1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年二月二十五日(火曜日)
午後三時十分開議
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議事日程 第八號
昭和二十二年二月二十五日
午後一時開議
第一 所得税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 華族世襲財産法を廢止する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 請願法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである。
所得税法の一部を改正する法律案
(以上二月二十二日提出)
一、去る二十一日貴族院から受領した政府提出案は次の通りである。
請願法案
一、去る二十一日吉田内閣總理大臣から次の通り發令があつた旨の通牒を受領した。
勳四等 井上知治
議院法第三條ニ依リ衆議院副議長ニ任ス
一、昨二十四日吉田内閣總理大臣から次の通り政府委員を仰せつけられた旨の通牒を受領した。
大藏事務官 渡邊喜久造
第九十二囘帝國議會大藏省所管事務政府委員
農林次官 楠見義男
第九十二囘帝國議會農林省所管事務政府委員
一、昨二十四日衆議院規則第十五條但書に依り議長において議席を次の通り變更した。
一 楢橋渡君
三 原尻束君
五 中野四郎君
六 北勝太郎君
七 北政清君
一一 和崎ハル君
一二 伊藤實雄君
一五 大石ヨシエ君
一六 紅露みつ君
一八 石原登君
三八 中山榮一君
五七 増井慶太郎君
一三七 松岡運君
二八九 坂田道太君
三六二 辻井民之助君
四三二 酒井俊雄君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより會議を開きます。この際一言いたします。本日をもつて會期三分の二に達しました。先例によりまして、今後本會議中委員會開會の件は、院議に諮うことなく議長において許可し得ること、また法律案は定規の日時にかかわらず上程し得ることといたします。
日程第一、所得税法の一部を改正する法律案の第一讀會を開きます。大藏大臣石橋湛山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=1
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002・会議録情報2
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第一 所得税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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所得税法の一部を改正する法律案
所得税法の一部を次のように改正する。
第十六條第一項中「二千四百圓」を「六千圓」に改める。
第二十四條第一項中「七十二圓」を「二百四十圓」に改める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十二年二月一日以後の支給に係る給與に対する分につき、これを適用する。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=2
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003・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。政府は、最近における國民經濟の推移、國民生活の實情、竝びに中央及び地方の財政事情等に鑑みまして、今議會に税制の根本的改正に關する法律案を提出し、この際必要とする中央及び地方の財政收入の確保を期するとともに、經濟その他諸情勢の推移に即應いたしまして、國民負擔の公正及び納税の簡易化等をはかることといたしまして、目下その立案に努めておる次第であります。
しかして最近における勤勞所得者の給與及び生計費等の實情を考慮いたしますれば、これら勤勞所得者の租税負擔につきましては、相當改正を加うべき點がありまするのみならず、現行の課税手續上におきましては、給與の支拂が行われます都度、支拂者がその給與に對する分類所得税を控除して、これを政府に納付することになつておりますので、改正税法の實施に先だちまして、勤勞所得者の租税負擔について、實情に即するよう適當なる是正をなすことを必要と認めた次第であります。
ここにおきまして政府は、近く提案の運びとなつておりまする所得税法の改正案の構想に即應して、源泉課税となつております甲種の勤勞所得に對する分類所得税の課税にあたりましては、基礎控除額現行月二百圓を五百圓に引上げ、また扶養家族控除額現行一人につき月額六圓を二十圓に引上げ、二月一日以後の支給にかかる給與に對する分からこれを實施することといたしたいのであります。この改正によりまして、本年度の租税收入の見込額にはさしたる影響を及ぼさないものと考えております。何とぞ御審議の上速やかに御協贊を賜わらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=3
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004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 質疑の通告があります。これを許します。川島金次君。
〔川島金次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=4
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005・川島金次
○川島金次君 私はただいま上程されました所得税法中一部改正法律案に對しまして、日本社會黨を代表して若干の質疑を試みまして、關係大臣の御答辯を煩わしたいと考えるものであります。
政府は、ただいま上程の理由といたしまして、最近における勤勞生活者の租税負擔の實情に鑑み、さしあたり控除の金額を引上げてその負擔の適正を期するために、この法案を提出いたしたいというのが理由であります。わが黨におきましては、御承知のごとく昨年七月の本議場におきまして、所得税等の法律改正案が上程いたされました際に、先輩松永君が代表いたしまして、所得税、殊に勤勞所得税基礎控除の問題に對しては、當時二百圓のものを五百圓に引上ぐべしとの強き要求をもつて、本議場に改正案を上程いたしたのであります。しかるにその當時におきましては、議場の自由、進歩兩黨の各位はもちろん、政府においても、わが黨の修正案に對して何ら考慮するとの意思がありませんで、これを多數をもつて葬り去りましたということは、皆さんの記憶に新たなところであります。この建前から申し上げましても、わが黨の修正案と今囘の大藏當局案の改正案とは、たまたま一致いたしたのでありまするが、これはあえて私どもが申し上げまするならば、大藏當局、殊に政府は、わが黨が昨年七月既に早くも主張しましたこの免税點問題に對しまして、ひざを折つて屈服した結果に今日相なつた奇觀を呈するに至つたのであります。しかしながら、わが黨は、七月において主張いたしました點とたまたま一致いたしたからといいましても、今日の現段階においては、この改正案には絶對に承服することができないのであります。その理由といたしまして、以下私は二、三の點について皆樣の御諒承を得たいと思うのであります。
