1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
教育基本法案(政府提出)(第一八號)
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昭和二十二年三月十五日(土曜日)午前十時二十六分開議
出席委員
委員長 江川爲信君
理事 小川原政信君 理事 及川規君
井田友平岩 上林山榮吉君
森山ヨネ君 永井勝次郎君
山下ツね君 米山久君
伊藤恭一君 平川篤雄君
出席國務大臣
文部大臣 高橋誠一郎君
出席政府委員
文部事務官 日高第四郎君
文部事務官 剣木亨弘君
文部事務官 柴沼直君
文部事務官 清水勤二君
文部事務官 伊藤日出登君
文部事務官 稻田清助君
文部事務官 辻田力君
文部事務官 近藤直人君
文部事務官 岡田孝平君
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本日の會議に付した議案
教育基本法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=0
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001・江川爲信
○江川委員長 これより會議を開きます。前會に引續きまして質疑を行います。小川原政信君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=1
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002・小川原政信
○小川原委員 第三條に「國及び地方公共團體は、能力があるにもかかわらず、經濟的理由によつて修學困難な者に對して、奬學の方法を講じなければならない。」と、こういう項が設けられてある。これは理論としてはまことに結構なことと思いますが、地方團體が能力がある、ないという判斷は、どういうところでなさるか。能力があつても、經濟的にこの地方は困りますとこう言つたときには、この項は何にもならない項になりますが、文部當局は、これをどういうふうに、實際の教育を取扱う上において行われようとなさいますか。その御意思をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=2
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003・辻田力
○辻田政府委員 お答えを申し上げます。現在國においてやつております例を申し上げますると、これは御承知の大日本育英會に對しまして、政府から昨日のこの會議で申し上げましたような國費を補助いたしまして、それによりまして大日本育英會は事業を經營しておるのでございますが、この奬學生を選定いたします場合には、各都道府縣に、能力があるにもかかわらず、經濟的理由によつて修學困難な者に對して申請するように勸誘いたしまして、そうしてそれぞれの學校長を經て縣の方に申請し、縣の方からまとめて育英會の方に申請いたしまして、育英會で一定の基準によりましてその能力を、書面審理でありますが、判定いたしまして、これによりまして奬學生にするか、しないかをきめるのであります。今後公共團體において行われまする場合におきましても、大體一應それに似たような方法がとられるのではないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=3
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004・小川原政信
○小川原委員 書面の上から見まするとその通りであります。私もそういうふうに考えるのでありますが、私の問うところはそうではありませんので、地方が、能力があつても、ないと言つた場合、公共團體としてまつたくできません。私の縣にはこういうたくさんの縣債がありまして、負擔力がないのでありますと、こう言われたときに、この問題はなかなか容易ならない問題だと思います。そこで奬學生を十名出さなければならぬものが二名になつてしまつたり、あるいは一名になつてしまつたり、今までの實際問題から考えてみますと、これはなかなか容易にできないことであります。同文書院に學生を送るのにしましても、豫算の上では何人ととつてありましたが、しかし實際送つたかというと、送らぬのであります。これは地方の知事が文部系統の人でも出ておつて、教育にまことに熱心な人であるならば、さように規則通りにやりましようけれども、産業にばかり熱心な人でありますと、いくらかの金でも、一萬圓の金でもその方に使つた方がいい。こういうことになりますと、これは行えないのでありますが、そのときは、どういう方法をもつてこれを行われるか、問うておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=4
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005・辻田力
○辻田政府委員 地方の公共團體によりまして、その理事者がこういう事柄について理解がなくて、從つて奬學ということについて熱心でないというふうな結果、せつかく能力があるにもかかわらず、經濟的理由により修學困難な者の奬學について、なおざりにするというようなことがありますことは、これはもしそういうことがありますると、非常に遺憾なことだと思いまするが、この新しく御審議によつてできまする教育基本法が、はつきりとこの事項について明定いたしますならば、そういうふうな事柄も、非常に少くなるのではないかと思われるのであります。なおそういう場合がもしありまするならば、文部省としましては、それぞれの地方公共團體に對しまして、この條文の趣旨を徹底するようにいたしたいと考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=5
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006・小川原政信
○小川原委員 この點はどうもはつきりいたしませんので困りますが、もつと何か、基本法ではできないとするならば、補助法を設けて、そうしてこれを徹底せしめて、ほんとうにこの教育上の差別待遇というもののないようにひとつはかるというお考えがあるのでありましようか、いかがでありましようか。その點もなお聽いておきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=6
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007・剣木亨弘
○剣木政府委員 義務教育を出ましてその上の高等の教育を受けます能力があるにもかかわらず、經濟的理由で、上級學校に行けないという場合の問題でございますが、これにつきましてはその高等教育を受ける能力があるか否かという問題は、今直ちにこれを確定的にこういう方法でやるということは申し上げることができませんが、今その能力をいかにして決定するかという方法等につきまして、いろいろ研究しておるのであります。具體的に申しますと、本年度の高等學校の入學試驗におきまして、一應知能檢査というようなものを、全部の入學志願者にやりまして、まず高等教育を受ける知能があるかどうかということを、第一段に一齊に檢査するという方法をとりましてその結果を十分考慮、研究いたしまして、將來の能力の檢査をいたしますことの指針にしたいと、今研究をいたしております。その結果によりまして、今お尋ねのありましたような、具體的な處置をとつていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=7
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008・小川原政信
○小川原委員 私は今經濟上の地方團體の問題を申し上げましたが、今度は奬學を受ける方の生徒の方は、まだお尋ねしておらないのでありまして、今ちよつとお話もあつたようでありますが、この奬學を受ける方の學生は、試驗制度によられるのでありますか。もし試驗制度が行われるというのであるならば、試驗は大體どういう形式をとつてやるのであるか。今までのようなただ知能的な、學理的なことばかりでは、今日この七十年の教育をいたしましたことをながめてみますと、まことに線の細い人ばかりができまして、そうしてほんとうに國家教育を受けて、國家に對して重大な問題を背負つていくという人が、非常に少くなつてまいる。いわば腹の人間がなくなつてくる。これを別の言葉で言うならば、まことに小利口な人間ができまして、表面的にうまくそこをつじつまさえ合わせればいいというような考え方で、そうして人が見ておろうがおるまいが、實際に國家のためにこうである、この仕事のためにはこうであるといつて、一身を投げ出してやるという人がなくなつたのであります。これは今までのようなやり方でありますと、何にもならぬのであります。ただ經費を投げこんでしまつて、そうして一つの本を讀みましても、こまかい理窟のみを考えてしまう人間ばかり出て、役に立たなかつたと思うのでありますが、この奬學を受けるところの生徒の養い方は、どういう養い方をするか。第一條を見まして、第二條を續いて見ますと、文章はまことに立派であります。この通りであります。文章の上から見れば一點の非難がない。しかし實際の方法を考えますと、七十年の歴史を振り返つて見ますと、まことに穴だらけであります。この穴をどういうふうにしてお埋めになりますか、その點をお伺いしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=8
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009・剣木亨弘
○剣木政府委員 お説の通り、今までの日本の教育におきましては、個人の能力を檢査するということに對します研究は、きわめてゆるがせにされておつたと思うのであります。この能力に應じまして、上級學校に入學することのできるようにいたしますためには、どうしてもこの點は十分研究されなければならぬのであります。今お説にございましたように、單なる試驗でございますとか、ある型にはまつたような方法だけをもつてやるということは、非常に危險でございまして、あらゆる方面からこれを研究いたしまして、最も正しい方法を見出していかなければならぬと存じます。今までの研究が、きわめてその方面に缺けておつたことは事實でございますが、今後極力この方面に對する研究を進めまして、誤りのない方法を發見していかなければならぬと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=9
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010・小川原政信
○小川原委員 これは大變むつかしいことでありまして、お話の通りであろうと思いますが、別に何か方法をこれから考えるとおつしやるならば、これはもう問う要がありません。ただこの七十年の結果を見ていただいて、そうしてまつたくこの缺陷を補つていただかなければならぬ。しかしこれは重大問題でありますから、實は文部大臣にも申し上げておきたいのでありますがこれは教育の根本をなす問題だと、こう私考えておりますから、この點はひとつ、特に御留意を願わなければならぬということを申し上げておきます。
次は第六條の問題でありまして、「法律に定める學校の教員は、全體の奉仕者であつて、自己の使命を自覺し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」この通りであります。一點の非難をするところはないのでありますが、個々の學校の教員の養成は、一體政府は今後どういうふうにして行われるようにお考えになつておりますか。さきに私が申しましたことは、學生の面から申したのでありますが、この學生を教育しておつたという點から見ますと、私は非常に不愉快な點がたくさんあると思います。たくさんの教員が日本におられますが、一例をあげてみますならば、公定相場の物を食い、配給米を食つておるならばひぼしになつて死んでしまわなければならぬ。ところが、教員自身は一人も死んでいない。軍人にはずいぶんたくさん彈に當つて死んでおる人がある。ところが教員は一人も死んでいないということになると、教員というものは生徒を教えるのに、どういう態度であつたか。これを教育學の上から見てみますと、御承知であるかどうかしりません。私どもも年が若いから知りませんが、われわれが教員になろうとするときの本を讀んでみますと、教員というものは天職である。そうであるから献身的にやらなければならぬというように、献身的という言葉が使つてある。ところが、いつの間にか献身的という言葉がなくなつてしまつておる。教員も人間であるのだから、献身なんということはできないということから一體大學の教授、高等學校の教授が教員をつくる、その人がそういう本を書いてしまつた。そうしたら献身的という言葉は見たくも、藥にしたくもない。教員がこういうことであつて、どうして立派な生徒ができるかということを私は考えるのであります。個々の教員というものはどういうふうにお育てになつて、そうしてどういう教員をおつくりになるか。今までの師範學校というものは、教員になろうと思つて出て來た人は實に立派な人であつたと思う。今教壇に立つている人はどの人も私は惡いとは言いません。けれども、この師範教育というものが、ついに私どもが申すようにそういうふうにつくつてしまつた。この責任は私は文部省にあると思う。文部當局は何も惡い教員をつくろうと思つておつくりになつたというようなことは、決してないと思います。何とかしてよい教員をつくろうという考えは私と一致しておりますけれども、その制度が惡かつたに違いない。そうでありますと、文部大臣はこの七十年間の積弊というものを自分一身に責任を負われて、そうして今後起るところのこの基本法によつたところの、立派な第一條の目的を達するには、どういう教員をおつくりになるかということを、私はお尋ねしたい。その方法であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=10
