1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月十日(月曜日)
午後二時十二分開議
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議事日程 第十四號
昭和二十二年三月十日
午後一時開議
第一 勞働基準法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第二 罹災救助基金法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 船員法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 統計法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第五 恩赦法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 參議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである。
昭和十九年度歳入歳出總決算
昭和十九年度特別會計歳入歳出決算
昭和十九年度歳入歳出決算檢査報告
(以上三月八日提出)
一、議員から提出された議案は次の通りである。
兒童保護に關する建議案
提出者
紅露みつ君 大石ヨシエ君
竹内茂代君 山下ツね君
最上英子君 野村ミス君
山崎道子君 本多花子君
齋藤てい君 木村チヨ君
吉田セイ君 森山ヨネ君
山下春江君 近藤鶴代君
大橋喜美君 越原はる君
田中たつ君 米山文子君
安藤はつ君 山口靜江君
戸叶里子君 新妻イト君
米山久君 杉田馨子君
菅原エン君
岐阜市立藥學專門學校の大學昇格に關する建議案
提出者
武藤嘉一君 日比野民平君
平野増吉君
酪農局設置に關する建議案
提出者
鈴木周次郎君 小川原政信君
佐伯忠義君
乳肉衞生事務の農林省移管に關する建議案
提出者
鈴木周次郎君 小川原政信君
佐伯忠義君
(以上三月八日提出)
一、去る八日提出された緊急質問は次の通りである。
綱紀肅正に關する緊急質問
提出者 井上良次君
一、去る八日吉田内閣總理大臣から次の通り政府委員を仰せつけられた旨の通牒を受領した。
内閣事務官 師岡健四郎
第九十二囘帝國議會政府委員
内務次官 齋藤昇
第九十二囘帝國議會内務省所管事務政府委員
一、去る八日議長において次の通り常任委員辭任の許可があつた。
第三部選出豫算委員 小川一平君
一、去る八日常任委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した。
豫算委員
理 事 日比野民平君(理事舟崎由之君去る七日委員辭任につきその補闕)
理 事 荒木武行君(理事寺田榮吉君去る七日委員辭任につきその補闕)
理 事 川野芳滿君(理事駒井藤平君去る七日委員辭任につきその補闕)
一、去る八日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した。
第五部選出豫算委員 木下榮君(駒井藤平君補闕)
第六部選出豫算委員 徳田球一君(鈴木茂三郎君補闕)
第七部選出豫算委員 竹山祐太郎君(林興一郎君補闕)
第八部選出豫算委員 日比野民平君(舟崎由之君補闕)
第八部選出豫算委員 福田繁芳君(寺田榮吉君補闕)
第六部選出決算委員 東隆君(竹山祐太郎君補闕)
第二部選出請願委員 坂東幸太郎君(小笠原八十美君補闕)
第四部選出請願委員 松本七郎君(杉本勝次君補闕)
一、去る八日理事補闕選擧の結果次の通り當選した。
第一部
理事 石原登君(理事坂田道太君去る七日理事辭任につきその補闕)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=0
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001・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより會議を開きます。議事日程第一、勞働基準法案の第一讀會を開きます。質疑を續行いたします。細迫兼光君。
――――◇―――――
第一 労働基準法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=1
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002・細迫兼光
○細迫兼光君 私はここに勞働者にとつて最も關係の深い勞働基準法について、若干の質疑を試みたいと思う次第でありますが、本法案の上程せらるることが決定した旨公報に發表せられたのが、去る三月五日でありました。この日を去ること十八年の昔、勞働者のために議會において孤軍奮鬪しておりました、さきの衆議院議員山本宣治君が、ちようどこの日、反動の凶刄の前に、血に染まつて倒れたのであります。そのとき議會は、治安維持法を死刑にまで惡化する、その緊急勅令案を議しておつたのでありますが、今日は勞働基準法を審議しておる。當時彼は議會に孤軍奮鬪、獨り力鬪しておつたのでありますが、今私の前には、共産黨の議員諸君をはじめ、當時彼と陣營をともにして戰つておりました社會黨内の多くの議員諸君が見えるのであります。かれこれ思つて、感慨の無量なるものあるを禁じ得ません。(拍手)
吉田總理大臣は御出席になつておりませんが、私の質問の第一點は、吉田總理大臣に向つていたされます。もちろん私はむりに即答を求めようとするのでもない。よく愼重お考えの上、御答辯を願いたいのでありますから、あえて御出席をここで求めようともいたしません。但し、もう二、三日前から、御出席していただくように要求はしてあつたのであります。
勞働基準法は、申すまでもなく勞動者のため―法案には、勞働者の人たるに値する生活を營むため、こううたつてあるのでありますが、その通り勞働者のためにこの法律がつくられなければなぬことはもちろん、これの實施運營が、一に勞働者のため、その利益のためということによつてなされなければならない。すなわちその實施運營について指導するところの政府それ自體が、勞働者を愛し、勞働者の利益を希う。そういう立場、考えにあらなければならないのであります。
〔議長退席、副議長著席〕
しかるに現内閣殊に吉田首相は、これに反し、勞働者を敵視するその思想を、あらゆるところに露出しておる。あるいは勞働運動の指導者を目して不逞の徒と言つたりする、これらもその一例でありますが、ここに私が問題に取上げますのは、去る二月十四日、本會議においてなされました總理の施政方針の演説であります。その末尾において、總理大臣は次のように述べている。現下のごとく勞働爭議の續發から各方面の一致を缺き、民主政治の圓滿なる發達を妨げるがごとき外觀を呈することは、わが國に對する國際の批判を低下し、聯合國の同情も離反し、遂に物資の輸入も減退し、國家經濟再建の遲延のみならず、媾和條約の時期も遲延するに至ることを恐れるものである、ここに見るところあつて、マツカーサー元帥は今議會の解散を勸告せられたものと想像する、この發言は二つのことを含んでおる。この國際批判の低下その他いろいろな惡いことを、勞働爭議にみなぶつかぶせておるという一つのこと、及び來るべき衆議院の解散は、勞働爭議が頻發するから、マツカーサー元帥が勸告せられたのである、こういうことを言つておるのであります。
ところが今度の議會解散、來るべき總選擧、それはそういう意味のものではない。AP通信の東京支局長ラツセル・ブライアンズ氏は、次のように書いておる。日本の保守勢力は現在政府を牛耳つておるが、政變を求める聲が全國に起つたときに、マツカーサー元帥は總選擧を行うべきことを命じたのである、まことに常識的な、しかしながら正しいマツカーサー元帥勸告の把握である、われわれもこのラツセル・ブライアンズ氏と同じように、マツカーサー元帥の議會解散勸告を受取つております。世界の常識は、まさにさように來るべき總選擧をながめておる。だからこそ、來るべき總選擧には、世界の注目が集まつておるのであります。
しかるに吉田總理大臣は、マツカーサー元帥の解散勸告の原因を勞働爭議の續發に求めている。何たる認識不足であるか。われわれはかかる認識不足の總理大臣――マツカーサー元帥の解散勸告の意義をまつたく把握し得ていない、こういう總理大臣をいただくことを、まことにはずかしいことに思う。しかしそれはただにはずかしいというだけに止まらない。そういう認識不足な、そうして自分の責任をたなに上げて、すべての惡いことを勞働者におつかぶせる、そういう態度を世界に對してわが日本の總理大臣が示すということ、これこそ國際の批判を低下せしめ聯合國の同情を離反せしめ、物資の輸入を減退せしめ、經濟再建の遲延をいたさしめ、講和條約の時期を遲延させるものでなくて何であろうかと思うのであります。
これの根本的解決は、もとより吉田首相のその職を去られることに求めらるべきでありますが、少くともこの施政方針の演説は、この部分において取消されなくてはならぬ。そうしてマツカーサー元帥の解散勸告の意義を正確に把握したことを世界に示し、自分の責任を責任としてはつきり認め、自分の政治の貧困、政治のやり方の惡いことによつて起るべきあらゆる事柄を、すべて勞働者に轉嫁しようとするがごとき、そういう態度を撤囘することを世界に表明する必要がある。この法案成立の曉、その實施運營についてそのことが必要であることはもちろんのこと、國家の運命、國民の幸福のために、私はこの部分の總理大臣演説の取消を要求したいと思うのである。總理大臣にその意思ありやなしや、ここにその態度の表明を願いたいと思う次第であります。
次の問題は、厚生大臣及び内務大臣から御答辯をお願いいたしたいと思いまするが、法案第百二條によりますれば、勞働基準監督官は、この法律違反について、刑事訴訟法の司法警察官の職務を行うことになつております。これはいけません。結論を申せば、この勞働基準監督官は、公選の監督官によつてなされなければいけない。せめて警察署長を公選にして、鑛山監督、鑛山警察などと統一して、これに任せられなければいけない。
特殊官廳の警察の見本は、あの鑛山警察にあるのであります。坑内の取締り、すなわち坑内警察は、鑛山監督官に委ねられている。外部警察との統一もない。今まで炭坑の坑口において、その垣一重で警察權が分離されている。普通の警察權は坑内に及ばない。坑内を取締るべき鑛山監督官は、數も少いし、居る所も遠いし、一般の警察權がないので、にらみも利かない。その場をごまかしてしまえば、それで通つていくのが普通である。しかも數の少い監督官は、當然の結果として、企業者とすぐ仲がよくなつてしまつて、たまさか鑛山の臨檢などに行きましても、坑内にはいつていくことなどは、はなはだ珍しい。坑内にははいらずして、案内せられずして、多くの場合料理屋の二階に案内せられる。そこで酒に殺されてしまつて歸つていく。これが實情である。
ここに官僚の腐敗墮落の根源も潛んでいるのでありますが、こういう天降の官僚の監督では、ほんとうに勞働者のためという、この法律の圓滿なる、滿足なる實施運營はほとんど豫期することができない。ほんとうに勞働者のためというならば、勞働者を交えた國民の公選による監督官に、その監督を委ねられる必要が絶對にあります。これは警察制度の改正と關聯する問題でありまして、警察制度において、その署長の公選が行はれることになれば、工場の警察、あるいは鑛山の警察も、一般の警察も、統一して警察署長に委ねられるのも一方法でありましようがが、もし署長にして公選ができなければ、ぜひこの工場の勞働基準監督官は公選にしなければならない。そういう關係から、内務大臣に對しては、警察制度の改正の構想を承りたい。またこれに關する厚生大臣の御所見を承りたいと思うのである。
次の問題は、厚生大臣の御答辯をお願いいたします。療養の問題であります。療養を受ける限りは、氣持のよい療養を受けたいものである。お醫者から、慈善事業の施療患者のような氣持の惡い待遇は受けたくない。健康保險の患者に對する不親切な、不愉快な取扱い、その原因はたくさん算えることができます。これに今一々當つておる餘裕はありませんが、その根本問題の一つといたしまして、保險制度の統一という問題が横たわつておる。すなわち現在國民健康保險があり、あるいは工場、鑛山の健康保險があり、あるいは運輸省は運輸省でもつておる。遞信省は遞信省でもつておる。文部省は文部省でもつておる。おのおの獨立して、その統一というものが全然ない。このことが根本的に國民の保險制度を非常にむずかしく、不愉快なものにしておる。現在國民健康保險などは、氣息えんえんとして崩壞の一歩手前に立つておる。國民健康保險の改革、統一問題‥‥。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=2
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003・井上知治
○副議長(井上知治君) 細迫君、簡單に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=3
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004・細迫兼光
○細迫兼光君(續) 國民健康保險の改正の問題の陳情は、全國から殺到しておる。前の議會においても、これは議會として政府に取次いだはずであります。政府は常に研究中だ、考慮中だ、こういうような御答辯であつたのでありますが、この健康保險の統一問題は、その後いかがなつておるか。もう何年も何年も御研究のようでありますので、その研究の經過竝びに結果の御報告を承りたいと思うのであります。
次の問題は、厚生大臣及び内務大臣にお伺いをいたします。これはこの法律についての根本的な機構、運營の機構、すなわち監督機關についてお尋ねをいたします。地方自治制度の確立という觀點から、地方の獨立官廳の整理、廢止、撤廢ということは、なるべく早い時期にその方針で行うということを、しばしば政府は正式に表明せられたのであります。殊に大村前内務大臣は、熱心にこれを聲明せられた。しかし新聞の傳えるところによりますれば、それが實現せられない。内務省案としては、聞くところによれば、存續すべきものとして財務局、税務署、税關、鐵道局、遞信局、通信官署のみをあげて、その他をすべて廢止する。こういう方針でおられたところ、商工省あるいは農林省あたりは、全面的にこれに反對して、勤勞署、鑛山局、農地事務局、あるいは海運局、内務省の土木出張所、木炭事務所、食糧事務所、地方物價事務局、地方商工局等々、いろいろあげればたくさんにありまするが、これらのものの存續を主張して讓らない。このことは豫算にも現われておるはずでありまするが、大村内務大臣の辭職の原因も、ここらにあるのではないかと思ふのでありますが、この地方獨立官廳の廢止、地方長官への權限の委讓、これは一體どうなつておるか、内務大臣に御伺いいたしたいのであります。このことは‥‥。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=4
