1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月二十八日(金曜日)午前十時九分開議
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議事日程 第二十六號
昭和二十二年三月二十八日
午前十時開議
一 地方自治法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會ノ續(委員長報告)
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 報告を致させます
〔小野寺書記官朗讀〕
昨二十七日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案ハ即日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知セリ
労働基準法案
学校教育法案
船員法を改正する法律案
帝國鉄道会計法を改正する法律案
皇室経済法の施行に関する法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル鳥取縣御來屋漁港修築ノ請願外三十五件ノ請願ハ各各意見書ヲ附シ即日之ヲ政府ニ送付セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
地方自治法案修正報告書
臨時軍事費歳入歳出決算審査報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
檢察廳法案
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案
裁判所職員の定員に関する法律案
裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案
檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=1
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002・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、議事日程、地方自治法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、委員長松平男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=2
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003・会議録情報2
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地方自治法案
右別册ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和二十二年三月二十七日
委員長 男爵松平外與麿
貴族院議長公爵徳川家正殿
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第十三條第一項トシテ左ノ一項ヲ加フ
日本國民たる普通地方公共團体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共團体の議会の解散を請求する権利を有する。
第六十六條第四項中「不服がある者は、」ノ下ニ「その決定書若しくは裁決書の交付を受けた日又は前項の規定による告示の日から三十日以内に、」ヲ加フ
第六十八條第一項中「被告として、」ノ下ニ「第五十九條第一項の規定による告示の日から三十日以内に、」ヲ加フ
第百二十條ヲ削ル
第百二十一條ヲ第百二十條トス
第百二十二條第一項ヲ第百二十一條トス
第百八十條 普通地方公共團体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共團体の長において、これを專決処分にすることができる。
前項の規定により專決処分をしたときは、普通地方公共團体の長は、これを議会に報告しなければならない。
第百八十二條第五項中「超える場合」ヲ「超える場合等」ニ改ム
第二百七條中「並びに」ヲ「及び」ニ改メ、「及び第百四十六條第一項」ヲ削ル
第二百四十七條 市町村長及び助役にともに故障があるとき、又は收入役及び副收入役(第百七十條第四項の規定による收入役職務代理者を含む。)にともに故障があるときは、上席の吏員又はその指定した吏員が、その職務を行う。
第二百四十九條中「第二百四十七條の臨時代表者又は」ヲ削ル
第二百五十一條ヲ削ル
第二百五十二條第一項ヲ第二百五十一條トス
第二百五十二條中「前項」ヲ「前條」ニ改ム
第二百五十五條ヲ削ル
第二百五十六條ヲ第二百五十五條トス
第二百五十六條 この法律に特別の定があるものを除く外、異議の申立又は訴願の提起は、処分又は決定があつた日から二十一日以内にこれをしなければならない。
決定書の交付を受けない者に関しては、前項の期間は、告示の日からこれを起算する。
異議の申立に関する期間の計算については、訴願の提起に関する期間の計算の例による。
異議の申立は、期限が経過した後においても容認すべき事由があると認めるときは、なお、これを受理することができる。
第二百五十七條第一項、第二項、第五項、第六項及ヒ第八項ヲ削ル
第二百五十八條 異議の申立があつても処分の執行は、これを停止しない。但し、行政廳は、職権により又は関係人の請求により必要と認めるときは、これを停止することができる。
第二百七十條第一項中「内務大臣の許可を受け、」ヲ削ル
第二百七十一條第一項ノ次ニ次ノ一項ヲ加へ、同條第二項中「区長及び」ヲ削ル
区長は、その被選挙権を有する者について選挙人が投票によりこれを選挙する。
第二百七十七條中「、第九十四條」及ヒ「第二百五十五條」ヲ削ル
第二百八十二條中「内務大臣の許可を受け、」ヲ削ル
附則第七條第二項中「第百二十二條第一項」ヲ「第百二十一條」ニ改ム
附則第十九條ヲ削リ、第二十條ヲ第十九條トシ、以下順次繰リ上ク
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〔男爵松平外與麿君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=3
