1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十二年三月二十九日(土曜日)
午後二時四十六分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第二十九號
昭和二十二年三月二十九日
午後一時開議
第一 衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續
第二 船舶公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 財政法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 會計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 石油配給公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 配炭公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 産業復興公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 貿易公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 價格調整公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 地方競馬法の一部を改正する法律案(小川原政信君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
〔朗讀を省略した報告〕
一、政府から受領した答辯書は次の通りである。
元軍用航空基地鹽田化に關する質問書に對する答辯書(石橋大藏大臣)
(以上三月二十七日提出)
━━━━━━━━━━━━━
〔參 照〕
元軍用航空基地塩田化に関する質問主意書
右成規により提出する。
昭和二十二年二月二十八日
提出者 二階堂 進
元軍用航空基地塩田化に関する質問主意書
一、元軍用航空基地中海岸地帶に在るものは、これを塩田化し、製塩業を営ましめ、目下不足せるわが國の塩の充足を図ることに決し、これを民間に貸し下げたと聞く。その箇所と面積は何程であるか、具体的に示されたい
二、右塩田化による塩の生産高予定は、当初何程で、そして本年一月末までに何程を生産したか
三、政府は製塩業に対し多額の補助をすることに決し、既に相当額補助せられたと聞くが、本年一月末までに補助した金額と、今後の予定金額はどれ程であるか
四、右國庫補助は本年二月六日までに設備の完成しないものには、これを打ち切る予定であつたと聞くが、それは事実であるか、そして実際はどうなつたか
五、政府が製塩補助政策を採つたために、民間ではその多額の補助金取りを目当に、元航空基地等を借り下げて仕事を始めたが、補助金打切りのことが定められたためにろうばいし、その期限までに表面的完成を急ぎ、ために極めて粗雜な工事が行われている所もあると聞く、果してそうだとすれば、それらの事業を精査することなく補助金を交付するようなことがあれば、由々しきこととなると思うが、政府はこれが検査並びに補助金交付等に関し、後日問題を起すことなきを期し得るか
六、産業復興に関し、眞面目な事業も、財界の現状からその資金に苦しむ折柄、政府補助事業として製塩事業だけは多額の費用が浪費せられている向もあり、そのために地方の賃金物價等の高騰を來たした事実もあると聞くが、政府はこれらの事実を認めるかどうか
七、前記元航空基地跡が塩田化し、その完成に対し補助を與えたとしても、將來外塩の輸入増加する折、採算がはなはだしく惡くなれば、政府はこれに対して更に助成の策を講ずる方針であるかどうか
八、政府はこれらの土地が、他の國家有用の事業に充てられることが明らかであつて、そしてその塩田のあることが、その事業の妨げをなすならば、その塩田を廃止せしめる方針を執るかどうか。例えば鹿兒島縣指宿町所在、元海軍航空基地跡の如きはその例である。即ち同地はわが國の將來にとつて最も重要なる役割をなす観光事業、就中國際観光事業の中心地たる所であるにかかわらず、地元の事情を察せず、又地元に諮ることもなく、これを塩田化するために貸し下げられ、そして無理な工事が進められて、観光事業、延いては地方発展の事業を妨げている事実があると聞く。政府は現在及び將來このような事情は、國土計画上精査して善処せられるべきであると思うが、政府の所見はどうであるか
九、政府は右指宿町の事実に対して如何なる所見を有するか。又右場所はこれを塩田とするよりも、観光並びに保健地区として設備することを適当なりとせられているが、政府の所見はどうか、若し又政府の所見はどうでも、地元において観光、特に國際観光並びに國民保健厚生に関する施設をして、地方の発展と國家の將來に寄與したいというならば、他の適当な海岸に、何処にでもできるような塩田はこれを廃止すべきであると思うが、政府の所見はどうか
十、殊に右の地方は廣大なる温泉地域であつて、燃料を要せざる温泉熱利用製塩が盛に行われて來て、將來相当量の塩を生産し得る事実があること(航空基地跡製塩は温泉熱利用でない)從つて該地方には普通の塩田は不経済であり、そして該地方、特に該地区がわが國の將來にとつて重要な役割をなすべき所であることを承知していながら、これが塩田化を認められたものであるかどうか
十一、なお右土地は当該会社に対しては、製塩田用としてのみ使用を許されているのであつて、他の目的のために使用できないものであると言明されたとのことであるが、政府の所見はどうであるか
右質問する。
━━━━━━━━━━━━━
昭和二十二年三月二十七日
内閣總理大臣 吉田 茂
衆議院議長 山崎 猛殿
衆議院議員二階堂進君提出の元軍用航空基地鹽田化に關する質問に對し別紙答辯書を送付する。
衆議院議員二階堂進君提出の元軍用航空基地鹽田化に關する質問に對する答辯書
一、第八軍より鹽田に轉換利用のため日本政府に開放されその後更に製鹽計畫について連合軍最高司令部の承認を得ているものは左記の如くである。
町歩
熊本縣 八代飛行場 九四、二
三重縣 香良州飛行場 一五、五
徳島縣 徳島飛行場 一五、〇
兵康縣 加古川飛行場 二〇、〇
愛知縣 豐橋飛行場 一五〇、〇
福島縣 磐城飛行場 五〇、〇
大阪府 佐野飛行場 二〇、〇
香川縣 詫間飛行場 三、〇
愛媛縣 西條飛行場 一〇、六
福岡縣 小富士飛行場 一〇、〇
熊本縣 天草飛行場 五、五
福岡縣 曾根飛行場 五二、〇
福岡縣 糸島飛行場 一〇、〇
鹿兒島縣 指宿飛行場 二四、〇
岡山縣 玉島飛行場 四四、五
千葉縣 香取飛行場 三五、〇
計 五五九、三
二、右計畫による生産豫定高は六萬八千瓲餘であり、設備の大部分は既に完成して石炭、電氣の供給をまつて稼動する態勢にある。
三、自給製鹽設備補助金としては
昭和二十年度 一七八、六七〇千圓
昭和二十一年度 六二四、六五一千圓
昭和二十二年度 四八九、二〇〇千圓
計 一、二九二、五二一千圓
であるが、右のうち昭和二十年度分及び二十一年度分の一部は既に交付濟である。
二十二年度分は今議會において豫算化されることとなつている。
四、今後交付すべき補助金は原則として本年二月六日迄に一定の能率條件をもつて完成したものにのみ交付することになつているが、舊飛行場鹽田化の分については例外として若干完成期限の延長が認められている。
五、自給製鹽業者については豫めその設備計畫、資金計畫を政府において審査して承認し、設備完成の後は愼重に實態調査を行つて補助金交付條件に該當しているか否かを認定し、補助金額については中央、地方にある官民合同の補助金査定委員會に諮つた上でこれを決定する等、努めて嚴正を期している。
六、製鹽事業のため地方の賃銀、物價が昂騰したという事實は認められない。
七、舊飛行場の鹽田化は鹽の需給上極めて緊要なものとして發足したのであり、現在においても鹽の需給關係は極度に逼迫しているので、折角完成した鹽田はこれを十分に稼動させて鹽不足の緩和に資して行きたい。
八乃至十、指宿町所在の飛行場を鹽田化するについて地元に起つた問題は、既に昨年三月當事者間に圓滿解決を見た。
十一、製鹽用として必要な土地は當該目的に優先的に使用させるがなお餘剩があれば他の用途に使用させるも差支えない意見である。
右答辯致します。
昭和二十二年三月二十七日
大藏大臣 石橋 湛山
━━━━━━━━━━━━━
一、昨二十八日貴族院から囘付された政府提出案は次の通りである。
地方自治法案
一、議員から提出された議案は次の通りである。
農事協同組合法案
提出者
鈴木周次郎君 宮村又八君
小川原政信君 青木泰助君
野溝勝君 深津玉一郎君
宮澤才吉君 葉梨新五郎君
稻本早苗君 岩本信行君
佐伯忠義君 安部俊吾君
財政法案(政府提出)に対する修正案
提出者 川島金次君
(以上三月二十八日提出)
一、昨二十八日衆議院規則第十五條に依り議長において議席を次の通り指定した。
一二一 長野重右ェ門君
一、昨二十八日衆議院規則第十五條但書に依り議長において議席を次の通り變更した。
一〇 仲子隆君
一一 大津桂一君
一二 伊藤幸太郎君
一四 布利秋君
一八 久芳庄二郎君
一九 丸山修一郎君
二〇 久保猛夫君
三〇 二階堂進君
五四 藤本虎喜君
六八 丹野實君
九〇 米倉龍也君
九一 大島多藏君
二九六 水谷昇君
一、昨二十八日議長において次の通り常任委員辭任の認可があつた。
第四部選出決算委員
上林山 榮吉君
一、昨二十八日次の通り特別委員の異動があつた。
石油配給公團法案(政府提出)外四件委員
辭任松尾トシ君 補闕大矢省三君
辭任細田綱吉君 補闕鈴木茂三郎君
地方競馬法の一部を改正する法律案(小川原政信君外五名提出)委員
辭任小池新太郎君 補闕菅原エン君
辭任宮澤才吉君 補闕太田秋之助君
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(大野伴睦君外一名提出)外三件委員
辭任池上隆祐君 補闕木下榮君
辭任佐伯忠義君 補闕小川半次君
辭任平野力三君 補闕加藤鐐造君
辭任田原春次君 補闕辻井民之助君
辭任山村新治郎君 補闕坂東幸太郎君
辭任稻本早苗君 補闕大久保傳藏君
一、昨二十八日委員長理事互選の結果次の通り當選した。
衆議院議員選擧法の一部を改正する法律案に對する修正案(大野伴睦君外一名提出)外三件委員
委員長 山口喜久一郎君
理事
神田博君 椎熊三郎君
淺沼稻次郎君 石田一松君
中野四郎君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=0
-
001・山崎猛
○議長(山崎猛君) これより會議を開きます。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=1
-
002・綿貫佐民
○綿貫佐民君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、伊藤卯四郎君提出、石炭増産に關する緊急質問を許可されんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=2
-
003・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=3
-
004・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。政府はこの議事日程變更に同意せられました。よつて日程は變更せられました。
石炭増産に關する緊急質問を許可いたします。提出者伊藤卯四郎君。
――――◇―――――
石炭増産に關する緊急質問(伊藤卯四郎君提出)
〔伊藤卯四郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=4
-
005・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 マツカーサー元帥から吉田内閣總理大臣にあてられました書簡に對して、吉田總理大臣はその囘答書に、昭和二十二年度には石炭生産三千萬トンを達成して、産業經濟の基礎を建直すと約束されたことが、本日の新聞に發表されておるのであります。私はこの石炭増産に關しまする緊急質問を、主として吉田總理大臣にいたしたいと思うのであります。
政府は石炭廳を内閣に移管することを閣議で決定されまして、もはや二箇月餘になりまするが、未だその處置が明確にいたされておらぬのであります。この明確にいたされない理由、同時に長引いておるところの理由を、總理大臣に伺いたいと思うのであります。
從來内閣に移管をされました諸機關におきまして、その目的を達成し、成功し得たものは、ほとんどないと言つて差支えないのであります。(拍手)それは何ゆえであるかと言えば、民間との間の血のつながりがなくなりまして、さらに象牙の塔に立てこもつてしまうというような結果になつておるのであります。そういう點から、各省との間の協力も得られなくなりまして、ほとんど失敗に終つておるということは、これはもはや、あまりにも試驗濟みになつておるのである。
石炭廳は作業廳でありまするから、現場と一身同體になつておるところのものでなければならぬのであります。さらに國家の生産の目的達成のために指導するところの、きわめて現場の機關でなければならぬということが大事であります。この點に對して、總理大臣はいかようにお考えになつておられるか、お伺いしたいのであります。
さらに石炭廳長官を國務大臣にするということが、しばしば發表されておるのでありますが、未だその國務大臣にするということの人選も決定をしておらぬようであります。その人選決定は、何ゆえに遲れておるのであるか。もはや發表されてから、これも二箇月になるようでありまするが、何ゆえにその決定されたることが遲れるのであるか。さらに國務大臣とされるということは、單に閣議に出席をして發言をさせるというだけであるかどうか。それだけならば、あまりに大した意義もないと思うのであるが、石炭廳長官を國務大臣にするというについては、どういうような權能を石炭行政の上においてもたすという所信をおもちであるかということを、お伺いをしておきたいのであります。
さらに石炭廳内閣移管の問題に關しましては、これはとかくの問題が起されておるようであります。たとえばこの問題に關連をいたしまして、當時の奧田商工次官は、憤慨をして辭職をしたということであります。さらにまた現石炭廳の菅長官も、同じくこの問題に關連をして、憤慨をして辭表を提出しておるということであります。さらに今日石炭廳におきましては、現菅長官も病氣と稱しまして、辭表を出しましてから二箇月近くも、ここに出勤をいたされておらぬのである。聞くところによれば、昨日あたりから出勤をしておられるということでありますけれども、しかしながらこの辭表の問題は解決をいたしておりません。さらに石炭廳の次長であります岡松氏も、商工次官に榮轉をされましたので、今日石炭廳では、長官も以上の如き實情にある。
さらに何か二、三日前に、商工省總務局長を石炭廳の次長の事務取扱いにされておるという話も伺つておるのでありますけれども、石炭を三千萬トン出さなければならないというこの重大なるところの生産廳におきましても、長官も以上のような状態である。次長も以上のような状態である。かような状態で、三千萬トンの石炭を出すという行政官廳として、どうしてその事務を完全に遂行することができるであろうか。(拍手)この點につきまして、吉田總理大臣は、行政上の處置に對して、どういうお考えをおもちになつておるかをお伺いしたい。
石炭關係の民間の諸君は、石炭廳を訪ねて、坊主のおらないお寺に參つたようなことで、物足らぬことおびただしいということを言つておるのである。かような状態でどうして三千萬トン計畫が達せられるであろうか。民間にどうしてその信頼をもつてやらすことができるであろうか。この行政上の處置の點につきまして、總理大臣はいかようにお考えになつておるかを、明確にこの際お伺いをいたしておきたいと思うのであります。
さらに私ども仄聞するところによれば、商工省といたしましても、石炭廳を内閣に移管することはおもしろくない、内閣に移管をして、姨捨山の状態に石炭廳をすることはおもしろくない、そういうことでは、とうてい三千萬トン増産計畫は達せられぬであろうというところから、石井商工大臣初め商工省内においても、石炭廳の内閣移管に對しては、相當強い反對のあるということを、私どもは聞くのである。この石炭廳内閣移管問題に對しては、相當内部にデリケートな問題があるように思われるが、そういう點から、石炭廳の内閣移管の問題、長官を國務大臣とする問題、以上私が申し上げましたような諸問題について、内部的なそうした諸事情の問題について、吉田總理大臣は、この問題の處置、解決をいたされ得ないのではないかと思うが、この疑問のある點に對して、この際明快なる總理大臣の御答辯を煩わしたいと思うのであります。
さらに石炭廳の根本問題は、石炭行政を一元強化することにあると思うのでありますが、總理大臣はこの點についていかようにお考えになつておられるかをお伺いをいたしたい。現在の石炭廳の石炭行政力をもつてしては、石炭増産の計畫は何一つ今日未だに立つておらぬと極言しても差支えございません。たとえば坑木の問題につきましては農林省、あるいは輸送の問題は運輸省、食糧の問題は農林省、その他經濟問題等の點につきましても、各省にそれぞれまたがつてあるのであります。
そういう點から、石炭増産のために、その増産計畫を遂行しようといたしましても、各省との間にあまりに窓口が多くまたがり過ぎておりますので、容易にこうした問題等の解決ができないために、石炭増産の計畫は、机上プランそのものを持續されておるという現状である。こういうような状態をもつてしては、石炭を明二十二年度において三千萬トンを出すということは、實際問題として、われわれはとうてい不可能であると考えざるを得ないのである。この點に對して、總理大臣はどういうようにお考えになつておるかを、私は明快にお伺いをいたしたいのであります。
さらに各省との關係を見ますと、石炭を増産しなければならないという點に對しては、異口同音に言われております。ところが各省の關係においては、舊態依然として、役所はセクシヨナリズムをもつておるのであります。そういう點から、各省におけるところの石炭増産に對する協力態勢というものは、ほとんど現實において行われておらぬというのが、今日の各省關係のなわ張り根性の上に築かれたセクシヨナリズムの醜態であるということを言わざるを得ないのであります。この點に對して吉田總理大臣は、こうした役所間におけるところの對立、協力の足らない、このセクシヨナリズムを、いかに石炭行政のために一元強化、解決しようという御方針であるかを伺いたいのであります。
さらに政府は、この坑木の問題等につきまして、昨年の秋ごろ、現在の坑木の單價をもつてしては、とうてい坑木業者が引合わないから、坑木を出さないであろう、坑木を値上げをしてやらなければならぬであろうということで、昨年の秋にその値上げの必要性を發表されたのである。もはやそれから六箇月にもなるのであります。ところが今なおその新しい坑木の値段というものを決定してやらぬのである。
そういう點から、坑木業者は坑木を山に伐出しておきながら、あるいは驛頭に坑木を積出しておきながら、それを積んで炭坑に送ろうとしない。そういう點から、炭坑は今日坑木がなくて、採炭ができないでおるのである。ほとんど坑木はその日暮しの状態におかれておるのである。
鑛山におけるところの坑木は、人間が米を食うのと同じ重要性をもつておるのである。坑木がなければ、坑内を一尺も掘ることができない。石炭を一トンも採炭することができない。そういう重要性をもつた坑木に對しまして、以上のような坑木の現状であるならば、とうてい三千萬トンの石炭を出すどころではない。今日一トンの石炭を出すためにも、坑木がなくて困つておる現状である。この坑木の新單價をいかように決定されるつもりであるか。またいつごろまでに新單價を決定して、坑木がスムースに炭坑に配給になるようにされるつもりであるか。この點に對しては、きわめて重要な問題であるから、時間的にこの解決の問題について、私はお伺いいたしたいのであります。
この點に對しては、安本長官はもちろん送られたばかりで、おわかりでありますまいから、吉田總理大臣なり、關係大臣等が、ほんとうに坑木の出てくるような、信頼のおけるところの適正なる單價の問題を、時間的に解決することをお伺いいたしたいのであります。
