1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年二月二十一日(金曜日)午前十時二十三分開議
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議事日程 第八號
昭和二十二年二月二十一日
午前十時開議
第一 國務大臣ノ演説ニ關スル件(第七日)
第二 請願法案(政府提出) 第一讀會ノ續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=0
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001・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔參照〕
昨二十日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十二囘帝國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
外務省所管事務政府委員
外務事務官 太田一郎君
同 大野勝己君
本日第九部ニ於テ決算委員井川忠雄君ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ高橋龍太郎君當選セリ
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=2
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003・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 是より本日の會議を開きます、議事日程變更に付御諮り致します、日程第一と第二との順序を變更することに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=3
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004・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=4
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005・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 日程第二、請願法案、政府提出、第一讀會ノ續、委員長報告、委員長北小路子爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=5
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006・会議録情報3
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請願法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年二月十九日
委員長 子爵北小路三郎
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔子爵北小路三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=6
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007・北小路三郎
○子爵北小路三郎君 只今議題に相成りました請願法案に關しまして、委員會に於ける審査の經過竝に結果に付て簡單に御報告申上げます、此の法案は簡單ではございまするが、新憲法の精神に則りまして、國民の基本的權利の一つである請願權の保障に遺憾なきを期するものでありまして、從つて受入れ側の官公署に於きましては、請願を誠實に處理することを規定致しまして、請願處理の心構へに於きまして其の深切を期するものなのであります、而して其の第六條に於きまして、「何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」との規定は新憲法の第十六條と同趣の規定ではありまするけれども、此の法案では重ねて之を規定することに依りまして、事の重要性を強調して居るのであります、本委員會は去る十五日に正副委員長の互選を致しまして、引續き十八日、十九日の兩日に亙りまして開會致しましたが、先づ國務大臣より法案の内容に付きまして詳細なる御説明を伺ひました後に質疑に入りました次第であります、今其の質疑内容に付きまして主なるものを申上げまするならば、第一に憲法改正の請願、皇位繼承の順位に關する請願は出來るかどうか、又攝政は新憲法の第十六條の公務員であるかどうかと云ふ御質問であります、之に對しまして政府の御答は、新憲法の下では請願事項を制限することは適當でないから、憲法の改正、皇位繼承の順位に關しましても、請願は出來ると言ふのであります、而して正面から是等の事項に付きまして、請願出來ると表現することは好ましくないから、新憲法には「その他の事項」に含ませてあるのである、又攝政は公務員ではないと云ふ御答でありました、次に天皇に對する直願は認められるかどうか、必ずしも不敬の意圖のない場合はどうであるかと云ふ問に對しまして、此の法案の第三條にある通り、内閣に提出すべきであつて、不敬の意圖がなくても、直願は認められないと云ふ御答であります、次に天皇に對する請願を内閣は一體どう云ふ風に取扱ふかと云ふ問に對しましては、内閣は單なる經由機關でなく、内閣は助言と承認と共に天皇に御屆けをなし、其の處理も、内閣の助言と承認とに依つてなされなければならないと云ふ答でありました、尚皇族に對しまして、又攝政に對しまして、請願出來るかどうかと云ふ問に對しましては、皇族が國法上當然に公の權限を持たれることはないから、皇族固有の地位に對して請願は認められない、又攝政に對するものは、天皇に準じて内閣に提出すべきであるとの答であります、又天皇に對する請願は、新憲法の第六條、第七條に規定する事項に限るかどうかと云ふ問に對しましては、御説の通りであるとの答であります、尚裁判に關するものでありますが、裁判に付て請願が一體出來るかどうかと云ふ問に對しましては、請願は國の機關が爲し得る事項に付てのみ許されるのであつて、裁判の進行を促すとか、司法行政の面に付ての請願は出來るが、確定した判決を覆すやうな請願は出來ないと云ふ答であります、尚裁判に關しまして、請願を認めることは司法權の獨立性から適當と思はれないがどうであるかと云ふ問に對しましては、新憲法は國政の有らゆる事項に民意の反映することを精神として居るのであつて、裁判に關する請願を認めても、司法權の獨立性と云ふものは害されないのであるとの御答であります、請願に付きまして又法律で規定することを要するか、それは寧ろ政令事項ではないのではないかと云ふ問に對しまして、政府はそれは官廳の職務權限に關する事項であるから、法律たることを要するのである、又裁判所に對する請願は法律で定めるのが適當であるとの答でありました、次に國會に對する請願には、此の法律は全然適用がないかと云ふ問に對しましては、理論上は適用はないとの答であります、尚請願は文書ですることのみを要求するのは憲法の要請ではないと思ふ、斯るが故に電報でするのはどうか、又圖畫や點字ですることは出來るかどうか、或は外國語を用ひても差支ないか、外國人は又請願が出來るかどうかと云ふ問に對しましては、憲法は請願權の骨子だけを規定して居るのであつて、文書ですることも憲法の趣旨には反しない、意思の表示に十分であるならば、電報でも圖畫でも點字でも構はない、外國語亦同樣である、而して外國人でも一般の國法の適用を受ける地位にある者は請願が出來るとの御答であります、尚現行請願令に見る所の罰則は必要でないのか、或は現行請願令の罰則の實績は一體どうであるかと云ふ問に對しましては、罰則は一般の取締法規で行く積りである、又罰則適用の實績は餘りないやうに思ふとの答であります、尚質疑應答は色々と續けられたのでありますが、大要は速記録に依りまして御了承を願ひたいと思ふのであります、尚希望意見と致しまして、近時請願に伴ひ所謂陳情の運動があるが、それは正當な請願ではなくして、所謂闇の請願である、斯るが故に、斯かる正式の請願のみを受付けることを希望するとの意見の開陳がありました、之に付きまして陳情を無くする爲には法制其の他を分り易くしなければならない、新憲法は豫算等財政状況を國民に周知させることを要求して居るのであるが、政府の意見は如何であるかと云ふ問に對しまして、政府は法制の改革と共に、官公吏の心構へは之を一新して其の目的を達したいと述べられ、且法制を分り易くすることは、此の法案と現行請願令を比較すれば御了解が出來ると思ふ、尚豫算に付ては今議會で御審議を願ふことになつて居るとの答であつたのであります、斯く致しまして、質疑を大體終りまして討論に移りましたる處、二三の委員より贊成意見の御開陳があつたのであります、即ち請願は大體一般民衆の爲にする規定である、第五條に官公署に於て、誠實に處理とあるが、此の誠實に處理するのが諸願法の生命でもあり、又眼目でもある、又請願は國民の權利でもある、之に對する國家又は國家機關の義務は請願の内容を誠實に檢討し、民意のある所を眞に檢討する、是が義務だと云ふことを要求する、其のことが請願の權利である、此の度國法の上に明確に誠實と云ふ文字が表はされたことは、平凡なことではあるが、非常に結構なことと思ふ、又請願の趣旨は當局の答辯に依りまして了承されるが、所謂答辯の爲の答辯ではなく、之を現實に答辯通りに、根本精神を個々の場合に適用して實行して欲しいものである、此の心境に於て、此の趣旨に於て、此の意味に於て、此の本法案に贊成するものであるとの意見の開陳があつたのであります、斯く致しまして討論を終りまして採決に入りました處、全會一致、政府提出原案の通り、可決すべきものと決定致した次第であります、以上を以ちまして御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=7
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008・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 別に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=8
