1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年二月十八日(火曜日)
午後一時五十四分開議
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議事日程 第四號
昭和二十二年二月十八日
午後一時開議
一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
第一 副議長候補者の選擧
第二 昭和二十一年度一般會計終
戰處理費の財源に充てるための借入金に關する法律案(政府提出) 第一讀會
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより會議を開きます。日程第一、副議長候補者の選擧を行います。
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第一 副議長候補者の選擧
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 副議長候補者の選擧については、今囘に限り特に衆議院規則第四條以下の選擧手續を省略し、井上知治君、宮原庄助君、小笹耕作君の順序により副議長候補者に當選せられたるものとなされんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=2
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003・山崎猛
○議長(山崎猛君) ただいまの山口君の動議に御異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて井上知治君、宮原庄助君、小笹耕作君が副議長候補者に御當選になりました。(拍手)ただいま御當選になりました副議長候補者は、直ちに内閣總理大臣を經由して奏上いたします。
これより日程第二に入ります。本案に對しては、本日政府より、議院法第二十七條但書竝びに第二十八條但書による要求がありました。よつて委員に付託せず、かつ讀會の順序を省略することといたします。日程第二、昭和二十一年度一般會計終戰処理費の財源に充てるための借入金に関する法律案を議題といたします。
大藏大臣石橋湛山君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第二 昭和二十一年度一般會計終戰処理費の財源に充てるための借入金に関する法律案(政府提出) (緊急事件〕
昭和二十一年度一般会計終戰処理費の財源に充てるための借入金に関する法律案
政府は、今期の帝國議会に提出すべき昭和二十一年度歳入歳出総予算追加に計上する終戰処理費の追加分の財源に充てるため、他の法律により起債することができる金額の外、百億円を限り、借入金をなすことができる。
政府は、前項に規定する経費中翌年度への繰越額の財源に充てるため、他の法律により起債することができる金額の外、昭和二十二年度において借入金をなすことができる。但し、前項の規定による借入金と通じて前項の制限額を超えてはならない。
前二項の規定による借入金の償還期限は、三年以内とする。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=5
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006・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) ただいま議題となりました昭和二十一年度一般會計終戰処理費の財源に充てるための借入金に関する法律案提出の理由を御説明申し上げます。別に本院に提出いたしました昭和二十一年度歳入歳出總豫算追加案に計上いたしました終戰處理費百億圓の財源は、一般會計歳計の現状に鑑みまして、これを借入金による必要がありますが、これがためには新たに起債の權能を得る必要があります。またこの百億圓のうち。若干の金額は翌年度にわたり繰越す場合もあるかと思われますが、その繰越額の財源に充てる借入金は、必ずしも昭和二十一年度において借り入れる必要はありません。そこでこれは翌二十二年度において借り入れることとするのを適當と認めますところ、これについてもその權能を得る必要があります。以上の理由によりましてこの法律案を提出いたした次第であります。事情御諒承の上、何とぞ速やかに御協贊下さらんことをお願いする次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=6
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007・山崎猛
○議長(山崎猛君) 採決いたします。本案は可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=7
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008・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
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009・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、(改第一號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=9
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010・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=10
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011・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。(改第一號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案を議題といたします。豫算委員長の報告を求めます。豫算委員長竹田儀一君。
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(改第一號)昭和二十一年度改定
歳入歳出總豫算追加案
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報告書
一 (改第一號)昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年二月十八日
豫算委員長 竹田 儀一
衆議院議長山崎猛殿
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〔竹田儀一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=11
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012・竹田儀一
○竹田儀一君 ただいま上程せられました昭和二十一年度改定歳入歳出總豫算追加案について、豫算委員會の經過竝びに結果を御報告申し上げます。
今囘改定豫算の追加として計上されました金額は、歳入歳出とも各百億圓でありまして、これを前議會までに成立いたしました改定本豫算竝びに追加豫算額に加えまするときは、その總額は歳入歳出ともおのおの九百三十億二千九百餘萬圓と相なります。二月十八日本追加豫算案は、終戰處理費の追加でありまして、連合國軍の駐屯に伴う住宅、兵舍その他の設營工事費、賠償引當豫定の工廠、工場等の管理保全に必要なる經費等の増加によるものでございます。
終戰處理費は、前の改定豫算において百九十億圓、第九十一議會に提出された追加豫算には九十三億圓、これが計上されており、今囘の追加分を合わせますると三百八十三億圓に上るのでありますが、このほか、これに準ずべき朝鮮關係の特別住宅建設資材費十二億圓、沖繩關係の沖繩再建資材諸費一億圓、これを加えますと、總計三百九十六億圓と相なるのでございます。
終戰處理費につきましては、政府におきましてもその節減竝びに經濟支出の効率化について連合軍當局の援助を懇請することはもちろん、國内的にも、過般第九十一議會において成立いたしました政府の契約の特例に關する法律を活用するほか、支出の監査機構を整備擴充する等、各般の措置を講ずる旨の政府の御言明があつたのであります。
本追加豫算の歳入といたしましては、借入金によることになつており、これがために必要な法律案については、特に審議をいたすことになつておるのでございます。なお現在のわが國財政經濟の現状におきましては、もとより財政の健全化をはかることが望ましいのでありますが、國民負擔の現状に鑑み、大豫算の財源を普通歳入によることは困難と認められますので、この際といたしまして、借入金で支辨することもやむを得ないとの政府の御説明があつたのでございます。
本年度の追加豫算といたしましては、右のほか、さらに相當額が上程される見込みでありますが、これにつきましては、追認的經費等の眞にやむを得ない場合に限り公債を發行することといたしまして、その他の經費については、すべて普通歳入による方針のように拜承しました。また近く上程されますところの明二十二年度豫算案につきましても、極力壓縮するとともに、普通歳入の増加をはかり、もつて財政收支の均衡をはかるよう大藏大臣の御言明があつたのでございますが、委員會といたしましても、政府に嚴にその御言明を實行に移されるように要望いたしたいという空氣でございました。
かくのごとくにして、質疑を省略いたしまして、直ちに討論に入り、自由黨を代表いたしまして山本勝市君、進歩黨を代表して保利茂君、社會黨を代表して井上良次君、協同民主黨を代表して宇田國榮君、國民黨を代表して久保猛夫君よりそれぞれ贊成の意を表せられました。引續き採決をいたしました結果、滿場一致原案通り可決いたしたのでございます。この段簡單ながら御報告申し上げる次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=12
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013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに贊成の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=13
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014・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立總員。よつて本案は委員長報告の通り全會一致可決確定いたしました。(拍手)
これより國務大臣の演説に對する質疑を繼續いたします。昨日の石黒武重君の質疑に對し、内閣總理大臣よりこの際答辯したいとのことであります。内閣總理大臣吉田茂君。
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一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=14
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015・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 石黒武重君の質疑に對してお答えをいたします。石黒君の質問は、連立工作不成立後の政局擔當に關する政府の信念いかんということに諒承いたしまするが、その連立の構想たるや、現在における難局に直面して、殊に經濟再建のこの難問題に直面して、各政黨が從來の立場を捨て、從來の行きがかりを捨てて、國家再建のために協力したい、また協力せんと欲する構想に出ずるものでありまして、一時の便宜その他の考えより出たのではないのであります。この連立内閣なるものの構想は、遂に具體化するに至りませんけれども、その經濟再建に協力せんと欲する愛國的或は憂國的精神においては、各黨においてたとい連立内閣が實現いたさないといたしましても、その精神においては、現に變るところないと私は考えるのであります。從つてまた各問題に關する各黨の立場は別といたしまして、いやしくも經濟再建に關する救國的運動、救國的政策については、各黨の支持を受けるものと私は考えまして、この再建のために邁進いたす考えであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=15
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016・山崎猛
○議長(山崎猛君) 水谷長三郎君
〔水谷長三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=16
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017・水谷長三郎
○水谷長三郎君 私は日本社會黨を代表いたしまして、去る十四日行われました總理の施政方針演説を中心といたしまして、以下述ぶるであらう數箇の點に對しまして、總理竝びに關係閣僚の明快なる答辯を求めんとするものであります。
まず私が聽かんとする第一點は、政府はいわゆる三月危機をいかに認識するかという問題であります。總理は、昨年の暮れ開かれた第九十一議會の施政方針演説におきまして、わが國現在の産業状態のただならぬ深刻なる状態を國民に訴え、また常時の經濟安定本部長官膳國務大臣も、いわゆる三月危機の重大なることを國民に警告されたのであります。もちろん三月危機とはいかなるものであるかというその内容につきましては、人により異つた意見もありましようけれども、私自身の考えるところによりますならば、まず第一には、二十一年度の前半期ごろの生産の増強は、大體において戰爭中のストツクが放出されたことが基盤になつたのでありまするが、それが三月ごろにはストツクが底をついて、生産が急激に低落するのではないかと言はれておるのであります。さらに第二には、厖大なる豫算の施行によりまして、通貨の増發も急ピツチに上つてくる。そうすると生産のカーヴは下降的になつてくるに反しまして、通貨の増發のカーヴは上向きになつて、それが今まで以上に激しい形で現われて來ざるを得ないということであります。さらに第三點は、こういう情勢になつてまいりますと、食糧の供出もまた輸送能力の關係などと絡み合つてうまくいかなくなり、現に東京都のごときは、遲配が十日を突破するという状態でございまして、三月、四月、あるいは五月ごろには、金融も生産、食糧の面から惡材料が重なり合つて出まして、危機を形成するというのが大體の私の見るところでございます。しかも事態は一般の人が想像しておるよりも、きわめて深刻であるということを言われておるのであります。
