1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
檢察廳法案(政府提出)(第三六號)
下級裁判所の設立及び管轄區域に關る法律案(政府提出)(第四八號)
裁判所職員の定員に關する法律案(政府提出)(第四九條)
裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案(政府提出)(第五〇號)
檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案(政府提出)(第五一號)
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昭和二十二年三月二十日(木曜日)午前十時四十九分開議
出席委員
委員長 小島徹三君
理事 三浦寅之助君 理事 荊木一久君
理事 細野三千雄君
小澤佐重喜君 木村チヨ君
青木泰助君 小林かなえ君
中村又一君 井伊誠一君
黒田寿男君
三月二十日委員磯田正則君辭任につきその補闕として吉田セイ君を議長において選定した。
同月十九日下級裁判所の設立及び管轄區域に關する法律案(政府提出)、裁判所職員の定員に關する法律案(政府提出)、裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案(政府提出)及び檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案(政府提出)の審査を本委員に付託された。
出席國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
出席政府委員
司法政務次官 北浦圭太郎君
司法事務官 佐藤藤佐君
司法事務官 奧野健一君
司法事務官 横田正俊君
司法事務官 内藤頼博君
司法事務官 野木新一君
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本日の會議に付した議案
檢察廳法案(政府提出)
下級裁判所の設立及び管轄區域に關する法律案(政府提出)
裁判所職員の定員に關する法律案(政府提出)
裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案(政府提出)
檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=0
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001・小島徹三
○小島委員長 會議を開きます。前會に引續き檢察廳法案の質疑を續けるはずでございますが、都合によりまして本委員會に上程せられました檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案その他三件の政府の説明を聽取いたします。北浦政府委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=1
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002・北浦圭太郎
○北浦政府委員 それでは下級裁判所の設立及び管轄區域に關する法律案と裁判所職員の定員に關する法律案、それから裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案、檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案、以上四法律案の提案の理由を説明いたします。
まず下級裁判所の設立及び管轄區域に關する法律案につきまして御説明申し上げます。高等裁判所及び地方裁判所の設立及び管轄區域について申し上げますと、これを從前の控訴院及び地方裁判所と比較いたしますれば、從前の控訴院所在地七箇所のほかに、高松市にも高等裁判所を設立し、四國四地方裁判所管内を統一してその管轄區域としたこと、大阪高等裁判所は、從前の大阪控訴院の管轄區域より高松、徳島、高知の三裁判所の管内を失い、廣島高等裁判所は、從前の廣島控訴院の管轄區域より、松山地方裁判所の管内を失つたこと、東京の民事、刑事の兩地方裁判所が併合されて、一個の地方裁判所となつたこと、樺太、那覇の二つの地方裁判所が御承知の事情で除かれましたことが相違いたしますが、その他は大體同じであります。高松市に高等裁判所を設けましたことは、從來四國が二控訴院の管下に二分されておりまして、現地に諸種の不便を與えておりましたので、このたびこの不便を除去するために、同一状況下にある四國四縣を統一して一高等裁判所の管下に置くことにしたのであります。
なお今囘設立することといたしました高等裁判所及び地方裁判所の名稱はすべて所在地名を冠することといたしましたので、仙臺市に設立される高等裁判所は仙臺高等裁判所、津市に設立される地方裁判所は津地方裁判所となつております。これはたしか前に安濃津と言つたように思つております。
簡易裁判所の設立及び管轄區域に關しましては、簡易裁判所が刑事訴訟法の改正によりまして、治安確保にきわめて重要な任務を擔當いたしますことと、その數の多いことのために、これが決定は短時日の間に簡單になし得ることではなく、愼重に現地の事情を調査、檢討の上これをなさなければなりませんので、このたびはこの法案の規定に基いてこれを暫定的に政令に讓つたのであります。新憲法施行後の最初の國會には、必ず簡易裁判所の設立及び管轄區域を定めた改正法案を提出いたすつもりであります。
以上本法案の概略を御説明申し上げました。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御協賛を賜わらんことをお願いいたします。
次に裁判所職員の定員に關する法律案につきまして御説明申し上げます。裁判所法案は、下級裁判所の裁判官、司法研修所教官、裁判所調査官、裁判所事務官、裁判所技官の各員數を別に法律で定めることを規定しておりますので、この法案を立案した次第であります。
次に本法案の内容について概略御説明申し上げます。まず裁判官の員數について申し上げますと、新裁判所法下の裁判官は、最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官、判事、判事補、簡易裁判所判事の六つの官にわかれておりますが、このうち下級裁判所の裁判官四者の員數をこの法律で定めたのであります。このうち判事とありますのは、高等裁判所長官以外の高等裁判所の裁判官と、地方裁判所の判事とを含むものでありまして、現在の豫定内譯數は、高等裁判所の判事が百九十九人、地方裁判所の判事が六百十五人でありまして、この地方裁判所の判事のうちには、地方裁判所長四十九人が含まれておるのであります。地方裁判所の裁判官は、この地方裁判所の判事六百十五人と、判事補二百五十人とから構成されるのでありまして、判事補は原則として單獨で裁判することができず、同時に二人以上合議體に加わることができませんので、この見地から具體的に定員の配置を考えましてこの員數を決定したのであります。
なお從前は、裁判官は判事という一つの官に統一されておりましたので、裁判官の間に兼官ということは起り得なかつたのでありますが、新裁判所法下ではこのように官がわかれましたので、從前のように機動的に事務を取扱うためには、所在地を同じくする廳に勤務する地方裁判所の判事と、判事の資格をもつ簡易裁判所判事との間、簡易裁判所判事の資格をもつ判事補と、判事補の資格をもつ簡易裁判所判事との間には、互いに他を兼任する必要を生ずることがありますので、判事、判事補、簡易裁判所判事の員數は、いずれも專任、つまり本官の員數として規定し、兼任の員數はこの數のほかになることを明らかにしたのであります。