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005・井上知治
○副議長(井上知治君) 細迫君、既に申合せの時間が經過いたしましたから、簡單にお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=5
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006・細迫兼光
○細迫兼光君(續) 承知いたしました。この問題だけ、おしまいまでお許しを願います。もう二、三分お願いします。これは地方自治制度の確立の問題その他にもう一つの問題を含んでおる。中央政府にその任免權が握られておるどころの出先官憲が、地方に來ておりまして、威張つてどうもしかたがない。始末におえない。これはよろしくその地方における公選の監督官にいたすべきである。少くとも公選の地方長官にその監督任命權が任さるべきである。これは實際において取締りを受けるものからいたしまして、そこに惡いことが起つた場合に、これを矯正していくというがためには、どこに責任があるかという、その責任の所在がはつきりしておるということ――それがはつきりしなければいけない。國民はどの部分品をとりかえればこの政治がよくなるかということを知ることができると同時に、その根源が國民の手の屆くところになくてはならない。
今中央政府からの直屬の官吏が地方に出ておりまして、その人がいけないことをする。これを是正するために、國民はこの惡官吏を糺彈するためには、中央政府まで出かけてこなくてはならない。北海道のはてから、九州のはてから、そういうことは不可能である。しかも出てきて厚生省に行きましても、ひようたんなまずの返事をして、つい泣寢入りになつてしまう。これでは惡いことが行われるのを是正することは、絶對に不可能である。ぜひこれは國民の手の屆く、手近なところにその根源がおかれなくてはならないと私は確信する。全國的の統一とか何とかいうよりも、法のほんとうの政治は、勞働者のためにというその精神を活かすためには、その現地において手の屆くところに根源をもつた、任兔權をもつた、そういう監督制度にしなければいけないと私は確信するのであります。厚生大臣の御意見を承りたいと思う次第であります。
他にもなおお聽きいたしておきたいこともありまするが、時間の關係上、以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=6
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007・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいまの細迫君の御質問にお答えいたします。私に對する第一のお尋ねは、勞働基準法の實施に當りまする監督官を公選にしたらどうかという點についてのお尋ねだと思います。それで御論旨によりますと、警察官を公選して、その公選した警察官に監督事務をやらせたらどうかという御趣旨もあつたように思いますが、その點は、勞働基準法は非常に專門的の法律でありまして、いろいろ專門的の知識をもたなければなりませんので、警察官にやらせるという考えはもつておりません。たといそれが公選であつても、警察官にやらせる考えはもつておりません。警察官とはまつたく別の監督官制度を布いてやらなければならぬというふうに考えております。
それからまたそれを公選にするという點につきましては、これは警察官以外の監督官にしましても、ただいま公選制度をとる考えをもちません。と申しますのは、これはよほど專門的の問題でありまして、そうしてなかなか勞働事情はもちろんのこと、科學的にいろいろな知識も要りますので、公選というよりも、やはり公益を代表する政府の任命にした方が適當である。特にこういう法律の實施の初めにおいて、さういうふうな必要があるというふうに考えております。
第三番目の醫療の問題でありますが、これは基準法直接の關係ではありませんけれども、勤勞階級に對する醫療の普及ということは最も緊要なことでありまして、この點につきましても、できるだけの方法を講じておるのでありますが、ただいま工場におきまするところの健康保險というものと、それから一般國民に對する健康保險と、この統合をどうしたかというお尋ねでありますが、これはいろいろ政府としてもこの統合について研究し、特に社會保險制度調査會についても、いろいろ意見を聽いておる次第でありまするが、だんだん物價の情勢の變化に伴いまして、工場における健康保險は、收入の何パーセントという、收入のパーセンテージによつて保險料をとつておりまするし、國民健康保險の方は、一人當りいくらというふうな保險料をとつておりまするので、こういうふうに物價關係、收入關係にいろいろ變化がありますると、だんだんと差がはなはだしくなりまして、そうして今これを統合するということは、勞働者を相手としておりまする健康保險の方に、いろいろ影響を及ぼす點もありはせぬかというような點から、ただいまこの問題の統合という點にはむしろ行き惱みの状態にあるというふうに考えております。
それから第三の問題は、基準法の監督は、これは地方的にやつたがよいじやないか、地方廳に監督の機關をおいたらどうかというふうの意味の御質問と拜承いたしますが、この法律では、中央に中心を置きまして、そうして地方に勞働基準局というものを設けて、それが直接監督するという建前をとつております。これもいろいろ一利一害があると思いまするが、だんだん勞働基準法の適用というものの範圍が廣汎になり、そうしていろいろこれに對する問題も起きてくると思いまするから、地方廳の一部の仕事とするよりも、專門にこれをやらせる方が、かえつて勞働者に對するすべての點において有利なりというふうに考えまして、直接の方法をとつておる次第であります。(拍手)
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=7
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008・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) 細迫君にお答えをいたします。第一の御質問は、勞働基準法第百二條による勞働基準監督官の司法警察の職務を、行政警察に取扱わせた方がよろしいと思うが、それはどうかという御意見と思います。第二の御質問の趣意は、警察署長等を、地方自治強化のために、むしろ民選にさした方がよろしいじやないかという御意見。第三の御質問は勞働基準局を――今日府縣の自治が行われる場合において、中央からの基準局を設置せしむるよりは、むしろそれを縣廳内に統一した方がよろしいではないかという、この三點と承知いたしました。
第一點につきましては、厚生大臣が既にお答えしておることでほぼ盡きると思います。御承知のごとく警察官は勞働行政には關興させない方針をとつております。のみならず、勞働基準法は、かなり專門的な法律であり、勞働の實態や、勞働行政によく精通いたした者が、これを取扱う方が適當だと思いまするがゆえに、この法律に規定してある規定が、最もこの問題取扱いに適したものと考えます。
第二の御質問の、警察官を民選にしたらどうか。この御意見は、一面において地方自治を徹底せしむる上において、そこまでいつた方がよろしいではないか、さようにすることも一つの考え方であり、將來地方自治が徹底的に實現される曉には、さようなことがよいのかもしれません。けれども、今日の國内のこの事情のもとにおいて、治安維持を確保してまいろうといたしますれば、まださような時期に到達しておらぬ。それでいろいろ研究もいたしてみましたけれども、現在の状態においては、さようにいたさない方がよいという結論に到達しておるのであります。
第三の御質問に對しては、中央政府のいろいろの出張所が地方に出現するこれは官僚政治を地方にまで、この過渡期においてさらに進出せしむるものである、こういうものはなるべく地方自治團體の縣廳の中に吸收して、地方自治を強化完成いたした方がよろしいではないかという御意見には、主義としては私同意を表するものであります。なるべくさようにできることが、地方自治強化完成の上によろしいことであると考えておりますけれども、この勞働基準局の問題は、きわめて専門的なことであり、國政をなるべく速やかに地方に浸透せしめて、その國政の運用を遺憾なからしむるというような立場から考えてみますれば、ただいまのところ、この基準局を地方に設けるということはいたし方のないことで、さようにいたした方が、現下の實情においてよろしかろうと考えておるのであります。さよう御承知を願いとうございます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=8
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009・井上知治
○副議長(井上知治君) 總理大臣に對する質疑の答辯は、適當な機會に讓ります。
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=9
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010・細迫兼光
○細迫兼光君 ちよつと簡單に――監督官を公選にしてはいけないという理由に、この監督には殊に專門的な知識技能が要るからという御答辯であります。もちろん專門的なことも要りますが、それよりももつと大事なことは、勞働者の幸福を護るということであるのでありまして、あえてそういう專門的な知識は要しない。これは常に勞働者と密接な聯絡を保つておれば、この監督は容易であります。勞働者はその專門でありまして、常に工場その他、そこで働いておるものでありますから、どこがいけない、どこが危險だ、こういう事情にあるということは、常に非常によく知つている。私ども何も專門家ではありませんが、どこの炭鑛のどこら邊に裸線が通つておる。どこの工場のどこの設備が非常に危險で、有毒ガスを出しておるということは、勞働者と密接に聯關しておれば、非常によくわかる。これらの監督に當る者は、何ら專門的な知識は要しない。それよりも必要なことは、そこに利害關係を密接にもつておる勞働者と、密接な聯絡を常にもつておつて、しかも親切に、勞働者のために利益なように保護していくということ、及びそれらにただ設備のことでありますか、その他の條件にしても、こうしたいけない條件があるということは、勞働者が一番よく知つている。それと一番よく聯絡を保つていくという、そういう心掛けができるような機構をそこにつくつていくということが、最も根本的に大切なことであると信ずるのであります。これらについての御所見を承りたい。
なを醫療のことにつきまして、健康保險の統一が行き惱んでおると言われますが、その行き惱みはもう數年前からのことでありまして、私も厚生省に友人がおり、數年前から國民健康保險の先端において、その運營に當つておりました關係上、上京のたびに私は厚生省に行つて、このことも陳情したのでありますが、五、六年この方、常に研究中々々々であります。そうしてそれはよいことだ。御意見まことにごもつともであると言われるのでありまするが、どうしてもこれができない。これが各官廳のなわ張り精神の現われであるのであります。遞信省は遞信省、運輸省は運輸省で、みななわ張りを爭つて、どうしてもこの統一ができない。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=10
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011・井上知治
○副議長(井上知治君) 細迫君に申し上げますが、きわめて簡單にお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=11
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012・細迫兼光
○細迫兼光君(續) 行き惱みのところはそこにある。そういうなわ張り爭いの精神をやめて、希望なさつておられるなら、やつたらよかろうと思うのであります。さように御願いいたします。
また地方自治の確立の建前から、特別官廳を廢止するということは、これはただに政府がずつと聲明せられておつたばかりではない。もうこれは自由黨でも、進歩黨でもの御主張であつたと思うのでありますが、またまた新しい地方獨立官廳ができるのであります。内務大臣は自由黨の幹部でありまするし、厚生大臣は進歩黨の幹部でありまするが、一體それでよろしいのでありましようか。政黨がもつた政策は、ほんとうに政黨政治でありまするならば、政黨が本體で、政府はその執行機關、ただ政策の實行機關であるはずなのでありまして、ほんとうに羊頭狗肉でなく、政黨の政策を實行なさるつもりなら、やるつもりなら、やれないはずはないと思います。大いにその實現に努めてもらいたいと思いますが、御所見いかがでありましようか。
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=12
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013・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいまのお尋ねに對してお答えいたします。この勞働基準法は、もちろん勞働者の幸福を念願しているものでございまして、その面において非常なウエートがなければならぬことはもちろんでありますが、大部分の規定は、經營者側の義務に屬する事項でありまして、そうしてやはり違反者に對しては、刑罰をもつて臨んでいかなければならぬ規定になつております。それでよほど裁判とよく似た性質が多分にありますが、特に法律實施の當初におきましては、政府において任命した監督官をもつてやつていくのが適當と考える次第であります。
それから第二の健康保險の問題でありますが、これは先ほども申し上げました通りに、ただいま給與が非常に變動いたしますので、それで健康保險の方は經營は比較的樂であるが、國民健康保險の方は經營が非常に苦しい。そこへもつてきて、財政がこういう状態でありまするから、國庫も十分補助ができないというようなことで、この經營の難易が非常にだんだん差がついてまいりましたので、この際にこれを合同するということは、いろいろな事情で非常に困難さを増したということを申し上げるのであります。
