1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)(第一七號)
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本委員は昭和二十二年三月十三日(木曜日)議長の指名で次の通り選定された。
岸本信行君 菊池長右ェ門君
栗原大島太郎君 廣川弘禪君
松浦東介君 松川昌藏君
井上東治郎君 關根久藏君
西山冨佐太君 原捨思君
吉澤仁太郎君 中村高一君
永江一夫君 林虎雄君
細田綱吉君 宇田國榮君
大島多藏君 中山榮一君
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同月十四日(金曜日)午後一時三十九分委員長理事互選のため次の委員が參集した。
岸本信行君 菊池長右ェ門君
廣川弘禪君 松浦東介君
松川昌藏君 關根久藏君
吉澤仁太郎君 中村高一君
永江一夫君 細田綱吉君
宇田國榮君 大島多藏君
〔年長者吉澤仁太郎君投票管理者となる〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=0
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001・吉澤仁太郎
○吉澤投票管理者 先例によりまして私が年長のゆえをもつて投票管理者となり、これより委員長の互選を行います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=1
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002・永江一夫
○永江委員 この際投票を用いず岩本信行君を委員長に推薦いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=2
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003・吉澤仁太郎
○吉澤投票管理者 永江君の御意見に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=3
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004・吉澤仁太郎
○吉澤投票管理者 御異議なしと認めます。よつて岩本信行君は委員長に御當選に相なりました。委員長岩本信行君に本席を讓ります。(拍手)
〔岩本信行君委員長席に着く〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=4
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005・岩本信行
○岩本委員長 ちよつと御挨拶を申し上げます。ただいま各位の御推擧によりまして、委員長の重責を汚すことになりました。まことに不慣れでございますが、各位の御協力によりまして大過なきを期したいと存じます。何分よろしく御鞭韃のほどをお願いいたします。引續きまして理事の互選を行います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=5
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006・永江一夫
○永江委員 理事はその數を三名として、委員長において御指名あらんことを希望いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=6
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007・岩本信行
○岩本委員長 永江君の御意見に御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=7
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008・岩本信行
○岩本委員長 御異議がないものと認めます。それでは
松川昌藏君 井上東治郎君
中村高一君
を理事に御指名申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=8
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009・会議録情報2
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昭和二十二年三月十四日(金曜日)午後一時四十三分開議
出席委員
委員長 岩本信行君
理事 松川昌藏君 理事中村高一君
菊池長右ェ門君 廣川弘禪君
松浦東介君 關根久藏君
吉澤仁太郎君 永江一夫君
細田綱吉君 宇田國榮君
大島多藏君
同日委員永江一夫君辭任につき、その補闕として戸叶里子君を議長において選定した。
出席國務大臣
内務大臣 植原悦二郎君
出席政府委員
内務事務官 林敬三君
