1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)(第一七號)
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昭和二十二年三月二十二日(土曜日)
午後六時十七分開議
出席委員
委員長 岩本信行君
理事 小澤佐重喜君 理事 中村高一君
神田博君 細田忠治郎君
廣川弘禪君 山村新治郎君
青木泰助君 椎熊三郎君
日比野民平君 小野瀬忠兵衞君
山下春江君 鈴木義男君
佐竹晴記君 淺沼稻次郎君
大島多藏君 松原一彦君
石崎千松君
三月二十二日委員江藤夏雄君、荒木武行君、宇田國榮君、河野金昇君、及び稻本早苗君辭任につき、その補闕として山村新治郎君、青木泰助君、大島多藏君、石崎千松君及び椎熊三郎君を議長において選定した。
出席政府委員
内務政務次官 林連君
内務次官 齋藤昇君
内務參與官 水田三喜男君
内務事務官 林敬三君
内務事務官 小林與三次君
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本日の會議に付した議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=0
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001・岩本信行
○岩本委員長 これより會議を開きます。衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案を議題として討論に入ります。
〔「そんなばかなことはない」その他發言する者多く、議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=1
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002・岩本信行
○岩本委員長 暫時休憩いたします。再び懇談にはいります。
午後六時二十一分休憩
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午後七時五十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=2
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003・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。この際議事進行に關しまして發言を求められております。これを許します。佐竹晴記君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=3
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004・佐竹晴記
○佐竹委員 私は大選擧區連記制に變更を加える修正案を出すかどうか。その態度を明確にせられますまでは、この會議を延期せられることの動議を提出いたします。その理由は、この選擧法一部改正に關する法律案の内務大臣説明によりますれば、かようにおつしやつておられます。すなわち大選擧區制限連記制を骨子といたしまする現行衆議院議員選擧法につきましては、前囘の總選擧の結果等に鑑み、論議のやかましいものがありまして、政府といたしましても、選擧法全般にわたつて根本的再檢討を加えてきたのでありますが、最近における政治情勢の要請により、急速に選擧を行うこととなりましたので、この際とりあえず選擧の執行に必要な日本國憲法の制定、地方制度の改正及び參議院議員選擧法の制定等に伴う最小限度の規定の整備を行うことといたし本改正案を立案した次第であります。とございます。すなわち政府提案理由の説明によれば、この選擧法の改正の立案は大選擧區制限連記制に觸れずに、最小限度の形式的な規定の整備を行うことを中心として提案されたものであることが、きわめて明白であります。從いましてこの提案理由の通りだといたしますならば、委員長が先ほどもおつしやつておられましたように、各派から一名を出しまして代表して質疑をせしめますならば、もうそれで十分かもわかりません。そうだといたしますならば、各派の質問を終ると同時に直ちに採決をいたしまして、もうこの議案は數日以前にこの委員會を通過して本會議にかけられておらなければならなかつたはずであります。しかるに今日、ここになおこれをもまなければならぬ状態になりましたことは、一體何を意味するものでありましようか。單なる新聞記事の臆測によつて、この委員會がもめておるものと言うことはできません。すなわち大選擧區制、制限連記制について、根本的な改正を企てようとするある力が強く動いておればこそ、これがために會議も延長せられ、またわれわれもこれに對して、相當の檢討を加えなければならぬ。必死の審議を盡さなければならぬ熱意を表わしているわけであります。すなわち會議の經過からごらんを願いましても、單なる新聞記事の臆測ではなしに、内務大臣がこの席へ出席しておいでになられまして、中選擧區單記の改正を企てることについて、内務大臣といたしまして、非常に熱意をもたれておることを示された。しこうしてその後會議を三日も休んだ。なぜ休まなければならぬか。もし政府がここに提案をいたしておりまするがごとく、こんな大問題に觸れることなしに單に御説明のごとき最小限度の規定の整備でございましたならば、これはもう提案されて一應の皆さんの質疑が濟んだならば、直ちに通過をみておるはずである。にもかかわらず、これが通過をみぬところは、内務大臣の御説明により、また各派がいろいろと協議をなさいましたその結果、いよいよここに中選擧區單記制に變更しなければならぬという空氣が、強く動いてまいりましたればこそ、ここに會議も延期され、また今日夜遲くまでお互いが審議をしなければならぬ状態にはいつておりますことは、申すまでもないのであります。しからば今日ここまで引きずつてまいりましたその原因が、中選擧區單記の修正を加うるや否やにかかつておりますことは、何人も否定することはできないところでありましよう。しかるにその修正が行われるであろうかどうか。その態度がまだ明白ではございません。もしそれ私どもがこの原案をここでうのみにいたしまして、明日これが本會議に移されました時分に本會議において突如として、われわれの今懸念しております大きな修正が提案せられるに至りますならば、われわれはその論議を盡す機會を失うことになるでありましよう。いやしくもここに委員會に付託されまして、愼重審議せよとわれわれに付託されました以上、もしその重大なる修正が行われまするならば、われわれはこの委員會において愼重審議を盡さなければならぬ義務がございます。しかるにそれを盡すことなしに、本會議にこれを移し本會議において突如としてその修正案でも出ましたときには、これは實に重大なる問題であると言わなければならぬ。よつてこの修正案が出るか出ないかということの態度が明らかになりません以上、われわれはこの案に對して賛否を決するまでに、未だその議が熟しておらないものと、言わなければならぬと存じます。もしそれこの會議へこの一部改正に關します法律案が委員付託と相なりまして、私どもがこれを審議いたしました結果、修正案なしとして滿場一致これを本會議に送りました後に、本會議において修正案が出ましたときは、これまつたく委員會の審議を無視し、委員會を蹂躪するところの結果になり終るであろうということは、私が申し上げるまでもないと存ずるのであります。よつてもしこの修正案が出るならば、速やかにこれを出していただきまして、その論議を盡すことまたこれに關連をいたしますよりよき修正案がございますならば、その修正案をもともに付議いたしまして、もつて愼重審議を盡すべきは、この委員會の當然の責務であると私は思うのであります、ゆえに私どもは、その修正案が出るか出ないか。しかも出るという豫想のもとに今日までここへひつぱつてきておいて、その修正案が出るか出ないか不明のままに、この原案をうのみにいたしますことは、われわれは斷じてできないことであると思うのであります。中村委員がおつしやつておられます通り、政府の説明を信頼し、最小限度の規定の整備を行う程度のものであるというがゆえに、各派より一名程度の質問者を出して、これで終ろうとしたのであります。しかるに事情は變更した。先ほど申し上げましたごとく、決して新聞辭令にあらざる他の確固たる事實の上に、選擧區制及び單記制の問題に觸れた重大なる修正が、行われるであろうことを前提といたしまして、會議が延期されてきた。しかして各派が愼重に會議を開いて協議をせられてきたとするならば、その結論を得ることなしに、われわれがこの原案をうのみにすることが、どうしてできましようか。よつてその選擧區制並びに單記制の問題について、さらに一層の審議を重ねまする意味において、われわれがさらに質疑をせんければなりませんことは當然であり、私がその質疑通告をいたしましたに對し、多數をたのんで、これを否決し、一擧に採決に移ろうという態勢を示しましたごときは、まつたく非民主的なやり方であると私は言わざるを得ないと思うのであります。私はこの選擧區制並びに連記單記の問題以外にも、なお政府當局に質さなければならぬ幾多の問題があつた。しかるにこれを一切抑えてしまつた。まずその一、二について申し上げまするならば、内務大臣は本會議における淺沼議員の質問に對しまして、すなわち淺沼議員の質問でございます、いつ政府は解散するか。その解散の時期こそ、ここにこの本法案について、政府が説明をいたしておりまする「急速に選擧を行うことになりますので」、と謳つておりますその内容を尋ねる意味において必要であるのでありこの委員會においてもこれを聽かなければならぬことであります。それで淺沼議員が本會議におきまして、一體解散はいつするかとお尋ねをいたしましたところ、内務大臣は曰く、現憲法のもとにおいては、解散をするかしないかは天皇の大權に屬するものである。從つて大臣としてはこの點について何とも申しようがないと説明せられたのであります。しからば私は聽きたい。内務當局もおいでになつておらるるのでお尋ねをしたい。解散をするかしないかということが、まだきまつていないかということを聽かざるを得ない。解散をすることはきまつておるでしよう。きまつておればこそ、内務省はポスターをどんどん刷られておるじやないか、何日に告示をやつて、何日に選擧に移るといふことを天下に表明しておるではないか。さらにまた解散なり選擧あることを前提として、われわれに資格審査申請をしろとお示しになつたではないか。しかして資格審査委員會は内閣に設置され、われわれの資格審査申請書を受けつけておるじやないか。これすなわち解散あることを前提としておる。天皇陛下は解散をやるかやらぬかは一向おつしやつておらぬ。しかるに内務省は解散をやることを前堤として幾多の手續きを進めておる。これ大權の干犯にあらずして何ぞ、内務大臣がおつしやるがごとく解散をするかどうかということは大權事項にあつて、これに觸れることは大權干犯になるから言われないとおつしやつた。しかるに事實の行動においてはどしどしと、まだ天皇が言われない先に、解散あるものとして行動をとつておる。しからば解散あることを前提といたしまするならば、いつ解散をやるのかということがどうして言えないのか、言われなければならぬはずである。われわれはこれを明らかにいたしますることは本法律案における急速に選擧を行うことになりましたのでというその内容を聽く意味において、きわめて必要でありますることは申し上げるまでもないのであります。しかるにこれをも抑えなければならぬ理由がどこにあるでありましよう。さらに私は申し上げなければならぬことは、選擧法百一條の三に、選擧費用に關しまするところの規定がございますが、これはポツダム宣言の規定に基きます勅令によつて、その實質に重大なる變更が加えられておる。しかしてこの關係は、今囘提案されておりまする百一條の四に關します審議と關連をいたしまして、きわめて緊密なる關係のある重大なる規定であることは申しあげるまでもない。この點を明らかにいたしておきません限り、われわれはとんでもない結果に陷るおそれがありまするので、これを明らかにすることは、本委員會において當然の義務であると私どもは考える。すなわちかようであります。選擧運動の費用の支出につき、全責任を負うべき者を定めます以上選擧運動のために要する一切の支出は、支出責任者の嚴重なる統制のもとにおくべきことはこれは當然であります。從つて選擧運動の費用は、原則として支出責任者でなければ支出ができないこととなつておる。これは前の百一條の三の改正でありますが、改正法においてはこれによりますれば、第三者運動が自由になつたので、それに要する費用の支出も自由にしなければ意味がなく、さらに議員候補者及び支出責任者と通謀し、選擧運動費用の制限額の超過を免れるために、第三者の名義で支出することを、これで防げばよいというのでありますが、しかしこの點に關しましてはポツダム宣言に基く勅令によつて重大なる變更が加えられた。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=4
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005・岩本信行
