1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
參議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)(第七號)
都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案(政府提出)(第八號)
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昭和二十二年三月六日(木曜日)午後一時四十六分開議
出席委員
委員長 松川昌藏君
理事 横田清藏君 理事 早稻田柳右ェ門君
寺尾豊君 本多花子君
天野久君 江部順治君
大久保傳藏君 松岡運君
鈴木義男君 森三樹二君
香川兼吉君 大津桂一君
出席國務大臣
内務大臣 植原悦二郎君
出席政府委員
内務事務官 林敬三君
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本日の會議に付した議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)
都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=0
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001・松川昌藏
○松川委員長 會議を開きます。これより參議院議員選擧法の一部を改正する法律案、及び都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する件の二件を一括議題といたします。まず政府の説明を求めます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=1
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002・植原悦二郎
○植原國務大臣 參議院議員選擧法の一部を改正する法律案の提案の理由並びに法案の内容の概略につきましては既に本會議において御説明申し上げたのでありますが、ここに重ねて、法案の要旨並びに法案中主要な事項につき御説明申し上げます。
參議院議員選擧法は、さきの第九十一議會を通過成立し、去る二月二十四日公布、即日實施さるるに至つたのでありますが、本法に對しましては議會審議の際、衆議院におきまして、選擧運動に關してわが國過去の幾多の選擧の實績に鑑み、選擧の事前運動及び戸別訪問の禁止、並びに費用制限の規定を、今にわかに撤廢することは時期尚早と思われるから、政府は第九十二帝國議會に適當なる法案を提出し、善處すべき旨の附帶決議がなされたのであります。政府は本法の立案に際しましては、選擧運動及び選擧運動の費用に關する、あまりにも煩雜な法的規制は、選擧の明朗濶達性を喪失せしめるのみならず、これに對抗する新たな脱法的措置を講じさせることとなつて、所期の目的を達することができないのが實情でありまして、特に全國選出議員の場合についてはその感を深くしますので、むしろこの際選擧運動につきましては、買收、選擧妨害等の惡質犯の處罰のみに止めて、他はこれを放任して一般國民の批判に任せるのが最も適切なる方策であると考え、第一に議員候補者及び政黨の選擧運動に關する收入及び選擧運動の費用の公開、第二に選擧事務關係者の、關係區域内における選擧運動の禁止、乃び第三に選擧運動のために掲示しまたは頒布する文書、圖畫の形式、數量、掲示の場所等に關する制限に關する措置を講ずるに止めて、他は一切これを自由に放任することとしたのでありました。もとより選擧運動は原則として國民の自由行動によるべきでありまして、これに煩雜な制限を加えますことは適當ではないのでありますが、過去の實績に鑑みまして、現下の状況に照らし、最小限度選擧の事前運動の禁止等に關する規定は、なお當分の間これを存置することを適當であるといたしまする衆議院の附帶決議の趣意には、傾聽すべきものがあり、かたがた衆議院議員の選擧その他各種選擧におきましても、同樣の法的規制が存置されることでもありますので、政府は附帶決議の意のあるところを了承して、次の議會にこれに關しまする改正案を提出することを言明したのであります。
以上の經緯に鑑みまして、政府におきましては參議院議員選擧法の一部を改正することといたし、選擧運動及び選擧運動費用に關して、事前運動及び戸別訪問の禁止、並びに費用の最高額の制限規定を設けますとともに、兒童等に對する特殊の關係ある地位を利用する選擧運動の禁止、その他若干の事項に關して必要な規定の改正を行うために、本改正案を上程いたした次第であります。以下改正規定の各條項につきまして御説明申し上げます。
第一には、第七十四條第一項として新たに加えようといたします規定は、選擧運動費用の制限に伴いまして、制限額の超過を理由とする當選無效訴訟の手續を定めようとするものであります。本項におきまして本訴訟を提起すべき裁判所を、現行衆議院議員選擧法の規定するように、大審院に相當する最高裁判所とせずに、東京高等裁判所といたしましたのは、最高裁判所をして、改正憲法におきまして、新たに定めた特殊の重要な職責を十二分に盡させるとともに、事實審理を一切行わないその建前からみまして、これに出訴させることは適當でないと認められるのみならず、反面においては全國選出議員の選擧の特殊性及び選擧に關する訴訟を、できるだけ速やかに處理、終結させる必要を考慮しなければならないので、特に東京高等裁判所に出訴させることが適當と考えたからであります。
第二には、第七十六條の改正規定中第一項はいわゆる事前運動の禁止の規定であります。第二項は戸別訪問禁止の規定であります。同條第三項の改正規定は、昨年四月に施行された衆議院議員の總選擧におきまして、特に國民學校等の兒童等に對する特殊の關係ある地位を利用して選擧運動を行つて、不當に選擧運動の機會均等の原則を破る等、相當弊害の顯著なるものがあつたように見受けられましたので、學校の教職員等が、未成年のすなわちまだ選擧權を有していない兒童生徒及び學生に對する、特殊の關係ある地位を利用して選擧運動をすることを禁止しようとするものであります。
第三には、第七十九條の改正規定は選擧運動の費用の最高額を定めて、選擧運動費用を制限しようとするものでありまして、現行衆議院議員選擧法の規定に準じて、規定しようとするものでありますが、ただ最高額を定めるにあたりまして、基準となるべき議員一人當りの選擧人の數を乘ずべき一定金額はこれを固定せず、物價變動の状況その他を勘案して、最も適當な額を定めることができるように、命令をもつてこれを定めようとするものであります。
第四には、第八十四條の改正規定は選擧運動に關し事前運動、戸別訪問及び兒童等に對する特殊の關係ある地位を利用して行う選擧運動の禁止規定が、新たに加えられるのに伴いましてこれらの規定に違反する者に對する罰則を定めようとするものであります。