政府は未だ一囘も石炭の値段というものを決定したことはないのであります。たとえば幣原内閣當時から現吉田内閣におきましても、石炭單價というものを、個々の山に決定してやつたことは、未だ一囘もありません。いわゆる石炭を出せ出せということは言いますけれども、お前のところの石炭は、一トンいくらであるぞという單價を決定して、石炭を掘らしたことはありません。依然としてあてがい扶持であります。あとからそれらに對して、赤字貸金の形で補給をしてやるというか、借金の形でそれらを貸してやるというやり方をしておるのであります。
そういう結果が、有形無形のうちに生産サボとなつて現われておるということは、おそらく關係大臣も御承知であろうと思う。石炭を出せ出せといつても、その單價もきめてやらないで、どうして生産業者の生産意欲を刺激してやることができるであろうか。こういうような無責任な状態をそのままにしておいて、石炭を三千萬トン出すということは、何といつてもわれわれの承服しがたい、政府に重大な責任があると思うのである。(拍手)この點に對して、明二十二年度といつても、もう來月からである。この四月から先の新しい單價を、一トンいくらに決定されるつもりであるか。この點も、きわめて時間的に重大な問題でありますから、明年度の單價決定に對しての明快なるところの、適正單價というものを發表されんことを要望したいのであります。
さらに單價を決定しないばかりではありません。先般最も重大な問題として現われましたのは、本年度平均單價を一トン三百四十六圓と平均線を引いておりましたが、先般これをどういうように個々の炭坑々々に配分をしたかということを見ますと、一割増産をしたところは、單價を一割引いたのであります。二割増産したところは、二割單價を引いたのであります。一生懸命にがんばつて、國家要請にこたえるつもりで石炭を一割増産した。ところが單價を、平均炭價から一割引いたのであります。(「炭價はまだきまつておらぬと言つたじやないか」と呼ぶ者あり)。
これは平均である。個々にきまつておらないで、平均の線を引いておるだけである。その結果、一割増産したところは一割引いた。二割増産したところは二割引いたのである。むしろ増産をしたところには、勤勉の報奬金を出してやるところにこそ、私は増産の意欲というものは起つてくると思うのである。増産をしたところの山々から、その單價を差引くということは、増産したことは、經濟上においては罰則の意味になるのである。こういうことでどうして生産業者に増産を刺激することができるであらうか。(「ほんとうのことを言え」と呼ぶ者あり)ほんとうのことである。議員として良心をもつて、ものを言つておるのであるから、靜かに聽きなさい。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=5
-
006・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=6
-
007・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君(續) さらにこの一割、二割の増産をしたところから、一割、二割という單價を差引いたばかりではない。明年度の計畫を仄聞するところによれば、一割、二割のこの増産に對しては、出るものと豫想をして、いわゆる單價を削減をしたところのものをつくろうとされておるということを聞くのである。こういうような單價のつくり方で、どうして生産業者の増産意欲を刺激することができるであらうか。私は石炭の増産に對しては、増産に順應して、それぞれの報奬金を増額してやるというところに、初めて増産は具體的に實現するものと思うのである。
さらに私はこの賃金問題について、政府は、石炭の増産のためには、勞働者を、一般屋外の勞働者より特にすべての點において優遇するということの發表をしばしばされておるのでありますけれども、現實においては、今日の一般勞働者の賃金より、炭鑛勞働者の賃金というものは、むしろ低いのである。政府は、地上勞働者よりも、坑内勞働者には八〇%の實收を多く與えるということを發表されておるのでありますけれども、一般地上勞働者より、むしろ低いという現状になつておるのであります。
さらにまた厚生施設の面から見ましても、あるいは住宅衞生の點から見ましても、炭鑛勞働者というものは、何ら優遇をされておりません。そういう點から、炭鑛住宅などに行つて見ますならば、今なお炭鑛勞働者の住居は、奴隷の住居にひとしいような状態におかれておるのである。たとえば十戸割の長屋にいたしましても、便所はその端に一箇所しかない。そういう不便を、不自由な、非衞生的な住居に住まわされておるのである。
あらゆるところの炭鑛勞働者の現状の姿を見まして、一般勞働者と比較して、實に悲慘なる生活の現状におかれておるのである。そういう結果は、業者側でも、政府側でも、炭鑛に多くの勞働者が行つて働いてもらうということの方策を盛んに立てて、呼びかけておりますけれども、炭鑛には勞働者がはいつていきません。のみならず、最近に至つては、炭鑛勞働者の移動は、またおびただしいものになつてきておるのである。人ははいつていかない。せつかく行つたものは、定著をしない。移動率が非常にひどい。
こういう状態で、どうして石炭の三千萬トン増産計畫が立てられるであろうか。こういう點からしても、炭鑛勞働者を、賃金の面から見ても、あるいは厚生娯楽の施設から見ても、住宅衞生の諸設備の上から見ても、もつと實際的に優遇するということの方針を政府が決定して、必ずこれを炭鑛々々に行わしめるというところの、強い建設的な指導力をもつてやらぬ限りにおいては、炭鑛に人を呼び、炭鑛に定著をさして働かすことは、できないと私は思つておる。
さらに今日の炭鑛勞働者は、自分の子供だけは炭鑛の坑夫にしたくない、自分の親族の者だけは炭鑛に呼んで働かせたくない、今なおそういう心理状態である。炭鑛の勞働者にそういう氣持をもたしておつて、どうして勞働による生産の根本的方針を立てることができるだろうか。この炭鑛勞働者を優遇するという點について、私は具體的にその方針をお伺いをしたいのである。
先般も既に全國の炭鑛勞働組合が集まりまして、いわゆる全國の炭鑛勞働は、ゼネストにはいるかどうかという危機一發のところにおいて、その交渉二箇月餘にわたつて、ようやく先般解決をして、今假調印をしておるのである。この假調印をされたものは、政府がこれを貸金によつて解決をしてやらなければならなくなつておる。もし政府が解決をしてやることが長びくということになると、容易ならぬことになる態勢を、今なおもつておるのであります。
さらにこれは一箇月、二箇月、三箇月の暫定的な假解決でありますから、四月から以後の解決は、今なお殘されておるのである。こういう點から、四月以後の炭鑛勞働者の賃金、待遇をどうするか。この問題はきわめて早く解決をしてやらなかつたならば、四月以後に至つて、再びまた重大な問題が起つてくるということを思つておるのであります。
こういう點に對して、政府はどういうように炭鑛勞働者を優遇するお考えであるか。四月以後はどういうように炭鑛勞働者の賃金をきめてやられるつもりであるか。この點に對して、炭鑛勞働者が安んじて増産に働くことのでき得るような政府の御方針を、この際お伺いをいたしておきたいと思うのであります。
さらに政府は昨年の夏の議會におきまして、必要なる炭鑛資材に對しては、不自由をさせないということを發表された。そのためには、各炭田別に國立炭鑛用資材倉庫をつくつて、そこから各炭鑛に必要なる資材というものは配分をしてやるということを言われたのである。ところがこの公約は、今なお何ら具體的に著手されておりません。何らこれを實現しようとされておりません。この炭鑛のために重要なる資材というものを、しかも昨年の夏の議會で公約されておきながら、依然としてそのままに放置されてあるということは、なぜであるか。
こういう無責任なことで、一體どうして石炭増産の計畫を遂行することができるか。(拍手)炭鑛に對する資材を解決してやるということに對しての、政府の御方針を伺いたい。昨年の夏の議會で公約された政治的道徳責任を、いかにお考えになつておるか。この際明確にお伺いをいたしておきたいのである。
さらに政府は、石炭單價の生産費の上に、やみ資材というものを認めないということを、しばしば言われておるのでありますが、また實際問題上、やみ資材の値段というものを、石炭生産費に認めておらぬのでありますが、實際は今日各炭鑛は、その大部分の資材は、やみの値段をもつてこれを購入しておるのである。そのほとんどと言つてよい資材というものは、やみで買つておるのである。政府は、やみで買わなくても、完全にいわゆる公定價格によるところの資材を配給してやるという自信を、おそらくもつておられぬであらう。またやつておらぬことを御承知であらう。
そういうことをみずからやつておらぬ。みずから認めておりながら、石炭生産費において、やみの資材の値段を認めないということは、一體どういうわけであるか。公定によつて品物はやらない。やみで買たものは、それを認めない。そういうことで、一體どうして生産者がその生産計畫を立てられるであらうか。どうして生産意欲を刺戟することができるであらうか。こうした矛盾について、何と政府は考えておられるかを、この際明快に御答辯を願いたいと思うのであります。
この資材の問題については、單に業者であるとか、勞働者ばかりが疑惑をもつておるのではありません。商工省管下にありますところの地方商工局、あるいは石炭部、現場におります官吏の諸君も、政府のこういうような資材のやり方では、自分たちは生産に對して責任がもてぬというのであります。そういう點から、地方官吏は中央政府を信頼しておらぬのである。從つて炭鑛經營者も、勞働者も、閣議決定とか、政府の發表というものは、ことごとく不渡り手形であるということを、もはや信じておるのである。
そういうような疑いをもたせておつて、政府のもとにある官吏に、政府を信頼させない。業者も、勞働者も、信頼しておらない。そういうことで、どうして政府が増産の生産命令を出し、それが實行されるということができるか。政府はみずからこれを解決せずして、石炭を三千萬トン出せという命令を出す資格があるか。(拍手)この點、責任をもつて關係大臣は御答辯していただきたい。それでなければ石炭は出ません。
さらに食糧の問題等についてでありますが、既に炭鑛には特別に食糧をやるということを言われておりますし、また本年度におきましても、占領軍の厚意により、炭鑛に特別なる放出食糧が充てられてあつたことは、われわれも深く感謝をしておるところであります。ところが、炭鑛には必ず食糧は完全にやると言われておりますけれども、既に北海道の炭鑛には、遲配缺配が起つておるのである。
今北海道の炭鑛の經營者なり勞働者が、不安にして心配しておるところは、この雪解けになつたならば、必ず炭鑛に働く職員なり勞働者が、食糧不安のために、自分らが山、畑を耕して、また從來のごとく、どつと外に出てしまうであろう、そういうことになれば、炭鑛はまたそのために非常に缺勤者が多くなつてしまつて、いわゆる生産目標、生産計畫は立たなくなるということを心配しておるのである。そういうことで、各炭田とも、食糧の問題に對しては非常に心配をしておるのである。
一昨日のごときも、炭鑛勞働者、炭鑛經營者側の代表が、たくさん商工大臣、農林大臣のところに陳情に押しかけてまいりました。われわれは石炭を出すから、政府は約束の食糧だけは食わしてくれということを、切々として悲壯な陳情をしておるのである。少くとも炭鑛には、二週間なり三週間分の食糧を貯藏しておいてもらいたい、そうすれば、不安のためにみずから職場を放棄して、山を耕したり、畑に行つたりする者がなくなるであろう、眞に安心して自分の職場を守つて、石炭を一トンでも多く出すために、みんなががんばるであろう、そういう方法を講じてくれなかつたならば、食糧のために不安動搖することを抑えることはできない、そのために増産計畫が立たないから、政府がほんとうに三千萬トン出そうということを眞劍に考えておられるならば、まず二週間分なり三週間分の食糧を貯藏してもらいたいということを、陳情して來ておるのである。
これに對して農林大臣は、ほんとうに炭鑛勞働者に安んじて増産に挺身さすために、そういう計畫なり方針をもつて、さようなことをやろうとしておられるかどうかをお伺いしたいのでありますが、農林大臣はお見えでないようでありますから、農林大臣にこの點については連絡をとられて、御答辯を願うようにしたいと思います。
さらに吉田總理大臣がマツカーサー元帥に對して囘答をいたされた書簡の中に、供出を一一〇%やらすということを發表されておるようでありますが、農林省關係の係官の諸君の話を聽きますと一〇〇%出さすということも非常に骨が折れるが、それより以上出さす供出のためには、その代償とする、いわゆる報奬物資というものが、十分に目安がつかぬのである。この報奬物資については、そういう不安を、現にその責任の係官から發表しておるのである。
そうなれば、一〇〇%出さすということも容易でないが、より以上出さすということに對しての報奬物資がないということになれば、吉田總理大臣が一一〇%供出をさせられるという點に對しても、おのずからその供出をさすということに對しての自信がもてなくなるのではないかと思うが、こういう點に對して、報奬物資はここにある、これをやる、それで食糧をこうして出さす、これを炭鑛にこうするという點を、具體的に私はお示しを願いたいと思うのであります。(拍手)
政府は、これも昨年の夏の議會におきまして、同じく政治的に公約された問題でありますが、石炭増産をはかるために、政府は現在あるところの鑛區を、鑛物増産法によつて整理分合する、そうして新坑開發をどんどんやらす、あるいは設備、機械、すべて條件を備えておるものには、その掌るべき鑛區がなくなつておつたら、隣りの鑛區をわけてやつて、掘進増區をどんどんやらす、新坑開發と掘進増區によつて、必ず増産計畫を立てるようにする、そのためには鑛物増産法を適用して、現在睡眠死藏されてあるところの有望鑛區を開放する、こう公約されたのでありますが、これも今なお一つも着手されておりません。鑛物増産法を適用されるようという氣配も見えません。
政府は一體石炭を増産したいと言いながらも、石炭の増産上實行しなければならぬところの、こういうような政治的公約を果しておらぬのである。しかも鑛物増産法を適用して、睡眠死藏しておるところの鑛區を開放することができるならば、新坑開發もどんどんやれるだろう。掘進増區もどんどんやれるだろう。そうすれば増産に對する基礎的條件はできるのである。これをやらずして、どうして石炭を出すという増産計畫が立てられるであろうか。
政府は一體もてる財閥の鑛區を一般に開放するということについて、財閥に氣がねをして、鑛區を整理分合することができないのであるか。何ゆえに鑛物増産法を適用して、睡眠死藏しておる鑛區を開放して、國家要請の増産にこたえさすことができないのか、この點に對して、必ず今度はやるというところの意思があるかどうか。この處置問題に對して、商工大臣に、眞に責任のある御答辯を願いたいと思うのであります。(拍手)
さらにこれは小さな問題の一つでありますけれども、増産にはきわめて重大な問題でありますから、大臣はおられなくとも、大藏當局でよろしうございますが、ひとつお伺いしておきたいことは、政府は新坑開發には、四箇年間税金を免除するということを言つて、やつておられるのである。まさにそれはやつておられるのである。ところが、その鑛業權者の下に請負掘りをしている、斤先掘りをしている、こういう者に對しては、その免税の方法をとつておられぬのであります。それならどういうことで税金をとつているかというと、石炭を採掘して、石炭を出しているのに、鑛業權に税金をかけるようにして、これを免税にしておりますから、實際請負掘り、斤先掘りで掘つているところの石炭採掘業者に對して、どういうことで税金をとつているかというと、土砂採取業税として取つているのである。
石炭を掘つている者に税金をかけぬのに、土砂採取業――土やらバラスを出している業者だといつて、税金をとるということは、あまりにこれは矛盾をしているようである。どうせ鑛業者として、全般に石炭増産のために税金を免除するというならば、請負業者であらうと、斤先業者であらうと、現に石炭を出しているところの業者には、同等に四箇年間の免税方針をとつてやるところに、私は請負掘りなり、斤先掘りによるところの石炭増産の開發の意欲というものが興されると思うのであるが、これはきわめて事務的な問題でありますけれども、しかしながら石炭増産にはきわめて重大なことであり、また實際問題として、非常に矛盾を起している問題であるから、この問題に對して、大藏當局はどういうようなお考えをおもちであるかということを、お伺いをしたいのであります。
最後に、私は吉田内閣總理大臣にお伺いをしたいのは、現在までの吉田内閣がとつて來られましたところの石炭政策に對し、あるいはその方針なり態度をもつてされるならば、三千萬トンは、いかなる努力をされても出ません。私はここで明言をする。いや、私が明言をするというより、政府の下にありますところの石炭に關係する各官吏諸君、現に現場に身を挺してやつているところの石炭部の官吏の諸君も、今までのような政府の方針やら態度で、あの緩漫な態度であるならば、われわれは三千萬トン出せるという自信はもてぬ、また業者も、勞働者も、今までのような政府のいわゆる不渡手形をもつてやられるならば、われわれは三千萬トン出すことはできぬと言つているのである。
いかに自分たちが増産意欲に燃えて身を挺してやろうとしても、拳骨では石炭は掘れぬ。腹が減つては石炭は掘れぬ。そういう點から、どんな努力をしても、今までの政府の方針、態度であるならば、明二十二年度には、二千七百萬トン以上の石炭を出すことは不可能だと言つているのである。ところが、本日發表されました吉田内閣總理大臣の、マツカーサー元帥に宛てられました書簡によれば、三千萬トン出すと言われている。きわめて重大なる約束を、マツカーサー元帥に吉田總理大臣はいたされたのである。
ところが、今申上げるように、石炭關係の官吏諸君なり、經營者なり、勞働者は、今までの政府の方針では、二千七百萬トン以上出ぬと言つているのである。この點を吉田總理大臣はどういうように解決をされるおつもりであるか。現場はどうであろうと、おれは出せるんだというその信念なり、その確信なり、方針――どうして出されるのかを、私は明快にお伺いをいたしたい。(拍手)
石炭を出すために、みんな現場にいる諸君も、一生懸命になつてやつておりますけれども、政府が眞に現場の欲することを解決してやつてくれぬので、出ぬのである。この點は、石炭關係の官吏諸君といい、經營者といい、勞働者といい、一致しているところである。この重大なる現場側の要求、問題を解決してやらぬ限りにおいては、三千萬トンは出ません。いかに石橋大藏大臣が惡性インフレにならないといつて、ここで心藏強くがんばられても、生産のない、物の裏づけのないところの健全財政というものは、あり得ません。
眞の健全財政というものは、その出されたところの貨幣を吸收するというのは税金ではないのである。物である。物が吸收してくれなかつたならば、出された貨幣はすべて不換紙幣として、惡性インフレにつるであろう。その物はすべて石炭を増産し、この基礎的な産業の根本條件を解決しない限りにおいては、日本の産業再開、再建、經濟復興はできないとわれわれは信じておる。この點に對して、吉田内閣が、三千萬トン出し得ないならば、吉田内閣は、敗戰日本の救國再建の國家的使命を果すことはできません。
吉田内閣は、三千萬トン以上出し得るならば、まさに救國再建の内閣であらう。ところが三千萬トン出し得ないならば、救國再建の内閣でないのであるから、今の日本にとつては、不適當なる内閣であると言わけなればなりません。(拍手)よつて私が以上質問いたしましたことは、わが國の救國再建上にとつて、基礎的條件解決の上に、きわめて重大なる問題であり、また吉田内閣の運命を決する問題であると思うので、この點に對しては、吉田總理大臣の、責任ある、不渡手形でない、きわめて政治家として良心的な答辯を、私は明快にしていただきたいことを切に要求いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=7
-
008・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 伊藤君にお答えをいたします。政府が三千萬トンの石炭を掘ることは、日本の經濟再建のために必要なりと考えて聲明いたしたことは、ただにマツカーサー元帥に對して聲明したのではなくて、しばしば私も政府も、三千萬トン掘る必要のあることを認めて、必らずこの増産をはかるという決心は、しばしば申し述べておるところであります。
しからばいかにしてこれをやるか。すなわち行政上の行政機構としては、三千萬トン掘る必要のためから、お話のセクシヨナリズムを破壞するためからいつても、これを内閣に置くことが必要なりと考えて、内閣に移したのでありますが、石炭大臣を置くか置かないかということは、まだ閣議は決しておりません。新聞になんとあらうとも、それは政府の關知したところではないのであります。