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004・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 只今上程されました地方自治法案に關する委員會の經過竝に結果を御報告申上げます、本委員會は二十三日に正副委員長の互選の後、直ちに審議に移りました、丁度五日間掛つて居りますのでありますが、中途各關係官廳の連絡の爲に、一兩囘委員會を中止したことになります、其の結果大體總ての方面の了解も得まして、茲に御報告を申上げることに相成つたのであります、申す迄もなく、此の地方自治法と申しますのは、從來ございました所の地方制度の諸法律を纏めまして、新らしき構想の下に、更に地方自治制度の民主化、自律化、之を中心と致しまして制定せられたものであります、此の法律案自體を御覽になりますると、相當浩瀚な條文に相成つて居りまするが、從來の法律の各條文から見ますると非常に洗煉されまして、非常に簡單に要點主義に出來て居ると云ふことが窺はれるのであります、此の法案に付きましては先般内務大臣から御説明がございましたので、殊更に申上げる必要はございませぬけれども、特に若干此の際更に申上げた方が宜いと思ふことを申上げたいと思ひます、從來の地方制度の各法令とは違ひまして、今囘は地方公共團體を二つに分けて居ります、普通地方公共團體と特別地方公共團體の此の二つに條文化された點であります、勿論内容的に從來からの關係を見ますると、殊更特に異つたやうな感じが致しまするけれども、事實はさうでございませぬで、唯此の法案の第三編に規定されまする條項に該當する關係上、特別地方公共團體と云ふ制度を茲に作られて居ります、其の次に特に感じますることは、選擧に關する點が相當擴張され整備されたこと、更に又地方の各議會、之の權限が非常に擴大されたと云ふ點を我我は認めなければならぬと思ひます、所謂自治制の本義に則りまして國の監督、指揮と云ふよりも、其の地方自治體の獨立性に依つて自己の發達、自己の進展に俟つ、此の趣旨が明かに此の法文に窺はれて居ります、之を特に申上げて置きたいと思ひます、而して此の法案は、衆議院に於きまして約五十箇所近くの修正が參つて居ります、委員會の初めに於きまして申上げた通り、先づ第一日に於きまして此の法案の御趣旨竝に衆議院の修正の主なる箇所の御説明を承りました、更に進みまして各條文に對する所の説明を要求致しました、第一編から第三編竝に附則迄、是等の政府に關する説明を求めました、それから質疑に移りました次第でございます、各委員共御熱心に檢討されましたことを、非常に滿足に思つて居ります、其の中に於きまして、質疑の主なものを若干申上げたいと思ひます、先づ第一に、普通地方公共團體と特別地方公共團體との名稱を分けた標準竝に實益は何處にあるかと云ふ問であります、之に對しまして政府當局は、都道府縣、市町村の全部に適用されるものを普通地方公共團體とする、特別市、特別區、財産區に特に適用される場合を、之を特別地方公共團體と規定したものであると云ふ御答辯であります、更に一委員は、東京都の區を特別區とし市と同樣にするのは行過ぎではないかと云ふ御質疑であります、之に對する政府の答辯は、東京都の區は從來法人區として存在して居つた、今改めて其の法人區になつた譯でない、さう云ふ關係から今囘の色々な制度の改正に於きましても、之を行政區に戻すと云ふことは不適當ではないか、斯かる見地から東京都の區を特別區として置いたのである、其の次は、是は二三の方から御質問があつたのでありますが、國の委任事務と地方公共團體の固有事務との區別の實益は何處にあるかと云ふ點であります、此の答でありますが、法律上の規定としましては二つのものとして表現せざるを得ない、どうしても斯う云ふ字句を使ふことは已むを得ない、其の區別を個々にするのはちよつと、例へば斯う云ふものは委任事務だ、斯う云ふ事務は固有事務だと、個々に行ふことはなかなか困難な場合が多い、唯經費の財源負擔區分、是等の點から見れば、明かに此の二つに事務を分けて置く方が實益がある、此の點から、所謂從來通り此の二つの字句と云ふものを採用して來たんだ、斯う云ふ御答辯であります、更に法律と政令に依る事務委任の取扱上の區別はどうか、條文を御覽下さいますと、場合に依りますと、「法律による」又は「政令による」と云ふ字句が載せられて居ります、此の區別でございます、是は基本的には大體は法律で定められるものであらうと思ふが、政令は法律に基く所の施行命令等が豫想されるに過ぎない、是等が所謂政令の範圍に入るものである、斯う云ふ御答辯であります、其の次には、個々の議員の解職請求制度は不當に濫用されて少數代表の趣旨に反する虞がないかどうかと云ふ點であります、又解職後一人の缺員、例へば個々の議員が辭めた、其の一人と云ふものに指定して、解職後一人の缺に對しては直ちに補缺も行はない、其の缺員の數が定數の六分の一を超えた場合に補缺選挙を行ふのである、それ等から考へても、必ずしも少數代表の趣旨に反する、斯う云ふことはないものと考へると云ふ答辯であります、それから次に、公選知事に依つて地方の警察と云ふものがどう云ふ按排になるか、言ひ換へますれば、自治警察と云ふ點はどうなるのかと云ふ御質問であります、之に對して政府の答辯は、成る程公選知事の下に警察事務と云ふものが、地方自治に適する所謂自治警察の外に、或は國家警察と云ふものも現在は幾分殘すと考へて居ります、然るにまだ之に關する法規が出來て居りませぬ、それでありますから其の點に於きまして考へられますことは、公選知事の下にありましても、現下の社會情勢に鑑みまして、當分の間警察は國に於て一元的に指揮監督する、其の職員も官吏の身分にして置く、特に必要がある場合が起るならば、是は政令を以て規定し得る、それだから政令を以て規定すると、斯う云ふ御答辯であります、更に此の地方自治と警察法と云ふものが、同時に竝行的に制定されたらば非常に宜いのぢやないか、之に何等か物足りない感じがあると云ふ御質問であります、政府の御答辯は、其の通りであります、所謂一方には地方自治體が出來、一方には警察法若しくは消防法が出來ます、さうしますると、關聯事項に付ても圓滿に出來る、斯う云ふものが兩方が竝行的に行くことは望しいことであるが、色々な各法律關係に於きまして、今囘は遺憾ながら竝行的に出來ないと云ふことを御了察を願ふと云ふ御答辯でございます、それから次に公務員法は何時頃出來るか、其の答は、本法と矢張り是も竝行的に行ひたかつたけれども、官吏法との關係上なかなか色々の折衝もあるので、本議會提出には間に合はないが、次の議會には必ず出したい、斯う云ふ御答辯であります、それから選擧に關係する御質問でありましたが、自書不能者の投票方法はどうするか、例へば病人である、重態である、又手が無い、足が無い、歩いて行けない、而も斯う云ふ人も選擧權は持つて居る、斯う云ふ自書不能者の投票方法はどうかと云ふ點であります、是は政令に依りまして、代理人が行ふことが出來る方法を考へて居る、斯う云ふ御答辯でありました、次に國会法に準ずるやうに地方議會法と云ふものの制定に付て考があるかどうか、斯う云ふ點であります、地方議會に付て特別法等を設けることは考へられますが、それよりも出來るならば、此の地方自治法の中に出來るだけ其の國会法に準據し得る點を加へて置いて、さうしてやつた方が宜いと云ふ考から、此の地方自治法の議會の章の第二節以下に於きましては、概ね國会法に準據して規定してあると云ふ御答辯でございました、尚其の他各種の御質問がございましたけれども、委細は速記録で御覽を願ひたいと思ひます、質疑が終了致しまして討論に入りました、討論に入りまして、一委員から修正の動議が出まして、之に對する贊成がありました、此の修正の箇所に付きましては、別途印刷物を以て皆さん方の御手許に配付になつて居りますから、それを以て御承知願ひます、一應貴族院の修正の箇所に付きましての御話を申上げます、本條文、地方自治法の條文を訂正致しました又は削除致しましたのは、此の貴族院の修正の條項に於きましては、四點ございます、此の四點が條文を削除する、若しくは新たにそれに加へると云ふ點でございます、それに依りまして條文の系列整備と云ふことが行はれて居ります、他の修正箇所は、衆議院から修正して參りました其の箇所を更に貴族院に於きまして再修正致したことに相成つて居るのであります、一々修正箇所に付て御話を申すのが宜いかも知れませぬけれども、煩に流れますから省略致したいと思ひます、斯く致しまして、修正の動議が成立致しました、採決に入りまして、所謂貴族院の修正箇所に付ての可否を問ひました、全會一致、修正を可決せられました、更に殘りました所の法案の全部に付て採決致しました、是亦全會一致、可決すべきものと相成つた次第でございます、以上を以て簡單でございますが、地方自治法案の委員會の經過竝に結果の御報告に代へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=4
