1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)(第一七號)
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昭和二十二年三月二十三日(日曜日)
午後一時四十九分開議
出席委員
委員長 岩本信行君
理事 小澤佐重喜君 理事 中村高一君
神田博君 細田忠治郎君
廣川弘禪君 山村新治郎君
生方大吉君 西山冨佐太君
井上東治郎君 大久保傳藏君
山下春江君 鈴木義男君
佐竹晴記君 淺沼稻次郎君
大島多藏君 松原一彦君
石崎千松君
同日委員小野瀬忠兵衞君、椎熊三郎君日比野民平君、青木泰助君、小川半治君及び稻本早苗君辭任につきその補闕として稻本早苗君、西山冨佐太君、井上東治郎君、小川半次君、生方大吉君及び大久保傳藏君を議長にをいて選定した。
出席政府委員
内務政務次官 林連君
内務次官 齋藤昇君
内務事務官 林敬三君
内務事務官 小林與三次君
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本日の會議に付した議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=0
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001・岩本信行
○岩本委員長 前日に引續きまして會議を開きます。中村君より議事進行について發言を求められておりますのでこれを許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=1
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002・中村高一
○中村(高)委員 昨日本委員會におきまして、わが黨の同僚議員でありまする鈴木義男君が、黨を代表いたしまして討論をいたしておつたのでありまするが、この鈴木委員の討論に對しまして、委員長はその發言を中止せられたのであります。昨日は時間も十二時に切迫いたしておつたときでありましてしかも委員長の鈴木君に對しまするところの發言の中止に對して、鈴木君は異議を唱えておつたのであります。その委員長の發言はきわめて不當な發言である。鈴木委員の討論は法規に從つた討論でありまして、その間においてわれわれは、議員法の規定あるいは先例というようなものに、何ら該當する點がないことを認めておるのであります。鈴木委員もなるほどいろいろの文章を引用いたしておりましたことは事實でありまするけれども、しかし決して鈴木委員の發言は委員長が注意をせられまするような議事の規則に違反しあるいは妨害をするというようなことは何らなく、演説の途中において文章を引用いたしておつたとわれわれは信ずるのであります。しかるにこれに對しまして、委員長は鈴木委員の發言が何かに牴觸するということから停止を命じたのでありまするけれども、どういう根據によつて鈴木委員が討論をいたしてをる最中これを停止いたしたのか。議員の發言に對しましては、その言論を尊重すべきことは當然でありまして、盡すべき言論を封鎖するというようなことで、議員としての職責を果すことのできないことは、今さら説明するまでもないところであります。しかるに昨日は、いかなる根據に基いて鈴木委員の發言を停止するかというようなことを、明示せずに鈴木君の發言を停止したために、その根據もわからず、鈴木委員も承服しないままにきのうの委員會は散會をしておるのであります。從つて本委員會の進行上、これはきわめて重要なことと信じまするので、鈴木委員の發言を停止いたしましたことは、いかなる根據によるか。議院法の規定のどこにあるか。あるいは先例のどういうところにあるか。明確にこの點を説明をして、速記録に明確にいたしてもらいたい。これが私の委員長に對しましての議事進行上の質問をいたす次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=2
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003・岩本信行
○岩本委員長 お答えをいたします。鈴木君は再三御注意申し上げましたが注意の趣旨に副われませんので、いたずらに議事の進行を阻害するものと認めまして、先例も多々ありますので、これを中止いたした次第であります。先例は隨所にあると存じますが、一々これをただいま調べておりませんからどの例とは申しませんけれども、そういう(發言する者多し)そういう趣旨であつたことを御諒承願います。(發言する者多し)これより討論に入ります。松原一彦君。(發言する者多し)松原一彦君。(發言する者多し)松原一彦君。(發言する者多し)お靜かに願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=3
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004・中村高一
○中村(高)委員 私の申し上げたのは議院法の第何條によるか。また先例でありまするならば、先例のどれに該當するか。先例彙纂もちやんとできておるのでありますから、あすこに事務の諸君がおりますから、ひとつそれは……。ただ單に先例がたくさんあつて、そのうちのどれかに當るというような不明確なことでなく、先例のうちのどれに當るということを、速記録の上に明確にいたしてもらいたいというので申したのでありますから、どうか………。決して私は今すぐ委員長にわからぬものを言えとは申し上げませんから……(發言する者多し)默つて……。默つて……。今おれが發言している——。あなたが本を見ないで、すぐどれに該當するということを今言うのほ無理だから、そこに下つて、暫時休憩して、それを調べて、どれに當るかということを調べて、速記録に載せてくれ。こういうことであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=4
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005・岩本信行
○岩本委員長 再びのお尋ねにお答えいたします。(發言する者多し)再びのお尋ねにお答えを申し上げます。どの條という問題を別にいたしましても、先例のあることと及び委員長の認識におきまして、進行を阻害するものと認めたから停止した次第であります。(發言する者多し)お靜かに願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=5
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006・中村高一
○中村(高)委員 今私が求めたのは、將來に殘ることでありますから、議員の、いやしくも議員の發言を停止するということは、議員の言論を尊重するということの趣旨からも、きわめて重大な關係があり、場合によつたならばあなたのここで發言をせられることが將來それが先例になるかもわからぬのでありますから、今までに先例があるならば、先例がたくさんある。あるのだから、そのうちのこれを、自分は先例として使つたということを言われるか。あるいは今までの先例とほ違つて委員長の認識に基いて、新たな發言を停止する場合を、自ら認識によつてきめたということを、ここに速記録に載せておく必要があるから、私は申し上げるのでありまするから、どうかひとつ、決してあなたに長い時間をどうするということではなく、ちよつと下つてあなたがこれを見ればわかる。私も持つており、あすこにもあるから、それだけで結構です。ひとつもむずかしいことを言つておるわけではないのですから、どれに當るということで、結構です。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=6
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007・岩本信行
○岩本委員長 先ほどお答えした通りであります。(「進行々々」と呼ぶ者あり)進行いたします。松原一彦君。發言ありませんか。發言ありませんか。松原君どうぞどうぞ。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=7
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008・松原一彦
○松原委員 私の發言中にも、今のような理由なくして委員長の認識だけで發言の中止をされては困ります。ただいまの中村君の要求はきわめて至當と思いまするから、それに對する正しい……。(發言する者多く、聽取不能)私も不安であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=8
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009・岩本信行
○岩本委員長 松原君にお答えいたします。松原君のお話中に、中止をするや否やということは未知數の問題でありまするが、する場合はする場合においていたしますから、さよう御諒承を願います。
〔「委員長が速記録に載せる材料をつくるまでの間、暫時休憩をせられんことを望みます」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=9
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010・岩本信行
○岩本委員長 議事を進行いたします。松原一彦君。
〔「横暴だ。フアツシヨだ」「暫時休憩の動議を提出したのでありますから、この發言の採決をしてください」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=10
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011・岩本信行
○岩本委員長 發言は許しておりません。(發言する者多し)發言は許しておりません。
〔「今僕に許したから僕が發言したのだ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=11
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012・岩本信行
○岩本委員長 それに答えておるのであります。答えたので終りであります。松原一彦君。
〔「暫時休憩の動議を提出したんだ」「その發言を許可していないのだ」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=12
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013・岩本信行
○岩本委員長 靜肅に願います。靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=13
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014・松原一彦
○松原委員 私も腑におちぬものを感じます。……
〔鈴木(義)委員「本員の一身上に關する發言はどうしたんですか」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=14
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015・岩本信行
○岩本委員長 それは許可いたしません。
〔發言する者多く、議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=15
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016・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。松原君——松原君。御發言はありませんか。〔離席する者、發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=16
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017・松原一彦
○松原委員 ……(聽取不能)
〔「委員長もつと整理したらいいじやないか」「少休してやれ」「委員長休憩しないか」「暫時休憩しろ」「進行々々」と呼び、離席する者あり。〕
〔松原委員「委員長休憩を求めます。私も實は議場の整理を待つてゆつくり申し上げたいから、この際一應御休憩の上に……。」と呼ぶ。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=17
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018・岩本信行
○岩本委員長 まだ發言を許しておりませんから……。委員長より申し上げます。先ほど私の申し上げたところで私ほいいと存じておりますけれども、特に類例を示せというお話もおありのようでありますから、一つの例を申し上げておきます。第五十囘議會に、粕谷義三議長が倉元要一君の演説に對しまして中止を命じた實例を申し上げておきます。
〔それは二十年前の話だ」「五十囘議會だとさ、よく聽けよ」と呼びその他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=18
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019・岩本信行
○岩本委員長 これより議事を進めます。(「その根據はないじやないか、根據はどこにあるのだ。」と呼ぶ者あり)根據はそのときの、私が引用いたしました例をあとで御覽を願いたいと思います。
〔「あととは何だ」「根據はないじやないか」「第何條のどこにある」と呼び、離席する者多く議場騷然。「委員長休憩しなさい」「休憩してやれ」と呼びその他發言する者多し。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=19
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020・岩本信行
○岩本委員長 申し上げます。先ほど五十囘議會の先例をお話し申し上げましたが、その先例はもちろんこれに適用して申し上げておるわけであります。ほかに(「その根據は」と呼ぶ者あり)根據を申し上げます。議院法の第八十七條、衆議院規則第二十九條、同じく第百十二條、同じく第百十六條等を混合した次第であります。(「どれへはいるのですか」と呼ぶ者あり)どれをも含んでおります。次に移ります。松原一彦君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=20
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021・松原一彦
○松原委員 私は國民協同黨を代表しまして、修正動議を提出するものであります。その修正動議は衆議院議員選擧法第九十六條を削除するという動議でございます。その理由を申し述べるに先立ちまして、私はこの委員會の經過に對しましてまことに不明朗、不愉快なるものを感ずる。これに對しまする私の率直なる所見を申し上げましてこれを前提としてこの修正動議の理由を説明いたしたいと思うものであります。私はこの委員會に出まして、先般來の樣子を見ておりますると、まことに理不盡なるものがあるということを感ずるのであります。昨日の懇談會の際におきましても、私は政治情勢その他の複雜なる今日の關係におきましては、あるいは無理をもせねばならないものがあるかもしれないが、そういうものがあるならば、納得のいくまでわれわれに話をして貰いたい。實は私はつんぼさじきにおりますので詳しいことは知りません。しかしいろいろの事由があるならば祕密會を開いてもよろしい、懇談會を開いてもよろしい、速記を停止してもよろしいから、われわれの腹の底の納得のゆくものをば示されるならば、この法規のごときは、概括してはいかにも一つの關連事項によるところの法規であり、また手續法によるものでありまするから、だいたいにおいては賛意を表せらるべき簡單なる法規の改正であると信ずるのであります。それが何ゆえにかくのごとく紛糾してまいつたかその紛糾してまいりましたところの原因に、私はいかにも心得がたきものがあることをば痛感し、また非常に遺憾に思うものであります。と申しまするのは、坊間傳えるところによりまするとこの改正案に名を藉りて、これに便乘して、選擧法の別表等の重大なる修正がたくらまれておるという事實を頻りに傳えておるのであります。それが紛糾の原因となつて、今日のごとく議事が進行いたさないと信ずるものであります。もし傳えられておる通りであるとするならば、私はこれはゆゆしき大事であると思います。選擧はわが國民に與えられたるところの、昨日鈴木代議士から懇々數時間にわたつて述べられましたように、長い歴史をもつたところの重大なる國民の權利であり、しかも過去の選擧法のごときものでなく過去の議會の運營のごときものでなく新しい平和なる民主主義の政治をば確立すべき、これがもつとも大切なるところの根本の手段でありまして、ここに道が明るく、明らかに、正しく開いておらなければ、この新しい時代は正しく、つくり上げらるべきものではない。民主主義はまず選擧から始まると私は常に感じておるものであります。その選擧の大道は、ある種の政治的意圖等によつて歪曲せられては斷じてならないものだと私は信ずるのであります。(拍手)好ましからざる思想があらうとも、しかしそれがある以上は、これをば當然議會の中に反映せしめねばならないのであります。ある思想を抑壓し、ある思想を毛ぎらいして、その種のものは議會に頭を上げしめないといつたような、もし不純なる意圖が立法の上にあるとしたならば、それこそ國を誤るところの根本の反逆的思想であると言わなくてはならぬのであります。(拍手)過去のことを申すまでもなく、われわれのゆがめられたる長い間の議會は、かくの如きそのときどきの爲政者の政治的意圖からして、小選擧區となりあるいは大選擧區となり、またさらに中選擧區に戻る行きつ戻りつしておるのでありまして、ここには一長一短あつてなかなか容易に決せられないものがありますけれどもが、議會政治の本義は、全國民のすべてが包藏するところの主張主義精神をば遺憾なく發表せられるように大道を開けることが、最も大切なことと思います。