それから第三の問題は、勞働基準局というものを地方に設けて、中央から直接やるということは、この法律は自治的にやる、地方自治と非常な關連性においてやるという分子が少いゆえに、地方自治はできるだけ地方にまとめてもよいという主義とは反しないということに御諒承願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=13
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014・井上知治
○副議長(井上知治君) 志賀義雄君
〔志賀義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=14
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015・志賀義雄
○志賀義雄君 勞働基準法案は、昨年の一月厚生省において着手され、昨年の七月から臨時勞務法制審議會で審議され、公聽會も開かれて、最も愼重な手續を經たので、今日まで現われました法律案の中でも、最も進歩的なものの部類に屬するのでありますが、なお改善すべき點が多々あります。ただ時間の關係上、一般的な點についてはこれを省き、また他の議員の質問された所もこれを省きまして、若干の點について質問いたしたいと思うのであります。
まず大藏大臣兼經濟安定本部長官の石橋湛山氏に伺いたいのでありますが、勞働基準法がほんとうにその效果を、この法案に書いてあるように發揮するためには、それの裏づけになる生産計畫がなければ不可能であります。しかるに今日の勞働者の状態は、いわゆるたけのこ生活であり、しかも昭和二十二年度の豫算案では、一層税金の負擔も重くなります。なるほど甲種勤勞所得税は幾分比率は下げられますけれども、名目的の賃金が上る上に、なお他の間接税その他の税金が徴收されますために、一層生活は苦しくなるのであります。さらに經濟安定本部で計畫している傾斜式生産方法によつて、非常に失業が多くなつてくる。そうなつてきますと、この勞働基準法のせつかくの法文も、勞働者には適用されないことになつてしまう。
今度の豫算案については、大藏大臣は、これは赤字のない財政である、健全財政であると言われますけれども、その内容を見れば、徳田議員も指摘されました通り、やみとインフレーシヨンはますます盛んになるばかり、非常に非生産的な豫算案になつております。そこでもしこの勞働基準法がこの議會を通過して、失業が多くなつて、適用範圍が少くなる、あるいは空文だけに終るというような場合がないかどうか。それを約束できますか。またその約束がほごになつたらどうするか。その點について伺いたいのであります。
第二は、以下數點について厚生大臣に伺いますが、この勞働基準法案には、失業保險、その他勞働者に關係する社會保險の裏づけがないのであります。ただいまも申しましたように、今後一時的には失業者が出るのもやむを得ないということを政府當局は言われておりますが、それを生活保護法など――三百萬人の人間に對して三十六億圓、一人當りわずか一月百二十圓、これでもつて今日生活のできないことは、河合厚生大臣も御存じでありましようが、こういう矛盾を解決するためには、どうしても失業保險制度というものの裏づけがなければならない。なぜ失業保險を同時にやられないか。これはこの法案を審議した勞務法制審議會においても非常に問題になつた點でありますが、なぜ失業保險を同時に出されなかつたか、その點について伺いたい。
なお第二十條には、解雇はついて豫告期間を三十日としておりますが、しかしそのほかには、豫告されればその場合に解雇手當をどうするかというような規定は、少しもないのであります。ただ第八十九條第四號に、もし解雇手當の規定がある場合には、就業規則にそれを載せるべきであるという選擇事項になつておりますが、これは明らかに第二十條において、解雇の豫告をするとともに、解雇手當を與えることを義務的な記載事項にしなければいけないと思うのであります。なお豫告期間も、三十日ではなくて、今日のような就業機會のはなはだ少いときには、三箇月の豫告をつけなければいけないと思うが、その點についてはどう考えられるか。
なお次の點は最低賃金制であります。スライデイング・スケールの問題については、國民協同黨の秋田大助君が質問されましたから、私はそれを省きますが、なおスライデイング・スケールをやるについては、最低賃金制を實施するについては、適正な生計費指數というものがなければならない。しかるに昨年の秋以來今年の一月までの大爭議の間で、政府は信頼するに足る統計を一つも出していない。しかも隣組を通じて配付した官報の號外には、何と言つているか。一部の統計を勞働組合が利用して、賃金の要求を出しているもしそれが惡ければ、なぜ政府の方で信頼するに足る生計費指數を出してみせないか。そういう點の用意があるかどうか。それがなければ、スライデイング・スケールというものは結構だから、賃金委員會においてそのようにさせるべく努力しますと厚生大臣が言われたところが、これは問題にならないのである。この點の用意ありや否や。
第四には休業手當のことであります。第二十六條に、資本家の責に歸すべき事由によりて發生したる休業においては、という點があります。ところが土建業の勞働者のごときは、天候が惡いときには就業ができない。そうするとその日の賃金はもらえない。だから昔から日本では、土方殺すには刄物はいらぬ、雨の十日も降ればよいということになつているのであるが、アメリカでは、土建勞働者が天候が惡くて就業ができない場合にも、ちやんと賃金に相當する手當を拂うようになつている。これをやらなければ、土建勞働者が今のように封建的な状態に呻吟している事態を改善することはできない。また最近でも停電が方々で起つている。停電の期間中には工場は閉鎖されて、その間の賃金は拂われない。停電するのは雨が降らないから惡いのだ、また石炭か來ないからいけないのだ、何も電氣會社の資本家のせいではないから賃金は支拂わない、これでは多くの勞働者は、停電のために賃金が非常に名目賃金より少くなつてしまう。こういう場合に、これは原案にも――厚生大臣は御存じでありましようが、一度は、勞働者のその責に歸すべからざる事由により發生したる休業においてはと、そういうふうにもう一度改める必要があるのでありますが、その點について厚生大臣はどう考えるのであるか。そうでなければ、今日のような休業状態、資材が足りない、いろいろな原料が足りないというときには、賃金が非常に實質上少くなる。どうしてもここは、勞働者の責に歸すべからざるというふうに改むべきであると思います。
次に八時間勞働制の問題であります。これはむろん拘束時間制のことを、世界的に八時間制と言つているのである。この勞働八時間制というものを、決して八時間制とは言わないのでありますが、その點について述べることはやめまして、ただ第九十一臨時議會において、幣原國務大臣は、勞働者は組合の力をもつてクローズド・シヨツプなどを要求している。しかしそのために戰災者や引揚同胞諸君は、就業の機會を失われてしまう、こういうふうに言われましたが、拘束八時間勞働制を勞働組合の團結の力によつて鬪い取るならば、それだけ多くの失業者、戰災者や引揚同胞諸君をも含めて、これに就業の機會を與えることができるのであります。故にこの實働八時間制を拘束八時間制にかえることは、今日のようにあらゆる意味での失業者が多いときは、日本を再建する上に絶對の必要事であります。これをよろしく拘束八時間制と明記するように改めるについて、厚生大臣はどういう態度をとられるか、その點を伺いたい。
なおこの八時間勞働制について、椎熊君が先日ここで質問されましたが、農林省の役人が執勞中に勞働組合運動をやる、あるいは官廳の一部に組合の事務室をもつておるというようなことを言われました。これは勞働組合の事務に一部の者が專門的にかかるならば、全體の勞働者がより多くその經營の仕事ができるから、その能率の必要上團體契約でとつたものであり、また單位企業の工場なり經營なりにおいては、どこの國においても、この勞働組合の事務所というものは、必ずその官廳なり經營なりの建物の中に入れる。入れるばかりでなく、その經營の方で、圖書館その他をもあえて備えてくれるのであります。これは決して一部の者が獨裁的に勝手なまねをやつて、こういうことをしているのではありません。
なお赤旗について、共産黨の旗を振りまわすとわれわれの方を向いて言われましたけれども、農林大臣を兼任された吉田首相を農林省官吏は赤旗で迎えたというのも、これはやはり理由があることであつて、勞働者を敵視するような年頭言を發表されるからです。そうしてちようど爭議が高まつているときであつて、なかなか政府で要求を容れてくれないから、こういう事態が起つたのでありまして、元來赤旗というものは、共産黨だけの旗ではないのであります。(笑聲)日本では、共産黨が生れる數十年前から、勞働組合が自分たちの旗印として、これを用いているのである。國際的にいつても、マルクスが生れる三十年も前のフランス革命の時きから、赤旗は實に人民の旗印であります。また支那の古い漢字を見ても、旗色皆赤しとある通り、漢の高祖は赤旗を掲げておりますが、漢の高祖を共産黨員だとは、まさか椎熊君でも言わないだろうと思います。そこでこれは椎熊君がういうことを言われたので――これからが質問です。(笑聲)こういうことをやるのがいかぬから、この勞働基準法はできるだけ締めろ締めろというふうに言われるから、それで私があえてこの點について質問するのであります。
また二・一ストについて、椎熊君は共産黨を攻撃されたけれども、マツカーサー元帥の聲明が出たときに、なぜ吉田首相は一國の首相として、こういう聲明を出されて、直ちに對處しなければならぬという態度をとられなかつたか、吉田首相は勞働組合に出掛けて行つて、膝をつき合せて、こういう命令が出たからやめなければならぬということを懇談したかどうか。ちよともそれをやつていない。ただあの命令が出たときに、われわれ共産主義者は、直ちに全員手を通じて勞働組合に出かけて、このストライキは直ちにやめるがよいということを説得した。これをやつたものは共産黨以外にないのである。吉田首相はそれをちつともやつていない。(「聲明が出てもやめるなと言つたぢやないか。」と呼ぶ者あり)その聲明を出したのはほかでもない、勞農前衞黨の佐野學の一派である。この連中が機關銃は撃たれてもやるべきであるということを現に石川島造船において勞農前衞黨員がやつている。これは共産黨から脱落した分子である。もう少し共産黨について言ふ場合には、椎熊君もよろしく事實を確めてやるべきである。(「脱線々々」と呼ぶ者あり)
八時間勞働制について、今度政府が審議會の案になかつたものを閣議で加えた。つまり官公吏を除外するという規定である。これは實際警察及び刑務所においては、四十八時間、三十六時間というような勤務がよくあるのです。大阪監獄において、千三百名の未決收容者に對し、たつた十三人の看守がついておる。三十六時間勤務が續くので行き屆かない。收容者が不平を言う。それがたびたび起つてくるあの脱走事件の原因である。なぜ官吏だけ餘計な時間を働かせなければならぬのか。むしろ政府としてこういう法律を出す以上は、政府みずからが、自分の使用している從業員に對して、まず嚴格に四十八時間制を布くべきであり、その模範を示すべきが當然であるのに、閣議においてこういうことをやる。しかも四十八時間も連續勤務をやらせる。そのうちに他のウイーク・デー、他の勞働日において、この四十八時間勤務のものをやり直しをする、埋合せをつけてやるというような規定は、ここにはちつともない。つまり官吏を一番ここでは酷使しようということになつておる。閣議でこういう改正をしている。これではいけない。
次に第五條の強制勞働の禁止のことでありますが、先日新聞にも監獄部屋がなおあるということを言つておる。はたしてその事實があるかどうか。當局はこれを嚴重に監視すると言つておるが、どうであるか。この點を伺いたい。
なお第十章の寄宿舍の條項において――私は審議會で聞き捨てにならないことを聞いたのでありますが、一人の資本家代表が、これを土建業の假小舍に適用するかどうかと言つたときに、厚生省の一人の役人は、これは土建業には適用されませんということを言つた。こういうことをするから、土建業の宿舍取締規則があつたところで、いつまで經つたつてこの監獄部屋がある。はたして勞働基準法を通過させるにあたつて、政府はこれをもつて監獄部屋をいかに取扱うつもりであるか、その點を併せて答辯願いたい。
なお次に監督機關の問題でありますが、これは委員會においても、勞働者側委員及び中立の若干の委員は、勞働監督官制度ではなくて、勞働監督委員制度にしてもらいたいということを、極力主張したのであります。聞くがごとくんば、一億圓餘の豫算をこのためにとるのでありますが、勞働監督官制度にすると、結局また官僚を殖やすことになる。それよりも、勞働方面の問題に明るい人、勞働組合の仕事をする人、こういう人を監督委員としてあげるべきであるが、厚生大臣はこの點についてどういう態度をとられるか、それをはつきりさせてもらいたい。
次には災害補償の問題でありますが、今度は災害補償保險制度が強制的になるはずである。資本家は自己の負擔において災害補償をしなければならないから、進んではいるわけでもありますが、勞働者には、これは一文も掛金を出させないというが、實は厚生年金の方から出るのではないかどうか。出ないとすれば、災害補償の掛金は勞働者にかけるかどうか。この厚生年金というものは、今日まで掛金率が非常に高くて、勞働者の苦痛とするところである。名前は厚生年金であるけれども、どういうふうに使つてきたかというと、先年までたまつておつた十二億圓というもので、ほかでもない、軍事公債を買つた。そういうふうに大藏省で運用しておるのです。ところが今度は名目賃金が上るために、昭和二十二年度には、二十億圓乃至二十五億圓の掛金を勞働者はかけられるが、なぜ掛金率を下げないのか。またこれを一體どこで運用するのか。現に大藏省と厚生省とは、これを自分の方で握つて運用しようと思つて、しきりに爭つておる。今までの大藏省のやり方というものは、これをアクチユアリーに運用するだけのことである。今後はこれを一體どうするつもりであるか、この點について答辯を願いたい。
