1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月十八日(火曜日)
午後二時八分開議
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議事日程 第十九號
午後一時開議
第一 所得税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 法人税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會
第四 土地台帳法案(政府提出) 第一讀會
第五 家屋台帳法案(政府提出) 第一讀會
第六 地方税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 地方分與税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 行政官廳法案(政府提出) 第一讀會
第九 宮内府法案(政府提出) 第一讀會
第十 檢察廳法案(政府提出) 第一讀會
第十一 日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十三 日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 船舶公團法案(政府提出) 第一讀會
第十五 昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 証券取引法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 日本証券取引所の解散等に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 裁判所法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 勞働基準法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである。
檢察廳法案
日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案
日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律案
日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律案
船舶公團法案
(以上三月十七日提出)
一、議員から提出された議案は次の通りである。
勞働基準法案(政府提出)に對する修正案
提出者
土井直作君 荒畑勝三君
伊藤卯四郎君 中原健次君
(以上三月十七日提出)
一、昨十七日衆議院規則第十五條但書に依り議長において議席を次の通り變更した。
一三一 池村平太郎君
一四四 加藤高藏君
一、昨十七日議長において次の通り常任委員辭任の許可があつた。
第九部選出決算委員 米倉龍也君
一、昨十七日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した。
第一部選出豫算委員 生方大吉君(飯島祐之助君補闕)
一、昨十七日特別委員委員長補闕選擧の結果次の通り當選した。
教育基本法案(政府提出)委員
委員長 椎熊三郎君(委員長江川爲信君三月十五日委員辭任につきその補闕)
一、昨十七日議長において次の委員を選定した。
地方自治法案(政府提出)委員
内海安吉君 中島守利君
細田忠治郎君 三浦寅之助君
村上勇君 青木泰助君
稻本早苗君 佃良一君
宮澤才吉君 早稻田柳右ェ門君
大矢省三君 永江一夫君
細田綱吉君 矢尾喜三郎君
川越博君 久保猛夫君
仲子隆君 伊藤實雄君
一、昨十七日次の通り特別委員の異動があつた。
勞働基準法案(政府提出)委員
辭任佐藤久雄君 補闕青木清左ヱ門君
辭任山下春江君 補闕中山たま君
辭任田中實司君 補闕藥師神岩太郎君
辭任山田悟六君 補闕齋藤てい君
統計法案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任庄司一郎君 補闕加藤一雄君
辭任森山ヨネ君 補闕竹内歌子君
辭任長野長廣君 補闕山崎岩男君
辭任松永佛骨君 補闕左藤義詮君
船員法を改正する法律案(政府提出)委員
辭任松原一彦君 補闕岡田勢一君
昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件)(政府提出)委員
辭任稻葉道意君 補闕左藤義詮君
辭任大石倫治君 補闕原侑君
教育基本法案(政府提出)委員
辭任井田友平君 補闕左藤義詮君
辭任池村平太郎君 補闕細川八十八君
辭任武藤嘉一君 補闕關根久藏君
裁判所法案(政府提出)委員
辭任豊澤豊雄君 補闕石田一松君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=0
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001・井上知治
○副議長(井上知治君) これより會議を開きます。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=1
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002・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第十五ないし第十七の三案を繰上げ一括上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=2
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003・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=3
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004・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は、變更せられました。
日程第十五、昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案、日程第十六、證券取引法案、日程第十七、日本證券取引所の解散等に関する法律案、右三案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長大谷瑩潤君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第十五 昭和十四年法律第七十八号を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の処分に関する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 証券取引法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 日本証券取引所の解散等に関する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 昭和十四年法律第七十八号を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件)(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十七日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎猛殿
附帶決議
本法の實施にあたりては、次の二點につき、その運用に萬全を期せられたい。
一 終戰後、著しくたい廢した國民思想を建直すため、宗教の果すべき役割の重大なるに鑑み、文部、大藏、農林三省の緊密なる連けいの下に、十分本法の趣旨貫徹に努められたきこと。
二 本法實施によつて、社寺等に讓與又は賣拂つた財産については、本法の趣旨に反せざるよう、社寺等において責任を以てその管理運用に、最善を盡されたきこと。
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報告書
一 證券取引法案(政府提出、貴族院送付)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十七日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎猛殿
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報告書
一 日本證券取引所の解散等に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十七日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎猛殿
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〔大谷瑩潤君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=5
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006・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 三月十三日本會議に上程されました、昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案、竝びにこの委員會に併託されました證券取引法案、及び日本證券取引所の解散等に關する法律案の三案に對する委員會の經過及び結果につき、簡單に御報告を申し上げます。
上程されました翌日、すなわち十四日より委員會が開かれまして、まず委員長の互選の結果、不肖私が委員長に御推薦を受けました。引續き理事の互選を行いましたところ、先例により委員長指名となりましたので、稻葉道意君、小笹耕作君、西村榮一君の三名に理事をお願いいたしました。しかして本委員會は、去る十四日以來十七日まで三囘にわたり委員會を開き、まず政府の提案説明があり、次で質疑にはいりました。
詳細なることは議事録に讓りまして、政府の説明を通じ本案の内容を檢討いたしてみますると、國有境内地約三萬七千町歩及び社寺保管林約二萬六千町歩につきまして、從來より神社、寺院等に對しまして行われておりました國有境内地の無償貸付關係、及び社寺上地林について認められておりました社寺保管林制度を整理いたしますために、昭和十四年法律第七十八號、寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件を、全文改正しようとするものでありまして、すなわち國有境内地の無償貸付關係を廢止するとともに、一定の條件のもとに、神社、寺院等に對しまして、國有境内地を讓與または半額で賣拂いを行い、また保管林制度を廢止するとともに、一定の條件のもとに、神社、寺院に對しましてこれを讓與し、または國有林野法の規定による部分林を設定し、あるいはこれに對し補償することを骨子とするものであります。
次に委員會における質疑應答の主要なる點を申し上げますと、第一に、昭和十四年法律第七十八號と、本改正法律案の主要なる差異はどうかとの質疑に對しまして、政府より次のごとき答辯がありました。
一、まず立法の精神において、本改正法は政教分離の建前から出發しているのでありまして、從來の法律における宗教保護の思想を一擲しているのである。
二、次に國有境内地の讓與または半額賣拂いの相手方として、從來の寺院及び教會のほかに、新たに神社が加えられている點であります。御承知の通り、從來神社は國の公用財産を使用していたのでありますが、昨年二月來、寺院と同樣に、これを雜種財産として國家より無償貸付を受けることとなつたために、この措置がとられたのである。
三、さらに國有境内地の讓與及び半額賣拂いの條件が相當に嚴格となり、社寺等が收益目的に供しておる土地は、讓與または半額賣拂いの對象とならないこととなつたのであります。
四、また保管林制度を廢止し、これが善後處置といたしまして、境内に編入することを相當とする部分は、これを社寺等に讓與し、社寺の植栽した地區については、主務大臣が必要と認めた場合はこれを部分林とし、その他の部分は補償することとなつたのであります。
五、その他戰災地處理等のため、今後土地區劃整理または耕地整理等が頻繁に行われますことを豫想して、これに關する規定を設け、また社寺等の買受代金の支拂便法として、從來の年賦延納のほかに、新たに土地による代物辨濟を認め、さらに社寺等に無償貸付中の御料地の處理に關する規定を設けたのであります。以上の諸點は、政教を分離し、神社寺院等をして國家の保護を離れ、爾後自由なる立場において宗教活動を行わしめる目的をもつて規定されたるものであるとの答辯でありました。
第二に、讓與の範圍は、從來の法律と比較してどうなつているかという點、及び讓與または半額賣拂いをしない土地はどうなるかとの質疑に對しまして、本改正法律に基く讓與の範圍は、從來の法律の施行勅令に規定されておりまする讓與の範圍と大體において同じであり、次に讓與または半額賣拂いをしない土地は、無償貸付關係を廢止するのでありますが、社寺等において希望があれば、有償で貸付を行い、または時價で賣拂いをするのでありますが、かかる土地は、從來社寺等に特別の縁故のあるものであるから、一般競爭入札によつて賣拂い、または貸付等をなすことなく、隨意契約をもつてその社寺に時價による賣拂いまたは貸付をすべきではないかとの質疑に對しまして、特別の縁故ある土地を隨意契約で賣り拂うことは、一般に會計規則で認めておるところであり、社寺なるがゆえに特別扱いをするのでないから、特別の縁故があるものなら、さように取扱つても差支えないとの答辯を得ました。
第三に、社寺等がその國有境内地の讓與を受けますためには、土地、地租改正等の沿革を立證しなければならないのでありますが、すべての社寺が完全な立證をなし得るかどうかは大いに疑問でありまして、この點に關する質疑に對しましては、直接的な證據のみならず、間接的な傍證にても差支えない旨の答辯を得たのであります。
第四に、讓與または半額賣拂い、あるいは補償等の場合には、審査會の議を經る必要がありまするが、この構成は、本改正法律の運用にはなはだ重大な影響を與えるのであります。政府の答辯によりますれば、社寺境内地處分審査會は、大藏本省及び地方財務局に設け、その構成は、會長を含めて十二名、官民同數とし、宗教家も、學識經驗者としてこれが委員に豫定されており、きわめて民主的に運用せられるのであります。また社寺保管林處分審査會につきましては、これを農林本省に設けまして、その構成も、社寺境内地處分審査會とほぼ同樣であります。
第五に、政教分離の趣旨の徹底によりまして、殊に本改正法律のごとく、從來國家から與えられておりました財政上の保護の廢止によりまして、社寺等の衰微を來し、ひいては國民の宗教心が稀薄となり、國民思想が惡化するおそれがあるから、政府としてはこの點愼重なる考慮を要するのではないかとの質問に對しまして、社寺等が從來から受けておりました國家の覊絆を完全に脱却いたしまして、宗教として自由なる發展をいたしますることを期待し得るのみならず、敗戰後における一般の宗教心の稀薄化、國民思想の惡化の實情に顧みまして、今後宗教情操教育についても、格段の努力をする旨の答辯がありました。
最後に、本改正法により讓與、半額賣拂いを受けました土地が自由に處分され、宗教目的に供しておる土地が賣却される等のことがありますれば遺憾であるが、この對策はどうかとの質疑に對し、法規上の監督はできないから、宗團内部の自治にまつ旨の答辯があり、また本改正法による處理については、なるベく速やかに、できれば三年以内に完了したいとの政府の答辯がありました。寺院等が先年既に讓與を申請したのに、未決定のままとなつているものは、あらためて申請をせねばならぬかとの質問に對し、あらためて申請をしてもらわなければならぬが、圖面等の使用のでき得るものは、前のを使用したいと考えておるとの答辯でありました。
本委員會におきまして、主として問題となつた點は、以上のごとくであります。きわめて熱心なる質疑應答の後、昨十七日討論採決にはいり、自由黨左藤君、進歩黨稻本君、社會黨西村君、國民協同黨増井君より順次御意見を述べられ、自由黨、進歩黨、社會黨、國民協同黨の各派は、附帶決議案を附して一致贊成の意を表されました。附帶決議を讀上げます。
本法の實施にあたりては、次の二點につき、その運用の萬全を期せられたい。
一、終戰後著しくたい廢した國民思想を建直すため、宗教の果すべき役割の重大なるに鑑み、文部、大藏、農林三省の緊密なる連けいの下に、十分本法の趣旨貫徹に努められたきこと。
二、本法實施によつて、社寺等に讓與又は賣拂つた財産については、本法の趣旨に反せざるよう、社寺等において責任を以てその管理運用に、最善を盡されたきこと。
この附帶決議をもちまして、委員會は原案通り可決をされた次第であります。
次に證券取引法案、及び日本證券取引所の解散等に關する法律案の委員會における審議の經過について、その概要を報告いたします。
證券の民主化、換言いたしますれば、證券が廣く大衆の手に分散保有せらるるためには、一般大衆が安心して自己の資産を證券に投資し得る仕組となつておることが、何よりも肝要なことであります。しかるにわが國における現状は、一般大衆が健全なる投資物としてこれを保有することは、比較的少かつたのであります。また證券取引組織につきましても、その中核的機關である取引所は、戰時中政府の強力なる統制下に設置された日本證券取引所であり、證券業者の態勢も、今日とはまつたく異なる状況下に整備されたものでありまして、いずれも現下の要請を滿たし得ないものと認められるのであります。右の事情を考慮し、かつ今後わが國經濟の民主化の徹底を期すべきとき、現行の日本證券取引所法、有價證券業取締法、有價證券引受業法及び有價證券割賦販賣業法を廢止し、新たにこれらの諸法令を統合し、かつその内容を民主的に改正し、なおこれに伴い、現行の日本證券取引所を解散いたしまするために、證券取引法及び日本證券取引所の解散等に關する法律の二法案が政府より提出されたのであります。
委員會におきましては、愼重なる檢討が加えられ、種々質疑がありましたが、以下、その主要なものについて報告いたします。
まず證券取引法案については、第一に、本法により新たに株式または社債の發行に關する屆出制度が設けられた趣旨、及び投資家保護に對する政府の今後の方針について質問があつたのに對し、政府よりの答辯といたしましては、發行會社の實體と、發行關係の諸條件を明らかにし、投資家に投資判斷の材料として、正確にして眞實な資料を提供するとともに、目論見書等による誇大宣傳の弊を防止し、投資家の自由な判斷と責任とにおいて、安心して證券投資ができるようにいたしたいためである。この制度は十數年前より米國においては實施せられ、その効果を上げておる。次に投資家保護に對する今後の方針については、證券の發行及び賣買取引について、種々なる投資家保護の規定を設けたのであるが、本法案の精神を體し、政府においても投資家保護に萬遺憾なきを期するよう十分努力してまいりたいとの説明がありました。
第二に、證券取引所の組織を會員組織に限定した理由について質問がありましたのに對し、政府からの答辯は、株式會社組織にするか、會員組織にするかについては、各方面の權威者をもつて構成される金融制度調査会で愼重に檢討した結果、會員組織とすることを適當とするとの答申もありましたし、かつ株式會社組織の取引所は、その營利追求の目的からも、賣買手數料收入の増收のみをはかることになりがちであり、從つて賣買高の多きを望むことになり、投機取引を助長する傾向が少くないので、取引所の公益的使命等に鑑み、非營利的な會員組織を採用したのであるとの説明がありました。
第三に、本法による證券取引委員會の委員を三名にしておるが、民主的な委員會とするために増員の必要がないかとの質問がありましたのに對しまして、政府の答辯は、證券關係の重要事項を迅速に處理するために、常時勤務を建前とする少數の委員制によることが適當であるとのことで、この委員には、各方面に信望のある、十分な知識經驗を有する者が選任され、なお民主的に廣く一般の意見を取入れるために、公聽會を適時開く等の方法により、運用の萬全を期したいとの説明がありました。
第四に、證券取引所の數はどのくらいになる見込みかとの質問がありましたが、これに對しましては、證券取引所の設置については、命令で具體的に定めることになつておるが、その地區の定め方は非常に重大な問題であるので、本法により設けられる證券取引委員會の審議により決定されることであるが、各地方における證券流通の現状、交通、通信の状況等を勘案して、證券の民主化に資するように定められることと思われるとの答辯がありました。
第五に、證券業者は、戰時中の企業整備によりその數を減少し、資質が向上しておるが、今後本法の施行により、證券業者の免許が寛大自由に行われるとすると、證券業者の資質の低下を來し、投資家保護上缺けることとなるのではないかとの質問がありましたのに對しましては、證券業者の資格については、從來よりも嚴重に、たとえば純財産額は、政府の指定する一定基準額以上を常時保有するものでなければならないことにいたしました。その他具體的に證券業者の免許をいたしまする際には、投資家保護の見地から、十分愼重を期したいとの答辯がありました。
次に日本證券取引所の解散等に關する法律案につきましては、その清算を主務官廳の監督のもとに行わず、裁判所の監督のもとに置いた理由について質問がありましたのに對し、政府の答辯としては、日本證券取引所は、終戰直前からその業務を停止して今日に及んでおるので、これを主務大臣の監督の下に置いて清算を行う意義も薄いので、公平な第三者たる裁判所をその監督者としたとの説明がありました。
以上は、質問の主要なものでありまするが、討論採決の結果、全員政府原案通り贊成可決いたしたのであります。以上、簡單でありまするが、委員會における審議經過の報告といたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=6
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007・井上知治
○副議長(井上知治君) 三案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=7
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008・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて三案の第二讀會を開くに決しました。
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009・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに三案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=9
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010・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=10
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011・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに三案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=11
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012・会議録情報3
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昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件) 第二讀會(確定議)
證券取引法案 第二讀會(確定議)
日本證券取引所の解散等に關する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=12
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013・井上知治
○副議長(井上知治君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して三案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=13
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014・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際日程第十八を繰上上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=14
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015・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=15
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016・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十八、裁判所法案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長小島徹三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=16
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017・会議録情報4
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第十八 裁判所法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 裁判所法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてことに報告する。
昭和二十二年三月十七日
委員長 小島 徹三
衆議院議長山崎猛殿
附帶決議
一、裁判所は、憲法が國民に對し保障せる、人權尊重の精神に徹し、官僚獨善の弊風を打破し、形式主義を排除し、眞に國民の信頼に應うる裁判民主化のために努力すべし。
一、陪審制度に關しては、單に公判陪審に止まらず、起訴陪審をも考慮するとともに、民事に關する陪審制度に對しても十分なる研究を爲すべし。
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〔小島徹三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=17
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018・小島徹三
○小島徹三君 ただいま議題と相なりました裁判所法案の委員會における審議の經過竝びに結果について御報告申し上げます。
本法案は、現行憲法のもとにおける裁判所構成法を廢止いたしまして、新憲法下における裁判所の構成竝びに權限等、今後の裁判所のあり方についてこれを規制せんとするところの、重要にしてかつ必要なる法案でございます。委員會におきましては、去る十四日、政府よりこの法案の説明を受けましたる後、引續き審議にはいつたのでありまするが、委員諸君におきましては、かかる重大なる法案が、會期切迫のために十分なる審議期間を與えられないということに對しましては、はなはだ不滿といたしておりましたのでありまするけれども、熱心なる討議を二日にわたつて續けました結果、昨日に至りましてようやく討論終結いたした次第でございます。その詳細につきましては、これを速記録に讓ることといたしまして、その質疑應答中のおもなる點について二、三御説明申し上げます。
質疑の第一點は、裁判所と裁判の民主化に對する問題でございまして、裁判所の民主化ということは、これは口頭禪に終らせることなくして、この際必ず實行しなければならぬことであるけれども、本法案においては、これらの構成はいかに盛られてあるのか、またいかなる考慮が拂われておるのかということが、問題の要點でございました。これに對しまして政府は、本法案においては、簡易裁判所の制度を設けて、その數を約五、六百といたして、これを全國に散在せしめ、簡單なる民事、刑事訴訟は、これを簡易裁判所において取扱はじむるのみならず、その裁判官は、必ずしも從來の法曹に限らず、一般の徳望篤い人々の中よりこれを任命いたしまして、一般民衆に最も直接關係あるところのこれらの小事件につきまして、民主化を期待しておるということでありました。また陪審制度を速急に復活いたしまして、その機會に陪審法を改正して、その制度を十分運用することによつて、裁判の民主化を期待しておるということでありました。
質疑の第二は、裁判所の獨立に關する問題であります。司法權の獨立がきわめて重要なことであることは、申すまでもないことでありまするが、この點につきましては、改正憲法に基いて、本法案におきましても十分配慮がなされておるのでありまするが、
〔副議長退席、議長著席〕
その反面におきまして、獨立が度を過ぎますると、ややもすると獨立が獨善となり、ひいては司法のフアツシヨ化という問題を惹き起す憂いがないとは言えないのであります。この點につき司法省はいかに考えるかということでございました。これにつきましては政府は、改正憲法において、下級裁判所の裁判官の任命は、最高裁判所のつくるところのリストによつてこれを指名することになつておるけれども、實際においては、政府はこの裁判所が提出するところの指名リストに基いて、必ずしもこれを全部任用する、指名するというのではなくして、場合によつてはこれを拒否することができるのであるからして、この運用の妙によつて、裁判のフアツシヨ化を防止することができるのであると、かように説明がございました。
質疑の第三點は、本裁判所法の施行の後における裁判所と司法省との關係でございます。政府からは、裁判所は司法省から完全に獨立することになるけれども、司法省は一般裁判關係の法律、竝びに一般の民事、刑事に關する法律の立案、檢察竝びに行刑に關する一切のことは、司法省において取扱われることでありますからして、必ずしも司法省の權限が少くなつたというのではなくして、むしろ司法省の仕事というものは増すと考へてよいのであるから、司法省の存在の必要性はあるの、であるという説明でございました。
最後に申し上げたいことは、委員全般の空氣といたしまして、裁判官竝びに裁判所書記の待遇の改善ということは、どうしてもこの際しなければならぬ、これに對して政府はいかに考えておるかということを問題といたしたのであります。これに對しまして政府は、今後十分に委員諸君の期待に副うように、栽判官竝びに裁判所書記の待遇を改善したいといふことでありました。
かようにいたしまして、昨日質疑を終りまして、討論にはいりました。日本自由黨の三浦寅之助君、日本進歩黨の荊木一久君から、それぞれ黨を代表いたしまして贊成の意見が述べられました。次いで日本社會黨の菊地養之輔君から、原案に贊成の意見が述べられ、附帶決議の提案がなされたのであります。採決の結果、本案竝びに附帶決議がそれぞれ可決されたのであります。ここに附帶決議を朗讀いたします。
一、裁判所は、憲法が國民に對し保障せる、人權尊重の精神に徹し、官僚獨善の弊風を打破し、形式主義を排除し、眞に國民の信頼に應うる裁判民主化のために努力すベし。
一、陪審制度に關しては、單に公判陪審に止まらず、起訴陪審をも考慮するとともに、民事に關する陪審制度に對しても十分なる研究を爲すべし。
以上簡單でございまするが、本委員會の審議の經過竝びに結果を御報告する次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=18
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019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=19
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020・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=20
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021・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=21
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022・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=22
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023・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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裁判所法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=23
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024・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=24
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025・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第十九を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=25
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026・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=26
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027・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十九、勞働基準法案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長矢野庄太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=27
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028・会議録情報5
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第十九 労働基準法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 労働其準法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十七日
委員長 矢野庄太郎
衆議院議長山崎猛殿
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〔矢野庄太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=28
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029・矢野庄太郎
○矢野庄太郎君 議題の勞働基準法案の委員會の經過竝びに結果を簡單に御報告申し上げます。
この委員會では、不肖私が委員長に、理事として自由黨小島徹三君、進歩黨椎熊三郎君、社會黨土井直作君の三君が選任せられたのでございます。
この法案は、御承知の通り新憲法に基きまして、勞働者の勞働條件の基準を決定する重大なる法案でございますので、委員各位には、數日間にわたつて熱心に審議を盡されたのでございます。今その内容について――法案それ自體に對する質疑應答について、きわめて簡單にその數點を御報告いたしたいと存じます。
その一つは、勞働時間に關する問題でございます。今日國鐵、遞信等、多數の勞働者を擁する政府事業を初め、多くの事業において拘束八時間制がとられておるとき、この法案がそれを下まわつて、實働八時間制をとつているのは、既に勞働組合が獲得したこれらの成果を無視するものである、拘束八時間制は、實働八時間制よりかえつて能率が高い、かつまた失業者に就職の機會を與えるためにも、勞働時間はこれを拘束八時間制にする必要があると思うが、政府の所見いかんとの質問に對して、政府は、拘束八時間制をとつている事業が多數あることは認めるが、今なお實働八時間以上の勞働時間制をとつている事業も相當に現存する、勞働時間と能率の關係については、長時間勞働が必ずしも能率的でないことは一般的に言い得るところであるが、實働八時間以上に勞働時間を短縮する場合の能率は、産業の設備、勞働者の技術、訓練等、各種の事情に依存するところが多く、一概には決定しがたい問題である、政府も理想としては將來拘束八時間制に進むべきものと思うが、わが國産業の現状をもつてすれば、最低基準としては、實働八時間制が適當であると思う、失業對策としては、消極的に勞働時間を短縮するより、積極的に失業勞力を活用する施策をとる方針であるということを言明されました。
その二は、賃金に關する問題であります。休電及び石炭不足等の事情による休業は、現在頻發しつつある現象であるが、この法案は、かかる事情による休業の場合の賃金については、何ら規定するところがない、使用者の責に歸すべき事由による休業の場合のみならず、廣く勞働者の責に歸すべからざる事由による休業の場合にも、休業手當を支給するごとく規定すべきであるとの意見がございました。政府はこれに對し、使用者の責に歸すべき場合の休業手當は、本來賠償的性質を有するものであるが、この法案は必要の最小限度において、これを的確、迅速に確保するために規定を設けたものである、使用者、勞働者いずれの責にも歸しがたい事由による勞働者の生活問題は、一般國民の生活問題と同じく、生活保護法などの問題として考慮する考えであるという答辯でありました。
その三は、年少勞働者の問題でございます。滿十五歳は最も旺盛な發育期であるから、最低年齡は滿十六歳とすべきではないか、滿十五歳以下の者に勞働を認めることによつて、六・三制の義務教育は骨拔きになるのではないか、義務教育を終つた年少勞働者の教育について、使用者は便宜を供與する義務を負うべきではないかとの質問がございました。厚生大臣及び文部大臣からそれぞれ、滿十五歳を最低年齡とするのは、國際的な水準でもあり、また六・三の義務教育ともほぼその制限を同じゆうする滿十五才以下の者に對しては、修學時間外に、嚴重な制限のものに輕易な勞働を許すに過ぎぬものであるから、義務教育の支障にはならぬ、義務教育を終つた年少勞働者が、高等教育を受けんとする場合、使用者に對して便宜供與の義務を課することは、最低勞働條件を定めるこの法案においては規定しがたい旨を答辯されたのでございました。
第四は、女子勞働者の生理休暇についての問題でございました。一般の勞働條件が惡く、衞生施設の低調であるわが國の女子勞働者にとつては、特にかかる保護が必要であるから、廣く全女子勞働者に對し、無條件に生理休暇を與うべきであるとの質問がございましたが、これに對し政府よりは、生理日でも就業に差支えない者もあり、また生理日の就業が必ずしも健康に有害でない作業もある、最低基準を定める法律としては、まずこれでよいと考えるとの答辯がございました。その他幾多の質疑應答が交されましたが、すべて速記録に讓りたいと存じます。
かくて昨日討論採決にはいつたのでございました。討論においては、自由黨小島徹三君、進歩黨椎熊三郎君は、おのおの所屬政黨を代表して、政府原案に贊成の意見を述べられたのでございますが、社會黨を代表して荒畑勝三君、國民協同黨を代表して石田一松君は、おのおの修正意見を提出されたのでございます。しかして採決において、修正案はいずれも否決になりまして、政府原案が全會一致をもつて可決通過いたした次第でございます。この段、簡單ながら御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=29
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030・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案に對しては、土井直作君ほか三名より、成規により修正案が提出されております。討論は、便宜上第二讀會において修正案の趣旨辯明を聽きたる上、これをなすことといたします。本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=30
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031・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=31
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032・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 直ちに本案の第二讀會を開かれんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=32
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033・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=33
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034・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。この際修正案の趣旨辯明を許します。土井直作君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=34
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035・会議録情報6
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労働基準法案 第二讀會(確定議)
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労働基準法案(政府提出)に對する修正案(土井直作君外三名提出)
労働基準法の一部を次のように修正する。
第二十條第一項中「三十日」を「六十日」に改める。
第二十四條第二項中「一回以上、」を「二回以上、」に改める。
第二十六條中「使用者の責に帰すべき事由」を「労働者の責に帰すべからざる事由」に改める。
第三十條第四項の次に左の一項を加え、第五項中「前三項」を「第二項乃至第四項」に改める。
賃金委員会は、最低賃金に関する発議権を有する。
第三十二條第一項中「除き」を「含みに改める。
第三十四條第一項中「六時間」を「五時間」に、「八時間」を「七時間」に改める。
第五十六條第一項中「満十五才」を「満十六才」に、「満十四才」を「満十五才」に改め、同項但に「この場合、使用者は、これらの兒童で定時制の高等教育を受けようとする者に対して、修学に関する便宜を與えなければならない。」を加える。
第六十條第二項中「七時間」を「六時間」に、「四十二時間」を「三十六時間」に改める。
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〔土井直作君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=35
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036・土井直作
○土井直作君 私は日本社會黨を代表いたしまして、ただいま上程されております勞働基準法に對しまする修正の趣旨を辯明いたします。まず修正いたしますところの修正案を朗讀いたします。
勞働基準法の一部を次のように修正する。
第二十條第一項中「三十日」を「六十日」に改める。
第二十四條第二項中「一回以上、」を「二回以上、」に改める。
第二十六條中「使用者の責に歸すべき事由」を「勞働者の責に歸すべからざる事由」に改める。
第三十條第四項の次に左の一項を加え、第五項中「前三項」を「第二項乃至第四項」に改める。賃金委員會は、最低賃金に關する發議權を有する。
第三十二條第一項中「除き」を「含み」に改める。
第三十四條第一項中「六時間」を「五時間」に、「八時間」を「七時間」に改める。
第五十六條第一項中「滿十五才」を「滿十六才」に、「滿十四才」を「滿十五才」に改め、同項但書に「この場合、使用者は、これらの兒童で定時制の高等教育を受けようとする者に對して、就學に關する便宜を與えなければならない。」を加える。
第六十條第二項中「七時間」を「六時間」に、「四十二時間」を「三十六時間」に改める。
以上の修正事項に對しまして、少しくその理由を説明申し上げたいと思います。
御承知のごとく、この勞働基準法案は、わが國の勞働法制の上から見ますならば、かなり進歩的な、ある意味において劃期的な法案であるということに對しましては、いずれの人といえども、これに異存のないところであると存ずるのであります。かくのごとき法案が提出されるに至りましたところのものは、さきに九十議會において決定されました新憲法の中にありまする、第二十五條の示す「すべての國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。」、さらに第二十七條の「すべて國民は、勤務の權利を有し、義務を負ふ。」という、この二つの條文の中から發するものであるということを考えられるのであります。
日本再建の基礎といたしまして、勤勞階級の正當なる價値が認められなければならないことは、論をまたざるところであります。かかる理由の上から見まして、本案をより高度の、より完全なるところの法案たらしめるということが、憲法の趣旨にも相副うゆえんであると私は信ずるのであります。(拍手)かかる理由の上から、まずこれらの修正事項がいかなる觀點に立つておるかということについて、以下申し上げてみたいと思うのであります。
まず第二十條の解雇の豫告期間が、原案におきましては三十日と相なつておるのでありまするが、この三十日の期間というものは、あまりに短か過ぎる感なき能わないのであります。言いかえまするならば、今まで就勞しておりました者が、急に解雇をされます。しからば次の就職のためには、十分なる準備がなければならないのであります。私の經驗をもつていたしまするならば、かつて昭和五年當時のきわめて不景氣なる時代におきましては、一たび解雇をされまするならば、最低三箇月、最高一年六箇月以上の失業期間をもつておつたということの統計が、所屬いたしましたわずかな勞働組合の中でありまするけれども、調査の結果これが分明したのであります。われわれは、もし豫告期間がわずかに三十日でありまするならば、その結果といたしまして、これらの人々が路頭に迷う場合をかなり考えていかなければならないと思うのであります。かかる理由の上から、六十日でも必ずしも完全とは考えませんけれども、少くとも最低六十日間の豫告期間をおくということは、勞働階級に對して最も必要な事項であると考えて、修正を申しておるのであります。(拍手)
次に第二十四條であります。原案におきましては、給料支拂に對しまして、月一囘以上拂うことに相なつておりまするが、われわれは現行の各工場、會社等の給料支拂を見ていきまするならば、現に二囘または三囘以上支拂つておる場合が、各工場に見受けられるのであります。かるがゆえに、原案の一囘以上というのを二囘以上にいたしました理由は、むしろ勞働階級に對しまするところの、生活的なる環境を緩和するということが必要である。將來理想的に申しまするならば、給料の支拂は、世界各國の例に倣いまして、週給制度を採用することが必要であろうと考えておるのでありまするが、わが日本の現在の客觀情勢の上から見まして、急速に週給制度などを採用することは、經濟的な面に及ぼす影響等を考慮いたしまして、月二囘と修正したのでありまするが、われわれはさらにこれを順次改革いたしまして、最後的な理想的な意味合におきまするところの週給制度にまで、賃金支拂を直していかなければならないということを考えておるのであります。
さらに第二十六條の「労働者の責に帰すべからざる事由」と修正いたした理由は、これは原案におきましては、「使用者の責に」ということに相なつておりますけれども、使用者の責あるいは勞働者の責以外の、言いかえれば第三者的な責任の上において休業をなす場合があるのであります。先ほど委員長の報告の中にもありましたように、言いかえれば第三者の關係におきまして工場が休業するような場合、こういう場合には、現行法の上から見ますならば、百分の六十の休業手當を支給しなくともよろしいことに相なるのであります。われわれは、勞働階級の生活を擁護し、確保する面からいきまして、少くとも勞働者みずからの責にあらざるところの休業の場合においては、いかなる場合でありましても、この百分の六十の休業手當は、最低のものとして支給しなければならないということを主張せざるを得ないのであります。
さらに第三十條の賃金の問題に對してでありますが、これはわれわれから申しますならば、賃金委員會というものが判定されようとしておりますが、この賃金委員會というものは、單なる諮問的機關に終るきらいがありますので、むしろこの賃金委員會が發議權を有し、積極的に勞働階級の賃金に對して、これを改正するところの權限を附與することが必要である。かくのごとき立場におきまして、この案の修正をしておる次第であります。
さらに第三十二條の勞働時間に關する問題であります。委員長の報告の中にもありましたように、今日わが日本におきましては、既に拘束八時間勞働というものが各方面において採用されておるのであります。しかるに現行本法案の上から見ますならば、實働八時間勞働制を採用しておるということは、この劃期的なる、あるいはまた進歩的なるところの勞働法制の精神からいきますならば、これは明らかに矛盾であると信ずるものであります。勞働階級がまずみずからの身體の疲勞を囘復し、次期生産のために努力しなければならないという面から考え、あるいはまた勞働階級が修養の時間を十分に保有することが必要である。勞働者自身が文化的な、あるいは常識の涵養によりましてこそ、初めてわが日本の平和文化國家が建設されるのでありまして、勞働者自身が無知蒙昧であるということは、決して日本將來の發展のために喜ぶべき現象ではないのである。言いかえまするならば、わが日本の勞働時間があまりに長きにわたり、しかも在來勞働時間は、常に殘業なり深夜業なり、その他の關係におきまして酷使されておりますから、勞働者みずからが修養する機會を與えられておらなかつたのであります。私はかような面から、勞働階級に十分なる修養をなす機會を與えるために、勞働時間は短縮していかなければならないことは、言うまでもないと信ずるものであります。かかる意味合におきまして、修正の要項は、言いかえますならば休憩時間を含みまして、拘束八時間勞働にこれを改むべきである。殊に世界いずれの國におきましても、今日拘束八時間勞働が實施されておるのにかかわらず、ひとりわが日本においてのみ實働八時間勞働制を採用するということは、これは厚生當局が、むしろわが日本の經濟事情について、あまり深く考え過ぎた結果であり、ある意味においては、事業主、資本家階級を擁護するために、この勞働時間に對するこうした制限を附したのではないかということさえも考えざるを得ないのであります。
さらに三十四條に對しましては、この三十四條は、大體休憩時間の問題であります。この休憩時間は、在來の例から見ていきますならば、あるいは災害の統計等から見ていきまするならば、勞働者が勞働に從事いたしましてから、ようやく疲勞の度を加えて來るのは、四時間ないし五時間が一番ひどいのでありまして、その結果災害をこうむる場合がしばしばあるのであります。ところが現行法におきましては、これを六時間としておるのでありますが、われわれはむしろこれは五時間とし、この日本において今まで災害の統計の面から勞働階級がこうむりました幾多の損害を、幾多の悲しむべき事情を拂拭することが必要である。かかる面からいきまして、いわゆる勞働を五時間繼續いたしました場合においては、四十五分の休憩を與え、さらに七時間を經過した者に對しましては、一時間以上の休憩時間を與えるというふうに修正すべきであるということを考えておるのであります。
さらに第五十六條は、これは國民協同黨とわが社會黨との共同提案でありまして、國民協同黨の面から言いますならば、學校教育の點についてかなり關心を有しておつたのであります。まず第一にこの修正をいたしましたところの趣旨は、滿十四歳または十五歳の兒童は、最も發育盛りであります。この發育盛りの兒童が勞働に從事するということは、これは發育を防止することになるのでありまして、この面から言つて、少くともこれらの兒童に對するところの就勞年齡の制限は、滿十六歳竝びに滿十五歳と變更すべきである。
この理由といたしましては、ただいま申し上げましたようなものでありますが、さらに第二の理由は、幼年勞働者が就職することによりまして、これが勞働階級の賃金の上において惡影響を及ぼすのであります。言いかえれば低賃金にならざるを得ないことは、必然であります。さらに將來わが日本の企畫の面におきまして、あるいは産業の面において考えなければならない點は、失業問題であります。すなわち十五、六歳程度の人々が、學校を卒業すると同時に直ちに就勞いたしますことは、これは結論的には勞働人口をそれだけ殖やすことに相なりますので、勢い失業問題がこれに關聯を有して來ることは言うまでもないのであります。かかる意味合いにおいて、修正を申しておるのであります。
さらに第三の問題は、むしろこの十五、六歳程度の場合におきましては、あくまでも就學をしていくことが必要である。向學の志を有しております人が、就勞しなければならないというような事柄は、悲しむべき現象でありまして、むしろこういう面から考えまして、ぜひともこういう若い十五、六歳の者を勞働に服せしむることのないように、制限を加えることが必要である。かように考えておるのであります。
さらに修正の要項の中で先程、この場合使用者は、これらの兒童で定時制の學校教育を受ける者に對しましては、就學に關する便宜を與へなければならないといふことを申しておるのでありますが、これは戰爭中におきましても、青年學校のようなものは、十八歳まで就學する議務を仰せつけられておつたのであります。義務制になつておつたのでありますが、將來とも、これら定時制をもつて就學いたす者に對しましては、工場、會社はこれに十分なる便宜を與える、それら向學の士に志を達せしめるように、法案の上において保護いたすべきが妥當であると信じておるのであります。
さらに第六十條の問題に對しましては、これは五十六條を承けておるのでありますが、第五十六條の面から見ますならば、六十條のいわゆる就學時間を通算して、原案では一日七時間と相なつておりますものを、これを六時間に改める。さらに一週間について四十二時間を、三十六時間に改めるというふうにしておるのでありますが、この點は、まだか弱い未成熟の少年を長時間勞働せしむることは、身體、衞生、その他の點において幾多の弊害を發見いたしますがゆえに、これらの勞働の制限は、一日六時間以上をやつてはいかぬ、同時に、一週三十六時間以上してはいかんという制限を設けて、幼年勞働者の保護に當るべきである。かように信じておるのであります。
以上申しましたのが、修正の大體の理由であります。われわれはこの修正は、少くとも今日の會議に列席しております同僚各位は、十分に御諒解のつくところであらうと考えておるのであります。願わくばこの問題に對しましては、各位ができるだけ、いわゆるその立場々々を考えずに、本案の内容について十分御檢討の上において、御贊成を願いたいのであります。
なお本案に對しまする運營にあたつても特にわれわれの希望として申し上げておきたいと思いますことは、本案を通じまして、幾多の將來行わなければならない問題の中に、特に災害の補償という問題があるのであります。この災害の補償は、大工場の場合におきましては、經濟的に十分なし得る餘裕があるでありましようが、中小企業家におきましては、この負擔にたえ得ないような場合がある。またその結果といたしまして、この法規にあります諸般の事項が十分に履行されないというような場合がありますならば、勞働階級のために、まことに悲しむべき結果であると考えられるのであります。そこでこの災害補償その他に對するこれらの實行に對しましては、でき得るならば地域別的に、あるいは産業別的に協同組合をつくりまして、負擔の責任を分擔するようにしてもらいたいということを主張せざるを得ないのであります。
さらに第十一章の監督制度に對しましては、この法案はまことに進歩的であり、ある意味において劃期的な内容を備えておりますが、法は死文でありまして、これを運營するは人にあるのであります。言いかえまするならば、もしこの運營が完全に行われなかつたならば、結果といたしましては、死文に終るということに相なるのであります。われわれはこの面から考えまして、少くとも監督制度の上において萬全を期するということの必要を、痛感せざるを得ないのであります。そこで監督制度の面におきましては、できることならば、この監督に對するところの、さらに監査督勵をする機關を設置する必要がある。すなわち監査督勵をするところのものは、勞働組合から選ばれておるところの委員から構成されたものによつて、そのすべてを監視あるいは監督し、督勵するというような機關を設置すベきであろうと、かように考えておるのであります。
