1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(大野伴睦君外一名提出)
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(鈴木義男君外六名提出)
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(原彪之助君提出)
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(徳田球一君外二名提出)
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昭和二十二年三月二十九日(土曜日)午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 山口喜久一郎君
理事 神田博君 理事 椎熊三郎君
理事 淺沼稻次郎君 理事 石田一松君
理事 中野四郎君
有田二郎君 本多花子君
大石倫治君 佐藤乕次郎君
水谷昇君 辻寛一君
松浦東介君 村上勇者
武田信之助君 坂東幸太郎君
藥師神岩太郎君 今井はつ君
大久保傳藏君 稻本早苗君
圖司安正君 小川半次君
堀川恭平君 八木佐太治君
山崎岩男君 山下春江君
佐竹晴記君 鈴木義男君
細田綱吉君 辻井民之助君
中村高一君 加藤鐐造君
木下榮君 石崎千松君
松原一彦君 細迫兼光君
徳田球一君
同日委員有田二郎君、佐藤乕次郎君、村上勇君、藥師神岩太郎君、大久保傳藏君及び鈴木義男君辭任につき、その補闕として本多花子君、水谷昇君、武田信之助君、今井はつ君、稻本早苗君及び細田綱吉君を議長において選定した。
同日委員稻本早苗君辭任につき、その補闕として圖司安正君を議長において選定した。
出席國務大臣
國務大臣 幣原喜重郎君
内務大臣 植原悦二郎君
出席政府委員
内務事務官 小林與三次君
委員長の許可を得た出席者
議員 小澤佐重喜君
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本日の會議に付した議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)に對する修正案(大野伴睦君外一名提出)
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(鈴木義男君外六名提出)
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)に對する修正案(原彪之助君提出)
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)に對する修正案(徳田球一君外二名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=0
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001・山口喜久一郎
○山口委員長 會議を開きます。質疑に入ります。石田一松君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=1
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002・石田一松
○石田委員 同僚委員であります松原委員が、昨日やむを得ない事情のため幣原國務大臣が欠席をされますので、やむを得ず内務大臣に對して質問を行いました。そのときに松原委員は、幣原國務大臣が欠席であるから、この點はまず讀み上げることを御遠慮申し上げるという言葉がはいつておりました。その意思を繼ぎまして、私はまず松原委員の尋ねんとしたことを補足してまたお尋ねしたいと思うのであります。それは幣原國務大臣がこの前の總理大臣であられた當時、現行の大選擧區制限連記制を採用なさり、しかもこれを昭和二十年の十二月一日の議會において御説明を遊ばしたそのお言葉の中に、この新選擧法によつて明朗闊達なる選擧を行い、眞に國民の總意を反映せる新議會を一日も早く形成し、憲政の清新にして強力なる運營をはかることを最も緊要なりと考えて、これを提出した。なお新事態に即應して新たなる基礎に立つて、清新なる選擧を執行するために、大選擧區制を採用することにしたと御説明を遊ばしております。しかもその當時の幣原總理大臣の閣僚であつた堀切内務大臣は、大選擧區制の説明竝びに答辯にあたつて、何がゆえに連記制にするのかということの説明に、堀切内務大臣は候補者選擧の自由を擴大し、より廣汎なる基礎に立つて國家的人物、ないしいわゆる新人の選出可能性を、新事態に即應した選擧區制として適當であろうと思つて、まずこの選擧區制を採用し、また連記制を採用した。特に連記制の問題については、大選擧區になりますと、從來のごとき單記投票法によりますときは、そのために投票が一部の候補者に偏在集中し過ぎる。それだからこの弊をある程度是正することが適當と認められるから、選擧すべき議員數が多くなるにかかわらず、ただ一人のみの選擇しか認めないということは、選擧人の議員候補者選擇の意思をあまりにも制限する結果となりますので、この程度の緩和をする必要がありましたと、幣原總理大臣はその所屬する内務大臣のお言葉を、同じ大臣席でお聽きになつておるはずであります。この點につきまして、幣原現國務大臣は、現在もその氣持をおもちであるかどうか。ぜひ確かなる御答辯をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=2
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003・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 私が内閣の首班として責任をとつておりました時代に出しました選擧法の改正案、大選擧區制をとつたことはお話の通りであります。われわれはさように信じたのであります。そうして議會の諸君も私同樣に信ぜられたのであります。しかしながらその方針でもつてやつてみるというと、その結果はおもしろくないのであります。これが改正を加えた方がよいということに今度なつて、議員の方からそういう修正案を出されたのでありましよう。これは經驗に基いて議員の諸君が出されたのだと思いますから、われわれはそれに對して反對をすることは何もないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=3
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004・石田一松
○石田委員 ただいま幣原國務大臣は、その當時はかくすることがよいと信じてやつた。やつて見たところが非常にその結果が惡かつた。惡かつたから今度かえるとおつしやいますが、そうなりますと幣原國務大臣は、そのおやりになつた現行大選擧區制限連記制というこの重大なる法律の制定の全責任者である。幣原國務大臣は少くとも一年ちよつとの間に、それだけの過ちが世間にできたということに對する、政治的責任をお負いになる御覺悟がおありですかどうですか。お願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=4
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005・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 お答えします。人間の頭というものは時勢の進運とともに變化して行くものであります。そこに進歩があるのであります。私はそれを進歩と考えておるのであります。何も一旦こしらえた法律は、數年間必ず永續しなければならぬ。そういうものを何年間永續しなければならぬというような、そういう保證のあるものはありません。少しでも惡いと議員が考えられるならば、それは改正する方がよい。こう言われるならちつとも差支えない。これは私はもう斷行してしかるべきだと考えておる。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=5
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006・石田一松
○石田委員 ただいま幣原國務大臣は、一つの法律をつくつてそれが何年間實行されなければならぬということはないというような御答辯でございましたが、もちろんそれは幣原國務大臣の言うように、何年間も實行されなければならぬということはありますまいが、少くとも選擧の根本をなす、しかも議會構成の根本をなす重大な選擧の別表が、數年間どころか、一年どころか、だだ一囘だけで改正されなければならぬと、それほどの熱意をお示しになるそれほどの社會情勢が變化しておるとおつしやるその理由と、惡い結果が現れたというその結果を、ひとつぜひ明瞭に、忌憚なく、ざつくばらんに御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=6
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007・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 その問題は昨日からたびたび繰返されておる質問應答であると思う。所管省たる内務大臣がたびたび答えておられるのであります。(「答えておらぬ」と呼ぶ者あり)この方がよい。あなた方は答えておらぬとおつしやるけれども、われわれは答えておると思つておる。私らはそう思つておる。今までのやり方ではすくないと諸君らがそう思われて、議會の諸君がそう思われて提出された。それに對してわれわれは何も反對することはない。いやしくもそれがよろしくないと議員がおつしやるなら、これを斷行してしかるべきであると、私はそう思つておる。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=7
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008・石田一松
○石田委員 ここで私は幣原國務大臣が、この現在の選擧法を一囘限りで惡い結果が現れた。その結果は説明した。だから議員の方で要求するならばかえてもよいと明言を遊ばしたことを再確認し、昨日——内務大臣はどうなさいましたか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=8
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009・山口喜久一郎
○山口委員長 内務大臣は貴族院に急にまいりましたが、濟み次第すぐまいりますから。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=9
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010・石田一松
○石田委員 では内務大臣にも一度確認したいことがあるのですが、まずここで速記録を調べればわかることではないかと思いますが、一應再確認をしたいのであります。昨日某委員の質問に對して、いまここに提出されたる選擧の根本をなす別表については、一切何事も、關係筋とは諒解または交渉などということは一切したことがありません。これはここではつきり申上げますと言明をなさいましたが、幣原國務大臣は、少くとも現吉田内閣の副總理、否それ以上の存在であると認めますが、内務大臣の昨日の本委員會における言明を、幣原國務大臣も確認なさいますでしようか。どうでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=10
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011・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 内務大臣が責任をもつてお話になりますことを、それを私は打消すべき何らの材料をもつておりません。私は閣僚の一人として内務大臣の言われたことは確かだと思う。内務大臣が何もその筋と連絡をとり、諒解を求めに行つたとかいうようなことはないと言われるならば、私はそれを信じて、それを打消すべき材料を何ももつておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=11
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012・石田一松
○石田委員 まことに明確なる御答辯をいただきまして感謝いたします。提出者側の趣旨辯明者がお見えにならないようですが、どなたか絶えずここにいてもらわないと、質問するのにまことに不便を感じますが……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=12
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013・山口喜久一郎
○山口委員長 至急さようにいたします。それでは提案者側の坂東君、こちらの席にお出になつて御答辯にあたつていただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=13
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014・石田一松
○石田委員 提案者として御答辯にお立ちくださいました坂東氏にお尋ねいたしますが、昨日小澤君は、現行制限連記制はまことに缺點ばかりたくさんある。たとえば十分に運動することができないとか、最初の一名たけは自分の信頼する人を書くが、二名連記のときには、他の一名はどうでもいい者を書く。三人連記のときの第三人目に至つては、いい加減な、さしみのつまのような、お添えもののようなものを書くというようなことを、現行制度の缺點の一つとしておあげになりましたが、坂東君においてもそれと同じお考えをもつていらつしやいますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=14
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015・坂東幸太郎
○坂東委員 お答え申し上げます。小澤君と同じ意見でありまして、ただいま石田君のお述べのごとく、政黨政治の根本から申しますれば、一つの選擧用紙には、同じ政黨の者を書くのがあたりまえでありまするけれども、今石田君がお示しのように、昨年行われた選擧におきましては、そういうことがたくさんあつたことは常識になつておりますが、それらも弊害の一つと考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=15
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016・石田一松
○石田委員 私が聞くところによりますと、國民の投票は、自由に國民の意思を表示するために無記名の投票方式を用い、だれがだれを書いて、どういうふうになつたということは、一切第三者が知られないようにしてあるところに、投票者、有權者はだれの拘束も受くることもなく投票をできるのだということを、私は承知しておりますが、そうするとただいま提出者側の御説明によると、今度の選擧の結果の投票用紙は、ほとんどお調べになつているかのごとき御答辯でございますが、ひとつどこの選擧でだれとだれが……(「全國に立會人がいるじやないか」と呼ぶ者あり)立會人が御相談の結果、その開票の結果をお調べになつたのですか。それともその祕密は與黨側には全部わかるのでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=16
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017・坂東幸太郎
○坂東委員 私は選擧立會人ではありませんからよくわかりませんが、ただいま申しましたことは國民の常識でありますから、ここでそれをかれこれ言う必要はないと思います。たとえ私が選擧立會人でありましても、絶對祕密のことでありますから、國民の常識通念の説明をここでする必要はないと思います。實際においてそういうことであつたことは、石田君自身も御承知の通りであると考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=17
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018・石田一松
○石田委員 そうすると提案者側の説明による連記制の現行制度の欠點は、ただ國民の通念という漠然たる、具體的根據のない、提案者側の想像による、現實的に言えば選擧管理人のみが知つておつたことを、ただそれを想像しての欠點だと私は了承いたします。それはともかくとして、しからば先ほど幣原國務大臣は昨日の内務大臣の答辯を裏書きなさいまして、内務大臣がこの場合そう言つたのならば、私も内務大臣が事前に、ただいま提出されておる修正案に對して諒解を得たことはないという御答辯でございましたので、ちよつとまた幣原國務大臣にお伺いしますが、幣原國務大臣は昨年四月十日の選擧の終りました直後、連合軍最高司令官が聲明せられましたところの、今度の選擧は國民の自由なる意思によつて公正に行われた立派な民主選擧であると、辭を強くして昨年の四月十日のわが國の衆議院の總選擧を賞讚せられたあの聲明、あれを幣原國務大臣お認めでございますか。どうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=18
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019・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 連合軍最高司令官が申されたことを私が裏書きするとか、あるいは認めるとかいうようなことは何も必要のないことであります。私はそれに對して反對であるとか、贊成であるとか、さようなことを申すべき立場ではないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=19
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020・石田一松
○石田委員 そうすると幣原國務大臣のただいまの答辯は、あれを認めるとか反對だとかいうことを今言つておるのではないのでありまして、ただ連合軍最高司令官が昨年四月のあの總選擧の直後、この選擧は民主的で、しかも國民の自由なる意思によつてやられたあの選擧た稱揚せられた。あの事實を幣原國務大臣はお認めになりますか。こう尋ねておるのであります。それを守るかどうか、そんなことを今聽いておるのではありません。ただあの事實だけはお認めになるのか。それともうお年のことだから、そんなことは、忘れたとおつしやるのかもしれませんが、ぜひこれをもう一度お答え願いたいと思います、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=20
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021・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 同じことを繰返してもしかたがないのでありますが、司令官の言われたことは、司令官が自分の責任をもつて言われたのだと私は思いす。それに對していかにもその通りである。私は贊成であるとか不贊成であるとか、さようなことを申すべき立場でないと申し上げたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=21
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022・石田一松
○石田委員 そういたしますと、われわれの知る範圍では、連合軍最高司令官は、去年の四月の十日の日本の現行制度による制限連記のこの選擧法の結果を、民意を尊重したまことに自由公正なる立場において行われたものだと稱揚されたことを私たちは再認識しております。かく司令官が稱揚された現行法を、今會期が二、三日に迫つて、特にこれを強行して改正しようとなさるときに、昨日内務大臣のおつしやつたように、一度も關係筋にも何にも諒解もなく、何らの交渉もなく、ただ單に議員側において提出した法案であるというふうに議員側にその責任を轉嫁して、しかも何らの諒解なくこれをおやりになるということになりますと、連合軍の最高司令官から聲明のあつたものは、向うの立場でお出しになつたので、日本の議會はその議會の思うが通りに、何らの交渉もしないで、かかる重大法案を急遽強引に修正または改正することが、はたして被占領國の日本において許されることであるかどうか。幣原國務大臣にちよつとお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=22
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023・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 昨日植原國務大臣が申されたのは、自分が最高司令官のところへ行つて、あるいはG・H・Qに諒解を求めに行つたようなことはない。こう仰せられたのであります。しかしながらこの法案を起草されて提出された方の方では、それはG・H・Qの諒解を求めに行かれたかもしれません。しかしそれを植原國務大臣は否認されたことはないと思います。
〔「幣原國務大臣は進歩黨の總裁だから諒解を求めたに行つたはずだ」その他發言する者多し。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=23
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024・山口喜久一郎
○山口委員長 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=24
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025・石田一松
○石田委員 そうすると植原内務大臣は自分はいらしやらなかつた。あの人も何でも外國に行つたお方だから、相當英語も堪能な方だと思いますが、それより以上に幣原國務大臣は、世界の英文法におけるすぐれた學者以上の方だと私たちは了承いたしておるのでありますが、そうするとどなたか閣僚の方で、事前に了解をなすつているということがあると私たちは了解して構いませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=25
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026・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 私の了解がもし誤りでなければ、議員が提出せられる法律案というものは、議會の事務局の方から諒解を求めに行くのが慣例のように私は了解いたしております。私は別に事務局へ行つて確かめたのではありませんけれども、多分その方法によつて諒解を求めたのだろうと思つております。
〔「いい加減にごまかすな」幣原國務大臣「いい加減のものではありません、証據がどこにあるか」「ちやんと知つている」と呼びその他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=26
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027・山口喜久一郎
○山口委員長 勝手に發言してはいけません。ただいま石田君の發言中でありますから靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=27
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028・石田一松
○石田委員 そうすると、幣原國務大臣のお言葉によると、これは議員側の提出の議案であるから、われわれはそんなことは知らぬが、多分想像するところによると、事務局でそういうことはやることだから、事務局が行つたのではないかと思うというようなお話ですが、しからば提案者にちよつとお尋ねしますが、提案者の方は事務局のどなたかいらつしやいましたか。そういう事實があるのですか。ちよつとお伺いします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=28
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029・坂東幸太郎
○坂東委員 その點につきましては昨日來小澤君から答辯した通り、私はその點はよくわかりません。小澤君の言うたことを御信用願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=29
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030・山口喜久一郎
○山口委員長 ちよつと石田君に申しますが、農林大臣に御質問がありますなら、農林大臣は今から至急に他に急ぐ用件があるそうですから、先に農林大臣に對する御質問をされてはどうでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=30
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031・石田一松
○石田委員 そうですか。ただいまの提出者の答辯では、私はそのことはよく知りません、昨日小澤君が言つた通りだとおつしやいましたが、實は小澤氏もそのことについてははつきりおしやつておりません。全然提案者もそのことは御存じなく、政府の方でも全然これは御承知ないということになりますが、これは保留しておきまして、農林大臣にちよつとお伺いいたします。最近新聞の論調や、いわゆる國民の議會に對する批判のおもなるものは、食糧が今日のごとく遲配のはなはだしいときにもかかわらず、院内において黨利黨略のために、次の選擧を自己の黨に有利に導こうとするがために、改正される選擧法に對して、野黨がこの次には絶對多數を得ようと思つている矢先、この中選擧區の單記制を出されたのではそれがやれないから、これを強引に、ほかのことは放つておいて、しかもこの法案ばかりやつておると、こういううわさが世間一般に流布され——新聞をここで讀み上げてもよろしうございますが社説などにもそういうことも出ておるようであります。私はここで一言申上げたいことは、私達が今ここでこの選擧法の改正案を論議しておりますことは、國民が遲配に惱んでいることを全然無視して、たとえばわれわれ野黨が今度大多數にならうとするためにのみこういうことを議論しておるのではありません。そのことについてはわれわれが當選した後の九十議會、九十一議會、九十二議會を通じて、さきの和田農林大臣竝びに木村農相のもとにおいても、木村農相がかくすれば供出か完全にできるのだ。議會においてこれならば確かに百パーセントいくだろうという信念を披瀝なさいましたので、われわれはその方のことは全議員一致をして、あなたのおやりになつたその法案については滿腔の敬意を表して、われわれはそれを可決しておるはずであります。この現在の遲配を放つておいて私たちはこれをやつておるのではありません。しからばもし世間にそういう流布される風説があるとするならば、この選擧法をわざわざこの會期の迫つたときにお出しになる。しかもそれと關連して食糧の遲配が問題になる。このことについて農林大臣は閣議の席上何か、遲配のはげしいときであるから、こういう重大な問題は、まず一應遲配の問題が片づいてから出すべきであるというふうな御發言をなされたか、あるいはまた現在そういうお考えをおもちになつておるかどうか。ひとつぜひこれをお伺いしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=31
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032・木村小左衞門
○木村(小)國務大臣 なかなかむずかしい御質問ですが、遲配と選擧法——私はこの選擧法は、提出になつた方面では黨利黨略のために提出になつたとは思わないのであります。現在消費地の食糧の遲配缺配は御承知の通りでありますが、それは選擧法の會期迫つた審議によつて、それが拍車をかけられるようには私は考えておりません。それはそれで、當局はこれだけ切り離して、一生懸命最善の處置はとつております。別に選擧法と食糧遲配というようなことを關連して考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=32
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033・石田一松
○石田委員 ただいま木村農林大臣より、まことに明確なる御答辯をいただきまして、われわれこの選擧法をかく熱心に審議しようとし、先般來の委員會において審議しているこのこと自身が、遲配の原因にはなつていない。その遲配の原因は關係當局にあることであつて、われわれの審議はそれとおのずから別個のものであると言明なすつたと私は了承しておきます。簡單ですが農林大臣の言明に對して敬意を表しまして、農林大臣に對する質問を打切ります。
さてこの法案の提出者に對して、先ほどお伺いしましたら、昨日小澤君の言つた通りで、私は何にも知りませんとおつしやいましたが、ちようど小澤君もいらつしやつておりますが、小澤君は議會の事務局か何かと御相談遊ばして、この法案の草案をおつくりになるときに、事前に關係筋との御諒解を事務局をして當らしめたのでありましたかどうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=33
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034・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 石田君にお答えします。昨日も淺沼君か佐竹君かの質問に對してお答えした通り、私自身は參りませんが、黨の代表である幹事長、また幹事長が支障ある場合にはその代理、あるいは總務と自進兩黨の幹部が、再三事務局とも協議の上、先方へ參つてたびたび説明もし、懇談もし、最後に諒解を得ることになつたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=34
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035・石田一松
○石田委員 ただいま大變ありがたい言明を承りました。直ちに黨の幹事長竝びにその關係筋に諒解を求めに行つて諒解を得たという、事務當局者數名をここにお呼びくださいまして、次の私の質疑を許可されんことをお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=35
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036・山口喜久一郎
○山口委員長 石田君の御希望に副うよう努力いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=36
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037・石田一松
○石田委員 努力いたされるその努力のもし不可能であつた場合の結果が非常に心配なのですが、それは言明していただけるのでしようか、ただ努力されるという程度に止まるのでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=37
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038・山口喜久一郎
○山口委員長 相手のあることでありますから、お引受けするということは直ちに言いにくいので、ともかく誠意をもつて努力いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=38
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039・石田一松
○石田委員 しからば、これはまつたく相手のあることでありまして、今それを呼びに行つたときに、まことに殘念だと悔悟して首をくくつて死んでいないかもわかりません。そうなるといないことですからどうにもなりません。できる限り努力してください。それに對する私の質問はここにはつきりと保留をしておきまして次に移ることにいたします。
小澤君にお尋ねいたしますが、昨日この改正案の提案理由の説明に際して、今も幣原國務大臣からも、たしかちよつとそうしたような御答辯があつたと思いますが、連記制の惡い結果の欠點を一二おあげになつた中に、三人投票するときには最初の一人には熱意と信頼をもつてやるが、あとの二人はあまり信頼のない、熱意のない人でも、ついでにお添え物に書くという惡い結果があると昨日小澤君は説明なさいましたが、それは今でもそうお考えになつておりますかどうですか、一應お伺いします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=39
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040・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 お答え申します。その通りです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=40
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041・石田一松
○石田委員 ただいま小澤君は私の質問に對して再確認をしてくださいました。そうすると東京の第一區の十人の當選人の中で、これは二名連記でありますから、五人だけは國民が信頼しない全然熱意をもたない者が當選しております。第二區の十二人は、これは三名連記制ですから、四人だけが國民に信頼をされて、殘りの八人はどうでもいいお添え物が出ました。その次に京都の十人は、これは半數の五人、大阪の第一區は七人ですからこれが三・五人、こういう理窟で衆議院の四百六十六人を計算してみますと、實にこれは何とも言えない結果を生ずるのでございます。ひとつ數字を申し上げたいと思います。ただいまの説明によると、現在の四百六十六名の議員のうち、眞に國民の信頼によつて出てきた議員は、今の計算によりますと二百四十八名強ということになります。殘余の二百十八名という議員は、これは國民に信頼をもたれない、全然熱意のない添え物として議會に出てきておることになりますが、これは實にゆゆしき議會否認の言辞であつて、實際に國民に信頼された、ただいま申し上げる二百四十八名強の者が全部自由、進歩黨に屬していらつしやるわけではありますまい。そうすると、この理論で行つて私はこの議會を否認しようとするものではありません。私たちは現行法によつて公正なる國民の判斷によつて選ばれる國民の代表だと私たちは信じております。しかし提案者の説明によると、この議會の中の二百四十八名強しか國民に信頼を受けていないことになります。しからば提案者はかかる國民に信頼を受けた數の少ない二百四十八名しかいない者で、次の新憲法下における重大なる選擧法を、しかもその別表を改正するかのごときこの暴擧をあえてすることなく、眞に政治教育を施して、この現行制度でこういうことをしてはいかぬ、たとえば自由黨と共産黨を書いてはいかぬということをますます宣傳普及して、なるべくこうした信頼されない人が出ないような手續をとつて、しかる後にその選擧を行つて、その後になるほどこれならば信頼されたという御觀點にお立ちになつて、次の議會にかかる重大な法案なぞは審議さすべきだとはお考えになりませんか。それとも提案者のごとく、二百十八名の國民に信頼をされない議員があると自覺されながら、なおもこの法案をここで強行に押し進めようとなさるのでございますかどうですか。これをぜひお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=41