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本日の會議に付した議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=9
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010・岩本信行
○岩本委員長 引續きまして會議を開きます。衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案を議題といたします。政府の説明を求めます。内務大臣植原悦二郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=10
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011・植原悦二郎
○植原國務大臣 衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案の提案の理由並びに法案の内容の概略につきましては、既に本會議において御説明申し上げたのでありますが、ここに重ねて法案の趣旨並びに法案中主要な事項につき御説明申し上げます。
大選擧區制限連記制を骨子といたします現行衆議院議員選擧法につきましては前囘の總選擧の結果等に鑑みまして、論議の喧しいものがありますばかりでなく、必ずしも滿足であつたとは申されないのであります。從つて政府といたしましても、選擧法全般にわたつて根本的再檢討を加えてきたのでありますが、最近における政治情勢の要請により、急速に選擧を行うこととなりましたので、この際とりあえず選擧の執行に必要な日本國憲法の制定地方制度の改正及び參議院議員選擧法の制定等に伴う最小限度の規定の整備を行うことといたし本改正案を立案した次第であります。以下改正案の内容の主要な事項について御説明申し上げます。
第一には、選擧權及び被選擧權に關する事項であります。代議政治の本義に則り普通選擧の精神を擴充することが望ましいので、さきの改正における選擧權の大擴張に次いで欠格條項を整理いたしますとともに、被選擧權につきましても必要な改正を加えることとしたのであります。まず選擧權につきましては、破産者で復權を得ない者、貧困のため公私の救助を受けまたは扶助を受ける者、及び一定の住居を有しない者は從來欠格者とされているのでありますが、これらの者は、かかる境涯に陷つた原因が個人的の責に歸すべきものよりは、むしろ社會的な原因に基くものが多いのでありまして、その經濟的無能力は必ずしも直ちに政治的無能力を意味するものではありません。殊に終戰後におきましては戰災、引揚等の不可抗力によりまして、このような地位に置かれている者の數は少くないと想像せられますので、これらの者に對しても選擧權を賦與し、その意思と主張を表明させる機會を與えることを適當と認めまして、欠格條項からこれを除外し、先般の地方制度の改正と歩を一にさせることにしたのであります。さらにいわゆる刑餘者につきましては、刑の執行を終りまたは受けることがなくなつた以上、その反社會性は拂拭されたものと見るべきでありますから、これらの者に對しましても平等な一國民として、基本的權利を保障することが當然であるばかりでなく、行刑處遇上も適當であると認められますので、これにも選擧權を與えることといたしました。
次に被選擧權につきましても、選擧權と照應した措置を講ずることといたしますほか、新憲法の精神に從い、華族の戸主にも被選擧權を與えることといたしますとともに、選擧管理委員會制の採用に伴い、必要な規定の整備を行うことといたしました。兼職禁止の職に新たに地方公共團體の吏員、及び市町村その他これに準ずるものの議會の議員を加えましたのは、國會法案の規定に相對應させるとともに、改正憲法下における議員の職責の重大性に鑑み、他の職との兼務を避けなければならないという點におきましては、官吏と吏員、都道府縣の議會の議員と市町村會議員との間に、本質的の差異を認め難いからであります。
第二に選擧管理委員會制の採用であります。選擧事務の執行を中立不偏のものとすると同時に、選擧の民衆化と日常化とをはかりますことは最も重要な事柄であります。このため地方議會の議員及びその長の選擧、並びに參議院議員の選擧における管理機關として各種の選擧管理委員會が設置されるに至つたのでありますが、衆議院議員の選擧におきましてもこれと同樣の措置を講ずることにしたのであります。しかしながら衆議院議員の選擧管理機關としては、類似の機關を別箇に設置することなく、各都道府縣の選擧管理委員會をもつてこれに當ちせ、衆議院議員の選擧に關する事務に關しましては、市町村の選擧管理委員會を指揮監督することができるものとし、この選擧管理委員會制の採用に伴い、必要な規定の整備をいたしました。