從つて選擧法規をばつくりまする場合におきましては、いかにすれば全國民のこの主義主張、希望するものが正しく反映するかをば、根本に置いて考えなければならないのであります。殊に今日は刑務所の中におつた人までをも、思想犯をも解放して、明るく朗らかなる議會政治によつて、この新しい祖國の文化的、民主的改造の上に、自由なる意見の發表をさせようと、連合軍の側においても着々歩を進めておられることは、諸君のとくに周知しておられる通りであります。もしこれをば抑壓して議會に言論の封鎖を行いあるいはある種の思想の代表の出ることをば阻止するような態度がありましたならばそれこそやがて地下潜行運動となり、議會外における政治運動となつて、せつかく大切な開かれたる議會主義の政治が歪曲せられ非常に危險に瀕するおそれを私は痛感するものであります。(拍手)ある思想はあるように展開せしむべきものであります。それをばこのガラスの中のような議場に盛り上げてそうして自由に討議懇談しつつ、國民が練りに練つて民意を政治の上に具現する、かようにしなければならない。しかしながらそれは特例もありましよう國の現實に則應して、たとえば今日極右の思想が許されざるごとき、特殊のこともありまするから、私はそれを是認するにやぶさかなるものではございませんけれども、合法的な今日の政黨、それが抑壓せらるべき何らの理由はないのみならず、さような意圖の上に、國民の現にたくさんの者が包藏しておるところの主義主張をば、選擧の際に現わさないようなことをした場合の危險、これは世界に幾多先例があるのであります。私どもは議會政治というものは、まことに能率のあがらぬてきぱきいかない政治だと思います。しかしながらこれを專制的な政治に比べますると、たとえ能率はあがらずとも、これがすなわち一つの安全辨であつて、天下公知のガラス箱の中で、すべての者が語り合うところに、不穩なる潜行的な、あるいは暴力的な、革命的なものを阻止するところの大きな役割を果すのであつて、ここに昔から申しておりますように、專制政治であつてはならない。能率はあがつてもあるいは一時善政が行われても、長い歴史の上から專制ではいけないという結論が出ておりまするので、政治形體として議會政治をとる以上は、この原則に從つてあるものをあるように反映せしむる。この意味におきまして、私は社會黨から修正動議が出されるかに聞いておりますところの、全國民の思想傾向、主張をば、殘りなく議會に反映せしめる比例代表制度というものを、私もかねがね希望しておるものでありまするがそれは今申し上げません。こういう意味におきまして今囘議會の閉會も迫り新しい憲法も行われようとする。やがて性格の變つた國會が生れようとするそのせつぱつまつた急速の場合に、どうにも腑に落ちない、合點のいかないような意圖をもつたと思われる修正案が、この簡單なる改正案に便乘して出てまいるというところに、この紛糾があつたのであつて、これをこのままに數で押切つてしまつて、そういう意圖がここに形の上に現わされるようになつたとしたならば、私は國民の非常な大きな不安を買い、そうしてまた將來おびただしい弊害を殘すものであるとして心配にたえないのであります。でありまするからこそ私は昨日も申しましたように、これを熟議懇談の上で、最善の方途を講じて、何か妥結の途はないか。理由がわかればわれわれは納得する。納得する以上はいかなる途も講じられる。いたづらに重大法案を目の前においてこういうことで日に夜を次いで騒ぐということは、決しておもしろいことではない。さらでだにこの議會政治、議員の行動に對する世間の非難がおびただしく集まりつつある際に、かような現象の現われますることは、われわれは極力愼まなければならないと思つて實は苦勞をして、きようのきようまで與黨の諸君にも御相談をして、何とか途を開けないかということを申し上げている次第であります。しかしながらその經過を見ますると、舊態依然たり。ただ押切る、それはすなわち暴力であります。尾崎先生がこの間本會議の議場において演説をせられ、諸君は拍手をもつてこれに賛成しておいでになるのであります。今日は黨派爭いをするときではない。國の危機ではないか。この國の危機に際しては黨派も解け。そうして小異を捨てろ。大異も捨てろ。熟議懇談によつて救國の對策を講ぜよと、尾崎先生はあの老體を推してわれわれに教えられつつあるのであります。かような際にわれわれがいくら希望しても容れてくれず、懇談會にもいでず、熟議もせず、理不盡にも數をもつて押切ろうとするからこそ、かような紛糾が起りますので、これはどうしてもわれわれは阻止しなければならないと思う。法において許す限り、私どもはかくのごとき亂暴なる理不盡なる態度によつて選擧法の別表等が改正せられ、その選擧の方法等に斧鉞を加えらるることをば、全力をあげて阻止しなければならないと固く信じます。選擧の大道にもしゆるみがついたならば、それはまことに重大なる遺憾事であります。民主政治を阻止するものは、歪曲せられたる數の暴力であることを私は主張するのであります。道理は一つであります。愛國の至誠、そうして民主主義の選擧のあり方、今後われわれが負擔しなければならない政治の責任から考えましても、私は今この際に最も弊害の多い小さな選擧區において選擧が行われるといつたようなことは、斷じて繰返してはならないと信ずるあまり、このことを申し上げるのであります。
次に私はこの修正動議の理由を説明申し上げたいと思う。第九十六條「何人ト雖學校ノ兒童、生徒及學生ニシテ年齡二十年未滿ノモノニ對スル特殊ノ關係アル地位ヲ利用シテ選擧運動ヲ爲スコトヲ得ズ」という一項を削除いたしたいのであります。これは私はいつかの機會にぜひ私の意見を申し述べて御批判を得たいという機會を待つておつたのでありますが、さいわいにこの委員たることを得まして、これを申し上げる機會を得ましたことを、私は非常に仕合せに思うものであります。お斷り申し上げておきますが、私も教育代表議員と言われる者の一人であります。しかしながら私は教員ではありません。三十數年前教員をしたことがあります。ただ教育界から主たる支持を受けて當選した者でありますから、やはり教育代表議員の一人に數えられておりますが、學校の先生ではありません。私は生徒を惡用した覺えはまつたくございません。しかしながらかくのごときことがこの法規に出まする以上は、私はどうしてもこの機會に全教育者のために申し上げざるを得ないものがあるのであります。その理由をここに申し上げたいと思う。この法規を正面から見ますると、滿二十歳以下の學校の兒童及び生徒、學生を對象とし、そうしてこれを選擧運動に利用することはできないというのでありまするからきわめて簡單なもののように見えます。また簡單なものであります。しかしこの法規の裏に包藏しておるものは學校教員はその任地において選擧運動をしてはならないというところの意圖が豐富に含まれておると私は信ずるものであります。かつて自由黨の某氏は本會議の席上において内務大臣に、教育者はその任地においては選擧運動をすることはできないという法律を制定する用意はないかという質問を發せられております。それと私は同じ意味をここにもつておるものであることをば認めざるを得ませんのであります。もちろん國民學校の學童を選擧に惡用するごとき、まことに許すべからざることであります。その點につきましては私は同感であります。常識的に考えましても、學校の兒重を選擧に惡用するごときは許すべきことではございません。しかしこれはきわめて明らかなる常識であります。が、さらに生徒とあります。學生とあります。今日の六・三・三・四という新しい制度において行われまする學制におきましては、十八歳にして高等學校を終り、大學の過程に進むのであります。順調に行つて滿十八歳、遲れていけば十九歳以上にして、大學に行くのでありますが、その大學の學生、滿二十歳に近いところの大學の學生を、教授がこれをば政治の演習としても、自分の選擧の場合に演説に使つて、一體何が惡いのであろうか。どうして惡いか、各黨の部屋を見れば、學生の辯士がすべて應援に來るようなる状況がいろいろはつてあるのを、私は知つておるのであります。おそらく今囘の選擧には、各大學の雄辯部の學生らが多數やつてこらるるでありましよう。それは候補者みずからの地位を利用してやるのであるかどうか知りませんけれども、もし教授がこれに當つたらどうするか。關係者がこれに當つたらどうするか。どうして一體大學の金ボタンの制服をつけたる二十歳末滿の學生が、政治の選擧の運動に從事していけないのであるか。私はその理由を知るに苦しむのであります。これは當然民主主義の國におきましては政治はすなわち生活であつて、生活がすなわち選擧に反映するものである以上、學生の時代からかくのごときことは、十分に體驗しておかなければならない必要もまたあるのであります。もしこの法規を峻嚴に實行するとしましたならば、これは非常に大きな過失的な、思わざるところの犯罪者をつくるおそれも少くございません。また兒童を利用して選擧運動に投票を集めたという事實があり、教育出身の代議士の中には、さような不都合な者があつたという聲が、新聞等にもたくさん出ましたので、私はまことに遺憾に思いまして、早速内務省の警保局に參つて、全國から集まつておりまするこの種の記録を、全部精讀いたしました。もちろんその中には、異例として、私どもからも顰蹙すべきものをいくつかは發見いたしております。しかしこれがすべての教育者の運動ではなかつたと私は信じます。そういうように既に私どもは陋劣な、地位を利用したる手段をもつて、學童を惡用したとは、固く信じておりません。のみならずわれわれの仲間では、誰も申合せてはおりません。あの當時の教育者の進出には、決して脈絡はなかつたのであります。あれは自然發生的なる運動でありまして、申合せはなかつたが、どこでもこれに對しましては、嚴重なる警戒が發せられておる。私どものところにも、當時の記録はみな殘つております。斷じて學童を利用してはならない。また教授用具あるいは學用品等、學校のものを利用してはならない。ポスターを書くにも、學校では書かないようにしろ、教授時間中には斷じて選擧運動等に出歩いてはならないということをば、幾たびとなく私どもは警告を發してまいつたのであります。しかし私の選擧區である大分縣におきましても、一、二この種の非難が起つてまいりました。その時分にある女教師が、泣いて私に訴えたことがあるのであります。この女教師は、熱心に私を支持してくれるところの一人でありますが、この人が自分の家で、紙を買つてきて、私が一生懸命に數枚のビラを書きました。どうぞ先生が當選せられるようにと念を入れてビラを書きました。のりバケツをさげて、のりはけを持つて、このビラを夕方街に出て張つてまわろうとしますると、そこに自分の受持の子供が數名やつてきて、先生、何をしなさるかと言う。いや、選擧のビラを張るのだ。手傳つてあげましよう。いや、あなた方に手傳つてもらつてはならないのだから、あなた方に手傳つてもらわないよと言うても、聞かないのです。先生、バケツを持つてあげます。のりをつけてあげます。あの電柱がよろしい。高い所がいいから、梯子を持つてきてあげますと、あとになり、先になり、ついてまわつて、どうにもしようがないのです。教育者の動くところには、子供がついてまわる。これが實際なのであります。私は斷りました。するな、やるなと斷りましたけれども、ついてまわつてくれば、實はいたし方がないのであります。先生、これでも犯罪になりますかと、女の先生は泣いて私に訴えたのであります。どうして一體かような行爲までをも、犯罪として取締らねばならないのであろうか。目の敵にして、教育者は子供を使つたと世間が非難し、遂にこれを取上げて、當然誰でもわかる、常識的な、學童を利用してはいかぬというようなことを、法規の上に麗々しく規定せられなければならないのであろうかと、私は長嘆息せざるを得ないのであります。教育者というものをば、そうまでに卑しめて、輕んじてみらるるのであろうか。實は昨年の選擧には、異數だと思われるほどに、教育界から當選者を出しておるのであります。もちろん出さない府縣もたくさんありまするが、しかしこれには長い歴史があり、理由があるのであります。皆樣も御承知の通りに、明治初年には、教育者というものは、一切政治に關與することが許されておりません。許されておらないばかりではないのであります。政談演説をも聽くことを禁止せられておつたのであります。教育者と政治というものは、固く切り離されておりました。政談演説などは、學校の先生は顔を隱さなければ入場することができなかつたのであります。また選擧權をも與えておらなかつたのであります。教育者と政治、それはまつたく違つた世界に置かれてあつたのであります。つい、ものは慣れるものでありまして、教育者は政治というものとは別な世界に住むもののごとき習慣が、おのずからつきまして、教育者は政治を語りません。政治に對する傍觀者であつたのであります。たまたま明治の末年に至つて選擧權も與えられ、ようやく人並みの選擧をすることができるようにはなりましたけれども、學校の先生の投票は、實に大きな苦勞のもとに置かれたところの負擔にしか過ぎなかつた事實があります。私の縣のごときはずいぶん政爭の激しい所でありまして、政友會、民政黨等が熾烈な對抗をいたしておりまするために、村の中には色のつかない者は一人もございません。出會えばお前はどつちかとこう言う、すべての人間は政友會にあらざれば民政黨というふうにはつきりと分れて、冠婚葬祭をも共にしない。お宮のお祭りをも一緒にやらない。芝居を別に興行するというような所までもできるほどにこの政爭は苛烈になつて、對抗意識が強くなつてまいつておつたのであります。こうなりますると、せつかく與えられましたるところの選擧権も、學校の先生には容易に行使することができません。一黨に偏れば、他の黨からは實にあらゆる迫害がまいつたのであります。土地の有力者に背けば、たちまち縣廳にそれが傳わつて彼らは左遷せられるという、非常に悲慘な境遇に置かれた幾多の事實を、私はなまなましくこの眼で見、また知つておるのであります。かような政爭のもとにおかれましたる教育者たちは投票はせぬに限るといつたような氣持になつてまいりまして、演説などは聽くもんじやない。どつちの演説を聽いても睨まれる。聽かないなら双方聽かないがよろしい。うつかり演説など聽くというと、すぐに色をつけて見られるおそれがあるからというので、教育者はついつい與えられた選擧權をも滿足に行使することができず、政治というものを逃避する形の上にやはり置かれざるを得なかつたのであります。たまたま私の知つた校長のごときは、投票を數えて、村の有力者が、二票だけ敵側の投票が多い、これは校長と教頭とがその投票をしたものであるに違いないとはつきり言い切つて、これが左遷をはかつたというようなことも、その當時の一つのエピソードとなつておるのであります。田舍の投票は實ははつきりわかるのであります。誰は誰と實によくわかります。こういうようなところから、長い間教育者は政界に對しては日の目を見ることができなかつたのであります。
その結果はどうなつたかは皆樣の御承知の通り、給料においては常に官吏の下に置かれ、非常な薄遇のもとに沈淪させられておつたのであります。從つてその負擔するところの重大なる國民教育は、常に追從であり、隸屬であり、すべては羊のごとく、お上の命令のままに、從順にこれを遵奉するほかにはない。遺憾ながら意氣地のない、非民主的な、無氣力な教育が、型のごとくにそこに行われざるを得ない有樣でございました。その結果がどうなつたか。かくのごときみずから信ずること能わず、ただお上の言うところに從つて教科書通りを、法の命ずるがままを從順に行う教育が、いかなる結果を招來したかは、この悲慘なる戰爭の起りに、誰一人これを阻止することができず、またかくのごとき敗戰の憂目をみる原因をつくつた教育的缺陷と言わないで何といたしましよう。いまさら顧みまして私どももその末班に連なる者として慚愧にたえないのでございまするがそれは骨を拔かれ、筋を失つたところの、當時の教育者たちの知らざる間に導かれておる境遇的結果であると、私は申さなければならないと思うのであります。それが今日の敗戰を體驗し、そうして新しい明るい民主主義の政治の實現によつて、檻の口が開き、扉が開いて、すべての教育者は新しい制度のもとに、教壇から議政壇上への直結の途が開かれたのであります。この喜びを御想像願いたいと私は思う。教育者はここに非常な喜びを感じたのであります。今まで冷い血が流れておつた體の中から、ほんとうに熱い血がたぎり上つたのであります。今こそわれわれは教育民主化運動の初陣に、われわれの代表が議會に送られねばならないと、この人たちが滿身の喜びと熱意とをもつて、いばらの垣根を開くために起ち上つた事實をば、どうか私は御想像を願いたいと思うのです。決して不純な意思ではない。しかしあまりに慘めな境遇におかれておりました教育者たちが、この新しい制度に解放せられた當時のその喜びから、せきを切つた流れのごとくに、選擧に對する意欲を燃やし立てて、どうあつてもわれわれの代表を議會に送りたいという熱意が燃え、乏しい——あの當時の乏しい財布から五十錢、一圓の醵金をして、そうして議員を、代表を議會に送ろうとしたというその事實に對して、私はまことに同情するものであります。私は私を支持してくれたがために言うのではありません。長い間のいばらの垣根を破つて、そうして世間からはややもすれば意氣地なしのように言われた、政治界へは縁のなかつた衆生、かのごとき教育者たちが、この選擧運動によつてわれわれの代表をかち得ようというのでありますから、いきおいそこには若干の行き過ぎもあつたことを私は認めます。しかしこれはこの當時の情勢からくるところの當然の結果でありまして、決して常態ではございません。さような無理をしてまでも、選擧をば歪曲してまでも、われわれは目的を達せなければならないものとは、おそらく教育者も感じなかつたでございましよう。さような昨年の選擧は、一つのある時期に起りましたところの、變態的な激情から生じたる熱意、それが集まつて違例の投票を一人の教育者に集中するといつたような結果をも生じたのでありますが、その一つの例をとりあげまして、教育者はその任地においては選擧運動をしてはならないといつたような、今日選擧權を極力擴大し、あらゆる刑餘の人にまで選擧權を與えようという時代に、制限する法規、すなわちこれを裏に含んだこの九十六條の條項のごときは、私は指導的地位にある教育者を、實は侮辱する法規であるとすらも感ずるものであります。私どもは教育者をして常識の高い、政治に對する識見のある、そしてほんとうに指導的地位の責任を自覺する、より高いものにまで向上せしめなければならないのであつて、これが一つの政治の、文化的民主主義の政治を實現する一番根底をなすものであると考え、教育優先の原則を議會においても決議をしてもらい機會あるごとにどうかして教育者の態度、その待遇、位置等の向上を今日まで願つてまいつたのでありますがその矢先にかくのごとき、たれが考えてもわかる、子供を利用してはならないという、常識でもわかることをば、法規の上に規定するのみならず、それがさらに生徒、學生にまで廣範圍に及んで、これを選擧運動に用いてはならないと、一項を規定しなければならない必要がどこにあるかと私は疑うのであります。