1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○地方自治法案
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委員氏名
委員長 男爵 松平外與麿君
副委員長 子爵 藤井兼誼君
侯爵 細川護立君
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 二荒芳徳君
子爵 秋元春朝君
子爵 森俊成君
子爵 青木重夫君
子爵 土屋尹直君
山田三良君
白根竹介君
男爵 三須精一君
男爵 岡俊二君
男爵 紀俊忠君
男爵 斯波正夫君
山崎延吉君
坂田幹太君
松本學君
宮澤俊義君
松尾國松君
磁貝浩君
山隈康君
小山完吾君
長谷川萬次郎君
町村敬貴君
瀬川彌右衞門君
淺井清君
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昭和二十二年三月二十三日(日曜日)
午後二時二十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=0
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001・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 是より地方自治法案の特別委員會を開會致します、開會に先だちまして、ちよつと皆樣方に御諮り致したいと思ひます、付託されました法律案と云ふものは條文に致しまして三百餘條の非常な浩瀚なるものでありますから、之を逐條細密に審議致しますと、相當なる日數を要するやうになりますから、成るべく集團的に審議致しまして、出來るだけ早く法案の結了を見たいと、斯う云ふ考であります、色々な逐條審議を省きまして或は章別其の他の方法を以て審議致したい、其の積りで御審議を願ひたいと云ふことを豫め申上げて置きます、それから内務大臣の御説明でありますが、本會議で非常に御鄭重な御説明を得まして、又更に繰返して御説明を願ひますのは、大體皆さん方御承知でありますから、餘り長きに亙りますから、あの御話の時に衆議院の修正其の他に付ては更に委員會で御説明すると云ふ御話でございましたから、初めの法案に付きましての説明は本會議で御説明をした意味で御了承願ひまして其の御説明を省かれて、それに付きまして細別的の御話を承る、斯う云ふことに致して宜しうございますか、皆さん如何でございますか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=1
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002・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 左樣取計ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=2
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003・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 本法案の提案の理由及びその内容中主要なる事項の概略に付ては、本會議に於て御説明申上げた通りでありまして、相當分量の多いものでございますので、茲に繰返して申上げることを避け、別途御配り致します印刷物に依り御承知を願ふことと致し、此の際は衆議院に於ける修正中の主要な事項に付て御説明を申上げたいと存じます、第一は「地方公共團體」の境界の裁定、又は決定に關する事項でありまして、原案に於きましては、内務大臣又は都道府縣知事の行政處分に依つて之を行ふこととなつて居りますが、事案の性質上、裁判所に於て之を行ふこととせられたのであります、第二は「選擧」に關する事項でありまして、不在者投票の制度を擴充し、不具者に對して投票の自書主義の原則に對する例外を認め、又當選の際には別に當選承諾を必要としないものとする等、選擧の民主化及び合理化の見地より若干の修正が加へられたのであります、第三は「議會」に關する事項であります、議會の議員は、其の任期中は定數に異動があつても解任しないこととし、又町村會に代る町村總會は、町村の任意に依り之を設置することが出來るものとし、其の他議會に於ける選擧の效力に關する異議の決定に對しては、裁判所に出訴することが出來るものとする等の修正が加へられたのであります、第四は「執行機關」に關する事項であります、都道府縣知事及び市町村長直接公選の本旨に鑑み、執行機關が議會に出席するのは、議會より其の要求があつた場合に限るものとし、又是等の者の解職は法律の定める所に依り、別に法律を以て定める彈劾裁判所に罷免の訴追をし、其の判決に依るべきものとする外、市町村長の處分が公益を害する場合に於ける都道府縣知事の取消權を廢止する等、其の地位及び權限の保障が強化せられました外、地方公共團體の長と其の執行機關との關係に付きまして、所謂原案執行權を制限し、原案執行は議會が法令に基く義務費、法令に基き監督官廳の命ずる經費を削除減額した場合に限り之を認め、非常災害の場合及び傳染病豫防の爲必要な經費を再度削除減額した場合は、之を不信任議決と看做すものとし、之に件つて暫定豫算の制度を設くるものとしました、唯議會不成立の場合は監督官廳の指揮を受くることなく、直ちに專決處分をすることが出來るものとし、執行機關と議會との權限の調整を圖ることとせられたのであります、第五は「監督」に關する事項でありまして、地方自治の本旨に鑑み、内務大臣及び都道府縣知事の一般監督權に關する規定を廢止して、監督は各當該規定に基いて行ふものとし、又強制豫算、代執行の制度を廢止し、許可事項を整理する等の修正があつたのであります、以上の外尚細部の點に付若干の修正があり、之に伴ひまして關係のある規定を整理致したのでありますが、此處に一々御説明申上げるのを避け、御質疑に應じ説明申上げることと致したいと存じまするが、是等の衆議院の修正案に對しては、政府としても之を了承して居る次第でありますので、何卒愼重御審議の上、速かに御協贊あらむことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=3
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004・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 大體内務大臣の御説明に依りまして御了承願ひますが、唯此の點を一つ前に承つて置きます、只今御述べになりました衆議院の本法案に對する所の修正の内容の御説明でありますが、審議の便宜上、此の今の衆議院の御説明のことに對する所の御質疑其の他を致しますか、或は全部法案が濟みましてから特殊に取り上げて致しますか、どちらに致しますか、多數の御意見に依つて進みたいと思ひます、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=4
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005・坂田幹太
○坂田幹太君 先づ此の法案に依つて進めて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=5
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006・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 法案に依つて進んで行きますか……承知致しました、それならば大體自治法案の順序に依つて進めたいと思ひますが、便宜上斯う致しませう、自治法案の第一編の第一條から第四條でありますか、「總則」に付て、特に御質疑其の他がございますれば此の際……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=6
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007・坂田幹太
○坂田幹太君 實は甚だ濟まない譯でありますが甚だ大きな法案でまだ眼を通して居りませぬのです、それから實は今朝の内務大臣の御説明の時も外の委員會に出て居りまして、まだ實は提案の説明を讀んで居りませぬけれども、是はゆつくり拜見しようと思ひます、今各章別にずつとおやりになると云ふことですが、其の中に今日大臣の御説明になつたやうな重要な點があるかも知れないけれども、讀む暇がないのですから、甚だをかしなことでありますけれども、斯うずつと、例へば第一編「總則」と云ふ風に御進みになる内に、政府委員の方から此處は斯う云ふことだつたと云ふ御注意を願つたら結構と思ひます、私共の方はまだ讀む暇がないものでありますから発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=7
