1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
石油配給公團法案(政府提出)(第六一號)
配炭公團法案(政府提出)(第六二號)
産業復興公團法案(政府提出)(第六三號)
貿易公團法案(政府提出)(第六四號)
價格調整公團法案(政府提出)(第六五號)
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昭和二十二年三月二十五日(火曜日)午前十時四十分開議
出席委員
委員長 岡部得三君
理事 小野瀬忠兵衞君 理事 松本七郎君
木村公平君 庄司一郎君
藥師神岩太郎君 寺田榮吉君
稻村順三君 細田綱吉君
松尾トシ君 香川兼吉君
増井慶太郎君
三月二十四日委員金子益太郎君辭任につきその補闕として細田綱吉君を議長において選定した。
出席國務大臣
商工大臣 石井光次郎君
出席政府委員
内閣事務官 椙杜正太郎君
内閣事務官 小笠公韶君
農林政務次官 森幸太郎君
農林事務官 遠藤三郎君
商工政務次官 保利茂君
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 鈴木重郎君
商工事務官 石田磊君
商工事務官 松田太郎君
商工事務官 岡村武君
商工事務官 渡邊誠君
商工事務官 高橋哲君
商工事務官 平井富太郎君
貿易廳長官 永井幸太郎君
運輸事務官 伊能繁次郎君
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本日の會議に付した議案
石油配給公團法案(政府提出)
配炭公團法案(政府提出)
産業復興公團法案(政府提出)
貿易公團法案(政府提出)
價格調整公團法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=0
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001・岡部得三
○岡部委員長 昨日に引續き質疑を繼續いたします。稻村順三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=1
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002・稻村順三
○稻村委員 昨日商工大臣の御答辯によりますと、現状においては重要物資の配給に關する限り、國の責任において統制は必要である。その統制をするのにはなおまた現状をもつてすれば、官吏による統制が國の責任においてなされることがきわめて適當である、というような御見解をもつておられたようであります。そこで私は大臣にさらに重ねて質疑しなければならないのは、それは今日この統制というものがこれまで官僚統制といわれ、あるいはいろいろな點について統制が國民の非常な怨嗟の的となつておる傾向がありますので、官吏による統制がはたしてどういう意味においてよろしいかという點に關して、官吏そのものに關するところのいろいろな點を質してみたいと考えておる次第であります。昨日から松本委員やあるいは竹山委員からの質疑に對しまして、大臣は、これは民間から採用することによつて一應こういう官僚化の弊を避けるというような御答辯をされたわけであります。ところがこれに對して、民間人は一度官吏となると官僚化するというのがこれまでの例であるから、こういう惡弊に對してはどういうふうに考えるかというような質問があつたと思うのであります。これに對して大臣は、これはわが國の國民性のしからしめるところであつて、これは政治意識を高めるとか、あるいは政治的訓練を經なければ何をやつてもだめであろうというような意味の答辯をされたわけであります。私たちから申しますと、それならば今日のような政治的段階の状態、國民の政治意識の段階においては、でき得る限りの手段を政府はとるけれども、しかしながら官僚化はこれはやむを得ない、これはしかたがないことである。こういうふうに私には受取れたのでありますが、その見解について一應大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=2
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003・石井光次郎
○石井國務大臣 今のお話はほかの委員の方にもお答えいたした次第でありまして、官吏による統制というものが、必ずしも完全無欠であるということは言えません。それには官僚的ないろいろな弊害があるといういろいろな事實も聞かされておるし、またその通りと私どもも思う面もあつたのでありますが、今日の場合においては、どうしてもこの公團組織、この間から申しまするように專賣と今の營團の組織の中間をいくような組織において、政府の責任においてやつていくのが一番よい方法といふことに結論づけられたのであります。そういたしますと、そこにまいります官吏をどうやつて一般の危惧するがごとき官僚的に陷らぬようにしていくかということは、根本は先日も申しました日本の國民性の問題もいろいろありますが、それを言つておつては追いつかない話でありますから、現實の問題といたしましては、それをできるだけ矯正し、そういう弊に陷らぬような努力をしていく。組織としては委員會の問題もお話したのであります。それから公團のいろいろな動きにつきましても、できる限り民主的に、そうして商賣に屬するようなビジネスマンがやれるような氣持でいろいろ組織して、役所等でやりますと物事がだんだん遲延する傾向が一番多いとか、決定が遲いとか、決定したものの運びが遲いというようなよく陷りやすいことをできるだけ組織の上でも、實際の上でも直すようにして、そうして民衆の信頼を得るように、あらゆる面からしていくというよりほかに方法はない。そういうふうに思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=3
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004・稻村順三
○稻村委員 その委員會なるものは昨日の答辯によりますと、監査委員ということですが、ほかにどういう委員會をおもちであるか、その點をお尋ねしてみたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=4
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005・石井光次郎
○石井國務大臣 一番問題になりますのは、地方の實際の状況がうまくいくかいかぬかの點でありますが、それは地方には監査委員會というものをおいて、うまく配給がいくかどうかという點を十分見てもらうということが、私は配給という面からすれば一番効果的な問題だと思つております。それから配給の一番高い面から見るのは、昨日申しました中央に委員會を置くということでやつてみたらどうか。それから先にたとえばそれぞれの所にもつと違つた委員會を置く必要があるということなら、それは將來いろいろ考えてもいいと思ひますが、今私ども腹案をもつておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=5
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006・稻村順三
○稻村委員 そうすると今具體的に大臣のもつていらつしやる案というのは、監査委員が一番具體的なもので、あとは漠然としておるように私は感ぜられるのであります。これは私は官僚があらゆる委員會をもち、いろいろな點についてあるいは諮問したり、あるいはまた一應監査させたりということは、これまでも十分やつてきたことであると思うのであります。しかしながらそういうことは依然としてこの官僚化ということを防ぐことができなかつたというのは、一體どこに原因があるかと申しますれば、結局私たちは監査あるいはその他の委員會が、單なる諮問であつたり、他に委員會を設けて單なる諮問であつたりして、それが決定に對して何らの拘束權がなかつたり、あるいはまた監査というような問題になりますと、これは要するにしたことに對する、既に終つた仕事に對するところの調査なのでありまして、結局事後承諾だということに考えております。たとえば日本の議會を考えてみましても、その意味において決算委員會というものは、非常に形式的に流れてしまう。したことはやむを得ぬからというので、よほどの大きな欠陷でもない限りは、ほとんどその問題に關しては、大抵形式的に通してしまう。そうしてどうかというと、大體國家の豫算などに對しましても、議員の重點は豫算委員會におかれる。これはやはり初めをなす場合が非常に重要なことで、そこに決定權がおかれる。こういうことによつて、たとえば立法府がある程度行政府を牽制していくという、これが一番重要な役割だと思います。もしここに豫算委員會がなくて、決算委員會だつたならば、行政府の官僚化の弊は、もつともつと大きなものだというふうに考えております。そうしますとこの官僚化を防ぐということになりますと、あらかじめ何か拘束するという機關をもつ必要があると思うのであります。この點既にこの法案が公布されると同時に、公團は直ちに活動を開始しなければならない。緊急を要する公團の仕事でありますので、そういうことに對する何らかのはつきりした政府の方針があるかどうか、それを伺つてからでないと、今度のこの官僚化を防げる防げないの問題は、ほとんど水掛論に終る危險があるのじやないか、かように考えるのでありますが、商工大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=6
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007・石井光次郎
○石井國務大臣 地方の監査委員會におきましても、數字的にこういう欠陷が起つておるのはいかぬとかいいとか、今の決算委員會なんかの行き方とは違う行き方があると思います。繼續的にずつとやつていくものでありますから、何かもう少し直すべきものがあるということになりますると、それをもつて、それから先の仕事をずつと繼續的にやつていくのでありますから、それを直していくということは、當然できることであるし、またそれが一囘で直らないなら、二囘でも話をするというふうに、續けていくのでありますから、これは決算委員會の問題とは違つて、實効があると思います。全體の問題としては、中央にひとつ委員會をおきまして、全般的のいろいろな問題を議してもらうというつもりでおりますが、そこでいろいろな行き方について、こういうものはこうしたらよい、ああいうものはああしたらよいというような、大體の方針によつて、それが公團の方に反映して動き出すということで、私は末梢だけでなく、中央からの委員會のサゼツシヨンというものが、この運營に大きく力を及ぼしていくだろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=7
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008・稻村順三
○稻村委員 きわめて樂觀的な御觀察のようでありますけれども、私たちから申しますれば、私は官吏というものが全部官僚化する——昨日も言つたように、個人々々から見れば全部が官僚化しているものだという前提のもとには、出發していないのでありまして、そのものは結局官吏制度というものと、非常に大きな結び付きがあるから起つてくる、こういうふうに考えておるのでありまして、この點私は石井商工大臣とよほど考えが違うのでありまして、國民性というのはほんの一部分の原因でありまして、實は私たちから申しますれば、日本の今日の官吏制度がそうさしておる、こう考えておるのであります。從いましてこれを官僚化しないためには、この公團の官吏にするというならば、官吏にするのはしかたがないといたしますれば、少くともこの公團におけるところの事務にあたる官吏は、一應官吏制度の覊絆からはつきりと拔けたものでなければならない。かように考えておるものでありますけれども、その點商工大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=8
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009・石井光次郎
○石井國務大臣 この公團に從事いたしまする官吏は、もちろん官吏でありまするから、官吏の服務紀律に從うわけでありまするが、今現業にしても、現業でない役所にいたしましても、現組織の中に何人かはいつていくというよりは、ほとんど民間人によつてこれが組織されるということであり、わざわざ別に役人にどうということのむずかしい手續をせず、この仕事に從事することによつて、既に官吏になるというような意味の手輕な氣持で、なるべく動かせるものなら動かしていくということを考えておるのであります。今のお話のような線に沿いまして、どういうふうにしたらいいか。なるべく今の現官吏制度から離してというお話でありまするが、現在の官吏制度の俸給の點等におきましては、申し上げましたように一般の官吏の俸給は俸給といたしまして、必要なだけは現在の收入よりも惡くしないとか、いろいろな點において考慮もされておるのでありまするし、これは今のお話の筋とは別でありますが、この仕事が仕事でありまするから、特に配炭なら配炭、石油の配給なら石油の配給という、今までやつておつたビジネスの線を出ないのでありますから、そういうことになつた人たちに、特別なものをもつていつて、これを寛大にするということをしないでも、今の官吏服務紀律のもとに服していく。そうして國家の公僕としての氣持で働いていくというこの制度は、一向變へぬでもいいのぢやないか。ただ働く人の心持と氣構えによつて、陷らんとする官僚の行き方というものを防ぐというところに、まずみんなが努力してもらうこと、それからその線に沿うてのわれわれのいろいろな指導をやつていくということで、完全無缺とは言いませんが、それによつてわれわれの心配する點をできるだけ除去することができるというふうに思うておるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=9
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010・稻村順三
○稻村委員 一應抽象的には、私も大臣の言うことが正しい、こう思つておるのであります。ところが具體的になりますと、さつき大臣も公僕というふうにおつしやいましたが、さてその公僕というのは、事實これはすべての人間が抽象的に、或は政治的な面だけを考えておるときには、一應公に仕えるし振りであるという心構えをもつて通用すると思うのであります。ところが具體的な經濟的な行動に携わるということになりますと、こういうことだけではいけない問題が、たくさん起きてきはせぬかというふうに考えております。公僕ですから一個の、やはり共通の問題になつてまいります。しかしながら公共人というか、公と言えば國民の問題になりますが、直接經濟行動のことを考えてまいりますと、この經濟行動に關しまして、公と申しましても、この中には少くとも石炭なら石炭ということで、石油でもそうでありますが、これを織り込む場合には、そこには生産者があります。その生産者の中にも從業員があり、經營者があります。さらに商業という取引業を、完全にこの公團によつて廢止したのでもないようでありますから、結局公團の一應のらち内、わく内において、取引業者もここに殘つております。そうしますとさらに需要者があります。需要者におきましても大口、小口いろいろな點でいろいろの違つた利害關係の上に立つておると思ひます。これらの人間が政治的にはある程度の一致點があるにいたしましても、經濟的には全部利害が非常に對立しておるとまでいかないにしても、異つた場合が多い。殊にこの公團が實施されるというその實情は、物資が少いということを前提としての問題なのです。この物資の少いということを前提として公團がつくられておる關係上、生産者は生産者、それから今度は取引業者は取引業者、需要者は需要者というので、そこにお互いに説を立てまして、目の色を變えてお互いに對立しておるような場合が非常に多いと思うのであります。その場合に公僕という、奴隷、しもべになるということになりますと、これはきわめて抽象的な問題であつて、具體的には私は非常にむずかしい問題になるのではないかというふうに考えられるのでありまして、この場合單に上から任命された官吏として、突如として天降つてきた人間が、はたしてこういうふうな場合に、あらゆる生産業者、配給業者、大口消費者、小口消費者というようなものの間に立つて、最も妥當な點を發見することができるかどうか。私はその點について農業會の例をとつてもそのことははつきりわかるのでありますけれども、農業會などにおきましても、そうなりますと結局これは配給業者という配給の業務をとるために配給業者となつて、一個のこれは官吏によるところの獨占資本というような、官吏による商業資本というような、それは生産業者からも獨立しておる、需要者からも獨立しておる、しかも品物がないという點でもつて、また買いどころはそこしかない、賣りどころはそこしかない、こういうふうなただ品物が少いというだけでもどうかというと、このごろは買う方がお客さんでなくて、賣る方がお客さんだというような、こういうことで普通の商取引においてもいわゆる取引業者が非常にいろいろな點で非難されておるときに、さらにそれに官吏という——一個の強制權をもたない者は官吏じやありませんが、この強制權をもつておる官吏という身分を與えられた場合に、一體それはどうなるのかというようなことに對して、私はそれが一番官僚化の大きな原因になりはせぬか、こういうふうに考えております。この點で私は先ほど豫算委員と決算委員との問題のようにたとえて申しましたけれども、實はこういうふうにするならば、たとえば官吏としての總裁、あるいは副總裁、理事、もしくはそういうふうな役員選衡にあたつて、これらの業者の意向というものを、私的でなく公式に代表することによつて、大臣がそれを任命する、こういう形態はとれないものかどうか、こういうふうなことが私は官僚化防止のまず第一の段階であるというふうに考えるのでありますが、その點大臣の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=10
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011・石井光次郎
○石井國務大臣 だんだん具體的なお話になつてまいりましたが、今お話の前段の點は、まことにそういう心配もあるからわれわれはどうしたらそれを除くかということに努力するという、どこまで行きましても同じようなことになりますけれども、そういう氣持でやるほかありませんが、役員の任命の場合に、各方面の公的に代表する氣持の者をどういう形かで出して、それを商工大臣が任命するということはどうだという話であります。どの方面から推薦されますにいたしましても、それはおそらく、たとえば需要者側とか、あるいは生産者側とかいうような面からかりに推薦するという場合に、その人達ちは皆その業界においての立派な人というものを推されるでありましようし、それから選ぶということは形の上において立派なように聞えますが、これはそういう組織をこしらえて、あるいは規定を置いて、どこから何人どういう方面から推薦するというような形はとる考えはもつておりません。主務大臣としての責任において、今のようなお氣持によつて各方面からの推篤は、かりにこういう方面にこういう人を出してもらいたいとか、ああいう者を出してもらいたいとかというような話としては、私ども萬端の裁量に間違いがないようにいろいろ承りたいとは思いますが、その中から必ず選べという形はとらずにいきたいと思つております。これは私商工大臣が全責任を負いまする關係上、その首惱部になる者は商工大臣が各方面の事情を十分聽きまして、公正に、そうしてこれが一番よく動き得ると思うところから決定をいたしたい、そういうふうに思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=11
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012・稻村順三
○稻村委員 實は大臣も神樣でもありませんので、その點別に大臣の任命に關しまして、常に間違いがないというようなことは言えないと思うのでありまして、その點私は考えといたしましては、結局こういう最高の役員をなぜそうしなければならぬか。殊にここに價格調整公團のごときは大臣ではなくて、任命が物價廳の長官になつております。こういうふうな場合になりますと、これは純然たる官吏が任命することになつておるように私ちよつと見たのであります。こういうふうなことになりますし、殊に大臣は純然たる官吏でないにいたしましても、やはり神樣でない限り、そういうようないろいろな問題が起ると思うのであります。しかもこれが大臣が任命すると申しましても、それの選考はまず大臣が一々現實の問題として、聽くこともそれを裁斷するということもなかなか困難でありまして、結局一應大臣のもとにおける官僚——官僚というより官吏の手を經て選考するというふうなことにもなり得ることも非常に多いと思うのであります。私も農業會に職を奉じておりまして、そういうふうな實情をよく知つておるのであります。こういうことを考えてみますと、とにかく官吏というものが直接行政なら行政なんかの仕事の事務にあたるに際しまして、至極公平無私にやろうといつたところで、なかなかできない問題があるのであります。各界からそのおのおのの利益代表が集まりまして、そこで相談してまとまつたものによつて一應執行するということになれは、きわめて圓滑になつて、官吏が官僚化するということをある程度防止していくことができる場合が非常に多いと思うのであります、殊に私たちは多年勞働爭議や、あるいは農民爭議というようなことに從事しておりますと、官吏がいきなり解決しようとして係りの官吏がはいつていつて調停をやろうとすると、かえつて激化して、間々爭議を解決すべきものも解決させないというような場合が多いのであります。兩者利害の對立しておる人間が話合いをした結果を、官吏がその點をある程度事務的に處理すると、問題がきわめてスムースに解決する場合が多いのであります。私たちさようなことを考えてみますと、こういうふうな場合に大臣がいきなり各方面から聽いて任命する、殊に何と言いますか、物價調整公團のような場合には、一官吏であるところの物價廳の長官がこれを任命する、こういうようなことをやつていくということは、主觀的にはどうであつても、將來非常に惡弊を殘す場合が多い。おそらく石井商工大臣はそういうことをせぬで、廣く意見を聽こうと思うのでありましようが、もし石井商工大臣がおやめになつて次の大臣が來た場合には、石井商工大臣ほどそういうふうなことができるかどうか。國の法律を決定する場合には、一應大臣の個人的主觀というものを離れてやり得る。こういうものが法律としてあることが私は望ましいことであると思うのであります。そのために私は各界から、たとえば役員選考委員會のようなものを法律的に定めまして、それによつてまず推薦をさせる、こういうふうなことが官僚化を防ぐ第一歩で、これは要するに議會における豫算委員會のような役割を果すのじやないか。かように考えているのですが、大臣はこれに對して先ほどそういうふうな意思はないとかように御答辯なされたわけでありますが、私は重ねてそういう必要があるかないかということを、——この官僚化を防ごうとするところの大臣の誠意を聽いて非常に滿足するものでありますけれども、その誠意の上から言つて、こういうものを一應つくる御意思があるかないかということを、もう一度御答辯を煩わしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=12
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013・石井光次郎
○石井國務大臣 一應ごもつともな御意見でありまするが、私は少し違う考えをもつております。私一個の立場というよりは、これはだれが商工大臣になつても今日のような世の中において、獨斷で勝手に自分の好きな者、あるいは自分の子分であるとか、世話になつた者を充ててごまかすというようなことはあり得ない世の中であります。またそういうことはなく、各方面のいろいろな意向を聽いて、必ずややられると思います。また各業界から人を出していけば、非常に民主的に行われるというお話でありますが、これは私は理論的にはその通りだと思います。ところが實際問題は私は逆だろうと思うのですが、私の考えが間違つておりますかどうか、どこの例をいろいろ見ましても、あつちこつちの職能代表的な者が集まつて、一つのものを動かそうとすれば、それはおそらく議論倒れになつて動かないと思います。たとえば需要者の面、供給者の面、運送の面といろいろな方面の人たちが集まつて、これはこうだ、あれはああだと言つておりましたら、責任逃れの問題が多く議論され、實際は動かない。議論倒れで毎日會議ばかりして、實際のいろいろな方面に動かぬということになりはせぬかと思うのであります。私は總裁なら總裁、理事長なら理事長というような人を、どの點から見てもこの人ならばという人を選び出して、その人がわれわれとも、相談し合いまして、各方面の、この面ならこの人が立派な人だ、この面ならこの人だというような人を集めて、總裁とその人たちが意氣が通うやうな氣持で、一體になつて配炭の仕事をやる。石油配給の仕事に一生懸命になつてやるという氣持でやつていかないと、實際動かぬじやないか。商賣的にこれを動かしたいという氣持からいたしますと、特にそういうような氣がするのでありまして、各方面のいろいろの意向の代表は、建前としては委員會においていろいろな方面のこともやつてもらう。しかし實際入れる場合に、今お話のような氣持を含めて、私どもまた總裁等が人選をするということでやつていきたい。そういうように私は思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=13
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014・稻村順三
○稻村委員 どうもこの點これ以上議論いたしますことは、大臣と私とは永久に平行線のような感じがいたしますので、この點に關する私の質疑はこれでやめにしまして、次の點に移りますけれども、もう一つ聽きたいことは運營の問題であまりす。先ほど申しました通りに、役員の問題、先ほどから問題になりましたように、結局各界の意見というものは、要するに大臣個人の肚で一致點を探してそれを執行するに適當な役員を大臣が任命するこういう御意見のように私聽いたわけであります。この點はたして大臣御一人でもつてこういうことができるかどうかそれに對して私多くの疑問をもちますけれども、しかしそれはそれとしまして、
今度は運營の問題に移つていきたいと思います。この運營に關して、ここにたとえて申しますならば、先ほど問題にしたように、從來の慣習としてはこういう仕事ができますというと、結局結果に對して一應の批判がなされて、次の仕事に對するそれが大きな規範になつていくということが言われてきておるのであります。私たちも一應ある程度までそういうことが言えるだろうというようなことは考えておりますけれども、しかしその規範力たるやきわめて小さいのではないか、こういうふうに考えておるのであります。そうなりますと、ここに運營というようなものに關して、一應運營方針を見ますと、本法案によりますと、どの公團の意見を見ましても、運營の方針は結局やはり總裁その他がするようになつておると思うのであります。こういうことに關してはやはり運營委員會というようなものを、特に石炭とか、コークスというような重要な、殊に生産再開にとつて非常に重要な役割のあるものは、運營委員會というやうなものを設けまして、そうしてこれは各界の方面にどちらにも不公平にならないように十分なる意見を聽取するために、あるいは勞働組合の代表者とか、あるいはまた經營者の代表者とか、需要者の代表者とか、こういうようなものを一應全部集めまして、ここできめられた方針をもつて運營していく、こういう形をとることができないものであるかどうか、この點に關して一應御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=14
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015・石井光次郎
○石井國務大臣 仕事の運營の全責任は總裁が負つていくという形は同感だと思いますが、この運營をどういうふうにやつていくか、前々からずつとお話になります民主的なる運營の方針はどうするか、そのために運營委員會みたいなものを置いたらどうかというお話でございますが、これは地方におきましての監査委員會みたいな話をされましたが、そういうものが今日實際に當るものだと思います。それから中央におきましても、まだはつきりはきめておりませんが、そういうふうなものができる方がいいじやないかというふうに私どもは思います。それで總裁の諮問機關としての運營委員會みたいなものを考慮してみたいと思つておりま