何ゆえにわが黨が昨年の七月において五百圓の基礎控除額を設定すべしとの主張をいたしまして、なお本日この會議におきまして、五百圓の免税點に對しまして反對の意思を表明するかと申し上げますならば、昨年の六、七月ごろにおけるところのわが國勤勞階級全體の一箇年の總所得平均額が五千五百圓でありましたことは、大藏當局が既に發表しているのであります。從つて一箇月の勞働階級の平均收入額は五百圓足らず、これを詳しく申し上げますれば、當時のわが國における勤勞大衆の平均月收額は四百八十圓に過ぎなかつたのであります。しかもこの四百八十圓に過ぎない勤勞大衆の俸給をもちまして、石橋財政のインフレの波にあおられながら、暴騰に次ぐに暴騰をもつていたしました物價の水準においては、斷じて最低生活をすらも保障することができない。この建前におきまして、院外におけるところの勞働組合その他の大衆の所得税撤廢という叫びがあるにもかかわらず、私どもは政治的大所に立ちました建前におきまして、その暫定措置として免税點を五百圓に引上げるということを主張いたしたのであります。
しかしながら今日の段階におきましては、昨年の經濟情勢と本年に入りましての經濟情勢とは、その根本においても、その内容においても、きわめて著しい變化を來しておりますることは、既に諸君も御承知の通りであります。殊に勤勞階級の立場から申し上げますならば、昨年の七月ごろにおける小賣公定物價指數は、それを一〇〇とした場合において、今年の一月における小賣公定物價指數は、日本銀行の發表いたしましたところによりましても、既に三〇〇になつておるという事實があります。すなわち昨年の六月ごろには、小賣公定價格ですらも一であつたものが、今年一月においては、それが三倍に暴騰しておるということは、日本銀行の發表によつても明確にされておるのであります。しかもその上におきまして、一般勤勞大衆はもちろんでありますが、全國民が生活をする場合において、その生活費の大半は、やみ價格によつて入手した主食糧によつて辛うじてその生存を維持しておることは、これまた言うまでもない事柄であります。しかもそのやみ價格というものは、高きは五割、低きも二割五分ないしは三割という暴騰を、今日においては示しておるのであります。私どもはこのような實情に鑑みまして、政府が本日提案いたしました勤勞大衆に對するところの課税の基礎控除額五百圓では、その實情に斷じてそぐわないという建前から行きまして、私どもの黨としては、月額の基礎控除額一千圓という額を主張するものであります。
第二の點は、今年度に入りまして、この全國勤勞大衆の月額平均收入が一千百餘圓になつておりますことは、皆さんも御承知のことと思います。昨年の六月、七月の交における日本の勤勞大衆の平均月收は四百八十圓、しかも今年一月にはいつて一千餘圓でありますることは、その數字的計算から申し上げますれば、明らかに二倍以上になつておるという事實ではありまするけれども、前段に申し上げましたごとく、われわれ國民の生活の基礎をなすところの物價の指數、しかも小賣公定價格すらにおいても三倍の暴騰を告げておるというこの現状に鑑みましても、これら平均給以下の、いわゆるたけのこ生活を續けておりまするところの勤勞大衆に、なおかつ基礎控除五百圓程度の免税において重税を課するということは、それでなくとも今やたけのこ生活どころか、皆さんも御承知と思いまするが、東京あるいは大阪等においては、最近このような歌がはやつております。この歌の内容を讀み上げてみますと、「たけのこ生活どころか、たまねぎの一枚はぐたび目に涙」、石橋大藏大臣にはよくこの點をお聽き願いたい。
今やこの狂歌通り、勤勞大衆の、殊に少額所得階級の生活の實情は、昨年來引續き叫ばれておりましたたけのこ生活どころではない。たけのこよりもつと何十分の一か小さいあのたまねぎの形であり、しかもその小さなたまねぎの生活の中にも、なおかつたんすの底を拂つて一枚々々脱いでおる。その一枚一枚脱ぐたびに目に涙であるというこの狂歌が、都會地において流行しておるという事實に鑑みましても、いかに今日の勤勞階級の、殊に少額所得階級の生活というものが悲慘極まる状態であるかということは、想像にあまりあるのであります。(拍手)
このようなことを考えました場合に、私どもは以上の理由によりまして、本日ここに上程されました勤勞所得税に對する基礎控除額二百圓を五百圓に引上げたに對しても、なおかつ反對いたしまして、これを一躍、暫定處置として一千圓に引上げるということが、私は最も勤勞大衆の要求に近い案であり、そういうことによつて、勤勞大衆が叫んでおりまするいわゆる賃上げの要求と同時に、税の改正に對する痛烈なる現内閣に對する批判をも緩和することができるのではないか。同時にまた勤勞大衆が政治的にそのような要求を提げておるにかかわらず、わずかにこのような引上案によりまして勤勞大衆の要求を緩和することは絶對に不可能であるということを、私は大藏大臣に強く反省を求めたいのであります。
しかも大藏大臣のみならず、吉田總理大臣もその他の各大臣におかれましても、今や日本の經濟は、三月を目して民族的危機の段階にはいるであろうということをいわれておる。しかもこの民族的經濟危機を乘り切るためには、官民總力をあげて生産の増強に邁進しなければならぬ、その生産の増強に邁進することは、殊に重點といたしましては、勤勞大衆がその政府を信頼し、また勤勞大衆の生活が最低限に保障せられまして、その勤勞大衆に旺盛なる勤勞意欲というものを高揚せしむるということが、私は民族危機突破に伴うところの前提である生産の増強にほかならぬのであろうと思うのであります。(拍手)
この點におきましても、今や院外におけるところの勞働階級はもちろん、政府自身のおひざもとであるところの全官公勞の諸君においてすらも、政府彈劾の叫びをあげておるのみならず、賃上げ要求をし、あまつさえ第二項におきましては、終始一貫この所得税の全廢という建前をとつて、強く要求しておる時勢にあります。これに鑑みましても、私どもは今日の民族危機を乘り切るために、勤勞大衆の要求を全幅的に滿たし得ないにいたしましても、暫定的な措置として、勤勞大衆の要求にほぼ近いであろうところのこの一千圓引上げ案というものを重ねて強く要求し、大藏大臣のこれに對する確信ある所見をお伺い申し上げたいのであります。
なお勞働階級が主張しておりますところの賃上げ要求と竝んで叫んでおりまするのは、今の所得税の問題であると同時に、綜合所得税の問題であります。綜合所得税は、御承知のごとく現行法をもつていたしますならば、年額一萬圓からであります。この現行法に對しましても、勞働階級はもとより、われわれ議會における議員といたしましても、今日の物價の情勢竝びに一萬圓内外の年額所得をいたしておりまするいわゆる勤勞大衆にとつても、重大な課税ではないかということを私は確信しておるのでありまして、この際この法案の上程を機會といたしまして、私どもは大藏大臣に、この綜合所得税においても大幅な、思い切つた基礎控除の引上げをする意思がないかどうかということを、重ねてこの機會にお伺いを申し上げたいのであります。
なお次ぎにこの問題に對しまして、重複するようでありますが、今や全官公勞の諸君におきましても、この所得税の問題が政治的な要求として重大なポイントとなつておるのでありまするが、もしこのような當局の發案されました、この席上に上程されました、いわゆる基礎控除額の程度でもつて、はたして全官公勞の諸君が承服し得るや否や、また承服せしめ得られるような自信があるかどうかということについて、殊に多數の從業員を擁しておりまするところの運輸大臣竝びに遞信大臣竝びにこれの所管の事務を掌つておりますところの厚生大臣にも、これに對する所見をこの機會に私はお伺ひを申し上げたいのであります。
