1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月十八日(火曜日)午前十時二十五分開議
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議事日程 第十八號
昭和二十二年三月十八日
午前十時開議
第一 罹災救助基金法の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 教育基本法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=0
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔參照〕
昨十七日会計檢査院法ヲ改正スル法律案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長 伯爵 柳澤保承君
副委員長 男爵 三須精一君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
昭和二十二年度歳入歳出豫算案
昭和二十二年度特別會計歳入歳出豫算案
昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案(改第二號)
昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案(改特第一號)
豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件(改追第一號)
罹災救助基金法の一部を改正する法律案
教育基本法案
同日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
綱紀振肅に關する決議案(公爵桂廣太郎君外六名發議)
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
統計法案
恩赦法案
本日各部ニ於テ常任委員ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果左ノ如シ
第四部
豫算委員木下謙次郎君ノ補闕トシテ吉田久君當選
第六部
懲罰委員吉田久君ノ補闕トシテ澁澤金藏君當選
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=2
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003・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、請暇の件及び委員辭任の件に付御諮りを致します、井上篤太郎君、古莊健次郎君、江口文雄君何れも病氣に付、井上君十日間、古莊君會期中、江口君十一日間請暇の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=3
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004・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、昨十七日豫算委員江口文雄君より病氣に付委員辭任の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=4
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005・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、就きましては第一部に於て其の補闕選擧を行はれむことを望みます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=5
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006・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 大藏大臣より發言を求められて居ります、此の際許可を致します、石橋大藏大臣
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=6
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007・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 昭和二十二年度一般會計歳入歳出豫算案、同特別會計豫算案、昭和二十一年度一般會計及び特別會計追加豫算案等の御審議を煩はしますに當り、茲に其の大要を申述べ、併せて政府の財政經濟政策の大體の方針を明かに致したいと存じます、最初に昭和二十二年度一般會計歳入歳出豫算案に付て御説明致すのでありますが、先づ其の形式に付て一言致します、政府は新憲法の施行に伴ひ、財政制度の民主化を徹底せしめる爲、別途今議會に財政法案を提出し御審議を願ふことと致して居りますが、昭和二十二年度豫算は此の財政法案に基きまして、其の形式に根本的改正を加へました、之に依りまして、從來甚だ分りにくいと非難されました豫算の面目は一新し得ると考へる次第であります、豫て議會及び一般國民からも強く御要求のある所でありますから、政府は此の要望に從ひまして、今後共尚豫算の形式に付きましては一層の研究を重ね、其の民主化の徹底を圖りたいと覺悟致して居ります、次に昭和二十二年度からは、當初から一年間の完全豫算を議會に提出する方法を採りました、續いて追加豫算の御審議を煩はす弊を一掃することに致しました、將來或は豫期せざる事情、若しくは特別重大の理由等の發生に依りまして、次期議會若しくは其の後に追加豫算の必要を生じないとは勿論限りませぬ、併し少くとも今期議會に、昭和二十二年度追加豫算の現はれることはないのであります、又將來と雖も些少の支出でございますれば、豫備金を以て之を賄ひ得る建前と致しました、それが爲昭和二十二年度豫算に於きましては、前年度當初豫算の八億圓に對しまして、一擧豫備金を三十億圓に増加致しました、同時に從來の第一、第二豫備金の區別を撤廢致しまして、其の運用の圓滑を圖ることに致したのであります、斯樣に追加豫算を一掃する方式を採用致しましたことも、從來甚だ理解し難いと言はれました財政を明瞭にし、其の民主化を徹底するに大いに役立つかと考へる次第であります、併し以上の如く豫算の形式を改めること等の爲、其の編成に手間が取りまして、政府と致しましては、非常の努力を致しましたに拘らず、議會提出時期が甚だ遲れましたことは、誠に遺憾至極であります、之に付きましては、曩に會計法第七條第一項の特例に關する法律案の御審議を願ふ際、一應御了承を得た所であります、茲に重ねて御寛恕を請う次第であります、扨、昭和二十二年度一般會計豫算は以上の如く形式に改良を加へますと共に、其の内容に付きましては、又一つの根本方針を立てまして、之が貫徹を圖りました、と申しますのは、昭和二十二年度財政に於きましては、嚴に收支の均衡を保つことに致したことであります、私は昨年七月、昭和二十一年度改定豫算を本院に提出するに當りまして、其の收支の關係は決して十分に滿足し得るものでないことを率直に認めますと同時に、併し來年度以降、遠からざる將來に於て收支の均衡を囘復し得る確信があると申上げました、私は其の確信に依りまして、以上の方針を昭和二十二年度豫算の編成に當つて立てた次第であります、固より財政の目的は單に財政だけの收支を均衡せしめ、狹い意味の所謂健全財政を押し通してだけ滿足し得るものではありませぬ、財政の第一の要義は、國の經濟の均衡を得せしめることであると考へます、殊に現在の我が國の如く人と設備とを通じ、多量の生産要素が遊休の状態にあり、而も物資の著しく不足致して居ります場合に於ては、此の用意が殊に肝要であると考へる次第であります、併し我が國の現況は是亦、昨年の財政演説に於て明かに申上げました如く、單に購買力を經濟界に注入することのみに依つて、直ちに産業活動を増進し、經濟の均衡を囘復し得るが如き簡單なものではございませぬ、政府は斯樣な觀點から昭和二十一年度の財政の處理に當りましても、一面に於ては極力財政收支の均衡を圖りますと共に、經濟界の整理を促進し、以てインフレの防止に努め、又他面に於ては極力産業活動の囘復を助長する方策を執りました、而して是は今日に於ても我々の堅持致して居る政策でございます、昭和二十二年度の一般會計豫算を編成致しまするに當り、嚴に收支の均衡を得せしめる方針を執りましたのは、即ち財政に關する以上の政策の實現を一層完全に致したい爲であります、昭和二十二年度一般會計豫算は、斯樣にして歳出歳入共千百四十五億三百餘萬圓と云ふ數字に相成りましたが、其の中國債發行に財源を求めましたものは、四十八億七千三百萬圓に止まります、尤も以上の歳入の中には財産税等收入金特別會計からの繰入金が七十五億四千三百萬圓程ございます、而して其の繰入金中、約六十五億圓は物納財産を見返りと致しまして、右特別會計が公債を發行し、之を一般會計に繰入れる豫定でございますから、此の分迄を加へますと、國債發行額は百十三億七千三百萬圓に上る勘定でございます、併し其の一面歳出に於きましては、第一封鎖預金等の支拂確保の爲、金融機關に交付する金融再建補償金百億圓、復興金融金庫等に對する政府出資金七十一億圓等を含んで居ります、而して是等は必ずしも普通歳入を以て支辨しなければならない支出ではありませぬ、然るに國債發行額は前述の如く百十四億圓足らずでありますから、以上の補償金及び出資金の合計百七十一億圓にも未だ遙かに及ばない次第であります、從つて昭和二十二年度の國債發行額は所謂赤字財政の意味を含まないものと考へて居る次第であります、歳出入の款項目等に付きましては、茲に一々御説明を申上げませぬ、唯大體の費目に付きまして今囘提出せる追加豫算案を含む昭和二十一年度豫算と比較して概略を申上げたいと思ひます、第一、民生安定費でありますが、是は昭和二十一年度に於きましては百二十二億五千三百萬圓でありましたが、二十二年度は今日の實情に鑑み、是が三十四億圓を増加致しまして百五十六億五千三百萬圓を計上致しました、第二に經濟再建費は昭和二十一年度の百八十二億六千三百萬圓に對し、二十二年度は三百三十六億四千九百萬圓としまして、百五十三億八千八百萬圓を増加致しました、但し此の中百億圓は前述致しました金融再建補償金であります、又此の中に含まれる公共事業費は二十一年度の六十七億六千八百萬圓に對しまして、二十二年度は九十五億圓に増額致しました、尚二十一年度の經濟再建費は以上の外、今囘提出致しました追加豫算案に於て、損害保險中央會及び生命保險中央會等の損失を補償する經費二百十億圓、是は戰爭保險金の小額のものの支拂に充てる金でありますが、其の經費が二百十億圓あります、二十二年度には勿論斯樣な經費はございませぬ、第三に教育文化費は昭和二十一年度の二十一億八千四百萬圓に對し、二十二年度は三十八億九千萬圓を計上致しまして、十七億六百萬圓を増加したのであります、他の費目に比しまして總額は未だ少い憾がありますけれども、其の前年度に對しての増加率は著しく大きく相成つた次第であります、此の中に所謂六・三制の實施費約四億五千八百萬圓、又私學復興費一億一千七百萬圓等が含まれて居ります、但し六・三制實施費は、此の他に地方分與税分與金中にも約三億五千萬圓を計上致して居りますので、總額は八億八百萬圓に上るのであります、尚五箇所の官立醫學專門學校を大學に昇格致します件は、別に豫備費より經費を支出し之を實行することに決しました、第四に同胞引揚費は、二十一年度豫算に於きましては八十三億六千四百萬圓の巨額を要しましたが、當時豫想致しました如く、昭和二十二年度に於ては四十七億四千百萬圓を減少し三十六億二千三百萬圓に止めることが出來ました、第五の終戰處理費は、昭和二十一年度に於きましては三百八十三億圓に上りました、其の他に朝鮮及び沖繩に於ける特別住宅建設資材費十三億圓がありましたので、之を加へますと約四百億圓の巨額を算したのであります、然るに昭和二十二年度に於きましては、是が百二十六億圓を激減致しまして、二百七十億圓を計上するに止めました、屡屡述べます如く是は聯合國司令部の絶大の好意と、且亦支出に對する政府の監督が漸次行屆くに至りました結果でございます、第九十議會に於きましては、政府の契約の特例に關する法律案の御協贊を得たのでありますが、政府は此の法律を今後一層活用致しまして、苟も放漫なる支出が工事費等に付て行はるることを極力防止する覺悟でございます、第六に地方分與税分與金は、昭和二十一年度の二十五億五千九百萬圓に對しまして、二十二年度は八十五億四百萬圓を激増し、百十億六千三百萬圓を計上致しました、地方分權の方針に依り、國務の多くを地方に委讓致しますと共に、其の經費を亦地方に交付致します、又地方職員の待遇改善に伴ふ經費の相當部分を此の分與金に依る財源で支辨することと致しました、是が此の地方分與税分與金増加の主なる理由でございます、第七に國債費は、昭和二十一年度の五十七億六千三百萬圓に對しまして、二十三億九千五百萬圓を増加し、八十一億五千八百萬圓を計上致しました、是は主として二十一年度の公債發行に依るものであります、尚屡屡問題になる戰時國債の利子が以上の中に幾何含まれて居るかと申しますのに、若し昭和六年度以來の滿洲及び支那事變公債及び臨時軍事費會計分の國債だけに之を限ると致しますれば、其の利拂は約三十八億圓であります、又昭和六年度から同二十年度に至る國債の増加分に對する全部の利拂と致しますれば、約四十九億圓でございます、第八に國庫豫備金は、二十一年度に於きましては、當初豫算の八億圓を今囘の追加豫算案に依り更に減じまして、六億七千萬圓と相成る次第でありますが、二十二年度に於きましては、前に申上げました通りの理由に依り、之を三十億圓に増額致しました、最後に以上擧げました主な費目の外の諸支出は、二十一年度の八十四億二千八百萬圓に對しまして、二十二年度は八十四億六千五百萬圓でありまして、大差がございませぬ、以上が甚だ簡略でありますが、昭和二十二年度豫算の歳出の大體でございます、次に歳入に付きましては、別途議會に提出致して居ります税制改正案に依り、一面負擔の公正を圖ると共に、極力増收に努め、又煙草の價格に付きましても、他の物價との均衡を考へつつ、之を適當に引上げる計畫であります、即ち租税は此の結果、二十一年度の二百六十億四千三百萬圓に對し、四百二十七億五千六百萬圓を増加致しまして、六百八十七億九千九百萬圓を計上致しました、第二に印紙收入は、昭和二十一年度の三億三千四百萬圓に對し、七億一千五百萬圓を計上致しました、第三に官業及官有財産收入は、昭和二十一年度の九十億九千三百萬圓に對し、百六十七億七千四百萬圓を増加致しまして、二百五十八億六千七百萬圓を計上致しました、而して此の中、專賣益金の繰入は二百二十六億五千八百萬圓でありまして、二十一年度の七十六億六千三百萬圓に比し、百四十九億九千四百萬圓の増加でございます、第三に雜收入も、二十一年度に比し、三億三千八百萬圓を増加致しまして六十七億六百萬圓に上る豫定でございます、第四に財産税等收入は、先に申上げました如く二十二年度に於きましても七十五億四千三百萬圓を計上致しましたが、是は前年度の繰入額三百十億九千七百萬圓に比しますれば、二百三十五億五千四百萬圓の減少でございます、第五に公債金及借入金收入は、是亦前に申上げました如く四十八億七千三百萬圓でありまして、二十一年度に於ては今囘の追加豫算を合せ四百四十五億圓でありますから、之に比較しまして三百九十六億二千七百萬圓を減少する次第であります、尚二十一年度に於きましては、前年度剩餘金繰入十六億四千九百萬圓を計上致しましたが、二十二年度豫算に於ては其の計上を致しませぬ、以上の如く昭和二十二年度の歳入は、租税及專賣收入に於て著しく増額致します、國民の貨幣所得も増加して居るとは申しながら、之が前年度に比し相當重き國民負擔となることは誠に已むを得ない次第であります、併し政府は税制調査會の答申等をも參酌致しまして、租税に於ては所得税等に於て相當思ひ切つた減税を行ふ計畫であります、前にも述べました如く、此の際の財政的措置として豫算の收支の均衡を計りますことは、國民經濟再建の爲の至上命令とも申すべく、國民各位が此の負擔を能く忍び、以て祖國復興に協力せられることを衷心より念願して已まない次第であります、以上は昭和二十二年度一般會計歳入歳出豫算の大要でございますが、次に昭和二十二年度特別會計豫算に付概要を申上げます、昭和二十二年度に於きましては、公債金等四特別會計を廢止することと致して居りますが、他面勞働者災害補償保險及び國有林野事業の二特別會計を新設致しますので、結局二十四特別會計と相成ります、又國有鐵道事業、通信事業、專賣局等の事業特別會計に付きましては、それぞれの事業を企業的に運營し、其の健全なる發達を圖る爲、從來の經理方法を改めまして、事業の成績及び財政の状態を明かに致すやうに致しました、是等に關する法律案は別途速かに提案の上御審議を願ふ豫定でございます、扨、以上の二十四特別會計の豫算額は何程かと申しますと、之を單純に合計を致しますと、歳入二千五百八十八億五千八百餘萬圓、歳出二千三百四十四億二千二百餘萬圓に相成ります、而して此の中特に重要なる國有鐵道事業及び通信事業の兩特別會計に付きまして少しく詳しく申上げたいと存じます、業務運營上の歳出歳入は、物價の騰貴、職員の待遇改善等に伴ふ經費の増加を見込みまして歳出を計上致しましたのに對し、歳入は現行の運賃料金に依り計上致しました結果、多額の歳入不足となつて居ります、是は此の豫算編成の當時に於きましては鐵道運賃、又は通信料金引上の具體的計畫が未だ確立するに至りませぬでした關係上、取敢ず借入金を以て不足を補填することと致した次第であります、併し其の後、通信事業に於きましては別途本議會に法律案を提出致してあります通り、郵便料金の引上が確定致しましたので、之に伴つて其の他の通信料金の引上を實施致しますれば、右の借入金は之を行ふ必要がなく、收支の均衡が保たれることを豫定して居る次第であります、又鐵道事業に付きましても是と同樣に、近く鐵道運賃の引上の具體的計畫を確定實施致しまして、以上申上げました同會計の不足額を補填しますから、事業の企業性を確立したい考でございます、次に兩特別會計の建設改良部門の支出に付きましては、其の性質が投資に屬するものでありますので、之が財源は大部分公債に依ることと致し、合計七十四億七千四百餘萬圓の公債發行を豫定致して居ります、尚食糧管理特別會計に於きましても、米其の他の主要食糧の價格は豫算上一應現在の儘と致してあります、從つて其の不足額は食糧證券の發行限度を引上げて處理することと相成つて居りますけれども、是亦、今後研究の上收支の調整を圖りたいと考へて居ります、次に昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算に對して今囘追加計上致しました金額は、歳入歳出共二百六十億五千七百餘萬圓でありまして、之を現在迄に議會の協贊を經ました改定本豫算、竝に追加豫算に加へます時には、昭和二十一年度一般會計の總額は歳入歳出とも千百九十億八千七百餘萬圓となります、而して今囘の改第二號の追加豫算に計上致しました主なるものは、損害保險中央會及び生命保險中央會等の損失を補償する爲必要な經費二百十億圓、政府職