1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案(政府提出)(第六八號)
—————————————————————
昭和二十二年三月二十九日(土曜日)午前十一時四十五分開議
出席委員
委員長 岡部得三君
理事 木村公平君 理事 舟崎由之君
理事 松本七郎君
内海安吉君 庄司一郎君
大井直之助君 横田清藏君
寺田榮吉君 稻村順三君
西村榮一君 増井慶太郎君
石崎千松君
三月二十八日委員松尾トシ君及び細田綱吉君辭任につき、その補闕として大矢省三君及び鈴木茂三郎君を議長において選定した。
三月二十九日委員鈴木茂三郎君、小野瀬忠兵衞君、小笹耕作君増井慶太郎君及び豊澤豊雄君辭任につき、その補闕として西村榮一君、舟崎由之君、江川爲信君、石崎千松君及び木下榮君を議長において選定した。
同日委員竹山祐太郎君及び大矢省三君辭任につき、その補闕として増井慶太郎君及び鈴木茂三郎君を議長において選定した。
三月二十九日理事小野瀬忠兵衞君の補闕として舟崎由之君が理事に當選した。
三月二十八日私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案(政府提出)の審査を本委員に付託された。
出席國務大臣
國務大臣 高瀬莊太郎君
出席政府委員
經濟安定本部第四部長 橋井眞君
内閣事務官 椙杜正太郎君
内閣事務官 橋本龍伍君
司法事務官 石井良三君
商工事務官 小山雄二君
━━━━━━━━━━━━━
本日の會議に付した議案
私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=0
-
001・岡部得三
○岡部委員長 會議を開きます。昨日の本會議におきまして、政府より提出されました私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案が、本委員に併託になりました。會期切迫の折、委員各位には大變御苦勞とは存じまするが、さらに一段の御熱意をもつて、本案の審議に當られんことを切望いたします。まず政府より提案理由の説明を聽取いたします。國務大臣高瀬莊太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=1
-
002・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 ただいま課題となりました私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案につきまして、その提案の理由を説明いたします。
わが國の經濟は敗戰の打撃によりまして、いまなお正常な状態に復するに至つておらないのでありますが、この際わが國民經濟を運營する基本方針を確立いたしまして、將來向うべき方向を明らかにいたしますことは、再建整備の途上にある企業に對しまして、その方針を立てさせるためにも、また講和會議を前にいたしまして、國際的信用を確立いたしますためにも、まことに肝要なることと存ずるのであります。
これがために政府は昨年以來愼重に研究を重ねて、獨占禁止準備調査會を設置してその意見を求め、かつ事業家、經濟團體、學者等の意見をも廣く求めまして、この法律案を立案いたしましたのであります
この法律の目的は、第一條に明らかにいたしましたように、私的獨占、不當な取引制限及び不公正な競爭方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、公正かつ自由な競爭を促進し、もつて一般消費者の利益を確保するとともに、國民經濟の民主的で健全な發達を促進することにあるのであります。もちろん現在の異常な状態におきましては、嚴格な統制の制度が必要でありまして、統制法令に基く行爲に對しましては、この法律の適用を除外いたすのでありますが、これは臨時的な措置でありまして、今後經濟の安定するに伴つて、この法律の精神に從つて、公正かつ自由な競爭によつて、民主的で健全な國民經濟の進歩の發展を期すべきものと、思料いたしておるのであります。但し安定後におきましても國營公營の獨占的事業、私企業のうちの鐵道、電氣その他の公益事業、小規模の事業者及び消費が相互扶助の目的で設立する協同組合等につきましては、この法律の適用をいたさないので、それぞれの根據法令に從つて、公共の利益を確保するために特別な考慮をいたすことが適當であると考へております。この法律は、このような例外の場合を除いては、國民經濟の一切の部面に適用せられるものでありまして、以下その概要を御説明いたします。
第一條の規定は、この法律の目的を明かにいたしたものでありまして、公正取引委員會及び裁判所が、實際の事件にあたつて具體的な判斷を下すための根本精神を定めたものとして、重要な意義を有する規定であります。この法律の運用にあたつては、單に取締のための取締に墮することなく、要は國民經濟の繁榮をはかり、國民生活をゆたかにすることにあることを、常に念頭に置かなければならないのであります。
第二條におきましては、私的獨占その他この法律において取締りの對象といたしておる事項等に關する定義を明かにいたしました。この法律による取締りの對象のうち最も根本的なものは、私的獨占及び不當な取引制限であります。私的獨占とは、いわゆるトラスト等の問題であり、不當な取引制限とはいわゆるカルテル等の問題でありまして、兩者は競爭を實質的に制限するに定る經濟的實力をつくりあげるための仕方が異るだけで、その作用乃至影響は異るところがないのであります。要するに、公共の利益に反して、ある物質等の生産。販賣等につきまして、競爭がほとんど行われないようにすることをいうのであります。この法律の實體的規定のうち、この兩者以外の事項に關する規定は、原則としてこの兩者を取締るための補完的規定であると申してよろしいのであります。
第四條におきましては、價格、生産數量、販賣數量等を制限する共同行爲を原則として禁止し、また第五條におきまして、事業者が統制機關を設立しまたはこれに參加することを禁止いたしております。これらは、必要があれば、國家が統制法令を制定して行うべきものでありまして、事業者自らが、こういうことを行うのは適當でないと思料いたすのであります。なほ第六條におきまして、第四條と同じような制限を内容とする國際的の協定等を原則として禁止いたしておりますが、これは昭和二十一年勅令第三十三號第三條の規定を若干變更いたしまして、この法律に移して規定したものであります。
次に、第八條におきまして、不當な事業能力の較差について規定いたしております。不當な事業能力の較差とは、技術的にみて正當な理由がなくて、しかも私的獨占の危險があるような、いたずらに巨大な事業の事業能力を問題とするのでありまして、これに對しましては、公正取引委員會が適當な措置を講ずることができるのであります。
次に、第九條以降の第四章におきましては、會社に關する諸種の禁止制限を規定しております。まず第九條におきましては、持株會社の設立を禁止いたしました。次に第十條におきまして、一般の事業會社が他の會社の株式を保有することの制限について規定いたしております。その要旨を申し述べますれば、まず第一に議決權のない株式については制限をいたしません。
第二に商事會社が子會社をもつことはこれを認めません。第三に原則として親會社が子會社株式の全部を所有する場合にしか子會社をもつことを認めませんが、當該親會社に株式をもつてもらわなければ、子會社の必要とする資金が得られないような場合には、例外として子會社株式の全部をもたない場合にも、子會社をもつことを認めることといたしました。その他、なほ若干の條件を定めておりまして、以上のような條件に從つて、公正取引委員會が、公共の利益に反しないと認めて認可する場合のほか、會社が他の會社の株式を取得することは、これを認めないことといたしました。第十一條におきましては、金融機關の株式保有の制限を規定してをります。銀行、保險、信託等の金融機關が、資金運用の目的で株式を保有することは差支えないのでありますが、その場合におきましても、一會社の株式は、その會社の株式總數の百分の五を超えて所有することは、これを認めないとともに、競爭關係にある同種の金融機關の株式を取得することをも認めないことと致しました。第十二條におきましては、一般の事業會社も、金融機關も、原則として一會社の資本金額の百分の二十五に相當する金額を超えて、その會社の社債をもつことを認めないことといたしました。第十三條には、役員兼任の制限を規定いたしまして、競爭會社相互間の役員兼任を認めないこと等を規定するとともに、一人の兼任し得る最大限を三會社までといたしました。第十四條は、個人が競爭關係にある二以上の會社の株式を所有することを制限いたすとともに、會社の役員が競爭會社の株式をもつことを禁止乃至制限いたしてあります。第十五條におきましては、會社の合併については、すべて公正取引委員會の認可を要することとし、合併が生産、販賣または經營の合理化に役立つ等一定の條件にかなつた場合に認可することといたしております。
