1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
行政官廳法案(政府提出)(第三二號)
宮内府法案(政府提出)(第三三號)
恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)(第四五號)
日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の效力等に關する法律案(政府提出)(第四六號)
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昭和二十二年三月二十日(木曜日)午前十一時二十七分開議
出席委員
委員長 天野久君
理事 森崎了三君 理事 淺沼稻次郎君
小川原政信君 加藤一雄君
石原登君 生方大吉君
星一君 村島喜代君
原彪之助君 大津柱一君
三月十九日恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)及び日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案(政府提出)の審査を本委員に付託された。
三月二十日委員淺沼稻次郎君、生方大吉君及び井上赳君辭任につきその補闕として、森本義夫君、石原登君及び大津柱一君を議長において選定した。
同日理事淺沼稻次郎君の補闕として森本義夫君が理事に當選した。
出席國務大臣
國務大臣 齋藤隆夫君
出席政府委員
内閣事務官 三橋則雄君
内閣事務官 前田克已君
法制局長官 入江俊郎君
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本日の會議に付した議案
行政官廳法案(政府提出)
宮内府法案(政府提出)
恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)
日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=0
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001・天野久
○天野委員長 それでは會議を開きます。咋日恩給法の一部を改正する法律案、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案の二法案が本委員會に併託されました。この際政府當局よりその趣旨辯明を求めます。入江法制局長官。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=1
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002・入江俊郎
○入江政府委員 ただいま議題となりました恩給法の一部を改正する法律案と、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
まず恩給法の一部を改正する法律案でありますが、今囘の改正は既に本會議においても申し上げました通り、新憲法の施行に伴う諸般の法令の改廢等に伴うものでありまして、その主たる點はおよそ次の諸點でございます。
第一點は皇室關係職員に關する規定の整備であります。宮内職員が現在宮内省恩給令によつて宮内省から恩給を支給されておりますので、恩給法中には宮内職員と政府職員との人事交流の場合の政府職員の恩給取扱いに關し、種種の規定が設けてありますが、これらの規定は今後不要となりますから、これを削除することにいたしました。また宮内職員の恩給は、宮内省廢止後は國庫がこれに代つて從來通りに支給し、なお宮内省廢止の際、引續き政府職員となる者につきましては政府職員を退職したとき、前後の在職年を通算して恩給を支給することにいたしました。改正法の附則にその規定があります。さらに先般皇宮警察所が警視廳に移管せられたに伴いまして、新たに設けられました皇宮護衞官のうち、皇宮警部補及び皇宮警手は、他の一般警部補及び巡査と恩給法上同樣に取扱うべきものと考えられますので、これを恩給法上の公務員たる警察監獄職員として指定することにいたしました。第二十三條の改正規定であります。
第二點は、恩給に關する爭訟についての規定であります。現行法によりますと、恩給の權利侵害に對しましてはまず内閣恩給局長に具申し、その裁決に不服あるときは、内閣總理大臣に訴願するか、または行政裁判所に出訴するか、二つのうちいずれか一つをとり得ることになつておりますが、新憲法の施行と同時に、行政裁判所は廢止せられ、從來の行政訴訟はすべて一般民事裁判の管轄に移されることになりましたので、從來行政裁判所に出訴することになつておりました恩給に關する訴訟は、これを民事裁判所に提起するように改めますとともに、右のような訴訟の提起につきましては、從來行政訴訟につきまして設けられておりましたような制限を存續させることは、新憲法の趣旨に照しましていかがかと思われますので、今後はあるいは具申を經ず直ちに出訴することも、また具申の裁決のみならず、訴願の裁決に對しましても出訴できることにいたし、かつ民事裁判所に出訴された事件につきましては、その判決を最終決定とする趣旨をもつて、重ねてその事件につきまして、具申または訴願をなすことは、これを許さないことにいたしました。第十三條の改正規定がこれであります。
第三點は、國會法の施行に伴います改正であります。新憲法の施行とともに、貴衆兩院事務局の職員は廢止せられ、國會職員が新たに設けられることになりました。ところで國會職員の恩給の取扱いについてはその任用制度、給與制度等の諸制度の整備と相まつて、遠からざるうちに何分の決定を見ることと存じますが、その決定を見まするまでの暫定的措置といたしまして、恩給法の適用につきましては、貴衆兩院事務局の職員その他恩給法上の公務員から引續いて國會職員となる者につきましては、その者の國會職員としての在職を恩給法上の公務員として、引續いて在職するものとして取扱うことといたしました。改正法律附則第九條の規定がこれであります。
第四點は、地方自治制度の改正に伴う改正であります。地方自治法の施行に伴いまして都道府縣等の地方廳職員の大部分の者の身分は、政府職員たる身分から普通地方公共團體たる都道府縣の職員の身分に移行することになるのでありますが、その恩給制度につきましては、その任用制度、給與制度等の諸制度の整備確立と相まつて檢討の上、近く何分の決定を見ることと存じますが、その決定を見まするまでの暫定的措置といたしましてその都道府縣職員としての在職を、恩給法上の公務員として引續いて在職するものとして取扱うことといたしました。改正法律附則第十條の規定がこれであります。
以上のほか、日本國憲法施行に伴う民法の應急的措置に關する法律の施行に伴いまして、恩給法中遺族に關する二、三の規定につきましても、右に應じ、應急的に政令で所要の定めをなし得るように措置し、また勅令という字句を政令に改めまするごとき、新憲法の施行に伴いまして修正されることになりました字句や、不要になりました規定に關し、若干の改正を行うことにいたしております。
以上が本案の提出理由であります。なお詳細なことにつきましては、御質問に應じて御説明いたしたいと思います。
次に、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案について、その内容を御説明申し上げます。
本案の第一條には、從來の法令は、日本國憲法施行に伴い、その内容が憲法の條規に背反するものは無效となり、それ以外の法令は效力を有することとなるのでありますが、これらの法令中勅令、省令等の命令の規定で、法律で規定しなければならない事項を規定しているものについて、それが憲法施行後いかなる效力をもつかということについて規定をいたしたのであります。すなわち、これらの命令の規定は、新憲法施行後は、法律と同一の效力を有する旨を明らかにするとともに、その期限を本年末までと限定いたしましてその間できるだけ速やかに正規の立法手續により、國會の議決を經て法律に改めたいものと考えている次第であります。もちろんこれら命令の規定も、日本國憲法施行前に十分檢討の上、不必要と考えられますものは、これを廢止し、不適當と考えられますものはこれを改め、本條の適用を受けるものは眞にやむを得ないものに限るように努力いたしたいと考えております。
次に第二條について御説明申し上げます。他の法律及び法律と同一の效力を有する命令の規定中に「勅令」という文字が多數あるのでありますが、日本國憲法施行後は、勅令という國法の形式はなくなりますので、これを「政令」と讀みかえることにいたしました。
次に第三條について御説明いたします。日本國憲法施行に際しまして、將來これを存續せしめる必要のないものをここに列擧して、これを廢止することにいたしました。明治二十三年法律第八十四號、これは命令の條項違犯に關する罰則に關する法律でありますが勅令以下の命令に罰則を附し得ることを包括的に委任している法律でありますが、かかる包括的委任は、日本國憲法第七十三條第六號の規定等に照して存續を許すことができないのであります。また明治三十八年法律第六十二號これは戸主でない者が爵位を受けられた場合に關する法律でありますが、華族制度の廢止に伴い廢止することにいたしました。また大正十五年法律第八十三號、王公族の權義に關する法律及び昭和二年法律第五十一號、王公族から内地の家に入つた者及び内地の家を去り王公家に入つた者の戸籍等に關する法律、これらは王公族に對して、一般國民とは特別の權利義務を認める法律でありますので、新憲法に照しましてこれを存續せしめることができませんので、これを廢止することにいたしました。明治四十三年法律第三十九號、皇族から臣籍に入つた者及び婚嫁によつて臣籍から出て皇族になつた者の戸籍に關する法律、これを廢止し、今後戸籍法の適用によることにいたしました。明治二年行政官達、士族の稱に關する件、以下太政官布告は、いずれも士族制度に關するものでありますが、士族制度は別段法律上特權を伴うものではありませんが、階級の別を示す呼稱を存續せしめることは、新憲法の精神に副わないものと考えまして、これを廢止することといたしたのであります。なお附則におきましては、若干の經過規定をおいてございます。
以上をもつて二件の御説明を終わります。何とぞ御審議の上、御協賛を仰ぎたいと存じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=2
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003・天野久
