1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月一日(土曜日)
午後二時五十一分開議
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議事日程 第九號
昭和二十二年三月一日
午後一時開議
第一 供米完遂感謝竝びに促進に關する決議案(坂東幸太郎君外八名提出)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである。
会計法等の特例に関する法律案
(以上二月二十八日提出)
一、議員から提出された議案は次の通りである。
選擧ポスター廢止に關する決議案
提出者
吉田セイ君 竹内茂代君
最上英子君
舞鶴市元海軍用地返還に關する建議案
提出者 大石ヨシエ君
婦人議員の講和會議參加に關する建議案
提出者 吉田セイ君
住宅難突破に關する建議案
提出者 吉田セイ君
乘物に母子席施設に關する建議案
提出者 吉田セイ君
主食遲配絶滅に關する建議案
提出者 吉田セイ君
(以上二月二十五日提出)
供米完遂感謝竝びに促進に關する決議案
提出者
坂東幸太郎君 井上良次君
森幸太郎君 坪井亀藏君
地崎宇三郎君 豊澤豊雄君
保利茂君 中島茂喜君
平野力三君
名寄支廳設置に關する建議案
提出者 太田鐡太郎君
薄荷竝びに除虫菊の國立試驗場設置に關する建議案
提出者 東隆君
國立農業物理研究所設置に關する建議案
提出者 東隆君
闇の女更生に關する建議案
提出者 吉田セイ君
甘藷飴製造に關する建議案
提出者 吉田セイ君
(以上二月二十七日提出)
所得税法の一部を改正する法律案
(政府提出)に對する修正案
提出者
加藤鐐造君 山下榮二君
永井勝次郎君
(以上二月二十八日提出)
一、議員から提出された質問主意書は次の通りである。
元軍用航空基地鹽田化に關する質問主意書
提出者 二階堂進君
(以上二月二十八日提出)
一、去る二十二日第六部選出請願委員堤隆君は死去せられた。
一、去る二十五日吉田内閣總理大臣から次の通り政府委員を仰せつけられた旨の通牒を受領した。
貿易廳長官 永井幸太郎
第九十二囘帝國議會商工省所管事務政府委員
一、去る二十五日衆議院規則第十五條但書に依り議長において議席を次の通り變更した。
一八一 木村小左衞門君
一九六 副議長井上知治君
一、去る二十五日議長において次の委員を選定した。
所得税法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
田中實司君 西村久之君
平岡良藏君 細田忠治郎君
松浦薫君 亘四郎君
小野瀬忠兵衞君 金光義邦君
齋藤てい君 西山冨佐太君
山崎岩男君 加藤鐐造君
永井勝次郎君 野溝勝君
山下榮二君 赤澤正道君
二階堂進君 増井慶太郎君
華族世襲財産法を廢止する法律案(政府提出、貴族院送付)委員
磯崎貞序君 稻葉道意君
今井はつ君 小川原政信君
上林山榮吉君 鈴木平一郎君
荊木一久君 菅原エン君
原捨思君 宮前進君
武藤嘉一君 淺沼稻次郎君
石川金次郎君 澤田ひさ君
棚橋小虎君 大橋喜美君
原國君 田中たつ君
一、去る二十六日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した。
第六部選出請願委員 田中松月君(堤隆君補闕)
一、去る二十六日委員長理事互選の結果次の通り當選した。
所得税法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
委員長 細田忠治郎君
理事
西村久之君 山崎岩男君
加藤鐐造君
華族世襲財産法を廢止する法律案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 武藤嘉一君
理事
上林山榮吉君 宮前進君
淺沼稻次郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=0
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001・井上知治
○副議長(井上知治君) これより會議を開きます。商工大臣より、去る二月二十一日の福田繁芳君の質疑に對し、この際答辯したいとのことであります。商工大臣石井光次郎君。
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=1
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002・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 過日福田君から、いろいろな私の所管に關する問題について御質問がありました。その席に列席することができませんやむをえぬ公用がありましたので、後ればせながら本日御返答申し上げます。
第一に、日本産業復興のためにでき上つた臨時物資需給調整法、商工協同組合法、復興金融金庫等がいかに産業に貢獻したか、中小工業者がいかに恩惠を受けたかというような御質問の趣旨であつたように承つております。臨時物資需給調整法は、昨年の議會で通りまして以來、この線に沿つていかなる方法をとつたがいいかということを研究中であります。戰時中の統制方式が、結居責任の所在が明らかでなかつたのがはなはだおもしろくないということでありまして、この際は、統制の上には一切政府が責任をとるという形をもつて、いろいろな法規類も作成にかかつたのであります。まず第一に生産資材に對しましては、一月に指定生産資材割當規制を出し、また二月にはいりましては、同規則によりまして、重要生産資材十七品目の指定をなし、切符制による割當を實施することに決定いたしたのでございます。また續いては、現在におきまする重要資材の逼迫状態を考えまして、在庫品の十分なる利用、また不急なる品物をつくらないように、またそれを販賣しないように制限して、ほんとうの仕事の上に、より重要なる方面に資材をまわすために、それぞれの規定を出すことになつたのであります。また國民の消費物資につきましても、その生活の安定確保をはかるために割當配給を行うことにいたしまして、今月の中ごろまでには、それぞれ準備が完了いたすようなわけであります。ただいま申し上げましたように、この一月にはいりましてようやくいろいろな規定ができ、またこれからできつつある状態でありますから、これが産業にどういうふうになるかということは、今後にまつほかはないと思いまするが、萬全を期して御期待に副うようにいたしたいと考えております。