す。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=15
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016・稻村順三
○稻村委員 そうすると、それは總裁、理事というようなものは、一個の事業上の執行の機關としてあるのでありますけれども、その執行に先だつてこの運營委員會の決定に從つて運營するという御方針を大體お認めになるのでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=16
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017・石井光次郎
○石井國務大臣 それは違います。執行のこの配炭の計畫その他につきましては、これに書いてありますように、安定本部總務長官が割當計畫、配給手續並びにこれに關する指示をなすのでありますが、これをやつていくのが總裁以下の仕事でありますが、それについて、どういうふうにしていけば民主的になる、どういうような點がいかぬというような點につきまして、今後はこういう問題はこうしていつた方がいいではないかというようなことが、委員會にお尋ねしたい問題でありまして、委員會がこの運營の主體であり、そしてただ總裁以下がその執行の任に當るという形は、考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=17
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018・稻村順三
○稻村委員 そうすれば結局先ほどの問題に移るのでありますが、結局どうかといえば、官吏が決定とそれから運營の一切の權限はもつておるけれども、ただお互いの業者の代表者は、これに對して諮問された場合に意見を具申することができる、しかしそれを採用するかしないかは、要するに官吏の意見一つによつてどうでもなる、こういうふうな樣式だと解してよろしうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=18
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019・石井光次郎
○石井國務大臣 なつかしく言いますと、形はそういうふうになりますが、今のどこにもあります委員會が、昔の委員會と違いまして、そこにおきましての話合いというものが、その業態の動きに非常に大きな力を及ぼしていき、また今後も及ぼしていくことは當然だと私は考えております。その運營委員會に立派な人を得ますれば、この公團の動きは同時によくなつていくということを私は確信いたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=19
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020・稻村順三
○稻村委員 それからもう一つ私はこの公團の職員を官吏とするということについて、一應質問してみたいと思うのであります。一體公團の職員というものは、國が責任をおびる。これは國が一應の責任の所在を明らかにするために、これを全部官吏としたというようなことになるのでありますけれども、この官吏になるということによりまして、先ほどから問題になりました今日の官吏制度というようなものから、いかにその官吏が主觀的には良心的な官吏であつても、結局非常に形式主義的にならざるを得ない。こういうことから、こういうものの獨立の活動を一應保障する意味におきまして、これを特殊法人としたと思うのでありますが、その特殊法人の職員が官吏であるというようなことは、これはその特殊法人というような趣意とは矛盾しはしないかどうか、この點大臣はどうお考えになつておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=20
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021・石井光次郎
○石井國務大臣 まことに特殊な形で、新しい形式であります。官吏は官廳において働く者が官吏であるというわれわれの今までの觀念からすると、そういうふうに見えます。しかし今度特別なこういうものを設けまして、役所にもつていかない方がよりそれよりは民主的であろう。筋といたしますると、昨日からもたびたび申し上げますように、これは平たくどうしても政府が責任をもつてこの通りするという方針であるならば、專賣にしてしまつて、專賣局の管理ということでやつてしまえば一番簡單なのでありますが、できるだけさういう形でいかない方が、そのほかにもいろいろな便利もありますから、この公團というような中間的な特別な法人を認めたわけであります。そこにおいてそれでは違つた官吏ではないものでやらしたらいいだろうが、何を考えられるかというと、今の營團のような形しかその次には考えられないのであります。ここに官吏が國家の公僕としての責任においてこの仕事をやつていく。しかし内容はビジネスの範圍に屬するものであるというので、兩方相寄つて、官吏と、それから組織は專賣までもつていかない公團、官廳にもつていかない一つの公法人ということでやつていく方が兩方の意味を生かし得るじやないかというので、こういうふうな特殊な形態をとることになつたのであります。どちらから見ましても、何となくさつぱりせぬものがあるというような氣持はありますが、兩方の特徴を生かして、ここに公團、そうしてそれの仕事をする者は官吏というようなことに考えが至つたわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=21
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022・稻村順三
○稻村委員 これとまた關連していることでありますけれども、今度はもしもこういうふうな官吏というものの活動を非常に敏速ならしめるために、これが獨立採算制をとつているというようなことが、私昨日の大藏大臣の説明の中にあつたと思つております。そうしますと、ここにその運營資金というものは、大體において手數料を主眼とするというようなことを、昨日大藏大臣は説明したようになつております。私はここで非常に危險を感ずることはどういうことかと申しますと、この公團というものは業務は單なる取引だけをなすところの團體であります。そのものはいわゆる生産とも離れておりますし、消費とも實をいうと離れているものでありまして、こういうものが一個の集團となつて、その取引手數料によつて一應の事業をやつていくということになりますと、それはいかに役員の任命、あるいはその他に關して細心の注意を拂いましても、それはただ公團を維持するということになりまして、消費者のための公團であり、生産者のための公團であるという目的でつくられた公團が、遂には公團のための公團というふうになつて、むしろ逆に公團のための生産者であり、公團のための事業者であるというような方向に轉換していく危險が十分ある。そこに働いているところの官吏は、自分の強制力と自分の權力というようなものに知らず知らずのうちに安眠いたしまして、そうしてどうかというと、公團がもうかりさえすればいい、公團の採算ということをまず第一に考えるようになるだろうと思うのでありまして、この點私たちは農業會に多々の實例を見ているのであります。農業會は農民のためにできた農業會でありますが、農業會というものができまして、一定の資本金を農民から集めてできたものでありますが、それが單なる商取引というようなことに主眼をおいておりますと、遂には商品を買取つた瞬間からもう既に、實を言うと、農民のつくつた機關だといいながら、實質上においては、商品が人の手から離れてしまいますと、賣つた人間と買つた人間との間の關係というものは對立的、分立的になつてしまいまして、關係はなくなつてしまいます。そういうように、商品の所有者として立つていくためには、厖大なこういう農業會組織を維持していくためには、遂にはその商品所有者たる地位を利用いたしまして、一錢でももうけたい、それは決して個人がもうけたいというのではなく、農業會を維持していくためにもうけたいというのでありますが、こういう氣持から、その活動が、遂には農業會のための農業會、むしろ農業會のための農民というような形になつたと思うのでありますが、この轍を履む危險が非常にあると思うのであります。この點生産と消費とをどういうふうにして具體的に運營のときに結びつけていくか、その點について大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=22
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023・石井光次郎
○石井國務大臣 大藏大臣がどう答辯されたか、私いませんでしたから承知いたしませんが、今のような話を聽きますと、少し違う點があるかも知れませんが、これは別に産業復興金庫その他から運營資金は出すのでありまして、經常的な費用の問題が手數料にひつかかつてくると思います。それでこういうふうなものをやると、どういう場合でも自分の所中心になつて、すつかり商賣人になつてしまう、そうして少しでも餘計收益をあげて、その中の給與をよくするとか、その他に濫費していくような傾向をもつて、配給を受けたものは迷惑をするというようなことになりはしないかという御心配のようでありますが、賣りまするものは、公定にきめられた價格で引渡すのであります。この公團がその間に餘計利益をあげようというても、手はないのであります。それから人件費等は國庫が負擔をすることになつておりまするし、それからここに一定の手數料がきめられておつて、扱い數量が多くなつて一般の經費を支拂つて餘裕がある場合には、それは國庫に納付することになつておるのであります。また人件費その他の收支は、政府で嚴重な監査をして認めることになつておりますので、その點は公團という業態自身で利益をあげてうまいことをしていこう、そうしてそれがほかの消費者等に迷惑を及ぼすということは、その面からはないと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=23
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024・稻村順三
○稻村委員 御説明を聽けば一應もつともな話でありますけれども、實はそういうようなことでもなおいろいろな點にそういう面が現われてくるのは、たとえば農業會が米を取扱うという場合にも、米は公定價格で買つてそうして公定價格で賣つておるのです。この點は手數料もちやんときまつております。それでもなおそういういろいろな問題が派生してきて、そうして農業會自身の經費を多少でも生み出そうという努力が、農業會というものの仕事に熱心であればあるほど、そういうふうな形をとつてきます。私はこれが生産とも離れ、それから消費とも離れた一個の獨立の取引というようなことに主眼をおいたところの組織であるならば、必然的にこういう形が出てくるのは、當然だと思うのであります。この點私たちは、それを防衞する途といえば、いかにして消費と結びつき、いかにして生産と結びつくかということが非常に重要な問題になつてくると思うのでありますが、その點私はここで議論してもしかたがないと思うのでありますけれども、私はさらにこれまでの質疑の點をまとめて結論の方面にいかなければならないと思うのでありますが、こういうふうに取引だけの統制をいかに強化いたしたといたしましても、やはり生産上においてこれに伴うだけの統制というものが具備しなければ意味がないというふうに考えるものでありますが、その點に關する商工大臣の御意見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=24
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025・石井光次郎
○石井國務大臣 石炭の場合において生産はどうなつておるかと申しますと、生産の量はいろいろな面において相談をされて決定をしておりますが、出てまいります品物が、生産の方から勝手々々に流れていくというふうなことが、この配給を亂雜ならしめた例が非常に多いということは、今まで事實でありまして、山で御承知のようにマル炭制度があり、これが必要な向きとの物々交換に使われる。たとえば食糧のいろいろな面においての不足等にも、交換に用いられた場合もありますし、あるいは機械の修理等の場合に、炭をやつてそうしてやつてもらつたというような點は、これは實際的において必要な面のマル炭の制度でありますが、その中には山元消費あるいはマル炭といわれるようなものから、少したつぷりと世の中に流れ出ておつたというようなものが、いろいろな方面の交換材料になつて、石炭のほんとうに必要な面よりは、第二次あるいは第三次的な必要な面の方に流れていつて、重點的な方に配給するものがそのために打撃を受けたということ等がありましたために、この一月からマル炭というものを全然認めないというようなその筋からの注意がありまして、これをやめなければ駄目じやないかというのでありましたが、これを全部なくなすというと、山として、それじや今まで交換によつて入手しておつたみそ、醤油等を完全に、今まであるいはそれ以上に配給してもらわなければまことに困るのであります。そういうことの十分な手配のできるまでのしばらくの間は、地方の商工局等においてこれをまとめて、マル炭をそこの許可があつた場合しか出していかぬというような過渡的な措置でやりました。今度三月からは、それも全然なしにしろ、そうしなければ、配給の實際上の數字と、それから計畫の數字と合わなくなるということで、それも嚴重に取締られることになりました。こういうような状態でありますから、生産の面におきまして、お話のような線に沿つての嚴重な統制が行われるという状態になつてきたわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=25
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026・稻村順三
○稻村委員 それはやはり配給の一つの強化が行われた、これに伴つて配給の強化が行われたということは、私も認める場合でありますが、しかしながら配給の機構として、機構の上にどういう變化が來したのか。また昔のままの生産の統制の機構はそのままにしておくかどうか、その點をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=26
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027・平井富三郎
○平井政府委員 生産機構につきましては、從來戰時中は統制會制度が中軸になつてやつてまいりました。戰後統制會が廢止になりまして、石炭鑛業會が引繼ぎまして、石炭廳と石炭鑛業會というものが、主として經營者に關する施策につきましては、一體となりまして運營してまいつたのであります。最近におきまするたとえば生産資材の問題、生産計畫に伴います必要な生産資材の割當等につきましても、これは政府の責任においてこれを行うという先日來からの基本の一つの考え方がここに打立てられました關係上、資材等の統制につきましても、やはりこれは政府の責任において行つていくということになりまするので今後の資材關係に關する統制につきましては、政府の責任において政府が行つていくという建前になるわけであります。從つて從來の生産統制機構と大分違つてまいりまして、配給につきまして、いわゆる政府の責任においてこれを行うということ、資材の配給、入手というものについて、政府がどういう關係に立つかということが、非常に大きな轉換をしてまいりましたので今後の生産統制につきましては、政府と山というような直結した關係が出てまいるというふうに考えます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=27
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028・稻村順三
○稻村委員 そうしますと、それまで行つたこと、これもまた問題になると思うのでありますけれども、政府はそういう資材を政府の責任においてこれを配給するということになりますと、配給されたところの資材を政府の責任においてこれを使わせる。たとえて申しますれば、私實は去年の十一月北海道へ行つたときに、北海道の炭坑へ行つてみたのでありますが、そうしますと、案内してくれた坑道が從來の坑道から見れば、私の見たところによると、二倍以上も坑木と坑木の間が離れているような、古い坑道から見ると二倍も離れている感じがいたしたばかりでなく、私が坑道にはいつて歩いている間に、みしりみしりという音さえ聞えるような状態でありました。それから古い坑道に行つてみますと、ほとんど修理がないように感ぜられるのでありまして、トロが走りますと、上からばらばら土が落ちてくるというようなところも實は見てきたのであります。私は坑夫の組合の人と話したところが、山の中に十時間はいつて働いても、そういうふうな氣分の重壓を受けて、實をいうと、滿足に働くのは、なるほど十時間はいつておつても、普通のときの三時間かあるいは五時間くらいに相當するくらいしか働けないということを漏らしておつたのでありまして、その方面から考えてみましても、配給の資材が足りないという面もありましようけれども、またそういうふうな配給資材が政府の監督というか、責任において生産のために使わせているという點につきまして、何らかの處置が必要である、これが講ぜられない限りいかに配炭公團のようなものをつくりましても、私はその機能をあげることができないというふうに感ぜられるのでありますけれども、この生産資材の使用に關する政府の見解は、どういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=28
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029・石井光次郎
○石井國務大臣 生産資材は政府が直接いろいろおせわしているものも、今申したような點がありますが、たとえば坑木のごときは、これは一番大きな問題であります。これは今政府がどれだけの木を伐つてどれだけ渡しておるということでなく、業者と業者の話合いになつております。先ごろから坑木の欠乏が各方面に非常に大きな問題になり、九州のごときも坑木が數日分しかないというようなところもあつて、あわてたこともあつたのでありますが、それにはいろいろな原因がありまして、木材の値段が決定しない。もう上るといううわさばかり出て上らないというようなこと等で業者が出ししぶつているか、あるいはまた輸送の關係で出てはおるのに、どこかサイド・ラインにそれが流れて現場に早く行かなかつたというようなこと等がいろいろありまして、これらにつきましても、政府はもう少し強力な處置をしなければならぬのじやないか。ただ業者と業者の話合いだけで坑木が十分な供給状態になるということは、はなはだ石炭増産を叫びながら困つたことだ。今お話のように危險を感ずるくらいな坑木の使い方では、實際はいる者がなくなつてくる何もきよう一日、あす一日というようなことでなく、ずつと續けて掘らなければならぬ所であります。そういう所の坑木については、安全だと思われる程度のものを初めに使わなければならぬ。イチかバチかでやらすべきでないことは當然であります。この坑木の供給等につきましても、今國有林の木材をどうするかというような問題と合わせまして、目下研究中でありまして、現在のように自由というか、業者と業者の話合いだけでなく、政府の方でさらに十分な坑木の供給をするような筋に進めようとして、この間からいろいろ話を進めております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=29
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030・稻村順三
○稻村委員 これは坑木ばかりの問題でなくして、私たちはレールの問題も相當あると思つております。殊にレールは坑道の中においては非常に腐蝕しやすいもので、私の見たレールなどは、目で見ましても既に細い太いがわかるくらいな古レールを使つておつたようであります。それにもう一つはこれをひつぱるところの電氣機關車が、ほとんどしよつちゆう故障し通しであつて、一度故障するというと、半日坑道の中に立ちふさがつて、ほとんどそのときは仕事ができないという、かような状態になつておりまして、これが全部資材の面に關係しておると思うのであります。これは資材不足という點もありますけれども、もう一つは私は實は今日の石炭會社の經理の状態から申しまして、これを一遍にたくさんな資材をやつたところで、またそれを借金してそういうようなことを全部完全なものにするためにやつたところでとうてい安心して坑夫が働くだけの設備をするようにするのは、採算上引合わないという氣持もあるのではないか、現に私の行つたところの炭坑は小さい炭坑でありましたけれども、そこの社員の人でそういうことを言つておつた人があります。こういうようなことを考えてみますと、相當根本的な修理のために多くの資材が要る。資材が集まつても、思い切つてその資材によつて安全なような設備をするだけの力が會社にはないというようなところも、大きい炭坑はいざ知らず、小さい炭坑には相當あるじやないかというふうに考えているのであります。そういう場合にそういうところにまで生産を續行させるためには、政府はどういう案をお持ちであるかその點をお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=30
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031・石井光次郎
○石井國務大臣 資材の缺乏は石炭増産の上に、非常に大きな障害の一つの部面でありまして、さつきは坑木のことをお話になつたから坑木の例を申し上げただけで、ほかの例もお話の通りであります。戰時中にいろいろの補給をせずに今まであるものをどしどしと亂暴に使つて、とにかく勝ちさえすればいいんだ、あとはあとのことだというような亂暴な使い方をして補給もされなかつたために非常に惡い状態になつております。何としてもこれはいろいろな方面から補給しなければならない。ところが今お話のように、第一にまず物が行くか行かぬか、かりに行かぬと假定して山の方でそれではどうするかということなのでありますが、今の炭價ではまことに經營はそろばんが出ないのであります。じや出ないそろばんをさしておいてどんどんやらすというのは、政府は何としているのだということになると思います。これはまことに殘念なことでありまするが、原價計算的にいろいろ物をきめられるのでありまして、それが日本政府で案を立て、G・H・Qと相談をして値段をきめるというようなことになつておりまして、向うの計算とわれわれの方の計算といろいろやつてみて、まずここらというところに落ちついておりますが、それでは利益というものが、勘定にはいらない。利益がなくしてそれではこれから仕事を伸ばしていつてどうなるかという見方も成り立つのでありますが、まずしばらくのところはもうけということを離れて、とにかく増産をやつて、だんだん出てくればそこで計算もよく立つじやないかというような建前になつております。いずれにいたしましても先ごろの勞銀の値上問題もありましたし、根本的に炭價の改正をやらなければならないということを思うておるわけでありますが、業者諸君が困つておる。しかし設備さえ直せば石炭が、余計出てくる、今よりも余計出てくるといる状態になりますれば、結局利益でありまして、そういう問題に對して資材をいろいろ貸しておりまする者には、私の方として金融をつけることに話をつけてあげて、まずその設備をする。そうして經營状態に持つていく、そうすれば自然とそういうようなものが、ほんとうにベスト・インベストメントになるというふうに手だてしていつて、仕事をやつていきたいというふうに思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=31
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032・稻村順三
○稻村委員 實はその點は確かにその通りでありますが、しかしもう一つ考えなければならぬのは、炭坑が老朽設備を直すのには非常に大きな投資、殊に今日のごとき物價高におきましては、非常に大きな投資になりますので、その投資に比してあがる石炭生産の量からすれば、とうてい採算が引合わない、こういうふうな考えを持つているものが今日でも非常に多いこういうふうに考えております。そういうふうな場合にでもなお生産をここで續行しなければならぬということになれば、生産に關しても何らかそこに公團にするような手段が一應とられなければならぬのではないかというふうな氣がするのでありますが、この點に關する商工大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=32
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033・石井光次郎
○石井國務大臣 お話の筋はだんだんと國家管理の問題に進んで來たようでありますが、私は本會議でもたびたび増産のためであるならば國家管理も辭するところでないということを申し上げました。今のような炭は出したし經營は立たない、投げ出す、投げ出すならどうするか、放つておくわけにいかない。ほかの業者がこれを引受けるか、あるいは國家が引受けてやるかというような問題になつてくるというような問題になつてくると思います。私はそういう場合におきまして、政府は必要であれば國家管理をやるかもわからないということだけを申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=33
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034・稻村順三
○稻村委員 必要であればと言えば、たとえばこの前新聞にもちよつと出たようですが、朝日炭鑛のような小さな炭鑛で投げられたものを生産をさせようとする、そういうのだけ取上げて國家管理に移すことも辭せないというのですか。それとも事情によつては全炭山を國家管理に移すこともやむを得ないと考えている、こうおつしやるのですか。その點一つ……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=34
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035・石井光次郎
○石井國務大臣 必要とあればと申しましても、また増産のために、減産しないためにというようないろいろな面があると思いますが、一つと思うておりますものが二つとなり、三つとなり、あるいは全部になるか、そのときの情勢でわからぬと思います。私は必ずしも小さいのならやる、大きなのならやらぬ、あるいは大きなのならやるが小さいのならやらぬというふうには考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=35
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036・稻村順三
○稻村委員 それからもう一つ私たちがよく見ることは、たとえば製糸業なら製糸業というものが自家用のために、たとえば小さな炭鑛を經營している。こういうふうなことが行われているわけでありますが、この公團ができることによりまして、彼らにそういうふうな小さな、たとえばほんのわずかしかできないような青森縣におけるような小炭鑛だとか、あるいはまた東京府下における小炭鑛というような、わずか十人か二十人で掘つているような小さな炭鑛もありますが、こういうふうな炭鑛もこの公團に全部石炭を出さなければならぬのかどうか。また全面的な統制を生産の上においてやらなければならない場合にも、こんなふうな小炭鑛をもやはり一緒に加えていくのであるかどうか。この點の御意見もお伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=36
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037・平井富三郎
