1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月十九日(水曜日)
午後三時十五分開議
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議事日程 第二十號
昭和二十二年三月十九日
午後一時開議
第一 帝國鐵道會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 通信事業特別會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 恩給法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 勞働者災害補償保險法案(政府提出) 第一讀會
第六 下級裁判所の設立及び管轄區域に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 裁判所職員の定員に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 裁判所法施行法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 國會法案(本院提出、貴族院囘付)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出した議案は次の通りである。
財政法案
會計法を改正する法律案
帝國鐵道會計法を改正する法律案
通信事業特別會計法を改正する法律案
恩給法の一部を改正する法律案
日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案
勞働者災害補償保險法案
下級裁判所の設立及び管轄區域に關する法律案
裁判所職員の定員に關する法律案
裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案
檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案
(以上三月十八日提出)
一、昨十八日政府から昭和十九、二十年度國有財産増減總計算書竝びに會計檢査院の檢査報告を受領した。
一、昨十八日貴族院から囘付された本院提出案は次の通りである。
國會法案
一、昨十八日議長において撤囘を許可した議案は次の通りである。
農業保護法案(林平馬君提出)
一、昨十八日吉田内閣總理大臣から次の通り政府委員を仰せつけられた旨の通牒を受領した。
内閣事務官 三橋則雄
第九十二囘帝國議會政府委員
大藏事務官 河野通一
第九十二囘帝國議會大藏省所管事務政府委員
一、昨十八日常任委員補闕選擧の結果次の通り當選した。
第九部選出
決算委員 丹野實君(米倉龍也君補闕)
一、昨十八日特別委員長補闕選擧の結果次の通り當選した。
統計法案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 加藤一雄君(委員長庄司一郎君去る十七日委員辭任につきその補闕)
一、昨十八日委員長理事互選の結果次の通り當選した。
地方自治法案(政府提出)委員
委員長 中島守利君
理事 内海安吉君
青木泰助君 永江一夫君
一、昨十八日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した。
昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件)(政府提出)委員
理事 原侑君(大石倫治君去る十七日委員辭任につきその補闕)
裁判所法案(政府提出)委員
理事 荊木一久君(青木泰助君昨十八日理事辭任につきその補闕)
一、昨十八日議長において次の委員を選定した。
所得税法を改正する法律案(政府提出)外六件委員
安部俊吾君 神田博君
菊池長右ェ門君 厚東常吉君
武田信之助君 綿貫佐民君
金光義邦君 神戸眞君
菅原エン君 宮前進君
八木佐太治君 稻村順三君
奧村又十郎君 川島金次君
中崎敏君 石崎千松君
木下榮君 二階堂進君
行政官廳法案(政府提出)外一件委員
伊藤郷一君 小川原政信君
加藤一雄君 松川昌藏君
森崎了三君 藥師神岩太郎君
天野久君 生方大吉君
岡部得三君 星一君
村島喜代君 淺沼稻次郎君
赤松勇君 原彪之助君
吉川兼光君 井上赳君
酒井俊雄君 原國君
日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案(政府提出)外二件委員
小川原政信君 小澤佐重喜君
木村義雄君 瀧澤脩作君
竹内茂代君 中野武雄君
荊木一久君 桂作藏君
小林かなえ君 林田正治君
武藤常介君 石川金次郎君
榊原千代君 棚橋小虎君
武藤運十郎君 大島多藏君
酒井俊雄君 森由己雄君
財政法案(政府提出)外一件委員
井田友平君 杉田一郎君
高橋泰雄君 原藤右門君
平岡良藏君 廣川弘禪君
小野瀬忠兵衞君 小坂善太郎君
白木一平君 寺田榮吉君
山崎岩男君 竹谷源太郎君
西村榮一君 藤田榮君
前田榮之助君 伊藤幸太郎君
川越博君 藤井正男君
一、昨十八日次の通り特別委員の異動があつた。
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
辭任松川昌藏君 補闕小澤佐重喜君
教育基本法案(政府提出)委員
辭任細川八十八君 補闕池村平太郎君
辭任關根久藏君 補闕武藤嘉一君
裁判所法案(政府提出)委員
辭任菊地養之輔君 補闕黒田壽男君
辭任田万廣文君 補闕森三樹二君
地方自治法案(政府提出)委員
辭任伊藤實雄君 補闕中野四郎君
辭任内海安吉君 補闕大塚甚之助君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=0
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001・井上知治
○副議長(井上知治君) これより會議を開きます。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=1
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002・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際日程第十一を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=2
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003・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=3
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004・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。政府は議事日程變更に同意せられました。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十一、國會法案、貴族院囘付案を議題といたします。討論の通告があります。これを許します。山口喜久一郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第十一 國會法案(本院提出、貴族院囘付)
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國會法案
第一條第三項中「憲法」ヲ「日本國憲法」ニ改ム
第四十二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
各議院は、両院法規委員会の勧告に基いて、前項各号の常任委員会を増減し又は併合することができる。
第四十三條中「專門的職員」ヲ「專門調査員」ニ改ム
第五十一條第二項中「予算」ヲ「総予算」ニ改ム
第五十六條第四項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前二項の規定は、他の議院から送付された議案については、これを適用しない。
第五十八條中「翌日以後」ヲ「翌日以後五日以内に」ニ改ム
第八十四條第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ
参議院は、衆議院の囘付案に同意しなかつたときに限り前項の規定にかかわらず、その通知と同時に両院協議会を求めることができる。但し、衆議院は、この両院協議会の請求を拒むことができる。
第八十八條ヲ左ノ如ク改ム
第八十四條第二項但書の場合を除いては、一の議院から両院協議会を求められたときは、他の議院は、これを拒むことができない。
第九十二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
両院協議会においては、協議案が出席協議委員の三分の二以上の多数で議決されたとき成案となる。
第百條第一項中「五人」ヲ「八人」ニ改ム
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=5
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006・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 簡單でありますから、自席からの發言を許可されんことをお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=6
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007・井上知治
○副議長(井上知治君) お許しいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=7
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008・山口喜久一郎
○山口喜久一郎君 本案に對する貴族院の修正は、その修正された各條項とも、既に本院において議決したものとほとんど同趣旨のものでありまして、何ら本院の意圖するところと異なつたものはなく、その意義を明瞭ならしめたことが多いのでありますがゆえに、私は各派を代表して、これに贊成の意思を表明する次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=8
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009・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて討論は終局いたしました。採決いたします。本案の貴族院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=9
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010・井上知治
○副議長(井上知治君) 起立總員。よつて貴族院の修正に同意するに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=10
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011・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第十を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=11
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012・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=12
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013・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十、裁判所法施行法案、第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長小島徹三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=13
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014・会議録情報3