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005・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 討論の通告がございます、淺井議員
〔淺井清君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=5
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006・淺井清
○淺井清君 私は本案竝に委員長報告に對しまして贊成を致す者でございます、新しい憲法の下に於ける地方自治制度が茲に其の基礎を得ましたことを喜ぶ者でございます、併しながら本法の運用、及び之に關係致しまする將來の立法に付きましては、最も注意を要する二つの問題があると存じまして、此の點に對し特に政府の注意を喚起致して置きたいと存じます、其の第一は、地方公共團體の公務員の人事に關する問題でございます、即ち政府は此の公務員、殊に官吏より公吏へ身分の變りまする者の人事行政が、將來公正になされ得るやう適切なる措置を講すべきものであると信じます、今や知事公選其の他の事由に依りまして、地方公共團體は政黨政治の波の打ち寄せて來る第一線となつたのでございます、さうして地方公共團體こそ、地方民生の安寧幸福が繋つて居る所と致しまするならば、宜しく政治と行政との間に、明確なる一線を劃しまして、地方公共團體の公務員が以て其の職に安んじ、地方住民の公僕たることに誇りと喜びとを感ずるやうに致さなければならないと存じます、殊に總選擧を目前に控へまして、此のことが全國の警察官吏の心境に及す影響のあることを指摘致さなければならないのでございます、私は政黨政治の必要を確信致す者でございまするけれども、政治と行政との間には正しく引かるべき一線の存することも、併せて確信致す者でございます、若し此の一線にして破れまするならば、是れ地方自治行政の崩壞を意味するものと存じます、仍て地方公共團體の公務員の人事に公明正大を保持すべき適切なる具體的措置が速かに講ぜられむことを望むものでございます、彼のアメリカに於きまする職階制度、即ちクラシフイケーシヨンの制度、或は公務委員會の制度、即ちシヴイル・サーヴイス・コンミツシヨンの制度の如きは、此の點に關して大きな示唆を與へるものと存じます、第二の問題と致しましては、國の公務員と地方公共團體の公務員との間に、人事の圓滑なる交流をなし得るやうに、適切なる措置を講ずることを必要と存じます、中央より地方へ、又地方より中央へと圓滑なる人事の交流が行はれることに依りまして、初めて地方公共團體に有爲の人材を吸收することが出來るのでございます、己の郷土に公職を奉じ、郷土の爲に郷土に死すると云ふだけでは、有爲の人材は吸收出來ないのでございます、從つて此の人事交流の途が絶たれますことは、國家の爲にも、又地方公共團體の爲にも、大きな不幸となるのでございます、但し此のことは決して官吏法と公吏法とを二つにするか、若しくは公務員法に纏めるかと云ふやうな、立法技術の問題ではなくして、もつと實質的な、強力な措置を致さなければなりませぬ、又何よりも先づ之に對する當局者の熱意が必要と存ずるものでございます、本法案の成立せむとするに當りまして、又我が貴族院が第二院としての嚴正公平なる任務が近く終らむと致し、本法の行末を見屆けることが出來ませぬ故に、地方自治と多くの公務員の將來を思ひまして、敢て一言を此の壇上に言ひ殘すより外ないことは誠に感慨に堪へないものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=6
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007・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 植原内務大臣
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=7
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008・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 淺井君の誠に御深切な、周到な御注意と申しますか、警告と申しますか、それに對しては、心から御禮を申上げます、之に對して、此の場合一言政府の所信を申上げて置くことも宜からうと存じます、御説の如くに新憲法の運用を全からしむるに付きましても、地方自治の完成されなければならない、地方自治の完成が議會政治を全からしむる根柢であると存じます、私共多年知事公選を唱へ、今將に新憲法の規定に基きまして、地方自治團體が都道府縣から市町村迄可なり徹底的に法文の上に於て、民主化されることを喜ぶものであります、同時に此の責任を痛感致すものであります、口に民主政治を言ふことは易しいが、人類の歴史の上から考へまして、實際に於て、實行に於て、民主政治は非常にむつかしい政治だと考へて居ります、殊に過去數年間は、國内が誤つた政治思想や觀念に依りましてミスリーズされて參りました、此の場合に新憲法の制定に依りまして、法文の上で民主的な地方自治制度が樹てられることになりました、之を運用する上に於きましては、淺井君の御指摘になりました公務員及び特に警察官、消防官等が、此の變轉期に處して何等の不安も動搖もなく圓滑に移り變ることが出來るばかりでなく、實際の事務に當りまする所の是等の人々が、安んじて其の職に就くのみならず、忠實に民主政治を實現する一つの役割を勤めて貰はなければならないのであります、此の事實を都道府縣、市町村の長になりました者が、十分に認識し、責任を感じて、只今御指摘の如く、政治と行政との間をはつきり認識して公務員を取扱ふと云ふことであると思ひます、又地方自治團體の長が、其の心掛があると共に、法制の上でも、是等の多くの公務員が安心して事に當られるやうに致したいと考へまして、恩給制度等は、中央の官吏たると、或は地方の公務員たるとも、其の間に更に之を隔離されたり、そこで切離されることのないやうに繼續して、官吏たる者が公務員になり、公務員たる者が又官吏になりましても、其の間を斷ち切られる虞のないやうにするやうに考へて居ります、又御話の如く、總ての今迄の役人と云ふものを官吏とするか、全部を公務員とするか、官吏とし公務員とするかの問題は、まだ能く決定致して居りませぬけれども、是等に付きましても、人事の交流が中央、地方と、更に支障なく圓滑に行はれるやうな仕組を打ち樹てたいと折角考慮して、之に對して萬遺漏なきを期して居る次第であります、警察官のことに付きましては、御指摘の如く、特に意を用ひなければならないのでありまして、一片の法制上の徹底化から申しますれば、地方自治制度が斯くも民主的に定められました此の場合に於て、國家警察と自治警察とを區別致しまして、自治警察は、自治團體に移すが當然のやうにも思はれますけれども、現下の社會情勢から考へまして、當分の間、警察行政に付ては現状の儘と致し、機を見まして、自治警察と國家警察とを區別します立法を致しまして、是等も其の途を付けたいと思ふて居ります、けれども特に是等の人人に付きましては、假令是が從來の官吏であつたものが、地方自治團體の公務員として殘りましても、其の待遇や取扱は決して官吏であつた時の身分と、公務員との間の身分との變化は來さないやうに、ちよつと官吏と云へば、今迄の日本の國民の俗受けから言つて、高いもので、公務員と言へば下つたやうに感ずるやうなことが從來の慣例に依ればあるかも知れませぬけれども、左樣なことは法文の上に於ても、實際の上に於ても、なからしめたいと考へて居ります、何れも國家の公僕で、假令官吏法と公務員法とが定りまして、兩者の名前は違ひましても、其の間に於て區別や差別や等差のあるべき筈がなく、又待遇をも成るべく共通に致しまして、中央と地方との交流をも必要に應じては滑かに行はれるやうに、總ての規定を定めるばかりでなく、其の任に當る人に對しても十分之を自覺して戴きまして、地方自治團體が民主化されれば、政黨に依つて幾多の弊害を釀すだらうと云ふやうなことを、懸念されましたことはありますが、是等のものが一片の杞憂となりまして、實際に於て地方自治が全きを期し、茲に民主政治の基盤が確保、確立されることを切望し、左樣な手配を出來るだけ萬遺漏なく致したいと思つて居ります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=8
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009・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 他に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=9
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010・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=10
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011・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=11
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012・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=12
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013・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=13
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014・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
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015・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、本案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=15
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016・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=16
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017・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=17
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018・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=18
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019・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=19
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020・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=20
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021・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=21
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022・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=22
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023・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 昨日衆議院より送付せられました檢察廳法案、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案、裁判所職員の定員に関する法律案、裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案、檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案、以上五案を、此の際議事日程に追加し、一括して第一讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=23
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024・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、木村司法大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=24
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025・会議録情報3
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檢察廳法案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十七日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
…………………………………
檢察廳法案
檢察廳法
第一條 檢察廳は、檢察官の行う事務を統括するところとする。
檢察廳は、最高檢察廳、高等檢察廳、地方檢察廳及び区檢察廳とする。