○平井政府委員 公團の業務といたしましては、生産されました石炭は生産業者からこれを買取らなければならないということに法案としてはなつておりまして、小さい石炭山の生産いたしましたものも、全部公團が買取ることになるわけであります。その山から出ました炭を、たとえば纖維業者なら纖維業者に納入しておつた、あるいは直營的に纖維工場で使つておつたというような場合の措置でございますが、これは纖維業者に對する割當というものが、現在の機構のもとにおきまして切符制を施行いたしますので、まず割當を受けることになるわけであります。從つてこれは纖維の石炭の割當の範圍内におきまして、個々の業者に、纖維の行政を擔當しております官廳におきまして、これを割當てるだけでありますが、今お述べになりましたような實情は、その割當にあたつて十分考慮していつてしかるべきものだと考えられるのでありますが、極端なことを申し上げますと、現在非常に不急なものをつくつている工場が石炭山を經營しておつたというような場合に、その不急品の製造があるいは制限されるというような場合におきましては、これは割當がまいりませんので、その山の炭を使うというわけにはまいりませんけれども、それがそういうものでなく、割當を受け得る品物をつくつておるという場合には、そういう實情は十分割當の際に考慮する。この割當は、その割當を受ける事業を主管する官廳が、割當をいたすということになつておるわけでありますが、これらの割當にあたりましては、その業界に明るい者を諮問委員といたしまして、十分それらの業界の實情を反映するような割當の仕方をいたすということになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=37
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038・稻村順三
○稻村委員 原則として自家用炭の生産は認めない、こういうことになるわけでありますね。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=38
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039・平井富三郎
○平井政府委員 そうであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=39
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040・稻村順三
○稻村委員 それからこの配炭公團の取扱いの中に、實は三千五百カロリー以上の亞炭の配給があるのであります。亞炭に關しましては、よそからも相當質問があらうと思いますので、私は基本的な問題についてはあまり觸れませんが、農村に關係したことについて、多少お伺いしてみたいと思うのであります。それはどういうことかと申しますれば、殊に最近におきましては、農村において、殊に新潟縣のような例の平場地方と申しますが、ほとんど米一作のところにおきまして、燃料問題というものが非常に激化しておるわけであります。炭も、實を言うとなかなか手にはいらない状態なのでありまして、その點亞炭というものが一應最近、ほとんど今年からでありまして、去年の薪炭の不足というようなことから起つてきたことでありますけれども、亞炭というようなものが相當家庭の中にはいつてくる。殊に農村を周圍にもつておるところの都市の家庭の中に、亞炭がはいつていつておるのであります。そうしますと、この亞炭は、三千五百カロリー以上というふうになつておりますが、大體において私どもから見ますと、三千カロリー前後の亞炭が一番多いのではないか、こういうことを考えてみますと、大體今農村を周圍にもつております都市などに使われておる家庭燃料が、この統制のために、主として工業用なら工業用にまわりましたならば、薪炭の不足のためにこれが補助的作用をなしておるものがなくなるという危險は生じないかどうか。やはりそういうものがある場合には、家庭燃料としての扱いを一應受けるものであるかどうか。この點についてお伺いしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=40
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041・石井光次郎
○石井國務大臣 亞炭は、これに書いてあります通り、三千五百カロリー以上のものを、石炭の不足のために、石炭總合配給の規格の中に入れることだけを私どもは考えております。それ以下の今お話のありました一般的なものは、大體三千カロリーくらいのもの、あるいはそれ以下のものもあるのでありますが、これは今まで通りに、特別な配給の統制を激化するようなことは考えておりませんから、家庭燃料の方にまわつていくと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=41
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042・稻村順三
○稻村委員 三千五百カロリー以上のものというようなことは、土地によつては、その土地における生産物がほとんど三千五百カロリー以上あるというので、家庭燃料にまわつていかないというような、特殊な地域も考えられるだろうと思うのであります。こういう場合には、この家庭燃料としての特殊性を認めるかどうかというようなことも、問題になると思いますが、その點ちよつとお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=42
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043・平井富三郎
○平井政府委員 現在亞炭の問題といたしましては、生産と輸送の問題があるわけであります。從つて三千五百カロリー以上の石炭につきましても、相當の貯炭が時期的にはできるということもございますし、特に亞炭の割當につきましては、中央でこの割當をせずに、地方の官廳をして割當をさせるというふうにいたしまして、地方の實情が十分反映し得るように、需要の割當についても考慮しておるわけであります。從つて今申し上げましたような貯炭ができますような場合、あるいは生産が増加するような場合等につきまして、その地方の實情について、適當にその邊を考慮してまいりたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=43
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044・稻村順三
○稻村委員 そうすれば三千五百カロリー以上であつても、その土地の家庭燃料その他の問題で、非常に重要な問題が起つた場合には、地方官廳が一應の處置をもつて、必ずしもこれを全部公團に渡すということにせずに、それを家庭燃料に割當てる、ことができるというふうに、解釋してよろしゆうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=44
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045・平井富三郎
○平井政府委員 三千五百カロリー以上の亞炭は、全部一應公團が買取ることになるのであります。割當は公團がいたすのではありません。割當は今申しました中央の官廳及び地方の官廳がこれをいたすということになりますので、一應公團としては全部の亞炭を買取りまして、割當先に配給するということになるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=45
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046・稻村順三
○稻村委員 それでは最後にお尋ねしたいことは、工業方面に亞炭がまわるものとするならば、石炭はいろいろな點において一つの保護を受けております。しかしながら亞炭はこれに對して大した保護を受けておらないと思いますので、その點たとえば補給金の問題であるとかその他に關しまして、亞炭に對しても石炭と同じような一つの報奬等のいろいろな手段を講ぜられるものであるか否か。これも最後にお伺いしてみたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=46
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047・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 亞炭の生産増強に對しての保護と申しますが、助長と申しますか、その點につきましては、必ずしも石炭と同じとは申し上げるわけにはまいりませんけれども、現在既に亞炭に對して資材の特配、あるいは資材の割當配給ということもいたしておりますので、全然亞炭に對しては今まで放つてあるというのではないのでありまして、しかもなるべく石炭と同じような用途に兩方調整しながら、混炭して配給されるということになりますと、まつたく石炭と同樣な、重要な用途に向うことになりますので、亞炭についてはできる範圍では、すべて石炭に近いあるいは石炭と同樣な取扱いをするようにしたいと、進めておるわけでございます。ただ價格の補給金の問題につきましては、現在の價格が不適當であつて損失が出た場合に、價格を訂正せずして、物價の上りを抑える場合に、つまり價格統制をやる場合に、補給金というか、政府の豫算で賄われることになるわけでありまして、現在のところでは、亞炭はコストに應じた價格というものの變更によつて賄つておるわけでございます。補給金については現在考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=47
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048・稻村順三
○稻村委員 そうすると、大體原價計算をそのまま公定價格として採用するという建前をとつている、こう解釋してよろしうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=48
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049・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 明確な正しい原價計算が出てまいります場合に、それを基本として價格がきめられるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=49
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050・稻村順三
○稻村委員 最後に私お尋ねしたいことでありますが、それは大體三千五百カロリー以上の亞炭を公團の方で取扱うという建前をとつておいでのようですが、これは大體日本全國にしてどれくらい一年間の生産があるのか、その點數字はありませんですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=50
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051・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 亞炭についての從來からの統計は、御承知のように亞炭の工業事務所等にも十分な資料がございませんので、從來の姿ははつきりつかまれておりませんけれど、明年度の計畫といたしましては、大體年間に三百五十萬トンほど生産されるようにしたい、こういうふうに考えて、それに向つて増産計畫、あるいはそれに應じた資材等を一應計畫として立案しております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=51
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052・稻村順三
○稻村委員 私の質問は大體これで終りました。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=52
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053・岡部得三
○岡部委員長 午後一時より再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。
午後零時十一分休憩
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午後一時三十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=53
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054・岡部得三
○岡部委員長 休憩前に引續いて會議を開きます。質疑を繼續いたします——香川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=54
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055・香川兼吉
○香川委員 まず私はこの公團に對しては贊成いたしかねるものであります。昨日來の質疑により、また先般の大體質問における大臣などの答辯によりまして、公團の性格、運營等について拜承いたしたのでありますが、まだ私は納得のできない點があるのであります。特に伺つておかなければならぬことは、敗戰の日本の今日の姿が、中小工業の復興と刷新によつて、日本の再建をはからなければならぬということは、議會でも總理大臣を初め各大臣が申されておるわけであります、この公團によりまして、これらの自由的な、また特に商工業のもついわゆる特權が奪われまして、そこには商業精神と申しますか、日本の消費面、あるいは生産面との仲介に立つ商工業の活動的精神が萎靡消沈をし、ひいては日本の再建に非常に影響を齎すものじやないか。さらにこれらはひいて配給と申しておりますけれども、生産がなければ配給ができない。先日本會議でも申したのですが、お役人が商人になると、はたして生産の方面、特に石油、石炭の問題についてでありますが、山元との交渉において、あるいは運營において、はたして民間人のやつてみるような工合にいけるかどうか。この點をどう考えられるか、まずこの點を伺いたい。私はよく官廳や銀行等を對比するのであります。郵便局の窓口に立つたときと、銀行の窓口に立つたときとおのずから性格が違う、氣持が違う。民間人を起用して、そうしてお役人にすると言いますが、これはいろいろ今まで話があつたのでありますけれども、民間人が一度官位を得ますと、やはりそれぞれの權威がそこに派生してまいる。これは日本人の特性でありましよう。こういうことから從つて山の方に對して政府が至上命令を出し、増産をし、そこには輸送關係等も指示はするでありましようが、今日まで日本石炭、地方石炭方面の會社の者が、いかに山元との上に連繋をとつてやつておつたか、命令一本によつてすべてのことができるなら結構、けれどもそういかない點が非常に多いのであります。さらに山元では非常に掘る。しかしながら既に本年もできた問題であるけれども、輸送の面において澁滯を來す。こういう場合において、いかに今までの配給業者が努力をいたし、消費面におけるところの需要者の便宜を取計つておつたか。それをお役人がやつていつて、ああせい、こうせいと命令一本ではたしてやつていけるかどうか。これは今日の勞働者の取扱いは重大な問題であります。机上の面はよろしいけれども實際面はいつていない。こういう點を十分お考えになつておありになるかどうか。さらに末端の配給の問題であります。さらにこれらの手數料の問題であります。特に石炭のごときは、二十六條において税金をとらない、また説明によりますと今日の手數料よりも安くなると言つておられますが、まず民間人が一人でやつておつた仕事は、官吏になりますとおそらく一倍半ないし二倍の數になるのではないか。能率は低下するでありましよう。いな能率を低下するというよりも、そういうように手間をかけるでしよう。手間をかけなければできない。これはいろいろの例によつて明らかであります。役所ができると多くの人ができてくる。こういうことから考えて、はたして商工大臣が言われるように、その取扱う手數料が今日よりも安くなるかどうか、私はその點を非常に心配をいたしておるのでありますが、この點に對して局長の御意見を承りたい。
なお末端の配給の問題であります。この配給は從來農業會その他の連絡によりまして、會社に馬車やトラツクをもつて取りにいつたものもあります。しかし多くは市外その他の關係で一トン、二トン、三トンというものは會社自體がそれぞれトラツク、馬車を動員いたしまして、家庭まで運んでおつたのであるが、これを公團がやるのかどうか。さらに輸送機關、いわゆる運炭機關をもつてそれをやられる御意思があるのかどうか。もしやられるということに相なれば、公團が直接にトラツクをもつことになるが、そうすればこれまた一般貨物業者に非常な影響を與えることになる。それで非常に神經過敏になつておりますが、地方のものにこれを囑託せられるのか、あるいはみずからおやりになるのか、この點も承つておきたいのであります。特に御答辯を聽く前に希望があるのでありますが、もし二トン、一トンのものを命令一本によつて取りにいくべく餘儀なくされるということになると、今日馬一頭を頼んでも何百圓であります。こういう事柄も十分考えてもらわなければならないのですが、この點御答辯をお聽きする前に意見を申し上げておくわけであります。
さらに切符制の問題でありますが、先日來いろいろお話を聽いておりますが、公正にしてしかも迅速にこれがやれるから公團というものの必要を最も感ずるのだというが、はたしてこの切符制というものが公正に、公平に、無論机上においては公平、公正でありましよう。しかしこれらは今までの衣料切符にせよ、幾多の切符問題にいたしましても、多く金をもつたもの、やみをするもの、そういうものの手によつて一方に買い集められ、買い占められたりして、公平に渡つていないものがあるのであります。こういうものに對する取締りにつき、あるいは監視につきそういうことの起らないような方法について考えておるかどうか。私は切符制というものは、必ずしも公正に需要者に渡らないような現實を體驗しておるのであります。これに對するところの御所見を承つてみたい。
次に石油の問題でありますが、石油の配給については從來各地區町村における農業會がこれを取扱い、農業會はそれぞれ貯油タンクをこさえておるのであります。これらに對してどういう工合におやりになるのか、農村に對するところの最も親切にして、しかも迅速に公正に今日まで取扱つております農業會の施設というものを活かして、農業會にこれを委囑するとか、何か方法をおとりになる御意思があるのかどうか。この問題について一般農村民は非常に心配しておるわけであります。もし今日容れものもなくて困つておるときにあたつて、これが利用できないということになれば重大問題であります。この點も承つておきたい。
次に公團の支所でありますがこれらは地區的にどういうような方法をもち、どういうような按配をもつて設置せられるのであるか。この點は特に配給面と受給關係の方面と密接不可分の關係をもつておるのでありまして、これがもし官僚的に迷惑を度外視し、そうして運搬まで云々というようなことがあるならば許されざる問題でありまして、特にこの點はわれわれ關心をもつておるのでありまして、御當局のこれに對する御方針を承つておきたいのであります。いろいろお尋ね申し上げたいのでありますがこの方面はこの程度にいたしまして、後刻石炭關係について承りたいと思います。一應これでお答えを願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=55
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056・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 まず第一に中小工業あるいは商業と公團との關係について御質問でありました。お説のように今後のわが國といたしまして、中小工業がわが國産業の基礎的組織になるということは仰せの通りであります。從つて公團と中小工業に對する資材の配給というものは、政府みづからやることになるのであります。從つてその切符に應じまして、公團が石炭なり石油をその切符を引換えに現物を渡すという建前になるのでありまして、むしろ割當さえ政府にまいりまするならば、現物の入手というものは正確にいくのではないかと考えております。また特に商業方面について、商業者の自由な活動に任せる方が産業を促進する上において、産業の囘復なり、進行なりに必要ではないかというお尋ねがありましたが、これもお説の通りでございまして、今囘公團をつくりたいと考えておりますものは、基礎資材中の基礎資材でありまするところの、石油と石炭の二つでございまして、その他のものは、從來ありました統制會社はこれをすべて解散をいたしまして、いわゆる販賣業者の自由な取引に移すわけでございます。ただ販賣業者の自由な取引と申しましても、數量に制限のあるものをわけるのでございますから、そのわけるにあたりましては販賣業者の間にやはり切符制度をとりまして、切符の示します數量をその販賣業者が扱うという建前にいたしておりまするが、扱いまする場合にはいろいろ商業者の條件のいいところへ消費者が物を買いにまいりまするように、その間になるべく競爭のできるような形において切符制を實施することによつて、商業者の活動を漸次復活してまいりたい。こういうふうに考えております。また日炭の例をおあげになりまして、山元と日炭とは、從來非常に民間人として特別な關係をもつて、うまく石炭を日炭に買入れる交渉をやつておられた。そういう圓滑な取引關係を今囘の公團にあつては、官吏になるためにむしろ阻害することはないかという御質問がございましたが、その點ももちろん從來のそういう經驗と申しますか、技術と申しますかそういう關係は依然公團と山元の間に殘していきたいと考えまして、從來の日炭のそういう係の方々はこれをなるべく優先して公團に採用する。また採用する場合におきましては、いわゆる狹義の官吏ということではなくて、そのままで政府の使用人になるという形をとりたいと考えております。すなわち何とかの事務官でありますとか、技官でありますとかいういかめしい名前をつけずに、そのままの地位においてそのまま政府が契約をして政府の職員になつていただく。こういうふうに考えております。いわゆるかみしもを着ない形において公團に收容いたしまして、そうして政府とは別な機關である公法人の職員として、いわゆるビジネスライクの事務をとる。こういうことによつて從來の關係というものをこの際活かして公團に使いたい。こういうふうに考えております。
また公團になることによつて手數料が安くなる自信があるかどうかというお尋ねでございましたが、これは今後日炭あるいは日本石油がやつておりましたよりも、多くかからぬやうに經營を進めてまいりたいと考えております。そういう意味でいわゆる獨立採算制というような形にした豫算を組み、その實行にあたるようにいたしたいと考えております。
また配炭公團において少量の一トン、二トンといつたような炭を割當いたしまする場合に、これは消費者のところにまでもち込むかどうか。そういうような配給のしかたをするかどうかというお尋ねでございましたが、今後公團もなるべくそういうトラツク等もあるいは專屬のものをもち、あるいは特別な運輸業者と契約をいたしまして、やはり配炭をして差上げる。工場なり、需要者まで送り屆けるようにいたしたいと考えております。
その次に切符制というものの實施がうまくいくかどうかというお尋ねがございましたが、これは仰せの通りなかなかむつかしい問題がこの實行には伴うことと考えております。規則の建前の上におきましては、切符と引換えなければ統制物資を販賣し、あるいは讓り受けてはならないということを明文化いたしておりますし、またそういう取締、處罰については今後嚴重にやるつもりでおりますが、それにいたしましても不正防止というものは實施上なかなかむづかしい問題でございます。これにつきましては、この實行について關係の方々を集めました委員會等によつて、圓滑なる運用についてのお智惠を拜借してまいりたいと考えております。切符制と申しましても二色ございまして、一つはいわゆる消費物資を一般國民の消費者にわける場合と、生産資材を需要者や産業者にわける場合と二色あつて、多少違う事情がございますが、少くとも前者の一般國民にわけまする場合については、廣く各方面の意見を聽いて、配給上の組織等についてもいろいろと改善を加えまして、切符の横流れを防止することに努めますると同時に、生産業者に切符をわけまする場合においては、やはり當業者の團體あるいは協同組合といつたようなものを使いまして、その切符の横流れを防止する。こういうようなことで進めてまいりたいと考えております。
次に石油の配給について、今日まで縣農あるいは縣水というものが、相當農村なり漁村なりの需要者のために圓滑なる配給をいたされておつたが、こういうものは今後どうなるかというお尋ねでございますが、これにつきましては今日までそういう團體が、いろいろな施設等をもつて配給の圓滑をはかる上において功績をあげておられたのでありますから、今後におきましても、その關係はこれを持續いたしまして、なるべくそういう方々の共同購入という形において、公團から切符と引換えに石油を流すようにいたしまして、今日まで圓滑にいつておりました状況というものを今後も繼續していきたい。こういうふうに考えております。
また公團の支所はどういう場所に設けるかというお尋ねでございましたが、石炭、石油それぞれ違いますが、仰せの通りやはり消費者の需要の状況とにらみ合わせまして、消費者の便宜を第一に考えまして、需要の多いところに必ず支所をつくつていく。こういうことでまいりたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=56
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057・香川兼吉
○香川委員 非常に御親切な答辯をいただきましたが、私がその中で非常に心配をいたしておることは、ただいまの御答辯では二つの公團である。なるほど今囘の御提案になりましたものは二つでありますけれども、聞き及びますとあるいは肥料とか、纖維とか、幾多の方面に伸びるにあらずやということを杞憂いたしておるわけであります。こういうことになりますと、全産業において、商工方面においての取扱方法が、全部いわゆる公團として處理せらるるというようなことになることを恐れるから、私はこの點をお尋ね申し上げるわけであります。それでもしこれが次々伸びる、殖える——商工大臣は暫定處置だと言われる。しかし暫定處置にして一年を區切つてやられるものとするならば、私は何も言わないけれども、この問題ははたして現時下において、一年先において云々するがごとき社會情勢というものが平和になり、しかも圓滑なる配給面が達成し、あるいは生産が上るというのははたしてどういう見透しがあるか。現實については實に前途暗しと言わなければならない今日の状況でありますから、私はもしも半年や一年にして官僚制度というものが廢止される、なくなるというならば、あえて本問題について云々はいたさないのでありますけれども、前途に非常なるそういう不安をもつから、この點をあえてお尋ねをしておるわけなんであります。それで特に一つ今後御當局が出そうという、いわゆる公團の數についておわかりであるならば聽かしてもらいたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=57
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058・保利茂
○保利政府委員 ただいまのお尋ねは、昨日大藏大臣からどなたかの御質問に對してはつきりお答えになつておりますように、重要物資について、需給のバランスが著しく均衡を失しておるものについては、公團組織をとるの餘儀ない状態にあるということを大藏大臣ははつきり申しておられましたから、それで一つ御諒承を願いたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=58
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059・香川兼吉
○香川委員 具體的にこの際おわかりならば、お聽かせ願えれば非常にさいわいですが、特に肥料問題については神經をとがらしておるわけですが、具體的におわかりならば、抽象的でなくひとつお聽かせ願ひたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=59
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060・保利茂
○保利政府委員 この問題につきましてはきわめて重大な問題でありますから、商工大臣が御出席されましてから御答辯を願うように取計らいたいと思います。さよう御諒承願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=60
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061・香川兼吉
○香川委員 時間がありませんから、私は次に石炭關係における亞炭の問題について、生産局長がお見えになつておりますから伺つてみたいと思います。
