1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十二年三月二十日(木曜日)
午後三時五十二分開議
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議事日程 第二十一號
昭和二十二年三月二十日
午後一時開議
第一 國有財産法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 相續税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 作業會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 燃料局特別會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 造幣局特別會計法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 國有林野事業特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第七 勞働者災害補償保險特別會計法案(政府提出) 第一讀會
第八 公債金特別會計法外四法律の廢止等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 企業再建整備法等の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 石油配給公團法案(政府提出) 第一讀會
第十一 配炭公團法案(政府提出) 第一讀會
第十二 産業復興公團法案(政府提出) 第一讀會
第十三 貿易公團法案(政府提出) 第一讀會
第十四 價格調整公團法案(政府提出) 第一讀會
第十五 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から提出された議案は次の通りである。
國有財産法の一部を改正する法律案
相續税法を改正する法律案
作業會計法を改正する法律案
燃料局特別會計法を改正する法律案
造幣局特別會計法の一部を改正する法律案
國有林野事業特別會計法案
勞働者災害補償保險特別會計法案
公債金特別會計法外四法律の廢止等に關する法律案
企業再建整備法等の一部を改正する法律案
石油配給公團法案
配炭公團法案
産業復興公團法案
貿易公團法案
價格調整公團法案
(以上三月十九日提出)
一、議員から提出された議案は次の通りである。
畜産振興に關する決議案
提出者 香川兼吉君
(以上三月十九日提出)
一、議員の異動
三重縣選出議員長井源君退職者となられたので、その補闕として水谷昇君が當選された。
一、昨十九日吉田内閣總理大臣から次の通り政府委員を仰せつけられた旨の通牒を受領した。
司法事務官 岡田善一
同 小澤文雄
同 内藤頼博
同 野木新一
第九十二囘帝國議會司法省所管事務政府委員
内閣事務官 小笠公韶
内閣事務官 窪谷直光
同 三浦參郎
同 向井鹿松
同 山崎丹照
第九十二囘帝國議會政府委員
一、昨十九日衆議院規則第十五條但書に依り議長において議席を次の通り變更した。
三一七 小見山七十五郎君
三四五 田中源三郎君
一、昨十九日常任委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した。
請願委員
理事 森本義夫君(理事杉本勝次君去る七日委員辭任につきその補闕)
一、昨十九日委員長理事互選の結果次の通り當選した。
所得税法を改正する法律案(政府提出)外六件委員
委員長 金光義邦君
理事
神田博君 宮前進君
稻村順三君
行政官廳法案(政府提出)外一件委員
委員長 天野久君
理事
森崎了三君 岡部得三君
淺沼稻次郎君
日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案(政府提出)外二件委員
委員長 小林かなえ君
理事
小澤佐重喜君 桂作藏君
棚橋小虎君
財政法案(政府提出)外一件委員
委員長 高橋泰雄君
理事
杉田一郎君 小野瀬忠兵衞君
西村榮一君
一、昨十九日特別委員理事補闕選擧の結果次の通り當選した。
統計法案(政府提出、貴族院送付)
委員
理事 山崎岩男君(青木泰助君昨十九日理事辭任につきその補闕)
地方自治法案(政府提出)委員
理事 大塚甚之助君(理事内海安吉君去る十八日委員辭任につきその補闕)
一、昨十九日次の通り特別委員の異動があつた。
統計法案(政府提出、貴族院送付)委員
辭任井上東治郎君 補闕岡部得三君
辭任堀川恭平君 補闕山下春江君
船員法を改正する法律案(政府提出)
委員
辭任大矢省三君 補闕田村定一君
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出)委員
辭任井上東治郎君 補闕荒木武行君
辭任細田綱吉君 補闕淺沼稻次郎君
辭任大井直之助君 補闕神田博君
辭任栗原大島太郎君 補闕細田忠治郎君
辭任松浦東介君 補闕江藤夏雄君
辭任原捨思君 補闕岡部得三君
辭任關根久藏君 補闕青木泰助君
辭任吉澤仁太郎君 補闕荊木一久君
辭任西山冨佐太君 補闕日比野民平君
教育基本法案(政府提出)委員
辭任平川篤雄君 補闕松本瀧藏君
所得税法を改正する法律案(政府提出)外六件委員
辭任奧村又十郎君 補闕松永義雄君
日本國憲法の施行に伴う民法の應急的措置に關する法律案(政府提出)外二件委員
辭任森由己雄君 補闕越原はる君
辭任大島多藏君 補闕米山文子君
一、昨十九日議長において次の委員を選定した。
勞働者災害補償保險法案(政府提出)
委員
江崎眞澄君 小澤國治君
小野孝君 滝澤脩作君
夏堀源三郎君 水口周平君
小川半次君 岡部得三君
加藤高藏君 圖司安正君
中山たま君 長谷川保君
松岡駒吉君 山口靜江君
山花秀雄君 石田一松君
大橋喜美君 鹿島透君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=0
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001・井上知治
○副議長(井上知治君) これより會議を開きます。この際新たに議席につかれました議員を御紹介いたします。第百二十一番、三重縣選出議員水谷昇君。
〔水谷昇君起立〕
〔拍 手〕
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=1
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002・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第十五を繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=2
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003・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=3
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004・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十五、臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長加藤一雄君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=4
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005・会議録情報2
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第十五 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案(政府提出)右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月十九日
委員長 加藤 一雄
衆議院議長山崎猛殿
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〔加藤一雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=5
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006・加藤一雄
○加藤一雄君 三月十七日、統計法案委員會委員長庄司一郎君が委員長を辭任せられましたので、不肖私が全會一致の推薦によりまして委員長に當選いたしました。
さてただいま上程に相なりました臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案の、委員會におきまする審議の經過竝びに結果を御報告申し上げます。
本法案の質疑は、昨十九日午後二時よりこれを開始いたしたのでありまするが、各委員より適切なる質疑が行われました。そのうち重要なるものを御紹介いたします。日本自由黨の左藤義詮君、日本社會黨の氏原一郎君よりそれぞれ、元來本法案は、民主主義的に組織せられました産業團體が割當をするように規定したのでありまするが、今囘の改正案におきましては、これを政府が實施するように相なつているが、この理由はいかなるところにあるかとの質問に對しまして、政府は、昨年十二月十一日の連合軍覺書たる、すなわち日本政府は産業界より配給統制の權限を取上げること、によるものであるとの答辯がございました。また私より、輸送命令を受けた者が、その命令に從わなかつたときは、いかに處理するかとの問いに對しまして、政府は、本議會に提案の運びには至らなかつたが、來議會には必ず公益命令規定を提案する旨の答辯がございました。
かくいたしまして質疑を打切り、討論にはいりましたるところ、左藤義詮君は日本自由黨を、竹内歌子君は日本進歩黨を、氏原一郎君は日本社會黨をそれぞれ代表いたされまして、本法案に贊成する旨の意見の開陳がございました。採決の結果、全員一致これを可決いたしたわけであります。この段御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=6
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007・井上知治
○副議長(井上知治君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=7
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008・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=8
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009・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決あらんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=9
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010・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=10
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011・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=11
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012・井上知治
○副議長(井上知治君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定いたしました。
(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=12
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013・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、政府提出、學校教育法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=13
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014・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=14
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015・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。
學校教育法案の第二讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長椎熊三郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=15
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016・会議録情報3
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學校教育法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
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報告書
一 學校教育法案(政府提出)右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十日
委員長 椎熊 三郎
衆議院議長山崎猛殿
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〔椎熊三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=16
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017・椎熊三郎
○椎熊三郎君 學校教育法案の、教育基本法案委員會における審議の經過竝びに結果を御報告申し上げます。
本案は、去る十七日本會議におきまして第一讀會を開き、教育基本法案の委員會に併託と相なつたのでございます。委員會は、去る十八日第四囘の委員會を開きまして、高橋文部大臣より提案理由の説明がございました。ついで審査の方針、竝びに質疑討論等の日割を協議決定いたしまして、即日質疑にはいつたのであります。十八名の委員はすこぶる熱心に御出席くださいまして、しかも出席委員のほとんど全部より熱心なる御質疑がございました。以下、重要なる點について、簡單に質疑の内容、答辯の状況等を御報告申し上げます。
本案は御承知のごとく、六・三・三制の學制を四月一日から實施する上において、缺くべからざる法律でございますので、その内容はすこぶる重要なものでございました。そこで大體の質疑のうち重要な點は、六・三制實施の場合における校舍の設備等について、不十分の點がある、ただ外形だけを整えて、内容及び實質について後退するような心配があるではないか、こういう質問に對しまして、政府委員よりは、現在のわが國の財政状況から、六・三制實施に伴う豫算はきわめて貧弱であつて、御質問のごとき心配は萬々承知しておるのであるが、文化國家建設のためにも、またわが國の國際的地位の囘復の上からも、日本教育民主化の第一歩を踏み出すために、確固たる決意をもつてやるのであるから、その點御諒承を願いたい、こういう答辯でありました。
次に、私立學校の校長は監督廳に屆け出るだけになつておるので、教育上支障はないかという質問に對し、政府は、大學を除く學校の校長及び教員には、免許状の制度を確立しておる、そうして間接的に監督を行うことができるのであるから、決して支障はないと信ずるという答辯がありました。これに對し、學校長の免許状によると、私立學校においては立派な校長を得られないおそれがあるのではないかという質問がありましたが、これに對し政府委員より、校長の免許状は教員の免許状と異つておつて、校長の適任證とも稱すべきものであるから、その資格をきびしく限定して、立派な校長を排斥するものではないという御答辯がありました。
なお國民大衆を教育する重要な青年學校はどうなるのか、またこれが定時制の高等學校になつた場合に、文部省ではその教科内容を通常の高等學校と同樣にする考えのようだが、これは不適當ではないか、そういう質問に對しまして、政府委員よりは、勤勞大衆の教育機關として、定時制の高等學校の普及實施には、文部省として極力努力いたす考えであるとのことでございます。教科内容についても、勤勞大衆に眞に魅力のあるものをつくりたい。從つて教科内容を定める場合においては、十分研究して遺憾のないようにいたしたいとの答辯がありました。
また最も重大な點として、教育税を新設してはどうかという質問でございます。教育財政を確立しなければ、教育の自主性が保たれないのではないか、こういう質問であります。これに對して政府委員よりは、教育財政の確立はきわめて望ましいのであるが、教育税については、税制の根本問題と關連しておるので、十分關係方面と協議しなければならぬ、そうして協議するの意思をもつておるという答辯がございました。
なほ教育委員會による教育行政の獨立要望に對して、政府委員よりは、關係方面と十分協議の上、實現に努力いたしたいとの答辯がございました。その他小學校、中學校、高等學校、大學等にわたつて、新制度における教育の内容及び方法等について、きわめて詳細かつ眞劍に檢討せられたのでありますが、教員養成の問題については、特に六・三制實施に伴う切實な問題として、活溌に論議が續けられました。これに對して政府委員よりは、教員養成に關しては、教育刷新委員會の建議の趣旨を尊重するが、眞に新教育を擔當すべき教員の質の向上、量の確保のため十分なる措置を講じ、實施に遺憾なきことを期したいという答辯があつたのでございます。
以上は、質疑内容のあらましでございますが、私、本委員會を通じまして、實に委員諸君の熱心なる態度、政府當局の真摯なる答辯の要旨につき、特に諸君に御報告申し上げておきたい點がございます。それは昨日の委員會におきまして、社會黨永井勝次郎君よりの熱心な質疑がございましたが、その要點は、今六・三制を實施いたしますとしても、殊に國民學校の兒童に對する設備、學用品、教科書等、はなはだ心もとないものがあるが、文部當局においては、これらについていかなる施策があるかという、つつこんだ專門的の御質問でございました。これに對して日高學校教育局長は、文部省の考えている一切を、率直に腹の中を打明けまして、そうして真摯なる態度をもつて御答辯せられましたが、その際日高局長は、敗戰後の日本の現状――戰爭を放棄したる日本は、文化國家建設のために、教育の徹底的な刷新改革がなされなければならない、しかも次代の日本を擔當すべき青少年に對する期待は絶大である、しかるにこの子供らに對して教科書も與えることのできないという今日の状況は、まことに遺憾千萬であるとの意味を漏らされたのでありますが、中途におきまして、局長は言葉が詰まりまして、涙滂沱として下り、遂に發言する能わず、最後には聲をあげて泣きました。この状況は、委員長初め各委員にも影響せられまして、(拍手)委員會は、そのために約五分間一言も發する者なく、寂として聲なき状況でありました。熱涙のもとに日本再建を考えたるこの學校教育法案の審議は、まさに將來文化日本建設のために、しかも將來の青少年のために期待をかけたるこの熱意のほとばしりがこの委員會に現われまして、この状況は、委員會としてはまさに類例なきものであつたと、私は特に御報告申し上げたい。(拍手)
かくして委員諸君の專門的なる御研究と、熱心なる御質問に對しまして、文部大臣初め政府當局は、熱誠をこめて答辯せられました。本日午後一時より第六囘目の委員會を開きまして、質疑を打切り、討論にはいりました。
討論にはいりましては、自由黨、進歩黨を代表して、左藤義詮君から贊成の御討論がございました。永井勝次郎君からは、社會黨竝びに國民協同黨を代表せられて、後に報告いたします希望條項六箇條を讀み上げまして、そうして贊成の御意見がございました。最後に平川篤雄君より、これまた國民協同黨を代表せられまして、熱心なる贊成の御演説があつたのであります。かくして採決に入りまして、まず本案に對する採決をいたしましたところ、滿場一致、總員起立をもつて原案を可決いたしたのであります。續いて社會黨永井君の説明せられました、國民協同黨との共同提案にかかる希望條項が採決せられました。希望條項は、まことに機宜に適して、しかも内容は重要な點がございますので、特に委員長からこの本會議に報告したいと存じます。
希望條項
一、本法の實施に當つては、民主的な措置により施行規則等を制定すること。
二、從來の青年學校の校舍、施設、教師等の活用について格別の注意を拂うと共に、勤勞青少年の定時制教育を重んずること。
三、教師の臨時的な養成竝びに恆久的な養成に關する方途を確立し、教育の革命的な刷新に萬全の基礎を固めること。
四、義務教育における教科書の編纂は廣く良識をとりいれうるよう民主的な措置を講ずること。
五、義務教育における教員の俸給は可及的速かに全額國庫負擔とすること。
六、盲、聾、唖學校の充實に格段の努力を拂うこと。
以上六項目でございます。この希望條項も、滿場總起立をもつて可決確定いたしたのであります。
以上は、本委員會における審議の經過竝びに結果の大要を、はなはだ粗笨ではございましたが、御報告申し上げた次第でございます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=17
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018・井上知治
○副議長(井上知治君) 討論の通告があります。これを許します。高津正道君。
〔高津正道君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=18
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019・高津正道
○高津正道君 私は學校教育法案に對して、贊成の意見を述べようとするものであります。
この法案は、教育基本法案とともに、實に重要な法案でありまして、たとえば今まで日本に存在して、日本の教育を規制しておつた十六の法律及び勅令が全部廢されて、この一本になるのであります。国民學校令、青年學校令、中等學校令、師範学校令、それらがみなこれに織りこまれるということだけでも、實に重要な問題でありますが、專門學校令、高等學校令、大學令、私立學校令、教員免許令というようなものも、この百八箇條の中に織りこまれるのであります。今までは官立大學と呼ばれておつたあの官立學校の名稱も、國立學校と改まり、四月一日よりは、國民學校という、フアツシヨのつけたあの名前が日本から消え失せて、今度は新しく、われわれに昔親しみのあつた小學校という名で呼ばれることになるのであります。その點だけから見ても、實に重要な法案でありますが、政府のこの法案の扱い方はどうなつておるかといえば、十七日に本會議に上程して、こんなせつぱ詰まつた議會でありますから、この重要な法案に對して、各派交渉會の取極めで、やむなく政府の説明に對して、一人の質疑も許さないことになり、委員會にこれがかけられましたけれども、十八、十九の兩日、いわゆる審議された。
今まで、私が議席に列してからでも、多くの委員長の報告を聽いたのでありますが。委員會では愼重審議したと言う。殊に椎熊委員長のただいまの報告では、日本文化の再建は、まさにこの學校教育法案委員會より始まるというほどの熱心さをもつて討議されたということが、ここに報告されておるのであります。私も傍聽して、それが僞りでなかつたことを知るものでありますけれども、しかしながらその委員の、教育議員の中の長老である松原一彦代議士の言葉の中には、文教の振興に熱意を缺いていることは、現内閣の性格的缺陷であるという言葉を聽いたのであります。
そうして討論にはいり、今日も私は委員會を傍聽いたしておりましたが、討論の全部の時間は、諸君、わずかに二十分であります。そうしてこの本會議にかけて、他に通告がないので、會期切迫しておることをおそれるがゆえに、通告もしないのでありますが、私は一人特にぜひともこの法案については、一語でも代議士の中から本會議において發言すべきであるということをもつて、この壇上に貴重なる時間を割いていただいて、立つておるのであります。(拍手)
議員がいかに熱心に法案を審議しようといたしましても、政府がこれに協力しないならば、まつたくわれわれ議員の職責、任務を果すことはできないのであります。この百八箇條の法案を見れば、有能なる委員が出ておられることは、私ももちろん承認いたしますけれども、神わざではないので、第何條と第何條とに、どういう矛盾があるか、この用語の解釋はどういう意味であるか、ほんとうに熱心に研究しようと思えば、これは二日や三日でできるものでは斷じてないと私は思うのであります。
それでは社會黨はなぜ贊成したか。これは憲法に對する態度と同じであります。われわれが千圓の借金を申し込む。七百圓しか出さない。その場合に七百圓を受取るか。それともわれわれがこれを蹴るか。共産黨は突き返し、われわれは七百圓をとる。殘りの三百圓は‥‥‥(「それが大事なことか」と呼ぶ者あり)これがなかなか大事なのであります。殘りの三百圓は、次の議會で、われわれはこれをよい法案に改めていく。そういう考えをもつて‥‥‥(「ふまじめでしよう」と呼ぶ者あり)最もまじめなる態度がこれであります。(「どれでも七分を要求するのか」と呼ぶ者あり)われわれは七分とつて――われわれは常に百を要求するが、百が通らない場合には、零で歸るかというと、そういう態度ではなくて、七百圓を借りて歸る。殘りの三百圓は‥‥‥(「取引か」と呼ぶ者あり)取引とは違う。殘りの三百圓は、われわれの力によつて、さらにさらによきものに固めていく。(拍手)
多くの簡單なる諸君は、オールかナツシングかという二つしか考えない。(「反對か」と呼ぶ者あり)これが贊成の重要な部分を構成するのであります。(「贊成か反對か」と呼ぶ者あり)大贊成だ。本案に贊成するゆえんは、一〇〇%に完全なものではないけれども、七〇%のよさがあれば、われわれはこれに贊成する。(「議院の神聖を冒涜する」と呼ぶ者あり)そうでない。一番‥‥‥(「七分に贊成だろう」と呼ぶ者あり)一人の議員がこの重要な法案に對して本會議で發言をすることを許さないというような態度は問題であるので‥‥‥
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=19
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020・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=20
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021・高津正道
○高津正道君(續) 私はこの壇に立つて、これだけの發言をどうしてもしなければならないと感ずるものであります。
政府においては、會期の切迫したこういうような時期に、一日に十も、殊に十九も一日に法案を上程される日がある。おそらくはこれは官僚の心理状態が、議員というものを、しゆうとやしゆうとめのごとく考えておつて、初めから出せば、長い間委員會でもまれて議論が出るから、それゆえに遲く、せつぱ詰つたときに、どさくさで、一瀉千里にみんなかけてしまおうとする態度であらうと思う。(拍手)
われわれはこういうような政府の態度に對しては、嚴重に警告を發したいと思うけれども、(「君の態度に對して嚴重に警告を發する」と呼ぶ者あり)本案に對しては、われわれはく腔の熱意を傾けるわけにいかないけれども、七〇%の熱心をもつて、將來を期して、本案に希望條件を附して贊成するものであります。私の意見は、いろいろ申し上げたいことがありますが、まだまだたくさんの議案が控えているので、遺憾ながらこれをもつて、椎熊君に對しても敬意を表しながら、この壇を降るものであります。(笑聲、拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=21
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022・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて討論は終局いたしました。本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=22
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023・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=23
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024・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 直ちは本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=24
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025・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=25
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026・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
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學校教育法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=26
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027・井上知治
○副議長(井上知治君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=27
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028・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第十ないし第十四の五案を繰上げ一括上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=28
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029・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=29
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030・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は變更せられました。
日程第十、石油配給公團法案、日程及十一、配炭公團法案、日程第十二、産業復興公團法案、日程第十三、貿易公團法案、日程第十四、價格調整公團法案、右五案を一括して第一讀會を開きます。商工大臣石井光次郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=30
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031・会議録情報4