第十九條以降の第五章には、不公正な競爭方法について規定してあります。不公正な競爭方法とは、第二條において定義いたしておるのでありますが、たとえばボイコツトをするとか、ダンピングをするとかいうように、他の事業者を壓倒するような手段として用いられる競爭方法をいうのであります。
次に第八章において公正取引委員に關しまして詳細な規定を設けました。この法律は複雜な經濟活動についてその當否を判定いたしまして、違反事實があると認められる場合には、營業の分割を命ずる等、國民の權利に重大な影響を及ぼしますので、特に衆議院の同意を得て任命せられる七人の委員を中心とし、これに事務局を附置した公正取引委員會を設置いたしまして、これがこの法律の運用に當ることといたしました。しかして、公正取引委員會は行政官廳ではありますが、その委員は裁判官と同じように、獨立してその職權を行うのであります。しかして委員會は、その職務を行うために必要がある場合には、強力な調査權限を與えられております。
次に公正取引委員會の審判手續及びこれに對する不服の訴えについて、その概要を説明いたします。まず何人でもこの法律の規定に違反する行爲があると思うときには、公正取引委員會に對してその旨を報告して、適當な措置をとつてもらうことができることにいたし、委員會の窓口を廣く國民に開放いたしました。また公正取引委員會はこのような申立をまたずに、職權で適當な措置をすることもできるのであります。なお委員會の審決のいかんは公共の利益に重大な關係がありますので、關係官廳等は委員會に對して意見を述べ、または事件關係人として審判手續に參加することができることといたしました。また經濟活動は日々行われているのでありますから、緊急な必要があるときには、審判前におきましても、公正取引委員會の申立によつて、裁判所が違反の疑いある行爲の差止めを命ずることができることにいたしますとともに、また反對に事業者の側におきまして、訴訟の判決の下るまでの間、裁判所の定める保證金等を供託して、公正取引委員會の審決の執行を免れることができるようにいたしました。
第九章には、訴訟について規定いたしております。この法律に關する事件は特別の性質を有する關係上、東京高等裁判所に特別の部を設け、公正取引委員會に對する不服の訴え、違反行爲による損害賠償の訴え、違反行爲に關する刑事事件等、この法律に特有な事件は、すべてこの特別の部において一元的に審理裁判をいたすこととし、練達な專門的な裁判官によつて迅速的確に、しかも統一ある裁判をなし得ることを期しております。なおこの法律に違反する罪の主要なものにつきましては、委員會の告發をまつてその罪を論ずることといたしております。
最後にこの法律の實施につきましては、經過規程の定め方に愼重な考慮を要するものが多いのであります。たとへば從來の子會社關係等をいかに始末するかというようなことでありますが、これにつきましては、大體これを命令に讓ることとし、關係方面とも打合せ、愼重に考慮いたしまして、無用の摩擦混亂を生じないようにいたすつもりであります。
以上をもつて私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案につきまして概略の説明をいたしました。何とぞ御審議の上、閉會期切迫の際でありますが、ぜひとも急速に御贊成をいただきまして、成立いたしますようにお願いをいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=2
-
003・岡部得三
○岡部委員長 では午後一時半まで休憩いたします。
午後零時五分休憩
————◇—————
午後三時五十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=3
-
004・岡部得三
○岡部委員長 午前に引續き會議を開きます。質疑に入る前にお諮りいたすことがございます。それは本日理事の小野瀬忠兵衞君が委員を辭任いたされましたので、後任理事の補欠選擧を行わなければなりませんが、これは先例によりまして、委員長指名ということに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=4
-
005・岡部得三
○岡部委員長 御異議なしと認めます。それでは舟崎由之君を後任理事に指名いたします。それでは四時半まで休憩いたします。
午後三時五十四分休憩
————◇—————
午後五時九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=5
-
006・舟崎由之
○舟崎委員長代理 休憩前に引續き會議を開きます。これより私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案に對する質疑を許します。寺田榮吉君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=6
-
007・寺田榮吉
○寺田委員 私はこの私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案につきまして、若干質問をいたしたいと存じます。
まずお尋ねしたいことは、昨日の本會議におきまして安本長官も言われましたように、この法案はアメリカの法案に根據をもつておるというふうに承つたのでありますが、この法案ができた場合のアメリカのその状態と、現在の日本の敗戰のこのみじめな産業界におきまして、財閥が解體され、大きい事業は制限會社となつておる。私はアメリカにおいてこの法案のできたときの事情と、日本でこれから行われようとする事情とは、ほとんど逆の状態であるというふうに感ずるのでありますが、はたしてこれが現在の日本に必要であるかどうか。おそらく何人も現在の日本では、まず生産の増強をしなければならないというように感じておるのではないかと思うのでありますが、この點について政府の御所信をお伺いしたいと存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=7
-
008・橋本龍伍
○橋本政府委員 ただいまの御質問にお答えをいたします。お話のようにアメリカの反トラスト法をもとにし、參考にいたしました。實情におきまして一八九〇年にアメリカで反トラスト法ができましたのは、大體スタンダード・オイルあたりの非常なトラスト的活動に對しまする、アメリカの中西部の農民の非常な反感、つまりアメリカの大企業が主として農民を搾取するというところの反感から、あのシヤーマン法ができたものであるということを伺つております。その後そういつた方面で發展いたしまして、アメリカの反トラスト法體系というものは、合衆國法に約六つぐらいでき上つておるのであります。仰せの通り現在の日本の實情とは大變な隔りであります。この趣旨はこういう意味であります。もちろん現在の状態におきまして、日本にトラスト、カルテルが非常に多いから、現在、ただいまにおいてこれを縛る、こういうふうな意味ではございません。終戰後財閥の解體をいたしまして、それからその他のいろいろな統制協定のようなものも廢止してまいりまして、新しいスタートで日本經濟がこれから起ち上つてまいるわけであります。その場合において、再び前の財閥支配のようなものを繰返さないという意味において、その將來の保障として現在それを立てて、そうして將來の行き方をはつきりさせる、こういうのが本法の目的であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=8
-
009・寺田榮吉