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011・剣木亨弘
○剣木政府委員 ただいままでの教員養成機關といたしましての師範學校の教育につきましては、御指摘になられました通り、相當その弊害が論議されておるのでございます。特に内閣につくられました教育刷新委員會におきましても、その點が相當御存じのように論議されまして、その刷新委員會の御意向といたしましては、大體この教員養成につきましては、新制大學に教育學學科を設けまして、これが養成に當るというような御意向になつておるようでございます。しかしまた一面教育者の質の向上と申しますか、内面的な向上が必要であるということだけでなく一面この新しい制度をやつていきます上につきましても、非常にたくさんな教員數を必要とするのでございます。この質の問題と量の問題とを併せて考慮いたしますと、教員養成機關をいかにするかという問題は、非常にむずかしい問題があると考えております。これにつきましてやはり刷新委員會が、今仰せられました現在の師範教育制度の缺陷を十分考えました上で、しかも相當數の教員數を確保するという制度を、實は文部省といたしましても、早急にこれを立案しなければならぬと考えております。なお刷新委員會におきましても、そのために早急に研究いたされるために、特別委員會をつくつていただきまして、この點を十分論議していただくようにいたしまして、できるだけ早くこれに對する對策を明らかにしていきたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=11
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012・小川原政信
○小川原委員 九十議會において特に大臣の出席を求めまして、私からこの師範教育制度の弊を述べて、文部大臣は私の説に賛成で、今委員會を開いておるからつくる。つくつてそうして完全にする。御答辯はそういうことであつたのですが、今のお話を聞きますとまだそれまでになつておらぬのだということでありますが、これは眞劔にやつていただかなければならぬと思うのです。文部大臣がそういう約束をしてやるのだと、こういつておられるが、まだできておらないということは、これは私は實に慨嘆にたえないのであります。この教員の制度というものをどういうふうにして養成されるか、こう申したのでありますが、今お聽きするのも文部大臣のおつしやつたのも同じことで、何ともこれは雲をつかむような話でありますから、それをよりつつこんでお話を申し上げることをいたしません。どうかこの問題は重大な問題でありますから、口頭禪に終らないように、ひとつ特段のお願いをしておきたい。なお文部大臣に對しましてもさように申し上げたいと思います。
それでこの機會均等の問題につきまして私は伺いたいと思うのでありますが、これは特定の人間で、あるいは盲聾唖生徒をどうしても、機會均等の上からいつて、國が教育をしなければならぬことに相なるのでありますが、今これらの學校を見ますと、何か慈善事業のようなことでやつておるような、まことに取扱い方が不備でありますがこれらに對しましてはどういうふうにお取扱いになりますか。その點を一つお尋ねしておきたい。かように思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=12
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013・剣木亨弘
○剣木政府委員 肓聾唖、それから身體虚弱者等に對しまする特殊の教育につきましては、今般六・三・三の學制改革を實施いたしますとともに、小學校及び中學校に相當いたします分を、義務教育といたす原則を立てましたのでございます。これをやります設置義務を府縣に命じまして、いわゆる學齡年齡に達しました者は、必ず義務教育として受けさせるという建前をとつたのでございます。しかしこの點は小學校、中學校と違いまして、相當府縣によりまして設備を必要といたしますのでできるだけ早くこれを實施いたしたいつもりでございますけれども、今直ちに二十二年度から實施することは困難だと考えますので、一應その時期は勅令で定めることにいたしておりますが建前といたしましては、そういう盲聾唖、身體虚弱者等に對しましても、全く普通の人と同じような教育を受ける機會を與えていこうというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=13
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014・小川原政信
○小川原委員 なお重ねてお尋ねをいたしたいのでありますが、宗教教育をここに認められておるのでありますが學校に今後は修身科というものを廢していこうというお考えであるならば、この精神教育は別に切り離さなくてもよいので、どの科にでもこれは結びつけていけるものでありますが、特定の學校に宗教でも入れてやろうというお考えがあるのでありますか。修身科を廢しますならば、その精神方面の取扱いはどういうふうに取扱つていこうというお考えでありますか。それらの點に關してお尋ねいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=14
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015・稻田清助
○稻田政府委員 新しい小學校あるいは中學校におきましては、ただいまお話のように社會科というような教科を設けまして、その中において從來系統的にあるいは倫理、あるいは歴史、あるいは地理と系統立つて教えておりましたものを、渾然一體といたしまして兒童の身體、精神の發達状況、境遇、あるいは社會生活環境、社會活動というような點から、適當な關連にまとめまして教育するというふうにいたしております。從いましてこの社會科の中にお話にありましたような宗教的情操の涵養というような意味合の學科がとり入れられることと考えております。そのほかあるいは國語科において、またその他の種々な機會において、やはりこうした精神を十分盛りこんで教科を按配するというふうになつております。ただ官公立の學校におきましては特定の宗派に偏りました教育は、御承知のように禁じております。私立學校の面におきましては、キリスト教、佛教、その他の宗教による教義を入れました教育をする自由を認めておる、こういうことになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=15
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016・小川原政信
○小川原委員 小學校の方面の取扱方は、どういうふうになつておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=16
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017・稻田清助
○稻田政府委員 小學校におきましては、これは原則として公立でございます。公立でございますから、公立の學校におきましては特定の宗派に偏ります宗教教育は、いたしませんけれども、現在でもありますが、新しい制度におきましても、私立の小學校を認めることになります。これはそれにはいりたい者が、希望してはいるのでございますから、宗教的教育を行いますることも將來とも認められることになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=17
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018・小川原政信
○小川原委員 大體の上におきまして不滿足ではありましたが、お話を聽くことができました。これは法文に少し關係が遠いのでありますけれども、ぜひお尋ねをしておかなければならぬことは、學校行政をしていきまする上におきまして、六・三・三という制度が行われましたので、そこでこの前の中學に當るところの三はそれでよろしいのでありますが、後の三年は高等學校に當る制度でありますが、高等學校に當る制度は三年と限定しますか。都合によりますと、あるいは三年ないしは四年という制度を置かれようとしますか。必ず後の三年は三年と限定いたしまして、大學に行くことになりますが。その點はどうでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=18
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019・剣木亨弘
○剣木政府委員 高等學校の修業年限は、やはり原則といたしましては六・三・三の三年でございますけれども、特殊の技能教育をいたします場合、もしくは夜間において授業を行います場合、もしくは定時制の授業を行います場合等におきましては、四年及び五年の高等學校が認められることになつておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=19
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020・小川原政信
○小川原委員 その場合、特定の者はそうであるということになりますと、大學に行くときには、競爭試驗をおやりになるおつもりでありますか。競爭試驗というものはなくして、全部大學に入れられまするか、どうなさいますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=20
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021・剣木亨弘
○剣木政府委員 將來の問題といたしまして、大學教育が相當完備いたしまして、でき得るならば高等學校の卒業者は、何らの試驗なしに上級學校に入學することができるような状態を、實は希望するのでございますけれども、さしあたり現在の状況といたしましては、全部の希望者を必ず收容するというほどの大學を設置することは、非常に困難だと思われまするので、それに至りまするまでは、一定の入學試驗といつたようなものがございますことは、やむを得ないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=21
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022・小川原政信
○小川原委員 もし高等學校に經濟的理由によつて行けない人で、優秀な人間でありまして、獨學力行、そういう人があつて大學に行こうとする者は、どういう救濟の方法をおとりになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=22
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023・剣木亨弘
○剣木政府委員 新制の高等學校におきましては、今申しました夜間における高等學校及び今の青年學校に相當いたします定時制の高等學校を、できるだけ青年學校と同じように各市町村に施設いたしまして、働きながらその學校に通うことができるという方法を講じますとともに、一面高等學校におきまして新たに通信による教育制度をつくりまして、通信教育を受けながらやはり勉強することができる。そうしてそういう定時制の學校でありましようが通信教育を受けた者でありましても、一定の條件はもちろん考えておるのでございますが、ある程度に勉強いたしました者は、他の高等學校を卒業いたしました者とまつたく同樣に大學への進路を認める方針をもちまして、規定をいたしておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=23