以上の修正に對しましては、願わくば滿場一致をもつて御贊成あらんことを切にお願い申し上げまして、私の修正の説明にかえる次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=36
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037・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより討論に入ります。中山たま君。
〔中山たま君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=37
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038・中山たま
○中山たま君 ただいま議題とされておりまする勞働基準法案は、敗戰日本の現状において、世界水準に達する劃期的なる法案を得たことに劃して、日本進歩黨として、委員長報告の通り贊成の意を表するものであります。(拍手)
本法案の必要なることは、第九十議會で勞働關係調整法、いわゆる勞調法が提出された際、進歩黨代表より政府に對し、勞働者の最低生活を保障する勞働基準法は、何ゆえ同時に上程しないかと質問されたほどでありまして、勞働組合法、勞働關係調整法と竝んで、勞働三大立法中でも最もその成立を要望されていたものであります。しかしてわが黨としては、十三章、百三十條にわたるこの勞働憲章が、過去一箇年に及ぶ當局の立案苦心、公聽會その他大衆の審議の經過をも十分に尊重し、既に原則的に贊成の意を明らかにするとともに、今後わが國の勞働界に與える影響の甚大性に鑑み、愼重に審議を行つた次第であります。
勞働者が人たるに値する生活を確立するという本法案の眞髓は、その文化的、平和的生活が高められ、社會に占むる人格的位置が、經營者その他の人人と對等たることを意味するもので、過去の日本における勞働者の非人格的地位を打破し、その印象を全國民の腦裡から一掃するものでなければならないのであります。(拍手)しかして現下産業復興の面において、主體的役割を示すものは、勞働者の旺盛なる勤勞意欲にまつほかないのであります。この意味において、資本、勞働、經營は、協和のもとに、破壞的の階級鬪爭を避けて、生産の増強竝びに分配の公正をはかり、日本經濟を正しい方向において再建することにあり、なお官公吏の地位の確立、男女同一勞働に對する同一賃金の問題、社會保險制度の問題、災害補償問題、工場監督機關の問題等、國民保健制度の整備が必要と思うのであります。巨大産業が撤去整備された今日、中小産業に對する復興育成は、實に重大であります。この見地において、中小工業の復興育成に對する深甚なる御配慮を要望して、贊成する次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=38
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039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 石田一松君
〔石田一松君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=39
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040・石田一松
○石田一松君 私は國民協同黨を代表いたしまして、ただいま議題となりました勞働基準法に對する社會黨の修正案に對して、贊成の意見を申し述べんとするものであります。(拍手)
その前に一言、國民協同黨としての立場を明らかにしておきますが、社會黨の修正案に全面的の贊意を表しますわれわれの眞意は、勞働者が資本家に對して鬪爭を營ましめるというような、國内の相剋磨擦を助長するという意味で、社會黨の修正案に贊成するものではありません。(拍手)すなわち私たちは、社會黨の修正案が可決されることにおいて、勞働者自身の生活が、眞に本案の第一條に明記されてあるがごとく、勞働者が人たるに値する生活を營むことができてこそ、初めて勤勞意欲が旺盛になり、敗戰後の日本の産業が興隆するものであるということを確信し、同志の融和によつて初めて生産が再開されるということを確信し、この社會黨の修正意見に全面的に贊意を表しようとするものであります。(拍手)
私は去る九十議會、勞働關係調整法の提出されました當時にも、われわれ同志とともに、何がゆえに勞働基準法案、すなわち勞働者の保護立法が同時に提出されないかということを、極力政府に追究したものであります。しかしそれは手續の問題、あらゆる關係方面の事情によつて、あの當時同時にこれが提出されなかつたことを遺憾に思い、しかもあの勞調法が強硬に實施される曉には、やがてゼネストなどというような、相當日本の社會不安を起すような事件が生ずるのではないか。これが生ずることは、勞働關係調整法のみを強硬に通過させようとする政府自身に、その責任があるのであるということを、本壇上から言明をしております。(拍手)その事實が二・一ゼネストとして現われておるということも、われわれはちやんと心得ておるのであります。
ここに私たちが特に主張したいことは、會期が既に足りないから、時間的にそれは不可能であるからというので、再びこの修正案が葬られることになりますならば、二たび三たび勞働者の勞働意欲を刺戟いたしまして、これに不滿を抱いた勞働者は、あくまでこれを鬪いとろうとする氣分に次第々々に進んでくることは、火を見るよりも明らかなのであまりす。時間の問題でありますが、この際われわれは、會期短しといえども、本勞働基準法案は、絶對的に最善なるものをわれわれは殘す義務があると考えております。(拍手)その意味においても、できるだけ力を盡して、この修正案にあるがごとく、この勞働基準法を立派なる法案にして成立さすべき、われわれの重大任務を私は感じておるのであります。
特に國民協同黨の最も主張したいと思います點は、第五十六條の末尾に、この場合使用者は、これらの兒童で定時制の高等教育を受けようとする者に對して、修學に關する便宜を與えなければならない、以上を加えることを特にこの際強調したいのであります。敗戰前におきましても、滿十八歳未滿の勤勞青年は、青年學校において教育を受けるべき義務を負つていたのであります。にもかかわらず、敗戰後日本は平和日本を建設する、文化日本を建設すると言いながらも、家庭の經濟的事情のために、六・三・三制の六・三の義務教育を終えた者が、やむを得ず勞働に從事する場合、すなわち五十六條の但書の滿十四歳以上の勤勞青少年たちは、自分に向學の氣がありましても、高等教育を受ける機會に惠まれない結果になつたのであります。何という不合理なことでございましよう。
戰時中の統計を調べてみましても、十九年度の統計によると、青年學校は一萬三千六百七十二校あるのであります。しかもこの學校について學んだ勤勞青年は、二百五十七萬以上の多數に上つておるのであります。この勤勞青年が、この勞働基準法において、高等教育を受ける機會を既にシヤツト・アウトされようとしておるのであります。私たちは、この勤勞青年に、少くとも文部省で今制定しようとする定時制の高等教育を受ける機會を與えるべきであることを、特に主張したいのであります。
敗戰後ちまたにおいて、電車の中において、勞働者諸君の中の道徳を無視したるあの行爲、日本人にもあるまじきあの非道徳的な行爲の現われは、すなわち日本國民全般的に教育の水準が低かつたということの暴露ではないかと思います。眞に平和日本を建設するならば、勤勞青年、すなわちただいま申し上げました、戰時中においても二百五十七萬以上にもわたるこれらの青年に、文部省が制定しようとするパート・タイム制の高等教育を受けさせるべき機會を與えなければ、われわれ議員が殘されたわずかの機會の任務を完全に果し得ないと私は考えております。(拍手)
しかしながらこれは道徳的に考えまして、使用者側におきましても、現在上の學校に行きたいという青少年に對しては、おそらくどの使用者も相當の便宜を與えて、夜學に行かしておる事實は、私も認めます。しかしそれは使用者側の道徳的な、良心的な範圍によつて行われておることでございまして、この勞働者たちが現在夜學に通つておりますのは、決して法律的根據をもつて通つているのではありません。
そこで私は、この勞働基準法の五十六條の末尾に、これらの勤勞青少年が法律的根據を有して、しかも義務制ではないが、使用者の良心を喚起して、これらの青年が學校に行くべく自分の權利を主張し得る機會を與えたいと私は考えるのであります。この點に關しては、特に私は國民協同黨の意のあるところを表明いたしまして、滿場一致の御贊成を得たいと思うものであります。
さて最後に申し上げておきますことは、教育制度刷新委員會においては、ただいま私が申し上げたこの五十六條の修正意見は、多數決によつて可決されているという事實であります。それにもかかわらず、公聽會などにおける使用者側の意見を多分に盛り入れて、刷新委員會の意思を無視して、この條項が省いてあるということであります。それならば、刷新委員會とか、何々委員會を何がゆえに設けたかということであります。民主主義の原則に副うならば、刷新委員會のこの決議を相當に尊重すべきではないかと私は考えます。しかしながらこれを強行することにおいては、六・三制が義務教育であり、普通一般の子弟は、これに對して高等教育の義務制をもつていないのに、勤勞大衆のみが義務制になるという不合理を感じ、あらゆる條件を考慮の上にかくなつたという話でありますが、ぜひこれら働く勤勞青少年に、高等學校に行く便宜を使用者が與えるよう、五十六條の末尾に修正條文をつけられんことを特に強調いたしまして、ともに社會黨の提出されたる修正意見に對し贊成の意思を述べ、國民協同黨の贊成意見にかえる次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=40
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041・山崎猛
○議長(山崎猛君) 志賀義雄君。
〔志賀義雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=41
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042・志賀義雄
○志賀義雄君 私は矢野委員長報告の原案に反對し、社會黨提出の修正案に對する共産黨の贊成意見を、重複した箇所を除いて簡單に述べてみたいと思います。
第一に、今日までの本會議及び委員會の審議を通じて見ますと、この程度の改正ならば少し行き過ぎると言つてもいいくらいで、日本の實情に合うのであつて、これ以上の改革を勞働基準法案に要求することは不可であるという意見がありますが、第一に勞働時間をとつてみましても、これは實働八時間よりも拘束八時間制の方がより文化的であり、勞働者にとつてその生活をよりよく保障するという意味ばかりでなく、今日の日本におきましては、非常に失業者が多い。海外から引揚げられた同胞諸君、戰災者諸君、あるいは資材のないために閉鎖される失業者諸君、こういうものが非常に多いのでありますから、ただに勞働時間を短縮するのがより民主的だという意味ばかりでなく、これらの人々にも勞働する機會を與えるために、勞働時間を短縮したがいいというのであります。
ところが、實はこの勞働基準法案にいろいろと除外規定あるいは經過規定が設けてありますが、特に鑛山における坑口八時間制は、今の日本では、坑夫に直ちにいろいろな設備を與えて、勞働生産性を増加することはとても不可能であるから、さしあたりのところは、勞働時間を除外規定として長びかせるがいいという意見がよく出るのであります。そうしてそれは必然に鑛山における婦人勞働及び小兒勞働とも關係するのでありますが、これは最近最高司令部のリデー及びロス兩氏が、日本で石炭を増産するためには、鑛山の設備を改善する以外には途はない、こう言つております。
今度の傾斜式生産制というものが、思いつきはともかく、實施後わずかに三月で失敗するに至つたのはどういうわけか。これはその前提條件として、ただむやみに時間を延ばして働かせようとすればそれでいいのだという考え方があるからであります。この意味からしても、今日日本の勞働時間を拘束八時間制にするということは、決して行き過ぎではないのであります。
次に最低賃金制の問題でありますが、これは先日河合厚生大臣にも質問しましたときに、賃金委員會がやはり委囑ということになつておりまして、勞働組合側から選出されていないのであります。今後インフレがますますはなはだしくなりますれば、どうしてもこの賃金ということが當面一番大きな問題になるのでありますが、これについて勞働者側の意向を十分に取入れた委員會をつくつておかないと、これをボイコツトするとか、あるいはこれを承認しないとか、いろいろな混雜が起ります。これは火を見るより明らかなことでありまして、賃金委員會というものを、どうしても關係者の選出制度にする必要があるのであります。
なお勞働監督委員會の問題であります。工場法というものは、これは法律をもつて關係者を拘束するものであります。しかしここで大切なことは、これはひとり資本家側を拘束するばかりでなく、勞働者にとつても、工場法、勞働基準法というものは、義務的でなければいけないということであります。これは何でもないことのようでありますけれども、時間外の殘業勞働、殘業手當をやるから、八時間勞働制を表面認めるけれども、實質においてはそれ以上働くようにしてくれ、これは原案にはなかつたのを、閣議の方で挿入した。官公吏の勞働時間の問題にもそれが現われております。こういうことでは、工場法が、資本家にとつても、勞働者にとつても義務的でなくなる。工場法はこれを守つて、自己の勞働者としての地位を改善するということに目ざめない以上、いつまで經つても、これは机の上の法文に終るだけでであります。
その意味におきまして、私は勞働監督官制度でなくて、勞働監督委員會制度で、勞働組合の代表者をもつて、この工場法、勞働基準法の義務的な遵法を監督するとともに、ただ法律の出しつぱなしでなく、あらゆる機會において、政府がこの勞働其準法の精神を、使用者及び勞働者の側にも徹底させる必要があると思うのでありますが、それらに關する何らの準備がないのであります。
最後に私は、婦人勞働繼續權の問題に觸れます。本法案には、婦人の勞働について有害な作業、あるいは生理上婦人の耐え得ない作業については、いろいろ禁止規定があるのでありますが、これが裏ずけがありませんと、使用者側において逆選擇が起りまして、こんなめんどうくさい婦人を雇うのは困るから、婦人は雇わないことにしようという事態が生ずるのであります。これは國際連盟の國際勞働組合會議においても、アムステルダム、インターナシヨナルに加入せる改良主義的な勞働組合からさえ、繰返し出された問題でありまして、また左翼の勞働組合も、これを支持しているのであります。
しかるに婦人は、工場において託兒所その他の設備がないために、姙娠、分娩のときには、いやでも應でも失業しなければならなくなる。勞働繼續權というものがなくなつてくる。ところが、一方厚生年金というものがあります。この厚生年金は、昭和十七年には一億四千萬圓積立てられております。昭和十八年には一億三千五百萬圓、昭和十九年には五億二千七百萬圓、昭和二十年には五億一千一百萬圓、合計昭和二十二年度までに十三億一千三百萬圓という巨額のものがためられている。ところがこれは三年以下においてやめた者には拂わない、かけ捨てという制度がありまして、殊に日本のような纖維工業における婦人勞働者は、非常に高い掛金率でもつて、これをすべてかけ捨てにしていく。それが十二億圓も、事實上軍事公債を買うために支出されているのであります。
ところが昭和二十一年には豫算において八億増加することを見込まれておりましたが、名目的な賃金が各方面で上りましたので、このほかに五億ないし六億圓増加の見込みであります。一年において十三億ないし十四億圓というものが増加するのであります。これをそもそもいかに使うかということについては、遺憾ながら勞働基準法においては何ら明確な規定がないのであります。そうして事實これが大藏省と厚生省、あるいは將來できるべき勞働省との間において、どちらがそれを管理するか、どちらがそれを使用するかという一つの權限の爭いになつておるのでありまして、今後はこの厚生年金積立金の問題が、日本の勞働運動の一つの重要な點になるのでありますが、こういう點については、一切の物的裏づけもなければ、社會保險、失業保險を初めとしての裏づけもない本法案だけを通してみても、今の傾斜式生産方法が失敗をすればするほど、これの適用を受ける範圍は狹まるのであります。その意味からしてこういうふうな裏づけを入れ、社會黨が條項を掲げて修正されたような點をはつきりとこの際示して修正することがいいと思うのであります。
以上、社會黨の修正意見に對し贊成し、原案に反對の趣旨を述べる次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=42
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043・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて討論は終局いたしました。これより採決に入ります。まず本案に對する土井直作君外三名提出の修正案につき、採決いたします。土井直作君外三名提出の修正案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=43
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044・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立少數。よつて修正案は否決されました。
次に本案につき採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=44
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045・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數。(拍手)よつて本案は原案通り決しました。これにて本案の第二讀會は終了いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=45
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046・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案の第三讀會を省略して、第二讀會議決の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=46
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047・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=47
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048・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案は第三讀會を省略して、第二讀會議決の通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=48
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049・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第十四を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=49
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050・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=50
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051・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十四、船舶公團法案の第一讀會を開きます。運輸大臣増田甲子七君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=51
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052・会議録情報7
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第十四 船舶公團法案(政府提出) 第一讀會
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船舶公團法案
船舶公團法
第一章 総則
第一條 船舶公團は、経済安定本部総務長官の定める海上輸送に関する基本的な政策及び計画に基き、海運の速やかな復興を促進するため、船舶又は船舶用資材の確保又は活用に関する業務を行うことを目的とする。
船舶公團は、法人とする。
第二條 船舶公團は、主たる事務所を東京都に置く。
船舶公團は、主務大臣の認可を受けて、第十六條に規定する業務を行うため必要の地に從たる事務所を設けることができる。
第三條 船舶公團の基本金は、三億円とする。
前項の基本金は、政府が全額これを出資しなければならない。
船舶公團の運営資金は、必要があるときには、復興金融金庫から借り入れるものとする。
第四條 船舶公團は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 基本金額に関する事項
五 役員に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告の方法
定款は、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けて、これを変更することができる。
第五條 船舶公團は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第六條 船舶公團には、所得税及び法人税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、船舶公團の事業に対しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて、内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合にはこの限りでない。
第七條 船舶公團がその業務のため、船舶又は不動産に関する権利の取得又は所有権の保存について登記を受けた場合には、その登録税の額は、船舶又は不動産の價格の千分の一・五とする。
第八條 船舶公團は、経済安定本部総務長官の命令によつて解散する。
前項に定めるものの外、船舶公團の解散に関して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第九條 船舶公團でない者は、船舶公團又はこれに類似する名称を用いることができない。
第十條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、船舶公團にこれを準用する。
第二章 役員及び職員
第十一條 船舶公團に、役員として、総裁副裁裁各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
総裁は、船舶公團を代表し、第十六條の規定に基き、その業務を総理する。
副総裁は、定款の定めるところにより、船舶公團を代表し、総裁を補佐して船舶公團の業務を掌理し、総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行う。
理事は、定款の定めるところにより、船舶公團を代表し、総裁及び副総裁を補佐して船舶公團の業務を掌理し、総裁及び副総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときにはその職務を行う。
監事は、船舶公團の業務を監査する。
第十二條 総裁、副総裁、理事及び監事は、主務大臣がこれを任命する。
第十三條 総裁、副総裁及び理事は、定款の定めるところにより、船舶公團の職員のうちから、主たる事務所又は從たる事務所の業務に関して、一切の裁判上又は、裁判外の行爲をする権限を有する代理人を選任することができる。
第十四條 船舶公團の役員及び職員は、船舶の製造、修繕若しくは運航を業とする会社の株式を所有し、又はこれらの会社その他の企業の業務に從事し、若しくはその営業につき一切の利害関係を有してはならない。
第十五條 船舶公團の役員及び職員は、これを官吏その他の政府職員とする。
総裁たる者は、運輸次官と同級又はこれと同格とし、その他の役員たる者は、一級又はこれと同格とし、職員たる者は、一級、二級若しくは三級又はこれらと同格とし、それらの定員は、主務大臣がこれを定める。
船舶公團の役員及び職員は、官吏に関する一般法令に從うものとする。但し、主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて、給與、服務その他必要な事項に関して特例を定めたときには、これによるものとする。
第三章 業務
第十六條 船舶公團は、経済安定本部総務長官の定める海上運送に関する基本的な政策及び計画に基き、主務大臣の監督に從い、左の業務を行う。
一 船舶、船舶用機関及び、ぎ裝品の製造の注文並びに船舶の改造、修繕、引揚又は解体の注文
二 船舶、船舶用機関、ぎ裝品及び船舶用資材の買受又は賣渡並びに船舶の保有又は貸付
三 造船事業用設備の貸付又は賣渡 四 政府の委託による船舶の管理船舶公團の保有又は管理する船舶の運航は、これを契約によつて海運業者に行わせなければならない。
第十七條 船舶公團は、業務開始の際、業務の方法を定めて、経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第十八條 船舶公團は、毎事業年度の前期及び後期の初において六箇月毎の事業計画及び資金計画を作成し、これを経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第四章 会計
第十九條 船舶公團の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとし、これを前期及び後期に分ける。
第二十條 船舶公團は、前條の各期毎に財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、毎事業年度経過後三箇月以内に、これを経済安定本部総務長官に提出し、その承認を受けなければならない。
経済安定本部総務長官は、前項の承認を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において承認の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとす。
船舶公團は、第一項の規定による経済安定本部総務長官の承認を受けたときには、その財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公告し、且つこれを定款とともに、各事業所に備えて置かなければならない。
前項の財産目録、貸借対照表及び損益計算書は、会計檢査院の檢査を受け、その承認を受けなければならない。
船舶公團は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、命令の定めるところにより、剩余金を、國庫に納付しなければならない。
船舶公團は、帳簿、書類その他一切の記録を整然且つ明確に記載し、会計檢査院、経済安定本部及び主務官廳の檢査を受けることができるように整備しなければならない。
会計檢査院は、常に適確に前項の檢査を行わなければならない。
第五章 監督及び助成
第二十一條 経済安定本部総務長官は、海上輸送に関する基本的な政策及び計画に関して、船舶公團を指導監督する。
経済安定本部総務長官は、海上輸送に関する基本的な政策及び計画を確保するため必要があると認めるときには、船舶公團に対して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、船舶又は船舶用資材の確保又は活用を圖るため必要があるときには、船舶公團に對して、経済安定本部総務長官の定める基本的な政策及び計画に基いて、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣又は経済安定本部総務長官は、必要があると認めるときには、船舶公團又は船舶公團から船舶若しくは造船事業用設備の貸付を受け、又は船舶用資材の賣渡を受けた者に対して、報告をさせ、又は当該官吏に、必要な場所を臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、当該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第二十二條 船舶公團は、その役員及び職員に対して、特別の報酬を與える必要があるときには、その報酬規程を定め、経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第二十三條 主務大臣は、船舶公團の役員が法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反したときには、これを解任することができる。
経済安定本部総務長官は、船舶公團の役員が船舶公團の目的及び業務に関して、その任に適せず、又はその職務を適切に遂行していないと認めるときには、これを解任することができる。
第二十四條 主務大臣は、左に掲げる者に対して、船舶公團が第二十一條第二項の規定による経済安定本部総務長官の命令を実行するにつき必要な協力を命ずることができる。
一 船舶公團の注文により船舶、船舶用機関又は、ぎ裝品の製造をなす者及び船舶公團と共同でその注文を為す者
二 船舶公團の注文により船舶の改造、修繕、引揚又は解体をなす者及びその船舶の所有者又は管理者
三 船舶公團から船舶、船舶用資材又は造船事業用設備の賣渡又は貸付を受けた者前項の命令により、協力を命ぜられた者が、損失を被つたときには、船舶公團は、その者に対して、協力の終つた日から一箇月以内を、適正な補償を支拂わなければならない。
主務大臣は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、前項の補償に関し必要な規定を定めた後でなければ、第一項の命令をなすことができない。
第六章 罰則
第二十五條 前條第一項の規定による命令に違反した者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第二十六條 左の場合においては、その違反行爲をなした船舶公團の役員又は職員は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十六條に規定しない業務を行つた場合
二 第二十一條第二項又は第三項に規定する経済安定本部総務長官又は主務大臣の監督上の命令に違反した場合
第二十七條 この法律の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十八條 前三條の罪を犯した者には、情状に因り懲役及び罰金を併科することができる。
法人(船舶公團を除く。以下同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関して第二十五條又は前條の違反行爲をなしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。
第二十九條 第九條の規定に違反して、船舶公團又はこれに類似する名称を用いた者は、これを一万円以下の過料に処する。
附 則
第三十條 この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
第三十一條 政府は、設立委員を命じて、船舶公團の設立に関する事務を処理させる。
第三十二條 設立委員は、定款を作成して、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。
前項の認可があつたときには、設立委員は、遅滯なく基本金の拂込を請求しなければならない。
第三十三條 基本金の拂込があつたときには、設立委員は、遅滯なくその事務を船舶公團の総裁に引き継がなければならない。
総裁が前項の事務の引継を受けたときには、総裁、副総裁、理事及び監事の全員は、遅滯なく設立の登記をしなければならない。
船舶公團は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三十四條 船舶公團でない者で、この法律施行の際現に船舶公團又はこれに類似する名称を用いているものについては、この法律施行後六箇月を限り、第九條の規定を適用しない。
第三十五條 船舶公團は、産業設備営團の船舶、船舶用機関、ぎ裝品及び船舶用資材並びに造船事業用設備に関する権利及び義務を承継するものとする。
船舶公團が、前項の規定により承継する権利及び義務の範囲並びに承継に関して必要な事項は、命令でこれを定める。
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〔國務大臣増田甲子七君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=52
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053・増田甲子七
○國務大臣(増田甲子七君) 船舶公團法案の提案理由を御説明いたします。
今日わが國經濟が、輸送力の逼迫のため著しくその復興を阻害されておりますことは、御承知の通りであります。殊に海上輸送につきましては、今次の戰爭によりまして保有船舶の大半を喪失し、まつたく壞滅にひとしい状態となりました。從つて今日のごとく極度に生産が低下しております状況におきましても、所要の海上輸送を完遂いたしますためには、非常なる努力を要するところであります。ましてや今後生産の囘復に伴い、海上荷動が増加いたしますにおいては、今日の輸送力をもつてしては、とうていこれが圓滑なる處理を期待することを得ないのであります。從つて今後における物資の出まわりも、海上輸送に制約せられて圓滑を缺くに至り、せつかくの生産囘復も、所期の成果を收め得ざるに至り、ひいてはわが國經済の復興を遲延せしむるのおそれなしとしないのであります。
一方、今日の海上運賃を新造船價との間には、非常な不均衡が存在し、かつ海運界が、軍需補償の打切りによつて、他産業には見られない甚大な損失をこうむりましたため、わが國海運界の自力をもつてしては、船腹の増強をはかることはもちろん、現在の遊休船舶を稼働せしめるため必要な修理を施すことすら、容易にこれを行い得ない状況であります。
かような状態におきまして、輸送力の緊急増強をはかりますためには、國家的に所要の調整措置を講ずることが絶對的に必要であると認められますので、新たに國策遂行機關たる船舶公團を設立し、運賃と新造船價及び修繕料との間の不均衡は、船舶共有の方式によつてこれを調整し、もつて船腹の急速なる増強に資することといたした次第であります。
船舶公團の業務のおもなるものといたしましては、終戰當時より工事繼續中の船舶の建造に關する業務を、産業設備營團より承繼して、これが急速なる完成をはかりますとともに、非能率船の改造、沈沒船の引揚げ、不良船の解體及び代船の建造等、當面の輸送力増強のため必要なる船腹の整備竝びに活用に關する業務を行うことといたしております。
なお右のごとき業務は、國家がその責任において實施すべきものでありますから、その業務の運營に當るべき役職員につきましては、これを政府職員とすることとなつておりますが、これが運用にあたりましては、民間の知識經驗を十分に活用いたしたいと考えておる次第であります。
船舶公團は、以上の趣旨によりまして、わが國の經濟復興に必要不可缺なる輸送力の緊急増強を目的として設立せんとするものでありまして、能う限り速やかにこれが實現をはかる必要があると認められましたので、ここに船舶公團設立の根據法律といたしまして、船舶公團法案を提出いたした次第であります。何とぞ十分御審議の上、御協贊あらんことを切に希望いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=53
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054・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=54
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055・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案は、政府提出船員法を改正する法律案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=55
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056・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=56
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057・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第一ないし第七は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=57
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058・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。日程第一、所得税法を改正する法律案、日程第二、法人税法を改正する法律案、日程第三、特別法人税法の一部を改正する等の法律案、日程第四、土地臺帳法案、日程第五、家屋臺帳法案、日程第六、地方税法の一部を改正する法律案、日程第七、地方分與税法を改正する法律案、右七案を一括して第一讀會を開きます。大藏政務次官北村徳太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=58
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059・会議録情報8
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第一 所得税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 法人税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 特別法人税法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會
第四 土地台帳法案(政府提出) 第一讀會
第五 家屋台帳法案(政府提出) 第一讀會
第六 地方税法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 地方分與税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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所得税法を改正する法律案
所得税法目次
第一章 総則
第二章 課税標準及び税率
第三章 申告
第一節 予定申告
第二節 確定申告
第四章 納付
第一節 申告納税
第二節 源泉徴收
第五章 更正及び決定
第六章 審査、訴願及び訴訟
第七章 雜則
第八章 罰則
所得税法
第一章 総則
第一條 この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有する個人は、この法律により、所得税を納める義務がある。
前項の規定に該当しない個人は、左に掲げる場合においては、この法律により、所得税を納める義務がある。
一 この法律の施行地にある資産又は事業の所得を有するとき
二 この法律の施行地において、公債、社債若しくは預金(貯金その他これに準ずるものを含む。以下同じ。)の利子又は合同運用信託の利益の支拂を受けるとき
三 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有する法人から利益若しくは利息の配当又は剩余金の分配を受けるとき
四 この法律の施行地において、俸給、給料、賃金、歳費、費用弁償(月額又は年額を以て支給するものに限る。以下同じ。)、年金(郵便年金を除く。以下同じ。)、恩給、賞與若しくは退職給與又はこれらの性質を有する給與の支拂を受けるとき
法人は、左に掲げる場合においては、この法律により、所得税を納める義務がある。
一 この法律の施行地において、公債、社債若しくは預金の利子又は合同運用信託の利益の支拂を受けるとき
二 この法律の施行地に本店又は、主たる事務所を有する法人から利益若しくは利息の配当又は剩余金の分配を受けるとき
第二條 前條第一項の規定に該当する個人については、所得の全部に対し、所得税を課する。
前條第二項の規定に該当する個人については、同項各号に規定する所得に対し、所得税を課する。
年の中途において、前條第一項の規定に該当する個人が同條第二項の規定に該当することとなつたとき又は同條第二項の規定に該当する個人が同條第一項の規定に該当することとなつたときは、この法律の施行地に住所又は一年以上居所を有した期間内に生じた所得の全部及びその他の期間内に生じた同條第二項各号に規定する所得に対し、所得税を課する。
法人については、前條第三項各号に規定する所得に対し、所得税を課する。
第三條 所得税は、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体及び民法第三十四條の規定により設立した法人には、これを課さない。
第四條 信託財産につき生ずる所得については、その所得を信託の利益として受くべき受益者が信託財産を有するものとみなして、所得税を課する。但し、この法律の施行地において、信託の利益の支拂をなす合同運用信託については、この限りでない。
前項の規定の適用については、受益者が特定していないとき又はまだ存在していないときは、委託者又はその相続人を受益者とみなす。この場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
公益信託の信託財産につき生ずる所得には、所得税を課さない。
第五條 株式の消却に因り支拂を受ける金額又は退社、脱退若しくは出資の減少に因り持分の拂戻として受ける金額がその支拂又は拂戻を受ける者の当該株式又は出資を取得するために要した金額を超過する場合においては、その超過金額は、これを法人から受ける利益の配当又は剩余金の分配とみなして、この法律を適用する。
前項の規定の適用については、相続、贈與その他命令で定める事由に因り、株式又は出資を取得した場合においては、被相続人、贈與者その他命令で定める者がその株式又は出資を取得するために要した金額は、これを相続人、受贈者その他命令で定める者がその株式又は出資を取得するために要した金額とみなす。
前二項の株式又は出資を取得するために要した金額は、株式若しくは出資の拂込済金額(会社が額面以上の價額で株式を発行した場合の額面を超える金額又はこれに準ずる金額を含む。)又はその株式若しくは出資の讓渡を受けた場合の対價の價額による。
第六條 左に掲げる所得については、所得税を課さない。
一 皇室経済法第四條第一項及び第六條第一項の規定により年額により受ける給付
二 傷病者の恩給並びに遺族の恩給及び年金
三 旅費、学資金及び法定扶養料
四 郵便貯金の利子及び命令で定める当座預金の利子
五 第九條第一項第八号に規定する所得のうち、営利を目的とする継続的行爲から生じた所得以外の一時の所得(第四十二條第一項に規定する所得を除く。)
六 日本の國籍を有しない者のこの法律の施行地外にある資産又は事業の所得
第七條 この法律において合同運用信託とは、信託会社(信託業務を兼営する銀行を含む。以下同じ。)が引き受けた金銭信託で共同しない多数の委託者の信託財産を合同して運用するものをいう。
第八條 この法律において同居親族とは、配偶者及び三親等内の親族で生計を一にするものをいう。
前項の規定の適用については、生計を一にする者の一人と同項に規定する関係がある者が二人以上あるときは、その二人以上の者相互の間には同項に規定する関係がない場合においても、その生計を一にする者全部の間に同項に規定する関係があるものとみなす。
この法律において扶養親族とは、納税義務者の同居親族のうち配偶者及び年齢十九歳未満若しくは六十一歳以上又は不具癈疾の者(命令で定める者を除く。)をいう。
前三項の規定は、この法律に特別の定がある場合を除く外、毎年十二月三十一日(年の中途において死亡した者とその他の者との間の関係においては、死亡当時)の現況により、これを適用する。
第三項に規定する不具癈疾者の範囲は、命令でこれを定める。
第二章 課税標準及び税率
第九條 所得税の課税標準は、左の各号に規定する所得につき当該各号の規定により計算した金額の合計金額(以下所得金額という。)による。
一 公債、社債及び預金の利子並びに合同運用信託の利益(以下利子所得という。)は、その年中の收入金額(無記名の公債及び社債の利子については、支拂を受けた金額)
二 法人から受ける利益若しくは利息の配当又は剩余金の分配(以下配当所得という。)は、その年中の收入金額(無記名株式の配当については、支拂を受けた金額)から、その元本を取得するために要した負債の利子を控除した金額
三 第五條第一項に規定する利益の配当若しくは剩余金の分配又は積立金(法人税法第十六條及び特別法人税法第九條ノ二に規定する積立金をいう。)でなした利益の配当若しくは剩余金の分配で株式若しくは出資の拂込に充てられたもの(以上臨時配当所得という。)は、前号の規定にかかわらず、その年中の收入金額(無記名株式の配当については、支拂を受けた金額)の十分の五に相当する金額
四 俸給、給料、賃金、歳費、費用弁償、年金、恩給及び賞與並びにこれらの性質を有する給與(以下給與所得という。)は、その年中の收入金額から、その十分の二に相当する金額(その金額が六千円を超えるときは六千円)を控除した金額
五 一時恩給及び退職給與並びにこれらの性質を有する給與(以下退職所得という。)は、その年中の收入金額の十分の五に相当する金額
六 山林の伐採又は讓渡に因る所得(以下山林所得という。)は、その年中の総收入金額から必要な経費を控除した金額の十分の五に相当する金額
七 不動産、不動産上の権利、船舶(製造中の船舶を含む。)、鑛業若しくは砂鑛業に関する権利若しくは設備又は株式その他命令で定める資産の讓渡に因る所得(前号に規定する所得及び営利を目的とする継続的行爲に因り生じた所得を除く。以下讓渡所得という。)は、その年中の総收入金額から当該資産の取得價格、設備費、改良費及び讓渡に関する経費を控除した金額の十分の五に相当する金額
八 前各号以外の所得(以下事業等所得という。)は、その年中の総收入金額から必要な経費を控除した金額
前項の規定により所得金額を計算する場合において、配当所得又は事業等所得の計算上損失があるときは、これを山林所得及び讓渡所得以外の所得の金額から差し引いて計算する。
第一項の規定により所得金額を計算する場合において、山林所得の計算上損失があるときは、これを讓渡所得の金額から差し引いて計算し、讓渡所得の計算上損失があるときは、これを山林所得の金額から差し引いて計算する。
第五條第三項の規定は、第一項第七号に規定する株式その他命令で定める資産の取得價額について、これを準用する。
第十條 前條第一項第一号乃至第五号に規定する收入金額は、その收入すべき金額(金錢以外の物又は権利を以て收入すべき場合においては、当該物又は権利の價額、以下同じ。)により、同項第六号乃至第八号に規定する総收入金額は、その收入すべき金額の合計金額による。
前條第一項第六号及び第八号の規定により総收入金額から控除すべき経費は、種苗、蚕種又は肥料の購買費、家畜等の飼養料、仕入品の原價、原料品の代償、土地、家屋その他の物件の修繕費又は借入料、土地、家屋その他の物件又は業務に係る公租公課、使用人の給料、收入を得るために必要な負債の利子その他收入を得るために必要な経費とする。但し、家事上の経費及びこれに関連する経費は、これを除く。
所得税は、前條第一項第六号及び第八号に規定する必要な経費には、これを算入しない。
前條第一項第七号に規定する資産で財産税法第一條に規定する調査時期前に取得したものについては、前條第一項第七号の取得價額は、その調査時期における價額(土地、家屋、借地法による借地権、借地法による借地権たるもの以外の地上権又は永小作権及び株式その他命令で定める資産の價額については、財産税法第三章の規定及びこれに基いて発する命令により計算した價額)にその百分の五に相当する金額を加算した金額によることとし、前條第一項第七号の設備費又は改良費は、その調査時期後になされた設備又は改良のため要した費用に限る。
前條第一項第七号及び前項の規定の適用についは、相続、贈與又は遺贈に因り取得した資産は、相続人、受贈者又は受遺者が引き続きこれを有していたものとみなす。
前條第一項第七号及び前二項に定めるものの外、讓渡所得の計算に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十一條 公債若しくは社債又は無記名の株式について、その所有者以外の者が利子又は配当の支拂を受けるときは、利子所得、配当所得及び臨時配当所得の計算上、その所有者が支拂を受けるものとみなす。但し、利子又は配当の生ずる期間中にその所有者に異動があつたときは、最後の所有者を利子又は配当の支拂を受ける者とみなす。
第十二條 第一條第一項又は第二項第一号の規定に該当する個人については、その所得金額から四千八百円を控除する。
前項の個人が給與所得又は退職所得とその他の所得とを有する場合においては、前項の控除は、まず、給與所得又は退職所得について、これをなし、なお不足額があるときは、その他の所得に及ぶものとする。
同居親族のうちに、所得を有する者が二人以上ある場合において、これらの者の所得の全部が給與所得及び退職所得以外の所得であるときは、これらの者の所得金額は、これを合算し、その総額について第一項の規定を適用する。
同居親族のうちに、所得を有する者が二人以上ある場合において、給與所得又は退職所得を有する者が一人だけであるときは、まずその者の給與所得又は退職所得について第一項の控除をなし、なお不足額があるときに限り、その不足額をその者及び他の同居親族の他の所得の金額から控除する。
同居親族のうちに、給與所得又は退職所得を有する者が二人以上ある場合においては、当該所得を有する者の当該所得の金額から各各四千八百円(当該所得の金額が四千八百円に満たない者については、当該所得の金額に相当する金額)を控除する。この場合において、同居親族の給與所得又は退職所得の金額から控除する金額の合計額が四千八百円に満たないときは、その不足額は、同居親族の他の所得の金額から、これを控除する。
前三項の場合において、誰の他の所得の金額からいかなる金額を控除するかは、命令でこれを定める。
第十三條 所得税は、前條の規定による控除後の所得金額(以下課税所得金額という。)を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して、これを課する。
一万円以下の金額 百分の二十
一万円を超える金額 百分の二十五
一万五千円を超える金額 百分の三十
二万円を超える金額 百分の三十五
三万円を超える金額 百分の四十
四万円を超える金額 百分の四十五
五万円を超える金額 百分の五十
七万円を超える金額 百分の五十五
十万円を超える金額 百分の六十
二十万円を超える金額 百分の六十五
五十万円を超える金額 百分の七十
百万円を超える金額 百分の七十五
前項の場合において、同居親族の課税所得金額は、これを合算し、その総額に対し税率を適用して計算した金額を、各各その課税所得金額に按分して、各各その税額を定める。
第十四條 第一條第一項の規定に該当する個人については、扶養親族一人につき二百四十円を、前條の規定を適用して計算した所得税額から控除する。
同居親族のうち、所得を有する者が二人以上あるときは、これらの者につき前條の規定を適用して所得税額を計算し、その総額を合算し、その合算額について前項の規定を適用する。
前項の場合において、誰の所得税額からいかなる金額を控除するかは、命令でこれを定める。
第十五條 第一條第一項又は第二項第一号の規定に該当する個人で、所得金額(同居親族については、所得金額の合計額)が五万円以下のものに課すべき所得税の税額は、前三條の規定により計算した金額によらず、命令の定めるところにより、所得金額並びに扶養親族の有無及びその数に應じ、別表第一に定める金額(第一條第二項第一号の規定に該当する個人及び命令で定める者については、所得金額に應じ、扶養親族がない者について同表に定める金額)による。
第十六條 第二十六條第二項の規定により、同條第一項に規定する確定申告書の提出を必要としない者に課すべき所得税の税額は、第十二條乃至第十四條の規定により計算した金額又は前條の規定による所得税額によらず、第三十七條第一項、第三十八條第一項、第四十條又は第四十二條の規定により徴收すべき税額の合計金額による。
第十七條 第一條第二項の規定に該当する個人が、この法律の施行地において支拂を受ける利子所得、配当所得又は臨時配当所得については、第九條第一項第一号乃至第三号及び第十三條の規定にかかわらず、他の所得とこれを区分し、その支拂を受くべき金額(無記名の公債及び社債の利子並びに無記名株式の配当については、支拂を受けた金額、第五條第一項に規定する利益の配当又は剩余金の分配については、その支拂又は拂戻を受ける金額が株式又は出資の拂込済金額を超過する場合に於けるその超過金額)に対し、百分の三十の税率を適用して、所得税を課する。
第一條第二項の規定に該当する個人が、この法律の施行地において支拂を受ける給與所得又は退職所得については、第九條第一項第四号及び第五号並びに第十三條の規定にかかわらず、他の所得とこれを区分し、その支拂を受くべき金額(退職所得については、その支拂を受くべき金額の十分の五に相当する金額)に対し、百分の二十五の税率を適用して、所得税を課する。
第十八條 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有する法人が、この法律の施行地において支拂を受ける利子所得、配当所得又は臨時配当所得については、第九條第一項第一号乃至第三号及び第十三條の規定にかかわらず、その支拂を受くべき金額(無記名の公債及び社債の利子並びに無記名株式の配当については、支拂を受けた金額、第五條第一項に規定する利益の配当又は剩余金の分配については、その支拂又は拂戻を受ける金額が株式又は出資の拂込済金額を超過する場合に於けるその超過金額)に対し、百分の二十の税率を適用して、所得税を課する。
この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人が、この法律の施行地において支拂を受ける利子所得、配当所得又は臨時配当所得については、第九條第一項第一号乃至第三号及び第十三條の規定にかかわらず、その支拂を受くべき金額(無記名の公債及び社債の利子並びに無記名株式の配当については、支拂を受けた金額、第五條第一項に規定する利益の配当又は剩余金の分配については、その支拂又は拂戻を受ける金額が株式又は出資の拂込済金額を超過する場合に於けるその超過金額)に対し、百分の三十の税率を適用して、所得税を課する。
第十九條 信託会社が、その引き受けた合同運用信託の信託財産について納付した所得税額は、命令の定めるところにより、当該合同運用信託の利益に対する所得税額から、これを控除する。
前項の規定により控除すべき合同運用信託の信託財産について納付した所得税額は、当該合同運用信託の利益の計算上、当該利益に、これを加算する。
第二十條 命令で指定する重要物産の製造、採掘又は採取を業とする個人には、命令の定めるところにより、開業の年及びその翌年から三年間は、その業務から生じた所得に対する所得税を免除する。
前項の重要物産の製造、採掘又は採取を業とする個人が、その設備を増設したときは、命令の定めるところにより、設備を増設した年及びその翌年から三年間は、その増設した設備による物産の製造、採掘又は採取の業務から生じた所得に対する所得税を免除する。
第三章 申告
第一節 予定申告
第二十一條 第一條第一項又は第二項第一号の規定に該当する個人は、毎年四月一日においてその年中における所得金額が四千八百円を超えると見積られるときは、毎年四月一日から同月三十日までに、命令の定めるところにより、左に掲げる事項その他必要な事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。(この申告書を四月予定申告書という。)
一 その年分の所得金額及び当該所得金額につき第十二條乃至第十四條の規定により計算した所得税額(所得金額が五万円以下と見積られる者については、第十五條の規定による所得税額)の見積額
二 その年分の第三十七條第一項、第三十八條第一項、第四十條又は第四十二條の規定により徴收される所得税額及び当該税額の計算の基礎となる所得金額の見積額
三 第一号に規定する所得税額の見積額から前号に規定する徴收税額の見積額を控除した金額
四 扶養親族の数