員等の待遇改善に伴ふ必要な經費二十五億四千八百萬圓等でございます、而して此の歳出豫算の追加に當りましては、他方經費の節減等に依り、既定豫算に於て三億千餘萬圓を減少致し、歳入と致しましては、租税收入の増加、前年度剩餘金受入の増加等の外、補償公債金二百十億圓を計上致して居るのであります、併し此の補償は純然たる追認的經費でございますから、其の財源を公債に求めましても、インフレを昂進せしめる憂はないと考へて居る次第であります、尚昭和二十一年度各特別會計追加豫算は、帝國鐵道及び通信事業等十六特別會計に關するものでございます、以上は本議會に提出致しました豫算案の大要でありますが、此の機會に我が國經濟の現状と前途とに付て少しく所見を申述べて御參考に供したいと存じます、先づ各種物資の生産は、終戰直後に於ける極端なる混亂と疲弊とから脱却致しまして、昨年中相當顯著の囘復を示しました、又昨年夏期に於ける未曾有の食糧危機も、聯合軍當局の絶大なる御協力に依りまして、幸に能く之を突破し、且昨年秋は近來にない豐作を迎ふることが出來たのであります、通貨は此の間顯著なる増加を示しましたが、併し市中の實際物價は昨年二月頃より騰勢が衰へ、食糧其の他の生活用品に於ては却て下落の傾向さへも示したのであります、然るに不幸にして此の傾向は昨年十一月頃より變化致しまして、爾來物價は相當顯著な騰貴を示しました、生産も亦昨年末迄は引續いて増加の足取りを示して居りましたが、本年一月は全體に於て生産指數の低下を示しました、是は誠に遺憾な次第であります、昨年以來世の中には頻に三月危機を唱へる者がありますが、以上の現象は、或は此の説を裏書するものではないかとの疑惑も起るかと考へる次第であります、併し私の信ずる所に依れば、是は全くの杞憂であります、先づ物價に付て申上げますに、元來激しいインフレーシヨンは、政府の財政が引續いて赤字を生じ、それが紙幣の發行に依つて賄はれる場合に起るものであります、然るに我が國の財政は、先に申上げました如く、昭和二十二年度に於て全く赤字は克服されるのであります、インフレの起る原因は茲に斷絶されるのであります、又昭和二十一年度に於て計畫致しました財産税の徴收及び戰時補償の打切も、種々已むを得ざる事情で遲れて居りましたが、最近漸く實施の域に達しました、是亦インフレ防止の觀點からも頗る強力な作用を爲すものと考へるのであります、更に最近政府は日本銀行初め全國の金融機關の協力を得まして、産業資金の供給を規制し、此の方面からインフレの發生する懸念をも一掃致したのであります、財政及び金融方面からのインフレ防止策は茲に全く完璧の域に達したと言うて宜いと考へます、殘る問題は、唯物資の生産及び流通であります、元來終戰後の日本經濟の最大の惱みが物資の供給不足にあることは、早くから私共の指摘して居つた所でありますが、之が對策として政府は先づ石炭の増産を圖ることが、工業生産囘復の最大の急務であることを認めまして、昨年以來不斷に其の努力を續けて參りました、而して昭和二十二年度に於ては三千萬トンの生産確保を目途と致し、目下著々と之が準備を進めて居る次第であります、幸にして炭鑛經營者及び勞務者諸君に於ても、又一般國民諸君に於かれましても、石炭増産の成否が國民經濟の死命を制する重大事であると云ふことを認識し、爲に炭鑛に於ける生産意欲が近時著しく増進するに至つたことは、國家の爲眞に慶賀の至りであります、去る二月一日以來、全國炭鑛の企業者團體と全國炭鑛の勞働組合とは、炭鑛勞務者の賃金の改定に付きまして協議中でありましたが、去る三月八日其の交渉が圓滿に妥結致しました、而して其の翌九日、勞資兩者は一つの共同聲明を發しまして、其の中に於て次の如く述べて居ります、即ち、「我々は今次交渉を契機として雙方の協力を密にし、以て全國民待望の出炭三千萬トン達成の爲有らゆる努力を盡したいと決意して居る」と申すのであります、今囘の炭鑛の賃金交渉は、最初から所謂分配問題としてではなく、全く石炭増産の爲の必要條件として行はれて居つたのでありますが、前述の共同聲明は其の趣旨を宣明したものと信ずる次第であります、是は我が國勞働運動史上に於ても特筆大書せらるべき劃期的出來事であると考へるのであります、安定本部總務長官としての私と石井商工大臣とは、三月十一日勞資雙方の代表者と、議會に於ける石炭増産協力會議員とを御招待致しまして、其の協定の成立を祝すと共に、重ねて勞資雙方から此の聲明の趣旨の確認を受け、政府も亦、今後一層の努力を盡すべきことを誓つた次第であります、最近經濟安定本部に於きまして、假に昭和二十二年度中、年間二千八百五十萬トンの石炭が配給される場合、如何なる影響を工業生産物に及すかを計算致して見ました處、二十一年度に比し、例へば鐵鋼は二倍以上、板硝子は五割増、硫安は七割増で、反當り四五貫目見當の配給が出來、ガスも約二倍、電力もずつと樂になると云ふ結論を得たのであります、而もそれだけの石炭を供給致しますのには、現在よりも毎月三四十萬トンの増産をすれば宜いのでありまして、全く、もう一歩の頑張りと申しても宜いのであります、政府は目下坑木其の他の炭鑛用資材の補給及び住宅其の他の炭鑛勞務者生活品の供給等に付きまして、縣命の努力を盡して居りますが、之に加へるのに先に申上げました如き勞資の協力がありますから、必ず年産三千萬トンの目標は之を達し得ることと私は確信する次第であります、次に昨年十一月以來の物價騰貴には色々の原因がございますが、其の最も大いなる一つは主食糧の遲配が意外にも東京等に於て起るに至つたことであります、是は全く政府として申譯ない次第であります、去る二月末日現在の政府買入米の状況を見まするに、勿論前年度よりも遙かに良好ではありますけれども、割當數量二千八百六萬三千四百石に對して、買入數量は二千一百八十二萬餘石で、進捗率は約七十七パーセントでございます、斯樣に供米が振はない原因は、無論色々の原因がありませう、併し如何なる原因に依るに致しましても、是は政府の到底默過し得ない所であります、我が國の現状は申す迄もなく聯合軍の占領下にありまして、而して聯合國の絶大な支援がなければ、到底祖國再建の途はないのであります、然るに其の日本に於て萬一にも農家が米の十分なる供出に應ぜず、且其の米が闇市場に流れる如き現象を呈して居りましたならば、聯合國はどうして日本を援助して呉れるでありませうか、我が國の食糧は幸に昨年豐作に惠まれたと申しながら、尚其の絶對量は著しく不足であります、是は是非とも聯合國の好意に縋つて輸入する外はない、萬一にも其の輸入が許されないやうなことが起りましたならば、それこそは日本國民は餓死せざるを得ないのであります、政府は茲に於て去る三月一日發表致しました通り、三月末日迄に百パーセントの供出を完遂した農家には、其の二十パーセントに對し石當り百五十圓の報奬金を呈して、其の誠意を謝し、又四月末日迄に百パーセント以上の供出を行つた農家には二種類に分ちましてそれぞれ超過分に對して、石當り三百圓及び六百五十圓の報奬金を出すことに致しました、政府は斯樣にして農民諸君の協力に依り百パーセントを超え、少くとも百十パーセントの供出を完遂せむと致して居るものであります、我々は聯合國の好意に對して、是だけの誠意を示さなければなりませぬ、此の百パーセントの供出は、今日の場合正に日本再建の絶對の條件であると申して過言でないと思ふのであります、而して政府は是と同時に、現在既に米の移出縣に於て、買入れられた米を急速に搬出致し、消費地に於ける主食の遲配、缺配を一掃する決意を固めて居ります、是亦實に日本再建の爲の至上命令と考へます、何卒米の生産縣に於ては、此の事情を深く認識し、政府の此の決意に絶大の協力を與へられむことを切望する次第であります、斯樣にして主食の配給が計畫通りに行はれるに至りますならば、私は最近の物價騰貴の一大原因は茲に拂拭されると考へます、幸に其の後供出成績は急速に上りまして、此の分ならば十一割の供出を超過することも不可能でないと考へるに至りましたことは、誠に慶賀に堪へない次第であります、最近の物價騰貴のもう一つの重大な原因は、各種の統制が完全に行はれず、闇取引の取締りが却て物資を地下に追込むに至つたことであります、政府は之に對しては先日の總理大臣の施政方針演説中にも述べられました如く、統制を要するものに付ては、政府の責任に於て思ひ切つた處置を講ずると共に、又既に不用に歸し、或は弊害を伴ふ如き統制は之を此の際整理したいと考へまして、目下鋭意研究を進めて居ります、而して其の中に於て立法を要するものは、近く法案を議會に提出する豫定であります、又經濟安定本部の機構も整備充實する積りであります、先日ラヂオでも申したのでありますが、バイブルの中に「誠に汝等に告ぐ、人もし此の山に移りて、海に入れと言ふとも、其の言ふところ必ず成るべしと信じて心に疑はずばその如くなるべし」と云ふキリストの言葉がありますが、我々も亦此のキリストの信念を以てすれば、必ず今日の危局を突破し、民主日本の興隆期して待つべきものありと考へるのであります、況や今我々に與へられた課題は、山を海に入れるが如き困難なことではありませぬ、以上に申上げました如く、財政及び金融等に付きましては、既に方途は明かに示さるるに至りました、物資の生産流通に付ても同樣であると考へます、殘る問題は唯我々の心でありまして、「必ず成るべし」と固く信じて邁進するかどうかであると考へます、先に百十パーセントの米の供出及び移出縣よりの米の急速なる搬出は、今日の日本に對する至上命令だと申上げましたが、石炭等の増産に付ても同樣であります、此の際萬一にも是等の生産が豫期の如く進まず、即ち人も物も、日本の國力一杯の働きをして居ないことが示されました場合には、我々は聯合國の援助を到底期待することは出來ず、斯くてそれは内からと外からとの二重の打撃を我が國に與へるのであります、でありますから、政府も全努力を傾注して、施策の誤りなきを期さねば相成りませぬが、同時に全國民、特に農家及び鑛工等の重要産業に從事する經營者及び勞働者諸君は、深く思ひを此處に致して戴きたいのであります、敗戰後の經濟再建は勿論苦難の業であります、極度の耐乏生活は之を忍ばなければなりませぬ、併し前途は決して暗黒ではありませぬ、今日の難局突破と日本再建とは「必ず或るべし」と信じ得る合理的根據があると私は信じます、以上昭和二十二年度一般會計各特別會計豫算案及び二十一年度追加豫算案の御審議を煩はすに當りまして、聊か所懷の一端を述べ、特に各位の御協力を御願ひする次第であります、何卒政府の意の存する所を御了察下さいまして、本豫算案に速かに協贊を與へられむことを切望する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=7
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008・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 通告順に依り質疑を許可致します、男爵西酉乙君
〔男爵西酉乙君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=8
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009・西酉乙
○男爵西酉乙君 昭和二十二年度一般及び特別會計豫算の編成に當つて、健全財政を根本方針として、收支の均衡に極力力を注ぎ、以て將に崩壞せむとする日本經濟の再建の基盤を固めるべく、努力せられたる當局に對して、其の御苦心を衷心敬意を表する者であります、併しながら此の當局の御苦心にも拘らず、果して石橋藏相の言はれる如く、本豫算が間違いなく赤字を克服し得て、インフレの源泉を斷絶し得るものと安心することが出來るでありませうか、又財産税の徴收、戰時補償の打切、産業資金の供給規制等に依つて、それが當初の目的通りに效果を擧げ得て、生産面に於ける石炭三千萬トン増産計畫と相俟つて、金融方面からのインフレ防止策が完璧の域に達したものと斷定して宜しいものでありませうか、私は石橋財政が樂觀に過ぎると云ふ世間の意見に耳を傾けざるを得ないのであります、(「ノー」と呼ぶ者あり)此の今年度の財政に大きな暗影を投げて居りまするインフレの原因と看做すべきものに付て、以下數項目を指摘して大藏大臣の御所見と、其の對策を伺ひたいと存ずる者であります、第一に、インフレの大きな潛在的要因となつて居りますものは、金融機關が保有して居りまする千五百億圓に達する第一封鎖預金の問題であります、昨年來全國銀行預金だけで、第一封鎖に屬するものが八百二十五億圓に上つて居り、其の大部分が第一封鎖預金である所の郵便貯金の預金額は四百九十八億圓であります、又既に、第二銀行に依る整理を必要とせられる農林中央金庫の預金も百九十八億圓に達して居ります、其の他の金融機關の預金計數を考慮に入れますと、第一封鎖に屬する預金の總計は千五百億圓に達すると言はれるのでありまして、本豫算に計上して居りまする金融機關整備再建補償金の百億圓は是等の支拂に充てるものではありませぬから、根本的な金融機關の整備再建には、此の千五百億圓の封鎖預金を對象として考へなければならない譯でありまして、其の解除などと云ふことは、新圓の封鎖が出來ないと同樣、責任の地位に在る者は何人と雖も爲し得る所ではないのであります、然るに石橋藏相が屡屡出來得る限り早く新圓一本にすると云ふ聲明をされましたことは、第一封鎖預金は棚上げをせぬと云ふ言明と相俟ちまして、今にも全面的な解除が行はれるかのやうな印象を國民に與へて居りまして、是がインフレに對する大きな脅威となつて居るのだらうと思ひます、一日も早く資金評價基準を正式に決定されて、是々のものは支拂ふ、是々のものは支拂へぬ、或は又支拂へぬ部分も、是々は新しく整理された銀行の株式に振替へてやるとか、或は社債で返してやるとか、何等かそこに具體案を示されて、以て世間の疑心とデマを一掃されることが、此の際必要ではないかと思ふのであります、其の點に付て御考を承りたいと思ひます、第二は、賠償撤去費と終戰處理費の問題でありますが、此の四百億圓に達すると傳へられて居ります巨額な賠償撤去費が本豫算に計上されて居ないと云ふことは、衆議院に於ても指摘された所でありますが、當局は問題が具體的になつた時に、之を豫算に組直しをすると答へられて居りますけれども、私は此の爲に、今直ちに豫算の編成替をせよと云ふ意見には、國政運營の實際上から贊成し難いと思ふ者でありまするけれども、此の豫見せらるべき大きな支出が未決定であると云ふことは、何と申してもインフレに對する大きな脅威であることは、爭はれぬ事實であらうと存じます、又終戰處理費が敗戰日本財政の過重な負擔であると云ふことは、我我日本人が言ふ前に、既に昨年の十二月二日のタイム誌上に、能くも日本人は此の大きな負擔にも進駐軍の權威に對して慴伏して居る、と云ふ意味を米國人自身の立場から率直に述べられて居ります、幸にして二十一年度の四百億圓に對し、二十二年度は聯合國の絶大な好意と、支出に對する政府の監督が漸次行き亙つて來た爲に、二百七十億圓に止め得たことは誠に感謝に堪へない所であります、併しながら此の賠償撤去費と、終戰處理費の二つの勘定は、敗戰國として免れることの出來ない負擔であると同時に、我が方で規制することの出來ない性質のものでありますから、是がインフレに對する最大の脅威であることも亦事實であらうと思ひます、故に之に對する適切な處理がなくして、赤字の克服も、インフレ防止策の完璧も期することが出來ないだらうと思ふのであります、インフレ防止に對して極めて自信ある石橋藏相のことでありますから、必ず何等か明確な御方針、對策を御持ちのことと思つて居ります、それを伺ひたいと思ふのであります、此の敗戰國として免れることの出來ない負擔は、一般會計豫算とは全然別個の勘定に整理し、其の困難な事情を聯合國に訴へましたならば、さうして此の分に對する聯合國の財政的援助を懇請することは出來ないものでありませうか、ポツダム宣言に依れば、聯合國は日本を政治的にも經濟的にも奴隷化せぬと言つて居りますし、又アチソン大使の言はれた如く、經濟的の援助なくして日本の民主化は不可能なのでありまするから、日本の民主化と、平和的再興に好意を持つて居りまする聯合國の援助も、こちらの誠意の次第では、得らるることが必ずしも困難ではないのではないかと思ふのであります、第三には、浮動購買力吸收の問題でありまするが、政府は浮動購買力吸收の爲に、全金融機關を動員して、極力預金の吸收に努めて居りまするが、遺憾ながら預金は正常なる増加を示して居りませぬ、即ち本年一月以降三箇月間の預金増加を豫定計畫通り行きまして、二百四十億の計數に達したと致しましても、通貨の發行高は既に千百億圓に及んで居りまして、昨年末に比べて百五十八億の増加を示して居りまするから、正常な資本主義經濟の市場に於ては、一圓の通貨を發行した時には、十圓の預金が出來ると云ふのが普遍的の法則でありまするから、現象でありまするから、通貨の増發に對して、此の一・五倍の預金増加では、まだインフレの防止には遙かに遠いのではないかと思つて居ります、只今預金吸收の困難な大きな原因の一つとしては、都市に於ける主食の遲缺配があることは、只今も大藏大臣が御説明の中にも認められて居つたやうに思ひますが、國民は此の爲に、如何に大きな支出を餘儀なくされて居るか知れぬのであります、一日も早く統制を重點主義に切換へられまして、強力簡明に米、味噌、鹽、それと僅かな食用油の配給だけでも確實に、遲配、缺配なくして戴けますならば、國民は政府の希望する如く、愛國貯金の幾分でも出來るやうな餘裕が生じて來るのだらうと思ひます、現在迄の官僚統制のやり方は、所謂子供が鰻の笊を引つ繰り返したやうな有樣で、どれも是も結局捕まらないと云ふやうな状態でありましたが、之を重點的に切換へられまして、我々の生活の最低を守つて戴ければ、又浮動購買力の吸收にも大きな效果があるのだらうと思ひます、次に同じ大藏省内にありながら、預金吸收に對する態度の相違も一つの障碍になつて居るのだらうと思つて居ります、預金の祕密性嚴守の問題を繞りましても、又預金課税の問題を繞りましても、銀行局と主税局との省内のセクシヨナリズムが、國民の眼に、預金吸收に對する熱意を疑はしむるものがあるのであります、第四は、産業資金供給規制の問題でありまするが、金融機關の放漫な貸出を規制することは、誠に必要なことでありまするが、今囘決められた如き、自由預金の半額を限度として貸出をやらせると云ふが如き、斯う云ふ安易な機械的な決め方は、徒に必要な産業資金の疎通を妨げ、一方惡質な高利の闇資金の跳梁を助長して、却てインフレーシヨンの大きな原因になる虞があるのであります、物價の統制が、煩雜な官僚統制下に目的を達し得なかつたと同樣に、徒に闇資金を擁する高利貸を働き易くさせて、戰爭は儲かるものなりとの感を懷かせるやうな結果となることを恐れるのであります、金融機關の代表者と、資金の需要者、預金者、學識經驗者等に、日銀機能の一部を加へたが如き、民主的な資金供給審議委員會のやうなものを作つて、大局的見地から公正な貸出規制を行ふやうにされては如何でありませうか、最後に、一國經濟の運行に對する國民心理の影響は、決して輕視してはならないと思ひます、石橋藏相がインフレ克服に當つて、バイブルの中の言を引いて、「其の言ふこと必ず成ると心に信じて疑はざれば必ず成る」と言はれたことは、誠に正しいと思ひます、併し問題は、國民をして、當局の施策に疑を懷かせぬやうに、萬全の策を執つて居るかどうかと云ふ點に在るのだらうと思ひます、貸出制限はしないと言つた後で、直ぐ資金供給規制を出さなければならないやうなことや、預金の祕密は守るから預けろと言ひながら、同じ政府が、必要な場合には何時でも調べるのだぞと言つたり、第一封鎖は棚上げせぬと言明してあるに拘らず、金融制度調査委員會の答申に依れば、五百圓の枠を外すと共に封鎖は強化される方向にあります、物價は横這ひであると説明せられて居る時に、國民は日常の生活を辛うじて支へて居ります、闇市場の物價は日々騰貴の一途を辿つて居ります、是で國民は石橋藏相の言はれた如く、政府の言ふことは必ず成ると信じて疑はぬことが出來ませうか、甚だ心許ないと存ずるのであります、私は飽く迄一國の經濟の復興には、國民心理を把握して、正しい方向を與へることが、重要なる要件であると信ずる者であります、故に特に藏相に、國民をして歸趨に迷はぬやうな方向を與へて戴くことを御願ひして、私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=9