司法研修所教官は、裁判所法上一級二級または三級となつておりますが、さしあたり一級一人、二級五人の教官のみを置き、三級の教官は設けなかつたのであります。この教官のうちには司法研修所長を含むものでありまして一級の教官一人とあるのをこれに豫定しておるのであります。
裁判所調査官は、裁判所法上最高裁判所及び各高等裁判所に通じて置かれることになつていますが、さしあたり最高裁判所にのみ二十人を置くつもりであります。
裁判所事務官は、最高裁判所事務局を初め、その他の事務局や司法研修所等で、庶務的事務をとる者と、裁判所書記に補せられて記録の作成、保管等に當る者とを含むのでありまして、一級一人とあるのは、最高裁判所事務局の次長をこれに豫定しておるのであります。
裁判所技官は、裁判所法上各裁判所に通じて置き得るようになつておりますが、さしあたり最高裁判所事務局だけにこの三人を置くつもりであります。以上簡單ではございますが本法案の概略を御説明申し上げました。何とぞ愼重御審議の上、御協賛を賜わらんことをお願いいたす次第であります。
次に檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案につきまして御説明申し上げます。
檢察官の俸給につきましては、檢察廳法案第二十一條により一般官吏とは別に、裁判官に準じて法律でこれを定めることとなつているのでありますが一般の官吏の俸給その他の給與につきましては、目下給與審議會等で現在の經濟事情に即した額を審議中でありまして、檢察官のみについて今直ちに法律をもつて俸給の額を定めることは不可能な事情にあるのであります。從いまして一般の官吏の給與の額の決定を見ました上で、檢察官の俸給に關する法律案を御審議願うこととし、新憲法施行後、當分の間の應急的措置として本法案を提出いたしました次第であります。次に本法律案の内容を概略御説明申し上げます。
第一條は最高檢察廳の長たる檢事總長の俸給の額についての規定でありまして、當分の間その額は國務大臣に次ぐものとし、内閣がこれを定めることを致しました。御承知のように、別に上程いたしました裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案におきましては、當分の間、最高裁判所長官の報酬は、總理大臣の俸給と、又最高裁判所判事の報酬は、國務大臣の俸給とそれぞれ同額としているのであります。この最高裁判所に對應する最高檢察廳の長官たる檢事總長につきましては少くとも國務大臣に次ぐ待遇を與えることが當然であると考えるのであります。
第二條は、次長檢事その他の檢察官の俸給の額を、さきに申し上げました理由により、當分の間、一般の官吏と同樣なものと致しました。また第三條は、檢事總長を含めた檢察官の俸給及び手當等の支拂その他の措置についても、また、第二條と同樣の理由により當分の間、一般の官吏と同一の取扱いを受けることを明らかにしたものであります。
附則第二項は檢察廳法第四十條により、現に在職する奏任官たる檢事が任命の辭令を省略されて、新たに檢察廳法による檢事となつた場合、これらの檢事がそのまま一般の官吏の例による從來の俸給を受けることを定めたもので、俸給の辭令を省略した規定であります。附則第三項は、この法案が應急的措置でありますことを示したものでありまして、政府としましては、前に申し上げた通り、それまでの間においてできるだけ早い機會に、改めて檢察官の俸給等に關する法律案を上程致したいと思います。
以上甚だ簡單ではございますが、本法案の概略を御説明申し上げました。何とぞ愼重御審議の上御協賛賜わらんことをお願いいたす次第であります。最後に裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案につきまして、御説明申し上げます。國内の治安を保持し國民の權義を保全する重大な職責を有しまする裁判官に對し、その地位に相應する額の報酬を支給しなければならぬことは申すまでもないところでございます。しかしながらただいまは經濟情勢なお變轉きわまりない状態にありまするのみならず、目下政府において官吏全體の給與改善につき鋭意研究努力中でございますので、裁判官の報酬等についても、ここに暫定的の措置を講ずることといたし、まず、最高裁判所長官の受ける報酬の額は、内閣總理大臣の俸給と同額とし、最高裁判所判事の受ける報酬の額は、國務大臣の俸給の額と同額とする。また高等裁判所長官の受ける報酬の額は、各省次官の俸給の額より高く、國務大臣の俸給の額より低い額の範圍内で、最高裁判所が定める額とし、またその他の裁判官及び司法修習生の受ける報酬または給與の額につきましては、それぞれ一定のわくを定めまして、その範圍内で最高裁判所がその等級なり、各裁判官の受ける報酬を定めることといたしました。さらに報酬以外の諸給與に關しましては、一般の官吏の例によることとしたのであります。
なお現職の裁判官で、この法律施行の際、裁判所法施行法第三條の規定によつて、引續き裁判官たる地位を有しまする者の受ける報酬につきましてはその者が新たに裁判官に任命されますまでは、この法律施行の際現にその者が受けておりまする、もとのままの俸給の額に相當する報酬を受けるものといたし、その旨附則に規定いたしました。
最後にこの法律は、前申し述べました通り、應急的措置に關するものでございますので、政府はでき得る限り早い機會に、新しく裁判官の報酬等に關する法律を制定いたしたいと存じております。はなはだ簡單ではございますが、これを以て御説明を終ります。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御協賛を賜わりますようお願い致します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=2
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003・小島徹三
○小島委員長 それでは大臣がみえられるまで、ただいまの四案について質疑をいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=3
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004・中村又一
○中村(又)委員 ただいまの御説明の案の中におきまして、檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案の中に、檢事總長の待遇につきましては、昨日檢察廳法案の審議の際におきまして、詳細にわたり説明をいたし、その一部修正の必要があるというような意見を述べておつたのでございまするから、本日は繰返しまして要點を、この點に對しまして申し上げておきたいと思います。昨日も申しました通りに最高裁判所の長官が總理大臣とその待遇が同額であり、十四人の最高裁判所の判事が、ことごとく國務大臣と同額であるというのにかかわらず全國の檢察廳を指揮監督いたしまする最高檢察廳のただ一人の長官でありまする檢事總長の待遇が、常に國務大臣よりも低くなつておるということは、まつたく權衡を失しておる事實と申さなければなりません。この點につきまして當局の意見をさらに承つておきたいと存じます。
