1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
財政法案(政府提出)(第四一號)
會計法を改正する法律案(政府提出)(第四二號)
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昭和二十二年三月二十二日(土曜日)午後二時六分開議
出席委員
委員長 高橋泰雄君
理事 小野瀬忠兵衞君 理事 西村榮一君
原藤右門君 平岡良藏君
廣川弘禪君 小坂善太郎君
寺田榮吉君 藤田榮君
前田榮之助君 伊藤幸太郎君
川越博君
出席政府委員
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 河野一之君
委員長の許可を得た出席者
議員 川島金次君
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本日の會議に付した議案
財政法案(政府提出)
會計法を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=0
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001・高橋泰雄
○高橋委員長 これより會議を開きます。寺田榮吉君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=1
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002・寺田榮吉
○寺田委員 財政法竝びに會計法につきまして二、三質問をいたしたいと思います。まず質問申し上げたいことは、大體議會でわれわれが豫算を見せられるというときに、どういう經路によつてできたかということが、われわれにほとんどわからぬというところに、私はいつも非常に矛盾を感ずるのでありまするが、これについて、豫算を編成するときに公聽會を催すなり、あるいは議員を少し入れてやるかどうかという點について、どういうお考えであるのか承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=2
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003・野田卯一
○野田政府委員 豫算編成の段階において公聽會を催すとか、議會のメンバーにはいつていただいていろいろ聽くということについては、ただいまは考えておりません。しかしながらわれわれの方といたしましては、豫算を編成いたします場合には、豫算編成方針というものをつくつて閣議で決定するのでありまして、そういうものは世の中に廣く發表いたします。それから今後の方針といたしましては、豫算は一年に一遍のいわゆる行事的なものにしないで、絶えず豫算の實行の内容を明かにする。また豫算に關連する事項につきましては、隨時いろいろな文書を出す、あるいはパンフレツトを配る、あるいはラジオその他の方法によつて一般に周知方をはかる、こういうわけで絶えず政府側からいろいろな施策なり考えていることなりを國民一般に知らせまして、そしてまたいろいろな批判を國民から受けまして、それを基礎にいたして豫算編成方針というものをきめ、それをまた世の中に發表していろいろ御批判を受け、具體的な豫算を組むことに相なると考えております。なお今度の國會法によりましては、國會においてこの豫算案を受取られた場合に、常任委員會のお方々に——豫算委員會におきましては總豫算ということを言つておられますが、總豫算という言葉は、新しい財政法または會計法では使つておりませんが、要するに一年分の豫算を審議する場合には、必ず公聽會にかけるという規定が設けられております。いわゆるパブリツク・ヒヤリングをやるということになつておりますので、議會の審議中に關係のいろいろな方面の人を議會みずからお喚びになつていろいろ意見を聽き、デイスカスされる機會を多く設けられることになつております。いろいろな機會におきまして、豫算というものが、一般國民大衆から離れたものでなく、國民一般の共有物である、自分たちのものだというような感じを受けるように相なると思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=3
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004・寺田榮吉
○寺田委員 ただいまの御説明で大體了承したのでありますが、豫算について豫算總會あるいは本會議等におきましての質問と、それに對する政府の答辯によつては、どうしても私はほんとうに民主化されないと思います。また國民の豫算を審議するという點について、審議し盡せないという感じが相當あるのであります。こういう點についてできるだけ民主化してもらう、つまり膝をつき合わして豫算について協議していくというふうな方針でやつていただきたいと思う次第であります。
その次にお尋ねしたいのは特別會計についてであります。この法案で見ましても、特別會計のことについては大して出ておりませんが、大體特別會計というものは、日本の豫算におきましては世界に類例のないほど多い。そのために豫算が非常に見にくい。一般の者がなかなかわかりにくいということが、今までの通弊であると感ずるのでありますが、これについて政府の方では、段々これを減らしていくのかどうかという點につきましてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=4
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005・野田卯一
○野田政府委員 ただいま御質問の第一點の豫算の審議の問題でありますが、たしかに御指摘のように、從來のような形で今後もやつていくとしますと、ほんとうの意味において豫算を審議するということにならぬのではないかと思います。今豫算總會と豫算分科會とにわかれておりますけれども、大體豫算總會においては何と申しますか、非常に大きな政治問題が述べられまして、豫算そのものについて掘り下げていくことはいたされません。また分科においても、豫算總會とあまり違わないような論議が行われる場合が多いのでありまして、これではどうしてもほんとうの豫算審議はできないと思います。それで今後新憲法下の議會におきましては、よほど形式の點、豫算審議の方法につきまして、私は構想を練る必要があるだらうと思います。それに備えまして、内部の方といたしましては、まず第一に豫算の審議期間を長くしなければだめだ、ただいまのごとき短かい期間では——特にこの議會は短かいのでありまして、これではどうにもならない。そこで新しい財政法では、十二月中に豫算を出すことにいたします。ですから十二月中に出しますと——十二月の初め、あるいは半ば、末になりますと、一月、二月、三月は完全に審議期間があるわけであります。しかも現行憲法におきますと、三月末までに豫算をきめてしまわないと、いわゆる施行豫算となりまして、前年度の豫算を翌年度も施行するということになつております憲法七十一條の規定が嚴存しておる。