最後に、この勞働基準法は、戰爭の後の日本の現状に照らして非常に高過ぎる、あるいは尚早であるから、この實施をもう少し待つてくれという意見が強いのでありますが、これについて私の質問したいことは、一九二一年のワシントンにおける國際勞働會議において、日本を代表する資本家代表武藤山治氏は、八時間勞働制は日本の實情に適しないから、これをもう少し待つてもらいたい、日本だけは除外してもらいたいということを言つた。その後國際勞働會議において、斷えずこれが繰返されてきた。何年經つたらこれができるか。遂に今度の戰爭の終るまで、日本では八時間勞働制というものが少しも實行されない。もし今これを尚早である。理想案に過ぎないから、もう少し待つたがよいと言えば、これは結局いつまで經つてもやられないことになる。むしろ今これをやつて、どんどん勞働生産制を高めるために、資本家の方が生産設備を整え、それに主力を注ぐならば、問題は解決するのである。それをやらずに、ただ勞働時間だけを延ばそうとする、勞働者の待遇だけを元のままに止めておこうとする。今度のこの勞働基準法で一番問題になつたのは、坑口制の問題である。鑛山においては、坑口にはいつてから出るまでの時間、これを八時間にせよという。ところが日本では坑道が非常に長い。しかもそれが荒れておるために、現に私がはいつた二瀬の炭鑛でも、半分水道になつて、その中でびちやびちや働いておる。こういう状態において、切羽で働いておる時間が少いということになつておりますが、これをただ時間を長く働かせるということを續けておつては、いつまで經つても資本家の方はこれを改めないのです。ゆえにこの際むしろこれを斷行しておく必要がある。殊にこの勞働基準法は、昨年の第九十臨時議會においても問題になつたように……。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=15
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016・井上知治
○副議長(井上知治君) 簡單に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=16
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017・志賀義雄
○志賀義雄君(續) 最後です。勞働關係調整法を通すときに、附帶決議――これは自由黨及び進歩黨から出された附帶決議でありましたが、なるべく速やかに勞働基準法を上程し、實施すべしということを決議されておる。しかるに今日に及んでこれを尚早であるということを言われることは、この附帶決議の精神を忘れることになる。ゆえにこの勞働基準法というものは、これを必ず實行する必要があると思う。以上を以て政府に對する質問を終ります。
〔國務大臣石橋湛山君登場〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=17
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018・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 志賀君からの私に對する御質問は、今後産業界が非常な不況になりまして、失業者が非常に多くなつてくる、從つて折角できたこの勞働基準法を適用する人たちの數がはなはだ減るのではないか、しかる場合にどうするというお尋ねのようでありました。これはお話のように、折角勞働基準法をつくりましても、これを適用し得る人たちがはなはだしく減るというようなことが起りましては、むろん大變であります。さようなことにいたさないように、われわれ努力しておるわけでありまして、しばしば申すように――それでありますから財政の處置としましても、むろんインフレというものに十分注意をしなければならぬから、財政の均衡はどこまでも確保する手段をとりますが、同時にいわゆる、あらゆる生産要素のフル・エンプロイメントをはかるようにすることが政府の一番の眼目である、それのためならば、どんな犧牲でも拂う。かように申しておるわけでありまして、どうぞ御諒承を願います。
〔國務大臣河合良成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=18
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019・河合良成
○國務大臣(河合良成君) ただいま志賀君から、各條項にわたりまして御質問がありましたが、こまかいことは委員會で御説明いたしますが、ごく大略だけここで御説明いたします。
第一番の失業保險との關係につきましては、先ほどの答辯で御諒承願いたいと思います。それから第二番目の解雇手當の豫告期間を、三十日を三箇月にしたらどうかという御意見でありましたが、これは日本の現在の産業状態、從來の慣行等を考えまして、三十日がころあいなりと考えて原案をつくつた次第であります。
それから第三番目の最低賃金制につきまして、年計費の指數の用意があるかというお尋ねでありました。これは政府においても著々調査をいたしております。しかし御承知の通りに、ただいま小賣物價を捕捉するということが非常に困難でありまして、なかなか思うようにこの正確な數字が出てこぬので、非常に困つておる次第であります。
その次の御質問は、休業手當に關することでありましたが、二十六條では、「使用者の責に歸すべき事由による休業の場合」と書いてありますのを、志賀君の御意見では、勞働者の責に歸すべからざる事由による休業の場合としたらどうかというふうのお考えと拜承いたします。一つのお考えだと思いますけれども、勞働關係以外の事項につきまして、使用者に責を負わせることが、ただいまの状態において適當でないと考える次第であります。
その次の問題は、拘束八時間であるか、實働八時間であるか、拘束八時間にしたらどうかというお話でありましたが、これも日本の現在の勞働状態及び從來の状態から考えまして、最低限度をきめるのであるから、實働八時間が適當であろうという、現状に即した考え方によつて決定したものであります。この點につきましては、いろいろ公聽會その他の意見を聽きまして、大體この邊を適當と認めた次第であります。また官公吏について除外例を設けたことに關しての御意見がありましたが、これは官公吏の職務は、全面的に公益に關係しまするがゆえに、時間について例外を設けなくてはならぬ臨時的の必要が起きることがときどきあります。たとえば、この議會開會中のごとき、いろいろ材料を調えたり、あるいは豫算をつくりましたり、外交などの關係でもそういう場合がありましようし、末端の市町村その他につきましても、災害が起きましたような場合には、救濟事業その他いろいろの必要が起るのでありまして、こいう場合には、臨時の必要に應じて例外を設けることが、實情に即したことと思います。しかしながらこれによつて、決して官公吏を一般の勤勞者以上に過重な勞働に服させようという氣持は、もちろんもちませんから、そういう場合には、適當な方法で、できるだけその埋合せをやるということも考えなくちやならぬと思つております。
なおその次に第五條の強制勞働についてのお尋ねでありました。今日は強制勞働はほとんどないと思つておりますが、もしありましたならば、嚴重に取締りをいたすつもりでおります。
それから寄宿舍について、土建の飯場のごときは、この法の寄宿舍の適用があるかという御質問と承りましたが、飯場といえども、寢泊りをしまする以上は、寄宿舍の適用があると解釋いたします。
それから勞働監督官を委員會制度にしたらどうかというお尋ねでありましたが、これは先ほどお答えしました、公選にすることは適當でないというのと同一の理由で、御諒承を願いたいと思います。
その次の點は、災害補償保險の問題でありますが、災害補償保險は厚生年金とは別でありまして、厚生年金の資金からこれに融通するというようなことはいたしません。また勞働者に對して掛金をとるというようなことは、絶對にいたしません。
その次は、この法律の實施を延期するような意見があるが、政府の考えはどうか、延期しては困るというようなお話でありますが、政府においては、そういう考えは一つももちません。また世間一般からも、各政黨からも、そういうような希望またはお申出は少しもない。できるだけ早く實施するつもりであります。ただこれは多少やはり知らせなければなりませんので、その知らせるのに何十日か要りますから、こういう問題は技術的に考えなければなりませんが、決してそういう考えはもちません。右答辯で御諒承を願いたい。(「厚生年金の使い方はどういうふうにするか」と呼ぶ者あり)
なお厚生年金の使い方についての答辯を忘れましたが、これはただいまいろいろな關係、あるいは從來の關係で、預金部へはいつておる金が非常に多いのであります。ところが預金部の金はなかなか今實際に使えませんので、困つております。そこでこれは法律を改正して、できるだけ勞働者の方へ使うというふうに變更したいという考えであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=19
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020・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=20
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021・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=21
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022・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=22
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023・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=23
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024・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際日程第六及び第七の兩案を繰上げ一括上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=24
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025・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=25
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026・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第六、參議院議員選擧法の一部を改正する法律案、日程第七、都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案、右兩案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長松川昌藏君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=26
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027・会議録情報2
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第六、参議院議員選挙法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 参議院議員選挙法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月六日
委員長 松川 昌藏
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 都道府縣及び市区町村の議会の議員及び長の選挙の期日等に関する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月六日
委員長 松川 昌藏
衆議院議長山崎 猛殿
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〔松川昌藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=27
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028・松川昌藏
○松川昌藏君 ただいま上程に相なりました參議院議員選擧法の一部を改正する法律案竝びに都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案につき、委員會の經過竝びに結果について御報告申し上げます。
まず議案の内容について御説明申し上げます。參議院議員選擧法は、第九十一議會を通過成立しまして、去る二月二十四日に公布實施せられて現行法と相なつたものであります。しかるに衆議院議員選擧法と參議院議員選擧法とは、ひとしく國民の選擧に關しまする法規でありますけれども、この兩者の間には、著しく選擧運動その他の手續に關しまして相違する點があるのであります。從つてこれを一致せしむるために、本改正案が提出せられたのであります。
改正の第一點は、現行法におきましては、立候補屆出以前の選擧運動は禁止せられていなかつたのでありまするが、改正案においては、これを禁止することにいたしたのであります。第二點は、同樣に戸別訪問が自由であつたのでありまするが、また戸別訪問を禁止することにいたしたのであります。第三點は、選擧運動の費用は無制限でありましたが、これを命令の定むる一定の額に制限することにいたしたのであります。第四點は、學校の兒童生徒等を利用いたしまして、これが選擧運動をなすことを禁止いたしたのであります。第五點は、法定の選擧運動費用が超過いたしました場合においては、その議員候補者の當選を無效として、選擧人その他より裁判所に對して當選無效の訴訟を提起することができることになつたのであります。第六點は、從來の無料郵便物の制度を改正いたしまして、議員候補者一人について官製葉書一萬枚までこれを供給することにいたしたのであります。その他二、三の點がありますが、これは省略いたします。
次に都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案の内容は、新憲法の發效期であります本年五月三日以前に、地方議會の選擧及び長の選擧を終了せしめる目的で、任期の滿了せざる議員の任期を來る四月二十九日限り滿了せしめて、四月三十日においてすべての選擧を實行せんとするために、改正せられたのであります。
なお委員會における質疑應答の三、三を御紹介申し上げます。第一は、各種の選擧の法規が雜然として統一いたしておらないのであるから、それらの選擧法を統一する意思がないかという質問であります。政府はこれに對しまして、理想としてはすこぶる結構であるけれども、事實といたしましては相當困難であるから、將來十分に研究をするということを答えられておるのであります。