また石炭長官については、内閣に移して、新たに適當なる石炭長官を得たいと苦心いたしておるのでありますが、今日は追放その他の事情がありまして、適當なる人を得ることに非常に困難を感じておるということも事實であります。しかしながら、およそ目あてもついておりますから、近日その任命ができるだらうと思います。
また炭價について決定のできないのは、いろいろな條件があつて決定ができないのであります。たとえば問題は物價政策にも關連し、またインフレーシヨンその他の問題に關係するために、單價を急に輕々しく決定できない實情にあることは事實でありますが、しかしながらこれに對する臨機の處置は、政府としては講じております。
また坑木、家屋、厚生その他の問題についてお話がありましたが、これは現に食糧とか家屋とか、その他の問題については、安定本部においてこれが計畫を立てております。この實行については、各省と最も緊密なる連絡をとつて、その實現に着手いたしております。また三千萬トン掘れるか掘れないか、掘れないと言われるものもあり、掘れると言うものもある。現に私のところに手紙をよこして、必ず掘つてごらんに入れるということを誓つているものもある。掘れるか掘れないかは、今後の實績に徴してごらんを願いたいと思う。
〔國務大臣高瀬莊太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=8
-
009・高瀬莊太郎
○國務大臣(高瀬莊太郎君) 物價廳關係の事項につきまして、お答えをいたします。坑木の價格は木材價格改訂と關連いたしまして、最も近い期日に發表の見込みであります。
石炭の單價につきましては、十一月一日に決定をされております。ただ明年度の單價は、勞賃の引上を含めて決定をいたすために、交渉中であります。
増産増奬金は、既に實行中であります。炭坑夫の勞賃につきましては、今囘引上が實行されることになりまして、一月ないし二月は、坑内九十五圓、坑外六十圓、三月以降は、坑内百十圓、坑外六十圓となります。大體電産のラインに近くなるのでありまして、從來の坑内五十圓、坑外三十五圓に比べますと、相當の引上になるはずであります。
なお、やみ資材の購入につきまして、これを單價に入れてきめるという問題でありますが、これはやみ資材の購入等を特に助長放任するという結果になりますので、はなはだ困難であると考えます。從つて重要資材配給について十分の努力をし、これを確保するという方針で進んでまいりたいと考えております。
〔國務大臣石井光次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=9
-
010・石井光次郎
○國務大臣(石井光次郎君) 伊藤君の質問の中に、資材がうまく行きわたつてない、あるいは住宅がかくかくかようだ、厚生施設も不完全だというお話がいろいろとありました。今までの状態は、私ども滿足すべき状態とは一つも思つていないのであります。その中にも、資材の面において、どうしても三千萬トン増産氣構えの形においての資材を、早く豫定通り送るということに、あらゆる努力をいたしているのであります。かりに鐵材のごときも、さいわいに第一期分に對する送出しということも、一通り今月でかつこうのつく程度には送り得る状態であるというようなことが、一つの例でありますが、そのほか至らないものも相當ありますが、この至らない中から、石炭の増産のためには、できるだけのものを早く送るということは、既にきまつた方針でありますが、私どももその線に沿つて、鞭撻をいたしているわけであります。
住宅の問題のごときも、まことに殘念なる状態でありますが、昨年から新築あるいは補修等についての數々の案も出ました中に、必ずしもその通り進行していない、またその通り進行しても、まだ不足な状態であるのでありまして、これはなんとか新しい手を打つべきではないかと思つて、さらに今考慮をいたしております。
特に私にお尋ねのありました新坑開發の問題、鑛區の整理分合の問題でありますが、これは前にもこの席でお答えしたと思いますが、今お話のありました、どういうふうにしてそれをやつているか、實際は一つもやつてないじやないかというお話でありましたが、各地におきまして、話合いにおいて相當進行しておるのは、多分御承知だと思うのであります。またこれから先の問題といたしましても、實際にこの整理分合を行いますれば、ここに相當な増産の結果が現われてくるというものが、いくつもあるように私ども聞いております。これらにつきましては、あるいは各種の委員をあげて、その坑の中にはいつて實際を調べる必要があるものもあると思います。これは實際に即するような手段方法をとりまして、私といたしましては、ぜひこの整理分合をやつていく、そうして必ずこの面からも増産をあげていくようにするということを、ここにはつきりと申し上げておきたいと思います。
三千萬トン増産できるか否かという問題につきましては、絶えず論議される問題であり、今お話のありましたように、その業者の意向あるいは勞務者關係の一應の意向として出ましたものも、大體二千七百萬トンぐらいであろうというようなことを、私ども初め聞いておりました。しかしどうしても三千萬トン出なければ、日本の經濟は復興しない。それにはどうするかということで、ああもしよう、こうもしようと、なけなしの中から資材をなげうつて、こうしようという案を立て、振興の計畫がようやくできたところに、先ごろ賃金値上の問題が起りまして、勞資の話合いがだんだん進みまして、別に他人も交えず、勞資兩方の話合いによつて、賃金の値上が決定しました。
その賃金値上の問題に携わるときに、一番初めに勞務者側も主張された問題は、これは單純なる賃金値上ではない。三千萬トン出すためには、ぜひこういうふうにして貰いたいという値上交渉のあつたことは、御承知でありましようし、伊藤君自身にも御盡力を願つたのでありますが、それによりまして、彼らの間に話合いができた。私ども役人が少しも携わることなくして、話合いができた。その共同聲明におきまして、勞資ともに三千萬トン増産を期して、われわれは驀進するというような意味の言葉が、そこにあつたと思つております。これは來年度において三千萬トン出すということに、私どもが努力するばかりでなく、一番大事なのは、第一線におる山の經營者と勞務者でありますが、この兩者が、この聲明をしたということに、私どもは非常な期待をもち、これにまた背かぬように、私どもも資材を送り、その他の面においても一生懸命努力して、この三千萬トン達成を期したいと思います。
〔政府委員北村徳太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=10
-
011・北村徳太郎
○政府委員(北村徳太郎君) 伊藤君のお尋ねにお答えを申し上げたいと思います。お尋ねの要旨は、石炭鑛業權者に對する税の猶豫期間が、いわゆる斤先掘に及ばないのはどういうわけであるか。こういう要旨であつたと思うのであります。これは元來税は、石炭に關しましては、鑛業權者が鑛業納税義務を負うておるものでありまして、免税、猶豫等の特典は、その直接の納税義務者に及ぶものである、こういう原則は間違いないのであります。ただしお話しの現下の日本の事情といたしまして、ただいま商工大臣の御答辯の中にもありましたように、石炭問題は非常に重大であります。從いまして、ただいまお話の事柄、特に石炭關係においては、斤先掘という現象が相當廣く行われておりますから、これに關しましては、十分調査の上善處いたしたいと存じております。
〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=11
-
012・木村小左衞門
○國務大臣(木村小左衞門君) 伊藤君にお斷りいたします。私貴族院の答辯にまわつておりまして、あなたの私の所管に對する御質問の要旨を、直接承ることができなかつたのでありまするが大體炭鑛に對して、米の心配のないように、二、三週間分貯藏しておいてはどうか、そういうことはできないか、こういう御質問の要旨のように承りました。
ただいまも各關係大臣からいろいろ御答辯のありました通り、石炭三千萬ン確保ということはわが國再建の至上命令であります。從つて私どもといたしましても、この實現に對しては、あらゆる努力を傾注しなければならぬことを深く自覺いたしております。ついては、第一に問題となりまする食糧につきましても、できるだけ便宜を與えまして、御希望に副うように努力いたしたいと思つて居ります。
ちよつと例をあげてみましても、九州の炭鑛だけでも、一箇月に所要量六萬石ぐらい要るようでありまするから、大體非常な量が入用でありまするので、市場の關係で、できます限り一週間分でも二週間分でも貯藏しておくような方法に、十分な努力をいたしてみたいと思つております。
第二には、政府は一一〇%の供出對策を立てて奬勵しておるが、それに對する報奬物質がないではないか、こういうような御質問のように承つたのでありまするが、これは去る三月一日に發表いたしました供米對策、あれを立てまするときに、ない物を、政府といたしましては立てまするはずはございません。これは報奬物質とちやんとにらみ合せまして、十分確信をもつて立てましたものでございますから、どうぞ御安心なすつて、何とぞ一一〇%を確保いたしまするように、御協力頤いたいと思います。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=12
-
013・山崎猛
○議長(山崎猛君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=13
-
014・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 簡單でありますから、自席からお許しを願います。
總理大臣初め、各大臣、當局の抽象的な御答辯では、私は滿足はできません。またあの程度の御答辯をされるようなことでは、三千萬トン出すという確信をおもちになつておるとは思われません。(拍手)その點に對してはなはだ遺憾であるし、不滿でもありますけれども、ただ一點總理大臣にお伺いしておきたいのは、單價を決定するのに輕輕にできないということをおつしやつつたのでありまするが、幣原内閣當時から吉田内閣になりまして二年、この間に一囘も、未だ炭鑛別に單價を決定してやつたことはないのであります。二年間經つても決定ができないで、なほ輕々にできないということなら、何年經つたら大體御決定になることができるのか。そういうのろまな状態では、とうてい増産意欲を刺激することはできないと思うのであります。明年度と言つても、もう幾日もございません。明年度の單價を、およそいつごろまでに決定されるか。
なぜ私がこれを強く聽くかというと、來月四月におきましても、國は八億圓以上の金を、赤字支出というか、何らかの形で出さなければならぬのであります。現在平均炭價をつくられて、約倍近くの金を、來月から何らかの意味において出さなければならぬ、それは八億圓以上になるのである。そういうことでいくならば、明年度全體で百億を突破するのである。こういうわけのわからない金の出し方で、百億以上の金を出さなければならぬということをしておいて、輕々にできないとして金を出しながら、その出し方が惡いために、増産の刺激にもならない、死金になるような出し方である。
どうせ金を出すのなら、私は生きた金を出してやつてもらいたい。(拍手)これで初めて増産意欲を刺激し、また増産に生きた金として使われるものであると思う。こういうきわめて重大なる點がある。來月からこれをやらなければならぬのである。およそ明年度の分は、いつごろまでに、どういう方法でやるのであるかということを、いま一囘、總理大臣のもつておられるこの點に關する明確なる信念を、私はお伺いしておきたい。
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=14
-
015・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) お答えいたします。輕々に定めることができないと申したのは、先ほどの理由の通りでありまするが、御意見は一應参考にして伺つておきます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=15
-
016・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 この石炭三千萬トンを出すということは、救國の基礎をつくり得るか、つくり得ないかという重大な問題である。總理大臣がそういうような程度でこの問題をお取上げになつていることを、私ははなはだ遺憾に思う。(拍手)そういうようなことで、前にも申しましたように、マツカーサー元帥に公約をされたことが、どうしてやれるのであるか。はたして總理大臣は、これで眞劍に救國再建しようと思つているのか。石炭増産をなさずして、どうして産業の再開、再建、經濟の復興ができるか。できないじやありませんか。この點に對して、もつと眞劍に私は考えてもらいたいと思う。これを吉田總理大臣がやり得られないならば、よろしく内閣を辭職されることが、國家再建の上にきわめて妥當であると私は信ずる。よつて私は、この點を要求いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=16
-
017・綿貫佐民
○綿貫佐民君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、辻井民之助君提出、司法權獨立と肅正に關する緊急質問を許可されんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=17
-
018・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=18
-
019・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。政府はこの議事日程変更に同意せられました。よつて日程は變更せられました。
司法權獨立と肅正に關する緊急質問を許可いたします。提出者辻井民之助君。
――――◇―――――
司法權獨立と肅正に關する緊急質問(辻井民之助君提出)
〔辻井民之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=19
-
020・辻井民之助
○辻井民之助君 私は總理大臣竝びに司法大臣に對しまして、社會黨を代表し、司法權の獨立竝びに民主的肅正の問題に關しまして、お伺いしたいと考えます。
憲法の實施を目の前にいたしまして、國會の選擧を初め、いくつもの選擧が既に行われ、また行われんといたしておるのであります。これらの選擧は、申し上げるまでもなく、その成否いかんは、日本の將來の運命にも關する、重大な選擧であると考えるのであります。世界はこの選擧に對しまして、嚴重に監視をいたしております。われわれは今こそこの選擧を通じまして、無謀な侵略戰爭を引き起し、さらにわが國をこの敗戰のどん底に突き落しましたる軍國主義者、戰爭責任者どもを、少くとも政治の面より一掃し、排除いたしまするとともに、今後再び徹底的にその政治的活動を禁遏する、そうして民主主義を實現するために、この選擧を通じて、十分な努力を盡さなければならぬと考えるのであります。もしこの努力が足らないために、十分な成績をあげることができなかつたならば、世界の信用を取りもどすこともできず、またわが國の自主權を囘復することの上に、どれだけ大きな障害を來すかわからぬと考えるのであります。
政府におきましても、この點を考えられまして、さきにいわゆる公職追放令を改正し、その範圍を擴大強化せられまして、從來は認められておりましたところの、いわゆる潛在的追放該當者―資格審査を受けないために該當者と烙印は押されていないけれども、もし審査を受けますならば、當然該當者になる者の政治的活動も、これを徹底的に排除する。あるいは追放者の三等親までも、その公職より追放するというがごとく、追放令の擴大強化を行われたのであります。これは當然なことである。
しかるにかように追放令を擴大強化し、民主的な肅正の誠意を示しているかのごとき態度をとつたところの政府自身の態度に對しまして、はなはだ遺憾な點があるのであります。それは何であるかと申しまするならば、この選擧を通じて、國民に率先をし、みずから民主的肅正の範を示さなければならぬこの内閣の重要な閣僚のうちに、追放該當者が存在するのであります。すなわち閣僚の中でも、最も樞要な地位を占めるところの木村司法大臣は、一月四日の追放令の擴大によりまして、明らかに追放該當者になつておるのであります。
すなわち木村司法大臣は、戰爭中東京都の澁谷區の翼贊壯年團の團長の職にあり、また武徳會の常務理事の職をお勤めになつておつた。しかして戰爭中、國民の先頭に立つて、國民をしてあの殘虐な戰爭に驅り立てるべく、重大な役割を果されてきておる。この木村司法大臣が、追放令によつてはつきり規定されない以前でさえも、けしからぬことであると考えるのでありまするが、既に追放令によつて、はつきり該當の事實が明らかになつたにもかかわらず、依然としてその地位に留まつておるということは、木村司法大臣個人の問題ではなく、吉田總理大臣としても、實に民主的な熱意をわれわれは疑わざるを得ぬのであります。
しかも今囘、今申し上げましたように、まさに新憲法のための選擧が行われようとしておる。今囘のこれらの選擧に對しましては、あるいは嚴正公平にこれをば取締るとか、不偏不黨で取締るとかいうような、從來のきまりきつた取締方針のみならず、今度のこの特別な重大な選擧にあたりまして、檢察當局としての最も重點をおかなければならない點は、申すまでもなく追放者あるいは僭在的な追放該當者の政治活動に對するところの取締りでなければならぬと考えます。
しからばこの重大な民主革命のための選擧に對するその取締りの檢査當局の總元締はと申せば、言うまでもなく木村司法大臣である。取締りの總元締が、追放該當者であるというようなことで、どうして明朗に、その徹底的な取締りの實をあげることができるでありましようか。(拍手)檢事諸君といたしましても、これらの該當者の政治的活動をば取締るにあたりまして、みずからいただいておる司法大臣、首腦者が追放該當者である。かような首腦者を頭にいただきながら、何ら良心に矛盾を感ぜず、何ら良心のとがめも感せずして、徹底的に職務に邁進するというがごときことは、斷じて不可能であると考えるのであります。
かような點から考えましても、速やかに木村司法大臣の退陣を、われわれは要求せざるを得ぬのでありまするが、さらに初めに申し上げましたように、今度の選擧にあたりましては、世界が嚴重に監視をしておる。日本がポツダム宣言に對するところの、その誠意を披瀝し、徹底的にこの選擧を通じて民主化の實をあげんがためには、どうしても政府自身がみずから肅正の實を示さなければ、世界の信用をかち得ることはできない。世界の連合國の疑惑を招く。日本の民主主義に對する誠意を十分に認めてもらうことができないというようなことになりまするならば、すなわち日本の自主權囘復の上に重大な障害となることは、申すまでもないと考えるのであります。
先だつての豫算分科會におきまして、この點を、總理大臣が出席されなかつたために、金森國務大臣にお尋ねしたのでありまするが、金森國務大臣は、木村司法大臣の追放は、五月の二日まではやめなくても差支えないのであるというお答えであつた。なるほど一月四日の追放令におきましては、そういう除外令が設けられておる。しかし現在職務についておる者は、五月の三日まで、あるいは二日までやめなくてもよいというのは、その地位を積極的に保護しておるものではないのであります。その人間が即日その地位を去ることが國務の上に重大な支障を來すというような場合を慮つて設けられておる特例に過ぎぬのであります。
しかもその地位が、至急にやめたために、はたして國務の上に非常に重大な支障を來すかと申しまするならば、今日の司法省内部におきましても、また民間の法曹界におきましても、司法大臣の後任の一人や二人を求めることは、決して困難でないと考えます。(拍手)
さきに平塚前運輸大臣は、追放令擴大によつてみずから該當者であることを知るや、直ちに辭表を提出せられた。そうして先ごろの内閣改造を機會に、みずから辭職をばせられておるのであります。運輸大臣というがごとき、事務的な職責の非常に多い地位でありまするならば、場合によれば多少同情をすることもできる。司法大臣というがごとき地位にあり、またその仕事が特別な技能であるとか、あるいは技術を要する仕事ではないのであります。掛替えはいくらでもある。この司法大臣を依然としてその地位に留まらしめ、しかもこの民主選擧の取締りの總元締の役を果さしめるということは、實に日本の民主革命を汚すものである。民主主義日本の新しい歴史の第一頁を汚すものであると言わざるを得ぬのであります。