○岩本委員長 佐竹君に御相談申し上げますが、あなたのは議事進行ということでありまして、今のお説のようなことは、討論の場合のお方におつしやつていただいたらいかがでありましよう。
〔「ノーノー」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=5
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006・佐竹晴記
○佐竹委員 (續) これは先ほど申し上げております通り、こういつたことを抑えなければならぬ理由がどこにあるかというのです。こういつたことは討論に讓るべきではなくして、質疑應答を重ねて、内務省の態度を表明すべきものである。私がこれを討論に讓つて政府の態度を表明する機會を失わしめることは、審議機關の無視だと私は言うのである。從つてこの點については私はきわめて簡單に申し上げるのです。それではその點は省略いたしましよう。すなわちこれは皆さんにとつても重大なることでありまして、第三者運動が自由になつたために、これに伴い第三者において任意に支出することになつて、選擧運動の費用の範圍がきわめて廣くなる。第三者の支出する費用が選擧運動に要する費用なら、もちろんそれは選擧運動の費用であつて、ただ選擧法においてその額を制限し、統制をしておるところの選擧運動の費用でないというだけである。從つて頭から選擧運動の費用は………(發言する者あり)これは種本に書いてあるのを讀んでおるのでありますから、間違いありません。それ以上に私が意見を加えることは間違うかも知れませんが………。(發言する者多し)靜かになりましてからそろそろとやりましよう。大分野次も出ておりますから、靜かになつてからいたします。選擧運動の費用は支出責任者でなければ支出ができないというのは、いささか一般の希望に副わない點がある。ここのところの氣持を代表するために、選擧運動の費用は、立候補準備のために要する費用及び議員候補者または支出責任者と意思を通ぜずして支出する費用を除いては、支出責任者でなければ支出することができない。(發言する者多し)さてこの關係は私が申し上げまするまでもなく、(發言する者多し)昭和二十一年二月にはいりまして、昭和二十年勅令第五百四十二號、ポツダム宣言受諾に伴い發する命令に關する件に關する勅令に基きまして、第三者の運動は……。(發言する者多し)靜かになつてから……。(發言する者多し)第三者の運動は、必ず費用支出責任者の承諾を得なければならぬというので、もしその承諾を得ないでやりました場合、すなわち意思を通ぜずにやつた場合でも、意思を通じてやつたものとみなすという規定ができたのであります。よつて第三者がもしも勝手に選擧運動をやりまして、意思を通ぜずにやりましても意思を通じたものとみなすという規定に基いて、これが選擧費用中に計算せられることになりましたならば、驚くべき重大なる問題の出ますことは申すまでもない。(笑聲)もしそこに笑つておられる諸君が——諸君のために私が第三者運動としてどんどん葉書を出したとする。皆さんの選擧費用が五萬圓であつたときに、五萬圓だけ支出しておつた。ところが私が第三者運動をやつて一萬圓使うておつたというのでこの人のために一萬圓使うたということを屆出ますと、たちまち選擧費用超過になつて、その人は落選する。當選無效になりましよう。笑うどころではありますまい。そこに意思を通ぜずして、意思を通ずることなしにやつた運動でも、意思を通じたものとみなすという規定になつておりますが、こういつた費用がはたして選擧費用として加えられることになりましたならば、先ほど申しまするがごとき重大なる結果を生ずるに至る。よつてこのポツダム宣言の規定に基きます勅令によつて正面解釋をいたしまするときに、とんでもない結果を生ずるおそれが出てまいりまするので、これらに對してはこの際政府當局より、この關係を明確にし、誤りなからんことを期するがために、この委員會においてはつきりいたしておく必要があると私どもは考える。しかるにこういつた選擧法の關係と、ポツダム宣言の條項に基きます勅令との間に、重大なるこうした關係にあるものを、政府當局がいかに解釋するかという質問すらも、これを封じなければならぬ理由が一體どこにあるのであるか。(拍手)これを抑えてまでも乘切らなければならぬほど、急がなければならぬ理由が一體いずこにあるのであろうか。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=6
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007・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=7
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008・佐竹晴記
○佐竹委員 (續) すなわち委員長はこれを抑えるために採決されました。日比野委員よりその動議を出し、われわれが反對を連呼するにもかかわらず、委員長は採決に多數をもつて押し切つた。それほど何が故に急がなければならなかつたか。急ぐ必要があるといたしますならば、これは當初私が申し上げました通り、本案については最小限度の規定の整備であつて、形式的問題であるから、もうこの程度でよいのではないかという以上の何ものでもなかろうと思うのであります。はたしてしかりといたしますならば、この會議において委員長は、この案に對して決して選擧區制の問題や、單記制連記制の問題には觸れない。またこの案については決して修正案を出さぬという態度を、はつきりと表明されてよいのではないかと私は思う。それができない理由がいずこにありましよう。從いましてこれを明らかにせられません限り、私どもは斷じてこれの審議を重ねてまいりますわけにはまいらぬと思う。何とぞその態度を明らかに、表明せられますまで、この會議を延期せられんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=8
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009・岩本信行
○岩本委員長 ただいま佐竹君より發言されました動議についておはかりをいたします。佐竹君の動議に御賛成の諸君は起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=9
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010・岩本信行
○岩本委員長 起立小數。よつてただいまの動議は否決されました。
討論に入ります。(發言する者多し)小澤君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=10
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011・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員 ただいま委員長の宣言通り討論に入ることになりましたから、發言を求めます。
〔委員長横暴〕「委員長々々々」その他發言する者多く、議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=11
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012・岩本信行
○岩本委員長 暫時休憩いたします。
午後八時三十四分休憩
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午後八時四十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=12
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013・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。初めに申し上げておきますが、傍聽者の諸君は、傍聽指定席より前列におはいりにならぬよう、しかも靜肅に願うようお願いいたしておきます。
中村君より委員長不信任の動議が提出されましたが、既に討論中のことでありますから、適當な機會にこれを許します。討論に入ります。小澤佐重喜君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=13
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014・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員 いろいろ論議が交されておりまするが、簡單に討論の結論だけを申し上げます。つまり私どもは社會黨その他の諸君が今後出るであろうというような、いわゆる中選擧區單記制についていろいろ論議されておりますけれども、少くとも今日現在においては、われわれはそうした修正案を出す氣持はございません。從いまして原案通り可決せられんことを、自由黨を代表いたしまして申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=14
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015・岩本信行
○岩本委員長 山下春江君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=15
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016・山下春江
○山下(春)委員 日本進歩黨を代表いたしまして、議題となつております原案に賛成いたすものであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=16
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017・岩本信行
○岩本委員長 鈴木義雄君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=17
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018・鈴木義男
○鈴木(義)委員 私は日本社會黨を代表いたしまして、この提出の法案に對する意見を申し述べます。この衆議院議員選擧法中改正法律案は、大體において當然な正當な改正であります。ゆえに賛成するにやぶさかでないのであります。しかしこの改正の中にはきわめて重大な意味のある改正が含まれておるのであります。たとえば第六條の「懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者ハ選擧權及被選擧權ヲ有セズ」というがごとき、あるいは第九十六條の「何人ト雖學校ノ兒童、生徒及學生ニシテ年齡二十年未滿ノモノニ對スル特殊ノ關係アル地位ヲ利用シテ選擧運動ヲ爲スコトヲ得ズ」この六條の項は、懲役を終つて出てきた者は直ちに選擧權を行使できるが、選擧違反などを犯して執行猶豫中の者は、選擧權の行使ができない。こういうことになるのでありまして、非常に均衡がとられておらないのみならず、裁判所が執行猶豫を許して、その刑の執行を許しております者を、今囘の新憲法におけるいわゆる完全なる自由平等の、普通選擧におきまして、特に除外すべき必要を認めないのであります。但し選擧違反者は、これを選擧法に關する限り資格を失うことに現行法はなつておりますから、この點については別に異議はないのであります。それから、たとえばこの九十六條の方で申しますと、二十歳以下の學生はいけないということになつておりまするが。新しい學制が施行されますと、十九歳で大學生になるのでありまして、また諸國の例を見ても、既に十八歳から選擧權を行使せしめておるような實情に鑑みまして何故に二十歳未滿の學生を、十八歳以上でありましても一律に選擧運動から警戒しなければならないか。利用するという言葉がありますけれども、かりに利用せられるにしても、既に大學生ともなりますれば、一向差支えがないという議論が成り立つのでありましてこれらの點については十分愼重に考えなければならぬと思うのであります。これらは選擧權、被選擧權の根本に觸れ、民主政治の使命の完遂に重大な影響のあるものであります。あるいは立案者におかれましては、十分にこの民主政治と選擧との關係を理解せず、この立案をなされたのではないかと考えられるところがあります。この際私は民主政治と選擧との根本原理を明らかにいたしまして、十分の希望條件を付して、しかるのちわれわれの意見を明らかにしたいと存ずるのであります。故に私の意見開陳は多少長くなりますが、選擧と選擧法理の根本から出發いたしまして、選擧制度をあらゆる角度から批判して、殊に世界のあらゆる實例を參照しつつ、この二個の條項に還つてくるのでありますが、その必要を感じまするので、あらかじめ御諒承を願いたいのであります。