それから裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案につきまして、一點御所見を承つておきたいと存じます。それは最高裁判所の長官は總理大臣と同等なる待遇となつておりまして、また同判事の報酬は國務大臣と同額に定められておりますが、これはまた當然なる規定だと存じます。しかしここに高等裁判所長官についてみますと、全國八箇所の高等裁判所のうち、東京高等裁判所はやはりその規定におきまして、あるいはその權限におきまして、他の高等裁判所とは比較にならないほど大きなるものになつておりますにもかかわらず全國八箇所の高等裁判所長官の待遇と同一に規定されておるのでございます。顧みますのに、東京の現在の控訴院長の待遇は親任の待遇を受けております。從來もほとんどその通りであります。こういう見地からみましても、新裁判所法の下におきます東京の高等裁判所長官にも、特別の待遇を與うるの必要があるのではないか。これが私が當局の意見を伺う點であります。これをいま少しく説明をしておきますが、何がゆえに東京高等裁判所のみを、他の四箇所の高等裁判所長官よりも待遇を別にする希望をもつかという點は、東京高等裁判所に限りまして一般訴訟事件の數においては格段の相違があるばかりでなく、特許法、獨占禁止法等の特別法によつて、この特許事件、獨占禁止事件等が、すべて東京高等裁判所の權限と相なつておるのであります。さらに經過的事件の取扱いではありますけれども、現在大審院に係屬いたしておりますところの多數の事件は、今後新憲法の實施と同時に、東京高等裁判所に引繼ぎ處理せしめらるることと相なるのでありますがこの處理のことに對しましても相當の期間を必要とすることだろうと存じます。如上の事件を取扱うために判事の數はどうなつておるか。おそらく全國の高等裁判所で判事が約二百名くらいであろうと考えますが、その三分の一にあたる六十名以上の判事が、東京高等裁判所の判事となる割合でございまして、しかもこれらの判事は全國判事中の最高峰の地位に立つ人たちでありまして、すなわち一級の官吏の俸級を受けらるる人たちであります。こういう人たちを、監督ということはありませんけれども、ともかく一番上に立つて指導するところの地位に立つ人でありますから、この東京裁判所の長官だけは最高裁判所の判事と同格の取扱をするということは、當然の筋ではなかろうかと確信いたす次第でございます。こういう事實につきまして當局の御所見はいかがでありましようか。
質問の第二點は簡單でございますが判檢事の取扱いに對する根本の原則をお尋ねいたしておきます。この判事の報酬と檢事の俸給は、相なるべくは差別があつてはならぬという考え方を私はもつております。今後におきましても人事の交流といたしまして、民間の辯護士の登用も數多くなつてまいるでございましようが、この判檢事の間におきましても圓滑に人事において適所適材に動かしていくということは、人物經濟の上からいきまして奬勵すべきことだと存じております。この線に沿うて考える場合におきましても、いわゆる判檢事一體の考え方におきましてその待遇に差等なきことが望ましいと存ずるのでありますが、當局の御所見を伺つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=4
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005・北浦圭太郎
○北浦政府委員 檢事總長の待遇につきましては、昨日も御答辯申し上げました通りに、全く同感でございます。中村君の御意見と私は同感でございます。檢事總長が國務大臣より以下の待遇に甘んじなければならないという理由は、どこから考えても發見することができない。全く同感であります。
第二點の東京高等裁判所の長ですがこれはほかの高等裁判所よりも優遇しなければいけない。これもいかにもごもつともの御論議でございまして、事件の管轄につきましても範圍が廣い特別の事項について裁判をしなければならぬ。こういうことで荷も重いので、これも同感でありますが、しかし一面考えてみますと、中村君もよく御承知の通り、東京高等裁判所の判事とか長、こういうものは前進の飛躍の踏み臺でありまして、ここに來るということは名譽も大きければ將來の希望も大きい。そこで御承知の通り東京の高等裁判所の判事だ、長だということは、おそらく優秀なる人がこれは熱望するところでございますし、從つて將來の希望なり名譽なり、秀才の集まるところだということで、十分報われもするしいたしますので、俸給の點はまずまず將來は考えるといたしまして、今囘はこの程度で御協賛を仰ぎたいと思うのであります。それから判事と檢事の待遇についての根本方針、これは私はもう全面的に中村君のお説に賛成でございます。その間差別待遇する何らの理由がない。判事も判事として相當の仕事がある。御承知でもありましようが判決を書くということだけでも實にえらい仕事ですけれども、檢事はまた檢事で犯罪の摘發であるとか、あるいは搜査であるとか煩わしいしかも大體において人からきらわれる仕事でありますが、いずれもその職務のことから考えてみまして、これを區別すべき理由は一つもない。そこで私は中村君の質問される通り、根本精神としては中村君のお説に賛成でございます。さような差別待遇をすべき理由は一つもないさようにお答え申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=5
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006・中村又一
○中村(又)委員 ただいま檢事總長の待遇問題に對する當局の御意見はまことに滿足にたえません。東京高等裁判所長官の待遇に對しましては、いささか滿足というまでにはいかぬ御答辯を得ましたために、いま一應當局の御答辯をくりかえして伺つておきたいと存じます。すなわち最高裁判所という新憲法の制定いたしましたるこの機構というものは、從來の裁判所の觀念をもつては考えられないところの、一種特別の性格をもつているものであろうと私は考えております。その考え方からいたしますと、東京高等裁判所というものは一般裁判官としての建前から見ますと、これこそ最高の官として、一般裁判官が仰ぎ見るところの地位でなければならぬと存じます。こういう意味合いから考えましても、東京高等裁判所に限つては、それぞれの諒解が受け得られるということを條件といたしまして、ぜひとも最高裁判所判事と同格の取扱いをしていただきたいと思うのでありますが、司法當局の御意見をいま一度伺つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=6
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007・北浦圭太郎
○北浦政府委員 最高裁判所の長は、司法權の——私が申します司法權というのは狹義の司法權でありますが、その最高峯であることは中村君御説明の通りであります。これは憲法上特別の地位であります。ところで東京高等裁判所の長、これは憲法にもどこにも、別に他の高等裁判所の長と區別すべきことは規定はされていないし理由も發見できません。しかし何分にも今日出ております法律案は、すべてまずまず經過法と言つてもいいくらいの程度でありますので、ただいま中村君のお説のように、特にこれを區別する必要ありということを研究いたしまして、來るべき機會にこの高等裁判所の判事と最高裁判所の判事と、同一の待遇にすべしという御主張に、なるべく合致するような考え方でいきたいということをここに申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=7
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008・中村又一