かような日本の現在おかれた經濟危機の原因はどこにあるかと申し上げますならば、これは無謀なる侵略戰爭と、いま一つは、敗戰以來わが政局を擔いました歴代の保守反動内閣の無爲無策、さらにまた一部特權階級のために強行された欺瞞政策の結果もたらされたものでございまして(拍手)この意味におきまして、現在の經濟危機に對する吉田内閣の責任、まことに重大なりと言わなくてはなりません。(拍手)はたしてしからば吉田内閣は、この三月危機に對していかなる認識をもたれておるのであるか。
去る二月六日、吉田總理が經濟安定本部總裁といたしまして、全國の町内會に送られたメツセージによりますると、政府は石炭の生産及び配給について、超重點非常手段をとるがゆえに、六月ごろまで辛抱してもらいたい、六月ごろになれば國民生活が樂になるから、それまで辛抱してもらいたいというような、何を根據にされたかしりませんが、こういう樂觀論を述べておられます。さらにまた大藏大臣石橋湛山君のごときは、一陽來復説を盛んに述べておられるのであるが、なぜ一陽來復かといえば、自分は去年の經濟の見透しは陰の極と言うた、陰の極の裏は一陽來復であるというようなまるで人をばかにした、禪問答のようなことを言つておられるのでございます。われわれはこういうような、政府がことさらに現在の深刻なる經濟危機に對しまして安價なる樂觀論を振りまわされることに關しましては、斷固として反對せねばならぬのでございます。むしろこの際ほんとうに政府が來るべき經濟危機を正しく認識し、これをば國民とともに切り拔けて行くという決意があるならば、この際政府は堂々と危機突破非常時宣言、あるいはまた危機突破緊急法令を制定いたしまして、國民とともにこの經濟危機を突破しようというのが、まさに政府としてとるべき途であろうと私は思うのでございます。(拍手)この點に關する總理の決意いかんということをまず第一點に聽きたいのであります。
第二點は、産業の再建に關しての問題でございます。總理は過ぐる十四日の施政方針の演説におきまして、現在の日本の生産再開の絲口をば石炭増強に求めたい、從つて是が非でも年三千萬トンの石炭をばたたき出さねばならないという決意を披瀝されたのでございます。この石炭超重點主義の考え方に對しましては、わが黨といたしましても全幅的に贊成するものであります、ただ問題は、この石炭の三千萬トンをいかにしてたたき出すかという、具體的の方策を聽かされなかつたことは、われわれはまことに遺憾とする次第であります。
日本社會黨といたしましては、インフレーシヨンのあらしの中で生産を興していくことは非常に困難でありまするがゆえに、一まずインフレーシヨンの影響から切り離して、一つの強い力で計畫的に石炭の事業を復興さして、重點的な強力な手を打たんとするものであります。こういう意味におきまして、われわれはその石炭産業に對しまして、國有國營を前提とした國家管理を斷行いたしまして、經營の社會化による勤勞意欲の發剌たる促進、さらにまた各山別の具體的な生産計畫の樹立と責任ある實施、さらにまた與えられた炭價による計畫的なる生産の實現、さらにまた資材、生産物の横流れ、やみ賣りの防止、さらにまた安全施設、厚生施設の完備等々を、國家管理の手によつて斷行しようとするものであります。
われわれがこういうことを申し上げるならば、おそらく反對派の諸君は、イギリスの例をとられて、イギリスはこの一月一日から國有國營を斷行したにかかわらず、遂に今日の石炭危機をば招來したではないかという御反問をされるであろうと思うのでございます。しかしながらこれは思わざるのはなはだしい議論でございまして、今日のイギリスの石炭の飢饉というものは、一月一日から斷行された國有國營が原因ではないのでございまして、むしろその以前にさかのぼつたもろもろの惡條件が重なり合つたもので、それらの惡條件をば解決するがために、この一月一日から國有國營が斷行されたのであつて、未だ今日にあつては、國有國營の功罪を論ずる時期には斷じて至つておらないとわれわれは考えるのであります。
傳えられるところによりますれば、政府は去年の十二月二十七日の閣議決定によつて、おもなる炭鑛の三箇年借上案というものを決定されたやにわれわれは聞くのであります。すなわち一月四日の朝日新聞の記事によりますならば、政府は石炭生産をば私企業の束縛から脱せしめ、強度の増産をはかるため、おもなる炭鑛に對して大體三箇年間政府の借上げ運營を實施する云々、ということを言われておるのでございます。すなわちこの政府の主要炭鑛の借上げは、またわが黨の國家管理と一脈相通ずるものであり、また現在の大藏大臣石橋湛山君が、戰爭中東洋經濟新報の一角に蟠踞して唱えられてきたところの議論であるのでございます。はたして政府は、現在のこの石炭の生産増強をなし遂げるために、わが黨が多年主張した政策に屈服いたしまして、主要炭鑛借上げをなす用意ありや否やということを聽きたいのでございます。
さらにまた總理は、鐵鋼、肥料の問題においても述べられ、さらにまた輸送の問題においても述べられております。この肥料の問題に關しましても、これまた二十一年十二月三十日の毎日新聞の報ずるところによりますれば、商工省においては、肥料の國家管理を行うため、着々と準備をしておるということを唱えられておるのであります。はたして政府は、この肥料の増産問題を解決するために、これまたわが黨が多年主張いたしました國家管理を斷行する意思があるのかどうか。すなわち國家管理の内容、國家管理の機構、これは私はここに一々讀む煩は避けますが、一から十までわが黨の案に屈服したところの案であると大體見てもよいのであります。(拍手)政府はこれに對し、はたして肥料問題を國家管理に移す用意ありや否やを聽きたいのであります。
さらにまた鐵鋼の増産問題に關しましても、政府は雪だるま式の増産を計畫されまして、石炭と鐵鋼とを絡み合わせてやつていくという方式を發表されたのでございます。これらを靜かに檢討いたしますならば、これまた石炭と鐵鋼との雪だるま式の増産方法は、とりもなおさずこの鐵鋼の場面においても、強力なる國家管理を斷行するよりほかに途はないのでございます。政府ははたしてこの鐵鋼産業の増産に對して、いかなる經營方式をとらんとするものであるかということをお伺いしたいと思うのであります。
さらにまた輸送の問題でございます。總理は施政方針の演説の中におきまして、またこの生産増強のためにいかに輸送の問題が重大であるかということを述べられております。わが黨といたしましても、全産業の増産計畫達成のために、特に輸送に關しましては、鐵道輸送計畫の完全なる實現、さらにまた必要なるトラツクの國家管理、あるいは急速なる船舶の新造等等、海陸兩面にわたり強力なる措置をとらんとするものでありますが、運輸當局は、このたびの生産増強に對して、いかなる計畫と用意があるかということをばお聽きしたいと思う次第でございます。以上が、大體第二點の産業の再建に關する私の問わんと欲するところでございます。
さらに第三點は、總理が施政方針の演説で述べられておるところのインフレーシヨンの問題でございます。このインフレーシヨンの問題は、いわゆる石橋財政の中核をなすものでありますがゆえに、この問題に關して昨日の本議場における石橋湛山君のお言葉に應じて、相當詳しくわが黨としても述べなければならない義務があろうと思うのであります。人も知る、石橋湛山君は、三十年の永きにわたつて東洋經濟新報の一角に蟠踞し、あるいは高橋財政、あるいは井上財政といつて、その時々の當路の財政を批判してこられたのでありまするが、今や舞臺は變つて、自分みずからが、石橋財政の名のもとにおきまして、國民から甲乙論駁、批判されるということは、その善惡にかかわらず、永年街の經濟學者として暮してきた石橋君としては、けだし男子の本懷であるかもしれないと思うのであります。
しからば石橋大藏大臣が考えているところのインフレ觀は、大體どういうものであるかということを考えますと、大藏大臣の考えるところによりますれば、日本の現在のインフレは大したことではない、もつと高進してもまだまだ恐れるにはあたらない、恐るべきは現下の生産の沈滯であるというのが、これが第一の考えである。さらにまた大藏大臣の第二の考えは、從つて生産さえ起ればインフレも恐れる必要はない、否、インフレをやれば、前のドイツの例のように生産もどんどん増して來るという考え方が、これが第二の考え方である。從つて大藏大臣のインフレ觀の結論としては、日本經濟の再建はインフレーシヨンによつて行わるべきものである、すなわち大衆の負擔において行うのが一番早途である、否、資本家的立場からはその途しかないというのが、石橋インフレ觀の結論にほかならぬのであります。右に述べたことは、これが石橋藏相獨特のインフレ觀である。
〔「デマだ」と呼び、その他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=17
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018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=18
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019・水谷長三郎
○水谷長三郎君(續) 石橋大藏大臣も知るように、通貨は遂に千億臺を突破し、生産は、大藏大臣の計畫的インフレ政策によつても少しも伸びてこなかつた。あまつさえ勤勞階級を犧牲とする藏相のインフレ政策は、全勤勞階級の全面的な反撃を受けても遂に三月の危機を迎えるに至つた次第であります。
總理は、去る十四日の施政方針の演説におきまして、このインフレーシヨンの對策として財政收支の均衡を保持し云々ということを言つておられます。さらにまた大藏大臣石橋湛山君は、十五日のこの衆議院の本會議におきまして、自由黨の大久保留次郎君の質問演説に對しまして、惡性インフレは財政の面から來るが、昭和二十二年度の豫算は收支の均衡は必ずはかれるという建前で編成しておるから、財政上のインフレは起らないと斷言していい。從つてインフレ問題も既にブレーキがかかつたと、きわめて手放しの樂觀論をやつておられるのでございます。しかしながら三歳の童兒といえども、少し考えれば、こういう石橋大藏大臣の樂觀論がいかに子供だましの、その場限りの逃げ口上に過ぎないかということは、一、二の例をもつても明々白々だろうと思う。
たとえば昭和二十一年の一般會計豫算は、昨年一月五日の閣議で決定いたしました骨格豫算では、歳入がわずかに百三十三億圓、歳出が百二十八億圓で、差引五億圓の黒字をば二十一年度の骨格豫算は出しておるのである。ところが第九十、九十一の臨時議會に追加豫算が提出されまして、それが八百三十億圓となりまして、骨格豫算の約六倍半の高さに膨脹したのであります。ただこれだけではございません。この第九十二議會において追加を豫定されておる額は約數百億、現に竹田豫算委員長が今日この壇上で述べられた額におきましても、約千億に手が屆き、これもやがて千億を相當上まわるだろうということは、これは火を見るよりも明らかであります。
これはひとり昭和二十一年度の豫算だけではございません。今度の昭和二十一年度の豫算におきましても、なるほど一般會計の當初豫算は、大藏大臣の申されるように六百五十億足らず――六百十五億と言われておるが、これは辻褄が合いましよう。しかしながらその他一々項目は述べませんが、傳えられるところによりましても、金融機關への政府の融資、復金出資、在外財産見返融資、待遇改善費、鐵道用炭價格差補給金、配給公社出資金、そういうものを加へましても、約五百億に手が屆こうとするのであります。これらの追加豫算は、あるいは專賣益金を多少値上げしても、あるいは税金を多少いらいましても、相當厖大なる赤字豫算をば伴わなくてはならぬでございまして、一體大藏大臣は二十一年度の骨格豫算に顧み、さらにこのたびの二十二年度の追加豫算等々をもにらみ合わされまして、一體どこを押したならば、二十二年度には赤字はびた一文も出さない、健全な財政が編成されると言われるか、その根據を私は示していただきたいと思う。(拍手)私はこの議會におきまして、單に一時の喜びを大藏大臣から聽こうとするものではありません。國民は單にこの壇上から、すぐに馬脚の現われるところの、片々たる樂觀論を聽こうとするものではないのでございまして、むしろ赤裸々に事實を事實といたしまして、はつきりとお述べになることが望ましいとわれわれは考えるのでございます。(拍手)
このようにいたしまして、大藏大臣が申されますように、インフレーシヨンというものは、財政支出から起るものであるならば、事實惡性インフレーシヨンを阻止するためには、まずその最大の原因である財政の赤字をなくすることが必要でありますがゆえに、われわれはここに二つの問題に關して、重ねて大藏大臣の明確なる答辯を煩わし、たいと思います。
二つの問題とは、言うまでもなく戰時公債の問題であり、もう一つは新圓の問題である。大藏大臣は、きのうこの壇上において、自由黨も、進歩黨も、社會黨も、財政政策には少しも變りがない、自分が石橋財政と言われておるが、ただ違つておるのは、この戰時公債の問題と、そうしてこの新圓の問題だと、いとも簡單に言われておる。大藏大臣の言われるように、まさに當面の危機突破對策としては、はつきり違つておるのは、この二つの問題であるかしれませんが、この二つの問題こそは、社會黨の經濟政策と石橋財政とを根本的に分つ二つの線であるということを、われわれは叫びたいのである。(拍手)
戰時公債とは一體これは何であるか。戰爭に勝つために發行された公債にほかならぬ。戰爭中は飛行機その他の兵器において消耗し盡され、さらにまた終戰當時殘つたものも、全部連合軍に接收されまして、戰時公債というのは、まさに、今や戰爭に負けた今日は、一片のほごであり、擬制資本の尤たるものにほかならないのでございます。この戰時公債をいかにして支辨するかということは、あるいは石渡大藏大臣、あるいは賀屋大藏大臣は、大東亞の天地に横たわる物資の裏づけ、あるいは支那大陸に横たわる物資の裏づけと、とらぬ狸の皮算用、あてにもならないことをあてにされてきたのでありまして、去年の第九十議會におきまして、私はその點を指摘し、もし大藏大臣が戰時公債をば棒引きせないならば、何によつて支拂うかといえば、石橋大藏大臣は、しやあしやあとして、戰時公債はインフレーシヨンによつて支拂うという暴言を吐かれたのである。戰時公債をインフレーシヨンによつて支拂う。すなわちインフレーシヨンが高進した時において戰時公債を支拂うということは、それは戰時公債の支拂にはなるかはしれませんが、そこまでインフレーシヨンが高進した場合の日本經濟の全體というものは、破産するのである。言葉をかえて申しますならば、大藏大臣がインフレーシヨンによつて戰時公債を支拂うということは、日本經濟全體をば犧牲にせなければ、そういう暴言は斷じて起らないと思うのでございます。(拍手)