新憲法ではその規定がない。だから三月末までに審議を了しなくて四月にかかつても、前年度の豫算を施行されることはないわけであります。それにいたしますれば暫定豫算を政府でつくりまして、暫定豫算四月分一箇月だけ認めていけば、一年分の豫算は四月にはいつてなお論議を續けてもよろしいという、時間の餘裕を生ずるわけでありますから、極端に申しますと、審議期間が四箇月ぐらいあることになりますから、そうなればやはり常任委員ができますから、相當つつこんでいろいろ話合いができるのではないかと思います。それで今までの御不滿は、今後運用によつて解決されるのではないかと考えております。また議會に出しますいろいろな資料でございますが、今までは非常に不完全でございます。特に今の議會あたりは不完全でありますが、今後は財政法に基きまして、今までよりはおそらく數倍するだらうと思いますが、いろいろなものから見ました資料をつけて出すことになつております。こういう資料とつき合わしまして、豫算の内容について一々御檢討願えば、國政の全般にわたる詳細なことがおわかりになると考えてわれわれは期待しております。新財政法竝びに會計法においては、そのお膳立てだけは十分にできたつもりであります。
それから第二點の特別會計のお話でございますが、特別會計の數が多い、こういうものがあると政府の會計が幾つにもわかれてわかりにくいということになりますので、われわれ當局の者といたしましては、この特別會計の數を減らすことに、今最善の努力をいたしておるのであります。本年も法律案を出しまして、四つばかり減らすことになつております。しかし減らす片方からまた新しいものができてくる。一般的に申しますと、一般會計にまとめてしまうのが便利であり、國政がそれによつて大觀できるのであります。しかしむやみに特別會計をやめてしまうというようなことは實行上できない。これからはどうしても政府の營む國營企業というものが起つてきますから、國營企業を一般會計と一緒にすることは、會計の性質が合いません。一般會計は御承知の通り、消費經濟で收入は強制收入でありまして、性質が全然違いますので、これは一本にいたしましてもあまり意味がない。こういう場合には區分して經理した方が實益がある。特に企業については、採算を見ていく、あるいは原價計算を見ていく場合に、一般會計につつこんだのでは、その事業の採算とか、原價計算というものがわからなくなるおそれがありますので、これは一般會計から引放して、獨立の會計にした方がいいということになるのであります。今後の方針といたしましては、實體的に見まして一般會計より分離して經理した方が、國家的見地からよろしいという場合については、特別會計を認めていきたい、こういう方針で進んでまいりたいと考えておりますが、根本方針といたしましては、できるだけ一般會計には變りはございません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=5
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006・寺田榮吉
○寺田委員 私は大體國がいろいろの企業をやることは反對なのでありまして、これはできるだけ民間でやるべきだという考えをもつております。しかし今まで國が通信事業とか、鐵道、あるいは專賣事業をやつておりますが、これについてなぜ一般會計に入れなければならぬかと言いますと、今までの形態を見ておりますと、事業各自の獨立した收支決算はほとんど出ない。一般國民ばもちろん知らないし、從業員すらも特別會計のそういう企業であるとか、專賣事業であるとかいうものについての收支決算を知らない。それで結局國がやつておる事業の能率が非常に惡く、また品質が非常に惡い。これは申し上げるまでもなく、電話にプレミアムがつく、あるいは最も惡い煙草が最も高い。あるいは鐵道にしても、十何年か前に民間で東海道線をもう一本敷いてみようということに鐵道省が非常に反對した。こういう民間事業家が先を見透して車海道線は複々線でなければならぬという時にでもちつとも知らない。これが私がいつも感ずる點であります。そういうふうに從業員すらも自分らがやつておる企業についての收支さえも知らない。從つてその能率があがらない。品質が惡くなる。そういう意味で特別會計をむやみにこしらえることは惡いのではないかという私の大體の考えであります。これを皆一緒に一般會計にすることの弊害ももちろんあると思いますが、大方針としてはできるだけ民間にやらす、そうでなければ收支をもつと明らかにする。各特別會計の收支を國民はもちろん從業員は、少くとも自分のやつておる仕事が引合つているか、引合つていないかさえ知らないでやるようではどうしてもいけないと思います。それから二十一年度の豫算竝びに今度の豫算の調書を見ましても、大體人件費が非常に尨大な額になつている。しかしながら人件費は出ておりますが、この人數がわからないために、平均して大體一人當りいくらかという見當がちよつともつかない。これはこのごろの物價の變動のはげしい時、またこういう生活が非常にむずかしい時には、一人當り大體いくらになつているかということは、豫算の書類に附けてもらうのが當然ではないかという感じがするのであります。それがかえつて國民に、官吏の俸給が大體いくらか、これでは少な過ぎるということも感じられるし、またよく理解されるのではないかと思うのであります。こういう點も豫算の調書に繰り入れていただきたいと希望する次第であります。また法案によりますと、第五條に「すべて、公債の發行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、國會の議決を經た金額の範圍内では、この限りでない」。こういう規定がありますが、緊急の場合、どうしても國會の議決を得られないという時にはどういうようにするのか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=6
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007・野田卯一