私が削除を要求する理由は實にここにあるのであります。この法規が置かるることによつて、おそらく私は教育者は屈辱を感ずるであろうと思います。この法規がないことによつて、決して將來大きな弊害は生じないであろうということを、私は固く信じます。この意味におきまして私はこの修正動議をもつて、この一箇條の削除を要求したのであります。實は私どもは常にかように考えております。政治こそ最高の道徳でなければならない。政治が最高の道徳であるがゆえに、この最高の道徳を行うところの政治家は、私は實際萬人にすぐれたる最高の人格者であり、仰がるる道徳者でなければならないと思うのであります。その國民信頼の的となるべき、國民が自分らの生活の向上を要求する、その總代を選ぶこの選擧、最高の道徳であるべき政治を擔任する議員を選ぶ選擧が、もしやみの中で行われたり、不道徳的な行爲によつて實行せられるとしたならば、はたして選擧によつて代議士を選出する目的は達せらるるでありましようか。私しみじみこの議會に參りまして見聞いたしまする中にも、實は遺憾なものをおびただしく感じます。今囘の選擧にあたりましても、解散を目の前においてよく聞く言葉は、選擧費用が非常に多額に要るということであります。五萬や十萬は問題にしておられない人がある。十萬、二十萬、いやいや三十萬はあたりまえで、五十萬、百萬要るという聲すらも私は耳にいたしまして、私は實は唖然といたしておるのであります。選擧に金のかかる間は、また政治家がやみ金を使つて代議士に當選する間は、斷じてやみの選擧は拔けないのであります。(拍手)やみの選擧は絶えないのであります。それを誇り顔に、得々と大きな金を使つたことをば人の前で口ばしるものがある。私は恥知らずであると思うのであります。政治こそほんとうのガラス箱の中にはいつたところの明るいものであつて、しかも最も大事な道徳的なものでありまして、萬民ことごとくがこれに信頼するものでなければならないのに選擧に金をかける。その金が法定の金などは鼻くそほどにも思つておらない。その數倍數十倍のやみ金をかけて、そうしてあらゆる裏の手段を用いて投票をかき集めるといつたようなことが行われる限りにおいて、私は世界に誓うところの平和的民主主義の國政は、斷じてあがらないことをば遺憾ながら嘆かざるを得ないのであります。一體この今囘の改正法の中にも、私はまことに腑に落ちざるものがあるのであります。それは第百條の二を削るということがあります。第百條の二とは、當選後における禮状、挨拶等の行爲を、今日までは自筆によるところの若干少數のものは許されるが、あとは禁ぜられておつたのであります。今囘はこの條項が削除せられておるのであります。そうなりますというと、今度の臨時特別の、あの本年限りの法律ではできませんけれどもが、原則としましては當選後に數萬枚の禮状を發することもでき得ることになつたのであります。選擧はどこまでも自由でなくてはいけません。極力自由であり、開放的なものでありなんら裏も表もないものでなくてはならないのが原則でありますから、やりたい人は禮状を出し、當選の挨拶をいたすことをば禁止する理由はないと思いまするので、私はこの點には觸れたくないのでありますが、しかし私はこの思想の中には、まことに困つたものがあるということを感ずるのであります。一體當選御禮とは何かと申したいのであります。昨日鈴木議員が縷縷として述べられましたように、選擧は一つの公法的な公務であつて、また國民は自分らの代表者を出すところの權利と同時に義務をもつておるものであります。候補者は、なりたいからなつたのじやないのであります。どうか出てもらいたいという人をば、有權者が總代として選ぶのであるということは尾崎先生がたびたび繰返しておいでになる。中にはいやな人もあつてしかるべきものであります。從つて法規の上にはみずから立候補せざるものをば推薦屆出をもつて行つていいのであります。本人が好まなくとも、適材であり、適能の人であるならば、有權者の總意をもつてこの人に出てもらうという決意をし、各人が醵金して、そうして各人が葉書を出して推薦状を出して、本人知らざるうちに當選することが、實は私は選擧の本體だと思つておる。私自分のことを申し上げたくはございませんけれどもが、私ども昨年の選擧のごときは、實は私選擧費用は一文も負擔しておりません。私はただ最後に候補者に選ばれただけであつて、用意は既に教育者自身が集まつて、一人五十錢、一圓のわずかな金を集めて數千圓、わずかです、一萬圓に足らぬ數千圓の金を集めて、そうして自分らが十萬以上の葉書をば、自筆でもつて書いて推薦状を出すという約束をして、そうして候補者を探して、實は私はそこにまつりあげられた一人であつて、五囘まで私は辭退をして、やむを得ず引受けたものであるのであります。從つて私は引受ける條件として、私は貧乏人、選擧運動の費用はもちません。それでよろしいか。よろしい。私は頭を下げて一票下さいとは申しません。それでよろしいか。よろしいと言う。たまたま私は病氣をして寢ておりましたが、出てこなくてもよろしい。選擧はわれわれがする。先生は寢ておれというので、私は半月間寢ておつたのであります。選擧は有權者がするものであつて決してお頼み申して一票もらうべきものではないと私は思う。私のような識見足らざる、政治を知らない者が誤つて出てまいりましたので、私は衷心みずから恥じてはおりますけれども、それは有權者の意思であつて私の意思ではないのであります。一體當選御禮とは何か。私が昔から苦々しく思うものはこの富選御禮の文字であります。何の御禮、誰にするのか。當選御禮は有權者が候補者に向つて言うのであつて出していただいたからまことにありがたいといつたような報償的な意味で當選御禮などと書くことは、私は非見識きわまるものだとかねて思つているのであります。尾崎先生がいつ當選御禮と出されたでしよう。當選に對する挨拶行爲を犬養先生がいつおやりになつたか。大隈候が、あるいは加藤高明先生が、島田三郎氏が、われわれの大先達であるところの一流の政治家たちが、いつ當選御禮の挨拶を出されたか。私は寡聞にして聞いたことがないのであります。自分のことを申し上げてはなはだ恐縮でありますが、私が當選しましたときに、村の人たちが大勢玄關にきまして、破れ疊の上にすわつて、私に喜びの挨拶をした。おめでとうございましたと言つてくれましたが、そのうちにただ一人老人がかしこまつてまことに御苦勞樣でございます。御迷惑でございましようと言つてくれましたときに、それがほんとうの挨拶だとしみじみ感じたのでございます。お年寄が私に代つて出て下さる、まことに御苦勞樣でございます御迷惑でございましようが、とにかくよろしくお願い申しますと、平身低頭してまいつたのであります。私はおそらく勞働關係者の中にはこういう方々がたくさんあるだろうと思う。御苦勞だが君出てくれたまえ、頼みますという純情な投票が勞働關係の中にはたくさんあると思うしかしどうも一般的には恩惠的を投票である。おれが投票してやつたのにあれは挨拶もせぬ、こういうことが長い間の習慣となつていると思います。日本も實に生れ變つたのであります。各人がおのおの自己の尊嚴に目ざめて、自分自身を最高の尊嚴の上に置き、新憲法の精神に副うてこの選擧が行われるとしますならば、從來のごとき選擧が恩惠的なものであつて、候補者の頭の下る程度に應じ、あるいは一種の暗默の報いを豫期して投ぜられるようなものであつては斷じてならない。われわれ自身こそこの選擧のたびごとに政治教育を行う。政治教育とは選擧教育であります。選擧教育によつて政治が初めて具現せらるるのでありまするから、こういう意味からも、私どもは選擧に對して、壇上から叩頭百拜して一票くれろというような卑屈な態度に出ることをば避けたいと思うものであります。こうして考えてまいりました時分に、今囘第百條の二を削除して再び當選御禮のビラが街中に氾濫する。思い起します。數年前こういう行爲が許されていました時分に、自動車のわきに當選御禮の幕を張つて、はやしまで入れてまわつた者を私は現に見ております。しかもある一例は、さあ當選だというという聲に非常に躍り上つて、數臺の自動車に當選御禮の札を張つて、東京の市内をまわつているうちに、最後の結果は落選であつて、候補者は遂にいくところがなくて箱根に逃げた(拍手)というような、一つの氣の毒な實例をも見聞いたしているのであります。當選御禮は候補者の側の言うべきものではない。それは當然有權者の側で言うべき言葉であると思いますとともに、この條項が削除せられなければならぬ。今日紙饑饉で困つているときに、候補者の方から澤山の葉書が濫發せられることがありましては、まことに困つたことになるのであります。金のかかるのがおそろしいから、實は有爲の士が立候補しないのであります。學者層その他志のある人々が立候補をおそれるのは、金のかかることと頭を下げなければならないことが、一番の苦になるからであります。頭を下げて一般有權者におもねらなければならないということが苦になるあまりに、志ある有能の士が實は議會に出てこないという缺點のあることは、皆さんも御承知の通りと思います。私は實は今の議會には、はなはだ御無禮ですが、失望している者の一人であります。しかし長く失望は續けぬつもりであります。おそらくこれから毎年解散がありましよう。解散のあるたびごとに私は議員は向上し一般國民は政治教育の度を高めると信じております。この選擧のあるたびに國民は政策批判の識見を養い、候補者の演説によつて啓蒙せらるるところがきわめて大きい。非常に大きな教育力が、この選擧によつて發揮せられるのでありますから、日本を洗い直すためには、また日本の政界を本當に向上せしむるためには、少くとも五六囘以上の解散が毎年續けて行われねばならないと思つております。これが行われて初めて議會もだんだんとほんものになつていく。そして舊態依然たる言論を抑壓したり、あるいは數によつて横暴をきわめるといつたようなものがなくなつてくる(拍手)道理によつてものをきめる。筋道に從つて事を運ぶ。公明正大に國民の前に訴える。かような政治はこの選擧の向上發達にまつほかにはないのであります。しかし殘念ながら解散は非常に大きな苦になる問題であります。何がゆえか。それは金がかかるからである。傳えるところによれば今囘の選擧には數億の金がかかるとすらも言われております。また選擧によつて食つぶされるところのやみ米が數千石でありますかよく記憶にありませんけれども、おびただしい米が食つぶされるとも言つております。そういうような、法にも許されなければ、道にも許されないところの不法なものが、選擧に附隨する最も重大なる條件である限り、解散は頻頻と行わるることができないのであります。どうかして解散を囘避せんがために、あらゆる妥協苟合が行われる。それでは政治に光明は斷じて認めることができません。私は英國の選擧區が一人一選擧區であつて、まことに簡單に選擧が行われている事實をうらやましく思う者であります。演説に行けば候補者の政見に對して自由に質問を行う。その答辯等を得てその政策に共鳴する者は、帽子をまわしてその場で金を集めて、選擧資金として候補者に贈呈する。いかにもうるわしい光景をわれわれの知人は幾人も見てまいつておる。いかにも簡單、いかにも明瞭に、一人一選擧區の選擧が行われまするがゆえに、甲の黨派から乙の黨派に變ろうとする時分には、彼らは潔く辭表を出して、選擧區に歸つて再選擧を要求する。自分の政見を修正し、この政黨に所屬する。諸君これを許すや否やということをば、一々選擧區に歸つて衆議に問うて、當落をきめてもらう。かような美しい習慣すらもイギリスには行われておるのでありまして、英國くらいに國民の政治常識が發達し、選擧に對するところの公正が保たれるようになりましたならば、私は一人一選區を主張したいと思います。これに限る。これほど確かなことはないのであります。しかしイギリスにおいては、買收というものをばまさに今日の有權者は知らないというのであります。いつぞやも私は笑つたのでありますが、得々として英國人が、日本には選擧に買收が行われるというが、買收とは何であるかと聽かれて僕は恥をかいたということを、英國から歸つた人が言いました。十八世紀以來の選擧の記録を見よ。イギリスでは、昔は選擧區をば財産のごとく心得、あるいは選擧民が選擧權を財産と心得て、新聞に廣告して競賣に出した事實があるではありませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=21
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022・岩本信行
○岩本委員長 松原君に申し上げますが、なるべく簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=22
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023・松原一彦
○松原委員 なるべく、簡單にやります。
〔「横暴だ」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=23
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024・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=24
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025・岩本信行
○岩本委員長 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=25
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026・松原一彦
○松原委員(續) 選擧が正しく肅正せられるまでに、少くとも百五十年を要するのであります。百五十年前のイギリスの選擧界は實に腐敗きわまるものであつたのであります。それをあのアングロ・サクソンの底力の強い、そうして壯重に物を處理する態度からだんだんに精錬せられまして、今日のごとき買收とは何かといつたような奇妙なことをもち出して、日本人を怪訝に思わせるようなところにまで進んでまいつたのでありますから、一擧に私どもの理想が實現するということは信じませんけれども、私は選擧區というものはほんとうは小さい方がいいと思う。しかし小さい選擧區には非常に大きな弊害もまた伴いますのでありまして、今囘仄聞するところの新聞紙上に出まする中選擧區のごときは、中選擧區という名は使つておりますけれども、一人一區が小選擧區であつて、二人以上は大選擧區であります。あれは大選擧區の範疇に屬するものでありまするが、その選擧區は日本の現在においては大きいほど弊害がないのであります。小さくすればするほど、日本國民の現在の選擧に對する常識、また選擧運動等の弊害から見まして、幾多の缺陷が存在する。選擧區の大小によつてこれはいろいろな利弊が伴いまするので、一概には斷定しかねまするけれども、英國のようになるまでには、なお幾多の年月を要しまするのでありますから、どうか最も金がかからないで、しかも最も公正なる選擧が行わるる方法として選擧區をも考え、選擧の制度方法をも考えなければならないと思つておるのでありまするが、第百條の第二項が削除せらるるような、こういう物の考え方からまいりますと、私は爲政者、立法者の態度もまた舊態依然たるものであり、當選御禮式の選擧意識ではないかと思うのであります。(拍手)一體内務省は何を考えておるのであろうか。
また私は今度の法規の中に、いま一點疑惑をもつものがあるのであります。それは繰上期間が今囘は非常に縮小せられたことであります。選擧法第七十九條によりますと、從來は次點者は一箇年間の繰上期間があつたのでありますが、それが今囘は非常に縮約せられまして、當選承諾期間だけしか與えられなくなつたのであります。これは當局の説明によりますと、いわゆる次點者狙いを封殺し、そうして選擧をば明朗にするためにこの手段をとつたと言うのでありますけれども、これはいかなるものであろうか。なお幾多の研究を要すると思うのであります。次點者狙いと言いますが、議員候補者になつた者が、次點者を狙うというようなことが一體あるものでありましようか。(拍手)議員諸公はいかにお考えになるか。おれは今度次點を狙つて出よう。さような者が一體あり得るものかどうか。私はこの言葉すらをも疑うのであります。誰しも必勝を期する。やむを得ず次點になるのであつて、次點を狙つて立候補するような者は、おそらくこの世の中にはあるまいと思うのであります。それが今日この條項を改正しなければならない理由の一つになつておることに、思わず苦笑を感ぜざるを得ないのであります。かくすればどうしてもここに補缺選擧に對する非常な手數と費用のかかることは免れません。補缺選擧がいかに煩わしいものであるかは、昨年のあの四分の一の法定得票數に達せざるものがあつたために、東京都において、福井縣において繰返されたる再選擧、あの煩しさに鑑みましても、選擧というものはそんなに頻々とたびたびやるべきものではない。やられるものでもない。非常な浪費と手數とをば要するのでありまして選擧區が大きければ大きいほど、これが困難を伴うのであります。いわんや今日の全國一選擧區のごときに至りましては、その再選擧には容易ならざる勞力と資材とを要するのでありますがゆえに、この一點につきましても私は非常な疑いをもち、なほ將來の研究を要求するものであります。しかしこの點は、今囘は私はここに記録にだけ止めまして、修正を申し入れません。また第百條以下の削除に對しましても、改めて選擧法規をば根本的に改正する場合にこれを研究せらるることをば要求して、私は修正案の中には織りこまないのでありますが、しかし私の今指摘しておりますところの第九十六條を削除するという案だけは、ぜひとも滿場の御賛成を願いたいのであります。私は單にこれをば教育關係者であるがゆえに言うのではないのであります。もしここに一つの勞働組合があつて、その勞働組合には年少組合員もまたあるのであります。二十歳以下、法定十六歳以上の少年工は到る所にあるのであります。少女もまたあるのでありますが、組合員は候補者を推すことができるのでありまして、その選擧運動にこの年少者を用いた場合、これは學生生徒は兒童とは申しません、學生生徒が選擧運動に對してビラを張り、あるいはのりをつけるといつたような行爲と、一體どこが違うのであるか、もし學生生徒の二十歳未滿の者が相當の常識をもつ年齡に達しておつても、なおかつ選擧運動に從事することができないとするならば、それは「利用」とありますが、利用はたれが利用するか。