われわれは、もし大藏大臣がほんとうに財政の收入の均衡をはかることがインフレ對策の何よりの點であるとすれば、なぜ大藏大臣は、この財政の收支の均衡をやぶるがんである戰時公債に手をつけないか。あらゆる戰時補償が全面的に打切られた今日、なおかつ戰時公債に戀々としておる理由はどこにあるか。おそらく大藏大臣は、この戰時公債の九割は金融機關に預けてある、あるいは預金部に大部分がある、そうしてこれをやれば、これは大衆の零細なる預金に迷惑をかけるのだと、なお大衆の零細なる預金の保護に名をかつておられまするが、しかしながら大藏大臣靜かにお考えを願いたい。あの敗戰以來、とうとうとして止まるところを知らないインフレーシヨンの大きな波の中に卷込まれた今日の勤勞大衆、まじめに、正直に働いておる勤勞大衆のふところには、いまさら石橋大藏大臣によつて保護される預金がどこに殘つておるかということを考えてもらいたいのである。(拍手)今日こういうような公債の問題によつて保護される預金というものは、これは新圓所得者の預金である。戰後のやみ利得者の預金である。もし大藏大臣が靜かに事態を正視し、さらにまた公債打切りに伴う萬端の處置をば斷行されるならば、今日において戦時公債の棒引は斷じて可能である。否、むしろもしインフレーシヨンがますます高進した後において戰時公債の打切りを行うということは、これは財政學上一箇のナンセンスであつて、今こそ戰時公債を打切らなければ、現在の日本の財政から起つてくるインフレーシヨンは斷じて救えないというのがわれわれの考えでありまするが、これに對しまして石橋大藏大臣の明快なる御答辯を願いたいと思います。(拍手)
さらにまた新圓の問題でございます。わが黨が言うまでもなくこの新圓の登録制を主張しておることは、天下周知の事實であるのでございます。去る第九十議會におきまして、豫算總會において私が通貨の増發の見透し、物價の見透し等々をお聽きいたしたときに、大藏大臣は、そのとき五百六十億、あるいは六百億程度でありましたが、これがいわゆる通貨の天井である、これ以上はもう通貨は上へ上らないということを述べておられます。私は時間の都合上速記録を朗讀することを差控えますが、そういうことを述べておられる。ところがどうですか。そういう大藏大臣の見透しは見事にはずれまして、新圓は遂に千億臺を突破いたしました。これに對して大藏大臣はしやあしやあとして、通貨の膨脹というものはこれは熱病のようなものである、むりに抑えてはいかん、ただ心臓が傷まない程度に處置をすればいいのだ、こういうことを大藏大臣は言つておられるのである。なるほど熱が出たならば心臟を傷めないようにする。これは一つの處置であり、これは藪醫者の處置である。ほんとうの名醫というものは、この熱が何ゆえにこれだけ高くなるかという、その根源を突いて、拔本塞源的な措置をとらなければ、一國の財政を賄う名醫とは私は斷じて申されないと思うのでございます。(拍手)
大藏大臣は、このいわゆる新圓は――來るべき三月の末日までにこの新圓の膨脹はいかなる點まで上つていくか。さらにまた講和會議が開かれあるいは國際的な通貨の會議にわが國が參加するその時期までに、一體新圓はどのくらい伸びていくか。それをば一體どう處置するか。もしこの新圓の伸びる足どりに對して、不幸にも生産の足どりが伴わなかつたとき大藏大臣は一體この新圓に對していかなる處置をとられんとするかということを、われわれは聽きたいのでございます。
この新圓の登録制の問題は、ひとり經濟上の問題だけではございません。今日においてはこれは一つの社會問題である。すなわち戰爭中國民の血潮を犧牲にして儲けました戰時利得者の利益は、既に舊圓において封鎖されておるのである。しかるにかかわらず、戰後においてやみをもつて儲けました戰後の利得者は、今なお何等の制肘を加えられずに、好き氣ままならざることなしという新圓生活で、あらゆる限りの傍若無人をふるまつておるのである。われわれはもしほんとうのこの耐乏生活を支えていくがためには、乏しきをわかち合い、少しの樂しみもわかち合うという態勢を整えていく今日において、一方においてはその日その日のパンにさえこと缺く者が多數あるときに、今日新圓を、あるいは個人で三千萬圓、あるいははなはだしきにおいては一億圓をふところに握つて、そうしてありとあらゆる傍若無人を許すというようなことで、はたしてこの敗戰のどん底につき落された日本の經濟を救えるかどうかということを、大藏大臣は篤とお考えを願いたい。
重ねて言う。新圓問題は今や一個の經濟問題の域を乘り超えて、これはゆゆしい社會問題になつておる。われわれはこの二點は、大藏大臣が昨日この本會議において、自分らと社會黨との違つておる二つの點であるということを言われた。われわれはほかにももつと違つておる點を發見しますが、かりに一歩を讓りましても、この二つの點は、これは口で言へば二つの點でありますが、これこそ大きな問題である。(「ヒヤヒヤ」)私はおそらくこの論戰は、單にこの議場における石橋、水谷の論爭だけに止めずに、來る四月二十五日の總選擧においては、自由黨、社會黨の論戰にわれわれは發展させたいと思ふのである。(拍手)もし石橋大藏大臣が、ほんとうに自分の經濟政策に自信があるならば、來るべき四月の二十五日においては、わが國選擧區中において一番レベルの高い、批判力の高い東京の第二區において堂々と爭われるがいい。さらにまた文化の殿堂である京都の舊一區にも出て爭われるがいい。そうして大衆の判斷によつて、石橋財政が正しいか、社會黨の財政が正しいかということを、われわれは堂堂と審判を受けようとするものである。(拍手)さらに‥‥
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=19
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020・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=20
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021・水谷長三郎
○水谷長三郎君(續) さらに第四點は勞働對策に對する問題であります。これは二點とも總理大臣から直接に答辯を求めるものでありまするが、總理が過ぐる十四日の施政方針演説におきまして、勞働對策として述べられた點は、大體においてわれわれは贊成であります。殊に組合内部における民主化の徹底を期待するというような點に關しては、わが黨もまた同感であるのでございます。ただ勞働對策の根本問題は、言うまでもなく勤勞意欲の高揚にあるのである。しかるにこの勤勞意欲の高揚は、政治の建前が勤勞の尊重の上におかれなくてはならないことは、言うまでもないと思うのでございます。しかるにこの點に關しましてわれわれが非常に遺憾に感ずるのは、總理がこの一月一日に述べられた年頭の挨拶の一句にほかならぬのでございます。
この總理の年頭の挨拶は、大體三つに要約されるのでございますが、その一つは、昨秋以來の勞働爭議が、生産減退とインフレ及び生活不安を激化したおもな原因であるということを述べられておる。第二には、産業の復興、經濟再建は、一内閣の問題だけではなく、政黨政派を超越した國家問題であるということを述べられておる。そうして第三には、勞働爭議は、經濟再建のための擧國一致を破る不逞のやからのすることである云々ということを述べられているのでございます。(「その通り」)
私は、總理がいかなる意圖に基いてこういう言葉を弄されたかしりませんが、大體不逞という表現は、戰爭時分から東條内閣が盛んに用いた言葉でございまして、ただ相手をやつつけ、相手の言うことをおつかぶせるという場合に盛んに用いられた、きわめて封建的な言葉にほかならぬのでございます。もちろん去年の暮から起りました勞働爭議の一部には、遺憾なる點があるいはあつたといたしましても、しかし總理が年頭の言葉といたしまして、そういう行過ぎな勞働爭議に對して、建設的なる指導の言葉を投げ與える代りに、これをば不逞呼ばわりをして、重大な侮辱を與へるという點に對しましては、われわれは斷固として承服するわけにはいかぬのであります。(拍手)
現に總理があの不逞の言葉を發せられてから後、組織勞働者にいかなる影響を與へたか。組織勞働者はこれに對していかなる抗議、いかなる反對をしたか。さらにまた全體の勤勞階級にいかなる惡い影響を與えたかということをお考えを願いたいと思うのであります。もし總理がほんとうに心の底から、現在の經濟危機を突破するがためには組織勞働者を先頭とし、全勤勞階級の理解と支持のもとにおいてこの經濟危機を突破しようとするならば、總理はよろしく今日この本會議を通じて、一月一日に發せられた不逞の言葉をば斷々固として取消す方が私は正しいと思うのである。(拍手)これをもしそのままにしておいて、いかに施政方針の演説において勤勞對策を論じ、いかに施政方針の言葉において勤勞尊重の言葉を述べられましても、それは何にもならないのでございまして、私は過去になずまず、過つたことは過つたと言う、昔の中國のたとえ通りに、總理がこの壇上から、一月一日の不逞云々の言葉を男らしく取り消されることが、日本經濟再建の第一歩であると強く主張するものでございます。(拍手)
さらにまた第二點といたしまして、いわゆる二月一日のゼネスト問題でございます。總理は施政方針の演説におきまして、このゼネストを論ぜられ、ただこの危機の囘避がわが國民みずからの手によつてなされなかつたことについて、深刻に反省する必要があると思う云々という言葉がございます。まるで總理はよそ事のようなことを言つておられるのであります。深刻に反省せねばならぬのは、國民にあらずして、政府みずからであると私は申し上げたいのである。(拍手)しかも二月一日のいわゆるゼネストというものは、全官公廳勞働組合のストであり、政府みずからが當事者の一方であるにほかならぬのである。普通のストライキではない。政府みずからが當然責任を負わねばならないストライキにかかわらず、荏苒日を空しゆういたしまして、遂にマツカーサー元帥の聲明によりまして、わずかに事態を食い止めたというその責任に至つては、われわれは斷々固として糾明せねばならぬと思うのでございます。(拍手)政府は、一體このゼネスト問題に對していかなる責任を感ずるか。さらにまたこのゼネスト問題によつて武装を解除された二百五十萬の全官公廳の勞働者諸君の生活問題を、いかにして解決するか。この二點をはつきりと私は答辯を願いたいと思う次第でございます。(拍手)
さらに第五點の民生安定對策に關して私はお伺いしたいと思うのでございます。總理は施政方針の演説の場合におきまして、生産再開の糸口を見出すために、石炭重點の傾斜經濟を行う。そのためには、その他の産業及び國民生活に非常な深刻なる影響を與えるということを言われているのでございます。これは總理の言われる通りである。はたしてしからば、政府は國民の最低生活を確保するために、いかなる用意があるかということをわれわれは糾明せなければならぬのでございます。
言うまでもなく、國民の最低生活確保の途は、正規の配給によりまして、最低の生活を確保すべき建前を堅持することであるのであります。すなわち古の教のごとく、乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂うるの建前を立てるということ、これが第一歩であることは言うまでもないのであります。ところがこのごろ東京都に起つておる遲配は十日以上に及びまして、人心の不安定、社會の動搖をひき起しておる。一體政府の責任というものは何であるかということをわれわれは問いたいのである。
去年議會におきまして、去年の缺配三百萬石をたな上げせんとしたときに、政府は一體國民に何と公約したか。三百萬石はたな上げにしてもらうが、しかし十一月一日から増配される主食の配給というものは、いかなる原因、いかなる事情があらうとも、一日一刻といえども斷じて遲配はいたしませんということを、政府みずから國民に公約したではないか。(拍手)しかも傳えられる豐年のまつ盛りに、政府の施政よろしきを得ず、既に年改まつて間もなしに、三百萬石を國民からたな上げをさして、しかもなお帝都におきまして十數日の遲配を讓したところの政府の責任というものは、きわめて重大であると言わなければなりません。(拍手)
われわれは、このように主食に對する不安動搖を與え、國民生活に不安定を與えておきながら、石炭重點の傾斜經濟を行うというがごときは、これは木によつて魚を求める以上の難事であると言わなくてはならぬのであります。われわれはこの石炭重點の傾斜經濟を斷行する前に、斷固としてこの遲配問題を政府が解決する責任ありと思うがいかん。しこうしてその解決の方法いかんということをも私は農林大臣から聽きたいのであります。
さらに最後の一點としてお尋ねしておきたいのは、これは内務大臣に對する質問でございます。以上述べました點は、これはとうてい現下のような力弱い吉田内閣の下において行えるものであるとは、われわれは考へてはおりません。從つて一日も早く解散が斷行され、總選擧が行われることを希望しておつたのでございますが、さいわい四月二十五日を期して總選擧が施行されるように、われわれは聽かされておるのでございます。はたしてしからば、政府はその來るべき總選擧にあたつて、いかなる選擧法をもつてこの總選擧を斷行しようとするのであるか。さらにまたいかなる選擧の手續をもつてこれを行わんとするものであるか。その點をわれわれは明瞭に内務大臣から聽きたいと思う次第でございます。
大體以上述べましたことが、一點から六點までの私の質問の要旨でございまして、これに對する政府の答辯いかんによりますれば、また私の考えを開陳したいと思う次第であります。(拍手)
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=21