私は、總理大臣は、かような點を深くお考えになりまするならば、少くとも國會の選擧の以前におきまして、司法大臣の交迭を斷行される必要ありと考えるのでありまするが、總理大臣の誠意ある御答辯を得たいと考えます。(拍手)
第二に、司法省内の司法權の獨立に關する問題についてお伺いしたいと考えます。司法大臣は、最近司法省人事課長河本喜與之君を突如休職處分に付したのであります。私は、これは明らかに司法權の獨立に加えられたる侵犯であり、さらにこれは裁判所構成法實施以來六十年、かつて見ざる不詳事件であると信ずるのであります。
司法權の獨立は、あくまでこれを守らなければならぬと考えます。やがて政黨政治が發達してまいりまするならば、一層このことは大切であると思うのであります。さいわいにいたしまして、わが國の裁判所は、明治以來行政權、俗權に對しまして、よくその獨立を守り拔いてまいつたのであります。司法權の獨立を擁護するためには、裁判官の身分はあくまで保障せられなければなりません。萬一にも裁判官の身分の保障が蹂躪せられるごときことになりまするならば、公正にして毅然たる裁判を期待するというがごときことは、斷じて不可能であります。
ゆえに裁判官たる判事は、現行法のもとにおきましても、犯罪を犯して刑に處せられた場合でありまするとか、あるいはその品位を害すべき行爲ありとして懲戒追訴を求められまして、懲戒裁判に付せられた結果有罪と決定した場合を除いては、その地位を奪われることはないのであります。從つて在職中は、その意に反して轉官、轉所、停職等にされることはないのであります。
司法大臣は、申すまでもなく一個の行政官に過ぎない。ゆえに司法大臣といえども、この判事の身分權はあくまで尊重しなければなりません。また實際明治以來、歴代の司法大臣はこれを尊重してまいつておるのであります。いかなる官僚的な司法大臣といえども、未だかつてこの司法權の獨立、判事の身分を踏みにじつたという事例はないのであります。
しかるに今や近く新憲法が實施せられ、司法權の獨立と司法官の身分の保障は一層強化せられることになつておりまする場合に、この憲法の改正に參畫した司法大臣が、これを知らないはずはあり得ないのであります。しかるにこの新憲法に基く民主的な裁判所の成立を目前に控えまして、司法大臣は、判事の地位を一時休止しておるに過ぎない河本君を、普通文官に對するごとく、突如として休職處分に付しまして、事實上その地位を奪うの暴擧をあえてしたのであります。
司法大臣は言われるかもしれません。司法省人事課長は、一個の行政官である。行政官を休職處分に付するのに、何の不可があるかと言われるかもしれない。これはまさに一個の形式論であり、詭辯と言はなければなりません。河本君は最初から判事として身を立てまして、東京民事地方裁判所の部長判事であつたのでありまするが、岩田前司法大臣の懇望によつて、しばらく司法行政に參與することとなり、祕書課長となり、次で人事課長となつたのであります。人事課長あるいは祕書課長という行政官、これが河本君の終生の目的でないことは申すまでもない。すなわち判事たる地位を休止しておるだけでありまして、やがて再び裁判所に戻るべき人間であることは、自他ともに認めているところであります。
かかる事情のもとに一時司法行政に携わつておりますものは、當然司法官としての身分の保障を與えらるべきであります。また事實今日まで長年にわたりまして、裁判所構成法が實施されましてから六十年間、これは司法行政上の慣習法として、確實に守られてまいつたのであります。しかるに司法大臣は、長年のこの神聖な慣例を蹂躪いたしまして、司法權の獨立を侵犯いたしたのであります。司法大臣にして、もし河本君に非違ありと認めまするならば、現憲法のもとにおいても、新憲法の精神に鑑みまして、よろしく徴戒裁判を求めて、事理を明白にした上で、その進退を決すべきであると信じます。
しからば一體河本君に何か法律上の非違があつたのかと申しますならば、われらの調査によれば、何ら法律上の非違を認むることはできないのであります。しからば司法大臣をして、かかる暴擧をあえてなさしむるに至つたほんとうの原因は何であるかと考えますると、近時司法部の人事は、はなはだ亂れておると言われております。司法部の民主化ということは結構でありまするが、これに便乘して、民間法曹等より多くの人をとる。これも結構であります。しかしその選擇標準に確たるものがない。衆望の歸するところをとる、輿論の趨向を察してとるというのではない。ただ親しい間柄だからとる。同郷だからとる。頼まれたからとるというのでありましては、これはまつたく朋黨的な人事でありまして、公の人事ということはできない。非難の囂々たるは當然であると言わなければなりません。いわゆる司法省内の木村閥を云々せられるのも、決して無理からぬことであると考えます。
河本人事課長が、司法部の總意に反する大臣のかかる人事に始終反對した結果、大臣の感情をはなはだしく害しておつたと言われておりまするが、さらに直接の原因としては、河本君が、司法大臣が追放該當者であるということを外部に漏泄したという誤解であります。河本君は、斷じてさようなことを漏らした覺えはないと申しておりまするが、かりにあつたといたしましても、司法大臣が翼贊壯年團の團長というがごとき重要な地位にあつたということは、河本君が漏らすまでもなく、あまりにも顯著な、天下周知の事實であるのであります。河本君を恨むがごときは、まつたく筋違いもまたはなはだしいと言わなければなりません。
しかるに司法大臣はこれを根にもつて、河本君を左遷せんとしたのでありまするが、河本君がこれを拒絶いたしまするや、さらに判事の身分を有する河本君を、一般行政官に適用せられる文官分限令を發動いたしまして、休職處分に付したのであります。おのが非をおおわんがために、その部下を血祭りにあげるというがごときは、暴もまた極まれりと申さなければなりません。
これは單に司法相の一人事課長、一判事の問題ではないと考えます。まつたく司法權の獨立に加えられたる一大脅威であり、一大汚點であると信じます。私は、長い間の司法部の傳統を破つて、前代未聞の暴擧をあえてし、神聖なる司法權の獨立を干犯したる木村司法大臣の責任を、強く糺彈せざるを得ないのであります。司法大臣は、この重大な責任を一體何とお考えになつておるか。司法大臣はお見えになつておるようでありまするから、司法大臣から、責任のある御答辯を得たいと考えます。
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=20
-
021・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 辻井君にお答えをいたします。閣僚の選任については、殊に愼重に各種の經歴その他について調査をした上でもつて任命をしたのであります。またこれは總理大臣の責任において任命いたしたのであります。(拍手)また今日私としては、司法大臣は必要缺くべからざる地位にあるべきものとして、これを更迭せしむる意思はないのであります。
また司法省の人事問題についてお話があつたが、過般事務上の都合から人事課長を更迭する必要がありまして、河本人事課長を甲府地方裁判所に榮轉せしむることにしたのでありまするが、同課長はこれを承諾いたさないために、やむなく休職を命じたのであります。これはお話の通り、司法省の一事務官たる人事課長の更迭を斷行いたしたのであつて、司法權の獨立を害するものでないというのが、政府の見解であります。これは詭辯でないのであります。(拍手)
〔國務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=21
-
022・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 辻井君の御質疑に對してお答えいたします。私は、河本君を休職處分に付したのは、決して司法權の獨立を害したものではないということを斷言してはばかりません。そもそも河本君を休職處分に付したことについては、相當の理由はあるのであります。懲戒處分に付したらどうかというような御議論もありましたが、先生の人格を重んじ、先生の名譽を重んじて、さようの處置に出ない。今總理の話があつたように、特に甲府の地方裁判所に轉任を命じたのであります。それを先生は肯んぜないから、やむを得ず休職處分に付したのであります。司法權の獨立とは、全然別個の問題であると私は斷言いたす。
殊に河本君は、みずから進んで司法省の一行政官に希望してはいつたのであります。行政官に希望してはいつた以上は、何どき事務の都合上でこれを他に轉任されるかわからないということは、承知の上であるのであります。しかるにかかわらず、事務の都合上他に――むしろ榮轉であります甲府の地方裁判所に轉任を命ぜられたことを肯んぜない。これを承知しないのを、いかに處理すべきであるか。斷じてさようなことは許さない。われわれは多數の事務官とともに仕事をしておるのでありまするが、その事務官を、自分の都合によつて、他に榮轉なり轉勤なりをすることについて承諾を得ないがために、その地位に鎖ざしめるということであれば、事務というものは決して圓滑にいくわけではないのであります。われわれは責任をもつて彼を他に轉勤せしめようとしたのであります。これを肯んぜなければ、やむを得ず休職處分に付するのは、當然のことであると信ずるのであります。
しかしてまた辻井君は、司法省において木村閥とか何とか言う。これはもつてのほかであります。私は在野法曹を多數採用いたしました。しかし採用するにあたつては、各辯護士會にその推薦を依頼しておるのであります。辯護士會の推薦によつて、しかるべき人を採用しておるのであります。自己の任意において私は決して採用しておる次第ではありません。まつたく辻井君の誤解であります。斷じて申します。私は一河本の人事について、司法權の獨立を害したというようなことは、斷じてないということを申し上げたいのであります。さよう心得ております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=22
-
023・辻井民之助
○辻井民之助君 簡單でありますから、自席から發言することをお許し願います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=23
-
024・山崎猛
○議長(山崎猛君) 許可いたします。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=24
-
025・辻井民之助
○辻井民之助君 總理大臣は、私の條理を盡した質問に對しまして、にべもなく、司法大臣を更迭する意思はないと御答辯になりました。これは明らかにまさに行われ、また行はれようとしております多くの選擧にあたりまして、この追放該當者をしてその選擧の取締りを行わしめる。日本の民衆を侮辱するものであると言わなければならぬと存じます。またさらに世界に對しまして、追放該當者であることが明らかである者を、依然としてその職に止まらしめておるということは、いかに民主主義に熱意をもたないか、誠意をもたないかということをば暴露する結果であるのであります。それでは日本が世界の信用を取りもどし、自主權を囘復する上に、重大な障害となるものであろうと私は信じます。
また今木村司法大臣の御答辯がありましたが、總理大臣は、懲戒處分にも附すべきであるけれども、一歩を減じて休職處分にしたのであるというようなお言葉であつた。もし懲戒處分に附すべきほどの不都合がありました者ならば、司法大臣が今お答えになりましたように、甲府の裁判所の所長というような榮轉の辭令を、なぜ出そうとされたのでありますか。もしその轉任をば本人が承知しない場合に、それでは事務に支障を來すというのでありましたならば、本人が承知しなくても轉任の辭令を出す、その辭令に從わないような場合にもし處分をせられるならば、あるいはいたしかたがないかと考えますけれども、そうでなしに、官吏の身分を有する者が一時行政官の地位になりましても、從來から司法内部と裁判所との間には、六十年の間人事の交流が行われておつた。その間に未だかつてかような事例がないのであります。その判事の身分なるものを、ただ普通の文官に對すると同じような處置をとつたという例がない。それでこそ、木村閥というようなことはもつてのほかであるとか、あるいは自分の行動を合理化せられておるのでありますけれども、現に大審院の判事は、懲戒以來、これが司法權の干犯であるかどうかを徹底的に調査するというようなことを決議しておつた。現に裁判所側と司法省とは相當な對立をし、また裁判官の間には、大動揺を來しておることは隱れもない事實であります。この多くの人の承知しておる事實を隱蔽して、まつたく詭辯としか考えられないような答辯をせられておる。
こういう無謀な人事を行われるような司法大臣が、相變らず吉田總理大臣の庇護を受けて、その地位に止まつておるということは、こうした木村司法大臣の横紙破りの辣腕を、今度の選擧に大いに發揮させるためであるというように考えられても、私はやむを得ないと考えます。(拍手)まだ選擧までには若干の日時があります。私は、總理大臣竝びに木村司法大臣の大いに反省を求めまして、質問を打切りたいと考えます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=25
-
026・綿貫佐民
○綿貫佐民君 日程第一は、後囘しにせられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=26
-
027・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=27
-
028・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程第一は後囘しといたします。
日程第二、船舶公團法案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長中川重春君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=28
-
029・会議録情報2
――――◇―――――
第二 船舶公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 船舶公團法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 中川 重春
衆議院議長 山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
〔中川重春君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=29
-
030・中川重春
○中川重春君 ただいま上程になりました船舶公團法案に關する特別委員會の審議の經過竝びに結果について御報告申し上げます。
本法案は、船員法を改正する法律案に關する特別委員會に併託せられまして、去る三月十八日より審議を開始し、前後三囘にわたり、愼重なる審議を續けたのであります。
まず運輸大臣より、本法案の提案理由について詳細なる説明があり、議事に入り、次いで委員と政府との間において、熱心なる質疑應答が續けられたのであります。
その概要を申し上げますれば、まず第一に、本法案によつて特にこの際船舶公團を設立する理由について質疑がありましたが、政府委員より、現在のいわゆる續行船建造に關する業務を取扱つている産業設備營團が先般閉鎖せられましたために、續行船の竣工が著しく遲延いたしておりますので、速やかにこれに代るべき新機關を設立する必要があること、竝びにわが國の船腹が激減し、かつ殘存船舶もまた不良船が多く、今日の輸送事情よりみまして、これを放置することを許されないので、かかる特殊機關を設けまして、輸送力の増強をはかることが緊要であるとの答辯があつたのであります。
次に船舶公團の組織については、役員及び職員を官吏または政府職員とする點について質問があり、官僚的運營に墮するのおそれある點を指摘せられたのでありましたが、これに對しましては政府委員より、役職員の任命については、官といわず民といわず、廣く適材を適所に起用する方針であり、民間の知識經驗は十分これを尊重する旨の答辯があつたのであります。
また船舶公團の事業につきましては、その範圍竝びに具體的内容について、熱心なる質疑がありましたが、これに對し政府委員より、詳細なる數字的説明があつたのであります。
その他船舶公團が取扱うべき船舶の建造等の業務と、船舶賠償との關連、今後の海運統制の基本方策竝びに船舶公團の監督に關する問題等につきまして、質疑應答が繰返されたのでありまするが、詳細につきましては、速記録についてごらん願いたいのであります。
以上をもつて質疑を終了いたしまして、討論に入り、船舶公團の業務の運營については、賠償問題との關連を十分に考慮すること、竝びに役職員については、民間人の知識經驗を十分に活用することの二點につきまして、特に要望があつた後、採決に入り、全會一致本案を可決いたしました。この段御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=30
-
031・山崎猛
○議長(山崎猛君) 討論の通告があります。これを許します。高倉輝君。
〔高倉輝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=31
-
032・高倉輝
○高倉輝君 日本共産黨を代表いたしまして、この法案に對する反對の意見を申し述べます。
明治十年に西南の役が起りました際に、政府はそのとき手持の汽船全部をあげまして、この西南戰争を鎭めるための兵隊の輸送に當てましたが、そのときにこれを任されましたのが當時の三菱であります。これによつて西南戰爭は鎭壓されましたが、その西南戰爭の終りました後で、そのとき三菱が取扱つておりましたところの政府の船は、これは一體三菱へ貸し與えられたのか、これに渡したのか、あるいは賣渡したのか、少しもその事實が明らかでないうちに、これは當時の岩崎の手に移つてしまいました。これを基礎といたしまして、この岩崎が後の財閥三菱として大發展をする基礎がおかれたのであります。このことがありませんでしたならば、後に岩崎が大三菱として發展する基礎はおかれなかつたはずでありますから、從つて今日ここにおられます幣原國務大臣も、三菱の婿となるというようなことは、おそらく實現はしなかつたでありましよう。(拍手)
つまり財閥と官僚との結びつきを基礎といたしまして、日本の産業が不自然なる運營をされるようになり、それを基礎としまして、後の軍國主義が發展する大きな基礎を得たのであります。それが後に最も大きく現われました事件が、あの山本權兵衞内閣のときのシーメンス事件でありまして、軍部はもとより官僚の當時の中心でありましたから、官僚と財閥とによる日本の産業をゆがめた最も極端な實例がここに現われております。こういう工合に官僚と財閥との汚い結びつきの上に日本の産業をゆがめてきたところに、今日日本民族全體がこの不幸の底に沈まなければならない原因があつたわけであります。
それではどうしてこういう不幸が生まれたかと申しますと、一口に申しますと、日本の産業が民主化されていなかつたからである。民主化されなかつたことは、どういうところに現われておるかと申しますと、實際に海運業を支えております從業員が、この運營に發言權をもち、これに參加する途が完全にふさがれておつたということであります。それが日本の産業全體の一つの特色でありましたが、この海運業の上にもはつきり現われております。
つまり産業の民主化が行われなかつたことが、今度ここに提出されました法案の上にもそのまま現われておる。何となれば、この法律によりますと、これはすべて事實上官僚の支配のもとに置かれるようになつております。先ほど委員長の御報告にもありました通り、既に委員會において、これは官僚の力を強くする結果になりはしないかという疑問が既に出ておる。その通りであります。この法律を通しまして、官僚と財閥との再び新しい結びつきをつくる危險を、十分この法律の中にもつておるわけであります。つまりかつてこれまでの日本の産業に行われなかつた産業の民主化が、やはりこの法案によつて固く阻まれる基礎をもつております。