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第十 裁判所法施行法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 裁判所法施行法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十八日
委員長 小島 徹三
衆議院議長山崎 猛殿
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〔小島徹三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=14
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015・小島徹三
○小島徹三君 ただいま議題と相なりました裁判所法施行法案に關する委員會の審議の經過竝びに結果について御報告申し上げます。
本法案は、御承知の通り、現行の裁判所構成法竝びに行政裁判所法の廢止に伴いまして、今後新たに施行すべき裁判所法の施行に伴つて必要なる經過的措置について、若干の事項を定めたものでございます。委員會は、昨十八日政府の説明を求めまして、引續き質疑にはいつたのでございまするが、その詳細は速記録に讓ることといたしまして、大要をここに申し上げます。
質疑は、本法案の第四條についてなされたものでございまして、第四條に定めるところの、閣令によつて定めたるところの裁判官任命に關する諮問委員會は、裁判所法施行後においてはどうなるのか、またその諮問方法については、政府はどういう考えをもつているのかということでございました。これに對しまして政府は、この閣令で定めるところの裁判官任命諮問委員會というものは、最高裁判所の裁判官を任命するについての經過的の規定であつて、これは裁判所法施行とともに消滅するものであるというお答えでありました。また諮問委員會に對する諮問方法といたしましては、政府の方で一定の候補者をこしらえて、これを諮問委員會に付すというのではなくして、諮問委員の方で推薦するところの人物を任命するようにしたい、こう考えておるということでございました。
かくいたしまして質疑は終了し、討論に移つたのでございまするが、日本自由黨を代表いたしまして山口好一君、日本進歩黨を代表いたしまして荊木一久君、日本社會黨を代表いたされまして井伊誠一君が、それぞれ原案に贊成の討論をなされました。
そうして採決の結果、滿場一致をもつてこれを可決いたした次第であります。以上、簡單ながら御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=15
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016・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=16
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017・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=17
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018・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=18
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019・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=19
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020・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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裁判所法施行法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=20
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021・井上知治
○副議長(井上知治君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
日程第一及び第二は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=21
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022・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。日程第一、帝國鐵道會計法を改正する法律案、日程第二、通信事業特別會計法を改正する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます。大藏政務次官北村徳太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=22
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023・会議録情報4
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第一 帝國鉄道会計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 通信事業特別会計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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帝國鉄道会計法を改正する法律案
國有鉄道事業特別会計法
第一條 國有鉄道事業を企業的に運営し、その健全なる発達に資するため、特別会計を設置し、一般会計と分つて経理する。
この法律において國有鉄道事業とは、國有鉄道の事業(國有鉄道の事業に関連する國営船舶事業を含む。)及び國営自動車の事業並びにこれらの附帶事業をいう。
第二條 この会計は、運輸大臣が法令の定めるところに從い、これを管理する。
第三條 この会計においては、この会計に所属する資産の金額を以て資本とする。
前項の資本は、これを自己資本及び借入資本の二種とし、自己資本は、これを固有資本と積立金と減價償却引当金とに、借入資本は、これを公債及び借入金とその他の負債とに区分する。
第四條 この会計においては、國有鉄道事業の経営成績及び財政状態を明らかにするため、財産の増減及び異動を、その発生の事実に基いて、計理する。
第五條 この会計において建設改良費、用品保有額の増加に要する経費及び出資拂込金を支弁するため必要があるときは、公債を発行し、又は借入金をなすことができる。
この会計において業務の運営に要する経費の財源に不足があるときは、借入金をなすことができる。
前二項の規定による公債及び借入金の限度額については、予算を以て國会の議決を経なければならない。
第六條 この会計において、支拂上現金に不足があるときは、一時借入金をなし、又は融通証券を発行することができる。
前項の規定による一時借入金及び融通証券の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第一項の規定による一時借入金及び融通証券は当該年度内にこれを償還しなければならない。但し、歳入減少のためこれを償還することができないときは、その償還することのできない金額を限り、一時借入金又は融通証券の借換をなすことができる。
前項但書の規定により借換をなした一時借入金又は融通証券は、一年内にこれを償還しなければならない。
第七條 前二條に規定する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の起債、償還等に関する事務は、大藏大臣が、これを行う。
第八條 左の國債は、この会計の負担とする。
一 從前の帝國鉄道会計の負担に属する公債又は借入金
二 第五條又は第六條の規定による公債、借入金、一時借入金又は融通証券
三 鉄道、軌道、旅客自動車運輸事業又は事業区間を定める貨物自動車運送事業の買收又は補償のため発行した公債又は國の負担に帰した債務
四 前三号に規定する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の借換のため起債した公債、借入金、一時借入金又は融通証券前項に規定する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の償還金及び利子並びに発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、年度内に償還する一時借入金及び融通証券の償還金を除いて、毎会計年度これを國債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。但し、第五條第二項の規定による借入金の借入又は第六條第三項但書の規定による一時借入金若しくは融通証券の借換を必要とする場合には、公債及び借入金の償還金に限り、これを繰り入れない。
第九條 運輸大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書を作製して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
前項の歳入歳出予算実施計画書には資産勘定、負債勘定、損益勘定、工事勘定その他の中間勘定の区分を設けるものとする。
第十條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを款及び項に区分する。
第十一條 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の豫算には左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書
二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 前年度及び當該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表
四 國庫債務負担行爲で翌年度以降にわたるものについての前年度までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業等に伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進行状況の説明書
第十二條 この会計においては、業務取扱数量の増加その他避け難い事由に因り生じた歳出予算の不足を補うため、歳出予算に予備費を設けることができる。
前項の規定による予備費のうち、業務の運営に要する経費に充てるものについては、政令の定めるところにより、財政法第三十五條第二項及び第三項の規定にかかわらず、運輸大臣が、これを使用し、その事由及び金額を大藏大臣及び会計檢査院に通知するものとする。
第十三條 この会計においては、建設改良費の財源の不足を補うため、調整資金を保有することができる。
前項の調整資金は、予算の定めるところにより、剩余金を以てこれに充てる。
第一項の調整資金は、予算の定めるところにより、これを使用しなければならない。
第十四條 この会計において執行する歳入歳出予算の区分は、財政法第三十一條第二項の規定にかかわらず、第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画書の区分によるものとする。
第十五條 この会計の支拂計画は、左の二種とする。
一 小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行するもの
二 第十六條の規定により鉄道官署の出納官吏をして支拂をなさしめるもの
前項第二号に規定する支拂計画は、これを日本銀行に通知することを要しない。
第十六條 この会計の支出官は、歳出金を支出するため、小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行する外、政令の定めるところにより鉄道官署の出納官吏に対し支拂命令を発することができる。
運輸大臣は、必要があると認めるときは、支出官の事務を分掌せしめるため、分任支出官を置くことができる。
支出官は、前條第一項第二号に規定する支拂計画の範囲内で、前項の分任支出官に金額の限度を示して、鉄道官署の出納官吏に対し、政令の定めるところにより、支拂命令を発せしめることができる。