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第十 石油配給公團法案(政府提出) 第一讀會
第十一 配炭公團法案(政府提出) 第一讀會
第十二 産業復興公團法案(政府提出) 第一讀會
第十三 貿易公團法案(政府提出) 第一讀會
第十四 價格調整公團法案(政府提出) 第一讀會
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石油配給公團法案
石油配給公團法
第一章 総則
第一條 石油配給公團は、経済安定本部総務長官の定める割当計画及び配給手続に從い、品質、種類又は産地の如何にかかわらず、別表に掲げる石油類(以下單に石油類という。)の適正な配給に関する業務を行うことを目的とする。
石油配給公團は、法人とする。
第二條 石油配給公團は、主たる事務所を東京都に置く。
石油配給公團は、主務大臣の認可を受けて、配給に関する業務を行うため必要の地に從たる事務所を設けることができる。
第三條 石油配給公團の基本金は、六千万円とする。
前項の基本金は、政府が全額これを出資しなければならない。
石油配給公團の運営資金は、必要があるときには、復興金融金庫から借り入れるものとする。
第四條 石油配給公團は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 基本金額に関する事項
五 役員に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告の方法
定款は、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けて、これを変更することができる。
第五條 石油配給公團は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第六條 石油配給公團には、所得税及び法人税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、石油配給公團の事業に対しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて、内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合にはこの限りでない。
第七條 石油配給公團は、臨時物資需給調整法の失効又は経済安定本部総務長官の命令によつて解散する。
前項に定めるものの外、石油配給公團の解散に関して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第八條 石油配給公團でない者は、石油配給公團又はこれに類似する名称を用いることができない。
第九條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、石油配給公團にこれを準用する。
第二章 役員及び職員
第十條 石油配給公團に、役員として、総裁副総裁各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
総裁は、石油配給公團を代表し、第十五條の規定に基き、その業務を総理する。
副総裁は、定款の定めるところにより、石油配給公團を代表し、総裁を輔佐して石油配給公團の業務を掌理し、総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行う。
理事は、定款の定めるところにより、石油配給公團を代表し、総裁及び副総裁を輔佐して石油配給公團の業務を掌理し、総裁及び副総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときにはその職務を行う。
監事は、石油配給公團の業務を監査する。
第十一條 総裁、副総裁、理事及び監事は、主務大臣がこれを任命する。
第十二條 総裁、副総裁及び理事は、定款の定めるところにより、石油配給公團の職員のうちから、主たる事務所又は從たる事務所の業務に関して、一切の裁判上又は裁判外の行爲をする権限を有する代理人を選任することができる。
第十三條 石油配給公團の役員及び職員は、石油類の生産、精製、保管、加工、賣買若しくは輸送を業とする会社の株式を所有し、又はこれらの会社その他の企業の業務に從事し、若しくはその営業につき一切の利害関係を有してはならない。
第十四條 石油配給公團の役員及び職員は、これを官吏その他の政府職員とする。
総裁たる者は、商工次官と同級又はこれと同格とし、その他の役員たる者は、一級又はこれと同格とし、職員たる者は、一級、二級若しくは三級又はこれらと同格とし、それらの定員は、主務大臣がこれを定める。
石油配給公團の役員及び職員は、官吏に関する一般法令に從うものとする。但し、主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて、給與、服務その他必要な事項に関して特例を定めたときには、これによるものとする。
第三章 業務
第十五條 石油配給公團は、経済安定本部総務長官の定める割当計画及び配給手続並びにこれらに関する指示に基き、主務大臣の監督に從い、左の業務を行う。
一 物價廳の定める價格による石油類の一手買取及び一手賣渡
二 石油類の保管及び加工
三 石油類の配給及びこれに附帶する業務
四 輸送施設の配置及び使用に関する法令に基き石油類の適切な輸送を行うために必要な措置
五 石油類の販賣業者の指定
前項第五号の指定は、経済安定本部総務長官の定める條件に基く主務大臣の認可を受けなければならない。
第十六條 石油配給公團は、業務開始の際、業務の方法を定めて、経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを恋更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第十七條 石油配給公團は、毎事業年度の前期及び後期の初において六箇月毎の事業計画及び資金計画を作製し、これを経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第四章 会計
第十八條 石油配給公團の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとし、これを前期及び後期に分ける。
第十九條 石油配給公團は、前條の各期毎に財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを経済安定本部総務長官に提出し、その承認を受けなければならない。
経済安定本部総務長官は、前項の承認を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において承認の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
石油配給公團は、第一項の規定による経済安定本部総務長官の承認を受けたときには、その財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公告し、且つこれを定款とともに、各事務所に備えて置かなければならない。
前項の財産目録、貸借対照表及び損益計算書は、会計檢査院の檢査を受け、その承認を受けなければならない。
石油配給公團は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、命令の定めるところにより、剩余金を國庫に納付しなければならない。
石油配給公團は、帳簿、書類その他一切の記録を整然且つ明確に記載し、会計檢査院、経済安定本部及び主務官廳の檢査を受けることができるように準備しなければならない。
会計檢査院は、常に適確に前項の檢査を行わなければならない。
第五章 監督及び助成
第二十條 経済安定本部総務長官は、割当計画及び配給手続に関して、石油配給公團を指導監督する。
経済安定本部総務長官は、石油類の適正な配給を確保するため必要があると認めるときには、石油配給公團に対して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、石油類の適正な配給を確保するため必要があると認めるときには、石油配給公團に対して、経済安定本部総務長官の定める割当計画及び配給手続に基いて、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣又は経済安定本部総務長官は、必要があると認めるときには、石油配給公團に対して報告をさせ、又は当該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、当該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第二十一條 石油配給公團は、その役員及び職員に対して、特別の報酬を與える必要があるときには、その報酬規程を定め、経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第二十二條 主務大臣は、石油配給公團の役員が法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反したときには、これを解任することができる。
経済安定本部総務長官は、石油配給公團の役員が石油配給公團の目的及び業務に関して、その任に適せず、又はその職務を適切に遂行していないと認めるときには、これを解任することができる。
第二十三條 主務大臣は、石油配給公團の業務を行うため必要があると認めるときには、石油配給株式会社の清算人に対し、当該会社の所有に属する施設の全部又は一部を、石油配給公團に貸與することを命ずることができる。
主務大臣は、石油配給公團の業務を行うため必要があると認めるときには、石油配給公團に必要な施設の所有者若しくは占有者又は大藏大臣を含む管理者に対して、当該施設を石油配給公團に貸與することを命じ、又は求めることができる。
前二項の規定による施設の使用料は、経済安定本部総務長官がそのあらかじめ定める方針に基いて、適正に定めるものとする。
前項の規定によつて使用料が定められたときには、石油配給公團は、第七條第一項に定められた存続期間を超えない範囲において、経済安定本部総務長官の承認を受けて第一項又は第二項の施設を賃借するものとする。
主務大臣は、石油配給公團の業務行うため必要があると認めるときには、石油配給株式会社の清算人に対して、当該会社が所有し、又は占有している資材の全部又は一部を石油配給公團に讓り渡し、又は引き渡すことを命ずることができる。
前項の命令があつたときには、石油配給公團は、前項の資材の讓渡又は引渡を受けた日から一箇月以内に関係者に対して、正当つ補償を支拂わなければならない。
主務大臣は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、前項の補償に関し必要な規程を定めた後でなければ、第五項の命令をなすこととができない。
主務大臣は、石油配給公團の業務を行うため必要があると認めるときには、経済安定本部総務長官の定める方針に基き、運輸大臣の同意を得て、必要な輸送施設の所有者若しくは占有者又は運輸大臣を含む管理者に対して、当該輸送施設を石油配給公團の使用に供することを命じ、又は求めることができる。
前項の場合において、石油配給公團は、関係者に対し正当な補償を支拂わなければならない。
主務大臣は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、前項の補償に関し必要な規程を定めた後でなければ、第八項の命令又は要求をなすことができない。
主務大臣は、石油配給公團が賃借した施設を管理し、又は必要があると認めるときには、保險を附する等の措置を石油配給公團にとらしめることに関し、責任あるものとする。
主務大臣は、前各項の実施について石油配給公團又は関係各大臣を含む関係者に対して迅速な措置を命じ、又は求めることができる。
第六章 罰則
第二十四條 前條第一項、第二項、第五項又は第八項の規定による命令に違反した者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第二十五條 左の場合においては、その違反行為をなした石油配給公團の役員又は職員は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十五條第一項に規定しない業務を行つた場合
二 第二十條第二項又は第三項に規定する経済安定本部総務長官又は主務大臣の監督上の命令に違反した場合
第二十六條 この法律の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十七條 前三條の罪を犯した者には情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関して第二十四條の違反行為をなしたときには、行為者を罰する外、その法人又は人に対して同條の罰金刑を科する。
第二十八條 第八條の規定に違反して、石油配給公團又はこれに類以する名称を用いた者は、これを一万円以下の過料に処する。
附 則
第二十九條 この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
第三十條 この法律は、昭和二十三年四月一日又は経済安定本部廃止の時の何れか早い時に、その効力を失う。
石油配給公團は、前項の時に解散する。但し、その時までになした行爲に対する罰則の適用及び石油配給公團の清算に関しては、この法律は、その時以後もなほその効力を有する。
第三十一條 石油配給公團が成立したときには、石油配給株式会社は、解散する。
前項の規定による石油配給株式会社の清算は、昭和二十三年四月一日までに結了せしめるものとする。
第三十二條 政府は、設立委員を命じて、石油配給公團の設立に関する事務を処理させる。
第三十三條 設立委員は、定款を作成して、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。
前項の認可があつたときには、設立委員は、遅滯なく基本金の拂込を請求しなければならない。
第三十四條 基本金の拂込があつたときには、設立委員は、遅滯なくその事務を石油配給公團の総裁に引き継がなければならない。
総裁が前項の事務の引継を受けたときには、総裁、副総裁、理事及び監事の全員は、遅滯なく設立の登記をしなければならない。
石油配給公團は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三十五條 石油配給公團でない者で、この法律施行の際現に石油配給公團又はこれに類似する名称を用いているものについては、この法律施行後六箇月を限り、第八條の規定を適用しない。
第三十六條 登録税法の一部を、次のように改正する。
第十九條第七号中「蠶絲共同組合」の上に「法令ニ依ル公團、」を、「蠶絲業法」の上に「公團ニ關スル法令、」を加える。
第三十七條 印紙税法の一部を、次のように改正する。
第五條第六号ノ六を次のように改める。
六ノ六 法令ニ依ル公團ノ業務ニ關スル證書帳簿
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配炭公團法案
配炭公團法
第一章 総則
第一條 配炭公團は、経済安定本部総務長官の定める割当計画及び配給手続に從い、石炭及びコークス並びに別表第一に掲げる亞炭(以下指定亞炭という。)の適正な配給に関する業務を行うことを目的とする。
配炭公團は、法人とする。
第二條 配炭公團は、主たる事務所を東京都に置く。
配炭公團は、主務大臣の認可を受けて、配給に関する業務を行うため必要の地に從たる事務所を設けることができる。
第三條 配炭公團の基本金は、三億円とする。
前項の基本金は、政府が全額これを出資しなければならない。
配炭公團の運営資金は、必要があるときには、復興金融金庫から借り入れるものとする。
第四條 配炭公團は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 基本金額に関する事項
五 役員に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告の方法
定款は、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けて、これを変更することができる。
第五條 配炭公團は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第六條 配炭公團には、所得税及び法人税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、配炭公團の事業に対しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合にはこの限りでない。
第七條 配炭公團は、臨時物資需給調整法の失効又は経済安定本部総務長官の命令によつて解散する。
前項に定めるものの外、配炭公團の解散に関して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第八條 配炭公團でない者は、配炭公團又はこれに類似する名称を用いることができない。
第九條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、配炭公團にこれを準用する。
第二章 役員及び職員
第十條 配炭公團に、役員として、総裁副総裁各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
総裁は、配炭公團を代表し、第十五條の規定に基き、その業務を総理する。
副総裁は、定款の定めるところにより、配炭公團を代表し、総裁を補佐して配炭公團の業務を掌理し、総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行う。
理事は定款の定めるところにより、配炭公團を代表し、総裁及び副総裁を補佐して配炭公團の業務を掌理し、総裁及び副総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときにはその職務を行う。
監事は、配炭公團の業務を監査する。
第十一條 総裁、副総裁、理事及び監事は、主務大臣がこれを任命する。
第十二條 総裁、副総裁及び理事は、定款の定めるところにより、配炭公團の職員のうちから、主たる事務所又は從たる事務所の業務に関して、一切の裁判上又は裁判外の行爲をする権限を有する代理人を選任することができる。
第十三條 配炭公團の役員及び職員は、石炭、コークス又は亞炭の生産、選別、保管、加工、賣買若しくは輸送を業とする会社の株式を所有し、又はこれらの会社その他の企業の業務に從事し、若しくはその営業につき一切の利害関係を有してはならない。
第十四條 配炭公團の役員及び職員は、これを官吏その他の政府職員とする。
総裁たる者は、商工次官と同級又はこれと同格とし、その他の役員たる者は、一級又はこれと同格とし、職員たる者は、一級、二級若しくは三級又はこれらと同格とし、それらの定員は、主務大臣がこれを定める。
配炭公團の役員及び職員は、官吏に関する一般法令に從うものとする。但し、主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて、給與、服務その他必要な事項に関して特例を定めたときには、これによるものとする。
第三章 業務
第十五條 配炭公團は、経済安定本部総務長官の定める割当計画及び配給手続並びにこれらに関する指示に其き、主務大臣の監督に從い。左の業務を行う。
一 物價廳の定める價格による石炭、コークス及び指定亞炭の一手買取及び一手賣渡
二 前号に掲げる物資の保管、檢査及び輸送
三 前各号の事業に附帶する業務
第十六條 配炭公團は、石炭、コークス又は指定亞炭の生産業者からこれらの者が生産したすべての石炭、コークス又は指定亞炭を買い取らなければならない。
配炭公團は、山元又は主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて指示する荷渡場所において前項に掲げる物資の荷渡を受けなければならない。
前二項に定めるものの外主務大臣は、経済安定本部総務長官の承
認を受けて石炭、コークス又は指定亞炭の買取又は賣渡について必要な事項を定めることができる。
配炭公團は、第二項の規定による荷渡場所において、役員又は職員に荷渡を受ける石炭、コークス又は指定亞炭の品質、数量その他必要な事項について適確な檢査をさせなければならない。
配炭公團は、前項の規定により、役員又は職員に檢査をさせる場合には、命令の定める所により、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第十七條 配炭公團は、業務開始の際、業務の方法を定めて、経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第十八條 配炭公團は、毎事業年度の前期及び後期の初において六箇月毎の事業計画及び資金計画を作成し、これを経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第四章 会 計
第十九條 配炭公團の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとし、これを前期及び後期に分ける。
第二十條 配炭公團は、前條の各期毎に財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを経済安定本部総務長官に提出し、その承認を受けなければならない。
経済安定本部総務長官は、前項の規定による承認を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において承認の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
配炭公團は、第一項の規定による経済安定本部総務長官の承認を受けたときには、その財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公告し、且つこれを定款とともに、各事務所に備えて置かなければならない。
前項の財産目録、貸借対照表及び損益計算書は、会計檢査院の檢査を受け、その承認を受けなければならない。
配炭公團は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、命令の定めるところにより、剩余金を國庫に納付しなければならない。
配炭公團は、帳簿、書類その他一切の記録を整然且つ明確に記載し、会計檢査院、経済安定本部及び主務官廳の檢査を受けることができるように整備しなければならない。
会計檢査院は、常に適確に前項の檢査を行わなければならない。
第五章 監督及び助成
第二十一條 経済安定本部総務長官は、割当計画及び配給手続に関して、配炭公團を指導監督する。
経済安定本部総務長官は、石炭、コークス又は指定亞炭の適正な配給を確保するため必要があると認めるときには、配炭公團に対して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、石炭、コークス又は指定亞炭の適正な配給を確保するため必要があると認めるときには、配炭公團に対して、経済安定本部総務長官の定める割当計画及び配給手続に基いて、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣又は経済安定本部総務長官は、必要があると認めるときには、配炭公團に対して報告をさせ、又は当該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、当該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第二十二條 配炭公團は、その役員及び職員に対して、特別の報酬を與える必要があるときには、その報酬規程を定め、経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において、認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第二十三條 主務大臣は、配炭公團の役員が法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反したときには、これを解任することができる。
経済安定本部総務長官は、配炭公團の役員が配炭公團の目的及び業務に関して、その任に適せず、又はその職務を適切に遂行してないと認めるときには、これを解任することができる。
第二十四條 主務大臣は、配炭公團の業務を行うため必要があると認めるときには、日本石炭株式会社、別表第二に掲げる石炭販賣株式会社(以下指定会社という。)又は日本亞炭株式会社の清算人に対し、当該会社の所有に属する施設の全部又は一部を、配炭公團に貸與することを命ずることができる。
主務大臣は、配炭公團の業務を行うため必要があると認めるときには、配炭公團に必要な施設の所有者若しくは占有者又は大藏大臣を含む管理者に対して、当該施設を配炭公團に貸與することを命じ、又は求めることができる。
前二項の規定による施設の使用料は、経済安定本部総務長官が、そのあらかじめ定める方針に基いて適正に定めるものとする。
前項の規定によつて、使用料が定められたときには、配炭公團は、第七條第一項に定められた存続期間を超えない範囲において、経済安定本部総務長官の承認を受けて第一項又は第二項の施設を賃借するものとする。
主務大臣は、配炭公團の業務を行うため必要があると認めるときには、第一項に掲げる会社の清算人に対して、当該会社が所有し、又は占有している資材の全部又は一部を配炭公團に讓り渡し、又は引き渡すことを命ずることができる。
前項の命令があつたときには、配炭公團は、前項の資材の讓受又は引渡を受けた日から一箇月以内に関係者に対して、正当な補償を支拂わなければならない。
主務大臣は、経済安定本部総務長官の承認を受けて前項の補償に関し必要な規程を定めた後でなければ、第五項の命令をなすことができない。
主務大臣は、配炭公團が賃借した施設を管理し、又は必要があると認めるときには、保險を附する等の措置を配炭公團にとらしめることに関し、責任あるものとする。
主務大臣は、前各項の実施について配炭公團又は関係各大臣を含む関係者に対して迅速な措置を命じ、又は求めることができる。
第六章 罰則
第二十五條 前條第一項、第二項又は第五項の規定による命令に違反した者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第二十六條 左の場合においては、その違反行爲をなした配炭公團の役員又は職員は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十五條第一項に規定しない業務を行つた場合
二 第二十一條第二項又は第三項に規定する経済安定本部総務長官又は主務大臣の監督上の命令に違反した場合
第二十七條 この法律の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は檢査を拒み、防げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十八條 前三條の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関して第二十五條の違反行爲をなしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して同條の罰金刑を科する。
第二十九條 第八條の規定に違反して、配炭公團又はこれに類似する名称を用いた者は、これを一万円以下の過料に処する。
附 則
第三十條 この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
第三十一條 石炭及コークス配給統制法及び同法施行令は、配炭公團成立の日においてこれを廃止する。但し、これらの法令廃止以前にこれらの法令に基いてなした行爲に関する罰則の適用については、これらの法令は、その廃止後もなおその効力を有する。
第三十二條 この法律は、昭和二十三年四月一日又は経済安定本部廃止の時の何れか早い時に、その効力を失う。
配炭公團は、前項の時に解散する。但し、その時までになした行爲に対する罰則の適用及び配炭公團の清算に関しては、この法律は、その時以後もなおその効力を有する。
第三十三條 配炭公團が成立したときには、日本石炭株式会社、指定会社及び日本亞炭株式会社は、解散する。
前項の規定による会社の清算は、昭和二十三年四月一日までに結了せしめるものとする。
第三十四條 政府は、設立委員を命じて、配炭公團の設立に関する事務を処理させる。
第三十五條 設立委員は、定款を作成して、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。
前項の認可があつたときには、設立委員は、遅滯なく基金の拂込を請求しなければならない。
第三十六條 出資金の拂込があつたときには、設立委員は、遅滯なくその事務を配炭公團の総裁に引き継がなければならない。
総裁が前項の事務の引継を受けたときには、総裁、副総裁、理事及び監事の全員は、遅滯なく設立の登記をしなければならない。
配炭公團は設立の登記をすることによつて成立する。
第三十七條 配炭公團でない者で、この法律施行の際現に配炭公團又はこれに類似する名称を用いているものについては、この法律施行後六箇月を限り、第八條の規定を適用しない。
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産業復興公團法案
産業復興公團法
第一章 総則
第一條 産業復興公團は、経済安定本部総務長官の定める基本的な産業政策及び産業計画に從い、産業設備又は資材の整備又は活用を図り、以て産業の速かな復興を促進することを目的とする。
産業復興公團は、法人とする。
第二條 産業復興公團は、主たる事務所を東京都に置く。
産業復興公團は、主務大臣の認可を受けて、第十六條に規定する業務を行うため必要の地に從たる事務所を設けることができる。
第三條 産業復興公團の基本金は、二億円とする。
前項の基本金は、政府が全額これを出資するものとする。
産業復興公團の運営資金は、必要があるときには、復興金融金庫から借り入れるものとする。
第四條 産業復興公團は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 基本金額に関する事項
五 役員に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告の方法
定款は、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けて、これを変更することができる。
第五條 産業復興公團は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第六條 産業復興公團には、所得税及び法人税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、産業復興公團の事業に対しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合にはこの限りでない。
第七條 産業復興公團が第十六條に規定する業務のため、不動産に関する権利の取得又は所有権の保存について登記を受けた場合には、その登録税の額は、不動産の價格の千分の一・五とする。
第八條 産業復興公團は、経済安定本部総務長官の命令によつて解散する。
経済安定本部総務長官は、前項の命令をなす場合には、主務大臣にはからなければならない。この場合において命令の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
前項に定めるものの外産業復興公團の解散に関して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第九條 産業復興公團でない者は、産業復興公團又はこれに類似する名称を用いることができない。
第十條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、産業復興公團にこれを準用する。
第二章 役員及び職員