第二條 最高檢察廳は、最高裁判所に、高等檢察廳は、各高等裁判所に、地方檢察廳は、各地方裁判所に、区檢察廳は、各簡旨裁判所にそれぞれ対應してこれを置く。
最高檢察廳の位置並びに最高檢察廳以外の檢察廳の名称及び位置は、政令でこれを定める。
司法大臣は、必要と認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所の支部にそれぞれ対應して高等檢察廳又は地方檢察廳の支部を設け、当該檢察廳の事務の一部を取り扱わせることができる。
第三條 檢察官は、檢事総長、次長檢事、檢事長、檢事及び副檢事とする。
第四條 檢察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。
第五條 檢察官は、いずれかの檢察廳に属し、他の法令に特別の定のある場合を除いて、その属する檢察廳の対應する裁判所の管轄区域内において、その裁判所の管轄に属する事項について前條に規定する職務を行う。
第六條 檢察官は、いかなる犯罪についても搜査をすることができる。
檢察官と他の法令により搜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる。
第七條 檢事総長は、最高檢察廳の長として、廳務を掌理し、且つ、すべての檢察廳の職員を指揮監督する。
次長檢事は、最高檢察廳に属し、檢事総長を補佐し、又、檢事総長に事故のあるとき、又は檢事総長が欠けたときは、その職務を行う。
第八條 檢事長は、高等檢察廳の長として、廳務を掌理し、且つ、その廳並びにその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る地方檢察廳及び区檢察廳の職員を指揮監督する。
第九條 各地方檢察廳に檢事正各一人を置き、一級の檢事を以てこれに充てる。
檢事正は、廳務を掌理し、且つ、その廳及びその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る区檢察廳の職員を指揮監督する。
第十條 二人以上の檢事又は檢事及び副檢事の属する各区檢察廳に上席檢察官各一人を置き、檢事を以てこれに充てる。
上席檢察官の置かれた各区檢察廳においては、その廳の上席檢察官が、その他の各区檢察廳においては、その廳に属する檢事又は副檢事(副檢事が二人以上あるときは、檢事正の指定する副檢事)が廳務を掌理し、且つ、その廳の職員を指揮監督する。
第十一條 檢事総長、檢事長又は檢事正は、その指揮監督する檢察官に、第七條第一項、第八條又は第九條第二項に規定する事務の一部を取り扱わせることができる。
第十二條 檢事総長、檢事長又は檢事正は、その指揮監督する檢察官の事務を、自ら取り扱い、又はその指揮監督する他の檢察官に取り扱わせることができる。
第十三條 檢事総長及び次長檢事、檢事長若しくは檢事正に事故のあるとき、又は檢事総長及び次長檢事、檢事長若しくは檢事正が欠けたときは、その廳の他の檢察官が、司法大臣の定める順序により、臨時に檢事総長、檢事長又は檢事正の職務を行う。
区檢察廳の廳務を掌理する檢察官に事故のあるとき、又はその檢察官が欠けたときは、檢事正の指定する他の檢察官が、臨時にその職務を行う。
第十四條 司法大臣は、第四條及び第六條に規定する檢察官の事務に関し、檢察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、檢事総長のみを指揮することができる。
第十五條 檢事総長、次長檢事及び各檢事長は、一級とし、その任免は、天皇が、これを認証する。
檢事は、一級又は二級とし、副檢事は、二級とする。
一級の檢察官は、内閣が、二級の檢察官は、内閣総理大臣が、これを任免する。
第十六條 檢事長、檢事及び副檢事の職は、司法大臣が、これを補する。
副檢事は、区檢察廳の檢察官の職のみにこれを補するものとする。
第十七條 司法大臣は、高等檢察廳又は地方檢察廳の檢事の中から、高等檢察廳又は地方檢察廳の支部に勤務すべき者を命ずる。
第十八條 二級の檢察官の任命及び敍級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 司法修習生の修習を終えた者
二 裁判官の職に在つた者
三 三年以上政令で定める大学において法律学の教授又は助教授の職に在つた者
副檢事は、前項の規定にかかわらず、左の各号の一に該当する者で副檢事選考委員会の選考を経たものの中からもこれを任命することができる。
一 高等試驗に合格した者
二 三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職に在つた者
三年以上副檢事の職に在つて政令で定める考試を経た者は、第一項の規定にかかわらず、これを二級の檢事に任命及び敍級することができる。
副檢事選考委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十九條 一級の檢察官の任命及び敍級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 八年以上二級の檢事、判事補、簡易裁判所判事又は弁護士の職に在つた者
二 最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官又は判事の職に在つた者
三 前條第一項第一号又は第三号の資格を得た後八年以上司法次官、少年審判官、最高裁判所事務総長若しくは裁判所調査官又は二級以上の司法事務官、司法教官、裁判所事務官若しくは司法研修所教官の職に在つた者
四 前條第一項第一号又は第三号の資格を有し一年以上一級官吏の職に在つた者
五 前條第一項の資格を有し一級の檢察官の職務に必要な学識経驗のある者で一級官吏選考委員会の選考を経たもの
前項第一号及び第三号に規定する各職の在職年数は、これを通算する。
前條第三項の規定により檢事に任命された者は、第一項第三号乃至第五号の規定の適用については、これを同條第一項第一号の資格を有する者とみなす。
第二十條 他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを檢察官に任命することができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
二 彈劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
第二十一條 檢察官の受ける俸給については、別に法律でこれを定める。
第二十二條 檢事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の檢察官は、年齢が六十三年に達した時に退官する。
第二十三條 檢察官が心身の故障その他の事由に因りその職務を執るに堪えないときは、檢察官適格審査委員会の議決を経てその官を免ずることができる。
檢察官適格審査委員会は、檢察官、裁判官及び弁護士の中から選任された委員を以てこれを組織する。
前二項に規定するものの外、檢察官適格審査委員会に関する事項は、政令でこれを定める。
第二十四條 檢事長、檢事又は副檢事が檢察廳の廃止その他の事由に因り剩員となつたときは、司法大臣は、その檢事長、檢事又は副檢事に俸給の半額を給して欠位を待たせることができる。
第二十五條 檢察官は、前三條の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。
