1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月四日(火曜日)
午後一時十六分開議
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議事日程 第十一號
昭和二十二年三月四日
午後一時開議
一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
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第一 參議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
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〔朗讀を省略した報告〕
一、昨三日吉田内閣總理大臣から次の通り政府委員を仰せつけられた旨の通牒を受領した。
内閣事務官 岩倉規夫
第九十二囘帝國議會政府委員
一、昨三日衆議院規則第十五條に依り議長において議席を次の通り指定した。
五 中村嘉壽君
一、昨三日衆議院規則第十五條但書により議長において議席を次の通り變更した。
一一 中野四郎君
二四 和崎ハル君
六二 伊藤恭一君
一四一 池村平太郎君
二九三 三浦寅之介君
三六八 金井芳次君
四五八 飯田義茂君
一、昨三日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した。
第二部選出
豫算委員 苫米地義三君(石黒武重君補闕)
一、昨三日議長において次の通り常任委員辭任の許可があつた。
第三部選出豫算委員 加藤一雄君
第七部選出豫算委員 西村榮一君
一、昨三日委員長理事互選の結果次の通り當選した。
會計法等の特例に關する法律案(政府提出)委員
委員長
武藤常介君
理事
田中實司君 青木清左ヱ門君
松永義雄君
一、昨三日次の通り特別委員の異動があつた。
會計法等の特例に關する法律案(政府提出)委員
辭任松本七郎君 補闕町田三郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより會議を開きます。大藏大臣の財政演説に對する質疑を繼續いたします。疋田敏男君。
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一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
〔疋田敏男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=1
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002・疋田敏男
○疋田敏男君 私は國民黨を代表いたしまして、ただいまから質問をいたします。まず大藏大臣に私はお尋ねをいたしたいと考えます。
今囘の豫算は、わが國の豫算始まつて以來の厖大なる金額でありまして、前年度の豫算における物件費、人件費の單價の二倍以上に引上げられておりますることは、インフレがその最も大きなる原因であると考えるのでありまするが、昨年度の豫算も、最初は五百六十億圓に始まりまして、インフレの進行とともに、數次にわたりまする豫算の追加で、遂に一千億圓を突破いたしておるのであります。大藏大臣は、昨年七月二十五日の演説の中に、われわれはここにわが國の今日のいわゆるインフレ乃至物價騰貴は、好むと好まざるとにかかわらず、デフレに轉ずる時期に近づきつつありと申されております。さらにまた、本年度限りの歳出と認められまするおもなるものは、同胞引揚費、戰災保護費、價格調整補給金、船舶運營會補助、終戰處理費、朝鮮住宅建設資材費等ということになります、かような大きな財政支出が、特に歳入不足を伴いまして、累積的に繼續いたしまするならば、その結果は、申すまでもなくはなはだ憂慮しなければならないわけであります、かように申されておるのであります。しかるに去る三月一日の豫算委員室における二十二年度の豫算の説明の際におきましては、インフレの懸念が強いと申されております。また三日の本會議におきましては、インフレは解消する、インフレ防止策は完璧であるとも申されておるのでありまするが、これらをいろいろ總合いたして考えますると、大藏大臣の言葉がかようにいろいろに違つておりますることは、いずれにしてもまことに憂慮すべき事態であることは、間違いがないのであります。
とりわけ大藏大臣の口から、累積的に繼續すればはなはだ憂慮すべき歳出であると説明されておりまするところの同胞引揚費、終戰處理費、價格調整費、船舶運營會補助等が、二十二年度においても依然として計上されておりますることは、大蔵大臣がいかなる言葉をお用いになりましても、これは眞の健全財政とは申されないのでございます。殊に船舶運營會は既に解散をされておると私は心得ておりまするが、これに對して、二十二年度も十二億圓という厖大な豫算を計上しておられまする理由が、はつきりいたさないのであります。
また同じく昨年の七月二十五日の演説の中には、來年度以後においては逐次歳出を減少することができ、遠からざる將來、收支の均衡を囘復し得ることをわれわれは確信して疑わないのであると申されておりまするが、なるほど二十二年度の豫算の收支におきましては、大藏大臣がお話になりましたごとくに、一應均衡はとれておるかもしれませんけれども、これは決して歳出が減少しておるのではございません。すなわち大藏大臣のお話とは反對に、歳出が前年度の二倍以上に進んでまいつておるのであります。これを物價が上つたから、あるいは國民の所得が増加したからと簡單に片づけられまするならば、大藏大臣の御信念と、その押しの強さには敬服をいたしておるのでございまするけれども、私はこれを良心的な政治とはどうしても申し上げにくいのであります。この點について特にお伺いをいたしたいのであります。
今日は物價が上る。國民の所得も増加する。税金も上る。豫算も上る。これでは世の中が何もかも上りづくしであります。これではたして國民は安心した生活がやつて行けるでありましようか。今日のような物の上る世の中で、喜んでおりまするのは、まづやみ屋と高利貸くらいのものではないかと私は考えます。昔から御承知のように、上下一致と申しておりまするが、上る物もあるけれども、下る物もあると、こういうことによつて、初めて社會の均衡がとれてまいるのであります。
大藏大臣は、外から力を加えずとも、滯留せる通貨がおのずから銀行に集まり、郵便貯金に化するようにいたすことが必要であり、それにはまず第一に經濟界の前途を明るくし、預金が封鎖されるのではないかという風説の現われる餘地のないようにすることが必要であると、同じように昨年の七月二十五日の演説の中に申されておいでになります。しかるに今囘の大増税、酒、煙草の値上げ、厖大なる豫算等に、さらに地方におきましては、通貨に對しまするいろいろの噂がまだ絶えないのであります。從つて金を物にかえて退藏する事實は、物資の偏在、物價の高騰を來しておるのでございますが、今後一層われわれはこの物價の騰貴を見ることを覺悟しなくてはならないのであります。
かくて大藏大臣のお説きになりました、經濟界を明るくし、滯留せる通貨を銀行や郵便局に集めるということは、現在の情勢からはますます不可能な状態に追いこんでまいつておるように考えるのであります。そこでこの際大藏大臣は、直に經濟界の安定と民心の安定のために、思い切つて第一封鎖の全面的解除を速やかに斷行せられる勇氣をお持ちではないでありましようか。もしこれを直ちに御實行に相なりますならば、たちまち農村を初め新圓階級におきましても、また一般國民におきましても、非常に安心感を與え、ひいては銀行にも、郵便局にも、政府が勸誘いたしませんでも預貯金が殖えることになつて、まことに好影響を與えると考えます。かくて初めて大藏大臣の申されまするところの、經濟界の前途を明るくする第一歩を踏み出すことができるのであります。
さらにこれに併せて申し上げるならば、昨日社會黨の西村代議士もお話になつたように思いまするが、現在發行せられてあります紙幣の裏づけをいたしまするためにも、政府は特にアメリカに懇請をいたしまして、アメリカにあり餘つております金を日本に借りてきて、そうして日本の經濟界の安定をはかり、いわゆるアメリカの隣人愛の精神にお訴えしたならば、これは絶對に不可能でないと私は考えまするが、ここまで大藏大臣におかれて偉大なる決心をせられるお氣持があるかないか。この二つは非常に重大でございますので、特に親切に御説明を願いたいのであります。
政府は近く國民負擔の公正、税制の簡易化をはかるために税制改正の法律案を議會に提出せられるそうでございますが、これはまことに結構なことと考えます。從つてこの機會に一言申し上げておきたいことは、今日徴税の種目が複雜多岐にわたつておつて、國民はもちろんのこと、税務署自體がその種目の簡略化を熱望いたしておるのであります。おそらく大藏大臣といえども、租税の種目を全部御記憶はないはずでございます。大藏省の政府委員にお尋ねをいたしましても、即答はできないのでございまして、ざつとこれらは三十二科目ぐらいございます。かように租税の科目が多いために、税務署の吏員は薄給と過勞のために、常に不平を述べておりまして、特に近來は吏員の素質が低下をいたしております上に、若い未經驗者が多いために、事故が非常に多いのでございます。從つて御承知の通りに税務署には、異議の申立が殺到をいたしておる有樣でございます。
一例をお話申し上げますならば、財産税のごとき、關係の吏員を集めて署長が説明をいたしましても、徹底をいたさないために、やむなく署長自ら出動して、これが徹底をはからねばならないというふうな有樣になつておるのであります。從つてこの機會に、租税の科目を徹底的に簡略化させる御意思がございますか。これは徴税の能率増進のためにも、ぜひとも斷行していただきたいと考える次第でございます。
次に厚生大臣と併せて大藏大臣に御尋ねをいたします。厚生大臣がもしおいでになりませねば、政府委員で結構でございます。當豫算の中に、民生の安定費は、昨年度は六百五十萬人分を計上されておりまするのに對しまして、二十二年度は三百萬人分を計上いたしておりまするが、昨年度においてさえも、戰歿遺家族や未復員者の留守宅のあわれな家族たちはその恩惠に浴しておりません。直接私のところに訴えられ、手紙をよこされている人たちが山ほどあるのであります。しかも物價はますます高騰いたしておりまする今日、政府がこの豫算を減少いたしましたことは、私は不思議にたえないのであります。もし昨年度は豫算が餘つたからと申されるのでありまするならば、それは地方における取扱者が冷淡であつたためでありまして、この裏面にはたくさんの泣いておられる人たちがあることを知つていただかなくてはならないのであります。
昨年のことであります。九州の柳河におきましては、引揚げの婦人が、近所の人たちの冷たさに、働くに多數の子供を抱えて職がなく、食うに一錢の金もなくて、子供とともに川に飛びこんで死んでいる事實があります。また山口市におきましては、朝鮮から引揚けてこられた檢事が、生活難のためにピストル自殺をしている事實もあります。戰歿遺家族にして、子供を抱えて生活難に苦しんでいる人たちが、どのくらい私のもとに訴えてきているかしれません。これはおそらくは全國的には、相當な數に上る悲劇が展開していることと私は考えているのであります。
さらに公共事業費は、昨年度より、なるほど増加はいたしております。しかしながら昨年度の百六十萬人に對しまして、二十二年度は百八十萬人、わずかに二十萬人分の増加でございます。もし本年度において賠償物資の撤去が行われまするならば、たちまちに二十萬人の失業者が出まして、この二十萬人分の増加も、これ一つでふいになつてしまうのでございます。今年はまた引揚者も歸ります。さらにまた石炭、鐵鋼の超重點主義によりまする傾斜生産によつて、二百萬ないし三百萬人の失業者が新たに生ずると見られるのであります。かくておよそ今年度においては七百萬人の失業者が巷に氾濫することになるのでございまするが、漏れ承るところによりますると、昨年度の豫算は、實際にはわずかに三十萬人しか救われておらないということであります。これはもちろん豫算を上程したときといろいろ時勢が變つて、物價が上り、賃金の値上りができましたので、さような少數な人員になつたのではないかと私は考えているのであります。
また南海の震災に對しましては、わづかに公共事業費のうち四億圓が充てられているのみと伺つておりまするが、その範圍の廣大であることは、關東大震災以上であります。鹽田あるいは田畑の破壞は、たちまち國民生活に大影響を與えております。日本再建のためにも、これらの復舊は緊急を要するものでありまして、そのために各派代表の議員諸君が、多大の犧牲を拂つて現地の調査にまいつておられることは、政府としてこれを無にしてはおいでにならないと存じますが、以上の豫算の面に現われておる點から考えますと、まだまだこれでは足らないのではないかと考えておる次第であります。これに對して政府としては何かよい方法があるかどうか、特にお伺いをいたしてみたいのであります。
次の首相にお尋ねいたしたいのでありますが、おいでになりませんので、首相に代るべき方で結構と思いますから、御答辯をいただきたいのであります。御承知のように昨年の當議會におきまして、全代議士の方々の御共鳴を得て、戰災復興促進の決議案が上程せられ、可決となつておるのであります。その後において昨年末、住宅復興に對する全代議士の御共鳴による方法が講ぜられようとしたことも、政府は御承知のことと存じますが、今年必要に迫られておる住宅は、既に四百萬戸に及ぶのであります。われわれがかような決議をし、かような行動をいたそうと思いましたことは、一戸でも多くの家を建てまして、戰災者、引揚者に温かい生活をしていただこうとするわれわれ議員一同の親心であります。さらにまた昨日大藏大臣のお話には、石炭の増産のためにも住宅が必要であるということをはつきり申されておりますが、この住宅の確保こそは、實に食糧に次ぎますところの民主安定上の焦眉の急であります。これが完備いたしませんでは、國土の再建、産業の復興も、とうてい期し得られないのであります。
特にわれわれが憂慮いたしますことは、住宅の不足が道義心の廢頽を招き、社會惡を増加することの恐ろしさを想像しなくてはならないのであります。あるいは未だに燒けトタンのもとに、あるいは小さな一室に六、七人の男女がごろ寢をし、赤ん坊は泣き、子供は大人の惡い世界を眺め、風紀は亂れ、この氣の毒な人たちは、機械のごとく、獸のごとく、まことにみじめな生活をして、政府を恨んでおるのであります。この慘状に對して政府は、二十二年度においてわずかに七萬五千戸の家を建てる計畫だと言つておりますが、これでは四百萬戸を建てるには、五十三年間という長年月を要することになるのでありまして、現在のこの氣の毒な人たちは、永遠に救われないことになるのであります。この七萬五千戸も、政府が御豫定になつておるように、どの方面にどのように割當てて、お建てになるお考えでありますか。
既に住宅營團は、すこぶる非能率であるので、解散を命ぜられております。住宅營團と戰災復興院との二本建で今までやつておりましてさえも、なおかつ住宅建築は非能率であつた現在におきまして、はたして住宅營團のなくなつた今日、現在の戰災復興院の機構一本で、完全に日本の戰災復興ができますかどうかは、はなはだ疑わしいのであります。戰災復興院の機構は、まことに小さな、微々たるものでありますから、これは何とかもつともつと擴大して立派なものにしなくては、あの東京の街の――昨日も私は見ましたが、電柱のあちらこちらには、われわれに住宅を與えよという悲壯なポスターが、今もなおはられておるのであります。かような状況を考えるときに、一日も早く戰災復興院の機構を擴大強化して、さらに住宅國營をもつて、積極的に國民の要求に應ずるということが、政府としては必要ではないかと考えるのであります。
農林大臣にお尋ねいたしまするが、今囘農林省において、超過供出米に對しまして報奬金制度を施行することを發表せられましたが、私はよいことはよいとはつきり申し上げます。この制度はまことによい方法のように考えるのでございますが、ここでもう一つよい上によい方法を採用していただくならば、もはや鬼に金棒で、供出に關しまする限りは、毎年々々政府が御心配になることは要らないのではないかと考えるのであります。その方法はまことに簡單であります。現在のように、毎年毎年苦勞する必要のない、いわゆる責任供出制度であります。この方法は、各農地を最初に調査いたしておきまして、一等地から五等地くらいまでに適當に分類をいたしまして、一等地は一反についていくら、二等地は一反についていくらと定めて供出をさせます。それ以上は本人のつくりどりということにいたしまして、今囘定めました政府の超過供米の場合における報奬金制度を併せて行いまするならば、増産と供出増進は絶對に疑いがないのであります。農村におきましても、これを實は希望をいたしておるのであります。
なおまた四日のある新聞の報ずるところによりまするならば、埼玉縣に對しましては、救國米供出のお禮に、供出米の中から酒をつくつて農民に贈つたということが出ておりましたが、これまた近ごろにない、實に名案でございまして、さすがに苦勞人の農林大臣のおやりになつたことと、私はほとほと感謝をし、また感心をしておるのでありまするが、ここでこれももう一つ御研究になつていただいて、救國米を一定量供出した者に對しては、警察署または税務署に屆け出れば、税金を前納して濁酒をつくることを大いに認めてやる、こういうような方法をいたしまするならば、大變に農家の人たちは喜ぶのではないかと考えるのであります。この點について、特に大藏大臣にも關係があるようでありまするが、まず農林大臣のお話を伺いたいのであります。