○野田政府委員 お答えいたします。第一點の國營企業の問題でありますが、この國營企業の問題につきましては、現在やつておりますいろいろな國營事業があります。それをどうするかという問題、竝びに今後國管企業に對してはどういうふうにするかという問題は、非常に大きな問題でありまして、にわかにどうするということは政府としても申し上げ兼ねる問題だろうと思います。各國もいろいろな行き方がありまして、日本としては世界各國がやつている現在竝びに過去にありましたいろいろな點を檢討し、また日本の特殊事情を勘案いたしまして、最も適切な方策をとつていくということに相なろうと考えております。それにつきまして收支を明らかならしめる必要があるのではないかという點につきましては、全く同感でございまして、その御趣旨によりまして、本年度はいろいろな事業會計の會計法を全面的に改正いたしました。そうして一つの例をとつて申し上げますと、通信事業特別會計法、國有鐵道事業特別會計など皆變つたのでありますが、第一條にはこういうことをうたつているのであります。すなわち通信事業特別會計法第一條では「通信事業を企業的に運營し、その健全な發達に資するため、特別會計を設置し、一般會計と分つて經理する」。こういうふうになつておりまして、企業的に經營するということをはつきりうたつております。今までの一般會計とは全然趣きを異にしておりますので、企業として見た採算關係、收支關係を明瞭ならしめるということに特別會計の運營の根本方針を置いたのであります。それに從いまして會計制度は全面的に改正しまして、一口に申しますと民間の會社等がやつているのと同じような方法を採用いたしまして、原價計算を明らかにし、また企業計算の關係を明瞭ならしむるということにいたしました。また損益計算、バランスシートも民間の會社とほとんど變らないような方法になつてきております。だんだん内容をはつきりさせまして、各方面から御檢討を願うということが、最もよろしいではないかと思います。
それから次に人件費の點であります。これは御承知のごとく最近の情勢におきまして、漸次厖大になりますのは免れがたいのでありますが、一人當りの金額がいくらかという點でありますが、これはもちろんわれわれの方で今後そういう方面の資料を整備する考えでおります。御承知のように今度の改正におきまして、この豫算書にも出ておりますけれども、各部款項と出ておりまして、その下に目、節というのがありますが、目というところになりますと、内容が二十幾つにわかれておりまして、そこに官吏給、給料及び手當、給與金、旅費とかいうような項目がはつきりとわかれておりますから、全部のものがわかつておりますから、これを縱にずつと合計いたしますと、一般會計全體の給料がいくらということがすぐ出るように存じますので、御希望に副えるようなものが出ると思います。そこで二十二年度のものについて申しますと、直接政府の使つております人件費は、全體で七十數億という數字がすぐ出てくるのであります。それから現在使つている人間の數は三十萬とわかつておりますが、それがわかりましてもなかなか簡單にいかない。その理由は人件費の大きな部分を占めているのは復員廳關係、いわゆる元陸海軍關係です。これは百萬程度の人間がまだ海外におるわけでありまして、その人間が歸つて來たときに拂う俸給というものが、これにはいつているわけであります。これには一月働いて九圓とか十圓とかいうのがはいつておりますから、それをごつちやにはできない。そういうものを選りわけねばならぬという關係がありまして、それには時間がかかりますが、今資料は手許にもつておりませんけれども、來年度は相當明瞭になるという自信をもつております。
それから第五條に「すべて、公債の發行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」とありまして、さらに但書をつけまして、その例外を設けているのでありますが、これはお話のこの豫算書におきまして、どれだけの程度のものは日本銀行から借入れるとか、公債の發行を引受けさせることができるとかいうことを明確に書くつもりでいるのでありますが、お話の場合はその金額の足りなかつた場合はどうするかということでありまして、もしそんなに足らないことが起りますと、これはよほど大きな問題になつてくるのではないかと思うのであります。そんなことがありましたら、それはおそらく何十億、何百億というものになりますと、これはやはりどうしても國會を緊急に開いていただきまして、御相談を願うのが筋道ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=7
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008・寺田榮吉
○寺田委員 今囘統計法案が出ることになつておりまして、あらゆる統計をよく整備し、それをもとに科學的にいろいろ政治をやつていくということになつたことは、非常にわれわれも喜んでおるのでありますが、これはむずかしい事業であると思います。またそれに對して費用も相當かかるのではないかと思うのでありますが、從來の豫算というものは、大體どれくらいとられておるのか、これをお聞きしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=8
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009・野田卯一
○野田政府委員 お答えいたします。直接内閣統計局で使う金、これが一番大きなものでありますが、これが總額で四千五百萬圓になつております。これは統計局みずからがお使いになる金であります。しかしこのほかに大きな七、八千萬圓の金が別にあるわけであります。今年の秋に國勢調査をすることになつておりますが、國勢調査をいたします金は數千萬圓、これは大體豫備金をもつていたすという豫定をもつておる。もちろん機會があれば追加豫算で出しますが、大體におきまして豫備金でやる豫定でおります。その他いろいろな統計で、必ずしも内閣統計局の經費の中にのつていない種類の統計に關する經費も各省にございます。統計に關する經費が、國家で一體どのくらいになつておるかという點は、おそらく非常に關心をもたれることだと思いますが、まだ私の方で正確に計算しておりません。今後十分その方面も研究することにいたします。このたびもう發令になつたと思いますが、統計事務局というものがありますが、あそこの中心になつてやつておる人を主計局の兼務にいたしまして、主計局の豫算關係の統計經費というものを、統計事務局のエキスパートに見させて、兩者緊密なる連絡をとつてやりたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=9
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010・寺田榮吉
○寺田委員 相當豫算をとられておるというふうにお聽きしたのでありますが、大體この財政法案の内容を見ましても、前々年度の歳入歳出決算の總計表とか、こういう大分前のことが提出されるいうことになつておるのであります。またあるいは日本の從來の統計局なんかの統計を見ましても、ほとんど見る時分には間に合わぬ、役に立たぬような前の統計が、始終世の中に出てくるということについて、私らは非常にいつもそれを遺憾に考えておる次第でありますが、できましたら相當な費用を使つてもかまわない。生きた統計を發表していただきたいというふうに感ずるのであります。できるだけそういうふうにやつていただきたいと思います。
それからこの二十五條の「歳出豫算のうち、經費の性質上年度内にその支出を終らない見込のあるもの」云々とありますが、從來大體年度末になつてくるという場合に、よくこれは世間で言われる、豫算が過剩を生じた場合に、種々な要らないところへ費用を使つていくという傾向があつたように聞いておるのでありますが、こういう點もどういうふうにやられるのか。またこれは豫算を編成すること自身がむろん惡いのでありますが、將來そういうことについてどういうふうに考えておられるのか。これをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=10