今日石炭が少くていわゆる燃料危機だと言われておるのでありますが、特にこの際今まで見捨てられておりました亞炭が認識を得まして、この公團法にも三千五百カロリーのものが配給の面に繰入れられたということは、まことに亞炭のために喜ぶものであります。申し上げるまでもありませんが、全國に賦存いたしておりまする數十億の亞炭でありますが、今日まで何ら—と言えば誤弊があるかもわからぬが、ほとんど繼子扱いにされて、本年二百三十萬トンの生産をあげるという豫定に相なつておる。ところでこの亞炭が今配給面に繰入れられるということについて、私どもが非常に心配をいたしておる點は、このままにいつて、ただ政府が何ら支援をせず、今までのごとく無方針に推移するならば、はたしてこの亞炭は生産があがるかどうか、現状維持ができるかどうか、私は非常なる危惧の念をもつものであります。そこで問題はかかつて石炭を補充する上において、一トンでも多く掘らなければならない。實は石炭増産協力會の方針とし、また亞炭業界の方面の意向を參酌しますと、昭和二十二年度は三百五十萬トンないし五百萬トンを掘りたいという考え方をもつておりまするが、掘らんとする場合において、今日の配給面に繰入れる結果が、今まで最も大きな問題として取扱れなければならぬことは、要するに亞炭を掘らんとするものは至つて貧弱なるものが寄り集まつておるために、それぞれの面から融資をいたしておつたわけであります。そうして掘つたものをそれらの方にまわして、自由に販賣をいたして、收支の面を、あるいは運營をいたしておつたのでありますが、今日掘つたものすべてが三千五百カロリー以上のものは政府に買上げられる。そうするとまさに増産を企圖して意氣揚々として立上らんとするときに、自分どもの運營に對する資本というものが、非常に重大なる問題になつてくるのであります。すべて政府に買上げられることになると、これに對する資本家が割合に出資ができない。してもらえない。こういう惱みがあるわけであります。この場合政府におかれては増産を大切に考えるならば、亞炭を取入れられておりまするけれども、まずこの公團の中から除去せられるという御意思があるかどうか。ぜひこの問題をお取上げを願いたいと、かように希望するものであります。と申しまするここは、今日かようなる配給の面に現實の姿においてやるということに相なれば、今二百三十萬トンというのが、おそらくこれの何割かが減少することは火を見るより明らかであります。今までのやり方というものは、至つて簡單な方法にして、しかもまた業者がそれぞれの創意工夫をこらしてやつておるのでありますが、今日までの石炭等の取扱いの状況を見ましても、融資の問題にしてもなかなか簡單にはまかりならないのであります。こういうことから考えまして、また一面における今日の亞炭のもつ使命というものは、石炭の足らないところを補い、しかも加工をいたしまして、當局が御承知の通り纖維工業方面には、すでに三、四十萬トンも今日の用を滿たし、また家庭の燃料不足の時にあたりまして、木炭の代用をいたしておる。これは今後にまた期待するものが非常に多いのでありまして、また産業方面に振向ける點において、あるいは加工方面の仕事、幾多の機械、加工という方面の産業上にも、石炭を補充する上において重要視され、まさにこれに對して御奉公をせんと亞炭業者が相當頑張つておるようにわれわれは認めるのでありますが、もしこれを繰入れることによつて、亞炭業界というものがあるいは増産をすることができなくして、現状維持もできないということになると、私どもは現在のこの政策、増産をし産業を興す精神に反するじやないか。ゆえに願わくば配給という問題についてのこの繰入れを御中止なさるる御意思があるかどうか。まずこの點をお伺いいたします。
そこでこれがもし配給という面を公團の中から除くことがどうしてもまかりならぬということになりますれば、亞炭は同じく現在の燃料に對して大きな役目を果しておるのでありまするから、石炭並に扱わなければならぬ。何ゆえに今日まで亞炭というものが石炭よりその存在の上において、あるいは認識の上において、お取扱いの上において、政府がこれを繼子扱いにしておつたか。最近における状況としては、金融の面も幾分は見ていただいておるのでありますけれども、今までの取扱いについては、ようやくにして一人前に亞炭課ができ、そうしてその運營の上においても、なおまた鐵道運賃の上においても、先般の値上げにおいて石炭より二割の格差がそこについておる。輸送の面にしても、今なお石炭、コーライトという加工品すらもわくの中にない。亞炭を掘る勞働者は、石炭山においては六合ないし七合の食糧があたるけれども、亞炭に從事される者は、わずかに五合の食糧しかあたらない。さらにそのほかの問題、衣料、地下足袋という問題にしても、特殊扱いは得ていないのであります。私はぜひ現下の重大なる燃料をして、亞炭のもつ力をもつて補給し、この難問題を妥結するについては、同じく刻下のこの大きな役目を果すものに石炭だ、亞炭だといつて區別をしてそこに繼子扱いをすることが、はたして國策であろうかどうか。私は政府當路者の今日までの不認識を指摘し、よろしくこの點は同一の方針をもつて待遇をし、國策の上に織込んで、今日困つておる燃料の危機をして、亞炭のもつ面において活躍せしめ、そうして増産對策を立てなければならぬと考えるのでありますが、この點に對する當局の御方針を、私は承つておきたいのであります。
次に融資の問題であります。ただいま申したように經營につきましては、資本等に關連して配給公團に繰入れられるということによりまして、非常な危機に當面しておるわけでありますが、大體全國において一千近い企業者があるでありましよう。將來全國に賦存をしております亞炭鑛業の状態から見まして、これらを少くも國策の上に織込んで、五百萬トンはおろか、一千萬トンの増産をしなければ、今後の日本の産業の再開は至難なりと私は見ておるのであります。その問題から見まして、今日大體五億か十億になりますが、そのくらいの金を用意してこの再建をはからなければならぬ。そうして亞炭の復興をしなければならぬと考えております。これに對して政府は、この公社を繰入れられることによつて、亞炭の運命が左右されるようになる危機に直面しておるのでありますから、要するにこれらの融資に對する御決意があるかどうか。まずこの點を承つておきたいのであります。以上ついて御答辯を承りたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=61
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062・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 お答えいたします。亞炭を公團の統制の中に入れるところの意思があるかないかという御質問であります。既に御承知のように石炭が非常に足りませんので、亞炭も從來の自由販賣の中から引出してきて、そうして足りない石炭の補い、あるいは石炭とともに配炭をいたしまして、この燃料不足による産業の再建を阻害している點を少しでも早く除去しようという趣旨から、從來のままに自由に販賣されておる亞炭を、もつとより重要な方面に向けるということにせざるを得ない現在の實情からいたしまして、公團の取扱う統制の物資として扱うということになつておることは、現在の國情から申しまして、やむを得ないことであると考えます。そういう統制が必要でなくなるような、十分な燃料が生産される時期に至るまでは、やはり公團による配給統制を確立いたさなければならぬと考えております。現段階におきましては、これを除去する意思はございません。しかしながら公團に三千五百カロリー以上のものは賣らなければならぬということになる反面、先ほどの御説のように、いろいろな需要者の方々から、亞炭の鑛業者が投資、あるいは融資を受けるという方面が、たずなを切られたために、金を出すというような意欲が鈍るのではないかというようなことは、御説のように考えられますので、亞炭の山の中で炭質の優秀な、この際非常に必要であるという亞炭の山、そういう山の企業に必要な金、妥當である事業に必要な金、あるいは必要なる運轉資金というようなものについては、これは融資する考えでおるわけであります。なお石炭と同樣な扱いをする必要があるだろうという點につきまして、これはただいま申し上げましたように、燃料不足で亞炭が非常に必要であり、なお三千五百カロリー以上の亞炭が工業方面に使われることだけでなく、家庭燃料の不足しておる折柄、三千五百カロリー以下の亞炭であつても、一般の家庭燃料としてきわめて重要であることは、十分認識しなければならない點がございますが、亞炭全體といたしましては、この工業用、あるいは家庭用の燃料不足の折柄、ぜひ増産かはからなければならない。この點まつたく御同感でございまして、政府はそれに對してまつたく繼子扱いをしたり、放りぱなしにしておるのじやないかというような御意見でございますが、決して政府の方でも亞炭を投げ出しておるわけではなく、各般の點について十分心配をいたしておるつもりでありますが、ただ石炭に比べて先ほどのお話のように、石炭に劣つている扱をしておるのではないかという點につきましては、確かに御意見の通りでありまして、今後特に炭質の優秀なものについては、極力石炭と同樣な扱いをするように、先ほどもお話に出ました食糧の問題、あるいは鐵道運賃の問題につきましては折衝をいたしております。たとえば鐵道運賃のごときは、今後公團でこれを取扱う石炭と一緒に割當配給をするというような場合は、當然同じ扱いを受けるであろう。こういうふうに考えておりまして、鐵道の方面に折衝しております。生産用資材等につきましても、從來以上の計畫性をもつて、供給いたすつもりでありますが、この點につきましては亞炭業者それ自身も、また計畫性を十分確立して、しかも一層の科學性をもつように、亞炭業者自身が努力することが必要であろう。もちろん政府はそれに對してできるだけの指導助長をしていくという方向に向つているわけであります、ただ石炭それ自身につきましても、需給の状況から申しまして、同じ石炭の中でも原料用炭、あるいは發生炉用炭というものが特別に必要だという場合には、同じ石炭の中でも資材の配給等には、やはり足りない資材の中から重點配當をする場合もあるわけであります。石炭、亞炭それぞれを通じまして炭質のよしあし、あるいは炭種の工合によりまして、資材が足りません場合には、おのずから多少の重點配當による差別がやむを得ずつけられる場合もあるということは一應申し上げておきます。
それから最後に、どうしても公團でやるなら投資融資に對する處置をどうするかといふ御質問でありますが、これは先ほどもちよつと觸れましたように、公團に三千五百カロリー以上の亞炭を全部賣るということになつたために融資、投資が鈍るであろうということは當然あり得べきことと考えておりますが、投資につきましては必ずしもこれが直ちに從來の投資を引揚げられるということになるとは考えられないのでありまして、今後の企業資金は、別途政府の方から適正なる企業に對しては貸すようにする融資の點は今後出るべき亞炭を見合つて、從來需要者の方から融資を受けるというようなものにつきましては、今後公團の方から生産の工合を見合つて、見返りのような形の貯炭に一時融資をするという方法を講じてまいるつもりでおります。切替えに際しまして多少の不便その他いろいろな都合の惡いことも幾分起るかと思いますが、大體この亞炭を石炭と同樣な扱いによつて、燃料不足の折柄の産業復興に寄與させようという強い考え方に從つてやるのでありまするから、多少の不便は忍んでいただくようにしなければならぬと思いますけれども、極力そういうことのないように、政府としては切替えどきのいろいろな不便を除去するように、目下關係の方面と折衝いたしておりまして、融資、投資等についての處置も今交渉中でございます。以上お答え申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=62
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063・森幸太郎
○森政府委員 先ほど香川委員の御質問がありました肥料公團に關する法案を今議會に提出するや否やという御質問のように承つておつたのでありますが、これは關係方面との關係もありまして、ぜひこの議會に提案いたすことに準備を取急ぎまして、大體提案の方針を決定いたしておるのであります。しかしながら今少しく關係方面との諒解が終つておりませんので會期の短かい今議會に出して必ず御審議を得られるかどうかということも考えておるような次第でありますので、政府の意思はそこにあるのでありますが、必ずしもこの議會にぜひとも提案するまでにいくかどうかということは、まだはつきり申し上げる時期になつておりませんので、御承知置き願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=63
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064・香川兼吉
○香川委員 生産局長から非常に御熱心な、しかも特に増産對策として政府の親心を發揮せられましたことについて、私は意を強くいたしておるわけであります。このただいま御答辯をいただきました問題は、重ねて申すのでありますが、亞炭の興廢に關係する問題であるとともに、私は今後の燃料の危機を克服する一助としての、最も重大なる問題に關連すると思うのであります。しかるに石炭に準ずるところの制度をとり、同じ國家の内において同じ使命を果すものに、そこには認識を欠き二、三にするというような事柄があつてはならないのであります。常に公正であり公明であり、平等であるということをすべてが申しておる今日のときにあたりまして、私は重大なるこの亞炭に對する政策として、一日も早くこの隘路を打開いたしまして、増産に邁進し得られるように、方策を特に實行せられるように希望を申し上げるものであります。
最後に私は希望を申して質問を打切りますが、特にこの石炭の増産對策に關連をいたす問題であります。過般勞資の間において賃上げ問題から締結をいたしました赤字問題、あるいは十數億の問題が、今その金のいかんによつて、増産對策というものは、今後に非常なる關連する問題が多いのであります。赤字を克服しまして、生産意欲というものは、あるいは三千萬トン増産というものは、この問題いかんにかかつておるものと私は考えておるわけであります。政府においてはこの懸案というものを直ちに實行して、働く者に對する感謝の念を、あるいは生産意欲の昂揚の上において、この案を妥結するように。さらに亞炭の問題でありますが、一つ増産對策の上において、少くも今日の亞炭行政の上におけるところの機構の問題、この機構の擴充強化につきましては特段の御高配を願いまして、あるいは部局というような、ここに一つ機構を擴充せられまして、一日も早く増産對策の確立ができ得ますように特に希望を申して私の質問を打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=64
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065・岡部得三
○岡部委員長 藥師神委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=65
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066・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私はあまりこまかい點には觸れないで、この公團法の提案になりますその根本をなす理念について、商工大臣の意見を質してみたいという考えをもつておつたのでありますが、他にお差支があるそうでありますから、政府委員の方から御説明を願いたい、かように存じます。私もできるだけ總合質問にいたしまして、時間を省略したいと存じております。戰時下におきましては官僚統制の必然性と申しまするか、この點についてはわれわれも十分これを肯定しております。しかしこの官僚統制の是非、つまり成功であつたか、失敗であつたか、その功罪については相當これは檢討さるべき問題である、かように私たちは思つております。これを一言にして盡すならば、われわれの目から見ますれば、この官僚が統制の衝にあたるということは、戰時下においてやむを得ざる必然性をもつておるが、これを結果から見れば、一言にして盡せば失敗であると思つております。これは具體的にいくらでもあげることができるのでありますけれども、これはどこに原因があるかということを考えてみますると、これまで體驗しなかつた、いわば役所の仕事の範圍外へ手を染めたということが、一つの大きな失態の原因であると考えます。それから一面言葉をかえて言えば、調子に乘り過ぎて行き過ぎたということが、私はこの失敗の原因を釀しておると存じております。最も卑近な例をあげてみますると、われわれの地方へ代表的な政府工場ができたのでありますが、この政府工場の用地の買收について政府の役人がまいりました。ちようど當時は麥が植えてあつた、ところがそこの町長に向つて、これは麥が植えてあるから、畑であるから水田よりも遙かに低廉に土地が買えるはずだ、こういうお話だつた。ところが、その町長のいわく、これは麥と稻とを交互につくるいわゆる二毛作田である、普通の水田よりも遙かに土地の價値は上なんだというお話をしたところが、そうかという話だつたという問題であります。もう一つの例をあげてみますると、これは農林省の統制でありますが、われわれの方は生糸の——世界一の生糸を出したいという出産地でありますが、そこの乾繭組合、すなわち繭を乾燥して貯藏する倉庫ができたのでありますが、この問題について地元の者たちは、土地の低廉な田舍であるから、できるだけ平屋の倉庫を建てるということを主張したのでありますけれども、それを農林省の方の役人は、鐵筋の三階の倉庫を建てて、未だにこの倉庫は殘つておるのであります。これが東京とか大阪とかいうような、一坪の土地が、いわゆる土一升金一升というような貴重な土地においては、そういう施設もやむを得ぬと思つておりますけれども、田舍のような土地の安い、土地の容易に手にはいる方面にもつていつて、三階の鐵筋の倉庫を建てて、いくら輕い乾燥繭といえども、未だにその三階建の倉庫は使わないで放置しておる。その一棟の倉庫を建てるために、當時の金にして數十萬圓、今だつたら何千萬圓の倉庫を建てておるのでありますが、そのためにこの乾燥組合は莫大なる借金のために苦しんでおるのであります。これは私は一、二の例をあげるのでありますけれども、そういうような不認識をもとにして、統制の衝にあたつたということが失態を釀す、あるいは行き過ぎたという大きな原因をなしておると私たちは思つております。今日考えてみますと、すべての國民は戰時中やむを得なかつたとはいいながら、戰時下におけるあらゆる統制にもう飽き飽きしておる。うんでしまつておる。これまで自由の天地に交渉していたものが、小さなわくの中に嵌め込まれたような、窮屆な思いをしてやつてきたのであります。それも戰時下なるがゆえに、泣きの涙で忍んできたのでありますが、敗戰とはいえども、今日自由の天地に開放されなければならない段階に立つておる場合において、再びこの統制を強化するということは、われわれは根本としては絶對にこれを容認することはできないのであります。その筋のいろいろの示唆、指令もあるでありましよう。しかし私はその點については、日本の國情と國民の氣持というものを體して、その衝にあるところの大臣なり政府委員が、十二分にその點に委曲を盡して、職をとしてでも、もつとよりよく日本というものの現状を把握認識してもらうように努めることが、私は先決問題ではないか、かように考えております。もし命令だから、指示だからといつてすべての問題をそのままにするならば、われわれはこの議場において言論を盡すことも、何らの意味をなさない結果になると私は考えます。われわれの言うことはそのままとつて、政府がそれを施策の上に實行することができないにしても、われわれは少くともこの議場を通して政府をいじめるとか、政府をどうするとかいう以外に、今日占領下にある日本の現状をはつきりと認識しております。自覺しております。從つて政府でやれない點、國民の希望する點、それを議會を通して連合國側によりよく日本の特異性を認識してもらつて、その上に管理政策を實行してもらいたい。こういう氣持でわれわれはここで働いておるわけであります。私は政府委員においてもこの認識、この覺悟が基本にならなくてはならないと存じておるのであります。つまり今度の公團法は、今現われておりますのは單に石油と石炭のみに限られますけれども、昨日も大藏大臣の説明があつたそうであります。今森農林政務次官からも説明がありましたが、農林省關係の方でも、肥料あるいは農機具その他纖維、こういうものについても順次この公團法が提案されるものと私は豫想しております。その及ぼす影響あるいは國民に對する反響、そういうものはおのおの違うでありましよう。石炭とか石油とかは最も重要なる産業ではありますけれども、國民の個個の生活に直接に響影の度の少いものと多いものとにおいては、これは輿論の上に、國民を刺戟する上におきまする程度の差はあるでしよう。けれどもそれらのものがもつ基本的な本質においては、皆一連の不可分性をもつております一つの線にあるわけであります。この點を考えますときに、單に石油だから、單に石炭だから、こういう工合にわれわれはこれを差別的に見るわけにいかないのであります。それでくだくだしくは申しませんが、今ごろになつて各種の統制團體のやり方がまずいとか、あるいは統制會社がいかないとか、横流しするとか、むしろ役人がやつたならばもう少し氣のきいたことができるだろうというような問題が今日出て來るのは、まるで化物が晝出て來たような感をわれわれは免れぬわけであります。時代思潮に逆行するこれよりはなはだしいものはないと私は思つておりますが、しかし私はその間の事情も十二分に斟酌して申し述べてみたいと思います。大體われわれが考えますことは、これまで戰時中にわかづくりにできた統制組合であるとか、統制團體であるとか、統制會社であるとかいうものは、一面から言えばいかに民間人がほんとうに努力しようと思つても、四面楚歌とも言うべき惡條件のもとにおいて、不慣れな統制にしばられてやつていくのでありますから、それがほんとうに一人前の仕事のできないうちに終戰になつたわけであります。私はこの問題を一々申し上げません。申し上げれば數限りもございませんが、ただこの問題については、何も今さら公團法を設けて、役人自身がこれを運營していかなくても、十分監督權を行使することができるだろうと思います。また民間人がそれほど無能力なもの——無能力なものと言つては語弊がありますが、役人の目から見れば頼りないものであるとすれば、常駐に役人をおいて指導監督することもできます。あるいは査察制度を強化することもできます。こういう意味においてもつと進んだ、國民の納得し得るような方法をお考えになることができなかつたかということを、私たちは殘念に思うわけであります。統制の問題については、私が申し上げぬでも政府の方方には御存じでありましようが、机上でおやりになることと、實際の社會とは大きな開きをもつております。たとえばこれは内務省か警視廳が主になつておるかしりませんが、最近どこの飮食店へまりいましても、A級だ、B級、C級だというかけ札がかけてあります。そうしてこれに違反したならば警察に屆出よということが書いてあるけれども、日本國中一軒でもこれが實行されておる所があるかという問題である。そういう實際においてわれわれの社會生活にあてはまらない制度や法律をつくるということは、それを犯す者の方が惡いのか、そういう實行のできない、實情にあてはまらない制度や法律をつくるのが間違つておるのかという根本の問題である。私はそういうことが多いのではないかと思う。役人などというものは、實情とあまりにもかけ離れた實行のできないことをやつておるのではないか。A級料理店は五十圓の料理しか出せない。B級は三十圓、C級は十五圓ということが言われておるが、一體A級、B級、C級という區別がどういうところでつくのかもわれわれにはわからない。私は東京で泊つておるのに、いつてみると、三十圓のいわゆる間代十五圓、夕食が十圓、朝食が五圓四人の定員云々と書いてあるが、私は一晩で酒一本飮まないで六百圓とられておる。三十圓の無慮二十倍、今日役人が旅館へ行つて泊つてみれば一番よくわかるでありましよう。警視廳の人たちは恐しいからそんなにとらないでしよう、ただでも泊めるかしれないが、役人の風をしないで默つてお泊りになつたら、おそらく三十圓や五十圓で泊めるところはないであらう。間代十五圓、夕食十圓、朝食五圓、それで取締りが實行されておるとお考えになる役人は、實にあほうのこつちようだと思つております。そういう方法で統制ができたと思つておることが——私は全體とは申しませんけれども、そういうところが多いのではないかと思うのであります。これは一例でありますが、今日政府の方々が銀座の邊でもどこでもいい、一晩お飮みになつても三十圓や五十圓ですまないことは、警視廳の方でもわかつておるはずであります。それを一々そういう規定をこしらえて、一軒々々ああいう札をかけてやつていくというような、まどろこしい形式的な仕事をしておるのが、私は今日の役所のやつておられる一般的な仕事ではないかと思つております。ここに一つ例をあげてみますと、私の知つておるある檢事に汽車の中で會つて、こういう話をされたことがあります。藥師神さん、このごろ牛を神戸に送ると、惡いやつがあつたもので、たくさん水を飮ましてやつていつて掛目を多くして賣れば、神戸に着いたときは三割くらい目方が減つてしまうのですから、買うた方は非常に缺損をするらしい。初め金を送つて買わして、買うたときの目方と神戸に着いたときの目方は三割も違つて損をする、こういう話を檢事がしたものでありますから、私はそれは檢事さん、そんなばかなことはない、なんぼ水を飮ましたからといつても、牛でもいやなら水を飮むわけではない。四斗樽に二杯も三杯も目方が殖えるほど水を飮むわけはない。飮んだとしても三時間、四時間經たないうちに尿になつて出てしまう。かりに一斗の水を飮んだところで一體なんぼになるか。一升五百匁としても五貫目だ。そんな話の合わないことはないので、ばかな話だ。そういう意味で減るのではなくして、牛馬は船や汽車に乘る經驗が少い。船や汽車に乘ると牛馬は非常に弱ります。人間よりもなお醉います。そうして船上りしても一週間くらいろくに馬草を食いません、それから輸送中には思うように飼料もやりません。それが非常に目方の減る原因であるということを私は檢事に申したのでありますが、そういうような認識を本にしてもしその檢事が——これは笑い話で濟みましたけれども、そんなことでお前は不都合なやつだ、お前は牛に多く水を飮まして目方を多くして賣つて不都合だといつて、これをもし泥棒騷ぎをやる場合においてはどういう結果を來すかと考えてみますと、われわれは慄然とせざるを得ないのでありますが、そういう事實が實に多いのでありまして、これは私は何も今日官僚攻撃をしようという考えをもつておりませんけれども、とにかく統制會社あるいは統制團體ができたときに、われわれが一番に遺憾に思うことは何であるかというと、その機構の改革統制よりも、たれを首腦部にすえるかというところまで干渉しております。自分に氣に入らぬ者は徹底的にこれを排撃しております。これはおそらくわかると思いますが、一つの統制團體の理事長なり專務理事なり、こういうものをこしらえるためにどれだけ干渉をしておるか。中には地方官などでも、部長などがそういう者を追いのけて、みずから理事に割りこんでおる例さえたくさんあるのであります。自分には自分として當然な大きな職務があるにかかわらず、そういう統制團體に頭を連ねておるのは今までいくらもあります。そうした官僚が往々あつたといつて私は斷言してはばからぬわけであります。この氣持が戰時下におけるところの統制の必然性、それに便乘したところの官僚の行き過ぎ、官僚の全然體驗を經ない範圍に手を伸ばしたというこの問題、これが私はこの功罪を言えば、實際においてこの官僚統制は總對的に失敗であるし、その罪輕からずとわれわれは思つております。それで今度こういう公團法ができましたが、われわれはこれに一つの魅力ももたないし、期待することもできない。これはここで論議しても始まらぬわけでありまして、將來の實績に見なくてはこれを批判することはできませんけれども、過去のあらゆる統制面から考えまして、これを比較してみる場合において、われわれは實にここに心細い感じをもつわけでございます。しかるにこういう法案が提出されるに至りましたことは、商工大臣もお述べになりましたが私は、これが日本の國情に合わないということなれば、大臣であらうとその他の政府委員であらうと、自分の職を賭してでも、日本の國情と日本の國民の希望するところ、ほんとうの日本の特異性を認識してもらつて、その上に一つの施策を實行してもらうように考えることが、まずこの法案提出の前提とならなければならないという意見をもつておるのでありますが、その點について御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=66
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067・石井光次郎