さらにまたついででありまするから、生鮮食料品の統制、これも一つ適當な機會に解いていただきたい。酒、タバコの値が上ります。こういうようなことで勤勞階級の口には、酒も、魚も、野菜も食べられないような状況に陷るのでございますから、これらも斷行をしていただきたいのであります。これはいかにも豫算に關係がないようでありまするが、實はこれらを實行いたしますると、インフレを防止することができまするので、豫算に大いに關係があることになるのでございます。
また豫算の中に、水産振興費あるいは遠洋漁業の奬勵費というようなものが計上されておりまするけれども、この遠洋漁業に最も必要なものはマニラ・ロープであります。しかるに御承知のように、今日はマニラ・ロープというようなものは、日本にも世界にもないのであります。いわゆるマニラ・ロープは、フイリツピンにおいて遂になくなつておるのでありますが、これらも政府におきましては、水産の振興のために、現在の豫算の中に、この代用品をつくりますることについての御研究ができておるのであるかどうか。すなわち私は、この代用品としてマオランの栽培をぜひとも政府においてやつてもらいたい。マオランの栽培をやれば、水産の振興が大いにできるということになるのであります。
さらに厚生大臣にお伺いをいたしまするが、この豫算の中に、厚生省に、國立少年教護院費あるいは都道府縣少年教護事業費、浮浪兒の保護事業費等が計上されてあります。また文部省に、國民學校の戰災孤兒集團教育施設費が計上されておりまするが、軍閥官僚の大きな犧牲者であるところの、敗戰社會から生じたこの氣の毒な戰災、引揚孤兒等に對しまして、この際こういうような分割的な豫算を計上せずに、大々的に國立育兒院を設立して、この氣の毒な子供たちを救つてやるという方法を講じていただくことはできないものでありまするかどうか。
ここで結論にはいりまするならば、當豫算の歳出が二十一年度の二倍になつたから、二倍の仕事を政府にしていただくのだと思うことは、大きなあて違いであります。これはもちろん物價高と賃金の値上りのための増大で、仕事はかえつて反對に二十一年度ほどできないと申し上げるのが正直なところであります。從つてただいまはあまり仕事をしてないので、仕事をしていただけないのかとお尋ねをいたしたのであります。
當豫算を本議會で通過させましたとたんに、國民に與えられまするものは何であるか。すなわち税金の値上り、酒、タバコ、切手、葉書の値上りであります。そうして失業者、戰災者、引揚者、遺家族、未復員の留守宅家族、あるいは敗戰の弧兒等は、置去りに遭うということになるのであります。また日本の民主化のために重大な役割をもつておりまする教育文化事業に對しましても、本豫算においては、まことに天から目藥程度の豫算が見積られておるような状態で、これまた何らの日本民主化の效果を生まないのであります。
そればかりでなくて、必ず失業者がどんどん製造されていくことになるのでございますから、大藏大臣がどのようにお話になりましても、ほんとうに仕事をやつて日本の再建をやろうといたしますならば、現在の豫算以上に金の要ることは當然のことであります。從つてここでちよつと私は運輸大臣にも伺いたいことは、將來起るべき追加豫算、あるいは相當にいろいろの經費を捻出しなくてはならない。それに充當いたしまするために、とつておきの鐵道の運賃の値上げということも考えられるのでございまするが、この際政府に仕事をしていただきまする財源といたしまして、旅客の運賃くらいなら、あるいは耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶために我慢をすることができるかもしれませんけれども、貨物の運賃まで上げてもらつては、これは物價の大騰貴を來す原因となりまするので、今からこの點御注意を申し上げるとともに、お話を伺つてみたいと考える次第でございます。
今や日本は滅亡の第一歩を踏み出しておるのであります。この際政府は、日本再建の目鼻のつきまするまで、いわゆる現在のような不安の状態下におきましては、ぜひともいま一層の御努力によりまして、目下差迫つておりまするところの賠償物資の撤去に對しまして、連合軍に延期方をお願いをいたしまするところの決斷がございませんでしようか、どうでありましようか。もし政府にして、かような決斷がありまするならば、われわれはこれに對しまして協力をあえて惜しまぬものであります。どうか關係各大臣の懇切なる御答辯を切にお願いいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=2
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003・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 疋田君の御質問にお答えします。第一に、二十二年度の豫算における人件費、物件費等の單價が昨年よりも引上げられておるということで、すなわちインフレを示しておるものだというお話でありますが、それはむろん賃金、物價等が上つておるのでありますから、引上げられたことは當然であります。殊に實は昨年までは、人件費、物件費の單價が合理化されておりません。特に古い單價によつて計算をしたということがありました。いつかこの議場でも申しましたように、單價は合理化をするということで、本年度から訂正をいたしたわけであります。なおまた昨年私が演説の中で、好むと好まざるとにかかわらずデフレに轉ずるというたことで、御批評がありましたが、これは御質問の中にもありますように、失業者が續々現われるとかいうような現象は、すなわちデフレ的現象でありまして、こういう現象に對して、われわれは大いに警戒をしなければならぬということを申したのであります。
次に昨年、歳出が減じて、そうして豫算の均衡がとれる時期が將來來るということを私が述べたと申して、御批評でありますが、これは二十二年度の豫算におきましても、御指摘のように、同胞引揚費もそれはむろん殘つておりますけれども、著しく減じましたことは御承知の通り、また終戰處理費も相當大きく減じております。かようなわけで歳出の減少も來しておる。ただいかにもまだ終戰直後の時期でありまして、同胞引揚費にしても、終戰處理費にしても、これが全額なくなるということに至つておりませんことは遺憾でありますが、しかし次第にこれらの歳出が減ずるということは、既に二十二年度の豫算においても現われておることと私は信じております。
その他いろいろ私が申した言葉をお取上げになりましたが、かように斷片的に人の言葉をお取上げになると妙なことになるのでありまして、全體の趣旨においては、何ら私は矛盾することなく、ずつと前から一貫しておると考えております。
それから預金の吸收と申しますか、あるいは通貨の膨脹につきましては、私は第一に經濟界の安定が必要なんだ、そのほかの細かいことはやつてもだめなんだ、むしろ弊害があるということを繰返して申しております。今でもさように考えております。これは疋田君においても御同感のことのように拜聽いたしましたが、ただその方法として、第一封鎖の解除をしたらどうかということでありますが、これはしばしば申します通り、むろん第一封鎖、第二封鎖というような區別があり、新圓があるということは、これは不自然な形でありますから、なるべく早くこれを解除する必要のあることは申すまでもありません。かような方針でもつて處理をいたしておるのでありますが、ただ時期は、私の見るところでは、まだ現在直ちに第一封鎖預金を解除することは早いと考えておる次第であります。
次に金をアメリカから借りて來て、通貨を安定させろということでありますが、これは第一借りてくることがなかなか容易でありますまいと思いますが、かりに借りてこられたといたしましても、御承知のように、通貨の安定というのは、金があるから安定するのではないのであります。金があつても安定はしない。通貨の安定というものは、金とは別問題であります。明治初年あたりに既に經驗がある。正金銀行でも、その當時經濟知識がなかつたため、うしろに銀でもあれば安定するかと思つて、銀を苦勞してつくつてみたが、これは兌換をしなければだめなんであります。兌換すればたちまち引出されてしまう。現在においても、金を借りてきて、そうして日本銀行券のうしろにそれをつけましても、しまつておいては何もならないのであります。つまり兌換をするから初めて通貨になる。兌換すれば皆さん金を引張り出すであろう。結局經濟界が安定しなければ通貨が安定しない。金があるなしにかかわらないのであります。
それから租税の種類が多過ぎるということ、これは御批評御もつともの點がありますが、しかしこれも理想を申せば、所得税一本でいくのがよいのですが、實際の世界はそうはいかないので、補完的の税はどうしても必要とする。從つて物品税も必要とする。かようなわけで税が複雜になることは、事實やむを得ないのでありますが、しかしこれは税制調査會等の研究にまちまして、できるだけ簡單化するということは、政府としても好むところでありますから、さようにいたしたいと考えております。
生活保護費のことは、厚生大臣が見えましたから、その方からお答えを願います。
公共事業費の中に、南海震災に對する費用が比較的少いという御指摘でありますが、これは追つて御審議を煩わします二十一年度追加豫算の中にも、この震災に對する經費は出てまいる次第でありますから、なお細かいことは豫算委員會等でもつて、説明員その他からお答えをいたさせたいと考えます。
次にこれは總理大臣へのお尋ねであつたかと思いますが、私からついでながらお答え申し上げておきたいと思います。つまり戰災復興について、殊に住宅について、これは御指摘のごとくできるだけ早く戰災地の復興をいたしたい、なお住宅の復舊をいたしたいということは、政府の最も念願するところでありまして、相當に努めておるのであります。しかしながらいかんせん、資材の關係がありまして、他に終戰處理費その他でもつて、住宅をたくさん建てられない。かような關係で、資材の關係上思うに任せないことは、政府としてもはなはだ遺憾の次第でありますが、現在できるだけの努力はいたし、なお將來もいたすつもりでおります。
それから住宅營團はなくなりましたが、これは各地方にその仕事を移讓して、地方でやつてもらうようにいたしております。これは地方分權の趣旨にも合うことだと考えまして、各府縣等の努力によりまして、從來の住宅營團以上の效果を上げてもらいたいと考えておる次第であります。なお戰災復興院の規模が小さいということも、これもごもつともでありますが、しかしこれも昨年以來相當に擴張いたしまして、實際に即應していつておるわけでありますが、なおこれについては、政府としてもただいま考えておる次第であります。
米の供出完遂者に、どぶろくをつくらせるということは、これはなかなか問題であります。しかし供出完遂者に、何かそういう方法で酬いたいということは、政府としても考えております。しかしどぶろくをつくらせるということは、どうもちよつとむづかしいと思うのであります。他の方法によつて何かいたしたいと考えております。
その他なお豫算につきましては、今後大いにまだ金が要るのだろうということでありますが、昨日もお答え申し上げました通り、大體二十二年度の豫算は、今後よほど重大なことがなければ、追加豫算は出さないつもりであります。のみならず、ただ金を出しましてもだめなのでありまして、金はいわゆる印刷すればできるのかもしれませんけれども、結局物の問題になりますので、いろいろ必要なことがありますけれども、それを全部滿足させるというわけにはいかない次第でありまして、この點はしばしば申し上げる通り、各位の御諒承を願いたいと思うのであります。
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=3
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004・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいま生活保護、失業等の問題に關連してお尋ねがありましたが、これはもう申すまでもなく購買力の非常に放出されますときには、どうしても物價高騰を來しまして、勤勞階級に對する富の分配が十分でないということで、御承知の通りのような非常な勞働問題などをだんだん惹起してくるのでありまするが、これはだんだん經費を節約しまして、そうして通貨の膨脹を抑止しまして、さいわいに物價が低落する傾向をたどりますると、今度は問題の中心は、お話の通りの民生問題に重點が移つてくると思いますので、これらの點に對しまして、政府としましては、できるだけこれに對するいろいろ方法を講じて、善處したいという考えでおります。それで失業問題につきましては、昨日もこの議場で申し上げました通り、豫算における公共事業費は九十五、六億に過ぎませんけれども、そのほか終戰處理費なり、あるいは經濟再建費なり、民生安定費なりというものは、多くはやはりそういう方面に、直接間接に失業對策に對する方法となると考えますので、この點を巧みに善用しまして、その線に備えたい。
それからもう一つの問題は、生活保護の問題でありますが、その後實施の經過は、保護法でうまくいかない。まだそこまでうまくいかないいろいろの點も事實あります。それからまた幾分は亂給にいつておる點もあるようでありまして、ただいま十五萬人の民生委員というものの指導教育のよろしきを得まして、だんだんこれをほんとうの軌道に乘せていきたいという考えでおります。ただいまは二百七十萬人ばかりの要保護者がおりまして、そうしてそのほかなお醫療その他の關係で三十萬人、合わせて三百萬人となつております。昨年度の豫算は百五六十萬人という豫算をもつて組みましたけれども、今日の實施の結果から押えまして、まず三百萬人、しかしただいま申しました二百七十萬人に、この三十萬人を加えた三百萬人ということよりも少し進みまして、生活扶助を要する者三百萬人、そのほかの醫療その他の扶助を要する者三十萬人、三百三十萬人という基調において豫算を編成した次第でありまして、まずこれで大體のことはやつていける見透しでおります。
それから戰災弧兒の問題につきましても、いろいろお尋ねがありましたが、これはただいまもあるいは政府直接、あるいは民間に委託しまして、できるだけの親切な手を盡しておる次第でありまするが、もちろんまだ完全とはまいりません。近いうちに兒童局をつくります。もう旬日のうちにこれをつくるつもりでありまして、そうしてこの議會には間に合いませんでしたけれども、この次の議會には兒童福祉法を出しまして、もつぱら弧兒、特に戰災、引揚げの孤兒を中心としました孤兒の救濟に、完全を期するつもりでおります。
〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=4
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005・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君) 疋田君に御答辯いたします。供出制度につきましては、御承知のように、戰時中の官僚的な、そして天降り的な割當制度の弊を除去いたしまして、民主的な方法に改善するために、種々研究いたしました結果、食糧對策委員會の愼重な檢討もお願いいたしまして、今日の方法となつておるのでありますが、なお改善の餘地はまだまだあろうかと思います。御意見にあつたような點は、從來の研究中にも現われた有力な意見の一つであつたようにも承知いたしておりまするから、いずれにいたしましても、今後の問題として、御意見の點は十分拜承しまして、參考に資したいと思つておるのでございます。
酒を報奬とする問題でありますが、食糧を輸出する側でありますところのアメリカにおきましてすら、穀物を酒につぶすことは制限されております。ドイツのごときは、酒の製造を禁止されておるような實情でありますから、酒の問題のきわめてデリケートな問題であるということだけは、御承知おきを願いたいと思つております。
生鮮食料品の統制撤廢の問題でありまするが、これは總理大臣の施政演説中にもございましたし、私も再々御答辯をいたしておるところであります。元來この種のものの統制をするということは、非常なむずかしいことでありますので、できるならば撤廢いたしたいと思いまするけれども、これには時期があります。また順序も考えなければなりません。今日ただいまのところ、まだその時期が到來しておらないように考えております。さよう御承知を願います。
みそ、醫油の確保の點は、お説のごとく、私どもも最も苦慮いたしまして、これが對策に腐心しておるところでありますが、御承知のように、何分にも原料たる大豆が滿洲から輸入の途が絶えております。國内の産地でありまするところの北海道の集荷状況も、御承知のようにきわめて不振の状況であります。結局どつちにいたしましても、輸入に仰がねばなりません。從來もアメリカより輸入せられたものは、極力この方面にまわしておるのでありまするけれども、何といつても大量のものは、滿洲から仰がねばなりません關係から、滿洲よりの輸入再開方につきまして、先般來極力マ司令部の御協力を懇願しておるのでありまして、これはぜひともその實現を期したいと念願いたしておりまする次第であります。
