1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)(第一七號)
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昭和二十二年三月二十五日(火曜日)
午前十一時五十一分開議
出席委員
委員長 岩本信行君
理事 小澤佐重喜君 理事 椎熊三郎君
理事 中村高一君
神田博君 細田忠治郎君
廣川弘禪君 山村新治郎君
堀川恭平君 五坪茂雄君
山崎岩男君 山下春江君
鈴木義男君 佐竹晴記君
淺沼稻次郎君 大島多藏君
石田一松君 石崎千松君
同日委員大久保傳藏君、西山冨佐太君及び松原一彦君辭任につき、その補闕として山崎岩男君、堀川恭平君及び石田一松君を議長において選定した。
出席國務大臣
内務大臣 植原悦二郎君
出席政府委員
内務政務次官 林連君
内務次官 齋藤昇君
内務參與官 水田三喜男君
内務事務官 林敬三君
内務事務官 小林與三次君
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本日の會議に付した議案
衆議院議員選拳法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=0
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001・岩本信行
○岩本委員長 前日に引續きまして會議を開きます。この際ちよつと申し上げておきますが、委員外のお方は傍聽席の方へお移りを願いたいと存じます。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=1
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002・淺沼稻次郎
○淺沼委員 ただいまの議長の發言について發言をお許しいただきたいと思います。
〔「下れとは何だ」「餘計なことを言うな」と呼びその他發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=2
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003・岩本信行
○岩本委員長 暫時休憩いたします。
午前十一時五十四分休憩
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午前十一時五十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=3
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004・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。鈴木君より修正案が提出されております。趣旨辯明を許します。鈴木義男君。
〔淺沼委員「私が發言を求めております」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=4
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005・岩本信行
○岩本委員長 鈴木義男君始めて下さい。
〔淺沼委員「私は議事進行について委員長に發言を求めておるのです」と呼びその他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=5
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006・岩本信行
○岩本委員長 申し上げます。傍聽人の問題について先ほど宣告いたしましたが一應取消します。鈴木義男君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=6
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007・鈴木義男
○鈴木(義)委員 私は社會黨を代表いたしまして、わが黨提案になる修正案の趣旨を御説明申し上げます。まず修正案文を朗讀いたします。
衆議院議員選擧法中の一部を左の通り改む。
第二十七條第一項中「左ノ區分ニ從ヒ」という文字を削る。「又は數人」とあるを削る。
第一號乃至第三號を削除する。
第六十九條第一項中「有效投票ノ最多數ヲ得タル者」とあるを「得票最多數ノ者」と改め「有效投票ノ總數」とあるを「各議員候補者ノ得票ノ總數」と改めこの一項を第二項とする。
新たに第一項として「有效投票中第一位ノ多數ヲ得タル者ヲ第一順位ノ當選者トシ其ノ得票中次順位ノ者トノ差數を其ノ當選者ト同一政黨に屬スル次順位ノ者ノ得票數に加算シ其ノ加算シタル得票數ト前記次順位者ノ得票數トヲ比較シ第二順位ノ當選者トシ以下同一方法ニ依リ同一政黨所屬ノ次順位得票者ニ第一順位以下ノ當選者ノ得票ヲ移讓シ定員數ニ達スル迄ノ得票ノ計算ヲ爲シ當選人ヲ決定ス」を挿入し、舊第一項を第二項とし、以下順次繰り下げる。
末項に「議員候補者ハ第六十七條第一項ノ屆出ノ日ニ所屬スル政黨アルトキハ之ヲ選擧管理委員會ニ屆出ヅベシ若シ右期日ニ本項ノ屆出ナキトキハ本條第一項ニ依ル得票ノ移讓を受クルコトヲ得ザルモノトス」を加える。
別表中東京、大阪、兵庫、新潟、愛知、福岡、北海道の二區を一區に改める。これが修正原案であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=7
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008・岩本信行
○岩本委員長 暫時休憩いたします。
午後零時六分休憩
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午後一時五十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=8
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009・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。鈴木義男君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=9
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010・鈴木義男
○鈴木(義)委員 提案の説明にはいります前に一言いたしまするが、この提案趣旨の説明の時間を非常に短かく短縮せられましたことは、まことに遺憾とするところであります。殊に重大な法案についての説明を、短かい時間でやるということは不可能でありまして言論制限のはなはだしきものと思うのであります。議會は言論の府でありまして、よほどの事情のない限り、あるいは自發的に自肅をいたしまする場合を除いて、言論はみだりに制限すべからず、封鎖すべからず、剥奪すべきものではないと思うのであります。しかるに多數主義をもちまして、しやにむに押切られましたることは、非常なこれは多數主義の濫用であり、間違つたる運用と思うのでありまして、後に本論において詳細御説明申し上げるつもりでありまするが、多數決主義というものはそういうものではないのであります。少數の意見を十分に尊重しつつ最後に數をもつて決するという制度でありまして、この點について私は本委員會の決定を、はなはだ遺憾に存ずるのであります。文書で出したらよかろうという御説がありますが、元來議院法八十七條も原則として口頭陳述主義をとつているのでありまして、そのために文書を用うることを制限してありますから、その制限している文書を出せ——先日私が文書を利用して述べているときに文書を利用しているから發言を禁止するこう言われたのでありますが、今度述べるのは短かくして文書を出せ、かくのごとき態度は、はなはだ横暴と言わざるを得ないのであります。(拍手)殊に文書をもつて意思を表示することは容易ならざることでありまして、ここで二時間口述いたしますることを文書に作成いたしまするためには、少くとも一週間の時日を要するのであります。そういうことができないから口頭で述べるのでありまして、この點においても用うべからざる制限であるということを申し上げておきたいのであります。時間の短縮ということは法案にもよることであります。簡單にせられてよろしい法案も多々あるのでありまするが、よい選擧法をつくるということは、よき國會を得る前提であります。民主政治の根幹をなすものであります。わが國の民主化が行われるかどうかという岐路でありましてこの重大なる問題に對して、時間を短縮するというがごときことは、私のとうてい承服しがたいところであるのであります。この今囘の御處置のごときものは、世界いずれの民主主義國家においても、未だかつて類例を見ざる暴擧であるということを申し上げておきたいのであります。そこで何ゆえにこの改正の提案をするか。本來選擧法を改正するということはわが黨の素思ではないのであります。この際選擧法を改正するということはわが黨は反對であるのであります。私のさきの討論の中におきましても、その意思を表示いたしておいたのでありまするが、最近自由黨、進歩黨の兩黨から改正の御意圖があるということをたしかにはつきりした形において承わりましたので、殊に政府が提出したる技術的、手續法的改正案に付隨して、拘き合わせで選擧法の根幹に觸るる修正を御提出になることがわかりましたので、これは實によろしくない態度である。しかしながらただこれを坐視することはできませんがゆえに、われわれは本來、素思ではありませんけれども、われわれとしてもまた正當と信ずる理想案をひつさげて、改正をここにはかるということに相なつたわけであります。現行法必ずしも缺點がないとは申しません。しかし選擧戰の開始を近々一週間後に控えて、各黨各候補者とも、大選擧區を前提としてそれぞれ準備をほぼ整えました今日、それを一切ご破算にしてまで、新しい準備をするのいとまないことを知りつつ、拔き打ち的にわが黨の水谷君のいわゆる巾着切りのようにどさくさまぎれに、數をたのんでがむしやらに、惡く申せば火事どろ式にやつてまで(拍手)これを捨てて中選擧區制に乘り替えなければならぬほどの缺陷を認めるわけにはいかないのでありまして、現行法は少くとも今一度ぐらいは用いるに足る制度であると考えるのであります。この際の改正はわれわれは反對であります。しかし改正を企てられるというならば、ここにこの選擧法改正委員會というものがあるのでありますからこの委員會の議に付せられて審議ののち本會議にこれをもつていくべきものである。これが國會における審議の常態であると考えるのであります。委員會に出さずに委員會はきわめて技術的な手續的な修正、改正だけをいたしまして、それを本會議にもつていく。本會議において委員長が報告をされると、その報告には不滿であるから、ここに根本的な改正をすると稱して、重大なる修正案を出すというがごときことは、決してこれは國會の議事運營の上における常道でないと考えるのであります。しかしわれわれは、そういうことをしないように、堂堂と正面から單獨法案でおやりになつたらよかろうということも申し上げましたけれども、遺憾ながら容れられないということでありますから、ここにやむを得ず、われわれのこの穩健妥當な、しかも實際的な論が容れられないのでありまして、他黨におきましては修正に名をかりて、しやにむに選擧法の根幹に斧鉞を加えようと遊ばされるのでありますから、わが黨としても、この際思い切つて理想的な、よい選擧制度に改めるべく努力したいと存ずるのであります。中選擧區單記というがごときは、まつたくこれは理論的根據のない制度であります。ただ便宜主義な、多分に偶然に頼るところの制度でありまして、現在のこの大選擧區制限連記制の方が、理論上は一層説明のできる合理的根據をもつておる制度であることは、後に選擧制度を比較いたしますときに申し上げたいと思うのでありますが、中選擧區單記というのは、世界にも例のない制度である。理論的には最も説明困難なものであるのであります。しかしながらもし他黨でも根本的な修正を出すということでありますならば、われわれも出さざるを得ない。われわれの主張はきわめて理論的なものである、また理想的なものでありますので、これを説明いたしますのには、まず前提を明らかにしつつ、きわめて理論的かつ根本的ならざるを得ないのであります。そこで比例代表法を説くにつきましては、われわれの提案は、簡單な言葉で申せば、大選擧區單記移讓式比例代表法という選擧のやり方であるのであります。この比例代表法を説くにつきましては、多數代表と少數代表というものの意議を説かなければならぬのであります。それはまた選擧なるものの根本理念から出發しなければ、理解をいただくわけにはまいらぬと思うのであります。そこでいきおい選擧とは何ぞということから説き起さなければならないのであります。以下政治の理念としての民主政治その實行方法たる代議政治及びその選擧の意義、選擧權、被選擧權、選擧區投票の方法等を論じまして、次第に比例代表の意義、方法、その價値判斷、わが黨が提案する選擧法が最も合理的にして、優秀なる制度であるということに及びたいと存ずるのであります。