○天野委員長 趣旨の辯明は終りました。それでは行政官廳法案、宮内府法案、恩給法の一部を改正する法律案、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案、以上を一括議題として質疑に入ります。淺沼稻次郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=3
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004・淺沼稻次郎
○淺沼委員 私は行政官廳法に關連いたしまして、二、三の點を御質問申し上げたいと思うのであります。第一點は、新憲法の制定に基きまして、内閣法が制定されました。その内閣法のもとに行政官廳法がまた制定を見るのでありまするが、この際政府にお伺いをしておきたいと思いますことは、この前内閣法案の審議を私どもがやりました際に、内閣法案は必然的に行政官廳法並びに公務員法を附隨して審議をしなければ完全なる審議ができないのである。從いまして行政官廳法並びに公務員法をこの前の議會に出してもらいたいということを要望したのでありまするが、政府におきましては、その準備ならざるゆえをもちまして、來るべき通常議會には必ず出すということを言明されたのであります。それにもかかわらず、出てまいりました行政官廳法は、一年間を區切つての案でありまして、一年後には變る法案で、これで全部的のものではないのであります。併せて公務員法は出てまいりません。從いまして私どもの考えるところによりまするならば、憲法が變つて、自然議會も非常な權限が與えられて、議會に基礎をもちまするところの、議院責任内閣制というものが確立されるようになつてまいりますれば、必然的にその内閣のもとに、いかなる行政機構によつて、さらにいかなる人によつて政治が運用せられるかということは、非常に大きな問題であろうと思うのであります。從いまして一年に限つた點が一つ。もう一つは、公務員法は、もう會期はいくばくもありませんけれども、出されないつもりであるかどうかという點についてもお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=4
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005・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 御質問の趣はまことにごもつともであります。でき得るならば行政官廳法も、官吏法、公吏法、こういうものを合わせて實は提出したいのでありまするが、なかなか行政機構の改革というものは、御承知でもございましようが、複雜多岐にわたつておりまして、とても短い時日で完成することができないという場面に立ち至つておるのであります。御承知のことでもありましようが、昨年の十一月でありましたか、内閣におきまして、行政調査部というものを設けまして、官制を發布いたしまして、總裁以下多數の人々を集めて爾來熱心に行政機構の改革、公務員の採用並びにその運用というような諸般の點について研究を續けておるのであります。またこれに關連いたしまして、アメリカから行政視察團が昨年の十二月の初めに參りまして、これは六箇月間日本に滯在する豫定で、日本の行政機構から公務員の運用方法等について、詳しく今研究しております。行政調査部におきましても絶えずそれと接觸を保ちつつ、諸外國の制度も詳細に研究しておるのでありまするが、なかなかこれを具體化して議會の協賛を仰ぎまするまでには、まだ至つておりません。別にこれをおろそかにしておるわけでもなければ、またお互い怠けておるのでもありませんが、なかなか最前申しましたように、むずかしいのでございます。御承知の通りに、新憲法におきまして、國權の發動する方式は、大體原則だけはきまつておりまして、立法權の發動は、國會法の制定、參議院法の制定、併せて衆議院議員選擧法の改正等によつてできまするし、また司法權の發動は最高裁判所以下の裁判所組織、これでできるので、割合に簡單でございますけれども、行政機構ということになると、はなはだ面倒でございまして、なかなかできません。しかしいつまでもこれを放つておくということはできませんから、大體一年を限つてこれを完成するという豫定になつておりますので、この暮れに開かれる議會、次の通常議會までには完成いたしまして、皆樣の御協賛を仰ぐことになつております。大體以上申し上げましたような次第で行政官廳法も公務員法も一緒に出すという考えをもつておりましたが、なかなかできませんので、この議會には出せませんから、かりの法案を出すのやむを得ざるに至つたのであります。どうかこの點は御諒解くださらんことをお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=5
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006・淺沼稻次郎
○淺沼委員 いろいろ調査研究されていることはわかりますが、しかし議會を構成する法律は別といたしましても議會は解散が一年前にありまして、また解散があるような情勢にあるのでありまして、立法の府は脱皮から脱皮を續けていくわけであります。しかし反面におきまして、政治をやつてまいりまする行政の府におきましては、行政官廳がありがままの姿、さらに官吏、公務員の關係におきましては、ありがままの姿を一應そのまま認めるという形でありまして、どうも私どもは新憲法實施にあたりまして、ふさわしい姿であるとは考え得られないのであります。從いまして新憲法實施とともに、行政の府におきましても、やはり新たなる組織のもとに、新たなる陣容のもとに、官僚組織のもとにやられることは私は一番妥當だと思うのであります。いろいろの手續よりいたしまして出さぬということについては、これ以上質問をしてもいかがかと思いますが、この次の議會には完全なものを出していただきたいと思うのであります。
そこでもう一つ念を押して伺つておきたいと思いますことは、内閣法も大體においてありがままの内閣の姿を認めて、それを法文化したという程度のものでありまして、行政官廳法も、大體においてありがままの今の行政官廳をそのまま認めて、幾分憲法の改正に伴うて變つておりますところをかえているという程度のものだと私は理解するのでありますが、これではどうも不十分であるような氣がするのであります。從いましてここに各省——各省という言葉を使われておりますが、これは各省通則に當るようなものであろうと思うのでありまして、行政機構全體とすれば、今の各省關係の機構というものをそのままでいいかどうかということについては、やはりこれは政令に委ねるということになるのでありましようか、これから政府が新たなる行政機構を考慮される場合におきましては自然法律によらずして、政令によるということになるのでありましようか。ここは私は非常に重大な問題と思うのでありまして、やはり行政機構をいかようにするかということは、少くとも官制というものは一應法律案として出るようになつたことは、一大進歩だと思うのでありますが、大體政令に任すということにしないで、全部をほとんど法律に任すという工合にした方が、私はいいのではなかろうかと思うのであります。今のこの法律によりまするものは、政府が必要に應じていろいろな機構をつくる場合においては、やはり政令に任してあるという結果になるのでありますか、これを伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=6
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007・入江俊郎
○入江政府委員 ただいまの御質問のお答えを申し上げます。行政官廳法第一條によりまして、行政官廳法の施行される時期、すなわち新憲法施行の時期におきましては、從前の規定をそのまま踏襲して法律上の効果を與えようと考えております。但し一條にありますように、「法律または政令に別段の規定あるものを除くの外」とありますものでありますから、他の法律で特例をつくれば、もちろんこれは特別法になりますし、また必要のある場合は政令で別段の規定も設けられる途をこれで閉ざしたわけではありません。しかしながらここで考えておりますのは、第一條では各省大臣の分擔する行政事務の範圍についての規定でありますので今お話のような新たに省を設けるとかまた各省大臣の性格をまつたく變えてしまうとかいうふうなことは、これはこの行政官廳法の第一條の趣旨からみましても、法律でもつてこれを行うべきものであると考えております。すなわち第一條におきましては、從來の行政機構がそのまま法律的效果をもつことになつて、事務の範圍についての若干の入り狂いというふうな程度も政令に委任したのであつて、本格的なものはもちろん法律でこれを定むべきものと考えております。但しこれは憲法施行後の問題であり、行政官廳法施行後の問題でありますから、行政官廳法が施行になるまでの間は一應現行の制度で行くことになり、行政官廳については勅令というものがその根據になるということは申すまでもないと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=7
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008・淺沼稻次郎
○淺沼委員 そこで三つ四つそれに關連して伺つておきたいと思いますことは、勞働省に關する問題であります。勞働省に關する問題につきましては、これはこの前の前の議會におきまして豫算委員會の席上で、わが黨の松岡駒吉君がその必要性を高調いたしましたところ、それに對して總理大臣は、準備の過程にあるということを答辯されております。さらにこの前の議會におきましても、河合厚生大臣もその必要性を認めて、何か具體化することを言明されておるのであります。さらに連立内閣の問題の起つた際におきましては、勞働省というものは豫定の行政機構の一つとしまして、それに對していろいろ議論が行われたやうに私は伺つておるのでありまして、しかもこの勞働省が必要であるということは、人のために必要でないのでありまして、要するに日本再建のために勞働者問題というものがいかに重要であるかということ、さらに勞働基準法の制定並びにその他勞働者關係に關する諸法律の制定に伴つて、厚生省の勞政局だけの仕事ではやり得ないというような状況が大きな省を必要とすると思うのであります。從いまして、日本のおかれております立場から考えて、人のために勞働省を設けることにあらずして、日本のおかれておる立場から勞働省が必要であり、勞働問題の重要性から勞働省が必要であるということになりますならば、自然これを設置されてしかるべきだと思うのでありますが、そのことに對しまするところの國務大臣としての齋藤さんの答辯を願いたいと思うのであります。さらに將來そういう問題が起きた場合には、五月三日以後におきましては、結局その新設についてはこれは法律によらなければならないという結果になるのでありましようか。