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022・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 水谷君にお答えいたします。政府は經濟危機をいかに認識しておるやというお尋ねでありますが、認識しておるがゆえ、昨秋以來しばしば政府として、また私の施政演説においても、經濟再建、經濟危機について、こぶの所において繰返し繰返し述べておるところであります。しからばいかにしてこの經濟の再建をするか、いかにして經濟の危機を救うかということについて、私のまず第一に聲明いたしておることは、石炭三千萬トンを掘り、肥料二百萬トンを製造することをもつて、まず第一歩とするということを言つておるのであります。これがために重油その他の必要なる物資の輸入をはかつて、既にこれは確約を得ておるのであります。
肥料その他についての新聞の發表しておるところを引用せらたが、新聞の記事については私は責任を負わない。
また私が年頭の放送において、不逞の徒云々ということについてお話があつたが、これは全部をお讀みになり、全部を熟讀せられたならば、意味が諒解せられるであろうと思いまするが、全勤勞者を言うわけではないのである。全勤勞者を政治的に誤つてこれを指導せんと欲するがごとき一部の者があるならば、と言つたのであります。これは放送をごらんになればよくわかることであります。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に――靜肅に。
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=23
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024・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 炭鑛等の國有國營を前提とせる國家管理というのが社會黨の一つのモツトーでありまして、その點について御質問がありましたが、これはいずれ商工大臣等からも御答辯があるかと思いますが、私も只今經濟安定本部を預かつておりますから、一言お答えいたします。水谷君も御承知のように、われわれは國有國營を前提といたしません。しかしながら當面もし石炭なり肥料なりの増産に役立つならば、國家管理またあえて辭せずというのが現政府の立場であります。(拍手)
なお朝日新聞の記事をお讀みになつて、炭鑛を三年間借り上げるという案が前に決定されたと言いますが、これはもしさような記事があつたとすれば、誤りであります。(拍手)
しかし英國の例はとにかくといたしまして、國家管理が實際に効力があるならば實施するということでありまして、社會黨ではあるいはさようなことには頓着なく、とにかく國有國營を前提とする國家管理ということになるのかもしれませんが、われわれは必ず實効があるということを突き止めた場合にやるのでありますから、さように御承知を願います。(拍手)なおまた國家管理のごときは……。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=24
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025・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=25
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026・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君)(續) 國家管理のごときは、少くも社會黨の專賣ではありません。それは水谷君御自身が、私が雜誌において、戰時中ある産業の國家借上げ論を、東洋經濟の一角に蟠踞して論じておつたということをおつしやいましたが、それによつて證明されるがごとく、あえて社會黨の專賣でなく、すなわち石橋もかつてさような論をしたものであります。(拍手)
次に私に對する‥‥
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=26
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027・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=27
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028・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君)(續) 御質問の中心であるインフレ問題についてお答えいたします。大體において私の説を相當よく分析せられておりましたが、しかしながら私は、インフレをやれば生産が起るとか、日本經濟再建にはインフレで行うとか、これを大衆の負擔によつて行うとかいうことは、かつて考えたこともなし、申したこともありません。大體これらの點についての水谷君の今日の御批評は、材料はなはだ不確實であります。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=28
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029・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=29
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030・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君)(續) 後にもありましたが、戰時公債をインフレーシヨンによつて拂うなどということを言うたこともありません。(拍手)さような不確實な材料によつての御批評は、一應お返ししておきたいと思います。(拍手)
二十二年度豫算の收支の均衡がとれることについて、非常な御疑念でありましたが、これは御承知のように、インフレーシヨンの問題等に對する處置として、これは至上命令であります。二十二年度の豫算が、もし御疑念のごとく非常な赤字が出て、收支の均衡を保たぬということになれば、これは日本の經濟がもてないということでありますから、これは何人といえどもやらざるを得ない――困難な問題でありますけれども、やらざるを得ないことでありますから、必ず實現ができます。しこうしてこれに對しては、むろん日本政府だけではできないことでありまして、連合國司令部の大いなる援助も受けなければならぬ。また國民諸君の後援を受けなければならぬことは申すまでもありませんが、私はそれらの援助と後援はあるものと確信をいたしております。これはもう數日のうちにわかることでありますから、數日中に豫算案を提出した場合にごらんを願いたいと思うのであります。
次にいわゆる石橋財政と社會黨の政策との當面の相違點である二つの點、その一つの戰時公債の問題でありますが、これは一體水谷君は今戰時公債の打切りとか言われましたが、どうも私は、社會黨では差當り一年間利拂停止と言われているように考えておりますが、いかがなものでありましようか。もしも戰時公債打切りをお説のごとき性質のものとするならば、利拂停止ではなくて、水谷君の今日のお話のごとく打切りでなければならぬ。ところで戰時公債なるものは、しばしば私から申し上げますように、それは、つまり戰時預金が戰時公債に變つておるのである。ゆえに戰時公債ならばすなわち戰時預金であります。戰時預金の打切りをしなければならぬということになるわけと思います。これに對して社會黨は、また大衆預金については特別の保護の措置を講ずるようにお考えになつているように私は考えておりますが、いかがなものでありましようか。もし戰時預金を打切らなければならぬ――戰時公債だから打切るべきであるというならば、大衆の預金であるがゆえにこれを保護する必要はないと考えるのであります。しかしながら實際問題として、社會黨であろうとも、どこであろらうとも、今日戰時公債を打切るなり、利拂の停止なりをいたしまして、郵便貯金の八割の利拂ができないとか、これを打切るとか、あるいは全體の金融機關の半額の預金がゼロになる、かような場合にこれを打捨てておけるかどうかという問題であります。私はかくのごときことは、たとえ今日社會黨が直ちに政局をおとりになりましても……。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=30
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031・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=31
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032・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君)(續) 斷じてできないと考えているものであります。(拍手)
次に新圓の問題でありますが、私がいつか五百六十億圓のときに、もうこの上殖えないと申したということでありますが、私はさような記憶はありません。しかしながらこれは、水谷君は他の材料と同じように、どうも私には記憶にない材料を持ち出されたのでありますから、何ともお答えができませんが、ただこの新圓問題は、拔本塞源的にその病源を衝かなければ處置ができない。拔本塞源的にこの新圓問題の病源を衝くのがすなわち名醫であるという水谷君の御批評でありますが、もししからば、私が名醫であると言うていいと思います。(拍手)というのは‥‥‥。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=32
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033・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=33
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034・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君)(續) というのは、新圓の問題は、しばしば申しますように、ただその新圓を封鎖するとかいうようなことでこれは片づくことではありません。新圓をかりに今日封鎖すれば、一時は百數十億に減るかもしれませんが、しかしながらその翌日からまた殖えます。のみならず、さらにその紙幣に對する信用を害して、いわゆる換物運動を刺激するに過ぎないと思うのであります。で私は、水谷君のお話、御質問の趣意において、一體新圓所得者に課税するという意味なのか、それとも封鎖せよという意味なのか、はつきりしませんでしたが、新圓所得者に課税するという意味ならば、これは私は特に新圓所得者に課税するという税は考えておりません。しかしながら全體の税制を改革して、高額所得者に十分の課税をいたすということは、いたすつもりでおります(拍手)所得税そのほかの種々なる税が考案をされるわけでありますから、さような方面に課税するという意味ならば御同感であり、またいたすつもりでおります。ただ新圓を封鎖するということであるならば、これは私としてはできませんし、これまた社會黨の諸君が今日おやりになりましても、できないことと考へておるのであります。(拍手)この二つの問題は、水谷君のお言葉によると、次の總選擧の大いなる題目であり、殊に東京第二區において大いにやるということでありますが、何ぞ東京第二區に限らんや。全國に向つておやりになつてしかるべきであります。大體私のお答えはこれだけであります。(拍手)
〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=34
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035・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君) ただいまの水谷君の食糧遲配問題に對しまして御答辯をいたします。豐作と増配とによりまして、せつかく安定を見ましたところの食生活に、最近の遲配が大きな暗影を投じておるということは、まつたく遺憾でございます。從來比較的順調に進み來つた供出状況の下におきまして、かかる事態の生じたことにつきましては、御承知のように石炭不足に伴う輸送難、ゼネストの影響、その他種々の惡條件があることは御承知の通りであります。その打開につきまして當局はあらゆる努力を拂い、現に努力しつつあることは、私は承知いたしておるのであります。
〔發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=35
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036・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=36
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037・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君)(續) しかして私どもといたしましては、過去の事情は事情といたしましても、はからずもこの責任の大任を擔うことに相なりましたる以上は、できる限り速やかにこの遲配を囘復し、絶對に缺配に終らぬよう、最善の努力を拂う決心でおるのであります。(拍手)また根本の問題といたしましては、國内食糧による絶對量の不足の補填について、一日も速やかに具體的な輸入の計畫の確立を連合軍總司令部に懇請し、その實現を期することを念願いたしておるものでございます。(拍手)
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=37