そういう法案が行われますと、これはこの法案を出します理由として、政府が述べております海運業の復興ということは、とうていあり得ない。海運業を眞に復興するためには、海運業を實際に支えております從業員の、心からなる協力を求めなければならない。ところが、この從業員の運營に關する發言の途を完全に止めておきながら、この協力を求めることは絶對にできない。つまり海運業そのものの民主化を、この法案が阻むところの重大なる要素をもつておるからであります。
そういう意味から申しまして、私ども日本共産黨は、この法案に對して反對せざるを得ないものであります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=32
-
033・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにて討論は終局いたしました。本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=33
-
034・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=34
-
035・綿貫佐民
○綿貫佐民君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=35
-
036・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=36
-
037・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
――――◇―――――
船舶公團法案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=37
-
038・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
日程第三及び第四は、同一委員に付託したる議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=38
-
039・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。日程第三、財政法案、日程第四、會計法を改正する法律案、右兩案を一括して、第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長高橋泰雄君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=39
-
040・会議録情報3
――――◇―――――
第三 財政法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 会計法を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 財政法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 高橋 泰雄
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 会計法を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十四日
委員長 高橋 泰雄
衆議院議長山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
〔高橋泰雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=40
-
041・高橋泰雄
○高橋泰雄君 ただいま議題となりました財政法案竝びに會計法を改正する法律案につきまして、委員會における審議の経過竝びに結果を簡單に御報告いたしたいと存じます。
財政法案は、御承知のように財政の基礎的事項を規律いたすものであります。詳細は過般の政府の提案の理由によつて御承知の通りでありますが、從來國の豫算その他財政に關する制度につきましては、現行憲法のほか、會計法、會計規則等の諸法令によりまして、處理せられてまいつたのでありますが、新憲法の制定に伴いまして、各種の國家機關に關する制度が、根本的に變つてまいりますとともに、諸制度の民主化が要望せらるることとなりまして、從つて財政處理の法則につきましても、基本的な改革を行う必要が生じてまいつたのであります。この必要によりまして、財政に關する基本的事項を規律いたしますために、財政法を制定することとなつたのでありまして、またこれと牽連いたしまして、現在の會計法を改正することと相なつたのであります。内容につきましては、ここに説明をいたすことを省略することのお許しを得たいと存じます。
委員會におきましては、去る十九日から本月の二十二日まで、前後三囘にわたりまして會議を開きまして、委員各位から熱心にして、しかも有益なる御質疑があつたのであります。その詳細は速記録にこれを讓りますが、ここにおもなるもの二、三について御紹介いたしたいと存じます。
〔議長退席、副議長着席〕
第一に、日本の豫算には特別會計が多いために、豫算が非常に見にくく、かつわかりにくいことが多いのであるが、政府はこれを減らしていく考えはないか。こういう質疑に對しまして、特別會計が多いということは、政府の會計がいくつにもわかれ、しかもわかりにくくなるので、政府としては特別會計の數を減らすことに最善の努力を拂つておるのであるが、むやみに特別會計をやめてしまうことは不可能のことであり、かつ今後どうしても國家企業が起つてくるのであるから、國家企業を一般會計と一諸にすることは會計の性質に合わない、一般會計は消費經濟で、しかも收入は租税收入であり、性質が全然違うために、これは一本にしても意味がないのであつて、こういう場合には、これを區分して經理した方が實益があるのである、要するに今後の方針としては、一般會計から分離して經理した方が、國家的見地から見てよいというような場合には、特別會計を認めていく方針であるとの答辯があつたのであります。
第二に、本法案には豫算不成立の場合に關する規定がないのであるが、豫算不成立の場合にいかなる措置が講ぜられることになるかとの質問に對しまして政府は、現行憲法においては、その七十一條において豫算不成立に備える規定があるが、新憲法にはこれが削除せられておる。この問題は、改正にあたつていろいろと問題になり、理論的には豫算が成立しない場合が起り得るので、これに對する何かの規定を設けておいた方がよいではないかという見方もあつたのであるが、また半面から言うと、豫算不成立の場合に何か他の方法でこれをやつていけるということにいたしますと、そういう非常に備える規定がかえつて常道化いたしまして、民主的でない政治の運行を生じさせる機會を與えるおそれがありますので、この場合には、いろいろな方法をもつて不成立になる場合を極力減らして、どうしても理論的に不成立になり得るという場合の事柄は設けないでおいて、そのときは高度の政治的な常識、考え方をもつて解決していくというふうにすべきではないかという答辯があつたのであります。
それから最後に、委員長から政府に對しまして、財政法三十一條第二項及び財政法第三十五條と國會法第三十二條との關係におきまして、二、三の質疑を試みまして、政府の答辯を求めたのであります。すなわち第一は、國會豫備金は、國會法によつて、獨立せる國會の經費の中に計上せられることになつており、かつ國會豫備金を使用するには、議院がその適當と認めるときに使用することが建前であり、從つてあらかじめ目及び節を設けるということは不可能のことであつて、また議院がその使用を決定した際に、一々これを大藏省に通知して目及び節を設くるということは、國會法の精神に反するのみならず、國會豫備金の性質に反すると思われるが、政府はいかに運用するつもりであるか。第二に國會豫備金を各議院に配賦するにあたつて、豫備金として配賦し、議院の意思にその使用を一任すべきものと思うがいかん。第三もしその解釋運用によつて、國會豫備金にも節及び目を區分して配賦せねばならぬとすれば、條文に但書を加え、「但し國會豫備金についてはこの限りでない。」という修正を加えるほかはないと思うが、政府の所見はどうか。第四、財政法第三十五條にいわゆる豫備費というものは、憲法上の豫備費であつて、内閣の責任において支出するものであり、國會豫備金とは全然別個のものと思うが、政府の所見はどうか。
かような質疑に對しまして、政府の答辯は次の通りであります。國會豫備金は豫備經費であつて、これを何に使うかわからぬ金でありますので、これを目及び節にわけて出すということは不可能のことであると思う。また豫備金の使用にあたりまして、これは國會の中に特殊な委員會ができて、その委員會が金の使用について愼重なる態度をもつてやることとなるのであつて、むろん議會の自由なる意思によるべきものであると思う。ただ問題は、具體的に金を出す場合には、小切手を切ることになるのであるが、小切手は日本銀行がこれを拂うのであつて、その時に金の使用の目的がわからぬと、金の支拂ができないということになるのであるから、技術的に申すならば、結局何に金が使われるかということがわかつたときに目及び節を附けることになるという政府の答辯であつたのであります。
大體以上をもちまして質疑を終りまして、財政法案竝びに會計法を改正する法律案を一括議題として討論に付しましたところ、日本自由黨を代表して杉田一郎君、日本進歩黨を代表して小野瀬忠兵衞君、國民協同黨を代表して伊藤幸太郎君より、各黨を代表してそれぞれ原案贊成の意見を述べられたのであります。次に日本社會黨の川島金次君から、財政法案第三條第二項について、左のごとき修正の意見が提出されたのであります。ここに川島君の修正意見を朗讀いたします。「なお第一項に定めたるもののほか、特に重要なる生活必需品及び重要基礎産業物資の價格についても國會の議決に基いて定めなければならない。」よつてまず社會黨川島君より提出せられました財政法案第三項第二項の修正案につきまして採決いたしましたところ、この修正案は少數にて否決されました。次いで原案について採決いたしました結果、兩案は原案の通り全會一致をもつて可決いたしました次第であります。
以上、簡單ながら委員會の審査の經過竝びに結果を御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=41
-
042・井上知治
○副議長(井上知治君) 兩案中、財政法案に對しては、川島金次君より正規により修正案が提出せられております。修正案の趣旨辯明は、第二讀會においてこれを許すことといたします。兩案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=42
-
043・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて兩案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=43
-
044・綿貫佐民
○綿貫佐民君 直ちに兩案の第二讀會を開かれんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=44
-
045・井上知治
○副議長(井上知治君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=45
-
046・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに兩案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。この際修正案の趣旨辯明を許します。川島金次君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=46
-
047・会議録情報4
――――◇―――――
財政法案 第二讀會(確定議)
會計法を改正する法律案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━
財政法案(政府提出)に對する修正案(川島金次君提出)
━━━━━━━━━━━━━
財政法案の一部を次のように修正する。
第三條第一項の次に次の一項を加える。
なお第一項に定めるものの外、特に重要な生活必需品及び重要基礎産業物資の價格についても、國會の議決に基いてこれを定めなければならない。
〔川島金次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=47
-
048・川島金次
○川島金次君 私は日本社會黨を代表いたしまして、ただいま上程になりました財政法案竝びに會計法改正案のうち、財政法案に對する一部の修正案を提出し、それに對する趣旨の辯明を試みたいと思うのであります。
この財政法案は、ただいま委員長からも報告がありましたごとく、新憲法の制定に伴い、國の豫算その他財政に關する基本的事項を規律するため、財政法を定める必要があるというので、この財政法案が提出されたのであります。從つてこの財政法は、その内容とするところは、新憲法に基いて從來の政府の財政政策に對する基本的な規律を求めたものであり、從つて私はこの財政法案というものは、財政的憲法にもひとしいものである、かように考えまして、きわめて重要なる一法案と確信いたす次第であります。
ただ問題は、この財政法案を一瞥いたしますと、私どもの從來の立場から申しまして、吉田内閣や石橋さんに、こういう財政法案が、どこをたたいたならばできるのだろうというような疑いを實はもつのであります。
一例をあげますと、この財政法案の中に盛り上げてありますところの問題は、從來國の事業でありました遞信料金、あるいは國鐵料金、あるいは專賣品等の價格についても、概ね御承知のごとく、一官僚のその時の御都合、あるいは財政の都合などに基いて、政府もしくは閣議が勝手にきめてまいつてきたのであります。ところがこの財政法によりますと、今後は必ず法律もしくは國會の議決に基かなければ、たとい煙草一箱の値段も増額することはまかりならぬ、こういうことが定められました。さらにまた國の歳出というものは、公債または借入金以外の歳入をもつてその財源としなければならない、こういうことが定められました。さらにまた公債の發行については、日本銀行にこれを引受けさせ、また借入金の借入については、日本銀行わらこれを借入れてはならない、こういう規定が挿入されました。さらにまた第二十八條におきましては、政府の定めた豫算案を上程する場合には、それに附隨するところの各般の詳細な參考書類を添附しなければならない。こういうことが定められました。さらにまた豫算案は必ず前年度の十二月中には上程の運びにしなければならない、こういうことが原則的に定められました。
こういうことを一々枚擧いたしてまいりますと、從來の吉田内閣、殊に財政の衝に當つているところの石橋さんのやり方に鑑みますと、概ね逆なことをここに決定されたという結果になりました。これを私はまことに卑近な例にたとえて恐縮でありますが、石橋さんの從來の財政政策というものは、この財政法にはおよそ似ても似つかないその場限り、無計畫、放漫、手放しの計畫で遂行されてきたような感が深いのであります。こういうことでは、まことにほんとうの國の財政とは申し上げられない。今までわれわれがやつてきたことは、まことに國民に對して申譯がない、そこで今後の石橋財政というものは、この財政法に基いてやることにいたします、今までのことはまことに申譯なかつた、これからは心を改めまして、この財政法に基いて財政計畫を立てますということに、否應なしになつてきたということはまことに何たる皮肉ぞやと私は申し上げざるを得ないのである。これをもつと卑近に申しますれば、今までは放漫な、勝手次第な財政計畫をやつてきた。いわば道樂息子と同樣な形でやつてきた。それをこの憲法の實施にあたつて、心から悔い改めて、いわゆる悔悟の涙をしぼつて、親もとに歸つて詫證文を出すような形になつておる。この詫證文を書かざるを得ざることになつたことは、むしろ國民にとつても、われわれ社會黨にとつても、まことに喜ぶべきことである。
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=48
-
049・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=49
-
050・川島金次
○川島金次君(續) 從つて喜ぶべきことであるから、われわれはこの原案そのものに對しては、全面的に異議はないのであります。むしろ贊成であります。ただこの詫證文の中に、一筆足らないものがある。その一筆足らないものを、われわれは附け加えさせようというのが、この修正案の心持であるのであります。
その修正案の内容といたしまするところは、ただいま委員長からも御報告がありましたが、この第三條にあるところの「租税を除く外、國が國權に基いて收納する課徴金及び法律上又は事實上國の獨占に属する事業における専賣價格若しくは事業料金については、すべて法律又は國會の議決に基いて定めなければならない」。この一項目のほかに、第二項といたしまして、わが黨といたしましては、なお第一項に定めますもののほか、重要なる生活必需品及び重要なる産業基礎物資の價格についても、國會の議決に基いてこれを定めなければならない。これがわれわれの修正の要旨とするところであります。
諸君も既に同感と思うのでありますが、日本の現状からいたしまして、われわれの生活に密接不可分の關係のある重要食料品、殊にその中の米麥等の物資、あるいは石炭、肥料、あるいは電力、鐵鋼等のごとき國民經濟の基底をなす重要な物資の生産竝びに價格、配給等のごときは、今や日本の現段階竝びに將來當分の間は、強力なる國家統制を遂行していかなければ、日本の國民經濟生活は成り立たぬであろうということは、おそらく諸君も御同感であろうと私は思う。(拍手)しかもそのような重要なるところの物資の價格について、その時の財政の都合とは言え、あるいは經濟事情とは申せ、一片の官僚が机の上において決定し、もしくは政府が一片の机上において價格を決定するということは――いわんや、この第三條に、タバコの値段すらも、今後においてはこの國會の議決に基いてでなければ、絶對に一錢の値上げもできないということになつたのが、財政法の重大な根本精神であります。
いわんや、われわれ國民生活に重大なる關係があり、わが日本の經濟機構の骨格の上にもこれまた重大なる關係のある食糧物資、重要生産基礎資材の價格が、ただいま申し上げたごとくに、一片の官僚の机の上において、一片の政府の机の上において決定されるということは、まことに不合理千萬と言わなければならないのであつて、(拍手)これら重要なる價格については、よろしく國民輿論の府であり、勞働者、消費者、生産者、あるいは配給業者の一切の希望と輿論を代表しておりまするところの國會において決定することこそが、私は價格政策の最も民主的な方法でなければならないということを強く主張するのであります。(拍手)
これに對して、おそらく自由黨の諸君、もしくは自由黨の主張に對して共鳴をいたしておりまする一部の諸君におかれましては、米麥等の主食糧、あるいは生産の基礎資材等のごときについては、やがて日本はこの窮乏の底から立直つて、生産が多量にできて、價格も自由になるであろう、あるいはまた配給等のごときも、今の統制を撤廢すべきであるから、そういうことを挿入することは不必要であろうというような意見が、定めし出ると思うのであります。しかしながら今の日本の現段階においては、そのようなことは斷じて單なる机上の希望的觀測に過ぎないであろうということを私は確信をいたすのであります。(拍手)
その證據には、先日連合軍の民政部代表が強調いたしましたところの、新聞に報道された選擧對策の一文によりましても、こういうことが書いてある。すなわち主食の強制集荷、物價統制、配給制などの撤廢を約束することができるであろうか。もしそういうようなことを選擧に約束して歩くような候補者がかりにあつたとすれば、そのような候補者は、きわめて日本經濟を知らざる者、日本の國民生活を知らざる者であるから、よろしく投票を差控えるべきであるということが、この聲明にもうたわれておるのである。
さらにまたもう一つは、たまたま本朝の新聞紙上にも報道せられました、マ元帥の吉田首相への書簡の中においても、これまたいかに自由黨の諸君が、生産價格、配給等に夢のような自由經濟主義を唯一の看板として振りかざしておりましても、この元帥の吉田首相に對する書簡の中にも、これまた絶對否定的なことが書いてあることを、自由黨の諸君は肝に銘じてこの際考えておくべきであろうと私は思うのである。(拍手)