○石井國務大臣 いままでの統制がうまくいかなかつたということは、藥師神君も御承認の通りでありますが、それでは今の統制をするならば、民間の何らかの方法で統制を續けて、そうしてそれを政府がもつとしつかり監督もし、そして實績もあげたらどうだというような意味に承りましたが、今のままを多少直しても、改善の方法が必ずしもないとは言えないと思うのであります。統制會社が全部惡い團體とも限らないのでありますけれども、ひどいものをいろいろな方法、あるいは人を設けて監督する方法もあらうと思うのでありますけれども、全體的に見まして、始めから繰返して申しておりますように、民間の統制では獨占的になる、獨占禁止をしようという法案を出そうとする建前からいたしましても、これはよろしくないというのが一つ、しからばどうしてやつていくか、お説のごとくできれば早く自由の形にしたいのであります。しかし特に重要生産資材でありまする石炭や石油のごときものを自由にしたらどうなるかということは、いまさら申すまでもないことでありまして、今は殘念ながら自由にはできない。それならばどんな形で統制していくか、今のも形式は面白くないということでありますると、統制をやるものは政府で、政府がその責任をもつてやるのでありますから、政府そのものがこの統制の實行にあたるという形をとらなければならぬという結論になるのであります。政府がとる形においては、幾度も申しますように、專賣の形もあり、また今度のような公團の形というものも考えられるのであります。で私どもは今の行き方が獨占禁止の線に沿うてもいけない、また實情においても大體においてその效果が十分にあがつてないというようなことを考えまして、しかし役所にもつていつてしまつて、專賣的な形をとることもいかがと思う點もいろいろ運營上にありますので、この中間的な公團法案というものを提出するわけになつたのであります。私どもは、これを永久にやつて、そうして官僚の統制と申しまするか、官吏による統制を樂しんで行くというような氣持は毛頭ないのであります。どうか今の統制の形を一日も早く解除するような状態に日本の經濟事情をもつていくにはどうしたらよいかということは、物が少くして散亂するおそれある物は統制をして、その統制を強化していく、そして重要部面にわける分量を少しでも多くしまして、そうしていろんな生産が順次起つてくる。そうして早くこの統制をなくなしていくというより方法はないという氣持をもちまして、この公團法を提出したわけであります。御趣旨の點はよくわかるのでありまするが、私どもはこの配炭公團、石油公團というものが、今日考えられる統制をやつていく上においては。いろいろな聲はありまするが、まず今日の場合としてはこれが一番よい組織ではないか。それに伴いまする御心配の點は、いろいろな面からこれを修正し、あるいは惡い弊害に陷らないようにできるだけいろんな意見を集めてこれを守つていくようにいたしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=67
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068・藥師神岩太郎
○藥師神委員 運輸大臣はお見えになりませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=68
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069・岡部得三
○岡部委員長 運輸大臣はちよつとよそへまわつて遲くなるらしいです。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=69
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070・藥師神岩太郎
○藥師神委員 農林大臣は……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=70
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071・岡部得三
○岡部委員長 呼びにやりましよう。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=71
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072・藥師神岩太郎
○藥師神委員 それではもう一つ商工大臣にお尋ねいたしますが、官僚統制という意味でなく、官廳の仕事、言葉をかえて言えば、いわゆる官吏制のもとにおける役人の仕事は、大體において非能率的だと思う。われわれ民間人が事業でも何でもやり、あるいは自治體の仕事をしておる立場から見ると、實に解しかねるような非能率的なところがあるのであります。學校築建のために寄附を受けた。その封鎖解除について、十二月末か一月の初めに委員會を通過しておる。この問題は私は一月にも言つたのですが、今計算中だと言う。一箇月くらい前にもまだ解決はついていなかつた。いくら電報を打つて、こちらから何と言つても解決がつかない。一體官廳の事務は委員會で通過しておるものに對して、それだけ事務的にかかるものであろうか。これは大藏省の惡口を言つておるのではなく、例をあげておるのですが、そういうところもある。たとえば市町村の仕事にしても、支那事變前までは五千人くらいの人口をもつた村、五人平均として一千戸くらいの大きな村であつても、その役場の吏員は七、八名で濟んでおつた。兵事も、學事も、村の一般行政も、戸籍も、衛生も、土木もやり、しかも國家の委任事務のために大半以上の精力を奪われながら、それぐらいのもので村政全般にわたつてやつておる。一方府縣廳に行つてみると、その比率からいうと、おそらく十倍ぐらいの人がおると思う。本省においてもそういうそしりを免れないと思うのであります。そうして仕事はどうかというと、一つもはかばかしくない。口でなんぼ民主主義を言つても、今言つたように一月か十二月に委員會を通過したものすら、計算をするとか何とかいつて一向に事務がはかどらないという實情である。實に私は非能率的だと思う。たとえば地方鐵道を運輸省が買收すると、今まで百人使つておつた民間鐵道であつたら、おそらく三倍の人がいると思う。それで從前よりサービスがよくなるかというと、一つもよくならない。こういう傾きというものはどこにも認めることができると思うのであります。こういう點をまず努めなければ、私は官廳の民主化もできないと思つておる。今度の公團法がいくら形の上では立派なものであつても、運營の面においては、私は非常に非難をむしろ受けなければならぬような結果を招きはしないかと思うのであります。それは官吏そのものの個々の責任か、あるいは制度の罪が、その點は非常に檢討を要すると思ひますが、これが民間のものであれば、どんな大きな事業をするにしても、二、三の幹部がちやんと話せば解決がつきます。ものを聽いて一々上司の鼻息をうかがつて、その順序を經なければならぬような官吏の制度に大きな欠陷があるのであります。人は皆優秀な者が入つておりますけれども、そういう官僚的の雰圍氣をこれまでつくつておる。これは的確にはつかんでおりませんけれども、そういうことははつきりと私は言い得ることであると思うのであります。この點は公團法がどうなりますか、私は豫測をしておらぬのでありますけれども、こういう點を十分にお考えになつて、そうしてこれまで民間でやつていつたよりも、少くとも公團法にすればより能率が上り、より國家建設に役立ち得るという信念のもとに御提案になつたものと考えまするが、民間のそれに比べてみますと、非常に非能率的であるという點をお認めになりますが、この點についてどういう考えをもつてこの弊を是正していく御決心でありますか、この點を參考のために伺つておきたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=72
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073・石井光次郎
○石井國務大臣 お説ごもつともであります。官吏そのものの今日の執務状態というような點になりますと、人の罪か、制度の罪か、私ども民間人としていた時代におきまして、官廳の行き方というものがなかなか面白くない、もつと迅速に事を運んでもらいたい。きまるのが遲く、いろいろ研究中であるということであつても、きまつたものを早く運んでもらいたいということが、私どもいつも思つておることであります。ただいまあげられました一つの例のごときも、まことにそういうこともありはしないかと私どもも思う點でありますが、配炭公團、石油公團等におきまして、一般の役所の執務のような氣持とは、これは違つた氣持で皆が仕事していかなければならぬ。官吏は公僕であるというようなことは別としまして、この仕事は商賣なのであります。要するに山から受取つたものを適當な場所に迅速に配給するということであります。これは全然商賣人の氣持をもつてやらなければならぬ問題でありますから、これがぐずぐずしておりましたならば、何のために一生懸命石炭を掘つたか、山に積んだままほつたらかしておつたり、どこの港にいけばどうではないかと言われるようであるならば、山の生産意欲も落すことになるのでありますから、何としても迅速に出てきた石炭、石油を配給するということに全力をあげてやらなければならぬと思います。そのために必要なる制度上の處置と申しますか、あまりに繁文縟禮にならないように、商賣的にものが次から次にと片づいていきまするように、そういうことを制度の上にも十分注意をいたしてやつていきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=73
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074・藥師神岩太郎
○藥師神委員 それでは商工大臣に對する質疑は以上に止めておきます。次には農林大臣にお伺いしたいと思つておつたのでありますが、お差支えがあるそうでありますから、局長さんに簡單に伺つておきたいと存じます。それはこの公團法に關連してでありますが、昨日私は早く參りませなんだので、聽きませなんだけれども、大藏大臣の説明があり、なお先ほど森政務次官からの他の委員に對する答辯の中に、今議會に提案するか、あるいはできないかわからぬが、とにかく農林省關係の公團法も、いずれは出るという意味の御意見があつたのであります。これは私冒頭に申し上げましたごとく、農林省關係のものだからといつて、私は特に重視するという意味ではないのであります。その基本理念、本質においては私は同じものだ、こう見ております。ただ今日對社會的と申しますか、對國民的と申しまするか、そういう意味における反響と利害の關係から見ますると、農林省關係が一番大きな問題を釀すと、かように私は見ている。この點はいずれも商工省から案としては出ると考えておりますが、その基本問題については、どこまで諒解が成立つておるか存じませんが、農林省としては、この點については基本的に十分に諒解されておるか。具體的に申しますれば、今の肥料ないし農機具の配給公團に對しての基本的の諒解を商工當局との間に遂げられておるのか。あるいは反對ではあるけれども、しぶしぶついていくというような状態であるのか。基本的に反對なのか、根本的に反對なのか、そういう點を承ることができれば、まず承つておきたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=74
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075・遠藤三郎
○遠藤政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。肥料の配給公團の問題につきましては、ただいま關係方面と折衝中でございます。その根本的な理念について、商工省との間の意見はどうかということでございますが、その點につきましては十分に連絡をとりまして、商工省と農林省との間の意見の食い違いは、ただいまのところはないのでございます。ただ關係方面との折衡が殘つているというような段階でございます。なお農機具の配給公團についてのお尋ねも關係してまいるのでありますが、農機具については、ただいまのところ配給公團をつくる考えをもつておらぬのでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=75
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076・藥師神岩太郎
○藥師神委員 農機具の配給公團はつくる考えをもつておられぬということを今承つたのでありますが、肥料の問題につきましても、私は二つの角度からこれを見ていくわけでありまして、まず今日農村の主體になつておりますものは農業會であります、この農業會もいろいろ非難されております。また非難され得る面もあると思ひます。しかし農業會が惡いのではなくして、これは一面から言えば、戰時中の官僚統制の片棒をかついでいる、官僚統制の下使いをやつているところに、今日の民主主義思潮の一つの反撃を受けているものだと私たちはかように見ております。從つてこれが今度農業協同組合に改組されることになるでありますが、これは戰時中に官僚統制の頤使に甘んじたわけでありまして、何も指導性をもつて能動的に働いたわけではありませんけれども、そこに今日農業會が一面に指彈される原因が潜んでいることは、われわれも肯定するわけであります。しかし何と言つても、農業協同組合が強固なものができて、これが農村の指導團體、指導の中心としてその形態と實質を具えるまでは、今日の農業會がやつていかなくてはならぬわけであります。してみると、これを私は二つの面からというのは、一面から言えば、將來農業協同組合になりましても、これが單に指導團體としてのみでは存立し得ないのであります。今日でも農業技術員の國庫補助の増額問題を全國的に要望してまいつておりますが、これを農業生産の中心指導團體としてやつていく上においても、今日の事業面、いわゆる舊産業組合の部面でありますが、事業面と指導面との合體によつて、初めて今日の運營ができるのでありますけれども、この面から事業面を拔き去つたならば、指導部面だけでは、農業會が協同組合に變りましても、これは存續し得ない状態になつているのです。これを存續させようと思うならば、國庫補助をうんと増強するほかに方法はないわけであります、これは今の農業會なり農業協同組合を中心としての一つの見方であります、もう一つの見方はどうかというと、農民全體がこういう統制には反對するという氣持であります。これはどういうことか。おそらく農民は自分一代ではなく、何代も以前から統制なんということに出遇つたことはおそらくないのであります。それが今度の日支事變からだんだん戰爭が長期化してくるに從いまして、統制を強化されて今日に及んでおるのでありますが、農民としてはこれくらいな煩わしい問題というものはございません。肥料の少いこともつらい、その他の農耕資材の足りないこともつらいことであります。作業衣の足らぬこともつらいことではありますが、それよりも、今まで統制なんかというようなことよりも、自然を相手にして生産にいそしんでおる農民の立場からいえば、この煩わしい統制機構というものに對しては、實にいやな感じをもつております。私もこれまで長い間農業の指導面にもあたつてきた者でありますから、よくわかるのでありますけれども、實際においてこれが除かれ得るものならば、農山漁村に對しては統制のわくというものを一日も早く一方から撤廢していかなくてはならぬと思います。この重苦しいところの重荷を一つ一つとつてやらなくてはならぬと考えます。これが生産意欲を増強するところの一番の根本原因である、私はかように存じております。それにもつていつて、今度また配給公團を設けていくということは、實に私は逆效果を來しはせぬかと思つております。かりに肥料の面からいつても、戰時中から、これも一本にしないで、元の商人系統と、農業會系統の二本建によつて、隨分無理な統制をやつてまいりました。わずか三俵か五俵かの肥料を入手するために、一部分は商人の方に行き、一部分は農業會の方に行くというように、實に農民はおもちやのように飜弄されたのであります。これを總括的に申しますと、地方には地方長官がある。中で氣のきいたのは大臣にもなる腕をもつ人が地方にも出ておる。それを中央官廳が地方長官に任して、そうしてできるだけ地方の自主性というものを尊重しなくては、社會の發達も、國家の興隆もないとわれわれは考えておりますが、それを本省の方では、地方廳に立派な人がおるにかかわらず、末端までも干渉しなければならないというような方針に出ております。これはだれが何と言つたところで、現實において否定することはできません。この考え方、この機構というものを根本的に改めない限り、私は日本再建はできないと思うのであります。それは何かといえば、すなわち官僚がほんとうに今こそ嚴正なる自己批判をしなくてはならぬ時代である、私はかように考えます。私は官僚と言いましたが、何も今日お見えになつておる役人の方々一人々々を攻撃しておるわけではないのであります。私はこれまで長い間かかつてつくり上げたところの、一つの官僚機構というものを打壞わさなくては、日本の民主化も、再建もできぬと信じております。いずれにいたしましても、農村には金がたくさん流れ込んでおる、こういうことを申しますけれども、われわれの目をもつて見るならば、なるほど農村においても、都市を圍繞しておる薄菜園藝地帶であるとか、一部の漁村におけるところの水産業者であるとかいうようなものには、相當な金がはいつておりますが、純農村として今日米、麥のみをつくつておる所においては、その生産高の六割五分を供出し、そうして自分が食つて、殘りを全部やみに流しても、その金は知れたものであります。上げた上げたという米一石が五百五十圓、東京において一晩の宿料が、酒一本も飮まぬで六百圓とつている。米一石もつていかなければ、一晩の宿賃が拂えないような状態が、この帝都のまん中に行われている。どんな安い宿にいつたところで、五十圓や百圓では泊めてくれない。この大きな矛盾をわれわれが見るときにおいて、役人が斜視的でなく、相對的にもつと視野を廣くしてかかつていかなければ、日本の再建はできません。私は固くこれを信じておるのでありまして、今農村全體に金がうなつておるというような考え方をもつているのが間違つているのであります。農村の原始的農業、いわんや水田經營の日本農村の特殊性においては、近代工業がほんとうに出直つていつたならば、これにはすぐに負けてしまう。壓倒される。そこにはどうしても徹底した農業保護政策というものを打立てなくては、日本の農村經營はできません。私は固くこう信じております。從つてこれを基本として考えますときには、まず農民の氣持を朗らかにするために、天眞瀾漫として産業にいそしんでおる、むつかしいことのきらいな農山漁村民に、このややこしい立法的な措置をもつて統制するという方法は、一日も早く取除く必要があると私は考えるのでありますが、この點を十分お考えになつての措置であるかどうか、この點を承つておきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=76
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077・遠藤三郎
○遠藤政府委員 ただいまの御質問の第一點でございますが、産業組合、すなわち改組されて農業會となつておりますが、この農業會の事業につきまして、經濟行爲、指導行爲の二つの面がありまして、この二つの面が兩々相まつて初めて農村の指導ができるのだというようなお話でございますが、その點はまつたく御同感でございます。われわれといたしましても、今後の農業會の指導につきましても、あるいは配給公團を設立する場合においても、その點を十分よく考えまして、特に肥料等につきましても卸團體の取扱いをするということを考えまして、縣以下の小賣、さらにその先の方の扱いについては、なるべく農業會を使い、もし改組されますならば、改組された協同組合を使つていく、こういう建前で進んでまいりたいと考えているのであります。
御質問の第二の點でございますが、御指摘のように、われわれといたしましても、統制は最小限度に止めまして、殊に農民に對するやかましい複雜なる統制を強いるということは、きわめて不適當でありまして、でき得る限り統制を緩和し、統制は必要やむを得ざる最小限度に止める、こういう考え方で進んでおるのでございまして、ただ現状においては物資もきわめて窟屈でありますし、價格面からの強い要求もありまして、最小限度の統制はやむなく續けておるのでありますけれども、でき得る限り速やかにこの統制を緩和していくように心掛けている次第でございます。なお官廳の民主化の問題についての御言及もございましたが、御指摘のように、この點につきましても、官廳機構全體として考えることはもちろんでありますが、個々の末端の行政の擔當者に至るまで、つとめて速やかに民主的な觀念に塗りつぶされるような方向に一日も早くもつていきたいということを念願しておるような次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=77
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078・藥師神岩太郎
○藥師神委員 運輸省の方はおられませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=78
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079・岡部得三
○岡部委員長 見えませんから後廻しに願いましよう。——それでは松尾委員の質疑を許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=79
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080・松尾トシ
○松尾委員 政府はこのたび臨時物資需給調整法を制定して、將來における自由經濟の復活をはかるために、ごく短期間ではありますけれども、これをよい結果をもたらそうと、物資不足の現状に鑑みて、さらに高度の配給統制の必要があるとなされて、このたびこの法案をまとめてお出しになつたのだと思いますけれども、會期も切迫しているし、この際このまとまつた重大法案を一々十二分に審議することはできないと思います。それからまた從來の統制が完全に行われなかつたのも長いことであるし、ここにきて急いでこれを審議し、通過させなくてもよいのではないかと私は思います。それからまた片方政府におきましても、この重大法案を會期がないからといつて、夜明かしでもして審議しようというような熱意がないばかりか、この委員會を通しても、早く質問を切り上げたいというふうにも思われますので、この次の議會までお延ばしになつたらいかがかと思います。その點いかがでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=80
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081・石井光次郎
○石井國務大臣 まことに會期が迫つて、これだけの法案を出したということは、私初めにもおわび申したのでありますが、まことに恐縮だと思つております。早くから出すことになつておりましたが、いろいろな條文の整理その他で、その筋との間になかなかきまらないものがありまして、ようやく大急ぎにしてこの間提出できたというような次第でありますが、この配給公團に關する二つ、それからそのほかの貿易等々におきましても、一日も早くやつた方がいい。一日早ければ一日早いだけ統制の實效があがるのじやないか。そうすれば日本の復興も、それだけ早くなるわけだということに私ども考えまするし、その筋からも、たつてぜひこの議會に審議はしていただいたらというような慫慂もあります。お話のようにまことに日が短かくて、これを丹念に見ていただきますれば、相當な時間がかかることもよくわかるのでありますが、大體の構想がほとんど一貫しておりますので、その意味におきまして皆さん方がよく御覽願いますれば、あるいは短期間でも御議了ができるのではないか。こういうふうに思つて出したわけであります。私どもといたしましては、できれば皆さん方が夜遲くまででもやつていただきますれば、喜んで私出るのでありますが、大體あれやこれやと荏苒日を送つておるわけではないのであります。ただ皆さん方のいろいろな御都合もあると思いまして、皆樣方のお指圖に從つておるわけでありまして、必要でありますれば、もちろんやるだけの熱意はもつておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=81
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082・松尾トシ
○松尾委員 その點は諒承いたしました。ところが實を申し上げますと、私のところへも各團體から絶對反對という電報や文書など、たくさんいただいておりますのです。それで時間はないにしても、この法案を一讀してみますと、これはどうも獨占資本と官僚の結合によつて、新たな官僚統制の方式を確立するようなものに思われるのであります。從つてこの公團法は勞働者、勤勞消費者大衆はもちろん、配給業者も自由主義産業資本家ですらも利益がないから、非常に反對しておるのであります。これは民衆の經濟復興に對する自主性と創意性とを抹殺するものであるといつて、大衆は反對しておるのではないかと私は察するのでございます。しかし今日は、民衆の聲を聽入れて立法化するという民主時代になつておるのですから、この民衆の協力と諒解がなくては、立法だけでは立つていかれないのではないかと思います。この民衆の聲をいかになさいますか、その御意見を伺いとうございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=82
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083・石井光次郎
○石井國務大臣 私のところにも役所にはいる前、昨年の秋の終り頃から、盛んに配給公廳に反對の手紙をいただいております。それをずつと今に及ぶまで——今でも來つつあるのでありますが、それを見ますと、内容的にはまだよくわかつてなかつたせいもありますが、配炭公團やら石油公團等に對する反對はないように思いますが、いかがでありましようか。配給公廳云々としてありますが、それは主として農業方面のいろいろな問題、たとえば肥料というようなものに對しての國民のいろいろなそういう方面からの聲のように、私のところに來ておる投書はそう見えます。名前は配給公廳と書いてありますが、内實はそこにあると思います。が私どもいろいろな人に會いましても聞きます。公團で役所でやつていく、官僚臭いというような面はいろいろ聞きますが、結局はこういうことは何等かの形としてやるには、石炭と石油に關します問題はこういうものもしかたないではないかという程度には、大體私は諒解されているように思うのであります。それで肥料公團の法案が今日なお出ないというのは、今お話のありましたように廣く聲を聽き、またあるいはそれが間違つた判斷に基いておるならば、もつといろいろ説明をするという期間をもつが適當ではないかというようなことも相當考慮されまして、實はこれと一緒に出てもいいはずのものがまだ出ないのでおるものと私は思つております。それから獨占資本と官僚の合作ではないかというような心配もあるようだというお話でありますが、獨占資本は獨占資本の行き方、獨占的な企業の行き方がいけないという獨占禁止法の精神に基いてこれはやるのでありまして、獨占資本家がこれにどう干與するかということが、私どもはちよつと想像つかないのであります。ただ今まで獨占的でありました、たとえば石炭で言えば、日本石炭會社の連中と役人と組んで、そうしてこういうものの中へ閉じこもつて、もつと何と申しまするか、強力に自分たちの威力を發揮しようというのではないかといふ御心配かと思いまするが、それは私はそうは思わないのであります。大體において從業員はそれぞれの配炭公團、石油公團の方に採用はいたしますが、全部そのまま移つて全部がそのまま役人になるのではないのでありまして、これに最も適すると思う立派な人たちを首惱部に置き、そして一般從業員は原則的にここに置くというつもりでありますから、今のお話は私は御心配には及ばぬではないか、そういうふうに思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=83
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084・岡部得三
○岡部委員長 鐵道總局長官がお見えになりましたので、藥師神君に質疑を許します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=84
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085・藥師神岩太郎