それと同時に、これと同じような問題で建設省の問題がございます。建設省の問題は、日本が現在おかれております立場を考えてみまするならば、小さな土地で多くの人間が生活をしてまいらなければならぬのでありますから、日本の國土、資源あらゆるものを十分にこれを利用開發してまいらなければならぬのであります。加えて一番必要なことは國土計畫ということの必要性が感ぜられるのであります。國土計畫が立てばさらに地方計畫というものも必要になつてまいります。さらに最近やつております都市計畫、復興計畫にいたしましても、國土計畫の一連としてこれをなさなければならぬのでありまして、そういう意味からいえば、一つの國土計畫を立てる所管省というものも必要のように考えるのであります。またそれが執行の機關としては、現在内務省に國土局あり、さらには戰災復興院があるのでありますが、これらの省というものは當然何らかの形において統一されてしかるべきだと私は考えるのであります。しかしこれも連立内閣のとき、並びに現在閣僚に田中さんが加わつておりますが、これも建設省というものができるのであるという豫想のもとに、國務大臣としてはいられておるやに私どもは新聞を通じて承つておるのでありますが、しかし省の實現というものはみないのであります。從いまして必要を政府が認めておるとすれば、これは早く兩省ともつくつた方がよいと私は思うのでありますが、どういうお考えであるかということを。これもやはり勞働省同樣に、五月三日以後になりますならば、法律によらなければできないという結果になるのでありましようか、これも伺つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=8
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009・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 お答えいたしまするが、五月三日以後になりますと、省の設置は法律によらざればできないことに相なるのであります。それから勞働省のことですが、これは一體つくることにきまつておりますけれども、まだいろいろ準備の都合によつて實現をいたしません。それから建設省のことでありまするが、これもいろいろ噂がございますけれども、まだそれをつくるかつくらぬかということも實はきまつておりませんから、將來つくるような場合がありましたならば、議會の協賛を經まして、法律の形式をもつて實現するようなことになると思います。さよう御承知を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=9
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010・淺沼稻次郎
○淺沼委員 その次にお伺いしておきたいと思いますことは、やはり機構に關する問題でありまするが、石炭廳といつたような廳、あるいは肥料廳というようなものがいろいろ議論の對象になつておるようであります。私は必ずしも機構をかえたからといつて、それによつて運用よろしきを得なければ、生産が擴充してまいるというような考えはもたないのでありますけれども、しかし政府の一部には、石炭廳を設けて、それを國務大臣が擔當するというような話も伺つておるのでありますがやはりそういうようなお考えを政府ではもつておられるのでありましようか。そういう點を今の各省の問題に關連して伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=10
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011・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 石炭廳のこともいろいろ噂はありますけれども、まだこれを設けるということは實はきまつておりません。さよう御承知願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=11
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012・淺沼稻次郎
○淺沼委員 それからもう一つは、この前も内閣法のときに私伺つてそれなりになつておるのでありますが、總理大臣の權限が非常に擴大されてまいつたのでありまするが、しかし總理大臣の權限が擴大して、總理大臣が非常な政治力を發揮するためには、やはりその總理大臣のまわりにあるところの機構が必要である。たとえば豫算局といつたようなもの、あるいは人事局といつたようなものをつくられることが、總理大臣の政治力を強化するゆえんではなかろうかということを伺つておるのでありますが、今度のこの法案によりますと、總理廳と申し上げましようか、そういうようなものを設けられるような規定になつておるのでありまするが、大體この總理廳というのはどういう仕事をされるところになるのでありましようか。具體的に申せば……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=12
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013・入江俊郎
○入江政府委員 この總理廳と申しますのは、内閣總理大臣が各省大臣と同じ立場において、中央行政官廳としていろいろな行政事務を擔任する場合の仕事をする役所の名稱であります。ちようど各省におきまして、内務大臣は内務省において仕事をすると同じように、内閣總理大臣が行政大臣として總理廳で仕事をするという觀念なのであります。しかしこの總理廳と申しますのは、言つてみますならば、ただいまの恩給局であるとか、統計局というような、そういう事務をまとめた一つの部局の名稱でありまして、別にこれがあるからと言つて、内閣法の内閣總理大臣の權限を強化するというような意味ではなく、むしろ事務的に行政大臣としての總理大臣の事務局という意味で、總理廳という名稱を設けてはつきりさした趣旨であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=13
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014・淺沼稻次郎
○淺沼委員 次に附則について關連して少し伺いたいのでありますが、内閣法の規定を附則の方で變更しているのであります。私は法律のことについては素人でありまして、よくわからぬのでありますが、内閣法の改正案を出さないで、これだけで出すということは事務的にはどうかと思う。それからもう一つ、「國務大臣十六人以内」というのが「並びに從來の各省大臣及び國務大臣の定數以内の國務大臣」に改めなければならなくなつたというのはどういうことであるか。私はこれを伺つておきたいと思うのであります。政府は參議院議員選擧法につきましても、まだ施行しないうちにその改正案を出している。法律というものは一遍やつてみなければ、いいか惡いかということはわからぬと思うのでありますが、參議院議員の選擧法については私ども修正動議を出したのでありますが、その修正動議のままのものが改正案になつて、執行しないうちに出てきているのであります。内閣法にいたしましても五月三日以後でなければ全然效力を發しないのでありますが、效力の發しない法律に對してまたすぐ修正をしなければならぬというのは、どういうわけか。やつてみていけなかつたから直すというならいいが、やらぬうちに修正しなければならぬというのは、どういう事情でありますか。どういう差支えのためにこうなるのでありますか、その事情を伺つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=14
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015・入江俊郎
○入江政府委員 内閣法の一部の改正は獨立の法律でやつてもよいわけでありますけれども、行政官廳法の規定の趣旨に對應させるための改正でありますから、便宜附則で行われたわけであります。そこでこの内閣法の改正の趣旨でありますけれども、これはそう深い意味があるのではないのでありまして、行政官廳法の第一條の考え方が先ほども申し上げましたように、各省のわけ方であるとか、または分擔する事務の範圍というものを、從前のまま踏襲するという暫定的の形をとつたわけであります。そういたしますと、前議會において成立をいたしました内閣法でありますけれども、行政官廳法がそういうふうな考え方で暫定的な規定をするということになつたのに照應いたしまして、この行政官廳法第一條では内閣總理大臣、各省大臣の分擔する行政事務の範圍が「從來の例による。」ということになつたものでありますからそこで大臣の數等も結局五月三日の時に存在する大臣の數を押えて、將來内閣というものが内閣法によつてつくられていく、こういうふうに規定を整備することの方が、行政官廳法と相並んで規定の體裁を整えることになるというふうに考えたわけであります。内閣法にしても、行政官廳法にしても、結局現状をそのまま踏襲したことになりますから、將來一年間くらいの間においては相當の變革を受けるでありましようし、その意味におきまして、この内閣法の第二條第一項の改正をしたというふうに御諒承願いたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=15
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016・淺沼稻次郎
○淺沼委員 これには、國務大臣十六人以内ということで、國務大臣の中から行政大臣が任命される形になるのでありますが、この修正された方から讀めば、從來の各省大臣と國務大臣の定數ということが、やはり變つておらないというけれどもありのままの姿を見たら變つておらないということであつて、内閣法の原文とはその意味が違つているでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=16
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017・入江俊郎