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010・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の御質問に御答へ致します、第一の御質問は、現在の第一封鎖預金は相當の巨額に上つて居るから、之を解除するなどと云ふことは、思ひも寄らないことのやうに思ふ、然るに之を石橋は、屡屡解除するかの如きことを申すが、どう云ふ譯かと云ふ御尋であつたやうに拜聽致しました、私は如何にもの其の第一封鎖預金、相當の金額に上りますが、併しながら是は御承知のやうに、現在同じ預金でありながら、第二、第一の封鎖があり、更に所謂新圓預金がある、まあ第二封鎖預金の方は、財産税等が片附きますれば、端から第一封鎖預金に繰入れられる譯でありますから、追付け是はなくなる譯でありますが、併し第一封鎖預金と新圓預金と云ふ二つのあることも、是は非常に不自然でありまして、どうしても出來るだけ早い機會に之を一本にすると云ふことが總ての觀點から見まして必要だと存じます、甚だ遺憾なことには、大藏省の中の役人などでも、此の二つの區別のあることを利用して、罪に陷る者も最近現れたと云ふやうな次第であります、世間にはさう云ふ罪を隨分犯す者がある、又詰り良貨と惡貨が二つ流通して居る譯でありますから、其の間に打歩が生ずると云ふやうなことで、誠に遺憾な状態を呈して居るのでありますから、是は是非とも早く解除する必要があると考へるのです、併し御説の如く、現在はまだ經濟界が安定して居りませぬから、無暗にそれなら解除が出來るかと云ふと、無暗に解除は出來ませぬ、併し少くも第一封鎖預金を今日以上に窮屈な預金にすると云ふ意圖は全然持つて居りませぬ、新聞なぞには一時左樣なことが傳へられましたが、是は全くの誤りであります、それから次に賠償撤去費及び終戰處理費の御尋がありましたが、賠償撤去費は、賠償其のものが一體どうなるのでありますか、色々の説があり、又色色の半公式な聲明なども折々あるのでありますけれども、未だ全然其の正體がはつきり致しませぬ、東京に居る司令部の人達とも接觸しましても、まだ決つて居らないやうな譯でありまして、從つて撤去費と云ふものも考へることが出來ないのであります、で、是は十分聯合國の當局とも打合せまして、本年度の豫算には計上致さなかつた譯であると云ふことを御承知願ひたいのであります、又終戰處理費の方は、今後起るべき賠償と等しく、無論日本の財政經濟に、非常な大きな影響のあることは御説の通りでありますが、併し既に聯合國、聯合軍司令部の非常な援助を受けて居ると云ふことを、今御質問の御言葉の中にもありました通りで、御了承を願ひたいのでありまして、今日は新聞にありましたマツカーサー元帥の言葉を見ましても、其の點は思半ばに過ぐるものがあると考へます、それならはつきりどうかと云ふと、唯我々は聯合國、聯合軍司令部の意圖だけははつきりして居るのでありまして、即ち日本に、是等の問題に依つて、インフレーシヨンを起すと云ふことは絶對にしない、是だけは、私は確信を以て申上げましても間違ひがないと信ずるのであります、從つて私としては、其の信念の下に財政の處理を致して居る次第であります、疑へば是は切りがないのでありまして、大變な賠償撤去費が要る、大變な終戰處理費が要るなどと云ふことは、其のことがインフレを心理的に非常に刺戟する危險があるだけでありまして、實際にはそんな心配は私はないと思ひますけれども、是は私がないと云つても、私がやるのでありませぬ、政府がやるのでありませぬから、お前等が云つたつて當にならぬぢやないかと云へば、それは何とも御答の仕樣がないのでありますが、唯さう云ふことは、私は非常に今日に於て、事情を十分知らない人達を刺戟する危險があると云ふことを御注意願ひたいのであります、第三には最近の預金の増加状況が思はしくないと云ふ御批評でありまして、それは確かに昨年末から、昨年の十二月は宜かつたのでありますが、御承知のやうに不幸にして色色な原因に依つて物價が上り、通貨が増加し、それに伴ひまして預金の増加状況が思はしくないのであります、是は終戰後御承知のやうな不確定な、非常な不安の要素のある經濟界でありますから、時々斯樣な波瀾の起ることも又已むを得ないかと考へて居るのであります、併し只今も申上げましたやうに、インフレーシヨンは結局財政が赤字で穴があき、それを日本銀行の通貨に依つて賄ふから何處迄も參るのでありますが、現在出て居ります所の通貨、預金の範圍だけで、後新しい通貨が現れないと云ふことになりますれば、私はインフレーシヨンは必ず止ると考へるのであります、詰り今日色々換物運動等があります、色々の噂で、新圓を封鎖するかも知れぬとか、やあ内閣がどうなるか分らぬと云ふやうなことで色々心配をして換物運動も起つて居るのでありますが、併し是は謂はばスペキユレーシヨンでありまして、昔屡屡ありました米の買占めなどと同じやうなものでありまして、其のスペキユレーシヨンを後援する、後から裏附ける事實が現れますれば、續いて其のスペキユレーシヨンが成功致しますが、其の事實が現れませぬと、いつかはスペキユレーシヨンは挫折せざるを得ないのでありまして、即ち米の買占めなどが曾て成功した例がないと言はれる所以であります、今日の状況は左樣な小さなものではありませぬけれども、矢張り大きな目で見ますると、財政の整理が十分に出來ると云ふことでありまするならば、現在國民の間に往往にして起る所の換物運動と云ふ大きなスペキユレーシヨンは、必ず止らなければならぬものと、私は理論的にも亦實際的にも考へて居る次第であります、それから預金の祕密性、課税の上から云ふと、預金と云ふものを調べるのが都合が宜い、是は昔からの議論でありまして、役所の中にも外にも議論のあることは仰しやる迄もありませぬけれども、併し之に依つて現在大藏省の中に兩論があつて分裂して、銀行局と主税局とが違ふやり方をして居ると云ふことは、是は絶對にございませぬ、尤も知らぬのは亭主ばかりなりと云ふ言葉がありまして、私がぼんやりして居つて知らないのかも知れませぬけれども、私の知つて居る限りに於ては左樣なことは少くも大藏省内にはないと信じて居ります、現在どう云ふことをやつて居るかと申しますと、銀行預金の調査を致します場合は、脱税の嫌疑が濃厚である時、滯納處分の爲必要な時、物納延納等の許可の爲に必要な時に限つて、是は個々の個人に付銀行に付て調査し得る、此の範圍に嚴に限つて居ります、一般的に銀行に付て預金を調査すると云ふやうなことは、只今は絶對に致して居らない筈でありますから、若し左樣な事實がありましたら、どうか御知らせを願ひたいのでありまして、十分戒飭を致す積りであります、次の産業の資金の貸出規制のことに付きましては、御指摘の如く、確かに之には矛盾があるのでありまして、貸出を引締めますと、そこに高利貸が活動する餘地が起つて來ると云ふことはいつものことであります、併しながら現在貸出を規制致して居るのは、嘗て自由經濟の時代に恐慌が起りまして、各銀行が競つて貸出を引締めたのとは全然其の性質を異に致して居りまして、何處迄も公正に重點主義に貸出をやつて行きたい、斯う云ふことで引締めて居るのでありますから、目茶苦茶に引締めると云ふことは致さない積りでありますし、萬一誤つてさう云ふことが末端に於て起らぬとは限りませぬけれども、是は日本銀行初め各金融機關に於て嚴に申合せて左樣なことを致さないやうに、即ち言ひ換へて申しますと、隨分金融は窮屈に相成りますけれども、健全に發達すべき産業、殊に中小産業等が高利貸の餌になると云ふやうなことは致さない方針を執つて居ります、若しも普通の金融機關で金融を致さない時には、遠慮なく復興金融金庫に來て貰ひたい、若し復興金融金庫でも埓があかない場合には、大藏大臣へ直接持つて來て貰ひたい、私の所へ持つて來て下されば、一一具體的の事實に付て合理的である場合には、必ずや何とか致したいと申上げてある次第でありますから、各位に於かれましてもどうか御了承下さいまして、左樣な事實を御承知の場合には、御遠慮なく御申出を願ひたいのであります、其の他政府が色々封鎖預金を棚上げすると言つて又しないとか、色々の矛盾をしたことを言ふ、斯樣なことでは政府を信用しないと云ふ御叱りでありますが、御指摘のやうなことは大部分世間の噂でありまして、封鎖預金を棚上げするなんと云ふことを政府は考へたことも、言うたこともないのであります、無論事務當局としては色々研究をされて居りますから、其の中で研究途中の事柄が往々にして新聞に漏れて、それが如何にも政府の方針であるかの如く掲げられた場合があつて非常に迷惑するのでありますが、左樣なことが多いのでありまして、政府としては無論斯う云ふ變化の多い場合でありますし、前途の見透しもなかなか容易でありませぬから、間違は無論侵さないとは申しませぬし、間違も起して居りますが、併し御指摘程に矛盾撞著したことをやつて居るとは考へて居らないのでありまして、是等の點も尚併し今後十分注意を致しまして、御質問の趣意に副ふやうに致したいと考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=10
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011・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 山本勇造君
〔山本勇造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=11
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012・山本勇造
○山本勇造君 昭和二十二年度の豫算案の中、私は教育費のことに付てだけ御尋ね致したいと思ひます、凡そ財政と云ふやうなものには、私は最も縁の遠い者でございますが、戰後の教育と云ふことに付きましては可なり考へて居りますので、質問を致す次第でございます、此の度教育文化費として計上されて居りますものは、三十八億九千萬圓でありまして、只今大藏大臣からの説明に依りますると、昨年よりも十何億とか多いと云ふことであります、併し今日の此のインフレ時代では、此の位の額で果してどれだけのことが出來るでございませうか、二十二年度の總歳出は一千百四十五億でありまして、それと對比致しますと、僅かに三パーセント四にしか當らない額であります、衆議院に於きましても此の點に付て質問があつたやうでありますが、私は私の立場から改めて御伺を致したいと思ふのであります、前の議員も述べられましたが、私も大藏大臣が健全財政を建前となされたことに對しましては、深く敬意を表する者であります、併し此の教育費に關する限り、是は果して健全なる建前のものでございませうか、勿論切迫した問題が今日澤山ございます、政府と致しましては何よりもそれを解決しなければなりませぬ、さうするとどうしても教育費と云ふやうなものにはなかなか手が廻らない、それで三十八億九千萬圓を計上致しましたのでさへも、政府としては大奮發をしたと御考になつて居るのかも知れませぬ、併しここが私の質問の要點でございます、政府は教育に對して一體どう云ふ考を持つて居るのでございませうか、教育の問題をこんな風な中途半端にさせて置いても宜しいのでございませうか、二十二年度の豫算と云ふものは昭和二十二年にはどうやつて行くかと云ふことであります、併しそれは昭和二十二年を唯切拔けると云ふだけではないと思ひます、敗戰の後の日本をどう建直すかと云ふことでなければなりませぬ、即ち二十二年度の豫算の中には、新しい日本を築き上げる所の大きな理想、大きな抱負が織り込まれて居なければならないと信ずるのであります、それには最も根本的な所に目を着けて戴きたい、目の前の退つ引きならない問題を處理することは勿論當然のことでありまするけれども、一方に於て十年先、二十年先、百年先の事をも考へて貰ひたいのであります、米を作ることは大事です、産業を興すことも大事であります、併し其の米を作り、産業を興すのは一體誰でありませうか、想ひ一度茲に到りますならば、國家再建の第一の原動力は人間である、人物を造るより外に國を興す根本の策はないのだと云ふことは、自ら浮んで來るのではありますまいか、千八百六十四年デンマルクはドイツと戰つて敗れました、さうして立上り難い程打のめされましたが、能く苦難に堪へて、平和な文化國家として新たに立上りました、あんなにひどく叩きつけられたのに、どうして國家の再建が出來たのであつたかと云ふと、其の最大の原因の一つは、實にグルントヴイの國民高等學校の力であります、此のことは世界に普く知られて居る事實でありまして、之を見ましても、國を建直すには人物を造ることが第一であると云ふことは肯かれるのであります、さうして人物を造る爲には、其の苗床を作らなければなりませぬ、其の苗床に當るものは申す迄もなく學校であり、教育であります、故に政府と致しましては、國家再建の根本策は、是非とも茲に置かなければならないと信ずるのであります、政府の御考は如何でありませうか、私は今デンマルクのことを例に引きましたが、斯樣な話は何も遠いデンマルクから借りて來る迄もありませぬ、實は日本にも之に類した實例があるのであります、それは明治初年に於ける長岡藩のやり方であります、此の事に付きましては、私は戰時中講演や戯曲に於て之を紹介して居りますので御存じの御方もあると存じますが、併し今日此の話を此の壇上から致しますことは、決して單なる繰返しではないと信ずるのであります、當時長岡藩は薩長の聯合軍に反抗をしました爲に、長岡の町は三度も兵火に罹り、町は燒け野が原となつてしまつたのであります、さうして最後に降伏の餘儀ない羽目に立至りましたので、丁度長岡藩は現在の日本が當面して居るやうな立場に陷つたのであります、併し其の時に燒け野が原の上に立つて長岡の復興を叫んだ人が居りました、それは藩の大參事小林虎三郎と云ふ人物であります、佐久間象山の門下で開國論者でありましたが、長岡を建直す根本策は、人物を造るより外にないと云ふ信念を以て事に當つたのであります、只今も申しましたる通り、當時の長岡は今日の我々と同じやうに、否我々よりも或はもつと苦しい生活をしたかも知れませぬ、それを見兼ねまして長岡藩の分れである所の三根山藩では、長岡の侍達に見舞の米を百俵送つて參りました、處が、此の小林大參事は、其の米を一粒も藩士達に分けないで、此の百俵の米を土臺にして、新たに學校を建てる計畫をしたのであります、それを聞いた侍達は非常に怒りまして、學校なんて悠長なものは後廻しにしても濟むではないか、一體大參事は我々を干乾しにするのであるかと言つて、大勢の者が刀を持つて押寄せて參つたのであります、すると大參事は、威儀を正して斯う答へました、「皆は百俵々々と言つてわめいて居るが、百俵ばかりの米に、何だつてそんなにがつがつするのか、百俵の米を頭數にして分けたら、一人の貰ひ分は四合か、五合にしか當らない、そればかりの米は一日か二日で食ひ潰してしまふ、一日か二日で食ひ潰して、後に何が殘るか、私は三根山藩の折角の好意を唯食ひ潰してしまひたくない、之を土臺にして、私はしつかりしたものを築き上げたい、之を土臺にして長岡藩を復興させたい、それには學校を建てることが第一である、學校を建てて人物を養成するのだ、子供を仕立て上げるのだ、まだるつこいやうであるが、是が一番確かな道だ、是が戰後の長岡を建直す唯一の道だ、之を外にして長岡を生返へらせる道はない、それは皆辛いだらう、苦しいだらう、併し辛抱をして呉れ、其の日暮しでは長岡は立上れない、新しい日本は生れない」さう言つて小林大參事は有らゆる反對を押切つて、長岡の坂の上町に、國漢學校と云ふ學校を建てました、それは明治三年六月のことでございます、後には是が分れまして、一つは坂の上小學校となり、一つは長岡中學となり、一つは長岡病院となりました、さう云ふ種を此の學校は最初から持つて居つたのであります、斯う云ふ種を蒔いて置いたればこそ、長岡は健全な發達を遂げ、多數の人材を世の中に送つたのであります、二三年前逝くなられました人類學の小金井博士であるとか、帝國憲法の起草に參畫した所の渡邊廉吉博士であるとか、或は福井の知事になつた改進黨の波多野傳三郎、斯う云ふ人々は、皆此の國漢學校で教を受けた人であります、更に坂の上小學校、長岡中學出身の人材、或は此の長岡の教育第一主義の影響を受けて、世の中に活躍した人々を數へ上げますると、非常に澤山の人物でありますが、其の一二を申しますと、西洋畫の元老であつた小山正太郎、帝大總長であつた小野塚博士であるとか、日米親善に努めた齋藤大使であるとか、それから今日では人氣が落ちて居りますが、山本元帥、元帥は三國同盟に極力反對し、日米戰爭も避けるべきことを進言して居つた人でありまして、元帥の死は、湊川に於ける正成よりももつと悲痛なものがあると私は思ふのであります、戰に負けて町は燒かれ、降伏の憂き目を見た其の燒け野が原の中から、斯樣な人物が輩出したと云ふことは、復興に當つて教育第一主義をモツトーとしたからであらうと思はれます、固より是は八十年も前の長岡と云ふ小さな町の出來事でありまして、現在の日本に其の儘當嵌まるものとは私は思つて居りませぬ、併し爲政者としての此の小林大參事の抱負、度胸、大理想に對しましては、今日も尚學ぶべきものがあると思ふのであります、私が申しますのはアメリカからメリケン粉を送られた場合、それを國民に分けないで、それで以て學校を建てろ、そんな直譯見たいなことをやつて呉れと云ふのではありませぬ、國を建直すには何よりも人物を造らなければならないと云ふ、此の大きな理想を、思ひ切つたやり方で内閣の諸公にやつて貰ひたいと思ふのであります、是は長岡にしましても、デンマルクにしましても、れつきとした實例があるのでありまするから、是こそ最も國を興す根本的な方策であると私は思ふのであります、併しながら何處迄も健全財政を盾に取つて、それは行ひ難いことであると云ふ御意見であるなれば、私は更にもう一つ手近な例を申上げて見たいと思ふのであります、世間には千圓か千五百圓位しか取つて居ない月給取りが澤山あります、さう云ふ人の家庭で、子供が中學に行つて居る者、或は女學校に行つて居る者、中には其の上の學校に通はせて居る者も相當にあると思ひます、さう云ふ家庭では、一體どうして子供を學校に通はせて居るのでせう、それ位の月給では恐らくは食べることだけでも容易ではないと思ひます、それにも拘らず、子供を上の學校に上げて居ります、學費はどう云ふ工面をして居るのか、筍生活をやつて居るのであるか、借金をして居るのか知りませぬが、之を財政通の