そこで選擧制度というものは、必ずしも政治的制度のもとにのみ考えらるべきものではないのでありまして、殊に議會制度におきまして、その議員を選出いたしまするための制度として考えなければならぬというものではないと思うのであります。學會あるいは社交團體、いろいろな社會的團體におきまして、委員とか評議員というような役員を選擧する。勞働組合あるいは會社のような經濟的諸團體におきましてその機關を選擧するというように、選擧は多數人がある任務を擔當するに適當であるという者をきめまするについて、廣く用いらるる方法でありましてその方法がそれぞれの關係において客觀的に規律化せられまして、ある程度の永續性を帶びまする場合には、精粗は別といたしまして、本質的にはそこに選擧制度があると言うことができるのであります。ところが、こういう普遍的に行われている選擧制度が、特に政治的制度の機構の一部として、ことさらに重要視せられまするのは、おそらくは第一に政治團體そのものの重要性によると言うことができるでありましようが、第二には、この重要性に關連しまして、その制度がこの政治的部門において、制度として最も發達をしたということによるのであります。第三には、現在の世界におきまして、大多數の國家によつて採用されておりまする民主的諸制度が、一般にこの選擧制度なくしては存在し得ない機構をもつているという事實と關連するのであります。ゆえにこの選擧制度というものを考えまするにつきましては、特にこの政治との關連、民主的政治の關連ということが最も大切でありまして、政治制度には絶えず選擧という方法が含まれているのであります。既に公法學者マンローも申しましたように、選擧の歴史はそのまま一つの政治學の歴史である。また實に一つの文明でもあり得るということを申しているのでありまして、選擧制度が政治制度の一部として、今日のように重要な意味をもつて考えられますのは、現代のデモクラシー政治が、健全な選擧制度なくしてはとうてい維持することができないという點と結びついているからであります。選擧制度が技術的に今日のように發達をいたしましたのも、それが民主的制度と結びついて、その民主的制度が人類の過去の歴史には、かつて見なかつたところの大なる價値を有するものとして考えられましたために、選擧制度の改善に對して、人類の大努力が拂われた結果であるのであります。ゆえに民主政治と選擧というものは、同一體であると申して差支えないのでありまして、私はその見地から、選擧というものは、ほんとうに理論的に、實際的に、兩方面からまじめに考えなければならぬ問題だと考えているのであります。そこで、現代の議會制度のもとにおきまして、その選擧というものはいかなる性質と目的とをもつているものであるか。この問題はおそらくこれを選擧の法律的考察と、政治的考察とにわけてみなければならないと思うのであります。けだし法的考察におきましては、その制度が制度の一種としてもつ意味が明らかにせられるのでありまして……。(「簡單々々」「本を讀んでるじやないか」「靜かに聽け」その他發言する者多し)どういうふうにやじられましても、十二時まではやりますから……(「立派な單行本ができるよ」「靜かになつてからやれ」「騷いでる間は默つておれ」「本を讀んでいるんだよ、それは」その他發言する者多し)本を見つつ私の意見を加えて述べていくのであります。本よりはよほどよけいになるのであります。——この政治的考察によりまして、制度としてもつべき要請が明らかにされるということができるでありましようが、同時にまた二つの……(「對論じやないじやないか」と呼ぶ者あり)後に申し上げますように、從來の選擧の性質を不明瞭ならしめる重要な原因の一つになつていたと考えることができるからであります。
そこでまずこれを法的に考察をいたしますると、今日の選擧は選擧人が一つの集團としてなす議員という國家機關の選任行爲である、こう言うことができる。別の言葉で申しますると、その行爲の性質は、もはや間もなくなくなりまするが、今まで勅任議員というものを天皇が任命した、今度は民衆が選擧ということで議員をつくる、これは法律的に見れば、まつたく同じ意味をもつておる行爲でありまして……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=18
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019・岩本信行
○岩本委員長 タバコを禁じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=19
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020・鈴木義男
○鈴木(義)委員 ただ一方は一人がやることであり、他方は集團、集合性の機關が、合同行爲としてやるところの一種の任命を言うのでありまして、これをわれわれが選擧と名づけるのであります。たとえば共和國で國の元首たる大統領自身が公選せられるのでありますが、この場合には、あるいは人民が直接に選擧する場合もあります。あるいは人民によつて公選せられた機關によつて、間接に選擧せられる場合もあるのであります。フランスでは代議院と元老院が合して國民議會となりまして、この國民議會が大統領を選擧するのであります。アメリカではまず大統領を選擧する選擧人を選擧して、その選擧人が大統領を選擧するのであります。これらの大統領の選擧は、もちろん議員の選擧と性質上何らの區別がないのでありまして、ただ前者が行政機關の選任であるのに對して、後のものは立法機關の選任である點にその區別が存するに止まるのであります。今度われわれは内閣總理大臣を選擧することになつておるのでありますが、これは行政機關の選任行爲である。これに對して近く行われようという總選擧は立法機關を選ぶということでありまして、その相違は單に選ばれるものの相違に過ぎないのであります。しかるに大統領の選擧におきまして、大統領を選擧するこの國民議會、あるいは立法議會は、一つの集合性の國家機關として別の國家機關、すなわち大統領を選任しておるのでありまして、すなわち各議員は自身としての義務を行つているのではなくして、公の機關として公務を行つておるのであります。しからばこの機關と同一の地位にあると考えなければならないところの、大統領を直接選擧するところの選擧人團、及び議員を選擧するところの選擧人團も、また一の國家機關としての同樣の公務を行つておるものと解さなければならぬのであります。スイスなどでは、上級の行政官及び司法官をも人民が選擧によつて任命するのであります。同時に人民は投票によつてこれらの官吏を罷免することができるのであります。この點はわが國の新憲法も同樣官吏を一般投票によつて罷免する場合をきめたことは御承知の通りでありますが、一般官吏の任免を人民が直接にその投票によつてみずから行うという制度は、現在におきましてはアメリカの各州におきまして盛んに行われておる制度であります。この種の行政官及び司法官の投票による任免と、大統領のなしまする行政官及び司法官の任免とは、實質的に少しも異らないわけである。こういう例によつて明らかでありまするように議員の選擧もまた他の選擧と同樣に國家機關を選任する行爲でありまして、すなわち性質上任命に相當する行爲であります。ゆえにこの議員の選擧におきましては、あたかも君主のなす任免が國家機關としての行爲であるように、その選擧人は集合的な國家機關としてその行爲をなしているものと解されなければならぬのであります。けだし選擧人團のなしましたこの選定が、法律上國家機關を選定する行爲としてその効果を發生したのは、選擧人團がそういう行爲をなし得る資格、すなわちその權限をもつておつたからであると考えるよりほかはないからであります。もしそうでないとすれば、權限のないものの行爲でありまするからそのものは、國家のためになしたその行爲が、そういう効果を發生する理由はないのであります。ゆえに選擧はその選擧という行爲に附與せられまする法律上の効果そのものから、その行爲が國家機關の行爲でありまして、從つて選擧人は國家機關として、國家のために公務を行うものであることが明らかになるはずであります。從つて選擧の主體は、あたかも任命の主體が國家でありますように、國家自身である、選擧人は決して個人として自己の代理人を定めておるのではないのであります。この點は選擧權の性質を明らかにいたしまするに必要でありまするから特に注意を促しておくのであります。ところが、選擧がこういう意味をもつているということは、なお必ずしも一般に承認せられてはおらないのであります。選擧が公務であるか、個人が有する權利の行使であるかということはフランス革命以來爭われたところであります。一七八九年の革命議會におきまして、既に一種の見解が存したのであります。一七九一年の憲法制定に際しては、その審議にあたりまして、委員長ツルネーは明らかに公務であるという見解をとりました。この趣旨のもとに憲法が制定されたのであります。但し一面選擧權が公民たる各個人の權利であるという見解が採用され、一七九二年の國民議會コンバンシヨン・ナシヨナールでは、これに對しまして、選擧權は主權者たる人民の有する權利である。選擧は人民の參政權の行使であるともつぱら解せられたのであります。一七九三年の憲法はこの趣旨のもとに制定せられておるのであります。今日においても國民主權説をとる一部の國におきましては、人民が主權者であると解しまして、ただ人民はみずからその權利を行使し得ないで、人民を代表する機關、すなわち議會をしてこれを行使せしむべきである。こう主張するのでありまして、これがすなわち直接民主制の國に對して、代議制と申すのでありますが、この議員の選擧は主權者たる人民が、その權利を受任者たる議員に委任する行爲であると説明されるのであります。この見解は民主國におきまして廣くとられておるところでありまして、人民が主權者であるという觀念と、選擧が委任であるという觀念との、二箇の思想をその基礎とするものでありまするが、そのいずれもが誤りでありまして、第一の觀念は明らかにかの天賦人權説に基く、個人主義的な思想によるものでありまして國家は本來獨立自由であり、自主的であり、各個人が集つてこれを構成したものであります。ゆえに主權の淵源は人民にあり、人民が主權者であるのであります。しかし主權が人民にありというのは、主權が……(「本を讀んではいかぬ」と呼びその他發言する者多く聽取不能)すなわち人格化された國民がその主體であるということであります。そうしてこの意味においてのみ國民主權説はこれを……(發言する者多く議場騷然聽取不能)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=20
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021・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。特に傍聽者は靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=21
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022・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 現在の法的現象を基礎といたしますればいわゆる主權者は人格化された國民、すなわち國家自身であるということになるのであります。ゆえにルソーのごとく、一方においては集團的人格者としての政治團體、すなわち國家自身が主權者であることを認めながら、他方においてその公民が國家の構成員として、主權の一部を有すると解しまするのは一種の矛盾であります。主權者が人格者としての國民、すなわち國家に屬するということは各個人が共有的に主權者であるということではないのであります。ゆえに各選擧人が公民として當然に主權の何分の一かをわけ前としてもつておると解することもできないし、またこれらの選擧人の構成する選擧人團という國民の中の一部が、その權利の主體であると考えることはできないのであります。從つてこの選擧人の行う選擧によつて國民の權利が議會に委任せられる理由はないのであります。しかのみならず個人主義な國民主權説に賛成する人々は、國家が本來自主的な各個人によつて構成せられたものであると解しまして、その主權はこれらの各個人に淵源をもつておると信じ、主權をもつて各個人に内在する權力のように解するのでありますが、主權は國家的組織の結果として初めて發生するものでありまして、國家の組織せられる前から、各個人がこういう權能を當然に内在的にもつておるということは考えることができないのであります。
〔委員長退席、小澤委員長代理着席〕
ゆえにこの點から言いましても、公民が個人的に主權者であるという考え方はこれを採用することができないのであります。この種の思想は、フランス革命當時に最も多く信ぜられたのでありますが、フランス革命當時におけるこの種の思想の基礎となつたものは明らかにルソーの思想であります。すなわち主權者はただこれを構成する個人が集まつて形成しておるものである。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=22