○中村(又)委員 くどくどしく質問を重ねるようでありますが、當分の間であるから最高裁判所の判事並に待遇をいたしておいて、十分研究をして、暫定的な措置法でないほんとうの法律をつくるときに、さらに御研究になつた結果の線に沿うて規則を制定するということのお考えに、御所見は相ならぬのでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=8
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009・木村篤太郎
○木村(篤)國務大臣 その點について申し上げます。中村君の御説ごもつともと思います。東京高等裁判所は他の高等裁判所とは同列に置かれておりますが、實際上の地位は高いものと見なければならぬと思います。と申しますのは東京の高等裁判所には、ほかの高等裁判所で取扱いませんすべての行政處分事件が參つてまいります。それと他日必ず問題となつてまいります獨占禁止法案に基きます獨占裁判所も、附置されることと考えておるのであります。かたがた東京高等裁判所の地位というものは、ほかの高等裁判所の地位とくらべて高い、と言うては語弊がありますが、つまり事件の性質の度合その他から見て、よほど性格が違つてまいりますから、その長官に對する報酬の點についても、特に考慮を拂う必要があろうかと考えております。なるたけ御希望に副いたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=9
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010・小林かなえ
○小林委員 ちよつと關連して……。ただいま御答辯を拜聽いたしましたが現行の制度におきましては、東京の控訴院長というものは親任待遇になつているのでありますが、俸給は他の控訴院長と違いますか、同じでございますか。この點お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=10
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011・木村篤太郎
○木村(篤)國務大臣 俸給は同じです。つまり地位が親任待遇ということになつております。御承知の通り今度の制度におきますると、各地の高等裁判所の長官は、ひとしく認證官でありただいまの親任官に相當する者で、地位には同等ということになります。ただ俸給の點をどう考えていくかという中村君の御質疑と考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=11
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012・小島徹三
○小島委員長 それでは大臣が見えましたから、檢察廳法案を議題として、質疑を進行いたします。黒田寿男君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=12
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013・黒田壽男
○黒田委員 私は檢察法案につきまして御質問申し上げたいと思います。なおその中で、ただいまは司法制度を構成しております人爲的要素の改革という問題に限定して御質問申し上げてみたいと思います。
わが國司法制度の從來の根本的の性格を一言にして盡しますならば、いわゆる封建性が壓倒的に司法制度を支配しておつたという點にあろうと思います。最初に警察官が搜査の面に現われてまいりますその時から、さらに檢事及び裁判所における審理、續いて行刑の行程に至りますまで、全部の過程を通じて人民としてこれに對して懷いておりました感じは民衆に對して非常に冷酷な制度であり、非常に暗黒的なものであるということであります。
〔委員長退席、三浦委員長代理着席〕
殊にこの司法部の封建的な色彩は滿州事變以來さらにそれが日支事變に及び、大東惡戰爭に及ぶ段階に至りまして、わが國の軍部を中心とする無暴な帝國主義的戰爭の時代におきまして司法部におけるこの封建的色彩は露骨に發揮せられるようになつてまいりました。またそれがますます強化されるようになりまして、世間でいはゆる司法フアツシヨという言葉を、檢察官に對して呈するようなことになり、一般にそれを信ずるようになつておつたのであります。私はそれには十分理由があつたと思う。こうして日本の過去の司法制度を振り返つてみますと警察と檢事局の搜査の段階におきましても、あるいは、暴行が行われ、あるいは凌辱人權蹂躪というようなことが、絶えず行われてまいりまして、進歩した近代的な科學的な犯罪搜査の方法はほとんどとられないで從來の刑事訴訟法その他の法律が、被告人の自由を蹂躪する規定をもつておりましたのに乘じまして、いちずに被告人の自白を強要するそのためには無理な取調べを強行するというようなやりかたであつたのであります。豫審の段階に至りましても、長い間勾留の更新を繰返しまして、暗黒的な祕密尋問式の調べ方をいたしまして、その間に幾多の被告人が、まだ罪の決定もない以前に、長い未決の生活において遂に肉體的にはなはだしい被害を受けまして、三木清君戸坂潤君のごとく、遂に生命を失う者さえ出たのであります。裁判の段階に至りましては、從來の憲法の第五十七條によりまして、天皇の名において裁判が行われるといふことをかさに着まして、封建主義的な官僚主義的な裁判が相當に行われていたということも、私は斷言して憚らないのであります。殊に檢察面におきましては、あるいは帝人事件におきまして見られるごとく、あるいはまたわれわれもその關係者の一人でありましたが、いわゆる人民戰線事件という事件におきましても、見られるごとくその當時における政治的な壓力に押されまして、檢事一體の原則を惡用いたしまして、軍部その他の封建的勢力に利用せられ、あるいはその手先となりまして、民衆を壓迫した。これは否定すべからざる事實だと思います。刑務所の制度に至りましては申すまでもない。幾多の人權無視の事例が算えられる状態でありました。こういうような状態でありまして、殊にそれが檢察關係の面においてはなはだしかつたということを、私自身も在野法曹の一人として痛感しておりました。さいわいに新憲法が公布せられ、近く實施せられることになりまして、わが國の司法制度も根本的な變革を受けることになつたのであります。いわば司法制度の民主化が、主權在民の原理に基いて、行われるということになつた。これが根本的な變革の本質であると考えるのでありまして、これからは裁判も眞にわれわれ人民の裁判であるという時代が來たと思います。制度の上におきましてわれわれから見ましてなお幾多の理想に遠き點もありますけれども、とにかくそういふ時代をわれわれは迎えることができたのであります。從つて司法制度運用の全般を通じまして、特に人民の立場に立ち、十分に人民の精神的並びに肉體的權利自由を考慮した方法が行われるものと考えるのであります。私はこういう方法によりまして、從來司法部の中に、特に檢察當局の中に存在しておりました官僚性階級性、こういうものを排除していかねばならぬと考えるのであります。司法の民主化の方法は種々あることと思いますが私は今日は、法案が檢察關係に限定せられておりますので一般的にこれを論ずることは避けたいと思います。檢察關係に限定いたしましても、今囘の司法制度改革の一つといたしまして、從來われわれの持論の一つでありました裁判所と檢察廳との分離が實現せられることになりまして、從來裁判官に對して檢事が不當に抑壓を加えておるというような感じを懷かされておりましたものが、こうしたことも制度の上から改められることになつたと思います。