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024・小川原政信
○小川原委員 一面大變緩和されてよろしいようでありますけれども、社會が複雜になつて、文化が高くなつてまいりますというと、獨學していくという人が非常に望ましいわけであります。その望ましい人が專心に入學試驗の勉強をせぬために、正規の學校にはいつた人と競爭するということは、なかなか至難なことでありますが、それをもつと救濟するところの方法をお講じになつたらどうでありましようか。そういう人こそ初めて人間らしい人間ができると私は思うのであります。小學校からずつと、高等學校まで親の厄介になつて學問をして、世の中のことを知らない。すなわち第一條にありますところの勤勞というような精神は、もう藥にして煎じて飮ませるほどの體驗もないという人。一方は獨學で、非常に貧困の中で、自分が稼いで親を養つて、そうして自分が勉強して、なおかつそれらの人と競爭してはいろうというような、實に剛腹な人間、すなはち忍耐の強いところの人間、この第一條の要求しておるところの人間であるがそれが不幸にしてはいれぬということは、この法の不備ではないでありましようか。あるいは今言われたところの青年學校とか夜學校——青年學校や夜學校のある所ばかりに人間は住んでおらぬので、山の中におる者もありましようし、いろいろさまざま。また東京のような所におつても、非常な苦境に陷つておる人もあると思いますが、これらの人を救わないから、社會というものが、非常にかたわになる。これはこの法の缺陷だと私は思うのでありますが、どうお認めになりますか。もしそれが他の法律によつて救う點があるならば、それをお話を願いたい。ただいまおつしやつた通り、夜學の三年を四年にしたとか、そんなことでは救えぬ、こう私は考えておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=24
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025・剣木亨弘
○剣木政府委員 もちろん中學校を出まして相當優秀な生徒でございますならば、當然これはさきに申し上げました育英會の對象となりまして、學資は出してもらえる。そうして進學の機會を與えられるということは當然でございますが、今申されましたのは、おそらく働きながら、しかも自分だけの學資でなしに、家族をも養うというような場合で、育英貸費だけでは、とうてい修學ができないというような者に對することであらうと考えます。そういう場合におきましては、要するに今申し上げました夜學とか、定時制の高等學校というものは相當簡易に地方に十分普及するようにいたしまして、それに就學の機會をできるだけ與えていくということが必要ではないかと考えます。これは働く青年の教育をいたします上に、この種の高等學校が眞に全國的に普及いたしまして、そういう者のためにほんとうに役立つていくということを私どもといたしましては熱望しておるわけでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=25
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026・小川原政信
○小川原委員 もう少し私は實況を知つていただきたいと思う。奬學を受けてはいれるようでありますならば、私はこれは申し上げません。その人は學問が好きであつて、親を養わなければならぬ。こういう人が相當あるのです。一家の中心になつていかなければならぬ人がある。奬學を受けて、そうしてその家を離れて、教育を受けるというならば、これは何も申し上げることはない。ところが奬學を受けてはいる人もよけいはございますまい。また私の申すような人も多くはおりますまい。しかし私の要求するような人間に教育を受けさして、立派な人にして、社會の指導者とさせたい。こう考えておりますが、その點をもう少しわかるように御説明を願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=26
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027・剣木亨弘
○剣木政府委員 そういう點も十分考慮して今度立法しておるつもりでありますが、たとえば先ほど申しました通信教育ということも、實は通信教育というものは單なる通信によつて教育するというだけではありませんで、その通信教育を受けること自體が高等學校を終了した資格を與える。こういう目的をもちましてやつておるのでございます。もちろん働いておる者につきましては、正規のものを三年でやることはできないで、四年になる場合、五年かかる場合があるかと思いますけれどもできるだけそういう者に對しましても上の學校に進學するところの資格を與えるようにしていきたい。なほそのほかに大學入學につきましては、高等學校を卒業いたしました者ばかりでなくこれに相當する學力を有する者に、やはり入學資格を認めていこうと考えておるのでございまして、この學校教育法といたしましては、できるだけそういう働きながら勉強する人の、何とか便宜になるようにという考えをもちまして、實は規定をいたしたのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=27
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028・小川原政信
○小川原委員 その問題はそれだけにいたしておきまして、次に視學制度の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、今後も視學制度というものをおつくりになるおつもりでありますか、いかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=28
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029・辻田力
○辻田政府委員 教育行政全般の問題につきましては、昨日も大分お話がありましたように、目下關係筋と折衝しておりますので明確なことは申し上げられませんが、しかし今仰せになりました視學というふうなものは、殘るだろうと思います。殘りますが、ただその職務等につきましては、從來と變つた形のものになるかも知れません。たとえば、これは先生方の相談相手というふうなことを本質といたしまして、今までのようなただ監督というふうな面が強く出るということでなしに、相談相手となつて、先生方と一緒に教育の振興に當るということに行くような傾向があると思います。大體視學というものは殘つていくと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=29
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030・小川原政信
○小川原委員 大變よい制度に改まることと考えられます。大變御苦心なされたことと思うのですが、その視學という方面には、ごくわずかの二、三の人では非常に弊害が起ると私は思うのです。その弊害と申しますのは、教育などというものは、多方面から指導すべきものが教育であります。今までのような工合に、二、三の人が、ただ學校の優秀な教員で變つた何かひとつ仕事をやつてみて、それがその當時の教育行政官のお氣に入つて、お前を視學にするから人を指導せよなどと言うものですから、そういう觀點からの學校教育の指導などということになると、非常に間違つたことになる。今までそれから起つたところの弊は、學問をもてあそんだということだと思う。今後はそうでなくて、民間からもあげられて——何も民間の人は教育の體驗がないというわけではないのであります。徳の高い人も民間にはおると思います。あるいは大學の先生の中にもおりますれば小學校の先生の中にもおるのでありますが、そういう多角形な方法によつて學校の先生の相談相手としていくというお考えをもつておられまするか。前の田中文部大臣は、この制度については變えたいのである。こう第九十議會で私に御答辯になつておるのでありますが、どういうような方法でお進みになるお考えでありますか。これはまた關係の筋もあろうと思いますから、文部省の言う通りにも行きますまいと思いますけれども、文部省の内案でもありましたならば、一つお話を聽かせていただきたい。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=30
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031・辻田力
○辻田政府委員 お答え申し上げます。視學制度の問題につきましてはその任用の方法もありますし、また視學というものの職務の問題もありますしその他いろいろ考うべき點がたくさんあるだらうと思つております。われわれの方におきましても、この點についていろいろな面から研究しておるのでありますが、先ほどもちよつと申しましたように、從來は視學が特に人事を中心として、監督というふうな面が非常に強かつたのであります。視學の御機嫌を損うと、先生方は立つていけないというふうなことで、視學の前には戰々兢々としておる面もないのではなかつたのであります。そういうことで視學と學校の先生方が互いに對立と申しますか、監督、被監督だけの冷たい關係であつてはならないのでありまして、視學はやはりその一種の先達である。また相談相手となるだけの、人格識見を具えた人でなければならぬと思つております。從つてその相談相手として十分立派な人であるためには、もちろん教育界からその先輩、あるいは優秀な人がたくさん出ていただくことは當然でありますが、これは場合によつては、民間におつて教育にいろいろ熱心であり、教育のことについて意見のある人は、これを視學に任用するということも考えられるかとも思いますけれども、場合によつては、こういう方方については視學委員ということも考えておりますので、そういう視學委員というような形でお世話を願うということも一案として考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=31
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032・小川原政信
○小川原委員 まだ試案としておられるというのでありますから、これを取上げてどうこうは申しませんが、私どもは視學と視學委員というものと區別をつけた方が便宜であるか、一つにした方が便宜であるかと考えますと、私は視學というものはなるべく一つにした方がいいと思うのでありまして、これらの點については、十分御研究を願わなければならぬ。かように思いますので、この點はこれだけで打切つておきます。
この學校行政、教育行政をやります上におきまして、その行政をとるものは、今までは内務系統の方が中等學校以下をとつておられたのであります。高等學校以上は別でありますが、今度はやはり從來の通りにわけて、そういうふうにおやりになるつもりでありますか、あるいは國がずつと大學から小學までを一本にして、教育行政というものをお取扱いになりますか、いかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=32
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033・辻田力
○辻田政府委員 教育行政特に地方の教育行政につきましては、從來形の上で内務省關係になつておりますが、この教育行政については、文部大臣としても十分發言權はあつたのであります。しかし一應形の上では内務省ということになつております。これを今後どういうふうにやつていくかという問題でありますが、これも遺憾ながら關係筋との間にいろいろ折衝中の問題でありますので、ここに明確なことを申し上げる自由をもちませんのを殘念に思いますが、われわれの方で考えております一つの案として申し上げますとこれは國からだんだん地方の下級の團體に及ぼしていくというようなことでなくて、むしろ地方の方で、たとえば市町村の方からだんだん上の方に盛り上つていくというような形に考えておるわけであります。具體的に申し上げますと、市町村に市町村民の公選による市町村教育委員會というふうなものを設置いたしまして、その教育委員會が教育の運營につきましては中心になつていくというような考えを持つております。また都道府縣の府縣民が公選をいたしました教育委員會が中心になりまして、そこでその都道府縣の教育の運營をやつていく。なおそれぞれの委員會のもとに事務局をおきまして、その事務局で事務的なお世話をするという建前をもつてやつております。國には國の一つの委員會を設けまして、そこでいろいろな御相談相手になつていただくというようなことを考えて、一貫した一つの教育面で、内務省の今までのやり方とは、變つたやり方で進んでいきたいというふうな考え方で進んだ來たわけでございますが、先ほど申しますように、いろいろ關係筋とも折衝中でありますので、はつきりしたことを申し上げられません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=33
