1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月二十六日(水曜日)午前十時二十六分開議
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議事日程 第二十四號
昭和二十二年三月二十六日
午前十時開議
第一 裁判所法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會ノ續(委員長報告)
第二 裁判所法施行法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會ノ續(委員長報告)
第三 労働基準法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會ノ續(委員長報告)
第四 通信事業特別会計法を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會ノ續(委員長報告)
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=1
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002・会議録情報2
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〔參照〕
一昨二十四日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十二囘帝國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
政府委員
内閣事務官 岸田 實君
昨二十五日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
昭和二十二年度歳入歳出豫算案
昭和二十二年度特別會計歳入歳出豫算案
昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案(改第二號)
昭和二十一年度特別會計改定歳入歳出豫算追加案(改特第一號)
豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件(改追第一號)
教育基本法
昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案
郵便法の一部を改正する法律案
同日豫算委員會ニ於テ副委員長ノ補闕選擧ヲ行ヒシニ男爵稻田昌植君當選セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
労働基準法案可決報告書
船員法を改正する法律案可決報告書
昭和十九年度歳入歳出總決算、昭和十九年度特別會計歳入歳出決算審査報告書
昭和十九、二十年度國有財産増減總計算書審査報告書
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第九十二囘帝國議會政府委員仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
商工省所管事務政府委員
商工事務官 平井富三郎君
同 小山雄二君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=2
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003・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、日程第一、裁判所法案、日程第二、裁判所法施行法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、是等の兩案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異義なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=3
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004・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、委員長黒田伯爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=4
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005・会議録情報3
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裁判所法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月二十二日
委員長 伯爵黒田 清
貴族院議長公爵徳川家正殿
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裁判所法施行法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月二十二日
委員長 伯爵黒田 清
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔伯爵黒田清君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=5
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006・黒田清
○伯爵黒田清君 只今議題となりました裁判所法案及び裁判所法施行法案、兩法案の特別委員會の經過及び結果を御報告申上げます、裁判所法は改正憲法に依りまして、現行憲法の司法に關しまする規定が著しく改正されましたことに基きまして、裁判所構成法を廢止致しまして、之に代り裁判所の組織及び權限等に關する事項を規定されたものでございます、又裁判所法施行法案は、裁判所法の施行に伴ひまして必要な事項を規定したものでございます、委員會は去る二十日及び二十二日の兩日に亙りまして之を開きまして、此の兩法案を一括して議題と致しました、委員諸君と政府側との間に極めて熱心なる質疑應答が交はされたのでございますが、其の詳細は之を速記録に讓りまして、茲には其の大要を御報告致したいと思ひます、質疑の第一點は、裁判所法施行後裁判所と司法省との關係はどうなるかと云ふ御質問であります、又其の場合に於ける司法省の機構と云ふものはどう云ふ風になるのかと云ふ點でありました、政府は、此の裁判所法を實施致します曉は、裁判所は司法省から全く分離して獨立するものでありまして、其の間に同等の關係もなくなるのでありますが、其の爲に司法省で從來裁判所に關して取扱つて參りました所の事務の中で裁判所に關する人事、會計其の他監督上の極く僅かな事務はなくなるのでありまするが、檢察、行刑、保護及び調査等に關しまする事項竝に司法に關しまする法規の立案等は依然として司法省で取扱はなければならないのであります、司法及び經濟に關しまする諸立法は今後益益多くなることと豫想され、又登記、戸籍、供託等に關する行政事項も矢張り司法省の所管とされるのであるから、一時は其の事務が減少することがあらうとも、將來は益益其の事務の殖えることも豫想されるのであると云ふ御答でありました、質疑の第二點は、裁判所法の第三條末項に依りますれば、陪審制度を實施することを豫定して居るやうに規定されて居るが、政府は如何なる構想の下に之を用意して居るのかと云ふ御質問でありました、即ち陪審制度と云ふものは日本にないのではない現在あるのである、併し現在はそれが行はれて居らない、行はれて居らないけれども、陪審制度と云ふものは存在して居るのである、それであるのに此の第三條末項に、特に此のことを規定したのはどう云ふ構想を持つて居られるのであるかと云ふ御質問であつたのであります、此の點に關しまして政府は、陪審制度は多くの民主主義國家に於きまして設けられて居る一つの制度であるので、我が國と致しましても、早急に此の陪審制度に付ては實現をしたいのでありまするが、法廷其の他の物的施設が戰災の爲に十分でなく、其の實現の時期を明かにすることは今日出來にくいのであります、又陪審制度自體も、日本の國情に最も適合するやうに從來の制度に根本的な檢討を加へなくてはならないのでありまするが、まだ其の成案を得るに至つて居らないのである。