第十一條 産業復興公團に、役員として、総裁副総裁各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
総裁は、産業復興公團を代表し、第十六條の規定に基き、その業務を総理する。
副総裁は、定款の定めるところにより、産業復興公團を代表し、総裁を補佐して産業復興公團の業務を掌理し、総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行う。
理事は、定款の定めるところにより、産業復興公團を代表し、総裁及び副総裁を補佐して産業復興公團の業務を掌理し、総裁及び副総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときにはその職務を行う。
監事は、産業復興公團の業務を監査する。
第十二條 総裁、副総裁、理事及び監事は、主務大臣がこれを任命する。
第十三條 総裁、副総裁及び理事は、定款の定めるところにより、産業復興公團の職員のうちから、主たる事務所又は從たる事務所の業務に関して、一切の裁判上又は裁判外の行爲をする権限を有する代理人を選任することができる。
第十四條 産業復興公團の役員及び職員は、産業復興公團から産業設備又は資材の貸付を受ける会社の株式を所有し、又はこれらの会社その他の企業の業務に從事し、若しくはその営業につき一切の利害関係を有してはならない。
第十五條 産業復興公團の役員及び職員は、これを官吏その他の政府職員とする。
総裁たる者は、親任の待遇とし、総裁以外の役員たる者は、一級又はこれと同格とし、職員たる者は、一級、二級若しくは三級又はこれらと同格とし、それらの定員は、主務大臣がこれを定める。
産業復興公團の役員及び職員は、官吏に関する一般法令に從うものとする。但し、主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて、給與、服務その他必要な事項に関して特例を定めたときには、これによるものとする。
第三章 業務
第十六條 産業復興公團は、経済安定本部総務長官の定める基本的な産業政策及び産業計画に基いて主務大臣のなす指導及び監督に從い、左の業務を行う。
一 経済安定本部総務長官が定める方策に基く産業設備の建設及びその貸付又は賣渡
二 経済安定本部総務長官の定める方策に基く産業設備又は資材の買受及びその貸付又は賣渡
三 前二号に掲げるものの外、経済安定本部総務長官の指定する業務 第十七條 産業復興公團は、業務開始の際、業務の方法を定めて、経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第十八條 産業復興公團は、毎事業年度の前期及び後期の初において六箇月毎の事業計画及び資金計画を作成し、これを経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第四章 会計
第十九條 産業復興公團の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとし、これを前期及び後期に分ける。
第二十條 産業復興公團は、前條の各期毎に財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを経済安定本部総務長官に提出し、その承認を受けなければならない。
経済安定本部総務長官は、前項の承認を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において承認の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
産業復興公團は、第一項の規定による経済安定本部総務長官の承認を受けたときには、その財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公告し、且つこれを定款とともに、各事務所に備えて置かなければならない。
前項の財産目録、貸借対照表及び損益計算書は、会計檢査院の檢査を受け、その承認を受けなければならない。
産業復興公團は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、命令の定めるところにより、剩余金を國庫に納入しなければならない。
産業復興公團は、その帳簿、書類その他一切の記録を整然且つ明確に記載し、会計檢査院、経済安定本部及び主務官廳の檢査を受けることができるように整備しなければならない。
會計檢査院は、常に適確に前項の檢査を行わなければならない。
第五章 監督及び助成
第二十一條 経済安定本部総務長官は、その基本的な産業政策及び産業計画に関して産業復興公團を指導監督する。
経済安定本部総務長官は、産業の速かな復興を図るため必要があると認めるときには、産業復興公團に対して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、産業の速かな復興を図るため必要があると認めるときには、産業復興公團に対して、経済安定本部総務長官の定める基本的な産業政策及び産業計画に基いて、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣又は経済安定本部総務長官は、必要があると認めるときには、産業復興公團又は産業復興公團から産業設備若しくは資材の貸付を受ける者に対して、報告をさせ、又は当該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、当該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第二十二條 産業復興公團は、その役員及び職員に対して、特別の報酬を與える必要があるときには、その報酬規程を定め、経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第二十三條 主務大臣は、産業復興公團の役員が法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反したときには、これを解任することができる。
経済安定本部総務長官は、産業復興公團の役員が産業復興公團の目的及び業務に関して、その任に適せず、又はその職務を適切に遂行していないと認めるときには、これを解任することができる。
第二十四條 主務大臣は、産業復興公團の業務を行うため必要があると認めるときには、産業設備営團の清算人に対し、当該営團の所有に属する施設の全部又は一部を、産業復興公團に貸與することを命ずることができる。
主務大臣は、産業復興公團の業務を行うため必要があると認めるときには、産業復興公團に必要な施設の所有者若しくは占有者又は大藏大臣を含む管理者に対して、当該施設を産業復興公團に貸與することを命じ、又は求めることができる。
前二項の規定による施設の使用料は、経済安定本部総務長官がそのあらかじめ定める方針に基いて、適正に定めるものとする。
前項の規定によつて使用料が定められたときには、産業復興公團は、第八條第一項に定められた存続期間を超えない範囲において、経済安定本部総務長官の承認を受けて、第一項又は第二項の施設を賃借するものとする。
主務大臣は、産業復興公團の業務を行うため必要があると認めるときには、産業設備営團の清算人に対して、当該営團が所有し、又は占有している資材の全部又は一部を、産業復興公團に讓り渡し、又は引渡すことを命ずることができる。
前項の命令があつたときには、産業復興公團は、前項の資材の讓受又は引渡を受けた日から一箇月以内に、関係者に対して正当な補償を支拂わなければならない。
主務大臣は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、前項の補償に関し必要な規程を定めた後でなければ、第五項の命令をなすことができない。
主務大臣は、産業復興公團の業務を行うため必要があると認めるときには、経済安定本部総務長官の定める方針に基き、運輸大臣の同意を得て、必要な輸送施設の所有者若しくは占有者又は運輸大臣を含む管理者に対して、当該輸送施設を商業復興公團の使用に供することを命じ、又は求めることができる。
前項の場合において、産業復興公團は、関係者に対して正当な補償を支拂わなければならない。
主務大臣は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、前項の補償に関し必要な規程を定めた後でなければ、第八項の命令又は要求をなすことができない。
主務大臣は、産業復興公團が賃借した施設を管理し、又は必要があると認めるときには、保險を附する等の措置を産業復興公團にとらしめることに関し、責任あるものとする。
主務大臣は、前各項の実施について産業復興公團又は関係各大臣を含む関係者に対して、迅速な、措置を命じ、又は求めることができる。
第六章 罰則
第二十五條 前條第一項、第二項、第五項又は第八項の規定による命令に違反した者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第二十六條 左の場合においては、その違反行爲をなした産業復興公團の役員又は職員は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十六條に規定されていない業務を行つた場合
二 第二十一條第二項又は第三項に規定する経済安定本部総務長官又は主務大臣の監督上の命令に違反した場合
第二十七條 この法律の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十八條 前三條の罪を犯した者には、情状に因り懲役及び罰金を併科することができる。
法人(産業復興公團を除く。以下同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関して第二十五條又は前條の違反行爲をなしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。
第二十九條 第九條の規定に違反して、産業復興公團又はこれに類似する名称を用いた者は、これを一万円以下の過料に処する。
附 則
第三十條 この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
第三十一條 産業復興営團法(以下旧法という。)は、これを廃止する。但し、旧法に基いてなした行爲に関する罰則の適用については、旧法は、その廃止後もなおその効力を有する。
第三十二條 旧法による産業復興営團は、第三十三條乃至第三十七條の規定により、この法律による産業復興公團になるものとする。
第三十三條 主務大臣は、改組委員を命じて、産業復興営團を産業復興公團にするために必要な事務を処理させる。
第三十四條 改組委員は、定款を作成して、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。
第三十五條 産業復興営團に対する政府の出資は、これを第三條第二項の規定による産業復興公團に対する政府の出資に引き当てるものとする。
第三十六條 第三十四條の認可があつたときには、改組委員は、遅滯なくその事務を産業復興公團総裁に引き継がなければならない。
総裁が前項の事務の引継を受けたときには、総裁、副総裁、理事及び監事の全員は、遅滯なく設立の登記をしなければならない。
産業復興公團は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三十七條 産業復興公團の成立により、産業復興営團はこれに吸收されるものとし、産業復興営團の一切の権利義務は、この法律の規定に基き、産業復興公團において承継する。
第三十八條 産業復興公團でない者で、この法律施行の際現に産業復興公團又はこれに類似する名称を用いているものについては、この法律施行後六箇月を限り、第九條の規定を適用しない。
第三十九條 登録税法の一部を、次のように改正する。
第十九條第七号中「産業復興営團、」及び「産業復興営團法、」を削る。
第四十條 印紙税法の一部を、次のように改正する。
第五條の六の五の二を削る。
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貿易公團法案
貿易公團法
第一章 総 則
第一條 貿易公團は、経済安定本部総務長官の定める輸出入に関する基本的な政策及び計画に基き、主務大臣の定める輸出入計画及び輸出入手続に從い、輸出入に関する業務を行うことを目的とする。
貿易公團は、法人とする。
第二條 貿易公團の種類は、左の通りとする。
鉱工品貿易公團
纖維貿易公團
食糧貿易公團
原材料貿易公團
前項の貿易公團の取り扱う製品の種類は、命令で、これを定める。
第三條 貿易公團は、主たる事務所を東京都に置く。
貿易公團は、主務大臣の認可を受けて、輸出入に関する業務を行うため必要の地に從たる事務所を設けることができる。
第四條 貿易公團の基本金は、左の通りとする。
鉱工品貿易公團 千五百万円
纖維貿易公團 三千万円
食糧貿易公團 千五百万円
原材料貿易公團 二千万円
前項の基本金は、政府が全額これを出資しなければならない。
貿易公團の運営資金は、必要があるときには、貿易資金から借り入れるものとする。
第五條 貿易公團は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 基本金額に関する事項
五 役員に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 會計に関する事項
八 公告の方法
定款は、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けて、これを変更することができる。
第六條 貿易公團は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第七條 貿易公團には、所得税及び法人税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、貿易公團の事務に対しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて、内務大臣及び大藏大臣の認可を受けたときにはこの限りでない。
第八條 貿易公團は、臨時物資需給調整法の失效又は経済安定本部総務長官の命令によつて解散する。
前項に定めるものの外、貿易公團の解散に関して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第九條 貿易公團でない者は、貿易公團又はこれに類似する名称を用いることができない。
第十條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、貿易公團にこれを準用する。
第二章 役員及び職員
第十一條 貿易公團に、役員として理事長副理事長各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
理事長は、貿易公團を代表し、第十六條の規定に基き、その業務を総理する。
副理事長は、定款の定めるところにより、貿易公團を代表し、理事長を補佐して貿易公團の業務を掌理し、理事長に事故のあるときには、その職務を代理し、理事長が欠員のときにはその職務を行う。
理事は、定款の定めるところにより、貿易公團を代表し、理事長及び副理事長を補佐して貿易公團の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故のあるときには、その職務を代理し、理事長及び副理事長が欠員のときにはその職務を行う。
監事は、貿易公團の業務を監査する。
第十二條 理事長、副理事長、理事及び監事は、主務大臣が任命する。
第十三條 理事長、副理事長及び理事は、定款の定めるところにより、貿易公團の職員のうちから、主たる事務所又は從たる事務所の業務に関し、一切の裁判上又は裁判外の行爲をする權限を有する代理人を選任することができる。
第十四條 貿易公團の役員及び職員は、輸出入に関する事務を営む会社の株式を所有し、又はこれら会社その他の企業の業務に從事し、若しくはその営業につき一切の利害関係を有してはならない。
第十五條 貿易公團の役員及び職員は、これを官吏その他の政府職員とする。
理事長たる者は、貿易廳局長と同級又はこれと同格とし、その他の役員たる者は、一級又はこれと同格とし、職員たる者は、一級、二級若しくは三級又はこれらと同格とし、それらの定員は、主務大臣がこれを定める。
貿易公團の役員及び職員は、官吏に関する一般法令に從うものとする。但し、主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて、給與、服務その他の必要な事項に関して、特例を定めたときには、これによるものともものする。
第三章 業 務
第十六條 貿易公團は、経済安定本部総務長官の定める基本的な政策及び計画に基き、主務大臣の監督に從い、輸出入に関する左の業務を行う。
一 輸出品の発注、買取、保管及び輸送並びに政府に対する賣渡
二 輸入品の引取、保管、輸送及び引渡
三 主務大臣の定むる輸出入に関する原材料及び包裝材料の取得及び配分
四 前各号に附帶する業務
前項第三号の業務は、原材料貿易公團に限つてこれを行うことができる。但し、輸入品の取得及び配分についてはこの限りでない。
原材料貿易公團は、現に生産の過程にある輸出品の生産に必要な又は主務大臣の認めた在庫に必要な資材の數量に限つてこれを買入れることができる。
第十七條 貿易公團は、業務開始の際、業務の方法を定めて、経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第十八條 貿易公團は、毎事業年度の前期及び後期の初において六箇月毎の事業計画及び資金計画を作成し、これを経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからねばならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第四章 会 計
第十九條 貿易公團の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとし、これを前期及び後期に分ける。
第二十條 貿易公團は、前項の各期毎に財産目録、賃借対照表及び損益計算書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを経済安定本部総務長官に提出し、その承認を受けなければならない。
経済安定本部総務長官は、前項の承認を行ふときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において承認の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
貿易公團は、第一項の規定による経済安定本部総務長官の承認を受けたときには、その財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公告し、且つこれを定款とともに各事務所に備えて置かなければならない。
前項の財産目録、貸借対照表及び損益計算書は、会計の檢査院の檢査を受け、その承認を受けなければならない。
貿易公團は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、命令の定めるところにより、剩余金を國庫に納入しなければならない。
貿易公團は、帳簿、書類その他一切の記録を整然且つ明確に記載し、会計檢査院、経済安定本部及び主務官廳の檢査を受けることができるように整備しなければならない。
会計檢査院は、常に適確にその檢査を行はなければならない。
第五章 監督及び助成
第二十一條 経済安定本部総務長官は、輸出入に関する基本的な政策及び計画に関して、貿易公團を指導監督する。
経済安定本部総務長官は、輸出入に関する基本的な政策及び計画を確保するため必要があると認めるときには、貿易公團に対して、主務大臣を通じて、監貿上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、輸出入計画及び輸出入手続の遂行を確保するため必要があると認めるときには、貿易公團に対して、経済安定本部総務長官の定める基本的な政策及び計画に基いて、監督上必要な命令をなすことができる。
経済安定本部総務長官は、貿易公團に対して主務大臣を通じて報告をさせ、又は当該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
主務大臣は、貿易公團に対して報告をさせ、又は当該官吏に必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前二項の規定により、当該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第二十二條 貿易公團は、その役員及び職員に対し、特別の報酬を與える必要があるときには、その報酬規程を定め、経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第二十三條 主務大臣は、貿易公團の役員が、法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反したときには、これを解任することができる。
経済安定本部総務長官は、貿易公團の役員が貿易公團の目的及び業務に関して、その任に適せず、又はその職務を適切に遂行していないと認めるときには、これを解任することができる。
第二十四條 主務大臣は、貿易公團の業務を行うため必要があると認めるときには、命令で定める統制機能を営む貿易組合その他の輸出の取扱に関する團体の清算人に対し、その所有に属する施設の全部又は一部を貿易公團に貸與することを命ずることができる。
主務大臣は、貿易公團の業務を行うため必要があると認めるときには、貿易公團に必要な施設の所有者若しくは占有者又は大藏大臣を含む管理に対して、当該施設を貿易公團に貸與することを命じ、又は求めることができる。
前二項の規定による施設の使用料は、経済安定本部総務長官が、そのあらかじめ定める方針に基いて、適正に定めるものとする。
前項の規定によつて使用料が定められたときには、貿易公團は、第八條第一項に定められた存続期間を超えない範囲において、経済安定本部総務長官の承認を受けて、第一項又は第二項の施設を賃借するものとする。
主務大臣は、貿易公團の業務を行うため必要があると認めるときには、第一項の團体の清算人に対して、その所有し、又は占有してゐる資材の全部又は一部を、貿易公團に讓り渡し、又は引き渡すことを命ずることができる。
前項の命令があつたときには、貿易公團は、前項の資材の讓渡又は引渡を受けた日から一箇月以内に、関係者に対して正当な補償を支拂わなければならない。
主務大臣は、経済安定本部総務長官の承認を受けて前項の補償に関し必要な規定を定めた後でなければ、第五項の命令をなすことができない。
主務大臣は、貿易公團が賃借した施設を管理し、又は必要があると認めるときには、保險を附する等の措置を貿易公團にとらしめることに関し、責任あるものとする。
主務大臣は、前各項の実施について貿易公團又は関係各廳大臣を含む関係者に対して、迅速な措置を命じ、又は求めることができる。
第六章 罰則
第二十五條 前條第一項第二項又は第五項の規定による命令に違反した者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第二十六條 左の場合においては、その違反行爲をなした貿易公團の役員又は職員は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十六條に規定しない業務を行つた場合
二 第二十一條第二項又は第三項に規定する経済安定本部総務長官又は主務大臣の監督上の命令に違反した場合
第二十七條 この法律の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者はこれを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に處する。
第二十八條 前三條の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務に関して第二十五條の違反行爲をなしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して同條の罰金刑を科する。
第二十九條 第九條の規定に違反して、貿易公團又はこれに類似する名称を用いた者は、これを一万円以下の過料に処する。
附 則
第三十條 この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
第三十一條 主務大臣は第二十四條第一項の團体の財産又は債務を貿易公團に引き継がせることができる。
主務大臣は、前項の措置をなすときには、大藏大臣にはからなければならない。
第三十二條 貿易公團が成立したときには、第二十四條第一項の團体は解放する。
前項の規定による團体の清算は昭和二十三年四月一日までに結了せしめるものとする。
第三十三條 政府は、設立委員を命じ、貿易公團の設立に関する事務を処理させる。
第三十四條 設立委員は、定款を作成して、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。
前項の認可があつたときには、設立委員は、遅滯なく基本金の拂込を請求しなければならない。
第三十五條 基本金の拂込があつたときには、設立委員は、遅滯なくその事務を貿易公團の理事長に引き継がなければならない。
理事長が前項の事務の引継を受けたときには、理事長、副理事長、理事及び監事の全員は遅滯なく設立の登記をしなければならない。
貿易公團は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三十六條 この法律は、臨時物資需給調整法の失効の時に、その効力を失ふ。但し、その時までになした行爲に対する罰則の適用及び貿易公團の清算に関しては、この法律は、そのとき以後もなおその効力を有する。
第三十七條 貿易貸金特別會計法の一部を次のように改正する。
第二條第一項中「昭和二十年法律第五十三號第二條の規定による貿易資金」の下に「及び一般會計からの繰入金九億五千萬圓」を加える。
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價格調整公團法案
價格調整公團法
第一章 総則
第一條 價格調整公團は、経済安定本部総務長官の定める基本的な政策及び計画に從い、物價廳長官の定める價格等(以下指定價格等という。)の適正な調整に関する業務を行うことを目的とする。
前項の價格等とは、價格、運送賃その他給付の対價である財産的給付をいう。
價格調整公團は、法人とする。
第二條 價格調整公團は、主たる事務所を、東京都に置く。
價格調整公團は、物價廳長官の認可を受けて、價格等の調整に関する業務を行うため必要の地に從たる事務所を設けることができる。
第三條 價格調整公團の基本金は、三千万円とする。
前項の基本金は、政府が全額これを出資しなければならない。
價格調整公團の運営資金は、必要があるときには、復興金融金庫から借り入れるものとする。
第四條 價格調整公團は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 基本金額に関する事項
五 役員に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告の方法
定款は、物價廳長官及び経済安定本部総務長官の認可を受けて、これを変更することができる。
第五條 價格調整公團は、勅令の定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第六條 價格調整公團には、所得税及び法人税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、價格調整公團の事業に対しては、地方税を課することはできない。但し、特別の事情に基いて内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合にはこの限りでない。
第七條 價格調整公團は、経済安定本部総務長官の命令によつて解散する。
経済安定本部総務長官は、前項の命令をなす場合には、物價廳長官にはからなければならない。この場合において命令の最終責任は経済安定本部総務長官にあるものとする。
前項に定めるものの外、價格調整公團の解散に関して必要な事項は、勅令でこれを定める。
第八條 價格調整公團でない者は、價格調整公團又はこれに類似する名称を用いることができない。
第九條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、價格調整公團にこれを準用する。
第二章 役員及び職員
第十條 價格調整公團に、役員として、理事長副理事長各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
理事長は、價格調整公團を代表し、第十五條の規定に基き、その業務を総理する。
副理事長は、定款の定めるところにより、價格調整公團を代表し、理事長を補佐して價格調整公團の業務を掌理し、理事長に事故のあるときにはその職務を代理し、理事長が欠員のときにはその職務を行う。
理事は、定款の定めるところにより、價格調整公團を代表し、理事長及び副理事長を補佐して價格調整公團の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故のあるときにはその職務を代理し、理事長及び副理事長が欠員のときにはその職務を行う。
監事は、價格調整公團の業務を監査する。
第十一條 理事長、副理事長、理事及び監事は、物價廳長官がこれを任命する。
第十二條 理事長、副理事長及び理事は、定款の定めるところにより、價格調整公團の職員のうちから、主たる事務所又は從たる事務所の業務に関し、一切の裁判上又は裁判外の行爲をする権限を有する代理人を選任することができる。
第十三條 價格調整公團の役員及び職員は、指定價格等に対する給付の目的である物資の生産、精製、加工、保管、賣買若しくは輸送を業とする会社の株式を所有し、又はこれらの会社その他の企業の業務に從事し、若しくはその営業につき一切の利害関係を有してはならない。
第十四條 價格調整公團の役員及び職員は、官吏その他の政府職員とする。
理事長たる者は、物價廳次長と同級又はこれと同格とし、その他の役員たる者は、一級又はこれと同格とし、職員たる者は、一級、二級若しくは三級又はこれらと同格とし、それらの定員は、物價廳長官がこれを定める。
價格調整公團の役員及び職員は、官吏に関する一般法令に從うものとする。但し、主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて、給料、服務その他の必要な事項に関して特例を定めたときには、これによるものとする。
第三章 業務
第十五條 價格調整公團は、経済安定本部総務長官の定める基本的な政策及び計画に基いて、物價廳長官のなす指導及び監督に從い、左の業務を行う。
一 経済安定本部総務長官の定める方策に基く價格等の調整のための資金の受入又は交付
二 経済安定本部総務長官の定める方策に基く價格等の調整のための買取及び賣戻
三 前各号の業務に附帶する業務
第十六條 價格調整公團は、業務開始の際、業務の方法を定めて、経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、物價廳長官及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第十七條 價格調整公團は、毎事業年度の前期及び後期の初において六箇月毎の事業計画を作成し、これを経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、物價廳長官及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第四章 会計
第十八條 價格調整公團の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとし、これを前期及び後期に分ける。
