1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月七日(金曜日)午前十時十五分開議
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議事日程 第十三號
昭和二十二年三月七日
午前十時開議
第一 会計等の特例に関する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 所得税法の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會ノ續(委員長報告)
第三 恩赦法案(政府提出) 第一讀會ノ續(委員長報告)
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 昨六日村上巧兒君貴族院令第一條第四號に依り貴族院議員に任ぜられました、就きましては其の部屬を第三部に定めました
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=1
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002・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 其の他諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=2
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003・会議録情報2
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〔參照〕
昨六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日之ヲ衆議院ニ送付セリ
統計法案
同日證券取引法案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長 男爵 周布兼道君
副委員長 子爵 錦小路頼孝君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
所得税法の一部を改正する法律案可決報告書
恩赦法案可決報告書
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十二囘帝國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
大藏省所管事務政府委員
大藏事務官 岡村峻君
厚生省所管事務政府委員
厚生事務官 石丸敬次君
同 宮崎太一君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
会計法等の特例に関する法律案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
華族世襲財産法を廃止する法律案
請願法案
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=3
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004・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、請暇の件に付御諮りを致します、長谷川赳夫君より病氣に付九日間請暇の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=4
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005・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=5
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006・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第一、会計法等の特例に関する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=6
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007・会議録情報3
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会計法等の特例に関する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月六日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
…………………………………
会計法等の特例に関する法律案
昭和二十二年度の歳入歳出総予算は、会計法第八條第一項の規定にかかわらず、これを歳入にあつてはその性質、歳出にあつてはその目的に從つて部に大別し、更に各部中においては、これを款項に区分し、又、その收入又は支出に関係のある部局等の組織の別を明らかにするものとする。
昭和二十二年度の歳入歳出総予算及び特別会計歳入歳出予算中に設ける予備費については、会計法第九條の規定は、これを適用しない。
昭和二十二年度の特別会計歳入歳出予算は、各特別会計法の規定にかかわらず、同年度の総予算とともにこれを帝國議会に提出することを必要としない。
附 則
この法律は、昭和二十二年度の総予算の提出の日から、これを適用する。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=7
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008・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました会計法等の特例に関する法律案提出の理由を御説明申上げます、昭和二十二年度豫算は概算決定の遲延其の他各般の事情に依りまして、議會提出が相當遲延致したのでありますが、今囘漸く歳入歳出總豫算に付ては別途其の提出を見るに至りましたのでありまして、又特別會計の歳入歳出豫算に付きましては、是亦近日中に議會提出を致し得る目途の下に目下鋭意其の編成に努力致して居る次第であります、而して政府は昭和二十二年度の豫算編成に當りましては、豫算の平明化等にも極力意を注いだのでありまして、即ち從來の豫算の形式は、歳入歳出を經常臨時の二部に分ち、更に之を款項に區分致して居りましたが、今囘は歳入歳出を、歳入にありましては其の性質に依り、歳出にありましては其の目的に從ひまして部に大別し、各部中に於て之を款項に區分し、所謂目的別の區分を行ふの外、又同時に收入支出の局に當る部局等の組織別の區分をも明かに致したのであります、又從來豫算中に設けました豫備費に付きましては、第一豫備金及び第二豫備金に區分致して參つたのでありますが、過去に於ける豫備金支出の實情に鑑みまして、昭和二十二年度豫算に付きましては、第一第二の區分を廢止して豫備金一本に致したのであります、而して斯かる形式を採用することに致しますのには、之に伴ふ法的措置をも竝行的に講ずることが必要でありまして、政府に於きましては、之に關し別途財政法案の提出を準備致して居るのでありますが、目下の處、其の提出は若干遲れる状況にありますので、今囘會計法第八條第一項及び第九條の規定に對する特例を設けて措置することに致したのであります、尚昭和二十二年度豫算の編成は、以上申上げます如く、歳入歳出總豫算と特別會計歳入歳出豫算とは同時に提出することが不可能の状況にあります關係上、特別會計豫算の提出時期に關する特別會計法の規定に對して特例を設ける必要がありますので、之をも併せて此の法律案を提出致しました次第であります、何卒事情御了承の上、御審議下さいまして、速かに御協贊を與へられむことを御願する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=8
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009・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました會計法等の特例に關する法律案は、証券取引法案外一件の特別委員に併託せられむことの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=9
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010・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=10
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011・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=11
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012・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=12