そういう人たちは許されておるのであります。學生及び生徒であるがゆえに許されないのであります。あるいは説明によりますると、農業會その他會社團體等においても、年少者の選擧運動に關する利用活用はなんらとがめられてはないのであります。そういたしますればまことにこれ片手落ちのはなはだしいものではないかと私は思います。むしろ學校等のごとく一定の教育の基盤をもつところのものが、一定の計畫の上から政治教育を授け、そうしてその政治教育の實地の訓練としても實驗としても、選擧の際に民主主義の政治のあり方、選擧の仕方をば訓練し教育しておくことこそ必要なのではなかろうか、投票の實際をも見せねばなりませぬ、投票のやり方、選挙の行い方、あるいは演説等も私は聽かしておかなければならないと思うのであります。それにもかかわらずこの學校に在學する學生生徒の禁止を行う、おそらく私はこれは學生生徒は一つのつけたりの言葉であつて、ほんとうは兒童が主體であろうと思うのであります。兒童を利用しちやならぬ、これは常識であります。繰返して申しますように、その常識は私ももつておるし、たれもさようなことをしてならないことは考えておるのであります。そのらちを越えてはならないことは、十二分に知つておるのであります。その捲き添えに學生生徒が實は加えられておるのでありまして、學生生徒こそまことにもつて私は迷惑をしなければならないのではないかと思うものであります。こういう意味におきましても、この複雜なる今日の社會情勢のもとに、同じ年齡の者に差別を設けて、そうしてこの一箇條をば存在せしめなければならないところの理由は、私には發見することができません。どうかこの一箇條はぜひとも修正することに極力御同意、御賛同を願いたいと思うものであります。私はこれをもつて大體私の修正動議に對するところの理由を開陳いたしたのでありまするが、重ねて申し上げたい。どうかこの委員會の運行をもつと明朗にするために、委員長はここに休憩を宣して、そうしてもし萬やむを得ないならば、あるいは傍聽を禁止してもよろしい。できるだけ傍聽の方は公開の席上におつていただきたいと思うが、萬やむを得なければ禁止してもよろしいが、もつと先刻から申し上げますように、議事の進行を滑らかにし、そうして皆が納得のいくようにして、この結末を圓滿におつけになつてよいのではないかと思う。かようなことを繰返して、そうしてニユースにとられ世間にさらされることは斷じて議會の名譽ではないと私は思うのであります。決して社會黨の諸君も、だてや義理にやつておるのではないことを私は信ずるのである。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は諸君にまつたく共鳴してまいつておるのであります。かような態度を繰返せば、どうしてもかくのごとき結果を生ぜざるを得ないのであります。議會の眞の任務から申しましても、民主政治のスタートから今日の場合を考えましても、納得のいかない間に、數で押し切つてしまつて、われ勝てりといつた態度を斷じてやめていただきたいということを私は切望する。あるいは諸君は數において議場で押し切ることができるかもしれませんが、全國八千萬の國民はみな眼をもつておるのであります。(拍手)頭をもつておるのであります。そうして今日は議會をば熾烈に批判いたしておるのであります。その國民の公正なる批判は曖昧模糊たる間に、一つの何かの含みをもつたであろうところの政略的な動機から、重大なる選擧法を選擧の眼前に迫つた今日にいじくりまわすことをばたれ一人賛成する者はなかろうと思う。(拍手)また今日既に各府縣には現に選擧が行われておるのであります。それは知事の選擧でありまするが參議院議員の選擧も既に行われておるのであります。やがて投票の日が目睫に迫つておりますところの衆議院の選擧は連記制をもつて用意せられておる。紙が印刷せられておる。一體これをどうしなさるのであるか。また役所その他においては、連記制の現行選擧法のもとに、すべての準備は進められておる。今とつさにこの急場に迫つて、あらゆる事務的なことにまでも、非常に大きな衝撃、刺激を與えるような改變をしなければならない理由はどこにあるのであるか。また候補者諸君も、今日大事な議場に精魂を打ちこまれなければならないのでありますが、しかしどうにも選擧の見透しがつかないために、みな印刷にも困つておるのであります。連記でよいか。單記でなければならないのか。いかにも困り拔いておるのであります。これはお互いがみな體驗しておるのであります。どうすれば一體よいのか。もう數日の後には、われわれは解散を豫期いたしておる。そうして一擧に國に歸つて、この選擧に全精魂を打込んで戰わなければならないのでありまするが、その武器であるところのビラの印刷ができない。また作戰も立たないのであります。せつかく與えらるべき二萬枚の葉書の印刷も躊躇せざるを得ない。方法がつかないのであります。何ゆえにわれわれをかくの如き混亂に陷れるのか。何がゆえに現行選擧法をこのままこの一囘使つていけないのであるか。私はどう考えてもその理由を知るに苦しむのです。おそらく私と同感の方々は自由、進歩兩黨の中にも、多數あることを信ずるのであります。(拍手)こういう意味におきましても、私はここに無理な押し切りをしないで、今囘だけは現行選擧法を實行し、そうしてあらためて——もう一箇月の後には新しい國會が生れるのでありまするから、新しい議員によつて、心を新しくして議を練つて、そうしてあらゆる方面の學者をも動員して、天下の公なる公聽に聽いてこの選擧法を改正すべきであると思うのであります。(拍手)何を苦しんでこそこそと、一黨一派の間で、どさくさまぎれにこの重大なる法案を片づけようとするのか。今日の重大法案はすべてこれは公聽しなければならないものである。選擧法には限らないけれども選擧法こそ公聽を要する最も大きな法案であると思う。(拍手)國民の納得せざる選擧において何のいい選擧が行われませうか。國民すべての納得がいつて、初めて國民の選擧權、權利が行使せられるのであります。同時に義務もまた完全に果されるのであります。私はかような意味におきましても、昨日來再三熱望いたしておるのである。願わくは委員諸君もどうか思い直されまして、心を改められまして、ここに新しい打開の途を講じていただきたい。委員長におきましても、單に法規や時間の制限などということでなく、どうか誠意をもつてこの問題の解決をはかり、形式的な結論が決してかくの如き重大な問題の結論ではないことに深く思いをいたされまして、善處せられんことをば、切に要望するものであります。
〔「休憩々々」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=26
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027・岩本信行
○岩本委員長 暫時休憩いたします。
午後三時四十三分休憩
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午後五時一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=27
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028・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。この際、前に中村君より委員長不信任の動議が提出されておりますので、この場合議題に供します。私の一身上に關しまするために、しばらく理事の小澤君に委員長代理をお願いたしまして、嚴正な御批判を受けるまで、しばらく私は退席いたします。
〔委員長退席、小澤委員長代理着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=28
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029・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 暫時委員長の席を汚します。社會黨の中村君より發議の、委員長不信任の動議を議題といたします。中村高一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=29
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030・中村高一
○中村(高)委員 前に提出をいたしてあります本委員會の委員長でありまする岩本信行君を、信任せずという動議につきまして、その趣旨辯明をいたしたいと思うのであります。かくの如き動議を提出するに至りましたことは、お互いに議員でありまた委員でありまして、同僚のやつておりまする委員長を、信任をしないというようなことは、情におきましてはまことに忍びないところもあるのであります。特に岩本君とは親交をもつて、おつきあいをいたしておるのでありまして、そういう意味からいたしまするならば、かくのごとき不信任案を出すというようなことは、できるだけ避けたいと、かように考えておつたのであります。しかしながら委員會の經過を見ておりますると委員長自身の氣持であるかどうかはわかりません。委員長自身のおそらく氣持ではないであろうと思いますけれどもその委員長振りははなはだ不公平でその委員長としてのやり方は、われわれは承服することができないのであります。これはおそらく、いろいろの黨内のかけ引とか、あるいはこの衆議院議員選擧法の改正に絡まつて、別の修正案を出そうというようないろいろの含みが、結局委員長をして、自分の公平なる職務を斷行することもできないような立場に、追いやつておるものだと思うのであります。しかしながら私事は私事でありまして、公のことはその現われますることによつて決するよりほかには、仕方のないことでありまして、委員長みずから最も公正に、この委員會を運用せねばならぬのであります。しかるにこの委員會が開かれましたのは、本月の十四日からでありまするが、その以後今日まで數囘にわたりまして、議事が混亂をいたしておりますることは、委員諸君のよく御存じの通りであります。これはいづれも委員長の不當な命令が、結局委員會を混亂させるような原因に相なつておると思うのであります。そういたしまするならばわれわれがやはり委員長に對しましてその不當を彈劾いたしまして委員長の處決を求むるということは、まつたくやむを得ないことでありまするので率直に私は事實を事實といたしましてここに陳述をいたしまして、委員諸君に、私の申し上げることがよいかあるいは惡いか。十分にひとつ御判斷を願いたい。かように思うのであります。
どういう點について、委員長の行動が適當でないかという點につきましては、たくさんあるのでありますが、先にその不適當なりとする理由を申し上げまする前に、事實關係を申し上げた方が、委員諸君の御審議に便宜だと思いますから、まず事實關係から申し上げるのであります。この委員會は、多數の委員諸君が途中にして變更をしておられます。おそらく毎日のように委員諸君が變つてきておりまするから、最初のことはおわかりにならぬ方があるかと思うのでありますが、これは委員長不信任問題について重大でありまするから、この點について説明をいたすのでありまするが、本月の十四日に第一囘の委員會が開かれました。その第一囘の委員會におきましても、私が植原内務大臣に對して質疑をいたしまして、まだ私が質疑をしておるのに、委員長は、本日はこの程度にして散會しますと言つて、第一日にもうすでに打切つて引上げてしまつた。これはおそらく途中から代られた委員諸君はわからぬと思いますが、内務大臣に對して私が聽きましたのは、もうその當時、十四日のときにすでに中選擧區單記案というものが發表せられて、新聞などで盛んに議論をせられておりましたから、内務大臣がこの提案の理由の説明に來られたときに、内務大臣にその點を質問いたしましたのであります。ところが内務大臣はいろいろのことを演説を自分でやりまして、質問をいたしました範圍を超えて、自分は小選擧區單記制というものが理想だと思う。これが一番政局を安定させる途であるからして、小選擧區單記制を自分はいいと思う。この前の、現行選擧法によりまするところの大選擧區制限連記制というものはいろいろ批評をされておるけれども、たくさんの缺點がある。だかしてその缺點を直すためには選擧法を改正したいのだというような意味のことを植原内務大臣が言われましたので、これは内務大臣の氣持は、この法律案にくつつけて修正案を出そうというような意味のことを言われましたので、私は岩本委員長の許可を受けて、これは重大だ。特にその問題が世間に非常に騷がれておりまするために、非常に選擧法に對しては議員は敏感であつて、どうなるかということに對して非常に氣をもんでおるから、この機會に内務大臣からその點を明確にしてくれろということが私の質問の趣旨でありました。これは委員長もここに聽いておられまするから、よくおわかりになつて、記憶しておられることだと思います。その點を内務大臣の答辯は曖昧なんです。出すことが、私は便乘してという言葉を使つた。ところがこれに修正案をつけることは便乘じやないよ、こういうような意味のことを内務大臣は言われた。これは便乘じやない。法律の修正であるからして何ら違法じやない。こういうようなことを言うから、そこで私は委員長の許可を受けまして、そこが重大なんだ。それならば今度の議會に出すのですか、どうですか。ここを私は内務大臣にもう少し徹底的に質問をしようとするというと、委員長、と言つたところが、委員長は、もう本日はこれで打切つて散會だと言うて、私が委員長、委員長と言うておるのにもかかわらず、やめてしまつた。でありますからして、結局私たち委員としては一番聽きたい點であり、またわれわれは黨から選ばれ、またお互いに各黨から選ばれておりますところの委員でありまするから、そのくらいのことを委員會で明確にせなければ、委員としての職責をはたすこともできないし、仲間の諸君から聽かれてもそういうことは答えることもできないでは、はなはだ困るからと言うて、一生懸命に岩本委員長を呼んだのでありますけれども、大して時間も遲くもなかつたのですがだめだつた。その時に恐らく岩本委員長の氣持では——これは植原内務大臣の腹も何かこれに、この現在審議しておるところの選擧法に併託をして、ひとつ修正を出そうという腹のようであつたことを、おそらく岩本委員長も同じような氣持をもたれたのだと思うのでありまするが、岩本委員長はそこで、まだ時間があるのに打切るから、私はその時に今そこにおりまするところの地方局長に内務省の地方局長に、あなたは一體今度のこういう法律案を出しておるけれども、これは手續上の規定であります。そこでこの手續上の規定でありますところの選擧法に、もし内務大臣の口吻を漏らしておるように、これに結びついて修正案が出るというようなことになつたならば、内務省としてはどうなんですか、ということを私が聽いてみたところが、地方局長は、困つたものです。もしこれにそういうものが抱きついて——抱きついてという言葉のようでありましたが、抱きついてこられたのでは、審議未了というようなことになるというと、これは大變なんです。なんとかしてひとつこれだけは通してもらえないでしようかというようなもつともな希望でありました。これは地方局長の提案をせられた立場から言いまするならば、まつたくもつとものことなんです。これは皆全部手續上の規定でありまして、私は別にしいて發言を引延ばそうなんという氣持をもつておりませんから、みじんもそういうことを考えておりませんから、提案の必要性などについては申し上げようと別に思つておるわけではありませんけれども、今度の提案をされたものは、目の前に控えておるところの選擧に直接關係があつて、これを通さなければ實際において私は選擧に非常に支障を來すだろう。たとえてみまするならば、選擧管理委員會の規定。これはまつたくです。これがもし、この今かかつておりますところの法律が通過しないということになれば、第一、選擧管理委員會というものができない。そうするというと、もとの法律に從つて市町村長がまた選擧管理をやる。これは困つたことです。地方制度は改正になつて、地方においては市町村長はもう選擧を管理しない。地方制度の方ではちやんと選擧管理委員會というものができて、どんどんやつておる。ところがこれが通過しないということになると、選擧管理委員會というものができないから、また市町村長が選擧管理委員になる。實際においてできなくなつたものをまた今度はやらなければならぬということになつて、これは全く困ります。それからこの法律が、次の選擧が行われるということが前提になつておりますから、選擧名簿などというようなものも、適格條項が非常に擴大される。これは何十萬ぐらい殖えるのか私は數はわかりませんけれども、あそこに局長がいるから、後でまた政府の意見も聽いてもいいのでありますが、とにかく選擧名簿が改正せられ、適格條項が擴大をせられて、海外から引揚げて來られました方などが、みんな新しい選擧名簿に載つて選擧權が行使されることになつた。ところがもし内務大臣の言うように、これに抱きついてくるということになると、どういう結果になるかと言えば、選擧名簿はもうこれが通るものとしての選擧名簿ができている。それで參議院の選擧だとか、市町村長の選擧だとか、知事の選擧などはそつちの名簿でやつて、今度はそれが通らないで衆議院の選擧をやるといつても、もとの選擧名簿というものはありますか。もとの選擧名簿というものはないのだ。新しい名簿しかなくて、衆議院の選擧が行えるかどうかさえ私はなかなか疑問だ。これを考えてみますとなかなか重大です。ただ舊法で議員が樂ができるというのは、二千圓の保證金が今度五千圓に上ると書いてあるけれども、これが通らなければ二千圓で濟むのだから、その點についてはあるいは多少息のつけるところがあるかもしれませんけれども、しかしきわめて重大な問題に逢着するので、そこで私は政府にそういう重大な法律であるならば、急いでこれを通さなければいけないじやないかということを話をいたしまして、なるほどこれは重大な法律だ。局長から説明を聽いてみると、いかにも重大な法律でありますので、そこで岩本委員長とも、一つこれは十四日でありましたか十五日でありましたか知りませんけれども、各黨の代表の者が集まつて、私が地方局長の説明を聽くと、この法律が通らないと選擧というものに對して非常に支障を來すと言うから、どうだ委員長、ひとつ何とかこれを早くやろうじやないかということを、私も委員長と協議をいたしたのであります。