第十九條 價格調整公團は、前條の各期毎に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを経済安定本部総務長官に提出し、その承認を受けなければならない。
経済安定本部総務長官は、前項の承認を行うときには、物價廳長官及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において承認の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
價格調整公團は、第一項の規定による経済安定本部総務長官の承認を受けたときには、その財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公告し、且つこれを定款とともに、各事務所に備えて置かなければならない。
前項の財産目録、貸借対照表及び損益計算書は、会計檢査院の檢査を受け、その承認を受けなければならない。
價格調整公團は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、命令の定めるところにより、剩余金を國庫に納付しなければならない。
價格調整公團は、帳簿、書類その他一切の記録を整然且つ明確に記載し、会計檢査院、経済安定本部及び主務官廳の檢査を受けることができるように整備しなければならない。
會計檢査院は、常に適確に前項の檢査を行わなければならない。
第五章 監督及び助成
第二十條 経済安定本部総務長官は、その定める基本的な政策及び計画に関して、價格調整公團を指導監督する。
経済安定本部総務長官は、價格等の適正な調整を図るため必要があると認めるときには、價格調整公團に対し、監督上必要な命令をなすことができる。
物價廳長官は、價格等の適正な調整を図るため必要があると認めるときには、價格調整公團に対して、経済安定本部総務長官の定める基本的な政策及び計画に基いて、監督上必要な命令をなすことができる。
物價廳長官又は経済安定本部総務長官は、必要があると認めるときには、價格調整公團に対して報告をさせ、又は当該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
價格調整公團は、必要があると認めるときには、指定價格等に対する給付をなすを業とする者(以下單に業者という。)、業者の所有する物資の占有者又は業者から指定價格等に対する給付を受ける者に対し、價格等の調整に関し、報告を徴し、書類の提出を求め、若しくは帳簿の作成を命じ、又は命令の定めるところにより、当該官吏に必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前二項の規定により、当該官吏に臨檢檢査をさせる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携行させなければならない。
第二十一條 價格調整公團は、その役員及び職員に対して、特別の報酬を與える必要があるときには、その報酬規程を定め、経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときには、物價廳長官及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は経済安定本部総務長官にあるものとする。
第二十二條 物價廳長官は、價格調整公團の役員が法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反したときには、これを解任することができる。
経済安定本部総務長官は、價格調整公團の役員が價格調整公團の目的及び業務に関してその任に適せず、又はその職務を適切に遂行していないと認めるときには、これを解任することができる。
第二十三條 物價廳長官は、必要があると認めるときには、その定めるところにより、業者に対し、当該給付の目的である物資を價格調整公團に賣り渡すことを命ずることができる。
價格調整公團は、前項の命令によつて、價格調整公團に賣り渡された物資を、物價廳長官が定める額で、その物資の賣主に賣り戻さなければならない。
第二十四條 物價廳長官は、必要があると認めるときには、業者から指定價格等に対する給付を受ける者に対し、その價格等を物價廳長官の定めるところにより、價格調整公團に支拂うことを命ずることができる。
價格調整公團は、前項の場合において價格等の受領につき、業者から委任があつたものとする。
第六章 罰則
第二十五條 第二十三條第一項又は前條第一項の規定による命令に違反した者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第二十六條 左の場合においては、その違反行爲をなした價格調整公團の役員又は職員は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十五條に規定しない業務を行つた場合
二 第二十條第二項及び第三項の規定による経済安定本部総務長官又は物價廳長官の監督上の命令に違反した場合
第二十七條 この法律の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は書類の提出をなさず、若しくは虚僞の記載をした書類を提出し、又は帳簿の作成を怠り、若しくは帳簿に虚僞の記載をなし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十八條 前三條の罪を犯した者には、情状は因り、懲役及び罰金を併科することができる。
法人(價格調整公團を除く。以下同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関して第二十五條又は前條の違反行爲をなしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金刑を科する。
第二十九條 第八條の規定に違反して、價格調整公團又はこれに類似する名称を用いた者は、これを一万円以下の過料に処する。
附 則
第三十條 この法律は、公布の日から、これを施行する。
第三十一條 價格調整公團が成立したときには、昭和二十一年十二月十一日以後、指定價格等に対する給付をなす業に從事した統制機関は、解散するものとする。
前項の規定による統制機関の清算は、昭和二十三年四月一日までに結了せしめるものとする。
第三十二條 政府は、設立委員を命じて、價格調整公團の設立に関する事務を処理させる。
第三十三條 設立委員は、定款を作成して、物價廳長官及び経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。
前項の認可があつたときには、設立委員は、遅滯なく基本金の拂込を請求しなければならない。
第三十四條 基本金の拂込があつたときには、設立委員は、遅滯なくその事務を價格調整公團の理事長に引き継がなければならない。
理事長が前項の事務の引継を受けたときには、理事長、副理事長、理事及び監事の全員は、遅滯なく登記をしなければならない。
價格調整公團は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三十五條 價格調整公團でない者で、この法律施行の際現に價格調整公團又はこれに類似する名称を用いているものについては、この法律施行後六箇月を限り、第八條の規定を適用しない。
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〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=31
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032・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) ただいま議題となりました四つの公團法案について、逐次御説明申し上げます。
まず配炭公團及び石油配給公團法の提案理由竝びにその要旨を御説明いたします。
石炭及びコクースにつきましては、昨秋の議會におきまして、石炭及びコークス配給統制法の一部を改正する法律が協贊せられました際、衆議院の附帶決議としまして、現在全國の一手買取、元賣の機關である日本石炭株式會社を解散し、速やかに民主的な新配給機構に移行することを可とする旨の要望がございました。政府はこれに鑑みまして、直ちに石炭及びコークスの各配給機構改善協議會を開催いたしました結果、兩協議會より政府に對して、それぞれ答申が提出されました次第でございます。
また石油類につきましては、昨年秋從來石油類の配給統制を實施してきた石油配給會社解散の指令が、連合國總司令部より發せられまして、その後石油類についていかなる機關によつて配給統制を實施するかについて、關係各方面の意見を徴し、種々檢討いたして今日に至つた次第であります。
以上のような經緯を經ましたが、その後の情勢の變化もありまして、愼重研究の結果、政府といたしましては次のような結論に到達いたした次第であります。すなわち今後の經濟施策の根本は、近く提案の豫定されて居りまする私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案に盛られました公正な自由競爭にあり、從つて關係の事業者を主體とする民間の統制團體による統制は、この際清算することが適當であると考えるのであります。しかしながら現在のような窮乏の底にある經濟のもとにおいては、ある程度の統制は絶對に避くべからざるものであります。殊に石炭、コークス、亞炭のごとく、各産業活動の基礎をなす物資であつて、しかもその需給が極度に逼迫しており、さしあたり強力な統制を必要とするものについては、政府またはこれに代るべき政府機關とも稱すべきものによつて、政府みずからの責任において、嚴重にこれを行う必要があると認めたのであります。この點は石油類についても同樣でありまして、殊に石油類は、その供給源は五分の四を連合國に仰いでいる有樣でありますので、連合國に對して輸入を懇請する前提條件としても、配給に關して政府みずから責任を負う體制を整える必要があるのであります。かかる觀點から本問題を檢討いたしました結果、成案を得ましたのが、ここに提出されました兩法案でございます。以下、兩法案の概要について申し述べます。
第一に、配炭公團及び石油配給公團は、石炭または石油類の一手買取及び賣渡をなす公法人であります。公團は官廳自體ではありませんが、從來の營團と官廳との中間にくらいする廣義の政府機關でありまして、その基本金は、全額政府より出資し、運営資金は復興金融金庫から借り入れることといたしております。公團の役員及び職員は、すべて政府職員とすることとしております。しかしてこれらの役職員は、原則として廣く民間より人材を收容し、いわゆる官僚統制の弊に陷らぬように留意してまいる所存でございます。公團の監督につきましては、經濟安定本部總務長官竝びに主務大臣がこれを行うこととなつておりまして、會計につきましては、特に會計檢査院が檢査に當ることとしております。
なお配給公團の制度は、この經濟危機を乘り切るための臨時の措置でありますので、經濟安定本部令及び臨時物資需給調整法と歩調をそろえ、明年四月一日か、經濟安定本部の廢止のときのいずれか早いときに、この二つの公團法はその效力を失うことといたしておるのであります。
以上申し述べましたごとく、配給公團の組織及び運用に關しましては、政府の責任で必要な統制を強力に行う一面、いわゆる官僚統制のごとき弊害は極力これを抑止し、産業復興と國民經濟生活の安定のために、これら物資の配給に萬全を期せんとするものであります。
次に、産業復興公團法案について申し上げます。政府におきましては、さきに第九十臨時議會の御協贊を得ました産業復興營團法に基き産業復興營團を設立いたしまして、目下著々その事業を推進中でありますが、今般物資配給等の分野におきまする配給公團の設立に伴いまして、從來の營團組織を公團組織に改組いたす必要を生じましたるため、ここに新たに産業復興公團法を制定いたしまして、これにより産業復興公團を設立して、産業復興營團の一切の事業をこれに引繼がしめることといたした次第であります。
産業復興公團法は、その内容におきまして、從來の産業復興營團法とその實體を一にするものでありますが、營團を公團に改めましたる結果、役職員は官吏その他の政府職員をもつてこれにあてることといたしました。また公團の業務運營に關する監督規定も、これを一層嚴にいたしまして、その國家機關としての性格を明確ならしめまするとともに、經濟安定本部の定めまする基本的な産業復興政策の實施機關たる機能を、規定上明瞭にいたしたのであります。また從來産業復興營團におきましては、産業設備及び資材の建設、貸付及び賣買に關する業務のみを實施いたすことと相なつておりましたが、産業復興に關する對策を強力に實施いたしまするためには、その業務の範圍も、いま一段の幅をもたすことが適當であると思料いたしましたる結果、今囘の改組の機を利用いたしまして、右の業務のほか、新たに經濟安定本部總務長官の隨時指定する事業をも行ふことができることといたしたのであります。
以上の諸點の改正を通じまして、新法による産業復興公團は、産業復興營團におけるよりも一層強力となり、國家機關的性格を明瞭にいたすことと相なつたのでありまして、産業の復興促進に關しまする所期の機能を、さらに強く發揮せしめることができると考えておる次第であります。
次に貿易公團法について申し上げます。わが國の輸出入貿易は、連合軍總司令部の好意ある取扱によりまして、終戰以來漸次軌道に乘り、相當の進展をみております。御承知の通りこれら輸出入貿易は、總司令部の嚴重なる管理のもとに運行されておる管理貿易でありまして、またわが國としては、唯一の貿易專管機關たる貿易廳の責任において行われる一種の國營貿易であります。しかし輸出入に關する一切の業務を貿易廳で行うことは、豫算や人員の點からも無理があり、また業務の能率的な遂行に不適當な點もありますので、貿易廳のもとに、便宜輸出入の品目別に、七十有餘の民間團體たる輸出入取扱機關を指定して、その實務運營に當らせてまいつたのでありますが、何分にも當初の急務に應ずるため取急ぎ設けた團體でありますので、その形態も區々で、運營上不便があり、早晩整備の必要に迫られていたのでありますが、たまたまこれらの機關は、私的獨占禁止の方針に觸れる恐れがあり、これらの輸出入取扱機關による業務の遂行は、不適當な事態になつたのであります。從つて政府といたしましては、私的獨占禁止の趣旨に即應し、かつ能率的なる業務運營、民間業界の創意と協力を十分に生かすべき方針のもとに、各方面の意見を徴し、愼重に檢討の結果、貿易實務の運營について公團制度をとることといたしまして、ここに貿易公團法を提出いたした次第であります。
この法律案の構想は、他の一般公團と同樣でありますが、貿易關係事務は複雜多岐にわたつておりますので、運營の圓滑を期するため、鑛工品貿易公團、纖維貿易公團、食糧貿易公團及び原材料貿易公團の四つの種類を設けたこと、公團の運營資金は、貿易資金特別會計の貿易資金から借り得ること、業務の内容その他若干の點において、貿易業務の特殊性に基きまして、他の公團と異なる特異な點が含まれて居るのであります。
以上、四案を提出いたした次第でありますが、何とぞ御審議の上、速やかに御協贊あらんことを希望いたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=32
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033・井上知治
○副議長(井上知治君) 物價廳次長工藤昭四郎君。
〔政府委員工藤昭四郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=33
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034・工藤昭四郎
○政府委員(工藤昭四郎君) ただいま上程されました價格調整公團法案につきまして、その提案理由を御説明いたします。
價格調整の業務は、從來配給統制會社等の民間統制團體によつて實施せられてきたのでありますが、今囘企業獨占の禁止及び臨時物資需給調整法に基く物資の配給方式の改變に基き、これら統制機關は、一手買取販賣及び物資の割當業務等の統制機能を喪失し、解散が豫定せられるに至りましたので、從來これらの統制機關が實施してまいりました價格調整のうち、新たに配給公團が設立せられ、その取扱います物資については、それぞれの公團で價格調整を實施することになりますが、それ以外の物資について、なお價格調整の繼續を必要とするものにつきまして、價格調整公團を設立し、これを實施せんとするものであります。
價格調整公團は、經濟安定本部總務長官の定める基本的の政策及び計畫に基いて、物價廳長官のなす指導監督に從い、次の業務を行うものであります。すなわち、その一として、價格調整のための資金の受入または交付、その二として、價格調整のための買取り及び賣もどし、その三として、前述の業務に附帶する業務であります。なお價格調整公團の發足にあたりましては、できる限り民間の經驗者を公團の役職員に任命し、業務運營の圓滑適正を期したいと存じます。
以上をもちまして價格調整公團法案の提案理由の説明を終ります。何とぞ御審議の上、速やかに御協贊あらんことを切望致します。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=34
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035・井上知治
○副議長(井上知治君) 質疑の通告があります。順次これを許します。細田綱吉君。
〔細田綱吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=35
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036・細田綱吉
○細田綱吉君 ただいま提案されました石油配給公團その他の公團、特に物資配給を主としておりまする石炭、石油、産業復興等の公團について、共通した點を簡單に御質問申し上げたいと思つております。
生産資材の不足のもとにおきまして、生産を確保増加し、生産の復興あるいは生活の確保に、あるいはまた産業の復興に、輸出入の増進に寄與せんとしまするならば、そこには必ず高度な計畫性を必要といたします。物が豐富にあり餘るときならいざしらず、物が不足していけばいくほど、そこには高度な計畫性が必然的に必要になつてまいります。巷間ややもしますると、終戰と同時に自由經濟に返すというようなことを強調する向きもありまするけれども、物と需要のバランスの極端に失われておりまする現在、自由主義經濟が許さるべくもあらざることは、先ほどの商工大臣の御説明にもありました。また私が今さらこの點を呶々申し上げる必要はないと考えております。
しかして計畫經濟は、最も民主的な構想の上に立つてのみ可能でありまして、もし民主的な立場を逸脱するごときことがありまするならば、そこには似て非なるいわゆる官僚統制か、あるいはまた大資本に統制されました獨占資本の形に陷つていくことは、過去の經驗が既にわれわれに十二分に教えておるところであります。政府は今囘數囘の公團法を提案されましたが、はたして本公團法の實施によつて、眞にその機能を發揮できるかどうか。左の數點について御質問申し上げたいと思います。
まず第一に、本公團に盛られております精神と、從來の統制會社その他の統制機關に盛られていた指導精神との間に、どれだけの違いがあるか。なるほど本公團は、從來の會社制度より官廳に變つております。會社員より官吏に、その取扱う人が違つております。從つて表面的に見まするならば、その仕事の結果については、官吏としての責任を負い、さらに官吏を統轄する大臣が、その責任を負うということになりましよう。しかしながら從來といえども、統制機關はいずれも政府の責任において設立されておる。しかも主務大臣がいずれもこれを指導監督するという立場に置かれておりまするので、從つてもし當該機關がその運用を誤り、あるいは非違を犯すようなことがありまするならば、もちろんその社員も責任を負いましようが、またこれを指導監督する立場にある主務大臣が責任を負うことも、また當然であつたのであります。
また特定物資の取扱いについて、國家的見地からこれが配給利用の方法が講ぜられなくてはならぬと言いまするならば、これまた官廳でなくても、從來の統制機關はそれと同樣の目的をもつて設立され、その方向に向つて機能が發揮されておつたはずであります。こうした點を種々檢討してみまするならば、今度の配給公團法に盛られましたいわゆる公團と、從來の統制會社との違いは、表面的に會社を官廳に塗りかえ、あるいは會社員を官吏に置きかえた以外には、一向に變りばえのする點を見出すことができません。(拍手)要は、これら配給機構の運營をいかに民主化するか否かにかかつていると考えられますが、本法案には、少しもそれらの點がはつきりしておりませんのみならず、どこに特色があるかということを、從來の配給統制機關に比べて見出すことの困難を感ずるのであります。これについて政府の御所見をお伺い申し上げたいと思います。
第二に、本公團法の實施によつて、ますます物資の配給が官僚統制の弊に陷つていくのではないかという點をお伺い申し上げます。從來の統制機關は、いずれも官僚的であつたがために、きわめて非能率的であり、また官僚的な机上プランとして實際に適合しなかつたことは、もう既に私が申し上げるまでもありません。一體日本の官僚は、從來は天皇の官吏として、長い間國民の上に特別な權利をもつて臨んでおりましたので、國民に對してはきわめて優越感がはなはだしかつた。從つて國民に奉仕するという觀念も、また稀薄であつた。ですから、經濟のごとく、國民の中にはいつて、國民とともに運營されなければならぬ場合には、それがきわめて非能率的であり、かえつて經濟の運營をすら妨げたという例が一再に止まつていなかつたことも、從來の統制會社がほとんど、落第と申しましようか、國民の非難を買つておつたことから見ましても、明瞭なことであると考えるのであります。(拍手)
しかるに今度は、さらにその機關に携わる者全部が官吏になつて、公團がいわゆる役所になるのであります。從來の官吏の弊が、憲法の改正によつて國民の公僕になつたのだと、一概にただ言葉の上で言われるかもしれませんが、實際長い間それらの特權の上に生活してまいりました官僚が、あるいはまた官僚と伍して統制會社の業務に携わつてきた諸君が、はたして國民の公僕として、特にこうした經濟の面に携わつて、いわゆる官僚統制の弊をためていくことができるかどうか。これによつて能率的に時局にふさわしい經濟政策を遂行していくことができるかどうか。このまま遂行しまするならば、もつと役所的な、もつと獨善的な、もつと非能率的な公團に終るのではないか。政府は、會社よりさらに官廳に發展せしめたと申しましようか、看板を塗りかえたこれらの統制機關のいわゆる官僚化を、どういうふうにして防止されるお考えであるか。この點をお伺い申し上げたいのであります。
第三點に、本公團の運營は、ひとり官吏のみによつて行われるのであるか。または他に特別の民主的機能をもつて、それとマツチし、組み合わして運營されんとするのか。またもし他に民主的な機能をもつて本公團を運營されようとするならば、いかなる構想と組織を政府において御用意があるかをお伺い申し上げたいのであります。申すまでもなく、官僚の手によつてのみこれらの公團の取扱う物資が配給されるとするならば、それはきわめて危險であるのみならず、むしろ不可能に近いと考えます。實情に即して最も效率的に、また最も速やかにこれを取扱おうとしまするならば、どうしても實際の企業に携わる者、あるいは生産者の代表、消費者の代表、特に勞働組合の代表等の參加した強力な委員會の制度のようなものが運營され、その結果を檢査し、あるいはまた運營を企畫決定するという方向に向わなくてはならぬ。營團の官僚は、これらの民主的な委員會の決定をまつて、その指揮のもとに仕事をするという方向が望ましいのではないかと考えまするが、先ほどお尋ね申しましたように、そうした民主的な構想と組織を政府はどういうふうに用意されているか、お考えになつているかという點を、お伺い申し上げたいと思います。
第四に、本公團は、當該物資の配給過程における中間的な取扱機關としておくのか、あるいはまた末端配給までの機能を擔當するものであるかという點をお伺い申し上げたいと思います。本公團が、中間的な取扱機關として、ただ單に政府の發行する切符の取次をするにしか過ぎないとしまするならば、また直接消費者への配給は、本公團の關知するところでないとしまするならば、この公團の意義はきわめて狭いものであると考えます。かりに需要者への直接配給の衝に、もし本公團が當るとしまするならば、この公團に盛られた條文の程度では、きわめて不明瞭であるのみならず、また用意も缺けているのではないかと考えます。中間的な取扱機關としておくのか、あるいは末端配給まで――消費者への配給まで責任を負わせようとするのか。その點をお伺いしたい。
第五に、從來の統制機關がいずれも解散されました。しかし中には、率直に申しますると、石炭の面においては石炭鑛業會、あるいは鐵の面その他の面におきましても、そうしたような統制會社が、統制という文字をとり、あるいは名前を變えまして、そのまま戰時の統制機關が覆面して存在し、しかもかなり政府の御用に立つているのが現状であります。本公團の實施に際して、こうした不明瞭な戰時機關の延長をそのまま見逃しておくのか。あるいは將來ともこれを從來のごとく利用しようとするのか。この際斷固としてそれらの戰時機關の延長を解散させる御意思があるのか。この點をお伺い申し上げたいと思います。
第六點に、わが國の經濟は、いわゆる三年危機とかあるいは何月危機とか申し、その他いろいろの表現によつて、刻々破局的な現象が傳えられております。その原因は、いずれも資材その他物資の不足にあることも説明の要がありません。われわれは、生産資材または生活上缺くることのできない物資を、萬難を排しても確保して、その最小限なりともこれに充てるということが必要であると考えます。しかしながら物資の不足は國民の要望にこたえることができないで、ややもすると不足がちで、たとえて申しますると、出版界においては、既に用紙の配給が昨年七月以來停止されているということを聞いております。その他こうした例は、私があえて用紙の例を申し上げるまでもなく、他にも幾多あるのであります。今にして國内にある物資を調査登録して、これを生活と生産の上に計畫し、これを利用更生することが必要であると考えるのであります。
政府は從來も、あるいは直接調査により、あるいは申告の制度によつて、若干はその物資の登録をはかられているのでありまするが、まだまだ萬全を盡し、全能力をあげておるとは考えられません。すでに一部に配給を停止されているという昨今、今朝の新聞を見ても、隱匿物資が各倉庫に眠つているというような現状を見まして、これらの物資を斷固として調査してこれを登録し、一部にすでに、缺くべからざる物資でありながら、配給が停止されているという面を緩和すると同時に、不急物資の生産、あるいはやみへ流れることを防止するお考えがないかどうか。この點をお伺い申し上げたいと思います。
本日御提案になつた五つの公團法中には、農林省所管の肥料、農機具、農業藥品等の、農業方面に向けられる物資の配給について提案されておりません。國民の食糧を確保するため、多くの工夫が農民への配給に向けられなければならぬと考えられます。特に考慮を要することは、農民に對する配給は末端に行けば行くほど、刻々と物が消えてなくなつてしまうということであります。從來の農村に對する配給機構がいかに不備であり、不十分であるかということを有力に物語つております。
しかも奇怪なことは、農民組合その他農村の民主團體の代表が、あるいは地方事務所へ、あるいは農業會へ、町村役場等へ配給物資の内容を聽きに參ると、ややもすると配給物資の内容を公表することを拒むがごとき事實が、所々に見受けられるのであります。こういうことでは、農民のたぎるような生産意欲がほとばしりでるとは考えられない。われわれは、明朗な、ガラス張りの、すなわち機構上不備の點を訂正して、農民へもわかるような配給機構、度々疑義を抱くことのないような配給機構を整備しなくてはならないと考えられますが、本日御提案になりました公團法中には、農林省所管の、農村方面に向けられる物資の配給機構が考えられておりませんが、農林省はこの點についてどういうようにお考えになり、あるいはどういうように御準備になつておるか、お伺い申し上げたいと思います。
なお最後に附け加えて、農林省は、農業方面に對する配給が、今申し上げましたように、末端にいけばいくほど消えてなくなるという事實に鑑みまして、末端配給を特にどういうふうに準備されているか。あるいはまた從來農業會等で擔當されておりました配給機構――公團法をもし準備提案されるとするならば、農業會はどういうふうな立場というか、地位に立つのか、そういう點もお伺い申し上げたいと思います。きわめて簡單でありますが、以上七點について政府の御所見をお伺いいたします。(拍手)
〔「農林大臣はどうした」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=36
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037・井上知治
○副議長(井上知治君) 農林大臣はただいま宮中に參内いたされておりますから、適當の機會に答辯を願うことにいたします。
〔「他の大臣は」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=37
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038・井上知治
○副議長(井上知治君) 大藏大臣は貴族院の豫算總會に出席中であります。
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=38
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039・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) ただいまお尋ねの件についてお答え申し上げます。まず統制會社と公團との内容の相違についてのお尋ねでありました。先ほども説明申し上げましたように、統制會社が私的企業獨占禁止の問題にひつかかるというような點は、さつき私が申し上げ、それについては全然御同感のようでありますが、實際上にうまくいくかどうかという點を特にお尋ね願つたと思うのであります。私はこの問題、それから官僚の統制ではないかという點に絡んで、お答え申し上げたいのでありますが、今物資の不足の際に、統制をやむを得ずやるならどうやつていくか。民間統制でありまする今までの統制會社は、獨占禁止の線にひつかかつて動けない。そうすればこれをやるものは、國がみずから責任をとつてやるよりほか方法がないではないか。その一番はつきりした形は、專賣をやるということだと思うのでありますが、專賣にもつてまいりますれば、豫算の點でありまするとか、それに使いまする從業員の扱い方というものが、この案よりももつとへんな方に――官僚的といえば官僚的の方へ行き、運營が非民主的になる傾向をもつと思うのであります。しからばどうしたらよいかというので考えられまするのは、今までの營團のような組織でありまするが、これとても獨占企業の線にはひつかかるでありましようし、そうすれば營團と專賣の中間を行くものを考えたらどうであろうかというのが、私どもの案として提出いたしましたこの公團であります。
實際上におきまして、今の統制會のやる仕事と、仕事の内容は大體同じでありまするが、しからばそれをやつていく上にどれだけの違いが起るか。役人なればかえつて惡いのではないか。その點私どもも一番心配する點であります。質問の方も、この議場におられまする方々のことごとくの御心配も、おそらくこれであろうと思うのでありますが、私どもはそれではどうやつて今のような形で、官吏として、國家の代行機關としてこれをやらなければならないか。これよりほか手がないのではないか。たとえば專賣がいけないとすれば、その專賣と違う形でやるとすれば、どうすればよいかということになると、さつきお尋ねのありました、これに民主的な心持をどうやつて織り込むかという問題になると思うのであります。
