1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
財政法案(政府提出)(第四一號)
會計法を改正する法律案(政府提出)(第四二號)
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昭和二十二年三月二十日(木曜日)午前十一時三十四分開議
出席委員
委員長 高橋泰雄君
理事 小野瀬忠兵衞君
井田友平君 原藤右門君
平岡良藏君 廣川弘禪君
小坂善太郎君 山崎岩男君
前田榮之助君 伊藤幸太郎君
川越博君
出席政府委員
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 河野一之君
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本日の會議に付した議案
財政法案(政府提出)
會計法を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=0
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001・高橋泰雄
○高橋委員長 これより會議を開きます。まず財政法案及び會計法を改正する法律案の兩案について政府の説明を求めます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=1
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002・野田卯一
○野田政府委員 財政法案及び會計法を改正する法律案に關する提案理由につきましては、本會議で申述べた通りでありますが、さらにその大體を申し上げます。
日本國憲法の制定施行に伴い、各種國家機關に關する制度が根本的に變りますとともに、諸制度の民主化が要望せられることとなり、從つて財政處理の方則についても、この際根本的な改革を行う必要が生じたのであります。從來國の豫算、その他財政處理に關する制度については、現行憲法のほか會計法、會計規則等の諸法令によつて處理せられ來つたのでありますが、この際財政の基本的原則として認められるものを一括總合して基礎法たる財政法を制定することとし、收入支出の手續的規定は、これを會計法に讓ることにいたしました。しかして會計法は國有財産法、物品會計規則、各特別會計法等と相竝んで、主として現金に關する會計法規としてその地位を明確にいたし、もつて一般の理解にも便ならしめることとした次第であります。
まず財政法案の内容についてでありますが、その内容は大別いたしますれば、大體四點くらいになるかと考えられます。その第一は、直接または間接日本國憲法の制定に伴つて必要となつた規定でありまして、たとえば豫算不成立の場合における前年度豫算施行の制度に代へて、暫定豫算の制度を新設したこと、豫算外契約に代る制度として國庫債務負擔行爲の制度を設けたこと、新憲法第九十一條に關連し財政状況を國會及び國民に報告するについての具體的規定を設けたこと等であります。なお民主憲法の精神に徹して、租税以外の權力的課徴金、獨占的政府事業の料金や價格は、法律または國會の議決に基いてきめることとしたこと、國會、裁判所及び會計檢査院のごとき獨立の地位を保障されている機關の豫算については、編成上特殊の取扱いを定め、行政部の專斷に陷ることがないようにしたこと等がこれであります。
第二は財政處理の基本的原則を明らかにしたことであります。すなわち財政總則の規定がこれでありますが、たとえば公債または借入金を財源として賄うべき經費を公共事業費、出資金及び貸付金のごとき生産的または資本的なものに限定したこと、公債の發行または借入金の借入について、日本銀行に引受けさせることを原則的に禁止したこと、歳計剩餘金の二分の一を公債の償還に充てることとしたこと、債權の免除効力の變更は法律に基くことを要することとしたこと、國の財産を交換し、讓渡しまたは貸付けることに關し法律に基く必要があることとしたこと、國以外のものに對する費用の賦課は法律に基かなければならないとしたこと等がこれであります。
第三は國の財政統制に關することでありまして、たとえば目的別の豫算區分の外に、部局等の組織別の編成方法をとつて、豫算に對する各部局の責任を明らかにしたこと、豫算の執行について、從來の現金支出を中心とした支拂豫算の制度から一歩進めて、契約等の計畫を立てることにした等はその主なるものであります。
第四は豫算の民主化と申しますか、これをわかりやすくし、またその審議に便ならしめるための規定であります、たとえば豫算の形式を根本的に改正し。歳入にあつては性質別、歳出にあつては目的別及び組織別の兩面からの區分を明らかにしたこと、豫算、決算關係書類を充實して、國の財政の全貌を把握するに便ならしめたこと、豫備費の事後承諾案の提出時期を繰上げたこと等はその内容をなすものであります。