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038・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 水谷君の御質問にお答えいたします。水谷君は、四月二十五日に決定いたした總選擧を、いかなる選擧法によつて施行するかというお尋ねであつたと思ひます。實はいかなる選擧法によつて施行するかということよりは、現在選擧法があるのでありますから、その選擧法を改正する意思があるかないかというお尋ねの方が、むしろ具體的ではないかと思うのであります。(拍手)現在の選擧法は、水谷君もよく御承知であらせられる通り、かなり忽卒の間にできた選擧法でありまして、いろいろの缺陷のあることは、政治的に多年の經驗のある水谷君としては、もうよく御了承のことと存じます。從いましてこの選擧法の缺點のありましたり、不備のある點は、できれば改正いたして選擧に臨んだ方がよろしいと考えるのであります。ただ選擧法の問題は、政府の意思のみによつて決定される問題ではありません。これは議員諸君の大體のお考えがいかにあるかということを、かなりよく檢討いたしまして、議會多數の方々の御諒承に相なる程度においての必要なる改正ならば、これをいたしたいと思います。ただこの場合において、まことに議會の會期が限定されておりますので、いかなる程度において改正をいたすがよろしいか、あるいは現行のままでやむをえず行かなければならないかということは、まだ議員諸君の全體に對しての檢討も、時日の問題を考慮いたしてしておりませんから、この場合においてはつきりとしたお答えをすることは、御容赦を願いたいのであります。(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=38
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039・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいま水谷君から、勞働爭議、殊に最近の勞働爭議についていろいろお尋ねがありましたが、勞働爭議は、やはり起きたあとには、よくそれを批判しなくちやいかぬと思います。それで大體最近起きまする勞働爭議というものは、ほんとうに民主主義の展開の線に沿うていつておるかどうか。あるいは日本再建ということにうまく乘つておるかどうか。あるいは勞働者の生活保護、生活の安定というような問題、あるいは國民全體としての一人前の分け前の増加というような點に沿つていつておるかどうか。こういう點はやはり嚴格に批判しまして、そうして今後の問題に資していかなければならぬのであります。
殊に官公吏はストライキをやつてはいかぬ。そうして官公吏たる、公僕たる地位を離れて、そうして法律の命ずるところに違反してストライキをやることがはたしてよいか。あるいは少數の者に煽動せられてストライキをやるのがよいかどうか。あるいは軍國主義の時代には、少數の者に煽動せられまして、そうして國を誤つたのであります。(拍手)それだから、今度もそういう點について、よほど重大に考えていかなくちやならぬ。こういう點について、十分やはり勞働者諸君なり、あるいは經營者諸君の自覺を促し、良心の命ずるところに――正しくないと思うならば、斷固としてこれをやらぬならやらぬ、やるならやるとはつきりきめて、自己の良心の命ずるところによつて批判すべきものである。そういうふうに私どもは考えておりまして、こういう勞働爭議に對處しておるわけであります。
それから二月一日の勞働爭議につきまして、マツカーサー元帥の聲明によつて直前に收まりましたが、この點については政府も反省しなければならず、國民も反省しなくちやならぬ。ストライキをやる人も反省しなくちやならぬと私は考えております。またこのストライキは收まつたが、官公吏の生活問題をどうするということにつきましては、目下一生懸命これが解決の衝に當つております。(拍手)
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=39
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040・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 水谷君のお尋ねの中に、私の受持の部分があるのでありますが、大體その答えは石橋大藏大臣から濟んだようであります。重ねて私の所見を申し上げます。
石炭増産三千萬トンを掘つていくには、國有、國營を前提とした國家管理でいかなければ達し得ないだろうといふ御質問がありました。ところが續いて、それなら自分たちはどうするかというお話の中に、炭山別の責任ある生産であるとか、資材等のやみ防止を嚴重にやつていくとか、勞務者の勤勞意欲を盛んにするというような問題等がありましたが、その内容については、全然私どもも同感であります。但しこれらのことが、國營を前提とした國家管理でなければできないというお言葉には、必ずしも贊成できないのであります。(拍手)私どもは今この三千萬トン増産という重大なる責任を負つて起ち上つておるのでありまするが、これにはもしできるなれば、生産機構等をいじりたくないのであります。そのひまにわれわれは増産に當りたいということを考えておるのでありまするが、この問題につきまして、私は現在の生産機構において、そうして必要とあれば、さつき大藏大臣も申しましたように、増産のためであれば、あるいは國家管理も行うでありましよう。あるいは鑛區の借上げを行うでありましよう。増産一途に進んでいきたいということを念願いたしておるものであります。
自然肥料、鐵鋼の問題についても、強力なる國家管理云々というお話がありました。社會黨の昨年の大會にも、肥料の國營という方針が出ておつたようでありまするから、この國家管理というものも、おそらく國營を前提とするというお氣持であらうと思いますが、これは前段石炭について申し上げましたと同じような考えでありまして、私どもはこの必要を認めない。また實際増産のためであれば、國家管理等をやつていく。國有國營等のことは、今考えていないということだけを、はつきり申し上げておきたいと思います。(拍手)
〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=40
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041・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 水谷議員の御質問のうち、海陸運輸に關する點について御答辯申し上げます。お説のごとく運輸は、單に増産計畫の達成のみならず、一般産業復興の先行條件であるという考えの下に、私は從來から一生懸命この點に努力してまいつたつもりでございます。
まず陸運のうち鐵道について申し上げますが、御承知の通り結局隘路は石炭でございます。戰災等によりまして、陸運陸上施設、あるいは車輛等が相當の損害を受けておりますが、今や機關車あるいは車輛ともに、百パーセント復舊をみております。ただ御承知の通り停車場その他の施設は、まだ三、四十パーセントしか復元いたしておりませんが、これは別段運輸にそう直接惡影響を來しておるわけではございません。ともかくも國鐵がこれほど大幅な縮減をみたという最大唯一の隘路は、戰災にあらずして石炭であることは、御承知の通りでございます。御承知の通り石炭も、だんだん生産が國民各位の御協力によりまして伸びつつございますから、來月あたりからは貨客ともに相當復元いたします。殊に貨車の方は、月九百萬トンの輸送を目途とするように相なつておりまして、この點は石炭の配給を受け得る見込みでございます。また旅客につきましては、國民各位に非常な御迷惑をおかけいたしておりまして、まことに恐縮でございますが、これも來月あたりからよほど復舊してまいりまして、昔のような状態に歸つてくるのも遠からざる將來であると存じておりますから、どうぞ御期待を願いたいと存じます。要するにわれわれは、戰爭前あるいは戰爭中に比べて、貨客ともに徑庭のない昔の状態に伸ばしたい。進んでは現在の輸送需要量を充足して餘りあるような輸送力を發揮いたしたいということを目途として進んでおります。
それから自動車でありますが、これは戰爭中は六萬輛ばかりございました。しかしながら戰爭の結果三萬四千輛まで減つてまいりましたが、先般本會議において前運輸大臣が御報告申し上げました通り、一萬六千輛ほどのトラツクを進駐軍から下附を受けまして、三萬四千輛に加えますと約五千萬輛、しかしながらまだ戰爭中に比べて一萬輛不足でございますが、ともかくもトラツクは非常に復元しつつあるということを御諒承願いたいと存じます。私どもは陸運のうち、この自動車につきましても、戰爭中に比べてあまり徑庭のない輸送力を發揮するということを目途として努めております。自動車の新造あるいは修繕等につきましても、大いに努力しておりますが、かんじんの工場等が、これまた石炭という隘路のために、修繕力なり、あるいは建造の力を伸ばしておりません。しかしながら既に二千輛ぐらいに戰後、殖えておるのでありますから、この點御諒承願いとうございます。
それから最後に海運であります。海運は戰爭中六百萬トンもございましたのが、現在百二十萬トンに減つておりますが、輸送力としては七十萬トンに相なつております。これは沈沒船を引揚げたり、あるいは修理することによりまして、さらに三、四十萬トンは増加せしめたい。しこうして石炭の増配を受けることによりまして、戰爭中に比べて少し下つておりますところの船舶の運航率も、相當上げたいということを目途として、折角努力中でございます。ともかくもわれわれは、輸送は産業復興、祖國再建の先行條件であるという認識の下に、折角努力中でございます。それにつきましても、石炭がその輸送という先行條件の、また先行條件をなすものでございますから、この三千萬トンの増産は、國民各位相協力していただいて、ぜひ早急に實現したいとお願いする次第でございます。何分よろしくお願いいたします。
〔水谷長三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=41
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042・水谷長三郎
○水谷長三郎君 ただいま私の質問に對しまする總理初め各大臣の御答辯は、必ずしも滿足はできないのでございまするが、その詳細は、同僚議員によつて、他の機會において補われることになりましようが、ただ二、三この際述べておかなくてはならない問題だけを述べておきたいと思ひます。
石橋大藏大臣は、お年にも似合わず大分に興奮されまして、我が黨の國有國營、國家管理について、社會黨は増産の邪魔にならうが何にならうが、それにかかわらずこういうことを主張すると言われたことは、わが黨の政策をしうるもはなはだしいものであらうと思うのであります。われわれが申しまする國有國營の根本觀念は、一九一八年イギリスの勞働黨が初めて綱領に掲げられたように、勞働の成果を全收するために、かつその成果をば可及的公平に分配するために、われわれは生産手段の社會化、公有を叫んでおるのでありまして、石橋君のようなことで、われわれは無責任に叫んでおるのではございません。
さらにまた戰時公債の問題と、そうして新圓の問題に關していろいろの御説明がございましたが、われわれは戰時公債に關しましては、さきに申しましたように、根本的にこれは棒引きであります。すなわち政府が戰爭中勝つということを前提として國民に公約した一切の債務の棒引き、すなわち戰時補償の全面打切り、戰時公債の棒引き、これはわが黨が立黨以來叫んでおつたのである。しかしながら今日の緊急對策といたしましては、あえて棒引きまでをうたわずに、元利拂をこの際一時停止するということをわれわれは言つておるのでございまして、それは戰時公債の棒引きという根本的立場に立つて、應急措置としてわれわれはそういうことを言つておるのであります。
さらにまた新圓の問題でございますが、われわれは新圓を封鎖のための封鎖というようなことを言つておるのではございません。われわれは新圓所得者を主たる課税對象として、第二次財産税、たとえて言えば危機突破財産税を創設することを主張する。そのためには新圓の登録制を實施する。その場合脱税防止のために、税法決定から登録納税までの期間をば最短期間とするというような、適當な措置を講ずるということを言つておる。われわれのいわゆる新圓の登録制は、危機突破財産税をとるための一つの手段として、われわれは叫んでおる次第でございます。
大藏大臣もまた第九十一臨時議會の場合において、財産税の免税點が十萬圓に引上げられたときに、もしこれで所期の目的を達することができなければ、これはまた別個に考慮するということを、大藏大臣みずから言明されておるのであります。われわれはこの惡性インフレーシヨンの嵐の中に生産を増強するがためには、大藏大臣が計畫的にインフレ對策をやられたと逆に、計畫的に金融恐慌對策をとらなければ、現在の惡性インフレのもとにおいて生産の増強は斷じて不可能だと思うのが、われわれの考えである。これがいわゆる石橋財政とわれわれとを根本的に區別しておる點でございまするから、その點誤解のないように願いたいと思います。
さらにまた河合厚生大臣の言葉でございますが、なるほど勞働者、勞働運動が、いわゆるアチソン氏の言葉をかりて申しますならば、憲兵的少數分子によつて指導される。これはよくないということは、われわれも同感である。しかしながらわれわれが政府に聽きたいのは、また政府の責任としたいのは、いわゆるややともすれば、そういうようなむりな煽動、むりな指導によつて、すでにゼネストまで行くという下地をば、政府みずからがつくつておる。そういうことをわれわれは責めたいのであるというのが一點であります。いわゆる火事というものは、半鐘が鳴つて起るのではない。火事があつて初めて半鐘が鳴るのである。厚生大臣のさきの説明を聽いていくと、どうも火事は半鐘が鳴るから起きるというような考え方でございます。これらは根本的に改めなくてはならぬと思います。
まだその他各大臣に對して言いたいこともございますが、就任早々の大臣もおられますから、敬意を表しましてこの邊で終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=42
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043・山崎猛
○議長(山崎猛君) この際暫時休憩いたします。
午後三時四十五分休憩
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午後四時九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=43
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044・山崎猛
○議長(山崎猛君) 休憩前に引續き會議を開きます。小坂善太郎君。
〔小坂善太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=44
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045・小坂善太郎