第三に議員候補者及び當選人に關する事項であります。從來の重複立候補は選擧界を混亂に導くおそれがあるばかりでなく、當選人の決定その他選擧事務の執行を複雜にさせる欠點がありますので、改正地方制度及び參議院議員選擧法の例に倣い、推薦屆出の場合には、必ず本人の承諾を得なければならないこととし、かつ同一人が二以上の選擧區から立候補できないことにいたしました。なお近時におきます物價高騰の現況に鑑みまして、泡沫候補濫立の弊を防止するため、供託金の額を五千圓に引上げることにしました。繰上補充は、元來便宜的な當選人または欠員の補充方法でありますが、これを一年にもわたつて認めますときは、いわゆる次點者狙いの便乘的候補者の輩出を促す危險がある等弊害を伴いますので、繰上補充は同點者を除き、當選人が未だ確定しない當選承諾期間内に限つてこれを認めることにいたしました。なお現行法による當選承諾期間は十日でありますが、來るべき總選擧の特殊性に鑑みまして、選擧の結果をでき得る限り速やかに確定させますために、特にこれを五日間に短縮することとしたのであります。
第四は、選擧運動に關する事項であります。參議院議員選擧法の制定に伴い、選擧公報の制度を改めて、經歴公報の制度を採用することにいたしました結果、選擧公報の發行區域におきます文書の頒布制限に關する制限を撤廢するとともに、事後の挨拶行爲に關する制限をも撤廢することとしたのであります。なお、さきに御協賛をいただきました參議院議員選擧法の改正に照應いたしまして、學校の兒童生徒に對する特殊の關係のある地位を利用して行う選擧運動を、禁止する旨の規定を新たに設けました。
第五は、選擧運動の費用に關する事項であります。選擧運動の費用の増大が、選擧界の腐敗をもたらす最大の原因である點に鑑みまして、選擧運動の費用の最高制限額の制度はこれを保持することにいたしましたのはもちろんでありますが、さらにこれと併行して議員候補者及び政黨その他の團體の選擧運動の收入支出を公開せしめ、二者相まつて議員候補者及び政黨その他の團體の自肅を促しますとともに、一般選擧人に對する公正な判斷資料を提供することといたしまして、選擧の公正明朗を期することとしたのであります。なお選擧運動の費用の最高額の基準は、法律で定められておりますが、これは必ずしも適當ではなく、かたがた現在の最高額も最近の物價變動の状況からは適當ではなくなつているので、選擧施行時におきます物價等の事情を考量いたしまして、實際に即して適正に定め得るように、命令で定める金額とすることとしたのであります。
第六は、罰則に關する事項であります、最近におきます物價の昂騰の状況に鑑み、且つ參議院議員選擧法の規定との權衡上、罰金はこれを一律に十倍に引き上げることとしました。なお、選擧運動の收入及び支出の公開制の採用、未成年者の學校の兒重及び生徒等に對します特殊の關係のある地位を利用する選擧運動の禁止等に伴い、所要の罰則を整備したのであります。
第七は、選擧公營に關する事項であります。選擧公報の發行及び新聞紙による議員候補者の氏名等の公告は、最近におきます用紙需給の状況よりいたしましては、とうていその實行が不可能であると認められるばかりでなく、兩者やや重複する感もありますので、參議院議員選擧法の例にならい、選擧公報の發行と議員候補者の氏名等の新聞紙の公告を統合致しまして、經歴公報を發行し、議員候補者の氏名、經歴等を掲載せしめることといたしました。なお經歴公報は總選擧のみならず再選擧及び補欠選擧等にもこれを發行することにしましたので、これに伴い再選擧及び補欠選擧の選擧期日を延長する措置を講じたのであります。次に無料郵便物の制度は參議院議員選擧法の改正にならいまして、選擧運動のためにする通常葉書を、議員候補者一人につき一萬枚を限り無料をもつて差し出し得るものといたしました。
その他改正憲法、參議院議員選擧法の制定及び地方制度の改正に伴い、選擧に關する訴訟の出訴裁判所を高等裁判所といたし、演説會開催のために必要な施設の公營の對象となるべき學校の範圍を、公立學校ばかりでなく、官立及び私立をも含ましませることとする等、必要な規定の整備を加えたのであります。
何とぞ速やかに御審議の上御協賛あらんことを切望いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=11
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012・中村高一
○中村(高)委員 本日は一般の質問についておやりにならない御豫定のようでありますが、特に重大な問題につきまして、一點だけお尋ねしたいので、お許しを願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=12
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013・岩本信行
○岩本委員長 どうぞ。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=13
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014・中村高一
