1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○勞働基準法案
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昭和二十二年三月二十三日(日曜日)
午後一時四十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=0
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001・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 開會致します、昨日に引續いて「第七章技能者の養成」に付て御審議を願ひたいと思ひます、今日初めて御出席の方も御ありのやうでありますから、此の章別審議と云ふことに係りませぬで、殊に商工大臣竝に厚生大臣も御出席になる筈でありますから、さう云ふ點は適宜におやりになつて、御審議を進めて戴いて結構だらうと存ずる次第であります、先づ差當り第七章に付て御審議を御願ひします、大臣が見えましたから、第七章に限りませず、其の他の點でも一つ此の際御尋ねを願つたら如何でございませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=1
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002・種田虎雄
○種田虎雄君 厚生大臣がおいでになりましたから、此の章別審議の外に亙つて御質問申上げて宜いと云ふことでありますから、實は私は此の全部の審議が終つてから御尋ねしたいと思つて居つたのでありますが、それは此の基準法は相當に廣範圍に亙つて規定が設けられ、而もそれが使用者側に取つては相當の是は影響を受けることと思ふのでありますが、是だけに使用者側に色色の義務を負はされた場合に、勞働者側に對して怠けたりなんぞした場合、如何なる制裁を政府は考へて居られるのでありませうか、さう云ふ方面に付ての御方針を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=2
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003・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 是は大體は矢張り勞働者の保護に關する規定が建前になつて居るものでありまするから、憲法の規定に基いて其の線に副うたことを主として居る譯です、併しながら勞働の、勤勞の權利と同時に、義務と云ふ觀念は勿論重要な問題でありまするから、此の法律に於て絶對に觸れない譯ではありませぬが、さう云ふ意味に於て建前としまして、極く受身的の消極的の意味に於て考へて居る譯です、それで就業規則の點もありまするけれども、此の問題を中心にしまして、就業規則の規定及び其の運用に依つて其の點を規律して行くと云ふ建前を取つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=3
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004・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御答辯に依りまして、此の法律の精神は能く分りますし、又さうでなくちやならぬと思ひます、併し茲に就業規則と云ふのが第九章に規定してございますが、此の中に適當な規定を設けて置いたら宜いだらうと云ふ御考のやうでありますが、此の就業規則の中に「制裁の定をする場合」と云ふのが書いてありますので、恐らくさう云ふことを考へて御答辯になつたんだらうと思ひますが、此の制裁に付きまして他國の立法例等、我々の參考になるやうなものがございましたならば、それを政府の方で御示しを願ひたいと思ふのであります、同時に表彰に關することに付きましても、多少參考になるやうな資料がございましたら、伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=4
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005・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 法律自體に制裁の種類を書いて居るのは見當りませぬ、唯就業規則に制裁を附し得ることを認めて居りますのは、各國共共通であると思ひます、唯就業規則に附けます所の制裁に付ては、各國の立法で最高限を決めて居るやうであります、例へば外國の工場法其の他の勞働法規で決めて居ります制裁の種類としての罰金と申しますか減俸と申しますか、それの最高限を、一日の俸給の五分の一とか、四分の一、二分の一と云ふ風な決め方をして居る立法例は、他の國にございます、此の法律でも制裁を定め得ることを八十九條で認めまして、其の制裁の種類として減俸を科します場合には、減俸の最大限を此の法律で制限すると云ふ建て方を致して居ります、現實に行はれて居ります就業規則の制裁規定は、即時解雇、減俸、出勤停止、譴責と云ふやうな種類の制裁が、各會社で採用されて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=5
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006・種田虎雄
○種田虎雄君 表彰の方は如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=6
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007・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 表彰に付ては、外國の立法例で勞働法に規定して居るのを承知致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=7
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008・種田虎雄
○種田虎雄君 さうすると、此の就業規則の中に表彰及び制裁に關する適當な規定を設けます場合に、是は唯行政官廳に屆け出れば宜いと云ふことになつて居るやうでありますが、さう云ふ意味の規定を設けることに付ては餘り政府は、此の程度と云ふ目標は御持ちになつて居らないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=8
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009・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 只今申上げましたやうな現實に行はれて居りまする制裁に付きましては、此の法律で即時解雇に付きましては、解雇の豫告、解雇の制限と云ふやうな最小限の保護を加へて居ります、又減俸に付きましては、九十一條で減俸の一囘の金額が一日の半分を超えてはいかぬ、一賃金支拂期の賃金の總額の十分の一を超えてはいかぬと云ふやうな制限を設けて居ります、此の法律自體に斯樣な制限を設けて居りますので、法令に違反しなければ就業規則としては有効であると解釋して居ります、唯就業規則としてどう云ふのが適當であるかと云ふことに付きましては、此の法律を運用致します場合に、各方面の意見を聽きまして指導と致しましては、斯う云ふ就業規則が適當であらうと云ふことは示すことにならうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=9
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010・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の色々實際の運用の面に當つての御指導を爲さるのは、先の方に出て居ります監督機關に依つてそれぞれ御指導になる御方針と思ひますが、此の監督機關に付ては、此の前もちよつとお尋ねして置いたのでありますが、是は相當に廣範圍に亙つての立法でもありますので、此の監督機關を御準備なさり、又それぞれを養成なさると云ふことは大變なことだと思ふのでありますが、殊に聯合國からの指令に依りますると、相當内務省系、殊に警察方面の監督指導と云ふものを全面的に排撃して居るやうな文書が御配付の參考書類の中にもあつたやうであります、從つて今後は獨立した主務官廳が出來、それに隷屬したそれぞれ中央及び地方の監督機關が出來るんだらうと思ふのでありますが、さう云ふ監督機關に對しまする何と申しますか、或程度の細かいことを此の際承つて置くことは參考になると思ひますが、御説明願へませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=10
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011・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 此の工場基準法の監督の點に付きましては、是は御承知の通りに初め此の現行の工場法の實施の際には元の農商務省と云ふ所にありまして、産業行政の面から監督して參つたのであります、勿論それは産業の面でありまして、必ずしも勞働の面ではなかつたのですけれども、餘り警察的でなく實態に即したやり方を以て行つたのです、處が其の後内務省の系統になりまして、さうして警察と相當深い關係を持つて行つたが爲に、工場監督と云ふものは一つの取締の方へ多少流れる、さうして何と言ひますか、勞働問題に對する本當の理解と云ふ所と少し懸け離れる感があつたんぢやないか、又專門家と云ふ者も自然と矢張り内務行政の全體の運用の上から變ると云ふやうなことがあつたんぢやなかろうかと云ふ懸念を私共致して居ります、今度此の法律で監督官の制度が出來まして、是は近い内に出來ると豫想される勞働省に屬しまして、勞働保護と云ふ一つの觀點から之をやつて行くことになりまするから、相當是は專門的の、さうして落付いた制度になつて行く、さうして又斯う云ふ民主的の思想が段々發達し、一面に於ては勞働問題が斯う云ふ風になつて參りますると、自然そこらに本當に一生を打込んで此の監督に從事しようと云ふやうな面の人が必ずや出て來る、又それを出すことを目標とし、それに對する行政方針を立てて行かなくちやならぬと云ふやうな風に大體觀察して居ります、私共は此の監督官制度と云ふものは相當實情に即した專門的のものに行くと云ふことに對する希望と確信を持つて居ると云ふ次第であります、尚此の運用をどう云ふ風にするかと云ふ細かい點に付きましては、政府委員から説明致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=11
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012・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 今御話がありましたやうな考で、監督制度を運用して行かうと思つて居りますが、細かい點に付きましては、此の法律施行の間に色々各方面の意見も聽いたりして作つて行く積りで居ります、今具體的にまだ細かいものは持つて居りませぬ、それから尚只今大臣から仰しやつたやうな點は十分我々は考へて行きますが、唯我々が勝手に考へると云ふことでなしに、此の中には先般もちよつと御説明を申上げたかと思ひますが、勞働基準委員會と云ふものを中央地方に置きまして、さうしてそれに使用者側なり或は勞働者側なりの方々に入つて戴く、或は中立の方々にも入つて戴きまして、さうして運用として遺憾のないやうにして行きたいと云ふ考を持つて居ります、從ひまして今御話のやうな監督の色々な基準或は先程の制裁なるものに付ての大體のまあ基準と云ふやうなものを作つて宜いと云ふ意嚮があれば、さう云ふ委員會にでも諮問もして、意見を聽いて作つて行くと云ふことも、宜いのぢやないかと云ふ考も持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=12
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013・種田虎雄