○小坂善太郎君 私は日本進歩黨を代表いたしまして、吉田内閣の施策全般に關して、關係大臣各位に對しましてそれぞれ質疑を行い、かてて加えてこれを鞭撻いたしたいと考えるのであります。
吉田内閣は組閣以來一年有半、敗戰後のわが國を立て直すために、いくたの施策を施したのであります。巷間、吉田内閣を目して、とかくの論議をなすものがありまするが、その行つた制度上の改革についてみますならば、おそらくわが國有史以來、大化の改新以來の大きなものがあるのであります。すなわち憲法の改正、農地制度の改革、補償の打切り等でありまして、このいずれの一つをとつてみましても、これはおそらく平和時においてはなかなかに行い得ない制度上の大改革であります。これを逆説的に申しますならば、平時におきましては、いかなる強力な内閣が出ましても、よくこの一つをすら行い得ないだろうと考えられるのであります。すべてこれ敗戰後のわが國のおかれておりまする特殊事情によるものであります。すべてこれ世界の潮流の一環であります。
しかしながら問題は、いかにこれらの制度上の改革をなしたかということではないのでありまして、いかにこれらの制度上の改革を國内情勢に適合せしめるかということにあるのであります。この制度上の改革とにらみ合わせまして、終戰後の産業の麻痺状態、インフレの高進のもとにおきまして、わが國をいかに再建するかということにおいて、でき得る限りの廣い基礎の上に、廣汎なる國民的な基盤の上に内閣をおきまして、強力に施策を行うことが望ましいと思うのであります。この觀點から、擧國内閣の構想をもたれました吉田内閣總理大臣竝びに幣原國務大臣に對して敬意を表するものであります。
そこで日本の將來の經濟的なよりどころに關しまして、さしあたりの危機突破の對策は別といたしまして、將來においてはたして社會主義日本を建設しようというのかあるいはまた修正された資本主義日本を建設しようといたすのかということについて、實は論議が根本的に鬪わされなければならないと思うのであります。(拍手)私見といたしましては、國内に資源が乏しく、かつ外國貿易に依存しなければならないわが國といたしましては、他のあらゆる國が社會主義國にならざる限りにおいては、わが國では資本主義的な形を捨てるわけには行かないのであろうと考えるのであります。すなわち個人の創意工夫あるいわ責任を重くみまして、國の中に散らばつているところの小さな落ちこぼれを拾つていかなければならない形に考えられるのであります。しかしながらこの場合におきまする個人の自由も創意も、あるいはその活動も、全體の公共の福祉を害せざる範圍においてのみ許される。すなわちわが黨の申します社會連帶主義の基礎の上に立ちまして、すなわち國家管理という大きなわくのもとにおける資本主義、すなわち修正されたる資本主義の形態、あるいは方式というものが、今後の日本のあり方であると思うのであります。これに對して總理大臣からお考えを伺ひたいと思いまするが、ただいまここに見えませんから、明日あらためて御答辯を願いたいと考えるのであります。
さしあたりの現状に關しましては、總理大臣の演説においても言われましたごとく、經濟においてもきわめて不健全な状態であり、國民生活におきましても不安定な状態でありまして、眞に遺憾にたえない状態であります。そこで、われわれといたしましては、あらゆる情熱と知能を傾けまして、すべてを動員いたしまして、一日も早く國民生活の安定を期し得る状態に囘復するようにはからなければならないのであります。
私はこれから順を追いまして、總理大臣の演説に關して、その演説に流れた線を追いまして、質疑を展開いたそうと考えるのであります。しかしながらそれに先だちまして、まず産業の再建とインフレーシヨンの克服ということをわけて考えられたことに關しまして、わが意を得たりと考えるのであります。すなわち去る九十議會におきまして、石橋大藏大臣がケインズの不完全雇傭理論を援用されまして、述べられましたところによりますと、大藏大臣は國に失業者があり、遊休施設の存するときは、不換紙幣を増發いたしましても、これが完全稼働、すなわちフル・エンプロイメントを目ざす限りにおいて、ケインズの言う意味においてインフレーシヨンではないと、こういうことを演説せられまして、それ以來石橋財政という言葉が、その意味において解釋せられ、そう發せられたのであると考えておるのであります。すなわち生産再開のためには資金をいくら注ぎ込んでもよい。すなわちそうすることによつて、インフレーシヨンはなくなるんだ、こういうお考えを言われたのでありまするが、今囘の首相の演説におきましては、率直にインフレの現状を認め、財政收支の均衡化によつてインフレを克服すると言われましたことは、萬般の施策をより合理的な科學的な基礎の上におくことを豫想させられるものでありまして、總理大臣の御演説に關しましては、大藏大臣を含めて敬意を表するものであります。
そこで生産再開の對策といたしましては、政府は、石炭を二十二年度に三千萬トン採掘することを可能とする態勢を囘復することによつて、わが國民經濟を擴大再生産の過程に轉ぜしめる、こう言われておられるのであります。そうして私はそこで考えるのでありますが、石炭を三千萬トン掘るということは、まことに容易なことではないのであります。すなわち鐵鋼であるとか、セメント、坑木、こういつたものを重點的に配給し、切羽を延長し、掘進速度を早め、あるいはまたそこに働く勞務者の住宅、おそらく三十五萬戸と計算されるものをつくり、その他萬般の施策をなしまして、炭鑛勞務者の生活を安定せしめて、心から政府の施策に協力させるような態勢をとらなければならないのであります。しかしながら目下の一般産業の資材の生産状況におきましては、總理大臣が前の議會で指摘せられましたように、平時の最低の需要に比べまして、二割七、八分の見當に當るのであります。この少い資材を動員いたしまして、ことごとくこれを石炭中心に注ぎこむということは、いわば石炭の増産に向つて國力を傾けることであります。國力を傾斜せしめることであります。これは決して竝大抵のことではないのでありまして、總理大臣も言われたごとくに、他の産業または國民生活に對して、相當の犧牲を強いることになるのであります。これに對しまして現内閣はいかなる腹をもつて臨まんとせられるのであるか。
われわれ國民は、さきに明るい希望を見出すならば、現在よしいかに苦しくとも、これを耐え忍んでいこうと考えるのであります。その覺悟をもつているのであります。石炭を三千萬トン掘れるようにするならば、他の資材はどれほどに生産が上つてくるのか。また二十三年度においては、石炭を初めとする一般の資材生産状況はどのようになるとお見透しをもつておられるのですか。國民に對して、一年々々ふんばればどこまで行けるのかという、さきに明るい希望を明確にこの壇上からお與え願いたい。これは安定本部長官竝びに石井商工大臣にお示しを願いたいと考えるのであります。
なお非常に大きな賠償の問題が未決定でありますから、長期にわたる計畫をここに示すということは困難であるかと存じまするが、少くとも年次計畫を立てて、本年度の見透しについてはこれを示す必要がある。すなわち綜合的な計畫經濟を立てまして、大きな國家管理のわくの下におきまして、農業、工業、商業その他の各分野を畫定いたしまして、八千萬の人口を適正配分する、すなわち國土計畫を立てまして、産業の再建をはかる必要があると考えるのであります。そうして國民が前途に明確な目標をもつて、計畫的に、一年々々復興にいそしむことができるようにしていただきたい。そうすればこそ、耐乏の生活をも現在は忍び得ると思うのでありまするが、このことは、國家再建の途上最も必要であると存じまするので、これまた明日總理大臣から明確にお示しを願いたいと思うのであります。
それにつけましても、總理大臣の演説の中に、政府は統制制度の調整に關して内閣に調整機關を設けるということを言つておられるのであります。このことはきわめてじみなことでありまするが、非常に重要なことでありまして、至急設置するように私は希望いたすのであります。すなわち私が今まで述べましたような國家再建の計畫を立てる目的をもつて、經濟安定本部というものは發足したのでありまするが、現在の安定本部のやつておりますることは、錯綜する諸種の統制法規を調整するために、安定本部が實は事務的に忙殺せられているように考えるのでありまして、このことは本末轉倒であると言わざるを得ないのであります。すなわち各省の連絡機關のごときものは、別途にこれを設けられまして、安定本部は五箇年後の再建日本の姿をいかにして具現するかということをもつぱら考究し、かつ企畫する機關とされたいと存ずるのであります。
私は總理大臣が、最近に至るまで、五箇年後の再建の姿を世界史的な觀點から眺めておられるような人物を總務長官として就任せしむべく懇望せられておつたのを見まして、心中ひそかに敬意を拂つておつたのでありますが、再建五箇年計畫を立てるために、安定本部の機能をあげて努力し得るように、安定本部の長官は、五箇年間内閣の交迭のほかにあり、内閣の組織に超然として、異動もないような官制を設けられまして、綜合計畫企畫官廳としての經濟安定本部を確立せらるように私は希望いたすのでありまするが、この點に關しましても、明日總理大臣から特に御答辯を得たいのであります。
現在私は、かような觀點から政策に統一性をもちたい、綜合的な施策を要望したい、こう考えているのでありまするが、各官廳間の連絡におきましては、依然としてセクシヨナリズムが横行しておると思うのであります。すなわち昨年末、かつてから問題になつておりました肥料行政の一元化の問題につきましても、膳元經濟安定本部長官のもとにおきまして、肥料行政に關しては、生産計畫は經濟安定本部が立てる、生産行政に關しては商工省がやる、配給行政に關しては農林省がやると、それぞれ確定したと傳えられておつたのでありまするが、今次の改造内閣の初閣議の當初におきまして、突如として肥料廳ができて、それが農林省の所管になるということが決定されようとしたという話も聞きました。また商工省においては、石炭増産について非常な熱意を傾けておりましたところが、突如として石炭廳が内閣移管となり、その關係者を茫然たらしめたようなことも聞いております。また星島商工大臣は、前議會において、しばしば石炭三千萬トンを掘るということを言われておつたのでありまするが、私の聞くところによりますると、あるいはこれは私の聞き違いかもしれませんけれども、實際石炭の物動は二千七百萬トンを基準としてつくられておつた。それが實際物動として取上げられ、規格決定をいたしたのは、この二月にはいつてからであるというようなことも聞くのであります。かくのごときは政府におかれましてもいろいろと御苦心になつており、また戰後のもろもろの困難なる事情がそうさせるのかとも思いまするが、政府は行政事務の敏活化竝びに官紀の一貫性に關しまして、特に御留意を願いたいと思つて一言申し上げるのでありまするが、これに關しまして、星島前商工大臣竝びに石井商工大臣の御意見を求めたいのであります。
首相の演説は、さらに進みまして、重要物資に關するやみ行為の取締りに關して一言されておるのであります。これがきわめて重要なことは申すまでもないのでありまするが、これは單に末梢を取締ることによつて解決し得ないのであります。か弱い露天商を取締ることによつて能事終れりとすることは、萬々ないと存じまするが、まず主食を初めとして配給物資の圓滑なる配給に全力をあげられ、さらに終戰後の特殊物件を利用して大がかりな組織的なやみ行爲をなしている人があるといううわさも聞くのでありまするが、こういう新圓利得者について徹底的なメスを入れられるよう希望いたすのであります。内務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
次にこの際強調いたしておきたいことは、先ほど水谷君の話の中にもあつたのでありまするが、輸送機關の整備計畫化であります。このことは主食の遲配にも現實に現われている問題でありまして、陸運の能力につきまして、國民に周知徹底せしめられる必要がある。現在の陸運はどうなつているのか。さらに先般連合軍當局の好意によつて輸入いたしましたトラツク、トレーラー、こういうものが現實にいかようになつているのか。また將來これはいかように活用せられんとしているか。この點に關しまして運輸大臣の御答辯を得たいのであります。
さらにまた海運に關しましても、戰時中の規格型の商船はいずれも使用にたえぬというのであります。またその他のものも既に老朽に達しております。そこで日本は將來國際間に正當なる地位を囘復いたしました際、どうしても貿易を再開するような場合を今から當然に豫想して、これに備えておかなければならないのでありまするが、商船群と申しますか、商船隊と申しまするか、そういうものを今から計畫的に準備しておく必要があると考えます。この點に關しましても、運輸大臣のお考えをお聽かせ願いたいと考えるのであります。
さらにこの際科學技術者の優遇と、研究機關の國家補助ということに關して、政府の御注意を煩わしたいのであります。わが國が文化國家といたしまして再生する上に、教育の重要なることは申すまでもないのでありまするが、そしてこのことはしばしば本議場においても論ぜられたのでありまするが、技術者と研究機關の重要視が叫ばれなければならないと思うのであります。一體わが國の研究機關は、財閥が工業に關しまして支配的に地位を占めておつた時には、財閥によつて維持育成せられたのであります。しかしながら財閥が解體せられた今日、これらの科學研究機關は、いずれも無力化いたしておるのであります。科學技術の研究については、これが平和的な文化的な目的をもつたものに關しましては、國家としての補助、保護政策が必要であると考えます。これはもちろん獨占企業的なものの意味ではなくして、社會的な保護政策を言うのでありまするが、かつて理化學研究所のごときものがありまして、産業界が大いにこの指導にまつたことがあるのでありまするが、こういつたような科學研究機關に對して、國家補助を大がかりに行い、さらに技術者の地位を尊重するということを、教育者の尊重と竝び行うお考えが文部大臣にないかということを伺いたいのであります。
次にインフレーシヨンの對策でありまするが、總理大臣は、財政收支の均衡化、産業資金の合理的な貸出、通貨價値の安定ということを述べておられます。これらはことごとく同感であります。しかしながら私の考えをもつてしますれば、歳出は殖える一方でありまするが、歳入の面においては、財産税以外これといつて大きな目ぼしいものはないのではないか。一般産業の大きな營業利得というものは期待できませんから、これによる税收入は期待できないでしようし、遞信、鐵道等の特別會計においても、ほとんど黒字は期待し得ないと思います。そこで小さな問題かもしれませんが、タバコ、酒というようなものの値上が問題になると思います。大藏大臣はこれらの値上について御考慮になつておらば、お漏らし願いたい。
