1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
裁判所法施行法案(政府提出)(第三四號)
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昭和二十二年三月十八日(火曜日)午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 小島徹三君
理事 三浦寅之助君 理事 荊木一久君
理事 細野三千雄君
小澤佐重喜君 木村チヨ君
藥師神岩太郎君 山口好一君
井伊誠一君 田万廣文君
三月十七日委員豊澤豊雄君辭任につきその補闕として石田一松君を議長において選定した。
三月十八日青木泰助君理事辭任につきその補闕として荊木一久君が理事に當選した。
同月十七日裁判所法施行法案(政府提出)の審査を本委員に付託された。
出席國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
出席政府委員
司法事務官 奧野健一君
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本日の會議に付した議案
裁判所法施行法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=0
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001・小島徹三
○小島委員長 會議を開きます。この際お諮り申し上げたいことがございます。昨十七日理事青木泰助君より理事辭任の申出がございましたが、これを許可し、委員長において理事の補缺を指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=1
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002・小島徹三
○小島委員長 それでは荊木一久君を理事にお願いいたします。
昨十七日本委員會に付託せられました裁判所法施行法案を議題といたします。まず政府の説明を求めます。木村司法大臣。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=2
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003・木村篤太郎
○木村(篤)國務大臣 ただいま議題となりました裁判所法施行法案につきましてその概要を御説明申し上げます。裁判所法の施行に伴いまして、裁判所構成法及び行政裁判法により定められております現在の裁判構成が著しく改められますことは、さきに同法案説明の際申し上げた通りであります。しかして裁判所法の施行に關しましては、なお經過的な措置、その他若干の事項を定めておく必要があるのでありまして、本法案は、これらの事項につきまして規定いたしたものであります。以下本法案の主要な點を御説明申し上げます。
まず第一に、裁判所構成法及び行政裁判法の廢止に伴いまして、不要となります裁判所管轄區域に關する法律、行政廳の違法處分に關する行政裁判の件等、若干の法律を廢止いたしますとともに、違警罪即決例もこれを廢止することといたしました。違警罪即決例は御承知の通り、警察署長による即決處分の制度を定めておりますが、裁判所法により、簡易裁判所を多數各地に設けまして、これら事件を取扱うことといたし、違警罪即決例はこれを廢止することといたしたのであります。
第二に、事件の引繼等の關係につきましては、現在の通常裁判所においてなされました各種の手續は、裁判所法に定める各裁判所においてなされたものとみなしますとともに、現在の行政裁判所になされました行政訴訟の提起は、これを東京高等裁判所になされました訴の提起とみなすことといたしました。
第三に、現職の裁判官の地位につきましては現在の通常裁判所の判事は裁判所法に定める各裁判所の判事に補せられたものとみなし、改正憲法の規定によりその後任者が任命されますまでその地位に在るものといたしました。もつとも最高裁判所及び簡易裁判所には、かかる經過的な裁判官を置かず、その裁判官はすべて新たに任命される者をもつて充てることといたしております。
第四に、裁判所法によりますと、裁判官任命諮問委員會につきましては、政令で定めることとなつております關係上、最高裁判所の裁判官の任命は、改正憲法の施行と同時には行い得ないこととなりますので、この點につきまして、裁判所法の規定の特則を設け、裁判所法の施行前に閣令による諮問委員會を設置いたしまして、改正憲法の施行と同時に、最高裁判所の裁判官の任命を行い得るよう處置いたしたのであります。
第五に、この法律に定めておりますもののほかに、裁判所法及びこの法律の施行に關しまして必要な事項は、政令で定めることといたした次第であります。
はなはだ簡單ではありますが、以上裁判所法施行法案の御説明を申し上げた次第であります。何とぞ愼重御審議を賜わらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=3
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004・小島徹三
○小島委員長 それではこれより質疑に入ります。井伊誠一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=4
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005・井伊誠一
○井伊委員 本法第四條の點についてのみ二、三お伺いをいたします。裁判所法によりますと、裁判官任命の諮問委員會に關する規程は政令をもつて定める、こういうことになつておりますが、本法ではこれは閣令をもつて定めることになつております。これはもとより憲法の施行前において政令が出ないという關係で、これにかえるに閣令をもつてするということだとは思うのでありますが、私のお聽きしたいのはこれは勅令にすべきではないかということなのであります。すなわち勅令が變つて政令となるのであつて、現在でもなお勅令でやり得ることであるからどうしてこれはまた閣令ということにしたのであるか。勅令と閣令との間にはおのずから發令の手續も、發令者の關係も違えば、何と言いますか、重い輕いというそういう關係も違うと思うのであります。この點はどうして閣令ということにされたのであるか、その點を一つお伺いたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=5
