1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
船員法を改正する法律案(政府提出)(第一二號)
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昭和二十二年三月十五日(土曜日)午後一時三十九分開議
出席委員
委員長 中川重春君
理事 馬越晃君 理事 米窪滿亮君
栗原大島太郎君 近藤鶴代君
三浦寅之助君 森崎了三君
中村嘉壽君 佃良一君
奧村又十郎君 松原一彦君
三月十三日委員鈴木明良君辭任につきその補闕として中村嘉壽君を議長において選定した。
出席國務大臣
運輸大臣 増田甲子七君
出席政府委員
司法事務官 横田正俊君
厚生事務官 石丸敬次君
運輸事務官 有田喜一君
運輸事務官 大久保武雄君
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本日の會議に付した議案
船員法を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=0
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001・中川重春
○中川委員長 これより會議を開きます。船員法を改正する法律案を議題といたします。まず政府の説明を求めます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=1
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002・増田甲子七
○増田國務大臣 船員法を改正する法律案の提出理由は、既に本會議において御説明申し上げました通り、新憲法の施行に伴い、新たに船員の給料、勞働時間、休息その他の勞働條件に關する基準を定めますとともに、船員の勞働關係及び船内の紀律を、終戰後の新事態に即應させることにより、船員の生活の安定をはかり、もつてわが海運再建の一助たらしめんとするものでありますが、次に主要な改正點につきまして具體的に御説明申し上げたいと存じます。
新法案は、十四章百四十七條よりなつておりますが、第一章總則において、船員法の適用範圍を擴張いたしまして、總トン數五トン未滿の船舶、湖、川又は港のみを航行する船舶及び三十トン未滿の漁船を除いて、すべての船舶に乘り組む船員に適用することとし、又新たに乘組員以外に豫備員をも船員法の適用の對象といたしました。
第二章船長の職務及び權限におきましては、從來商法中にありました船長の公法的義務の規定を船員法中に移しまして、統一的に規定するほか、現行法の規定を踏襲したのであります。
第三章紀律におきましては、新憲法の精神に基きまして、いわゆる海員の強制乘船の制度を廢止するほか、懲戒の種類中から監禁を削除する等、人權尊重の見地に立脚して所要の改正を施しました。
第四章以下は、前二章が海上航行の安全保持の規定であるのに對しまして、海上勞働の保護規定ともいわれるべきものであり、國際勞働條約の内容を採用するとともに、勞働基準法案と相竝んで新憲法の要請である「健康で文化的な最低限度の生活」を船員に對し保障せんとするものであります。右の勞働保護規定のうち、新たに規定せられました主要の點を申し述べますと、まず雇入契約の締結に際しましては、勞働條件を明示するものとするほか、雇入契約に關し種々の保護規定を設けますとともに、船員が契約の解除をなし得る場合を擴張いたしました。また給料その他の報酬に關しましては、その支拂方法に關し從來より一層厚い保護を與えまた必要ある場合は、最低給料を定め得ることとするほか、歩合給について一定額の保障制度を設けました。
勞働時間及び休日につきましては、八時間勞働を原則とし、停泊中においては、原則として週休日を與えることにより保護をはかるほか、勞働時間制の實施を可能ならしめるのに必要な定員を乘り組ませるべき旨規定しております。
有給休暇は、海上勞働の特異性に鑑み最も重要な規定でありますので、勞働基準法案の休暇日數を遥かに上廻つた日數の休暇及び報酬を與えることとしております。
食料及び衞生に關しましては、法定の食料表により食料を支給すべき船舶の範圍、醫師を乘り組ませるべき船舶の範圍、醫藥品等を備え置くべき船舶の範國を擴張いたしまするとともに、健康證明書をすべての乘組員に所持せしめて、船員の健康の増進に遺憾なきを期しているのであります。
次に船員の最低年齡は、現行法通り一般の者については十五才、石炭を運搬しまたはたくというような重勞働に從事する者については、さらに最低年齡を十八年と定めてありますが、今囘の改正にあたり、從來勅令によつて規定されておりました例外は、絶對にこれを認めないことにいたしました。また女子の船員につきましても、年少船員とともに夜間勞働を禁止するほか、勞働基準法案に準じた保護規定を設けてあります。
災害補償の額は、船員が後顧の憂なく職務に從事し得るように、從來の扶助額に比し畫期的に増額いたしましたが、一面船舶所有者の負擔を輕減せしめるため、これらの補償を保險によつてカバーすることとし、目下船員保險法の改正の準備を進めておりますが、成案を得次第今議會に上程される豫定であります。
右のほか就業規則、監督制度等につきましても、概ね勞働基準法案の趣旨と同じく、必要な改正をいたしております。
最後に本法案の立案の過程を申しますと、本會議でも御説明申し上げました通り、本法案は、船主及び船員の代表者を初めとし、關係各方面の學識經險者からなる臨時船員法令審議會が、東京、神戸を初め全國主要港で開かれました公聽會の意見を參考として、約半年にわたり愼重審議を重ね、成案を得ました答申を骨子としているのでありまして、最も民主的方法によつて立案されたものであります。何とぞ御審議の上御贊成あらんことを希望する次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=2
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003・中川重春
○中川委員長 次いで質疑に入ります。米窪滿亮君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=3
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004・米窪滿亮
○米窪委員 ただいま運輸大臣から御説明があつた船員法の改正法律案は、名前は改正でありますけれども、その内容を承りますと現行法の非常なる變革になり、殊に船員に對する相當手厚い保護規定が盛られておるのでありまして、この點は實質的には新しい海上勞働者保護法と言つてもいい。陸上の勞働基準法と竝び得る晝期的な重要法案と思うのであります。その意味においてこの委員會の任務はきわめて重要だと思いまするが、以下私は時間をお借りして質問を申し上げたいのですが、政府委員各位の御都合も考えまして、大體私の質問の要點をあらかじめ申し上げた方が、都合がよくはないかと思うのであります。そこで法案自體について若干の御質問を申し上げ、ほかに運輸大臣に對しては、船舶運營會に關する質疑、さらにこの議會に上程されるということが豫想されておる船舶公廳と運營會との關係、勞働省の問題、こういつた問題について、主として運輸大臣に御質問を申し上げたい。さらに先ほど運輸大臣からもお話がありました、船員保險法と本法との關係及び船員保險法の内容に關する質疑については、主として厚生省の政府委員の方に御質問申し上げたい。さらに最後に船員法改正委員會において重大なる附帶決議となつているところの、いわゆる船員の二重刑罰に關する問題については、司法省の政府委員にお尋ねしたいと思いまするが、運輸大臣がしばらくおいでになれそうですから、本法の質疑から始めます。
本法の第一條第二項におきまして、この改正法律案の適用範圍を限定しておりまするが、その第三號において總トン數三十トン未滿の漁船には適用しないということがきめられております。漁船の場合これを除外することの趣旨はよくわかりますが、これを三十トンというところをもつて一線を引いたという、その理由を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=4
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005・大久保武雄
○大久保政府委員 漁船を三十トンで區切りましたのは、大體三十トン未滿の漁船は、沿岸の小規模な漁業に從事するものが多くございまして、現行法でもこの線に區切りをつけておりますので、この限界以内は、比較的自分の家庭と職場との間を往復しているという、一般の陸の勞働體系に近接している。こういう關係から省いたような次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=5