○種田虎雄君 監督機關に付きまして色々將來御苦心があると思ひますが、どうも此の委員會を作つて、總て委員會の意見も聽いて色々やられると云ふ其の御趣意は非常に結構でありますが、從來出來て居りまする委員會等の實際の運用、活用等に付て見て居りますると、どうもお役所の方は、官廳は委員會で色々意見を聽いたからと云ふので、どうも先程大臣の仰しやつたやうに終生身を入れて、本當に勞働を保護し、さうして産業の發達を圖つて行かなければならぬと云ふ精神に燃えた精神を打込んだ人が腰を据えて行政の衝に當つて戴く場合に、まあ責任を轉嫁すると云つたやうな氣持が起らないやうに、一つして戴かないといけないのぢやないか、どうも委員會に於て相談したのだから、是で責任は果せたと云ふやうな傾向が起るのぢやないか、過去の勞働委員會等に於ても、中央及び地方にさう云ふものが出來ますと、お役所の方の考は、まあ委員會に任してあるのだからと云ふやうな、どうもさう云ふ風になり勝ちではなからうかと云ふやうな懸念もございますので、斯う云ふ監督機關が將來出來まして、さう云ふ委員會に色々なことを御尋になることは無論結構でありますが、大臣の仰しやつたやうな意味の監督機關の出來ることを大いに希望するのでございます、此の點を特に御願ひ申上げて置きます、それから是は小さい問題でありますが、七十二條に未成年者の「年次有給休暇として、十二勞働日を與えなければならない。」と云ふことが書いてありますが、此の三十九條の二項は矢張り同じやうに適用されるのでありませうか、其の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=13
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014・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 基礎になります日數の讀み替へだけでありまして、其の他は全部年次有給休暇の三十九條が適用されるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=14
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015・種田虎雄
○種田虎雄君 さう致しますと未成年者は十二勞働日を與へられて、其の以上には茲に三十九條の二項の日數が矢張り加算されて行く譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=15
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016・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=16
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017・種田虎雄
○種田虎雄君 此の年次有給休暇と云ふのは、是はまあ相當に必要なことでありますけれども、他の國の立法令等と比べまして、日本がどう云ふ風なことに今度の原案はなつて居るのでありませうか、實は戴いた資料を十分に讀みませぬでしたから、ちよつと御尋ねして見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=17
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018・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 年次有給休暇の三十九條の規定、七十二條の規定は、何れも國際勞働條約を基礎にして、初めての制度でもありますし致しますので、日本の實情を十分考慮致しまして、國際勞働條約の規定を稍稍緩和致しまして、低い所に水準を付けて規定してある條文でありまして、國際勞働條約で規定しましたのと變つて居る點を申上げますると、國際勞働條約では一年間在籍した者に付ては、總て六勞働日を基礎日數として、有給休暇を與へると云ふことになつて居ります、八割の出勤を條件と致しましたのは、日本の特種な状況で、勞働者に出勤の義務を課すと云ふ……有給休暇を補償的な意味のものにすると云ふ建前で、是は私共の方で特別に考慮して加へた點であります、それから六勞働日の此の基礎日數に付ては、國際勞働條約では分割を認めて居りませぬ、六勞働日から遞増します分に付ては分割を認めて居りますが、基礎日數に付ては分割を認めて居りませぬ、基礎日數を分割致しますれば、年次有給休暇としての意義が減ると云ふ意見もあつたのでありますが、色々の是は結婚であるとか、盆暮であるとか云ふ風に分けて使ふと云ふやうな從來の例もありますので、此の基礎日數に付ての分割を認めました點も日本の特殊の事例であります。又勞働者が請求する場合に與へた結果、其の場合に企業の正常の運營を妨げる場合には、他の時期に之を與へることが出來ると云ふ點も特に考慮致した點であります、尚年少者に付きましては、國際勞働條約では一律に十勞働日を基礎日數にすることになつて居りますが、日本には特に技能者養成の爲に使はれる勞働者、從來徒弟と言はれて居るものに付きまして、特に低賃金勞働、それから色々な一般の勞働條件よりも不利な勞働條件で雇ふことを認めて居りますので、其の年少勞働者に付てだけは國際勞働條約の十二勞働日と云ふのを基礎として取入れて立法致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=18
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019・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 宜しうございますか、宜しうございますやうならば、章別として一應此の次の災害補償の方に行きますが、それを主題として其の外の關係のある御質問等を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=19
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020・種田虎雄
○種田虎雄君 七十九條に「遺族又は勞働者の死亡當時その收入によつて生計を維持した者」と云ふことが書いてありますが、是はどう云ふやうな意味なのでございませうか、御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=20
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021・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是は從前にもありました規定でございますが、勞働者が亡くなつた時に補償を其の遺族にやる、其の遺族と云ふのは戸籍上餘りやかましく言ひますと、實體に副ひませぬので、遺族又は其の本人に依つて生活されて居つた扶養者、それ等の者に對して其の遺族補償をやる、其の順位等は現在の工場法の施行令等にもございます、先づ第一に嫡出子であるとか、其の次は弟とか、妻であるとか云ふ色々な順位があります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=21
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022・種田虎雄
○種田虎雄君 勞働者の「死亡當時その收入によつて生計を維持した者」と云ふのは遺族もあり又其の勞働者の死亡當時其の收入に依つて生計を維持した者もある場合には兩方にやると云ふのでありますか、さう云ふ場合にはどう云ふ風に御裁きになるのでありますか、順位もさう云ふ時には決めてございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=22
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023・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) さうではございませぬので、それは先順位の人に補償をやるのでありますが、先程申しましたやうに遺族と申しますと、唯妻であるとか、子供であるとか云ふことになります、さう云ふ者があれば勿論さう云ふ順位者にやりませうが、なければ兄弟とか或は親戚の者であるとか、さう云ふやうな段々と薄くなりますけれども、其の勞働者の死亡當時、其の收入に依つて生計して居た者迄も順位に依つて定めることになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=23
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024・種田虎雄
○種田虎雄君 八十二條の規定を御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=24
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025・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 傷害補償と遺族補償に付きましては、今の工場法でも行政官廳の許可を受けて、分割拂をすることが出來ると云ふ規定でございます、此の法律では、此の法律の補償義務は、勞働者災害保險で裏付けすることになつて居りますけれども、其の強制適用を受けない小さい五人未滿の事業は、強制適用を受けないのでございまするが、さう云ふ事業に於きます使用者の支拂能力などを考慮致しまして、從來の分割拂の制度を少し改めまして、斯う云ふやうな規定を設けたのであります、今の工場法と違つて居ります點を申上げますと、第一に行政官廳の許可を受けることを要しない、使用者が支拂能力のあることを證明し、證明の方法は別に規定して居りませぬが、同意を得る爲の一つの方法として、支拂能力のあると云ふことを證明する、さうして勞働者の同意を得ると云ふことで、從來の行政官廳の許可に代へると云ふことに致したのであります、行政の簡素化を圖ると云ふことと同時に、現在の失業問題などを考慮致しまして、傷害を受けました勞働者でありましても、作業の轉換等に依つて、出來るだけ長く其の職場に留まる方が有利であると考へて、斯う云う問題は官廳と使用者との許可關係と云ふ、官廳と使用者との取決めよりも、當事者間の合意を尊重した方が、圓滑に行くと云ふので斯う云ふ風にしたのであります、唯事業者に付きましては、行政官廳と致しましては、それが分割された場合、履行出來るかどうかと云ふ點がありますので、此の點は分割拂になつた場合は、現行の施行規則で定めて居ります通り屆出る報告の義務は課せられることになると思ひます、此の法律の施行令で、さう云ふ點は定めて行く必要があらうかと思ひます、尚從來の分割拂に於きましては、分割の方法と金額に付ては、何にも規定がなかつたのであります、之に付きましては六年定期、六年分に分割して同一金額を拂ふ使用者の便宜ばかりでなく、勞働者の便宜も同時に考へると云ふ建前で、分割補償の定を致したのであります、元來御承知のやうに災害補償の金額は、一定の定期金制度を執るのが一般の例でありまして、國際勞働條約で定めて居ります災害補償に關する條約も、定期制度を執ると云ふことを規定して居ります、それで此處では從來の工場法の精神を採りまして、一時金制度を執りましたけれども、一時金制度に加味するに定期金制度、それを勞資双方の便宜の立場から調整すると云ふ建前で、斯う云ふ六年の定期金制度と云ふ制度を執つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=25
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026・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明で分りましたが、傷害補償の方には、第九級から第十四級迄あつて、五十日から千三百四十日分迄あります、此の分割拂と云ふのは、是はどの程度の金額に對しても、分割拂を認めると云ふことになるやうな勘定になりますが、隨分低いのもあるやうですが、其の點はどう云ふ御考へなんでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=26
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027・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 仰せの如くでございますが、元々此の一時金を算出しますのに、六年定期と云ふ考へ方で算出して居るのであります、金額の多寡に拘らず、六年定期と云ふ原則を採つて、全額の小さいものに付ても、適用すると云ふ制度に致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=27
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028・畠山一清
○委員長(畠山一清君) まだ御質疑は御ありのことと思ひまするが、後から又願ひまして、次の「就業規則」と「寄宿舍」と此の二條に付て一應御審議を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=28
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029・種田虎雄