何かこの議案をわれわれの黨の者がひつぱろうというふうに誤解をされておるから、はなはだこれは心外であまりす。自由黨や進歩黨の諸君が、もし社會黨はこの案をひつぱらうという考えじやないかというようなことを思つたならば、それは大變な間違いであります。私は一日も早くこれを通過させたいという氣持をもつて岩本委員長とも相談をして、これは何とかお互いに發言を制限しようじやないか。委員長も言われまするし、私もそれじやお互いに各黨とも討論者は一人ずつにしようじやないか。結構だ。場合によつたならば十四日、その日は金曜日で私もよく覺えておりまするが、三月十四日、金曜日であります。そこで岩本氏は明日は土曜で、明後日は日曜だ。萬一金曜日に通れば土曜日に本會議があるから——これは重要なんです。土曜日に本會議があるから、今日あげることができるならば、土曜日に本會議にあげられる。私はそう思つておつた。だから場合によつたならば今日中にでも——そのときは植原内務大臣もおつたのですから、植原内務大臣がおるし、局長もおるし、今日中にでもやつちやおうぢやないか。お互にみんなこの問題については議論がないし、討論などあまり長くするということは、この際よくないし、もう會期は切迫しておるし、こういうわけだ。よかろう。それで私の方の黨も、それでは一人にしましよう。こういうことに約束をきめまして翌日の土曜日には、そういう進行を始めたのであります。これは岩本委員長もよく記憶をいたしておられる通りでありまして、私の申上げるところは微塵も間違つたことを申し上げておるとは思いませんから、もし間違つておりましたならば、後で委員長みずから一身上の御辯明によつて誤解を明確にせられますことは結構であります。そういう經緯でありますから私は土曜日にも、委員會を各黨が一人づつやつて、おしまいにしようといたしたのでありまするが、何ゆえか政府も急いでおりわれわれ委員も急いでおるにもかかわらず、いかなる根據によつて、いかなる委員長の腹のうちかわかりませんが今日は打切りにしなくてもいい。こういうことでありましたから、そのときにもどうも私はこれはおかしい。政府もこんなに急いでおり、委員も急いでおるのに、金曜日にも、その日でも打切ろうという委員の氣持ちだつたのに打切らず、土曜日になつて、みんなが一人づつ打切ろうというのでありましたけれども、これもやらないで、ぐじやぐじやにして日曜から月曜日に送つてしまつたのであります。われわれはただいま申上げたことによつても、いかに今度のこの改正案というものを早く通そうかということに熱意を持ち、努力をしたかということは、途中で迭わられた委員諸君は、よくその事情を御了解を願うのでありますか、そういう經緯でありますから、私は十六日は日曜で、議會がなかつたのだから仕方がありませんが、十七日にはおそらく委員長は開かれて、この案を通過させることに努力をしてくれるものだと思つておりましたが、委員長は開かないのです。(「なぜだ」と呼ぶ者あり)どういうわけかわからないけれども、開かない。そこで私は十七日だつたか十八日だつたか、その點はよく記憶がないのです。あなたは覺えているかもしれませんが、廊下で會つた時に、私は委員長に向つてあの法律は重要な法律で今度の選擧に間に合わないと困るそうだから、早く君委員會を開いてくれないかといつて催促を私がいたしましたときに、委員長はそのうちに開くよ。いやそのうちでは困るのだ。すぐに開いてくれないか。このくらいしつこくこの委員會を早く打切ることのために努力をいたしたということを、委員諸君はひとつ御諒解を願いますならば、いかに私がこの法案を早く通すために努力をしたかということもおわかりくださると思うのであります。岩本委員長は公正にこの委員長の職責を果し、この法案を一日でも早く通過させるために努力するこそが、委員長の任務であつたと思うのでありますが、何故か月曜日の十七日にも開かず、翌日火曜日にはたぶん開いてくれるだろうと思つておりましたが、また火曜日にも開きません。いいですか。月曜日にも開かず、火曜日にも開かず、たぶん水曜日にはいよいよ今度は開いてくれるだろうと思つて公報を見ますと、またないのです。私はがつかりいたしましてこれは委員長はこの法律を通過する熱意がないのじやないかということを疑つた。そこで私は何か駈引があるんだということが、血のめぐりの惡い私にもようやくわかつてきた。私は正直でありまするからして、委員長に開け開けと言えば開いてくれるものだと思うから言うていた。ところが委員長の方ではそんなことはちつとも考えていなかつたでありましよう。十七日にも十八日にも十九日にも開かれない。もう會期は切迫をいたしておりますが、いくら切迫しても、審議し盡すべきことは十分に審議を盡さなければならぬが審議をしないでこの案を通すというようなことは、事選擧法でありまするから、なかなかそれはできない。でありまするから、一日も早く委員會を開いて審議をしてもらいたいという私たちは熱意を持つておつたのであります。この三日間開かれないでどういうお考えかしりませんが二十日には私たちには何も相談がなくして開會をせられました。從來の慣例からいたしまするならば勝手に委員長が三日も休んでいるのですから、開くときには各黨の代表の理事くらいには集まつてもらつて、二十日には一つ委員會を開きたいがどうだと、一言くらい耳打ちされるものだと思つておりましたが、三日間放つたらかしておいて、四日目になつて委員長が自分で勝手に日をお決めになつた。別に私は法規にあるわけではありませんから、委員長が理事と相談をしなくてはいけない。それが違法だと私は言うているのではありませんが、三日も休んでおつたのならば、それくらいのことはあつてしかるべきだと思いますけれども、それもやらない。そこで二十日に開かれまして、このときからは委員の諸君も大體において御承知だと思いまするが、二十日に開くといきなり日比野君は、委員が交代をしたからいなくなつたけれども、日比野民平君から、委員長がこれから開會をすると言うとまつたく間髪を入れず、質問をここで打切つてくれろと言われたのでありまして、誰も發言も何もすることができない。いきなりこれから開會をします、委員長、質問を打切りだこういうことを委員長が自ら日比野君と打合せをされたのかどうか分りませんけれども、その鮮やかなる呼吸の合いまするところは、前もつてそういうことのなんらかの御協議があつたのではないかと疑われるのであります。もし間違いだと思ひますならば、どうぞ自由に岩本君から辯明願つて差支えありませんが、普通の委員會の慣例としては、いきなり開いて質問打切の動議をばつさりというようなことは大體ありません。三日も休んでおつて、四日目にやつと開く。開いたら一言の下に質問打切りの動議だ。こういうことを委員諸君はどうぞ、自由黨や進歩黨の諸君もひとつ公平に御反省を願いたいと思うのであります。あなた方がおれに關係したことでないのに、でかい聲で責めるなと言われるかも知れませんから、あなた方を私は責めるわけではありませんが、私の提出しておりまする不信任案が、なるほどそれはやむを得ないということについて、納得をせられるだろうと思うのであります。いきなり質問を打切るなどというようなことは、今日の民主議會において、私は悲しむべきことだと思います。岩本委員長のためにも惜しむのでありまして、このときの發言の通告者は佐竹君外何名かありました。おそらくこういうようなことを拔打ちにやるということは計畫的なものであつて、議員の發言を封ずるということで計畫をせられたものだと思いまするが、これは委員長としてはなはだしい間違いだと思うのでありまして、質問のごときものはなすべきものは十分になさせ、あるいは急ぐというようなことから質問を、もしやめようというのでありまするならば、いくらでも相談をしてやれるのです。他の委員會では、岩本委員長も御承知の通り、自分でも委員長をおやりになつたかどうかわかりませんが、委員にもなつておられる通り、之は拔打ちの質問打切りというようなことをおやりになつたことは私はないのだと思つております。これはどういうところに一體岩本委員長の氣持があるのかまことに了解に苦しむのでありまするが、おそらくは月曜日、火曜日、水曜日といろいろの計畫をせられて、いよいよこの法律に改正案を便乘させるということがおきまりになつたので、腹がきまつた以上はお急ぎということで二十日に開いて一氣呵成にそのまま審議を打切つて、委員會を終了、そういうお考えであつたことは大體想像ができるのであります。しかしながらこれが私ははなはだよくないやり方だと思つて、その點について、いきなり質問打切りをやることについて、委員長のとりました態度はまつたくこれは委員長としてあるまじま行爲でありましてわれわれから彈劾を受けることは當然だと思つております。三日間、いつものときでありますならば私は責めませんけれども、會期が切迫してもう餘日のないこの委員會において、三日間を空費している。これも委員長として十分反省しなくちやならぬ點だと思うのであります。これが去る三月十四日から二十日までの經過であります。さらに委員長はこの二十日を過ぎて、二十一日は休みでありましたから、二十二日にこの委員會を再開をいたされたのでありまするが、二十二日というと昨日であります。昨日委員會が開かれまして、これは經過は私が説明する必要がないから、説明をいたしませんけれども、昨日の委員會におきましても、各黨の本案に對しまするところの討論になつているのでありまするが、この討論につきましても、はなはだ私は岩本委員長のとりました態度は、偏頗な態度だと思うのであります。わが黨の鈴木義男君が昨日この委員會におきまして、討論をいたしておつたのでありまするが、委員長は鈴木君の發言が議事を妨害をするものだという理由で中止をさせてしまつたのであります。一體鈴木君の發言に對しまする中止が、適當であるかどうかということについては、本日の委員會においても議論をせられまして、これは後に、先ほど委員長からいかなる根據に基いて中止をしたかということを明確にされておりますから、委員長のとりました行動が正しいか、正しくないかということについては、後に條文によりまして、議院法という法規によりまして檢討をいたして、委員長の中止が適當であつたかないかということは、委員諸君でひとつ十分に御檢討を願いたいと思うのであります。しかし私がさらに委員長に對しまして、その委員會におけるやり方がよろしくなかつたということにつきましては、同僚議員の佐竹君から、議事進行に關しまするところの質問をいたしておりまするが、この質問に對しましても、佐竹君は委員會として扱うべき態度について、議事の進行を委員長にどうするかということを訴えたのであります。話が前に戻りまするけれども、佐竹君の動議につきましても私は委員長としては當然これは協議いたさなければならない問題だつたと思うのであります。それは私がもう冒頭に説明いたしましたように、この法案というものが非常に重要な法律案であるからして、もしも本會議になつて他の改正案がこれに結びつくというようなことになると、この案が通らない危險があるからして、十分委員長とも相談をしてこの案の通るように協議をして、一時延期をしてでも、取扱い方について協議をしたらどうかということを、佐竹君は熱心に委員長に訴えたのでありまして、私たちもこれは當然だと思います。この法案の委員會の委員としては、この法律を一日も早く通すということが皆の熱意なのでありますから、萬一本會議で他の議員諸君から重大な改正案を結びつけるというようなことではいけないから、この委員會としてはこの審議をいたしました委員の責任としても、速やかに本會議を通して、法律として公布させたいから、委員會として協議をして、これにはもう、くつつけて改正案などは出さないということにしようではないかということが、佐竹君の提案であつたのであります。もしも不純な氣持をもたずに委員長がこの法案の委員長として、この法案を一日も早く通そうという熱意をもたれまするならば、岩本委員長としては私は當然佐竹君の案を協議をいたして、場合によつたならば自由黨の諸君も進歩黨の諸君も、われわれも一緒になつて、これは本會議に出して、これだけを通過させる。途中に妙なものが一緒にからまつてくるということは、いけないということをひとつ申合せをしようじやないかということを、佐竹君は熱心に主張しているのであります。少しも無理のないことであると私たちは思つております。私たちはこの法案の委員なのでありますから、この法案の委員として、この法案を通すことに最善の努力をするということが委員としての任務であります(「しかりしかり」拍手)委員長としてもこの法案が本會議を通過するまでは、あなたは最善の努力をしなければいけない。萬一政府から抱きつくならば切り離すんだ。委員長としては自由黨からくる場合であつても、この法案の委員長であるならば、これを通過させようとする熱意があるならば、自由黨から出ようが、進歩黨から出ようが、一切そういうじやまものは打ち拂つてこれを通すということに、最善の努力をするということが委員長の任務だと私は思うのであります。(拍手)その點について佐竹君からあの通り熱誠に發言があつたにもかかわらず、これを少しも取上げられず、そうしてこの問題について直ちにわれわれは休憩でも何でもして理事會を開くなら開いてやれば、あるいは審議の速やかなることを期することができたかも知れないのでありますが、そういうこともせられずに、そのまんま進行をするというようなことになりましたので、私はそのときにもうこれはこの委員長では、この法案をまじめに審議しても、これは通らぬと、こう思いましたから、私は佐竹君の發言が終ると同時に委員長に向つて、委員長を信任せずという動議を出すために、この席から飛んで行つた。そうして私が岩本委員長を信任せずという動議を書いた紙を持つていきなり飛んで行つた。ところが委員長はそのときには佐竹君のこの議事進行についての發言を、もうこれは終つたとして、松原君に發言を許した。私は早く飛んで行つたのでありますけれども、普通ならば十分に、私が出て行つたのだからして——普通の委員會であるならば、委員長は私が出てから、私はいやしくもこの委員會の選擧理事であります。重要なる任務をもつた理事であり、この委員會の運營については、あなたと協力をするいわば夫婦のような間柄であります。(笑聲、拍手)この大事な男が委員長に向つてとんで行こうとするときには、普通ならば來たな。いらつしやい。何でありますかと、こう來るのが……。(笑聲、拍手)委員長がほんとうにこの委員會をやろうという氣持であるならば、それがほんとうであります。(笑聲、拍手)ところが委員長は私がかけつけるというと、もう松原君に發言を許したのだとかいうようなことでありました。私は委員長に對しまして不信任でありまするから委員長は自分の發言と同時に——私はどつちかわからなかつた。實際においてはどつちが先であるかというようなことについて多少疑問がありました。私もそんなことを考えていなかつたから、私も普通に歩いて行けばいいと思つておつた。ところがもうこの委員長に對てはすばらしいスピードでかけつけなければ間に合わないというようなことになつた。そこで私がかけつけるというともうだめだ。おれの方が早かつたと言う。いやおれの方が早かつたと言うて問答をさせるなんということが、委員長としては私は、はなはだ公正ではないと思います。(拍手)委員長というものは委員の發言に對しましては、最も公正に扱い、また理事が進行について發言を求めるということに對しては、もつと愼重であらねばならなかつたと思うのでありますが、ここにも私は委員長の不公明でありました態度を——今あなたの面前で申し上げることはいやでありますけれども、公のためには一身を犠牲にいたしまして、(拍手、笑聲)あなたに言わざるを得ないことをはなはだ悲しむのであります。ところがそれは時間の問題でありますからして、議論があつたから私はおとなしくあきらめた、少しも議事を妨害する意思ではありませんから、一意專心委員長の進行に對して協力しなければならない理事であります。反對黨でありますからして、世間の人は何か委員長の仕事に妨害をするように感ぜらるるかも知れませんが、私の一身は委員長を護り、(笑聲)委員長をしてこの委員會の審議に過ちなからしめたいという氣持に熱心でありました。ところが私が出しましたところの岩本委員長不信任の動議の紙をいきなり握つちやつて、そうしてもんじやうんだ。(拍手、笑聲)一體こういうことがありますか。あなたは自分で御存じだろうと思いますが、私が紙を出すと、ぐいぐいやつて破いてしまうから、私が止めた。私が止めなければきれいに破かれてしまうところです。(笑聲)いわばこれは委員會の理事が委員長に提出した書類でありまするから、場合によるとこれは公文書であります。(拍手、笑聲)これは法律問題といたしまするならば、公文書毀棄に該當いたす罪を委員長は犯しておるのであります。(拍手)しかしこういう時局重大なときに委員長を告訴するというようなことは、まことに忍びませんので、公のためには、あるいは告訴をせねばならぬかと思いますが、しかし一身をこの際犠牲にして、私は委員長を告訴するやうなことをせずにやろうと思つていますけれども、あなた自身がひとつみずから反省して今は冷靜でこうやつてお聽きになつておられるから、なるほどおれは、委員長として人の出した動議を、もみくちやにもみつぶしたということは、はなはだ惡かつたということをお考えになられると思うのであります。(拍手)こういうことも實際においては前例がないことでありますよ。(拍手)委員の出した動議をもみくちやにするという委員長があつたかどうか。先例をどうぞお調べ願いたいと思います。(拍手)事務局の方もおりまするからして、あんな前例があつたか、先例集をよくお調べを願いますれば、委員長は、なるほど惡かつたということをお考えになると思うのであります。こういうことも言いたくはないのでありまするが、やむを得ず私は申し上げておるのであります。これは決して正しいことでなかつたということは自由黨の諸君も、進歩黨の諸君もお認めになると存じます。どうか今後委員長になられますときには、人の動議をもみくちやにしたり、破いたりすることのないように、私は衷心より希望を申し上げておくのであります。(拍手、笑聲)