次に、一體税というものは、言うまでもなく國民負擔の公正を期することにあります。なお財政上の缺點あれば、その財政上の赤字をも補填し、そしていわゆる大藏大臣の主張してまいりましたところの健全財政の確立ということにも重點をおいて努めなければならぬということは、私が申し上げるまでもない事柄であるのであります。しかるにただいま申し上げましたごとく、全國の勤勞大衆は、働けど働けどなおその最低生活をすらも保障し得られず、たけのこ生活どころか、たまねぎの一枚一枚をはいで、眼に涙の生活を續けておるという現状にかかわらず、一面においては、大口の不當なやみ取引をいたしまして、莫大なる新圓をふところにしている階級が、日々増大を示しておるということは、これまた私が申し上げるまでもない事實であります。しかもこれら新圓所得階級は、一夜に料亭で數千金を投じ、あるいは數萬金を投じておるという事實さえもわれわれは聞いておるのであります。
これは、私がこの一月三日に、事實を見てきたという者に聞いた話でありまするが、栃木縣下の某温泉の料亭においては、ある新圓所得階級の十二名が、その大料亭に乘りこんで、二日二晩遊び上げたあげくにおいて、十二人が、なんとその帳場に支拂つた新圓は、十五萬圓であつたという事實を見たという男から、私はその話を聞いたのであります。このような事實は單に國内におけるところの一つの例に過ぎないので、このような状態に準ずるような新圓所得階級のランチキ騷ぎ、新圓所得階級の浪費、濫費という現象は、今や全國にとうとうたる状態であろうと私は想像申し上げておるのであります。今や日本の國内には、働かんとしても職のない失業者、住まんといたしましても住むことのできない、住宅をもつことのできない戰災者、復員者がとうとうとして全國に充滿しておるのが事實であります、しかも、まじめに勤勞の職について、働いてもなおかつ最低生活を保障することのできない状態にあるときに、その上に、日本は經濟的に今や危機が到來するであろう、しかもその危機は繰返して申し上げますが、民族的な危機の樣相を深めておる今日において、一方にまじめな大衆が働いておるにかかわらず、一方においては新圓大口所得階級が、一夜にして數千金、一夜にして十數萬圓という新圓を投じて、なおかつ傍若無人のふるまいをしておるというこの事實は、私どもの立場から申し上げるまでもなく、國民全體の社會正義感に訴えましても、斷じてそのようなことは許さるべき筋合ではないということを私どもは確言をいたしたいのであります。(拍手)
わが黨は、先般來大口新圓所得階級に對して高率なるところの税を課すべきであるということを主張し、それは同時に富の再分配はもちろん、いわゆる健全財政確立の上から言つても、インフレの防止から言いましても、これは絶對に必要であるという建前において主張してまいつたことは、大藏大臣も御承知の通りであります。しかるに大臣はこれに對しまして、われわれは今のところ新圓所得階級に對して別な課税をするという方針がないと言つておられる。私はかくのごとき言葉というものは、いやしくも大臣の地位にある人の輕々しく放言すべき事柄でないということを確信をいたしておるのであります。このために、大藏大臣が本議場もしくはその他において、新圓所得階級に對しては別の課税方針をもたないというので、恐らく院外における一部少數階級、しかも國民の經濟生活を攪亂するような、吉田總理大臣の言葉をかりて申し上げまするならば、かくのごとき大口新圓階級等のごときこそが、私はすなわち不逞のやからであると言つても差支えないのではなかろうか。(拍手)その不逞のやからを放置しておいて、それに對して別な課税の方針をもたないなどということは、院外の新圓所得階級の一部においては、石橋さんを神樣のごとく崇め奉つて拍手喝釆を送つたのでありましようが、その反面においては、働けど働けどなお食うことのできない國民大衆の九割というものは、この石橋藏相の放言に對して心から憤激をしておるであろうということを私は想像しておるのであります。(拍手)
この意味におきまして、先輩諸公が既に重ねてこの壇上から、新圓階級に對するところの課税に對して大藏大臣に要求しておつたのでありますが、この機會におきまして、重ねて私は大藏大臣に、この新圓所得階級に對していかなる方針をもつて、しかも公正に、しかも徹底的に課税するという確信ある方針をおもち合わせであるかどうかということをお尋ね申し上げたいのであります。(拍手)
なおさらにこの機會にお伺いを申し上げたいのは、税制の根本的改正をば近く行うというのが、ただいま大藏大臣の説明であります。もとより今日の税制というものは――現行税制は、戰爭中の形骸を殘したままの税制であるのが大部分であります。この戰爭中におけるところの税制の骨格をば根本的に改正いたしまして、國民のいわゆる負擔の公正を期するとともに、健全財政の確立に重點をおいて、いわゆる國民大衆の犧牲になつておりまするところのインフレの防止をも重ねてこれに織り込んで、改正を行うということは、われわれも同感でありまして、その必要をわれわれは認めておるのであります。しかるに大藏大臣は、ただいまこの席上においても、なおかつ今日これから税制調査會や大藏省省議を開いて、税制の根本的改正を行うと、こう申しておられる。しかも昭和二十二年度の豫算に間に合わせるような口吻でありますが、未だにこれがきまつておらないで、はたして來る二十二年度の豫算案というものが、全面的に確信のある態度をもつて編成できるかどうかということを、私は衷心から疑わざるを得ないのであります。(拍手)もし大藏大臣にいたしまして、來るべき二十二年の豫算案を提出する意思がありといたしますならば、當然今日においても、その根本的、全面的な税制改正案というものを持合わせておらなければ、總豫算の上程も私は不可能であるということを確信いたすのでありますが、これに對して、もしないのでありますならば、はつきりとない、もしありといたしますならば、その全貌でもよろしいのでありまするから、私どもにこの機會にお聽かせを願いたいということが、第三點の質問であります。
さらに第四點といたしましては、最近東京新聞の二月十五日紙上で發表された事柄でありますが、これも私どもが昨年の七月の議會以來強硬に當局に迫つてまいつた事柄でありまするが、その東京新聞の報道によりますると、七百圓のわくを撤廢、所得、融資新圓一本へ近く成案、四月から實施か、ということが書いてあるのであります。今日の國民生活の國家管理とも申し上ぐべきところの五百圓のわく生活というものは、最近において、當局の勇氣によりまして、七百圓に引上げられたということは事實でありますが、この七百圓のわくを引上げただけでは、今日におけるところの勤勞大衆の生活というものは、少しも緩和されておらないのであります。殊に前段に申し上げましたごとく、勤勞階級の所得は、なるほど昨年の七月から比べれば倍近くには値上げされておりましても、一般の物價のつり上りというものは、それ以上になつておるということは、いかに剛腹な、いかに強硬な、いかに心臓の強い石橋大藏大臣といえども、これは認めておられるところであろうと思います。