マニラ・ロープの點につきましても、同樣輸入の懇請をしておりまするが、一面お説のごとき代用品の供給確保もまた必要でありますと認めておりますから、マオランのごときものは、ぜひ今後増産に努力いたしたいと思つております。先般大麻の生産禁止の指令が、關係方面よりありました際にも、政府といたしましては、これらの事情を訴えまして、その影響を最小限度に止めることに努力いたしたのもそのためであります。これをもつて御答辯といたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=5
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006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 疋田君、まだ御質疑がありますか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=6
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007・疋田敏男
○疋田敏男君 運輸大臣の御答辯がまだ殘つております。
〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=7
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008・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 疋田君の御質疑にお答えいたします。船舶運營會については、藏相からお答えすべきでございますが、便宜私からお答えを申し上げます。船舶運營會は、御承知の通り、戰時中船舶が國家管理に移されておりましたが、それを實施するための機關として設置されたものでございます。しかるところ、進駐軍の管理下に船舶が移された今日も、進駐軍の諒解のもとに、運營會は相變らずこの管理の事務を實施するために存續を許されております。しかしながら海運業が自營體制でやらなくてはならぬという根本方針に基きまして、將來はどういうふうにしたならばよいかというその體制については、目下研究中でございますが、ともかくも現在存續いたしておりますから、これに關する經費を計上いたした次第でございます。
それから國鐵の貨物運賃について特に御質問がございましたが、御承知の通り國鐵は一つの企業である。從つて自賄い主義でやつていかなくてはならないものであります。しかしながら一面公企業でありますから、別に利益を收める必要はない。但し損失は困る。こういうような體制で運營していつたならばよいのであります。從つて相當運賃を計上して、一般會計まで賄うというようなことまでは考えておりません。その反對に、現在四十億餘萬圓の一般會計からの借入れがあるのであります。一面昭和十一年の貨物運賃に比べまして、去る二月二十八日までの運賃は、全然上つておらないのであります。しかるところ、物價は御承知の通り、物貨指數に現われたところをもつてみましても、昭和十一年に比べますと、十五倍ないし二十倍の高率を示しております。しかるところ、一方貨物運賃は全然上つていないというようなことで、去る三月一日これを二倍に引上げました。從いまして昭和十一年に比べますと、約二倍になつたに過ぎないのでありまして、これではとうてい四十億の赤字は補填できないのであります。
〔議長退席、副議長着席〕
從つてある程度の運賃は、これを必ず相當増額しなくてはならぬ。但しお説のごとく物價には惡影響を來たさないように、せつかくただいま鐵道會議にかけまして、研究中であります。右をもつてお答えといたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=8
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009・疋田敏男
○疋田敏男君 この席からお許しを願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=9
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010・井上知治
○副議長(井上知治君) よろしうございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=10
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011・疋田敏男
○疋田敏男君 ただいまのいろいろの御答辯に決して滿足をいたしておるものではありません。できるならば再登壇をいたしまして、もう少し質問をいたしたいところでありますけれども、本日は時間の制限を受けておりまするので、詳細は委員會に讓りますが、一言大藏大臣にこの席から申し上げます。金をアメリカから借りてくることは、何も猫に小判式で眺めていようというのではありません。今日の日本が、かような悠長な状態の許されないことは、誰もが知つているのであります。從つてアメリカに頭を下げてお願いを申し上げて、金を借りてくる、クレヂツトを得るということは、この日本の再建のために、やむにやまれない對策であるがゆえに、これを政府にお尋ねいたしたのであります。これを一言附け加えまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=11
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012・井上知治
○副議長(井上知治君) 田中伊三次君。
〔田中伊三次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=12
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013・田中伊三次
○田中伊三次君 大藏大臣石橋湛山君の御演説に對して、私は質疑をいたしたいと思うことの骨組だけを、ここできわめて短時間に申して、質疑をいたしたいと存じます。
まず第一に私の伺いたいのは、昭和二十二年度におけるわが國の國家資金計畫の内容であります。この國家資金計畫は、戰時中引續きこれが行われ、私の記憶するところによれば、昭和二十年度の資金計畫の發表を最後として、今日までこれはとだえているように見受けられます。すなわち國民所得の總額を、政府はいくらと認定をするか。その國民所得の中よりいくばくの租税を納入するか。いくばくの事業資金、いくばくの産業復興ないし都市復興の資金を充當するか。いくばくの貯蓄を行うか。これらのものを充當いたしましたる殘額を、いくばくとしてこれを最後の國民生活資金に充當するかということの、概略の目標が確立しておりませんことには、國家の資金計畫がどちらを向いておるかがわからぬ。これでは政府も國民も、今日の國家の再建を行うことに不便が多いのであります。
昭和二十一年度の資金計畫は、年度が終らんとしておるにかかわらず、今日までに未だその發表を見ない。私はここに詳しい數字を聽くことは無理であると考えるので、二十二年度の國家計畫の内容については、何億何千萬圓程度でよろしいから、その概算をここで御發表をしていただきたいと思うのであります。これを要請いたしまするゆえんは、これによつて政府の意圖するところを國民がことごとく知る。これによつて國民が心より政府の施策に協力をいたして、國家の再建に邁進をすることがよろしいと信ずるからであります。
それから第二點は、この豫備費と追加豫算の關係を、新憲法の建前から考察をして、私の所見を述べ、大藏大臣のお考え直しを願いたいと思うのであります。昨日からの所論を拜聽いたしておりますと、大藏大臣は、總豫算一本でいくんだ。よほどのことが起らざる限りは、追加豫算は出さない考えであるということを述べられて、同時にこの言葉と合わすがごとくに、從つて緊急の入用を生じたる場合には、豫備費をもつてこれに充當すべく、三十億圓にわたる豫備費を計上しているんだというがごとき御説明を行つておられるようであります。しかしながらこのことは、新憲法の國家財政に關する規定というものより考察をいたしますると、いささかその精神に違背をいたしているかに見受けられる。
新憲法のもとにおきましては、國家財政のことごとくが、議會の決定によるのであります。議會の決議によらざる國家の收支は、斷じて許さぬという建前が、國家財政の民主化の大原則として、新憲法の國家財政に關する條章中に、明瞭に掲げてあるところであります。こういう條項がすこぶる明瞭に掲げてありまする場合においては、極端にこの新憲法の精神を尊重しようとするならば、かりに二十二年度の豫算案において、ここに三十億圓にわたる豫備費が計上してあるとして、その豫備費がかりにあるといたしました場合においても、豫備費のある限りは、從來の舊憲法下と同樣に、豫備費としと協贊を與えた以上は、これは自由に使つてよろしいという状況にはならない。豫備費ある場合といえども、議會の決議を行うの時間的餘裕のある限り、それほど緊急を必要とせざる限り、必ず追加豫算の形式をもつて、その都度議會の決議を經るということによつて、國家の收支をとつていくべきものである。この原則が新憲法の精神であることは、ここに新憲法の制定に對して非常な努力を重ねられた金森國務大臣もおられることであり、その特別委員會の論議を通して、すこぶる明瞭となつていることであります。
ここに昨日來の所論を考えて私が案ずるのは、追加豫算をなるべく避けようという努力をいたしますことはよいことであるが、そういう努力をいたしました結果は、結局例外的に認められてをります、緊急やむをえざる少額の支出においてのみ使途を認められておりまするこの豫備費を、使おうとする傾向となつてくるのではないか。これは例外をもつて原則におきかえようとする努力であると私は考える。それで大藏大臣の努力のほどはよくわかるのだが、そういうやり方はよくない。またそういう考え方は、あえて必要のないことでありますから、今後追加豫算については、必要の都度、そのたびごとに國會に提出をして、その決議を求める、國會の決議によるという憲法の大原則に從つていくべきである。この原則をいかに守ろうとしても、萬やむを得ざる場合に限つてのみ、この三十億の豫算を適當に運用すべきものであると考えるのであります。そういう考え方に訂正せられる意向はないか。これについて大藏大臣の所見を質しておきたいと思うのであります。
それから第三點は、皇室費であります。これは二千三百萬圓の皇室費が計上されております。私は宮内省の今日まで歩んでまいりました道をつぶさに精査をいたしまして、過去において宮内省が使つてまいりました經費というものを研究をしてみますと、遠い昔のことは別論といたしまして、最近、本年度まで五箇年間における宮内省の本豫算、竝に幾多の追加豫算を總計して、その累計を平均してみますと、從來の御皇室が支出せられた豫算の總額というものは、實に三千萬圓を超えるのである。多い時には三千數百萬圓に上つておるということが事實である。しかるにかかわらず、今囘はわずかに二千三百萬圓の皇室費が計上してあるに止まつておる。しかも追加豫算はなるべく出さぬのだ、こう言う。
なるほどその内容をよく調べてみると、宮内省官制の改正によりまして、宮内職員は相當なる量にわたつて減員が行われることは事實である。また學習院、博物館、こういうようなものに對する經費の支出が必要でなくなることも事實である。また宮内當局において行つておりました各種の關係補助金というものが、姿を消すに至ることも事實である。しかしこういうようなものを勘案して、これを考えてみても、私の見るところでは、少くとも宮内當局の必要といたします經費は、三千萬圓ないし四千萬圓に近い數字になるものと確信をしておつたにかかわらず、この數字を見たことは、私はまことに心細く思つておる次第であります。
さきに新憲法が制定されんとするときに、特別委員會の席上において、皇室の全御財産というものを、例外なく國庫に歸屬せしむべきや否やということについて、各位の熱心な所論が行われましたときに、政府當局もえりを正して、このことに對しては既に御説明があつたはずである。皇室の入用であるところの一切の經費は、ことごとく謹んで議會がこれを決定して、國民の出した税金の中から差し上げることになるのである、皇室の民主化を行うために、皇室には決して御不自由をさせないのだという熱心な政府の言明があつて、これを諒といたしました結果、皇室に決して御不自由をかけるがごときことなしと確信をして、われわれはここに新憲法のもとに、皇室の全財産の國庫歸屬を決定しておるようなわけである。このような事情がありますにかかわらず、今日の二千三百萬圓という經費の提出を見ておりますことは、私はとりもなおさず、一言にして盡すならば、今日の物價高の情勢のごときは眼中に入れずして、ここに査定を行つたものではなかろうかと考えるのである。いかなる根據によつて二千三百萬圓という少額に失する全額の決定をいたされたものか。この二千三百萬圓はいかなる内容を有するものであるか。その根據竝びに内容について、私は御説明を願いたいと思うのであります。
それから第四點、政府は昨年の新圓制度以來――新圓制度という言葉はおかしいのでありますが、昨年の四月の新圓制度以來、政府は十數囘にわたつて幾多の手を打つておる。ところが大藏大臣は、一千億圓を突破いたしました今日においても、通貨抑制のためには何らの手を打つ意思がないということを、しばしば述べられておるようであります。しかし通貨抑制の具體的な措置を施すことなくして、現状のままで放任しておきますときには、本年末においては、誰が考えてもわかることでありますが、二千億になんなんとするところの通貨になるのではないか、こう考えられるのであります。これをこのままに放任しておいて、打つべき手がないということでは、政治にならぬ。
そこで私が大藏大臣に尋ねたいことは、これはこの際どうしても日本銀行券の最高發行高に、その限度という一つのくぎを打つ必要があるのではないか。日銀券の發行限度を決定するという制度をここに確立する意思が、大藏當局になければならぬ、この段階に來らねばならぬと、こう考えるのであります。しかしながら、ただ議會が法律において、大藏省が考えにおいて、机の上で單にそれを決定しただけでは、インフレが止まるものでもなければ、通貨の抑制が可能なものでもない。言うまでもなく、その最高限度を定めるには、最高限度をどうしても守つていかなければならない幾多の施策を施すの必要があります。そこで先ほど私が所見として申しましたように、國家資金計畫の内容を明瞭にいたしまして、本年はそのインフレを防止するためには、いくばくの新圓の貯蓄を行うべきであるか、國民協力してこれを行うのに、どうすればいいかということ、いくばくの公債を消化すればいいか、いくばくの貯蓄を行うがいいか、こういう事柄について、國民が理解のもとに努力していかなければならないことになるわけであります。
まず少くとも第一に考えられる、この制度を確立するについての裏づけといたしましては、最近いわれております、いわゆる救國貯蓄運動の強力なる展開ということが必要になつて來ると思う。それから第二には、輸出向き事業を除く、他の一切の事業に對する各銀行の貸出しに對しては、強力なる抑制を行う必要がある。第三には、外貨の輸入状況というものをにらんで、これに具體的な一つの見透しをつける必要がある。この第三點は、最も重大であると考えるのでありますが、これらの幾多の裏づけを考慮に入れて、しかして今日の段階においては、最後の手段として日銀券の發行高に限度を打つ、その御確信が大藏大臣にもうぼつぼつなければならぬと考えるのであります。この點について大藏大臣の所見をお伺い申しておきたいと存じます。
それからもう一點聽いておきたいと思いますことは、一體昨年以來しばしば起る事柄であるが、これは政府に信用がないからであるが、新圓竝びに第一封鎖に對して、政府の聲明とはまつたく反對に、何らかの緊急措置があるのではないかというデマがひんひんとして飛ぶ。そのデマの飛びましたときに、そのデマの出どころはどこにあるのだろうかということを、手探りをもつて探つてみると、いつでもデマの出どころは同一の方向である。いつでも同一の方向からデマの火の手が上つておる。このデマによつて國民經濟は極度の不安に襲われます。しかもその國民の不幸をまのあたりに見ながら、その反面において、國民經濟の混亂ということにつけこんで、多額の利得をしておる階級が若干あることを見逃すことができぬ。いつでも共通した方向からデマが出、そのデマを飛ばすことによつて、いつでも共通した階級――少數階級がこれによつて莫大な利得を得ておるということが推定できるのであります。かようなことが今後においても行われる場合においては、石橋大藏大臣はいかに確信をもつてこの通貨政策を行つていかれても、効果をあげることはできないと私は思う。ここに大藏大臣竝びに司法大臣がおられるようでありますから、ともにお尋ねを申しておきたいのでありますが、こういうデマの根源を突き詰めることは、あながち困難なことではないと思うが、これを突き詰めると同時に、これを嚴に取締る途はないのか。現行法制上の根據十分ならずというならば、新法制をここに立案をして、議會の協贊を求めても、かかる不當な作爲的なデマの根源は、根こそぎ芟除するの必要を認めるのであります。(拍手)政府のこれについての御所見を伺うことにいたしたいと存じます。