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006・米窪滿亮
○米窪委員 私としてはこの三十トンで一線を引いたのは少し高過ぎると思うのですが、それは議論になりますから、いずれ討論の場合に申し上げたいと思います。
次の質問は、第六條におきまして船員の勞働關係についても適用するといつて、勞働基準法の條章をここで引例しております。このうちの第百十七條ないし百十九條及び百二十一條というのは、勞働基準法においては罰則になつておりまするが、御承知の通り船員法においては、第百二十二條以下は相當峻嚴なる罰があるのでありまするが、この罰則以外においても勞働基準法の罰則を適用しなければならないというその根據、あるいは二重になつているところもあるのじやないかと考えまするが、その點立案者の意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=6
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007・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまの御質問の第六條の關係は、勞働基準法の勞働憲章に相當する海陸共通に適用して差支えないような條文を、船員に適用する關係から起つてくるのでありまして、その罰則につきましても、百十七條、百十八條、百十九條と、勞働基準法の諸規定は、いずれも勞働憲章に相當する部分に對する罰則に相なつております。それから百二十一條は使用者に關する責任を規定してございまするが、これはやはり、この勞働憲章に相當する各條の違反に關する使用者の責任を規定した次第でございまして、船員法の罰則とだぶるという點はないと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=7
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008・米窪滿亮
○米窪委員 一、二の御質問を申し上げます、字句の表現の點ですから、この機會に明確にしておきたいのですが、第三十一條の後段の方で、「この場合には、雇入契約は、その無效の部分については、この法律で定める基準に達する勞働條件を定めたものとみなす」とあります。これに該當する勞働基準法の第十三條において「無效となつた部分は、この法律で定める基準による」とありまして、勞働基準法の表現の方が非常に明確であります。船員法の方では「この法律で定める基準に達する勞働條件を定めたものとみなす」とありまして、これは御説明を伺えばそれでいいかもしれませんが、勞働基準法のような表現方法にしたらどうかということを御質問申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=8
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009・大久保武雄
○大久保政府委員 表現の違いはありますが、内容は全然同一であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=9
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010・米窪滿亮
○米窪委員 次は、第三十六條、三十七條におきまして、雇入契約の一般提示と公認の問題をきめております。これはいわゆる船長の公法的義務をここできめているのであります。また第四十條には、船長は船舶所有者に代つてこれこれのときには船員を解雇するということになつております。この條文によると、船舶所有者は解雇することができるとなつておりますが、事實において船長の認定によつて解雇するので、實際は船長がやつている。私はこの三つの條項から見まして、これはいかに船長の公法的義務とは言いながら、また海上勤務者の特殊性があるとは言いながら、船長の社會的存在がこれによつて非常に不鮮明になる。船長ははたして勞働者であるか。あるいは使用者であるかという議論が、從來の議會においてたびたび繰り返された。おそらくそういう議論が出てくるのは、このいわゆる船長の公法的義務の點で出てくると思うのであります。私はいやしくも船員法の改正法律案が、勞働基準法と竝んで船員保護を目的とする法律案である以上は、殊に第一條において船長も勞働者である、いわゆる船員である、こういうようなことを明確にきめている以上、船長の社會的立場が不鮮明になるような、そういう取扱い方は何とか改善する必要はないか。この點を一つお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=10
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011・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまお尋ねの三十六條、三十七條、四十條に關連いたしまして、船長の行います行爲は、使用者としての性格はあくまで船舶所有者にあるわけでございますが、この船長の行います行爲は、船舶の長としましてその秩序の維持者であり、また勞働者としての立場から、海員に對する諸般の勞働保護の萬全を期する、こういう意味から船長が行う行爲でございまして、これは船長が雇主として行う行爲ではない。かように解釋をしておる次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=11
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012・米窪滿亮
○米窪委員 多分そういう御説明があると思つておつたのですが、その御説明だけでは私の質問の點が少しも、進展してないのであります。これは別の機會において、船長がぬし的存在であるがごとき誤解を受けないように、船長の社會人としての存在が、その勞働者であるかあるいは船主であるか、こういうことの、誤解の起らないように、今後しかるべき機會に、一つはつきりと適當な改正をされんことを希望して次の質問に移ります。
第四十條の第一項の第三號において、「海員が船長の指定する時までに船舶に乘り込まないとき。」こういうのがあります。そのときは解雇される。ところがこれはいろいろの事情がありまして、例えば汽車の故障であるとか、いろいろその他乘組船員が思わざる不測の原因によつて、船長が指定した時までに船に乘れない場合があると思いまするから、この條項の上に「ゆえなく」という表現を加えた方がよくないか、立案者はおそらくそれには御贊成であろうと思うのですが、「ゆえなく船長の指定する時までに船舶に乘り込まないとき」と修正されることが、本法の改正の趣旨に副うのぢやないか、こう考えるのでありますがその點をお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=12
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013・大久保武雄
○大久保政府委員 立法の精神は御説の通りであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=13
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014・米窪滿亮
○米窪委員 同じく第四十條の第四號において、「海員が著しく船内の秩序をみだしたとき。」ということと、第六號の「前各號の場合を除いて、やむを得ない事由のあるとき。」こういうのがありまするから、一括して御質問申し上げます。第四號の「著しく」というのは、何か具體的にそれの内容、限界、そういうものをお考えになつておるのか、それは一々の事實に對して言うのか、その邊のことと、それから第六號の「やむを得ない事由のあるとき。」というのは、大體一、二のこういう場合だというケースをお伺いできれば結構と思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=14
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015・大久保武雄