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023・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 鈴木君にちよつと御相談しますが、議事規則で本を讀むことは許されておりませんが、ただ引用する場合はいいのですが、それを御承知だろうと思いますが、念のため申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=23
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024・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 次にこの見解によりますれば、議會は主權者たる人民を代表するものでありまして、主權者たる人民は、選擧によつてその權利の行使を議會に委任するものであると解するのでありまして、選擧委任の場合における授權と同樣に解するのでありまするが、この選擧委任における授權と同一視するとは誤つております。もつともこれを、一般的に論じまして、選擧または任命を、國の有する權利または權限の委任であるとする見解は、現在においてもかなり廣く行われておる見解でありまするが、これは正當ではないのでありまして、一般的に選擧または任命を委任と解すべき理由はないのであります。たとえば多數の共和國におきまして、司法官は大統領がこれを任命するのでありまするが、大統領はこの任命によつて自分の有する司法權を司法官に委任するものであると解することはできないのであります。またフランスにおきましては大統領を七年ごとに國民議會が選擧するのでありまするが、そのために大統領の權限が本來國民議會に、屬するものであるということは言われないのであります。殊にフランスの大統領は下院の解散權をもつておるのでありますから、かりにこの選擧を委任であると解するといたしますれば、受任者がかえつて委任者を解任するという不都合な結論に到達するのであります。この關係から考えましても、この大統領の選擧を委任と解し得ないことは明らかであります。今かりにこれを委任であると解しますならば議員と選擧人との間には、委任關係が、あることになるはずであります。しからば、委任者である選擧人、または選擧人團は、受任者であるところの議員に對して、委任者の意思に從つて行動するように規定することができなければならない。現に英國議會は、後に説明いたしまするが、中世的な皇族會議の性質をもつておる。各議員が政治的特權の主體である各選擧區の代表者でありました時代におきましては大陸における皇族會議の代表者と同樣に、選擧區の訓令に從つたのであります。しかるに現在におきましては、議員の議會における行動はまつたく自由でありました。徳義上の拘束は受けるといたしましても、法律的に選擧人の意思に拘束されることはないのであります。同樣に委任關係におきましては通常受任者は委任者の意思に從つて委任事務を處理しなければならない。從つて受任者は一般に委任者の請求のあるときには、委任事務について報告するというような義務を負擔するものであります。しかるに議員はその選擧人に對して、法律上はこの種の義務をもまつたく負擔しておらないのでありまして、選擧人との關係におきましては議員が議會においていかなる行動をとるにいたしましても、法律的にはまつたく無責任であり、さらにまた委任關係におきましては、通常委任關係は當事者、殊に委任者の意思によつて解除することができるのであります。たとえば今日の國家はある種の事務の處理を、地方團體に委任する場合が往々ありますが、國家はこの委任關係を解いて、みずからその事務を處理することができるのであります。そのためにただいまいろいろな行政組織の改造に伴つて、地方團體に預けた權限を、中央機關が奪取しようとして努力しておることは御承知の通りであります。しかるに議員の場合には、委任者たる選擧人または選擧人團は、いずれもこの權限をもたないのであります。また最後に通常委任の場合におきましては、委任權の範圍は委任者の意思によつてきまるのであります。すなわち授權はあるいは包括的である場合もあるし、また列擧的、限定的である場合もありますが、要するにその範圍は常に、委任者の意思によつて定まるのであります。委任者の意思を無視し、委任範圍を超えてなされたる受任者の行爲は越權の行爲となる。從つて今もし議員の選擧が委任であるとしますれば、選擧人は選擧に當つて、その委任の範圍を定めることができるはずであります。しかして議員はその委任の範圍を超えることができなくなる。しかるに今日の選擧では 實際に選擧人がその委任の範圍をきめることもないのであります。かくて今日の選擧においては、委任範圍の擴張と考えられることは全然認めることができない。選擧をもつて委任なりと解することは根據なき説であります。このことはしかし選擧人と被選擧人との間には、法律以外にも何らの關係がないというわけではない。選擧人と被選擧人との間には、社會的または經濟的な別の關係が存する場合が多いのであります。選擧人の意思を尊重し、殊に候補者として選擧にあたつて宣言したところを忠實に行う政治道徳上の義務を負いますることは言うまでもないのであります。從つて今日でも諸外國では選擧人を選擧いたしまして……。
〔委員以外の者は退場させて下さい」。「委員以外の者ははいつてきてはいけない。」と呼び、その他發言する者多し。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=24
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025・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=25
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026・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) これは法的な委任關係があるからではなくて、ただこういう社會的または政治道徳的な關係を便宜に言い表わしたものに過ぎないのでありまして、まつたく一つの類推であることに注意しなければならないのであります。議會が國民を代表するといい、あるいは議會は國民の代表機關であるというのも、一つのアナロギーでありまして、選擧が委任でない以上は、一般の人々の主張いたしまするように、國民と議會との間に、委任による代理關係が存しないということは言うまでもないのであります。從つて法的には選擧を委任と解する根據から議會を國民の委任による代理機關であると解する理由は全くないのであります。そこで一部の學者は委任關係でない、また委任に基く代表關係が存在しないことを是認しながらも、別の理由によつてなお法的に議會が國民の代表機關である。議會と國民との間には、あたかも司法上の法定代理と同樣の關係が存在する。こう主張しておるのであります。美濃部博士のごときその一つの主張であります。この種の見解によりますると、代表または代理とは、同一でない二者の間において、その一方の意思が法律上直接に他の者の意思と認められる場合を言うのであります。しかるに議會の場合におきましては、議會の意思が直接に國民の意思と認められるのでありまするから、議會は國民の代表機關であり、國民と議會との間には代理關係が存在すると考えられるのであります。すなわちこの種の論者は、議會の行爲の法律上の効果から、議會と國民との間に代理關係があると解するのであります。議會と稱する國家機關の意思は、一旦國民と稱する國家機關の意思としてその効果を發生するのであります。しかし國民と議會との間には委任關係がなく、國民は事實上意思能力をもたないものでありまして、その關係はあたかも胎兒、幼兒のような意思無能力者と、その法定代理人との間のような關係にあるものと解せられるのであります。それはすなわち法定代表の關係にあるということができる。こう主張するのであります。しかしこの主張も正しくないと思うのであります。なんとなれば、まず第一にこの議論は、議會が國民の代表機關であるというのは、國民という國家機關と議會という國家機關との間に、司法上の代理關係と同樣の法律關係が存在して、議會は國民のかわりにその權限を行使しておるのであります。從つて議會の行爲の効力が、國民のために發生すると解するわけであります。しかしながら國家機關というのは國家のためにその意思を構成するものを言うのであります。從つてまつたく統一的な意思を構成しない國民のようなものが國家機關であるというならば、そこには既に明らかに概念上の矛盾が存在するわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=26
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027・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 鈴木君、發言中ですが、ちよつと先ほどと同じことを御注意しますが、百十六條に「會議ニ於テ意見書又ハ理由書ヲ朗讀スルコトヲ得ス但シ引證若ハ報告ノ爲ニ簡單ナル文書ヲ朗讀スルハ此ノ限ニ在ラス」こういう規定があります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=27
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028・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 文書を朗讀しておるのではありません。選擧權の本質を論じておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=28
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029・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 もしこの趣旨に反する場合は中止することがありますから、そのつもりで……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=29
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030・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) そういう亂暴なことは……。
〔淺沼委員「議事進行について發言を求めます。」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=30
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031・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 ただいま鈴木君の發言中であります。鈴木君、良心に基いていまの規定にあてはまるように、これに反した場合は委員長において相當の處置をとることにいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=31
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032・鈴木義男
○鈴木(義)委員 われわれの良心を言う前に、自由黨が曖昧なる態度をとりいかなる修正案を出すのか、これとともに出すのか、離れて出すのかというようなことを明らかにしないために、われわれはあくまでかくのごとき態度をとらざるを得ないのであります。どちらが良心的であるか、よくお考えを願いたい。要するにこの選擧權の本質というものを、よく理解しなければ選擧法を論ずる資格がありません。本議場で演説するときにも、みなちやんと原稿を前に置いて始めから終りまで讀んでおるのであります。
ゆえにこの代表關係というものを考えることは間違つておるのでありまして、一種の擬制——セクシヨンを論じておるものであると言わざるを得ないのであります。そこでこの國民の法定代表機關であるということは採用しがたいのでありまして、要するに法律的に考える限り、いなる意味においても議會は國民の代表機關ではない。すなわち選擧は議員を選任する行爲である。選擧人はその機關でありまするがこの選擧人またはその集團はもちろん國民自身ではないし、選擧は委任ではないのであります。
そこで選擧とは一體何かということについて、これまた學者の間にはいろいろな議論があるのでありますが、一つの立法手續あるいは訴訟手續等と同樣に、連續的になされる多數の行爲の總合、こう解するのが普通である。たとえば宮澤俊義君は選擧法要理の八頁にこういうことを申しております。すなわち選擧は選擧期日の公布または告示、議員候補者の屆出、投票開票、選擧人の決定、當選人の承諾等連續してなされる行爲が一體となつて、その効果を發生することを言うのである。こういうふうにその要因事實をなす行爲、すなわちそれがなければ選擧が成立しない。不存在であるという事實であります。選擧を選擧として成立せしめないのであつて、こういう場合にはむろん選擧は無効であります。すなわち不存在の結果は常に無効であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=32