○寺田委員 これが將來長い間の日本産業の根本の方針であるというふうに言われたのでありますが、アメリカにおきましても、一九一八年に貿易振興のためにウエッブ法が出ている。あるいは農産物が非常に下落をしたというときには、カッパー法が出ておる。そうしてこれによつてアンチ・トラスト法の制限を除外されたような例があるのでありますが、日本の將來におきましても、もちろんそういうことはわれわれにとつてまた望ましいことであり、そうなつてもらわなければならぬと思つておるのでありますが、そういう場合にはどういうふうにされるのでありますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=9
-
010・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答えをいたします。ただいまお話のございました點は、日本にとつてもきわめて重要な點であると思います。まず輸出關係の問題でありますが、これは率直に申しまして、本來の建前からいくならば、獨占禁止法はアメリカと同じように、まつたく國内の問題だけを取扱つて、外國の關係につきましては、むしろ大いに團結をして自國の利益をはかるということが筋であるかと思います。ただこれにつきましては、アメリカのような非常に強い國と、現在日本の置かれているような状態とは違うと考えられるわけであります。それで本法の第六條におきましては、貿易に關しましても、制限的な協定をしてはならないということに相なつておりまするが、これはアメリカのように、大體世界經濟を支配している國においては、むしろ自國の利益をはかるために、團結して外國に對しては大いに取引制限をやるという方が有利でもあり、かつそれを押し通すことができるのでありますが、現在日本の置かれている状態から考えますと、貿易に關しましても、もし日本側で團結いたしまして特別に高く、ないしは特別に安くというような方策をとりますことは、實際問題として、相手國に輸入制限をやられるとか、關税引上げをやられるということの種になるだけで、效果のあるような行き途はとうていとれないと考えられるのであります。むしろ貿易に關しましては輸出檢査等をしつかりやりまして、確かな品物をちやんとした値段で出す。そうして各業者はそれぞれ善いしつかりした品物を出すのに、競爭でやつていくというのが日本にとつて殘された唯一の途であり、かつ賢明な方法であるというふうに大體考えておる次第であります。
それから農業關係のカッパー・ボルステッド・アクトに比較して、この獨占禁止法の體系がどうなつておるかという問題につきましては、まつたく同樣に考慮いたしました。この第六章の適用除外の第二十四條に「この法律の規定は、左の各號に掲げる要件を備え、且つ、法律の規定に基いて設立された組合(組合の連合會を含む。)の行爲には、これを適用しない。」ということが書いてございまして、これの一番大きな適用分野というのは日本は農業の關係であります。これにつきましては、今後も大いに農業協同組合の團結力によりまして、外國から安値の穀物がはいつてくる場合、あるいはまた國内における農業改良その他についてもカッパー・ボルステッド・アクトとまつたく同じような立て方で本法の適用を除外しておるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=10
-
011・寺田榮吉
○寺田委員 次にお伺いしたいのは、過日來から各種の公團法が出ておるのでありますが、これによつてほとんど日本の重要物産というものは、個人でこれを生産あるいは取引が自由にできないということになつておるのであります。この獨占禁止法の大體の趣旨は、第一條にもありまするように、自由の競爭によつて取引をさそう、そうして事業活動を盛んにするということになつておるのでありますが、そういう點に關しまして、現在の日本の敗戰状態において、あらゆる事業においてまず生産をしなければならない。この生産の指數をみましても、かえつてだんだん減つてきておるというような現状にあるときに、非常に矛盾した法案でないかということを感ずるのでありますが、これに對するお考をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=11
-
012・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答えいたします。公團法との關係に關しましては、こういうふうに考えておる次第であります。日本の將來の經濟のもつていき方といたしましては、自由經濟を基本にしてやつていく。特別に自由經濟ではうまくいかない特殊の事業について、國營、公營にゆだねるほかは、自由經濟でやつていくということを基本方針に考えておるわけであります。ただ自由經濟でやつていきますためには、物資だとか資金等に關する入手の自由ということが基礎になるわけでありまして、それが成り立たない限り、うまくいかないわけであります。ところが現實の状態は、御承知の通りのようなことでありまして、物資についても資金についても、割當が必要だという状態であります。そのために物資需給調整法及び公團法が出ておるわけであります。この經濟危機を乘り切るためには、やはり統制は嚴重にやつていかなければならぬ。それは現在の状態としてはやむを得ないところだと思います。ただ本法との關係におきましてはつきりさせましたことは、統制というものをいつまでもきりなくやつていくということでなくて、それはあくまでも危機を切り拔けるための、一つの臨時的な體制であるという建前にいたしまして、今まで期限も何もない、一般の統制會社というようなものでやつておつたのを、公團法という法律に基く公團で扱い、この公團は臨時物資需給課整法の動く間、運命をともにいたしまして、なるべく早い時期にこれをやめる。そうしてあとはできるだけ生産が自由になる。こういうような體制でいたしましたので、現在の状態ではやむを得ない。むしろこれの方が秩序正しく、現在の危機の状態においては、できるだけうまく生産をやつていくゆえんであると考えておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=12
-
013・寺田榮吉
○寺田委員 次に、これは大體私的獨占を禁止するということで、國の事業はそのままだということはよくわかるのでありますが、國のやつております事業の中にも、一般消費者に對して、自由競爭の方が最も利益が多いのだということになれば、これはもちろんそうさるべきと思うのであります。殊に煙草事業、これは當然民間においてやるべき事業ではないかというふうに考えておるのであります。これは國がやつておりますために、品質が最も惡くて、最も高い。世界にこういう惡い品質の煙草で、こういう高い煙草はないと考えるのでありますが、こういう事業に對するお考えは、どういうふうに考えられておるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=13
-
014・橋本龍伍
○橋本政府委員 これはむしろ關係大臣からお答えをいただいた方がいいと思いますので、私は建前の問題だけを申し上げておきます。國營關係の事業につきましては、いろいろなものがございまして、御要求がありますしたので明日資料を差上げたいと思つておりますが、大體におきまして、それぞれ二つか三つの體系にわけることができると思います。鐵道のようなものは、巨大な資本を要するというような關係で、日本のような状態においては、私人がやるより國家がやる方がうまくいくという關係がございましよう。煙草等につきましては、財政上の見地から言つて、專賣でやるのが一番財政收入を確保するゆえんであるというような考え方があるのだと思います。ただそれに關しましても、財政收入を確保しつつ、なお煙草の品質を改善するには、どうしたらいいというような御意見は、非常にあると思います。これに關しましては、今後においては特に本法を實施するというようなことになりますれば、政府部内においても常に考え、また議會側においても、お考えの對象になる機會が多いのだと思いますが、現在のところにおきましては鐵道、通信、煙草、それからポツダム勅令に基く貿易の國營、こういつた面の問題の全部にわたつて、大體國がやつていくのがよろしいのだという考えをもつておる次第であります。これについての官制の問題につきましては、早速連絡をいたしまして、關係の方に出ていただきたいと思つておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=14