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008・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 承知致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=8
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009・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 若し斯樣なことが願へれば大變都合が好いと思ひますが、此の法案の原則は、新憲法に依つて、地方自治團體の長は民選にする、それに基いて總ての取扱を民主化すると云ふ趣意のもので、多くは技術的のものであります、それ故に之を取扱ひました專門の政府委員から、質問と云ふよりは、此處は斯うだ、此處は斯うだと云ふて、まあ一應説明することを御許し願つた方が、御了解に便宜と思ひますが、それで委員の皆樣方が御同意下されば、左樣に致してはどうかと私自身は思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=9
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010・坂田幹太
○坂田幹太君 非常に結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=10
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011・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 私自身としては誠に細かしい技術的のことと思ひますが故に、矢張り專門の政府委員に之を大體、第一章は斯うだ、第二章は斯うだ、策三章は斯うだと云ふことを申上げて、御了解を得た方が徹底すると思ひますから、どうかそれで宜かつら、左樣に取計ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=11
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012・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 只今の内務大臣の御意見は御尤もと思ひます、左樣進行致したいと思ひます、御承知願ひます、第一編に付きまして御説明がありましたら……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=12
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013・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) それでは第一編の「總則」に付きまして、特に現在の東京都制、道府縣制、市制、町村制と云ふものに比較致しまして、變更致しまして規定を致しました點を中心と致しまして御説明を申上げます、第一條で矢張り「地方公共團体」と云ふ言葉を使つて居りますが、是は憲法の「地方自治」の章に、矢張り「地方公共團体」と云ふ言葉を使つて居りますので、それを承けて、都道府縣、市町村其の他の所謂地方團體を總て「地方公共團体」と云ふ言葉で申すことに致して居ります、さうして「地方公共團体」には、「普通地方公共團体」「特別地方公共團体」、此の二通りの公共團體の種類を區分致して居ります、「普通地方公共團体は、都道府縣及び市町村とする。」「特別地方公共團体は、特別市、特別區、地方公共團体の組合及び財産區とする。」「特別市」と申しますのは、後程申上げますが、人口五十萬以上の市に付きまして、特別に内務大臣が指定を致しました所謂大都市であります、それから「特別区」は東京都の現在の區であります、之を特に「特別區」と申しまして、大體市と同じやうな權能を認めることに致して居ります、「地方公共團体の組合」と申しますのは、今迄の府縣組合でありますとか、市町村組合と云ふやうな地方公共團體の區を總稱して斯樣に申して居ります、「財産區」と申しますのは、從來から學術上の名稱に財産區と申して居りました、市町村の一部の財産を持つて居ります區でありますが、特にそれを「財産區」と申します、それを一括して之を「特別地方公共團体」斯樣に申して居ります、此の法律の體系と致しましては、第一編が「總則」でありますが、第二編は「普通地方公共團体」と致しまして、都道府縣、市町村に關する事項を規定して居ります、そして第三編が「特別地方公共團体」と云ふ風になつて居りまして、それに更に若干の特例と致しまして、「地方公共團體に關する特例」と云ふものを規定致して居るのであります、左樣な大體の法の構成になつて居ります、第二編が全體の中心でありまして、第一編と第三編は極めて簡單な數箇條を設けるに止まつて居ります、第二條は、團體の權能に關する事項でありまして、大體今迄の府縣制なり市町村制の規定を承けた規定でございます、唯從來、所謂團體に對する國家事務の委任は命令でも宜い、各省大臣の省令でも宜いと云ふことになつて居りましたが、今囘は省令で委任致しますことは、團體の自治性を尊びまする所以でないと考へまして、政令以上の立法手續を以てしなければいけないと云ふやうに致したのであります、唯古いものは、即ち從來からやつて來て居りますものは其の儘で宜いやうに致して居ります、特別地方公共團體の權能は第三編に書いてありますので、此所は唯抽象的に書いてあるのであります、それから第三條は名稱、第四條は「事務所」、是は府縣廳とか、市役所、町村役場と云ふことを抽象的に包括しまして「事務所]と云ふ言葉で表はして居りますが、是等は大體從來の例に從つて、其の位置の變更の方法を規定致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=13
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014・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 引續き第二編に移りまして、矢張り政府委員の御説明をして戴くことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=14
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015・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 第二編の「普通地方公共團體」、第一章は「通則」でありますが、是の第五條は區域に關する規定でありまして、是は孰れも從來の區域を地方團體の區域とする、斯う云ふやうに規定して居るのであります、それから第五條の二項で「都道府縣は、市町村を包括する。」と、斯う規定してありますが、道府縣は市町村の上にあります複合的な團體でありまして、さう云ふ性格が從來からはつきりして居つたのでありますが、都は東京都制と云ふ法律で御承知のやうに、市町村と同じやうな基礎的の團體、即ち都自身が住民を持つと云ふ形になつて居りまして、自分自身の區域を持つ、斯う云ふ形に今迄なつて居つたのであります、處が此の「地方自治法」と云ふ一つの法律に規定を致しますと云ふと、矢張り如何にも都と云ふのが、他の府縣の市町村と同性格の團體であると云ふことは、どうも稍稍こじつけの感がありまして、實際實情に即しないのであります、そこで區なり、市町村、都内の區なり、市町村と云ふものは、矢張り是が基礎的な團體であつて、他の府縣の市町村と同じ性格のものである、都は其の上に立つ所の全體を包括する複合的な團體である、即ち性格として道府縣と同じものであると云ふ風に規定して居るのであります、都が「市町村を包括する」と云ふ風に規定致しましたのが新たに變更する點であります、それから第六條の道府縣の廢置分合、境界變更の規定は府縣制の規定と同じであります、唯財産處分に付きましては、從來は協議と云ふ手續を經て内務大臣が定めると云ふ形になつて居りましたが、先づ必ず協議と云ふ手續を經てからやると云ふ風に致しまして、此の點は自治體の自治性を重んじて居る譯であります、それから第七條の規定は、大體市制、町村制と同じでありまして、市を置くと云ふ場合、或は市の區域に區を置くと云ふやうな場合、或は市の廢置分合に伴ひまして、町村の境界を變更すると云ふやうな場合に於きましては、内務大臣が之を定める、是は從來の規定と同じであります、市制、町村制と同じにした譯であります、町村の廢置分合、又町村の境界變更、是は從來から府縣知事が内務大臣の許可を經てやることに致して居りますので、斯樣に致したのでであります、其の他は從來の規定と同樣であります、第八條は新たに規定した分でありまして、「市を設置し又は町村を市としようとするときは、その地方公共團體は、人口三萬以上を有し、且つ、都市的形態を具えていなければならない。」