○中村(高)委員 せつかく大臣がお見えになつております。この機會に、一つ明確にいたしておきたいと思いますのは、聞くところによりますと、政府ではこの議會に中選擧區單記の衆議院議員選擧法改正の提案を、引續きお出しになるというような噂を聞くのでありまして、特にこの問題については、内務大臣からこの議會にただいま申しましたような改正案を御提出になりまするかどうか。その點につきましてだけ、この際いろいろ選擧前でありまして話題を生んでおりますので、明確にしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=14
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015・植原悦二郎
○植原國務大臣 選擧區制の問題のことでありますが、現在の大選擧區制制限連記という選擧區とその投票の仕方については、ただ一囘試みただけでありまするけれども、論理の上から、また事實の上から缺陷の多いものであるということについては、まず世間の定論と申して差支えなかろうと思います。原則的に申しますれば、大選擧區であるならば比例代表で理窟は立ちます。大選擧區で比例代表という制度を大きな國で取扱つておる所はありませんけれども、さように取扱いました所でも、まず比例代表でなければ大選擧區というものはうまく行われない。日本にこれを適用してはいかがかと申しますれば、比例代表の行われるのは、どうしても政黨が發達して、政黨の分野が明らかにならざる限りは採用できないのであります。のみならず比例代表制というものは非常に複雜なものでありまして、これを採用するには、政黨の分野が判明するということ、及び選擧民が相當に政治的に訓練したものであるというこの二つの條件が整わなければ、大選擧區比例代表という制度はうまく行われません。現在においては大選擧制をとりながら連記の制をとつております。これは去る總選擧の結果について見ましても明瞭なる通り、もし連記ということであれば、この連記ということが大選擧區比例代表と同じように、連記が同じ黨のものに對して連記されるというなら政治的の意義があります。もしこれが政治的の主義主張を異にしておるものに連記したということであれば、政治的にその投票の意味は抹殺されてしまいます。この間もある場所で向うの方々とお話したことがありますが、それでも選擧民の意思がそれならよいのではないかという説が起りました。けれども連記という意味は、主義主張を同じうするものに對して、そこに十三人、十四人の候補者が立つておるのだから、その者に三名くらいの選擧をする自由を與えたらよかろうということから出發したものであるのであります。從つてこれが三名ということは同一の主義主張をもつておる者でなければならないのに、これが相反する主張の者に入れた場合にはその投票の意味がなくなる。それでもいいじやないかということでありましたから、それならば同一人が西と東に、違つた方角に一度に歩くことができるかと言いましたらば、それで話は終つた實例がありますが、さような意味で、連記ということが主義主張によつて行われない場合には、政治的の意味はなくなるのであります。そういうこと考えまして、一度試みた總選擧の實績に照らしてみましても、どうもこれがうまく行われない。いい結果を生じないということはきわめて明瞭であるので、選擧法の改正はいろいろ參議院法やその他の法律と照らし合わせまして、技術的にも改正しなければならない所があるのだから、でき得べくんばこの別表に對しても改正をいたしたいと思つて考えました。これは何と申してもさようなことをするについては、議員の方の御諒解をよく得なければならないことだ、と言つて選擧法はどこの國でも試みた一番むづかしいことであります。なぜかなら現在どこの國におきましても、出ておる議員はこれが改正については自分の足もとを變えなければならないことでありまして、大局から考えれば何でもないことだけれども、自分の足もとに變化を生ずることは、人間としてどうもたやすくできないことでありますので、どうも選擧區というものの改正はそう簡單に參らない。理窟を申せば議會を中心とするところの政治は二大政黨の分野すなわち政府黨とそれに反對する――反對する人もやはり英國などでは國王の反對黨と言う、もし民主主義ならば國民の反對黨と言う。日本で申せば天皇の反對黨と言う。これまで兩黨が政權を握るものも國の政黨であり、反對するものも國の政黨であるという認識が行われまして、二大政黨の分野が確立されるようになれば政局は安定するし、ほんとうにいい民主主義の政治が行われるようになります。いつでも民主政治を破つたことはどういうところにあるかといいますれば、小黨分裂で破る。南歐の諸國がこれを實驗し、フランスは民主主義の議論を徹底的にさせるならば、フランス人は徹底的に議論する國民であります。けれども實際にいつでもフランスにはいい立憲政治が行われない。何ゆえかと申せば、選擧區が惡くて、感情的で小黨分立である。フランスの戰爭前の政府で八箇月續いたものは長くて、短かければ三箇月、一箇月くらいで政府が迭わる。そういうのではどんないい政治家が出ても安定せる政治を行うことができない。