そこでこの選擧という制度でありますが、これは申し上げるまでもなく、ひとり政治上に存在する制度ではなくして、社會的もろもろの現象に附隨して存在するところの制度であります。いろいろな組合でありますとか、もろもろの團體、學界であるとか、いろいろなものがみな選擧ということをやつて、それぞれの機關を構成させておるのであります。しかし何といつても、選擧というものが發達をいたしましたのは、政治團體におけるそれでありまして、政治あるところ選擧あらざるなしと申して差支えないのであります。きわめて極端な專制主義を除いては、必ずギリシヤの昔から選擧というものがあつたのでありまして、彼の公法學者モンローが、選擧の歴史は同時に政治の歴史である。選擧の歴史は同時に文明史である。こう申したことは理由あることであると思うのであります。そこで、この選擧には政治的な意義と法律的な意義とがあるのでありまして政治的な意味においては、適當なる代表者あるいは適當なる機關を選定するところの一つの方法でありますが、法律的な意味におきましては、いわゆる國家機關を構成する公務員を選任するところの行爲でありまして、これが君主あるいは大統領というようなものが單獨でいたします場合には、これを任命といい、國民大衆がいたします場合には、これを選擧と申すのであります。その法律上の効果はともにひとしいものであるということが、ほぼ學界の定説であります。君主の任命は單獨行爲であり、國民の選擧は合同行爲であるという差はありますが、大體その法律上の効果は同じものである。しかしていやしくも政治的共同體を構成いたしますものは、貧富の別なく、老幼の別なく、男女の別なく、教育を受けた、受けないの別なく、國家意思の構成に參與し、國家の運營に參與する資格があるものと信ぜられておるのでありますから、これが民主政治の根本理念でありまして、その民主政治の選擧は、必然的に普通選擧にならざるを得ないこともまた當然であります。制限選擧から普通選擧へということは、選擧法の歴史を見ますれば明らかなことであります。わが國は今日まで、いろいろなことを申しましても、非常な制限選擧であつたのであります。今囘初めてこの憲法改正によりまして、國民が徹底的なる普通選擧と、公務員の選任權とを得たのでありまして、新憲法の第十五條に、公務員を選定しこれを罷免することは、國民固有の權利であるということを明瞭にいたしましたのは、まさに民主主義の理想を現實化したものと存ずるのであります。一體主權は國民にあるというようなことで、新憲法は國民主權主義を明らかにいたしたのであります。この意味がほんとうに國民の間にわかつているかということにつきましては、疑問なきを得ないのでありまして、相當識者といわれる人の御説明を聽いておりましても、實は一向不得要領な、顧みて他を言うような説明が多いことをわれわれは遺憾に存じておるのであります。今國民主權論を説明いたしている時間はありませんから、それは省略いたしますが、たとえばこの公務員を選定しこれを罷免するということが、明らかに國民主權説の大きな現われでありまして、上は内閣總理大臣より、下は一警察官に至るまで、これを選任する權利があつて初めてこれを民主國というのである、そういう權利がない國民は民主國ではないのであります。ゆえに今囘の新憲法におきましては、御承知の通り、内閣總理大臣もこれを公選にすることになつたのであります。本來から言えば全國民をして投票せしめて今度はたれを内閣總理大臣にするかということをきめるべきものと思うのであります。われわれ憲法審議の際そのことを主張いたしたのでありますが、全國民をして選ばせるということになれば、投票を算えるだけでも一箇月かかる。これでは實際の組閣の上に困難であるから、いわゆる間接選擧の方法をとりまして、一應國民が信頼して出した國會議員というものがあるのであるから、その國會議員が國會においてこれを選擧する。そうしてきのうまで官僚の古手であつたものを一晩のうちに借りてきて、がん首のすげ替えをするというようなことのないように、これは尾崎行雄先生の御警告でありまするが、國會において眞に國民の前にその主義政策を公に約束しておるところの政治家のうちから、すなわち國會議員のうちから必ずこれを選定する。こういうことにきめたことは御承知の通りであります。府縣知事、市町村長、その他あらゆる公務員が國民の選擧によつて選ばれるということになりまして、初めてこの民主主義の原則が貫かれつつあるわけであります。裁判官のごとき從來は國民が毫も手を觸れることのできなかつた存在、地位の保障というものを保障しておりましたところのものも、三權分立の建前から、もちろん内閣總理大臣もこれを動かすことはできない、國會もこれに關與することはできないが、主權者たる國民は、適當にあらずと信ぜられるものはこれを罷免することができる。すなわち國民投票によつてこれを罷免することができるというところまで規定をいたしたのでありまして、これらによつて初めてわが國は民主主義を貫きつつあるのである。私は新しき日本の黎明が來たということを、新憲法改正にあたりまして非常に喜んだ一人であるのであります。從つてこの國會議員——參議院議員も衆議院議員も同樣でありまするが、こういうものを選擧するということは非常に重要な意味をもつております。選擧は國家機關の公の行爲であります。選擧人團というものは、一つの國家機關であるということが公法上の有力な説でありまして、決してこれは烏合の衆ではなくして選擧人團という一つの選擧區に居住する選擧有權者は合して一體となつて國家機關を構成しておるのである。そうしてこの選擧という合同行爲を營むことによつて、公法上の効果を發生する行爲を營むのである。これはあたかも國會において總理大臣を選擧し、共和國において、國民議會において大統領を選擧するのと少しもその價値及び意義を異にしないのであります。ゆえにいかなる選擧人團をこしらえるべきか、いかなる選擧區をもつて一つの選擧構成の單位とすべきかということは、非常に大切な意味をもつのでありまして、われわれが選擧區の變更につきまして重大な關心を寄せまするのは、まつたくこの見地から來ておるのであります。しからば選擧とは何ぞ。これは學説を拾いますることはなるたけ避けたいと思うのでありまするが、しかし選擧の本質を知らずして選擧法の改正を論ずることはできないと思うのでありまするから、一言だけいたしておきたいと思うのであります。いわゆる反射的利益説がある。權利ではない。ただ國民が法によつて與えられた反射的利益に過ぎないのである。こういう説明をするものがある。あるいは權利ではないが、一つの公の職務を遂行するものである。あるいはエリネツクのように國家機關としての權利、さらに個人として國民がもつておるところの權能、これを特に選擧權と稱するのであつて一つの公法上の權利である。こういうふうに説明をする三つの説があることは御承知の通りであります。法律的にはいろいろに論ずることができましようが、私はこれが權利であるとともに、一つの公の職務であるということを前提として考えていきたいと思うのでありまして、すなわち國家意思というものを作成する過程に參加するところの權利である。權能である。すべての國民がこの國家意思の形成に參與するというところに、國民主權の意味があり、また普通選擧の意味があると思うのでありまして、新憲法の第十五條の第三項に「公務員の選擧については、成年者による普通選擧を保障する。」こういう規定をいたしましたのも、そんなことはわかり切つたことでなければならぬのであるが、わが國においては往々にしていまだこの國民主權の觀念が徹底しておらない。こう考えられまするがゆえに、特にこういう規定を挿入いたしましたことは御承知の通りであります。ゆえにいかにこの選擧制度というものを新しき憲法は重大に取扱つておるかということがわかると思うのであります。この民主主義の原則に基く普通選擧というものは、いかなる實際的の効果と根據をもつておるかということも、話せば長くなるのでありますが、これは申すまでもなく、普通選擧を實行いたしますことによつて、國民一般の地位が向上する。その結果一國の文化が高まる。第二には人民の公共心を養いまして國事に興味をもたせる。泣く子と地頭には勝たれぬ。お上の言うことはご無理ごもつともということが、封建思想であつたことは御承知の通りでありますが、そういう考え方から脱却せしめまして、この日本國を運營していくのが、われわれの責任であるという意識を國民全體に植えつける。こういう効果をもつておるのであります。また責任觀念を養成させることになるのでありまして、先日この委員會において私の發言が長きに失するということで禁止されたということで、私の郷里から言論を制限することはけしからぬことである。身を挺して戰つてくれというような激勵電報が五六本、あまり知識の高くない人からまいつたのでありまするが、その程度に選擧民は自覺をしてくるということが普通選擧の尊さであると考えたのであります。それから直接行動、過激行動を防止する効果があることは、申し上げるまでもないことであります。議會政治は御承知の通り、直接行動による革命を避けるために何事も話合いで解決をする。大いに議論をし、論爭をしてそうして最後に多數の決するところに落着かせるということで、できておるところの政治でありまするから、これによつて直接行動と革命とを防止する効果があることは申すまでもないのであります。しかしてこの普通選擧が選擧制度として最もよいところは、數の増加は買收を困難にいたしまして、小選擧區ならばすぐに、制限選擧の文句として一票十圓とか、二十圓とか、私の知つております人は、あの村をひとつ二千四百圓で請負つてくれ——よほど前のことでありまして、貨幣價値のもつと高い時の話でありますが、二百四十人あるから二千四百圓というので、承知しましたと言つて持つていつて、いよいよ投票がありまして、開けてみたらば一票もはいつておらない。それで頼んだ候補者は、僕はまさか二百四十はあてにしておらなかつたが、君の一票だけはあてにしておつたよ、こう申したことがあつたのであります。これは制限選擧の時代に一票十圓ということが、公定價格であつたのであります。そういうときの話でありまして、小選擧區でも普通選擧ならばよほど買收は困難になるが、しかしまだまだ遺憾ながら危險性が多い。中選擧區なればよほどそれはよいでありましようが、それでも有權者と候補者との關係が密接になること、大選擧區よりは遙かでありまするから、大選擧區の方がどうしても買收の危險を避けることになりまして、いわゆる有權者が非常に多い普通選擧が徹底しておるというところに、選擧の廓清ということが望まれるのでありまして、その點でわれわれは現行制度は非常によい制度であるということを喜んでおりましたところが、突如として再び中選擧區にこれをもどすというような噂を聞きまして、はなはだしく遺憾に存じておるのであります。しかし普通選擧の最も尊い點は、民衆の政治的能力を高めるというところにあるのでありまして、殊に普通選擧に感謝しなければならぬことは、勞働者、無産者の地位を向上せしめ、その自覺を上昇せしむる効果があるということであります。どこの國でも普通選擧が行われて後、初めて勞働者、無産階級が、ほんとうに人間に値する生活を求めて、その意識が向上しつつありますことは、明らかなことでありまして、彼の英國のごとき、その最も顯著なる例をわれわれに示しておると思うのであります。今度中選擧區にするということが、もしほんとうであるといたしまするならば、これは選擧區分割の企てでありまして、勞働者とか、無産者というものは、合同行爲の行使をもつて、自己の地位を向上せしめようとしておるのであります。そのほかに途はないのであります。新憲法が勞働者に向つて、勞働の權利を規定し、團結權並びに團體交渉權、その他の勤勞者の基本的權利なるものを規定いたしましたのも、ひとえにこれによつて勞働者の地位を高めたいという考え方からきておるのでありまするが、その方法は、一つは組合運動等において經濟的要求を貫徹するということにある。これは申すまでもない。いま一つは政治上において、この團結の力と數の力を利用いたしまして、自分たちの信ずるところの候補者を議會に送り、そうして自分たちの人間に値するに適當な生活を展開するがごとき立法をなさしめ、あるいは政治を行わせようというところにあるのであります。これは廣ければ廣いほどよろしいわけでありまして、一縣を一單位としまして、全國を一單位として單一の團結にまでなつたならば、參議院の選擧において、幾多の優秀なる代表者を送ることができるのであります。衆議院においても一縣一區というようなことでありますれば、それでもわれわれは小さきに過ぎると思いまするが、ほかの國におきましては、後に例をあげたいと思いまするが、日本くらいのちつぽけな國では、これを五つか六つくらいの選擧區にわけて、そうして比例代表法を實行しておる國も多いのでありますから、そういう方法においてこの勞働者、無産者の要求を貫徹させる。地位を向上せしむる。その要求を議會に反映させるという途を講じてやるべきでありますのに、既にわれわれは小さきに過ぎると思つておる一府縣を、今度の傳えらるるところの改正によれば、私の縣などは三つにわかれるのであります。小さくても二分し、はなはだしきはたつた五人くらいしか出ないところの選擧區をさらに二分して、二人にし、三人にしようというような噂すらも行われておるのでありますが、こういうことによつて普通選擧のそもそもの根本理想というものを沒却しよう、蹂躙しよう、壓殺しようという企圖が、その中に隱されておらないかということを、疑わざるを得ないのであります。せつかく伸びかけたところの民主選擧の伸展を、これは妨げるものである。そこに私どもは重大な意味を考えまして、愼重にこれに對處せざるを得ない理由があるのであります。