このような状態にある現段階において、勤勞大衆の一番がんとなり、一番大衆の生活の重壓となつており、それがいろいろの面において好ましからざるところの副作用を呈しております、この國家管理とも申し上ぐべき五百圓、さらに七百圓のわく生活というものを、今日この新聞通り四月から撤廢をする意思が、大藏大臣にはあるのかどうかということをも、重ねてこの議場からお尋ねを申し上げたいのであります。七百圓のわくを引きはずすとともに、いわゆる事業の方面において、あるいは融資の面において、あるいは所得面においても、なお新圓一本にするという御意思があるかどうかということを、私はこの機會に重ねてお伺いを申し上げたいのであります。
殊に大藏大臣におかれましては、昨年の七月の議會においても、さらにまた十月の議會においても、新圓の一本經濟というものは、できるだけ一刻も早く實現をいたしたいので、それに對して目下研究中であるということを重ねて言明しておるのであります。今や私どもの見解から申し上げますならば、この七百圓のわくをはずすべき時が來たのではないか。同時にまた新圓一本の經濟政策を確立する時が到來したのではないかという考え方を私どもはもつておるのでありますが、なお未だに大藏大臣におかれましては、昨年の七月から言つておりますところの考えを、目下思案投げ首中であるのかどうかということをお伺い申し上げたいのであります。
さらにまた私は、この機會において、先般の議會におきまして成立を遂げました増加所得税竝びに財産増加税に關して、一言當局に對して警告を申し上げたいのであります。當局におきましては、この増加所得税竝びに財産増加税は、いよいよ本年の三月をもつて打切つて、これが具體的な徴税を行うことになつたのであります。その徴税を行うことに相なりましたことは異論がないのでありますが、これを機會といたしまして――この私の言葉が單なるデマであればよろしいのであります。デマであることを私はまた望ましいと考えておるのでありまするが、この増加所得税竝びに財産増加税の徴税にあたつて、全國的とは申し上げませんが、一部の税務署において、この納税者と税務署の官吏との間に、好ましからざるところの事柄が生じやすい傾向になつておるといううわさが、最近頻々として上つておるのであります。私はかくのごとき事柄は、日本の官吏の責任と良心において、斷じてないであろうということを、確信をもつて申し上げたいのでありますが、事實はこれに反して、火のないところから煙は出ないということもありまするが、往々にしてそのような好ましからざることが伏在しつつあるのではないかという不安を、私は多くの人たちのうわさとともにもつておるのであります。あるいはこのようなことがないでありましようが、もしないといたしますれば、言うまでもなく何事でもないのでありますが、このようなことがあるといううわさだけでも、私は全國の税務官吏の建前の上において、きわめて好ましからざるところのうわさであると思いますので、この問題に對して當局におかれましては、嚴重な監督、嚴重な査察をもちまして、増加所得税納税者にかかわらず、財産増加税納税者にかかわらず、政府の所期いたしておりまするところの、いわゆる公正なる負擔の目的を達成するように、十分なる警戒を私は煩わしたいのであります。同時に當局はそれらに對するどのような監督査察をもちまして、その公正負擔を期するための機關と、あるいはその他の方針をおもちであるかどうか。それについてこの機會にお伺いをしておきたいのであります。
さらに最後に私は、この機會を利用いたしまして、政府當局に重大な一言を申し上げたいのであります。ただいま議長からもお話があつたのでありますが、第九十二議會はいよいよ會期を三分の二過ぎて、殘るのはわずかに三十餘日であります。しかも今議會は、三月に經濟危機が到來する、その推移いかんによりましては、民族的未曾有の危機の樣相を深からしめようという、官民あげて憂慮にたえない現段階であるのであります。しかもその上に今議會は、前議會において成立を遂げました、わが日本の民主化の上に一大骨格をなすところの憲法の改正に次いでの重要なる法律案を、好むと好まざるとにかかわらずこの議會に上程し、それを成立せしめなければならぬという重大な議會であるのであります。なおさらに經濟危機と相關連いたしまして、來る二十二年度の豫算案というものは、わが國の財政と、さらにその財政の影響するところの通貨、金融、インフレ等にも重大な影響をもたらすであろうということを豫想される、最も重要なる豫算案を審議しなければならない議會であるのであります。しかるに政府はいたずらに自己の責任でないかのごとき口吻を漏らしつつ、これら重大な、切迫いたしました法律案も、豫算案も、未だに一向にこの議會に上程されておらないのであります。わずかに上程いたされましても、本日のこの所得税一部改正法案が初めてに過ぎないのであります。政府は新聞紙上その他で、あるいは言葉をもちまして、われわれの耳にもはいつているのでありますが、遲くとも三月一日までには總豫算案を上程するということを言明されておりますが、はたして三月一日に豫算案が上程されるような運びになつたかどうかということも、重ねてお伺いいたしておきたいのであります。
聞くところによりますと、政府の怠か、あるいは政府のいわゆる錯覺か、いろいろの事情がありまして、三月一日にすらも、本豫算の全貌は上程が不可能であるということを傳え聞いているのであります。しかもその上に、それができないので、四苦八苦の未に、政府は彌縫的な一案を考えて、昨年の議會と同樣に、この三日の初頭において、辛うじてわずか四、五の二箇月の暫定豫算案をこの議場に上程して、自己の責任をひとまず糊塗しようという考え方をもつているのであろうということをも、私は聞いているのでありますが、それに對する事實の有無を、私はお尋ね申し上げておきたいのであります。
なお最後に、一體吉田内閣は、幣原内閣も同樣でありますけれども、いつも國民の全體に對しては、食糧においては、米も麥も遲配をいたしません、斷じて遲らせるようなことはいたしません、國民生活の最低保障はいたしますといつておりながら、その舌の根も乾かない間に、いつも食糧の遲配をやつております。しかも食糧の遲配だけならいざしらず、政府はともすれば政治の遲配を、今日常套手段のごとくにやつていることは、まことに日本國民として不幸この上もない事柄であると、私は確信をもつて申し上げるのであります。
第一に、この上程されておるところの所得法の改正問題のごときも、昨年の六月、七月のころに、わが黨の主張に同調して、政府があのときにこの改正案を上程しておつたならば、今日のごとき實情にはならなかつたと私は確信しておるのでありますが、これが半年遲れたがために、すなわち政府の所得税案だけを見ましても、政治的遲配を行つた結果、このようなお粗末な改正案を、あわてふためいて出さなければならないような結果になつたのではないかと思う。これら政治的な遲配の問題につきましては、算えあげれば自進兩黨の各位におかれましても御承知のごとく、きりがない。きりがないことであるから、この機會におきまして私は多くを申し上げませんが、政治というものは、私ごとき者が申し上げるまでもなく、民の憂いに先んじて憂い、民の喜びを先にして、政治家はその喜びをあとにするということは、政治家の責任であり、政治家のとるべき態度でなければならない。そのような態度によつてこそ私は、政府が國民に信頼され、同時に勤勞大衆の政府に對する信頼感も強まつて、われわれが最も心配するところの、いわゆる生産の増強の上に、いかほどか役に立つのであろうかということを私は考えておるのであります。