○入江政府委員 少し私の言葉も足らなかつたと思います。行政官廳法で五月三日を期して、それまでの行政機構をそのまま踏襲して法律化するということにしたわけであります。そういたしますと、五月三日までの間におきまして、現在のような行政上のいろいろな要求がある場合におきましては、先ほども申し上げた中に、勞働省の問題もあつたように思いますけれども、そういつたようなことによりまして、國務大臣が殖えるということも考えられるのであります。そこで五月三日現在における行政機構をそのまま踏襲して將來の行政機構にしていこうという建前で、行政官廳法の一條ができているものですから、そこで内閣法の方もそれに照應して、ゆとりのある書き方にしておくことが必要になろうかと思う。もちろんそれまでの間に國務大臣が殖えるか殖えないか、そこはむろんわかりませんけれども、しかしゆとりのある書き方にしておくことが、制度の移り變りを圓滑ならしめるゆえんであると考えた點もありまして、特に内閣法の一部を改正することになつた次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=17
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018・淺沼稻次郎
○淺沼委員 この點は、この前金森さんにお伺いいたしました場合には、金森さんの内閣法に對する答辯としてはこういうことを私ども伺つておつたのでありますが、今のありのままの姿をそのまま内閣法に移しているのだ、從つて十六人以内という數はきまつているのだ、そうすると、ここに出ております從來の、ということになれば、何も改正をしないでもいいということでありのままの姿になろうかと思うのです。そうすると、今お伺いしてみると大臣が増員することがあるべしということが五月三日までの間に豫想され、あるいは勞働省が新設されるかもしれないというようなことを暗示されるような感じを私は懷くのでありますが、そういう工合に了承してよろしゆうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=18
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019・入江俊郎
○入江政府委員 その點は、勞働省につきましても、先ほど申し上げましたように、研究中であるし、そのほかの問題も研究中であるから、それまでの間にそういうことがあるであろうということを前提として規定をおいたわけではございませんけれども、しかし五月三日現在における行政機構をそのまま踏襲して法律化そうというのでありますから、五月三日現在における從來の例ということにして、内閣制度も、また行政制度もつくつていくということが首尾一貫した考え方と思うのであります。前議會におきまして内閣法で十六人以内と書きましたのは、まさにその當時における國務大臣の數そのままであつたのであります。しかし今度は行政官廳法における第一條で「從來の例による。」とやりまして、五月三日現在の國務大臣の數を押えるということに新しく規定されたものですから、それに照應して内閣法の第二條の第一項も十六人というきまつた數でなくして、五月三日現在における國務大臣の數を踏襲していくということに規定をいたして、行政官廳法第一條と首尾一貫したわけであります。從つてこうなりますると、結局において五月三日の國務大臣の數に増減があつたにいたしましても、そのときの現在をそのまま押えるということになるわけでありますけれども、しかしそれを豫想して、特に書いたというわけでなくして、むしろ行政官廳法第一條と平仄を合わせる意味において書いたというように御諒承願つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=19
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020・淺沼稻次郎
○淺沼委員 それでよろしうございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=20
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021・天野久
○天野委員長 それでは午前中の質疑はこの程度にいたしまして、午後一時まで休憩いたします。
午後零時八分休憩
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午後一時五十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=21
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022・天野久
○天野委員長 會議を開きます。午前中に引續き質疑に入ります。星一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=22
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023・星一
○星委員 この日本行政機構一覽というものを見ると、總務局という局のある役所とない役所とあります。外務省にはあります。それから農林省、商工省、運輸省にはありますが、その他の内務省、大藏省、司法省、文部省、厚生省には總務局というのがありません。私は行政機構はなるべくこういうふうな部分、デパートをたくさんつくらぬ方が能率があがると思います。しかるに官房があつて總務局をつくるというようなことは、これは二重のようじやないかと思います。農林省などはまたその部分の下に總務部とか總務局というものがあります。運輸省にも商工省にもそういうものがあります。たとえば商工省でいいますと、商工省に既に總務局があつて、石炭廳にいつて官房と總務局とあります。そうしてそのほかに生産局、配炭局があります。石炭は生産と配給がおもなる仕事であるので、それに官房は必要でありましようが、總務局はなくていいものと思われます。貿易廳においても同じように官房があつて、總務局があるのであります。殊に運輸省に至つては、鐵道總局があつて、また總務局があるというようなことで、私から見ると、よけいな役所があるように思います。こういうよけいの役所がある所にかえつて成績があがらぬ。石炭廳に官房、總務局があることは、かえつて活動を防害していやせぬかと私は思いますが、何の必要があつて、官房と總務局があるのか。また、ない省とある省とある理由はどこにあるのでしようか。私は官房を強化していくならば、こういう總務局はみなやめてもいいものだと思いますが、この點について政府の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=23
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024・前田克巳
○前田政府委員 御指摘のように、總務局あるいは總務部というものが、ある省もあるし、ない省もあります。これは總括あるいは企畫的な仕事をやりますために、總務局のようなお役所をおくのは、大體戰時中廣く行われたのでありますが、その後終戰後に至りまして、漸次部局の整理等に伴いまして現在においてはよほどその數が減つている状況でございます。今後この總務局的なものをおくかどうかということにつきましては、今行政調査部の研究事項の一つといたしまして、いろいろ取調べをいたしておりまするが、中には總務局という名前でありながら、實際は必ずしも企畫あるいは總括的の仕事ばかりでなく、その省の計理あるいは勞務關係のように、その省全體に關係があつて、いずれの局につけるのも工合の惡いというような仕事を一括して總務局にしておるところもありまして、多少省によりましてこの總務局をおいた方がいいかどうかということは具體的には事情の異なるものがあります。この點は今後研究をいたしましてほんとうに必要なものだけは存置いたしまして、御指摘のごとく、いわば戰時中の遺物と見られるようなところで、その必要の減りましたところは整理をいたしたい。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=24
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025・星一
○星委員 そうすると將來これはなくなるものと見ていいのですね。それで今言うたように、勞務關係を總務局へもつていくというお話がありましたがこれは間違いだと思います。たとえば鐵道で言うならば、業務局、運轉局、施設局、電氣局というものの勞働問題は勞働者のことはその部分々々、局々の專門であつて、別なところで勞務問題を解決すべきものじやないと思います、そういうことをしたならば能率的じやないから、今の勞務問題などの關係上必要だという理窟は私は立つていかぬと思いますから、どうも總務局は全部において私は不必要である、こういうふうに考えておりますから、どうぞ政府は議論があるならば早くこれは廢するようにお願いします。私の質問は終りとします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=25
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026・天野久
○天野委員長 村島喜代君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=26
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027・村島喜代
○村島委員 先ほどから行政官廳の機構のことにつきましては、既にもう質問がなされたようでございますから、ただ一點だけ官紀の肅正につきましてちよつとお尋ねしたいのでございます。先日來たびたび行われましたゼネストや何かにつきまして、官吏の身分法というようなものが制定されておりましたわけでございましようが、この文官のいろいろの規定とかああいう文官分限令とかいつたようなものに、ああいう幾日も休むとかいろいろの行動をしておつて、その文官分限令というようなものに牴觸しないものでございますか、どうですか。それは牴觸いたしませんからああいう行動をとつたのだと思いますけれども、その邊をちよつと伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=27
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028・入江俊郎
○入江政府委員 文官分限令及び文官懲戒令の規定は、お話のように、現在ございまして、從つて官吏が職務上の義務に違背した場合には、嚴重にこれらの規定を適用すべきものであり、またしておると思います。官吏あるいは公吏がストライキ等の行動をとつたがために、職務上の義務に違背するというような場合がありましたときには、嚴重に現在でも戒告も發し、またはなはだしい者については懲戒手續きにも及ぶというような方針でもつて勵行しておるのでありまして、官吏に關する各種の規定は、當然ストライキ等を行つておる官公吏にも適用あるものと御承知願いたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=28