次に商工協同組合法のこともお尋ねでありましたが、これは御承知のように、古い商工組合法が二月の末までまだ有效でありまして、その過渡的状態をようやく終りつつあるところでありますので、まだその實效という面までははつきりいたさないのでありますが、この商工協同組合法によりまして、中小商工業の指導育成の上には、この協同組合を十分に利用していくということにいたしまして、これに對する金融あるいは技術等の援助についても、十分なる施設をいたしたいと思つております。
第三の復興金融金庫のことでありますが、これは大藏大臣の方がより關係があるのでありますが、お答えがなかつたようでありますから、簡單に私から申し上げておきます。二月一日に創立が終つたばかりでありますから、これも大きな期待は將來にということになると思いますが、この一箇月ばかりの間に、前から引續いて興行銀行でやつておつたものを引繼いだ關係等もありまして、相當多方面に融資をいたしております。鑛業の方面が第一でありますが、機械器具、化學工業、あるいは水産業というような方面にも、相當な數の融資が行われております。特にお尋ねの中小工業の面においては、百萬圓以下の融資で、四百八十二件現にやりました。金額にいたしますと、一億八千萬圓ほど出ておるのであります。大體この拂込の四十億圓も、ほとんど使つてしまつたくらいに減少いたしておるようなわけであります。なお今後はこの資金の充實面について、大藏省はいろいろ考えておるようであります。やがてこれは仕事の上に影響してくるだろうと考えております。
第二の大きい御質問は、生ゴムの輸入の見透しはどうかということであつたのでありますが、今日までにマレーから輸入いたしました數量は、千六百五十トンであります。これだけの入荷が現在は終つております。なほ政府といたしましては、引續き相當量の輸入を懇請いたしておるのであります。具體的數字は、まだはつきり申し上げる域に達していないのであります。しかし重要産業竝びに國民生活必需品の緊要なる方面の需要を賄い得る程度には輸入が許されるだろうと、私どもは信じておるのであります。
第三に、製鹽に對する石炭の割當を除外したのはなぜか、配炭復活はいつごろかというお尋ねがありました。この製鹽のいろいろな問題については、大藏大臣からも屡屡御答辯申し上げたようでありますが、石炭の割當につきまして、一月から今日までの状態は、鹽のために石炭を差上げることがほとんどできなかつた。ゼロという計畫であつたのであります。ということは、鹽が生活必需品という面から考えまして、また製鹽業者の方にはなはだお氣の毒の至りでありますが、石炭の需給關係が非常に逼迫いたしておりまして、いろいろな方面から研究をいたされたのでありますが、やむをえず製鹽への割當を削られたのであります。しかしなんとかして一日も早く石炭の割當を製鹽の方にも差向けたいというのは、福田君だけでなく、私どもすべての願いであります。石炭の増産とにらみ合わせまして、製鹽への配給を一日も早く復活するように努力いたしたいと思つております。大體この程度の御質問だつたと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=2
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003・井上知治
○副議長(井上知治君) 日程第一、供米完遂感謝竝びに促進に關する決議案を議題といたします。提出者の趣旨辯明を許します。提出者坂東幸太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=3
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004・会議録情報2
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第一 供米完遂感謝竝びに促進に關する決議案(坂東幸太郎君外八名提出)
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供米完遂感謝竝びに促進に関する決議
食糧事情再び急迫の兆ある時、供米完遂市町村は、よく食糧増産の重大使命を自覺され、あらゆる惡條件に屈するところなく、昭和二十一年産米の増産供出の任務を達成されたことは誠に感謝に堪えない。
この際政府は、予て衆議院食糧対策委員会において審議具申した方策に基き、生産農家の格段の協力を求め供米の完遂を期し、以て食糧輸入に対する連合國の好意に應えるべきである。
衆議院は、茲に院議を以て完遂農家に対し感謝の意を表するとともに、政府の勇斷を促すものである。
右決議する。
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〔坂東幸太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=4
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005・坂東幸太郎
○坂東幸太郎君 ただいま上程せられしました供米完遂感謝竝びに促進に關する決議案の趣旨を辯明いたします。まずもつて案文を朗讀いたします。
供米完遂感謝竝びに促進に関する決議
食糧事情再び急迫の兆ある時、供米完遂市町村は、よく食糧増産の重大使命を自覺され、あらゆる惡條件に屈するところなく、昭和二十一年産米の増産供出の任務を達成されたことは誠に感謝に堪えない。
この際政府は、予て衆議院食糧対策委員会において審議具申した方策に基き、生産農家の格段の協力を求め供米の完遂を期し、以て食糧輸入に對する連合國の好意に應えるべきである。
衆議院は、茲に院議を以て完遂農家に対し感謝の意を表するとともに、政府の勇斷を促すものである。
右決議する。
新しき日本を建設し、日本民族の福利を復興増進することは、敗戰日本のわれわれに課せられたる重大なる使命であります。この至難なる事業を達成するためには、まず第一に食糧問題の解決をはかるべきことは、いまさら言を要しないところであります。敗戰の結果、われわれは資材と工業生産力の大半を失い、加うるに石炭、電力等の動力源も、諸般の事情から供給不足を見ることになりまして、農業再生産のために最も必要とせられます肥料竝びに農機具、資材等も、著しく入手困難の事態を生ずるに至つております。
この状況下において、農家が食糧の増産をはかりますることが、なみなみならざる苦心と努力を要しますことは、われわれのつとに承知いたしておるところであります。その改善に頭を惱ましておるところでございます。かかる至難の環境の下にありまして、全國二千有餘の市町村は、國歩艱難の事態を認識せられ、食糧増産の重要性を體得せられまして、既に二十一年度産米供出完納の事業を達成せられましたとの朗らかなる報告を聞きますことは、われわれの最も喜びとするところでございます。これら市町村農家の人人に對して、深き感謝の念を禁じ得ないところでございます。