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011・野田卯一
○野田政府委員 統計の點と、年度末における經費の濫費の點はここでお答え申し上げます。古い統計しか出てこないというお話しでございますが、これは私の方の所管ではない。むしろ統計の問題で一般論になりますが、統計の方で大規模に調べますと、その集計あたりに非常に時間がかかるのであります。なかなか資料が集まらない。集まらないものをむりに集めて集計いたしますと、一つの縣ではだめでありますから、全部待つておると非常に時間がかかる。金もかかる。でき上つたころは遲過ぎる、こういう御非難があるのでございまして、この點につきましては、サンプリング・メツソードというものを取入れることになつております。これはアメリカでは主計局というか、豫算局で統計をやつております。アメリカの統計局というものは豫算局の中にある。今アメリカの豫算局から統計の專門家が數名來ております。私も時々會つておるのでありますが、その人たちの話を聽きますと、サンプリングを大いにやりなさいと言う。サンプリングというのは、たとえばここに全國にわたつてことごとく調べなければわからないものを、代表的なものをピツクアツプして、何分の一か何千分の一を正確に調べて、それを全體に推し及ぼして數字に表わすというサンプリングの行き方でありますが、これをアメリカでは隨分やつております。これは經費がかからなくて早い。日本も大いにそれをやらないかということを二、三日前に會つた時に言つておつた。今後は今までのように全部のものを調べて集計する行き方と、一方におきましては何かサンプリングをとつて全體を推していくという二つの行き方を適當に取入れまして、早くできるようにいたさなければならぬと思います。なお統計機械などについても、アメリカの統計機械は非常に進んでおりますから、そういう統計機械の輸入をいたしまして、その方の陣容を強化して、どんなむずかしいのでもすぐ出るというようなことにしなければならないと考えております。
それから繰越しの問題と、年度末に濫費されるという問題でありますが、これは昔から問題になつておる點でございます。しかしながら最近におきまして、この弊風が相當矯正される傾向にあると思います。と申しますのは、支拂豫算でもつて非常に嚴重にやつております。日々に出す金を一々大藏省の承認を得なければできないことになつておりますから、年末にきてどつと出そうといたしましても、大藏省の承認を得なければ出せないことになつておりますし、内容を整備することになりますので、その御心配の點はよほど矯正されると思います。なお將來の問題につきましては、會計法にも出ておりますが、小切手の認證制度をやる。御承知のように役所が金を拂う場合は小切手でありまして、この小切手を切る人はきまつておる。この小切手を切る人を支出官と言つておりますが、支出官が小切手を切る場合に、銀行でそれだけでは金にならない。裏に大藏大臣か、大藏大臣の代りの者がサインをしなければ金にならないということになつた。それでたとへば年度末にAならAという人がどんどん小切手を振り出しても、大藏大臣かその代理官がサインをしなければ、全然金にならないことになりますので、御指摘のような點は非常に矯正されてくると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=11
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012・寺田榮吉
○寺田委員 私の質問は終りました。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=12
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013・高橋泰雄
○高橋委員長 委員外の川島金次君より政府に對し質疑の要求があります。これを許します。川島金次君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=13
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014・川島金次
○川島金次君 簡單に二、三この際お尋ねいたしておきたいと思います。この法案の第三條によりますと、「專賣價格若しくは事業料金については、すべて法律又は國會の議決に基いて定めなければならない。」とあります。まことにわれわれの年來の主張でありまして、結構なことであります。この際お伺いしておきたいのは、殊に事業料金の問題でありますが、政府の事業料金と申しましても、かなり廣汎にわたつておるのでありますが、その事業料金といわれる全體がこの法案の事業料金にあてはまつてくるのか、あるいは事業料金といつても多少の例外があつて、主なる事業料金について法律または國會の議決に基いて定めなければならないということになりますか、これを一つお尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=14
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015・野田卯一
○野田政府委員 お答えいたします。その第三條に規定しております事業料金は、ここに書いてあります「法律上又は事實上國の獨占に屬する事業における專賣價格若しくは事業料金」というのであります。國が獨占している——法律上獨占というのは、專賣であるとか、通信などが、法律上の獨占になつております。鐵道でございますが、鐵道は法律上の獨占ではなくて、事實上の獨占になつております。そういう獨占に屬する事業の料金については、法律できめるなり、あるいは豫算できめてもよろしゆうございますが、とにかく國會の議決を經てやれということでございまして、その點獨占でないものについては、この規定は適用しないということになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=15
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016・川島金次
○川島金次君 そうすると、たとえば鐵道の料金でも、運賃がおもですが、同じ運賃の中でも手荷物等に對する收入、あるいは遞信事業料金についても、かなり廣汎にわたつて些細なものがあります。そういつたものを全部法律もしくは國會の議決によつて定めることになりますかどうか。これもお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=16
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017・野田卯一