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042・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 石田君にお答えします。賢明な石田君からそういう質問を受けることを私は豫期しておりませんでしたが、私の先ほど申上げたことは、連記制におきましては第二、第三に對しては熱意を欠くおそれがあるということは申上げましたけれども、現在當選されている議員が、その熱意を欠いた票によつて當選されたものとは想像いたしておりません。從つてすべての議員が優秀なものと考えております。從つて先ほどのように前段を前提とした審議の問題に對してはお答えする限りでないと思います。ただ申上げますが、いわゆる第二、第三というものは、熱意を欠くというようなことは今日の新聞紙にも出ておりましたが、お互いに國民は、最もこの候補者中誰がよいかという一人を選ぶことさえ、相當困難なのであつて、それを二人三人と考えさせられることはそれ自體が無理であります。それは參考まででありますが、そういう論も新聞紙上にありました。以上のような次第でありまして、なお石田君の質問を具體的に調べてみる場合におきましては、投票の全部を調べてみない限りにおいては、その結果がどうなつているかということは、俄に速斷することはできないと考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=42
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043・石田一松
○石田委員 ただいま小澤委員は、この議會は私が言つたように決して多數の者が信頼されないものではなくして、これは立派な議會である。立派な議員の集まりであると提案者側から御言明がありました。そうすると、提案者は制限連記制における投票の結果でも、このたびの當選の結果は實に有資格者のみを送り出したということを是認あそばしたわけであります。そうすると、連記制の惡い缺點を趣旨辯明の中にお述べになつたことは、全然事實無根であつたということをおつしやつたことと同一のことになります。ただ一つ新聞で世間に何かこういう參考を書いているから、それも參考にはなるという程度でありまして、それは參考として私もとり上げる必要があると思いますが、少くとも提案者は本議會は國民に信頼された議員のみによつて構成されていると信じられているのですから、それならば今の現行の選擧法は、提案者の擧げるがごとき欠點によつて改正される必要はないという結論に到達したことを私は大變喜ぶものでございます。
さて私はくどくど申上げるのではございませんが、そういうふうになつてまいりますと、一言お聽きしたいのでありますが、先般來のこの委員會、またはこの前の選擧法の一部を改正する委員會等において、流血の慘事までみました。しかも小澤君におかれては、繃帶まで卷くほどの重傷をお負いになりながら、しかもこの委員會において昨日ももう頭が痛くて、お疲れになつておるのを、晩遲くまで御答辯下すつておることに對しては、まことに提案者側としてもお苦しいことと個人的には同情しておるのであります。しかし先日來の野黨の暴力を振つたということに對しては、私もその當時からこれに關係しておりまして、極力私は暴力を振わないように、この現實をまざまざ見ておりまして、なるほどこれは何も速記がとつたわけでなし、映畫をとつていたわけでありませんから、誰を誰が初めに撲つて、それが撲り返されたものかどうか。そのことの眞僞はここでとやかくいうことではありませんが、少くとも、ある新聞の社説に、堂堂と野黨側のこの暴力の非のみ強調をし、最後に申譯的に與黨側の反省を促がしておるようです。昨日同僚の中村委員が、別表の問題について御質問をいたしましたが、その質問はこの別表がわれわれの手に渡つて、わずか二三時間で整理された材料によつて質問をなされた。わずか二三時間の餘裕を下されば、小澤君自身がよく御存じのように、これだけの問題がこの別表に生じてくるのであります。小澤君も昨晩は私は岩手縣の出身だから、岩手縣のことならばわかるけれども、その他の縣のことについてはわかりませんというふうなことにまで立至る事實が、わずか三時間の餘裕を下されば、それだけの欠點がこの別表に現われてくるのであります。それならばあの亂鬪事件が起きる當時に、われわれが絶えず主張いたしましたごとく、なぜ正々堂々とこの別表をわれわれの前に、われわれの手に渡して、十分に檢討をする期間を與えて、これを堂々と單行法として本會議に上程し、たとえ四日でも五日でも本議會竝びに委員會において審議をする餘裕を與えなかつたのか。もしこれをこのまま繼續したならば、後日この點については中村委員から發言の保留がありますことですから、十分に質疑が行われることと私は信じておりますが、こういう杜撰な別表であるからこそ、われわれに審議の餘裕を與えようとなさらなかつたのではないか。こんなことになるから、こんなことが世間に新聞で發表されては困るから、上程をするその前の日までこの別表を隱していて、あす上程される、あすこの委員會に廻附されるということになつて初めて出して、われわれにこれを檢討する余裕を與えないで、一氣に押切ろうとしたところに先般來のあの委員會の興奮が生れたことと私は思います。そこで私が特にお願いしたいことは新聞の傳えるところによると、お怪我をなすつた被害者の方が、正當の手續を踏んで何でも告發しておるとか、告訴しておるとかいうようなことを聞きますが、これは問題が解決したのですか。それとも告發されておる本人であるある委員は、眞面目な意味でこの委員會で論議しておるのであります。個人として私は小澤君に眞に決してこういうことを言いたくないのですが、小澤君もこの法案に關する限り、そういうことはさらつと水に流して皆の納得のいくような、お互いが寛容な態度を示していただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=43
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044・山口喜久一郎
○山口委員長 あまり議題外にわたらないように行きたいものだと思います。小澤君お答えになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=44
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045・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 お答えします。私といたしましては、できるだけ今石田君のお話したような問題を、こうした席上でお話したくないと存じております。しかしお氣持の點は十分了承いたしまして、自分といたしまして善處いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=45
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046・石田一松
○石田委員 どうもありがとうございました。それで私は最後にお聽きしたいと思うのでございますが、昨日來この問題について、もし各派各黨に諒解ができる一致點があるならば、提案者の方としてもその一致點に向つて進むことに異存はないということを、提出者としての小澤君はおつしやいましたが、現在でもそうお考えになつておるのでございましようか。ぜひそれを再確認していただきとうございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=46
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047・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 お答えいたします。別表についていろいろな御意見がありました。その際にただいま石田君がお話のような、これに對してそれ以上の合理的な案が出た場合には、その相談に乘る用意があるかという御質問に對して、あるということを申し上げました。ただしその合理的な案が、われわれも合理的なりと同感し、同時にまず第一にこの修正案の根本である中選擧區單記制に贊成さるることを前提としてのみ、そのことが論議されることと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=47
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048・石田一松
○石田委員 それでは昨日來の各委員の質問にお答えになつたことと今お答えになつたこととは全然答辯が食い違つております。昨日來おつしやつたのは今あなたたちがおやりになろうと思つておるこの法案の中選擧區單記の範圍内で、ということはおつしやつておりません、兩者が話し合つてその一致點が見出せるものならば、という確かに御答辯でありましたけれども、一晩の中に何がゆえにそれほどの答辯の食違いがくるのですか。そうなると、私は質問を打切ろうと思いましたが、ちよつと了承しかねます、その根據をお尋ねします。昨日はそうではなかつた、速記録を調べてもわかる。今日になつたら中選擧區單記を變える以外の方法は駄目だ。中選擧區單記の範圍内での交渉なら應ぜられると言うが、それ以外は應ぜられないと言う、昨日と今日とのその答辯の食違いの根據をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=48
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049・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 お答えします。私が昨日お答えしたのは、中村君の別表の問題についてお答えしたのでありまして、そのときに私が今申し上げましたようにはつきり申し上げればよかつたのですが、別表についてこれを相談する余地があるか、用意があるかというお尋ねでありましたから、それについては合法的であり、われわれ提案者全部が納得する案であれば、私もいつでもその用意があるということをお答えしたのです。今日申し上げたのは、別表の問題をさらに明確にするために、いわゆる基本であるところの中選擧區制、あるいは單記制というものが崩れずして、別表だけについての御意見、ただいまのような合法的な意見があり、しかもその意見というものがわれわれの納得し得るものであれば、いつでもこれに應ずる用意があるということをお答えしたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=49
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050・石田一松
○石田委員 大變うまい御答えのようで多分そうおつしやるだらうと思つて私も待つていたのですが、あなたは昨日の御答辯で、中村氏の別表についてもそうお答えになつたが、その前の淺沼君の質問に對しては提案者全體としてはおつしやらないが、あなた個人としては別表問題以外のことについて各派が合意するものならば合意する意思がある、それに同調する意思があるとおつしやつております。速記録をお調べになつてもこれはわかる。その點の食違いの根據を一つ御説明を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=50
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051・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 私はその點についてははつきり記憶いたしておりません。私の考えは先ほどの答辯の通りだと考えております。速記録を調べて、ということでありますので、速記録を見た上で、適當に御相談をいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=51
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052・石田一松
○石田委員 では、速記録を調べてからの御答辯と言われますから、特に私はこの際これを追及したくはありません。私たちの眞意は、何もこれを妥協をこととしようとしているのではありません。少くともかかる重大なる選擧法案が、その時の與黨の多數でいらつしやることは事實でありますが、與黨側のみによつてこれが提出されて——私たちの意見もいくらかこれに加わつて、小數意見をこれに考慮されて、しかるのちこれが滿場一致の形でこの改正案が通ることを望む以外に、私にはほかに他意はないのであります。このことを諒承くださいまして、われわれが先日來とつた行動は、口では實に猛烈に戰つておりますが、その眞意は決して、われわれ自身が當選しようとか、野黨のみが今度多數を得ようとか、こういう意味でやつているのではありません。これが事實合理的なものであり、しかも各派が納得して、滿場一致で可決される、納得のいく選擧法の改正ならば、別表の改正ならば、われわれは決して少數の意見をどこまでも全面的に主張しようというのじやありません、その點を私は極力主張するのであります。提案者においてもよくわれわれのこの少數意見をおくみ取りくださいまして、もうあす、あさつてに迫つている會期でありますので、ぜひこれが滿場一致で贊成ができるという線に、提出者側においても萬全の處置を講じて、後世の史家によつて批判されたときに遺憾のないような手續、竝びに審理方法をとられんことを、切に切ににこの際要望いたしまして、私の質問を終る次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=52
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053・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田君に御相談申し上げますが、提出者に對する質疑はありませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=53
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054・徳田球一
○徳田委員 ありますが、あるけれども、重大な問題は幣原さん、それから植原さんに根本的な政策について質問したいと思う。それから幣原さんは進歩黨の總裁であり、植原さんは自由黨の黨員であるから、これはどこの議會でもその大臣になろうが、何になろうが、これは黨を代表してやつているのである。從つてこれは黨の決議に對してはみな責任を負うべきものだから、それらの點からどうしてもこれは追究しなければならない問題である。それから後に提案者に對しまして細かい事務的なことを聽きたいと思うのであります。どうしても基本的な問題を解決しなければ、質問がちやんと論理的に發展しないのであります。そういう意味から幣原さんと植原さんの御出席を願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=54
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055・山口喜久一郎
○山口委員長 もう十分くらいしてお見えになると思いますが、その間その事務的な問題からお進めいただくように、堪能な徳田さんのことですからその順序を振替えていただくわけに行きませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=55
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056・徳田球一
○徳田委員 そうすると少々長くなると思いますけれども、長くなつても構わなければ……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=56
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057・山口喜久一郎
○山口委員長 どうせ長短は一緒でしよう。どちらからやるのも……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=57
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058・徳田球一
○徳田委員 一緒だけれども前の基本的のものからずつと流れていかないと相當やらなければならぬ。重複することになるから長くなる。こういう理窟であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=58
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059・山口喜久一郎
○山口委員長 しからば木下君からお進めいたします。木下榮君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=59
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060・木下榮
○木下委員 提案者に質問いたします。本日御配付になつた人口表の割當でありますが、これはどこからお調べになつたのでありますか。まず第一に伺いたいと思います。
〔委員長退席、神田委員長代理着席〕
選擧の對象は有權者の數によるものであつて、單なる人口では標準が立たないと思う。であるから有權者の數の割當表をつくつていただきたい。それからまだありますが、おもなる一つの例をあげますと、兵庫縣の場合單に神戸市三名としてある。第三區は同じく三名でありますが、本年の二月一日に神戸市に合併された町村はどつちにはいつておるか。これは一つの例でありまして、まだ全國にたくさんあるが、神戸市の例を一つ、この人口割當表はどこでつくつたか。信頼できるか。それから選擧の對象は有權者である。人口では標準が立たない。有權者の數の表を提出していただきたい。これをお伺いします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=60
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061・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 お答えいたします。御要求の通り有權者の表をつくることにいたします。なお後段の兵庫縣の例でありますが、これは昨日中村君からもいろいろそういうような點を指摘されてお話がありました。ところが委員會におきましては最終だつたと思いますが、委員長よりお諮りいたしまして、この別表に關する問題は、各派から代表を選んで雜談的に、あるいは懇談的に話すことによつて、よりよき成果を得るだらうというような結果になつておりますから、やはりこれも中村君の案と同じように後日懇談の際、詳細に主張されて、もし私どもの間違つておる點があれば、説明したいと思いますから、その際に一括してお出しを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=61
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062・神田博
○神田委員長代理 木下君に御相談申し上げます。ただいま幣原國務大臣がお見えになつておりますので、徳田君に代つていただきたいと思いますが、いかがでございましよう。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=62
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063・木下榮
○木下委員 それでは今の問題は保留しておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=63
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064・神田博
○神田委員長代理 徳田球一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=64
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065・徳田球一
○徳田委員 幣原國務大臣にお伺いいたします。幣原國務大臣は、この前大選擧區に改正いたしまする際には、この大選擧區が今後の政治を明朗にし、選擧を正常にするものであるということを言明せられたことは、先ほど石田委員からの質疑によつて明らかになつておるところであります。しかるにこのたび選擧法の改正をいたしますことに關しまして、幣原國務大臣は、情勢が變化したから、情勢が變化した場合に、また政策も變化することは進歩であると思われる、それゆえにかかる變化することに對しては、何ら政治的責任を云々すべき筋合でないと言われるのである。しからばここで問題になるのは、現在の情勢はいかに發展しておるかということであります。日本において現在發展しつつあるところの諸情勢は、民主主義革命の激化でありまして、また民主革命を徹底しない限り、現在の政治的な諸情勢は決して改善されないし、また安定されないものであります。同時にこれは現在の經濟情勢に大いに關係があるのでありまして、この經濟的な諸情勢を安定せしむることなしには、政治的な情勢も安定しないのであります。しからば現在の經濟情勢のいかんに關しましては、既に本日の朝日新聞に明らかにせられておるのでありまして、マ元帥からの吉田首相への書翰があります。同時にこれに對して吉田首相からマ元帥に囘答を送られておるのでありますが、これによりますと、明らかに日本政府の經濟安定に關する諸方策はきわめて間違つておる、政府はこの經濟安定に關し非常な怠慢であるのみか、まつたく誤謬を犯し、責任を遂行しておらぬことを追究せられておるのである。しかるにこれに關して吉田首相の答辯なるものは、まつたくこれはなつておらない。これはもの笑いの種である。昨日から新聞記者の諸君もわれわれの控室にまいりまして、かかる答辯などはまつたく兒戯に類するものであると嘲笑しておるのである。國際的な恥さらしである。そこに書いてあるところのものは何である。現在われわれはやつておるのだ、こういうわけである。そうしてまたこれを強行するのだこう言つておるが、しかし現在いかん、現在の經濟情勢はますます惡くなる一方ではないか、物價はだんだん上つていく。市場にはますます物がなくなつておる。欠配はますます深刻になる。米の生産縣から消費縣への搬出は、ますます困難になりつつある。また一切の生産の状態はますます惡化しつつある。これは主として鐵鋼の問題をここに掲げてあるのでありますが、一月まで大體において比率が、石炭は計畫に對して一一〇%、その他は六〇%、銑鐵は九三%、鋼材はわずかに七三%、しかるに二月におきましてはこの比率はだんだん下つておる。二月には石炭は九二%に下り、その他は少し上つて七〇%になつておりますが、重要な問題、必要な鐵においては、銑鐵は八五%に下り、鋼材は少し上つておる。しかしこれは停滯しておる。七六%である。しかるにこれが三月上旬におきましてはますます低下しておる。石炭は七四%に下り、その他は再び六一%に下り、銑鐵におきましては五八%という驚くべき低下である。鋼材もまた五九%に下つておるのである。計畫のわずかに半分近くしかできておらぬ。かくしてますます經濟状態は惡化しつつあるのである。かかる際におきましては、現在の政府を支持しておりますところの自由黨、進歩黨もなおかつこれは責任を負わなければならないのである。しかして自由黨、進歩黨の責任においてこの政策が破壞しつつあることは明らかである。現在の多數黨がかかる責任を負うべき重大なる被告の立場に立つておる。從つてまたその總裁であられる幣原國務大臣も、被告たる立場をとつておると私は信ずるのである。現にこのマ元帥の書簡は、まつたくこの點について痛烈に責任を問うておるのである。かかる情勢におきましては、いよいよますます反動的諸勢力、すなわち大地主、大資本家、やみ的な組織をもつておるところの資本家、こういうものを追究すべき必要がある。これを破壞しなければならないのである。またこれと結合しておりますところの高級官吏、總行政機關を刷新する必要がある。これは徹底的に刷新しなければならないのである。しからばかかる要求に應ずるためには、どうしても勞働者、農民、一般市民、中小商工業者の、全體としての人民の利益のためにこそ、選擧法もまた改正さるべきであることを信ずるのである。幣原國務大臣は、その點におきまして今度のこの大選擧區、あなたが責任をもつて布かれたところの大選擧區、これはこういう意味において人民の代表が進出するに、確かに有利である。現に勞働者諸君は、この中選擧區の問題に對しては徹底的に反對しつつある。なぜならば、訓練された勞働者は、自己の代表者を三人連記なら三人、二人なら二人、直線的にこれを推していけば、他の政治的な能力の低い者に對して、十分勝利するだけの選擧はやれるのである。現にその方針に對して、各勞働組合がみな各方策をきめまして、非常な活動をしつつあるのである。また農民組合におきましてもそうである。他の文化團體におきまして、あらゆる團體におきまして、政治的な行動なしに、議會に多數を送ることなしには決定的な勝利は得られない。ストライキだけではどうしてもだめだ。これは一つの大きな武器であつても、ストライキだけに止まつてはいかぬ。單に爭議だけに止まつてはいかぬ。さらに政治的に大進出をしなければならないということを自覺しきたつたのである。これに對して既に勞働者諸君は、昨年十月ごろから繼續的に準備を重ね、特に二・一ストライキ後におきましては、この政治的興奮が、まさに劃期的に躍進しておるのである。人民の政治的熱意は非常に燃えておる。しかもこれに最も有利なものを、あなたがあなたの責任において出されたのである。しかもこの制限連記制というものが、比例代表への一つのはしごだんであるということは、その當時言われておるところである。比例代表の方がより有效である。そのはしごだんとしてのみ、この制限連記制は認めらるべきであるということを言つております、また事實そういう傾向を示しておる。この連記制によりまして、少數派の意見を代表するところのものは、多くこの議會に議席を得ておる。殊に共産黨のごときは、この點では實際上非常に損をしておる。われわれは二百萬票以上もとりました。實際これが比例代表であれば、十五、六人は出せるのである。そうでないために、われわれは、最初の當選は五人であつた。しかし制限連記であつても、これが比例代表へ進むという意味においては、われわれ五人が出たことは非常に有意義である。また議會におきましては、共産黨の五人がおるということは、非常に重大なる意義をもつておる。これは幣原國務大臣も十分御存じであろうと思う。しかるにあなたはいかなる條件があつて、いかなる情勢の變化によつて、この發展する方向を逆にもどすべきものと判斷せられましたか。いかなる情勢からこうなつたか。客觀的諸條件につきましては、幣原國務大臣——國務大臣としてのみならず、進歩黨の總裁として明確なる意見を述べる必要がある。これではこの中選擧區は小選擧區に近い。そうしてまた植原國務大臣は、小選擧區の方が理想的だと言われる。それは英國の組織でありますが、英國が理想的だと言われる。英國においてはどうだ。英國においては内閣に列するものはみな議員だけである。大臣はみな議會の議員である。議員でなければ出られない。なぜならばこれは黨が支配しておるからである。黨が責任を負うておるからである。議會で論議する者は議員以外にはない。すなわち議會に登院し得る者は、議員としての發言をし得るもののみに限られている。從つて新しい憲法におきましても、また議會に席を有する者が首相として指名されるのであつて、その新憲法の精神は、現在もう既にこれを實際上實行しなければならないのであります。また實行しておる。そういう精神でやつておるということは、たびたび政府も聲明せられておるところである。植原内務大臣も本席においてまた聲明しておられるところである。それゆえにあなたがただ國務大臣として、政府の役人として、形式的の答えをすることはこれは必要ない。むしろ進歩黨の總裁として、實質的にいかにこの選擧問題に對して考えておられるか。あなたが進歩したと言われるこの客觀的の諸條件をどう考えられるか。この點をお聽きしたいのである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=65
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066・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 ただいま徳田君は、マツカーサー元帥の手紙はあたかも日本政府を糺彈するがごとき趣旨であるようなことを仰せられた。またそれに對する日本政府の囘答は、世界に對する面よごしである、恥さらしであるというような汚い言葉をもつて批評された。はたしてマツカーサー元帥の手紙が日本政府の糺彈であるかどうか。もう少し公平に、冷靜に、その目標をごらんくだされば、私はその趣旨はよくわかることだと思う(「ヒヤヒヤ」)今年の二月の七日か八日ごろに、この議會を解散する方がよかろうといつたような趣旨の手紙をマツカーサー元帥が總理大臣にあてて出しております。その手紙は既に發表されております。それは徳田君も必ずお讀みになつたことだと思う。過去一年間の經過を見てみると、日本の國内の情勢、經濟の模樣、すべてが一變しておる。この際にもう一遍ひとつ民主的な方法によつて民意を徴するのがよかろう、こういつたような趣旨が書いてあります。私も同樣に信じておる。過去一年間の變化というものは經濟的の問題だけではない。すべての問題において變つておると思つております。それでこの變化に適應するような改正をこの際にやるということは、これはやはり進歩だと私は思う。この進歩があつてこそ初めて民主政治というものは完全に行われるのである。いつまでも古い着物を着て舊套を追うというような形は私は贊成しない。選擧法それ自身でも、從來の方法が惡いと思えば何も遠慮することなく、どんどん變えて一向差支えないと私は考えているのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=66
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067・徳田球一
○徳田委員 しからば、このマ元帥の吉田首相に對する書簡を全部讀まなければなりませんが、これを全部讀むことはおそらく皆さんもお退屈であろうと思われますので、特にここで新聞記者が要約しているところの三點だけ擧げまして、いかにこれを指摘されているものであるかを……。(「經濟的の諸條件の發展が實態じやないか」と呼ぶ者あり)客觀的の條件の發展が重大じやないか。
〔「賣名じやないか」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=67
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068・神田博
○神田委員長代理 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=68
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069・徳田球一
○徳田委員 客觀的の條件の變化によつて進歩するということが、これが大事なことだ。
〔「止せ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=69
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070・神田博
○神田委員長代理 靜肅に願います。論旨を進められるよう望みます。
〔「選擧のことに願いたい」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=70
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071・徳田球一
○徳田委員 選擧法の改正というものは單に表面的のものではない。客觀的な諸條件に應じて變化すべきものだということは、一年間にかかる認めているものに對して、われわれがこれを根本的に論究することに對して……。
〔「新聞記事の朗讀はいかんというのだよ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=71
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072・神田博
○神田委員長代理 私語を禁じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=72
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073・徳田球一
○徳田委員 幣原國務大臣はそうじやないというのだから、證據を明らかに提出することはわれわれの任務ではないか……。
〔「私語を禁じて下さい」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=73
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074・神田博
○神田委員長代理 私語を禁じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=74
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075・徳田球一
○徳田委員 しからば、この要綱をちよつと讀んでみますが、こう言つております。この書簡を送り國民生活の安定について日本政府の責任を指摘し、特に指摘し、かつ生産再開のための強力な、總合的經濟統制を必要とする旨を強調し、と特に言つているのであります。しかるに現在におきまして、この總合的な統制經濟はちつとも強化されておらぬばかりか、ますます弛緩し、ますますやみは横行しつつあるではありませんか。國民の經濟生活の安定の方向に向わねばならない。向うことが日本の政府の責任であるということを、特に指摘されている。そして現在日本の食糧問題が、非常に破綻する。これに對してどうしても輸入しなければならない。輸入をするためには日本におけるこの供給問題を、公正にやらなければならないということを、特に強調されているのであります。現にこの状態がどうです。幣原國務大臣は遲配欠配の大横行に對して、やみ物價は、今や米が大阪においては千三百圓、芋は八百八十圓もしている。この事實に對しまして、はたしてこれを糺彈さるべきものでないと信ぜられますか。誰人もこれは糺彈すべきものである。國民は囂々として糺彈している。またこの趣旨におきましてもそうである。かかる状態、かかる不公正な状態がなくならない限り、輸入することに對しては躊躇せざるを得ない、ということを指摘されているのである。これが前提問題であるということは、このたびの書簡のみならず、幾たびもこれは強調せられているのであります。政府は十分に御存知であると思う。しかるにこの明確なる書簡に對しましても、幣原國務大臣はこれをそうでないと認められる。そこにいかなる理由があるか。いかなる點が存する。どこにそういうあれがあるか。その點を十分に明らかにせられんことを希望するものである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=75
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076・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 その手紙をよくお讀みくださるように私はお願いするのであります。少しも政府を糺彈いたしているとは私は思わない。政府が國民生活を安定するような手段をとるということは政府のやるべきことであつて、これは當然のことであります。それを責任というのである。それが何がおかしいのでありますか。これがあるから、これが行われないからといつて政府を糺彈するというような意味はありません。政府もそういつたような意味に私は解してはいかぬと思う。何ゆえにそういう手紙を寄越されたかというその目標を、もう少し冷靜に、公平にお考えくださることを希望するのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=76
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077・徳田球一
○徳田委員 これ以上追究することは止めます。しかし責任を指摘するということは、責任は君らにあるではないかということは、糾彈でなくしてなんだ。これを實際上やつておるならば、なぜ責任を指摘する。平地に波瀾を起すものではないか。かかることを自分が糾彈せられておるのではないと理解せられること、ここに政治的な神經の消磨しておるところがある。もうこれは感覺がなくなつておるのである。でありますからわれわれはこれをさらに追究する必要がないと信ずるのである。しからば幣原國務大臣の言われるにおきましては、この一年間社會情勢は變つている。だから總選擧をおやりなさいということを、マツカーサー元帥から御書面を送られたといわれますので、それで今度は状態が變つたから新選擧法で、改めてやらなければならない。こう言われるのでありますが、それならばあの書簡の中にはこの選擧法が惡いから、それだから現在の諸條件に對しては、諸状態に對しては、既にこの選擧法では、國民の總意を問うに足りない。新しい選擧法でなければならない。いかなる選擧法がいいかということに對して、特に御指示があつたというのであるか、その點をお伺いしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=77