第五には、第九十條第一項の改正規定は、無料郵便に關する制度を定めたものであります。近く提案いたす豫定であります衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案におきまして、現下における用紙の逼迫の状況に鑑み、從來の無料郵便物の制度を改めて、通常葉書を議員候補者一人につき一萬枚を限つて、無料で差出すことができるように改正する考えであるのでありまして、本項は衆議院議員選擧法の改正に照應するとともに、選擧運動費用の節減に資し、選擧の機會均等を確保しようとするものであります。
第六には、參議院議員選擧法附則第四條の改正規定は、その後の政治情勢の變化により、衆議院の解散が豫定されるに至つたために、第一囘の參議院議員の通常選擧の、全國選出議員選擧管理委員を、衆議院議員の中から選擧させることが困難となるおそれがありますので、特に貴族院議員の中からこれを選擧させるようにしようとするものであります。
第七には、參議院議員選擧法附則第十條の改正規定は、當選人の確定をできるだけ速やかならしめて、なるべく改正憲法施行の時期までに、參議院議員の選擧を完了させるために、今囘の選擧に限つて、當選承諾期間を五日に短縮しようとするものであります。
第八には、參議院議員選擧法附則第十一條の改正規定は、選擧運動の費用制限を行うに伴いまして、その最高額算出の基準であります議員の定數について、任期六年の議員と、任期三年の議員の合併選擧であります第一期の選擧の特質に鑑みまして、地方選出議員については、「通常選擧における當該選擧區内の議員の定數」とあるのを、單に「當該選擧區内の議員の定數」とし、全國選出議員については「通常選擧における議員の定數」とあるのを、單に「議員の定數」とするように特例を設けようとするものであります。
その他第二十一條第二項、第八十條第一項、第八十一條及び第八十六條の改正規定は、前に御説明申し上げました各項の改正に伴う條文の整理及び字句の單なる訂正であります。
以上參議院議員選擧法の一部を改正する法律案の内容の大綱を御説明申し上げました次第であります。何とぞよろしく愼重審議の上、速やかに御協賛あらんことをお願いいたします。
次に都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する件につきまして、その提案理由並びに法案中の主要な事項の概略について御説明申し上げます。
この法律案は、新憲法實施を控えまして、四月中に國及び地方の選擧を一齊に行うことが適當と認められますので、都道府縣及び市區町村等の議會の議員及び長の選擧を、内務大臣の指定する日に一齊に施行させるために必要な事項を規定しようとするものであります。
まず第一に規定しようとする點は、都道府縣及び市區町村等の議會の議員及び長の選擧は、衆議院議員及び參議院議員の選擧とともに、新憲法施行の期日までに、相次いで行われますので、これらの各種の選擧を圓滑にかつ支障なく行わしめるために、内務大臣の定める期日に、一齊にこれを行わしめようとするものであります。
第二の點は市町村等の議會の議員の選擧は、四月三十日に行う豫定でありますので、四月二十九日までに任期の滿了しない市町村等の議會の議員の任期を、同日に滿了させることといたしまして、一齊にこれらの選擧を行い、新憲法實施の時期までに、一切の地方議會の議員を更新しようとするものであります。
第三の點は參議院議員選擧法等の制定に伴いまして、今囘行われる地方選擧についても、選擧權の欠格條項を整理し、選擧權の範圍を擴張しようとするものであります。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御協賛あらんことをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=2
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003・松川昌藏
○松川委員長 次いで兩案を一括議題として質疑に入ります。鈴木義男君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=3
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004・鈴木義男
○鈴木(義)委員 第一にお尋ねをいたしたいのは、この選擧法が非常にたくさんできまして、殊に將來の民主政治を實施して行きますることは、あらゆる選擧を通じてやつていかなければならぬのでありまして、選擧法というものは非常に大事なものでありますが、參議院、衆議院、知事、縣會、市町村會市町村長等の選擧は、ほとんどこれは共通の基盤の上に行われるものが多いのであります。いわば選擧法總則というようなものをつくつて、各種の選擧について各論的に規定をして、一つの統一した選擧法典をおつくりになることが適當ではないかと思う。政府においては、そういう御意思がありませんかということをお尋ねいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=4
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005・植原悦二郎
○植原國務大臣 鈴木君にお答えいたします。御質問は、まことにごもつともな御質問と思います。しかし御承知のごとく新憲法ができた、新たに參議院の選擧法を定める必要がある。その選擧法につきましても、政府では、なるべく參議院は全國の選擧區というような、未だかつて日本に試みられないところの選擧區制もあるのであるから、かような大選擧區で戸別訪問とか、あるいは買收というようなことはほとんど不可能だろうということと、なるべく自由闊達なる選擧をさせるようにしようとして、從來の選擧法における制限をとりまして、御承知のごとく去る議會に政府はこれを提案いたしました。ところが衆議院の各位の御意見で、まだ日本の國民の政治教養はその程度に至つておらぬのだ。戸別訪問の弊害もある。また選擧費用の制限等もいるというようなお説もございまして、衆議院多數の御意見に從うて、選擧法等はしかるべく改正することが當然と思いまして、ここに御承知のごとく參議院議員選擧法の一部を改正する法律案を提出いたしたのであります。これらとまたいろいろのバツを合わせるために、衆議院議員選擧法の改正も必要になりましようし、從來存在しておりましたところの都道府縣、市町村等の議員の選擧につきましても、從來の法案があり、とりあえずそれらに對しても改正を加えるところは改正をしなければならないというような、昨年憲法が定められて以來、いろいろ迅速に決定しなければならないことがありまして、とりあえずさような決定をいたしておる次第で、殊に知事の公選などという新しいこともできましたので、その必要に應じてその選擧法をつくる、こういうふうに現在の行きがかりが、いろいろの選擧に對していろいろの法律案ができておるということになつておると思います。もしこれらが一貫して一つの選擧法ができるような形になりますれば、それは理想的で結構なことだと思いますが、現在ばらばらな状態になつておりますことについては、鈴木君よく御承知であろうと思います。將來これらを考えまして、なるべく國民全體にわかりのよいように、またその運用についても統一した運用のできるように法を定めることは、まことに結構だと思います。それらのことも御意見に從つて、將來研究の餘地を殘してまいりたいと思うが、ただいまのところでさようになつておらない事情は御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=5