第二十六條 最高檢察廳に檢事総長祕書官を置く。
檢事総長祕書官は、二級とする。
檢事総長祕書官は、檢事総長の命を受けて機密に関する事務を掌る。
第二十七條 檢察廳に檢察事務官を置く。
檢察事務官は、二級又は三級とする。
檢察事務官は、上官の命を受けて檢察廳の事務を掌り、又、檢察官を補佐し、又はその指揮を受けて搜査を行う。
第二十八條 檢察廳に檢察技官を置く。
檢察技官は、二級又は三級とする。
檢察技官は、檢察官の指揮を受けて技術を掌る。
第二十九條 檢察廳の職員の定員は、予算の範囲内において政令でこれを定める。
第三十條 司法大臣は、檢事総長若しくは檢事長又は檢事正にその廳又はその廳及びその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る區檢察廳の三級官吏の進退に関する権限を委任することができる。
檢事長又は檢事正は、その廳の檢察事務官及び檢察技官の中から、その廳の支部に勤務すべき者を命ずる。
第三十一條 檢察廳の職員は、他の檢察廳の職員と各自の取り扱うべき事務について互に必要な補助をする。
第三十二條 檢察廳の事務章程は、司法大臣が、これを定める。
附 則
第三十三條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第三十四條 この法律施行前、從前の檢事総長又は大審院檢事のした事件の受理その他の行爲は、これを檢事総長又は最高檢察廳の檢事のした事件の受理その他の行爲とみなし、從前の檢事長、控訴院檢事、從前の檢事正又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事のした事件の受理その他の行爲は、これをそれぞれ政令で定める檢事長、高等檢察廳の檢事、檢事正又は地方檢察廳の檢事のした事件の受理その他の行爲とみなす。
第三十五條 この法律施行前、從前の檢事総長又は大審院檢事にあててされた事件の送致その他の行爲は、これを檢事総長又は最高檢察廳の檢事にあててされた事件の送致その他の行爲とみなし、從前の檢事長、控訴院檢事、從前の檢事正又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事にあててされた事件の送致その他の行爲は、これをそれぞれ政令で定める檢事長、高等檢察廳の檢事、檢事正又は地方檢察廳の檢事にあててされた事件の送致その他の行爲とみなす。
第三十六條 司法大臣は、当分の間、檢察官が足りないため必要と認めるときは、区檢察廳の檢察事務官にその廳の檢察官の事務を取り扱わせることができる。
第三十七條 裁判所構成法による檢事たる資格を有する者は、第十八條及び第十九條の規定の適用については、その資格を得た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。この法律施行の際現に弁護士たる資格を有する者で弁護士の在職年数がこの法律施行後において三年に達する者についてその三年に達した者も同樣とする。
この法律施行前弁護士試補として一年六箇月以上の実務修習を終え考試を経た者は、前項の規定にかかわらず、その考試を経た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。
第三十八條 裁判所構成法による檢事若しくは判事の在職又は同法による檢事たる資格を有する者の司法省各局長、司法省調査部長、司法省調査官、司法書記官、司法研究所指導官、司法研究所事務官、司法省参事官、領事官、朝鮮総督府檢事、朝鮮総督府判事、台湾総督府法院檢察官、台湾総督府法院判官、関東法院檢察官、関東法院判官、南洋廳檢事若しくは南洋廳判事の在職は、第十九條第一項第一号の規定の適用については、これを二級の檢事の在職とみなす。
第三十九條 第十八條第二項第二号中二級官吏とあるのは、奏任文官を、第十九條第一項第四号中一級官吏とあるのは、勅任文官を含むものとする。
第四十條 この法律施行の際奏任の檢事で現に控訴院檢事又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、檢事に任ぜられ、二級に敍せられ、且つ、それぞれ政令で定める高等檢察廳又は地方檢察廳の檢事に補せられたものとする。
第四十一條 この法律施行の際現に書記長若しくは裁判所書記の職に在つて檢事局に属する者又は檢察補佐官の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、現に受ける号俸を以て檢察事務官に任ぜられ、奏任又は二級の者は、二級に、判任又は三級の者は、三級に敍せられたものとする。
第四十二條 政令で特別の定をした場合を除いて、他の法律中「檢事」を「檢察官」に、「管轄裁判所ノ檢事」を「管轄裁判所ニ對應スル檢察廳ノ檢察官」に改める。
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下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十七日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案
第一條 別表第一表の通り高等裁判所を、別表第二表の通り地方裁判所をそれぞれ設立する。
第二條 別表第三表の通り各高等裁判所及び地方裁判所の管轄区域を定める。
第三條 簡易裁判所の設立及び管轄区域は、当分の間、裁判所法第二條第二項の規定にかかわらず、政令でこれを定める。
附 則
この法律は、裁判所法施行の日から、これを施行する。
第三條の規定による政令は、日本國憲法施行後最初に召集される國会の開会の後六十日を経過した時に、その効力を失う。
裁判所職員の定員に関する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十七日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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裁判所職員の定員に関する法律案
第一條 下級裁判所の裁判官の員数は、左の通りとする。
高等裁判所長官 八人
判事 專任八百十四人
判事補 專任二百五十人
簡易裁判所判事 專任六百四十五人
第二條 司法研修所教官の員数は、左の通りとする。
專任一人 一級
專任五人 二級
第三條 裁判所調査官の員数は、專任二十人とする。
第四條 裁判所事務官の員数は、左の通りとする。
專任一人 一級
專任百七十六人 二級
專任二千七百六十四人 三級
第五條 裁判所技官の員数は、左の通りとする。
專任一人 二級
專任二人 三級
附 則
この法律は、裁判所法施行の日から、これを施行する。
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裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案
右の政府提出案は本院において修正議決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十七日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
…………………………………
裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案