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078・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 私がただいまお答え申したことをよくお考え願いたい。私は何もあなたの仰しやるような解釋で、意味で申したのではありません。よくお考えを願いたいのであります。形勢は大變違つてきておる。それゆえに選擧法を變えろと書いてあると私が言つたように仰せられるが、そんなことを私は言つたことはありません。形勢が變つておるならば、形勢の變化に應じて法律を變える方が、ここに進歩というものがある。長い間、十數年前にできておつた法律を、そのまま行われるということは、それがいいということを私は言つておるのじやない。その間に時世の變化があると思うなら、それは遠慮なく改正修正を行つていいと、私はこういう趣旨で言つたので、何もマツカーサー元帥の手紙の中に、今度選擧法を變えろと書いてあると、私はそんなことを言つたことはありません。私の言つたことを曲げて解釋して、そうしてここで抗議をされることは御免をこうむります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=78
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079・徳田球一
○徳田委員 しからば私は幣原國務大臣の御答辯がきわめて不誠意であると思う。そういう原則を聽いておるのではない。そんな原則ぐらいたれでも知つておる。議員を侮辱しない限りかかることをもつて答辯すべきではないと思う。情勢が變ればこれに從つて法律も變るという。これは原則で、誰だつて知つておる。そういうのではない。そういうのではないのだ。この選擧法についていうのだ。具體的のことを言つておる。なんだ。この選擧法についてこちらは聽いておる。そんな原則を聽いておるのではない。そんな原則なら聽く必要はない。私はこの選擧法の實際上の改正にあたつて、今度の民意を問うに對して、この大選擧區が惡くて、なぜ中選擧區に變えなければならないか。これでなければ國民の總意を問うことはできない。そういう必要があるという、そういう客觀的諸條件に對して答辯を要求しているのである。だから幣原國務大臣の答辯、決してこつちの質問に對して符合しているのではないと思う。もつと具體的にやつてもらいたい。今度何ゆえに中選擧區に變えなければならないか。そういう具體的な諸條件に對して言つているのだ。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=79
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080・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 もう私はこれ以上答辯したつて、徳田君を滿足せしめることはできないと思います。たびたび提案者からも申されたごとく、いよいよ時世が變つてきているのだから、こういうような案を出すに至つた。このことは説明しておられるので、私はそれを裏書きして申したのであります。何もそれは不思議なことはないと思う。しかしながら私の言つたことを曲解されて、あるいは歪曲されて解釋されるのなら、それはもうお答えする必要はありません。
〔神田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=80
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081・徳田球一
○徳田委員 幣原國務大臣はきわめて答辯がお利口でありまして、私は幣原國務大臣の言つていることを曲解しているのではない。幣原國務大臣は言わないのだ。言わないものをなぜ問うか。私の要求していることは、客觀的な諸條件を具體的に言いなさいと言つているのだ。物事は具體的なことが必要なんだ。單なる原則を言つて、原理を言つただけでは問題にならない。天は高く地は低くと言つたのではだめだ。そんなことは何だ。あたりまえだ。そんなことばかり言つておつたのじや何にもならない。高い所から低い所に水は流れる。そういう原則はあたりまえだ。そんなことを言つても何にもならない。それは政治でも何でもない。時世が變化するに從つて法律も變化する。あたりまえのことだ。そういう原則だけ言つて、それで問題が濟むのではない。具體的に言つて、この中選擧區をなぜ今ここに改正しなければならないかという具體的の條件を示しなさい。それが必要じやないか。それなしにいかにして答辯ができ、いかにして政治が行われるか。しかるに實際は何だ。私は具體的に言うているではないか。現在の情勢においては、大資本家や、大地主や、大やみ利得者や、そういうものの存在、これと官僚との結託、こういうものの存在する以上は、この政治の情勢というものは改善されないということを言つている。これが常態なんだ。かかる場合には民主的な勢力が伸張せらるべき、そういう選擧法が必要ではないかと言つているのだ。それは具體的なんだ。ところがあなたは具體的に示しはしない。中選擧區云々はちつとも具體的な條件を示しておらない。それゆえに進歩黨の總裁として、何らそういう具體的な條件を示しておらぬ。示し得ないところに、ここに大なる欠陷があるのである。すなわち中選擧區というものはご存じの通り、大選擧區の弊害ももつている、小選擧區の弊害ももつている。ありとあらゆる病いの巣だよ。(笑聲)あらゆる病氣が發生し、餘病がだんだん發生する大きなもとだ。それが中選擧區なんだ。徹底的の小選擧區にすればこれは直ちにわかる。もうこれは非常に惡いということがすぐわかる。だからすぐ破壞される。だれだつて贊成しない。だから小選擧區の利益をもちながら、そうしてこの小選擧區の弊害を負いながら、なおかつ大選擧區の利益を、なお幾分かでもこれを發現し得るかのごとくよそおうている所に、この中選擧區の重大なる欠陷がある。これはどこの社會だつてそうなんだ。だけれども特にこの中選擧區においては、こんなのは中選擧區とはいえ、小選擧區に近い。なるべく小選擧區に近いように近いようにこれを押し詰めていく。だからこの別表にもみな無理ができてきているのである。この別表がわざわざ三人から五人となぜこれを決定する必要がある。何もしいて三人でなければならぬ。五人でなければならぬ。按分ということは便宜だという。そもそも便宜だというならば、實際上この別表をつくる時に便宜といふ手を用いたらどうだ。いくらでも便宜を用いるがいい。そもそも便宜だから標準といふものはない。しかもこの便宜の目的とするところは、これは小選擧區になるべく押し詰めようとする、小選擧區の利益をなるべく多く吸收しようとするその努力のための便宜なんだ。これは京都の例でありますが、京都の市をまつ二つにわけてある。なぜまつ二つにわける必要があるか、京都の第一區がちよつこりとまん中にある。第二區がこれをぐるぐる囘つておる。何をそんなばかなことをする必要がある。京都市を一體にしてもちよつとも不都合ではないか。ただそれが六人になる。五人に伸べるといふことを表面上の理由にして、これをまつ二つに割つてある。こんなことではなんにもならぬじやないか。そうしてそこには明かにそこを狙つている人がちやんと計畫している。その事は提案者である小澤君が既にこの席上において聲明せられるごとく、この提案の別表は全體として一つの統一制を持たない。全體としてこれを十分に説明し得るものを小澤君自體が持たない。小澤君は岩手縣出身、岩手縣選出であるから、岩手縣だけだ。各選出代議士の都合のよいようにつくつてをる。小澤君はなかなかまじめな人でありまして、そういうことは禁ぜられておるであろうけれども、たまたまやむを得ず實際であるからやむを得ずこうなつたのでありまして、こういうふうな状態である。でありますからこの中選擧區というものは、一黨派の利益のために無理押しをしておるということは明らかである。明確なことだ。そういうことになります。これは一體何が繁昌するか、政黨ボスが繁昌するにきまつておる。かつまたその選擧地區々々において、この政黨ボスを中心として、その下にまたまた小さいボスが發生するにきまつている、顏役がズラリと強固になることはきまつてゐる。これまでの状態がそうである。だからいかに統制法が布かれも、いかに法律が布かれても、みなそれがぐるぐるつとからになつて、それを拔ける途がいくらでもあつたのである。そうであるからこの大紛亂が起つておる。それは官僚組織でもみなそうである。みな子分々々と筋をとつて、そうして根を張つておる。それがすべての罪惡の本である。現に公定價格が非常に低すぎる。生産が上らないのを無理やりにわざと改正しまいとしている。なぜか、これはやみをやるのに都合がよい。公定價格がちやんと合うならやみをやらなくても堂々とやつてもうかる。公定價格が合はないからどうしてもやみをせざるを得ない。せざるを得ないからいよいよ犯罪は發生せざるを得ない。そうしなければ生産はできない。要するにこういうボス組織が發達するような選擧法ではいけない。このボス組織を根本的に破滅さして行く。これを切開して行くということは、現在の日本の情勢においては最大の必要事である。かかる具體的の客觀的の情勢に應ずるところに、法律の進歩というものがある。單に世が變つたから變えなければならぬというだけでは進歩がない。變つたから變つたもの、これが現在の情勢に應ずるものでなければならぬ。これは明らかに反動だ、進歩じやない。それは逆行だ。退歩だ。墮落だ。それゆえに私は、この中選擧區が正當であるや否やを質すために、特に幣原國務大臣の出席を願いまして、ここにこの問題の重點を問うておるのである。しかるに幣原國務大臣は、これに對して何ら答えられない。そうしてさらに重大なることがある。幣原國務大臣はここにおかれまして、これは議員が提出しているのである。政府はちつとも關與しておらぬ。議員がこれをよいというならば、それは何でもよろしい。それは政府は受け入れる。議員さへよければよいということでありますが、しからば幣原國務大臣は進歩黨の總裁である。實際議員を指導しておらるる、責任をもつておらるる人である。これは徒黨ではないのだから、ちやんと屆けの出た公黨でありますから、堂々としなければならぬ。あなたが進歩黨の總決定に對するところの責任を負われる身でなければならない。そうであると私は信じます。しからばこの議員の提出する議案に對しまして、あなたは何ら責任はないのだ。おれは責任はないのだ。これは議員だけがやつておるのだ。おれは内閣國務大臣だと言われておる。それでは納まらない。あなたに責任がある。進歩黨の決議に對しましては、全面的に責任があると私は思う。それゆえに單にかかる議員が出したからよいというだけでは、私は足らぬと思う。少くともこれに對しまして、あなたは責任ある囘答を、責任ある方針を示されることが必要であると思うのであります。それゆえ特にしつこく、この中選擧區が、どのように正しい。根本的な方針において何ゆえに正しいかということを、御囘答あらんことを希望する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=81
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082・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 また同じことを……。私はこの問題については、何も責任がないのだというようなことを言つたことがありますか。私は責任ないと言つたことはありません。これはすなわち兩黨から出したものである。これは言つたことがあります。政府が出したのじやない。提出者じやない。それゆえに私にお聞きになるならば、私は國務大臣として答辯いたしておるのであります。この法律の精神というものは、兩黨の代表者がここでもつて昨日から詳しく説明いたしておるのであります。私はそれに附け加えて申すことはないと言つたことはあります。しかし私に何も責任がないといつたのじやありません。黨の總裁として、黨の内部で話したことを、みな言わなくちやならぬということでありますならば、徳田さんは御自身の黨の内部でいろいろ話のあることを、すつかりすつぱ拔いて話をしますか。そういうものではなかろうと思う。公黨であるがために、黨の中に行われた論議というものを、ここでもつてすべて説明しなければならぬというものじやない。それだから私は國務大臣として答辯すべきものじやない。こういう趣旨で私は言つたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=82
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083・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 ちよつと徳田君に釋明申し上げておきます。先ほど私の名前が出まして、昨日の答辯で私の縣は私が知つておるが、その他の縣の事情は知らないからというようなお話が出ましたが、それは原則的には再三申し上げました通り、まず人口というものを基準にみて、それから地理的關係、經濟的關係、歴史的關係という根本原則は、もう全體の選擧區一定しておるのであります。ただ具體的に京都府あるいは大阪府の一區、二區というものをきめる場合において、經濟的にどうか。地理的にどうか。歴史的にどうかという具體的問題だけは、私が知らぬから、それに關與しておらぬから、お答えできぬという趣旨でありますから、おそらく誤解ないと思いますけれども、私の名前が出ましたから、ちよつと御説明申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=83
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084・徳田球一
○徳田委員 幣原國務大臣はなかなか論法がうまいようでありますが、これはしかし的をはずれておる。なぜならば私は共産黨の書記長として、共産黨の決定したことに對しましては責任を負い、かつ公言いたします。常にわれわれは發表いたしております。最近におきましては新聞にはあまりわれわれの聲明だの發表だのを載せませんので、われわれはアカハタにどんどん載せております。もし御必要があるならば、アカハタを常にお送りいたしましよう。明確に公言しておるのである。われわれの決定したものに對し、黨の態度に對しては、責任がある地位において聲明することを惜しまない。中のごたごたを話せというのではない。何も人の尻の孔まで見る必要はない。それをわれわれは言うのでない。しかし堂々と決定せられた方針に對して、責任を負うて馨明を發し、この趣旨に對してあなたが根本方針を明らかにすることは、これは責任である。そういう意味においてならばわが黨は、書記長の地位にある私は、いかなることでも常にやつておる。またやります。あなたはできないだろうというようなことを言つておるけれども、そんなことじやない。できる。いつでもやつておる。だからあなたは、この根本方針に對しましては、これまで提出者から言われただけでよろしい。それ以上は何ら附け加えることはない。こう言われるのでありますが、それではまつたく貧弱である。この根本的方針に對しては、ほとんど何ら説明しておりません。それはすなわち何を意味するかと申しますれば、この中選擧區に改正するということは、これは手續の如何に對していろいろな問題はありますが、これは後にいたします。根本的に言いまして、これは現在の情勢に對して適應するものではなくして、逆行するものである。この選擧法でいくならば、いよいよますます状態が惡くなる。既に警告せられておりますところの、日本の全經濟の總合的處理、統制經濟の一層の強化、そうして全面的に經濟を安定する方向ではなくして、これが生活の基本でありますから、從つてまた政治の基本である。一切の社會的諸條件の基本である。そういうことを處理するに、より進歩的役割をなすのではなくして、これは逆の役割をなすことであるのである。これが明らかである。この點はちつとも説明されておりません。從つてこの中選擧區を提出したところの根本的な趣旨辯明というものは、ほとんどなつておらぬ。だからこれは通用しない。議會におきましてはかかる根本的な趣旨に對しまして、何らの趣旨を明らかにしないような情勢におきまして、これを論議するということは、私は根本的に拒否さるべきであると信ずるのである。しかしながら幣原國務大臣はこの點において、何ら答えるところがないのでありますから、これ以上追及はいたしません。しかしながらわれわれの知る範圍におきましては、幣原國務大臣は、ぜひともこの中選擧區單記制を押し通せ。全黨員はこれに對して決死的になつて、無理でも押し通せということを激勵されておると、漏れ聞いておるのである。しからばこの點におきまして幣原國務大臣は、この情勢に逆行して、みずから稱するところの進歩に對する原則を破壞するものと、われわれはとらざるを得ないのであるが、あえて幣原國務大臣の答辯を要求しないのである。なぜならば要求したつてほとんど問題にならないからである。だからこの點だけを明らかにいたしまして、幣原國務大臣に對する私の質疑はこれで打ち切ります。その次に植原國務大臣兼内務大臣、國務大臣が本職でありまして、内務大臣はこれは兼職でなければならない。日本における制度は所管大臣は事務的であるが、いずれも國務大臣であつて欲しいのであります。從つて國務大臣兼内務大臣としての答辯を要求する次第であります。植原内務大臣は選擧の實情は小選擧區だ小さい選擧區だ。こう言われたのであります。しからば小さい選擧區制を現在日本で行わずして、この中選擧區制を行わなければならない。そういう實際上、具體的な、根本的な理由について御説明を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=84
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085・植原悦二郎
○植原國務大臣 しばしば私ここでお答えしておるから、徳田君よく御諒承うくだすつておることと思いますが、私が選擧區制というものに對して私の一番いいと思う理想を言えと言われます場合には、私は常に一區一人の小選擧區が一番よろしいのだ。これはその候補者の主義主張を選擧民に徹底せしむる上から申しても、またその區の代表者が選擧民と密接な關係をもつ點から見ましても、國會がねらうところの議會中心主義の政黨政治の基礎の上において、政局を安定せしむる上においてもそれが一番よろしいと思うのだ、こう申しておるのであります。そこで現在の中選擧は、徳田君御承知の通り、議員提出の方の案であります。私の主張する小選擧區をやらないで、なぜ中選擧區をとるのかということは、中選擧區を今論議しておる理由は、議員の方々の提案なのであります。そこで現在の連記制の大選擧區と、今議員の方の提案しておるところのいわゆる中選擧區と、いずれがよろしいかと言えば、私は議員の方々の提出しておるものの方が、現在のものよりはさらに優れて、日本の實情に適したものである。こう了解すると御承知を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=85
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086・徳田球一
○徳田委員 それでは植原内務大臣の根本的な趣旨は小選擧區がよろしい。小選擧區がよろしいから、これに近いものだから中選擧區がよろしい。こういうわけでありますか。結局そういうわけですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=86
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087・植原悦二郎
○植原國務大臣 それも一つの理由でありましよう。なおさらに日本の現下の實情も考えて、諸般の問題を考慮いたしてのことでありまして、ただ一に小選擧區に近づくからというのみの理由でないことは御承知願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=87
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088・徳田球一
○徳田委員 それでは現在の日本の實情及び諸般の事情と言われるのでありますが、この點は非常に重大でありまして、今さつきも幣原國務大臣と大いに爭つたところでありますが、この爭いを幣原國務大臣は、何ら具體的に示されなかつたのでありまして、從つて植原内務大臣がこの點にふれられましたことは非常に喜びにたえない次第であります。その内容を具體的にひとつお示しをくださらんことを希望する次第であります。この中選擧區、大選擧區云々の問題は、すべて具體的の問題でありますから、ただ實情がどうとか、諸般の事情を總合してとか、これでは單に抽象的のことであります。何が實情であるか、何が諸般の事情であるか。これがわからなければ審査する基礎を失うのでありますから、かかる抽象的言葉でなくして、はつきりした具體的のものをお示しくださることが必要だと信ずるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=88
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089・植原悦二郎
○植原國務大臣 あげましたらいろいろあると思いますが、今の大選擧區の連記ということによりましては、昨日も私が申し上げた通り、一縣で五人の區の所ではこれは一名、一人の國民が一名の代表者を出すだけのことであります。しかるに一縣下十三人、十四人である所では、三名の連記で三人違つた人を書けます。これは徳田君のような明敏な頭腦をもつておる方には、いかに不條理であるかはすぐおわかりであると思います。それから現在の大選擧區のような場合において、選擧の期日が二十五日、三十日と限られておつて、英國などのように、あるいはアメリカのように政治思想が發達して、一年中その政黨の主義主張を選擧民に徹底せしめておられるようなところなら別でありますけれども、日本では戰爭中政黨は皆解消せられてしまつて、政黨ができたと申してもまだ一年かそこらしか經つていないのでありますから、古い政黨でもその主義政策や、そのすべての組織を選擧民に知らせるには、割合小さな方法が知らせいいという點から考えても、これは徳田君すぐおわかりのことで、個人々々の問題は別といたしましても、そういう主義政策を選擧民によく徹底せしめて理解せしむるには、あまり今のようでは範圍が廣すぎて漠としておるから、それより縮まつた方がよいということもありましよう。今のように大變交通機關の不便な時に、全縣下を、いくら選擧區でも津々浦々までよく徹底して演説して歩くこともできないような實情が必ずある。ある地域に限つた所だけは動けないような實情が多いでありましよう。それならば動ける範圍において、個人の識見や政策を、はつきり選擧民により多く聽かしめ、知らしめる機會があつた方がよろしいでありましよう。算え來れば無數でありますが、このくらいのところでどうか御諒承を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=89
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090・徳田球一
○徳田委員 これは驚いた。現在の情勢がどうであるから中選擧區がいいというのではない。これは講義だ。それは選擧問題に對する講義だ。十年前に言つても同じことである。百年後に言つても同じことである。それは講義である。そんなことを私は聽いておるのではない。そんなものは聽かないでも、私が鋭敏でなくてもわかる。それは少しも問題ではない。何ゆえに現在の中選擧區が必要であるかということを言つておるのであります。いわゆる社會的條件、經濟的條件、國民の要求、民主革命を達成するために選擧法という手段を、いかに適當に處理すべきかという、客觀的な諸條件を私は聽いておるのであります。ですから少しも返事にあたりません。しかしながらその返事にあたらないからこの點を具體的に言つてもらいたい。あなたの今言われた講義に對しまして、私は現在の情勢に實に適せないことを言われておることを指摘したいと思うのであります。なぜならあなたの言われることは、すべて選擧法というのは、この選擧の間だけのことを規定しているのであるから、問題は選擧の期間中、二十五日間が問題になつておる。これは私はほんとうに選擧法の實情を理解しておらぬと思う。なぜなら政黨本位であるならば、いつもの行動全部がみんな選擧に響いてくる。これは單に政策の發表であるとか、口で聽かせるとか、そういうことばかりではない。この議會における諸行動であり、植原内務大臣が何を言われたかということは、みんな自由黨に響く。それから幣原國務大臣がわれわれの黨に對していかにそうしたかということは、これはみんな進歩黨の全體の利益に關係する。これは一々言わなくても、津々浦々まで知れておるのである。われわれの一擧手一投足、これが政治的の諸問題に關係する以上、ただ二十五日ばかりではない。一年中、日常終始これはみな響いてくるのである。また宣傳するのもそうだ。宣傳もまたそうしなければならぬ。すべてこれに應じて選擧は收獲さるべきものである。選擧は一つの選擧から次の選擧までの間に、各黨派がいかなる活動をしたか。何をしたか。これは四年間、五年間でもよろしい。その間の諸活動と現在の諸條件に應じて、いかなる黨が正しいかということを、國民の判斷に訴えるものであります。これはその五箇年間のすべての行動の總清算を、國民の前に訴えるところの成績がここに現われてくるのである。單に二十五日間などを問題にする必要はない。だからあなた方のこの選擧法に關する考え方は間違つておる。根本的に間違つておる。しかもこれはマツカーサー司令部からもたびたび聲明せられました通り、個人本位ではいかぬ。政黨本位でなければいかぬということを、全國民に訴えておるのであります。かかる意味におきましては、個人が何もすみのすみまで歩く必要はない。それは實際上小選擧區にいたしましても、あるところにおきましては、すみのすみまで歩けぬところがたくさんある。飛彈の山の奧、大野郡なんかに至つては、すみのすみまで歩けますか。一年かかつても歩けやせぬ。とうていそれは不可能である。そんなことを言つた日にはきりがない。それは常平生の問題である。從つてかかる論議で、かかる問題で小選擧區がいいというふうなことを言うに至つては、これはまさに古代ものである。現在の政治的水準では、おそらく私はそういうことを考えることはできないと思う。勞働者諸君、農民諸君はかかる古くさい説明はもう既に放棄している。非常に政治的な水準は高まつてきておるのであります。もう一つ重要なる點は、自分の選擧區の人たちと密接に關係する。要するにせわをする、——昔はありました。ある議員がほかのことはとにかく、いや何でもかんでも精力的にすぺてせわをして歩く。結婚のことでも屆け一つのことでも、家賃のことでも、何でもかんでもせわして歩く。それが政治だというが、いくらよくてもそれは政治ではない。そんな單なる小使、單なるせわ人なら政治家ではない。政治家というものは、もつと大きい分野において、もつと高いところ、全國民の生活の安危に對して識見をもち、これに政策をもち、また行動力をもつておつて、初めて政治家たることができると思うのである。單に常識的にあつちこつちぐるぐるまわるというだけでは何にもならぬ。ですからあなたのように、小選擧區で密接な關係ができるというならば、これが正しいというならば、これは弊害の最もひどいボス政治に對するところの、あなたの禮讚と言わなければならないのであります。だから舊政友會がこの小選擧區を主張いたし、これが非常なる弊害を來し、そうして遂に二、三箇月のうちに原總理大臣が暗殺されざるを得ない状態にまで陷つた。そうしてそれ以後は政友會は下り坂になつた。そういうことでは何にもならない。それはわかつているじやないか、現在ではあのときの情勢よりも、遙かにわれわれは經濟的にも、政治的にも重大な地位に立つている。しかしてこれは大飛躍をすべき重大なる時機に際會しているのである。あらゆる問題はそこにくつつかなければならない。してみればかかる小選擧區のごときはほとんど問題にならぬ。その問題にならない小選擧區に近いということが一面の理由、むしろこれはおそらく根本的な理由であろう。そう言われるにおいては、この中選擧區の素性がはつきりしている。これは現在の情勢にまつたく逆行するものであるということははつきりしました。これをあんたがはつきりさせたことに對しては私は感謝する次第でありますが、從つてまたこれは世論に問いましても徹低的に反對されるであろう。反對されるからこれは長い期間の審議をすることをやめまして、これをなるべく早く審議させる。なるべく強行的に通そうというその結論を生んだではありませんか。これはそういうのではないかどうかという點を一つお尋ねしたいのである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=90
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091・植原悦二郎
○植原國務大臣 徳田君の御意見はたくさん承りましたけれども、私に對する質問は最後にこれを早急にやるのは何ゆえか、こういうことのようでありますが、政府は早急も何もありません、これはすべて議員諸君がおきめになることで、政府のかれこれいたすべきことではありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=91
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092・徳田球一
○徳田委員 まだ相當長く續く危險性をもつておるのでありますが、もし委員會におきまして他に支障がなければ、僕らも人間でありますから石炭をたかなければながく動かない體であります、どうか一つ食事その他につきまして御考慮願いたいと思います。しかしながらもしそれが容れられなければ私は相當覺悟をきめてやるつもりでありますがいかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=92
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093・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田君の御質問は植原内務大臣及び幣原國務大臣に對する質問はまだ續きますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=93
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094・徳田球一
○徳田委員 幣原さんの方は既に私が言いました通りもう盡きておりますから、幣原さんには質問は繼續いたしません。しかし植原さんにはまだ少々殘つておりますが、やれと言われれば何も差支えありませんよ、私だつてひもじいくらいは何も平氣だから……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=94
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095・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田さんに御相談いたしますが、辻井君から特に幣原さんに對する御質疑があるようです。だから徳田君の演説は一時保留しまして、そうして幣原國務大臣だけは一つ辻井君の演説で本委員會への御出席を終ろうと思うので、御諒承願います。辻井民之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=95
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096・辻井民之助
○辻井委員 私は提案者竝びに植原國務大臣に御質問をした上で、幣原國務大臣に御質問をしたいと考えておつたのでありますが、前後いたしましてすこぶる要領が惡くなつたのでありますが、ごく簡單に一、二點についてお尋ねしたいと思います。もう同僚議員からも相當つつこんだ質問があつた點ではありますが、幣原國務大臣は前内閣の總理大臣として、現在の選擧法を提案され成立せしめられたのでありまして、當時この選擧法が最も立派なものであるという説明をせられたことも、石田君によつて述べられた通りであります。それがわずか一囘使つただけで、先ほどのお言葉によればもう十何年と使い古した着物を脱ぎ捨てた方がよいというような、すこぶる簡單にこれが中選擧區への改正に贊意を表されておるのであります。ところで私がお聽きしたいのは——これは相當野黨側から論議されましたが、依然として現在副總理としての地位にある幣原さんが、前の内閣で推稱して提案されたほどのものでありまして、ただ一囘使つただけである。一囘の成績によつてこれの可否を決定的に判斷することは非常に無理であろう。この點だけから見ても、まだ決定的にこれを批判する時期には達していないと思うのであります。さらにこれを中選擧區に改めるために、御承知のように議會においては相當大きな波瀾を卷き起しております。これは繰返して申し上げるまでもないが、すこぶる不明朗な、多數をかつてしやにむに、別表を前もつて示しもせずに、本會議に便乘して押し通そうというような與黨側の態度が、大いに紛糾した根本的な原因になつたのでありまするが、とにかくそのために議會は非常に紛糾しておる。また今後も相當波瀾が豫想されるのでありますが、なぜそれほど無理をしてこの選擧法をかえなくちやならぬかということと、それからもう一つはそのために起るところの多くの政治の澁滯であります。徳田君の質問に對して、マツカーサー元帥の書簡は、糺彈ではないと幣原さんがお答えになつておるが、あるいは糺彈でないかもしれないけれども、少くとも日本の政府は相當強く叱られておることは間違いないのであります。ただマツカーサー元帥から時候の挨拶が來たようなわけではないのでありまして、ごく一部を讀んで見ましても、「日本政府にして直ちに確固不動の措置を講ずるにあらずんば、經濟界のインフレ情勢は、食糧その他必需品の附隨的不適正配給と相まつて、ますます惡化すべく、産業再建はさらに遲延すべく、また日本國民が頼もしき前進を開始せる社會的、政治的目標の達成は、ために危機にひんするに至るであろう。」決して現在の日本の情勢を正しい、あるいはやむを得ない情勢とマツカーサー元帥は見られていない、このような状態が續けば、遂に日本は危殆にひんするであろうという強い警告を發せられておるのであります。現在の日本の状態はこういう事態に立ち至つておる。都會の缺配は政府が本月中には全部埋め合わすと言明したにもかかわらず、一向埋合わせがついていない、まだ他の都市にも擴大しておるように承つております。國民は食糧危機のために、重大な生活苦にあえいでおる。石炭は出ない。鐵道は相變らず復活しない。マツカーサー元帥の書簡をまつまでもなく、一日も早く配給機構を確立し、あるいは産業の復興に邁進しなければならない。それからさらに新憲法のための立派な議會を一日も早く生み出さなければならぬのであります。それには選擧に對してもいろいろな事務的な手續をしなければならない。こういう場合にかような無理な選擧法を一夜づくりの選擧法案を、しやにむに押し通そうとする結果、この重大な場合に各大臣は全部ではありませんが、絶えずそのために重大な政務を停滯せしめられておる。これは日本のこの危機突破のために、また再建のために、實に重大な支障を來すのでありまして、よし選擧法がしやにむに議會を延長してまでも通つたといたしましても、事務の上の十分な準備ができない。その結果選擧の上にどれほど惡い影響を與えるかわからない。またこの選擧法の問題について議會で盛んに爭うておるというようなことは、國民の目から見たならば、一體どう見えるのであるか。幣原さんは議會の總意で改めようというのならば——政府自身がやつておるのではない、議會が總意ではないか、議會みずからが改めようとしておるのであるからというようなお言葉があつたが、徳田君の意見にもあつたように、進歩黨の總裁である、そうして政府と進歩黨あるいは自由黨の間には、十分にその間の脈絡があるのでありまして、植原内務大臣は昨日のわが黨の同僚議員の質問に對して、政府はこの議案の出たことに非常な熱意をもち、喜びをもつて期待をかけてみておるというような、審議中の議案に對して絶大な贊意を表されておる。こういう状態でありまして、ただ議會が勝手にやつておるのではないのであつて、政府との間には十分な連絡がある。政府は幣原さんの言葉を借りても、また植原内務大臣の言葉によれば、非常に贊意を表されておるのでありまするが、はたして今申し上げたようなこういう場合に、かような無理押しをしてごたごたしておることが、絶えず援助を求めなければならないところの連合國に對しても、どういう影響を與えるか。國民の思想の上にどういう影響を與えるか。日本の再建やあるいは食糧問題が、このために相當私は支障を來すと思う。そういうものを犧牲にしてまでも押し通すことが、はたしてよいとお考えになつておるがどうか、この點を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=96