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006・鈴木義男
○鈴木(義)委員 次ぎに今囘の御提案は大體賛成でありまして、わが黨におきまして前の議會で修正意見を出したのが、そのまま御採用になつておるのであります。わが黨が出しましたときには、まだ時期尚早である。あるいはできるだけ選擧は明朗闊達にやる方がよろしいから、制限はしない方がよろしいというようなときの内務大臣の御答えであつたのであります。しかして制定公布せられまして、未だ一囘も施行せざる法律が、またわれわれの提案と同じ改正案をお出しになるというようなことは、あまり議會の審議權を尊重しておるゆえんではないと思うのであります。與黨以外の黨の提案でも、やはりとるべきものはとるという習慣をつくつていただきたいと、われわれは考えておるのであります。その意味において未だ一囘も施行せざる法律を、特に改正をしなければならない理由はどういうところに出てきたのであるか、念のためにお伺いいたしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=6
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007・植原悦二郎
○植原國務大臣 御説のごとくに、參議院法は去る九十一議會に通過いたして一囘も實施されておりません。私の考えは、すべての法律でも、國政でも民主主義に立脚する以上は、第一に國論の趨勢、またさらにこれが具體的になりますれば、議會各位の大多數の意向、それを考慮に入れて國政を行い、法律をつくつていくことが、一番よろしいことだと思います。どの黨派がどういう意見をもつておるとかいうようなことは別問題として、議員多數の希望するところに向つて政治を行い、できれば法律をつくつていく、これが民主政治實現の上のなすべきことだと思います。そのゆえに去る議會において參議院法通過の際に、附帶決議を付されたその附帶決議の趣意は、衆議院多數の御意向と思い、それをたとえ一囘も實施しないところの選擧法でも、初めて參議院というようなものができまして、この選擧を行うについては、國民を代表する衆議院の多數の方の御意向によつて參議院選擧法をつくり、それを運用していくことがよろしいことだと思いまして、前の議會に議會多數の御意向として現われたことをここに織り込んで、この改正案を提出した次第であります。かような立場で一囘も實施しない法でありますけれども、かように改正することが民意に副うゆえんであり、また初めての參議院議員選擧を行うには、なるべく國民を代表するところの衆議院各位の意向を織りこんだ法律を用いて行うことが、一番よろしいこととしてかようにいたしたものであるから、これに對しては必ず私は鈴木君も御同意下すつて、賛意をお表し下さることと存じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=7
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008・鈴木義男
○鈴木(義)委員 賛意は表しますが、立法技術の精力の經濟から見て、あのときに一擧手一投足の勞で訂正ができたものを、こうしてまた改めてやるということは、はなはだむだな精力の浪費であるということを御注意申し上げておきたいのです。
次にこれはこの改正とは直接關係がありませんが、實際に參議院議員の選擧が今や行われんとしておる、既に資格審査を經た結果、いわゆる事前運動に類したものが行われつつあるのであります。嚴格な意味で事前運動とは思いませんが、全國選擧區というものが大いに疑問のある制度であるということは、私も前囘の議會において大いに強調いたしておいたのであります。既にいわゆる豫備運動とも申したらよろしいか。事前運動とは申しませんが、そういう傾向を見ますると、ほんとうに全國を選擧區として使おうとしている候補者が非常に少い。全國立候補を志しておりながら早くも何縣と何縣に働きかける。こういうことは、つとに私どもは豫見して、全國選擧區はやめたらよかろうということを申し上げたことがあつたのであります。政府は全國選擧區というものが、やはり理想的な區制であると今もお考えになつておるのでありましようか。その點も御所見を承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=8
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009・植原悦二郎
○植原國務大臣 これは鈴木君よく御承知でありましようが、民主政治というものは、ほんとうに哲人が考える理想というようなものが行われにくいもので、まあ大勢の人の寄り集まつた妥協の政治というものが、多く民主政治の現實のものではありますまいか。そこで全國大選擧區が理想的にいいかどうかといえば、私自身もすこぶる疑問をもつております。疑問をもつているけれども、いろいろの關係方面やなどで、大勢の意見が妥協的にでき上つたものが、全國一選擧區として、できたわけで、實現される前にもそれが理想かといえば、なかなか經驗のないことで、ただいろいろのことを想定してみるので、理想でないようにも思われるし、理想のようにも思われますけれども、どうも大勢のやることは、大概大勢の意見で落着く所で落着かせるより仕方がないというためにまあできたような次第でありまして、これがはたしてうまくいくかいかぬかということは、法律そのものばかりでなく、日本國民の政治思想というもの、政治教育というものが、どれまでに實際面において働くかということの想定も、やはりこれがうまくいくとかいかないとかいうことの判斷の基礎にもならうと思います。これに對しては正直なことはどうもわかりません。しかし大勢でここに落着いたので、まず一度やつてみた結果によつて、その上でいいとか惡いとか判斷することが、政治家の行くべき途ではなかろうかと思います。鈴木君もこの點はよく御承知のことと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=9
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010・鈴木義男
○鈴木(義)委員 それらの點はその程度にいたしまして、次に費用の問題についてお伺いいたします。御提案のこの改正案では、抽象的にだけ出ておるのでありますが、通常選擧の場合、實際の具體的な數字は命令でおきめになるのですか。腹案がおありになりますならば、お示しを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=10
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011・植原悦二郎