是が新たな規定であります、是は從來内務省が市制を施行致します基準と致しまして内規的に用意をして居つた點であります、是は今囘は之を法律上明かに致しまして、人口は必ず三萬以上なければならぬ、「都市的形態」と申しますのは、中心市街を成して居ります戸數が全體の戸數の六割なければならぬ、都市的な形態の戸數が全體の戸數の六割なくてはならない、斯う云ふことを從來條件と致して居りましたが、それを抽象的に「都市的形態」と、斯樣に規定致したのであります、其の他は從來と同樣であります、それから第九條は市町村境界に關する爭論でありますが、即ち境界がはつきりしない場合に爭論になります、或は爭論はないが境界がはつきりしないと云ふ場合の規定であります、是は從來と同樣であります、唯此の點に付きましては衆議院の修正がございまして、境界に關する爭論は總て府縣知事が裁定をする、府縣の境界に亙つて左樣な異見が生じました場合には、内務大臣が裁定する、斯う云ふ風になつて居りましたが、之を總て裁判所に持つて行け、斯う云ふやうなことになりまして、裁判所に關係市町村が境界の「確定の訴を提起することができる。」斯樣な風な修正になつて居ります、それから爭論がない場合に於きましては、府縣知事から「裁判所に境界の決定を求めることができる。」と云ふことになつて居ります、境界の決定を求めます場合の手續は、訴訟ではございませぬが、非訟事件手續法の例に依つてすると云ふ風な修正になつて居ります、以上発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=15
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016・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) それから第二章に參ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=16
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017・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 第二章「住民」、是は從來と全く同樣の規定の致し方でありますが、唯細かい點で二、三字句の修正を致してございます、第十條の一番初めの「市町村の區域内に住所を有する者は、當該市町村及びこれを包括する都道府縣の住民」是は唯書き方が違つただけで、内容は同じであります、それから第十二條に、「普通地方公共團體の條例又は規則の制定」とございますが、是は衆議院の修正がございまして、「制定又は改廢を請求する權利を有する。」と云ふやうになつて居ります、是は改正の條例を制定する、或は廢止の條例を制定する、斯う云ふ意味で原案は使つて居るのでありますが、改廢と云ふ意味をはつきり致す爲に、特に斯樣に入れたのであります、それから第十三條に於きましては、舊法では、十三條は解職の請求、市町村の重要な職員の解職請求權でありますが、是は副收入役とか云ふものに付ても解職の請求權を認めましたが、其の點は落しまして、今度は新たに副知事に對する解職請求、それから出納長制度を新たに設け、出納長に對する解職請求、之を認めることに致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=17
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018・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 第三章「條例及び規則」に付て発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=18
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019・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 第三章の第十四條は、書き振りが從來と變つて居りますが、是は「その事務に關し、條例を制定することができる。」斯う書いてありますのは、從來は事務及び住民の權利義務に關する事務は條例に制定することが出來る、併し此の住民の權利義務に關する事務は總て條例と云ふことではありませぬので、規則、即ち十五條で規定をして居ります都道府縣知事とか、市町村長の權限に屬する事務に關する規則を制定致しますが、其の中にも權利義務に關する事項があります、特に十四條に一項だけ權利義務に關することを明記致しますれば、稍稍誤解を生ずる虞がありますので、條例は團體の事務、規則は長の權限に屬する事務と云ふことに區分を致しまして、又制定手續としましては、條例は總て議會の議決を要する規則は總て議會の議決を要しないで、都道府縣知事、市町村長だけでやる、斯樣に致して條例、規則の區分と云ふものを、從來よりも形式的に明確に致しました點が變つて居ります、尚十四條の第二項に於きまして、條例に違反しました者に對しては、法律の定めるところに依つて「刑罰を科することがあるものとする、」と云ふ規定があります、是は今後警察の一部が府縣に委讓になりますとか、其の他府縣の事務の擴充に伴ひまして、矢張り從來の如く條例違反の行爲に對しては一切國家として刑罰を科すると云ふことがないと致しますと、國政事務の處理に遺憾を來す點があると考へられますので、特に「刑罰を科することがあるものとする」と云ふことの原則を明かに致しました、尤も是は斯樣に致しましても、條例自身に刑罰を設けると云ふのではございませぬので、既存法のそれぞれの、例へば食糧管理法なら食糧管理法と云ふものに於きまして、此の點に關する府縣の條例に違反したら幾らの刑罰に處する、斯う云ふことになる譯であります、規則に付ても其の點は同樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=19
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020・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 第四章「選擧」に付きまして、御話を承ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=20
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021・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 第四章「選擧」でありますが、「選擧」の章は最も技術的な章でありまして、而も非常に條文が長くなつて居ります、十七條、十八條は變更ございませぬ、十九條に於きまして、衆議院の修正がございますが、是は被選擧權の年齡の關係でございます、是は被選擧權の「年齡は、選擧の期日によりこれを算定する。」と云ふことを特に衆議院で入れましたが、是は解釋上從來も左樣に扱つて居るのでありますが、それを明確にする爲に、特に加へることに致したのであります、二十條、二十一條、二十二條、此の邊は何れも特別な變更はございませぬ、二十四條と二十五條の規定は、今囘新たに設けました點でございまして、二十四條に於きましては、今後選擧を同時に行ふことを原則と致しまして、選擧の期間に付てやかましい限定を置かないことに致しまして、成るべく選擧は速かに行ふと云ふことにしたのであります、尚議會の議員の選擧に付きましても事前選擧、任期が終つてからやらないで任期が終る前、滿了前三十日内には選擧をやれることに致したのであります、それから第二十五條に於きましては、選擧を同時にやりますことを規定してございます、即ち同じ都道府縣の中の議員の選擧と知事の選擧を一緒にやります規定と、それから更に上下の、都道府縣の選擧と市町村の選擧を一緒にやります此の二つを規定して居ります、唯都道府縣の選擧と市町村の選擧を一緒にやります爲には、特に市町村の方から都道府縣の選擧管理委員會に對して選擧を行ふ必要を生じました場合に、一々連絡を致しませぬと、一諸にやることが出來ませぬので、さう云ふ連絡に關する規定を二十五條の二項に、色々通知するやうに規定してございます、其の爲に其の第二十條の規定は色々細かく規定してございます、それから第二節の「選擧人名簿」でありますが、是は衆議院