1. 会議録本文
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000・会議録情報
大正三年三月十二日(木曜日)午後一時四十九分開議
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議事日程 第二十一號 大正三年三月十二日
午後一時開議
第一 (第一號)大正三年度歳入歳出總豫算追加案
第二 (第二號)大正三年度歳入歳出總豫算追加案
第三 (特第一號)大正三年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第四 大嘗祭齋田の土地免租に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第六 巡査看守退隱料及遺族扶助料法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 日本興業銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 戸籍法改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 明治三十八年法律第六十二號中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 寄留法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 明治四十三年法律第三十九號中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 關税定率法中改正法律案(關直彦君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 質屋取締法中改正法律案(岡田榮君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 日本勸業銀行法中改正法律案(白川友一君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 競馬法案(廣澤辨二君外二十名提出) 第一讀會
第十八 運河法中改正法律案(齋藤珪次君外二名提出) 第一讀會
第十九 社寺上地下戻に關する法律案(請願委員長提出) 第一讀會
第二十 奈古浦丸の所有者救恤に關する法律案(請願委員長提出) 第一讀會
第二十一 區裁判所管轄區域變更に關する法律案(吉田定之助君外一名提出) 第一讀會
第二十二 地租條例中改正法律案(大西五一郎君外一名提出) 第一讀會
第二十三 不動産登記法中改正法律案(三谷軌秀君提出) 第一讀會
第二十四 陸軍治罪法中改正法律案(花井卓藏君外二名提出) 第一讀會
第二十五 海軍治罪法中改正法律案(花井卓藏君外二名提出) 第一讀會
第二十六 薄荷營業取締法案(木下成太郎君外二名提出) 第一讀會
第二十七 市制中改正法律案(小出五郎君外一名提出) 第一讀會
第二十八 町村制中改正法律案(小出五郎君外一名提出) 第一讀會
第二十九 陸軍幼年學校廢止に關する建議案(石黒磐君外四名提出)
第三十 野岩羽鐵道速成に關する建議案(日下義雄君外四名提出)
第三十一 大嶺線延長工事速成に關する建議案(久保通猷君提出)
第三十二 名古屋富山間鐵道建設に關する建議案(三輪市太郎君外三名提出)
第三十三 鐵道速成に關する建議案(佐々木文一君外二名提出)
第三十四 飛騨鐵道建設に關する建議案(佐々木文一君外三名提出)
第三十五 置賜輕便鐵道建設に關する建議案(長晴登君外五名提出)
第三十六 上白鐵道建設に關する建議案(長晴登君外三名提出)
第三十七 阿仁輕便鐵道建設に關する建議案(田中隆三君外四名提出)
第三十八 開拓促進竝農牧奬勵に關する建議案(吉植庄一郎君外三十一名提出)
第三十九 府縣税及市町村税制限に關する建議案(石黒磐君外三名提出)
第四十 蠶業革新政策に關する建議案(武藤金吉君外四名提出)
第四十一 警視廳廢止に關する建議案(高木益太郎君外二名提出)
第四十二 滿洲戰蹟保存會の事業に關する建議案(長谷場純孝君外六名提出)
第四十三 田畑地價修正に關する建議案(有田温三君外一名提出)
第四十四 官幣大社熱田神宮禮遇復興に關する建議案(石黒磐君提出)
第四十五 靖國神社の祭日を國の祝日となすの建議案(清崟太郎君外四名提出)
第四十六 港務局設置に關する建議案(西村丹治郎君外一名提出)
第四十七 航空事業國庫補助に關する建議案(岩田大中君外一名提出)
第四十八 水産教育及其の試驗に關する建議案(小西和君外一名提出)
第四十九 治水事業費増加及其の竣功期限短縮に關する建議案(長谷場純孝君外六名提出)
第五十 森林事業調査機關設置に關する建議案(齋藤珪次君外十名提出)
第五十一 阿武隈川治水に關する建議案(齋藤珪次君外十名提出)
第五十二 多摩川改修工事年度繰上けに關する建議案(高木正年君外一名提出)
第五十三 瓦斯事業取締法制定に關する建議案(才賀藤吉君提出)
第五十四 移民奬勵に關する建議案(西村丹治郎君外一名提出)
第五十五 會計檢査機關擴張に關する建議案(中川虎之助君提出)
第五十六 鳴門架橋及潮流利用發電調査に關する建議案(中川虎之助君提出)
第五十七 眞心金條例制定に關する建議案(中川虎之助君提出)
第五十八 (特別報告第一號)木田村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第五十九 (特別報告第七號)西目村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十 (特別報告第八號)比樂島村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十一 (特別報告第四二號)林田村郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十二 (特別報告第四三號)小港郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十三 (特別報告第四四號)和地村無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十四 (特別報告第四五號)知井宮村郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十五 (特別報告第四六號)御座村三等郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十六 (特別報告第四七號)村君村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十七 (特別報告第四八號)村上村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十八 (特別報告第四九號)石橋に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第六十九 (特別報告第五〇號)圓座に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十 (特別報告第五一號)更木村に郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十一 (特別報告第五二號)神町に無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十二 (特別報告第五三號)三田村に無集配郵便局設置の請願 (委員長報告)
第七十三 (特別報告第五四號)十津川村折立無集配局を集配局に變更の請願 (委員長報告)
第七十四 (特別報告第五五號)金田一郵便局に集配事務開始の請願 (委員長報告)
第七十五 (特別報告第五六號)奧津郵便局に電信電話事務開始の請願 (委員長報告)
第七十六 (特別報告第二號)明治四十四年法律第五十九號附則中改正の請願外四件 (委員長報告)
第七十七 (特別報告第三號)軍人恩給法中改正の請願外三件 (委員長報告)
第七十八 (特別報告第五號)癈兵恩給竝軍人遺族扶助料増額の請願 (委員長報告)
第七十九 (特別報告第六號)明治四十四年法律第五十九號附則中改正の請願 (委員長報告)
第八十 (特別報告第四〇號)明治四十四年法律第五十九號附則中改正の請願外三十二件 (委員長報告)
第八十一 (特別報告第四一號)軍人恩給法中改正の請願外二件 (委員長報告)
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001・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ諸般ノ報告ヲ命ジマス
〔書記朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
大嘗祭齋田ノ土地免租ニ關スル法律案
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
支那ノ領土保全及機會均等主義ニ關スル質問(牧野外務大臣)
移民奬勵ニ關スル質問(牧野外務大臣)
海軍收賄ニ關スル第二質問(山本内閣總理大臣齋藤海軍大臣)
大正二年度追加豫算ニ關スル質問(高橋大藏大臣)
義務〓育費ニ關スル質問(原內務大臣)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
陸軍治罪法中改正法律案
提出者花井卓藏君加瀨禧逸君高野金重君
海軍治罪法中改正法律案
提出者花井卓藏君加瀨禧逸君高野金重君
薄荷營業取締法案
提出者木下成太郞君福井三郞君小出五郞君
市制中改正法律案
提出者小出五郞君小坂順造君
町村制中改正法律案
提出者小出五郞君小坂順造君
直江津開港ニ關スル建議案
提出者丸山豐治郞君翠川鐵三君井上角五郞君
根岸峮太郞君
千曲川治水計畫ニ關スル建議案
提出者小坂順造君笠原忠造君
武豐開港ノ修築ニ關スル建議案
提出者〓水市太郞君吉原祐太郞君春田祐〓君
殉難義勇者旌表ニ關スル建議案
提出者武市庫太君渡邊修君高野金重君
武內作平君村松恆一郞君矢野莊三郞君
才賀藤吉君〓水隆德君
帝國衞生行政ノ統一施設ニ關スル建議案
提出者濱田政壯君瀨戶山 清彥君八木逸郞君
若杉喜三郞君丸尾光春君
決議案
提出者中川虎之助君森田小六郞君加賀卯之吉君
森丘覺平君紫安新九郞君
營造物設置ノ補償制度制定ニ關スル建議案
提出者本出保太郞君植場平君漆昌巖君
小額生命保險官營ニ關スル建議案
提出者黒須龍太郎君
軍人恩給法中改正法律案
提出者森茂生君
裁判所構成法及辯護士法ヲ臺灣ニ施行スルノ法律案
提出者松田源治君岩崎勳君鵜澤總明君
戶水寬人君熊谷直太君
明治三十九年法律第三十一號中改正法律案
提出者松田源治君岩崎勳君鵜澤總明君
戶水寛人君熊谷直太君
行政裁判法及訴願法ニ關スル法律ヲ臺灣ニ施行スルノ法律案
提出者松田源治君岩崎勳君鵜澤總明君
戶水寛人君熊谷直太君
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ如シ
樺太現行漁業制度ニ關スル質問
提出者森田小六郞君
鐵道事故竝監營ニ關スル第三質問
提出者野村嘉六君
犯罪少年取締法制定ニ關スル質問
提出者加瀨禧逸君
新聞紙ノ發賣禁止ニ關スル第三質問
提出者齋藤隆夫君
〔左ノ答辯書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス)
大正三年三月十日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
衆議院議長長谷場純孝殿
衆議院議員伊東知也君提出支那ノ領土保全及機會均等主義ニ關スル質問ニ對
シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員伊東知也君提出支那ノ領土保全及機會均等主義ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
一、質問ノ趣旨ハ外蒙古ニ對スル露國ノ措置及ヒ西藏ニ對スル英國ノ措置ハ支那
領土保全主義ニ支障ヲ來スコトナキヤ否ヤニ在リト解セラルヽ所前記ノ措置ハ支
那ノ領土ニ變更ヲ加フルモノニアラサルヲ以テ政府ハ之カ爲帝國ト關係各國トノ
條約ニ規定セル支那ノ領土保全主義ニ支障ヲ來スコトナキモノト認ム
一蒙古ニ對スル露國ノ措置及西藏ニ對スル英國ノ措置ハ共ニ政治的關係ニ基ク
モノナルヲ以テ之ニ對シ商工業上等ノ關係ヲ律スヘキ機會均等主義ヲ適用シ得ヘ
キモノニアラスト思料ス尤モ政府ハ支那ニ於ケル帝國ノ利權ヲ增進スル爲常ニ機
宜ノ措置ニ出ツルコトヲ怠ラサル方針ナリ
右及答辯候也
大正三年三月十日
外務大臣男爵牧野伸顯
大正三年三月十一日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
衆議院議長長谷場純孝殿
衆議院議員中川虎之助君提出移民奬勳ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
(別紙)
衆議院議員中川虎之助君提出移民奬勵ニ關スル質問ニ對スル答辯書
政府ハ國民ノ經濟的海外發展ニ關シテハ大體ニ於テ質問者ト所見ヲ同クスルモノニ
シテ南米其他適當ノ方面ニ於ケル移民及起業ニ關シ事宜ニ應シテ相當ノ奬動ヲ與
フル覺悟ナリ尤モ質問末段ノ設備ニ關シテハ尙調査ヲ要スヘキモノアルノミナラス財
政其他ノ都合上未タ何等決定セルモノナキモ移民ノ出發前或程度ノ〓導ヲ與フル
件等ニ關シテハ目下考案中ニ屬ス
右及答〓候也
大正三年三月十一日
外務大臣男爵牧野伸顯
大正三年三月十一日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
衆議院議長長谷場純孝殿
衆議院議員黑須龍太郞君提出海軍收賄ニ關スル第一一質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
(別紙)
衆議院議員黑須龍太郞君提出海軍收賄ニ關スル第二質問ニ對スル答辯
書
質問ノ事項ハ孰レモ無根ノコトヲ前提トセルモノナルヲ以テ答辯ノ限ニ在ラス
右及答辯候也
大正三年三月十一日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
海軍大臣男爵齋藤實
大正三年三月十一日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
衆議院議長長谷場純孝殿
衆議院議員田川大吉郞君提出大正二年度追加豫算ニ關スル質問ニ對シ別紙答
辯書差進候
(別紙)
衆議院議員田川大吉郞君提出大正二年度追加豫算ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
大正二年度追加像算案第一號歲入經常部第七款第二項ニ計上セル砂糖消費
稅繰入ハ豫算參考書第十五ニ記載セル如ク旣ニ大正一一年度ニ於ケル行政整理ニ
依リテ生スヘキ財源三千九百餘万圓ノ一部ニシテ從テ又其ノ使用計畫ノ內譯ヲ示
シタル財源ノ總額一億三千二百八十九万餘圓ノ一部タリ故ニ之ヲ追加豫算ノ歲
入ニ計上シタルハ單ニ豫算編成上ノ形式ニ止リ之カ爲ニ何等豫定外ノ財源ヲ生ス
ル所ナシ
右及答辯候也
大正三年三月十一日
大藏大臣男爵高橋是〓
大正三年三月十一日
內閣總理大臣伯爵山本權兵衞
衆議院議長長谷場純孝殿
衆議院議員中川虎之助君提出義務〓育費ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
(別紙)
衆議院議員中川虎之助君提出義務〓育費ニ關スル質問ニ對スル答辯書
義務〓育費其ノ他地方費ハ累年遞增ノ趨勢アリタルヲ以テ大正元年九月內務文
部農商務ノ三大臣ヨリ地方長官ニ訓令シ以テ地方費ノ節約ヲ圖ラシメシニ漸次其
ノ效果ヲ呈スルノ狀況ナリ而シテ地方稅ヲ賦課スルニ當リ納稅者ノ負擔力ヲ願ミサ
ルカ如キハ其ノ當ヲ得タルモノニ非サルヲ以テ政府ハ切ニ課稅ノ權衡ヲ得セシメムコト
ニ付適宜ノ方法ヲ採ラムコトヲ期ス
右及答辯候也
大正三年三月十一日
內務大臣原敬
(左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ揭載ス〕
一去十日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如シ
取引所法中改正法律案外一件
鵜澤總明君森久保作藏君松本孫右衞門君
翠川鐵三君小泉策太郞君
佐々木仙一君渡邊修君茂輔君
坂口仁一郞君村高阪川本日本水壓館書 君 君 君 君
教育課程課大人民國卯之吉君
紫安新九郞君早起港發整爾君
耕地整理法中改正法律案外二件
戶狩權之助君加藤新次郎君春田祐〓君
大橋松二郞君渡邊祐策君木村良君
辻寛君豐福泰造君有田溫三君
肺結核療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法律案外一件
八木逸郞君岸本賀昌君宮古啓三郞君
若杉喜三郞君濱田政壯君鈴木萬次郎君
國光五郞君相島勘次郞君岡部次郞君
印紙稅法中改正法律案外二件
富安保太郞君三谷軌秀君稻茂登三郞君
石黑磐君佐藤信古君矢島浦太郞君
川上淳一郞君中小路與平治君大西五一郞君
著作權法中改正法律案
板倉中君鈴木巖君小坂順造君
武市庫太君小山完吾君大原義剛君
藏原惟郭君相島勘次郞君石橋爲之助君
農工銀行法中改正法律案
西谷金藏君大久保弁太郞君橫田千之助君
渡邊祐策君細梅三郞君西英太郞君
〓水隆德君柴田源左衞門君松本恆之助君
盲人保護法案
齋藤珪次君若杉喜三郞君原眞澄君
加藤勝彌君瀨戶山〓彥君神藤才一一君
半谷〓壽君高木益太郞君石橋爲之助君
國有土地森林原野下戾法中改正法律案
關信之介君伊藤祐一君岡田泰藏君
岩本平藏君則元由庸君大森與三次君
井上廣居君吉田圓助君有田溫三君
公共團體ノ管理スル公共用土地物件ノ使用ニ關スル法律案
森久保作藏君一坂俊太郞君稻茂登三郞君
友枝梅次郞君濱本義顯君黑須龍太郞君
福田又一君的野半介君田川大吉郞君
議院法中改正法律案
板倉中君澤來太郞君田邊熊一君
望月圭介君手塚正次君林齋藤隆夫君