運輸大臣は、第二項の規定により分任支出官を置いたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十七條 運輸大臣は、政令の定めるところにより、鉄道官署の出納官吏をして、この会計の歳出金をその保管に係る現金を以て、支出官又は分任支出官の発する支拂命令により支拂わしめることができる。
第十八條 この会計において、決算上利益を生じたときは、これを積立金に組み入れ、損失を生じたときは、積立金を減額してこれを整理する。
第十九條 運輸大臣は、毎会計年度第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画書と同一の区分により、この会計の歳入歳出実績計算書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第二十條 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の歳入歳出決算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出実績計算書
二 当該年度の損益計算書、貸借対照表、財産目録、資産價格増減表及び資本増減表
三 債務に関する計算書
第二十一條 この会計において支拂義務の生じた歳出金で当該年度内に支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
前項の規定による繰越は、財政法第四十三條の規定にかかわらず、大藏大臣の承認を経ることを必要としない。
運輸大臣は、第一項の規定による繰越をなしたときは大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第二十二條 第十三條の規定による調整資金は、公債を以てこれを保有し、又は大藏省預金部に預け入れることができる。
この会計に支拂上余裕金があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第二十三條 國有鉄道事業の運営に妨げのない限り、この会計の負担において、一般の委託により、陸運に関する機械器具その他の物品を製作し、修理し、若しくは調達し、又は工事を施行することができる。
第二十四條 鉄道、軌道その他陸運、陸運の用に供する機械器具の製造(自動車の製造を除く。)、修理その他の事業及び倉庫営業(臨港倉庫に係るものを除く。)に関する監督、助成及び統制に要する諸費用は、この会計の負担とする。
第二十五條 この法律の施行に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、附則第四條の規定は、公布の日から、これを施行する。
第二條 昭和二十一年勅令第百十一号、同年勅令第百八十号及び同年法律第五十五号により借り入れた從前の帝國鉄道会計負担の借入金及び昭和二十二年三月三十一日現在の支出未済額は、これを借入資本に編入する。
第三條 昭和二十二年三月三十一日現在における鉄道官署の出納官吏の保管に係る歳入歳出外現金及びその日本銀行えの預託金並びに從前の帝國鉄道会計に属する物品で資本所属以外のものは、これを資産に組み入れる。
第四條 從前の帝國鉄道会計の用品勘定においては、昭和二十一年度に限り、用品資金の額を超過して用品を保有することができる。
前項の規定による超過額は、これを用品資金の他勘定からの借入れとして整理するものとする。
第五條 從前の帝國鉄道会計の昭和二十一年度歳出予算中同年度内に支拂義務を生じ同年度末までに支出済とならないものについては、これを昭和二十二年度予算に繰り越して使用することができる。
第六條 この会計において昭和二十二年三月三十一日までに歳出金に繰替使用した現金の補填のためにする歳出の支出、これに伴う公債金及び借入金の收納並びに同日までに出納官吏の收納した歳入金の拂込はこれを昭和二十一年度分として整理するものとする。
前項の收納及び拂込は、昭和二十二年五月三十一日までに、これをすることができる。
第一項に規定する公債金及び借入金は、これを第八條第一項第一号に規定する公債及び借入金とみなす。
第七條 從前の帝國鉄道会計法第二條の規定は、昭和二十一年度の歳出の財源に充てるための公債の発行については、なおその効力を有する。
從前の帝國鉄道会計法第二條の規定による公債又は借入金を以て支弁する経費で附則第五條の規定により昭和二十二年度に繰越した場合においては、第五條の規定にかかわらず、公債を発行し又は借入金をなすことができる。但し、昭和二十一年度において発行した公債及び借入れた借入金の額と通じて同年度における公債又は借入金の予算額を超えてはならない。
第八條 前條の規定に基いて発行する公債及びこの法律施行の日以後昭和二十一年法律第五十五号に基いてなす借入金は、これを第八條第一項第二号に規定する公債及び借入金とみなす。
第九條 この法律施行前になした予備費の使用並びに昭和二十年度及び同二十一年度の決算に関しては、なお從前の例による。
第十條 この法律中「國会」、「内閣」及び「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これをそれぞれ「帝國議会」、「政府」及び「勅令」と読み替えるものとする。
第十一條 昭和二十年法律第十九号を次のように改正する。
第二條中「帝國鐵道會計資本勘定」及び「帝國鐵道會計收益勘定」を「國有鐵道事業特別會計」に改める。
第十二條 昭和二十一年法律第五十五号の一部を次のように改正する。
第四項を削る。
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通信事業特別会計法を改正する法律案
通信事業特別会計法
第一條 通信事業を企業的に運営し、その健全な発達に資するため、特別会計を設置し、一般会計と分つて経理する。
この法律において、通信事業とは、郵便、電信、電話、郵便爲替及び郵便貯金の事業、簡易生命保險及び郵便年金の取扱に関する業務、年金及び恩給の支給その他國庫金の受入拂渡に関する事務、收入印紙の賣さばきに関する事務、電氣試驗所において行う試驗及び研究並びにこれらの附帶業務をいう。
第二條 この会計は、逓信大臣が、法令の定めるところに從ひ、これを管理する。
第三條 この会計においては、この会計に所属する資産の金額を以て資本とする。
前項の資本は、これを自己資本及び借入資本の二種として、自己資本は、これを固有資本と積立金を減價償却引当金とに、借入資本は、これを公債及び借入金とその他の負債とに区分する。
第四條 この会計においては、通信事業の経営成績及び財政状態を明らかにするため、財産の増減及び異動を、その発生の事実に基いて計理する。
第五條 この会計において、事業設備費用品保有額の増加に要する経費及び出資拂込金を支弁することの必要があるときは、公債を発行し、又は借入金をなすことができる。
この会計において、業務の運営に要する経費の財源に不足があるときは、借入金をなすことができる。
前二項に規定する公債及び借入金の限度額については、予算を以て國会の議決を経なければならない。
第六條 この会計において、支拂上現金に不足があるときは、一時借入金をなし、又は融通証券を発行することができる。
前項の規定による一時借入金及び融通証券の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第一項の規定による一時借入金及び融通証券は、当該年度内にこれを償還しなければならない。但し、歳入減少のためこれを償還することができないときは、その償還することができない金額を限り、一時借入金又は融通証券の借換をなすことができる。
前項但書の規定により借換をなした一時借入金又は融通証券は、一年内にこれを償還しなければならない。
第七條 前二條に規定する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の起債、償還等に関する事務は、大藏大臣が、これを行う。
第八條 左の國債は、この会計の負担とする。
一 從前の通信事業特別会計の負担に属する公債又は借入金
二 第五條又は第六條の規定による公債、借入金、一時借入金又は融通証券
三 前二号に規定する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の借換のために起債した公債、借入金、一時借入金又は融通証券前項に規定する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の償還金及び利子並びに発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、年度内に償還する一時借入金及び融通証券の償還金を除いて、毎会計年度これを國債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。但し、第五條第二頃の規定による借入金の借入又は第六條第三項但書の規定による一時借入金若くは融通証券の借換を必要とする場合には、公債及び借入金の償還金に限り、これを繰り入れない。
第九條 逓信大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書を作製して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
前項の歳入歳出予算実施計画書には、損益勘定、建設勘定、用品勘定、その他所要の勘定の区分を設けるものとする。
第十條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを款及び項に区分する。
第十一條 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作製し、一般会計の予算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の予算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出予算実施計画書及び國庫債務負担行爲要求書
二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 前年度及び当該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表
四 國庫債務負担行爲で翌年度以降にわたるものについての前年度までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進行状況の調書
第十二條 この会計においては、業務取扱数量の増加その他避け難い事由に因り生じた歳出予算の不足を補うため、歳出予算に予備費を設けることができる。
前項の規定による予備費のうち、業務の運営に要する経費に充てるものについては、政令の定めるところにより、財政法第三十五條第二項及び第三項の規定にかかわらず、逓信大臣が、これを使用し、その事由及び金額を大藏大臣及び会計檢査院に通知するものとする。
第十三條 この会計においては、事業設備費の財源の不足を補うため、
一 経資金を保有することができる。
前項の調整資金は、予算の定めるところにより、剩余金を以てこれに充てる。
第一項の調整資金は、予算の定めるところにより、これを使用しなければならない。
第十四條 この会計において、執行する歳入歳出予算の区分は、財政法第三十一條第二項の規定にかかわらず、第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画の区分によるものとする。
第十五條 この会計の支拂計画は、左の二種とする。
一 小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行するもの
二 第十六條の規定により通信官署の出納官吏をして、支拂をなさしめるもの
前項第二号に規定する支拂計画は、これを日本銀行に通知することを要しない。
第十六條 この会計の支出官は、歳出金を支出するため、小切手を振り出し、又は國庫金振替書を発行する外、政令の定めるところにより、通信官署の出納官吏に對し、支拂命令を発することができる。
逓信大臣は、必要があると認めるときは、支出官の事務を分掌せしめるため、分任支出官を置くことができる。
支出官は、前條第一項第二號に規定する支拂計画の範囲内で、前項の分任支出官に金額の限度を示して、通信官署の出納官吏に對し、政令の定めるところにより、支拂命令を発せしめることができる。
逓信大臣は、第二項の規定により分任支出官を置いたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十七條 逓信大臣は、政令の定めるところにより、通信官署の出納官吏をして、この会計の歳出金をその保管に係る現金を以て、支出官又は分任支出官の発する支拂命令により支拂わしめることができる。
