ決めては居りませぬ、唯理論的に誠實であると云ふことに限られて居りますけれども、今大凡意識して居りまする所は、從來のやうな簡單な方法で處理するのではなくて、行政官廳の中に於きましても、其の處理に付て監督を嚴重にして、それ等の文書が十分目的を表し得るやうに致しまして、各行政官廳の計ひに依りまして其の重要なる請願に付きましては公聽會の如きものを開きまして、其の問題に關聯して審議を盡すと云ふことも致さなければならぬ場合があらうと存じまするし、又或時期を決めまして定期的に請願受理の状況を發表すると云ふやうな方法も、場合に依つては用ひて宜いのではなからうかと云ふやうに研究致して居ります、個々の場合に、請願者に何か通知を出すかどうかと云う問題になりますと、適當なる裁量の下に、向ふに事實上答が出るやうな風にして行きたい、斯う存じては居りまするけれども、事柄が複雜でありまするので必ずさうするとは申し切れないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=56
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057・村上恭一
○村上恭一君 只今の御答辯で大體滿足致しました、個々の請願に對して何等かの通知を與へるかどうか、是は其の請願の件數の多少にも依りませうし、請願が殺倒すると云ふやうな場合には一々の通知も發し兼ねると云ふこともあらうかと考へられまするが、成るべくは請願者に對しては何等かの通知を與へると云ふことが宜くはなからうか、公聽會も結構です、又或機會に纏めて告示すると云ふやうなことも結構でありまするが、個々の請願者に對して何等かの通知を與へると云ふことが極めて適切でありはせぬかと思ひまする、是は更に當局に於て御考慮を願ひたいと思ひます、尚私他の機會に發言したいことも考へて居りまするが、只今質問しますることは一應是で打切つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=57
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058・佐々木惣一
○佐々木惣一君 私も請願に付て多少論點を持つて居りまするけれども、色色今御兩君の御質問、それから之に對する國務大臣の御答の中に私の御尋したいやうなことも入つて居りますから止めて置きまして、應答を聽いた中で大體私自身の考は、此の請願法の解釋に關する是は金森國務大臣の御説明に私は大體同じやうな考を持つて居りますが、唯一つちよつと御尋して見たいのですが、今便宜上具體的に御伺して見たいと思ひますのは、例へば裁判の或繋屬中の事件に付て、此の被告は無罪にして貰ひたいとか、或は又あの民事の時にはこちらの方に勝たして貰ひたいと云ふやうな、此の人間が惡い人間だから是は止めて、此の人間の言ふ方が正しいのだと云ふやうな、そんな請願は出來ますでせうか、是は今具體的に申上げたのは、今の御兩君と國務大臣との應答の間に、ちよつとさう云ふ風に具體的の例で申上げた方が宜いやうに思ひまして、實は現行法では御存じのやうに裁判に干預することを得ず、干預することの請願が出來ないと云ふことになつて居ります、干預と云ふのは、裁判に關すると云ふやうな意味ぢやない、裁判と云ふものを、今の國務大臣の仰しやつた裁判所が詰り自己の權限に屬する範圍、即ち裁判所で判決を下すと云ふこと、ですから、其の事項としては矢張り權限に屬するのですが、併しそれに干預すると云ふのは、それを請願に依つて動かすと云ふやうなことを要求する請願は出來ないと云ふ風に、まあ是迄解釋して居るのです、それは國務大臣の仰しやつたやうに、既に判決があつた場合に、其の判決を覆すと云ふやうな、さう云ふことの出來ないのは、是はもう法律上裁判官の機關の權限に依らなければ出來ませぬのですが、併しさうではなしに、或る判決にほ是は一つこちらの方を勝たして呉れとか、こちらを無罪にして貰ひたいと云ふやうな、さう云ふことを、それを「裁判ニ干預スル」、斯う云ふ風に現行の請願例の解釋ではさうなつて居る、それは、或る、裁判が下つた時に、それを更に變更をして行くと云ふやうなことも出來ないことは、是は當然請願令の規定で出來ないのではない、それは裁判と云ふものの性質上出來ないのです、ですからそれは問題ないのですが、そこで私共の考ます所に依れば、同じく國家機關の行動に於きまして、行政機關と裁判機關とは非常に國家の考へる所が違ふ、即ち裁判機關に於きましては、其の權限行使に付て非常に獨立性を要求して居る、現行法ではですよ、其の獨立性たるや他の機關からの獨立、行政機關とかそれから又或は裁判組織に於きましても下級裁判所に對して上級裁判所と雖も指圖することが出來ない、さう云ふ相互間の獨立性を要求して居ります、併し他に一般國民とか輿論とか云ふものからも獨立性であつて、實に裁判機關と云ふものが自己の良心のみに左右されるのであつて、それ以外のものには一切左右されないと云ふことから、所謂國民の意思、民衆と云ふやうなものに依つて動かされないと云ふやうなことは、斯う云ふことを確立する爲にああ云ふ規定がある、斯う云ふ風に立法の趣旨を考へて居る譯でありますが、さう云ふ點がどう云ふ風になりませうか、先刻來伺つて居りました御質問や御答辯では何か二つのことが混同されて居るやうな感じがひよつとするものですから、それでちよつと具體的に例を申上げたのであります、私の趣旨は御分りでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=58