人が見たならば、實に不健全な家計であると評するでありませう、それならば一家の家計を健全にする爲に、學校を止めさせて、子供を工場に送るなり、或は奉公に出すなりして居るでありませうか、已むを得ずさう云ふ風にして居る家庭もありませう、併し多くの者は、學校を下げずに子供を前の通り通學させて居ります、或は新たに通學させようと致して居ります、親達は自分の食べるものを食べないでも、筍生活をしてでも、借財をしてでも、子供を學校に通はせて居ります、それは子供が可愛いからであります、子供には何としてでも教育を授けたい、教育をしてやつて、行く行くは世の中の爲に立派に働かせたい、さう云ふ親心から無理な世帶のやり繰りをやつて居るのだと思ひます、今日の月給取りの家庭は斯うでないものは殆どないと言つても宜しいでありませう、併し是が不健全な暮し方であると、どうして非難することが出來ませうか、財政家の眼から見ましたら、釣合の取れない不健全な財政かも知れませぬが、親の立場からすれば、子供の教育の爲には、さう云ふ無理をしないでは居られないのが、今日の實情であると思ひます、是は小さな家庭のことですが、小さな家庭でさへも教育費には其の位心を碎いて居るのであります、さうであるならば、苟も國家として立つて居る政府は、教育費の問題にもつと力を盡して宜いものではないでありませうか、日本には凡そ千五百萬人の學生生徒が居ります、政府は謂はば其の千五百萬人の親であります、其の親心がもつと此の豫算の上に現れて來ないものでありませうか、而も政府は昨年、日本國憲法を公布し、世界に例のない戰爭放棄を宣言し、民主的な國家として立つことを明かに致したのであります、それのみならず、今囘送付されました教育基本法に依りますと、文化國家を建設することを理想とし、其の理想を實現する爲には、教育に俟たなければならないと云ふことを明示して居るのであります、それであるならば、當然豫算の上に、是が現はれて來なければ辻褄が合はないやうに私には思はれるのであります、若し此の豫算の中に、もつと教育費が見込んでありますならば、日本は本當に文化國家にならうと努めて居るんだと云ふことがはつきりと分つて、一層世界の信用を増すことになり、講和會議の時にも可なり有利なことになりはしないでせうか、又此の豫算の中で終戰處理費と云ふものが一番支出の多いものでありますが、日本が文化國家として進んで行くことがはつきりとして來ますならば、此の終戰處理費なるものは、恐らくは、豫定以上に年々少くなつて行く可能性があるものと思ふのであります、さうすれば、教育費に金を掛けると云ふことは、一面危險なやうに見えて、實は却て實質的にも、財政的にも、得る所が多いことになりはしますまいか、大きな眼から見れば、さうも考へられると思ふのであります、凡そ豫算に現れた數字は、是は單なる數字ではありませぬ、之を組んだ所の政府の施政方針を最も率直に物語るものであります、それは數字には相違ありませぬけれども、此の數字は直ちに其の政府、其の國家の理想抱負を示すものに外なりませぬ、然るに教育文化費が歳出の僅かに三パーセント四にしか過ぎないと云ふことは、どう云ふことでありませうか、是では吉田内閣は教育と云ふものを全體の三パーセント四位にしか考へて居ないと云ふことになります、私は國を建直す根本策は、人を造ることが第一著であり、さうしてそれにはこんな生温るい豫算では不十分だと思ふのでありますが、政府の御考は如何でありませうか、是は重大な問題でありますので、出來れば總理大臣の御答辯を煩はしたいと思ふのでありますが、或は責任あるお方の御答辯でも結構であります、第二には稍稍具體的な問題を御尋ね致します、先程の質問は總論風のものでありましたから、私の申したことが主觀的に響いたかも知れませぬ、そこで遠い慮りを以て人を造れと言つたが、政府は十分に其の點を考慮して居る、即ち今囘の豫算に於ては八億圓と云ふ巨額の支出をして、六・三制と云ふ新しい教育制度を行はむとして居るではないか、さう云ふ答辯があるかも知れませぬ、一應御尤もだと存じます、併し私は其のことを知らないで先程の質問を致したのでございませぬ、寧ろ八億圓ばかりの金で此の新しい制度を始めようとすることが中途半端だと思ひましたので、あのやうな質問を致したのであります、新しい制度を起して教育の建換をしやうと云ふ御考は、結構なことだと思ひます、併しそれ行はうとするならば、肚を据ゑてやつて貰ひたいと思ふのであります、申譯ばかりの金を出して、吉田内閣は教育にも力を盡して居ると云ふやうな見せかけな態度には、私は贊成することが出來ないのであります、日本を建直すには、人を造ることが第一著だと云ふことが、肚の底から分つて居るならば、今囘のやうな豫算はもつと違つたものになつて居なければならない筈であります、本當に教育の建直しをやる積りならば、見舞の米を一粒も分けないで、それで學校を打建てると云ふ位の、あの大きな度胸が此の豫算面に現れて來なければならない筈だと思ふのであります、一口に六・三制と申しますが、問題になるのは三年制の新制度の中學校であります、三年制と申しましても、今年は初年度のことでありますから、政府は八億圓で賄へると見込んで居るのでありませうが、幾ら初年度でありましても、是では形だけの中學でありまして、迚も本式の教育は出來ないと思ふのであります、校舍は國民學校と青年學校を代用する御考のやうでありますが、現在の實情ではまあ是は已むを得ないことだと思ひます、併しそれには相當校舍の模樣替をしなければならないのでありますが、其の補助金は實に微々たるものであります、そんな金では、實際に必要な模樣替もどれだけ出來るか疑問であらうと思ふのであります、併しそれは姑く措きまして、それ等の中學に對する設備の補助費を見ますと、設備と云ふものは國民學校や青年學校を代用するのでありまするからして、中學としての設備がありませぬ、そこで中等教育に必要な機械類や圖書を備付けようとするもののやうでありますが、其の設備の補助費は約六千八百萬圓であります、六千八百萬圓と云ふと可なり大きな額のやうに聞えるのでありますけれども、それは二萬五千二百二十三校に分けるのでありますから、一つの學校に分ける補助費は二千七百圓にしか當らないのであります、此のインフレの時代に一年にたつた二千七百圓で一體どんな機械が買へるのでございませうか、本が何册買へるでありませうか、どうも子供騙しのやうな豫算に思はれるのであります、本會議でありますから私は一々細かいことは申上げませぬけれども、此の設備費の補助金と云ふことを見ただけでも、此の新制度の中學と云ふものが如何に御粗末なものであるか分るのであります、其の他も推して知るべしでありまして、教員にしましても、中學である以上は專門の學科はそれぞれ專門の教師が擔當しなければならない筈でありますが、此の豫算ではなかなかさう云ふ譯には行かないのであります、でありますから、此の新制度の中學は、名前は中學でありまするけれども、在來の中學に比べたら、可なり程度の低いものになるのではないかと思ふのであります、在來の中學でさへ世間は滿足して居らないのに、此の豫算の儘でありますると、それよりももつと低いものになつてしまふのであります、殊に急に多數の中學を造るのでありますからして、教師は寄せ集めのものになつてしまひます、さう云ふ寄せ集めの教師で、さうして是からの子供を育てて行くと云ふことで果して人物が出來るのでありませうか、私は非常に寒心に堪へないのであります、義務教育を延長し、新制度の中學を造ることは必ずしも惡いとは思ひませぬが、斯樣な豫算では唯形式が六・三制になるだけで、實質がどれだけ向上するか、非常に疑問であります、他所の國で六・三制が效果を擧げて居るとしましても、唯形式だけ眞似た所で、教育の實は擧がるものではありませぬ、人間を本當に造る學校を作るのでなければ、私は效果がないと思ふのでありますが、文部大臣は野に在つて多年教育に御經驗の深い方でありますが、どう御考でございませうか、此の新制度の中學を斯樣な豫算で實施して行くことにどう云ふ御成算があるのでありまするか、私は伺ひたいのであります、もう一つは、是は初年度のことでありまするから、假に少い經費で間に合せるとして、來年になりますと新しい生徒が入つて參ります、さうすると從來の代用の校舍だけでは濟まされなくなります、更に再來年になりますと、又々新しい生徒が入つて參ります、さうすると云ふと是非とも校舍を澤山造らなければなりませぬが、さうしますると云ふと、校舍の建築費だけでも非常な額に上ると思ひます、それに連れて教師の費用、其の他も當然増加して參ります、三年制のものである以上、是は繼續費にした方が宜いのではないかと考へられるのでありますが、二十三年度、二十四年度の分はどう云ふ支出になるのでありませうか、念の爲に此の點も伺つて置きたいと思ふのであります、是は殆ど行はれないと思ひますけれども、併し私の立場からすれば、特に斯う云ふ豫算では不十分であるから、思ひ切つた豫算の編成替が出來ないものであるかどうか、其の點も御尋を致したいのであります、伺ひたいことは、實は非常に澤山あるのでありますが、一時に多くのことを御尋ね致しますと混亂を致しますから、私は以上のことだけに止めて置きます、巷に出ますと、如何に戰爭に敗れたとは言へ、時風の荒んで居るのに私は情ない氣が致して居るのでありますが、それにつけても、私の一番心を寄せて居るのは、次の時代の人々のことであります、日本が建直るか、建直らないかは此の人々に俟つ所が非常に多いのであります、若し次の時代の人々の教育を忽せにしたならば、新憲法の精神を實現することは容易のことではないと思ふのであります、私は是等の人々に最も希望と關心を抱いて居りますので、今日の質問を致した次第でありますが、政府に於ても、どうか此の點を御留意になつて、眞劍な御答辯をして戴きたいと思ふのであります(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=12
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013・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 事豫算にも關係して居りますから、只今の御質問に私からも御答を申上げたいと存じます、御指摘の如く、又私が先程説明の中にも申上げました如く、教育文化費として、總額として比較的少いと云ふことは、是は政府としても甚だ遺憾に存じて居ります、併し唯ちよつと御參考迄に申上げて置きますが、所謂教育文化費として數字に表向き書きましたものは三十七億圓でありますが、其の外の省にも學校がありますし、又行政費全般の費用の中にも教育關係のものがございます、それ等のものを、實は細かく拾つて居りませぬが、ちよつと其處で目の子算を致しまして、それ等のものを合せますと、約五十億圓に達します、それから地方分與税分與金の中にも、先程も六・三制實施に對する費用が入つて居ると申上げましたが、あれは、教育費は地方に關するものは、實は半分教育費として計上され、約半分は地方に對する補助費に相成ります、其處で分與税の中に其の補助費に當る部分がありまして、是が多分二十億圓位にならうと思ひます、ですから一般會計の教育關係の支出は、正確ではございませぬが、多分七十億圓位には相成つて居らうかと思ひます、それから同時に、言ふ迄もありませず、地方で又地方費の支出がございますから、全體の國民の負擔となる所の教育費と云ふものは、約三十九億圓と云ふ表面の數字よりも遙かに大きなものに相成つて居るだらう、斯う考へる譯でありまして、十分多額とは申せないかも知れませぬが、相當の金額には事實は上つて居ると存じます、それから無論是からの教育が非常に大切だ、是が根本だと云ふことは、政府も十分に認め、又大藏大臣としての私も之に付て決して閑却して居る譯ではありませぬが、例へば六・三制の如き、何れに致しましても、實は御指摘の中にもありましたやうに、相當‥‥準備が十分とは申せない、唯抽象的に紙の上で考へますと、澤山の豫算も計上し得るのでありますが、扨、實際に校舍を造る、或は色々の機械等を集める、又教員を集めると云ふことになりますと、是等の物と人とに於て非常な制限を受ける次第でありまして、急に十分なことはフイジカルに出來ないと云ふ結論に到達せざるを得ないのであります、從つてそれに無理が起らない程度に於て、豫算も計上致した譯でありまして、從つて六・三制の實施が、是は明年度明後年度に於ては相當多額の金額を計上し、資材等もそれに注ぎ込まなければならないと云ふことは、覺悟は致して居りますが、本當の完備には今の日本の經濟状態でありましては、可なり長く掛るものではないか、併しそれでも之を實施しないよりも實施した方が、兎に角此の六・三制を促進し教育を良くするのに、謂はばベターである、斯う云ふ考で思切つて昭和二十二年度から無理ではありますが、六・三制の實施に邁進をしようと致した次第であります、是は言ふ迄もなく政府だけの考ではなく、教育審議會等に於ても同樣の考でありまして、各方面から是非共不完全でも兎に角此の制度の實施をして欲しいと云ふ強い要求に應じた次第であります、斯樣な譯で物的方面に於きましては繰返して申しますやうに、十分とは無論申して居るのではありませぬけれども、表面で見るよりは多少は多いものである、同時に御指摘の中にもありましたやうに、今後終戰處理費等は無論逐次減つて行くものと考へて居りますので、それ等が減つて參りますれば、それだけ豫算の上にも物心の上にも餘裕が生ずるのでありますから、其の場合には躊躇なく教育文化費の増加を行ひたいと考へて居るのであります、同時にデンマーク等の御話もございましたが、單に物的の方面からの完備だけでなく、一層教育文化に付ては精神的方面の活動を促進するやうに、政府としても最善の努力を盡したいと考へて居る次第であります
〔國務大臣高橋誠一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=13
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014・高橋誠一郎
○國務大臣(高橋誠一郎君) 只今大藏大臣から御答がございましたが、私からも一言御答へさせて戴きます、只今御質問になりましたやうに、誠に文教方面の豫算が計上せられますこと甚だ僅少であること、如何にも遺憾に堪へない所でございまするが、併しながら是も今日の國民經濟の状態から申しまするならば、已むを得ざるものがあるのではないか、先づ物質方面に於きまして救はれることがなかつたならば、文化方面に於ての向上發展も亦期し得ないのではないかと云ふ考が深いのであります、甚だ記憶が朦朧として居りまして恐縮でございますが、嘗て英國の議會に於きまして勞働黨のダラムでありましたか、ブラハムでありましたか、ちよつと失念致しましたが、或議員が教育の必要を主張致しまして、總ての英國人が悉く皆ベーコンが讀めるやうにならなければならないと云ふことを申したさうでありますが、之に對しましてコブデンでありましたか、ブライトでありましたか、はつきり記憶致しませぬが、成る程ベーコンが總ての人に依つて讀まれるやうになると云ふことは誠に結構なことであるが、其の以前に於て、先づベーコンが總ての人間に依つて食へるやうにならなければならぬと、斯う云ふことを申しましたと云ふことを聞いて居るのであります、今日に於きましては、無論先程デンマルク、或は長岡藩の例を御引きになりまして色々御話のありましたやうに、我々食はなくとも、文化方面、教育方面に費用を投じなければならぬと云ふことも考へられるのでありまするが、是も亦餘りに極端に走ると云ふことは避けなければならぬ所ではないかと云ふ風に考へられるのであります、無論我々と致しましては、是非文教方面にもつと澤山の豫算を割つて戴きたいと云ふ希望があつたのでありまするが、是等の點を考へ合せますると云ふと、餘りに強い主張を致すと云ふことも出來ずに終りまして、今囘計上致したやうな程度に止めなければならぬことに相成つた次第であります、尚大藏大臣から御話のありましたやうに、山本氏の御指摘になりました豫算に對しまする三・四でありまするか、斯う云ふ割合になつて居ると云ふ御話でございまするが、文部省で計算致しました所では四・四に相成つて居るのであります、是は文部省の會計課長とジー・エツチ・キユーの方などで計算致しました結果がぴつたり合ひまして、四・四となつて居るのであります、尚大藏當局の方で伺ひますると云ふと、主計局長に就て質したのでありまするが、之に依りますると云ふと、公共事業費其の他の諸支出などを加へますると云ふと、其の中の文化教育費と看做さるべきものを加へますると云ふと、恐らく六パーセントになつて居るのではないかと、斯う云ふやうな囘答を得たのであります、之に付きましては色々解釋もあることと考へられるのでありまするが、甚だ僅かではありまするが、只今御指摘になりました所のものよりは聊か多い割合になつて居ると考へるのであります、尚六・三問題に付て色々御質問があつたのでありまするが、御指摘の通り誠に乏しきを以て此の大事業を行はなければならぬのでありまするが、大藏大臣も御答になりましたやうに、兎に角今日我々は文化國家、平和國家として起ち上るが爲に、どうしても此の案を實行しなければならぬ必要に驅られて居るのでありまして、無論もつと澤山の豫算を取ることが出來まするならば、一層仕合せであつたのでありまするが、先づ是位な點に於きましても、是非今年度から之を實行に移さなければならぬと云ふ必要に驅られて居るのであります、來年度に於きましては、更に一層増額すべく努力する積りでごさいます、どう致しましても、明年度に於きましては、約二十億を必要とすることと考へるのであります、第三年目になりますと云ふと、更に巨額に上ることは無論でありまして、大凡そ最低見積りまして先づ六十億を要する、斯う云ふ風に考へて居るのであります、尚校舍増築の爲の起債に付きましても、之を許すやうに致したいと考へまして、關係當局と折衝を致して居るのであります、足らざる所は既存の設備を十分に活用致しまするやうに指導致して居るのであります、所謂經濟の本則に從ひまして、最小の費用を以て最大の效果を收めたいと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=14
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015・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 休憩を致します、午後は一時十五分より開會致します
午後零時二十一分休憩
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午後一時二十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=15
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016・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 休憩前に引續き會議を開きます、男爵園田武彦君
〔男爵園田武彦君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=16
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017・園田武彦