○野田政府委員 御質問の點は、今後政府部内でよく研究して決定すべき問題でありますけれども、われわれの考えておりますところを申し上げますと、事業料金、鐵道の例をおとりになりましたが、鐵道の料金もあの表を見ますと、非常に詳しいものであります。複雜多岐なものでありまして、あれの全體を法律できめるなり、あるいは豫算できめることにする必要はないじやないか。むしろその根幹をなす部分をきめれば、他のものは當然技術的に、普通の事業料金はきまつてくるものでありますので、むしろ法律または豫算できめるものは、基本的なものにしたらどうか。あとのものはそれに應じまして、場合によりますれば委員會をつくりまして、その委員會に諮つてきめていくというような方向にやつたらどうかという感じをもつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=17
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018・川島金次
○川島金次君 第三條の原則的精神というものが、專賣價格、事業料金となつている以上は、そういつた廣汎にわたるものまでをも含めておると、一應われわれは解釋しなければならない。そこで政府の方に、そういう細かい廣汎にわたる部分——主管以外の問題については別な措置をするのだという考え方が、かりにあるとすれば、この三條の法文の書き方がまたおのずから變つてくるのじやないか。そこで私はそういうお尋ねを申し上げたのです。從つてもし當局が既にそういう腹案があるとすれば、この三條の法文の書き方に多少の變更があつてしかるべきじやないかと考えられるのですが、第三條だけでそういう手續、別な腹案を實際に實施できるようなことになるか。第三條の精神に牴觸するようなことになつたのでは意味をなさぬので、その點をよくこの際たしかめておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=18
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019・野田卯一
○野田政府委員 その點につきましては、この法文をつくるときにも十分に吟味をいたしました。これは私ども法文の專門家ではございませんが、今までの法制局その他の從來の考え方、あるいは法文の例といたしましては、法律または國會の議決に基いて定めるという場合には、法律で全部を定めるという意味でなく、法律に基いて定めるという場合には、私がさつき申し上げたような場合で、もし全部法律できめなければならぬという場合には、「法律により」という言葉を使うことになつておるそうでございまして、これも「基いて」という言葉を、初めは「より」と書いてあつたのでありますが、それでは大變だらうというので、「基いて」という言葉に變えた、そういう經緯であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=19
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020・川島金次
○川島金次君 そうすれば一例をあげますれば、遞信、國鐵あたりの事業料金について、この基くというのは、貨物運賃とか旅客運賃、遞信事業で申せば郵便料金あるいは電話電信料金、そういつたものに屬したものだけが、この議決に基いてということに解釋してよろしいわけでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=20
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021・野田卯一
○野田政府委員 お答えいたします。こまかい點は私はあまりはつきりと責任をもつて申し上げられませんけれども、基いてと申しましても、非常に大ざつぱなものというわけではございませんで、相當の程度に詳しくなりますけれども、たとえばわれわれ大藏當局が豫算を編成いたします場合に、遞信當局なり鐵道當局から御相談を受けるわけであります。そういう場合には紙で申しますれば數枚のものであります。本當にやるときは本みたいになるかもしれませんが、それが數枚の紙でわかるのでありますが、われわれの知つていることはほとんど含まれることになります。大體普通にわれわれが知つておる必要のある程度の事柄は、全部含まれるのでないかと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=21
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022・川島金次
○川島金次君 さらにこれに關連してお伺いしてみたいのですが、これは本來でありますれば大藏大臣にお伺いをいたしたいと思つたのですが、現在の日本の經濟事情、民族の生活事情に鑑みまして、いわゆる國民の主食、あるいは生産經濟復興の上においての重大な根底をなしまする石炭、鐵鋼、肥料、こういつた重要産物の價格というものは、これまた國民の納得した價格で定むべき性質のものではないか。そこでお伺いを申し上げたいのですが、こうした主食その他重要生産物の價格を、國民代表の府であるところの國會で議決することが、極めて妥當な政治ではないかと思うのであります。時に米麥等の價格につきましても、特の政府の考え方一つによつてきめられる。しかも汗を流し、勞力を費してみずから耕しておるところの耕作農民は、價格の問題に對して何ら關係をもつことができないというのが、現實の形になつておる。そういう形では今日の段階におけるところの耕作農民の精神を刺戟し、あるいは納得のできるような價格決定というものは、不可能ではないかと思う。この際私どもの考え方からいたしますれば、ただいま申し上げましたような米麥、いわゆる主食、石炭、鐵鋼、肥料等のごときは、是が非でも國會の議決によつて、その價格を定めるということにすることが、政治上、經濟上、また國民の上に及ぼす心理作用の上からいきましても、當然の事柄のように私どもは考えておるのでありますが、そうした心構え、氣持が當局におありであるかどうか。それを一つお聽かせ願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=22
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023・野田卯一
○野田政府委員 この問題はきわめて重要な問題でありまして、私から答辯することが適當であるかどうかと考えるのでありますが、石炭、鐵鋼、肥料、米麥等のいわゆる基本的物資と申しますか、國民生活の基本になる物資の價格をきめる場合に、政府だけできめるということにつきましては、お説のような議論があり得ると思います。專賣等につきましては獨占というような點から申しましても、こういう規定を設けておるのでありますが、實質的な國民生活に及ぼす影響については、ウエイトにおいて何ら變らない。それよりは重要であつても、劣らないというものがあるのであります。これは今後の考え方としては、お説のような意見を十分檢討していかなければならぬ。こう考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=23
