1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○勞働基準法案
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昭和二十二年三月二十二日(土曜日)
午前十一時四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=0
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001・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それでは開會致します、本法は非常に劃期的な大問題がありますし、又具體的な、實質的な條項が相當に織込まれて居るやうでありますから、最初暫く大體に於ける逐條審議のやうなことで進んで行つて見たいと思ひます、先づ第一條から三條迄を一括して御審議を願ひたいと思ひます、朗讀致させませうか、一條から三條迄朗讀願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=1
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002・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「勞働條件の原則、第一條勞働條件は、勞働者が人たるに値する生活を營むための必要を充たすべきものでなければならない。この法律で定める勞働條件の基準は最低のものであるから、勞働關係の當事者は、この基準を理由として勞働條件を低下させてはならないことはもとより、その向上を圖るように努めなければならない。勞働條件の決定、第二條勞働條件は、勞働者と使用者が、對等の立場において決定すべきものである。勞働者及び使用者は、勞働協約、就業規則及び勞働契約を遵守し、誠實に各各その義務を履行しなければならない。均等待遇、第三條使用者は、勞働者の國籍、信條又は社會的身分を理由として、賃金、勞働時間その他の勞働條件について、差別的取扱をしてはならない。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=2
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003・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 如何ですか、御質疑がありましたら、どうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=3
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004・種田虎雄
○種田虎雄君 勞働時間等に付て、今後八時間制が實施され、週休が行はれるのでありますが、只今官廳或は會社等に於て土曜日の如きは半日で、後は大體休みになつて居るのであります、少くとも八時間勞働制と云ふものを實施すると云ふことになると、それを矢張り土曜日も八時間と云ふことにすることは、勞働條件低下として、それはいけないと云ふ御考なんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=4
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005・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の法律が出來たからと云ふ理由で、八時間迄は宜いから、今迄八時間でなかつたものを八時間にするぞと云ふことは、此の法律の趣旨に副はないことに相成ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=5
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006・種田虎雄
○種田虎雄君 さうしますと、今後新しく採用する場合に、八時間勞働と云ふことを條件として、團體協約等を締結することは差支ないと云ふ考へ方なんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=6
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007・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今の問題は役所に付ての御話を事例に取られたと思ふのでありまするが、役所のやうに今迄勤めて居る者が土曜日半どんでやつて來て居る、それに新しく役所に入つて來る者に付て土曜は八時間で君とは契約するぞと云ふ趣旨は事實上もございませぬでありませうし、又それは矢張り此の法律の趣旨に副はないと、斯う云ふ風に思ふのであります、唯一般的に或會社を作るとか、或工場を作ると云ふ場合には、土曜日も八時間でやつて行くと云ふ一つの協約を結ぶことは、此の法律に一向差支ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=7
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008・種田虎雄
○種田虎雄君 第三條に社會的身分と云ふことがありますが、是は學校の色色違つた教育を受けて來た、それ等の者に對して此の社會的身分と云ふことが適用されるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=8
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009・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 學校を出たのは、是は一つの資格でありまして、決して身分ぢやございませぬから、此處に言ふ身分と云ふのは、唯生れながらどう云ふ位置に生れたか、と云ふやうなことを意味して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=9
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010・種田虎雄
○種田虎雄君 さうしますと、教育程度の違つたことに依つて、或程度の賃銀等に於ける差別を設けて居ると云ふことは、此の第三條違反にはならぬ譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=10
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011・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=11
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012・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 私第一條に付て少しく伺ひたいのですが、人たるに値する生活と云ふのは、餘程大きな意味があるのでありますが、最低生活の保障と云ふ意味でありませうか、文化生活迄考へてのことでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=12
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013・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の人たるに値する生活と云ふのは、御話のやうに言葉は簡單でありますけれども、色色内容のある問題でありますが、既に憲法第二十五條でございましたか、斯う云ふ言葉ではございませぬが、健康にして文化的な生活を保障すると云ふ言葉を使つて居ります、是も一つの人たるに値する生活を意味して居ると思ひますが、此處に人たるに値すると云ふのは、人間としての生活が出來るやうにと云ふことでありまするから、今御話のありましたやうに唯生きると云ふだけではなしに、矢張りそれには人としての生活が營まれるやうにと云ふことでありまするから、文化的なものも入ると思ひます、唯併し同じ人たるに値する生活と申しましても、色々客觀的な情勢に應じまして、國民全體が物資がなくて非常に困つて居ると云ふ時の人たるに値する生活と、非常に物資の豐富な時の人たるに値する生活と云ふものには自ら時期に依りましては、差が付くとは思ひますけれども、一般の國民として人としての生活を營まれるやうにと斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=13
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014・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 御質問ありませぬければ、次の第四條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=14
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015・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「第四條、使用者は、勞働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=15
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016・種田虎雄
○種田虎雄君 是は昨日もちよつと私御尋ねしたのでありますが、斯う云ふ原則を決められることは誠に結構なんでありますが、完全雇傭と云ふことがやかましく言はれて居りますが、昨日も申上げたやうに女子には、男子と比べれば色々と長所もありますけれども、又肉體的に或程度の劣つて居る條件があるやうに思ふのであります、然るに斯う云ふやうな原則が一般的に決められ、又他に色々女子保護に關する規定がありますが、今後事業經營者としましては成るべく女子を採用しない、斯う云ふことになるやうな懸念があるのぢやないか、從つて完全雇傭の關係、さう云ふ點に付てどう云ふ風に政府は御考になつて居るのでありませうか、其の點伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=16
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017・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 是も矢張り問題の運用如何に依りましては御心配のやうな事例も發生するかとも思ふのですが、大體此の趣旨は矢張り勞働能率から來て居る考でして、同じ勞働能率のある者に付ては同じ賃金を與へろと云ふ原則ですから、今迄因襲的に女子と云ふものは同じ勞働能率に拘らず、賃金が低くかつたと云ふことを是正する意味でありまして、さう云ふ意味で書いたものと私は承知して居ります、從つて女子を使へば特に非常に能率上損だと云ふことの意味で、女子を保護したのでありませぬから、其の點に付ては此の法律は正當に實行されれば、其の不安はなかるべきものだ、又さうなくちやならぬと云ふ考で居ります、さう云ふ意味に於て完全雇傭の問題などと關聯性に於て考へて宜いのぢやないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=17
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018・種田虎雄
○種田虎雄君 實は此の賃金の問題ばかりでありませぬ、他に色々女子保護に關して進んだ規定が大分織込んでありますので、實はさう云ふやうな問題の起きた時に、或相當規模の大きい會社で、組合等からさう云ふ主張が出た時に、實際問題として經營者の方で組合の方の主張は能く分つたから、今後は女子は成るべく採用しないやうにすると云ふことを、ちよつと言うたやに聞いて居りますので、今後女子を保護する意味で作られる色々の規定が、却て女子の働く範圍が狹くなるやうなことになるやうなことになつてはいかぬと思つて、御尋ねしたやうな譯であります、是は事實問題としてさう云ふことが相當大きな規模の會社に於てあつたやうでありますから、それで伺つた譯なんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=18
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019・東久世通忠
○伯爵東久世通忠君 只今の女子と男子との同一賃金と云ふ問題に付きまして、今の原則は御尤もでありますけれども、もう少し細かく進んで行きまして、賃金を決めます時に、今御話の通り男子と女子との賃金の差を、能力に應じて變へるのは結構ですが、此の基準法の細則、或は施行規則等が是から出ると思ひますが、所謂最低賃金等を政府に於て御決めになる場合、同一能力に於ける男子と女子の賃金の差があるかないか、若し付けるとすればどう云ふ風にするか伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=19
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020・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) まだ最低賃金を作るに付ての具體的な問題迄は考へて居りませぬけれども、矢張り原則としては最低賃金に於ても能力が同じである場合に差別を付けるべきではなからうと思つて居ります、唯御承知のやうに、此の前の委員會でも意見が出ましたが、今日の賃金は所謂生活賃金の部面が多うございます、さうすると家族がある者と、ない者と自ら其處に差を付けませぬと一律に參りませぬから、さう云ふ面に付ての差は、或は出て來はしないかと思ひますが、今ちよつと具體的な構想は持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=20
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021・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 宜しければ第五條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=21
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022・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「第五條使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身體の自由を不當に拘束する手段によつて、勞働者の意思に反して勞働を強制してはならない。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=22
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023・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 別に御質疑はありませぬか、なければ第六條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=23
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024・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「第六條何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=24
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025・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 此の點は如何でせう、請負、建築事業などに付ての口入業務の關係のことが御ありのことと思ひまするが、今日は竹中委員も御出でになりませぬけれども……御ありにならなければ其の次第七條に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=25
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026・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「第七條使用者は、勞働者が勞働時間中に、選擧權その他公民としての權利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない、但し、權利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を變更することができる。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=26
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027・東久世通忠
○伯爵東久世通忠君 第七條は公民としての權利を行使する場合に於ても當然でありますが、所謂拘束時間中に公民としての權利を行使する爲に職場を離れることになります、其の場合に於て茲に書いてある通り時間の差繰がうまく付けば、成るべく其の差繰を付けて公民としての權利を行使して貰ふのでありますが、事業主としては其の場合にどうしても作業の都合其の他に於ても、出來得ない場合もあらうと思ひますが、又其の爲に努めて便宜を圖るべきでありますが、其の時に事業主は其の者に對して賃金を支拂ふべきか、或は賃金を支拂はないで宜いかと云ふ問題も起ると思ひますが、政府に於ては此の點に付てどう云ふ風に御考になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=27
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028・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 實は此の七條に付ては公民權の行使を避けてならないと云ふ基本的な條項を言つたものでありまして、其の場合に於て賃金を拂ふかどうかと云ふことに付ては規定してございませぬ、ですから其處は自由で、やる場合もございませうし、又やらぬ場合もございませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=28
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029・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 私一つ御尋ねしたいのでありますが、此の「公の職務を執行するため」とかありますが、公民權を行使する場合でなしに、例へて申しますと、區會議員に出るとか、其の他の議員に出ると云ふやうなことにも考へられるのでありますが、さう云ふ場合に於て時間を與へる、或は有給の待遇をすると云ふやうなことが必要であるやうにも解釋出來るのでありますが、其の點は如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=29
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030・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今の御話の通り、公民權の行使ばかりでなしに、公の職務執行の爲の時間を與へなければならぬ、例へば議員になりまして、さうして議會に出席をする必要があれば矢張り拒んではなりませぬ、併し其の場合に、其の者が缺席して居る場合に給料をやるか、やらぬかと云ふことは、此の七條では規定して居りませぬから、やる所もございませう、事業主の方で考慮してやると云ふことであれば、それは一向差支ありませぬが、法律としては有給でやらなければならぬと云ふものではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=30
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031・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 次の問題は「適用事業の範圍」でありますが、是は別段御意見もなからうかと思ひます、其の次の「定義」、九條、十條、十一條、此の三箇條を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=31