しかしながらわが國現下の食糧事情を大觀いたしますると、昭和二十二米穀年度は、最も苦しいとせられました前年度に比べまして、優るとも劣らざる苦難に當面いたしておるのでございまして、二十一年度産米が若干の増收を見込まれたという一事をもつて樂觀いたしますことの危險なることは、つとにわれわれが唱道し、警鐘を打つたところでございます。はたせるかな昨年度未より、五大都市においては遲配の惡現象を再現し、今日に至つてなおその状態は緩和せられざるのみか、ますます深刻化の傾向にさえあるのでございます。
一方供米の全般の状況を見ますと、二月二十日現在においては、二千百萬石でございまして、割當量二千八百萬石の約七割七分の進捗率を示しており、特に神奈川、埼玉、靜岡等の各縣は、既に全割當量を突破、さらに進んで自發的に超過供出を進めておることは、まことに心強い次第でございますが、地方によつては、供出が遲々として進まぬ所があり、また當初はすこぶる順調であつたものが、あるいは七割、八割とかの線を限度として、頭打ちの傾向を示しておるのでございまして、最近の石炭不足による輸送力の減退と相まつて、消費都市に對する囘米の不圓滑を招來いたしまして、一般消費者に、食糧不足による種々なる動搖を與えております。かくのごとくいたしまして推移いたしますならば、われわれの國民生活は破局的状態を現出し、産業はますます萎微沈滯し、國民思想はますますすさんで、日本の復興と再建は望み得ないことを恐れるものでございます。
思うに、この事態を克服し、この不明朗なる環境を切り開いて光明を求めます途は、適切なる政府の施策と、國民全員の心からなる協力にまつよりほかはないのであります。(拍手)特に農家が占める地位と義務の遂行が、今日ほど重くかつ大なるときはないと信ずるものでございます。
健全なる精神は健全なる身體に宿ると申しまするが、乏しき食糧の配給をさえ行えないで、どうして健全なる身體を得ることができましようか。(拍手)健全なる身體を得ずして、どうして國民思想の惡化を防止し、さらに産業復興の基盤をなす勞働力の效率を上げることができましようか。食糧の供給が、精神的物質的なる民族の再建に缺くべからざるものであるときに、本米穀年度の食糧需給事情を推定してみますると、需要は、二合五勺の一般家庭配給のためには四千萬石を必要といたします。その他勞務者の加配米、酒、みそ、醤油等、竝びに明米穀年度繰越米等を合しますると、實に合計五千百萬石を必要とするのでございます。しかるにその供給の面では、農家よりの供出米は、雜穀を含めまして、今のところ二千八百萬石、本年度の麥、昨年度産の甘藷、本年度産の馬鈴薯竝びに甘藷及び早場米の供出等 考え得るあらゆる手段を講じましても、合計三千六百萬石前後でありまして、差引千五百萬石餘の不足を生ずるのでございます。
昨年度産米の實收高につきましては、政府が昨年秋需給推算を立て、米の實收高を五千七百五十萬石と推定いたしましたが、その後の經過を見ますると、右の實收高は相當程度上まわつておることは、内外の輿論の指し示すところでございますからして、農家におかれましては、この需給の推算より見たるわが國食糧事情の窮迫化を深く認識せられまして、耐えがたきを忍んで、さらに一層供出に努力せられ、國民の義務を果されんことを切望してやまないところでございます。(拍手)
以上のごとくして、全力を上げて農家に供米をしていただき、今後食糧増産に挺身していただきましても、本年度は相當額の食糧不足を生ずるのでございまするから、右不足額については、何としても聯合國の援助を懇請するほかに途がないのでございますが、敗戰日本の立場において、連合國より食糧輸入を懇請いたしますためには、まずわれわれ國民が、國内食糧確保について眞面目なる努力をいたしたることの實證を示すことは、必要缺くべからざる條件と思います。この點につきまして、過般アメリカより來られました食糧使節團の聲明が、最も明瞭にその事情を明らかにしておりまするが、みずからの義務を履行せずして、聯合國の援助を求めることは、われわれが再び世界各國民の信用を失墜するものでありまして、内には道義日本の再建を阻害し、外、諸外國に對しては、われわれの恥をさらすことになり、その結果、講和會議の時等期に惡影響を及ぼすことがないとは言えません。
外交もまた政府のみの責任ではないのでありまして、國民各個人々々が外交の重要部面を擔當しておるとの認識こそは、民主主義國家の國民が深く自覺し、實踐せねばならぬものであると考えるのでございます。農家が供米を完遂せられ、これが正常のルートによつて的確に配給されるように努力をいたしますことこそは、これに關係するすべての日本人が、大いなる外交を行われておるものであるということを確信いたすものでございます。
しかしながら一方農家の側に立つて今日の經濟情勢を見まするに、昨年米價が決定いたしましたるときの事情とは、また格段の相違を來しておりまして、また農家自體の經濟も、著しく脅かされるに至つております。すなわち肥料を初めとして、農機具、作業衣、ゴムぐつその他の生活必需物資を公定價格にて入手することは、すこぶる困難でございます。たとい入手できましても、その量はきわめて少いのでありまして、農家が、自衞上の立場から、物交用として米その他の農作物を保有せんとする風潮を生じつつあることも、無理からぬことであるとわれわれは考えます。この環境下にあつて、何らの對策を講ずるところなく、農家に對して供出を迫りますことは、農家、農民の立場を無視した措置となるのでございます。
よつてわれわれは、昨年以來、本院の食糧對策委員會において、國民全般の立場と農家の事情を參酌して、これらの諸點にらいて種々檢討を加え、米價に對する再檢討、竝びに農家必需物資の適正なる配給實施を含む諸對策を樹立し、政府に建議しておるのでございますが、政府におかれましては、われわれの苦心の存するところと農家の立場を十分理解せられまして、この際一大勇斷をもつてわれわれの建議を容れ、速やかにこれを實現せられんことを望んでやまないものでございます。(拍手)
かくて政府が、農家の側に立つて直ちに適切なる方策を實施せられ、下級官廳に對しては、個々の農家に對する割當が公平の原則を破らざるよう特にその趣旨を徹底せしめ、もつて農民の協力を求められますならば、農家もまた喜んで供米を完遂せらるるばかりでなく、さらに進んで一割以上の超過供出にも協力せらるることと存ずるのであります。これによつてわが國の食糧事情は改善せられ、國民は國家に對し感謝の念を懷き、産業生産力もまた復活の歩度を進め、ひいては農家必需物資の生産も増強し、その入手を容易ならしめ、農家自體の福利も増進せしむることとなり、兩者は因となり果となつて、事態を好轉せしめる重大なる契機をつくり、民族と國家の再建は、ここに初めてその光明を見出し得るものと信ずるのでございます。(拍手)