○植原國務大臣 ただいまの御質問に對しても、政府で相當豫想し、あるいは具體的に考慮したこともあります。しかしこれも御承知のごとく、今囘は四月二十日に參議院議員の選擧が行われ、四月二十五日に衆議院議員の選擧が行われるというような状態になつておりますので、兩者をにらみ合わせなければならないということも、實際上起つてまいります。そこで最近衆議院の方がいろいろお寄りになつて、これらの問題についても御研究になつて、ある結論に到達したように伺つております。そうするとこれもやはり參議院議員の選擧の費用を考える上に、一應照らし合わしてみなければならないように考えますので、まず大體において府縣の參議院議員に對しては五萬圓見當、全國に對しては七萬五千圓見當にあたるようなことではいかがかと、これも衆議院の方々の、もし各派で御決定になつた額が決定すれば、それらとなおにらみ合わしてきめたように考えております。大體その見當をにらんでおります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=11
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012・鈴木義男
○鈴木(義)委員 そうするとたとへば衆議院の方では先般各派共同委員會できめましたのが、現行法が三十錢になつておるが、それを六十錢ぐらいにして、倍額にしようということになつたのであります。やはりこの參議院の方でも府縣の選擧の場合は、これはちよつと數字は違つてきます。額でいえば五萬圓になる場合には、かける數は人數が少いから違うわけであります。とにかくこうお伺いしてよろしいでしようか。府縣選擧の費用は、大選擧區における衆議院の選擧とほぼ同じ費用でやるという方針でおられる。こう承つてよろしいでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=12
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013・植原悦二郎
○植原國務大臣 大體さように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=13
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014・鈴木義男
○鈴木(義)委員 それをわれわれは希望するのであります。參議院が特に多く費用が要るという理由はちよつと考えられない。働きかける選擧民の範圍は、大選擧區であります限りは同一である。同一でない所もありますけれども、費用が一方は非常に多く許され、一方は少いということではよろしくないと思いまするがらできるだけ歩調を一にして御決定を願いたいということを希望として申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=14
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015・植原悦二郎
○植原國務大臣 なるべく御希望に副うようにいたしたい。定員數でありましたらば違うかも知れませんが、今お話のような理由で逆算しても、さような方針で行きたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=15
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016・鈴木義男
○鈴木(義)委員 私の質問はこれで終りました。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=16
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017・松川昌藏
○松川委員長 森三樹二君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=17
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018・森三樹二
○森(三)委員 私は選擧の公營を今後徹底していただきたいという觀點から、二、三質問してみたいと思います。衆議院の選擧の費用が、先日の各派の共同委員會で、大體五萬圓程度というような標準にきめられたということを聞いております。ところが實際今日のインフレーシヨンの經濟状況から言つて、一般に言われておりますのは、大臣も新聞等でお知りでしやうがたとえば參議院の選擧は五十萬圓かかる、あるいは百萬圓かかるとか言われておる。また衆議院等におきましてもお互いが話をすれば、今度の選擧は物が高いから五十萬かかるとか、あるいはいくら少くとも二、三十萬かかるとかいうことが言われておるのでありますけれども、こうしたやうな情勢のもとでは、金のある者でなければ選擧に出れないという形が續くのでありまして、眞に學者であるとか、あるいはまた經驗に富んだような人でありましても、いかにその人に豐富な學識經驗があつても、そうしたところの厖大な金がなければ、選擧に出られないというのが今日の實情であります。結局三十萬、四十萬も使うということは、法律に違反する行爲である。法定費用というものがきまつておるのだから、その範圍内でやるべきであるということはわかつておりますけれども、實際われわれが選擧をしまして、あとでいろいろ話合いを聞きますと、皆相當莫大な金を使つておる。どうしても今後選擧の公營というものを徹底いたしましてできるだけ費用がかからないで濟むような制度を、われわれは立てていかなければならぬと考えておるのであります。それにつきまして私が新聞を見たところによると、たとへば演説會のポスターをはることについて、市町村等においてそうした取扱の公營をするということは、人手間が不足であるからできないというようなことが、大臣の談として載つておつたように思うのであります。もし私の記憶が間違つておるとすればその點は撤囘してもよいのですが、いずれにしましても、現實の問題として今囘の選擧には間に合わないかもしれませんが、將來の選擧においてポスターを貼る方法であるとか、あるひは演説會場は公營の設備をすると聞いておるが、それらにつきましてもまだ幾多便宜をはかつてやらなければならない點もあり得るのであります。技術的な問題にもなつてきますが、いずれにいたしましても、選擧に厖大な金がかからなくて濟むということは、これはどうしても必要なんでありまして、この點につきまして大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=18
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019・植原悦二郎