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032・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「第九條この法律で勞働者とは、職業の種類を問わず、前條の事業又は事務所(以下事業という。)に使用される者で、賃金を支拂われる者をいう。第十條この法律で使用者とは、事業主又は事業の經營擔當者その他その事業の勞働者に關する事項について、事業主のために行爲をするすべての者をいう。第十一條この法律で賃金とは、賃金、給料、手當、賞與その他名稱の如何を問わず、勞働の對償として使用者が勞働者に支拂うすべてのものをいう。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=32
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033・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=33
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034・種田虎雄
○種田虎雄君 十一條に「その他名稱の如何を問わず」云々と書いてありますが、例へば各官廳若しくは會社等に於て、厚生施設として色々の面に於ての給與等を助けて居りますが、是等も含まれるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=34
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035・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今の御尋の點どう云ふのか存じませぬが、所謂金で支拂ふ以外に、最近のやうに物が非常に不足致しますると物でやつて居る、それを厚生と言つてやる場合が可なりあるかと思ひますが、さうして物を給與すれば、それが勞務の對價としてやつて居る以上は矢張り賃金としてそれは認めなければならぬと思ひます、唯厚生施設に金を掛けるからと言つて、それが賃金とは勿論是は考へられませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=35
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036・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 賃金の支拂を受けた者は總て勞働者であると云ふことになりますと、囑託とか顧問とかと云ふ者はどうなりますでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=36
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037・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此處に謂ひます勞働者と云ふのは、此の前にも御議論がありましたが、矢張り賃金、又此の賃金と云ふのは給料等も勿論入るのでありまして、さう云ふものを受けて、勞務の提供をして、其の報酬としてさう云ふ給與を受ける者は總て入る譯であります、唯併し此の中で時間制なんかになりますると、さう云ふ上の方の指導的な立場にある者は、時間制なんかは省いて居りますから、唯一律に時間制が適用になると云ふ譯ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=37
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038・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 此の囑託、顧問と云ふ者が勞働者の中に入ると入らぬとでは給與の面に於きまして相當問題が起るのであります、それは例へて申しますと、賞與をするのに全體の給料の何箇月分と云ふやうな計算を致します場合に、囑託、顧問を入れるか入れぬかに依つて非常に差が起るのでありますが、さう云ふ點に於て入れるか、入れぬとかと云ふことをはつきりして置かなければならぬと思ひますが、何處で區別したら宜いでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=38
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039・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今申したやうに高級の者であつても勞務を提供されて、其の勞務に對して報酬を拂ふと云ふのであれば、廣い意味で勞働者に入る譯であります、唯今御指摘になりました賞與の計算は是は會社等に於て所謂一般の勞働者、下級勞働者と言ひますか、普通の職員とか、勞働者に對する賞與の決め方、それから高級な者の賞與の決め方、是は色々會社なり、其他に依つて取扱が違ふかと思ひます、本法ではさう云ふ者を一律に取扱つてはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=39
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040・畠山一清
○委員長(畠山一清君) ちよつと意味が違ふのでございますが、囑託、顧問を勞働者の中に入れると全體の賞與が非常に殖えるのであります、さうすると其の配分は自由でありますから、下級の方に多く均霑し得ることになるのでありまして、入れぬと下級の方の配分が少くなるのであります、そこでそれをはつきりして置く必要があらうかと、斯う思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=40
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041・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今の御尋は、實際の會社なんかの經理の部面に於てはさう云ふことが起るかも知れませぬが、此の法律ではさう云ふ點は觸れて居りませぬで、會社で勞働者とか、職員の賞興はどれ位にする、それは何處から出す、それから今のやうに顧問なら顧問の賞與は何處からどの位出すと云ふのは、是は會社それぞれの給與で自由でありまして、此の法律で一律にするとか云ふことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=41
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042・畠山一清
○委員長(畠山一清君) さうではなしに顧問と云ふ者は勞働者であるかないかと云ふことさへ分れは宜いのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=42
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043・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の法律で顧問が會社に勤務と言ひますか、勞務の提供、色々な相談に乘るなりして、さうしてそれに對して一定の報酬を受けると云ふことになると入ると云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=43
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044・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 入ると云ふことは併し……まだ少し疑問がありますが、次に御移り願ひませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=44
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045・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「第十二條この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の發生した日以前三箇月間にその勞働者に對し支拂われた賃金の總額を、その期間の總日數で除した金額をいう。但し、その金額は、左の各號の一によつて計算した金額を下つてはならない。一賃金が勞働した日若しくは時間によつて算定され、又は出來高拂制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の總額をその期間中に勞働した日數で除した金額の百分の六十二賃金の一部が、日、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の總額をその期間の總日數で除した金額と前號の金額の合算額前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する、前二項に規定する期間中に、左の各號の一に該當する期間がある場合においては、その日數及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の總額から控除する。一業務上負傷し又は疾病にかかり療養のために休業した期間二産前産後の女子が第六十五條の規定によつて休業した期間三使用者の責に歸すべき事由によつて休業した期間四試の使用期間第一項の賃金の總額には、臨時に支拂われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支拂われる賃金竝びに通貨以外のもので支拂われた賃金で一定の範圍に屬しないものは算入しない。賃金が通貨以外のもので支拂われる場合、第一項の賃金の總額に算入すべきものの範圍及び評價に關し必要な事項は、命令で定める。雇入後三箇月に滿たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。日日雇い入れられる者については、その從事する事業又は職業について、勞働に關する主務大臣の定める金額を平均賃金とする。第一項乃至第六項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、勞働に關する主務大臣の定めるところによる。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=45
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046・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=46
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047・種田虎雄
○種田虎雄君 此の條文には或は直接關係がないことと思ひますが、政府としては大體此の勞働者に對する賃金は日給制を原則として考へて居られるのでありませうか、或は又月給制を將來原則として考へて居られるのでありませうか、さう云ふやうな點に付て何か御方針があれば伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=47
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048・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の問題は衆議院の方の委員會でも大分御議論がありまして、衆議院の委員會では、或委員は週給制にすべきぢやないか、併し週給制に直ぐ實施出來なければ、月二囘の支給と云ふ、是は賃金支拂日での議論でございまして、多少御趣旨の點と違ひまするけれども、さう云ふ議論もございましたのですが、其の時私の方として御答へ致しましたのは、此の法律は有らゆる業態、有らゆる企業に適用のある法律でございまするので、それで賃金の支拂としては少くとも月一囘と云ふ原則を採つたと云ふ答辯をして居ります、さう云ふやうに今の日給にするか、月給にするかと云ふ問題は、色々な職種に依つて私違つて來ると思ふのであります、日々の生産に應じて賃金を拂ふと云ふやうな職業に付きましては、是は日給制と云ふことが實際に合ふのぢやないかと思つて居ります、其の日給制を週給拂にするか、或は月何囘にするかは別であります、それから普通の我々見た樣なサラリーの、一日の働く量に依つて給料が決つて居ない者に付きましては、是は月給制が矢張り宜いのぢやなからうかと思つて居ります、ずつと將來になりまして此の月給制、或は週給制と云ふやうな實體の方が相應して来るかも知れませぬけれども、少くとも是は月給制で行くべきぢやなからうかと思つて居ります、日々の生産をやつて居る勞働者の給與と云ふものが、所謂出來高に應じたと申しまするか、其の月々の生産額に應じた日給制度で行くが宜いか、或はさう云ふものも一月に引繰めて大體定額式の月給制が宜いかと云ふやうな議論が是は實はございますが、之に付ては何とも申上げにくいのでありまするけれども、矢張り此の生産に應じた給與と云ふものは、又能率に應じた給與制度と云ふものが實際宜いのぢやなからうか、其の能率に應じたと云ふことを止めて、さうして一律に月給制で行くと云ふことは餘程生産が安定をし、生産が上つた時に考へられるかも知れませぬけれども、少くとも今日ではそこは如何なものであらうかと私共は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=48
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049・種田虎雄
○種田虎雄君 此の勞働基準法の中で一番問題になつて居るのは最低賃金、それから勞働時間、此の二點が主なものぢやないかと思ひますが、此の勞働時間を大體時間で決めて來ると云ふことになりますと、其の超過した時間に對して如何なる賃金を拂ふかと云ふやうな問題が今後相當實際問題としては起つて來るだらうと思ひます、結局戴いて居る資料なぞを見ましても、相當所謂オーヴアー・タイム、時間外に働いた者に對しては一倍半とか云ふやうな或は又それ以上の支拂をすると云ふやうな問題も今後起きて來る場合に、此の給料と云ふものを日給で決めるか、或は週給若しくは月給で決めるかと云ふ問題は、實際問題として非常に相當起つて來る問題で、所謂監督の立場にあつたり、計畫の立場にあつて頭腦を以て色々仕事をして行く方は、是はさう云ふ問題が少いと思ひますけれども、少くとも官廳會社等に於ても事務に働く者も技術に働く者も、矢張り或程度時間と云ふものをやかましく言つて來られると、さう云ふ問題が相當今後起るのでありまして、大體方針として勞働者に對して日給を原則とするか、或は月給をあれするかと云ふことに付ては相當議論の別れる所ぢやないかと思ひます、他の國の例に依つても勞働者と大體考へられて居る所は先づ日給を原則とすると云ふやうな國もあるやうに承知して居ります、日本が今後どこを採つて行かれるか、又どう云ふやうに御指導になるかと云ふことに付ては相當御研究願はなければならぬ問題ぢやないかと思つて伺つたのであります、支拂方法としては成るべく頻繁に支拂つて戴くと云ふことが勞働者の方の立場としては宜いだらうと思ひます、給與の根本を如何に決めるかと云ふ問題に付ては相當掘り下げて研究され、將來之を指導する上に於て、例へば團體契約を作ります時に於て各會社官廳に於てどう云ふ風にするかと云ふことに付て相當研究をしなければならぬのぢやないかと斯う考へて居りますので伺つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=49
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050・畠山一清
○委員長(畠山一清君) まだ大分問題もおありのやうでありますけれども、實は本會議の方で委員の御出席を煩したいと云ふことの申入れがありましたから、是で委員會を閉ぢることに致しまして、午後一時から再開致しますから、どうぞおいでを願ひます
午前十一時四十七分休憩
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午後一時三十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=50
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051・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それでは午前に引續いて開會致します、第二章勞働契約でありますが、十三條、十四條、十五條以下は……十五條は勞働條件のことで當然のことでありますし、十六條、十七條は封建的の條項のやうでありますし、それ以下も大したこともありませぬ、十九條が「後三十日間」と云ふやうなことがありますから、是は問題が御ありかも知れませぬが、それ以下又二十三條に至る迄は大して問題がないかと思ひますから、此の勞働契約の條項全部を議題として御審議を願ひます、十三條と十四條発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=51
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052・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「(この法律違反の契約)、第十三條この法律で定める基準に達しない勞働條件を定める勞働契約は、その部分については無效とする、この場合において、無效となつた部分は、この法律で定める基準による。(契約期間)第十四條勞働契約は、期間の定のないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの外は、一年を超える期間について締結してはならない。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=52
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053・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 以下一括して御審議を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=53
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054・種田虎雄
○種田虎雄君 午前に於てちよつと私が御尋ねしたと思ひますが、例へば勞働時間の規定がございますが、そこに週四十八時間と書いてあるのでございまして、現在四十八時間になつて居ない官廳若しくは會社等に於て、それを四十八時間にすることは條件を低下せしめるものであるから、いけないと云ふ御説でありまして、處が是から新しく採用して行く人々に對して此の法律で定められた條件に適ふ勞働時間を決めた場合に於ては無論違反ぢやないと思ふのでありますが、さう云ふことに付ては差支ないのでございませうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=54
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055・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=55
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056・種田虎雄
○種田虎雄君 十四條で大體契約の期間が大體一年を限度として居るやうでありますが、此の契約なるものが一年で大體更新して行くとするならば、只今申上げたやうな勞働時間の問題を此の基準法に從つて決めることは無論差支ないと思ふのでありますけれども、それ等の點に付て實際問題としては相當に論議されやしないかと思ふのでありますが、政府の方ではさう云ふ點に付て御考慮になつたのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=56