小寺謙吉君高木益太郞君毅陸君
刑事訴訟法中改正法律案
翠川鐵三君武部其文君福岡世德君
〓水市太郞君相川久太郎君矢島浦太郎君
武內作平君高木益太郎君加瀨禧逸君
明治二十三年法律第二十七號中改正法律案
濱名信平君三浦盛德君丸山 豐治郞君
志々目藤彥君金子圭介君高津野末良介君
竹村欽次郞君高木正年君金重君
市制町村制中改正法律案
高津仲次郞君石黑磐君小出五郞君
永見寬二君小坂順造君山田珠一君
水野正己君大口喜六君有田溫三君
去ル十日會計法中改正法律案外一件委員戶狩權之助君辭任ニ付其補闕トシテ
森川源吾君ヲ、關稅定率法中改正法律案外一件委員田邊熊一君辭任ニ付其補
闕トシテ工藤善太郞君ヲ、衆議院議員選舉法中改正法律案外二件委員熊谷五
右衞門君辭任ニ付其補闕トシテ木下成太郞君ヲ、生產奬勵特別免稅法案外一件
委員齋藤宇一郞君辭任ニ付其補闕トシテ平井熊三郞君ヲ議長ニ於テ選定セリ
一委員長及理事左ノ通リ當選セラレタリ
取引所法中改正法律案外一件委員會
小泉策太郞君
委員長鵜澤總明君理事本出保太郞君
阪本彌一郞君
耕地整理法中改正法律案外二件委員會
委員長戶狩權之助君理事木村艮君
肺結核療養所ノ設置及國庫補助ニ關スル法律案外一件委員會
委員長八木逸郞君理事濱田政壯君
印紙稅法中改正法律案外二件委員會
委員長石黑磐君理事中小路與平治君
著作權法中改正法律案委員會
委員長板倉中君理事小山完吾君
農工銀行法中改正法律案委員會
委員長西谷金藏君理事橫田千之助君
盲人保護法案委員會
委員長齋藤珪次君理事若杉喜三郞君
國有土地森林原野下戾法中改正法律案委員會
委員長關信之介君理事有田溫三君
公共團體ノ管理スル公共用土地物件ノ使用ニ關スル法律案委員會
委員長森久保作藏君理事田川大吉郞君
議院法中改正法律案委員會
委員長望月圭介若理事澤來太郞君
刑事訴訟法中改正法律案委員會
委員長武部其文君理事〓水市太郞君
明治二十三年法律第二十七號中改正法律案委員會
委員長濱名信平君理事高木正年君
市制町村制中改正法律案委員會
委員長石黑磐君理事小出五郞君
〔左ノ質問書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ茲ニ揭載ス〕
海軍收賄ニ關スル第二質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正三年三月六日
提出者黒須龍太郞贊成者岩崎安次郞
外八十九人
海軍收賄ニ關スル第二質問主意書
我カ國民中ニハ夙ニ海軍部內ニ勢力ヲ振ヒ現內閣總理大臣海軍大將伯爵山本
權兵衞ニ對シ軍艦及兵器ノ購入ニ關シ當業者ヨリ賄賂ヲ收受セルノ疑ヲ懷クモノア
リ本員モ往々其ノ噂ヲ耳ニセルカ偶「シーメンス、シユッケルト」會社贈賄事件暴露セラ
レ關係將校ノ何レモ山本伯眤近ノ徒ナルヲ發見スルニ及ヒ國民ハ山本伯ヲ以テ海
軍腐敗ノ中心ト疑惑シ殊ニ山本伯カ昨年該事件ヲ知リナカラ之ヲ曖昧ニ葬リ去リ
タルコト及今囘該事件暴露ノ初ニ於テ山本伯カ議會ニ於テ海軍部內收賄者ナキヲ
公言シ海軍ノ腐敗ヲ蔽ハムトセルカ如キ怪ムヘキ態度トハ一層國民ヲシテ山本伯ノ
心事ヲ疑惑セシムルニ至レリ然ルニ山本伯ハ斯ル疑惑ヲ蒙ルニ拘ラス言ヲ左右ニ託シ
未タ引責辭退スルニ至ラス玆ニ於テ本員ハ左ノ諸項ヲ質問スルノ止ムヲ得サルニ至
レリ
第海軍腐敗ノ中心ト疑惑セラルル山本伯ニシテ依然内閣總理大臣海軍大將
ノ職ニ在リトセハ海軍ノ威信ヲ失墜シ國民ノ奉公心ヲ減殺シ延ヒテハ國民一般ヲ
腐敗墮落セシムルノ憂ナキカ
第二國防ノ根本義ハ軍隊及國民ノ士氣奉公心ノ旺盛ニ在ルコト何人モ熟知ス
ル所ナリ然ルニ山本伯ハ荐リニ軍艦ノ充實ヲ要求スルモ自ラハ國民ヨリ海軍腐敗
ノ中心ト疑惑セラレ其ノ結果第一項ノ憂ヲ生スルヲ顧ミス政府ハ軍艦ノ充實ヲ以
テ軍隊及國民ノ士氣奉公心ヨリモ國防上一層緊要トスルニ在ルカ
第三近年忠良ナル我カ國民中往々徵兵ヲ忌避スルノ不祥事アリ政府ハ之カ矯正
ニ苦心中ナルカ如キモ内閣總理大臣海軍大將タル山本伯ニシテ國民ヨリ海軍腐
敗ノ中心ト疑惑セラレ尙其ノ職ニ在リトセハ國民ヲシテ豺狼途ニ當ル焉ソ狐狸ヲ
問ハムトノ反動心ヲ懷カシメ徵兵忌避其ノ他ノ罪惡ヲ輕微視セシムルノ憂ナキカ
第四我カ皇室ハ獨リ權力ノ中心タルノミナラス實ニ國家風〓ノ淵源タルコト先キ
ニ明治天皇カ〓育勅語戊申詔書等ヲ降シ給ヒシニ徵シ明確ナリ然ルニ君側ニ侍
シ大政輔弼ノ責ニ任スル山本伯ニシテ海軍腐敗ノ中心ト疑惑セラレナカラ依然其
ノ職ニ在リトセハ上ハ聖德ヲ汚シ下ハ帝國ノ風〓ヲ害スルノ虞ナキカ
第五山本伯ニシテ反省引退セス飽迄其ノ職ニ留マルコトヲナサハ國民ノ反抗ヲ高
メ終ニ意外ノ變事ヲ生スルノ虞ナキカ
以上ハ本員カ衷心疑懼措カサル事項ニシテ其ノ結果實ニ帝國ノ盛衰消長ニ影響ス
ルモノアリ希クハ誠心誠意所見ヲ答辯セラレムコトヲ切望ス
右及質問候也
大正二年度追加豫算ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
大正三年三月五日
提出者田川大吉郞贊成者岩下〓周
外二十九人
大正二年度追加豫算ニ關スル質問主意書
大正二年度追加豫算案第一號歲入科目中臨時部第十款第一項ニ前年度繰入
金貳百九萬千拾參圓トアルニ對シ大正三年度豫算參考書前年度剩餘金ノ計算
中大正二年度ヘ繰入タル追加豫算見込額ハ五百五拾萬圓トアリ故ニ該見込財源
ハ差引尙參百四拾萬八千九百八拾七圓ノ殘餘ヲ存スヘキ計算ナリ然ルニ政府委
員ハ委員會議ニ於テモ本會議ニ於テモ最早殘餘金ナキモノノ如ク說明シ其ノ理由ト
シテ歲入經常部第七款第二項ノ砂糖消費稅綠入參百四拾六萬圓ヲ援用シタルカ
該繰入ハ豫算參考書前年度剩餘金ノ項ニ於テ旣ニ大正二年度一般歲入ニ計上シ
タル金額ヲ單ニ形式上追補シタルニ過キサルカ如シ故ニ該繰入ハ結局該見込額ニ何
等ノ關係ナキモノノ如ク解セラル隨テ該繰入ノ關係ニ依リ該見込額相殺セラレ最早
殘餘金ナシトスルノ理由ハ徹底セス此ノ〓ニ於ケル政府委員ノ說明ハ依然不分明ナ
リ重ネテ更ニ明確適正ナル說明アラムコトヲ希望ス
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=1
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002・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 都合ニヨリ暫ク休憩致シマス
午後一時五十五分休憩
午後三時十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=2
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003・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、日程第一第二及第三ハ大禮費ノ
豫算追加案ナルニ依リ一括シテ議題ニ致シマス、一(第一號)大正三年度歲入歲出
總豫算追加案一(第二號)大正三年度歲入歲出總豫算追加案一(特第一號)大
正三年度各特別會計歲入歲出豫算追加案委員長ノ報告ヲ求メマス、豫算委員長
改野耕三君
第(第一號)大正三年度歲入歳出總豫算追加案
第二(第二號)大正三年度歲入歲出總豫算追加案
第三(特第一號)大正三年度各特別會計歲入歳出豫算追加案
〔改野耕三君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=3
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004・改野耕三
○改野耕三君 諸君、本日ハ御卽位御大禮ニ關スル豫算ニ付キマシテ、豫算委員會
ノ結果ヲ御報告スルノ光榮ヲ有シマス、此御大禮ニ付キマシテ豫算ハ第一第二號、
特第一號、此三案ゴザイマスガ、先ヅ第一ノ追加豫算ハ大禮ニ屬スル分デゴザイマシ
テ、第一條ニ大正三年度歲入歲出追加額各三百八十一一万六千百四十圓、此財源
ハ前年度ノ財源ヲ繰入レテ歲入ニナッテ居リマス、而シテ此內譯ハ卽チ大藏省所管ノ
第十一款大禮費第一ガ祭典費、第二ガ工營費、第三ガ調度費、第四ガ饗宴費、第
五ガ接待費、第六ガ諸給費、此項目ニ別ッテ居ルノデアリマス、此金高ハ諸君ノ御手
許ニ皆アリマスカラ數字ハ省キマス、而シテ第二號ノ方ニ至リマシテハ、所謂大禮ノ施
設費デアリマシテ、各省ニ是ハ跨ッテ居ルノデアリマス、外務省ニ於キマシテハ宴會費、內
務省デハ警察費、衞生費、大藏省ニ於キマシテハ紀念章、宴會費、陸軍デハ觀兵式
ニ係ル費用、海軍ハ觀艦式、文部省ハ此御卽位式ニ付テノ唱歌ニ係ル費用、遞信省
ハ所謂通信費用、斯樣ニ別レテ居リマスガ、是亦數字ハ最早御手許デ御承知ノコトデ
ゴザイマスカラ省キマスソレカラ特第一號ノ特別會計ハ關東都督府、朝鮮總督府、臺
灣總督府、是ハ皆宴會費デゴザイマス而シテ豫算委員會ニ於キマシテハ御儀式ニ係
ル事ハ內務大臣ヨリ、經費ニ係ル事ハ大藏大臣ヨリ、詳細ナル說明ヲ受ケタノデゴザ
イマス、而シテ委員會ハ格別ノ質問モ無イコトデゴザイマスカラ、分科ニ移サズシテ豫算
總會ニ於テ卽決スルコトニナッタノデアリマス、抑〓此御大禮ハ千載一遇ノ御大典デゴザ
イマシテ、國民ハ均シク奉祝スルモノデゴザイマスカラ、豫算委員ハ滿腔ノ至誠ヲ捧ゲ敬
意ヲ表スルタメニ全會起立致シマシテ、此三案共原案ノ通リニ可決致シタノデゴザイ
マい、就キマシテハ此議場ニ於キマシテモ滿場一致ヲ以テ原案ノ通リ可決アランコトヲ
切ニ希望致シマス(拍手起ル)玆ニ謹ンデ豫算委員會ノ經過ヲ御報告申上ゲマス(拍
手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=4
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005・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 山本總理大臣
(內閣總理大臣伯爵山本權兵衞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=5
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006・山本權兵衞
○內閣總理大臣(伯爵山本權兵衞君) 諸君、本大臣ハ玆ニ大禮ニ關スル豫算ニ
付キマシテ一言スルコトヲ得マスルノハ最モ光榮トスル所デゴザイマス、諸君、大禮ニ關ス
ル豫算及儀式ニ付テハ昨日豫算委員總會ニ於テ關係ノ國務大臣ヨリ詳細ニ說明ニナ
リマシタノデ、諸君ニ於カレマシテモ定メテ御承知ニ相成ッタコトト信ジマス、惟フニ卽位ノ
禮及ビ大嘗祭ハ、嚮ニ本大臣ガ本議場ニ於テ一言致シマシタル如ク至尊御一世ニ
唯一タビ行ハセラルル國家最高ノ大典デゴザイマスルカラ、擧國一心滿腔ノ赤誠ヲ披瀝シ
テ寶祚ノ無窮ヲ奉祝致シマスルノハ本大臣ノ信ジテ疑ハザル所デゴザイマス就キマシ
テハ本豫算ハ滿場一致ヲ以テ御協賛アランコトヲ切ニ望ミマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=6
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007・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ヨリ採決ヲ致シマス、採決ノ前ニ御注意ヲ一言致シテ置
キマス、本案ハ最モ重大ナル議案ナルニ依リ、採決ニ際シテハ起立シテ贊成ノ意ヲ表セ
ラレンコトヲ望ミマス、是ヨリ採決致シマス、委員長ノ報告ニ贊成ノ諸君ハ起立
滿場總起立発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=7
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008・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 滿場一致ト認メマス、(拍手起ル)卽チ本豫算追加案ハ滿
場一致ヲ以テ可決確定致シマシタルコトヲ宣言致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=8
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009・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第四、大嘗祭齋田ノ土地免租ニ關スル法律案ノ第
一讀會ヲ開キマス
第四大嘗祭齋田ノ土地免租ニ關スル法律案(政府提第一讀會
번
大嘗祭齋田ノ土地免租ニ關スル法律案
大嘗祭ノ齋田ニ指定セラレタル土地ノ地租ハ大正三年分ニ限リ之ヲ免除ス
府縣市町村其ノ他ノ公共團體ハ前項ノ土地ニ對シ大正三年度ニ於テ租稅其
ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ス
本法ニ依リ免除シタル稅金ハ法律上總テノ納稅資格中ヨリ控除セス
〔大藏大臣男爵高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=9
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010・高橋是清
○大藏大臣(男爵高橋是〓君) 諸君、謹ンデ惟ミマスルニ、大嘗祭ハ國家ノ大典デ
ゴザイマシテ、悠紀主基ノ齋田ニ指定セラレタル土地ニ付テ、租庸ヲ免ジ給ヘルハ古來
ノ典例デゴザイマス、本年此大典ヲ舉行セラルヽニ當リマシテ、齋田ニ指定セラレタル土
地ニ對シ、古典ニ則リ地租ヲ免ズルヲ至當ナリト認メマシテ、本案ヲ提出シタル次第デ
ゴザイマス、愼重審議ノ上速ニ協贊ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=10
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011・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第五、右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議
題ト致シマス
第五右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=11
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012・中村啓次郎
○中村啓次郞君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=12
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013・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 中村君ノ動議ニ御異議ナイト認メマスカラ、其通リ決シマ
入、日程第六、巡查看守退隱料及遠族扶助法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-原內務大臣
第六巡查看守退隱料及遺族扶助料法中改正法律案第一讀會
(政府提出、貴族院送付)
巡查看守退隱料及遺族扶助料法中改正法律案
巡査看守退隱料及遺族扶助料法中左ノ通改正ス
第三條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ後ノ勤續年數ニ付第一條ニ依リ算定シタル退隱料年額本條ニ依リ算
定シタル年額ヨリ多キトキハ其ノ額ニ依ル
附則
本法ハ大正三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔內務大臣原敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=13
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014・原敬
○內務大臣(原敬君) 唯今日程ニ上リマシタトコロノ巡査看守退隱料ノ改正案ハ
是ハ誠ニ簡單ナル法案デアリマスルガ、要スルニ巡査看守ガ一度退隱致シマシテ恩給ヲ
受ケ、更ニ就職致シマシテ相當ノ年限ニ達シタル折ニ與ヘルトコロノ恩給ガ、前後俸給
ノ差ニ依テ前ノ方ヨリモ後ガ不利益ヲ來スコトガアルノデアリマス、此缺〓ヲ補ハンガタメ
ニ提出致シタル法案デアリマス、極メテ簡單ナル案デゴザイマスルガ、御審査ノ上速ニ協
贊セラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=14
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015・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程第七、右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選舉ヲ議題
ト致シマス
第七右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=15
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016・中村啓次郎
○中村啓次郞君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=16
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017・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 中村君ノ動議ニ御異議ナイモノト認メマスカラ其通リ決シ
マヽ、日程第八日本興業銀行法中改正法律案第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長日
下義雄君
第八日本興業銀行法中改正法律案(政第一讀會ノ續(〓〓〓)〓〓那里佳
府提出、貴族院送付)
〔日下義雄君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=17