その月中に前項の規定により支拂われた金額が、その月初における出納官吏の保管に係る歳入金額とその月中に出納官吏の受け入れた歳入金額との合計額を超過したときは、逓信大臣は、政令の定めるところにより、翌翌月末までに、その超過額に相当する金額を出納官吏に交付しなければならない。
第十八條 この会計において、決算上利益を生じたときは、これを積立金に組み入れ、損失を生じたときは、積立金を減額してこれを整理する。
第十九條 逓信大臣は、毎会計年度、第十一條第二項第一号に規定する歳入歳出予算実施計画書と同一の区分により、この会計の歳入歳出実績計算書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第二十條 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作製し、一般会計の歳入歳出決算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の歳入歳出決算には、左の書類を添付しなければならない。
一 歳入歳出実績計算書
二 当該年度の損益計算書、貸借対照表、財産目録、資産價格増減表及び資本増減表
三 債務に関する計算書
第二十一條 この会計において、支拂義務の生じた歳出金で当該年度内に支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、翌年度に繰り越して使用することができる。
前項の規定による繰越は、財政法第四十三條の規定にかかわらず、大藏大臣の承認を経ることを要しない。
逓信大臣は、第一項の規定による繰越をなしたときは、これを大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第二十二條 第十三條の規定による調整資金は、これを公債を以て保有し、又は大藏省預金部に預け入れることができる。
この会計に余裕金があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第二十三條 收入印紙の賣さばき代金及び買戻代金は、これをこの会計の歳入及び歳出とし、その收入済額から收入印紙の買戻代金を控除した金額に相当する金額は、これを一般会計に繰り入れるものとする。
第二十四條 通信事業の運営に妨げのない限り、この会計の負担において、一般の委託により、通信に関する機械、器具その他の物品を製作し、修理し、若くは調達し、又は工事を施行することができる。
第二十五條 この法律の施行に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 昭和二十一年勅令第百十一号、同年勅令第百八十号及び同年法律第五十五号により借り入れた通信事業特別会計負担の借入金及び昭和二十二年三月三十一日現在の支出未済額は、これを借入資本に編入する。
第三條 昭和二十二年三月三十一日現在における逓信官署の出納官吏の保管に係る歳入歳出外現金及びその日本銀行への預託金並びに從前の通信事業特別会計に属する物品で資本所属以外のものは、これを資産に組み入れる。
第四條 この法律施行前になした予備費の支出並びに昭和二十年度及び同二十一年度の決算に関しては、なお從前の例による。
第五條 この法律中「國会」、「内閣」及び「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これをそれぞれ「帝國議会」、「政府」及び「勅令」と読み替えるものとする。
第六條 簡易生命保險及郵便年金特別会計法の一部を次のように改正する。
第五條第二項を削る。
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〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=23
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024・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) ただいま議題となりました帝國鐵道會計法を改正する法律案及び通信事業特別會計法を改正する法律案について、提案の理由を御説明申し上げます。
現在、國有鐵道事業及び通信事業に關する經理につきましては、明治四十二年制定にかかる帝國鐵道會計法及び昭和八年制定にかかる通信事業特別會計法に基いて、それぞれ經理いたしているのでありまして、現行法におきましても、資本の制度を設け、不十分ながらも複式簿記法に從つて計算整理し、事業の損益計算並びに財産及び資本の増減計算を行い、一應事業の財政状況を明らかならしめる體制を備えているのであります。しかしながらその損益の計算は、現金の收支を主たる對象として計算する制度と相なつております關係上、まだ眞の損益を正しく把握し得る制度とは相なつていないのでありまして、事業會計としての經理といたしましては、遺憾ながら十分とは申し得ない状態にあるのであります。事業會計におきましては、損益の計算を正確にし、經營成績及び財産状態を明確にすることは最も重要なことでありまして、これに基いて事業の合理化、能率化もまたはかられる次第でございまして、兩事業の健全な發達を期する上において、緊要なことと存ずるのであります。從いまして今囘現行制度を改善いたしまして、兩事業における財産の増減及び異動を、その發生の事實に基いて計理し、經營成績及び財政状態を明確ならしめることといたしたのであります。
以上の理由によりまして、兩法案を提出いたしました次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊を與えられんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=24
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025・井上知治
○副議長(井上知治君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=25
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026・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 日程第一及び第二の兩案は、一括して政府提出昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=26
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027・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=27
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028・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第三及び第四は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=28
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029・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。日程第三、恩給法の一部を改正する法律案、日程第四、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます。法制局長官入江俊郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=29
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030・会議録情報5
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第三 恩給法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律案(政府提出) 第一讀會
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恩給法の一部を改正する法律案
恩給法の一部を次のように改正する。
「勅令」を「政令」に改める。
第六條第二項を削る。
第八條第二項を削る。
第十三條第二項中「訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スル」を「訴願スル」に改め、同項但書を削り、同條に第三項として左の一項を加える。
前二項ニ規定スル具申又ハ訴願ハ裁判所ニ出訴シタル事件ニ付テハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二十條第一項中「宮内官以外ノ」を削る。
第二十三條第二号を削除し、同條に左の一号を加える。
四 皇宮警部補又ハ皇宮警手タル皇宮護衞官
第二十五條第二号但書を削る。
第三十三條 削除
第四十一條第三号を削除し、同條第六号を削る。
第四十二條第一項第一号を削除し、同條第二項後段を削る。
第五十三條 削除
第五十七條 削除
第五十八條第一項第一号中「又ハ第四十二條第一項第一號ニ規定スル宮内職員」を削る。
附 則
第一條 この法律は、日本國憲法施行の日からこれを施行する。但し、第二十三條第四号及び第四十二條第二項後段の改正規定は、昭和二十二年一月一日から、これを適用する。
第二條 この法律施行前、普通恩給、増加恩給又は傷病年金を受ける権利のある者が、退職後一年内に從前の宮内官の恩給規程による宮内職員として就職したときは、恩給法第六條の規定の適用については、これを公務員として再就職したものとみなす。
第三條 從前の宮内官の恩給規程による宮内職員の恩給及び從前の宮内官の恩給規程による宮内職員としての在職については、なお從前の例による。但し、昭和八年皇室令第一号附則第八條第一項第一号及び第二号並びに同條第二項の規定は、この法律施行後給與事由の生ずる恩給の基礎となる在職年の計算については、これを適用しない。
第四條 從前の宮内官の恩給規程によつて受ける恩給は、これを恩給法の規定によつて受ける恩給とみなす。
前項の恩給は、これを國庫の負担とする。
第五條 この法律施行の際、從前の宮内官の恩給規程による宮内職員が、引き続いて公務員となつた場合には、これを勤続したものとみなす。
第六條 この法律施行前の在職について、在職年を計算する場合の加算年については、第三十三條の改正規定にかかわらず、なお從前の例による。
第七條 この法律施行前に二年以下の懲役又は禁錮の刑に処せられた者については、第四十一條第三号の改正規定にかかわらず、なお從前の例による。
第八條 從前の規定による貴族院守衞又は衆議院守衞の恩給及び從前の規定による貴族院守衞又は衆議院守衞としての在職については、なお從前の例による。
第九條 この法律施行の際、現に公務員たる者が、引き続いて國会職員となつた場合には、これを從前の身分のまま勤続するものとみなし、当分の間、これに恩給法の規定を準用する。
第十條 この法律施行の際、現に公務員たる者が、引き続いて都道府縣たる普通地方公共團体の職員となつた場合には、これを從前の身分のまま勤続するものとみなし、当分の間、これに恩給法の規定を準用する。
第十一條 恩給法第七十三條第二項の規定による扶助料を給する順位及び同法第七十四條第三項の規定による扶助料を給する養子については、当分の間、政令で特別の定をなすことができるものとする。
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日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律案
第一條 日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定で、法律を以て規定すべき事項を規定するものは、昭和二十二年十二月三十一日まで、法律と同一の効力を有するものとする。
第二條 他の法律(前條の規定により法律と同一の効力を有する命令の規定を含む。)中「勅令」とあるのは、「政令」と読み替えるものとする。
第三條 左に掲げる法令は、これを廃止する。
明治二十三年法律第八十四号(命令の條項違犯に関する罰則に関する法律)
明治三十八年法律第六十二号(戸主でない者が爵位を授けられた場合に関する法律)
明治四十三年法律第三十九号(皇族から臣籍に入つた者及び婚嫁によつて臣籍から出て皇族になつた者の戸籍に関する法律)