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057・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今の御質問の點が或は私聞違つて居るかも知れませんが、一年々々で更新をする、した場合に前の一年間で決めた勞働條件よりも後の年に決めた勞働條件は惡くなる、惡くなるが、此の法律で決めて居る條件には牴觸しない、其の場合如何かと云ふ風に御尋ぢやないかと思ふのですが、是はまあ契約自體は一年一年更新致しまするけれども、所謂使用關係と申しまするか、そこの工場に於ける勞働條件と云ふものは續く譯でありますから、それから個人々々をとつて見ると、それは一年々々になりますけれども、全體としては矢張り澤山の人間が居りましてずつと更新して行くことですから、そこの工場に於ける勞働條件としては矢張り一貫したものとして見て、是が色々な事情の爲にやつて行けなくてもう少し働かなければならぬと云ふ風なことはあり得ると思ひますが、私が午前中申しましたのは、此の法律が出た時、出たことを理由として此の法律では斯うなつて居るから直ぐ更改をするぞと云ふことになりますと、折角勞働者の保護の爲に設けた法律が逆用されると云ふことになりますから、其の趣旨ではないぞと云ふことでありまするので、左樣御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=57
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058・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明、法の制定の御趣旨はよく分つて居りますが、御承知の通りフランスあたりでも、今迄四十時間と云ふのを四十八時間にしろと云ふやうなことをフランスの當局は一般勞働者に對しても要求して居るやうな大勢で、我が國の如く敗戰の現状から切拔けて再び相當の平和國家として再建するには餘程勞働の時間に於ても又其の質に於ても努力しなければならぬ時代になつて居るやうでありまして、勢ひ先程も申しましたやうな時間等に付きましては、民間の事業會社などで土曜半日だなんと云ふことは如何にも呑氣過ぎやしないかと云ふ風な氣がするのであります、是は國の現状から照して申すのであります、一年の期間を超えて無論勞働契約と云ふものは締結しちやいかんと云ふこと迄書いてあるのでありますから、さう云ふ機會に大いに從業員などに對して同意を求めて、皆が大いにやらうと云ふやうな場合には、四十八時間位は働くのは當り前ぢやないか、斯う考へられるのであります、そこで諄いやうでありますが、さう云ふ點を是は法律違反だと云ふことになると、罰則もありますし、なかなか相當の重い制裁が書いてございますから、餘程さう云ふ點に付て事業經營者として考へなきやならぬ問題でありますから御尋ねして居るやうな譯なんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=58
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059・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 大體種田さんも法律の立法の御趣旨はよく御存じのやうでございまして、私共から申すのも、此の法律が出たと云ふのを理由として從來ありました條件を低下させてはならぬと云ふ趣旨でありまして、經濟再建の上に於てどうしても斯う云ふ風にするが望ましい、而も其の間に勞働者側との間に納得づくで話合をすると云ふことであれば、此の法律に牴觸しなければ結構なことでありまして、御趣旨の點には異議はございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=59
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060・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 外に御質疑はおありになりませんか、おありでなければ次に第三章に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=60
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061・種田虎雄
○種田虎雄君 ちよつと御聽きすることを忘れましたが、貯金の點でありますが、現在相當廣く民間の會社では貯金をして居るのでありますが、是は強制貯金と云ふ名前はどうか、強制と云つたらをかしいですが、實は會社の方では貯蓄奬勵の意味に於て、普通の銀行に預け入れるよりは有利な利率で以て貯金を大いに獎勵して居る會社が相當あらうと思ひます、私共の會社でも矢張り相當利率を高くして從來貯金をさせて居つたのであります、是は強制して居ると云へば強制して居るのでありますが、或は任意であると云へば任意であるのであります、此の十八條と云ふものが、相當實際問題としては、強制なりや任意なりやと云ふことで色色議論が起るかも分りませぬが、斯う云ふことに付て政府としてはどう云ふ風に御考でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=61
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062・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 是は勞働契約に隨して居る貯蓄契約、詰り貯蓄契約で、勞働者の足留をする爲の貯蓄契約を禁止する趣旨でございます、従來の工場貯金には二通りの趣旨があつたと思ひます、一つは足留の爲の貯金と、もう一つは事業資金を集めると云ふ意味で勞働者から集めて居る、斯う二つあつたと思ひます、尤も戰時中は此の外に國の政策として割當貯金をやつて居りましたので、其の名殘が相當殘つて居らうかと思ひます、是は國としても戰時中のやうなやり方は強制的に現在はやらぬと云ふことになつて居りますので、其の方は問題はないと思ひます、殘りますのは足留の爲の貯金と事業資金を集める爲の貯金、足留の貯金、是は封建的の身分拘束を起すもので、是は禁止すべきものであると云ふことに付ては問題はないと思ひます、唯事業資金の點に付きましては、民間の銀行よりも高い利率で預かる、それが勞働者の爲にも便利になると云ふ場合がございますが、一旦不況になりまして事業が閉鎖になると云ふやうな場合には、勞働者は職業を失ふだけでなく、從來の貯蓄も失ふと云ふやうな問題もありますので、從來から此の工場貯金に付きましては相當監督の方法を加へて參つて居ります、さう云ふ意味の貯蓄は、此處に書いてありますやうに、行政官廳の認可の下に之を認めて行くと云ふことになつて居ります、それではどうして此の二種類の貯蓄を見分けるかと云ふことになりますと、勞働契約に附隨して居るか居ないかと云ふ問題であります、勞働契約に附隨して居る貯蓄契約と云ふのは、是は非常に、例へば紡績などで行はれて居ります若干の惡い例でありますが、工場が預かるのでなく、君の月給の何割かを銀行に預けると云ふことを使用者と勞働者とが契約すると云ふ場合は、それは勞働契約に附隨して居る契約であると云ふことがはつきりして居ります、唯事業主が銀行に代つて自分で預かると云ふ場合に、勞働契約に附隨して居るものであるかどうかと云ふことは、是は一々の契約の内容を見なければ判定し難い場合があらうと思ひます、例へば月々一定額を決めて貯蓄するとか、或は排他的に事業主だけに預けると云ふやうな契約をすると云ふ場合は、是は極めてはつきり勞働契約に附隨して居る契約であると云ふことが分ると思ひます、其の他の場合には大體附隨契約ではないと云ふ風に解釋すべきものだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=62
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063・種田虎雄
○種田虎雄君 大體此の法の精神は能く分りましたが、多くの會社では、入社の際に大體從來は賃銀の何割或は何分と云ふものを貯蓄すると云ふやうなことにし、それを積立金として別に積立てて行くと云ふやうなことをした、而もそれをなかなか會社が勝手に使へないやうに、銀行にも別口座として會社の金と混同しないやうにして貯金をして居るやうな場合も相當ありますし、而も其の利率は會社が相當に高く從業員の爲に出して居る例も相當あるやうに思ひましたので、今御尋ねした譯でありますが、是は勞働契約に附隨して居るとは實は考へて居らぬ譯でありますが、それ等の點に付ては解釋上、色々實際問題としては是が人に依つて解釋が違ふと困るのでありまして、斯う云ふものは、事實問題としては、斯う云ふ場合、今の御説明のやうな事情を成るべくはつきりさせて戴きましたらば、非常に結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=63
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064・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 宜しうございますか、それでは二十四條以下の賃金の問題に付て御審議を願ひます、二十五條は非常時拂だから必要がないやうでございますから二十四條と二十六條を御讀み願へませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=64
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065・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「(賃金の支拂)、第二十四條賃金は、通貨で、直接勞働者に、その全額を支拂わなければならない。但し、法令又は勞働協約に別段の定がある場合においては、賃金の一部を控除し、又は通貨以外のもので支拂うことができる。賃金は、毎月一囘以上、一定の期日を定めて支拂わなければならない。但し、臨時に支拂われる賃金、賞與その他これに準ずるもので命令で定める賃金については、この限りでない。(非常時拂)、第二十五條使用者は、勞働者が出産、疾病、災害その他命令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支拂期日前であつても、既往の勞働に對する賃金を支拂わなければならない。(休業手當)、第二十六條使用者の責に歸すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中當該勞働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手當を支拂わなければならない。(出來高拂制の保障給)、第二十七條出來高拂制その他の請負制で使用する勞働者については、使用者は、勞働時間に應じ一定額の賃金の保障をしなければならない。最低賃金、第二十八條行政官廳は、必要であると認める場合においては、一定の事業又は職業に從事する勞働者について最低賃金を定めることができる。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=65
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066・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 二十九條以下三十一條迄は、最低賃金の決め方を書いてあるやうに思ひますから、之を一括して御質疑を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=66
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067・種田虎雄
○種田虎雄君 二十七條の趣旨をちよつと御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=67
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068・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の二十七條はプリンシプルを謳つたのでありまして、或工場の生産には出來高拂ひがある譯ですね、さうしますと云ふと、其の出來高拂ひになつて居る時に材料が不足であつたり何かしまして、十分にフルに働けない場合、さうすると出來高にやると、まあ一つ造つて幾らですから、其の日に一つしか出來ないと云ふことで、それで其の賃金がお前の賃金と云ふことになりましては、本人の生活に困る譯でありますから、それで大體出來高に付ては一律にどれ位迄は保障すると云ふ一つの保障の限度を作つて置いたと云ふことで、其の場合にどれ位の金額を保障したら宜いかと云ふことはあり得る譯ですけれども、是は各企業體、各場合があらうと思ひまするので、法律で以て一律にやる譯には行きませぬから、本條は唯プリンシプルを此所で規定したと云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=68
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069・種田虎雄
○種田虎雄君 是も條文に直接關係がなく、賃金のことで御伺ひしたいと思ひますが、政府は賃金を色々今後御決めになります場合に、職階制の賃金制度と申しますか、さう云ふやうなものに付てどう御考になつて居りませうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=69
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070・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の賃金の制度と云ふのは是は非常にむつかしくつて、實はまだどう云ふ風にと云ふ確立は致して居りませぬ、實は安本の方と私の方と相談をして、ずつと研究はして居りますが、又今度作りました給與審議會でも一つの重要なる項目と致しまして、賃金の額は幾らであるべきかと云ふことと同時に、賃金の制度、賃金の體制と云ふものはどうあるべきかと云ふことを研究しようと思つて居る譯であります、職階制も是も色々な企業がありますから、一律にすることはなかなかむつかしいのではないかと思ひます、唯併し私共極く大きなプリンシプルとしては此の前もちよつと申上げましたやうに、矢張り賃金が最低の生活を保障するものであつて、それから同時に能率に應じるものでないと、唯一定の形式的な賃金と云ふのはどうも餘り芳しくないのではなからうか、一定の收入を確保すると云ふ點に於ては宜いのですが、矢張り勞務に對して拂はれる賃金としては能率に依つて拂はるべきものでなければならない、アメリカに於きましても大體に於て能率本位に出來て居ります、唯能率一點張りで行きますと云ふと、動もすると戰前に一時ありましたやうに、能率に應じるが、全體の賃金と云ふものは能率を擧げれば擧げる程段々低下してヘヴイ・ワークに陷ると云ふ點もありますから、矢張り其の點も考慮して參りたいと斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=70
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071・種田虎雄
○種田虎雄君 職階制の賃金制度と云ふものは大體能率或は仕事の難易、繁閑、色々な觀點から職階制の賃金と云ふものは相當各國で研究され、同時にさう云ふやうに決められつつあるやうに私は信ずるのでありますが、日本の最近の賃金の色々の爭ひに、各産別あたりから出されて居る要求が殆どさう云ふ點を無視して、さうして一本で何處迄も押して行かう、斯う云ふ風な實際傾向があるやうに思ふのです、從つて事業經營者としてはさう云ふ要求に對して之をどう考へるか、是は經濟的の要求であるか、或は他に政治的意圖を持つた要求であるかと云ふやうなことに付ても疑はざるを得ないと云ふ風な氣がするのであります、從つて賃金の決め方に付きましては政府としても餘程御研究戴いて、さうして一般に無差別に、唯一本で賃金の制度を決めて、それを經營者に組合の方から押付けて來る、是は少し考へて戴かなければならぬのではないか、今日の御承知の通り中央及び地方の委員會等で色々其の要求に付ての調停或は裁定されるやうな場合に、如何にも根抵がなく色色御決めになるやうな傾向があるやうに思ひます、唯妥協して何とか當面を糊塗したらどうかと云ふことになるのでありまして、甚だ産業全般に亙つて相當重大な問題ではないかと云ふ風に考へられます、只今御研究中であると云ふ御答辯でありますから、此の點は特に一つ政府として御研究願つてソヴエツトにしても職階制の賃金制を執つて居ると私は思ひます、アメリカは無論のことであります、さう云ふ他國の事例もよく御示し願つて、さうして日本の今の組合等で以て主張して居られる誤つた考は直して戴きたい、斯う思ふのであります、それから此の賃金の委員會でありますが、今後最低賃金を決めますに付て、中央及び地方の賃金委員會と云ふものは、是は相當重大な役割を持つて居ると思ふのであります、此の委員の選定でありますが、今日の勞働委員會の如きは、勞働者の團體から選ぶ、又使用者の團體から選ぶ、又其の中立は政府の方で色々御選びになつて、それを兩方の利害關係者から同意を求めるやうになつて居りますが、此の賃金委員會も矢張り同じやうな方針で御委囑になる御考でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=71
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072・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 賃金委員會の構成に付きましては二十九條に掲げてありますやうに、矢張り三部制と申しますか、勞働委員會と同じやうに勞働者を代表する者と、使用者を代表する者と、それから一般の公益を代表する者とで成立する機構であります、其の際に中立委員の同意を求めるかと云ふと、是は此の規定にもございませぬやうに、それは法律の命ずる所ではありませぬ、唯運用と致しましては出來るだけまあスムースにやりたいとは思つて居りますが、何分賃金委員會は專門事項が多うございますから、多少勞働委員會とは趣を異にするかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=72
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073・種田虎雄
○種田虎雄君 殊に公益を代表する者の方面から政府が御委囑になる場合に、之を使用者側と勞働者側に皆が納得が行くものと云ふことで色々御考へになつて、非常に圓滑にと云ふので、さう云ふ風になさるのだらうと思ひますが、是はなかなかむづかしい點で、少く共公益を代表する委員に付ては、行政官廳の方で一方的に御決めになることの出來るやうにして置かれないと、實際問題として御困りになるのぢやないだらうか、中に極端なことを主張する方は、勞働者及び使用者側の委員以外にはないのだ、中立と云ふものはないのだ、斯う云ふ議論をなさる方がある、そんな風な極端な議論を年中繰返して居るやうな方面に御相談になつても、無理ぢやないか、詰り行政官廳と云ふものが嚴然と茲にある以上は、其の權威を以て矢張り代表と云ふものは御決めになるやうになさらぬといけないのぢやないか、何れ是は命令か何かで以て御決めになることでせうと思ひますが、私はさう云ふ風にして戴かなければ、實際運用の上に於て差支はせぬかと思ひますので、ちよつと申上げた譯なんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=73
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074・東久世通忠
○伯爵東久世通忠君 二十六條の休業手當でありますが、最近聞き及びますと、現行の健康保險法の手當の六割の問題がありますが、あれを政府は近く六割以上に引上をしつつあると云ふことも仄かに聞くのでありますが、若しそれが六割が七割或は八割になると、此の二十六條の休業手當百分の六十も、矢張り併行して上げられるやうになりますかなりませぬか、其の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=74
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075・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 健康保險の方はどう云ふ風になつて居るか、私まだ連絡を受けて居らぬのでございますが、差當りは、百分の六十でこちらは行く積りであります、將來は又別途考へて行かうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=75
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076・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 宜しうございますれば第四章に移ります、勞働時間、休憩、休日及び年次有給休暇、第三十二條の勞働時間は、是は大分八時間制に付ての問題が世の中にあるやうであります、其の次の三十三條は災害の場合の除外規定だから是はいいとして、一應三十二條を朗讀願ひませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=76