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018・日下義雄
○日下義雄君 日本興業銀行法中改正法律案其委員會ノ經過及結果ヲ御報告
致シマス、此案ハ誠ニ簡單ナル案デゴザイマシテ、日本興業銀行法中ノ第五條ノ理事
四人ト云フモノヲ三人ニ改メタイト云フ希望テゴザイマス、ソレカラ第九條第五號ノ次ニ
左ノ一號ヲ加ヘル、詰マリ爲替及荷爲替ヲ取扱ハレタイト云フ希望デゴザイマスソレカ
ラ第二十條ニ於キマシテ、新ニ是ハ設ケタノデアリマスガ、日本興業銀行ニ於キマシテハ
支店代理店等ヲ設ケ、又ハ他ノ銀行ト「コルレスポンデンス」ヲ締結セントスルトキハ大藏
大臣ノ認可ヲ受クベシト云フコトデゴザイマス、是ハ從來興業銀行ニハ爲替及荷爲替等
ヲ取扱フ規定ガ無カッタノデアリマスルガ、新ニ之ヲ設ケテサウシテ此銀行ノ發展ヲ圖リタ
イト云フ主意ニ外ナラヌノデアリマス、是ハ諸君モ御承知ノ通リ、貴族院ヲ通過致シテ
政府素トシテ衆議院ニ迥ッテ參ッタモノデアリマスル、デ委員會ハ滿場一致ヲ以テ可決致
シマシタカラ、何卒速ニ諸君ノ御贊成ラ祈リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=18
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019・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=19
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020・中村啓次郎
○中村啓次郞君 直ニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決確定セ
ラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
日本興業銀行法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=20
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021・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直ニ二讀會ヲ開キ委員長ノ報告通リニ三讀會ヲ省略シテ
可決確定シタイト云フ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=21
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022・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ、本案ハ可決確定致シマス、日程
第九乃至第十二ハ同一委員ニ付託シ關聯セル議案ナルニ依リ一括議題トナスニ御異
識アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=22
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023・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ委員長ノ報告ヲ求メマス-長
島鷲太郞君
第九戶籍法改正法律案(政府提出)第一讀會ノ續(委員長
報告
明治三十八年法律第六十-二號中改第一讀會ノ續( 〓詩仁多少
第十正法律案(政府提出)
第十一寄留法案(政府提出)第一讀會ノ續報報いつもありがと
明治四十三年法律第三十九號中第一讀會ノ續(〓〓調節 中心
第十二改正法律案(政府提出)
〔長島鷲太郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=23
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024・長島鷲太郎
○長島鷲太郞君 本員ハ御付託ニナリマシタトコロノ戶籍法改正案外三件ニ付キマ
シテ委員會ノ報告ヲ致シマス、報告ノ便宜ト致シマシテ先ヅ戶籍法外三件ニ付キマシ
テ〓略ノ報告ヲ致シテ、後デ此戶籍法ニ付キマシテ一通リ御報告ヲ致シタイト云フ考テ
アリマス戶籍法改正案ハ僅カノ修正ヲ致シマシタ外ハ全部政府ノ改正案ヲ是認ヲ
致シタノデアリマス次ニ此明治三十八年法律第六十二號中改正法律案、及明治四
十三年法律第三十九號中改正法律案ハ現行戶籍法ガ改正ニナリマシタ結果ニ於
キマシテハ當然改正セラルベキモノデアリマスルカラ、此二法律案ニ付キマシテハ政府ノ
改正ヲ全部是認致シタ譯デアリマス、寄留法案ニ付キマシテハ多少政府ノ提出サレタト
コロノ法案ガ不熟ノ點ガゴザイマシタカラ、其部分ハ委員會ニ於テ修正致シマシテ、定
メシ諸君ノ御手許ヘ印刷シテ參ッテ居ラウト思ヒマス、〓要ノ御報告デアリマスガ、戶籍
法ニ付キマシテハ特ニ一通リ委員會ノ經過ヲ申上ゲタイト思ッテ居ルノデアリマス、戶籍
法改正法案ハ御手許ヘ配布サレテ居リマスル通リ、百八十六條カラ成ッタトコロノ大法
典デゴザリマシテ、而モ此法典タルヤ國民一般ニ通用セラルベキトコロノ重要ナル法典デ
アリマス、併ナガラ今同政府ガ改正ヲ企テラレタトコロノ骨子眼目ト致シマスルトコロノモ
ノハ、所謂身分登記簿ノ撤廢デゴザイマス、諸君ノ御承知ノ如ク唯今行ハレテ居リマ
スルトコロノ戶籍法ハ、明治三十一年六月ニ公布サレタモノデゴザイマシテ、所謂戶籍
法其文字ノ示シマスル如ク、我國占有ノ家族制度ニ墓キマシテ、戶主ヲ本ト致シテ人
別ヲ書入レル手續デアルコトガ此戶籍法ノ眼目デアリマスガ、尙ホ其他ニ民法ト關聯
致シマシテ、身分ノ變動ニ付テノ屆出ヲ記入スルトコロノ、所謂身分登記簿ト云フモノガ
アルノデゴザイマス、然ルニ諸君ノ御承知ノ如ク、此身分ノ變動ヲ屆出シムルトコロノ身
分登記簿ニ書上ゲル事柄ハ、是亦重複ニ戶籍簿ノ上ニ書上ゲルノデアリマスカラ、此事
務ヲ取扱ヒマスル市町村ニ於テハ、所謂重複ノ仕事ヲ致スノデアリマス、而モ此身分登記
簿ト申シマスル帳簿ハ、永久ニ之ヲ保存センケレパナラヌノデゴザイマスカラ、此保管ニ
付テモ亦尠ナカラザル費用ヲ費スノデアリマス、而シテ其實用如何ヲ顧ミテ見マスレバ
此明治三十一年以後本年ニ至リマスルトコロノ十有餘年ノ歲月ノ久シキ間ニ於キマシ
テ、戶籍簿ヲ利用スル方ガ多イノデゴザイマシテ、身分登記簿ヲ利用スル場合ハ至ッテ
少ナイノデアリマス、故ニ此事務ヲ取扱ヒマスル市町村役場ニ於テハ、此煩累ニ堪ヘヌ
ト云フトコロノ叫ビハ一般ニ起ッテ居ルノデアリマス、政府ニ於テハ此一般ノ叫ビニ從ヒ
マシテ、今囘此改正ヲ企テラレタノデアリマシテ、所謂身分登記簿ノ撤廢ト云フコトガ
此戶籍法ノ改正ノ骨子眼目トナッテ居ルノデアリマス、故ニ此改正案ノ大眼目ニ付キマ
シテハ、各派委員ニ於キマシテモドナタモ御異存ガナカッタノデアリマス、唯併シ委員會
ニ於キマシテ、斯樣ナ質問ガ委員ヨリ出タノデアリマス、一體十有餘年モ經ッテカラ身分
登記簿ガ不用デアルト云ッテ之ヲ撤廢スルト云フノデアルナラバ、何故ニ政府ハ十餘年
前ニ於テ斯樣ナ不用ナモノヲ作ッタノデアルカ、是ガ不用デアルト云フナラバ、本年ヲ俟タ
ズシテ今マデニ於テ是ガ撤廢ヲシテ宣イデハナイカト一云フ御質問ガ出タノデアリマス、之二
對スル政府ノ御答辯ハ、此身分登記簿ナルモノハ民法ノ實施ニ伴ッテ必要ラ生ジタノ
デアル、而シテ此長キ歲月ノ間ニ不用ヲ覺ッタノデアル、是ガ爲ニ此改正ヲ企テタノデアルト
云フ御答辯デアリマシタ、此外ニ此改正法案ノ中ニ於テ修正-改正セラレマシタトコロノ
モノハ數多アリマスガ、特ニ吾〓民間ノ代表者ト致シマシテ注目スベキトコロノ改正ノ箇條ガ
二ツアルノデアリマス、其第一ハ、元來此戶籍簿ノ上ニ於キマシテハ華族士族平民ト云フ名
稱ヲ書クノデアリマス華族士族ハ是ハ族稱テゴザイマスガ平民ト云フノハ一ノ名稱ニ止ッ
テ居ルノデアリマス、而モ此名稱アルガ爲ニ平民ト云フモノハ何カ一種ノ特別ナル階級ノ如キ
感ヲ起スノデアリマス、然ルニ△〓囘ノ此改正案ニ於キマシテハ、族稱デアリマストコロノ華族士族
ト云フモノハ戶籍ニ書キマスケレドモ、平民ト云フ稱號ヲ書カヌコトニ致シタノデアリマス、是ハ
注目スベキトコロノ改正ノ一〓デアリマス、第二ニハ元來此日本ノ御役所ノ御取扱ト云フ
モノハ、至極繁文縟禮ニ流レテ居ルノデアリマス、殊ニ屆出ノ如キハ何事モ書面ヲ以テセネバナ
ラヌト云フコトガ一般ノ風デゴザイマス、現行ノ戶籍法ニ於キマシテハ、ヤハリ此居出ヲ書面ヲ
以テスルト云フコトガ本則ニナッテ居ルノデアリマス、若シ之ヲ口頭ヲ以テスルトキニハ、相當ノ理
由ヲ具シテ其許可ヲ得ナケレバナラヌ手續ニナッテ居ルノデアリマス、此戶籍法ナルモノハ津
津浦ミノ人ニマデ適用サルベキトコロノモノデアリマスカラ、其手續タルヤ極メテ簡便ニ致
シテ置カナケレバナラヌノデアリマス、而シテ今囘ノ改正案ニ於キマシテハ、書面ニ依テモ
口頭ニ依テモ此屆出ガ出來ルト云フコトニシタノハ繁文縟禮ヲ除イタトコロノ私ハ一ノ
改正デアルト思ヒマス、是ガ此改正案ノ中ニ於テ注目スベキトコロノ二〓デアリマス、他ハ
或ハ字句ヲ修正致シマシタリ、條文ノ排列ヲ變ヘマシタリ、若ハ身分登記簿ノ撤廢ノ
結果多少ノ修正ヲ加ヘタニ過ギナイノデアリマス而シテ委員會ニ於キマシテハ前申述
ベマシタ通リ大體ニ於テ政府ノ改正案ヲ是認ヲ致シタノデアリマスガ、唯一條特ニ修
正ヲ致シタ重ナルモノガアルノデアリマス、ソレハ戶籍ノ屆出ヲ致シマシタトコロノ書類ト云
フモノハ、一箇月每ニ是ハ裁判所ニ送ルノデアリマス、此政府ノ改正案ニ依テ見マスト、
一タビ裁判所ニ送ッタトコロノ書類ハ見ルコトガ出來ナイ手續ニ相成ッテ居リマス、而シ
テ其屆ガ或ハ僞造デアルトカ或ハ變造デアルト云フ場合ガナイトモ限ラヌノデアリマス、是
等ヲ取調ベルニ付テハイロノ〓ノ手續ハアリマスケレドモ、極メテ簡易ニ調ベ得ル手續デナ
ケレバナラヌノデアリマス、是ガ爲ニ其〓ヲ修正致シマシテ、裁判所ニアル場合デモ市
町村ニアル場合デモ、之ヲ見ルコトガ出來ルト云フ修正ヲ致シタノデアリマス、此〓ハ
各派ノ委員諸君ニ於テモ何レモ一致サレタトコロノ點デゴザイマス、又政府ニ於テモ此
〓ニ付テハ敢テ反對ヲサレナカッタトコロデゴザイマス、尙其外ニ御報告ヲ申スベキモノガ
二ツバカリゴザイマスガ、其第一ハ元來此新領土ニ於キマシテハ、特別ノ法令ガ布カレテ
居ルノデアリマス、而シテ此現行ノ戶籍法ハ勿論此度改正サレマシタトコロノ戶籍法ニ
至リマシテモ、新領土トノ關係ガ定メテナイノデアリマス、ソレガ爲ニ例ヘバ朝鮮デアリマ
ストカ臺灣デアリマストカ云フ處ノ者ト、內地人ガ結婚シタ場合ニ於テ、事實ハ夫婦デ
アリマシテモ之ヲ正式ニ戶籍ニ載セルコトガ出來ナイト云フ不便ラ來シテ居ルノデアリマ
ス、此〓ニ付キマシテハ政府當局ニ質問ヲ致シマシタトコロガ、臺灣ニ於テハ何トカ工夫
ヲ致ス考デ、目下司法當局者ト交涉中デアルト云フ囘答ヲ得タノデアリマス、朝鮮ニ於
キマシテモヤハリ同樣ナル考ヲ持ッテ居リマスケレドモ朝鮮ノ方ハ未ダ交涉ノ手續ニナッ
テ居ラヌト云フ御囘答ヲ得タノデアリマス、是ハ他日政府ニ於キマシテモ何トカ考慮セラ
ルベキ點デアラウト思フノデアリマス、第二ハ此戶籍法ノ中ニ於テ最モ注意ヲ要スベキ條
交ガ一ツアルノデアリマス、卽チ此戶籍法ノ改正案ノ中ノ第四條ニ、市町村吏員ガ職務
ヲ行フ場合ニ於テ、故意若クハ重大ナル過失デ人民ニ損害ヲ加ヘタ場合ニ於テハ之
ヲ賠償スルト云フ規定ガアルノデアリマス、是ハ現行戶籍法ニモアルトコロノ規定デゴザイ
マスガ委員會ニ於テハ此規定ヲ一層擴メマシテ、國家ガ是ニ付テ賠償權ヲ持ツベキガ當
然デアルト云フコトニ付テ政府ニ質問ヲサレタノデアリマス、而シテ此場合ニ於テ司法大
臣ハ今日ノ場合ニ於テハ何トカ是等ニ對シテモ工風ヲ致サナケレバナラヌ、ソレー〓其法
規ヲ取調ベルコトニ努メルト云フコトノ言明ヲナサレタノデアリマス、此〓ガ委員會ニ於テ
議論ノ岐レタ〓デアリマスガ、此事ニ就テハ何レ少數意見ノ方カラシテ御意見ガ出ヤウ
ト思ッテ居リマス、唯問題トナリマシタノハ、直チニ此改正案ニ付テ修正ヲ施スベシト云
フ說ト、司法大臣ノ言明ニ期待シテ其時期ヲ待ツベシト云フ、此二ツノ點ガ說ガ岐レタノ
デアリマス、以上委員會ノ經過ヲ報告致ス次第デアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=24
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025・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 四案共ニ二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ議題ト致シマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=25
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026・中村啓次郎
○中村啓次郞君 直チニ二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=26
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027・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 直チニ二讀會ヲ開クト云フ中村君ノ動議ニ御異議ナイト
認メマス、其通リ決シマス、而シテ此四案ノ中ニハソレ〓〓修正ノ發議ノ申出モアリマ
スカラ、採決ハ一案每ニ採決スルコトニ致シマス
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=27
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028・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 先ヅ戶籍法ノ改正法律案ヲ第一ニ議題ト致シマス-齋
藤隆夫君
戶籍法改正法律案第二讀會(確定議)
〔齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=28
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029・齋藤隆夫
○齋藤隆夫君 諸君、本員ハ原案第四條ニ向ッテ根本的ノ修正ヲ提出致シマス、先
ヅ修正文ヲ朗讀致シマスルニ依テ、願クハ諸君ノ御手許ニアリマストコロノ原案第四條ト
御對照ヲ希望致シマス「第四條市町村長カ其職務ノ執行ニ付キ故意又ハ過失ニ因リ
テ屆出人其他ノ者ニ損害ヲ加ヘタルトキハ國ハ之ヲ賠償スルノ責ニ任ス前項ノ場合ニ
於テ國ハ市町村長ニ對シテ求償權ヲ有ス」是ガ修正案デゴザイマシテ、原案ト異ナッテ居
リマス所ハ、二箇ノ〓デアリマス、卽チ第一ハ賠償責任ノ主體ニ關シ、第二ハ賠償責
任ノ原因ニ關スル事柄デアリマス、先ヅ賠償責任ノ主體ニ關シマシテハ、原案ニ依リマス
ルト市町村長ガ其職務ヲ行フニ當リテ、屆出人其他ノ者ニ損害ヲ加ヘタトキニハ、市
町村長ガ個人トシテ己レノ私有財產ヲ以テ其責ニ任ズルト云フコトニナッテ居リマスガ、
修正案ハ之ヲ改メテ國トナシ、卽チ國家ヲ以テ責任ノ主體トシタノデアリマス、茲ニ一言
註釋ヲ加ヘテ置カナケレバナリマセヌノハ、戶籍事務ハ國家ノ事務デゴザイマシテ、市町
村ナル自治體ノ事務デハゴザイマセヌ、ソレ故ニ市町村長ガ戶籍事務ヲ取扱ヒマスノハ、
自治體ノ機關タル資格ニアラズシテ、國家ノ機關タル資格ニ於テ爲スモノデアリマスカラ
シテ、其責任モ亦國家デアルト云フコトニ極メタノデアリマス、次ニ賠償ノ原因ニ付キマ
シテハ、原案ニハ「故意又ハ重大ナル過失」ト云フコトニ制限シテアリマスガ、之ヲバ「故
意又ハ過失」ト云フコトニ致シマシテ、民法上ノ損害賠償ノ原因ト同一ノ程度ニ置クト云フ
ノガ修正案ノ要旨デゴザイマス、是ヨリ本員ガ此修正案ヲ提出致シマシタトコロノ理由
ニ付キマシテ暫クノ間御〓聽ヲ煩ハシタイノデアル、此修正案ハ戶籍法、我國ノ法典ト
シテ餘リ多クノ注意ヲ拂ハレザルトコロノ戶籍法ノ僅カ一箇條ヲ修正セントスルモノデゴ
ザイマシテ、其趣百モ唯今申述ベマシタ如ク頗ル簡單ニシテ明瞭デアリマス、併ナガラ事
柄ハ頗ル重大デアリマス、卽チ國家ノ賠償責任ニ關スル問題デゴザイマシテ、我國ニ於キ
マシテハ未ダ曾テ立法例ガ無イノミナラズ、歐米諸國ニ於キマシテモ其立法例ガ區々ニシ
テ未ダ一定シテ居ラヌトコロノ此大問題ヲバ、此一箇條ノ修正ニ依テ決定セントスルノ
デゴザイマスカラ、其理由ヲ述ブルコトハ隨分面倒デアリマス、或ハ法理ノ上ヨリ論ジ、或
ハ實際ノ上ヨリ論ジ或ハ憲法ノ上ヨリ論ジ、更ニ各國ノ立法例ナドヲバ竝ベマシタナラ
バ、迚モ短キ時間ニ於テ述べ盡スコトガ出來マセヌカラ、本員ハ唯其要〓ヲ略述致シマ
シテ、後トハ諸君ノ御〓究ト御判斷ニ一任スル外途ガナイノデアリマス、先ヅ此〓ニ關ス
ル我ガ國法上ノ解釋ハ如何デアルカト申シマスルト、是ハ二箇ノ方面ヨリ觀察ヲシナクテ
ハナリマセヌ、卽チ第一ハ國家ノ私法的行爲ヨリ生ズル損害デゴザイマシテ、第二ハ國
家ノ公法的行爲ヨリ生ズルトコロノ損害デアリマス、國家ノ私法的行爲ヨリ生ズルトコ
ロノ損害ハ、是ハ普通民法ノ支配ニ屬スルモノデアリマスカラ、官吏ヤ公吏ハ私法的行
爲ヲナスニ當ッテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキ、例ヘバ鐵道ノ役人ガ過ッテ乘客ニ損害ヲ加
ヘタヤウナ場合ニ於キマシテ、是ハ國家ガ其責任ヲ負フベキモノデアルト云フコトハ現行
法ノ解釋ニ於テモ亦判決例ニ於テモ一致シテ居ルトコロデゴザイマスカラ、此〓ニ付テハ
別ニ議論ハ致シマセヌ、次ニ國家ノ公法的行爲ヨリ生ズル損害ニ付キマシテハ、是ハ聊
カ議論ハゴザイマスガ、併シ今日我ガ國法上ノ解釋トシ、又判決例ノ示ストコロニ依リ
マシタナラバ、國家ニハ責任ガナイ、國家ニハ全ク賠償ノ責任ガナイト云フコトニ一致
シテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ官吏公吏ガ國家ノ公吏的事務ヲ行フニ當ッテ、他人ニ