これは刑事事件につきまして、田舍に行けば行くほど、從來、裁判所に對する檢事の壓迫が多分に加えられてゐたのであります。われわれは辯護士としましていろいろな事件に携わりました關係から、常にこういう印象を受けておつたのであります。このたび司法制度改革の一つといたしまして兩者が分離されたことは、非常に結構なことと思います。さらに私の望みたいと思いますことは、檢事と被告人とを、彈劾主義の立場から、對等な地位におくというその制度を徹底さしてもらいたいということであります。形式的な問題ではありますけれども、裁判所の法廷の構造におきまして、檢事が裁判長と同じ高さの位置に着席しておりまして、被告人はもとより、辯護人證人に至るまでを、なにか見下したような形である。これは昔の糾問式時代の遺風、封建時代的なものを殘していると思うのであります。かくの如きことも速やかに改めなければならない。裁判長は當事者双方の上に立ちまして公平な審理をするのでありますから、裁判所と檢事と同席におくというようなことは、やめてもらいたいと思いますし、また檢事と辯護人との法廷席における差別的な點を改めなければならぬと思うのであります。なお司法警察檢事局、豫審を通じまして、ただいま申しましたような封建主義、糾問主義、秘密主義的なものの横行が、憲法、刑事訴訟法その他の諸法令の改正によりまして相當に改革せられまたせられることと思いますし、殊に豫審制度が廢止されることになりましたことは、これもわれわれの從來の主張が容れられたことになるのでありますが、私はこれ以上にさらに從來のいわゆる自白強要主義を改めて、一日も早く科學的な方法で事件の取扱ひがなされる方向に進んでいただきたいと思うのであります。このたびの檢察廳法の中にもこれに關連いたしまして、檢察技官の制度が新たに設けられておりますが、私はこの程度以上の改革を期待したいのでありますが、この點についてこれ以上に承ることができますれば、御方針を拜聽いたしたいと思います。さらに陪審制度の復活も、これも人民のための裁判という方向に向う傾向の一つだと考え、私ども歡迎しているところであります以上は制度の上の改革についてでございますがさらに法律それ自身の改革につきましても、これは今日私は言及いたしませんが、民法、刑法あるいは訴訟法その他の方面において改正が企てられつつあると信じますが、私が今日特に問題といたしたいと思います點は、かような制度の上の改革、法令そのものの改革と併せて、司法制度を構成する人的要素の改革ということであります。司法ももちろん人によつて運營せられるところでありますから、いかに人を得るかということが、結局改革の中心問題になると考えます。こうした意味におきまして、判事、檢事の任用は、司法制度の改革の中心をなすものであるとさえ、私は斷言することができると思うのであります。單に判決の技術に長じているとか、あるいは搜査技術に長じているとかというような判事や檢事ではなくて社會の實情を十分に知悉し、人民大衆の心の機微をよく把握した人、學識並に經驗その他いろいろな素養がプラスされて、初めてここにわれわれの信頼する判事並びに檢事が生れると考えるのであります。この見地から從來の判檢事、殊に檢事のことを問題にしてみたいと思うのであります。檢察官の先ほど申しましたようなフアツシヨ的性格が大いに問題とされた時期もあるのでありますがこういう點から見まして、われわれは理想といたしましては、判事あるいは檢事は、もし民主主義の段階がもつと進んでいるならば、選擧によつてこれを選ぶというような方法をとることがよいと思うのであります。しかしこれは今日の段階におきまして、直ちにこれを原則とすることはまだ無理であると思うのであります。しかしわれわれ在野法曹におきまして、從來唱え來つているのでありますが、判事、檢事、辯護士などを、在野であるとか、在朝であるとかいうようなことで、區別して考えるところの官僚主義的な氣持を一掃して、これらの法律關係者をことごとく一體として考えるという、いわゆる法曹の一元化を徹底せしめる方向に進んでいただきたいと考えるのであります。われわれの考へを申しますれば、檢事のように他人を彈劾する立場に立つ職務につく人は、彈劾せられる側の人々の氣持をよく知ることが必要である。そういう氣持を十分に知り得た經驗をもつような過程を經た者が、私は初めて理想的な彈劾者となり得ると思う。ところで司法制度の改革を思い切つてやるためにはこの判事とか檢事とかを、一定の年限の間民間で生活させて、在野法曹として苦勞をさせ、世の中の表も裏も知り、人情の機微に通じ責める者の立場よりも、むしろ責められる側の立場に立つて、民衆の權利擁護の立場から、一定年限の經驗をつむ。そうした人々の中から判檢事を任命する。あるいは選擧する。そうした方法をとるべきではなかろうか。私は檢察官を特に民間から出す制度を設けたい。このたびの檢察廳法におきまして、第十八條並びに第十九條に、檢察官の任免の問題が取扱われておりますけれども、從來辯護士になるものが辯護士の事務所で一定の修習をいたしておりましたやうに、檢事になる者もこれと同じように、民間において一定の期間修習させるというような制度を設けまして、將來これらの者の中から、檢事並びに判事の職務につかせる。從つて檢事、判事、辯護士は、從來のような意味での區別がなくなり、すなわち在野とか在朝とかという觀念を捨て去り、すべて國民の司法に關係する法曹であるという、渾然然一體となつた氣持、辯護士から判檢事になるからといつて、それは官僚になるというような氣持からでなく、最もよく人民のために裁判をなし得る判事になる。また最も適切なる彈劾をなし得る檢事になる。役人になるというような氣持ではなく、人民のための司法の職務におけるある一定の職につくのだという民主的な氣持をもつて、どしどしと辯護士のうちから判檢事を採用する。それを原則にするという方向に進めてもらいたいと思う。從來も多少はこういう方法が行われて、現に司法大臣、次官、檢事總長等は、ことごとくわれわれが同職として尊敬しておりました先輩の方でありまして、われわれは民間法曹の者といたしまして、この方法を大いに歡迎している者でありますが、しかし現在のごとくきわめて例外的な方法でそういうことが行われるというようなことでは、徹底した人事の民主的改革にはならないと思います。中途半端のことをいたしますから、なまじつか本來の司法官と、在野出身の司法行政官との間に、いういう好ましからぬ派閥爭いとかのうわさを聞くということさえ起る。これはやはり民主化が徹底していないからであると考えます。むしろ私は、現在例外とされているものを本則とするというような方向に將來進んでもらいたい。そういう點から見ますと、私はまだ本法案がはなはだ民主主義的でないと思う點が多分にあると考えるのであります。機構改革の人的要素の思い切つた民主化という點につきまして、私は以上の如き見解をもつているのでありますが、司法大臣の御意見を承つてみたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=13
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014・木村篤太郎