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009・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=9
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010・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=10
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011・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=11
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012・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=12
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013・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=13
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014・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、本案全部委員長の報告通りで御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=14
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015・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=15
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016・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=16
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017・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=17
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018・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=18
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019・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=19
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020・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部第二讀會の決議通りで御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=20
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021・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=21
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022・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 日程第一、國務大臣ノ演説ニ關スル件、第七日、山地土佐太郎君
〔山地土佐太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=22
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023・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 私は先日の總理大臣の施政方針演説に對しまして、茲に一言所懐を附加へて總理大臣竝に關係各大臣の御意見を御尋ねしたいと存じます、先づ總理大臣及び文部大臣に御伺ひ致します、總理大臣は此の施政方針演説中に於て産業再建を叫ばれ、國際社會への一日も早き復歸を要望せられたのであります、併しながら其の方策として御示になりました所の耐乏生活の實踐、勞働問題の解決、インフレーシヨンの克服等、何れも極めて大切なことではございませうが、而も其の根抵を爲す所の極めて大事なことが忘れられて居つたのではないかと思ふやうに考へるのでございます、此の點は私の誠に遺憾とする所でございます、それは何かと申しますと、日本に於ける道徳の再建と云ふことであります、思ふに、終戰以來我が國民は生活の目標と其の依存すべき心の中心を失つて居ります、加ふるに敗戰に伴ふ絶望觀と累増する生活の困難とは、互に相俟つて我が國の道徳を混亂の極に陷れたのであります、今日の日本は殺人と強竊盗と詐欺と卑猥との坩堝であります、道義の頽廢は實に其の極に達し、全く亂雜無秩序の状態に置かれて居り、恐らく日本歴史始つて以來の最暗黒時代と稱しても過言でないと思ひます、それは何故であるか、我々の先祖は、或は儒教とか、或は武士道とか云ふ極めて嚴格なる道徳律に依つて訓育されて居るのであります、又我々自身は、そして我々の同年輩の人々は、教育勅語と云ふ極めて洗煉されたる道徳目標に依つて育てられたのであります、然るに現在我々は、我々の子孫を教ふべき何等の道徳律を持つて居りませぬ、又我々の子孫を依つて以て訓育すべき何等の道徳標準を持たないのであります、之が爲に敏感なる青少年層は其の適從すべき處を知らず、前途の光明を失ひ、絶望の餘り、或は暴に、或は惡の途にさまよつて居るやうな者もあるのであります、世の道義が斯くの如く紊れて居る際に、如何に窮乏生活を説き、如何に勞資の協調を叫ばるとも、決して日本の再建は成らないのであります、是れ即ち、私が本日他の百般の施策に先んじて、先づ現下の緊急事として道義の再建を説く所以に外なりませぬ、古の武士道、又は明治の教育勅語等、何れも之を其の儘現時に適用することは、必ずしも其の當を得たものではないと思ひます、仍て其の美を採り、其の短を捨て、更に補ふべきものは之を補足して、以て急速に此の新時代に適合すべき新道徳律を樹立するの要、切なるものがあるを思ふのであります、是こそ國家再建の根柢でありまして、又國家再建の捷徑なることを信じて疑はぬのであります、諄いやうでございますが、政治も經濟も秩序の維持なくしては斷じて再建は行はれませぬ、而して秩序の維持の根本が、新道徳律乃至道義の確立にあることは申す迄もございませぬ、仍て私は本日茲に此の點に關する總理大臣竝に文部大臣の御意向を伺ひたいと存ずる次第でございます、次に總理大臣竝に大藏、商工、農林の各大臣に御伺ひしたいと思ひます、總理大臣は現下の日本經濟が縮小再生産の惡循環より脱する爲、先づ重點産業の再建に百般の努力を集中するの結果、ここ當分國民が其の日常生活に付、窮乏に甘んずることの已むを得ざる旨を説かれたのであります、總理の言に依りますると、當分此の時期を脱すれば、久しからずして國民は再び豐かなる經濟生活が營み得るが如き印象を持つのであります、而も事實は之を去ること遙かに遠いのではありますまいか、即ち我が國は本州、四國、九州及び北海道の狹隘なる地域に跼蹐を餘儀なくされて居ります、而も人口は略略同樣の版圖を有したる明治の初年に比較しまして、約二倍にも達せむとして居ります、加ふるに空襲に依る破壞と賠償の爲の生産力の大部の撤去と云ふ惡い條件に直面して居るのであります、從つて此の事實を直視しまする時に、今後我が國の國民生治の苦しさは實に容易ならざるもののあると云ふことは、三尺の童子と雖も容易く了解し得る所であります、私の考では、假令現在政府の努力せられて居る經濟諸施策が成功したと致しましても、而も相當長い期間に尚國民の生活程度は、恐らくは我が國最近に於ける最も不況時代の、即ち昭和五、六年の更に六割乃至七割程度のものしか營むことが出來ぬではないかと思ふのであります、茲に思ひを致しまする時に、私は此の際總理大臣としては、此の事實を率直に全國民の前に開示して、我が國の前途の容易ならざることを十分に理解せしめ、國民をして極めて徹底せる窮乏生活に甘んずるの覺悟を促すべきものと考へるのであります、仍て私は茲に提唱致すのでありますが、國民の間に消費節約と生活程度の徹底せる切下げ運動を大々的に展開して、一切の奢侈を捨て、總ての無駄を去り、以て今後長期間に亙る窮乏生活の實踐を慫慂すべきものであると思ひます、其の長き耐乏生活の實踐に依りまして、初めて我が産業は合理化せられ、生産コストは切下げられ、而して戰時及び戰後に於て急激に暴騰したる我が國の諸物價をば世界の水準迄引下げ得るものと思ふのであります、即ちコストの切下げ、輸出の増進は可能となります、是こそ眞に我が經濟を再建する所以でありまして、又是れ無くしては日本の經濟は到底立直らぬものであると私は固く信じて疑はぬのであります、此の點に關しまする總理大臣及び大藏、商工、農林各大臣の御意見を伺ひたいと存じます、最後に私は吉田兼攝外務大臣竝に關係各大臣に御伺ひ致します、最後の第三點の私の質問は、以上申述べました此の二つの事柄が今日我が日本を再建する爲の緊急事であることを信ずるものでありまするが、今一つ力強く政府に要望致したい點があるのであります、それは我が再建の爲の、詰り外力、外の力の援助の要請であります、勿論自ら立上る意思と努力の必要なることは申す迄もありませぬが、併し是のみを以ては我が國の再建は容易のことではありませぬ、恐らく測り知られぬ長日月を要するものと懸念せられるのであります、現在の我が國は既に完全に生れ變りたる新國家であります、軍國主義の日本帝國は既に幕の外に姿を沒して、現前の日本は戰爭と暴力を完全に放棄し、民主と共同愛に徹したる新日本であります、而して日本の復興なくしては、東洋の再建、否、世界の經濟復興は完璧とはならぬのであります、此の點に留意しまする時に、若し我が國にして國家再建の熱意と努力を惜まざる限り、而して之に付十分なる實績を示す時は、恐らくは何れの國と雖も我に一臂の援助を惜しむものではないと、固く信ずるのであります、勿論政府に於かせられましても、夙に此の點に著目せられ、十分の努力は盡して居るとは存じて居ります、併し尚、此の上ともに此の點に對する最大の努力を盡さるることが極めて必要と思ふのであります、既にドイツに於きましては、米國より五億ドルの借款を得たと云ふことの報が見えて居ります、我が國にしても、此の際若し外國の經濟的援助、即ち物資なり資金なりの積極的援助がより多く得られるならば、其の復興は比較的容易に、且短日月に完成するものと認められます、私は政府が能く我が國の實情を明かにして、外力の援助に付格段の努力を傾注せられむことを切望する次第であります、茲に私は此の點に關する外務大臣、其の他關係大臣の御意向を承知致したいと思ひます、尚本日は總理大臣が御病氣で御出席がございませぬから、關係大臣の方より御傳達を下さいまして、適當な機會に總理よりも御答辯を煩はしたいと思ひます、之を以て私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣高橋誠一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=23