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077・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 「使用者は、勞働者に、休憩時間を除き一日について八時間、一遇間について四十八時間を超えて、勞働させてはならない。使用者は、就業規則その他により、四週間を平均し一週間の勞働時間が四十八時間を超えない定をした場合においては、その定により前項の規定にかかわらず、特定の日において八時間又は特定の週において四十八時間を超えて、勞働させることができる。」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=77
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078・種田虎雄
○種田虎雄君 此の八時間と云ふのは、實働時間でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=78
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079・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=79
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080・内田敏雄
○男爵内田敏雄君 八時間制のことでございますが、是は種田委員から午前中に色々御質問がございまして、重複致すかも知れませぬが、此の日本の再建に當りまして、朝から夕方遲く迄働かなければならぬやうな時代に、斯う云ふやうな八時間制と云ふことを法律で規定すると云ふことに付きまして、政府の御見透し、信念と云ふものを伺つて置きたいと思ひます、勞働時間のことは、勞働者の能率と非常に關係があると考へますが、最近私が聞きました所でも、進駐軍の勞務に從事致して居ります者が、仕事がつらくて長續きをしない、續いて仕事をする者が少いと云ふやうなことを聞きましたけれども、之を見ましても、日本の勞働者の體力、能率、給料と云ふことを、八時間制を決定する前に、もう一度檢討し明かにして置く必要があるのぢやないかと云ふやうにも思はれるのであります、アメリカでも九時間と云ふことを考へたことがあるやうに私は記憶致して居ります、日本の勞働者がアメリカに比較致しまして、能率が多少低下して居ると云ふことだけでなく、八時間をみつちり働けると云ふのならば、まだいいのぢやないかと思ふのでございますけれども、日本の多くの勞働者が勤勞を厭はない、責任觀念が非常に強い者ばかりであるとは必ずしも限らないのでありまして、さう云ふことを思ひますと、斯う云ふ勞働者の權利と云ふものを強く主張致します前に、矢張り勞働者の能率と云ふやうなことも強く主張する規定か何かあつて宜くはないかと云ふやうな氣も致します、此の法律の建前が、詰り勞働者の保護と云ふことを規定することになつて居りますけれども、段々と其のうちに勞働者の主張が非常に強く法律化されまして、茲では八時間、僅かの時間働いて生活して行く、多くの給料を取らうと云ふやうな、勞働者のさう云ふ心持を政府が認められて立法をされたと云ふやうなことになつてはいかぬ、と云ふやうな心配を私は持つて居る者であります、諸外國の例がさうであるからと云ふことで、八時間制を法律化すると申します其の前に、日本の今日の再建に忙しい時に之を法律化することが、果して適當な時期であるかどうかと云ふことに付て、御答辯を煩したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=80
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081・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今の御質問御尤ものことでございまするが、實は從來の日本の勞働時間は御承知のやうに非常に長うございました、是は戰前もさうでございましたし、戰時中は又生産に非常に忙しかつたと云ふ點で、非常に長時間働いて居りました、併し此の長時間働いた割合に、それでは能率が上つて居たかと云ふと、是は業者自身も、私共隨分聞いても調べても見たこともありまするが、長時間必ずしも能率が上らない、寧ろ一定の時間を決めてさうして其の間にみつちり仕事をすると云ふ方が非常に宜いと云ふやうに言つて居りました、現在の日本の状況がどうかと云ふ點は、是は大いに考慮せねばならぬ所でありまするが、現在の状況は大體此の法律で決めませぬでも、勞働組合との間に結ばれて居る協約は、寧ろ實働八時間よりも拘束八時制、詰り休憩時間を含めての八時間制も可なり行はれて居るやうな状況でありまして、生産は今の御話のやうに再開はされつつあるものの、なかなか思ふやうに行かないのでありまするが、同時に従つて非常に長時間働かなければならないやうな實情と云ふよりも、實際の實情を昨年に付て調べて見ますると、七割程度迄は大體もう所謂實働八時間制でやつて居るのであります、あとの三割程度が多少時間を超えて九時間或は十時間に亙るやうなものがある状況でありますから、現在に於てはさう無理でないのではなからうかと思つて居るのであります、將來産業がずつと再開して非常に忙しくなつた時には、八時間では困りはせぬかと云ふことを豫想せぬ譯ではありませぬけれども、是は矢張り戰前のやうな唯時間を延ばして仕事をすると云ふよりも、寧ろ今後の日本の産業は、此の國際的な水準の上に能率を上げて行くと云ふ風に轉換をすべきではなからうかと云ふ風に考へて居る譯であります、此の八時間制も從前の日本の慣行から見ますれば、確かに進歩ではありまするが、今日の國際的な水準から見ますると、大體國際勞働會議の最初の時に採擇されました所謂八時間制でありまして、今日のアメリカでも、ソ聯でも、もう既に此の四十八時間制は大分前から四十時間制、四十二時間制位に切換へられて居る實情にあるのであります、實際第一條にありまするやうに、唯朝から晩迄長い時間働いて、歸つて僅かに寢る時間しか與へられぬと云ふことでは、本當のしつかりした日本の再建と云ふことは期せられない、寧ろ一定の時間の間にうんと能率を上げて、そして其の後はゆつくりと體を休め、又文化的の方面にも頭が向くと云ふやうにしたいものだと考へて居る譯であります、今日の實情に於きましては、さう無理ではなからうかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=81
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082・種田虎雄
○種田虎雄君 此の三十三條の第四項になりますが「公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、第八條第十六號の事業に從事する官吏、公吏その他の公務員については、」云々と云ふことが書いてあります、是はどう云ふ趣旨でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=82
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083・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 勞働時間は、第三十二條にありまするやうに、八時間制を取りまして若し之を延長する場合に於きましては、後の三十六條に於きまして組合との間の協約、若くは勞働者の過半數に依る協定で時間の延長を認めて居るのであります、彈力性のある、八時間制とは申しまするが、法律で以て八時間に釘付けをするのではなくして、所謂割増金の制度をくつ附けまして、組合との間に於ける協約では延長出來るやうになつて居る譯であります、併し是は所謂時間制を決める時の話でありまするが、さう決めた中に於きましても、災害が起つたりした時に臨時に必要な場合があり得る譯で、其の時に其の時間が延長出來ないとか、或は組合との間の協定を結ばなければ出來ないと云ふやうなことになつてはなりませぬから、さう云ふ緊急の場合の必要に三十二條の一項と云ふものがある譯であります、處が是はまあ非常に嚴格な場合でありまして、災害其の他避くことの出來ない事由で臨時に必要な場合を認めて居る譯でありまして、それで役所の方と致しましては災害だけに限られない、矢張り公務の執行の上で臨時に必要な場合が起る譯であります、其の場合に所謂八時間制で拘束を受けたり、又後にありまする三十六條のやうに、組合と協定を結ぶ、或は組合との了解を得てでなければ執行が出來ないと云ふことでは困りまするから、公務の特殊性に鑑みまして、公務の爲に臨時の必要がある時に、時間延長又は休日の例外が行ひ得ると云ふ規定を置いた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=83
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084・種田虎雄
○種田虎雄君 此の第八條の第十六號の事業に從事する官吏公吏とありますが、茲にずつと擧げてありまする、或は郵便、電話、電信、或は鐵道さう云ふやうなものが既に國營でやられて、所謂官吏が之に從事して居るのであります、是等の所謂官公吏でも同じやうなことが言へるのぢやなからうか、そこで特に十六號の事業に從事する官吏と云ふ風に區別されたのはどう云ふ譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=84
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085・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は勞調法の時にも大體斯う云ふ方針を取つて居りまするやうに、八條に掲げてありまする各號にありまするのは、主として是は現業に値する譯であります、此の現業に付きまして、偶偶官が經營して居るからと云ふことで特別な扱をする事由と云ふものは、極めて少く、鐵道に致しましても、民間で經營する鐵道の場合と、官が經營して居りまする鐵道の場合とは、さう實體は違はない譯でありますから、是等の通信にしましても運輸にしましても、工場にしましても、さう云ふものは民間と同樣な取扱をする、唯さう云ふ現業的なものを離れた本當の國務の遂行の爲に臨時必要のあつた場合、矢張りそれが時間の制限を受けて出來ないと云ふことがあつてはならぬから、其の場合の救ひの爲に設けた規定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=85
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086・種田虎雄
○種田虎雄君 さうしますと、此の郵便、電信或は鐵道事業で本省の仕事をして居る、所謂監督若くは計畫等に當つて居る人で、普通の官公吏と本質的に違はない仕事をして居る者は、どう云ふ風になるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=86
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087・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) それは例へば運輸省だつたら運輸省が全部運輸に該當するとは言へないのであります、勞調法でも現業の範圍を決めて居りまするやうに、所謂現業としての部門と、それから所謂國家の國務の遂行の部門とは、是は範圍が自ら分れて來るものと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=87
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088・種田虎雄
○種田虎雄君 さうすると、繰返して御尋ね致しますが、前項の各號に該當しない官公署、此の官公署の意味は、所謂現業を除いたものと、斯う云ふ風に私共考へて宜いのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=88
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089・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=89
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090・種田虎雄
○種田虎雄君 此の深夜の割増賃金、又は時間外或は休日、或は深夜の割増賃金の問題でございますが、二割五分以上の率で計算した割増賃金と云ふことになつて居る、大體實際の今我が國の現状はどう云ふ風になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=90
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091・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今ちよつと正確な數字は持合せませんので、又調べまして、後に御覽に入れても宜いと思ひますが、色々でございまして、一般的には言ひ難いと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=91
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092・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 統計が廣汎に亙つたものでなく極く小範圍のものでございますが、工場で調査致しましたところに依りますと、大體基礎にして五割とか六割とか、高いのは七割とか八割と云ふのが非常に多いのでございます、基本給は全收入の三分の一、三割五分ばかりに該當致します、家族手當、通勤手當を除いた給料と逆算致しますと、凡そ二割五分か三割見當になると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=92
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093・種田虎雄
○種田虎雄君 さうしますと、二割五分加算すると云ふことに、一時間が例へば一圓であるならば、それを二割五分と云へば一圓二十五錢、斯う云ふ意味なんでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=93
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094・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=94
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095・種田虎雄
○種田虎雄君 他の國の例はどうなつて居りませうか、是等の點に付ては、一倍半とか、何とか云ふやうな、何か戴いた參考書類の中にそんなことが書いてあつたやうですが、此の二割五分以上と云ふのは、一時間一圓であるならば、二圓幾らとか云ふ風に是がなるのかと思つて居るのですが、さうではないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=95
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096・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の二割五分は國際勞働會議で採擇しました標準でありますが、實際はアメリカでもソ聯でも大體五割増の原則を立つて居ります、併し一般の國際水準としては最低二割と云ふ點を採つて居りまするので、それをこちらに取入れたと云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=96
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097・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明で、大體割増賃金のことが相當色々苦になつて居ると云ふことも能く分つて居りますが、若し出來まするならば何か參考になりますやうな資料を戴けば……何時でも宜しうございますから戴きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=97
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098・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 今三十七條迄行つたやうでありますが、其のあと三十八條から四十一條迄一括して御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=98
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099・種田虎雄
○種田虎雄君 此の第三十七條の御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=99
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100・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 三十九條の有給休暇は、一年間繼續勤務して其の働いた人が八割以上出勤した勞働者には有給休暇として六日を與へるやうにと云ふことが一つの原則であります、それは繼續してやつても宜いし、又分割してやつても宜しい、是は繼續するのが望ましいのでありますが、勞働者側の便宜を圖つて、勞働者側の方で分割して欲しいと云ふ時には分割さしても宜しいと云ふことで繼續又は分割と云ふことに致して居ります、それから永年勤務した者に付きましては、一日と云ふことではどうかと云ふので、二項に、二年以上の勤勞者に對しては一年を超える毎に一日を加算する、斯う云ふことであります、さうすると永年勤めました者は、非常に多くの日數を貰ふことになりまするから、其の最高は二十日迄で食ひ止めると云ふことであります、「前項の休暇に一勞働日を加算した有給休暇を與えなければならない。但し、この場合において總日數が二十日を超える場合においては、その超える日數については有給休暇を與えることを要しない。」是は事業主の方でそれ以上やると云ふことは一向差支ございませぬが、此の法律で強制するのは遞増して行つても二十日迄を限度として居ると云ふ趣旨であります、それから第三項と致しましては、それは唯會社が勝手の時にやると云ふことでなしに、勞働者の請求する時期にやると云ふことを決めたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=100
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101・種田虎雄
○種田虎雄君 相當永年勤續した者に對して二十日を超えて有給休暇をやる必要はないと書いてありますが、此の第二項の計算で行きますと、是が三十日になり或は四十日になると云ふやうなものも考へられるのでありますが、其の場合には二十日だけの有給休暇を與へて、あとの二十日とか十日とか云ふ、所謂三十日、四十日になつた場合に、其の超えた分は勞働者としては休まして呉れと云ふことを主張し得る權利があるのでございますか、それはどうなんでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=101
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102・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) それは此の法律ではございませぬ、だから事業主の方で或は協約で御決めになつても結構でありますし、又協約でなくて與へられても結構でありますが、此の法律としては二十日迄を法律上の義務として居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=102
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103・種田虎雄