そこで選擧區のわかち方という問題でありますが、理論的に申せば全國選擧區が最も合理的であります。全國を打つて一丸とした選擧區をつくることが、國民の眞の意思を反映させるには、最も合理的なのでありまするが、その缺點は、私は今度の參議院議員選擧をやつてみたならば、すぐわかると思うのであります。參議院議員選擧法のときに、全國選擧區というものは、實際上においては幾多の缺點を藏しておるぞ。やつてみなければわからぬというものではない。やらないうちからわかるところの缺點をもつておるということを申し上げたのでありまするが、その缺點がありまするからこれはひとつ衆議院議員の選擧の場合におきましては、私は賛成ができない。他の黨派からは全國一選擧區の比例代表というものが、主張されておるようでありますが、理想的ではあるが、實際的には幾多の困難を伴うと思うのでありますから、しばらく私は賛成を留保するのであります。そうすればどうしてもこれはいくつかに區畫をせざるを得ない。そこで小選擧區と大選擧區というものの區別が出て來るのでありまするが、小選擧區の缺點とするところは、必ずしも多數意見を代表しないということであります。一つの小さい選擧區で三人以上立ちますれば、五人も六人も八人も立ちますれば、かりに五千人の有權者がありまするところでは、八百票か七百票とつて當選をして來るという人ができるのであります。五千人のうち、わずかに七、八百でその選擧區を代表する。その選擧人團たる國家機關を代表するということは、私は正しい考え方でないと思うのであります。そういう缺點があるのであります。候補者が多いほど投票は分割せられて、絶對多數を占めるものが少くなつて、結局は比較多數で當選をするのでありまするから、眞にその選擧區の意思を代表しておるということは言われないことになる。それから地方的人士が壓倒的に勝つということは、否定できないことでありまして、よほど政治的訓練政治的意識が發達をした國民でなければ、小選擧區においては大人物が出てくることができないのであります。かつて時の總理大臣でありながら、高橋是清氏が盛岡において、盛岡出身の某氏と爭つて非常な苦戰をみたことは御承知の通りであります。夫婦げんかの仲裁をしてやつたり、橋をかけてやつたり、道路普請を手傳つてやるような人が多くは珍重されるのでありましてそういう弊害があることは御承知の通りであります。また情實に左右され、地方的利害によつて動くということも否定できない事實であります。さらに買收が容易に行われる。直接の露骨なる買收でなくとも、平素から慢性的に藥をきかせていくという方法による買收が行われることは申すまでもないのであります。また小選擧區におきましては競爭が非常に苛烈となる。それから、わが國の今日以後、新憲法のもとにおいては間違つてもないことと信じますが政府の干渉が容易となる。さらに進んでは小さい選擧區ほど、いわゆるジエーリー・マンダリングを行ふ機會が多くなるのでありまして、ある有力な黨派の利益になるように、選擧區を適當に處理していくということが殖えるのであります。また選擧人が候補者を選擇する範圍がすこぶる狹くなるのであります。こういういろいろな弊害がありますから、どうしてもこれは大選擧區でなければならぬということでわれわれは長く大選擧區制度というものを主張してまいつたのであります。しかるに大選擧區制に對して反對する者は、またこの缺點をあげるのであります。殊に今囘近く改正案が現はれてくるらしい雲行きを見せているのでありますが、その唯一とまで申し上げないけれども、有力なる根據は、大選擧區では運動が徹底しないということであります。從つてあの候補者、この候補者がいかなる識見をもつており、いかなる人物であるかということを、選擧區の隅々まで行き渡らせることができないこういうことが憂えられているのであります。これは今日のごとき交通不便の状態において、紙の缺乏しております状態において、私は確かに理由ある缺點であると思うのでありますが、しかしただこの理由をもつて今急遽選擧區を小さくしなければならないというほど、決定的な、致命的な理由には相ならぬと思うのであります。さらに候補者と選擧民の關係が密接でないために、選擧ということに興味をもたない。冷淡になる。こういう缺點があることは確かでありますが、從來はあまりこの選擧というものに熱心過ぎて弊害があつたのでありますから、私はむしろ、むりに狩り出してまでも投票させるというようなことを斷念して自然の自覺の成長にまつという態度をとることによつて、決してこれも憂うるに足らざることと思うのであります。かつては山奧の炭燒の親父さんを狩り出すために、貨幣價値の高かつたころでありますが、五十錢銀貨を二三百圓用意して、山々をまわつて歩いて二百二十人ほど五十錢銀貨を渡したときに警官に誰何され、つかまつて、選擧違反に問はれたという實例がありますが、とにかく狩り出さなければ、旅費、日當をもらわなければ投票しないというような風習は、いつときも早くこれを排除すべきことはもちろんでありますから、大選擧區制のこれはむしろ弊害でなくして長所であると考えるのであります。さらに費用が非常にかかるというのでありますが、これもかけ方であります。今度のように、紙を儉約し、葉書も無料でくれるというようなありがたいことでは、金のかけようがない。それでも巷間傳えるところでは、何萬とか、何十萬とか申しているのでありますが、何にそういう金を使うのであるか、われわれは不思議にたえないのであります。むしろこれも選擧のやり方を公營化することによつて、十分に費用を節減することができるのでありまして、われわれは大選擧區を維持するとともに、公營の趣旨を徹底させることを、常に主張いたしておりますることは御承知の通りであります。それから大選擧區では補闕選擧が非常に煩雜であるという缺點が指摘されるのであります。それから大選擧區では、今度ははたして當選するかどうかわからぬということで非常に豫測困難なために、解散を恐れる心理を馴致する。これがこの大選擧區制の缺點であるとして指摘されているのでありますが、むしろそれによつて絶えず人物が更新していくというところに、民主的選擧の合理性があるのでありまして、私はそういう點は決して缺點として指摘するに足らざるものと思うのであります。殊に選擧區が選擧制度において生命的な問題であることは、選擧區のわけ方によりまして、いろいろ黨派の利害を明らかに表わすことができ選擧を有利に導くことができるということであります。いわゆるジエリー・マンダリングの缺點でありまして、ここにこまかい數字をあげなければ説明ができませんから、略しておきますが選擧區のわけ方によつて、どうにでもなるという實例として、實際にあつた場合と、理論上あり得る場合とを、ロージンといふ學者があげているのであります。一選擧區に甲、乙、丙、丁、戊という候補者がありまして、甲の黨はこれこれの票を得る、乙の黨はやはり甲、乙、丙、丁、戊という五人の候補者があつて、たとえば、甲黨においては、甲は三千五百票、乙は二千六百四十五票、丙は三千二百三十八票、丁は二千五百九票、戊は二千六百三票を得て皆當選するのである。ところが、乙黨は、甲は千九百九十五票を得て落選、乙は二千三百五十五票を得て落選丙は千七百六十五票を得て落選、丁は二千四百九十一票を得て落選、戊は二千三百九十四票を得て落選、その獲得した總得票、甲黨は一萬四千票、乙黨は一萬一千票である。そうして甲黨は五人の當選者を得、乙黨はゼロである。これはある選擧區にジエリー・マンダリングを應用した結果、そういうような結果を得たという實例であります。あまりそういう數字を述べておりますることは恐縮でありまするから、省略に付しておきまするが、とにかく日本におきましてもこの點は十分に考えられることでありまして、われわれはこの中選擧區に直すということが問題でなくして、どの郡とどの郡とを結び合わせるか。どの郡は第一區にいき第二區にまわるかということに、むしろ重要な意味をもつと思うのでありまして、もしそういう案が出まするならば、そういう點にきめて愼重なる審査を加えなければ輕々に賛意を表するわけにいかないのであります。そこで私どもは、こういう選擧のやり方、選擧區の分け方、その他いろいろな點に缺點がありまするがゆえに、何とかして公平に國民の輿論、意思というものが反映するような選擧法を發見したい。こういうことから研究いたしました結果、從來の制度と違つた制度を樹立してみたいということに相なるわけでありまして、それには民主的平等の要求と、いわゆる少數者の權利というものを考慮してみなければならぬと思うのであります。すべての會議體の決議、あるいは團體の運營、みな民主國家におきましてはいわゆる多數決の原理なるものによつて動かされているわけでありまするが、しかし多數の意思というものは決して全體の意思ではないのであります。あくまでもそれは部分の意思であつて全體の意思ではないのである。殊にこの少數意見も價値の高いものがあるのである。また國家意思のきわめて重要なる部分を構成することは多く説明を要しないと思うのであります。極端に申せば、いわゆる數の政治にあらずして質の政治ということになりますれば、いつでも少數の意見というものは、最も尊重すべきものであるとすら申しても差支えないくらいのものであります。ここに數をもつて質を考えずに押通していくということでありまするならば、多數專制の弊を生ずるわけでありまして、これ實力、權力、暴力に代るに數の壓制ということになるわけでありまするから、われわれはいつでも少數の意見というものを尊重しつつ、最後に多數決でいくということが、民主主義の根本原則であるということを忘れてはならぬと思うのであります。その意味において少數黨というものを尊重する必要がある。立憲政治の發達している英國などにおきましては、私は傍聽いたしたこともありまするが、議場等においては、決して少數黨といえども、在野黨といえども輕蔑をするというような態度がないことはもちろん、いかなる意見も尊重して、反對黨の議員を呼ぶには、わが名譽ある陛下の反對黨の議員の何のたれそれ君、こういう長々しい前置きを必ずつけて呼びかけて議論をしていくのであります。數日來この議場に見るような光景は、イギリスの議會等においては、私の行つたときだけでなく、おそらくはいかなるときでもそうたくさんは起らなかつたろうと思うのでありまして、これは少數黨の意見というものを尊重し、少數黨に非常な敬意を拂う。他日自分たちに代つて國家の政治を擔當する尊敬すべき反對黨、こういう觀念が行き渡つているからであります。私はこの委員會に列席をいたしまして私の抱いた感想を申し上げることは恐縮でありますが、いつでも人間は相手方の立場を尊重し、相手方の立場に立つたことを考えて、原告になつた場合には被告の立場を考え、被告になつた場合には原告の立場を考えて思いやりをもつて事を處していくならば何事も圓滑に進行するものであります。今後議會政治におきましてもどうかそういう慣習がだんだん發達し成長せんことを希望するのでありますが、多數決というのは決して至上命令でも何でもない。ただ運營をしていきます上の便宜に過ぎない。これは一つの實際的の便宜である。正しいか正しくないかということは、最後のところは神樣が判斷をすることでありまして、しばらく多數決に從うけれども、それは十分に少數の意見を尊重し、取入れられる限りは取入れ、そして多數に落着かせるというところに民主政治の要諦があるのでありまして、常に和衷協同ということが必要であると思うのであります。それには少數黨の方から常に謙遜な態度だけをとつておりますれば屈辱と服從とがあるだけでありまして多數黨の方でその點については常に御留意を願わなければ、この和衷協同なるものは、そして多數決の圓滑なる運用なるものは、どうしてもできないということを申し上げざるを得ないのであります。(拍手)そこでこの選擧の原理として多數代表か少數代表かということが學者の間に常に議論されているところでありますが、選擧というものは多數代表なのだ。少數のことなど構つておられるか。一票でも多ければ勝なのだ。五萬一人が有權者である選擧區で、それが小選擧區であれば、二萬五千一票を得た者は當選するのであり二萬五千票を得た者は落選するのであります。ただ一票の差で一方は當選し一方は落選する。これが多數代表の原理であります。しかし二萬五千の意思というものが全然忘れられたり、あるいは無視せられたり、看過せられてよろしいものでありましようか。これを顧慮しつつ多數代表を認めていくところに——かりに多數代表を認めるといたしましても意義があると思うのであります。それで多數代表というのは、いつでも多數はその地位を固持しておつて、容易に少數にその地位を讓らない。そこに非常な缺點がある。小選擧區でありますればますますそうでありましていわゆる小選擧區で多數を一度占めたものは常に多數を占める。有名なイギリスの憲法學者でありますバジヨツトが、自分の選擧區において自分は二十年來尊敬する人に投票しているが、未だかつて當選したことがない。自分の選擧區ではもうちやんと保守黨が當選することにきまつておるのであつて、この選擧區は保守黨の固定財産である。こういうふうに論じておるのでありまして、そういうところに非常な弊害が生ずるのであります。ロジンという學者でありますが、この人がいろいろな實例をあげておりまするが、これまた確かに選擧區が固定して、とうてい他の黨派が動かすことができないようになつていくという實例が世界的に多いのであります。それから選擧區の廣さからくるいろいろな不合理があるのでありますが、全國で選擧をいたしまする場合と、いろいろ區分せられたる選擧區でやられまする場合と、それぞれ相違があるわけであります。コンモンスの指摘しておるところによりますと、アメリカの一八八八年の總選擧におきまして、共和黨の得票數は五百三十四萬八千三百七十九票、當選者は百六十四、民主黨は五百五十萬二千五百八十一票、當選者は百六十一、禁酒派という政黨がありますが、十八萬四千九百三十七票を得てゼロ、その他諸派が五萬六千八百八十九票を得てゼロ、こういうふうにたくさんの票を得ても、一人も代表者を出すことができないのであります。これを比例代表式にして出しますると、共和黨は百六十四人を得ましたけれども、實際は百五十八人しかとれないのであります。民主黨は百六十一人であるが、比例代表であれば百六十二人になるだけの得票をとつておる。そうして禁酒派は五人の代議士を送ることができるのであります。あるいはベルギーに行われましたカトリツク派と、自由黨の選擧における實例、あるいはそのほかの國々における選擧の實例がたくさんここにありまして、時間が許しますならば一一御紹介をいたしたいのでありますができるだけ時間を短縮いたしますから殘念ながらすべて省略に付して進めてまいることにいたします。