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024・高橋誠一郎
○國務大臣(高橋誠一郎君) 國民に道徳律の如きものを制定致しまして、青少年、一般國民の向ふ所を示し、之を指導するの意なきや如何と云ふ御質問に御答へ致すことに致します、敗戰の爲に「社稷殆ど虚となる」と申した有樣でありまして、國民が大きな打撃を受けまして、其の向ふ所に迷つて居りますることは、誠に遺憾至極のことでございます、併しながら國民總てが既に此の濃霧の中からして、新しい光を求めて進んで居る、進まんとしつつあると云ふことも、亦私共の信ずる所であります、道徳は國民自らの力に依つて獲得せられなければならぬものであると考へて居るのでありまするが、併しながら民主的平和的な文化國家と致しまして、日本が再發足するに當りましては、曩の憲法の劃期的改正に對應致しまして、新しい時代の教育の維新となるべきものを明示する必要があることは、御説の通りであると考へます、併しながら是は獨斷的に一方的に定めらるべきものではなく、國民を代表致しまする議會に於きまして、討議確定致しまするが爲に、法律の形で以て定めたいと考へて居るのであります、此の新しい時代の教育の指針と同時に、教育上の諸原則を定めまする爲に、教育基本法を本議會に提出すべく、豫定致して居るのであります、「徳教は時世と共に變化する」の約束でありまして道徳律に付きましては、古今東西の倫理、哲學、宗教等に其の據り所を求め、各人の良心に依つて自らに之を課し、之を實踐して行く所がなければならないと存じます、唯是等の道徳の據り所に對比しまして、新しい時代に即應致しまして、教育上如何なる態度を以て攝取して行くか、其の一應の標準を示しまするが爲に、教育基本法の中に教育目的の項を起しまして、此の點を明かに致したいと存ずる次第であります、是が又國民道徳律に付きまして、何等かの示唆を與へることが出來るものと考へて居るのであります
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=24
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025・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 山地氏の御質問中、私に關係がある部分に付て御答へ致します、先般の總理の演説中、耐乏生活を強調することが足りなかつた、それに付て御意見がありまして、其の御意見に對して我々の見る所はどうかと云ふ、御尋ねのやうに拜聽致しました、先般の總理の演説の趣旨は、寧ろ比較的短期間の當面の政策に付て申されたと私は理解するのでありまして、さう云ふ比較的短期間の問題と致しますると、現在我々の見る所ではどん底である、例へば、石炭の問題に致しましても、政府は目下三千萬トン目標で、増産に邁進せむと努力を致して居る次第でありまするが、假に明年三千萬トン若くは三千萬トンに近いものの生産があり、それが各方面に配給されるものと致しますると、例へば鐵鋼の如きでも、昭和二十一年度の倍以上の生産が可能である、板硝子に付ては五割増の生産が可能である、或は硫安に付ても七割の増加が豫想されまして、從つて反當り四五貫の割當が出來る、瓦斯の如きも二倍の生産がある、期樣な數字が出る譯でありまして、二千八百萬トン乃至三千萬トンの生産が石炭に可能ならば、詰り今日から見ると、それだけの國民經濟の餘力が現れると、斯樣な觀點から述べられたものと了解致す次第であります、併し山地氏の御質問はもつと長期に亙る御説でありまして、例へば日本の領土が縮小した、或は今後に賠償撤去に付ての影響と云ふことを御考になつて、從つて國民としては更に更に、長く耐乏生活を必要とするのであらう、從つて政府は其の運動を起し、それを實踐せしむべきであると云ふ御説でございまして、之に對しては政府としては何等の異論がございませぬ、其の通りと考へて居ります、唯領土の縮小は、之に依つて今迄日本が蓄積した資本が失はれる、自由の活動の範圍が狹まると云ふことに依つて、非常に支障を生じますが、併し是は國際貿易の自由が許されるに至れば、此の缺點の大部分は之を補ふことが出來る、又賠償撤去に致しましても、矢張り是は相當打撃がありまするが、併し日本の平和産業の維持には、支障を來さないだけの産業を殘す、斯う云ふ聯合國の建前でありますから、之に依つて日本の經濟が再び立直ることが出來ない如き、非常な打撃を受けることに信じて居りませぬが、併し之に對して耐乏生活を致し、資本の蓄積を急速に行はなければならぬと云ふことは、政府の強く感じて居る所であります、其の點に於ては山地氏の御意見と全然同感であると云ふことを申上げ得ると存じます、尚それに關聯致しまして、此の際外國の援助を強力に受ける必要があるのではないか、既に歐洲に其の例があるやに聞く、其の點はどうかと云ふ御尋でありました、是は外務大臣に對する御尋ねでありますが、同時に關係閣僚へと云ふ御話であります、政府と致しましては寧ろ此の點に常に努力を致して居ります、而して段々状況は其の方に強く、例へばクレジツトとか云ふやうな問題も、固まつた具體的な話は未だ其の時期ではないと思ひますが、併し段段左樣な空氣も現はれて來て居るかに感ずる次第でありまして、政府と致しましては無論常に此の點に努力を致して居る次第であります、經濟安定本部、或は大藏省と致しましても機會ある毎に左樣の努力を續けて居ると云ふことを御了承を願ひます
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=25
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026・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 山地議員の御尋に對しまして、殆ど各般に亙つて今大藏大臣が説明致しましたので、私は其の御話の中の米國から物又は金の援助を受けるやうなことを考へたらどうだと云ふ御話、それに對する答は今一應あつたのでありまするが、物の援助と云ふやうな面から見ました問題、即ち外國からの物資の輸入の問題に付て簡單に御説明致したいと思つて居ります、御承知のやうに今日本と外國との貿易關係に於きまして運行されて居る状態は國營貿易であるのでありまして、輸入の品種、數量、時期等に付きましては、總て總司令部が最後的に決定を致して居るのであります、基本の計畫等に付きましては絶えず私共の方から資料を提供して、是是の物を是非輸入して貰ひたいと云ふことを願つて居るのであります、御話の如く誠に日本の今日の状態から致しますると、如何に努力を致しましても、此の澤山の人間、此の小さくなつた國土の中に於きましての我々の日常生活を此の國内だけで維持し得ないのでありまするから、此の外國からの輸入と云ふ問題は大きな日本の國内の安定問題に影響することは當然なことであります、特に重要な物に付きましては、具體的に數字を擧げまして輸入を懇請して居る、例へば食糧の問題、或は重油、石炭の輸入等々がそれなのでございます、又見返り物資をどうしても多く出さなければ、只で外國から物を持つて來て貰ふ譯に行かないのであります、其の一番大きな問題と致しましては、纖維製品、棉花を輸入させて貰つて、我々の方で絲、或は綿布として出すと云ふことに大きな力を注がなければならぬ、先頃から政府は中小工業の振興對策要綱を發表致したのでありまするが、其の中にも述べましたやうに、生活必需品の生産と輸入の見返り品の生産に重點を置いて、有らゆる施策をやつて行く積りで居ります、是等も輸入の見返り品を多くして、出來るだけ多く外から物を入れたいと云ふ希望の實現を圖る爲でありまして、何を致しましても今日の場合に直ぐにどれだけかのクレジツトを欲しいと云ふことは簡單に實現出來ないまだ事情にありますので、今と致しまして私共の考へることは、さうして又將來の爲にも考慮致さなければならぬ問題は、どうしても此の輸出に向ふ所の工業の勃興、之に對する我々の援助努力と云ふことであると思つて居ります、さう云ふことを致しまして、我々の見返りの品物が殖えますれば、輸入は段々殖え、先頃御話のありました日本國民の生活安定の面に於て一歩々々と進み得ることが出來るだらうと思ひます、其の意味に於て我々は努力を續けて行きたいと思つて居ります
〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=26
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027・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君) 山地さんの御高説誠に御尤もで、御同感でございます、只今日本の敗戰の冷嚴なる實況を國民は自覺致しまして、出來るだけ生活を切り詰めて耐乏生活に徹せなければならぬと云ふこと誠に御同感でございます、日本再建の爲に尚どうしても必要であると云ふ物資は出來るだけ輸入を懇請致しまして、之に向つて努力致したいと思つて居る次第であります、大概、大藏、商工兩大臣から御答辯がありましたので、簡單でありますが、是だけ御答辯申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=27