前項の場合において、その年中における給與所得及び退職所得の收入金額(退職所得については、收入金額の十分の五に相当する金額)の合計金額が六万円以下で、且つ、その他の所得の金額が千円に満たないと見積られるときは、四月予定申告書は、これを提出することを要しない。
四月予定申告書に記載すべき所得金額及び所得税額の見積額並びに扶養親族の数は、毎年四月一日の現況による。
同居親族のその年中における所得金額の見積額は、これを合算し、その総額について第一項又は第二項の規定を適用する。
同居親族のうちに申告義務者が二人以上ある場合においては、各申告義務者について、第一項に規定する事項を区分して記載し、連署で四月予定申告書を提出しなければならない。但し、他の同居親族の氏名を附記して、各別にこれを提出することを妨げない。
前二項の規定の適用については、同居親族であるかないかは、毎年四月一日(その年一月一日以後三月三十一日以前に死亡した者とその他の者との間の関係においては、死亡当時)の現況による。
第二十二條 第一條第一項又は第二項第一号の規定に該当する個人は、毎年四月二日から十月一日までの間に、左の各号の一に該当することとなつた場合においては、当該各号に定める期限までに、命令の定めるところにより、前條第一項各号に掲げる事項その他必要な事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。(左の第一号の規定により提出する申告書を七月予定申告書といい、第二号の規定により提出する申告書を十月予定申告書という。)
一 毎年七月一日において、あらたにその年中における所得金額が四千八百円を超えると見積られるに至つた場合においては、その年七月一日から同月三十一日限
二 毎年十月一日において、あらたにその年中における所得金額が四千八百円を超えると見積られるに至つた場合においては、その年十月一日から同月三十一日限
前條第二項乃至第六項の、規定は、前項の規定による申告書を提出する場合について、これを準用する。この場合において前條第三項及び第六項中「四月一日」とあるのは、前項第一号の場合においては「七月一日」、同項第二号の場合においては「十月一日」と読み替え、前條第六項中「三月三十一日」とあるのは、前項第一号の場合においては「六月三十日」、同項第二号の場合においては「九月三十日」と読み替えるものとする。
第二十三條 四月予定申告書を提出した者は、当該申告書に記載された所得金額又は所得税額の見積額がその年七月一日における所得金額又は所得税額の見積額に比し、増減があるに至つた場合においては、その年七月一日から同月三十一日までの間に、命令の定めるところにより、第二十一條第一項各号に規定する事項のうち異動があつた事項その他必要な事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。(この申告書を七月修正予定申告書という。)
左の各号の一に該当する者は、その年十月一日から同月三十一日までの間に、第二十一條第一項各号に規定する事項のうち、異動があつた事項その他必要な事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。(この申告書を十月修正予定申告書という。)
一 四月予定申告書又は七月予定申告書を提出した者で、当該申告書に記載された所得金額又は所得税額の見積額が、その年十月一日における所得金額又は所得税額の見積額に比し、増減があるに至つたもの
二 七月修正予定申告書を提出した者で、当該申告書に記載された所得金額又は所得税額の見積額が、その年十月一日における所得金額又は所得税額の見積額に比し、増減があるに至つたもの
前二項の規定は、第四十四條第一項乃至第三項の規定による更正又は決定があつた者の当該更正又は決定に係る所得金額の見積額又は第二十一條第一項第三号に規定する金額(以下予定納税額という。)につき増減があるに至つた場合について、これを準用する。
第二十一條第三項乃至第六項の規定は、第一項又は第二項(前項において準用する場合を含む。)の規定による申告書を提出する場合について、これを準用する。この場合において、第二十一條第三項及び第六項中「四月一日」とあるのは、第一項の場合においては「七月一日」、第二項の場合においては「十月一日」と読み替え、第二十一條第六項中「三月三十一日」とあるのは、第一項の場合においては「六月三十日」、第二項の場合においては「九月三十日」と読み替えるものとする。
第二十四條 通信、交通その他の状況により、政府において已むを得ない事由があると認めるときは、政府は、命令の定めるところにより、前三條に規定する申告書の提出期限を延長することができる。
第二十五條 第十四條の控除に関する規定は、四月予定申告書、七月予定申告書又は十月予定申告書に、第二十一條第一項第四号に規定する扶養親族に関する事項の記載がない場合においては同項第一号に規定する所得税額の見積額の計算については、これを適用しない。
但し、命令で定める場合は、この限りでない。
第二節 確定申告
第二十六條 第一條第一項又は第二項第一号の規定に該当する個人は、その年中における所得金額が四千八百円を超えるときは、翌年一月三十一日までに、命令の定めるところにより、左に掲げる事項その他必要な事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。(この申告書を確定申告書という。)
一 その年分の所得金額及び当該所得金額につき第十二條乃至第十四條の規定により計算した所得税額(所得金額が五万円以下である者については、第十五條の規定による所得税額)
二 前号の所得金額及び所得税額の計算の基礎
三 所得の基本たる資産若しくは事業の所在地又は所得の生ずる場所
四 扶養親族の氏名、生年月日、申告者との続柄及び不具癈疾の事実
五 その年中における所得につき第三十七條第一項、第三十八條第一項、第四十條又は第四十二條の規定により徴收された又は徴收さるべき所得税額
六 その年中における所得につき第三十條、第三十一條、第三十三條、第三十四條又は第四十五條の規定により納付した又は納付すべき所得税額(命令で定める金額を除く。)
七 前二号の所得税額の合計額が第一号の所得税額に比し過不足ある場合におけるその超過額又は不足額
前項の場合においてその年中における給與所得及び退職所得の收入金額(退職所得については、收入金額の十分の五に相当する金額)の合計金額が三万円以下で、且つ、その他の所得の金額が五百円に満たない場合その他命令で定める場合においては、確定申告書は、これを提出することを要しない。
第三十八條第一項の規定により税金を徴收された者は、確定申告書には、第六十二條の規定により交付せらるべき源泉徴收票を、添附しなければならない。
確定申告書を提出する義務がある者が当該申告書の提出前に死亡した場合においては、命令の定めるところにより、相続人その他の者は、当該申告書を提出しなければならない。
第二十一條第四項及び第五項並びに第二十四條の規定は、確定申告書を提出する場合について、これを準用する。
第二十七條 確定申告書を提出した者は、当該申告書に記載された前條第一項第七号に規定する過不足額について不足額が過少であること又は超過額が過大であることを発見したときは、命令の定めるところにより、同項各号に掲げる事項のうち、修正すべきものその他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。(この申告書を修正確定申告書という。)
確定申告書を提出した者は、当該申告書に記載された前條第一項第七号に規定する過不足額について不足額が過大であること又は超過額が過少であることを発見したときは、確定申告書の提出期限後一箇月間を限り、政府に対し、同項第一号に規定する所得金額及び所得税並びに同項第七号に規定する過不足額の更正の請求をなすことができる。
政府は、前項の請求があつた場合において、その請求の理由がないと認めるときは、その請求をなした者にその旨を通知する。
第二項の請求があつた場合においても、府政は、税金の徴收を猶予しない。但し、政府において已むを得ない事由があると認めるときは、税金の全部又は一部の徴收を猶予することができる。
前條第四項の規定は、修正確定申告書を提出すべき者又は第二項の規定による更正の請求をなし得る者が、当該申告書の提出又は更正の請求前に死亡した場合について、これを準用する。
第二十八條 第十四條の控除に関する規定は、確定申告書に第二十六條第一項第四号に規定する控除に関する事項の記載がない場合においては、同項第一号に規定する所得税額の計算については、これを適用しない。但し、命令で定める場合は、この限りでない。
第二十九條 年の中途において死亡した者のその年一月一日以後死亡の時までの所得金額(死亡当時の同居親族に所得があるときは、その所得金額の見積額との合算額)が四千八百円を超えるときは、命令の定めるところにより、相続人その他の者は、第二十六條第一項の規定に準じ、必要な事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
第一條第一項又は第二項第一号の規定に該当する個人は、第六十六條に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、命令の定めるところにより、その住所及び居所を有しないこととなる当時の現況により、第二十六條第一項の規定に準じ必要な事項を記載した申告書を、その住所及び居所を有しないこととなる日までに、政府に提出しなければならない。
前二項の場合において、第十四條の控除に関する規定の適用その他に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四章 納付
第一節 申告納税
第三十條 四月予定申告書を提出した者は、その予定納税額の四分の一に相当する税額の所得税を、左の四期において、政府に納付しなければならない。
第一期 その年四月一日から同月三十日限
第二期 その年七月一日から同月三十一日限
第三期 その年十月一日から同月三十一日限
第四期 翌年一月一日から同月三十一日限
七月予定申告書を提出した者は、その予定納税額の三分の一に相当する税額の所得税を、第二期至第四期において、十月予定申告書を提出した者は、その予定納税額の二分一に相当する税額の所得税を、第三期及び第四期において、それぞれ政府に納付しなければならない。
第三十一條 七月修正予定申告書又は十月修正予定申告書を提出した者の納付すべき所得税額は、左の各号の定めるところにより、当該各号に掲げる金額による。
一 七月修正予定申告書を提出した者が第二期乃至第四期において納付すべき所得税額は、前條第一項の規定による当該納期分の所得税額につき、四月予定申告書に記載された予定納税額と七月修正予定申告書に記載された予定納税額との差額の三分の一に相当する金額を加算又は減算した金額
二 第二十三條第二項第一号の規定による十月修正予定申告書を提出した者が第三期及び第四期において納付すべき所得税額は、前條の規定による当該納期分の所得税額につき、四月予定申告書又は七月予定申告書に記載された予定納税額と十月修正予定申告書に記載された予定納税額との差額の二分の一に相当する金額を加算又は減算した金額
三 第二十三條第二項第二号の規定による十月修正予定申告書を提出した者が第三期及び第四期において納付すべき所得税額は、第一号の規定による当該納期分の所得税額につき、七月修正予定申告書に記載された予定納税額と十月修正予定申告書に記載された予定納税額との差額の二分の一に相当する金額を加算又は減算した金額
第三十二條 確定申告書を提出した者は、予定納税額の申告をなし又はその決定を受けた者であるときは、前二條及び第四十五條の規定による第四期分の所得税額に代え、当該税額につき第二十六條第一項第七号に規定する金額を加算又は減算した金額に相当する税額の所得税を、その他の者であるときは、同号に規定する金額に相当する税額の所得税を、第四期において政府に納付しなければならない。
第二十六條第四項に規定する場合における前項の規定の適用については、被相続人のなした申告又は被相続人の受けた決定は、相続人その他の者のなした申告又はその受けた決定とみなす。この場合においては、同項中「第四期において」とあるのは、「命令で定める期限内に」読み替えるものとする。
修正確定申告書を提出した者は、当該修正に因り増加した所得税額を、当該申告書の提出の日に、政府に納付しなければならない。
第三十三條 その年中における所得の主たる部分が農業から生ずる所得で、且つ、その年十月一日以後において生ずるものである者の納付する所得税の納期その他の事項については、命令で特別の定をなすことができる。
第二十四條(第二十六條第五項において準用する場合を含む。)の規定により申告書の提出期限の延長があつた場合においては、命令で定める税額の所得税については、その納期限が当該提出期限まで延長されたものとみなす。
四月予定申告書、七月予定申告書、十月予定申告書、七月修正予定申告書、十月修正予定申告書、確定申告書又は第二十九條第一項若しくは第二項に規定する申告書の提出期限後又は申告をなすべき日後に当該申告書を提出した者の所得税については、命令の定めるところにより、当該申告書の提出の日に、これを政府に納付しなければならない。
第三十四條 第二十九條第一項の規定による申告書を提出した者は、命令の定めるところにより、被相続人の納付すべき所得税額のうち、まだ被相続人が納付していない税額の所得税を、政府に納付しなければならない。
第二十九條第二項の規定による申告書を提出した者は、命令の定めるところにより、その納付すべき所得税額のうち、まだ納付していない税額の所得税を、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなる日までに、政府に納付しなければならない。
第三十五條 納税義務者が、前五條に規定する所得税を期限内に完納しなかつたときは、政府は、國税徴收法第九條の規定により、これを督促する。
第一期乃至第三期において納付すべき所得税については、國税徴收法第三章の規定により滯納処分を行う場合においても、確定申告書の提出期限までは、同法第二十四條の規定による公賣は、これをなすことができない。
第三十六條 七月修正予定申告書又は十月修正予定申告書の提出があつた場合において、すでに納付した所得税額に過納額があるときは、その全部又は一部は、命令の定めるところにより、その後の納期において納付する所得税額に、順次これを充当する。
第二節 源泉徴收
第三十七條 第一條第一項の規定に該当する個人に対し、この法律の施行地において利子所得、配当所得又は臨時配当所得の支拂をなす者は、その支拂の際、その支拂うべき金額(第五條第一項に規定する利益の配当又は剩余金の分配については、その支拂又は拂戻を受ける金額が株式又は出資の拂込済金額を超過する場合に於けるその超過金額)に対し、百分の二十の税率を適用して算出した税額の所得税を徴收し、その徴收の日の属する月の翌月十日までに、これを政府に納付しなければならない。
第一條第一項の規定に該当する個人について、前項の規程により徴收した所得税額が、その年中の所得金額につき第十二條乃至第十四條の規定により計算した所得税額(第十五條の規定の適用を受くべき者については、同條の規定による所得税額)を超える場合においては、第十二條乃至第十五條の規定にかかわらず、命令の定めるところにより、前項の規定により徴收した金額を以てその者のその年中に納付すべき所得税額とする。
第三十八條 第一條第一項の規定に該当する個人に対し、この法律の施行地において給與所得又は退職所得の支拂をなす者(命令で定めるを除く。)は、その給與の支拂をなす際、左の各号に定めるところにより、左に掲げる税額の所得税を徴收し、その徴收の日の属する月の翌月十日までに、これを政府に納付しなければならない。
一 第三十九條が規定による申告書を提出した者の当該申告書の経由先から支拂を受ける給與については、その給與の支給期が毎月、毎半月、毎旬、毎週又は毎日と定められているときは、当該支給期の区分に從い、その給與の金額並びに申告された扶養親族の有無及びその数に應じ、別表第二の月額表、半月額表、旬額表、週額表又は日額表の各甲欄に掲げる税額
二 第三十九條の規定による申告書を提出した者の当該申告書の経由先から支拂を受ける給與については、その給與の支給期間が月又は週の整数倍の期間により定められているときは、その給與の月割額又は週割額並びに申告された扶養親族の有無及びその数に應じ、別表第二の月額表又は週額表の各甲欄に掲げる税額に当該倍数を乘じて計算した税額
三 第三十九條の規定による申告書を提出した者の当該申告書の経由先から支拂を受ける給與については、その給與の支給期が前二号に定めるものと異なるものであるときは、その給與の日割額並びに申告された扶養親族の有無及びその数に應じ、別表第二の日額表甲欄に掲げる税額にその支給日数を乘じて計算した税額
四 第三十九條の規定による申告書を提出しなかつた者の支拂を受ける給與又は二以上の給與の支拂者から給與の支拂を受ける者の当該申告書の経由先以外の支拂者から支拂を受ける給與については、前三号の規定に準じ、別表第二の各乙欄に掲げる税額(給與の支給期間が月又は週の整数倍の期間により定められているときは、その給與の月割額又は週割額に対する別表第二の月額表又は週額表の各乙欄に掲げる税額に当該倍数を乘じて計算した税額、給與の支給期間が第一号又は第二号に定めるものと異なるものであるときは、給與の日割額に対する別表第二の日割額乙欄に掲げる税額にその支給日数を乘じて計算した税額)
五 賞與及び賞與の性質を有する給與については、その給與の金額及びその金額の計算の基礎となつた期間の区分に應じ、別表第三に掲げる税額
六 退職所得については、その給與の金額に應じ、別表第四に掲げる税額
前項第二号乃至第四号の給與の月割額、週割額及び日割額の意義、同項第一号の申告された扶養親族の数に関する特例その他同項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十九條 この法律の施行地において支拂を受ける給與所得を有する者は、命令の定めるところにより、給與の支拂者及び扶養親族の氏名その他必要な事項を記載した申告書を、給與の支拂者(二以上の支拂者があるときは、主たる給與の支拂者 以下本條において同じ。)を経由し、毎年最初に給與の支拂を受ける日(年の中途においてあらたに給與所得を有するに至つた者については、その最初に給與の支拂を受ける日)の前日までに、政府に提出しなければならない。
前項に規定する申告書を提出した者は、給與の支拂者又は扶養親族に異動があるに至つたときは、命令の定めるところにより、異動があつた事項その他必要な事項を記載した申告書を、給與の支拂者を経由し、その異動があつた日後最初の給與の支拂を受ける日の前日までに、政府に提出しなければならない。
前二項の場合において、給與の支拂者が申告書を受け取つたときは、その申告書は前二項の規定により、政府に提出されたものとみなす。
第四十條 第一條第一項の規定に該当する個人に対し、この法律の施行地において給與所得につき支拂をなす者は、その支拂者がその個人に対しその年中に支拂う給與所得につき第九條第一項第四号の規定により計算した所得金額が五万円以下である場合において、第三十八條第一項の規定により徴收する所得税額の合計額が、当該所得についての第十五條の規定による税額に比し過不足あるときは、命令の定めるところにより、過納額は、その年最後に又はその翌年において給與の支拂をなす際徴收すべき所得税額にこれを充当し、(徴收すべき税額がないときは還付し。)不足額は、その年最後に又はその翌年において給與の支拂をなす際、順次これを徴收し、その徴收の日の属する月の翌月十日までに、これを政府に納付しなければならない。
第四十一條 第十七條又は第十八條に規定する所得につき支拂をなす者は、その支拂の際、第十七條又は第十八條の規定による所得税を徴收し、その徴收の日の属する月の翌月十日までに、これを政府に納付しなければならない。
第四十二條 この法律の施行地において、原稿、挿画、作曲及び音盤吹込の報酬、放送謝金、著作権の使用料及び講演料並びにこれらの性質を有する報酬又は料金の支拂をなす者は、その支拂をなす際、その支拂うべき金額に対し百分の十五の税率を適用して計算した税額の所得税を徴收し、その徴收の日の属する月の翌月十日までに、これを政府に納付しなければならない。
この法律の施行地において、外交員、集金人その他これらの労務者に準ずる者に対し、報酬又は料金の支拂をなす者は、その支拂をなす際、その支拂うべき金額に対し百分の十の税率を適用して計算した税額の所得税を徴收し、その徴收の日の属する月の翌月十日までに、これを政府に納付しなければならない。
第四十三條 第三十七條第一項、第三十八條第一項又は前三條の規定により徴收すべき所得税を徴收しなかつたとき又は徴收した税金を納付しなかつたときは、國税徴收の例により、これを支拂者から徴收する。
法人が解散した場合において、前項の規定により徴收せらるべき税金を納付しないで残余財産を分配したときは、その税金については、清算人が連帶して納税の義務があるものとする。
第五章 更正及び決定
第四十四條 四月予定申告書、七月予定申告書、十月予定申告書、七月修正予定申告書又は十月修正予定申告書の提出があつた場合において、申告又は修正に係る所得金額の見積額又は予定納税額が、政府において調査したところと異なるときは、政府は、その調査により、その所得金額の見積額又は予定納税額の更正をなすことができる。
政府は、四月予定申告書、七月予定申告書又は十月予定申告書の提出をなす義務があると認められる者が、当該申告書を提出しなかつた場合においては、政府の調査により、所得金額の見積額及び予定納税額の決定をなすことができる。
政府は、前二項の規定により更正又は決定をなした所得金額の見積額又は予定納税額について、第二十三條第一項又は第二項の規定に該当する事実があると認めるときは、第一項の規定に準じ、所得金額の見積額又は予定納税額の更正をなすことができる。
政府は、前三項の規定により、所得金額の見積額又は予定納税額の更正をなし又は決定をなしたときは、これを納税義務者に通知する。
この法律の施行地に住所及び居所を有しない個人が、第六十六條に規定する納税管理人の申告をしていないときは、前項の通知に代えて公告をすることができる。この場合においては、公告の初日から七日を経過したときは、その通知があつたものとみなす。
第四十五條 前條第一項又は第三項の規定による政府の更正があつた場合においては、その更正に係る予定納税額と更正前と予定納税額との差額は、左の各号の定めるところにより、更正前の所得税分納額に加算して、これを政府に納付しなければならない。
一 四月予定申告書、七月予定申告書又は十月予定申告書に記載された予定納税額について更正をなした場合においては、更正に因り増加した税額は、第三十條第一項又は第二項に規定する納期及び分納額の区分により、更正前の各納期の所得税分納額にこれを加算する。
二 七月修正予定申告書又は十月修正予定申告書に記載された予定納税額について更正をなした場合においては、更正に因り増加した税額は、第三十一條各号に規定する納期及び分納額の区分により、更正前の各納期の所得税分納額にこれを加算する。
前條第二項の規定により、決定をなした場合においては、その決定に係る予定納税額は、第三十條第一項又は第二項の規定による納期及び分納額の区分により、これを政府に納付しなければならない。
前二項の場合において、納期限前十日にあたる日以後に更正又は決定の通知を受けたときは、更正に因り増加した税額又は決定に係る税額で当該納期以前の納期に係る分は、当該通知を受けた日後一箇月を経過する日までに、これを政府に納付しなければならない。
第三十五條の規定は、前三項の規定に因る更正により増加した税額又は決定に係る税額について、これを準用する。
第四十六條 確定申告書又は修正確定申告書の提出があつた場合において、当該申告書に記載された所得金額若しくは所得税額又は第二十六條第一項第七号に規定する金額が、政府において調査したところと異なるときは、政府は、その調査により、所得金額若しくは所得税額又は同号に規定する金額の更正をなす。
政府は、確定申告書の提出をなす義務があると認められる者が、当該申告書を提出しなかつた場合においては、政府の調査により、所得金額及び所得税額並びに第二十六條第一項第五号乃至第七号に規定する金額の決定をなす。
前二項の規定は、第二十九條第一項又は第二項の規定による申告書の提出があつた場合又は当該申告書の提出がなかつた場合について、これを準用する。
政府は、前三項の規定による更正又は決定後、その更正し又は決定した所得金額若しくは所得税額又は第二十六條第一項第七号に規定する金額について脱漏があること(同項第七号に規定する金額が超過額であるときは、当該金額が過大であること)を発見したときは、政府の調査により、所得金額若しくは所得税額又は同項第七号に規定する金額の更正をなすことができる。
政府は、前四項の規定により更正又は決定をなしたときは、これを納税義務者に通知する。
第四十四條第五項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第四十七條 政府は、前條第一項乃至第四項の規定により更正又は決定をなした場合において、その追徴税額(その不足税額又はその決定による税額をいう。以下同じ。)があるときは、同條第五項の通知をなした日から一箇月後を納期限として、これを徴收する。
第六章 審査、訴願及び訴訟
第四十八條 納税義務者は、第四十四條第四項の規定により政府の通知した所得金額の見積額又は予定納税額に対し異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
第二十七條第四項の規定は、前項の請求があつた場合について、これを準用する。
第四十九條 納税義務者は、第四十六條第五項の規定により政府の通知した所得金額若しくは所得税額若しくは第二十六條第一項第五号乃至第七号に規定する金額又は第五十七條第二項の規定により政府の通知した税額に対して異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
前項の規定は、第二十七條第三項の規定による政府の通知に対し、納税義務者が異議がある場合について、これを準用する。
第二十七條第四項の規定は、第一項(前項において準用する場合を含む。)の請求があつた場合について、これを準用する。
第五十條 政府は、第四十八條第一項又は前條第一項(同條第二項において準用する場合を含む。)の請求があつたときは、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第五十一條 前條第一項の決定に対し不服がある者は、訴願をなし又は裁判所に出訴することができる。
第四十四條第一項乃至第三條若しくは第四十六條第一項乃至第四項の規定による更正若しくは決定又は第五十七條第一項の規定による所得税額の追徴税額に関する訴願又は訴訟は、審査の決定を経た後でなければ、これをなすことができない。
第七章 雜則
第五十二條 納税義務者が、災害その他の事由に因り著しく資力を喪失して、納税困難と認められるときは、政府は、命令の定めるところにより、所得税を軽減し又は免除することができる。
政府は、前項の場合において、同項の協定による軽減又は免除の処分が確定するまで、税金の徴收を猶予することができる。
第五十三條 納税義務者の提出した申告書又は更正若しくは決定に関する書類を閲覽しようとする者は、命令の定めるところにより、政府にその閲覽を請求することができる。
第五十四條 納税義務があると認められる者が、確定申告書若しくは修正確定申告書を提出しなかつた事実又は所得金額若しくは所得税額若しくは第二十六條第一項第七号に規定する金額に脱漏があると認められる事実(同号に規定する金額が超過額であるときは、当該金額が過大であると認められる事実)を、政府に報告した者がある場合において、政府がその報告に因つて当該所得金額、所得税額又は同号に規定する金額を決定し又は更正したときは、政府は、命令の定めるところにより、その報告者に対し、決定又は更正に因り徴收することができた税額の百分の十以下に相当する金額を、報償金として交付することができる。但し、報償金の金額は、十万円を超えることができない。
前項の規定は、その報告をなした者が官吏又は待遇官吏であるときは、これを適用しない。その報告が官吏若しくは待遇官吏の知り得た事実、公務員(官吏及び待遇官吏を除く。)の職務上知り得た事実又は不法の行爲に因り知り得た事実に基くものである場合も、また同樣とする。
第五十五條 納税義務者は、第二十七條第一項の規定による修正に因り増加した税額、第三十三條第三項の規定により納付する税額、第四十四條第一項若しくは第三項の規定による更正に因り増加した税額又は同條第二項の規定による決定に係る税額については、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額百円につき一日三錢の割合を乘じて計算した金額に相当する税額を加算して納付しなければならない。
前項の規定は、政府が第四十七條に規定する追徴税額を徴收する場合について、これを準用する。
第三十五條の規定は、第一項の場合について、これを準用する。
第五十六條 第四十三條の規定により支拂者から所得税を徴收する場合においては、第三十七條第一項、第三十八條第一項又は第四十條乃至第四十二條の規定により徴收すべき所得税を徴收しなかつたこと又は徴收した所得税を政府に納付しなかつたことについて已むを得ない事由があると認められる場合を除く外、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額百円につき一日三銭の割合を乘じて計算した金額に相当する税額を加算する。
第五十七條 確定申告書の提出期限後に確定申告書若しくは修正確定申告書の提出があつた場合又は第四十七條の規定による追徴税額に相当する所得税を徴收することとなつた場合において、左の各号の一に該当するときは、当該各号に掲げる事実について已むを得ない事由があると認められる場合を除く外、政府は、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、第一号の場合においては、第二十六條第一項第七号に規定する金額、第二号の場合においては、修正確定申告により増加した所得税額、第三号の場合においては、追徴税額に相当する所得税額に、一箇月を経過するごとに百分の五の割合を乘じて計算した金額に相当する所得税を追徴する。但し、この金額は、当該税額に百分の五十を乘じて計算した金額を超えることができない。
一 確定申告書の提出期限後に確定申告書を提出した場合においては、確定申告書の提出期限内に確定申告書を提出しなかつたこと
二 修正確定申告書の提出があつた場合においては、前の確定申告又は修正確定申告に係る所得税額について誤謬があつたこと
三 第四十七條に規定する追徴税額に相当する税額の所得税を徴收することとなつた場合においては、納税義勞者の申告又は修正に係る所得税額が政府の調査した所得税額と異なること
政府は、前項の規定により追徴する税額を決定したときは、これを納税義務者に通知する。
第四十四條第五項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第五十八條 この法律の施行地において利子の支拂をなすべき公債又は社債を募集した者(委託募集の場合は委託を受けて募集した者)は、命令の定めるところにより、その公債又は社債に関する事項を記載した調書を、政府に提出しなければならない。
第五十九條 この法律の施行地において無記名の公債、社債又は株式について利子又は配当の支拂を受ける者は、命令の定めるところにより、氏名又は名称、住所その他必要な事項を、利子又は配当の支拂の取扱者に告知しなければならない。
利子又は配当の支拂の取扱者は、前項の告知をなさしめた後でなければ、その支拂をなすことができない。
第六十條 この法律の施行地において、俸給、給料、賃金、歳費、費用弁償、年金、恩給、賞與若しくはこれらの性質を有する給與又は報酬若しくは料金で命令で定めるものの支拂をなす者は、命令の定めるところにより、使用人又は労務者の職名別人員その他必要な事項を政府に申告しなければならない。
第六十一條 左に掲げる者は、命令の定めるところにより、支拂調書を政府に提出しなければならない。
一 公債、社債若しくは預金の利子又は合同運用信託の利益の支拂をなす者
二 利益若しくは利息の配当又は剩余金の分配をなす法人
三 第四十二條に規定する報酬又は料金の支拂をなす者
合同運用信託以外の信託の受託者は、命令の定めるところにより、各信託について、計算書を政府に提出しなければならない。
第六十二條 第三十八條第一項の規定に該当する給與支拂者は、命令の定めるところにより、左に掲げる事項その他必要な事項を記載した源泉徴收票二通を作成し、給與の支拂をなした年の翌年一月二十五日まで(年の中途において退職があつたときは、退職後一箇月以内)に、一通を政府に提出し、他の一通を給與の支拂を受ける者に交付しなければならない。
一 その年中の支拂に係る給與所得及び退職所得につきその種類ごとにその合計額
二 前号の所得につき第三十八條第一項及び第四十條の規定により徴收した所得税額
三 第三十九條の規定により申告された扶養親族の数
政府の承認を受けた場合においては、前項の規定による源泉徴收票の提出及び交付を要しない。
第六十三條 收税官吏は、所得税に関する調査について必要があるときは、左に掲げる者に質問し又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 前二條に規定する支拂調書、計算書又は源泉徴收票を提出する義務がある者
三 納税義務者若しくは納税義務があると認められる者に金銭若しくは物品の給付をなす義務があつたと認められる者若しくは当該義務があると認められる者又は納税義務者若しくは納税義務があると認められる者から金銭若しくは物品の給付を受ける権利があつたと認められる者若しくは当該権利があると認められる者
第六十四條 收税官吏は、所得税に関する調査について必要があるときは、命令で定める事業をなす者の組織する團体に、その團体員の所得に関する事項を諮問することができる。
前項に規定する團体は、同項の諮問を受けたときは、命令の定めるところにより、調書を提出しなければならない。
第六十五條 所得税は、納税義務者の住所地(この法律の施行地に住所がないときは居所地)をその納税地とする。但し、納税義務者は、政府に申告して居所地を納税地とすることができる。
この法律の施行地に住所及び居所がない納税義務者は、納税地を定めて政府に申告しなければならない。その申告がないときは、政府は、その納税地を指定する。
第六十六條 納税義務者が、納税地に現住しないときは、この法律による申告書の提出、納税その他所得税に関する一切の事項を処理させるため、納税地に居住する者のうちから納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。命令で定める場合を除く外、納税義務者が、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときも、また同樣とする。
第六十七條 同族会社の行爲又は計算でその株主若しくは社員又はこれと親族、使用人、命令で定める出資関係がある会社等特殊の関係がある者の所得について、所得税を免れる目的があると認められる場合においては、政府は、所得金額又は所得税額の更正又は決定に際し、その行爲又は計算にかかわらず、その認めるところにより、所得金額又は所得税額を計算することができる。
前項の同族会社とは、法人税法第三十四條第二項に規定する会社をいう。
第六十八條 都道府県、市町村その他の公共團体は、所得税の附加税を課することができない。
第八章 罰則
第六十九條 詐僞その他不正の行爲により第二十六條第一項第一号に規定する所得税額の全部又は一部につき所得税を免れた者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。詐僞その他不正の行爲により第三十七條第一項、第三十八條第一項又は第四十條乃至第四十二條の規定により徴收せらるべき所得税を免れた者も、また同樣とする。
前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その免れた税金を徴收する。
第七十條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 四月予定申告書、七月予定申告書、十月予定申告書、七月修正予定申告書又は十月修正予定申告書に虚僞の記載をなしてこれを政府に提出した者
二 第五十九條第一項に規定する告知すべき事項について、虚僞の告知をなした者及び同項の規定に違反し告知をなさしめないで支拂をなした者
三 第六十一條第一項若しくは第二項の支拂調書若しくは計算書若しくは第六十二條第一項の源泉徴收票を政府に提出せず又はその支拂調書、計算書若しくは源泉徴收票に虚僞の記載をなしてこれを政府に提出した者
四 第六十二條第一項の源泉徴收票を給與の支拂を受ける者に交付せず又はその源泉徴收票に虚僞の記載をなしてこれを交付した者
五 第六十三條の規定による帳簿書類その他の物件の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
六 前号の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
七 第六十三條の規定による收税官吏の質問に対し答弁をなさない者
八 前号の質問に対し虚僞の答弁をなした者
第七十一條 所得税に関する調査に関する事務に從事している者又は從事していた者が、その事務に関して知り得た祕密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第七十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第六十九條又は第七十條の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
第七十三條 他人の所得税について、政府に対し、第五十四條に規定する事実に関する虚僞の報告をなした者は、これを三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第七十四條 第六十九條第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りではない。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附属の島(勅令で定める地域を除く。)にこれを施行する。
第三條 この法律は、昭和二十二年分以後の所得税につき、これを適用する。但し、讓渡所得のうち、株式その他命令で定める資産の讓渡に因る所得に対する所得税については、昭和二十二年四月一日以後における讓渡に因る分に、これを適用する。
改正後の第十七條及び第十八條の規定により課する所得税については、昭和二十二年四月一日以後の支拂に係る所得につき、これを適用する。
第四條 不動産所得、乙種の配当利子所得、甲種の事業所得及び乙種の事業所得、乙種の勤勞所得、山林の所得、乙種の退職所得及び個人の総所得に対する昭和二十一年分以前の所得税及びこの法律施行前に課した又は課すべきであつた甲種の配当利子所得、丙種の事業所得、甲種の勤勞所得、甲種の退職所得及び清算取引所得に対する分類所得税並びに從前の第百六條第一項の規定により支拂の際賦課することを得べき綜合所得税については、なお從前の例による。但し、從前の第三十六條第二項又は第六十八條第一項の規定により所得金額を決定すべき場合においては、これらの規定にかかわらず、所得調査委員会の調査又は所得審査委員会の決議によることなく、政府において、その所得金額を決定する。
第五條 改正後の第一條第一項の規定に該当する個人が、この法律の施行地において支拂を受ける公債、社債、銀行預金、銀行貯蓄預金、市町村農業会貯金、産業組合貯金、市街地信用組合貯金その他命令で定める預金の利子及び命令で定める。合同運用信託の利益については、改正後の第九條第一項第一号及び第十三條の規定にかかわらず、納税義務者の申告により、他の所得とこれを区分し、利子又は利益の支拂の際、その利子金額又は利益金額を課税標準とし、百分の六十の税率により、その所得税を課することができる。
前項の規定による所得税は、その利子又は利益の支拂の際、支拂者においてこれを徴收し、その徴收の日の属する月の翌月十日までに、政府に納付しなければならない。
改正後の第四十三條及び第五十六條の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第六條 信託会社が、その引き受けた合同運用信託の信託財産について、從前の規定により納付した甲種の配当利子所得に対する分類所得税額は、命令の定めるところにより、当該合同運用信託の利益に対する所得税額から、これを控除する。
前項の場合において、控除すべき分類所得税額は、当該合同運用信託の利益の計算上、当該利益にこれを加算する。
第七條 増加所得税は、改正後の第九條第一項第六号及び第八号に規定する必要な経費には、これを算入しない。
第八條 昭和二十二年分の所得税については、昭和二十二年一月一日から同年三月三十一日までの間に支拂を受くべき甲種の配当利子所得(公債及び社債については、支拂を受けた利子)に対する分類所得税額又は從前の第百六條第一項の規定により支拂の際課せられた綜合所得税額は、これを改正後の第三十七條第一項又は附則第五條第二項の規定により徴收された所得税額とみなす。
昭和二十二年分の所得税については、昭和二十二年一月一日から同年三月三十一日までの間に支給に係る丙種の事業所得、甲種の勤勞所得又は甲種の退職所得に対する分類所得税額は、これを改正後の第三十八條第一項、第四十條又は第四十二條の規定により徴收された所得税額とみなす。
第九條 從前の第三十五條第二項の規定に基く命令の規定により、昭和二十二年一月一日現在の扶養家族につき提出された控除に関する申請書は、これを改正後の第三十九條第一項の規定により提出された申告書とみなす。
この法律施行の際、現に改正後の第八條第三項の規定に該当する扶養親族と前項に掲げる申請書に記載された扶養家族とが異る場合においては、給與所得の支拂を受ける者は、この法律の施行後最初に給與の支拂を受ける日の前日までに、改正後の第三十九條第二項に規定する申告書を、給與の支拂者(二以上の支拂者があるときは、主たる給與の支拂者)を経由し政府に提出しなければならない。
改正後の第三十九條第三項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第十條 昭和二十二年に限り、四月予定申告書、七月予定申告書、十月予定申告書、七月修正予定申告書及び十月修正予定申告書に関する事項並びに第一期及び第二期の納期については、命令で特別の定をなすことができる。
第十一條 日本國憲法施行の日までは、改正後の第五十條第二項中「政令」とあるのは「勅令」、改正後の第五十一條第一項中「裁判所」とあるのは「行政裁判所」と読み替えるものとする。
第十二條 財産税法の一部を次のように改正する。
附則第三項を次のように改める。
納税義務者が財産税の納付に関し立木を讓渡した場合(立木を伐採して讓渡した場合を含む。)又は立木を財産税の物納に充てた場合においては、命令の定めるところにより、所得税法第九條第一項第六号の規定にかかわらず、当該立木の讓渡又は物納に因り生ずる收入金額から必要な経費及び財産税額に納税義務者の調査時期における財産の價額中その讓渡し又は物納に充てた立木の價額が占める割合を乘じて算出した金額の合計額を控除した金額の十分の五に相当する金額により所得金額を計算する。
第十三條 増加所得税の課税については、なお從前の所得税法第五條、第六條、第十條第一項、第一号、第三号、第五号及び第八号、第十一條第六号及び第七号、第十二條第二項、第三項及び第六項乃至第八項、第三十六條第四項、第三十九條第二項、第六十六條、第七十三條第二項、第七十五條、第七十六條、第八十一條、第八十二條及び第八十四條乃至第八十七條の規定並びに從前の財産税法附則第三項の規定による。
第十四條 この法律施行前になした行爲に対する罰則の適用については、なお從前の例による。
第十五條 昭和二十一年法律第十四号(所得税法の一部を改正する等の法律)の一部を次のように改正する。
第五十一條に次の但書を加える。
但し、從前の同法第十七條第二項又は第二十二條第一項の規定により利得金額を決定すべき場合においては、これらの規定にかかわらず、昭和二十二年の所得税法を改正する法律による改正前の所得税法の所得調査委員会又は所得審査委員会の調査又は決議によることなく、政府において、その利得金額を決定する。
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法人税法を改正する法律案
法人税法目次
第一章 総則
第二章 課税標準
第三章 税率
第四章 申告
第五章 納付
第六章 課税標準の更正及び決定
第七章 同族会社に関する課税の特例
第八章 審査、訴願及び訴訟
第九章 雜則
第十章 罰則
法人税法
第一章 総則
第一條 左に掲げる法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。
一 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有する法人
二 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人でこの法律の施行地に資産又は事業を有するもの
第二條 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有する法人に対しては、その所得及び資本の全部について法人税を課し、この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人でこの法律の施行地に資産又は事業を有するものに対しては、この法律の施行地にある資産又は事業の所得及びこれに関する資本についてのみ法人税を課する。
第三條 法人が合併した場合においては、合併後存続する法人又は合併に因り設立した法人は、合併に因り消滅した法人の所得及び資本について法人税を納める義務がある。
第四條 法人税は、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体及び民法第三十四條の規定により設立した法人には、これを課さない。
第五條 第九條の規定により計算した各事業年度(清算中の事業年を除く。以下同じ。)の普通所得金額(第六條の規定により法人税を免除する場合における当該業務より生ずる所得金額を含む。以下本條において同じ。)のない法人の当該事業年度の資本に対する法人税は、これを免除する。第十七條及び第四十一條の規定により算出した各事業年度の資本に対する法人税額が、その事業年度の普通所得金額からその事業年度の普通所得及び超過所得に対する法人税額を控除した残額を超過するときは、その超過額に相当する各事業年度の資本に対する法人税についても、また同樣とする。
第六條 命令で指定する重要物産の製造、採掘又は採取をなす法人には、命令の定めるところにより、製造、採掘又は採取の事業を開始した事業年度及びその翌事業年度開始の日から三年以内に終了する事業年度において、その業務から生じた各事業年度の普通所得に対する法人税を免除する。
前項の重要物産の製造、採掘又は採取をなす法人が、その設備を増設したときは、命令の定めるところにより、当該事業年度及びその翌事業年度開始の日から三年以内に終了する事業年度において、その増設した設備による物産の製造、採掘又は採取の業務から生じた各事業年度の普通所得に対する法人税を免除する。
第七條 この法律において事業年度とは、法令又は定款に定める事業年度をいう。
法人が事業年度の中途において解散し又は合併に因り消滅した場合においては、この法律の適用については、その事業年度開始の日から解散又は合併の日までの期間を一事業年度とみなす。
第二章 課税標準
第八條 法人税は、左に掲げる所得及び資本について、これを課する。
一 各事業年度の普通所得
二 各事業年度の超過所得
三 清算所得
四 各事業年度の資本
第九條 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有する法人の各事業年度の普通所得は、各事業年度の総益金から総損金を控除した金額による。
法人が各事業年度において、納付した又は納付すべき法人税又は罰金若しくは科料(通告処分による罰金又は科料に相当する金額を含む。)は、前項の普通所得の計算上、これを損金に算入しない。
法人が各事業年度においてなした寄附金のうち、命令の定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、第一項の普通所得の計算上、これを損金に算入しない。但し、命令で定める寄附金については、命令の定めるところにより、これを損金に算入する。
法人の各事業年度開始の日前一年以内に開始した事業年度において生じた損金は、第一項の普通所得の計算上、これを損金に算入する。
前三項に規定するものの外、第一項の普通所得の計算に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十條 法人が各事業年度において、所得税法第十八條の規定により納付した所得税額は、命令の定めるところにより、当該事業年度の普通所得及び超過所得に対する法人税額から、これを控除する。
前項の場合において控除すべき所得税法第十八條の規定により納付した所得税額は、法人の各事業年度の普通所得の計算上、これを損金に算入しない。
前二項の規定は、清算所得に対する法人税について、これを準用する。
第十一條 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人でこの法律の施行地に資産又は事業を有するものの各事業年度の普通所得は、この法律の施行地にある資産又は事業について、第九條の規定に準じて計算した金額による。
第十二條 所得税法第四條及び第七條の規定は、法人税を課する場合について、これを準用する。
信託会社の各事業年度の普通所得の計算については、合同運用信託に因る收入及び支出は、その総益金及び総損金から、各各これを控除する。
第十三條 法人の各事業年度の超過所得は、各事業年度の普通所得が各事業年度の資本の金額に対し百分の十を乘じて算出した金額を超過する場合におけるその超過額による。
前項の超過所得の計算の基礎となる各事業年度の普通所得は、第九條第三項但書の規定を適用しないで計算した金額による。
第十四條 法人の清算所得は、左に掲げる金額による。
一 法人が解散した場合において、その残余財産の價額が解散当時の拂込株式金額又は出資金額を超過する場合のその超過額
二 法人が合併した場合において、合併後存続する法人若しくは合併に因り設立した法人が合併に因り消滅した法人の株主又は社員に対し交付する株式の拂込済金額又は出資金額及び金銭の総額が、合併に因り消滅した法人の合併当時の拂込株式金額又は出資金額を超過する場合のその超過額
法人が解散した場合において清算中になした寄附金で、命令で定めるものの價額は、これを残余財産の價額から控除する。
第九條第五項の規定は、第一項の清算所得の計算について、これを準用する。
第十五條 この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有する法人の各事業年度の資本は、各事業年度の各月末における拂込株式金額、出資金額、基金又は醵金の月割平均額及び各事業年度開始の時における積立金額の合計金額に当該事業年度の月数を乘じたものを十二分して計算した金額による。
宗教法人又は法人たる労働組合の各事業年度の資本は、收益を目的とする資産又は事業について前項の規定に準じ、命令の定めるところにより計算した金額による。
この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人でこの法律の施行地に資産又は事業を有するものの各事業年度の資本は、この法律の施行地にある資産又は、事業について第一項の規定に準じ、命令の定めるところにより計算した金額による。
法人が合併した場合における各事業年度の資本の計算に関しては、前三項の規定にかかわらず、命令で別段の定をなすことができる。
第十六條 この法律において積立金額とは、積立金その他法人の各事業年度の普通所得のうち、その留保した金額をいう。
法人税として納付すべき金額は前項の留保した金額には、これを算入しない。
第三章 税率
第十七條 法人税は、左の税率により、これを課する。
一 各事業年度の普通所得
この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有する法人 所得金額の百分の三十五
この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人でこの法律の施行地に資産又は事業を有するもの 所得金額の百分の四十五
二 各事業年度の超過所得
各事業年度の超過所得金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用する。
各事業年度の普通所得のうち、当該事業年度の資本の金額に対し百分の十を乘じて算出した金額を超える金額 百分の十
同百分の二十を乘じて算出した金額を超える金額 百分の二十
同百分の三十を乘じて算出した金額を超える金額 百分の三十
各事業年度の資本の金額が年十万円以下である法人に限り、本号に規定する税率百分の十は、これを百分の五とし、同百分の二十は、これを百分の十五とし、同百分の三十は、これを百分の二十五とする。
三 清算所得
清算所得金額を次のように区分し、各税率を適用する。
積立金又はこの法律若しくは他の法令により法人税を課せられない所得から成る金額 百分の二十
その他の金額 百分の四十五
四 各事業年度の資本 資本金額の千分の五
第四章 申告
第十八條 納税義務がある法人は、第二十一條の規定に該当する場合を除く外、各事業年度終了の日から二箇月以内に、その確定した決算に基き当該事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
前項の規定による申告書には、命令の定めるところにより、財産日録、貸借対照表、損益計算書、第六條、第九條、第十一條乃至第十三條及び第十五條の規定により計算した各事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額の計算に関する明細書並びに当該所得及び資本に対する法人税の税額の計算に関する明細書を添附しなければならない。
この法律の施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人でこの法律の施行地に資産又は事業を有するものは、前項の書類の外、この法律の施行地における資産又は事業に関する損益を計算した各事業年度の普通所得金額及び超過所得金額の計算に関する明細書並びにこの法律の施行地における資産又は事業についての資本金額の計算に関する明細書を添附しなければならない。
宗教法人又は法人たる労働組合は、前二項の規定に準じ、收益を目的とする資産又は事業の各事業年度の普通所得金額及び超過所得金額の計算に関する明細書並びに当該資産又は事業についての資本金額の計算に関する明細書を添附しなければならない。
第一項乃至前項の規定は、法人に法人税を課すべき各事業年度の普通所得、超過所得又は資本のない場合について、これを準用する。
第十九條 納税義務がある法人が、前條第一項の場合において、同項の申告期限までに決算が確定していないときは、同項の規定による申告書の提出に代え、同項の申告期限までに、当該事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額を概算し、その概算による当該事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
前項の申告書には、命令の定めるところにより、その概算による当該事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額の計算に関する明細書、法人税の税額の計算に関する明細書その他必要な書類を添附しなければならない。
前條第五項の規定は、第一項の申告書の提出について、これを準用する。
第二十條 前條第一項の規定により概算申告書を提出した法人は、当該事業年度の決算が確定したときは、決算確定の日から二十日以内にその確定した決算に其き当該事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額を記載した申告費を政府に提出しなければならない。
第十八條第二項乃至第五項の規定は、前項の申告書の提出について、これを準用する。
第二十一條 納税義務がある法人について、法令又は定款に定めた事業年度(以下法定事業年度という。)が六箇月を超える場合においては、この法律の適用については、法定事業年度開始の日から六箇月間を一事業年度とみなす。この場合においては、当該法人は、当該事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額を計算し、当該期間の終了の日から二箇月以内に、当該事業年度の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
第十九條第二項及び第三項の規定は、前項の申告書の提出について、これを準用する。
前二項の規定は、宗教法人及び法人たる労働組合については、これを適用しない。
第二十二條 納税義務がある法人は、前條第一項の規定に該当する場合においては、法定事業年度終了の日から二箇月以内に、その確定した決算に其き当該法定事業年度(前條第一項の規定により一事業年度とみなされた期間を含む。)の普通所得金額、超過所得金額及び資本金額を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
第十八條第二項、第三項及び第五項の規定は、前項の申告書の提出について、これを準用する。
第十九條及び第二十條の規定は、第一項に規定する申告期限までに当該法定事業年度の決算が確定していない場合について、これを準用する。