損害ヲ加ヘマシタ場合ニ於テハ、是ハ救濟ヲ訴ヘル所ノ途ガナイノデアリマス、警官ガ拔
劍ヲシテ人民ヲ殺傷スルコトアリト雖モ、人民ハ何レノ所ニ對シテモ其賠償ヲ請求スルコ
トガ出來ナイト云フノガ今日我國ノ現行法ノ解釋デアリマス、立憲法治國ノ下ニ於キ
マシテ、我ガ國法上ニ於テ斯樣ナ大ナル缺漏ガアルト云フコトハ實ニ驚クベキ事實デアリ
マス、唯之ヲ行ヒタマシタ所ノ官吏ヤ公吏ガ、或ル特殊ノ場合ニ於テハ個人トシテ自
分ノ私有財產ヲ以テ其責任ヲ負擔スルト云フ規定ガ二三ノ法律ニ於テ定メテアリマス、
ソレハ如何ナル場合デアルカト云フト、刑事訴訟法第十四條、不動產登記法第十三
條公證人法第六條、及現行戶籍法ノ第四條デゴザイマシテ、此場合ニ於テハ下手
人タル所ノ官吏公吏ハ個人トシテ自己ノ財產ヲ以テ其責ヲ負フコトガアリマスルガ、之ヲ外
ニシテハ國家ハ固ヨリ下手人タル官吏公吏ト雖モ一切其責任ヲ負ハナイノデアリマス、
是ハ理論ノ上ニ於テモ實際ノ上ニ於テモ、亦憲法ノ上ニ於テモ實ニ不都合極マルコトデ
アリマスカラシテ、此機會ニ於テ此條文ヲ利用シテ、國家ノ賠償責任ノ端〓ヲ啓キタイト云
フノガ本員ノ趣意デアリマス、先ヅ理論ノ上ヨリ申シマスレバ、國家ニハ賠償責任ガアル
ト云フコトガ近來發達シテ居ル所ノ法理上ノ思想デゴザイマシテ、是ハ全ク立憲法治國
ノ賜デアリマス、專制ノ時代、國家萬能主義ヲ以テ國民ノ思想トナシ、法理上ノ基礎
トナシテ居リマシタ時代ニ於テハ、國家ハ過チヲ爲スベキモノデハナイ、國家ハ決シテ不法
行爲ヲ爲スベキモノデナイト云フコトニ一致シテ居ッタノデアリマス、國家ノ機關タル官吏
ヤ公吏ガ爲シタ不法行爲ハ、國家ノ行爲デナクシテ私人ノ行爲デアル、國家ハ官吏ヤ公
吏ニ向ッテ不法行爲ヲナスベシトハ命令シナイ、ノミナラズ之ヲ禁ジテ居ルノデアルカラ、此
命令及禁令ニ違背シテ爲シタル行爲ハ國家ノ行爲テナクシテ個人ノ行爲デアルカラ、國
家ハ決シテ其責任ヲ負擔スルモノデナイト云フコトニ極ッテ居ッタノデアリマス然ル所ガ近
來ニ於テハ此思想ハ全ク打破ラレテシマッテ、國家ハ不法行爲ヲナスノ能力ガアル、國家
ノ機關タル官吏ヤ公吏ガ爲シタトコロノ不法行爲ハ卽チ國家ノ不法行爲デアルト云フ
コトニ、法理上根據ヲ固メテ來タノデアリマス、併シ此〓ニ付テハ精シク論ジタナラバ
限リガゴザイマセヌカラ、總テ省略ヲ致シマスルが、縱令後ニ於テ本員ノ修正案ニ反對ス
ル御方ト雖モ、此論結ニ付テハ御同意アルコトヽ思フ、唯此〓ニ關スル政府當局者ノ
意見ニ付テハ一言シテ置カナケレバナリマセヌ、委員會ニ於テモ此處ニ出席サレテ居ル所
ノ奧田司法大臣ヲ始メトシテ、次官及局長ノ諸氏ハ此〓ニ付テ如何ナル意見ヲ持ッテ
居ラレルカト云フト、ヤハリ舊思想ニ因ハレテ、國家ハ決シテ不法行爲ヲ爲スベキモノデ
ナイ、官吏公吏ノナシタ不法行爲ハ個人ノ行爲デアルト云フ思想ノ下ニ此戶籍法第
四條ノ原案ヲ規定セラレタノデアリマスガ、是ハ實ニ驚クベキコトデアル、奧田大臣ハ失
禮デハゴザイマスルガ大分オ年ヲ召シテ居ラレマスカラ、頭ノ中ガ幾ラカ古クナッテ居ル
カモ知レマセヌガ、其以下ノ次官ヤ局長諸氏ハ新智識ヲ以テ自カラ任ジテ居ラレル方デア
ル、此人〓ノ口カラシテ斯カル舊說ヲ聞クニ至ッテハ、本員ハ實ニ呆レザルヲ得ナイノデア
リマス、併シ本員ハ之ニ付テ別ニ追窮ハ致シマセヌガ、諸氏ノ說ハ已ニ學界カラ驅逐セ
ラレテ居ルト云フコトヲ御承知ニナッタナラバソレデ宜シイノデアル、次ニ實際ノ上ヨリ觀
察致シマシテモ、市町村長ニ責任ヲ負擔セシメテ、市町村長ガ個人トシテ己レノ私有
財產ヲ以テ其責任ヲ負フト云フコトニ致シマシタナラバ此賠償責任ト云フモノハ殆ド
有名無實ニナラナケレバナラヌノデアリマス、何故カト云フト、不法行爲ニ依テ生ズル損害
ノ程度ト云フモノハ測リ知ルコトノ出來ナイモノデアル、而シテ彼等ノ財產ハ高ノ知レタ
モノデアリマス、有形無形ヲ問ハズ彼等ノ財產ノ程度ハ知レタモノデアリマスカラ、是等
ノ財產ヲ以テ測リ知ルベカラザル所ノ損害ヲ賠償シロト云フコトヲ、法律ノ上ニ制定ヲシ
テ居タ所ガ、殆ド有名無實トナッテシマフノデアル、況ヤ彼等ガ仕事ヲスルノハ、個人タル
資格ヲ以テセズシテ國家ノ代表者トシテ仕事ヲスルノデアル、而シテ其損害ヲ個人トシテ
負擔ヲセネバナラヌト云フコトニナリマシタナラバ、是ハ彼等ニ對シテ非常ニ殘酷デアルノ
ミナラズ、寧ロ背理ノ事ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、最後ニ憲法政治ノ上ヨリ觀
察致シマシタ所ガ、憲法政治ノ主タル目的ハ卽チ人權ノ擁護ト云フコトデアル、人權擁護
ノナキ所ニハ憲法政治ハナイノデアリマス、然ルニ人民ガ人民ニ對シテ損害ヲ加ヘタ時ハ
賠償ノ責任ガアリ、國家ガ人民ニ對シテ損害ヲ加ヘタ時ニハ賠償ノ責任ガナイ、人民
ハ國家ノ前ニハ全ク無權利デアル、奴隷ノ境遇デアルト云フガ如キ今日ノ我國ニ、立憲
政治ガ行ハレテ居ルト云フコトガ言ハレマスルカ、御承知ノ如ク今日我國ノ言論界ニ於
テハ、人權蹂〓ニ關スル非難ノ聲ガ隨分高イノデアリマス、人權蹂躙ニ關スル非難ハ卽
チ人權擁護ニ關スル聲デアル、然ルニ國法上ノ規定ニ於テ斯カル〓陷ガアル場合ニ於
テ、ドウシテ人權擁護ト云フコトガ出來ルノデアリマスカ、人權ノ擁護ハ唯判事ヤ檢事
ヤ乃至警察官ノ非行ヲ攻擊シテ、一時當局者ノ責任ヲ糺ス位ノコトデハ決シテ其
目的ヲ達スルコトガ出來得ルモノデハアリマセヌ、彼等ノ非行ニ對シテ國家ノ賠償責任
ヲ定ムルニ當ッテ初メテ其實ヲ擧ゲルコトガ出來ルノデアル此途ヲ取ラズニシテ、如何ニ
人權蹂〓ヲ口ニシタ所ガツマリ其目的ヲ達スルコトガ出來得ルモノデハアリマセヌ、唯之
ニ付テ諸君ニ御報告申上グベキ一事ハ、去月二十二日大阪管內ノ辯護士大會ニ於テ
ハ、初メテ此事ニ氣ガ付イテ、其決議第五項ニ於テ斯ウ云フコトヲ揭ゲテ居ルノデアリマス
「官吏其職務ヲ行フニ當リ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ國家ヲシテ是カ賠償ノ責ニ任セ
シムヘキ規定ヲ設クルコト」斯ウ云フコトヲ決議シテ居リマスルガ、御參考ノタメニ諸君ニ
御報告ヲ致シテ置キマス、右述ベタヤウナ次第デゴザイマシテ、理論ニ於テモ實際ニ於テ
モ亦立憲政治ノ上ヨリ觀察ヲ致シマシテモ、此原案ハ頗ル時代遲レノ失當ノ甚シキモノ
デアリマシテ、本員ノ修正ハ最モ時代ニ適シテ居ルモノト信ズルノデアリマス、唯茲ニ豫想
シ得ベキ二ツノ反對說ガゴザイマスカラ、此反對說ニ付テ簡單ニ辯駁ヲ加ヘテ置クノ必要
ヲ認メテ居ルノデアリマス、ソレハ如何ナルコトデアルカト云フト第一ハ法律ノ均衡ト云
フコトデアル、此法律ノミヲ改正シテ他ノ法律ヲバ其儘ニ打チヤッテ置イタナラバ、法律ノ
均衡ヲ維持スルコトガ出來ナイ、改正ヲスルノナラバ外ノ法律ト一〓ニ改正ヲシナケレバナ
ラヌト云フ議論デアル、此議論ハ時ニ政府當局者ノ口カラ聽クノデアリマス、政府ノ當局
者ハ議員ガ提出スル法律案若クハ修正案ヲ排斥セントスル場合ニ於テハ斯ル口實ヲ
以テ當ッテ居ルノデアル併ナガラ本員ノ見ル所ニ依レバ、此ハ取ルニ足ラザルトコロノ愚
論デアリマス、一體法律ノ均衡トハ抑.、如何ナルモノデアル、法律ヲ作ルハ家ヲ建テタリ
庭ヲ造ッタリスルトハ違フノデアル、法律ハ國家ノ飾リ物テハアリマセヌカラ、必要ニ應ジ
テ改正ヲスルト云フノガ立法事業ノ目的デアリマス、他ニ二三時代後レノ背理ノ法律ガ
アルカラト云フノデ、此法條ノ修正ヲ拒ムト云フコトハ理窟ノ上ニ於テ認ムベカラザルコト
デアル、次ニ唯今委員長ノ御報告ガアリマシタ如ク、政府ニ於テモ國家ノ賠償責任法
ニ關シテハ是ヨリ〓究ヲ遂ゲテ、孰レ成案トシテ出スカモ分ラヌト云フ政府ニ意見ガアル
カラ、先ヅソレマデ待タウト云フトコロノ議論デアリマス、是ハ實ニ誤マレルノ甚ダシキモノ
デアリマス、信ズベカラザルトコロノ政府ノ公約ヲ信ジテ、議會ノ權能ヲ抛タントスルトコロ
ノ議論デアリマス、帝國議會ヲシテ政府ニ隸屬セシメントスルトコロノ議論デアリマス、況
ヤ政府ノ公約ナドト云フコトハ決シテ當テニナルモノデハアリマセヌ、又此立法事業ヲ舉ゲ
テ政府ニ一任シタトコロガ、決シテ最善ノ效果ヲ得ルモノデナイト云フコトハ過去ノ歷
史ガ之ヲ證明シテ居ルノデアリマス、諸君ハ我ガ政府內ニハ新智識ヤ學者ヲ以テ滿タ
サレテ居ルト思ッテ居ラルヽカハ知リマセヌガ、本員ノ見ル所ニ依レバ政府部內ニハ學者
ト稱ヘラレル者ハ一人モ居ラヌノデアリマス(「エラト事ヲ仰シヤル」ト呼フ者アリ)最前申
上ゲマシタ如ク、現ニ司法部內ノ要部ヲ占メテ居ラレルトコロノ大臣以下諸氏ニ於テ
モ、國家ニ賠償責任ガナイト云フヤウナ舊思想カラシテ脫却スルコトガ出來ナイノデアリ
さく、況ヤ其以下ノ人〓ノ智識ニ至ッテハ大〓推シテ知ルコトガ出來ルノデアリマス(「エ
ライモンダ」ト呼フ者アリ)是等ノ人〓ガ相集マッテ頻リニ外國ノ事例ナドヲ竝ベ立テヽ、
空論ヲ鬪ハシテ筆ヲ執ッテ原案ヲ書イタトコロガ、ドウセ碌ナ原案ガ出來ルモノデハナイ、
遠ク例ヲ求ムルニ及バズ、近ク此改正案ハ何デアリマスカ、唯今委員長ノ御報告ニナッ
タ如ク、此改正案ハ何ガタメニ現ハレタノデアルカト言ヘバ身分登記簿ヲ廢スルト云フノガ
骨子デアル、面シテ此身分登記簿ハ何ガ基トナッテ現戶籍法ノ中ニ記入セラレタノデアル
カト云ヘバ、言フマデモナク是ハ洋行歸リノ「ハイカラ」學者ノ土產デアリマス(「君ハ如何」
ト呼フ者アリ)御承知ノ如ク、我國ハ家族制度ヲ基トシテ居ルトコロノ國デアリマスカラ
シテ、元來一ノ戶籍簿ハアッテモ身分登記簿ハ無カッタノデアリマス、然ルニ歐米諸國ニ
於テハ個人制度ノ國デアリマスカラシテ、戶籍簿ナルモノハナクシテ一ノ身分登記簿ガ
アッタノデアリマス、ソレデ洋行歸リノホヤ〓〓ガ、己レノ「カラ」ヤ「ネクタイ」ヲ買フト同ジ
ヤウニ此制度ヲ持歸ッテ、サウシテ之ヲ政府ニ提供シテ、政府ノ當局者ハ輕卒ニモ之ヲ
信ジテ之ヲ採用シタ結果、遂ニ現行戶籍法中ニ現ハレテ來タノデアル、ソレ故ニ二種ノ
帳簿ハアルガ、其中ニ記載スル事柄ハ殆ド同ジモノデアル、一ツ有ッタナラバ他ハ不用デ
アルト云フコトガ漸ク近頃分ッテ來タカラシテ、之ヲ取除カント云フノガ此改正案ノ骨子
トナッテ居ルノデアリマス、諸君ドウデアリマス、既往十數年ノ間、日本全國一万二千
有餘ノ戶籍役場ハ、全ク此無用チルトコロノ帳薄ヲ製造スルガ爲メニ忙殺サレテ居ルノ
デアル、政府委員ノ說明ニ依リマシテモ、東京管內グケノ身分登記簿デモ一箇年ノ間
ニ五十三間ノ高サニ上ルト云フコトデアリマス、今日ニ於テハ地方裁判所モ司法省ノ二
階モ身分登記簿ヲ以テ塡マッテ居ル、尙此以上此制度ヲ繼續セントスルナラバ、國費ヲ
以テ倉庫ヲ建テナケレバナラヌコトニナッテ居ルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)既
往十數年ノ間戶籍役場ヲシテ無益ナル手數ト無益ナル費用ヲ掛ケテ、サウシテ此反古
紙ノ製造ニ忙殺セシメテ居ッタノデアリマス、是ハ抑〓誰ノ責任デアルカト云ヘバ言ハズ
シテ斯カル法案ニ協賛ヲ與ヘタトコロノ議會モ其責任ナシトハ言ヘマセヌガ、斯樣ナ粗未
ナルトコロノ法案ヲ提出シタトコロノ政府ニ於テ、其責任ノ大部分ヲ負擔シナケレバナラ
ヌノデアリマス(拍手起ル)更ニ此原因ヲ溯ッテ考ヘテ見タナラバ何デアルカト云ヘバ
彼ノ洋行歸リノ「ハイカラ」ノ仕業デアル、彼等ハ無暗ニ空理空論ニ心醉シテ國家ノ法
典ヲ玩弄シテ居ルノデアリマス、國費ヲ以テ彼等ヲ洋行セシメテ斯樣ナイタヅラヲスルニ至ッテ
ハ將來留學生ナルモノモ餘程考ヘモノデアラウト思フ(「ヱライ〓〓」ト呼フ者アリ)殊ニ
本員ハ委員會ニ於テ、政府ニ對シテ一體政府ハ何時頃カラ此戶籍法ノ不完全ナルコト
ニ氣ガ付イタノデアルカ、又何時頃カラ此改正案ニ著手シタノデアルカト問フタトコロガ、
約三年以前デアルト云フコトヲ答ヘタノデアリマス、三年以前ニ於テ此不完全ナルコトヲ
バ知リツヽ今日マデ此原案ヲ起草スルコトモ出來ナカッタノデアリマス、而シテ此原案
ノ內容ハ如何デアルカト見マシタナラバ、身分登記簿ヲ取除クト云フニ過ギナイノデアリマ
ス、是位ノ原案ヲ作ルニハ三箇年ノ長月日ヲ要セズトモ、如何ニ痴鈍ナル法律家ト雖
も、十日カ二十日カ掛カッタナラバ是位ノコトハ出來ルノデアリマス、ソレヲバ三箇年モ
要シタノデアル、斯樣ナ政府ノ公約ヲ信ジ、斯樣ナ政府ノ能力ヲ信ジテ、人權ヲ擁護シ
立法事業ヲ完成セシメントスルガ如キモノガアッタナラバ)是ハ實ニ百年河〓ヲ待ツガ如
キモノデアリマス、ソレ故ニ吾ミハ吾ミノ權能ヲ發揮シテ、人權擁護ニ關スルトコロノ法
律ヲ制定スルニ付キマシテハ、決シテ政府ニノミ賴ムベキモノデハアリマセヌ、吾〓ノ必要
ト認ムル時機ニ遭遇シタナラバ、此事業ヲハ斷行スルト云フノガ吾〓ノ義務デアルト、殊
ニ時代ノ要求デアルト私ハ確信スルノデアリマス、以上述ベマシタ如ク、之ヲ根本的ノ理
由ヨリ見ルモ、反對論者ノ薄弱ナル〓ニ照シマシテモ、本員ノ修正案ハ最モ時宜ニ適シ
テ居ルモノト認メマスルニ依テ、諸君ハ法律ノ前ニ人權ノ前ニハ政黨トカ政派トカ云フヤ
ウナ感情ハ排斥シ、黨略トカ黨議トカ云フ下ラナイ繩ハ斷切ッテシマッテ、自由ナル良心
ト自由ナル判斷力ニ依テ此案ノ贊否ヲ決セラレンコトヲ希望スルノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=29
-
030・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 熊谷直太君
〔熊谷直太君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=30
-
031・熊谷直太
○熊谷直太君 諸君、齋藤君カラ提出サレマシタトコロノ第四條ニ對スル修正案ニ付
キマシテハ、遺憾ナガラ反對ヲ表スル者デゴザイマス(「遺憾ニアラズ」「大ニ贊成」ト呼フ者
アリ)齋藤君ハ長イ間卽チ數万言ヲ費サレマシテ、極ク新ラシイ頭ヲ以テ此法案ノ修正
ノ意見ヲ述ベラレマシタ、ヽ私ハ之ニ反シマシテ極ク古ルイ頭ノトコロデ、サウシテ最モ簡單
ニ此修正案ニ反對シテ見タイト思フノデゴザイマス(「謹聽」ト呼フ者アリ)元來官吏公
吏ガ其職務ヲ行フニ方リマシテ、個人ニ損害ヲ與ヘマシタ場合ニ於テハ、國家ガデス其
責任ヲ負フヤ否ヤト云フコトハ大ナル問題、議論ノ存スルトコロデゴザイマス(「ヒヤ〓〓ㄴ
ト呼フ者アリ)殊ニデス、其行爲-行爲ハ責任ヲ負フベキ基礎タルベキトコロノ行爲ト
云フモノハ、公法的行爲ナルヤ或ハ私法的行爲ナルヤ否ヤト云フコトニ付テモ非常ナ議
論ノアルトコロデゴザイマス、若シ其行爲ガ公法的ノ行爲デアルナラバ、是ハ理論トシテ其
責任ヲ負フベキデアル、私法的行爲デアルナラバ國家ハ如何ニ是ガ賠償ノ責ニ任ズベキ
ヤト云フコトハ問題ト相成ルノデゴザイマス、此〓ニ關シマシテハ齋藤君カラモ述ベラレマ
シタ通リ、學說ハ紛々トシテ岐レテ居ル、各國ノ立法ト云フモノモ又區々ニナッテ居ルノデ
ゴザイマス(「岐レテ居リマセヌ」「默ッテ聽ケ」「其方ガ默ッテ聽ケ」ト呼フ者アリ笑聲起ル)ツ
レデ、若シソレガ公法的行爲ニアラズ而モ災害ヲ被リマシタル-損害ヲ被リマシタルト
コロノ民人ニ對シテ相當ノ賠償ヲセネバナラヌト云フトコロノ觀念ガ段々昂マリマシテ、其
觀念ニ從ヒマシテ賠償ヲスルト云フコトニ相成リマスレバ、此四條ノ-修正案ノ四條ガ規
定スルガ如キ、卽チ齋藤君ノ修正セラルヽ如キ案デハ到底イカヌノデアル、其形式ト方法
トヲ變ヘナケレバ其目的ヲ達スルコトハ出來ナイノデアリマス(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」「其
通リ」ト呼フ者アリ)是故ニ吾〓ノ最モ尊敬スル學說ノ中ニ於キマシテハ、卽チ行爲ハ私
人ノ行爲デアルカ法人ノ行爲デアルカソレハ分ラヌガ、併ナガラ國家ノ職務ヲ行フニ方ッ
テ損害ヲ與ヘタルモノナルガ故ニ、ソレガ故ニ國家ハ保障ノ地位ニ立ツ先ヅ官吏公吏
ヲシテ賠償ヲ爲サシメテ國家ガ保障ノ地位ニ立ッテ其責任ヲ完ウスルト云フ學說モアル
位テゴザイマス(此時發言スル者アリ「默ッテ聽ケ」ト呼フ者アリ)齋藤君ハドウ云フ風ニ御調
ベニナッタカ知ラヌガ、其說ハ立派ナトコロノ學說ニナッテ居ッテ最モ有力ナルトコロノ說デア
ルト云フコトヲ齋藤君ハ御承知アリマセヌカ(「三十年前ノ說ダ」「默レ」ト呼フ者アリ)成
程齋藤君ハ新シイ頭ヲ持ッテ居ラレマセウガ、ドウ云フ學說ヲ採ラレタカドウ云フ「オーソ
リチー」ノ本ヲ採ラレタカ存ジマセヌガ、是ハ今日歐羅巴ノ大學者ガ滔々トシテ唱ヘテ居
ルトコロノ學說デアル(此時發言スル者アリ「默レ」ト呼フ者アリ)サウ云フ風ニアリマシテ、
若シ賠償ノ責務ト云フモノヽ基礎ガデス、私人的行爲デアルカ法人的行爲デアルカト云
フコトニ付キマシテ問題ト相成リマスル以上ハ、其形式方法ト云フモノモ、修正法ニ揭ゲ
テアルトコロノ如キ簡單ナルモノデハイカヌノデアル、大ニソレ〓〓ノ方法ト云フモノヲ講ジ
テ相當ノ法律ヲ要スルモノデゴザイマス、然ルニ齋藤君ノ法案ト云フモノハ此行爲ト云フ
モノハ獨斷的ニ公法的行爲ナリト先ヅ斷定シテ居ル、サウシテ國家ガ責任ヲ負フト云フ
コトヲ斷定スル論デアル、此ノ如ク貧弱ナルトコロノ基礎ヲ持タレテ、サウシテ之ヲ公
法的行爲ナリト云フコトノ斷定ヲ下サルヽト云フコトハ甚ダ其當ヲ得ナイ、私ノ尊敬ス
ル大變學問ニ豐富ナル新ラシイ智識ヲ持ッテ居ラレルトコロノ、而モ新ラシイ頭ヲ持ッテ
居ラレルトコロノ齋藤君ニ於カレマシテ、齋藤君ノタメニ甚ダ惜マザルヲ得ナイノデアリマ
ス(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)(「公法的行爲ト云フコトハ分ッテ居ル」ト呼フ者アリ笑聲起ル)
(「默レ」笑聲起ル)齋藤君モ-(此時發言スル者アリ)サウシテ見レバ、マケ此齋藤君ノ
修正案ト云フモノハ決シテ、形式方法ハ宜シキヲ得タルトコロノ案ト云フコトハ出來ヌデ
ゴザイマス、殊ニ此國家ガ民人ニ對シテ損害賠償ノ責任ヲ負フ場合ト云フモノハ、多クノ
場合ハデス、公法的行爲デアルカ私法的行爲デアルカ疑ハシイ場合ガ最モ多イノデゴザ
イマス(「是ハ公法的行爲デアルコトハ分ッテ居ル」「默レ」ト呼フ者アリ笑聲起ル)ツマリ
公法的行爲デアルカ私法的行爲デアルカ、最モ問題ニナルモノハ最モ適用ニ苦ンデ最モ
救濟ヲ受ケル一番最大ノ場合デアルノデゴザイマス、然ルニ齋藤君ノ論據ニ依ッテ見レ
バ極端ナル公法的行爲ノ場合ヲ救濟スルトコロノ法案ト云フモノハ私法的行爲