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029・村島喜代
○村島委員 ただいま伺いまして大體了承したのでございますが、こういう場合でございますし、殊に社會の師表であるべき人たちで範を垂れなければならないところの官公吏のああいう行動というものは、まことに私たちといたしましては、殊に婦人の側から考えまして感心しないと思います。とかくの批評を受けております現在、つまり今までの勅令といつたようなものは結局死文ということになるわけでございましよう。先ほどからいろいろ伺いまして、政令というようなものが皆これからきめられるわけでございましようが、こういう時代でございますから、よけい官紀肅正のために早くそういう法令を急いでいただきたい、こういう希望だけを申し上げまして、私の質問をこれで打切りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=29
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030・星一
○星委員 私村島同僚委員の質問に關連して伺います。日本では小學校の先生は勞働組合法によつてあの教員連中の團體を組織したのであります。それで田舍へ行きますと、こういうことです。學校の先生は二十四、五で學校の先生になつてくる。その若い先生に田舍の人は、年とつた人もみな先生々々と言うて敬意を拂つた。しかし今度學校の先生が勞働組合法によつてゼネストをするようになつた。そして今まで先生と思つておつた學校の先生は、勞働組合法によつてゼネストという騷ぎをする。あれは先生でなかつた、勞働者であるということになつたということです。それですから先生に會つても今までのように先生として敬禮をせぬ。勞働者だということを言う。親父もそれを言い、子供にも言う。そして先生もああいう騷ぎをして勞働者扱いを受けて、先生は田舍の道を歩きながら農夫と會つても頭を下げて通る先生があるということであります。それで日本の今の勞働組合法に學校の先生などを入れずに、ほかの職業組合をもつてするような途があつたならば、今のような先生を勞働者だとするようなことがなくてすんだろうと思います。私はわかりませんが、アメリカには學校の先生の組合をつくるのに、勞働法によつてつくつてはいないと思いますが、この點はどうであるか知りませんが、どうも日本の勞働組合法に、官吏までも入れ、學校の先生までも入れたなんということは、これは大きな間違いではないかと私は思います。それで私の今知らんとするアメリカでは、勞働組合法のもとに學校の職員は組合をつくつていないと思いますが、これは日本はどういうふうに研究しておられますか。それを伺いたいのと、また將來勞働組合法から學校の先生などを除外していくようなことを考えておいでになるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=30
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031・入江俊郎
○入江政府委員 ただいまのお話まことにごもつともな點が多々あると思うのであります。現在の勞働組合法ができますときにも、學校の教員というものにストライキの權利を認めるがいいかどうかというふうな議論は相當あつたのでありますけれども、しかし生活上の經濟的な權利を保護するという面において、勤勞者という點においては、學校の先生も、また工場で働くいわゆる勞働者も、同じだというような見地から考えていく方がいいのじやなかろうかという議論の結果、現在の勞働組合法では、學校の教員も勞働組合を結成することができ、さらに勞働關係調整法等の關係におきましても、罷業行爲を認めるという結果になつております。しかしながらこれは、たとえ經濟上の地位を確保するために認められた權利でありましても、公務員の性質によりましては、やはりその權利の行い方について各種の制限があるものと考えます。お話のような、地方において學校の教員がストライキもしくはこれに類似する行爲をしたために、父兄から非常に信用を失墜したとか、あるいはまた兒童から見てもまことに從來の信頼感を薄くしたとかいうことを聞くのでありまして、これ等ははなはだ遺憾な點であると思つております。
將來の問題としては、公務員、あるいは學校の先生等について一體どの程度それらの點を調整していつたらいいかという點は殘された研究問題だと思いますけれども、今日とにかく勞働組合法及び勞働關係調整法におきまして、その權利を認めておりますから、私どもとしては、その權利の行使をできるだけ適正にいたしまして、本來の職責に違背のないように行くことを期待しておるのであります。アメリカにおきましては、詳しいことは私存じませんけれども、別段公務員、もしくは學校の先生に勞働組合を禁止した法律的の規定があるようには聞いておりません。しかしながらアメリカにおきましては、一般の官公吏であるとか、あるいは學校の先生であるとかいうものが、勞働組合を結成したり、あるいはストライキを行うなどということは、およそ例がないように聞いております。これはおそらく各種の條件が日本と違うであろうと思いますし、日本としても將來においては無論そういうふうにもつていきたいと思いますが、何分にも終戰後の非常な混亂期でありますので、どうもそれらの權利の正しい運用に遺憾の點があるのじやないかと思つております。でき得る限りそういうふうな權利の濫用に陷らないように、學校教員組合その他の公務員に對して、適正な判斷を期待したいと思つておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=31
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032・星一
○星委員 學校の先生も勞働者とするならば、日本では勞働組合法による以外は組合をつくる途はないのでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=32
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033・入江俊郎
○入江政府委員 勞働組合法という法律がございませんでも、自分達の權利を主張するために、團體的な行動をとることはもちろん可能だと思います。しかしながら勞働組合法で認められた勞働組合になりますと、その權利を主張する場合に、いろいろな利益があるわけであります。そこで現在としては、勞働組合法の特別法として、公務員、もしくは學校の先生等の特別な組合の法律がありませんから、それらの利益を享有しようとすれば、どうしても勞働組合によつてやるほかはなくなつております。しかしただいま星さんがおつしやつたように、學校の先生等については、何か特別な團體なり組合なりをつくらせることはどうかという點は、確かに將來殘された問題だと思つておりまして、研究を要する點であろうと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=33
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034・星一
○星委員 今日東京の役所に行つて見ますと、私はあまりほかに行きませんが、文部省や運輸省に行つて見ました。ところが玄關からはいつて中に行くと、鬪爭といいますか、いわゆるゼネストに關係した大きい字の鬪爭のビラがはつてあります。また運輸省に行つたらばダンスのことを書いてあります。まるでアメリカにおいては大道においても見ることのできないような廣告の文字をはつてあります。役所の中に、いやしくも省廳の中にああいうビラをはらしておくのはどういうわけでしよう。ああいうのは取締りはできないものでしようか。まるで役所と大道と同じに、アメリカだつたらはることを禁止すると思うような文句を書いたものまではつてある。こういうことでどうして日本の政治ができるかと思うようなことをさせております。大分このごろでは變つて來ましたけれども、ああいうことは將來やめさすお考えは政府にありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=34
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035・入江俊郎
○入江政府委員 今仰せの點はまことにごもつともなことでありまして、特に、二月一日のゼネストの前、相當の間ずいぶん極端なビラが各官廳にはられました。これにつきましては、はなはだけしからぬという見地のもとに、數囘次官會議においてもその取締りについて協議し、また閣議においても話が出まして、ある程度の正しいビラにつきましては、これは勞働組合を認めている以上は、組合員にそれを知らせる必要があるというので、一定の場所を指定して、その場所だけに組合員相互の意思を疏通するためのビラをはることを許し、その他の場所にはることを非常に嚴重に取締つておるのであります。ただ最近組合員でない者が外からはいつてきて、役所の壁にビラをはつていくことがしばしばあるそうであります。もちろんこれははなはだ不都合な行爲でありますから見つけ次第どんどんとつておりますけれども、何分にも現在手が足りない點もあるでしようが、そういう遺憾なビラがはられておることがあるそうであります。私どもとしては、この點については非常に神經を尖らせ、嚴重に取締つておるわけでありまして、こういうようなことはだんだんと改善されていくことだと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=35
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036・星一
○星委員 私の質疑はこれで終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=36
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037・天野久
○天野委員長 石原登君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=37
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038・石原登