-
015・寺田榮吉
○寺田委員 それからこの法案によりまして、もう一つはつきりしておらない點がありますために、將來の事業をやつていくことについて、現在でも各産業陣が非常に積極性が失われつつあるということは、事實であろうと思うのであります。たとえば纖維會社なら纖維會社を例にとりましても、これが非常に個人の創意工夫によつて、他の製品を市場から驅逐した。そういう場合に、これは獨占になつてくるのかどうかというような問題に關連しまして、積極性が失われていくというふうに感ずるのでありますが、こういう點について、どういうふうに考えられておりますか。お尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=15
-
016・橋本龍伍
○橋本政府委員 むしろ本法は、生産の面においても、販賣の面においても、積極性を確保するための法律でありまして、優秀な企業が競爭の結果、打ち勝つてますます大きくなつていくということを奬勵するので、それが何らか資本力の大きいものによる不當な拘束等によつて、そういつたふうな自然に優秀なものの、競爭に立つていくのを阻害するのを防ぐ目的なんでありまして、どうもこれが一般的に非常に誤解されております關係で、何かまた新しい官僚統制の組織ができたのぢやないかという感じをもたれておるわけでありますが、その點はむしろ本法の趣旨から言つて、御心配になり過ぎておるのだということをはつきり申し上げることができると思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=16
-
017・寺田榮吉
○寺田委員 そういたしますと、たとえば自動車工業なら自動車工業におきまして、將來ある一會社の自動車が非常に優秀であり、それが低廉であるという場合に、ほかの自動車會社が全部倒れてしまう。日本にその會社一つだけになるという場合には、これは獨占禁止法に違反になるのかどうかということが疑われるのであります。この點を伺います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=17
-
018・橋本龍伍
○橋本政府委員 これははつきり違反に相なりません。私的獨占のところにも書いてございますように、公共の利益に反して、一定の取引分野における競爭を、自主的に制限することが目的なのでありまして、ただいまのお話のように、優秀なものが自然に大きくなつて、それが一軒殘るということは、なかなかむずかしいと思いますが、あれば結構なことであります。ただ多くの場合におきまして、一軒になりますとそこで擔當の利潤を上げようというので、おそらくは獨占價格を設定いたしまして、今まで公共の利益に合致するような形できたのが、公共の利益に反するような形に動きをし始めるおそれは非常にあると思いますが、その場合におきましても、現實はそういうような公共の利益に反するような行動を起してこない限り、事業能力の較差の點におきましても、明瞭にそれは技術的能力によつて正當とされておるわけでありますから、私的獨占を行えば行い得る程度であつても、較差の方でも問題に相ならないわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=18
-
019・寺田榮吉
○寺田委員 この公正取引委員會、これが相當重要な役目をもつように思うのであります。またこの權限も相當大きい權限をもつておるということになるのでありますが、この委員會の運營と、大藏省あるいは商工省、農林省、運輸省というような各省との關係は、どういうふうになるのかお伺いしたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=19
-
020・橋本龍伍
○橋本政府委員 ただいまのお話は非常に重要な問題であると思います。實際問題として、本法が結局うまくいくかどうかということは、一にかかつて公正取引委員會の委員の人選及びその動きがどういうふうになるかという點にあるのでありますが、私はこれに關しましては、内閣總理大臣において立派な人物を推薦され、かつまた衆議院において同意をされるときに、その議會の御判斷が誤りのないものであるということを確信いたしておる次第であります。それで各省との權限の問題に關しましては、これは第一に問題になつてまいりますのは、第六章の適用除外の第二十三條のところで、特定の事業について特別の法律のある場合の適用除外の問題であります。これははつきり適用除外をいたしますれば、その方は、たとえばガス事業法については、かりに全部はずすということになれば、商工大臣が一元的に監督をいたすということに相なるわけであります。それからなおそうでなくて、同じような問題について、二面の監督が當然出てくるという場合がございます。たとえば合併のような場合に、本法に基いて本法の見地からする合併の認可の問題がありまするし、それから別にやはりこれは資金調整法等でもおそらくいろいろ問題が起つてくると思いますが、こういうふうな問題に關しましては、これが現實に動き出しますまでに、よく各省と政府部内で相談をいたしまして、一般の經濟活動を阻害しないで、しかも本法の目的をよく達成するように考えたいと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=20
-
021・寺田榮吉
○寺田委員 公正取引委員會、これの運營は實に將來の日本の事業の活殺を握つておるというふうにも解釋されるのでありますが、それについての委員の身分の制限だとか、いろいろ規定がありまして、相當制限をされております。そういう點について、委員に相當な報酬を與えるということが必要ではないかというふうに私は感ずるのでありますが、そういう規定は見あたらないのでありまして、どうしてもこの委員會は公正にやつてもらわなければいけないという點において、相當な高給を出し、そうして人選をするということが必要ではないかということを感ずるのであります。またこの委員會に、おそらく實際問題としまして種々なる運動が行われるというおそれが相當あると思うのであります。そういうために、委員會を當然公開すべきだと私は感ずるのでありますが、そういう點について、どういうふうに考えておられますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=21
-
022・橋本龍伍
○橋本政府委員 ただいまお話のございました點もごもつともでありまして、初めから考えておる次第であります。これは立場上ほかの仕事に關係することはできぬというような制限を、三十七條あたりにやかましく置いてございますので、お話になりましたように、給與を十分にしなければならないということは、ぜひ必要でありまして、委員の報酬を法律の中で明定したらどうかという御意見もございましたが、どうも法律で一々書くのもどうか。アメリカあたりのは全部法律で書いて、報酬をかえる場合にも一々改正法を出しておりますが、それほどまでにしないでもよからうということで、ただ一般の官吏の俸給令とは別に定めて、よく考えていきたいというので、第三十六條の中に「委員長、委員及び公正取引委員會の職員の報酬は、命令を以てこれを定める。」と書きました趣旨は、一般の官吏の俸給とは別に、よくすることができる。こういう趣旨であります。委員長及び委員の報酬は、議會の同意を得て任命されるという地位から見まして、大體そういつたたちの職員、たとえば最高裁判所の判事とか、いろいろな人達と平均をとりながら考えたいと思つておる次第であります。それからなお公正取引委員會事務局の職員につきましても、特別に考えることといたしたいと思つております。なおお話のありました審議をどういうふうにやつていくかという點に關してでありますが、これは公正取引委員會の審判手續というのは、原則として公開をいたすわけであります。ただ第五十三條に「審判は、これを公開しなければならない。但し、事業者の事業上の祕密を保つため必要があると認めるとき又は公益上必要があると認めるときは、これを公開しないことができる。審判には、速記者を立ち合わせて、陳述を筆記させなければならない。」ということになつておりまして、問題が起りまして、これを審理いたしままときに公開を原則とするわけであります。しかも後で委員會の委員が適當に自分の心證で證據をまとめてはならないというために、これは相當めんどうであると思いますが、全部陳述を筆記させなければならない。こういうことに相なつておるわけであります。ただいよいよ審判手續が終りまして、審決をやるときに、最後の合議につきましては、第五十六條に「公正取引委員會の合議は、これを公開しない。」ということになつております。しかしこの場合におきましても、審決の結果一つの判斷が出ました場合に、特に問題の大きいような場合には、第五十七條の第二項に書いてありますように、「審決書には、小數意見を附記することができる。」七人の中で審議をしたんだが、結論はこれこれであつたけれども、そのうちの三名はこれと反對のこういうふうな意見を述べたということを記することができる。こういうふうにいたしました。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=22