デアルカ公法的行爲デアルカ或ハ明カニ私法的行爲デアル場合ヲ救濟スルニハ
甚ダ足リヌトコロノ不足ナルトコロノ、偏頗ナルトコロノ法案デゴザイマス(此時發言スル
者アリ)況ヤデス、齋藤君ガ此戶籍法ノミニ於テ此ノ如ク國家賠償ノ大キナ問題ヲ第四
條ノ一則ニ納メタイト云フコトハ、甚ダ法ノ權衡ヤ宜シキヲ得ナイモノデゴザイマス、齋
藤君ガ言ハルヽ通リ、不動產登記法、公證人規則、刑事訴訟法ノ規則ニソレ〓〓ヤ
ハリ是ト類似ノ規定ガアルノデゴザイマス、又單リ此法バカリデアリマセヌ、其他ノ法律ニ
於キマシテモ、若シ國家ガ國家ノ職務ニ付テ民人ニ對シ損害賠償ノ責任ヲ負フコトア
ル場合ニ於キマシテハ、相當ノ規定ヲ要スベキモノデアル、單行法ニ依テ爲スベキモノヂヤ
ナカラウト思フノデゴザイマス、若シ此戶籍法ノミニ依テ、戶籍法ノミノ適用ヲ受ケルト云
フモノヲ救フト云フコトニナリマシタナラバ卽チ戶籍法ノミニ依テ戶籍法ニ依ルトコロノ
人ノミ救濟ヲ得ルト云フコトニナリマスレバ、其他ノ官吏公吏ノ行爲ニ依テ損害ヲ受ケ
タトコロノ人ハ、賠償ヲ受ケナイト云フコトノ偏頗ニ相成ルノデゴザイマス、此ノ如キ法案
ト云フモノハ、法ノ整一ヲ期スル我國ニ於キマシテハ決シテ許スベカラザルモノデアリマス必
ズ統一シタルトコロノ法規ヲ以テ、均一ニ賠償要求權ヲ持ッテ居ルモノヲ保護シナケレバナ
ラヌコトニ相成ル理窟デゴザイマス、、是等ノ第一第二點ニ於キマシテ、齋藤君ノ今日此單
行法ノ上ニ損害賠償ヲヤラナケレバナラヌト云フトコロノ理由ハ明カニナラナイト自分ハ
考ヘルノデアリマス、故ニ齋藤君ノ修正案ト云フモノハ速ニ否決セラレムコトヲ希望致シ
マス(拍手スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=31
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032・中村啓次郎
○中村啓次郞君 雙方ノ議論ハ十分熟セリト認メマスカラ、討論終結ノ動議ヲ提出
致シマス
(「贊成々々」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=32
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033・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 討論終結ノ動議ニ御異議ハナイト認メマス、討論ハ終結サ
レマシタ、齋藤隆夫君ノ修正說ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=33
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034・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 少數-委員長ノ報告ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=34
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035・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 委員長報告通リ決シマス
·······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=35
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036・中村啓次郎
○中村啓次郞君 讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=36
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037・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 本案ハ三讀會ヲ省略シテ委員長ノ報告通リニ確定スルト
云フコトニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=37
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038・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ二一讀會ヲ省略シテ本案ハ確定致
シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=38
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039・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 日程ノ第十
明治三十八年法律第六十二號中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=39
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040・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ハ發言通〓ガアリマセヌ、委員長ノ報告ニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=40
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041・中村啓次郎
○中村啓次郞君 木案モ三讀曾ヲ省略シテ委貝長報告通リ可決確定セラレムコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=41
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042・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 今中村君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ異識ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=42
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043・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ其通リ決シマス、本案確定、ソレ
カラ第十一ノ寄留法案ニハ修正通告ガアルコトヲ發見致シマシタ、故ニ先刻ノ宣言ヨリ
除キマス、此場合ニ於テ討論ヲ許シマス、荒川五郞君
寄留法案(政府提出)第一讀會ノ續発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=43
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044・荒川五郎
○荒川五郞君 私ノハ修正意見デハナイノデスガ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=44
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045・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 修正トハ申シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=45
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046・荒川五郎
○荒川五郞君 ソレデハ第一讀會トシテ討論シテ宜シイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=46
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047・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 宜シイ一讀會ノ續、討論··
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=47
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048・荒川五郎
○荒川五郞君 此寄留法案ニ付キマシテ簡單ニ之ヲ二讀會ニ移スベカラズト云フ意
見ヲ申述ベマス(「簡單」ト呼フ者アリ)此寄留法ニ付テハ曩ニ委員長ヨリ說明モアリマ
シタ通リニ、段々質問モ出マシタ、政府ニ於テモ又不備ナルコトヲ自白シタ場合モアルノ
デアリマス、ソコデ之ヲ協議會ニシテ修正シタナラバ宜カラウト云フコトニナッタ、所デ此委
員長ノ報告セラレタ案ガ出タノデアリマスガ、併シ其委員長ノ報告セラレタ修正案ナルモ
ノハ、殆ド修正ニナッテハ居ラヌノデアリマス(「ノウ〓〓」「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)其譯
ハ唯修正ニナッタト言ヘバ第三條ノ屆出ヤ、屆出義務者寄留薄其他寄留ニ關スルコト
ハ司法大臣ガ定メルト云フ-司法大臣ガ定メルト云フコトヲ之ヲ勅令ヲ以テ定ムルト
云フ-是ハ司法大臣ノ命令ニ依ラズシテ勅令デ定ムルコトニ之ヲ鄭重ニ致シタト云フ
唯是ダケデアリマス、種々疑問ガアッテサウシテ內容ニ付テハ政府モ疑義ヲ自白シテ居
ルヤウナ、其疑問等ノ存スル其問題ニハ少シモ觸レナイデ、唯別ノ條項ナル司法大臣ガ
定ムルト云フ司法大臣ノ權限ニ屬セシメヤウトスル原案ヲ勅令デ規定スルコトニ換ヘタト
云フノミデ、何ガ此疑問ガ解決致シマスルカ、實ニ此修正ナルモノハ極メテ杜撰デサウシ
テ更ニ修正ノ效ガ無ク、又此寄留法ニ實際ニ之ヲ行フベカラザルモノト思フノデアリマス、
何故ニ此修正案ハ司法大臣ノ定ムルノヲ勅令ニ定メルコトニ改メタダケノ違ヒデアルト
申シマスカト云フニハ、此第一條ノ修正ハ唯文句ノ修正ニ過ギナイ旣ニ諸君ノ御覽ニ
ナル通リ「一定ノ場所ニ居住スル者ハ」ト云フ言葉ガアル、是ガ問題デ「九十日以上本
籍外ニ於テ一定ノ場所ニ居住スル者ハ」ト云フノガ是ガ非常ナル問題ニナッタニモ拘ラズ、
其內容ニハ更ニ觸レナイデ、唯居住スル者ハト云フノヲ修正案デハ唯之ヲ「住所又ハ居
所ヲ有スル者ハ」ト改メ、居住ト云フ二字ヲ分ケタニ過ギナイ、居住ト云フノヲ「居所又
ハ住所ヲ有スル者ハ」ト居所又ハ住所ト文言ヲ換ヘタノミデアリマシテ、本案ノ內容ニハ
更ニ變更ヲシテナイノデアリマス、最モ問題トナリ疑義ヲ生ジテ居ル其〓ハ少シモ解決
セラレナイ、此疑問ヲ唯文句ヲ變ヘタノミデドウシテ此修正ノ價値ガアリマセウカ、其次ニ
「屆出ニ依テ又ハ職權ヲ以テ寄留簿ニ記載スルコトヲ要ス」ト云フ文句ガ第一條ノ文言ノ
中ニ棒書ニ書イテアルノデ、ソレダケヲ除イテ之ヲ第一一項ニシタト云フノミ是モ唯文句
ノ配列ヲ改メタニ止マル、決シテ內容ノ修正デハナイノデアリマス、デアリマスルカラ「居住ス
ル者ハ」ト云フノヲ「住所又ハ居所ヲ有スル者ハ」ト變ヘタリ又「寄留簿ニ記載スル」ト云
フコトヲ第二項ニ分ケタト一云フコトハ決シテ修正ト云フ價値ニハナラナイ、字句ノ修正デ
アッテ、此內容ノ修正デハナイ、デアリマスカラ此寄留法案ハ修正シタト云フノハ交句ノ
修正デ、唯一ツ極ヲテ居ルノハ「司法大臣之ヲ定ム」ト云フノヲ之ヲ「勅令ヲ以テ之ヲ定
ム」ト變ヘタ、是ダケノ値ニ外ナラナイ修正案デアル、委員長此内容ニハ疑義アッテ紛雜
致シタト斯ウ云フノデスガ、而シテ修正シタト云フノハ勅令司法大臣問題ニ止マルノデア
リマスカラ、委員長ノ報告デモ此案ト云フモノハ未ダ成ッテ居ナイト云フコトヲ自白シタモ
ノト言ハナケレバナラヌ、此寄留案ハ第四條ニ於テ過料ト云フ罰金マデモ科スルコトニナッ
テ、寄留ノコトニハ追〓手重クナル大事ナ法律デアリマス、故ニ人ノ居住所ヲ明カニスベ
キ大事ナ法律デアリマスノニ、此ノ如キ大事ナ議案-其含マレタル問題ヲ全ク之ヲ葬
リ去ッテ、僅カナ文句ヲ修正シテソレヲ誤麻化シ過ギヤウト云フノハ甚ダ杜撰ナコトヽ言
ハンケレバナラヌ、デ此法案ハ尙ホ〓〓十分ニ審議〓究シナケレバナラヌ問題デアリマス
カラ、委員會ニ於テハ其討議ヲ延ベテ、更ニ審査センコトヲ求メタノデアリマスケレドモ、
何故カ此ノ如ク文句ノ一部ヲ修正シテ、サウシテ疑問ガアッタカラ修正シタト云フノデ、修
正ハ項ヲ改メ文句ヲ變ヘタノミノ修正ヲ以テ、爰ニ一場ヲ糊塗セラルヽト云フコトハ、私
共ノ甚ダ了解ニ苦シムトコロデアリマス、故ニ已ムナク玆ニ否決スベク二讀會ニ移スベカ
ラザルコトヲ提出致ス所以デアリマス、然ラバ其理由全體ニ於テドウ云フ問題ガ含マレテ
居ルカト云フニ、九十日以上本籍外デ-本籍外ニ於テ一定ノ場所ニ居住スル者
ハ-或ハ居所住所ヲ有スル者ハデモ宜シイガ-之ニ依ルト一人ノ人デ、二箇所ニ
モ三箇所ニモ寄留籍ヲ持ツ場合ガ生ズル、政府委員ノ中ニハ寄留籍ハ一箇所ニ限ルト
云フ答辯ヲスル人ガアリ、或ハ二箇所ノ寄留ノ場合アルヲ認メルト云フノモアル、是ハ政
府部內ニモ議論ガ一定シテ居ラヌ、實際ソレハドチラガ宜イカ、ドウスベキモノデアルカ、
ソレハ政府案デ見レバ分ラヌ、又此修正案ノ居所又ハ住所トシテ、住所寄留、居所寄
留ト、サウ云フ意味ニスレバ宣イト云フモ、ソレデモヤハリ此議論ハ解決シナイノハ、
同樣デアル、全體我日本ハ先キカラ述べラレタ通リ家族制度ノ國デ、戶主ヲ以テ元ト
シ、サウシテ其戶主ノ所屬ハ本籍地主義ヲ採ッテ居ルノデアリマスカラ、人〓其本籍ノ土
地ニ居レバ宜イガ、本籍以外ノ土地ニ、一定ノ場所ニ住所ヲ定メテ居ルノハ、之ヲ指シ
テ寄留ト云フ、卽チ寄留地ハ住所デアル、而シテ寄留地以外ニ旅行滯在スル場合ガア
ル兩院議員ノ如キ議會中九十日餘ハ東京ニ滯在シテ居ル、此滯在ヲ此法案デハ
總テ寄留ト見ル、卽チ之ヲ居所寄留ト云フ一種ノ寄留籍ニ入レヤウト云フノデアル、併
シ(「解釋ガ狹イ」「ヤレ〓〓」ト呼フ者アリ)イヤ早ク濟マス積リデアルガ御分リニナラ
ヌケレバ、水ナト飮ンデ御聽キニ入レナケレバナラヌ(「ヤリ給ヘ」ト呼フ者アリ)斯ク居所寄
留、住所寄留ヲ認メヤウト云フノデアリマスケレドモ、實際我國ノ總テノ法制ガソレニ伴フ
コトヲ許サナイ、例ヘバ府縣制或ハ市町村制ノ如キドウ成ッテ居リマスカ、府縣制ノ百
五條ニハ「三箇月以上府縣內ニ滯在スルモノハ」ト是ニハ「滯在」ト書イテアル、寄留トセ
ズ滯在トシテアル、百六條ニ「府縣内ニ住所ヲ有シ又ハ三箇月以上滯在スルコトナシト
雖モ」百七條ニ「住所滯在一府縣以上ニ亙ルモノ」此等ノ箇條ハ住所ノ外ニハ是ハ滯
在トアル、此府縣制ノミナラズ、市町村制等ニモサウ云フヤウニナッテ居ルノデアリマス、卽
チ別段本籍ヲ有シテ、本籍以外ニ居住スル者ハ之ヲ寄留ト云フ、其寄留外ニ居ルモノ
ハ滯在ト云フ、サウ云フヤウニ地方ノ制度ナドハ認メテ法律ニ現ハシテ居ル、然ルニ其等
ノ法律ラマルデ見ナイデ唯寄留簿ダケデ居所寄留住所寄留ヲ認メヤウトスルト直チニ第
一條ノ問題ガ生ズル、況ヤ住所ナルモノハ修正案ニモ原案ニモ「九十日以上本籍外ニ
於テ一定ノ場所ニ」云々トアリマスガ、住所ヲ定メルニハ必ズシモ九十日ト云フコトハ關
係ハナイノデアリマス、縱令三日居リマシテモ、苟モ此所ニ居テ、自分デ此處ヲ生活ノ本
據トスルト極メタ以上ハ、九十日ニ關セズ十日ニ關セズ或ハワレガ三日デ又變ハルコトガ
アルカモ知レヌ、變ヘルコトガアルカモ知レヌケレド、モ同ジク住所デアル、此住所ノ極マ
ルノハ決シテ何十日ト日ノ界ヲ以テ極ルモノデナイ、然ルニ寄留簿ニハ九十日以上ト
云フコトヲ頭ニ置クカラ住所ト云フコトデハ譯ノ分ラヌコトニナル、九十日以上デナケレ
バ住所デナラヌコトニナル、九十日以上一定ノ場所ニ於テ住所ヲ有スルモノハ寄留デ
アルトセバ、九十日ニナラネバ住所ニナラヌコトトナル、此ノ如キコトハ一々文章ヲ細カニ
說明シテ述ベタナラバ幾ラモアル、全然杜撰極ル、今日ノ實際ニモ亦法又ヲナサヌ實用
ニモ適セヌ修正デアルカラ、又原案デアルカラ、之ヲ〓卒ニ議スルコトハ甚ダ宜シキヲ得
ナイモノト信ズルノデアリマス、(「簡單々々」ノ聲起ル)簡單ヲ御望ミデアリマスカラ、各
條ニ亙ッテ一々此不始末ヲ計クコトハ止メマス、以上ノ理由ニ依リマシテ、此寄留法ハ
不完全ナルサウシテ種々疑ヲ含ミ、實施スベカラザルモノト信ズルノデアリマス、所ガ玆ニ
一ツ戶籍法ヲ改正スレバ從テ此寄留法ヲ改正シナケレバナラヌト云フ議論、是ハ卽チ急
ガレタル一ノ理由ニナッテ、已ムナク臭イ物ニ蓋主義デ早クヤラウ位ナ所デ修正ニナッタノ
デアリマスガ、寄留實地ノ上ニ氣遣ハ決シテナイ、今マデ戶籍ハ司法省ニ屬シテ居フタケ
レドモ、寄留ナルモノハ內務省デ支配シ居リマシテ、寄留ニ關スル取扱ハ其等ノ法令トシ
テマダ生キテ居ルノデアリマス、多少ノ不便ハアルニシテモ今日此寄留法ヲ直チニ實施シ
ナイデモ、寄留ノコトハ從來ノ行成リニ依テ實施スルコトガ出來ル、故ニ若シ已ムナキ必
要ガアッテ法律ニ制定スル必要ガアレバ、更ニ再議ニ附シテ之ヲ完成シナケレバイカヌト信
ズルノデアリマス、故ニ本案ニ反對スル所以デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=48
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049・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 島田俊雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=49
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050・奧田義人
○司法大臣(法學博士奧田義人君) 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=50