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024・川島金次
○川島金次君 この問題については、いずれ大藏大臣にお傳え願いまして、大藏大臣としての考え方をこの席でお聽かせ願いたいことを希望しておきます。
次にこの財政法案を一覽いたしますると、豫算の執行の場合において、豫算の成立した場合ということで、成立という文字は二、三箇所見受けられるのであります、豫算不成立の場合に關する規定が、この中にないように私は見受けておる。民主議會においても、あるいはまだ事情によつては政府の提出された豫算全體に不成立というような事態が起らないとは、保證ができないのではないか。そういう場合において豫算の執行の上にどういつた措置が講ぜられることになつておるか。それがこの法案にはないようでありますが、その點についての御意見をお尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=24
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025・野田卯一
○野田政府委員 豫算不成立に備える規定は、御指摘のようにございません。それで現行憲法におきましては、御承知のように憲法七十一條に不成立の場合に備える規定がございますが、新しい憲法におきましてはその規定が削除になつております。この問題は憲法の改正に伴いましていろいろと論議しましたときに、非常に問題になりました。理論的に申しますと、まさに豫算が成立しないという場合が起り得るのであります。起り得るからそれに對する何らかの規定を設けておかなければいけないじやないかということが、一方において非常にやかましく言われたのでありますが、また反面から言いますと、この豫算が不成立になつた場合に何かほかの方法でこれをやつていけるのだということにいたしますと、そういう非常に備える規定が、かえつて惡くいたしますと常道化する。民主的でない政治の運行を生じさせるそこにチヤンスを與えるというおそれもあるのでありまして、その場合はまずいろいろな方法をもちまして、不成立になる場合を極力減らして、どうしても理論的に不成立になり得るという場合の事柄は、それは一應設けないでおいて、そのときには高い政治的な常識と申しますか、政治的な高い考え方でもつて解決していくというふうにすべきではないか、こういうふうに私共は承つておるのであります。それで今まで豫算の不成立になりました多くの場合を申しますと、三月三十一日までに翌年度の豫算が成立しない、そうすると豫算は不成立になつてしまうということであつたのでありますが、今度は三月末までには成立しない、四月になつて成立した場合であつても、やはり有效なことになつておりまして、今までのように三月三十一日という限界でもつて豫算が不成立になるということをなくした。しからば三月末までにできなかつた場合に、四月の初めから政府はやはり活動しなければならぬが、その豫算は一體どうするのだというような問題になるのでありますが、それにつきましては暫定豫算制度というものを新しく設けまして、この暫定豫算制度でもつて泳いでいく。そのうちに本豫算が成立するということに相なると思うのであります。そうするとこの暫定豫算制度をつくつても、やはり暫定豫算というものは議會の承認が要るのではないか、そうすると暫定豫算そのものも議會が承認しないという場合が起るじやないか、そうすると暫定豫算制度というものをつくつても意味がないではないか、こういう御質問があるところから出たのでありますが、暫定豫算というものは、私達の考え方ではこれは政策を盛つたものじやない、國家が存在しその機能を營んでいく以上は、どうしても絶對的に必要な經費というものがございます。たとえば警察官の俸給だとか、役人の俸給だとか、とにかく支拂わなければならない金がある、そういつたような基本的な、どうしても要る經費だけを大體暫定豫算というものに盛るつもりであります。政策に屬するような經費は本豫算、すなわち一年分の豫算には盛りますけれど暫定豫算には盛らない。最小限度の經費を暫定豫算に盛る、こういう考え方であります。もしその際に暫定豫算すらも認めないということになりますと、それは政治上の大きな問題になるだろうと思います。そのときは内閣を倒したいという一つの狙いとなると思いますが、内閣を倒すという大きな問題になりますと、これは巡査とかあるいは普通の役人の月給を拂わせないというような、國家機能を停止するというような方法をとらなくても、重要政策を否認すれば當然内閣を打倒することができるのでありまして、そういう暫定豫算に盛られているものすらこれを否定するということは、實際上必要がないじやないか。おのずから政治的にみて解決のできるものである、こういうふうに考えておるというようなことも申し上げた次第でありまして、多分に話が政治的になりまして恐縮でありますが、そういうふうに御理解願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=25
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026・川島金次
○川島金次君 そうするとこの財政法の立案の當初においては、一應豫算の不成立ということは考えに入れておかない、考えられない建前でこの法案をつくつたことになると承知してよろしいのでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=26
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027・野田卯一
○野田政府委員 お答えいたします。豫算の不成立の場合は、今のところこの法文上では、豫想してそれに備える規定というものは設けておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=27
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028・川島金次
○川島金次君 そうすると今局長の仰しやられるように、實際の理論的な問題として取扱つた場合には、豫算の不成立があり得る、あり得た場合には、今のお話を承れば最高の政治的解決のしかたが豫想されるということになるのでありますが、理論的にあり得るものであつたならば、何らかの形においてこれは規定すべき性質のものではないかと私には考えられる。實際上今後の情勢によつては、そういうことがあり得るとは私ども考えられない。その場合には別な憲法委員會あたりでも、速記録を見ればそういうことも考えているからよいじやないかというようなことも考えられるでありましようけれども、しかし理論的にあり得るものであれば、それはまた理論的にやはり法文化しておくことの方が、私は一番好ましいことであり、一番間違いのないことだと思うのであります。ただ政治的の反面解釋からいえば、今局長の仰しやつたような弊害もあります。しかし弊害があるからといつてこれを明文化することを避けるということは、私は理論的ではないと思う。そこでこういう問題を私は持ち出しておるのですが、政治的な解決の方法といつても、そのときの事情によつてやるのだといえばそれまででありますが、それでは私はきわめて曖昧なものがこの法案のどこかへ部分的に殘つてくるということになるのではないかと思うので、何か適當な法文化する方法というものが、弊害を少くせしむるような——反面解釋すれば今のような弊害も確かにあり得るのであります。しかし理論的に言えば、それを法文化することを避けるということは、私としてはどこかに未解決なものを殘しておくということになるおそれが多分にあるのですが、その點何かお考えがありますかどうか、もう一度お答え願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=28