第二十三條 解散した法人は、残余財産のうち拂込株式金額又は出資金額を超過する部分を分配しようとするときは、命令の定めるところにより、命令で定める期限までに、清算所得金額を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
前項の申告書には、命令の定めるところにより、解散の時における財産目録及び貸借対照表、残余財産分配の時における財産目録及び貸借対照表その他清算に関する計算書並びに当該清算所得に対する法人税の税額の計算に関する明細書を添附しなければならない。
第二十四條 合併後存続する法人又は合併に因り設立した法人は、合併の日から二箇月以内に、合併に因り消滅した法人の清算所得金額を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
前項の申告書には、合併に因り消滅した法人の合併の時における貸借対照表その他合併に関する書類及び合併に因り継承した資産の明細書を添附しなければならない。
第二十五條 第十八條乃至前條の規定により政府に申告書を提出した法人又は第十八條乃至前條の申告期限後に申告書を提出した法人は、申告書に記載した各事業年度の普通所得金額、超過所得金額若しくは資本金額又は清算所得金額について脱漏があることを発見したときは、直ちに政府に申し出て、その申告書を修正しなければならない。
前項の申告書の修正をなす場合においては、修正に関する明細書を政府に提出しなければならない。
第五章 納付
第二十六條 左の各号に掲げる法人税は、命令の定めるところにより、当該各号に定める期限内に、これを納付しなければならない。
一 第十八條第一項の規定による申告書に記載された各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税については、同項の申告期限
二 第十九條第一項の規定による申告書に記載された各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税については、同項の申告期限
三 第二十條第一項の規定による申告書に記載された各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税(前号の規定により納付すべき法人税を除く。)については、同項の申告期限
四 第二十一條第一項の規定による申告書に記載された各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税については、同項の申告期限
五 第二十二條第一項の規定による申告書に記載された各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税(前号の規定により納付すべき法人税を除く。)については、同項の申告期限
六 第二十二條第三項において準用する第十九條第一項の規定による申告書に記載された各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税(第四号の規定により納付すべき法人税を除く。)については、同項の申告期限
七 第二十二條第三項において準用する第二十條第一項の規定による申告書に記載された各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税(第四号及び前号の規定により納付すべき法人税を除く。)については、同項の申告期限
八 第二十三條第一項の規定による申告書に記載された清算所得に対する法人税については、同項の命令で定める申告期限
九 第二十四條第一項の規定による申告書に記載された清算所得に対する法人税については、同項の申告期限
第十八條乃至第二十四條の申告期限後に申告書を提出した法人の各事業年度の普通所得、超過所得若しくは資本又は清算所得に対する法人税又は第二十五條第一項の規定による申告書の修正に因り増加した各事業年度の普通所得、超過所得若しくは資本又は清算所得に対する法人税については、当該申告書の提出又は修正の日に納付しなければならない。
第二十七條 法人が解散した場合において、各事業年度の普通所得、超過所得若しくは資本又は清算所得に対する法人税を納付しないで残余財産を分配したときは、その税金については、清算人及び残余財産の分配を受けた者は、連帶して納税の義務があるものとする。但し、残余財産の分配を受けた者は、その受けた利益の限度においてその責に任ずる。
第二十八條 納税義務がある法人が第二十六條第一項に定める期限内又は同條第二項に定める申告書の提出又は修正の日に法人税を完納しなかつたときは、政府は、國税徴收法第九條の規定により、これを督促する。
第六章 課税標準の更正及び決定
第二十九條 第十八條第一項、第二十條第一項、第二十二條第一項、第二十二條第三項において準用する第二十條第一項、第二十三條第一項又は第二十四條第一項の規定による申告書が提出された場合又はこれらの申告書について第二十五條第一項の規定による修正があつた場合において、申告又は修正に係る課税標準(各事業年度の普通所得、超過所得若しくは資本又は清算所得をいう。以下同じ。)が政府において調査した課税標準と異なるときは、政府は、その調査により、課税標準を更正する。
第十九條第一項、第二十一條第一項又は第二十二條第三項において準用する第十九條第一項の規定による申告書が提出された場合又はこれらの申告書について第二十五條第一項の規定による申告書の修正があつた場合において申告又は修正に係る課税標準が政府において調査した課税標準と異なるときは、政府は、その調査により、課税標準を更正することができる。
第三十條 政府は、納税義務があると認める法人が申告書を提出しなかつた場合又は法人税を課すべき所得又は資本がない旨の申告書を提出した場合においては、政府の調査により、課税標準を決定する。
第三十一條 政府は、前二條の規定による課税標準の更正又は決定後、更正又は決定した課税標準について、脱漏があることを発見したときは、政府の調査により、課税標準を更正する。
第三十二條 政府は、前三條の規定により、課税標準を更正又は決定したときは、これを納税義務がある法人に通知する。
第三十三條 第二十九條乃至第三十一條の規定により課税標準を更正又は決定した場合においては、前條の通知をなした日から一箇月後を納期限として、その追徴税額(その不足税額又は決定による税額をいう。以下同じ。)を徴收する。
第七章 同族会社に関する課税の特例
第三十四條 政府は、同族会社の行爲又は計算で法人税を免れる目的があると認められるものがある場合においては、その行爲又は計算にかかわらず、政府の認めるところにより、課税標準を計算することができる。
この法律において同族会社とは、株主又は社員の一人及びこれと親族、使用人、命令で定める出資関係のある会社等特殊の關係のある者の有する株式又は出資の金額の合計額がその会社の株式又は出資金額の二分の一以上に相当する会社をいう。
第三十五條 政府は、同族会社が各事業年度の普通所得のうちその十分の三に相当する金額を超えるものを留保した場合においては、その超過額に対し特別の率を乘じて算出した金額を当該事業年度の普通所得に対する法人税に加算することができる。
前項の特別の率は、同族会社の当該事業年度の普通所得金額を年額に換算した金額のうち十万円以下の金額に百分の三十五、十万円を超える金額に百分の五十五、二十万円を超える金額に百分の六十五、五十万円を超える金額に百分の七十、百万円を超える金額に百分の七十五を乘じて得た金額の合計金額の普通所得年額に対する率とする。
第二項の各事業年度の普通所得及び普通所得中留保した金額は、その事業年度の普通所得、超過所得及び資本に課せられる法人税額(同項の規定により加算する税額を含まない。)をその事業年度の普通所得及びその普通所得中留保した金額の双方から控除した金額による。
第一項の規定は、この法律の施行地に本店を有しない会社でこの法律の施行地に資産又は事業を有するものその他命令で定める会社には、これを適用しない。
第三十二條及び第三十三條の規定は、第一項の規定により税額を加算した場合について、これを準用する。
第八章 審査、訴願及び訴訟
第三十六條 納税義務がある法人は、第三十二條の規定により政府の通知した課税標準、前條第五項において準用する第三十二條の規定により政府の通知した加算税額又は第四十四條の規定により政府の通知した税額に対して異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
前項の請求があつた場合においても、政府は、税金の徴收を猶予しない。但し、政府において已むを得ない事由があると認めたときは、税金の徴收を猶予することができる。
第三十七條 政府は、前條第一項の請求があつたときは、これを決定し、納税義務がある法人に通知する。
前項の場合において、必要な事項は、政令でこれを定める。
第三十八條 前條第一項の決定に対し不服がある法人は、訴願をなし、又は裁判所に出訴することができる。
第二十九條乃至第三十一條の規定により政府のなした更正又は決定、第三十五條第一項の規定による加算税額又は第四十三條の規定による追徴税額に関する訴願又は訴訟は、審査の決定を経た後でなければ、これをなすことができない。
第九章 雜則
第三十九條 納税義務がある法人の提出した申告書又は課税標準の更正、決定若しくは修正に関する書類を閲覽しようとする者は、命令の定めるところにより、政府に、その閲覽を請求することができる。
第四十條 納税義務があると認められる法人が申告書を提出しなかつた事実又は課税標準に脱漏があると認められる事実を、政府に報告した者がある場合において、政府がその報告に因つて課税標準を決定し又は更正したときは、政府は、命令の定めるところにより、その報告者に対し、課税標準の決定又は更正に因り、徴收することができた当該事業年度分の法人税額の百分の十以下に相当する金額を、報償金として交付することができる。但し、報償金の金額は十万円を超えることができない。
前項の規定は、その報告をなした者が官吏又は待遇官吏であるときは、これを適用しない。その報告が官吏若しくは待遇官吏の知り得た事実、公務員(官吏及び待遇官吏を除く。)の職務上知り得た事実又は不法の行爲に因り知り得た事実に基くものである場合も、また同樣とする。
第四十一條 第十七條の規定により算出した各事業年度の資本に対する法人税額が五百円に満たないときは、これを五百円とする。
第四十二條 納税義務がある法人は、第二十六條第二項に掲げる法人税については、同項の規定により法人税を納付すべき日に、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額百円について一日三銭の割合を乘じて算出した金額に相当する税額を加算して納付しなければならない。
前項の規定は、政府が、第三十三條の規定による追徴税額を徴收する場合について、これを準用する。
第四十三條 第二十六條第二項の規定による法人税の納付があつた場合又は第三十三條の規定による追徴税額に相当する法人税を徴收することとなつた場合においては、第十八條乃至第二十二條、第二十四條の申告期限若しくは第二十三條第一項の規定により命令で定める申告期限内に申告書の提出がなかつたこと、第二十五條第一項の規定による申告書の修正があつた場合において前の申告若しくは修正に係る課税標準について誤謬があつたこと又は納税義務がある法人の申告若しくは修正した課税標準が政府の調査した課税標準と異なることについて已むを得ない事由があると認められる場合を除く外、政府は、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額に一箇月を経過するごとに百分の五の割合を乘じて算出した金額に相当する税額の法人税を追徴する。但し、この金額は、当該税額に百分の五十を乘じて算出した金額を超えることができない。
第四十四條 政府は、前條の規定により追徴する税額を決定したときは、これを納税義務がある法人に通知する。
第四十五條 收税官吏は、法人税に関する調査について必要があるときは、納税義務がある法人又は納税義務があると認められる法人に質問し又はその帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
第四十六條 收税官吏は、法人税に関する調査について必要があるときは、納税義務がある法人又は納税義務があると認められる法人に対し、金銭の支拂若しくは物品の讓渡をなす義務があると認められる者若しくは金銭の支拂若しくは物品の讓渡を受ける権利があると認められる者に質問し又はその事業に関する帳簿書類を檢査することができる。
第四十七條 都道府縣、市町村その他の公共團体は、法人税の附加税を課することができない。
第十章 罰則
第四十八條 詐僞その他不正の行爲により法人税を免れた場合においては、法人の代表者、代理人、使用人その他の從業者でその違反行爲をなした者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。
前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その課税標準を決定し、その税金を徴收する。
第四十九條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の徴役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第四十五條又は第四十六條の規定による帳簿書類その他の物件の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
二 前号の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
三 第四十五條又は第四十六條の規定による收税官吏の質問に対し答弁をなさない者
四 前号の質問に対し虚僞の答弁をなした者
第五十條 法人税の調査に関する事務に從事している者又は從事していた者が、その事務に関して知り得た祕密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第五十一條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務に関して、第四十八條又は第四十九條の違反行爲をしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
第五十二條 他人の法人税について、政府に対し、第四十條に掲げる事実に関する虚僞の報告をなした者は、これを三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第五十三條 第四十八條第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附属の島(勅令で定める地域を除く。)にこれを施行する。
第三條 この法律は、法人の各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税については、昭和二十二年四月一日以後に終了する事業年度分から、清算所得に対する法人税については、同日以後の解散又は合併に因る分から、これを適用する。
第四條 第二十一條の規定は、法人の昭和二十二年四月一日以後に終了する事業年度で当該事業年度開始後六箇月に当る日がこの法律の施行後に到來するものについて、これを適用する。
第五條 法人の昭和二十二年三月三十一日以前に終了した各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税並びに同日以前の解散又は合併に因る清算所得に対する法人税については、なお從前の例による。但し、改正前の第二十四條第一項の規定により、所得金額、資本金額又は加算税額を決定すべき場合においては、同項の規定にかかわらず、昭和二十二年の所得税法を改定する法律による改定前の所得審査委員會の決議によることなく、政府において、その所得金額、資本金額又は加算税額を決定する。
第六條 この法律の施行後に終了する事業年度において又はこの法律の施行後における解散に因る清算の期間中に法人の納付した從前の所得税法第十條に規定する配当利子所得に対する分類所得税は、これを所得税法第十八條に規定する所得税とみなし、第十條の規定を適用する。
第七條 日本國憲法施行の日までは、第三十七條第二項中「政令」とあるのは「勅令」、「第三十八條中「裁判所」とあるのは「行政裁判所」と読み替えるものとする。
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特別法人税法の一部を改正する等の法律案
第一條 特別法人税法の一部を次のように改正する。
第四條第五項中「前三項」を「前四項」に改め、第三項の次に次の一項を加える。
特別ノ法人ガ各事業年度ニ於テ爲シタル寄附金中命令ノ定ムル所ニ依リ計算シタル金額ヲ超ユル部分ノ金額ハ第一項ノ剩餘金ノ計算上之ヲ損金ニ算入セズ但シ命令ヲ以テ定ムル寄附金ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ損金ニ算入ス
第五條に次の一項を加える。
特別ノ法人ガ解散シタル場合ニ於テ清算中ニ爲シタル寄附金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ價額ハ之ヲ殘餘財産ノ價額ヨリ控除ス
第六條 削除
第九條第一項第二号中「百分ノ三十五」を「百分ノ二十」に、「百分ノ五十」を「百分ノ四十」に改める。
第十條 納税義務アル特別ノ法人ハ各事業年度ノ決算確定 日ヨリ一箇月以内ニ當該事業年度ノ剩餘金額ヲ記載シタル申告書ヲ政府ニ提出スベシ
前項ノ規定ニ依ル申告書ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ財産目録、貸借對照表、損益計算書、第四條ノ規定ニ依リ計算シタル各事業年度ノ剩餘金額ノ計算ニ關スル明細書竝ニ當該剩餘金額ニ對スル特別法人税ノ税額ノ計算ニ關スル明細書ヲ添附スベシ
前二項ノ規定ハ特別ノ法人ニ特別法人税ヲ課スベキ各事業年度ノ剩餘金ナキ場合ニ付之ヲ準用ス
第十條ノ二 解散シタル特別ノ法人ハ殘餘財産中拂込濟出資金額ヲ超過スル部分ヲ分配セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ命令ヲ以テ定ムル期限迄ニ清算剩餘金額ヲ記載シタル申告書ヲ政府ニ提出スベシ
前項ノ申告書ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ解散ノ時ニ於ケル財産目録及貸借對照表、殘餘財産分配ノ時ニ於ケル財産目録及貸借對照表其ノ他清算ニ關スル計算書竝ニ當該清算剩餘金ニ對スル特別法人税ノ税額ノ計算ニ關スル明細書ヲ添附スベシ
第十條ノ三 合併後存續スル特別ノ法人又ハ合併ニ因リ設立シタル特別ノ法人ハ合併ノ日ヨリ二箇月以内ニ合併ニ因リ消滅シタル特別ノ法人ノ清算剩餘金額ヲ記載シタル申告書ヲ政府ニ提出スベシ
前項ノ申告書ニハ合併ニ因リ消滅シタル特別ノ法人ノ合併ノ時ニ於ケル貸借對照表其ノ他合併ニ關スル書類及合併ニ因リ繼承シタル資産ノ明細書ヲ添附スベシ
第十條ノ四 前三條ノ規定ニ依リ政府ニ申告書ヲ提出シタル特別ノ法人又ハ前三條ノ申告期限後ニ申告書ヲ提出シタル特別ノ法人ハ申告書ニ記載シタル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ニ付脱漏アルコトヲ發見シタルトキハ直ニ政府ニ申出デ其ノ申告書ヲ修正スベシ
前項ノ申告書ノ修正ヲ爲ス場合ニ於テハ修正ニ關スル明細書ヲ政府ニ提出スベシ
第十一條 左ノ各號ニ掲グル特別法人税ハ命令ノ定ムル所ニ依リ當該各號ニ定ムル期限内ニ之ヲ納付スベシ
一 第十條第一項ノ規定ニ依ル申告書ニ記載シタル各事業年度ノ剩餘金ニ對スル特別法人税ニ付テハ同項ノ申告期限
二 第十條ノ二第一項ノ規定ニ依ル申告書ニ記載シタル清算剩餘金ニ對スル特別法人税ニ付テハ同項ノ命令ヲ以テ定ムル申告期限
三 第十條ノ三第一項ノ規定ニ依ル申告書ニ記載シタル清算剩餘金ニ對スル特別法人税ニ付テハ同項ノ申告期限
第十條乃至第十條ノ三ノ申告期限ニ申告書ヲ提出シタル特別ノ法人ノ各事業年度ノ剩餘金又ハ清算剩餘金ニ對スル特別法人税又ハ第十條ノ四第一項ノ規定ニ依ル申告書ノ修正ニ因リ増加シタル各事業年度ノ剩餘金又ハ清算剩餘金ニ對スル特別法人税ニ付テハ當該申告書ノ提出又ハ修正ノ日ニ納付スベシ
第十一條ノ二 納税義務アル特別ノ法人ガ前條第一項ニ定ムル期限内又ハ同條第二項ニ定ムル申告書ノ提出又ハ修正ノ日ニ特別法人税ヲ完納セザルトキハ政府ハ國税徴收法第九條ノ規定ニ依リ之ヲ督促ス
第十一條ノ三 第十條第一項、第十條ノ二第一項、第十條ノ三第一項ノ規定ニ依ル申告書ノ提出アリタル場合又ハ此等ノ申告書ニ付第十條ノ四第一項ノ規定ニ依ル修正アリタル場合ニ於テ申告又ハ修正ニ係ル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ガ政府ニ於テ調査シタル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ト異ルトキハ政府ハ其ノ調査ニ依リ各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ヲ更正ス
第十一條ノ四 政府ハ納税義務アリト認ムル特別ノ法人ガ申告書ヲ提出セザリシ場合又ハ特別法人税ヲ課スベキ剩餘金ナキ旨ノ申告書ヲ提出シタル場合ニ於テハ政府ノ調査ニ依リ各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ヲ決定ス
第十一條ノ五 政府ハ前二條ノ規定ニ依ル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ノ更正又ハ決定後更正又ハ決定シタル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ニ付脱漏アルコトヲ發見シタルトキハ政府ノ調査ニ依リ各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ヲ更正ス
第十一條ノ六 政府ハ前三條ノ規定ニ依リ各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ヲ更正又ハ決定シタルトキハ之ヲ納税義務アル特別ノ法人ニ通知ス
第十一條ノ七 第十一條ノ三乃至第十一條ノ五ノ規定ニ依リ各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ヲ更正シ又ハ決定シタル場合ニ於テハ前條ノ通知ヲ爲シタル日ヨリ一箇月後ヲ納期限トシ其ノ追徴税額(其ノ不足税額又ハ決定ニ依ル税額ヲ謂フ以下同ジ)ヲ徴收ス
第十三條 削除
第十四條 納税義務アル特別の法人ハ第十一條ノ六ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル各事業年度ノ剩餘金額若ハ清算剩餘金額又ハ第十八條ノ四ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル税額ニ對シ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ一箇月以内ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ税金ノ徴收ヲ猶豫セズ但シ政府ニ於テ已ムコトヲ得ザル事由アリト認ムルトキハ税金ノ徴收ヲ猶豫スルコトヲ得
第十五條 政府ハ前條第一項ノ請求アリタルトキハ之ヲ決定シ納税義務アル特別ノ法人ニ通知ス前項ノ場合ニ於テ必要ナル事項ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條中「行政裁判所」を「裁判所」に改め、同條に次の一項を加える。
第十四條第一項ニ規定スル事件ニ關シテハ訴願又ハ訴訟ハ前條第一項ノ規定ニ依ル決定ヲ經タル後ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第十七條 削除
第十八條ノ二 納税義務アル特別ノ法人ハ第十一條第二項ニ掲グル特別法人税ニ付テハ同項ノ規定ニ依リ特別法人税ヲ納付スベキ日ニ命令ノ定ムル所ニ依リ命令ヲ以テ定ムル期間ニ應ジ當該税額百圓ニ付一日三錢ノ割合ヲ乘ジテ算出シタル金額ニ相當スル税額ヲ加算シテ納付スベシ
前項ノ規定ハ政府ガ第十一條ノ七ノ規定ニ依ル追徴税額ヲ徴收スル場合ニ付之ヲ準用ス
第十八條ノ三 第十一條第二項ノ規定ニ依ル特別法人税ノ納付アリタル場合又ハ第十一條ノ七ノ規定ニ依ル追徴税額ニ相當スル特別法人税ヲ徴收スルコトトナリタル場合ニ於テ第十條、第十條ノ三ノ申告期限又ハ第十條ノ二第一項ノ規定ニ依リ命令ヲ以テ定ムル申告期限内ニ申告書ノ提出ガナカリシコト、第十條ノ四ノ規定ニ依ル申告書ノ修正アリタル場合ニ於テ前ノ申告若ハ修正ニ係ル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ニ付誤謬アリタルコト又ハ納税義務アル特別ノ法人ノ申告若ハ修正シタル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ガ政府ノ調査シタル各事業年度ノ剩餘金額又ハ清算剩餘金額ト異ルコトニ付已ムコトヲ得ザル事由アリト認ムル場合ヲ除クノ外政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ命令ヲ以テ定ムル期間ニ應ジ當該税額ニ一箇月ヲ經過スル毎ニ百分ノ五ノ割合ヲ乘ジテ算出シタル金額ニ相當スル税額ノ特別法人税ヲ追徴ス但シ此ノ金額ハ當該税額ニ百分ノ五十ヲ乘ジテ算出シタル金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第十八條ノ四 政府ハ前條ノ規定ニ依リ追徴スル税額ヲ決定シタルトキハ之ヲ納税義務アル特別ノ法人ニ通知ス
第十九條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ特別法人税ヲ逋脱シタル場合ニ於テ特別ノ法人ノ代表者、代理人、使用人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ違反行爲ヲ爲シタル者ハ之ヲ一年以下ノ懲役又ハ其ノ逋脱シタル税金ノ三倍以下ニ相當スル罰金若ハ科料ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情状ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テハ政府ハ直ニ其ノ剩餘金額ヲ決定シ其ノ税金ヲ徴收ス
第二十條 左ノ各號ノ一ニ該當セル者ハ之ヲ一年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十二條ノ規定ニ依ル帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
二 前號ノ帳簿書類ニシテ虚僞ノ記載ヲ爲シタルモノヲ呈示シタル者
三 第十二條ノ規定ニ依ル收税官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サザル者
四 前號ノ質問ニ對シ虚僞ノ答辯ヲ爲シタル者
第二十一條 特別法人税ノ調査ニ關スル事務ニ從事シ又ハ從事シタル者其ノ事務ニ關シ知得タル祕密ヲ漏洩シ又ハ竊用シタルトキハ之ヲ二年以下ノ懲役又ハ二萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條ノ二 特別ノ法人ノ代表者又ハ特別ノ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其ノ特別ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第十九條第一項又ハ第二十條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ特別ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス
第二十二條中「第十九條」を「第十九條第一項」に改め、同條に次の但書を加える。
但シ懲役刑ニ處スルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二條 有價証券移轉税法の一部を次のように改正する。
第五條中「萬分ノ五」を「千分ノ一」に、「取引所の實物市場」を「證券取引所」に、「萬分ノ十」を「千分ノ二」に、「萬分ノ二十」を「千分ノ四」に改める。
第三條 登録税法の一部を次のように改正する。
第二條第一項及び第四項中「三圓」を「十圓」に、「二圓」を「五圓」に、「二十圓」を「五十圓」に改める。
第三條第一項中「三圓」を「二十圓」に、「二圓」を「十圓」に、「一圓」を「五圓」に改める。
第三條ノ三及び第三條ノ四中「十五圓」を「五十圓」に改める。
第三條ノ五中「五十錢」を「三圓」に、「二十錢」を「二圓」に、「十錢」を「一圓」に、「二圓」を「二十圓」に改める。
第四條第一項中「一圓五十錢」を「十圓」に、「三十錢」を「二圓」に、「二十錢」を「一圓」に、「一圓」を「十圓」に改める。
第四條の二、第五條及び第五條ノ二中「五十圓」を「二百圓」に、「十五圓」を「五十圓」に改める。
第六條第一項中「百圓」を「五百圓」に、「百五十圓」を「五百圓」に、「六十圓」を「二百圓」に、「五十圓」を「百五十圓」に、「十五圓」を「五十圓」に改め、同條第二項中「十五圓」を「五十圓」に改める。
第六條ノ二第一項中「五十圓」を「二百圓」に改め、同條第二項中「十五圓」を「五十圓」に改める。
第六條ノ三中「五十圓」を「二百圓」に改める。
第六條ノ四第一項中「六十圓」を「二百圓」に、「三十圓」を「百圓」に、「十五圓」を「五十圓」に改め、同條第二項中「五圓」を「二十圓」に改める。
第七條中「百五十圓」を「五百圓」に、「五十圓」を「二百圓」に、「五圓」を「二十圓」に改める。
第八條中「醫師」の下に「齒科醫師」を加え、「百五十圓」を「五百圓」に、「八十圓」を「二百五十圓」に、「三十圓」を「百圓」に、「二十圓」を「七十圓」に、「三圓」を「十圓」に改める。
第九條中「五十圓」を「百五十圓」に、「三十圓」を「百圓」に、「二十圓」を「六十圓」に、「十圓」を「四十圓」に、「七圓」を「三十圓」に、「五圓」を「二十圓」に、「二十五圓」を「八十圓」に、「六十圓」を。「二百圓」に、「二圓」を「十圓」に改める。
第十條中「五圓」を「二十圓」に、「三十圓」を「百圓」に、「三圓」を「十圓」に、「十五圓」を「五十圓」に、「二圓」を「五圓」に改める。
第十條ノ二中「六十圓」を「二百圓」に、「五圓」を「二十圓」に、「三十圓」を「百圓」に、「三圓」を「十圓」に、「一圓」を「五圓」に改める。
第十一條及び第十二條中「五圓」を「二十圓」に、「十五圓」を「五十圓」に、「三圓」を「十圓」に改める。
第十二條ノ二中「五圓」を「二十圓」に、「十五圓」を「五十圓」に、「三圓」を「十圓」に、「五十錢」を「十圓」に改める。
第十三條中「五圓」を「二十圓」に、「六十圓」を「二百圓」に、「十五圓」を「五十圓」に、「三圓」を「十圓に改める。
第十四條中「三百圓」を「千圓」に、「百五十圓」を「五百圓」に、「三十圓」を「百圓」に、「十五圓」を「五十圓」に、「三圓」を「十圓」に、「六百圓」を「二千圓」に、「六十圓」を「二百圓」に、「五圓」を「二十圓」に、「一圓」を「五圓」に、「五十錢」を「三圓」に改める。
第十五條中「五十圓」を「百五十圓」に、「十圓」を「三十圓」に、「三圓」を「十圓」に、「十五圓」を「五十圓」に、「五圓」を「十五圓」に、「五十錢」を「三圓」に、「二圓」を「五圓」に、「三十圓」を「百圓」に、「一圓」を「五圓」に改める。
第十五條ノ二中「三圓」を「二十圓」に、「十五圓」を「百圓」に、「一圓」を「十圓」に、「十圓」を「七十圓」に、「二圓」を「十圓」に、「五圓」を「五十圓」に、「五十錢」を「五圓」に改める。
第十九條第四号ノ二を削り、同條第五号を次のように改める。
五 市町村ノ一部ニ屬スル財産ヲ其ノ市町村ニ移ス場合ニ於ケル市町村ノ權利ノ取得又ハ其ノ市町村ニ所有權ヲ移スニ付爲ス所有權ノ保存ノ登記又ハ登録
同條第五号ノ二を削り、同條第六号中「、町内會部落會」を削る。
第十九條ノ七及び第十九條ノ八を削る。
第十九條ノ九中「評價」を「國税徴收法第三十一條ノ二第一項ノ規定ニ依ル審査」に改め、同條を第十九條ノ七とする。
第十九條ノ十乃至第十九條ノ十三を削る。
第四條 酒税法の一部を次のように改正する。
第二十五條第二項中「第二十二條第二項」の下に「及第二十三條」を加える。
第二十七條第一項を次のように改める。
酒税ノ税率左ノ如シ
一 清酒
第一級 一石ニ付 八千八百三十圓
第二級 一石ニ付 六千四百圓
二 合成清酒 一石ニ付 六千三百二十圓
三 濁酒 一石ニ付 四千圓
四 白酒 一石ニ付 八千八百三十圓
五 味淋 一石ニ付 七千五十圓
六 燒酎 一石ニ付 六千二百三十圓
七 麥酒 一石ニ付 四千四百六十圓
八 果實酒
第一級 一石ニ付 六千圓
第二級 一石ニ付 四千五百圓
第三級 一石ニ付 三千九百圓
九 雜酒
第一級 一石ニ付 一萬二千八百圓
第二級 一石ニ付 八千八百五十圓
アルコール分二十度ヲ超ユルトキハアルコール分二十度ヲ超ユル一度毎ニ五百三十一圓ヲ加フ
第三級一石ニ付 八千圓
アルコール分二十度ヲ超ユルトキハアルコール分二十度ヲ超ユル一度毎ニ四百八十圓ヲ加フ
第四級 一石ニ付 六千八百圓
同條第三項中「百三十八圓」を「四百四十八圓」に改める。
第二十七條ノ四 酒場、料理店其ノ他酒類ヲ自己ノ營業場ニ於テ飮料ニ供スルコトヲ業トスル者ガ其ノ業務ノ用ニ供スル酒類ニ付テハ第二十七條、第二十七ノ二又ハ第八十三條ニ規定スル酒税ノ外左ノ酒税ヲ課ス
一 麥酒 一石ニ付 一萬千四百圓
二 雜酒 一石ニ付 五萬圓
三 前二號ニ掲グルモノ以外ノ類酒 一石ニ付 二萬圓
第三十三條但書中「引取人ヨリ」の下に「、第二十七條ノ四ニ規定スル者ノ業務ノ用ニ供スル酒類ニ付テハ其ノ業務ノ用ニ供スル爲販賣シタル石數ニ應ジ販賣者ヨリ」を加える。
第三十四條ノ二 酒類ノ製造者又ハ販賣業者が酒類ヲ自己ノ經營スル酒場、料理店其ノ他酒類ヲ營業場ニ於テ飮料ニ供スルコトヲ目的トスル場合ニ於テ飮料ニ供シタルトキハ第三十三條但書ノ規定ノ適用ニ付テハ其ノ製造者又ハ販賣業者ヲ以テ第二十七條ノ四ノ規定ニ依リ酒税ヲ課スベキ酒類ヲ販賣シタル者ト看做ス
第三十五條ノ二 第二十七條ノ四ノ規定ニ依リ酒税ヲ課スベキ酒類ヲ同條ニ規定スル者ニ販賣シタル者ハ毎月其ノ販賣シタル酒類ノ種類毎ニ石數ヲ記載シタル申告書ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スベシ但シ酒類販賣業ノ免許ヲ取消サレ又ハ同條ノ規定ニ依リ酒税ヲ課スベキ酒類ノ販賣ヲ廢止シタルトキハ直ニ申告書ヲ提出スベシ
前條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十六條第一項但書中「第三十三條但書ノ場合ニ於テハ」を「保税地域ヨリ引取ル酒類ニ付テハ」に改め、同條第二項中「前條第一項」を「第三十五條第一項但書又ハ前條第一項」に改める。
第五十九條及び第五十九條ノ二中「酒類業團體法」を「酒類業組合法」に、團體を「組合」に改める。
第六十四條第一項第四号中「又ハ第二項」を「若ハ第二項又ハ第三十五條ノ二第一項」に改める。
第八十三條第一項中「千八百五十五圓」を「六千三百四十五圓」に、「百四十八圓」を「五百七圓」に、「千六百九十五圓」を「六千百七十五圓」に、「八十一圓」を「二百九十六圓」に改める。
第五條 酒類業團體法の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
酒類業組合法
第三條中「整備發達及統制運營」を「改良發達」に改める。
第三條ノ二第一項第一号中「統制」を削る。
第四條ノ二 削除
第五條 酒類製造者カ酒造組合ニ加入セムトスルトキハ酒造組合ハ正當ナル事由ナクシテ其ノ加入ヲ拒ムコトヲ得ス
第五條ノ二 酒造組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ組合ニ對シ經費ヲ分賦シ及過怠金ヲ徴收スルコトヲ得
第五條ノ三及第五ノ四 削除
第五條ノ六 酒造組合ノ組合員ハ左ノ事由ニ因リテ脱退ス
一 組合員タル資格ノ喪失
二 死亡又ハ解散
三 除名
組合員ハ前項ノ規定ニ拘ラス三月前ニ豫告ヲ爲シ事業年度ノ終ニ於テ酒造組合ヲ脱退スルコトヲ得
前項ニ定ムルモノノ外組合員ノ脱退ノ場合ニ付必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條ノ三 削除
第六條ノ六 削除
第六條ノ七及び第六條ノ八中「第四條ノ二、第四條ノ三、第五條ノ二第一項、同條第二項、同條第五項、第五條ノ三、第五條ノ四、第五條の七及」を「第四條ノ三乃至第五條ノ二及第五條ノ六乃至」に改める。
第六條ノ九及び第九條ノ三を削る。
第十條中「定款若ハ統制規程」を「法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款」に改める。
第十條ノ三中「整備發達及統制運營」を「改良發達」に改める。
第十條ノ七 削除
第十條ノ八中「第四條ノ二」を「第四條ノ三乃至第五條ノ二、第五條ノ五」に改める。
第十條ノ九中「第四條ノ二乃至第五條、第五條ノ二第一項、同條第二項、同條第五項、第五條ノ三、第五條ノ四、第五條ノ七、」を「第四條ノ三乃至第五條ノ二、第五條ノ六乃至」に改める。
第十條ノ十一第一項中「酒類業團體」を「酒類業組合」に改める。
第十條ノ十二乃至第十條ノ十五削除
第十條ノ十六乃至第十一條中「酒類業團體」を「酒類業組合」に改める。
第六條 清涼飮料税法の一部を次のように改正する。
第二條中「三百二十圓」を「千三百圓」に、「五百五十圓」を「二千三百圓」に、「二百圓」を「八百五十圓」に改める。
第七條 砂糖消費税法の一部を次のように改正する。
第三條中「二百八十圓」を「八百七十圓」に、「三百四十圓」を「九百圓」に、「三百五十圓」を「千五十圓」に、「三百六十圓」を「千八十圓」に、「四百六十圓」を「千四百圓」に、「八十五圓」を「三百二十五圓」に、「四百八十圓」を「千四百四十圓」に、「百二十圓」を「三百六十圓」に、「二百五十圓」を「八百五十圓」に、「百四十圓」を「四百二十圓」に、「三百十圓」を「八百五十圓」に改める。
第七條第二項中「製造場外ニ移出シ」の下に「又ハ保税地域ヨリ引取リ」を、「移出先」の下に「又ハ引取先」を加える。
第八條 織物消費税法の一部を次のように改正する。
第二條但書中「原料トスル織物」の下に「及命令ヲ以テ定ムル織物」を加える。
第九條第三項乃至第五項を削り、同條第六項中「此ノ場合ニ於テハ前三項ノ規定ヲ準用ス」を削る。
第九條 物品税法の一部を次のように改正する。
第一條第一項第一種中
「二 寫眞用ノ乾板、フイルム及感光紙
三 蓄音器及同部分品
四 蓄音器用レコード
五 樂器、同部分品及附屬品
六 雙眼鏡、隻眼鏡及同ケース
七 銃及同部分品
八 藥莢及弾丸
九 ゴルフ用具、同部分品及附屬品
十 娯樂用ノモーターボート、スカール及ヨツト
十一 撞球用具
十二 ネオン管及同變壓器
十三 喫煙用ライター及電氣マツチ
十四 乘用自動車
十五 化粧品
十六 貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒタル製品
十七 眞珠又ハ眞珠ヲ用ヒタル製品
十八 貴金屬製品又ハ金若ハ白金ヲ用ヒタル製品
十九 鼈甲製品
二十 珊瑚製品、琥珀製品、象牙製品及七寶製品
二十一 毛皮又ハ毛皮製品但シ第四十五號ニ掲グルモノヲ除ク
二十二 羽毛、羽毛製品又ハ羽毛ヲ用ヒタル製品」
を
「二 蓄音器及同部分品
三 雙眼鏡、隻眼鏡及同ケース
四 銃及同部分品
五 藥莢及彈丸
六 ゴルフ用具、同部分品及附屬品
七 娯樂用ノモーターボート、スカール及ヨツト
八 撞球用具
九 ネオン管及同變壓器
十 乘用自動車
十一 貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒタル製品
十二 眞珠又ハ眞珠ヲ用ヒタル製品
十三 貴金屬製品又ハ金若ハ白金ヲ用ヒタル製品
十四 鼈甲製品
十五 珊瑚製品、琥珀製品、象牙製品及七寶製品
十六 毛皮又ハ毛皮製品但シ第四十五號ニ掲グルモノヲ除ク
十七 羽毛、羽毛製品又ハ羽毛ヲ用ヒタル製品
乙類
十八 寫眞用ノ乾板、フイルム及感光紙
十九 蓄音器レコード
二十 樂器、同部分品及附屬品
二十一 喫煙用ライター及電氣マツチ
二十二 化粧品」
に、「乙類」を「丙類」に、「丙類」を「丁類」に、「丁類」を「戊類」に改める。
同項第一種第八十五号を次のように改める。
八十五号 削除
同項第一種第八十七号を次のように改める。
八十七 削除
第一條戊二項中「又ハ丁類」を「、丁類又ハ戊類」に、「丁類ニ該當スルモノハ之ヲ丙類トス」を「丁類又ハ戊類ノ何レカニ該當スルモノハ之ヲ丙類トシ丁類ニ該當スル物品ニシテ戊類ニ該當スルモノハ之ヲ丁類トス」に改める。
第二條第一項を次のように改める。
物品税ノ税率左ノ如シ
第一種
甲類 物品ノ價格百分ノ百
乙類 物品ノ價格百分ノ八十
丙類 物品ノ價格百分ノ五十
丁類 物品ノ價格百分ノ三十
戊類 物品ノ價格百分ノ二十
第二種
一 燐寸 千本ニ付 一圓五十錢
二 飴、葡萄糖及麥芽糖 百斤ニ付 六百圓
三 サツカリン及ヅルチン 一瓩ニ付 二千四百圓
四 蜂蜜 百斤ニ付 九百圓
第十六條ノ二第二項を削り、同條第三項中「第一項ノ規定ニ依リ」を「前項ノ規定ニ依リ」に改める。
第十九條第一項第一号中「第三項」を「第二項」に改める。
第十條 入場税法の一部を次のように改正する。
第三條第一項を次のように改める。
入場税ノ税率ハ入場料ノ百分ノ百トス
第四條第一項中「五十錢」を「一圓」に改める。
第六條ノ二第一項中「税率ノ區別ニ從ヒ」を削る。
第八條ノ二第二項を削り、同條第三項中「第一項ノ規定ニ依リ」を「前項ノ規定ニ依リ」に改める。
第十條第一項を次のように改める。
特別入場税ノ税率ハ特別入場料ノ百分ノ四十トス
第十一條第一項中「五十錢」を「一圓」に改める。
第十四條第一項中「税率ノ區別ニ從ヒ區分シテ」を削る。
第十六條ノ二第一号中「第三項」を「第二項」に改める。
第十一條 取引所税法の一部を次のように改正する。
第四條中「及日本證券取引所」を削る。
第五條 取引所(證券取引所ヲ含ム以下同シ)ニ於ケル賣買取引ニシテ差金ノ授受ニ依リテ決濟ヲ爲シ得ルモノニハ其ノ賣買各約定金高ニ對シ左ノ税率ニ依リ取引税ヲ課ス
第一種 地方債證券又ハ社債券ノ賣買取引 萬分ノ一
第二種 有價證券ノ賣買取引 萬分ノ十
第三種 商品ノ賣買取引
甲 銘柄又ハ等級別ニ相對賣買ノ方法ニ依リテ行ヒ履行期ニ於テノミ差金ノ授受ニ依リテ決濟ヲ爲シ得ル取引ニ屬スルモノ 萬分ノ一・二五
乙 其ノ他ノモノ 萬分ノ二・五
賣買ヲ解約スルモ其ノ税金ハ之ヲ免除セス
第十七條第一項中「第二十五條」の下に「第一項」を加え、「日本證券取引所法第五十四條」を「證券取引法第六十六條第一項」に改める。
第十二條 骨牌税法の一部を次のように改正する。
第四條第一項中「百圓」を「三百圓」に、「十圓」を「三十圓」に改め、同條第二項中「二圓」を「六圓」に改める。
第十三條 印紙税法の一部を次のように改正する。
第四條第一項第一号乃至第五号中「十錢」を「三十錢」に、「五十錢」を「一圓」に、「一圓」を「二圓」に、「五圓」を「十圓」に、「十圓」を「二十圓」に、「五十圓」を「百圓」に、「同百萬圓ヲ超ユルモノ 百圓」を「同百萬圓ヲ超ユルモノ 二百圓」に、同項第六号中
「記載金高三圓以下ノモノ 五錢
同五圓以下ノモノ 二十錢
同十圓以下ノモノ 六十錢
同二十圓以下ノモノ一圓二十錢」
を「記載金高二十圓以下ノモノ 一圓二十錢」に、「五錢」を「一圓二十錢」に、同項第七号中「十錢」を「二十錢」に、同項第八号乃至第三十二号中「十錢」を「三十錢」に、同項第三十三号中「二十錢」を「五十錢」に、同項第三十四号中「二圓」を「五圓」に改める。
第五條第十号中「一圓」を「十圓」に改める。
第六條ノ二中「十錢」を「三十錢」に改める。
第十一條中「又ハ科料」を削り、「十圓」を「二十圓」に、「科料」を「罰金」に改める。
第十二條中「十圓以上ノ」を「百圓以下ノ罰金又ハ」に改める。
第十四條 狩猟法の一部を次のように改正する。
第八條第一項中「綜合所得税」を「所得税年額五千圓以上」に、「二百圓」を「六百圓」に、「分類所得税年額百五十圓以上」を「所得税」に、「百二十圓」を「四百圓」に、「五十圓」を「二百圓」に改める。
第十五條 租税特別措置法の一部を次のように改正する。
第一條中「特別法人税、營業税」を「相續税、財産税」に改める。
第二條中「甲種の配當利子所得」を「公債、社債又は預金の利子」に、「分類所得税」を「所得税」に改め。同條第一号中「(日本銀行を除く。)」を削る。
第三條を削る。
第四條中「分類所得税」を「所得税」に改め、同條を第三條とする。
第五條乃至第七條を削る。
第八條中「及び營業税法による純益」を削り、同條を第四條とする。
第九條中「及び營業税法による純益」を削り、同條を第五條とする。
第六條 昭和二十年八月十四日以前に開始した相續につき相續税を納付すべき義務のある者が、相續財産(相續開始前一年以内に被相續人が贈與した財産を含む。以下同じ。)のうちに含まれてゐた財産を昭和二十一年三月三日まで引き續き有してゐた場合において、その引き續き有してゐた財産(第七條に規定する在外財産等を除く。)について財産税法第三章の規定及びこれに基いて發する命令により算定した價額の合計額が當該財産の相續開始當時における價額の合計額に比し十分の三以上減少してゐるときは、當該相續税について、命令の定めるところにより、その減少額の當該相續についての課税價格に對する割合を昭和二十年八月十五日以後に納期限の定められた相續税の税額に乘じて算出した金額に相當する税額を免除する。
前項の規定により免除された相續税の額は、財産税の課税價格の計算上、これを財産税法に規定する調査時期における財産の價額に加算する。
第七條 昭和二十年八月十五日以後に相續の開始があつた場合において、相續財産のうちに命令で定める地域外にある財産その他命令で定める財産(以下在外財産等という。)が含まれてゐるときは、命令の定めるところにより、當該在外財産等の價格を算定することができることとなるまで、當該相續についての課税價格の計算上、その價額(相續開始の時において命令で定める債務があるときは、その債務の金額を控除した金額)を相續財産の價額に算入しない。
前項の規定を適用して課税價格を計算した場合においては、政府は、在外財産等の價額を算定することができることとなつた際に、命令の定めるところにより、その課税價格を更正することができる。
第八條 昭和二十年八月十四日以前に開始した相續につき相續税を納付すべき義務のある者が、相續財産のうちに含まれてゐた在外財産等を昭和二十年八月十五日まで引き續き有してゐたときは、政府は、命令の定めるところにより、その引き續き有してゐた在外財産等の價額(同日において命令で定める債務があるときは、その債務の金額を控除した金額)の當該相續についての課税價格に對する割合を同日以後に納期限を定められた相續税額に乘じて算出した金額を限度として、相續税の徴收を猶豫することができる。
第十條乃至第十六條を削り、第十七條を第九條とし、第十八條を第十條とする。
第十六條 國税徴收法の一部を次のように改正する。
第四條ノ五 既納ノ税金過納ナルトキハ其ノ過納額ヲ未納ノ税金ニ充ツルコトヲ得
第五條 削除
第六條中「又ハ市町村」を削る。
第八條 削除
第三十一條の次に次の一章を加える。
第三章ノ二 審査、訴願及訴訟
第三十一條ノ二 租税ノ賦課徴收ニ關スル處分又ハ滯納處分ニ關シ異議アル者ハ所得税其ノ他別ニ法律ヲ以テ定ムルモノノ外當該處分アリタル日ヨリ二箇月以内ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ爲スコトヲ得
政府ハ已ムコトヲ得サル事情アリト認ムルトキハ前項ノ期限經過後ニ於テモ仍同項ノ審査ノ請求ヲ受理スルコトヲ得
第一項ノ請求ハ税金ノ徴收又ハ滯納處分ノ續行ヲ妨ケス但シ政府ハ已ムコトヲ得サル事由アリト認ムルトキハ税金ノ全部若ハ一部ノ徴收ヲ猶豫シ又ハ滯納處分ノ續行ヲ停止スルコトヲ得
第三十一條ノ三 政府ハ前條第一項ノ請求アリタルトキハ之ヲ決定シ當該請求人ニ通知スヘシ
前項ノ場合ニ於テ必要ナル事項ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十一條ノ四 前條第一項ノ決定ニ對シ不服アル者ハ訴願ヲ爲シ又ハ裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三十一條ノ二第一項ニ規定スル事件ニ關シテハ訴願又ハ訴訟ハ審査ノ決定ヲ經タル後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第十七條 納税施設法の一部を次のように改正する。
「第一章 納税團體」を削る。
第一條中「納税團體」を「納税組合」に、「團體員」を「組合員」に、「町内會部落會其ノ他ノ團體」を「組合」に改める。
第二條 納税組合ヲ組織シタルトキハ組合ノ代表者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ規約ヲ税務署長及市町村長ニ屆出ヅベシ規約ヲ變更シタルトキ亦同ジ
第三條乃至第六條中「納税團體」を「納税組合」に改める。
第六條ノ二第一項中「納税團體」を「納税組合」に、「團體員」を「組合員」に、同條第二項中「團體員」を「組合員」に改め、同條を第七條とする。
第六條ノ三第一項中「納税團體」を「納税組合」に改め、同條を第八條とする。
第六條ノ四を第九條とする。
第二章及び「第三章 納税準備預金」を削る。
第四章及び「第五章 雜則」を削る。
第二十六條中「納税團體」を「納税組合」に改め、同條を第十七條とする。
第二十七條を削る。
第二十八條中「納税團體」を「納税組合」に改め、同條を第十八條とする。
第二十九條中「納税團體」を「納税組合」に改め、同條を第十九條とする。
第三十條を第二十條とする。
第三十一條中「納税團體、法人納税金積立」を「納税組合」に改め、同條を第二十一條とする。
第十八條 間接國税犯則者処分法の一部を次のように改正する。
第一條 收税官吏ハ間接國税ニ關スル犯則事件(以下犯則事件ト稱ス)ヲ調査スル爲必要アルトキハ犯則嫌疑者若ハ參考人ニ對シ質問シ又ハ犯則嫌疑者ノ所持スル物件、帳簿、書類等ヲ檢査シ又ハ之ヲ領置スルコトヲ得
第二條 收税官吏ハ犯則事件ヲ調査スル爲必要アルトキハ其ノ所屬官署ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ得テ臨檢、搜索又ハ差押ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ急速ヲ要スルトキハ收税官吏ハ臨檢スヘキ場所、搜索スヘキ身體若ハ物件又ハ差押ヲ爲スヘキ物件ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所又は簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ得テ前項ノ處分ヲ爲スコトヲ得
收税官吏第一項又ハ前項ノ許可ヲ請求セントスルトキハ其ノ理由ヲ明示シテ之ヲ爲スヘシ
前項ノ請求アリタルトキハ地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ハ臨檢スヘキ場所、搜索スヘキ身體又ハ物件、差押ヲ爲スヘキ物件、請求者ノ官職氏名、有效期間及裁判所名ヲ記載シ自己ノ記名捺印シタル許可状ヲ收税官吏ニ交付スヘシ此ノ場合ニ於テ犯則嫌疑者ノ氏名及犯則事實明カナルトキハ裁判官ハ此等ノ事項ヲモ記載スヘシ
收税官吏ハ前項ノ許可状ヲ他ノ收税官吏ニ交付シテ臨檢、搜索又ハ差押ヲ爲サシムルコトヲ得
第三條 現ニ犯則ヲ行ヒ又ハ現ニ犯則ヲ行ヒ終リタル際ニ發覺シタル事件ニ付其ノ證憑ヲ集取スル爲必要ニシテ且急速ヲ要シ前條第一項又ハ第二項ノ許可ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ犯則ノ現場ニ於テ收税官吏ハ同條第一項ノ處分ヲ爲スコトヲ得
現ニ犯則ニ供シタル物件若ハ犯則ニ因リ得タル物件ヲ所持シ又ハ顯著ナル犯則ノ痕跡アリテ犯則アリト思料セラルル者アル場合ニ於テ其ノ證憑ヲ集取スル爲必要ニシテ且急速ヲ要シ前條第一項又ハ第二項ノ許可ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ者ノ所持スル物件ニ對シ收税官吏ハ同條第一項ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第四條中「臨檢、搜索、尋問」を「質問、檢査、領置、臨檢、搜索」に改める。
第五條中「、尋問」を削る。
第八條第一項中「現行犯ノ場合」を「第三條ノ規定ニ依ル處分ヲ爲ス場合」に改める。
第九條中「臨檢、搜索、尋問」を「質問、檢査、臨檢、搜索」に改める。
第十條中「臨檢、搜索、尋問」を「質問、檢査、臨檢、搜索」に、「又ハ尋問」を「又ハ質問」に改める。
第十二條第一項中「臨檢、搜索、尋問」を「質問、檢査、領置、臨檢、搜索」に改める。
第十八條第一項中「裁判所」を「檢察官」に改める。
第十九條ノ二 第一條ノ規定ニ依ル收税官吏ノ檢査ヲ拒ミ、妨ケ又ハ忌避シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十九條 関税法の一部を次のように改正する。
第三十二條第二項を削る。
「第五章 異議及訴願」を「第五章 審査、訴願及訴訟」に改める。
第六十一條中「二十日以内ニ文書ヲ以テ税關長ニ異議ノ申立」を「一箇月以内ニ理由ヲ具シ税關長ニ審査ノ請求」に改め、但書を削る。
第六十二條 前條ノ規定ニ依リ審査ノ請求アリタルトキハ税關長ハ文書ヲ以テ之ヲ決定シ審査請求人ニ之ヲ交付スヘシ前項ノ場合ニ於テ必要ナル事項ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十三條乃至第六十六條 削除
第六十七條中「異議ノ申立」を「審査ノ請求」に改める。
第六十八條中「判定」を「決定」に改め、「訴願」の下に「ヲ爲シ又ハ裁判所ニ出訴」ヲ加え、同條に次の一項を加える。
第六十一條ニ規定スル事件ニ關シテハ訴願又ハ訴訟ハ第六十二條第一項ノ規定ニ依ル決定ヲ經タル後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第七十六條ノ二 第八十四條ノ規定ニ依ル檢査又ハ第八十五條ノ規定ニ依ル開示ヲ拒ミ、妨ケ又ハ忌避シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ者ス
第八十二條ノ四に次の但書を加える。
但シ第七十六條ノ二ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第八十四條中「其ノ他ノ場所ニ臨檢シ搜索ヲ爲スコトヲ得」を「其ノ他ノ場所ヲ檢査スルコトヲ得」に改める。
第八十五條中「其ノ開示ヲ求メ若之ニ從ハサルトキハ身邊ノ搜索ヲ爲スコトヲ得」を「其ノ開示ヲ求ムルコトヲ得」に改める。
第八十六條中「參考人ヲ訊問」を「參考人ニ對シ質問」に改める
第八十六條ノ二 税關官吏ハ犯則事件ヲ調査スル爲必要アルトキハ其ノ所屬官署ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ得テ臨檢、搜索又ハ差押ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ急速ヲ要スルトキハ税關官吏ハ臨檢スヘキ場所、搜索スヘキ身體若ハ物件又ハ差押ヲ爲スヘキ物件ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ得テ前項ノ處分ヲ爲スコトヲ得
税關官吏第一項又ハ前項ノ許可ヲ請求セントスルトキハ其ノ理由ヲ明示シテ之を爲スヘシ
前項ノ請求アリタルトキハ地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ハ臨檢スヘキ場所、搜索スヘキ身體又ハ物件、差押ヲ爲スヘキ物件、請求者ノ官職氏名、有效期間及裁判所名ヲ記載シ自己ノ記名捺印シタル許可状ヲ税關官吏ニ交付スヘシ此ノ場合ニ於テ犯則者ノ氏名及犯則事實明カナルトキハ裁判官ハ此等ノ事項ヲモ記載スヘシ
税關官吏ハ前項ノ許可状ヲ他ノ税關官吏ニ交付シテ臨檢、搜索又ハ差押ヲ爲サシムルコトヲ得
第八十六條ノ三 現ニ犯則ヲ行ヒ又ハ現ニ犯則ヲ行ヒ終リタル際ニ發覺シタル事件ニ付其ノ證憑ヲ集取スル爲必要ニシテ且急速ヲ要シ前條第一項又ハ第二項ノ許可ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ犯則ノ現場ニ於テ税關官吏ハ同條第一項ノ處分ヲ爲スコトヲ得
現ニ犯則ニ供シタル物件若ハ犯則ニ因リ得タル物件ヲ所持シ又ハ顯著ナル犯則ノ痕跡アリテ犯則アリト思料セラルル者アル場合ニ於テ其ノ證憑ヲ集取スル爲必要ニシテ且急速ヲ要シ前條第一項又ハ第二項ノ許可ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ者ノ所持スル物件ニ對シ税關官吏ハ同條第一項ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第八十七條中「臨檢、搜索、訊問ヲ爲ス」を「質問、檢査(第八十四條ノ場合ニ限ル)、臨檢、搜索若ハ差押ヲ爲シ又ハ開示ヲ求ムル」に改める。
第九十條第一項中「犯則事件ノ調査ニ依リ發見シタル物件犯則ノ事實ヲ證明スルニ足ルヘシト思料シタルトキハ之ヲ差押ヘ」を「犯則事實ヲ證明スヘキ物件ヲ差押ヘタルトキハ」に改める。
第九十一條第一項中「臨檢搜索及物件差押」を「臨檢、搜索又ハ差押」に、「現行犯ノ場合」を「第八十六條ノ三ノ規定ニ依ル處分ヲ爲ス場合」に改め、同條第二項中「臨檢搜索又ハ物件差押」を「臨檢、搜索又ハ差押」に改める。
第九十三條第一項中「臨檢、搜索、訊問」を「質問、臨檢、搜索」に、「若ハ訊問」を「若ハ質問」に改め、同條第二項中「訊問」を「質問」に改める。
第二十條 保税工場法の一部を次のように改正する。
第七條 税關官吏ハ取締上必要アリト認ムルトキハ保税工場ニ出入スル者ニ對シ身邊ニ所持スル物件の開示ヲ求ムルコトヲ得
第十三條第二号中「搜索」を「開示」に改める。
第二十一條 税関貨物取扱人法の一部を次のように改正する。
第十一條 削除
第二十二條 税務代理士法の一部を次のように改正する。
第一條中「、營業税」を削り、「行政訴訟」を「訴訟」に改める。
第二十三條 耕地整理法の一部を次のように改正する。
第十二條 耕地整理ノ施行ニ依ル土地ノ異動ニ關シテハ土地臺帳法第十八條、第十九條、第二十一條第二項、第二十三條、第二十四條、第二十六條乃至第三十條及第三十二條乃至第三十四條ノ規定ヲ適用セス