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013・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第二、所得税法の一部を改正する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會の續、委員長報告、委員長梅渓子爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=13
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014・会議録情報4
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所得税法の一部を改正する法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月六日
委員長 子爵梅渓 通虎
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔子爵梅渓通虎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=14
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015・梅渓通虎
○子爵梅渓通虎君 只今議題となりました所得税法の一部を改正する法律案特別委員會の經過竝に結果を御報告申上げます、本委員會は三月四日開會致しまして正副委員長の互選を行ひ、五日六日の兩日に亙り愼重審議の結果、全員異議なく之を可決すべきものと決定致した次第でございます、尚此の法案の提案理由に付きましては、本議場に於きまして、既に大藏大臣より説明がございましたので、之を省略致します、茲に質疑應答の中其の主なるものを御紹介致します、一委員より、金額を六千圓とか、二百四十圓に引上げたが、此の基準は何で決めたか、何か根據があるのかとの質疑に對しましては、政府委員より六千圓、即ち月五百圓と云ふのは、是が最低生活費と云ふ意味でない、唯基礎控除と云ふ制度竝にそれに伴ふ累進性を考へ合せて、結局六千圓と云ふ數字を妥當なりとして出したのである、尚中央勞働委員會案も四百圓となつて居り、四月よりの改正に依り勤勞所得に付て二割の控除を認めることになつて居るので、それと合致せしめる爲に此の金額とした、尚四月に先立ち改正したのは、他の事業所得は年額と定められて居るが、甲種勤勞所得は給與期間に應じて徴收されるので、遡つてやらぬと九箇月分しか控除されないからであると云ふ説明でありました、又一委員より、本年度の歳入との關係如何との質疑に對しまして、政府委員より、若し引上げるとすると、月額六億圓位の收入減と相成ると思ふが、半面給與自體が引上げられて居るので、税收入と致しては差引大體増減はないと考へて居るとの答辯がありました、又一委員より、勤勞所得に對する物納の案があると聞いたが間違ひであらうか、又現物給與の點はどうかと云ふ質問に對しましては、政府委員より、物納制度は全然認めて居ない、最近發表の税法改正の要綱に於ては、相續税の物納制度を現在も認めて居るが、之を擴張して居るのである、現物給與は給與として現在も課税して居る、併し最近現物給與の弊害が相當廣く行はれ、此の際申告納税の際明かに給與として課税すると明記する方が注意を喚起する上に於て宜いと思ひ、一應要綱に掲げた次第であるとの答辯でございました、又一委員より、第一次歐洲大戰後のソヴイエトでは、經濟復興の基本としての石炭増産の爲、總てを犧牲にして之に全力を集中したが、我が國に於ても石炭増産は最重要事だから、思切つて炭鑛勞務者のみ勤勞所得税を撤廢すると云ふ意見なきやとの質疑に對しましては、大藏大臣は、其のやうな際立つたやり方をやるより、我が國では種々なる周圍の事情上、八方うまく行くと云ふやり方の方が宜いので、炭鑛勞務者には給與上種種優遇して居るが、特に勤勞所得税を撤廢すると云ふ意思はないとの答辯がありました、又一委員より、扶養家族の課税を撤廢しては如何との質疑に對しまして、大藏大臣は今之に對して全面的に廢するのは如何かと思ふ、今の處、六圓を二十圓に致したから、結局百圓は免除になると云ふ結論になるが、それ以上免税すると多數の内にはさうすることに依つて給料の方を殖やさず、家族手當だけを殖やすと云ふ脱税の途も行はれる、矢張り全額免除は非常にむづかしいと思ふとの答辯でありました、其の他本法案に關聯致しまして、第三國人に對する課税の問題、或は所謂闇所得に對する課税の問題、其の他税制に關する問題等、委員各位より種々熱心なる質疑がありましたが、是は省略致しまして、詳細は速記録に依つて御承知を願ひます、以上のやうな次第で質疑を終りまして討論に入りましたが、別に御發言もございませぬので、採決を致しました處、原案通り全會一致を以て可決せられたのでございます、簡單でございますが以上を以ちまして報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=15
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016・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=16
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017・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=17
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018・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=18
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019・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=19
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020・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=20
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021・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=21
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022・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、本案全部委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=22
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023・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=23
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024・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=24
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025・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=25
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026・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=26
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027・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=27
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028・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=28
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029・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=29
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030・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第三、恩赦法案、政府提出、第一讀會ノ續、委員長報告、委員長稻葉子爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=30
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031・会議録情報5
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恩赦法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月六日