-
023・寺田榮吉
○寺田委員 最後に、よく現在問題になつております事業の多角經營ということでありますが、どういう範圍までが多角であるかそういうことを御説明願いたいのであります。それとまた一つの生産について、どれくらいの割合をもつた場合に、これが獨占であるかということについてお尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=23
-
024・橋本龍伍
○橋本政府委員 多角經營の問題につきましては、多角經營體について獨占禁止法で取締りをすべきものであるという意見が、本法の審議をやります中間の過程において出たことがございます。しかし私ども政府部内の者といたしまして、それは格別獨占禁止の見地からいつて、そう問題にすべき問題じやないと思う。殊に化學工業のごときものは、多角經營を必らずやつておるわけでありまして、そういうふうなことによつて生産が阻害されるだけである、そういうことでいろいろ審議をいたした結果といたしまして、多角經營というのは全然問題にしないことになつております。しかしてまた中間過程で話をいたしましたときにも、そういうわけでありますから、どういうのが多角經營で、どういうようなものを問題にするのかということをつきつめて話したこともございませんので、多角經營の定義というものは從つて考え及びません。それから次にどの程度になると獨占かと、こういうお話がございましたが、これは何も日本全國の生産額の何割占めると獨占であるというようなことは、まつたくそういう線の引き方はないわけであります。あくまでもある種の物資だとかサービスだとか生産供給において、實際上にほかに競爭しようと思つても、できないということになるのが獨占でありまして、これは實質的な問題であります。それでこの獨占が成立つか成立たないかということに關しましては、いくつかの條件があると思います。第一にまいりますのは、輸入の可能性が容易であるかどうかというのが一點であります。それから一つには國内で獨占をやつた、そうしたところがたちまち外國からの輸入で崩れてしまう、こういうのでは獨占が成立たないわけであります。それからまたもう一つは、競爭者が容易に興つてくるかどうか、その競爭者というのは當該物資ないし當該物資の代用品でもよいわけでありますが、たとえば味噌なら味噌の獨占をやつた、ほとんど日本全國抑えてみたけれども、代用味噌が一箇月ぐらいの間に、わずかな生産設備であるためにあつちにもこつちにも興つてきたというのでは、すぐ獨占が崩れてしまうわけであります。この二點が一番大きな獨占が成立つか立たないかにかかつてまいると思います。それからもう一つは、この獨占が全國一圓でなくて、地域的に成立つかどうかという點に關しましては、非常に輸送費のかかるような貨物については、ないし非常に傷みやすくて、遠い輸送が困難であるというようなものについては、地域的な獨占が成立つと思いますけれども、もちのよい品物で、しかも特別に輸送費がかからないというような物でありますれば、たとえ東京で獨占をしてみましても、たちまち大阪あたりから品物がはいつてきて、崩れてしまうということになつて、一向に競爭を實質的に制限するということにならないわけであります。從つて獨占というものが成立つためには、相當程度大きく占めなければ獨占というものは出てこないと考えるわけでありまして、相當程度大きく占める場合においても、今申し上げましたように、外國の競爭であるとか、あるいはまた代用品ないしその品物の新規の競爭者がすぐ出てくるというふうな場合においては、やはり獨占は非常に成立ちにくいということになると思います。これは實際に問題がありましたときに、公正取引委員會の勘案すべきものであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=24
-
025・寺田榮吉
○寺田委員 私の質問はこれで打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=25
-
026・舟崎由之
○舟崎委員長代理 それでは七時まで暫時休憇いたします。
午後五時四十八分休憇
————◇—————
午後七時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=26
-
027・岡部得三
○岡部委員長 休憇前に引續き質疑を繼續いたします。西村榮一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=27
-
028・西村榮一
○西村(榮)委員 經濟安定本部長官にあらましだけお伺いいたします。まず第一にこの私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案でありますが、わが國の戰時經濟の整理がまだ完了しておらない今日、なお將來の産業の性格、骨格が提示されておらない今日において、なぜこういうふうな法案を提出しなければならぬかということについて御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=28
-
029・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 ただいまの御質問ごもつともと思われる點もあります。しかし講和會議を目前に控えておることでありますし、日本の將來の經濟がどういうふうに運營されるべきかということについての大方針は、やはりあらかじめきめておく必要がある。それからまた、これからの經濟再建を一般の事業界の人たちが考えてまいりますについても、やはりこういう大方針につきましては、はつきりきめておく方が適當だろうと考えるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=29
-
030・西村榮一
○西村(榮)委員 まだ整理な完了しておりませんが、日本の産業の中から財閥機構というものがあらゆる角度から否定せられてきております。從來の財閥機構が存在する状態のもとにおいてでも、日本においてはアメリカ、イギリスと比較して、そう著しく巨大な獨占資本というものはなかつたのでありますが、しかも財閥機構というものが否定せられて、その整理が着々進展しているというときに、一體日本の將來の産業の民主化に對しては、どういうふうな効果をあげようとなさるのか、一應大臣の御説明を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=30
-
031・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 日本の財閥というものにつきましては、はたして今度の法案にすべて適合するということになるかどうか、これは十分具體的に、いろいろの場合についてあてはめて考えないとわからないと思います。とにかくこれは解體されまして、日本の將來の經濟民主化についての一つの大きな仕事になるわけであります。從つていままでの財閥に關しましては、問題は消滅いたしますけれども、なおその他の方面の事業、將來起るべきいろいろな事業等につきましては、やはりあらかじめこういうことは、きめておく方がはつきりしてよかろうと考えるのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=31
-
032・西村榮一