第二は、參議院議員選擧法は未だ一囘も實施しないうちに、かくのごとき大なる改正をするのは、どういうわけかという點でありますが、これに對しまして政府は、國論の趨勢を考え、衆議院の附帶決議の趣旨を尊重し、そうして國民の輿論に從つたと答辯せられたのであります。選擧運動費用はどのくらいの額にするつもりであるかという質問に對しましては、大體府縣においては五萬圓、全國選擧區においては七萬五千圓くらいを適當とする。衆議院議員選擧の場合においても、大體同樣であるという答辯であつたのであります。
次に、選擧費用が非常に多くかかつて、金權候補が出るために、非常に弊害があるのではないか。こういう場合におきましては、選擧公營の趣旨を徹底強化する意思なきやという問があつたのであります。政府はこれに對しまして、元來選擧運動は、自由公正を原則とすべきものであつて、しかして選擧運動の趣旨は、政治の教育あるいは訓練等によつて、これを鍛え上ぐべきものであつて、あまり制限することはよろしくないのであるが、今日におきましては、この趣旨の制限をすることが、現下の實状において適當であろうと考えるという答辯でありました。さらにポスターの制限等におきまして、新人の進出する餘地がふさがれるではないかという質問があつたのでありますが、これに對しましては、選擧法は今後十分研究しなければならないけれども、物資等の窮屈な現状におきましては、大體その程度においてやむを得ないじやないかという御答辯であつたのであります。
右につきまして、委員會は三月五日開會いたしまして、委員長竝びに理事の互選をいたしました。さらに六日に委員會を開きまして、前記のごとき質問應答を繰返したのであります。よつて質疑を終了いたしまして、討論に入りましたが、自由黨横田清藏君、進歩黨早稻田柳右ェ門君、社會黨鈴木義男君が、それぞれの黨派を代表せられまして、贊成の意見を開陳いたしたのであります。よつて採決いたしました結果、起立全員、本案は滿場一致をもつて可決いたしたのであります。以上御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=28
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029・井上知治
○副議長(井上知治君) 兩案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=29
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030・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて兩案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=30
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031・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに兩案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=31
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032・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=32
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033・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに兩案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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参議院議員選挙法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)
都道府縣及び市區町村の議會の議員及び長の選擧の期日等に關する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=33
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034・井上知治
○副議長(井上知治君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して兩案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=34
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035・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際日程第四及び第五を繰上げ、逐次上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=35
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036・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=36
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037・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第四、統計法案の第一讀會を開きます。法制局長官入江俊郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=37
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038・会議録情報3
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第四 統計法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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統計法案
統計法
(法の目的)
第一條 この法律は、統計の眞実性を確保し、統計調査の重複を除き、統計の体系を整備し、及び統計制度の改善発達を図ることを目的とする。
(指定統計)
第二條 この法律において指定統計とは、政府若しくは公共團体が作成する統計又はその他のものに委託して作成する統計であつて統計委員会で指定し、その旨を公示した統計をいう。
(指定統計調査)
第三條 指定統計を作成するための調査(以下指定統計調査という。)は、この法律によつてこれを行うものとし、他の法律の規定を適用しないものとする。
この法律に定めるものの外、指定統計調査について必要な事項は、命令でこれを定める。
(國勢調査)
第四條 政府が全國民について行う人口に関する調査で、統計委員会で指定し、その旨を公示したものは、これを國勢調査という。
國勢調査は、これを五年ごとに行わなければならない。
前項の期間の中間において、統計委員会の承認を得たときは、臨時の國勢調査を行うことができる。
(申告義務)
第五條 政府は、指定統計調査のため、人又は法人に對して申告を命ずることができる。
前項の規定により申告を命ぜられた者が、営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者若しくは禁治産者である場合又は法人である場合には、その法定代理人又は理事その他法令の規定により法人を代表する者が、本人に代つて、又は本人を代表して申告をする義務を負う。
(統計委員会)
第六條 統計委員会に関する事項は、この法律に定めるものの外、勅令でこれを定める。
(指定統計調査の承認)
第七條 指定統計調査を行おうとする場合には、調査実施者は、その調査に関し、左に掲げる事項について、あらかじめ統計委員会の承認を得なければならない。但し、第十六條但書の規定による場合において、第三号の事項については、この限りでない。
一 目的、事項、範囲、期日及び方法
二 集計事項及び集計方法
三 結果の公表の方法及び期日
四 関係書類の保存期間及び保存責任者
五 経費の概算その他統計委員会が必要と認める事項
前項の承認を得た後、調査を中止し、又は承認を得た事項を変更するには、更に統計委員会の承認を得なければならない。
第一項各号に掲げる事項について、変更の必要があると認めたときは、統計委員会は、調査実施者にその変更を求めることができる。
(統計調査の届出)
第八條 指定統計調査以外の統計調査を行う場合には、調査実施者は、その調査に関し、前條第一項第一号に掲げる事項を統計委員会に届け出なければならない。
前項の規定により届け出るべき統計調査の範囲その他の事項については、命令でこれを定める。
(統計委員会の権限)
第九條 統計委員会は、必要と認めたときは、左に掲げる事項を行うことができる。
一 関係各廳又はその他のものに対し。指定統計及びその他の統計に関する資料又は報告の提出を求めること。
二 関係各廳又は公共團体に対し、指定統計調査の実施若しくは中止又はその他の統計調査の変更若しくは中止を求めること。
三 関係各廳又はその他のものの行う指定統計調査の実施の状況を監査し、改善の必要があると認めたときは、意見を内閣総理大臣に具申し、又はこれらのものに対して、その改善につき勧告すること。
(統計事務職員)
第十條 指定統計調査に関する事務に從事する官吏は、統計官に補せられた者に限る。
指定統計調査の事務に從事する公共團体の吏員又はその他の團体の職員は、その職務を行うのに適当な特別の資格を有する者でなければならない。
統計官に関し必要な事項竝びに前項に掲げる者の範囲及び資格は、統計委員会の意見を聞き、命令でこれを定める。
統計委員会の承認を得たときは、第一項及び第二項に定める者以外の者をして指定統計調査の事務に從事せしめることができる。
第十一條 前條第一項の統計官又は同條第二項の公共團体の吏員は、その意に反して、その職務を免ぜられ、又は他の職務に轉ぜしめられた場合には、統計委員会に、その事情を述べることができる。但し、別に勅令で定める場合にはこ
の限りではない。
前項の場合には、統計委員会は、その事情を審査し、これに対する意見を、統計官については、その者の本属長官に、統計官以外の者については、その者の進退に関する権限を有する者に述べることができる。
(統計調査員)
第十二條 政府は、その行う指定統計調査のために必要があるときは、統計調査員を置くことができる。
統計調査員に関する事項は、命令でこれを定める。
(実地調査)
第十三條 第十條第一項、第二項及び第四項竝びに前條に掲げる者は、指定統計調査のため、必要な場所に立ち入り、あらかじめ統計委員会の承認を得た事項について、檢査をなし、調査資料の提供を求め、又は関係者に対し質問をすることができる。この場合には、その職務を示す証票を示さなければならない。
(祕密の保護)
第十四條 指定統計調査の結果知られた人、法人又はその他の團体の祕密に属する事項については、その祕密は、保護されなければならない。
第十五條 何人も、指定統計を作成するために集められた調査票を、統計上の目的以外に使用してはならない。
前項の規定は、統計委員会の承認を得て使用の目的を公示したものについては、これを適用しない。
(結果の公表)
第十六條 指定統計調査の結果は、速やかにこれを公表しなければならない。但し、統計委員会の承認を得た場合には、これを公表しないことができる。
(経費の補助)
第十七條 指定統計調査のために、公共團体の支出した経費については、統計委員会の意見を聞き、予算の範囲内において、國庫が、その全部又は一部を補助する。
(罰則)
第十八條 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役若しくは禁錮又は五千円以下の罰金に処する。
一 第五條の規定により申告を命ぜられた場合申告をせず、又は虚僞の申告をした者
二 第五條の規定により申告を命ぜられた調査につき申告を妨げた者
三 第十三條の規定による檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、調査資料を提供せず、若しくは虚僞の調査資料を提供し、又は質問に対し虚僞の陳述をした者
四 指定統計調査の事務に從事する者又はその他の者で指定統計調査の結果をして眞実に反するものたらしめる行爲をした者
第十九條 統計委員会委員、統計官その他指定統計調査に関する事務に從事する者、統計調査員又はこれらの職に在つた者が、その職務執行に関して知り得た人、法人又はその他の團体の祕密に属する事項を、他に漏し、又は窃用したときは、これを一年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
前項に掲げる者が、統計委員会の承認を得た場合の外集計された結果を、第七條の規定により定められた公表期日以前に、他に漏し、又は窃用したときは、これを五千円以下の罰金に処する。
職務上前二項の事項を知り得た第一項に掲げる者以外の公務員又は公務員であつた者が、同項の行爲をしたときもまた同項の例による。
附 則
第二十條 この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。
第二十一條 資源調査法、明治三十五年法律第四十九号、及び大正十一年法律第五十二号は、これを廃止する。
第二十二條 前條の法律に基く勅令又は命令は、この法律によつて発せられた勅令又は命令とみなす。
第二十三條 この法律の施行後三箇月以内に行う指定統計調査については、統計委員会が承認した場合に限り、第七條の規定による承認を得ないで、これを実施することができる。
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〔政府委員入江俊郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=38
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039・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) ただいま上程せられました統計法案について、その提案理由を御説明申し上げます。
この統計法案は、かねてわが國情に適する正確な統計を整備いたしますことが、國の基本的施策に科學的な基礎を與えるためにも、また聯合國はじめ世界各國の正しい理解と信頼とを得るためにも、特に重要であると認めまして、昨年八月内閣に設けました統計制度改善に關する委員會の答申の趣旨に基いて、わが國統計の改善發達をはかるための基本法として立案したものであります。