この問題につきましては、私どもは經濟安定本部の中にありまする審議會とか、あるいは顧問の會議というものを善用してこの問題にはいつていくことも考えられまするが、それよりは、またこの問題に特に石炭なら石炭、石油なら石油に關する委員會を設けまして、そうしてその委員會のアドヴアイスによつて、これを民主的に運用するというよりほかに、しかたがないのでないかというふうに考えておりまして、この委員會をぜひこしらえたいという方向に話を進めつつあるのであります。
それから内容がちよつとはつきりしませんでしたが、帳簿だけの配給會社があるが、これはどうするかというお尋ねでありましたが、これは當然解散させるつもりであります。
それから隱匿物資の問題、退藏物資の問題についてのお尋ねでありましたが、隱匿物資を出させて、そうしてそれを正常のルートに乘せるということは、規定もでき、その線にも沿つていろいろと動いてはおりまするが、まだ實際的に聲の割合に出てこないというのが實情のようであります。そのための係も經濟安定本部に設けまして、順次この調べができておるのであります。またこれが出てまいりますれば、當然正常のルートに乘せられると思います。また實際上に使います隱匿物資でなくとも、退藏されて、今はある人があまり多くもつておる。それだけもたなくても、この際はそれを出してもらつて、正常なルートにまわして、ひどく困つておるところを緩和しようという問題につきましても、先ごろからいろいろ規則も設けられ、また實際の調査にも當つておるのでありまして、その結果といたしまして、近く退藏物資ももち出されまして、そうして正常のルートに乘せられることになると思つております。以上お答えいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=39
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040・細田綱吉
○細田綱吉君 自席から發言の許可を願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=40
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041・井上知治
○副議長(井上知治君) お許しいたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=41
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042・細田綱吉
○細田綱吉君 末端配給その他私の質問に對して、まだ大臣の御答辯が缺けておるのであります。なお特に農林大臣の御答辯がありませんから、農林大臣の御答辯のあつた後に、なおまた商工大臣から私の質問の速記録でもごらん願つて、落ちておる點もわかりましようから、その御答辯を伺つた上で、さらに質問を申し上げることにして、農林大臣の御答辯があるまで留保いたします。
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=42
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043・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 末端配給までやるか、中間的の存在かというお問いに對するお答えを申し上げるのを忘れました。石炭も石油も、末端まで配給することにいたしております。石油は御承知のように、ただいま末端の方は指定販賣店の組織をもつてやつておりますが、その制度をやります。また縣の水産會やら農業會やらに直結して配給いたしておるものは、特に考へていきたいと思つております。石炭の方は私どもの今度の案によりますと、配炭公團が一本になりまして、今までの日本石炭あるいは地方石炭というものが一本になるのでありますが、この配炭公團によりまして、末端まで配給をいたしていくつもりでおります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=43
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044・井上知治
○副議長(井上知治君) 香川兼吉君。
〔香川兼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=44
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045・香川兼吉
○香川兼吉君 ただいま御上程に相なりました諸公團法案に對して、私は國民協同黨を代表いたしまして、若干の質疑を行いたいと思います。ただいま細田さんより、いろいろ公團に對しまする大綱、さらに重要なる問題を御質疑になりまして、私はその御質疑に對しましての問題を、重複を避けまして簡單にお尋ねを申し上げてみたいと存じます。
今囘公團法を御上程になりまして、ただいま商工大臣よりの御答辯もあつたのでありますが、今、日本の再建において憲法が示しまするがごとく、民主的であり、自由なるところの經濟を國民の前に展開し、そこには民生の安定と、すべての便宜主義を遂行いたさなければならぬことは、今さら申し上げるまでもないのであります。しかるにただいま上程になりましたる公團法そのものは、いわゆる官吏によりまする官僚政治の遂行である。權力政治というようなことは、多少語弊もあるかとは存じまするけれども、すべてが政府の力、官吏の力によつてこれを強行せんとしておる。
商工大臣もただいまお話があつたのでありまするけれども、要するにこの公團というものによつて、すべての惡弊を一掃し、獨占禁止法において、問題の是正と公正なる配給をいたし、國民の苦澁を一日も早く減殺しようという政府のお考えであるのでありますが、私は昔から申しておりまするように、はたしてさむらい商人に、今日國民の期待しておりまするごとき、眞の合理的なる配給というものが實現できるかどうか。この點を考えまして、非常なる杞憂を抱くものであります。官吏が行えば配給が完全に、公正に、迅速に行い得られるか。
私は今日の官吏の状況を見まするに、いろいろ組合にはいりまして、旗を立て――あの日々に報ぜられるところの新聞の報道はいかがでありましよう。あらゆる面において罪惡を構成しているのでありまして、國民指揮の的になつている。こういうような状況のもとに置かれておるのでありまして、私はこの公團法によつて眞の實績があがるならば何をか言いませんけれども、おそらく私は、長い間の體驗と經驗と熱と意氣とをもつて眞に國家再建のために努力をいたしておりまする經濟人においてすらも十分なし得ないものが、直ちにとつてもつてこれをなさんとするならば、必ず暗礁ができるのではないか。
暗礁とは何か。私は考えまするに、一般民衆に對して、必ずやそこにはいろいろの面において力の自由を奪われ、今まで簡單に配給をしてくれているものを、必ずやどこそこにとりに來いというような、無理な、しかも力で抑えるというようなことができはしないかどうか。もしかようなことがありとするならば、私は今日の時代において、いわゆる新憲法の精神に反するものだと、かように考える。この點において、公團法の實施後において、今日一般會社、あるいは今までの統制會社、あるいは營團がやつておつたような工合に、民主的な親切味をもつてやり得られるかどうか。私はこの點をまず劈頭にお尋ね申し上げておくものであります。
次に割當の問題であります。私は、公團は現下必要なしと認めている一人でありまするが、ただいまもお話がありましたが、どうも今までの官廳が指導してやつているものにおいて、計畫の割當というものははつきりしていない。割當をするけれども、空手形を出している。こういう事柄か、いわゆる公團法によつてお上の役人がしたときには、おそらくあり得ないものであろうと思うけれども、もしそういう事柄が派生したらどういう責任を政府はとるか、この點であります。
特に石炭における問題でありますが、非常に心配をいたしておることは、商工大臣も今日石炭増産の重責におつきになつているので、私が説明するまでもないのでありますが、石炭を掘るがために鐡鋼の必要がある。鐵鋼増産のために石炭を何トンやろうという配給の指令は出しておりますけれども、それか完全に製鋼所に渡つていない。それは何か。途中においていろいろ問題が派生しているのであります。こういう問題が、今日でも政府の責任をもつて處理しなければならないのでありますが、よろしく政府の責任において、將來十分なる監視をなすべきである。もし公團法の制定後においてお役人がやつた場合、かくのごとき状態が再來するというようなことがあるならば、私は政府の一大責任であつて、許されざるところの問題であると、かように考えるのであります。この點について、私は商工大臣の確信ある御答辯をお願い申し上げたいのであります。
さらに私はこの場合、特に國家の再建上において、石炭の増産というものが重大問題でありまするから、一應石炭の増産に對しまする公團法の點について、一、二お尋ねを申し上げておきたい。まず國家再建におきましては、石炭の三千萬トン増産は明年度にやらなければならぬ。しかるに今日非常に私が心配いたしておりますことは、政府が口には國民に對して増産問題、あるいは幾多の問題を唱えて御奬勵をなさつておりますけれども、おひざもとの最も重大な問題について、疎んじているきらいがある。
私は公團法を實施するにいたしましても、非常に危惧の念をもちますることは、行政機構の問題でありますが、さきに閣議決定において、石炭廳を内閣に移管するということであつたが、その後どういうようなことになるか。これらも未だ宙に迷つているような状況でありまして、この點を一日も早く御決定になつて、まず増産態勢を示すべきものである。さらにお役人についても、いろいろ委員會においてお尋ねを申し上げたいと思いますが、まだ各商工局におきまする人員の補充もできていない。こういう問題でありまして、生産がなくして何の配給公團であるか。配給であるか。生産態勢というものを、まずもつて第一にこれを整える必要がある。
さらにこれらの割當の問題につきましても、一は經濟安定本部の總務長官がこれを指令し、しかして生産の方面については石炭廳が云々をいたしているのであります。こういうふうな二元的をもつてやる場合において、これらの公團の運營がはたして完全にできるかどうか。この場合一元化する上において、政府が石炭省をつくつて、そこには二元を一元化して、この運營を強化し、完全なるところの増産状態を整えて、今日の經濟再建の根源となし、もつて産業復興の根源たらしめなければならない。かように考えるのでありますが、この點に對する御所見を承つておきたいのであります。
次に、配炭の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。先ほども細田議員よりお尋ねがあつたのでありますが、今までの配炭の問題は、ただいま御説明があつたように、二つの會社がこれを處理いたしている。ところで、これらに從事いたしておりまする幾萬の人々が、今日仕事を奪われまして、前途に非常なる暗さをもつている。しかも、これらの者は體驗をもつている人である。こういう者を、もし公團をつくつた場合において、官吏として採用せしめ、あるいは採用するについては、嘱託にするとか、この者をお使いになつて、今日重大問題の配炭處理をなさしめることが機宜に適したものではないかと、かように考えているのでありますが、今全國を通して、配炭會社なるものが非常なる檄を飛ばしまして、今日失業問題の起らんとするときに當つて、この公團法案に反對をいたしていることを、商工大臣は十分御認識を願いたいのであります。
かような、國家のために今日まで鬪い續けてまいつた――私はあえてこの業者を擁護するものではありません。擁護するものではないが、この業者をして配炭の一端を受持たしめて、いわゆる合理的配炭をし、圓滑なる配炭のもとに、一般需要者をしてその用を辯ぜしめること、これがすなわち今日の國策なりと、かように考えているわけであります。特にこの點について、商工大臣の御所見を承つておきたいのであります。
最後に私は、これは石油でも石炭でも共通の問題と思いますが、そのほかのものも物價の問題は共通と思いまするが、炭價に對する問題であります。要するに今日までの行き方を見ますと、價格の決定に對してはすこぶる獨善的であり、すこぶる不可解きわまるところの決定をみているわけであります。しかも、これが事後決定である。時を過して、時ならぬときに決定をいたして、その間非常に業者が困つている。特に石炭の問題につきまして、三百四十六圓というような額の決定に對して、今日赤字を出しまして、各生産業者は悲鳴をあげているのであります。
特に私は先般常磐地帶に參りまして、非常なる生産業者の聲を聞いてまいつたのでありますが、一生懸命に働く者はばかを見ている。こういう炭價問題を云々するというようなことにつきましては、私は今後におきますところの公團法の運營において十分檢討して、正直者がばかを見るようなことがあつてはいけません。しかして、まじめに働く者もあるいは公正に健鬪する者も、そこには公平なるところの問題によつて解決を見なければ、私は政府不信任の問題となり、本法案の將來にとつて暗影を投ずるものと、かように考えるものであります。
以上は非常に簡單にして要を盡せませんが、特に公團法の制定にあたりまして、政府においては十分御檢討を願い――聞きますところによると、地方農村に對しますところの政策につきましても、公團法の實施を上程せんとするような雰圍氣等も承つているのでありますが、われわれは農村の將來にとつて、かようなる公團法というものは現實の問題として必要なし。特に今日の國家緊急の場合において、圓滑なる配給あるいは需要者に對する便益をなすことについては、眞の合理的な體驗者をもつてやれ、さむらい商人によつては、完全なるところの結果を得られない、斯樣に斷言する者であります。以上をもちまして質問を終ります。
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=45
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046・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) お尋ねにお答えいたします。香川君も官僚統制に墮することを一番おそれて、最初に御質問になりました。先ほど細田君に答えましたと同樣、私自身もそういうことになつてはならぬ、この制度をとるのやむを得ぬことは、さつき御説明申した通りでございますが、それで一番心配するのは、官僚的にならぬようにということであります。これは今の統制會社にいたしましても、自分で力を持つようになりますと、名前が官吏とつかなくても、官僚的になりやすいのでありますのに、さらに官吏と名がつくのでありますから、その心配は非常にあるのであります。そういうことに陷つていかないように、あらゆる方法を講じたいと思うております。
それから第二に石炭の生産面についてのお話がありまして、現に鐵鋼のごとき配給も、生産減のために遲れて、山に送られてない、これで三千萬トンの増産等ができるかというお話でありました。一、二月の石炭の生産減のために、第四四半期の鐵鋼の配給がずつと遲れておつたのでありまするが、今月にはいりまして、全部引渡しができる豫定になつておりまして、第二、第三四半期の例に比べますれば、ずつとよくなつて――八割方ぐらいよくなつているはずだと思つております。なお資材を送らなければ増産の面に非常な打撃のあることは、御説の通りであります。今後とも十分注意をいたすつもりであります。
それから行政機構の問題についてお尋ねがありました。石炭廰の移管問題は、そのままの形になつておつて、はなはだ申しわけありません。いろいろな事情のために、今日なお決定をいたしておりませんが、近くその決定を見るはずになつております。
また安定本部と商工省の關係におきまして、片一方が企畫をし、片一方が實施をする、こんなものも一元にしたらどうだというお話でありまするが、これは安定本部の方で、全日本の産業その他の面につきましての總合計畫をするのでありますから、私はそれにおいての計畫が、決して商工省の石炭廳なら石炭廳の動きに牴觸し、または二元的になつているとは思わないのであります。また安定本部の方には、商工省關係のものには、商工省の者がそれぞれ出て連絡をとつておりまするから、十分うまくいくと存じております。なおこれも今後一層注意をいたさせます。
公團ができるとすれば、その從業員はぜひ配炭關係の人からとれというお話でありました。これは先ほども申し上げたかと思いまするが、原則的に今度の會社は民間人であります。その民間人というのは、特に經驗の深い石炭、石油關係に從事しておつた人たちを採用するのでありまして、その全部を採用するかどうかわかりませんが、この新しい組織の中にはいつて十分働ける人、立派な人、そうしてこの運營が少しでもよく動くようにという線に沿つて、採用をいたしたいと思つております。役人をこの方へ流しこむというような考えは毛頭ないのでありまして、御心配のありました、實務の人をできるだけ採用しろということは、十分そのつもりであります。
最後に炭價の問題がありました。まことに今の炭價は、經營者が勞務者の賃金を十分拂つていけない。先ごろの税金値上げの問題にいたしましても、生産者が何らのはき出すべきものももたなかつたというような問題を見ましても、今までのいろいろな計算から割出しました炭價の實際を見ましても、私は今の炭價を適當とは思つておりません。何としてでも、經營者も勞務者も、ほんとうに自分たちがやつて、やりがいがあるというような氣持になるだけの給與も受け、經營の採算も立つようにしなければ、赤字々々で追つかけて、その借金を政府がお世話して、大きな顏をしているというようなことではいかぬと思うております。何としてもこの問題は解決しなければならぬ問題でありまするが、いろいろ關係方面の問題もありまするし、意に任せないのでありまするが、一層努力をいたすつもりであります。お答えいたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=46
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047・井上知治
○副議長(井上知治君) これにて質疑は終了いたしました。各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=47
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048・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 日程第十ないし第十四の五案を一括して、議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=48
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049・井上知治
○副議長(井上知治君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=49
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050・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
日程第一ないし第九は、便宜上一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=50
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051・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。日程第一、國有財産法の一部を改正する法律案、日程第二、相続税法を改正する法律案、日程第三、作業会計法を改正する法律案、日程第四、燃料局特別会計法を改正する法律案、日程第五、造幣局特別会計法の一部を改正する法律案、日程第六、國有林野事業特別会計法案、日程第七、労働者災害補償保險特別会計法案、日程第八、公債金特別会計法外四法律の廢止等に関する法律案、日程第九、企業再建整備法等の一部を改正する法律案、右九案を一括して第一讀會を開きます。大藏政務次官北村徳太郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=51
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052・会議録情報5
――――◇―――――
第一 國有財産法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 相續税法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第三 作業会計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 燃料局特別会計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 國有林野事業特別会計法案(政府提出) 第一讀會
第七 労働者災害補償保險特別会計法案(政府提出) 第一讀會
第八 公債金特別会計法外四法律の廢止等に関する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 企業再建整備法等の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會
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國有財産法の一部を改正する法律案
國有財産法の一部を次のように改正する。
第一條中「勅令」を「政令」に改める。
第三條 衆議院議長、參議院議長、最高裁判所長官、會計檢査院長竝ニ内閣總理大臣及各省大臣(以下各省各廳ノ長ト稱ス)ハ其ノ所管ニ屬スル國有財産ノ維持保存及運用(以下管理ト稱ス)ヲ爲スヘシ
第三條ノ二 雜種財産ハ法律ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外大藏大臣之ヲ管理シ又ハ處分スルモノトス
第三條ノ三 公共用財産、公用財産又ハ營林財産ノ用途又ハ目的ヲ廢止シタル場合ニ於テハ法律ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外各省各廳ノ長大藏大臣ニ之ヲ引繼クヘシ
第三條ノ四 大藏大臣ハ各省各廳ノ長ノ行フ國有財産ノ管理及處分ニ付其ノ適正ヲ期スル爲之ヲ總轄スヘシ
大藏大臣必要アリト認ムルトキハ各省各廳ノ長ニ對シ其ノ管理ニ屬スル國有財産ニ關シ其ノ状況ニ關スル報告ヲ求メ實地監査ヲ行ヒ又ハ閣議ノ決定ヲ經テ用途ノ變更、用途若ハ目的ノ廢止又ハ管理換其ノ他必要ナル措置ヲ求ムルコトヲ得
第五條 雜種財産ハ法律ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ讓與スルコトヲ得ス
第七條第一項中「帝室用又ハ國」を「國又ハ」に改め、「若ハ私人」を削り、「勅令」を「政令」に改める。
第八條中「政府」を「當該財産ヲ所管シタル各省各廳ノ長」に改める。
第八條中「政府」を「當該財産ヲ所管シタル各省各廳ノ長」に改める。
第九條 國有財産ノ賣拂代金又ハ交換差金ハ財産引渡前之ヲ納付セシムヘシ但シ當該財産ノ讓渡ヲ受ケタル公共團體又ハ教育若ハ社會事業ヲ營ム團體ニ於テ代金又ハ差金ヲ一時ニ支拂フコト困難ナリト認ムルトキハ五年以内ノ延納ノ特約ヲ爲スコトヲ得
前項但書ノ規定ニ依リ延納特ヲ爲サムトスルトキハ、各省各廳ノ長ハ延納期間及擔保ニ關シテハ同項ニ規定スル團體ヲ監督スル主務大臣ノ意見ヲ聞キ大藏大臣ニ協議スヘシ
第一項但書ノ規定ニ依リ延納ノ特約ヲ爲シタル場合ニ於テ左ノ各號ノ一ニ該當スル事由アルトキハ各省各廳ノ長ハ直ニ其ノ特約ヲ解除スヘシ
一 當該財産ノ讓渡ヲ受ケタル者ノ爲ス管理力適當ナラスト認ムルトキ
二 延納ニ係ル代金又ハ差金ノ各年度ニ於ケル納付金額カ當該年度ノ當該財産ノ賃貸料及公租公課ノ合計額ニ滿タサルトキ
第十三條 削除
第十四條及び第十九條中「政府」を「當該財産ヲ所管スル各省各廳」に改める。
第十五條第一項第一号中「八十年」を「六十年」に改める。
第十六條 國有財産ハ之ヲ無償ニテ貸付スルコトヲ得ス但シ公共團體ニ於テ公共用、公用若ハ公益事業ニ供スル爲必要アル場合其ノ他法律ニ別段ノ定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ規定ニ依リ無償貸付ヲ爲サムトスルトキハ各省各廳ノ長ハ當該公共團體ヲ監督スル主務大臣ノ意見ヲ聞キ大藏大臣ト協議スヘシ
第一項但書ノ場合ニ於テ國有財産ノ無償貸付ヲ受ケタル者ノ爲ス當該財産ノ管理良好ナラスト認ムルトキハ當該財産ヲ所管スル各省各廳ノ長ハ直ニ其ノ契約ヲ解除スヘシ
内閣ハ政令ノ定ムル所ニ依リ無償貸付ヲ爲シタル國有財産ニ付毎會計年度末現在ニ於ケル状況ヲ翌年度開會ノ國會ノ常會ニ報告スヘシ
第十八條第一項中「帝室用又ハ國」を「國又ハ」に改め「若ハ私人」を削り、「政府」を「當該財産ヲ所管スル各省各廳ノ長」に改め、同條第二項中「損害ニ付」の下に「當該財産ヲ所管スル各省各廳ノ長ニ對シ其ノ」を加え同項の次に次の二項を加える
前項ノ規定ニ依リ賠償ノ請求アリタルトキハ當該財産ヲ所管スル各省各廳ノ長ハ之ヲ會計檢査院ノ審査ニ附スルコトヲ得
主務官廳ハ前項ノ審査ノ結果ニ關シ會計檢査院ノ通知ヲ受ケタルトキハ其ノ通知アリタル判定ニ基キ適當ナル措置ヲ採ルヘシ
第二十一條 削除
第二十二條 削除
第二十三條 削除
第二十五條中「政府」を「各省各廳」に改める。
第二十六條 各省各廳ノ長ハ毎會計年度間ニ於ケル國有財産増減報告書及毎會計年度末現在ニ於ケル國有財産現在額報告書ヲ調製シ翌年度八月三十一日迄ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
大藏大臣ハ前項ノ規定ニ依リ送付ヲ受ケタル國有財産増減報告書及國有財産現在額報告書ニ基キ國有財産増減總計算書及國有財産現在額總計算書ヲ調製スヘシ
内閣ハ前項ノ國有財産増減總計算書及國有財産現在額總計算書ヲ各省各廳ノ國有財産増減報告書及國有財産現在額報告書ト共ニ翌年度十一月三十日迄ニ之ヲ會計檢査院ニ送付シ其ノ檢査ヲ受クヘシ
第二十六條ノ二 内閣ハ前條第三項ニ依リ會計檢査院ノ檢査ヲ經タル國有財産増減總計算書及國有財産現在額總計算書ニ會計檢査院ノ檢査報告ノ外各省各廳ノ國有財産増減報告書及國有財産現在額報告書ヲ添付シ之ヲ翌年度開會ノ國會ノ常會ニ於テ國會ニ報告スルコトヲ例トス
第二十六條ノ三 各省各廳ノ長ハ毎會計年度毎ニ當該年度末及翌年度末ニ於ケル國有財産見込現在額報告書ヲ調製シ當該年度九月三十日迄ニ之ヲ大藏大臣ニ送付スヘシ
大藏大臣ハ前項ノ規定ニ依リ送付ヲ受ケタル各省各廳ノ國有財産見込現在額報告書ニ基キ當該年度末及翌年度末ニ於ケル國有財産見込現在額總計算書ヲ調製スヘシ
第二十九條ノ三 削除
第二十九條ノ四 第二十六條第一項ノ規定ニ依リ調製スヘキ國有財産増減報告書及國有財産現在額報告書ニハ昭和十九年度以後ノ朝鮮、臺灣、樺太、南洋、關東州及外國ニ係ル分ハ之ヲ省略スルコトヲ得第三十一條中「第二條」の下に「第三條第二項」を加える。
第三十三條 削除
附 則
この法律は、昭和二十二年五月三日から、これを施行する。但し第二十六條の規定は、昭和二十一年度分から、これを適用する。
農林大臣の所管する國有林野に属するもの、史蹟名勝天然記念物に指定されてゐるもの及び帝國鉄道会計、通信事業特別会計、簡易生命保險及び郵便年金特別会計の保險勘定に属するもの竝に雜種財産で現に大藏大臣と協定してあるものについては、第三條ノ三の規定にかかわらず当該財産を所管する各省各廳の長は、当分の間、これを、大藏大臣に引き継ぐことを必要としない。
前項の規定により大藏大臣に引き継ぐことを必要としない雜種財産については、当該財産を所管する各省各廳の長が、これを管理し、又は処分するものとする。
國有財産に関する法制を整備するため、内閣に國有財産法制調査会を設置する。
調査会は、会長一人委員六人以内で、これを組織する。
会長は、大藏大臣を以て、これに充て、委員は、会計檢査院その他関係各廳の一級の官吏及び学識経驗のある者の中から、内閣で、これを命ずる。
調査会は、國有財産に関する法律案を作成し、内閣は、これを次の國会の常会に提出するものとする。
前項に定めるものの外調査会に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
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相続税法を改正する法律案
相続税法目次
第一章 総則
第二章 課税價格、控除及び税率
第一節 相続税
第二節 贈與税
第三章 財産の評價
第四章 申告及び納付
第五章 課税價格の更正及び決定
第六章 審査、訴願及び訴訟
第七章 延納及び物納
第八章 雜則
第九章 罰則
相続税法
第一章 総則
第一條 相続が開始した場合において、被相続人がこの法律の施行地に住所を有するとき又は相続財産がこの法律の施行地にあるときは、左に掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続人
二 受遺者
三 相続開始前二年以内に被相続人から贈與を受けた者
財産を贈與した個人(以下贈與者という。)がこの法律の施行地に住所を有するとき又は贈與の目的たる財産(以下贈與財産という。)がこの法律の施行地にあるときは、贈與者は、この法律により、贈與税を納める義務がある。
第二條 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有するときは、相続財産の全部に対し、相続税を課する。
被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある相続財産に対し、相続税を課する。
第三條 贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有するときは、贈與財産の全部に対し、贈與税を課する。
贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある贈與財産に対し、贈與税を課する。
年の中途において、この法律の施行地に住所を有していた者がこの法律の施行地に住所を有しなくなつたとき又はこの法律の施行地に住所を有しなかつた者がこの法律の施行地に住所を有することとなつたときは、この法律の施行地に住所を有していた期間内に贈與した贈與財産の全部及びこの法律の施行地にある贈與財産で贈與者がこの法律の施行地に住所を有していなかつた期間内に贈與したものに対し、贈與税を課する。
第四條 左に掲げる財産は、これを相続財産とみなす。
一 相続開始前二年以内に被相続人が贈與した財産
二 相続開始の時においてまだ保險事故が発生していない生命保險契約で被相続人が保險料の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保險料の金額に相当するもの
三 被相続人の死亡に因り相続人その他の者の受け取る生命保險契約の保險金
四 退職手当、功労金及びこれらの性質を有する給與(以下退職手当金等という。)で被相続人に支給せらるべきであつたものが被相続人の死亡したためその相続人その他の者に支給された場合におけるその退職手当金等
五 相続開始の時においてまだ定期金給付事由の発生していない郵便年金その他の定期金の給付に関する契約で被相続人が掛金の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金の金額に相当するもの
六 定期金受取人の死亡に至るまで定期金の給付をなす外、一定期間内に定期金受取人が死亡したときは、その死亡後遺族その他の者に対して継続して定期金を給付する契約に基いて、定期金受取人たる被相続人の死亡後、相続人その他の者が取得する定期金に関する権利で被相続人が掛金の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該権利のうち被相続人が負担した掛金の金額に相当するもの
七 被相続人の死亡に因り相続人その他の者が取得する定期金に関する権利で、前二号に掲げるもの以外のもの
被相続人の被相続人が生命保險契約又は定期金の給付に関する契約について負担した保險料又は掛金は、それぞれこれを被相続人が負担した保險料又は掛金とみなして、前項第二号、第五号又は第六号の規定を適用する。