第一條 当分の間、最高裁判所長官の受ける報酬の額は、内閣総理大臣の受ける俸給の額と同額とし、最高裁判所判事の受ける報酬の額は、國務大臣の受ける俸給の額と同額とする。
第二條 高等裁判所長官の受ける報酬の額は、当分の間、名省次官の受ける俸給の額より高く、國務大臣の受ける俸給の額より低い額の範囲内で最高裁判所が定める額とする。
第三條 あらたに高等裁判所の判事に補せられた裁判官の受ける報酬の額は、当分の間、一般の一級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
あらたに地方裁判所の判事に補せられた裁判官の受ける報酬の額は、当分の間、一般の一級及び二級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
あらたに判事補に補せられた裁判官の受ける報酬の額は、当分の間、一般の二級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
簡易裁判所判事の受ける報酬の額は、当分の間、一般の二級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
第四條 最高裁判所は前條の範囲内でそれぞれ報酬の等級を定めるものとする。
第五條 下級裁判所の各裁判官の受ける報酬は、最高裁判所がこれを定める。
第六條 裁判官が退官し、又は死亡したときは、当月分の全額の報酬を支給する。
第七條 報酬以外の給與については、当分の間、一般の官吏の例による。
第八條 司法修習生の受ける給與の額は、当分の間、最高裁判所の定めるところによる。
前項の給與については、第五條及び第六條の規定を準用する。
司法修習生には、第一項の給與の外、当分の間、一般の官吏の例による給與を支給することができる。
第九條 裁判官の報酬及び司法修習生の給與等に関する細則は、最高裁判所がこれを定める。
附 則
この法律は、裁判所法施行の日から、これを施行する。
この法律施行の際現に在職する裁判官は、日本國憲法第六條第二項、第七十九條第一項又は第八十條第一項の規定により裁判官に任命される者を除いて、この法律施行の際現に受ける俸給の額に相当する報酬及び一般の官吏の例による俸給以外の給與を受けるものとする。
この法律は、昭和二十三年一月一日から、その効力を失う。
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檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十二年三月二十七日
衆議院議長 山崎 猛
貴族院議長公爵徳川家正殿
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檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案
第一條 檢事総長の受ける俸給の額は、当分の間、國務大臣の受ける俸給の額に次ぐものとし内閣でこれを定める。
第二條 檢事総長以外の檢察官の受ける俸給の額は、当分の間、一般の官吏の受ける俸給の例による。
第三條 前二條に規定するものの外、檢察官の受ける俸給及び俸給以外の給與については、当分の間、一般の官吏の例による。
附 則
この法律は、檢察廳法施行の日から、これを施行する。
檢察廳法第四十條の規定により檢事に任命された者は、別に辞令を発せられないときは、この法律施行の際現に受ける俸給額に相当する俸給を受けるものとする。
この法律は、昭和二十三年一月一日から、その効力を失う。
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〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=25
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026・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 只今上程に相成りました檢察廳法案外四件の提案理由を御説明申上げます、從來、裁判所構成法に依りまして、檢事は裁判所に附置された檢事局の職員として、檢察事務を行つて來たのでありますが、新憲法が司法權の獨立に付きまして、深甚の考慮を致して居りますることに鑑みますれば、狹義の意味の司法機關、即ち裁判機關にあらざる檢察機關は、之を裁判所と別個獨立のものとすることを相當と思料致しました結果、裁判所法とは別に、檢察機關の組織を定めることと致しましたのであります、是が檢察廳法案の提出理由であります、本法案の立案に付きましては、概ね裁判所構成法に依る檢察制度を踏襲することと致しました結果、其の根本に於きましては、重大な變革はないと申しても差支ないのであります、從ひまして以下本法律案に依りまして、從來の檢察制度が改革される主要な點に付きまして申述べたいと存じます、第一、從來の檢事の名稱は、新憲法の用例に從ひまして、之を檢察官に、檢事局は之を檢察廳に改めることと致しました、第二に、從來の檢事をして新憲法に所謂檢察官の職務を行はせることは勿論のことでありまするが、別に副檢事の制度を設けまして、專ら區檢察廳に於て檢察官の職務を行はせることと致したのであります、新たに副檢事の制度を設けました理由は、裁判所法の施行に伴ひまして、違警罪即決例が廢止され、從來警察署長に依つて即決されました違警罪、即ち拘留又は科料に該る罪が、總て簡易裁判所に於て處理されることとなります爲、檢察官の取扱ふ事件は、急激に増加することが豫想されるのでありますが、今遽に從前の檢事の資格を有しまする多數の檢察官を得ますことは、人的にも、又豫算的にも極めて困難でありまするのみならず、是等の事件は、必ずしも總て從來の檢事の資格を有する者をして、之を處理せしむることを要しないと思はれまするので、從來の檢事の任用資格を緩和致しまして、所要の檢察官を得ようとする點にあるのであります、第三に、檢察官の任用資格は、略略是迄と同樣でありまするが、副檢事は、上述の理由から高等試驗に合格した者、又は三年以上政令で定める二級官吏、其の他の公務員の職に在つた者で、副檢事選考委員會の選考を經た者の中からも、之を任命することが出來ることに致したのであります、而して三年以上副檢事の職に在りまして、別に定める考試を經た者は、之を檢事に任命出來ることとなつて居るのであります、斯樣に副檢事の制度を設けまして、更に副檢事から檢事への昇進の途を拓くことは、從來下積みの感のありました裁判所書記、警察官等に對し、將來の希望を與へるものとして、大いに意義ある改革と考へて居るのであります、第四、檢察官の職務遂行の公正を擔保致します爲、其の身分を保障する必要があることは勿論であり、本法案に於きましても其の點十分考慮致して居りまするが、檢察官の身分保障が鞏固に過ぎまして、若し心身の故障、其の他の事由に依りまして、檢察官の職務に堪えない場合にも、尚且之を罷免することが出來ないと云ふやうな如きことは、決して當を得たものではありませぬので、左樣な場合には、檢察官適格審査委員會の議決を經まして、其の官を免ずることが出來ることと致したのであります、第五、檢察官は、從來と同樣司法大臣の指揮監督に服するものでありまするが、檢察權行使の獨立性を擔保する爲、個々の事件の取調又は處分に付きましては、司法大臣は檢事總長のみを指揮することが出來ることと致したのであります、第六、檢察廳