もしそれ政府が、國家財政と經濟機能の許す最大限度において誠意を示しましても、供出を肯んじないものがありといたしましたならば、これらの農家は、われわれ國民が當面している運命とその義務の履行を忘却し、國民全般の福祉を無視するものとして、斷固たる措置に出ることがあつてもやむを得ないことと存じます。ゆえに國民もまた、この好ましからざるもやむを得ざるの措置を、社會正義の立場から支持せられるものと存じます。
われわれは、食糧事情のますます深刻化せんとする實情に鑑みまして、一方においては、供米を完遂せられたる市町村及び農家に對し深き感謝の念をささげるとともに、農民各位が、わが國がおかれている運命と國民立場とを深く認識せられまして、國際外交の重責を擔當せられるの氣魄をもつて、一層供米に努力せられんことを希い、かつまた政府に對しましては、農民の立場をも十分理解せる施策の即時實現を強く要望して、ここに本決議案を提出したのでございます。何とぞ各位の御贊同を願う次第であります。
最後にわれわれは、わが國の食糧難救濟のために聯合國が非常なる好意を寄せられまして、食糧輸入その他諸般の方策をとられておることに對しまして、深甚なる感謝の意を表するものでございます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=5
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006・井上知治
○副議長(井上知治君) 採決いたします。本案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=6
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007・井上知治
○副議長(井上知治君) 起立總員。よつて本案は全會一致可決いたしました。
〔拍 手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=7
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008・井上知治
○副議長(井上知治君) この際政府より發言を求められております。農林大臣木村小左衞門君。
〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=8
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009・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君) ただいま御決議になりました食糧供出の問題に關連いたしまして、この際政府といたしまして一言申し上げたいと存じます。世界的食糧不足のさ中におきまして、食糧の輸入を期待せねばならぬわが國現在の食糧事情からいたしまして、まずもつて國内における供米確保に萬全の努力を盡すことが、食糧輸入を期待し得る前提としての絶對的條件であることは、申し上げまするまでもないことでございます。政府といたしましては、國民諸君とともにこのことを深く銘記し、從來より努力をいたしてまいつたのでありまするが、最近における供米事情は、前途まことに憂慮すべきものがありまして、このまま推移するを許さないところの實情でありまするので、衆議院食糧對策委員會の御意見等も十分に參酌し、かねて供米確保に關する對策を考究中でありましたが、このほど供米完遂農家に對する特別報奬金制度、供出に對する肥料、農機具、纖維製品等、見込物資の供給確保對策その他を中心とするところの具體案について、ようやく成案を得るに至りましたので、これの對策に基き、かつその實行にあたつては、確固たる決意と最大の努力とをもつて、今後の供米完遂に邁進せんとするものであります。
なおこの機會において、既に供米を完了し、さらに進んで超過供出に努められつつある農家に對しまして、哀心より感謝の意を表しまする次第でございます。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=9
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010・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、政府提出、所得税法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=10
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011・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=11
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012・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加されました。
所得税法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長細田忠治郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=12
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013・会議録情報3
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所得税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 所得税法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年二月二十八日
委員長 細田忠治郎
衆議院議長山崎猛殿
附帶決議
一、自家労力を主体とした中小企業、特に農業は事業所得の算出上、常に不利なる條件の下に置かれているから、今議会に提案される改正税法には、この点に留意し今囘の改正と均衡を失せないよう十分考慮すること。
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〔細田忠治郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=13
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014・細田忠治郎