○男爵園田武彦君 私は大藏大臣の財政演説を拜聽致したのであります、此の豫算案の内容に付きましては、何れ豫算總會に於きまして委員各位が愼重審議を遂げられることと信ずるのでありまするが、私は大藏大臣に對しまして、我が國の經濟の再建、又インフレーシヨンの對策に關しまして、茲に簡單に御尋を致したいと存ずるのであります、大藏大臣の演説の中にもありましたが、我が國の經濟の前途は決して心配するに當らないと云ふことを述べられて居るのであります、又大藏大臣は、我が國のインフレーシヨンは特殊の關係に基いて居るものでありまして、それが爲に生産面に於きまして、是が軌道に乘る場合には、決して心配することはないと云ふことを屡屡又種種なる機會に於て極めて自信ある、又樂觀的な見解を述べられて居るのであります、勿論一國の大藏大臣と致されまして、其の財政の前途に對して極めて悲觀的なる見解を述べられますることは、其の影響する所が極めて大なるものがありまして、徒に財界を混亂せしむるに役立つのみでありまして、何等益のないことは明かなることと信ずるのであります、假令將來の見透しに對しまして、的確なる所の判斷を下し得ざるにせよ、國民をして其の前途に光明を求めせしめて、最善の努力を致すことが賢明の策と思ふのであります、此の意味に於きまして政治的見地より致しまして、私は石橋大藏大臣の樂觀説には深く贊意を表したいのであります、併しながら現實問題と致しまして、例へば日本銀行の紙幣の増發、一般市場の物價の暴騰、又政府が此の度發表せられましたる所の煙草、運賃、鐵道賃金、郵便電信、電話等の大幅の引上は、果してインフレに拍車をかけるものでないと御考になるのでありませうか、此の點を先づ伺つて置きたいのです、今日何一つとして物價の値下りを期待し得るものはないと思ふのであります、一方生産面を見ますれば、資材の不足、又賠償として撤去さるべき種々な施設等より考へますれば、著しき減退を豫想せられるのであります、是が多大なる影響を及すことは見逃し得ない所の事實でありまして、從つて需要供給のバランスを保つことは極めて困難でありまして、之に依りまして物價の騰貴は避け難き結果を來すことは亦明かなことと存ずるのであります、又大藏大臣は新圓の再封鎖は絶對に行はれ得ないと聲明されて居られるのであります、是は技術上より見ましても、紙幣の印刷に約六箇月を費し、其の間の祕密を保つことは困難である、而して財界に極めて惡影響を及すものであると述べられて居るのであります、私は此の度米國政府が執られましたる所の、我が國占領軍關係のドル紙幣の切換が極めて祕密裡に行はれ、而も極めて短時間に決行されました、其の手際の鮮かさには誠に驚歎する外はないのであります、且又日本人が右ドルを不法に闇取引しまして所有したる所の者に對しましては、何等の餘裕も與へずして、總て之を無效にし去つた點であります、此の占領軍の取決められましたる所の暫定的の一ドル對十五圓が、一躍一ドル對五十圓と決定されたのでありまするが、聯合軍司令部の發表に依りますると、右は日本物價の引上には、何等の影響を齎すものではないと説明せられて居るのであります、併しながら何れに致しましても、我が國の物價が著しく値上りしましたことに對應したる策であると云ふことは明かであり、從つて我が國の貨幣價値の低落しましたことを明かに示すものと言へるのでありませう、大藏大臣が我が國のインフレーシヨンは特殊事情に依ると申さられましたることは、現在國際的爲替相場に支配されて居らぬと云ふ意味を多分に其の間に含まれて居るのではないかと私は考ふる者であります、眞に我が國の財政の安定を得る上に於きましては、單にインフレーシヨンを防止したと云ふことに依りまして、是が決定さるるものではないと思ひます、速かに貿易の再開を必要と致し、大いに輸出を盛に致しまして、他方必要とする所の食糧の輸入を圖り、之に依つて國民生活の安定を得せしむることが財政の安定を基礎づけるものではないかと考ふるのであります、勿論是は講和條約が締結せられたる後のことであり、對米爲替の基準が如何なる點に執られるかと云ふことに依りまして、或は政府が平價切下を餘儀なく斷行せらるる所の可能性があると私は信ずるのであります、之に對しまする所の政府の御所見は如何でありませうか、私は斯くの如き御尋を致しまする理由は、第一次歐洲戰亂直後歐米各國を視察に參りましたる際、當時の敗戰國たるドイツ、オーストリーに於きまして親しくマーク、クロネーの急激なる爲替相場の下落と、之に伴ふ所の恐るべきインフレーシヨンの事情を見聞致したからであります、ドイツは遂に全マークの制定に依りて、平價切下の斷行を致したことは御承知の通りであります、私は是等の點より見まして、我が國に於ても平價の切下が必然的の結果と相成るのではないかと深く懸念致して居るのであります、且世界の金融の中心がロンドンよりニユーヨークに移つた今日、對米爲替の眞の決定は、我が國の財政の安定を決する重大なる意義を持つものと信ずるのであります、而して我が國の貨幣價値を保持して行く上に於きまして、何を以て之を裏附けると御考になるのでありませうか、我が國は戰敗國であり、一等國より一躍四等國に顛落を致し、多くの國力を失つたのであります、正貨の保有も賠償の對象物として或は之を失ふこととなり、何を以て貨幣の價値を裏附ける物があるのでありませうか、私は此の點に付て大藏大臣の御所見を伺ひたいと存ずるのであります、結論と致しまして圓の國際爲替の基準はインフレーシヨンの根源をなすと共に、又一方之が防止の、解決の鍵も其の間に潛んで居るのではないかと考へられるのであります、是等の點に付て大藏大臣の御所見を伺ひたいと存ずるのであります、次に私は内務大臣に御伺ひ致したいのでありまするが、現下の世相を如何に見て居られるのでありませうか、今日新聞紙上に現はれて居りまする事件のみを見ましても、或は強盜殺人、集團的ギヤング等の事件は驚くべき數を示して居るのであります、而も白晝悠々として是が行はれて居りまして、恰も無警察の状態を思はしめる感があるのであります、内務大臣は現在の警察官の人員を以て果して我が國の治安維持を確保し得らるると御考になるでありませうか、勿論警察官の人員に付きましては、聯合國より制限を受けて居られることは私は承知して居るのであります、又其の理由と致しましては、曾てドイツが警官に名を藉りまして、之を軍隊に轉用した事實が深き懸念を聯合國側に持たれて居るのではないかと思ふのでありまするが、我が國はドイツの場合と異りまして、明かに新憲法に依りまして戰爭を此の度放棄して居るのであります、又國民は斷じて再び戰爭を爲すが如き考を持つ者は、私は一人もないと深く信ずるのであります、我が國が占領下に置かれて居る間は、重大事件、例へば暴動の如きことは明かに占領目的を害するものでありまするから、是等に對しては聯合國側に於て處斷さるべきと考へますが、日常起りつつある所の是等の強盜、殺人事件等は日本政府の責任に於て爲さるべきことは、又當然のことと信ずるのであります、内務大臣は警官の増員を必要と認められますならば、速かに聯合國側に懇請せらるべきと考へまするが、其の御意思ありや否や伺ひたいのであります、又一般國民は之を切望致して居るのであります、少くとも今日枕を高うして其の居に安んずることを得たいと考へて居ることは亦當然であります、又政府が如何に闇取締を嚴にせられても、此の手不足に乘じまして、有らゆる手段に依りまして之を行ひ、現状に於て之を防止することは極めて困難なことと察せられるのであります、戰前に比しまして警官の數、又其の警備の低落は彌が上にも闇の横行を許し、且國民生活を脅かし、又犯罪の増加を來して居りまして、國民は益益不安に驅られて居ると思ふのであります、私は日本再建の上より致しまして、是等の點に付きまして内務大臣の善處を要望致して已まぬ次第であります、最後に私は一言申添へたいのでありまするが、政府は深刻なる國民の叫びに耳を傾けられて居るのでありませうか、其の叫びとは道義廢頽の根源が政府自らに依つてなされて居ると云ふ點であります、煙草の値上をされまして、其の質の改善は何等なされて居らないことであります、鐵道の賃金を引上げられまして、其の混雜の緩和も、又原則として座席を與へるべきものが與へられないと云ふこと、又極めて旅行は不愉快であり、困難であると云ふ點であります、電信電話、郵便物も亦然りであります、値上に對する何等のサーヴイスも改善も捗つて居らぬやうに見受けられるのであります、重き負擔のみを國民の上に置かれまして、之に報ゆるに何物をも以てせられざることは果して如何なことでありませうか、外國の諺に「得むと欲すれば先づ與へよ」と云ふことがあります、政府は收入を量る爲に如何なる手段も辭せぬとせられるならば、是は國民各自の上に於きましても、收入を量る上に於て他人の迷惑を他所に、有らゆる手段に依つて闇取引をなしても宜いと云ふ結論に達するのではありますまいか、政府は良心よりして是等の點に付て如何御考になるでありませうか、私は考へます、人間は須く相互の間に幸福の増進をなすべきでありまして、絶えず是が努力を續けて行かなければならないと思ふのであります
〔議長退席、副議長著席〕
又良き品物を安價に多數に製作すると云ふことが製作面に於ける所の理想でありまして、又是がモツトーであると私は信ずるのであります、是等の國民の叫びに對しまして、政府は何を以て應へむとせられるのでありませうか、御所信を承らむと致すものであります
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=17
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018・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の御質問に對して御答へ申上げます、私が樂觀説をポリシーとして述べて居ると云ふ風な御批評でありましたやうでありますが、私はいつも申します通り、長い眼で見た日本の前途に付ては勿論樂觀を致して居ります、併し差詰の問題が、必ずしもさう樂觀すべきものだと云ふことは言つて居らないのでありまして、生産面等に於ては其の爲に極力非常手段も執らなきやならぬと考へて居るのであります、併し私は決して肚では悲觀して居るけれども、表面樂觀を裝つて居るのではないのでありまして、少しく長い眼で見た日本に對しては心から樂觀をして居るのであります、それは只今御擧げになりましたインフレ問題に致しましても、前々申上げた通り、私は尠くも所謂惡性インフレなるものは、財政の赤字を紙幣の増刷に依つて補ふ場合に起るものだと考へて居りますが、其の財政は非常な困難な中ではありますけれども、兎に角收支の均衡を見せつつあります、私は是は日本の如き、斯くの如き戰爭をして來た國が一年や二年足らずにして、兎に角是だけの財政の收支の均衡が得られると云ふことは、是は政府の力とは申しませぬけれども、非常に環境に惠まれたものと思ひます、と云ふのは一つの大いなる其の環境は、幸に日本を今占領して居る聯合軍司令部と云ふものが、先程も申上げますやうに日本に絶對にインフレーシヨンは起させない、今朝の新聞に、昨日マツカーサー元帥が新聞記者に會見して述べたと云ふ其の要領が出て居りますが、之を見ても分りますやうに、日本を如何に早く囘復せしめ、常態に復さしめようかと云ふことに非常な苦心を拂はれて居ることがはつきり了解出來るのでありますが、斯樣な聯合軍の占領下にある日本であると云ふことが、今日終戰後第二年目に入る時に、早くも財政の收支の均衡を保つことが出來た最も大きな原因だと思ひます、賠償に付ても今朝のマツカーサー元帥の言の中には觸れられて居ります、終戰處理費に付きましては、既に第二年目に於て著しく減額、減少を來したことは豫算の面にも現れて居りますし、又今朝のマツカーサー元帥の言葉の中にも、平和締結後は日本の軍事占領を終り、聯合國最高司令部も直ちに解消せらるべきものであると云ふことが述べられて居るのでありまして、幸に若し此の平和條約の締結なるものが比較的近い内に來るものと致しますれば、即ち終戰處理費なるものも、明年度の終戰處理費なるものは多分全然なくなるか、或は非常な減少を來すものであらうと考へるのであります、斯樣に財政の前途に見透しがあるとすれば、インフレーシヨンがどこ迄も昂進すると云ふ理由は絶對ないと考へるのであります、唯併しながら昨年以來御指摘の如く、物の價値は下りませぬ、のみならず先程も申しましたやうに、十一月頃から可なり著しい騰貴を來して居ります、それから又今囘の豫算に於きましても、煙草の値上も致しますし、又運賃、通信料等も値上を致さなければならぬ、昨年以來の物價騰貴は、是は私から見れば寧ろ一時的現象、さつき申しました一種のスペキユレーシヨンから起つた現象と考へますが、既に新な通貨が財政の側面から盛に出ると云ふことがない限り、謂はば一つの桝の中に入つて居る購買力が色々の動きを爲すに過ぎないのでありまして、其の前途はさして心配することはないと考へるのであります、それから運賃、通信料金、煙草等の問題は、一方に於ては財政の收支を調節し、殊に録道及び通信事業に於ては一つの企業體として健全な運營をして行きたいと云ふ意味でありますが、同時に又一般の物價の水準との凹凸を調整する意味を持つて居るのでありまして、今後私は其の他の物に於きましても公定價格の改訂、或は賃金其の他を見合ひまして、有らゆる價格面の凹凸の調整は行はれなければならぬと考へて居るのでありまして、其の場合に或物に付ては相當の値上りをすると云ふこともあり得ることと思ひますが、それは根本的にインフレーシヨンを刺戟すると云ふ事柄とは違ふと考へて居る次第であります、それから需要供給の關係でありますが、需要供給と云ふものは申上げる迄もなく、物價を離れて需要供給はないのでありまして、今日物資の供給が甚だ不足であると云ふことは毎々申上げることでありまして、日本經濟の根本的の困難はそこにあるのでありまして、併しながら此の不足の物を需要と一致せしめると云ふには、單に統制に依つて之を配分すると云ふだけでは足りないのでありまして、矢張り價格の働きをここに加へなければなりませぬ次第でありまして、結局價格と云ふものが需要供給の調節を致すものであります、從つて物の足りない時には、それに從つて價格が騰貴をすると云ふことは已むを得ないことでありますが、併し其の價格がどこ迄も上つて行くか、上つて行かないかと云ふことは、即ち先程から申します財政面からの通貨がどんどん出るか出ないかに係るものと考へるのであります、結局需給供給を調整するものは價格に依り、而して其の價格の凹凸を今後調整すると云ふことが、需要供給を早く均衡せしめる唯一の途であると私は考へて居ります、それから最近司令部が執りました軍票に對する處置、それからそれの日本圓との交換率の變更に付きまして御指摘があり、且日本政府は追つて平價切下をするのではないかと云ふ御質問のやうでありましたが、平價切下と云ふ言葉は最近日本に於ては色々の意味に使はれて居りまして、國内に於ける紙幣を、例へば百圓の紙幣を五十圓に切下げると云ふやうなことも、是は平價切下と言つて居るやうであります、併し御質問の趣意は左樣な通俗的な意味でなく、矢張り国際爲替に關係した平價切下のことのやうに伺ひました、若しさうでありまするならば、今後平和條約が出來、日本の貿易が自由に、商業的に營めるやうになりました場合には、當然爲替問題が登場を致して參ります、其の時に日本の圓の爲替相場がドルなり、パウンドなりに對して幾らになるかと云ふことは、其の際決め得ることでありますが、勿論今日の情況から考へますれば、過去の戰爭前の爲替相場とは遙かに違つたものになると云ふことだけは、是はもう斷定し得ると思ひます、併し幾らになるかと云ふことは分りませぬ、其のことを若し平價切下、詰り爲替相場を變更しなければならないと云ふことを平價切下と言はるるならば、是は平價切下は當然起ることだと斯う考へて宜しいのであります、で、實は現在の物價其のもの、アメリカの物價と日本の物價と云ふものとの比較に依つて既に圓の價値と云ふものは動いては居りますけれども、或程度決つて居るのでありますから、ですから平價切下と言ひましても、何も新しく改めてそこへ來て日本の通貨の價値がどかんと違ふ譯ではないのでありまして、既に今日實際に國内に行はれて居る通貨價値が、愈愈國際貿易を營みます場合には、爲替と云ふ形に飜譯されて現れる譯でありますから、國内經濟には、直接には影響のない事柄であります、從つて第一次世界戰後のドイツの或る時期に見ましたが如く、爲替が暴落して、インフレーシヨンがどんどん昂進すると云ふやうなことは、日本が今後國際貿易を開始する場合には起らない現象であります、更に又、政府は左樣な場合に、此の貨幣價値の裏附けを、何でするかと云ふ御尋のやうでありましたが、是は一言に申せば、日本の生産力を裏附けにすると申すべきであらうと思ひます、金がないからと云ふ御話も、屡屡伺ふ所でありますが、無論金がありますれば、金も一つの貨幣のリザーブになりまして、價値の裏附けになるとも申せるのでありますが、實際に於ては金があつたからと申して、それで貨幣價値が安定するものではないのであります、それは第一次世界戰爭後に於て、各國共金本位が倒れた理由は其處にあるのであります、結局其の國の生産力、それから貿易のバランス、貿易のバランスが保てるが如き國の生産力、經濟力がある場合には、假令金がなくても、所謂管理通貨でありましても、爲替相場の安定は期待し得るのであります、金がありましても、若し國際貿易のバランスが保てないやうな場合には、貨幣價値の安定は期し得ないのでありますから、政府と致しましては、必ずしも金がなければならないとは考へて居りませぬ、金がなくとも、日本の經濟が安定し、生産力が伸び、國際貿易に當りまして、收支のバランスが保ち得るやうにさへすれば、それで貨幣價値は安定するものと信じまして、左樣な觀點から、目下日本經濟の安定に努力を致して居る次第であります、以上甚だ簡單でありますが、御答を致した次第であります
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=18