しかるに政府の諸政策というものは、繰返して申上げまするが、いつも政治的遲配を續けております。このような遲配をもつていたしましては、私は全國民、殊に勤勞大衆の政府に對する信頼というものは、日々刻々に一層に信用を低めまして、信頼をせずという觀念を、とうとうとして深めるであろうということを、私は斷じてここに申し上げたいのであります。かくのごとき状態でありましては、政府がいかに國民に對して生産の増強をせよ、いかに勤勞大衆に、生産の意欲を高揚いたして、生産増強の目的を達せなければ、日本の經濟危機は突破できないと、かねだいこで叩くような宣傳をいたしましても、勤勞階級がほんとうに政府を信頼し、心から勤勞の喜びを感ずるような、いわゆる遲配なきところの政策を次々に斷行しなければ、その經濟危機も突破できないであらうということを、私は最後に斷言をいたしまして、各關係大臣のこれに對するところの明確なる御答辯を煩わしたい次第であります。(拍手)
〔「良心のある演説をやれ。」その他發言する者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=5
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006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=6
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007・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 川島君の御質問にお答えいたします。昨年の議會でいわゆる勤勞所得税について、あるいは撤廢、あるいは基礎控除を五百圓に引き上げろと、いろいろの御説があつたことは、よく承知しております。同時にそのときに私は、この税制の改革というものは、單に勤勞所得税だけをいじるとか、あるいは所得税だけをいじるとかいうことはできないものでありまして、全體の税制の上からすべて考えなければならない、從つてこの根本的改正は昭和二十二年度において行うつもりである、そのために衆議院の各派から委員をお出しをお願いしまして、税制調査會をつくる、こういうことで、現にその税制調査會は進行をいたしております。相當の答申も既にいただいております。その中には社會黨の諸君もおはいりになつておられます。從つて昨年、決してこの税制を改革しないと申したのではないのでありまして、税制を改革するが、それは昭和二十二年度において十分やる。そこで最近さいわいにその税制調査會から御答申を得ました。その御答申に基きまして、明年度、二十二年度の税制改革をすることになりまして、その案はほぼ完成いたしましたので、近く御審議を煩わすことになつております。ところが先ほど説明を申しましたように、ほかの税は昭和二十二年度から實施すればよろしいのでありますが、このいわゆる勤勞所得に關する税は、月々源泉でとりますから、これを今日から實行いたしませんと、昭和二十二年度からの實行と申しますと、ちようど一年分つまり四月からでは、その前が何箇月かやはり所得税をとられることになりますから、そこで今囘暫定措置としまして、これから改正することを豫想して、その改正に基きまして、本日暫定措置の御審議を煩わしたのであります。五百圓の控除に、この暫定措置はいたしておりますが、ほんとうの改正は五百圓ではないのであります。五百圓ではないのでありますが、暫定措置に合わせて、現行所得税法の一部の改正をする必要上、かような簡便な措置をとつた次第であります。
なほ川島君は、これでは足りぬから、千圓くらいの基礎控除にせいという御説でありますが、これは實際においては、今度の暫定措置によりましても基礎控除五百圓、それに扶養家族の控除がありますので、事實は給與月額千圓の人が、かりに扶養家族四人といたしますると、税を二十圓拂うということでありますから、事實においてはほぼ御注文に近づいているものと考えております。
しかして、さらに綜合所得税の問題は、これも税制調査會の答申に基きまして、今囘所得税は、綜合所得税から分類所得税一本にいたしました。つまり綜合所得税なるものはなくなる。これは議會の御審議で可決していただけばの話でありますが、案といたしましては、綜合、分類兩所得税を一本にまとめたものにいたしますので、綜合所得税についての御意見も、その點でもつて解決されるわけに相なる次第であります。かような解決は、なぜ去年しなかつたかというようなお話でありますが、それは先ほど申しましたように、それにはほかの税との見合いをいたさなければならぬということと、それからまたむろん、川島君も御指摘のように、その後いろいろ給與その他の事情も變つておりますので、今囘かような改正をいたしたいと、かように考えているわけであります。
それから第二點の新圓所得者についての課税問題は、常に各方面から御主張があるのであります。いかにもごもつともと思います。しかしこれは私が申しますように、税というものは抽象論では駄目なんで、實際にどうしてとるかということが問題なんです。ですから非常に大きな、いわゆる新圓かせぎをしている者から税をとるということは、言うのは樂でありますが、しからばどうしてとるかという實際の具體問題になりますと、そう簡單ではない。そこで政府といたしましては、これも税制調査會でも十分御研究を願つている次第でありますが、増加所得税、それから明年度から所得税を豫算課税にいたします。それらのことでもつて、この普通の税制――所得税でもつて、十分高額所得者からは、それに相應するところの税がとれるということを確信しております。これはいわゆる新圓階級と申しますか、所得の多い人ですが、いずれその所得は何かの形に現われるのであります。あるいは不動産を買いますとか、あるいは家を擴げますとかいうようなこともありますし、また消費方面からもこれをキヤツチできますし、あるいはまた請負とかなんとかいう方面の請負金高等によつて捕捉できますしいたしますから、今囘豫算課税にいたすということによつて、十分これらの人たちから、これに適應するところの税がとれる、こういうように確信をいたしております。それから二十一年度については、御承知のように増加所得税によつてすでにこれをやつている、こういうわけであります。
それから戰時中の税制改革――戰時中の税制は、これを改革しなければならぬ、これもごもつともでありまして、これは昨年度から私も申している。それを税制調査會でも研究していただき、今囘二十二年度から、戰時中の税制を相當根本的に改革して、御審議を煩わそうとしておる次第であります。それからこの税制ができないだろう、從つて二十二年度の豫算が出せないだらろうということは、はなはだ御親切有難うございますが、出せます。税制も改革いたしますし、二十二年度豫算も近く御審議を煩わすことになつております。ただいかにも遲れましたことは、これは政府としてもはなはだ遺憾に存じます。決してこれはほかに責任を轉嫁いたしません。遲れたことは確かに政府の責任であるということを、私はよく認識いたします。
それから東京新聞に何か記事がありましたそうで、どういう記事がありましたか、今私記憶いたしておりませんが、七百圓のわくをもう既にはずす時期が來ておるから、はずしたらどうか、あるいは新圓一本の經濟にするということは、大藏大臣常に言うておるのだが、やつたらどうか、こういうお話であります。これは私最近常に申すのでありますが、先般例のいわゆるゼネスト問題のときに、中勞委の調停案の中の一項に、この七百圓のわく、當時は五百圓と申しますが、そのわくを二月一ぱいをもつて撤廢するように政府は努力しろ、こういう一項がありました。これは政府としても努力いたしますと、こうお答えをしておるわけであります。今日も同じようにお答えする以外には、方法はないのであります。新圓一本の經濟にするということは、好ましいことであります。ただその時期が今日來ておるか、あるいはもう少し先であるかということは、いろいろ見込みでありますが、御趣意はよくわかつておる次第であります。