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097・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 マツカーサー元帥の書面が、決して日本政府の糾彈でないということは先刻もお答え申したのであります。しからば日本の今日の状態——缺配遲配というものは到る所にある。こういつたような事態に滿足しておるのかという御質問でありまするならば、これは決して滿足いたしておりません。マツカーサ元帥の書面にあつたことは私は全然贊成であります。贊成でありますから、今われわれがここで苦しんで努力いたしておるのである。どうかしてこういう事態を早く直したい。救濟したいというので、われわれは苦心努力いたしておるのであります。その點はよくお察しを願いたいと思います。決してこれで滿足いたしておつて、これが一番いい事態だというような、うぬぼれはもつておりません。どうかそのためには皆さんが協力してくだすつて、われわれがこういう問題にあまり時間を費しておるということでなくて、ほんとうに快い氣持になつて協力してくだされば、この問題は解決し得られると私は思うのであります。もう數日間もこの問題で爭つておるのであります。どうかその意味でこの問題は御研究を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=97
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098・辻井民之助
○辻井委員 もう大體私の與えられておる時間も少いので、これ以上繰返して質問しましても、もう答辯は大體わかつているのでありますから打切りたいと思いますが、私は決して政府が滿足されているというようなことは申し上げたことはないのであります。こんなことが滿足していられそうなはずはないのであつて、前の議會の全員で決議した決議にもありますように、一刻を爭うものでないものは、なるべく後囘しにして、そうして今日の危機を打破り、また憲法實施に備えなければならぬ場合であります。しかるにこの議會を延長してまでもしやにむに押し通そうとするというような無理なことが、結局食糧問題の上にも、あるいは連合國側の信用の上にも、國民の思想の上にも重大な影響を來す。そういうものもこのむちやな、無理な選擧法の改惡のために、どれほど支障を來すかわからない。そういう大きな犧牲を拂つてまでもやることが、はたしていいとお考えになつておるかどうかということを申し上げたのでありますが、もうこれ以上質問しても始まらぬと考えまして、幣原國務大臣に對する質問はこれで打切りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=98
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099・山口喜久一郎
○山口委員 木下榮君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=99
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100・木下榮
○木下委員 私は同僚の石田君の質問に對する幣原國務大臣の答辯が、われわれの腑に落ちないところがあります。それで石田君の質問を補足、あるいは重複するようなきらいがありますが、これは特にお許しを願いたいと思います。これが非常な緊急事であり、それが核心であるからであります。幣原國務大臣は御承知の通り幣原内閣時代にこの選擧法を改正しまして、大選擧區の連記でなければ清新な選擧ができない。有爲な人物、新人を出すには、どうしても大選擧區の連記がいい。こういう御趣旨のもとにこの現行の選擧法を御制定になつたのであります。そうして昨年の四月の十日にこの選擧法によつて初めて執行されたのであります。これも幣原さんが總理大臣として執行されたのであります。でありますから現行の選擧法に對しその是非善惡、竝びにその長短は幣原さんが一番よく御存じのはずです。そうして四月十日の選擧の結果は、連合國司令部においてもいい選擧ができたといつて稱揚をされております。またわれわれが公平に見ましても、今までの選擧よりも明朗である。いい結果を得たと固く言じております。おそらく幣原さんもその通り信じておられたことと推察するのであります。でありますからこの選擧法を改正するについて、どういうところが惡いから今度は中選擧區の單記にする。その事實を一番御存じの幣原さんからはつきりお伺いしたいのであります。どういうところが惡いからこれを中選擧區の單記にするのか、自分は大選擧區の連記がいいと思つてやつたけれども、これを直すのにはどういうところが惡いから、だからこれを中選擧區の單記に直す、このことをはつきりお伺いしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=100
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101・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 その問題につきまして、私は先刻以來たびたび同じことを繰返えして答辯申し上げているのであります。それは、この案を出した方の提出者から、既に委曲を盡して答えておられると私は思うのでありますが、それが不十分であるとおつしやるなら、もう一ぺんお尋ねになつたらよかろうと思います。私はこの前の選擧は明朗でないなどということを考えたことはありません。おそらく、まつたく公平に、政府の干渉なしに行われたというのは、私は昨年の選擧は實は珍しいよい例を示していると思うのであります。しかし時局の推移にみますというと、やはりその中には改正を要する條項があるということを、自進兩黨の提案者が説明せられているのであります。公平は行われた、選擧の干渉なしに行われたということはその通りでありますが、今度はその問題には關係ありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=101
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102・木下榮
○木下委員 私が聽くのは、幣原さんは提案者から縷々説明されたから、自分は説明しなくてもよいというように聞えますが、この法律をつくつて、この法律を施行したのは幣原さんではないか、それがどこが惡いから改正するというのか。それを聽いている。發案者の意見を聽くのではない。あなたの意見を聽きたい。一體この問題は、われわれがあなたに聽くまでもなく、あなたは進歩黨の總裁ではないか。そうして選擧法の改正をして、それを施行した本人ではないか。われわれが聽く前に、進歩黨が提案者であるならば、自分はこういう法律をつくつて、こういうふうに施行したが、こういうところが惡いから、それで今度は中選擧區の單記に直す。なぜみずから進んでその辯明をしないか。その質問をされて、提案者がやるとか、發案者がやるとか、卑法じやないか、不親切なんだか、誠意がないのかわからない。どこが惡いのか、提案者の總裁として、また法律をつくつた人として、これを施行した經驗者として、はつきりしたことを返答なさい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=102
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103・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 私ははつきり申し上げたつもりであります。提案者の述べられたことは私の意見であります。そう御了解くだされたいのであります。私は同じことを繰返す必要はありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=103
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104・木下榮
○木下委員 提案者の意見は幣原さんの意見と承りましたが、私は提案者の意見を聽いておりません。ちようど缺席しましたから、もう一度幣原さんに伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=104
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105・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 缺席された問題を二度も三度も繰返えして言うというのは、これは委員會の正しい行き方でありましようか。私はそういうことはないと思います。もしそれを知りたいとお考えなら、それは速記について御承知願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=105
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106・木下榮
○木下委員 公正に考えて、いかなる方面から考えても、自分が法律をつくつた責任者であつて、これを施行した本人である。しかも提案者の總裁であつて、どういう所が惡いからこの法律を改正するかという質問に對して、提案者、發案者が言つたからその通りだ。意見はその通りだというような御答辯は、はなはだけしからぬ話で、誠意を缺いたものと思います。質問しなくても、これを提案した場合には、總裁として自分らの經驗、それらから割り出して、こういう所が惡いからこう改正するのだということは、進んで言わるべきがほんとうであると思います。これ以上私はあなたに聽く必要はない。止めておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=106
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107・山口喜久一郎
○山口委員長 御相談いたします。これから約三十分ほど休憩いたしまして、一時五十分ごろ再開したいと思いますが、昨夜の決定に基いて別表懇談會は、午後の委員會と併行して議長應接室または副議長應接室で、自由黨から大石君、進歩黨からは小川君、社會黨から中村君、國民協同黨から石崎君、その他會派から中野君または細迫君。これらの諸君にお集まりを願つて別表懇談會を開くこととし、委員會はこれと併行して續行する豫定であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=107
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108・細迫兼光
○細迫委員 別表懇談會のことでありますが、一應そういう名前がつけられたようでありますが、ちよつと名前に異議がありまして、これを別表に關する質問會なりと名前をかえてもらいたい。あたかもこの別表をつくることを前提として懇談をするような印象を受けますから……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=108
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109・山口喜久一郎
○山口委員長 別表研究會というような程度ではいけませんか。質問會というのはどうかと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=109
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110・細迫兼光
○細迫委員 いろいろ別表について質疑が出ましてもそれに應答ができないので、その質疑を徹底させるための會議だと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=110
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111・山口喜久一郎
○山口委員長 それではいかようとも名前はその會でつけることにお願いしまして、それを速記録に載せることといたしたいと思います。晝食のため休憩いたします。午後は一時五十分より再開いたします。
午後一時二十二分休憩
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午後二時二十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=111
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112・山口喜久一郎
○山口委員長 休憩前に引續き會議を開きます。徳田球一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=112
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113・徳田球一
○徳田委員 先ほどからの續きでありますが、小選擧區になりますと、候補者と選擧區の選擧權者との間に、非常に密接な關係ができるからいいと言われますが、これまでの經驗によりますと、そういう關係のできるのは、選擧民とまたそこから選出せられた代議士との間において非常に醜關係が生ずる。すなわち利己心を發揮するのであります。みな自分たちの利益、利權を中心といたしまして、兩方が結合することが多いのであります。そのために政界が非常に腐敗した事實が多いのであります。現在でも建議委員會に出て來ます建議は非常に地方關係が多いのでございまして、從つて全國を通じての政治性の薄いものが出てきます。そのために全體の政治の進行ということに對して、惡影響を及ぼしておるのであります。最もこのことは官僚組織が惡いのであつて、集中的に中央集權を行いまして、中央の許可なしには何事もできないという官僚組織のややこしいというよりは、權力癖を強調しておるところに原因はしておりますが、もし現在のような状態で小選擧區にしますならば、それはますます發達する一方である。そして今度は自分の選出した代議士を使いまして、行政的な諸關係に非常に干渉する。そのことはたくさん事例があるのであります。從つて中央における政界も混濁するし、それがまた引續いては地方の自治體に對する干渉となり、地方にはおける行政もまた非常に腐敗する危險が十分にあるのであります。またこれまで、あつたのであります。ですからこの小選擧區の弊害は驚くべきものである。これは英國自體でさえも非常に困つた。英國の保守黨が強く、なかなか拔けがたい力をもつていて、これを被るためには英國勞働黨は、三十年の大努力をもつてもなお今でも弱體である。實際上多數を擁しないのにまだまだ強い力をもつております。のみならず勞働黨自體の中に大きな腐敗をもちこんでおる。英國勞働黨の政策が、常に英國勞働者から批判され、そうしてそれがブルジヨア化しておるという點において大きな非難をこうむつておるのはこれによるのであります。すなわち言葉をかえて言いますれば、各政黨内に非常な利己心をもちこむのである。自分の地盤だからというので地盤々々で爭うのである。そうすると新しい者が芽を出してきたときにも、その人間が政治的により高い能力をもちながら、腐敗墮落した保守的な勢力に對抗することができぬ。壓倒されまして、常に新進の機運を阻まれておるのである。これが小選擧區の最も大きな弊害である、黨内が非常にセクト化しまして、黨内の全體が統一ある意思をもつて動くことができない。そういう意味におきまして小選區は實に惡い、惡の惡の最大の惡だ、小選擧區ぐらい惡いものはない。現に日本において要求せられておりますところの、民主主義の徹底におきましては、この小選擧區こそは最も惡いのである。これは大きい人物を出すとか出さぬとかいうことばかりでなく、實際非常に保守的に塊まつておる。政黨がおのおの利己の塊りになつておる。だから黨を脱黨する理由なども、政治的な信念から脱黨するのではなく、そういう利己的な關係から脱黨する場合が非常に多い。自分の地方の選擧民の利益が達せられず、これをその政黨の本部が認めない場合は、脱黨するという事例は、たくさんあるのである。ですから政黨本位を選擧に主張し、また政黨の發達を促すというその見地からすれば——現在それは非常に要求せられておるのでありますが、その要求からすればこの小選擧區というものは實に惡いのであります。しかるにかかわらず植原内務大臣がこの小選擧區を特に主張し、これが理想的であると言い、それに近い中選擧區であるからこれがいいと言われる。この論點は承服しがたいのであります。この點につきまして植原内務大臣の眞卒なる答辯を要望するのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=113
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114・植原悦二郎
○植原國務大臣 どうも徳田君の御陳述を聽いておると、徳田君の御意見で、御意見の違うのはこれはいたし方がないのであります。小選擧區であるから墮落するとか、腐敗するとかおつしやるけれども、小選擧區でも——あなた御存じかどうか知りませんが、私が初めて選擧に出ましたときには大選擧區であります。長野縣全體の選擧區であります。その時で私の當選投票は二千五百に足りません。そういう少數なものは大選擧區でも、もしあなたのおつしやるがごとく買收ということであるならば、數が少いほど買收しやすい。大選擧區から小選擧區だからということは、内容をお確かめになつた上での議論でなければ、あなたが御隨意に斷定なすつて、あなたの論據をおつくりなさるのは隨意でありますけれども、人間のすることだから英國にも腐敗が絶對にないなどと、私はあるかないかよく知りませんから申されませんが、私の寡聞の知識によれば、英國の選擧ほど割合にうまく行われておる選擧區はありません。これは小選擧區です。勞働黨もここにおいて完全にできております。だからあなたの斷定に對して私かれこれ申すわけではありません。あなたの御意見は御意見として承りますけれども、それによつて答辯したりすることは、單に時間の延びるだけで、まつたく選擧がいかなる小選擧區なるがゆえにどういう結果を生ずる、大選擧區ならばいかなる大選擧なるゆえに……。私が小選擧區になつて出ましたときには、わずか小選擧區全部において一萬票足らずであります。今日の中選擧區というのは、少くともその選擧區に六十萬も投票があります。そういう場合を考えまするときに、ただ小選擧區だから、中選擧區だから、大選擧區だから買收がない、腐敗がないなどということはとんでもないことであるので、そんな斷定に私はお答えしておるわけにいきません。それのみならず腐敗するか腐敗しないか。墮落するか墮落しないかということは、むしろ個人の場合が多いのでありまして、大選擧區でも惡い人は買收もしよう。いかに小選擧區でありましても、どんな場合でありましても、買收しないでも出る人は出るでしよう。だからそういう個々の問題と、もし大選擧だ小選擧だの問題で議論するならば、その小選擧區とはいかなる選擧だ、そこにいかなる投票があつてそれがいかに動くか、それまで徹底して議諭しなければ、科學的の議論ではないことを御諒承願いたいのであります。そういう斷定中傷に對してお答えしておつても際限のないことであると思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=114
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115・徳田球一
○徳田委員 しからばあんたの御要求ならば具體的に詳細に述べましよう。あんたは現在ここに述べておる小選擧區について具體的にあるから、われわれはこれに對して文句を言わずに略しておつたが、あんたがお望みであるならば一々詳細にあげて論議いたしましよう。しからば始めます。あんたの小選擧區の場合に二千何票であつたと言われる。そうでありましよう。それは制限選擧であるから……。だからその時代には大選擧區であらうが何區であらうが、みな買收が行われたのであります。それゆえにこそ普通選擧が行われ、さらに現在におきましては男女を通じての徹底的な選擧が行われております。あんたが選擧權の擴大を要求せられることはこれは非常にいいことであると信ずるのであります。しからばわれわれの要求する通り、滿十八歳以上に選擧權を擴大して、一層ますます選擧權を擴張することがよろしいと思う。それにはあんたは御贊成であらうと思うのであります。特に若い人たちの選擧權を擴張することは必要だ。年をとればとるほど買收には應じやすい。若ければ若いほど買收には應じがたい。殊に政治的意識は若いのが非常に強いのであります。そしてまた正義的な觀念も強いのであります。非常に急進的である。だから若い者が買收せられる危險の非常に少いのは當然である。でありますからあなたはその意味におきましては、滿十八歳以上の者に選擧權を與えるということに、おそらく贊成せられるであろうと思うのであります。しかし私寡聞にしてあんたがそういう十八歳以上に選擧權を擴大するということに對して贊成せられたことを聞かないのであります。しからば一體どういう小選擧區において弊害を生じてきたかということについてでありますが、現在では選擧權が非常に擴大されました結果、もし一人單位にするならば現にこの中選擧區において出しております通り十五萬人の人口に一人といふことになりましよう。しかし十五萬人の人間であるからといつて十五萬票あるわけではありません。票ははるかに少くなります。おそらくこの票は三分の一以下になりましよう。だから票にいたしますれば五萬前後でありましよう。あんたはこれを六十萬と稱せられるが、これはどこから計算されたか。六十萬なんというのが小選擧區にあるはずがない。現在の中選擧區だつてそうですが、十五萬の三人だから四十五萬の人口、四十五萬の人口ならばそれの三分の一で十五萬票。人口から割れば大概それくらいだ。あんたがこれを六十萬と計算するのはどういうわけか。そんなにありはしない。あんたがあげ足をとるからこつちも言うけれども、そういうあげ足をとるものでない。あげ足をとればこつちだつてあげ足をとるのは知つている。辯護士だからそういう方はお手のものだ。だからそういうことは何もする必要はない。しかしながら小選擧區が實際上、中選擧區ようも、大選擧區よりも、買收するのによりいいということは言い得る。買收ということをあんたは個人々々に金をやるということに考えるからいけない。たとへばいろいろな利害關係で終始ボスとくつついているのは、これはやつぱり買收だ。そういうことがより多くあればあるほど困る。だからおれの地盤だということが困る。黨全體からいいまして、黨の支持する者に對しては、何人が出ようとも黨に對する支持でなければならない。それが政黨本位であります。先ほども申しました通り、マツカーサー司令部から特に啓蒙をやられているのであります。個人本位は危險だ、政黨本位になれということ、特に奬めておられるのであります。政策本位になれということを奬めておられるのであります。從つてかかる状態におきましては、小選擧であろうが、中選擧區であろうが、大選擧區であろうが、そういう選擧區などに拘泥することは、そもそもこれは末である。むしろそういうものから生ずるところの弊害を考えなければならない。だからわれわれは全國一選擧區、完全比例代表を主張しているのであります。これをやればどこの地盤、かしこの地盤というものはあるものじやない。どこだつてみんな一つの黨、黨に對する支持でありますから、これは個人的のものじやありませんから、最もよくこの黨本位主義に適合するのであります。これほど正しいものはない。現にそのことに關しましては、既に參議院において採用しているのであります。比例代表ではありませんが、全國を一選擧區とすることに對しては、これを實際上あんたが提出者になつて、政府が提出者になつて、これを可決せられているのである。現に行われている。われわれは一院制を主張しているのでありますから、一院制からすればこれが一番正しい。從つてそれの反對の極である一人を爭つてやるところの小選擧區は、最も劣惡で、個人本位になることは明らかである。そういう點は何も私が假想したり、私だけが一つの條件をこしらえて云々しているものではない。具體的の今の事實、具體性の上にわれわれは論議しているのである。一つ一つの詳細のことを言うよりも、今ここに現れている具體性を見れば、あんたは十分おわかりになると思う。そうしてこれは選擧權者が殖えれば殖えるほど、今度は小選擧區で困るのは、一部の小さい者だけの政策ならば、喧嘩したつてたいしたことはない。ところが全體が選擧權をもち、一つの集團が大きな選擧權をもつということになれば、小選擧區で、ここが共産黨を支持する、これは自由黨を支持するということになれば、小さい區域ではこれは大きな爭いになる。大禍亂になる可能性を十分もつている。殊に日本のような場合においてはますますこれはひどい。階級對立はだんだん激成し、しかも封建色がきわめて強いところにおいては、また政治に對して正當な論議を用いてやるという習慣がないとろにおいては……。全然ないのじやない、これが小さ過ぎる。そうして興奮性をもち、喧嘩することに對して非常に興味をもつて、なかなかまだ鬪爭的である。鬪爭的であるといつても、これは思想的ではない。むしろ腕力的に鬪爭的である。そういう危險は十分ある。從つてこれが選擧權者が多くなり、集團が大きくなればなるほど、二つの對立におけるこの選擧を、モメントとしての大鬪爭が起るのは道理である。大禍亂を起すもとになるじやないか。あなたは内務大臣として治安の維持に對して重大なる責任をもたれているのだが、そういうことに考え至らぬという法はないのじやないか。これまでの小選擧區、ごく少い選擧權者でも、個々の利益になれば水爭いだとか何だとか、いろいろなものがありまするように、選擧區自體に對しても血を流したことがある。日本でもそれはある。そんな小さいものでもあるのに、大集團で大きなものになればなるほどそれは大鬪爭になるじやないか。だから大選擧區、全國的の一大選擧區になれば、これはもう強いて喧嘩にはならぬ。なるはずはない。そういう個々の利益にとらわれない。また大きいものだから、どことどこでどうというわけに行かぬ。それは共産黨支持者、自由黨支持者があつても、一つの小さい爭いではなく、全國的の爭いだから、かかる禍亂を起すものとはならないのである。從つて小選擧區は現在の諸情勢と、日本の實情に即して正しいということは言えないのである。それは具體性である。あんたは私が假説を設けて云々と言われるが、私はこの具體性を今言つているのである。そういう意味において、あんたがどうしても小選擧區がいいんだということを、ぜび一つ開陳せられんことを希望するのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=115
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116・植原悦二郎
○植原國務大臣 何囘繰返しても徳田君同じです、實際私の理念はさようであるが、それが今どうかというのは問題になりません。あなたの非常に長い陳述を興味をもつて伺いましたが、もしそのうちに一つ一致する點があるとすれば、選擧は黨でするようになればこれは一番よろしいと思います。その場合にも、もし選擧民がその候補者の人格、識見、その人のすべてこの性格をより多く知れば、なおさらよろしいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=116
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117・徳田球一
○徳田委員 そこでまた脱線しているのでありますが、あんたは政黨本位と言いながらすぐ個人を持つてくる。そういう個人じやない、それが大事なんだ。その人を知る知るといつたつて、大政黨の中から言えば、個々の個人の問題を、一々あの人は鼻がどう曲つているとか、あの人はこんなふうな性格でどうなんだ。そんなことを知る必要はない。政策本位だから、むしろその人が黨内でどういう働きをして、どういう政治行動をしているとか。それはしかし黨内においてだ。黨全體としてどうしているかということが眼目である。黨本位であれば、ほとんど個人に關しては無視せらるべきが當然だ。それはだんだん薄らぐことが當然だ。あなたはそういう點においては私と一致すると言われるが、すぐさま掌をひつくり返したように、あとでそういうことを言われる。だから問題がきわめて紛糾するが、結局あんた自身におきましても、小選擧區の弊害は十分お認めになるだろうと思うのでありますが、まあここのところはそれくらいにいたしまして、次に小選擧區の弊害として松原委員が昨日述べました百人の選擧權者のうち、もし三人立つならば、そのうちの一人が三十五點とつて、あとが三十一點、三十二點になれば、すなわち六十五に對して三十五とつている者が當選するということを主張いたしまして、死票が多くて、當選する有效票が少いということを申されたのであります。これは選擧問題に對する批判として、講義録なんかにはよく書いてあるのでありまして、いずれの講義におきましても、かかる一定の假定を設けて論議するのであります。すなわちこれは有效と無效になる票數の一つの假定である。その數を表わすためのものである。代數で言えばA、B、Cを書くのと同じである。それは一つの抽象化したものである。しかるにあんたはこれに對して、三十五とか何とかという、そんな小さい數ならそれは問題にならぬ、大きい數だからいいじやないか。こう言われるのでありますが、これは倍數を乘ずればいい。三十五に對して千を掛ければいい、そうすると、三萬五千あとは六萬何千と、千を掛けさえすればいい。千をふつ飛ばして話をしているだけのことで、それは話のあやである。數の觀念から言えば、それは三十五と言つたつて、百と言つたつて、それは一つのフイクシヨンを示しているものですから、何ら問題じやありません。しかるにあんたはそれに對する答辯においてかかる小さい數では問題にならぬ。大きい數ならばよろしい。こういう議論でありますが、これはまつたく人を食つたようなものでありまして、あんたも大學の教授級の方でありますから、これらのことに關しましては十分に御了解のことと思いますが、特にそういうふうな議論をしたり、そういうふうな返事をしなければならぬというところに小選擧區の實際上の弊害があり、これを正しいと主張し得る根據がないということの馬脚を現わしておると思うのでありますが、あなたの所見はいかがであるか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=117
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118・植原悦二郎
○植原國務大臣 なかなか徳田君はいろいろのお言葉をお使いになるのが上手で、馬脚を現わすかどうか存じませんが、これだけは事實であります。この小選擧區の場合には、比較的に死票が多くなるということの事實は、これは大局的に、原則的にその通りであります。しかしそれほどの選擧區についても結果をもつもので、それを補うよりは、より以上の利益があるがゆえに、さように主張するのであります。その一つだけをとらえてみますならば、それは大體抽象的に言つても、小選擧區の場合には死票は他の選擧區よりも比較的多くなるということは事實であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=118
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119・徳田球一
○徳田委員 しからばお尋ねしますが、そういう莫大な死票を選出するということにつきましては、最も惡い、すなわち死票をたくさん出す、死票よりも有効票が半分前後にしかあたらぬというようなものは合理性がない。その合理性がないものをも特に用いまして、なおかつ小選擧區を主張しなければならない、そういう特別な大きな利益があると言われるのでありますが、そういう利益は一體どういうものでありますか、一つお示しを願いたい、そうして納得したいのでありますから、どうか御苦勞ではありますけれども、懇切を極められんことを希望するのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=119
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120・植原悦二郎
○植原國務大臣 お答えいたしますが、徳田君はやはり一つの共産黨の主張をもつてすべて徳田君獨自の出發點から斷定的に御出發なさつて、徳田君獨自の結論に到達するのだから、どうも私が申し上げたつて納得はなさるまいと思いますが、私が小選擧區で利益ありというのは、政治の上において、いかなる議會政治でも、三年か四年の任期をもつて一遍づつ選擧をするのであります。その間においてなるべく議會政治を中心とするならば、幾多の小黨に分裂せないということが一つの有利な點であります。そうして小選擧區ならば必ず二大政黨の——概してですよ。これは、その場合においてだつて、一人の共産黨も出ないなどとは私は申さない。英國にはないかも知れませんけれども、そうは申さないが、そういう場合に多くの黨には分裂しない、それが一つの有利な點であります。それのみならず政黨の主義主張を非常によく徹底せしむる上においてはこれは議論の餘地がありません。それを強いてそうでないというならば、それは自己獨得の判斷で、理論のないのにむりな結論をつけるので、いかなる學者の間でも、政治家の間でも、小選擧區の方が割合に政黨の主義政策をすべての國民に徹底理解せしむるの便利があるということを疑ぐる人はありません。さようにいたして徳田君は選擧區民と候補者とは、何にも知らない人でもよろしいとおつしやいますが、私はなるべく選擧區民が主義政策ばかりではありません。その候補者のパーソナリテイー、その人の性格、人格、その人の平素の總てに對しても知つておれば知つておるだけ、それだけ私は有利だと思います。さような點をあげて數え來りますれば無數でありますが、政局を安定せしめる上から言いまして、小選擧區が一層有利である。從つてはつきりした政策を繼續的に、政黨政治の下に議會政治の下に、國會中心の政治の下に行われるということよりは、民主政治を行うことにおいてこれより以上有利なることはありません。さように御承知を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=120
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121・徳田球一
○徳田委員 植原内務大臣はこの小選擧區に對しましては、非常なる信念をもたれておるようでありまして、今お述べになりましたことに關しましても、これは小選擧區のみがかかる流行をもたらしておるというこのことのみを言われるのでありますが、これは決してそうばかりではない。小選擧區でなくても二大政黨の成立、あるいは一大政黨すらも成立しておるところがある。こういう選擧區にするということに對しましては、必ずしも小選擧區のみがそうではない。英國の例のみがすべてではない、世界は廣いのであります。もつと眼界を廣くして見ますれば、政局はただ小選擧區のみによつて安定しておるわけではないのであります。ですけれどもこの點は非常にデリケートな問題でありまして、要するにこれはプロレタリヤートの利益、すなわち勞働者、農民の利益、一般人民の利益ということと、ブルジヨアジーの利益ということの對立からこれは觀察しなければならない。從つて小選擧區の場合にはブルジヨアジーや地主には非常に利益であります。そういう時代、いわゆるブルジヨアジーのデイクテイーターシツプの時代、ブルジヨア獨裁の時代におきましては、確かに小選擧區は有利であります。それが政黨の一般に對しましても非常に有利に働いておることは確かであります。しかしながら現在の日本におきましては、既にかくのごとき時代は過ぎている。また過ぎなければならない。このブルジヨア獨裁こそが封建主義と結びまして、侵略的軍國主義を發達せしめたのであります。それを打破るためにはむしろかかる保守的に固定し得る状態を除いた方がよろしい、そういう具體的な現在の情勢というものを考えますれば、小選擧區を主張する論據はほとんど消えてしまうと思うのであります。これを實際の情勢から、つまり具體制から引離しまして、これを抽象的に形式的に論ずることによつては、この問題は解決し得られないと思うのであります。從つてこの問題についてこれ以上に論及する必要はないと思いますが、ただこの原理が現に參議院は全國一選擧區を用いまして、また各府縣においては大選擧區を用いる。しかるに植原内務大臣の言われるのには、參議院というのは特殊の職務を持つている。衆議院は急進的である。衆議院が焦慮にかられるときに、これを批判し、これをチエツクし、これに冷水をかけて冷靜ならしめるところの作用をなす特殊のものであるといわれる。そういう特殊の機能を有するといわれるそれはその一つであります。しかしそれだけのものでは保守的であるために、われわれはこれに贊成しないのでありますが、そういう冷水をかけることも確かでありチエツクすることも確かである。從つてこれは批判的立場に立つとあなたは言われるが、これもある程度是認してよろしい、しからばこういう批判をせられるものはよりよき選良でなければならぬ。よりよき國民の代表でなければならぬ。一般が急進的であり、早急である、考えなさ過ぎるときに、これに批判を與えるためにはよりよきものでなければならぬ。より惡いものがこれに批判を與えたつて無價値である。一般的の輿論に對しては何ら意義をなさないものである。從つて植原國務大臣の理論を根據といたしますれば、參議院こそがいよいよますます小選擧區にならなければならぬ。これが理想なんです。小選擧區にならざるを得ない。早急のものはこれは廣くてもよろしいということになる。しかるに參議院は官僚の空想的産物であると、あなた方の黨の代表が言われる。いわゆる提出者が提出理由において言われる。そういうものをもちながら、これをあなたの言うように批判的地位において、一方は保守的に固まろうとする傾向、すなわち小選擧區によつて保守的に固まる。こういう衆議院をこしらえるならば、それなら逆じやありませんか、衆議院の方が參議院をチエツクする、參議院を批判する、これにひや水をぶんぶんぶつかけなければならぬような状態になるではありませんか。それは逆である。そういう點において何ゆえにそれならばあなた方が參議院に對しまして特に大選擧を用い、さらに一方もう一つの半分はこれを全體一選擧區にしなければならなかつたか。それを正しいと認める理由は一體どこにあるかということをお聽きしたいのである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=121