その後におきましても、本日の議事の進行工合を見ておりましても、數囘とにかく議論がわきまして、そうして議事が滑らかに進行いたしておらないのでありまするが、これはどこに根據があるかといいまするならば、一々あなたが委員の發言を制限しようというような氣持をもつておられるところに、私は根據があると思つてをります。われわれも先ほど來申し上げておりまするように、この委員會の進行については、できるだけ早くやろうという氣持をもつておるのでありますから、今でもすぐにこの委員會を終了して、本會議に上げたい熱意は變りはありません。けれども委員長が何か底意のあるような計畫をおもちになつて、委員會を運營いたしておりまするというと、なかなかこの委員會が滑らかに行かないことは明らかであります。先ほども議論をいたしましたように、昨日の鈴木委員の發言を、あなたは委員長として中止をせられました。なるほどこれは議論もありましようし、あるいは先例などもたくさんあるのでありまするからして、委員長は委員長としての解釋をせられるかもしれませんけれども、あの委員長が鈴木委員に對しまするところの討論の打切りについては、これはどうしても一應の是非を明らかにいたしておかなければ、今後の委員會の先例にもなりまするので、どうしてもこの點については論議をいたしていくよりほかには、仕方がないと思つておるのであります。先ほど私は委員長に對しまして——これは委員長がいなくてもいいのであります。委員諸君で審議をせられればいいのでありますから、委員長がおらなくても結構でありまするけれども、問題は委員長の、一體鈴木委員に對する討論の中止を命ずることが、はたして妥當であるかどうか、これは大いに檢討をして委員長の討論の打切りが不適法であるとしますならば、委員長は當然その責任をとらなければならぬことは明らかであります。今代理の議長をやつておりまする小澤理事は、討論打切りにつきましては、私が昨日もしばしば折衝をし、議論をし、本日も議院法と先例集を持ち歩いて、議論をいたしたのでありまするが、小澤代理委員長も法律家でありまするからして、これは非常に便宜でありまするから、よくあなたは代理委員長として、私の法律解釋が間違つているか、岩本委員長の解釋が間違つているか。君——君と言うては失禮でありまするが、あなたの、小澤代理委員長の解釋が正しいか。これはなかなか委員諸君の公平な判斷を受けていかなければ相ならぬと思うのでありまするから、あなたも法律家として、私が先例あるいは議院法を引用しまするから、引用するときには、その都度引用すると私は言いまするからして、參考文を讀み續けるなどということで、苦勞をせられないように、そういうことで私の發言を止めるというようなことを、計畫をせられないように、あらかじめ申し上げておきます。引用するときには必ず引用すると申し上げまするが、本日鈴木委員が發言を中止されたことについて、明確に速記録にとるために、先ほど少しばかりこぜり合いがありましたが、どうかひとつこの問題は、後に殘る問題として、十分に討議をいたしておきたいのでありまして、速記に止めておきたいのであります。先ほど委員長に對して、岩本委員長に對して、何ゆえ議員の發言を停止いたしたるか。その法律上の根據を示せということを、私が議事進行によりまして質問をいたしたのでありまするが、委員諸君がお聞きの通りに、委員長は類例があるとか、先例があるとかいうことでありましたので、それはいけない。類例があるとか、先例があるとかいう不明確なことではいけないのだということで、それでは承服することができない。重要な委員の討論を打切るのであるならば、事いやしくも帝國議會の委員會でありまするから、十分にその根據を示しておけと言うた。その結果が先ほど説明をするところによると、議院法の第八十七條、議院規則の第二十七條を議院規則百十二條、議院規則百十六條だと思いましたが、私はそういうように聞きましたが、もし私の言うたことに間違いがありましたならば、後に訂正もいたしましようし、代理の委員長から御注意を受けても結構でありまするが、私が前聞いておりましたのによると、この四つの條文によつて、鈴木委員の討論は、黨を代表してやつておりまする鈴木委員の討論は、發言を停止をいたしたという、こういうことになつておるのでありまするから、第八十七條を一應檢討をすることが、岩本委員長のとりましたことが、正しいか正しくないかということに、重大なる關係がありまするから、その意味において議院法を引用いたします。
議院法の第八十七條によりまするというと、「會議中議員比ノ法律若ハ議事規則ニ違ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ルトキハ議長ハ之ヲ警戒シ、又ハ制止シ、又ハ發言ヲ取消サシム命ニ從ハサルトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ルマテ發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退去セシムルコトヲ得」、この八十七條によるというと、これは小澤今の委員長もこれだと言うて、昨日數囘小澤委員長も鈴木君の發言に注意をいたしたのでありまするが、會議中議員が議事規則に違うとか、この法律というのは議院法でありまするが、議院法もしくは議事規則に違い、こういう規定に一體該當するかどうかが問題であります。小澤代理委員長も昨日私と問答のときに、八十七條で議事規則に違うのだ、こういうことでありますが、どういう點について議事規則に違うか。大いにここは議論があるのであります。おそらく後にあげられました議事規則の三つの條文によつて、議事規則と違うという、そういう意味だと思うのでありまするが、そうするというと、先ほど岩本委員長が説明をせられた三つの衆議院規則というものが、一體はたして鈴木君の發言を中止する理由になるかどうかということを、これも檢討をしなければならぬことは當然であります。そこでやむを得ません。これは條文でありますから引用することをお許し願いたいと思います。衆議院規則二十七條には——私は二十七條のように聞きましたけれども、もし間違つていたらあとで訂正をいたしますが、「委員ノ審査ハ議院ノ付託シタル事件ノ外ニ渉ルコトヲ得ス」これも言うたようでありますが、今鈴木君の説明によると二十九條の「委員長ハ委員會ノ會議ヲ整理シ秩序ヲ保持ス」というこの規定だと思いまするが、これは特に議論をするほどの條文ではないから、時間を急ぎますから、私はそういうことについては、なるべく省略をいたします。(笑聲)必要のないことはどんどん省略をいたしてまいります。(笑聲)その次は百十二條、これはなかなか問題のあるところでありまして、委員長の不信任には重大なる關係のある條文でありまするが、百十二條には、「討論ハ議題外ニ渉ルコトヲ得ス」この條文から行きますならば、議題外にわたるということでありますならば、確かに問題はあると思いまするが、鈴木君のように選擧法について、選擧のことばかり議論をしておつたという場合には、議題外にとも言えないし、選擧法の委員會について、議題外にわたるということならばなるほどいけない。けれども今日豫算委員會におきましても一般の委員會におきましても、もう議題外ばかりだ。實際あなた方は自分でも御存知でありませうが、その法案以外のことをお互いに議論をしておる。實際において豫算委員會などにあたつても、豫算について議論をするならぱこれはいいが、實際においては議題外と思われるようなことを議論いたしておるのであります。しかしそれでもどの委員長も——豫算委員長だつて一言半句もよこやりを入れるわけではなくて、言いなりほうだいに、われわれが考えたならば止めたらいいと思うようなものも止めておらぬ。そうしてこの委員會だけそういうような嚴重なことをやろうとしておるのであります。しかし鈴木君の發言はのちに速記録を調べればわかりますが、選擧法のことに關する以外のことを何も述べておらぬのであります。もう少し廣く述べてくれればいいと思うのに、(拍手)選擧のことばにかりにわたるものでから、そばにおりましても困るくらい議題の中にばかりはまつて、はなはだ長い時間を聽いて迷惑をいたしたのでありますが、ほかの委員諸君のように議題外にわたつて論ずれば、もう少しいろいろなことがあつたろうと思いますけれども、鈴木君の發言についてはそういう點はなかつたと思います。もう一つはこれも條文を引用することのお許しを願いたいと思います。百十六條は「會議ニ於テ意見書又ハ理由書ヲ朗讀スルコトヲ得ス但シ引證若ハ報告ノ爲ニ簡單ナル文書ヲ朗讀スルハ此ノ限ニ在ラス」これはいかにも議院規則に書いてあるところであります。そこで鈴木君の發言が百十六條にありまするところの「引證若ハ報告ノ爲ニ簡單ナル文書ヲ朗讀スルコトハ比ノ限ニ在ラス」ということになつておりまするがこれに該當するかどうかということもなかなかこれは問題が複雜だと思います。とにかく引例に使うとか、あるいは報告のためであるならば、文書を朗讀することは差支えがないと言うているのでありまするが、これもあるいは議論になるかもしれませんけれども、委員諸君が私の言うことを判斷をしていただけば結構でありまするから、私の言うことが間違いかどうかは、のちに採決のときに十分にみなさんは判斷をしてくだされば結構でありまするが、鈴木君がなるほどいろいろの書物を讀んだりなどいたしたことは事實でありまするが、いずれもこれはこの條文にありまするところの引證、いわゆる引用だと私は思うのであります。しかしこれは法規上の議院法の解釋上、なかなか議論のあるところでありまして、過去における議院のいろいろの先例集を見ますると、こういう鈴木君のような發言を中止する場合については、議院法とか議院規則だけでは、なかなか解釋のしきれない問題がたくさんあるのであります。これは私はもつともだと思います。わずかにこれだけの條文でありますから、出てくる問題をすべてこの條文にあてはめて、これはよい場合もあるし、あるいは解釋のつかない場合もたくさん出てくるのです。これは事實は書いてある通りには起つてこないのでありまするから、いろいろの問題が突發してくるのでありまするから、こういうふうに書いてある通りに現われてこないことだけは明らかであります。それでありまするから過去における帝國議會の先例となつて現われてきているのであります。實際において委員長となるような方は、この先例集というようなものを十分にごらんになつておいて、そうして委員長の重責におつきになられることが私は當然だと思いまするが、この委員會が始まつて自分で命令を出しておりながら、どの條文であつたかわからぬというようなことでは、はなはだ委員長として不勉強であると思います。(拍手)すべての條文を覺えろと申し上げているのではありませんし、過去における先例を全部記憶してこいと申し上げているのでもありませんけれども、いやしくも人の重大なるところの發言を中止するというような場合においては、一應先例を研究することをおやりにならなければ、今度のような問題が起つてしまつたときにどうすることもできないことは明らかであります。そこで鈴木君のような場合が過去における先例として扱われて、これにぴつたり該當するものがあるとするならば、これは岩本委員長のやりましたことが、あるいは正しいという批判も受けましようし、あるいは場合によつたならば、岩本委員長のとつたことは不適當だということになるのでありまするが、先例集を見ると、さつき岩本委員長も言われましたようにたくさんある。たくさんあつて、そのうちのものが該當するのだというようなことを言われておりまするから、これはどうしても重要なことでありまするからして、一々私もそういう先例を記憶しておるわけではありませんから、重要な先例でありまするからして、これもまた本を引用することをお許しを得たいと存じます。先例集によりまするというと、鈴木君の發言を、討論を中止させるというような問題について、たしかに議論になるようなところがあることは事實であります。それは「議長ハ議員ノ發言議題外又ハ範圍外ニ渉リ若ハ不穩又ハ議事妨害ト認ムルトキハ之ヲ制止シ又ハ取消ヲ命ス」こういう先例があるのでありまして、具體的な事實としては、さき岩本委員長がこれだと言うたのが、五十囘の帝國議會に於ける先例だということでありました。これは委員諸君にはつきりさせるために、先ほど皆で岩本委員長にそれは駄目だ。五十囘の議會だと言つただけではわからない。委員は今日別に先例集をもつてきているわけじやないから五十囘と言われただけでは、どつちがよいか惡いかわからない。だから五十囘の先例集というものの中にはどんなことがあるのか朗讀しろと、さつき私がもつていつて、君の言うのはこれだ……。そうすれば皆がああそういうことかと納得するから讀めと言つたのでありますが、だめだ。そんなものは讀まないと、頑として委員長が聽かないために、どうもこの點が明確にならなかつたのは、はなはだ遺憾でありまするが、委員諸君の審議の御參考のためにごく簡單でありまするから朗讀することを、引用することをいたしたいと思うのであります第五十囘の議會においては——大正十四年でありますが、三月二日に政府提出の衆議院議員の選擧法の——やはり衆議院議員の選擧法の改正案のときでありまして、よくよく選擧法の改正のときには問題が起るとみえまして、大正十四年のときにも、やはり選擧法でもめておることがこれでわかるのであります。どうも議員と選擧法とはもめるもののように過去におきましてはつきりされておりまするが、またこういう先例が、これに本日追加せられるのかどうかわかりませんが、大正十四年三月二日、よほど古いことであります(「軍國主義時代だ」と呼ぶ者あり)大正十二年が震災の時でありますから、(笑聲)その翌る翌る年であります。「三月二日政府提出衆議院議員選擧法改正法律案第二讀會ニ於テ」……進行を急ぐために途中を省略いたします。(笑聲)不必要なと思われますところをどんどん省略いたしまして、(笑聲)引用も重點だけをいたしまするが「本案反對ノ討論中」……やはり討論中でありまして、(笑聲)「參考文書トシテ多數ノ印刷物ヲ朗讀シテ容易ニ其ノ論旨ヲ進メサルニ依リ」(笑聲)議長はしばしば同君に注意をなしたるのち、參考文書は速記録に掲載の便宜あるにより、時間を尊重して徳義上これが朗讀を止められんことを望む旨を告げたる際、議場騷然して一時休憩した。(笑聲)こんなことはよけいなことでありますから省略いたします。(笑聲)再開と同時に議長粕谷義三君は倉元要一君の演説に對し、議長は再三注意したるにかかわらず、同君は依然として參考文書を朗讀して少しもその論旨を進めない……。鈴木君のはどんどん論旨が進んでおります。(拍手)これとは實例がまつたく相違をいたしておる。參考文書を朗讀し、少しもその論旨を進めず。かくのごときはいたずらに議事を妨害するものと認められた。これは私は相當な論據があると思います。論旨を少しも進めないような人に對しては、粕谷議長がこれに中止をするといふことも相當な論據があると思いまするが、しかし鈴木君は論旨は一定のところに止まつたことはないのでありまして、どんどん論旨は進んでおり、しまいには自分の重要なる研究をいたしておりました文書を朗讀いたしておつたのであります。その時に委員長が中止をしたのでありまするから、これもはなはだ中止の場所が惡い。これはまつたく委員長の中止の發言に影響があることでありますから申し上げるのでありますが、鈴木君も文書をいろいろ援用していたけれども、發言禁止當時は——これは重要なことでありますけれども……これは一枚どこかへいつちやつたから……ああ、落ちている。(笑聲)幸にしてありましたから、これも引用することを委員長特にお許しを願いたいのであります。委員長は不信任案の提出中に鈴木君の發言を禁止した論據として、第五十議會の例をあげましたが、その文書朗讀を唯一の理由にいたしておるのでありまするけれども、委員長が鈴木君の發言を禁じた當時は、全然參考文書は朗讀をいたしておらぬのであります。(發言する者あり)靜かにして下さい。發言が聽き取れないと、せつかくの發言が速記に載らないと困りますから……。(「進行々々」と呼ぶ者あり)參考文書は鈴木君は朗讀をしておらなかつたときであります。發言を禁止した時は——鈴木君は選擧權に關する議論の比例代表の著書を引用いたしておつたが、禁止した當時は論題を改めて、全然參考文書を引用することなしに、新たな議論を進めておつた時であります。鈴木君は注意を受けましたので、あるいは多少でも、少しでも先例に該當することがあつてはならぬということから、鈴木君は綿密な注意のもとに、違う文書を、自分で研究した研究論文を、あとはお讀みになつておりまして、その時に發言を中止をされたのでありまして、まつたくこの先例にありますような、論旨を進めずということとはまつたく違つておりますことが、これによりまして明確になるのでありますが、なお先ほど委員長はたくさん先例があると言われました。いかにもこの先例集を見ますというと、發言を中止した場合がたくさんあるのであります。よければこれも引用を許していただきたいのでありますが、たくさんだという方がむろんおありだと思いますから、これも私は發言の進行を早くするために、この點についても省略をいたします。これはやろうと思えば、確かに委員諸君の御參考にもなるし、發言停止が正しいかどうかの重要な參考文献ではありますけれども、この際そういうことについては省略をいたしてもいいのでありますが、この問題につきましては今私は議事妨害と認められた先例だけを申し上げて、むしろ私は鈴木さんとしては、鈴木さんには不利益な先例だと思います。今進歩黨の方からも、そういうものを讀んではかえつてやぶへびじやないかというようなことを言われましたが、私は議論の公正を期するために、不利益であつてもしかたがない。(拍手)利益なものばかり讀むということは私の本旨ではありません。不利益なものもあえて讀みまして委員諸君の參考に供するということが、これがほんとうの正しい道だと思いますからして、全部洗いざらい、いいものも惡いものも申し上げて、皆さんの御參考に供したいのでありますが、さらに參考文書を引用したということについての先例は、これはどうしても重大でありますから引用するよりほかには方法がないのでありますから、參考文書を引用することがいいか惡いかということについての先例だけは、讀むことを許していただきたいのであります。これをやらぬというと參考文書を引用することの是非ということが、過去においてどういう扱いを受けたかということについて、非常に重要な關係をなすのでありまして、その點についてはこれも不要なところは省略いたしまして、要點だけを拾つて申上げまするからお許しを願いたいと思うのでありまするが、「文書ハ引證若ハ報告ノ外之ヲ朗讀スルコトヲ得ス」ということになつております。引證の場合は差支えがないという先例でありまするが、「會議ニ於テハ自己ノ意見書又ハ理由書ヲ朗讀スルヲ得ス然レトモ演説ノ引證又ハ或事項ヲ報告スル爲簡單ナル文書ヲ朗讀スルコトヲ妨ケス而シテ其ノ朗讀ハ議員自ラ之ヲ爲スヲ例トスルモ書記官長若ハ書記官ヲシテ之ヲ爲サシメタルコトアリ」ということをいつておりますが、大したことはないからこういうことは省略いたします。引證のために朗讀をして問題になつて今日のような問題を起しておりまして、きわめて適切なものだけを引用いたします。第十囘の帝國議會におきまして、明治三十年、ちよつと古いけれども例はなかなか適切の問題であります。