○植原國務大臣 選擧に金のかかりますことは、民主政治の實現の上に大きな支障であることは疑いありません。なるべく金のかからないようにする。そのためには公營というお説も一應ごもつともと思います。またさようにすることがよいことであるかもしれませんが、國民がほんとうに政治的に訓練され、教育され、また候補者がほんとうに政治によつて立とうとすれば、選擧費用をかけなくてもできるのではありますまいか。理想からいつて公營にして一文もかけないようにして、誰でも出られるということにするのがよろしいのか、あるいは自分の識見を選擧民に理解せしめて、それによつて出られるようになる議會政治の方がよろしいのか、これはかなり考へ方があると思います。英國あたりの選擧のことを私は親しく臨んでみたことがありますが、日本のようにポスターをはりまわしてポスターの展覽會をやつて競爭をするというようなことは英米にないと思つております。また選擧のやり方もかなり違うと思います。そうしてもし國民がほんとうに教育されてきたら選擧の事前運動などというものも止める必要は私はないと思います。公共のために議員になろうとするならば、いかなる場合においてもその主義政見を國民に徹底せしむるということに努めまして、そうしてそれが選擧運動であるような形であればどうかしりませんがそれでない限り、自分が一つの理念をもつてその理念を實現せんがために議會に臨んで事をする。なおさらに進んで政權に携わつて自分の理想を實現するというならば、選擧の場合にのみ自分の主義主張を述べるということでなくて一年中ひとり選擧區ばかりでなく全國民に向つて、自分の主張や意見が徹底されるようにしてこそ、初めて正しい選擧ができるのではありますまいか。それまで國民を教育することはなかなか骨の折れることで、戸別訪問でもいろいろに意見がありますけども、私は戸別訪問などで選擧民と選擧民を代表しようとする者と接觸して、何でいけないかという疑問をもつものであります。ただいけないということは、過去において戸別訪問を名として買收する、買收するということはよいことではない。これはやる方からいつても、受ける方からいつてもよいことではない。これらも國民を政治的に訓練し、教育してやめなければならない。いずれにしても選擧に多くの金のかかるということはいかぬと思います。そこで今の日本國民の政治教育の程度、また國民を代表して議員になろうという人の政治理念の程度においては仕方がない。事前運動も禁ずる。あらゆる窮屈な運動も禁ずるというようにしなければならぬのでありますが、そこで政治の實際と理念と、やはりおのずから違うところがあるのであります。第一に選擧費用のかからない選擧をする。さようにありたいと思ひます。そうしてどうしても今のような形でいけない場合には選擧公營にして、そうして金のかからないようにして、何人でも出られるようにするということも一つの方法だと思います。またそれでなくて、ほんとうに自分が一つの主義主張をもつて、それを國家のために實現したいために政治をやる。さような場合には選擧區民に限らず、全國民に向つて自分の主張を唱えて、そうして選擧費をかけないでも、國民の支持を受けていくという行き方も一つの行き方だと思います。いずれも現實の問題を考えてやらなければならない。日本の現況においては、なるべく費用のかからないように公營とすることも一つの考え方だろうと思いますが、それは必ずしも理想的ではない。理想的はもう戸別訪問も事前運動もおかまいなしに、いつでも國政に携わろうという人は、自分の主義主張を國民の間に明らかにして國民の方から出てくれろというくらいな信望を得て出られるようになれば、まことに結構だと思います。だからそういうことも考え方によつていろいろあろうと思いますが、いずれにしても金のかからない選擧をするようにということは全然同感であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=19
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020・森三樹二
○森(三)委員 私の質問の要旨を、大臣が大體答辯をしてくれているようにも思いますが、多少誤解されておるような點もあると思う。私は選擧に出る者が、一錢も金をかけずに出るようにしなければならぬのではないかという質問はしていない。ある程度の金のかかることはいいでしようが、あまりにも厖大な金のかかるようなことではいけないから、そこを調節して、つまり選擧の公營という方法によつて、できるだけ負擔を輕減してやる方針に進んでいただかれないものかということを私は質問したのであります。たとえば私らの知つている友人なんかでも、非常に優秀な人物が、どうだ、一つ今度參議院にでも全國から出たらどうか、こう言いますと、いや君、金がないから出ない。まあ私はずいぶんいろいろ當つてみると、皆異口同音にそう言つておる。選擧というものは金がやたらにかかるものだという觀念になつてしまつている。ですからそこを今後政府は選擧公營という建前によつて、できるだけ金をかけさせないようにするのだという理想をもつてもらいたいのであつて、今大臣の御答辯をお聽きしておりますと、英國等の例をとつて、むしろ事前運動もするようになることが理想であるかのごとく、あるいは戸別訪問もやる方が理想であるかのごとき御答辯の言葉づかいであつたのですが、私の言つておるのは、一錢も選擧に金をかけないでやるようにというのではないのです。それについて大臣の御意見をもう一囘お聽きしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=20
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021・植原悦二郎
○植原國務大臣 實は御質問のような趣意で、一萬枚の葉書も無料で出せるようにしております。またポスターにしましても、一千枚を限つてではありますけれども、それを各候補者に渡すようにしてあります。また非常な紙のきゆうくつなときでありますけれどもその紙も一定の額を定めて候補者に渡すようにしてあります。今日の國情としてできるだけ候補者に費用をかけないで、しかもそれが普遍的に機會均等のもとに行われるように、できるだけのことを考慮いたしております。私が新聞にどういうことを言つたと出ておつたか、それは存じませんけれども、もし一切の演説會のお世話を市町村でするようなことになれば、今日の場合に、市町村の費用も政府の費用も、とうていたえきれないということは、何かの機會に申したことがありますけれども、それは候補者の選擧費用がかさんでも構わぬという意味でなしに、できるだけ候補者に費用もかけないようにし、それから政府でもでき得るだけの負擔は背負いますけれども、それ以上のできないことをお約束したつてしかたがない。それから今の戸別訪問の問題ですが、戸別訪問などをしないで選擧が行われるようになることがいいと思います。また政治知識が發達して選擧に出る候補者も選擧民も進んで參りますれば、戸別訪問などは政治上の問題にならぬと思う。またさようになることがいいと思いますが、それも今日の場合には禁じなければならぬというような状態、御同樣に候補者になる人も政府も、努めて選擧費用がかからなくても選擧ができるようになることを切に希望します。政府としては、現段階においては、なるべく多くの人が候補者たる機會均等を得るようにしたいと思いまして、許す限りにおいて御便宜をはかるように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=21
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022・森三樹二