大正十五年法律第八十三号(王公族の権義に関する法律)
昭和二年法律第五十一号(王公族から内地の家に入つた者及び内地の家を去り王公家に入つた者の戸籍等に関する法律)
明治二年六月二十五日行政官達(士族の称に関する件)
明治五年太政官布告第二十九号(世襲の卒士族に編入伺出方に関する件)
明治五年太政官布告第四十四号(郷土士族に編入伺出方に関する件)
明治七年太政官布告第七十三号(華士族分家者の平民籍編入に関する件)
明治十三年太政官布告第三号(士族戸主死亡後に於ける族称廃絶に関する件)
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
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〔政府委員入江俊郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=30
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031・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) ただいま議題と相なりました恩給法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
今囘の改正は、新憲法の施行に伴う諸般の法令の改廢等に伴うものでありまして、そのおもなる點は、およそ次の諸點にこれを要約することができるのであります。
第一の點は、皇室關係職員に關する規定の整備であります。宮内職員につきましては、新憲法の施行と同時に宮内省が廢止されますに伴い、宮内省から支給されております恩給を、今後國庫より支給することにいたしますに伴う改正をいたしました。また今後は、從前のような宮内職員はなくなりますから、これに伴う規定を整備いたしました。さらにまた先般皇宮護衞官たる皇宮警部補及び皇宮警手の新設されましたに伴いまして、これを警察監獄職員たる公務員に指定することといたしたのであります。
第二點は、恩給に關する訴訟についての規定の改正であります。現行法におきましては、恩給に關する權利の侵害について、行政裁判所に出訴できることになつておるのでありますが、新憲法の施行に伴いまして、行政訴訟は民事裁判所に出訴せねばならないことになりますので、これに關して恩給法中所要の改正を加えまするとともに、また現行法におきましては、行政訴訟の提起は内閣恩給局長に具申し、その裁決を經た後でなければなりませんのみならず、内閣總理大臣に訴願いたしました場合には、これを提起することができないようになつておりますが、今後この種の訴訟の提起につきましては、あるいは具申を經ず、直ちに出訴することもできるようにし、また具申の裁決のみならず、訴願の裁決に對しましても、出訴できますようにいたしまする等のため、改正を加えることにいたしました。
第三點は、國會法の施行に伴います改正であります。新憲法の施行とともに、貴衆兩院事務局の職員は廢止せられまして、國會職員が新たに設けられることとなりました。ところで國會職員の恩給の取扱いにつきましては、その任用制度、給與制度等の諸制度の整備と相まつて、遠からざるうちに何分の決定を見ることと存じまするが、その決定を見まするまでの暫定的措置といたしまして、恩給法の適用につきましては、貴衆兩院事務局職員、その他恩給法上の公務員から引續いて國會職員となるものにつきましては、その者の國會職員としての在職を、恩給法上の公務員として引續いて在職するものとして取扱うことといたしたのであります。
第四點は、地方自治制度の改正に伴う改正であります。都道府縣等の地方廰職員の大部分の者は、地方自治法の施行に伴いまして、その身分は、政府職員から普通地方公共團體たる都道府縣の職員に移行するのでありまするが、その恩給制度につきましては、その任用制度、給與制度等の諸制度の整備確立と相まつて檢討の上、速やかに何分の決定を見ることと存じまするが、その決定を見まするまでの暫定的措置といたしまして、その都道府縣職員としての在職を、恩給法上の公務員として引續いて在職するものとみなして取扱うことといたしたのであります。
以上のほか、日本國憲法施行に伴う民法の應急的措置に關する法律の施行に伴いまして、恩給法中の遺族に關する二、三の規定につきまして、應急的に政令で所要の定めをなし得るように措置する等、若干の改正を加えております。
以上が、本案を提出するに至りました理由であります。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊あらんことを希望いたします。
次に、日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に關する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
本案の内容は、まず第一に、日本國憲法施行の際現に効力を有する勅令、省令等の命令の規定で、日本國憲法によれば、法律で規定しなければならない事項に屬するものを、その規定内容といたしているものの將來における効力につきまして、規定をいたしたのであります。これらの命令の規定は、でき得るだけ速やかに法律に改めることが望ましいのでありまするが、本法第一條においては、さしあたりの措置として、これらの命令の規定が、そのまま法律と同一の効力を有する旨を明かにするとともに、その期限を本年末までと限ることにいたしたのであります。政府はその時期までに、速やかにこれに代るべき法律案を準備いたしまして、國會の議決を經て法律に改めることといたしたいと考えております。もちろんこれらの命令の規定も、日本國憲法施行前におきまして十分檢討の上、不必要と考えられますものはこれを廢止し、不適當と考えられまするものは、これを改正いたしまして、日本國憲法施行の際には、眞に存續を必要とするもののみを殘す考えでおります。
次に、他の法律及び法律と同一の効力を有する命令の規定の中には、勅令という文字が使つてあるのが多數ありまするけれども、日本國憲法施行後には、勅令という國法の形式がなくなりますので、これを政令と讀み替えることといたしたのであります。なお日本國憲法施行に際し、將來不必要となる法令を廢止することといたしまして、これに關する規定を設けております。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊あらんことを御願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=31
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032・井上知治
○副議長(井上知治君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=32
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033・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 日程第三及び第四の兩案は、一括して政府提出行政官廳法案外一件委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=33
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034・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=34
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035・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第五、勞働者災害補償保險法案の第一讀會を開きます。厚生政務次官小笠原八十美君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=35
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036・会議録情報6
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第五 勞働者災害補償保險法案(政府提出) 第一讀會
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労働者災害補償保險法案
労働者災害補償保險法目次
第一章 総則
第二章 保險関係の成立及び消滅
第三章 保險給付及び保險施設
第四章 保險料
第五章 審査の請求、訴願及び訴訟
第六章 雜則
第七章 罰則
附則
労働者災害補償保險法
第一章 総則
第一條 労働者災害補償保險は、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、癈疾又は死亡に対して迅速且つ公正な保護をするため、災害補償を行い、併せて、労働者の福祉に必要な施設をなすことを目的とする。
第二條 労働者災害補償保險は、政府が、これを管掌する。
第三條 この法律においては、左の各号の一に該当する事業を強制適用事業とする。
一 左に掲げる事業で常時五人以上の労働者を使用するもの
(イ)物の製造、改造、加工、修理、淨洗、選別、包裝、裝飾、仕上、販賣のためにする仕立、破壞若しくは解体又は材料の変造の事業(電氣、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは傳導の事業及び水道の事業を含む。)
(ロ)鉱業、砂鉱業、石切業その他土石又は鉱物採取の事業
(ハ)道路、鉄道、軌道、索道又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
二 左に掲げる事業で常時労働者を使用するもの又は一年以内の期間において使用労働者延人員三百人以上のもの
イ 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壞若しくは解体又はその準備の事業
ロ 船きよ、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱の事業
ハ 立木の伐採、造林、木炭又は薪を生産する事業その他の林業
三 その他命令で指定する事業労働基準法第八條に規定する事業で前項に掲げるもの以外のもの及び同條に規定する事務所(以下事業という。)は、これを任意適用事業とする。
國の直営事業、官公署、同居の親族のみを使用する事業及び船員法の適用を受ける舶員については、この法律は、これを適用しない。
第四條 労働者災害補償保險事業の運営に関する重要事項を審議するため、労働者災害補償保險委員会を置く。
労働者災害補償保險委員会の委員は、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者について、主務大臣が、各各同数を委嘱する。
この法律に定めるものの外、労働者災害補償保險委員会に関し必要な事項は、命令で、これを定める。
第五條 この法律に基いて発する命令は、その草案について、労働者災害補償保險委員会の意見を聞いて、これを制定する。
第二章 保險関係の成立及び消滅
第六條 第三條第一項の強制適用事業の使用者については、その事業開始の日又はその事業が第三條第一項の事業に該当するに至つた日に、その事業につき保險関係が成立する。
第七條 第三條第二項の任意適用事業の使用者については、その者が保險加入の申込をし、政府の承諾があつた日に、その事業につき保險関係が成立する。
任意適用事業に使用される労働者の過半数が、その事業につき保險関係の成立を希望する場合は、その使用者は、保險加入の申込をしなければならない。
第八條 事業が改次の請負によつて行はれる場合には、元請負人のみを、この保險の適用事業の使用者とする。
第九條 第三條第一項の強制適用事業に該当する事業が、同條第二項の任意適用事業に該当するに至つたときは、その翌日に、その事業につき第七條の規定による承諾があつたものとみなす。
第十條 その事業につき保險関係が、成立してゐる事業の廃止又は終了のあつたときは、その事業についての保險関係は、その翌日に、消滅する。
第十一條 第七條又は第九條の規定によつて保險関係が成立してゐる事業の使用者については、前條の規定によるの外、政府の承諾があつた日の翌日に、その事業についての保險関係が消滅する。但し、その承諾を受けるには、保險関係成立後一年を経過してゐること及びその事業に使用される労働者の過半数の同意を得たものであることを要する。
第三章 保險給付及び保險施設
第十二條 この法律で保險する災害補償の範囲は、左の各号による。