○細田忠治郎君 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案につきましては、われわれ十八名の委員に付託せられました。この特別委員會の經過竝びに結果を御報告申し上げます。
本委員會は、去る二十六日から二十八日まで委員會を繼續いたしまして、大藏大臣より、提案の趣旨につきまして詳細なる説明がありました。これに對しまして、各委員より連日にわたつて熱心なる質疑がなされ、政府よりはまた懇篤なる説明がございました。その詳細は速記録に讓ることにいたしまして、大體その質疑應答の趣旨を御報告申し上げたいと存じます。
まず自由黨の西村久之君から、昭和二十二年度の國民所得は、その算定基礎をいずれに置いたか。またその見込額はいかほどであるか。また明年度の所得に對して豫算課税をするのか。實績課税をするのか。第三點は、家族扶養料の控除は戰時中のものである、これあるがゆえに有能者が有能ならざる者の收入より減るようなことがあるので、この制度を廢止して、増給制度に立戻つたらどうか。この三點でございましたが、第一點につきましては、正式の調査はないが、五千億くらいになるのじやないかという、政府の前尾主税局長の答辯でございました。なお第二問につきましては、一年を四期に分割して、その實績に課税するから、事實上實績課税と同一のような結果になるであらう。かかる關係からして、豫算課税は申告課税制度をとつて、徴收の簡素化をはかる。第三點につきましては、現在の給與は必ずしも滿足ではないが、さりながら實情上今はやむを得ぬと答えられました。
次に社會黨の山下榮二君からの質問は、その徴税の困難性から見て、甲種勤勞所得税を撤廢してはいかん。たとえば日雇勞働者の收入のごときしかりであつて、しこうして總合所得税を全面的にとることが最も公平なる徴税方法ではないか。これに對して石橋大藏大臣の答辯は、近く税制の改正によつて分類所得税、總合所得税が一本建になるから、勤勞所得税というものはなくなる。日雇者は、昭和十九年以來丙種勤勞所得として、支拂賃金の中から、これを差引の上で徴收しておるから、非常に困難なる税種ではあるけれども、大分課税技術が完備しておつたがために、所期の目的を達成しつつあると、かような答辯でございました。
次に社會黨の加藤鐐造君からの質問でありまするが、およそ税の本體は負擔の衡平でなくちやならない。一方に生活にあえぎつつあるところの、血税を納める者があるかと見るならば、他方においては多額の不正收入のある者が課税の對象とならない。こういう不合理な現實がある。大藏大臣は豫算課税を實施すると言うが、課税の對象七、八百億圓は、表面に現われたところの營業者に限られておる。すなわち現在の課税の對象は戰後の利得者なるも、この中の、終戰當時より混亂期に隱匿物資の大口を取扱つた者はいかに處理するのか、これに對して大藏大臣は議會においてこの問題についてはしばしば御答辯も申し上げた。終戰後の大口收入に對しては、特別所得税ができて、二十二年度の收入にも相當多額に見込んで豫算を編成しておる。課税對象を完全に捕捉することはすこぶる困難であるけれどもが、税務當局は各方面に資料を求めておるので、これに對しては豫想以上の調査ができ、見込額も相當以上のことを期待いたしておる。世上特に新圓課税を考えよという説もあるが、今はその時期でないと思う。財産税、補償打切り等の問題が解決して、經濟界が安定氣分を得てからやつてみたい。新圓登録制を布き、新圓を對象として第二、第三の財産税をとれという説があるけれども、ただ通貨を對象として課税するならば簡單であるが、かくすれば、ある期間は登録は封鎖となるのではないかと思う。第二、第三の財産税をとることは、きよう發表して、きようとるということはできない。これが準備には相當の日子も要する。昨年の財産税のときにも非常にこれは動搖いたした。いよいよ新圓を登録して、きよう發表ときまれば、そのときには換物という作用が大規模に行われて、經濟界というものは大動搖し、大混亂を釀すであらう。となれば一體どうなるであらうか、新圓を封鎖したあとは、いかなる社會經濟状態に陷るのであらうかということも心配である。日本の經濟の不安が一掃されるとなれば落ちつくが、第二次の財産税が問題となる。將來の不安を招くから、要は時期の問題であらう。實施までの混亂と、その後の不安を顧みて、現状をもつてしては、何人がその衝に當るといえども、これは非常に至難なことであらうと思う。これに對して加藤君が重ねて、封鎖ではない。登録はあくまで登録である。換物運動が起きれば物に課税すればよいじやないか。物に課税してみるならば、税を免れるということもない結果になるじやないかというようなことを言われました。
次に協同民主黨の二階堂進君の意見といたしましては、國寶的の美術品に對して課税するということは、これは慮外の沙汰である。これは現品の隱匿となつて、或は海外に流出する場合も出てくる。政府は高度の審美眼をもつてこれを取扱わなければならない。これに對しての政府答辯は、かかる國寶的の美術品は、業者がかえつて高くないという評判である。その課税の方法はある程度の點數を申告させて、番附的のもので標準をきめる。美術品に限つて均等を失つたような課税をするというようなことはありません。こういう答辯であつたのであります。第二には、税の申告に對して徴收は收入を主としているが、支出の面も顧みて、會社または個人の課税は、あらゆる角度から、不正申告と正直な申告とを鑑別せなければならない。これに對しての答辯は、豫算課税制をとるために申告制度を採用している。不正申告に對しては、極力防止する手段を講じている。なお第三點の質問として、供出後の在米の委託釀造をやるという氣はないか。これに對して政府の答辯は、酒の釀造はこれによつて副産物もとれておる。その面から見れば、一石二鳥の名案とも思うが、關係方面に力説しているが、現在の食糧不足の事情から見ては、よほど困難なる形勢にあるものであるという答辯でありました。
次に進歩黨の金光義邦君からの質問は、金融制度調査會、税制調査會等の構成員に、概ね業者が介入しておらない。かるがゆえにはなはだ不都合なる結果に陷るような場合が多いということを苦慮する。これに對してどういう考えをもつておるかということと、第二點は、第一封鎖預金の引出制限が新聞に發表されていたが、これの眞僞いかん、この質問が二點。なお希望としては、勤勞者の糧はよく考えて、遲配、缺配というものは、折角の關係筋の好意も水泡に歸する場合があるから、これを經濟的方面から檢討して、これが救濟に向つて萬全を期してもらいたいという希望意見が出ました。さきの質問に對しましては政府からは、この各調査會の構成に向つては十分善處する旨の答辯がありました。第一封鎖預金の引出制限云々の問題につきましては、まだ確定しておらぬが、これは研究中であると大臣は答えられました。