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051・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 島田君チヨット待ッテ下サイ-奧田司法大臣
〔司法大臣法學博士奧田義人君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=51
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052・奧田義人
○司法大臣(法學博士奧田義人君) 唯今荒川サンヨリ寄留法案ヲ二讀會ニ移スベ
カラズト云フコトノ御意見ガ御提出ニナリマシタニ付キマシテ、玆ニ唯一言ダケ致シテ置
キマス、先刻當議場ニ於キマシテ議決確定ニナリマシタル所ノ戶籍法ハ御承知モアラセ
ラルヽ如ク全部ノ改正デアル、全部ノ改正ノ結果ハ是ガ實施ニナリマスト現行ノ戶籍法
ハ自然ニ廢止ニ屬スルノデアル、然ルニ現行戶籍法ノ第二百二十二條ニ於キマシテ、寄
留ニ關シマスル明治四年ノ規定ハ玆ニ效力ヲ有スルコトガ規定シテアルノデアリマス、此二
百二十二條ノ規定モ戶籍法ノ全部ガ廢止ニ屬シマスル結果、固ヨリ戶籍ガ無クナルノ
デアル、然ルニ今政府ヨリ提出イタシマシタ所ノ寄留法案ガ、本議場ニ於テ二讀會ニ移
ス可カラズト議決ニナーマシタ時ニハ、寄留ニ關スル規定ハ全ク無クナッテシマフト一云フ結果
ニ陷ルト私ハ信ジマスルノデ、此〓ダケ一言致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=52
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053・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 島田俊雄君
〔島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=53
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054・島田俊雄
○島田俊雄君 唯今荒川君ヨリ寄留簿ノ案ガ杜撰デアルト云フ理由ヲ以テ、竝ニ今
日急イデ此法案ヲ議決致サナクテモ事務ノ扱ヒニ差支ナイト云フノ理由ヲ以テ、此法
案ヲ二讀會ニ移スベカラズト云フ御議論ガゴザイマシタ、其第二ノ〓、卽チ急イデ此法
案ヲ議了致サナクテモ差支ガナイト云フコトニ付テハ、唯今司法大臣ヨリ此處ニ御明
言ニナリマシタ通リデゴザイマシテ、卽チ此寄留法ハ戶籍法ニ附屬シテ存在スルトコロノ
法律デゴザイマス、殊ニ現行ノ寄留ノ取扱ト云フモノハ明治四年太政官布告ヲ以テ
出マシタトコロノ寄留ニ關スル規則ガ本トナッテ居リマシテ、ソレニ內務省令ナドガ附加ッ
テ出來テ居ルトコロノ、多クハ明治二十年以前ノ規定ニ係ルトコロノモノデアリマシテ、斯
ノ如ク古キ又非常ニ複雜ニナッテ居ルモノハ、此機會ニ於テ其母法トモ申スベキトコロ
ノ戶籍法ノ新ニ制定セラレル場合ニ當ッテ整理スルト云フコトハ當然ナコトデアラウト思
フ、故ニソレ等ノ意味ニ於テ此事ヲ玆ニ整理シ、竝ニ古キ寄留ニ關スルトコロノ手續ヲ
新シク短イ法律ニ纏メテスルト云フコトハ相當ノコトデアラウト思ヒマスシ、既ニ議決ニナ
リマシタトコロノ戶籍法ニ於テ別段ニ此寄留法ノ制定ヲ待ツガタメニ寄留ニ關スル規
定ヲ設ケテ居ラヌノデゴザイマスカラ、既ニ戶籍法ノ可決ニナリマシタ以上ハ、今日此
處ニ於テ此寄留法ト云フモノヲ議シテ、必ズ之ヲ如何ナル形ニカシテ通過セシムルト云フ
コトノ必要ハアラウト思フノデアリマス、其〓ニ付テハ餘リ多クヲ辯明致シマセヌ、偖此
寄留法ノ內容ニ付テ、唯今荒川君ニ縷々御話ガゴザイマシテ、成程委員會ニ於キマシ
テモ委員諸君ノ中カラシテイロ〓〓ノ質問ガ出マシタ、質問ハ出マシタケレドモ唯今荒
川君ノ御話ニナリマシタヤウニ、非常ニ大キナ疑問ガアルト云フコトヲ御話ニナリマシタガ、
其疑問ノ一二ノ例ハ此處ニ御述ベニナリマシタケレドモ、質問ハ多カッタケレドモ疑問ハ
サウ多クナイノデ、此法律ニ付テ〓究シテアルトコロノ疑問ハサウ多クナイ、唯二點ダケ疑
問ニナッテ居ルノデアリマス、現ニ其二〓ニ付テ私ガ其質問者ノ一人デゴサイマスガ、其
他ノ委員ノ諸君モ疑問ヲ起サレタノデアッテ、卽チ政府ノ提出ニナリマシタ原案ニ於テハ、
二重寄留ト云フコトニナルヤウデアルガ、其二重ノ寄留ト云フコトヲ認メルカ否ヤト云フ
コトガ、唯今荒川君ノ御話ニナリマシタ二重ノ寄留ニナルコトヲ認メルカドウカト云フ邊
ノ質問ニ對シテ、政府ノ答辯ハ、成程荒川君ノ御話ニナッタヤウニ或ハ二重ニナルト云
フコトヲ言ハレタ方モアリ、或ハ二重ニナラヌト云フ主義ヲ採ッテ居ルト云フコトヲ言ハレ
タ方モアリマス、卽チ其事ニ付テ政府委員ノ其時ノ出席者ノ御答辯ガ一一樣ニナッテ居ツ
タタメニ、其點ヲ御話ニナッテ居リマス、ケレドモ是ハ二重寄留ヲ認メルト云フコトノ已ムヲ
得ヌノハ、此法案ノ根本ノ趣旨ニ於テサウデアッタコトハ、後ニ政府委員ガ出ラレテ議ヲ
纏メテ御辯明ニナッタトコロデ明デアルト思ヒマス、現行ノ戶籍法ニ於キマシテモ、此改正
案ニ於キマシテモ、旣ニ此本籍ヲ定ムルト云フコトニ付テ、本籍ヲ定ムルニ付テ隨意ニ本
籍ヲ定ムルト云フ主義ヲ採用シテ居リマス、卽チ自分ノ住ヒ所ガ東京ニアッテモ、自分ノ
欲スルトコロ、自分ガ島根縣ニ生レタラ島根縣、鹿兒島ニ生レタラ鹿兒島ト一云フヤウニ、
自分ノ欲スル所ニ隨意ニ本籍ヲ定メルコトガ出來ルト云フ風ニ定メラレテアル、隨意ノ場
所ニ本籍ヲ定ムルコトガ出來ルト云フ主義ヲ採ルガ故ニ、其本籍以外ノ場所ニ住所ヲ
定メタ者ガ其場所ノ寄留者トアリ、其寄留場所カラ更ニ一時的ニ何レカノ場所ニ出テ
居ルト云フトキニ、又別ニ一ツノ寄留籍ヲ持ツト云フコトニスルト云フコトハ已ムヲ得ヌコ
トデアル、卽チ此第一條ニ於テ、其點ニ現ハシテ居ル、偶〓居住ト云フ文字ヲ用井テ居ル
ガタメニ、却テ住所ト居所トヲ二ツナガラ含ンデ居ルノデアルカ否カト云フ疑ガ起ッテ、二
重寄留ガ認メラレテアルカナイカト云フ問題ガ起ッタ、サウ云フ次第デアリマシテ、果シテ
戶籍法ノ現行法ニ於テ此改正案ニ於テモ本籍ヲ定ムルニ隨意ニスルコトガ出來ルト云
フ主義ヲ採用シテ居ルト云フ以上、二重寄留ハ巳ムヲ得ヌコトヽ思ヒマス、私共此〓
ニ付テ疑問ヲ起シマシタケレドモ、以上ノ如キ答辯ニ依テ滿足シテ原案ノ僅カナル字句
ノ修正ニ依テ是認ヲシタ次第デアリマス、今一ツノ疑問ハ此原案ノ政府案ノ第一條ニ
於キマシテ、寄留ヲシタ場合ニ屆出ルコトヲ規定シテ居リマス、ケレドモ寄留者ノ退去ス
ル場合ノ事柄ガ規定シテアリマセヌ、其第一條ニハ「屆出ニ因リ又ハ職權ヲ以テ寄留簿
ニ記載スルコトヲ要ス」トー云フコトデアリマシテ、寄留ヲスル場合ニ付テハ「屆出ニ因リ又
ハ職權ヲ以テ寄留簿ニ記載スルヲ要ス」トナッテ居リマス、寄留者ノ退去スル場合ハドウ
ナルカ、此事ニ付テ政府委員ニ質問致シマシタトコロガ、ソレハ第三條ニ依テ寄留ニ關
スル屆出云々ト云フコトヽ其三條ノ規定ニ依テヤルト云フコトデアリマス、ソレハ少シ權
衡ヲ得ナイ、寄留ニ付テ最モ大切ナ事ハ寄留ヲスル場合ニ屆出ヲスルノト同時ニ、寄留
ヲ除カレル場所、卽チ退去スル場合ニ又屆出ヲスルコトハ同ジ必要ナ事柄デアル、其同
ジヤウナ事柄デアルニ、一方ノ這入ルト云フ方ノ時ノ屆出ヲスル方ノ規定ハ法律ニアルノ
ニ、退去スル場合ニ於テハ何等規定ガナクシテ、ソレハ司法大臣ノ定ムルトコロニ依ルト
云フノハ權衡ヲ得ナイ、斯ウ云フ〓ガ疑問ニナッタト云フコトハ事實デアリマス、卽チ吾ミ
ハ此第二ノ點ヲ解決スルタメニ、卽チ第一條ニ一ノ項ヲ設ケマシテ、卽チ寄留ニ關スル
事項ト云フ-寄留ニ關スル事項ト云フモノヲ總テ寄留シタ場合モ退去スル場合モ含
メテ、寄留ニ關スル事項ハ居出ニ因リ又ハ職權ヲ以テ寄留簿ニ記載スルコトヲ要スト云
フ項ヲ設ケテ、退去ノ場合モ這入ッテ來ル場合モ共ニ含メテ、之ヲ法律ニ規定シ、一ノ三
於テ屆出ニ因テ云々ト云フ第一項ノ十數字ノ文字ヲ削ルコトニ致シタノデアリマス、斯樣ナ
次第デ委員會ニ於キマシテハ、種々ナル質問ハアリマシタケレドモ、結局スルトコロ其疑問ヲ
二ツノ點ニ止ルノデ、此二ツノ〓ニ付テ救濟ノ方法ヲ修正案ニ於テ設ケテ置キマスレバ
最早疑問ハ解決サレタモノト私共考ヘテ居リマス、之ニ附加ヘテ唯今九十日云々ト云
フコトニ付テイロ〓〓御議論ガゴザイマシタガ、是ハ私ノ承知スルトコロデハ荒川君御一
人ノ御疑問デアッテ、他ノ委員ハ別ニ一人モ疑ヲ起シテ居ラヌヤウデアリマス、私共是デ
十分了解ガ付クヤウニ考ヘテ居リマスカラ、此〓ニ付テ此壇上ニ於テ別段ニ辯明致シマセ
ヌ、以上ノ理由ニ依テ卽チ第三條ノ司法大臣之ヲ定ムト云フコトヲ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
ト云フコトニシタト云フ〓ニ付テハ、荒川君モ御承認ニナッテ居リマスカラ、是亦辯明ヲ要シ
ナイ、要スルニ其御言葉ハ甚ダ大キクシテ、杜撰孟浪ト云フヤウナコト、疑問百出ト云フ
コトヲ御話ニナリマシタケレドモ、實ハ疑問ハ二ツデアッテ、サウシテ餘リ杜撰孟浪デナイノ
デ、ソレデアリマスカラ私共ノ攻究ヲ致シマシタトコロニ依テ、此修正案トシテ提出セラレ
テ居ルトコロノ箇條ニ付テノ修正ヲ加ヘテ、此必要ナル附屬ノ法律ヲ茲ニ可決シテ置クト
云フコトハ、國家ノタメ最モ必要ナルコトデアルト考ヘマシテ、此修正案ヲ提出シ、又是
ガ委員ノ大多數ニ依テ是認セラレタ次第デアリマス、何卒此修正案ノ通リ可決アランコ
トヲ希望致シマス
〔拍手起ル〕
(「討論終結」「採決々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=54
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055・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) モウ此案ニ付テハ賛否ノ通告モゴザイマセヌカラ討論ハ終
結シタモノト認メマス(「異議ナシ」ト呼フ者アリ)二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ議題ト致シマ
ス-直ニ二讀會ヲ開クニ異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=55
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056・中村啓次郎
○中村啓次郞君 直ニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決確定サ
レンコトヲ望ミマス
〔「異識ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=56
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057・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 今ノ中村君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル)
寄留法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=57
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058・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイトモノト認メマスカラ、直ニ二讀會ヲ開キ三讀
會ヲ省略シテ委員長報告通リ本案ハ確定致シマス(拍手起ル)第十二-日程第十
二ノ明治四十三年法律第三十九號中改正法律案ニ付テハ發言通告ガアリマセヌ
〔「異議ナシ」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=58
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059・中村啓次郎
○中村啓次郎君 本案モ直ニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決
確定セラレンコトヲ望ミマス
(「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
明治四十三年法律第三十九號中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=59
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060・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 是ハ直ニ二讀會ヲ開クト云フコトハ先刻ノ院議ヲ以テ決定
ニナッテ居リマスカラ、三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=60
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061・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 御異議ナイト認メマスカラ其通リ可決確定致シマス-日
程第十三及第十四ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ因リ、一括シテ議題ニ供スルコ
トニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=61
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062・長谷場純孝
○議長(長谷場純孝君) 異議ナイモノト認メマス、委員長ノ報告ヲ得タウゴザイマ
ス-板東勘五郞君
關稅定率法中改正法律案(政府第一讀會ノ續幸せない
第十三提出)報告一
關稅定率法中改正法律案(關直第一讀會ノ續(委員長
第十四彥君外三名提出)報告
〔板東勘五郎君登壇〕
〔拍手起ル〕
(議長長谷場純孝君議長席ヲ退キ副議長關直彥君議長席ニ著ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=62
-
063・板東勘五郎
○板東勘五郞君 本案ニ對シ委員會ニ於テ調査シマシタ〓末ヲ極メテ簡略シテ御報
告致シマス、風邪ノタメニスッカリ聲ヲ傷メテ居リマスカラ、暫ク御辛抱ヲ顧ヒマス、此關
稅定率法中改正案ハ、關直彥君外數名ヨリ提出サレマシタモノト、竝ニ政府ヨリ提出
シマシタモノト同一ノ委員ニ於テ審査ヲ遂ゲタ次第デアリマス、日程ノ順ニ依リマシテ政
府案カラ申上ゲヤウト存ジマス、政府ノ改正ハ專ラ輸入稅表中十數箇所ヲ改正スルコ
トニ相成ッテ居リマス、貿易上ノ大勢ニ依リ、內地ノ商工業ヲ保護スル意味ニ於テ、而
シテ此輸入關稅ノ均衡ヲ得ルト云フ意味ニ於テ、總テ改正サレテ居ルノデアリマス、改
正ノ箇條ハ僅カ數文字ノ改正シカアリマセヌケレドモ、種々ナル關係上ノ理由モ含ンデ居
リマスノデ、私ハ極メテ要ヲ摘ンデ簡單ニ申述ベマスカラ、御不審ノ廉ハ更ニ御質問ヲ受
ケルコトニ致シタウゴザイマス、此別表中ノ第二十五號中「菜子」ノ下ニ「及芥子」ヲ加
ヘル、卽チ菜種ノ下ニ「及芥子」ト云フ文字ヲ入レルコトニナッテ居リマス、是ハ使用ノ途ニ
於キマシテモ亦性質ニ於キマシテモ、價額ノ上ニ於キマシテモ殆ド同一ノモノデアリマシテ、
一ハ從價稅トナリ一ハ從量稅トナッテ居リマスガ故ニ、之ヲ同一ノモノトスルダケノ是ハ
意味デアリマス、ソレカラ百一號中「一·四〇」ヲ「二·五〇」ニ改ム、此箇條ハ大豆ノ油
ヲ輸入スルトキニ、其輸入稅ヲ二·五〇ニ改メタノデアリマス、極ク大要ハ外國カラ大豆
ヲ輸入シマシテ、之ヲ製造シテ油トシテ種々ナル算當ノ上カラ極メ出シマスルトキニハ、戾
稅ガ二圓四十二錢掛ルノデアリマス、トコロガ今輸入シマスル現行法ノ輸入稅ハ一圓四
十錢、間デ一圓二錢ト云フ差異ヲ生ジテ居ル、故ニ其油ヲ輸出スレバ宜シイガ、外國
ノ大豆ヲ製造シタ其油ヲ內地デ使用スルトキニハ、內地ノ消費者ガ一圓二錢ノ重キ負
擔ヲ荷フト云フコトニナッテ居リマス、故ニ輸入稅ヲ增シテ是等ノ均衡ヲ圖ルト云フ意味
ニ於テ、二·五〇ト云フコトニ直シタ次第デアリマス、ソレカラ百十四號中「四十二度」
ヲ「四十五度」ニ改ム、是ハ燐寸ノ原料ニ多ク使用シマスル「パラフィンワックス」ナルモ
ノデアリマシテ、從來ハ四十二度以下ノモノハ無稅デ輸入シテ居リマシタガ、亞米利加
ノ原產地ニ於テ、此ノ如キ低度ノモノハ最早產出スルコトガ出來ナイ傾ヲ生ジテ參リマ
シタ、故ニ燐寸ノ製造者ヲ保護スルタメニ四十五度マデ上セマシテ、四十五度マデノ融解
スベキ點マデヲ無稅トシテ、燐寸業者ヲ保護スル意味ニ於テ之ヲ改メタノデアリマス、次ニ
ハ百五十號中赤燐ノ下ニ硫化燐ヲ加ヘル是モヤハリ燐寸ノ原料デアリマシテ、此黃燐
ノ燐寸ハ外國ニ於キマシテ輸入ヲ禁ジタ所ガ段々アリマシタ、ソレガタメニ內地ノ燐寸ノ
製造者ハ多クノ打擊ヲ受ケマシタ、此黃燐ニ代ルベキタメニ硫化燐ナルモノヲ加ヘタ譯デ
アリマス、ソレカラ二百四十五號中「每斤」ヲ削リ「一二·四〇」ヲ「無稅」ニ改ム、是ハ金
液トカ銀液トカ白金液-陶磁器、硝子物、瀨戶物、斯樣ナ物ニ繪ヲ描クニ、是等ノ
物ハ入レルラシウゴザイマス、是等ノ物ヲ無稅トシテ、夫等ノ產業ヲ保護スルト云フ意味
ニ於テ、大體改メラレタ次第デアリマス、ソレカラ二百八十三號-是ハ毛織絲ノ染メ
タルモノト、染メザルモノヽ外ノ絲ニ對シテ從來從價稅デアリマシタモノヲ從量稅トシテ權
衡ヲ得サセル爲メニ出來テ居リマス、第二百九十四號中「毛粉」トアリマスガ、此「毛
粉」ニ「綿粉」ヲ加ヘマシタ、近項綿粉ガ段々這入ッテ參リマシタカラ、毛粉ト同ジヤウ
ニ取扱フベキモノトシテ關稅ヲ掛ケルコトニナル、第二百九十八號及第二百九十九號
中「別號」ヲ「別項」ニ改ムト云フノハ、是ハ最初法律ヲ拵ヘマシタ時分ノ誤リデアルサウ
デアリマス、第三百號中「亞麻」ノ下ニ「苧麻」ヲ加フ、是モ同一ノ精神デアリマシテ、是
モ亞麻ト同樣ニ取扱フコトニナリマシタ、三三八ノ二瓦斯塡充用囊、是ハ從來四割掛
ケデアリマシタモノデ、イロ〓〓ノ理由ニ依テ二割ト致シマシタ、ソレカラ四百七號中「泥