○種田虎雄君 此の有給休暇の請求を勞働者側の自由に任せて置くと云ふことになりますと、例へば交通機關の如き、非常に忙しい時にさう云ふえらい仕事をするのは厭だと云ふので斯う云ふ休暇を申出た場合には、拒む譯に行かないのでございますな、實際に於て事業は差支へやしないかと思ひますが、政府はどう御考へでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=103
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104・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 其の點を考慮致しまして、ちよつと先程説明を落しましたが、三項で、勞働者が請求した時與へなければならぬが、但し請求された時に有給休暇を與へることが事業の正常な運營を妨げる場合に於ては他の時季に之を與へても宜い、斯う云ふことにして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=104
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105・種田虎雄
○種田虎雄君 此の規定があるから大抵の場合に從業員の方は納得するだらうと思ひますが、相當是は爭の起る點ではないかと思ひます、實際運用の場合に於きまして、斯う云ふやうな點に付ては可なり使用者側と從業員の方の側とで以て見解を異にするやうなことが相當起りはしないかと思ひますので、實際問題としては相當爭があるであらうと察せられますので、是は餘程何か命令か何かの中に御決めになるやうなことになれば、斯う云ふことに付てもう少し詳しく書いて置かれる方が宜いのではないかと思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=105
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106・東久世通忠
○伯爵東久世通忠君 此の三十九條の、一年間繼續勤務とか、或は二年以上繼續勤務とかありますが、十四條の勞働契約との關係は、此の勤務と云ふことと契約との關聯性はどう云ふ風になりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=106
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107・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 契約の方は、先程御説明致しましたやうに、期間を定めて契約をする場合には一年を限る、期間の定めのないものは、是は其の儘であります、それで個々の規定は、期間を一年宛限つて更新致しましても、繼續してずつと勤務して行けば、矢張りそれは繼續勤務と見て取扱ふと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=107
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108・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 期間を定めてと云ふのは妙な條頃ですが、是はどう云ふ意味ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=108
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109・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 能く所謂年季奉公と言つて何年間と云ふ契約をして、さうして拘束をすると云ふことは宜くないから一年々々でと云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=109
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110・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それから此の三十九條の「有給休暇」の問題でありますが、是は次の年度に前年度の休暇を與へることになるのでありませうか、それからそれ以後永久に有效なものでありませうか、それからもう一つは何時から何時迄を年度と決めるか、年度の起算の、非常に休みの多いやうな期間を外して置くと云ふ、外すと入れるのとは大變違ふやうに思ひますが、其の點如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=110
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111・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 一年繼續勤務致しまして、一年を終つた時、二年目に之を與へると云ふことに各國が使ひ、皆さうなつて居ります、それから會計年度のやうな年度を作る譯ではございませぬ、或者が傭入れられてから一年經つたからと云ふ、斯う云ふことで、其のものに付て之を決めて行く趣旨になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=111
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112・畠山一清
○委員長(畠山一清君) さうすると何ですね、傭入れの日を基として、さうして一年間を勘定することにしますと、個人々々に於て皆違ふ譯であつて、計算が非常に面倒になるのでありますが、一月一日を基として其の年を勘定して、其の翌年に與へるとか云ふやうなことにしますれば、實際上非常に便利でありますし、それから只今御答へになりました次年度に與へると云ふ御話でありますが、其の次年度中に休暇を取らない者は、其の次の年、又其の次の年に有效でありませうか、時效があるのでありませうか、ないのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=112
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113・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 時效は此の法律全般と致しましては、後にありますやうに、賃金、災害補償其の他此の法律の下で……請求をする權利、請求權と云ふものは二年で消滅すると云ふ規定を此の法律で致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=113
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114・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 此の休暇も矢張りさうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=114
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115・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 全體の請求權を此の法律は二年で制限致して居ります、休暇の請求權は勿論それに入る趣旨だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=115
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116・東久世通忠
○伯爵東久世通忠君 さうしますと、今の御話の如く時效を二年間と申しますと、最低一年間は、毎年二年分宛ずれて請求權がありますから、前の年に使はなかつたら、翌年は前との合計だけは次の年で使ひ得ると云ふ計算でありますが、さう云ふ風な御考でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=116
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117・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 勞働者の權利としてはさうなると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=117
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118・東久世通忠
○伯爵東久世通忠君 さうでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=118
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119・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) さうでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=119
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120・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 年度の問題はどうでせうか、實際問題としまして一人一人に付て入社事情を調べて、一年で計算すると云ふことは非常に面倒でありますが、其の點は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=120
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121・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は其の業態に依りまして、一齊に或時季を限つて休まして宜い場合と、それからそれでは却て仕事に困るので、ばらばらにずつと平均化して行く場合もあらうかと思ひます、此の法律としては矢張り一年に付て六日分と云ふのは、傭入れ日から起算せざるを得ないと思ひますが、實際の運用として若し一律にやる方がいいやうな場合には、一年を使用者の方が多少負けて半年でもそれだけやれば、其の次からは起算點が揃ふと云ふことにもなるので、運用として此の勞働者の權利を侵して揃へる譯には行きませぬが、實際は其の點の調整は適宜出來るのぢやないかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=121
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122・種田虎雄
○種田虎雄君 此の勞働時間及び休憩の特例とか或は適用の除外方面に付ても質問して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=122
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123・畠山一清
○委員長(畠山一清君) どうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=123
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124・種田虎雄
○種田虎雄君 第四十條に「命令で別段の定をすることができる」と云ふ言葉が書いてありますが、是は鐵道其の他特殊の事業に對してのことらしいのですが、何か御用意があるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=124
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125・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是はまだ用意はございませぬ、此の法律が通過致しましたら至急に之に基きまする命令に入りたいと思つて居ります、若干は色々な各種の命令の準備は致して居りまするが、此の條項に付てはまだ草案は出來て居りませぬ、之に付きましては、各業界の使用者側なり或は勞働者側なりの意見を徴し、又公聽會等を開きまして眞に適切なるものを定める積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=125
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126・種田虎雄
○種田虎雄君 適用の除外の所に、農業とか、或は二には「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と云ふやうなことが出て居りますし、三の所に「監視又は斷續的勞働に從事する者で、使用者が行政官廳の許可を受けた者」と云ふ風なことが書いてあります、先程官公吏に付て特例を云々と云ふことは、前の時間の所で伺ひましたが、ここにある「監督若しくは管理の地位にある者」云々と云ふのは、無論官公吏以外一般の會社等に於ての斯う云ふ事業に從事して居る者を指すのでありませうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=126
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127・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます、四十一條に掲げて居りまするのは、所謂監督とか管理とか、部課長のやうな地位にある人なり或は祕書あたりの地位に居りまするやうな者は時間制限と云ふ譯には行きませんから、例外を認めて居る、官公吏に付ても同樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=127
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128・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 守衞とか料理番とか云ふものはどうでせうね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=128
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129・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今の守衞などの方は三項の監視等に當るかと思ひます、是等は無制限と云ふことでなしに、行政官廳の許可を得て居ればそれでいいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=129
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130・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 二の中には入らぬものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=130
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131・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 二の方は監督の地位にあるとか、管理の地位にあるとか云ふ人、さう云ふ立場の者を指して居る譯であります、是は大體國際勞働會議の採擇した時間制にも斯う云ふ原則をとつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=131
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132・種田虎雄
○種田虎雄君 三の斷續的勞働と云ふのは、先程問題になつて居りました或は囑託とか或は顧問とか、さう云ふやうなものを指すのでありますか、さう云ふものも入るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=132
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133・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 是は業務の性質自體が斷續的であるもの、例へば鐵道の踏切番のやうなものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=133
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134・種田虎雄
○種田虎雄君 斷續的勞働と云ふものを踏切番と云ふ事例をお擧げになりましたが、是はどうですか、さう云ふものを言ふのでございますかしら発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=134
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135・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 踏切番と申しましたのは、都會地の踏切番と田舍の踏切番とは隨分違ふと思ひます、都會の踏切番はしよつ中電車が往復する間は拘束時間として計算される場合が多いが、田舍の踏切番は電車が一日に何囘しか通らぬ、さう云ふものは時間が決つて居ります、それ以外は自由に時間を使ひ得る譯でありますから、斷續的勞働と解釋して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=135
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136・種田虎雄
○種田虎雄君 都會の踏切等に於ては殆ど斷續的と云ふことは無論考へられませんが、併し地方に於て一時間に何囘、一囘とか、二囘とか、囘數の少いやうな所でも、踏切番なんと云ふものは臨時に、鐵道の如きもので言ひますならば、貨物列車の如きは特に臨時に動く、さう云ふやうなことは囘數は少いのでありますけれども、踏切番の本質から考へて見て、人命を扱ひ保護すると云ふ意味に於て、相當問題だらうと思ひますが、まあ仕事の量が少いとは申しますけれども、相當注意しなくちやならぬ、往々ある事故と云ふものは田舍の踏切で起る場合が多いのでありまして、是等に付て餘り勤務時間を長くすると云ふことは相當重大問題ぢやないかと思ひます、政府の方でさう云ふ御見解であれば何でありますが、斷續的勞働の中に踏切番なんかを入れると云ふことはどうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=136
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137・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 引例が惡かつたかも知れませぬ、問題は勞働が繼續する職務であるか勞働が繼續しない職務であるかに依つて、事實上行政官廳の許可の際個々に亙つて判斷すべき問題だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=137
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138・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それでは次に第五章安全及び衞生、四十二條から五十五條迄でありますが、之を一括して御審議を願ひたいと思ひます、朗讀は如何でせうか、必要なら朗讀ざせますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=138
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139・種田虎雄
○種田虎雄君 いいでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=139
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140・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それぢやどうぞ御審議を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=140
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141・種田虎雄