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034・小川原政信
○小川原委員 私、こういうことを考えておるのであります。非常に實際面を申し上げるのでありますが、教員の優遇法であります。教員の優遇というものを一本にしたいという考え方であります。これは田中文部大臣も、その通りにしたいというふうに言つておられた。小學校の先生から大學の先生まで、一例をあげて見ますならば、年額一萬圓といえば小學校の先生にも一萬圓の人があり、中學の先生にも、高等學校の先生にも、大學の教授にもある。こういうふうにしなければいかぬ。それはどうでありますかというと、その通りにしたいということであります。これを現文部大臣はどういうふうにお考えになつておられるか。それから小學校の先生、中等學校の先生、それから上の先生も、今日は實に生活にお困りでありましようが、殊に小學校の先生は中等學校の先生より待遇が惡いのでありますが、その待遇をどこまで上せようというお考えでありましようか、この點であります。そこでこれらの待遇をやるという上におきまして、今までの地方官吏の取扱いぶりは、昨年の七月俸給が増俸した。上げなければならぬというのが、十一月になつても十二月になつても俸給を渡してくれない。それはどういうわけかと尋ねて見ますと、とても役所の手が足りなくて俸給をやることはできないのだ、こういうことを言うのでありますが、こういうことは實際あり得ないことであります。けれども、私どもその内面を知つております。人の俸給を上げるのにそんなに急いでやらなくてもよいのではないかという、まことにまずい心持から投げやりにしてある實情がある。そういうことでは、一體教育というものの實績が上らぬからして、教育を掌る所として地方に教育廳というものを置かれるお考えがあるのかと、こう申しましたところが、教育廳ということは申されませんけれども特定のものを置くことを考えておるのだ、そうして文部の役人でもつてやらしたいのだ。こういうお答えがあつたのでありますが、これらはどういうことになつたのであるかお伺いします。
それから私はこういうことを考えておつた。これからの教育の行政というものは、非常に重大なものであつて、教育廳を置くといつても、これはなかなか容易でない。できれば結構であります。理想としてはそれもよいと思うが、第一は日本全國を幾つかの大學區にわけまして、その大學區は總合大學を中心として、その大學區の中に高等學校もあれば、中等學校もあれば、小學校もある。それから主としてこの大學區の中に教育廳というようなものがありまして、これがずつと一貫した教育制度を行つていつた方がよいではないかという意味合の質問をいたしたところが、やはりそういうような考え方をしてをるというのであります。これらの點はどうなつたか、この點をお尋ねいたしたい。大體これによりまして私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=34
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035・及川規
○及川委員 各條項にわたりまして、相當詳細に質問があり、大體明瞭になつておりますが、第三條の教育の機會均等のところで、まだはつきりしない所があるのでお聽きしますが、初めの方は「すべて國民は、ひとしくその能力に應ずる教育を受ける機會を與えられなければならない」というので、いわゆる機會均等でありますが、第二項の方に行くと「國及び地方公共團體は能力があるにもかかわらず、經濟的理由によつて修學困難な者に對して、奬學の方法を講じなければならない。」ここに特に「能力があるにもかかわらず」と書いてあります。もちろん能力のない者は學校にはいる資格がないので、現に奬學資金等をもろう者は、學校にはいるということが條件で、はいつた以上は能力があるはずであります。それにもかかわらず「能力があるにもかかわらず」ということが書いてある。實際現實はどうなつておるかというと、先ほどの政府委員のお答えのように、大日本育英會というものがありまして、そこで全般的に奬學の事務をとつておるようであります。その金も本年度は四倍になつて、九千何百萬圓か計上した。大變結構でありますが、第一が名前から育英會、育英の英というのは英才ということでありましよう。秀才を育てるということでありましてこの第三條の「すべて國民は、ひとしく、その能力に應ずる教育を受ける機會を與えられなければならない」ということは、別個の觀念であるわけです。英才はもちろんあらゆる經濟的障害を克服して教育しなければならぬが第三條は、英才でなくとも、普通の國民、すべての國民がその能力に應ずる教育を受ける機會を與えられなければならないというので、今文部省でやつておいでになることは、教育の機會均等ということと、英才教育ということがごつちやになつているのではないか。主として力が英才教育にはいつているのではないか。育英會でなく、育國民會とでもしなければならぬ。國民を教育するという事柄と、英才を教育するということとは、これまた別個であります。政府の詳しい御説明がありましたようですが、いかにして能力あることを認めるかということは、これから考えると言いますが、實際はどうしているかというと、中等學校であると、席次十分の一以内の者とか、國民學校であると、五分の一以内の者とかいうような規定をこしらえております。現實に育英會に金があつて、豫定の人員が何千人かあるのだが、その豫定の人員に滿たないはずであります。滿たないものだから、何邊ももつとないかもつとないかと言うて、學校長に催促が來ますけれども、遺憾ながら十分の一以内というような規定があつて、しかも十分の一以内の者が、皆貧乏に限つておりませんから、結局そういう規定がなければ、いくらでもあるのでありますが、いわゆる英才、十人に一人というような英才をのみ目的としている關係上、應ずることができないというので、實際はおそらく金が餘つておると思います。その現實を御調査を願います。神奈川縣のごときは、たしか餘つておつて、まだ足りない足りないと何次も募集しておりますが、結局滿たない。それにもかかわらず今度はそれを四倍にも五倍にも増したそうでありますが、そういう規定を設けておつたのでは、英才教育という方はそれでよろしゆうございましようが、「すべて國民は、ひとしく、その能力に應ずる教育を受ける機會を與えられなければならない」という趣意から言いますと、これはまつたく矛盾しております。この「能力があるにもかかわらず」ということは要らんので、奬學資金を受けようとする者は、現に學校にはいつておるのだから、中學にはいつている者は、ビリでも、その能力があるから中學にはいつているので、それで經濟上困つたら申請すれば金を出してやればいい。それが十分の一以内と言われるから、とてもだめだ。大體觀念の混同があり、しかも實際がそういう扱いになつている。そういうことを文部當局は御存じかどうか。もし御存じで、十分に調査ができているならば、二十一年度は育英資金によつて何人を育英する豫定であつて、現に何人しているのか、餘裕が一ぱいになつているかどうかということの御答辯を願いたい。今後はそういうものを改めて、第三條第一項の精神を十分に活かすように、何分の一というような規定をとつてしまつて、もちろんあまりに多かつたならば、成績のいい者から採用するのは當然でありますが、滿たないにもかかわらずそういうわくをおいておく。いわゆる形式主義であります。その點文部省の御見解をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=35
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036・辻田力
○辻田政府委員 お答え申し上げます。第一點の第三條第一項と第二項の間に、觀念の混同があるではないか。すなはち育英、英才を育てるということと、教育の機會均等との間に、觀念の混同があるではないかというお話でございますが、これは昨日も申し上げました通り、第三條第一項の前段は、新憲法第二十六條を承けて、すべて國民は能力に應ずる教育を受ける機會を與えられなければならないというので具體的に言いますと、たとえば入學等のときに、いかなる學校においても能力さえあれば、その能力に應ずる教育を受けられるのだということであります。また後段の方は、ここに書いてありますような、人種以下これこれの條件によつて教育實施上差別されない。むろん入學の場合もそうでありますが、それに加うるに教育實施上差別されないということも含まれているのであります。次に第二項の方は奬學の方法、これは實は經過を申しますと初めは育英の方法というような字が書いてあつたのでありますが、しかし育英ということについては、今お話がありましたように、非常に誤解を生ずるおそれもありますので、これを奬學の方法というふうにわざわざ改めたのでございまして、第一項と第二項と考え方が一貫するようにむしろ努めて直したのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=36
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037・稻田清助
○稻田政府委員 育英會の本年度の奬學生の數等につきましては、また後刻調査いたして申し上げたいと考えております。育英會におきましても、本年度既に先般御指摘のように、豫算も殖えております。來年も殖えてまいるわけでございますので、奬學生の選定方法につきましては、先般來根本的に改正を計畫されまして、殊に從來高等專門學校に重點がありましたのを、中等學校の方へ廣く及ぼそうというようなことで、各府縣ともいろいろ協力されまして、やつておられるわけであります從いまして、從來は非常に數が少くありましたので、十分の一とか五分の一とかごく少數に限定されておりましたのも自然これまた廣くなつてまいる傾向にございます。詳細な點につきましてはいずれお答え申し上げることにいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=37
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038・及川規
○及川委員 第六條學校教育というところに、「法律に定める學校の教員は全體の奉仕者であつて」——これは憲法の精神から公務員としてこういうことになりましたが、ここに「自己の使命を自覺し、その職責の遂行に努めなければならない」とあります。大體この法案はそつちこつちにこういう文句がありますが、教育基本法は、教育の根本の最も重要なところを規定したのであつて、一言一句もよけいなところがあつてはならない、足らなくてもならない。みな文句が金玉の文字で、その位置に最も適當なものであつて、一つ削つてもならないというようなものができ上らなければならぬと思うのでありますが、ここに到るところ、あつてもなくてもいいじやないかと思う文句が散見するのであります。現にここにある「教員は、全體の奉仕者であつて、自己の使命を自覺し、その職責の遂行に努めなければならない」というのは、これは教師ばかりでなく、官吏でも公吏でも勞働者でも、たれでも國民全部がそうあるべきことで、當然過ぎるほど當然なことで、ひとり教育者のみ自己の使命を自覺して職責の遂行に努めなければならぬものかどうか。今まで教育者が特に自己の使命を自覺しなかつた、無自覺であつた。教育者が特にその職責の怠つたというような事實があつたので書かなければならぬというなら、特別でありますが、そうでないのに、このように訓示規定といいますか、道徳規定といいますか、こがなければ教育基本法は成り立たぬのか、あるいはかつこうが惡くなるのか。讀んでみてはなはだ變な感じを起させる。むしろ反對に、今までの教育者が自己の使命を自覺しなかつたのではないか、職責の遂行に努めないところがあつたのではないかという感じを起させる。こう思うのでありまして、むしろここで強調すべきところは、教員の身分が尊重されるということ、待遇の適正であること。これは過去の日本の教育界おいて、教員の身分は必ずしも尊重されない、待遇はきわめて不適正であつたから、ここにぜひ強調しなければならぬ、こういう強調しなければならぬのだけ書いて、あつてもなくてもいい、むしろあれば反對解釋で、教育者の尊嚴を害するような、あるいはそうでなければ官僚が教育者に何か道徳的訓示をしているような感じを與える文句を入れる必要はないじやないかと思いますが、どういう御趣旨でこういうものを入れたか、これを聽いておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=38