○種田虎雄君 此の八十九條の就業規則でありますが、此の内容は相當廣きに亙つて居りますが、相當問題になるやうなことも多々含まれて居ります、此の就業規則に付て、他の國の實際どう云ふやうな内容を就業規則として居りますか、それを承れば結構と存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=29
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030・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 就業規則は大體各國の勞働立法で規定して居るのが普通でございますが、其の中で各國の記載事項の内容は略略同一でございますが、行政的に必要な記載事項として、就業規則に記載を義務付けて居ります、問題と致しましては、勞働日の開始時間、終了時間、それから休憩、休日、賃金決定の方法、特に時間給、日給、請負、出來高拂の別、それから出來高拂制、請負制の場合に其の計算竝に監視の方法、賃金支拂の時期と云ふやうなことに付ては、必要的な記載事項として規定して居るのが普通であります、尚以上のこと以外でありましても、企業全般に亙つて、一定の準則があります場合には、監督員の權利義務、異議ある勞働者の上訴方法とか、それから物品を給與して賃金を差引くものであるとか、解雇の豫告期間は、法律上の豫告期間を設けるものとか、それから豫告なしに契約を解除し得る場合であるとか、制裁の規定、表彰の規定、それから制裁の場合の減俸の種類、減俸の額、それの適用の方法と云ふやうなこと、それから更に清潔、安全、風儀に關すること、災害が起つた場合、應急手當の方法であるとか云ふやうなことを規定して居るのが普通の事例であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=30
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031・種田虎雄
○種田虎雄君 退職に關係しました事項とか、退職手當或は賞與云々と云ふやうな、斯う云ふやうなものの規定が各國にありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=31
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032・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 退職に付きましては、只今申上げましたやうに、退職の際の解雇の方法であるとか、解雇の豫告と云ふやうな問題はございますが、退職手當に付きましては、記載事項として規定して居るのは承知致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=32
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033・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 此の第八十七條に請負が二次、三次に互つて、我々の事業で申しますると、斯う云ふ機會が度度あるのです、そこで第八十九條の規定を只今種田委員から御質問がありましたが、退職に關する事項なんと云ふものは、下請が、是はなすべき仕事なんですが、元請としては、之に關與しなくても宜いのですか、どうなんですか、請負の場合には……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=33
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034・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話のやうに、數次の請負をして居ります時は、矢張り其の下の直接使つて居る所が使用者でございまするから、これが使用關係として、總ての此の勞働關係の義務を果さなければならぬ、唯此の八十七條に付ての災害補償に付きましては、現行法に於きましても、此の補償が動もしますると、下請が義務を履行しない虞が多いものですから、是だけは特に取上げまして、元請人を使用者とし、併し下請が拂へば宜いし、拂はなければ矢張り使用者、元請人が責任を負ふ、是は現行規定にあるのでありまして、是だけ特に取上げたのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=34
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035・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 下請人は第八十九條の規定を作業法に掲げてなにをしなければならぬことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=35
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036・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=36
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037・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 此の點は非常に現行の下請業者としては、困難な問題だと思ひます、實行を實は危ぶむものでございますが、是はむつかしい問題ですね、殊に長期に亙りますのは、退職の色々な規定が設け得られるのでありますけれども、我々の作業は極めて期間が短かい場合もあるのです、さう云ふ場合に是が果して適用が出來ますか、出來ませぬか、何等か請負事業に付ては此の除外例が設けられなければ實行が不可能になるのぢやないかと危ぶむのでありますが、其の點は如何でございませうか、例へば二月三月、もつと短い場合もあるかと思ひますけれども、一々此の規定が適用が出來ませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=37
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038・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話のやうに、土木なんかのやうな下請に於きましては、是等の事項を詳細、全部に亙つてと云ふと實に困難な場合があらうと思ひます、此の就業規則は先程ちよつと説明致しましたやうに、一と申しますか、一から二、三と云ふ風にどうしても記載が必要な事項、凡そ使用する上に於ては、此の條件として必要な事項はやらなければならぬ、其の他の事項は、若し斯う云ふ事項を掲げる場合に於ては、それを決めて置かなければならぬ、斯う云ふことでありますから、此の就業規則にありまする一から九迄を全部義務づけて居る譯ではございませぬから御了承戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=38
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039・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 尚もう一つ御伺ひ致しますことは、詰りピース・ワークが多いのです、第二次、第三次に亙りまして、又其の下の勞務者を使ふ場合にはピース・ワークが非常に多いのです、例へば掘り方を使ふに致しましても、技術者は幾らと云ふやうなことをやつて居る、さう云ふピース・ワークの場合、是は今の御答辯に依りますれば全部を適用しなくても宜いと云ふのですが、さう云ふピース・ワークの場合もあると云ふことも、餘程當局に於ては御認識を願つて置かないと、可なりさう云ふ場合が多いのぢやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=39
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040・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 請負の場合、中小工の場合等に對しまして、此の法律全體が非常に細か過ぎて煩瑣であると云ふことは、實は餘程考慮した問題であります、それで此の勞働基準法の適用に付きまして、大體矢張り建前として二つの建前がありまするので、結局實情を主として、さうしてそれにぴつたり嵌る法制を編むと云ふことと、それから稍稍煩瑣になりましても、勞働者の保護の爲にはどうしても斯う云ふものを作つて、それで日本の勞働者保護、民主主義の線に沿うて勞働者保護と云ふことをどうしても達成させなくちやならぬ、それには教育も、自覺も、工場監督も必要だが、其の線に沿うて進めなくちやならぬと云ふ建前と、二つの建前が實はある譯です、それで政府としましても、此の二つの建前に付きまして餘程深甚なる考慮を拂ひ、又關係方面とも十分折衝を遂げまして、さうして第二の方法を採ることになつた次第であります、其の點は御了察を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=40
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041・種田虎雄
○種田虎雄君 只今政府委員の御説明の中に、就業規則、「左の事項について就業規則を作成し」と書いてありますので、私共は是だけのものはどうしても作らなくちやいかぬかと思つたのですが、強制すべきものとさうでないものとあると云ふことがちよつと御説明の中にありましたが、それは何處の條項にさう云ふことが書いてあるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=41
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042・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 策八十九條の一號から三號迄は必要的な記載事項、四號以下は條文に書き分けて居りまするやうに、四號に、最低賃金額の定をする場合に於ては、之に關する事項、五號、六號以下何れも斯う云ふ定をする場合に於ては、之に關する事項、そこの事業場でさう云ふ規定を設けるなら、それは就業規則に書いて置かなければならぬ、斯う云ふ意味のことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=42
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043・種田虎雄
○種田虎雄君 分りました、序に伺ひますが、此の行政官廳と云ふのは、今度出來ます監督機關を指すのでありますか、或は從來各企業に對してのそれぞれの監督官廳をも指すのでありますか、此の行政官廳の意味をどう云ふ意味に取つたら宜いのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=43
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044・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 此處で各條で申して居ります行政官廳は、第百條を御覽戴きますれば、大體のことが分るやうになつて居ります、末端の機關と致しましては五十八頁の百條の終りの方でございますが、勞働基準監督署長が「この法律に基く臨檢、尋問、許可、認可、認定、審査、仲裁その他この法律の實施に關する事項を掌り」と、斯う云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=44
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045・種田虎雄
○種田虎雄君 私の尋ねたことが意味が徹しなかつたやうでありますが、例へば鐵道の如きは運輸省の現在監督を受けて居る譯であります、さう云ふ場合に就業規則やなんぞを屆け出ると云ふ其の行政官廳、それは運輸省の關係にも屆出をし、又此の法律に書いてある勞働關係の監督機關にも屆出る、斯う云ふ意味なんでありますか、どう云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=45