申し上げたいことはいろいろあるわけでありますが、時間のない關係がありますから、私の質問は一應これだけに止めておきたいと思います。(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=13
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014・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) ただいまの御質問にお答えいたします。
第一の國家資金計畫というものは、戰時中何年か續けて發表されましたが、最近はこれをやめました。これは國家資金計畫という、ああいう計數、それから國民所得の計算などにもさような弊があるのでありますが、結局數字をただつくる、これはつくることはできるのでありまして、實は大藏省あたりでも計算はいたしておるのでありますが、しかしながらその計算というものは、結局たとえば財政が膨脹すれば、それがまた資金へはいつてくるというようなものでありまして、實は循環的なものであります。そこで參考としてはある程度計算をいたしてみる必要はありますが、實はあまりこういうものに大きな信頼をおくことはできないのでありまして、殊に最近のようにいろいろな變化があります際には、かような計算もなかなか困難であります。そこでただいまは、さような計算によりましてどうこうと申すよりも、實情に副いまして、殊に物資の側面から觀察して、財政を處理していきたい。また貯蓄の問題につきましては、現に通貨の發行が相當あるのでありますから、さような見當から貯蓄の奬勵を行い、そして實際に月々預金が殖えるであろうと、各金融機關で豫想をしておりますその豫想に從つて、それを産業資金と財政資金にわかつ、かような實際的な處置をとつておる次第であります。
それから豫備費の問題でありますが、お説は一面において非常にごもつともと考えます。しかし第一、三十億圓と申しますが、一千億圓の豫算でありますから、實は三%であります。三%の豫備費でありますから、金額においてもさして非常に大きなものではないのであります。それからまたその三%の豫備費は議會の御承認を受け、議會によつて決定されるのであります。でありますから、必ずしも憲法の趣意に違反するものではないと思う。のみならず、なるほど豫備費を使いますその歳出の内容については、一々議會の決議を經ませんけれども、その取扱いは相當愼重にいたします。今までは第一、第二豫備金がありまして、一つは大藏大臣と各省の大臣との協議だけで使えるようにしておつたのでありますが、今後は愼重に閣議を經て使うような方法をとりたいと思つております。議會には歳出の内容はあらかじめ出ないわけでありますけれども、しかしながら歳入歳出の見合いというものは、すなわち豫算に現われているのでありますから、私は御指摘のごとく憲法を云々するほどのものではないと實は考えております。三%くらいの豫備費がありまして運用をするということは、むしろ當然であろうかと思います。なおこれをはずしまして、なるほど議會がある場合には追加豫算を出してもよろしいのでありますが、その場合には、その追加豫算の財源をどうするか。とにかく當初の豫算において三十億圓の豫備費を置き、それに見合う財源を置いて、議會の御決議を受けておく方がよいのではないかと考える次第であります。
その次に皇室費の問題でありますが、これは二千三百六十六萬圓というわけでありまして、決して多いとは申せません。しかし實情を申し上げますと、宮内省では實はもう少し小さな豫算を要求されたのでありますが、大藏大臣としまして、これを少しく増額したのであります。もつともこのほかに皇宮警察費は、別に警察費の方に一千萬圓ほどはいつております。一昨日實は豫算の内奏を申し上げました際に、皇室費のところで、宮内省の方では非常な御遠慮で、少額の豫算を出されたが、ということを陛下に申し上げましたら、いや、皇室費はなるべく少い方が好ましいというお言葉で、恐縮いたしたような次第であります。でありますから、この二千三百六十六萬圓は、決して少く査定をいたしたのではなく、むしろ増額の方に多少なり査定をいたしたわけであります。(拍手)
その次に通貨抑制について、日本銀行券の發行の最高限度をきめる意思はないかというお尋ねであります。これは今日のごとき通貨事情におきましては、最高限度を決定するということは、相當困難な事柄とは存じまするけれども、これはさような制度を設けるつもりであります。實はできればその法律を今期議會に提出して、御協贊を得たいと思いましたが、これはあるいは間に合わないかと存じます。法律によつて間に合わなければ、他の手段によりまして、事實上通貨發行に對して、ある委員制度のごときものを設けたいと考えておる次第であります。なお通貨抑制につきましては、申上げるまでもなく、單に最高限度をきめるというようなことで抑制ができるものではありませんので、結局根本的に通貨の發行がそう多くならぬでもいいような事情をつくる必要があるのでありまして、その第一は、常に申しますように、まずもつて財政の收支を均衡せしむることと考えております。從つてこの通貨の問題も、昭和二十二年度の豫算が實行せられる時期になりましたならば、事實においてよほど解決をされるであろうと、私は信じております。
なお通貨に關するデマを一部の者が常に發して、その一部の者が利得をする、はなはだ怪しからぬ、私はこの通貨に關する、あるいは新圓封鎖でありますとかいうような、いわゆるデマが、はたして一部の者からのみ出るのかどうかということは、實はよく存じませんが、しかしとかくこのデマというものは、發する場所は、何事にかかわらず多く同じ所から起るというような現象がありますから、あるいはさようでもあろうかと存じます。これに對して取締りをする意思があるかどうかというお尋ねであります。むろん取締りも結構でありまして、これもいたしたいと考えるわけでありますが、しかしながら結局デマが飛ぶというのは、デマが起るような基本的條件があるということでありますから、司法大臣としては別としまして、大藏大臣としては、このデマが起りましても、一般の人がこれを信じないような基本的條件を、どうか經濟界につくりたいと念願しておる次第であります。(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=14
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015・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 田中君にお答えいたします。デマを放送して、その間に不當利得をするがごとき行爲は、斷じて許すべからざるものと考えております。新たに法律を制定してこれを取締ることはどうかという御意見でありますが、ただいまの法律をもつてしても、かような行爲は十分に取締り得るのであります。從いまして、かような行爲がもし發覺するとするならば、司法當局といたしましては、斷じてこれを處置するつもりであります。さよう御承知願います。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=15
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016・井上知治
○副議長(井上知治君) 徳田球一君。
〔徳田球一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=16
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017・徳田球一
○徳田球一君 私は本日大藏大臣の財政政策に對しまして質問をいたしたいと思うのであります。もちろん共産黨を代表してのことであります。
第一點は、財政制度の民主化に對しまして、大藏大臣はきわめてこの方針に對して盡力しておられるように演説しておられるのでありますが、これはまつたく事實を裏切つているものである。第一新國會法によりますと、豫算はすべて公聽會を開いて、公聽會において十分に審議され、全人民の意思が、この豫算に對していかなることを考えているかを反映した後に、これは議會に提出せらるべきことを規定せられているのであつて、會計法を單に設けたからというだけで、これが民主化されることはないのである。しかるに新國會法はまさに成立せんとするに際しましても、なおかつ公聽會などを設けないばかりか、内示をして後、たつたわずか二日にして、ここに提出せられて、われわれはこの質問演説をしなければならないのである。たつた二日間、しかもわれわれはこの資料を提供することを政府に要求しましたところが、資料は今印刷中であつてだめだ。明日、明後日でなければ、この資料も出てこないのであります。ですから、實際上この審議が民主的に行われるところの基礎を與えておらない。これはまさに民主化を裏切つているばかりでなく、議會の審議權を蹂躙していると信ずるのである。
またこの豫算のすべての計上におきまして、經濟的基礎に基くところの諸事實をここに提供しておらぬのである。もつと適切に言いますれば、國民所得の内容は、ちつとも大藏大臣は説明しておらぬ。歳出の各單價を説明しておらない。大きな額をただここにもち出してきて、何萬人に對してどうすると言つてみたところで、何萬人のその一人の單價に對して、どういうことをやつているのかといふことを言わない限り、これが正當であるや否やを論議すべき基礎はないのである。これは後にいろいろ説明したいと思うのでありますが、公共事業のごとき、昨年はわずか一日に對して十七圓の單價、だから實行はできない。そういう豫算の審議、こういう單價を明瞭にし、ない豫算の審議というものは無意味である。ゆえに審議は實質上に行われておらない。非常に形式的である。
かかる豫算の提出というものは、結局するところ、天皇制の官僚主義をまだ今もなお續行しているのである。これは天降り的豫算。われわれ議員が豫算を眞に審議し、われわれ自身がこの豫算を國民にもち出すというのではなくして、官僚が與えた豫算に對して、單に審議するというだけ、協贊を與えるというだけのものである。從つて官僚は、でき得る限りこれの内容がわからないように、審議ができないように、うやむやに通るようにしかやらない。國民はこれに對して、この豫算がいかなるものであるかということに對して、十分なる認識を與えられない。できないのである。ここに根本的の缺陷があるのである。大藏大臣は、みずから主張するところの民主化がはたして行われているかどうか。この點について明確なる答辯を要求するのである。
第二點は、この豫算はきわめて堅實、健全な豫算だと大藏大臣は主張するのである。形式上においては、なるほどこれが歳入と歳出との均衡は大體保たれている。しかしながらこれは形式である。實質においては、これはやみをあおり、インフレをあおるところの不健全な財政だ。かかる財政で計畫は、結局するところやみとインフレとが一層横行して、この豫算を實行することさえも不可能に陷らしむることになると思うのである。
實際上この問題を具體的に見ますれば、この豫算案は大體昨年の十月から十一月を基礎にしておるものと思われる。そうでなければこの厖大なる計數というものは、とうてい計上することはできないのだ。しかるに東京都の卸賣物價指數によりますと、十月から二月八日までの間に、一八・六%物價は向上しておる。これは東京都が公式に發表しておるところである。さらにこれがやみ物價になりますと、もつとはなはだしい。これは警視廳の發表でありますが、十月から一月までの間に、三六・七%上つておる。これは現在二月におきましては、實際上これは五〇%以上騰貴しておるものと稱せられておるのである。大體正當でありましよう。しからばこの豫算というものは、實際上の土臺がすでにぐらついておる。どこに健全がある。どこにこの豫算の實行し得べき基礎がある。
さらにこれを租税の點において論じますれば、租税は本年度は六百八十七億計上されておるのである。昨年度が二百十四億でありまして、大體三倍に増大しておる。その中心的なものは所得税でありまして、所得税は、増加税を加えまして、四百四十三億計上されておる。昨年度は百三十九億でありまして、これまた三倍以上に増大しておるのである。しかるに一方において勤勞所得と乙種事業所得におきましては、財政計畫の概要からいたしまして、これは相當なる輕減をしておるのである。削られております。またさらにこれの最高率におきまして、九五%であつたものが、七五%に低減されておる。すなわち上と下とから、兩方からこれは輕減されておる。狹められておる。だから中間に向つて、これは集中的に租税をとろうというのである。
しかるにこの方法によりますれば、從來のような課税對象では、かかる莫大な徴收はできないことは明らかである。しからば、ここに何か別に大きな課税對象が起つてこなければならない。この課税對象は、現在におきましては、やみによる莫大なる不當利得、これ以外にはないのである。公正なる所得というものは少い。なぜならば、公定價格が非常に低くきめられておりますので、正當なる帳面の上の生産と、これを賣拂つての收支というものは、利益があがるどころか、どこの會社へ行つても全部これはみな赤字だ。われわれが爭議を指導してみまして、實際會社の者と立會つて調停をしましても、勞働委員會における調停におきましても、どこの會社だつて、プラスになつておるところは一つもない。全部マイナスだ。これは公定におきまして、實際上マイナスでなければならないのがほんとうである。それゆえにこの方面に税をかけたつてできるものじやない。結局厖大なるやみの不當利得をやつておる者にかけなければいかぬ。
しかるに大藏大臣は何と言われる。大藏大臣は新圓階級に對しては課税しない。新圓階級とは何者か。新圓階級とはやみによつて不當利得をしておる者である。これに對して課税をしない。すると、どこにもつていくか。マイナスに課税することができるか。できるもんじやない。だから大藏大臣は、結局この新圓階級に税を課さないということは選擧目あてだ。(笑聲)新圓という金それ自體に課税するなというばかが、どこにあるか。そんな課税なんかできるものではない。新圓という金自體に課税するなんて思わせるような、そういうふうなことを言いふらして、そうして殊に自覺の程度の低い農民階級の票を集めようとするのである。これは財政計畫の基本をまつたく忘れて、選擧宣傳のためにやつておることである。(「その通り」拍手)
しかるに大藏大臣は、遂に昨日この新圓階級に關しても、實質上の所得に對して追求して税をかけると言われた。とうとうけつを出してしまつた。しつぽを出したのである。實際これに課税しない限り、かかる莫大なる六百何十億という税がとれるはずはないのである。すなわち政府は、表向きは新圓階級、すなわちやみ不當利得者に對して課税しないかのごとく言い、實際上は課税せざるを得ない窮地に陷れられておるのである。しかるにかかる場合に課税するときに、彼ら大やみ、大資本家、また新興的な新しいやみ利得者、これらは暴力團を組織し、また政府と密接なる關係をもつておるのである。こういうものに對しては課税をしぶる。現にやみの摘發におきましても、實に莫大なるやみの摘發をやりつつありながら、かかる三井、三菱系統の諸會社、あるいはやみの厖大なる組織者、これに對してやみを摘發したということは聞かないのである。聞かないばかりか、これをやらざらんことを欲しているのである。(笑聲)
從つてやみの摘發は、すべて失業をしているがゆえに、食うに食われず、死ぬに死なれず、惡いこととは知りながら、やむを得ずやみをやる人、あるいはかかあどんが買出しに行くもの、これをやみ行爲者として摘發している。最近におきましては、一箇月約三萬人以上が檢事局に送られていると稱せられている。司法大臣がいないから、よくは返答ができないだろうと思いますが、(笑聲)こういう莫大なる犧牲者を出しているのである。これはまつたく勞働者、農民、その他一般市民大衆、國民の九五%に對して追求をし、われわれを搾つているところの五%の人間に對して放置しているところの政府の政策が、てきめんにここに暴露せられていることを私は言いたいのである。この點に關しまして政府は實際どういう政策をとるか。また今までとつたかということに對して、十分なる責任ある答辯をせられんことを希望するのである。
もし政府が從來の態度をもつてするならば、この財政計畫は一大破綻をし、何ら意義のないものになつてしまうであらう。みずから計畫した仕事ができないばかりか、全經濟を破綻に陷れる重大なる危機に際會するのである。すなわち中小商工業者、農民以下勞働者の人々、失業者の人々に、税を通じて莫大なる追求をし、やみ取締りを通じてどんどん追求する。供出を通じてどんどん追求する。しこうしてこの儲けはみんな獨占大資本家の手に、暴力團をもつところのやみ屋の手に、これにみんな集中することを意味するのである。政府は何と考えられる。
政府はもちろん、税務機構の改善におきまして、税務署吏員の講習所を設けたり、あるいは税務署官吏を増加させたり、あるいは税務署を増設したりして、大いに大會社、大所有者から徴收することをすると言われておるのでありますが、しかしながら、かかる根本方針をもつてしては、實際上これは實行し得ないのである。その點を實行するや否や。すなわち新圓階級に對して課税しないなんという暴言を取消し、ここに不當利得者に對しどしどし追求して、租税をとるということを聲明せらるる責任があると私は信ずるのである。いかなる所存で、いかなる所見を有せられるや。