議員選擧人名簿と補充選擧人名簿に依つて選擧をやると云ふこと、從來と同樣のものであります、唯訴訟の手續が地方裁判所に參りまして、行政裁判所でなくなつた譯であります、それから第三節の「投票」でありますが、是は大体衆議院の場合と同じやうな方式を執つて居ります、唯第三十條に付きまして、此の投票立會人の關係でありますが、是は衆議院で修正になり、即ち候補者がそれぞれ投票の立會人を各各定めて屆出るやうになつて居りますが、是は同じ人を數人の候補者が、自分の立會人として屆け出られると云ふことを規定致しました、さう云ふ修正を致したのであります、是は矢張り同じ政黨から出ました候補者は同じ者を立會人に出來ると云ふことを念の爲に書き入れた譯であります、それから尚其の三十二條に於きましては、一般の投票の方法でありますが、特に其の點に付きましても、修正がありまして、それは身體の故障に依つて自ら候補者の氏名を記載することが出來ない者の投票に付ては、特に政令で特別に規定を設けることにして、政令で特別の投票方法を明かに致しました、即ち兩腕の無いやうな者で氏名を書けないと云ふやうな者に對して、特に投票の方法を認めることに致したのであります、さう云ふ修正があります、それから尚三十七條に於きましては、是は不在者投票の規定でありますが、是は從來職務又は業務の關係で選擧の當日投票が出來ないことに付きまして、不在者投票を認めて居りましたが、それを更に擴充致しまして、病氣の理由に依つて投票に行けないと云ふやうな者に付きましても、不在者投票を認めることに致しました、即ち病院等に長期入院を致して居ります者に付きましては、不在者投票が出來ると云ふやうな規定を新たに設けたのであります、其の他の點は色々細かく規定してありますが、大體同じであります、第四節の「開票」は從來と殆ど同樣であります、第五節の「選擧會」も同樣であります、第六節の「候補者及び當選人」是も大體從來と同樣でありますが、五十四條に於きまして、供託金の額をそれぞれ増額して居ります、即ち都道府縣知事は從來二千圓でありましたものを、五千圓、市長は千圓でありましたのを三千圓、都道府縣の議員は二百圓でありましたのを二千圓、市會議員も二百圓でありましたが、千圓と云ふ風に供託金の額を上げたのであります、是は衆議院、參議院の方が矢張り五千圓となりましたので、それと筈を合せて皆上げたのであります、それから第六十條でありますが、第六十條に當選承諾の規定がございますが、是は此の原案に於きましては、當選人は、當選の告知を受けてから、十日以内に當選の承諾をしなければならぬと云ふことになつて居りました、若し當選人が十日以内に承諾しなければ、當選忌避と云ふやうになつて居りますが、矢張り衆議院に於て修正がありまして、當選承諾を一々しなくても、十日以内に特に當選を辭しようとする人だけが屆出をして、其の他は放つて置けば、告知があつてから十日經てば、當然に當選を承諾したものと見る、斯う云ふ風に修正されました、唯兼職禁止の關係にありますものに付ては、特にさう云ふ議員を兼ねる地位を辭したと云ふ旨の屆出を要することにしまして、其の屆出が十日以内になければ、是は逆に當選を辭したものと見て居ります、官吏に付きましても、當選しましてから、所屬長官の許可を必要としますから、許可を受けた旨の屆出をしないと、是亦當選を辭したことになるのであります、次に第七節は「特別選挙」でありまして、「特別選挙」と云ふ言葉は、新しく使つたのでありますが、六十二條は所謂再選擧の規定であります、即ち當選人が欠けました場合の規定でございますが、是は特に從來は府縣と市町村で規定が違つて居りました、府縣は當選人の不足が、欠員の數と通算して定數の十分の一を超えた場合に再選擧をやる、市の方は其の數が六分の一を超えた場合に再選擧をやるやうになつて居りましたが、之を總て市と同じ原則にして、定數の六分の一を超えるやうな、當選人の不足が欠員を通算してあつた時に、再選擧を行ふことに致したのであります、此の點に付きましては、多少字句の修正がございますが、内容的の修正ではありませぬ、それから六十三條は補缺選擧でありまして、是も今の再擧擧と調子を合せて、十分の一を六分の一に修正して居ります、其の他は大體從來と同じであります、それから六十四條は議員なり當選人が全部なくなつてしまつた場合、或は死亡し、或は選擧無效と云ふやうなことで、結局全部なくなつた場合の再選擧でありまして、是は大體同じであります、六十五條は決戰投票の規定であります、市町村長、府縣知事に付ての規定でありますが、是も大體從來同樣の規定であります、第八節は「爭訟」であります、是は從來は行政裁判所の系統の訴願に依ることになつて居りましたが、行政裁判所がなくなつたので、司法裁判の系統に依ることに致しました、異議の申立は選擧管理委員會にする、市町村の場合は、市町村の選擧管理委員會にして、更に市町村の選擧管理委員會の決定に不服のある者は、更に都道府縣の選擧管理委員會に行く、さうして都道府縣の選擧管理委員會で決めたことに付て異議のある者は、高等裁判所に出訴出來るやうに規定した、此の點が變つて居るだけであります、それから六十八條の一項で、選擧費用を法定の制限額を超えて使用した場合の、當選無效の訴訟を簡單に規定して居りますが、是は市會議員迄で、町村長、町村會議員に付ては、此の規定はありませぬのでしたが、今囘は町村長、町村會議員に付ても、選擧運動の費用を限定してそれを超えた場合は、衆議院と同じやうに、當選無效の訴訟を認めることに致しました、次に第九節の「選擧運動及び罰則」であります、是は大體從來と同樣でありますが今申上げました町村會議員、町村長の方に付ても選擧運動の費用を定めることを含めてあります、第七十三條は罰則の規定であります、尚七十二條に於きまして、府縣知事の選擧に投票所に於ける氏名の掲示と云ふ公營の方法を新しく加へました、從來の公營は選擧公報と、演説會場の二つでありましたが、更に公衆の見易い所に候補者の氏名を掲示することにしたのであります、以上が選擧關係の改正の點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=21
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022・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 第五章をお願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=22
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023・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 第五章は「直接請求」でありますが、殆ど從來と同樣であります、唯七十四條に先程も申上げましたが、條例の制定の請求を選擧人が致します場合に、特に「改廃」の請求が出來ると云ふ、「改廃」と云ふ言葉を衆議院で修正せられて入つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=23
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024・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 第六章を一つ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=24
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025・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 「議会」の章に於きましては、大體國會法の規定に準じて整備した點が多いのであります、議員の定數は從來と同樣であります、唯九十一條の終の方に「議員の定數は、總選擧を行う場合でなければ、之を増減することができない。但し、著しく人口の増減があつた場合において同項の定數以内の數を増減することは、この限りでない。」議員の定數は任期中は増減しないと云ふのが原則であるが、著しく人口の増減があつた場合、即ち町村を新たに市が吸收した場合、或は市の一部分が別に獨立して町になつた、斯う云ふやうな場合に於きましては、新に定數の増加を認めることにしてございますが、此の場合に減を認めることを致しませぬで、總て増加しか認めない、減る方はどうせ一任期間の間であるから、其の間は定數基準より多くても構はないと云ふ衆議院の修正であります、著しく人口の増があつた場合に、同項の定數以内で増加することは差支ない、「減」が「加」と云ふことに修正になつて居ります、それから九十四條は、町村の、或は市の一部が分離を致しましたやうな場合に於きまして、町村會議員の定數が任期中に減少する場合の規定でございます、其の場合に於て欠員が出るとか、其の他色々細かい規定ですが、今の修正と同じ趣旨で、全部九十四條は削除の修正になつて居ります、任期中に於ては定數が減るやうになつても、それは其の儘減らさないで行かうと云ふ譯であります、其の代り九十五條の第一項を九十四條に送りまして、九十五條は第二項が生きることになつて居ります、さう云ふやうな技術的な修正でございます、それから第二節の「権限」に付きましては、大體從來と同樣でございます、唯第九十九條に於きまして、「普通地方公共團体の議會は、當該普通地方公共團体の長に委任された國、他の地方公共團体その他公共團体の事務に關し、當該普通公共團体の長の説明を求め、又はこれに對し意見を述べることができる。」