狀ノモノ」ヲ「液狀又ハ泥狀ノモノ」ニ改ム、是ハ「メタルポルス」ト云フ磨粉デアリマシテ、
從來ハ泥狀ノモノバカリデシタガ、液狀ノモノガ出來マシタカラソレヲ加ヘルコトニナリマシタ、
四百八號中「ウヱツトストーン」ヲ削ルト云フノハ是ハ全ク要ラナイモノヲ書イテアッタサウ
デス、之ヲ削ルコトニナリマシタ、四百十八號第一項中「每百斤」ヲ削リ「○·七〇」ヲ無
稅云々トアリマス、是ハ石綿デ拵ヘマシタ器具類デアリマス、是ハ汽鑵ノ「パッキング」ニモ使
ヒマス、其他ニモ使用サレマスガ、是等ノモノハ五圓程ノ從價稅デアリマシタノヲ三圓ニ
改メマシタ、此間ニ委員會ニ於キマシテ一ノ追加修正ガアリマスカラ、其追加修正ヲ申
上ゲマス、是ハ御手許ニ御迴シ致シテ置キマシタ通リ、四百六十二號ノ鐵ノ種類デアリマ
ス、鐵ノ種類ノ中ノ鐵管デアリマス、是マデ鐵管ハ四万二三千噸モ輸入サレマシタガ、我
國ニハ製造者ガアリマセヌデ、總テ輸入ヲ外國ニ仰イデ居ッタモノデアリマス、近項段々鞏
固ナル製造者ガ出來マシテ、旣ニ四五千噸モ出來ツヽアリマス、先ヅ一万五千噸位ハ出
來ル形勢デアリマス、現在出來ツヽアリマス種類ニ對シテ、關稅ヲ以テ保護スベキ意味
ニ於テ之ヲ加ヘルト云フコトノ動議ガアリマシテ、是ハ尤ノコトデアルト云フ政府ノ同意ヲ
得テ此改正ヲ致シタ次第デアリマス、次ニ四百八十五號ノ二壓權瓦斯塡充用鐵製「シ
リンダー」、是モ五圓ノモノヲ三圓トシタ次第デアリマス、次ニ五百二十七號第八項ヲ左
ノ如ク改ム、是ハ大體金屬製ナリ白金製ナリノ時計ヲ出來タモノデ入レルヨリモ、部分
ニ壞シテ入レル方ガ安ク關稅ヲ潜ルコトガ出來マス、故ニヤハリ部分デ壞シタ機械デ、白
金製金製ノモノハ時計ト同一ノ關稅ヲ掛ケルコトニ引直シタノデアリマス、第六百五號中
「スチームタービン」、是モ前ニ二割テアリマシタモノヲ一割五分ト致シマシタ、終リノ六百十
七號ノ骨炭デアリマス、是ハ砂糖ヲ瀘ス、製糖用ニ供スルモノデアリマス、是ハ二五「ミリ
メートル」ノ圓眼ヲ有スル篩ヲ通過スルモノヲ無稅ト云フコトニ致シマシタ、大體右樣ナ改
正ヲ致シ、而シテ一箇所ダケ委員會ノ決議ニ於テ挿入シタノデアリマス、此改正ノ結果
ニ於キマシテ、總テノ關稅ノ收入ニ如何ナル結果ヲ來スカト申シマスレバ、此改正ノ爲メ
ニハ將來幾多ノ關係ガアリマスガ故ニ、的確ナル數ヲ現ハスコトハ固ヨリ出來ヌ譯デアリ
マスガ、先ヅ四万圓ツコラ位ノ減額ヨリシナイデアラウ、關稅ノ財政カラ申シマスレバ、別
ニ增減ヲ論ズル程ノモノデハアリマセヌ、唯產業上ニ對スル保護ニ依テ是ハ改正セラレタ
意味ニ歸スノデアリマス、此事ヲ併セテ申上ゲテ置キマス、ソレカラ議員ヨリ提出サレマシ
タ此關稅法中改正法案ハ、是ハ御承知ノ通リ外國カラ内地ニ輸入スル米ノ關稅ヲ
全廢スルト云フ理由ニ依テ立テラレタ案デアリマシテ、此問題ハ前期議會ニ於テモ當議
場ニ現ハレ、當議場ニ於キマシテ激シク贊否ノ討論ガアリマシタノデ、又本年提出ノ理
由モ昨年ノ理由ト略〓同一デアリマス、是ハ引續キ此席ニ於テ贊否ノ討論ガアル筈デア
リマスガ故ニ、私ハ其雙方ノ論ヲ御紹介スルコトヲ省略致サウト存ジマス、是ハ採決ノ結果
六名ニ對スル一名ノ少數ヲ以テ本案ハ否決スベキモノト決定致シマシタ、卽チ六名ノ多
數テ否決スベキモノト決定致シマシタ、唯〓是ニ對シテ一言後ノ討論ノ爲メニ申添ヘテ
置クベキコトガアリマス、ソレハ此案ガ案ヲ立テラレタ趣意トシテ、此書式ノ改正ノ仕方
トハ矛盾致シテ居リマス、此案ハ關稅撤廢ノ意味ニ於テ立テラレタ案デアリマスガ、此形
式ニ於キマシテハ米ト籾トヲ別表ノ第十一號ニ於テ削ルト書イテアリマス、之ヲ削ルト改
正シテモ、輸入關稅法ノ別表ノ三十二ニ於テ、從價一割五分ヲ掛ケラレルコトニナル、
此所デ米ト籾ノ關稅ヲ削リマシテモ、後ノ三十二號ノ支配ヲ受ケテ、ヤハリ從量稅ガ從
價稅ニナッテ、一割五分ハヤハリ米ニモ籾ニモ掛ケラレルコトユナル、故ニ現行法ノ第六
條ニ於テ、內地ノ凶作ナル時ニ於キマシテハ、百斤四十錢マデ下ゲラレルコトニ付テ餘
地ガアルニ拘ラズ、從價一割五分ノ更ニ負擔ヲ增スト云フコトニモ相成ルノデアリマス、且
又是ニハ施行期限ガ載ッテ居リマセヌ、是等ノコトハ順序トシテ委員會ニ於テ修正ヲ出スベ
キ筈デアリマスガ、多數ノ反對者アリマシタ故ニ、提案者ヨリ是ハ斯ク修正スベキ意味ニ
於テ議シテ吳レト云フコトヲ諒シマシテ、其意味ヲ認メテ而シテ調査ヲ繼續シ、決議致
シタ次第デアリマス、アトデ御論ニナリマストキニ多少御參考ニモナラウト思ヒマスカラ此
事ヲ併セテ報告致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=63
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064・關直彦
○副議長(關直彥君) 他ニ御質問等ガナケレバ討論ニ移リマス、唯今ノハ政府提出
案ノ方デアリマスカラチヨット御注意致シマス
〔小山谷藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=64
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065・小山谷藏
○小山谷藏君 諸君、私ハ日程第十三、卽チ政府ヨリ提出セラレタル關稅定率法中
改正案ニ付テ之ニ對スル贊成ノ意見ヲ發表致シマシテ、同時ニ政府ニ對シテ此改正ニ
伴フ所ノ警告ヲシタイノデアリマス、此度政府ヨリ提出セラレタル所ノ改正案ハ、唯今委
員長ヨリ報告セラレタルガ如ク、委員會ニ於テハ大ナル議論ヲ起ス程ノ問題デハゴザイマ
セヌ、卽チ滿場一致ヲ以テ之ヲ可決致シタノデアリマスルガ、之ヲ滿場一致ヲ以テ可決
スルニ殆ド討論スラ無カッタ程重大ナル問題ニハナラナカッタノデアリマス、換言スレバ委員
會ニ於テハ之ニ對シテ大ニ討論シ審議スルト云フ程ノ重大ナル意味ヲ持ヲテ居ラナカッタ
ノデアリマス、然ルニ今日我國ノ關稅法ナルモノハ、斯ノ如キ微細ナル修正ヲ加ヘ、改
正ヲ加ヘテ政府ハ滿足セラルヽノデアルカト云フコトニ付テハ、本員共ニ大ナル疑問ヲ持ツ
テ居ルノデアリマス、所謂關稅法ノ改正ト云フコトニ付テハ、此度政府ヨリ提出シタル所
ノ案以外ニ、更ニ其根本ニ立入ッテ大ナル〓究、大ナル修正ヲシナケレバナラヌト思クニ
モ拘ラズ、此姑息ナル案ヲ提出サレタト云フコトニ付テハ、本員共ハ我國ノ商工業ノ爲
メニ稍<遺憾ニ感ズルノデアリマス、政府ノ提出サレタ所ノ目的、卽チ今日我國ノ產業
保護ノ意味ニ於テ、此改正案ヲ出サレタト云フコトニ於テハ、勿論何人モ之ニ對シテ反
對ノ議論ハアルベキ筈ハゴザイマセヌガ、更ニ此同ジ精神ヲ以テモウ少シ根本ニ立入ッタ
改正案ヲ提出サレタイト云フ意味ニ於テ、今此壇上ニ立ッテ居ルノデアリマス、此政府ノ
提出シタル所ノ修正案ノ中ニモ、燐寸ノ原料ニ要スル所ノ「パラフインワックス」ノ修正案
ガ出テ居リマス、燐寸ハ我國ノ輸出貿易品中ノ大宗ヲ成シテ居ルモノデアル、此パラフ
インワックス」ノ修正案ヲ出スナラバ何故ニ政府ハ燐寸貿易ノ更ニ重大ナル原料タルベ
キ所ノ軸木ニ對シテ修正案ヲ出サナイノデアルカ「パラフインワックス」ハ燐寸ヲ造ル時分ニ
原料トシテ極ク〓細ナモノデアリマス、若シ之ヲ軸木ニ較ベマシタナラバ實ニ微々タルモノ
デアル、然ラバ今日我國ノ燐寸ノ軸木ノ生產ノ狀態ハ如何ナル狀態デアルカト申シマス
レバ、北海道其他ノ軸木ノ產地ニ於テハ殆ド原料ハ〓乏シ、生產業者ハ遠ク山奧ノ
中ヘ入ッテ然モ大キクナッタ木ハ殆ド之ヲ伐盡シ、小サナ言換ヘテ見レバ若シ他ニ適當ナ
ル成育シタル所ノ木材ガアルナラバ、是等ニ向ッテ手ヲ著ケルコトハ實ニ森林經濟カラ忍
ブ能ハザル所ノ木ヲ濫伐シテ居ルト云フ狀態デアリマス、此燐寸ノ軸木ニ付テハ當業者
ハ既ニ數年前ヨリ此事ヲ心配致シマシテ、西伯利、殊ニ浦鹽ノ西北ノ方ノ山奧ヘ入ッテ、
非常ナル危險ヲ冒シ又政府ニ於テモ此事ハ既ニ以前ニ於テ心配サレテ、農商務省ノ技
師ハ西伯利ノ山奧ヘ入ッテ-探檢ニ入ッテ非常ナル危險ニ遭ッタト云フコトモアッタノ
デアリマス、換言スレバ我國貿易品ノ大宗タル燐寸ヲ製造スル、其原料ノ重大ナル部分
ヲ成シテ居ル所ノ軸木ニ向ッテ何等ノ奬勵ヲ加ヘズシテ、僅カニ當業者カラ迫ラレテ止ム
ヲ得ナイト云フノデ「パラフインワックス」ノ修正案ヲ出シ、此根本ニ橫ッテ居ル軸木ニ對シ
テハ何等奬勵ヲ加ヘナイト云フニ至ッテハ、驚カザルヲ得ヌノデアリマス是ニ於テ本員ハ政
府ハ何故ニ此修正案ヲ同時ニ出サレナイカト質問スレバ、是ハ重大ナル問題デアルガ故
ニ愼重審議ヲ要スル-斯ノ如キ答辯デアリマス、諸君、此問題ハ今日起ッタ問題デハ
アリマセヌ、數年以前ヨリ我國ノ燐寸業ニ關スル大ナル問題デアリマス、而シテ今日委
員會ニ於テ此質問ヲスレバ、愼重審議ヲ要スルガ故ニ更ニ〓究ノ上來年ノ議會ニハ相
當ノ案ヲ具シテ提出スルツモリデアル-斯ノ如キ答辯ヲシテ居ルノデアリマス、何等ノ
迂濶ゾヤ、近頃海軍ノ收賄問題ニ對シ、內閣ノ諸公ノイロ〓〓之ニ對スル責任ノ議論
モゴザイマス、而シテ政府ノ首領ハ輕々ニ進退スベキモノニ非ズト云フ御議論ヲ爲サッテ
居ル、上ノ好ム所下之ヨリ甚シ、此問題ニ關スル所ノ政府委員ハ輕々ニ此重大ナル案
ヲ議場ニ出スコトハ出來ナイ-數年前ヨリ大ナル問題トナッテ居ルニモ拘ラズ、今尙輕
輕ニ此問題ヲ議場ニ出スコトガ出來ナイ-斯樣ニ申シテ居ルノデアリマス、實ニ斯ノ
如キ問題ハ我國ノ貿易ノ上ニ大ナル影響ヲ持ツモノデアルニモ拘ラズ、數年ヲ經テ尙且ツ
其調査ガ行屆カヌト云フニ至ッテハ、驚カザルヲ得ンノデアリマス、是ハ唯單ニ此修正案
ノ實ニ姑息ナルコトヲ證明スル一例ニ止リマスガ、若シ汎ク眼ヲ放ッテ關稅ト我國ノ生
產狀況トヲ對照シテ調査〓究シタナラバ、斯ノ如キ問題ハ多々アルノデアリマス、故ニ此
修正案ニ對シテ吾ミハ滿場一致ヲ以テ可決シタ、卽チ議論ノ餘地ガナイト一云フ程明晰
ナルモノデアルト云フ意味ニ於テ、勿論同意ヲ表シタノデアリマスケレドモ、其以前ニ更ニ
重大ナル問題卽チ大ニ討論シナケレバナラヌ問題ガゴザイマス、其案ヲ具シテ復タ此議會
ニ提出サレンコトヲ政府ニ希望スルト云フ意味ニ於テ、此警告ヲ與ヘテ贊成ノ意ヲ表ス
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=65
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066・中村啓次郎
○中村啓次郞君 唯今十三ノ日程ダケデスナ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=66
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067・關直彦
○副議長(關直彥君) サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=67
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068・中村啓次郎
○中村啓次郞君 直チニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決確定
セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=68
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069・關直彦
○副議長(關直彥君) 中村君ノ動議ニ御異議ガアリマセヌケレバ直チニ第二讀會ヲ
開キマス、而シテ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ確定シテ差支ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
關稅定率法中改正法律案第二讀會(確定議)
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=69
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070・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ガナイト認メマス、仍テ本案ハ委員長報告通リニ可決
確定致シマシタ、次ニ關君提出關稅定率法中改正法律案ノ討議ニ移リマス、日程ノ
第十四、委員長ノ報告ハ先刻濟ミマシタカラ反對ノ通告順序ニ依リ鈴木梅四郞君
〔鈴木梅四郞君登壇〕
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=70
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071・鈴木梅四郎
○鈴木梅四郞君 諸君、本案ニ付キマシテハ私ハ一一タビ此壇上ニ立ツノデゴザイマスル
ガ、今日ハ是迄論ジマシタ〓ハ避ケマシテ、本問題ノ最モ重大ナル〓ヲ一二〓論ジテ諸
君ノ御〓聽ヲ濱シタウ存ジマス(「謹聽々々」ト呼フ者アリ)本問題ニ付キマシテ最モ重要
ナル問題、我帝國ノ爲ニ謀リマシテ最モ重大ナル所ノ問題ハ、卽チ〓物供給問題デゴ
ザイマス、此上カラ私ハ論ジテ見タイ、御承知ノ通リ我ガ帝國ノ人口ハ每年約六十万
人ヅヽ殖エテ參リマスル、然ルニ此〓物ノ中デ重要ナル米ノ產額ハ如何デアルカト申シマ
スレバ、多少ヅヽ殖エナイトハ申シマセヌガ、併シ殖エル率ト云フモノハ誠ニ輕微ナモノデ
ゴザイマス、而シテ此後一道三府四十三縣ノ本土ニ於テ、果シテドノ位ノ產額ヲ殖スコ
トガ出來ルカト云フコトニ付キマシテハ、農商務省ノ當局者モ大分調ヲ致シテ居ラルヽノ
デゴザイマス、此調ニ依テ見マスルト七十万町步ノ未墾田地ガ殘ッテ居ル、ソレカラ百
万町歩ノ畑ニスル所ノ未墾畑地が殘ヲテ居ル、斯ウ云フノガ農商務省ノ御調デゴザイマ
ス、諸君、其七十万町歩ノ未墾ノ田地ト云フモノヲ分析シテ見マスルト、誠ニ失望セザル
ヲ得ヌノデアリマス、何故失望セザルヲ得ヌカト云フノニ、七十万町歩ノ中デ北海道ガ三
十二万町歩ゴザイマス、サウシテ東北ノ靑森秋田巖手若ハ千葉ト云フヤウナ所ガ五万
町步若ハ四万町步三万町步ト云フヤウナ稍〓大ナル所ノ面積ヲ有ッテ居リマスノデ、七
十万町歩ノ半分以上約六割以上ト云フモノハ米ヲ作ルニ最モ不利益ナル所ノ地方デ
ゴザイマス、就中三十二万町步ノ北海道ノ未墾田地ト申スモノハ、御承知ノ通過去ノ
實蹟ニ依リマシテモ、北海道ノ米作ト云フモノニ付テハ事實ガ證明スル如ク餘リ好イ成
績ヲ舉ゲテ居リマセヌ、申ス迄モナク稻ハ熱帶植物ノコトデゴザイマスカラ、北海道ノ如キ
氣候ノ寒イ所デハ良ク出來ナイト云フコトハ當リ前デゴザイマスルガ、併シ我ガ大和民族
ノ農業ニ鍛練ナル、先年來此天然ニ背イタ處デ米田ヲ拵ヘテヤッタ、多少ノ成績ハ舉ゲ
テ居リマス、ケレドモ併シ是ハ甚ダ計算ニ合ハナイ所ノ仕事デアル、昨年ノ如キハ殆ド總
テ凶作ニナッテ居ルト云フ事實ヲ見マシテモ、アマリ有利ナ仕事デナイト云フコトハ明白デ
ゴザイマスル、ソレカラ又東北ノ如キモデス、比較的ニ九州中國其他ノ地方ト比ベマスレ
バ、溫度ノ相違ト云フコトガ最モ此米作ニ影響スルノデゴザイマシテ、三年カ四年ニ必ズ
大凶作ノ起ルト云フノハ、卽チ實際ノ事實デアル、此地方ト中スモノモ米作ガ最モ有利
ナルモノトハ信ゼラレナイノデゴザイマス、面シテ今後開カルベキ所ノ水田ノ餘地ト云フモ
ノガ、多ク北海道ト東北地方ニアリト致シマスナラパ農商務省ノ調ノ七十万町步ノ米
田ト云フモノモ甚ダ我ガ國人ノ要求シマスル所ノ米ノ供給ヲ期待スルコトニ於テ不安
心ナルモノト申サナケレバナラヌノデゴザイマス、又畑地-麥ヲ作リ或ハ豆ヲ作ル所ノ
畑此畑モ全國ニ亙ッテ百万町步アルト云フノハ農商務省ノ調デゴザイマスガ、其中八
十何万町歩ト云フモノハ北海道デアルノデゴザイマスカラ、是ハヤハリ米田ト同樣トハ申
セマセヌ、北海道デモ畑ニナリマスレバ相當ノ收穫ノアルモノモゴザイマスルガ、併ナガラ此
北海道ノ畑ト申シマスモノハ、內地ノ畑ト比ベマシテ其收穫ノ貧弱デアルト云フコトハ明
白ノ事デゴザイマスカラシテ、此畑ノ百万町歩ト申スモノモ、我國ノ穀物供給ノ上カラ見
マスルト甚ダ賴ミ少イ所ノ未墾ノ畑地デゴザイマス、此外ニ新領土デゴザイマスル臺灣朝
鮮等ハゴザイマスルガ、此邊ノ調ハ農商務省ニ於テハマダ能ク著イテ居ラヌヤウデ、吾〓
モ存ジマセヌガ、併シ是トテモ年々六十万人ノ人口ヲ養フ所ノモノヲ此地方カラ得ヤ
ウト云フコトハ、實際ニ於テムヅカシカラウト思フノデゴザイマス、此ノ如クニ致シマシ
テ、今日ノ米田、畑竝ニ將來開墾スベキモノマデ合セマシタ所テ、〓物ノ前途ヲ考ヘテ
見マスルト誠ニ心許ナク考ヘマスル次第デゴザイマスルガ、實ハ其筈デゴザイマスル、
諸君、日本帝國ノ面積ハ御承知ノ通リ可ナリ廣ウゴザイマスルガ、此面積ノ中デ
耕地トナッテ居リマスルモノガドノ位アルト調ベテ見マスレバ、僅ニ一割四分シカナイノデゴ
ザイマス、此未墾ノ土地、將來田トナリ畑トナル百七十万町步ヲ寄セマシタ所デ、二割
ニ達スルカ達セヌノデゴザイマス、是ハ國土ノ狀勢ガ然ラシムルノデゴザイマシテ、御承知ノ
通リ日本帝國ハ島ヨリ成立ッテ居ルモノデ、殆ド山ヲ以テ構成シテ居ルト申シテ宜シイノ
デゴザイマスルカラ、此上ニハモウ耕スベキ處ガナイノデゴザイマス、世界ノ人口ノ割合ヲ統
計學者ガ調ベテ居ルノヲ見マスルト云フト、一番世界デ人口ノ稠密ノ場所ト申シマスル
ノガ白耳義デゴザイマス、是ハ一平方里三千八百八十人住ンデ居ル英蘭ガ同ジク三
千八百八十人「ホルランド」ガ二千七百二十五人、日本ハ四番目テ二千三十二人住
ンデ居ルノデアリマスガ、是ハ全面積ニ對スルトコロノ人口デゴザイマシテ、耕地ニ對スル
トコロノ人口ヲ計算シテ見マスルト、大變ニ違シテ居ル、耕地ニ對スル人口ヲ割合セテ見
マスルト、世界中デ一番稠密ナ所ハ英蘭デゴザイマス、御承知ノ通リ英蘭ハ世界ノ第一
ノ大都會ガアリ「リパーブール」ガアリ「マンチエスター」ガアリ、其他商工業ノ十分ニ發達
シタトコロデ、地球ノ中デ一番人ノ密集シテ居ル所デゴザイマスカラ、是ハ一平方里ノ中ニ
一万四千七百二十人住ンデ居ッテ、是ガ世界デ第一等ノ人口稠密ノ場所ニナッテ居リ
マ、然ルニ驚クベシ此大ナル所ノ山ヲ持ッテ居ル日本帝國ハ、耕地ノ上カラ申シマスル
ト一平方里ニ付テ一万四千二百二十四人ト云フモノデゴザイマシテ、英蘭ト較ベマシテ
誠ニ僅ノ違ヒニ過ギナイノデアッテ、世界ノ中デ最モ人口ノ稠密ナ卽チ耕地ニ割合ヒマス