この多數代表制度のもとにおきましては、實は少數が多數議員を出して、多數が少數しか送らないということが廣く行われておるのでありまして、實際は決して、文字通りそういうふうに多數が代表されてはおらないのであります。これも數字を讀み上げることがあまり煩わしくありますから、略してはおきまするが、コンモンスがアメリカの四十五囘から五十四囘までの選擧におけるオハイオ州の實例をあげております。得票數は少數であつても、單なる多數代表主義をとつておりまするために出てくる議員の數は少數をとつておる方がよけい出るのである。多數をとつても死票が多くして、皆少數の代表者しか送ることができない。さらに絶對多數主義をとるというならば、民意をそれだけ健全に正當に代表することになるからよいではないか。必ず過半數以上の得票をもつた者でなければ當選しないことにしておいたらよかろうというような主張もあり得ますが今度の知事の選擧などでは——これは絶對多數ではありません。比較多數に過ぎないが、それでもあまり少かつたときには決選投票をやることになつておる。私はこの結果に興味をもつて見ておるのでありますが、どうしても絶對多數をとらなければ當選しないということにすれば、今日の小選擧區、中選擧區におきましては、いつでも決選投票をやらなければ解決はしない。こういうことになれば、いわゆる再選擧の煩にたえないということに相なるおそれがあるのであります。さらに少數代表の法はそれではどうか。少數の票を生かすためにいろいろなやり方が研究されたわけであります。御承知のごとく聚積または累積投票法、こう言うのでありまして、通俗的に言えば完全連記制であります。三人の候補者がありまする場合には、三人同じ黨派のものを書いてもよろしいし、一人の人に三票を投じてもよろしい。こういつたようなやり方であります。あるいは移讓法と申しまして、完全連記ではあるけれども、移讓式にして、自分の欲するものにその票を移讓することをあらかじめ表示しておく。こういうやり方があることも御承知の通りであります。それから有限投票法というものがあります。いわゆる大選擧區連記制でありまして、制限連記であります。今日行われておる現行選擧法は、少數代表を生かすためにこの外國において實驗濟みの制度を採用したものでありまして、これまた御承知の通りであろうと思うのであります。これは比較的公平に民意が反映するのでありまして、今の選擧法というものが、決して致命的な缺陷をもつておるものでないということは、學理上からも、世界の實驗からも私は申すことができるのでありまして、何ゆえにこういう差迫つたときに、いろいろな準備をすることもできないようなあわただしさにおいて、捨てなければならない選擧制度であるかということを、責任あるお方々にお伺いをいたしたいぐらいなのであります。それからいま一つは、少數代表の意味を生かしまするためにいわゆる遞減連記法——完全連記でありまするが第一に書く人と、第二に書く人と、第三に書く人とでは、その投票の効力にだんだん差を生ぜしめて、そうして少數の意思を援ける。こういうやり方のあることも御承知の通りであります。それから大選擧區または中選擧區の單記式、これが近く企てられておると信ぜられるところの改革案でありまするが、これは小選擧區と違つて、ある一人が獨占的にその選擧區を支配しない。選擧人團を支配しないという特徴があることは確かであります。しかし少くも計畫的に、合理的に、少數の意見はこの制度においては代表されないのでありまして、代表されるとすればそれは單に偶然性に委ねられておるのであります。そしてこの選擧區において單記式で爭うことになりますと、個人中心の選擧戰になるのでありまするから、さきに小選擧區について指摘いたしましたような、もろもろの缺點が生じて來るとともに、個人間の競爭が激烈になりまして、同志相喰む、骨肉相喰むような選擧戰が展開されることになりまして、非常な弊害と腐敗とを招くことは、これまた學者のひとしく實驗に徴して指摘しておるところであります。これらの少數代表の方法も、いづれもあまりに缺點が多くして採用いたしかねるのであります。そこで最後に殘るものは比例代表の方法しかないことに相なると思うのであります。
比例代表とは何か。國民の中に保守的な分子があり、進歩的な分子がある。戰鬪的な世界觀をもつておる者があり、平和的な世界觀をもつておる者もある。いろいろな人生觀をもつておる者があります。これは政黨の存在にもよりますが、フランスの政黨のように、世界觀的觀點から分立しておる政黨と、イギリスのようにきわめて實際的見地からだけ對立しておる政黨とでは大いに違うのでありますけれども、とにかく國民がいかなる政見をもつておるかということを、あたかも地圖をつくるようにその通りの形において國會に反映させよう。府縣會に反映させようというやり方が、いわゆる比例代表でありまして、輿論をできるだけ公平に比例的に示すという點にあるのであります。その原理はもとより三種類以上の政黨の存在を前提といたします。二大政黨であれば比例代表を用いる必要はありますまい。三つ以上の政黨の存在を前提といたしまして、政黨支持の國民意思の比率を現わそうとするのであります。從つてこの選擧制度は必ず大選擧區たることを要するのであります。全國一選擧區ならばなお結構であります。比例代表は御承知の通り二つの原理の上に立つておるのでありまして、投票總數を通算いたしまして、一定數ごとに候補者を當選者とするのであります。十萬の有權者があれば、二萬とれば當選する。こういうことにきめるのであります。そして二萬とつた者はみな當選する。無論これは五人の選擧區ならば當然のことでありますが、それをかりに十八萬の有權者として二萬とつた者は當選者とする。一名の候補者を當選せしめるに必要な一定數を、いわゆる當選商數クオーター、または當選標準數と申すのでありますが、つまり五千人の選擧區で五人の定員でありますならば、五千を五で割つた一千というのがいわゆる當選標準數と申すのであります。甲の黨の候補者が三千とつておれば、誰がとつても構わない。三千とつておればその黨からは三人當選するのであります。乙の黨派からは總計二千とつたならばその黨派は二名の代表者を出すことができる。こういうふうにやつていくことが根本原理なのであります。
第二は投票の移讓であります。讓渡すことであります。當選標準數以上の個人の得票は他の者にこれを讓ることができる。また絶對當選する可能性がなくて、供託金沒收組の人の投票も、これを有效に活かして用いて、あぶない次點の候補者に讓渡することができるのであります。だからしてこの選擧制度においては死票はなくなるのであります。小選擧區においては先ほど申し上げまするように、五萬一人の選擧區において一方が二萬五千一票とり他方が二萬五千票とれば、この二萬五千票は死んだ投票になるのでありますがこの制度においてはそういうことは絶對にないのであります。二萬五千票は必ず二萬五千だけの働きを營む。この二つの原理に立つて比例代表なるものが成立することは御承知の通りでありまするが、その移讓の仕方によりまして、單記移讓式比例代表法と、名簿式比例代表法と二つに相なるわけであります。いわゆる一種の完全連記をとりますならば、單記移讓式比例代表となり、名簿式代表の方は、政黨に候補者名簿をあらかじめ提出せしめまして、そしてその人員をきめて票を讓渡すということにいたすわけでありまして、先だつて行われました選擧等において三十二萬もおとりになつた方もあるがあれはとり過ぎたというものであります。十八萬、二十萬という人はざらにある。しかも最少當選圈は三萬、四萬という選擧區が多いのでありまして、そういう無駄な票を一人がよけいとるようなことはなくなるわけであります。とることはとつても差支えないがそれが結局は有効に働いて移讓される。讓渡されるというところに比例代表の意味があることは申し上げるまでもないと思うのであります。そこで單記移讓式比例代表法は、一八八五年、初めてデンマークにおいて有名な數學者であり、時の大藏大臣でありましたアンドレーによつて創案されたのでありまして、一院制のデンマークの國會の選擧に適用されたのが最初であります。その後世界の各國においてだんだん普及を見たことは、後にその例を申し上げる通りであります。名簿式の比例代表法も夙に一八四二年、スイスにおいてコンシデランによつて提唱されまして、一八九一年テツシェン、ノインインブルグの兩州に採用されたのが最初でありまして、その後各州に採用され、遂に一九一四年にはスイス連邦に採用され、それからフィンランドスエーデン、その他の國々に行われるようになつたのであります。
そこで世界において、この比例代表法がいかに行われておるかという實例を申し上げまするが、英國におきましては大學選擧區は一九一八年、イングランドにおいては一九一一年からいろいろな團體に行われたのであります。それから一九一八年からスコツトランドにおきましても行われ、一九二〇年北部アイルランド上院及び下院に行われるに至つたのであります。アイルランド自由國も、上院下院共に一九二二年から比例代表法を用い、地方議會は一九一九年から、英國から獨立する以前におきましては一九一四年から、それぞれの團體において行われているのであります。フランスの下院におきましてはあるいは實施せられ、あるいは廢止せられたる時がありまするが、一九一九年から實施をみているのであります。ベルギーも一八九五年から上院、下院等において、また各州の州會において行われているのであります。スイスは連邦議院の下院には一九一八年から實施せられまして、各州はそれぞれ一八九一年、九五年、一九〇五年あるいは一九二〇年に至る間に、ほとんど全部にわたつて行われるに至つたのであります。ドイツにおきましても一九〇六年にウエルテンブルグに行われたのを最初といたしまして、あるいは一九一八年に憲法制定議會を構成するときに比例代表法が採用せられ、一九一九年國議會、各連邦の議會、プロシヤその他多數の國において實施せられたのであります。オーストリーにおきましても憲法制定議會におきまして一九一九年、一九二〇年あるいは上院及び下院、一九二〇年以後は州會、市町村會等に行われるに至つたのであります。ノルウエーは一九二〇年から、デンマルクは先ほど申上げます通り、一八五五年初めて採用せられまして、その後下院、地方議會に施行されたのであります。フインランドも同樣であります。一九〇六年。また大統領選擧の豫選につきまして一九一九年から比例代表を採用したのであります。スエーデンもそう、上院及び下院が一九〇九年から、同じく一九〇九年から地方議會が採用したのであります。アイスランドも一九一五年から採用をいたしたのでありまして、決して私はこれは時間を長くするために言つているのではないのでありまして、世界中どれくらい比例代表を實際に行つているか、聞いていてもいやになるほどたくさん行つているということを、表明いたしまするために申上げるのであります。オランダは一九一七年から下院に用いまして、さらに地方議會、さらに一九二三年からは上院の選擧に採用いたしのであります。ポーランドは一九一九年から憲法制定議會のときに用いまして、さらに一九二一年から最近まで——最近の選擧法は私存じませんが、上院及び下院共に比例代表でやつておつたのであります。ルクセンブルグが一九一九年から下院、一九一九年から地方議會。それからユーゴースラビヤ、これも一九二〇年の憲法制定議會に採用しさらに一九二一年の議會にこれを用いたのであります。それからチエツコスロバキヤ、これも一九二〇年來上院及び下院に採用している。エストニヤも一九一九年から憲法制定議會で採用しさらに議會において一九二〇年來採用しているのであります。ラトビヤ、これも一九二〇年から採用しているのでありまして、リスアニヤ一九二〇年、ブルガリヤも一九一二年以來、ポルトガル一九一一年以來、ルーマニヤ一九一八年から下院地方議會共に比例代表を採用しているのであります。ハンガリーも一九一九年の憲法制定議會に採用し、さらに地方議會にブタペストの議會において一九二〇年以來採用しているのであります。イタリーの下院もその後廢止になつたようでありますが一九一九年から比例代表を採用しておるのであります。市會におきましても一九一四年から採用しております。ソビエトは全然別個の、ほんとうの徹底した十八歳以上の男女の普通選擧を施行しておるのでありまして、これは論外でありますが、いわゆる憲法制定議會のときには、一九一六年のときには比例代表を用いたことは歴史的な事實になつておるのであります。米國はどうかと申しますと、これはオハイオ州のアシュタブーラ市、コロラド州のバルダー市、一九一五年がオハイオ州でありますが、コロラドでは一九一七年ミシガンのカラマズ市では、一九一八年、カリフォルニヤのサクラメント市では一九二〇年、コネクチカット州のウェルストハートフオード市は一九二八年、オハイオ州のクリーブランドでは一九二一年、オハイオ州のシンシナチでは一九二四年というように比例代表を採用するに至つたのであります。それから英領の自治領も、文化的には遲れておるかの如くにわが國などでは誤解しておる向きもあるのでありますがいずれも比例代表を採用しておるのでありまして、まずオーストラリヤ連邦はタスマニヤ議會が一八九六年、それからニユーサウスウエルスが下院の方で一九一八年から、ニユージランドも——これは今施行しておるかどうかちよつと調べなければわかりませんが法案だけは出來たのでありますが、地方議會は選擇的に一九一四年から實施しておるのであります。それから南阿連邦これも上院は一九〇九年から比例代表であり、喜望峯の市會も一九一二年から比例代表をやつておる。カナダも全部と申すわけではありませんが選擇的におもな都市において比例代表を實施しておるのであります。インドすらも、インドは今度獨立するわけでありますが、一九一九年から既に比例代表をかなりの部分において使つておるわけであります。それからマルタ島におきましても、一九二一年から實施しておる。それからアルゼンチンも一八七三年以來地方議會、ヴエノスアイレスあるいはメンドサというようなところで實施しておるのでありまして、キユーバのような小さな國も、國會及び地方議會とも一九〇八年以來實施しておる。さらにウルグアイ國も一九一〇年以來、下院の選擧に比例代表を用いておるのであります。これが世界の大勢でありまして、極く新らしいところは調査不十分でありますから材料がありませんので留保しておきますが、大體世界の大勢がそういうふうであつた。
それでこの場合、しからばどういう選擧のやり方をするのであるかということを申し上げなければわからぬと思うのでありまするが、そうなるとこれは半日一日を要する仕事になつてまいります。方法につきましては三百幾通りもあると言われておるのでありまして、いろいろなやり方があるのであります。そのうちのいかなるやり方が一番適當であるかということの比較研究をしなければならぬのでありまするが、かかる席において簡單な口述をもつていたしますることはいかがかと存じまするし、それこそそれぞれの文献に基き、いろいろな印刷物を利用して御理解を願うほかはないと思いまするから私はしばらく省略に付しておきます。とにかくわが黨の提案しておりまする大選擧區單記移讓式比例代表制というものは、決してわれわれが獨斷的に頭の中に描いて、理想的の制度であると主張するのではなくして、世界各國に實施せられた實例をもつており、經驗をもつており、同時に理論上から申しましても、ただいま申し上げまするように、常に少數の意見というものも國政の上に反映させることができ、少數意見などというものは葬つてしまえ、おれの方のじやまになるのだというような御態度でありまするならば、また何をか言わんやでありまするが、少數意見も尊重すべし、少數黨もまた存在理由がある。こういう見地から……。(「演説中だ、妥協するな、妨害するな」と呼びその他發言する者多し)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=10