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039・辻田力
○辻田政府委員 第六條の第二項の前段の問題でありますが、これはこの基本法が、昨日もお話がありましたように、法律の形で出されまして、從つて國民の代表であられる議會において十分練られて、その意思として出されるわけでありますが、そこでただいまお話がありましたように、官吏が教員に訓示をするというような形にはならないと思うのであります。國民全體が、學校教育に携わる教員はかくあるべきものであるということを、國民全體の希望と申しますか意思として發表するということで、こういうふうな考え方が出てきたわけであります。從來一部分の者があるいは自己の使命を自覺しなかつたり、自己の職責の遂行に努めなかつた者もあるかもしれませんが、大部分の學校の先生方は、非常に使命を自覺し職責の遂行に努力されたのでありますけれども、法律に定める學校の先生方のあるべき姿を、次の「このためには、教員の身分は尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない」。これは從來場所によつては身分も尊重されましたが、場所によつては尊重されなかつたり、また待遇については必らずしも適正を期せられなかつたというようなこともあつたのでありますし、またそういうふうな從來の關係から、經緯からだけでなしに、今後こういう前段に書いてありますような使命を持つておられ、また全體の奉仕者としての性格を持つておる方々でありますから、これは教育者の側でなしに、その外部、行政を掌る方とか、あるいは國民全體として、教員の身分を尊重し、その待遇の適正を期するように努めなければならぬと、われわれの方としては考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=39
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040・及川規
○及川委員 文部大臣がおみえになりましたから、第八條の政治教育というところでお伺いいたします。第二項の「法律に定める學校は、特定の政黨を支持し、又はこれに反對するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」という條項でありますが、昨日も同僚の永井委員からお尋ねいたしまして、これは學校として政黨を支持、あるいは反對の政治教育、政治活動をしてはならないということであつて、個人として學生あるいは教師がなすことは、これは自由であるというお答えを得たのでありますが、私はもう少しはつきりいたしたいことは、個人として國民としてやることは、勿論お聽きしなくともわかつたことであります。問題は學校としてではないが、學校の學生、生徒あるいは教職員が、學園内において、ある政黨を支持する、あるいは政黨の政策を支持する、あるいはそれを批判する。あるいはさらにそれを強調する、他の人に説得する、さらに宣傳するようなものは、この條文からでは一向に禁止しておるか許されておるかわからない。學校自體がやるんじやありませんが、學園内において學生、生徒、もしくは教師が、あるいは個人で、あるいは組織をつくつて、今申上げたような政治的活動をすることが、許されるかどうかというような問題は、これも條文によつては何らはつきりしておらないのであります。ところで前文部大臣は、前年の九月六日貴族院の豫算分科會での質問に對する答辯で、學園内の學生、生徒の政治運動を禁止するという意向を表明しております。大體要旨はこういうふうになつております。學園は政治的鬪爭の圈外で、教職員はその地位を利用して宣傳をしてはならない。反面また學徒は自己が未完成の立場にあることを考え、學内で政治運動をなし、學校行政改革についてくちばしを容れてはならない。學校當局がさような意味をもつ學生組織を認め、それにはかつて學長、教授を選び、また學生の投票によつてきめることは認めない。大學の自治といつても、教授會以外に父兄の力や學生の力が加われば、自治は破壞される。右翼が盛んなころにはその事例があつたが、左翼についても同樣である。政治運動を起し學園の秩序を亂し、反省せぬ學生は、その程度に應じて處斷することもやむを得ない。學校當局で確信を失つておる向きもあるが毅然たる態度で臨んでもらいたいというのが、この答辯の要旨なのであります。この中には二つのことがはいつております。一つは教職員がその地位を利用して、宣傳してはならないという、その禁止と、それから學徒については二つのことが書いてあります。學徒は自己が未完成の立場にあることを考えて、學校内で政治運動をなしてはならない。もう一つは學校行政改革についてくちばしを容れてはならないということでありましてまずこれを學徒の方面から言いますと一般に學園内で政治活動をしてはならない。それから自分の屬する學校行政について介入することを許さない。こう二つありますが、教職員は地位を利用して宣傳してはならない。これを加えれば三つでありますが、これは前文部大臣の意見であつて、勿論ただいまの大臣の意見かどうかわかりませんが、この方針は現文部大臣も踏襲されるのでありますか、どうでありますか。この點お聽きいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=40
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041・高橋誠一郎
○高橋國務大臣 及川委員の御質問にお答えいたします。御質問の點は二つであつて、第一に教員の場合、第二には學生の場合であつたと存じます。教員活動中におきまして、特定の黨派を支持し、またはこれに反對するための政治教育その他政治的活動をいたしますることは、その基本法第八條におきまして、相ならぬことと考えるのであります。學生の場合でありまするが、これは昨日も一言觸れたかと思いまするが、思想の自由を尊重いたしまするので、學生が特にある特殊の思想、あるいは政見を研究いたしますることは、むろん自由でありまするしまた進んでこれを運動に移しますることも、決してこれを禁止はしないのでありまするが、しかしながら教育の目的を達成いたしまするがために、學園の秩序を維持するため、一定の制限があることは、申すまでもないことであると存ずるのであります。この制限がいかなる限界を有するものであるかということにつきましては、各段階の學校によりまして、それぞれ差別があることと考えるのであります。この點の判斷は、一に學生そのものの自覺と、學校長、學校當局の判斷に任せらるべきものと考えておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=41
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042・及川規
○及川委員 大體了承いたしましたが教職員が地位を利用して宣傳をしてはならないということは、教職員が學校の構成員の一員として授業の講義の中に、あるいは授業の中にそういう特定の政黨の政策とか、主義等を織り込んで宣傳するということになれば、第八條のいわゆる「法律に定める學校は、」ということに當ると思いますが、この正規の授業を離れまして、學生の組織した自治會とか、研究會とかいうものに出て、あるいは學友會と言いますか、さまざまな自治的な團體があると思いますが、そういうものに出て、自分の信念に基いて一つの主義政策を表明する、力説する、あるいは説得する。あるいは多數になればこれを宣傳すると言いますか、宣傳するということは第八條に該當しないものと私は解釋いたしますが、文部大臣の御意見はいかがでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=42
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043・高橋誠一郎
○高橋國務大臣 學校外における政治運動につきましては、やはり教員の場合と學生生徒の場合を、わけて考えなければならぬのでありまするが、教員の場合におきましては、その自由を認めなければならぬと考えるのであります。ただ二十歳未滿の學校の兒童生徒及び學生を使用いたしまして、その特殊の地位を利用いたしまして、選擧運動をいたすことは相ならぬものと考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=43
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044・及川規
○及川委員 ただいまの二十歳未滿の者を、特殊の地位を利用して選擧運動に行使することができないということは、これはわかつておりますが、問題はそうではありません。學校以外のとおつしやいまするが、學校以内とか、以外とは何を指すか。この前も文部省では、訓令で學園内という文字を使つて、この前の選擧運動に政治行動をしてはならぬということを出しまして、大分教員の政治行動に障害を來したものでありまするが、その學園内というのは學校の地域的區域を指すのか。よくここにも學園は政治的鬪爭の圈外にあるという、學園とは何を言うのか。今度の選擧運動でも、多くの學校はこれを選擧運動に開放せられまして、そうして政談演説會場になるのでありまするが、今の教師の場合でも、學校外、もちろん學校を離れて、どつかの無關係な公會堂とかなんかに行つてやることは、だれが見ても當然でありますが、學校のいわゆる區域内、そこにたとえば學生の自治會とか、あるいは研究會とかいうものがありますが、そういう所でやることは、いわゆる學園内でやることであつて、田中文部大臣の學園内における政治運動であつて、禁止されるかどうかということを、お聽きしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=44
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045・高橋誠一郎
○高橋國務大臣 この點は、日高學校局長が政府委員として出席せられておりますので、同氏からお答えすることをお許し願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=45
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046・日高第四郎
○日高政府委員 御説のように、學園の内外ということの區別は非常に微妙でありまして、一概にきめがたいと思うのでありますが、それは前の文部大臣が話をされましたときには大體地域と時間とでもつて、學園の内外ということをきめたんであります。しかし實情を考えてみますと、大きい建物がみんな戰災にかかつておりまして、選擧の演説の場所等もないのでございますから、學校等をそういう選擧の政見發表等の場所に貸すことを認め、またそれを公の手續を經るならば、機會を均等に與えなければならないということになつておりますので、それで選擧演説を校内で認めないわけにいかなくなつておりますから、場所でもつて簡單に明僚にきめることは非常にむずかしくなつております。それで要は學校の教育の内容が、政治的に中立でなければならない。それから學校の教育そのものの中に、政治的な鬪爭が導き得られてはならないというような趣意も徹底させまして、各學校長にそのときどきの場合によつて、その標準できめてもらうという方針を立てております。先ほど大臣からのお答えした中に一部觸れておりますけれども、すべての學校を同じに取扱うわけにいかないこともあるかと思います。たとえば法科大學とか、あるいは經濟をやつておる大學とか、そういうようなところで政治學の教育をし、政黨に關する教授をするというような場合に、どこまでそれを學問的な意味を政治教育ときめるか、どこからそれが政治運動であるか、それは講義をする人の意圖にも態度にもよりましようし、その場合にもよるものと思いますので、それをどこではつきりきめるかということは、概念的にはなかなかきめがたいのでありまして、その點は學校長並びに學校當局に委ねまた教育者並びに學生の自覺に訴えてその標準を見出してもらいたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=46
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047・及川規