○大久保政府委員 御質問の第四號の「著しく船内の秩序をみだしたとき。」と申しますのは、これは社會的に見ましても、勞働關係から見ましても船舶の安全の上から申しましても輕視できない場合でありまして、しかもこの二號におきましても、職務を怠つた場合を、「船員に重大なる過失のあつたとき。」と並べて書いてありますように、重大なる過失にも相當すべき大きなる影響をもつた行爲、こういうふうに考えておる次第であります。
それから第六號の關係の「やむを得ない事由のあるとき」と申しますと、一例を擧げますれば、たとえば不況の際における船舶の繋船、こういう場合はこれにあてはまる一例であらうか、かように存じております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=15
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016・米窪滿亮
○米窪委員 次の質問は第五十五條の給料渡しのところですが、これによると、但書に「やむを得ない事由のあるときは、他の職員に手渡させることができる」。この點は私の經驗によると、海員界の今までの宿弊でありまして、たとへば一つの例を申しますと、水夫長、火夫長というものがあります。今では名前が變つておりますが、この水夫の取締りをしておる者、あるいは火夫の監督をしておる者が、同じく船員でありながら、一括して部下の給料をもらう、この場合に、船員が家族へ金を送るとかいうような關係で前借りをするのであります。その前貸しをするときに、一割、あるいは二割という非常な高利をつけて貸すのでありまして、この高利は給料を渡す時に天引するのであります。この惡弊があつたために、船員が非常に困つた。これは最近においてその弊害はなくなつてきたのですが、まだまだ絶無とは言えないのであります。そういう海員界の實情のところにもつてきて、この第五十五條でもつて、やむを得ざるときには他の職員に手渡さすことができるというような但書を入れておくことは、この宿弊を矯正する意味において、これははなはだ遺憾であると思うのでありますが、これを一つお伺いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=16
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017・大久保武雄
○大久保政府委員 給料を渡す場合における諸般の弊害につきましては、たとえば米窪委員から御指摘になつたような事情があつたのでありまして、ここにあります「やむを得ない事由のあるとき」と申しますのは、やはり船長が一船の秩序の維持者といたしまして、やむを得ないと認定し、また他の職員についても船長がこれを定めるわけであります。船長は一船の統卒者としての關係から、今後さような弊害が起らないように仕向けてゆくような方向に、運營していきたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=17
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018・中川重春
○中川委員長 米窪君に申し上げます。大臣は討論にはいると、そつちにおいでにならなければならぬそうでありますから、運輸大臣に對する質問をさきにお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=18
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019・米窪滿亮
○米窪委員 それでは法案に對する質疑はここで打切りまして、大臣に對してお伺い申し上げます。
今日日本の船舶の大部分は、船舶運營會が徴用しておる。また船員も船舶運營會が徴用しておりますが、これは戰時中の戰時管理令によつて、そういうことになつておるのであります。この管理令は三月三十一日限り失效するということを聞いておりますが、その後における船舶運營會に對する監督官廳としての運輸省は、どういう工合におやりになるのか。もちろんこれは監督官廳としての關係も考慮しなければならぬと思いますが、一方において續行船、あるいは沈沒した船を引揚げる引場船については、船舶公廳に關する法案が出てくると思います。この法案の内容について新聞紙の傳えるところによりますと、政府がその公廳をつくつて、それに出資をして、完成した曉には、それを政府と船主が協議をして運營會の方に貸付けるというように、われわれから見ると船舶公有というか、そういつた前提ではないでしようが、それに類似の形態をとり、社會化するように見える。これは動機が社會化でなくとも結構ですが、見ると社會化のように見える。そういう工合に船舶の建造、あるいは船舶の引揚げ、修理については、そういつた形の機構をつくろうとしておるのに對して、運營する側は、やはりこれと同調して、依然として國家管理という方向を維持してゆくのであるか、あるいは最近盛んに論議されておるところの民營——この戰時管理令が失效になると同時に、各徴用された船をまた元の船主へ返すのであるか。この點は相當重大であると思いますから、大臣の御説明をお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=19
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020・増田甲子七
○増田國務大臣 米窪委員の御質疑にお答え申し上げます。船舶管理令はお説の通り今月末をもつて期限が滿つることになつておりますが、御承知の通り、百トン以上の船舶は、終戰後は連合軍の管理下に屬しておりまして、從つて船舶管理ということは連合軍の委託をうけて政府が管理しておるこういうような建前になつておりますから、何らかの法令がやはりなくてはならぬ。管理が實は存續するのでありますから、その法令等につきましては、今關係筋と極力折衝中でございますから、さよう御諒承願います。それから今囘船舶公團というものができて、お説の通りに船の建造とか改造とか、あるいは大修理というようなことはその公團がやりまして、そうして船主と公團とで共有する、こういうことに相なつております。これは結果的には社會化ではないかというお説でありますが、結果的には社會化かもしれませんが、公團をつくるゆえんのものは、船主等の經濟力をもつてしては、とうていこれらの建造なり改造なり、大修理等ができませんものですから、從つて政府の投資による公團が事業主體となつてこれらの行爲をするわけでありますから、社會化かもしれませんが、そういうひそみにならつて運營會も社會化あるいは國家管理でやつたらどうかという御意見には、直ちには贊成しかねるのでございまして、やはり私どもは海運業というものは自營體制に早く戻すべきものとこういうふうに思います。ただ戻す際にも、現在の船舶運營會の職員等の職業問題等について脅威を與えないように、この點は愼重に考究して善處したい、こう存じておりますからさよう御諒承願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=20
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021・米窪滿亮
○米窪委員 大臣のただいまの御説明によつて、船舶運營については、言いかえますと、現在船舶運營會がもつておる船を、なるべく早い機會に民營に移すというお考えがわかつた。私は決してイデオロギーで申し上げるのではない。現實の問題で申し上げるのですが、たとえば船主經濟から言いまして、石炭なら石炭、あるいはその他の荷物を運ぶのに、今日の運賃とこれに要する經費の對照を見ますと、とうてい自營では引合わない。たとえて言いまするならば、飯塚と阪神の間の石炭を陸上で運ぶのに、諸掛經費が五十九圓七十四錢。ところが海上の場合においては若松大阪間の經費が八十八圓四十七錢、こういう工合に海上の場合は非常に經費がかかる。しかるに運賃においては若松大阪間、石炭が二十八圓。こういうのでこれが陸上の場合においては飯塚神戸が二十圓七十錢。運賃もなるほど海上輸送の方が高いのですが、諸掛は遙かに陸上よりも高い。この差額、すなわちトンあたり約六十圓というものは、押え方によつて違うかもしれませんが、私の計算によると六十圓のマイナスになつておる。從來運營會によつてこれを扱つていた場合においては、いわゆる運賃差額補給金という形で國家が補給しておりまするが、これは一たん民營になつた場合においては、一應はこういつた政府の補助金というものはなくなるものと私は考えております。あるいは運輸省の方針が、民營になつた場合にも依然として運賃差額補給金を支給するものであるかどうか、そのへんのことはわかりませんが、いずれにせよこういう工合に考えてみますると、採算はとれない、採算のとれないという條件をそのままにしておいて、民營に移したところで船主は成立つていかぬ。この點は政府は民營に移すという前提條件としては、はたして今日運營會に與えておる補給金を民營の場合に船主に渡すべきものであるかどうか。そうでないというと、名前だけ民營々々と言つても、結局船主經濟からいえば成立たないということになります。