次に會計法を改正する法律案でありますが、前にも申し述べました通り會計法は收入支出、出納官吏その他の手續的方面を規定することといたしたのでありまして、大體現行會計法または現行會計規則の當該規定を統一する建前といたしたのであります。ただ財政法に關連し、また現行制度の整備等の點から新たに規定することにしたものも多少あります。たとえば契約等の債務の負擔に關する規定を置いたこと、支出を國の外部に對する支出と内部の移換とに區分し、後者は小切手によらず國庫金振替書によることとしたこと、小切手に對する認證の制度を創設したこと、大藏大臣の豫算の執行監査の權限を強化したこと等がその主なものでありますが、その他地方制度の改正に伴つて、都道府縣の職員をして、國の豫算の執行ができる規定を置いており、なお會計經理に關する制度について調査審議するため、内閣に會計制度調査會を設置することとしておることを特に一言いたしておきます。なお兩法律案を通じ用語等についても例示をなし、若干の定義を加えるとともに、なるべく一般に理解しがたいことを避けることに意を用いておるつもりであります。以上兩法律案についてその大體を説明した次第であります。何とぞ速やかに御贊成をお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=2
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003・高橋泰雄
○高橋委員長 どなたか御質疑の方はありますか。——まだ委員の方もあまりお見えになつておりませんから、午前はこの程度に止めまして、午後一時半から開會いたします。
午前十一時四十三分休憩
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午後二時一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=3
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004・高橋泰雄
○高橋委員長 休憩前に引續き會議を開きます。政府委員から發言を求められております。これを許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=4
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005・野田卯一
○野田政府委員 財政法を今囘新しくつくり、また會計法を改正する理由につきましては、先ほど一應御説明を申し上げたものでありますが、なおこれを補足いたしまして、さらにわかりやすいように申し上げてみたいと思います。
新憲法の制定に伴いまして、財政に關する基本的事項を規律するために、財政法を制定することになつたのでありますが、それにまた關連いたしまして現在の會計法を改正する、こういうことになつて來ております。そこでこれを現在の法制の建前と比較してみますと、現在は憲法がありまして、すぐその下に會計法という工合に、憲法からすぐ會計法につながつておるのであります。新憲法のもとにおきまして、新しく財政法というものがそこにはいつてくるのであります。憲法、財政法、會計法、こういうふうに三本建になるのであります。從來憲法、會計法の二本建でいつたのでありますが、憲法、財政法、會計法の三本建にするのはどういうわけかという疑問が起るわけであります。それにつきまして、その理由をごく簡單に申し上げますと、大きく三つに分けられると思います。その第一點は、現在の會計法の規定は、その中を檢討いたしますと、財政經理に關する基本的な問題を規定しておるものと、會計技術に關するものを規定しておるものと、兩樣含んでおりますので、この兩樣含んでおるのを、今囘新憲法下におきまして、財政關係の法制を整備いたしますために、分離いたしたいというのが第一點であります。それから第二點は、新憲法の制定に伴いまして、憲法の補完的な意味におきまして、ある程度の規定を設けなければならぬ、こういう問題があるのであります。要するに、新憲法の補完的な規定を設けなければならない、こういう問題があります。第三點は、新しい問題として今囘財政に關する基礎的な法律をつくる際に、財政の基準法のごとき規定をそこに織込んでいきたい、こういう考えをもつたのであります。大體この三つの理由によりまして、會計法というもののほかに、財政法というものをつくる。財政法におきましては、ただいま申し上げました從來よりある財政經理に關する基本的な規定と、それから新憲法の制定に伴う補完的規定と、財政基準法的規定とをそこに統合する。そして從來の會計法は、この中から財政法の中に吸收される部分を拔きましたあとの部分、それからなお一部は現在會計規則でやつておりますものの中、重要なものを集めまして、純然たる會計經理の技術部面を規定する法律にしたい、こういう考えであります。