○西村(榮)委員 ただいまの御説明がありましたが、この法案のねらつておるところは、經濟の民主化をはかるとともに、不當なる獨占を避けようとするのであります。一應これで經濟の民主化といいますか、企業の民主化は完成するかもしれないが、しかし民主化されたその日本の經濟力というものは、一體どうして育てるかという、育てる方法についてはなんら對策が講ぜられておらない、新しき日本の産業というものをもつていくためには、一應民主化するとともに、その産業を、新しく民主化された經濟というもの育てていくべきところの對策が、同時に講ぜられなければならないのに、昭和二十二年度の豫算案においても、日本の産業育成に對して何らの手がない。またこれに對しては何らの對策もない。そういうふうにして新しい産業を、民主化された後における産業をどうして育てていくか。具體的に申しますると、貿易に對する問題をいかに政府は考えられておるか。同時に經濟企業の民主化された後において、その新しい國際貿易というものが、あるいは國内問題でもそうですが、それらの高能率を發揮して、廉價良品という立場において産業の能率をあげていくために、一體どういうふうな對策をやつていかれるのであるか、この點を伺います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=32
-
033・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 ただいまの御質問の、これから日本の經濟をいかにして育て上げていくべきか、その方法についての御質問だと思います。敗戰後の今日の經濟状況から申しますと、將來の日本經濟を十分に發展せしめていくということにつきましては、いろいろの困難があるということは豫想されるのであります。しかしながらあらゆる手段をつくしまして、經營の合理化をはかり、技術の進歩をはかり、實業教育の振興をはかり、あらゆる手段をつくして努力をいたしますれば、決してこれも不可能ではない。なかなか困難ではありますけれども、決して不可能なこととは考えておりませんので、そういう一つ二つの方法でなく、あらゆる方面から考えまして、育てる方向に努力していくというよりほかはないのじやないかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=33
-
034・西村榮一
○西村(榮)委員 安定本部長官は、日本の將來の産業性格が一體どういうふうなものであるとお考えになつておるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=34
-
035・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 日本の將來の産業の性格がどうあるべきかということについての御質問であると考えます。敗戰の事實によりまして、日本産業の構造はどうしても變革されざるを得ないと思つております。賠償との關連もあり、その他いろいろの事情によつて相當の變化は免れない。何にしても貿易が日本經濟を支えていく上においては、一つの非常に重要な要素であることは當然でありますので、輸出方面の産業はどうしても急速に、最も重要視して考えていかなければならないものであると思います。その他生活必需品方面の工業も急速にやらなければなりません。それらのものに手をつけて相當の目鼻をつけた上、やはり日本としては遠い經濟發展のことも考え、あらゆる方面についての工業の發展を構想していかなければならぬと私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=35
-
036・西村榮一
○西村(榮)委員 長官のただいまの御説明は、私はよく了承いたします。ただ現吉田内閣においても、そのことの十分な認識がないのでありまして、安定本部長官から初めて御意見を承るので、私は明確に承つておきたいと思うが、日本は憲法において戰爭を放棄いたしました。このことは一體經濟にどういうふうな影響をもつてきておるかと申しますならば、憲法において戰爭を放棄した國家は政治國家ではありません。軍備なき政治國家はあり得ないのでありまして、日本の將來の國家の性格は企業國家です。企業國家は産業國家であり、産業國家は平和國家でありまして、もう一遍申しますと、戰爭を放棄して政治國家はない。今吉田内閣のとられんとする政策は、この點を明確にしないで、依然として政治國家的な妄想の下にすべての産業政策をやつている。一體これに對して安定本部長官はどういうふうな御見解をもつておられるか、承りたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=36
-
037・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 ただいま政治國家として現内閣があらゆる施策方面を考えておるというお話でありますが、この點私には十分具體的には諒解できません。私の意見としては、武力を放棄した以上は、國家の進むべき道はお説のような經濟國家、文化國家、こういう方面にむろん進むべきものであろうと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=37
-
038・西村榮一
○西村(榮)委員 大變に明確にお答えを願いまして感謝いたします。先ほど長官は輸出貿易に主力を注いでわが國民經濟を支えていかなければならぬという御意見である。私はこれに對しても贊成であります。ただ問題は、いかにして輸出貿易を盛んならしむるか、それがためにこの法案に關係しておる事項で御質問申し上げたいことは、輸出業者が協定、あるいは將來これによつて今日の貿易國家管理を解かれた後において、輸出業者がここに結合することができるか。第二點は關税の自主權がどこまで許されるか。と申しますことは、今日のわが國の置かれた段階においては、少し先走つた質問であるかも知れませんが、將來われわれ國民が守つていかなければならぬこの法案を審議する上におきまして、一應お伺いしておかなければならぬのであります。よく世間ではわが國の過去における産業がソシアル・ダンピングをもつて世界の市場を荒したというのでありますが、しかし過去の日本經濟は好んでソシアル、ダンピングをやつたものではない。ソシアル・ダンピングをやらなければならないところの國際的な條件が生れ、同時に不當な勞働賃銀をもつていかなければ日本の産業が成立しない。もちろん超過利潤というものもありますが、それは別の角度から見て、産業全體からいつて非常な安い勞働賃銀をもつてしなければ日本の産業が成立しなかつた。科學技術の問題について、原材料の問題についても同樣である。かるがゆえにわが國の過去における企業家といえども、みずから好んでソシアル・ダンピングをなしたのではないのでありまして、わが國の置かれた政治的あるいは經濟的な諸條件が、それをせざるを得なかつた。從つて私がお伺いする第二點は、前段申し上げましたわが國の將來の國家性格というものは、政治國家にあらずして平和國家であり、産業國家であるといたしまするならば、しかも現實の日本の國民經濟というものは、輸出貿易を中心として國民經濟を組立てていかなければならぬといたしまするならば、この關税自主權というものも問題になつてくると思うのでありますが、これに對して長官はどういうふうな見透しをもつておられるか、一應お伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=38
-
039・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 御質問の第一の點は、將來日本が貿易の發展をはかつていくという上におきまして、輸出業者等が團結をしてやつていくというような必要もあるかも知れない。それがこの法律とどういう關係をもつか。こういう御質問ではなかつたかと思います。その點は、この法規によりますと、輸出業者が、團結をしまして、やはりそれによつて競爭を制限するとか、獨占的になるということは、もとよりこれはこの法律で許されておりません。輸出業者の團結についても、やはりそういう意味ではこの法律が適用されるかと考えます。