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046・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の八十九條に規定致しまする行政官廳は、此處ばかりでなしに、他にもございますが、此の法律の施行に付きましては、只今政府委員の申しましたやうに、所謂此の法律に基く監督機關、所謂監督署長の許可、認可、屆出、斯ういふ風になつて居ります、それで御話のやうに鐵道なんかに付ては、營業監督の上からさう云ふものを含めて、色々な營業時間なんかの屆出なり認可があらうと思ひます、それは其の方の別個の法律の要求に基くものでありますから、それはそれぞれの又監督官廳に恐らく屆出なり許可があらうかと思ひますが、之に掲げて居りまするのは、此の監督機關の許可を要するのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=46
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047・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 もう一つ御伺ひ致したいことは、私は近來のアメリカの情勢は知りませぬけれども、以前に我我が調べた時には、アメリカには職別の組合がありまして、ちよつと一例を申すと云ふと、煉瓦工が、詰り前の晩向ふの事務員が廻つて參りまして、明日は此の職場には何人職工を要するかと云ふことを見に來るのであります、そこで明日は煉瓦工は十人仕事をするのに要ると言へば、十人やつて來て規定通り働いて歸る、翌日は又別の手配をして行くと云ふやうなことで、土木建築の如き、日々に作業が變る、今日十人使つて翌日も十人と云ふこともない、一應積上げれば、又二、三日そこでセメント硬化を待つて積上げると云ふやうになつて居る譯であります、そこでさう云ふ手配が極めて圓滑に行つて居る、土木建築のもう一つの仕事の性質と云ふものはさう云ふものであります、そこで將來我々は矢張り日本に於きましても、さう云ふやうな勞働者の組合が出來て、それが始終我々に勞務者を供給すると云ふ形が一番都合が好いと思つて居る、今斯う云ふ八十九條の規定とか其の他を考へますると、我々が矢張り勞務者を傭つて雇傭關係が生じて、斯う云ふ手續をすると云ふことは非常に面倒なのであります、そこで是は當局の御方針を承りたいのでありますが、我々は矢張りさう云ふやうな組合を作ることを寧ろ奬勵して、さうして勞務者に對する總ての何と言ひますか、福祉を圖るとか何とか云ふものは、さう云ふ組合がやるにしても、我々は日々勞銀の形に於てさう云ふ何を見ることは宜くないかと、今ちよつと思ふのでありますが、當局はさう云ふ問題に對して何か外國の例などを御調になつて居るかどうか、又指導方針としてさう云ふ考へ方が宜いのかか惡いのかと云ふことを一つ伺つて見たいと思ひます、どうも雇傭關係を生じて、きちつと云ふ譯には行かないんですね、どうしても何かさう云ふ組合でもあつて、それから自分の作業に最も適當な勞務者を日々入れると云ふ形が一番都合が好いのでありますが、將來此の日本の再建を期する上に於きまして、勞銀が徒に高くなると云ふことは好ましいことではない、是等が能率的に働くことが必要である、さう云ふ考へ方の下に勞務者を指導して宜いのかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=47
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048・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 私も餘り詳しくは存じませぬが、今竹中委員の仰しやいまするやうに、恐らくさう云ふ職業的なものに付きましては組合が出來て居りまして、さうして其の組合との話で日々入つて來て仕事をすると云ふことが行はれて居ると思ひます、日本でも所謂勞務供給業者と云ふものがございまして、從前はさう云ふ人が所謂使用者との間に契約する、さうして日々労務を提供して居りますが、是は所謂此の中にありまする中間搾取の形態を取つて居るのでありまして、間に勞務だけの請負をして、さうして使用者の方に供給をして仕事をして行く、是は此の法律では認め難い、是は特別の法律、職業紹介法等で特に許可をして居れば格別でありますが、さう云ふ形態としては出來るだけ取りたくないと云ふ趣旨でございます、今竹中委員の仰しやいましたのは、同じ職業を持つ者が、例へば左官であるとか、或は大工であるとかと云ふ者がさう云ふ組合を作つて、さうして組合として行動をすると云ふことは今後も起つて來るだらうと思ひます、それは結構ぢやないかと私は思ひます、唯併し使用者の方がさう云ふ組合と話して日々やつて來るから、唯賃金だけ拂へば宜いぢやないかと云ふ風には是は行かないので、假に日々傭入れましても、直接使ふのはそれは使用者が使ふのであります、組合が組合長なり組合の役員との話で職人を連れて來る場合がありましても、其の使用關係の責任は矢張り使用者にあるのでありまするから、使ふ上に於ての最小限度の勞働條伴と云ふものは、是ははつきり決める必要がありまするし、又勞働者に對する福利も、或程度は是は使用者の義務に屬すると思ひます、唯さう云ふ今の職業關係の組合が出來ますと、所謂トレー・ユニオンでございますが、さう云ふものは組合としても其の組合員の福利事業を色々やつて戴くと云ふことが私望ましいと思ひます、勞働組合は唯單に團結して、所謂使用者とぶつかつて團體交渉をするだけを組合の使命と致しませぬで、矢張り其の組合員の福利を組合員自身に於ても考へて行くと云ふ風に向ふことは結構であると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=48
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049・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 御質問もございませうと思ひますが、商工大臣が御見えになりましたから御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=49
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050・種田虎雄
○種田虎雄君 此の勞働基準法が實施されますと、相當我が國の産業に影響があるのぢやないかと云ふ風に考へて居りますが、先般厚生大臣の御意見では、彼れ此れ相殺して大した影響はなからうと云ふやうな御考のやうに承りましたが、商工大臣として我が國の産業が殊に將來日本の食糧其の他の輸入に對する見返り物資として出さなければならない所謂輕工業、就中纖維工業の如きものは、此の基準法の實施に依つて相當の影響があるのぢやないか、從來ソシアル・ダンピングと云つて色々彼れ此れの批判を受けて居りました日本の纖維工業も、恐らく此の法律が實施されれば、さう云ふ心配はなくなるだらうと云ふ風な氣が致します、のみならずそれ以上に相當法案の内容が、どつちかと云へば進み過ぎて居ると云ふやうな感もする規定があるのであります、殊に女子保護に關する規定は相當進んで居るやうに思ひます、他の國の規定にも見當らないやうなこと迄も規定されて居る、從つて纖維工業の如き從來女子を多數使用して居つた産業には重大な影響があるのではないかと、斯う考へて居るのであります、之に對しまして商工大臣は如何なる御見透しがありますか、承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=50
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051・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 現在の形の儘、現在の人の使ひ方、技術それから能率と云ふものが變らないならば正に御話の通りに總ての産業で年少者を使ひ、又女子の若い者も使つて居たやうなものに付て打撃が起るのは當然だと思ひます、特に纖維産業の面でありまするが、纖維産業では特に若い者を使つて居つた、今囘の規定に依りまして見ましても、數の上を調べますると、纖維工業の今大體の勞務者數が四十四萬位ありまするが、其の中の約十五パーセント、六萬人位が十八才未滿の年少者であります、更に本法に依つて就業不能となりまする十五未滿の者が更に其の中の二十パーセント、約一萬二千人位と云ふことに相成つて居ります、此の一萬二千人位であれば、是は何とか六箇月の猶豫期間もありますので、其の間で切替も出來るであらうと云ふことは考へられますが、總體と致しまして勞務者がまだ不足でありますので、本年の國民學校の卒業生を採用する豫定が約六萬四千位豫想して居る譯であります、是が皆いけなくなりますると、ちよつとここ暫くの間に非常に困難な事態が出て來ると思ひますが、是は此の法案が出る豫想の下に、募集の給源と申しまするか、其の方面の子供達を使はないで、十五才以上の者を採用すると云ふ方針でやらして居りますので、暫くは困りませうが、順次直つて行くだらうと思ひます、併し御承知のやうに此の頃は農村の方が食物事情も好く、其の他の事情も好いものでありますから、農村から絶えず此の勞務者、特に若い女の子などを纖維工業に引つ張つて來たと云ふこと、是は實際上は非常に困難なのであります、さう云ふやうな事情と併せ考へますと、紡績の勞務者に農村の若い娘さん達を連れて來れない、都會の娘さん達はなかなか來たがらないと云ふことで、事實上は困難な状態がずつと連續して考へられるのでありますが、さう云ふ方面から離れて、少し年の行つた者でも、都會地の仕事がなくなつて、女の人等を使用すると云ふやうなことで、是は行き得るだらうと思つて居ります、併し之には業者だけでなく、相當政府の方でも此の面の指導援助をしなければ、勞務者を獲得するのに困難ではないかと思つて居りますが、是が一番大きな例でありまして、其の外の産業、特に中小工業一般の面から見ますと、是が此の法律が適用せられまする爲に起る惱みと云ふものは相當あるやうに思ひますが、是は一番の問題は、時間の問題等が直ぐ來る譯でありますが、是は勞務者全體と業者との間の話合に依つて、時間の延長も出來るとか云ふやうなこと等で、一通りは困難を打ち破る途があるのでありますが、併しそんなことは、斯う云ふ途もある、ああ云ふ途もあると云ふ、僅かな逃げ道の話でありまして、根本に於てはどうしたら宜いかと申しますると、能率を高めると云ふ面に行くより外仕方がないと思つて居ります、今の紡績の關係を見ましても、御承知と思ひますが、戰爭前の能率と今の能率とは大變な差であります、暫く勞務者の間に、仕事が外の方面に變つて行つたと云ふやうな事情もあるが、紡績工の熟練者が段々減つて居ります、前に一人で百錘のやつを二臺も三臺も受持つたと云ふのに、今では一臺に對して一人ではやり切れないと、二人掛るとか、或は三人掛るとかと云ふやうな状態で、ひどく惡くなつて居ります、斯う云う處が段々慣れて來れば、元のやうになる、或は元以上にも働くやうになりますれば、假令年少者で給與の低い者に代つて、年長者の高い者になつても、計算の上にうまく行くのではないかと云ふ風に紡績の面では考へますし、其の他の方に於きましても、技術の指導と、能率の増進と云ふやうな方面にうんと力を入れて行かなければ、是は是から先中小工業と云ふやうなものから出て來る産物がどうしても此の國際貿易の根幹になる傾向を持つて居りますので、此の前も中小企業の將勵に對する色々な要綱を我々の方で決めた場合にも、是非此の技術の指導と能率の増進には、政府も力を入れて指導すると云ふことに致して居りますので、それや是や併せまして、過渡的に多少の困難もありますが、之をやつて行つて居る中には、自然と是が實施した爲に惡くなる、それは辛うじて辛抱して行く、何とかやつて行くと云ふだけでなく、積極的に良い效果も現れて來るのではないかと云ふ風に私共は考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=51
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052・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明で大體了承致しましたが、御説明の中に、技術の指導、能率増進等に依つて缺陷を是正して行くと云ふやうな御説明がありましたが、能率の増進を圖るのには、矢張り賃金の形態等に付て相當適當な形で之を決めて行かなければ、勢で能率の増進は出來ないのではないかと、勿論設備の改善等もございますけれども、一つは働けば働くだけ或程度は報ひられる、骨の折れる仕事に從事すれば矢張り相當報ひられる、斯う云ふ賃銀形態を取らなければいかぬのぢやないかと思ふのでありますが、大體今後の勞働行政を扱はれる官廳は、近く勞働省と云ふやうなものが豫想されて居るやうでありますが、さう云ふ能率増進に關係のある、最も根幹を成す賃銀形態等に付きまして、商工省として今後どの程度に關與されるやうなことに相成るのでありませうか、さう云ふ點に付て伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=52