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033・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 鈴木君に第三囘目の御注意を申し上げます。先ほどから見ますと、全部朗讀しておるようでありまして、議事規則に反するものと一應認定いたしますから……。
〔「そんなことはない」と呼びその他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=33
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034・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 參考書なり原稿なりもたずにやるということは、無責任な放言をすることになる。責任ある發言をする以上は、參考書、原稿を前にすることは當然のことであります。
これは選擧法上の最も根本的原理をやつておるのであります。從つてこれを契約であるというふうに解するのは間違つておるのでありまして、これはどうしても合法的行爲である。そしてこの行爲は任命行爲と同樣に、ある個人を國家機關の地位につかしめるための行爲でありまして、その選任せられた議員が、どういう權能をもつているかということは、一般的に選擧人自身がこれを授けるのではないのでありまして、法律によつて規定されておるのであります。それでこの議會と國民との間にすでに申し上げますように、まつたく代表關係がないという意味は議會の政治上の任務が押えられるものでありまするところの、一般人民の意思を實際政治上に反映せしめ、それによつて民意による政治、すなわち民主的な與論政治を行う點にあることを否認するものではないのであります。今日の議會制度はいうまでもなく、民主的な公民自治の要求に從いまして、いわゆる人民のため、人民の政治を行うがための制度と考えられておるのであります。この要請を前提として、議會の存在とその合理性とが承認せられておるのであります。そしてそのためになるべく議員が人民の意思にしたがつて行動するということが當然に要請せられまするが、この目的を達するには選擧が主義政見に從つて行われ、すなわち各候補者をしてその主義、政見を選擧にあたつて選擧人に訴え、各選擧人は自分の欲する主義、政見を有する候補者を選擇して、これに投票する。選出された議員は忠實にその公約を履行するという關係になることが、必要であります。このことは現代の議員制度が、いわゆるデモクラシーの要求に出發しておるという當然の論理的歸結であります。いわゆる民主的要求は、近世ではその初めは社會契約説及び天賦人權説に基礎を置いて發達したのでありますが、國家は本來自由に生れた人類が集まつてこれを構成しておるのであります。そして人類が國家を構成したる主たる理由の一つは、天賦の人權である自由を維持せんがためである。從つて國家におきましては、われわれは互いに他の何人かの意思にもつぱら服從することになつてはならないのでありまして、われわれはわれわれがつくる團體の意思、すなわちわれわれの意思に服從するようになつて、初めて自分が自分の意思に服從するということになるのでありまして、われわれはわれわれの自由を維持しながら、全體としての團體生活を維持することができることにならなければならぬのである。しこうしてそのためにわれわれは當然國家意思の形成に參加し得なければならないということになるのであります。この根據から人民の直接投票制及び近世的な代議制度の採用が唱えられたわけであります。もつともこの種の説の出發點をなしております社會契約説あるいは天賦人權論というものは今日ではもはや一般からは承認せられておらないのであります。けだし社會契約が考えられます前に、既に社會の存在が考えられなければならないのであります。また人間が自由に生れたということは、人間が赤裸で生れるという事實の類推にありますために、いかにも眞實らしく聞える主張ではありますが、まつたく事實に基礎を置かない感情的な、架空の命題であるのであります。フランスのデユギーも申しておりますように、生れながらにして自由に、他の人間とはまつたく無關係な獨立の人間というものは、事實存在しないのであります。われわれが考える場合にその目標とする人はありのままの人間である、とらわれない人間でなければならない、この意味においてのみわれわれはその立論の基礎として自然の人を選ばなければならない、こう言い得るのであります。これはデユギーの言葉でありまして、私の言葉ではない。しかしこの立論の基礎とせらるべき人は、十八世紀の哲學者の考えられたような、抽象的な、架空な自然の人であつてはならないのでありまして、またこの架空な自由に生れる人、人間が實際に赤裸々で生れるという事實と混同してはならないのであります。孤立的な、社會と沒交渉な自然の人というものは、單にこれは十八世紀の哲學者の頭の中にあつただけの人間でありまして、實際には存在しないのであります。また人間が赤裸で生れるということは事實でありますが、それはもちろん人間が自由に生れるということではないのであります。從つてこのことからすべての人間に參政權を認めなければならないという論理は、必ずしも生れてこないのであります。しかしそれとともにわれわれが注意しなければならないのは、天賦人權説は滅びましたけれども、その思想の根抵をなすところの、人間は人間として互いにその權威——ヂグニチー及び價値を尊重し合わなければならないという考えは、今日においても少しも價値は減少しておらないのであります。それから今日のいわゆる民主的理想は、自由にこの思想の上に建設せられておる。それが現に多數の國において、その政治組織を維持する一つの重要な指導原理となつておるということであります。換言すれば、いわゆる天賦人權が、人間は自由に生れるものであり、互いにこの自由を維持しなければならないというのは、人は互いに人として取扱わなければならないということを言おうとしておるのにほかならないのでありますが、この意味においてはその主張は正當である。すなわち天賦の人權説において誤つておつた點は、擬制的な、フイクシヨン的な説明そのものにありまして、これによつて明らかにしようとしたところの、人間の價値に關する思想ではないのであります。目標とせられたところの理想そのものが誤つておつたのではなくして、その理想を導き出すためにたどられた説明の途に誤りがあつただけであります。天賦人權説では理想を説明するために事實が用いられたのでありますが、その事實であるとしたところが一つのたとえ、フイクシヨンに過ぎなかつたというだけであります。ルソーなどは、われわれの祖先が廣い野原に集まつて、これから國家をつくろうというようなことで契約をして國家をつくつたというふうに説いたのであります。まるで見てきたような説明をしたわけであります。こういう説明の過程に誤りがあつたのでありまして、その理想そのものはまつたく正しいので、結局今日の國家理想も、やはり私は國家契約論で説明ができると考えておるのであります。そこでこれらの説明によつて明らかでありまするように民主的要求とは結局倫理的な要請としての人格獨立の要求でありましてその相互的尊重の要求であります。そしてその獨立の要求からは個人の自由に關するいろいろな要求が生れてくるのであつて、その相互的尊重から取扱上の平等の、いろいろな要素が生れてくるのであります。現代の民主的な諸國家の選擧制度におきまして投票權を一般的に與え、かつ各個人の平等の資格において取扱つておりまするのも、原理的にはまつたくこの要求に基くものと言わざるを得ないのであります。しかるに今日のこの代議制度がこの要求を基礎とするものといたしますならば、實際に議會が人民の意思を反映するかどうかということは、單に議會の意思はすなわち人民の共同意思と考えるというような、擬制的な取扱い方に滿足することのできないことはもちろんであります。今日の選擧が法的には——法律的には議員選任行爲であるに止まるにかかわらず、政治的には民意を問うところの一つの方法と考えられる一種の人民投票、レフエレンダムの意味を付して考えられる根據はまことにここに存するのであります。政治的な見地からは民主的要求を基礎とする以上、この考え方がまつたく正しいと思うのであります。またこれが權利としての要請は實際的必要とも結びつくのでありまして、けだし今日實際に投票權を行うのは、單に人間としての權威の保持という抽象的な理由だけによるのではない。われわれは互いにひとしく國家の一員でありまするから、當然公民たる資格が認められ選擧權が認められなければならないという抽象的理由より以外に投票がわれわれにとつてはわれわれの利益を防護する手段であると考えられるからであります。そこに實益が考えられるからこれを要求し、これを行使するのであります。無産者が納税資格を撤廢して勞働者に選擧權を認めることを要求いたしましたのも、人問としての權威の問題だけでなしに、またその投票が勞働者の利益を防護するために、缺くべからざる手段であると解せられたからであります。すなわち投票が、ミルのいわゆる各人に當然認められなければならないセルフ・プロテクシヨン、自衞の手段であると考えられたからであります。これを國家の立場から申しましても、實際に多くの國が、のちに述べますように、普選と自由投票制度とを採用しているのは、一面ではなるべく各方面の意見を議會に反映させることが、國家の利益であると解するからでありますが、また各人にとりましても、そこに利益がありますから、進んで投票することを豫想しているものであることを推論させることができるのであります。もし人間が公平無私なものであり、投票權を有する者が、自己またはその屬する團體、あるいは階級のために、これを行使せずして、常に全體の利益のためにこれを行使し、これを行使すると行使せざることが、個人の生活の上に何らの影響を與えないものといたしましたならば、おそらく普通選擧の要求というものは、われわれが各國の運動において見たような強いものではなかつたでありましよう。しかるに各國の實例に徴して見ましても、非常な努力をもつて、無産者の地位が實質的に著しく選擧權の擴張とともに高められ、改善されたということは事實であります。わが國におきましても普通選擧が制度として採用されただけで、無産者あるいは社會問題に對する各政黨の態度が著しく違つてきたという事實は、何人もこれは否定することができないと思うのであります。
〔「委員長、事務當局が委員長にそんなことをすることは越權だ」「親切なやり方だ」と呼び、その他發言する者あり。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=34
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035・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 書記が委員長の仕事についてやることはあたりまえであります。少しも越權じやありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=35
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036・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 參政權における平等の原則というものは、ただいま申し上げるような理由をもつて出てくるのでありまして、これらの要請から、さしあたり選擧制度の原則として、いろいろな原則が生れてくるわけであります。森口繁治君の「選擧制度概論」によりますと、こういうふうな………(「人の意見は必要じやない」「引用は必要だ」と呼び、その他發言する者あり。)政黨は公務である。ゆえに選擧制度は公の事務にふさわしく、公の制度で組織されなければならない……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=36
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037・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 鈴木君、發言中ですが、議院法第八十七條に「會議中議員比ノ法律若は議事規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ルトキハ議長ハ之ヲ警戒シ又ハ制止シ又ハ發言ヲ取消サシム命に從ハサルトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ルマテ發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシムルコトヲ得」ということがありますので、念のために申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=37