第二の關税自主權の問題でありますが、これはまだ講和會議も濟んでおりませんので、今どうということはむろんできないことであります。講和會議が濟みまして、日本が完全に主權を囘復する時期は必ずくるだろうと思いますが、そういう時期になりますれば、やはり關税についてもこれは認められることになるだろうと私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=39
-
040・西村榮一
○西村(榮)委員 第二にお尋ねします。第一項の輸出業者の將來の統制團結について、この條項を委員側から修正を出したときに政府はどうなされますか。と申しますのは、アメリカにおいても獨占禁止法の中に輸出業者だけは除外例を布かれておるということを聞いておる。なぜかというと、これは一八八〇年において、初めて獨占禁止法が布かれたときに、大體その目的とするものは、都市の商工業に對して農村の對抗策であつた。かるがゆえに對外的に、輸出業者に對しては大體これに除外例を設けた。もしもアメリカにおいてそのことが除外例を布かれておつたといたしますならば、日本の貿易においても除外例を布いてもいいのではないか、その點率直に御答辯を願いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=40
-
041・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 ただいまの御質問にお答えいたしますが、日本という立場から申しますと、どうしても自由競爭によつて立つていく。獨占等の手段は一切使わない。こういう建前になりますので、お話のようなことはどうしても認められないように思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=41
-
042・西村榮一
○西村(榮)委員 戰爭前のわが國の貿易の任務目的と、戰後における任務目的というものは、これは根本的に違つてきておる。そのことは學者である安本長官は、私から説明するまでもなく、よく御承知であろうと思う。戰前におけるわが國の貿易は輸出が主であつた。しかし戰後におけるわが國の貿易というものは、輸入が主であつて、その支拂の代價の一方法として輸出貿易がなされる。戰後における貿易は、結局輸入代價の支拂という任務しか負わされておらない。しからばその輸入代價を支拂うかどうかということの問題は、國民經濟が維持できるかどうかということが問題でありまして、過去における輸出は商權の擴張と、利潤の獲得であつたと一面言えるのでありますが、今後は生存權の問題、戰後におけるわが國の貿易の目的というものは、國民經濟の生存權の問題であつて、ここにわが國といたしましては、貿易というものが從來のようなまぬるいものとは考えられてはいかない。わが國の生活、經濟の水準は昭和五年に置かれるということでありますが、しからば昭和五年の工業生産力は三三・二%です。しかも今度の昭和二十三年度の大體のそれは、農業の工業化も入れて、五二%にこれを上げていかなければ國民經濟は維持できない。しかもそれは輸出貿易に根幹を置いておる。同時に先ほど申し上げましたように、輸出貿易による利潤の獲得あるいは國力の膨脹のための發展という任務ではなしに、國民經濟の生存權の問題であるといたしますれば、この貿易は民族の死活の問題であると申し上げても、これは過言ではないのであります。ところが現在の日本の状態からまいりまして、一體貿易が十分に輸入貿易の代價を支拂い得る諸條件が具えられておるかどうかということになると、これは全然逆です。通貨の面から申しますると、インフレーションというものが進展していく過程においては、生産コストが非常に高くなつてまいります。從つてその生産コストが非常に高くなつておる現實において、しかも將來輸入される品物と輸出する品物との爲替の比率の相違というものを考えてみまするならば、同時に先ほど申しましたように、日本民族の死活の問題がここにあると思う。現在の状態において輸出貿易がやつていけるかどうかということも、率直に言えば、將來爲替の比率はどの程度できめられるのであるかということ。第二點においては、現在のインフレーション下において貿易がやつていけるのであるか、通貨の不安定と高騰の下において、生産コストが高く、國家財政が壓迫されて、國民生活は壓迫されておる。それが惡循環になつて、また再び高い段階における生産の價格というものが、上つてくるという時において、いかにして輸出貿易の問題を打開されるのか。いわゆる爲替比率の問題と、それからインフレーションからくるところの爲替コストとの問題をどう解決するか。その點の御意見をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=42
-
043・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 現在の貿易の性格が、戰前の性格と非常に違つておるという點については、まつたく御同感であります。今日の日本の經濟は非常な窮乏の經濟でありまして、どうしても外國から物をもつてこなければやつていけないという、非常に窮乏した状況であります。從つて輸入の問題が最も重大であります。しかし將來の問題として考えますと、必ずしも今日の状況が永久の日本の貿易の性格を示すとは決して考えられないと思いますが、現在の状況においては確かにお説の通りではないかと思います。從つて輸入が日本國民の生活維持の上からいきまして非常に重大な問題である。これをどうして解決していくかという問題についての御心配でありますが、私も同樣非常に心配しておるものでありまして、いかにしてこれを解決するが。せつかく今就任早々でありまするが、これを一つの新しい最初の重要な課題として研究を進めております。何とかひとつ方法を立てまして、一遍になかなかいきませんでも、少しづつでもその方向に進み得るように努力をいたしたいと考えておるわけであります。爲替のレート等の問題は、まだこれはまつたく未定のようでありまして、どういうようになりますか見當が私にもつきません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=43
-
044・西村榮一
○西村(榮)委員 國内の生産物が非常に高くなる。しかし爲替の比率の決定いかんによつては、外國へ安くそれを出さなければならないという状態が出てくると思ひます。これは先ほど申したように、日本の自主的な、任意的な意思によつて輸出貿易をするのじやありません。輸入代金の支拂として物を外へ出す。しかもその國内に生産されておる物は、國内の内から計算すれば非常に高くなる。しかも外國に出るときは適當な値段で世界的水準で出ていく。日本だけはインフレーションで高くなる。この差はどうして埋められるか。インフレーション下における輸出貿易というものをどう解決するか。その二點であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=44
-
045・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 インフレーションが非常に激化いたしまして、その結果日本の爲替が下る。外國には安くなつて日本では非常に高い。これは事實であります。これはドイツの大インフレーションのときに實驗されたことであります。そういう結果になりますと、外國に品物を賣りましても日本經濟にとつては決して有利な事情ではありません。從いましてこの問題を解決するには、何としてもインフレーションの方を解決するよりほか方法がない。インフレーションの解決にあらゆる手段を盡してやつて、一方輸出貿易の方をうんとやる。この再建でいくよりほか方法がないだろうと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=45
-
046・西村榮一
○西村(榮)委員 具體的に言えば安本長官はインフレーションをどう克服していこうという御方針ですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=46
-