○木村(篤)國務大臣 お答えいたします。申すまでもなく裁判官も檢察官もともに國民の公僕であります。一派の人あるいは一階級の人、一集團の人、それらの利益をはかるべきものじやないのであります、いわゆるパブリツク・フエアーを根本に置いて、すべて事件を處埋していかなければならぬと存じます。從來司法の殊に檢事のフアッショとかいうようなことを謳われまして非難の的となつたが、これは將來の檢察官にとつては注意すべきことであろうと思います。結局は人の問題なのであります。どこまでもただいま申し上げたように、國民の利益ということを主眼に置いてやらなくてはならぬものと考えております。採用の問題でありまするが、まことにごもつともであります。アメリカにおきましても裁判官の任用については申すまでもなくいわゆるロイヤーからでありまして、多年在野で法律の實際事務に從事した者の中から選拔されるのであります。去年亡くなりました有名な最高裁判所長官のストーンのごときも、ただいまその名を忘れましたが、ある法律事務所で實務に從事したことかれこれ十年、その後自分で事務所をつくりましてまた實務に從事して、選ばれて最高裁判所の長官になつたのであります。多年ロイヤーとして幾多の經驗を經た人がなつておるようなことであります。日本におきましても將來の行き方といたしましては、今黒田君の御指摘になりましたごとくに、あらゆる事件について經驗を經て、世の中の裏表を知つた者が、その地位につくということになりますと、司法の民主化というものは相當の點まで實現できるかと考えております。ただ實際問題といたしまして、ただいまの段階においてはなかなか容易ではないのであります。それで裁判官が、一たび在野法曹として相當年限を積んで、また裁判所なり、檢事局なりに戻つてくるということは、きわめて望ましいのでありますが、これもなかなか容易ではありません。そこで實際問題といたしましては、試補の修習でありますが、從來これは辯護士になる試補と、裁判官、檢事になる試補と別々に修習さしておつたのであります。これらを一體にして教育していくそこで互いに切磋されて、よりよく修養ができることになりますれば、その間に學問上のことは申すまでもなく、人格の問題、あるいは交際の問題といつたようなあらゆる部面から考えてみましても、非常に私は進歩的になつてくるだろうと考えております。元來日本では在朝の法曹と在野の法曹とは、あまり疎隔され過ぎておるのではないかと考えております。申すまでもなくイギリスあたりにおきましては、御承知ではございましようけれども、全國にバー・アソシエーションというものが設けられまして、その上にプリンス・オブ・ウエールズ、日本で言えば皇太子がその會長になつて、實によく圓滿に、すべてのことを取扱つていつておるのであります。そこで人格的の修養も、學問的の修養もできるわけなのであります。日本においてはまつたく分離しておるかけ離れておる。これは私はいかぬと思う。全國一丸となつて在野も在朝も、ともどもに語り得る。互いに膝を交えて、ものによつては大いに攻撃してよいのですから、活發な議論をやつて、お互いに討論する機會を與えることが、必要ではないかと考えております。それはわれわれ辯護士會の方にも呼びかけて、そういうような機構をつくろうじやないかというところまでいつておるのであります。どうぞ各位におかれましても、御盡力を願いたいと考えております。
それから法廷樣式の問題であります。これはごもつともであります。從來のようなあり方では私はいかぬと考えております。ぜひその點については十分の考慮を拂つて、改造すべきは改造したいと考えております。要は人の問題に歸着いたします。これはお互いに私を捨ててやらなくちやならぬのでありますが、なかなかそこがむつかしい點でありまして、ただいまのところでは一足飛びに、ほんとうの民主化というものはできかねるのであります。これは徐々にやつていくよりしかたがないと思いますけれども、來るべき憲法の實施に備えまして、今黒田君の仰せになりましたような人事の交流ということも、十分考えてみたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=14
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015・黒田壽男
○黒田委員 大臣は御多忙のようでありますので、簡單に申します。今囘の法案の第十八條におきまして、二級檢察官任命の方法として、司法修習生としての修習という方法が設けられておるのであります。ただいま司法大臣が仰せられましたように、從來辯護士として修習をいたしておりますものを、すべて一體として引きくるめて他の職務の修習生とともに修習させるということになつたのでありますが、辯護士という方面から見ると、この修習の方法は、私の見解から言えば、むしろ逆戻りである。せつかく民間の學識あり經驗あり、人格ある辯護士の事務所におきまして、修習いたすことになつてゐたものがこのたびは一體として、修習を受けることになりますと、辯護士修習という面からみれば、むしろわれわれの理想より反對の方向に退歩するように考えます。私は人生の出發點は非常に大切であると考えます。殊に大學を出まして、これから一定の職に就きますものが、最初に經るいろいろな經驗なり、訓練というものは、その人の一生を後々までも支配するものであります。そういう意味から若い檢察官が、檢察官としての出發點をつくる場合に、この大切な人生への、世間への出發點におきまして、民間の權威あり、人格ある法律家によりまして、修習を受けるという方法は、私といたしましてはぜひ通過させたい段階ではなかろうかと考えます。これにはいろいろ經濟上の問題も伴うことと思うのでありますけれども、それはある程度の補助を國家が出せばよろしいと思います。そういう心配をなくして、すなわち經濟上の心配をなくしました上で、民間で修習さした方がいいという考えを私はもつておりますが、これには意見の相違のある人もございましようが、私としてはそういうようにしたいという意見をもつておることを申し上げておきます。なお念のために申しますが、ただいま司法大臣は、今後新憲法の實施に際しまして、在野の法曹と判檢事の交流について、思い切つたやり方をしてみたい。こういうようなお話がありました。私もこの點については實はお聽きしようと思つておつたところでありまして、從來の程度のやり方では非常に不徹底だと思います。私が先ほど申しました程度のところまでには、直ちにいかないといたしましても、今後においては十分に思い切つた交流をさせるという方法において、人事面における民主化方向への進展としたい。こういうように考えております。從來判檢事としての道を歩いてこられた人人は、民主化という點から交流という點に理解をもち、民間からはいつてきた者との間に無用な摩擦の生じないようにする。今後はそれが原則となる。思い切つてそういう方向をとつていただきたいと思います。近い將來に於て私が最初に申しましたような意味において、司法官が選擧できまするという制度が、原則になる時代がくることを私は確信したいと思います。
最後に私はただいまの交流の問題につきまして、意見並びに希望を申し述べたいのであります。この際念のためにお伺いしておきたいと思いますことは、新憲法の實施をよき機會にいたしまして、檢察陣の人事を、思い切つて刷新する御意向がございましようか。これをお尋ねしたいと思います。檢事並びにその出身者の中には、戰爭犯罪人となり、あるいは牴觸した人も相當にあるようでございますけれども、新憲法の實施に際しましては、檢察官につきましては私は人事の思い切つた刷新をなすべきであると考えておる。こういうようなことにつきまして、人事交流の問題と合わせて司法大臣におきましてどういう考えをもつておいでになるか。ついでに承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=15
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016・木村篤太郎