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122・植原悦二郎
○植原國務大臣 どうも根底において共産黨と自由黨と違うように、いつまで話しても違うように思います。今申しますように、なぜ參議院の方が廣い選擧區でもいいか。御承知の通り參議院は一院制、二院制を言うならば、二院制のもので、權能においてはほとんど第二位のもので、再三申し上げた通り批判的の立場に立つ。衆議院が焦躁に、火急に、ただ一、二の感情に走るときに、これを遲延せしめる大所高所よりこれを批判して、そうして國民の判斷に訴えるということがその主要目的であるならば、ちようどこれは一家の中についていうならば、世を去つた人で、御隱居さんで大所高所から多年の經驗をもつてその家庭内のことを批判するような、これはよいたとえか惡いたとえか、參議院の役目は大體政治的にもあらゆる經驗や知能をもつて、もうほんとうの政治活動から第二線に退いて、そうして自分の私心、野心がなく大所高所からものを批判する。こういう人が二院制度を立てる上においての第二院のほとんど原則であります。そういう立場から申しますれば、大選擧區でありましても、私どもは下の制限は四十歳でもよいと思います。なるたけ年もとつて、實社會の活動から離れたような人をより多く出させる。さような人は既に名成つて功遂げたような人である。從つて全國的においても有權者がその人の選擇をしよい。全國的でもよかろう。さようにいたさなければ直接選擧ということの建前で、一院制と二院制との差別をつけることは事實非常に困難でありますがゆえに、さような結果になつたということを御諒承願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=122
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123・徳田球一
○徳田委員 そうすると、この問題は選擧區の問題ではないように思います。選擧區がいかに大きくても、そういう批判的な地位にあるものを選び出すならば、利害關係から離れて、そうして批判的な地位に立ち得るというならば、これはむしろ衆議院にも要求さるべきである。利害關係にとらわれてがむしやらに手前の利益ばかり追求するものが、衆議院にうじやうじや出てきた日には、これは大變な話でありまして、これは衆議院が修羅場になることになるのであります。それならばむしろそういうものは衆議院に出すべきではないと思う。初めから衆議院はいかなる選擧法を用いても、これが急進的で焦躁的であると斷定せられるのが私はおかしいのであります。しからばそういうものになれば、衆議院と言つただけで、衆議院の機能をきめただけで、選擧法などはどつちでもよいということは論理的に肯定せられないのである。あなたは參議院に對してはなるべく第二線に立つものを望むと言いますけれども、しかしながら選擧法自體にそれを請求しない限り、制度がこれを實現せしむるようにこしらえておかない限り、かかるものは出てこないのである。やはり現在では衆議院においても、三十歳以下の者は非常に少いのであります。大體三十歳以上、四十歳、五十歳以上のはげ頭がたくさんいるのであります。これは決してあなたの要求せられるようにはなつておらぬ。だから私は制度を聽いているのでありまして、あなたの希望を聽いているのではないのであります。それゆえに、この參議院がこういう制度でそういう役目をなすということは斷定せられない。すなわちあなたの意見によりますれば、參議院は非常に空想的なものにこしらえられている。その空想的なものはいかぬから、今度は中選擧區にするのだというならば、參議院はなおさら空想から離れなければならぬ。一般的に批判的な地位に立つものは、より多く空想的なものから離れなければならぬ。そこに重大なる缺陷があるのであります。從つて參議院の選擧はこうだから、衆議院の選擧は參議院の選擧とは變つた選擧方法を用いない限りだめだ。だから大選擧區は參議院、中選擧區は衆議院、もつと希望するところは小選擧に近い中選擧區をもつてやるということになつてくるのでありますが、これは私は逆じやないかと思う。あなたの論據をもつてすれば、これは逆であると思うのであります。しかしながら實際上この問題を解決するためには、參議院が黨本位でないならば、衆議院が黨本位ということになれば、衆議院の根本的なものは、これは黨本位ということである。參議院はだんだん黨本位が薄くなるように仕組まれている。またあなたの立場からいえば仕組まなければならぬということになりましよう。これは黨派に屬せば黨の決定に從わなければならぬのでありますから、あなたの考え方からすれば批判的でなくなる。いわゆる中立にはならない。當然喧嘩にはまき込まれるのでありまして、それはこの議會に現われている通りである。だから、これはなるべく黨派的な色彩を除くようにするのがあたり前であります。だから、これは根本的に選擧法とは別の關係で解決すべき問題である。だからこういう點で、この選擧法にぜひとも參議院はこう、衆議院はこうということを言わなければならない根據は全然ない。あり得べきものではない。それは理論的な根據がないのです。ですから、衆議院と參議院がもしそうであるとするならば、われわれは一院制を主張するのでありますが、どうしても新憲法によつて二つにわかれるならば、衆議院の方は全國的に、黨本位にこれを選擧しなければならない。この政黨本位ということは社會黨の修正案にも言われているのであります。われわれとはその點は一致しているのであります。ただわれわれの方は全國的完全比例、社會黨の方は大選擧區移讓制であります。そうして比例代表である。それだけの違いでありまして、大體において黨本位であるということは同じである。全國一選擧區であつても、黨本位と個人本位の選擧區は、これは完全に趣きを異にするのである。そういう根本的な相違にあるのであります。選擧法自體でもつて、選擧區自體でもつてこれを色分けする。これに色をつける、この性格を變えようということになりますと、これは間違つておる。だからこれはみんなでたらめなんだ。逆さに立つておる。そういう逆立ちしておつたのでは、これは人間の生活はできない。人間はやつぱり直立しなければならぬ。(笑聲)そういう點が根本的に誤つておるのでありますから、これは選擧區の問題で解決しようというこの點を捨てまして、そうして根本的に改めることが必要だと思うのである。しかしながらこれはまあ言つてみたところで石地藏に水を浴びせるようなものでありまして、とうていこれは問題になりませんから、次の問題に移りたいと思います。(笑聲)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=123
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124・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田君相當時間が經過しますが、できれば何とか簡潔に……。あと細迫君よりもまだ質疑の申込がありますが、いかがでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=124
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125・徳田球一
○徳田委員 懇談會も長く續くようでありますから、懇談會とともにらみ合わせて……。私のがあまり長いようでしたら懇談會の都合も見て一つ打切りたいと思いますけれども、しかし懇談會もなかなか盛んなようでありますし、またこの問題はなかなか重要でありますから、私は……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=125
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126・山口喜久一郎
○山口委員長 ですからどうぞ一つ……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=126
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127・徳田球一
○徳田委員(續) 私はほんとうから言えば、この選擧區の問題、この選擧法の問題に對しまして、特に植原内務大臣が、もうこういうめんどうなものは實際複雜至極であつて、とてもこんな論議では盡きないのであるから、これはどうもやつぱりいかぬ。今度こそこれをよすということを、政府が特に聲明せられるように、懇篤に私は申し上げたいのである。この聲明が發せられますならば、私は即時あらゆるものを徹囘いたします。そうして喜んでこの質疑を打切るつもりでありますが、そこまではまだ至らぬようでありますから……。(笑聲)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=127
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128・山口喜久一郎
○山口委員長 それじや……。しかしもう一時間半になりますからね。ですから簡潔に御質疑願いまして、もう二十分程度で……。細迫君からも質疑の通告がありますので、二十分程度で御諒承願います。
〔細迫委員「いや、私のは簡單です」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=128
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129・徳田球一
○徳田委員 承知しました。ではもう一つ進みたいと思います。實はこの問題を論及いたしましたときに、これは幣原國務大臣にもお聽きしたのでありますけれども、議員がこの問題を提出しておるのであつて、政府としては何ら關係しておらぬ。議員だけがこれをいいと言えばいいんだということを植原さんからも申されたのでありますが、これが私たちにはどうしても解せぬ。なぜならばほかのあらゆる議案は、これまで議員が提出した法案でありましても、政府の所見はみんな聽いておるのであります。
〔山口委員長退席、神田委員長代理着席〕
政府としてこういうものが實際上通過したときに、これを取上げてやる氣があるのかないのか。これをみんな聽いておる。それでこの問題におきましても、これはこの前の佐竹君の提出せられました各改正案につきましても、一々政府の意見を聽いておるのであります。一體これに對してどう思われるか、どう思われるかというのをみんな聽いておるのであります。だから議員だけが單に承知したからといつて、可決したからといつて、政府の態度というものに對して特に重大なる關係があるので、みんな答辯を要求しておるのであります。しかるに今度のこの選擧法に關する限りにおいては、政府は全然知らんのである。政府はどうでもいいのだ。議員がこれを可決しさえすればこんなことはどうでもいいのだということを特に聲明せらるる理由がどうしてもわからぬ。これは一體どこに基いたものであるかを一つ御答辯くださらんことを希望するのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=129
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130・植原悦二郎
○植原國務大臣 政府が關係するとかしないとか、またその關係とかいう意味はどれだけのことなのかということになりますと、大變むずかしくなりますが、ただいま問題となつておりまするいわゆる中選擧區のことについて申し上げてみまするならば、私が繰返して申し上げた通り、これは徳田君御承知の通り、議員提出の選擧法であります。その選擧法に對しても、いかなる選擧法に對しても政府としては關心をもちます。このいわゆる中選擧區の選擧區制が議員諸君の御意向で議會を通過いたしますれば、これはまことによろしい案だと思いまして、政府はこれを進んで實行に移すものだということを御諒承願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=130
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131・徳田球一
○徳田委員 そういたしますと、これはやはり政府がこれを望んでいる。政府が、これはよろしい。これを望んでいる。確かにこれは決行しなければいかぬのだという強い意思をもたれておるということは明らかだと思いますが、そう承知してよろしいですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=131
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132・植原悦二郎
○植原國務大臣 強いとか弱いとかいうことは徳田君の判斷でありますが、あらゆるものをかりに議會の議員の方がお通しになる。それは議會を通過したものは、政府はこれを實現しなければならない責任のあることは御承知でありましよう。そういふ意味において、選擧法は政府でも次の新しい憲法實施に對して、非常に重要だと思つて關心をもちますが、おそらくいかなる法律よりも議員直接の關係のあるものは選擧法、特に私は區制に關する問題であると思います。その言葉も解剖すればいろいろありましようけれども、言葉そのままにおとり下さつて差支えないと思いますが、衆議院の方の何ごとよりも一番關心をより強くおもちになる——特別の方に對しては、特別なこともありましようが、全體を通じて申しまするならば、特に關心をもたれることは、自分に一番關係のある選擧法、特に選擧區の區制に關する問題だと思います。これを衆議院の方が多數でお通しになる場合においては、特に政府としてはこれは非常に注意してその實施にあたるべきは當然であるということであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=132
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133・徳田球一
○徳田委員 實はこれを聽きますのは、わけがあるのでありまして、この選擧法改正の場合に、特に名を指して申し上げますか、閣僚中の齋藤國務大臣が、特にこの中選擧區單記制を布かなければならないという理由をこんこん説明いたされて、これをその筋へ——G、H、Qの方へ出された書面があるそうであります。この書面は大分タイプなどに打ちましてほかにも出ているそうであります。これを見たという人もあるのでありまして、實は至急に手に入れてここで披露したいと思つたのでありますけれども、なかなか觸手が動かないのでかくのごとくになつておるのでありますが、そういたしますと、それが事實だといたしますと、これまで政府が聲明せられた通り、これは議員だけの問題ではなく、政府の閣僚が重大なる關係をもたれたということになるのでありますが、かかる事實はないのでありますか。私も手を盡しておりますから……。どうです。これを聲明してもらいたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=133
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134・植原悦二郎
○植原國務大臣 ただいま徳田君の御指摘になつたような事實は、私は承知いたしません。(「何を言つてる。」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=134
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135・徳田球一
○徳田委員 それならばこれをあとの問題といたしまして、いずれわれわれも手を盡すでありましよう。ところで後でばれてから、これは植原内務大臣だけが知らなかつたとあつて、齋藤さんは事實やられたということになると、これは非常に重大なる問題であると思いますから、特にこれはくぎを打つておきたいと思うのであります。
さて植原さんは非常に英國の事情にお通じになりまして、かつ英國の憲政に對しまして特に理想的だと言われますので、そこでお尋ねいたすのでありますが、英國におきましては現在でもずつと内閣ができてからは、大臣はすべて議員がなる。なぜならば議會の中においては議員以外の者は發言を許しておりません。事務官などは發言を許しておらぬ。だからここでは政務官も參與官もたくさんあります。これが内閣の一員である。これが皆政治的の活動をどんどんしておる。ところが日本ではそうぢやなくて、閣僚よりもむしろ事務官が仕事をやる。ここにおきまする答辯でも事務官の答辯の方が實がある。閣僚の答辯の方は實がない、からつぽである。實際これはおかしいのでありますが、こういうふうな状態になりますのは、結局するところ閣僚と黨員というのと、すなわち植原さんが自由黨の黨員というのと、これを形式的に分離するところに重大なる欠陷があると思うのである。黨員である以上、また自由黨をあなたが代表せられて内閣にはいつておる以上、これは自由黨の政策を内閣に執行させなければならぬ、黨議でまず決定して、しかるのちに内閣の政策がきまらなければならぬ。さもなければあなたの主張されますように政黨政治の發達はないのである。英國の議會、英國の憲政が發達した重大なる原因は、議員と内閣の閣員が一致しておる。そうして黨議が先決で、この黨議に從つて内閣のすべての憲政が布かれる。すなわち黨の大會ですべてのものを發表し、それが是認せられて、初めて新しい政治活動ができるのである。そういうことにならなければ全然問題にならないのである。しかるにこの選擧法の重大問題が、現在の内閣におきましては大部分の閣僚が自由黨竝びに進歩黨でありまして、特に總理大臣は自由黨の黨員でありかつ總裁である。また進歩黨は副總理の幣原國務大臣をもつておる。この點において何ら差があるはずはないであろうと思う。しかるにあなた方はこの選擧法に對して、特に政府が責任を逃れるために、議員提出ということにしなければならない理由はちつともないぢやないか。自由黨進歩黨の政策であるならば、あなたも黨員である。これを閣議において決定されて、あなた方の兩方の黨の決定された政策でありますから、この政府の政策として發表すべきである。すなわち自由黨進歩黨の黨大會において決定せられたる諸政策をこの内閣は行うところの義務を感じなければならない。かくしてこそこれが政黨政治である。これが拔けてしまえば政黨政治じやないのである。しかるにこの選擧法の改正については、ことごとにこれは議員の提出だ。これは自由黨、進歩黨だげのものだ。政府は關與しないのだ。どうだのこうだの、政府は責任逃れ一方のことばかり行つておるということは、これは政黨政治とまさに反對のものである。すなわち官僚内閣のとつたのと同じことをやつておる。これでは何にもならない。しかるにこの選擧法の改正は、特に新憲法施行後の日本における民主主義の發展を助け、政黨政治を發展せしむるための一つのキーポイントである。これがてこである。これなしにはできないという確信のもとに出されておるということと關連いたしまして、官僚的政府、非政黨政府の態度をとられることはまことに遺憾の次第でありまして、新憲法の趣旨に反するものと思いますが、内務大臣はいかなる見解を有せられるのであるか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=135
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136・植原悦二郎
○植原國務大臣 昨日どなたかから、現憲法によつて今までの政府はすべての法案を出して、議員はそれをところどころ修正するだけであつて、今までと違うじやないかというような質問がありました。今日はまた徳田君からかようなものを議員が出すのは妙じやないかという、ちようど二つ違つたものが御質問にあるように感じますが、眞の政黨政治は徳田君が今御陳述の通りだと思います。政黨が平素國民に明らかにしたその主義政策で、議會において多數黨になつたときには、その政策を行うたあの内閣というものは、政黨の國民に示した政策を、議會を通じて實現することがほんとうの民主政治、政黨政治であることは御説の通りだと思います。またさようにあること、そういうことを徳田君がお感じになるなら、内閣というものはなるべく單一な政黨によつてできたがよろしいという結論になる。そうすれば私の言う一區一人の小選擧區がよろしいという結論に、おのずから到達しなければならないわけでありますが、それは議論になりますからその程度に止めておきます。そこでたとえ英國におきましても、議員に發言權があり、重要なもので火急を要する場合においては、議員みずから提案をなし、政府の案に對してかなり徹底的な修正をする。その議會の多數黨というものはちようど歩調を合わせて歩くものだということについては疑いありません。それで政府と自進兩黨の間に深い關係があるじやないかといえば、御説の通り。
但しいかなる場合であろうとも、議員が議會において提案したり、發言したり、修正を出すこはできないかということは、民主政治、議會政治、政黨政治の上にないとは申されないのであります。その點をよく御諒解くださつたならば、政府は政黨の主義政策を議會に多數を占めて行うのが、政黨政治、議會政治である。その場合においてもすべての政府の行うものは黨できめたものでなければならない。その黨できめるものは黨員多數がきめるものだ。その黨員多數が議會においてその發言權を行使し、政府の提案に修正を加えること、あるいは政府の提案に一つの大きな改正を加えることは、徳田君の御趣意と少しも違わないと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=136
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137・徳田球一
○徳田委員 植原内務大臣の今の答辯は私はさつぱり了承することができないのであります。それは過半數を擁する政黨がこの小選擧區でなければできない。小選擧區でなければそれが達成し得られないという論據はちつともない。そういう點を特に強調せられまして、そうしてまた一つの政黨のみが大きくなつた場合にだけ、多數黨になつた場合にだけ公約せられた政策が行われるということも、これはないのありでます。現に日本におきましては保守戰線が共同戰線を張つておる。民主戰線は惜しいかなまだ共同戰線を張つておりませんが、しかし地方においてはこれは完全にやつておるところがある。政黨は二つありましても、三つありましても、それぞれ共同戰線をもちまして多數を擁することは必要である。問題は現在の大混亂をしつつ發展するところの大革命の状態において、小選擧區をもつて無理やりに一大政黨過半數を擁する政黨をつくろうとするそのことが、何を結果するか。それは結局するところ、階級鬪爭をもつと激成し、これは議會政治をむしろ破滅に導く重大なる原因になると思う。なぜならば小選擧區を無理につくらなければ、これはそうはなるまい。現在においてこれは無理である。たれが見ても無理である。殊にこの點に關しましては、植原内務大臣は、大選擧區は小數者のみがこれを支持しておる。こういうことをきのう言われておりますが、この小數者のみが支持しておるということは、私は重大なる失言であると思う。なぜならば全勞働組合、全農民組合みんな反對しておる。日本における實際上團體をこしらえて發言ができる最大の團體は、勞働組合である。また農民組合である。漁民組合である。すべてこういう團體が絶對に反對しておる。しかしてこの團體が主として支持しておりますところの社會黨、國民協同黨、共産黨もまた反對しておる。これは少數者のみではない。現在の議會の數におきましては、われわれは少數であるけれども、國民の割合からすればわれわれの方がはるかに多數である。これはまだ啓蒙せられておらないところの勞働者や、その他農民諸君が、この前の選擧に過ちを犯して、進歩黨、自由黨に投票をしたのである。現在におきましてはどこの勞働組合であらうとも、どこの農民組合であらうとも、自由黨、進歩黨に對しては、絶對に投票せぬということをみんな聲明しておる。みんな全國大會においてやつておる。(「やつてみなければわからぬじやないか。」「暴論だ」と呼ぶ者あり)暴論ではない、これは決議である。少數者のみが支持者であるということは言えないと思う。そういうことを少數者のみの支持だと言われるならば、これは大きな間違いである。從つて現在のこの革命的な大發展をしておる状態におきましては、決して小選擧區はみんなの要望しておるところではない。要望しておるところではないのを無理にここへ出してきた。しかももしこういうものを出さなければならないというならば、新憲法の精神に從つて植原内務大臣は議員の發議權をイニシアテイヴを尊重すると言われるのでありますから、それならばほんとうの新憲法の精神でありますところの大衆に基礎をもつ、すなわち公聽會を開くという手續きをぜひともとらなければならなかつたのである。現に勞働組合法、勞働關係調整法、勞働基準法、これらのごとき勞働者に關係したものは、すべてこれを公聽會に付しておるのであります。しかるにこれは一般國民全體にとりまして一大利害關係のある問題であります。利害關係がある以上は、これはどうしても新憲法の精神に則つて、公聽會を開くべき重大なる責任があると思うのであります。でありますから政府はいかなる議員の提出であろうとも、これを公聴會へまわしまして、これの決定を待つ間は、政府としては態度を決定すべきではないと思う。ただ私の言いたいのは、自由黨、進歩黨の政府の與黨であられる方々が出すなら、政府が出したのと同じじやないかということを言いたいのであります。いかなる場合におきましても、議員が議案を提出してはいかぬということは絶對に言われておらない。新憲法は議員のイニシアテイヴを重んじまして、この發議によつて法律ができることは當然である。何らそれに關してわれわれは異議をはさむものではありません。
〔神田委員長代理退席、委員長著席〕
しかしながらこういう重大問題に關しましては、特に公聽會を開き、政府が責任をもつて處理すべきものでありますから、反對黨が出すならば別のこと、與黨が出されるにおきましては、特に與黨の政府がこれに對し萬全の處置を講ぜられることが當然であると思うから。こういうことを言つておるのであります。でありますから特に植原内務大臣がかかる處置をとらず、また少數者のみの支持するものとして、この大選擧區に反對して、中選擧區を特に受入れられるという點、またそういう手續をしなくてもよろしいということに對しての所見を伺いたいのである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=137
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138・植原悦二郎
○植原國務大臣 現在議會における方方は國民を代表しておるものと思うております。その多數で御決定になつたものは、國民の意思を代表するものと考えます。だから公聽會を開くなどという考えは毛頭もつておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=138
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139・徳田球一
○徳田委員 それなら議會で多數を制しさえすれば、すべて公聽會は問題にならないというわけですか。それをひとつお聽きしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=139
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140・植原悦二郎
○植原國務大臣 そういうすべての問題に對しては申し上げません。あなたの質問がこの中選擧區にかかわる問題についておつしやつたから、これに關して公聽會を開く意思はない、かように申したのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=140
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141・徳田球一
○徳田委員 この問題に關して意思がないというのではだめだ。この問題に關し意思があると否とにかかわらず、新憲法の精神により、國民の利害に重大なる關係を及ぼすもの、及び歳入の問題に關しては公聽會を開けということは國會法が規定しておるのであります。從つてこれは意思がある、ないじやありません。そういうことを欲しなくても、新憲法の精神により、國會法の規定により行うべき義務を負擔されておるのである。議會にいかに多數であろうとも、國民がこれを實際承知するかどうかという、いかなる批判をするかということを特に確めるために、國民に重大なる利害關係のあるものは公聽會に付さなければならないという義務を言つておるのであります。議會中心だからといつて議會が多數であれば國民の多數を代表しておると斷定することは間違いである。それならばこの公聽會の制度というものは何ら意味をなさないのである。何ゆえにこの公聽會の制度ができておるか、その點をお聽きしたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=141
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142・植原悦二郎
○植原國務大臣 いくら繰返しても同じことであります。ただいま公聽會を開いてこれを審議する意思はありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=142
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143・徳田球一
○徳田委員 いやそうでない。何ゆえに公聽會の制度が設けられてあるか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=143
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144・植原悦二郎
○植原國務大臣 現在の憲法においては公聽會の制度を認めておりません。來る國會法によつては公聽會の制度を認めております。それも公聽會を開く問題が局限されておることを御承知でありましよう。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=144
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145・徳田球一
○徳田委員 公聽會を開くべき問題はもちろん局限されておる。局限されておる中に、かかる國民に重大なる利害關係のあるものは特に公聽會に付すべしということは書いてある。ですからこの選擧法のごときは、殊にこれが別表の選擧區劃の問題に關しますれば、これは議員だけの問題ではないことは明かであります。選擧權者全部、國民全部に重大なる關係がある問題であります。これが公聽會に付せられないということは、いかに曲辯せられましても、これは私は否定することはできないと思います。(「議會を否定するか」と呼ぶ者あり)私は議會を否定するのではない。議會を否定する、しないの問題ではない。國會法が規定しておるからこれを言うのである。國會法自體がそれを規定しておる。議會の多數いかんにかかわらず、國會法においてはこれを公聽會に付すべしということが書いてある。その重大なるものをもつて、それが議會を否定するというのならば、國會法が議會を否定しておるのではないか。そんなことではない。そういうことで私の論旨を論駁せられると思われるのは私は遺憾である。ですから單に意思があるないではない。公聽會をなぜ開かぬでもよいかというその理論的根據と、制度上の根據を御答辯くださらんことを希望するのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=145
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146・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田君、この程度でいかがですか。いまの公聽會の問題は國會法が行われて後の問題であろうと思うのですが……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=146
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147・徳田球一
○徳田委員 後は後だけれども、新憲法に備えてわれわれは新憲法の精神でやつておるというのです。それだから現に勞働組合に關する問題はみな公聽會に付しておる。これは公明正大である。公聽會に付したものが、實際上みんなの意見が一致するようにできておる。これは幾分の反對もあるし、いろいろな問題もあるが、大體公正を得るようにできておる。そういう公聽會に付すべしというのは、われわれの主張と大分違つたことがあつても、公聽會に付したものは、どうしても大衆の意見を大きく曲げて別の方向にいくことはできない。そこにあるのであります。(「議會が公聽會になる」と呼ぶ者あり。)そういうことを言つたつてそれはだめだ。議會が公聽會になるなんてだめだ。それは公聽會という制度を、特にアメリカの公聽會のいいところの制度これが輸入されておるのであります。この點に對してもし反對なさるならば、國會法に對して諸君の御同意があつたことは、これは遺憾の次第であります。國會法に反對なさるか。公聽會に反對したりしたら大變なことである。そういう制度が既にできておるのでありますから、この精神によつてこれがなさるべき性質をもつておるのでありまして、特にこれは重大だと思いますから、もしそういうことに關して特別に付せぬでもよいという論據がありましたならば、これお示しくださらんことを希望する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=147
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148・植原悦二郎
○植原國務大臣 努めて進歩的な新しい憲法、民主的の憲法の精神は尊重いたします。これは尊重いたさなければならないと思います。しかしただいまのすべての議會の運行は現行憲法において、現行議院法の規定において行われておるのであります。この規定のもとにおいて、まだ實施されない國會法でいかなる規定がありましても、現行の憲法においてアメリカの議會式の公聽會は許されないのでありますから、それを御承知を願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=148
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149・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田君どうですか、大概……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=149
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150・徳田球一
○徳田委員 問題がある。公聽會をそういうふうに扱うならば勞働組合のことに關してはすべて公聽會に付している。そういう強辯をするということがいかん。矛盾しておる。(「自分だつて約束を守らぬじやないか」と呼ぶ者あり)それが内務大臣が誠意ある答辯をすれば約束を守る。誠意がちつともないじやないか。(「重大な問題でない」と呼ぶ者あり)重大な問題だ。公聽會に付するということは重大ではないか。公聽會を開き堂々公聽會でやらるるならばこれはスムーズに通つて行く。公聽會に付したものに對しては、すべて議會もスムーズに通つておるのでありますから、それだから私は言うのである。だから自分の都合のよいときには公聽會に付して、新憲法の精神に從うと言い、自分の都合の惡いときには現在は新憲法は布かれておらぬ。現在においては國會法も布かれておらぬ。議院法であり、すべてこれはなんら公聽會やその他のものを使わぬでもよろしい。こういう答辯をなさる。どうも一貫していないところに重大な欠陷があると思うのであります。この點いかん。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=150