第十三條第一項中「定ム」の下に「但シ公有水面埋立法ニ依ル埋立ヲ爲シ同法第二十四條若ハ第五十條ノ規定ニ依リ埋立地ノ所有權ヲ取得シ土地臺帳法第三條第一項ノ規定ニ依ル第一種地ト爲リタルモノニ付テハ賃貸價格ヲ除ク」を加え、同條第二項中「第十四條ノ四ノ有租地」を「前項但書ニ規定スル土地」に改め、同項但書を削る。
第十三條の二 削除
第十三條ノ三第一項中「第十三條第二項ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ配賦ヲ爲シタル土地」を「第十三條第一項ノ規定ニ依リ處分ヲ爲シタル土地」に、「七十年」を「三十年」に、「耕地整理減租年期」を「耕地整理年期」に改め、同條第二項中「地租法第九條第一項」を「土地臺帳法第十一條」に、「耕地整理減租年期地」を「耕地整理年期地」に改め、同條第三項中「地租法第九條第三項」を「土地臺帳法第十七條」に改める。
第十三條ノ四中「耕地整理減租年期地」を「耕地整理年期地」に改め、「、地類變換又は開墾」を削り、「耕地整理減租年期」を「耕地整理年期」に改める。
第十三條ノ五 削除
第十三條ノ六中「耕地整理減租年期地」を「耕地整理年期地」に改め、「滿了スル年」の下に「ノ翌年」を加え、「地租法第九條第三項」を「土地臺帳法第十七條」に、「修正シ其ノ修正ヲ爲シタル年ノ翌年分ヨリ修正賃貸價格ニ依リ地租ヲ徴收ス」を「設定又ハ修正ス」に改める。
第十四條 削除
第十四條ノ二中「無租地」を「土地臺帳法第三條第二項ノ規定ニ依ル第二種地」に、「有租地」を「同條第一項ノ規定ニ依ル第一種地」に、「地租法第九條第三項」を「同法第十七條」に改め、同條に次の一項を加える。
前項ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ設定ヲ爲シタル土地ニ付テハ設定賃貸價格ハ之ヲ土地臺帳法ニ依ル土地臺帳(以下土地臺帳ト謂フ)ニ登録セス
第十四條ノ三中「第十四條第一項又ハ」を削り、「前條」の下に「第一項」を加え「修正又ハ」を削り、「地租法第九條第一項」を「土地臺帳法第十一條」に改め、「修正賃貸價格又ハ」を削る。
第十四條ノ四を削る。
第十五條第一項中「開墾減租年期、地目變換減租年期、開拓減租年期、埋立免租年期、耕地整理減租年期、耕地整理開拓免租年期又ハ耕地整理堺立免租年期」を「耕地整理年期」に、「地租法第九條第三項」を「土地臺帳法第十七條」に改め、同條第二項及び第三項を削り、同條に次の一項を加える。
前項ノ規定ニ依リ賃貸價格ノ修正又ハ設定ヲ爲シタル土地ニ付テハ其ノ修正賃貸價格又ハ設定賃貸價格ハ之ヲ土地臺帳ニ登録セス
第十五條ノ二中「又ハ第三項」を削り、「地租法第九條第一項」を「土地臺帳法第十一條」に改め、「、前條第三項ノ設定賃貸價格ハ工事完了ノトキノ現況ニ依リ」を削る。
第十五條ノ三 第十五條第一項ノ土地ニ付テハ其ノ年期カ賃貸價格配賦前ニ滿了スル場合ニ於テハ其ノ滿了スル年ノ翌年ニ於テ同項ノ規定ニ依ル修正賃貸價格又ハ設定賃貸價格ヲ土地臺帳ニ登録ス
第十六條乃至第十六條ノ七 削除
第十六條ノ八中「第十四條第一項、第十四條ノ二、第十五條第一項、第三項、第十六條及第十六條ノ二」を「第十四條ノ二第一項及第十五條第一項」に改める。
第二十四條 森林法の一部を次のように改正する。
第十二條 削除
第二十五條 北海道國有未開地処分法の一部を次のように改正する。
第十九條 削除
第二十六條 北海道旧土人保護法の一部を次のように改正する。
第二條ノ二 削除
第二十七條 大正八年法律第三十八号(私立学校用地免租に関する法律)の一部を次のように改正する。
第一條第二号中「大藏大臣」の下に「及内務大臣」を加える。
第二條中「大藏大臣」の下に「及内務大臣」を加える。
第二十八條 昭和十四年法律第三十九号(災害被害者に対する租税の減免、徴收猶予等に関する法律)の一部を次のように改正する。
第二條中「課税標準ノ決定又ハ更訂」を「課税標準ノ計算」に改める。
第三條中「申請」の下に「(審査ノ請求ヲ含ム)」を加える。
第二十九條 左の各号に掲げる法律は、これを廃止する。
一 地租法
二 家屋税法
三 営業税法
四 鑛区税法
五 遊興飮食税法
六 大正七年法律第四十三号(地種変更免租年期に関する法律)
七 昭和二年法律第十八号(御料地拂下地の地租及び登録税免除に関する法律)
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第二條及び第十一條の規定は、政令で定める日から、第一條中特別法人税法第十四條乃至第十六條の改正規定、第三條中登録税法第十九條第四号ノ二乃至第六号及び第十九條ノ七乃至第十九條ノ十三の改正規定、第八條中織物消費税法第九條第三項乃至第六項の改正規定、第十八條中國税徴收法第三章ノ二の改正規定、第十七條中納税施設法第一章、第二章、第四章及び條五章の改正規定並びに第十八條乃至第二十一條の規定は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第二條 第一條(同條中特別法人税法第十四條乃法第十六條の改正規定を除く。)の規定は、特別の法人の各事業年度の剩余金に対する特別法人税については、昭和二十二年四月一日以後に終了する事業年度分から、清算剩余金に対する特別法人税については、同日以後の解散又は合併に因る分から、これを適用する。
特別の法人の昭和二十二年三月三十一日以前に終了した各事業年度の剩余金に対する特別法人税及び同日以前の解散又は合併に因る清算剩余金に対する特別法人税については、なお從前の特別法人税法の例による。但し、改正前の同法第十五條第一項の規定により、剩余金額を決定すべき場合においては、同項の規定にかかわらず、昭和二十二年の所得税法を改正する法律による改正前の所得税法の所得審査委員會の決議によることなく、政府において、その剩余金額を決定する。
第三條 第三條中登録税法第十九條第五号の改正規定施行の際、現に町内会部落会に属する財産の整理のため、当該財産が市町村その他政令で指定する者に移轉された場合において、当該市町村その他政令で指定する者の権利の取得の登記又は登録で当該規定施行後六箇月以内になすものに対しては、登録税を課さない。
第四條 第四條の規定施行前に課した又は課すべきであつた酒税については、なお從前の例による。
第四條の規定施行の際、製造場又は保税地域以外の場所で、酒類の製造者又は販賣業者が各種類を通じて合計四斗以上の酒類を所持する場合及びその所持する酒類が合計四斗に満たない場合でも命令で定める酒類が合計一斗以上である場合においては、その場所を製造場、その所持者を製造者とみなして、その所持する酒類に対し酒税を課する。この場合においては、同條の規定施行の日に、その酒類を製造場から移出したものとみなし、改正後の酒税法第二十七條、第二十七條ノ二又は第八十三條の規定により算出した税額と從前の規定により算出した税額との差額をその税額として、命令の定めるところにより徴收する。
前項の製造者又は販賣業者が酒場、料理店その他酒類を自己の営業場において飮料に供することを業とする者であるときは、その業務の用に供するため所持する麦酒については一石につき一万千四百円、雜酒については一石につき五万円、その他の酒類については一石につき二万円の割合により算出した金額を、前項の酒税額に加算する。
第二項の製造者又は販賣業者は、その所持する酒類の種類、級別及びアルコール分の異なるごとに数量、價格及び貯藏の場所並びに前項の規定に該当するときはその旨を、第四條の規定施行後一箇月以内に、政府に申告しなければならない。
第四條の規定施行の際、製造場に現存する酒類で、戻入又は移入したものについては、酒税法第三十八條第一項の規定にかかわらず、これを移出した時に酒税を徴收する。この場合においては、第二項後段に定める税額を、その税額とする。
第五條 第六條の規定施行前に課した又は課すべきであつた清涼飮料税については、なお從前の例による。
第六條の規定施行の際、製造場以外の場所で、同一人が第一種又は第二種を通じて合計一石以上の清涼飮料を所持する場合においては、その場所を製造場、その所持者を製造者とみなして、清涼飮料税を課する。この場合においては、同條の規定施行の日に、その清涼飮料を製造場外に移出したものとみなし、第一種の清涼飮料については一石につき九百八十円、第二種の清涼飮料については一石につき千七百五十円の割合により算出した金額をその税額として、命令の定めるところにより徴收する。
前項の清涼飮料の所持者は、その所持する清涼飮料の種別、数量及び貯藏の場所を、第六條の規定施行後一箇月以内に、政府に申告しなけれはならない。
第六條 第七條の規定施行前に課した又は課すべきであつた砂糖消費税については、なお從前の例による。
第七條の規定施行後一箇月以内に輸出した菓子、糖果その他命令で定める物品に対する砂糖消費税法第十二條ノ二の規定による交付金については、なお從前の例による。
從前の砂糖消費税法第三條の税率により消費税を課せられた砂糖、糖蜜又は糖水を原料として製造した砂糖(第三種の砂糖を除く。)、糖蜜又は糖水で、第七條の規定施行後製造場から引き取られるものについては、同法第十二條の規定にかかわらず、消費税を徴收する。この場合においては、改正後の同法第三條の税率により算出した金額と從前の同條の税率により算出した金額との差額を、その税額とする。
從前の砂糖消費税法第三條の税率により消費税を課せられた第二種乙の砂糖を以て製造した第三種の砂糖で、第七條の規定施行後製造場から引き取られるものについては、改正後の同法第三條中「三百二十五圓」とあるのは「千二十五圓」、「三百六十圓」とあるのは「千八十圓」と読み替えるものとする。
第七條の規定施行の際、製造場又は保税地域以外の場所で、同一人が各種類を通じて合計二百斤以上の砂糖、糖蜜又は糖水を所持する場合においては、その者が、同條の規定施行の日に、これを製造場から引き取つたものとみなして、消費税を課する。この場合においては、改正後の砂糖消費税法第三條の税率により算出した金額と從前の同條の税率により算出した金額との差額(第三種の砂糖については、氷砂糖は百斤につき九百四十円、その他のものは百斤につき九百六十円の割合により算出した金額)をその税額として、命令の定めるところにより徴收する。
前項の砂糖、糖蜜又は糖水の所持者は、その所持する砂糖、糖蜜又は糖水の種別、数量及び貯藏の場所を、第十條の規定施行後一箇月以内に、政府に申告しなければならない。
第七條 第九條の規定施行前に課した又は課すべきであつた物品税については、なお從前の例による。
第九條の規定施行後一箇月以内に輸出した菓子、糖果その他命令で定める物品に対する物品税法第十四條の規定による交付金については、なお從前の例による。
第九條の規定施行の際、製造場又は保税地域以外の場所で、改正後の物品税法第一條に掲げる第二種の物品の製造者若しくは販賣者又は命令で定める者が左の各号の一に該当する物品を所持する場合においては、その場所を製造場、その所持者を製造者とみなして、物品税を課する。この場合においては、同條の規定施行の日に、その物品を製造場外に移出したものとみなし、改正後の物品税法第二條の税率により算出した金額と從前の同條の税率により算出した金額との差額をその税額として、命令の定めるところにより徴收する。
一 三十万本以上の燐寸
二 飴、葡萄糖又は麦芽糖で、合計三百斤以上のもの
三 サツカリン又はヅルチンで、合計一瓩以上のもの
四 二百斤以上の蜂蜜
前項の製造者若しくは販賣者又は命令で定める者は、その所持する物品の品名ごとに数量及び貯藏の場所を、第九條の規定施行後一箇月以内に、政府に申告しなければならない。
第八條 第十二條の規定施行前に課した又は課すべきであつた骨牌税については、なお從前の例による。
第十二條の規定施行の際、骨牌の製造又は販賣をなす者の所持する骨牌については、製造又は販賣をなす者が、改正後の骨牌税法第四條の規定による税額と從前の規定による税額との差額に相当する金額を税額として、骨牌税を納めなければならない。
第九條 第十四條の規定施行の日から昭和二十三年四月十五日までに狩猟の免許を受ける者については、昭和二十一年分の綜合所得税又は増加所得税を納める者及びその家族を以て狩猟法第八條第一項に規定する一等に該当する者、分類所得税年額百五十円以上を納める者及びその家族を以て同項に規定する二等に該当する者、これらの者以外の者を以て同項に規定する三等に該当する者とみなす。
前項の分類所得税年額の算定について必要な事項は、命令でこれを定める。
第十條 昭和二十一年分以前の甲種及び乙種の事業所得、山林の所得及び個人の総所得に対する所得税、増加所得税、個人の昭和二十一年分以前の営業税、法人の昭和二十二年三月三十一日以前に終了した各事業年度の普通所得、超過所得及び資本に対する法人税及び純益に対する営業税、法人の同日以前の解散又は合併に因る清算所得に対する法人税及び清算純益に対する営業税又は特別の法人の同日以前に終了した各事業年度の剩余金に対する特別法人税及び同日以前の解散又は合併に因る清算剩余金に対する特別法人税の軽減又は免除並びにこれらの租税の課税標準の計算、徴收又は納税積立金若しくは納税準備預金の特例に関しては、なお從前の租税特別措置法の例による。
第十一條 第十六條(同條中國税徴收法第三章ノ二の改正規定を除く。)の規定施行前に市町村のなした納税の告知に係る國税の徴收及び税金送付に関する市町村の責任並びに徴收の費用として市町村に対し交付すべき交付金については、なお從前の例による。
第十二條 第十七條中納税施設法第一章、第二章、第四章及び第五章の改正規定の施行前納税團体たる町内会部落会が管理していた納税資金又は納税團体たる町内会部落会に対し國税その他の租税公課の納付を委託して交付した金銭等が当該規定施行前に亡失したため被害を受けた團体員に対する國税の軽減又は免除及びこの場合における町内会部落会の役員、使用人等の賠償の責任については、なお從前の例による。
法人の昭和二十二年三月三十一日以前に終了した事業年度分に係る從前の納税施設法第七條第一項に規定する租税に関する納税積立金については、なお從前の例による。
第十三條 第十八條及び第十九條の規定施行の際、從前の間接國税犯則者処分法第一條又は從前の関税法第九十條第一項の規定による差押中の物件がある場合において、收税官吏又は税関官吏がその差押につき第十八條及び第十九條の規定施行後十日以内にその所属官署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許可を受けたときは、当該差押は、これを政正後の間接國税犯則者処分法第二條第一項又は改正後の関税法第八十六條ノ二第一項の規定による差押とみなす。
前項の規定は、第十八條及び第十九條の規定施行の際、從前の間接國税犯則者処分法第一條又は從前の関税法第九十條第一項の規定を準用する他の法律による差押中の物件がある場合について、これを準用する。
改正後の間接國税犯則者処分法第二條第三項及び第四項又は改正後の関税法第八十六條ノ二第三項及び第四項の規定は、第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定により裁判官の許可を受ける場合に、これを準用する。
第十四條 第二十三條の規定施行の際現に從前の耕地整理法による耕地整理減租年期、耕地整理開拓免租年期又は耕地整理埋立免租年期を有する土地は、その残年期間に限り(その残年期間が昭和四十四年までに満了しないものについては、同年までは)、改正後の同法による耕地整理年期を有するものとみなす。
第二十三條の規定施行の際現に從前の耕地整理法による耕地整理開墾減租年期若しくは耕地整理地目変換減租年期を有する土地又は從前の同法第十四條第一項の規定により賃貸價格を修正し、第二十三條の規定施行の際まだ從前の同法第十四條第二項に規定する年期を許可されていなかつた土地に関しては、改正後の同法第十三條第二項の規定による現賃貸價格の計算については、從前の同法第十四條第一項の規定による賃貸價格の修正がなかつたものとみなす。
第二十三條の規定施行の際現に從前の耕地整理法第十六條の規定により配当金を有する土地があるときは、その賃貸價格については、同條の年期の残年期間の満了するまで(その残年期間が昭和四十四年までに満了しない場合においては、同年まで)は、その期間中に当該土地の異動に因り賃貸價格を修正することとなつた場合を除く外、なお從前の同法の例による。
前項の土地の賃貸價格は、同項の期間が満了した年の翌年において、これを修正する。この場合においては、その期間が満了した時における賃貸價格に從前の耕地整理法第十六條の規定による配当金を加えたものを以て、その土地の賃貸價格とする。
第十五條 第二十九條第一号乃至第四号の規定は、法人の各事業年度の純益に対する営業税については、昭和二十二年四月一日以後に終了する事業年度分から、清算純益に対する営業税については、同日以後における解散又は合併に因る分から、個人の営業税並びに地租及び家屋税については、昭和二十二年分から、鑛区税については、昭和二十三年分から、それぞれこれを適用する。
法人の昭和二十二年三月三十一日以前に終了した各事業年度の純益又は同日以前の解散若しくは合併に因る清算純益に対する営業税、昭和二十一年分以前の個人の営業税、地租及び家屋税並びに昭和二十二年分以前の鑛区税については、なお從前の地租法、家屋税法、営業税法又は鑛区税法の例による。但し、從前の営業税法第十七條第二項又は第二十二條第一項の規定により純益金額を決定すべき場合においては、これらの規定にかかわらず、昭和二十二年の所得税法を改正する法律による改正前所得税法の所得調査委員会又は所の得審査委員会の調査又は決議によることなく、政府において、その純益金額を決定する。
第二十九條第三号の規定施行の際、他の法令(地方税法及び地方分與税法並びにこれらに基く命令を除く。)中「営業税法」とあるのは「地方税法」、「営業税」又は「営業收益税」とあるのは「地方税法による営業税」、「営業税法による純益」とあるのは、「地方税法による営業の純益」、「営業税の附加税」とあるのは「地方税法による営業税、営業税附加税及び営業税割」と読み替えるものとする。
第十六條 附則第十四條及び第十五條に規定するものの外、第二十三條乃至第二十七條並びに第二十九條第一号、第六号及び第七号の規定の施行に関し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第十七條 改正後の税務代理士法第一條の期定中「訴訟」とあるのは、日十國憲法施行の日までは、「行政訴訟」と読み替えるものとする。
第十八條 第二條、第三條(同條中登録税法第十九條第四号ノ二乃至第六号及び第十九條ノ七乃至第十九條ノ十三の改正規定を除く。)、第八條(同條中織物消費税法第九條第三項乃至第六項の改正規定を除く。)、第十條、第十一條、第十三條及び第二十九條第五号の規定施行前に課すべきであつた有價証券移轉税、登録税、織物消費税、入場税、特別入場税、取引所税、印紙税及び遊興飮食税については、なお從前の例による。
第十九條 第三條中登録税法第十九條ノ七乃至第十九條ノ十三の改正規定、第八條中織物消費税法第九條第三項乃至第六項の改正規定及び第十九條の規定施行の際、從前の登録税法第十九條ノ七第一項、從前の織物消費税法第九條第三項又は從前の関税法第六十一條の規定により、課税標準の評價の請求又は織物の評定價格若しくは関税の賦課に関する異議の申立中であるときは、当該評價の請求又は異議の申立は、これを改正後の國税徴收法第三十一條ノ二第一項又は改正後の関税法第六十一條の規定による審査の請求とみなす。
第二十條 この法律による他の法律の廃止又は改正前になした行爲に関する罰則の適用については、なお從前の例による。
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土地台帳法案
土地台帳法目次
第一章 総則
第二章 賃貸價格の調査及び決定
第三章 土地の異動
第一節 第一種地及び第二種地の轉換
第二節 分筆及び合筆
第三節 地目変換
第四章 審査、訴願及び訴訟
第五章 雜則
第六章 罰則
土地台帳法
第一章 総則
第一條 この法律の施行地にある土地については、その状況を明確に把握し、地租の課税標準たる土地の賃貸價格の均衡適正を図るため、この法律の定めるところにより、土地台帳に必要な事項の登録を行う。
第二條 土地は、これを第一種地及び第二種地以外の土地とする。
第三條 第一種地は、第二項に規定する土地以外の土地をいう。
第二種地は、左に掲げる土地をいう。但し第二号乃至第六号に掲げる土地で有料借地たるものを除く。
一 都道府縣又は市町村の所有する土地
二 國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体において公用又は公共の用に供する土地
三 墳墓地
四 公衆用道路、鉄道用地、軌道用地、運河用地
五 用惡水路、溜池、堤塘、井溝
六 保安林
七 その他命令で定めるもの
第四條 土地には、一筆ごとに地番を附し、その地目、地積及び賃貸價格を定める。但し、第二種地については、賃貸價格は、これを定めない。
第五條 政府は、土地台帳を備え、左の事項を登録する。
一 土地の所在
二 地番
三 地目
四 地積
五 賃貸價案格
六 所有者の住所及び氏名又は名称
七 質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地についてはその質権者又は地上権者の住所及び氏名又は名称
この法律の定めるものの外、土地台帳に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六條 地番は、市町村、大字、字又はこれに準ずべき地域を以て地番区域とし、その区域ごとに起番して、これを定める。
第七條 第一種地の地目は、田、畑、宅地、塩田、鑛泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雜種地に区別して、これを定める。
第二種地の地目は、第三條第二項第三号乃至第六号の土地にあつては、各各その区別により、その他の土地にあつては、その現況により適当に区別して、これを定める。
第八條 地積は、左の各号の規定により、これを定める。
一 宅地及び鑛泉地の地積は、平方メートルを單位としてこれを定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、これを切り捨てる。
二 宅地及び鑛泉地以外の土地の地積は、アールを單位としてこれを定め一アールの百分の一未満の端数は、これを切り捨てる。但し、一筆の地積が一アールの百分の一未満のものについては、一アールの一万分の一未満の端数は、これを切り捨てる。
第九條 賃貸價格は、貸主が一公租公課、修繕費その他土地の維持に必要な経費を負担する條件でこれを賃貸する場合において貸主の收得すべき一年分の金額により、これを定める。
第十條 土の異動があつた場合においては、地番、地目、地積及び賃貸價格は土地所有者の申告により、申告がないとき若しくは申告を不相当と認めるとき又は申告を要しないときは、政府の調査により、政府がこれを定める。
第二章 賃貸價格の調査及び決定
第十一條 賃貸價格は、十年ごとに、一般にこれを改定する。
第十二條 賃貸價格を一般に定める場合においては、その賃貸價格は、これを定める年の前前年四月一日現在の賃貸價格の定のある土地につき、各地目ごとに土地の状況が類似する区域を一区域とし、その区域内において標準となるべき賃貸價格によつて、これを定める。
前項の標準となるべき賃貸價格の算定に関する事項は、命令でこれを定める。
第十三條 前條第一項の区域及びその区域内において標準となるべき賃貸價格は、土地賃貸價格調査委員会に諮問して、政府がこれを定める。
土地賃貸價格調査委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十四條 政府は、前條第一項の規定により第十二條第一項の区域及びその区域内において標準となるべき賃貸價格を定めたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
市町村長は、前項の通知を受けたときは、二十日間関係者の縱覽に供しなければならない。縱覽期間は、予めこれを公示しなければならない。
第十五條 賃貸價格を一般に定める年の前前年四月二日以後賃貸價格を一般に定めるまでの間において異動があつた土地については、一般に定める賃貸價格は第十二條及び第十三條第一項の規定にかかわらず、第十七條又は第三十條の例に準じ、政府の調査により、政府がこれを定める。
第十六條 この法律に定めるものの外、一般の賃貸價格の改定に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十七條 第十一條の規定により一般に賃貸價格を定める場合及び第三十條の規定により賃貸價格を定める場合を除く外、賃貸價格を設定し又は修正する必要があるときは、類地の賃貸價格に比準し、その土地の品位及び状況に應じて、これを定める。
第三章 土地の異動
第一節 第一種地及び第二種地の轉換
第十八條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたとき又は第二種地が第一種地となつたときは、土地所有者は、一箇月以内に、これを政府に申告しなければならない。
第十九條 第一種地が第二種地となつたときは、土地所有者は その旨を政府に申告しなければならない。但し、これに関し予め他の法令に基き政府の許可を受け若しくは申告をなしたもの又は官公署において公示したものについては、この限りでない。
第二十條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは 當該地番区域内における最終の地番を追い、順次にその地番を定める。但し、特別の事情があるときは、適宜の地番を定めることができる。
第二十一條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、直ちにその地目を設定する。
第二種地が第一種地となり又は第一種地が第二種地となつたときは、直ちにその地目を修正する。
第二十二條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、直ちにこれを測量して、その地積を定める。
第二種地が第一種地となつたときは、直ちにその地積を改測する。但し、政府において、その地積に異動がないと認めるときは、これを省略することができる。
第二十三條 あらたに土地台帳に登録すべき土地が第一種地に該当するとき又は第二種地が第一種地をなつたときは、直ちにその賃貸價格を設定する。
第二十四條 第一種地が第二種地となつたときは、命令の定めるところにより、当該土地の土地台帳に登録された賃貸價格を抹消する。
第二節 分筆及び合筆
第二十五條 この法律において分筆とは、一筆の土地を数筆の土地とすることをいい、合筆とは、数筆の土地を一筆の土地とすることをいう。
第二十六條 分筆又は合筆をしようとするときは、土地所有者は、これを政府に申告しなければならない。
第二十七條 一筆の一部が左の各号の一に該当するに至つたときは、前條の申告がない場合においても、政府は、その土地を分筆する。
一 別地目となるとき
二 第一種地が第二種地となり又は第二種地が第一種地となるとき
三 所有者を異にするとき
四 質権又は百年より長い存続期間の定のある地上権の目的となるとき
五 地番区域を異にするとき
第二十八條 分筆した土地については、分筆前の地番に符号を附して、各筆の地番を定める。
合筆した土地については、合筆前の地番中の首位のものを以て、その地番とする。
特別の事情があるときは、前二項の規定にかかわらず、適宜の地番を定めることができる。
第二十九條 分筆をしたときは、測量して各筆の地積を定める。
合筆をしたときは、合筆前の各筆の地積を合算したものを以て、その地積とする。
第三十條 分筆をしたときは、各筆の品位及び状況に應じ、分筆前の賃貸價格を配分して、その賃貸價格を定める。
合筆をしたときは、合筆前の各筆の賃貸價格を合算したものを以て、その賃貸價格とする。
第三節 地目変換
第三十一條 この法律において地目変換とは、第一種地の各地目を変更することをいう。
第三十二條 地目変換をなしたときは、土地所有者は、一箇月以内に、これを政府に申告しなければならない。
第三十三條 地目変換をなしたときは、直ちにその地目及び賃貸價格を修正する。
第三十四條 政府は、地目変換に因り賃貸價格を修正する場合において必要があると認めるときは、その地積を改測する。
第四章 審査、訴願及び訴訟
第三十五條 自己の所有する土地について適用されるべき第十三條第一項の規定により定められた賃貸價格につき異議のある者は、第十四條第二項の縱覽期間満了の日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
第三十六條 政府は、前條の請求があつたときは、これを決定し、当該請求人に通知しなければならない。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第三十七條 前條第一項の決定に対し不服のある者は、訴願をなし又は裁判所に出訴することができる。
第三十五條に規定する事件に関しては、訴願又は訴訟は、前條第一項の決定を経た後でなければこれをなすことができない。
第五章 雜則
第三十八條 政府は、土地台帳に登録すべき事項につき異動があつたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
第三十九條 政府は、土地の異動に因り地番、地目、地積又は賃貸價格を土地台帳に登録したとき又は登録を変更したときは、土地所在の市町村を経由し、土地所有者(質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地については、当該質権者又は地上権者)に通知しなければならない。
第四十條 第十八條又は第三十二條の規定により申告をなすべき場合において、第十八條又は第三十二條に定める申告期限内に土地所有者の変更があつたときは、旧所有者がなすべき申告で所有者の変更があつた時にまだなしていなかつたものは、所有者の変更があつた日から一箇月以内に、新所有者からこれをなさなければならない。
第四十一條 この法律により土地所有者からなすべき申告は、質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地については、土地台帳に登録された質権者又は地上権者から、これをなさなければならない。
第四十二條 当該官吏は、調査上必要があるときは、土地の檢査をなし又は土地の所有者、質権者又は地上権者その他利害関係人に対して、質問をなすことができる。
第四十三條 町村組合で町村の事務の全部又は役場事務を共同処理するものは、この法律の適用については、これを一町村、その組合管理者は、これを町村長とみなす。
東京都の区の存する区域又は市制第六條若しくは第八十二條第一項の規定により指定された市においては、この法律中市に関する規定は区に、市長に関する規定は区長に、これを適用する。
町村制を施行しない地においては、この法律中町村に関する規定は町村に準ずるものに、町村長に関する規定は町村長に準ずるものに、これを適用する。
第四十四條 この法律は、國有地には、これを適用しない。
第六章 罰則
第四十五條 第四十二條の規定による土地の檢査を拒み、防げ又は忌避した者は、これを五百円以下の罰金に処する。
第四十六條 賃貸價格の調査若しくは審査の事務に從事し又は土地賃貸價格調査委員会の議事に参加した者がその調査、審査又は議事に関し知り得た祕密を漏らしたときは、これを五千円以下の罰金に処する。
第四十七條 第十八條、第三十二條又は第四十條の規定により申告をなすべき義務のある者がその申告をしないときは、これを二百円以下の過料に処する。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 地租法による土地台帳は、これをこの法律による土地台帳とみなす。
第三條 この法律施行前の土地の異動で、この法律施行の際まだ地租法による賃貸價格の設定又は修正その他の処分の確定していなかつたものについては、この法律中にこれらに関する地租法の規定に相当する規定があるときは、この法律を適用する。
第四條 地租法による申告で、この法律中にこれに関する地租法の規定に相当する規定があるときは、これをこの法律による申告とみなす。
この法律施行前になした地租法による開墾の成功又は地類変換の申告は、これをこの法律による地目変換の申告とみなす。
第五條 地積は、第八條の規定にかかわらず、当分の間、左の各号の規定により、これを定める。
一 宅地及び鑛泉地の地積は、六尺平方を坪、坪の十分の一を合、合の十分の一を勺として、これを定め、勺未満の端数は、これを切り捨てる。
二 宅地及び鑛泉地以外の土地の地積は、六尺平方を歩、三十歩を畝、十畝を段、十段を町として、これを定め、歩未満の端数は、これを切り捨てる。但し、一筆の地積が一歩未満のものについては、歩の十分の一を合、合の十分の一を勺として、これを定め、勺未満の端数は、これを切り捨てる。
第六條 この法律は、伊豆七島の土地に関しては、当分の間、これを適用しない。
第七條 地租法により賃貸價格を定むべき旨の定のある土地で、この法律により賃貸價格を定むべき旨の定のないこととなつたものについては、土地所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
第八條 地租法により賃貸價格を定むべき旨の定のない土地(免租年期を許可された土地を除く。)で、この法律により賃貸價格を定むべき旨の定のあることとなつたものについては、当該土地の所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
前項の規定に該当する土地については、政府は、その土地の現況により地目の修正、地積の改測又は賃貸價格の設定を行う。
第九條 地租法第十九條の規定による開拓減租年期、同法第二十條の規定による埋立免租年期、同法第三十六條の規定による開墾減租年期、同法第四十六條の規定による地目変換減租年期又は同法第五十五條の規定による荒地免租年期の許可を受けた土地でこの法律施行の際まだ期間の満了していないものについては、当該土地の所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
前項の規定に該当する土地については、政府は、その土地の現況により、地目の修正、地積の改測又は賃貸價格の設定若しくは修正を行う。
第十條 前條の規定は、この法律施行の際現に地租法及び耕地整理法以外の法律により一定の期間賃貸價格について特別の取扱を受けている土地(一定の期間地租を免せられたことに因り賃貸價格について特別の取扱を受けている土地を含む。)その他これに準ずる土地で命令で定めるものについて、これを準用する。
第十一條 土地の第一囘の一般の賃貸價格の改定は、昭和二十五年一月一日において、これを行う。
第十二條 この法律に定めるものを除く外、この法律の施行に関して必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三條 日本國憲法施行の日までは、この法律中「政令」とあるのは「勅令」、「裁判所」とあるのは「行政裁判所」と読み替えるものとする。
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家屋台帳法案
家屋台帳法目次
第一章 総則
第二章 賃貸價格の調査及び決定
第三章 家屋の異動
第四章 審査、訴願及び訴訟
第五章 雜則
第六章 罰則
家屋台帳法
第一章 総則
第一條 この法律の施行地にある家屋については、その状況を明確に把握し、家屋税の課税標準たる賃貸價格の均衡適正を図るため、この法律の定めるところにより、家屋台帳に必要な事項の登録を行う。
第二條 この法律において家屋とは、住家、店舗、工場、倉庫その他の建物をいう。
第三條 家屋には、一個ごとに家屋番号を附し、その床面積及び賃貸價格を定める。
前項の場合において、附属家屋があるときは、これを合せたものを以て、一個の家屋とみなす。
一個の家屋のうちに所有者を異にする部分があるときは、各別にこれを一個の家屋とみなし、前二項の規定を適用する。
床面積の計算に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四條 左に掲げる家屋については、賃貸價格を定めない。但し、第二号乃至第五号に掲げる家屋で有料借家たるものは、この限りでない。
一 都道府縣又は市町村の所有する家屋
二 國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体の公用又は公共の用に供する家屋
三 國宝保存法又は史蹟名勝天然記念物保存法により國宝又は史蹟若しくは名勝として指定された家屋
四 私立の幼稚園、中学校、高等女学校、実業学校、專門学校、高等学校及び大学並びに命令で定めるその他の私立学校において直接に保有又は教育の用に供する家屋
五 宗教法人令による宗教法人の神社、寺院又は教会の用に供する家屋
六 その他命令で定める家屋前條第三項の規定は、一個の家屋のうちに賃貸價格を定める部分と賃貸價格を定めない部分がある場合に、これを準用する。
第五條 政府は、家屋台帳を備え、左の事項を登録する。
一 家屋の所在
二 家屋番号
三 種類、構造及び床面積
四 賃貸價格
五 所有者の住所及び氏名又は名称
この法律に定めるものの外、家屋台帳に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六條 賃貸價格は、貸主が公租公課、修繕費その他家屋の維持に必要な経費を負担する條件でこれを賃貸する場合において貸主の收得すべき一年分の金額により、これを定める。
第二章 賃貸價格の調査及び決定
第七條 賃貸價格は、五年ごとに、一般にこれを改定する。
第八條 賃貸價格を一般に定める場合においては、その賃貸價格の調査は、これを定める年の前前年四月一日現在の賃貸價格の定のある家屋につき、これを行う。
第九條 一般に定める賃貸價格は、第十條に規定する場合を除く外、家屋賃貸價格調査委員会に諮問して、政府がこれを定める。
家屋賃貸價格調査委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十條 賃貸價格を一般に定める年の前前年四月二日以後賃貸價格を一般に定めるまでの間において異動した家屋については、一般に定める賃貸價格は、第十三條第一項又は第十七條の例に準じ、政府の調査により、政府がこれを定める。
第十一條 政府は、第九條第一項又は前條の規定により賃貸價格を定めたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
市町村長は、前項の通知を受けたときは、二十日間関係者の縱覽に供しなければならない。縱覽期間は、予めこれを公示しなければならない。
第十二條 この法律に定めるものの外、一般の賃貸價格の改定に関し必要な事項は、命令でこれる定める。
第十三條 第十五條の規定に依り賃貸價格を定める場合においては、その賃貸價格は、類似の家屋の家屋台帳に登録された賃貸價格に比準し、その家屋の状況に應じて、これを定める。
前項の場合においては、床面積及び賃貸價格は、家屋所有者の申告により、申告がないとき又は申告を不相当と認めるときは、政府の調査に依り、政府がこれを定める。
第三章 家屋の異動
第十四條 家屋を建築したとき、賃貸價格の定のない家屋が賃貸價格を定むべきものとなつたとき、賃貸價格の定のない家屋の一部が賃貸價格を定むべきものとなつたとき又は家屋を増築したときは、家屋所有者は、命令の定めるところにより、一箇月以内にその旨を政府に申告しなければならない。但し、建築又は増築した家屋が第四條第一項の規定により賃貸價格を定めない家屋に該当するものであるときは、この限りでない。
第十五條 家屋を建築したとき、賃貸價格の定のない家屋が賃貸價格を定むべき家屋となつたとき、賃貸價格の定のない家屋の一部が賃貸價格を定むべきものとなつたとき又は家屋を増築したときは、政府は、直ちにその賃貸價格を定める。
前項の規定は、家屋が損壞し家屋所有者がその旨を申告した場合について、これを準用する。
第十六條 家屋につき、左の各号の一に該当する事由を生じたときは、家屋所有者は、命令の定めるところにより、その旨を政府に申告しなければならない。
一 一個の家屋が数個の家屋となつたとき
二 数個の家屋が一個の家屋となつたとき
三 賃貸價格の定のある家屋の一部が賃貸價格を定めない家屋となつたとき
四 家屋の一部が所有者を異にするに至つたとき
第十七條 家屋が前條各号の一に該当するときは、命令の定めるところにより、從前の賃貸價格を配分又は合算して、その賃貸價格を定める。
第十八條 家屋が滅失したとき又は賃貸價格を定めない家屋が賃貸價格の定のない家屋となつたときは、政府は、家屋所有者の申告により、直ちにその家屋について、家屋台帳に登録された事項を抹消する。
第四章 審査、訴願及び訴訟
第十九條 自己の所有する家屋について第九條第一項又は第十條の規定により定められた賃貸價格につき異議がある者は、第十一條第二項の縱覽期間満了の日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
第二十條 政府は、前條の請求があつたときは、これを決定し、当該請求人に通知しなければならない。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第二十一條 前條第一項の決定に対し不服のある者は、訴願をなし又は裁判所に出訴することができる。
第十九條に規定する事件に関しては、訴願又は、訴訟は前條第一項の決定を経た後でなければ、これをなすことができない。
第五章 雜則
第二十二條 政府は、家屋台帳に登録すべき事項につき異動があつたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
第二十三條 政府は、家屋の異動に因り、家屋番号、種類、構造、床面積又は賃貸價格を家屋台帳に登録したとき又は登録を変更したときは、家屋所在の市町村を経由し、家屋所有者に通知しなければならない。
第二十四條 当該官吏は、調査上必要があるときは、家屋の所有者、占有者その他利害関係人に対して、質問をなし又は日出から日沒までの間家屋の檢査をなすことができる。
第二十五條 町村組合で町村の事務の全部又は役場事務を共同処理するものは、この法律の適用については、これを一町村、その組合管理者は、これを町村長とみなす。
東京都の区の存する区域又は市制第六條若しくは第八十二條第一項の規定により指定された市においては、この法律中市に関する規定は区に、市長に関する規定は区長に、これを適用する。
町村制を施行しない地においては、この法律中町村に関する規定は町村に準ずるものに、町村長に関する規定は町村長に準ずるものに、これを適用する。
第二十六條 この法律は、國有の家屋には、これを適用しない。
第六章 罰則
第二十七條 第二十四條の規定による家屋の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者は、これを五百円以下の罰金に処する。
第二十八條 賃貸價格の調査若しくは審査の事務に從事し又は家屋賃貸價格調査委員会の議事に参加した者がその調査、審査又は議事に関し知り得た祕密を漏らしたときは、これを五千円以下の罰金に処する。
第二十九條 第十四條の規定により申告をなすべき義務のある者がその申告をしないときは、これを二百円以下の過料に処する。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 家屋税法による家屋台帳は、これをこの法律による家屋台帳とみなす。
第三條 この法律施行前の家屋の異動で、この法律施行の際において、まだ家屋税法による賃貸價格の決定又は修正その他の処分の確定していなかつたものについては、この法律中にこれらに関する家屋税法の規定に相当する規定があるときは、この法律を適用する。
第四條 家屋税法による申告で、この法律中にこれに関する家屋税法の規定に相当する規定があるときは、これをこの法律による申告とみなす。
第五條 第四條第一項の規定により賃貸價格を定めない家屋については、当分の間、第三條、第五條及び第十六條の規定は、これを適用しない。
第六條 家屋税法により賃貸價格を定むべき旨の定のない家屋で、この法律により賃貸價格を定むべき旨の定のあることとなつたものについては、当分の間、命令の定めるところにより、第三條、第五條及び第十六條の規定は、これを適用しないことができる。
第七條 家屋税法により賃貸價格を定むべき旨の定のある家屋で、この法律により賃貸價格を定むべき旨の定のないこととなつたものについては、家屋所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
第八條 家屋の第一回の一般の賃貸價格の改定は、昭和二十七年一月一日において、これを行う。
第九條 日本國憲法施行の日までは、この法律中「政令」とあるのは、「勅令」、「裁判所」とあるのは、「行政裁判所」と、読み替えるものとする。
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地方税法の一部を改正する法律案
地方税法の一部を次のように改正する。
地方税法目次中「第一節 府縣税第一款 附加税第二款獨立税」を「第一節府縣税」に改める。
第一條第三項中「、府縣參事會」及び「、北海道參事會」を削り、「北海道廳長官」を「北海道知事」に改め、同條第四項中「東京都」の下に「及特別市」を加え、同條第五項中「、府縣參事會」を削り、「東京都、東京都税、東京都民税、東京都長官、東京都吏員、東京都參事會又ハ東京都條例」を「東京都若ハ特別市、東京都税若ハ特別市税、東京都民税若ハ特別市民税、東京都知事若ハ特別市長、東京都吏員若ハ特別市吏員又ハ東京都條例若ハ特別市條例」に改め、同條第六項中「又ハ北海道」及び「又ハ北海道廳長官」を削り、「東京都長官」を「東京都知事」に改める。
第二條中「國税附加税」を削る。
第七條 数府縣ニ於テ營業所ヲ設ケテ營業ヲ爲ス者ニ賦課スル營業税ノ課税標準タルベキ純益金額ノ總額ハ主タル營業所所在地ノ府縣知事之ヲ決定スベシ
數府縣ニ於テ營業所ヲ設ケテ營業ヲ爲ス者ニ關係府縣ニ於テ賦課スル營業税ノ課税標準タルベキ純益金額ハ前項ノ府縣知事ノ定ムル所ニ依ル
第一項ノ府縣知事純益金額ノ總額ヲ決定シタルトキハ直ニ前項ノ規定ニ依リ關係府縣ニ於テ賦課スル營業税ノ課税標準タルベキ純益金額ヲ定メ之ヲ關係府縣知事(第一項ノ府縣知事ヲ除ク以下本條中同ジ)ニ通知スベシ
關係府縣知事ニ於テ第二項ノ規定ニ依リ第一項ノ府縣知事ノ定メタル純益金額ニ異議アルトキハ内務大臣純益金額ヲ定ム
前項ノ異議ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ之ヲ申出ヅベシ
内務大臣第四項ノ異議ノ申出ヲ受理シタルトキハ三月以内ニ之ヲ決定スベシ
内務大臣特別ノ必要アリト認ムルトキハ第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ第一項ノ府縣知事ノ定メタル純益金額ノ總額又ハ純益金額ヲ更正スルコトヲ得
第八條第一項第二号及び第三号中「當該府縣ノ本税額」を「純益金額」ニ基ク當該府縣ノ税額」に改め、同條第三項中「及大藏大臣」を削り、同條第四項中「第四項及第五項」を「第五項及第六項」に改める。
第九條 鑛區若ハ砂鑛區又ハ漁場ガ數市町村ニ亙ル場合ニ關係市町村ニ於テ賦課スル鑛區税附加税又ハ漁業權税附加税ノ課税標準タルベキ本税額ハ鑛區若ハ砂鑛區又ハ漁場ノ面積ニ依リ本税ヲ按分シタルモノニ依ル
第十一條第一項を次のように改める。法人ノ營業税(營業税割ヲ含ム)ノ賦課率ハ
法人ノ事業年度終了ノ日又ハ合併若ハ解散ノ日ノ屬スル年度ノ賦課率ニ依ル
同條第二項に次の但書を加える。
但シ法人ノ營業税附加税ノ賦課率ハ法人ノ事業年度終了ノ日又ハ合併若ハ解散ノ日ノ屬スル年度ノ賦課率ニ依ル。
第十二條第一項第二号中「勅令」を「政令」に、同項第三号中「勅令」を「政令」に「家屋」を「土地、家屋」に改め、同項第五号を削る。
第十七條中「官吏若ハ」を削る。
第二十條第二項中「第四十八條ノ六」を「第四十五條ノ五」に改め、同條第四項及び第五項中「行政裁判所」を「裁判所」に改め、同條第六項中「府縣制第百二十八條及第百二十八條ノ二」を「地方自治法第二百五十七條」に改める。
第二十一條第一項中「官吏若ハ」を削る。
第二十三條第一項中「官吏若ハ」を削り、同條第二項及び第三項中「行政裁判所」を「裁判所」に改め、同條第六項中「府縣制第三十八條、第百二十八條及第百二十八條ノ二」を「地方自治法第六十六條第三項及び第二百五十七條」に改める。
第二十四條第一項第三号中「帝國」を「本邦」に改める。
第二十五條第一項中「地方税」を「市町村税」に改め、同條第二項中「府縣制第百二十八條及第百二十八條ノ二」を「地方自治法第二百五十七條」に改める。
第二十八條中「府縣参事會」を「府縣會」に改める。
第三十四條第一項中「帝國」を「本邦」に改める。
第三十六條第四項中「府縣制第百二十八條ノ二第二項」を「地方自治法第二百五十七條第三項」に改める。
第三十九條中「官吏若ハ」を削る。
第四十條第四項中「府縣制第百二十八條ノ二第二項」を「地方自治法第二百五十七條第三項」に改める。
第四十三條第一項中「官吏若ハ」及び「官吏又ハ」を削る。
第二章第一節中「第一款 附加税」及び第四十四條乃至第四十七條並びに「第二款 獨立税」を削る。
第四十八條第一項を次のように改める。
獨立税トシテ課スルコトヲ得ベキ府縣税左ノ如シ
一 府縣民税
二 地租
三 家屋税
四 營業税
五 鑛區税
六 船舶税
七 自動車税
八 軌道税
九 電話加入權税
十 電柱税
十一 不動産取得税
十二 漁業權税
十三 狩獵者税
十四 藝妓税
十五 遊興税
十六 入湯税
同條を第四十四條とする。
第四十八條ノ二を第四十五條とする。
第四十八條ノ三第一項中「四月」を「十月」に改め、同條を第四十五條ノ二とする。
第四十八條ノ四中「六十圓」を「百二十圓」に、「第四十八條ノ二」を「第四十五條」に改め、同條を第四十五條ノ三とする。
第四十八條ノ五を第四十五條ノ四、第四十八條ノ六を第四十五條ノ五とする。
第四十六條 地租ハ土地ニ對シ土地臺帳法ニ依ル土地臺帳ニ登録セラレタル賃貸價格ヲ標準トシテ其ノ所在ノ府縣ニ於テ其ノ所有者(質權又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ定アル地上權ノ目的タル土地ニ付テハ其ノ質權者又ハ地上權者)ニ之ヲ課ス
前項ノ場合ニ於テハ土地臺帳ニ所有者、質權者又ハ地上權者トシテ登録セラレタル者ヲ以テ夫々其ノ土地ノ所有者、質權者又ハ地上權者ト看做ス
第四十六條ノ二 地租ノ賦課期日ハ四月一日トス但シ特別ノ必要アル場合ニ於テハ内務大臣ノ許可ヲ受ケ之ヲ變更スルコトヲ得
第十條第一項及第二項ノ規定ハ地租ニ付テハ之ヲ適用セズ
第四十六條ノ三 地租ハ各納税義務者ニ付同一市町村内ニ於ケル土地ノ賃貸價格ノ合計金額ニ依リ算出シ之ヲ徴收スベシ但シ賃貸價格ノ合計金額ガ政令ヲ以テ定ムル金額ニ滿タザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十六條ノ四 土地臺帳法ニ依リ申告ヲ爲スベキ義務ヲ有スル者其ノ申告ヲ爲サザルガ爲賃貸價格ノ設定又ハ修正ナク仍テ地租ニ不足額アルトキハ直ニ之ヲ追徴スベシ前項ノ規定ニ依リ地租ヲ徴收スル場合及詐欺其ノ他不正ノ行爲ニ依リ地租ヲ逋脱シタル者ヨリ其ノ地租ヲ徴收スル場合ニ於テハ前條ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第四十七條 家屋税ハ家屋ニ對シ家屋臺帳法ニ依ル家屋臺帳ニ登録セラレタル賃貸價格ヲ標準トシテ其ノ所在ノ府縣ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
前項ノ場合ニ於テハ家屋臺帳ニ所有者トシテ登録セラレタル者ヲ以テ其ノ家屋ノ所有者ト看做ス
第四十七條ノ二 家屋税ノ賦課期日ハ六月一日トス但シ特別ノ必要アル場合ニ於テハ内務大臣ノ許可ヲ受ケ之ヲ變更スルコトヲ得
第十條第一項及第二項ノ規定ハ家屋税ニ付テ之ヲ適用セズ
第四十七條ノ三 家屋税ハ各納税義務者ニ付同一市町村内ニ於ケル家屋ノ賃貸價格の合計金額ニ依リ算出シ之ヲ徴收スベシ但シ賃貸價格ノ合計金額ガ政令ヲ以テ定ムル金額ニ滿タザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十七條ノ四 家屋臺帳法ニ依リ申告ヲ爲スベキ義務ヲ有スル者其ノ申告ヲ爲サザルガ爲賃貸價格ノ設定又ハ修正ナク仍テ家屋税ニ不足額アルトキハ直ニ之ヲ追徴スベシ
前項ノ規定ニ依リ家屋税ヲ徴收スル場合詐欺其ノ他不正ノ行爲ニ依リ家屋税ヲ逋脱シタル者ヨリ其ノ家屋税ヲ徴收スル場合ニ於テハ前條ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第四十八條 營業税ハ營業ニ對シ純益ヲ標準トシテ營業所ヲ設ケテ營業ヲ爲ス個人及營利法人ニ對シ營業所所在ノ府縣ニ於テ之ヲ課ス前項ノ純益ハ法人ニ付テハ各事業年度ノ純益及清算純益トシ個人ニ付テハ前年ニ於ケル營業ノ純益トス
法人ノ各事業年度ノ純益ハ各事業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタル金額ニ依ル
法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
法人ノ清算純益ハ法人解散シタル場合ニ於テ其ノ殘餘財産ノ價額ガ解散當時ノ拂込株式金額又ハ出資金額及積立金額の合計金額ヲ超過スルトキノ超過金額ニ依ル
法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ社員ガ合併後存續スル法人若ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ因リテ取得スル株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額及金錢ノ總額ガ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ合併當時ノ拂込株式金額又ハ出資金額及積立金額ノ合計金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ清算純益ト看做ス
個人ノ純益ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額ニ依ル
營業税ヲ課スベキ營業ノ種類及營業税ノ課税標準ノ算定ニ關シテハ本法ニ定ムルモノヲ除クノ外政令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十八條ノ二 個人ノ營業純益金額ガ政令ヲ以テ定ムル金額ニ滿タザルトキハ營業税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ内務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十八條ノ三 特別ノ必要アル場合ニ於テハ營業税ノ課税標準ニ關シテハ營業ノ種類ヲ限リ内務大臣ノ許可ヲ受ケ第四十八條ノ規定ニ依ル純益ノ外他ノ標準ヲ併セ用ヒ又ハ第四十八條ノ規定ニ依ル純益ニ依ラザルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テモ第七條第一項ノ規定ハ其ノ適用ヲ妨ゲラルルコトナシ
第四十八條ノ四 地租、家屋税又ハ營業税ノ賦課率ガ夫々地租、家屋税又ハ營業税ノ標準賦課率(地租ニ付テハ百分ノ十二、家屋税ニ付テハ百分ノ十・五、營業税ニ付テハ百分ノ七・五ヲ謂フ以下同ジ)ヲ超ユルトキハ内務大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ左ニ掲グル場合ニ於テ賦課率ガ各標準賦課率ノ一・二倍ヲ超エザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 災害應急費、災害復舊費、傳染病豫防費及國營事業費負擔金ニ充ツル爲借入レタル負債ノ元利償還ノ爲費用ヲ要スルトキ
二 災害應急又ハ復舊ノ爲費用ヲ要スルトキ
三 傳染病豫防ノ爲費用ヲ要スルトキ
前條第一項ノ場合ニ於テ適用スベキ營業税ノ賦課率ニ付テハ前項ノ規定ニ拘ラズ内務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第四十八條ノ五 地租、家屋税及營業税(第四十八條ノ三第一項ノ規定ニ依ル營業税ヲ除ク)ノ賦課率ノ各標準賦課率ニ對スル割合ハ同一府縣ニ於テハ之ヲ同一ト爲スベシ但シ負擔ノ均衡上特ニ必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十九條 鑛區税ハ鑛區及砂鑛區ニ對シ其ノ所在ノ府縣ニ於テ其ノ鑛業權者(砂鑛權者ヲ含ム)ニ之ヲ課ス
鑛區税ハ左ニ掲グル賦課率ニ依リ之ヲ課スベシ但シ内務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 試掘鑛區 面積千坪毎ニ 二圓
二 採掘鑛區 面積千坪毎ニ 四圓
三 砂鑛區
河床 延長一町毎ニ
河床ニ非ザルモノ 面積千坪毎ニ 二圓
第五十條第一項中「二十噸以上ノ船舶」の下に「又ハ其ノ取得」を、「所有者」の下に「又ハ取得者」を加え、同條に次の一項を加える。
左ニ掲グル船舶ノ取得ニ對シテハ船舶税ヲ課スルコトヲ得ズ
一 家督相續又ハ遺産相續ニ因ル船舶ノ取得
二 法人ノ合併ニ因ル船舶ノ取得
第五十一條中「自動車」の下に「又ハ其ノ取得」を、「所有者」の下に「又ハ取得者」を加え、同條に次の一項を加える。
第五十條第四項ノ規定ハ前項ノ自動車ノ取得ニ對スル自動車税ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第五十一條ノ二 軌道税ハ軌道法又ハ地方鐵道法ニ依リ敷設シタル軌道又ハ地方鐵道ニ對シ其ノ所在ノ府縣ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス 第五十一條ノ三 電話加入權税ハ電話加入權又ハ其ノ取得ニ對シ電話機所在ノ府縣ニ於テ其ノ電話加入權者又ハ取得者ニ之ヲ課ス
第五十條第四項ノ規定ハ電話加入權ノ取得ニ對スル電話加入權税ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第五十六條ノ二 遊興税ハ料理店、貸席、カフエー、バー、旅館其ノ他之ニ類スル場所ニ於ケル遊興、飮食及宿泊ニ對シ其ノ行爲地所在ノ府縣ニ於テ其ノ行爲者ニ之ヲ課ス
第五十六條ノ三 入湯税ハ鑛泉浴場ニ於ケル入湯ニ對シ其ノ浴場所在ノ府縣ニ於テ其ノ入湯客ニ之ヲ課ス