茲に此の陪審制度のことを特に謳つたのは、國際的に日本の裁判所にも陪審制度と云ふものがあると云ふことを、國際的に表示したに過ぎないのであると云ふ御答でありました。質疑の第三點は、裁判官の任命及び待遇に付てどう云ふ方針を政府は持つて居るか、特に將來裁判官の缺員を補充する場合には、成るべく在野法曹から之を任命し、簡易裁判所は殊に民衆に直接接觸し、社會的に非常に重大なものであるから、法曹等の經歴に拘泥せず、社會的に相當地位のある常識圓熟した人格者を之に任命し、其の待遇に付ては、地位に相應しい生活の保障の出來るやうな特別の考慮をする必要があるが、此の點に付て政府はどう云ふ風に考へて居るかと云ふ質問がありました、之に對しまして政府は、裁判官の人選及び其の待遇に付ては特別の考慮を致して居る、裁判官の缺員の補缺に付ては將來所謂法曹の一元化となるやう努力をしたいと思つて居る、尚裁判所法案に於きましては裁判官、檢察官及び辯護士は何れも司法修習生の修習を經ることになつて、其の養成を一元化して居るのである、又簡易裁判所判事には裁判官其の他で既に高い地位に就いた者でも、尚進んで就任することが出來るやうにしたいと思つて居る、其の待遇に付ても特別の考慮を拂ふ積りであると云ふ御答辯でありました、質疑の第四點は、最高裁判所は改正憲法第八十一條に依りまして、法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかと云ふことを決定する權限を持つて居ると云ふことになつて居るのでありまするが、其の裁判で法令が憲法に適合しないと判斷した場合、其の法令の效力はどうなるのであるかと云ふ御質問でありました、それに關しましては、若し法令が憲法に違反すると云ふ裁判があつても、其の裁判の效力は直接には其の訴訟の當事者に及ぶだけであつて、法令の存在其のものは直ちに消滅するものではない、斯う云ふ解釋である、唯其の後に他の事件に付ても同樣の裁判がなされることが期待されることになるのであつて、結局一度憲法違反の判斷をされた法令は、形式的に存在することに止つて居る、政府に於ては其の廢止の手續を執ることが望ましいのであると云ふ見解であると云ふ御答でありました、質疑の第五點は、最高裁判所は改正憲法第七十七條第一項に依りまして、訴訟手續其の他の事項に關する規則の制定權を與へられて居るのであるが、之に依つて制定せられた所の規則と法律の關係はどう云ふことになるのであるかと云ふ御質問でありました、之に對しましては、政府は國民の權利義務に直接關係する事項は、勿論法律が規定するものである、其の他裁判所に於けるプラクテイスに關する事項即ち實務に關することは、最高裁判所が規則に依つて定め得るものであるのであるが、其の限界を明確に劃すると云ふことは、實際上なかなか困難である、事柄に依つては此の兩者が相共に交錯することも已むを得ないことであらうと思ふ、唯一に今後の運營に俟つの外なからう、政府としては其の運營に萬全を期したいと思ふと云ふ御答でありました、質疑の第六點は、高等裁判所は下級裁判所の職員に對して監督權を持つて居るのであるが、此の監督權は下級裁判所の裁判官の轉所、昇級をも含んで居るのかと云ふ御質問でありました、政府は之に對しまして、轉所に付ては裁判所法第四十七條の規定に、又昇給に付ては報酬に關する法律の規定に依つて、何れも最高裁判所が其の權限を有する旨の御答辯があつたのであります、最後の御質問第七と致しまして、裁判所の經費は獨立して國の豫算に計上されべきことが規定されて居るのであるが、豫算の作成に付て、是はどう取扱はれるのかと云ふことであります、此の問題に關しましては、裁判所法第八十三條は、裁判所の經費が一般行政の經費とは別個に豫算に計上されなければならない旨を規定して居るのであるから、豫算の作成方法に付ては、別に財政法案に特別の規定を設けて居ると云ふ趣旨の御答辯があつたのであります、是に於て大體質疑の御紹介を申上げたのであります、是で質疑は終りまして、討論に入つたのであります、討論に入りました處、一委員から發言を求められまして、本法案には贊成ではあるが、併し自分としては若干不滿な點があるから、其の不滿の點を申上げたいと言はれたのであります、即ち第一は、最高裁判所に關するものでありまして、第二には、簡易裁判所に關するものであります、第一の最高裁判所に關することに付きましては、二つの事項があるのであります、一つは先程質疑の中で申上げました憲法違反の裁判を下された場合に、其の裁判の既判力がどう云ふことになるかと云ふ點であります、其の效力が横には第三者にどう云ふ影響を及すのであるか、又縱には既往にどう云う風に遡つて行くのかと云ふ二つの問題が生ずる譯である、或は此のことは民事、刑事、行政に亙つて訴訟法に規定が設けられると云ふことになるのかも知れないけれども、原則は矢張り最高裁判所の裁判の性質論として、此の裁判所法の中に明かにして欲しかつた、若し法律が政府側の先程の御答のやうに生きて居ると云ふことであるのならば、後日最高裁判所が新たなる判決に依つて、判例を變へると云ふことであつて、其の法律を生かすことも出來るのではないかと云ふ議論が起る虞がある、是は何か後日何れ補充されることとなることは勿論であらうと思ふが、思想的に最高裁判所の性質に關して、何等かのことが明かにされて居らぬと云ふことは、自分としては多少の不滿を感ずるのであると云ふ御趣旨であります、最高裁判所に付きましての第二點は、第九條の大法廷、小法廷で、合議體の定足數は、最高裁判所が之を決めると云ふことになつて居りまするが、是は小法廷では三人以上、大法廷に關する規定としては、特別のものが出來るやうな趣旨であるとのことではあるが、極端に申しますれば、最高裁判所が極端な規定をなし得る譯である、而もそれを救濟する途はないのである、實情から申しますれば、苟も憲法の擁護者である最高裁判所が、憲法の趣旨に反するやうな規則を設けるやうなことは萬なからうとは思ふけれども、併し立法府として其の全權能を最高裁判所に委ねてしまふと云ふことは、立法府としてはどうかと思ふ、それで小法廷は三人、大法廷は九人と云ふ風な意味合のことを第九條にはつきりと規定することが、然るべきではなかつたのかと思ふと云ふ御趣旨であります、次に簡易裁判所に關しての御意見は、どうも簡易裁判所と云ふものは、其の簡易と云ふ名稱からして如何にも手輕な小さな、又地位からしても最も下位に在る裁判所のやうに人に思はれるやうな虞がある、併し此の簡易裁判所と云ふものは、此の度の裁判所法に於て最も特色ある裁判所であつて、今迄は裁判所と申しますれば、煩雜な手續に依つて總て物事をぎごちなくする傾向があつたのであるが、此の度の簡易裁判所に於ては、簡明に實情に即した裁判が爲されることになるのでありまして、裁判所と云ふものが明朗化されたことになるのであります、即ち民衆に親しみある裁判所が出來る譯であります、又裁判官の待遇に付ても唯下級裁判所の裁判官の待遇であつてはならないのでありまして、其の點を十分考へなければならない、さう云ふ觀點からして此の簡易裁判所に關する理念と云ふものを、何か表示して置いて欲しかつたと云ふ御趣旨の御發言があつたのであります、是にて討論を終りまして採決に入りましたる處、兩法案とも全員異議なく可決すべきものと決定致した次第でございます、簡單ではございますが、是で御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=6