また財産税については、昨年の三月以降、いわゆる新圓インフレの高進によつて、特に財産の増加したものに關し、第二次の財産税を課せられるお考えはないか。そしてこれらのことを考えたといたしましても、結局歳入が不足すると思うのであります。そういたしますると、結局大藏省證券を出しまして、短期資金を獲得いたしまするが、これらのものが累積いたしまして、赤字公債になつてゆくのではないかというように考えるのであります。そこで私は金貨であるとか、あるいは米であるとか、こういつた價値不變のものを基礎とする、十年後沸いの小額公債をお出しになりまして、公債の消化と併せて新圓の囘收をはかる考えはないかという點をお尋ねいたしたいのであります。
また産業資金の合理的な貸出あるいは通貨の安定に關しましても、價値不變の通貨を基準として物價の變動をとらえてゆく。すなわち一九二三年にドイツにおいて行われましたロンバルド貸付において見られる安定價値計算の考え方を、大藏大臣はお考えにならないかと私は考えまして、實はお奬めいたしたいのでありまするが、この點に關してのお考えを伺いたいのであります。
又わが國の場合におきますると、外國爲替相場というものがありませんから、きわめて科學的に計算され、客觀的に妥當と見られまするところの物價指數を作製することが必要であると思いまするが、統計委員會等において、このような企をなさしむるようなお考えはないか、藏相の御意見を伺いたいと思います。そしてこのことは、少くとも官公勞の職員に對しましての賃金、俸給、これを適正にスライデイング・スケールによつて算出し得るという利點があると私は考えておるのであります。
次に政府は、勤勞者の生産者的地位の向上と、生活の安定について至大の關心をもつておると言われております。また合理的な給與體系を確立したいと考えておると言われます。このことはきわめて必要なことでありまして、勞働運動と經濟復興に關する心構えに關しましては、昨日わが黨の石黒議員が指摘いたした通りでありまするが、政府は眞に盛り上る勞働者諸君の生産意欲を振い起して、これを巧みにとらえるように努力せらるるよう切望いたすのであります。
一體勞組法とか勞調法の精神は、かつて資本主義の爛熟期において行われました資本家の横暴を抑えて、賃金と利潤との間の不公平なる分配比率を抑制するという考え方が、多分に流れておるのでありまするが、現下の勞働運動の焦點は、資本家の搾取への鬪爭では私はないと思うのであります。すなわちインフレーシヨンの高進によつて、賃金、俸給の實質が低下していく、その低下していくことに對しての鬪爭でなければならない。すなわち鬪爭の目標は、經濟攪亂をなすもの一般に對して向けられなければならないと思うのであります。すなわちみずからの力によつてみずからの産業を再建し、みずからの祖國を救うのだという大目的につながらなければならないと思うのであります。この點に關しまして、政府は勞働運動の指導に對して一貫性をもたなければならないと考えまするが、厚生大臣の御見解を伺いたいと存じます。
さらに海外引場者のことに關しまして、昨日石黒君が政府の御當局にその促進方を要望いたしましたが、私はさらに重ねてその引揚者の待遇について萬全を講ぜられたいということを、特に申し上げたいのであります。さらにこれは厚生大臣の御管轄外になるかもしれませんが、やはり多くの學生が歸還しております。この學生の入學等に對しても、特別の處置を今からお考えになつていただきたいというふうに存ずるのであります。
次に農林大臣に若干お伺いいたしたいのでありまするが、政府においては、統制のわくは次第に取はずしよいものからはずしていくと述べられておるのであります。そこで私は米麥等の主食に關しましては、供出完納後の保有米麥に關しまして、特に政府において特別の價格をもつてこれを買上げ、そうしてそれを他に轉賣せらるるという御意向はないかという點を伺いたいのであります。(拍手)さらにまた鮮魚であるとか蔬菜であるとか、こういつたものに對する統制はいかにお考えになつていらつしやるかという點をお漏らし願いたいのであります。なおわが國の見返り物資の大宗でありまするところの生糸、この問題については、しばしば本議場で論ぜられておりまするが、この繭の掛値、繭價が未だに未決定なのであります。これは一體いかが相なつておるのか、繭價はいつ決定されるかということについて、お伺いいたしたいと存じます。
これを要しまするに、總理大臣の演説を拜聽いたしますると、わが黨が昨年末決定いたしましたところの新政策、竝びに本年の一月二十日に發表いたしましたところの緊急對策にことごとく合致し、これを全面的に取入れられたものでありまして(拍手)この點に關しましては深く敬意を表するのであります。政府はこれが實行にあたつては、緩急よろしきを得て、國民大衆の聲なき聲を聽かれて、國民に先だつて憂え、救國の大道を邁進せられるよう切にお願いいたして、私の質問を終ります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=45
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046・山崎猛
○議長(山崎猛君) 内閣総理大臣はやむを得ざる用務のため外出せられましたので、總理大臣の答辯はこれを保留することにいたします。
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=46
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047・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 小坂君の御質問中、私の所管に關する部分についてお答え申し上げます。安定本部においては大きな長い五箇年計畫と、いうようなものの設計にもつぱら當り、當面の問題についてはもう少し別な機關をつくれ、その點いかが、こういうお尋ねでありましたが、御意見は非常にごもつともと存じますが、現在の安定本部は、とにかく一年間を限つて――これはあとはわかりませんけれども、つくれらたものでありまして、むろん將來の計畫というものについても、研究の基礎をつくつておりますが、まず當面の經濟をどうして再興するかということの立案及び指導に當ろうとしておる次第でありまして、先ほどお話の統制調整委員會――名前は何としますか、統制調整機關というようなものも、また安定本部で世話をすることになると考えておる次第であります。なお數日前にも總理及び私から申し上げたように、ただいまのところでは、長い間の經濟計畫というものを立てるのには相當の不便がありまして、國際經濟の關係等が未だはつきりいたしておりませんし、國際經濟そのものもはつきりしていないというような次第でありますので、十分の計畫は立てられないと考えますが、なお石炭増産等の結果が、二十三年度以後においてどういう影響を及ぼすかということについては、これは數字にわたりますので、いずれ豫算總會等において、資料をそろえてお答えをいたしたいと存じます。
それから肥料廳のことは、これは農林大臣等からお答えがあると思いますが、これは内閣で決定をしておるということは事實でありません。
それからタバコ、酒等の値上げについて考えておるかという御質問でありますが、これは考えております。
それから第二次財産税を行う意圖ありや否やというお尋ねでありまするが、これはただいまのところでは考えておりません。先ほどもどなたかの御質問に對して申し上げたと思いますが、ただいまのところでは、既に計畫しておる財産税がようやつと來月終了をしようという――補償打切りがまだそのあとに續いてまいりますので、その上でなければ、かりにかような大きな第二次財産税というものを施行するといたしましても、その上の問題であると考えておる次第であります。しかしながら二十二年度の豫算は、先ほども申し上げましたように、第二次財産税というものを施行しませんでも、税制改革その他によつて、歳入は相當多くを見積り得るものと考えております。
それから何らか小額公債を發行して、これを賣り出し、新圓吸收等に役立てる意圖はないかというお尋ねでありますが、さような公債を計畫いたしまして、これが金融機關以外に賣れるという見込みがありますれば、ぜひいたしたいものと考えておる次第であります。ただいまのところでは、まだ具體的にこれこれのものを發行するという計畫は立つておりません。
次に安定價値計算のことは、小坂君からしばしば御注意がありまして、御意見は常に尊重して伺つておる次第でありますが、ただいま私の考えでは、まだその時期ではないのではないか。やはりこれは時期を見て――かりにこういうものをいたすといたしましても、その時期を見るべきものと考えておる次第であります。なおそれについては完全な物價指數をつくる必要があるという御意見も、かねて伺つておりまして、同感であります。これは今囘統計委員會の決定によりまして、政府においては相當統計の整備に努力いたすつもりでおります。その一つとしてむろん物價指數等も取上げられてまいることと考えておる次第であります。以上はなはだ簡單でありますが、お答え申し上げます。(拍手)
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=47
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048・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 小坂君にお答えいたします。石炭が今問題の中心になつておりますが、この三千萬トンの増産のために、むりな犧牲をほかの方面に求める、しかし將來に明るい希望があつたならばよいが、ほんとうに明るい希望をもつことができるかどうかというのが、第一番目のお尋ねであります。昨日でありましたか、青木君の質問に對しても答えましたように、私どもはこの石炭増産のために、ほかのあらゆるものを犧牲にしてかかつていきますが、その期間をなるべく短くいたさなかつたならば、ほかの産業は遂に息を吹つ返すことができなくなるだらうということは、私どもの深く注意をいたしておるところであります。ということは、とりもなおさず、石炭の増産がだんだんできてきますれば、その増産の部分がほかの産業にもまわつていくのであります。やがて平和産業であります纖維製品であるとか、あるいはそのほかの日用品等にまでも、いろいろな材料がだんだんとまわつていくことは當然なんであります。一體がそうしたらどんなものができるか、どういう程度にできてくるかということにつきましては、目下いろいろな材料を集めて研究中でありますが、まずそういうことの計畫を立てるにあたりましても、海外から參ります石炭、重油等が今後もどういうふうに來るか、あるいはそれを運ぶ船はどうなるかというような、あらかじめ考究しなければならないものもありますので、三千萬トンできたら何がこのくらいできるというところをはつきりつかめない憾みがありますが、せつかくのお尋ねでありますから、はなはだラフでありますが、私どもの今もつております資料によりますと、鐵鋼は約二倍ぐらいに増すのじやないか、銅は六割から七割ぐらい増し得るんじやないか、セメントは五割ぐらい増すのじやないか、化學肥料も五割ぐらい増す、纖維製品は二、三割増し得るんじやないかというような計算が、およそ出ておるようなわけであります。(拍手)どうかこういう數字がこれ以上にも實現いたしますように、われわれ努力を續けていきたいと思つております。(拍手)
それから肥料行政一元化の問題は、石橋大藏大臣から説明がありましたから、重複になるかとも思いますが、これは研究をいたしておる状態であります。昨年の議會においても、この肥料行政一元化問題はいろいろ論ぜられ、政府の答辯も時にはまちまちであつたこともあるようであります。さいわいに公平なる農林大臣が親任されまして、農林大臣と私とよく協議をいたしまして、増産にはいかにすればよいかという點から、この問題を決定いたしたいと思つております。
それから石炭廳の獨立について、どういうつもりか、どういういきさつがあるかということのお尋ねでありました。石炭がこの際われわれ日本國民の經濟生活の復興の一番大事なものとして、三千萬トンを目標に起ち上つた政府は、どうしてもこれを完遂しなければならぬ。それについて今商工省の一外局であります石炭廳でよいかどうかということが、研究の對象になつたのであります。これをもつと大きくクローズアツプして、そうして内閣の直屬にして、各省ことごとくこれに力を注いでいくという形をとろうじやないかというのが、この石炭廳獨立の初めの目標であります。しかしただ商工省の一外局を内閣にもつてきたということだけでは、これは何ら利するところはないのであります。逆に私はそれは惡くなると思うのであります。それで中央にもつてくるには、もつてくるだけのいろいろな機構の改正をしなければならない。まず第一は、内閣にもつてきたら、各省が今よりもこの問題について協力一致して動くように――今は商工省にあるから、あるいはセクシヨナリズムとか何とか言われて、農林省が應援しないとか、あるいは運輸省が應援しないとかいうことがあつてはならないという建前からいたしまして、内閣總理大臣が各省大臣に強い命令をする規定をこの中に織りこみ、さらにこの長官である者は閣議に列して、そうしてほかの閣僚との連絡、國政上のあらゆる問題についても十分了解して、自分の動きをきめて行くというために、石炭廳の長官は國務大臣であるべきではないかということが私の意見であります。(拍手)この線に沿いまして、さいわいに總理初め全閣僚の同意を得て、この方向に進みつつあります。こうやつてでき上りました石炭廳、そこにできまする石炭大臣が、あるいはこういう議會中でありましても、議會を離れて、九州にあるいは北海道の山に飛んで行つて、勞務者あるいは經濟者と膝つき合わせて、増産の實をあげるというような形がとれるようになりましたならば、私は必ずや三千萬トン増産に、この組織の變更ということが非常に有意義であつたということがわかると思うのであります。私の答辯はこれで終ります。(拍手)
〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=48