是は國、其の他の所謂委任事務でございますが、之に付從來、議會は全然發言權がございませぬでしたが、今後は議會が長の説明を求めたり、或は之に對し意見を述べることが出來る、國政の民主的運營を圖らうと云ふ譯であります、それから第百條も今囘新たに加へた規定でございまして、大體國會法と同樣で議會の自治制を尊重致しますので、議會が自ら選擧人、其の他の關係人の出頭を求めて調査をする、或は記録の提出を請求すると云ふ權能を認めたのであります、で、さう云ふ請求を議會から受けた場合には、團體其の他の者は、其の求めに應じなければならないと云ふ義務を規定してございます、尤も此の求めに應じなかつた場合の制裁はございませぬが、さう云ふ法律上の精神的な義務を規定した譯であります、それから第三節の「招集及び会期」でありますが、是は從來と同樣であります、それから次に第四節の「議長及び副議長」是は從來と概ね同樣でございますが、唯規定を明かに書いた點が違つて居るだけでございます、第百八條に議長、副議長の辭職の手續が書いてございます、是は現在はつきりして居ないのを明確に規定することにしたのでございます、第五節の「委員会」は、常任委員會と特別委員會、此の二つの制度を新たに規定を致したのでございます、是は地方、殊に府縣の議會に於きましては、稍稍是と類似のものがあるやうでありますが、今囘は大體國會法の規定に從つて常任委員會、特別委員會の制度を規定致したのであります、常任委員會は議會の會期の初めに於て選任をしまして、爾後在任期間中、四年間在任する譯であります、常任委員會は又其の部門毎に、例へば府縣で申しますと、經濟部とか、警察部、教育部と云ふやうに、部門毎に設けることが出來る、さうして必要な調査、議案、陳情等の審査をすると云ふ譯であります、尚常任委員會に於ては公聽會を開いて利害關係を有する者から意見を聽くことが出來る、特別委員會は、大體普通の法案の審査の爲の委員會であります、それから第六節の「会議」の點に於きましては、大體從來の地方制度の規定に從つて規定してございます、第百十八條の議會の選擧手續に付ての異議でありますが、例へば選擧管理委員を議會で選擧すると云ふ場合に、其の投票の效力等に付て異議がある場合には、議會が之を決定することになつて居りますが、其の決定に對して異議のあります場合には、從來は訴願をすることになつて居りましたが、今囘は其の訴願を改めまして、最初から裁判所に出訴する、議會の選擧の投票の效力に付ての決定に付て不服がある者は、直ちに「裁判所に出訴することができる。」と云ふ風に衆議院で修正をせられました、選擧に關することは成るべく當初から裁判所に持つて行つた方が宜い、斯う云ふ趣旨であります、それから第百二十條でありますが、此處も簡單な修正がございます、「普通地方公共團体の議会の議員は、選擧人の個人的指示又は委囑を受けてはならない。」「個人的」と云ふ言葉を加へる修正を衆議院で致して居ります、是は「指示又は委囑」と申すのは、議員の地位を公共的なもの、全團體の代表者と云ふ地位をはつきりしようと云ふ趣旨と、個人的な請託などを受けてはいけないと云ふ趣旨を、兩樣に解釋出來ると思ひますが、此の修正は特に個人的な請託を受けてはいけないと云ふことを、明確にする修正と存じて居ります、それから第百二十二條は知事、市町村長が直接公選になりましたのに伴ふ修正でございまして、議會と知事と云ふものが相對應する立場にありますものでありますならば、丁度アメリカの大統領と國會との關係に於けるが如く、國會は國會で獨自の立場から自主的に審議出來るやうにしなくてはいけないと云ふやうな考へ方で、現在丁度政府と帝國議會との關係のやうに、國務大臣なり政府委員が議會に出て説明致します、さう云ふ仕組になつて居りますものを原則として設ける、さう云ふ風な議會に出掛けて行つて執行機關の側の者が説明をするやうなことはしない、特に議會の方から説明の爲に出席の要求があつた時にのみ知事、市町村長其の他の者が出掛けて行くと、斯う云ふやうに衆議院は修正せられたのであります、是は謂はば大統領制度式の國會と政府との關係を、府縣知事と府縣會との關係に推し及さうと云ふ譯であります、從ひまして自ら出掛けて行つて説明をすると云ふことがありませぬので、書面を以て豫算に關する説明書、其の他の特別の教書と申しますか、説明書を議會に執行機關の方から出すことが出來る、長から出すことが出來る、第二項でさう云ふ趣旨の修正に相成つて居ります、それから第七節の「請願」は新たに今囘規定をされた事項でありまして、議會に獨立的に自主的な地位を認めます關係上、選擧民等から議會に對して獨自の請願が出來る、義會が其の請願のありました場合には、それを長なり其の他の關係の執行機關に送付して、其の「結果の報告を請求することができる」と云ふことを規定して居ります、それから第八節は「議員の辞職及び資格の決定」であります、是は從來と同樣な規定であります、唯其の決定に對する救濟の方法が、從來行政裁判所に行つて居りましたのが、矢張り普通の司法裁判所に行くことになる譯であります、それから第九節、「紀律」でありますが、是は大體國會法の規定に從つて規定を致してございます、特に第百三十一條でありますが、此處で「議員又は第百二十二條第一項の規定による出席者は、議員の注意を喚起することができる。」此の「第百二十二條第一項の規定による出席」と申すのは、所謂國務大臣、政府委員に當る知事其の他の列席者でありますが、是は議場に出席して、「議長の注意を喚起する」と云ふやうな點は之を削除するやうに衆議院で修正せられたのであります、先程の考へ方に即應するものであります、第十節の「懲罰」、是は概ね國會法と同樣の規定でありますが、從來の地方制度に比較致しますると云ふと、新たなる懲罰の方法が加はりました、其の一つは百三十五條の一號の「公開の議場における戒告」、二號の「公開の議場における陳謝」、此の二つと、それから第四號にあります「除名」であります、「一定期間の出席停止」は從來から地方制度にもございました、「戒告」、「陳謝」はさ程の懲罰ではございませぬが、「除名」は今囘新たに認られたものでありますが、今後相當政黨政治が府縣、市町村にも及ぶと致しますると、矢張り議會の運營等に付きましては、相當秩序保持の各種の方法を用意して置く必要があると思ひますので、特に「除名」の制度を新しく認めたのであります、但し除名に付きましては、議員全員の三分の二以上が出席して、さうして其の四分の三以上の者の同意がなければならないと云ふことに致して居ります、第十一節は事務局に關する規定でありまして、「書記長」と云ふ制度を新たに設けました、是は主として府縣を對象に考へて居りますから、市町村では之を置かなくて宜いと云ふ風に規定してございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=25
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026・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 次に第七章の「執行機関」の説明を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=26