次に財政法の内容について御説明申し上げます。ただいま申しましたような理由によりまして、財政法の中には、從來會計法の中に含まれておつた財政に關する重要な規定、新憲法の制定に關連する規定、それから財政基準法的な規定というものが當然はいつているわけでございますが、そのほかに二、三新しい觀點からの規定を入れてあるのであります。その一つは、財政統制に關する規定でありまして、財政統制を從來よりも遙かに強化していこう。これは具體的には内閣における財政管理の責任者たる大藏大臣の財政監督權の強化という點に現われて來ておりますが、要するに財政統制をさらに強化徹底さしていこうという規定が設けられております。その次には、財政の民主化をはかるというための規定がはいつております。この財政の民主化は議會に對するものもあり、國民に對するものもありますが、そのために相當多くの規定がございます。その内容につきましてはあとでもう一度御説明申し上げたいと思います。それからさらに一點、財政の合理化をはかる、財政制度におきまする合理化をはかるというような意味合の規定も相當設けられております。以上のように相成つている次第でございます。
今は大體財政法の内容のきわめて大きい狙い所を申し上げたのでありますが、その具體的な問題について申し上げますと、第一に新憲法の施行と申しますか、憲法の改正と申しますか、それに伴つて生ずる必要によつて設けた規定の一つといたしまして、暫定豫算というものがございます。これは第三十條に規定してあるのでありますが、現在の憲法においては豫算が年度末までに成立しない場合においては前年度の豫算を施行する。三月三十一日までに豫算が成立しないと、前の年の豫算と同じものを翌年施行する、こういう建前になつております。この規定は今度の新憲法においては削除された。從つて前年度末までに次の年度の豫算が成立しなかつた場合に、いかにこれに對處するかという關係の規定が拔けてしまつた。それを補うために、暫定豫算という制度を設けまして、暫定豫算は年度の中の一箇月とか二箇月とかいう短い期間に對應する豫算でありまして、實例をもつて申し上げますれば、三月の初めになりまして、どうしてもその當時の情勢で、三月三十一日までに豫算を成立させることができないというような場合には、暫定豫算として、たとえば四月一箇月分なり、あるいは四月及び五月の二箇月分なりという短い期間を切つた豫算をつくりまして、それを議會に提出して議決していただく。そうすると一年分の本豫算が遲れておりましても、それが四月にはいつて審議されても、國政の上に差支えないということになります。これが暫定豫算というものを設けたわけであります。
それから新憲法の精神を取入れて設けたともいうべき規定といたしまして、專賣事業の價格とか料金、それから政府の營んでおります獨占事業の料金等をきめる場合には、いずれも法律か、あるいは議會の議決によらなければならない、こういうことにいたしまして、從來大藏省、あるいは運輸省等の告示でもつてきめておつた專賣價格、あるいは國營の獨占事業の料金も、今後は議會の議決によることにいたしたのであります。
次にこれは新しい憲法の特色でありますが、國會、裁判所、それから會計檢査院の地位を新憲法におきましては非常に重要視して、その獨立を保障する建前になつております。しかしこれを憲法にうたいましても、實際上そういう機關を運營する經費の部面におきまして、行政部がこれを完全に握つておりまして、財政の部面から抑えてしまつたのでは、憲法上こういう機關の獨立を保障しても實効があがらないという状況になりますので、この三機關の豫算の編成については特別鄭重と申しますか、特別そういう點に愼重なる考慮を拂つた規定のいたし方をしたのであります。三機關の豫算につきましては、なるべく政府としては、三つの機關からきわめて妥當な、政府として査定を加えたりなんかしなくてもよいようなよい豫算を要求してもらいたい。そうすればそれをそのまま盛り込んで議會に出したいという希望をもつておるのであります。しかしながらいろんな事情がありまして、三つの機關から要求される豫算と、行政部である内閣が適當なりと認めるものとの間に、相當の開きがある場合があり得る。そういう場合にはどうするかと言いますと、内閣はそれを閣議できめてしまう前に、裁判所の長であるとか、あるいは國會の議長とか、そういう人人と相談を一應して意見を聽くということをいたすのであります。そうしてもなお議が合わない、話がまとまらない場合には、内閣が自分で適當なりと思う數字を豫算に組み、それを議會に出すわけであります。