○木村國務大臣 お説の通り、われわれといたしましてもこの際相當の考えをもつて人事刷新をやりたいと考えておりますが、この際附言して申し上げておきたいことは、裁判所の法廷の問題であります。御承知の通り今司法省の建物のわきに區裁判所、檢察廳ができております。あれにおきましては、法廷は全部改造されております。機會がありましたらどうぞごらん願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=16
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017・黒田壽男
○黒田委員 私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=17
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018・小島徹三
○小島委員長 三浦寅之助君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=18
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019・三浦寅之助
○三浦委員 私はこの前の裁判所法の委員會で實は質問したのでありますがその際答辯の殘つておる點であります。それは檢察廳法案の時に御答辯を願うことになつておつたが、大臣もいませんし、その時政府委員もいませんでしたから、重ねて説明申し上げます現在警察でやつておるところの犯罪搜査の場合において、司法官憲の令状もなく何もなくやつておる警察の留置、犯罪の搜査の場合において刑事が迎えに來て留めておくか、さもなければ呼出しをしてそのまま場合によつては取調べも何もしないで留置しておく。またそれが長きにわたる場合においては一箇月あるいは二箇月にもなつておるそういうことを今後行うかどうか。またそういうことが實際の犯罪搜査の場合においては、ある程度必要かとも考えられる點もあるのでありますが、そういうようなことが今後いかなる方法によつて行われるか。また現在警察が取調べをして檢事局に事件を送致するそうすると警察の方は取調べが終つて事件を檢事に送致したにもかかわらず檢事の都合でまた警察へ戻してそれを留置しておくといようなことが行われておるし、また警察署長になんら關係のない縣刑事課なり、縣の經濟係の人が取調べの都合上警察に來ておる。そして警察署長には何らの關係がなくても警察に留置しておく。またはなはだしきに至りましては、從來税務署等が取調べをする場合において、警察に頼んで警察に留置しておくというようなことが、いわゆる從來人權蹂躙を起したりいろいろの問題を起すのでありますが、そういうことが今後行われるかどうか。まずその點に對しての御答辯をお願いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=19
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020・北浦圭太郎
○北浦政府委員 われわれも三浦君の御質問のごとく警察が承諾同行という名前のもとに引張つていく。誰も警察あたりに喜んでいく者はありませんが任意出頭とかいろいろな形式で引張つていきますが、あのようなことが不當であることはもちろんであります。かりに十日間なら十日間の法定期限があると、一遍ちよつと出した形式にしてまた放り込む。けしからぬ話で將來どうなるか。これは御承知の通り憲法は令状なしにやれないのだ。あそこは確かに司法官憲という文字を使つていたように私は思いますが、この司法官憲という文字もこれは問題だ。一體檢事とか警察なんか司法官憲になるか。とにかく裁判所の令状なくしては勾引はともかくとして勾留なんかできない、こういう憲法の精神からいきまして、從來のような承諾同行とか、あるいはみずから飛込んできたのだとか、さようなことは絶對にないということにお互い努めなければならないと私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=20
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021・三浦寅之助
○三浦委員 憲法の規定の立場からいつて、北浦さんの申されまするような司法官憲の令状がなければ抑留や勾留はされないということは明示されているが、實は私は仕事の關係上、そういう問題を警察等においてどうするかというようなことを非公式に聽いてみると、やはりそういうことがなければ犯罪の搜査ができないのだというようなことで、やはりそれは行わざるを得ないじやないかというようなことを言つておりますし、またもう一つは、現在現に公然と行つている。しかもそれはおそらく私の知る範圍においては、なんらの法律上の根據がないじやないか承諾同行や承諾留置、あるいは行政留置でも、なんとか理窟をつけているけれども、おそらく法規上の根據がないじやないかと思うことが公然行われ、しかもそういうような留置した場合において、差入れや面會も絶對させておらない。しかも憲法發布以來、まだ施行されなくとも、現在においてそういうことが事實行われている。私の知る範圍においては特殊の理由があるかしらんが、昨年の十二月頃からまだ警察に留められておるものすらある。そういうようなことでその點がもし絶對に違法であり、なすべからざるものであるならば、現在法律上の根據がないのだからして、今からでもそういうことを當局において相當に指揮して、憲法の精神に從うように取扱わるべきでなかろうかと思うのでありますが、そういう點に對する御意見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=21
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022・北浦圭太郎
○北浦政府委員 もちろんでございますから、そういう不當なことをやつている警察がありますれば、至急お知らせ願いたい。それから將來のことですが、新刑事訴訟法には裁判官の令状なしには——司法官憲というのはどうやら裁判官と制限したらしいですが、令状がなければ逮捕できないと、こう變るようでありますが、あなたの御意見通りであります。ほんとうは古い刑事訴訟法を見ましても、一體被告人でも親切丁寧に取扱えということは條文に出ている。いはんや被疑者において、さような亂暴なことはできないはずでありますが、どうも黒田君の御質問にもありましたように、實際戰爭時代にはむちやくちやであつた。言えば話は長くなりますが、選擧の時なんか、いわゆる東條反對の候補者でもあると、たとえば私の宅へ向けてほかの用で來ても、門口にいるとすぐひつぱつていくいわゆる承諾同行です。實に亂暴千萬な話である。さような次第でありますから今後はそういうことはなくしたい。そうして現にさような亂暴なことをやられておるところがありますればどしどし警察署長もしくは知事、あるいは司法省の方へ抗議をもち込んでいただきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=22
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023・三浦寅之助
○三浦委員 大變結構なお答えをいただきまして、非常に感謝いたします。