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053・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 色々な面の給與、今のやうな御話の點等も考慮致しましての各事業別、各勞務者の給與等に付きましては、内閣の經濟安定本部の中に設けて居りまする給與審議會で、現に其の方針の下に議を進めつつあるのでありまして、之に依りまして各方面の智識も集め、そして政府の方の色々な意嚮もそれに案として持ち出しまして、研究した結果に依つて、それを御趣旨のやうな線に副つて之が決定されるやうに、そして實施されるやうなことになると云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=53
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054・種田虎雄
○種田虎雄君 私の質問は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=54
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055・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 他にどなたか商工大臣に對する御質問はおありでございませぬか、おありになれば此の際御尋を願ひたいと思ひます、他にございませぬか、其の他の質問を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=55
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056・種田虎雄
○種田虎雄君 此の第九十條に就業規則の作成とか變更に付きまして、勞働組合方面等の意見を聽かなければならぬと書いてありますが、意見を聽かなければならぬと云ふ意味なんでありますか、ちよつと御説明を願つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=56
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057・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 第九十條の就業規則は、先程から申しましたやうに、其の職場に於ける勞勞働條件を決定するものでございまするので、勞働組合がありまする時は勞働組合、組合がございませぬければ、其の事業場の勞働者の過半數の代表の意見を徴してから決めると云ふことを規定して居るのであります、是は先般も申上げたかと思ひますが、意見を聽くと云ふことであつて、必ずしも同意を要すると云ふ趣旨ではございませぬ、併し唯事業場の方で一方的に決めると云ふことのないやうにと云ふことであつて、民主的にと申しまするか、出來るだけ勞働者の意見を反映させて決めるやうにと云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=57
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058・種田虎雄
○種田虎雄君 此の八十九條の就業規則の中に、恐らく各工場或は會社等に於きまして、退職手當とか、賞與とか、何かさう云ふやうなものの規定のない所は殆どないので、さう云ふやうな規定が恐らくあるのだと思ひますが、さうしますと、此の點に付ては相當に使用者側と勞働者側とは意見が違ふと思ひます、勞働者の方では、多ければ多い程宜いと云ふことにまあなる譯で、使用者の方では經營者の立場から色々な意見を持つて居るだらうと思ひますが、殊に退職手當に付きまして一年を何日に換算するとか云ふやうな問題は、是は相當面倒な……、是は餘り今迄發表がないから、問題が起らなかつたのですが、之を發表して必ず就業規則の中に織込まなければならぬ、斯うなると、是は紛爭の種を播くやうなことになるのではないかと思ふけれども、是は定がないのだと言つて突つぱつてしまへばそれで宜ひか知れませぬが、恐らく是は相當の所なら皆持つて居る譯で、之を定があるからと言つて發表すれば問題になる、然らば定がないとして、其の都度決めるのだと言つて逃げなければならぬと云ふ妙なことになつて、運用上の問題としては是は非常にむづかしい問題だと私共は思ふのでございますけれども、當局では斯う云ふやうなことを極く簡單に考へておいでになるんぢやないかと云ふやうな氣がしますので、それ等の點に付て一つ色々實際問題を御研究になつたのでございますか、伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=58
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059・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話のやうに可なり是はむづかしい、面倒だと思つて居ります、併しながら從前の所謂勞働條件と云ふものは、今御話のやうに、所謂内規とか何とか云ふやうなことで、賃銀の計算の基礎を勞働者には明示しないで、唯入つて來て、會社の方で一方的にやつて行くと云ふやうな場合がある、決して惡意ばかりでなしに、それは善意の場合も多いのでございますが、それが往々にして封建的な取扱ひと言ひますか、さう云ふ風になつて居りますので、此の勞働基準法に於きましては、さう云ふ勞働條件と云ふものは一切さう云ふ隱れた方法でなしに、公に勞働者に示して、さうしてやつて行くと云ふ建前を取ると云ふことで、相當此の點は從前から見ますれば、其の點は改めると云ふ氣持で居ります、誰併し御話のやうに、退職金やさう云ふ勞働條件の問題になりますると云ふと、御話のやうに勞働者側が高ければ高い程宜いと云ふ主張が出るでありませうが、そこで同意を得なければならぬと致しますると、是は到底同意はむづかしい場合が多からうと思ひまして、ここでは同意と云ふことを要求しない、唯意見を示す、意見を聽くと云ふことを取つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=59
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060・種田虎雄
○種田虎雄君 先程政府委員の御説明にもございましたやうに、恐らく此の退職手當の、所謂手當なんと云ふやうなものを出すやうな國は、他にはないと思ひます、斯う云ふ事自體が封建的なんです、此の封建的なものを殘して置いて、さうして一方に於てはもつと進んだことを何とかやらうと仰しやるので、是は甚だ今日の賃銀形態なるものが大分進んで來て居る、斯う云ふものを要求して居ないのだらうと思ふ、今の賃銀と云ふものが……斯う云ふものが、若し退職手當なんと云ふものが相當にあるのだ、或は賞與と云ふものが相當にあるのだと云ふことならば、是は矢張り普通の賃銀に於ても相當考へなければならぬ問題ではないか、處が普通の賃銀に於ては文化生活の出來る賃銀を要求して居る、殊に更に賞與金も從來通り封建的な考を以て退職手當なども出す、賞與金も出す、而も是は斯うしろと云ふことであれば、事業經營などと云ふものは出來るものではないと私は考へます、ですからどつちか方針をはつきり御決めにならないと、矢張り徒らに問題の種を播くやうになるのぢやないかと云ふやうな氣が致しますので、ちよつと御尋ねした譯であります、決して私は封建的な考を持つて、之を隱して置けと云ふ意味ではないのであつて、元々斯う云ふことを是正するならば、斯う云ふことは止めたらどうか、何故政府が進んで御やりになつたかと云ふ風な氣がするのであります、斯う云ふものを殘して置くと常に紛爭の種を播くと云ふ風に考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=60
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061・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話のやうに退職金、賞與と云ふやうな制度は、賞與はございますが、退職手當と云ふやうな制度は他所の國には餘り聞いて居りませぬ、是は將來相當考究を要する問題だとは思ふのです、但し他所の國では退職手當がない代りに、所謂失業保險の制度がございまして、詰り長年勤めた者が退職手當を貰つて、さうして老後の營みをすると云ふ、此の退職手當の代りに、今の失業保險の方が、長い短いに拘らず、失職して居る間は其の保險に依つて生活が出來ると云ふことでございますから、是はどちらが宜いか、或は失業保險の方が合理的かも存じませぬが、併し此の退職手當などは封建的と言へば封建的かも存じませぬが、矢張り日本人の氣持にそぐつて發達したやうにも見えまするので、之を直ぐ止めるのは宜いかどうか、止めるに致しますれば、今のやうな之に代る制度も考へての上でないと、矢張り直ぐ止める譯にも行かぬのぢやないだらうかと思つて居ります、賞與の場合も御話のやうに他所の國にもありまするが、日本のやうに非常に賞與が多い、多いのはどうかと云ふのでG・H・Qあたりで矢張り官吏の俸給等を決めまする場合にも、或方面の意見ではありましたが、矢張り斯う澤山な賞與をやるより、此の賞與を賃金に織り込んだらどうかと云ふやうな意見で、去年の七月に改訂致しました官吏の俸給制度は此の賞與を賃金給與中に織り込んだやうな事情であります、併し是も亦賃金が相當高ければ斯う云ふ問題はなかなか起らぬでも濟みますけれども、御承知のやうに、給與が今のやうな状況でなかなかぎりぎりでありまするから、矢張り年末とか、年度末なんかになりますると、何等かの形で出さざるを得ないと云ふ状況でございまして、是は先程も申しましたやうに、退職手當を是非出さなければならぬぞ、賞與を是非やらなければならぬぞと云ふのではございませぬ、若しやると云ふ風な氣があるならば、やると云ふ何があるならば、是は隱して居つて幾ら呉れるのか分らぬと云ふことでなしに、是はきちつと規定をして置くと云ふ趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=61
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062・種田虎雄
○種田虎雄君 御趣旨はよく分りますが、どうか私の希望として重ねて申上げて置きますが、政府の方では成るべく早い機會に失業保險、社會保險等に付きまして、十分一つ日本の國力が或程度増進するに連れまして、さう云ふ立派な制度を御立てになつて、各産業の經營者が國家の負擔すべきもの迄も負擔して、さうして産業の再建をやれとか、經營をうまくやつていけ、斯う云ふやうな今日のやうなやり方では到底經營は成立たない、經營の根底を成すものは、矢張り或程度の合理的な基礎に於て、人件費、物件費等を支出しなければ産業は成立たないと思ふのでありまして、今日のやうに國が負擔して行かなければならぬやうなもの迄も各企業者が負擔して行かなければならぬと云ふ、此の制度を成るべく早い機會に是正するやうな方針で、色々社會保險なり、失業保險の制度の完備を斯して戴きたいと云ふことを御願ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=62
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063・牧野英一
○牧野英一君 政府委員にちよつと伺ひますが、九十三條、法律的な言葉の使ひ方でございますが、「無效とする。」と云ふ言葉がありますが、從來の就業規則を變更することに依つて勞働契約の方が有利になつた場合にはどう云ふことになりますか、無效とすると云ふことになると、消えてしまふやうに考へられるやうな文字の使ひ方になつて居りまするが、其の間足踏みをして居ると云ふ意味でありませうな、さうぢやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=63
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064・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 就業規則が變更せられまして、就業規則以上に個個の勞働契約の内容がなつて居ります場合には、就業規則に定める條件に達しない勞働條件を定める勞働契約が無效……就業規則以上のものが無效になる譯ではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=64
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065・牧野英一
○牧野英一君 一度無效になりまして就業規則の方が勞働者に有利な場合……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=65