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151・植原悦二郎
○植原國務大臣 私の答辯の方が一貫しておると思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=151
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152・山口喜久一郎
○山口委員長 まだおやりになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=152
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153・徳田球一
○徳田委員 あなたのここにおける答辯は一貫しておるかしらんけれども、しかし政府全體としての行動が一貫しておらぬということを言うておる。その點を私は言つておるのであります。しかしながらいくら聽いても大して益にもならぬと思いますから私の質問は大體これで打切りますけれども、しかしながらわれわれはこれにつきましては、討論において十分に意を盡くすべきことを留保したいと思う。誠意があればこれは質疑だけで大體濟ますのでありますけれども、この質疑に關しまして、なんら誠意ある答辯なき限りにおいては、われわれはこれを反對討論におきまして十分意を盡し、かくしてこの選擧法一部改正案が、政府の特に拒むことによつてこれの徹囘せられることが、最も現在の情勢に適すると思いますから、特にこの點を留保することを申し上げておきたいのである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=153
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154・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 議事進行に關して……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=154
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155・山口喜久一郎
○山口委員長 ちよつと速記を止めて……。
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=155
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156・山口喜久一郎
○山口委員長 先ほどの申し合わせによつて暫時休憇いたします。
午後四時十五分休憇
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午後四時四十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=156
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157・山口喜久一郎
○山口委員長 休憇前に引續き會議を開きます。細迫兼光君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=157
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158・細迫兼光
○細迫委員 私の質疑の問題の中心になります點は、去る二月十四日なされました吉田首相の施政方針演説の一節でありまして、その一節は選擧に關する一つの見解を述べられたのでありまして、できれば吉田首相に御答辯を願いたいのでありますけれども、おいでになることができないというので、國務大臣としての植原内相にお尋ねいたすのであります。その關係でますお聽きしたいのでありますが、吉田首相が二月十四日本會議でなされました施政方針演説は、閣議に諮つてその承認を得てなされたものでありまするか。從つてあの演説については國務大臣としての植原内相も責任をもち、また御了解の上でありますか。この點をひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=158
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159・植原悦二郎
○植原國務大臣 今二月十四日と御指摘になりますその演説がどういうものか存じませんが、吉田首相が首相としての御演説ならば、閣僚として責任をもつのは當然だと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=159
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160・細迫兼光
○細迫委員 吉田總理大臣は去る二月十四日本會議において、政府を代表した立場において、その施政方針演説をなさいました。その最後の一節に選擧に關する御見解をかくのごとく述べられております。現下のごとく勞働爭議の續發により、各方面の一致を欠き、民主政治の圓滑なる發達を妨げるがごとき外觀を呈するにおいては、わが國に對する國際の批判も自然低下し、連合國の同情も離れ、遂に物資の輸入も減退し、國家經濟再建の遲延せらるるのみならず、講和條約の時期も自然遲延せらるるに至らざるかを恐れるものである。ここに見るところあつて、マツカサー元帥は本議會後解散を勸告せられたものと想像する。すなわちこれによりますればここには解散という文字で表現せられておりまするが、その意味はもちろん次の選擧はかくのごとき原因によつてなさるべきことを、マツカサー元帥が勸告せられたという意味にとつて差支えないと思うのであります。すなわち勞働爭議が續發していろいろな惡いことが起るので、それで選擧をやり直せ、こういうふうなマツカーサー元帥の勸告と理解しておられるのであります。ところが今度のこの選擧法の一部改正は、これからさきの選擧ももちろん適用せられるのでありますが、さしあたり目の前に來るべき四月に行われる選擧を目がけておるのでありまして、いかなる選擧を行わねばならないかということについては、來るべき選擧の意義というものをはつきり認識しなければ、それに適用した選擧法の改正というものはできないのであります。今度の選擧につきましては、私は吉田首相のこの見解とは違つた見解をもつております。しかしそれは私のみではない。それはまたただに日本だけではない。多くの知識ある世界的の言論が違つた見解を表明しております。その一、二の例をあげますれば、AP通信の東京支局長ラツセル・ブラインズ氏はこういうことを書いております。日本の保守勢力は現在政府を牛耳つておるが、政變を求める聲が全國に起つたときに、マツカーサー元帥は總選擧を行うべきことを命じたのである、かように述べております。あるいはまたニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーン紙は、今度の日本の選擧は非常に重大である。吉田内閣は民主的であることに非常な欠陷があるという意味を言つて、吉田内閣の閣僚を再び當選させるがごときことがあつたならば、日本の民主化も非常に悲觀すべきものであるという意味の見解を、その社説において述べております。またロスアンゼルスのイヴニング・ニユース・ぺーパーは、今日の日本の議會はまだ非常に民主的でない。かくのごときであつては日本の民主化も前途遼遠であるという意味のことを述べております。これらのことを總合いたしますれば、世界的な見解としましては、今度の來るべき日本の選擧は、滿足の表せられない現在の日本の政治情勢、殊にその政權の所在を何とかここに變化を求める希望をもつて行われるのである、行われなければならないというように考えておると思うのであります。この點につきましてやはり内閣として、その閣僚の一員といたしまして植原内相は、吉田首相の述べられたように、世界のみるところと反して、今度の選擧をマツカーサー元帥が勸告せられたのは、勞働爭議の續發があるから、それでこういう勸告をせられたのだという見解をやはり維持せられるつもりでありましようかどうか。お尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=160
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161・植原悦二郎
○植原國務大臣 お答えいたします。U・Pの記者がどう申したとか、あるいはロスアンゼルスのイブニング・ニユースがどう申したとかいう、新聞記者の批評や評論は別であります。それは御隨意のことでありまして、吉田首相の申された通りと私は解釋しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=161
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162・細迫兼光
○細迫委員 もちろんA・P通信の東京支局長の言論も、あるいはニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーンの社説も一應の論に違いないのでありまして、必らずそのいうことを政府がもつてとるべしとは、私も強制いたすつもりはないのであります。ここがしかしながら重大なところでありまして、今度の選擧の意義、これをはつきり把握して、その意義に適合するような選擧法の改正をするならする。そうでなくてはならぬ。ところが吉田首相の見解にしたがいますれば、今讀みあげましたように、勞働爭議が續發するとか、いろいろな惡い結果をもたらすから解散して選擧をやり直すのだ。かように理解しておられる。このこと自體においてなんら連絡のない、論理に合わないことを言うておられるのでありますが、すなわち勞働爭議が續發していろいろな惡いことが起るから、全部解散する。これは三段論法にならないのでありますが、しかしながら語るに落ちておりまして、今度の選擧をいかになすべきかという一つの政府の方針の片鱗をここに示しておる。すなわち勞働爭議の續發、これを非常に憂えられまして、あらゆる惡いことはここから出てくるというように考えられておりまして、これの中心勢力を、なんとかして少しでも押えなくちやならぬ。こういうような考えが動いておるように考えます。それの線に沿うての改正をしなければならぬ。かような意圖が、ここに一本の隱れたる糸のごとくに背後を連ねておるように私は考えます。これが私の引用しましたいろいろの論説のように、今度の選擧は日本を不滿足の状態にある。民主主義化という點からみまして、不滿足な状態にあるものを、より完全な民主的なものにまで持ちあげていかなければならぬ。それがためにこの選擧をやらなければならぬのだという根本觀念に立ちますれば、從つて選擧法もその目的を達するに便宜なような改正が行われなくちやならぬ。かような筋合いになつてくるのであります。その點から申しましてこの選擧法の一部改正及びそれの今度與黨側から提案せられました修正案は、日本民主化の促進のために役立つものであるというふうにお考えになりますか。いかがでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=162
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163・植原悦二郎
○植原國務大臣 吉田總理の御指摘の演説と、それから引き出すところの細迫君の推定とは、これは御隨意でありますが、二月のゼネストが日本の産業をほとんど破滅にでも導きはせぬかということに對しての、非常に憂慮すべき状態であつたことは、爭うべからざる現實であるのみならず、マツカーサー元帥におかれても、これを非常に心配されて、その勃發の直前にこれを止めるように手配されたということは、細迫君御承知の通りであります。これに對しては議論の餘地のないところで、ただ日本國民として申しますならば、かようなことが進駐軍の御心配をかけなんで、日本國民みずからの手で、しかもこれを自覺し反省して、かようなことを他の力を用いずして、これに當つておつたものが止めれば、誰が止めたよりはよかつたのでありますが、國内自身でこれを止めさせることができずして、進駐軍の心配まで煩わしたということは、まことに重大なことであるのであります。そういうことをももちろん日本の國民が選擧の場合に考慮してくれることも、やはり健全なる民主主義の發達を期するゆえんでありましよう。また現在において——この點は必らずや細迫君も同意してくださると思いますが、日本人はややもすると極端から極端にまいります。今日の日本の國民のほとんどお念佛式に唱えておる民主主義、あるいはなんでもかんでも民主主義だというておる状態は、民主主義に徹底をいたしておりませぬ。のみならず民主主義の名を借りて、自省ある自由にあらずして、放縱やわがまま勝手を民主主義と考えて、日本の現在の社會の實相を洞察いたしますときには、民主主義も結構だが、この誤つたところの民主主義によつていくならば、ちようど數年前にプロレタリアイズムやフアツシズムにひかれて誤つたように、右と左の差はありますけれども、同じ日本のために憂うべき状態を呈するということは、心ある國民の憂うるところであると思います。從つてこの選擧にもそういうことが國民の間に自覺されて、ほんとうの民主政治を理解し、自由を尊重し、自己の責任を感じて選擧が行われることは、私ども一國民としても、また政府當局としても、さようなようになつて貰いたいと熱望しているのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=163
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164・細迫兼光
○細迫委員 勞働爭議の續發を防ぐには、政府の施策よろしきを得ることが唯一の方策でありまして、選擧をもつてこれを防ごうということは、木によつて魚を求むる類だと思いますが、そのことはこの際これ以上論議することは止めまして、政府もどの政黨も、ポツダム宣言の忠實なる履行ということを、ほとんどその政策の冒頭に謳つているのでありまして、あらゆる日本の現下の施策は、この線に沿うたものでなくてはならぬと思うのであります。ポツダム宣言の一節を見ますれば、「日本國政府は日本國國民の間における民主義的傾向の復活強化に對する一切の障礙を除去すべし。」と日本政府に對して命令をいたしているのであります。このことはポツダム宣言における重要なる一つの骨子をなしているのであります。選擧という重大なる一政策におきましても、このことは十分考慮して行われなければならぬのであります。大選擧區の欠陷としていろいろなことが申されております。たとえば費用が増大するとか、候補者の政見徹底ができないとかいうようなことがいろいろ申されております。また内相は政局安定にとつてよくないということも言われております。そういういろいろな論點もあると思いまするが、選擧にあたつてこのポツダム宣言の一部を適用する場合においては、從來の日本の選擧において民主主義的傾向の復活強化に對する障害の根本は、從來の選擧が選擧ブローカー、選擧ボスを中心になされる傾向があつた。これを打破するということが、選擧における民主主義の障害の打破の根底である。でありますので、私ちよつと極端に申しますが、費用がいくら増大しようと、あるいはまた候補者の政見がいかに徹底しない不利はあらうとも、この選擧ブローカー、選擧ボスの存在を徹底的に撃滅する、一掃するということが、民主主義化の障害を除去するという、そのことでなくてはならぬと思うのであります。でありますので、選擧ボス、選擧ブローカーの徹底的撃破ということについては、大選擧區がいいとお考えになりますか、あなたの理想たる小選擧區がいいとお考えになりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=164
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165・植原悦二郎
○植原國務大臣 細迫君にお答えいたします。ポツダム宣言を忠實に履行することは、ポツダム宣言なるがゆえに忠實に履行するというばかりでなく、私どもはさらに進んで眞に民主主義的平和國家をつくることが、ポツダム宣言のあるいかんにかかわらず、日本の國家の將來に對しては最善なりと考えております。ポツダム宣言に言われているからやむを得まいというような考えでは毛頭なく、さようなもののありますことのいかんにかかわらず、世界における日本の現状を考えまして、過去の過ちを反省いたしまする立場から申しますれば、私どもは徹底的に民主的な平和國家を建設することを、日本國民みずから自覺して、これに邁進することこそが、最も望ましいことであると考えているのであります。從つて選擧に臨むにあたりましても、その趣意に從つて、できるだけ民主的政治の實現に支障のありまするようなことは、いずれの方面においてこれが存在するにいたせ、政府の力でできますることならば、なるべくそういうものは芟除してまいりたいと思います。ただいまお説の政治的のブローカーやボスは、中選擧區のもとにおいてたやすく撲滅されるか、あるいは大選擧區のもとにおいて、よりたやすく撲滅されるかということは、選擧ブローカーというものの性質にもより、またそのボスという存在の意味もいろいろありますが、その間においては、私は大選擧區であるから、中選擧區であるからという差異はなく、さようなものは、法律よりはほんとうに民主政治に徹底する、各候補者がさようなものを退治して、ほんとうに正しい民主政治を實現することに努力されることを、私は切望してやまぬものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=165
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166・細迫兼光
○細迫委員 私の質問は討論の前提といたしまして、御意見を確めたいと思つたに過ぎないのでありまして、なおまた時間のお約束もありますし、この程度で打切ることにいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=166
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167・山口喜久一郎
○山口委員長 どなたか御發言はありませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=167
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168・辻井民之助
○辻井委員 提案者小澤君おいでになりませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=168
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169・山口喜久一郎
○山口委員長 坂東君ではどうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=169
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170・辻井民之助
○辻井委員 きのう小澤君が答辯された點について確めたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=170
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171・佐竹晴記
○佐竹委員 その間、内務大臣に對する質問を留保いたしておりましので、この際本案に關連して一言お尋ねいたしておきたいと存じます。本案件は議員提出修正案でこざいますけれども、修正案によつて修正さるべき原案が、本委員會審議の對象であるかどうかについては問題でございまして、この點がまだ明らかにされておりませんので、私は修正案自體には關係ありませんけれども、修正案によつて修正さるべき原案に關連、關係をもちますので、ここに一言お尋ねを申し上げておきたいと存じます。選擧法百一條の三及び百四條の規定の適用に關しまして、連合國最高司令官の要求に基き、昭和二十年勅令第五百四十二號、すなわちポツダム宣言の受諾に伴い發する命令に關する件に基く勅令によりまして、選擧法第百一條の三及び第百四條の規定の適用について、明らかに規定されました。これによりますれば「議員候補者又は支出責任者に非ざるものの支出する費用にして自筆の推薦状又は電話による選擧運動の爲めに要する費用以外のものは議員候補者又は支出責任者と意思を通ぜずして支出する費用と雖も其者と意思を通じて支出する選擧運動の費用と看做される」と書いてありますが、これは議員候補者の意思に反して、勝手に第三者が運動をいたしました場合でも、議員候補者または支出責任者と意思を通じてなしたるものとみなすという規定に含まれる趣旨でございましようか。これを明らかに願つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=171
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172・植原悦二郎
○植原國務大臣 お答えしてもよろしいが、事務的のことはなるべく事務を扱う者に答辯してもらつた方が明瞭になると思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=172
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173・佐竹晴記
○佐竹委員 局長にお答え願つて結構です。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=173
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174・小林與三次
○小林政府委員 ただいまお尋ねの點はお尋ねの通りでございます。その費用はポツダム省令の結果、事實上意思を通じなくて支出した費用でも、すべて自筆の推薦状か電話による選擧運動の場合以外の場合は、一切合財この費用の支出の關係においては意思を通じたものとみなされてしまうわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=174
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175・佐竹晴記
○佐竹委員 そうなりますと大變なことが起りますのは、選擧費用がかりに五萬圓と限定されますと、五萬圓を超えて支出いたしますと、當選無効になる場合を想像しなければなりません。そこで私が五萬圓の豫算を立てて四萬九千圓支出をいたしまして選擧をいたしました。それでかりに當選したといたします。ところが第三者が私に通告しないで好意的に葉書を數萬出しておつた。その金が一萬圓も二萬圓もかかつておつたといたしますと、私の選擧運動の費用が五萬圓と限定されておるにかかわらず、私の豫算のたとえば四萬九千圓なら四萬九千圓でちようどいくものを、第三者が好意による葉書を出しましたために六萬圓なり七萬圓なりになつて、私が直ちに當選無効にならなければならぬことになりますが、こういつた場合でも皆選擧運動の費用とみなされることになつて、當選無効に影響することになるという御趣旨でございましようか。これを明らかに願つておきたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=175
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176・小林與三次
○小林政府委員 ただいまの問題は百十條の解釋問題になるのでございます。百十條は御承知の通り費用超過訴訟の規定でありまして、原則として選擧運動の費用が最高限度額を超えれば議員候補者の當選は無効になるのでございますが、ただいまお尋ねのありました通り、支出責任者が全然關知しないで、第三者が勝手に金を支出した場合におきましては、この費用の加算とか取締りの面におきましては、今の規定が働きますが、當選訴訟の關係では百十條に但書がございまして、支出責任者またはこれに代わつてその職務を行う者において、選擧運動の費用の支出に過失がなかつたときはこの限りでない。こういう規定がございますから、第三者が支出責任者が關知せずに、勝手に費用を出したという場合には當選訴訟の上におきましては當選無効の原因にはならない。こういうことに相なるわけでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=176
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177・佐竹晴記
○佐竹委員 そうしますとポツダム勅令の五百四十二號の趣旨が、まつたく抹殺せられることになる恐れはないでしようか。すなわち五百四十二號には意思を通じてなしたるものとみなすとありますよ。意思を通じてなしたるものとみなすという場合においては、承諾の上にやつたものと同一なのです。從つて故意も過失もありません。意思を通じてなしたるものとみなす、すなわち私がやつてよろしいと承諾したものとみなされます。すなわち第三者が私の意思に反して出しましても、また私どもに何にも言わずに出しましても、それは私の承諾に基く場合と同樣にみなす。ですからみなされました以上は、第三者の出しました葉書も私の意思に基いて出したるものとみなされる。しからば私が私自身の支出いたしました場合と、第三者が私に對する好意のために出した場合との間に區別はございません。すなわち私が出した場合と同一にみなされます。みなされたときには、それは先ほどの但書適用の問題ではございません、私の支出でございますから、當然私が當選無効の訴訟を受けなければならぬことになりますが、それはいかがでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=177
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178・小林與三次
○小林政府委員 ただいまの御質問はごもつともでございますが、このポツダムの省令の趣旨は、私が理解しておるところによりますと、要するに第三者の選擧運動の費用は從來意思を通じない場合は自由だつたのでございます。そこで第三者が自由だということになると、結局その最高額を今度増額して、五萬圓なら五萬圓に押えても、まるで底が拔けてしまう。そういうことを司令部の方で憂慮いたしまして、これではいかぬ、實際の選擧運動の費用は五萬圓なら五萬圓のわく内に改めないといけない。こういう趣旨でこのポツダムの省令ができたものだと考えておるのでございます。そこでその費用の制限といたしましては、一切合財、必ず五萬圓なら五萬圓以内に入れぬといかぬという制限が設けられたわけでございます。それとともに、その場合に但しこの費用超過訴訟の面はおきましては、これは善意の支出、全然責任者が關知しておらぬ事實につきまして、直ちにその議員候補者の當選を無効にするということはいささか酷に過ぎるわけでございます。そこで百十條の解釋の上からは、當然に但書が働きまして、選擧運動の費用支出について、過矢の有無という問題は、實際問題といたしまして支出責任者竝びにその仲間の人たち、あるいはこれを支援、後援するといつたような人たちが支出すれば、過失の判定という問題が起り得るのでありますが、それ以外の全然關係のない人がやれば、過失がなかつたものと見て、當然に扱つているのじやないかと思います。そうすると一體このポツダムの省令は意味がないではないか、こういう點が御疑問の點だと思います。これはまことにごもつともでございます。この點は百一條の三に——ポツダム省令にも百一條の三及百四條の規定の適用についてはと、特に斷つておるのでございまして、百十五條の規定をひつぱつておりません。百一條の三の規定によりますと、支出責任者でない第三者が支出をする場合には、必ず文書による承諾を得ることになつております。それでありますからこの規定に違反すると、罰則の規定が働くわけでございまして、そこにこの制限の非常な意味があるのであります。それとともに勝手に反對黨の人を落すために何とかするという場合は、この當選無効の規定の上において必要な除外例が設けられておりますので、その間の調節がとられている。こういうふうに私たちは理解しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=178
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179・山口喜久一郎
○山口委員長 辻井民之助君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=179
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180・辻井民之助
○辻井委員 小澤君にお尋ねしたいと思います。昨日どなたの質問でありましたか、記憶いたしませんが、あなたの御答辯のうちに現在の選擧法、あるいは連記あるいは比例代表制はいいものではあるが、現在の日本の民度が低いためにうまく行かない。それで改正しなくちやならぬのだというようなお言葉があつたと思いますが、もう一應その點をひとつお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=180
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181・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 お答えいたします。私は民度が低いということは申し上げなかつたのであります。ただ日本の現在の國民の政治的訓練、あるいは婦人參政權が初めて出たというような状態から考慮いたしますと、現在直ちに比例代表制を布くことが不適當であるということを答えましたところが、淺沼君と思つておりますが、いわゆる民度の低いという言葉をそちらから受けたのでありまして、私は民度という言葉を使わぬつもりであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=181
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182・辻井民之助
○辻井委員 重ねてお尋ねいたしますが、比例代表制あるいは連記そのものに對して、それが絶對にいかんというお考えではないわけですね。この點もう一度伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=182
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183・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 つまり比例代表制というものに對しては、あるものは將來結構な時期がくるであろうけれども、その前提としてねらいをつけた現行選擧法の連記制というものは、この前提案の趣旨にも申し上げたような缺陷があるから、これは改正することが適當だろう。こういう考えであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=183
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184・辻井民之助
○辻井委員 いまの連記制度に對する缺陷として、今まで私の記憶している御答辯によりますと、いわゆる政治的訓練が足りない。その結果自由黨と共産黨を入れるとか、あるいは社會黨と進歩黨を入れる。また一名は名前を記憶するが、他に對しては適任者を十分に選擇することが不可能だ。そのために他はついでに入れるというような點が現在における缺陷だというような御答辯であつたが、そういうように受取つてよろしうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=184
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185・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 大體その趣旨であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=185
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186・辻井民之助
○辻井委員 内務大臣にお尋ねしたいのでありますが、私らの解するところでは、終戰以來の日本におきましては國民を十分に教育訓練してから制度を改めていくというのも一つの行き方でありますが、そういうことを待つておれない。從來の制度あるいは法律はすべて、間違つているのである。たとえば醫者にかかつて藥を飮んでおつたら、それは藥でなしに毒であつた。一刻も早く藥を取換えなくちやならんという状態であると考えます。それでこそ國氏を政治的に教育もせずに、頭から從來のいわゆる主權在民に裏返しをしてしまうような改革をやる。あるいは普通選擧を昔われわれ要求してまいりました時分に、まだ勞働者や農民は三圓以上の直接國税を納め得ぬ者は政治に參與するだけの訓練がない。時期尚早だというようなことで抑壓されてきた。また二十五歳以上でなければ選擧權を行使する能力がないということで普通選擧すらも與えることをこばんできた。ところがこういう行き方と對蹠的にまず泳ぐのに疊の上で訓練してから水へはいるのではなく初めから水の中へ投げこんで、溺れようとすることによつて遮二無二泳ぎを習得するというような行き方をとらざるを得ぬ状態にあると思うのであります。それでこそ現に憲法におきましても、根本的な主權を天皇國民にもつてくる。また演説會を聽きに行くことすらも禁止され、政治的な訓練を組織的に受けていなかつた婦人にまでも、一擧に參政權を與えている。二十歳までの全國民に參政權を與える。今日刑務所から出てきたばかりの者にも參政權を與へるというように、すべての行き方が、まずやらして教育していくというやり方をとられておると思うのでありますが、この點私は二つの行き方があると思います。徐々に教育をしてからその武器なりあるいは制度なりを與えるという行き方と、初めからやらして教育していくという二つのやり方があり、終戰以來の現在の日本は、まずやらせながら實際にぶつからせて教育し、訓練していくという途をとらざるを得ぬのである。また現に政府がとつてきておると思いますが、この點内務大臣はいかに考えておられるか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=186
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187・植原悦二郎
○植原國務大臣 お答えいたします。革新に向つて進むときにはお説のごとく二つの途があると思います。急進的にほとんど現存するところの制度を無視する程度に、思い切つてやつて、そしてそれと同時に訓練せしめるということと、漸進的に行くという方法とあると思います。その二つの方法のあることは辻井君のお説の通りだと思います。現在においてもいろいろの方面にその二つの行き方が現れておると思います。どちらがよいかということは、その特殊な環境と、特珠な事情によつてどちらがよいかという判斷をすべきものであります。兩方の方法が現在もあらゆる方面において行われておることも事實であります。またそういう二つの方法のあることも事實であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=187
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188・辻井民之助