それから一方今日の船主の状態は、非常に弱小船主が濫立しておりまして、そういう船主の状態では、とうてい強力なるところの海運というものは——強力でなくても、安心できる海運というものを運營することはできないじやないか、こう考えております。そこでこれははなはだ古い統計ですが、昭和十四年の九月現在で、日本の船主が二百四十社のうち、百社というものは一ぱいきりもつておらない、いわゆる一ぱい船主と稱する、所有船僅かに一隻というものが二百四十社のうち百社まであるという現状であります。戰爭でもつて戰前六百三十萬トンという日本の總トン數の船舶が、今日は約それの五分の一くらいで百二十萬トンになつて、しかもそのうち半分は大修理を要しなければ動けないという船で、いわゆる長期繋船になつておりますが、殘りの稼働船、働き得る船舶は六十萬トン。この六十萬トンに對して郵船、商船その他の會社が、私の調査によると百四十社もある。これらのものが目白押しに竝んで、しかも帳簿だけの財産きりもたないというような船主、現實に船を一ぱいももたないという船主がこの中にあるのであります。こういうような船主經濟の事情から見て、今日先ほど申し上げた運賃と諸掛との懸隔が非常に大きいということ、それからこういつた群小船主が竝んでおるというこの二つの事實から見て、運輸當局はこれに對して企業合同でも進めるお考えがあるか、あるいはこの採算のとれないマイナスの船主には、依然として運營會に與えておつたように差額補給金をおやりになる施針であるか。民營になる際の態度、この二つの點についてお尋ねいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=21
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022・有田喜一
○有田政府委員 ただいま大臣の答えました通り、日本の海運のあり方というものは、やはり國際海運として伸びるために民營を基調とすべきものと思うのであります。ただ米窪委員も指摘されましたごとく、今日の現状におきましては、海上運賃と原價との非常な開きのために、民營が非常に困難だということは考えられます。しかし私どもは、ともかく今申しましたような海運の將來に對する基調を骨子といたしまして、そうして今日の船主の可及的な能力の發揮、要するに運航能率の向上ということに邁進いたさなければならぬ。從いまして同じく民營と申しましても、直ちにこれを完全な民營にしようということは、現在の段階では考えられないのであります。やはり一つの運航統制を守りながら、船主がその能率をあげ得るような態勢に進めていきたいと思うのであります。また運賃につきましても、これまた運賃政策と言いますか、物價政策によつていろいろと制肘をうくべきものと考えられるのでありますが、ともかくその間の調整につきましては、十分考慮していきたいと思うのであります。最後に今日の船主で船をもたぬ者もある。また一ぱい船主のごとき非常に船の少いものもできているが、それをどうするかというお尋ねでありますが、これは私は自然に統合せらるべきものと考えます。必ずしも現在の船主をそのままにするというようにも考えておりません。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=22
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023・米窪滿亮
○米窪委員 ただいま海運總局長官の御説明がありましたが、もう一度繰返してお尋ねしたい點は、この點はきわめて重大ですから明らかにして置きたいと思う。民營に移す前に、何らかの形體で今日の關係を持續してゆこうというお考えであるかのごとくに伺つたのでありますが、これは具體的にもつと言いますと、今日の船舶運營會の内部の機構その他については、改善すべき點のあることはわれわれも認めておりますが、直ちに民營に、船舶運營會の徴用しておる船を返さずに、當分の間運營會の式に、たとえばシー・エム・エム・シーという名前を附けてやるというお考えのようですが、そういつた形でその内容を變えても、運營會というようなああいう機構を殘して置かれるつもりであるか、そうでない場合は、運賃差を運營會に與えたと同じような關係において、民營に返した船主にお與えになるつもりであるか、その點を明確にしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=23
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024・有田喜一
○有田政府委員 その點が實は關係筋と目下いろいろと折衝を重ね、また先方においてもいろいろと研究を重ねておる問題でありまして、今直ちにかくするんだということは、遺憾ながら申しかねる實情であります。しかし大體想像されるごとく、今日の段階におきまして運營の統制ということはこれは必要であります。さきに言いましたように、同時に船主をして大いに能率を發揮させるような態勢にもつていかなければならぬということも考え、今その線に沿いながら、次の段階に進みたいとかように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=24
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025・米窪滿亮
○米窪委員 はなはだ物足らぬですけれども、これ以上はお困りのようですから、この點はこの程度で質問を打切ります。
次は勞働省のことについてお尋ねしたいですが、最近勞働省というものが設立されるということを承つております。これは新聞の傳えるところによると、報道區々でよくわかりませんが、船員勞働に關する行政も勞働省に移す、鑛山の方も移す、あらゆる勞働者に關する問題は勞働者に移すということを傳えられております。また一方船員勞働は依然として現在の海運總局に殘すという説もあるのでありますが、これに對して運輸大臣としては、船員勞働の特殊性、あるいは船員の勞働條件の問題であるとか、そういう監督行政、船員の職業に關する行政、そういうものと切り離して、船員勞働行政だけを移す。もつとひらたく言えば、海運總局の船員局の扱つておるものだけをもつていかれたときに、その他の局で扱つておる船員に關する行政との一貫性を缺くという點において、はなはだ不便であるから、それは現在のままのものとして置きたいという御意向であるのか、あるいはいつそのこと勞働省にもつていつた方がいいというお考えであるのか、運轉大臣の御意見を伺います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=25
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026・増田甲子七
○増田國務大臣 お答え申し上げます。我が國海運勞働界の大先輩米窪議員の御質問でありますが、私はこういう方面はきわめて經驗の乏しいものでございますが、一般勞働に關する勞働行政については、相當私も年數をかけて勉強しておるのであります。御説のごとく、海運勞働は陸上勞働に比べますと性質も非常に異つた特殊性をもつておるというように聞いておりますし、また現に私も海上勞働者のことも多少は船に乘つてみてわかつております。全然土の上を離れた一つの運命共同體といいますか、危險共同體というようなシンボルである、單なる勞働だけを切り離して勞働省が所管するということによつて、海運を立派に運營できないというふうに私は感じております。船長と船員の關係、あるいは船員相互の關係、勞働を離れた紀律の關係というようなものが一體となつて、勞働條件の維持改善という行政と一緒にやらなければどうしてもならない、こう存じております。從つて新設せらるべき勞働省に、そつくり…實は一體となるべきものをある程度切り離しまして、海上勞働に關する分だけは切り離して、規律の關係、船員と船長の關係、その他海運勞働者に附帶しておる特殊性から、勤勞條件の維持改善だけを切り離して、向うの所管にしただけでは、うまく海運が運營できない。こういうように私は確信しておりまして、關係方面ともみずからも折衝し、また事務當局等をしていろいろ折衝せしめつつありますが、現在の状況では方々に海上勞働の特殊性というものを諒解せしめつつあるというふうに感ぜられますから、その點御諒承願います。結局私といたましては、どうしても勞働省に海運勞働を全然所管させるということは面白くないという見解は、終始同一でございます。ただいやしくも勞働省ができて、陸上勞働のことは知つているが、海上勞働のことはまるつきり存じませんといつたことでは、これは勞働省なり勞働大臣としても心苦しかろうとこう存ずるわけであります。海上勞働の按配はこういうふうになつておるということくらいは知らなくてはならない。大局觀察くらいはできなくてはならないものと感じております。その間における連絡徹底というような範圍のものを勞働省に設けてもろうといつたような運びになるように諒解を得つつありますが、しかしまだはつきりした、具體的にどうなるこうなるということは申し上げかねますが、そんなふうな方向に向いておりますから、さよう御諒承を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=26