○種田虎雄君 四十三條中に保温と云ふことが書いてありますが、此の保温と云ふことの設備を相當すると云ふことになりますと、今日のやうな、殊に燃料不足の際に、此の條項を盾に取つて色々要求し、又それに實行が伴はない場合に規定違反であると云ふことになると、相當是は問題だらうと思ふのであります、實際問題としては、此の保温と云ふことなんかに付ては、議會あたりでも何等の煖房設備もないと云ふやうな譯で、相當工場やなんかでも保温設備をしろと云ふことになると、斯う云ふ時代には非常に困ることになると思ふのですが、どう御考になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=141
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142・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は御尤もでありまして、程度がなかなかむつかしいと思ひます、又實際の國情に應じると申しますか、富力にも應ずるので、非常に生産が高まつて、施設がうんと出來れば幾らでも出來ますけれども、今のやうな日本の状況ではなかなか是は滿足なものは望めないと思ひます、まあ寄宿舍なんかも含めて居りますので、寄宿舍あたりで、寒いのに全然保温がなくて宜いと云ふ譯でもありませぬので、さう云ふ點をも考慮して出來るだけ實情に副ふやうにあらしめたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=142
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143・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明で、さう云ふ御考で此の規定は出來て居るのだらうと思ひますが、罰則の方に斯う云ふやうなことに付て何等の斟酌なく、相當罰金或は體刑に處せられることになつて居りますので、此の運用の場合には、餘程さう云ふことに付て、兎角今は理窟を以て爭ふ從業員も多いのでございますから、相當御考慮願はないと、是は使用者側は非常に困ることだと思ひますので、特に其の點を御注意願つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=143
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144・渡邉覺造
○渡邉覺造君 第五十條に衞生の爲の教育を施さなければならぬとあるが、是はどう云ふことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=144
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145・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は今迄でも相當指導して私共やつて來て居るのでありますが、工場へ入ります場合に於て、安全教育を相當施しませぬと云ふと、つい怪我をし、又色々な職業病に罹る虞がございますので、所謂安全運動として、相當戰前に於きましては力を注いだ積りでありますが、是は一般の衞生もありますが、衞生問題に付きましては、色々な化學工場等に於ては、どう云ふ風な處置、或はマスクを掛けなけりやいかぬとか、或は斯う云ふ時には手を洗つて置かなけりやいかぬとか、色々從來の實績に徴しまして、研究もして居り、指導もして居るのでございます、其の點を茲に謳つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=145
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146・渡邉覺造
○渡邉覺造君 第五十二條は、是は前にもちよつと申上げましたが、「定期に、醫師に勞働者の健康診斷をさせなければならない。斯うあります、さうして「使用者の指定した醫師の診斷を受けることを希望しない勞働者は、他の醫師の健康診斷を求めて、その結果を證明する書面を使用者に提出しなければならない。」是は今迄健康保險にもありまして、非常に是は醫師會と健康保險組合で問題になつた事項であります、勞働者が大した病氣でもないのに、健康診斷を求めて來ます、それに付て正直にそれを斷はる醫師があれば宜いのですけれども、中には其の求めに應じて、診斷書を書く醫師があつて、非常に是は組合側と醫師側と問題になつた事項であります、是は直ぐ明日にも此の問題が起きて來ようと思ひますが、是はどう云ふ風に處置して行きますか、何か御考がありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=146
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147・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は實は現在でも、全般ではございませぬけれども、一定規模以上の工場に付きましてはやつて來て居る所でありますが、まあ大きい工場では工場に工場醫を置かせまして、さうして工場醫に定時的な健康診斷をやらせて、さうして其の工場の健康状態を診させる、二項はさう云ふ方法を講じますと、勢ひ事業主が事業主の都合の好い醫者に強制的に診させると云ふことになりまするから、勞働者の方で、俺はあの醫者では嫌だと云ふ場合には、他の醫者にかかり得る途を開いたと云ふ状況であります、併し工場と申しましても、專門的な醫者を置いて置けるやうな大きい工場は宜しうございますけれども、さうでない工場なんかでは町の開業醫を囑託致しましてやつて居るものもあらうかと思ひます、大體は其の工場に專屬醫と申しまするか、決つた醫者に健康診斷をさせると云ふことになるかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=147
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148・渡邉覺造
○渡邉覺造君 是は大きい工場ならさう云ふやうな診療機關も設け、囑託醫も置けますけれども、前にも申しましたやうに、勞働者使用の範圍が非常に廣うございますから、一々小さい所で囑託醫を置くと云ふこともなかなか容易ぢやない、それで、それをどう云ふ風に防ぐか、是は何か御考がありますでせうか、一口に言へば所謂診斷書の濫發ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=148
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149・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は先だつての委員會でも御注意を戴いた點でございまして、御尤もであり、是は醫師の監督の面としては相當考へなければならぬと思ひまするが、私共としましては、先程申しましたやうに、是は有らゆる本法の適用のある勞働者全部にと云つたつて非常にむづかしいことでありますので、其の點を豫想して一定の事業として必要な規模以上のものにやらせる積りで居ります、現在でももう既に、現在の工場法では百人以上の勞働者を使用する工場には工場醫を置かねばいかぬ、さうして其の工場醫に定期的な健康診斷をやらせる、と云ふ風にして居ります、是は出來得れば段段廣くしたいと思つて居りますけれども、全部の事業、全部の勞働者にと云ふのは、是は無理であらうと思ひます、從ひまして今御話のありましたやうに、唯開業醫の誰彼に行つて、證明と云ふことでなしに、此の二項に置きましたのは、唯強制的に工場のお抱への工場醫にだけやらせると云ふ場合に弊害が起つてはと云ふので、勞働者の希望を容れさせるやうな條項を置いたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=149
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150・種田虎雄
○種田虎雄君 「使用者の指定した醫師の診斷を受けることを希望しない勞働者は、」云々と云ふことになつて居りますが、今御話のやうに皆工場に相當の專門の囑託醫が居つて、それに診斷を受けると云ふやうな場合に、若し其の工場の醫師の診斷を受けることが嫌だと云ふことを勞働者が言ひました場合は、どうなさいますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=150
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151・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) さう云ふ場合が起つてはと思ひまして、二項で、それが嫌なら他の醫者の證明を貰つて來い、斯う云ふことです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=151
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152・種田虎雄
○種田虎雄君 そこで今の渡邉さんからの御質問が出て居るのぢやないかと思ふのですが、勞働者の工場に所謂病院なら病院の設備がある、而も其の醫者が診斷をすると云ふのに、それを嫌だと云つて町の醫者かなんかに勞働者が診斷書を貰ひに行くんだと云ふやうな場合に、其の要求を容れる理由が何處にあるのでありませうか、勞働者の我儘を唯通すと云ふだけなのでありますか、其處がどうも私は分らないのであります、寧ろ専門の立派な病院でもあつた場合に其の診療を受けさせるのが本當で、それを嫌だと言つて、町の醫者の所に行つて勝手な診斷書を作つて來ると云ふのは、さう云ふのを法律で以て認める理由は何處にあるのであるか、それを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=152
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153・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 矢張り健康診斷でありまするから、之を定期的に勞働者の健康診斷を強制をすると言ひますか、やらなければならぬと云ふ建前を採つて居りまする上から、どうしても嫌だと云ふ醫者に矢張り健康診斷を強うると云ふことは少し無理であらう、矢張りさう云ふ時には他の醫者に健康診斷を求めるの自由は與へても宜からう、大體は其の工場に居る工場醫に何か特別の事由がない限りは、私は受けると思ひますが、併し健康診斷を強制する建前上、工場の使つて居る醫者にそれを強制させるのは少し無理があらうかと云ふので、例外的な意味に於て規定して居るに過ぎませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=153
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154・種田虎雄
○種田虎雄君 殊に此の雇入の際に各工場なり會社等で、其の事業に、例へば一番問題になるのは色盲なのです、さう云ふやうな問題は交通機關や何かには實に困る譯です、そこで之を嚴格にやりますと採用されない者が相當ある、さう云ふのを成るべく避けて、さうして町の醫者かなんかに行つて診斷を受けて來ると云ふやうなことは相當あるのです、でありますから、之に對して無條件に唯勞働者の自由だとか何とか云ふことでやられては、事業の性質に依つては困るだらうと思ひます、雇入の場合に健康な人間を雇入れると云ふことはどうしても必要なのであります、然るにも拘らずそれは嫌だと云ふやうなことで、若し勝手に町のお醫者さんに診斷書を貰つて來ると云ふやうなことがあつたんぢや是は非常に問題だと私は思ふのであります、でありますから斯う云ふやうな立法を爲さる時には、弊害の面も矢張り御考へ願はないといかぬのぢやないか、實際問題として寧ろ弊害の方が私は多いと思ひます、會社の方で立派な相當の醫者を雇つて一般的にやつて居るのに拘らず、それを避けて特に町の醫者か何かの診斷を受けて來ると云ふのは、先程も渡邉さんの仰しやるやうな、實際に醫師の公益性と云ふことが徹底しない限りは、どうもさう云ふことが起り得ると思ひます、それに對する政府としてどう云ふ取締を爲さつて居るかと云ふことを渡邉さんも御聽きになつて居るのでありまし、其の點どう云ふ風にして御取締になるかと云ふことを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=154
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155・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) それは御話の通りであります、雇入の際に付ては、是は多少疑はしければ雇はないと云ふことに依つてチエツクが出來ると思ふのですが、今のお話のやうに工場の自分の方の勝手な醫者だけで強行すると云ふことも一つの考へでありませうが、併しまあ例外的の場合として醫者と云ふものは、他の醫者の健康診斷を求めるの自由を與へることは、是は私は宜いんではないか、要するに其の醫者がさう云ふ間違つた診斷書を出すことが惡いのであつて、之を全部信用出來ぬと云ふことになりましたならば、今日の開業醫と云ふものは是はもう非常に考へなければならぬ状況であります、數多い中ですから私あるとは思ふのであります、往々耳にすることがあるとは思ひますけれども、是は矢張り開業醫の制度を認める以上は、監督もし、是正もして行くことであつて、一應開業醫として國が免許して許して居る以上は、矢張り其處に或程度信用を得て行くと云ふことは、それは考へて宜いことぢやないかと、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=155
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156・渡邉覺造
○渡邉覺造君 どうも五十二條は實際問題になつて來ると思ふのですが、今迄醫師會と、先程申上げたやうに事業主と幾度びか是は問題になつて居ることで、勞働者が鑛山や事業場に、今種田さんも仰せられるやうに、立派な病院があるにも拘らず、町の開業醫へ行つて診斷を受ける、甲の開業醫が出さなければ乙の開業醫へ行つて出させる、或はもつと場末の開業醫に行つて、さうして醫者の診斷書を持つて來る、是は御話の通りに、さう云ふと開業醫の人格を認めないことになつて、理論上ではさうであるが、實際問題として是は工場使用者の指定した醫師の診斷書を必要とすると云ふ工合にしないと、明日にも事故が起きて來ると思ひます、で此の法案に依ると、使用者は非常に負擔が……休まれると手當も何も出さなくちやならぬし、五十二條はどうですか、もう少し御考になつて戴きたいと思つて居りますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=156
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157・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は多少御話の點は御尤もで、私共も分るのでありますが、多少誤解があるかと思ひますので申上げたいと思ひますが、此の五十二條と云ふのは今の健康保險等に依る診斷書があつたらば、休業手當が貰へるとか、休めるとか、それから金がどう云ふ風になると云ふ意味の是は規定ではございませぬ、此所にありまする安全、衞生に關する規定は、勞働者が工場に於て働く上に於て、病人がどう云ふ風に出て居るとか、病人を使つて居るのぢやないかと云ふ勞働者保護の爲に、所謂斯う云つた健康診斷の規定でありまして、先程からの御話の點は、往々行はれて居ると云ふのは、健康診斷の診斷書を貰つて、休んで休業手當を貰つたり、所謂健康保險法や其の他の法律から來る場合のことを御指摘になつて居るのぢやないか、是は紡績なら紡績工場に於て一定の時期に檢査して、結核に罹つて居る者は何パーセントあるか、さう云ふどれ位の程度の者を使つて居るか使つて居ないか、或は職業病の發生して居る工場に於て、どの程度に職業病が發生して居るかと云ふのを定時に健康診斷をさせまして、さうして其の結果、監督もし、保護も加へると云ふ趣旨で置いた規定でありまして、先程のやうな僞の健康診斷を貰つて、それで何かを要求すると云ふ趣旨の規定では全然ございませぬ、多少誤解があつてはと思ひまして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=157
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158・渡邉覺造
○渡邉覺造君 然らば此の健康診斷書を出す意味は何所にありますか、若し此所で此の診斷を受けて、是は不健康なりと云ふ診斷を受けた場合に、其の者はどう云ふお取扱になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=158
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159・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) まあ工場に於ける健康診斷をやる上に於ては色々の考へ方があります、例へば其所の工場がどんなに不健康であるかと云ふことを定期的に見る必要がございます、又或一定の疾患に付きましては、此の中にもございますが、其の者が働いて居つては外の者が迷惑すると云ふ、さう云ふ者に付ては就業をさせないやうに監督をしなければならぬ、職業病に付ては、特に職業病がどれ位に、發生して居るかと云ふことは是は重大なる點でございます、唯監督官が行つて時時見ると云ふだけでは迚も的確なる資料を得ることが出來ませぬから、法律に依つて義務を命じて、さうして其の資料や報告に基いて監督を加へなければならぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=159
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160・渡邉覺造
○渡邉覺造君 此の勞働者の健康診斷をやつた場合に、若しも胸部の疾患があると云ふことを發見したと云ふ時には健康診斷を出すのですか、あなたの言ふ健康診斷と云ふのは一體何れを指すのですか、私は健康診斷と云ふものは、此の者に何處に疾患がありや、健康なりや否やを見るのが健康診斷ぢやないかと思ふのですが、それで若し健康診斷の結果何處か不健康な所があつた場合には、勞働者はどうなりますか、矢張り其處に於て休養を與へるか何かする必要が起つて來るのぢやないですか、此の意味から言へば「定期に、醫師に勞働者の健康診斷をさせなければならない。」、此の健康診斷と云ふのは、勞働者が健康なりや否やと云ふことを診斷するのが健康診斷です、だから若し此の診斷の場合に、不健康なりと診斷した場合には其の勞働者には休養を與へなくちやならぬと云ふ意味ぢやないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=160
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161・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます、左樣でございますが、今言つたやうに其の出て來た結果に付て非常に傳染性の疾患があれば、それは休ませなければならぬし、又胸部疾患が非常に高度に進んで居る者はそれに保護を加へなければならぬ、さう云ふ問題は勿論ございます、唯茲にありまするのは、健康保險の休業手當をやるかどうかと云ふ意味に於ての健康診斷を之に依つて指定した譯ではありませぬ、それは又別個に起つて來る、何處其處の醫師の診斷を求めると云ふことは、それは別の法律に依つて命ずる所であつて、是は一般的な工場、鑛山等に於ける健康の状態を調査をすると云ふ趣旨に出た規定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=161
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162・渡邉覺造
○渡邉覺造君 どうも私此の條文から言へば、「定期に、醫師に勞働者の健康診斷をさせなければならない。」と云ふことは、それは何に使ふか、其の工場の仕事が宜いか惡いか、參考にする爲に使ふ場合もありませうし、それから勞働者個々が疾患に罹つて居るか、罹つて居ないか、所謂保健、豫防の意味で健康診斷をやる場合もありませうから、それを含んで居ると思ひます、それで保健豫防の立場からは此の第五十二條を適用した場合に、今申上げたやうに、或は個々に不健康な状態があり、ありと見えたと云ふ時には、是は取りも直さず今の休暇を與へなくちやならないもんぢやないですか、其の時に休暇を與へなければならないとすれば、個々の健康診斷書と云ふものは即座に休暇を與へるに役立つ診斷書になりませぬか、どうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=162