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029・野田卯一
○野田政府委員 御質問は、私財政法の問題よりもむしろ憲法の問題だと考えます。憲法自體にそういう一種の穴と申しますか、充填せられておられない部分があるのでありまして、それを財政法で埋めるということは非常に困難ではないかと思います。そういうことの生じた場合に、いろいろな暫定豫算なんかもそれに備える方法でありますけれども、とことんまでつき詰めたところへまいりますと、どうもやはり最後のところに隙が殘るのではないかということになると思います。御説のように理論的に考えられることはあくまで理論的に充填をしていくという行き方と、それから理論的にはあり得ても、他の政治的解決に俟つべきものはそこへ充填せずに殘しておくという行き方と、二つの行き方があると思います。從來の獨法系の法制によりますと、お説のようにとことんまで理詰めでいつて、どこも逃げられないようにしておくというのが獨法の行き方でありますが、英米の系統におきましては、そこにやはりある意味において穴を殘しておく。そしてほんとうの太いラインをきめておいて、そして例外の例外、また極端な場合というようなものは、むしろそれに備える方法を設けておかないで、それは最高の政治的判斷によつて決定するというふうになつておるのでありまして、今のような問題につきましても、イギリスでも、アメリカでも、やはりとことんまでつき詰めると、それをふさぎ得るような途は英米の憲法その他にもないのではないかというように私は聞いております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=29
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030・川島金次
○川島金次君 その點はそれまでとしておきますが、次にこの法案によりますれば、必ず豫算の上程の場合には、國有財産の財産表を出すことになるわけであります。まことに結構なことですが、この財産表の價格の問題について、毎年これは財産の現在高を書くことになつておりますが、その價格は一體どういう基準においてこの國有財産の價格を決定していくお考えでありますか、それを一つお聽かせ願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=30
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031・野田卯一
○野田政府委員 これは國有財産法の問題であるのでありますが、この國有財産をどういうふうに評價するか、國のもつておる國有財産というものは、政府のもつておる財産全部を意味しておるのではございませんがこの基準をどうするかということにつきましては、現在の制度では大體帳簿價格、取得價格でやつておりますが、それでいいかどうかという問題があると思います。特に最近のように物價が騰貴したりしますと、臺帳價格だけで漫然とやつていいかということについては問題がありますので、これは別の委員會にかかつておるのでありますが、國有財産制度調査會というものが新しく法律でもつて、設けられることになつており、そこで國有財産全般を再檢討して、この次の常會に國有財産法を出すことになつておりますから、その際に十分檢討して、御指摘のような點も考えていかれるものと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=31
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032・川島金次
○川島金次君 先日別の委員會で私聽いたことなのですが、たとえば遞信關係の財産を調べてみますと、これが二十八億ばかり、國鐵の財産が八十七億、合わせて百億ばかりということで、今日の状況からいえば、ほとんどナンセンスに近い財産評價額になつている。いろいろの國家の財政計畫を立てる場合、あるいは生産計畫を立てる場合、あるいはまた勞働賃金を設定するというようないろいろな面からいつて、國有財産の評價というものは、非常に重要な問題で、その根本をなすものの一つであるという考え方を私どもはもつている。そこで今後この財政法案が實施される場合においては、必然的に必ず財産の現在高というものを國民に知らせなければならぬ。また知らされた以上は、國民として受取る方の立場からいえば、その國有財産の價値の評價いかんによつて、國民のいわゆる現有するところの財産の價格のきめ方ということにも、これまた影響がある。そういうことになりますると、必然的に各方面にそれが大きな影響力をもつことになるのであります。そうしてまたそれが基礎となりまして、日本の經濟の復興の狙い方、あるいは生産の狙い方、生産物價の立て方、あるいは勞働賃金の立て方というようなことにも非常な關連性をもつものである。從つてこれは非常に重要な問題だと思いましてお尋ね申し上げたのでありますが、その方面に關する別な法律が今やられているというお話でありますから、この問題はこの程度で打切つておきます。
最後にお尋ね申し上げたいのは、第四十六條に、いろいろな國の豫算その他財政に關する一般の事項について、印刷物、講演その他適當な方法で國民に報告しなければならないとある。これが豫算成立の場合の規定であります。これもまことに結構だと思いますが、なおさらに「前項に規定するものの外、内閣は、少くとも」云々ということで、國會及び國民に報告をしなければならないということが附け加えられておりますが、これをどういう形で國民に報告するかということについてのお考えがありましたならば、この際承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=32
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033・野田卯一
○野田政府委員 その方法につきましては目下研究中でありますが、ちよつと考えられる點を申しますと、印刷物にして配布するという問題があります。また新聞に發表するとか、あるいはラヂオを通じて知らせるとか、あるいは人のたくさん集まる所へいろいろな數字などをグラフにして發表してわかりやすくするとか、いろいろな方法があると思いますが、これについては民間の專門家の御意見も聽いて檢討をいたしている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=33