第五條 信託行爲があつた場合において、委託者以外の者が信託の利益の全部又は一部についての受益者であるときは、当該信託行爲があつた時において、委託者が信託の利益を受ける権利(受益者が信託の利益の一部を受ける場合においては、当該信託の利益を受ける権利のうち、その受ける利益に相当するもの)を受益者に贈與したものとみなす。
委託者が受益者である信託について、あらたに委託者以外の者が受益者となつた場合においては、委託者以外の者が受益者となつた時において、委託者が信託の利益を受ける権利をあらたに受益者となつた者に贈與したものとみなす。
第六條 相続開始前二年以内に信託行爲があつた信託について、委託者たる被相続人以外の者が信託の利益の全部又は一部についての受益者である場合又は相続開始前二年以内に委託者たる被相続人が受益者である信託について、あらたに委託者以外の者が受益者となつた場合において、当該信託が左の各号に掲げる信託の一に該当するときは、当該信託の利益を受ける権利については、当該信託の受託者を受益者とみなして、前條の規定を適用する。
一 相続開始の時において信託行爲により受益者として指定された者が受益の意思表示をしていないためまだ受益者が確定していない信託
二 相続開始の時において受益者がまだ存在していない信託
三 停止條件附で信託の利益を受ける権利を有せしめた信託で相続開始の時においてまだ條件が成就していないもの
四 相続開始の時において受益者が不特定である信託
前項の場合において、受託者が同項の規定の適用により納付すべき相続税は、命令の定めるところにより、当該信託財産の中から、これを納付しなければならない。
第七條 生命保險契約で保險金受取人以外の者が全部又は一部の保險料を負担したものについては、保險事故が発生した時において、保險料を負担した者が、命令の定めるところにより、保險金額のうちその負担した保險料の金額に相当するものを保險金受取人に贈與したものとみなす。
前項の規定の適用については、被相続人が負担した保險料は、これを相続人が負担した保險料とみなす。
第一項の規定は、第四條第一項第三号の規定により当該保險金を相続財産とみなす場合においては、これを適用しない。
第八條 郵便年金その他の定期金の給付に関する契約で定期金受取人以外の者が全部又は一部の掛金を負担したものについては、定期金給付の事由が発生した時において、掛金を負担した者が、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうちその負担した掛金の金額に相当するものを定期金受取人に贈與したものとみなす。
前項の規定は、郵便年金その他の定期金の給付に関する契約につき返還金その他これに準ずるものの支拂があつた場合について、これを準用する。
前條第二項の規定は、前二項の場合について、これを準用する。
第一項又は第二項の規定は、第四條第一項第六号又は第七号の規定により当該定期金給付の契約に関する権利を相続財産とみなす場合においては、その相続財産とみなされる権利については、これを適用しない。
第九條 生前処分で寄附行爲がなされたときは、財團法人設立の許可があつた時において、寄附行爲をなした者が、当該寄附財産を財團法人に贈與したものとみなす。
第十條 著しく低い價額の対價で財産の讓渡がなされたときは、その讓渡の時において、財産の讓渡人が、その対價の價額と讓渡の時における讓渡財産の時價との差額に相当する金額を当該財産の讓受人に贈與したものとみなす。
第十一條 対價を受けないで又は著しく低い價額の対價で債務の免除、引受又は第三者のためにする債務の弁済があつたときは、その免除、引受又は弁済があつた時において、免除、引受又は弁済をなした者が、免除、引受又は弁済に係る債務金額に相当する金額を債務者に贈與したものとみなす。但し、命令で定める場合においては、この限りでない。
第十二條 第五條、第七條乃至前條に規定する場合の外、対價を受けないで又は著しく低い價額の対價で、他人に利益を受けしめたときは、その利益を受けしめた者が、その利益を受けしめた時において、利益の價額に相当する金額を利益を受けた者に贈與したものとみなす。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三條 遺言で信託、生命保險契約の保險料若しくは定期金の給付に関する契約の掛金の拂込、寄附行爲又は前三條に掲げる行爲をなしたときは、遺贈があつたものとみなす。
第四條第一項第三号、第四号、第六号又は第七号の場合において、相続人以外の者が、保險金を受け取り、退職手当金等を支給され又は定期金に関する権利を取得したときは、当該財産について遺贈があつたものとみなす。
贈與者の死亡に因り効力を生ずべき贈與は、これを遺贈とみなす。
第十四條 左の各号に掲げる財産の所在は、当該各号に規定する場所による。
一 動産若しくは不動産又は不動産の上にする権利については、その動産又は不動産の所在 但し、船舶については、船籍の所在
二 鑛業権又は砂鑛権については、鑛区の所在
三 漁業権若しくは入漁権又は漁業権を目的とする権利については、漁場に最も近い沿岸の属する市町村又はこれに相当する行政区画
四 金融機関に対する預金、貯金、積金又は寄託金で命令で定めるものについては、その預金、貯金、積金又は寄託金をなした営業所又は事業所の所在
五 合同運用信託に関する権利については、その信託をなした営業所の所在
六 前各号の外、この法律の施行地に営業所又は事業所を有する者の当該営業所又は事業所の営業上又は事業上の権利については、その営業所又は事業所の所在
前項に掲げる財産以外の財産の所在は、権利者の住所の所在による。
第一項第五号の合同運用信託とは、信託会社(信託業務を兼営する銀行を含む。)が引き受けた金銭信託で、共同しない多数の委託者の信託財産を合同して運用するものをいう。
第十五條 相続財産の所在は、相続開始の時の現況による。但し、第四條第一項第一号に掲げる財産については、贈與の時の現況による。
贈與財産の所在は、贈與の時の現況による。
第二章 課税價格、控除及び税率
第一節 相続税
第十六條 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有するときは、相続財産の價額から左に掲げるものの全額を控除した金額を以て課税價格とする。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 葬式費用
前項の課税價格の計算については、相続開始前二年以内になされた契約による贈與の義務で、相続開始の際現に存するものの金額は、これを前項第一号に掲げる債務の金額に算入しない。
第十七條 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある相続財産の價額から被相続人の債務(公租公課を含む。以下同じ。)のうち、左に掲げるものの金額を控除した金額を以て課税價格とする。
一 その財産に係る公租公課
二 その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
三 前二号の外、その財産を取得、維持又は管理するために生じた債務
四 その財産に関する贈與の義務(相続開始前二年以内になされた契約によるものを除く。)
五 前四号の外、被相続人が、相続開始の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有する場合においては、その営業所又は事業所の営業上又は事業上の債務
第十八條 前二條の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。
第十九條 左に掲げる相続財産の價額は、これを課税價格に算入しない。
一 國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体に対してなした贈與又は遺贈に係る財産の價額
二 相続開始前二年以内に被相続人が同一人に対してなした贈與の目的たる財産の價額の合計金額が千円以下である場合における当該贈與に係る財産の價額
三 第四條第一項第三号、第四号、第六号又は第七号に掲げる保險金、退職手当金等又は定期金に関する権利の價額の合計金額のうち、三万円までの金額
四 互に扶養をなす義務のある者相互間において生活費又は教育費に充てるためになした贈與に係る財産の價額のうち、通常必要と認められるもの
第二十條 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で命令で定めるものに対して相続開始前二年以内になした贈與に係る財産又は遺贈に係る財産の價額の合計金額のうち、十万円又は本條及び第二十一條の規定の適用前の課税價格の十分の一に相当する金額のいずれか低い一方の金額までの金額は、これを課税價格に算入しない。
第二十一條 相続税については、課税價格から五万円を控除する。
第二十二條 相続税は、課税價格(前條の規定による控除後の課税價格をいう。以下特別の定のある場合を除く外、本節中同じ。)を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して、これを課する。
納税義務者が二人以上であるときは、各納税義務者の納付すべき税額は、課税價格に前項の税率を適用して算出した金額を、前條の規定による控除前の課税價格中各各その者の受ける利益の價額を占める割合により按分して計算した金額とする。但し、二人以上の納税義務者について適用すべき税率の種類を異にするときは、課税價格についてその者に適用すべき種類の税率を適用して各別に算出した金額に、前條の規定による控除前の課税價格中その者の受ける利益の價額の占める割合を乘じて計算した金額とする。
二人以上の者が第四條第一項第三号、第四号、第六号又は第七号に掲げる保險金を受け取り、退職手当金等を支給され又は定期金に関する権利を取得した場合においては、第十九條第三号の規定により課税價格に算入しない金額は、これをその者の受け取つた保險金額、支給された退職手当金等の金額又は取得した定期金に関する権利の價額の割合により按分して、前項に規定するその者の受ける利益の價額を計算する。
前項の規定は、第二十條の規定の適用がある場合において、同條に規定する者が二人以上あるときの、各各の者の受ける利益の價額の計算について、これを準用する。
相続人のあることが分明でない場合において、その相続人について納付すべき税額は、第三種の税率を適用して算出した金額とする。
前項の規定の適用があつた場合において、相続人のあることが分明となり、且つ、その相続人が第一種又は第二種の税率の適用のある者であるときは、政府は、税率の適用を改訂し、税金の差額を還付する。
第二十三條 相続が開始した場合において、被相続人が当該相続の開始前五年以内に開始した相続について相続税を納付したとき又は納付すべきときは、命令の定めるところにより、その納付した又は納付すべき前の相続税の額に相当する相続税の全部又は一部を免除する。
前項の規定の適用については、第二十六條の規定により控除された税額については、相続税の納付があつたものとみなす。
第二十四條 第六條第一項第一号乃至第三号に掲げる信託について受益者として指定された者が受益の意思表示をなし、受益者が存在するに至り又は條件が成就した後当該受益者の死亡に因り相続が開始した場合においては、第六條の規定により当該信託の受託者の納付した又は納付すべき相続税は、これを当該受益者の納付した相続税とみなして前條第一項の規定を適用する。
第二十五條 この法律の施行地外にある相続財産について、その地の法令により相続税が課せられたときは、命令の定めるところにより、その課せられた相続税の額に相当する相続税の全部又は一部を免除する。
第二十六條 相続開始前二年以内に被相続人がなした贈與について納付した又は納付すべき贈與税があるときは、命令の定めるところにより、当該贈與税額(第五十八條及び第五十九條の規定による加算税額又は追徴税額に相当する金額を除く。以下本條中同じ。)を、相続人の納付すべき相続税額から控除する。
前項の規定の適用ある場合においては、当該相続についての課税價格の計算については、当該贈與税額に相当する金額を相続財産の價額に加算する。
前項の規定により相続財産の價額に加算した金額は、第二十二條第二項の納税義務者の受ける利益の價額の計算については、これを相続人の受ける利益の價額に算入する。この場合において相続人が二人以上あるときは、各相続人の受ける利益の價額に算入する金額は、その加算した金額をその相続分に應じて按分して計算した金額とする。
第二節 贈與税
第二十七條 贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有するときは、贈與者がその年一月一日から十二月三十一日までの間に贈與した財産の價格の合計金額を以て課税價格とする。
贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有しないときは、贈與者がその年一月一日から十二月三十一日までの間に贈與した財産で、この法律の施行地にあるものの價額の合計金額を以て課税價格とする。
年の中途において、この法律の施行地に住所を有していた者がこの法律の施行地に住所を有しなくなつたとき又はこの法律の施行地に住所を有していなかつた者がこの法律の施行地に住所を有することとなつたときは、この法律の施行地に住所を有していた期間内に贈與した贈與財産の價額及びこの法律の施行地にある贈與財産で贈與者がこの法律の施行地に住所を有していなかつた期間内に贈與したものの價額の合計金額を以て課税價格とする。
第二十八條 左に掲げる贈與財産の價格は、課税價格に算入しない。
一 國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体に対してなした贈與に係る財産の價額
二 その年中に同一人に対してなした贈與の目的たる財産の價額の合計金額が千円以下である場合における当該贈與に係る財産の價額
三 その年中に宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で命令で定めるものに対してなした贈與に係る財産の價額の合計金額のうち、五千円(その贈與に係る財産の價額の合計金額が五千円を超えるときは、五千円及び五千円を超え十万円までの金額についてその二分の一に相当する金額の合計金額)までの金額
四 互に扶義をなす義務のある者相互間において生活費又は教育費に充てるためになした贈與に係る財産の價額のうち、通常必要と認められるもの
第二十九條 贈與税については、課税價格から五万円を控除する。
納税義務者が前年までの分の贈與税について前項の規定による控除を受けていた場合においては、同項の規定による控除は、これをなさない。但し、前年までの分の贈與税について同項の規定による控除を受けた金額が通じて五万円に満たないときは、五万円と前年までの分の贈與税につき同項の規定により控除を受けた金額の合計金額との差額を課税價格から控除する。
第三十條 贈與税は、納税義務者のその年までの課税價格(前條に規定する控除後の課税價格をいう。以下特別の定のある場合を除く外、本節中同じ。)の合計金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して算出した金額から、納税義務者の前年までの課税價格の合計金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して算出した金額を控除した差額により、これを課する。
二万円以下の金額 百分の十五
二万円を超える金額 百分の十七
五万円を超える金額 百分の十九
十万円を超える金額 百分の二十一
十五万円を超える金額 百分の二十三
二十万円を超える金額 百分の二十六
二十五万円を超える金額 百分の二十九
三十万円を超える金額 百分の三十二
三十五万円を超える金額 百分の三十五
四十万円を超える金額 百分の三十八
五十万円を超える金額 百分の四十一
六十万円を超える金額 百分の四十四
八十万円を超える金額 百分の四十七
百万円を超える金額 百分の五十
百五十万円を超える金額 百分の五十三
二百万円を超える金額 百分の五十六
三百万円を超える金額 百分の五十九
四百万円を超える金額 百分の六十二
五百万円を超える金額 百分の六十五
第三十一條 この法律の施行地外にある財産につきなした贈與についてその地の法令により贈與税を課せられたときは、命令の定めるところにより、その課せられた贈與税の額に相当する贈與税の全部又は一部を免除する。
第三十二條 相続開始前二年以内に被相続人がなした贈與については、贈與税(第五十八條及び第五十九條の規定による贈與税を除く。)を免除する。但し、相続開始の日までに政府に提出された第三十九條の規定による申告書に記載された課税價格(第四十條の規定による修正後の課税價格を含む。)及び同日までになされた第四十五條の規定による政府の更正又は決定に係る課税價格に対する税額については、この限りでない。
第三章 財産の評價
第三十三條 地上権(借地法に規定する借地権を除く。以下同じ。)及び永小作権の價格は、相続財産については相続開始の時、贈與財産については、贈與の時における現況により、残存期間に應じ、その目的となつている土地の價額に左に掲げる割合を乘じて算出した金額による。
残存期間が十年以下のもの 百分の五
残存期間が十年を超え十五年以下のもの 百分の十
残存期間が十五年を超え二十年以下のもの 百分の二十
残存期間が二十年を超え二十五年以下のもの 百分の三十
残存期間が二十五年を超え三十年以下のもの 及び地上権で残存期間の定のないもの 百分の四十
残存期間が三十年を超え三十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が三十五年を超え四十年以下のもの 百分の六十
残存期間が四十年を超え四十五年以下のもの 百分の七十
残存期間が四十五年を超え五十年以下のもの 百分の八十
残存期間が五十年を超えるもの 百分の九十
第三十四條 相続財産たる定期金に関する権利で相続開始の時までに給付事由の発生しているものの價額は、左に掲げる金額による。
一 有期定期金については、相続開始の時の現況により、残存期間に受くべき給付金額に、その残存期間に應じ、左の割合を乘じて算出した金額但し、一年間に受くべき金額の二十倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの 百分の八十
残存期間が五年を超え十五年以下のもの 百分の七十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの 百分の六十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が三十五年を超えるもの 百分の四十
二 無期定期金については、その一年間に受くべき金額の二十倍に相当する金額
三 終身定期金については、相続開始の時の現況により、一年間受くべき金額に、その目的とされた人の年齡に應じ、左の倍数を乘じて算出した金額
二十五歳以下の者 十五倍
二十五歳を超え四十歳以下の者 十二倍
四十歳を超え五十歳以下の者 八倍
五十歳を超え六十歳以下の者 五倍
六十歳を超え七十歳以下の者 二倍
七十歳を超える者 一倍
第八條第一項に規定する定期金給付の契約に関する権利の價額は、定期金給付の事由が発生した時の現況により、前項の規定を準用して算定した金額による。
前項に定めるものの外、相続財産たる定期金に関する権利で相続開始の時までに給付事由の発生しているものの價額及び第八條第一項及び第二項に規定する定期金給付の契約に関する権利の價格の評價に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十五條 相続開始の時までにまだ保險事故の発生していない生命保險契約に関する権利の價額は、相続開始の時までに拂い込まれた保險料の合計金額を基準として、命令の定めるところにより計算した金額による。
第三十六條 相続開始の時までにまだ年金支拂事由の発生していない郵便年金契約に関する権利の價額は、相続開始の時までに拂い込まれた掛金の合計金額に、掛金の拂込開始の時から相続開始の時までの経過期間を基準として、命令で定める割合を乘じて算出した金額による。
第三十七條 第三十三條、第三十四條第一項及び第三項並びに前二條に定めるものの外、相続財産の價額は、相続開始当時の時價により、相続財産の價格から控除すべき債務の金額は、相続開始当時の現況による。
第三十三條並びに第三十四條第二項及び第三項に定めるものの外、贈與財産の價額は、贈與の時における時價による。
第四章 申告及び納付
第三十八條 相続税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、相続の開始後四箇月以内に、課税價格その他の事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
前項の場合において、納税義務者が二人以上あるときは、連署で前項の申告書を提出しなければならない。但し、他の納税義務者の氏名を附記して、各別に申告書を提出することを妨げない。
通信、交通その他已むを得ない事由に因り、第一項の期限内に同頃の規定による申告書を提出することができない者については、政府は、命令の定めるところにより、同項の期限を延長することができる。
第三十九條 贈與税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、贈與をなした年の翌年一月三十一日までに、價税價格その他の事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
前條第三項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
贈與税について納税義務がある者が贈與のあつた年の中途においてこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなる場合における第一項の規定による申告書の提出については、命令で特別の定をなすことができる。
第四十條 前二條の規定による申告書を提出した者は、前二條の規定による申告書の提出期限後その申告に係る課税價格について脱漏があることを発見したときは、直ちに政府に申し出て、その申告書を修正しなければならない。
前項の規定は、第四十五條の規定による課税價格の更正又は決定があつた者が更正又は決定に係る課税價格について脱漏があることを発見した場合における課税價格の修正について、これを準用する。
第四十一條 第三十八條又は第三十九條の規定による申告書に記載された課税價格に対する相続税又は贈與税は、第三十八條又は第三十九條の規定による申告書の提出期限までに、これを納付しなければならない。
第三十八條又は第三十九條の規定による申告書の提出期限後課税價格の申告書の提出があつた場合において、その申告書に記載された課税價格に対する相続税又は贈與税は、その申告書提出の日に、これを納付しなければならない。
前條第一項の規定による申告書の修正又は同條第二項の規定による課税價格の修正があつた場合において、その修正に因り増加する税額に相当する相続税又は贈與税は、その申告書の修正又は課税價格の修正の日に、これを納付しなければならない。
納税義務者が、前三項の定めるところにより、相続税又は贈與税を完納しなかつたときは、政府は、國税徴收法第九條の規定により、これを督促する。
第四十二條 第六條第一項第四号の規定の適用を受ける信託の受託者は、相続開始の時において現に在する信託財産の價額を限度として、相続税を納める義務を負う。
第四十三條 相続税について納税義務がある者が二人以上あるときは、各納税義務者は、他の納税義務者の納付すべき相続税について、その受けた利益の價額を限度として、連帶納付の責に任ずる。
第四十四條 受贈者は、贈與者の納付すべき贈與税について、贈與に因りその受けた利益の價額を限度として、連帶納付の責に任ずる。
第五章 課税價格の更正及び決定
第四十五條 第三十八條若しくは第三十九條の規定による申告書が提出された場合又は第四十條の規定による申告書の修正があつた場合において、申告又は修正に係る課税價格が、政府において調査した課税價格と異るときは、政府は、その調査により、その課税價格を更正する。
政府は、納税義務があると認められる者が第三十八條又は第三十九條の規定による申告書を提出しなかつた場合においては、その調査により、その課税價格を決定する。
納税義務者が第三十八條又は第三十九條の規定による申告書を提出せず、且つ、第六十五條に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、政府は、命令の定めるところにより、第三十八條又は第三十九條の規定による申告書の提出期限前においても、その調査により、その課税價格を決定することができる。
政府は、前三項の規定による課税價格の更正又は決定後その更正又は決定に係る課税價格について脱漏があることを発見したときは、その調査により、その課税價格を更正することができる。
第四十六條 政府は、前條の規定により、課税價格を更正し又は決定したときは、これを納税義務者に通知する。
この法律の施行地に住所及び居所を有しない者が第六十五條に規定する納税管理人の申告をしていないときは、前項の通知に代えて公告することができる。この場合において、公告の初日から七日を経過したときは、その通知があつたものとみなす。
第四十七條 政府は、第四十五條の規定により課税價格を更正し又は決定した場合においては、前條第一項の通知をなした日から一箇月後を納期限として、その追徴税額(その不足税額又はその決定による税額をいう。以下同じ。)を徴收する。但し、納税義務者が第六十五條に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなる場合においては、直ちに追徴税額を徴收する。
第六章 審査、訴願及び訴訟
第四十八條 納税義務者は、第四十六條の規定により政府の通知した課税價格又は第六十條の規定により政府の通知した税額に対して異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
前項の請求があつた場合においても、政府は、税金の徴收を猶予しない。但し、政府において已むを得ない事由があると認めたときは、税金の徴收を猶予することができる。
第四十九條 政府は、前條第一項の請求があつたときは、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第五十條 前條第一項の決定に対し、不服がある者は、訴願又は訴訟をなすことができる。
第四十五條の規定により政府のなした更正若しくは決定又は第五十九條の規定により政府のなした税額の追徴に関する訴願又は訴訟は、審査の決定を経た後でなければ、これをなすことができない。
第七章 延納及び物納
第五十一條 相続税の納税義務者は、その納付すべき相続税額が一万円以上で、且つ、金銭で一時に納付することを困難とする事由があるときは、命令の定めるところにより、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供し、五年以内の年賦延納を申請することができる。
前項の規定は、相続税につき連帶納付の責に任ずる者について、これを準用する。
第五十二條 相続税の納税義務者は、その納付すべき相続税額のうち、金銭で納付することを困難とする金額について、物納を申請することができる。
前項の規定は、相続税につき連帶納付の責に任ずる者について、これを準用する。
前二項の場合において、物納に充てることができる財産の種類その他物納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十三條 政府は、前二條の規定により相続税の延納又は物納の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、税金の納付を猶予することができる。
第五十四條 第五十二條第一項又は第二項の規定の適用を受けて納付した相続税につき過誤納があつた場合の還付に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第八章 雜則
第五十五條 納税義務者が、災害に因り著しく資力を喪失して、納税困難と認められるときは、政府は、命令の定めるところにより、相続税又は贈與税を軽減し又は免除することができる。
政府は、前項の場合において、同項の規定による軽減又は免除に関する処分が確定するまで、税金の徴收を猶予することができる。
第五十六條 納税義務者の提出した申告書又は課税價格の更正、決定若しくは修正に関する書類を閲覽しようとする者は、命令の定めるところにより、政府に、その閲覽を請求することができる。
第五十七條 納税義務があると認められる者が申告書を提出しなかつた事実又は課税價格に脱漏があると認められる事実を、政府に報告した者がある場合において、政府がその報告に因つて課税價格を決定し又は更正したときは、政府は、命令の定めるところにより、その報告者に対し、課税價格の決定又は更正に因り徴收することができた税額の百分の十以下に相当する金額を、報償金として交付することができる。但し、報償金の金額は、十万円を超えることができない。
前項の規定は、その報告をなした者が官吏又は待遇官吏であるときは、これを適用しない。その報告が、官吏若しくは待遇官吏の知り得た事実、公務員(官吏及び待遇官吏を除く。)の職務上知り得た事実又は不法の行爲に因り知り得た事実に基くものである場合も、また同樣とする。
第五十八條 納税義務者は、第四十一條第二項又は第三項の規定により納付すべき相続税については、当該各項に規定する日に、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額百円について一日三銭の割合を乘じて算出した金額に相当する税額を加算して納付しなければならない。
第四十一條第四項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第一項の規定は、政府が、第四十七條の規定による追徴税額又は第五十一條の規定による延納税額に相当する相続税を徴收する場合について、これを準用する。
第五十九條 第四十一條第二項又は第三項の規定により相続税又は贈與税の納付があつた場合又は第四十七條の規定による追徴税額に相当する相続税又は贈與税を徴收することとなつた場合においては、第三十八條又は第三十九條の申告期限内に申告書の提出がなかつたこと、第四十條第一項の規定による申告書の修正があつた場合において前の申告若しくは修正に係る課税價格について脱漏があつたこと又は納税義務者の申告若しくは修正した課税價格が政府の調査した課税價格と異ることについて已むを得ない事由があると認められる場合を除く外、政府は、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額に一箇月を経過するごとに百分の五の割合を乘じて算出した金額に相当する税額の相続税又は贈與税を追徴する。但し、その金額は、当該税額に百分の五十を乘じて算出した金額を超えることができない。
前項の規定により追徴する税額については、第五十一條及び第五十二條の規定は、これを適用しない。
第六十條 政府は、前條第一項の規定により追徴する税額を決定したときは、これを納税義務者に通知する。
第四十六條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第六十一條 相続が開始した後、相続人の廃除又はその取消に関する裁判の確定に因り相続人に異動を生じた場合においては、その裁判確定前に、裁判確定前の相続人のなした課税價格の申告(その修正を含む。以下本條中同じ。)又は裁判確定前の相続人について政府のなした課税價格の更正若しくは決定は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者のなした課税價格の申告又は裁判の確定に因り相続人となつた者について政府のなした課税價格の更正若しくは決定とみなし、裁判確定前の相続人の納付した相続税は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者の納付した相続税とみなす。