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038・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 私の發言のどこが一體それに該當するのですか。私はまず選擧權の原理から説いて、そしてだんだん缺格條項の可否に及ぼうとしているじやありませんか。選擧とは何ぞや、選擧權、被選擧權の本質いかんというような問題を説明せずして、どうして缺格條項の批判をなすことができますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=38
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039・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 委員長は本規則のあることを申し上げただけです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=39
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040・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 私の言論はその理由がないと信じます。これをもし否定せんとするときは、議會の權威をみずから捨てるものでありまして、斷じて承服することはできません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=40
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041・小澤佐重喜
○小澤委員長代理 ただいまのは注意だけで、鈴木さん、發言を御進行願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=41
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042・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 委員長、發言中でありますが、ちよつと休憩を願いまして、便所に行くことをお許しを願いたいと思います。
〔小澤委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=42
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043・岩本信行
○岩本委員長 續行いたします。
〔議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=43
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044・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。お靜かに願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=44
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045・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 委員長から休憩の宜言があるまではやります。今日の選擧は、より基本的な民主國家の原理を前提としておるのでありまして、この要請から選擧人の自由と選擧人の平等の要求が發生するのであります。それからこの民主的要求は、實際的に結論することによつて別の原理を生むのでありまして、選擧人の地位を保護する制度が考えられる。次には議員が選擧人の意思を尊重して行動することを、制度の機構として要求するのでありまして、議員と選擧人との關係を密接にし、有効に選擧人の意思を反映せしめる制度として、いわゆる直接投票の制度が考えられる。また議員の任期を短期とする制度が考えられるのでありましてこれをそれぞれ直接選擧の原理及び短期改選主義と名づけることができるのであります。こういう原理を調和しながら種々の特別に技術的な意味をもつ原理が考えられるのでありまして、選擧の場合はひとしく多數によるといたしましても、決議のように承知した、しないというような、いづれかにわかれるということは言われないのでありまするから、選擧人の一定數ごとに議員を選出せしむるこの比例選擧が採用せられ得るのであります。選擧手續におきましては、できるかぎり浪費を避けて能率をあげる廣い意味での經濟的要求も考えられるのであります。そこでこういう選擧制度が何ゆえに發達してきたか。どうして發達してきたかということは、ギリシヤから始めて近世に至るまで、ずつと沿革を説かなければほんとうはわからないのでありますけれどもこれはあまりに長時間を要しまして、どうしても十時間以上かかると思いますから、すべてそういう點は省略をいたしまして、單刀直入に選擧權の本質について、法律的並びに政治的な説明を加えておきたいと思うのであります。
現在の代務制のもとにおきまして、選擧が何であるかということは一番最初に申し上げた通りであります。すなわち選擧は法律的に言えば、選擧人團集合性國家機關が他の國家機關、すなわち一番典型的な場合は、議員というものを選定する行爲であります。すなわち行爲による一種の任命にほかならないのであります。ところが選擧というものがこういう任命と同一視すべきものであり、選擧人を集合性の國家機關の行爲であるというならば、一般に考えられておりまするように、選擧は個人的な權利の主體である。各選擧人が權利の主體であると考えるのは間違いであるということになるわけであります。すなわち選擧の主體は、あたかも任命の主體が國家でありまするように國家自身である。選擧人は個人のためにではなく、國家機關として國家のために公務を行つておることになるのであります。換言すればこの意味でみずから直接に政治の一部に參與しておるのであります。ゆえに選擧するということは、私事、私の仕事、私務——公務に對する私務でありまするが、私の仕事と解して、選擧する權利を個人の權利と解することは當らないと思うのであります。この點も既に申し上げましたいわゆる國民議會が大統領を選ぶ、大統領が、裁判官を任命するというようなことが、私人の私務として、自己の權利を行使しておるのではなくして、國家機關としてその權利を行使しておるということと併せ考えまするならば、おのづから明らかであろうと思うのであります。今日國民議會が大統領を選擧したり、大統領が裁判官や行政官を任命する行爲は、それぞれ國家機關としての行爲でありまして、その行爲が完全にその効果を發生するのは、國民議會及び大統領に、それだけの權限が法によつて與えられておつたからであると解せられまするが選擧についても同樣のことが言えるのでありまして、選擧人團のなした行爲が、法上國家機關を選定する行爲としてその効果を發生し、當選者が議員になり得るのは、選擧人團がこの行爲をなすことができる結果、すなわちその權限をもつておるからであると考えるべきであります。もしこれを別々に解釋いたしますれば、權限ないものの行爲がこういう効果を發生することになるのでありまして、明らかに逆説的であります。ゆえに選擧はその行爲に付せられた法的効果そのものから、その行爲が國家機關の行為である。その行爲をなすものが國家機關であるということを、明らかに推論することができるのであります。またこの場合國家機關としてこの權限を有するものは、他の集合性の機關について考えられると同樣選擧人團という合成機關そのものであるということは、容易に推論できるはずであります。この點は議會が立法について協賛權を有するのでありまして議員各自がそれぞれ協賛權を有するものと解せられない關係と同樣であります。すなわち選擧人は、この場合あたかも合成機關として選擧人數千人、數萬人が一體となつて考えられるところの機關として行動しておる議會の選員たる議員と、同樣の地位にあると解することができるのであります。といたしますと、選擧は決して私人の私事ではなくして、その權利の行使と解し得ないばかりでなく、選擧人各自の行爲を直ちに選擧であると考えることもできないわけであります。個人は選擧人として、いわゆる選擧權をもたないことになるのではないか。あるいは選擧人に屬する選擧權というもの自體が存在しないことになるのではないか。個人と選擧人との關係をいかに解するのが正當であり、個人は選擧においていかなる權利、または權限を有するのであるかという問題が、成立するのであります。いわゆる選擧權の性質の問題がこれであります。この點につきましては以前から選擧を個人に屬する純然たる公權と解した説と、選擧は公務であるから個人の利益のために存する公權でなく、公務を行う權限であるという二つの説が存在いたしますことは御承知のことと思います。しかし現在ではこれを單純に、個人の利益を内容とする公權であると解するものは少いのでありまして、何らかの意味で、選擧が一つの公の仕事である。公務であるということを認めておる。また事實選擧自體が公務であることは、爭う餘地はないのであります。從つて問題は選擧人團の行いまする選擧について、個人の占める地位、及びその性質の問題になるわけでありまして、選擧と選擧人との關係が問題になるわけであります。この關係において、いわゆる選擧權者が選擧權を有するということが、何を意味するかという問題であります。しかるにこの點について、あたかも學説は、最も區々にわかれておる。ただいま一々これを論評することは避けたいのでありますが、しかし大體の分類というものは、選擧權の本質を理解する上に、ぜひ御説明申し上げておかなければならぬと思うのであります。
すなわち第一は選擧を公務と解することから、直ちに論理的に、いわゆる選擧權は權限に過ぎないのであつて、權利ではないとする見解である。第二の見解では選擧を公務であると解して從つて選擧權はこの見地から公務を行う權能、ないしは義務の履行にほかならないと解するのでありますが、同時に一面からみれば、それは公權の行使である。從つて同一の行爲が、同時に公務の履行と權利の行使との、二重の意味を有するものであると解するのであります。第三の見解は、これに對しまして選擧が公務であるということを認め、その權限が權利でないことを認めますとともに、別に選擧人が權利を有することを認めるのであります。この第一の説はランバードによつて代表せられておる説でありまして、この種の説に從いますれば、選擧人は國家機關として見らるる限り、國家から離れた別な人格はもたないのであります。その行使する權利は國家の權利にほかならない。從つて選擧人が特別の利益を有する人格者として、權利を有するということはないわけでありまして、選擧人が一般に選擧人たるの權利を有するということはないのであります。選擧人が選擧に參與し得るのは、裁判傍聽人が裁判の公開を規定する法の存する結果、公判廷に出ることができると同樣に、これは一つの法の反射にほかならないのであります。それが個人の權利をなすものではない。これがいわゆるランバードの反射説であります。しかしこの場合直ちに問題となるのは、國家が公選手續を規定したのは、いわばランバードの説の當然の歸結であるように、もつぱら國家のためと解し得るかどうかという點であります。この公選に參加することが、個人の利益であると解される部分が、ないかどうかといふ點であります。ランバード式の考え方によると、これを否認することになるわけでありますが、一般にこの關係における個人の利益を否認しては、おそらく各國において、猛烈な普通選擧運動あるいは婦人參政權運動の行われた事實と、この制度との關係を適當に説明することはできないのであります。しかのみならず、この選擧人がある權利を有することは、第一にこの選擧人名簿に登録されない選擧人が、登録を求めることができる。第二に投票をなすことを拒否せられた正當なる選擧人が、選擧人たることを認め、投票せしむることを要求することができるというような事實を中心として、考えることができるのであります。殊に前の場合には、法律は訴訟上の行爲によつて、その救濟を求むることを認めております。もつとも法律はこの種の手段を、單に選擧有權者に限つて與えられておるだけではない。しかし法律がこの手段を選擧有權者に與えておることは爭われないのでありますが、この場合の選擧人は、國家機關として訴訟上の行爲を行つておることと解することができるかどうか。また投票を拒否せられたる有權者が——委員長、少し便所にまいりたいですから休憩を願いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=45
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046・岩本信行
○岩本委員長 ただいま生理的關係から休憩のお話がございましたが、ごもつともと存じまして、暫時休憩いたします。
午後十時九分休憩
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午後十時二十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=46
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047・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。鈴木義男君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=47