次に進歩黨の山崎君から、濁酒に使われている米二百萬石から、清酒が三百萬石できて、粕が千五百萬貫もとれる。燒酎が七萬五千石もとれる。燒酎だけでも税金が一億四千萬圓も徴收できるじやないか。勤勞者に對するところの税の輕減をはかるということから、かれこれにらみ合わせても、ぜひともこの方法を促してみたい。米がいかぬという場合には、甘藷をもつてアルコールをとつてもいいじやないか。この問に對しまして前尾主税局長は、二階堂君に説明した通りでありまして、甘藷も澱粉分を含んでおりますから、これはとりにくい。こういうような話であります。
次に協同黨の赤澤君の質問でございまするが、事業所得と勤勞所得に對して區別を設けておるのはどういうわけか。これに對して政府の答辯は、事業所得は財産的部分を含んでおる。勤勞所得の課税は最低生活を意味するものじやない。負擔に累進性をもたしめるためであると答えられました。
次に社會黨の野溝君の質問としまして、なぜ農村に對するところの基礎控除を、この勤勞所得と同樣に取扱わぬかということでございましたが、大臣の答辯として、改正所得税が昭和二十二年四月から實施されるから、同一恩典に浴するが、甲種勤勞所得は一箇年分だから、一月、二月、三月は、時間上控除すると九箇月になるから、急遽實施の要があると答えられました。
大體まず以上のような質疑應答でございましたが、かくいたしまして、昨二十八日の午後討論に入り、自由黨を代表いたしまして、西村久之君からは、原案贊成の意見が述べられまして、なお協同黨の首唱にかかる附帶決議が、合議の結果取上げられまして、各派共同提案として西村君から述べられました。その附帶決議を朗讀いたします。
自家勞力を主體とした中小企業、特に農業は事業所得の算出上、常に不利なる條件の下に置かれているから、今議會に提案される改正税法には、この點に留意し今囘の改正と均衡を失せないよう十分考慮すること。
こういうような附帶決議でございました。次に進歩黨を代表されまして山崎岩男君が、原案贊成の意見とともに、この前述の附帶決議に贊成の意を表されました。次に社會黨を代表せられまして、加藤鐐造君より修正案が提案されました。その修正案は、第十六條第一項中、二千四百圓とあるを六千圓に改めるとありますのを、これを一萬二千圓に改めるとなすのであります。しかしなお各派の共同提案に對しては贊成であるが、この原案に對しては、この通り修正いたしてみたい。こういうような意見でございました。次に協同民主黨を代表されまして、赤澤正道君より原案贊成の意見を述べられ、前述附帶決議につきましては、贊成の意を表明せられました。最後に國民黨を代表されまして、増井慶太郎君から原案贊成の意見を述べられると同時に、前述の共同提案の附帶決議に向つて贊成の意を表されました。かくして採決に入りました。まず社會黨提案の修正案について採決いたしましたところ、起立少數をもつて、本委員會におきましては否決されたのでございます。次に原案について採決いたしましたところ、起立多數をもつて、本委員會においては原案通り本案は可決いたされました。次に各派提案になる附帶決議について採決いたしましたところ、滿場一致をもつて贊成せられ、この附帶決議は可決されたのであります。その際石橋大藏大臣より、この附帶決議に對する意見の發言を求められましたので、これを許しました。すなわちそれによりますれば、二十二年度の計畫として、改正税法は既に準備が整つており、數日中に提案される税法中に組み入れることは困難であるが、趣旨のあるところはよく了承いたしておるから、中小企業に對する負擔の均衡については、愼重に考慮する旨の言明がありました。以上簡單でございますが委員會の經過竝びに結果を御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=14
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015・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案に對しては、加藤鐐造君外二名より、成規により修正案が提出されておりますが、便宜上第二讀會において修正案の趣旨辯明を許すことといたします。本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=15
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016・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=16
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017・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=17
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018・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=18
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019・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。この際修正案の趣旨辯明を許します。山下榮二君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=19
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020・会議録情報4
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所得税法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
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所得税法の一部を改正する法律案(政府提出)に對する修正案(加藤鐐造君外二名提出)
所得税法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第十六條第一項を改正する規定中「六千円」を「一万二千円」に改める。
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〔山下榮二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=20
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021・山下榮二