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028・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 此の席から御許し願ひます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=28
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029・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=29
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030・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 大藏、商工、農林大臣の熱意ある御答辯に滿足致します、唯文部大臣に對しましては今後の施策に依りまして、之を具體化して行かなければならぬと思つて居ります、之を以て私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=30
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031・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 川上嘉市君
〔川上嘉市君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=31
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032・川上嘉市
○川上嘉市君 私は今日四つの問題に付て御質問申上げたいと思つて居ります、第一は教育に關すること、第二に醫療に關する件、第三に勞働問題、第四にインフレの問題、此の四つでありますが、出來る限り時間を節約するが爲に、簡單に要旨を申上げたいと思ひます、第一に教育に關する問題の中で、不具者、就中唖者竝に聾者、盲唖聾者、此の盲唖聾者の教育に付きまして、從來政府の施設が甚だ不十分であると私は感じて居ります、國民の中で非常に不幸な不具者として生れた其の人達を教育するのは、是は國家の義務であります、從來官立の盲唖學校と云ふものが全國で二つしかありませぬ、其の外は公立或は私立と云ふのであります、是等が非常に設備不十分であると、私は信じて居るものであります、盲人の中にも、非常に才能を持つて居る人が澤山あります、是は昔のことで申しますが、塙保己一と云ふやうな人、或は現在に於きましても、米國の曾て參りましたヘレン・ケラーと云ふやうな、盲者であり且聾者である、此の人が非常に目明き以上の能力を持つて居られるのであります、或は關西學院の岩橋先生とか、或は箏曲の方の新機軸を出しました宮城道雄さんとか、斯う云つたやうな方方が、それぞれ教育を致しますれば、非常な能力を發揮する、それでなくとも、普通の人でも少くとも國民の教育をやることが、是が教育の均等と云ふ點から言つても、非常に必要であると考へるのであります、只今此の官立の外に公立が幾つあるか、又私立が幾つあるか、是等に付てどの位の經費を政府で以て支出して居りますか、是等に付ての御説明を願ひたいと思ひます、而して若し此の不完全なる設備が澤山あるならば、政府はもつと費用を増して、さうして此の不幸なる國民の爲に本當に教育の均霑を得るやうに盡力して戴きたいと考へるのであります、是が私の第一の質問、次には社會教育であります、學校教育が必要であると同時に、社會教育と云ふものが非常に必要であると云ふことは、異論のない所であります、然るに日本人は從來學校の教育は比較的尊重致しますが、世の中に出てから普通の人も勉強する人が非常に少い、さうして學校を終りますと云ふと、もう既に勉強しないでも宜いと云ふやうな傾が非常に西洋人に比べまして見受けられる譯であります、是では教育の半面だけであつて、本當の教育は寧ろ世の中に出てから本當の勉強をする、又成人教育もする、さう云ふ時に初めて人間の完成が出來るのでありまして、此の點に付て從來、文部省のやつて居られる、政府のやつて居られる仕事が、非常に片手落である、學校教育に餘り重きを置き過ぎて居つて、世の中に出てからの教育は誠に少い、今各府縣にありまする社會教育と云ふものに付て考へて見ますると、經費が非常に少い、實際やつて居る仕事が誠に内容が空虚である、各府縣等に社會教育課長と云ふのがあります、ありますけれども、それの下部組織である地方事務所、此の地方事務所の中には社會教育に關する人は一人も居らぬ、それで各府縣では社會教育の外郭團體と致しまして、社會教育協會と云ふものを置いて居りますが、從來、それは縣の教育課長が會長をやつて居りましたり、或は知事がやつて居りましたか、兎に角官吏がやつて居りましたが、最近にはもつとそれを民主的にやると云ふので民間人を會長にし、副會長を教育課長がやると云ふやうにして、多少の活動をして居る譯であります、現に私は實は靜岡縣の社會教育協會の會長をして居りますが、處が、それが實際の運動を段々に各尖端迄やらうと致しますと云ふと、經費がちつともない、是では何も出來ない、而も先程申しましたやうに、地方に呼び掛ける爲に、地方事務所に參りましても、一人も其の擔當者がないと云ふことになると云ふと、殆どいけない、今の社會教育と云ふものが如何に重要であるかと云ふことは、先程山地議員も御話になつた通り、今日の日本の國民道徳が非常に低下する、或は國民の訓練が足りない、或は國民の社會教育の程度が足りぬ、是等の水準を上げる爲には、もつとさう云つた方面の教育を盛にする必要があると思ふのであります、其の費用が殆ど一つの學校の費用にも足りぬやうな、僅かばかりの費用で以て、どうしても出來ない、もつと此の點に付て政府は力を盡されむことを希望するのであります、是が第二であります、次に醫療の問題であります、此の醫療の問題は近來非常に國民の苦痛になつて居ります、お醫者さんが高過ぎる、其の高い値が、所謂闇値段であります、實際に調べて見ますと云ふと、非常に國民の收入に比べて醫療が高過ぎる、私が調べました數個の例を申しますと云ふと、盲腸炎の手術に對して千圓と、其の他に米一斗を要求して居る、それが健康保險の料金でやると云ふと二百二十五圓、約十倍になつて居る、それから胃の切除、是は胃癌の手術であります、是が四千五百圓、是は健康保險で申しますと云ふと七百八十圓、それから腸閉塞症、之を或人が六千圓取られた、それが健康保険で參りますと云ふと六百五十圓、町内の往診料、是が八十圓、是は健康保險で申しますと云ふと、夜間の風雨のひどい時に半里以内が十五圓取られます、斯う云つたやうな數字を見ますと云ふと、國民の生活の程度、收入の程度から非常に懸け離れて居る、是では病氣になりましても、殊に重い病氣になりましても、手術をし、或は手當をする其の餘裕がない、是が現情であります、八千萬の國民は始終不安の裡に病氣に對して何等の手當を施すことが出來ぬと云ふやうな状態にあるのであります、此の點に付ては第九十一議會に於て、私は之に對する政府の處置を御尋ねしましたけれども、答辯がありませぬでした、今重ねて此の質問を致しますけれども、之に對してもつと嚴重な取締をする、而も此の闇たるや、普通の一般の經濟違反の如くに、非常に數が多くありませぬ、取締の對象とする所が非常に狹い、ちよつと或規定を作つて、さうして之を監督すれば極めて容易である、而もそれは國民の健康の維持上、非常に必要であると致しまするならば、斷乎として之を取締りあらむことを希望する次第であります、次には勞働爭議の問題であります、勞働問題のことであります、御承知の全官公廳のゼネストがG・H・Qの警告に依りまして、兎も角も一時小康を得て居ります、得て居りますが、併し是は決してまだ解決したのではない、從來の政府の當局のやり方を拜見して居りますと云ふと、非常に不用意である、是等の勞働問題に付て非常に不用意である、事が起つた時に、いつでも後から後からと、後手後手と行きまして、さうして其の當座を糊塗すると云ふやうな風に見受けられるのであります、是では到底此の事態に適應することが出來ないと私は考へます、例へば此の今度の問題に付きましても、所謂給與審議會、詰り此の生活の程度が非常に苦しくなる、生活が苦しくなる、其の苦しくなると云ふのが、どんな風に苦しいのか、之を實際に證據立てる確乎たる根據がない、それであるからして、爭議をやる方では、是だけなければ食へぬ、或は千五百圓、二千五百圓なければ食へぬと、斯う言つて見た處で、是で實際出來ないと云ふことを言ふ反證を與へるべき根據がない、茲に初めて給與審議會なるものが出來まして、さうしてそれを皆で決める、是が適正な生活費だと云ふことを決めようと云ふことになつたのであります、併しながら見て居りますと云ふと、もう既に昨年の中に、さう云ふ風なものが相當な成果を擧げるべき筈であつたのが、新聞に依りますと云ふと、まだ第一囘の審議會をやつただけでありまして、後一向に進んで居らぬらしく推察するのであります、是では爭議が矢張り本當に或根據を以て、權威を以て解決すると云ふことは出來ない、其の後此の審議會がどうなりつつあるか、又之を假にやつたと致しましても、どうなるか、若し一方に於て物價と云ふものが動いた時には、或物價に對して是だけで宜い、斯う決めた時に、それから先は所謂スライデイング・スケールで、又物價が上つた、さうすると又是だけ上げる、何倍に上げる、何割上げる、斯うなつて來ると、殆ど際限がありませぬ、それで此の勞働問題を本當に解決するのには、其の後にある所の根本を決めて掛る、それは何かと申しますと、物價の問題であります、我々の生活を支配する食糧品其の他の必需品、其の物價の問題、之を解決しない限りは、爭議の問題はいつ迄經つても鼬鼠ごつこであります、現に全官公廳の爭議の委員連中と、私共中勞委員と會見した時にも話を聞いて見ると、要するに我々が今三倍に給料を増して貰つても何にもならぬ、それは分つて居る、増して貰つた所が物價の方で又どんどん先に行つてしまつて、一向に何にもならぬ、然るに物價を安定させ得ないやうな政府は駄目だからして、我々の今やつて居る爭議は政治的の爭議である、斯う云ふことを言明して居ります、是は皆さんの全部御承知の通りであります、然らば此の爭議問題に對して本當の基本を定めると云ふことは、結局は國民生活を安定さす、之をやらない限りは、何時迄經つても鼬ごつこである、而も爭議の後の給與を出します時に、是が後のインフレにも關係致しますが、政府が或收入を得むが爲に何時でもやられることは、直ぐ其の増給に應ずるだけの資金を政府のやつて居る仕事の料金の値上げに依つて補つて行くと云ふことであります、是は私は最も拙劣な惡い方法だと思ふ、是は新聞でありますが、新聞の報ずる所に依ると、郵便料金を葉書は七十五錢、封書を一圓五十錢に上げると、斯う云う風なことが出て居りました、事實かどうか知りませぬが、之を御尋ねしたいと思ひます、若し此の調子で參りますと、片方で給與を二倍にした、それでいきなり、つい此の間上げたばかりの郵便料金を又上げる、斯う云ふことは所謂惡性循環だから物價を上げる、此の物價を上げると云ふことを政府が何時でも先に立つて範を示すやうなことになる、其の結果はどうなるかと申しますと、民間の者が、封書でさへ一圓十五錢だから、床屋が三圓五十錢、四圓と云ふのは安過ぎる、三倍に上げろ、斯う云ふ風に直ぐ來るに決つて居る、其の結果は益益貨幣價値を下落さしてインフレを助長さすことになると思ふ、是等の點を考へて、もつと本當の手を打つて貰ひたいと思ふ、是は私は寧ろ公債を出す方が遙かに宜いと自分では信じて居ります、何となれば、公債を出さないと云ふことが必ずしもインフレを起さぬと云ふ理由にならない、今申しますやうに、官公吏の給料が假に今度の増給の爲に百億圓支出が増すと、それを百億圓の公債を出した時と、或は之に逆に他の料金で補つた場合と比べて見ますと、此の料金を上げた時には、もう既に物價は三倍に上り五倍に上ると云ふやうに直ぐ上つて居る、此の公債を出した爲に政府の支出が多くなるから、それから物價が上ると云ふ段になると、或過程を經て段々に上つて來ると云ふことになるので、片方の直ぐ上つてしまふと云ふこととは非常に響きが違ふ、さう云ふ點から考へますと、私は非常に拙い方法だと考へて居ります、斯う言つたやうな點に付て、是は唯當面の問題だけでありませぬ、御承知の通り、重點主義の産業政策を採る場合に於きましては、重點的になつて、工場は是から澤山閉鎖するか、或は當分の間窒息すると云ふやうな状態が起つて來ると考へます、さう云ふ時に、それ等の失業者をどうするか、斯う云ふ問題が一つある、之に對する政府の御考へ、或は成案を御伺ひしたいと考へるのであります、尚例へば嘗て鐵道の爭議が起つた時に、六萬五千人でしたか七萬五千人でしたか、是だけ人が多いと云ふことを先に政府が言はれて、其の結果爭議になつて、馘首絶對反對と云ふことになり、馘首をしないと云ふことになつたらしいのでありますが、併し冷靜に考へて見ると、今此の儘で持つて行けるかどうか、例へば事變中、或は少し前迄は鐵道從業員が四十五六萬人であつた、それが今日六十二萬人、六十二萬人でどれだけの仕事があるかと申しますと、前より遙かに減つて居る、實は此の間汽車に乘りました處が、まだ爭議のゼネストをやる計畫の時でありました、若い人がメガホンで以て、我我は是だけでは食へないから之をやるのだと云ふ話がありまして、一つ是から、之に對する皆さんの輿論を聽きたいから、若し差支なかつたら色々話して呉れと云ふので、私の所にもどうだと言つて聽きに來た、私が其の時に申しましたのは、成る程是では食へぬだらう、増すと云ふことに私は贊成だ、贊成であるけれども、併しながらそれはどうしても能率を上げて、さうして少い人でやつて行けるやうにしなければいかぬ、今鐵道の仕事を見ると云ふと、其の分量と云ふものは非常に減つてやせぬか、眞の仕事は、例へば此の日本の大動脈である東海道が、直通の汽車が一晝夜に二往復しかない、是が以前には十も、或はもつとあつた、さうなると貨物の輸送に於ても、或は旅客の輸送に於ても、分量が遙かに減つて居る、それにも拘らず人の方は二十萬人も殖えて居ると云ふことになると、例へば私の感ずるのには、或一家の主人がある、其の主人の下に二十人の家族が皆喰つ付いて居る、さう云ふ時には迚もやつて行けないではないか、若し君等子供が本當に意氣地があるならば、一つ獨立して他所でやつたらどうか、さうして親父を援けてやつたらどうか、我々は勤勞の權利がある、併しながら其の勤勞の權利も、或一箇所で勝手に自分で勤勞すると云ふ權利はないのだ、だからして本當に日本を再建する爲には、或一箇所へ持つて行つて、多勢寄りたかつて仕事が半分になつても是でやるのだと云ふ考は止めて貰はなければいかぬぢやないか、さうして今の倍の仕事をやつて、給料を二倍にして呉れ、二倍半にして呉れと云ふことならば私は贊成だと、斯う言つたことがある、今考へて見ると、色々な方面に於て仕事が可なり事變前に比べて能率が下つて居ります、將來の日本の、食糧もないし輸出に依つて之を補はうと云ふやうなことになりますならば、今日のやうな状態で以てやり得ると私は考へませぬ、必ず其處に本當に能率的經營と云ふ風なことを考へねばいかぬ時が來るに決つて居る、それならばさう云ふ時に或人を減らす、整理をすると云ふことは、是は當然であります、それに對する矢張り政府が、或しつかりした失業對策とか云ふやうなものを今の中に講じて置かぬと云ふと、將來今迄と同じやうに、非常に躓きを來しはせぬかと云ふことを懸念するのであります、是等に對する準備と云ふことに付て御意見を伺ひたいと考へるのであります、それから其の次にはインフレの問題であります、インフレと云ふことに付て、時々色々な議論があるやうでありますが、私共は自分で貨幣價値の下落と云ふことをインフレだと考へて居ります、今冷靜に考へて見て、非常に貨幣價値が下つて來た、最近の物價、特に闇物價でありますが、それが如何に高いかと云ふことは皆さん御承知の通りであります、つい一兩日前も私が親戚に子供が生れたので雛人形を買ひに三越へ行つて見た、行つて見ると、驚いたことにはちよつとしたものは千圓以下の品物は殆どないと言つて宜い、少し氣の利いたやつは皆萬と云ふ單位であります、それからサフアイアか何かの附いた指環でありますが、事變前で申しますれば三百圓が五百圓位、精々五百圓位のものが、二萬七千圓、三萬圓と云ふ値段が附いて居る、昨日も私の所で木炭を買つた、木炭を買ひますと、一貫目が七十圓であります、木炭は四貫の俵と八貫の俵がありますが、四貫の俵で二百八十圓と云ふやうな非常に箆棒な値段になつて居るのであります、若し郵便料など存分に上げるやうなことでありまするならば、封書が一通が一圓五十錢、斯うなると、何箇月前ですか、中國に於ける上海の郵便料金は、確か五圓か幾らかと思つて居りますが、段々それに近附いて來るやうな感じがする、結局さうなると日本の經濟は破綻に段段に近寄りつつあるやうに考へるのであります、それで大藏大臣の衆議院などの話に依ると、來年度の豫算は公債を出さずに辻縷が合ふ、だからしてインフレの心配がないと云ふ御話のやうに聞いて居りましたが、此の公債を出さぬ、來年出さぬと云ふことに付ては、特別の理由があります、それは何かと申しますと、補償の打切とか、或は財産税徴收、或は臨時増加税の徴收とか、或は色々の料金を値上するとか、色々な理由がありまして、或は公債を出さずに濟むかも知れませぬ、濟みましても、併しながらそれは將來永遠に亙る所の財政策でないと私は考へる、それはもつと眞劍に考へないと云ふと、一體來年過ぎて再來年はどうなるか、斯う考へると、假に公債を出さぬと言つた處が、恐らくはむづかしいのではないか、何となれば貨幣價値がうんと下つて支出がどんどん殖える、斯うなりますると、それを埋合せるには金はどうしたつて殖えて、通貨は益益膨脹してインフレはひどくなるより外はないと考へる、然らば之をどうしたら宜いか、結局自分の信ずる所は、此の物價の根柢を決めてしまふこと、それは今日の如き非常に箆棒な闇値の高い値段、之を封じてしまふ、つい三日ばかり前でしたか、進駐軍の誰かの御話に、矢張りインフレの防止は闇の撲滅に出發すると云ふことを話して居られたのでありますが、結局此の闇を禁ずることと、さうして此の配給を適正にやりまして、正規の配給に依つて最低の生治が保障されると云ふことが前提でありまして、それに依つて若し生活の安定が出來る、さうして配給の常道が出來まして、それに全部流れると云ふことになれば、茲に初めて物價が安定する、安定すると云ふことは結局總てのインフレを根絶する基であると考へるのであります、それで只今政府の方で色々御心配になつて、或は石炭を來年度三千萬トンにするとか、或は肥料を増産するとか、色々御話がありますけれども、併しながら是だけでは本當は、到底此の財政の整理も何も出來ないと云ふことは明かだと思ふ、詰り非常に減つて居る、それが唯幾らかの常道と申しますか、其の足りぬ分が少し助かると云ふ程度であつて、之に依つて生産が非常に増して來て、さうして物價を下げると云ふ所まで行くと云ふことは信じられない、それで私の申上げたいことは、結局今インフレを根絶する爲には、どうしても根本の物價の問題、それから配給の問題、之を解決するより外ないと考へるのでありますが、それには闇の取締と云ふことも非常に必要であります、是等も本當に困難な問題でありまして、なかなか思ふやうに行かぬと云ふことに付ては、十分我々も理解をして居りますが、併し今日の闇の取締と云ふやうなものは、丁度私がこちらに參りましたのは、十七日の十一時の汽車でありますが、此の汽車は闇列車と言はれて居るのでありますが、それを新橋で以て檢査すると云ふので、五十人位の警官が集つて居る、それがちやんと横濱を出ぬ先に向ふに通じて居りまして、横濱で殆ど下りてしまつて、新橋で引掛つたのは三人しかない、さう云つたやうなことを考へると、闇の取締は時時思ひ出したやうにやつて見ても、それでは到底いかないのであつて、もつともう少し根本的にしつかり連續的にやると云ふことが必要ではないか、例へば今申しましたやうに、こちらで警官が集つて居る、それが直ぐ先に知れると云ふことは、恐らくは驛員の誰かと連絡を取つてやつて居るのぢやないか、さう云ふことを考へると、今のやり方に付ては、可なり不完全と申しますか、不十分な點が澤山あると、考へますが、それ等の點に付ても、もつと一層注意を願つて、何とかして此の目的を達して戴きたいと考へるのであります、それで實は此のインフレに付ては、或種類の人は之を寧ろ歡迎して居るやうな點もあるかも知れませぬが、結局今日幾ら儲けて見た處が、若し萬萬一中國に於けるが如くにインフレの破綻に瀕するやうな状態になりまするならば、今新圓階級の持つて居る新圓が殆ど皆零になる、新圓のみならず、公債も何も全部零になる、斯う云ふ時代が來るに決つて居るであります、それ等の點に付ても、もう少し政府が國民に呼び掛けて本當に國民に協力を求めて、どんな階級にも、若し破綻が來るよりは、遙かに之を阻止した方が宜いと云ふことを滲み渡るやうに、國民に呼び掛けて戴いたらどうかと云ふやうな感じがするのであります、要するにインフレ問題に付て、もつと根本の物價安定だとか、或は配給だとか云ふやうな問題を強力に何處迄も勇氣を以てやつて戴きたいと考へるのであります、序に御伺ひ致しますが、此の配給公廳と申しますか、之を何か法案を今期議會に出すと云ふやうな新聞に噂もありましたが、是等に付ての計畫の有無、又やるならば、どの位の程度におやりになるか、それ等に付ての御考も御伺ひ致したいと思ひます、是で質問を終ります