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019・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 園田男爵に御答へ致します、園田男爵の第一の御質問は、内務大臣は現下の世相を如何に見て居るかと云ふことであつたやうに思はれます、男爵も此の御問を發するに付きましては、現下の世相が頗る憂慮すべき状態であるが、内務大臣はそれを十分に認識して事に當つて居るかと云ふ御意味が内に含まれてのことと思ひます、内務大臣と致しましても、現下の世相を眺めまして、實に憂慮に堪へざるもののあるのは事實であります、御説の如く、殺人や、強盜や、竊盜が各所に頻出して居ることも承知して居ります、社會の秩序も決して安定せりと申す譯には參りませぬ、人心も或程度から申しますれば不安であることは事實でありますが、戰爭の後と云ふものは、何處に於ても道義が頽廢し、人心が不安になり、社會の秩序が紊されると云ふことは、人類の歴史を見て、いずこにも存在する所の事實であります、戰爭は勝ちましても、敗けましても、戰爭の恐しいことは、之に伴ふ所の道義の頽廢であります、殊に日本の國のやうなみじめな敗け方をした國、而も日本の國民は兎角、御承知の通り附和雷同性を有する國民でございまして、初まりから國力の相違の爲に、當然勝てない戰爭であるにも拘らず、軍部の宣傳に乘りまして、勝てるものと一般に考へて、或意味から申しますれば、無我夢中にそれに邁進して來た所が、最後に至つて、まだ一面に於て勝てる勝てると云ふ宣傳があつた時に、敗戰の事實を眺めました時には、想像もつかない程の慘憺たる所の敗北の姿であつた、是は國民全體は擧げて一時は虚脱状態になつたと申しても宜しいことは、園田男爵の御承知の通りと思ひます、斯樣な状態で、なかなか之を平常の通りに戻すことは困難でありますが、其の當時に比べては、今日は非常に改善されて居ると思ひます、御承知の通り、まだ風紀は紊れたり、殺人、強盜が頻出して居る光景は實に殘念至極でありまするけれども、今日に於ては國民全體も敗戰の事實を痛感致して、本當に是が爲には日本は平和國家を建設しなければならぬと、全國民が、遲蒔のやうでありまするけれども、漸次其の感じを取戻して、有らゆる方面に、教育は徹底的に改めなければならない、國民は總て協力して、努力して、産業の復興に當らなければならないと云ふ意氣込になりましたことを見ましても、まだ滿足とは申されませぬけれども、漸次非常に憂ふべき状態であつた世相から離脱致しまして、今日に於ては相當國民全體から申しますれば、希望を持つて進むやうになつた、此の點に於て憂慮すべき實情はまだ存在して居りまするけれども、漸次囘復出來るものと、又さうさせなければならないと、折角努力致して居る次第であります、第二の御質問としては、左樣な世相であるが故に、現下の警察力を以て治安の維持を確保することが出來るか如何との御質問のやうに拜聽致しました、之に附帶して警察力を増さなければならないぢやないか、其の警察力の増加に付て聯合國と了解を得るやうに努めたことがあるかどうか、動もすれば此の警察力の増加に付て、嘗てドイツにあつたやうに、警察力を増加すれば之を軍隊化して、又日本を軍國主義に導くと云ふやうな虞から、此の問題が行詰つて居るではないかと云ふやうな御意味の含まれた御質問と拜察致します、御承知の如く、今日の全體の治安の状態は滿足とは申されませぬけれども、今日の警察力、人口約七千五百萬乃至八千萬の人口を擁し、敗戰國の動搖せる所の人心、社會情勢の後の安寧秩序を維持して行く警察力と致しますれば不足を感じて居ります、又警察も一時は非常に虚脱状態に陷りまして、其の職責を果すと云ふ意氣込を有しなかつた時代もありまするけれども、今日は可なり九萬の警察力を以て全國の秩序維持に能く努めて呉れて居ります、御承知の如く、警察の待遇は、必ずしも良くはありませぬ、又警察官は地味な仕事で、而も今迄の警察制度其のものの不完全でありました點から、國民の本當に同情と支持を受けて居らぬやうな立場にあるにも拘らず、晝夜を分たず社會の安寧秩序維持に忠實に働いて、國民の生命、財産の保護に能く努めて居つて呉れる、此の状態は人口と警察力とを以て、決して滿足とは申されませぬ、能く努めて居つて呉れると思ひます、之に付てもどうか警察官の斯う云ふ社會に處して、非常にむづかしいことであると云ふことの御同情を得て、一層勵んで努力するやうに御協力を願へば更に結構であると思ふて居ります、警察力は何れに致しても、増さなければならないのでありまして、此の人員を三萬乃至三萬五千増加致したいと思ひまして、關係筋とも交渉を遂げて居ることを御了承を得たいのであります、啻に數を増すばかりで警察の機能が十分に發揮されると云ふ譯には參りませぬ、矢張り警察官の素質も改善致さなければならない、訓練の仕方も能く致さなければならない、又彼等の教養に付ても考慮致して、其の士氣の昂揚に資するやうにならなければならないと、折角努めて居るばかりでなく、警察官に對しても、より高き教養が必要だと思ひまして、特に警察官の指導者と申すべき者を教育し、訓練する爲に、高等の警察學校を作りまして、さうして此處で從來の警察官よりは更に高い教養と訓練と修養を積んで行けるやうに、之を指揮する爲に、今警察學校を作つて、折角訓練して居る次第であります、是等も十分整ひましたならば、御心配のないやうに、警察行政が行はれるのではないか、從つて治安の維持もより良くなるやうに思ふて居ります、最後に、少し是は御言葉が過ぎたのではなからうかと思ふやうな感じが致した、道義の頽廢して居るのは、政府自らの責任ではないか、鐵道の運賃を上げても、更に鐵道の乘客に對してより良き便宜が與へられて居らないではないか、郵便、電信、電話を値上しても、其のサーヴイスは少しも良くなつて居らぬではないか、政府は良心的に是等のことをやつて居るのかどうか、斯う云ふ責任を誰が持つのだと、斯う云ふやうな御意味の御質問であつたやうに承知致して居ります、御説の如く鐵道の運賃は上げたにも拘らず、石炭其の他の不足の爲に、乘客の方々に、却て運賃は高くなつた、乘客は尚更不自由と不便と不愉快な状態に於て旅行致さなければならない、郵便、電信、電話の値上はしたけれども、實際其のサーヴイスは思ふ通り改善されて居らぬと云ふのは、是は事實であります、之に付きましては、どうか一つよく御理解を願ひたいと思ひます、是等の運賃の値上は、多くの場合にそれに從事して居る方々の待遇改善の爲に、已を得ず値上をしなければならないと云ふやうな破目になつたのであります、之には色々意見もありませうけれども、今日の是等の仕事に從事して居る者の待遇が、今日の物價騰責の半面と睨み合しては、決して滿足でないと云ふことは事實であります、と云つて、日本全國總ての國民の今日の生活の状態は、負けた國として誠にみじめである、財閥は解體され、事業を致して居る者も、決して其の事業に對して利益を得て居られない、株を持つて居る人も、其の配當を求めることは出來ない、誰も良くない状態でありますが故に、勞働者と雖も可なり自分の状態を我慢して呉れれば宜しいのでありまするけれども、どうも兎角其の時の時局の波に乘り易い、附和雷同し易い、自由と放縱とを穿き違へるやうな過去の教育が幾多の禍を致して、是等の状態を作り出して居るのだ、唯一つの理由ではない、政府に於ても是等のことに對しては、折角心配致して居りまするけれども、現在の日本に於きます總ての事情を御了承下さいましたならば、一に政府が之が爲に良心的に行動して居らぬと云ふやうな御咎めでなく、どうか政府も最善を盡して居りまするが、まだ皆樣方に滿足を與へられないやうな状態であることは遺憾であります、此の状態はどうか政府も、國民も本當に各自能く時局を認識して附和雷同、自由と放縱とを取違へないやうに、景氣の好い時ならばストライキも宜いけれども、不景氣のどん底で、資本家も利益を見て居らない、株も配當を得て居らない、政府と致しましても、儲け仕事をして居らないと云ふ時には、相當働く者も考慮して呉れなければならないが、是等が各方面に於て色々思ひ違ひのあることも、懸つて斯樣な實情を呈して居る、是は御同樣の力で治めて行くより仕方がないと思ひますから、能く此の點を御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=19
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020・園田武彦
○男爵園田武彦君 簡單でありますから此の席から發言を御許し下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=20
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021・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=21
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022・園田武彦
○男爵園田武彦君 只今大藏大臣竝に内務大臣より詳細なる御答辯を戴きまして誠に感謝の意を表します、内務大臣の御答辯の中に、我が國民の深刻なる叫びに付て傾聽して居られるかと云ふ點に付ての私の申上げた點に付て御注意を戴いたのであります、私が政府に對して申上げたことに付て、或は誤解を得たかと存じまするが、穩當でない言葉が其の間にありましたならば、私はそれを取消したいと存じますと同時に、此の點に付ては御詫びを申上げたいと思ひます、私の質疑は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=22
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023・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 林春雄君
〔林春雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=23
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024・林春雄
○林春雄君 會期切迫して居りまして、時間の餘裕も少い時でありますから、私は簡單に結論を申上げて、御當局の御答辯を得たいと思ふて居るのであります、第一に會計法であります、我が國の現在の會計法の爲に、如何に政府に於て豫算を使ふのに不便であるかと云ふことは私の申上げる必要もないと思ひます、實例は幾らでもございます、左樣なことは私が申上げぬでも、豫算を御使ひになつた方には直ぐ分るのであります、此のことが不便である爲に折角政府で多額の豫算を組まれましても、其の豫算の金の效率が、エフセンシーが非常に減じて居ると思ひます、どの位減ずるかと云ふことは此處で具體的に申上げることは出來ませぬけれども、一例を申上げて見たいと思ひます、近頃アメリカの、學校視祭をする人がありますが、それが私立の學校を視察して來て、更に同樣の官立の學校を視察した、其の時に其の所感を述べて居る、其の學校の校長から聽いたのでありますが、お前の學校はあの學校の殆ど十倍の豫算を使つて居るのではないか、併しながら此處へ來て見ると云ふと、どうしても十倍の金を使つて居るとは見えない、詰り金の使ひ方が下手だ、其の時に日本の會計法の窮屈なことを幾ら説明してもアメリカの視察に來た人には分らない、それは當然のことであります、元來御上の仕事は高くなることは昔から皆人の能く知つて居ることで、請負でも御上の仕事であるからと云つて高くなるのは皆人の知つて居る所であります、國民の膏血を搾つた金が何割か價値少く使はれると云ふことは、國民の一員として悲しむべき事柄であると思ひます、是は一つ會計法を全面的に、革命的に改正をして行かなければならぬと思ひます、是は何となれば、會計法では官吏、之を使ふ人間は惡い事をする、請負であれば請負は狹いものであると云ふ、斯う云ふやうな前提の下に出來て居るのではないかと私は何時も思ふのであります、それでなしにもつと信を腹中に置いたやうな會計法の改正は出來ないものであるか、私は具體的な例を擧げることは差控へますが、實はそれに對して首相若しくは大藏大臣でありますか、詰り内閣の國務大臣としてそれに對する御所見、どう云ふ風に改正の意思があるかと云ふことを伺ひたいと思ふのであります、それから第二に今一つ伺ひたいのは、是は小さい問題のやうでありますが、今囘の豫算に計上されて居ります色々な科學研究の費用でありますが、文部省では自然科學に對して四千九百幾萬、それから人文科學に對して九百八十萬幾ら、其の外各省に亙りまして、科學研究の費用が大分出て居ります、是も私等に言はせますと、例へば科學研究ならば、文部省の科學研究ならば、學術振興會と云ふ大きな確かな團體がありますので、此の方に助成金として戴きますならば、其の金は非常に有效に使はれて居ります、是は皆知つて居るのであります、處が、文部省から科學研究の費用を頂戴しますと、非常に不自由であります、殊に依ると會計年度の過ぎる時分に、急に金をやる、それから會計年度を過ぎて金を使つちやいかぬと云ふやうなことで、色々な文句が付いて來ますから、折角可なりの金を頂戴しても、矢張り其の效率が非常に少くなるのであります、此のことは先程申上げたのでありますが、それと同じことでありまして、詰り成るべく助成金に廻して戴けば大變結構と思ふのであります、政府では何だか助成金、補助金などは削つてしまふと云ふやうな御方針のやうで、例へば學術振興會の費用は三百萬圓であつたのが、昨年などは二百萬圓に減らされた、本年度は六百萬圓になると云ふことであります、さう云ふ風にやつて戴けば大變結構でありますが、之に對する政府の御所見を伺ひたいのであります、唯本年は會計法が今急にそれ程改革される譯にも行きませぬし、それから研究費を助成金に廻せと言つても、それも出來ないことでありますが、そこで一つ大藏大臣に御願ひ致しまして、御相談申上げまして、御意見を承りたいのでありますが、それは大正七年か、八年頃に文部省に於て自然科學研究奬勵費と云ふものを三十萬圓計上致しました、大藏大臣は御承知ありますまい、文部大臣も御出になりませぬが、矢張り御承知ないと思ひます、それは數年前迄續いて居りました、其の三十萬圓の自然科學研究奬勵費と云ふものは、どう云ふ話合で出來たか知りませぬが、此の方は研究者に現金で直ぐ拂ふ、私なども頂戴したことがあります、本席にも其の金を貰つた方があると思ひます、金が直ぐ頂戴出來るし、其の金は年度を越えても使つて宜い、後でどう云ふ風に使つたと報告するだけで宜かつた、誠に有難く、有效に使へたのであります、今文部省に自然科學に四千九百萬圓、人文科學の方に九百八十萬圓の豫算がありますが、あの金は學術振興會、或は其の外の手を通じて戴く、丁度前に申しました、大正の頃の自然科學研究奬勵費と同じやうに頂戴出來ないものでせうか、私は文部省の方にも始終話して居りますが、兎に角研究してみやうと云ふだけで、何處で引掛かるか知らないが、一向實現しませぬ、本年は會計法の改正なんか間に合ひませぬが、それで大藏大臣に御相談致しますが、文部の方と御相談を願つて、さう云ふ風にして渡して戴けば、今の金が非常に有效に使へる、是は折角國民の膏血を搾つた金でありますから、其の金を有效に使ひたいのであります、之に對する大藏大臣の御答辯を願ひたいと思ひます、私はもう簡單に之を以て終りと致します 〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=24
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025・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今非常に適切な御質問を戴きまして、私の方から御禮を申上げます、會計法は今期議會に於きまして、財政法と云ふ新しい法律、それから會計法の改正案を御審議を煩すことになつて居りますが、併し是は今の御質問の問題は、大體は寧ろ運用の問題だらうと思ひます、無論法律は、殊に會計に關する法律制度は、只今御指摘もありましたやうに、間違ひのないと云ふ方に重點を置いて居りますから、兎角窮屈なことにはなつて居りますが、併しながら現在此の政府の會計が餘りにも支拂が遲れましたり、非常識な點がありますのは、是は制度の罪よりは運用の罪に大部分はあるのではないかと考へまして、私も氣が付きまして、最近當局を鞭撻して、左樣なことのないやうに改啓致さむと致して居る次第であります、そこで具體的に御話のありました科學研究費に付きまして、助成金の形が良いと云ふ御言葉であります、是は實は助成金には良いのもあり、惡いのもあり、種々雜多で、非常に澤山斯樣な種類のものがありますので、成るべく整理して有效なものに致したいと考へて、整理を致して居ることは事實でありますが、有效に使用せられるものに敢て反對して居る譯ではございませぬ、先年ありました自然科學奬勵費と云ふものの支出の状況の御話がありましたが、今囘文部省に豫算として割當てられました此の研究費に付きましては、御言葉のやうに一つ文部大臣とも相談致しまして、窮屈でない、本當に有效な支出が出來ますやうに取計らひたいと存じます、是は運用で必ず出來るだらうと考へて居る次第であります、私も文部省と相談致しますが、尚林博士に於ても、其のやうに文部省に御話し下されば尚更結構と存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=25
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026・林春雄
○林春雄君 簡單に自席より申上げます、只今大藏大臣より簡單な、併しながら明快な御答辯を得まして有難う存じます、尚私は細かいことで申上げたいことは澤山ございますが、何れ豫算の委員會の時に當局の方々に詳しく御話を致します、只今の大藏大臣が誠意を以てやつて戴くと云ふやうな御答辯、有難く存じます、どうぞ其の點事實を以て御示し下さるやう御願ひ致します、是で以て私の質問は終りと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=26
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027・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 河西豐太郎君
〔河西豐太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=27
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028・河西豐太郎