それから七百圓のわくの撤廢の約束でありますが、これはゼネスト終結のときにおきまして、二月中には必ずやるように努力する。もちろん努力するという約束ではあつたけれども、やらなければならないのである。しかるにこれをやつておらぬ。未だにやつておりません。やつておらぬばかりか、この七百圓のわくを撤廢するならば、その代りに第一封鎖は凍結するということを、政府の意向として發表せられている。しからばこれまで勞働者諸君、農民諸君は、五百圓のわくをおつかぶされて、それゆえに第一封鎖に相當のものを強制貯蓄させられているのである。この強制貯蓄させられているところの第一封鎖が今度は凍結せられる。凍結せられることによつて七百圓のわくをはずすというのである。これは明らかに勞働者、農民に對して、強制力をもつてするところの貯蓄の收奪である。かかることをやることは明らかに新圓に對する封鎖政策の第一段である。
事實上この豫算を運用して、インフレが厖大に厖大を重ねるならば、そのときに石橋大藏大臣が言おうが言うまいが、またいかに頑固に、いかにがむしやらに、つつぱろうがつつぱるまいが、厖大なるインフレが上り、銀行券が山と積まれるならば、何かの處置をしなければならない。今封鎖をしないなんという約束をしてみたところで、これはあてにならぬ。現に政府が、勞働者に對して給與審議會をやるとか、職員の給與對策委員會をやるとか、さんざん約束をしたけれども、去年の九月以來現在に至るまで、ほとんどやつていないぢやないか。何でも約束はする。やあ來年はどうする。金はどうすると約束はするが、實際はやらない。
この勞働關係調整法のときにも、厚生大臣は何と言つたか。厚生大臣は勞働基準法を直ちに出す、次には必ず出すと言つたが、未だに出てきやしないじやないか。この間あつた議會にも出やしなかつた。未だに出やしない。すべて政府の約束というものは、あてにならない。信頼ができない。このことは國民の間に十分にしみこんでいる。從つて政府がこの新圓問題において、いかに約束しようとも、こんなものは事實がふつとばしてしまう。
その次は失業者の救濟のことでありますが、これは昨日遂に河合厚生大臣がこの祕密をみずから暴露しておる。すなわち失業者を救濟することをやらない。事實上やらない。これはなぜか。これはやみをみなやつている。やみをやりなさい、やみをやりなさいと、やみを奬勵している。救濟しないことは、やみを奬勵する。なぜならばやみをやらない限り、生きていけないじやないか。何で生きていく。正當に働いて生きてゆく途があるか。生きていく途は誰もない。從つてみなやみをやらざるを得ない。
現在勞働者にしろ、一般政府の投入にしろ、下積みの方は事實上生きていかれぬ。だからやみをやる。犯罪行爲としても相當たくさん起つて、檢擧せられておる。しかしながらわれわれは、これに對して憎むことはできない。憎むのは、政府、大資本家を憎む。自ら惡いことをしながら免れている人を憎む。しかしこれは政府が政治的な能力がなく、これらの失業者を救濟することができず、一般の勞働者、農民の生活を改善することができない結果によつて起つている。政府の重大責任と言わざるを得ない。
しかるに民生安定費なるものは、事實上昨年は五人に對して三百圓、一人あたり六十圓。大體こんなものをもらつたつて何になる。六十圓、これは一日でみなふつ飛んでしまう。もらつたつて生活できるものじやない。しかもこれをもらいに行くときには、まるで乞食扱いしやがる。こんな乞食扱いされて、顔をさらしてまで、一箇月わずかに一人六十圓というような金をもらいに行くばかは今いません。わずかに少しはいるだろうが、實際上一體どれだけ使われたのか。實際この生活保護法によつてどれだけの支出をやられたのか。これの成績がいくらあがつたのかを示していただきたい。
今年はなるほど五人家族に對して六百五十圓、一人あたり百三十圓でありますが、これは一般の水準が、給料やその他もみな二倍に上つておる。だからこういうことをするのは當然である。當然であるけれども、これは實質的にはやはり昨年と同じである。これだけは物價が上つたのであるから、同じである。これだつて結局實行はできない。だから一般に生活のために、やみをやらなければならないようなこの政策を、こういうふうに追いこめられていく政治的な方針を完全に改め、すべてがやみをやれないようにやらなければいかぬ。そうしてまたこれらに對してむりに課税するということはいかぬ。それよりも、實際上小さい商店なんかもつておる人でも、店ではそう大してもうかつておらぬのである。この元締めをしているところの大やみ者、暴力團をもつている大やみ者の方が莫大な利益を得ている。從つてかかる方向に、三井、三菱のような大會社を結成しているやみ組織の大きい頭をつかまえて、この方面に課税しなければならないのである。これのみが、今度の財政をして事實上ここに提出されているものを實行する途である。この決心があられるや否や、この點を石橋大藏大臣にとくと聲明せられんことを希望する。
その次には、今度の租税の基本が、多くは消費税にかけている。酒の税、織物消費税、入場税、その他消費税において莫大なものを引き上げている。同時に官業收入といたしまして、專賣益金を莫大に引上げている。これまた大體三倍に増加しているのである。こういうふうにして、すべてこれを一般國民の負擔にかけているのである。從つてこれは生活費が暴騰し、生産費が暴騰することは當然である。生産費が暴騰すれば、これはインフレを止めようたつて止まるものでない。厖大にどんどんインフレは、増進しなければならない。運賃關係その他におきましても上れば、それだけ生産費は上るのであるから、やむを得ない。これはどんどん價格を引上げなければいかぬ。
しかるに一方においては、小さいやみを抑える結果、物資はなくなる。物資がなくなれば、當然ここに購買力を集中するために、いよいよますます上つてくる。これは大藏大臣も認めている通りである。かくすれば物價はますます高騰し、從つてインフレは増大するのである。かかるインフレの増大をすれば、この豫算がとうてい行われないことは明らかである。もつとも政府はこのインフレを増大させ、増大させたインフレから生ずるところの收入によつて、三倍以上もの税をとろうとするであろう。それは將來インフレを増大させなければ、こういう税はとれないということになる。しからばいよいよますます財政の基礎は破壞され、いよいよますます勞働者、農民に對して決定的な犧牲を要求するのである。それゆえにこの豫算は、實際上におきまして、私は實行不可能の豫算であると思う。最も不健全、最もやみとインフレとをあおるところの罪惡的な豫算だと信じておるのである。政府の所見いかん。
第三點は公共事業費でありますが、公共事業費は今年は九十五億であつて、これは大體五〇%だけ増大しておる。しかるにこれは一體いかなる單價によつて形成されておるのであるか。一日一人いくらで使うつもりか。昨年は十七圓で使おうとしたために、いくら募集してもこなかつたじやないか。失業者だつて十七圓では食えない。今年もまた二十圓や三十圓ぐらいのものでやろうとしたつて、だめである、どうしても集つてこない。だから公共事業なんかは、實際やられておらないのである、それは幾分かはやられておるに違いない、一體どれだけの成績をあげられておるのであるか。今後またいかにこれが成績をあげて、失業者を救濟するという目當があるのか。これを河合厚生大臣から返答を得たいのである。
第四點は、傾斜生産と稱せられておる、すなわち主要産業に對して重點的な生産の増加をしようという、この政策に對してである。この政策は、ちよつと見たところはきわめて巧妙にできておる、しかしながら石炭と鐵鋼に向つて集中したために、ほかのものは全部これは非常に衰えざるを得ない。このために失業者ができるということは、石橋及び河合兩大臣も認めておるところである。
しかしながら實際上それならばこの石炭と鐵鋼に集中したところのものは、効果をあげておるかどうか。實績をごらんなさい。實際は石炭は、十二月に、この重點産業の政策をやらない前には二百十七萬トン出ておる。ところがこれを始めたところの一月にはどうであるか。二百二萬トンしか出ない。これは十五萬トン減つておる。ところが二月はどうだ。二月は大體において二百萬トンを割るだろうという。石橋大蔵大臣は、石炭の増産がどんどん計畫通り進んでおるかのごとく、ここで聲明せられておる。そうしてこの次の年度におきましては、一箇年三千萬トンは優に超すであらう、そうして肥料は七倍、いや何は三倍、かには何倍、ぼんぼんぼんぼん大増産をして、われわれは極樂へでも行くかのように説明せられておる。しかし事實はいかん。事實は反對じやないか。
實際はこれは鋼材においてもそうである。鋼材におきましては、十二月に二萬七千トン、一月におきましては二萬六千トン、幾分かであるけれども下つておる。二月におきましては大體二萬五千トンぐらいであらうといわれておる。だんだん下つておる。なぜか。かかる重點政策をとつて、これを公定物價で押えれば、これではやりきれるものではない。しかもこれが増産せられると思えば、價格が安くなると思うから、ここには利益を感じない、興味は感じない。外へ外へと、むしろこれをまわしていくのである。事實上この問題におきましても、重點産業に集中したところのものは、石炭は豫定の八〇%しか製鐵と製鋼所に集まつておらぬ。ところがこの製鋼所から採炭資材を石炭方面に渡しておるのは、わずかに豫定の一七%にしか過ぎない。かかる状態で一體できるのか。生産の増大なんてできやしない、だから生産はどんどん下つてくる。
しかるにあべこべに、今度は重點産業でない部分にかえつて石炭は集中する。なぜならば、ここでは物價が上ると思うから、これを生産して、やみに賣ればどんどんもうかる。だからそこへみな集中しておる。この實際上の状態をみれば、鹽のごときは、一月の配炭計畫ではゼロであるのに、實際の實績におきましては一萬三千トン使つておる。化學工業、すなわち肥料を除いたその他の化學工業においては、三萬九千トン豫定されておつたものが、實績は五萬トン使つておる。繊維におきましては、五萬二千トンが六萬トン使つておる。窯業――セメントその他の陶器などでありますが、これが六萬八千トン豫定されておるのが、實際においては七萬七千トン使つておる。食料品加工におきましては、二萬三千トン豫定されておるのが三萬トン使つておるのである。すなわちもうかる方面にどしどし逆に石炭が流れておるのである。重點産業、傾斜生産というものは、まつたく破綻しておる。だから石橋藏相の極樂行のバスは、おそらく地獄に落ちこむであろう。(笑聲、拍手)
それから實際上この重點産業に集中せられておることにおきまして、最も遺憾なることは、生産に使われる生産事業費の資金におきまして、政府の許可を得たところの事業費が、實際に重點産業、その他の指定された産業に使われたものは、われわれの見るところでは五分の一である。五分の四は、すべてやみの方の資金にまわされておる。なぜならば、その方がはるかにはるかに効果的である。だから從つて重點産業は實際上において、全面的に經濟を破壞する一大モメントを結成しておると思うのである。政府はなるほどこの事業におきまして、これを監督する制度を設けるとか、その他この事業資金の放出に對してきわめて嚴重なる監督をするとか言われるけれども、しかしながらこの監督するということが、これが怪しいじやないか。これは實際事業家がやみ屋と結託をして、そうして賄賂をとつておるではないか。その事實の一端がここに現われておる。
これは日本經濟新聞の本日のものであるが、これに「職務を怠り休職」ということになつておりますが、「商工省では前紙業課長記内角一氏を官吏分限令第十一條第一項第四號によつて一日附休職を命じた。これは昨年九月ごろから本年二月までの間に、王子製紙が講談社から立木を取得し、これとバーターで、割當の約三倍にあたる七十萬ポンドの紙を超過供給していた事件を、主管課長の記内氏が事實を知らずにいたため、職務懈怠の責任を問われ」云々と、こう書いてある。しかしながらこれははたして知らなかつたのかどうか。實際知つていて、こういうことをしたのかどうか。重大なる問題である。こういう問題は、あらゆる場所にたくさんある。
この問題に關係いたしまして、奧田商工次官がやめられたこと、これはいかなる理由によるか、何ゆえにこれはやめられたのか。このことに關して、政府は堂々大衆の前に、國民の前に、議會に聲明せらるる必要があると思うのである。すなわち實際上監督するものが、實際はどろぼうの相棒であつたならば、監査制度なんというものは全然無意味になつてしまう。いかに銀行を締めつけるといつても、銀行と官僚と事業が組んでしまえばどうなる。いかなる監査制度であつても、これはだめである。それゆえにわれわれは金融機關を全部統合し、これを國營にし、これを人民自身の管理に移すべきことを主張するのである。これが根本だ。これを掘らなければ、やみ退治はできない。ここに基本點があるのである。
また實際課税をするときでも、大藏大臣は、預金の調査その他のことは商業の祕密と稱し、これを調べることを抑えている。その結果いくらでもやみをし、いくらでも預金をしても大丈夫、あなたの言う百億圓の貯蓄というのはそれなんだ。實際上こういうものはみなやみの機關になつている。(笑聲)かかる状態ではだめだ。これを人民が管理する。官僚ではだめだ。人民が管理して、そうして實際上こういうことをやらせない。基本を抑えなければ到底だめである。
それから主要産業――主要産業は、石炭、肥料、電産、海運、その主要運輸、こういう基本的のものを國營にして、しかして人民の管理にすべきものである。國鐵といえども、遞信といえども、これを人民管理に移す。人民の監視の下に、人民の信頼する機關にしなければならない。かくして初めて全體をしてのやみを抑え、インフレを抑えることができるのである。政府はいかなる所見を有せられるか。政府から、この厖大なるやみとインフレとの責任において、この全體の機構に對し、重點に關して御返答をいただきたいのである。これまで大藏大臣は、ややともすると中心的ポイントをはずして、いつもはつぱ、けつの方を握つて、そうして答辯をごまかすことがたくさんある。これは特に社會黨の諸君のときにおいて著しかつた。わが黨の野坂君に對してもそうである。今度はこれを許さぬ。(笑聲、拍手)
第五點、これは單價を示さないところの豫算が無意味であるということを具體的に申したい。というのは、終戰處理費であるが、その終戰處理費は、單價を規定しておらぬがために、これに對して實に大きな間違いが起つている。これに大なる怠慢――大なる事業資金の放出が行われた。これがやみの重大な本であつたことは、大藏大臣自身も大體認めているだろうと思う。それゆえに、この終戰處理費に對しては、今後十分なる監督をせらるると言うけれども、實際上私人經營、資本主義的經營に對して、官僚がいかにこれを監督したところでだめである。これまでの成績においてだめである。それゆえにわれわれはこれを國營にすることを主張する。何で國營にしないか。技術者の失業しておる者はたくさんいる。こういう者を收容してやれば、私は斷言する、終戰處理費はおそらく三分の一以下に下るであろう。現に實際において、これは一の所要量に對して三拂つておるということは、政府當路の人たちも言つておる。こういうことをやつちやだめだ。
その次に今度は皇室費であるが、皇室費が二千三百萬圓ある。この前は四百五十萬圓であつて、約五倍になつた。これは一體どういう意味であるか。皇室といえども、また一般國民と同等の地位に立たれることになつておる。しからば今政府が役人諸君に平均千二百圓の生活をしろと言つておるのに、ここでは一體單位あたりどれだけの生活が保障されておりますか。この點を十分に明らかにすることが必要であると思うのである。
かかる點におきまして、全體のこの豫算において最も障害になつておるのは、現在の公定價格による官僚統制である。この官僚統制ではとうていやつていけない。やみを増大し、インフレを増大するばかりである。それゆえにこの公定價格の不公正を正して、全體として、やみのない、無理のない、正直でやつても立つていけるところの、新しい人民統制をやらなければならないと思う。これのみがやみとインフレとを撲滅するところの基本的な政策であると信ずるのである。この點について大藏大臣の説明を願いたいのである。
第六點は、金融機關の再建補償費として百億も使つておる。ところが金融資本家は、現在事業資金を出すことにおいて、あらゆる點において非常にもうかつておる。殊に利子などのごときは莫大のものである。かかるものによつてもうかつておるから、彼らを救濟する何らの意味はない。百億なんか出す必要はない。むしろ彼らがこの不當利得をしておることに對して追究して、これから租税をどんどんとるべきである。しかるに反對に百億與えるというのは、いかなる理由によるのか。彼らが損をしておるとかなんとか言つたつて、これだけもうかつておる。
第七點は農林大臣に對する質問でありますが、今度主要食糧について徹底的にやみを撲滅し、これを統制に乘せるという。しからば實際現在の配給で食えるかどうか。現在の配給で食えないことは明らかではないか。しかるに遲配と欠配とが今では非常に旺盛になつた。ひどいところは十二、三日も欠配が續いている。遲配が續いている。そういう場合に一體どうする。われわれは食わずして生きられるか。われわれは一體何を食つて生きるか。絶對的にやみを撲滅するという。こういうことをはつぱで握るならば、けつつぽで握るならば、かかる矛盾が來るのである。やみをたたくためには、そのもとをたたかなければならぬ。基本をたたかなければならぬ。そうしてこれをしつぽの方へだんだん集中的にして、そうしてしまいにこれを取除くほかない。事實上この自由市場というものは必要である。しかるにここを抑えて、そのもとを助けているということはいかぬ。