次に搜査の公平を期することに對する監督方法であります。具體的に申し上げますと、無責任な投書、あるいは取調べ當局の何らかの考えによつて、飮食店の取締りをする場合がある。實際問題として現在建築をやつておるとかあるいは市内で飮食店をやつているとか、賣店というようなものについて、全部物の出どころ、値段を取調べたならば、おそらく現在統制違反なしにやつておるところはないというくらいに私は想像しておるのであります。ところがそういうふうにたくさんある飮食店、賣店等を、たまたま取調べをする警察が、これはどういう考えからか知れませんが、一軒だけを特に取調べをして、そうしてそこにある物をみなもつていく。そうしてこれを留置して取調べをするというようなことが行われておるのであります。私は別に統制違反を搜査をするのが惡いというのではありません。これはいいのでありますが、ただ特に一軒だけを指定してそこだけを搜査するというと、結局その搜査を受けたところだけは營業が立つていかぬのであります。そういう公平に搜査しないような點に對する監督について伺いたいと思います。
もう一つは、さようにされる關係上場合によると、これは故意にやらぬのか、それともできないのか、それは存じませんが、第三國人の名義の飮食店などにおいては、公然と晝間からでも列をなして、主食でも何でも食べられる場所がある。ところが日本人にはそういうことは全然できない。これは私は非常に殘念に思うのであります。つまり日本のそういう業者が、ほかの國の人の名前だけを借りて、そうして名義料を支拂つて營業をするという現状であります。そうなると、あまり取調べの心配はなくなり、安心して商賣ができるというような印象を與えて、そういうことが行われているということを考えますと、私は非常に遺憾に感ずるのでありますが、これの取締りの方法についてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=23
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024・北浦圭太郎
○北浦政府委員 第一點につきましては、投書か何かによつて特に一軒の店を指定してやり、公平を缺くということは實際に田舍へまいりますとあります。それもやみなどで、犯罪行爲の顯著なるものをねらつていくならいいのでありますが、そうではない。その連絡をもつている者はかなりひどいことをやつていても行かない。そうして官憲の連絡のない家はあまり大したことをやつていないのに襲われる。まことにけしからぬ話である。要するにこれは官紀振肅の問題でありますが、これは今後嚴重に取締つていかなければならぬと考えておりますのと、いま一つ、これはおそらく日本人誰でも考えておられることだろうと思いますが、御質問の第三國人の名前を借りて、正々堂堂とやみをやるという點については、私は平生こう考えております。もし日本が獨立國ならば、朝鮮人の名前であろうが、支那人の名前であろうが、日本の法律に從はなければならぬ。これは當然である。ところが今日の場合、日本の法律の力は第三國人には及びません。しかし第三國人に及ばなくても、日本人は從わなければならぬ。だから日本人が他の國の人の名前を借りて公々然とやみ屋をやるのは、これは檢擧してよいと私は考えております。なんとなれば、その人は日本人の國籍をもつておりとにもかくにも日本の法律は日本人には及んでおるのでありますから日本人たるものが人の名前を借りて何ごとでもやつているということは許されないことと私は平生考えております。そうしておそらくそれがほんとうではないかと思います。ただ困難なことは、この第三國人の家へはいつて行つて、そうして日本の警察が證據をとるとか、結局搜査の問題でありますがその點が非常に困難ではないかと考えておりますが、何分かようなことは連合國の諒解を得まして、一日も速かに根絶しなければ、やみというものを根本的になくすることに非常な妨害になる。これを白晝公然と許していてはいかに司法省がやかましく言おうが、内務省がやかましく言おうが、内閣がやかましく言おうが、やみ征伐ということは不可能である。ただいま御質問の點は、第三國人でも占領目的に反するということがあるのでありますから、まず連合國のお許しというか、お願いをいたしまして、根本的に、日本人だけではない。名前を貸すこともいけないというような方向に進むのが、ほんとうだろうと私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=24
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025・三浦寅之助
○三浦委員 私の考え通りの御答辯でありまして、どうぞただいま仰せられたような御方針で今後進んでいただきたいということを希望いたします。
最後に第六條であります。「檢察官は、いかなる犯罪についても搜査をすることができる」ということでありますが、現在の進駐軍關係の事件等の取扱いの關係について御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=25
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026・北浦圭太郎
○北浦政府委員 實際どうしておられるか、私はしつかりしりませんが、しかし法律的に考えてみますと、進駐軍が搜査をせられ、あるいは搜査を命じて來ることも私は經驗上知つておりますが、これはその命令に從つて搜査することに實際はやつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=26
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027・三浦寅之助
○三浦委員 もう一つ、判事の地位とそれから檢事の地位とを考えると、檢事の立場からいきますると、檢事總長以下の指揮を受ける。同時に司法大臣の指揮も受けるというように、二重の指揮監督を受けることになるようでありますが、こういうような點から檢事は判事よりかも、地位や身分が低いのではないかというような印象を與えるように考えるのでありますが、もしそういうような印象をかりに與えるとするならば、檢事の職務執行の點において、支障を來すようなことがないかという心配をいたすのでありますが、そういう點についてはいかにお考えでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=27
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028・北浦圭太郎
○北浦政府委員 その點はお考えの通り、さような二重監督などがあれば、檢事畑の方が判事畑より地位が低く見られるおそれがありますが、第十四條によりますと、司法大臣は、第四條、第六條に規定する檢察官の事務に關して指揮監督するだけでありまして、それ以外の個々の取調べ、または處分については檢事總長だけを指揮いたしまして、檢事總長また檢事長、檢事というように間接になつておりますから、まずまず二重監督のおそれはなかろうと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=28
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029・小島徹三
○小島委員長 それでは本日はこれにて散會いたします。次會は明後二十二日の午前十時より開會いたします。なお當日は檢察廳法案の討論採決、でき得るなら他の法案についても討論採決いたしたいと思いますから、ぜひ御出席を願います。
午後零時二十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211135X00619470320&spkNum=29
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