かつてモンテスキユーが英國に行つてみて、英國の政治がよく行われるのは三權分立しておるからで、實にうらやましいと言つたが、モンテスキユーの三權分立は、私は必ずしも正しい議論だとは思つておりませんけれどもそれでも民主政治では、ある程度のステツデイな、安定的な状態において行われなければ民主政治はうまく行われない。そういう立場を考えれば一區一人の選擧區が一番よろしいけれども、大選擧區から一區一人に飛ぶのにはあまりに高跳び過ぎるので、これは考えても實際政治家としてはちよつと飛び過ぎる。どこまでも理想は主觀的に高くもつことはよろしいけれども、實際の問題に對しては現實の事實をはつきりと見、はつきりと客觀的に認識してその基礎の上に立つて政治を行うということよりほか、民主政治を行う者の心構えはないのでありまして、私は現在においては中選擧區單記無記名が、日本の現状に對しては一番實現可能であり、しかもよろしいものだと考えまして、それをどうか實行の上に移したいと思つて、政黨の方々にお話して、もし議員提案でそういうものができれば一番望ましいことで、しかも民主主義の憲法を行う第一歩の選擧だ。昨日も尾崎さんが選擧革正の御演説をなすつた。御意見に對してはいろいろありましようけれども、その志たるや、あの老齡をもつてなお憲政の前途を憂えて、そうして選擧の革正をしなければならないということは、私は涙ぐましいほどのことだと思います。そういう點から各人その立場を捨てて、ほんとうに日本の民主政治の第一歩を踏み出す點を上手に踏み出させたいと思いますれば、まず今はとりあえず中選擧區單記無記名というところまでゆくのが一番よかろうかと思うのであります。そう思いまして企てましたけれども、時日やいろいろの問題のために、さようにしてまたいろいろの禍いが起つてはいけない。むしろ私の考え方は、率直にいかなる場合でも申す。私はさように信じておる。そこでここに衆議院議員選擧法の改正案を出して、これに對して議員の方がほんとうにお考えくだすつて、第一に民主主義の政治を行う選擧をするところの選擧法であるからということに徹底してくだすつて、そうして議員の方で法案に、中選擧區單記無記名の修正を加えてくださればこれは一番よろしいことだと、そういう立場で私個人の考えをもつていますけれども、でき得る限りは衆議院多數の方の――直接議員の方に影響のありますことでありますがゆえに、それらの方々の御意思によりまして別表を御考慮くださることがよろしいと思つて別表はブランクのままとして、まずここに技術的の必要なものの改正案を出した。この上はどうか日本の民主主義憲法實現のために、議員諸君は、時日は遷延されておりますけれどもいざこれをやろうとすれば、過去七囘の總選擧において試みた中選擧區がよい。これをつくりますことは、技術的にそうむずかしいことでもなし、何でもないことでありますから、もし衆議院の皆樣方の多數の御意向によつてそれができれば、新憲法發足の第一歩といたして、私はたいへん結構なことだと信じております。けれどもなるべく議會の議員の方の意思を尊重いたしたいつもりで、政府といたしましては、ここにまず技術的の方面だけのものを提案して、皆樣方の御意向によつて不足のことを御決定していただきたいという立場であることを御諒承願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=15
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016・中村高一
○中村(高)委員 今大臣の御説明でよくわかりましたが、それで噂されておりまするような中選擧區單記無記名の案が、政府からは提案せられないという意味に了解をされるようでありまするが、それでよろしうございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=16
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017・植原悦二郎
○植原國務大臣 先刻申し上げたごとき、私がかなり以前に、ある關係筋の人と選擧區の問題を論議いたしましたときには、先刻申し上げたような意見がありました。ところが關係筋の方でも研究いたしまして、日本の今の情勢を考えてそうしてどうもやはり中選擧區單記無記名がよろしいというような強い意見をもつ方が相當多くなつたようであります。そういうことは承つておりますけれども、それを政府として直ちにどうこうというわけではありません。けれども現在におきましては、なるべく關係筋の方と歩調を合わせるようにしていくことが、殊に新しいむずかしい憲法でありますがゆえに、さようなことができればいいと思いまして、政府では議員の方々がそこに心を寄せられることを切望いたしますけれども、政府としてはみずから進んでさようにいたすことは、ただいまの場合、この瞬間においては考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=17
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018・中村高一