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011・中村高一
○中村(高)委員 委員長、しばらく休憩をしたいということであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=11
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012・岩本信行
○岩本委員長 どうぞ御繼續を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=12
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013・中村高一
○中村(高)委員 今までも前例のあつたことでありまするし、非常なむずかしい學理を述べておりますから、しばらく休憩を宣していただきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=13
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014・岩本信行
○岩本委員長 御繼續を願います。
〔「水をもつてきてくれ」「水がなければ毒だ」と呼びその他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=14
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015・鈴木義男
○鈴木(義)委員 ただいま同僚から、まことに結構な演説である、世界の大勢を説いて實例豐富であるが、日本の實例をなるたけ述べるようにせよということで……。
〔「降壇なすつたらどうですか」「降壇する必要はない」「妨害するな」「議場整理」と呼び、その他發言する者多く議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=15
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016・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。お靜かに願います。
〔「マークをつけない者がきてしやべつているではないか。しかも發言してやじるとは何だ」「議場を整理せよ」「守衞長を呼べ」「一方的な警備だ、計畫的だ」と呼びその他發言する者多く議場騷然〕
〔「マークなしで入れてやじるなんてどうするのか」「守衞は何のために警戒しておるのか」「委員長注意しろ」「知らなかつたんだ」「知らなくて濟むか」「懲罰だ懲罰だ」「休憩々々」その他發言する者、離席する者多く、議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=16
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017・岩本信行
○岩本委員長 暫時休憩いたします。
午後三時三十分休憩
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午後四時八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=17
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018・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。この際委員長より申し上げておきますが、先ほど徽章のない方が傍聽席におられたということでそれがために混亂になりましたことはまことに遺憾に存じます。元來徽章のない者はここへはいれないことになつておりますので、今後そうした者を發見いたしました場合は直ちに退席を命じます。そういうことのないように注意を願います。これより先ほどの鈴木君の發言を進行いたします。鈴木君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=18
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019・鈴木義男
○鈴木(義)委員 實はこの私の改正案提案理由の説明は、比例代表制を採用すべしということでありまして、比例代表法というものがいかに合理的なものであり、必要なものであるかというところまで、お話はいたしたのでありますが、これから比例代表法の内容にはいつて、ヘヤー・クラーク式であるとか、グレゴリー式であるとか、ドループ式というようなたなざらしの問題サンガルン式、いろんな説明をしなければ、私の話は徹底しないのであります。しかるに私はただいまより放送局にまいつてラジオの放送をしなければなりません。私だけでなく、この委員の中にも三人おります。その他の諸君と放送いたしまするので、これはやはり純然たる公務でありまして、これを避けるわけにいかないのであります。そこでそのあとということにお願いしましたが、どうしてもお許しが出ない御都合が惡いということでありますから、結局ここでまとまりをつけて退席をしなければならぬ。私は民主主義を説く一人として、とにかく二十分の制限に對して二時間以上申し述べたのでありますから、委員長の切なる御懇請を諒といたしまして、また私のこの詳細にわたる提案の説明は、まだいま一度か二度、あるいは八時間、十時間をいただいて述べる機會があろうかと存じますので、今日はとにかく比例代表法というものが、きわめて合理的であり、かつ必要なるものであるということを申し上げて、そして私の結論といたしましてここで結ぶことにいたします。以上をもつて提案趣旨の説明をいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=19
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020・岩本信行
○岩本委員長 暫時休憩いたします。
午後四時十二分休憩
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午後九時四十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=20
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021・岩本信行
○岩本委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます。佐竹君より、修正案の先ほど説明されましたことについて括りをつけるために、當局の意見を聽いてみたいということでありますから發言を許します。佐竹君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=21
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022・佐竹晴記
○佐竹委員 内務大臣並びに地方局長の御出頭をお願いいたします。内務大臣、内務次官、地方局長の御出頭をお願いいたします。大臣がお見えにならなければ、次官並びに局長に先にお聽きしてもよろしうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=22
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023・岩本信行
○岩本委員長 そう願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=23
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024・佐竹晴記
○佐竹委員 政府の御意向を確かめておきたいと思います。私の修正動議を提出いたしております第一項についてまずお伺いしておきたいと存じます。衆議院議員選擧法第七十九條三項中「選擧ノ期日ヨリ一年以内」とありますのを「選擧ノ期日ヨリ一箇月以内」と改むという修正動議、すなわち繰上當選の期間を一箇月以内と改めたいと存じますが、この點について政府はいかなる御所見をおもちでありましようか。これを承りたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=24
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025・林敬三
○林(敬)政府委員 ただいまの佐竹さんのお話に對しまして、政府の意見を申し上げたいと存じます。第七十九條第三項、すなわち當選の承諾期間内においてのみ繰上當選が認められるという規定でございますが、御承知のように從來は一箇年以内は繰上當選が認められることになつております。申し上げるまでもなく選擧法は概ね理論的にでき上つておりますが、ときに便宜上たとえば今の問題なんかも、從來一箇年以内は繰上當選ができるということになつておりますのは、これは選擧の手數と負擔というものを省いて、便宜の規定をここに織込んでおつたわけでございます。しかしながら立憲時代になりまして、立憲を強化して代議政治というものを充實させていくというためには、できるだけ選擧人の意思というものを正しく反映させるような選擧を行うことが必要である。偶然の理由によりまして、たとえば當選者となつた人が死亡したり、失格したりするというたまたまの理由によつて、まるで逆の人が出るというようなことになることは、著しく選擧人の意思に反する規定である。從つてこういうことはできるだけこの時代においては避けるべきではないか。また次の點にたまたま當りました人あるいはそれを支持いたします人あたりが、まま萬一にもこれが一番下の點で當選いたしました人のあら探しを、むりにやるという傾向もなきにしもあらずであります。こういう不明朗も避けた方がいい。こういうようなことをいろいろ考慮いたしました結果、この「一年以内」というのを當選承諾期間内」というふうに改めて提案をいたした次第でございます。この當選承諾期間内であれば、この期間内ぐらいのところは、いわゆる當選を辭退し得る不確定なまだ期間であります。この期間のみ繰上當選を認める。あとは認めない。そうして缺員が法定數に達したときは、どんどんと選擧を行つて、正しく選擧人の意思を反映させる方を代議士に出ていただく。これがもつとも適當と考えた次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=25
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026・佐竹晴記
○佐竹委員 純理よりいたしますなれば、繰上當選を認めないということが本則であるという御趣旨の御答辯のようであります。もしそうだといたしますならば、むしろ繰上當選は全面的に認めないことにすることが、筋が通つておるのではないかと思います。もし繰上當選を認めるというならば、それは手數と負擔の問題、すなわち便宜の問題でございますので、便宜の問題から申し上げますならば、實情に即するということがきわめて穩當ではないかと思います。實情に適するという觀點より見ますならば、わずかに五日というがごとき期日は、これは實は認めて認めないと同樣であります。實際問題として、ある程度便宜を取入れて繰上を認めるということならば、實際問題といたしましては、一箇月程度くらい認めるということが、いわゆる便宜主義の精神に適うものではないかと存じますが、その意味においては、政府はいかにお考えでございましようか。すなわち一箇月というものをお認めくださることはどうしてもできないのでしようか。また一箇月以内と私が修正をしようということに對しまして、政府は同意せず、また關係方面の承認を求むるについても故障があるというふうにお考えでございましようか。この點についても突き進めてお伺いいたしておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=26
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027・林敬三
○林(敬)政府委員 當選承諾期間内にのみ繰上當選を認めるか、あるいは一箇年以内は繰上を認めるかという制度は、過去の選擧法の歴史におきましても絶えず繰返されてきております。これが一箇年以内になるまたその例外が出て、ぐつと短かくなつてくるというような歴史を繰返しておるようであります。しかし今のお話、一箇月以内ということにしたらどうかという、この中間をとつたお話でございますが、やはりさつき申し上げましたように、現在の立憲政治をしつかりやつていく、それの基礎をなすところの代議政治というものを、正しく選擧人の意思を反映するということから見まするならばこれを最短期間に止めるということが今後の日本の實情に最も適しておるものだと考えるのでございます。それでそれなら全然認めなければいいじやないかということでございますが、しかしこの承諾期間内というものは、その間は承諾しないでずつといつて、最後にいつて認めてもいいというときでもございますし、その間に當選を辭退し得るような選擧自體もきわめて不確定な時期であります。この期間だけただいまのところでは中間ということが一番實情に適して最も適當であるというふうに、政府としては考える次第でございます。關係方面の承諾を得ることの見透し、その他についてのお尋ねがございました。これについては實は私もここでもつてこれは向うと當つてみませんと正確なことは申し上げかねると存ずるのでございますが、關係方面の意向もこの原案に對しては、相當強く支持をされているように存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=27