一 療養補償費(療養費中命令で定める金額を超える部分)
二 休業補償費(休業七日を超える休業一日につき平均賃金の百分の六十)
三 障害補償費(別表に定めるもの)
四 遺族補償費(平均賃金の千日分)
五 葬祭料(平均賃金の六十日分)
六 打切補償費(平均賃金の千二百日分)
前項の規定による災害補償の事由は、労働基準法第七十五條乃至第八十一條に定める災害補償の事由とする。
第一項第一号の規定による災害補償については、政府は命令の定める場合には、同号の療養補償費の支給にかえて、直接労働者に療養の給付をすることができる。
第一項の平均賃金とは、労働基準法第十二條の平均賃金をいう。
第十三條 前條第一項第一号の療養補償費又は同條第三項の療養の範囲は、左の各号(政府が必要と認めるものに限る。)による。
一 診察
二 藥剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 病院又は診療所への收容
五 看護
六 移送
第十四條 第十二條第一項第二号の休業補償費の支給を受けるべき期間に、その補償を受けるべき者が、使用者から賃金の全部又は一部を受けたときは、命令の定めるところによつて、政府は、その賃金を受けた期間の休業補償費の全部又は一部を支給しない。
第十五條 第十二條第一項の規定による保險給付は、これを補償を受けるべき労働者、遺族又は労働者の死亡当時その收入によつて生計を維持した者に支給する。
第十六條 第十二條第一項の障害補償費、遺族補償費及び打切補償費は、命令の定めるところにより、命令の定める期間毎年これを支給する。但し、主務大臣は、必要と認めるときは、別段の定をなすことができる。
第十七條 事業につき保險関係の成立してゐる事業についての使用者(以下保險加入者という。)が、保險料の算定又は保險給付の基礎である重要な事項について、不実の告知をしたときは、政府は、保險給付の全部又は一部を支給しないことができる。
第十八條 保險加入者が、故意又は重大な過失によつて保險料を滯納したときは、政府は、その滯納に係る事業について、その滯納期間中に生じた事故に対する保險給付の全部を支給しないことができる。
第十九條 故意又は重大な過失によつて、保險加入者が、補償の原因である事故を発生させたとき、又は労働者が、業務上負傷し、若しくは疾病に罹つたときは、政府は、保險給付の全部又は一部を支給しないことができる。
第二十條 政府は、補償の原因である事故が、第三者の行爲に因つて生じた場合に保險給付をしたときは、その給付の價額の限度で、補償を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
第二十一條 保險給付を受ける権利は、これを讓り渡し、又は差し押えることができない。
第二十二條 保險給付として支給を受けた金品を標準として、租税その他の公課を課してはならない。
第二十三條 政府は、この保險の適用を受ける事業に係る業務災害に関して、左の保險施設を行う。
一 外科後処置に関する施設
二 義肢の支給に関する施設
三 休養又は療養に関する施設
四 職業再教育に関する施設
五 その他必要と認める施設
第四章 保險料
第二十四條 政府は、労働者災害補償保險事業に要する費用に充てるため、保險加入者から保險料を徴收する。
第二十五條 保險料は、賃金総額にその事業についての保險料率を乘じて得た金額とする。
前項の賃金総額とは、その事業に使用するすべての労働者に支拂つた賃金、給料、手当、賞與その他名称の如何を問わず労働の対償として使用者が労働者に支拂うすベてのもの(三箇月を超える期間毎に支拂われる賃金その他命令で定めるものは、これを除く。)の総額をいう。
第二十六條 保險料率は、この法律の適用を受けるすべての事業の過去五年間の災害率を基礎として、数等級に区別して、賃金一円当りについて主務大臣が、これを定める。
第二十七條 常時三百人以上の労働者を使用する個個の事業についての過去五年間の災害率が、同種の事業について前條の規定による災害率に比し著しく高率又は低率であるときは、政府は、その事業について、同條の規定による保險料率と異なる保險料率を定めることができる。
第二十八條 保險加入者は、毎年四月一日から翌年三月末日まで(以下保險年度という。)に使用するすベての労働者(保險年度の中途に保險加入者となつた者については、加入の日からその保險年度の末日までに使用するすべての労働者)に支拂う賃金総額の見込額に、保險料率を乘じて算定した概算保險料を、四月一日(保險年度の中途に保險加入者となつた者については加入の日)から三十日以内に納付しなければならない。
事業の期間が予定される事業については、その保險加入者は、前項の規定にかかわらず、その全期間に使用するすべての労働者に支拂う賃金総額の見込額に、保險料率を乘じて算定した概算保險料を、保險加入の日から十四日以内に納付しなければならない。
保險加入者は、申出によつて、前二項の概算保險料を命令の定めるところによつて、分割して納付することができる。
第二十九條 政府は、前條の賃金総額の見込額に変更を生じたときその他必要がある場合においては、概算保險料を追加徴收することができる。
第三十條 前二條の規定によつて拂い込んだ概算保險料が、保險年度の末日又は保險関係の消滅する日に、第二十五條の規定により確定する保險料に比し過不足があるときは、政府は、保險料を返還し、又はこれを追加徴收する。
前項の規定によつて返還する保險料は、その事業についての次期の概算保險料に、これを充当することができる。この場合においては、政府は、その旨を当該保險加入者に通知しなければならない。
第三十一條 保險料その他この法律の規定による徴收金を滯納する者があるときは、政府は、期限を指定して、これを督促しなければならない。
前項の規定によつて督促するときは、政府は、納付義務者に対して督促状を発する。この場合においては、督促手数料として命令で定める金額を徴收する。
第一項の規定による督促を受けた者が、その指定の期限までに、保險料その他この法律の規定による徴收金を納付しないときは、政府は、國税滯納処分の例によつて、これを処分する。
第三十二條 前條の規定によつて督促をしたときは、政府は、徴收金額百円につき一日四銭の割合で、納期限の翌日から徴收金完納又は財産差押の日の前日までの日数により計算した延滯金を徴收する。但し、督促状に指定した期限までに徴收金及び督促手数料を完納したときその他命令で定める場合は、この限りでない。
第三十三條 保險料その他この法律の規定による徴收金の先取特権の順位は、市町村その他これに準ずべきものの徴收金につぎ、他の公課に先だつものとする。
第三十四條 保險料その他この法律の規定による徴收金に関する書類の送達については、國税徴收法第四條の七及び第四條の八の規定を準用する。
第五章 審査の請求、訴願及び訴訟
第三十五條 保險給付に関する決定に異議のある者は、保險審査官の審査を請求し、その決定に不服のある者は、保險審査機関に審査を請求し、その決定に不服のある者は、裁判所に訴を提起することができる。
前項の審査の請永は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。
第三十六條 保險審査官は、必要があると認める場合においては、職権で審査をすることができる。
保險審査官が、審査のため必要であると認める場合においては、保險給付の決定をした官吏若しくは吏員に対して意見を求め、保險加入者若しくは保險給付を受けるべき者に対して報告をさせ、若しくは出頭を命じ、又は医師に診断若しくは檢案をさせることができる。
第三十七條 保險料その他この法律の規定による徴收金の賦課又は徴收の処分に関して訴願の提起があつたときは、主務大臣は、保險審査機関の審査を経て裁決をする。
第三十八條 保險審査機関は、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者につき、主務大臣が、各各同数を委嘱した者で、これを組織する。
第三十九條 保險審査官又は保險審査機関は、審査のため必要があると認めるときは、証人又は鑑定人の訊問その他の証拠調をすることができる。
証拠調については、民事訴訟法の証拠調に関する規定及び民事訴訟費用法第九條及び第十一條乃至第十三條の規定を準用する。但し、保險審査官又は保險審査機関の証拠調については、過料に処し、又は拘引を命ずることはできない。
第四十條 審査の請求、訴の提起又は訴願は、処分の通知又は決定書の交附を受けた日から六十日以内に、これをしなければならない。この場合において、審査の請求については訴願法第八條第三項の規定を、訴の提起については民事訴訟法第百五十八條第二項及び第百五十九條の規定を準用する。
第四十一條 この章に定めるものの外、保險審査官及び保險審査機関に関し必要な事項は、命令で、これを定める
第六章 雑則
第四十二條 保險料その他この法律の規定による微收金を徴收し、又はその還付を受ける権利及び保險給付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。
前項の時効の中断、停止その他の事項に関しては、民法の時効に関する規定を準用する。
命令の定めるところによつて政府のなす保險料その他のこの法律の規定による徴收金の徴收の告知は、民法第百五十三條の規定にかかわらず時効中断の効力を生ずる。
第四十三條 この法律又はこの法律に基いて発する命令に規定する期間の計算については、民法の期間の計算に関する規定を準用する。
第四十四條 労働者災害補償保險に関する書類には、印紙税を課さない。
第四十五條 行政廳又は保險給付を受けるべき者は、労働者の戸籍に関して、戸籍事務を掌る者又はその代理者に対して、無料で証明を求めることができる。
第四十六條 行政廳は、命令の定めるところによつて、勞働者を使用する者に、必要な事項について報告をさせ、文書を提示させその他この法律の施行に関して必要な事務を行わせ、又は出頭させることができる。
第四十七條 行政廳は、命令の定めるところによつて、この保險の適用を受ける事業についての労働者に、この保險の施行に関して、必要な申出、届出若しくは文書の提出をさせ、又は出頭させることができる。
第四十八條 行政廳は、必要があると認めるときは、当該官吏又は吏員に、この法律の適用を受ける事業の行われる場所に臨檢し、関係者に対して質問し、又は帳簿書類の檢査をさせることができる。
第四十九條 行政廳は、保險給付に関して必要があると認めるときは、命令の定めるところによつて、当該官吏又は吏員に、診療録その他の帳簿書類を檢査させることができる。
第五十條 この法律の施行に関する細目は、命令で、これを定める。
第七章 罰則
第五十一條 当該官吏若しくは吏員又はその職にあつた者が、故なく第四十九條の規定による診療録の檢査に関して知得した医師又は歯科医師の業務上の祕密又は個人の祕密を漏したときは、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
職務上前項の祕密を知得した他の公務員又は公務員であつた者が、故なくその祕密を漏したときもまた同項と同樣である。
第五十二條 保檢加入者が、左の各号の一に該当するときは、これを六箇月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 この法律の規定による報告をせず、虚僞の報告をし、文書の提出をせず、又は出頭しなかつた場合
二 この法律の規定による当該官吏又は吏員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚僞の陳述をし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
第五十三條 保險加入者以外の者であつて保險給付を受けるべき者その他の関係者が、左の各号の一に該当するときは、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 この法律の規定による報告、申出若しくは届出をせず、虚僞の報告、申出若しくは届出をし、文書の提出をせず、又は出頭しなかつた場合
二 この法律の規定による当該官吏又は吏員の質問に対し答弁をせず、若しくは虚僞の陳述をし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
第五十四條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他從業者が、その法人又は人の業務に関して、前二條の違反行爲をしたときは、行爲者を罰するの外、その法人又は人に対し各本條の罰金刑を科する。
附 則
第五十五條 この法律施行の期日は、勅令で、これを定める。
第五十六條 この法律の施行後五年間は、保險料率は、第二十六條の規定にかかわらず、労働者災害補償保險委員会に諮つて、数等級に区別して賃金一円当りについて、主務大臣が、これを定める。