前項の場合において、裁判の確定に因り相続人となつた者は、裁判確定前の相続人の申告した課税價格又は裁判確定前の相続人について政府の更正若しくは決定した課税價格について異議があるときは、第四十八條の規定による審査の請求をなすことができる。但し、その期限は裁判の確定した日から二箇月以内とする。
前二項の規定は、相続の抛棄に因り、その抛棄前の相続人と異る者が相続人となつた場合について、これを準用する。
相続人の廃除に関する裁判の確定又は相続の抛棄に因り、相続人のうち、その受ける利益の價額が増加した者がある場合においては、裁判の確定に因り廃除された者又は相続の抛棄をなした者の納付した相続税は、これを相続人のうち、裁判の確定又は相続の抛棄に因りその受ける利益の價額が増加した者が納付したものとみなす。
相続人の廃除の取消に関する裁判の確定に因り、相続人のうち、その受ける利益の價額が減少した者がある場合においては、裁判の確定に因り、相続人のうち、その受ける利益の價額が減少した者の納付した相続税は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者が納付した相続税とみなす。
第六十二條 第六條第一項第一号乃至第三号に規定する信託について受益者として指定された者が受益しない旨の意思表示をしたこと、受益者が存在しないことに確定したこと又は條件が成就しないこととなつたことに因り信託財産又は信託の利益を受ける権利が委託者に帰属したときは、当該信託は、初めからなかつたものとみなす。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十三條 相続人があることが分明でないとき又は相続人が相続財産について全く処分の権能を有しないときは、この法律中相続人に関する規定は、相続財産管理人又は遺言執行者に、これを準用する。この場合においては、第三十八條第一項の規定による申告書の提出期限は、その就職の日から四箇月とする。
第六十四條 相続税は、相続の開始地を、その納税地とする。但し、相続の開始地がこの法律の施行地外の地であるときは、この法律の施行地にある相続財産の所在地(その相続財産が二以上の地にあるときは、主たる相続財産の所在地)を、その納税地とする。
贈與税は、この法律の施行地にある贈與者の住所地(この法律の施行地に住所がないときは、この法律の施行地にある居所地)をその納税地とする。
贈與者がこの法律の施行地に住所及び居所を有しない場合における贈與税の納税地は、贈與者が納税地として申告した場所とする。その申告がないときは、政府が、その納税地を指定する。
第六十五條 納税義務者は、この法律の施行地に住所及び居所を有しないときは、申告書の提出その他相続税又は贈與税に関する一切の事項を処理せしめるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者の中から納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。納税義務者がこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときも、また同樣とする。
第六十六條 相続人は、相続の開始後三箇月以内に、被相続人が相続開始前二年以内になした贈與の受贈者及び受遺者に対し、命令の定めるところにより、被相続人の氏名、相続開始の年月日、相続の開始地その他受贈者又は受遺者が、第三十八條の規定による申告書を提出するために必要な事項を通知しなければならない。
第六十七條 市町村長その他命令で定める者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、これを政府に報告しなければならない。
第六十八條 この法律の施行地において、生命保險金を支拂つた者は、命令の定めるところにより、支拂調書を政府に提出しなければならない。
この法律の施行地において、本人に支給すべき退職手当金等を、本人が死亡したため、その相続人その他の者に支給した法人は、命令の定めるところにより、支拂調書を政府に提出しなければならない。
この法律の施行地において、受益者と委託者とが同一人でない信託を引き受けた者は、命令の定めるところにより、信託に関する調書を政府に提出しなければならない。
第六十九條 收税官吏は、相続税に関する調査又は相続税の徴收について必要があるときは、左の各号に掲げる者に質問し又は第一号に掲げる者の財産若しくはその財産に関する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 前條の調書を提出しなければならない者
三 納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、債権若しくは債務を有していたと認められる者又は債権若しくは債務を有すると認められる者
四 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、出資者であつたと認められる法人又は出資者であると認められる法人
五 納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、財産を讓渡したと認められる者又は財産を讓渡する義務があると認められる者
六 納税義務者又は納税義務があると認められる者から、財産を取得したと認められる者又は財産を取得する権利があると認められる者
七 納税義務者又は納税義務があると認められる者の財産を保管したと認められる者又は保管すると認められる者
八 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、その営業又は事業に関し加入していたと認められる團体又は加入していると認められる團体
收税官吏は、贈與税に関する調査について必要があるときは、左の各号に掲げる者に質問し又は第一号若しくは第二号に掲げる者の財産若しくはその財産に関する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 納税義務者又は納税義務があると認められる者から贈與を受けた者又は贈與を受けたと認められる者
三 前條の調書を提出しなければならない者
四 贈與財産若しくは贈與財産と認められる財産を保管したと認められる者又は保管すると認められる者
第七十條 都道府縣、市町村その他の公共團体に、相続税及び贈與税の附加税を課することができない。
第九章 罰則
第七十一條 詐僞その他不正の行爲により相続税又は贈與税を免れた者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その課税價格を決定し、その税金を徴收する。
第七十二條 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第六十八條の調書を提出せず又はその調書に虚僞の記載をなして、これを提出した者
二 第六十九條の規定による財産又はその財産に関する帳簿書類その他の物件の調査を拒み、妨げ又は忌避した者
三 前号の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
四 第六十九條の規定による收税官吏の質問に対し答弁をなさない者
五 前号の質問に対し虚僞の答弁をなした者
第七十三條 相続税又は贈與税に関する調査又審査の事務に從事している者又はこれに從事していた者が、その調査又は審査に関して知り得た祕密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第七十四條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第七十一條第一項又は第七十二條の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
第七十五條 他人の相続税又は贈與税について、政府に対し、第五十七條に規定する事実に関する虚僞の報告をなした者は、これを三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第七十六條 第七十一條第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
附 則
第一條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第二條 この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附属の島(政令で定める地域を除く。)に、これを施行する。
第三條 この法律施行前に開始した相続に対する相続税については、なお從前の例による。
但し、左の各号に掲げる事項については、当該各号に定めるところによる。
一 この法律の施行後、政府が從前の第十五條又は從前の第十七條ノ二の規定により決定又は処分をなす場合においては、相続税審査委員会の諮問を経ることを必要としない。
二 この法律施行後、從前の第十六條の規定による出訴をなす場合においては、裁判所に対し、これをなすものとする。
この法律の施行前に信託に因り委託者が他人の信託の利益を受ける権利を有せしめた場合において、当該信託の元本又は收益の受益者がこの法律施行後初めて元本又は收益を受けることとなつたときは、当該信託行爲のあつた時において、從前の第二十三條の規定による遺産相続が開始したものとみなす。
第四條 この法律施行後開始する相続の開始前二年以内に被相続人が贈與した贈與財産に対し課した又は課せらるべき從前の第二十三條の規定による相続税があるときは、当該相続税額は、命令の定めるところにより、受贈者の納付すべき相続税額から、これを控除する。
第五條 昭和二十二年分の贈與税については、第二十七條に規定する課税價格は、この法律施行の日から昭和二十二年十二月三十一日までの間に贈與された贈與財産の價格により、これを計算する。
第六條 登録税法の一部を次のように改正する。
第二條第二号を次のように改める。
二 遺言、贈與其ノ他無償名義ニ因ル所有權ノ取得
不動産價格 千分ノ二十五
第三條第二號中「千分ノ五十五」を「千分ノ二十」に改める。
第三條ノ二 信託財産タル不動産又ハ船舶ヲ受託者ヨリ受益者ニ移ス場合ニ於ケル所有權取得ノ登記ニ付テハ左ノ區別ニ從ヒ登録税ヲ納ムヘシ
不動産 不動産價格 千分ノ二十五
船舶 船舶價格 千分ノ二十
第七條 租税特別措置法の一部を次のように改正する。
第三條中「第十七條ノ二」を「第五十二條」に、「不動産又は立木」を「不動産、立木その他命令で定める資産」に、「山林の所得」を「山林所得」に改める。
第六條第一項中「以下同じ。」を「以下特別の定をなす場合を除く外、同じ。」に改める。
第七條第一項中「相続財産のうち」を「相続財産(昭和二十二年五月三日以後に開始する相続については、相続開始前二年以内に被相続人が贈與した財産を含む。以下本條中同じ。)のうち」に改める。
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作業會計法を改正する法律案
專賣局及び印刷局特別會計法
第一條 專賣局及び印刷局の事業を企業的に運營し、その健全な發達に資するため、各各特別會計を設置し、一般會計と區分して經理する。
第二條 專賣局特別會計及び印刷局特別會計(以下各會計という。)は、大藏大臣が、法令の定めるところに從い、これを管理する。
第三條 各會計においては、夫夫各會計に所屬する資産の金額を以て資本とする。
第四條 各會計においては、夫夫專賣局及び印刷局の事業の經營成績及び財政状態を明らかにするため、財産の増減及び異動を、その發生の事實に基いて、計理する。
各會計に屬する資産及び負債については、政令の定めるところに從い、その内容を明らかにしなければならない。
第五條 各會計において、事業設備費を支辨するため必要があるときは、各會計の負擔において、公債を發行し又は借入金をなすことができる。
前項の規定による公債及び借入金の限度額については、豫算を以て、國會の議決を經なければならない。
第六條 各會計において、運轉資金に充てるため必要があるときは、各會計の負擔において、一時借入金をなし若しくは融通證券を發行し又は國庫餘裕金を繰替使用することができる。
前項の規定による一時借入金、融通證券及び繰替金は、當該年度内に、これを償還しなければならない。
第一項の規定による一時借入金、融通證券及び繰替金の限度額については、豫算を以て、國會の議決を經なければならない。
第七條 各會計の負擔に屬する公債及び借入金の償還金及び利子、一時借入金及び融通證券の利子並びに公債及び融通證券の發行及び償還に關する諸費の支出に必要な金額は、毎會計年度、これを國債整理基金特別會計に繰り入れなければならない。
第八條 大藏大臣は、毎會計年度、各會計の歳入歳出豫定計算書及び國庫債務負擔行爲要求書を作製しなければならない。
第九條 各會計の歳入歳出豫算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを款及び項に區分する。
第十條 内閣は、毎會計年度、各會計の豫算を作成し、一般會計の豫算とともに、これを國會に提出しなければならない。
前項の豫算には、左の書類を添付しなければならない。
一 歳入歳出の豫定計算書及び國庫債務負擔行爲要求書
二 前前年度の損益計算書、貸借對照表及び財産目録
三 前年度及び當該年度の豫定損益計算書及び豫定貸借對照表
四 國庫債務負擔行爲で翌年度以降にわたるものについての前年度までの支出額及び支出額の見込、當該年度以降の支出豫定額並びに數會計年度にわたる事業に伴うものについてはその全體の計畫その他事業等の進行状況の調書
第十一條 各會計において、決算上利益を生じたときは、これを當該利益を生じた年度の一般會計の歳入に納付しなければならない。
第十二條 大藏大臣は、毎會計年度、歳入歳出の豫定計算書と同一の區分により、各會計の歳入歳出決定計算書を作製しなければならない。
第十三條 内閣は、毎會計年度、各會計の歳入歳出決算を作成し、一般會計の歳入歳出決算とともに、これを國會に提出しなければならない。
前項の歳入歳出決算には、左の書類を添付しなければならない。
一 歳入歳出決定計算書
二 當該年度の損益計算書、貸借對照表及び財産目録
三 債務に關する計算書
第十四條 各會計において、支拂義務の生じた歳出金で當該年度内に支出濟とならなかつたものに係る歳出豫算は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
前項の規定による繰り越については、財政法第四十三條の規定は、これを適用しない。
大藏大臣は第一項の規定により繰り越をなしたときは、會計檢査院に通知しなければならない。
第十五條 この法律の施行に關し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 從前の各會計の昭和二十二年三月三十一日現在における資本所屬以外の物品等は、これを各會計の資産に組み入れ、同日現在の支出未濟額は、これを資本に編入する。
第三條 昭和二十一年度における一般會計歳出豫算中專賣局又は印刷局の事業に係るもので、年度内に契約をなし、四月三十一日までに支出を終らなかつた經費の金額については、これを各會計に繰り越して使用することができる。
第四條 この法律施行前になした豫備費の支出並びに昭和二十年度及び同二十一年度の決算に關しては、なお從前の例による。
第五條 この法律中「國會」、「内閣」及び「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これを夫夫「帝國議會」、「政府」及び「勅令」と讀み替えるものとする。
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燃料局特別会計法を改正する法律案
アルコール專賣事業特別会計法
第一條 アルコール專賣事業を企業的に運営し、その健全な発達に資するため、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理する。
この法律において、アルコール專賣事業とは、アルコール專賣法に規定するアルコールの製造、收納、販賣等の事業、アルコールに関する試驗及び研究並びにこれらの附帶業務をいう。
第二條 この会計は、商工大臣が、法令の定めるところに從ひ、これを管理する。
第三條 この会計においては、この会計に所属する資産の金額を以て資本とする。
第四條 この会計においては、アルコール專賣事業の経営成績及び財政状態を明らかにするため、財産の増減及び異動を、その発生の事実に基いて計理するものとする。
この会計に属する資産及び負債については、政令の定めるところに從い、その内容を明らかにしなければならない。
第五條 この会計において、事業の設備費を支弁するため必要があるときは、この会計の負担において、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
公債及び借入金の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第六條 この会計において、運轉資金に充てるため必要があるときは、この会計の負担において、一時借入金をなし若しくは融通証券を発行し又は國庫余裕金を繰替使用することができる。
前項に規定する一時借入金及び融通証券は、遅くとも翌年度内に、繰替金は当該年度内に、これを償還しなければならない。
第一項の規定による一時借入金、融通証券及び繰替金の限度額については予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第七條 前二條に規定する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の起債、償還等に関する事務は、大藏大臣がこれを行う。
第八條 この会計の負担に属する公債、借入金、一時借入金又は融通証券の償還金及び利子並びに発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、年度内に償還する償還金を除いて、毎会計年度、これを國債整理基金特別会計に繰入れなければならない。
第九條 商工大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出の予定計算書及び國庫債務負担行爲要求書を作製して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第十條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを夫々款及び項に区分する。
第十一條 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成して、一般会計の予算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の予算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出予定計算書及び國庫債務負担行爲要求書
二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 前年度及び当該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表
四 國庫債務負担行爲で翌年度以降にわたるものについての前年度までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進行状況の調書
第十二條 この会計において、決算上利益を生じたときは、これを当該利益を生じた年度の一般会計の歳入に納付しなければならない。
第十三條 商工大臣は、歳入歳出予定計算書と同一の区分により、この会計の歳入歳出決定計算書を作製して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第十四條 内閣は、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の決算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前頃の歳入歳出決算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出決定計算書
二 当該年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 債務に関する計算書
第十五条 この会計においても、支拂義務の生じた歳出金で当該年度内に支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、これを翌年度に繰越して使用することができる。
前項の規定による繰越については、財政法第四十三條の規定にかかわらず、大藏大臣の承認を経ることを要しない。
商工大臣は、第一項の規定による繰越をなしたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十六條 この法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、附則第五條の規定は、公布からこれを施行する。
第二條 從來の燃料局特別会計の昭和二十二年三月三十一日現在における資本所属以外の物品等は、これをこの会計の資産に組み入れ、同日現在の支出未済額は、これを借入資本に編入する。
第三條 燃料局特別会計法第三條の規定により、据置運轉資本補足のため借り入れた借入金又は國庫余裕金を繰替使用した繰替金は、これを第六條の規定による一時借入金又は繰替金とみなす。
第四條 昭和二十一年度における一般会計歳出予算中アルコールの專賣事業に係るもので、年度内に契約をなし、昭和二十二年四月二十日までに支出を終らなかつた経費の金額については、これをこの会計に繰り越して使用することができる。
第五條 この会計において、決算上生じた利益金の一般会計への納付については、この法律の施行後三年間を限り、第十二條本文の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、その翌年度までに納付することができる。
第六條 この会計において、資本を増加する必要があるときは、当分の間、予算の定めるところにより、この会計の決算上生じた利益を以て、これに充てることができる。
第七條 この法律中「國会」、「内閣」及び「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これを夫々「帝國議会」、「政府」及び「勅令」と讀み替えるものとする。
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造幣局特別会計法の一部を改正する法律案
造幣局特別会計法の一部を次のように改正する。
第一條中「附屬雜收入及」を「固定資本ニ屬スル物件ノ賣拂代金及附屬雜收入竝ニ」に、「作業ノ費用及」を「作業ノ費用、固定資本ノ擴張費、改良費、補充費及維持修理費竝ニ」改める。
第二條第二項中「處分ニ關スル用途」の下に、「竝ニ本會計ノ固定資本ノ擴張費及改良費ノ財源」を加える。
第三條 本會計ニ於テハ事業ノ經營成績及財政状態ヲ明ナラシムル爲財産ノ増減及異動ヲ其ノ發生事實ニ基テ計理ス
第八條 削除
第九條ノ二 資金ニ不足ヲ生シタトキハ一般會計ハ第二條第二項ノ規定ニ依リ資金ヲ固定資本ノ擴張費及改良費ノ財源ニ使用シタル金額ヲ限度トシテ之カ補足ノ爲繰入金ヲ爲スコトヲ得
附 則
この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、附則第三項の規定は、公布の日から、これを施行する。
昭和二十一年度における一般会計歳出予算中造幣局の事業に係るもので年度内に契約をなし昭和二十二年四月三十日までに支出を終ならかつた経費の金額については、これをこの会計に繰り越して使用することができる。
昭和七年法律第十二号(造幣局資金拂出に関する法律)の一部を次のように改正する。
第三項中「昭和二十二年度」を」「昭和二十五年度」に改める。
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國有林野事業特別会計法案
國有林野事業特別会計法
第一條 國有林野事業を企業的に運営し、その健全な発達に資するため、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理する。
この法律において、國有林野事業とは、國有林野法第一條に規定する國有林野及び北海道における國有林野の管理経営の事業、林業に関する試驗、研究及び調査並びにこれらの附帶業務をいう。
第二條 この会計は、農林大臣が、法令の定めるところに從い、これを管理する。
第三條 この会計においては、從來の國有林野(北海道における國有林野を含む。)の事業に属する土地、森林、原野、建物、工業物、機械その他の設備、貯藏物品等の資産及び將來この会計に所属する資産の全額を以て資本とする。
第四條 この会計においては、國有林野事業の経営成績及び財政状態を明らかにするため、財産の増減及び異動をその發生の事実に基いて計理する。
この会計に属する資産及び負債については、政令の定めるところに從い、その内容を明らかにしなければならない。
第五條 この会計において、事業施設費を支弁するため必要があるときは、この会計の負担において、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
前項の規定による公債及び借入金の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第六條 この会計において、運轉資金に充てるための必要があるときは、この会計の負担において、一時借入金をなし又は融通証券を発行することができる。
前項に規定する一時借入金及び融通証券は、当該年度内にこれを償還しなければならない。
第一項の規定による一時借入金及融通証券の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
第七條 前二條に規定する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の起債、償還等に関する事務は、大藏大臣がこれを行う。
第八條 この会計の負担に属する公債及び借入金の償還金及び利子、一時借入金及び融通証券の利子並びに公債及び融通証券の發行及び償還に關する諸費の支出に必要な金額は、毎会計年度、これを國債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。
第九條 農林大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予定計算書及び國庫債務負担行爲要求書を作成して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第十條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを款及び項に区分する。
第十一條 内閣は毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の予算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出予定計算書及び國庫債務負担行爲要求書
二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 前年度及び當該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表
四 國庫債務負担行爲で翌年度以降にわたるものについての前年度までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについては、その全体の計画その他事業等の進行状況に關する調書
第十二條 この会計においては、森林資源の維持のための積立金を保有することができる。
前項の積立金は、予算の定めるところにより、会計の決算上生じた利益金のうちから、これを積み立てるものとする。
第十三條 この会計において、決算上利益を生じたときは、当該利益の額から前條第二項の規定により、積立金として積み立てる額を控除した額に相当する金額は、これを当該利益を生じた年度の一般会計の歳入に納付しなければならない。
第十四條 農林大臣は、歳入歳出予定計算書と同一の区分により、この会計の歳入歳出の決定計算書を作成して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第十五條 内閣は、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の歳入歳出決算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出決定計算書
二 当該年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録
三 債務に関する計算書
第十六條 この会計において支拂義務の生じた歳出金で、当該年度内に支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、これを翌年度に繰越して使用することができる。
前項の規定による繰越については、財政法第四十三條の規定にかかわらず、大藏大臣の承認を経ることを要しない。
農林大臣は、第一項の規定による、繰越をなしたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十七條 第十二條の規定による積立金は、國債を以てこれを保有し、又は大藏省預金部に預け入れ運用することができる。
この会計に余裕金があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第十八條 國有林野事業の運営に妨げのない限り、この会計の負担において一般の委託により、森林の管理経営木材の加工若しくは林業に関する機械施設の工作又は林業に関する試驗、檢査及び調査をなすことができる。
第十九條 この法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 從來の國有林野(北海道における國有林野を含む。)の事業に属する負債は、これをこの会計に帰属せしめる。
第三條 財産税等收入金特別会計に所属する資産のうち、從來帝室林野の事業の用に供したものについては、これを無償を以て、この会計の所属に移すことができる。
第四條 從來の帝室林野事業に属する資産及び負債で國に引き継がれたものは、これをこの会計に帰属せしめる。
第五條 この会計においては、当分の間第十三條の規定にかかわらず、予算の定めるところにより、一般会計に納付金を繰り入れることができる
前項の場合において、決算上の利益の額が第十二條第二項の規定により積立金として積み立てる額及び納付金の額の合計額を超過するときは、その超過額は、これを損失補填のための積立金として積み立てるものとする。
第六條 昭和二十一年度における一般会計歳出予算中國有林野業に係るもので、年度内に契約をなし、昭和二十二年四月三十日までに支出を終らなかつた経費の金額については、これをこの会計に繰り越して使用することができる。
第七條 この法律中「國会」、「内閣」及び「政令」とあるのは、日本國憲法施行の日までは、これをそれぞれ「帝國議会」、「政府」及び「勅令」と読み替えるものとする。
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労働者災害補償保險特別会計法案
労働者災害補償保險特別会計法
第一條 労働者災害補償保險法による労働者災害補償保險事業を経営するため、特別会計を設置し、その歳入を以てその歳出に充てる。
第二條 この会計は、厚生大臣が、法令の定めるところに從い、これを管理する。
第三條 この会計においては、保險料、積立金から生ずる收入、借入金及び附属雜收入を以てその歳入とし、保險金、保險料の返還金、保險施設費、借入金の償還金及び利子、一時借入金の利子、事業取扱費その他の諸費を以てその歳出とする。
第四條 この会計に属する経費を支弁するため必要があるときは、この会計の負担で、借入金をなすことができる。
前項の規定により、借入金をなすことができる金額は、純保險料を以て保險金及び保險料の返還金を支弁するに不足する金額を限度とする。