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048・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) なるたけあつさりとおもしろく今度はやります。そこで、しかし缺格條項を批判しますためには、選擧權の本質はどうしても明らかにしていかなければならぬ。權利であるか權限であるか、反射的利益に過ぎないかということは、これは重大なことであります。第二の説はズキーによつて代表せられているものでありまして、いわゆるフオンクシヨン説であります。職能機能説というものであります。やはり選擧權を公務とは解しますけれども、しかし同時に公共のためにするところの一つの職能であるということでありまして、多くフランス學者はそういう議論をするのでありますがエスマン、ミシユー、オーリユー等がいずれもこの種の説明をいたしておることは、既に皆樣も御承知のことと存ずるのであります。それから第三の見解といたしましては、選擧人が選擧する權利をもつということを否認するのでありまして、いわゆる權利否認論の考え方からきているものであります。これも結局はエリネツクやマールブルグなどの説に見るのでありますが、一種の公の機能である。權利でもなく、機能であり、公の利益に奉仕するためになされるところの事實行爲である。こういうふうに解する點において特徴をもつておるのでありますが、ただ個人の權利とみるが、團體の一つの權限とみるかという點が、選擧權を見るものの根本的にわかれるところでありまして、これは未だ學説の上では結論に達したとは申しかねるのであります。われわれはそのいづれの説をとつてもいいと思うのでありますが、要するに代理人的な關係ではない。その選任行爲は一種の委任する關係ではなく國家行爲を助成するための公の職能を果すものである。こういうふうに選擧權の本質を考えることによつて、必要にして十分である。こういうふうに私どもは考えておるのであります。この考え方も、選擧權の本質を、そういうふうに見ることによつて選擧資格、普通選擧の意義というものを考えて、今日われわれが問題としている選擧法をいかに改正すべきかといふ問題に、密接につながつていくのでありますが、いわゆる普通選擧というものが、何ゆえに合理的根據をもつているかということであります。
選擧權は、廣い意味では選擧人が選擧との關係において有する權限と權能とを、包括的に指している言葉でありますが、しかしてそれが個人の利益のためでなく、國家的な公の目的を遂行するために與えられるものであるといたしまするならば、國家構成員は何人でもこの權利をもつておらなければならぬということに相なるわけであります。あるいは納税の資格、あるいは教育の程度というようなものは、毫もこの權利の有無について影響あるべき要件をもつものでないということは、おのづから明らかであらうと思うのであります。これを特に選擧權の制限にいたしましたのは、あるいは封建制度のもとにおいて、あるいは資本主義發達の過程において、人爲的に單なる因襲的な考えから、これにこういう考え方を附け加えてまいつたものでありまして、何ら合理的な根據はないと考えるのであります。われわれは共同の福祉のためにつくつているところの團體、その團體を維持していくための職能行爲としてやつていくのであります。結局これは、少しむづかしい哲學的な表現になつてまいりますが、共同意思、ボロンテ・ゼネラールといふものを構成する過程における行爲である、こういうふうに考えることができるのであります。あるいはボロンテ・ゼネラール、一般意思、共同意思、あるいはボロンテ・デユ・ツール、全體意思というようなものはないとか、あるとかいうような議論もあるのでありますが、私どもは法律というものを哲學的に見た場合には、やはり一つの團體意思であつて、總合意思であり、共同意思であるということは、ルソーの言葉をまつまでもないと思うのであります。結局その形成に參加するということが選擧の意味である、こういうことになつてくることは、多少考える者の當然到達し得る結論であると思うのであります。國家の利益のためにこの公務を行わしめるということが、同時に個人の利益をも滿足させるというところに選擧の重要な意味があり、また普通選擧の決定的な價値というものが存するのであります。普通選擧というものは、申すまでもなく一般的に、ほんとうに意思能力のない者を除いては、およそ男女の別なく、老幼の別なく、貧富の別なく、すべての國民に國家意思構成に參與するところの機會を與える、こういう性質のものであるのであります。しかるに制限選擧というものは、いろいろな制限を設けて、この國家意思の構成に參加させることを阻むのでありますが最近まで存在したものは、いわゆる教育程度というものでありますが、これも決してむづかしい政治原理、あるいは立法技術を理解し得る程度の能力を必要とするというような意味では毛頭ないのでありまして、どこまでもある特定の人を、國家機關として選出するに適當であるかどうかということを、直感的に判斷し得る程度の能力があれば必要にして十分である。こういうことに相なつておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=48
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049・岩本信行
○岩本委員長 鈴木君、發言中でありますが、御相談申し上げます。あなたの御討論はただいま提案になつておりまする議案とは直接的に關係の薄い面が多いように考えます。(「ノーノー」)よつて議事進行上簡潔にお願いを申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=49
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050・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) できるだけ簡潔にいたしますが、何しろ缺格條項というものは、御承知のように選擧權を奪うものでありまして、非常に重大なものであります。何ゆえに執行猶豫中の者に選擧權を與えないか。また何ゆえに十八歳以上二十歳までの、他の國では選擧權すら與えている者に、選擧に關興して使うことを許さぬというようなことにいたすのであるか。できるならばこういうものは取除いてほしいということを私は明らかにいたすために選擧權とは何ぞ、選擧とはいかなる行爲を意味するものであるかということを、哲學的に、あるいは法律論的に、政治論的に、社會學的に觀察をいたしまして、十分檢討をして、そうして議論を結論にもつていきませんと、その議論が非常に輕薄なものになるおそれがあるのであります。(拍手)
そこでこの納税資格であるとか、あるいは高度の教育というものを必要としたというようなことは、これはまつたく一つの傳統的な因習的な意味をもつておる以外の何ものでもないと思うのであります。何といつても普通選擧の一番特徴は、多數の民衆の利益を伸長したということであります。いわゆる參政權を有産者だけに與えるときは國家はいわゆる有産者の國家となるのであります。これに對しまして無産者に對して權利を與えたということは、非常に無産者の地位を向上せしめたということは爭うことはできないのであります。そこでこの普通選擧の理論というものを徹底させていきますれば、どうしても、一切の制限を撤廢しなければならぬ。事實上文字を讀むことができない者、あるいは白痴、心身喪失者であつて、判斷力を失つておるような者は、これは事實、行爲できないのでありまするから、これらは選擧權を與えないということは當然のことでありまするが、その他の者は男女老幼の區別なく、すべて選擧權を與えるに差支えないばかりでなく、當然これを與えるべきものである。これ新憲法におきましても、いわゆる無制限な普通選擧をわが國民に保證したゆえんであると思うのであります。そういう場合に選擧權を行使させるには、できるだけ一切の制限と條件とをなくして、自由なる選擇をなさせまするように、選擧制度を考えていかなければならぬことはあまりにも明白なことであります。今缺格條項としてどういうものを諸國がとつておるかということを考えてみますると、風癲、白痴その他精神病の疾病によるもの、それから禁治産者、準禁治産者、こういうものがいわゆる缺格者であることはほぼ共通しておるところであります。さらに準禁治産者は心身喪失の状況にあるのではないのでありまして、いわゆる心身耗弱者だけに限られておるわけでもないのであります。つんぼであるとか、おしであるとか、浪費者——隨分このごろは新圓をむやみに使う人があるのでありますが、そういう人々にはやはり選擧權を與えるのはよほど考えなければならぬ。私はこういう新圓浪費者は準禁治産者に編入した方がいいと思つております。そういうふうな制度を樹立した上で、選擧權も制限した方がよろしいと思いまするが、公民として選擧に參加せしめるを不適當とする理由があるもの、それは選擧に關する犯罪、いわゆる選擧違反であります。これによつて公權を停止せられた者——ほかの犯罪でやつたものは私は必ずしも選擧權を停止する必要はない。それだからこの缺格條項が問題になるのでありまするが、監獄から出てきた者はすぐにでも選擧權を行使してもいいのに、なぜ執行猶豫中の者は選擧權を行使していけないか。むしろ監獄から出てきた人は、犯した罪はより重い者が多い。執行猶豫中の者は、裁判所がこれは勘辨してもよろしいというので許しておるのでありますから、情状においてはるかに輕いものだ。こういう人の選擧權を剥奪すべき理由はないのでありますが、ただ一つ例外は、選擧について罪を犯した者、張るべからざるポスターを張つたり、發送すべからざる文書を發送したり、こういうものは缺格條項にあてはめてよろしいと思います。いわんや餘計金を使つて投票を獲得したというような者は、これはぜひとも缺格條項に入れるべきものである。これは執行猶豫中でも許すわけにいかぬ。これはどこの國でもそういうふうな制度にいたしておるのであります。現行法もさいわいにその點はやつておるのでありまして、私どもはその點賛成でありまするが、イギリスでは地方議會や地方廳委員、感化委員、學務委員などの選擧にあたりまして、不正行爲をして罰金刑に處せられた、有罪の決定を受けた者には、やはり選擧權を剥奪しておるのであります。第二はその他の犯罪人でありまするが、これは一體どの程度までの犯罪人は缺格條項にあてはめるかということが、非常にむずかしいのでありまして、單に懲役及び禁錮と原案は御提案になつておりまするが、罰金刑でも惡質なものは相當あるのでありまして、殊に今日のやみ取引というようなものは、概ね罰金刑に處せられるのでありまするが、その實質的に、選擧權という公務に參與せしめるべからざる、好ましからざる人物すなわち追放すべき人間の隨一におるものでありまして、こういうものも大いに選擧法の改正にあたりましては、考えなければならぬとわれわれは考えておるわけなんであります。昨日私はその筋にまいりまして、お話をいたしておりますると、追放を徹底させなければならないということを非常に力説せられまして、追放にはいろいろあるが、熱心に愛國のために戰爭自體に參與したために追放された者、あまり人間が下等で、大政翼賛會すらも相手にしなかつた人間、それがさいわいに追放を免れて、生き殘つて今日保守的存在としておるのであります。そういうものが非常に政治を混濁する。これをいかにして政治界から追放すべきかということが、今度の選擧で重大な問題であるから、その點をラジオを通して全國民に放送せよというようなお言葉をいただいたのであります。私はやはりそういうボスがおるならば、議會から追放すべきであるとともに、選擧にあたりまして、やはりそういうものを追放することが、國民の義務でなければならぬと考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=50
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051・岩本信行
○岩本委員長 鈴木さんに御相談申し上げますが、修正の御意見を御提出になりますか、いかがですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=51
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052・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 必ずしも修正の意見と言わずに、十分一つ御反省を願つて、希望條件を附して賛成をいたしたいと思うのであります。しかし修正は……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=52
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053・岩本信行
○岩本委員長 それではみなさんにお諮りいたしますが……。
〔「發言中だ」「發言中に諮るということがあるか」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=53