政府提出新聞紙條例中改正法律案第一讀會の續會において工藤行幹君、どこの人か説明はありませんけれども、何黨の人かわかりませんが、工藤行幹君は本案に關する參考書を朗讀せしめたき旨を請求したるに、議長鳩山和夫君は院議に從つて、特に書記官をして參考書を朗讀せしめたり。これは大した議長であります。參考書を書記官をして朗讀せしめた。この先例によりまするならば、鈴木君は自分で讀まないで、書記官をして(拍手)朗讀せしめればよかつたのに、自分でその時間も苦勞して朗讀するものだから、そこで問題が起つたのでありますが、書記官をして參考書を朗讀せしめる、こういう先例がある。さらに大正九年の四十二囘の帝國議會におきましても、きわめて重要な、大正九年の一月二十四日、國務大臣の演説に對する質疑に對し、高橋大藏大臣の答辯中、サー、テヤールス、ウヰード氏の物價問題に對する説を——外人の説を引用した人ですね。物價問題に對する説を引用朗讀したるに議場騷然たり、よつて議長、それは大岡育造君であります。「ハ引證ノ爲簡單ナル文書ヲ朗讀スルハ法規ノ認ムル所ナル旨ヲ告ケ靜肅ノ注意ヲ爲セリ」議場騷然としたけれども、文書を朗讀することは法規の認むるところだから靜肅に聽きなさいといつて注意をした。(拍手)岩本委員長がもしこの先例を讀んでおりまするならば、かくのごとき無理な發言の中止をするというようなことはなかつたろうと思いますけれども、惜しむらくは先例集を御覽にならなかつたために、こういう問題が起つていると思います。これはあまり古いものばかりでありますから、その他を省略して、參考文書を讀んだことが一體いいか惡いのかのことについて、もう少し新しい昭和になつてからのものを一つだけ引用いたします。それによると、五十六議會でありまするからずつと近くになつてからであります。昭和四年一月二十九日、原夫次郎君——これはまだ現在議員の方でありまするから、わからなかつたらお聞きになつたらよくわかると思いますが、原夫次郎君は國務大臣に對する質疑中、佐藤實君の刑事事件に關する聽取書なるものを朗讀したところが議場騷然たり。よつて副議長清瀬一郎君——この人も存命中であります。副議長は、衆議院規則によれば演説の代りに朗讀は許さざるも、報告または引證のため文書を朗讀することは許されたるところである。であるからただ簡單なるを要する。よつて原君に質したるところ、簡單なる趣きなれば引續きこれを許可するも、なお長きにわたるにおいては適宜處置する旨を述べている。こういうことになつているのであります。あまりたくさん申し上げることはよくないと思いまするから省略いたしまするが、不利益なものもあえて公正を期するために讀んでおります。さらに報告のために朗讀した例などもたくさんありまするけれども、よければ引用いたしたいとは思いまするが、これも省略をいたします。こういう先例でありまするとか、あるいは議院法というようなものの規定から考えてみまするならば、鈴木委員の發言というものは少しも發言停止に該當しないということが、この法規の上からも、あるいは先例の上からいたしましても、私は論ずることができると思うのであります。しかるに岩本委員長は、この先例集であるとか、あるいは法規に明確になつているのにもかかわらず、あえて鈴木君の發言を停止いたしたのでありまして、どうか諸君は、この點についてどちらが一體正しかつたか。鈴木委員の發言を止められたことがよかつたか惡かつたかを判斷していただきたいと思うのであります。
次は一身上の辯明について鈴木君から發言を求めたのであります。これも委員長は許さない。一身上の辯明を許さないということは違法であります。委員長としては一身上の辯明は許さなければいけないのです。これまた澤山先例がありまするから、これも問題になります。さらにその前に佐竹君ほか數名の者から質疑の申し出がありましたが、これも委員長は中止をいたしております。これについても澤山先例があるのであります。また私が提案をいたしました不信任につきましても、これは先決問題でありますから、他の議案のすべてに先決してやらなければならないという先例もあるのであります。こういう點についても委員長はいづれもその發言を止めたのでありまするから、委員長としては、はなはだ私はその當を得ておらぬと思つております。そこでこれから一身上の辯明が正しいか正しくないかということについて議論にはいるのでありますが、これまた先例を引用してまいりますと、數時間を要すると思います。しかし食事の時間のようでありますが、食事を拔きにしてやるということでありますか、どうでありますか。この際委員長の御意見を承りまして、食事をやらないで腹が減ろうがどうしようがやれということでありましようか。それならばやむを得ないからこのまま十二時まで繼續いたしますけれども、どうせ一囘休憩をなさらねばならないと思いまするが、それとも理事會でも開いてやりませうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=30
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031・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 委員長の考えといたしましては、先ほど中村君ほか理事會できめた通り、この不信任案の議題全部を終了してから食事をすることになつておりますから、それを守ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=31
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032・中村高一
○中村(高)委員 どうせ一度食事をしなければならぬのだから、途中で休憩したらどうですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=32
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033・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 あなたは發言が終つたのですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=33
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034・中村高一
○中村(高)委員 終つてはおりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=34
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035・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 では進めてください。あなたの發言が終つてしかる後、そういう動機が出たら委員長はしかるべく處置します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=35
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036・中村高一
○中村(高)委員 それでは、鈴木君の一身上の辯明を鈴木君が求めたのにもかかわらず、委員長はこの一身上の辯明を許されないで、遂に混亂をいたしたのでありますが、委員長がもしも鈴木君の一身上の辯明を求められたことにつきまして、これを採用いたして先例の通りにやりますならば、ああいう混亂はなかつた筈であります。しかるに委員長は重要なる議員の一身上の辯明を遂に許されなかつたので、これもまた先例を例にとりまして、この判斷をつけるほかには仕方のないことでありまするから、委員長が休憩を許されない以上はやむを得ませんから、文書を引用することを許していただきたいと思います。一身上の辯明というものは、これは原則上、許すことが先例であります。一身上の辯明を許さないということが例外なんです。そういうことを委員長は研究をいたしておらないために、ああいう無理なことをやつたのだと思いまするが、一身上に關する辯明は、場合によつたならばこれを許さないこともあるということが例外になつておりまするのであつて、許す例というものが當然でありまするから、先例集にはないのであります。ところが一身上の辯明になりますると。許すことが先例でありまするから、許さない場合だけがこれに載つておりますることを考えてみても、委員長はいかに無理をいたしたかということが明確になると思います。從つてこの點につきましては、先例を引用することを許していただきたいのでありまするが、一身上に關する辯明は議事日程の變更を要せず、これを許すを例とする、場合によつてはこれを許さざりしことありとこう書いてあります。實にこの點については明確でありまして、一身上の辯明は許すのだ。けれども場合によつたならば、これを許さないことがあつたと言うて、それの例外が先例となつて出ておるのでありまして、懲罰に關する場合は、事犯ありと告げられたる議員、懲罰動機の議決前辯明のために——これは懲罰の場合でありまするからして、今度の例とは違います。しかしながら一身上の辯明に關しましては、先例集でありまするから全部同じとは申しませんけれども、こういうことになつております。議員懲罰動議の議決前に、辯明のために數囘の發言をなし得るも、議長の職權をもつて懲罰委員に付せられた場合は、議長の宣告と同時にその効力を發生するものなるがゆえに、懲罰事犯の會議において、辯明をなすのほかなきものとす。例外の場合を申しますると——許さなかつた例外であります。大正十三年でありまするから、これも相當古いことであります。四十九議會であります。政府提出非常徴發令廢止に關する法律案の第一讀會にはいるに先だちまして、田淵豐吉君は一身上に關する發言を求めたけれども、副議長の小泉又次郎君は、田淵君は既に懲罰委員に付せられたる後の發言の要求なるのみならず、さきに懲罰委員に付するの動議が出た際、田淵君のある言辭を取消すか、取消さぬかの意思を問うべく發言を許した際にも、十分一身上の辯明は盡されおるものと認むる旨を告げて發言を許さなかつた。重大な引用でありまするから、もう少しこれを引用いたします。その後政府の提出いたしました復興貯蓄債券法案の第一讀會にはいるに先だちまして、さらに田淵君はしばしば一身上に關し發言を求めたるをもつて、副議長は懲罰事犯に關係ない一身上の辯明に限つて發言を許可せり。なお同月十五日、田淵君は謝辭朗讀を命ぜられたるにも拘らず、その命に從わなかつたので、さらに懲罰委員に付せられたのであります。同日その懲罰事犯の會議にはいるに先だつて、同君は一身上の辯明を求めたけれども、副議長はこれを許可せざる旨を宣言をいたした。かように書いてあるのであります。なおこの先例は、讀みまするとたくさんあります。しかしながら全部を私は朗讀しようとは思いませんけれども、いかに一身上の辯明というものが重要なものであるか。議員にとりましては、一身上の辯明をするということが從來の先例であります。おそらく鈴木君としても、黨を代表してせつかく討論をいたしておるのにかかわらず、發言を停止せられまするというようなことは、鈴木君としてもおそらく不滿だと思います。もしこれが先例集にもないとか、あるいは法律にもないということでありまするならばいざ知らず、堂々と法律において認められ、先例集において認められておりますことが、この本質問題になつております岩本委員長の手によつて行われたというところに、先例無視の問題があるのであります。(拍手)さらにこれは第五十一囘の議會でありまするが、ここでも例外として許さなかつたという例外の場合がありまして、この法案に關係をいたしております問題と關連がありまするが、大正十五年の三月二十五日、これは高橋熊次郎という人がやつたときの問題でありますが、高橋君が何か謝辭を朗讀するという場合であります。その際に一身上の辯明のために發言を求めましたところが、副議長は小泉又次郎君でありますが、この人はこれを許可せざる旨を宣言をいたした。なぜ一體小泉副議長が高橋熊次郎君に、せつかく一身上の辯明を求めておつたのにもかかわらず、これを許さなかつたかといいますと、これは相當の理由があるのであります。高橋熊次郎君は懲罰事犯に付せられておりましたために、これを許さなかつたという場合でありまして、今度の鈴木君の場合などは、何も懲罰に付せられたわけでも何でもありはしない。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=36
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037・淺沼稻次郎
○淺沼委員 委員長ちよつと中村君の發言中でありますが、中村君の發言にも關連して議事進行についてお許し願いたいと思います。中村君のお許しも願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=37
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038・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 中村君が結論に入りましたら發言を許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=38
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039・中村高一
○中村(高)委員 私はいいです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=39
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040・淺沼稻次郎
○淺沼委員 本人の許可を得ましたからお許しください。決して議事を長くしようとか、この委員會を紛糾させようとは思つておりませんから、その點も御諒承のうえに、もしそういう事例があつたら御許可願いたいと思うのであります。(「ノーノー」「委員長の責任で三分間休憩を願つたらどうです」と呼ぶ者あり)發言中でありまするけれども、議事進行について發言中の議員の許可を得ましたからお許し願いたいと思います。動議でありません。議事進行です。それがために私は議事を混亂させようとか長引かせようと思つておりませんから、事務當局でよいというならお許し願いたいと思います。
〔「淺沼君に發言を許してないでしよう」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=40
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041・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 中村君の發言中ですが、淺沼君が一方的に話したことは耳に聞いております。中村高一君に御相談がありますが、議事進行について發言があるようです。ちよつとあなたの發言を待つてください。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=41
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042・淺沼稻次郎
○淺沼委員 議事進行中に發言を求めましたことは、中村君が發言中でしかも討論中でありまして、はなはだ恐縮に存ずるのでありまするが、ただいま時刻は七時十分を過ぎております。先ほど委員長の宣告では、理事會において進行については決定をして、その理事會の決定を委員長は忠實に守つてやりたいということでありまして、委員長としては私は當然かくあるべきだと思うのであります。從いまして、委員長が議事進行の上に、理事會の協定を守つていかれようということについては敬意を拂うのでありますが、やはり私ども一應夕食をしなければならぬ時間が來ておると思うのでありまして、腹をすかしておいて議論をするということもいかがかと思うのでありまして暫時休憩をされんことを希望する次第であります。あとの議事進行については、もう一囘理事會を招集願いまして議事を圓滑に進行していただくようにお願いしたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=42
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043・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 ただいま淺沼稻次郎君の動議の次第もありますから食事のために暫次休憩をいたします。
午後七時八分休憩
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午後七時五十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=43
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044・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 休憩前に引續き會議を開きます。中村高一君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=44
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045・中村高一
○中村(高)委員 休憩前に私が申し上げました委員長不信任の理由につきましては、大體その要領を申し上げてありまするので、これ以後は各論になりまして、詳細なことを説明せなければならなくなりますので、ただいままで申し上げたことによりまして、委員諸君の不信任案に對します審議につきましての私の趣旨辯明は、この程度でよろしいと存じまするので、あとは諸君の討論と御判斷に任せたいのでありまするが、どうぞ、この問題は、委員長の一身に關することでありまして、われわれもこの提案をいたしましたことは、公人として、議會の言論の尊重というようなこと、並びに委員會の權威のために申し上げたのでありまして、何らその間に私心なく、岩本君に對しましても、個人的に何らの考えもあるわけではありませんが、すべては公明なる議會政治を運用いたしたいという趣旨にあるのでありますから、さように御諒承を願いたいことを切望いたしまして、私の趣旨辯明を終りにいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=45