○辻井委員 内務大臣は今、二つの方法を、要するに實情に即して適當に行つていくべきだというような御答辯であつたと思いますが、私は現在までの日本が、あるいは政府がおやりになつてきた點は、これはもう好んでおやりになつたのではないと思いますが、好むと好まざるとにかかわらず、まず教育してからではなしに、與えてそしてそれを使いこなしながら、與えてから使いこなすことを實地について訓練し、教育していくという行き方をおとりになつてきておるのであり、これよりほかに進む途がない。ポツダム宣言を誠實に急速に履行することは、これは日本の國際的な連合國に對する義務でありますると同時に、そうしなければ日本は起ち上り得ないのでありまして、また民主的に早く日本が、いわゆる無血民主主義革命という言葉さえ使われておりますように、民主主義を確立するためには、そうするよりほかないと私は考えるのであります。さように考えますると、一方においては主權在民の十分でないにしましても、憲法を實施するときが既に一箇月向うに迫つておりまするし、また既に女子には參政權が與えられており、あるいは地方自治法がまさに議會を通らんとしておるというように、刻々といわゆる民主革命が無血のうちに行われようとしておるのであります。こうせざるを得なかつたという事實に立つてわれわれは考えるのでありますが、そういたしますると結局現在の連記にいたしましても、速記をお調べになればわかりますが、きのうの御答辯では小澤君が民度がまだそこまでいつていないという言葉を使つております。どちらでもよいが、政治的に訓練がまだ十分でない。それで一人ぐらいの候補者ならばきめることができるが、二人、三人になるともうそこにいい加減な者を書くようになる。また政黨に投票をすることを知らない。また内務大臣も共産黨と進歩黨に投票することは碁において、黒と白とを一緒に打つようなものだというようなお言葉もあつた。要するに選擧民の多くが、民衆がまだ政治的に自覺が足らない。無自覺であるというような斷定の上にお立ちになつておると思うのであります。だがこれは私は非常に誤まつた、また非常にこれはわれわれとしては默視することができないお考えだと思います。というのは、現在の日本におきましてごく少數の——この間も尾崎先生がお褒めになつた共産黨の徳田君や何かのように、十八年も牢獄におられた人は別でありますが、そのほかの國民はごく少數を除く多くの者は、おれが政治的に自覺しておる、進んでおるというようなことの言える權利のある者はごく少數であると思います。かえつて指導的な地位にあつた者が國を過らしたのであります。少くとも内務大臣なんかは、あの當時の東條軍閥、フアツシヨに反對され、彈壓もお受けになつてきましたけれども、積極的にそれを覆すだけの力がなかつたわけで、ともにその責任はわれわれ同樣免がれないと思います。正しくそれに對抗するだけの鬪いをなし得なかつかのであります。民衆をわれわれの方に引つけてそれを覆すだけの鬪いをなし得なかつた。どつかにわれわれの運動の方針に、やり方に間違いがあつたわけであります。その責任は免れぬと思います。いわんや先はど内務大臣も述べられたように、はやり言葉で民主主義、民主主義と今日猫も杓子も唱えておる。そうしてこのようにきのうまでの東條禮讚、フアツシヨ的な追隨者が、手の裏を返したように今日では民主主義を主張しておる。このように政治的な駈引でありますとか、あるいは政治的な遊泳術であるとかいうようなことにたけておる者が、政治的に自覺しておる、訓練されておるというような考え方は、これは絶對に間違いであると考えます。共産黨と進歩黨、あるいは自由黨と連記しましても、これが一體何が惡いのか。あるいは社會黨と自由黨と連記しましたところで何の弊害があるのか、それが現在の裸にしたところのそのままの今日の大衆の意識でありますならば、それが直接に反映する選擧法が最も正しい選擧法であると思います。それを無理に單記投票にいたしまして、結局自由黨に入れようとか、共産黨に入れようとか、二人入れたいけれども一票しかないから一票は共産黨に入れた。乙は偶然に反對に自由黨を入れた。結果において一人の人間が兩方に入れるが。二人の人間が互いに自分の敵とも知らずに、敵に對して一票入れるような結果になるだけであります。結果においては連記で麗々しく自由黨と共産黨が竝びましても、別々の人間が別々に自由黨と共産黨とを入れましても、選擧の結果においては何の變りもない。しかしこうして一旦黨に投票すべきをそこまでまだわかつていないために相反する政黨に連記をいたしましても、その結果お互いに投票した議員に對しては、政黨に對してはその後關心をもつておる。そうして議會における兩派の對立を見ましても、これはどちらに入れるべきであつた、あれに入れたのは間違いだというふうなことがだんだんわかつてきている。そうして去年の選擧から一年餘り經ちました今日におきましては、昨年とはどれほど政治的な水準が上つておるかわからぬと思うのであります。しかるにまた一方におきましては、さきに小澤君が言われたように、やがて連記あるいは比例代表制がいいかもわからぬけれども、現在では民度が低いから、あるいは政治的な訓練が足らないから、そういう間違いができるというお言葉でありましたけれども、ほかの何らの訓練も何もない婦人に參政權を與えておる。天皇が神さんだと思つておつたものに、天皇は神さんではない、お前らが日本の主權者であるという憲法を與えておる。そうすれば將來ならばどころではない。現在連記あるいは比例代表を與えることがなぜ惡いのだ。私はこれは單に選擧法の改正だけではない。今後刻々とまだ民主革命を遂行し、民主主義を實現していかなくちやならぬのでありまするが、そういう場合にできる限り、できたならば一般に教育し、訓練してから法律を與える。制度を與える。制度の改革をやる。法律の改革をやる。ただ關係方面との關係もあるから、やむを得ぬから憲法を主權在民にする。女子に參政權を與える。こういう行き方でおいでになりまするならば、なかなか日本は自由權を囘復し、世界の信頼を取戻すことは困難であろうと思います。こういう點に對して一體内務大臣竝びに提案者は、いかにお考えになつておるのでありますか。内務大臣、小澤君、兩君から御答辯を得たいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=188
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189・植原悦二郎
○植原國務大臣 私非常に注意して承つておつたのですけれども、御質問の要點が實はどこにあるか、補足するのに非常に私苦しんだのでありまするが、御趣旨はこういうことでしようか。なるたけ今のような世の中には急進的に法律をつくつた方がよろしい。しかるに單記制は急進的を缺いておる。これはどうかという御意味でありますか。あるいは單記制というものが非常に急進的なものである。連記制の方がちようど今の國民の政治思想や政治訓練に適しておるのである。どつちかという御質問でしようか。その點どうも私非常に補足するのに困つたのでありすが、連記と單記との前置きならば私ははつきりお答えいたします。現在の大選擧區の連記というのは、これはすぐお考えになれば、實に間違つた連記であるということはわかる。ほかの事實は一切除きまして、かりに香川縣なら香川縣の例をとつてみましても、香川縣は定員五名の選擧區である。そこではただ一人の代表者しか書けない。しかるにその隣の縣の愛媛では(「長野縣の話をした方がいい」と呼ぶ者あり)そこに定員が十三人おる。その場合に三名書ける。同じ國民でありながら、一人の人は三名の代表者を出し、一人の人は一名しか書けない。こういうことはどんなに考えても、一人の人が三人の代表者を出して、一人の人が一人しか出せない。こんな矛盾はないと思います。どつちでも公平に選擧するということでありましたならば、單記が一番よろしい。これは政治思想の問題よりは、とにかく原則として一番よろしい。こうお答えする方がよろしいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=189
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190・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 お答えいたします。大體辻井君の御質疑は、かりに比例代表等の制度が理想的なものであるならば、その理想的なものに邁進することが適當ではないか。現在の日本國民の民度が低いという言葉を用いましたが、あるいは政治的訓練が少いというような理由で、直ちにその制度を避けておくことは不都合ではないか。むしろそういう民度が低い、あるいは政治訓練等が少い場合でも、まつすぐに理想的な制度にもつてきて、そのうちにだんだん訓練をさしたらどうかというようなお話だと承つております。そういう考え方ももちろんそうでありまするが、私はきのう淺沼君にもお答えしたように、少くともこの問題については辻井君の考え方は一つ、また政治教育というものをやるということが一つと、二つの行き方があると思うのです。しかしこういうものは理論だけではいけませんので、實際の面に至つては、並行する方が一般問題としては效果的なものであると私は考えております。ただ私は比例代表制という問題について、直ちに實施することができぬというようなことは、現在の政黨の關係等もこれをどうかというとおかしくなりますが、現在の政黨というものをもう少しやはり比例代表制に合うような程度まで進むことを望んでからで遲くはないのではないか。こういう點が非常に氣づかれております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=190
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191・辻井民之助
○辻井委員 小澤君御用があるそうですから、昨日のお言葉を確かめたかつたから來てもらつたのですが、もうお歸りになつて結構です。内務大臣の御答辯は、はなはだ私の質問の的をはずれておるのでありますけれども、あれはあれくらいにいたしまして、次にお尋ねしたいと思います點は、民主主義を確立していきますためには、ただ一黨派が議會で多少多數でありましても、獨斷的にこれは一番いいものだからと言つて天降りに與えたのでは、これは正しい意味の民主主義の確立にはならないのであります。そう斷定して差支えないと思います。そういう法律や制度をつくる手段方法においても、民主的な方法をとらなければならぬと考えます。それはもうこの議會における與黨の議案提出の仕方についての不合理なる、すこぶる不明朗なやり方につきましては相當論ぜられましたから、これは重ねて申し上げようとは思いません。内務大臣自身が現在の連記がそれほどいけない。また大選擧區制がそれほどいけない。中選擧區制單記を非常な熱意をもつてこれの通過を迎えられておるという、それほどの熱意をもたれておるならば、なぜ進んで政府提出法案としてお出しにならなかつたか。これももう相當繰返されておりますが、さらに私のお尋ねしたい點は、いわゆる民主主義的な制定の仕方、立案の仕方、現に政府は勞働基準法あるいは勞働關係調整法、そのほか幾多の法律案の制定にあたりまして、民間の關係者、勞働關係調整法あるいは勞働基準法におきましては資本家側、勞働組合側あるいは中立の學識經驗者というような人たちを網羅して、そうして政府が立案するよりも、その委員會において立案をなさしめる。立案されたものは公聽會を開いて、代表的な關係者を集めて、そうして公聽會を開いて世論を探る。その上で多少の手を入れて政府の原案として提案せられておる。これらの法律案でさえもそれほどの手續をおとりになつておる。選擧法の改正案というがごときものは、現にきのう提出せられた別表を見ましても、幾多の疑惑をもたざるを得ない。あくまでも公正に作成せられ、立案せられたとはどうしても受け取れない。いろいろ質問をしましてもはつきりした答辯を得ることができないから、今別にこの調査會でありますか、質問會であるかをやつておるというような状態でありまして、またこれが一黨派によりまして、あるいは與黨だけによりまして、公平にたれが見ても納得のいくようなものができそうなはずはない。お互いにこうして出ております以上は、あくまでも自分の當選に都合のいいような選擧法、區制が布かれることを望まない者はないのであります。そういうお互いに同じ立場に立つた人たちが寄つてつくるのでありますから、自由黨には自由黨に黨利がある、自由黨にとつて都合のいいところの、政府黨にとつて都合のいいところの選擧の別表のつくり方がある。進歩黨でも同じことである。こういう人たちが寄つてやれば、よほど割引をして、公平にやつたつもりで御本人たちはおられても、結局強く希望するところが知らず知らず影響いたしまして、そうして結局我田引水的なものにならざるを得ないのであります。また公平におやりになりましても、公平にやつたとは國民も考えない。われわれ野黨にいたしましても、そういうことを考えにくい立場にあるのであります。從つて選擧法の改正案というようなものの立案は、あの勞働基準法やあるいは勞調法の立案の場合と同じように、そういう方面の、自分が直接選擧に携わらないで、しかもそういう道の權威者を集めて、そういう人たちの意見を聽くとか、あるいはそういう委員會において立案させるというような方法をとりましたならば、だれが見てもそれに異議をさしはさむことはできないのでありまして、少くともこれくらいの準備をもつて十分にねつて、政府原案としてお出しになるのが私は當然ではないかと思うのであります。しかるに豫算總會その他における内務大臣の答辯を承りますると、完全なものではないと思うが、次の選擧はこれでやつていつて差支えないと思う。しかし議會側から改正しようという御意見があれば、それに對しては反對しないというような、何か今から考えるとすこぶる含みのある答辯をせられている。それが、政府と自由黨、進歩黨が何の關係もないのならどうか知らんけれども、いわゆる與黨でありまして、政府黨なのであります。また内務大臣も、幣原國務大臣も、總理大臣も、皆黨員である。あるいは總裁である。幹部である。この場合、これほど無理をして押し通さなければならぬほどのものならば、なぜそういう民主的な手續をとつて立案せられなかつたのであるか。この點、何ら手落ちがない、これで堂々たる行き方であるというようにお考えになつているかどうか、内務大臣のお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=191
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192・植原悦二郎
○植原國務大臣 辻井君にお答えいたします。先刻の御質問の要旨がよく私わかりませんでしたが、小澤君の御答辯でわかりましたから、この際はつきり申し上げておきます。辻井君の先刻の御質問は、小澤君の答辯によつてみますと、今の日本の國民の政治の訓練や知識の程度はどうであつても、民主革命のときだから、大選擧區で比例代表制に邁進したらどうだ。こういう御質問であつたように小澤君の答辯から推測して判斷してよろしゆうございますか。それならそれについてお答えいたしますが、大選擧區であるならば比例代表でなければ大選擧區というものの意味を達することができないと思います。そこで比例代表というものを實際に行うためには、政黨がはつきりしておらなければならないのであります。政黨が今日の日本はまだはつきりしたとは申されないということは、この委員會においても私が屡屡申し上げているところで、數が多いばかでなく、實は今日の政黨において、それがまた解黨して別のものになつているというような状態でありますから、こういうときにいくら邁進するといいましても、比例代表制を扱つても考え通りにいかないことになる。比例代表制というのは計算するのに非常にむずかしいものであります。たとえそれを移讓式にいたしましても、それはなかなか容易ならぬ。今日のような政黨のほんとうに發達していないときに、今日の程度で比例代表制をやりましても、これは口で言うことはやさしいが、實際にこれを責任をもつてやるということは、ほとんど不可能であると私は思います。これで第一のお答えといたします。
次の御質問の、なぜ公聽會でも開いて、もつとこの中選擧區制を練つてやらなかつたかという點でありますが、公聽會のことについては先刻既に徳田君の御質問に、再三再四お答えして御承知のことだらうと思います。民主主義を尊重するがゆえに私は議員提出の案に敬意を表する。何といいましても、選擧のことは、選擧によつて出た議員より、選擧に精通している人はありません。この多數の方がきめますことに對しては、敬意を表することは當然であると私は承知しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=192
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193・辻井民之助
○辻井委員 初めに申し上げた質問に對する今のお答辯が、まだ相當的がはずれていると思うのであります。社會黨からは比例代表制の修正案を出してはおりますけれども、これは提案理由の説明にわが黨の鈴木君が申し上げたように、これは積極的にわれわれが出しているのではない。改惡に對して、どうせ改めるならかくのごとき方法で改むべきであるというので出しているのでありまして、われわれはかような改惡案が出なければ、積極的に修正案を出す意思はなかつたのであります。ただ私の言うことは、幣原國務大臣が總理大臣の時分に、御承知のように政府みずからが提案され、自由黨や進歩黨の多數の方が——當時はまだ自由黨や進歩黨はなかつたかと思いますが、結局現在の自由黨、進歩黨に屬する多數の方がこれに贊成して制定せられたのであります。この二名連記、三名連記は既に一囘行われている。その結果について、これがまずいという重大な理由はない。あらゆる危機を眼の前にして、あるいはマツカーサー元帥から政府に對して重大な警告が發せられ、ぐずぐずしていれば日本が滅びなければならぬような幾多の重大な問題に今ぶつつかつている場合に、他の議案を山積させておいてそのために會期を四日も延長して、さほどまでにして押し通さなければならぬほどの欠陷が現行選擧法にあるとはわれわれは認められない。ただ昨日からの提案者の言い分を聽いておりますと、黨に投票することはできないとか、一人の候補者ならわかるけれども、二人以上になるといい加減にやるとかいうようなこと以外には、あるいは廣過ぎて運動がしにくいとかいうような、ほとんど決定的な、致命的な、ここで無理やりに改めなければならぬような、根本的な理由を何らわれわれは承ることができないのであります。結局しやにむに與黨に都合のいいような選擧法をでつち上げようとしてやつているとしか、われわれにも國民にも考えられないのは、決して無理がないと思うのであります。個人的にはよく自由黨や、進歩黨の諸君が言われているのを直接承つておりますけれども、個人的な話だから氏名は指しませんが、今の選擧法では共産黨が進出するから困る。あるいは政治的な訓練も何もない女が、まぐれ當りに出て來ることが困るからというようなことが、直接に會えば理由に擧げられるけれども、委員會に出てお示しになつているところの理由というものは、ほとんどとるに足らぬようなものであり、それも一年間以上經過しておりまする今日においては、昨年の選擧から較べますと、どれほど政治的な訓練、教育が濟んでいるかわからぬと考えているのであります。こういう場合に今まで承つたところによりましては、なんらわれわれは納得することができないのでありますが、しかしそのほんとうの理由を承ろうとしても承ることはおそらくできないと思います。ただ最後に内務大臣にもう一應、幣原國務大臣にも外の同僚からもお尋ねいたしましたけれども、マツカーサー元帥からああいう警告が出たりして、實際石炭も出ない。鐵道も痲痺しかけている。食糧は遲配續きで政府の言明にも拘らず埋め合せがちつともできていない。それを解決するために……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=193
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194・山口喜久一郎
○山口委員長 あまり重複しないように言つて下さい。もう二、三囘問題は出ておりますから……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=194
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195・辻井民之助
○辻井委員 いろいろの營團の法案が出ておりますけれども、もうすぐやらなければ、早くやらなければ間に合わない。これほど政治を澁滯させ、忙しい中を、そのために大臣が政務をみることができない、それほどまでにしても押し通そうとする。これが正しい態度であるとお考えになつているかどうか。最後に内務大臣竝びに提案者に念のためにもう一應お聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=195
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196・植原悦二郎
○植原國務大臣 お答えいたします。しばしばその點はお答えいたしました。ただ繰り返すのみであります。政府としては議員の經驗を尊重するという外にいたし方ありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=196
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197・坂東幸太郎
○坂東幸太郎君 昨日來提案者の答辯した通りで、それで辻井君も御諒解願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=197
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198・辻井民之助
○辻井委員 必ずしも時間の引き延ばしに質問をしているのではないのでありまして、われわれとしては社會黨を代表して聽かねばならぬから聽いているのであり、われわれはこの日本の現在の危機というものを、非常に重大に考えているのであります。この認識が今彌次られておつた與黨の諸君とは、根本的に變つているから、なんべん繰り返して聽いても、聽きすぎるということのないほど、日本の將來にとつて重大問題であるから繰り返し質問しているのであります。なんべん聽いても決して私は多すぎるということはないと思う。まつたくこの重大な日本の危機に對する、またこの危機に處すべき政治家としての十分な認識の問題であると思います。これ以上お尋ねしても、もう滿足の行く答辯は得られそうにありませんから、この上はまた本會議において十分に鬪うことにいたしまして、私の質問はこれで打切りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=198
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199・佐竹晴記
○佐竹委員 この際さきに私の發言いたしました事項についてはつきりといたしておきたいと思います。左の四點について委員長より御答辯をお願いいたしておきます。第一、本委員會の審議の對象はいかなる案件であるか。すなわち今囘の委員付託の原案は大野伴睦君外一名提出の修正案外三件、これはいずれも議員提出の修正案であります。その三件である。この委員會で、修正案により修正されようとする政府原案も審議の對象となるのか。第二が本委員會の修正可能の範圍いかん。すなわち原案たる修正案に對する修正の外、修正さるべき政府原案に對する修正も許されるのか。第三にさきの政府提出選擧法の一部改正案に關する委員會において可決したものにつき、本委員會で修正を議することは一事不再議の原則に反しはせぬか。第四、今囘のごとく修正案を分離して委員會に付託した先例ありや。相當論議のあるようなことは今後廢止する必要があると思うが、いかん。以上四點についてこれを明確に願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=199
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200・山口喜久一郎
○山口委員長 お答えいたします。お尋ねの第一は、本委員會の審議の對象はいかなる案件であるかということであつたと思いまするが、本會議で付託された四件の修正案であるということを御承知願いたいと思います。しかして第二に修正の範圍についてお尋ねがありましたが、修正の範圍は現行法の衆議院議員選擧法の全部にわたつて差支えはないと思います。でありまするが、それは付託された修正案件を修正する限度に限らなければならぬと思います。第三番目は委員會において可決したものを、また本委員會で修正することは、一事不再議の原則に反せぬかというお尋ねであつたと思いますが、これは本會議でいまだ議決せざる前でありますので、一事不再議の原則には反しないと解釋しております。最後に今囘のように修正案を分離して委員會に付託した先例があるか。またこういうことに對しては相當論議の餘地があると思うが、今後はなるべくこういうことは廢止する方がいいと思う。そういうことであつたと思います。本會議に委員長報告の後修正案が提出されたときは、その修正案について、本會議でただちに審議するのが、あくまでも本質であると思います。しかしながらこのたびの場合におきましては、特殊の情勢によりまして、御承知の通り各派交渉會の申合せもありまして、これにもとずいて審議の愼重を期するために、特に委員會を設けたような次第でございますが、しかしながら今後御論議のあるようなことは、なるべく避けた方がいいということに關しましては、まつたく佐竹君の御説に同感であります。以上はなはだ簡單であり不行屆きでありますが、私の見解を申し述べて御答辯とする次第であります。
佐竹君。大體この程度でお差支えございませんでしようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=200
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201・佐竹晴記
○佐竹委員 これについては私どもなお相當別異の意見ももつておりますけれども、せつかくただいま御答辯でありますので、この問答といたしましてはこの程度にいたしておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=201
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202・山口喜久一郎
○山口委員長 これにて質疑は終了いたしました。これより討論に入るのでありますが、討論の時間の打合せ、また議事等について打合せの必要がありますので、午後七時まで休憇いたすことにいたします。
午後六時九分休憩
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午後九時十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=202
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203・山口喜久一郎
○山口委員長 休憇前に引續き會議を開きます。速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=203
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204・山口喜久一郎
○山口委員長 速記を始めて……。この際提案者より發言を求められておりまするからこれを許します。小澤君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=204
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205・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 ただいま大石委員が御報告の通り別表についていろく懇談いたしましたが、社會黨その他の代表諸君から、いろいろな點において御參考になる非常に有益な御意見がありましたので、私どもはその意見を諒といたしまして、ここに別表を提案者といたしまして一部訂正することと相なりましたから、何とぞ御諒承を願いたいと存じます。なおこの内容につきましては、事務局の事務官に朗讀をしていただきますから、御靜聽を願います。
〔事務官朗讀〕
七頁、八頁、九頁京都府第二區のうち、下京區を、第一區に加え、第一區の定員を五人とすること。同第三區を全部第二區に加え、第二區の定員を五人とすること。
二十頁、二十一頁茨城縣は、元の印刷のままとし、添附した張紙をとること。
三十二頁、三十三頁岩手縣第一區のうち、稗貫郡を第二區の和賀郡の前に加え、第二區のうち上閉伊郡を、第一區の下閉伊郡の前に加えること。 以 上
三十二頁、三十三頁岩手縣第二區のうち、釜石市を第一區の盛岡市の次に加えること。 以 上発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=205
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206・山口喜久一郎
○山口委員長 これより衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案の各案を一括議題といたしまして討論に付します。速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=206
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207・山口喜久一郎
○山口委員長 速記を始めてください。坂東幸太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=207
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208・坂東幸太郎
○坂東委員 ただいま委員長より宣告せられました大野伴睦君外一名提出にかかる衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案に贊成の意を表します。これは申すまでもなく中選擧區單記制の改正でありまするが、これに關しましては連日各方面から質疑研究されまして、もはや議論は明瞭になつてまいりました。なるほど見ようによつてはいろいろ議論もありましようが、要するにわれわれはこの案に對しては絶對に贊成の意を表します。他の修正案に對しては反對の意を表します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=208
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209・山口喜久一郎
○山口委員長 椎熊三郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=209
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210・椎熊三郎
○椎熊委員 日本進歩黨の委員を代表いたしまして、選擧法一部改正の法律案の、ただいま議題となつております修正案のうち、自進兩黨提案の修正案に對して贊成の意を表します。他の修正案に對しては反對の意を表する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=210
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211・山口喜久一郎
○山口委員長 淺沼稻次郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=211
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212・淺沼稻次郎
○淺沼委員 私は日本社會黨を代表いたしまして、ただいま議題になつておりまする衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案、大野伴睦君外一名提出の案外一件反對をいたしまして、衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する鈴木義男君外六名提出にかかる修正案に贊成するものであります。簡單に大野伴睦君外一名提出の修正案外一件に反對し、鈴木君提出の修正案に贊成する理由を申し上げてみたいと存ずるのであります。
改正憲法には、その前文において、「日本國民は、正當に選擧された國會における代表者を通じて行動し、」と述べております。さらに第十五條には、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である。」という規定があります。さらに續いてすべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。公務員の選擧については、成年者による普通選擧を保障する。」こういう規定があります。さらに第四十三條には「兩議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。」という規定があります。また第四十一條には、國會は、「國權の最高機關であつて、國の唯一の立法機關である。」という規定があります。かくのごとく、選擧を通じて人民はその主權者として行動するのでありまするが、その選擧されたる人民の代表によつて國會は構成されてまいるのであります。その國會を構成するところの選擧法についてただいま修正案が出ておるのでありますが、これは選擧法の根本にふれた修正でありまして、私はこの取扱いについては非常に愼重を期さなければならぬと思うのであります。私が反對いたしまする第一點は、取扱いに關する點よりして反對をしたいと存ずるものであります。政府におきましては、四月二十五日に選擧を執行するということを發表しております。從つて議會がこれ以上延長にならない限りにおきましては、選擧は四月二十五日に行われることになるのであります。すなわち選擧が行われるのを現實に控えておりまして、今迄選擧法をかえなければならないという理由が一體どこにあるかということを、私どもは究明しなければならぬと思うのであります。この點につきましては、過日の本會議の席上において、われわれの同僚鈴木義男君が、ちようど競技を前にして、そのグランドの入口でもつてルールの改正を協議していると同じようなものであるというような比喩をもつて演説されておりましたが、私もまさしくその通りに考えるのであります。國會構成を規定する選擧法である限りにおきましては、私はその扱い方というものは非常に愼重でなければならぬと思うのであります。ところが政府の原案において選擧法の一部改正に關する法律案が提出され、それを委員會で審議中、私どもはたびたび委員の方に對しまして、これに抱き合わせて、根本にふれたような改正案が出るのであろうかということの念を押したのでありまするが、最後に出るということになりまして、これが本會議において出て、さらにそれが委員會に付託されて今審議の過程にあるのであります。かくのごとく期日が非常に迫つておるということと、しかもその修正案を出す形式というものが、これも異例中のことと私は思うのでありまして、すなわち委員會に付託されたのは一部改正に關する法律案が付託されておるのでありまして、その根本でありますところの選擧法の改正全體が委員會には付託されておらなかつたのであります。從いましてそれまでに改正案が出るということはいかがであるかという考えをもつておつたのでございますが、しかもこの委員會におきましては、提案者であるところの自進兩黨を代表する委員が加わりまして、審議をやつたその結果委員長報告となつて議場に出されたのでありますが、しかし議場に出された後において、自進兩黨よりさらに追加修正案が出ておるということは、私は委員會に對する自進兩黨から出た修正案が、委員會の審議に對しまするところの一つの彈劾的な立場に置かれておりはしないかということを考えまして、この形式が私どもには納得がいかないのであります。さらに加えまして、その修正されました委員長報告に修正案が出たものを、併せてこの委員會に付託になつております。修正案が出たものを委員會に付託するということは、まだ前例がないところでありまして、委員長もこれを前例にしないということを、先ほど同僚石崎君の質問に對して答えられたのでありますが、その例のない委員會を開いて、しかも期間は時間を切り切りやつて、二日でこの案を仕上げなければならないという立場におかれておるのであります。審議期間必ずしも十分というわけにはまいりません。從いまして私どもは、選擧を前にして一氣にこれを押し通してやらなければならないという理由がわからぬのと、さらに委員會におきまするところの審議の經過、竝びに委員會における提出者の案の取扱い等を考慮いたしまして、この點から案に贊成しかねるのであります。
第二點は、質疑應答の中に現われたところによつて、この案の立案に當りましては政府が關與しておるという點であります。すなわち政府と質疑應答の中に、國務大臣幣原氏にいたしましても、さらに所管大臣植原さんにいたしましても、この案に對しては贊成であるという意思表示をされておるのであります。私どもは議院において、審議の行動中であります。立法の府におきまして、私どもは議員としての行動中でありまして、行動が終止されないうちに行政の府からこの案に贊成であるという意思表示をされることは、ある意味から申しますならば、私どもの審議に對する一つの制約でもあろうと思うのであります。政府が同意をするということが初めからわかつておるのだということになりますれば、結果においては審議をしても結果はわかつておるという形になりまして、この點私非常に重大だと考えるのであります。すなわち政府がわれわれの行動中にこの案に同意であるということを表明するゆえんのものは、政府と自進兩黨との間におきましては、政府で提出すべき責任を、政府が逃れて、自進兩黨の名において出したのではないかという私は疑いをもつのでありまして、そういう點からいたしましても贊成するわけにはまいらぬのであります。この點につきましては、國會法の審議に當りまして、貴族院におきましてある議員が金森所管大臣に對して、政府はこの國會法に對していかなる態度を持しておるのかという質問をいたした際に、金森國務大臣は非常な愼重なる態度をもちまして、今は議院が行動中でありまするから、政府はまだ自分の立場を表明する域に達しておりません、と言つて答辯を留保されております。それは、衆議院を通過して貴族院で審議中のものでも、政府は愼重なる態度をもつて自己の態度を表明しておらぬのであります。しかるに本案審議中におきましては、兩國務大臣はともに、立案の趣意には贊成である、しかも議院でやつておることに對しては政府はそれにいつでも同意をするという態勢をとつて來ておりますことは、明らかに本案作成に當りまして、政府が關與しておるということを私どもは感ぜざるを得ません。しかも植原國務大臣は、政府としては關與しないけれども、事務當局は關與したかもしれぬ、下僚の者は關與したかもしれぬという答辯を私にされておるのであります。どういう程度の關與であるかわかりませんけれども、少くども大臣の答辯の中にそういうことが現われておりますことは、立案に當りまして政府が關與しておる。非常に立案そのものに對して不明朗な點がある。これが私が贊成しかねる第二の點であります。