それからその次におきましては、價格調整費でありますが、これが百億以上もかけられている。この目的、この使用方法いかん。實際上はこれをもしこのままにおくならば、これは犯罪の巣になるであろう。二重價格制度の問題がこれに續くのでありますが、この二重價格制度というものは、實際においてはやみをあおるものである。そうしてここに收賄と官吏の涜職行爲とが結合して、全體を腐敗させるもとになるのである。この點に對して政府はいかに考えられるか。
第八點は住宅問題であります。この點は既に論ぜられたが、大藏大臣は、これは地方に委讓しているから、地方でやるだろうと言われる。地方では今は財政は破綻的である。この點は大藏大臣が十分御承知のことと思う。その破綻している財政に、さらに住宅問題まで押しつけるというのは一體どうしたことか。できるものか。そういうことを言つてみたところで、これは實際上は住宅問題を放棄する、ことを意味する。
第九點、價格差益納付金を今年はたつた十億しか計上しておらぬ。(「もつと勉強してこい」と呼ぶ者あり)勉強はよくしているよ。十億しか計上しておらぬが、これは一昨年におきましては、三百億圓はあると計算されておる。大藏大臣はしきりに一割と七割との間違いだと言われるけれども、そうじやない。調べてみればあのときに何と言つた。野田主計局長は、今年一割とる、來年三割とる、あとの六割は次のものにまわしておくと、こう言つた。だから十五億は一割だ。十五億が一割だから、これは百五十億ある。百五十億は半分だ。これはあなたもよく知つておることだ。價格差益納付金として、もうかつた分を政府に納める。これは半分だ。ところがこれはおととしまであつて、これは去年とる。ことしは去年のものをとらないで――おととしよりも去年は公定價格はどんどん上つておる。だから價格差益納付金はもつともつと、三百億どころか、六百億もあつたに違いない。どれだけあつたかしらぬが、とにかく三百億以上あることは明瞭である。しかるにたつた十億しかここに計上しておらぬということは、一體どういうわけである。
第十點は隱匿物資のことでありますが、この前にはわずかに三億圓であつた。ところが實際はこれはたくさんある。一千億あると私たちは見ておるのでありますが、現在これを使つたあとのものであつても、七、八百億圓はある。しかしこれは單にこれを取上げるというばかりでなしに、今の重點産業のやり方を改めて、この隱匿物資を摘發し、これによつて重點産業に使うならば、現在のような無理をせずして、重點産業は必ずや成功的に上つていくであらう。しかして一般産業もまたこれに應じて生産を増強することは明らかである。この隱匿物資を摘發し、これによつて日本の産業經濟の復興をはからなければいかぬ。ここに犯罪を許しておいて、しかも日本産業の水準、さらに重點生産云々と稱して、一層これを弱體に陷れるということは、政府の重大責任と信ずるのである。いかに考えられるか。
第十一點は特殊物件の收入の十六億である。(「まだあるのか」と呼ぶ者あり)もう少しあるよ。もう少しあるから待ちなさい。十六億であるが、この十六億は昨年と同じである。しかし事實この特殊物件、すなわち戰爭のために使つたこの殘りというものは、莫大なものがあることは、政府も承知である。これが隱匿されておることも政府は承知である。なぜこの特殊物件をうんとうんととつて、これによつて仕事をしないのか。これは實際の物件なんだ。だからこれを重點産業にまはし、國鐵にまわし、いろいろな方面にまわせば、非常なる利益がある。日本産業の復興は、この隱匿物資を追究して、徹底的に人民の手によつて、これを正しい方向に使うかどうかによつて決定せられると信ずるのである。しかるに配給公廳というものを設けて、さらに一層官僚統制を強化しようとしておるのである。かくしてはむしろこれは反對である。インフレーシヨンとやみとを旺盛ならしめるだけに過ぎないと信ずるのである。これに對する所見いかん。
第十二點は私學の問題であります。私學に對してこれを復興するということを言われておりますが、實際上職員は、現在大闘爭の暫定措置によりまして、二倍に賃金が上らなければならない。しかるにこの二倍の賃金に上ることが、現在の私學の經濟状態ではだめである。でありますから、政府がどうしてもこの不足だけのものは、私は補給しなければならない義務があると思われる。すなわち教育を眞に完全に遂行するためには、私學を無視することはできない。私學を無視しないというならば、私學に働いている職員、教師諸君の生活を保障しなければだめだ。今の收入は實際生活費の三分の一しかとつておらぬ。だから實際に教育なんかできやしない。みな頽廃しておる。これに對しまして文部大臣はいかなる見解をもたるるであろうか。
實際上これを結論いたしますれば、この豫算は合理性の上に立つておらぬ。妄想である。これは健全豫算という看板を立てて、このべールをかぶせて、やみとインフレとをあおるところの犯罪的の豫算である。かかる妄想をもつてしては、いかなる確信をもつてしても、すなわちバイブル的確信をもつてしてでも――昨日大藏大臣はバイブルにこう書いてある、この確信をもつてやれば必ず成功すると言われたが、かかる不合理の基礎に基いては、いかにバイブル的な確信をもつてしても、この豫算は破滅するに違いない。これだけが私の質問である。(拍手)
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=17
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018・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 徳田君は最初に、國會法もできかけておるのに、その趣旨に、從つてやらないことは、すなわち豫算の民主化の原則にもとるというような御意見でありました。しかしながら今囘の豫算は、御承知のように、またしばしば私から申し上げましたように、何ゆえに今日まで遲れたかということは、徳田君もよく御諒承のことと信じます。つまり今日の現況において、できる限りの民主化をした。かようにお答えいたします。(拍手)
次に豫算單價の問題でありますが、これは一々の單價につきましては、いずれ豫算總會等で申し上げますけれども、本年は相當の改訂をいたしております。それからこれはまだ上るのじやないかというお話でありますが、もし物價、賃金が今後上るといたしますれば、先ほどもどなたかにお答えしたように、同時に歳入も殖えるのであります。さようなことはないと思いますが、――物價がどんどん上るということはないと思いますけれども、かりに徳田君の言われるように、今の單價の査定が不當であつて、そしてなお支出が殖えるという場合には、同時に歳入も殖えます。さように御諒承を願います。
それから所得税について、これは御滿足を得たことと思いますけれども、下の方を大變安くした、それからまた上の方は、先ほどお話のように、これは資本の蓄積その他を考えまして、税率を下げましたにもかかわらず、なぜたくさんに税がとれるかというと、これは全體の國民所得、つまり納税者の所得が殖えるから税額が殖える。從つてその中には、いわゆる新圓階級なるものが、むろん含まれる。累次申しました通り、たくさんの所得をとるものからたくさんの税をとる、こういうのであります。私は、あなたは聽き損う人でない、もう少し明敏だと思つたのでありますが、私は新圓階級に課税しないというようなことは、かつて言つたことはない。新圓階級に特別の課税をしないということは既に申しましたが、多くの所得のあるものから税を多くとる。これは新圓階級からも、多くの所得があれば多くの税をとる。これは農村であつても、都市であつてもたくさんとる。昨年は農村からたくさんとつた。ところがこれが非常に問題になつて、徳田君は陳情者を連れてきて、事情を訴えられたことがあるが、今度とつた場合には、どうか御協力を願います。聞違いは訂正いたしますが、たくさんとるから不都合だといつて、大勢の陳情者を連れてこられないようにお願いいたします。(拍手)どうも‥‥。
〔發言する者多く、議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=18
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019・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=19
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020・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君)(續) どうも私が――私が何か選擧演説をしたというお話でありますが‥‥。
〔發言する者多く、議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=20
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021・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=21
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022・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君)(續) それからよくわかりませんでしたが、何か徳田君は、前においては、あらゆる會社は赤字だ。すなわちもうけがない。しかるに同時にやはり三井、三菱とかいうものが非常に儲けておる。それに課税をしなければいかぬというのでありますが、ただいまも申し上げましたように、いかなる階級であろうとも、職業であろうとも、多くの所得のあるものは、これを捕捉してとるつもりでおりますので、もしも三井、三菱、というものが現在も存在して、多くのもうけがあれば、むろん課税をいたします。しかしながら大體において、大きな會社というものは、徳田君も言われたように赤字が多いのでありまして、はなはだ法人の方からはとりにくいのであります。それだけ彼らはもうけていないのでありますから、どうもとることは、法人の方からはむずかしいと思います。
それから七百圓のわくをなぜ早くはずさないかというようなお尋ねがありましたが、これはただいまいかにしてこれをはずすかということの研究をし、またいろいろ關係方面とも折衝しておるわけであります。しかるにそれと同時に、何か第一封鎖を、さらにひどく封鎖するということを大藏省が發表したと言われますが、さような事實はございません。どうかその事實を――むろん凍結はいたしません。のみならずわれわれの今の考えでは、第一封鎖の部分はむしろ現在よりもできるだけ廣く利用ができるように、第一封鎖が生きるようにしたいと考えている次第であります。(拍手)そこで非常によいことを徳田君から伺つたのでありますが、すなわち第一封鎖をさようにさらに封鎖すると、勞働者は莫大な第一封鎖を所有しておるから、これに損害をかけるということであります。私は今まであるいは徳田君からさように伺つておつたのではないかと思いますが、公債の利子打切りの場合等においては、勞働者は國債などはもつておらぬ。だからして利子なんかぶち切つたつて、金持だけに損害がかかるのだというような意見を伺いました。しかし今徳田君から、勞働者は第一封鎖を莫大にもつておるということを伺いまして、非常に私はありがたく存じます。(拍手)
それから次に給與審議會につきましては、これは厚生大臣からお答えになることと思いますが、私大藏大臣または安定本部長官としましても、給與審議會が速やかにスタートして活動するようにお願いしたいのでありまして、これにつきましては、特に徳田君等の御協力をお願いいたします。(拍手)
それからインフレの防止等に關係しまして、今度の豫算には酒、タバコ等の値上げがあるので、それがインフレを促進するというような御意見であつたように伺いましたが、今囘の税制の改革及び專賣收入の改革によりまして、どういう結果になつておるかというと、税の方は直接税が六七%、間接税が二七%、その他が六%という數字であります。これが税であります。でありますから、今日の日本の税は、間接税が非常に少い。直接税が六七%であります。しかしこの中にはタバコがはいつておりません。タバコを入れますと直接税が五〇%、間接税の中にタバコを入れるとしますと、間接税が四五%、その他が五%であります。五〇%と四五%でありまして、やはり間接税の方が低いのであります。現在の日本の状況で、直接税が比較的額が大きいということは、私はやはりこの點においても健全なる状況であると考えます。(拍手)タバコや酒というものは、なるほど今囘ある程度の値上が行われますけれども、これはひとつぜひこの際でありますから、やはり節約をしてもらう。タバコが上つたから、それだけ餘計に給與を殖やすという行き方ではなく、やはり同時に節約をするということでなければ、日本の經濟はもたないと思うのであります。(拍手)
それから公共事業費につきましては、これは單價等については、先ほどの問題と同じように、いずれ委員會等でお答えいたしますが、相當の効果を擧げるようにいたしておるつもりであります。重點生産がうまくいかないではないか。石橋は極樂に行くようなことを言うが、その極樂行のバスが地獄の方に行つておるではないかというようなお話であります。これは極樂行のバスに違いないのでありますが、しかしながらこれが行かないように妨げる力も相當にあるということを考えるのであります。(拍手)その點は特にひとつ徳田君などの御協力を願いたいのであります。ちようど傀儡師がおつて、佛を出すも鬼を出すも心一つでありますから、どうぞお願いするわけであります。
それから銀行及び重要産業はこれを國營にすべし。しかしながらその國營は、いわゆる官僚による國營ではだめで、人民管理にしろ、しからば官僚化しないという御意見で、政府はどうかというお尋ねでありますが、政府はただいまのところ、銀行及びその他の重要産業を國營にする意思はもつておりません。なお人民管理にすれば、その國營が官僚化しないということにつきましては、私は多少疑問を懷くものでありまして、昔のギリシヤなどのように、直接に人民が政治にあるいは經濟に、ことごとくが關與するわけにいかないのでありまして、どうしても政治も代表者を出し、しかして經濟におきましても、かりに國營にするとすれば、人民直接の管理ができない現況におきましては、ややもすればやはり官僚化する危險があると私は考えます。しかしこのことはとにかくとして、ただいま政府としては國營の意圖はもつておりません。
それから終戰處理費につきまして、やはりこれも工事の國營をしたらどうかというお尋ねであります。これは見本的にある程度――國營ではありませんけれども、もつと國家の力を加えた建築もやつてみるつもりでおります。しかしながら全面的に工事を國營にするということは、これはかえつて非常に不經濟を來すものと考えております。監督は十分に現在いたしており、將來ますますこれをいたすつもりでおります。
それからその次に金融再建補償金、すなわち第一封鎖預金に損害をかけないために百億圓出しますことは、先ほど勞働者にたくさんの第一封鎖預金があるということをお認めになりましたから、それで私は結論が出ると思いますが、これは決して銀行にやるものじやありません。どうか事實をお調べ下さるようにお願いするのであります。(「その通り」)
それから價格調整補給金――價格調整補給金は主として米と石炭でありますが、お説のごとく二重價格制度が缺點をもつことは、私もかねてから認めておるところでありまして、これはできるだけ早い機會にやめたいのであります。しかし、過渡的にいたし方がなく、たとえば米の消費價格を直ちに一石千何百圓を標準にするというようなこは困難でありますので、過渡的にこれを認めておるわけであります。
それから住宅營團をやめて、これを地方の事業に移すということは、必ずしも地方財政、すなわち地方租税等の收入で賄うという意味ではございません、資材等がありますれば、資金は別にこれを供給いたすわけでありますから、つまり經營の主體が地方になるか、住宅營團になるかという違いであります。
それから價格差納付金のことは、どうもしばしば御意見がありますが、やはり七割、一割の相違のやうに考えます。それから隱匿物資につきましては、これは政府としても興味をもつて調査し、相當のことをやろうと考えておりますが、これまたあまり騷ぎますと、かえつて隱匿いたしますから、どうかさように御諒承願います。
それから配給公社のことは、世間に非常に誤解がありまして、何か官僚統制にまたもどるのではないかというのでありますが、さようの意味ではありません。實は民間の團體で、多く戰時中にできたものであるということが一つと、それからそういう團體で、そこに何らかの利益があるというものが長く存在しますと、これを急にやめるということは困難になります。そこでこの統制をなるべく短期間にやめたい。それには一旦政府の手に移して、いつでも必要がなければぱつとやめる仕組をとりたいというのが、配給公社の考え方であります。でありますから、これは決して統制を企圖するとか、長くするという意味ではありません。さように御諒承願います。(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=22