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027・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 「執行機関」の章は、地方官官制の規定を併せて規定を致して居ります、是は大體從來の規定と同樣でございますが、是は大臣の提案理由の説明の中にもございました點でございまして、第百四十六條の原案は「内務大臣は、都道府縣知事が著しく不適任であると認めるときは、政令の定めるところにより、公聽會を開いて、これを解職することができる。」と云ふのが原案であります、府縣知事が市町村長を解職する場合も同樣であります、公聽會の組織に付きましては、例へば地方公共團體の代表者でありますとか、地方自治に付て學識、經驗を持つて居ります者とか、或は裁判官と云ふやうな者を、大體十人以内の範圍で構成を致しまして、其の意見を聽いて、それに基いて解職をする、斯う云ふやうな方法を考へて居たのでありますが、矢張り稍稍漠然たる規定であると云ふことから、又裁判官の罷免に付きましては、特に憲法に彈劾裁判所を設けると云ふ規定がございますが、さう云ふ規定との釣合等を考慮致しまして、矢張り「法律で定める彈劾裁判所にその罷免の訴追をする」斯う云ふ風に衆議院の修正が爲されたのであります、知事に付きましても、それと同樣に彈劾裁判所に市町村長の「罷免の訴追をする」、斯う云ふ風に修正をされて居ります、それから第百四十九條の簡單な修正がございますが、それは第七號として、是は大體地方公共團の長の行ふ仕事を列記してございますが、其の中に「前各號に定めるものを除く外、当該普通地方公共團体の事務を執行すること。」と云ふことを長の權限として一枚加へた修正が爲されました、是も事柄を明瞭にしただけであります、それから第百五十條、第百五十一條の規定は、孰れも官制にあります規定を持つて參りましたのでありますが、百五十條は行政官廳法が目下提案されて居りますが、それと稍稍調子を更に揃へた規定をせよと云ふ修正がございました、即ち自治團體の事務に付ては、各省大臣は指揮監督出來ない、國の機關として委任事務を處理します場合に於ては、主務大臣或は府縣知事と云ふものは、それぞれ知事なり市町村長を指揮監督する、斯う云ふ趣旨に百五十條を明瞭に規定をしてございます、さう云ふ修正に相成りました、百五十一條は公益を害する場合に、知事が市町村長とか行政廳の處分を取消すと云ふ規定がありますが、公益を害すると云ふ點を、さう云ふ處分であるからと言つて取消すのは行き過ぎであると云ふことで、公益を害した場合の取消權、停止權と云ふものを削除する修正がありました、それから此の邊は大體官制の規定でありますが、百五十六條であります、百五十六條の第一項は、府縣知事、市町村長其の他の者が「法律又は政令の定めるところにより、警察署その他の行政機關を設ける」、斯う云ふ風に規定してございます、是は大體特定の委任事務に付て、特殊の府縣知事の補助機關を設けることを此處で規定して居るのであります、其の前の百五十五條の方は地方事務所とか支廳と云ふやうな、一般的な行政事務を掌る府縣知事の補助機關でありますが、此處は特定の事務に付ての補助機關の規定であります、さうして百五十六條の第三項に、「都道府縣知事は、法律又は政令の定めるところにより、食糧事務所、本炭事務所、社會保險出張所その他行政機關の長を指揮監督することができる。」斯樣な規定がございます、是は國家機關に對しまして、都道府縣の知事は、法律又は政令に定める所に從つて指揮監督出來ると云ふことを規定してあるのでございます、例へば食糧事務所に付きましては、食糧の買入、檢査と云ふやうなものに付て指揮監督が出來ると云ふやうなことを政令の、或は法律の中に、規定をすることになる譯でございます、それに依つて初めて指揮監督が出來ると云ふことになる規定であります、都道府縣知事は公選にはなりましたが、矢張り左樣な根本的な權利を持つて居ると云ふことを明かにしようと云ふ譯でございます、此の點に付ても衆議院の修正がございまして、「法律又は政令の定めるところにより、」と云ふのを、「部内の行政事務に關係のある事項につき、食糧事務所、木炭事務所云々、」斯う云ふ風に規定されて居ります、「部内の行政事務」、即ち知事が自分の權限に屬する關係の事務に付ては、其の自己の處理する事務の綜合的な調整を圖る爲に、特殊の國家機關に付ての指揮監督權を持つ、斯う云ふ修正の趣旨であるやうに思ひます、それから第百五十七條は知事及び市町村長が、其の區域内の團體等に對して矢張り指揮監督する規定であります、是は現行法にある規定でありますが、此の外の團體に付きまして、一切の團體に對して知事、市町村長が監督出來ると云ふのは廣過ぎると云ふことから、「公共的團體等の活動の綜合調整を圖るため、これを指揮監督することができる。」と云ふ修正がありました、百五十八條は是は大體官制にありました規定でありまして、公選知事の下の局とか部とか云ふものは大體今迄と同じやうな建前に致して居りますが、それを其の儘規定をして居ります、唯新たに總務部、會計部と云ふ規定を設けました、總務部は此處に書いてあるやうな仕事でありますが、會計部を特に設けましたのは、出納長の制度を府縣に新たに設けましたので、矢張り出納長の地位と外の局部との權衡上、會計部と云ふことで規定を致したのであります、是等の局部を總て法律で規定されますと、又窮屈でありまするので、但書を設けまして、條例で局部を併せたり分けたり、又は部は其の儘にして置いて、事務の配分を變更することが出來ると云ふやうに規定を致しました、それから百六十條は衆議院で簡單な修正がございました、即ち非常災害がありました場合に、色々市町村長が土地等を使用する、其の場合に其の損失は時價に依つて全額を補償することを明確に規定しなければならぬと云ふことで、さう云ふ趣旨の修正があつたのであります、原文でも同樣の趣旨でありますが、左樣な修正がございました、次に第三款の「補助機關」であります、百六十一條に新たに副知事の制度を設けてあります、是は人口二百萬人に二人、三百萬人以上は三人と云ふことになつて、其の他の府縣は總て一人、斯う云ふ譯であります、是は大體從來の市町村の助役制度の考でありまして、名前は副知事でありますが、さう云ふ意味で人口が多い事務の多い縣に於きましては、二人、三人と云ふことに致したのであります、三百萬以上と申しますと、東京と北海道と云ふことになります、それから副知事の選任方法は百六十二條で議會の同意を得て選任する、百六十三條で任期は、副知事は「四年」と云ふことになつて居ります、それから百六十八條に行きまして、新たに「出納長」の制度を規定してございます、是は市町村の收入役に相當するものでありまして、即ち收入支出に付きましては、知事の收入支出の命令の審査權を持つことになります、即ち獨立の地位を以て會計全體を統轄することになるのであります、而して其の補助機關として副出納長を、又更に出納長の手先として出納員を置きまして、其の出納員が實際の出納をする、斯う云ふことになる譯であります、出納長は矢張り任期は「四年」で、議會の同意を得て府縣知事が遷ぶと云ふことになる譯であります、百六十九條等は大體出納長と收入役に付て同じやうな規定を設けて居ります、それから百七十三條でありますが、是は府縣の吏員、市町村の吏員の種類をここに大きく分けまして、「事務吏員」、「技術吏員」、「教育吏員」、「警察吏員」と云ふことにしてございます、是は大體現在の官吏の種類別に從つた仕分けであります、それから專門委員の制度を今囘新たに設けました、先程常任委員會と云ふ制度を議會に設けたと申上げましたが、それとの關聯がありまして、即ち議會と常任委員會と云ふものは議會閉會中も常時調査等を行ふことが出來る譯であります、從つて議員は其方の常任委員會の方に入る、專門委員と云ふのは執行機關の補助機關と致しまして、特定の事項の專門的調査をすると云ふ建前に切替へたのであります、從つて選任の方法も從來は議會の同意を得ることになつて居りましたが、議會の同意を得ないで、長が自ら最も適當と思ふ專門家を選任すると云ふ規定を置きました、それから第四款「議會との關係」でありますが、是は所謂原案執行を此處に規定を致して居ります、此の原案執行の關係が衆議院に於きまして、大きな修正がありましたので、逐一申上げますと、百七十六條であります、是は此の第一項の違法越權の議決を議會が致しました場合、或は選擧が違法越權でありました場合、斯う云ふ場合には、知事、市町村長は理由を示して之を再議に付する、或は再選擧を行はせる譯であります、處がそれでも尚改めないと云ふ場合には、從來知事、内大臣の指揮を請うて原案を執行する、斯う云ふ建前になつて居りましたが、是は違法越權でありますから、矢張り裁判事項になります、そこで裁判所に之を持つて行くのも可能でありますので、衆議院の修正は、議會を被告としまして、「裁判所に出訴することができる」と云ふことに致しまして、兩者の關係を裁判所に裁いて貰ふと云ふことに致したのであります、從つて此の二項、三項、四項と云ふ所が皆變つて來て居ります、それから百七十七條は明かに議決が公益を害する場合の原案執行を規定して居ります、處が此の議決が或は公益を害するかどうかと云ふことの認定は、長と申しますよりも寧ろ議會が議決を致したのでありますから、それは議會の自主的認定に俟つべきであると云ふやうな考へ方から、第一項、第二項は長が假に公益を害すると認めましても、原案執行と云ふやうなことは無論しない、即ち議會に其の點は委せると云ふことで、一項、二項は削除の修正になつて居ります、さうして第三項の「議會の議決が、收入又は支出に關し執行することができないものがあると認めるときは、前二項の例による。」