○河西豐太郎君 私は我が國經濟再建に關する根本事項、特に生産の發達を期する爲焦眉の急を要しまする所の外資輸入及びクレジツトに付て御尋ね致したいのであります、先刻來大藏大臣の御話も承り、又色々の御答辯も拜聽致しましたが、一應私の所信を申述べて御尋ね致したいと思ふのであります、戰後既に一年有半に垂んとする今日、經濟再建の聲は朝野を擧げて叫ばれて居りまするが、國情は日に月に非に致しまして、今や國民は危機を叫びながら危機を孕んで行く現状であります、一體此の危機なるものは、其の根柢に横はる所の物資の缺乏から來るのでありまして、石炭、鐵鋼は勿論、食糧、衣料、住居等も非常なる不足を告げて居ります、更に各種のストツクも漸く盡きむとして居るのであります、是が所謂危機の實情であらうと思ひます、此の危機は敗戰の所産であることは勿論でありまするが、本來我が國の經濟は如何なる構造に於て成立して居たのでありまするか、生活必需物に付て考察して見ましても、一般食糧は、滿洲事變前日本が平和的な經濟を營んで居りました昭和五年の生活水準に於て、即ち我が國が深刻なる不景氣を體驗した時代に於て、國民が最も裕かな生活を營んで居りました昭和十一年から十二年に比べると約三十パーセント低位の生活であります、其の當時の食糧消費を一人當りの熱量に換算致しますると、約二千二百カロリーになりまするが、其の程度の所謂最低生活を維持するに致しましても、尚且約二割の食糧は海外に依存して居つたのであります、近き將來に於て我が國人口は八千萬人に上らうとするのであります、さる場合、是以上の數量の不足を見ることは當然と考へるのであります、斯かる絶對的不足量が横たはります以上、比較的豐作を傳へられた昨年の米收穫に於ても、一面に於ては既に豐作飢饉と言はれて居つたのであります、此の不足額を補充する爲、全國に於て開墾されて居らない土地約百五十萬町歩の開墾を主張する者があります、此の面積は現在の耕作面積の約二十五パーセントに當り、我が國が明治初年より開墾し來つた面積と略略同じであります、斯かる大事業を茲數年間に行ふことは、殆ど不可能に近く、又斯かる大原野の開拓は我が國の地勢に重大なる影響を及しまして、或は非常なる惡結果を招くの虞なしとしないのであります、從つて僅か六百萬町歩の耕地に依りて多數の人口を扶養せねばならない我が國農業は、當然に多肥料耕作に依らざるを得ないことと存ずるのであります、それにも拘らず、自給度の比較的高い窒素肥料を除いて、燐酸及び加里は總て輸入に俟たざるを得ないのであります、窒素肥料に於ては、其の生産高は昭和十六年度硫安百二十四萬トン、石灰窒素二十四萬トン、それが昭和十九年の生産實績は、硫安四十萬八千トン、石灰窒素十一萬四千トン、斯樣に激減を示して居るのであります、是が急速なる囘復を圖らなければならないことは勿論であります、其の他味噌、醤油の原料たる大豆に於ても約八九十萬トンの輸入を必要と致します、砂糖に於ても殆ど全量の輸入を必要と致します、又食用鹽及び油脂の原料も同樣であります、棉花其の他の衣料の原料も矢張り輸入を必要とするのであります、斯樣に見て參りますれば、國土狹く、資源乏しく、人口多き我が國經濟の孤立し得ざるものであることは明かとなるのであります、然るに我が國經濟は、今や逆に工業生産の低下に惱んで居るのであります、敗戰の所産として植民地を失ひましたる上に、過去の蓄積を消耗し盡して居ります、之に加ふるに戰災に依り受けた諸設備の打撃、數年間補修を怠つて居りました所の諸機械の老朽化、更に賠償撤去、基本的資材原料の不足等相俟つて、生産は殆ど危機に瀕して居るのであります、戰災から漸く免れました所の生産施設も、賠償撤去が行はれむとして居ります、而も是は單なる豫想ではなく、近い將來に於て我が國が犯しました所の帝國主義的侵略戰爭の償ひとして、現實に撤去されるのであります、我が國經濟は如何なる状態になるか、言はずして知るべきであります、殘る設備をフルに動かし、各生産の基礎を爲す石炭、鐵鋼の生産状態はどうでありまするか、銑鐵の月産一萬トン、鋼材の三萬トンは誠に慘憺たるものであります、昭和五年銑鐵月産九萬七千トン、鋼材の十五萬二千トンに及ばざること遠く、再興の爲の最低需要量を去ること誠に程遠いものがあるのであります、鐵鋼飢饉状態に付て、或人は、我が國の今の鐵生活は正に明治三十年臺の水準にあると申して居ります、鐵鋼の飢饉は正に決定的であります、此の影響は炭鑛の設備にも及ぶでありませうし、機械生産に於ても、輸送關係に於ても大なる障碍になつて居ります、石炭の生産はどうでありませうか、本年度計畫の三千萬トンは、有らゆるものを犧牲として集中的に資材を投下しても、恐らくはそれに充たないであらうとする見解が多いのであります、此の不足を何處で補ふか、現に電氣は消えて居ります、列車は極度の制限をして居る、更に一般産業への供給も減るでありませう、鐵鋼、纖維等重要な産業部門に於ても今迄さへ石炭が足りない、加ふるに原料資材無く、僅かに保つて居つた所の生産も決定的な打撃を受けるではないかと恐るるのであります、更にインフレーシヨンはどうか、此の點に付ては先刻來屡屡御話があつたでありまするが、一月中に一千億の大關門を突破するであらうと豫想されて居りました日銀券は、豫想を裏切らずに遂にそれを突破してしまつた、更に今後と雖も増發が昂めらるることが豫想されます、此の溜り込んだ通貨はどうなるか、通貨の處理は不可能ではありませぬ、それは一時的なインフレの進行を喰止めはするが、インフレーシヨン解決の方法としては誠に不完全であります、インフレーシヨンの解決は申す迄もなく生産面の裏附と、財政支出に依る通貨増發を止めることが必要であります、然るに既に述べました如く、生産面の激減が決定的であることは周知の事實であります、一方財政支出方面に於ても、終戰の諸費と、社會政策的諸費は、我が國財政を相當困難ならしむると共に、相當長期間續くものと見なければなりませぬ、加ふるに生産性の低い、而も冗費整理の不可能なる官業組織は、失業の費用と共に日本の政治を硬化ならしめて居るのであります、斯樣に見て參りまする時に、現在日本のインフレーシヨンは不可避的ではないかと思ふのであります、國民生活は最後の破綻へ巨大なる歩みを進めたと論者は申します、大藏大臣は非常に此の點に對して苦心せられて居りまするが、生活は愈愈苦しくなつて參つて居るのであります、物價は目に見えて跳上つて居ります、闇物資の檢察が嚴重になりましたが、それが正しき配給で裏附けられない限り、闇市に徹底的な依存をして居る大衆の生活は、どうにもならなくなつて居るのであります、要するに我が國の經濟は孤立經濟では成り立ちませぬ、世界經濟への依存に於て初めて成立すると思ふのであります、然るに現在は、世界經濟との交渉は申す迄もなく斷たれて居ります、僅かに聯合軍の同情的供給に依りまして、生存して居るのであります、更に八千萬國民の就業を考へる時、農業部門は既に充たされて居りまして、どうしても工業部門に吸收しなければならぬ、併し我が國現下の經濟は餘りにも窮屈であります、剩へ勞働攻勢は經濟的範圍に止らず、政治的要求として、大衆運動への兆も見せて居ります、此の際銅材、重油其の他の原料と機械等の現物を輸入するのは申す迄もなく、出來得る限りクレジツトの供給を受けることが必要であります、是は正に水枯れしたる處ポンプへの差し水となるでありませう、之に依つて初めて日本國民に將來の希望が與へられる、我が國經濟の危機を脱することが出來るのではないかと存ずるのであります、此の點に鑑みまして、政府は聯合國軍に懇請すべきものと考へまするが、之に對しての御考は如何でありませうか、此の點を御尋ね申上げたいと思ひます
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=28
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029・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 河西議員からの御質問に御答へ致します、日本の經濟の現状に付て、種々御批判がありましたが、結局何等かの形で、海外からクレジツトを受くるに非らざれば、復興が非常に困難である、國民の生活も窮屈に陷らざるを得ないが、其の點に付て、政府はクレジツト問題に付て如何に考へて居るかと云ふ御尋のやうに拜聽致しました、是は屡屡問題になることでありまして、無論政府としましては、此の際若し相當纏つた資金が海外に於て出來ますれば、それに依つて日本の經濟の再建に役立つ、即ち呼び水となるやうな、重要な物資の輸入が出來る譯でありますから、之に越した喜びはない譯でありまして、其の機會の來ることを希つて居ることは勿論でありますが、併し只今の所ではまだ左樣な時期には到達して居らないやうに感ずるのであります、唯先程も申しましたやうに、今日のマツカーサー元帥の談話の中にも、「聯合軍最高司令部が臨時に採用して居るバーター制は滿足すべきものではない、講和條約締結後の日本の世界貿易は、政府による統制を最小限度に止めて遂行されねばならないと思ふ」と言はれ、又日本人は「生きる爲に衣類や身廻り品を賣つて居る、事態はどんどん惡化しつつあり、餓死を囘避する爲には何等かの形の外國貿易が許されねばならない」とありまして、又「若し日本の經濟封鎖が此の儘續けられるなら、日本人の生存に必要な食糧其の他の物資を供給出來る國は米國あるのみである、即ち日本人が生存出來る量と、日本人が生存に絶對必要とする量の差は、米國が補給しなくてはならない」、尚「マツカーサー元帥は日本の輸出貿易を再興させる爲、日本の纖維工業を急速に擴張する必要のあることを指摘した」と云ふやうな記事も出て居りますが、無論今直ぐと云ふ譯ではありませぬが、講和條約締結後は、日本も自由なる國際貿易に參加の出來ることと考へられますので、左樣な場合には自然クレジツトの問題も實際に登場して來ることと思ふのであります、現在の所では、日本としては出來るだけ見返り物資の生産に努力しまして、之に依つて必要な物資の輸入を致すと云ふことに最善の努力を致し、其の努力に依つて出來るだけ早く、日本の平和條約等の締結の時期を早めまして、さうして經濟の復興を圖る、斯樣に考へて參りますのが、常道であり、一番或は早道ではないかと考へて居る譯であります、唯、今直ぐにクレジツトが欲しいと、斯う言ひました所が、是は唯日本の政府の努力だけで出來ることではありませぬので、無論是は希望致して居りますが、其の希望に到達するのには、日本政府又國民自體として、盡すべきことを大いに盡すと云ふ必要がある、而してそれが軈てクレジツトをも得られる時期を早く齎す唯一の方法である、斯樣に考へて折角努力を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=29
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030・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 是にて質疑通告者は全部終りました
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=30
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031・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 日程第一、罹災救助基金法の一部を改正する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、小笠原厚生政務次官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=31
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032・会議録情報3
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罹災救助基金法の一部を改正する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月十七日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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罹災救助基金法の一部を改正する法律案
罹災救助基金法の一部を次のように改正する。
第一條、第二條第一項、第七條及び第十五條ノ二中「府縣」を「都道府縣」に改める。
第三條中「府縣」を「都府縣」に改め、同條に次の一項を加える。
北海道ニ於テ貯蓄スベキ罹災救助基金ノ最少額ハ百萬圓トス
第十五條、第十六條、第十七條、第十九條、第二十條及び附則第二項中「府縣」を「都道府縣」に、「府縣會」を「都道府縣會」に、「内務大臣及大藏大臣」を「厚生大臣、内務大臣及大藏大臣」に改める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
北海道罹災救助基金法は、これを廃止する。
北海道罹災救助基金法により貯蓄した罹災救助基金は、罹災救助基金法により貯蓄した罹災救助基金とする。
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〔政府委員小笠原八十美君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=32
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033・小笠原八十美
○政府委員(小笠原八十美君) 只今議題となりました罹災救助基金法の一部を改正する法律案に付て、提案理由を説明致します、非常災害に際しましての救護に關する法律としましては、罹災救助基金法がありますが、其の外に北海道に付きましては、其の地域が廣大であります爲に、他の内地一般府縣に比して、多額の基金を必要とすること、基金の急速な増成を圖る必要があつた事等の特殊事情に依りまして、北海道罹災救助基金法が設けられて居るのであります、同法の施行期間は四十年間と定められて居り、其の期間が滿了したのでありますが、同法に依る基金も既に相當額に達し、北海道に付て特別法を設けて置く必要もないものと認められますので、罹災救助基金法の一部を改正して、北海道にも之を適用されるやうにし、北海道罹災救助基金法は之を廢止しやうとするのであります、何卒御審議の上速かに協贊を與へられるやう希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=33
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034・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました罹災救助基金法の一部を改正する法律案は、会計檢査院法を改正する法律案の特別委員に併託せられむことの動議を提出します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=34
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035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=35
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036・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=36
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037・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないものと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=37
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038・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 報告を致させます
〔寺光書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
國会法案修正報告書
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=38
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039・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 此の際議事日程に追加し、國会法案の第一讀會の續を開き、委員長の報告を求めたいと存じます、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=39
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040・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます、本案は衆議院の提案でございますから、日程變更に付政府の同意を求めます、‥‥同意を得ました、尚委員會の修正案は印刷配付するの暇がございませぬから、書記官をして朗讀させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=40
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041・会議録情報4
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國会法案
右別册ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月十八日
委員長 伯爵橋本 實斐
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔河野書記官朗讀〕
第一條第三項中「憲法」ヲ「日本國憲法」ニ改ム
第四十二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
各議院は、両院法規委員会の勧告に基いて、前項各号の常任委員会を増減し又は併合することができる。
第四十三條中「專門的職員」ヲ「專門調査員」ニ改ム
第五十一條第二項中「予算」ヲ「総予算」ニ改ム
第五十六條第四項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前二項の規定は、他の議院から送付された議案については、これを適用しない。
第五十八條中「翌日以後」ヲ「翌日以後五日以内に」ニ改ム
第八十四條第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ
参議院は、衆議院の回付案に同意しなかつたときに限り前項の規定にかかわらず、その通知と同時に両院協議会を求めることができる。但し、衆議院は、この両院協議会の請求を拒むことができる。
第八十八條ヲ左ノ如ク改ム
第八十四條第二項但書の場合を除いては、一の議院から両院協議会を求められたときは、他の議院は、これを拒むことができない。
第九十二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
両院協議会においては、協議案が出席協議委員の三分の二以上の多数で議決されたとき成案となる。
第百條第一項中「五人」ヲ「八人」ニ改ム
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=41
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042・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 委員長橋本伯爵
〔伯爵橋本實斐君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=42