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023・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいまの徳田君の御質問にお答えいたします。生活保護法は、先ほど申しました通りに、昨年の六月の末日及び十二月の末日の調査によりますると、生活扶助を受けておる者は二百七十萬人、それから醫療及び生業扶助を受けておる者が約三十萬人弱でございまして、合計約三百萬人となつております。その成績は相當のところへ進んでおると考えております。なお今度は六百三十圓にいたしまして、知事の權限によつて六百五十圓までということになつておりまするが、これは昨年實施しましたときには三百圓であつて、それが四百五十圓に上つて、今度六百三十圓と上げたわけでございまして、この物價の高騰に伴うて、生活の困難を考えまして、こういう程度に上げております。もちろんこれは、生活が十分だとは申せませんので、なかなか苦しいことはよくわかつておりますが、交付金にも限りがありまするし、それから最低生活保持という見地から、ほんとうの意味の最低生活の衣食住、學校用品等を考えたのであります。しかしどうしてもこれでいけないという特別な人には、なお特別に出せる方法を認めた次第であります。
また公共事業についてのお尋ねがありまして、大體この賃金の單價は、前には十七圓だつたじやないか、今度も安いだろうというようなお話でありまして、これは三十圓乃至五十圓という見當でございまするが、これも地方の事情に應じて、また特別な取扱いができる途を講じております。
なおまた給與審議會につきましては、ただいま石橋大藏大臣からもお話の通り、何とかこれの第二囘を急速に開きたいものだと思うて、實は苦心をしている次第でありまするが、この點については、石橋君同樣、どうぞ徳田君などの御盡力がお願いしたい。
それからなおこの御質問に關連しまして二、三御答辯を申しますが、勞働基準法は、いかにも政府は先約を破つて出さぬじやないかというような調子のお尋ねでありましたが、これは徳田君も御存じだろうと思いますが、もう議會に送付してあります。ところがなかなか活版が大きいので――もう二、三日中に上程されると思いまするが、これは決して政府は約束を破ることはいたしませず、次期議會に出すと言うて出しているのであります。そういうことは徳田君も御存じのはずでございますから、どうかそれはそういうようなふうに……(徳田球一君「今日出た、衆議院へ……」と呼ぶ)今日出ているということでございますが、ともかく活版で遲れたのであります。そのことはよく御存じのはずであります。
それから第二番目に、私がきのう答辯いたしましたことから、何だか政府はやみを奬勵しているじやないかというような御推定でありましたが、これはとんでもないことで、きのうの答えは、潛在失業者の中にやみをやつている者があるということの事實を申し上げたのでありまして、この言葉をとらえて、私がやみを奬勵しているのだなんということは、しいるもはなはだしいものだと思うのであります。(拍手)政府は十分やみの取締りをできるだけやつております。
それから第三番目になおお答えするのは、この生活保護法の金を貰いに行くと乞食扱いをするというようなお言葉がありましたが、これは實際ただいまの生活保護法は、非常に困つた人に對しては、立派な法律であり、またこれをやつておる人にも、ほんとうに命がけで獻身的にやつておる人もなかなか多いのであります。(拍手)こういう人にこういう言葉を聞かせることを、私ははなはだ愉快に感ぜざる次第でありまして、(拍手)御批判は自由でありまするが、なるたけ物事の事實に即した、眞實に副うたことにお願いしたいということを希望する次第であります。(拍手)
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=23
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024・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) お尋ねの中に、石炭の一月以降の産出状況がはなはだおもしろくない、これでは三千萬トンの目標を前にして、どうしてやつていけるかというようなことでありました。一月は十二月よりも減り、二月もまた十二月よりも少いというのは、日數の關係、またあるいは正月休み、あるいは冬休み等の關係もありますので、初めから少い計畫になつております。しかし十分にはそれができなかつたというようなことは、いつかもここの席で申し上げましたように、雪のためとか、あるいは坑木の入手が非常に困難であつたというような、やむを得ぬような問題があつて減つたのであります。來年度三千萬トンの生産目標に向いまして、私どもは今あらゆる資材の集中計畫を進めておるのでありまするが、その資材の面につきましても、先刻鐵の面はまことに哀れなものではないか、たとえば第四四半期の鐵は一七%しか行つていない――二月の中ごろまでの數字は、まことにその通りでありました。これはいろいろな鐵を配給する企畫が、一月の末になつてきまつたものでありまするから、自然に延びまして、今のところ二月の半ばでは、まことにその通りでありまするが、三月末になりますると、約八〇%ぐらいのものは、第四四半期の鐵材が送り得る状態になつておると思つております。さらに來年からの三千萬トン計畫に對する鐵材の配給の面から見ますと、第一四半期には二萬五千トンを送ることになつておるのであります。既に契約の濟んだものが一萬二千トン、そうして發送濟みのものが既に四千トンあります。さらに契約中のものが一萬三千トンであり、これは現在鐵工所においてロールしつつありまするから、これは來期の分は、鐵材の面は十分に送り得るのではないか、かように思つておるわけであります。そういたしまして、いろいろなほかの資材もできるだけ早く現地に送り屆けるようにいたしまして、來年度三千萬トン増産の線に沿うて進んでいきたいと思つております。
一つ非常に私として遺憾に思う發言があつたのでありまするが、それは商工大臣に私がなりました後やめました奧田次官の身上のことを申されました。お言葉によりますると、奧田君が何か不正なことでもあるように聞えたのでありまするが、奧田君は、私が大臣になる時に、前大臣とともに自分もやめたい、健康がすぐれないからやめたいという申出がありました。あの人は立派な人格者であり、手腕のある人だということを、私は前大臣からも聞き、そのほかからも聞いておつたのでありまするが、大臣が迭る機會に次官も迭ることが人心を一新するという點のみから、次官に迭つてもらつたのでありまして、私は奧田氏の身上に對して、やましいことは一點もないだろうと確信をいたしております。(拍手)
それから第二の記内氏――用紙課長でありました記内君の休職事件に觸れられまして、新聞を朗讀されましたが、はなはだ殘念なことには、その新聞の朗讀を途中でおやめになりました。最後までお讀みになりますと、お話のような線には行かなかつたろうと思う。最後の方に涜職罪ではないということが書いてあつたと思うのでありまするが、それは行が少し變なところに行つておるから、ごらんにならなかつたかもしれませんが、私の見ましたところではそうなつております。(拍手)記内君の休職は、まことに休職になつたのでありまするが、これはお讀みになつたような事件がありまして、その監督が不行屆でありましたので、監督が不行屆であるということによつて、行政處分にしたのでありまして、涜職ではないということを申し上げます。(徳田球一君「涜職罪であると言つたか‥‥‥」と呼ぶ)涜職とはおつしやらない。おつしやらないが、最後までお讀みになると、御趣旨のような線とは違うということを申し上げておきます。
〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=24
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025・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君) 遲配缺配をなくすることが根本的な至上命令であるということは、よく承知いたしております。食糧の供出は昨年末までは非常に好調に進んでまいりましたのが、今年に入りまして、遲々として進行が鈍り、二月に入りまして、ほとんど停頓したような状況になつたのであります。これは價格の諸物價との均衡の關係、天候、輸送の關係等もありまするが、當時中央における官公廳勞のゼネストの思想が、地方へ影響した傾向が多いのであります。(拍手)從つてこの點に最大の努力を拂つておりまして、今囘の供米對策も、この問題を解決するに大きな役割を果し得ると思うのであります。米の供出につきましては、政府だけ一生懸命あせりましても、國民全體の支持と協力を得なければなりません。共産黨もどうぞその點一はだ脱いで協力していただきたいことを希望いたします。しかし當面の差迫つた現在の状態をよくすることが焦眉の急務でありますので、關係方面に對し輸入食糧の放出を懇請しておりまするが、一刻も速やかにその實現を見ることを期待しておる次第でございます。
なお價格差補給金の問題につきましては、國家財政の觀點からしても、できればこれを避けたいのでありまするが、一面消費者の點も考慮せねばならぬから、やむを得ずいたしておるような事情でありまして十二分にその點は御諒承くださいますようにお願い申し上げます。
〔國務大臣高橋誠一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=25
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026・高橋誠一郎
○國務大臣(高橋誠一郎君) 文部大臣への御質問は、私學教員待遇改善の問題であつたと存じます。私學に對しまして國庫の補助を與えますことは、私學の健全なる發達を害するものではないか、私學本來の面目を害するものではないかというような意見が相當強いのであります。むしろ私學の復興竝びに經營に關しまして、この困難を救いますがためには、貸付金の形態によることが一番よいのではないか、こういうことが主張せられまして、殊に私立大學方面におきましては、この聲が強かつたのであります。文部省といたしましては、この貸付金の點に主力を注ぎまして、きのう大藏大臣から申されましたような額が、今囘豫算に計上せられた次第であります。むろん文部省といたしまして要求いたしました額は、これよりもはるかに大であつたのでありまするが、今日の經濟、財政の事情からいたしまして、かくのごとく査定せられましたることは、まことに遺憾でありまするが、いかんともいたし方ない次第でございます。この額は五年据置と相なつておりまして、三分五厘、三十年元利償却、こういうことになつておるのであります。これによりまして、私學も幾分の潤いが得られることと考えておる次第であります。しかしながら私學はもとより私學でありまして、自己の力によつて自己を救う途をどうしても見出していかなければならぬと考えるものであります。これがために文部省におきましては、私學振興協議會を設けまして、私立學校の代表者とともに、當面の重要問題につきまして協議いたしまして、解決に努めておるのであります。あるいは收益を伴いまする事業の經營を認めるというような點、そのほかの點に關しまして、いろいろ協議を遂げまして、やがて私學の前途を打開する途を講ずることができると考えている次第であります。
〔徳田球一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=26
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027・徳田球一
○徳田球一君 再質問をいたします。これは第一に勞働者に關係していることでありますから、特に言わなければなりませんが、第一封鎖はこれは税濟みのものである。この第一封鎖がいくらあらうと、これから税を取ろうなどという惡いことを考えては大變なことである。これは既に税濟みである。税は皆とられているのである。同時に第一封鎖は相當たくさんあるけれども、この第一封鎖は、食うに食われずして、勞働者諸君が既に借金になつているのである。裏には借金がある。事實上第一封鎖以上の借金をしているのである。この第一封鎖が凍結せられるならば、勞働者諸君はとうていこの借金の負擔にたえられない状態になつているのでありますから、これが相當あるというので、これに目をつけようというのは、いかにも石橋らしくて、とんでもないことであると信ずるのである。
その次にやみの問題であります。このやみによつて太つた者に對して必ず課税する。これは確かによろしい。しかしながらこれは、昨年も農民に乙種事業所得に對して課した。これが非常に亂暴である。いかに亂暴であつたかということは、農民諸君にとつちめられて、石橋藏相謝つたじやないか。おじぎしたじやないか。そうして間違いは必ず直しますと言つて、直したじやないか。しかるに農民に對してはかかる亂暴な誅求をしながら、なぜ昨年、一般のやみをやつている大會社とか、やみの元締に課税しなかつたか。これをわれわれは責めるのである。そこをしつぽをつかまえて云々するという石橋式が、ここに十分現われているのである。これが再質問する理由である。
さらに間接税のことでありますが、日本では專賣がたくさんあるために、間接税は少くなつている。しかしながら專賣からとるところの實質上の間接税、これを加えますれば、直接税と間接税とは、大體五十パーセントずつである。半々である。これによつても、財政上いかに勞働者、農民の負擔が重くなつておるかということが明らかである。大藏大臣は形式上のことを言うて、詭辯を弄していると信ずるのである。
それから食糧の問題についてでありますが、この配給公社は、大藏大臣の説明によれば、直ちに統制をやめるために一應國家がこれを公營にしなければならぬと言うが、農業に關する限りにおいては、全農業會及び農民組合が、すべて強烈に反對しているのである。今日もこの陳情は大分ありました。ところでこれに反對するところはどこにあるかと言えば、農業の配給公社になりますれば、警察がこれに關與する、ありとあらゆる農民の活動を制壓するところの、ひどいひどい統制である。戰時統制以上の統制だ。こんなことをすればどうなる。こんなことをすれば、これは農業生産が次第々々に減退することになる。生産しても、もうからない。今は生産費の半分で取上げておる。こんな状態でやれば、いよいよますます農業生産は停滯する。停滯するばかりでなく、減少する。こういうべらぼうなことをして、末を押えて本を押えない。大資本家、大やみを押えない。こういう結果は、實際上勞働者、農民を餓死せしむることである。
それから供米の不成績に關して、これは共産黨の責任であるかのごとく言うけれども、絶對にそうではない。われわれはゼネストをやらないじやないか。ゼネストをやめたじやないか。ゼネストに關する限り、この供米には何ら關係はない。そればかりではない。政府は昨年何と言つたか。この前の豫算會議において何と言つたか。供米と同時に、肥料も農具も、ありとあらゆるものを必ず見返りとしてやると言つたじやないか。現在やつておるか。こういう見返品をくれないじやないか。そのためにこそ供米はやらないのだ。見返品と引換えに持つてこい。そうでなければ供米してやらぬ。農民が言うのはあたりまえである。政府は約束を守つておらぬ。今後とてもこれは守れない。現にこの供米に對してより以上奬勵するために、必ず見返品をやります、やりますということを繰返し言わなければならぬことは、何であるか。これまでやらなかつたから、そうなんである。これまで見返品をくれなかつたからである。これまで見返品をくれなかつたから今度はくれる、今度はくれる。そんなものは女郎の證文みたいなものだ。全然意味をなさぬ。いつも裏切つているのである。それゆえにこれはできないのであつて、これは共産黨の責任どころか、この責任は政府にあるのである。その他の諸條件に關しましては、いずれ豫算委員會その他において政府の所見を質したいと思う。
最後に商工大臣に對してでありますが、この續きの點もみな讀んでいる。私もこれが收賄事件云々と言つておらぬ。これは怠慢だと言つておる。こういう怠慢の生ずるところに腐敗の事實があるのである。私もこれを收賄事件とは言つておらぬ。收賄事實はなく云云と言つておる。しかしながらこれも官僚制度の内容が腐敗していることを意味している。これは相當長い期間にわたつてできている。これがわからなかつたというのはどこにあるか。ここに怠慢があるじやないか。共産黨は、かかる怠慢をしろなどと言つたことはない。(「煽動する」と呼ぶ者あり)どこに煽動があるか。講談社と結合して、うんと配給を亂すようなことを煽動した覺えはない。そういうことを抑えろということをわれわれは言つている。その反對だ。煽動しているのは、その反對のことである。正しいことをすることを煽動する。いわゆるやみとインフレとを抑えることをわれわれは言うておる。かかるやみ行爲の發生することを防がんことをわれわれは言うておる。その他の點につきましては、いずれ豫算委員會において質問するであろう。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=27
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028・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて大藏大臣の財政演説に對する質疑は終局いたしました。