第五十七條 府縣税附加税トシテ課スルコトヲ得ベキ市町村税左ノ如シ
一 地租附加税
二 家屋税附加税
三 營業税附加税
四 鑛區税附加税
五 船舶税附加税
六 自動車税附加税
七 軌道税附加税
八 電話加入權税附加税
九 電柱税附加税
十 不動産取得税附加税
十一 漁業權税附加税
十二 狩獵者税附加税
十三 藝妓税附加税
十四 遊興税附加税
十五 入湯税附加税
十六 第四十四條第二項ノ規定ニ依ル獨立税附加税
第五十八條乃至第六十條を削る。
第六十一條中「本税ノ百分ノ三百」を「夫々地租附加税、家屋税附加税又ハ營業税附加税ノ標準賦課率(地租附加税ニ付テハ土地賃貸價格ノ百分ノ十二、家屋税附加税ニ付テハ家屋賃貸價格ノ百分ノ十・五、營業税附加税ニ付テハ營業純益ノ百分ノ七・五ニ相當スル率ヲ謂フ但シ第四十八條ノ三第一項ノ規定ニ依ル營業税附加税ニ付テハ百分ノ七・五ヲ同年度分ノ第四十八條ノ規定ニ依ル營業税ノ賦課率ヲ以テ除シテ得タル率ヲ謂フ以下同ジ)」に、「本税ノ百分ノ三百六十」を「各標準賦課率ノ一・二倍」に改め、同條第五十八條とする。
第五十九條 鑛區税附加税ノ賦課率ガ第四十九條第二項ニ掲グル率ニ相當スル率ヲ超ユルトキハ府縣知事ノ許可ヲ受クベシ
第六十條 地租附加税、家屋税附加税及營業税附加税ノ賦課率ハ同一市町村内ニ於テハ之ヲ同一ト爲スベシ但シ負擔ノ均衡上特ニ必要アル場合ニ於テ府縣知事ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第六十一條 府縣税附加税(地租附加税、家屋税附加税、營業税附加税及鑛區税附加税ヲ除ク)ノ賦課率ハ同一市町村ニ於テハ之ヲ同一ト爲スベシ但シ負擔ノ均衡上特ニ必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第六十二條を削る。
第六十三條第一項中
「市町村民税
舟税
自轉車税
荷車税
金庫税
扇風機税
屠畜税
犬税 」
を
「一 市町村民税
二 舟税
三 自轉車税
四 荷車税
五 金庫税
六 扇風機税
七 屠畜税
八 犬税
九 廣告税 」
に改め、同條第二項中「第四十八條」を「第四十四條」に改め、同條を第六十二條とする。
第六十四條を第六十三條とする。
第六十五條第一項中「四月」を「十月」に改め、同條を第六十四條とする。
第六十六條中「四十圓」を「八十圓」に、「第六十四條」を「第六十三條」に改め、同條を第六十五條とする。
第六十六條ノ二を第六十六條とする。
第六十七條第一項中「二十噸未滿ノ舟」の下に「又ハ其ノ取得」を、「所有者」の下に「又ハ取得者」を加え、同條に次の一項を加える。
第五十條第四項ノ規定ハ第一項ノ舟ノ取得ニ對スル舟税ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第七十三條ノ二 廣告税ハ廣告(新聞、雜誌及書籍ニ依ル廣告ヲ除ク)ニ對シ其ノ廣告物所在ノ市町村ニ於テ其ノ廣告主ニ之ヲ課ス
第七十四條中「第四十九條乃至第五十六條」を「第四十六條乃至第五十六條ノ三」に、「第六十三條」を「第六十二條」に改める。
第七十五條第一項を次のように改める。
府縣ハ都市計畫法ノ施行ニ要スル費用ニ充ツル爲府縣税獨立税ノ百分ノ十以内ニ於テ都市計畫税トシテ府縣税獨立税割ヲ課スルコトヲ得但シ地租割、家屋税割及營業税割ニ付テハ夫々標準賦課率ヲ以テ算定シタル地租、家屋税又ハ營業税(第四十八條ノ三第一項ノ規定ニ依ル營業税ニ付テハ其ノ税額ヲ同年度分ノ第四十八條ノ規定ニ依ル營業税ノ賦課率ヲ以テ除シテ得タルモノニ百分ノ七・五ヲ乘ジテ得タルモノヲ謂フ以下同ジ)ノ百分ノ十以内トス
同條第二項中「府縣民税」の下に「及鑛區税」を加え、同條第三項を削る。
第七十六條第一項を次のように改める。
市町村ハ都市計畫法ノ施行ニ要スル費用ニ充ツル爲府縣税獨立税及市町村税獨立税ノ百分ノ三十以内ニ於テ都市計畫税トシテ府縣税獨立税割及市町村税獨立税割ヲ課スルコトヲ得但シ地租割、家屋税割及營業税割ニ付テハ夫々標準賦課率ヲ以テ算定シタル地租、家屋税又ハ營業税ノ百分ノ三十以内トス
同條第二項中「府縣民税」の下に「及鑛區税」を加え、同條第五項を削る。
第七十七條第一項「水利ニ關スル事業」の下に「其ノ他土地ノ利益ト爲ルベキ事業」を加え、「水利税」を「水利地益税」に改め、同條第二項を削り、同條第三項中「水利税」を「水利地益税」に改める。
第七十八條第二項を削り、同條第三項中「第三項」を「第二項」に改める。
第八十條第二項中「二百圓」を「二千圓」に改め、同條第三項乃至第五項中「行政裁判所」を「裁判所」に改め、同條第六項中「府縣制第百二十八條及第百二十八條ノ二」を「地方自治法第二百五十七條」に改める。
第八十一條中「官吏及」を削る。
第八十三條中「勅令」を「政令」に改め、同條に次の一項を加える。
第四十八條ノ三第一項及第四十八條ノ四ノ規定ニ依ル内務大臣ノ許可ニ付テハ政令ノ定ムル所ニ依リ内務大臣ハ大藏大臣ト協議スルモノトス
第八十四條中「勅令」を「政令」に改める。
第八十五條ノ二中「區ノ存スル區域」を「特別區ノ存スル區域及特別市」に、「第四十六條」を「第四十八條ノ四第一項」に「百分ノ二百トアルハ百分ノ五百、百分ノ二百四十トアルハ百分ノ六百」を「百分ノ十二、百分ノ十・五又ハ百分ノ七・五トアルハ夫々百分ノ二十四、百分ノ二十一又ハ百分ノ十五」に改める。
第八十五條ノ三中「區ノ存スル區域」を「特別區ノ存スル區域及特別市」に、「第四十七條」を「第四十九條」に、「百分ノ十トアルハ百分ノ二十」を「二圓トアルハ四圓、四圓トアルハ八圓」に改める。
第八十五條ノ四第一項中「東京都ノ區」を「東京都ノ特別區」に、「第四十八條ノ四」を「第四十五條ノ三」に、「六十圓」を「百二十圓」に、「第四十八條ノ二」を「第四十五條」に、「四十圓ニ區」を「八十圓ニ特別區」に改め、同條第二項中「都民税」を「東京都民税」に、「第四十八條ノ二」を「第四十五條」に、「第四十八條ノ四」を「第四十五條ノ三」に、「區ノ存スル區域」を「各特別區ノ區域」に改め、同條に次の一項を加える。
特別市ニ於テハ第四十五條ノ三第一項ノ規定ノ準用ニ付テハ同項中百二十圓トアルハ二百圓トス
第八十五條ノ五第一項中「區ノ存スル區域」を「特別區ノ存スル區域及特別市」に、「第四十八條」を「第四十四條」に、
「舟税
自轉車税
荷車税
金庫税
扇風機税
屠畜税
犬税 」
を
「一舟税
二自轉車税
三荷車税
四金庫税
五扇風機税
六屠畜税
七犬税
八廣告税 」
に改め、「東京都税」の下に「又ハ特別市税」を加え、同條第二項中「其ノ區」を「其ノ特別區」に改める。
第八十五條ノ六中「第七十三條」を「第七十三條ノ二」に、「區ノ存スル區域」を、「特別區ノ存スル區域及特別市」に改める。
第八十五條ノ七 東京都ノ特別區ノ存スル區域及特別市ニ於テハ第七十五條第一項ノ規定ノ準用に付テハ同項中百分ノ十トアルハ百分ノ二十(第八十五條ノ五ノ獨立税ニ付テハ百分ノ三十)トス
第八十五條ノ八中「區ノ存スル區域ニ於テハ」を「特別區ノ存スル區域ニ於テハ竝に特別市ハ」に改める。
第八十五條ノ九を削る。
第八十五條ノ十中「區ノ存スル區域ニ於テハ」を「特別區ノ存スル區域ニ於テハ竝ニ特別市ハ」に改め、同條を第八十五條ノ九とする。
第八十五條ノ十一中「東京都ノ區」を「東京都ノ特別區」に、「區税」を「特別區税」に改め、同條を第八十五條ノ十とする。
第八十五條ノ十二第一項中「區」を「特別區」に改め、同條を第八十五條ノ十一とする。
第八十五條ノ十三第一項中「區税」を「特別區税」に改め、同條第二項中「區、區長、區所屬ノ官吏、區所屬ノ都吏員若ハ區吏員、區會又ハ區條例」を「特別區、特別區長、特別區所屬ノ都吏員若ハ特別區吏員、特別區會又ハ特別區條例」に改め、同條を第八十五條ノ十二とする。
第八十五條ノ十四中「區ノ區税竝ニ東京都ノ區」を「特別區ノ特別區税竝ニ東京都ノ特別區」に、「勅令」を「政令」に改め、同條を第八十五條ノ十三とする。
第八十六條中「勅令」を「政令」に改める。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。但し、官吏、府縣制、府縣参事会、東京都長官、北海道廳長官及び東京都の区並びに特別市に係る改正規定は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十二年度分の地方税(法人に対する営業税については、昭和二十二年四月一日以後に終了する事業年度分又は同日以後における合併若しくは解散に因る分)から、これを適用する。
昭和二十一年度分以前の地方税に関しては、なお從前の規定による。
土地及び家屋について一般に賃貸價格の改定されるまでは、地租及び地租附加税並びに家屋税及び家屋税附加税の標準賦課率については、第四十八條ノ四第一項、第五十八條及び第八十五條ノ二の規定にかかわらず、地租及び地租附加税に関してはその三倍以内、家屋税及び家屋税附加税に関してはその二倍以内において、命令を以て別段の定をなすことができる。
減租年期地、免租年期地その他地租法その他の法律により、一定の期間賃貸價格に関し特別の取扱をなす旨の定のあつた土地で土地臺帳法により賃貸價格を設定若しくは修正すべきもの及び家屋税法により賃貸價格を定めない旨の定のあつた家屋で家屋臺帳法により賃貸價格を決定すべきものについて、この法律施行の際賃貸價格が設定若しくは修正又は決定されていないときは、その土地又は家屋の賃貸價格が設定若しくは修正又は決定されるまでは、第四十六條第一項又は第四十七條第一項の改正規定にかかわらず、評定賃貸價格を標準として、地租又は家屋税を課することができる。
前項の評定賃貸價格は、類地又は類似家屋の賃貸價格に比準し、当該土地又は家屋の品位及び情況に應じ、府縣條例の定めるところにより、府縣知事がこれを定めなければならない。
日本國憲法施行の日までは、改正後の地方税法中「政令」とあるのは「勅令」、「裁判所」とあるのは「行政裁判所」と読み替えるものとする。
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地方分與税法を改正する法律案
地方分與税法目次
第一章 総則
第二章 道府縣分與税
第三章 市町村分與税
第一節 通則
第二節 大都市分與税、都市分與税及び町村分與税
第三節 特別分與税
第四章 補則
地方分與税法
第一章 総則
第一條 地方分與税(以下分與税という。)は、都道府縣、特別市及び市町村に対して、これを分與する。
第二條 所得税及び法人税の徴收額の百分の二十三・八六並びに入場税の徴收額の百分の三十一・三八を以て、分與税とする。
第三條 毎年度分として分與すべき分與税の額は、前前年度において徴收した所得税及び法人税の百分の二十三・八六並びに入場税の百分の三十一・三八とする。
前項の規定により分與すべき分與税の額が前年度における分與額の百分の百十を超過したときは、その超過額は、これを当該年度において分與すべき額から減額する。
第一項の規定により分與すべき分與税の額が前年度における分與額の百分の九十に不足するときは、その不足額は、これを当該年度において分與すべき額に増額する。
第四條 地方財政の情況上必要があるときは、前條の規定により分與すべき分與税の額に、左の各号の一に定める額を増額することができる。
一 前條第二項の場合においては、前年度における分與額の百分の百十を超過する額の全部又は一部
二 前條第三項の場合においては、前年度における分與額に不足する額の全部又は一部
三 前條第一項の額が前年度における分與額に不足し、且つ、その百分の九十を超過する場合においては、その不足額の全部又は一部
四 当該年度における分與税の收入見込額が前條第一項の額を超過する場合においては、その超過額の全部又は一部
第五條 地方財政の情況上必要があるときは、第三條の規定により分與すべき分與税の額から、左の各号の一に定める額を減額することができる。
一 第三條第二項の場合においては、前年度における分與額を超過する額の全部又は一部
二 第三條第三項の場合においては、前年度における分與額の百分の九十に不足する額の全部又は一部
三 第三條第一項の額が前年度における分與額を超過し、且つ、その百分の百十に不足する場合においては、その超過額の全部又は一部
四 当該年度における分與税の收入見込額が第三條第一項の額に不足する場合においては、その不足額の全部又は一部
第六條 地方分與税分與金特別会計法第四條の規定による借入金の元利償還上必要があるときは、当該年度における分與税の分與額から、その所要額を減額することができる。
第七條 分與税は、左の区分により、道府縣及び市町村に対して、これを分與する。
一 道府縣分與税 分與税総額の百分の六十七
二 市町村分與税 分與税総額の百分の三十三
第八條 分與税の分與額は、前年度初日の現在により、各道府縣及び市町村について、これを算定する。
前項の期日後において、道府縣又は市町村の廃置分合又は境界変更があつた場合においては、当該道府縣又は市町村に対する分與税の分與額は、命令の定めるところにより、これを変更することができる。
第九條 分與税は、毎年度四回に分けて、これを交付する。
第二章 道府縣分與税
第十條 道府縣分與税は、これを第一種分與税乃至第四種分與額に分け、第一種分與額及び第二種分與額は道府縣の課税力を標準とし、第三種分與額は道府縣の財政需要を標準とし、第四種分與額は特別の事情がある道府縣に対しその事情を考慮して、これを分與する。
第十一條 第一種分與額乃至第四種分與額は、それぞれ道府縣分與税総額の百分の四十五、百分の五、百分の四十五及び百分の五とする。
第十二條 第一種分與額は、第一單位税額が道府縣第一標準單位税額に不足する道府縣に対し、その不足額に当該道府縣の人口を乘じた額に按分して、これを分與する。
第一單位税額は、当該道府縣の標準賦課率で算定した三收益税額(地租額、家屋税額及び営業税額をいう。以下同じ。)から、災害土木費負債額の七分の一を控除した残額を、当該道府縣の人口で除した額とする。
道府縣第一標準單位税額は、全道府縣の標準賦課率で算定した三收益税額に道府縣分與税総額の百分の九十を加えた額から、全道府縣の災害土木費負債額の七分の一を控除した残額を、全道府縣の人口で除した額とする。
北海道については、北海道拓殖費の毎年度支出額中の一定部分を北海道の人口で除した額を、第二項の額に加算した額を以て、第一單位税額とする。
前項の支出額中の一定部分は、命令の定めるところによる。
第十三條 第二種分與額は、第二單位税額が道府縣第二標準單位税額に不足する道府縣に対し、その不足額に当該道府縣の人口を乘じた額に按分して、これを分與する。
第二單位税額は、当該道府縣の普通税総額から、三收益税額、道府縣民税額及び地方税法第四十四條第二項の規定による独立税額(以下道府縣税法定外独立税額という。)の合算額を控除した残額を、当該道府縣の人口で除した額とする。
道府縣第二標準單位税額は、全道府縣の普通税総額から、全道府縣の三收益税額、道府縣民税額及び道府縣税法定外独立税額の合算額を控除した残額に、道府縣分與税総額の百分の十を加えた額を、全道府縣の人口で除した額とする。
第十四條 第三種分與額は、当該道府縣の割増人口に按分して、これを分與する。
割増人口は、当該道府縣の大都市部人口の三倍、都市部人口の二倍及び町村部人口の合算額に百五十万を加えたものとする。
第十五條 第四種分與額の分與方法は、命令の定めるところによる。
第十六條 第十二條乃至第十四條の規定による道府縣分與税の額を当該道府縣の人口で除した額及び当該道府縣の第三單位税額の合算額が、道府縣第三標準單位税額の一倍半を超過する道府縣については、その超過額に当該道府縣の人口を乘じた額を、分與税の分與額から減額する。
第三單位税額は、第十二條第二項の第一單位税額及び第十三條第二項の第二單位税額の合算額とする。
道府縣第三標準單位税額は、第十二條第三項の道府縣第一標準單位税額及び第十三條第三項の道府縣第二標準單位税額の合算額とする。
第十七條 前條第一項の規定により減額した額は、これを第四種分與額に加える。
第三章 市町村分與税
第一節 通則
第十八條 市町村分與税は、大都市分與税、都市分與税、町村分與税及び特別分與税の四種とする。
大都市分與税は大都市に、都市分與税は都市に、町村分與税は町村に、特別分與税は大都市、都市及び町村に対して、これを分與する。
大都市及び都市の区分は、命令の定めるところによる。
第十九條 大都市分與税、都市分與税及び町村分與税の各総額は、左の各号の額の合算額とする。
一 市町村分與税総額の百分の四十五を、市町村第一標準單位税額から、大都市、都市又は町村の第一平均單位税額を控除した残額に、各総人口を乘じた額に按分した額。
二 市町村分與税総額の百分の五を、市町村第二標準單位税額から、大都市、都市又は町村の第二平均單位税額を控除した残額に、各総人口を乘じた額に按分した額
三 市町村分與税総額の百分の四十五を、大都市総人口の三倍、都市総人口の二倍及び町村総人口に按分した額
前項第一号の大都市、都市又は町村の第一平均單位税額は、大都市、都市又は町村の標準賦課率で算定した三收益税附加税額(地租附加税額、家屋税附加税額及び営業税附加税額をいう。以下同じ。)を、それぞれの総人口で除した額とする。
第一項第一号の市町村第一標準單位税額は、全市町村の標準賦課率で算定した三收益税附加税額及び市町村分與税総額の百分の九十の合算額を、全市町村の人口で除した額とする。
第一項第二号の大都市、都市又は町村の第二平均單位税額は、大都市、都市又は町村の普通税総額から、三收益税附加税額、市町村民税額、地方税法第四十四條第二項の規定による独立税附加税額(以下法定外独立税附加税額という。)及び地方税法第六十二條第三項の規定による独立税額(以下市町村税法定外独立税額という。)の合算額を控除した残額を、それぞれの総人口で除した額とする。
第一項第二号の市町村第二標準單位税額は、全市町村の普通税総額から、三收益税附加税額、市町村民税額、法定外独立税附加税額及び市町村税法定外独立税額の合算額を控除した残額に、市町村分與税総額の百分の十を加えた額を、全市町村の人口で除した額とする。
第二十條 前條の規定による大都市分與税、都市分與税又は町村分與税の各総額を大都市、都市又は町村の各総人口で除した額及び大都市、都市又は町村の第三平均單位税額の合算額が、市町村第三標準單位税額の二倍を超過するものについては、その超過額に当該大都市、都市又は町村の総人口を乘じた額を、当該大都市分與税、都市分與税又は町村分與税の各総額から減額する。
大都市、都市又は町村の第三平均單位税額は、それぞれ前條第二項の第一平均單位税額及び前條第四項の第二平均單位税額の合算額とする。
市町村第三標準單位税額は、前條第三項の市町村第一標準單位税額及び前條第五項の市町村第二標準單位税額の合算額とする。
第二十一條 特別分與税の総額は、市町村分與税総額の百分の五とする。
第二十二條 第二十條第一項の規定により減額した額は、これを特別分與税に加える。
第二節 大都市分與税、都市分與税及び町村分與税
第二十三條 大都市分與税、都市分與税又は町村分與税は、それぞれ第一種分與額乃至第三種分與額に分け、第一種分與額及び第二種分與額は大都市、都市又は町村の課税力を標準とし、第三種分與額は大都市、都市又は町村の財政需要を標準として、これを分與する。
第二十四條 第一種分與額乃至第三種分與額は、それぞれ大都市分與税総額、都市分與税総額又は町村分與税総額の百分の四十七・五、百分の五及び百分の四十七・五とする。
第二十五條 第一種分與額は、第一單位税額が大都市第一標準單位税額、都市第一標準單位税額又は町村第一標準單位税額に不足する大都市、都市又は町村に対し、その不足額に当該大都市、都市又は町村の人口を乘じた額に按分して、これを分與する。
第一單位税額は、当該市町村の標準賦課率で算定した三收益税附加税額を、当該市町村の人口で除した額とする。
大都市第一標準單位税額、都市第一標準單位税額又は町村第一標準單位税額は、全大都市、全都市又は全町村の標準賦課率で算定した三收益税附加税額及び大都市分與税総額、都市分與税総額又は町村分與税総税の百分の九十の合算額を、全大都市、全都市又は全町村の人口で除した額とする。
第二十六條 第二種分與額は、第二單位税額が大都市第二標準單位税額、都市第二標準單位税額又は町村第二標準單位税額に不足する大都市、都市又は町村に対し、その不足額に当該大都市、都市又は町村の人口を乘じた額に按分して、これを分與する。
第二單位税額は、当該市町村の普通税総額から、三收益税附加税額、市町村民税額、法定外独立税附加税額及び市町村税法定外独立税額の合算額を控除した残額を、当該市町村の人口で除した額とする。
大都市第二標準單位税額、都市第二標準單位税額又は町村第二標準單位税額は、全大都市、全都市又は全町村の普通税総額から、三收益税附加税額、市町村民税額、法定外独立税附加税額及び市町村税法定外独立税額の合算額を控除した残額に、大都市分與税総額、都市分與税総額又は町村分與税総額の百分の十を加えた額を、全大都市、全都市又は全町村の人口で除した額とする。
第二十七條 第三種分與額は、當該市町村の割増人口に按分して、これを分與する。
割増人口は、当該大都市、都市又は町村の人口にそれぞれ九十万、四万五千又は三千を加えたものとする。
第二十八條 前三條の規定による大都市分與税、都市分與税又は町村分與税の額を当該大都市、都市又は町村の人口で除した額及び当該大都市、都市又は町村の第三單位税額の合算額が、大都市第三標準單位税額、都市第三標準單位税額又は町村第三標準單位税額のそれぞれ一倍半、一倍半又は二倍を超過する大都市、都市又は町村については、その超過額に当該大都市、都市又は町村の人口を乘じた額を、分與税の分與額から減額する。
第三單位税額は、第二十五條第二項の第一單位税額及び第二十六條第二項の第二單位税額の合算額とする。
大都市第三標準單位税額、都市第三標準單位税額又は町村第三標準單位税額は、それぞれ第二十五條第三項の大都市第一標準單位税額、都市第一標準單位税額又は町村第一標準單位税額及び第二十六條第三項の大都市第二標準單位税額、都市第二標準單位税額又は町村第二標準單位税額の合算額とする。
第二十九條 前條第一項の規定により減額した額は、これを特別分與税に加える。
第三節 特別分與税
第三十條 特別分與税は、特別の事情がある大都市、都市及び町村に対し、その事情を考慮して、これを分與する。
第三十一條 特別分與税の分與方法は、命令の定めるところによる。
第四章 補則
第三十二條 東京都は、道府縣分與税の分與に関しては、その全区域についてはこれを道府縣とみなし、市町村分與税の分與に関しては、その特別区の存する区域についてはこれを市とみなす。
特別市は、道府縣分與税の分與に関しては、これを道府縣とみなし、市町村分與税の分與に関しては、これを市とみなす。
第三十三條 この法律の適用については、町村組合であつて町村事務の全部を共同処理するものは、これを一町村、町村に準ずべきものは、これを町村とみなす。
伊豆七島に関しては、命令で別段の定をなすことができる。
第三十四條 第十二條、第十三條、第十六條、第十九條、第二十條及び第二十五條乃至第二十八條の人口、第十四條の大都市部人口、都市部人口及び町村部人口、第十二條、第十三條、第十九條、第二十五條及び第二十六條の三收益税額又は三收益税附加税額、第十三條、第十九條及び第二十六條の普通税総額、道府縣民税額、市町村民税額、道府縣税法定外独立税額、法定外独立税附加税額又は市町村税法定外独立税額、第十二條及び第十三條の道府縣分與税総額、第十九條の市町村分與税総額、第二十五條及び第二十六條の大都市分與税総額、都市分與税総額及び町村分與税総額並びに第十二條の災害土木費負債額は、命令の定めるところによる。
第三十五條 分與税の分與の基礎に用いる人口、税額等について錯誤があつた場合においては、命令の定めるところにより、後年度において、分與税の分與の基礎に用いる人口、税額等について加算又は控除を行い分與額を算定する。
第三十六條 この法律施行に関する重要事項について、政府の諮問に應ずるため、地方分與税委員会を置く。
地方分與税委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第三十七條 この法律に定めるものの外、分與税に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、公布の日から、これを施行する。但し、附則第十四條の改正規定中予算、帝國議会及び勅令に関する部分は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十二年度分から、これを適用する。
昭和二十一年度以前の地方分與税については、なお從前の規定による。
第二條 第二條中百分の二十三・八六とあるのは、昭和二十二年度においては百分の二十三・七九とする。
第二條中百分の三十一・三八とあるのは、昭和二十二年度においては百分の二十九・三〇とする。
第三條 第三條第一項中百分の二十三・八六とあるのは、昭和二十二年度においては百分の百八十一・八六、昭和二十三年度においては百分の九十四・九九、昭和二十四年度においては百分の二十三・七九とする。
第三條第一項中入場税の百分の三十一・三八とあるのは、昭和二十二年度においては入場税及び遊興飮食税の百分の二百二十一・八五、昭和二十三年度においては百分の百六十一・二三、昭和二十四年度においては入場税の百分の二十九・三〇とする。
第四條 当分の間、道府縣分與税には、第一種分與額乃至第四種分與額の外に第五種分與額を設け、戰災に因り税收入の減少した道府縣に対し、その減收額を標準として、これを分與する。
第五種分與額は、道府縣分與税総額の百分の十以内において、命令で定める額とする。
道府縣分與税中第一種分與額及び第三種分與額は、当分の間、第十一條の規定にかかわらず、道府縣分與税総額から、同條に定める第二種分與額及び第四種分與額並びに前項に定める第五種分與額の合算額を控除した残額の半額ずつとする。
第五條 道府縣分與税中第五種分與額は、戰災後の税收入額(以下戰災後税額という。)が、戰災がなかつた場合において收入したであろう税收入見込額(以下戰災前税額という。)に不足する道府縣に対し、その不足額に按分して、これを分與する。
道府縣分與税中第五種分與額が、前項の不足額の合計額を超過する場合においては、その超過額は、これを第四種分與額に加える。
第六條 当分の間、第十六條第一項中「第十二條乃至第十四條」とあるのは「第十二條乃至第十四條及び附則第五條第一項」と読み替えるものとする。
第七條 当分の間、市町村分與税には、大都市分與税、都市分與税、町村分與税及び特別分與税の外に、臨時特別分與税を設け、戰災に因り税收入の減少した大都市、都市及び町村に対し、その減收額を標準として、これを分與する。
臨時特別分與税は、市町村分與税総額の百分の二十以内において、命令で定める額とする。
当分の間、第十九條第一項中「市町村分與税総額の百分の四十五」とあるのは「市町村分與税総額の百分の四十五から臨時特別分與税の半額を控除した額」と読み替えるものとする。
第八條 臨時特別分與税は、戰災後税額が戰災前税額に不足する大都市、都市及び町村に対し、その不足額に按分して、これを分與する。
臨時特別分與税総額が前項の不足額の合計額を超過する場合においては、その超過額は、これを特別分與税に加える。
第九條 当分の間、第二十八條第一項中「前三條の規定による大都市分與税、都市分與税又は町村分與税の額」とあるのは「前三條の規定による大都市分與税、都市分與税又は町村分與税の額及び附則第八條第一項の規定による臨時特別分與税の額の合算額」、「大都市第三標準單位税額、都市第三標準單位税額又は町村第三標準單位税額」とあるのは「大都市特別標準單位税額、都市特別標準單位税額又は町村特別標準單位税額」と読み替えるものとする。
第十條 前條の大都市特別標準單位税額、都市特別標準單位税額又は町村特別標準單位税額は、臨時特別分與税の大都市、都市又は町村に対する各分與額の総額を全大都市、全都市又は全町村の人口で除した額に、大都市第三標準單位税額、都市第三標準單位税額又は町村第三標準單位税額を加えた額とする。
第十一條 附則第五條及び第八條の戰災前税額及び戰災後税額並びに前條の人口は、命令の定めるところによる。
第十二條 昭和二十二年度及び昭和二十三年度に限り、第八條第一項中「前年度初日」とあるのは「当該年度初日」と読み替えるものとする
第三十六條第二項中「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、「勅令」と読み替えるものとする。
第十三條 当分の間、第十二條第二項の第一單位税額及び同條第三項の道府縣第一標準單位税額の算定については、命令の定めるところにより、三收益税額に改正前の地方分與税法及び地方税法の規定による還付税額及び國税附加税額を加え、第十三條第二項の第二單位税額及び同條第三項の道府縣第二標準單位税額の算定については、命令の定めるところにより、普通税総額から改正前の地方税法の規定による國税附加税額を控除することができる。
当分の間、第十九條第二項の大都市、都市又は町村の第一平均單位税額、同條第三項の市町村第一標準單位税額、第二十五條第二項の第一單位税額及び同條第三項の大都市第一標準單位税額、都市第一標準單位税額又は町村第一標準單位税額の算定については、命令の定めるところにより、三收益税附加税額に改正前の地方税法の規定による國税附加税額を加え、第十九條第四項の大都市、都市又は町村の第二平均單位税額、同條第五項の市町村第二標準單位税額、第二十六條第二項の第二單位税額及び同條第三項の大都市第二標準單位税額、都市第二標準單位税額又は町村第二標準單位税額の算定については、命令の定めるところにより、普通税総額から改正前の地方税法の規定による國税附加税額を控除することができる。
第十四條 地方分與税分與金特別会計法の一部を次のように改正する。
第二條中「地租、家屋税及営業税ノ收入、配付税」を「地方分與税」に、「還付税及配付税」を「地方分與税」に改める。
第四條第二項中「配付税」を「地方分與税」に、「第六條」を「第三條」に改める。
第八條中「歳入歳出豫算」を「豫算」に、「歳入歳出ノ總豫算」を「一般會計ノ豫算」に、「帝國議會」を「國會」に改める。
第十條中「勅令」を「政令」に改める。
附則第二項乃至第五項を次のように改める。
昭和二十一年度分以前ノ地方分與税ニ付テハ仍從前ノ規定ニ依ル
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〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=59
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060・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) ただいま議題と相なりました所得税法を改正する法律案ほか四法律案につきまして、提案理由の御説明を申し上げます。
政府は最近における國民經濟の推移、中央及び地方の財政事情、地方自治制度の改正等に鑑みまして、現行の税制に改正を加える必要を認めまして、税制調査會を設ける等、その準備を進めておりましたのでありますが、このたびその成案を得ましたので、ここに提案する運びと相なつた次第であります。
今囘の税制改正にあたりましては、多額に上る財政需要の現状に對應いたしまして、その收支の均衡をはかるため、租税收入を確保するとともに、國民經濟の實情に即應いたしまして、負擔の公正を期し、併せて租税の民主化及び税制の簡易平明化をはかり、もつて現下當面する財政經濟の再建に資することといたしたのであります。
以上の趣旨に基きまして、所得税はこれを租税體系の中樞といたし、一定額以上の所得を有する個人に對しましては、その擔税力に應じまして適當な課税を行い、これにより租税收入の根幹を形成せしめることといたしたのであります。法人税及び特別法人税につきましては、個人に對する課税との權衡上、必要な改正を行うことといたしたのであります。しかして酒税その他の消費税及び流通税につきましては、物價事情の變動、その他各般の情勢の推移に即應いたしまして、各税にわたり相當の増徴を行う一方、物品税につきましては、現在といたしましては、課税上不適當と認められる一部の税率の引下げを行う等、所要の改正を加えたのでございます。このほか地方税制度の改正に關連いたしまして、地方財政の確立及び適切なる地方應益負擔の實現に資する等のため、地租、家屋税、營業税、鑛區税及び遊興飮食税は、これを地方に委讓することといたしたのであります。なお相續税につきましては、民法の改正に伴う所要の改正を行うとともに、各般の状況に鑑みまして、その課税を相當強化する必要を認めておる次第でありまして、數日中にその改正案を提案することといたしておるのであります。
次に、各税に關する改正の大樣について申し上げます、まず所得税でありまするが、租税負擔の適正及び納税の簡易化等をはかるため、現行の分類所得税及び綜合所得税を兩建とする課税は、これを廢止いたしまして、個人に對しましてはすべての所得を總合して、一本の超過累進税率により課税することといたしたのであります。また現在の課税方法は、前年の所得によつて税額を定め、政府がこれを告知することになつておるのでありまするが、今囘これを改めまして、その年の所得によつて税額を定め、納税者がその申告した所得によつてみずから税額を計算して納税する豫算申告納税制度を採用したのであります。
しかして所得税改正の根本のねらいの一つは、納税者の負擔を現下の實情といかに適合させるかということであります。これにつきましては、所得及び生計費の實情竝びに財政の需要等、各般の事情につき愼重に考慮を重ねました結果、その年一年間を通じて計算した課税所得金額に對し、最低百分の二十ないし最高百分の七十五の超過累進税率により、税額を定めることといたしたのであります。基礎控除及び扶養家族控除につきましては、相當大幅にこれを引上げまして、納税者ごとに年四千八百圓の基礎控除を認めまするほか、扶養家族を有する者につきましては、家族一人ごとに税額で年二百四十圓の控除を認めることといたし、少額所得者及び扶養家族を擁する者の實際負擔を緩和いたした次第であります。特に勤勞所得者につきましては、その擔税力を考慮いたしまして、最高六千圓の限度において、その勤勞により生ずる收入金額の二割を控除して課税することといたしたのであります。
所得税の納税方法につきましては、原則として申告納税の方法によることといたし、一定の勤勞所得者以外の納税者は、毎年四月にみずからその年の所得額を豫算し、その豫定税額の四分の一ずつを、毎年四月、七月及び十月に分納し、その年の確定所得に對する税額との差額は、これを翌年一月に納付することといたしておるのであります。但し勤勞所得及び配當利子所得等につきましては、現在通り支拂のつど、源泉において支拂者が一定の税額を徴收することといたしておるのであります。
次に法人税について申し上げます。法人の超過所得に對する課税は、最近における經濟界の急激な變動に伴いまして、その負擔が實情に適せず、産業の再建に必要な法人の企業活動の促進を期しがたい憾みがありますので、今囘その税率を相當程度引下げることといたしたのであります。また本税におきましても、全面的に申告納税制度を採用し、所得の發生後、速やかに法人がみずからその税額を計算して納税することに改めたのであります。なお特別法人税につきましても、申告納税制度を採用することといたしました。
次に酒税につきましては、財政の現状及び酒類消費の状況等に照し、この際各種酒類について相當大幅の税率の引上げを行うほか、料理店等において消費される業務用の酒類につきましては、一般の酒税のほかに、相當額の加算税を徴收することとし、これらによりまして、相當多額の國庫收入の増加をはかつておるのであります。
酒税以外の消費税及び流通税におきましては、現在從量課税をいたしておりまする清涼飮料税、砂糖消費税及びマツチその他に對する物品税につきましては、今囘相當程度の税率の引上げをいたしました。また定額税たる登録税の一部、印紙税、骨牌税及び狩獵免許税竝びに有價證券移轉税及び取引所税のうち取引税の一部につきましても、相當程度の税率の引上げを行うことといたしておるのであります。
入場税につきましては、最近の利用の状況等に鑑みまして、その税率を一本とし、相當の増徴をはかることといたしたのであります。他方從價課税をいたしております物品税の大部分につきましては、相當程度の税率の引下げ等を行い、また織物消費税につきましては、下級織物に對して輕減税率を適用する範圍を擴張する等の改正を行いまして、經濟情勢の變動に伴う租税負擔の適正を期しておる次第であります。
なお今囘別途實施せらるべき地方税制度の改正に對應いたしまして、前に述べましたごとく地租、家屋税、營業税、鑛區税及び遊興飮食税を地方税として委讓することといたしました。但し地方税たる地租及び家屋税の課税標準たる賃貸價格は、その均衡の適正をはかり、併せて土地及び家屋の状況を國において明確に把握するため、この際土地臺帳法及び家屋臺帳法を制定し、現在通り税務署において土地臺帳及び家屋臺帳を備え、土地及び家屋に關し必要な事項を登録することといたしました。
令囘の税制改正によりまして、租税及び印紙收入の國庫收入額は、近く改正法律案が提出される豫定の相續税の收入額をも含めましても平年度において約六百七十二億四千三百萬圓、初年度たる昭和二十二年度において約六百九十五億一千四百萬圓に達する見込であります。その各税につきまして、初年度の收入額で申し上げますれば、直接税は約四百六十六億八千三百萬圓でありまして、全體の六割七分二厘に當り、間接税は約百九十一億七千萬圓でありまして、全體の二割七分六厘に當り、その他の諸税は約三十六億六千百萬圓でありまして、全體の五分二厘に當るのであります。しこうして直接税のうち、所得税の收入額は、初年度において約四百十三億四千八百萬圓に達し、租税收入總額の五割九分四厘に當る見込みでありまして、國税の重點は所得税にかかつておるのであります。
この際申し上げたいことは、今囘直接税の各税にわたり劃期的なる申告納税制度を採用したのでありまするが、これが成否は一に全國民の協力にまつこととなる次第でありまして、一般國民が自主的に納税の義務を果され、現下の難局に處し、財政の基礎確立に寄與せらるるよう期待してやまないものであります。本案の提案につきましては、各般の事情により、議會提出の時期がはなはだ遲れまして、遺憾にたえないところであります。何とぞ御審議の上、速やかに協贊を與えられんことを切望する次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=60
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061・山崎猛
○議長(山崎猛君) 内務大臣植原悦二郎君。
〔國務大臣植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=61
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062・植原悦二郎
○國務大臣(植原悦二郎君) ただいま議題となりました地方税法の一部を政正する法律案及び地方分與税法を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
現行地方税制は、昭和十五年の國税、地方税を通ずる税制の根本改正の結果制定せられたるものに、その後若干の小改正が加えられたものでありますが、これを新憲法の精神とする地方自治強化の趣意に副い、かつ地方財政の現況に即應するものとするためには、再び國税、地方税を通ずる税制の根本改正を必要とすることとなつたのであります。これがため今囘は、第一に地方所要財源の充足、第二に自主的地方財政の確立、第三に税種間負擔均衡の是正、第四に地方財政調整の適正化の四つを目標といたしまして、地方税法の根本に觸れてその一部を改正するとともに、地方分與税法の全部を改正することといたした次第であります。
まず地方税法中の改正事項について御説明申し上げます。
改正の第一點は、還付税制度の廢止と、國税の地方委讓に關する事項であります。その第一は、地租、家屋税及び營業税の委讓であります。現行地租、家屋税及び營業税は、國税として賦課徴收し、これを還付税としてそのまま徴收し、都道府縣に還元交付されているのでありますが、今後地方團體をして自主的に財政運營を行わせていく見地から考えまして、この制度を廢止して、これを都道府縣の獨立税とするとともに、市町村において附加税を課するものとせんとするものであります。その第二は、鑛區税の委讓であります。鑛山地帶の財政状況に鑑み、かつは地租に準じまして、國税鑛區税を都道府縣の獨立税として委讓を受け、市町村においてこれに附加税を課するものとせんとするものであります。その第三は、遊興飮食税の委讓であります。遊興飮食税につきましては、その沿革竝びにこの税の性格に鑑みまして、これを都道府縣の獨立税として委讓を受け、市町村において附加税を課するものとせんとするものがあります。しかし特に遊興税と言えないような飮食や宿泊に對しましてまで課税することは穩當でありませんので、これを遊興税として地方獨立税に取入れることにいたしました。
改正の第二は、法定獨立税目の擴張に關する事項であります。すなわち地方財源はきわめて窮乏した状況にありますので、地方團體が熱心に課税を希望しております獨立税のうち、あまり無理のない税は、廣く法定税目のうちに取入れることとし、一々主務大臣の許可を受ける煩瑣な手數を經ないでも、自由に課税し得るような途を開いておくことが適當であると考えまして、新たに都道府縣に、この種の税目として電話加入權税、軌道税及び入湯税を追加するとともに、現行の自動車税及船舶税の内容を擴張して、自動車及び船舶の取得に對しても課税し得るものといたしました。新たに市町村の方で獨立税目として廣告税を追加するとともに、現行舟税の内容を擴張して、舟の取得に對しても課税をし得るものといたしました。
改正の第三は、住民税の増税に關する事項であります。地方財政の窮乏、經濟事情變化の状況等に鑑みまして、住民税を倍額に引上げることとし、一納税義務者あたり平均の賦課額を、府縣民税百二十圓、市町村民税八十圓に改正せんとするものであります。このほか、目的税につきましても若干の改正を加えております。
次に地方分與税中の改正事項について御説明申し上げます。
改正の第一は、分與税制全體に關する事項であります。還付税制度を廢止するとともに、遊興、飮食税を分與税の財源から除外せんとすることであります。その二は、繰入率及び分與率を改定せんとすることであります。明年度において増額を要すべき地方所要財源の總額は、物價の高騰に伴う物件費、工事費の増、職員待遇改善費の増、各種制度の改正に伴う經費の増等を含め、一應二百十二億六千萬圓と概算いたしているのであります。これに對し税制改正によるものと、いわゆる自然増收に屬するものとを合算いたしまして、地方財源の増加いたします額は、百八十六億七千七百萬圓でありますが、なお二十五億八千三百萬圓の不足を生じますので、これを分與税の増額に求めることといたしますために、その繰入れ割合を増率する必要が生じたのであります。その三は、分與税の道府縣分と、市町村分との割振りを改めんとすることであります。すなわち財政需要の増加額と、税制改正による財源賦與額との調整を、分與税の割振りの變更に求むることとしたのでありまして、この結果道府縣分百分の六十七、市町村分百分の三十三となるのであります。
改正の第二は、道府縣分與税竝びに市町村分與税に關する事項でありまして、その一は、課税力を標準とする分與基準を一種類追加せんとすることであります。その二は、分與税、分與額の制限基準を改正せんすることであります。これは、今囘の税制改正により多數の獨立税が創定せらるる結果、團體間の課税力の差が一層大きくなることと思われますので、これを分與基準竝びにその制限基準に加味することとしたのであります。その三は、市町村分與税を大都市、都市、町村の三ブロツクに分割する際も、課税力の著しく高いブロツクには、分與税の分與額を制限せんとするものであります。
以上、地方税法の一部を改正する法律案及び地方分與税法を改正する法律案の大要について御説明申し上げたのであります。何とぞ愼重御審議の上、御協贊あらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=62
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063・山崎猛
○議長(山崎猛君) 質疑の通告があります。これを許します。奧村又十郎君。
〔奧村又十郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=63
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064・奧村又十郎
○奧村又十郎君 私は日本社會黨を代表いたしまして、ただいま上程の税制改革に關する諸法案につきまして、大藏大臣に御質疑をいたしたいと存じます。大藏大臣はただいま事情によつておいででありませんので、代るべき政府委員の方から御答辯願いたいと思います。
われわれはかねてから、この昭和二十二年度の豫算につきまして、その收支の適合をいかにはかるか、戰後處理その他の事情によつて莫大な歳出を――昨年とは違いまして、今年度は財産税の收入がありませんから、この莫大な歳出をいかに賄うかということについて、非常な懸念をもつておつたのであります。ところが今囘とにもかくにも一應のつじつまを合わせて豫算案を提出されました。大藏大臣は、これによつてインフレは抑え得るということを強調しておられるのであります。はたしてしからば、この豫算案の基盤であるところの歳入の見積り――現在提出されておる税制改革による歳入の見積りが、はたしてこれ確實なものであるかどうかということを、お尋ねいたしたいと思うのであります。
まず租税收入の六〇%を占めるところの所得税收入について伺いたいと思います。これは四百十一億見込んであります。昨年度と比べますと、昨年度は八十六億を見込んでおつたのでありますから、約五倍の増收であります。もつとも昨年度は、第九十一議會において議決されまして、總合所得税をとつております。これが四十五億見込んでおりますから、これを合しまして、百三十億の所得税收入になります。この百三十億と比較いたしましても、今年度の所得税收入見積りは、約その三倍の増收を見込んでおるのであります。
この厖大な所得税收入の課税の對象であるところの本年度の國民所得の實質は、はたして昨年度あるいは一昨年度の國民所得と比べて殖えるかどうか。私はむしろ多少とも減るのではなかろうかと考えるのであります。すなわち第一に、財産税あるいは軍需補償打切りによりまして、大口所得者が激減いたしております。また所得が細分化されております。かりに同じ所得といたしても、所得が細分化されるならば、御承知の通り所得税は累進でありまするから、税收入は減るはずであります。第二番目に、昨年度までは終戰當時のストツクがあり、そのストツクを食いつないで、經濟活動が細々ながら行われてきておりましたが、本年度に至つて、既にそのストツクはほとんど底をついております。また生産再開は、未だに軌道に乘つておりません。これらを考えれば、經濟活動は昨年よりも盛んになるということは考えられないと思います。また第三に、賠償撤去等によつて、相當今後においても見透しが變つて來るだろうと思うのであります。
こういうふうに考えますれば、昨年度あるいは一昨年度と比べて、實質國民所得が、減じようとも殖えるとは考えられないのであります。ところが一方において、税制改革によりまして、むしろ税收入は減るべき立場になると思うのであります。すなわちこの法案によりますると、基礎控除が大巾に引上げられております。いま一つは税率が非常に經減されております。これを昨年度に比較いたしますと、昨年度は分類所得税、總合所得税の二本建になつておりまして、たとえば一萬圓超の場合については、分類所得税二〇%、總合所得税三五%、合計五五%になつております。ところが今囘は、一本建の所得税で、わずかに二五%に止まつております。また三十萬圓超の場合を比較いたしますると、昨年度は總合所得税で六七%であります。分類所得税を合しますれば九二%ないし九七%になつておりますが、今囘はわずかに六五%に止まつているのであります。
すなわちこれは、昨年の總合、分類兩所得税を今囘一本の所得税に改めましたが、その税率は、昨年度の總合所得税の税率にほぼひとしいものをもつて税率といたしております。從つて分類所得税の税率の分だけは、輕減しておるということになつております。そういたしますると、これは思い切つた輕減でありまするが、かようにして税率は輕減する、基礎控除は引上げる、しかも國民の實質的所得が殖えないということならば、なぜに税收入のみが三倍以上も増收を見込まれるのであるか。これをお伺いいたしたいのであります。
これにつきましては、おそらく大藏大臣は、インフレによる物債の値上り、あるいは賃金、俸給の引上げを言われるのではなかろうか。もしそうであるとするならば、昨年度あるいは一昨年度に比べて、いかなる程度物價が引上げられ、あるいは賃金、俸給が上らんとするかというお見透しを伺いたいと思うのであります。
もう一つは、大藏大臣は、今囘の豫算課税あるいは申告納税制度によつて、いままで捕捉されなかつた所得が捕捉され、これによつて税收入が殖えると言われるかもしれません。しかしこれはあまりにも甘い考え方であると思います。これは後ほど申し上げてみたいと思うのであります。要するに、大藏大臣が健全財政を強調されるならば、その基礎であるところの、特にこの所得税收入の見積りについて、國民に納得のいくよう御説明を賜わりたいと思うのであります。
次に豫算課税申告納税制度についてお伺いいたしたいと思うのであります。從前は勤勞所得については、主としていわゆる源泉課税を行います。從つて所得が發生した時に課税いたされます。しかし主として事業所得などについては、いわゆる實績課税でありまして、前年度の利益を計算して、一年後れて税が納められておつたのであります。しかし今日のように、經濟が非常に早く變轉する場合に、この實續課税ということは、はなはだまどろこしいことでありまして、所得を押えることはできがたい。また勤勞所得と事業所得との間に、税の上に非常に衡平を缺くことになります。從つて今囘この豫算課税の制度をおとりになることは、まことに結構なことであります。われわれとしても贊成であります。しかしこの制度をとるところの今日の時期といたしまして、わが國の經濟その他の状態より考えまして、この斷行は非常な困難を豫想せられます。これに對して政府はいかなる用意、いかなる御覺悟があるかということを承りたいと思います。
すなわち豫算課税におきましては、四月においてその年一ぱいの所得の豫想を立てまして、その豫想によつて申告いたしまして、しかも納税するのであります。これは少くともその年一ぱいの經濟その他の見透しがつくような、平常な經濟状態でなければ、これは行われない制度であります。しかるに政府みずから申されるごとく、現在わが國の經濟は、戰後の疲弊混亂からまだ脱しておりません。むしろこれから先において、より以上の疲弊混亂が來るのではないかと、不安をもたれておるのであります。特に事業所得の納税者にとつてみまして、鐵、石炭等の基礎資材は、ほとんど配給がない。あるいはその他の手持資材も、ほとんど底をついておる。今年一ぱいどころか、三月先の豫想も立たない時において、これらの人々が、將來一箇年間の事業所得の豫想をなして、これに對して納税をするということは、事實において不可能なことに屬すると考えられるのであります。もしそれを斷行するといたしましても、かかる場合、人情として將來の不安を豫想いたしまして、どうしても、はなはだしい差控えた申告をするに違いないと思います。
こういう場合においてこれを斷行するということになりますれば、ある場合においては三月だけの申告をさせる。ある場合においては修正申告をたびたびしてもろう。あるいは更正をなすとか、臨機應變、經濟状態の變革に應じて、適切なる措置を講じられなければならないと思うのであります。從つて今日までの税務機構では、これはできない。思い切つて強化し、税務行政の敏活化をはからなければならないと思うのでありますが、これに對して政府はいかなる御用意があるかどうか、お伺いいたしたいと思うのであります。
もう一つ、豫算課税申告納税制度をとるにつきまして特に考えておきたいことは、國民の納税思想という問題であります。國民の道義が比較的確立しておりまする平常の時においても、納税者が正直に申告書を出して、税金を納めるということは、これは利己的な人間性からいたしまして、なかなか困難であるということは、わが日本ばかりではない、諸外國が今日まで非常に苦しんで來ておつたのであります。特に今囘のように豫算課税申告納税ということになりますれば、これは納税者の誠實なる申告に最も多く基礎をおくのでありますから、これが滿足な效果を收めるということに對しては、まず國民が文化的に非常に進んで、納税思想が發達しておるということが根本條件であらうと思うのであります。ところがわが國民は、殘念ながらまだ納税思想がそこまで發達してきておらない。
たとえば今日までの實績課税の場合にいたしましても、既に所得が確定しておることでさえも、その申告がなかなか誠實に行われがたい。納税者の申告によつて、税務署がそのままこれを受入れるということは少かつた。また現に今年の一月に實施されました増加所得税につきましても、その申告期日において、申告書がほとんどまだ提出されなかつた税務署が多かつたのであります。アメリカがこの豫算課税制度をとりましたのは、一九四三年であります。これはアメリカ國民が最も戰意が昂揚し、この納税によつて戰に勝つのだという納税思想が最も高まつておつた時にこの制度をとりましたがために、成功したのであろうと思うのであります。今日わが國が、敗戰後思想が混亂し、道義が頽發しておるこの際において、この制度をとるということは、非常に危險なことであり、困難なことであります。これに對して政府はいかなる覺悟と御用意があるか、お伺いいたしたいのであります。
本法案を見ますれば、あるいは體刑、あるいは罰金刑なり、非常に罰則を強化いたしておりまするが、國民納税思想が高揚されない限り、いかに罰則を強化いたしましても、これは戰時中の統制法令のごとく、一片の空文に化すると考えるのであります。(拍手)。
次に、第三者通報制度ということを大藏大臣が強調しておられまするが、本法案を讀みますると、納税者の所得の公開をいたしません。ただ特に税務署に聽きに來た場合には知らせるという程度であります。特に個人的な事情のある人でない限り、わざわざ税務署に行つて、他人樣の所得を調べる人は少かろう。またかりに第三者が通報した場合、その通報が誤つておるなら、三年以下の懲役、あるいは罰金を科するということに規定されております。他人樣のことを通報するのでありますから、惡意がなくとも、あるいは間違つておることがないとも限らぬ。間違つた場合には嚴罰に處するという條文を入れておりまするが、この條文の入れ方について、惡意がなかつたなら、多少間違つておつても、これは罰しては、ならぬと思う。眞にこの第三者通報制度を活用するなら、もう少しこの條文の書き方があると思うのであります。この條文の書き方を見まして、大藏當局でも、第三者通報制度に眞に期待をかけておらないということを私は考えるのであります。(拍手)
これにつきまして、私は民主的な納税協力機關、あるいは監督機關の設置を要求し、これを條文に書き加えていただきたいと思います。大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。すなわち今囘所得調査委員會、あるいは審査委員會は廢止になります。從來のこれらの調査會、委員會は、納税者の側に立つてなるべく税を輕減させる側に立つて活動いたしておつたのでありまするから、これの廢止は結構であります。しかしこれらの考えとは全然趣を變えまして、民主的な協力機構、あるいは監督機關はぜひ必要であると考えるのであります。
すなわち私の考えで申しますれば、税務署を單位といたしまして、國民各階層、職業あるいは政黨代表、あるいは勞農組合の代表を入れまして、常置の委員會をつくりまして、これが税務署の調査に協力をし、また税務署の仕事を監督する。こういうふうにいたしたいと思うのであります。
その目標は、今日インフレに際して、どうしても健全財政の確立が本筋であります。これがためには、税收入の確保が根本であります。これは官廳にのみ任せておく仕事ではない。國民全體が協力すべきである。もし所得を隱匿する者があるならば、國民の手によつてこれは監督しなければならない。この考え方でもつて所得を適正に調査しなければならぬ。また課税の公正を期さなければならぬ。いま一つは、これらの委員會の活動によつて、國民の納税思想を普及發達させねばならぬと考えるのであります。この委員會の設置については、ぜひとも御考慮を願いたいと思いまして、大臣の御意見を伺ひたいのであります。
次に所得税法第六十三條、法人税法第四十六條、これは税務官吏は、所得税あるいは法人税に關する調査について必要があれば、納税義務者に取引のあるところの者に對して質問をなし、あるいは帳簿を檢査することができる、もしこれに反するならば、所得税法第七十條、法人税法第四十九條によつて、體刑、罰金等を科せられるということになつているのであります。この規定によつて、特に問題になりますのは、銀行その他の金融機關の問題であります。從來銀行その他金融機關におきましては、預金の祕密性を言い立てまして、税務署の調査には全然應じないことが多かつたのであります。また預金者に對して、むしろ合法的脱税の便宜を與えておつたことが多かつたのであります。こうしてこの銀行の非協力なことが多かつたために、税務の調査が完全に行われがたかつた。これは私から申し上げるまでもなく、大藏當局のよく知つておられるところであります。
從つてこの際、ただいま申し上げたこの條文、規定に對し、銀行、金融機關が該當すれば、税務官吏がいつでもこれを調べることができるということを、この際はつきりしておいていただきたいと思うのであります。この點、ただいま大藏御當局が、貯蓄増強を口實として、預金の祕密性確保――金融業者などに強要せられまして、態度をはつきりいたしておりませんから、特に取立ててお伺いをいたしておく次第であります。
時間がありませんから、最後に申し上げたいと思うのであります。政府がこれらの今囘の豫算を實行されるといたしますれば、酒、タバコ、鹽、マツチ等、大幅に値上げされます。また鐵道、遞信等の特別會計が、獨立採算制をとるということになります。これら鐵道會計などは、特に昨年の十月においても、一箇月に三億圓も赤字を出している。現在十億圓以上も赤字を出しているのではないかと思いますが、これが獨立採算制をとるとするならば、大幅に運賃あるいはその他種々なる官業の料金を引上げなければならないと考えるのであります。また價格差補給金もとりやめるということになれば、米、石炭等の消費者價格も引上げられる運命になつております。これらの引上げが必ず一般物價に影響し、賃金も引上げられると思うのであります。