その場合には豫算書の中には政府の査定案を書き、それと竝んで國會なり、裁判所なり、あるいは會計檢査院から出してきたもと要求の内容を詳しく書く、そうして議會が正當に判斷できるような基礎を提供する。しかもなお議會が、これは政府の方がよろしくない。もとの三つの機關の要求の方がよいと考えた場合には、金額を増額するということが起る。そのときに國會としては増額をしたい、しかし財源がないという場合が起る。財源關係から國會が豫算を殖やしてやろうと思つてもできない場合がある。そういうときに備えまして、内閣といたしましては、もし殖やしたいと思われるならば、その金はここからお出しなさいという財源のことまで詳しく書いて出す。こういう制度にいたしておるのであります。こういう非常に愼重な用意周到な制度をつくりまして、三つの機關の憲法上の獨立性というものを、經理面から不當に壓迫しないという措置を講じたのであります。
それから新憲法の第九十一條におきましては、財政状況を國民に周知させるということの規定がございますが、それを承けまして財政法におきましても、どういうようにそれを國民に周知させるかということについてやや詳しく規定を設けております。
次に財政處理の基本的な原則、財政基準法的の規定を設けておると申しましたが、その内容をごく簡單に申し上げます。
第一には健全財政の原則を確立した。健全財政といえば結局通俗に申しますれば、普通の歳出は普通の歳入によつてこれを支辨していく。大體公債金、あるいは借入金等によらないで、租税、專賣益金あるいは官有財産收入というものをもつて支辨していくということでありますが、この原則を確立したのであります。しかしそうだからといつて公債を全然發行しないというのではありません。右の原則に反しない限り公債の發行を認めることとし、公債發行の目的と限度というものを確定しておるのであります。公債をむやみに出して國の債務を尨大ならしめ、そうして財政全體の基礎を危くするということがないように、公債發行を限定しておりますけれども、公共事業あるいは出資金、貸付金等それ自體の中において償還性のあるもの、使い放しにならないで還つてくる性質をもつておるもの、すなはち生産的の方面に使うとか、また資本的な支出に充てるとかいう場合、これを具體的には公共事業費、貸付金、あるいは出資金、こういうように表現をしておるのでありますが、これらには公債の發行を認めるのであります。この公共事業というのは御存じのように英語でパブリツク・ロークスという言葉を使つておりますが、いろいろの公共の土木事業その他の建設事業を主たる内容としておるのであります。どちらかと申しますと生産的色彩が濃厚であります。もちろん一面においては、現在失業救濟的の意味をもつてやつておるものもございますが、あくまで生産に役立たせるという意味をもつておるのでありました、こういうものは公債によつてやつてもよい。しかしこれとても無制限にやるわけではなしに、どういうものが公共事業かということについてはやはり議會できめていただく。公共事業という名前を借りましてむやみに公債を發行してはいけないので、こういうものが公共事業であるというその範圍について議會の決定をしていただく。またその金額にいたしましても無制限でなしに、やはり金額の限度というものを國會できめるという建前になつておるわけであります。かつまたさらに愼重な態度をとつておりますのは、こうして發行した公債をどういうふうにして償還していくかという、その計畫まで立てなければならぬ。先ほど申しましたように、この金はそれ自體の中に償還性をもつておる。これを示すことにもなりますが、どうして公債を還していくかという計畫を併せてつけるというように、非常に周到な用意を規定して、公債が濫發され、財政基礎を危くすることのないようにいたしておるわけであります。
その次にやはり公債に關することでありますが、公債發行の方法といたしましては、大きく分ければ公募と日本銀行等に引受けさせる方法とあるのでありますが、公募主義によりまして一般から募る。一般の者の貯蓄によつて公債を消化するという方法によれば、財政上はきわめて健全でありまして、インフレーシヨンの危險は起らない、ところが日本銀行に引受けさせますと財政インフレを起すことになる。こういう關係から今後は原則として公債は日本銀行に引受けさせない。また公債の變形であるところの借入金も、日本銀行からしないということにいたした次第であります。しかしながらいろいろな事情があり、財政經濟の推移なかなか豫斷を許しませんので、ある場合にはやはり日本銀行に引受けさせなければならぬ場合もございますので、それに對しましては特別の例外を設けておりますが、この場合といえどもその全額については、國會の議決を經るということにいたして愼重を期しておるわけであります。