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066・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 就業規則が勞働契約よりも有利になります場合には、一度無效になりまして、後段の規定で、就業規則の定める基準に依る……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=66
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067・牧野英一
○牧野英一君 と云ふことになりませう、今度就業規則が其の後變更されるのでせうな、變更されて勞働契約の方が有利になつた場合には無效の契約が活き返る譯でございませうな……私の疑の趣旨は御分り下さいますかしら、無效と云ふ言葉が少し強過ぎるぢやないかと云ふだけのことになります、無效ではないので、其の間契約の方が效力を停止される、斯う云ふ位な意味に私は解したのですが、それで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=67
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068・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 牧野先生の御尋の點能く分りました、そこ迄は考へて居りませぬのでしたが、今のやうに就業規則で定めた條件よりも契約の方が低い時には、其の部分が無效になつて、就業規則で定めた基準になると云ふ譯でありますが、其の裏の方と申しますか、あべこべに其の後變更されて契約の方が高くなれば、高くなつた方が活き返ると云ふことになりますと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=68
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069・牧野英一
○牧野英一君 なりませうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=69
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070・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 從つてまあ此の無效と云ふのは、それが無效と言ひますか、停止することになると思ひますが、そこ迄は氣が附きませぬでございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=70
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071・種田虎雄
○種田虎雄君 度々伺つて申譯ないのですが、此の八十九條其の他の規定でありますが、是は官公吏にも無論適用があるのでございませうな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=71
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072・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=72
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073・種田虎雄
○種田虎雄君 實際上の問題として何か現在の法規關係に於て不都合は生じませぬでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=73
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074・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 大體不都合は生じないと思ひます、是は就業規則と云ふ機構一本でやるのでも宜し、又それぞれの事項で決めても宜い譯でありまして、官廳には大體所謂始業の時間と言ひますか、出勤の時間、退廳時間なり、それから賃金に付きましても給與規定もございまするし、或は退職に關する規定もあり、大體現在の所あるものが多いし、無いものに付きましては此の趣旨に從つて作つて宜いのではないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=74
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075・種田虎雄
○種田虎雄君 九十一條等は現在の懲戒處分に關係のある色々の規定が實際官公吏一般に適用されて居りまするが、誠に現業の官廳等もありますやうでございますが、さう云ふ所と是が牴觸するやうなことはありませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=75
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076・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 是はさう細かく其處迄照し合せませぬで、それぞれの現業官廳とも相談を致しまして是なら宜いと云ふ了解の下で出來て居りますが、或はさう云ふ風な基準の決め方で多少牴觸するものが出るかも知れませぬ、それはもう此の基準に依らうと云ふ考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=76
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077・種田虎雄
○種田虎雄君 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=77
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078・畠山一清
○委員長(畠山一清君) それでは次の第十一章監監機關に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=78
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079・種田虎雄
○種田虎雄君 今度地方自治法案が相當全面的に改正されるやうでありますが、都道府縣、或は其の他の行政機關と此の監督機關と競合するやうなことはないんでございませうか、此の點に付て伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=79
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080・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 重複するやうな點はございませぬ、ございませぬが、ちよつと申上げて置きたいことは、此の勞働基準法の施行は此の法律にありまするやうに、國の主務省の直轄機關としてそれぞれ府縣から獨立した基準局が出來、其の下の監督署と云ふものが出來るのであります、一方御承知のやうに爭議關係の、勞働關係の方の行政でございますね、爭議を調停するとか、斡旋するとか云ふ、斯う云ふ方面の關係は、是は府縣の方に殘る譯でございます、ですから所謂全般的な勞働行政と云ふものが二つの系統になると云ふ状況にはなります、是はどうしてさう云ふ風になるかと申しますると、此の監督機關は府縣々々で區々であつてはならない、矢張り一本でなくちやならない、而も其の監督と云ふことは、是は矢張り嚴正と言ひますか、各府縣とも同じやうに所謂監督機關が行はれなければなりませぬ、そこで府縣から獨立してやつたら宜からうと云ふ趣旨で、是はもう各國とも國際勞働會議に於きましても勞働法の監督機關はさう云ふ風なものが望ましいと云ふことを言つて居りますから、さう云ふ方法を採りました、それから爭議關係の調停と云ふやうなことは、是は可なり府縣の知事あたりの關係の多いと言ひますか、知事の努力に俟つと申しまするか、府縣行政に關係する所が非常に多うございまするから、是は獨立致しませぬで、全國的なものは、是は國及び中央勞働委員會と云ふやうなものに依つてやりまするけれども、府縣内に於ける爭議の調停、斡旋は、是は府縣の行政として殘した方が宜いと云ふことで別れて居ります、序でではございまするが、ちよつと申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=80
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081・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明で大體分りましたが、色々事業の監督を受ける方の所謂會社工場等の立場から言ひますと、或問題は斯う云ふ監督機關に持つて行かなければならぬ、或問題は府縣廳に持つて行く、其の中にある委員會に色々持つて行かなければならぬと云ふことになると、勞働者側としても、事業經營者側としても非常に是は面倒ぢやないのかと思ひますし、殊に御承知のやうに將來は或は迭るでございませう、行政官が今迄は迭る譯なんです、擔當者等も隨分迭る譯でありますが、此の監督機關は恐らくは先程も大臣がお話になつたやうに終身斯う云ふ仕事に沒頭してやつて行くと云ふやうな熱意とそれだけの眞面目さを以てやる方が、勞働者を保護する、又事業經營者に對しても産業が成立つやうに指導して行くと云ふやうな意味のことがなければ、是はうまく行かないと思ふのです、それが矢張り兩方に行かれると云ふことは非常に實際問題としては困ることが起るのぢやないか、中央に於て既に全國的のものは中央勞働委員會なり或は勞働省が出來れば勞働省でお扱ひになるのでありませう、中央に於ても段々今の傾向から云ひますと、組合も段々産業別と申しますか、單一組合に段々となつて來るやうな傾向もあります、さうなつて來ると、地方的に色々處理されて居る問題が可なり中央に來ることが多くなるやうに思ふのであります、此の點に付ては隨分御研究になつて居ることと思ひますが、今後の實際問題として相當お考になつて、將來どちらが宜いか十分に御研究願はなければならぬ點だと思ひますので一言申上げて置きます、此の百二條に此の法律違反の罪に付ては司法警察官の仕事を勞働基準監督官が行ふやうになつて居りますが、此の法律違反は他の司法警察官が矢張り扱ひ、又勞働基準監督官が扱ふのでありますか、勞働基準監督官だけでやりますか、其の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=81
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082・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 一般の司法警察官は排除する意味ではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=82
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083・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御説明に依ると、勞働基準監督官が唯司法警察官の警察權を持つて居ると云ふに過ぎないので、矢張り一般の司法警察官と協力して仕事をする、斯う云ふ風に解釋して宜しいのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=83
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084・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 單獨でやる場合が多からうと思ひます、是が現在の鐵道關係の職員に司法警察權の行使が認められて居るのと同じ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=84
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085・種田虎雄
○種田虎雄君 單獨で其の勞働基準監督官が司法警察權を行ふ譯なんでありますが、さうなると、此の監督官の身分は、色々書いてあるやうでありますが、凡そどの位の素養のある者を任命される御考へでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=85