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007・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ兩案の採決を致します、兩案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=7
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008・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=8
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009・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに兩案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=9
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010・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=10
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011・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=11
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012・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=12
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013・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 兩案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、兩案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=13
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014・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=14
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015・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに兩案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=15
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016・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=16
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017・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=17
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018・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=18
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019・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 兩案の第三讀會を開きます、兩案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=19
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020・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=20
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021・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 議事の都合に依り日程第三を後に廻したいと存じますが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=21
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022・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、日程第四、通信事業特別会計法を改正する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、委員長齋藤子爵
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通信事業特別会計法を改正する法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月二十四日
委員長 子爵齋藤 齊
貴族院議長公爵徳川家正殿
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〔子爵齋藤齊君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=22
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023・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 通信事業特別會計法を改正する法律案に關する特別委員會の審議の經過竝に結果を御報告致します、本案の審議は去る二十三日、二十四日の兩日に亙つて行はれ、其の結果本案は原案通り可決すべき旨全會一致を以て決定致しました、次に審議の概要を御報告致します、政府の提案理由の説明等に依りまして、本案の骨子が明かになりました、即ち改正の根本は第一條に謂ふ所の精神でありまして、會計の原則は、現行法が所謂現金主義即ち現金收支を唯一の記録計算の對象とする點に據つて居るのを、今囘發生主義の原則に據ることに改め、以て眞實の經濟活動を反映し、事業の經濟性を正確明瞭に表示する如く根本的に改正せむとするのであります、而して會計組織にあつては、現行法では資本、用品及び業務の三勘定を設けて居るのを廢止致しまして、全體を一つとした合理的な勘定體系を設定せむとするのであります、又簿記としましては、第一條の精神に依り、複式簿記の採用せられることは當然であり、豫算決算に損益計算書、貸借對照表、財産目録を添付すべき旨を規定して居ります、又財産の處理に付きましては、新たに減價償却制度が設定せられることになつて居り、現金の處理に付きましては現行制度の