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006・木村篤太郎
○木村(篤)國務大臣 御説ごもつともでありまするが、むしろ勅令にするよりか、將來は御承知の通り勅令というものはなくなります。政令一本で行きますので、政令と相呼應する意味において閣令で定めることにいたしたのであります。ちよつと速記を止めて下さい
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=6
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007・小島徹三
○小島委員長 速記を始めて……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=7
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008・井伊誠一
○井伊委員 それからこれはそうなりますと、その閣令できまつたままのものが、ずつとこれから裁判官の任命諮問委員會を構成する規定というものはその閣令が元になつて行く、かように思われるのでありますが、そうなりますとその前の裁判所法のところにあります第三十九條第五項というものは、何か空文のように思われるのでありますが、政令によつてやるということは、いつ實現するとも言つてないことになると思うのであります。これはあるいはまた後になりまして、この閣令そのものを廢止をされて、そうして政令にでもされるというお考えなのでありましようか。その邊ちよつとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=8
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009・木村篤太郎
○木村(篤)國務大臣 お答へいたします。この四條の規定は初めて今度できまする最高裁判所の裁判官の任命に關するものであります。その裁判官を任命するにあたつては、内閣は諮問委員會の諮問を經て定めることになるのでその規定を設けたのであります。それでこの諮問を經て内閣で最高裁判所の判事を任命いたしまして、最高裁判所の判事がそこで定まりますると、その本法の諮問委員會というものは、裁判所法の施行と同時に消えるものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=9
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010・井伊誠一
○井伊委員 その次に、これはあるいは裁判所法のところでお聽きすべきであつたかもしれませんが、この委員會ができます場合に、内閣の諮問のしかたというものはどういうふうになるのでありましようか。司法大臣の御私見としての構成については先般御説明を承りましたが、どういう形で諮問をするのであるか。たとえばだれだれを最高裁判所の長官に指名せんとするのであるが、これについてはどうか。あるいはだれだれを最高裁判所の判事に任命せんとするのであるが、意見はどうか。こういうような聽き方をされるのであるか。はたまた最高裁判所の長官にはだれを指名すべきか。あるいは最高裁判所の判事にはだれだれを任命すべきか、というようなふうに諮問をされるものであるか、こういう御質問をしますのは、その内閣に豫定があつて内閣の意見で、これはただ諮問機關であるからして、聞いたならばそれでいいというだけで、結局は内閣の意思によつて決定するということに重きを置いてあるのであるか。あるいは諮問機關そのものに重きを置くのであるかということにかかつているわけであります。願わくばこれは特にかような諮問機關を設けたというところにおいて、その諮問機關の方の御意見を主とするというふうにしたいものと思うのであります。ただこれは内閣の閣令によつて、その制度がはつきりいたしませんとわかりませんけれども、大體どういうふうになさるのであらうかということをお聽きしておきたいと思います。これはせつかくこの裁判官の位置というものを確保しようとする憲法の手前從いまして國民の批判によつて十年間その地位は一應保障されるというその立場、その初めにおいて非常に簡單に閣令の中に規定されてすらつといつてしまうということは、この制度を始める第一歩のところにおいて、はなはだ歩み出し方が不確かなものができそうに思われる。すなわち民主化せんとする人事が、内閣の中に逃げ込んでしもうような形に見えるのであります。でありますから、その點を一應どういうお考えをもつておるかということを伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=10
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011・木村篤太郎
○木村(篤)國務大臣 お答えいたします。日本國憲法におきますると、最高裁判所の裁判官はすべて内閣において任命するということになつておるのであります。長官はむろん天皇が任命されるのはもとよりであります。しかしこの規定を設けたのは、いわゆる廣くその任命について民意を反映せしめようという趣旨から出たのにほかならないのであります。そこでもとよりこの諮問委員會は諮問委員會にすぎないので、内閣を拘束するわけではありませんが、しかし今仰せのように、この諮問委員會の機能を十分に發揮せしめるということは、要するに民意を反映せしめるにほかならないのであります。内閣であらかじめこの者を任命したいがという人を豫定して、それを諮るというような形式は私はとるべきものではないと考えております。要は諮問委員會にいかなる人を適當とするかということで、その人の人選を諮るというような形式が、望ましいのじやないかと考えております。しこうしてそれに基いて、内閣が適當と思う人を任命するということでありますから、仰せのごとく諮問委員會に重點をおかれることと豫想しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=11
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012・井伊誠一