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028・佐竹晴記
○佐竹委員 參議院議員の選擧との比較權衡の問題を何かお考えになつておられるではないでしようか。いま一つ一箇月という期間が、たとえば當選の効力の確定をいたします期間、これは一箇月と見ますならば、そういつたようなものと關連せしめて考えますことも、きわめて常識的に考えまして穩當ではないとも考えますが、當選効力の確定訟訴等の關係、參議院選擧との關係等をもにらみ合わせて、どういつたふうにお考えでございましようか。この點についていま一應承つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=28
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029・林敬三
○林(敬)政府委員 これは申し落しましたが、お尋ねのように參議院議員の選擧法は、過般御協賛を經まして成立したのでありますが、それは目下政府から提案している原案とまつたく同じになつておりまして、當選承諾期間内だけは繰上げ當選が認められる。こういうふうに相なつておるのでございます。從つてもしこれが一箇月以内ということになりますと、それとの平仄がまつたく合わないことになるわけでございまして、やはりそういう方とのつり合の上からも原案が政府としては最善ではないか。かように考えるわけでございます。なお訴訟のことについてのお話でございましたが、當選訴訟あるいは選擧訴訟で一部の當選者が失格する。こういうような場合は、いつでも繰上げが認められるわけでございます。この當選承諾期間内だけしか繰上げが認められないというのは、死亡とか、失格とか、そういう遇然の理由による場合のみでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=29
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030・佐竹晴記
○佐竹委員 なおこの點について考える點もありますが、こまかになりますので、進んで第二の修正の點についてお伺いをいたします。すなわち同法九十六條をさきに委員會において申し上げました通り、「何人ト雖、學校ノ兒童生徒及ビ學生ニシテ年齡十八歳未滿ノモノニ對スル特殊ノ關係アル地位ヲ利用シ選擧運動ヲ爲スコトヲ禁ジ、又學校、兒童等ヲ選擧運動ニ使用スルコトヲ得ズ」と修正いたしたいと存じますが、この點に對しまする、内務當局の御意見はいかがでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=30
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031・林敬三
○林(敬)政府委員 學校の兒童を何人といえども選擧運動に使用することができない。原案は二十歳未滿の學生、生徒に對して、特殊の關係ある地位を利用して選擧運動にこれを使つてはいけないということになつておりますがそれをさらに充實されまして、學校の兒童などは選擧運動にはどんなことがあつても使つてはいけない。こういうふうにやつてはどうかという御所見と拜聽するのであります。そのお氣持は私もよくわかるのでありますが、しかしそういう規定になりますと、法としては少し行き過ぎではないかと考えるのでございます。すなわち學校の先生が兒童に對して、先生たる立場に立つて選擧運動をする。あるいは父兄會長というような立場にある人が、兒童を使つて選擧運動をする。あるいは後援會長、教育會長、そういう特殊の立場をもつた人が兒童に對してやるということが、いろいろと過去においても弊害があつたところでありまして、これがこの案をお諮りいたすべく出しましたゆえんのものでありますが、そういう場合でなくても、學校の兒童というものである場合は、これを選擧運動に使つてはいけないということになりますと、自分の家の子供やなんかでも、選擧運動にちよつと手傳いをさせるということまでもひつかかつてくるということになり、親類の人なんかで、ちよつと高等科の生徒あたりに状袋を書いてもらつたり、張つてもらつたりすることを手傳つてもらつてもひつかかるというような、實に——本來の趣旨とされるお氣持はわかるのでありますが、法規としてこれを規定して運用するということになると、實にあぶないことになり、あまりにも行き過ぎになると考えるのでございまして、參議院議員の選擧法においても、これを過日御協賛を經まして、既にこれと同じ條文が成立しておるわけであります。そちらとの平仄もありますので政府といたしましては、原案をもつて最適と存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=31
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032・佐竹晴記
○佐竹委員 十八歳未滿と修正をいたしたいという私共の意見に對しましては、いかなる御意見をおもちでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=32
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033・林敬三
○林(敬)政府委員 何歳未滿の學生生徒に對して、そういう選擧運動に使うことを禁じたらいいかということは問題となるところであろうと存ずるのでございます。これはすなわち線の引き方の問題であると思うのでありますがいわゆる選擧權というものとこれは合わせるべきもの、そこでこれが線を引くのが一番妥當である。かように考えるわけでございまして、現行選擧法におきましては御承知のように二十歳ということに相なつておりまして、二十歳ということであれば、ごく抽象的、總體的にみまして一應政治參與の能力がある、政治判斷の能力があると認められて選擧權が與えられておると思うのであります。もしこの選擧法が十八歳以上のものに選擧權を與える。判斷能力がある。十八歳以上のものにはやつてもいいという選擧法の本法の建前でありますれば、お話のように十八歳未滿のところで線を引きまして、これを選擧運動に利用してはいけないということが正しいと思うのであります。現行選擧法は二十歳というところで線を引きまして、それ以上のものに選擧權を與えるという建前になつております以上は、線をどこで引くかということになれば、二十歳未滿というところで線を引くのが、一番適當であると考える次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=33
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034・佐竹晴記
○佐竹委員 年齡の問題は、選擧權を中心として考えるべきかどうか、私は多大の疑問をもたざるを得ません。九十六條の趣旨は、選擧運動に關します弊害を除去しようというのである。別に選擧權をもつておるか、もつていないかによつてものごとをどうこうしようというのではないのです。從いまして選擧權をもつともたぬとには關係なしに。あまり成熟いたしません小さな子供などを利用いたしまして、選擧運動に使用いたしますと、選擧の弊害を釀すことを惧れての規定であると私どもはみております。從いましていま十八になる子供といたしますと、もう中學を卒業する。少くとも中學を卒業しあるいは高等學校へいく程度のものであります。これくらいの生徒になりますれば、かなり分別も立ちます。從いましてこういつたような生徒を利用いたしましても、さほど弊害を釀すようなことは私はあるまいと思います。十八歳程度をもつて區別をいたしますことが、むしろ本來の精神に適うのではなかろうか。私どもは選擧運動に關する取締りということを中心といたしまして考えまするときに、選擧權被選擧權を中心として一線を引くことの當否について、多大の疑いをもたざるを得ない。從いましてただいまの御説明程度では、私はなお十八歳をもつて一線を引くという私どもの修正意見を、引つこめるか引つこめぬかという私どもの腹がきまりません。いま一度この點御説明願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=34
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035・林敬三
○林(敬)政府委員 選擧權を有するか有しないかということで線を引く、少し私は結論だけお話を申し上げていなかつたかと存ずるのでありますが、その結果から申しますと、すなわち學校の先生という特殊の關係ある立場、あるいは後援會長というような特殊の關係、それが影響されるかされないか。どの程度の年になつたならば、自分の判斷力で政治的の判斷がついて、そういう特殊の關係があつても、それに動かされないかどうかというところをどこで引くか、どこが妥當かという問題になつてくると思うのであります。それは結局政治參與の能力があり、政治に對する判斷の能力がある。こういうことを國家の法律として認定いたしました二十歳というところで線を引くのが、一番公平妥當ではないか。かように考えまして、こういう案を作つた次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=35
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036・佐竹晴記
○佐竹委員 たとえば問題をかえて考えて見ますのに、ここに工場の經營者があるといたします。そこに職工を使つておるといたします。十八、十九の職工がおるといたします。この經營者がこれらのものを利用いたしまして選擧運動をする。別にこれを止めようという規定は設けておりません。これらから考えまして、特に學校の兒童、生徒等を利用をして、その地位を利用して選擧運動をなすことの弊害を、特にここに規定しなければならぬことについて、特別の必要をお考えになつたことであろうと存じます。一番問題になるのは、なんといつても國民學校の生徒を利用するという點です。何も政治的な判斷力もないところのあの小さな子供を利用して、これを惡用して、そうして當選を得ようとするところのその不純なるやり方を取締ろうということが目標であつて、もう十八、十九になるというような、中學を卒業するあたりの子供を利用いたしましても、これがあまりそう弊害を釀すようにも私どもは思いません。小さな七、八つの子供、十、十一の子供、國民學校の生徒などを惡用いたしますと、これはどうもという感じが起りますが、二十歳をもつて線を引く、それからそれ以下のものは、ことごとく全部取締りの範圍にあてはめるべしというふうにお考えになることは、はたしてどうでございましようか。私は率直に申し上げたい。本當に政府の狙つておるのは、國民學校の兒童を目標となさつておるのではないでございましようか。この點を率直に一つ承つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=36
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037・林敬三
○林(敬)政府委員 お尋ねの通り一番主たる狙いは國民學校の兒童の點であると存じます。また過去の選擧におきまして、弊害ありと一般に言われましたのも、國民學校の生徒に關してだと存じます。しかしながらだんだん上へ行くほどその害の程度が少くなつてまいるのと思いますが、それをどこできるかという問題になりますと、二十歳できるのが一番妥當ではないかと、かように考えた次第であります。ほかの工場などの場合でありますと、これは別に社會生活をいたしております。また別段それを使つて、過去において弊害があつたというような事例もほとんど見當りませんので、それの方は規定をいたさなかつた次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=37
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038・佐竹晴記
○佐竹委員 進んで私がここに修正しようといたしましたのは、學校兒童等を選擧運動に使用することを得ずという文句を加えて、國民學校の兒童などは選擧運動には一切使わないことにする。その特殊なる關係、特殊なる地位を利用して選擧運動をなすと否とにかかわりませず、國民學校の兒童はもう選擧運動に使われないといたしますことが、むしろ私は、いいじやないかと思うのであります。ところが先ほどのお話によりますると、親父さんが立候補した。子供にちよつと何かポスターをもつてこい。あるいは演説會場へお茶を運べというようなことに、もし使つたといたしまするならば、たちまちひつかかつてしまうといつたような御心配があるようであります。しかし私どもの解釋するところによれば、こういつた單なる勞務員のなす勞務、しかもそれが親子の關係においてなされた兄弟の間に行われるというようなものについて、これはどうも違法性ありとどの點からみても私どもは考えるわけにまいりません。そういつたような小さな點を御心配のあまり、國民學校の兒童を、全般的に選擧運動に使用することができるといたしますることは、むしろ多くの弊害を伴う大きな問題をかえつて殘しはしないであろうか。私はかように考えるのであります。なお私はいま一言ここにお尋ねをいたしておきたいことは、前段にございます「特殊ノ關係アル地位ヲ利用シテ選擧運動ヲ爲スコトヲ得ズ」とありますのは、特別なるその地位を利用いたしまして選擧運動をなす場合のみであつて單純に國民學校の兒童を使用いたします場合を含んでおらぬではないか。從つて特に學校兒童等を選擧運動に使用することを得ずという別個の表現をいたしませんければ、そこに十分の取締りを期することができぬではないかと私は懸念をいたしますが、その點當局といたしましては、いかかでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=38
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039・林敬三