○石原(登)委員 まず私のお尋ね申し上げたいことは、第二條の但書に、各省大臣は内閣總理大臣みずからこれに當ることができるという規定があるのでありますが、この規定によりますと、總理大臣は無制限に各省の大臣を兼任できるのであります。私は何も條文を盾にとつて、絶對にそういうことがあり得ないと申すわけではありませんが、今日の現状から考えてみましても、今日日本で非常に重大なことは渉外業務だと思うのであります。政治も經濟も皆渉外業務にありまして、この業務を擔當するのは外務大臣であり、なおまた終戰連絡事務局總裁だと思うのでありますが、この二つの最も重大なる仕事を總理が兼任しておる。これがために議會が開かれまして、非常に重大なる問題の審議が行われておるのにもかかわらず、總理が常に缺席がちである。こういうことでは私はとうていこの一番むずかしい時代にある日本の再建のために、日本の衆智を集めて行くということに非常に缺陷があると思うのであります。私はこの際この第二條に對しては、數の制限をするとか、あるいはこれらのことが組閣の場合に非常に影響があるというなら、この兼任する期間について一つの制限を設ける。かようなことにしまして、大臣が自分の所管の業務に一生懸命に責任をもつてやつていけるようにしてもらいたい。能率の惡い、しかもよぼよぼのおじいさんたちが、三つも四つも仕事を受け持つて、そうして實際仕事をやらないで、事務官僚に任せきりでやつていくということは、私は非常に殘念だと思う。私はこういうような見解から、これにぜひ數の制限、それから時間の制限をお願い申し上げたい。さらにこの際外務大臣並びに終戰連絡事務局總裁を、兼任でなしに、專任にされる意思があるかどうか、そのことについてまずお尋ねいたしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=38
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039・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 お尋ねの御趣旨はもつとものことと考えます。なるべく總理大臣に限らず、各大臣が他の省、他の廳とかいうものを兼務することは、私は原則としてはよろしくないことであろうと存じます。ところがいろいろ適任者がないとかなんとかいう支障のために、今日もお話のようなことが行われておるのでありまするが、これは異例でございますから、なるべく常道に復して、そうして一人にして數箇の職務を兼ねるようなことは、これは私はやめるがよかろうと思いまするし、またやめなければならぬと思います。しかるに最前申しましたように、そこには人の關係とか、いろいろな關係がありまして、今日のような状態を呈しておりますが、なるべくこんな状態からは逃れたいと思つております。御趣旨の點は總理に傳えまして、御希望に副いたいと思つております。さようにお含みを願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=39
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040・石原登
○石原(登)委員 ただいまの問題は、齋藤國務相の御言明によりまして了承いたします。外務大臣並びに終戰連絡事務局總裁は非常に重大な職務であります。また同時に總理はもちろん重大な職務でありますから、これはそれぞれ專任になつて、この際うんと働いていただくということを強く要望いたしまして、この問題はこれで打切ります。
次に私は内閣に宣傳局の設置をお願いいたしたいと思います。最近終戰後、國民のいわゆる思想的動向が非常に急激に變つてまいりますると、これと呼應するようにしまして、すべての新聞紙の論調が非常にある面では過激であり、ある面では消極的であり、何が中心思想か見當らないような感がするのであります。今日國民の大多數が、自分たちの一つの判定の資料にするものは、その大きな部面を新聞紙に依存しているのであります。この大事な新聞紙に、もちろん言論の自由は與えなくてはならないのでありますけれども、ただその新聞社の思考する意思においてのみ、國民がそのまま受け取つて判斷の資料にするということは、非常に危險だと思います。現に二・一ゼネスト前後の新聞紙の論調を見ておりますると、あるいは非常に強く、あるいは非常に弱く、國民の大多數が非常に迷つたと思います。こういう時代において、政府は、政府自體が一つの宣傳機關をもつて、そうして政府の意圖するところ、さらに國際情勢その他のものを加味しまして、こういうことが正しい方向であるという一つの指導を、政府の方面において行われる意圖はないかどうか、たとえば新聞紙の若干を、政府のいわゆる周知宣傳のスペースとして使いまして、そこに政府自體が意圖する記事を掲載する、こういうようなことをされるならば、一般國民は、新聞の論調と、さらに政府の主張する、いわゆる意のあるところを兩兩相比べて讀んで、初めて正しい自分の判斷資料にすることができる。私はかように考えますが、これらに對して政府の所見をお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=40
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041・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 政府において宣傳の機關をもつておらないことは、政府の政策その他政府の意思を全國民に傳える上におきまして、まことに不便であると思います。できることならばそういうこともやりたいと思つております。御承知の通りに、今度行政機構を大改革するつもりでありますから、お話のようなことは、極めて重要な一項目として、考察の資料に供したいと思います。さように御諒承願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=41
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042・石原登
○石原(登)委員 了承いたしました。それからこれは最も大事な點でありまするが、この法案によりますると、法制局が依然として政府に殘されているのであります。新憲法の趣旨から考えてみましても、法制局は當然立法の府に所屬すべきものだと、私はかように考える。その法制局が依然として政府に殘つているというは、非常におかしなことだと思う。むしろ今日になりますと、法制局は議會の一つの機關として、いわゆる立法府の一つの事務局としての法制局でなくてはいけないと思うのでありますが、これに對して國務大臣並びに法制局長官の御意見を承りたい。これは非常に重大な問題でありますから、お尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=42
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043・入江俊郎
○入江政府委員 法制局の性質につきましては、お話のように新しい憲法のもとにおいては、その機能が從來とはよほど變つていくかと思つております。お話のように、國會が最高の機關でありまして、國會において法律をつくるということが原則になりますれば、國會における法規に關しての委員會というようなものが重要な地位を占めてまいりますから、從つて法制局が從來政府部内においていろいろ立法に關與したというような點が、今後においてはよほど改まつてくるのではないかとも考えております。しかしそうなりましても、やはり政府にも法律の發案權もあり、また法律以外の政令その他の法則に關する責任も政府にありますので、政府部内におきましても、法則に關する專門の部局というものが、やはり必要ではなかろうかと考えております。ただそれが從來のような法制局と同じようなものになるかどうかにつきましては、これはさらに研究を要する問題かと思つております、この行政官廳法は、先ほど申しましたように、暫定的なものでありますから、とりあえず現在の組織を踏襲したのでありまして、さらに研究の上、政府部内における法制の專門の部局というものはどういうふうに取扱つていくかということ、すなわち法制局というものの性格をどのように將來の内閣制度の上に取扱つていくかということは、十分ひとつ研究をしてみたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=43
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044・石原登
○石原(登)委員 私はただいまのお答えの中で、政府に立法する一つの技術的機關が必要であるということについては、もちろん認めるのであります。しかしながら立法は嚴然として議會の最も大きな仕事であります。この仕事、いわゆる發案權とでも申しますか、何と言いますか、そういうものが政府にある、しかもその政府が實際行政を擔當する。そうなりますと、何としても政府に都合のいいような方法、構想において法律がつくられる。かようなことに當然なるのであります。そういうような見解から見ましても、また先ほどから申します通り、議會が立法の府としてその職責を十分に果す意味におきましても、當然法制局は議會内におかなければならぬ。しかもこの法制局の立案にあたつては、少くとも政府相互間のいろいろな状況は法制局に任せ、あるいは御研究願うにしましても、われわれ國民の代表としてこの職にあります者は、今度は國民一般の聲として、國民の立場からさらに法制局にわれわれはいろいろなことを指示、監督しなければいけない、かような見解をもつのであります。ぜひこの問題は十分に善處せられまして、法制局は必ず内閣から分離されるように、私は強く要望するものであります。
次に私はお尋ね申し上げたいのでありますが、最近官紀が非常に紊亂いたしてまいりました。先日も遞信省の問題が非常に大きく取扱われたのでありますが、それよりももつと重大な問題であるあの二・一ゼネストのその後の處置であります。これは何もマツカーサー元帥の聲明を取上げるまでもなく、あの行爲が日本國家の破壞行爲であつたということは、今日おそらく國民の大多數も期して疑わないのであります。ああいうような國家を破壞に導くようなことを、その寸前まで指導して行つたところの人々の責任が追求されないということは、私は非常におかしいと思つております。たとえば竊盜犯にしても、強盗にしても、殺人にしましても、決して竊盜したから、強盗をやつたからというだけでなしに、その未遂も當然罰せられるのであります。こうなりますと、このような大きな國家破壞をたくらんだところの、いわゆる不逞の分子とでもいいますか、こういう人を斷固として私は糺明さるべきだと思いますが、これに對して政府はこれを糺明するだけの熱意があるのか、あるいはこのまま猫をかぶつて放つておかれるのか、これは今後の官紀肅正のために非常に重大なる影響をもつものでありますから、この際政府は明らかにされることを私は希望するのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=44