本法の目的といたしますところは、統計の眞實性を確保し、統計調査の重複を除き、統計の體系を整備し、及び統計制度の改善發達を圖るにあるのでありまして、第一に、政府または公共團體がみずからまたは他のものに委託して作成いたしまする統計の中で、國の統計體系において重要な地位を占める統計を指定し、これを指定統計と名づけまして、その實施に必要なる規定を整備いたしました。第二に、この法律の目的とする統計の改善、發達のため、昨年十二月内閣に設けられました統計委員會をして、これに關する事務を統轄させることといたしまして、その任務、權限を規定し、さらに第三に、指定統計調査の結果は、原則として速やかにこれを公表すべき旨を定めまして、社會一般が廣く迅速、適切にこれを利用し得る途を開いたのでありますが、なおこのほかにも國勢調査に關する規定、統計調査のための申告義務に關する規定、統計關係職員に關する規定、統計調査の結果知られました人、法人またはその他の團體の祕密の保護に關する規定、經費の補助に關する規定等、必要の條項を設けることといたしたのであります。何とぞ御審議の上御協贊あらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=39
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040・井上知治
○副議長(井上知治君) 質疑の通告があります。これを許します。松本七郎君。
〔松本七郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=40
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041・松本七郎
○松本七郎君 私は日本社會黨を代表いたしまして、ただいま上程になりました統計法案につき、ごく簡單に若干の質問を行いたいと存ずるのであります。
從來わが國の統計が眞實性に缺け、かつ不統一でありましたことは、何人もこれを認め、これを遺憾となしてきたところであります。特に敗戰後、何かと聯合國、殊に米國の援助を仰がねばなりません今日におきましては、外國の信用を得るに足る、眞實性をもつた、しかも迅速なる統計がいかに必要であるかということは、しばしば總司令部との折衝に苦心慘擔されておられる政府みずからが、おそらく最も痛切に感じておられるところであろうと存ずるのであります。政府の懇請により折角輸入を許可されました米綿が、實はわが國の消化能力以上の數量であつたというがごときは、わが國統計の不備を遺憾なく暴露したものであります。かかることが頻發いたしますならば、結局遂にはわが國の信を外に失うの結果になることをおそれるのであります。
敗戰日本を、まつたく新しい平和國家として再建し、一日も早く外國の信用をかち得るために、日夜努力をいたさなければなりません今日ほど、眞實にして、しかも迅速な統計の必要切なるものはないのであります。また内外の動向に鑑みましても、統計の重要性は將來いよいよ増大することは明白であります。世界經濟は、恆久平和の實現を目的に、いよいよ計畫性を必要としております。特にわが國のごとく缺乏經濟のもとにおきましては、綿密な總合計畫を絶對に必要とするのであります。いやしくも計畫の樹立には、統計の眞實性が絶對必要條件であることは、今さら申すまでもないのであります。
これを要するに、五月三日新憲法の實施を機會に、新しい日本が發足せんとするときにあたりまして、統計の完備を期して本法案が提出されましたことは、まことに意義深いものと申さねばなりません。それゆえにわれわれは、政府がいかなる具體策をもつて本法案の所期の目的を達成されんとするのであるかということに關しましては、多大の關心を抱いているものであります。ここに私は、統計の眞實性と迅速性を確保する上に必要と思われまする數點につき、以下質問を申し述べ、關係閣僚の御答辯を願いたいと存ずるのであります。
第一は、統計事務に携わる職員及び調査員についてであります。いかに統計法を整備し、その機構を完備いたしましても、結局統計の眞實性を確保し得るや否やは、末端の統計事務に從事する職員及び調査員の能力いかんにかかつておるのであります。官廳その他の團體が現在公表せる統計と事實との間には、はなはだしい誤差のあることは、周知の事實であります。これは職員、調査員が統計知識に缺けているということに根本原因があるのでありまして、これを改めますためには、特に農業會、地方自治體、警察等における統計事務職員、調査員の再教育が必要であると考えるのであります。政府はこれに對するいかなる具體策を考えておられるか。
第二は、職員、調査員の再配置と優遇策についてであります。現在の統計事務というものは、まるで隱居仕事のような状態におかれております。これが全國的な通弊となつているのであります。かかる状態では、とうてい活氣ある活動は望めません。速やかに職員、調査員の再配置と優遇策を講じなければ、本法の目的を達することは絶對不可能と思うのでありますが、これが對策につきまして、いかなる構想をもつておられるか、御説明を願いたいと思うのであります。
第三に、調査事項整理の具體的方策いかんということであります。統計には眞實性と迅速性が不可決の重大要素でありますから、現在のごとく調査事項が不統一であり、また、たとえば内務省と司法省、商工省と農林省とで調査事項が重複しているというような状態を、速やかに改善しなければならぬと思うのでありますが、これが具體的方策を伺いたいのであります。
第四は、統計委員會の性格についてでありますが、これに關する詳細は、これを他の機會に讓ることにいたしまして、ここではただ次の四項目を列擧するに止めておきますから、この四項目に關する政府の見解を御答辯願います。第一は、統計委員會は諮問機關であるか、あるいは決定機關であるかという點、第二は、内閣統計局と統計委員會との關係いかん。第三は、この内閣統計局と統計委員會とが竝立の機能に立つた場合、いずれが優位になるか。第四には、地方統計委員會の制度を考慮する必要はないか。さらにこれと關連いたしまして、地方における統計機構の完備については政府はいかなる具體的な考慮を拂つておられるか。以上の四項目であります。
最後に質問いたしたいことは、統計思想の普及啓發についてであります。統計上必要なもろもろの報告は、いかにこれを強制してみましても、一般國民に統計に關する認識が缺けておりましたならば、完全な統計は絶對に期待できません。從いまして、統計思想の普及について、その對策を伺いたいのであります。この際特に文部大臣にお伺いしておきたいと思いますのは、學校教育に何らか適當な形で統計を取入れるお考えはないかどうかということであります。私は、小學校のような兒童教育においても、これを適當に取扱うならば、ただに統計思想の普及に役立つのみならず、教育技術の面から見ましても、はなはだ效果があるものと考えるのであります。これまで長年文部省の監督によつて、こまかい點まで畫一化された形式教育は、算數は算數、工作は工作と、ばらばらに教えこまれてまいりまして、何らそこに關連性がない。生活と游離しておつたのであります。この點、今後大いに改善されなければならないのでありましようが、その意味で、統計を兒童教育に取入れて、これを教育者の創意工夫に委ねまして、自由に活用してもらうならば、おそらく私は一石二鳥以上の效果があるものと考えるのであります。それは教育者の巧みな手腕によりまして、算數がそこに活かされてくる、圖畫や工作が活用されてまいるでありましよう。また統計の實地訓練を施すことによりまして、勤勞精神も涵養されるでありましよう。しかもこれらは兒童の興味と樂しみのうちに行われるであらうと思うのであります。かくてこれが統計思想の普及ともなり、科學教育、情操教育にも與つて力あるものと考えるのであります。この點につき、文部大臣の御所見を伺いたいのであります。以上をもちまして、私の質問を終ります。(拍手)
〔國務大臣高橋誠一郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=41
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042・高橋誠一郎
○國務大臣(高橋誠一郎君) 私への御質問は、統計思想の普及啓發についてでありました。御意見まことにごもつともに存じます。單に教科書に取入れますばかりでなく、また社會科、理科で教師が教えまするばかりでなく、兒童をして、日常の學習活動として、十分にこれを取上げることになつております。まことにこの統計の發達というものは、社會科學全般の發達の上におきまして、はなはだ大なる役割を演じてきたものであります。科學思想發達の上におきまして、これを奬勵いたしますることは、非常に效果が大きいことと思います。統計學の母體と稱せられておりまする政治算術の元祖サー・ウイリアム・ペテイは、智者にはただ一語をもつて足る、という名著を遺しております。きわめて小さなものでありますが、ちようどこの名著に現われておりますような、きわめて簡單な、きわめて端的な言葉をもつて兒童を教育して、統計思想を普及發達せしめたいと考えておる次第でございます。(拍手)
〔政府委員入江俊郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=42
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043・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) お答え申し上げます。統計事務職員及び調査員の再教育の重要性につきましての御意見は、まことに御同感でございます。政府といたしましては、官吏その他公務員につきまして、常にその知識經驗を豐富にし、時勢の進展に對應せしめることの必要を痛感しておりまして、公務員制度改革の重要な一項目として、目下内閣の行政調査部におきまして研究中でありますが、特に國策の基盤たるべき統計事務に關しては、その重要性に鑑みまして、適當な方法を速急に實施したいと考えております。たとえば、將來におきましては、再教育のために統計に關する專門の教育施設のごときを設けたいと思つておりますけれども、これは直ちに實現しがたいので、さしあたりは講習會等の方法によりまして、でき得る限りこの再教育に努めたいと考えております。
次の統計事務職員及び調査員の再配置の問題でありますが、統計事務職員に適材をあげまして、これを適所に配置するということの重要なることは、もちろんであります。なかんずく全國一齊に行うセンサス的の統計、たとえば、今年度行う豫定になつておりますが、國勢調査、經營調査、工場統計、作物統計等につきましては、統計職員の現在の配置は決して滿足すべきものではないのでありまして、これはでき得る限り完全な再配置をはかりたいと思つております。ただいま統計事務職員が隱居的仕事であるというふうなお話がありましたが、確かにそういう面も否定できないのであります。また統計事務職員が、經驗が比較的淺いにかかわらず、やや重要な職務を擔任するというような面もあり、さらにまた本務以外に兼務して、統計事務をやつておるというようなこともございますので、これらの點はできるだけ速やかに是正していきたいと考えております。なおこの再配置を十分ならしめるためには、やはりそれだけの待遇も必要でありまして、聞くところによりますと、アメリカ等では、統計技術者は他よりも高い給與が與えられておるとも聞いておりますけれども、日本では現在むしろその逆であるというふうな面もありますので、將來は豫算の許す限り優遇していきたいと考えております。
第三の、統計調査の重複の除去の點でありまして、これはまことにごもつともであります。本法は、統計調査によつて眞實を申告する義務を國民に課しておるのでありまするが、一面において、いたずらに煩雜な調査によりまして、國民の負擔を不當に重からしめるということは、嚴にこれを避けねばならないのであります。そこでこの法律でも考えておりまするが、内閣に設けました統計委員會におきましてこれらを審査いたしまして、各種の統計の相互の間に類似のものがございます場合には、その重複を避けるためにこれを中止せしめたり、あるいはまたこれを統合することができるようにいたしまして、國民の申告の負擔を輕減し、またそういたしますことによつて、重複によるむだな經費をも節約することができると考えております。從來しばしば非難されました統計の重複という點は、これによりまして著しく改善されることと考えております。
次の統計委員會の性格についてのお尋ねでございます。まず諮問機關か決定機關かという點でありまするが、この統計委員會は、雙方の性格をもつております。統計委員會官制によりますと、その第一條におきまして、その自主的の權限として、特定の事項を決定する權能をもつております。また第二條によりましては、關係大臣の諮問に應じて意見を述べるという規定もございまして、雙方の性格をもつておるものと御承知願いたいと考えております。さらに統計局とどういう關係にあるかという點でございますが、統計委員會も、統計局も、ともに内閣總理大臣のもとに屬する行政機關でありまするが、統計委員會は、重要統計に關する企畫、行政各部の行う統計に關する企畫の調整、その他統計制度の改善發達をはかる、そういうことが、その主たる機能であります。一方統計局は、センサス的統計調査の實施官廳となるものでありまして、この點は官制の上にも明瞭ならしめる必要を感じまして、目下官制についても、その點を明らかならしめるような改正の手續きを進行中であります。かような次第でありますから、統計局と統計委員會とは、おのおのその所を得て相補うのでありまして、權限の重複等のことはないと考えております。
さらに地方における統計機構をどうするかという點でございますが、現状におきましては、統計の體系を統一的に整備いたしまして、將來の發達の基礎を立てるということが當面の必要でありまするから、さしあたりは、地方統計委員會とか、あるいは特別な地方統計機構というものも考えておりませんけれども、しかし委員會とまでいきませんでも、何か地方統計會議というふうなものを全國主要地に開催いたしまして、中央、地方の提携を密にしたいと考えております。またそれがさらに發展いたしまして、地方統計連絡協議會というふうな常設的な組織ができますならば、それもよかろうと考えておりまして、大體そういつたような方向にもつていきたいと考えておるのであります。