○及川委員 この學園内で、學園が政治鬪爭の外にあるべきだとか、學園を政治鬪爭の場にしてはならないという思想の中には、政治鬪爭というものは惡いものだという思想が、その奧にあるではないか。政治鬪爭というものをつかみ合いか何かというふうに考えておるならば、それはもちろん惡いが、政治鬪爭は當然これは展開されなければならぬ、日本においては最も活溌になされなければならない。昔の腐敗墮落した政黨時代の政治的鬪爭は、公明なる政治鬪爭というべきものでなく、これは私黨の爭いであり、あるいはどろ試合であるとか、非常に醜いものでありますが、少くとも今後の政治的鬪爭は、單なる私黨の爭いではない。現に目下政黨として結成されておる政黨は、單なる自分の利害の要求を掲げておるのではない。同じ陣營内で、ある一部分を代表するというのではなくして、既に世界觀の對立である。またいかにこの目をふさごうといたしましても、現實にこの社會に階級が存在することもこれは否定できません。今日の政治鬪爭は、世界觀の鬪爭であり、階級間の鬪爭である。從つて國民はこの現實を正視して、活發に理論鬪爭を展開しなければならない。殊に大學等は、一般國民の教養水準からみて、きわめて高いのであつて、こういう場面においてこそ、活發な政治鬪爭がなされなければならないと、自分は信ずるのであります。それを學園が政治鬪爭の圈外にあるべきだ、中立的であるべきだという根本觀念が、既に誤りではないかと思うのでありまして、ただいまのお答えでは、必ずしも滿足はいたしません。ただその程度に應じた、ある制限は設けらるべきである。しかしその制限が、學校の秩序を破壞するということであれば、これはひとり政治鬪爭ばかりではない、いかなる動作でも學園の秩序を亂すようなことは制限されなければならぬ。事實上これは政治鬪爭には直接關係のないものであつて、ただ秩序を亂すべき行動を禁止すべきものである。殊に前文部大臣は、學徒は自己が未完成の立場にあることを考えて、學内で政治運動をしてはならぬ。政治運動をすることのできないという理由は、自己が未完成であるからであるということを言うておるのでありますが、何によつて完成、未完成の區別をするか。大學生が未完成であるならば、大學にはいらぬ者、高等學校にはいらぬ者は、みな未完成で、人間として政治運動ができない。少くとも大學生のごときは、一般國民よりも水準の高いものであつて、そういう者が未完成であるからというて、政治運動をしてはならぬということは、きわめて反動的な思想であると思うのであります。この學徒が自己の未完成の立場にあることを考えて、學内で政治運動をしてはならないという前文部大臣のこの意見は、現文部大臣は踏襲せられない。こう了承してよろしゆうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=47
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048・高橋誠一郎
○高橋國務大臣 現代においての政治的鬪爭は、むろん過去におけるがごとく、武力鬪爭によりませんことは明らかであります。政治運動を決して惡いものとは考えておらぬのであります。しかしながら政治的活動を放置いたしますると、すなわち學園内においての政治運動を自由に放任いたしておきますと、教育の主體としての學校が政爭の渦中にはいりまして、その結果學校教育の目的の實現を妨げるおそれが多分にあると考えるのであります。それがために學園は政治的鬪爭の上に超然と立つべきものと考えておるのであります。しかしながら、むろん學園内において一定の政治的知識を授けますことは、先ほど申しましたように、必要なことと考えておるのでございます。なお御質問になりました前文部大臣が學徒は未完成のものである云々という言葉を漏らされたそうでありまするが私はこの點におきまして、いささか前文相とは意見を異にするものでありまして、ただ未完成なるがゆえに、その政治運動を禁ずるとは考えておらぬのでありまするが、學徒本來の面目によりまして、靜かに研究を行うべきものであつて、政治運動に狂奔すべきものではない。そこに限界があると考えておるのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=48
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049・及川規
○及川委員 なお私の理解できないことは、政治運動に狂奔してはならない政治運動が學園内で激しくなると、本來の教育の使命が達せられない、秩序が亂されるというような御意見でありますが、政治鬪爭というものは、先ほども申し上げたように、つかみ合いをするものではない。かるがゆえに、自分の眞と信ずるところの政策を發表し、研究し、それを批判する。そうして自己の信念に共鳴する者を求めるということは、これは正しい行動であつて、それによつて學校の教育がゆがめられる、あるいは秩序が亂れるということはあり得ない。あり得たならば、それは政治鬪爭の必然の結果ではなく、それに附隨するところの、あるいは惡い動機に基いて故意にやる鬪爭で、それはそれ自身として取締るべきものであつて、そういう弊害が起るであろうという理由のもとに、正しき政治鬪爭を學園内で禁止するかのごとき態度は、はなはだいかぬと思います。この點におきましては、さきに田中文部大臣がこの表明をせられまして、あらゆる社會層から批判され、あるいは論難されておるようでありますが、九月六日にこれを發表して、九月八日の朝日の社説では、教育獨占思想に注意せよ。また九月十七日の帝國大學新聞では、學生と政治問題再燃、九月十六日の週間教育新聞等にもこれを批判し、これを非難をしておりますが、わが日本社會黨も先々月の黨大會において、學生の學園内における政治鬪爭、政治活動は當然許さるべきものであるという決議を掲げておりますので、こういう點においても、今までの文部當局の見解と正面的に衝突して、その矛盾を指摘しておりますので、今後新たに就任せられた現文部大臣におかれましては、前文部大臣と違いまして、反動的思想の持主であるとは思いませんので、なおこの點について十分御考慮を願いまして、正しき道に導き、學園内で堂々と政治鬪爭が秩序正しく組織的に民主的に行われるように御配慮を願いたいと思います。これで私の質問は終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=49
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050・小川原政信
○小川原委員 私は時間がありませんから、ごく簡單に要點だけを申し上げます。前に田中文部大臣に質問をいたしまして、田中文部大臣よりお答えがあつたのでありますが、それについてどうかということをお尋ね申し上げるのでありまして、全國をいくつかの大學區にわけまして、そこに學校行政というものをお立てになられたらどうであるか。その大學區の中には總合大學を中心といたしまして、その總合大學の中の中學校、あるいは高等學校、小學校、この行政を行わしめるに、大變都合がいいじやないか。そこに文部省の役人が中にはいつておりまして、教育廳というものを設けたらどうか。こういうお話を申し上げたのでありますが、大體それはそういうふうにしたいのだ。こういう御答辯でありましたが、今もつて文部省はそういう御計畫に向いてお進みになつておるかどうかその點をお尋ねいたします。どうか文部大臣の教育行政に關するこの點をお話願いたい。かように考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=50
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051・高橋誠一郎
○高橋國務大臣 ただいま御質問になりました地方教育行政の改善につきましては、教育刷新委員會、そのほかにおきまして、十分御研究に相なつたところでありまして、文部省といたしましては、ただいま關係諸方面と協議しておるのであります。この點目下未定でございまして、明確にお答え申し上げることができないのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=51
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052・小川原政信
○小川原委員 ちよつと一言——。實際ありのままのお話で、時間もございませんのでそれに附け加える何もございません。ただ他の内務官僚によつて教育行政を掌られますと、往々にして誤つた點が相當ございますので、文部省はこの點をひとつ御留意下さいまして、なるべく文部省の管理によつて、教育行政を掌つてもらわなければ相ならない。こういう考え方を私もつておりますので、その點を十分御考慮願いたい。ごく單純な問題でありますが、昨年の七月など増俸になつたものでも、十二月に支拂いがしてない。こういうことはどういうわけかと申しますと、内務省の役人がなかなか忙しがつて、そして人の増俸の仕方などというものにそう力を入れてやらない、やりつ放しにしておる。實際問題を見ますと、そのため教員が非常に苦しんでいるというようなことがありますので、私はそういう弊をためたいと思つて、こういうことを申し上げておいたのであります。なるべくその趣意に從つてやりたい。こういう田中文部大臣のお答えであつたのでありまして、どうかそういう點を一つ御考慮願いたい。これだけ附加しておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=52
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053・江川爲信
○江川委員長 それでは平川篤雄君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=53
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054・平川篤雄
○平川委員 各條ごとに御質問申し上げたいと思いますが、初めに全般的な問題及び第一條、第二條に關連をいたしましてお尋ねをいたしたいと思いますのは、教員組合の問題なのであります。聞くところによりますと、ただいま勞働組合法に基く教員組合のほかに教員連盟というようなものをつくりまして、そしてそれによつて教育の進展教育效果の向上というような方面に資したいというような案があるそうでありますが、これについて……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=54
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055・高橋誠一郎
○高橋國務大臣 御質問の點は、目下教育刷新委員會において研究いたしておるのでございまするが、いまだ決定を見ませんで、答申せられておられないのでございます。これをまちまして文部省の態度も決定いたしたいと考えておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=55
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056・平川篤雄
○平川委員 それならば特にこの際お願いをしたいことは、私個人の考えといたしましては、教員組合のほかに、今のようなものをつくることは、かえつて現在教員組合が正常な道をたどろうとしておるのを阻害するのではないかと思う。二・一ゼネストは、非常に不幸なことでありましたが、しかしこれによつてむしろ私は、どうせいつか破綻が來べきものがあの程度で止まりかつ教育者自身の中に大きな反省が、それによつてもたらされたのではないかというように考えて、いろいろな待遇上の條件を滿たす問題にいたしましても、それが解決すればするほど、教員の自己自身の責任が重加してくるというふうに、大部分の教員が考えて來ておるのではないかと思われる。かようなことは他の勞働組合ならどうかわかりませんけれども、教員組合にあつては、私はむしろ喜ぶべき傾向にただいま乘つて來ておるのではないかというふうに考えております。從つて一部分にはいろいろな考えの違つた者もあるでありましようけれども、全體といたしましては日本を教育によつて興していかなければならないというまじめな考え方が興つておる際に、片方は經濟的な要求だけを掲げる勞働組合としての教員組合、もう一つは例のただいまの大日本教育會のごとき仕事をするものと思いますが、教員連盟というようなものをつくりますことは、かえつて黨中黨をつくると申しますか、あるいはそれに似たような惡い結果を生ずるのではないかと考えております。この點を要望いたしておきたいと思います。