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027・米窪滿亮
○米窪委員 このことは總理大臣と厚生大臣の御意見を伺いたいと思つておるのでありますが、運輸大臣の御意見ははつきりしたのでありまして、その他兩大臣に對する質問は保留して、委員長にしかるべく、適當な機會において御囘答を賜わるようにお手配を願いたいと思います。運輸大臣に對する質問はこの程度に止めまして、後また船員法の法案の質問をいたしたいと思います。委員長にお願い申し上げたいのでありますが、もう一分ばかりお暇をいただきまして、ほかの委員の方の御質問を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=27
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028・中川重春
○中川委員長 それでは中村さん運輸大臣に御質問はありませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=28
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029・中村嘉壽
○中村(嘉)委員 私は水産と船の關係について御質問申し上げたいと思つておりますので、水産局長にお願いしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=29
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030・松原一彦
○松原委員 その間にちよつとお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=30
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031・中川重春
○中川委員長 どうぞ……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=31
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032・松原一彦
○松原委員 私は質問するのに少し準備が足りませんから後にいたしますが、一點だけ、お尋ねしたい。第三十條に「勞働關係に關する爭議行爲は、船舶が外國の港にあるとき、又はその爭議行爲に因り人命若しくは船舶に危險が及ぶようなときは、これをしてはならない。」とありますが、航海中の勞働爭議は常識として行わないことになつておるように私は聞いておるのであります。航海中は一番危險でありますから、航海中に勞働爭議が起つては船長も困るし、乘客も困る、これはもつと押し擴めて、外國の港にあるときばかりでなく、航海中というような意味のことをお入れになる意思はないか。航海中に勞働爭議を起してもいいかどうか、その邊の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=32
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033・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまのお尋ねは、航海中の勞働爭議のことでありますが、勞働爭議を禁止しまする精神は、やはり安全というものに關連した、この一線において勞働爭議行爲の制限が行われる。そこで航海中におきましても、やはり船舶の安全、ひいては人命、船舶に危險を及ぼす、そういう際におきましては、爭議行爲はできない。こういうふうに解釋をいたしております。ここにもありますように。あくまで爭議行爲により人命もしくは船舶に危險を及ぼす、この線によつて判定をしてまいりたい、かように存じます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=33
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034・中川重春
○中川委員長 司法省の關係について、米窪君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=34
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035・米窪滿亮
○米窪委員 私は改正案の條文について若干質疑が殘つていますが、司法省の政府委員の御都合があるようでございますから、司法省の政府委員の方に質問することをお許し願います。
實は船員が船を操作する上において、船員の過失あるいは責任に歸すべき原因の事故、そういうものもあるでしようが、あるいは船體の構造が不完全だとか、舵機の故障であるとか、あるいは航路標識が不完全であるとか、そういつた直ちに船長あるいは水先人、その他船員の責任に歸すべからざる原因からして衝突、坐礁、そういつた海難事故が起ることはよくあることですが、問題はその點でなしに、そういつた問題が起つたときに、今までは海員懲戒法、最近の改正によつて海難懲戒法ということになるそうでありますが、そういう法律によつて當事者は處罰されるのであります。これはやはり行政處分という解釋から一歩も出ないのでありますが、これは地方海難審判所あるいは中央海難審判所という上級の裁判所があつて、これによつて船員は一應處罰を受ける。ところが、これは當然民事問題が伴うのでありまして、すなわち該當船主はそれによつて損害を受けるのであるから、殊に衝突の場合は、相手側があるので、それに對して海事審判所で不利な裁決を受けた側の船主は、これに對して上告の手續をとるのであります。それがために船長あるいはその他の船員は、その裁判の期間はおりてこなければならぬ。すなわち失業しなければならぬ。これはやむを得ないが、なるべくそういう失業期間を少くして、そして早く復職ができるようにするということが、今囘船員法を改正した目的の一つだらうと考えますが、この場合、從來は海事審判所で取扱う前に刑事裁判、いわゆる刑事訴訟法でもつて一般の司法裁判でこれを取扱うというような場合がよくある。司法省の政府委員の方には、はなだ失禮かもしれぬが、そういう海難事故については、やはり專門の者が取扱うことが實情をよく知ることになるのですが、それが海事審判の裁決がある前に、刑事裁判の方でこれを取扱うことになると、ままその事實の把握が不完全なために、あるいは間違つた裁判が行われ、あるいは荷酷なるところの刑罰が行われるという危險が、從來たびたびあつたのであります。そこで私は第七十議會のときにも當時の遞信大臣、それから司法大臣にもこの點を相當質問したのでありますが、これは船員の長年の要求でありまして、今囘この船員法改正の法案を審議したところの臨時船員法令審議會でも附帶決議をつけている どういう附帶決議であるかというと、「政府は、海運の重要性と船員勞働の特殊性とに鑑み刑法改正の機會に船員の業務上の輕過失については、處罰しない旨定められたい。」第二は、「政府は、刑事訴訟法改正の機會に船員の業務上の過失については、海員審判所の審判後でなければ、刑事訴追をしない旨定められたい。」この問題に關する附帶決議はこの第一、第二となつているのでありますが、これは非常に長い間同じ趣旨の陳情、あるいは質問等を議會においてわれわれもいたしましたし、船主、船員關係者からもそういう陳情が出ているのであります。ところが實際においてそれでは…そのたびごとに、司法省は考慮すると言つておきながら、なかなかそういうことになつておらないのはまことに殘念であります。