それから増加所得税及び財産税等について、何か税務官吏が不正なことをしておる、これはそういうデマであろう、川島君も、さようなことはないと確信するが、というお言葉でありましたが、その通りでありまして、(拍手、笑聲)さようなことはございません。のみならず、財産税については御承知の通り通告制もあることでありますから、そうむちやなことは、かりにやろうとしてもできるものではないと思います。監督は無論いたしております。ことに近く二十二年度からは、これらに關しましては、査察機關も設けて、十分監督をいたしたいと考えておる次第であります。そういうデマもあるということは承知しないではありませんが、各税務署等に向つて――萬々そういうようなことはないと思いますが、もし万一さような者があつたら躊躇なく首にしてよろしい、嚴重に處斷するように、と申しておる次第であります。
次に第五點でありますが、豫算案を三月一日に出すという話だが、出せるかどうか。それからまたうわさによると、四月、五月の暫定豫算案を出して、それでごまかすつもりだという話であるが、どうであるか、四月、五月の暫定豫算などは絶對に出しません。これはデマでありますから、御承知願います。それからただいまの見込みでは、三月一日に豫算案を出せるつもりでおりますが、日限の點は、これを少しも違いないと言うことはできませんから、さように御承知願います。遲れておりますことは確かに相濟まない次第でありますが、現状まことにやむを得ない次第で、どうぞ御了承を願いたい。
それから結論として、川島君は、どうもだんだん政府が信頼を失う、こういうお話でありますが、私の見るところはそれと全く違うのであります。日本が現在あるところの位置、日本の現在の位置というものに認識を缺いている者はどうかしりませんが、日本の現在の位置を一應はつきり認識している者にとつては、現政府はだんだん信頼を増しておる、かように私は確信しております。(拍手)
〔國務大臣一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=7
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008・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 川島君の私に對しまする御質問にお答えいたします。遞信從業員諸君が、今日物價高のために生活難に陷つておりますることは、私は十分にこれは認めておるのであります。ゆえにでき得べき限り待遇の改善をいたしたいということに對しましては、熱意をもつてこれが處理に當つているつもりでありますが、あなたの御質問は、いわゆる五百圓の控除額では不適當ではないか、千圓くらいに引き上げるのが適當ではないかという御趣旨でありますが、そういう點に對しましては、私は國家の財政の收入とにらみ合わせまして、これらの點は、今日の程度においてはこれが相當であらう、こういうところで、大藏省の方で提案したものと認めておるのでありまするから、もし一層生活苦に陷りましてこれではとうていいけないということになれば、やはりこの税制の改正をする時期が、また近いうちに來るかもしれませんけれども、今日においては、この程度が適當であろう、こういう立場でこれを提案をいたしたことと承知しております。さように御承知を願います。
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=8
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009・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいま川島君の御尋ねでありましたが、全官公の方の組合の方も、大體これで落つくんじやないかと思つております。それからまたどうしても國家の現状から見て、この程度で落ついてもらわなくちや困るというふうに考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=9
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010・川島金次
○川島金次君 私の質問に對する、殊に大藏大臣の答辯は、他を顧みて言つておるような形で、その核心に觸れた御答辯がありません。殊に重大な問題は、最後の點の豫算案その他重大な法案の提出の問題であります。もしこれが政府の手違いによつて、審議期間がさらに一層縮小されるようなことがあつた場合に、われわれがその審議に當る場合において、もしその愼重審議しなければならぬ法案、豫算案に對して、期間がないために、一方においては四月二十五日には總選擧、その總選擧に絡んで、來月いつぱいで否應なしに會期を終了しなければならぬ状態に一應なつている。その關連に立つて、短少の期間において、これらの重要な豫算案や法律案が、いちどきに上程されるような場合があつて、しかも期間が少くて、それでわれわれは、あくまで國民の代表として愼重審議しなければなりません。その場合に、愼重審議しつつ、しかもそれが三月二十五日を過ぎ、或は三月いつぱいでも、なおかつその審議を終らないようなことがありましたときには、一體それに對して政府はいかなる責任を負うべきか。これは私は重大なる問題であらうと思う。先ほど私が申し上げましたごとく、ややもすれば、政府は自己の責任にあらざるがごとき口吻をもつて、いたずらに法律案や豫算案の上程を遲らせております。このような状態で、もし三月いつぱいかかりましても、法案、豫算案が成立を遂げなかつた場合においては、來るべき四月二十五日の總選擧と關連して、それに對する何か別の對策を政府は用意があるかどうか。その點、重ねて私は強く當局の意向をお伺いしておく。はつきりとこの席上で明確にして欲しいのであります。その點に對する最後の御答辯が曖昧でありますから、重ねて御尋ねを申し上げます。
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=10
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011・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 先ほども繰返して申し上げましたように、豫算案の提出が遲れておりますことは、いろいろの事情上まことにやむを得ない次第でかようになつておるのであります。むろん政府としては、この責任を十分に考えておる次第であります。しかし現在の日本の状況をもお考え願いまして、いずれ豫算案を提出いたしまする場合に十分の御説明をいたし、御諒解を得たいと思います。何とぞその御了承のもとに御協贊下さらんことを切にお願いする次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=11
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012・川島金次
○川島金次君 ただいまの仰せでありますが……。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=12