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034・川島金次
○川島金次君 冒頭に私が質問しました事柄、それに關連して希望しておいた事柄で、重ねて言う必要はございませんが、主食糧、石炭、鐵鋼、肥料等のごときいわゆる基本物資これらは相當重大な事柄だと思いますので、その旨をあらためて大藏大臣に傳達を願いまして、さらに大藏大臣の考え方をお聽かせ願いたい。その考え方によりましては、さらにまた大臣に御質問を續けたいと思つておりますので、委員長よりよろしくお取計らいを願います。これで私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=34
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035・高橋泰雄
○高橋委員長 この際委員長より重要なる數點につきまして、政府當局の御答辯を得ておきたいと思います。
財政法の第三十一條第二項の規定は、歳出について項を目及び節に區分して、内閣から各省各廳の長に配賦するという規定でありますが、國會法に基く國會豫備金はこれをどう取扱うかということについて、以下數點政府の所信を伺つておきたいと思います。その第一は、國會豫備金は國會法により獨立せる國會の經費の中に計上されることになつておりまして、かつ國會豫備金はこれを使用するにあたりましては、議院がその適當と認めるときに使用するというのが建前であります。從つてあらかじめ目及び節を設けるということは不可能なことであり、また議院がその使用を決定した際に、一々これを大藏省に通知いたしまして目及び節を設けるということは、國會法の精神に反し、かつ國會豫備金の性質に反するものと考えられるのでありますが、これをいかに運用するお考えであるか、この點をまず承つておきたいと思います。それから第二に、國會豫備金を各議院に配賦するにあたりましては、豫備金として配賦いたしまして、議院の意思によつてその使用を一任すべきものと思うのでありますが、政府におかれましてはこの點をどうお考えになつているか、これを伺つておきたいと思います。それから第三に、もしその解釋、運用にあたりまして、國會豫備金にも目及び節を區分して配賦せねばならぬものといたしますならば、同條又に但書を加えまして、但し國會豫備金についてはこの限りでないということに修正する外はないと思うのでありますが、この點はどうお考えになつておられますか。それから第四に、財政法第三十五條に規定いたしまする豫備費は憲法上の豫備費であつて、内閣の責任において支出するものであり、國會の豫備金は憲法上のいわゆる豫備費とは金然別個のものであると考えますが、この點はどうでありますか。以上の諸點について政府のお答えを得ておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=35
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036・野田卯一
○野田政府委員 御質問に對しましてお答え申上げます。まず話が少し逆になりますが、三十五條の點から申上げておきたいと思います。三十五條の豫備費は憲法上の豫備費でございます。國會法及び裁判所法の中に豫備金という言葉を使つてありますが、あれは政府の解釋によりましては、憲法上の豫備費ではないという解釋であります。從いまして豫算書も初めは豫備金という言葉を使つておつたのでありますが從來の實行におきましては豫備費と豫備金とが同じ意味で使われております關係上、將來疑義が生ずるおそれがありますので、豫算もこれを豫備經費というように修正をいたしました。それで政府豫算關係の言葉といたしましては、これを豫備經費という言葉でもつて將來處置してまいりまして、憲法上の豫備費でないということを明らかにしたいと考えました。それから三十一條の方に戻りまして、三十一條の第二項の「前項の規定により配賦する歳入歳出豫算は更に、歳入にあつては、項を目に、歳出にあつては、項を目及び節に區分する。」ということになつております。これにつきましては、この三十一條の意味でありますが、三十一條は、從來豫算というものは議會を通過して成立いたしますと、これを公布いたしたのであります。しかしながら新憲法下におきましては、豫算の公布ということは廢止せられる。從いまして豫算が成立いたしましても、各省といたしましてはどういう豫算が提出せられたかということをはつきり知るオーソリタテイヴな方法がなくなつたわけであります。今まででありますと、官報にちやんとそれが公告されたのでありますが、今後はそれはありません。そこで豫算が成立したときは、内閣は各省各廳の長に對してその内容はこうだということをお示しするという必要が生じたのでありまして、この三十一條は新しく設けられた規定でございます。そこでその豫算の内容をお知らせするときに、目、節をつけろということが書いてございますが先ほど御指摘になりました國會の豫備經費、これは豫備經費はいうまでもなく豫備經費でありまして、何に使うかわからない金でありますので、これを目、節をつけて出すということは不可能だろうと思います。
次に豫備經費の使用についての問題でありますが、豫備經費の使用につきましては、國會の中に特殊の委員會というようなものができて、それが十分中で相談されて使われることになつております。國會におきましてもこの金の使用方法については、十分愼重な態度をもつておやりになるということになつておりますが、ただ問題は具體的に金をお出しになるときに、やはり小切手を切らなければならない。小切手は日本銀行がこれを支拂う。そのときに日本銀行は一體これはどういう目、節の金であるかということがわかりませんと拂えませんから、そういう技術的な問題として、目、節が何に使われるかということが、はつきりきまつたとき、そのときに目、節の區分が生ずる。この點は支拂技術上の問題として御了承願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=36
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037・高橋泰雄
○高橋委員長 他に御發言はございませんか——御發言がなければ本案に對する質疑はこれで終了いたしました。次會は明後二十四日午後一時より開會いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後三時十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211149X00319470322&spkNum=37
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