○山下榮二君 ただいま御審議中の所得税法の一部を改正する法律案に對し、日本社會黨を代表して修正案を提出し、その理由を説明せんとするものであります。
すなわち政府原案の所得税法中の第十六條「甲種ノ勤勞所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ年六千円ノ割合ニ依リ給與ノ支給期間ニ應ジテ算出シタル金額ヲ其ノ給與ヨリ控除ス」とありますのを、わが黨は、第十六條「甲種ノ勤勞所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ年一万二千円ノ割合ニ依リ給與ノ支給期間ニ應ジテ算出シタル金額ヲ其ノ給與ヨリ控除ス」と修正したいのであります。第二十四條の、扶養家族一人につき年二百四十圓というのは、原案そのままといたしたいと存ずるのであります。その理由を簡單に説明申上げたいと存じます。
わが黨は、基本的には、この勤勞者の給與より直接天引するいわゆる源泉課税なる甲種勤勞所得税について、その制度は妥當なる徴税方法だとは思つていないのであります。從つてこの制度には根本的には反對でありますけれども、現下の敗戰國としてのわが國の内外の事情を考慮いたしまして、やむを得ないものであるということを考えているのであります。しかし税制の制度または徴税の方法は、あくまで納税通知書を國民に渡し、國民が進んで納税義務を履行するという、國民の積極的なる納税精神を涵養することのできる制度竝びに政策をとることが必要であると考えております。次には、國民が生命を辛うじて維持することのできる最低生活資の全額には、所得税を控除するのが當然であると考えております。また政府竝びに爲政者は當然さようなことを考慮すべきが責務であるとわれわれは考えます。
現今の惡性インフレーシヨンや、天井知らずの物價騰貴等から考えまして、今日の物價指數を考慮いたしますとき、一月千圓の生活費は決して樂な生活ではないのであります。生命を維持するに十分なる賃金給與と言うわけにはいかないのであります。昨年の七月、第九十囘議會の豫算委員會あるいはその他の機會に、わが黨は、當時勤勞所得税が二百圓の控除であつたときに、五百圓の控除額にいたしたいということを主張いたしたのであります。當時の勤勞者の平均收入所得額は、一箇月四百八十圓であつたといわれておつたのであります。本年の一月の調査によりますと、本年一月の全勤勞者の平均一箇月收入は、一千四圓となつているといわれております。しかも物價指數は、昨年の十月政府が全面的に公定價格の改正を行われた、その改正前の六月の物價指數を一〇〇と假定いたしまするとき、實に今日の物價指數は三〇〇に相當するといわれているのであります。物價の指數は三倍に昂騰いたしたと申し上げても過言でないのでございます。この調査は、わが黨が調査したのではなく、日本銀行の調査によるものでありまして、よほど正確を期したものとわれわれは想像いたしているのであります。給料が二倍以上に高騰いたしたといえども、物價が三倍以上に高騰をいたしておりますから、その生活水準は三倍乃至四倍に上つているとわれわれは想像いたしているのであります。また過般來政府は、官公勞働の最低生活確保のための給料値上に對する要求に對し、いろいろ説があり、紆余曲折はいたしましたけれども、結局において平均一箇月收入、税込一千三百圓にお認めになつたのであります。この點から綜合して考えてみても、千圓の給與に對して控除するということは、決して不當な無理な言い方ではないとわが黨は考えているのである。(拍手)
ここにおきましてわが黨は、現在の戰勝國の占領治下にあるという事實と、敗戰祖國の國家再建に深き思いをいたしまして、國民が耐えがたきを耐え、忍ぶべからざるを忍ぶことこそが、國家再建のための國民の覺悟でなければならぬと信じ、苦難の中からでも、われわれは、一千圓以上の給料所得者は甲種勤勞所得税を納めるべきであると、かように信じまして、ここに控除額一箇年一萬二千圓、一箇月一千圓を控除していただきたいという修正案を提出するゆえんであります。
どうか各政黨政派を超越され、今日の國家國民の生活苦難の實情を御賢察願いまして、わが黨のこの修正案に奮つて御贊成あらんことを切にお願い申し上げまして、説明にかえる次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=21
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022・井上知治
○副議長(井上知治君) これより採決に入ります。まず本案に對する加鐐藤造君外二名提出の修正案につき採決いたします。加藤鐐造君外二名提出の修正案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=22
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023・井上知治
○副議長(井上知治君) 起立少數。よつて修正案は否決されました。
本案の委員長報告は可決であります。本案につき採決いたします。本案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=23
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024・井上知治
○副議長(井上知治君) 起立多數。本案は原案の通り決しました。これにて本案の第二讀會は終了いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=24
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025・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案の第三讀會を省略して第二讀會議決の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=25
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026・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=26
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027・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて本案は第三讀會を省略して第二讀會議決の通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=27