こうして大藏大臣は、物價暴騰に拍車をかけながら、財政の面からは通貨の膨脹は起らないから、インフレは抑えられると言われるのであります。大藏大臣は、今からまだ三月ほど前の第九十一議會において、通貨が千億に向つて膨脹しておつたときに、通貨は膨脹するが、やみの物價は上つておらないから、インフレでないと言つた。今日はどうですか。物價は上つても、健全財政で通貨は殖えぬから、インフレでないと言う‥‥。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=64
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065・山崎猛
○議長(山崎猛君) 奧村君。――奧村君。注意をいたします。各派交渉會の申合せ時間もありますから、簡單に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=65
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066・奧村又十郎
○奧村又十郎君(續) 早もう二分ほどお願いします。こういうふうにして、大藏大臣のお言葉は、いかようにでも變轉自在に言うておられますが、國民生活はますます窮乏のどん底に陷つていくのであります。
特に見逃してならないことは、今年度にはいつて、大藏大臣の財政方針が、百八十度の轉換をなしていることであります。すなわち昨年の第九十議會あるいは第九十一議會においては、大藏大臣は、生産さえ進むならば赤字財政も差支えない、國民經濟全體としては、それは健全財政であると言われたのであります。そうしてあるいは石炭に補給金をどんどん出す。中小工業者にも、うんと金融をする。こうして四百三十五億の財産税を徴收しながらも、一般會計、特別會計を合わせて、莫大な赤字財政をやつて來たのであります。
ところが今年にはいつて、どういうことを言うておられるか。インフレは財政から起るんだ。健全財政を確立させねばならぬということでもつて、金融を引締め、しかも莫大な財政支出を増税によつて賄おうとしているのであります。これは非常なデフレ政策であります。今後日本の復興は、中小工業者に依存しなければならぬのであります。物の不足とともに、この金融の逼迫によつて、ほとんど生産は行われないのであります。かくして昨年度においては、大藏大臣は生産を強調して、赤字財政を擁護し、今日は健全財政のために生産を顧みぬというやり方であります。この點、大臣の御見解をお伺いしたいと思うのであります。(拍手)
〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=66
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067・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) 奧村君の御質問に、簡單に要領をお答えいたしたいと思うのであります。
まず第一に、豫算に計上せられた税收入というものが、これはどうも過大ではないかというような御質問であつたと思うのであります。お示しになりました通り、たとえば所得税について申しますると、昨年度の八十六億が、本豫算においては四百十一億になつている。それでいいのかというような意味の御質問であつたと思うのであります。ところが、昨年度の八十六億も、自然増收の結果、實際においては百五十億收入している。こういう状態でありまして、今年のこの税の見込みにつきましても、昨年十一月、十二月ごろの物價事情、所得の状況等を勘案いたしまして、すなわち勤勞所得につきましては千二百圓のベースにより、また農業所得につきましては五百五十圓の米價を基準にいたしまして、それによる所得。營業所得につきましては、最近調査いたしました増加所得税等によつて推定いたしまして、昨年末ごろの所得の状況によつて推算をいたしたものであります。從いまして、これは相當具體的に補足をいたしておりますので、決して見積りは過大でございません。從つてこのたび豫算に計上されました税收入については、これは確實に徴收し得る確信をもつているということをお答え申し上げます。
それから次に申告制が突如としてできたが、これはどうもまずいのじやないかというような御意見であつたかと思うのであります。ところが、これは結局のところ、國民の自覺に訴えて、だんだん申告制がよくなるように、今後仕向けて行かなければならぬ。今年これを實施いたしまして、直ちに豫期の成果を十分に收め得るかどうか、その點は相當に努力をしなければならぬと思うのであります。從いまして、内部關係においては、たとえば税務署を殖やす、財務局も殖やすのみならず、税務行政の内部の革新をはかりまして、人員を増加するのみならず、相當の擴充をいたしまして、税務行政に遺漏なきことを期して、この申告制度というものを十分に活かすようにいたしたい。言葉は惡いかもしれませんが、民衆に對してできるだけ親切に指導して、指導的な立場に立つて、十分な指導をなし得るように機構を擴充強化いたしたいこういうことを考えているのであります。
第二には、奧村君も仰せになりましたが、一つの協力機關を設けたらどうか。これは現在計畫いたしているところでありまして、税務協力員というようなものを設けまして、外側からも協力を受ける。内部の關係においては、税務官署の増設、外部の關係においては、優秀なる税務協力員を設けまして、内外相呼應して、このせつかく實施しようといたしまする――またわれわれは、日本國民がこの申告税制というものに必ず成功すると信じたいのであります。十分に親切なる指導をなすことによつて、これを可能にいたしたい、こういうふうに考えているのであります。
それからなおいろいろお話が多岐にわたつたのでありますが、その一つは、預金の祕密性について、これを確保することが税を逸脱さしているのじやないかというような御議論であつたと思うのであります。これは現在のわが國の段階において、奧村君も仰せになりましたように、結局通貨の收縮をはからなければならぬ。通貨の收縮をはかるには、浮動購買力を何とかして吸收するということをいたしまして、積極的にはそうした資金の蓄積によつて、財政資金あるいは生産資金というものを潤澤にしていく、それで賄つていくというような方向に努力をしなければならぬのであります。從いまして、貯蓄の重要性は實に非常に倍化している。こういう見地から、貯金をする人と、しない人と、不均衡であるというようなことになつてはならない。貯金をしたがために祕密性が確保せられずに、それが直ちに税の對象になるということになると、退藏を奬勵する結果になり、ふところに入れた方がましだということになりますので、ここはわれわれは大きな目的のために、預金の祕密性というものを確保しながら、できるだけ浮動購買力を吸收して、現下膨脹の過程にありまする通貨を、何とかして收縮しなければならぬ。この點に最善の努力をいたしているのであります。とは申しますものの、不正があつても、これを放置するというのではございません。いやしくも不正があるならば、これは追究して税を捕捉するに決して躊躇はいたしません。
その他いろいろ御質問がございましたけれども、これは委員會において十分に御質疑を願うことにいたしたい。この程度でお答え申上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=67
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068・奧村又十郎
○奧村又十郎君 簡單でありますから、自席から發言を許していただきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=68
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069・山崎猛
○議長(山崎猛君) 簡單に願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=69
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070・奧村又十郎
○奧村又十郎君 要するに、ただいまの御答辯の中で、ただ一つだけ承りたいと思います。所得税法第六十三條、法人税法第四十六條の規定において、銀行その他の金融機關が該當するかどうか、はつきり御答辯を願いたいと思います。
〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=70
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071・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) お答えいたします。該當いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=71
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072・奧村又十郎
○奧村又十郎君 殘餘の質疑は、委員會でいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=72
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073・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて質疑は終了いたしました。各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=73
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074・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第一ないし第七の七案を一括して、議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=74
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075・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=75
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076・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議の如く決しました。
日程第八及び第九は便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=76
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077・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程第八、行政官廳法案、日程第九、宮内府法案、右兩案を一括して第一讀會を開きます。國務大臣齋藤隆夫君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=77
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078・会議録情報9
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第八 行政官廳法案(政府提出) 第一讀會
第九 宮内府法案(政府提出) 第一讀會
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行政官廳法案
行政官廳法
第一條 内閣総理大臣及び各省大臣の分担管理する行政事務の範囲は、法律又は政令に別段の規定あるものを除くの外、從來の例による。
第二條 各省大臣は、國務大臣の中から、内閣総理大臣がこれを命ずる。但し、内閣総理大臣が、自らこれに当ることを妨げない。
第三條 各大臣の管理する事務は、法律又は政令に別段の規定あるものを除くの外、総理府、從來の各省及び從來の各大臣の管理する外局で、これを掌る。
第四條 各大臣は、所部の職員の服務につき、これを統督する。
第五條 各大臣は、主任の事務について、法律又は政令の制定、改正又は廃止を必要と認めるときは、案を具えて、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めなければならない。
第六條 各大臣は、主任の事務について法律若しくは政令を執行するために、又は法律若しくは政令の特別の委任に基いて総理廳令又は省令を発することができる。
総理廳令又は省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は議務を課し、若しくは権利を制限する規定を設けることができない。
第七條 各大臣は、主任の事務について、國の機関としての地方公共團体の長の法律に基いてなす行政事務に関しその長を指揮監督することができる。若し、國の機関としての地方公共團体の長の措置が成規に違い又は権限を侵すものありと認めるときは、その措置を停止し、又は取消すことができる。
前項の規定は、地方公共團体の長の地方自治の本旨に基く法律に基いてなすその地方公共團体の事務に関しては適用しない。
第八條 各大臣の所管する部内に置くべき職員の種類及び所掌事項は、法律又は政令に別段の規定あるものを除くの外、從來の職員に関する通則による。
第九條 内閣官房及び法制局は、政令の定めるところにより、内閣総理大臣の管理する事務を掌ることができる。
第十條 内閣官房及び法制局に夫夫内閣官房長官及び法制局長官を置く。各一人一級とする。
内閣官房長官及び法制局長官は、夫夫内閣官房又は法制局の事務を統理し、所部の職員の服務につき、これを指導監督する。
第一項の職員の外、内閣官房及び法制局に置くべき職員の種類及び所掌事項については、法律又は政令に別段の規定あるものを除くの外、從來の例による。
第十一條 第四條乃至第六條の規定を適用するについては、内閣官房及び法制局に係る事項は、これを内閣総理大臣の所掌事項とみなす。
第十二條 総理廳、各省、内閣官房及び法制局には、法律又は政令の定めるところにより、所要の部局及び機関を置く。
第十三條 國務大臣及び別に法律で定める官吏の外、その任免につき、天皇の認証を要する官吏は、特命全権大使、特命全権公使及び戰災復興院総裁とする。
第十四條 官吏の任免、敍級、休職、復職その他官吏の身分上の事項に関する手続につき必要な事項は、法律に別段の規定あるものを除くの外、政令でこれを定める。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律は、施行後一年を限り、その効力を有する。
この法律施行の際現に各省大臣たる者は、別段の辞令を発せられないときは、この法律により、各省大臣となつたものとする。
前項に規定するものの外、この法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
内閣法の一部を次のように改正する。
第二條第一項中「及び國務大臣十六人以内」を「並びに從來の各省大臣及び國務大臣の定数以内の國務大臣」に改める。
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宮内府法案
宮内府法
第一條 宮内府は、皇室関係の國家事務及び政令で定める天皇の國事に関する行爲に係る事務を掌り、御璽國璽を保管する。
第二條 宮内府に左の職員を置く。
宮内府長官 一級
宮内府次長 一人 一級
宮内府長官祕書官 專任一人 二級
侍從長 一級
侍從 一級及び二級
式部官 一級及び二級
宮内府事務官 一級、二級及び三級
宮内府技官 一級、二級及び三級
侍從、式部官、事務官及び技官の定員は、政令でこれを定める。
第一項の規定による職員の外、政令で定めるところにより、所要の職員を置くことができる。
第三條 長官及び侍從長の任免については、天皇の認証を要するものとする。
第四條 長官は、府務を総理し、所部の職員の服務につき、これを指揮監督する。
第五條 次長は、長官を助け、府務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する。
第六條 祕書官は、長官の命を受け、機密の事務を掌る。
第七條 侍從長は、側近に奉仕する。
第八條 侍從は、侍從長の職務を助ける。
第九條 式部官は、上官の命を受け、儀式及び接待に関することを掌る。
第十條 事務官は、上官の命を受け、事務を掌る。
第十一條 技官は、上官の命を受け、技術を掌る。
第十二條 宮内府には、政令の定めるところにより、所要の部局及び機関を置くことができる。
第十三條 宮内府は、内閣総理大臣の所轄とする。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
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〔國務大臣齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=78
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079・齋藤隆夫
○國務大臣(齋藤隆夫君) 上程せられました行政官廳法案につきまして、提案の理由を説明いたします。この法律案は、行政官廳の組織權限等に關する基本的事項を規定しておるものでありまして、その内容のおもな事項は次の通りであります。
第一に、内閣總理大臣初め各省大臣の行政事項の分擔は、原則として從來の例によることにいたしました。
第二に、各省の制度は從前の通りでございまするが、各省大臣と同じ立場におきまして、内閣總理大臣の所掌する事項を管理する官廳として、特に總理廳を設けることにいたしました。
第三に、各大臣の權限につきましては、概ね從來の例によつております。ただ從來内閣總理大臣の發するところの命令は、閣令と稱しておりましたが、これを今後は總理廳令と稱することにいたしました。
第四に、以上のほか内閣法の規定に對應して、内閣に置かるべき内閣官房及び法制局の組織を規定するとともに、第五に、任免については天皇の認證を要する官を規定し、第六に、なお官吏の身分上の事項に關する手續につきましては、法律に別段の規定あるものを除くのほか、政令をもつてこれを定めることにいたしたのであります。
以上が、本案の大體の要點であるのであります。
行政機構及び公務員制度に關しましては、政府におきまして目下根本的に研究を進めております。この成果を待つて、本格的な法制を整備いたしたいと考えておるのであります。本案は概ね現状を基礎として、とりあえず必要な事項を規定せんとするものでありまするから、この有效期間も一年を限つた次第であります。御審議の上に御協贊をお願いいたします。
次に宮内府法案について、提案の理由を説明いたします。日本國憲法の施行とともに、從來國の一般行政とは別の系統でありましたところの、皇室關係事務を掌つておりました宮内省が、廢止せられることになりますので、ここに内閣總理大臣の所轄する宮内府を設けることとし、その職權及び組織に關する事項を規定いたしまするがために、この法案を立案いたしたものであります。
その内容のおもなる點は、第一には宮内府の權限を規定し、皇室關係の國家事務及び政令で定める天皇の國務に關する行爲に關する事務竝びに御璽國璽の保管に關する事務を所掌する旨を規定いたしたのであります。
第二は、宮内府の職員として長官、次長、侍從長、侍從、式部官、宮内事務官、宮内技官等の諸官をおくことにいたしたのであります。これらのうち侍從長、侍從及び式部官は、宮内府におきまして所掌する事項の性格に鑑み、設けんとするものでありまして、侍從長は側近に奉仕するものであり、式部官は儀式及び接待に關することを掌るものであります。なお長官及び侍從長は、その地位に鑑み、その任免につきましては、天皇の認證を要することにいたしました。
第三には、宮内府の所屬の部局及び必要なる機關は、政令でこれを設置し得ることにいたしたのであります。御審議の上、御協贊をお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=79
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080・山崎猛
○議長(山崎猛君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=80
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081・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第八及び第九の兩案を一括して、議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=81
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082・山崎猛
○議長(山崎猛君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=82
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083・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第十ないし第十三は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=83
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084・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。日程第十、檢察廳法案、日程第十一、日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案、日程第十二、日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案、日程第十三、日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案、右四案を一括して第一讀會を開きます。司法大臣木村篤太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=84
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085・会議録情報10
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第十 檢察廳法案(政府提出) 第一讀會
第十一 日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十三 日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
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檢察廳法案
檢察廳法
第一條 檢察廳は、檢察官の行う事務を統括するところとする。
檢察廳は、最高檢察廳、高等檢察廳、地方檢察廳及び区檢察廳とする。
第二條 最高檢察廳は、最高裁判所に、高等檢察廳は、各高等裁判所に、地方檢察廳は、各地方裁判所に、区檢察廳は、各簡易裁判所に、それぞれ対應してこれを置く。
最高檢察廳の位置並びに最高檢察廳以外の檢察廳の名称及び位置は、政令でこれを定める。
司法大臣は、必要と認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所の支部にそれぞれ対應して高等檢察廳又は地方檢察廳の支部を設け、当該檢察廳の事務の一部を取り扱わせることができる。
第三條 檢察官は、檢事総長、次長檢事、檢事長、檢事及び副檢事とする。
第四條 檢察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。
第五條 檢察官は、いずれかの檢察廳に属し、他の法令に特別の定のある場合を除いて、その属する檢察廳の対應する裁判所の管轄区域内において、その裁判所の管轄に属する事項について前條に規定する職務を行う。
第六條 檢察官は、いかなる犯罪についても搜査をすることができる。
檢察官と他の法令により搜査の職権を有する者との關係は、刑事訴訟法の定めるところによる。
第七條 檢事総長は、最高檢察廳の長として、廳務を掌理し、且つ、すべての檢察廳の職員を指揮監督する。
次長檢事は、最高檢察廳に属し、檢事総長を補佐し、又、檢事総長に事故のあるとき、又は檢事総長が欠けたときは、その職務を行う。
第八條 檢事長は、高等檢察廳の長として、廳務を掌理し、且つ、その廳並びにその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る地方檢察廳及び区檢察廳の職員を指揮監督する。
第九條 各地方檢察廳に檢事正各一人を置き、一級の檢事を以てこれに充てる。
檢事正は、廳務を掌理し、且つ、その廳及びその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る区檢察廳の職員を指揮監督する。
第十條 二人以上の檢事又は檢事及び副檢事の属する各区檢察廳に上席檢察官各一人を置き、檢事を以てこれに充てる。
上席檢察官の置かれた各区檢察廳においては、その廳の上席檢察官が、その他の各区檢察廳においては、その廳に属する檢事又は副檢事(副檢事が二人以上あるときは、檢事正の指定する副檢事)が廳務を掌理し、且つ、その廳の職員を指揮監督する。
第十一條 檢事総長、檢事長又は檢事正は、その指揮監督する檢察官に、第七條第一項、第八條又は第九條第二項に規定する事務の一部を取り扱わせることができる。
第十二條 檢事総長、檢事長又は檢事正は、その指揮監督する檢察官の事務を自ら取り扱い、又はその指揮監督する他の檢察官に取り扱わせることができる。
第十三條 檢事総長及び次長檢事、檢事長若しくは檢事正に事故のあるとき、又は檢事総長及び次長檢事、檢事長若しくは檢事正が欠けたときは、その廳の他の檢察官が、司法大臣の定める順序により、臨時に檢事総長、檢事長又は檢事正の職務を行う。
区檢察廳の廳務を掌理する檢察官に事故のあるとき、又はその檢察官が欠けたときは、檢事正の指定する他の檢察官が、臨時にその職務を行う。
第十四條 司法大臣は、第四條及び第六條に規定する檢察官の事務に関し、檢察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、檢事総長のみを指揮することができる。
第十五條 檢事総長、次長檢事及び
各檢事長は、一級とし、その任免は、天皇が、これを認証する。
檢事は、一級又は二級とし、副檢事は、二級とする。
一級の檢察官は、内閣が、二級の檢察官は、内閣総理大臣が、これを任免する。
第十六條 檢事長、檢事及び副檢事の職は、司法大臣が、これを補する。
副檢事は、区檢察廳の檢察官の職のみにこれを補するものとする。
第十七條 司法大臣は、高等檢察廳又は地方檢察廳の檢事の中から、高等檢察廳又は地方檢察廳の支部に勤務すべき者を命ずる。
第十八條 二級の檢察官の任命及び敍級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 司法修習生の修習を終えた者
二 裁判官の職に在つた者
三 三年以上政令で定める大学において法律学の教授又は助教授の職に在つた者
副檢事は、前項の規定にかかわらず、左の各号の一に該当する者で副檢事選考委員会の選考を経たものの中からもこれを任命することができる。
一 高等試驗に合格した者
二 三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職に在つた者
三年以上副檢事の職に在つて政令で定める考試を経た者は、第一項の規定にかかわらず、これを二級の檢事に任命及び敍級することができる。
副檢事選考委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十九條 一級の檢察官の任命及び敍級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 八年以上二級の檢事、判事補、簡易裁判所判事又は弁護士の職に在つた者
二 最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官又は判事の職に在つた者
三 前條第一項第一号又は第三号の資格を得た後八年以上司法次官、少年審判官、最高裁判所事務総長若しくは裁判所調査官又は二級以上の司法事務官、司法教官、裁判所事務官若しくは司法研修所教官の職に在つた者
四 前條第一項第一号又は第三号の資格を有し一年以上一級官吏の職に在つた者
五 前條第一項の資格を有し一級の檢察官の職務に必要な学識経驗のある者で一級官吏選考委員会の選考を経たもの
前項第一号及び第三号に規定する各職の在職年数は、これを通算する。
前條第三項の規定により檢事に任命された者は、第一項第三号乃至第五号の規定の適用については、これを同條第一項第一号の資格を有する者とみなす。
第二十條 他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを檢察官に任命することができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
二 彈劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
第二十一條 檢察官の受ける俸給については、別に法律でこれを定める。
第二十二條 檢事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の檢察官は、年齢が六十三年に達した時に退官する。
第二十三條 檢察官が心身の故障その他の事由に因りその職務を執るに堪えないときは、檢察官適格審査委員会の議決を経てその官を免ずることができる。
檢察官適格審査委員会は、檢察官、裁判官及び弁護士の中から選任された委員を以てこれを組織する。
前二項に規定するものの外、檢察官適格審査委員会に関する事項は、政令でこれを定める。
第二十四條 檢事長、檢事又は副檢事が檢察廳の廃止その他の事由に因り剩員となつたときは、司法大臣は、その檢事長、檢事又は副檢事に俸給の半額を給して欠位を待たせることができる。
第二十五條 檢察官は、前三條の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。
第二十六條 最高檢察廳に檢事総長祕書官を置く。
檢事總長祕書官は、二級とする。
檢事総長祕書官は、檢事総長の命を受けて機密に関する事務を掌る。
第二十七條 檢察廳に檢察事務官を置く。
檢察事務官は、二級又は三級とする。
檢察事務官は、上官の命を受けて檢察廳の事務を掌り、又、檢察官を補佐し、又はその指揮を受けて搜査を行う。
第二十八條 檢察廳に檢察技官を置く。
檢察技官は、二級又は三級とする。
檢察技官は、檢察官の指揮を受けて技術を掌る。
第二十九條 檢察廳の職員の定員は、予算の範囲内において政令でこれを定める。
第三十條 司法大臣は、檢事総長若しくは檢事長又は檢事正にその廳又はその廳及びその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る区檢察廳の三級官吏の進退に関する権限を委任することができる。
檢事長又は檢事正は、その廳の檢察事務官及び檢察技官の中から、その廳の支部に勤務すべき者を命ずる。
第三十一條 檢察廳の職員は、他の檢察廳の職員と各自の取り扱うべき事務について互に必要な補助をする。
第三十二條 檢察廳の事務章程は、司法大臣が、これを定める。
附 則
第三十三條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第三十四條 この法律施行前、從前の檢事総長又は大審院檢事のした事件の受理その他の行爲は、これを檢事総長又は最高檢察廳の檢事のした事件の受理その他の行爲とみなし、從前の檢事長、控訴院檢事、從前の檢事正又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事のした事件の受理その他の行爲は、これをそれぞれ政令で定める檢事長、高等檢察廳の檢事、檢事正又は地方檢察廳の檢事のした事件の受理その他の行爲とみなす。
第三十五條 この法律施行前、從前の檢事総長又は大審院檢事にあててされた事件の送致その他の行爲は、これを檢事総長又は最高檢察廳の檢事にあててされた事件の送致その他の行爲とみなし、從前の檢事長、控訴院檢事、從前の檢事正又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事にあててされた事件の送致その他の行爲は、これをそれぞれ政令で定める檢事長、高等檢察廳の檢事、檢事正又は地方檢察廳の檢事にあててされた事件の送致その他の行爲とみなす。
第三十六條 司法大臣は、当分の間、檢察官が足りないため必要と認めるときは、区檢察廳の檢察事務官にその廳の檢察官の事務を取り扱わせることができる。
第三十七條 裁判所構成法による檢事たる資格を有する者は、第十八條及び第十九條の規定の適用については、その資格を得た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。この法律施行の際現に弁護士たる資格を有する者で弁護士の在職年数がこの法律施行後において三年に達する者についてその三年に達した時も同樣とする。
この法律施行前弁護士試補として一年六箇月以上の実務修習を終え考試を経た者は、前項の規定にかかわらず、その考試を経た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。
第三十八條 裁判所構成法による檢事若しくは判事の在職又は同法による檢事たる資格を有する者の司法省各局長、司法省調査部長、司法省調査官、司法書記官、司法研究所指導官、司法研究所事務官、司法省参事官、領事官、朝鮮総督府檢事、朝鮮総督府判事、台湾総督府法院檢察官、台湾総督府法院判官、関東法院檢察官、関東法院判官、南洋廳檢事若しくは南洋廳判事の在職は、第十九條第一項第一号の規定の適用については、これを二級の檢事の在職とみなす。
第三十九條 第十八條第二項第二号中二級官吏とあるのは、奏任文官を、第十九條第一項第四号中一級官吏とあるのは、勅任文官を含むものとする。
第四十條 この法律施行の際奏任の檢事で現に控訴院檢事又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、檢事に任ぜられ、二級に敍せられ、且つ、それぞれ政令で定める高等檢察廳又は地方檢察廳の檢事に補せられたものとする。
第四十一條 この法律施行の際現に書記長若しくは裁判所書記の職に在つて檢事局に属する者又は檢察補佐官の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、現に受ける号俸を以て檢察事務官に任ぜられ、奏任又は二級の者は、二級に、判任又は三級の者は、三級に敍せられたものとする。
第四十二條 政令で特別の定をした場合を除いて、他の法律中「檢事」を「檢察官」に、「管轄裁判所ノ檢事」を「管轄裁判所ニ對應スル檢察廳ノ檢察官」に改める。
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日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に関する法律案
第一條 この法律は、日本國憲法の施行に伴い民法について、個人の尊嚴と両性の本質的平等に立脚する應急的措置を講ずることを目的とする。
第二條 妻又は母であることに基いて、法律上の能力その他を制限する規定は、これを適用しない。
第三條 戸主、家族その他家に関する規定は、これを適用しない。
第四條 成年者の婚姻、離婚、養子縁組及び離縁については、父母の同意を要しない。
第五條 夫婦は、その協議で定める場所に同居するものとする。
夫婦の財産関係に関する規定で両性の本質的平等に反するものは、これを適用しない。
配偶者の一方に著しい不貞の行爲があつたときは、他の一方は、これを原因として離婚の訴を提起することができる。
第六條 親権は、父母が共同してこれを行う。
父母が離婚するとき、又は父が子を認知するときは、親権を行う者は、父母の協議でこれを定めなければならない。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、裁判所が、これを定める。
裁判所は、子の利益のために、親権者を変更することができる。
第七條 家督相続に関する規定は、これを適用しない。
相続については、第八條及び第九條の規定によるの外、遺産相続に関する規定に從う。
第八條 直系卑属、直系尊属及び兄弟姉妹は、その順序により相続人となる。
配偶者は、常に相続人となるものとし、その相続分は、左の規定に從う。
一 直系卑属とともに相続人であるときは、三分の一とする。
二 直系尊属とともに相続人であるときは、二分の一とする。
三 兄弟姉妹とともに相続人であるときは、三分の二とする。
第九條 兄弟姉妹以外の相続人の遺留分の額は、左の規定に從う。
一 直系卑属のみが相続人であるとき、又は直系卑属及び配偶者が相続人であるときは、被相続人の財産の二分の一とする。
二 その他の場合は、被相続人の財産の三分の一とする。
第十條 この法律の規定に反する他の法律の規定は、これを適用しない。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十三年一月一日から、その効力を失う。
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日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律案
第一條 この法律は、日本國憲法の施行に伴い、民事訴訟法について應急的措置を講ずることを目的とする。
第二條 民事訴訟法は、日本國憲法及び裁判所法の制定の趣旨に適合するようにこれを解釈しなければならない。
第三條 判決以外の裁判は、知事補が一人でこれをすることができる。
第四條 上告は、高等裁判所がした第二審又は第一審の終局判決に対しては最高裁判所に、地方裁判所がした第二番の終局判決に対しては高等裁判所にこれをすることができる。
第一審の終局判決について、上告をする権利を留保して、控訴をしない旨の合意をした場合には、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所に、地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、直ちに上告をすることができる。
第五條 高等裁判所が上告裁判所である場合に、最高裁判所の定める事由があるときは、決定で事件を最高裁判所に移送しなければならない。
第六條 高等裁判所が上告審としてした終局判決に対しては、その判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とするときに限り、最高裁判所に更に上告をすることができる。
前項の上告は、判決の確定を妨げる効力を有しない。但し、最高裁判所は、同項の上告があつたときは、決定で強制執行の停止を命ずることができる。
第七條 民事訴訟法の規定により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、その決定又は命令において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とするときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
前項の抗告の提起期間は、五日とする。
第八條 行政廳の違法な処分の取消又は変更を求める訴は、他の法律(昭和二十二年三月一日前に制定されたものを除く。)に特別の定のあるものを除いて、当事者がその処分があつたことを知つた日から六箇月以内に、これを提起しなければならない。但し、処分の日から三年を経過したときは、訴を提起することができない。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十三年一月一日から、その効力を失う。
東京高等裁判所が裁判所法施行法の規定に基いて審理及び裁判すべきものとされた事件(同法施行の際東京控訴院に係属していたものを除く。)についてした終局判決に対しては、その判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とするときに限り、最高裁判所に上告することができる。
前項の上告については、第六條第二項の規定を準用する。
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日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律案
第一條 この法律は、日本國憲法の施行に伴い、刑事訴訟法について應急的措置を講ずることを目的とする。
第二條 刑事訴訟法は、日本國憲法、裁判所法及び檢察廳法の制定の趣旨に適合するようにこれを解釋しなければならない。
第三條 被疑者は、身体の拘束を受けた場合には、弁護人を選任することができる。この場合には、刑事訴訟法第三十九條第二項の規定を準用する。
第四條 被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため辯護人を附しなければならない。
第五條 判決以外の裁判は、知事補が一人でこれをすることができる。
第六條 引致された被告人又は被疑者に対しては、直ちに犯罪事實の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げなければならない。
勾留については、申立により、直ちに被告人又は被疑者及びこれらの者の弁護人の出席する公開の法廷でその理由を告げなければならない。
第七條 檢察官又は司法警察官は、勾引状及び勾留状を発することができない。
檢察官又は司法警察官は、裁判官の令状がなければ、押收、搜索又は檢証をすることができない。但し、現行犯人を逮捕する場合及び勾引状又は勾留状を執行する場合は、この限りでない。
檢察官又は司法警察官は、身体を檢査し、死體を解剖し、又は物を破壞する処分を必要とする鑑定は、これを命ずることができない。
第八條 逮捕状及び勾留状の発附並びに公訴の提起については、左の規定による。
一 檢察官又は司法警察官吏は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官の逮捕状を得て、これを逮捕することができる。
二 檢察官又は司法警察官吏は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を得ることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
三 現行犯人が逮捕された場合には、遲滯なく刑事訴訟法第百二十七條及び第百二十九條に定める時間の制限内に檢察官から裁判官に対する勾留状の請求がされなければならない。この制限された時間は、逮捕の時からこれを起算する。檢察官又は司法警察官吏がやむを得ない事情により時間の制限に從うことができなかつた場合において、その事由が適当に示されたときは、裁判官は、その遲延がやむを得ない事情に基く正当なものであると認定することができる。勾留状が発せられないときは、直ちに犯人を釈放しなければならない。
四 第二号の規定により被疑者が逮捕された場合には、逮捕状と同時に勾留状を発することができる。第一号及び第二号の規定により被疑者が逮捕された場合には、前号の場合に準じ、遲滯なく同号に定める時間の制限内に檢察官から裁判官に対する勾留状の請求がされなければならない。勾留状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
五 第一号乃至前号の場合その他被疑者が逮捕されたすべての場合においては、公訴の提起は、遲滯なくこれをしなければならない。勾留状の請求があつた日から十日以内に公訴の提起がなかつたときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第九條 予審は、これを行わない。
第十條 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第十一條 檢察官及び弁護人は、公判期日において、裁判長に告げ、被告人、証人、鑑定人、通事又は飜訳人を訊問することができる。
被告人は、公判期日において、裁判長に告げ、共同被告人、証人、鑑定人、通事又は飜訳人を訊問することができる。
第十二條 証人その他の者(被告人を除く。)の供述を録取した書類又はこれに代わるべき書類は、被告人の請求があるときは、その供述者又は作成者を公判期日において訊問する機会を被告人に與えなければ、これを証拠とすることができない。但し、その機会を與えることができず、又は著しく困難な場合には、裁判所は、これらの書類についての制限及び被告人の憲法上の権利を適當に考慮して、これを証拠とすることができる。
刑事訴訟法第三百四十三條の規定は、これを適用しない。
第十三條 上告は、高等裁判所がした第二審又は第一審の判決に對しては最高裁判所に、地方裁判所がした第二審の判決に對しては高等裁判所にこれをすることができる。
刑事訴訟法第四百十二條乃至第四百十四條の規定は、これを適用しない。
第十四條 刑事訴訟法第四百十六條各号の場合には、地方裁判所がした第一審の判決に對しては最高裁判所に、簡易裁判所がした第一審の判決に對しては高等裁判所に、控訴をしないで、上告をすることができる。
第十五條 高等裁判所が上告裁判所である場合に、最高裁判所の定める事由があるときは、決定で事件を最高裁判所に移送しなければならない。
第十六條 上告裁判所においては、事實の審理は、これを行わない。
第十七條 高等裁判所が上告審としてした判決に對しては、その判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とするときに限り、最高裁判所に更に上告をすることができる。但し、事件を差し戻し、又は移送する判決に對しては、この限りでない。
前項の上告は、判決の確定を妨げる効力を有しない。但し、最高裁判所は、同項の上告があつたときは、決定で刑の執行を停止することができる。
第十八條 刑事訴訟法の規定により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、その決定又は命令において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とするときに限り、最高裁判所に特に抗告することができる。
前項の抗告の提起期間は、五日とする。
第十九條 檢察事務官は、搜査及び令状の執行については、司法警察官に準ずるものとする。
第二十條 被告人に不利益な再審は、これを認めない。
第二十一條 この法律の規定の趣旨に反する他の法令の規定は、これを適用しない。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律は、昭和二十三年一月一日から、その効力を失う。
第十二條の規定は、この法律施行前に既にその証拠調が終つている書類については、その審級に限り、これを適用しない。
この法律施行前に終結した弁論に基いて言い渡された判決に対しては、なお刑事訴訟法の規定により上告をすることができる。
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〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=85
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086・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) ただいま上程に相なりました檢察廳法案外三件の提案理由を御説明申し上げます。
從來裁判所構成法により、檢事は、裁判所に附置された檢事局の職員として檢察事務を行つてきたのでありまするが、新憲法が司法權の獨立につき深甚の考慮をいたしておりますことに鑑みますれば、狹義の意味の司法機關、すなわち裁判機關にあらざる檢察機關は、これを裁判所と別個獨立のものとすることを相當と思料いたしました結果、裁判所法とは別に、檢察機關の組織を定めることといたしたのであります。これが檢察廳法案提案の理由であります。
本法案の立案につきましては、概ね裁判所構成法による檢察制度を踏襲することといたしました結果、その根本におきましては、重大なる變革はないと申しても差支えないのであります。從つて以下、本法案により從來の檢察制度が改革される主要なる點について申し述べたいと存じます。
第一、從來の檢事の名稱は、新憲法の用例に從いまして檢察官に、檢事局は檢察廳に改めることといたしました。
第二に、從來の檢事をして、新憲法にいわゆる檢察官の職務を行わせることはもちろんでありまするが、別に副檢事の制度を設けまして、もつぱら區檢察廳において檢察官の職務を行わせることといたしたのであります。このたび副檢事の制度を設けました理由は、裁判所法の施行に伴い、違警罪即決例が廢止され、從來警察署長によつて即決された違警罪、すなわち拘留とかまたは科料に該る罪が、すべて簡易裁判所において處理されることとなりまするために、檢察官の取扱う事件は急激に増大するのでありまするが、今にわかに從前の檢事の資格を有する多數の檢察官を得ますることは、人的にも豫算的にもきわめて困難であるのみならず、これらの事件は必ずしもすべて從來の檢事の資格を有する者をしてこれを處理せしめるを要しないと思われまするので、從來の檢事の任用資格を緩和いたしまして、所要の檢察官を得ようとする點に存するのであります。
第三、檢察官の任用資格は、ほぼこれまでと同樣でありまするが、副檢事は上述の理由から、高等試験に合格した者、または三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職にあつた者で、副檢事選考委員會の選考を經た者の中からもこれを任命することができることといたしたのであります。しかして三年以上副檢事の職務にあつて、別に定める考試を經た者は、檢事に任命することができることととなつておるのであります。かように副檢事の制度を設け、さらに副檢事から檢事への昇進の途を開くことは、從來下積みの感のあつた裁判所書記、警察官等に對し將來の希望を與えるものとして、意義ある改革と考えておるのであります。
第四、檢察官の職務遂行の公正を擔保するため、その身分を保障する必要あることはもちろんであり、本法案においても、その點十分考慮いたしておりますが、檢察官の身分保障が強固に過ぎて、もし心身の故障その他の事由により檢察官の職務を行うに堪えない場合にも、なおかつこれを罷免することができないというがごときは、決して當を得たものではありませんので、さような場合には、檢察官適格審査委員會の議決を經て、その官を免ずることができることといたしました。
第五、檢察官は從來と同樣、司法大臣の指揮監督に服するものでありますが、檢察權行使の獨立性を擔保するため、個々の事件の取調べまたは處分については、司法大臣は檢事總長のみを指揮することができることになつております。
第六、檢察廳には、檢察官のほかに、檢察事務官と檢察技官とを置くこととしました。檢察事務官は、從來の裁判所書記の職務を行うのほか、檢察官の指揮を受けて、搜査を行う職權を有するのであります。これによりまして、檢事直屬の搜査機關を設けて、いわゆる人權蹂躙事件の根絶を期すべしとの一般の要望に應えんとするものであります。檢察技官は、今後における犯罪搜査に關しては、科學的知識を一層活用する要があると信じ、その技術を擔當せしめるために、これを設けることとしたのであります。
以上が、本法律案により檢察制度が、改革される主要な點であつて、檢察官の職務權限その他は、概ね從前の制度と變りはないのであります。
次に、日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案の御説明を申し上げます。
日本國憲法は、すべて國民は個人として尊重せられ、法のもとに平等であること、及び法律は個人の尊嚴と兩性の本質的平等に立脚して制定されなければならないことを宣言いたしておるのであります。しかるに現行民法には、この趣旨に抵觸する幾多の規定を含んでおりますので、新憲法の基本原則に適合させるために、これを根本的に改正する必要があります。政府はかねてからその改正の準備に著手し、遲くとも今議會にはこれを上程すべく努力してまいつたのでありますが、種々の事情から、遂にこれを提出することができなくなりました。それでとりあえず新憲法の基本原則を實現するために、特に必要な諸點につき、民法の改正に至るまでの最小限度の應急的措置を講じ、もつて新憲法の實施と民法の改正とが時期を異にするために生ずる種々の混亂をできるだけ防止しようとするのが、この法律案の目的であります。もとよりこの法律だけで、新憲法の基本原則が實現されるわけではないのでありまして、引續き各方面の御援助のもとに、民法典の改正事業を繼續し、できるだけ早い機會にこれを實現して、同時にこの法律を廢止したい所存であります。
次に、この法律案の内容の要點を申し上げます。第一點は、戸主、家族その他家に關する規定及び家督相續に關する規定を、適用しないものとしたことであります。現行民法のもとでは、戸主は家の統率者として家族に對し、居所指定權、婚姻及び縁組の同意權、その他各種の權力を認められておりますが、これらに個人の尊嚴と兩立しないため、新しい憲法のもとでは、これを認めることができないのであります。そしてこれらの權力を否定すれば、もはや民法上の家の制度は、法律上はその存在の理由を失うのみならず、これを法の上に殘すことは、かえつて戸主の權力を廢止する趣旨を不明瞭にするおそれがあります。また戸主を中心とする法律上の家の制度を認めない以上、戸主權の承繼を内容とする家督相續の制度も、またこれを認めることができないことは明らかであります。よつてこの法律では、戸主、家族その他家に關する規定及び家督相續に關する規定はすべてこれを適用しないことといたしました。
第二點は、成年者の婚姻、離婚、養子縁組及び離縁につき、父母の同意を要しないものとしたことであります。
〔議長退席、副議長著席〕これは、婚姻が兩性の合意のみに基いて成立すべきものとした憲法の規定、その他個人の尊嚴を規定する新憲法の趣旨に從つたものであります。
第三點は、夫婦及び親權に關する諸規定につき、兩性の本質的平等を徹底させるための措置を講じたことであります。すなわち妻の無能力、母の親權行使の制限等、妻または母であることに基いて法律上の能力その他を制限する規定は、これを適用しないものとし、夫婦の同居すべき場所は、その協議で定めるものとし、妻の財産に對する夫の使用收益權、管理權等、夫婦の財産關係に關する不平等な制度はこれを認めないことにし、裁判上の離婚原因は、これを夫及び妻につき平等とし、子に對する親權は、父母共同行使を建前として、離婚または認知後の親權者は、父母の協議により定めることとしたのであります。
第四點は、相續制度について種々の改革を行つたことであります。すなわち家督相續制度の廢止に伴い、全面的に分割相續制度を採用し、大體は從來の遺産相續制度によりますが、兄弟姉妹も相續人に加え、配偶者は常に相續人となるものとし、配偶者の相續分については特別の措置を講じ、かつ遺留分の定め方につき、若干の變更を加えました。以上が、この法律案の大要であります。
次に、日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に關する法律案につきまして御説明申し上げます。
日本國憲法及び裁判所法の制定によりまして、裁判機構に著しい改革がもたらされることとなりますので、これに即應して現行民事訴訟法に所要の改正を加えることが必要となつたのであります。しかしながら日本國憲法實施の上は、訴訟に關する手續については、最高裁判所が規則を定める權限を有することとなりますので、民事訴訟に關する手續中、法律によるものと、最高裁判所の規則によるものとの調整をはかることが肝要であり、これがためには、最高裁判所發足後、最高裁判所と愼重協議することが望ましく、その他諸般の事情に鑑みまして、このたびは民事訴訟法自體の全面的改正を差控え、日本國憲法及び裁判所法の施行上必要やむを得ない部分に限りまして、本法に對する應急的措置を講ずることといたしました。これが本法案を提出する趣旨であります。なおこの趣旨に照らし、本案については、その有效期間を限りまして、應急的措置であることを明らかにするとともに、その期間内に、新しい國會において、民事訴訟法の全面的改正の審議を煩わすことといたしたい所存であります。
以下、本法案の要點を申し上げますと、まず第一に、民事訴訟法の適用について、日本國憲法及び裁判所法の制定の趣旨に適合するようにこれを解釋すべき旨の規定を設けたことと、第二、上訴の制度について、新しい裁判機構に即應する規定を設けたこと。既に裁判所法におきまして、簡易裁判所の事件に對する上告は、高等裁判所の權限に屬するものと定められましたが、最高裁判所を、違憲の判斷に關する最終裁判所とする日本國憲法の精神に鑑みまして、高等裁判所が上告審としてなした判決については、その判決において示した法律、命令、規則または處分が違憲であるかどうかの判斷が不當であるとするときは、さらにこの點につきまして、最高裁判所の判斷を受け得ることといたし、不服申立の方法のない決定及び命令につきましても、同樣の途を開いたのであります。第三に、行政廳の違法な處分の取消または變更を求むる訴えの出訴期間を定めたことであります。以上が、本法案の提案の理由であります。