第五條 厚生大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予定計算書を作製し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第六條 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に從つて、これを款及び項に区分する。
第七條 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、これを國会に提出しなければならない。
前項の予算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出予定計算書
二 前前年度の損益計算書及び貸借対照表並びに前前年度末における積立金明細表
三 前年度及び当該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表
第八條 この会計において、支拂上現金に余裕があるときは、これを大藏省預金部に預け入れることができる。
第九條 この会計において、支拂上現金に不足があるときは、この会計の負担において、一時借入金をなすことができる。
前項の規定による一時借入金は、当該年度内に、これを償還しなければならない。
第十條 第四條に規定する借入金及び前條に規定する一時借入金の借入及び償還に関する事務は、大藏大臣がこれを行う。
第十一條 厚生大臣は、毎会計年度、歳入歳出予定計算書と同一の区分により、この会計の歳入歳出決定計算書を作製して、これを大藏大臣に送付しなければならない。
第十二條 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに國会に提出しなければならない。
前項の歳入歳出決算には、歳入歳出決定計算書、当該年度の損益計算書、貸借対照表、当該年度末における積立金明細表及び債務に関する計算書を添附しなければならない。
第十三條 この会計において、決算上剩余金を生じたときは、これを積立金に組み入れなければならない。
この会計において、決算上不足を生じたときは、積立金から、これを補足する。
第十四條 この会計の積立金は、國債を以て保有し又は大藏省預金部に預け入れて、これを運用することができる。
第十五條 この会計において、支拂義務の生じた歳出金で、当該年度の出納の完結までに支拂済とならなかつたものに係る歳出予算は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
前項の規定による繰越は、財政法第四十三條の規定による大藏大臣の承認を要しない。
厚生大臣は、第一項の規定による繰越をなしたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十六條 この法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
この法律は、昭和二十二年七月一日から、これを施行する。
労働者災害扶助責任保險特別会計法は、昭和二十二年六月三十日限りこれを廃止する。
労働者災害扶助責任保險特別会計廃止の際これに属する積立金は、これをこの会計に帰属せしめる。
前項の規定により帰属せしめられた積立金は、第十三條第二項の規定にかかわらず、これを予算の定めるところに從い使用することができる。
前項に規定するものの外、労働者災害扶助責任保險特別会計廃止の際これに属する権利義務は、これをこの会計に帰属せしめる。
この法律施行前になした予備費の支出並びに労働者災害扶助責任保險特別会計の昭和二十年度、同二十一年度及び同二十二年度の決算に関してはなお從前の例による。
第十四條 この会計の積立金は、國債を以て保有し又は大藏省預金部に預け入れて、これを運用することができる。
第十五條 この会計において、支拂義務の生じた歳出金で、当該年度の出納の完結までに支拂済とならなかつたものに係る歳出予算は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
前項の規定による繰越は、財政法第四十三條の規定による大藏大臣の承認を要しない。
厚生大臣は、第一項の規定による繰越をなしたときは、大藏大臣及び会計檢査院に通知しなければならない。
第十六條 この法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
この法律は、昭和二十二年七月一日から、これを施行する。
労働者災害扶助責任保險特別会計法は、昭和二十二年六月三十日限りこれを廃止する。
労働者災害扶助責任保險特別会計廃止の際これに属する積立金は、これをこの会計に帰属せしめる。
前項の規定により帰属せしめられた積立金は、第十三條第二項の規定にかかわらず、これを予算の定めるところに從い使用することができる。
前項に規定するものの外、労働者災害扶助責任保險特別会計廃止の際これに属する権利義務は、これをこの会計に帰属せしめる。
この法律施行前になした予備費の支出並びに労働者災害扶助責任保險特別会計の昭和二十年度、同二十一年度及び同二十二年度の決算に関してはなお從前の例による。
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公債金特別会計法外四法律の廃止等に関する法律案
第一條 左の法律は、これを廃止する。
公債金特別会計法
爲替交易調整特別会計設置等爲替
交易調整法
特殊財産資金特別会計法
学校特別会計法
大正十三年法律第十号(高等諸学校震災復旧諸費に関する予算の施行に関する法律)
第二條 國債整理基金特別会計法の一部を次のように改正する。
第二條ノ二を削る。
第二條ノ三中「前二條ノ」を「前條又ハ他ノ法律ニ依ル」に改める。
第三條 厚生保險特別会計法の一部を次のように改正する。
第五條中「同事業ノ」の下に「業務取扱ニ関スル諸費」を加える。
第六條中「船員保險事業ノ療養所費、福祉施設費又ハ」を「船員保險事業ノ業務取扱ニ関スル諸費、療養所費、福祉施設費又ハ」に改める。
第十八條ノ二健康勘定ノ積立金ハ予算ノ定ムル金額ニ限リ健康保險事業ノ福祉施設ニ充ツル爲業務勘定に繰入ルルコトヲ得。
第四條 食糧管理特別会計法の一部を次のように改正する。
第四條ノ二中「百億円」を「二百億円」に改める。
第五條 薪炭需給調節特別会計法の一部を次のように改正する。
第三條但書中「八千万円」を「五億一千百万円」に改める。
第六條 昭和六年法律第九号(特別会計における営繕費に関する法律)の一部を次のように改正する。
第二項但書を削る。
第七條 昭和七年法律第八号(昭和七年度以降國債償還資金の繰入の一部停止に関する法律)の一部を次のように改正する。
第一項中「三分ノ一以上トシ同法第二條ノ二ノ規定ニ依ル元金償還資金ノ繰入ハ之ヲ爲サザルコトヲ得」を「三分ノ一以上トス」に改める。
第八條 昭和二十一年法律第五十五号(帝國鉄道会計又ハ通信事業特別会計における昭和二十一年度の経費支弁のための借入金等に関する法律)の一部を次のように改正する。
第一項中「二十五億五千二十万円」を「四十二億七千四百七十万円」に、「八億六千四百八十万円」を「十五億三千四十万円」に改め、同法に次の一項を加える。
從前の帝國鉄道会計收益勘定おける第項の借入金を以て支弁する経費で、年度内に支拂の義務が生じ昭和二十一年度内に支出を終らないため國有鉄道事業特別会計法附則第五條の規定により昭和二十二年度に繰り越して使用する場合は、その繰越額の財源に充てるため借入金をなすことができる。但し、第一項の規定による借入金の額を通じて同項の制限額を越えてはならない。
第九條 昭和二十一年勅令第百十号第三條第二項の規定により一般会計の所属となる経費の財源の不足を補うため、國は、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
前項の規定による公債及び借入金の限度額については、予算を以て、國会の議決を経なければならない。
昭和二十一年勅令第百十号第三條第二項の規定により一般会計の所属となるべき経費及びその他の経費に國庫金を一時繰替使用したことに困り生じた國庫出納上の不足を補うため、國は百億円を限り、日本銀行から借入金をなすことができる。
第十條 昭和二十一年度末現在の学校特別会計法第五條の規定に基く大学及び学校の資金及び同法第十七條の規定に基いて大学及び学校の資金として整理してきたもので現金及び有價証券を以て保有するものは、これを一般会計所属の資金とする。
前項の資金は、これを大学及び学校資金という。
大学及び学校資金は、文部大臣が、法令の定めるところに從ひ、これを管理する。
大学及び学校資金は予算の定めるところにより、これを使用することができる。
大学及び学校資金に属する場合は、これを大藏省預金部に預け入れなければならない。
前二項に規定するものの外大学及び学校資金の運用及び使用に関し必要な規定は、政令でこれを定める。
第十一條 帝國大学その他の文部省直轄の大学及び学校における奬学を目的とする寄附金は、これを命令の定めるところにより、当該大学又は学校に交付し、総長若しくは学長又は学校長に経理を委任することができる。
学校特別会計法第十條の規定により経理を委任した奬学を目的とする寄附金の昭和二十一年度現在の支拂残額は、これを前項の規定により経理を委任したものとみなす。
第十二條 この法律の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
附 則
第十三條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
但し、第五條、第八條及び第九條第三項の規定は、公布の日からこれを施行する。
第十四條 公債金、爲替交易調整及び学校の各特別会計の昭和二十年度分の歳入歳出決算並びに昭和二十一年度分の歳入歳出の出納及び決算等については、旧法は、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
第十五條 公債金、爲替交易調整及び学校の各特別会計廃止の際にこれら各特別会計に属する決算上の剩余、資金(学校特別会計の資金については、現金及び有價証券を除く。)又は権利義務は、これを一般会計に歸属せしめる。
第十六條 昭和二十一年度における学校特別会計歳出予算中年度内に契約をなし、出納の完結までに支出を終らなかつた経費の金額については、財政法第四十三條の規定により、これを一般会計に繰り越して使用することができる。
第十七條 特殊財産資金特別会計の会計年度は、昭和二十二年三月三十一日までの期間を以て、一会計年度とする。
特殊財産資金特別会計の歳入歳出の出納に関する事務は、政令の定めるところにより、昭和二十二年七月三十一日までに、これを完結するものとする。
特殊財産資金特別会計の廃止の際これに属する資金及び権利義務は、これを一般会計に帰属せしめる。
内閣は、特殊財産資金特別会計の歳入歳出決算を作成し、昭和二十一年度の一般会計の歳入歳出決算とともに、これを國会に提出しなければならない。
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企業再建整備法等の一部を改正する法律案
第一條 企業再建整備法の一部を次のように改正する。
第五條第一項中「資本金」を「指定時現在の資本金(以下資本金といふ。)」に改める。
第六條第七号中「又はその資産」を「若しくはその資産」に改め、同号中「設立する場合」の下に「又はその資産の全部若しくは一部の出資若しくは讓渡を受けるため資本を倍額以上に増加する会社にその資産を出資若しくは讓渡する場合」を加える。
第七條第二号中「旧債権のうち」の下に「命令で定めるものを除くの外」を加え、同條に左の一項を加える。
前項第一号又は第三号の規定により計算した負担額の各株式についての株主の負担額については、命令の定めるところによる。
第八條第一項及び第二項中「命令を以て定める」を削る。
第十八條の二 第十條の規定により決定整備計画に定められた債務の承繼に関し異議のある当該債務の債権者は、第十五條第一項又は第二項の規定による認可の日から一箇月以内に、特別経理株式会社にその旨を述べることができる。
商法第百條第二項及び第三項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
前二項の規定は、決定整備計画に定める合併又は資本の減少に関し異議のある債権者に、これを準用する。この場合においては、商法第百條第一項(同法第三百七十六條第二項において準用する場合を含む。)の規定は、これを適用しない。
特別経理株式会社は、第一項の期間満了後でなければ資産の出資、合併又は資本の減少をすることができない。
第十九條第一項中「会社経理應急措置法第十四條第一項の旧債権は、」の下に「命令の定めるところにより、」を加える。
第二十條第二項中「乃至第十八條」を「乃至第十八條の二」に改める。
第二十一條第二項中「及び前條」を「、第十八條の二及び前條」に改める。
第二十二條中「(第二十條第二項及び前條第二項」を「(第二十條第二項、前條第二項及び第五十四條の二第二項」に改める。
第三十一條中「特別経理株式会社が、決定整備計画に定めるところにより、第二会社を設立する場合」を「第六條第七号の規定により決定整備計画に定めるところにより行ふ第二会社の設立又は資本の増加の場合」に改め、「及び第百八十五條乃至第百八十七條の規定」を「、約百八十五條乃至百八十七條、第三百五十三條、第三百五十四條第二項及び第三項並びに第三百五十五條の規定」に改める。
第三十四條第三項中「第二項」を削り、同條第二項を次のように改める。
清算若しくは破算手続中の特別経理株式会社、決定整備計画に定めるところにより解散する特別経理株式会社又は株金全額の拂込のある特別経理株式会社であつて特別損失のないもの若しくは決定整備計画の定めるところにより特別損失の額の全部を繰越缺損として処理するものを徐くの外、特別経理株式会社は、命令で定める額を下らない額の資本を減少しなければならない。
第三十九條 第八條の規定による評價換により營業用の固定財産に附せられた價額は、当該財産については、これを商法第二百八十五條に定める取得價額又は製作價額とみなす。
会社の資産の讓渡に因る益金で命令で定めるもの、第八條の規定による資産の評價換に因る益金、債務の消滅に困る益金及び資本の減少に因る益金については、命令の定めるとことにより、他の法令の規定にかかはらず、法人税法による各事業年度の普通所得、営業税法による各事業年度の純益又は特別法人税法による各事業年度の剩餘金の計算上、これを益金に算入しない。
第四十條の二 特別経理株式会社については、指定時を以て終了する事業年度に続く事業年度は、他の法令又は定款の規定にかかはらず、旧勘定及び新勘定の併合の日(第三十六條第一項第一号但書の規定に該当する場合においては、第十五條第一項又は第二項の規定による認可の日)を以て終了するものとする。
前項の規定による事業年度に続く事業年度は、当該会社についての法令又は定款の規定により同項の日後最初に到來する事業年度の末日(その末日が、同項の日後三箇月以内に到來する場合には、次に到來する事業年度の末日)を以て終了するものとする。
第五十四條の二 特別経理株式会社及び第五十二條の規定の適用を受けるものを除くの外、戰時補償特別税を課せられた会社又は在外資産を有する會社であつて整備を必要とするものは、命令の定めるところにより、整備計画を立案し、主務大臣に認可を申請することができる。
第五條第二項、第六條(第一号、第四号、第八号、第十号、第十一号、第十三号及び第十五号乃至第十七号を除く。)、第十條第二項、第十三條乃至第十五條、第十八條、第十八條の二、第二十條、第二十一條、第三項、第二十二條、第二十三條、第二十七條、第二十八條第三項及び第四項、第二十九條、第三十一條、第四十一條、第四十三條並びに第四十九條の規定は、前項の場合に、これを準用する。この場合において、これらの規定中「特別管理人」とあるのは「取締役」と、第六條第七号中「第十條」とあるのは「第五十四條の三」と読み替へる。
第五十四條の三 前條第一項の規定により整備計画の認可を申請する会社が資産の全部又は一部を出費する場合には、その出資を受ける者は、命令の定めるところにより、當該會社の債務の全部又は一部を承繼する。
第五十六條第四号中「第四十三條」の下に「(第五十四條の二第二項において準用する場合を含む。)」を加える。
第五十七條中「第四十一條第二項」及び「第四十九條第二項」の下に「(第五十四條の二第二項において準用する場合を含む。)」を加える。
第六十條中「及び第二十一條第二項」を「、第二十一條第二頃及び第五十四條の二第二項」に改め、「第四十一條第一項」及び「第四十九條第一項」の下に「(第五十四條の二第二項において準用する場合を含む。)」を加え、「第三十九條第二項の規定に基いて發する命令又は」を削る。
附則第一項の次に左の一項を加える。
第四十條の二の規定にかかはらず、法人税法の適用については、定款に定める事業年度の終了の日において事業年度が終了したものとみなす。
第二條 会社経理應急措置法の一部を次のように改正する。
第七條第七項中「會社財産」を「財産」に、同項中「當該會社財産」を「當該財産」に改める。
第十五條に左の一項を加える。
特別經理會社の解散、合併及び組織變更については、この法律及び他の法令にかかはらず、命令を以て別段の定をなすことができる。指定時後合併する會社の一方又は雙方が特別經理會社である場合において、合併後存續する會社であつて特別經理會社でないもの又は合併に因り設立する會社についても、同樣とする。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。但し、企業再建整備法第四十條の二の規定は、同法施行の日から、これを適用する。
理 由
特別経理株式会社の資産の出資を受けて資本金を二倍以上に増加する會社を第二会社とする等のため、企業再建整備法等の一部を改正する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=52
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053・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) きわめて短い時間をいただきまして、ただいま議題となりました諸法案につきまして、ごく簡單に御説明を申し上げたいと存じます。
〔副議長退席、議長着席〕
初めにまず國有財産法の一部を改正する法律案について御説明を申し上げます。國有財産法は、國有の不動産その他一定の動産及び權利の管理處分に關し、必要な規定を定めた法律でございますが、今囘この法律の一部を改正致しまする理由は、第一に、新憲法の實施に伴うものでありまして、現行規定によりますと、國有財産は帝室用として必要ある場合には、これを無償讓渡または無償貸付等ができることと相なつておりますが、これらはすべて新憲法の趣旨に則つて改める必要が生じたのであります。第二に、國有財産の運營のいかんは、財政上、はたまた國民經濟上、重要な關係をもつておりますので、これが管理に萬全を期するとともに、その處分にあたつても、これを嚴正、適實に行う必要上、國有財産所管廳の權限を明確にする一方、讓與、無償貸付等の財政收支に密接な關係がある事項につきましては、法律によつて、具體的にこれをなし得る場合を定めることとする等、所要の改正をいたす必要があるのであります。
以上は、終戰後の新事態に即するための、現行國有財産法についての應急的な必要最小限度の改正でありますが、現行國有財産法は、立法後相當の年數を經過いたしており、新情勢に必ずしも即應しない面もありますので、明年度においてこれに根本的檢討を加え、新事態に應ずる國有財産制度を確立するとともに、これに關する法制を整備いたしたいと存ずる次第であります。これがため政府は内閣に國有財産法制調査會を設けまして、國有財産に關する法制を調査立案せしめ、これを次の國會の常會に提出することとするため、これに必要な規定を今囘の改正法律案においたのであります。
次に、相續税法を改正する法律案について御説明を申し上げます。先般所得税その他に關する税制改正法律案が上程されました際説明致しましたごとく、日本國憲法の施行に伴う相續制度改正の大勢、その他現下の諸情勢の推移に即應いたしまして、相續財産に對する課税の整備及び強化をはかるとともに、贈與財産に對する課税を擴張するため贈與税を創設し、併せて兩税について申告納税制度を採用することとし、本法律案を提案することといたした次第であります。
次に改正の内容について、ごく手短かに説明いたします。まず相續税について申し上げますると、今囘の改正の要點は、第一に民法の一部改正に伴い、家督相續と遺産相續の別による税率の區分を廢止することといたしました。被相續人と相續人、受遺者等との親疎の別に從い、税率を三本建とし、税負擔に若干の差等を設けることといたしたのであります。第二に、相續税の計畫的な負擔輕減を防止する等、課税の適正を期するため、相續税の課税にあたりましては、相續財産と見なすべきものの範圍を擴張整備することといたしました。たとえば相續開始の直前になされた贈與につきましては、現行法におきましては相續開始前一年以内に、被相續人がなしたる贈與だけに相續税を課税しておるのでありますが、今囘これを相續開始前二年以内にいたしました贈與にまで及ぼすことといたしたのであります。第三に、被課税財産の範圍を限定するとともに、最近における物價騰貴の状況等に鑑みまして、非課税として扱う金額の限度について、所要の調整を加えることといたしたのであります。すなわち現行法においては、公益事業に對する贈與財産及び遺贈財産は、すベてこれを課税外においたのでありますが、今囘はその相手方を限定いたしまして、府縣市町村等に對する分は全部課税外といたしますが、一般の公益事業に對する分は、一定額以下の金額だけを課税外におくことといたしたのであります。他面被相續人の死亡により、相續人その他の者が取得する生命保險金及び退職手當金等につきましては、郵便年金等をも含めまして、總額三萬圓までの金額については課税しないことにいたしたのであります。
第四に、家督相續については二萬圓、遺産相續について三千圓の免税點の制度を、一律に五萬圓の基礎控除の制度に改めるとともに、この際扶養家族控除の制度を廢止することといたしたのであります。
次にこのたび創設されました贈與税について申し上げます。贈與税については、現行の贈與に對する課税と相當異なる内容を盛ることといたしました。その第一は、贈與財産に對する課税を擴張したことであります。すなわち現行法におきましては、贈與に對する課税は、親族間に行われたものに限り、遺産相續が開始したものとみなして、相續税を課税してまいつたのでありますが、今囘はこれを改正いたしまして、相手方のいかんを問わず、すべてこの贈與に對して贈與税を課税するとともに、納税義務者を受贈者から贈與者に改めることにし、もつて相續税の補完税たる機能を十分果させることといたしたのであります。その二は、非課税財産の範圍につき概ね相續税と同樣の改正を行うとともに、その課税を、後に申し述べまする申告納税制度の採用等とも關連して、暦年課税といたしたことであります。その三は、贈與税が相續税の補完税たる點に鑑み、その課税標準を一囘ごとの贈與財産の價額とせず、贈與者の一生を通じての贈與財産の累積額とし、これに對して五萬圓の基礎控除を行い、殘額につきましては相續税の第三種税率と同一の超過累進税率を適用いたしまして、これによつて算出した金額から前年分までの贈與財産の合計額に對する贈與税相當額を控除いたしまして、その税額を算出することといたしたのであります。
次に相續税及び贈與税を通じて、財産の評價に關する規定を整備するとともに、兩税を通じて申告納税制度を採用することといたしました。現在及び將來における諸情勢の推移に即應いたしまして、自主的なる納税制度を導入することといたしました。以上のほか、この際所要の改正を行うことといたしたのでありますが、これにより相續税の收入見込額は、贈與税をも合わせ、初年度約一億六千五百萬圓、平年度三億二千三百萬圓となる見込みであります。
次に作業會計法を改正する法律案、燃料局特別會計法を改正する法律案、造幣局特別會計法の一部を改正する法律案について、一括して御説明申し上げます。
從來專賣局及び印刷局の事業、アルコール專賣事業及び造幣局の事業につきましては、それぞれ作業會計法、燃料特別會計法及び造幣局特別會計法に基きまして、經理いたしておるのでありますが、これらの會計におきましては、特別會計としての獨立性が若干稀薄であり、たとえばこれらの特別會計に屬する固定資本及び据置運轉資本は、一般會計の支辨と相なつておるのでありまして、またその經理につきましては、現金の收支を主とする建前でありまして、ただ据置計算におきまして、複式簿記法による計算をも加味しておるの状況でありまして、未だ正確に損益を把握しおるとは申せない憾みがあつたのでございます。今囘これらの事業を企業的に經理することを可能ならしめるために、まずこれらの會計におきまする資本的支出を、その會計の負擔とすることといたすとともに、これらの財源としての公債借入の途を開き、他面國有鐵道事業特別會計等におけると同樣、いわゆる發生主義の經理を採用いたさせることといたしたのであります。
次に國有林野事業特別會計法案について申し上げます。今囘内地、北海道の國有林及び御料林を、一元的に經營することといたしますに際しまして、從來一般會計において經營しておりました國有林野の管理經營の事業につきまして、一つの特別會計を設置し、その經理方法といたしまして、いわゆる發生主義に基いて經理いたしまして、もつてその經營の成績及び財政状況を明らかならしめようといたすものであります。
次に、勞働者災害補償保險特別會計法案について申し上げます。今囘別途提出の勞働者災害補償保險法に基きまして、國が管掌いたします勞働者災害補償保險事業につきましては、その性質上特別會計を設置するのを適當と認めまして、この特別會計法案を提出いたしたのであります。
次に、公債金特別會計法外四法律の廢止等に關する法律案につきまして簡單に申し上げます。この法案の内容は、特別會計の廢止に關するもの、特別會計の一部改正等に關するもの、借入金の借入れに關するもの等でありますが、まず特別會計の廢止に關するものについて申しますれば、これは現行特別會計のうち、比較的その設置の理由を失うに至りましたところの公債金、爲替交易調整、學校及び特殊財産資金の四特別會計竝びに大正十三年法律第十號を廢止いたさんとするものであります。次は特別會計法の一部改正等に關するものでありまするが、そのうちまず第一は、今囘別途提出いたしておりまする財政法の制定に伴う國債整理基金特別會計法及びこれに關連する法律の一部改正であり、第三は、勞働者の災害補償に關しまする制度の改正がありましたのと、健康保險の積立金を一部切り崩し、福祉施設費に充てる途を開く必要がありますとに基きまして、厚生保險法の一部を改正するものであります。第三は、食糧管理及び薪炭需給調節の兩特別會計の運營を圓滑にするため、兩會計における證券の發行または借入金の借入れの限度額を擴張いたさんとするものであります。次に、帝國鐵道及び通信事業の兩特別會計における昭和二十一年度の業務勘定における追加經費、または帝國鐵道會計における歳入不足の財源に充てるための借入金の増額、さきに緊急勅令に基きまして、臨時軍事費特別會計を廢止し、その整理を一般會計に引繼ぐことといたしましたのに伴いまして、將來整理のため必要となるべき公債及び借入金をなし得る途を開きおくとともに、その間における國庫金出納上の不足を補うために、借入金をなし得ることにいたそうとするものであります。
次に、企業再建整備法等の一部を改正する法律案について御説明を申し上げます。企業再建整備法の實施につきましては、先般中央企業再建整備委員會におきまして、資産評價に關する基準、末拂込株金の拂込徴收の方法等に關する要綱の決定を見まして、いよいよ具體的なる實行の段階にはいるに至つたのでありますが、その後の情勢に鑑みまして、企業再建整備法及び會社經理應急措置法のうち、若干改正する必要を生じましたので、ここに本法案を提出いたした次第であります。
次に、本法案につきまして、改正の主要なる點を簡單に御説明申し上げます。改正の第一點は、特別經理株式會社の特別損失を負擔すべき資本金を、指定時、すなはち昨年八月十一日午前零時現在の資本金とし、指定時後に新たに資本を増加いたしました場合には、増資新株は特別損失を負擔しないことを明らかにいたしたことであります。第二は、第二會社の範圍に、新たに特別經理株式會社の資産の全部または一部の出資、または讓渡を受けるため資本を倍額以上に増資する會社を加え、かくのごとき會社をも第二會社として取扱い、その増資手續等の簡易化をはかることといたしておるのであります。第三に、在外負債、未拂込株金の拂込請求權等の舊債權につきましては、一律にこれを一般の舊債權と同樣に取扱うということは、必ずしも適當でない點がありますので、命令をもつて別段の規定を設け、一般の舊債權と若干異なる取扱いをなし得るようにいたしたのであります。第四は、特別經理株式會社の事業年度の延長であります。すなわち特別經理會社が整備計畫の認可を受けて、債權債務の關係を整備確定いたしまするまでの間は、會社の決算には未確定の分子が少くなく、その間において從來通り毎決算期ごとに決算をするということは、相當困難な事情にあると考えられまするので、指定時、すなわち昨年の八月十一日から、整備計畫の認可等のあります日までを一つの事業年度とし、その間に到來いたしますところの、會社の定款で定められた決算期における決算は、すべてこれを省略せしめようとするものであります。第五に、特別經理會社でない會社でありましても、企業の再建整備上必要がある場合におきましては、特別經理會社と同樣、整備計畫の認可を申請することができるものとし、認可を受けました場合には、その整備計畫は、特別經理會社の整備計畫と同樣の效力を有するものとして、簡易な手續によつて、これらの會社の整備再建を行い得る途を開こうとする點であります。その他、減資の方法、資産の評價換による評價益に對する課税等の點につき若干の改正を加え、また會社經理應急措置法につきましても、一、二の必要な改正を行おうといたしております。
以上九法律案につき、提案の理由を簡單に説明いたしました。何とぞ速やかに御審議の上、御協贊あらんことをお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=53
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054・山崎猛
○議長(山崎猛君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=54
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055・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 日程第一、第三ないし第九の八案を一括して、政府提出昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案委員に、日程第二は、政府提出所得税法を改正する法律案外六件委員に併せ付託せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=55
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056・山崎猛
○議長(山崎猛君) 小澤君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=56
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057・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
これにて議事日程は議了いたしました。次會の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散會いたします。
午後五時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X02219470320&spkNum=57
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