それから次はやはりこれも公債に關する基本的の原則でありますが、公債の償還を確保するということがすなわち公債の信用を維持していくということでありますので、公債の償還ということに大いに留意いたしまして、今後は毎年度の歳入歳出を締めまして、歳計に餘剩金ができますと、その餘剩金の半額以上をもつて國債償還に充てるということにいたしたのであります。現在でも法律におきまして歳計剩餘金の四分の一は公債償還に充てるということになつているのでありますが、これは國債整理基金特別會計法にそういう規定があるのでありますが、昭和七年以降他の法律によりまして、この規定の效力が停止されている。從つて現在行われていないのであります。これを今囘は復活し、かつまたその限度を從來は剩餘金の四分の一ときまつておりましたのを、今後は二分の一というふうに倍に引上げまして、公債の償還をこの面からも確保していきたいと考えているのであります。
次にやはり財政處理の基本原則に屬する規定でありますが、國家の資産を保全すると申しますか、そういう意味合から債權の免除を制限する規定を設けて、國家がもつているところの債權を免除するとか、あるいはその效力を變更する、すなわち貸付金でありますれば、その條件等を非常に政府側に不利に變更するというようなことにつきましては、法律に基ずかなければできない。行政府が任意にはできないということにいたしているのであります。さらにまた、これも國の財産の保全の關係でありますが、國の財産の處理あるいは運用をする場合の制限を設けておりまして、國の財産は適正な對價がなくては、讓り渡すとか貸付けることはできない。ただであるとか、安い値段で國の財産を賣り渡すなり、あるいは貸付けることをしてはならぬ。あるいは國の財産は常にいい状態において管理をしていく。またこれを效率的に使う。こういつたような財産の處理、運用に關する基本的な考をうたつている規定をもつております。なお基本的原則を明らかにした最後の規定といたしましては、國が國以外のものに特別な費用を負擔させる場合には、法律に基かなければならぬということを規定いたしております。たとえば國が地方團體に對しまして、いろいろな公共事業等につきまして、負擔を負わせることがありますが、そういう場合には法律によらなければならないということを明らかにしたわけであります。
次に大きな分け方の第三でありますが、國の財政處理の統制を強化する規定をもつておりますが、この中には今囘の豫算の形式を改めまして、内容を一面におきましては歳入はその性質に從い、歳出はその目的に從つて編成するというやり方をとつておりますが、他面におきましてその歳出なり、あるいは歳入を取扱う役所をはつきり書いております。これを各省の部局別にいたしまして、たとえば大藏省の主計局はどういう金をいくら使う、農林省の農政局においてはどういう金をいくら使うかということを書き、また歳入につきましては何省ではどういう種類の歳入をいくらとるかということをはつきり書きまして、歳入歳出に關係する各省竝びに各部局の責任關係を明瞭にいたしまして、財政統制の適正を期したのであります。
またもう一つ新らしく設けました制度といたしましては、今までは豫算がきまりましてこれを實行するという場合に、支拂豫算制度というものをつくりまして、各役所が具體的に金を使う場合には、その計畫を立てて、一箇月ごとなり、あるいは三箇月ごとに大藏大臣の承認を受けなければならぬという制度がございます。これは今までは現金を支出することについてのみ大藏省の承認を要することになつておつたのでありますが、今後は現金を支出する前に各役所が契約をして、それからそのことが行われた後に現金を拂うのでありますが、まず契約をする、その契約の段階におきまして大藏大臣の承認を要するということにいたしたわけであります。外國でもこういう例はあるわけでありますが、とにかく契約をして、その仕事をやつてしまつておいて、いざ金を拂わなければならぬというときになつて、大藏省にやつて來て、大藏省がこれを抑えるということになりますと、經濟界の混亂を來し、政府と取引をしている者に非常な迷惑を及ぼしますので、まず契約の段階におきまして、これを取締つていくというか、監督していくというか、そういうことをやるわけであります。これも財政處理の統制を強化した顯著な規定でございます。
なお今度そのほか財政法外に、新しい會計法におきましては、この點をさらにはつきり規定しておるのでありまして、今の規定のほかに各役所の支出官、金を拂い出す擔當の役人が小切手でもつて金を拂い出すのでありますが、その小切手につきまして、大藏大臣か、あるいは大藏大臣が指定する役人が、裏書きをしなければならぬという制度を設けております。また會計法にはそのほかに財政統制を強化する規定もございますのであとで纏めて申上げます。とにかく財政法と會計法兩者を通じまして、この方面の規定が非常に重視されておるというわけであります。