第五十七條 労働者災害扶助責任保險法は、これを廃止する。
この法律施行前に発生した事故に対する保險給付及びこの法律施行前の期間に属する保險料に関しては、なお旧法による。
この法律施行前の旧法の罰則を適用すべきであつた者についての処罰については、なお旧法による。
この法律施行の際、労働者災害扶助責任保險につき現に政府と保險契約を締結してゐる者が既に拂込んだこの法律施行後の期間に属する保險料は、この保險の保險料に、これを充当することができる。
前三項に定めるものの外、旧法廃止の際必要な事項は、命令で、これを定める。
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〔政府委員小笠原八十美君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=36
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037・小笠原八十美
○政府委員(小笠原八十美君) ただいま議題となりました勞働者災害補償保險法案の提案理由を御説明いたします。
今議會に提案されました勞働基準法の制定に伴いまして、勞働者の業務災害に對する使用者の災害補償の義務は、いかなる小事業を經營する使用者に對しましても課せられることとなり、かつその災害補償の額についても、勞働基準法は從來の勞働保護法規に比べまして、相當高額のものとなつたのであります。しかるに一方飜つてわが國の産業の現状を考えますときは、大きな業務災害が發生しましたような場合、事業主の中には、あるいは災害補償を完全に履行できない者もありましようし、また履行できたといたしましても、あるいは資金融通等のため災害補償が遲れ、せつかく勞働基準法によつて規定されました勞働者の基本的權利が侵害されるばかりでなく、産業の過重負擔となる場合が豫想せられますので、ここにおきまして、業務災害によつて勞働者が負傷し、疾病にかかり、あるいは廢疾となり、あるいは不幸にして死亡した場合に、これら勞働者に對して迅速かつ公正な保護をはかる必要上、災害補償の確保と、勞働者の福祉のために必要な施設を行い、併せて産業の負擔を輕減するような、何らかの制度が要求されるのでありまして、これが勞働者災害補償保險法の立案をいたしました理由であります。
換言いたしますと、この制度の趣旨とするところは、日本國内の全産業が渾然一體となつて、相互扶助の精神によつて、災害に對する勞働者の保護の完璧をはかり、併せて使用者の負擔を輕減しようとするのであります。なおこの制度の創設によりまして、現行の健康保險、厚生年金保險における業務上の保險給付及び勞働者災害扶助責任保險を、すべてこの制度に吸收いたしまして、事業主の災害補償義務に基く責任を明らかにすることとしたのであります。
この法案の内容について、特に考慮いたしました第一の點は、本制度は、勞働者の保護の完璧を期するため、保險金は直接勞働者に支拂うこととし、保險料は全額使用者の負擔といたしましたことであります。第二の點は、この保險の適用について、強制と任意とに區分いたしまして、災害の危險率の高い事業については、可及的廣範圍にこれを強制することとし、危險率の低い事業についていたずらに強制することを避けて、使用者の意思に任すように留意いたしました。第三の點は、使用者の災害豫防に關する注意力を薄めることのないよう、災害率の高い低いによつて、保險料を上げ下げできるようにいたしました。
以上の理由と考慮に基いて、政府は勞働者災害補償保險法案を提案した次第であります。何とぞ御審議の上、御協贊あらんことを希望いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=37
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038・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
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039・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=39
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040・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=40
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041・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議の如く決しました。
日程第六ないし第九は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=41
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042・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。日程第六、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案、日程第七、裁判所職員の定員に関する法律案、日程第八、裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案、日程第九、檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案、右四案を一括して第一讀會を開きます。司法大臣木村篤太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=42
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043・会議録情報7
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第六 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案(政府提出) 第一讀會
第七 裁判所職員の定員に関する法律案(政府提出) 第一讀會
第八 裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案(政府提出) 第一讀會
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下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律案
第一條 別表第一表の通り高等裁判所を、別表第二表の通り地方裁判所をそれぞれ設立する。
第二條 別表第三表の通り各高等裁判所及び地方裁判所の管轄区域を定める。
第三條 簡易裁判所の設立及び管轄区域は、当分の間、裁判所法第二條第二項の規定にかかわらず、政令でこれを定める。
附則
この法律は、裁判所法施行の日から、これを施行する。
第三條の規定による政令は、日本國憲法施行後最初に召集される國会の開会の後六十日を経過した時に、その効力を失う。
裁判所職員の定員に関する法律案
第一條 下級裁判所の裁判官の員数は、左の通りとする。
高等裁判所長官 八人
判事 專任八百十四人
判事補 專任二百五十人
簡易裁判所判事 專任六百四十五人
第二條 司法研修所教官の員数は、左の通りとする。
專任一人 一級
專任五人 二級
第三條 裁判所調査官の員数は、專任二十人とする。
第四條 裁判所事務官の員数は、左の通りとする。
專任一人 一級
專任百七十六人 二級
專任二千七百六十四人 三級
第五條 裁判所技官の員数は、左の通りとする。
專任一人 二級
專任二人 三級
附則
この法律は、裁判所法施行の日から、これを施行する。
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裁判官の報酬等の應急的措置に関する法律案
第一條 当分の間、最高裁判所長官の受ける報酬の額は、内閣総理大臣の受ける俸給の額と同額とし、最高裁判所判事の受ける報酬の額は、國務大臣の受ける俸給の額と同額とする。
第二條 高等裁判所長官の受ける報酬の額は、当分の間、各省次官の受ける俸給の額より高く、國務大臣の受ける俸給の額より低い額の範囲内で最高裁判所が定める額とする。
第三條 あらたに高等裁判所の判事に補せられた裁判官の受ける報酬の額は、当分の間、一般の一級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
あらたに地方裁判所の判事に補せられた裁判官の受ける報酬の額は、当分の間、一般の一級及び二級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
あらたに判事補に補せられた裁判官の受ける報酬の額は、当分の間、一般の二級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
簡易裁判所判事の受ける報酬の額は、当分の間、一般の二級の官吏の受ける俸給の額の範囲内とする。
第四條 最高裁判所は前條の範囲内で、それぞれ報酬の等級を定めるものとする。
第五條 下級裁判所の各裁判官の受ける報酬は、最高裁判所がこれを定める。
第六條 裁判官が退官し、又は死亡したときは、当月分の全額の報酬を支給する。
第七條 報酬以外の給與については、当分の間、一般の官吏の例による。
第八條 司法修習生の受ける給與の額は、当分の間、最高裁判所の定めるところによる。
前項の給與については、第五條及び第六條の規定を準用する。
司法修習生には、第一項の給與の外、当分の間、一般の官吏の例による給與を支給することができる。
第九條 裁判官の報酬及び司法修習生の給與等に関する細則は、最高裁判所がこれを定める。
附 則
この法律は、裁判所法施行の日から、これを施行する。
この法律施行の際現に在職する裁判官は、日本國憲法第六條第二項、第七十九條第一項又は第八十條第一項の規定により裁判官に任命される者を除いて、この法律施行の際現に受ける俸給の額に相当する報酬及び一般の官吏の例による俸給以外の給與を受けるものとする。
この法律は、昭和二十三年一月一日から、その効力を失う。
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檢察官の俸給等の應急的措置に関する法律案
第一條 檢事総長の受ける俸給の額は、当分の間、國務大臣の受ける俸給の額に次ぐものとし内閣でこれを定める。
第二條 檢事総長以外の檢察官の受ける俸給の額は、当分の間、一般の官吏の受ける俸給の例による。
第三條 前二條に規定するものの外、檢察官の受ける俸給及び俸給以外の給與については、当分の間、一般の官吏の例による。
附 則
この法律は、檢察廳法施行の日から、これを施行する。
檢察廳法第四十條の規定により檢事に任命された者は、別に辞令を発せられないときは、この法律施行の際現に受ける俸給額に相当する俸給を受けるものとする。
この法律は、昭和二十三年一月一日から、その効力を失う。
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〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=43
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044・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) ただいま議題となりました下級裁判所の設立及び管轄區域に關する法律案ほか三件の提案理由を御説明申し上げます。
さきに上程いたしました裁判所法は、その第二條におきまして、下級裁判所の設立及び管轄區域は別に法律でこれを定めることといたしておりまするので、この規定に基きまして、このたびこの法案を提出いたした次第であります。
この法案に現われておりまする高等裁判所及び地方裁判所の設置箇所、管轄區域は、大體從前の控訴院及び地方裁判所の設置箇所及び管轄區域と同樣でありまするが、ただ從前の控訴院所在地七箇所のほかに、高松市に新たに高等裁判所を設置いたしまして、四國四地方裁判所管内を統一してその管下に置いたことと、東京の民事、刑事兩地方裁判所を併合いたしまして、一つの地方裁判所といたしましたことと、樺太、沖繩の二つの地方裁判所が除かれていることが、これと相違するのであります。