〔國務大臣高橋誠一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=32
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033・高橋誠一郎
○國務大臣(高橋誠一郎君) 只今御質問の四つの點の内の第一の點に御答へ致します、此の點は更に又二つに分れて居つたと記憶致しまするが、第一は盲唖教育に關するものであります、盲唖學校の數竝に國庫の支出額に付て最初に申上げまするが、質問者の御示になりましたやうに、昭和二十一年四月三十日に於ける全國數を申しますると云ふと、官立が二校であります、それから公立が八十一、私立が二十九と云ふことに相成つて居ります、本年度の豫算を申しますると云ふと、官立二校に對しまして、一校當り約三十五萬圓、公立及び私立に對しまする補助金年額二十萬五千圓、其の内譯第一、盲唖教育補助、是が十五萬圓、盲唖學校設備費補助、五萬五千圓、斯樣に相成つて居るのであります、誠に僅少な高を計上して居るに過ぎないのであります、既に内閣に設置されました教育刷新委員會に於ける此の問題に付きましての審議報告の次第もありまするので、盲唖教育の刷新充實の爲に、本議會に提出しようと致しまする所の學校教育法の中に規定致しまして、都道府縣は其の地域内にある學齡子女中、當該の兒童生徒を收容するに足る學校を必ず設けなければならないと共に、私立學校を自由に設けることが出來るやうに處置致しまして參りたい所存で居るのでございます、それから第二の點は地方に於ける社會教育に關するものでありまするが、各都道府縣に於ける社會教育は各地方の實情に即しまして、それぞれ自主的に行はれますることが望ましいのであります、現在全國で三十の都道府縣に於きまして、獨立の社會教育課が設けられて居りますこと、御示になりました通りであります、それから又全國各都道府縣には都道府縣教育協會が設けられて居るのであります、此の點も先程御話になりました通りであります、で各都道府縣と是が連絡を保ちながら民間團體としての特質を發揮して行くことに相成つて居るのでありまするが、都道府縣の財政上、或は一般國民經濟上の理由の爲に十分に其の内容を完備し得ない状態にありますることは、誠に遺憾至極であります、之に鑑みまして文部省と致しましては、出來得るだけ強力に援助を致しまして、地方に於ける社會教育の振興を期するやうに折角努力致して居るのであります、それが爲に此の社會教育に相當の經費を計上する傾向が又認められることになつて居るのであります、國と致しましては、其の時々の必要性を考へまして、社會教育上實施すべき事項に付きまして補助金を府縣又は市町村に交付して居るのであります、例へば憲法趣旨普及であるとか、各種講座であるとか云ふやうなものに對するものであります、それから地方事務所に專任職員を設置すると云ふことは望ましいのでありまするが、其の規模から考へまして、俄に希望を致しますることは困難であります、社會教育委員の如きものの活動を期待して居る次第であります
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=33
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034・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今川上議員から醫療の問題及び勞働問題に付て御尋がありましたが、先づ醫療の問題に付て御答へ致します、醫療費の問題は、御承知の通りに一般の物價高に伴ひまして、どうも段々高くなつて來るので、實は非常に困つて居る所であります、で大體が矢張り今日の物價高は通貨膨脹の關係もありまするが、どうしても茲で、大藏大臣から度々御答のあるやうに、財政インフレと云ふものを一つ茲でがつちりと喰ひ止めまして、さうして財政のバランスを取つて行くと云ふことが、此の只今の政府の、もつ中心觀念になつて居ります、そこで豫算の膨脹と云ふことはなかなかやれませぬので、各省の豫算も千數百億も要求があつたのを六百十五億位の所で皆もう、今迄の豫算分取り、斯う云ふのは一切一擲してしまつて、茲で喰い止めなくちやならないと云ふ決心で居ります、さう云ふことで、此の醫療の問題に對しましても、豫算上の關係の非常な制約を受けます、それで思ふやうに參りませぬ、例へば醫藥品の如きも、或は二重價格制度でも執つた方が宜いのかも知れませぬ、どうしても豫算の關係でさう云ふ所へ參りませぬので、十分それ等の點に付て手を盡すことが出來ぬのを甚だ遺憾と致します、それで大體醫療の高いのは、醫藥品が段々高くなり、公定價格も上るが、闇でも行くと‥‥、之に對しては醫藥品の増産と云ふことが最も重大であります、是は相當進展致して居ります、昨年から見まして、是が倍以上にもなり、隨分進展して居り、又戰災を受けました工場も大部分囘復しまして、非常に緒に著いて居りまするが、何分にも原料が不足であります、原料の點に付ても、聯合國に輸入方を懇請して居るやうな次第でありますが、其の點に非常な隘路があります、又配給の方法もうまく行つて居りませぬ、是も目下關係方面とも十分なる打合せをやりまして、根本的に變へたい積りで居ります、又醫療の設備も、戰災で燒かれました設備の囘復も、なかなか資材其の他の關係で思ふやうに行きませぬ、之を囘復するのに、なかなか金が掛るものですから、自然矢張り醫療費、診療費の方へ負擔が掛つて來ると云ふやうな現状であります、尚公的醫療機關に付きましても、今度は醫療審議會を作りまして、根本的にやる、又出來るだけ之を擴充して行く考で居ります、國民健康保險、或は一般の健康保險に付きましても、豫算の關係其の他で、今年度もどうも思うた程は行きませぬ、此の點に付きましても、此の診療費の昂騰を來して居るので、實は困つて居るやうな状況でありますが、豫算の許す範圍内に於て全力を盡くしたい、出來ることはベストを盡して、此の面の診療費の昂騰と云ふことを防止したい、又國民醫療法に依りまして、過當なものに付きましては、嚴重な取締をやつて行くと云ふ考で居ります、第二の勞働問題に付きまして、どうも大體後手ぢやないかと、當座の問題だけをやつて行くと云ふ御叱りを受けましたが、是も矢張り微力汗顏の至りでありますが、なかなか御承知の通りに、例へば賃金の問題を只今之をやつて居る内に、もう直ぐ次の問題が出て來ると云ふやうな情勢であります、生活難及び此の思想の民主的な轉換と云ふ過渡時代に於きまして、なかなか此の勞働問題のテンポが早い、さうして其の範圍が大きいので、どうも政府も之をなかなか先頭に立つて先へ先へ導いて行くことが出來ないことは甚だ殘念に思つて居ります、又是は問題の性質上、餘り先へ進みまして、却て方向を誤まるやうなことがあつてもと云ふことも、實は考慮して居るやうな次第であります、が大體勞働問題に付きましては、先日來衆議院の社會黨とも色々連立のことに付て協議をし、勞働對策に付ても色々打合せ致しましたが、社會黨の勞働對策と云ふものと、今現に政府が懷いて居る勞働對策と云ふものは、もう百パーセント同じなのであります、今日勞働對策に對する考と云ふものは國民全體に於て一つであります、唯一部共産系其の他の指導者が獨裁的思想を以て之を導いて、之を煽動して行くと云ふことは、甚だ殘念に思つて居りまするが、大體國民の考は茲に一致して居るのでありますから、今後或は總選擧が濟みましても、勞働問題に關する限りはもう殆ど國民の輿論が一致して居る次第であります、此の線に沿うて段々勤勞階級の理解を求め、自覺を求めまして、さうして此の線に沿うてやつて行きたい、現に段々自覺的傾向が各方面に出て居りまして、官公廳の組合に於きましても、個別的の交渉はして居りまするが、本當に能く分つて呉れると云ふ風の傾向に段々進みつつあります、又産業復興會議の如きも其の線に沿うた問題でありまして、之を勤勞者の自覺と云ふことを中心にしまして、輿論に從つて此の問題を處理して行くと云ふ考で居るのであります、尚給與審議會に付ての御尋がありましたが、是は第一囘を開きましたが、不幸にして勞働者代表の委員から、中立委員に共産黨の代表を加へろと云ふ非常に熱心な、長時間に亙る主張がありまして、政府としても此の點は餘程考へなくちやならぬ點でありまするので、私は共産黨員を入れることに付て承諾を與へて居りませぬ、さう云ふことで、第一囘の審議は到頭實質問題に入ることは出來ませぬで終つたのは甚だ殘念に思つて居ります、第二囘は出來るだけ近い機會に開きたいと思つて居りますが、此の共産黨員を入れて呉れと云ふ問題などに對しまする十分な考慮を加へて行かなければならぬので、出來るだけ早く第二囘を開きたい、併し此の問題も爭つて之を決めて行くことになりますると、極めて短時間に進行するのでありまするが、矢張り斯う云ふ問題は、總ての代表の間に於て圓滿に話を進めて行かなければならぬ事情にありまするので、多少時間が掛つて居ると居ふことを御了察願ひたいと思ひます、それからこんな風に物が段々騰つて行つては、鼬ごつこぢやないかと云ふ御話もありましたが、是は何れ關係國務大臣から御答になることと思ひます、矢張り大體にしましては、インフレをどうしても防止し、さうして増産面なり、或は配給面なりと云ふ根本問題を解決して、生活安定と云ふ面に行かなければ、勞働問題は解決致さぬのでありまして、勞働問題の上へ出て來ました現象だけを捉へて處理してはいけませぬ、問題の根柢は言ふ迄もなく生活問題になるのでありまするが、唯御説の如く公債をやると云ふやうなことに付きましては、是はどうも公債で購買力を段々増加さして行くだけではいかぬので、何かの方法に於て矢張り吸收すると云ふことでないと、バランスが取れぬと云ふ風に私共は考へて居ります、又企業整備に伴ふ失業者對策に付て色々御意見がありまして、御尤もでありまするが、此の點に付きましては、先日も此處で申上げました通り、只今では、求人數が少いやうな奇現象を呈して居りまするが、是はデフレ政策の滲透と共に、必ずや此の失業問題がもつと猛烈に具體化して來る問題であると云ふ期待の下に、職業補導なり、或は共同作業なり、其の他色々の手の打てる限りは打つて居ります、尚公共事業も、今年度の十月から十二月迄は三十三億、一月から三月迄も相當のことをやつて居りまして、勤勞署に現はれました面から見ますと、四十萬人ばかりの就業が此の方面に吸收されて居りまするが、實際に於ては農民の一部有閑な者を混ぜまして、百二三十萬人は之に吸收されて居ると云ふ見込であります、明年度は九十億圓の公共事業費を計上しまして、其の上に又色色特別會計の事業もありませうし、尚又地方費に於て之に三十億程度を附加することになりませうから、相當の額になり、此の方面には百八十萬人以上の者を吸收したいと云ふことで、將來の企業整備に伴ふ面に對して、出來るだけの備へをしたいと云ふ考で居ります