○森(三)委員 葉書の一萬枚とか、ポスターの千枚というものは、それは衆議院議員全體の意思の反映であつて、内務大臣がそれにきめたというわけでもない。要するに私が先ほど來言つておることは、今後大臣として、選擧の公營というような方法によつて、できるだけ候補者に費用をかけないようにするために、今後この法案の改正等に主力を集中していただきたい、またその意思ありやという意味の質問をしたのであります。結局できる範圍において便宜をはかつていくと言われているが、それはもう衆議院全體の空氣の反映が現われたのであつて、ひとり内務大臣の意向がそれに反映したものとは私は思つていない。できるだけこの選擧に對しても、施行細則等において便宜をはかつて、各候補者の費用の點に御配慮を願いたいと思う。演説會に關して今日ラジオが非常に普及されておるのでありますが、この前の選擧では各候補者は衆議院では五分間ラジオ放送を許したのであります。五分間といえば始まつたと思いますと終つてしまうというものでありますが、それらについてももう少し徹底させる。それから囘數も、私どもの方では一囘しか認めなかつたようでありますが、一囘などと言わず、許せる範圍において囘數を多くするというように、ラジオの利用については大臣はどういう御所見をもつておられるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=22
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023・植原悦二郎
○植原國務大臣 直接の演説會と、ラジオを利用して政見を選擧區民に徹底せしめるということは、まことに結構なことだと思います。できるだけラジオも選擧のために、使えるようにいたしたいと思うて心配いたしております。ただこの場合に御理解願つておかなければならないことは、四月の間に五囘の選擧がたて續けて行われるようになります。ラジオは、もし米國あたりのように、幾多のラジオ會社があるというようなことならば、そういう便宜もあると思いますけれども、日本では御承知の通り、財團法人のラジオが一つよりないようなわけでありましてその一つのものを、參議院と衆議院の選擧は五日違うだけだから、選擧中は大部分同じだと思います。また都道府縣會、市町村會議員の選擧も、衆議院の選擧と五日ばかり違うだけだから、これらも選擧運動期間は奪い合うことになります。こういう人全部にラジオを使う機會を與えるということは、言うべくしてほとんど不可能なようなことではないかということをおそれております。それでも政府といたしましては、なるべく候補者にそれらのものが利用できるように必配したいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=23
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024・森三樹二
○森(三)委員 最後にもう一體ですがこの衆議院も參議院も、立候補の供託金は五千圓になつているのであります。なるほど今日の物價の面から言うならば、從來二千圓であつたものが十倍なら二萬圓、二萬圓も供託しなければならないようなものですが、その五千圓の供託金というものも、やはり選擧費用というものが上つてきておるのですから、總體においてやはり立候補する者の經濟的負擔というものは、相當大きくなると思う。これにつきましてわれわれとしては、もつと減額する必要があるのではないかというようなことも思つておるのです。これにつきましては政府はどういう御所見をもつておられますか。これは現實のこの改正案の問題ではありませんけれども、一應お聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=24
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025・植原悦二郎
○植原國務大臣 理想から申しますれば、その保證金はないのが一番よいと思います。そういうふうになることを希望いたします。けれども、日本の現状においては、當選ということを考えないで、一種の宣傳や、自己廣告のためにいわゆる泡沫候補というような者も各地において實際たくさん出る實情であることを御承知だと思います。もしさような泡沫候補者というようなものがあるならば、それらの者が實際に誠心誠意自分が國民の代表者として議會に出ようとして努力する人の足絡みになつて、隨分選擧の禍いをすると思います。これらを法律上とめる途はありません。そういう點から、自然と泡沫候補者を防ぐために、眞に國家のために議會に出ようというような人の便宜をはかるために定められたのが、いわゆる保證金だと思います。それが今までは二千圓だつたが、五千圓になつた。これは政府ばかりでなく、現在の衆議院における多數の御意向もそこになつておるのではありますまいか。政府としてはそういう事情をも考慮いたして、ものを取扱いたいと思うております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=25
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026・森三樹二
○森(三)委員 大體私の質問は終るのでありまするが、むろんこの泡沫候補者を制限すべきところの供託金でありまするが、今後この供託金が、物が上つていくにつれて、その物の上る比率と同じような比率で上げようというようなこともあつてはならないのであります。結局は、供託金を積むから泡沫候補者が出ないというわけではなく、また供託金を積む、積まぬにかかわらず、眞にまた國を思う人もあるのでありまして、全然その制限、供託金の制度を撤廢することができないことは、私どももわかつておりまするが、將來これを上げるようなことがあつてはならないし、また現在の額も、このインフレとか、その他の關係が縮まつてくるならば、やはり將來引き下げなければならぬというような考えをもつておるのでありまして、先ほどより私が縷縷申し上げたことは、結局この選擧費用というものが厖大にかからないように、あまり費用がかかり過ぎますと、優秀な人物も結局費用のために足を進めない。新聞等にも、非常に優秀な人があまり參議院なんかに出ないことがいけないというようなことも書いてあるごとく見るのであります。結局この選擧費用に絡んで優秀な人物が立候補しないというようなことを、私ども極力防ぎたいという考えから、先ほど來質問したのでありまして、特に政府に對してそのように將來御努力あられんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=26
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027・植原悦二郎