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043・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 只今上程になりました國会法の特別委員會に於ける經過竝に結果を御報告申上げます、御承知の通り本案は衆議院提出に係る法案でありまして、同一の案は既に去る臨時議會に提出せられましたが、時恰も會期最終の切迫致しました場合に本院に囘付致されまして、本院と致しましては之に對しまして、多々修正すべき意見があつた爲に、會期不足、時間不足の爲に、遺憾ながら審議未了と相成つた案でありまして、本通常議會に於きましては、衆議院は重ねて前案を修正することなくして、其の儘議會に提出され、是が今囘本院に囘付された次第なることは是亦既に諸君の御承知の通りなことでございます、衆議院提出に係りますが故に、特別委員會に於きましては、別段衆議院からの提案理由を伺ふ機會もなかつたのでありまして、唯政府を通じまして衆議院の提出の意の在る所を間接に伺ひ得たに止まる次第であります、本案の取扱に付きましては、誠に貴族院と致しましては愼重なる手續を盡して居ります、議會閉會中に於きましては、貴族院の調査委員會に於きましては特に國会法に關する特別の委員會が設けられまして、本委員會が愼重審議、純粹の法理的な立場から檢討致しまして、衆議院案に對しまして、相當澤山の修正意見を、修正に關する成案を得て居つたのであります、本通常議會に於きましては本案が貴族院に上程せられまするや、特別委員會は先づ此の貴族院の調査委員會に於きまして研究致しました案を相當參考に致しまして、愼重審議之を檢討致した次第でございます、本委員會は去る二月二十二日に初めて第一囘を開き、二十四日には各章別に詳細な審議を重ねまして、二十五日、二十七日會合致しまして、是は懇談に終始致しました、飛んで三月十七日、即ち昨日委員會は集合致しましたけれども、是亦懇談を重ね、今日一時より特別委員會を開催致しまして、一委員より提出せられました修正案、即ち只今此の壇上に於て書記官より朗讀致しました其の修正案が提出せられ、之を採決致しましたる處、此の修正案全部を可決せられ、又殘りの原案全部も其の儘可決すべきものと決定致した次第であります、只今申上げましたさう云ふ色々の經緯がございますので、二月二十二日に上程致されましてから今日に至ります迄、相當の日子を閲み致して居ります、此の間只今申上げました通り、幾度も懇談會を開き、又懇談會を開きませぬ間にも、絶えず委員の少からぬ方方が政治的な考慮を愼重に加へられまして、今日只今御聽きになりましたやうな修正案が出來上つた次第であります、左樣な譯でありますから、上程になりましてから非常に長い日子を費しましたことは、從來餘り例のない審議の經過であつたのでございます、併し今日の最後の委員會に於きましては、何等紛糾もなく極めて圓滿に、無事皆さんの御勉強に依りまして、貴族院と致しましての成案を得ましたことは、委員長と致しまして、誠に感謝の外はなかつた次第でございます、本案は只今も申しました通り衆議院提出に係りますものでありますから、其の提案理由の説明も、又法案の内容に付きましても、御聽取の機會がなかつたのでありまするから、極簡單に此の國会法と從來の現行の議院法との相違致しまする點を申上げて見たいと存じます、第一に、常會の會期を百五十日と致しました、從來の制度に依りますと三月と云ふことになつて居りますが、之を百五十日とするの外、臨時會を設け、又特別會の會期の決定及び常會、臨時會、特別會の會期延長は兩院一致の議決に依ると云ふことになつて居ります、第二點は、役員を設くると云ふ新しい規定が設けられましたことであります、第三には、從來の部制を廢止致しましたことであります、第四には、讀會制の廢止、是も從來行はれて居りました讀會制を廢止致して居ります、第五に、全院委員會の廢止を致して居りまして、專ら常任委員會中心主義の採用せられたと云ふことであります、此の常任委員は議院に於て選擧致し、其の任期を議員の任期中と致してございます、又常任委員會には專門的な職員を常置することになつて居ります、又第六に、此の國会法に特異の制度と致しまして、公聽会の制度を新設致された次第であります、第七には、所謂法案の、議案の棚上げと云ふ制度が是であります、是は後に修正案に關係がありますから御説明申上げまするが、第五十六條に規定致してございます、國会法の主義が常任委員會中心主義になつて居りまして、先づ議案を受取ります者は常任委員會でありまして、常任委員會が受取りました議案にして價値なしと認めたものは、此の本會議に移さずに其の儘葬り去ることであります、即ち提出されました總ての議案は、所謂棚上げの制度に遭ふ運命を持つて居る譯であります、第八と致しましては、國會と内閣との關係に付て、從來の内閣の優位の點を國會至上主義に改めたことであります、又第九には、自由討議の制度を採用致して居ります、第十には、法律案に付ては、參議院に對して兩院協議會の請求權を規定致して居ります、第十一點と致しまして、審査又は調査の爲に議員を各所に派し、或は内閣や官公署其の他と直接照會往復を爲し得ることに改められたことであります、從來は此の議會は、外部とは直接に交渉を致す手段を持つて居らなかつたのでありますが、此の點が改められまして、只今申上げましたやうに内閣でありますとか、其の他の官公署と直接の照會往復を爲すことが出來るやうになりました、又決算等に於きましても、會計檢査官の出席を求めまして、直接説明を聽取することが出來るやうな制度が採用されたのであります、それから議院提出案に付きましては、其の委員長又は發議者が他の院へ出席致しまして、直接説明を爲し得ることに改められたのであります、從來は矢張り衆議院提出法案に對しまして、公式に貴族院に於て衆議院の説明を聽取する手段を持たなかつたのでありまするが、此の點が是等の發案者から、直接に説明を聽取することを得るやうな制度に改められたことであります、其の他從來ございませぬでした、兩院法規委員會の制度でありまするとか、國會の圖書館を設けるとか、議員の法制部の新設等、新たな施設が多々見られるのであります、時間もございませぬから、極簡略に申上げまするが、委員會に現れました質疑應答の極一二を拾つて御報告申上げます、一委員から致しまして、常會の召集期日を十二月上旬と固定することは、常に國會開會中、又は閉會直後に參議院の改選が行はれる事態を生じまして、其の爲に議員が落著いて職責を盡すことを阻害する虞なしとしないから、少くとも其の期日を十一月上旬に繰上げるべきではないか、斯う云ふ質疑がございましたが、政府より致しまして、參議院議員選挙法には、通常選擧を行ふべき期日が、參議院開會中、又は閉会の日から三十日以内に掛る場合には、選擧は閉會の日から三十一日以上三十五日以内に行ふと云ふ規定があり、又本法案第二條但書の運用に依つて、大體調節がつくと云ふ答辯でありました、次に一委員からは、議員が政府と特殊の關係ある特殊會社や、特殊銀行の役員を兼ねることは弊害が多いから、之を禁止すべきではないかと云ふ質問がございましたが、之に對しまして、政府は、御趣旨は誠に御尤もであるけれども、議員の兼職禁止を餘り廣くすることは、角を矯めて牛を殺すやうな結果も生じ得るし、又成るべくゆとりあるやうにして置きたい、又議員の權利義務にも關係あること、重要な事柄であるから、一々具體的に規定する、何々會社と具體的に列擧するならば兎も角も、政府と特別の關係にある云々と云ふやうな、不明確な言葉では、立法技術上規定がなかなか困難である、斯う云ふ趣旨の答辯がございました、又他の委員からは、國會は言論の府であるから、議員の言論を國會側自ら制限するやうな規定を設くべきではない、從來文書質問に對する政府の答辯と云ふものは、餘りにもお座なり的であつて、少しも議員を滿足さすものではなかつた、仍て今囘の國会法制定に當つては、口頭を原則とすべきで、書面質問は踏襲すべきでないと思ふが、政府の所見如何と、斯う云ふことでありました、之に對しまして政府は、從來の出會ひ頭的に、いきなり質問を浴せるやうなやり方は、多くの場合戰略を含んで居るので、答へる方でも、勢ひ揚げ足を取られまいとするやうなことから致しまして、平凡な質疑應答になつてしまふ状態であつた、本當に十分意見を戰はすには、答へる方にも十分準備の時間を與へられるべきものであると思ふと、斯う云ふ答辯があつたのであります、質疑應答は此の程度に致しまして、先程此の席に於きまして、書記官より朗讀せられました修正案に付きまして、少しく説明申上げたいと存じます、第一條の修正は、是はほんの字句の修正でありまして、「日本國」と云ふ字を加へたに過ぎませぬから、是は申上ぐべきこともございませぬ、第二の點は、四十二條第二項を、「各議院は、両院法規委員会の勧告に基いて、前項各号の常任委員会を増減し又は併合することができる。」斯う云ふ風に改めることであります、是は衆議院に於てもさうでありまするが、特に衆議院に比べまして、議員數が今度の參議院は少くなつて居ります故に、必ずしも二十一の常任委員會を設けると云ふことの必要はないかも知れませぬ、又強いて設くべしと要求せられまするならば、員數の關係から致しまして、甚だ困難が起る場合なしとしないのであります、斯う云ふ理由に依りまして、兩院の法規委員會の勸告さへあれば、制度と致しましては參議院、衆議院兩方共が、其の好む所に依つて、或は常任委員會を増設も出來る、減すことも出來る、或は二十一のものをお互に合併することも出來る、斯う云ふ趣旨に改めたのでございます、第四十三條は、是は單に字句の修正でありまして、「專門的職員」と云ふ原案を、「專門調査員」と云ふことに改めたに過ぎませぬ、第五十一條は先程觸れました公聽會の規定でございまするが、原案には「予算及び重要な歳入法案については、前項の公聽会を開かなければならない。」豫算と云ふことでありまするからには、如何なる輕微なる豫算も、公聽會に掛けなければならない結果に相成るのでございまするが、是は誠に實際的でないので、公聽會に付するものは總豫算の如き重要なものに限つて然るべきであると、斯う云ふことが此の修正案の理由でございます、次は第五十六條でございまするが、第四項の次に「前二項の規定は、他の議院から送付された議案については、これを適用しない。」と、斯う云ふ一項を挿入する修正であります、此の點は委員會に於て最も論議の多かつた一つの問題でありまして、所謂先程も申上げました法案の棚上げの問題でありまするが、他の議院を通過して、其の院から送付された議案が委員會限りで葬られることは、改正憲法第五十九條第二項の、衆議院が三分の二の多數で再び可決することが出來ると云ふ衆議院の特權、特別の權限行使を阻碍する虞がある、即ち衆議院は自分の方へ來たならば、其の議案が假に參議院で否決されても、それが其の儘潰滅しない限りは、自分の方で三分の二の權限でもう一遍復活出來るのでありまするが、之が廢案となる以上は、其の機會を失ふ譯であります、即ち折角憲法上認められました衆議院の優越權が、此の法律に依つて阻碍される、即ち法律の力に依つて憲法上保障されました衆議院の優越權がなくなる、斯う云ふ結果に相成るのであります、でありますから、議院から送付された議案に付ては適用しない、其の結果と致しまして、政府から提出されました議案に付きましては、矢張り廢案となる虞が殘るのである、次に第八十四條でありますが、本問題は此の國会法案中最も大きな問題でありまして、是は先程申上げましたやうに、臨時議會に於きまして、國会法案が審議未了になつた原因を持つたと云ふ案件であります、遡りますと、憲法第五十九條の修正以來の因縁のある規定でございます、修正案に於きましては、「参議院は、衆議院の回付案に同意しなかつたときに限り前項の規定にかかわらず、その通知と同時に両院協議会を求めることができる。但し、衆議院は、この両院協議会の請求を拒むことができる。」斯う云ふ一項を加へた修正であります、即ち原案に依りますと、衆議院は、參議院が修正し、若しくは否決した議案に付ても、兩院協議會の請求が出來るのに反しまして、參議院は否決した案に付ては兩院協議會の請求は出來ない、唯其の修正した案件に限り修正を求めることが出來るやうに此の案ではなる結果になります、之を假に參議院に於きましても、否決した法案に對して迄、兩院協議會の要求を出來ると致しましても、是は矢張り憲法五十九條の修正に依りまして、衆議院が最高の權限たる三分の二で以て決せられれば、同じ結果に到達致すのでありますから、參議院に於きましては、唯單に修正案に付て、兩院協議會を求めると云ふことに止めることになつた次第であります、又但書は、憲法上の衆議院の三分の二の優越權を言葉を換へて現したに過ぎない規定であります、次に八十八條でありまするが、是は八十四條を修正致しました當然の歸結としての條文整理の問題であります、九十二條は「両院協議会においては、その意見が一致したときに限り成案を議決する。」斯う云ふ規定でありまするが、兩院協議會に於て全員一致を以て成案を得ると云ふことはなかなか困難である、全會一致を條件と致しますならば、折角兩院協議會を開きましても、其の目的を達成し得ない場合が多々生じて來る、それでは甚だ兩院協議會を設けました趣旨に悖るものでありますから、之を三分の二程度に引下げまして、其のゆとりを設けた趣旨に外ならないのであります、最後に第百條でありまするが、兩院法規委員會の構成員に關する規定でありまして、「衆議院から選挙された十人の委員及び参議院から選挙された五人の委員でこれを組織し、」と云ふことになつて居りまするが、此の原案は參議院と衆議院との構成人數の差から來た結果でございまするが、他方兩院協議會を見ますると、參議院、衆議院各各の人數が違ふにも拘らず、兩方の委員が同數になつて居るやうなことを考へて見ましても、必ずしも兩院の構成人數に拘束せられまして、此の委員會の員數を決することは、有力な法律上の根據を見出し難いのでありまするから、貴族院と致しましては、矢張り初めの各委員の御意見では、之を十人とすべしと云ふことでありましたが、結局色々檢討致しました結果、不滿足ではありまするが、八人の委員で之を容認しようと云ふことになつた次第であります、以上修正案に付きまして概略の御説明を申上げました、先程申上げましたやうに、此の外別に議論もございませぬので、質問を打切りまして討論に移り、先づ修正案に付きまして採決致しました處、先程此處で朗讀せられました修正案を其の儘可決せられ、次に殘ります議案全部を問題に致しました處、是亦原案通り可決すべきものと決定致しました、討論に際しましては、一委員から、修正案に對しまして、必ずしも是が上々の案ではないけれども、内外政治上の情勢等から考慮して、是で滿足する外はないのであるから、自分は此の意味合に於て之に贊成する、斯う云ふ御意見がございました、又政府の之に對する意見を徴せられましたる處、政府當局よりは、政府と致しましても、修正案に何等異存がないのである、凡そ只今のやうな非常時局に於きましては、纖細な磨きの掛つた檢討を法律案に加へることは必ずしも適當でない、寧ろそれは進歩を阻碍する結果ともなることもある、提出せられました修正案は、此の言葉の幅を能く見て、其の意味合に於て之を讀んで、其の意味合に於て政府は贊成である、斯う云ふ御意見の開陳がございました、採決を致しました處、此の修正案を含みまする原案を可決すべきものと決定致した次第であります、甚だ不十分でございますが、之を以て國会法の特別委員會の經過竝に結果を御報告申上げました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=43
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044・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 別に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=44
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045・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=45
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046・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=46
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047・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=47
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048・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=48
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049・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=49
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050・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、本案全部委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=50
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051・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=51
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052・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=52
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053・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=53
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054・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=54
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055・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=55
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056・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=56
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057・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます、本日は此の程度にて延會致したいと存じます、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=57
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058・徳川宗敬
○副議長(伯爵徳川宗敬君) 御異議ないと認めます、明日は午前十時より開會致します、議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後三時三十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X01819470318&spkNum=58
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