その一つは、賃金及び價格を確固たる統制の下におき、必需品につき嚴格な割當配給計畫を策定維持するとともに、適正配給を確保することは、日本政府の責任であると、こう書いてある。この一文をもつていたしましても、今後當分の間、日本の生産、日本の國民生活の重要なる物資、これらのごときものは、あくまでも強力なる統制經濟のもとに推し進めていかなければ、日本の主觀的を條件も許さぬし、日本の世界的におかれた客観的な條件も斷じて許されないというのが、日本の現状であるのであります。(拍手)
このようなことを根據といたしまして‥‥
〔發言する者多し〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=50
-
051・井上知治
○副議長(井上知治君) 靜肅に。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=51
-
052・川島金次
○川島金次君(續) われわれといたしましては、すべからく國民生活に密接な關係のあるところの主要食糧、殊に米麥等のごとき物、あるいはその他、繰返して申し上げますが、いわゆる日本經濟の再建の基盤をなすところの、すなわち重要な物質、たとえば石炭、肥料、鐵鋼、あるいは電力、あるいはその他重要なところの物資につきましての價格は、先ほど冒頭にも申し上げましたごとく、一片の官僚の机上計畫に乘らず、一片の政府の財政の都合上あるいは經濟上の都合だけで決定することなくして、いわゆる全國民が一堂に會しておりまするこの民主議會においてその價格を決定し、その最高價格の決定に基いて、日本の經濟再建に必要なるところの總合的な物資計畫、總合的な價格計畫というものをそこに打立てることが、むしろ民主議會の責任であり、民主議會の使命でさえあると私は考えるのであります。(拍手)
この意味におきまして、おそらく自由黨の諸君あるいはその他の方々は、この事柄にきようは反對するでありましようが、この事柄を私は斷言しておきまするが、好むと好まざるとにかかわらず、やがてはこれを議會できめなければならないという國民的な輿論が起り、また主觀的、客觀的な情勢が、そこに結論するであろうということを、私は繰返して申し上げまして、どうぞ今からでも決して早くはないのでありまするから、このわが黨が提案いたしました修正案に、滿場一致贊成せられたい。
今や農民の諸君でさえも、みずから耕した米や麥の價格が、政府の官僚の手によつて決定されることはけしからない、すべからくわれわれ農村の耕しておる耕作者もこれに加えて價格を決定することが至當ではないかという輿論さえも、今日起きておるのであります。これは農民諸君として當然な與望であり、當然な希望であると私は思うのであります。これは單なる一例であります。あまねく生産業者がそのような考え方をもつておるということをも、併せて繰返し申し上げまして、わが黨が提案いたしましたこの第三條に對するところの追加一項を加えるべく、修正案の趣旨の辯明とする次第であります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=52
-
053・井上知治
○副議長(井上知治君) これより採決に入ります。まず財政法案につき採決いたします。本案に對する川島金次君提出の修正案につき採決いたします。川島金次君提出の修正案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=53
-
054・井上知治
○副議長(井上知治君) 起立少數。よつて修正案は否決せられました。
次に本案につき採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=54
-
055・井上知治
○副議長(井上知治君) 起立多數。本案は原案の通り可決いたしました。
次に會計法を改正する法律案につき採決いたします。本案は原案通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=55
-
056・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて本案は原案の通り決しました。(拍手)これにて兩案の第二讀會は終了いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=56
-
057・綿貫佐民
○綿貫佐民君 兩案の第三讀會を省略して、第二讀會議決の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=57
-
058・井上知治
○副議長(井上知治君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=58
-
059・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて兩案とも第三讀會を省略して、第二讀會議決の通り可決確定いたしました。(拍手)
日程第五ないし第九は、同一委員に付託したる議案でありますから、一括議題となすに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=59
-
060・井上知治
○副議長(井上知治君) 御異議なしと認めます。よつて日程第五、石油配給公團法案、日程第六、配炭公團法案、日程第七、産業復興公團法案、日程第八、貿易公團法案、日程第九、價格調整公團法案、右五案を一括して第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。委員長岡部得三君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=60
-
061・会議録情報5
――――◇―――――
第五 石油配給公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 配炭公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 産業復興公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 貿易公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 價格調整公團法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 石油配給公團法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十七日
委員長 岡部 得三
衆議院議長 山崎 猛殿
附帶決議
一、石油配給公團の業務運営の根本方針は、運営委員会に諮つて総裁が之を決定すること。
運営委員会は、関係各方面の代表者を以て構成すること。
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 配炭公團法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十七日
委員長 岡部 得三
衆議院議長 山崎 猛殿
附帶決議
一、石炭、コークス、亞炭の特異性に鑑み、その配給実務については、速かに業界の経驗者を廣く活用し、單純なる官僚統制より一歩を進めて、本法運営の妙を発揮し、生産と配給の円滑を図るため、万全の機構を確立せむことを要望する。
一、配炭公團の業務運営の根本方針は、運営委員会に諮つて総裁がこれを決定すること。
運営委員会は、関係各方面の代表者を以て構成すること。
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 産業復興公團法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十七日
委員長 岡部 得三
衆議院議長 山崎 猛殿
附帶決議
一、産業復興公團の業務運営の根本方針は、運営委員会に諮つて総裁が之を決定すること。
運営委員会は、関係各方面の代表者を以て構成すること。
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 貿易公團法案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十七日
委員長 岡部 得三
衆議院議長 山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 價格調整公團法案(政府提出)右は本院において可決すベきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十七日
委員長 岡部 得三
衆議院議長 山崎 猛殿
━━━━━━━━━━━━━
〔岡部得三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=61
-
062・岡部得三
○岡部得三君 ただいま議題となりました石油配給公團法案ほか四件の公團關係法律案に關する委員會の審議の經過及び結果について御報告申し上げます。
委員會は、三月二十二日、二十四日、二十五日、二十六日及び二十七日の五日間にわたり開催せられ、まず商工大臣及び物價廳次長より、石油配給公團、配炭公團、産業復興公團、貿易公團竝びに價格調整公團の各法律案に關する提案理由及び要旨の説明が詳細にわたつてなされました。續いて質疑に入り、各委員と商工、大藏、運輸各大臣初め政府委員との間に、きわめて眞摯無心な質問竝びに應答が行われたのであります。
〔副議長退席、議長著席〕
以下、その重要なるものについて要旨を御報告いたしますると、委員より、公團は官廳統制の弊を避けがたいと思はれるが、何ゆえにかかる機構をとるに至つたかとの趣旨の質問があり、これに對して政府側からは、今後の經濟施策の基本が、私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律案に盛られる公正な自由競爭にあり、從つて民間の團體による統制方式は、これをとることが不適當になつたので、需給の極度に逼迫しており、買取統制を過渡酌に必要とする物資については、政府またはこれに代るべき政府機關のごときものが、政府の責任のもとに統制を行う必要があること、他方政府直接の專賣方式をとると、豫算や資金の拘束を受けて、圓滑なる業務の運營が困難であるために、從來の營團方式と官廳組織との中間に位する公團の形式を、現状では最も適當と考える旨の答辯がありました。
委員よりは、さらに官僚的弊害を豫防すべき政府の具體的措置に關して、詳細の質問がなされましたが、政府側ではこれに對し、中央及び地方に配給の適正竝びに官僚化防止のために委員會を設置すべく考慮中であること、公團の役職員は、大部分當該事務に經驗のある民間人をもつてこれにあて、たとい官吏その他の政府職員に任用しても、極力民間經營に劣らぬ、ビジネスライクな能率的運營に努める旨の答辯がありました。
その他公團の役職員は、當該公團の取扱物資に利害關係のある他の職業との兼務を許さぬとすることは、人材を得がたいことになるおそれありとの質問に對しまして、これは配給の適正を期するための規定であつて、この趣旨が達成できる限度において本規定を運用していきたい旨の答辯があり、また公團の存立期間は、臨時物資需給調整法の有效期間と同じく、一應明二十三年四月一日までであるが、延長されるか否かとの質問に對しまして、その際の經濟情勢によつて考慮さるべき旨の答辯がありました。
また公團の人事は、關係方面の代表者をもつて組織する委員會において候補者を選考する意思がないかとの質問に對しまして、人事に關しましては、特別の委員會を設けないが、廣く各方面の意見を徴して、現下の事情のもとにおいて、最適任者を總裁、副總裁に定め、これと相談して、廣く適材を役職員に任命したい意向である旨を、政府當局の見解として表明せられました。
次に、公團の經理に關しまして、公團の役職員が、生産者や消費者の意向を尊重せず、公團自體の利益を追求する弊はないかという質問に對しまして、政府側から、公團の取扱う物資の販賣價格及び手數料は、政府がこれを定め、收支は嚴に國家がこれを監督し、餘剩金を生じた場合には、これを國庫に納入せしめる等の措置が講ぜられておるから、かかるおそれのない旨の囘答がありました。
さらに配炭公團に關しまして、坑木その他石炭資材不足の對策、炭鑛金融の問題、炭鑛國家管理に關する政府の方針等についても、それぞれ質疑應答があり、特に亞炭の統制については、地方の家庭燃料用亞炭の配給竝びに亞炭事業一般の助成方策、特に石炭鑛業なみに亞炭を取扱うこと等について、政府の善處を要望する旨の發言に對し、政府よりその趣旨において考慮する旨の囘答がありました。
また配炭公團は、消費者直賣制度をとつておるが、指定販賣人制度を設置することが適當ではないかとの質疑に對し、政府側より、現在のごとき少量の配給量の場合においては、むしろ現在の消費者への直賣制度をとる方が適當であると考えておるが、取扱量の増加に伴い、指定販賣人制度設置についても、眞劍に研究を進めたいと考えておる旨の囘答がありました。
なお貿易公團に關連して、貿易公團設立の意義及びその能率的運營竝びに將來の貿易形態について、輸出計畫、特に見返り物資の見透しについて、また輸入物資の價格の問題等についての質疑があり、これに對して政府側よりそれぞれの答辯がありました。
また産業復興公團に關しましては、その資金計畫に關連いたしまして、政府側から、同公團の明年度の運營資金は、緊急産業及び輸出産業を中心とする中小産業の設備の建設、隱退藏物質の買取り等に要する資金として、推定年間約百億圓に達する見込みである旨の説明がありました。
なお石油配給公團に關しまして、石油類が將來自由に輸入されるときにおいて、國内業者はいかになるか、石油類の國内生産増強方策はいかに、農業會、水産會等の石油類取扱いに關する措置等について、質疑應答がなされましたが、特に農業會、水産會の石油類取扱いに關しましては、從來のいきさつに鑑み、會員たる需要者の委託による共同購入を認めるということになると思うが、關係方面と協議の上善處したいという答辯がありました。
以上の質疑に續きまして討論に移り、木村委員より、自由黨を代表してこの五法案に贊成し、ただ配炭公團法案に對しましては、次のような附帶決議を付して贊成なる旨の表明がありました。小野瀬委員より、進歩黨を代表して、石油配給公團、配炭公團及び産業復興公團の三法案に對し、次に述べる附帶決議を付して、この五法案に贊成の意を表明されました。次に松本委員より、社會黨を代表して、石油配給公團、配炭公團及び産業復興公團の三法案に對し、運營委員會及び監査委員會を設置する旨の規定を入れるよう修正意見が述べられたのであります。竹山委員より、國民協同黨を代表して、この五法案に全面的に反對なる旨の表明がありました。
木村委員提出の附帶決議の内容は、配炭公團については、
一、石炭、コークス、亞炭の特異性に鑑み、その配給實務については、速かに業界の經驗者を廣く活用し、單純なる官僚統制より一歩を進めて、本法運營の妙を發揮し、生産と配給の圓滑を圖るため、萬全の機構を確立せむことを要望する。
というのであります。また小野瀬委員提出の附帶決議の内容は、石油配給公團、配炭公團及び産業復興公團に對して、
業務運營の根本方針は、運營委員會に諮つて総裁がこれを決定すること。運營委員會は、關係各方面の代表者を以て構成すること。
というのであります。
採決の結果、松本委員提出の修正案は否決され、多數をもつて政府提出の原案通り可決し、木村委員及び小野瀬委員提出の附帶決議案に對しても、多數をもつて決定いたしました。審議の内容の詳細につきましては、速記録によつて御承知願います。以上をもつて私の報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=62
-
063・山崎猛
○議長(山崎猛君) 五案中、日程第五乃至第七の三案に對しては、松本七郎君ほか三名より、成規により、それぞれ修正案が提出されております。討論は便宜上第二讀會において、修正案の趣旨辯明を聽きたる上これをなすことといたします。五案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=63
-
064・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて五案の第二讀會を開くに決しました。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=64
-
065・綿貫佐民
○綿貫佐民君 直ちに五案の第二讀會を開かれんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=65
-
066・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=66
-
067・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに五案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。この際修正案の趣旨辯明を許します。松本七郎君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=67
-
068・会議録情報6
――――◇―――――
石油配給公團法案 第二讀會(確定議)
配炭公團法案 第二讀會(確定議)
産業復興公團法案 第二讀會(確定議)
貿易公團法案 第二讀會(確定議)
價格調整公團法案 第二讀會(確定議)
━━━━━━━━━━━━━
石油配給公團法案(政府提出)に對する修正案(松本七郎君外三名提出)
━━━━━━━━━━━━━
石油配給公團法案の一部を次のように修正する。
第十七條第一項の次に次の三項を加える。
石油配給公團の業務運營の根本方針は運營委員會に諮つて總裁が決定する。
運營委員會は石油の生産業及び消費産業竝びに輸送業の各勞資代表、一般消費者代表、新配給機關の役員竝びに從業員組合代表及び學識經驗者を以つて構成する。
運營委員會の決定事項は、これを公表しなければならない。
第二十條第五項の次に次の二項を加える。
石油配給公團の業務は配給監査委員會が常時これを監査する。配給監査委員會は消費産業、輸送業の各勞資代表、一般消費者代表及び學識經驗者を以つて構成する。
配給監査委員會は監査の結果に基き、石油配給公團の運營に關し必要な措置を講ずべきことを總裁に對して具申することができる。この場合總裁はその權限の範圍内に於て速かに適當な措置を講じなければならない。
━━━━━━━━━━━━━
配炭公團法案(政府提出)に對する修正案(松本七郎君外三名提出)
━━━━━━━━━━━━━
配炭公團法案の一部を次のように修正する。
第十八條第二項の次に次の三項を加える。
配炭公團の業務運營の根本方針は、運營委員會に諮つて總裁が決定する。
運營委員會は石炭及びコークス竝びに指定亞炭の生産業及び消費産業竝びに輸送業の各勞資代表、一般消費者代表、新配給機關の役員竝びに從業員組合代表及び學識經驗者を以つて構成する。
運營委員會の決定事項はこれを公表しなければならない。
第二十一條第五項の次に次の二項を加える。
配炭公團の業務は、配給監査委員會が常時これを監査する。
配給監査委員會は、消費産業、輸送業の各勞資代表、一般消費者代表及び學識經驗者を以つて構成する。
配給監査委員會は、監査の結果に基き、配炭公團の運營に關し必要な措置を講ずべきことを總裁に對して具申することができる。この場合總裁はその權限の範圍内に於いて、速かに適當な措置を講じなければならない。
━━━━━━━━━━━━━
産業復興公團法案(政府提出)に對する修正案(松本七郎君外三名提出)
産業復興公團法案の一部を次のように修正する。
第十八條第二項の次に次の三項を加える。
産業復興公團の業務運營の根本方針は、運營委員會に諮つて總裁が決定する。
運營委員會は、關係産業の各勞資代表、産業復興公團の役員竝びに從業員組合代表及び學識經驗者を以て構成する。
運營委員會の決定事項は、これを公表しなければならない。
第二十一條第五項の次に次の二項を加える。
産業復興公團の業務は、復興監査委員會が常時これを監査する。復興監査委員會は、關係産業の勞資代表及び學識經驗者を以て構成する。
復興監査委員會は、監査の結果に基き、産業復興公團の運營に關し必要な措置を講ずべきことを總裁に對して具申することができる。この場合總裁は、その權限の範圍内に於て、速かに適當な措置を講じなければならない。
━━━━━━━━━━━━━
〔松本七郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=68