○植原國務大臣 御希望であつて、御答えはどうかと思いまするが、費用をかけないで優秀な人が當選するようにということに對しては、もう御意見と寸分の違いもありません。政府ではそれを切望するものであります。そうして保證金などというものも、私は將來これを減額するというよりは、かようなものがなくなることを希望しております。かようなもののあることは、まだ政治意識の幼稚なこと、そうしてそういう泡沫候補に充たされるというようなことは、立つ人も、選擧民も幼稚なことを證明するものであります。私は一日も早くさような保證金制度というものがなくなつて、もつと自由濶達な選擧が行われ、しかもわずかの費用でこれができるようになることを切望してやまざるものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=27
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028・松川昌藏
○松川委員長 早稻田柳右ェ門君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=28
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029・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 簡單な質問をいたしたいと存じます。實は法案もまだ入手いたしましたばかりで、十分檢討ができておりませんが、この選擧についての資格でございます。ただいまそれぞれ資格審査を進められつつあるわけでありますが、既に發表せられた缺格事項に該當していると見らるる者の中におきましても、實際上職務を擔當していなかつた者等が、相當あるように地方では見受けますが、こうした者に對して、資格審査にあたつてはいかなる方途をとられるか、こういう點を伺いたいのであります。
それからいま一つは、各種選擧におきまして、審査期間中に申請をしなかつた者があつた場合、選擧民が最適任者と認めてこれを推薦するような現實の問題が生れて來ると存じます。そういう場合は、さらに資格審査をして立候補せしむることができるのか、あるいは期間中に資格審査を受けなかつた者は、立候補することができ得ないのか、この二點について伺いたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=29
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030・植原悦二郎
○植原國務大臣 參議院、衆議院、あるいは知事等の選擧につきましては、事前に資格審査を要求されております。從つて資格審査を受けない者はちよつと立候補はむづかしいことになつております。そういう建前でおります。それから府縣會、町村會議員の選擧には、資格審査が事後に行われるものに對しましても、資格審査の書類は選擧前に提出するようになつております。その審査は後に行われましようが、資格審査の書類を出さなければ立候補できない建前になつております。御承知のごとく、これはただ政府ばかりのなんでなく、關係筋やいろいろの方面でさようになつていることを御諒承願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=30
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031・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 いま一つ伺いたいと存じますのは、先般の議會において、今議會には、地方自治制度の改正に伴う官吏法であるとか、公務員法であるとかいうような、地方自治制度の確立に重要な法案が提出さるると稱されており、また大臣も、おかわりにはなりましたが、前大臣が明言しておりました。今議會においてこれらの諸法案の提出がせられるように私どもは期待しておりますが、その邊に對しての大臣の所見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=31
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032・植原悦二郎
○植原國務大臣 地方自治法案は提出することになつております。近く提出して皆樣の御審議をお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=32
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033・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 公務員法とか、あるいは官吏法も出るのですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=33
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034・植原悦二郎
○植原國務大臣 それはちよつと間に合わないようでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=34
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035・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 地方局長に一つ伺つておきたいのですが、今般の各種選擧は合併選擧とか、あるいは合同選擧というような方途をとられるように聞いておりますが、これらの趣旨の徹底、あるいは運營の方法について所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=35
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036・林敬三
○林(敬)政府委員 このたびは、四月中にあれだけのたくさんの選擧が行われます。しかも知事、市町村長合併でございます。それから地方議會は道府縣會、市町村會全部合併になつております。從いまして今御指摘のような心配は、事務當局としては非常にもつておるわけでございます。しかも憲法施行を目前に控えて、ぜひやらなければならないと考えまして、こういう計畫を立てたわけでありますが、日にちが非常に少いのでございます。それで趣旨を普及徹底する。その他技術上、事務上、投票の上において誤りなからしむるということにつきましては、私どもといたしましては言論機關の方々の全幅の御協力も仰ぎたいと思つております。また道府縣廳というものの全精力を傾けて、誤りないようにやつていきたい、かように考えております。方法についてはいろいろ考えられるのでございますが、短期間に全精力を傾倒いたして誤りなきを期していきたい、かように考えるわけでございます。今でもあらかじめ法の改正その他を豫想しまして、實はいろいろと道府縣廳の責任者を呼びまして打合せ會もいたしまた通牒も出しております。今後も一層この點は努力いたしまして、誤りなきを期したいと存じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=36