簡易裁判所につきましては、その數を多くし、かつ直接社會の治安に關連する重要な新しい裁判所でありまするから、これが設置箇所及び管轄區域につきましては、なお詳細に現地の事情を調査いたしました上、これを決定する必要がありまするので、今囘この法律の規定に基き、暫定的に政令でこれを定めることといたし、新憲法施行後の最初の國會に、この點に關する改正法案を提出することといたす次第であります。
次に、裁判所職員の定員に關する法律案の提案理由を御説明申し上げます。さきに上程いたしました裁判所法では、下級裁判所の裁判官、司法研修所教官、裁判所調査官、裁判所事務官、裁判所技官の各員數は、別に法律でこれを定めることと規定いたしております。從いまして、これらの規定に基きまして本法案を提案した次第であります。
本法案は、各條とも員數の規定であり、法文の記載自體で明瞭でありますが、若干これに補足いたしますれば、第一條の判事は、高等裁判所長官を除く高等裁判所の裁判官と、地方裁判所の判事とを含むものでありまして、この地方裁判所の判事のうちには、長たる地方裁判所長も含まれておるのであります。また裁判所事務官のうちには、事務局や司法研修所等で庶務的事務を掌る者と、裁判所書記に補せられて記録の作成保管等に當る者とを含んでをるのであります。
次に、裁判官の報酬等の應急的措置に關する法律案の提案理由を御説明申し上げます。さきに上程いたしました裁判所法案は、その第五十一條におきまして、裁判官の受ける報酬については別に法律でこれを定めることとし、また第六十七條第二項は、司法修習生には國庫から一定の給與を支給することといたしておりますので、この規定に基きまして、このたびこの法案を提出いたした次第であります。
國内の治安を確保し、國民の權義を保全する重大な使命を擔う裁判官に對しまして、その地位を保つに足るだけの相當の報酬を支給しなければならぬことは、申すまでもないところであります。しかしながら經濟事情はなお變轉きわまりない状態にありますし、また目下政府は、官吏全體の給與改善につきまして鋭意研究中でありますので、暫定的の措置といたしまして、最高裁判所長官の報酬の額は、内閣總理大臣の俸給の額と同一とし、最高裁判所判事の報酬の額は、國務大臣の俸給の額と同額とするように定めましたほか、その他の裁判官及び司法修習生の報酬または給與につきましては、それぞれ一定のわくを定めまして、その範圍内で最高裁判所がこれを定めることといたしたのであります。
最後に、檢察官の俸給等の應急的措置に關する法律案の提案理由を御説明申し上げます。檢察官の俸給につきましては、さきに上程いたしました檢察廳法案第二十一條において、一般の官吏の俸給とは別に、裁判官の報酬に準ずるものとして、法律でこれを定めることといたしておるのであります。ところが、現在直ちに法律をもつて檢察官の俸給の額を定めますることは、御承知のように不安定な經濟事情のもとにありましてはきわめて困難であり、また現に給與審議會その他關係廳におきまして、一般官吏の俸給その他の給與につきまして、新しい事情に即した額の算定等に努力しつつあるのでありまして、これが決定を見るまでは、檢察官のみについて法律によりその額を定めることは、不可能な状態にあるのであります。從いまして、一般官吏につき新しい俸給額が決定されるのを待ちまして、新憲法施行後の最初の國會に、改めて檢察官の俸給に關する法律案を提出いたすことといたしまして、それまでの應急的措置といたして、本法案を提出いたした次第であります。何とぞ御審議の上、御協贊あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=44
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045・井上知治
○副議長(井上知治君) ただいまの四案は、裁判所法案委員に併せ付託することに御異議ありませんか。
〔「質問があるじやないか」「質問の通告があるわけだ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=45
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046・井上知治
○副議長(井上知治君) 質問の通告は、あらかじめございませんでした。
〔「異議なし」「進行々々」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=46
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047・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつてただいまのごとく決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=47
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048・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、政府提出日本銀行法の一部を改正する等の法律案及び金融機關債券發行特例法案の兩案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=48
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049・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=49
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050・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
日本銀行法の一部を改正する等の法律案、金融機關債券發行特例法案、右兩案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長大谷瑩潤君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=50
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051・会議録情報8
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日本銀行法の一部を改正する等の法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
金融機關債券發行特例法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 日本銀行法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十九日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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報告書
一 金融機關債券發行特例法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十九日
委員長 大谷 瑩潤
衆議院議長山崎 猛殿
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〔大谷瑩潤君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=51
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052・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 日本銀行法の一部を改正する等の法律案及び金融機關債券發行特例法案につきまして、委員會の經過竝びに結果を御報告いたします。
これらの兩法案は、去る十七日本會議に上程され、昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案委員會に併託されたのでありますが、委員會においては、去る十八、十九の兩日に質疑及び討論を行いました。
質疑におきましては、稻本、最上、増井の各委員と政府との間に、それぞれ應答があつたのでありますが、そのおもなる點を申し上げますれば、まず現在のインフレ進行過程において、單に日本銀行法の一部を、この法案に示されているように改正しても、もつと根本的な問題に手をつけなければだめではないかとの質問に對し、インフレーシヨン阻止、通貨の信認維持のために、政府としては萬全の努力を拂つており、財政面及び金融面からの諸方策及び物資生産その他各般にわたる總合的施策と相まつて、本法案の適正な運用により、所期の效果をあげることを期待している旨の答辯がありました。次に、通貨發行審議會設置の理由、その性格いかんとの質問に對し、本審議會を設置して、銀行券の發行限度等を定めるにあたり、あまねく各方面の智嚢を動員し、各界の意見を聽くこととしたい、またその性格については、審議會獨自の見解によつて議事を決するのであつて、實質的に政府から獨立の機關である旨の答辯があつたのであります。また特別銀行、金庫が現在發行している債券の、この特例法上の取扱いいかんとの質問に對し、第二金融機關に移されるものについては、第二金融機關がこの法律によつて發行した債券とみなされるが、第二金融機關に移されない既發の債券は、そのまま舊金融機關の債券として取扱われるのはもちろんである旨の答辯がありました。
質疑の後討論を行い、採決の結果、滿場一致可決いたしました。以上をもちまして御報告といたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=52
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053・井上知治
○副議長(井上知治君) 兩案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=53
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054・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて兩案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=54
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055・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 直ちに兩案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=55
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056・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=56
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057・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに兩案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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日本銀行法の一部を改正する等の法律案 第二讀會(確定議)
金融機關債券發行特例法案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=57
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058・井上知治
○副議長(井上知治君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、兩案とも委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
これにて議事日程は議了いたしました。次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後三時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02119470319&spkNum=58
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