日程第一及び第二は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=28
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029・井上知治
○副議長(井上知治君) 異議なしと認めます。日程第一、参議院議員選挙法の一部を改正する法律案、日程第二、都道府縣及び市区町村の議会の議員及び長の選挙の期日等に関する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます。内務大臣植原悦二郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=29
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030・会議録情報2
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第一 参議院議員選挙法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 都道府縣及び市区町村の議会の議員及び長の選挙の期日等に関する法律案(政府提出) 第一讀會
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参議院議員選挙法の一部を改正する法律案
参議院議員選挙法の一部を次のように改正する。
第二十一條第二項中「市町村会議員選挙管理委員」を「市町村会議員選挙管理委員会」に改める。
第七十四條に第一項として次の一項を加える。
第七十九條第三項の規定により当選を無効であると認める選挙人又は議員候補者は、当選人を被告とし、第五十九條第一項又はこれを準用する第六十九條の規定による告示の日から三十日以内に、東京高等裁判所に出訴することができる。
第七十六條に次の三項を加える。
選挙運動は、第五十四條第一項乃至第三項又はこれを準用する第六十九條の規定による届出のあつた後でなければ、これをすることができない。
何人も、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的を以て戸別訪問をすることができない。
何人も、学校の兒童、生徒及び学生で年齢二十年未満のものに対する特殊の関係のある地位を利用して選挙運動をすることができない。
第七十九條 選挙運動の費用は、議員候補者一人につき、左の各号の額を超えることができない。
一 通常選挙における当該選挙区内の議員の定数(全國選出議員については通常選挙における議員の定数)を以て選挙人名簿確定の日においてこれに記載された者の総数を除して得た数を命令で定める金額に乘じて得た額
二 選挙の一部が無効となり更に選挙を行う場合においては、通常選挙における当該選挙区内の議員の定数(全國選出議員については通常選挙における議員の定数)を以て選挙人名簿確定の日において関係区域の選挙人名簿に記載された者の総数を除して得た数を命令で定める金額に乘じて得た額
三 第二十六條の規定により投票を行う場合においては、前号の規定に準じて算出した額
但し、都議会議員選挙管理委員会又は道府縣会議員選挙管理委員会は、必要があると認めるときは、これを減額することができる。
都議会議員選挙管理委員会又は道府縣会議員選挙管理委員会(全國選出議員に関する前項第一号及び第二号の規定による額については全國選出議員選挙管理委員会)は、選挙の期日の公示又は告示があつた後直ちに前項の規定による額を告示しなければならない。
議員候補者のため支出された選挙運動の費用が前項の規定により告示された額を超えたときは、その議員候補者の当選を無効とする。但し、議員候補者及び推薦届出者が支出責任者又はこれに代つてその職務を行う者の選任及び監督につき相当の注意をし、且つ、支出責任者又はこれに代つてその職務を行う者において選挙運動の費用の支出につき過失がなかつたときは、この限りでない。
第八十條に第一項として次の一項を加える。
支出責任者は、命令の定めるところにより、選挙運動に関する收入及び選挙運動の費用を都議会議員選挙管理委員会又は道府縣会議員選挙管理委員会(全國選出議員については全國選出議員選挙管理委員会)に届け出なければならない。
第八十一條中「前二條」を「前條」に改める。
第八十二條第一項中「第七十九條及び」を削る。
第八十四條 第七十六條第一項の規定に違反した者は、これを六箇月以下の禁錮又は三千円以下の罰金に処する。
第七十六條第二項乃至第四項の規定に違反した者は、これを一年以下の禁錮又は五千円以下の罰金に処する。
第八十六條中「第七十九條又は」を削る。
第九十條に第一項として次の一項を加える。
議員候補者又は推薦届出者は、命令の定めるところにより、選挙運動のためにする通常葉書を議員候補者一人につき一万枚を限り無料で差し出すことができる。
附則第四條中「衆議院」を「貴族院」に改める。
附則第五條に次の一項を加える。
第七十四條第一項中「東京高等裁判所」とあるのは、日本國憲法施行までの間は、「大審院」と読み替えるものとする。
附則第十條に次の一項を加える。
この法律により初めて行う参議院議員の通常選挙については、第六十一條中「十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
附則第十一條中「及び第五十六條第一項但書」を「、第五十六條第一項但書並びに第七十九條第一項第一号及び第二号」に、「及び第六十七條但書」を「、第六十七條但書並びに第七十九條第一項第一号及び第二号」に改める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
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都道府縣及び市区町村の議会の議員及び長の選挙の期日等に関する法律案
昭和二十一年法律第二十六号(東京都制の一部を改正する法律)、同年法律第二十七号(府縣制の一部を改正する法律)、同年法律第二十八号(市制の一部を改正する法律)及び同年法律第二十九号(町村制の一部を改正する法律)により初めて行う都道府縣及び市区町村その他これに準ずるものの議会の議員及び長の選挙は、内務大臣の定める日にこれを行わなければならない。
市町村その他これに準ずるものの議会の議員で昭和二十二年四月二十九日までに任期が満了しないものの任期は、同日までとする。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
東京都制の一部を次のように改正する。
第十三條第一項但書中第二号乃至第四号を次のように改める。
二 懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
市制の一部を次のように改正する。
第十四條第一項但書中第二号乃至第四号を次のように改める。
二 懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
町村制の一部を次のように改正する。
第十二條第一項但書中第二号乃至第四号を次のように改める。
二 懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
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〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=30
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031・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) ただいま上程になりました參議院議員選擧法の一部を改正する法律案の提案理由竝びに法案中主要な事項の概要を御説明申し上げたいと存じます。
參議院議員選擧法はさきの第九十一議會を通過成立し、去る二月二十四日公布、即日實施されたのでありますが、本法に對しましては、議會審議の際、衆議院におきまして、選擧運動に關して、わが國過去の幾多の選擧の實績に鑑み、選擧の事前運動及び戸別訪問の禁止竝びに費用制限の規定を、今にわかに撤廢することは時期尚早と思われるから、政府は第九十二囘帝國議會に適當なる法案を提出して善處すべき旨の附帶決議をなされたのであります。政府は本法の立案に際しましては、選擧運動及び選擧運動の費用に關するあまりにも煩雜な法的規制は、選擧の明朗濶達性を喪失せしむるのみならず、これに對抗する新たな脱法的措置を講じさせることとなつて、所期の目的を達することができないのが實情であります。特に全國選出議員の場合については、その感を深くするので、むしろこの際選擧運動につきましては、買收、選擧妨害等の惡質犯の處罰のみに止めて、他はこれを放任して、一般國民の批判に委せるのが最も適切な方策であると考え、第一議員候補者及び政黨の選擧運動に關する收入及び選擧運動の費用の公開、第二に選擧事務關係者の關係區域内における選擧運動の禁止、及び第三に選擧運動のために掲示し、または頒布する文書圖畫の形式、數量、掲示の場所等に關する制限に關する措置を講ずるに止め、他は一切これを自由に放任することといたしたのであります。
もとより選擧運動は、原則として國民の自由行動によるべきものでありまして、これに煩雜な制限を加えますことは適當ではないのでありまするが、過去の實績に鑑みまして、現下の状況に照らし、最小限度選擧の事前運動の禁止等に關する規定は、なお當分の間これを存置することを適當であるといたします衆議院の附帶決議の趣旨には傾聽すべきものがあり、かたがた衆議院議員の選擧その他各種の選擧運動も、同樣の法的規制が存置されることでもありますので、政府は附帶決議の意のあるところを諒承して、次の議會にこれに關します改正案を提出することを言明いたしたのであります。
以上の經緯に鑑みまして、政府におきましては、參議院議員選擧法の一部を改正することといたし、選擧運動及び選擧運動費用に關し、事前運動及び戸別訪問の禁止、竝びに費用の最高額の制限規定を設けますとともに、兒童等に對する特殊の關係ある地位を利用する選擧運動の禁止、その他若干の事項に關し必要な規定の改正を行うために、本改正案を上程いたした次第であります。
以下改正規定の各條項につきまして御説明申し上げます。第一には、第七十四條第一項として新たに加えようといたします規定は、選擧運動費用の制限に伴いまして、制限額の超過を理由とする當選無效の訴訟の手續を定めようとするものであります。本項におきまして、本訴訟を提起すべき裁判所を、現行衆議院議員選擧法の規定するように、大審院に相當する最高裁判所とせずに、東京高等裁判所といたしましたのは、最高裁判所をして、改正憲法におきまして新たに定めた特殊の重要な職責を十二分に盡させるとともに、事實審理を一切行わないその建前から見まして、これに出訴させることは適當でないと認められるのみならず、反面においては、全國選出議員の選擧の特殊性及び選擧に關する訴訟を、できるだけ速やかに處理終結させる必要を考慮しなければならないので、特に東京高等裁判所に出訴させることが適當と考えたからであります。
第二には、第七十六條の改正規定中、第一項はいわゆる事前運動の禁止の規定であり、第二項は戸別訪問禁止の規定であります。同條第三項の改正規定は、昨年四月に施行された衆議院議員の總選擧におきまして、特に國民學校等の兒童等に對する特殊の關係ある地位を利用して選擧運動を行つて、不當に選擧運動の機會均等の原則を破る等、相當弊害の顯著なものがあつたように見受けられましたので、學校の教職員等が、未成年の、すなわち未だ選擧權を有していない兒童、生徒及び學生に對する特殊の關係ある地位を利用して選擧運動をすることを禁止せんとするものであります。
第三には、第七十九條の改正規定は、選擧運動の費用の最高額を定めて、選擧運動費用を制限しようとするものでありまして、現行衆議院議員選擧法の規定に準じて規定しようとするものであります。ただ最高額を定めるにあたりまして、基準となるべき、議員一人あたりの選擧人の數を乘ずべき一定金額は、これを固定せず、物價變動の状況その他を勘案して、最も適當な額を定めることができるように、命令をもつてこれを定めるようにしようとするものであります。
第四には、第八十四條の改正規定は、選擧運動に關し、事前運動、戸別訪問及び兒童等に對する特殊の關係ある地位を利用して行う選擧運動の禁止規定が、新たに加えられるに伴いまして、これらの規定に違反する者に對する罰則を定めようとするものであります。
第五には、第九十條第一項の改正規定は、無料郵便に關する制度を定めたものでありますが、近く提案いたす豫定であります衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案におきまして、現下における用紙の逼迫の状況に鑑み、從來の無料郵便物の制度を改めて、通常葉書を議員候補者一人につき一萬枚を限つて無料で差し出すことができるように改正する考えであるのでありまして、本項はこの衆議院議員選擧法の改正に照應するとともに、選擧運動費用の節減に資し、選擧の機會均等を確保しようといたすものであります。
第六には、參議院議員選擧法附則第四條の改正規定は、その後の政治情勢の變化により、衆議院の解散が豫定されるに至つたために、第一囘の參議院議員の通常選擧の全國選出議員選擧管理委員を、衆議院議員のうちから選擧させることが困難となるおそれがありますので、特に貴族院議員のうちからこれを選出させるようにしようとするものであります。
第七には、參議院議員選擧法附則第十條の改正規定は、當選人の確定をできるだけ速やかならしめ、なるべく改正憲法施行の時期までに、參議院議員の選擧を完了させるために、今囘の選擧に限つて當選承諾期間を五日に短縮しようとするものであります。
以上參議院議員選擧法の一部を改正する法律案の内容の大綱を御説明申した次第であります。何とぞ愼重に御審議の上、御協贊あらんことを望みます。
ただいま上程になりました都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案につきまして、その提案理由竝びに法案中の主要な事項の概略について御説明申し上げます。
この法律案は、新憲法實施を控えまして、四月中に國及び地方の選擧を一齊に行うことが適當と認められますので、都道府縣及び市區町村等の議會の議員及び長の選擧を、内務大臣の指定する日に一齊に施行させるために、必要なことを規定しようとするものであります。
まず第一に規定しようとする點は、都道府縣及び市區町村等の議會の議員及び長の選擧は、衆議院議員及び參議院議員の選擧とともに、新憲法施行の期日までに相次いで行われますので、これらの各種の選擧を圓滑に、かつ支障なく行わしめるために、内務大臣の定める期日に一齊にこれを行わしめようとするものであります。
第二の點は、市區町村等の議會の議員の選擧は四月三十日に行う豫定でありますので、四月二十九日までに任期の滿了しない市區町村等の議會の議員の任期を、同日に滿了させることといたしまして、一齊にこれらの選擧を行い、新憲法實施の時期までに、一切の地方議會の議員を更新しようとするのであります。
第三點は、參議院議員選擧法等の制定に伴いまして、今囘行われる地方選擧についても、選擧權の缺格條項を整理し、選擧權の範圍を擴張しようとするものであります。
何とぞ愼重に御審議の上、速やかに御協贊あらんことをお願いいたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=31
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032・井上知治
○副議長(井上知治君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
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033・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第一及び第二の兩案を一括して、議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=33
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034・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=34
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035・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
これにて議事日程は終了いたしました。次會の議事日程は公報をもつて御通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後四時二十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01219470304&spkNum=35
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