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054・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) こういうことは政黨の政策として、技術者の問題でありますだけに、客觀的情勢によつてその都度發すべき可動的なものでありまして、必ずしも政黨の基本的な政綱とは關係がないのであります。從つて正當の理由がありまするならば、これを明らかにして、國民をしてよく納得せしめ得まするならば、適當な時に適當に變更して決して差支えないのであります。とらわれざる立場においてお考えを願ひたいのであります。選擧制度を考えるにつきまして、この制度が運用される基盤たる國民の意識が、そういう段階に達しておりますれば………
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=54
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055・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願ひます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=55
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056・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 選擧制度を考えるにつきまして、この制度が運用される基盤たる國民の意識がこの段階に達しておれば、そうあの制度、この制度と迷う必要はない。半永久的にある制度を主張することができるのであります。しかし遺憾ながらわが國民の今日の意識水準では、どの制度も絶對にこれがよいと言い切れないものがあるのであります。いましばらくの間は、國民のこの意識水準、その他もろもろの客觀的情勢を考慮に入れて、時間的には時々變更を豫想して立案しなければならないと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=56
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057・岩本信行
○岩本委員長 いま一遍鈴木君に申し上げます。たびたび申し上げておる通りの理由でございますから、どうぞ結論に願うようにお願いいたします。
〔「委員長が委員の言論を束縛するとはどういうわけだ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=57
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058・岩本信行
○岩本委員長 そのわけを申し上げます。それはただいま提案になつておりまする政府の修正案に對して、あまりに縁遠いと考えるのであります。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=58
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059・岩本信行
○岩本委員長 略して結論をお願いします。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=59
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060・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=60
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061・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) これは因果關係論というものを哲學的に、法律學的に御説明申し上げなければならないのでありますが、すべてこの因果關係は無限に擴がつておるのでありまして、缺格條項を論ずるのでも、やはり選擧權の本質、あるいは選擧人、被選擧人の性質、進んでは選擧區の分ち方というものまで考えなければ、ほんとうの議論はできないのであります。そんなことを言わなくてもできると思う人はそれはその人の御認識の御自由でありますけれども、しかしこれは當然この選擧權というものを論ずるについては何んでも私は考えてよろしい。またそこから議論を進めて何が惡いかということを信じておるのでありまして、ぜひいま少し論を進めることのお許しを得たいのであります。選擧區というものがまた大いに選擧制度の善惡に關係あることは申し上ぐるまでもないのであります。大選擧區、中選擧區、小選擧區というものがつとに問題となつておりまして、これは世界的に大選擧區と小選擧區は實例がありますが、いわゆる新聞傳うるところのごとき中選擧區というようなものは、世界に例がないのであります。なおさらこういうものをつくれば適當であるかないかということを考えるにつきましては、非常に緻密な、合理的な研究を必要とすると思うのでありまして輕々に決すべき問題ではない、こう私どもは考えておるのであります。從つてこの選擧區というものは、いかなる必要と合理的根據に基いてできてきたものであるかというようなことを、やはり研究する必要があると思うのであります。これは歴史的にだんだん發達してきたものでありますから、世界における歴史、日本における歴史だけを考えましても、二時間や三時間は御説明申し上げる材料があるのでありますが、これもあまりに煩わしくなりますから、ごくあつさりと要點だけをかいつまんで申し上げまするならば、小選擧區の制度の長所は一般的に申しましても政黨の數が少ければ勝敗の決がはつきりあらわれまして、政局を安定させるに役立つのであります。それから主義、政策、政綱等を隅々まで行渡らせることができるのであります。それから選擧の取締ということも比較的周密に行うことができるのであります。また公正に行われるならば選擧費用が少くてすむのであります。そういう特長があることは申し上げるまでもないのであります。敗戰後のわが國の現状におきまして、何よりも人々の求めることが政局の安定である。その意味においては小選擧區制度というものがすこぶる魅力があるのであります。しかし今直ちにこの制度を採用して、所期の目的を達し得るかというに、大いに疑問なきを得ないのであります。わが國ではまだ政黨の整理がそこまで行われておらないのであります。新聞紙の傳うるところによれば今明日中に政黨の整理が行われるそうでありまするが、それでもまだ決して日本の政黨は整理がそこまでいつておらない。出る結果は相當複雜であると私どもは見ておるのでありまして、現状とあまり遠くはないのではないかと憂えるのであります。小選擧區は政黨を整理する傾向があると申しまするがたしかにその一面はあるのであります。われわれは大いにそれに期待するのでありまするが、イギリスのような政治意識の進んだ國民にありましてもそしてイギリスは御承知のごとく一人一區の小選擧區でありまするが、資本主義か社會主義かというような爭いにおきまして、選擧民が候補者の如何を問わず、主義政權にだけ着眼して投票するかというに、必ずしもそうでないのであります。可能の程度まで候補者の人格というものを選ぶのであります。そこがやはり長所であり短所でありまするが、イギリスなどではもう純然たる政見だけで候補者を選ぶというふうに傳える人がありますが、私はイギリスにおつて選擧の實際を見てまいりましたから、責任をもつて申し上げることができるのでありまするが、それは必ずしも主義政見だけに着眼せずして、やはり石川五右衞門のような男でないかというような點に着眼して人物というものをよく見て投票していることは、まことに敬服するに足りるものがあるのであります。選擧民の九割まではプロレタリヤであり、かつ自由主義に愛憎をつかして、社會主義に心をよせておりながらも、チヤーチルの出てきた選擧區において、チヤーチル以上の人物を勞働黨が立てない限りやはりこのチヤーチルが勝つのであります。フランスは、最近の選擧制度の正確なことは、材料が到達しておりませんからわかりません。變化があつたかもしれませんが、このわれわれの觀念で、小選擧區と中選擧區を合わせ用いている形である。政局がなかなか安定しないのは、國民の政治意識が相當に進んでゐるにもかかわらず—…もちろんこの國民の政治意識、主義政見も政黨の數のように分裂している事實も否定することはできないのでありますが、投票の場合に、候補者の人物を見るという傾向があるからであります。共産黨は比較的はつきりしているということでありますが、社會主義の選擧人でも、社會黨の候補者がダラ幹だというような噂がありますと、しつかりした共和黨やカソリツク黨の候補者に投票するものも多いと言われているのであります。しかし何といつてもイギリスとアメリカでは大體二大政黨の對立でありますから、小選擧區制度はうまくいつていると言われ得るのであります。どちらかの黨が一人だけ多數を占めましても、政局は安定するのであります。日本の現状では輕々に斷言はできませんが、小選擧區制を施行して、われわれのような無産政黨が勝ち得るためには、やはり到るところの選擧區で、保守政黨の立てる人物と見劣りのしない人物を立てることが必要だということをわれわれは感じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=61
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062・岩本信行
○岩本委員長 鈴木君に申し上げます。數囘にわたつて御注意申し上げましたにもかかわらず、鈴木君の發言は議事の進行を阻害するものと認めまして、發言を禁止いたします。
〔「異議あり」「異議なし」と呼び、議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=62
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063・鈴木義男
○鈴木(義)委員(續) 承服できません。言論の自由の府におきまして、よほど重大なることのない限り、議員の言論を止むることはできません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=63
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064・岩本信行
○岩本委員長 松原一彦君
〔「議事進行について……」「議長横暴だ」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=64
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065・鈴木義男
○鈴木(義)委員 わが國民の政治意識の状態では、選擧區が小さくなればなるほど……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=65
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066・岩本信行
○岩本委員長 鈴木君、發言を禁止いたしました。松原一彦君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=66
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067・鈴木義男
○鈴木(義)委員 禁止する權能はない。いかなる條文によるのか、その法的根據を示せ。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=67
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068・岩本信行
○岩本委員長 委員長の權限において禁止しました。(發言する者多し)暫時休憩いたします。
午後十一時十六分休憩
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午後十一時二十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=68
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069・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。本日はこの程度に止めまして明日は午前十時より開會いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後十一時二十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00419470322&spkNum=69
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