○藥師神委員 それでは鐵道總局長官がお見えになりましたから、二、三お尋ねをいたしたいと思います。實は私運輸省の當局に質疑をしようという考えをもつていなかつたのでありますけれども、昨日の委員會で増田運輸相と野村委員との應酬を聽いておりまして、實に隔靴掻痒の感を免かれなかつたわけであります。この問題をもう少しはつきりしておく方が私よいと考えましたので、御迷惑をかけたわけであります。これは現在公團法として頭を出してくる豫想もありませんけれども、相當これは關連性をもつておると考えますのでお伺いをするのでありますが、昨日増田運輸相の御答辯では、日本通運に合同されていないつまり統合會社が二百八十幾つあるというお話であつたのですが、これは日通ないしその他の小運送業者に對しても、巷間各種の非難が浴びせかけられております。それからまた運輸省の職員、從業員の待遇と小運送業方面の待遇との間に非常に開きがある、こういう問題も昨日質疑の中に出てまいりました。それから日本通運は戰時統制會社であつて、つまり國策會社であつて、當然これは解體すべき運命をもつているのではないか、こういう意見も出てきておつたのでありますが、今日の問題でなく、ずつと以前からでも小運送業を運輸省の方へ買收してしまつて、そうして鐵道と一元的に經營するという意見というものは、かなり一方に有力に傳えられておつたのでありますが、今日の段階においてこの點についてはどういうお考えをもつておられますか、最初にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=85
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086・伊能繁次郎
○伊能政府委員 ただいまお尋ねの點は、國内の小運送業を全部政府に吸收して、一元的に政府が行う意思がないかというお尋ねのように拜承いたしましたが、目下のところ政府としてはさような考えはもつておらぬのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=86
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087・藥師神岩太郎
○藥師神委員 この點につきましては、もつておらないと今の御意見でありますから、重ねて私はこの問題を掘り下げる必要はないと考えますが、日本通運は日本通運本來の使命というものは、中央計算會社としての使命であつたのであります。いくらか主要なところにおいては實務の方面にも手を伸べておりましたけれども、大體は中央計算會社としての使命が本質と私は考えておりますが、戰時中においてはこれがいわゆる當時の國策でありますが、これも官僚統制の線に沿うて業者の意思のいかんにかかわらず強制統合をやつて、當時の法令を見てもわかりますが、この法律に基いて業者の意向を斟酌せず、ほとんど強制的に統合をやらせて、日通に併合させたのであります。これは主要なところからだんだん始めていつて、今殘つているところは重要でない面の方が大體殘つておるといつてよいのであります。われわれの方面においても、まず眞つ先に合同を慫慂したのは高松地區であります。それから廣島地區、岡山地區というふうに順次主要な、一面からいえばその經營上一番に利益がある、業者の面からいえば十分採算の立ち得る方面、一面からいえば十分重要な、貨物その他の輻輳する重要なというのでありますけれども、一面からこれをひつくり返してみると、引合わないどころじやない、十分採算のとれる方面を合同させたのであります。これが今言つたように、現在の日本通運、以前の國際通運、そういう時代から中央計算會社としての使命をもつておつたのが、順次今日は實務の方面に戰時中はいりこんで來たのでありますが、これは私はこれがいいとか惡いとかいう議論をしておるのではないのでありまして、これに對して相當世論というものはいろいろな意見が起つておりますが、これに對してどうお取扱いになるのか。一方においては日通は解體するだろう、これは戰時統制會社だから解體するだろう、あるいはもとの日通あるいは地方の統制會社に逆もどりするのではないかというような意見がまちまちに行われておるようでありますが、これに對する當局の方針及び御見解はどういう點にありますか、承りたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=87
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088・伊能繁次郎
○伊能政府委員 わが國の小運送問題につきましては御承知と存じますが、長い沿革をもつておりまして、第一に業者の濫立競爭の段階から、一定の自主的統合時代にはいりましたのが、御承知のように昭和二年であります。その以後いろいろな經過を經まして、御指摘のごとく國際通運が統轄計算會社の使命と同時に、主要な國内各地域における小運送業自體を取扱い、またそれ以外にもいろいろな統轄計算會社、竝びに併せて小運送業を取扱う會社が對立いたしておつたのでありまするが、昭和十二年に小運送業法竝びに日本通運株式會社法が議會の通過を見まして、小運送の合理的な運營を小運送業法の公布竝びに日本通運株式會社の成立によつてはかつたわけであります。必ずしも戰時的な目的のみをもつて今日に至つたのではありません。ただその間、沿革的にはただいま御指摘にございましたように、一部政府が經營の合理化、竝びに戰時中における作業の最も簡易な取扱い、竝びに能率的な取扱いを促進いたしますために慫慂いたしまして、統合した向きもありますが、これは現在におきましても小運送店二百八十六を算します。その點につきましては大體主要な箇所においては、相當な統合をみたことは事實でありますが、今日終戰後におきまして、現在の小運送の實際上の獨占的な形態、殊にいわゆる小口貨物につきましては、日本通運と鐵道との契約的な形式による取扱いの獨占化という問題が、一番大きな問題だらうと存じます。一般貸切扱いに付きましては、自家扱というものが日本通運以外に常に開放されておりますし、また專用、獨占その他におきましてはこれはほとんど自家扱いで、もしくは特殊な運送店が取扱うということによつて、大量の國有鐵道貨物の九〇%以上を占めます一般貸切扱いにつきましては、形式上獨占形態はないのでございますが、いずれにしましても沿革的には、戰時中からそういう態勢にありましたことについて、ただいま御指摘のような、一部に非難もございますので、これにつきましては今後小運送をこういう新しい時代に即應した合理化を促進せしめる意圖に基きまして、將來免許制度にしたい、かように考へております。また日本通運の問題につきましては、その免許制度と睨み合せて、今いかに處理すべきかということについては研究中でございますので、今後日本通運が從來小口その他一部にありましたような獨立形態をとらしむるということはまずなくなるのではないか。かように私どもは考えており、目下研究中であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=88
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089・藥師神岩太郎
○藥師神委員 きのうの稻村委員の意見には、運輸省の職員、從業員の待遇と小運送面の待遇というものが非常に差がある。小運送業方面の待遇というものは非常に遜色がある、こういう質問がありました。それに對して運輸相は最近いろいろ職員組合の活動によつて、同じくらいのレベルに進んできたというような漫然たる御答辯がありました。私はそういうような御答辯、また質疑の方もほんとうの實情がわかつていないと思つております。私はこう見えても專門家であります。私は昨年まで通運の社長をやつておつた者でありますから一番よく知つております。それは何かというと今日日本の鐵道においては、おそらく現在新聞紙の傳えるところによると、百數十億圓の赤字を出すということが傳えられておりますが、昨年の八月ころでもたしか五十億圓くらいの赤字を出しておつたそうであります。
私は政府委員からこれは聽いたのでありますが、それがどれだけになるかしれませんけれども、もし赤字が出てまいりましても、これの埋め合わせ方法は赤字公債によつて補填することもできると私は思います。特別會計においても一般會計から繰入れることもできると思ひますがそれに附屬しております小運送業方面は、政府の官營事業と違つてそういうことはできません。そこに官營と民營との一つの大きなハンデイキヤツプがつく。この點を私は運輸省も何も見逃しておると思います。この點にメスを入れなくてはこの問題は解決せぬのじやないか。運輸省の方の側から見れば、常に小運送の方の側が働かない。小運送の方の能率が上らなくてはいくら鐵道の方があせつてみたところで、輸送の萬全は期し得られないということは、いつも杓子定規で出てくる意見でありますが、運輸省の方では一箇年に百億圓の赤字を出しても職員の待遇はできるが、日本通運はもちろんそうでありますが、地方に散在している五十萬や百萬の統合會社が、そういう赤字を見越して職員、從業員の待遇のできるわけがありません。そしてその收入の上においてどういうことがあるかというと、鏡道の方は運賃の引上げに應じて、順次改善さしていく一つの會計をもつておりますが、民間は自分自身の力において、自分自身の意思においてこれを解決することができない立場にあるのであります。それで鐵道運賃が上げられれば、その次に小運送業者の方の集配料金の公定價格というものもきめているし、あるいは積込料金もきめているし、日通の元受料金も變えてくるし、扱い料金も變えてくる、こういうふうになつてくるのでありまして、民間の經營にかかる小運送方面においては、自主性というものは全然ないのであります。これを見落しているじやないかと私は思います。きのうある委員の指摘されたように、貨車一つ融通を受けるのに二千圓やみの金を拂つたとか、あるいは荷主の方がトラツクで持つて行きながら、二重に運賃をとられたとかいうような、いろいろ枝葉末節な意見が出てきましたけれども、それの原因はどこにあるかというと、根本問題は私が今指摘した點にあるのではないか。小運送業者はその經營面においては、一つも自主性というものをもつておりません。認可制度でありますから、それより以外のものは全部やみでないとやれない、荷主と諒解をつけないとやれない。從つて收支の範圍内においてしか職員、從業員の待遇改善はやれない。運輸省の方は赤字がどんどん出ておつても職員、從業員の待遇の向上はできるが、小運送業者の方は赤字を出しておつたら、一遍に倒れてしまう。このハンデイキヤツプを正常にもどして、小運送業者の能力を十二分に發揮せしむるためには、これは運輸當局が考えるよりほかには方法がないものだと私は思つております。その運輸當局の方でこれを遷延しておれば、倒れてはしかたがないのだから、それが今言つたような不自然な方面にまで手を伸ばしてくる結果になるのではないか。公定價格は十圓のものでも日通の諒解を受けて二十圓もとらなければならない。不正と申しまするか、苦しまぎれと申しまするか、今日遲配欠配によつてリユツクサツクをさげて買出しに行くのと同じであります。會社がつぶれてはしようがないのだが、それと同時に從業員の待遇も改善しなければならない。同じ軒を竝べて仕事をしているのだから、鐵道の方の從業員なり職員なりの待遇が改善されれば、今日辭令がくればその日に皆にわかつてしまう。それと同じに小運送の方も、翌日から待遇の改善ができるような制度というものは運輸省が設けてやらなければならない。運輸省が赤字が出ておつても、今度運賃を引上げるまで、その組織ができるまで放任しておくという今日のやり方で、仕事の面だけ小運送業者にその責任を負わしているというのが、今日の現状だと私は思います。もし私の言うことに違つたところがあれば御説明を承りたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=89
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090・伊能繁次郎
○伊能政府委員 ただいま御指摘になりました點につきましては、既に藥師神さん御承知だらうと存じますが、鐵道運賃のわくと密接不可分な關係にあります小運送料金というものは、いずれも交通が公企業として國民生活の上に密接な關係をもつておりますために、運賃値上げ及び小運送料金の引上げにつきましても、各般の制約を受けているわけでございます。御承知のように鐵道運賃は、大正十年から昨年の三月まで約二十數年間一度も上つたことがございません。昨年の三月一囘と今年の三月に引上げをいたしました。これは貨物運賃でございますが、そういう状態で戰前に比較して四倍強の値上げに相なつております。これに對しまして小運送料金の方は、全般的な平均の資料でございますが、昭和十一年に此較して昨年の秋に自動車運賃が十二倍に引上つております。これに對しまして小運送賃の方は大體十倍程度に値上りに相なつております。もちろんこれはただいま藥師神さんからお話のありましたような、鐵道の作業に結びついた密接不可分の仕事でありまするから、御指摘のように必ずしも常に現在の經濟状態に即應して、適時適切な料金の改訂を行うということが困難であることはお話の通りでございます。また私どもといたしましても、對日本通運の元受契約に關連して、各地方における下請の料金等の引上げ、また構内における各種の作業料金等につきましても、常に適正な價格の保持に努めている次第でございます。また現に關係の筋にこれが適正料金の改訂につきまして、せつかく折衝中でございまするが、最近のような情勢におきましては、單に運輸省だけでこれが決定をみるということが困難なものでございまするから、鐵道について御指摘のような赤字を出しておりまするし、業界にもいろいろ負擔の過重を來さしめている事態だろうと存じます。この點は今後鋭意私ども努力いたしまして、交通事業自體が財政上危殆にひんするようなことのないようにいたしたい。殊に交通關係の小運送事業というものは、公の企業であります。その經營が私企業であつても、その企業自體が公の企業でありますので、それが萎靡沈滯しては、ひいては鐵道事業全體の沈滯を來すことにも相なると思いますので、今後は極力料金運賃等の是正について努力をいたしてまいりたい。かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=90
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091・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私は私が現業におつて經營の面におりますれば、我田引水のようなそしりを免れませんので、私はこの言はなさぬのでありますが、昨年議會に出てまいりますと同時に、私は業界の方も足を洗つて、公平な立場におりますからこの言をあえてするわけでありますが、今申しましたごとく鐵道の方の側から言えば、總體的にいつて、小言の對象になるのは小運送業者であります。ところで今の從業員の待遇の問題にいきますと、一つの公定料金のわくにはめられてしまつているのでありまして、それ以上一歩出れば、物わかりのいい荷主であれば、今日の情勢からみて納得しますけれども、昨日も指摘になつたように、二重にとるとか、持込み料金の問題ではないかと思うのでありますけれども、そういう内容もわからないで今の非難を浴びるわけでありますが、こういう點は運輸省の内輪の會計から算定されましても、おわかりになるように、どうしても鐵道の從業員と小運送の從業員との待遇の問題というものは、竝行して進まなくてはならぬと考えております。この點においてはでき得るような制度を早く當局においてお考えを願つて、鐵道と同じレベルにおいて小運送業が十分なる活動ができ、ひいては國鐵運送の萬全を期するためにも、この問題を解決するように御配慮を願いたい。かように存じております。それと同時に今日再び統制の聲が高くなりまして、業界においてもいろいろなデマが飛び、取越苦勞でもありましようが、不安をもつております。日通の從業員もゼネストをやつて待遇改善を叫んでいるけれども、本社はつぶれるのだぞ、本社はもうあかんのだぞということを鬪爭委員の主たる者が言つているような今日の状態では、ほんとうの仕事はできないと思いますから、この點については機構を改められることはよいと思いますが、時代に即應したような機構にして、將來の方針をはつきりと一日も早く運輸當局が立てられることは、こういう不安を除去する上からいつても、必要な問題であろう。かように考えますから、この點に十二分の御配慮をお願いいたしたいと思います。
最後に一言申し上げておきたいことは、綱紀の問題であります。單に運輸省のみをとやかく言うわけではないのでありますけれども、例にあげるわけでありますが、運輸省においては以前から驛の賣店等は鐵道の從業員の、それも驛長なり何なりのおもだつた人たちの退職後における慰安場所として、あるいは生活の保障場所として獨占されておつたのであります。今日では鐵道弘濟會、あるいは交通公社その他鐵道の購買部というようなものがいろいろありますが、私はこまかい點を指摘しようとは思いません。それは總務長官の方が早くおわかりになつていると考えますから申し上げませんが、この點については運輸省は特別會計であつて、一面から言えば少くとも鐵道の改良費だけは事業資金から生み出すくらいな餘裕をもつた一つの經濟面であつたのでありますが、運輸省における職員のみが、退職後においても特別なる一つの繩張りをもつてやつていくということは、私は今日の官吏制度の上から言つても、疑わしい目をもつて見られる憂いが多いと考えます。私はこの内情を一々指摘しませんけれども、たとえば購買部においても、自由經濟時代においてはそういうことも私はよろしかつたと思いますが、今日の主食その他の乏しき統制面においては、どの程度までおやりになつておるかしりませんが、私の耳には相當ひどいこともはいつております。こういう問題は、やはりそこに轉任すればそこの市民となり、そこの町村民となつて、その配給に甘んじて職員が働くような制度にもつていかなくてはならぬのではないかと私は思つております。鐵道の職員なるがゆえに特別の恩惠を受けるというようなことがあつてはならぬ。田舍の方へ行けば村の一員として住んでいかなければならぬ。町の一員としてやつていかなければならぬ。所によれば、そこにおける單なる驛夫からなり上つたところの田舍の驛長であつても、その出先においては、その方面のあらゆる官衙の高等官連中とやはり同等につき合つて、鐵道の代表として顏出しをしなければならぬような立場におります。こういう問題についても、その驛へ行けばその町村の住民として、同じ待遇において生きていくような方法をとらなくてはならぬのではないかと私は思います。それから鐵道に職を奉じておるために、他の官廳より特別に惠まれた境遇に退職後もおられるという制度は、今日の民主化の建前から言つても、相當改革する餘地がありはしないか。かように私は存じております。これは私は何も攻撃をいたしておるのではないのであります。私が長い間接觸しておりまして、鐵道關係の内部をあまりに知り過ぎておりますがゆえにこの言をなすわけでありますが、これぐらいに止めておきます。長官におかれましても十分にこの點を御考慮に相なりまして、時代にふさわしいような機構と運營方針をお立てになつていただくようにお願いを申し上げて、私の質疑を終りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=91
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092・岡部得三
○岡部委員長 松尾委員にお諮りしますが、大臣は今閣議がありますので、出ておりますが……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=92
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093・細田綱吉
○細田(綱)委員 鐵道總局長官がおられるようですから、こまかいことですが、一、二點伺いたいと思いますが……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=93
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094・岡部得三
○岡部委員長 松尾君よろしうございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=94
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095・松尾トシ
○松尾委員 どうぞ。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=95
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096・細田綱吉
○細田(綱)委員 産業復興あるいは價格調整という問題の基礎をなす食糧問題、及び輸送の點でございます。これは私、思いつきと申しましようか、きわめて事務的なことを伺います。官廳のセクシヨナリズムとでも言いましようか、おれの所は輸送すればよいのだというような考えはあるわけではないだろうが、官吏の本質から、知らず知らず各驛の輸送事務の上にそれが現われておると私は思う。その一つの事例としまして、國民特に都市の勞働者その他俸給生活者等、いわゆる消費者階級が、咽喉から手の出るほど欲しいと思つているあの甘藷の輸送でありますが、茨城縣その他の甘藷生産地の驛へ行きますと、到るところ野積みのまま雨ざらしになつておる。御承知のように、甘藷は雨にさらされるとすぐに腐つてしまう。一面また東京都のシート屋へ來てみますと、あのシートをどんどん小さく切つて何かに加工しておることをよく見る。シートの材料がないかといえば、一面そういう點を見せつけられる。驛に尋ねてみると、シートがないからと言うので、たださえ不足の食糧をかくして腐らせる。長官はこういう點に對して、去年及び一昨年のこの事例を見て、何か對策を立てておられるか。それから例の八高線の事故について思い起すことですが、きわめて若い機關士が運轉をしておつたがためにああした實に悲慘な事故を起した。かつて運輸省は鐵道從業員七萬の馘首を前提とした計畫を立てられて、まあその問題は撤囘された。七萬も餘つておるのなら、人が足りなくて二十歳ぐらいの機關士を使うというような危險をなさらなくても、人の配置ができるのではないか。特に最近第一線から續々と從來の經驗を積んだ諸君が復職をされておる。これらの人的配置について、どういうふうに對策を立てておられるか。なお産業の大動脈である鐵道の軌道が、實に專門家に聽かせると慄然たらざるを得ないほどに荒れておる。いつ何時大脱線するかわからぬほどに、軌條というか、レールというものが常識的に言うならば使用にたえないのをそのままにしておられる。もちろんこれは戰爭中の無理がかくさせたのである。レールなんかはそう簡單に八幡製鐵所から無限に來るわけでもなければ、あるいはアメリカ、ドイツから從來のごとく無限にはいつてくるものでもないから、この點はきわめて御苦心を要しておられることと思うが、だからといつて、數千、數萬の生命を扱うあるいは産業の血液と言われる陸上運送の大動脈が、このままであつていいということにはならない。この點について、どういうふうに對策を講ぜられておるか。この點をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=96
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097・伊能繁次郎
○伊能政府委員 第一の點につきましてお答え申し上げます。御承知のように、昨年は甘藷は例年に見ない大豐作でございました。御指摘のごとく、千葉縣、茨城縣その他の沿線には相當に甘藷が殺到いたしました。私ども農林當局と緊密な連繋をとりまして、極力これが輸送にあたつたのでございます。實績といたしましては、いろいろとかつても議會その他でも御報告を申し上げたのでありますが、はるかに計畫數量を上まわつた數字を輸送いたしたわけであります。しかしながら具體的な個々の驛々等におきましては、ただいま細田さんから御指摘になりましたように、一部下積みになつたものが水だまりをしたというような事態あつたやに私ども聽きとります。御承知のごとく甘藷は原則として有蓋車で送りませんと、荷いたみの非常に早いものですので、できる限り有蓋車で輸送いたしたいと私ども考えておりまするが、何分にも一萬輛近い戰災車輛のうち、かなり多くの部分が有蓋車でございました。現在無蓋車はやや餘裕をもつているが、有蓋車の方面は非常に逼迫していたため、やむを得ず御指摘のようなシートがけの輸送も敢行したような次第であります。殊に千葉、茨城のような近距離は臨時列車で荷いたみのないような急送態勢もとりました。御指摘のように戰時中戰後にわたつてシート、ロープの管理が役所全體としても十分でなかつた。何分にもマニラ麻その他純綿等でつくるロープ、シートの需給は戰時中から非常に逼迫をきわめていたために、これが需給も思うに任せません。もとよりシートの破れたものは隅田川の用品庫、あるいは各鐵道局で加修に全力を盡しております。また相當大きな破損を生じたものは、二枚もしくは三枚繼ぎ合わせて使うような措置も講じ、また商工當局にもお願いして、新品の製造にも極力努力しておりますが、全體として十分な供給が得られているかという點についてはなお疑問がある。この點は今後も極力努力して、來るべき新しき甘藷輸送等には、今後とも萬全を期したいと考えております。
第二點の八高線の事故についてはまことに私ども申譯ない次第と存じます。當時機關士が七萬も餘つているのに、ああいう若年の者を乘務させなくても、しかるべき施策があつたではないかという御質問のようでございますが、現在機關士の過半が二十四歳未滿の職員であります。これは復員した者その他全部を入れての計算であります。その理由は、戰時中二十歳になると、機關士のような重勞働に耐え得る體をもつている者は、ほとんど九七、八%入營してしまうようなことで、まつたくさいの河原のような教育をしておりました。その結果が今日に至つた次第で、私ども終戰後これが再教育に鋭意努力をしておりました。また現に機關士、從事員全般に對する適性檢査、性能檢査等も實施して、今後ああいう事態のないように取計らつて計畫を立てております。また具體的にあの機關士についても、直ちに檢察當局と實地檢証、その他適性檢査を實施したのでありますが、あの線路を運轉するまでに約十一箇月、十七囘の試運轉を實施させておりまして、また事故を起すまでに本運轉として七、八囘やつており、技倆その他適性檢査の上では決して劣つていない者であるが、偶偶勾配區間で非常なカーブにありました際、スピードの節制を誤まつた結果、かたがた副因としていろいろ超滿員であつたり、その他各般の事情がありますが、ああいうことになりました。現在勞働組合等とも篤と協議をいたしまして、全般的な適性檢査のほかに、もちろん再教育もいたしておりますが、機關士の等級制の實施によつて、機關車乘務員が安んじてその職に就き得るような施策についても、實施をしようといたしておる際でありますから、今後ともああいう事態が起りませんように嚴に萬全の措置を講じたいと、かように考えております。
最後に終戰後における鐵道の現状、殊に線路の關係が非常に荒廢しておつて危胎にひんしておるやに聞いているが、これが實情及びに將來の對策をどう考えるかという御質問でありますが、御指摘のごとく戰時中鐵鋼需給が戰爭遂行のために、非常に逼迫をしたのでレールに向ける鋼材の獲得は相當困難をきわめておりました。國有鐵道全般として營業キロ二萬にわたる延長の鐵路の總トン數は、約二百三、四十萬トン、これを三十年の命數があるといたしまして、年間八萬トン程度の軌條交換をしなければ、健全な状態に保持することができないということは、一應常識的に言ひ得るわけでありますが、戰時中からだんだんレールの交換數量が減少いたしまして、終戰直前のごときは二萬トン終戰後においてはそれ以下にもなるという事態で、はなはだ殘念な状態でありますが、ただ一つさいわいにいたしまして、運輸省としてつとに主要本線については、重軌條政策をとつてまいりまして、山陽、東海については五十キロ・レールを敷設する。また東北本線、鹿兒島本線その他の主要幹線には三十七キロ・レールを敷設するという政策をとつてまいりまして、それらの軌道は比較的命數の新しいのが敷設されておりますので、現在特にレールの磨耗のはげしいところだけを交換いたしまして、どうやら事なきを得ていると私どもは存じますが、將來鐵鋼需給の問題は直ちには解決しがたい事態にありますので、單にレールだけを交換することに重點をおくのみではなく、道床の改善、枕木の交換、バラスの充填といつた全體としての軌條構造の強化に全力をあげておりますので、御指摘のごとく非常に危險などうにもならぬ状態だといふようにはないと私どもは確信いたしている次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=97
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098・細田綱吉