第四番目の大きい分け方につきましては、豫算の民主化、これは皆さんに關係のことで、國民竝びに議會によくわかつていただくという意味で、豫算を民主化することに大いに努力しておるわけでありますが、その内容といたしましては、第一に豫算の形式を改めたことであります。從來の豫算の形式が、お讀みになつても必らずしもわかりやすくない。難解だといわれる方が多いのであります。そこで今日會計、財政に關する規定の改正に際しまして、豫算の形式を一變いたしまして、新形式によつたものが、ただいま二十十年度豫算については、議會に提出されておるのであります。必らずしもまだ完全とは申し上げられませんが、とにかく相當大きな變革をして、できるだけわかりやすくするという方向に進んでいる。そのもとになつておる規定が、財政法の中に新らしく設けられておるのであります。
第二點といたしましては、豫算に關連いたしまして、議會に提出する幾多の書類があります。この書類の内容を非常に擴充、充實いたしたという點であります。豫算を御審議願うときには、單に豫算書ばかりでは十分でないのでありまして、それに關連する各種の書類が揃つてまいり、それを御覽になりまして、豫算を縱からも横からも、いろいろな觀點から十分に御審議願う。この關係の書類を大いに完備いたしました。
次に第三點といたしましては、議會における豫算の審議機關をできるだけ長くするという意味合におきまして、提出の時期を早めたのであります。現在は御承知のように豫算案の提出というものは、一月の二十日頃から二十五ぐらいの間に、議會が再開せられた後劈頭に出されたのであります。それで三月末までに審議する。法定の審議期間というのは、各院が二十一日ないし二十六日ということになつておる。これでは今後の豫算審議に對しては不十分であると考えられます。新生議會におきましては、常會は前年度の十二月の上旬に召集され、會期も五箇月というふうに長くなつております。從いまして豫算の審議に割いていただく時間も相當ありますので、大體十二月中に豫算は出すということにいたしました。原則として三月三十一日までには審議を了していただきますが、もしいろいろな關係でどうしても三月末までに審議が終えられないというような場合には、先ほどちよつと申し上げました暫定豫算という制度がありますので、それでもつて四月一箇月分の豫算をかりに通しておけば、さらに審議は延ばして四月にはいつて議決されても間に合う。こういうわけで非常に豫算の審議期間を延ばしたという點、これは非常に國會の立場を尊重した規定でございます。
それからなお民主化規定につき最後に申し上げておきたいのは、先ほどちよつと申しましたが、財政状況を周知徹底させるという問題であります。これは新憲法九十一條でうたつてあり、新しい財政法の四十六條でそれを詳しく書いておるのでございますが、とにかくあらゆる手段を盡しまして財政を國民の各層によくわかつていただくことを考えておるのであります。あるいは講演をすることもありましよう。あるいはラジオを通ずることもありましよう。あるいは印刷物を配布する。とにかく今研究をいたしておりますが、あらゆる方法を盡して財政の民主化、その周知徹底を期したい。こういうふうに考えておる次第であります。
そのほか大きな分け方の第五となりますが、それにつきまして財政の合理化というような觀點から設けられておる規定もあるのでありますが、それにつきましてはやや技術的になりますので、説明を省略いたしたいと思います。
次に會計法の問題でありますが、會計法は先ほど申しましたように改正されまして、會計技術法という色彩を明らかにいたしまして、大體におきまして收入支出に關する手續的な規定、あるいは出納官吏に關する規定というようなものを主といたすのでありますが、内容的には從來會計法にあつたこういう方面の規定、それから會計規則にある規定、そういうものをとりまとめてつくられております。そこで從來のそういう系統のものにつきましては説明を省きまして、新たに設けられた規定のおもなるものについてごく簡單に申し上げてみたいと思うのであります。
第一點は支拂いを擔當しておりますところの支出官が振り出す小切手とか、あるいは國庫金振替書というようなものがあるのでありますが、そういうものに對する大藏大臣あるいはその指定する官吏の認證制度というものがあります。これは先ほどちよつと觸れましたが、全國に現在こういう小切手を振り出す權限をもつておる役人というものは、千數百人おるわけであります。これが小切手を振り出して、國家の各種の支拂いをいたしております。その者が小切手を振り出しました場合には、それに對して大藏大臣か、あるいはその指定する役人が裏書きをしないと通用しない。こういうことにいたしたのであります。こうしますと大藏大臣または大藏大臣の代理者によりまして、豫算が實行されるそのほんとうの末端において十分な監督もされるということに相なるわけでございます。外國でも現にアメリカあたりではこの制度が實行せられておりますが、相當革新的な規定であります。