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163・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) それで私は其の點を含んで居ないとは申しませぬ、含んで居ないとは申しませぬが、其の爲にやる健康診斷ではないのでありまして、一般的な健康診斷をやつた、其の結果として出て來た場合に、其の者を休ませなければならぬと云ふ問題は起つて來るであらうと思ひます、其の時には健康診斷が物を言ふことは御説の通りであります、それは當然であります、ですから決して先程から御指摘になりました開業醫が間違つた診斷をして居る弊害がないとは申しませぬ、是は若しさう云ふ事實があれば外の開業醫に診斷を求めさして、それが信用出來ぬと云ふことになれば、其の弊害は、それはないことはありませぬけれども、茲に言ふ定期的な健康診斷と云ふのは、今迄能く言はれて居る、健康保險なり、其の他の休業手當を貰ふ爲に自分が勝手に健康診斷を貰つて來て、さうして權利を主張すると云ふ爲に設けた規定ではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=163
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164・渡邉覺造
○渡邉覺造君 私はどうも今の政府委員の健康診斷書の説明は少しをかしいと思ふのですが、私は是はどうしても繰返して申上げますが、勞働者に健康診斷をさせると云ふことは、大きく言つて疾病の治療ばかりでなく、豫防からも是は扱つた問題だと私は思つて居るのです、豫防の爲には治療と云ふものが前提になりますけれども、其の意味から言つて、是はどうしても此處で疾病がありと云ふ、健康でないと云ふ診斷を受ければ、是は矢張りさつきあなたの仰しやるやうに健康保險の給付の方に、是は直ぐ廻るべきもんぢやないかと私は思ふ、だから何も是は一般の健康診斷で、給付を受けるのは別に貰はなくちやならぬと云ふものぢやないと思ふのです、診斷書は何時でも同じ效力があるもんだと私は思つて居る、何時受けても普通一般の健康診斷書も、疾病に依る健康診斷書も、診斷書と云ふものの性質に變りはないと私は思ふ、だから是は種田さんの言ふやうに、一定の事業場、工場なりで指定した醫者に大體に於て受けさせるやうな條文がないと、是は問題が必ず起きます、是は是非御考を願ひたいと私は思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=164
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165・種田虎雄
○種田虎雄君 私も今渡邉さんの仰しやつたことと同感なんです、自分共が大分事業をやつて居つて、さうして勞働者が自分の好みに依つてやるやうな場合には、必ずそこに何か考へて居る場合が多い、會社の指定して居る者を嫌がると云ふことは、それが不親切だとか、或は取扱が亂暴だとか、色々なことがありませうけれども、多くは他意があるのです、さう云ふことがあるやうに思ひます、ですから先程來渡邉さんが言はれた、如何に御取締になるか、取締りの方法はどう云ふ風になさつて居るかと云ふことを御尋になつて居つたのでありますが、是は勞働者を保護する規定なんでありますから、保護すると云ふことは、我が儘勝手をさせると云ふ意味ぢやないので、是は矢張り事業がうまく行くやうにすることが、即ち勞働者を保護する所以だらうと思ふのです、斯う云ふことを御決めになることは決して勞働者を保護するのぢやないので、勞働者の我が儘をさせると云ふ御趣旨なら別ですけれども、勞働者を保護すると云ふ規定から言ふならば、會社で以て相當立派な醫者を指定して、そんな變な醫師を指定する場合はないと思ひます、何處の工場でも矢張り一流の立派な醫者を指定するのですから、それを避けて外の所へ行くと云ふのは、それは何かそこに必ず事情がありやしないかと思ふので、此の規定は矢張りさう云ふ意味に於て御考になるのが宜いのぢやないかと、斯う云ふ風に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=165
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166・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御趣旨の點は私共も能く了承致しますが、唯一概に言へないことは、工場が總て信用のある良い醫者を指定するとは限らない場合もある、さう云ふ際に勞働者側がどうも醫者は指定されて居るけれども、自分は信用しない、あの人の診斷だけに依つてやる譯に行かぬが、自分の信用する醫師に依つて診斷を受ける、詰り其の醫師の診斷を拒否すると云ふ建前を執らないでも宜いぢやないか、事實は工場が本當に信用する醫者を指定し、又眞にさうであるならば、何も勞働者の多數の者がそれを拒否するとは考へられない、それは中には我が儘の者もあり得ると思ひます、あり得るとは思ひますけれども、さう致しますると、一面の弊害としては往々にして工場に都合の好い人を指定して、さうして健康診斷の時に家の工場には斯う云ふ風に病人はもう一人も居りませぬと云ふ風なことが若し起るとするならば、それを是正する方法と云ふものはない、それは監督官が行きまして、監督官が一人々々全部檢査をすると云ふ方法も出來ぬことはないけれども、矢張り其處は大體は私も仰しやる通りだとは思ひまするけれども、さう一概に決め兼ねない所もあるのぢやなからうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=166
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167・種田虎雄
○種田虎雄君 工場で指定した醫者が宜くない、斯う云ふ風な醫者ならば監督官として如何樣にでも工場に對して御干渉出來るのぢやなからうかと思ひます、でありますから若しさう云ふやうな疑のあるやうな醫者を指定して居れば、其の醫者を變へるやうに御盡力になれば宜いのであつて、勞働者個々の者があの醫者もいかぬ、此の醫者もいかぬと云ふことを自由にさせると云ふことは、どうも此の規定が何だか勞働者保護ぢやないやうな感がするのでありまして、寧ろ工場、會社等で指定して居る醫者が不適當ならば、それに對して工場なり、會社を御取締になれば宜いのでありますから、其の方が寧ろ目的を達成出來るのぢやないかしら発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=167
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168・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 勿論御指摘になりました方法も是は講じなければなりませぬし、出來ると思ひますが、それだけでなしに、矢張りそれはもう相當見付かりまして相當の大きな弊害になつて出た時に、實際問題としては取るべき處置でありまするから、さうでない場合にも、勞働者自身にも其の途を開いて置くことが宜いのぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=168
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169・種田虎雄
○種田虎雄君 是以上は所謂意見の違ひでありますから申上げませぬが、十分に運用の上に於て御注意願はぬといかないと云ふことだけ繰返して申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=169
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170・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 私は又別の意味に於て此の健康診斷と云ふものの御考を承りたいと思ひますが、是は從來やつて居りまするのは、健康診斷は可なりやります、色々の試驗を致しまして結核其の他の疾患を發見することに努めて居るのであります、けれども先程渡邉さんが御話になつた御言葉に反しまして事實は何にもしないのであります、唯健康診斷をすると云ふだけで、さうして精神的に勞働者に不安を與へると云ふだけでありまして、其の後の手當を一向やらぬのでありますが、是では有效でなし、却て結果が面白くないのぢやないか、斯う云ふ風に大體なつて居りましたのですが、處が今度此の基準法に依つて斯う云ふことが制定されまして、其の結果之を有效に使はうと云ふことならば非常に結構だと思ひますが、矢張り在來通りならば、大した效果もないやうに思ひますが、其の點に付て政府はどう云ふ風に御考になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=170
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171・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今御意見がありましたやうに、從來健康診斷をやつて居りますが、どうもお座なりになりがちでありまして、是は私も遺憾に思ひます、まあ此の基準法は相當進歩的と申しますか、從前から見ますれば進んた法律でありまするし、從つて此の法律の施行に付きましても、相當監督官を増置致しまして監督をすることになつて居りまするので、只今御注意の點は今後一層十分に留意をして行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=171
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172・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 監督官の監督に依つて是から後のことを運ぶとのことでありますけれども、實は監督官の仕事でないのでありまして、さう云ふことを發見したらどうすると云ふ制度もありませぬければ設備もありませぬ、國としての施設もありませず、サナトリウムとか其の他の療養所と云ふものの設備も甚だ不足で、又事實出來ないと云ふことになつて居ります、又さう云ふことをせなければならぬと云ふ法規もないやうに存じて居るのでありまするが、是等に對しての附帶命令でありますか、法規でありますか、さう云ふものが出るのでありませうか、それとも在來通りで暫く行くのでありませうか、此の點を何ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=172
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173・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は御尤もで、從來はなかなか思ふやうには出來ませぬ、相當努力は致しておりましたが、思ふやうではございませぬが、此の法律でも、勿論此の第三項にありまするやうに、其の健康診斷の結果に付て、其の就業の場所が非常に惡ければ其の改善を命ずる、或はさう云う個人に付て非常に無理であれば、業務の場所を變へさせるとか、或は就業時間が餘り無理であるならば、就業時間が假に八時間でありましても無理な時には、其の短縮方法を講じさせるとか、其の他色々な處置は命ずる積りでは居ります、併し是はまあ其の本人、病氣に罹つた人の取扱と云ふよりも、其の環境其の他の法律でございまして、今の病氣に罹つた者の處置等に付きましては、是は矢張り健康保險なり其の他の施設を擴充をして行くことが望ましいのぢやないかと思つて居ります、從前も相當は進んで來て居りますけれども、御指摘のやうに十分でないことは私も認めて居りますが、今後さう云ふ風な大きい工場でありますれば、病院の施設だとか、療養所の施設でありまするとか、其の他色々の施設も伴つて來るのでありますけれども、斯う云ふ問題はまあ法律で直ぐどうと云ふ風にはむづかしいのでありまして、矢張り或程度は指導に依つて漸次向上させて行くと云ふ風に行かざるを得ぬのぢやないかと思つて居ります、最小限度の命令處置は此の三項に依つてやつて行く積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=173
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174・種田虎雄
○種田虎雄君 此の五十五條の第二項はどう云ふことを意味するのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=174
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175・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 勞働者の就業させて居ります事業の建築物は此の法律で定めて居りまする基準に違反して居る、其の場合に行政官廳が、監督官が出掛けて行つて、非常に危險な状態であると云ふ場合には、其の建物乃至機械器具、さう云ふものの使用の停止、變更、禁止を命ずる譯でありますが、さう云ふ場合に事業主にさう云ふものの使用乃至は其處の場所を使ふなと云ふことを命ずるだけでなく、勞働者にも命ずることが出來ると云ふ意味の規定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=175
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176・種田虎雄
○種田虎雄君 さうすると、大體勞働者には唯使ふなと云ふことだけでせうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=176
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177・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=177
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178・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 宜しうございましたら、次の第六章女子及び年少者の章に移りたいと思ひますが、此の章は女子に對して特別な保護を與へると云ふ條項でありまして、我か國に取つては初めての、而も實質上相當の變化があるのでありますから、皆樣も色々と御意見、御質疑があることと思ひます、一つ一括致しまして六十八條迄十分に御審議を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=178
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179・種田虎雄
○種田虎雄君 此の五十七條に「その年齡を證明する戸籍證明書を事業場に備え付けなければならない。」と書いてありますが、是は十八歳に滿たない者だけに付てですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=179
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180・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=180
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181・種田虎雄
○種田虎雄君 此の六十一條に女子の勞働時間のことに付て規定してありますが、一日二時間、一週間に付て六時間、一年に付て百五十時間を超えて時間外の勞働をさしちやいかぬ、又休日に勞働さしてはならないと斯う云ふ風に書いてありますが、是は政府として特に女子を保護すると云ふ意味で斯う云ふ規定を設けられたのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=181
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182・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます、是は御承知のやうに炭坑に付きましては例の八時間制は執つて居りまするが、組合なり或は過半數の勞働者の協定があれば、時間延長が出來るやうにまあ彈力性を執つて居る譯でございますが、此の女子に付きましては協約で結びさへすれば八時間制を幾ら延長しても宜いと云ふ譯のものでなく、矢張り女性を保護する必要がありますから、其の限度を是では設けて居る、炭坑の方にはないのですが、女子には一日に二時間、一週に六時間、一年に百五十時間と云ふ制限を設けて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=182
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183・種田虎雄
○種田虎雄君 此の規定は如何なる場合に於ても此の規定は適用される譯なのでありますか、或は何か已むを得ないやうな突發的な、特にタイピストとか何とか云ふああ云ふ方面の仕事をやる人には相當色々な會議とか、色々な場合に熟練をして居る人達でなければ實際仕事の出來ない場合がある、速記或はタイピスト、特にタイピストの場合が多いと思ひますが、何か會議でもある時に、實際の時に二時間しか働かせることが出來ないと云ふやうなことでは、是は強行規定なのでありませうか、何等か例外は認められないのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=183
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184・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は所謂特に婦人に付ては保護する必要があるので、無制限に流れることを制限した譯であります、全然ない譯ではございませぬ、先程申しました三十三條の災害とか、さう云ふ時の非常の例外は是は勿論ございますけれども、今種田さんの仰しやいましたやうな例外は、此の六十一條の枠内でなければいけないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=184
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185・種田虎雄
○種田虎雄君 そこで益益我々は同じやうな賃銀で、所謂同一の待遇に男と女とすると云ふやうなことに付て、益益其の保護をする規定があつちこつちに澤山あります爲に、男と比べて女は非常に仕事の上に使つちや不利だ、事業經營上不利だと云ふやうなことが起つて來て、所謂完全雇傭の一方に於て叫ばれて居る際に、女子を保護される積りで色々規定されることがどうも斯う云ふ法律が出ますと女を採用しては困ると云ふことが實際問題として起つて來るだらうと思ふ、女子を保護することにあらずして女子を保護しない結果になるのではないかと云ふ感じが致すのであります、隨所に女子を保護し過ぎて居るやうに思ふのでありますが、又是から先に色々規定が書いてありますけれども、當局ではそれをどう御考になつて居るのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=185
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186・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話の點は是は實際相當考へさせられることと思ひますが、女子の方に厚くなりますと、逆作用を生じまして、女子を避けると云ふ傾向が出ぬとも限らないのでありますが、さうかと言つて何時迄も之を放置致しますると、何時迄も女子の條件と云ふものが上りませぬから、矢張り或程度茲で枠を嵌めざるを得ぬ、それで男子の方に付ても此の六十一條見たやうに三十六條は協定に依るならば時間延長が出來ると云ふけれども、幾らでも出來ると云ふことは無制限ではない、男子に付ても一定の限度を嵌めるべきぢやないかと云ふ意見も相當ありましたが、是は餘り劃一的に致しますれば、無理が出來ますから、男子に付てはまあ組合の自治制に俟つと云ふことで時間の枠を嵌めて居ないのであります、女子の保護の今の例へば産前産後とかと云ふ、女子特有の問題に付きましては、是は已むを得ませぬが、斯う云ふ時間の問題に付きましては、是は私は或程度迄女子に付ては制限を置きませぬと、是が協定であれば幾らでも宜いと云ふことになつて、是は矢張りいけないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=186