次に文部大臣が先ほど團體協約を組合との間に結ばれたのでありますが、昨日他の委員の方から御質問がありました際に、鬪爭態勢を早急に解こうと思つてこういう協約を結んだというような御答辯があつたように思はれるのであります。大體六箇月間の期間をもちましたああいう團體協約に、はつきりした豫算的な根據だとか、あるいはその他の實現の期待というものをもたれて結ばれたものであるかどうかということに、私は非常に疑いをもつ。そんなことは私は萬々あつてはならないと思いますけれども、惡くすると、その協約を盾にとつて第二のストライキを考える者がおらないとも限らない。私は文部大臣がお結びになりましたこういう團體協約の各條項は、まことにもつともなものであり、また私どもが年來そのようにありたいというふうに念願をしておつたものでありまして、その條項については、何ら異存はない。むしろそういうことのできない場合には、われわれも協力をいたしたいというくらいに思つておるのでありますけれども、しかし私はただ乘ぜらるるすきがあるようなことであつては、かえつて組合に對する好意的なお考えが、むしろ組合を愛さないものになるのじやないかと心配するのであります。その點につきまして、一つ大臣のお考えをお聽かせいただきたいと思います。具體的に申せば、たとえば四時間の授業時間というような問題であります。これなどは、たちまち教員數の不足をどうするかという問題をもたらすのであります。現在新制中學が設置せられまして、その教員數さえもなかなか得られない状態であります。このような問題について、どういうようなお考えで協約を結ばれたか、お聽かせを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=56
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057・高橋誠一郎
○高橋國務大臣 教員諸君の組合と締結いたしました團體協約につきましては、いろいろ實現困難な點もあることを、われわれも想像しておつたのでございまするし、殊にただいま御指摘になりました勤務時間の點などにおきましては、文部省側と組合側との間に、幾次の折衝を重ねたのでありまするが、しかしながら教員の地位、境遇などを考え合わせますると、やはりあれくらいな時間を約束するということが、いいのではないかと考えまして、文部省としては最大の努力を行いまして、これを實現させたいと考えておるのであります。これがために教員の増員もおのずから必要となつてまいりましようおそらく二學級につきまして三人ぐらいの教員は、どうしても必要となることと考えるのでありまするが、この點におきましても、あくまで努力いたしまして、これを實現させたい、契約を履行させたいと存じておるのであります。これによりまして教員諸君の再教育に要する十分な時間、たとえ十分とはまいらないまでも、現在と比べまして、はるかに時間的に餘裕のある生活をせしめたい。こう考えてああいう契約を締結した次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=57
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058・平川篤雄
○平川委員 御決意を承つて大變うれしく存じますが、なかなか文部大臣のおつしやるように簡單にはまいりません。大藏省やそのほか閣僚の各位と相當喧嘩をなさる御覺悟でなければ、できないのではないかと存じます。今までのストライキに至りますまでのいろいろな事情を考えますときに、そのようなお心持をおもちになつているのであるならば、せつかくよほど御覺悟をおきめになつて御努力をいただきたいと思います。われわれまた十分協力を惜しまないつもりでいる次第であります。
それではところどころ法案にちよつと疑義のある所だけをお尋ねいたしたいと思います。この三條に教育の機會均等の條文がありますが、これについて先ほど及川委員の方からもお話がありましたが、私どもはやはりこの機會均等が、ただ個人的な經濟的な事情だけに限られているような印象を、非常に受けているのであります。これに對しまして國及び地方公共團體が學校の設立にあたりまして、位置等の問題をよほど考慮する必要があるし、現在戰災などを受けております學校その他、事情の許す學校につきましては、これを適當に地方に分散することを考えなければいけないと考えております。これができない限りにおいては、いくら勤勞青年を教育しようと思いましても、またそのほかの不遇な事情にある者を教育しようと思つても、無駄になるのではないかと思う。從いまして設立を許可する方法というようなものが、從來のようにとかく都市の財産のある一部分の者の希望によつて行われるというようなことをよほど制限を加えまして教育的な見地から、むしろ國家あるいは地方自治體の力で行うように、地方分散の計畫を立て直すということが一つ大切だと思う。もう一つは入學試驗の方法であります。これができなければ教育の機會均等というものは不可能であります。最近メンタルテストをもつて、眞に能力ある者を選出するということが言われておりますけれども、具體的にそういうことが可能なのであるか、これをちよつとお聽きいたしたいと思います。もしもそれが不可能であるならば、一體どういうような方法を文部省は考えておいでになるのか。眞に能力ある者が教育を受けるということは、誰しも納得をすることなのでありますけれども、事實はそうでない。このことが教育を傷めもし、また眞に教育の機會均等ということを破つてしまう根本の問題だと思います。第三に教育を受ける個人的な經濟的な理由というものが、ある程度ならされなければならないと思います。第四條に「授業料は、これを徴收しない」とありますが、授業料ももちろんのことであります。現實によいクレヨンあるいはよい畫用紙、筆のよいのをもつておるというようなことが、隨分子供の成績を左右するのであります。このようなことは、どのくらい父兄や子供たちの心を暗くし、傷めておるかということを考えますときに、私どもは授業料のみならず、義務教育にあたりましては、一切の學用品類を國家が支給することを原則にいたしたいというふうに考えておるのであります。もちろん現状としてはそういうことは不可能でありましようが教育の基本法に、何とかその精神を盛ることについて、何かお考えがないであろうか。以上教育の機會均等という問題につきまして、三つの點をお伺いいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=58
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059・日高第四郎
○日高政府委員 ただいまお尋ねの點で、第一に學校をもう少し地方に分散しなければ、單に能力がありさへすればすべていけるように取計らうと言つても、事實上できないというお話でございましたが、それは殊に現在のように、生活上の問題がいろいろ窮屈になつておるときには、まことにごもつともなお話であります。文部省としましては、できるだけ都會に集中しておる學校を、地方に分散させたいという希望はもつておりますが、ただ學校は建物ばかりでなくして、そこに通います子供たちの住居のこともありますし、またそこに勤めております教員たちの住居關係等もありますし、その學校の背景になつております學校關係者等のこともありますし、事實上一つの學校を移轉させるのにも、資材、運送、その他の點においても、隘路がたくさんありまして、なかなか思うようにまいりませんので、これは現在の日本の國力においては、簡單には期待できないことなんであります、その意味で、たとえば戰災を受けました大都市等にあります學校を、地方の軍の建物等に移すような場合には、できるだけ便宜を取計らつて移すように勸奬いたしております。それから戰災の都市に新たに學校を設けるというふうなことについては、できるだけそれを抑制するような方法で進んでおりますが、何分にも現在の日本の國力では、それが急速には行かないことを非常に遺憾に存じております。
それから次の、メンタルテストによつて學生、生徒の素質や能力を、どの程度に偶然性を入れないで確實に見出せるかということについては、相當まだ未解決の問題がたくさんあると思います。しかし日本で現實にそれが行われておるわけではありませんけれども一部分の實驗とアメリカ等における經驗等を考えてみますと、今までのいわゆる入學試驗は、俵に偶然に棒をさして中の物を見るというのと同じようにたまたま前の日に勉強したことが出たといつたような、そういう偶然なところが非常に多いと思います。その點は試驗が通つたら必ずしも能力があるとは言えないようなところもありますので、偶然性の比較的少い、いわゆる試驗勉強では效果のないようなしかたでもつてインテリジエンス・テストというようなものをやれば、一層學生の素質に近いものが見出せる望みは十分ありますので、今後はそういうことについてもつと努力をしていつて、ほんとうに能力のある者を見出すように努めたいと思つております。
最後に、單に授業料ばかりでなく、個人の經濟のために、學校における成績等にも影響のあるようないわゆる學用品についても、できるだけ同じコンデイシヨンに置いて教育させたいとは思つておりますけれども、これも現在の日本の状況においては、願いはいたしますけれども、なかなか實現が困難だろうと思つております。御指摘の點はいずれも理論として、また一つのわれわれの衷心の願いとしては同感にたえないのでありますけれども、現實の障害によつてそこまで到達できませんものですから、そしてその到達は相當時をかさなければできないことでありますので、基本法に約束のように出すことについては、控えなければならないというような考慮から、御指摘の點も幾分は考えたのでありますけれども、確實な、そして明確にどうしてもしなければならないような點だけを掲げたような次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=59
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060・平川篤雄
○平川委員 ただいま御答辯いただきましたことは、實は私の氣持とちよつと離れております。私はもちろんそれをお伺い申したのでありますけれども同時に最後におつしやつたように、この基本法にそういう條項をお入れになることができないかという氣持が主であつたわけなのであります。ただいまおつしやるように、私ども現實的には非常に困難だということはよくわかつておるのでありますが、たとへば地方分散の問題にいたしましても、今後設立せられる中學校や高等學校、大學について、これはやはり基準にならないものだと思う。ただいまのように、今あるものを移すということになれば、運賃とか何とかいう問題はありますけれども、その點について言つておるのではないのであります。入試方法にいたしましても、適當な方法があるならば、ここへお書き入れになつてもいいわけであります。教育費についても、そういうことを當然目ざしていくべきだというお考えならば、やはりこれにお書き入れになることも差支えないのじやないか。これは基本法であるがゆえに、私は必要だと考えるのであります。そうでなしに、これがただ今までのような省令でありますとか、あるいはもつと具體的な學校教育法であるとかというようなものならば、私はそうまですぐ實現不可能な問題を盛る必要はないと思います。教育の基本法であればこそ、私はそれを望んで差支えないのではないか、またやつていいのではないかというふうに思う。思い合わせられますことは、このたびの改正憲法であります。これなんかは、どの條項をとりましても、すぐにはできそうにないことばかり盛つてあると言つてもいい。同樣にこれが教育の憲法でありますならば、そのような問題を大膽率直にうたい出されてよろしいのではないか。この點について、文部省の御所見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=60
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061・日高第四郎
○日高政府委員 お話の點は一面ごもつともだと思いますけれども、これは單純に政府の政策を表わしたのではなくて、永續的なものでなければならないという意味において、そうしてそれが同時に法律であるという意味においては、あまり理想的なことだけを述べることも、どうかというふうに考えたのであります。法律は、やはり法律としての效力をもつためには、實行可能な面を相當に考えておかなければならない。それと同時に、やはり理想的な方法も入れておかなければならないというように考えられますので、私どもとしては、たとえばこれらの學校の建設というような點は、教育行政上の一つの方針としては、できるだけ御趣旨に副うようにいたさなければならないと思つております。それから學生の能力の發見というような點についても、できるだけ學問的な科學的な方法をとらなければならないというふうに考えます。それから個人の學問上の條件も、できるだけフエヤーな條件のもとに置くことについては、努力を惜しまないつもりであります。基本法としては、やはり法律であるという建前から、ただ理想的なことだけでは濟まないのではないか、やはり現實的な可能性ということも十分考えた上でないと、空文に終るおそれがありますので、御指摘の方向には、これを背景にして進みたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=61
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062・平川篤雄