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086・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 先程も政府委員から申上げた所でありますが、國際的に、監督官の教養、資格と云ふものは相當高いものでなければならぬと云ふことが、勞働會議で討議され決定されて居るのでありますが、まだ監督官の採用基準、それから教養方法、さう云ふものは具體的には定つて居りませぬが、大體國際的に勸告されて居ります線に沿つて、監督官を採用し教育して行きたいと思ひます、一般司法の警察官よりも、豫算の面に於て遙かに高い監督官を採用し得る豫算が決定され、此の議會に提出されて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=86
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087・種田虎雄
○種田虎雄君 凡そ一人當りどの位の豫算を組んで居られるのでありませうか、ちよつと伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=87
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088・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 豫算は後で調べて申上げますが、現在の官吏は、御承知のやうに、一級官吏、二級官吏、三級官吏とございますが、數と致しましては、大體二級官吏、所謂高等官、昔で申しますれば奏任官、さう云ふクラスの者が約千三十七人であります、さうして元の判任官、所謂三級官吏が九百三十人、寧ろ判任官が少くて、昔の奏任官の身分を持つ程度の者に主力を置いて居ります、ですから先程申しましたやうに、所謂警察官と申しますか、巡査とかと云ふやうな者と比べますれば、數等程度の高い者である、從つて採用に當りましては、三級の官吏にしましても、出來るだけ專門學校程度は出た者を採用しようかと思つて居ります、現在もう既に、大學なんかを出ました若い者を出來るだけ採り入れまして、色々な講習なり養成を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=88
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089・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 次に第十二章雜則は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=89
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090・種田虎雄
○種田虎雄君 百八條に賃金臺帳と云ふことが書いてありますが、是は各人各人の賃金を幾らと云ふ風に作つて、誰は幾らと云ふことをすつかり書いて出すのでありますか、或は賃金と云ふものの凡そ基準となるやうなものを書いて出すことになるのでありますか、此の臺帳と云ふのは、どの程度のものを言ふのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=90
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091・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 此の賃金臺帳の樣式に付きましては、現在まだ決定致して居りませぬ、併し大體工場、事業場のやうに、一人の勞働者を繼續して長く雇うと云ふやうな所では、今の戰時中から實施して來て居ります賃金統制令の賃金臺帳と同じやうに、之を個人別に作成されることが規定されることにならうと思ひます、又日傭其の他の者に付きましては、極く簡單に澤山の人間を並べて別に記載して行くと云ふことにならうかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=91
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092・種田虎雄
○種田虎雄君 各人の賃金の基礎になる數字は分ると思ひますが、なかなか各人の賃金は工場や何かで一定の額ではないと思ひます、色々時間等に於て變つて來るのだらうと思ひます、之を基準だけを書くのは簡單ですが、此の書き方に依つては是はもう大變な手數もかかるし、今日各工場なり、或は交通機關等の現業の從事員の賃金の計算をする係は、非常な面倒なことをやつて、大變な人をかけてやつて居る譯であります、其の數字が非常に區々になつて居る譯であります、其の數字を全部網羅して書けと云ふことになると、是は大變な仕事だと思ひます、是は或意味に於ては不可能ぢやないかと思はれる位、面倒なものであります、是は實際御承知ぢやないからぢやないかと思ひますが、工場或は交通機關の現場あたりでは、どう云ふ程度の賃金計算をやつて居るか、それを御承知になると、個人々々のものを全部書き出すと云ふことは大變なことで、基礎になる數字は分つて居りますが、個人々々の賃金を一々それに書くのだと云ふことになると、えらい面倒なことになるのぢやないかと思ひます、其の點、是から御研究になつて色々御定めになるならば、實情を能く御研究の上で決めて戴きたいと、斯う思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=92
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093・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 此の點ばかりではありませぬ、手續の點に付ては、今御指摘のやうなことが非常に多からうと思ひます、それでやり樣が拙いと非常な負擔になると思ひます、是は經理統制令で政府は非常に苦い經驗を持つた實例もありますので、さう云ふ點に付ては十分注意させる積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=93
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094・牧野英一
○牧野英一君 第百十四條でちよつと政府委員に伺ひたいのでありますが、附加金と云ふものは、未拂金と同じ額に規定してありますが、裁判所が然るべく裁量の餘地を殘すと云ふことが寧ろ公平或は適切なものになるのぢやありませぬでせうか、如何なものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=94
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095・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御話の點も一つの考へ方と存じますが、此の條項に於きましては、同一額を附加金とすると云ふことに致したのでございます、是は實はアメリカの勞働標準法に矢張り同じ原則を採つて居りますものですから、それに做つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=95
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096・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 次は十三章の罰則の條項に移りたいと思ひます、最後の百三十條迄全部一括して御願ひ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=96
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097・種田虎雄
○種田虎雄君 百九十條には色々細かいことがずつと書いてございますが、昨日もちよつと伺つて居つた設備や、何かで所謂保温、採光色々なことに付て、使用者としては相當に義務を負はされて居る譯でありますが、是等は非常に大きな問題であると思ひますが、是は大體此の規定に違反した事實があれば、告發に依つて斯う云ふ處罰を受けるものでありませうか、勞働者か、或は監督官か誰か來て、此の工場なり工場の保温設備は十分でないと云ふことを申告、或は告發すれば、それに依つて直き處罰されるのでありますか、或は監督官が行つて此の條項に該當するからと云ふことになりますか、隨分規定が細かく出來て居りますので、其の規定に觸れることが多いと思ひます、現在の状況では之に合致しないものが多いと思ひます、現在の状況では之に合致しないものが多いと思ひます、使用者がそれだけの義務を怠つて居る、或は其の設備がない場合が多い、さうするとそれは直き處罰されるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=97
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098・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 第百十九條の一乃至四のやうな事項に付きまして體刑を科するかどうかと云ふ問題は餘程考慮した點であります、是は勞働基準法實施の初期に當りまして、殊に初めて適用を受ける工場などに付きましては、なかなか之を非常に嚴格に實施して行くことは困難な事情があると豫想して居ります、それで主として監督官の制度の運用に依りまして、初の中は十分之を教育し、又戒告をし、さうして法律を嚴格に適用して行くと云ふやうな階段を經てやるべきものだと云ふやうに考へて居ります、唯適用をやるものに付きましては、是は告發の場合もございませうし、それから又監督官が見る場合もありませうし、それは色々な場合があらうと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=98
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099・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の大臣の御答辯の趣旨に依つて、此の法はうまく運用して戴きたいのでありますが御承知の通り相當近頃色々勞働攻勢が可なり激しくなつて來て居りますので、場合に依れば色々の戰術を用ひられるだらうと思ひますが、其の場合に斯う云ふやうな問題が惡用されてはいかぬと、斯う實は思つて今御尋ねして居る譯なんで、可なりデリケートな問題だと思ふのですが、なかなか此處に規定してあることは相當深く事業の經營者として、是だけの條項に照して差支ないやうな保温設備と云ふやうなものは事實に於て出來ないと思ひます、實際今日の日本の現状に於ては、そんなことをやれと言つてもどうしてやれるか、事実不可能と思ひます、採光は出來ることは出來るでせうが、保温と云ふやうなことになると相當是は解釋の仕方に依つては、斯んな寒い所に入れて置きやがつてと云ふやうなことが起ることが多からうと思ひます、さう云ふやうな感じが致しますので可なり實際の運用に當りましては、餘程注意をして戴かないといけないと思つて御尋ねした譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=99
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100・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 設備の點に付きましては御話の通りでございまして、なかなか一擧にさう理想的のものは出來難いと思ひます、四十三條に原則を決めて居りますが、此の原則の具體的な基準に付ては、四十五條にありまするやうに、第四十二條なり第四十三條等に依つて、講ずべき處置の基準に付きましては命令で決めて行き、さうして段々と出來るやうになりますれば、其の程度を上げて行くやうにして行かなければならぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=100
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101・牧野英一
○牧野英一君 百二十一條の適用に付て、是は末梢的なことかも知れませぬが、一項と二項との關係を伺ひたいのであります、第一項では事業主が罰金刑に科せられる場合、罰金刑だけを適用するのでせうね……、處が、「防止に必要な措置を講じなかつた場合、」になると、當然第二項に於て行爲者になるのでありますが、第一項の適用はあるが、第二項の適用はないと云ふやうな場合はどう云ふやうな場合でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=101