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028・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際政府提出會計法等の特例に關する法律案を議題となし、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=28
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029・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=29
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030・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。會計法等の特例に關する法律案の第一讀會を開きます。大藏政務次官上塚司君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=30
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031・会議録情報5
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会計法等の特例に関する法律案(政府提出) 第一讀會
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会計法等の特例に関する法律案
昭和二十二年度の歳入歳出総予算は、会計法第八條第一項の規定にかかわらず、これを歳入にあつてはその性質、歳出にあつてはその目的に從つて部に大別し、更に各部中においては、これを款項に区分し、又、その收入又は支出に関係のある部局等の組織の別を明らかにするものとする。
昭和二十二年度の歳入歳出総予算及び特別会計歳入歳出予算中に設ける予備費については、会計法第九條の規定は、これを適用しない。
昭和二十二年度の特別会計歳入歳出予算は、各特別会計法の規定にかかわらず、同年度の総予算とともにこれを帝國議會に提出することを必要としない。
附 則
この法律は、昭和二十二年度の総予算の提出の日から、これを適用する。
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〔政府委員上塚司君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=31
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032・上塚司
○政府委員(上塚司君) ただいま議題となりました會計法等の特例に關する法律案提出の理由を御説明申し上げます。
昭和二十二年度豫算は、概算決定の遲延、その他各般の事情によつて議會提出が相當遲延いたしておるのでありまするが、今囘ようやく歳入歳出總豫算については、別途その提出を見るに至つたのでありまして、また特別會計の歳入歳出豫算につきましては、近日中に議會提出を目途として、目下鋭意その編成に努力いたしております。しこうして政府は、昭和二十二年度の豫算の編成にあたりましては、豫算の平明化等にも極力意を注いだのでありまして、すなわち從來の豫算の形式は、歳入歳出を經常、臨時の二部にわかち、さらにこれを款項に區分いたしてまいりましたが、今囘は歳入歳出を、歳入にあつてはその性質により、歳出にあつてはその目的によつて部に大別し、各部中において、これを款項に區分し、いわゆる目的別の區分を行うのほか、また同時に收入支出の局にあたる部局等の組織別の區分をも明らかにいたしたのであります。
また從來豫算中に設ける豫備費につきましては、第一豫備金及び第二豫備金に區分いたしてまいつたのでありまするが、過去における豫備金支出の實情に鑑みまして、昭和二十二年度豫算につきましては、第一、第二の區分を廢止しまして、豫備金一本にいたしたのであります。しかしてかかる形式を採用することにいたしまするには、これに伴う法的措置をも併行的に講ずることが必要でありまして、政府といたしましては、これに關し別途財政法案の提出を準備いたしておるのでありまするが、目下のところ、その提出は若干遲れる状況にありますので、今囘會計法第八條第一項及び第九條の規定に對する特例を設け、措置することといたしたのであります。
なお昭和二十二年度豫算の編成は、前述のごとく歳入歳出總豫算と、特別會計歳入歳出豫算とは、同時に提出することが不可能の状況にありまする關係上、特別會計豫算の提出時期に關する特別會計法の規定に對して特例を設ける必要がありますので、これをも併せてこの法律案を提出いたした次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊を與えられんことを希望いたします(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=32
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033・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧につきお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=33
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034・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=34
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035・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=35
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036・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
明後三日は定刻より特に本會議を開きます。議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後三時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01019470301&spkNum=36
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