-
069・松本七郎
○松本七郎君 私は日本社會黨を代表いたしまして、ただいま議題となりました法案中、石油配給公團法案、配炭公團法案及び産業復興公團法案に對する社會黨提出の修正案につき、その趣旨を簡單に辯明いたしまして、御贊成を求めんとするものであります。まづ修正案を朗讀いたします。
石油配給公團法案に對する修正案
石油配給公團法案の一部を次のように修正する。
第十七條第一項の次に次の三項を加える。
石油配給公團の業務運營の根本方針は運營委員會に諮つて總裁が決定する。
運營委員會は石油の生産業及び消費産業竝びに輸送業の各勞資代表、一般消費者代表、新配給機關の役員竝びに從業員組合代表及び學識經驗者を以て構成する。
運營委員會の決定事項は、これを公表しなければならない。
第二十條第五項の次に次の二項を加える。
石油配給公團の業務は配給監査委員會が常時これを監査する。配給監査委員會は消費産業、輸送業の各勞資代表、一般消費者代表及び學識經驗者を以て構成する。配給監査委員會は監査の結果に基き、石油配給公團の運營に關し、必要な措置を講ずべきことを總裁に對して具申することができる。この場合總裁はその權限の範圍内に於て速かに適當な措置を講じなければならない。
配炭公團法案に對する修正案
配炭公團法案の一部を次のように修正する。
第十八條第二項の次に次の三項を加える。
配炭公團の業務運營の根本方針は、運營委員會に諮つて總裁が決定する。
運營委員會は石炭及びコークス竝びに指定亞炭の生産業及び消費産業竝びに輸送業の各勞資代表、一般消費者代表、新配給機關の役員竝びに從業員組合代表及び學識經驗者を以て構成する。
運營委員會の決定事項はこれを公表しなければならない。
第二十一條第五項の次に次の二項を加える。
配炭公團の業務は、配給監査委員會が常時これを監査する。配給監査委員會は、消費産業、輸送業の各勞資代表、一般消費者代表及び學識經驗者をもつて構成する。
配給監査委員會は、監査の結果に基き、配炭公團の運營に關し必要な措置を講ずべきことを總裁に對して具申することができる。この場合總裁はその權限の範圍内に於て、速かに適當な措置を講じなければならない。
産業復興公團法案に對する修正案
産業復興公團法案の一部を次のように修正する。
第十八條第二項の次に次の三項を加える。
産業復興公團の業務運營の根本方針は、運營委員會に諮つて總裁が決定する。
運營委員會は、關係産業の各勞資代表、産業復興公團の役員竝びに從業員組合代表及び學識經驗者を以て構成する。
運營委員會の決定事項は、これを公表しなければならない。
第二十一條第五項の次に次の二項を加える。
産業復興公團の業務は、復興監査委員會が常時これを監査する。復興監査委員會は、關係産業の勞資代表及び學識經驗者を以て構成する。
復興監査委員會は、監査の結果に基づき、産業復興公團の運營に關し必要な措置を講ずべきことを總裁に對して具申することができる。この場合總裁は、その權限の範圍内に於て、速かに適當な措置を講じなければならない。
以上が修正案の内容でありますが、この案を提出いたしました根本の趣旨は、要するに統制は國民の納得のうちに行われなければならない、すなわち民主的統制を必要とするということにあるのであります。民主的統制とはいわゆる官僚統制に對する意味でありまして、舊來の官僚統制の弊害を除去せんとするものであります。今囘政府提出の公團法案によりますと、官僚統制の弊害がますます増大するおそれが多分にあるのでありまして、わが國の實状に鑑みまして、はなはだ案ぜられるのであります。國民がこれらの公團法の今後の成り行きに、疑心暗鬼をもつて注目しておるゆえんも、またここにあると思うのであります。(拍手)
政府においてもこの點に留意されまして、先ほど岡部委員長の報告にもございましたように、經濟安定本部に運營委員會と監査委員會とを兼ねさせた委員會を設置いたしまして、公團の民主的運營に努力する旨の答辯があつたのであります。けれども、政府のこの程度の言明では、國民は納得いたしません。政府はしばしば國民の協力を求められております。しかしながら國民の眞の協力は、納得があつてこそ初めて得られるものであります。
これまで國民は、あまりにも官僚統制の弊に苦しめられてまいりました。從いまして、民主的運營に努力するとの言明程度では、國民は少しも安んずることができないのであります。一口に民主的運營と申しましても、どの程度をもつて民主的なりとなすかは、それぞれ主觀によつて相違するからであります。われわれは少くとも運營委員會及び監査委員會の制度は、これを條文に明記すべきものであると信ずるのであります。かくて政府は民主的運營について、その熱意のある所を示さなければ、國民の協力を得ることは困難であろうと思うのであります。
物資が極度に缺乏しておりますときに、これが適正な配給をなさんとするには、統制を絶對に必要とすることは、何人も異論のないところでありまして、政府においても、また經濟統制の強化の要を説いておるのであります。さればこそ、これらの公團法案を提出されたのでありましよう。
かくのごとく統制の必要が増大すればするほど、それだけ統制機關の民主的運營がまた必要になつてくるのでありまして、この意味から、われわれは運營委員會及び監査委員會の制度により、少しでも運營の民主化を確保促進するために、これらの規定を條文に追加すべしと主張するのであります。(拍手)
しかもわが國の現状や國民性などを考慮いたしまして、この委員會は末端のこまかい事務にまで干渉するものではなく、特に根本方針に限つているのでありますから、これがため事務の停滯を來すがごときおそれは、少しもありません。むしろ適當な構成員による事務の促進が期待できるのであります。
以上が、はなはだ簡單ではありますが、大體の根本趣旨であります。官僚統制の弊害を少しでも阻止し、これら公團を幾分でもより民主的に運營させようとの熱意がおありでしたら、何とぞこれらの修正案に御贊同くださらんことを切望いたしまして、私の趣旨の辯明を終ります。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=69
-
070・山崎猛
○議長(山崎猛君) 五案に對しては、反對討論の通告があります。これを許します。柄澤と志子君。
〔柄澤と志子君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=70
-
071・柄澤と志子
○柄澤と志子君 日本共産黨を代表いたしまして、石油配給公團法案以下、第五、第六、第七、第八、第九公團法案を一括いたしまして、反對の趣旨を簡單に申し上げます。
石油竝びに石炭は、人間にとりましての食糧と同じく、日本の經濟を動かしますところの根源であります。この大事な二つの日本の經濟を動かして行く機動力になるところの産業に對して、今まさに、社會黨竝びに先ほどの船舶公團法案に對しましてわが黨の高倉代議士が指摘いたしましたように、今日まで日本の經濟を發展させます上に、民主化します上に、大きな弊害になつておりますところの財閥と官僚との結びつき、官僚統制の弊害が、ここにおいてさらに強化されようとしていることを指摘いたしまして、この法案に断固反對する次第であります。
今日石炭が足りない、生産を増強しなければならないと申されておりますが、その生産された少い石炭の大部分が、やみに流されておることをわれわれは知つております。また官僚が今日いかに腐敗堕落しているかというような事實も、多く新聞紙上などに暴露されております。この二つの問題は、決して別々な事象ではなくて、その根源は一つであります。
私どもは、政府がこの法案によつて私的獨占、つまり資本家の利潤を中心にした經營に任せることなく、その弊害を除くために、また官僚統制の弊害を除くために、その中間としてこの法案をとるということを申されたのでございますが、現在の政府によつてこれが行われますならば、おそらくその兩方の弊害がこの法案に殘されるということをおそれるのであります。
法案の内容を調べますと、經濟安定本部長官によりまして、また主務大臣によりまして、縱からの系統によつてこの人事の構成が行われます。われわれは、この公團を眞に民主化するためには、運營に對しましても、人事に對しましても、關係の各生産の團體の從業員、また輸送關係の從業員、消費者の代表、こうした人々の意見が反映するところの機關が、最も必要であると思われるのでございますが、その點が、この法案には、一つも取入れてないのでございます。
われわれは、石炭にいたしましても、石油にいたしましても、ことごとく國營を主張いたします。そして同時に、これに眞に新憲法の主權在民の趣旨を反映いたしますためには、人民の管理ということを主張しているのであります。人事にも運營にも、あらゆる方面に、消費者、生産者、それに從事する勞務者、こうした人々の意見が反映するためには、この人々の參加することが法案に盛られなければならないのでございますが、この法案は依然として官僚機構の弊害をそのままに取入れてあるのでございます。官吏服務紀律によつてこれらの從業員が支配されることを、はつきりとうたつてあるのでございます。
一體今の官僚があの腐敗堕落する原因はどこにあるのでございますか。日本の全官公吏が、なぜあのような要求を掲げて、政府と鬪わなければならなかつたのでしようか。今日その弊害を多くもつておりますところの官公吏、これは官公吏の生活が安定せず、今日のインフレ政策が日本で解決されないというところに基礎があるのでございますが、その官公吏の服務紀律を、またこの從業員に適用して、それを支配していこうとするような機構が、ここに企てられております。
私どもはこの點を十分指摘いたしまして、石炭、石油のような日本の經濟を左右する大事な産業に對して、非民主的な官僚的支配――今日多くの弊害を暴露しております官僚的支配が、ここにまた再現しますことの危險を指摘し、國營、日本の人民管理、日本の人民の手によつて日本の重要産業を經營することを主張いたしまして、この法案に反對の趣旨を簡單に申し上げる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=71
-
072・山崎猛
○議長(山崎猛君) これにより採決に入ります。まず日程第五ないし第七の三案につき採決し、次に日程第八及び第九の兩案につき採決することといたします。日程第五ないし第七の三案に對する松本七郎君外三名提出の三修正案を一括して採決いたします。松本七郎君外三名提出の三修正案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=72
-
073・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立少數。よつて三修正案は否決されました。
次に三案を一括して、原案につき採決いたします。三案の委員長報告は、いずれも可決であります。三案に贊成の諸君の起立を求めます。
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=73
-
074・山崎猛
○議長(山崎猛君) 起立多數。三案は原案の通り決しました。(拍手)
次に日程第八及び第九の二案は、原案の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=74
-
075・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて二案は原案の通り決しました。(拍手)これにて五案の第二讀會は終了いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=75
-
076・綿貫佐民
○綿貫佐民君 五案の第三讀會を省略して、第二讀會議決の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=76
-
077・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=77
-
078・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて五案とも第三讀會を省略して、第二讀會議決の通り可決確定いたしました。(拍手)
日程第十、地方競馬法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます。政府は本案の上程に同意せられました。委員長の報告を求めます。委員長佐伯忠義君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=78
-
079・会議録情報7
――――◇―――――
第十 地方競馬法の一部を改正する法律案(小川原政信君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 地方競馬法の一部を改正する法律案(小川原政信君外五名提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する。
昭和二十二年三月二十八日
委員長 佐伯 忠義
衆議院議長山崎猛殿
━━━━━━━━━━━━━
〔佐伯忠義君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=79
-
080・佐伯忠義
○佐伯忠義君 ただいま上程されました地方競馬法の一部を改正する法律案の委員會における審議の經過竝びに結果を報告いたします。
本改正案は、御承知のごとく畜産の振興をはかるために、地方事情により競馬場の數を増す必要があるので、地方競馬法の一部を改正しようとするものであります。
さてこの改正法案は、去る二十二日本委員會に付託いたされ、審議は短時日に行われたのでありますが、これは地方農村民及び一般大衆の熱烈なる要望にこたえんがための改正案でありますので、委員各位は、多忙な折にもかかわらず大多數出席されまして、熱心に論議されたことを、心から感謝している次第であります。
次に質疑應答の概要を申し述べますと、まず鈴木周次郎君から趣旨辯明があり、次いで質疑に入る前に懇談會を開きまして、各委員の地方競馬増設に對する熱望をまとめ、鈴木委員は政府側に希望意見を述べられました。その意見は次の八項目であります。すなわち
一、競馬場設立の基準をきめられたい。
二、競馬を行うときの審判制度を確立せられたい。
三、勝馬投票の方法について萬遺漏なきを期せられたい。
四、出走上における各種不備の點を是正する方法を考慮せられたい。
五、馬種の基準についての改善を考え、またその競走上における方法についても考慮せられたい。
六、賣得金に對する使途に對し當局は特に嚴重なる指導をするよう注意せられたい。
七、競馬に關する豫算作成にあたつては學識經驗者等を集めて、公聽會等を開き作成をなさしめ、また豫算を認可する場合は萬遺憾なきを期せられたい。
八、次期議會に提出を豫想されている。農事協同組合法案においては、畜産は全國的に連繋せられたる一本建になると思うが、その際は日本競馬會を廢止してその畜産團體に移管せられたい。
以上が政府に對しまする希望意見として述べられたのであります。
次に、佐藤乕次郎君より、畜産の増産改良の急務なること、及び調教、馴致、訓練の必要について熱烈なる意見が開陳せられ、さらに都道府縣馬匹組合及び連合會の承認を得た場合には、小競馬を認めてはどうかとの質疑がありました。また香川委員から、敗戰日本の現實の姿は、娯樂というものがほとんどないと言つてもいいくらいで、國民はみな萎靡沈滯している。これは重大問題で、何らかの方策が考えらるべきである、殊に文化の惠澤に浴さない地方の農民に對しては、一年に一囘か二囘のお祭り競馬というか、いわゆる草競馬を許して、一面健全なる娯樂を與え、他面においては馬匹の改良發達に貢獻して、生産増強に役立つという一石二鳥の方法をとられてはどうか、殊にこのことは、地方農村民だけでなく、一般大衆が熱望し欲求していることであるから、民意をくんで、この問間が直ちに具現するよう原案として出すか、もしそれができないならば、近いうちに施行細則なり、または農村協同組合法案提出の場合に、これを取入れていただきたいと思うが、この點いかに考えるかとの、實情に即した熱心なる質疑でありました。
これに對しまして政府は、競馬はいろいろの角度から見なければならぬ事情があり、一概に地方競馬は非常にいいものであるとの論斷はできないが、愼重に考慮研究する、また今囘の改正案では、北海道に六箇所、その他の府縣は二箇所までできることになつているが、はたして各府縣二箇所ずつできるかどうか疑問である。現在登録してある馬の數ははなはだ少い、しかしながら議會で皆さんの輿論として出されるのであるから、政府としてはただ増設の場合の認可の内規は、あくまで畜産の振興を目的とし、馬匹の改良増殖をはかることを目標とし、また馬を虐待しないよう考慮するとの答辯でありました。なお先ほどの鈴木委員の希望意見には贊成だが、ただ最後の畜産團體の獨立に伴つて、日本競馬會のやつていることを畜産團體の方に移管すべきであるという御希望は、政府としては十分愼重に考慮せねばならぬ問題であるとの、政府としての立場からの本法案に對する考え方が述べられました。
かくして質疑を終了いたしまして討論に入り、委員小川原政信君が、各黨を代表して原案に贊成の意見を述べられ、採決の結果、會全一致をもつて原案の通り可決いたしました。
最後に、本委員會の雰圍氣については、地方農村民及び一般大衆の熱望をそのまま委員各位が表明せられ、和やかな雰圍氣の中にも、きわめて眞劍にして、しかも熱心なる審議が行われまして、民主政治の眞髓が本委員會において具現せられましたことを、日本の將來における議會政治の發展のために、まことにまことに喜ばしい傾向であると、非常に心強く感じた次第であります。
なお本委員會の經過竝びに結果についての詳細は、速記録によつてごらん願うことといたしまして、以上をもつて、簡單ではありますが、報告といたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=80
-
081・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=81
-
082・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=82
-
083・綿貫佐民
○綿貫佐民君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=83
-
084・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=84
-
085・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
――――◇―――――
地方競馬法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=85
-
086・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定いたしました。(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=86
-
087・綿貫佐民
○綿貫佐民君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、政府提出特別調達廳法案を議題となし、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=87
-
088・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=88
-
089・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。
特別調達廳法案の第一讀會を開きます。國務大臣田中萬逸君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=89
-
090・会議録情報8
――――◇―――――
特別調達廳法案(政府提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━
特別調達廳法案
特別調達廳法
第一章 総則
第一條 特別調達廳は、内閣総理大臣の監督の下に、経済安定本部総務長官の定める基本的方策に基き主務大臣の定める計画に從い、連合國又は政府の需要する建造物及び設備の営繕並びに物資及び役務の調達に関する業務であつて主務大臣の指定するものを行うことを目的とする。
特別調達廳は、法人とする。
第二條 特別調達廳は、主たる事務所を東京都に置く。