委員長 子爵稻葉 正凱
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔子爵稻葉正凱君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=31
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032・稻葉正凱
○子爵稻葉正凱君 只今議題となりました恩赦法案の特別委員會に於ける審議の經過竝に結果を御報告申上げます、委員會は本月五日、六日の兩日に亙り愼重審議の結果、全委員異議なく本案を可決すべきものと決定致した次第であります、是より本委員會に於きまする審議の模樣を簡單に申述べたいと思ひます、先づ司法大臣から本案に對する御説明を承りましたが、既に本會議に於て爲されましたことでもあり、茲に改めて其の内容を申上げることは省略させて戴きます、次に質疑に入りまして、其の主なるものの要點を御紹介申上げますと、恩赦法の目的が現行恩赦令と變つて行くか、又如何なる時に恩赦を行ふかとの御質問に對しましては、恩赦の目的とする所に變りはない、又之を行ふのは從前恩赦は多く皇室の御慶事等に際して行はれたのでありますが、今後は時の情勢を把握し、内閣に於て適當と考へた時に行ふので、特に確定的な標準はないとの御答でありました、新憲法が實施せられれば、犯罪と云ふものに對する法律上の觀念が變り、又國民の罪に對する道徳的な觀念にも變化がある、是も情勢の變化であると思ふが、新憲法が實施せらるる時は恩赦の行はれる時期であると考へられるか否かと云ふ御問に對しましては、軍事關係の犯罪に付ては一昨年と昨年との兩度の恩赦に依り、大體恩典に浴して居り、新憲法の實施に伴つて、現在の刑罰法規と、將來の改正せらるべき刑罰法規との間に於て、以前は處罰されて居つたが、今後は處罰されぬと云ふものが出來れば、是は其の改正法自體に於て經過法が解釋することと思ふ、今の處、新憲法の實施に伴つて恩赦が行はれると云ふことは考へて居ないとの答辯でございました、内地裁判所の判定に對してのみならず、軍法會議、外地裁判所、又復員裁判所等に於て言渡された刑に對し、恩赦の適用ありやとの御尋には、適用されるとのことでございました、恩赦の職權を行ふに當り内閣に於ては刑の根本の趣旨に鑑み、其の言渡を執行した裁判所に一應諮問することが妥當ではないかとの御意見に對しましては、恩赦は國家の恩惠である、裁判事務とは全然懸け離れた國家の主權の一つの發動の形態と申して差支ない、然るが故に、行政權の首班たる内閣に、其の權限が與へられたもので、各國の例を見ても、直接主權の發動として内閣でやつて居る、從つて斯樣な事務に裁判所で關與することは、寧ろ妥當でないとの御答がございました、又選擧違反者の復權に付て、それが容易く行はれること等に依り、選擧違反に對する一般の權念が、他の犯罪と異なるが如く感ぜられるが、政黨政治が正しく行はれ、健全なる民主國家として再興する爲には、其の點を餘程愼重に考へねばならぬと思ふが如何との御質問に對しましては、選擧違反に付て國民一般が普通の犯罪より輕く見て居ると云ふことは事實であるが、刑罰法規自體に於て選擧違反を他の犯罪よりも重く視る、或は復權に付て他の犯罪と同じやうに、容易く復權しないやうに取扱ふと云ふやうな措置は出來て居ないので、御心配の點は今後國民のみならず、政府も選擧違反を輕視しないやう十分適切なる方法を研究したいとのことでございました、其の他復權の申出、現行恩赦令に「刑ノ言渡ヲ受ケタル者」とあるのを、本法案に「有罪の言渡を受けた者」と改めた理由等々の質疑應答がございましたが、是等は速記録に依つて御了承願ひたいと思ひます、以上の質疑應答を終り討論に入りました處、一委員より、從來の恩赦は天皇の大權に屬し、天皇の恩惠に基いて爲されると云ふことになつて居る、新憲法に於ては恩赦は内閣の國務として、要するに國の恩惠と云ふことに改められた、恩赦は國の恩惠であると同時に、司法裁判の結果を動かすと云ふ重大なる關係のある事柄であるから法律の形、即ち恩赦法と云ふ法規に依つて規定しなければならぬことは當然のことと思ふ、併し新憲法が新たになつても、恩赦と云ふものは殆ど目的は同じであるから、改正憲法に依り刑の執行の免除と云ふやうな特別なものが加へられただけで、恩赦法案に於ても恩赦令に於ても内容的に大差なく、適當なる法案であると考へられるが、唯本法案には、恩赦令にあつた復權に關する本人の出願權の規定が削られてあるが、本人の出願を許さぬ譯ではなく、施行令にさう云ふことを書くと云ふ御話であるから、強ひて本法案に其の規定を設ける必要もなからうと思ふが、施行令に於て十分規定して戴きたい、又恩赦があつた時に判決の原本に、其のことを檢察官が附記しなければならぬと云ふ規定の適用に付、裁判所と檢察廳と云ふものが分離することになると、非常に面倒な關係になると思はれるから、其の點に付ては裁判所と十分連絡の上、遺漏なきやうに運用して戴きたいと希望を附して、原案に贊成の意を表されたのであります、斯くして討論を終り、採決に入りました處、全委員異議なく本恩赦法案を原案通り可決すべきものと、決定した次第であります、之を以て簡單ながら御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=32
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033・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=33
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034・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=34
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035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=35
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036・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=36
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037・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=37
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038・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=38
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039・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、本案全部委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=39
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040・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=40
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041・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=41
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042・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=42
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043・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=43
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044・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=44
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045・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=45
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046・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、次會の議事日程は決定次第、彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十時三十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01319470307&spkNum=46
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