○林(敬)政府委員 お話のように、自分の子供にちよつとお茶を持つてこいというようなことまで、選擧運動と考えることは妥當でないという御意見については同感でございます。しかしながらまことに法律というものは非常にしかつめらしいと申しますか、やかましいと申しますか、氣持はそういう氣持で書きましても、どうしても學校の兒童を選擧運動に使つてはならぬということになつてしまいますと、その場合どこまでひつかかるかということは各人の判斷にまつほかなく、最後には裁判所で決定すべき問題だと思いますが、その限界がまま不明確になつて、行き過ぎということも起るわけであります。むしろそういうことによつて學校の生徒である限りにおいてはどうにもこうには手も足も出ないという大きな支障が出てくることをかえつて憂えられるのでありまして、その點いろいろ解釋というか、できるだけ氣持を汲んで實際の實情に合うような法律解釋をやつて行くべきものだと思うのでありますが、いよいよ法文になつて出てまいりますと、ところところではやはり原案のように、特殊の地位を利用してやつた者だけひつかかることにいたしませんと、やはり狙つたところがきちつと出てこないのではないかと考えるわけでありましてやはり原案が一番よいのではないかとかように考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=39
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040・佐竹晴記
○佐竹委員 今お尋ねいたしました點どうもお答えがないようでございますが、特殊の關係にある地位を利用し選擧運動をなすことを得ず、こういうのは、學校の校長なら校長が、自分が校長であるという地位を利用いたしまして、その子供をおとつちやんの一票を穫得するように使つて選擧運動をなす場合であつて、學校の兒童をじかに選擧運動に使用いたします場合を含んでいないではないか。從つてこういう新しい表現をいたしませんと、あとで誤解を受けるおそれがありますので、こういうような別途の表現、別途の規定をここに修正として規定をいたします必要があるのでなかろうかと存じますが、今一點それだけをお答え願つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=40
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041・林敬三
○林(敬)政府委員 その點私の申し上げたことが不十分だつたかと存ずるのでございますが、そういう御心配は今提案いたしております法案でもつていきますならば、萬々誤りはないと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=41
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042・佐竹晴記
○佐竹委員 進んで同條、百二條を、選擧運動の費用はこれを公營とすと改めて、一般の選擧はすべて公營でもつてやるようにすることが適當ではないかと私どもは思うのでありますが、當局といたしましてはいかなるお考えでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=42
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043・林敬三
○林(敬)政府委員 選擧運動の公營の範圍というものは、當局といたしましては、つとめて擴充強化していくべきものだと思うのであります。理想といたしましては、適當なる範圍における公營を、もつともつと充實して行うべきものだと思うのであります。ただ實際問題といたしますと、現在の國の財政なり、あるいは資材の關係、その他國家の現状から申しますと、理想からいえばまことに不滿足ではありますが、現在のビラ何枚、無料葉書何枚、あるいは無料でもつて演説會を行いうるという程度の公營が、ぎりぎり一ぱいのところだと考えるのであります。將來の問題としては公營の問題については大いに研究もし、また充實する方向に向つて、政府といたしましては當然努力を續けるべきものだと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=43
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044・佐竹晴記
○佐竹委員 そういたしますと、今これを直ちに修正いたしまして、次の選擧にこの修正を生かして活用することは、政府といたしましてはできないという御趣旨でございましようか。それは豫算その他の關係だけのことでございましようか。また選擧運動の費用はある程度運動するものなら運動するものが負擔をすることが適當であるというお考えでございましようか、この點を承つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=44
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045・林敬三
○林(敬)政府委員 ただいま申し上げましたように、公營というものは、理想としては極力擴充強化する方向に向つて邁進いたしたいと存じますが、政府といたしましては、現在のとろは現在の國の状態その他から見合わせまして、まずできる限り、現行の法規にきめられてある程度というところでいたし方がない、かように考えております。なお將來の問題につきましては、先ほど來申しますように、極力擴充していく方向に向つて、ほんとうに眞劍な努力を續けてまいりたいと存じておりますが、やはりこれは選擧であります以上、全部公營ということが適當かどうか。あるいは自分で立つて戰う以上、やはり自分の責任において、自分の金も若干出してやるのが妥當かどうか。そこらのところはいろいろ議論のあるところだろうと思います。この點は將來十分研究をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=45
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046・佐竹晴記
○佐竹委員 さらに進んで百條の二の削除の關係を伺いたいと思います。百條の二にはかように規定いたしております。「内務大臣ハ選擧ノ期日後ニ於テ當選又ハ落選ニ關シ選擧人ニ挨拶スル目的ヲ以テ爲ス行為ニ關シ命令ヲ以テ制限ヲ設クルコトヲ得」とございます。この百條の二に基いて發せられたのが衆議院議員選擧運動等取締規則第六條であります。第六條には「何人ト雖モ選擧ノ期日後ニ於テ當選又ハ落選ニ關シ選擧人ニ挨拶スルノ目的ヲ以テ左ノ各號ニ掲グル行爲ヲ爲スコトラ得ズ
一、選擧人ニ對シテ戸別訪問ヲ爲スコト
二、自筆ノ信書及當選又ハ落選に關スル祝辭、見舞等の答禮ノ爲ニスル信書ヲ除クノ外文書圖畫ヲ頒布スルコト
三、議員候補者一人ニ付二百枚以内ノ張札ヲ除クノ外文書圖畫ヲ貼付シ又ハ掲示スルコト
四、新聞紙又ハ雜誌ヲ利用スルコト
五、當選祝賀會其ノ他集會ヲ開催スルコト
六、多衆集合シ又ハ自動車ヲ連ネ若ハ隊伍ヲ組ミテ往來スル等氣勢ヲ張ルノ行爲ヲ爲スコト」
かように規定いたしております。すなはち第六條は、選擧が濟んだのちに戸別訪問をしたり、あるいは新聞廣告で當選御禮をしたり、あるいは祝賀會を開いてみたり、あるいは自動車を連ねて當選萬歳々々でねり歩くとか、あるいはたくさんの葉書を印刷して數萬も數千萬も御禮の手紙を出す、こういつたようなことは一切相ならぬぞと禁止をいたしております。ところが、今囘の政府提出の改正案によりますと、その基本であります百條の二を削るというのであります。百條の二を削りますから、從いまして、これによつて發せられました衆議院議員選擧運動等取締規則中の第六條は消えます。從つて今度は選擧が濟んだら戸別訪問もしほうだい、當選祝賀會もやれる、多衆自動車を連ねて、萬歳々々とねり歩くこともできる。新聞で當選御禮の廣告をすることもできる。葉書を何十萬枚刷つて出しても差支えがない、かようになるのであります。われわれが今度の選擧をするに際しまして、二萬枚しか出せないとか、ポスターは千枚しか張れないとか、制限を加えておきながら選擧が濟んだらやり放題というのは、これはどうしても解せません。(拍手)何で政府といたしましてはこういうふうな禁止規定をとつて、自由に何でもやつて構わぬというような改正をお企てになつたのでございましようか、その理由を承りたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=46
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047・林敬三
○林(敬)政府委員 百條の二の事後の挨拶運動の禁止の解除のことでございますが、これはお話の點もまことにごもつともだと思います。しかしながらこれを提案いたしましたわけは、從來の選擧法というものが、あまりにもいろいろの制限を設け過ぎた運動についての制限をあまりにもこまかく設け過ぎておるという非難が非常に強くございました。殊に終戰後においては、なるべく自由に運動をするということを本來の建前として立法していく、こういう氣持でございます。また事後の挨拶運動の程度というものは事後の挨拶ぐらいするのは人情ではないか、こういうようなことでさような立案をいたした次第であります。しかし今のお話にもありましたように、文書圖畫の制限も出ておりまして、最近にこれを一番初めに立案して提案いたしましたころから見ますと、非常に刻刻に事情が變化もいたしてまいつてきております。御意見は大いに傾聽すべきものだと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=47
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048・佐竹晴記
○佐竹委員 選擧が濟んで一應挨拶をするのは、これは人情だとおつしやいますが、これは本委員會において松原委員も言つております通り、選擧というものは本來の精神といたしましては國民がその人に國政を御依頼いたしまして御苦勞でございますといつて、選擧民の方からまことに御苦勞でございましたと感謝する、それをどうも當選さしていただきました、有難うございましたといつて、當選御禮をしなければならぬということを法律が認めるそれ自體が、これは時代逆行でございます。まだそれのみではありません。こういつたような解放をいたしますことすなわち自由にこういつにようなことができるようにいたしますことは、およそ今占領治下にあるということを忘れておるのではありますまいか。われわれは戰爭に負けて今占領下において苦しみ惱んでおる。國民學校の兒童の教科書すらも刷ることができないで、私どものポスターも、その他の信書も制限を受けておる、選擧は制限をするが、選擧が濟んだらいくらでもおやりなさい、これはどうあまりに聞えません。またそれのみではございません。われわれはこの占領下において、今や苦しい歩みのもとに選擧をしておる。ところが選擧で勝つた負けたといつて、自動車を連ねて赤鉢卷で酒をひつかけて、萬歳々々で歩くような體たらくが出ても當り前だとさようにお考えになると思われますが私はこれは修正案が出るまでもない。こういつたことは政府が進んで、むしろこの條文はお引込めになるだけのお氣持はないのでございましようか。この修正意見に對しまして、これはむしろ進んで撤囘してもよろしいというくらいの御氣持が、政府にはあつてしかるべきではないかと思いますが、いかがでございましようか、これを承つておきたいと思います。
〔「大臣はどうした」「休憩してやり直せ」その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=48
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049・林敬三
○林(敬)政府委員 政府といたしましても……
〔「大臣を呼べ」「地方局長では駄目だ」その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=49
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050・岩本信行
○岩本委員長 お靜かに願います。——御靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=50
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051・佐竹晴記
○佐竹委員 地方局長から一應答辯を聽きましよう。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=51
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052・林敬三
○林(敬)政府委員 ただいまのお話に對する政府の意見を申し上げたいと存じますが、議會におきまして本案を削除すべし、こういうことに御決定になります場合は、政府としては異論はございません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=52
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053・佐竹晴記
○佐竹委員 私は單に異存がない程度でなく、この問題は非常に重大であると存じまするので、内務大臣の御出席をお願いいたしまして、その言明をお願いいたしたいと存じます。その答辯のございますまで一時小休せられんことをお願い申し上げたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=53
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054・岩本信行
○岩本委員長 ただいま大臣の見えるまでというお話でありましたが、こちらから今要求中でございますが、まだ見えませんから……
〔中村(高)委員「委員長、議事進行について」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=54