○細田(綱)委員 長官のお説明を聽きますと、甘藷の輸送は有蓋車がないので、無蓋車にシートをかけてやつたということであります。私の疑つているのは無蓋車にシートを用いずして輸送しておる。各驛にはシートを用いずして甘藷の滯貨の山が到るところで見られる。これなんです。無蓋車が有蓋車に比べて割合に多いので、無蓋車を使うべく餘儀なくされた。從つてそれに對してはシートを使つたとおつしやつた。鐵道としては全能力をあげてシートを使つたではありましようけれども、しかし全體のパーセンテージから言うとおそらく私の近縣の状況では、半分使つていなかつたのじやないか。これはむろん一々調べて申し上げた數字ではないから、私の想像です。しかしこの食糧の逼迫したときに、ああしたような、それは半分であろうと、あるいはまた三分の一であろうと、一旦雨がかかつたらもう駄目になつてしまう。甘藷は特に駄目になつてしまう。長官の言われるような御説明では、來年もまたこういうことを繰返すのじやないか。御承知のように、農作物の豐作は一年限りじやない。續き出すと二年、三年は必ず續くのですから、來年も豐作だと考えられまするが、今の御説明ではまだ對策が立つていないと申さざるを得ない。まず私は長官に伺いたいことは、終戰後の軍需物資の中から、鐵道はどれだけのシートを當該官廳から受けられたか。私は他の方面にかなり厖大な數字の物が流れたことを知つておる。かくのごときことは一面當該官廳の怠慢もありましようけれども、輸送方面に、かくのごとくシートが逼迫しておるならば、自分でどんどん調査して、飛びついていつて交付を受けなくちやならぬはずだ。ただどこどこの工場で修繕しておりますだけでは心細い。御承知のように、軍の方面ではかなり厖大なシートを内地でも使つておつた。從つてそれが重點的に流用されておるなら、鐵道がかくのごとく國民の必要な食糧である甘藷を雨ざらしにして輸送し、滯貨の山を積んでおくことがなかつたはずであると私は考える。鐵道の方面では、軍需物資方面からどれだけのシートを流用されたか。その方の努力が足りないからかくのごとき結果になつた。あなたのおつしやるように、有蓋車が燒けてしまつて無蓋車を使つた結果です。シートをかけたかけないというのじやない。無蓋車でも結構、もうしようがないのですから、もちろんシートをかければ無蓋車でも輸送に耐えるけれども、そのシートが到るところ使われていない。あれだけ農民が苦勞しながら收穫をあげて供出してくれるものを、鐵道の驛と輸送中に腐らしたのじや、ほんとに鐵道は申譯ない。私の申し上げるのは、その方面の對策がどれだけ立つておるか。既に絶對の數において不足なのだから、それは修繕してもらわなくちやならぬ。もちろん修繕しているのではありましようが、それだけでは足りないのです。だから他の當該官廳から、軍需物資のシートを鐵道はどれだけもらつて、どれだけの對策を立てられたか。その點きわめて怠慢と申しましようか、おれの方はただ輸送しさえすればいいという、おのずから官廳のセクシヨナリズムが出ておつたのではあるまいか。その點を私は伺つておるので、あなたが今おつしやつた有蓋車が燒けたから無蓋車で送つたということを伺つておるのではない。どれだけの對策を立てたのか。あなたのおつしやるように、農林省と緊密な連絡をとつておられたのなら、從つて本年の豐作はおわかりになつておつたはずだ。おわかりになつておる限りは、この方面に對して新しくどれだけの調製をされたか。そして來年再び今年のごとき豐作になつても、どれだけの對策を立てておられるかどうかということを具體的に伺いたい。
それから私も若い機關士が過半數を占めておることを承知しておりますので、今長官に伺つたのです。けれども御承知の通りかつて警視廳の自動車檢査の結果、六八%までが二十歳前後の青年運轉手であつたという統計が、何年前でしたかあつたことを私は記憶しております。若い諸君は何と言つても多少そこに注意が足りない。また冒險的な氣持もあつて、スピードなんか構わぬということもある、だから私が伺うのは、二十歳、二十四歳未滿の機關士でかくのごとき軌道の上を走つておる限りは、將來もこういうことの危險があるのではないか。ただ二十四歳未滿の青年諸君の智能檢査、體格檢査をしただけでは駄目だ。御承知の通りどんどん復員しておられるので、もつと過去において經驗を積まれた機關士をどんどん交替させる必要があるのではないか。そういうことが不可能であるかどうか。言いかえれば、もつと年をとつた、經驗の積んだ機關士をお使いになることが不可能かどうかということを私は伺つておるのであります。その點を重ねてお伺いいたします。
また第三點におきましても、なるほど軌道の全般にわたつて、あるいは枕木の交換、あるいはまたバラスの取換え等々、いろいろのことをはかつておられるというのですが、それはもちろん必要であり、またしなくてはならぬ。しかし問題は私はレールではないかと思う。中央線のある一例ですが、途中でレールが欠けてひどい事故を起したということも私は承知しておる。問題は非常な危險の前にさらされているレールです。だと言つて日本の鋼鐵の需給状況を知つている者は、これを簡單に取換えることも考えられない。從つて何と言つても一時はまた輸入に仰ぐ必要がある。長官は一番御存じですが、從來はアメリカ方面から、また一部はドイツ方面から入れられておつた。そういうような輸入をやはり懇請する必要があるのではないか。レールが到るところ破損して折れて來たということになつたら、ゆゆしい一大事です。今のうちにそうした對策を立つておく必要があるのではなからうか。こういうことをお伺いするのであります。
それからなお附け加えまして、最近連合軍方面から、日本政府に自動車の拂下げをしたとか、するとかいうことを伺つたのですが、こういう拂下げと言いますか、讓り受け自動車は、私どもから考えますれば、極力省營バスの擴張に使つていただきたいと思います。最近の輸送という輸送はやみを普通としておる。かくのごときことでは、いくらここで價格調整公團ができたところでどうにもならない。要は國家の手で少しでも多くのやみを排除した輸送をより完璧ならしめることに對してどういうふうな配車計畫、どういうふうな省營バスの計畫を立てておられるか、この點を附け加えてお聽きしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=98
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099・伊能繁次郎
○伊能政府委員 第一點につきましては、終戰當時どれだけの數量のシートが、私どもの方に配給せられたかという詳細については、ここに資料をもち合わせませんので、明確にお答え申し上げることのできないのははなはだ殘念でありますが、御質問の點につきましては、御承知のごとく荷いたみの早い品物のことでありますから、私ども農林省と緊密な連携をとつて、一日の輸送力にマツチした小運送によるもち込みができうることが一番理想であります。しかしながらこれは農家の方の關係、その他各般の地方的な關係で、そういふ器用なことが現在ではなかなかできないことは、御承知の通りだらうと存じます。そのために一部が驛頭に積み殘される。從つてときに雨がかかつて腐損をするという事態もあつたかと存じますが、昨年はさいぜん申し上げましたごとく、特に甘藷については豐作でございましたのと、また價格の點もあつたと存ずるのでありますが、當初の出荷計畫の倍以上も送つて、私どもとしてはできる限りの努力をいたしたつもりでございますが、何分にもいろいろ御指摘のありましたような不十分な點もあつたろうかと存じます。本年度につきましても、さいぜん各方面え流れたシート等について、十分の獲得ができていないのではないかというような御指摘がございましたが、この點私もよく調べてみたいと思いますが、御指摘のごとくシート全體としては十分でございませんので、あるいはシート掛けなしに短距離の急行貨物として輸送したこともあつたろうかと考えますが、今後においてはああいう季節的な、比較的短期間に輸送を完了しなければならないものでございますので、事前にシート等各鐵道局に渡りますものの集荷統制をできる限り十分にいたしまして、本年の甘藷輸送に對處いたしたいと考えておる次第であります。
第二點の機關士の年齡の問題でございますが、御承知のように戰時中の急速養成として、ああいう弱年の機關士をして運轉せしむるということに至つたのでありまして、今お尋ねの年寄りの機關士を動員する意思はないかというお話でありますが、私が申し上げましたごとく、機關士全體の平均年齡で、その半數が二十四歳未滿、現在國有鐵道におりまする復員その他から歸りました機關士全體を合わせまして、その半數が二十四歳になるということでございますので、新たにこれを教育するということでは非常な歳月を要しますので、どうしても現在の機關助手竝びに弱年の機關士の再教育を行つてこれが事態に對處しなければならない、かように考えておる次第でございます。また一般の鐵道の昨年七萬程度の會員をもつておりました實態につきましては、業務方面また助手竝びに非常に弱年の人々を御承知のように戰時中非常に採用しましたので、その方面の人々がより多く會員になつておつたような次第であります。しかしながら昨年秋勞働組合との話合いによりまして、配置轉換を双方誠意をもつて實施するという點、また當分の間は特殊の勞務者、あるいは技術者を除いては新規採用を見合わせるというようなこと等で、さらにまたさいぜん藥師神さんからも御指摘になられましたように、ごく惡質な者であるとか、不正を働くような者等については管理者、組合側協力して嚴重に處理していくというようなことで、昨年の秋から今日まで、大體月々五千人程度の退職者がございました。それと復員の方の關係は、昨年の夏頃までは相當に歸つて來たのでございますが、秋以後におきましては御承知のごとく、南方の作業隊も一時歸らぬことになりますし、あるいは滿洲、北方方面も一時停頓するということで、二千人程度の歸還者しかないというようなことに相なりまして、續々復員者が歸るという態勢にも相なつておらなかつたものでありますから、一番早い途は、現在の機關車乘務員竝びに機關車關係の人々を再教育をしていくのが急務ではないか。かように考えまして、今いろいろ御指摘をいただきましたような點につきまして、せつかく努力中でございます。
第三の點、關係筋への輸入の懇請につきましては、これは安定本部竝びに貿易廳等にわれわれといたしまして最小限度の數字、これだけは何とか來年度の鐵鋼需給の觀點からぜひ考慮してほしいというような數字を實は出しておるのでありまして、これは日本全體として現在の状況で、もしクレジツトの關係で輸入を許可されるという場合には、何を優先的に輸入するかということについて考慮される筋合かと存じます。私どもとしては御指摘の點について、目下單に安定本部、貿易廳のみならず、直接の監督を受けておりますシヴイル・トランスポテーシヨン・セクシヨンの方へも常に折衝いたして努力いたしております。
最後の輸入自動車の點につきましてはいろいろと示唆に富んだ話を承りまして、私どもの現在の自動車交通が戰後非常に荒廢しておるということについては御指摘の通りであると存じます。これが官民の整備増強につきましては、極力その急速な促進をはかりたい、かように考えておりまして、ただいまお尋ねのように、極力官營で、國營自動車でやれというような御激勵のお言葉がございましたが、既存の業者につきましてもこれが育成助長すべきものは極力育成助長いたしまして、官民の對立相剋をいたさぬような計畫を實は立てておるような次第であります。それでさしあたり國營バスといたしましては、あれを旅客用に改造するということにつきまして、まだ具體的の敷字をもつておりませぬが、國營に代るものといたしまして大都市、東京であるとか、横濱、名古屋、京都、大阪、神戸、これらのものにつきましては約八百五十輛程度のバスを公共機關に配分いたしまして、既に一部は、東京都内におきましても運行を開始しておるというような状態になつております。またトラツクにつきましても、既存の業者との路線の調整、その他につきましては、乏しい自動車輸送力を官民協力して、最高度に發揮せしむる意味において、いたずらに官營だけでやるということも摩擦を誘發することにもなりますので、その邊は自動車交通審議會、あるいはその他各地方的にも、各鐵道局單位に自動車交通關係の會議を開きまして、廣く民意を問いまして、萬全を期しているやうな次第でございますが、御指摘のような點につきましては、まことに御激勵のお言葉をいただきましたので、さらに一層強力にやりたい、かように考へております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=99
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100・岡部得三
○岡部委員長 皆さんにちよつとお諮りいたします。六時まで本委員會を休憩いたしまして、六時からまた質疑を繼續したいと思いますが、いかがでございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=100
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101・岡部得三
○岡部委員長 では休憩いたします。
午後四時五十分休憩
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午後六時二十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=101
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102・岡部得三
○岡部委員長 それでは休憩前に引續き質疑を許します。庄司一郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=102
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103・庄司一郎
○庄司委員 配炭公團法に關し、また本案に關連をいたしましてきわめて簡單に二、三の疑いを質したいと思います。本案の條文の中に、石炭關係の會社の株式を持てるものは本法の公團の役職員に採用されない旨の條文がございますが、これはそういうことになると、全然石炭あるいは亞炭等の體驗や業務上の經驗を持つておりませんほんとうのアマチユアーだけが役職員になれる、こういう意味の條文でございましようか、立法の精神がどこにあるかということを條文的にお尋ねしたいのであります。私の考へでは本公團の中に多分に體驗、經驗等を持つている業者の中からも使用したいものである、それがまた民主主義の線に沿うたものであると考えておるのであります。石炭あるいは亞炭の業者にしましても、株式會社の株式を持たず、獨自の資金をもつて企業を經營している者は採用される可能性があるのでありましようか。またたまたま法人であるがゆえに株式を持つておつたというものは、適任者でありましても採用が相かなわないということにこの案文ではなると思いますが、この點の御見解は如何でありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=103
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104・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 配炭公團法の第十三條によりますると、配炭公團の役員及び職員は石炭、コークスまたは亞炭の生産その他の業務をいたしまする會社の株式を所有いたしましたり、またはこういう會社その他の企業の業務に從事することはできない、一切の利害を持つてはいけない、こういうふうに規定をいたしております。この規定の趣旨は配炭公團の業務が適正にいくための規定でございまして、お話のように從來石炭の生産輸送、その他の關係の會社等に役職員をしておられました方が、たまたまその會社の株式を持つている、そういう方がこの方面に經驗を持つておられるというような場合に、これを起用することができないことになつております。しかしながら一面この規定の趣旨は、あくまで配給公團の業務の嚴正な事務のやり方をしたいという趣旨なのでございます。そういう方々はそういう株式會社の株主であることをやめる、すなわち株を賣却していただくというようなことによつて、これを採用するということのほかいたし方がないかと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=104
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105・庄司一郎
○庄司委員 ただいまの私の質問を繼續いたしまして、第十三條關係、たとえばお父さんが石炭あるいは亞炭等の株式をもつている、その方がたまたまこの役職員に選考とか推薦されるというような場合に、子供にあるいは第三者に株式を讓渡することによつてこの第十三條より免るることができますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=105
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106・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 ただいまおあげになりましたような例の場合には、配給公團の役職員に任命して差支えないと思ひます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=106
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107・庄司一郎
○庄司委員 十三條は明瞭になりました。第二十四條に關しましてお伺いいたします第二十四條の中に「日本亞炭株式會社の清算人に對し、當該會社の所有に屬する施設の全部又は一部を、配炭公團に貸與することを命ずることができる。」こうなつておりますが、日本亞炭株式會社なるものは單にきわめて時間的に、刹那的に短時日の間に名稱は現われましたけれども、未だに裁判登記等を行つた公正な會社ではないと本員は聞いている。從つてこの日本亞炭株式會社なるものが、今清算事務を行つているやのうわさも聽いておりますが、この清算事務を行つている日本亞炭株式會社という、まだ公に登記を濟ましておりませんこの會社に、何らかの施設、あるいは清算中のこの會社の所有に屬しているところの亞炭山であるとか、そういう財産をもつていると政府はお考えの上において、第二十四條に日本亞炭株式會社の清算云云ということを成文化せられんとするものであるや否やをお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=107
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108・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 お話のように日本亞炭株式會社というものは、成立日が淺いのでございます。登記は濟んだそうでございますが、成立の日が新しいので、十分な施設等をまだもつておりません。しかしもしあればこの規定によつて貸與を命ずるという趣旨でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=108
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109・庄司一郎
○庄司委員 全國亞炭連合會の連盟が、十日ほど前に商工省御當局に對して配給上の問題、そのほか各具體的な問題に關し、すなわち輸送、勤勞者の加配米の問題その他に關して、本二十五日の日附をもつて請願書を出されておる。それに對して本日の日附をもつて御答辯を願つておつたそうでありますが、その御答辯を商工省は全國の亞炭連合會の請願に對してなされたのでありましようか。もしなされたとするならば、その内容をタイトルだけでよろしうございますが、ごく簡單にお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=109
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110・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 本日の午後五時、全國亞炭連合會の代表者及び各地方の亞炭鑛業會の代表の方々に對しまして、商工大臣の代理として政務次官から御囘答をいたしました。連合會竝びに各亞炭鑛業會の代表の方々は、二、三の御質問をなさつた後、諒として引取られました。その内容について申し上げますが、その囘答書はおもち歸りになりまして、直ちに各鑛業會の方々に傳達されるそうでありますけれども、各條を申し上げますと、第一の點は、別に亞炭の公團をつくるということをするかどうかという御質問がございました。それに對しましては、現在燃料不足の折から、石炭と亞炭と兩者をにらみ合わせて、配給するという點から、同一の場所でやる方が適當と考えられるので、現在亞炭だけ別に分離する意思はないというお答えをいたしておるのであります。それから要望といたしましては亞炭公團と書いてございますが、ただいまの場合、石炭の配給公團というふうにこちらは解釋しております。それに十分亞炭の經驗をもつておる人間を採用するようにという御要望であります。この點はまことにごもつともな御意見でありまして、石炭については從來から石炭の一元的な配給會社があつたわけでありますけれども、亞炭についてはそういうものは現在までのところございません關係上、新たに出發いたします公團について、十分その方の經驗者がおはいりになつて活躍してもらうことは非常に結構である。ぜひ亞炭業界の方面から適任者と思われる方々を早くお知らせを願いたい、こういうお答えをいたしております。それから次は、もし公團に買取られるようなことになりました場合に、從來からの金融關係のきずなが切られるであらう、そういう點について政府はどういう措置をとるのかという御質問でありましたが、それに對しては、切換えの過渡期に融資が鈍つてしまつて、そのために亞炭の生産が減るようなことがあることは極力防止しなければならないので、具體的の問題について十分混亂の起きないように、融資等の途を講ずるようにいたしたいというのが政府の考え方であるというふうにお答えしたのでございます。それから食糧その他の亞炭生産關係の資材、あるいは物資の配給配當その他は、石炭と同樣に扱うべきであるという項目がございました。これに對してはできるだけ石炭と同じようにしたいと考えて、目下その方向に折衝中であります。なお食糧等の加配については、亞炭の勞働あるいは石炭に關する勞働、あるいはその他の一般の勞働等とのカロリーの消耗とか、その他の點を科學的に檢討した上、訂正すべきものは訂正する。しかし今それを調べつつあるということをお答えしたのです。なおその他の資材につきましては、もちろん石炭と同じようにこの公團で扱いますような優秀な亞炭の生産に關しては、取計いを同樣にやつていきたいと、こういうようにお答えしたのであります。それから公團で買上げるのであるから、これの輸途について支障のないようにせよという御意見でありました。それは公團で取扱つて、石炭と亞炭とをそれぞれ重要な用途に配るのでありまするから、これに對してはもちろんできる限りの配車、その他輸送をなすことは當然のことであると考えるというようにお答えいたしておきました。それから亞炭の價格について改訂をする必要があるだろうという項目がございました。これについては適正なる亞炭の價格を設定することは當然必要であると考える。しかしながら明確な正しい原價計算の資料を御提出願うことが必要であるから、至急その資料を頂戴いたしたいという御返事をしておきました。そのほか價格が改訂されるまでの間、過渡的に現在の價格の二倍くらいのところの價格をつくつてはどうかという御意見であつたようでありまするが、現在物價をきめますには、さしあたりの手段として亞炭だけを目見當で、過渡的措置として二倍にしておくというやり方は採用できないから、やはり原價計算の資料を至急御提出願うようにしてほしい、こういうことをお答えしておいたのであります。大體以上でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=110
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111・庄司一郎
○庄司委員 私は昭和十二年通常議會以來、おそらく毎議會ごとに、本會議において、あるいは豫算總會において、その他の適當なる委員會等において亞炭談義をせざるはなしという、この九箇年間の亞炭談義の議會體驗をもつておるものであります。先ほど香川委員より述べられたように、亞炭が石炭と對比してあらゆる差別待遇を受け、あるいは政府より迫害を受け——迫害とは、石炭山に亞炭山の勞務者を強制的にもつて行かれることであります。私から言えば、非常な壓迫を受け、この亞炭業者がしかもそういう苦しみの中に起ち上つて、浮かび上つてきた。政府の指導奬勵もそのよろしきを得られたでありましようけれども、山口六平君の在職された時代以前において、いかにこの亞炭というものが差別待遇を受けて、その採炭において、あるいは販賣において、配給において苦しめられてきたか、政府はこれを消極的に等閑に付しただけではない、積極的に、ただいま申し上げたのは一つの實例でありますが、その他たくさんあります。業者というものがあらゆる惱みと艱難の中に起ち上つてきたのであります。しかるに今だに、ただいまお述べをいただいたように、加配米の問題においては、石炭山と亞炭山の勤勞者においては差別待遇を受けておる。でき得るだけ石炭と同樣な待遇にしたいという御念願は大變ありがたいことでありますが、いかがでございましようか。石炭山の勞務者と同樣に、亞炭山の勤勞者諸君の加配米の問題、その他地下足袋であるとか、作業衣の配給であるとか、まつたく平等にこれをお取扱いくださる確信をもつて、さような御處置に出てくださることができ得ないものであるか。この一點を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=111
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112・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 過去においていろいろな亞炭に對して加えられた力が不十分なるのみならず、かえつて亞炭の健全な生産を阻害するようなこともあつたというような點につきましては、現在そういう點は毛頭ないということを申し上げておく次第であります。なお御質問の、食糧あるはい地下足袋その他の生産資材の點について念願をして努力しておるのではなくて、どうしてもそうしなければいけないということでありますが、全體といたしましてやはり依然として食糧が足りない現在の段階において、一般の人よりも、たといわずかであろうとも、餘計な加配米を供給するという場合には、他の人の分がそちらにまわることになるのでありますから、これに對して十分に檢討を加えていくということはやむを得ないことと存じますが、石炭と同樣の用途に向けられていくこの亞炭の重要性に鑑みて、從來石炭と同じではないとは申しながら、石炭を除く他の産業に比べますと、石炭に次ぐ有利な加配を受けておるというような状態でございますが、ぜひ石炭と同樣なところまで引き上げていく。そうして石炭と同じ値打のある亞炭の生産を増強するようにという意味で、目下經濟安定本部、農林省方面と折衝をいたしておりますので、それについて先ほど申し上げましたように、加配米の増加という點については、一般の影響もあるので、愼重を期して科學的の調査を至急やらせてほしいというようなことで、それを目下やつております。その結果によりまして訂正されるようにわれわれは努力いたしたいと思います。それから地下足袋につきましては、今後御心配のないように、供給力のある限り、石炭の山と同樣な扱いができるようにしたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=112
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113・庄司一郎
○庄司委員 亞炭關係の勤勞者の加配米が、石炭山より少量である現在の差別待遇を改めて、速やかに石炭山と同樣になるように御善處願いたいと存じます。現在の石炭山より不足なる加配米さえも、府縣によつてはその加配米が亞炭山にいつておりません。おれの縣では米の生産が少いから、政府の命令であつてもやれない、そういうような理由によつて、亞炭採掘勤勞者に對するわずかな加配米が、府縣によつては配給されておりません。こういう事實も商工省の石炭廳においては特に御調査を願いまして、府縣によつて加配米をやつておらない所がありますので、十分再檢討されて、普遍的に加配米が全國二十九縣の亞炭生産縣の勤勞者諸君に配給されるように、せつかく御努力を要望しておきます。