次に第二點といたしましては、大藏大臣の財務の監督權を非常に高めておる規定でありまして、これは會計法の四十六條に規定いたしてあります。大藏大臣は豫算の執行の適正を期するために、各省各廳に對しまして、收支の實績もしくは見込みについて報告をとる報告の徴取權であります。それから豫算の執行状況について實地監査を行う實地監査權であります。また閣議の決定を經て豫算の執行に必要な指示ができる指示權、すなわち報告徴取權、實地監査權、指示權、こういうふうな權限を大藏大臣がもつことになつております。それからこれは役所に對するものでありますが、そのほかに大藏大臣は豫算の執行の適正を期するために、みずからまたはよその役所の長に委任して工事の請負契約者、物品の納入書、あるいは、補助金の交付を受ける者、あるいは調査、試驗、研究等の委託を受けて居る者、こういう者に對しましてその状況を監査し、または報告を徴することができる。これは役所以外の財政と密接な關係のある相手方に對しまして、その状況を監査したり報告させることができるという規定であります。それを活用いたしますならば、財政の健全化、あるいは適正なる運用に非常に役立つと考えられる次第であります。
第三點には會計制度調査會というものが設置されるという點であります。これは附則の最後の六條についてでございますが、國の會計經理に關するいろいろな事項を調査審議いたしまして、その改善をはかるために大藏省に會計制度調査會というものを設けられることになりました。大藏次官を會長として、大體これは純粹の事務の役人、それから會計經理の方面に知識經驗をもつておられる人をもつて構成されるのでありますが、會計制度調査會というものをつくりまして、それで十分今後の會計制度の改善をはかつていきたいというのであります。
それからその他の規定といたしまして、地方制度が今囘新憲法とともに改正されまして、地方團體の役人が官吏から全部吏員になつてしまいます。こういう者に對しましてやはり今後も國家事務を相當取扱わせますので、それに關連して國家のいろいろな會計經理の事務を取扱わせるという必要が生じてまいつておるのでありまして、それに關する規定を設けております。また先ほど財政法のところにおいても述べましたが、大藏省の支拂豫算に關する統制が、さらに支拂豫算から一歩さかのぼりまして、その元たる契約の部面にさかのぼりましたので、それに關連する會計上の手續等につきまして新しく規定が設けられたのであります。
なお最後に政府の國庫金についてでありますが、國庫金の出し入れにつきまして、今までは小切手一本でやつておつた。國が民間のものに金を拂う、あるいはその他外部に對して金を拂う場合でも、國庫の中でいろいろとやり繰りをする場合におきましても、ともに同じ形式の書類を用いて處理しておつたのを、今後は外部に對するものと、内部でいろいろ處理するものとの間に區別をつけまして、國の資金と申しますか、國の財政資産の動きを、一般の金融とつながりのあるものと、ないものとに二分してわかるようにする、こういう制度を新しく設けた點であります。これは國の財政と國民經濟との資金的つながりに關し、新しい觀察がよくできるようにする趣旨から設けられているのであります。大體會計法に關する説明は以上のようであります。あと御質問によつてお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=5
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006・高橋泰雄
○高橋委員長 御質疑はありませんか。——別に御質疑がありませんければ、本日はこの程度にいたしまして、ただいま上程中の兩案に對しましては大體の質疑を打切りたいと思いますが、いかがでございましようか。御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=6
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007・高橋泰雄
○高橋委員長 御異議がなければさように決定いたしました。次囘は明後二十二日午後一時より開會いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後一時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00219470320&spkNum=7
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