今度新憲法が五月三日に實施されることになつたのですが、新憲法の七十六條によると、行政處分は結局行政官廳においては終審をきめられぬ、これはやはり刑事裁判において決定するということがはつきりときめられているので、しからば地方海事審判所、中央海事審判所でもつて決定されても、もしもこれを關係者が上告する場合には、當然それは刑事裁判の方へもつてくるのでありますが、この點について司法省としてはどういうお考えをもつているか、すなわちこれは地方裁判所で取扱うものであるか、あるいは高等裁判所で取扱うものであるか、あるいは最高裁判所で取扱うものであるか、この司法省の御態度がきまらないとこれは大問題で、もしそういう場合に上告されたものが地方裁判所にいくということになると、地方裁判所で裁決に服さないものはさらに高等裁判所、そこできまらぬとなると最高裁判所にいくということになる。結局事故があつたときには、船員なり水先人というものは、五遍の裁判を受けることになる。刑罰に關しては憲法は社會福祉のために刑をくだすという理由もありますが、人民の基本的人權を尊重するということも、これまたこの間題に關連する憲法の解釋です。これは應報刑主義によるか、教育刑主義によるかという點において、學説もまちまちでありまするが、新憲法の精神のあるところは、やはり應報刑主義よりも教育刑主義でなければならぬと私どもも考えております。現に海難懲戒法も從來はその海難事故を起した者に對する處罰をするということに重點をおいておつたのが、最近の解釋はそうでなしに、それももちろんそうであるが、今後における海難事故を防止するということに重點が置かれている。この意味からいうと、司法當局もいわゆる輕過失と認めるものはこれを訴追せぬ、重過失と稱するものも、海事審判の決定をまつまではこれを取扱わぬという御方針を、この際裁判所なり、その他の司法關係の法規において明確に態度をきめていただきたいと思います。以上の點について司法當局の御意向を伺います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=35
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036・横田正俊
○横田政府委員 米窪委員の御質疑に對してお答え申し上げます。ただいま懲戒のほかに、裁判所で船員について刑事責任の裁判をする、往々にして間違つた裁判とあり、かつ輕過失についてその責任を問うことはきわめて不當ではないかという御質疑でございます。この運輸關係の刑事問題につきましては、御承知のように、これは海上の輸送關係のみならず、陸上問題につきましても、やはり同樣な關係がございます。なるほど海上交通は陸上交通に比してその運航の上に幾多の惡條件がございますし、また高度の技術とか、熟練などを要する關係がございまして、幾多のさういつた點もございましようが、しかし半面において、海上の事故がありました場合起りますいろいろな結果のきわめて重大な點を考えますると、やはり刑事政策といたしましては、相當結果の點に重きを置きまして、ある程度の處置をいたさなければならぬという結論になると思います。すなわち船員は多數の貴重な人命を託されているというような關係から、運航にあたつてはその責任の自覺の上に、事故の發生することのないように、特に強い注意が要請されていいのではないかと思うのであります。今申しました刑事責任の結果の輕重を重く見るということは、御承知の通り刑罰法規の一貫している原則でありまして、結果の重大という點を除外しまして、過失の程度いかんによつて結果を左右いたすということは、現在われわれの考えております刑事政策の上から申しますと、實はいかがかと存ぜられるのでございます。もちろん先ほど申されましたように、いかにも氣の毒な事情のある場合も相當ございます。それらの關係につきましては、具體的にその事件を取扱いまする裁判所におきまして、適當な措置が必ず下されることと存じます。また裁判所の方で往々にして能力が足りませんために、不當な裁判をいたすというようなことがございますならば、われわれとしてまことに申譯ない次第でございますが、この點もわが司法部といたしまして大いに自肅自戒、さらに研鑽に努め、御期待に副う立派な裁判をいたしたいと存ずる次第であります。なおその點に關し、懲戒の方と刑事裁判の方との關係につきまして、法律で懲戒の方を先にし、刑事裁判はその後にしたらどうかというお話でございます。私實は正確なことは存じませんが、その點につきましては、わが司法部では、たしか大正年代に、既に各現地の裁判所、檢事局に向いまして、そういう重大な事件につきましては、懲戒海事審判の方を先にし、刑事裁判の方はその結果を見てからやれというような通牒も出ていたことと存ずるのであります。なお實際上の取扱いといたしまして十分に注意をいたしたいと存じます。
それから、懲戒處分の結果に對して、さらに上訴の途が今後の憲法によつて開かれて、それがはたしてどういう形式で裁判所に取上げられるかという御質疑も含まれておつたと思いますが、この點はそういう審判手續を經ましたものにつきましては、高等裁判所——結局現在の控訴院にあたる裁判所でございますが、これに上訴の手續をする、こういう大體の仕組になつております。その點を附け加えて申し上げておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=36
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037・米窪滿亮
○米窪委員 ただいま司法省の政府委員から詳細なる御説明があつたのでありますが、その御説明によれば、上告の場合は控訴院に相當する高等裁判所がこれを受理するということであります。そこでこの高等裁判所で服せぬ場合には、さらに最高裁判所すなわち大審院にもつていくことになると、船員は要するに四囘裁判を受けなければきまらないということになるのであります。これは單に船員ばかりでなく、船主も非常に困る。その長い期間船員は失業者として取扱われるということは、まことに氣の毒である。それで憲法七十六條ではつきりと明示していて、これは行政處分だけでは終止にならぬのでありますからやむを得ぬのですが、私どもとしては、これを最高裁判所が取扱う、すなわち三審で濟むように、司法省が今後そういう態度をとつていただきたいということを希望として申し上げます。なぜそういうことを申すかというと、英國、アメリカ、ドイツ、フランス等の各國においても、この問題についてはそういう組織になつている。現に英國においては、そういう海難事故があつたときに、一番最初に調べるものはインスペクトリアル・オフイス・オブ・ロースト・ガード、あるいはチーフ・オフイサー・オブ・カストム、税關長などの海難に對する知識と經驗をもつている者が、まず最初に調べるということになつております。またアメリカにおいても、大體においてこういう取調べのコースをとつております。この點は從來の議會においてもたびたび御質問申し上げた通り、ぜひとも海事審判を先行していただき、そうして輕過失の場合はこれを處罰せぬということ、これが第二の點であります。第三の點は、終りの刑事裁判は最高裁判所によつてやつていただきたい、すなわち三審で終るようにやつていただきたい。以上の三つの意見を希望意見として申し上げて、この問題に對する司法省の政府委員に對する質問を終ります。
それでは法文の條章にもどります。本法の第六十條の勞働時間に關する問題ですが、それの第二項の但書、それから六十七條、これも執務と、休息時間との關係、七十五條、有給休暇に關する條項、こういう點は相當の餘裕を船長に與えておりますが、これは臨時船員法令審議會でも異議なく通過したものであるかどうか。すなわち船員側にこれに對する何ら反對意見はなかつたかということをお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=37
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038・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいま御指摘の點につきましては、臨時船員法令審議會におきましては、特別に船員側からこの條章について反對であるという意見の開陳はなかつたように思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=38
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039・米窪滿亮