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=34
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035・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 川上さんの御質問に對して御答へ致します、郵便料金、鐵道運賃等、さう云ふものの料金を上げるよりも、寧ろ公債の方が宜いと云ふ御意見を承りました、一番の理想は、賃金等が値上になつた場合に、其の事業其のものを合理化して行くことでありまして、此の點も川上さんの御觸れになつたことでありますが、無論鐵道、通信等に於きましても、事業の合理化も各特別會計に於て致す筈でありますが、併しそれだけでは間に合ひませぬので、矢張り料金値上を必要とするのであります、只今それをどれ程に上げるか、又其の豫算措置をどうするかと云ふことは檢討中であります、唯それを公債で賄ふと云ふことは、私としては異論がありますので、矢張り料金に依つて之を賄ふ、公債でありますと、それだけ餘計に購買力をそこへ出す譯で、料金の改定に依る方が此の際適當であると考へて居る次第であります、又インフレに付きまして、段々貨幣價値が低下して、中國に於けるが如き状態に陷るのではないか、又政府は昭和二十二年度の豫算の收支は均衡を保つと言ふが、それは特別な財産税等に依つて行はれるのであらう、從つて明後年以後は不安であると云ふやうな御話でありますが、是は近いうちに豫算の御審議を願ふことでありまするから、其の際に全貌がはつきりする譯でありますが、如何にも財産税の收入も多少でございませう、併しながら大部分は所謂普通歳入で支辨される譯であります、明後年以後に於て若し物價がどんどん上つて、從つて支出が非常に膨れると云ふことであると、支出が膨れますから、明後年以後又收支の均衡を破るのだらうと云ふことに對しましては、どうしても左樣に物價が上つて支出が殖えると云ふことに對しましては、所謂租税の豫算課税の方法に依りまして、歳入も同時に増加して行くと云ふ處置も現在執つて居る譯であります、併しながら見込としましては、昭和二十二年度の豫算の收支が均衡をすると云ふことでありますと、私は所謂インフレには、先般申上げましたやうに、ブレーキが掛つて物價が左樣に暴騰して行くと云ふことはないと、確信を致して居ります、同時に現在は御承知のやうに、二十一年度も二十二年度も隨分多くの臨時的の支出があります、是も無論明後年になつて全部なくなると云ふことは、申上げ兼ねますけれども、兎も角臨時的な支出が非常に大きいでありますから、其の方の調整も年の經つに從つて行はれることと信じて居ります、ですから昭和二十二年度の財政に成功し得るならば、二十三年度から其の成行を一層確實にすると云ふことは無論期待出來るものと信じて居る次第であります、闇の問題に付ては、之を強力に撲滅し、正規のルートに依つて配給をするやうにしなければならぬと云ふ御説は非常に御尤であります、是には政府も努力して居る譯でありますが、まあ御承知のやうな次第でありまして、なかなか是は事實困難な問題であります、從つて政府としては強力に行ひ得る所の統制は強力に行ひ、同時に不必要であるとか、或は却つて弊害があると云ふものに付ては、其の統制を何等か調整をすると云ふ考を以て只今進んで居ります、要するに闇とか云ふものは、末端の現象でありまして、其の根本は斯樣なものが發生する根本的經濟的原因があるのでありますから、其の根本的原因を解除する、其の最も大きなものは財政上から通貨が發生して、所謂インフレを促進すると云ふ點でありますから、其の點に、根本にメスを下すと云ふことは、私は此の際最も必要であると思ふ、併しながらそれ故に現在横行して居る所の闇を默つて見て居るとか、或は物資の正規な配給ルートを通ることを怠つて居るとか云ふ意味ではございませぬ、それはそれでやりますが、それよりも一層根本の原因にメスを加へたいと考へて居る次第であります、無論、是等に對しては、大いに國民に呼び掛けて、國民諸君の協力を受けなければならぬと考へて居る次第であります、尚配給公廳のことに付きましては、只今石炭、肥料、及び石油に付きまして、配給公廳、ガヴアーメント、エージエンシーとしての配給機關を作ることに決定しまして、只今それぞれ商工省で準備をして居る譯であります、其の他の物に付きましては、未だ決定を致して居りませぬ、併しながら主要食糧等に付ては、只今如何に致すかと云ふことは研究を致して居る次第であります、出來るだけ正規の配給ルートを確實に通して行くと云ふことに、一層進めて參る考で居る次第であります、以上甚だ簡單でありますが、御答と致します
〔國務大臣一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=35
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036・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 川上議員の御質問中、私に關係のある點に限り、御答を申上げます、待遇改善等に關して、郵便料金の値上をすると云ふ噂を聞いて居るが、果してさう云ふやうな考を持つて居るのかどうか、若し考を持つて居るならば、料金の値上げよりも寧ろ公債に其の財源を求める方が宜いのではないか、斯ふ云ふ御趣旨のやうに承つたのであります、御承知の如く遞信從業員の生活苦に對しましては、政府といたしまして、何とか是等の生活の安らかに、さうして彼等が與へられた椅子に安心して腰を下ろして業務の爲に精勵したいと云ふ態度を執つて貰ひたい、之に對しては最低生活の保障をする必要があると云ふ所から、彼等の待遇の改善をしなければならないと考へて居るのであります、此の時に當つて、然らば從業員諸君の要求して居りまするやうな、平均千七百何十圓と云ふが如き國費を出すとするならば、只今遞信省が從業員諸君に拂つて居りまする人件費は、二十數億に上つて居りまするが、之を從業員諸君の要求の如く致しますならば、八十數億の金がなければなりませぬ、併しながらそれ等の莫大の國費を支出することは、今日我が國の財政状態から考へまして、是は困難なことである、故に政府が取敢ずまあまあ此の程度ならばと云ふだけの改善をするに致しましても、少くとも五十數億の金が要るのであります、其の五十數億の金をあなたの仰せになるやうに、之を公債に俟つと云ふことになりますると、是は一般國民に對して課税すると云ふことと結果は同じになるのでありまするが、是が宜いのであるか、或は郵便等を利用する所の利用者に對して之を負擔せしむるのが宜いかと云ふことに付ては、色々意見もございませう、併しながら私の考では、斯う云ふやうな郵便とか、或は電話とか電信とか云ふものを利用するそれ等の利用者に對して之を課税すると云ふことが合理的ではないか、但しそれが非常に負擔が大きいと云ふ場合に於ては、其の一部を公債に俟つて、一般の國民諸君に御願ひすると云ふことも、是は考へなければなるまいと、斯樣に思ふのであります、そこで私は取り敢ず利用者に對して之が負擔をして戴くと云ふ建前から、葉書とか封書とか云ふものに對する郵便料金の値上を只今考へて居ります、是は何れ皆樣方の御協贊を得べく豫算を提出することになるでございませうが、それはあなたの御聽きになつて居るやうに、葉書を七十五錢、封書を一圓五十錢にすると云ふことが宜いのであるか、或はもう少し下げた方が宜いのでないかと云ふことを、私色々考へて居ります、今日の如く物價が非常に騰つて參つて居りまする時に、葉書の十五錢、或は封書の三十錢と云ふことは、是はどうも餘り安過ぎる、色々な物價が十倍、二十倍、甚だしきは百倍とかなつて居る時に、之を多少値上すると云ふことは已むを得ないのではなからうか、殊に明治二十二年の頃は、葉書が五厘、封書が一錢、其の時には米の値段が一石五圓、それが今日では、米が一石買上料金が五百五十圓、丁度五圓の百十倍、さうすると五厘の百十倍五十五錢、一錢の百十倍一圓十錢と云ふ位に葉書を値上しても必ずしも不當の値上ではないのでなからうか、但し是は二十二年の葉書竝に封書の價格の標準が、米を基準にして定めたものであるかどうかは、是は分りませぬけれども、さう云ふ點を考へて見ますると、今日此の十五錢の昔の五厘の葉書を、百十倍とすると、五十五錢になる、一錢が百十倍になつて一圓十錢になるが、斯う云ふ點をも考へまして、今私は葉書、封書を相當額値上することが適當ではなからうかと考へて居るのであります、併し此の點を一つ他の方面から考へて見ますると、郵便のサービスと云ふのが前囘の議會でも御叱りを受けましたやうに、非常に惡うございます、それが爲に、例へば一つの封書を出すのにも、書留料若しくはもつと丁寧なのは配達證明をつける、現に斯う云ふやうな事實が行はれて居りまする所から見ますと、三十錢の郵便料金が二圓三十錢になる、之に速達を加へると三圓三十錢になる、之を相當額に値上をしてサービスを改善して、速達料金を取らなくても、書留料金を取らなくても、配達證明の料金を取らなくても、それ等の費用を支拂つたと同一以上のサービスが提供が出來ると云ふことになれば、必ずしも私は之を相當額増額しても高くはない、實は斯樣に考へて居るのでございます、從業員の方では、自分等の給與に關する費用を料金値上に依ると云ふことは我々は贊成しない、故に是等のものは新圓階級若しくは隱退藏物資、若しくは價格差益金と云ふ方面から取れば、我々の待遇改善に料金を値上すると云ふ必要はないぢやないかと云ふ議論もございます、併しながらそれは議論と致しまして、實行と云ふものがなかなかむづかしいのでありまするから、私の今申上げますやうに、利用者に其の一部分を負擔して貰ひ、少しく利用者の負擔が重過ぎると云ふやうな點は、一般會計の方面、即ちあなたの仰せになります公債と云ふ方面にも一部之の財源を仰ぐと云ふことも適當ではなからうかと考へて居る次第でございます
〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=36
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037・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 川上さんの御質問の中、運輸に關する分に付て御答へ申上げます、運賃の値上に關する御質問に付きましては、只今の大藏大臣、或は郵便料金に關する遞信大臣の御答辯の趣旨に依つて御了解願ひたいと存じます、それから相當數の冗員を抱へて居る、經營合理化の見地から是は檢討を要すると云ふ御質問でございますが、御説の如く相當數の冗員を抱へて居つた時代もあつたのでございます、併しながら其の後新規採用は之を見合せて居りまして、相當數冗員は減つて參つて居りますから、此の點御了承願ひたいと存じます、更に本日國鐵總聯合と私との間に於きまして、勞働協約を締結致しまして、拘束八時間と云ふ勞働時間を協約致したのでございます、之に依りまして約五萬位の國鐵の職員を増加しなければならぬ、斯う云ふことにも相成つたのでございます、それから先般本議會に於て御報告申上げました通り、聯合軍から一萬六千輛の自動車の拂下を受けて居ります、之に依りまして相當大規模なる省營のトラツク、バスの運營を致したい、斯う存じて居ります、從つて是等の職員に對しましては、現在の國鐵職員から或程度の轉換配置を致すと云ふことに相成つて居ります、それから進駐軍要務として尚職員の増員を要求されて居ります、もう一つ新建設と云ふこともございますし、更に戰災復舊に極力努力致して居りまして、段々輸送力も充實整備を來して居ります、それから政府の石炭三千萬トン計畫に依りまして、段々石炭増産の實を上げることが出來たならば、我々の御願する通り石炭の増配を受けまして、出來るだけ早く輸送力を昔日の姿に復元致したい、斯う念願致して居ります、從つて御説の冗員も殆どなくなると云ふ時代も遠からず來るのでございますから、どうぞ御了承願ひたいと存じます、更に御説の如く經營の合理化とか、或は勞働能率の増進と云ふことは、私國鐵五十七萬の職員と一生懸命努力致しまして必ず御期待に副ふやうに致したい念願でございますから、どうぞ御了承願ひたいと存じます
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=37
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038・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 川上議員に御答へ致します、民生を安定するには、闇をなくすると云ふことが必要であると云ふことは申す迄もないことであります、司法當局と致しまして、此の闇の撲滅に付非常に關心を持つて居るのでありますが、此の前も議場で私が申上げた通り惡質の闇行爲、殊に主食糧其の他石炭鐵等の闇行爲に付ては徹底的に之を檢擧すると云ふ方針で參つて居つたのであります、而して相當の成績を擧げて居ると云ふことを私は皆さんに御報告申上げたいと思ひます、其の後本月の七日から更に一般的の全國に亙る闇行爲撲滅に付ての方針を立てまして、内務省と緊急な連絡を保つて只今其の方向に進行して居ります、但し此の闇行爲の撲滅に付ては、國民各位の協力を待たなくちや遂行出來ないのであります、一例を申上げますと、一昨日私は内務省の警保局長と此の問題に付て相談をした際に、大阪の警察部では、徹底的に此の闇行爲撲滅と云ふ方針でやつた處が、例の闇屋が相當數減つた、一週間後になると、市民は大阪の警察部はどうも餘り行き過ぎぢやないか、全く闇物資が我々の手に入らぬとすると誠に生活上困る、どうも大阪の警察部は少しやり過ぎたと云ふ非難が出て來たと云ふことを聞いたのであります、私は其の際に警保局長に、左樣な非難に顧慮せずに徹底的に之を繼續してやれと云ふことを申しました、そこであります、本當に眞劍に政府が掛つて行くと、國民の方で俺の方で不自由だと云ふやうな悲鳴を擧げるのです、是は私は非常に國民が惡いと思ひます、國民各位に於ても政府の方針に從つて御協力を願ひたいと思ひます、去年御承知の通り、アメリカでも相當物價の統制をしたのであります、處が、御承知の通り牛肉が約四十五パーセント當り値上りをした、其の時に國民はどうしたか、國民は政府に協力してボイコツトをやつたのであります、そこで又肉の値段が下がつたと云ふことを聞いて居ります、私はニユース・ウイークで讀んだのであります、左樣な譯でアメリカの國民は政府の施策に付て非常に協力致して居るのであります、さうして私は眞劍に闇行爲の撲滅を致したいと思うて居ります、先刻も申上げました通り、今月の七日から徹底的に方針を立ててやつて居ります、どうか各位に於かれましても政府の方針に御協力を下さいまして、闇行爲の撲滅に邁進されむことを此の機會に御願ひする次第であります
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=38
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039・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 川上議員に御答へ致します、私の所管に對する御質問も闇の存在が物資を正常のルートから横流しをさせることも多い、又國民生活を一層不安ならしむる原因となつて居るのだから、之をもつと有效適切に取締つては如何と云ふ御意見であつたと思ひます、御説の如く政府でも出來得る限り闇の撲滅を期したいと努力して居ります、此の點は司法大臣も申された通りであります、但し闇の存在しますのは、何と申しても物が不足して居るのであります、又適正な價格と云ふものが容易に捉へられないのだ、人心も頽廢して居る、斯う云ふやうな色々の理由が集つて闇の根源を成して居るのでありますが故に、之を徹底的に勦滅してしまふと云ふには、何と申しても統制經濟の根本を衝くよりは致し方がありますまい、と申しても現在に於て物が足りない、總ての人に之を乏しいながらも出來るだけ配給致さなければならないと云ふ點になりますれば、或統制も已むを得ないと云ふことも起る、此の間に於て闇を撲滅すると云ふことでありますが、御承知の通り昨年八月、政府と致しましては所謂八・一肅正と申した時に相當嚴重に闇の取締を致しました、是が爲に闇は相當減りましたけれども、亦再び是が普遍的に行はれるやうな状態になつて居ります、更に先刻司法大臣が申されました通り、二月七日から全國に亙つて出來るだけ嚴重に、有らゆる方面に亙つて闇の取締を斷行致して居ります、司法大臣の申された通り、大阪方面に於ては特に其の效果が現れて居る爲に、又反動をして物の出廻りが少いと云ふやうな苦情もあります、闇を撲滅すれば、闇に流れて居りました所の品物が一時止まる虞がありますからして、それは何としても皆樣方から我慢して戴いて、其の氣持に徹して參りますれば或統制がありましても、其の正常のルートに依つて物が流れるやうになると思ひます、司法大臣が申されました通り、是は政府のみで行はれることでない、配給機構も出來るだけ完成致さなければなりませぬ、又國民一般も之に依つて御考慮下さるやうに致さなければならないのであります、今度はやり掛けた取締を何處迄も徹底するやうに致したいと政府は決意を致して居ります、けれども、御承知の通り、先般も私は申上げた通り、全國に僅か九萬の警察官すらありませぬ、八千萬の人口に對して九萬の警察官と云ふのは極めて少いのであります、勿論之を其の儘にして置く積りはなく、成るたけ良い警察官があれば増員をする積りで増員計畫を立てて居ります、又之を有效に活動させる爲に訓練も致して居ります、さうして警察官は時に依つては身を挺して其の職務に當らなければならないやうな場合も多々あるのであります、此の警察官は、現在に於ては可なり薄給でありますが、それにも拘らず能く其の職務に忠實に當つて呉れて居ります、是等に付きましても、何としても全國民の皆樣方から御協力を願つて、此の國民生活の不安の一つの原因を成す、或場合に於ては物價騰貴の誘導體ともなる此の闇を撲滅したいと思つて居るのでありますから、政府としては非常なる決意を以て出來るだけの努力を致して居ります、どうか此の足らざる所は國民諸君の御協力を得て其の目的を達するやうに致したいと思ひます、宜しくどうか御援助の程御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=39
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040・川上嘉市
○川上嘉市君 此の席から失禮致します、各關係大臣の御懇切な御答辯に對して誠に有難うございました、時間もございませぬから、是で質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=40
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041・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 是にて各大臣に對する質疑は全部終了致しました、念の爲に申しますが、本日衆議院から國會法案が提出せられました場合は、明日午前十時より開會致したいと存じます、議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後零時二十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X00819470221&spkNum=41
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