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187・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 休日に付て一つ伺ひたいのであります、毎日曜を休みますし、それに日本には祭日が相當に多くありまして、十二日もありますが、其の外に盆暮の休みがある、盆に二日、暮に三日と致しまして五日間、正月に五日間として合せて十日間もある、日曜、祭日、盆、暮、正月の休みの合計七十日もあるのであります、此の點外國ではどの位あるものでありませうか、盆暮とか祭日とかと云ふものは、斯うは澤山ないと思ふのであります、其の外に之に依りますと云ふと、年次有給休暇と云ふものが二十日間迄與へられるやうになつて居ります、尚女子には其の外に生理休暇と云ふものが月に三日間、一年に三十六日間與へられることになつて居ります、是等も必ずしも全部の女子に與へる譯でもないでありませうけれども、又聞く所に依りますと云ふと、五十ばかりの炊事の婆さんが相當の月給を取つて居るのだけれども、毎月必ず三日づつ休むと云ふやうな話を聞きました、あの五十ばかりになる婆さんに生理休暇と云ふのが必要なのかどうかと云ふ噂も聞いで居るのでありますが、是は行き過ぎでありませうが、どうかすると云ふと、日本人は斯う云ふやうな虞がないでもないかと思ひますが、さう云ふものを全部加へますと云ふと、百二十六日となりまして、一年三百六十五日の三分の一以上になるのであります、二日出ては一日休み、或は三日出ては一日以上になりますか、と云ふやうな割合になるやうに思ひますが、是等の點に付て諸外國の例竝に政府の方の御考はどうでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=187
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188・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 此の法律で期待致して居りまする休日は、週休だけでありまして、外には年次有給休暇……、週休は一年五十二日であります、其の週休の外に外國の例として手許に最近の資料がございますが、比較的新らしい資料は、ロシヤの勞働法では國家祝祭日、是は週休の外に八日間でございます、イギリスの工場法では日曜日の外にバンク・ホリデーだけを規定して居ります、日本では御説の通り祝祭日と規定されてありますのはございますが、此の法律ではそれを休日として規定して居りませぬ、年次有給休暇の最大限が二十日と此の法律で規定致して居りますので、此の法律の規定して居ります五十二日の週休は、此の二十日を入れますれば、此の法律で規定して居りまする休みと致しましては七十二日、一年間の二割と云ふ計算になつて居ります、尚生理休暇を御尋になりましたが、生理休暇は法文で御覽の通りでありまして、此の法律では平均賃金を考へるに付ても、それから年次有給休暇の出席率の計算にも出缺とは見て居りませぬ、謂はば病氣に準ずる扱としてさう云ふ原則を示した計算になつて居ります、是で此の法律の規定した休暇の中に入れるのは稍稍無理ではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=188
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189・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 法律の休暇と云ふ名前には入らぬかも知れませぬけれども、實際に於て仕事をしなければそれだけしか能率が上らぬことになります、どうも三日に一日の休みでは少し多いと思ふのですが、外國には何はないでございませうな、祭日或は盆暮に相當する休暇と云ふものは……、ないからして相當出るのではないかと思ひますが、日本ではそれがどうも多くて、其の外に外國にないものがくつつきますと、餘程多くなつて、殆ど仕事をする日がなくなるのではないか、是等のものを御認めになるならば、其の代りに外のものを御やめになるとか、法律でやることが出來ぬならば、外の面に於て指導すると云ふやうな考はないものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=189
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190・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話のやうに休みが多くなり勝ちでありますが、御説明申上げたと思ひますが、盆暮の休みは、恐らく有給休暇として年次有給休日の方に含まれて行く場合が多くないだらうかと思ひます、有給休暇を其の方に充てると云ふ場合が多いのではないかと思ひます、それから先程御質問になりました生理休暇に付きましては、確かにさう云ふ御指摘になつたやうなことも割合耳に致します、是は矢張り行過ぎでありまして、此の法律では女子であるからと言つて、一律に生理休暇を認めて居るのではないのでありまして、先日もちよつと御説明申上げましたが、本人の特異性から病的にやつて來るものがありまして、それが就業に非常に困難であると云ふ場合には休ませると云ふことと、もう一つは、是は豫て私の方の專門家が調査して居りましたが、バスでありまするとか、電車と云ふやうなああ云ふ激動の所に出て居りまする女子は、健康體でありましても、其の影響を受けまして、生理に非常に障害を來すのであります、斯う云ふ風な業務自身が非常に生理に有害なものに付きましては、之を指定を致しまして休ませると云ふ最小限度を必要な範圍に於て此の規定は認めて居るのであります、而も之を法律は有給と云ふことでなしに、只請求があつたら休ませなければならぬと云ふ程度にして居るのであります、唯御話がありましたやうに、實際今日迄行はれて居る處では、それが動もすると行過ぎて、女子は當然一月に二日乃至三日休ませる……休むのか、休ませられるのかと云ふやうなことを言つて居る向きもございまして、是は私は芳しくないと思ひます、それから事實一時はさう云ふ聲もあり、又さう云ふことも行はれたやうに聞いて居りますが、漸次矢張り、生理と申しましても、是は生理現象でありまして、一律にさうしなければ非常に困ると云ふ譯ぢやございませぬので、事實協約等で生理休暇を規定したものに於きましても、實際の實情は段々と生理休暇を請求する者が少く、實際は少いやうで、全部が生理休暇を要求して居ないやうな状況であります、是は私共指導の上に於ても十分氣を付けなければならないと思ひますが、行過ぎの點は之を是正したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=190
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191・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 御言葉を返すやうでありますけれども、盆暮の休みを有給休暇に向けると云ふことは、勞働者の方に選定權があるのでありますから、必ずしもさうは行かぬのぢやないかと云ふ風に考へます、それから女子の生理休暇を病的にある者に限ると云ふことでありますならば、是は病的であるか否かと云ふことを證明すべき何等かの方法を執らなければならぬと云ふやうな規定があるならば、非常に結構だと思ひますが、其の點は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=191
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192・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) さう云ふ點も考へられるのでありますが、まあ實際なかなかむづかしいのと、それから此の有給休暇として居りませぬから、本人が休めばそれだけ給料が減ると云ふことを覺悟してのことであらうかと思ひまするので、さう云ふ面でも或程度是正出來るのぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=192
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193・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 日給の者はですね、月給の者は矢張り……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=193
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194・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=194
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195・種田虎雄
○種田虎雄君 此の六十八條に歸郷旅費のことが書いてありますが、是は女子及び年少者に限つての問題なのですか、一般の勞働者にも斯う云ふ、是に似たやうな規定を何かで決められるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=195
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196・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は御話のやうに此處にありまする滿十八歳に滿たない者とそれから女子、是が解雇されて十四日以内に歸郷する時だけでございます、一般ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=196
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197・種田虎雄
○種田虎雄君 是は主として纖維工業か何かの場合の工場の寄宿舍に居る者に對して適用されると限つて居るのでありますか、一般の勞働者も矢張り斯う云ふやうなことが言ひ得るのぢやないかと思ひますけれども、特に斯う云ふ風な年少者及女子だけに斯う云ふことが書いてありますから、是は或特殊の企業に從事して居る者だけを豫想して規定されて居るやうに思ひますが、如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=197
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198・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 纖維工業等が多いとは思ひますが、此の規定は纖維工業だけではございませぬ、總ての企業に適用になるのでありまして、是はさう云ふことになると、女が解雇されまして、旅費其の他に困つてつい色色な方面に走ると云ふことも考へられまするので、斯う云ふ風に加へたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=198
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199・種田虎雄
○種田虎雄君 男子と女子と殆ど賃銀其の他に於て同じやうな待遇を受けて居るに拘らず、女子だけに斯う云ふやうな特別の規定を設けて居られるのは何か新らしい時代の精神には副はないやうな感がするのでありますが、當局としては矢張り何か女子を、是も保護すると云ふ精神で之を設けられたのでありませうか、大體に於て男と女とは同じやうに扱はれて、特に斯う云ふ規定があるのは、女子を特に保護しようと云ふ精神でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=199
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200・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 勿論女子と男子は同等に待遇は致しますけれども、矢張り能力に應じてのことでありまするから、勢ひ女子なり年少者はまあ弱い所がある、從つてそれに付ては特別の保護が必要であらうかと云ふ趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=200
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201・種田虎雄
○種田虎雄君 今の御説明は一通り頷けるのでありますが、何か外の規定が斯う云ふ一つの保護規定に入つたので、それがすらつと入つたのではありませぬですか、さう云ふ譯でありませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=201
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202・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 此の歸郷旅費に關します規定は、此の法律の外の部分としては、第十五條に明示された勞働條件が事實と違ふ場合には、勞働者は契約を解除して郷里に歸る、其の場合に必要な旅費を負擔しなければならないと云ふ規定がございます、それから職業紹介法に基きます勞働者募集規則に、募集した勞働者が工場にやつて參りまして、勞働條件が募集員が言つたのと違ふ、其の場合には歸郷旅費を拂つてやるやうにと云ふことが、勞働者募集規則にごさいます、此處へ採入れました六十八條は從來工場法の施行令に規定されて居りましたのを、其の儘踏襲して來た譯でございます、歸郷旅費に關しますものとしましては、今申しました三つの事例がある譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=202
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203・種田虎雄
○種田虎雄君 六十八條の規定には「滿十八歳に滿たない者又は女子がその責に歸すべき事由に基いて解雇され、使用者がその事由について行政官廳の認定を受けたときは、」歸郷旅費を拂はないで宜いと云ふ但書が出來て居ります、此の十五條の方にはさう云ふやうなことは、是は無論ない譯でありますが、其の釣合ひは取れて居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=203
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204・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 十五條の方は勞働條件が使用者側の豫め明示したものと違つた場合でありますから、其の場合には、其の責任は事業主の方にあると云ふことで六十八條との均衡は取れて居ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=204
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205・種田虎雄
○種田虎雄君 併し一概にさう言へないこともあるのぢやないかと思ふのですが、勤務成績其の他色々の所謂從業員の方に相當責を負はなければならないやうな場合に、交通機關等に於ても相當に變へなければならぬ、仕事の場所を變へなければならぬと云ふやうなこともあるのでありますね、或は又どうしても辭めなければならぬと云ふやうな場合も起るのでありますが、變へられちや困るから辭めると斯う云ふやうなことも起る譯なんですね、さう云ふやうな場合に從業員も矢張り責に歸する、使用者側だけでなく、從業員の方にもあるのではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=205
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206・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御趣旨の點、ちよつと私詳しく申上げたと思ひますが、十五條の方は、初めに斯う云ふ風な條件で雇ふぞと言つて、さうだからと思つて行つて見ると實は非常に條件が違つて居つた、是では居られぬから直ぐに辭めて歸ると云つた時に、其の歸郷する爲の旅費は出すと云ふ譯であります、是は女子でも男でも事業主が僞はつて連れて來たのでありますからして、是は當然負擔しなければならぬと思ひます、今御話のやうに、入つてから後に色々な事情で辭めさせると云ふ場合に付ては、此所にありまするやうに、事業主の方から辭めて貰ひたいと言つて解雇する場合は、十八歳未滿の者や女子の場合に於ては、十四日以内に歸れば負擔をさせる、併し解雇する場合に於ても事由が色々あるでありませう、事業主の都合もあるでありませうし、又主人、勞働者の方の責に歸すべき事由の場合もあらうかと思ひます、此の勞働者の方の歸すべき事由に依つて解雇された者は其の旅費を事業主の負擔とすることは酷でありますので、六十八條の但書に於て、さう云ふ風な場合には行政官廳の認定を受けさへすればやらぬでも宜い、斯う云ふ風になつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=206
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207・種田虎雄
○種田虎雄君 六十八條の但書のやうなことが、普通一般の勞働者にもあるのではないかと云ふやうな氣がするのですが、さう云ふ場合はありませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=207
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208・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今のやうに一般勞働者にもありますが、さう云ふ場合には、事業主は旅費を負擔せよと云つて居ない、一般のものには十五條の方はさう云ふ風な一般の趣旨のことを言つて居るのではなしに、初め募集致します時に、色々な甘言を弄して連れて來て、來て見ると、條件も違つて居つたと云ふので歸へると云ふ場合でありますから、是は矢張り事業主が負擔しなければならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=208
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209・種田虎雄
○種田虎雄君 さうしますと、一般の勞働者に對しては六十八條の規定は無論ないのでありますから、其の場合場合に依つて適當に或は歸郷旅費を出す場合もある、それから歸郷旅費を出さぬ場合もある、斯う解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=209
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210・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=210
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211・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 他にございませぬならば、本日は此の程度で散會致しまして、明日午後一時半から開會致します、本日は是で散會致します
午後四時十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=211
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212・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 畠山一清君
副委員長 男爵 長基連君
委員
公爵 島津忠承君
伯爵 東久世通忠君
子爵 岩下家一君
子爵 大久保教尚君
牧野英一君
男爵 内田敏雄君
種田虎雄君
伊藤傳七君
渡邉覺造君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
同 寺本廣作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00219470322&spkNum=212
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