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059・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 分りました、此の裁判に關する請願が出來るか出來ないか、又させないが宜いかどうか、斯う云ふ問題がございまするけれども、大體憲法の十六條が既に其の問題を解決して居りまして、兎に角國民の願ふ所のものが國家の官廳に傳へられて、それが何等かの形に於て役に立ち得るならば斯樣な場面に於ては請願を許しても宜いぢやないか、斯う云ふ廣い意味からして此の十六條の請願權が生れて居るものと思ふ譯であります、從つて裁判に關係する問題に付きましても、兎に角希望する人間の意見を聽くこと迄は構はぬぢやなからうか、聽いたからとて裁判官の正しい考へ方が、それが爲に狂ふことがないからして、それは裁判官を信用して、さう云ふ面に付ても請願を認むることが宜いのではなからうか、法律上不可能なことの請願だけは、是は必然的に成立しないことになるけれども、それ以外のことは聽いた方が宜いぢやないか、斯う云ふ前提に於て此の憲法の十六條も出來て居ると思ひますし、又今囘の請願法も出來て居るのであります、斯う云ふ風に考へて行きまするが、從來發達して居りました司法權の獨立と云ふことに重きを置きまして、色々制度の緻密を圖りました考とは多少違つた方向を取つて居りますから、此の憲法が持つて居る一つの持味と致しまして、國民の意見は何でも國の働きの上に出來るだけ流れ込んで行くやうにしよう、斯う云ふ考へ方を持つて居りますので、今の裁判の途中に於きまして、或事に付て裁判官が尚考へ得る範圍の中のことを請願すると云ふことは、許して置いても宜いと云ふ理窟が立つのぢやなからうか、其の理窟の方を是は採つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=59
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060・佐々木惣一
○佐々木惣一君 能く分りました、私の憂ひますのは今御話のやうなことと、それから御兩君の御話になりましたやうな早く裁判をして呉れとか何とか云ふこととは、事柄の性質が少し違ふやうに思ひますから、それでちよつと御尋したのであります、尚是は立法論にも關しますけれども、併しさう何する程のこともありませぬ、唯問題の論點さへ御分り下さいましたならば結構であります、是で私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=60
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061・飯沼一省
○飯沼一省君 二、三御尋を致したいと思ひます、第一は此の法律には別に施行令若しくは施行規則と云ふやうなものを御考でありませぬか、第二は現在の請願令には十五條から十七條迄種種の規定がありますが、其の中十六條に付ては先程渡部さんの御質問に付て御答辯を伺ひましたが、十五條、十七條等に付ては、斯う云ふものは全部お廢めになる譯でありませうか、其の邊の御考を伺ひたいと思ひます、それから尚先程村上さんから資料の御要求がございましたが、十五、十六、十七條の現行請願令、之を實際に此の條項を働かされた實例と云ふものがあるのでありませうかどうか、若し御分りになりましたならばそれを一つどうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=61
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062・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 此の請願法に於て更に施行令を出すかと云ふ問題でありますが、只今の所では之を以て略略盡きるのでありまして、現在の請願令でもあれに別に施行細則を附けて居る譯でございませぬ、それで略略支障なく動いて居るやうでありますから、まあ是切りで行かうと云ふやうな考で居ります、どうも此の請願と云ふやうなものに細密な規定を設けますと、結局理窟は通つても請願の趣旨には合はぬと云ふことになりますので、簡單な方法を選んで置く必要があるのであります、それから請願に關しまして此の罰則に付てでありますが、矢張り請願と云ふことは非常に國民の權利であると云ふ面を強調して考へて見ますると、之に對して必要な罰則を附けると云ふこともをかしいのでありまして、此の罰則はもつと廣い見地からの行動として定める方が宜からうと思ふ譯であります、それでありますから現行請願令の諸般の罰則に該當するものは今日之を作りませぬで、一般の法規に依つて之を解決すると云ふ趣旨を持つて居ります、今の實例の問題でありまするが、關係して居る人の意見に依りますると、餘り具體的のものは豫想が出來ぬと云ふ風に言つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=62
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063・飯沼一省
○飯沼一省君 御話能く分りましたが、尚もう一點御伺ひ致したいと思ひますのは、天皇に對する請願でございますが、是は日本國憲法の第七條第一號から第十號迄の事項に限られるものでありませうか、或はさうでなく其の他の事柄に付ても天皇に對する請願と云ふものは出來るものであらうかと云ふ點に付て御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=63
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064・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 天皇に關しまする請願が本來此の憲法の規定に依つて出來ると豫想すべきものであるか、或は出來ないと豫想すべきものであるかと云ふことそれ自身が確か貴族院の委員會に於て問題として提供せられた譯でありまして、其の時に私は天皇に對しても請願は出來るのだ、斯う云ふ風に御答を致しました、何故天皇に對して請願が出來るかと云へば、天皇は此の憲法に基きまして國務上の權能を御特になつて居る、既に權能を御持になるとすれば、其處に何等かの形に於て天皇の御意思が働く面があると云ふことの考を持たなければならぬ、是は法律的に見るのと政治的に見るのとで此の答は違ひますけれども、理論的には正に左樣であるべきものと思つて居ります、從つて天皇が此の憲法に依つて理論的に御意思を御用ひになる範圍があるものと云ふ解釋を執りますれば矢張り天皇に對して請願の途を設くることが正當であらうと云ふことで考へて居つた譯であります、其の趣旨が今囘の請願法の中に入つて居ります、そこで天皇に對して請願が出來まするのは、此の憲法に基いて天皇が自己の御意思を關與せしめて權能を御行使になり得る範圍に限ると云ふことになりまして、さう云ふ解釋に依りますと結局六條と七條と云ふことに限定せられる譯と存じて居ります、併し六條と七條の範圍に於きましても、一つ一つの規定を考へて見ると相當政治的に言へば微妙な點を含んで居りまして、個々の請願を爲し得るかなし得ないかと云ふことは實は相當複雜な考を用ひなければならぬこととは存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=64