○井伊委員 もう一點お伺いいたします。これは大したことではないかも知れませんが、附則の方には「この法律は、裁判所法施行の日から、これを施行する。」こういうふうになつておるのでありますから、第一條から第七條まで、これが五月三日まではとにかく釘付になつておるわけだと思うので、第四條も、結局その形式的な考えからすると一應釘付になるように思うのであります。しかし内容を見れば附則のまた例外ということになつておるのでこれは形式的にどういうものであろうか。新憲法は補則を設けて、そのあとに施行期日を定めた後に、期日前に準備すべきときは、その期日よりも前に行うことができるというふうに憲法の方ではやつておるのであります。もとより意味によつてこれをやれば、第四條の文字があつても一向差支えないと思うのでありますけれども、何か形式の上に一つの疑問を生じはしないかというふうに考えるのでありますが、法律にこういう形式を備えておる例もありましようか。その邊を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=12
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013・奧野健一
○奧野政府委員 一應ごもつともな御質疑でありますが、お説のように、第四條というのは附則の特例になりますので、附則にその點を書く例もありますが、こういうふうに本文に書く例もありまして、たとえば日本國憲法の第百條の第二項には、この憲法を施行するために必要な法律の制定とか、參議院議員の選擧、國會の召集、その他この憲法を施行するために必要な準備手續は、この六箇月を經過した時からという期日前からでも、これを行うことができるとあるわけでありまして、これは憲法の一條文でありますから、この憲法は公布の日から六箇月を經過した日から施行するということになるとこの百條の二項も、その施行前に何らできないように見えますが、これは施行前にも、參議院の選擧を行うというこの條文だけは、憲法施行前にやはり効力を生じてできるというのと同じような行き方で、本文の中に、この條文だけは施行前に効力が出るのだという意味です。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=13
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014・井伊誠一
○井伊委員 私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=14
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015・小島徹三
○小島委員長 これで屆出の質疑者は終りましたが、そのほか御質疑はございませんか。
〔「ありません」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=15
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016・小島徹三
○小島委員長 それでは質疑はこれで終了いたしました。午後一時まで休憩いたしまして、午後は討論、採決に移ります。これで休憩いたします。
午前十一時十六分休憩
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午後一時二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=16
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017・小島徹三
○小島委員長 休憩前に引續き會議を開きます。これより裁判所法施行法案を議題として、討論に付します。自由黨山口好一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=17
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018・山口好一
○山口(好)委員 本案に對しましては自由黨といたしましては、大體において全面的に賛成するものであります。この理由につきましては、既に法案の上にその要旨は明らかであると思いますので、ここに喋々申し上げません。自由黨といたしましては、全面的にこれを支持いたして、この通過を希うものであります。一日も早くこの法案が實施いたされまして、明るい裁判上の諸制度が、その一歩を踏み出しまして民主主義化を促進いたす。こういうことを希う次第であります。ここに賛意を表する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=18
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019・小島徹三
○小島委員長 進歩黨荊木一久君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=19
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020・荊木一久
○荊木委員 日本進歩黨を代表しまして、全面的に賛意を表します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=20
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021・小島徹三
○小島委員長 社會黨井伊誠一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=21
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022・井伊誠一
○井伊委員 私は日本社會黨を代表いたしまして、本法案に對しまして全面的に賛意を表します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=22
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023・小島徹三
○小島委員長 討論は終局いたしました。採決いたします。本案につき原案に賛成の諸君の御起立を望みます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=23
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024・小島徹三
○小島委員長 總員起立。よつて本案は全會一致をもつて原案の通り可決いたしました。これにて散會いたします。
午後一時五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00419470318&spkNum=24
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