次に日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律案について、提案理由を御説明申し上げます。
新憲法第三章においては、基本的人權の尊重に關する諸種の新しい規定が設けられ、その第三十一條以下數條は、刑事手續に關する規定であります。この規定を實施するためには、現行刑事訴訟法に相當廣範圍の改正を加えなければならないばかりでなく、さらに裁判所法及び檢察廳法の制定、民法の改正等に伴いまして、これが改正を要する部分もまた少くないのであります。從つて政府におきましては、過般來臨時法制調査會の答申に基きまして、現行刑事訴訟法を全面的に改正すべく、これが立案に鋭意努力をいたしまして、組織法たる裁判所法案及び檢察廳法案に引續いて御審議を願う豫定でありましたが、諸般の準備に多大の日時を要し、その他いろいろの事情に鑑みまして、ここに從來の方針を改めまして、新憲法の施行上最小限度に必要な規定を選びまして、しかもその大綱のみを掲げて、本應急措置法を立案いたしまして、もつて近く現行刑事訴訟法の全面的改正までの應急的措置を講ずることといたした次第であります。從いまして本案につきましては、その有効期問を限り、應急的措置であることを明らかにいたした次第であります。
以下、本案の要點を申し上げますと、まず第一に、公訴提起前、すなわち搜査の段階においても辯護人を認めること、貧困その他の事由によつて辯護人を依頼することができない被告人のためには、その請求によりまして、國で辯護人を付することといたしたこと、第二に、搜査機關の權限につきまして所要の改正を加えましたこと、第三に、豫審を行わないことといたしましたこと、これは現在の豫審が非公開の手續であり、實際上長期間を要すること等のために、憲法の規定する迅速な公開裁判の趣旨を徹底せしめんとするものであります。第四に、事實の誤認、刑の量定不當等の理由による上告を廢止いたしました。かつ上告審では、事實の審理を行わないことといたしました。もつて上告審の法律審としての性格を明らかにした次第であります。第五に、特別上告及び特別抗告の制度を設けたのであります。これは憲法第八十一條によりまして、最高裁判所が終審として憲法の解釋について決定權を有することとなつたことによる次第であります。
以上御説明申し上げました通り、本法案の内容はきわめて簡單であり、現在の刑事訴訟法とやや性質を異にする規定でありますので、これが適用について解釋上相當困難な問題も生ずると思われますが、重要な點はほぼ列擧いたしてありますので、憲法、裁判所法及び檢察廳法の制定の趣旨に則りまして、裁判官竝びに搜査官の健全な常識によりまして、これが圓滑に運用されることを期待し、第二條におきまして、特にその趣旨を明らかにいたした次第であります。何とぞ愼重御審議の上、御協贊を賜わらんことをお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=86
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087・井上知治
○副議長(井上知治君) 質疑の通告があります。これを許します。山下春江君。
〔山下春江君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=87
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088・山下春江
○山下春江君 議題となりました民法の應急措置に關する法案に對して、簡單に御質問いたします。
新憲法は、個人の尊嚴と、兩性の本質的平等の二大原則を規定しております。私は、この二大原則に則り、政府が民法の大法典を提出するものと期待いたしておりましたが、今囘はそれが間に合いませず、十箇條の暫定法案を提出いたしましたことに對しまして、女性の立場から、深く遺憾の意を表するものでございます。
御承知のように、新憲法は民主政治の基本原則を取入れておりまして、政治機構に一大改革を與えましたが、この政治機構の大改革にも増しまして重大な意義のあるのは、民法の改正であります。今囘の民法の改正で、封建的な家が廢止され、家督相續がなくなりました。また女性は男性と平等の立場に立ち、封建的な桎梏から解放されました。この意味におきまして、民法こそは、國民生活に一大改革をもたらすものであり、女性解放の大宣言であると言つても、過言ではないのでございます。
しかるに今囘はわずかに十箇條をもつて、應急措置を講じました。私はわずかこの十箇條で、女性に對して憲法が保障した點をすべて確保し、女性の立場を保障しておるかどうか、疑問をもつておるものであります。女性が、憲法施行と同時に、男性と本質的に平等となるのでありますが、司法大臣は、この十箇條で女性の權利を十分保障したとお考えになるでございましようが、まずこの點をお尋ねいたします。
次に、家の廢止に伴いまして、いわゆる淳風美俗と考えられまする、父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和しの、よい意味での家族生活というものが破壞されはしないかということでございます。これは憲法審議のとき既に問題となりまして、貴族院では、家族生活はこれを尊重するという意味の修正意見が出たくらいでございます。そうしてこれは一般の人のみならず、法律家のような專門の人々までが、よい意味の家族生活が破壞されるのではないかということを恐れたのであります。司法大臣はこれに對して、家は廢止されても、よい意味の家族生活は破壞されないが、平和的な家族生活を維持するために、民法に十分の規定を設けると申されました。
しかるにこの法案を見ますと、その點には何ら觸れておりません。單に戸主、家族その他家に關する規定はこれを適用しないとだけしか書いてございません。民法大法典が出ますまでには、少くとも二、三箇月かかるであらうと考えられます。現在の世情は、惡い意味での個人主義がはびこりまして、人心は日に日にすさんでおります。私は暫定法案とはいえ、平和的な家族生活を維持するために、家族生活尊重の趣旨を明文化すべきではないかと思うのであります。この點に關する司法大臣の御所見を伺いたいと思います。
次に、兩性の本質的平等の結果、妻の無能力を廢止されました。女子の地位は確保されたのでございますが、夫婦の財産上その他の關係で、妻はその地位を十分保障されているかどうか、お伺いいたします。
まずその第一といたしまして、法制審議會の答申案によりますと、離婚した場合、相手方に對して、相當の生計を維持するに足る財産の分與を請求することができるとありました。しかるに今囘の暫定法案では、兩性の本質的平等に反するものはこれを適用しないとあるだけで、財産分與請求の權利は保障されておりません。現在の婦人は、社會的地位が低く、經濟生活においてはとうてい男子に伍していくことは困難であります。男子から不當に離婚されました場合、財産を分與されなければ、直ちに明日の生活に迷う者がたくさんあります。政府は、この暫定法案に財産分與請求權をお加えになる意思がないかどうか、お伺いいたしたいのであります。
次に第二點といたしまして、離婚の場合、子供はいずれが引取るのでありましようか。もちろん協議によつてきまるものではございますけれども、女子の經濟上の地位という點から、十分御考慮せらるべきであると思いますが、御所見はいかがでございましようか。
次に、第三點といたしまして、男女は同權となりました。これはまことに結構でございますが、完全な平等となりましても、教育の機會均等によりまして、女子の地位が向上するまでの暫定期間中、國家的保障がなければ、女子の地位はかえつて困難となるのではないかと思います。憲法の改正によりまして、夫婦は婚姻前の財産はそれぞれ特有財産となります。また婚姻中でも、自己の名で得た財産は、自分のものになると思います。またその財産の處分についても、夫の同意を得る必要はないこととなると思いますが、もししかりといたしますれば、そのことが平和なる家庭生活に及ぼす影響はいかがなものでございましようか。すなわち個人の財産の擁護せらるべきは當然でありましようが、一面また夫婦の共有財産制とも稱すべきものを考慮すべきではないでございましようか。
次にその第四點といたしまして、この暫定法案では、離婚の原因といたしまして、著しい不貞行爲をあげております。この著しい不貞行爲とは、セクシユアルなものを指しているのだと思いますが、現行刑法がそのままであるといたしますれば、著しい不貞行爲だけでは、女性は男性と平等の立場にあるとは考えられません。また著しい不貞行爲と、その解釋に餘裕のもたせてある眞意をお尋ねいたしたいのであります。
最後に、女性の權利擁護のために、裁判への女子の參加を要望いたします。御承知のように、民法の改正により、裁判所の國民生活への關係は、ますます深まつてまいりました。改正民法が施行されますれば、遺産爭いとか、離婚とか、遺憾ながら家庭の爭議は續出する傾向にあると思われるのであります。政府は、家庭の平和と健全な親族共同生活を維持するために、家事審判所を設けることを明らかにいたしました。しかるにそれが今議會に間に合わなかつたのであります。私は改正民法の運營を完全にし、女子の後見的機能を果すために、家事審判所設置を強く要望して、第九十議會において、家事審判所設置の建議を出し採擇されまして、政府は次の議會にその法案を提出することを言明したのでありますが、その實現を見なかつたことは、最も遺憾にたえません。家事審判所ができるまで、政府は人事調停法を適用になると思うのでありますが、その調停には、兩性の本質的平等から、婦人の參加を廣くお認みになるべきだと思うのであります。そして女性の聲を廣く聽かれまして、裁判の公正を期していただきたいと思います。
以上をもちまして、私の質問を終りますが、政府は一個人の尊嚴と兩性の本質的平等から、完全なる民法の大法典と、これに附隨して家事審判所法を、次の議會に速やかに提出せられるよう、重ねて要望いたす次第でございます。(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=88
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089・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) ただいままことに適切なる御議論を拜聽いたしました。御承知の通り、新憲法の實施に伴いまして、民法には多分の改正を加えることが必要であるのでありまして、政府におきましては、諸般の準備を整えまして、大體成案を得て本議會に提案する運びとなつておつたのでありまするが、思わざる種々の事故が發生いたしまして、殘念ながら提出することができなかつた次第であります。そこで御承知の通り、新憲法において強調されました個人の尊嚴と男女の本質的平等を基調といたしまして、できる限りの範圍内において、應急的處置として、ただいまの法案を御審議を願うことになつたのでありまするが、この應急處置といたしましての法律案において、大體女子の權利は認められると申して差支えないと思うのであります。すなわち妻としての法律上の制限は、すべて御承知の通り應急處置で撤廢されたのであります。從いまして、大體婦人としての憲法上認められた權利というものは、これで確保できると申して差支えないのであります。また男女の營みまする家庭につきましては、御承知の通りいろいろ問題もありましようが、結局は男女が相より相助けて家庭生活を營むというのが基本であります。從來は申すまでもなく、戸主權がはなはだ強くあつて、ややともすれば、他家からはいりました妻は非常に不遇な立場にある。これは世間應々散見するところでありまするが、この應急處置によりまして、家というものが廢止されまして、家庭は妻と夫が中心になつて、平和な家庭生活を營むということが基本になるのでありまするから、夫婦が相より相助けて協調的態度に出ますならば、今後の日本の家庭というものは、十分に保護され、發展されることが期待できるものと固く信じている次第であります。
次に女子の財産の分與請求權の點でありまするが、これはただいまの應急處置では、この點に觸れておりませんが、近く憲法實施以後に開かるべき臨時議會において、この點については、民法法典の全面的改正とともに提出したいと考えている次第であります。
また離婚の場合の子供の處置についてはどうするかということでありまするが、これはごもつともな御議論であります。ただいまのところ、應急處置にはこの點に觸れていないのでありますが、この點も、民法の全面的改正について十分考慮を拂うつもりであります。現段階におきましては、かような場合には、人事調停にこれをもち出されますと、十分にその點についての考慮を拂われまして、應急的な處置は取計らわれることと信じております。
次に共有財産制度を設ける意思はないかどうか、これもごもつともな御議論であります。これまた民法の全面的改正におきまして、十分考慮を拂う餘裕があるのであります。これも問題が起つた場合には、ただいまのところでは、人事調停で取計らわれることと、固く信じておる次第であります。
次に家事審判所の問題でありますが、これは山下君におかせられても、この法案の作成についてはいろいろ御盡力を願つたのであります。御承知の通り、これも成案を得て、本會議に提出する運びに實はなつておつたのでありますが、いろいろな故障の結果、殘念ながらこの議會に提出することができなかつたのであります。この家事審判所が設けられますると、もちろんこの審判所には婦人の方もおはいり願いまして、十分に婦人の立場から、いろいろな事件の處理を願うことに相なると信じている次第であります。
なおこの際附言いたしまするが、裁判所法において設けられまする簡易裁判所におきましては、將來婦人の方もこの裁判所の判事として、裁判の公正を維持するために、十分な御協力を願うことにならうと存じます。この點、さよう御承知を願いたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=89
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090・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=90
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091・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 日程第十は、政府提出裁判所法案委員に併せ付託し、日程第十一ないし第十三の三案は、一括して議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=91
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092・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=92
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093・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=93
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094・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際政府提出財政法案及び會計法を改正する法律案の兩案を一括議題となし、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=94
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095・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=95
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096・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
財政法案、會計法を改正する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます。大藏政務次官北村徳太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=96
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097・会議録情報11
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財政法案(政府提出) 第一讀會
會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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財政法案
財政法目次
第一章 財政総則
第二章 会計区分
第三章 予算
第一節 総則
第二節 予算の作成
第三節 予算の執行
第四章 決算
第五章 雜則
財政法
第一章 財政総則
第一條 國の予算その他財政の基本に関しては、この法律の定めるところによる。
第二條 收入とは、國の各般の需要を充たすための支拂の財源となるべき現金の收納をいい、支出とは、國の各般の需要を充たすための現金の支拂をいう。
前項の現金の收納には、他の財産の処分又は新らたな債務の負担に因り生ずるものをも含み、同項の現金の支拂には、他の財産の取得又は債務の減少を生ずるものをも含む。
なお第一項の收入及び支出には、会計間の繰入その他國庫内において行う移換によるものを含む。
歳入とは、一会計年度における一切の收入をいい、歳出とは、一会計年度における一切の支出をいう。
第三條 租税を除く外、國が國権に基いて收納する課徴金及び法律上又は事実上國の独占に属する事業における專賣價格若しくは事業料金については、すべて法律又は國会の議決に基いて定めなければならない。
第四條 國の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、國会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
前項但書の規定により公債を発行し又は借入会をなす場合においては、その償還の計画を國会に提出しなければならない。
第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、國会の議決を経なければならない。
第五條 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、國会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
第六條 各会計年度において歳入歳出の決算上剩余を生じた場合においては、当該剩余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。
前項の剩余金の計算については、政令でこれを定める。
第七條 國は、國庫金の出納上必要があるときは、大蔵省証券を発行し又は日本銀行から一時借入金をなすことができる。
前項に規定する大藏省証券及び一時借入金は、当該年度の歳入を以て、これを償還しなければならない。
大蔵省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額については、毎会計年度、國会の議決を経なければならない。
第八條 國の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。
第九條 國の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支拂手段として使用し、又は適正な対價なくしてこれを讓渡し若しくは貸し付けてはならない。
國の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に應じて、最も効率的に、これを運用しなければならない。
第十條 國の特定の事務のために要する費用について、國以外の者にその全部又は一部を負担させるには、法律に基かなければならない。
第二章 会計区分
第十一條 國の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする。
第十二條 各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。
第十三條 國の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。
國が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする。
第三章 予算
第一節 総則
第十四條 歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。
第十五條 法律に基くもの又は歳出予算の全額の範囲内におけるものの外、國が債務を負担する行爲をなすには、予め予算を以て、國会の議決を経なければならない。
前項に規定するものの外、災害復旧その他緊急の必要がある場合においては、國は毎会計年度、國会の議決を経た金額の範囲内において、債務を負担する行爲をなすことができる。
前二項の規定により國が債務を負担する行爲に因り支出すべき年限は、当該会計年度以降三箇年度以内とする。但し、國会の議決により更にその年限を延長するもの並びに外國人に支給する給料及び恩給、地方公共團体の債務の保証又は債務の元利若しくは利子の補給、土地、建物の借料及び國際條約に基く分担金に関するもの、その他法律で定めるものは、この限りでない。
第二項の規定により國が債務を負担した行爲については、次の常会において國会に報告しなければならない。
第一項又は第二項の規定により國が債務を負担する行爲は、これを國庫債務負担行爲という。
第二節 予算の作成
第十六條 予算は、予算総則、歳入歳出予算及び國庫債務負担行爲とする。
第十七條 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計檢査院長は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出及び國庫債務負担行爲の見積に関する書類を作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければならない。
内閣総理大臣及び各省大臣は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出及び國庫債務負担行爲の見積に関する書類を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第十八條 大藏大臣は、前條の見積を檢討して必要な調整を行い、歳入、歳出及び國庫債務負担行爲の概算を作製し、閣議の決定を経なければならない。
内閣は、前項の決定をしようとするときは、國会、裁判所及び会計檢査院に係る歳出の概算については、予め衆議院議長、參議院議長、最高裁判所長官及び会計檢査院長に対しその決定に関し意見を求めなければならない。
第十九條 内閣は、國会、裁判所及び会計檢査院の歳出見積を減額した場合においては、國会、裁判所又は会計檢査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出予算に附記するとともに、國会が、國会、裁判所又は会計檢査院に係る歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならない。
第二十條 大藏大臣は、毎会計年度、第十八條の閣議決定に基いて、歳入予算明細書を作製しなければならない。
衆議院議長、參議院議長、最高裁判所長官、会計檢査院長並びに内閣総理大臣及び各省大臣(以下各省各廳の長という。)は、毎会計年度、第十八條の閣議決定のあつた概算の範囲内で予定経費要求書及び國庫債務負担行爲要求書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第二十一條 大藏大臣は、歳入予算明細書、衆議院、參議院、裁判所、会計檢査院並びに内閣及び各省(以下各省各廳という。)の予定経費要求書及び國庫債務負担行爲要求書に基いて予算を作成し、閣議の決定を経なければならない。
第二十二條 予算総則には、歳入歳出予算及び國庫債務負担行爲に関する総括的規定を設ける外、左の事項に関する規定を設けるものとする。
一 第四條第一項但書の規定による公債又は借入金の限度額
二 第四條第三項の規定による公共事業費の範囲
三 第五條但書の規定による日本銀行の公債の引受及び借入金の借入の限度額
四 第七條第三項の規定による大藏省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額
五 第十五條第二項の規定による國庫債務負担行爲の限度額
六 前各号に掲げるものの外、予算の執行に関し必要な事項
第二十三條 歳入歳出予算は、歳入にあつては、その性質、歳出にあつては、その目的に從つて部に大別し、更に、各部中においてはこれを款項に区分し、又、その收入又は支出に関係のある部局等の組織の別を明らかにしなければならない。
第二十四條 予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める全額を、歳入歳出予算に計上しなければならない。
第二十五條 歳出予算のうち、経費の性質上年度内にその支出を終らない見込のあるものについては、特にその旨を歳入歳出予算に明示し、これを翌年度に繰り越して使用することについて、國会の承認を得ることができる。
第二十六條 國庫債務負担行爲は、事項ごとに、その必要の理由を明らかにし、且つ、行爲をなす年度及び債務負担の限度額を明らかにし、又、必要に應じて行爲に基いて支出をなすべき年度、年限又は年割額を示さなければならない。
第二十七條 内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の十二月中に、國会に提出するのを常例とする。
第二十八條 國会に提出する予算には、參考のために左の書類を添附しなければならない。
一 歳入予算明細書
二 各省各廳の予定経費要求書及び國庫債務負担行爲要求書
三 前前年度歳入歳出決算の総計表及び純計表、前年度歳入歳出決算見込の総計表及び純計表並びに当該年度歳入歳出予算の総計表及び純計表
四 國庫の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における見込に関する調書
五 國債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書
六 國有財産の前前年度末における現在高並びに前年度末及び当該年度末における現在高の見込に関する調書
七 國が、出資している主要な法人の資産、負債、損益その他についての前前年度、前年度及び当該年度の状況に関する調書
八 國庫債務負担行爲で翌年度以降に亘るものについての前年度末までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度に亘る事業に伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進行状況等に関する調書
九 その他財政の状況及び予算の内容を明らかにするため必要な書類
第二十九條 内閣は、予算作成後に生じた事由に基き必要避けることのできない経費若しくは國庫債務負担行爲又は法律上若しくは契約上國の義務に属する経費に不足を生じた場合に限り、予算作成の手続に準じ、追加予算を作成し、これを國会に提出することができる。
内閣は、前項の場合を除くの外、予算の成立後に生じた事由に基いて、既に成立した予算に変更を加える必要があるときは、その修正を國会に提出することができる。
第三十條 内閣は、必要に應じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを國会に提出することができる。
暫定予算は、当該年度の予算が成立したときは、失効するものとし、暫定予算に基く支出又はこれに基く債務の負担があるときは、これを当該年度の予算に基いてなしたものとみなす。
第三節 予算の執行
第三十一條 予算が成立したときは、内閣は、國会の議決したところに從い、各省各廳の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算及び國庫債務負担行爲を配賦する。
前項の規定により配賦する歳入歳出予算は、更に、歳入にあつては、項を目に、歳出にあつては、項を目及び節に区分する。
大藏大臣は、第一項の規定による配賦のあつたときは、会計檢査院に通知しなければならない。
第三十二條 各省各廳の長は、歳出予算については、各項に定める目的の外にこれを使用しすることができない。
第三十三條 各省各廳の長は、歳出予算の定める各項の金額若しくは各部局等の金額を彼此流用することができない。但し、予算の執行上必要がある場合においては、各省各廳内の部局等の間で、政令の定めるところにより、同一名称の項の金額に限り、流用することができる。
各省各廳の長は、目又は節の経費については、政令の定めるところにより、流用することができる。
第一項但書及び前項の規定は、予算において特別の定めをなした場合にはこれを適用しない。
第一項但書及び第二項の規定による流用については、大藏大臣が会計檢査院に通知しなければならない。
第一項但書及び第二項の規定により流用した経費の金額については、歳入歳出の決算において、これを明らかにするとともに、その理由を記戴しなければならない。
第三十四條 各省各廳の長は、第三十一條第一項の規定により配賦された予算に基いて、大藏大臣の定める期間に從い支出事務職員及び契約事務職員ごとに、支出の所要額及び國の支出の原因となる契約その他の行爲(以下契約等という。)の所要額を定め、支拂又は契約等の計画に関する書類を作製して、これを大藏大臣に送付し、その承認を経なければならない。
大藏大臣は、國庫金、歳入及び金融の状況並びに経費の支出状況等を勘案して、前項の期間ごとに、支拂又は契約等の計画の承認に関する方針を作製し、閣議の決定を経なければならない。
大藏大臣は、前項の方針に基いて第一項の支拂又は契約等の計画について承認をしたときは、各省各廳の長及び会計檢査院に通知するとともに、支拂計画はこれを日本銀行に通知しなければならない。
第三十五條 予備費は、大藏大臣が、これを管理する。
各省各廳の長は、予備費の使用を必要と認めるときは、理由、金額及び積算の基礎を明らかにした調書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
大藏大臣は、前項の要求を調査し、これに所要の調整を加えて予備費使用書を作製し、閣議の決定を求めなければならない。但し、予め閣議の決定を経て大藏大臣の指定する経費については、閣議を経ることを必要とせず、大藏大臣が予備費使用書を決定することができる。
予備費使用書が決定したときは、当該使用書に掲げる経費については、第三十一條第一項の規定により、予算の配賦があつたものとみなす。
第二項、第三項本文及び前項の規定に、各省各廳の長が第十五條第二項の規定により國庫債務負担行爲をなす場合に、これを準用する。
第三十六條 予備費を以て支弁した金額については、各省各廳の長は、その調書を作製して、次の國会の常会の開会後直ちに、これを大藏大臣に送付しなければならない。
大藏大臣は、前項の調書に基いて予備費を以て支弁した金額の総調書を作製しなければならない。
内閣は、予備費を以て支弁した総調書及び各省各廳の調書を次の常会において國会に提出して、その承諾を求めなければならない。
大藏大臣は、前項の総調書及び調書を会計檢査院に送付しなければならない。
第四章 決算
第三十七條 各省各廳の長は、毎会計年度、大藏大臣の定めるところにより、その所掌に係る歳入及び歳出の決算報告書並びに國の債務に関する計算書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
大藏大臣は、前項の歳入決算報告書に基いて、歳入予算明細書と同一の区分により、歳入決算明細書を作製しなければならない。
第三十八條 大藏大臣は、歳入決算明細書及び歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の決算を作成しなければならない。
歳入歳出の決算は、歳入歳出予算と同一の区分により、これを作製し、且つ、これに左の事項を明らかにしなければならない。
(一)歳入
一 歳入予算額
二 徴收決定済額(徴收決定のない歳入については收納後に徴收済として整理した額)
三 收納済歳入額
四 不納欠損額
五 收納未済歳入額
(二)歳出
一 歳出予算額
二 前年度繰越額
三 予備費使用額
四 流用等増減額
五 支出済歳出額
六 翌年度繰越額
七 不用額
第三十九條 内閣は、歳入歳出決算に、歳入決算明細書、各省各廳の歳出決算報告書及び國の債務に関する計算書を添附して、これを翌年度の十一月三十日までに会計檢査院に送付しなければならない。
第四十條 内閣は、会計檢査院の檢査を経た歳入歳出決算を、翌年度開会の常会において國会に提出するのを常例とする。
前項の歳入歳出決算には、会計檢査院の檢査報告の外、歳入決算明細書、各省各廳の歳出決算報告書及び國の債務に関する計算書を添附する。
第四十一條 毎会計年度において、歳入歳出の決算上剩余を生じたときは、これをその翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
第五章 雜則
第四十二條 毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。但し、歳出予算のうち、第二十五條の規定により繰越について國会の承認を得た経費の全額及び年度内に契約等をなし避け難い事故のため年度内に支出を終らなかつた経費の金額は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
第四十三條 各省各廳の長は、前條の規定による繰越を必要とするときは、繰越計算書を作製し、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにして、大藏大臣の承認を経なければならない。
前項の承認があつたときは、当該経費については、第三十一條第一項の規定により、予算の配賦があつたものとみなす。
第四十四條 國は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。
第四十五條 各特別会計において必要がある場合には、この法律の規定と異なる定めをなすことができる。
第四十六條 内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに公債、借入金及び國有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、講演その他適当な方法で國民に報告しなければならない。
前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、國庫の状況その他財政の状況について、國会及び國民に報告しなければならない。
第四十七條 この法律の施行に関し必要な事項は、政令で、これを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第十七條第一項、第十八條第二項、第十九條、第三十條、第三十一條、第三十五條並びに第三十六條の規定は、日本國憲法施行の日から、これを施行し、第三條、第十條及び第三十四條の規定の施行の日は、政令でこれを定める。
第四條及び第五條の規定は、昭和二十三年度以後の会計年度の予算に計上される公債又は借入金について、第七條、第三章の規定(第十七條第一項、第十八條第二項、第十九條、第二十八條、第三十條、第三十一條並びに第三十四條乃至第三十六條の規定を除く。)及び第四章の規定は、昭和二十二年度以後の会計年度の予算及び決算について、これを適用する。
第二條 この法律中「國会」、「内閣」「各省各廳」又は「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これを夫夫「帝國議会」、「政府」、「各省」又は「勅令」と読み替えるものとする。
日本國憲法施行の日までは、第二十條第二項中「衆議院議長、參議院議長、最高裁判所長官及び会計檢査院長並びに内閣総理大臣及び各省大臣(以下各省各廳の長という。)」とあるのは「各省大臣」、第二十一條中「衆議院、参議院、裁判所及び会計檢査院並びに内閣及び各省(以下各省各廳という。)」とあるのは「各省」と読み替えるものとする。
第三條 この法律施行前になした予備費の支出並びに昭和二十年度及び同二十一年度の決算に関しては、なお從前の例による。
第四條 從來予算外國庫の負担となるべき契約に関する件として帝國議会の協賛を経た事項は、日本國憲法施行後においては、國庫債務負担行爲となるものとする。但し、この場合においては、改正後の第十五條第三項の規定は、これを適用しない。
第五條 左に掲げる法令は、これを廃止する。
明治四十四年法律第二号(公共團体に対する工事補助費繰越使用に関する法律)
明治五年太政官布告第十七号
(政府に対する寄附に関する件)
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会計法を改正する法律案
会計法目次
第一章 総則
第二章 收入
第三章 支出及び債務の負担
第一節 総則
第二節 債務の負担
第三節 支出
第四節 支拂
第四章 契約
第五章 時効
第六章 國庫金及び有價証券
第七章 出納官吏
第八章 雜則
会計法
第一章 総則
第一條 一会計年度に属する歳入歳出の出納に関する事務は、政令の定めるところにより、翌年度七月三十一日までに完結しなければならない。
歳入及び歳出の会計年度所属の区分については、政令でこれを定める。
第二條 各省各廳の長(財政法第二十條第二項に規定する各省各廳の長をいう。以下同じ。)は、その所掌に属する收入を國庫に納めなければならない。直ちにこれを使用することはできない。
第二章 收入
第三條 租税その他の歳入は、法令の定めるところにより、これを徴收又は收納しなければならない。
第四條 大藏大臣は、歳入の徴收及び收納に関する事務の一般を管理し、各省各廳の長は、その所掌の歳入の徴收及び收納に関する事務を管理する。
第五條 租税その他の歳入は、官吏(國会の職員を含む。以下同じ。)で、法令の定めるところにより、これを徴收する資格を有する者(以下歳入徴收官という。)でなければ、これを徴収することができない。
第六條 歳入徴收官は、租税その他の歳入を徴收するときは、これを調査決定し、債務者に対して納入の告知をしなければならない。
第七條 租税その他の歳入は、出納官吏でなければ、これを收納することができない。但し、出納員に收納の事務を分掌させる場合又は日本銀行に收納の事務を取り扱わせる場合はこの限りでない。
出納官吏又は出納員は、租税その他の歳入の收納をしたときは、遅滯なく、その收納金を日本銀行に拂い込まなければならない。
第八條 歳入の徴收の職務は、現金出納の職務と相兼ねることができない。但し、特別の必要がある場合においては、政令で特例を設けることができる。
第九條 出納の完結した年度に属する收入その他予算外の收入は、すべて現年度の歳入に組み入れなければならない。但し、支出済となつた歳出の返納金は、政令の定めるところにより、各各支拂つた歳出の金額に戻入することができる。
第三章 支出及び債務の負担
第一節 総則
第十條 各省各廳の長は、その所掌に係る債務の負担及び支出に関する事務を管理する。
第二節 債務の負担
第十一條 契約等(財政法第三十四條第一項に規定する契約等をいう。以下同じ。)は、法令又は予算の定めるところに從い、これをしなければならない。
第十二條 各省各廳の長は、財政法第三十一條第一項の規定により配賦された予算に基いて契約等をなすには、同法第三十四條の規定により承認された契約等の計画に定める金額を超えてはならない。
第十三條 各省各廳の長は、他の官吏に委任して、契絶等をさせることができる。
第三節 支出
第十四條 各省各廳の長は、その所掌に属する歳出予算に基いて、支出しようとするときは、財政法第三十四條の規定により承認された支拂計画に定める金額を超えてはならない。
第十五條 各省各廳の長は、その所掌に属する歳出予算に基いて支出しようとするときは、現金の交付に代え、日本銀行を支拂人とする小切手を振り出し、又は大藏大臣の定めるところにより、國庫内の移換のための國庫金振替書(以下國庫金振替書という。)を日本銀行に交付しなければならない。
第十六條 各省各廳の長は、債権者のためでなければ小切手を振り出すことはできない。但し、第十七條、第十九條乃至第二十一條の規定により、主任の官吏又は日本銀行に対し資金を交付する場合は、この限りでない。
第十七條 各省各廳の長は、交通通信の不便な地方で支拂う経費、廳中常用の雜費その他経費の性質上主任の官吏をして現金支拂をなさしめなければ事務の取扱に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、当該官吏をして現金支拂をなさしめるため、政令の定めるところにより、必要な資金を交付することができる。
第十八條 各省各廳の長は、前條に規定する経費で政令で定めるものに充てる場合に限り、必要已むを得ないときは大藏大臣の承認を経て、会計年度開始前、主任の官吏に対し同條の規定により資金を交付することができる。
大藏大臣は、前項の規定による承認をしたときは、日本銀行及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十九條 大藏大臣は、日本銀行をして國債の元利拂の事務を取り扱わしめるため、必要な資金を日本銀行に交付することができる。
第二十條 各省各廳の長は、政令の定めるところにより、現金支拂をなさしめるため、逓信官署その他の官署の当該官吏をしてその保管に係る歳入金、歳出金又は歳入歳出外現金を繰り替え使用せしめることができる。
各省各廳の長は、前項の規定により、歳出金に繰り替え使用した現金を補填するため、その補填の資金を当該官史に交付することができる。
第二十一條 各省各廳の長は、隔地者に支拂をしようとするときは、必要な資金を日本銀行に交付して、支拂をなさしめることができる。
前項の規定は、隔地の出納官吏に対し第十七條又は前條第二項の規定により資金を交付しようとする場合に、これを準用する。
第二十二條 各省各廳の長は、運賃、傭船料、旅費その他経費の性質上前金又は概算を以て支拂をしなければ事務に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、前金拂又は概算拂をすることができる。
第二十三條 各省各廳の長は、逓信官署その他特殊の経理を必要とする官署で政令で定めるものの事務費については、政令の定めるところにより、その全部又は一部を主任の官吏に渡切を以て支給することができる。
第二十四條 各省各廳の長は、他の官吏に委任してその所掌に属する歳出金を支出するため小切手を振り出さしめ又は國庫金振替書を発せしめることができる。
第二十五條 各省各廳の長又はその委任を受けた官吏(以下支出官という。)は、政令の定めるところにより、小切手又は國庫金振替書につき大藏大臣又はその指定する官吏の認証を受けなければならない。
第二十六條 歳出の支出の職務は、現金出納の職務と相兼ねることができない。
第二十七條 過年度に属する経費は、現年度の歳出の金額からこれを支出しなければならない。但し、財政法第三十五條第三項但書の規定により大藏大臣の指定する経費の外、その経費所属年度の毎項金額中不用となつた金額を超過してはならない。
第四節 支拂
第二十八條 日本銀行は、支出官の振り出した小切手の提示を受けた場合において、その小切手が振出日附から十日以上を経過しているものであつても一年を経過しないものであるときは、その支拂をしなければならない。
日本銀行は、第二十一條の規定により、資金の交付を受けた場合においては、支出官がその資金の交付のために振り出した小切手の振出日附から一年を経過した後は、債権者又は出納官吏に対し支拂をすることができない。
第四章 契約
第二十九條 各省各廳において、賣買、貸借、請負その他の契約をなす場合においては、すべて公告して競爭に付さなければならない。但し、各省各廳の長は、競爭に付することを不利と認める場合その他政令で定める場合においては、大藏大臣に協議して、指名競爭に付し又は随意契約によることができる。
第五章 時効
第三十條 金銭の給付を目的とする國の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、五年間これを行わないときは、時効に因り消滅する。國に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同樣とする。
第三十一條 金銭の給付を目的とする國の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項に関し、適用すべき他の法律がないときは、民法の規定を準用する。國に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同樣とする。
第三十二條 法令の規定により、國がなす納入の告知は、民法第百五十三條(前條において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。
第六章 國庫金及び有價証券
第三十三條 各省各廳の長は、法律又は政令の規定によるのでなければ、公有若しくは私有の現金又は有價証券を保管することができない。
第三十四條 日本銀行は、政令の定めるところにより、國庫金出納の事務を取り扱わなければならない。
前項の規定により日本銀行において受け入れた國庫金は、政令の定めるところにより。國の預金とする。
第三十五條 國は、その所有又は保管に係る有價証券の取扱を日本銀行に命ずることができる。
第三十六條 日本銀行は、その取り扱つた國庫金の出納、國債の発行による收入金の收支、第十九條又は第二十一條の規定により交付を受けた資金の收支及び前條の規定により取り扱つた有價証券の受拂に関して、会計檢査院の檢査を受けなければならない。
第三十七條 日本銀行が、國のために取り扱う現金又は有價証券の出納保管に関し、國に損害を與えた場合の日本銀行の賠償責任については、民法及び商法の適用があるものとする。
第七章 出納官吏
第三十八條 出納官吏とは、現金又は物品の出納保管を掌る官吏をいう。
出納官吏は、法令の定めるところにより、現金又は物品を出納保管しなければならない。
第三十九條 出納官史は、各省各廳の長又はその委任を受けた官吏が、これを命ずる。
各省各廳の長又はその委任を受けた官吏が必要があると認めるときは、前項の出納官吏の事務の全部を代理する代理出納官吏又はその事務の一部を分掌する分任出納官吏を命ずることができる。
第四十條 各省各廳の長は、特に必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、各省各廳の事務員をして現金又は物品の出納保管を分掌せしめることができる。
前項の規定により現金又は物品の出納保管に関する事務の分掌を命ぜられた事務員は、これを出納員という。
第四十一條 出納官吏が、その保管に係る現金又は物品を亡失毀損した場合において、善良な管理者の注意を怠つたときは、弁償の責を免れることができない。但し、各省各廳の長の定めた規程により各省各廳の職員の使用に供した物品の亡失毀損について、合規の監督を怠らなかつたことを証明した場合は、その責に任じない。
出納官吏は、單に自ら事務を執らないことを理由としてその責を免れることができない。但し、代理出納官吏、分任出納官吏又は出納員の行爲については、この限りでない。
第四十二條 各省各廳の長は、出納官吏がその保管に係る現金又は物品について、これを亡失毀損したときは、遅滯なく、これを大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第四十三條 各省各廳の長は、出納官吏の保管に係る現金又は物品の亡失毀損があつた場合においては、会計檢査院の檢定前においても、その出納官吏に対して弁償を命ずることができる。
前項の場合において、会計檢査院が出納官吏に対し弁償の責がないと檢定したときは、その既納に係る弁償金は直ちに還付しなければならない。
第四十四條 代理出納官吏、分任出納官吏及び出納員は その行爲については、自らその責に任ずる。
第四十五條 出納官吏に関する規定は、出納員について、これを準用する。
第八章 雜則
第四十六條 大藏大臣は、予算の執行の適正を期するために、各省各廳に対して、收支の実績若しくは見込について報告を徴し、予算の執行状況について実地監査を行い、又は必要に應じ、閣議の決定を経て、予算の執行について必要な指示をなすことができる。
大藏大臣は、予算の執行の適正を期するため、自ら又は各省各廳の長に委任して、工事の請負契約者、物品の納入者、補助金の交付を受けた者(補助金の終局の受領者を含む。)又は調査、試驗、研究等の委託を受けた者に対して、その状況を監査し又は報告を徴することができる。
第四十七條 大藏省、歳入徴收官、各省各廳の長、第十三條の規定により契約等を行うことを委任された官吏、支出官、出納官吏及び出納員並びに日本銀行は、政令の定めるところにより、帳簿を備え、且つ、報告書及び計算書を作製し、これを大藏省又は会計檢査院に送付しなければならない。
出納官吏、出納員及び日本銀行は、政令の定めるところにより、その出納した歳入金又は歳出金について、歳入徴收官又は支出官に報告しなければならない。
第四十八條 國は、政令の定めるところにより、その歳入、歳出及び契約等に関する事務を、都道府縣の吏員をして取り扱わしめることができる。
前項の規定により、歳入、歳出及び契約等に関する事務を取り扱う都道府縣の吏員については、歳入徴收官、支出官、第十三條の規定により契約等を行うことを委任された官吏及び出納官吏に関する規定を準用する。
第四十九條 第十五條の規定は、各省各廳の長又はその委任を受けた官吏が、歳出金の支出によらない國庫金の拂出をする場合について、これを準用する。
第五十條 この法律施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第七章及び第四十八條の規定は、日本國憲法施行の日から、これを施行し、第十二條、第十四條及び第二十五條の規定並びにこの法律中國庫金振替書に関する規定施行の日は、各規定について、政令でこれを定める。
第二條 この法律中「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日まで、これを「勅令」と読み替えるものとす。
第三條 從前の第一條又は第六條の規定は、昭和二十一年度に属する歳入歳出の出納に関する事務の完結並びに同年度に属する大藏省証券の発行、借入金の借入及びこれらの償還に関しては、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
第四條 從前の第三十五條乃至第三十七條の規定は、日本國憲法施行の日まで、なお、その効力を有する。
第五條 昭和二十年度歳入歳出の決算については、次の会期において國会に提出することができる。
第六條 國の会計経理に関する事項を調査審議しその結果に基いて会計経理に関する必要な改善措置を内閣に建議させるため、臨時に内閣に会計制度調査会を設置する。
調査会は、会長一人及び委員六人以内で、これを組織する。
会長は大藏次官を以てこれに充て、委員は会計檢査院の官吏の中から一人、各省の官吏の中から二人及び学識経驗のある者の中から三人以内を内閣において命ずる。
調査会の事務を整理するため、調査会に、書記若干人を置く。
調査会は各省各廳に対し、その会計経理に関する資料の提出を求め又は報告をさせることができる。
内閣は、第一項の規定により調査会の建議を受けたときは、その建議に基いて、必要な法律案を國会に提出するものとする。この場合においては、調査会の建議に関する文書を参考として添附しなければならない。
調査会の廃止を必要とすることとなつた場合に関し、必要な事項は、法律でこれを定める。
前各項(第六項を除く。)に定めるものの外、調査会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
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〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=97
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098・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) ただいま上程に相なりました財政法案、及び會計法を改正する法律案について、提案理由の御説明を申し上げます。
さきに日本國憲法の公布を見、近くこれが施行されるに伴いまして、これに即應いたしまして、財政處理に關する制度、殊に豫算制度について根本的な改正を行う必要が起つたのでありますが、また財政の民主化その他の點からいたしましても、現行の諸制度について相當の政變を行う必要を生じてまいつたのであります。從來豫算その他財政の處理に関する制度といたしましては、現行憲法のほか、會計法、會計規則等の諸法令によつて處理せられきたつたのでありますが、新しい制度といたしては、財政處理の基本となるべき諸原則、竝びに豫算、決算に關する制度とを財政法として總合統一し、他方收入支出の手續等に關する規定は、會計法によることを適當と認めまして、ここに二つの法案を提出した次第であります。
まず財政法案についてその大體のことを申し上げますると、第一は、直接または間接憲法の改正により必要となつた規定でありまして、たとえば新たに暫定豫算の制度を設けたこと、憲法第九十一條の規定との關連におきまして、財政状況を國民に周知徹底させる方法を規定したこと、その他日本國憲法の精神からいたしまして、租税以外の權力的課徴金、獨占的政府事業の料金や價格は、法律または國會の議決に基かねばならぬとしたこと、また國會、裁判所及び會計檢査院の豫算について、特殊の取扱いを定めたこと等がこれであります。
第二は、財政處理の基本的原則に關する規定であります。すなわち公債または借入金を財源とする歳出の制限、公債または借入金の日本銀行引受けの禁止、歳計剩餘金の二分の一以内を公債償還にあてること、債權免除の制限、國の財産の處理に關する制限等の規定であります。
第三は、國の財政統制を強化するための規定でありまして、たとえば部局等の組織別の豫算編成方法を確立したこと、豫算の執行について、契約等の計畫をも立てねばならぬこととしたこと等は、そのおもなるものでございます。
第四は、豫算をわかりやすくし、またその審議に便ならしめる意味のものでありまして、たとえば豫算または決算に併せて國會に提出する書類を充實したこと、また豫算の形式を改正いたしまして、目的別及び組織別の兩面からの區分を明らかにしたこと等の措置を講ずることとしたのであります。
次に、會計法を改正する法律案についてでありますが、前に申し述べましたごとく、會計法は、收入支出の手續、出納官吏に關する規定等、その手續的方面を規定する法律とすることといたしました。從つて現行會計法中にあるこれらの規定をもつて、改正會計法案の本體としたのでありますが、財政法の制定に關連いたしまして、新たに規定し、また現行法上改善を要する點につきまして、改正を加えたものもあります。すなわち契約等の計畫を當該擔任官から提出させること、支出を國の外部に對する支出と、國庫内の移換とに區分し、その支出方式を改めたこと、小切手に對する認證の制度を創設したこと等の諸點が、これであります。
なお地方制度の改正に伴い、歳入歳出について、都道府縣の職員にその事務を扱わせる必要があるので、その規定をおいてあります。
最後に、國の會計経理に關する事項を調査審議するため、内閣に會計制度調査會を設置することとしておりますことを特に附言いたします。
以上、兩法案についてその大體を御説明申し上げたのでございますが、何とぞ愼重御審議の上、御協議を賜わらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=98
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099・井上知治
○副議長(井上知治君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=99
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100・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 財政法案及び會計法を改正する法律案の兩案を一括して、議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=100
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101・井上知治
○副議長(井上知治君) 山口君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=101
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102・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
これにて議事日程は議了いたしました。明十九日は定刻より特に本會議を開きます。議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後五時四十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02019470318&spkNum=102
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