最後に、一般國民に對して統計思想の普及啓發についてどう考えているかというお尋ねでございますが、お話のように、一般の國民が統計の何たるかを十分理解いたしまして、その統計の實施に喜んで協力するという態勢をつくることは、きわめて必要であります。政府におきましても、十分この趣旨におきまして、統計思想の普及啓發に努めたいと考えております。まあさしあたりといたしましては、統計法實施を機會といたしまして、ラジオ等によりまして、十分その趣旨を徹底し、また先ほどもお話がございましたように、學校教育の面におきましても、それらを取入れる、さらにまた現實に統計の調査を實施いたしますときに、統計關係職員が現實に調査に當ります場合に、各個の國民につきまして、十分統計の趣旨をお話しをし、その理解を深めまして、そしてだんだんと統計思想の普及啓發に努めたいと考えている次第であります。以上お答え申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=43
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044・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=44
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045・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=45
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046・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=46
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047・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第五、恩赦法案の第一讀會を開きます。司法大臣木村篤太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=47
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048・会議録情報4
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第五 恩赦法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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恩赦法案
恩赦法
第一條 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権については、この法律の定めるところによる。
第二條 大赦は、政令で罪の種類を定めてこれを行う。
第三條 大赦は、前條の政令に特別の定のある場合を除いては、大赦のあつた罪について、左の効力を有する。
一 有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。
二 まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。
第四條 特赦は、有罪の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。
第五條 特赦は、有罪の言渡の効力を失わせる。
第六條 減刑は、刑の言渡を受けた者に対して政令で罪若しくは刑の種類を定めてこれを行い、又は刑の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。
第七條 政令による減刑は、その政令に特別の定のある場合を除いては、刑を減軽する。
特定の者に対する減刑は、刑を減軽し、又は刑の執行を減軽する。
刑の執行猶予の言渡を受けてまだ猶予の期間を経過しない者に対しては、前項の規定にかかわらず、刑を減軽する減刑のみを行うものとし、又、これとともに猶予の期間を短縮することができる。
第八條 刑の執行の免除は、刑の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。但し、刑の執行猶予の言渡を受けてまだ猶予の期間を経過しない者に対しては、これを行わない。
第九條 復権は、有罪の言渡を受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し、又は停止された者に対して政令で要件を定めてこれを行い、又は特定の者に対してこれを行う。但し、刑の執行を終らない者又は執行の免除を得ない者に対しては、これを行わない。
第十條 復権は、資格を回復する。
復権は、特定の資格についてこれを行うことができる。
第十一條 有罪の言渡に基く既成の效果は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権によつて変更されることはない。
第十二條 特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除及び特定の者に対する復権は、檢察官又は受刑者の在監する監獄の長の申出があつた者に対してこれを行うものとする。
第十三條 特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除又は特定の者に対する復権があつたときは、司法大臣は、檢察官に特赦状、減刑状、刑の執行の免除状又は復権状を送付し、これを本人に下付させなければならない。
第十四條 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除又は復権があつたときは、檢察官は、判決の原本にその旨を附記しなければならない。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
監獄法の一部を次のように改正する。
第六十四條中「裁可状」を「特赦状、減刑状若クハ刑の執行ノ免除状」に改める。
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〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=48
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049・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) ただいま上程に相なりました恩赦法案の提案理由を御説明申し上げます。
現行憲法におきましては、恩赦は天皇の大權事項でありまして、從つてその方式、效力及び手續き等は、勅令の恩赦令をもつて定められておるのであります。しかるに改正憲法は、内閣が恩赦を決定し、天皇は内閣が決定いたしたところの恩赦を認證することと改め、なお恩赦の一種類といたしまして、新たに刑の執行の免除を規定いたしておりますので、今般憲法の改正に伴い、恩赦に關し必要な事項を定める必要があるのであります。しかして恩赦は司法權に基く裁判の效果を動かすものであり、また恩赦の恩惠を受けるかどうかということは、國民の權利に重大な關係があるところでありますので、恩赦の方式、效力等基本的事項は、法律をもつて規定いたすのを相當と考え、この法律案を提出した次第であります。
この法案が現行恩赦令と異なるおもな點は、一、恩赦の新たな種類として刑の執行の免除を加えたこと、二、大赦、特赦及び復權の三種の恩赦は、刑の言渡しを受けた者のみでなく、刑の免除の言渡しを受けた者に對してもこれをなし得ることとしたこと、三、この法案は恩赦に關する基本的事項のみを規定することとし、詳細な手續規定は施行政令に讓ることといたしたのであります。そのほかの點につきましては、その内容は、ほぼ現行恩赦令と同樣であります。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御協贊あらんことを希望いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=49
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050・井上知治
○副議長(井上知治君) 質疑の通告があります。これを許します。森三樹二君。
〔森三樹二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=50
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051・森三樹二
○森三樹二君 ただいまの司法大臣の恩赦法上程の御説明に對して、社會黨を代表いたしまして、數點にわたつて質問を試みたいと思うのであります。
從來の勅令が、新憲法の施行によりまして、人權を尊重いたしまして、法律をもつて恩赦法を規定することとなりましたのは、われわれといたしまして、まことに當を得たものであると考えるのであります。犯罪者の救濟は、起訴猶豫、また起訴猶豫をされないで起訴されました者は、これに對して執行猶豫の恩典があります。また執行猶豫の恩典をこうむらなかつた者は、假出獄あるいはまたこの恩赦によつて救濟されるのでありますが、犯罪者といえども、その犯罪は憎みましても、その人となりを憎むべきものではありません。國家は温かいところの法の力によつて更正させなければならないのでありまして、實にこの恩赦は、犯罪者を救濟する最後の温かい手であると考えるのであります。
しこうして私は第一點といたしまして、この恩赦の取扱いにつきまして、その犯罪の範圍を擴大せられてはどうかということを司法大臣に質問いたしたいのであります。從來の恩赦の例を見ますと、政治犯であるとか、あるいは經濟犯であるとかいうような犯罪に多く恩赦が行われておるように、われわれは見ておるのであります。競馬法違反であるとか、あるいは取引所法違反であるとか、銃砲火藥取締法違反であるとか、警察犯處罰令違反とか、かような小さな犯罪によりまして、罰金二十圓あるいは五十圓に處せられたような者が、輕微な犯罪であるからといつて、そのままにされておりまして、一生その前科をぬぐうことができなかつたのであります。しかも本人から恩赦を請求するにいたしましても、その刑罰そのものが、種類を限定して恩赦令を出しておつた關係上、その令恩赦の内容にこうした微細な犯罪を指定されない以上は、一生前科者として取扱いを受けるというような犯罪者の窮状をつぶさに考えておつたのでありまして、われわれはこの際恩赦をするにあたりましては、そうした微細な犯罪に對しましても、恩赦の恩典に浴せしむることを希望いたしまして、司法大臣に對し、その御所見をお伺いいたしたいのであります。
次に私は、犯罪者が復權を行う場合におきまして、今日の日本の状態は、大都市がほとんど空襲によつて燒けてしまつたのでありまして、多數の裁判所も燒けまして、犯罪者の記録がないのであります。從つてせつかく昨年の秋のごとく、新しい憲法の公布によつて、非常に範圍の廣い恩赦令が發布されたのでありますが、これによつて復權をすべき手續をとる方法がないのであります。一般の人々は恩赦令が出ますと、當然に自分は復權するのだ、自分は經濟法規違反をしても復權するのだというような考えをもつておるのでありますが、實際は記録が燒けておりますから、復權の手續きをすることができないのであります。それで調査いたしますと、犯罪者本人の本籍地の役場におきまして、犯罪名簿に記載してあるその身分證明書をもつてくれば復權の手續をしてやると司法當局は言うのでありますが、一般の人々はそうした細かい手續を知らないのであります。從つて私は恩赦令が發布になりますと同時に、司法當局におかれましては、できるだけその恩赦に浴することができるように、これを一般に周知せしめまして、本人よりどしどし司法當局に對して復權の手續きができるようにいたさなければならぬと考えておるのでありますが、この點につきまして司法大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
第三點といたしまして、本法案には大赦、特赦、復權の效果を規定いたしておるのであります。本法の第三條、第五條、第十條には、大赦、特赦、復權のそれぞれの效果を規定いたしてあるのでありますが、第十一條には、「有罪の言渡に基く既成の効果は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除又は復權によつて變更されることはない。」と規定されておるのであります。これは從來も問題であつたのでありまして、たとい恩赦によつて大赦、特赦、復權がなされたといたしましても、既成の効果は變更されないのだ、すなわち一旦納めた罰金は戻してもらえるもものでありませんし、あるいはまた復權をいたしましても、何年何月復權をいたしたという事實を、本籍地役場の犯罪名簿に記載するだけでありまして、抹消するのではありませんから、興信所あたりが行つてそれを調べますと、いついついかなる犯罪をしたかということが、やはり載つておるのであります。これでは、犯罪を犯してから十年とか二十年經ちまして、もうその傷がいえたあとのあとまでも、昔そうしたことをやつたことが犯罪名簿に殘るということになつて、ほんとうに更生さすことはできない。また若いとき血氣にはやつて犯罪を行つたという者につきまして、十年も二十年も經つて、たとい復權をいたしましても、やはりその傷が帳簿の上に殘る。これでは私はほんとうの恩赦の效果というものは薄いと思うのであります。われわれが、たとえば肉體に傷を受けましても、十年とか二十年とかいたしますと、その傷は自然に治つて、あとかたもなく見えなくなつてしまうのでありますが、一度犯した犯罪は、十年經ち二十年經ちましでも、たとい恩赦がありましても、恩赦があなたという事實は記載されますけれども、そのあとかたは永久に殘つておるのです。大赦、あるいは特赦、あるいはまた復權等がありまして、その犯罪の效果をいつまでも既成の事實としておいておくという本法案の十一條のような規定は、從來なかつたのであります。ところがここでは、はつきりと既成の事實というものは變更されないということが戴つおてるのでありまして、これを戴せることは、私はむしろ改惡ではないかとさえも考えておるのであります。一層進んで既成の事實もとつてしまう、すなわち昔の古傷をとつてしまわなければ、眞の更生はできないものであると考えるのでありまして、刑罰を抹消するところまで進んでいかなければならぬ。かように考えるのでありますが、司法大臣の御所見はいかがでありましようか。これについて御答辯をお願いしたいのであります。