と云ふのがあります、是は收支が適合しない、收入と支出に幾分かマツチしないやうな議決を議會でしたと云ふ場合には、一應再議に付することになつて、更に内務大臣の指揮を受けて府縣知事が原案を執行すると云ふのが原案でありますが、之に付きましては、矢張り修正がありまして、一應左樣な議決は再議には付するけれども、再議に付した上は最早指揮を請はない、それでも尚議會が改めないと云ふやうなことは先づないだらうと思ひます、修正の場合は恐らくは手落で收入支出が適合しないやうな豫算を作つたに過ぎないと思ひますので、再議に付すれば大體直ると思ひますが、それでも直らなければ其の次に長が追加更正豫算等を出して辻褄を合せると云ふやうなことで、收入支出に關する原案執行はやらないことに修正になつたのであります、其の次の必要な經費、即ち法令に依つて負擔する經費であります、法律の規定に基いて當該行政廳の職權に依つて命ずる經費其の他の義務費を削除致しました場合であります、又非常災害とか其の他の緊急避けることの出來ない經費を削除提案した場合、此の際再議に付してもそれでも改めなければ、内務大臣、知事に持つて行つて指揮を請ふ、斯う云ふことになつて居りましたが、此の點も修正がございました、即ち第一號に規定して居ります「法令により負擔する經費、法律の規定に基き當該行政廳の職權により命ずる經費其の他の普通地方公共團體の義務に屬する經費、」之を削除又は減額をしました場合には、再議に一應付して、それでも尚改めなかつた場合には、知事、市町村長は自ら豫算を計上して支出出來る、斯う云ふ風な修正に相成つたのであります、是は當然に長としては法律上の義務に屬するものだから、支出出來る、斯う云ふ解釋で指揮を請はずに解決をする建前にしたのであります、其の次の緊急の經費、是は抽象的に緊急避けることの出來ない經費と云ふことで原案執行するのは適當でないと云ふことから、「非常の災害に因る應急若しくは復舊の施設のために必要な經費又は傳染病豫防のために必要な經費」と云ふものだけに限定をしまして、それを削除減額した場合には再議に付する、それでも尚改めませぬでした場合には、知事或は市町村長に對する「不信任の議決とみなす」、斯う云ふ風な修正になつたのであります、斯樣な緊急の經費を議會としては承認するのが當然であるけれども、それを特に承認しなかつたと云ふのは、事柄自體よりも、知事、市町村長に對する不信任の表明である、斯樣に法律上解釋してしまふ、斯う云ふ譯であります、從つて其の次の條文の百七十八條に依りまして、不信任議決のあつた場合には十日以内に解散するか、さうでなければ退職しなければならないと云ふ規定が働いて參りまして、知事が何等か進退を決しなければならぬ、斯う云ふことになつて解決をすることになつた譯であります、以上が百七十七條の修正であります、それから百七十九條でありますが、是は議會が成立しない場合の原案執行の問題であります、斯う云ふ場合には府縣は内務大臣、市町村は知事の指揮を請ふと云ふことになつて居りましたが、之を改めまして、成立しない場合には長が自ら適當に處理をして行く、專決處分をする、斯う云ふ風に致したのであります、唯此の關係で例へば年度内に豫算が議決にならない、斯う云ふやうな場合に於きましては、善後措置と致しましては、通常豫算を知事が其の儘專決處分をしてしまふと云ふことは行き過ぎでありますので、別途暫定豫算を計上致しまして暫定豫算の制定を設けまして、暫定豫算に依つて知事が專決處分をする、斯う云ふ風に後の方で暫定豫算の制度を設けて居ります、それから第二節の「選擧管理委員會」でありますが、是は大體從來と同樣な規定の仕方でございます、唯此の點に付きましても、衆議院に於きまして修正がございました、それは第百八十二條に二項加はるのでありますが、選擧管理委員が府縣の場合には六人、市町村の場合は四人でありますが、同一黨派から六人のうち三人も四人も出ると云ふことになりますと適當でない、矢張り各政黨が一定の比例を以て利益を代表し得るやうな仕組にならなければいけない、斯う云ふ趣旨から、同一政黨が府縣に付ては二人迄、即ち三人以上の委員を出すことは出來ない、市町村に付ては一人だけ、即ち二人以上の委員を出すことは出來ないと云ふ趣旨の修正があつたのであります、それから第三節の「監査委員」でありますが、是は從來と殆ど同樣の規定であります、唯二百條に於きまして特に監査委員にも補助機關を設けまして、書記を置くことが出來ると云ふことを規定致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=27
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028・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) ちよつと御諮り致しますが、時日の關係もありますから、少し御勉強願ひまして、もう少し區切りの宜い所迄進行致したいと思ひますが、宜しうございますか……第八章を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=28
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029・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 第八章「給與」、此の「給與」の章は、大體從來の地方制度と同樣な程度であります、唯此の第二百六條でありますが、此處は從來、色々斯う云ふ給與に付きましての異議の申立等の制度、それから行政裁判所へ行く訴訟の制度が規定されて居りましたが、今囘は削除致しました、削除と云ふことになりますと、其のやうな權利に關する訴訟は、當然に一般の裁判所へ行くと云ふことになるのであります、さう云ふ點の改正が二百六條にあるのであります、それで其の他は大體從來と同樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=29
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030・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) 第九章、「財産」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=30
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031・鈴木俊一
○政府委員(鈴木俊一君) 第九章の「財産」でありますが、是も從來の制度と概ね同樣の規定でございます、唯書き方と致しましては、是は書面は「財産」になつて居りますが、財務でございます、第一節の「財産及び營造物」、第二節「收入」と云ふ風に事柄の内容に依りまして節を改めて設けましたのであります、第二百十二條に「普通地方公共團體の財産又は營造物は、宗教上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、教育若しくは博愛の事業に對し、その利用に供してはならない。」是は憲法に新しく規定をせられた事項でありますが、それに即應しまして、此の法律にも同趣旨の規定を設けたのであります、それから二百十五條の財産營造物を使用する權利に關しましての行政上の救濟手段でありますが、是は從來矢張り行政訴訟になつて居りましたが、それを削除致しました、削除致しました結果、當然に一般の行政事件の手續に依りまして訴訟が出來るやうになつた譯であります、第二節「收入」の點であります、是は二百十八條に此の「夫役」「現品」の制度があります、是は島等に於きましては租税の代りに斯樣な現物主義を執ることが出來ることになつて居りますが、現在は一般的に如何なる場合でも夫役、現品を賦課徴收出來ることになつて居りますのを特に非常災害の復舊、其の他特別の必要のある時に限つて之を徴集することが出來ると云ふことに、衆議院で修正されました、それから尚其の次の項に「夫役又は現品は、これを金額に算出して賦課しなければならない。