には檢察官の外、檢察事務官と、檢察技官とを置くことと致しました、檢察事務官は從來の裁判所書記の職務を行ふの外、檢察官の指揮を受けて、搜査を行ふ職權を有するのであります、之に依りまして、檢事直屬の搜査機關を設けまして、所謂人權蹂躙事件の根絶を期すべしとの一般の要望に應へむとするものであります、檢察技官は、今後に於ける犯罪搜査に對しましては、科學的知識を一層活用する要があると信じまして、其の技術を擔當せしむる爲に、之を設くることと致したのであります、以上が本法律案に依りまして、檢察制度が改革される主要な點でありまして、檢察官の處分權限の外は、概ね從來の制度と變つて居ないのであります、次に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案、裁判所職員の定員に関する法律案の提案の理由を御説明申上げます、曩に御協贊を得ました裁判所法は、其の第二條に於きまして、下級裁判所の設立及び管轄區域は別に法律で之を定めることと致して居りまするので、此の規定に基きまして、此の法案を提出した次第であります、此の法案に現れて居りまする高等裁判所及び地方裁判所の設置個所、管轄區域は大體從前の控訴院及び地方裁判所の設置個所及び管轄區域と同樣であります、唯從前の控訴院所在地七箇所の外、高松市にも新たに高等裁判所を設置し、四國四地方裁判所管内を統一致しまして、其の管下に置いたことと、東京の民事、刑事兩地方裁判所を併合致しまして、一個の地方裁判所と致しましたこと、樺太、那覇の二つの地方裁判所が除かれて居ることが是と相違して居るのであります、簡易裁判所に付きましては其の數も多く、尚且直接社會の治安に關聯する重要な新しい裁判所でありまするから、是が設置個所及び管轄區域に付きましては、尚詳細に現地の事情を調査致しました上に之を決定する必要があると存じまするので、今囘は此の法律の規定に基きまして、暫定的に政令で之を定めることと致しまして、新憲法施行後の最初の國會に此の點に關する改正法案を提出することと致した次第であります、次に裁判所職員の定員に関する法律案の提案の理由を説明致します、曩に上程致しました裁判所法では、下級裁判所の裁判官、司法研修所教官、裁判所調査官、裁判所事務官、裁判所技官の各員數は、別に法律で之を定めることを規定致して居るのであります、從ひまして是等の規定に基きまして、本法案を提出した次第であります、本法案は各條とも員數の規定でありまするので、其の詳細は別の機會に御説明申上げたいと存じます、最後に裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案と、檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案の提案理由を御説申上げます、過日本院を通過致しました裁判所法案は、其の第五十一條に於きまして、裁判官の受ける報酬に付ては別に之を法律で定めることとし、又第六十七條第二項は司法修習生には國家から一定額の給與をすることと致して居りますので、此の規定に基きまして此の法案を提出した次第であります、國内の治安を確保し、國民の權義を保全する重大な使命を擔うて居りまする裁判官に對しまして、其の地位を保つに足るだけの報酬を支給しなければならぬと云ふことは、是は申す迄もないことであります、併しながら經濟状勢は尚不安定な状態にありまするし、又目下政府に於きましても、官吏全體の給與改善に付きまして鋭意研究中でありまするので、暫定的の措置と致しまして、最高裁判所長官の報酬の額は、内閣總理大臣の俸給の額と同額とし、最高裁判所判事の報酬は、國務大臣の俸給の額と同額とすると定めました外に、其の他の裁判官及び司法修習生の報酬又は給與に付きましては、それぞれ一定の枠を定めまして、其の枠の範圍内で最高裁判所が之を定めることと致したのであります、尚本案に付きましては、衆議院に於きまして、東京高等裁判所長官の受ける報酬の額は他の高等裁判所長官の受ける報酬の額より高く、最高裁判所で之を定める旨の修正があつたのであります、次に檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案の提出理由を御説明申上げます、檢察官の俸給に付きましては、只今上程になりました檢察廳法案第二十二條に依りまして、一般の官吏の俸給とは別に、裁判官の報酬に準ずるものとして法律で之を定めることとなつて居るのであります、處が、現在直ちに法律を以て檢察官の俸給の額を定めますことは、曩に裁判官の報酬に付て申しましたのと同樣に、極めて困難な状態にありますので、一般官吏に付きまして新らしい俸給額が決定されるのを待ちまして、新憲法實施後の最初の國會に改めて檢察官の俸給に關する法律案を提出することと致しまして、それ迄の應急的措置として本法案を提出致しました次第であります、何卒御審議の上御協贊の程御願ひ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=26
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027・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程せられました檢察廳法案外四件の特別委員は其の數を十九名とし、委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=27
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028・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=28
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029・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=29
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030・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔小野寺書記官朗讀〕
檢察廳法案外四件特別委員
公爵 九條道秀君 侯爵 淺野長武君
伯爵 橋本實斐君 子爵 秋月種英君
子爵 清岡長言君 子爵 高木正得君
村上恭一君 渡部信君
吉田久君 霜山精一君
副島千八君 男爵 内海勝二君
男爵 奧田剛郎君 男爵 村田保定君
野村嘉六君 我妻榮君
山隈康君 有馬忠三郎君
淺井清君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=30
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031・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 明日は午前十時より開會致します、議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十時五十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203242X02619470328&spkNum=31
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