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055・岩本信行
○岩本委員長 大臣は所用のために次官が代理でお答えするそうであります。
〔「次官ぢや駄目だ」「大臣を呼べ」その他發言する者多し。中村(高)委員「委員長、議事進行について大臣の出席の問題です」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=55
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056・岩本信行
○岩本委員長 大臣はおいでにならぬそうであります。
〔中村(高)委員「そういう問題ぢやない、話が違う、別のことです。」と呼ぶ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=56
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057・佐竹晴記
○佐竹委員 私はこの四つの修正に關しまして内務大臣の御答辯がありました後、大體第一から第四までは政府當局の意向を承りましたから、第一、第二、第三については私ども直ちに役員とはかりまして、この點に對して撤囘すべきや否やを考えたい。しかし第四に關します御答辯がありません限り、この第一から第三に關します修正動議を撤囘すべきや否やについては私はまだ意を決することができません。從いまして内務大臣に速やかに御出席願いますように、ひとつ御取りはからいを願いまして、御囘答のあり次第、この修正意見の取扱いをいかにすべきかについての、最後の私の意見を開陳いたしたいと思います。内務大臣の出席をお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=57
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058・岩本信行
○岩本委員長 佐竹君に相談申し上げますが……。(「大臣を出せ。大臣を呼べ」と呼び、その他發言する者多し)御靜肅に願います。佐竹君に御相談申し上げますが、次官が大臣と打合せて來ておるそうであります。次官でいかがでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=58
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059・佐竹晴記
○佐竹委員 先ほど内務大臣は呼んでおるから、すぐ來るということではなかつたですか。
〔「大臣を呼べ」「委員長議事進行」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=59
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060・佐竹晴記
○佐竹委員 大臣がお見えになりましたからあらためて一つお伺いをいたします。大事なことでございますので、今一度あらためてお尋ねをいたしますが、しかとお答えを願いたいと思います。今度の改正案によりますと百條の二を削るとございます。百條ノ二には「内務大臣ハ選擧ノ期日後ニ於テ當選又ハ落選ニ間シ選擧人ニ挨拶スルノ目的ヲ以テ爲ス行為ニ間シ命令ヲ以テ制限ヲ設クルコトヲ得」と規定いたしております。しかしこれに基いて發せられました規則がすなわち衆議院議員選擧運動等取締規則でございます。その第六條にかようにございます。「何人ト雖モ選擧ノ期日後ニ於テ當選又ハ落選ニ關シ選擧人ニ挨拶スルノ目的ヲ以テ左ノ各號ニ掲グル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ、一選擧人ニ對シテ戸別訪問ヲ爲スコト、二自筆ノ信書及當選又ハ落選ニ關スル祝辭、見舞等ノ答禮ノ爲ニスル信書ヲ除クノ外文書圖畫ヲ頒布スルコト、三議員候補者一人ニ付二百枚以内ノ張札ヲ除クノ外文書圖畫ヲ貼付シ又ハ掲示スルコト、四新聞紙又ハ雜誌ヲ利用スルコト、五當選祝賀會其ノ他ノ集會ヲ開催スルコト、六多衆集合シ又ハ自動車ヲ連ネ若ハ隊伍ヲ組ミテ往來スル等氣勢ヲ張ルノ行爲ヲ爲スコト」、かようにございます。そこで今度の政府提出の改正案で百條の二を削りましたために、百條の二によつて發せられた衆議院議員選擧運動等取締規則第六條も消えてしまいます。すなわちここにやられないと規定をいたしておりましたことが、やつてもかまわないということになります。そこで選擧が濟みました後には戸別訪問はやりしだい、お禮の手紙は出し放題、當選祝賀會をやることもできれば、自動車をつらね赤鉢卷で一杯ひつかけて萬歳々々でねり歩くこともできる。かように相なつておりますが、一體内務大臣はこんなことを自由にやつてよろしいとお考えになつて、これは眞面目にお出しになつた改正案でございましようか。われわれは今日選擧をいたしますのに、あらゆる制限を受けておる。學校の兒童の教科書すらも十分にこれを配ることができない状態である。さればこそ、われわれが今日選擧運動をいたしますに際しましては、ポスターは千枚に限る、葉書は二萬枚以上使うことができない。あらゆる制限を加えて選擧はこんな窮屈な状態ではなければやれぬぞということをちやんとお示しになつておる。これは議員提出の法律案で出ましたが、政府の方においてもその通り今やろうと内務省におきましてもその法規を刷つて、そうしてその方針に從つてやることを準備された。しかるに選擧が濟んだ後は、お禮の手紙は何十萬枚出し放題、戸別訪問もやり放題、祝賀會はいくらやつても差支えない、自動車をつらねてねり歩いてもよい。こんなことは一體どうして許されるのでありましよう。内務大臣といたしましては一體これを何とお考えになつておるか。——〔「こういう法律を出しておいて今になつて相談しておるとは無責任だ」と呼ぶ者あり。〕まあ御相談になるならゆつくりどうぞひとつ……。(植原國務大臣發言の許可を求む。)御協議なさつておりましたからお待ちをいたしておりました。それでそういつたようなことを一體解放してしまいます御趣旨が私どもには飮みこめません。先ほど事務當局より、選擧はなるべく自由にやらせるような原則を考えたのであるから、自然すべてのものを自由にしようとするお考えがあるかに御答辯がございました。しかし選擧をそんなに抑えておいて、選擧後のそういつた行動については自由にやり放題では、これはとうてい解せません。殊に占領治下において、選擧で爭つて、勝つた負けたで、それで自動車を連ねて萬歳々々というようなことを許すことは、政府はほんとうに正氣かどうか、私ははなはだ疑問をもたざるを得ません。この百條の二を削ろうといたしました政府の眞の御精神をここに承りたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=60
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061・植原悦二郎
○植原國務大臣 先刻その問題につきましては、私の參る前に地方局長がお答えしたそうですが、それと同じ意味において、なるべく選擧に對しましては、あらゆる制限がない方が一番いいのであります。しかし時局の變遷や時の相違に應じましてまたそれに應ずることをするのがよろしいので、それが皆樣方がお惡いと考えるならば、ちようど皆樣方が各派で協同しておきめになつた選擧取締りでいろいろ窮屈なこの時局に對しては、それより良法がないとおきめになつたと同じ理由でありまして、それもこの場合においてさようなことが不都合であるとお考えになるなれば、皆樣方の御意思で御決定になつてこれはよろしいのだが、なぜ政府でそれをきめたかといえば、先刻局長の申した通りであります。
〔山村委員議事進行について發言の許可を求む。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=61
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062・岩本信行
○岩本委員長 山村君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=62
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063・佐竹晴記
○佐竹委員 ただいま申し上げました通り、こういつたことが、いかに自由にするのか、これは選擧の本來の精神だとおつしやるのでしようけれども、こんなことを自由にやつて構わないなどといつたことは、これはどうしても私ども解せません。内務大臣といたしましては、どうでございましよう。こういつたものは、これはむしろそれを消そうとしたことは、それは事務當局がやろうとしておつたならば、これは間違いだ、これはひとつ撤囘しよう、こういつたようなお氣持になれぬでございましようか。承つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=63
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064・植原悦二郎
○植原國務大臣 先刻お答えした通りであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=64
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065・佐竹晴記
○佐竹委員 私はただいまの内務大臣の御答辯は腑に落ちません。これは内務大臣におかれましては、永い間衆議院に席を置いておられまして、そうしてこういつたような法規が前から出ておることもよく御承知であります。また内務大臣とせられましては、これはまことに必要な規定であるとお考えになつておると私は確信いたします。これはどうしても現下時局に照らしてこの規定は必ず置かなければならぬということを、内務大臣の御良心にみずからお問い願いますならば必ずやお考えになることと思います。それをとろうとする、ここに削除の規定を設けようとしておつたならば、これは間違いだつた。よろしい、それはとりましよう。撤囘しましよう。これくらいなひとつざつくばらんな氣持をお示しいただきましてもいいじやないかと私は思います。こういつたような規定を、これはどうもとつたらよろしいというお考えでありますならばそれは議員各位の自由にお任せして結構であります。あなた方の議決によつて然るべくおやりくださいの問題でなくして、現下の情勢に照らして内務大臣御自身が、この規定は置いておかなければならぬという熱意に燃えらるべき筋合のものではなかろうかと思うのであります。ほんとうの内務大臣のお氣持をひとつこの際承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=65
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066・植原悦二郎
○植原國務大臣 氣持は、趣意といたしますれば、選擧は自由に行われることがよろしいと思います。但し現下の事情におきましては皆樣方が各派でおきめになつた嚴しい制限を必要とするような時代におきまして、諸君がそういうことがない方がよろしいというお考えでありますならば、政府はその皆樣方多數の御意向に同意することにはやぶさかでありません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=66
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067・岩本信行
○岩本委員長 議事進行について山村君の發言を許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=67
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068・山村新治郎
○山村委員 これにて……。(發言する者多く議場騷然)打切り……。
〔議場騷然聽取不能〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=68
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069・岩本信行
○岩本委員長 山村君の動議に……。
〔「發言の繼續中じやないか」「何言つてるか」と呼び、その他發言する者、離席する者、多く議場騷然聽取不能〕
〔佐竹委員「委員長、早く大臣を出してください。そうして私の質問のけりをつけましよう。」と呼び〔「早く大臣を出せ、陰謀政治はやめろ」と呼び、その他發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=69
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070・岩本信行
○岩本委員長 御着席を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=70
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071・佐竹晴記
○佐竹委員 私の發言中に議場騷然となつて、そのままでございますから、私の發言はなお繼續中でございますので、その點は明確に願つておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=71
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072・岩本信行
○岩本委員長 發言を許しておりません。
〔「發言中だ」「速記録を見よ」「發言を許していないというのを取消せ」と呼び、その他發言する者、離席する者多く、議場騷然〕
本日はこれにて散會いたしまして、明日午前十時開會いたします。
午後十一時五十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211501X00719470325&spkNum=72
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