但し、市町村においては、直接市町村税を準率とし云々」と規定がございますが、之を夫役、現品の賦課の基準となりますのは、端的に市町村民税を基準としなければ、夫役現品を賦課出來ないと云ふことに規定を致したのであります、其の點の修正が衆議院でありました、其の他行政上の救濟手續が司法裁判所に變つたと云ふだけでありまして、其の外は特別な變更はございませぬ、第三節の「支出」此處は矢張り從來と概ね同樣の規定でありますが、二百三十條は矢張り憲法の規定に即應しまして、公金の支出も、矢張り宗教上の組織、團體或は一般の社會事業等に對しては之を支出してはいけないと云ふことを規定致しました、それから第四節の「豫算」でありますが、是も概ね從來と同樣でありますが、新たに暫定豫算の制度を衆議院の修正に依つて二百三十五條の末項に規定を致しました、即ち會計年度の一定期間を限つて豫算を調製して議會に提出することが出來ると云ふ制度を衆議院で修正の結果挿入をされたのであります、其の必要は先程申しましたやうな場合でありますが、大體此の豫算不成立の場合の措置と致しましては、通常豫算と暫定豫算を當初から設けまして、先づ暫定豫算の可決をして貰つて置いて、そうして通常豫算を愼重に審議をする、從つて如何なる場合でも暫定豫算だけは必ず成立すると云ふやうな行政上の慣習を地方に於ても確立するやうに運營を指導したい、斯樣に考へて居ります、それから「出納及決算、是は概ね從來と同樣であります、第六節は財務に關する」雜則」でありますが、二百四十三條は競爭入札の原則を新たに規定を致しました、是は從來はあつたのでありますが、統制經濟、戰時經濟に入りました時に是は落したのであります、けれども、又再び復活を致しまして、地方團體の工事の請負、物件、勞力其の他の供給等は、總て競爭入札にならければならないと云ふ原則をはつきり致したのであります、それから第十章の「監督」でありますが、是は矢張り從來から非常に問題のありました章でございますが、此の點は衆議院に於きまして相當大きな修正がございました、一般的な監督事項に付きます規定は之を成るべく削除しまして、それぞれ特定の事項に付て特に必要な點に付てのみ中央の統制を加へる、斯う云ふやうな恰好に相成つたのであります、從つて第二百四十六條の此の規定は全部之を削除致しました、それから第二百四十七條でありますが、是は第一項を第二百四十六條に致しまして、策二項は之を削除致しました、二百四十七條の第一項は昔からある規定でありますが、第二項は今囘新たに入れた規定であります、即ち原案の趣旨は、普通地方公共團體に對して其の一般的な基準を定めて之を通知し、或は其の採用を勸告すると云ふ新しい制度を設けたのでありますが、是は矢張り衆議院の趣旨としては、斯樣な基準は總て法律を以て之を規定すべきであつて、行政廳、即ち知事なり内務大臣が自ら基準を定めて採用を勸告すると云ふことは稍稍行き過ぎである、斯樣な點からの修正意見がありまして、第二項は削除することになつたのであります、それから第二百四十八條、是は所謂第一項は強制豫算の制度であります、即ち自治機關が法律に基き必要な經費を豫算に計上しなかつた場合は、監督官廳が自ら強制的に豫算に加へることが出來ると云ふ制度であります、第二項は又法律上行ふべき事件を執行しない場合の監督官廳の代理執行の場合でありますが、左樣な一般的な規定は必要でない、必要があるならば、それぞれ特定の法律に依つて特定の事項に付て規定をすべきであると云ふ建前から、是は全部削除になつたのであります、それから第二百四十九條、是は所謂臨時代理者の選任の規定であります、是は此の儘でございますが、之を二百四十七條に致しました、それから其の次に二百四十九條に併せて規定をしてあります選擧管理委員が缺けました場合の臨時選任の方法を特に二百四十八條として別に規定を致したのであります、二百四十九條を二つに分けて七條と八條の規定をする、さう云ふ修正を衆議院がやつたのであります、其の次の項の二百四十九條の一番終りの項であります、即ち臨時代理者又は臨時選擧管理委員に對する給與、是は矢張り獨立の條文に致しまして、二百四十九條に是がなります、それから二百五十條の第二項に於きまして、起債の許可に付て、特に從來是は内務大臣及び大藏大臣の許可事項になつて居りましたが、それを今囘の原案に於きましては内務大臣が許可をする、但し内務大臣が許可をするに際しては、大藏大臣に協議をすると云ふことを第二項に規定したのであります、此の趣旨は衆議院案に於きまして無論其の儘殘つて居ります、之を特に二百五十一條に致しまして、削除に伴ふ條文の整理を致したのであります、さう云ふ修正が衆議院で行はれました、それから第二百五十二條、是は條例を總て許可事項にしてあるのが原案でありますが、之を特定の條例に限つて許可を要することに規定を致しました、即ち議員の定數を増加する場合の條例、それから府縣の局なり部なりを増加し、或は分合する場合の條令、それから大きな市に行政區を設けます場合の條例、又夫役、現品とか其の他財務に關する條例、さう云ふものだけを許可事項に特に規定をするやうに、修正をされたのであります、但しそれ以外の條例は總て所轄行政廳に報告をすると云ふ風に第二項に新たに修正を加へることになつて居ります、それから二百五十二條は、是は同樣に許可事項を整理致しました場合、特に必要がありませぬので、全部是が削除致すことになりました、さうして二百五十一條及び二百五十二條に修正になつて動いて來て居ります、それから第十一章の「補則」であります、是は二百五十三條は從來の通りの規定でございますが、特に數府縣に跨りまして、例へば岡山縣と廣島縣の間に町村組合を作ると云ふ場合には、廣島縣の知事が町村組合を管理すると云ふことは、是は内務大臣が指定をして居つたのであります、是が左樣な指定の制度を改めて、兩縣知事が協議で定めると云ふ衆議院の修正がありました、二百五十四條は多少字句の修正がございました、其の他特に申上げることはございませぬ、二百五十八條は島に對する行政の特例であります東京都の利島、鳥島と云ふやうな町村制を施行して居ない島が從來からありますが、さう云ふ島に對しても地方自治制を一應施行致しまして、唯さう云ふやうな島に於ては、當分の間從前の例に依つて行政をやる、斯う云ふやうな規定を政令で設けようと云ふ風に原案は規定して居つたのでありますが、此の點に付きまして左樣な特例は總て法律で規定しようと云ふ趣旨から若干の修正がございました、次に此の二百五十九條に於きまして郡の區域の變更の手續を新たに規定を致しました、從來は全然是はなかつたのでありますが、特に内務大臣が府縣會の意見を聽いて、郡の境界或は名稱の變更をすると云ふことを規定して居ります、二百六十條は市町村の中の町、或は字の區域の變更等であります、是は從來も勅令で規定がございますが、特に法律で之を規定することにしたのであります、二百六十一條は憲法第九十五條の「一の地方公共團體のみに適用される特別法」、此の規定でございます、是は一般投票をすることを憲法は要求して居ります、其の一般投票の手續を此處に規定致したのであります、即ち衆議院の方に於きまして、特定の市に適用される法律が可決になりますれば、それを衆議院議長から總理大臣を經由して内務大臣に通知をして來る、内務大臣は其の通知のあつた日から五日以内に、關係の府縣なり市町村にそれを通知しまして、そこで通知があつてから三十一日以後六十日以内に、選擧管理委員會の招集をし投票を行はせる、其の投票の結果が判明したならば、又速かに今度は地方公共團體の方から、内勞大臣に報告をして來る、又其の投票に付て色々な訴訟其の他があつて、それが確定しましたならば、其の確定した方から又直ちに報告をして來る、さうして内務大臣は報告を總て總理大臣に送つて、總理大臣が投票の結果が確定したと云ふ報告を内務大臣から受けたならば、そこで上奏御裁可を仰いで法律を公布する、斯う云ふ段取りになる譯であります、左樣な手續を二百六十一條でして戴く譯であります、尚二百六十二條は其の特別法の一般投票と、選擧其の他の投票を併せてやることが出來ると云ふことを規定して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=31
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032・松平外與麿
○委員長(男爵松平外與麿君) ちつと御諮り致します、政府委員より第一編、第二編に付て、大體の御説明があり、特に新たに定められ、又衆議院修正の箇所等に付て、個別的の御話がありました、時間の關係もありますが、尚引續きやりますか、此の儘打切りますか……、それでは是で止めまして、明日本會議がありませぬければ午前十時から、本會議があります場合には、午後一時から開會することに致しまして、第三編の方に進みたいと思ひます、之を以て散會致します
午後四時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=32
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033・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 男爵 松平外與麿君
副委員長 子爵 藤井兼誼君
委員
侯爵 細川護立君
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 二荒芳徳君
男爵 三須精一君
男爵 岡俊二君
男爵 紀俊忠君
男爵 斯波正夫君
坂田幹太君
宮澤俊義君
山隈康君
小山完吾君
淺井清君
國務大臣
内務大臣 植原悦二郎君
政府委員
内務事務官 林敬三君
同 鈴木俊一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009202392X00119470323&spkNum=33
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