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046・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 これより討議にはいります。井上東治郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=46
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047・井上東治郎
○井上(東)委員 自由、進歩兩黨を代表いたしまして、ただいまの中村君提出の不信任案に對しましては反對の意を表するものであります。委員長のとられました處置に對しては、客觀的な情勢から見て、妥當なる處置であつたという點で、ただいまの動議に反對をいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=47
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048・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 鈴木義男君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=48
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049・鈴木義男
○鈴木(義)委員 私は中村委員の提案に滿腔の賛意を表する者であります。およそ會議體の、殊に言論の府の會議體の議長たるものは、至公至平、たとえ黨派に所屬しておりましても、議長の席にあります間は、まつたく黨派を離れた氣持で議事を進行させる義務だけはもつておらなければならないと思うのであります。それには、本來尾崎行雄先生が提案しておられまするように、すべての會議の議長、座長は、できるだけ少黨派の人、あるいは無黨派の人から選ぶべき慣習をつくるべきであるとすらわれわれは考えているのであります。そうでないまでも、黨籍を離脱して、彼のイギリスの議長が、常に選擧せられますれば黨籍を離脱するごとく、形だけ離脱するというようなわが國のごとき制度でなくして、實際に心から黨人たることをやめて、至公至平、ほんとうの議事の統裁をいたすべきであると思うのであります。わが國の議會の議長、各種委員會の委員長ほとんどこれは多數黨から選ばれておりまして、多數黨の代理人たるの觀があるのであります。まつたく多數黨のロボットである。もつと極端に言えば多數黨の中にも健全なる分子もあるのでありまするが、多數黨のボスの鼻息をうかがつて、ただ命これ從うというだけのようなものがあるのであります。はなはだしきは清盛入道のような議長、委員長が現われるのでありまして、まことに悲しむべきことであります。岩本委員長はこの席で初めてお目にかかつたのでありますが、なかなか腹のすわつた人であつて、由來お粗末な委員長の多い中では、まことに鐵中の錚々とお見受け申すのであります。その心臟の強さにも御敬服申し上げるにやぶさかではないのであります。しかし心臟の強さだけで名委員長になれるものではないのであります。公平無私、毫末の私心がないということが、最も大切な要件であります。殊にうしろに多數黨を控えておる。多數黨の威力を借りる。多數黨の頤使に甘んずるというようなことでありますれば、許しがたい偏頗であります。近代民主主義政治におきましては、少數者の權利というものを尊重することが最も大切なのであります。それで初めて議會政治というものがスムースにいくのであります。しかるに岩本委員長の態度は私の關與した限り、驚くべき獨斷專行ぶりであります。清盛入道もかくやと思われるものがあります。私は歸つてきていきなり「開會します。質問打切り。」とやられてしまつたので、びつくりしてしまつたのであります。なるほど私の言論は長かつたのでありまするが、長いことは相當の理由があることは、委員長もよく御推察のはずであります。故に武士の情というものもなければならないのでありまして、適當に御宥恕あるべきであつたと思うのでありますが、遂に發言を禁止せられたということは、私は公平であつたとは申しかねると思うのであります。少數黨の合法的抵抗は、長い演説あるだけであるということは、世界を通じて議會政治の常則であります。一番長い例は十九時間やつたという例があるのでありますが、五、六時間、二、三時間というものは、どこにでもざらに存在する實例でありまして、いずれの議長もこれを許しておるのであります。それを許さないならば、どうも實力でいくよりほかはなくなる。暴力でいくよりほかはなくなる。一種の革命を強要するということに相なるのであります。私のみるところ、委員長は最初からある既定の方針をもつてこの委員會に臨んでおるようにみえるのであります。その席上における言論によつて動かされるというところは見えないのであります。われわれがどう言おうと、ここへ來る前にだれかと御相談に相なつてちやんとある方針をきめてきておられるようにみえるであります。この場におけるわれわれの要求、氣持などは少しも顧みられない。しやにむにもつていくところに、もつていくように、みえるのであります。これは委員長は公平なる中立者でなくして、自由黨、進歩黨のしかも一部の人々の代理人、ボスに頤で使われるロボツトではないかと疑われるゆえんであると思うのであります。そうしてひとえに多數を頼んで何事も押し切ろうとする、さたの限りであります。これは社會黨、協同黨が今いかなる立場に立つておるかということを御諒承下さいますならば、こういう態度をおとりになることはできないと思うのでありまして、西尾氏が最初の日に、やむにやまれずして壇上に跳り上つて、諸君、見てくれ給へ、これが民政、政友全盛時代においてやつたところの暴力政治の實例である。こう叫んだことはまことに無埋からんことと思うのであります。ボスの存在するところ、常に多數黨の横暴が伴うのであります。世の中では申しておるのであります。追放された人の中にはまことに人間として立派な人が多かつた。追放を免れた生き殘つた人は、かえつて質が惡いために生き殘つた形があるのであつて、その支配下に自由黨の一兵卒として忠勤をぬきんずる。これは民主政治を談ずる資格がないとすら申すことができると思うのでありまして、自由黨の中に、私に向つて大いにやつてくれ、こう頼んだ人が少くないことをここに申し上げておきます。
〔「だれだ。」「名前を言へ」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=49
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050・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=50
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051・鈴木義男
○鈴木(義)委員 議會政治は多數ならばなんでもできる。しかし一體これに道義が伴わなければ一つの暴力團になるのでありまして、道義心のない多數黨の横暴は、議會政治の壓殺であります。これはかつての軍閥の專制と異なるところがない。國民の反感が必ずや爆發するであろうと思うのであります。往年政友會の全盛時代、思うてならざるものはなかつたのであります。あまりに横暴をたくましういたしましたために、ついに匕首を揮つてその統領を倒したということは、歴史に明らかなるところであります。これに對して天下の人々が何と申したか。實は私はお許しを得ればここに當時の新聞の切拔きを持つてまいりましたので、たくさんの時間を頂戴して述べるつもりでありましたが、すべてそれらは省略をいたしまして、要するにどうか多數黨の横暴ということを抑制していただきたい。その意味において委員長の不信任に賛意を表する次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=51
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052・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 石崎千松君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=52
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053・石崎千松
○石崎委員 石崎はアメリカに二十五年居つて昨年の一月に歸つたものであります。從つて日本語のいい言葉を知りません。きわめて粗野であります。つまり石崎は野人であります。でありまするがゆえに、私の今から話そうとする言葉の節々には、おそらく失禮に當るような言葉があるかも知れません。しかしこれは二十五箇年間アメリカにおつたということによつて、私は免じて貰わなくちやならないと思うのであります。少くとも私はこの提案に賛成する上から、私は中村さんが先ほど述べられたことを一番初めのAからZまで、ことごとくこれを證明しなければなりません。復習しなければならないのであります。從つて私の演説がもし許されるなら、今晩の十二時ごろまでかかるだろうと考えております。中村さんは先ほど岩本委員長に對しては、はなはだお氣の毒であると申し上げました。しかしながら私はこれを氣の毒だともなんとも考えておりません。當然のことだと考えております。しかも保守陣營が、私どものこの會議の決議をかように急がせようとするその冷酷さに比べるならば、私どもが岩本さんの不信任案を出すということは冷酷どころかきわめて温かい心特であると考えます。(拍手)數々申し上げたいことがあります、私は昨日から委員をずつとやつていまするが、その以前におけることは、私は正直に申し上げて實際のことをよく知らないのであります。しかし昨日から今日にかけて見たところの岩本さんが、あのような横暴を極めたあの岩本さんが、昨日以前において佛樣であつただろうと信ずるわけにはいかない。かようにして委員長初め自由黨の人々が、數をたのんでわれわれにむりに押しつけるということになれば、われわれもまた武器をもつて、十二時まででも、一時まででも闘わざるを得ぬのであります。私たちはいつまででもやつていこうと思います。大勢の人をたのむといつたようなやり方が、はたして民主主義であるかどうかということになりますと、私はここで相當なことをしやべらなくちやなりません。民主主義というものは絶對多數のものが、その力を頼んで小數黨を抑えつけるのじやありません。議會政治において多數のものが横暴を極める。そうして多數の意思を通すということになると、これ議會政治と民主主義とは矛盾せざるを得ぬのであります。しからばそのいずれをとるか、どつちがほんとうの民主主義でいくかということになる。いろいろ議論はあります。議論は拔きにいたしましよう。いたしましようが、少くとも力をたのんでそれでもつて押し通すことができるならば、自由、進歩の現政府は、何がゆえに連立内閣をつくつたかということを言わざるを得ぬ。自分の意思でもつてやつつけられるものならば、なぜ連立内閣をつくらずにそのまま押し切らぬかと言いたいのであります。昨晩でありまするが、私が現に私の目をもつて見たのでありまするが、不信任を提出いたしました時に、岩本さんはそれをつかみ散らかした。くちやくちやにももうとされた。その出された時に私はちやんとここから見ておつたが、それは時期は誤つていなかつた。ほんとうに理事であるところの中村さんがそれを出された時に、岩本さんがそれを受け取らぬということは私は間違いであるとかように考える。おそらくアメリカにはああいつたようなことはないと思つております。そうしてあの時の岩本さんの態度というものは、一口で言えば短いけれども、實際には大變あの時もめた。とるとかとらぬとかいつて、はなはだしくもめたのでありますが、ああいうことは私は委員長としてはなさけない行爲であると考えております。どうかああいうことがないように、うまくやつてくれればいいと、あの時に勤めたのでありますが、なかなかきかぬ。そうしてそのあげくにはとうとう受け取つたのでありまして、受け取るくらいなら、初めから心特よく受け取ればよかつたと私は考える。それからさらに鈴木さんが演説をなさつておりましても、その時にその發言を禁止いたしました。鈴木さんは御承知の通り學者であります。從つて學者が説こうとするところの眞理なり理論なりというものは、われわれが考えるよりも十倍も二十倍も廣く深いはずであります。從つてでくのぼうどもが聽いたら、おそらくなんのことかというかも知れません。(拍手)私は鈴木さんの言うところが一々わかります。決して私は鈴木さんが軌道を踏みはずしたとは信じでおりません。にもかかわらず、途中において鈴木さんの發言を禁止したということは、私は委員長としてまことに越權であつた。まことに私は殘念であつたと思います。あの時は十一時二十五分でありましたから、十二時までもうあと三十五分しかない。私はその時に聽きました。何がゆえにあと三十五分間やらせることができぬか。何がゆえに三十五分間おし縮めて昨日のうちにやめさせなくちやならぬかと答辯を求めましてが、それに對して十分な答えはありませんでした。今でも私は尋ねます。何がゆえに昨晩はあと三十五分間だけ靜肅にしていくことができなかつたか。私どもは電車がなくなつててくてく歩いて歸りました。歩いて歸つたのでありますから、皆歩く氣であれば聽かれるはずであります。私はそこに深い企みがあつたと考えます。(拍手)二月十二日に——これは言うていいかどうかしらぬが、おそらく言うてもよかろうと思います。怒られるなら私が怒られるのだから、ほかの人は世話をやかぬでもいい。二月十二日に日本側から今度の選擧のことでG・H・Qに尋ねておるそうであります。中選擧區單記制にするかどうか。その時に返事が來たそうであります。それからつい近ごろになつてまた日本人からでて來たそうであります。二月十二日とまた同じような返事がいつたということであります。ところが前の二月十二日の時の返事に對しては何らの方法を講ぜないでもつて、この議會が濟もうとする今日、次の選擧に移ろうとする今日、急遽足もとから鳥が立つようにして、新しい法案を出そうとなさるということの眞意は、はたしてどこにあるのか。(拍手)私は尋ねざるを得ぬのであります。その結果がかようなところに事態をひつぱつて來た。それがさらに委員長に反映したということであります。從つて委員長がうまくやつたであろうということは、何人にも想像ができないのであります現にそれらの數々を私は私の目をもつて見ております。だから私はもはや結論を急がなくちやならないようになりましたが、私はこれらのことに對しまして——これらのことと申しますのは私が言う足もとから鳥が立つようにやろうとするこの選擧であります。私どもはこの選擧はよいが、隨分費用をかけてするのだから、これだけのことをしないでも、ほんとうに民主主義によつて世の中をひつぱつていかうとするなら、まず政府みずから民主主義に則つて、これらの重大法案を少くとも半年以前に世間に知らせて、そうして批判を仰いで、それから後に決すべき問題であります。(拍手)かくのごとく足もとから鳥が立つようにしてやると、その結果がかようなことになるということになると、私ども日本の議會なんていうものは、ろくでもない者が一ぱいいるもんだ。かように考えます。(「けしからぬ」と呼び、その他發言する者あり)けしかるも、けしかけぬもない。これはまさしく事實でありまして、私ども今夜八時二十分までやらされたということは……。
〔「議會を侮辱するのか」、「ろくでもないとはなんだ」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=53
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054・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 石崎君、發言を御注意を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=54
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055・石崎千松
○石崎委員 さようでございます。日本の議會はまことに立派な議會でございます。そこで私は言葉がはなはだ惡いから、こらえてくれということを前から言つておるのであります。(拍手)いや私どもは、私ども初め——いやこれはやめておきましよう。言いますまい。要は私の申し上げようとするところのものは、私は中村さんの説に賛成いたしまして……(「なまいき言うな」と呼ぶ者あり)中村さんの説に賛成するというのが何がなまいきだ。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=55
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056・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=56
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057・石崎千松
○石崎委員 中村さんの説に賛成いたしまして、その案が通りますように、皆さんにひとつ御投票願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=57
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058・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 これより採決をいたします。この動議に賛成の諸君は御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=58
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059・小澤佐重喜
○小澤(佐)委員長代理 起立少數。よつてこの動議は否決されました。(拍手)明日は午前十時より開會いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後八時二十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00519470323&spkNum=59
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