○平川委員 今現實々々とおつしやつたのでありますけれども、一體その現實というものを、どういうふうにお考えになるのであるか、平生から教育行政上の事務をおとりになつておりますから、非常にそれがお氣になられるのだろうと思いますけれども、しかし私どもは、大體戰爭中に軍部がああいう軍人の教育についてやつてきておつた大膽なやり方を見ておりまして、そうしてまたあのような方法をもつて、ああいうような考え方をもつてすれば不可能ではないということは、大體國民もこれは了承しておるのではないか。ただいまのこのインフレであるとか、あるいは封鎖經濟をやつておるとかいうような現實では、確かにこれは無理であります。無理でありますけれども、正常な状態になつたときには、これはおつしやるように不可能な問題ではないと私は思います。もしそんなことを考えておいでになりましたならば、この基本法などは、ただいま大急ぎで制定される必要はないと私は思います。憲法の精神に則つてしかるべくやつていつて差支えないと思う。今おつしやるようなお考えでは、どうも納得がいかないのでありますから、重ねてお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=62
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063・日高第四郎
○日高政府委員 たとえば授業料は徴收しないということは、現實にこれは可能でもありますし、そしてもしそれで立つていかなければ、國が補助をしても、それだけの最小限のことはしなければいけない。授業料を徴收しないということの精神は、授業料を徴收しなければそれでいいという意味ではなくて、これはすべての生徒を同じ條件によつてたやすく義務教育を受けさせたいという、そういう一つの動いている方向であるというふうに考えれば、御趣旨のこととあまり差異はないのではないかと思います。それからもう一つは、現實ということを言いましたけれども、これは現在のような悲慘な日本の状態だけを考えているのではなくて、今後もう少し安定した場合においても、實現が可能であるかどうかということをも考慮に入れた上の考えだと思います。それからもう一つ、すぐに理想的なこういう基本法をつくらないでも出發できる、ただ方向だけをきめるなら基本法は要らないというお話でありますけれども、しかし基本法というような日本の教育の根本方針を、議會の協賛を得て、國民の代表である議會によつて認められて、國家のとるべき教育の方針をきめるという點については、これは現在の状態においては特に必要である、そういうふうに考えておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=63
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064・平川篤雄
○平川委員 私どうしても理解がいかぬのであります。ただいま地方へ分散する計畫というのは、今燒けている學校を山の中へもつていくとかいうならそれは馬車をどうするか、トラツクをどうするかということで、これは困難であります。しかし今までに都市集中をしてまいりました理由というものはいろいろありましようけれども、それが設立を願い出るものと、それを許可するものとのきわめて科學的でない考え方に立つてできている。その結果として、結局一部分の有産階級は樂に勉強できるけれども、他の者は恩惠に浴することができないというようなことが、現實に起つておつたのであります。だから今後はこの基本法によつてその地域にはもう既に數種の學校が數校ある、絶對にこれ以上許可しない。それよりもこの山間部の某地方にはないから、この邊にひとつ積極的に學校を建てようというような考えをもたせる基礎としての基本法というものが、私は必要ではないかと思うのであります。それが財政的に不都合であるならば、他の方面でお考えになつている教育行政とか、あるいは教育についての財政の獨立ということについて、どんどん邁進していかれたら結構と思います。われわれはそれについて、ちつとも援助を惜しむわけではありません。そういう全體を考慮せられて、なおそれがおつしやるように不可能なのであるかどうか、そこのところをもう一度伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=64
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065・日高第四郎
○日高政府委員 今の學校設立等については、私は基本法ではなく、學校教育法の中に、そういう精神を盛つた點がありますので、その點で御説明申し上げられると思います。それは學校の種類によりまして、たとえば小學校と中學校は義務教育でありますから、市町村が設置をしなければならないという義務を負つている。高等學校以上のものは都道府縣の知事とか、大學については、現實の問題としては文部大臣、たとえば大學をつくるというような場合には、今までのように、行きあたりばつたりのつくり方、あるいは偶然的な設立というようなことを避けるために、大學の設立に關しては、設立に關する委員會をつくつて、そこに諮問した上で、設立の條件に適うものを許す、こういうことに法律の中できめようと思つております。そういう點から言いますと、御趣旨のようなことは必ずしも基本法になくても、デモクラチツクな委員會の運營によつて、むろん國土計畫とか、あるいは産業の状況とか、地方の文化の状況などを考慮した上で、委員會を通して決定できるような途が開けると思います。問題は基本法にそういうことをうたうか、あるいは學校教育法でいいかということになるのではないかと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=65
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066・平川篤雄
○平川委員 それはここへおうたいになつた方が、私はいいと思います。先ほどからいろいろおつしやいますけれども、この法案を一讀して私ども感ずるのは、きわめて抽象的であるということであります。ただここに教育の機會均等とか、義務教育とか、授業料は徴收しないとか、あるいは九年の普通教育を受けさせるというようなことが割合に具體的に書いてあるから、私はむしろ問題になるのだと思う。先ほど法律だから現實的でなければならないとおつしやいますけれども、實は全般を見ると、ちつとも具體的ではないし、現實的ではないと思つております。これをもし現實的であり具體的だとお考えになつておられるなら、まつたく學校教育を觀念的に把握しておる證據だと私は思う。殊に第三條の教育の機會均等という條項だけ見ましても、これはだれが見ても偏頗だという感じがするのであります。單に個人的な經濟的理由だけを考えておつて、教育というものは「公の性質をもつものであつて」という言葉が第六條にあつたと思いますけれども、そういうような公の性質をもつものでありながら、公の立場で廣く各般にわたつて考えられたものでないということが、印象せられるのでないかと思われます。そういうようなわけでありまして、これは討論の機會に讓りますけれども、文部當局は、それじやもう別にそういう點につきましてこの條項をおかえになる、あるいは挿入をするというような御意思はないと、了承してよろしいわけでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=66
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067・辻田力
○辻田政府委員 先日大臣から教育基本法の提案理由並びにその性格等について御説明がありましたので、十分御承知のことと思いますが、教育基本法は今後の教育の大目的と言いますか、今後の新しい日本の教育の基本を確立するためにつくられたものであります。從つて教育に關する重要なことをすべて網罹するということは困難であります。それで結局大きな目的とか、大方針というようなもの、それから憲法に直接關係ある事項の解明、あるいは教育に關する諸原則の中で、特に重要なものの摘記というようなことになつておるわけであります。從つて教育に關することは、すべてここに包括されて書いてあるというわけではありません。しかし教育目的の中には昨日も第一條の所で申し上げたのでありますが今後特に注意を要すべき點等につきましては、大體必要なことを網羅して書いてあるつもりであります。それでただいまお話の地方分散の問題でございますが、これはもちろん第三條の教育の機會均等のところにも非常に關係のあることでありまするし、また十條の教育行政のところにも關係のあることでありまして、特に學校の設立を認可するというような場合の處置等につきましては、これは第十條の精神をもつて今後實施さるべきものであろうと存ずるのでございます。この第十條によりますると、第一項において「教育は、不當な支配に服することなく、國民全體に對し直接に責任を負つて行われるべきものである。」というふうにありまするが、このあとの方の「國民全體に對し直接に責任を負つて行われるべきものである。」ということはこれは一部都會の者だけとか、あるいは縣の一地域だけというようなことを、もちろん意味してないのであります、全體に對して責任を負うのでありますので、國民の各階層、あるいはまた地域にわたつて、教育というものは普及徹底しなければならないことをも意味しておるのであります。教育行政はこの自覺のもとに必要な諸條件の整備確立を目的として行われなければならぬのであります。ただいま平川委員のお話にありましたような、地方分散ということは非常に大切なことでありますが、この中から十分引出し得るものだと思つておるのであります。
なおこの機會に第四條の第二項に授業料を徴收しないとあるが、授業料を徴收しないだけでなしに、學用品等をも支給するようにしたらどうかという御意見であります。昨日も申しましたように、われわれとしてもそれを念願し、そういうふうにありたいと思つておるのでありますけれども、今日の状況ではそこまで國力はいつていないと考えます。そこで將來はそういうふうにありたい、實現したいと思いますが、今日の状況では、この授業料を徴收しないということをもつて、義務教育は無償とするという憲法の意味を明らかにしておるのであります。また適當なときに、國力が囘復いたしまして、こういうことが實施できる場合には、これにまた附け加えられるということも考え得るのじやないかと思います。また各國の例を見ましても、授業料を徴集しないというようなことが大部分でありますが、しかしアメリカのように非常に國力のゆたかな國におきましては、授業料はもちろん教科書とか、場合によつては兒童の送迎をする費用までも、州でもつておるというような所もあります。しかしアメリカでも州々によつてそれぞれやり方が違つておるのであります。われわれとしましては、御趣旨のところ十分よくわかるのでありますが、今日の現状を見てこの程度で規定しておきたいと存ずるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=67
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068・江川爲信
○江川委員長 平川君に申し上げます。この委員室は、午後一時から建議委員會にかえるのですが、どうでしよう、もうよろしゆうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=68
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069・平川篤雄
○平川委員 よろしゆうございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=69
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070・江川爲信
○江川委員長 それでは質疑はこれにて全部終局いたしました。討論採決は次會に行うことにいたしまして、本日はこれで散會いたしたいと思ひますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=70
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071・江川爲信
○江川委員長 御異議がないようでありますから、そのように決定いたします。次會は公報をもつて御通知申し上げます。次會において採決をいたすことにいたしたいと思います。これで散會いたします。
午後零時四十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210549X00219470315&spkNum=71
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