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037・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 ただいまの點につきましては、これは相當困難な面が多いと存じますので、完璧を期していただきたいと思いますが、もう一つ氣づきました點をお尋ねしたいと思います。先ほどちよつとお話もありましたが、選擧の公營についてはいろいろ意見もありますが、今般の物資の不足による態勢に伴いまして、新人進出の途がふさがれたような感がいたしますが、新人の進出にあたりましては、ポスターであるとかあるいは推薦状、その他ほとんど知悉せしむるに必要な手段を選ぶことができないようになつたように考えられますが、何かこれについて當局は、新人進出に適切なる方途を考えられておるかどうか。こういう點を一つ承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=37
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038・林敬三
○林(敬)政府委員 先ほど公營についていろいろお尋ねがございまして、大臣から御答辯がございましたが、私どもはお話のように、理想としては公營というものを、でき得る限り擴大していく方向でいきたい。かように考えております。この議會が濟み、選擧が濟みましたならば、またすぐに選擧法のいろいろな調査というもの、過去を顧みて、先ほどお話のありましたように立憲政治の基礎をなしますところの選擧というものの完璧を期するための、あらゆる調査と研究を續けていきたいと存じておりますし、公營という方向についても、でき得る限りこれは擴大していく方向で途を進むべきものと考えます。ただ現在の實情から申しますと、まことに御承知のように資材も行き詰まり、人手も少く、無理にそれを動員しようとすれば非常に金がかかつてしまつて、手も足も出ないという状態でございます。これを自由に放任しておけば、非常にやみでお金がかかるというようなことを放任するような結果になります。それでは金がかかるからというて公營にしようといたしますと、國の力、縣の力、公共團體の力をもちましても資材、人というものについて、はたと行き詰まつて、引受けてもこれがどうにもできないというような實情でございまして、衆議院の各派交渉會でもいろいろなお話合いがあつたように承り、また内務省としてもその間の理想と現實というものをにらみ合わせ、しかもお引き受けできる可能の程度の、最大限度の公營というところに止めてやつていくよりほか、いたし方がないという現状でございます。そこで現在では御承知のように、施設の公營とか、さきお話がありました通常葉書を一萬枚出すとか、經歴公報を出しますとか、氏名を掲示いたしますとか、そういうような方法でもつてやつていくよりほか、いたし方ないと存じておるような状態でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=38
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039・松川昌藏
○松川委員長 暫時休憩いたしす。
午後二時五十七分休憩
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午後三時十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=39
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040・松川昌藏
○松川委員長 休憩前に引續き會議を開きます。質疑は終了いたしました。これより討論に入ります。——横田清茂君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=40
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041・横田清藏
○横田委員 私は原案に賛成いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=41
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042・松川昌藏
○松川委員長 早稻田柳右ェ門君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=42
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043・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 本案は新人の進出には相當大きな阻害を來すものと存じますが、現下の状勢とにらみ合わせてやむを得ぬものと存じまして本案に賛成いたしますが、資材面との關係をにらみ合わせて、適當な時期に改正されんことを希望いたしまして賛成するものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=43
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044・松川昌藏
○松川委員長 鈴木義男君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=44
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045・鈴木義男
○鈴木(義)委員 ただいま進歩黨の御意見では、新人の進出によろしくないという御意見でありますが、本案は別にそういうことには關係ないと思います。誤解ではないかと思う。戸別訪問の禁止だとか、未成年兒童を利用することを禁ずるとか、選擧費用を制限すること、いずれもよいことばかりであります。またわが黨としてもかねての主張でもあり、無條件賛成いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=45
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046・松川昌藏
○松川委員長 討論は終詰いたしました。採決いたします。兩案とも原案に賛成の諸君は起立を願います。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=46
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047・松川昌藏
○松川委員長 起立總員。よつて兩案はいづれも原案の通り可決いたしました。これにて本委員會の議事は全部終了いたしました。
この際各位の絶大なる御援助によりまして委員長の職を汚しましたことを厚く御禮申上げます。本日はこれにて散會いたします。
午後三時十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211167X00219470306&spkNum=47
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