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013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=13
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014・川島金次
○川島金次君(續) 豫算案に關しましては大藏大臣の答辯がありましたが、重大法案に關連しました囘答がありませんので、どなたかから御答辯を願います。
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=14
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015・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 重大法案の提出が遲れておることは、まことに遺憾千萬であります。殊に司法當局に關係する法案が隨分たくさんあるのであります。司法當局といたしましては、非常に努力しております。たくさんの法案が輻湊しておることは事實であるのであります。この點については、政府當局においては、全般にわたつて十分な努力をいたしております。しかし何分にも今大藏大臣が言われたように、いろいろな事情があるのであります。その點を十分に御認識を願いたいと思います。われわれといたしましては、この上とも十分努力をいたしまして、一日も早くこの法案の提出をして、各位の御協贊を願いたいと思う次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=15
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016・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=16
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017・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=17
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018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異義なしと」呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第二、華族世襲財産法を廢止する法律案の第一讀會を開きます。法制局長官入江俊郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=19
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020・会議録情報3
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第二 華族世襲財産法を廃止する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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華族世襲財産法を廃止する法律案
華族世襲財産法は、これを廃止する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
登録税法の一部を次のように改正する。
第二條第一項第八号を次のように改める。
八 削除
不動産登記法の一部を次のように改正する。
第百四條 削除
第百四十三條 削除
從前の不動産登記法第百四條の規定によつてなされた華族世襲財産の設定又は管理財産である旨の登記については、登記官吏は、その登記のある不動産についてこの法律施行後最初に登記をする場合に、職権でこれを抹消しなければならない。
前項の規定を除いて、この法律の施行に関し必要な事項は、宮内大臣がこれを定める。
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〔政府委員入江俊郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=20
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021・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) ただいま上程に相なりました華族世襲財産法を廢止する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
華族世襲財産法は、華族制度による華族の身分上の特典として、有爵者がその家格を維持するに必要なる範圍におきまして、世襲財産を設定し得る目的をもつて制定された法律であります。しかるに今囘新憲法によりまして、華族制度は廢止さるることとなつており、もはやこの法律も必要がなくなりましたため、これを廢止しようとするのであります。何とぞ速やかに御審議の上御協贊あらんことを希望いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
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023・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=23
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024・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=24
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025・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第三、請願法案の第一讀會を開きます。國務大臣金森徳次郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=25
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026・会議録情報4
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第三 請願法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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請願法案
請願法
第一條 請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。
第二條 請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場名は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。
第三條 請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。