○米窪委員 第百十四條で、「船舶所有者は、給料その他の報酬、失業手當、送還手當又は傷病手當のうち、その二以上をともに支拂うべき期間については、いずれか一の多額のものを支拂うを以て足りる。」こういう場合があるのでありますが、これはどういう意味であるか。すなわち船員としては給料のほかに、場合によつては失業手當を貰う資格も同時に起り得ると思うのでありますが、あるいは送還手當をもらえる資格が同時に發生する場合もあると思いますが、これは多額のものさえ拂えば後は拂う必要はない。こういう船主に對する免除規定のようなことになつておりますが、この點を一つ、眞相を、どういうものであるかということを伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=39
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040・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまお尋ねの百十四條に關しましては、たとえば送還の途中におきまして、それが雇止せられておりますような場合に、失業手當、送還手當、傷病手當、またその傷病によりまして雇止せられるという場合におきまして、それらが各本條においてダブる場合がある。そこでそれぞれ各本條に掲げられておる期間、その期間内においてダブつております場合におきましては、ダブつておる手當のうちの多額なるものを一つ拂えばいい。こういう意味であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=40
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041・米窪滿亮
○米窪委員 最後にお尋ねしたい點は、第八十九條からして第九十四條まで、大體において船員保險法とダブる場合の規定ですが、これはおそらく本法において支給した場合においては、船員保險法によつてダブつて支給する必要はない。こういう點であると思いますが、本法によつて支給したということが、同じ官廳であればすぐわかるのでありますが、今日船員保險は厚生省で扱つておる。そこで厚生省との連絡は完全にそれがいくかどうか。その方法、そういう見透しについて御説明を承りたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=41
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042・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまお尋ねの各條文に規定されております災害補償の給與は、仰せの通り船員保險でこれをカバーしました場合におきましては、その範圍内において船舶所有者の責任を免れる、こういう解釋になつております。そこでこの點に關しましては、この船員法が實體でありまして、この裏打を船員保険法がやつていく、こういうことになるわけでありますから、この條章の關係につきましては、今後におきましても緊密なる連絡をとりまして、いやしくもかような諸手當の滯りがないように萬全の手配をいたしたいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=42
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043・米窪滿亮
○米窪委員 厚生省の方が見えませんが、この際運輸省の海運總局に伺いたいのは、今私が御質問申し上げたような點、その他船員保險に關する點において、船員行政を扱つている海運總局では保險事務をやつておられない。こういう點において、船員及び船主、その他の關係者は、みな船員保險については、船員行政を扱つている官廳において一元的に取扱うべきものであるという熱烈な希望をもつているのであります。いずれこの點は後刻厚生省關係の政府委員の方にお尋ねするつもりでありますが、海運總局關係としてはどういう御意見であるか、またそれについて運輸省としては省議でも決定になつておられるかどうか、この點を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=43
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044・有田喜一
○有田政府委員 ただいまの問題について、仰せの通り、海員組合を初め船主、その他本件に關係のある者のほとんどが、厚生省と運輸省と離れたために非常に不便であるという強い要望があることは事實でございます。從いましてわれわれ海運當局といたしましては、何らかの方法によりましてこの問題を解決したいと考えているのであります。また運輸省としての省議とか何とかという堅苦しい手續はとつておりませんが、運輸省といたしましては厚生省と話合いをいたしまして、何らかの形において、近い將來にこの問題を解決したいと考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=44
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045・米窪滿亮
○米窪委員 私が先ほど御指摘申し上げた臨時船員法令審議會の附帶決議の中に、「政府は一九三六年十月六日ジユネーヴにおいて採擇された「港における船員の福利の増進に關する勸告」に規定された事項を實施するため努力すると共に一九二四年十二月一日ブラツセルにおいて調印された「花柳病治療の爲の船員に便宜供與方に關する協定」になるべく速かに加入するように取り運ばれたい」ということがあります。それからもう一つ「政府は、船員法改正に關連し、船員の健康状態の改善を圖るため船内における居住衞生設備に關し規定する法令の改正を圖られたいという附帶決議もついております。この後の附帶決議については、現行の船員法によると、船員及び旅客を交えて百人以上の乘員がある場合には醫師を乘せるということになつておりますが、百人以上ではこの附帶決議は滿足しないという含みをもつて出ていると私ども解釋しております。これらの點について、政府はこの附帶決議の趣旨に合うためには、近い將來においてどういう態度をおとりになるつもりであるか、この點をお聽きしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=45
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046・大久保武雄
○大久保政府委員 ただいまお話がありました附帶決議の、港における船員の福利増進に關する勸告竝びに花柳病治療のための船員に便宜を供與するということに關する協定等につきましては、船員の海上勞働の特性からいたしまして、その勞働保護をはかりますためには、いずれもこれを整備しなくてはならぬ問題のみでありますので、これらの事項を實施するに最も適當とする機關等の協力を得まして、一日も早くこの附帶決議の實行に着手をいたした、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=46
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047・米窪滿亮
○米窪委員 船員保險について、厚生省の政府委員がお見えになつておりますから、お尋ねをしたいと思います。この船員法を改正するために、臨時船員法令審議會というものが海運總局の中にもたれております。それが一月十六日に附帶決議を出しております。それは政府は、改正船員法案第十章災害補償に規定する船舶所有者の負擔すべき給付と同程度のものを、船員保險で給付し得るように、船員保險法を改正するとともに、この際船員保險業務の圓滑な運營を圖るために必要な拔本的措置を講ぜられたい。」この前段の、船員保險で給付し得るように、改正船員法案第十章の災害補償規定に同調しろということでありますが、つまり言いかえると、改正法律案が實施された場合においては、現在の船員保險ではそれに追いつかないものが出てくる。先ほど運輸大臣は、その點は船員保險を改正する意思があるということを述べられたのでありますが、厚生省としての御意見を伺いたい。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=47
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048・石丸敬次
○石丸政府委員 ただいま附帶條件として述べられました點を、十分織り込んで改正することにいたすつもりであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=48
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049・米窪滿亮