○中村(高)委員 今大臣のお言葉によりまして、議員が自發的にそういう提案をしてくれれば望ましいことであるというようなお話でありましたが、實はわれわれもこの問題については、各黨とも考えておつた重大な問題ではありますが、何にしても今期議會はもう會期切迫をいたしておりますし、選擧を目前に控えておるのでありまして、おそらく議員提案といたしましても、これを全部が歩調を合わせて提案をするということの困難性を感ずるのであります。もう一つは選擧の期日が公布されておるのに、その直前にこういう重大な選擧法の改正というようなことはどうも時期を得ないことで、やはり選擧法というものは一定の期間を置いて、選擧民にある程度までその改正の趣旨の、特に重大な點については徹底をさせて、そうして選擧に臨むということが最もいいのであつて、こういう重大なことの改正があつて、それがまだ一般に徹底しないうちに、選擧に臨むというようなことでは、はなはだ選擧民に對し、立法府としても不親切だと思いますが、この議會においてはなかなかそういうことは困難である。かように思いますし、世間でいろいろ迷うようでありますから、今期議會においてはこの程度をもつて選擧に臨むということの趣旨を御明確にしていただく方がいいと思いまして、御所見を伺う次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=18
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019・植原悦二郎
○植原國務大臣 お説のごとく選擧法などは時をかけてよく熟議した方がいいという御意見に對しては御同感であります。但しこの選擧法の改正が、短かい議會に出されましたゆえんは、御諒承くださることと思います。御承知のごとく、實はこれは政府で相談したという考えではありませんけれども、私個人としてはこんなふうに考えておりました。この議會は憲法に最も關係のある諸法案を審議しなければならぬ。それらはきわめて愼重にした方がよろしい。けれども貴族院は五月三日憲法の效力を發生するとともになくなるのだから、この選擧はどつちにしても四月中に早くやつてしまわなければならない。衆議院は憲法の經過規定によりましても、存在して審議を進めていつてちつとも差支えないのでありますから、衆議院としてはまず參議院の選擧を終り、五月後にも、繼續して、衆議院としてあらゆる必要な法案を審議して、それが五月になつても、六月になつても、そのときに議會を解散して、そうして選擧に臨んで、次の議會からまた新しい憲法の下で日本の國會として事をするようになればよろしい。そういうような考え方もしておりました。しかるにもかかわらず、いろいろの事情で五月三日の新憲法が效力を發生する以前に、憲法に關係するところのすべての機關の成立を要望されるようになりまして、一切の選擧を四月中に行わなければならないというはめになりました。その結果衆議院の選擧を定めました通り四月二十五日にこれを行うといたしますれば、新しくできました參議院の選擧や、その他いろいろの選擧に關する諸法令が改正されたり新たに成立した點もありますので、それらと歩調を合わせるために技術的の必要なる改正は何としても取急いでしなければならない。こういう意味でこの改正案を出した次第であります。その點はよく御諒承くださると思います。
なおまた後段の、時間がないからなるべくそれらの問題に手をふれないようにということでありましたが、私は衆議院の多數の方が、實際新憲法の意義に徹底いたして、その第一歩として、なるべく國民の輿論はよく反映せしむるとともに議員の候補者そのものも選擧民となるべくよりよく接觸ができるようになる立場において、しかも選擧民の意思を議會によりよく反映せしめるということをも考慮いたしまして、場合においては――先刻來申し上げた通り、中選擧區單記無記名が一番よろしいのである。これは非常に手數のむずかしいことでも、どういうことでもなく、衆議院の多數の方が決意すれば、もう直ちに修正できることでむずかしいことでありませんので、どうか諸般の事情をよく御考慮くだすつて、衆議院多數の方がさような修正をなすつてくださることを、私としては切望してやまざるのであります。といつて、政府としてはこれらのことをどうするということはできないので、皆樣方の新憲法の實施に對する熱意と、徹底的理解に期待してやまざるものだということを、御諒承願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=19
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020・岩本信行
○岩本委員長 本日はこの程度で止めまして、次會は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散會いたします。
午後二時十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00119470314&spkNum=20
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