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045・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 ゼネストが起らんとして、マツカーサー司令部の命令によつて中止されましたことは、國家、社會のさいわいだと思いますが、またこのゼネストに對するところの、内は國民の批判及びアメリカあたりの輿論をば伺いますと、このゼネストに對しては同情し賛成しておるものがどうもないようであります。しかしこれを法律上からみるのと、政治、道徳上とからみるのとがありまして、いやしくも法律に違反するような行爲がありますならば、それは司法權の發動によつて容赦なくどしどし自由を拘束し、ひいて制裁を加えることもできるであろうと思いますけれども、これが法律に違反せずして、政治上及び道徳上の範圍に屬しますと、これは政府として別に打つ手はないのであります。道徳上のことは一般の道徳心にうつたえるよりしようがありませんし、政治上のことはゼネストに對するところの反對的の政治運動をまき起して、この力でもつて壓倒するということが、この民主政治、立憲制度の上におきまして、お互いがとるべきところの途であろうと思いますが、私はなはだ遺憾に思つておりますのは、そういうことに對するまだまだ日本の政黨の力が弱いと思います。殊に保守陣營といわれておりますところの、今の政府の與黨になつております自由黨でも、進歩黨でも、もつとああいうようなことに對しては政治的に國民の輿論を發揮して、大きな力を出さなくちやならないように思つておりましたが、どうもそこまで至らぬことははなはだ遺憾に思つておりますけれども、これはしばしばああいう景況になりますと、自然その間において政治力及び道徳力が強くなつて、落ちつくところに落ちつくであろうと思いますが、政府といたしましては、先ほど申しますように、法律違反が起りませんと、司法權も警察權も手を出せぬのと、今は言論の自由、政治運動の自由、集會結社の自由が憲法において認められておりますからして、この認められたる權利によつて一部の者が策動する、惡ければ國民の輿論によつてこれをたたくということよりほか途がないと思います。さように考えておりますから御承知願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=45
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046・石原登
○石原(登)委員 私は法理のことは餘りよくわからないのでありますが、たしか官吏服務紀律というものがあると思いますが、あの規定がこれらの行爲の場合に適用できないのでありますかどうか、その點をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=46
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047・入江俊郎
○入江政府委員 官吏につきましては、現在官吏服務紀律という勅令がありまして、これによつてその官吏が職務をとる場合の紀律を規定しております。そこでああいうふうな場合には、もちろんそれに對して服務紀律の規定を適用し、さらに懲戒の方法があるのであります。しかしながら職務の義務に違反しない限度におきまして、組合運動をするという限度でありますと、これはただちに違法ということにはなるまいと思います。それで先日來のいろいろな活動につきましてもいろいろな段階がありまして、場合によつては服務紀律上遺憾の點もあつたように思いますので、それらの點については官紀の上からも現在十分檢討中であり、さらにただいま國務大臣も仰しやつたように、これが犯罪を構成するような面におきましては、もちろんそれらの方でも十分檢討をしつつあると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=47
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048・石原登
○石原(登)委員 私はたしか東京新聞でも取扱つておつたと思うのでありますが、今囘行われる選擧にあたりましては、こういうような勞働運動の指導者並びに一部の進歩的學者の人々が、競つて參議院議員の立候補をするというような趣のようでありますが、そういたしますとこれまでの貴族院というものが非常に性格的に變ります。さらにこれには追放令が相當影響いたしまして、新しく現われるところの參議院議員が、非常にはげしい思想の足溜りみたいな状況になるように思はれるのでありますが、こういう觀點から、私はこの追放令という問題についてよほど考えなくちやいけないじやないかというようなことも考えておるのであります。私は日本を再建するには、もちろん物の面も必要でありましようし機構も必要でありますけれども、まず國を興すためにはその興す人々が必要であります。これらの多くの人々が十二分の働き得べき能力と、それから愛國心を有しながらひつこまなくちやいけないというようなことについては、私は政府の處置に若干遺憾の點があるのじやないか、かようなことも考えられるのであります。たとえば私共の友人で、學校を卒りましてから當時の状況上召集されました。それがただ單に軍人になつたといようなことのために公職から追放された、これらの優秀な青年達が地方に悶々と遊んでいる姿を見るのであります。私はこういう青年達の實際における能力、實際もつている愛國心、これらの愛國心並びに能力は本當に日本再建の原動力となるものでありまして、これらの人々が追放令にひつかかつておるということは、私はむしろ日本のためにも、ひいては世界平和のためにもこれはよほど考えなくちやいけないじやないか、かように考えるのでありまするが、こういう問題について政府は大體どういうような御見解をもつていらつしやるのであるか。何か最近の情報によりますと、ますますこの追放が擴大強化されるような傾向をみることを、私はまことに遺憾に思つております。この點に對して政府の御見解を承りたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=48
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049・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 追放令の適用につきましては、まことに私どもも同情にたえないのみならず、敗戰後の日本を經營して、新國家を再建するがために働いてもらわねばならぬところの豫備におる多數の人が追放令によつて手も足も動かぬようにされてしまうことは、國家の大局からみましても、損はあつても、別に益はないものと認めまして、政府部内におきましても、いろいろそれらに關する話もいたしまして、もうすこしこれをゆるやかにしたいという考えは、みなもつておるのでありますけれども、御承知のようないろいろ事情がありまして、なかなか政府の思うようにもまいりませんので困つておるような次第であります。つい先だつては御承知のごとく訴願の途を開きまして、あまり理由のないことについては、あるいは事實の認定に錯誤があつたような場合におきましては、訴願によつて救濟をしようという途も開かれておるのでありまするから、何かの手段によつて、もう少し緩和することができるように、おたがいに考えてみたいと思いますけれども、何分にも、どうも今日日本は占領治下にありますので、思うようにまいらぬ事情もありまするから、その點もよくお含みを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=49
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050・石原登
○石原(登)委員 次に私は官廳のセクシヨナリズム廢止のために、これを排除するために、大體政府にはどういう御用意があるかということをお尋ねしたいのであります。私は、いくら議會が脱皮いたしましても、いかに國民の民主主義政治に對する考え方が徹底してまいりましても、事實行政の任に當りますところの官廳のやり方が間違つたのでは、決して日本の本當の民主化は望まれないと思うのであります。今日官廳では、あらゆる方面において民主化が叫ばれておるのでありますが、これは口ばかりであつて、事實民主化が行われておりません。いわゆる官僚なるこの語源、この言葉は、すなはち役人たちが上から下まで一つの組織をもつて、國家という權力のうしろにこの組織をもつて、これに芋づる的におたがいに助け、助けられ、これはよい面に助け、助けられるならよいのですけれども、自方たちの利益のために利用されておるというような傾向を、十二分に見るのであります。私はこれらのことを排撃する一つの方法といたしまして、各省の人事というものは、他でやつたならば面白いのじやないかと思う。たとえば農林省なら農林省の役人を、すべて農材省の職員で集めることは危險であります。人間みな榮達を望まない者はありませんが故に、上司の言うことを唯々諾々としてきく。これらの者がまた、役人根性と言いますか、唯々諾々としてきく者が、上司に可愛がられて、どんどん榮達する。こういうことではほんとうに官廳の民主化ができないと私は思う。こういう建前から、たとえば農林省に一という課があるとしますれば、その一という課に運輸省、あるいは商工省、あるいは大藏省、そういうようなところと特に密接な關係がありまするならば、それらの省から必ずそれらの省に屬する人を派遣してきます。そしてそれらの人は勤め場所こそ、農林省の課にありますけれども、人事權から何から一切のことは運輸省にある。あるいは商工省にある。あるいは大藏省にある。こういうことにしますならば、その農林省の一課の中で働く人々は、みずから自分の省に忠實に、任務の遂行のためにうんと努力すると私は思います。從つて豫算の奪い合いとかあるいは不當なセクシヨナリズムの主張とか、こういふことは自然になくなると思うのでありますが、この問題については、さつき淺沼君からも内閣人事局というような話もあつたようでありますが、私はよほど研究してみるべき問題だ、かように考えるのであります。こういう私の見解に對して、政府はどういうふうにお考えになりますか。その點ちよつとお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=50