特別調達廳は、主務大臣の認可を受けて。必要な地に從たる事務所を設けることができる。
第三條 特別調達廳は、基本金又は運営資金を有しない。その一切の建造物、設備及び物資(以下物という。)又は役務に対する支拂は、その物若しくは役務を需要し、又はこれが支拂の責に任ずる各廳関係の議会の議決を経た予算のうちからこれをする。
特別調達廳が調達を要求する権限のある各廳のために物又は役務の調達(営繕を含む、以下同じ。)を行うときは、工事又は物若しく、は役務の数量及び價格並びに支拂を受けるべき供給者を示す証明書を同時に支拂の責に任ずる各廳に提出しなければならない。当該証明書中連合國の需要に應するものに係るものについては、連合國の調達要求と差異のないことを明かにし、及び調達要求書の番号を示すことを必要とする。
第四條 特別調達聽は、定款を以て、左の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 役員に関する事項
五 業務及びその執務に関する事項
六 会計に関する事項
七 公告の方法
定款は、主務大臣及び経済安定本部総務長官の承認を受けて、これを変更することができる。
第五條 特別調達廳は、勅令の定め
るところにより、登記しなければ
ならない。
前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第六條 特別調達廳は、所得税及び法人税を課さない。
都道府縣、市町村その他これに準ずるものは、特別調達廳の事業に對しては、地方税を課することができない。但し、特別の事情に基いて内務大臣及び大藏大臣の認可を受けた場合は、この限りでない。
第七條 特別調達廳は、経済安定本部総務長官の命令によつて解散する。
前項に定めるものの外、特別調達廳の解散に関して必要な事項は勅令でこれを定める。
第八條 特別調達廳でない者は、特別調達廳又はこれに類似する名称を用いることはできない。
第九條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及び第五十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、特別調達廳にこれを準用する。
第二章 役員及び職員
第十條 特別調達廳の役員として、総裁副総裁各一人、理事二人以上及び監事一人以上を置く。
総裁は、特別調達廳を代表し、第十五條の規定に基きその業務を総理する。
副総裁は、定款の定めるところにより、特別調達廳を代表し、総裁を補佐して、特別調達廳の業務を掌理し、総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁が欠員のときにはその職務を行う。
理事は、定款の定めるところにより、特別調達廳を代表し、総裁及び副総裁を補佐して特別調達廳の業務を掌理し、総裁及び副総裁に事故のあるときにはその職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときにはその責務を行う。
監事は、特別調達廳の業務を監査する。
第十一條 総裁、副総裁、理事及び監事は、内閣總理大臣がこれを任命する。
第十二條 総裁、副総裁及び理事は、定款の定めるところにより、特別調達廳の職員のうちから、主たる事務所又は從たる事務所の業務に関して一切の裁判上及び裁判外の行爲をする代理人を選任することができる。
第十三條 特別調達廳の役員及び職員は、特別調達廳と物又は役務の調達に関する契約をなし、又はその調達に係る工事又は物の生産、加工、保管、賣買若しくは輸送を業とする会社の株式を所有し、又はこれらの会社その他の企業の業務に從事し、若しくはその營業につき一切の利害関係を有してはならない。
第十四條 特別調達廳の役員及び職員は、これを官吏その他の政府職員とする。
総裁たる者は、各省次官と同級又はこれと同格とし、その他の役員たる者は、一級又はこれと同格とし、職員たる者は、一級、二級若しくは三級又はこれらと同格とし、それらの定員は、内閣総理大臣がこれを定める。
特別調達廳の役員及び職員は、官吏に関する一般法令に從うものとする。但し、主務大臣が経済安定本部総務長官の承認を受けて、給與、服務その他必要な事項に関して特例を定めたときは、これによるものとする。
第三章 業務
第十五條 特別調達廳は、経済安定本部総務長官の定める基本的方策に基き主務大臣の定める計画及び指示に從い、左の業務を行う。
一 主務大臣の指定する連合國又は政府の需要する建造物又は設備の建設又は修理
二 主務大臣の指定する連合國又は政府の需要する物資又は役務の調達
三 経済安定本部総務長官の指定する場合前二号に定めるものの外第一條第一項の目的を達するために必要な業務
特別調達廳は、経済安定本部総務長官の定める方策に從い、特定の調達命令を充足し、又は主務大臣の特に承認する物資の集積を行う場合の外、資材を購入することができない。
第十六條 特別調達廳は、業務開始の際、業務の方法を定めて、経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官が前項の認可を行うときは、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において、認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第十七條 特別調達廳は、毎事業年度の前期及び後期の初において六箇月ごとの事業計画及び資金計画を作成し、これを経済安定本部総務長官に提出し、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときは、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
第四章 会計
第十八條 特別調達廳の事業年度は、毎年四月から翌年三月までとし、これを前期及び後期に分ける。
第十九條 特別調達廳は、前條の各期ごとに財産目録、業務報告及び財産増減書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを経済安定本部総務長官に提出し、その承認を受けなければならない。
経済安定本部総務長官は、前項の承認を行うときは、同項に掲げる書面を受理してから十五日以内に、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。但し、この場合において承認の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとする。
特別調達廳は、第一項の承認を受けたときは、財産目録、業務報告及び財産増減書を公告し、且つこれを定款とともに各事務所に備へて置かなければならない。
前項の財産目録、業務報告及び財産増減書は、会計檢査院の檢査を受け、その承認を受けなければならない。
特別調達廳は、経済安定本部総務長官の承認を受けて、命令の定めるところにより、毎期末の現金を國庫に納付しなければならない。
特別調達廳は、帳簿、書類その他一切の記録を整然且つ明確に記載し、会計檢査院、経済安定本部及び主務官廳の檢査を受けることができるように整備しなければならない。
会計檢査院は、常に適確に前項の檢査を行わなければならない。
第五章 監 督
第二十條 経済安定本部総務長官は、調達の基本的方策に関して、特別調達廳を指導監督する。
経済安定本部総務長官は、主務大臣の指定に係る連合國又は政府の需要する物又は役務の調達を確保するため必要と認めるときは、特別調達廳に対して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、連合國又は政府の需要する物又は役務の調達を確保するため必要と認めるときは、特別調達廳に對して、経済安定本部総務長官の定める物又は役務の調達に関する基本的方策に基いて監督上必要な命令をすることができる。
主務大臣及び経済安定本部総務長官は、必要があると認めるときは、特別調達廳に対して報告をさせ、又は当該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により当該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第二十一條 特別調達廳は、その役員及び職員に対して、特別の報酬を與える必要があるときは、その報酬規程を定めて、経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
経済安定本部総務長官は、前項の認可を行うときは、主務大臣及び大藏大臣にはからなければならない。この場合において、認可の最終責任は、経済安定本部総務長官にあるものとす。
第二十二條 主務大臣は、特別調達廳の役員が法令若しくは定款又はこの法律に基いてなす命令に違反したときは、これを解任することができる。
経済安定本部総務長官は、特別調達廳の役員が特別調達廳の目的及び業務に関して、その任に適せず、又はその職務を適切に遂行してゐないと認めるときは、これを解任することができる。
第六章 罰則
第二十三條 左の場合においては、その違反行爲をした特別調達廳の役員又は職員は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十五條に規定しない業務を行つた場合
二 第二十條第二項又は第三項に規定する経済安定本部総務長官又は主務大臣の監督上の命令に違反した場合
第二十四條 この法律の規定による報告を怠り、若しくは虚僞の報告をなし、又は檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十五條 前二條の罪を犯した者には、情状に因り懲役及び罰金を併科することができる。
第二十六條 第八條の規定に違反して、特別調達廳又はこれに類似の名稱を用いた者は、これを一万円以下の過料に処する。
附 則
第二十七條 この法律施行の期日は、勅令でこれを定める。
第二十八條 特別調達廳がその業務上なす契約は、会計法第四十六條第二項、財政法第十五條及び昭和二十一年法律第六十号の規定の適用については、政府を当事者とする契約とみなす。この場合において、必要な事項は、勅令でこれを定める。
第二十九條 政府は、設立委員を命じて、特別調達廳の設立に關する事務を処理させる。
第三十條 設立委員は、定款を作成して、主務大臣及び経済安定本部総務長官の認可を受けなければならない。
第三十一條 前條の認可があつたときは、設立委員は、遅滯なくその事務を特別調達廳の総裁に引き継がなければならない。
特別調達廳の総裁が前項の事務の引継ぎを受けたときは、総裁、副総裁、理事及び監事の全員は、遅滯なく設立の登記をしなければならない。
特別調達廳は、設立の登記をすることによつて成立する。
第三十二條 登録税法の一部を次のように改正する。
第十九條第七号中「法令ニ依ル公團、」の下に「特別調達廳、」を、「公團ニ關スル法令、」の下に「特別調達廳法、」を加える。
第三十三條 印紙税法の一部を次のように改正する。
第五條第六號ノ六の次に左の一號を加える。
六ノ六ノ二特別調達廳ノ業務ニ關スル證書帳簿
━━━━━━━━━━━━━
〔國務大臣田中萬逸君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=90
-
091・田中萬逸
○國務大臣(田中萬逸君) ただいま上程と相なりました特別調達廳法案の提案の理由竝びにその概要につき申し上げます。
連合國の需要する建造物の設營、建物設備等の修理、あるいは連合國の要求する物資及び勞務その他の役務の調達につきましては、從來各關係廳においてそれぞれその所管に應じ、これが目的達成に努力していたのでありますが、急速にこれを一元化いたし、能率の向上をはかり、經費を節減するとともに、連合國の便宜をも考慮いたしまして、ここに特別調達廳を設置する法案を提出する次第と相なつたのであります。本案により、特別調達廳は、從來各官廳の所管しておりました實際業務の大部を行うこととなりまして、各官廳は、これが企畫及び監督を實施する態勢となるのであります。
特別調達廳は、これを法人として、できるだけ民間有能の士を登用いたしまして、その創意と工夫とを活用して、能率の向上をはかりたいと思つておるのであります。何とぞ愼重御審議の上、御協贊あらんことを切望いたします。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=91
-
092・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧についてお諮りいたします。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=92
-
093・綿貫佐民
○綿貫佐民君 本案は議長指名十八名の委員に付託し、委員を直ちに指名されんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=93
-
094・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=94
-
095・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。委員の氏名は、書記官をして報告いたさせます。
〔書記官朗讀〕
特別調達廳法案委員
石原圓吉君 武藤常介君
大井直之助君 八坂善一郎君
栗山長次郎君 井上良次君
塚田十一郎君 伊藤卯四郎君
渕田長一郎君 金子益太郎君
横田清藏君 長谷川保君
太田秋之助君 安藤はつ君
佐藤久雄君 秋田大助君
關谷勝利君 木下榮君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=95
-
096・山崎猛
○議長(山崎猛君) ただいま指名いたしました委員諸君は速やかに第二委員室に御參集の上、委員長及び理事を互選し、引續き審議せられんことを望みます。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=96
-
097・綿貫佐民
○綿貫佐民君 議事日程變更の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、政府提出復興金融金庫法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=97
-
098・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=98
-
099・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて日程は變更せられました。
復興金融金庫法の一部を改正する法律案の第一讀會の續を開きます。委員長の報告を求めます。大谷瑩潤君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=99
-
100・会議録情報9
――――◇―――――
復興金融金庫法の一部を改正する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
報告書
一 復興金融金庫法の一部を改正する法律案(政府提出)
右は本院において可決すべきものと議決した因つてここに報告する
昭和二十二年三月二十九日
委員長大谷 瑩潤
衆議院議長山崎猛殿
━━━━━━━━━━━━━
〔大谷瑩潤君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=100
-
101・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 ただいま議題となりました復興金融金庫法の一部を改正する法律案に關し、委員會の經過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、昨日本委員會に付託せられまして、本日午前及び午後にわたり、愼重審議いたしました。まず政府の提案説明があり、次で質疑にはいりました。
政府の説明を通じて本案の内容を檢討いたしてみますると、復興金融金庫は、三月上旬末現在において、貸出總額六十億圓を突破し、日本經濟の再建復興に貢獻してきたのであるが、今日喫緊の重要事たる民需生産の再興のために、今後ますます多額の産業資金を要し、復興金融金庫に期待せられるところ相當巨額に上ることは當然であり、加うるに各種配給公團、船舶公團、産業復興公團等の所要資金を融資することになつて、これらの資金需要を種種檢討した結果、二百五十億圓に増額を決定したというのであります。
次いで政府と氏原一郎君、小笹耕作君、兩委員の間に、熱心な質疑應答がありました。第一に金庫の業務の運營につき、企業的基礎に立つて囘收の確實を第一とするか、あるいは國庫の損失を覺悟しても、危險な融資を行うものであるかについて質問がありましたが、政府はこれに對し、金庫は戰後經濟の再建を目的とするゆえ、ある程度の危險も豫期せられるが、決して放漫な貸出を行うものでないとの答辯がありました。
第二に、融資先に對する監督について、政府の方針に關する質問でありますが、これに對して政府は、貸出にあたつては、事前の審査はもとより、事後の檢査についても、具體的に計畫を進めておる旨の答辯がありました。
次に、中小企業に對する融資が十分でないきらいがないかとの質問がありましたが、これに對し政府は、中小企業に對する金融については、種々積極的に便宜をはかつておるほか、今後も一層努力をいたしたい旨の答辯がありました。以上、おもなる質疑について申し上げましたが、詳細は速記録をごらん願いたいと存じます。
次いで討論に移りまして、各黨代表より、それぞれ原案に贊成の旨の意見の開陳がありましたが、殊に社會黨氏原君より、放漫に貸付がせられないように、また公平に行われたいとの希望を述べられました。引續いて採決の結果、全會一致をもつて原案を可決いたしました。この段御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=101
-
102・山崎猛
○議長(山崎猛君) 本案の第二讀會を開くに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=102
-
103・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて本案の第二讀會を開くに決しました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=103
-
104・綿貫佐民
○綿貫佐民君 直ちに本案の第二讀會を開き、第三讀會を省略して、委員長報告の通り可決せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=104
-
105・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=105
-
106・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。よつて直ちに本案の第二讀會を開き、議案全部を議題といたします。
――――◇―――――
復興金融金庫法の一部を改正する法律案 第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=106
-
107・山崎猛
○議長(山崎猛君) 別に御發議もありません。第三讀會を省略して、委員長報告通り可決確定いたしました。
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=107
-
108・綿貫佐民
○綿貫佐民君 この際暫時休憩せられんことを望みます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=108
-
109・山崎猛
○議長(山崎猛君) 綿貫君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=109
-
110・山崎猛
○議長(山崎猛君) 御異議なしと認めます。暫時休憩いたします。
午後六時十八分休憩
――――◇―――――
〔休憩の後會議を開くに至らなかつた〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009213242X03019470329&spkNum=110
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。