第三の點は案の内容であります。案の内容につきましては小澤君から説明がありまして、伺つたのでありますが、中選擧區單記制について、小選擧區制の缺點竝びに大選擧區制の缺點、制限連記制の缺點をあげております。小澤君の説明によりまするならば、選擧區の大小が、小選擧區の場合は、選擧區の矮少、地方的人物を出す。第二番目には選擧區爭が激烈になつて、買收が行われる、第三には、官權濫用、干渉が行われる。これはもうないだらうと附け加えておる。第四番目には議員の行動が地方的になりやすい。地方の利害を代表する結果になる。こういう缺點をあげております。大選擧區制につきましては、府縣の區域に廣狹の差がある。さらに選擧區域が廣いから運動が困難である。政策が徹底をしない。選擧運動の費用が嵩む。こういうような弊害をあげておるのであります。さらに制限連記につきましては、投票に對する熱意がなく、選擧民は政策の異つた黨派に投票する。こういうようなことが制限連記の缺點である。こうあげまして、中選擧區ならば、大選擧區の弊害を補い、さらに小選擧區の弊害を補つて、中庸の道を行くのであるという説明であつたのであります。しかし今現われておりまするところの修正原案によりますならば、中選擧區といいますけれども、三人、五人の中選擧區でありまして、小選擧區と變りがないといつては語弊がありますけれども、小選擧區か擴大されたものであります。大選擧區の縮小されたものではありません。從つてそれは小選擧區に通ずる方が多いのであります。從いまして、その提案されておる原案の中選擧區制というものは、それによつて小選擧區制の弊害が除去され、救濟されるとは考えられません。小選擧區のもつ弊害をそのまま中選擧區に持込む結果にならうと私は存ずるのであります。さらに大選擧區制のもつておりまする弊害を除去するという形がとられまするけれども、私は、大選擧區制であつたからといつて、必ずしも選擧の區域が廣いから運動が困難だとか、あるいは選擧運動に費用がかかるとか、そういうようなことはあり得ないと思うのでありまして、大選擧區でも、ラヂオを通じて二三囘演説をやつてもそれで當選し得る人もあると思うのであります。必ずしも大選擧區の弊害というものがあげてある弊害に合致するわけではないと思うのであります。さらに制限連記の點について申し上げますならば、投票に熱意がないということを言われておりますけれども、私は、投票する國民の立場から申し上げまするならば、少くとも自分が新憲法制定によつて、今までとは違つた統治權をもつた人民として、そうして自分の投票を行使して、自分のみずからの政治を行うのであるという熱意に燃えて、たれしもやることであろうと思うのであります。熱意がないと規定することは、どういうわけで熱意がないというのかわかりません。ただ熱意がないということは、第一人者は自分の信ずる人を書くが、二番目に書く人はどうでもいい人を書く、こういう工合に説明されておつたのでありますが、必ずしもそれは妥當な表現ではないと思うのでありまして、國民の側から申しまするならば、そういつたような考え方で投票する人は一人もなく、自分の投ずる一票の中には必ず日本によりよき政治を行いたいとの熱意に燃えてやられるものだと私は思うのであります。さらに、政策の異つた黨派に投票することは、非常に惡いということを言われるのでありますが、およそ普通選擧というものは、その國におけるところの知識の進んでおりまする程度を示すバロメーターだと思うのでありまして、從つて、制限連記をやつて、その間に政策の異つた候補者を書いたからといつて、その國におけるところの民度がそれである場合におきましてはそれが惡いということにはまいらぬと思うのであります。その民度を、さらに民主主義達成のためにどういう工合に高揚してまいるかということが、これが制度改革の根本の方針でなければならぬと思うのであります。そうなつて考えて見まするならば、將來は政黨を中心として政治が行われなければならぬのでありますから、政黨を中心として政治が行われる限りにおきましては、いわゆる大選擧區比例代表制が根本でなければならぬと私は思うのであります。その前提として制限連記というものの制度が採用されるということは當然なことでありまして、政黨政治確立までに至りまするところの過度的制度としては、これは當然なものだと私どもは考えるのであります。しかるにそれを缺點としてあげております。それを欠點としてあげた結果、中選擧區制に還るということになりまするならば、投票の對象というものは、制限連記の場合には漸次政黨竝びに政策に還るさらに比例代表制になれば完全なる政黨竝びに政策に投票するということになつて、死票をつくらないという結果になるのでありますが、中選擧區單記制にするということになれば、投票の對象は政策より個人が中心になるのであります。從つて政黨政治發展の上におきましては、それを前進する姿よりも、一遍前に出た政黨政治を確立しようという選擧の方法をもう一遍うしろに引戻す形になりまして、これには私どもはよく贊成するわけにまいらぬのであります。そういう點よりいたしまして反對せざるを得ませぬ。さらに加へまして一點だけ申し上げておきたいと思いますことは、提案の説明におきまして小澤君は、現行の法規は、官僚の空想の上に立てられた選擧法であるということを指摘されて、だからかえなければならぬということを言われておるのであります。しかし考えてみまするならば、この選擧法の制定をした者は、何人であるかということになりまするならば、現に國務大臣として内閣に列しておりまするところの幣原さんが總理大臣の時代に、現行法案は通つておるのであります。從いましてもし小澤君のごとき論據をもつていたしまするならば、幣原さんが與黨より責任を問わなければならぬ立場に立とうと、私は思うのであります。そういう表現を用いまして空想だと言いまするけれども、私は官僚が立案したものには違いはないと思います。しかし必ずしも空想でなくて、やはり政黨政治を發達せしめようとする一つの努力の中に、本案は生れておるということは看知し得るのでありまして、提案者の提案理由を諒承しかねるのであります。
以上四點をあげまして、はなはだ簡單ではありまするけれども、私どもの提出いたしました鈴木義男君の案に贊成をいたしまして、大野伴睦君ほか一各提出の修正案に反對をするものであります。さらに加えまして徳田球一君ほか一名提出の衆議院議員選擧法の一部改正は關する法律案は、全國を一選擧區といたしまする比例代表制でありまするが、私どもは鈴木君提出の大選擧區比例代表制に贊成をしたのでありまして、自然本案に對しましては、理想としては贊成でありますけれども、現實の場合におきまして反對であるという表明をしておきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=212
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213・山口喜久一郎
○山口委員長 石崎千松君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=213
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214・石崎千松
○石崎委員 私は國民協同黨を代表しまして、本日ここに上つております衆議院議員選擧法の一部改正する法律案につきましての修正案、大野伴睦君ほか一名提出、それから衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案、鈴木義男君ほか六名提出、それから衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案、徳田球一君ほか一名提出、この三件に對してことごとく反對するものであります。私ども國民協同黨の者は何がゆえに今までやつてきた——今までという言葉は惡いようでありまするが、前囘行いましたところの選擧は、何がゆえに惡いかということであります。どこが惡いか、いろいろ議論されたけれども、私どもはそれに傾聽する値を見つけ得なかつたのであります。大選擧區にすると金がかかる。金がかかろうとかかるまいと、それはいらぬ世話の話である。それは候補者に立つ者の勝手な話である。大體金がかかるとおつしやるが、それではあの選擧費用を五萬圓と決定なすつた理由はいかん。五萬圓の範圍でやれるのだから、五萬圓だけしか使うことはできぬのだから、たれもかれも五萬圓、廣うても狹うても五萬圓である。金がかかるという言葉の裏には、明らかに買收するということの意味が、含まれていると私は信ずる。私どもはさような買收をやる選擧は、まつぴらごめん蒙りたい。つまり買收が行われるということは、小さい選擧區にして買收をやつてきた人たちが、大きくなると買收がしにくい、金がかかつてしようがないということの意味であるかと考える。そもそもこの連記制がとられたところのゆえんというものは、前の議會における速記録が雄辯に物語つておるがごとく、新しい人を出すにはどうしても連記制でなければいけない。そのほか數々の長所があげられております。そうして今やこの連記制というものを捨てようとするにあたつて、古い着物は脱いで新しい着物に着がえなくちやならぬ。こういつたような例がとられましたが、私はそれに對して附け加えて言いたいことは、今度のは今着ておるところの着物を脱いで、新しい着物を着るにあらずして、もう一つ前に脱ぎ捨てた、十何年だか着古したところの古い着物を着るのである。かかる着物を再び着なければならぬという理由がどこにあるか。私はその理由はまつたくないと思うのであります。そうしてほんとうに連記制こそ民主主義的な正しい行き方であると、かように考えるのであります。少くとも法律が通過した後において、民主主義が行われるのではなくして、日本の民主主義というものは、ポツダム宣言を受諾したその瞬間から、行われなくてはならぬと私は考える。でありまするがゆえに、民主的にやろうとするところの連記制というものこそ、まさに正しい行き方であると考えるのであります。そのほかいろいろな點において、もはや議論し盡されました。私どもがいくら申し上げてみてもお聽き容れがなかつた。今とられておる大野伴睦氏外一名の提出にかかる修正案というものは、どうしても今議會中に通さなければならぬ。こうおつしやるけれども、私は前にも申しましたように、これだけの大事な法案であるなら、なぜ半年とか一年とか前に、天下にかようかようなことをするということを見せた上で、おやりにならないかというのである。批判を乞いあるいは見せた上で、十分納得のいくようにしておやりにならぬか。會期がまさに終ろうとしておる今日、何がゆえにあわただしく出すかということであります。そこには魂膽があるということは私は否定しません。必ずあると思います。いろいろたくさんな法律案というものが山積しております。しかしながらこの前から私たちは會議を休んでおります。この審議のために本會議を休んでおります。あの休んでおる間にやつてしまえば、すべての案はとうに終つていたはずです。それをおいてまでもこれをやらなければならぬという理由を見つけるのに、私はまことに苦しむものであります。傳えるところによりますと、共産黨がおるから、共産黨の閉め出しをするのだといつたようなことも言われておりますが、それは方便かもしれません。まさに私は方便であると信じます。というのはこの議會におけるところの五人か三人かの共産黨の黨員を閉め出してみて、それではたして日本全體の共産主義が屏息するかどうか。外の方にはさつぱり手をつけないで、議會の中だけ三人か五人抑えてみたところで、それが何の糞になる。さようなことは私は確かに口實であると思う。このうしろには何ものかがある。すなわち私をして忌憚なく言わしむるならば、これによつて與黨側は、來るべき選擧において、多數の黨員を獲得しようという魂膽にほかならない。かように信ずるのであります。しかしながらもはや私はこのことについて、反對の意見を數々述べることの愚を十分に知つております。從つて私はこれ以上述べようとするものではありません。第一の大野伴睦氏の修正案に對しては反對であります。それから鈴木さんの出された修正案に對しても、私どもは非常によいのだと思いますけれども、今日あれをとるところの事態にまだ日本は行きついていないと思いまするがゆえに、これにも反對いたします。同時にまた共産黨から出されたところの案に對しましても、日本は左樣な事態じやないということによつて、これに反對いたします。以上申し述べましたことによりまして、私ども國民協同黨のものは、この三箇の修正案に對して反對をするものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=214
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215・山口喜久一郎
○山口委員長 細迫兼光君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=215
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216・細迫兼光
○細迫委員 無所屬クラブに屬する一委員として意見を開陳いたします。私は大野伴睦氏ほか一名提出の修正案は、不合理にしてかつ民主化に逆行するのであると認めるがゆえに、これに反對をいたします。徳田球一君ほか二名提出の修正案が、最も合理的で理想的であると思いますので、これに贊成をいたします。鈴木義男氏ほか六名提出の修正案は次によきものと思いますゆえにこの徳田氏の案、鈴木氏の案、いづれか先に採決せられまするものに贊成をし、もしこれ破るれば後のものにまた贊成しようとするものであります。本會議におきまして徹底的な討論の機會が與えられることを豫期いたしまして、以上私の意見開陳を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=216
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217・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田球一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=217
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218・徳田球一
○徳田委員 私は第一に大野伴睦君ほか一名提出にかかる衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案に關しましては、徹底的に反對するものであります。まずこの理由から述べたいと思います。そもそもこの修正案なるものは、現在の日本における情勢をまつたく理解しないところのものであると信ずるのであります。いな理解しないばかりか、むしろ現在の情勢が民主主義の徹底を要求しているにかかわらず、これに遂行して、民主主義の發展を阻害することを強く意圖して、それを強硬に阻止しようとする反動的な行爲と認めざるを得ないのであります。事實この選擧法の修正案が通過するならば、これは勞働者、農民その他一般市民を基礎とする政黨の進出はきわめて困難になるのであります。いま先も國民協同黨の反對理由にありました通り、これまでのは金がかかるから、金のかからないようにするということでありますが、われわれ勞働者階級を土臺といたしまする政黨におきましては、むろん金はない。金はないから金をかけようとしてもかかるはずはない。だから大選擧區だろうが、またわれわれの主張するところの全國一選擧區だろうがいくら金をかけようとしてもかかるものではない。またそうあるべきである。一體金がかかるというのはなんだ。かけなければいいじやないか、かけるのが惡いのだ。かけなければいいじやないか。かけるかけぬはその人の意思によつて左右される必然的な問題ではない。ぜひともかかるというのではない。かけたくなければ一錢もかけなくもよい。わが黨においては選擧費用はすべて黨が全部負擔するのでありまして、各個人がこれを云々するのでない。でありますから各黨員がこれを據出いたします。または一般大衆がこれに對して寄附金をすることになりますれば、それだけで問題は解決するのであつて、金がかかるということは、何ら意義をなさぬ。かけなければよい。またもし金のことが問題になりますれば、金をかけない方が民主主義的な發展を助成するのでありますし、金をかけて選擧するということは、それ自體政黨を腐敗せしむるものである。かつまた民主主義の發展を阻害するものであるがゆえに、選擧法にこれを制限することは必要である。現に選擧法でこれを制限しておる。大選擧區であつても、これをもつと制限すればいいぢやいか。制限しさえすれば何も金はかからぬ。金がかかり過ぎるなどということは、これはとんでもない間違いである。何の理由にもならない。要するにこれを理由とするところは、金なしには選擧ができないということを前提とするからである。金なしに選擧ができないというなら、それは選擧の期間において、何とかして大衆をごまかし、そして投票をかき集めようとすればこそ焦つて金が要るのであります。そうでなしに、常平生の黨の活動が選擧において收獲せられるというのなら、何ら金をかける必要はないのであります。また金のかかることによつて恐るる必要がないのであります。もし金がかかるなら、それはわれわれの活動によつて、不足した金は大衆の支持によつていくらでもくるのであります。かかるだけの金はくるではないか。何も恐れることがない。また大衆自身がこの選擧に對して自覺をするならば、そのときにはかかる金は全部大衆がもつのである。われわれ自身がこれをもとうというのであるから、從つて金のかかることは何ら心配ないのである。この問題はさらに進みまして、公營にすべきである。社會黨も選擧を公營にしなければならぬということを特に主張しております。これはこの前の政府提出議案に對しまして、社會黨から修正案を出しまして、これにその條項があつたのであります。わが黨もこれを支持したのでありますが、その公營にさえすれば金の問題は全然問題にならない。ほとんど一錢も使わなくともよい。ほんとに金を使うことを憂えるなら、何ゆえ公營にしないか。公營にすれば國家の費用がかさまるという。國家の費用が嵩む。それでも必要ならやらなければならないのだ。くだらぬものに、むしろ弊害があるものに補助金をたくさん出しておるにかかわらず、こういう政黨を腐敗し、社會を腐敗し、政治機構の全體と腐敗せしめることを防ぐためには、われわれは金を負擔することは當然である。全國民が喜んで負擔するであろう。のみならず、かかる負擔は大體不當にもうかつておるところの者からとるのであるから、なんら差支えない。大資本家や大闇によつてもうかつておる連中から權力でもつて費用をとればよいじやないか。あたりまえだ。そういう不當にもうかつておる者からどんどんとるべし。そうして全國民の政治的の機構を正常化するために使うならば、これは非常に有效である。從つて金がかかるということはなんら問題にならない。大選擧區は金がかかるから、これを中選擧區にするということはなんら問題にならないのである。問題にすべきでない。しかるにこれに對しまして、最も有力な、大選擧區反對理由、かつこの中際擧區に修正をしなければならない理由とする一つに、金をかけなければならぬ、金がかかり過ぎておるということを出しました理由、その基礎はどこにあるか。これは要するに、先ほども言われました通り、買收することにある。買收するならなるほど小さい方がよい。小さければ小さい方がよい。植原内務大臣が小選擧區を理想とせられるところは、まつたくこの買收を目的とする點においては理由あるところであります。それに近い中選擧區をでき得る限り設けようとするのもまた理由あるところである。從つて今度のこの別表におきましても、でき得る限り小さくしようと努めたのはありありとみえるのである、たとえば京都市全區のごときは、これは全京都市をまとめることがあたりまえである。どこのでもこれを二つにわけてあるものはない。今度のものはこれは二つにわけておる。下京區までは一區でありまして、右京區、伏見區はやはり郡部と一緒になつてある。何もわける必要はない。ただ五人という數にとらわれてこれをわけてあるのである。すなわち狹ければ狹いほど、定員數が少なければ少いほどよいから、だから五人という數をわざわざおいた。何もおく必要はない。必要であれば六人にしたつてよい。どうせ同じ選擧なら六人にしても少しも差支えない。七人、八人、十人でも差支えないのだ。それは事實上必要であれば差支えない。しかるにわざわざそういうふうなことをするところに魂膽があるのである。三人から、五人という數に、ぜひともこの穴の中へぐんぐんつつこんでやらなければいかぬという、そういうむちやをしておる、そこに魂膽があるのである。すなわち多ければ多いほど買收に苦しむから、でき得る限りこれを小さくする。もしこの案が通過いたしまして、今度の選擧において、もしさらに保守黨が多數を得まして、過半數になりますれば、またぞろ情勢はかわつてくる。いよいよますます自分の勢力を強固にするために、これは中選擧では惡い。今度はいろいろの弊害がある。ああの、こうの文句をつけて、これを植原内務大臣の理想とするところの小選擧區、すべて一人の選擧區、これは英國において成功したという理由のもとに、そういうふうに滑り込むところの、これはまず第一段階であると言わざるを得ない。だれしも非常に極端なものから非常に極端なものに一遍にするすると走つていくには、やはり人樣に對して正當な理由を云々することができない。だから一歩一歩、ワン・ステツプ、ツウ・ステツプ、最初のものから次のものに跳び越える一つの跳び臺になつておるのである。だからこれを通過させることは、正にいよいよますます買收選擧を奬勵するものである。近き將來においては最も恐るべき買收の危險のある小選擧區に追いつめていくことになるのである。全國民は非常なる災害をこうむるのである。それなればこそ、あらゆる勞働組合におきまして、また農民組合も、文化團體も、一切がこの選擧區の改正、中選擧區單記制に對して反對しておる理由であります。あたりまえである。反對しなければならないのである。かくて腐敗墮落するのである。現在といえどもかかる塗炭の苦しみにわれわれは追いこまれておる。この日本の民族の破滅を救うためには、經濟を復興していくためには、何としても古い官僚統制をやめて、何としても古い官僚統制とくつついておる大きな闇的諸行爲に對して、民主的方法によつてこれを破壞せざるを得ないのである。これのみがわれわれを救うのである。しからばかかる反動的行爲をもつてすればいかになるか。これは日本民族を破滅から救う途から逆に、いよいよますます破滅の方へ導くところの結論になるのである。從つて人民諸君がこぞつてこれに反對せざるを得ないのである。わか黨は勞働者、農民その他一般人民諸君の利益を擁護することを目的としておるがために、かかる選擧區の改正に對して絶對反對せざるを得ないのである。
次に中選擧區を主張いたします重大なる原因の一つは連記制が單記制に變ることになつておる點でありますが、連記制だから熱意かそう出ない、單記制だから熱意が出る。從つて大選擧區よりは中選擧區、中選擧區よりは小選擧區か熱意を生ずるというのでありますか、これはみな立場が違うからである。たれ人といえども、みずからの利益を最も痛切に感ずるものに對しては熱意をもつのである。何の利益もないのにだれが熱意を注ぐか。すべて最も利益があると思えばこそ、最も熱意を注ぐのである。だから商人はもうかるといえば、目を眞赤にして追つかける。あぶなく監獄に入る危險に足場を踏み入れることも忘れてやるのである。相場をしておるものを御覽なさい。相場をしておる者は最も危險な道にどんどん走つていく。そうして監獄にぶち込まれることはよくあるのである。われわれは永年の監獄生活上かかる危險に利益に眼がくらみ、監獄に飛び込んできた者は澤山ある。相場をやる者はこの利益に對し非常なる熱意を感ずるのである。當り前である。それゆえに今勞働者にとつて連記制が最も自己に對して有利であるのであるから、連記制になつても非常なる熱意を感ずるのである。感ぜざるを得ない。しかも二人連記もしくは三人連記とすれば、自分の票を自分の目標とするところの自分の代表に完全に活かして、そうして政治的自覺のないひよろひよろ連中を打ちのめし、徹底的に勝とうという意思があれば、必ずや三人を連記し、堂々と一直線に進むことができるのである。またこれはやりつつあるのであります。さらにこれは今後のことを意味するのではない。現に我が黨に對する昨年行われました埼玉縣の選擧のごときは、三人連記はずつと三人が續いておる。もう少しで當選圈に近づき、次點の次くらいにまで三人がずつと進んでおる。堂々たるものである。三人連記は有效に利用されておるのである。なるほど東京のごときは非常に世間的に單に有名であるというのと有名でない者が組んだために、そのために三人連記、二人連記が完全に遂行はされなかつたのであるけれども、訓練のいつておる、粒の揃つておる所では完全に連記制は運用されるのであ。それだけに現在勞働組合を土臺として、農民組合を土臺として、この自覺ある民主主義的勢力が伸びるためには、この連記制は最も有用である。事實この有用である證據は實績において現われておるのである。またこのたびの各組合の政治に對する熱意が非常に高揚してきたことも、この連記制がこの要素になつておるのである。連記制なるがゆえに一層熱心になつてきておるのである。しかるにここにおいて連記を單記にする。そうして大選擧區を中選擧區にすれば、これはきわめて不利である。であるからこれは勞働者階級また自覺ある農民が政治的な勢力に發展していくことに對して、これを阻止し、これに水をぶつかけることにおいて、最も有效な措置をとられておるのである。この點につきましてはただにこれは中選擧區云々のことにおいて、われわれが論議するばかりでなく、本日内務大臣がこれに關しましての實際上信義の片鱗を披瀝しておるのである。吉田總理大臣が、この議會の解散はストライキが頻々として起るがゆえに、そうして社會が壞亂せんとしておるがゆえに、特にこの選擧を行つて、かかわる状態を阻止しようとする。この解散を命ぜられておることはかかる意味において理解するということを言われておるのでありますが、内務大臣はその通りだということを言つておるのである。すなわちストライキをやるものは誰か、ストライきをやるものは勞働者、勞働組合……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=218
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219・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田君少し本論を急いでやつて下さい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=219
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220・徳田球一
○徳田委員 それならひとつあしたに延ばして下さい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=220
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221・山口喜久一郎
○山口委員長 ただいま理事の方から、時間は大體二十分程度というお約束があつたということを聽きましたから……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=221
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222・徳田球一
○徳田委員 いや三十分だろう。まあ心持というのだから、どうですあしたに一つ延ばしてもらえませんか、私も聲の都合もあるからまたあめでも食つてきまして喉を……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=222
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223・山口喜久一郎
○山口委員長 徳田君の御人格を信用しますから、どうぞ發言して下さい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=223
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224・徳田球一
○徳田委員 それならば大分端折りまして、あとしばらくやりまして、その代り本會議におきましてはさらに種々の點においてわれわれは論議しなければならぬと思うのであります。この中選擧區の區分その他につきましても十分に質疑應答もしますし、また論議も盡くさなければならないと思いますから、その點を保留することにいたしまして、私の反對理由をかなり大部分、まあ二十分の一くらいに縮めまして、もう少しで終りたいと思うのであります。實際上ストライキをしておる者は勞働者であります。それゆえに吉田内閣は全體として勞働者のストライキをする權利、これに對して反對しておる傾向は明らかである。これを抑えるためには選擧法まで改正してこれを抑えようとする意思が、ここに明らかであるのである。しかるに勞働者はストライキをやらなければ事實生きて行くことはできない。現に物價はどんどん騰貴する。食えないからあとからあとから追かけてストライキをやつておるのである。現に二・一ストライキのときにおきまして、勞働者の要求したのは賃金三倍値上だ。一體どこの國に三倍値上の賃金を要求するようなところがあるか。大概賃金値上というものは二十パーセントとか三十パーセント、せいぜい五十パーセントくらい要求せられるのが當り前であるそれぐらいのことはみな上げておる。やはり追つくようにはしておる。しかるに日本のは實にひどい。三分の一の生活費で生活しろというところまで勞働者を彈壓してきたのである。だからこの三倍を要求するためには非常に大きな力を要する。だからこれがゼネストとして發展せざるを得なくなつてくる。これは政府に責任があるのである。現に私は中央勞働委員會におきましてこれを調停したのでありますが、この調停したときに調停委員全部、中央勞働委員全部が三倍の要求は正しいということを認めておる。これは現在の生活としてはミニマムであるということを認めておる。しかるに調停はこれを二倍に止めた。これはミニマムのミニマムだ。そんな表現なんかあるものではない。ミニマムというのは一つしかない。ミニマムにまたミニマムがある。二つの底がある。そういうのは軍艦だけだ。(笑聲)大概ミニマムは一つしかない。こういう彈壓をするために軍艦的表現をするということは、まつたく無暴至極である。かくして政府は、實際上この勞働者の眞の要求を非常に恐れまして、みずから正しくやれば決してかかるゼネストは起らないのに、それをむりやりいたしまして、ゼネストを起そうとすれば、このゼネストを恐れてこれを彈壓しようとする。しかるにもうゼネストが實際においてやることができなくなつたために、勞働者はこれは政治的に大進出する、この機會に勞働者の大勢力をもちこんで來る。みずから政府をにぎつて自分を解放しようとすることは當然であり、それに恐れをなして提出したのがこの中選擧區である。從つてこれは勞働者に對してまさに彈壓を宣言しておるところの、一大暴力的な宣言と言わざるを得ないのである。從つてこの暴政的選擧法の改正に對しまして、これの手續云々に對して、われわれはさらに多くの反對理由を述べ得るのでありますけれども、また述べねばならないのでありますけれども、山口委員長の名委員長ぶりを特に有效ならしめるために、(笑聲)わが黨も決して紳士的な協約に對しては、これを違約しないということを證明するために、特に本日はこれを縮めて反對理由を明らかにしてこれだけにしておきたいのであります。社會黨の鈴木義男君ほか六名の提出にかかる改正案に對しましては、特に反對する理由を述べるほどもありませんけれども、これは現在においてはそれくらいでもいいのでありますが、しかしまたわが黨もわが黨の一大主張の修正案を出しておるのでありますから、それとのつり合もありまして、これには反對するのであります。理由は申さなくてもよいと思います。それから徳田球一ほか一名の提出にかかる修正案に對しては、これは根かぎり贊成するものであります。(笑聲)そうして本修正案の貫徹を期するものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=224
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225・山口喜久一郎
○山口委員長 中野四郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=225
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226・中野四郎
○中野委員 日本農民黨を代表いたしまして、大野伴睦君ほか一名、竝びに鈴木義男君ほか一名、及び徳田球一君ほか二名の提案する修正案に率直簡單に反對をせんとするものであります。徳田君が誓約を守りつつ、お互いの申合せを大分超過しておるようでありますから、委員に選ばれた私はこの罪ほろぼしをするつもりで、簡單にごく短かく反對の理由を申し上げます。
日本の現段階におきましては大選擧區單記制を最も正しいと主張するわが黨におきましては、過去數囘經驗してその惡弊を十二分に體驗せる中選擧區單記制には、絶對に反對せざるを得ないのであります。さらに連記制については將來においてはとにかくも、現状に即さんと信じましてこれに率直に反對するものであります。なお詳細な點につきましては本會議の討論に讓りまして、私はこの委員會においては簡明に反對の意思表示をしておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=226
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227・山口喜久一郎
○山口委員長 この際選擧區の訂正について、補正がありまするから報告いたさせます。
〔事務官朗讀〕
三十二頁の岩手縣の第二區の中釜石市を第一區の盛岡市の次に挿入いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=227
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228・山口喜久一郎
○山口委員長 討論は終局いたしました。これより採決に入ります。
まず徳田球一君ほか二名提出の修正案について採決いたします。本案に贊成の諸君は起立を願います。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=228
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229・山口喜久一郎
○山口委員長 起立少數、よつて本案は否決されました。次に鈴木義男君ほか六名提出の修正案について採決いたします。本案に贊成の諸君は起立を願います。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=229
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230・山口喜久一郎
○山口委員長 起立少數、よつて本案は否決されました。次に大野伴睦君ほか一名提出の修正案について採決いたします。本案に贊成の諸君は起立を願います。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=230
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231・山口喜久一郎
○山口委員長 起立多數、よつて本案は可決されました。(拍手)これにて本委員會における議事は全部終了いたしました。
御挨拶を申し上げます。咋二十八日乏しきを顧みず本委員會の委員長に推擧されましてから、文字通り各位とともに不眠不休、今日ここに委員諸君の絶大なる御支援によりまして、その職責を果し得ましたことは感謝にたえない次第であります。委員諸君の眞摯なる態度と、熱烈なる論戰とは、速記録を通じてわが國憲政史を飾り、後の世の語り草となるでありましよう。ここに聊か諸君の御勞苦を謝し、併せて御健康を祈り、委員長の御挨拶といたす次第であります。(拍手)本日はこれにて散會いたします。
午後十時三十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211500X00219470329&spkNum=231
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