複雜な繰替拂制度を合理化して居ります、借入金は運營費の不足に對しても爲すことが出來ることとなり、資産の増加となるべき事業設備費の財源の不足を補ふ爲、調整資金を保有し得ることとし、積立金の制度を設けて決算上利益が生じた場合、之を組入れ、損失を生じた時には、此の積立金を減額して整理する等、種々の彈力性ある改正が立案されて居ります、要するに改正は、事業の合理化、能率化を圖り、事業の健全なる發達を期する上に、極めて緊要なものであるとのことであります、質疑に入りました處、現行法と改正法の比較に付て質問がありました、政府側より改正の要點は、所謂現金主義會計から發生主義會計原則を建前とすることに付て、必要な諸般の改正を行ふ旨の答辯がありました、又一委員より、改正の趣旨は、民間事業と同じやうにしようと云ふ點にあると思ふが、公共性の高い通信事業は民衆の協力に依らなければ事業の發展、圓滑なる運營は出來ないと思ふので、國民の理解を深める必要があると思ふが如何、事業發展、新規事業を採入れ、有利な經營を圖る必要があると思ふが如何、との質問がありましたが、政府當局は、理解を深める點では毎年國會に提出する歳入歳出決算、貸借對照表等を、國民の批判を受ける意味に於て適當な方法で公表することを考へて居る、尚新規事業に付ては、現状は通信サービスの改善に全力を學げて居るので、他に新しい事業を行ふと云ふことは考へて居らない旨の答辯がありました、又放送事業を政府で行ふ考はないかとの質問に對しましては、現在は日本放送協會をして、政府の監督の下に運營せしめて居るので、之を政府の事業とする考はない、とのことでありました、一委員より、郵便貯金の第二封鎖はどうなるか、又財産税の之に依る納付に付て、どう處置されるのかとの質問がありましたが、金融機關再建整備に要する政府補償の豫算は百億圓であり、補償の順位は先づ政府事業の第一封鎖、次は民營事業の第一封鎖、第三に、政府事業の第二封鎖、最後に民營事業の第二封鎖となつて居るのであるが、未だ整理が出來て居らないで、郵便貯金の第二封鎖がどうなるかは決定されて居らない、且又財産税に關する處理も、まだ決定して居らぬと云ふ答辯でありました、最後に一委員より、第一條の「企業的に」と云ふ字句の意味に付て質問がありましたが、政府當局は昭和八年以來本特別會計では、消費會計である一般官廳會計とは異つた獨立採算の會計制度を採つて居るのであるが、未だ完全に企業的にはなつて居らないので、第四條で發生主義の原則を定める等健全な運營を圖る意味であつて、利潤追求と云ふ意味ではないと云ふ答辯がありました、以上が質疑の概要であります、討論に入りましたる處、別に御發言もなく、直ちに採決に入り、異議なく原案通り可決せられました、以上簡單でございますが御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=23
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024・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=24
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025・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=25
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026・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=26
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027・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=27
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028・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議がございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=28
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029・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=29
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030・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、本案全部委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=30
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031・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=31
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032・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=32
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033・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=33
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034・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=34
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035・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=35
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036・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=36
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037・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、暫く御待ち願ひます、御諮りを致します、議事の都合に依り、本日は是にて延會致したいと存じます、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=37
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038・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、明日は午前十時より開會致します、議事日程は彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十時五十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02419470326&spkNum=38
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