請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣に提出することができる。
第四條 請願書が誤つて前條に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願書に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。
第五條 この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。
第六條 何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
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〔國務大臣金森徳次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=26
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027・金森徳次郎
○國務大臣(金森徳次郎君) ただいま上程に相なりました請願法案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。
御承知のごとく日本國憲法の第十六條におきまして、國民の基本權として請願の權利も保障しているのであります。何人も損害の救濟、公務員の罷免等の事柄につきまして、平穩に請願する權利を有しており、何人もかかる請願をしたために、いかなる差別待遇も受けないという趣旨の規定があるわけであります。かような憲法の規定を實施いたしまするためには、これに必要なる法律を設けなければならぬ次第でございます。明治憲法の場合におきましては、憲法は明治二十二年に制定せられましたにかかわらず、請願の基礎を定めまする規定は、大正の半ばに至つてできたのでありますが、さようなことは甚だ不適當と存ずるのでありまして、今囘憲法が實施せられますると同時に、請願に關しまする詳細なる手續をきめなければならぬことと存じます。本案は、この趣旨に基きまして、請願の手續、また請願を提出いたしまする官公署等につきまして、必要にして缺くべからざる規定を設け、かつまた適法なる請願を受けました官公署は、必ずこれを受理して、誠實に處理しなければならないということを規定いたしまして、かつまた國民は、請願をいたしましたために何の差別待遇も受けないことを明かにする規定を、法律の上に盛り込んだわけであります。
以上がこの法案の内容でございまするが、よろしく御審議、御協贊を與えられんことをお願いする次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=27
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028・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=28
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029・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出、華族世襲財産法を廢止する法律案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=30
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031・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。これにて議事日程は議了いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=31
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032・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御報告いたすことがあります。議員堤隆君は去る二十二日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。この際弔意を表するため發言を求められております。これを許します。森幸太郎君。
〔森幸太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=32
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033・森幸太郎
○森幸太郎君 ただいま議長より御報告に相なりました故衆議院議員堤隆君に對し、院議をもつて弔辭を贈呈し、その弔辭はこれを議長に一任するの動議を提出いたします。
この際私は諸君のお許しを得まして、議員一同を代表して謹んで哀悼の意を表したいと存じます。
御承知のごとく君は滋賀縣の御出身でありまして、つとに社會運動家として令名があり、その眞摯にして熱情に富む性格は、君の信望をいよいよ篤からしめたのであります。教育家を志した君は、廣島高等師範に學びまして、生物學を專攻し、さらに京都帝國大學に進學して、教育學の研修を重ねた篤學の士でありました。大學卒業の翌年、植民地研究を併せて、熱帶生物學研究の目的をもつてハワイに渡航した君は、前後八年の滯留期間中、その大部分を同地日本人勞働連盟書記長として活動し、歸國後も、もつぱら社會運動に献身せられたのであります。けだし君の後半生こそ、實に君の眞面目を發揮したものと申すべきでありましよう。
衆望を擔うて本院に議席を占められてからは、多年の抱負を實現すべく全力を傾注せられたのであります。おそらくは過勞のゆえか、舊臘來病臥せられたるまま再び起つことができず、本月二十二日病状急變して、にわかに訃報を聞くに至つたのであります。まことに痛恨の極みであります。しかしながら君こそは、實に民主日本建設の尊き人柱となられたのでありまして、在天の靈またもつて冥すべしと存ずるのであります。
本日この畏友と永遠に訣別するにあたり、ここに謹んで哀悼の辭を申述べる次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=33
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034・山崎猛
○議長(山崎猛君) 森君提出の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=34
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035・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議は可決せられました。ここに議長の手もとにおいて起草をいたしました文案を朗讀いたします。
衆議院は議員堤隆君の長逝を哀悼し、恭しく弔詞を呈すこの弔詞の贈呈方は議長において取計らいます。
次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後四時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X00919470225&spkNum=35
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