047・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 結局非常に困難な仕事であります。抽象的には通貨政策、生産増加でこれを克服するのだ、こういうことになると思います。具體的にどれをどうしていくかということになりますと、なかなかむずかしい問題でありますが、現在やられております通貨政策、それから生産對策についての集中政策等もとより非常に必要なことだと思つております。非常に大切な問題であると思いますが、ただこれが今まで十分の效果を現わしておらない點もあると思います。それをあくまで徹底的にやりまして、効果をあげるということをやりたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=47
-
048・西村榮一
○西村(榮)委員 私は今日は安本長官と議論をする意思はない、かつまたこの獨占禁止法を、政府の要望に從いまして早く仕上げたいという協力的な立場をとつているのであります。かるがゆえにインフレーションの問題については深く申し上げません。しかし今の安本長官の御答辯はきわめて不滿足です。ということは昨日——本朝の新聞において既にマッカーサー司令官から、日本政府に對して公式にインフレーション克服に努力せよと命令された。今おつしやつたことはきわめてお坐なりです。私は三月から始まる危機は少くとも、今後半年間に非常なスピードをもつて爆發點に達してくる。こういう見透しをもつておる。そこでインフレーションの原因は何かということは、結局財政不均衡、赤字財政、生産の不振だと言われている。それ以上別に根本的な原因はあります。しかしそういう問題は、先刻申し上げたように議論する意思はもたないので、別の機會に申したい。新任早々の安本長官、大藏大臣相協力して、このインフレーション問題を解決するにもつと具體的な方針と、氣魄とをもつてもらいたい。そこでもつと率直にお伺いしたい。現在のインフレーションは三月をすぎ四月にならうとしているが、きわめて惡性インフレーションの段階に入つている諸現象を現わしている。これを解決する方法は、古い通貨と取組むか、あるいはこれを肩すかしして別な體制をもつてくるか、從來のような、お座なりな答辯、方針ではなく、もつと安本長官として明確な方針と、この深刻な民族の危機を招來するインフレーションの問題についてどうするかという對策が、もつと具體的にあつてしかるべきだと思う。一應承りたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=48
-
049・高瀬莊太郎
○高瀬國務大臣 先ほど御答辯申し上げましたようなわけであります。具體的には通貨の方面につきましては、いろいろの施策が現在行われております。これを一つ極力ほんとうに嚴格に徹底して、實行していくことが必要であります。生産の方面についても同じであります。これを徹底的に實行していきたい、また統制方面、配給方面につきましても、今までのやり方について不十分な點がずいぶんあると私思つております。それらを徹底したい、これをまず私は考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=49
-
050・西村榮一
○西村(榮)委員 私は安本長官と議論をするつもりではありませんから、今日は御意見だけを承つておきます。しかし諒承しかねる點もありますが、ただ時間も遲いようでありますし、他の大臣も出席せられぬそうでありますから、私は安定本部長定に對する質問はこれで打切りますが、大臣でなくても結構ですから、事務當局の方に一言お伺いしたいと思います。この私的獨占禁止法の中の生命保險竝びに銀行、信託の現在の許可制は一體どうされるか。これは許可制になつているが獨占です。預金者竝びに保險契約者、信託預金者の利益を保護するという名目によつて獨占的に經營されているが、これは一體將來どうなるのか。
第二點は、それらの生命保險竝びに銀行信託が、從來の型を破つて認可せられ、何らの統制も加えず、今安本長が御説明になつた國家計畫經濟の線に何ら沿わずして、これが自由企業として許される場合においては、ここに企業獨占の逃げ道が生れてくるではないか。銀行竝びに信託の預金を通じて、ここで他の株を所有してもよいということになつておりますが、一體そういうふうな關連はどうなるか。長官でなくて事務の方で結構であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=50
-
051・橋本龍伍
○橋本政府委員 お答え申し上げます。ただいま銀行、保險等の金融業についてお話がございましたが、この銀行、保險のような金融業は、公衆の利害關係が深いので、特に例として適當でございますが、公衆的な理由で認可制度にしておつて、その認可の場合に數が少い。從つて認可の反射的な結果として、獨占的状態が起るというようなものは、ほかにもいろいろございます。これは銀行を例にして考えてみましても、よくわかるわけでありますが、どうしても十分な監査をいたしまして、これならば大丈夫だと思われる銀行でないと、認可はできないわけであります。その結果といたしまして、反射的に銀行は數が少いというふうなことは、むしろ別な公益的な理由から出てきた結果として、やむを得ないところでありまして、そういうふうなたちのものにつきましては、銀行法だとか、保險業法等で、一般の自由競爭の企業に認められない嚴重な監督をしてあるわけであります。たとえば重役につきましても、兼任をする場合には一々認可が要ることになりまして、この間も調べてみましたが、銀行の重役で兼任を許可されておるのは一つもありません。從來も例がないようであります。そういうふうな式でありまして、これは認可制度の結果として、數の少くなるのはやむを得ない。その代りそれについては別に非常に嚴重な監督を置いておる。こういうことに相なりますので、そういう式のものはほかにも多々あると思いますが、むしろその行き方が、大體においてはよろしいと考えられるわけであります。ただその場合、特殊の事業法規による監督が不十分であるから、もつと嚴重な監督をしなければならないというふうなことは考えられる場合もありましようし、それからまた、銀行だとか保險なんかになりますと、これはどうしてもそういう式に考えざるを得ませんが、ものによりましては、むしろそうした認可制度、をやめてしまつたらいいじやないかと思われるものもあるでありましようし、それからまた、認可のやり方をもう少し考え直したらいいじやないかという問題もあると思われる次第であります。これは政府自身も反省しなくちやなりませんし、それからまた今後公正取引委員會も、課題として考えなければならぬ問題でありますし、また議會側においても、これはよほどお考えになつていただいて、將來の課題として順次檢討して行くべきものだと思います。それで一番問題のあるのは、銀行保險なんかよりも、むしろ府縣令でやつておる警察許可の問題などというものが非常に問題があるわけであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=51
-
052・西村榮一
○西村(榮)委員 委員長にお伺いしますが、今日は商工大臣、大藏大臣の出席はだめですか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=52
-
053・岡部得三
○岡部委員長 今日は大藏大臣も所用があつておられませんし、明日はどちらも早朝から御出席願えるように連絡をとつてあります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=53
-
054・西村榮一
○西村(榮)委員 それでは私は安定本部に對する質問をこれで打切りまして、商工省、大藏省に對する質問は明日にいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=54
-
055・岡部得三
○岡部委員長 では皆樣にお諮りいたしますが、本日はこの程度にいたしまして、次會は明日午前十時より開會いたしたいと思いますが、いかがでございましようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=55
-
056・岡部得三
○岡部委員長 それでは本日はこれにて散會いたします。
午後八時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212018X00619470329&spkNum=56
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。