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102・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 只今の御質問の點ちよつと私聽き漏したのですが、第一項の方では、事業主に對しましては罰金刑だけを科する、それから二項の方では、其の違反の計畫を知つて、其の防止に必要な措置を講じなかつた時、それから違反行爲を知つて、其の是正に必要な措置を講じなかつた時、それから又違反を教唆したと云ふやうな、斯う云ふやうな惡質な、犯意があると申しますか、さう云ふものに付ては、事業主も行爲者として罰する、從つて體刑に處すべきものに付ては體刑を科する、斯う云ふ趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=102
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103・牧野英一
○牧野英一君 計畫を知ると云ふことは、私はちよつと氣が付いて居りませぬでした発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=103
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104・種田虎雄
○種田虎雄君 最後に厚生大臣に重ねて伺つて置きたいことは、此の勞働基準法なるものは相當重大な法律で、非常に各種産業に大影響があると思ふのであります、此の實施は成る程勞働者側から言へば、一日も早く實施して貰ひたいと云ふ聲が多からうと思ひます、又さうしなければならぬものと思ひますが、先程來伺つて居りましても、我々が疑問とするやうなことは、大體まだ命令等の御準備が十分出來て居らぬやうに思ひます、是から施行規則等に付て相當にお骨が折れると思ひます、殊に監督官の如きものは、先程の御説明に依ると、相當の方を御任用になるやうでありますが、斯う云ふ劃期的な法律を實施なさるのには、萬全の策を期して矢張りやつて戴きたいのでありまして、餘り施行されてから後、彼此れの問題を起さないやうにすることが必要だと思ひますが、先般、七月頃から實施なさらうとか云ふことでありますが、果してさう云ふ御考でありませうか、殊に是は使用者に對しては相當の準備を要することで、施行期日が決まりましたら、それから六箇月位は猶豫されるやうでありますが、是だけの準備を使用者側に於てすると云ふことは、大變なことでありまして、どうか施行期日に付ては十分に御考慮願つて置きたいと思ふのであります、是だけ特に御願ひ申上げて置きます、もう一つ、是は政府委員に伺ひたいのですが、ちよつと失念して申譯ありませぬが、勞働組合法の三十二條、削除になつたやつですが、此の三十二條と云ふのはどう云ふことでしたか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=104
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105・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 特定の工場なり事業場の勞働條件が非常に惡い場合には、勞働委員會が勞働條件に付て調査して、行政官廳に勞働條件の改善に付て具申することが出來る、行政官廳は其の意見に基いて指示をすることが出來る、指示をしました場合には、其の指示が協約に代る效力を有すると云ふ規定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=105
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106・種田虎雄
○種田虎雄君 それを削つた譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=106
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107・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) それは最低賃金制とか、最低勞働條件に關する法制が不備であると云ふので、それに代るものとして規定し、勞働組合の趣旨とする所から大分外れますけれども、暫定的に規定したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=107
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108・竹中藤右衞門
○竹中藤右衞門君 重ねて諄いことを申すやうでありますが、臨時的の飯場に付ては除外するとか何とか云ふことに付て、九十六條の末項にでも加へることは出來ませぬか、何だか非常な不安を覺えるのであります、短期間の臨時的のものは……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=108
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109・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 此の前もちよつと申上げましたが、此の寄宿舍の章にございまする九十四條、五條と云ふやうなものは、是は矢張り寄宿舍に於ける自治生活と申しますか、自由と云ふものを規定した規定でございますから、飯場と雖も矢張り此の原則は例外を認めると云ふ風に參らぬと思ひます、竹中委員の仰しやいました點は、飯場のやうな臨時的の仕事の爲に設けた其の設備が、普通の一般の工場の寄宿舍のやうな堅固な完備したものを造ると云ふことは、是はむつかしいと云ふ御趣旨だらうと思ひます、さう云ふ御趣旨のものは九十六條にございます、九十六條に依つて、其の寄宿舍設備に付ては各種の必要な措置を講ずることになりますが、其の基準と申しますか、それは命令で決めることになつて居りますが、其の命令では、今のやうな臨時的な施設に付て、一般の恒久的な施設と同樣のものを命ずると云ふことは、是は事實上出來ないと思ひますから、其の點に於て便宜な處置を講ずると云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=109
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110・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 御質問ありませぬか、體刑に付て一點伺ひたいことがありますが、此の體刑は相當苛酷な體刑、罰金等を科せられて居ると云ふ一般の輿論であるやうでありますが、殊に遽かに斯う云ふ法令が設けられまして、從來の慣例に甚だ懸け離れた所があるので、此の取扱上惡意を持たないで善意で、不注意の爲或は氣が付かないと云ふやうな點で違反を起す場合が相當あらうかと思ふのであります、斯う云ふ場合に於きまして、除外例と申しますか、經過規定と申しますか、本法施行後或年限を限つて、惡意のない違反に付ては情状を酌量するとか、適用しないとか云ふ除外例を附則としてでも御加へになるやうな御考はございませぬでせうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=110
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111・寺本廣作
○政府委員(寺本廣作君) 此の法律の罰則でございますが、非常に苛酷だと云ふことが一般に謂はれて居ると云ふことでございます、刑の均衡は外の法令とは十分事務的には取れて居ると思ひます、強制勞働に付て十年と云ふのがございますが、是は現在刑法でも、暴行、脅迫、逮捕及び監禁、恐喝、特に恐喝に付きましては懲役十年、威迫の手段に依りまして財物を取得し、財産上の利益を得たと云ふのは十年となつて居ります、強制勞働が十年と云ふのは刑法との權衡は概ね取れて居ると思ひます、又中間搾取の排除、有害物製造禁止、最低年齡坑内勞働の禁止が懲役一年と云ふのは百十八條に規定されて居りますが、是も現在有害物の製造禁止に付ては一年の懲役が附いて居ります。それから是と比較の對象となります兒童虐待防止法は、現在此の違反に付て一年の刑を科して居ります、又百十九條で規定して居ります色々澤山の事項に付きましては、最近の例と致しましては、勞働組合法竝びに勞働關係調整法で六箇月以下の懲役禁錮を規定致して居ります、又時間及び賃金に關しまする立法例としましては、日本では初めてでありますが、アメリカの公正勞働標準法其の他では矢張り六箇月と云ふやうな刑が附けてあります、大體刑の權衡は事務的には一應取れて居ると考へます、尚犯意の問題でございますが、此の法律は原則として行爲者罰、從來の事業主の如き……雇人がやつた場合でも全部事業主が被ると云ふことでなく、原則としては行爲者罰の制度を採つて居るのであります、工場長でありましても、職工長でありましても、使用者の利益を代表して勞働者に相對する者が違反しました場合には、行爲者を罰すると云ふ建前でございます、唯事業主に付きましては、其の際一般的な違反の防止義務に違反した …一般的に違反の防止に付て必要な處置をしなかつたと云ふ場合の責任を罰金で處罰すると云ふことが特に規定されて居る譯であります、一般の行爲者を罰すると云ふ建前を採つて居りますので、其の事實に付て認識があり、犯意がある場合に罰すると云ふ刑法總則の規定は此の法律に當然適用があるものと解釋して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=111
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112・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 私の懸念するのは、慣れないことでありますから、此處一年や二年の間はうつかりして居つて、つい此の法に觸れるやうなことがなきにしもあらずと、斯う云ふ風に輕い意味に考へて居るのでありまして、でありますから最初の一年間とか、二年間とか云ふやうなものを限つて、特別の取扱をする御考はありませぬかと云ふことを御尋ねして居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=112
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113・吉武惠市
○政府委員(吉武惠市君) 御尋の點御尤もでございまして、私共立案の際にも相當實は考へた問題でございます、先程大臣もちよつと御觸れになつたと思ひますし、又大臣も此の點は實は立案の際にも相當御考慮になつた點でありますが、さう云ふ規定に依つて除外と云ふことは是は出來難いと思ひますが、要は運用の問題と思ひます、それで此の法律を施行した直ぐ翌日違反行爲がある、本人はまだ此の法律の趣旨を能く知らない、それを直ぐ罰金、或は體刑に處すると云ふことは是は事實無理なことだと思ひます、ですから相當期間は矢張り指導的な方面に重點を置きまして、所謂啓發主義と言ひますか、處罰主義と云ふことでなしに、相當期間は指導的に、若し違反行爲があれば注意、戒告をする、それでも聽かぬと云ふ場合もあらうと思ひます、さう云ふ風ならば是は矢張り法の命ずる所に依つて處斷をせざるを得ぬと思ひますが、今御話にございました所謂常識的に善意で知らなかつた、うつかりやつたと云ふのを直ぐ其の儘嚴罰に處すると云ふやうなことは、是は實際の運用として宜いことではございませぬですから、其の點は十分氣を付けて行く考でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=113
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114・畠山一清
○委員長(畠山一清君) 一應御質疑が終つたやうでありますから、今日は此の程度にして置きまして、明日は差支があるさうでありますから、明後日の午前十時に再開致したいと思ひます、左樣御承知を願ひます、散會致します
午後四時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=114
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115・会議録情報2
出席者左の如し
委員長 畠山一清君
副委員長 男爵 長基連君
委員
公爵 島津忠承君
侯爵 佐竹義榮君
伯爵 東久世通忠君
牧野英一君
男爵 山根健男君
男爵 内田敏雄君
種田虎雄君
膳桂之助君
竹中藤右衞門君
伊藤傳七君
伊藤豐次君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
商工大臣 石井光次郎君
政府委員
厚生事務官 吉武惠市君
同 寺本廣作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009203759X00319470323&spkNum=115
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