次に第四點といたしまして、現行の恩赦令の第十五條第一項には、「本人ノ出願ニ依リ司法大臣ニ復權ノ申立ヲ爲スコトヲ得」と規定されておるのであります。しかるに私は本法案を見ましたときに、本人の申立による復權の制度がなくなつておるのはどういうわけであろうか。もつとも從來も本人が復權の申立をしたという例は非常に少く、また手數がかかり、またよしんば本人が復權の申立をいたしましても、容易に司法省ではそれを許可してもらえなかつたのが實情でありましたが、人權が尊重せられることが、憲法に十二分に保障される今日におきましては、本人が一定の期間、あるいは一定の要件をもちましたならば、いつでも司法大臣に對して復權の申立ができるということを、やはり私は本法案の中に規定することが必要であると考えるものであります。これにつきまして、政令によつて規定するというようなことをちよつとお聽きもしたのでありますが、政令等によらず、やはりこの法律のなかに本人の復權の申立というものを規定することが必要であると考えるのであります。これにつきまして、司法大臣の御囘答を得たいと思うのであります。
第五に、本法案の附則に、監獄法の一部を改正する規定があるのでありますが、これにつきましては、犯罪者に對しまして温情あるところの假出獄の制度というものが從來あつたのでありますが、假出獄は刑期の三分の一を經過いたしますと、その情状によつていつでもこれを假出獄さして差支えないことになつておるのであります。しかるに從來では、三分の一が過ぎましても、あるいはまた相當期間を過ぎましても、一旦監獄をにはいつた以上はなかなか出さないというのが實情であつたのでありまして、これでは眞の刑事政策の目的を達することができない。從來あつたところの法文は、あつてなきにひとしいような形であつたのでありますが、私はせつかくそうしたところの條文がある以上は、眞に犯罪者が更生して社會的な危險性がなくなりました場合には、すべからく速やかにこれを釋放することが必要であると思うのであります。この點につきまして、司法大臣の御答辯をお願いしたいのであります。
第六點といたしまして、私は人權蹂躙の問題についてお伺いしたいのであります。人權蹂躙の問題は、議會におきましては從來しばしば問題になつておつたのでありますが、われわれが忘れることができないところの、例の神奈川縣の集團放火事件におきましては、多數の人々が拷問によつて虚僞の自白をしておつたのであります。また諸君も御承知のごとく、帝人事件は、當時の大臣あるいはたま銀行局長、あるいはまた銀行の總裁等までも、多數の人人が、拷問によつて虚僞の自白をした事實があるのでありまして、當時の議會において大分問題になつたことは、われわれの記憶に明らかなことでございます。今日新憲法下におきまして、拷問行爲をやつてはいけないということは、憲法の條文中に規定せられたのであります。しかるに戰爭中は、拷問をすることを平氣でやつておつた。戰爭が濟みました今日、裁判所、檢事局等におきましては、非常に民主化されまして、裁判所、檢事局の内容は、非常に新しい憲法の精神によつて進められておるのでありますが、未だ警察に至りましては、新しい憲法の精神を冒涜するがごとき行爲がしばしば行われておるのでありまして、私はこの點はまことに遺憾と考える次第であります。警察官は、新憲法の第三十四條、あるいは第三十八條のごとき規定さえも知らないものがあるというのであります。これでは眞に國民の人權は保護されない。國民の基本的な人權、身體あるいは生命、自由を尊重する上から言うならば、警察官は當然に人權を尊重する最も重要なる責任があるのでありまして、われわれは、今日未だに人權蹂躙の事實を聞くということは、實に嘆かわしいことであると考えておるのであります。これにつきましては、司法大臣、竝びに警察官の監督、教育にあたるところの内務大臣――内務大臣が御出席なければ、これに代るべきところの政府委員の御答辯をお願いいたしたいのであります。(拍手)
最後に私は、これはいささかこの法案とは關連がかけ離れておるようでありますが、私が日常遺憾至極に感じておる點でありますから、お尋ねするのでありますが、今日食糧であるとか、あるいはまた綿製品等の統制品について、各露店であるとか、あるいはまたマーケツト等において、公然と晴天白日下にやみ取引が行われておるところの事實であります。これは單に司法大臣や内務大臣ばかりの責任ではなく、政府全體の責任でありますが、われわれはそうした市場に行くことによつて、今日の石橋財政によつてインフレーシヨンがますます助長され、物價が高騰していつておる。市場に行けばその高騰しておるところの實情というものは、まつたく直ちにわかるのでありまして、たとえばタバコの値上げ、あるいは酒の値上げ等によつて、もう直ちにそうしたところに響いております。今日市場はそうしたところの物價のバロメーターであるとさえ、私は痛感いたしておるのでありますが、わずかばかりの品物を汽車に載せてくる、學生が上京するにあたつて米をもつてきた、その米を容赦なく取上げておるところの警察が、こうしたやみ行爲を默認するのであるか。あるいは手が行き屆かないために、これを放任するのでありましようか。私はまつたく解せないのであります。これに對して政府は斷固たるところの處置をとらなければ、この惡性インフレとともに、一般國民大衆の生活というものは、ますます窮迫に陷るのでありまして、國民は死を待つばかりの生活を續けておるのであります。これに對しまして、取締りの責任ある内務大臣、あるいはその他の關係閣僚の責任ある御答辯をお願いする次第であります。簡單でありますが、私の質問はこれをもつて終る次第であります。(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=51
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052・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) ただいまの森君の御質問に對してお答えいたします。恩赦を受くべき刑の範圍を擴張したらどうかという御質問でありますが、これはまことにごもつともな御議論と存じております。御承知の通り恩赦は國の恩惠であります。この國の恩惠をなるたけ廣範圍にわたらせるということは、最も望ましいことであります。今後御承知の通りこの法案が通過いたしますると、恩赦をすべきや否やは内閣の決定にまつのでありますが、おそらく今後内閣の決定によつて恩赦が實施されるような場合には、この恩赦をこうむるべき刑の範圍というものは、擴張されることであろうと信じて疑いません。
それから第二の復權の手續等について、いろいろ裁判所の記録が燒けた等について國民が周知しない、從つて非常な不都合が生じておるから、一般に周知する方法をとることができないかということであります。これはごもつともなお話であります。將來この復權等についての手續きを一般に周知する方法をとりたいと存じております。
次に前科者の記載の抹消でありまするが、これも私はごもつともな御意見と存じております。できる限り、さような前科者という記載は、恩赦によつて抹消いたしたいと思つております。また恩赦がない場合でも、相當な年數が經てば、さような前科者という記載は、これを抹消いたしたいと存じておる次第であります。
なおこの際一言申しておきたいのは、司法省におきましては、刑法改正法律案といたしまして、何人も刑の執行を終つた後十年を經過いたしますると、その刑が當然消滅して、一切の資格の制限、禁止が洗い去られるものという、刑の消滅に關する規定をただいま研究中であります。さよう御承知を願いたいのであります。(拍手)
それから假出獄の問題でありまするが、從來假出獄の制度があるにかかわらず、刑期三分の一を過ぎても、なおこの制度の活用をみなかつたのは遺憾であるという御意見でありまするが、私もさように存じております。不肖私が司法大臣に就職以來、この制度を活用すべく、部下を督勵いたしております。最近におきましては、おそらくこの制度は相當活用されておるものと信じておるのであります。將來もこの假出獄の制度については、十分活用いたしたいと存ずる次第であります。
それから復權に關する本人の申立權についての御質問でありますが、御説の通り現行恩赦令第十六條には、復權に關する本人の出願について規定いたしておるのでありますが、本法案中にはこれに關する規定はないのであります。その理由は、本案は形式が法律でありまするので、恩赦に關する方式、效力等、重要な事項のみを法律に規定し、手續規定はこれを施行政令に讓つたことと、なお復權に關する本人の出願を、法律をもつて認めた權利といたしまする規定を設けますることは、本人の出願の趣旨を容れなかつたような場合に、これに對する異議申立、あるいは行政訴訟等の問題が生じまして、恩赦の趣旨と相容れないことと相なりまするので、復權に關する本人の出願を、本法案中には規定せずに、これを政令に讓つたわけであります。
それから第十一條の問題でありますが、これは森君にとくとこの法案を御研究を願いたいのであります。この有罪の言渡しの既成の效果は恩赦によつて變更されないというのは、御承知の通り、刑の言渡しによつて恩給などを止められた場合、あるいは役人をやつておつて刑の言渡しを受けて、役人をよさなくてはならないというような場合、これが恩赦の場合に當然にあるいは官吏の身分を復活して、もとの勤務につくとか、あるいは恩給がまた貰えるようになるというようなことであつてはいけないということで、さような判決の言渡しによつて生じた既成の效果は、恩赦によつてよみがえらないのであるぞという規定に過ぎないのであります。その點は誤解のないようにお願いいたしたいと存じます。
次に人權蹂躙の問題でありまするが、これは御もつともなことであります。人權の蹂躙すべからざることは、申すまでもないことであります。新憲法實施の曉に至りましては、いろいろな方面から、人權の蹂躙できないような規定は設けられておるのでありますが、しかしただ規定で設けられておるからと申しまして、實際にこれがなくなるものではない。結局は人の問題であります。われわれといたしましては、この點について十分愼重に取扱いたいと考えております。最近裁判所、檢事局におきましては、相當人權蹂躙ということについては非難の聲がなくなりました。まことに私は仕合せと考えております。將來とも、この人權の蹂躙ということについては、十分の考慮を拂いまして、一日もさような非難のないように注意をいたしたいと存じております。(拍手)
それから最後に、統制品をやみ市場において散見する、まことに遺憾だということのお話であります。御もつともに存じます。これは内務當局の方と十分に連絡を保ちまして、一日も速やかにかような違反の行われないように、十分處置いたしたいと存じております。(拍手)
〔政府委員林連君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=52
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053・林連
○政府委員(林連君) 内務大臣が目下豫算委員會に出席されておりますので、森君の質問に對しまして、私より御答辯を申し上げることにいたします。
人權尊重につきましては、御説の通りであります。このことについては、内務省といたしましては、各都道府縣に對し、しばしば指示をいたしまして、かかることの絶對にないよう戒めてまいつたのであります。この點につきましては、相當改善されておることと信ずるのでありますが、將來とも人權尊重を基礎とする民主警察の樹立につきましては、嚴に指導戒告を加えますとともに、刑事警察官の素質向上にも十分留意いたしまして、將來かかることのないように、監督をいたしてまいるつもりであります。しかし萬が一にもかようなことが生じました場合には、適當なる調べをいたしまして、十分なる處置をいたしていきたいと考えておる次第であります。
なお買出しの問題でありまするが、この點は、その取締り寛嚴よろしきを得ることは、非常にむずかしい問題であります。ゆえに質問者の御意見のあるところをそのまま大臣に傳えまして、善處いたしたいと思います。以上。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=53
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054・森三樹二
○森三樹二君 詳細は委員會に讓ることといたしまして、私の質問は打切ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=54
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055・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=55
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056・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は政府提出統計法案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=56
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057・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=57
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058・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます、よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=58
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059・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 殘餘の日程を延期し、本日はこれにて散會せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=59
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060・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=60
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061・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後四時四十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X01519470310&spkNum=61
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