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065・飯沼一省
○飯沼一省君 さう致しますと、六條七條以外のことに付ては天皇に請願することは出來ない、或は請願してもそれは適法な請願にならぬ、斯う云ふことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=65
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066・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 適法なる請願とならないと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=66
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067・飯沼一省
○飯沼一省君 それから天皇に對する請願は、此の法案に依りますると内閣に之を提出しなければならないと云ふことになつて居りますが、此の内閣に提出と云ふことは先程村上委員からの御質問もあつたやうでありますが、内閣は之をどうなさるのでありませうか此の内閣に提出しなければならないと云ふ言葉が第二項にもあるやうでありますが、此の第二項の「内閣に提出」と云ふことと、第一項の「内閣に提出」と云ふ言葉が同じ言葉なのでありませうか、或は意味が違ふのでありませうか、第一項の方は内閣を經由すると云ふ意味に解釋して宜いのか、或は内閣で其の處理迄なさる、斯う云ふ意味なのでありませうか、其の邊の解釋に付て御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=67
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068・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) 此の第三條の第一項と第二項とに内閣に提出すると云ふ言葉がございます、此の言葉の持つて居る直接の意味に於きまして、是は兩者共全く同じ趣旨であります、併しながら此の規定の奧の方に存在しまする點は、第二條の第一項は天皇に對する請願書でありまするが故に、請願の客體……客體と言いますか、請願を受入れられるべき相手方は天皇でありまして、内閣ではございませぬ、其の意味に於きまして、内閣は何と考へても經由機關であると云ふことに歸著する譯であります、併し經由機關ではあると申しまするけれども、單純なる經由機關ではなくて是は憲法の規定から考へまして、内閣と天皇とが複雜なる組合せの下に第六條第七條の天皇の權能が行はれて行きまするので、それに合せるやうに内閣に於て處理して行かなければならぬ、斯う云ふことにならうと思ひます、之を碎いて申しますれば、此の請願書は天皇に御屆けをしなければならぬ、併しながら之に付きまして、内閣が「助言と承認」と云ふ其の字句に當るだけの働きをしなければならぬ、斯う云ふことになります、是が、現實に處理されて行きます時も、矢張り内閣の助言と承認を基本としての天皇の御働きに依つて處理せられて行くと云ふやうに考へて居ります、唯それが婉曲な所でありますから、第三條の規定にはあつさりと内閣に提出する、斯う云ふ風に書いて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=68
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069・北小路三郎
○委員長(子爵北小路三郎君) 他に御質疑はございませぬか、別に御質疑がなければ今日は此の邊で止めたいと思ひますが如何でございませうか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=69
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070・北小路三郎
○委員長(子爵北小路三郎君) それでは明日は午前十時に開會致します、今日は是にて散會致します
午後零時七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=70
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071・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 子爵 北小路三郎君
副委員長 男爵 沖貞男君
委員
候爵 佐竹義榮君
子爵 松平銑之助君
子爵 井上勝英君
佐々木惣一君
村上恭一君
渡部信君
男爵 高崎弓彦君
男爵 斯波正夫君
飯沼一省君
松尾國松君
名古屋三吉君
長島銀藏君
國務大臣
國務大臣 金森徳次郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009201999X00119470218&spkNum=71
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