いま一つ著しく差別待遇を受けている亞炭山關係の、石炭山と比べて目につくのは、勤勞者の住宅問題が取上げられていない。これは十年前から私は年々叫んでいる。どこの亞炭山に行つても、勤勞者諸君の惠まれた、住み心地のよい住宅があるか。どこへ行つてみても、おこもさんのいるような掘立小屋です。これは厚生施設の點からいいましても、勤勞者の待遇をよくする面からいいましても、實に殘念なことです。石炭山關係においては、相當資本力をもつている方の御經營の關係もありましようし、あるいは住宅資材等も相當配給されているのでありますが、亞炭關係の山の勤勞者を收容するための住宅資材は、ただいままで配給されておりません。かような石炭が本妻で、亞炭がおめかけさんのような差別待遇であります。私は亞炭業者でも何でもありません。けれども將來のわが日本の燃料危機を救わんがためには、どうしても新興燃料である亞炭によらなければならないという信念の上から、民間においては、亞炭學會という研究團體をつくりまして、過去十箇年の間、あるいは建議案において、あるいは請願において、その他あらゆる面より亞炭の増産、亞炭の熱源によつて、わが國のもろもろの工業を興隆していく、また現在においては、再興していく、その信念で今までやつてまいりました。先ほど香川委員より、私の過去十箇年間に述べたる説の大部分を述べていただきました。大變私の質問の時間が短縮されてありがたいのですが、住宅問題というようなものも、亞炭山についてはひとつ手を打つていただきたい。石炭山の諸君だけが比較的惠れて——あまり石炭山の方も惠れておりませんけれども、亞炭山に至りましてはまことに極端なる差別待遇の状態である。この住宅問題の解決のために、一層の御努力、御配慮を煩わしたいと思うのであります。
地下足袋の問題は心配これなしとの御答辯がありました。大變結構でありますが、現在の亞炭山には配給が少いために、やみで地下足袋を一足百五十圓で買つております。こういう實情をよく御檢討いただきたい。亞炭山に働いておる諸君の中には、一日一人で十三トン掘つておる者がある、十三トン掘るということは、地下足袋が一箇月に少くとも二、三足が必要であるということを意味するのであります。それからより多くの亞炭を増産するために、カーバイトの配給が思わしくございません。こういう實際問題に即應しての石炭廳内の一課である亞炭課等は、一層御奮鬪を願わなければならない。また商工省全體としても、國として一層乏しいところの石炭を補うために、新興燃料である亞炭の増産のために、あらゆる手を打つてほしいのであります。先ほど連合會の諸君に對して御答辯なされた、その御答辯を着々とひとつ形に現わして實現してほしいのであります。過去十箇年の間、私はおそらく二十囘ぐらい亞炭談義を試みております。亞炭に關しては何時間でも申し上げる自信をもつておりますが、聞くならく今夜本會議もあるやのことでありますから、きわめて簡單に亞炭の談義は打切つておきたいと思いますが、この配給公團法案をめぐつていろいろ業者間において不安、焦燥に襲われておる點もあります。第一總裁、副總裁というおえらい方々——東北興業の總裁、副總裁、あるいはその他朝鮮とか、北海道とか、今までいろいろありましたようなそういうおえらいお役目だけは出るけれども、ほんとうに増産してよりよく、公正に配給する、そういう經驗者、體驗者等を一體起用するものであるかどうかというような不安、政府から三千五百カロリ以上のものを買い取られた場合に、殘るものが少いために、從來金融をしてもらい、同時に亞炭をもつて解決しておつたその關係における一つのトラブルが現われている。こういう關係における不安、また政府において御努力を願いたいのは、具體的に言うと、ただいま東北六縣だけで亞炭が二十五萬トンも山や驛に山積され滯貨されております。この亞炭を急速に都内に、あるいは國内に、石炭に代る熱源として必要なる各工場等にこれを分配しなければなりません。御承知の通り亞炭は天日にさらしておきますと、約二十日後において酸化といいましようか、カロリーが激減するのでありまして、二十五萬トンの亞炭が現在滯貨している。これをできるだけ速かなる期間において輸送され、燃料がなくて困つているところの商工業、あるいは官公廳、あるいは家庭燃料としまして、そういう方面に一日も早く用いることができ得るように、篤と運輸省と商工省は御相談の上において、御善處願いたいと思うのであります。これは國家のためであります。國民の幸福のために私は申し上げるのであります。今申し上げたのは東北六縣だけの滯貨量が二十五萬トン、全國においてはおそらくその二倍程度の滯貨があると思うのであります。
それから最後的に申し上げて御答辯も得、また希望として申し上げたいのは、亞炭の中には御承知の通り四千五百カロリーあるいは五千カロリーのものもある。またカロリーの少いものでありましても、それをコーライト化することによつて、六千カロリー程度のものになることは御承知の通りであります。そこで生亞炭を利用厚生する意味において、たとえば東北大學においては亞炭の利用研究會、あるいは全國の連合會内にもさような意味における研究團體があります。そういうまじめな、學究的な、あくまでも研究の結果を企業化して、乏しいわが國の熱源をひとつ補給しようというような信念でやつているまじめな研究團體等には、商工省といたされましても多少の援助、應援があつてしかるべきものであると考えておるのであります。これは單に亞炭だけではない、すべての燃料に關して眞劍に研究している學究的な團體等には、多少の御援助があつてしかるべきものである、こういうふうに考えておりますが、政府の御所見はいかがでございますか。今私の知つている範圍においては、健全なる、まじめなるこの燃料の研究團體というものが、國内に三つ四つあるようでございます。そういう團體等は助成して、あくまでも燃料の合理化、燃料のよりよき研究とその結果が企業化さるるようなことを、私は念願してやまないのでありますが、政府においてもこれは御同感であると思います。しからば何らかの方法でそういう團體を應援していくというような形がほしいと考えておるのであります。他の委員各位もあとお二人質問者があるようでございますから、私はごく簡單に以上のことをもつて私の質疑を終り、また政府の御意見を拜聽いたし、ひとり亞炭に限らず、乏しいわが國の燃料が一層増産され、増送され、そして産業あるいはもろもろの工業の再建の上になくてならない熱源が、圓滑に供給されることを念願してやまないのであります。そういう意味においてただいま申し上げましたようなまじめな研究團體等に對しましては、政府は適當なる援助を與えられ、そしてその研究團體の健全なる發達を願われることが妥當であると考えて、御意見を求める次第であります。これで私の質問は終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=113
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114・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 ただいま亞炭その他燃料關係に携わつておるわれわれが、大いに示唆され、まだ御鞭撻を受けるような御意見を承りまして、われわれもまことに同感でございます。將來の日本の燃料の問題として新しく——幸か不幸か、從來あまりに掘られていなくて、亞炭の資源というものが殘されておつた。これを今後大いに開發をして、日本の乏しい燃料資源に充てていくということは、ぜひ必要なことであると考えるのであります。しかしながらなおその亞炭につきましても、これをお説のようになまのままで使うということは、非常に無駄なことでありまして、できるだけこれを加工して輸送力を援けるというようなことも必要であろうと考えますし、採掘方法等につきましても、もつともつと技術的檢討竝びに進歩をはからせるように指導をいたしていかなければならぬと存じますし、亞炭の企業というものに對してもつと科學性をもたすということは、非常に必要なしかも急速にこれを實施すべきことだと考えております。そこでこれらの研究につきましては全國的に進められておることは承知いたしております、商工省といたしましても、燃料研究所におきまして、亞炭の試驗研究をやはり進めておりますし、あらゆる角度から亞炭の現實の操業に對して科學性を與えるようにするために、優秀なそういう研究團體等については、できるだけの御援助をしなければならないと考えております。ただ現在のところ財政その他の關係から、金錢的な補助はいたしておりません。そういう點につきましても研究者の方々と十分連絡をとりまして、今後必要な場合には、そういう點について考慮するように、また折衝を進めるようにいたしたいと考えます。なおいわゆる基礎研究のほかに、現實に亞炭というものの實際の試驗をしてみせるという、亞炭業者の目に見えるようなところで、實際に亞炭の山と取つ組んで、科學性をもつた仕事の標本となるような試驗もでき得ることならばいたしたいと考えて、今そういう點について研究を進めております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=114
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115・庄司一郎
○庄司委員 よろしうございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=115
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116・岡部得三
○岡部委員長 松尾委員。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=116
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117・松尾トシ
○松尾委員 今度の制度切替にあたりまして、その準備期間といいますか、殘務整理といつたような期間が短かいような樣子で、これはいろいろの層に支障を來すのではないかと思いますが、特に石炭鑛業におきましては、ここ一、二箇月は二十二年度三千萬トンの出炭目標が達成できるかできないかという重大なときであると思います。さいわいにして資材の手當は最高司令部の絶大な援助と、政府の重點的なお骨折りによりまして、あるいはまた關連産業團體の協力によつて順調に進んでおることは私も認めておりますが、臨時物資需給調整法の改正によりまして、物資の割當發券機構が變更されまして、割當發券が一時政府に引揚げられた上、また現品輸入機構が移動するというふうな二重、三重の變革が一時に殺到したというような形であるように思われます。この機構とか制度の變革のよいとか惡いとかいうことは別問題といたしまして、直接間接に多少でもこれに關係のある方は、いろいろ心配をしていらつしやることだと思います。特にこの機構の變革にあたりましては、人事の問題の點が非常に多いのではないかと思います。人というものは將棋や碁の駒みたいに、容易にかえられるものではなし、またたとえかえても、なかなかそのポイントで十分な仕事の成果を發揮するということにならないと思うのです。結局これは一定の期間を要して、その仕事に孰得しなければよい成績が得られないというところにあると私は信じております。この重大時期にあたりまして、政府ではこの改正法案を四月一日から實行するように伺つておりますけれども、私はこの機に第一四半期だけは、從前の制度によつて、石炭の場合だけはおやりになつた方がよろしいのではないかと思うのです。もしこれができない場合には、經濟の基礎的資材に困り、日本の産業再建にまで及ぼすのではないかと案じておるものでございますが、この點におきまして政府はいかがなさいますか、お尋ね申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=117
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118・石井光次郎
○石井國務大臣 お話のように大分日が追つておりますので、四月一日からすぐ實施するということは不可能だと思つております。しかしいつまでも放つたらかしておくわけにもいきませんし、この法案を御通過願いましたら、すぐにも準備にかかりまして、準備のでき次第に始めることにいたしたいと思います。どんなに急ぎましても、四月中に始めるということは困難だと思うております。早くても五月にかかるのではないか、そういうふうに思うております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=118
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119・松尾トシ
○松尾委員 特に重大な石炭の場合は、第一四半期だけで從前通りでよろしいというふうにすることはできないのでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=119
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120・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 ただいまのお話は割當切符制の問題であろうと考えますが、これは形といたしましては、四月一日から政府の割當の形をとります。但しこれも先般の衆議院において可決せられましたように、物資需給調整法の一部改正をいたしまして、政府の代行機關といたしまして、從來の通り産業團體をして割當させることができるというふうになりましたので、少くともこの一、二箇月あるいは三箇月の間は、從來の機構を活かしながら、産業團體の協力を得て、政府の割當切符制度を實施したいというふに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=120
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121・松尾トシ
○松尾委員 配炭公團法の第十一條に「總裁、副總裁、理事及び監事は、主務大臣がこれを任命する。」という規定があります。この立法の建前から申しますと、民主化、社會化するというように申されておりまするが、民主化、社會化ということは、民間から一遍に官僚化すということではないし、またそれでは無理があつていけないのではないかと私は存じます。こういう觀點から、この總裁竝びに副總裁、監事は選考委員會のようなものを設けまして、そこで推薦したもののうちから任命するようにしたらいかがでごさいましようか。また理事は直接いろいろの關係から總裁と關係が深いのでございますから、この諮問委員會に一應諮つた上で總裁がこれを任命するようにいたしたらいかがなものでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=121
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122・石井光次郎
○石井國務大臣 この點は今日稻村委員の御質問のときでありましたか、お答えいたしました通りのお答えをせざるを得ぬのでありますが、皆樣方——皆樣方と申しまするが、各方面のいろいろな意向、御注意進言等は承りますが、これは商工大臣が全責任において任命するということにいたしたいと思うております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=122
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123・松尾トシ
○松尾委員 そういたしますと、從來でもいろいろ非難がございましたごとく、その總裁なら他の役員が天降りであると言つて、なかなか不平が多いのではないかと思いますが、商工大臣のお考えがその邊でありますればそのことはそれにいたしまして、そのほか配炭公團法の第十四條に「配炭公團の役員及び職員は、これを官吏その他の政府職員とする。」とございますが、これは公務員として別に定められる公務員に關する法令に從うようにした方がよろしいのではないかと思うのですが……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=123
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124・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 同しく第十四條の第三項に、配給公團の役員及び職員は官吏に關する一般の法令に從うものとするという規定がございまして、公務員よりもさらに強いと申しますか、公共的な立場をこれによつて守ることになつておるのでございます。公務員以上の、何と申しますか、制限を受けておるという意味でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=124
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125・松尾トシ
○松尾委員 私の考えでは、公共的ということは、官吏であることがよりその責任を全うできるというふうに考えられませんですけれども、それはその邊にいたしまして、次に商工大臣のお話では、運營委員會を安定本部内に置くとおつしやいましたが、これを權威あらしめるように條文化してはいかがなものでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=125
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126・石井光次郎
○石井國務大臣 それも一つの案としては考えられますが、私どもは別にこれに條文を置かずに、諮問委員會を別に置けばいい。それで實際の運營をやつて、そうして形式的に流れぬように、その意向をよく反映せしめるということにあると思いますので、わざわざ條文に入れることは考えなかつたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=126
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127・松尾トシ
○松尾委員 それから公團は、經濟安定本部總務長官に承認を受けまして、命令の定むるところによつて餘剩金を國庫に納入しなければならないようになつております。從つてこの邊が結局官僚的であるというような考えがあつて、金を殘してないような考えから、考えなしにお金を使つてしまうというふうになるのではないかと思いますから、この規定を削除なすつてはいかがと思いますが……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=127
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128・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 配給公團の會計等につきましては、規定もございまするように、會計檢査院の檢査を受けて、經理の適正を期しておるわけでございます。從いましてそういう檢査をいたしまして、適正なる經理をいたしましても、なお剩餘金があるという場合がございまするので、その場合には、この公法人が利益を得るのは本體ではないという意味を明らかにいたしますために、剩餘金はこれを政府に上納する、こういう規定を置いたのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=128
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129・松尾トシ
○松尾委員 ただいまのお話でその邊は了承いたしましたが、それは單なる形式的であるように思われるのですが、いかがでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=129
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130・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 これは別の機會に申し上げたように思いまするが、配給公團の會計は、いわゆる獨立して振出しまして、そのつじつまが合うように經理をいたす方針でございます。大體必要な經費を見て、販賣價格等も物價廳においてきめるわけでございますが、それでもなお餘剩金があつた場合についてのこれは規定でございまするから、實質的に見まして、ただいまの規定は形式的に過ぎるということはございませんので、實質的に會計の内容をよく檢討をいたしまして、販賣價格なり經費なりを檢討いたしました上で、經理を立ててまいるつもりでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=130
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131・松尾トシ
○松尾委員 從來のいきさつを見てみますと、形式的でなくとも、實際的におやりになつていても、その結果がよくないという點を多々聞いておりますけれども、その邊はいかがでございましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=131
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132・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 この上納する一番の目標は、御承知のように配給公團關係の職員の經費は、國庫において支辨することに相なつております。從いまして上納する限度は國庫において支出いたしております。配給公團の人件費及び事務費というものを根本なるものについての額に相當するものを納入するということを狙つておりますが、實質的にもその經理の状況というものは、會計檢査院を通じて内容をこまかに檢討しておくつもりでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=132
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133・松尾トシ
○松尾委員 これは人の問題で、結局は帳面ずらや何かはよくいつているでしようが、官吏の徹底した民主化をはかるということがなくしては、全うできないと思いますから、これはこの邊で止めまして、次にこの法案のもとに問屋制度というようなものも設けるように聞き及んでおりますが、この問屋制度を設けましたときには、結局横流れとか、やみというようなものは、たとえ價格調整公團というようなものができておりましても免れないと思いますが、この點は政府でどういうような處理をおとりになるおつもでありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=133
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134・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 配給公團のうち配炭公團につきましてはこの公團をやつております間は、いわゆる販賣店というものを使わないで、結局消費者に石炭をお渡しする仕事をやるつもりでございます。石油配給公團におきましては、從來の小賣店というものを使つて配給をいたしますが、これは配給等に切符と引換えに販賣することは、別の省令によつて命ぜられておるわけでありますから、それに違反するものがございました場合は、そういう販賣店の指定を取消すということで、配給の適正を期していきたいという考えであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=134
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135・松尾トシ
○松尾委員 その點重々お氣をつけになつていただきたいと思うんです。非常に適正にやつていると思いましても、末端にいきますと、決して中央の意思は通じておらない。そうしてむしろ中央が非難を受けるというようなかつこうにあることは、從來全面的でございましたから……。
それからもう一つこれは各委員の方がお尋ねになつたのでございますけれども、政府はこの配給統制の法案を立案するにあたりましては、配給面ばかりを大變熱心に見ておられるようでありますけれども、結局配給方式というものは、生産を伴わなければ意義はない。生産があつてこそその意義があるものではないかと思うのですが、この配給法案も重要産業の生産力の囘復向上に役立つというような匂いを見せないと、決して一般の方々が信用しないで、從來の供出米のように不完全な、ああいつたものに終つてしまうのではないかと思うのですがいかがでございませうか。私としましては、社會黨でもありますし、この統制ということは結構だと思つておるのです。しかし長いこと民衆は、戰時から敗戰後を通じまして、いろいろの統制というものが失敗に終つたので、統制という二字を聞いただけでも、生産がなければそんなものをやつたつてだめだと、こういうふうにおつしやるものですから、この邊の線をはつきりとここににおわした方がよろしいと思うのですけれども、いかがでせうか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=135
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136・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 配給統制の目的をはつきりいたしますることはもちろん必要でございます。配給統制の基本法でありますところの物資需給調整法には、その點が明確に書いてございます。今日ここにございまするところの配給公團、石油配給公團というものは、配給の一種の手段でございまして、配給を的確ならしめるための手段でごさいます。その大きなる目的は、物資需給調整法にございます。從いまして配給の目的はあの法律にありまするように、産業の囘復及び振興をはかるという點に重點がございまして、そのうちの特に基礎物資でありますところの石炭と石油につきましては、この公團という組織で適正嚴格な配給をしていく、こういうことで兩方合せて一本にお讀み願いたいと考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=136
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137・松尾トシ
○松尾委員 その點におきまして生産の具體策がないという聲が世間に高まつているのですけれども、物資需給調整法の中には、その點もはつきりしているのでございますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=137
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138・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 物資需給調整法の中には、あの條文にございますように、經濟安定本部におきまして産業の囘復及び振興に關する基本的政策を練るということになつておりまして、安定本部において産業の重點性を考え、その重點的な産業を活かすために、囘復するために各種の原材料、資材というものを割當てしていく、こういう建前にいたしております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=138
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139・松尾トシ
○松尾委員 あともう一點殘つているのですが、これは食糧局の方でないとおわかりにならないそうですから、これで私の質問を打切りまして、もし明日食糧局の方がお見えになりましたら、御尋ね申し上げたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=139
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140・松本七郎
○松本(七)委員 殘餘の質疑を延期いたしまして、今日はこれで散會せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=140
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141・岡部得三
○岡部委員長 ただいまの松本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=141
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142・岡部得三
○岡部委員長 それでは本日はこれで散會いたしまして、明日は午前十時より本委員會を開きたいと思いますから御承知を願います。本日はこれで散會いたします。
午後七時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00319470325&spkNum=142
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