○米窪委員 これは實は第九十議會において、私豫算總會でもたびたび質問したのです。保險局長に對してまことに相濟まぬですが、率直に申し上げますと、被保險者である船員、それから保險料の相當な分擔者であるところの船主、兩方面から、今日の船員保險は非常に評判が惡い。どういう點が評判が惡いかということを、一つ他山の石としてお聽取り願いたい。實は私この船員保險法ができるときに、船員保險法制定の審議會の委員であつたのですが、その當時私は保險料というものが非常に高過ぎる。保險給付の目的からみてこれは非常に高い、すなわち標準報酬月額百圓について十七圓というものを船員に拂わせる。さらにそのほかに船主からは、保險料額の十七分の十を徴收する。こういうことで、必ずこれは餘る。保險料が保險給付額よりも餘つてくるから、その當時の要望であつた失業年金、または手當金というものを給付項目の中に加えろということを強く主張したのでありますが、その當時保險數學の專門家は、どうしてもそろばんがとれないということで、船員の失業年金は落してしまつた。ところがはたせるかな、これは古い統計ですが、昭和二十一年四月一日現在の積立金は四千五百萬圓に上つておる。しかもこの金はどう處分されておるかというと、仄聞するところによると、債券をお買いになつておる。船員が非常に薄給で、血の涙の出るような保險料を拂つて、積り積つた四千五百萬圓で厚生省が債券を買つておるということは、はなはだもつてのほかだと私は考える。なぜこの際厚生省は、船員保險を根本的に改革して、これに現下の要望であるところの失業年金を加えられるお考えがないのか。今まではなかつたのですけれども、近い將來において急速にそれをおやりになるというお考えはないか。その點について保險局長の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=49
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050・石丸敬次
○石丸政府委員 お答えいたします。積立金で公債等を買うということでなく、そのほか有意義な方面、特に失業給付等に使つたらどうかという御意見であります。實はこの積立金を年金として將來支出する場合に、直ちに支出ができ、しかもまた消耗のしないという方面に利用しようということで、ある方面と折衝いたしておるのであります。同時にまたこの船員保險の中に失業給付というものを入れるということにするか。あるいはまた陸上も皆合わせて失業保險にするかということにつきましては、目下各方面の資料を集めまして、研究中でございます。私も着任しまして數日にしかなりませんので、詳細な資料をもつておりませんが、なお適當な機會に、研究を始めておりまする材料等をお目にかける機會があろうかと思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=50
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051・米窪滿亮
○米窪委員 着任早々非常に短期間の石丸さんに、つつこんでお尋ねするのはまことに恐縮ですが、この機會にお尋ねしたいのは、われわれとしては、保險料の收入の半額はこれを長期給付に充てて、殘りの半額を短期給付に充てるべきが、大體において妥當であろうと考えております。ところが現行の船員保險はそういうバランスがとれていない。しかも支出の方は昭和二十年度の短期給付においてはわずかに二百萬圓、その年度の給件付數は三萬七百十五件ですから、從つて一件當り六十五圓というきわめて貧弱なる保險給付をしておる。ところが長期給付についても同樣なことが言えるのであつて、百六十七萬圓の支出であるから、一件當りわずかに百二十圓であります。これでは積立金が殘るのはあたりまえなのです。しからば長期の場合でも、短期の場合でも、該當事故はなかつたかというと、被保險者である船員の疾病あるいは傷害、あるいは脱退、あるいは災害、そういうものはあるのでありますが、手續が非常に煩瑣であつて、しかも各地方官廳に保險事務をやらしておる。ところがこの地方官廳というものは船員の實情には疎い。そういう保險行政などはあまり關係がない。こういう不慣れな連中がやつておるために、いわゆる繁文縟禮でむずかしいために、申請手續が煩瑣であるがために、氣の短かい船員はそういうめんどうくさいものはいらないとかいうことで、手續しないという實情であります。そういうわけで保險事故の該當數は相當あるにかかわらず、保險給付を確實にもらつた者は少い。それが今日船員保險の非常に不評である原因であります。もう一つの點は、脱退給付というものが船員保險の給付項目の中にある。この脱退給付というものは三年以上船員をしておる者にやるというのが原則である。しかるにこの脱退給付の關係は、國民健康保險法の厚生年金というものは三年以下でも、六箇月以上の場合においては、その資格ができてから半年の間にこれを申請するともらえるという特別な勅令が出ておる。ところがそういうた國民健康保險あるいは船員保險という同じ種類の保險を取扱つておる厚生省が、一方の國民健康保險法の場合には、いわゆる厚生年金については三年以下でも特別の勅令によつて支拂う。しかるに船員に對しては支拂わない。もちろんそれは省令として豫告はしておるけれども、それが船員の場合には船に乘つておるから徹底をしない。いきおい船員で特別の恩典に浴しておる者は非常に少いのが實情であります。この點は私九十議會において厚生大臣に注意を喚起した。この告示が昭和十九年四月二十四日に出ておるが、昨年の夏私はこの點を厚生大臣に注意を喚起した。その間約二年間脱退給付というものの恩典、いわゆる無資格者の特別の恩典というものに浴しておる者は一人もないと言うてもいい。これははなはだ片手落ちじやないかということを厚生大臣に注意を促したところ、厚生大臣もその點ははなはだ遺憾であるということで、御承知の通り九十議會に厚生年金保險法及び船員保險法特例案という法律をあわを食つて出したという状態である。こういうことから見て、私こういう結論を得る。これは結局勞働行政を行う官廳と別々の官廳が、船員の生活問題に直接關係のある保險事務をやるからそういうことになる。これは各官廳がいろいろの傳統もあり、御都合もいろいろあるでありましようけれども、各官廳の割據主義を清算して、勞働行政をやつておられる官廳に船員保險事務を竝行しておやりになるというお考えはないのか。こういうことを厚生當局に伺いたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=51
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052・石丸敬次
○石丸政府委員 ただいまの御質問御意見等を伺いまして、非常に得るところが多かつたのであります。事務の不圓滑その他に關しましては將來とも十分注意いたしまして、さようなことのないようにいたしたいと思つております。船員保險を運輸省に移管するという問題につきましては、ただいま厚生省の内部では移管するということに相なつておりませんし、また私どもも十分研究しておりませんので、ここではつきりお答えはできませんが、事業關係その他から申しますと衞生局等と非常に關係が多い。また藥品の關係においても便宜の面もある。また保險關係のいろいろな計算その他數字的の方面から申しましても、統一してやつたらいいだろう。こういうふうに考えておるわけであります。御意見の點はなお大臣に申し上げるようにしたい。かように思つております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=52
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053・米窪滿亮
○米窪委員 私の質問はこれをもつて終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=53
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054・中川重春
○中川委員長 それでは本日はこの程度にいたしまして、次會は明後十七日午後一時より開會いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後三時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009212067X00219470315&spkNum=54
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