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049・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) お答え申し上げます。先般進駐軍から拂下げを受けたトラツク竝びにトレーラーの配分内容を御質問でございますが、詳細にわたりましては別の機會に申し上げたいと思いますが、要するに配分委員會なるものを設けまして、貿易廳を中心として各官廳、民間業者等を入れまして、十分研究した結果、具體的に妥當な配分と思われる計畫を立てたわけであります。こまかい數字にわたることは時間の關係上避けますが、要するに官廳用重要物資關係で、省の直營管理關係、それから都市の貨車の代行、これらは運輸省でやり、あるいは所管廳でやるものであります。それから交通を緩和するために、トラツクを改造してバスとして活動させるものが一千輛ほどに及んでおります。トレーラーも大體そんなような標準でございまして、トレーラーが八千數百輛、トラツクが八千數百輛、合計一萬六千輛ということになつております。こまかいことはなお別の機會に縷縷と申し上げるつもりでございます。
それからわが國が獨立國になりまして國際貿易が再開された場合には、商船隊というようなものを豫想し、計畫しておるかどうかというお尋ねでございますが、御承知の通りわが國は四面環海であり、また資源のきわめて少い國でありまして、國際貿易に從事することによつて、わが八千萬同胞を養わなくてはならぬということは、私全然見解をひとしゆうするものでありまして、將來は商船隊というものの充實を期したいと存じております。ただ御承知の通り現在は進駐軍の管理下に海運があるのでありまして、できるだけ進駐軍の諒解を得て、海運の充實に努めておる次第でございます。以上をもつて御答えといたします。(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=49
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050・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいま小坂議員から勞働問題についてお尋ねがありましたが、大體御論旨には至極贊成でございます。それで政府はこの勞働問題についてどういうふうに一貫性をもつた考えをもつておるかというお話でございました。これはたびたび申し上げる通りに、民主主義の展開という太い線に沿いまして問題を取進めていつております。しかし一方日本再建ということはどうしても必要だ、この日本再建という意味は、やはり日本民族のためであり、國民のためであり、また勞働者自身のためである、その線に沿うて、問題を太く考えて取扱つていつております。
それから賃金の問題につきましては、これは適正なる賃金をきめなくちやならぬのはもちろんでありますが、ただいまの日本の情勢におきましては、國が非常に疲弊しておる關係上、最低賃金の確保という線が最も重大に取上げられております。アメリカのごときは、ストライキは多くはいかに利潤と賃金とを分配するかという點に主力が注がれておりますけれども、日本におきましては、むしろ生きんがためにどうしても最低賃金を保障しなくちやならぬという點が重點になつております。しかしもちろん利潤との間にも公正なる配分は考えていかなくちやならぬと思つております。
なお引揚者の問題についてお尋ねでありましたが、政府は既定の方針に沿いまして、あるいは生活保護法により、あるいは庶民金庫の貸出により、あるいはその他の定着方針をとりまして、實行しております。殊に越冬物資の配給である毛布百四十萬枚のごときは、既に配付を完了いたしました。夜具、ふとん七十萬組は、寒い所から先にやつたものでありますから、まだ全部配給は終つておりませんが、約六割見當は配給を終りました。それから越冬住宅對策につきまして、二億六千萬圓ばかりの金は全部使用しております。なお在外資産を對象にするところの引揚者に對する補償、貸付等の問題につきましては、研究中でありますが、まだ結論を得ざることをはなはだ遺憾としております。しかし庶民金庫の金のごときは、御承知の通りに三億圓を政府から出しまして、それを十億圓にまわしておるのでありまするが、これらはほぼもう使い果しましたので、その次にさらに三億圓を出しまして、これを十億圓に運轉するということについて、具體的に研究を進めておる次第であります。(拍手)
〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=50
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051・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君) 小坂君の御質問で、私の受持は、一は供出完納後の保有米麥については、これを政府において特別な價格をもつて買上げて販賣する考えはないか、二は生魚、蔬菜の統制方針はどうか、三は繭價はいつごろ決定せられるか、この三點であろうと思います。順序をかえまして、鮮魚、蔬菜の統制方針、すなわち生鮮食料の統制について、前に申し上げたいと思います。
生鮮食料品を統制するということは、元來非常にむずかしいことでありまして、なかなかこれは現にうまく行つておらないと思つております。從つてこの現状においては、できるだけ合理的な改善の方法を講じてゆかねばならぬ、と思いまするが、大體できるならば速やかにこれを徹廢した方がよからうと思います。(拍手)それは昨日總理大臣もそういうことに向つての御答辯があつたように聽いております。根本的に統制を撤廢するということにつきましては、現在の主食の事情、つまり多量の食糧を輸入しなければならぬ、その他漁業用の重油のほとんど全部が輸入にまたなければならぬという實情等を十分に考慮に入れてかからねばならぬ事情があると思つております。從つてこれらの事情との關連において、その時期、方法、その他順序等を愼重に檢討してゆきたいと考えております。なおこれらの問題は、近く内閣に設置せられるところの統制制度調整に關する機關において、まず第一にこの問題を取上げてもらいたいと私は思つております。(拍手)
それから供出割當完了後のいわゆる超過供出米については、政府といたしましても、でき得る限りその勞に報ゆるため、あらゆる措置をなしたいと考えております。せつかくそれに向つて、當局ではいま努力しておるのでございます。現在までに決定しておるものを申し上げますると、肥料を供出米一俵につき二貫のリンク、價格において一石當り百五十圓の特別報奬金を與えるということであります。その他纖維製品等についても、ただいま研究中であります。右のほか、特別價格をもつて買上げるかどうかの點につきましては、これは關係するところが非常に廣範圍でありますので、十分檢討してこれを決定したいと思つておりまするが、ただいまのところ、まだこれを決定したということを申し上げまする時期に到達いたしておりませんから、この點はどうぞ御諒承願いたいと思います。
それから繭價の決定はいつするか。これもまことに緊急なる問題でありまして、これは關係方面とせんだつて來、私の就職前から、毎日熱心なる交渉にかかつております。これはもう近近のうちに何とか決定をいたしまして、發表する機運に向うことと存じます。(拍手)
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=51
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052・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 小坂君のお尋ねにお答えいたします。小坂君の私の所管のことに對する御質問は、三點であつたように思つております。第一は、主食物に對してやみを撲滅するように、嚴重に取締つては如何、これがいかなる状態にあるかということが一點、その次は連合軍から返還される特殊物資の處理をいかにしておるか、これがやみに流れておらぬかどうかという御質問だと思います。順次お答えいたします。
主食物の取締りを嚴重にして、これを徹底的に撲滅することは切望するところでありますが、これはなかなかむずかしいことで、昨年八月一日、すなわち八・一の肅正と申されたことによりまして、嚴重に取締りを斷行いたしまして、相當の成績をあげたようでありましたが、また再びこれが元に戻るような傾向を見ましたので、今月に入りましてから、全國にわたつて、主食物の街頭販賣はもちろん、あらゆる方面において嚴重に取締り、できるならばやみ市場を撲滅したいとせつかく努力しております。相當の效果はあがろうと思いますけれども、なかなかこれを徹底的に一掃することは、非常に困難なることであると憂慮いたしておる次第であります。
また、連合軍から返還を受けた特殊物件の處理、及びそれがやみに流れておるかどうかという御質問であります。特殊物件の處理は、連合軍最高司令部よりの指令に基きまして、適正に處理いたしておるのでありますが、處分の公正を期するために、中央にては内閣に關係官廳の職員、地方には各道府縣の地方長官を中心といたしまして、官民の關係者をも入れて、特殊物件處理委員會を設けて、特殊物件の處分は、すべて議を經て決定いたすことにいたしておるのであります。特殊物件の拂下げに當りましては、地方廳より最終消費者または物資ごとの統制機關に拂い下げることといたしまして、その間に中間業者またはブローカーの介在しないように措置いたしております。そうして現在連合軍と緊密な連絡をとりまして、特殊物件拂下げ後の處分の状況について調査を行うておりまして、その結果不適正なる事實の判明した場合においては、惡質者に對して嚴重なる處分を行うはもちろん、既に行つた處分の取消しを行いまして、適正なる處分を確保するように措置いたしております。なおやみ市場において特殊物件が流れておるという風評がありますが、これは終戰當初の混亂に乘じて軍が放出した、いわゆる放出物件のことでありまして、これについてもできるだけその根源を絶つように、判明次第摘發に努めておる次第であります。かような状態であることを御諒承願います。(拍手)
〔國務大臣高橋誠一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=52
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053・高橋誠一郎
○國務大臣(高橋誠一郎君) 私よりお答え申し上げまする點は二つであると考えます。第一は引揚學徒の轉入學に關する件であります。この點具體的に申し上げまするが、外國、外地の大學、高專に在學中でありました引揚學徒は、終戰當時におきまして約二萬人と推定されております。一昨年の十二月、昨年の四月竝びに九月の三囘にわたりまして、轉學の處置を講じまして、約六千名の學徒が轉入學を終つたのでありますが、なお殘つております者は、第四次の轉學措置を講ずることになつております。次に文部省といたしましては、官立學校につきましては引揚學徒を收容いたしますがために、本年度一萬名の定員増加を行いましたが、明年度におきましても、これと同數の定員増加を行う豫定であります。次に公私立の大學、高等專門學校につきましても、收容能力のあります限り多數轉入學せしめます希望でございます。さらにまた中等學校以下の生徒は、時期、定員のいかんを問はず轉學を認めまして、萬全を期するつもりであります。なを附けて申し上げますが、引揚學徒につきましては、大日本育英會におきまして、奬學につきまして特別の措置を講じております。また各學校におきましても困窮の度に應じまして、授業料などの減免、納付の延期など、いろいろな措置を講じておるのであります。以上第一點にお答えいたします。
第二の點は、民間の研究團體に對する助成の件であると存じますが、お説の通りに財閥を背景といたしましたところの研究機關、竝びに財團法人組織によりますところの研究機關は、財閥の解體竝びに經濟的事情の變化に伴いまして、非常な困難に陷つておるのであります。まさに死活の急場に存するものが多いのであります。この際何とかしてこれを救濟しなければならぬという考えをもつておつたのでありますが、文部省は來年度民間研究機關補助の豫算につきまして、大藏省と折衝をいたしており、相當の額を認められることになる見込みが立つておるのであります。實は今日の御質問のことは私存じませず、昨朝科學局からして所管事務の報告を受けておつたのでありまするが、この點の御報告を受けまして、非常に喜んだ次第であります。また商工省と協同いたしまして、大企業附屬の研究機關を、産業復興に關する技術研究指導に當らしめたいと、いろいろな方策を講じておるのであります。かような次第に相なつておるのでございます。この點お傳えいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=53
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054・山崎猛
○議長(山崎猛君) 小坂君、殘餘の御質疑がありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=54
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055・小坂善太郎
○小坂善太郎君 詳細にわたりましては、豫算委員會等で質疑いたしたいと思います。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=55
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056・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 國務大臣の演説に對する殘餘の質疑は延期し、明十九日特に定刻より本會議を開き、これを繼續することとし、本日はこれにて散會せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=56
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057・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=57
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058・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後五時十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00519470218&spkNum=58
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