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051・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 官僚というものに對する國民の反感、攻撃は、ますます熾烈になつてまいります。私どもはこれは國家のために、まことに憂うべき現象であると思つておりまして、どうしたならば官僚の弊をためることができるか。というて私は決して官僚をきらうものでもなければ、官僚を攻撃するものでも何でもない。官僚は官僚として、國家のために奉仕するところの、きわめて貴重なる存在でありますから、官僚の勢力は日本に限らず、いずれの民主國、いずれの立憲國においても、牢固としてその根底は拔けないものがありますけれども、ただその弊害をどうして除去することができるか。どこまでも國家の行政を行うにあたりまして、まず第一に能率増進ということ、國民に迷惑をかけないようにすること、道徳的に緊張して、できる限り仕事をするというような方面に向わせなくてはならぬのでありますが、今日日本國内の役所を見ますると、中央といわず、地方といわず、何となく官紀は頽廢して、一種のサボタージユ氣分が横溢しておるようであります。その中にまた下剋上を認めて、下の者が上の者の命令を奉ぜず、はなはだしきは下の者が上の者に抵抗することをもつて、自分らの能事を發揮したというような考えをもつておる氣風が、一般にみなぎつておるということは、まことに憂うべきであります。歴代の政府も、官紀振肅とか何とかいうことを唱えてまいりましたけれども、これは一向に實績があがらないのであります。役人もそんなことは聞きあきておつて、またあんなことを言うかといつて、ほとんどかえるに水をかけるようなものであつて、效果がないようにみえますから、今度も思い切つて行政機構を改革をすると同時に、いかに行政機構を改革しても、人間が役に立たなければだめでありますから、行政機構を改革して、行政運用の任にあたるところの官吏をして、十分精神的に緊張して、官吏としての本能を現わすことができるかということについて研究しておりますが、なかなかこれはむつかしいのでありまして、いろいろな方法もありますし、またいろいろな方法も教えてもらつておりますけれども、どうしたらよろしいか。今朝のお話いたしましたが、アメリカから日本の行政視察團がまいつておりまして、六箇月日本におつて、日本の行政運用の實際を研究するというので、今一生懸命やつておつてくれますから、いずれ近いうちに相當浩瀚なレコンメンデーシヨンを出してくれると思います。そういうことも參照いたしますのみならず、アメリカにおいても、イギリスにおいても、どういう工合にやつておるかということを研究いたしまして、なるべくこの機會において、官僚にわだかまつておりますところの惡風潮をできる限り除きたいと思つておりますから、あなた方におきましても何かいい方法がありますならば、どうぞお教えを願いたいのであります。われわればかりやつておつてもいけぬし、廣く國民の考えに聞こうということで、懸賞論文でも出したらどうかというようなお話もありますけれども、それでどれだけの結果を得られるかわかりませんから、何でも衆智を集めて最善の方法を考えてやろうと思つておりますから、どうかそれをお含み願つておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=51
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052・石原登
○石原(登)委員 ぜひ齋藤國務大臣の御奮起を期待いたします。次に私は關連して質問いたしたいのでありますが、私は先般北海道に參りまして、これから日本再建の原動力であるべき北海道がどうもすべての點において内地からはるかに後れておる。これはもう連絡船を上つて北海道の棧橋に着いてすぐ感ずるのでありますが、一例を引きますれば雜誌一册買つてもすぐ一割高いのであります。私は昔の日本だつたならばともかくも、今日こういうような狹い限られた日本において、北海道だけが昔のような考え方で植民地的取扱いを受けたり、北海道道民諸君がそういうような考え方をもつておることは非常にいけないことだとかように考えるのであります。私は北海道もぜひ内地並にこれをいくらかの縣に分割いたしまして、これはあるいは經費その他の關係で相當難色もあると思うのでありますが、今北海道の開拓が國家の大きな仕事として計畫されておりまする今日においてはなおさらのこと、部分的にこれを競爭させる、そうしてその實績をうんと高揚させることに努力させるのがいいのではなかろうか、かようなことを考えるのでありまするが、この點に對する政府の御見解を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=52
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053・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 北海道は御承知の通りに、特殊な關係をもつておりまして、永い間特殊な取扱いをせられておつたようでありまするが、だんだんと事情も違うし、また北海道自身としても進歩してまいりましたことと、また日本の領土も御承知の通り敗戰の結果として、ほとんど半分になつてしまつたのでありますから、北海道をこれまでのような特別の取扱いにしておくということは、どうももう時代の進運に副わないという考え方も大分起つてまいりまして、北海道を内地と同じように取扱いたい、今お話があつた北海道を四つくらいにわけて、府にするか縣にするかというお話も出ております。また今度北海道に對する開拓廳でありますが、これもまた具體化しておりませんけれども、内務省の豫算にはたしかに載るはずでありますから、着々として内地と同じように取扱おうというような方針に向いつつあるのでありますから、それが將來どういう工合に具體化していくかはまだわかりませんけれども、方針はそこにありますから、これもお含みを願つておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=53
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054・天野久
○天野委員長 この際お諮りいたします。理事の淺沼稻次郎君が委員を辭任されましたので、その補缺選擧を行うことになりますが、先例によりまして委員長の指名に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=54
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055・天野久
○天野委員長 御異議がないと認めます。それでは森本義夫君を理事に御指名いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=55
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056・石原登
○石原(登)委員 私無所屬でありますのできわめて發言の機會がないものですから、この席で申し上げるのはどうかと思いますが、ちよつと政府に對して一、二要望いたしたいと思います。私どもは今囘の總選擧が非常に重大な總選擧であることを自覺しながら、また一面日本が非常に資材的に涸渇しておりますことを考えまして、選擧のポスターその他にもわれわれどもも制限をいたそうと今いたしておるようでありますが、こういうような現状において町を見たとき、映畫とか演劇のポスターがほんとうにはなにつくくらいたくさんはりまわされておるのであります。私はもちろん演劇を通して國民思想を善導するという必要は認めるのでありますが、この重大なる選擧にさえ十二分に紙を使えないという現状において——つまらない映畫もあるようであります、つまらない演劇もあるようでありまするが、そういうようなポスターがそのまま自由に放任されておるということを私は非常に殘念に思うのであります。しかもこの一面においては國民學校の子供の教科書さえないというような實情でございますので、こういう方面の取締りを徹底的にしていただき、それの周知が必要であるならば、新聞の廣告でも利用する。必要以上の大きなポスターを出して、必要以上の大きな資材をつぶす、こういうことのないように、これもぜひ政府としては善處をお願い申し上げたい、かように考えますから、この點は御出席の方々から、關係方面にぜひお取次をお願い申し上げる次第であります。以上であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=56
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057・齋藤隆夫
○齋藤國務大臣 この紙のことは大變むつかしい問題になつております。これまで商工省が管轄しておりましたが、これにもよほど弊害——というては言い過ぎかもしれませんが、なかなか思うようになりませんので、今度は紙の統制に關することを内閣の方に移しましたが、商工省から内閣に引繼ぐにあたりましてもいろいろめんどうなことが起りまして、ちよつとどうも表向きに言えないようなこともあるらしうございます。しかしこれは着々としてこれまでの弊害をば是正して配給の統制をはかつていつて、今お話になつたように國家のために必要な選擧には紙を制限して、くだらない方に紙をたくさん使うというようなこの弊害は、ぜひひとつ是正したいと思つております。そういう方針で内閣でも進んでおりますから、だんだんとそれが現われてくるだろうと思います。さようお含みを願つておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=57
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058・石原登
○石原(登)委員 ぜひ御努力せられんことをお願いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=58
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059・天野久
○天野委員長 それではこれで質疑を終了いたしますことに御異議ありませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=59
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060・天野久
○天野委員長 御異議がないものと認めまして質疑を終了いたします。明後日は午後二時より開會、討論採決を行いたいと存じます。本日はこれにて散會いたします。
午後二時五十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009210921X00219470320&spkNum=60
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