ルト云フト白耳義「ホルランド」伊太利獨逸ニ較ベテ見マスト非常ナ稠密ナモノニナッテ
居ルノデゴザイマス、斯樣ナ國柄テゴザイマスカラシテ、此穀物ノ供給ヲ自國ニ仰グト云
フコトハ到底私ハムヅカシイコトデハアルマイカト思フノデゴザイマス、勿論近項ハ總テノモ
ノガ獨立主義ガ流行リマスカラ、或ハ兵器ノ獨立、或ハ商業ノ獨立イロ〓〓ノコトガア
リマシテ、卽チ自國ノ食物ハ自國デ供給スルト云フコトガ或論者ニハ一ノ定論トシテ主
張サレテ居リマスガ、併シ斯ノ如キ狀勢デゴザイマシテ、我日本帝國ハ到底食物ト云フモ
ノヲ自國ニ於テ供給スルト云フ望ミハ殘念ナガラ絕タネバナラヌ運命ヲ持ッテ居ルト私ハ
斷言致スノデアリマス(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)斯樣ニ致シマスレバデス、此年々御互ニ
六十万人ヅヽモ殖エテ行キマスル〓物供給問題ト云フモノハ、日本帝國ノ大問題デア
ルトシマスレバ此〓物ニ關稅ヲ掛ケルト云フ問題ハ、全國民ノ最モ重要視シテ愼重審
議ヲ重ネナクテハナラナイ問題デアルト思フ、私ハ委員會ニ於キマシテタッタ一人ノ贊成者
ヨリナクシテ大多數デ否決サレタト云フコトハ甚ダ衆議院ノ面目上ヨリ考ヘマシテ、如何
ニモ遺憾ニ存ズル次第デゴザイマスガ、此〓物供給問題ト云フモノハ此後モ繼續シテ諸
君ノ御攻究ヲ願ヒタイ、ソレカラ第二ニハ社會問題ト致シマシテ、私ハ諸君ノ御〓究ヲ
願ヒタイ重要ノトコロガアル、此問題ヲ攻究シマスル上ニ於テ、便宜ノ爲ニ最近ノ日本
ノ人口最近ト申シマシテモ統計年鑑ニ出テ居ルノハ明治四十五年、卽チ大正元
年ノ調テゴザイマスガ、五千百十二万ナンボト云フノガ土臺ニナッテ居リマスカラ、其御積
リデ御聽ヲ願ヒマス、此五千百十二万餘人ノ人口ノ中デ米ガ高イタメニ利益ヲ得ルト
コロノ階級ハドノ位アルカ、米ノ價ノ高下ニ關係ノナイ人民ハドノ位アルカ、ヽ米ノ高イ爲
ニ非常ニ不利益ヲ被ムルトコロノ人口ハドノ位アルカ、斯ウ三段ニ分ケテ實ハ調ベテ見タ
ノデアリマス、所ガ此調タルヤナカ〓〓ムヅカシウゴザリマシテ、精密ナル少シモ間違ハヌト
云フ統計ヲ取ルコトハムヅカシウゴザイマスガ、先ヅ直接國稅三圓以上ヲ納ムルトコロノ
農民デス、卽チ今日ノ所デ府縣會議員ヲ選舉シ得ル所ノ資格ヲ持ッテ居ル、其以上ノ
農民ト云フモノヲ以テ先ヅ米ヲ賣ルトコロノ人民、卽チ米ノ高イト云フ爲ニ利益ヲ得ルト
コロノ階級ト見タノデゴザイマス、諸君直接國稅三圓ト申シマシテモ、田地ノ高ニ割合
セテ見マスルト云フトナンボモ田地ヲ持ッテ居ル譯デハゴザイマセヌ、三圓ヲ納ムルトコロノ
平均ノ地價ハ六十四圓デゴザイマスカラ、地價ノ六十四圓ノ田畑ヲ持ッテ居ルト云フ者
ハ餘リ富裕トハ申サレナイノデゴザイマスガ、併シ之ヲ先ヅ假ニ加ヘマシテ、私ハ此階級ヲ米ヲ
賣ッテ利益ヲ得ル、卽チ米ノ高イト云フコトヲ利トスルトコロノ階級デアルト見タノデアリマ
ス、其階級ハドノ位アルカト申シマスレバ、九百八十万人餘ゴザリマス、總人口ニ割合
セマスルト是ガ二割九分ニ當ッテ居リマス、次ニ中立階級卽チ直接國稅二圓又ハ地租一厘
以上納ムル者、卽チ町村ニ於キマシテハ町會議員村會議員ヲ選ム者、此資格ヲ持ッテ
居リマストコロノ以上ノ人間二圓以上二圓九十九錢五厘マデノ納稅資格者ハドノ
位アルカ、之ヲ私ハ米ノ價ノ中立ノ階級ト假ニ名付ケタノデアリマス、何故ナラバ此階級
ハ自作若クハ小作ヲ以テ自分ノ食ベマスルトコロノ米ダケハ確ニ穫リ得ルトコロノ階級ト
信ズルカラデアリマス、勿論此中ニモ米ヲ買フ人モゴザイマセウ、又殊ニ依ッタラ少々賣ル
人モゴザイマセウガ、便宜ノ爲ニソレヲ一階級ノ中ニ加ヘマシテ是ガ八百二十万人ゴザイ
さ、卽チ全人口ノ一割六分ニ當ルノデゴザイマス、次ニ米價騰貴ニ苦シムトコロノ階
級ハドウデアルカ、此調ヲシテ見マス、此調ハ三口ニ分レテ足ロリマスガ、第一ハ全國ノ市
ニ住ンデ居ル六十六ノ市ノ中ニ住ンデ居ルトコロノ人民、是ガ八百二十九万九千
七百四十四人ゴザイマス、ソレカラ次ニハ一万人以上ノ町ノ中ニ住ンデ居ルトコロノ町
民、是ガ二百八十八万三千九百六十二人、又此二ツノ階級ハ資產ノ上カラ申シマスレ
バ如何ナルモノカ知レマセヌケレドモ、免ニモ角ニモ商工業ニ從事シテ居ルトコロノ階級デ
ゴザイマスカラ、總テ米ヲ買ッテ食ベル方ノ階級デゴザイマスヽソコデ此一万人以上ノ町ヲ
數ヘマシテ三千以上若クハ五千以上ノ町ヲ加ヘナイノハ餘程大事ヲ取ッタノデアリマス、
是ハ說明ヲ致シテ置キマスガ、三千以上ノ町ト云フモノハナカ〓〓多イ、此町モ總計致
シマスレバ餘程ノ數ニナリマセウガ、統計デソレヲ見出ストコロノ便宜ヲ得マセヌノデゴザイ
マシタカラ、假ニ町ノ方ノ人ハ一万人以上ノ町ヲ數ヘタノデゴザイマス、ソレカラ今一ツハ
町村ノ貧民デゴザイマス、村ノ貧民デゴザイマス、ワレガ二千百九十五万六千八百餘人
ゴザイマス是ハ直接國稅二圓ヲ納メルコトモ出來ズ、田地田畑モ少シモ持タナイトコロ
ノ肩書ヲ以テ申セバ、諸君ハ農業家ト仰シヤル、卽チ農業ト云フ肩書ヲ持テ居ルトコ
ロノ階級デゴザイマスガ、併シ農業家デハナイ、農業ノ下手間ヲ働ク勞働者デアッテ、眞
ノ貧乏人デゴザイマス、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ所謂水呑百姓デゴザイマス、是ハ私ハ
輕蔑ノ意味ヲ以テ申スノデハナイ、水呑百姓ト云フノハ深キ同情ヲ以テ申ストコロノ貧
民階級デゴザイマス··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=71
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072・關直彦
○副議長(關直彥君) 時間ノ延長ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=72
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073・鈴木梅四郎
○鈴木梅四郞君 此三口ヲ合セマスルト三千三百十四万四百餘人ト云フモノニナリ
マス卽チ人口ニ割合セマスルト、此水呑百姓ノ階級ト市ニ住ンデ居ル者ト、町ニ住ン
デ居ル者トノ、米ヲ買フ方ノ階級ヲ三ツ合セマスルト總人口ノ六割五分ダケニ當ルノデ
ゴザイマス、諸君、斯樣ニ統計ノ示ストコロニ依テ調ベテ見マスルト、此米ノ高イト云フ
コトニ苦ム階級ハ斯ノ如ク多イノデゴサイマス、更ニ私ハ一步ヲ讓リマシテ、今一ツ別ナ
統計ヲ取ッテ見マシタ、日本國民ノ貧富ノ程度ヲトスルニ足ルベキ〓數ヲ取ヲテ見タ、ド
ウゾ能ク村ニ歸ッテ御調ベニナル材料ニナリマスカラ御聽取ヲ願ヒマス第一階級ニ算ヘ
マスノハ、直接國稅十圓以上ノモノ是ガ七百五十一万五千餘人、日本全國都市ヲ
籠メテノ話デゴザイマス、第二階級ノ直接國稅三圓以上ヲ納メル者ハ九十三一万三千
人第三階級ノ直接國稅ノ一一圓又ハ地租ヲ若干納メル者ガ一千三十三万五千人、
此三口ト云フモノガー先ヅ餘リ第三階級ナドハ金持トハ申セマセヌケレドモ、併ナガラ
村曾議員町會議員市會議員ヲ選舉シ得ル資格ヲ持ッテ居ルモノデゴザイマスカラ先ヅ
困ラナイ所ノ人ト看做シテ、是ハ日本デハ先ヅ相當ナ者ト見マシテ、此合計ノ人間ガ都
市ヲ通ジマシテ二千二百五十一万五千餘人ゴザイマス、サウシテ第四階級ノ地方ノ町
村ニ於キマシテモ、都會ニ於キマシテモ、何等ノ選舉權モ無イトコロノ勞働者貧民階級
ト云フモノガ二千八百六十一万五千四百人ゴザイマス、此貧富ノ兩階級ニ於キマシ
テ眞ノ貧乏人本當ノ勞働者、日雇人足同樣ナ人間、地方ニ於テハ水呑百姓、ソ
レヲ合セマシタモノガ人口ノ五割五分ニ當ッテ居リマシテ、今ノ僅ナル財產ヲ持ッテ居ル
者ヲ加ヘマシタモノガ四割五分ト云フ割合ニナッテ居リマス、假リニ前ノ六割五分ト此
中流階級トノ三階級ニ分ケマシタモノハ餘程割合ガ宜クナッテ居リマスガ、ソレヲ止シ
テ唯貧乏人金持ト云フ此二ツノ階級ニ分ケタマシテモ、日本帝國ノ社會狀態ト申シマス
ルモノハ斯樣ニナッテ居ルノテゴザイマス、シテ見マスレバ此階級ト云フモノノ〓物問題、生
活問題ト云フモノハ帝國議會ナドニ於テハ最モ大事ニ審議討論セラレナクテハナラヌ
問題ト思フノデゴザイマス、私共ハ此問題ニ就テハ黨派ノ異同ヲ問ハズシテ十分ニ御〓
究ヲ願ヒタイノデゴザイマスガ、今日委員長ノ報告ニナリマシタヤウナ結果ヲ來シタト云フ
モノハ滿場ノ諸君ガ日本ノ經濟狀態、日本ノ社會狀態ト云フモノヲ十分ニ御承知ガ
ナイノデハナイカト(「ノウ〓〓」ト呼フ者アリ)云フ虞レヲ懷イテ居ルノデゴザイマス(拍手
起ル)諸君御同樣ニ國政ニ參與スルトコロノ議員ハ、卽チ政治家デゴザイマス、政治家
ト申スノハ少シク如何テゴザイマスガ、免ニ角政治圈內ニ立ッテ國家ノ爲ニ努力スルトコ
ロノ人デゴザイマシタナラバ唯自分ヲ選舉シマシタ選舉民ノ御機嫌ヲ取ルトヨロノ案バ
カリ相談ヲ爲サッテ、吾〓ヲ選擧スルトコロノ權利ノナイ日本帝國ノ多數ノ人民ノ利害
得失ト云フモノハ洵ニ之ヲ顧ミズシテ、恰モ對岸ノ火災ノ如クニ見テ居ルト云フノハ御
互ノ職責ヲ完ウスル所以デゴザイマセウカ(拍手起ル)私ハ此〓ニ至リマスト我帝國議會
ノ程度ノマグ甚ダ幼稚ナルコトヲ歎息スルノデアリマス(「不都合ナコトヲ言フナ」ト呼フ者
アリ)諸君御承知ノ通リ、世界ノ文明國ニ於テハ、政治問題ノ根本ハ過去ノ歷史ニ於
テ政權爭奪時代、若クバ經濟問題時代、斯ウ云フ階級ヲ經テ、今日ハ既ニ社會政策
ノ問題ニ進ンデ居リマス、所ガ日本帝國議會ノ議論ヲ見マスルト、マダ政權爭奪時代、
一世紀モ二世紀モ遲レタトコロノ議論ガ議場ニ歡迎サレマシテ、第二世紀デアル經濟
問題經濟問題ヲ土臺ト致シマシタル所ノ議場ノ議論ト云フモノガ諸君ヲ倦マシメ
ルト云フ景況ハゴザイマセヌカ、私ハ世界ノ大勢カラ考ヘマシテ、我日本帝國ノ政治論
恐ラクハ經濟問題ニ入ラズシテ一足飛ニ社會政策間題ニ進ミハセヌカト云フコトヲ考
ヘテ居ルノデゴザイマスガ此社會政策間題ノ攻究上、私ガ唯今提供致シマシタトコロ
ノ統計ト申シマスルモノハ最モ愼重ニ諸君ガ御考ヘ下サルトコロノ材料ト思フノデゴザ
イマス、私ハ政治家タルモノハ木戶孝允ノ詩ニ於テ三千餘万ノ蒼生ヲ如何セント云フコ
トヲ言フテ居リマス、御互ニ政治ノ圈內ニアリマスナラバ、六千万ノ蒼生ノ利害得失ヲ考
ヘナケレバナラヌデハゴザイマセヌカ(「當リ前ダ」ト呼フ者アリ)然ルニ唯徒ニ、自分ノ選擧
サレタ少數ナルトコロノ階級ノ爲メバカリニナルコトヲ論ジテ、此多數ノ六割五分以
上-貧富ノ關係カラ申シマシテモ五割五分以上ノ多數ノ國民、最モ同情スベキトコロ
ノ貧民階級ニ向シテハ殆ド一掬ノ淚モナイヤウナ政治家デアッテ、果シテ政治家タルノ資
格ヲ備ヘテ居ルデゴザイマセウカ、私ハ此〓ニ向ッテ甚ダ失禮デハゴザイマスケレドモ(「大
失禮」ト呼フ者アリ)本案ノ如キニ向ッテ罵聲ヲ御掛ケニナル諸君ハ政治家タルノ資格ガ
無イモノト斷言ヲ致シマス、斯ク如キ理由ニ於キマシテ、私ハ本案ノ維持ヲ致スノデゴザ
イマス、但シ滿場ノ諸君ハ唯今ノ態度ヲ拜見致シマシテモ、マダ御悟リニナラナイト或ハ
葬ラレルカモ分リマセヌガ併シ諸君ドウゾ六千万ノ同胞ト云フモノヲ能ク御考ニナッ
テ、少數ナルトコロノ富メル階級ニバカリ阿ネルト云フトコロノ說ヲ御止シニナルコトヲ希
望致シマス、洵ニ是ハ國家問題ト致シマシテモ最モ重要ナル問題ト信ジマスカラ、失禮
ヲ顧ミズ激語ヲ申シタノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=73
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074・關直彦
○副議長(關直彥君) 丸尾光春君
〔丸尾光春君登壇〕
(「簡單ケ々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=74
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075・丸尾光春
○丸尾光春君 成ルベク簡單ニ述ベマスカラシテ暫ク謹聽ヲ願ヒマス(「謹聽タケ」ト呼
フ者アリ)此輸入ノ米問題ハ非當ナル重要問題、米ハ我國ノ生命デアルコトハ申スマデ
モナイ、卽チ我國民ノ重要食物タル以上ハ、此問題ハ輕々ニ論斷スベカラザルトコロノモ
ノデアル、極言スレバ實ニ國家存亡ノ岐ルヽトコロノ大問題デアリマス、從ッテ外米ノ關
稅撤廢ニ付テハ細心注意ヲ要スルノデアリマス、故ニ此外國米ノ輸入問題ヲ〓究スルニ
付テハ、世界ノ產米狀況ヲ勢ヒ玆ニ前提トシテ述ベナケレバナラヌノデアリマス、明治三
十八年ヨリ四十二年ニ至ル五箇年ノ平均ヲ申上ゲマスガ、先ヅ筆頭ノ英領印度ガ二
億九百万石、支那ガ一億五千万石、日本ガ五千万石、瓜哇「スマトラ」ガ二千万石、
暹羅ガ二千万石、朝鮮ガ九百万石、比律賓ガ百十万石、亞細亞露領ガ百十万石、
阿非利加ガ三百三十万石、歐羅巴通計三百五十万石、北米ガ二百万石、南北ガ
百十万石、合計四億九千二百二十九万石、最モ此中ニハ海峽殖民地「フイジー」島
ノ米ニ至ルマデノ產米ヲ合シテ此數字ニナルノデアリマス、是ニ依レバ日本米ハ世界ノ產
米ニ對シテ九分五厘乃至一割ヲ產出スルノデアリマス、所ガ四十三年ニハ既ニ四億九
千二百二十九万石ト云フ數字ガ長足ノ進步ヲシテ、世界ニ於テ五億五千三百五十
五万石ニ達シテ居ル、以テ其增進ノ驚クベキ狀況ヲ知ルコトガ出來マス是ガ故ニ日本
以外ニ於テ五億万石產出スルノデアリマスルガ、故ニ若シ此關稅ヲ撤廢致シマシタトキ
ニハ恐ルベキ勢ヲ以テ日本ニ入ルト云フコトハ推測シ得ラルヽノデアリマス、次ニ米ノ直
段ノ中心〓ヲ論ジテ此關稅撤廢ノ反對ノ理由ニ供シタイト思ヒマス、先般來關稅撤
廢問題ヲ提出ニナリマシタトコロノ諸君ニ、凡ソ米ノ直段ハドノ位然ラバ減ジタラ宜イ
カ、君達ハ細民ヲ救濟スルト云フガ細民ヲ救濟スルナラバ米價ヲドノ位ノ點ニマテ下ゲタ
ラ細民ノ〓濟ガ出來ルカト云フ質問ヲシタトコロガ、其答辯ハ終ニ無カッタ、唯無意味
ニ米價ヲ安クシテ細民ヲ救ヒサヘスレバソレデ宜イ、斯ウ云フ御議論デアリマシタガ是
思ハザルノ甚ダシキモノト思ヒマスル、故ニ茲ニ米ノ値段ノ中心〓ヲ割出シテ、サウシテ吾〓
ガ外米ノ輸入ニ反對ノ理由ヲ申上ゲマス、今米一石アタリノ入費ヲ調ベテ見マスト、最
モ是ハ全國平均段別收穫米一段ニ付テ二石モ三石モ出來ル所ガアリマスガ、一石七
斗二升三合ノ數字カラ割出シタノデアリマスカラ、左樣御承知ヲ願ヒマス、米一石ニ付
テ國稅ガ九十六錢、府縣稅ガ五十三錢、町村稅ガ七十八錢合計二圓二十七錢、ソ
レニ肥料ガ三圓五十四錢、人夫賃ガ五圓八十九錢五厘、雜費ノ中ニハ修繕費モアリ
農會費モアリ協議費モアリ種々含ンデ居リマス、ソレカラ種子マデデ一圓六十三錢五
厘ソレカラ此合計ガ十一圓七錢、土地資本利子是ハ當然ノコトデアリマシテ、之ヲ
六步ト見マシテ六圓八十錢此三合計ガ二十圓十四錢ニナリマス、、而シテ此中カラ段當
テノ藁代屑米籾殼等ノ三圓十錢、一段ニ付テ收入ガアリマスカラ、之ヲ折半シテ一圓
五十五錢ノ收入ニナリマス之ヲ差引クト米ノ直段ガ十八圓五十九錢ト云フモノニナ
リマス故ニ米ノ値段ノ中心點ハ十八圓五十錢デアリマス、此中心點ヨリ上レバ農家
ガソレダケ收入ガアル、此中心點ヨリ下レバ農家ガ堪ヘナイ憂色ガアル、故ニ若シ此關
稅ヲ撤廢シタナラバ二百万石ヤ三百万石ハ入ッテモ意トスルニ足ラヌト言ハレマスガ直ニ
是ハ障ルノデアリマス全國六步ヲ占メテ居ル農家ハ直ニ打擊ヲ受ケルト云フ大キナ
問題ニナル、故ニ米ノ直段ノ中心點ヲ能ク御記憶遊バサレタナラバ關稅嶽廢ヲスルト
云フ議論ハ出テ來ル筈ガナイノデアリマス、畢竟スルニ此中心値段ヲ御存ジナイカラデア
ルト思ヒマス(ヒヤ、拍手起ル「東京ニ出テ買物ヲスル人ハアリヤシナイ」「名論名論」
ト呼フ者アリ)成ルベク簡單ニヤリマスカラ今暫ク辛抱ヲ顯ヒマス(「ヤリ給ヘノ」ト呼フ
者アリ)更ニ農村保護上ヨリ此關稅撤廢ニ反對スル理由ヲ簡單ニ申シマスルガ、我國
ノ一年ノ生產額ハ屢〓三十億圓トカ云フ話ヲ聽キマシタガ、的確ニ申シマスナラバ一一十五
億圓ホドガ日本ノ生產額デアリマス、此中十八億圓ハ農產物デアリマス、以テ農業ハ
國家經濟ノ基礎ヲ成シテ居ルコトガ是テ御分カリニナリマスト私ハ存ジマスル、而シテ尙
輸出入ノ上ニ於キマシテ此輸出入ノ重要首位ヲ占メルモノハ皆農產物デアリマス
卽チ輸出ニ於キマシテモ生絲ノ一億四千六百万圓カラ茶、砂糖、米、麥)稗果實、
野菜、是ハ尤モ三年平均テアリマスガ二億以上ニ達シタトキモ生絲ガアリマスケレドモ
是ハ三年平均デアリマスカラ左樣御承知ヲ願ヒマス輸入ニ於キマシテモ綿、米、砂糖、
羊毛、大豆、小麥、小麥ノ粉、皆斯ノ如ク輸出輸入ノ首位ヲ占メル重要產物ハ農產物
ナラザルハナシ、ソコデ尙輸出入ノ額ヲ申シマスルト、明治四十三年カラ大正元年マデノ三年
見マシテモ輸出ノ總計ガ二億二百七十三万六千六百一圓、是ハ農產物デアリマス、其
次ニ輸入ノ方ハ二億八千三百四十九万五十一圓、是亦農產物デアリマス(「聽エマセ
ヌ」ト呼フ者アリ)更ニ生計問題ヨリ此關稅ヲ撤廢シナカッタナラバ、米價ノ騰貴シタトキ
ニハ細民ガ悲鳴ヲ揚ゲテ餓死スルガ如キコトヲ提案者ハ述ベラレルノデアリマスルガ、米價
騰貴ノトキニハ從來ノ經驗ニ依レバ寧ロ細民ハ賃金ノ向上ノタメニ中層ノ人ヨリモ奢リ
タル生活ヲ爲スノ有樣デアリマス(「其通リダ」「米ヲ標準トシテ賃金ハ定マルノダ」ト呼フ
者アリ)故ニ相當ニ値ノ良イ時分ニハ他ノ穀物モ好況ナルヲ以テ、茲ニ田畑ノ開墾ト云
フコトガ餘程進ンデ參ルノデアリマス(ヒヤ〓〓)而シテ米價下落ノトキニハドウ云フコ
トニナルカ、米價下落ノトキニハ遂ニ購買力ヲ減ジテ都會ノ商況ハ衰頽ニ赴クノデアリマ
ス、而シテ尙提案者ノ唱フルトコロハ外米ハ都會ノ薄給者ノ腰辨諸君ノ生計ヲ救フ
ノデアルト云フ話デアリマスルガ、決シテ左樣ナコトバカリデハアリマセヌ、現ニ外米ガ這
入ッテ往キマスル方面ハ秋田縣、山形縣、新潟縣ノ一部、凶作ノ年ニハ靑森ヤ仙臺ノ
方ニモ這入ッテ參リマスルカラシテ、決シテ都會ノ薄給者ヲ救ヒ得ルト唱ヘテ居ラレマスケ
レドモ事實ハツレニ相違スルノデアリマス(ヒヤ〓〓)而シテ又(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者ア
リ)此現行法ノ米ノ關稅法卽チ百斤ニ一圓一石ニ二圓五十錢、此課稅ハ最モ安全瓣
デアル、國ノ穀物ヲ保護スル上ニ於テ安全瓣デアル、非常ニ都合好ク出來テ居ル、尙其
上ニ勅令ヲ以テ凶作ノ年若クハ國家非常ノトキニハ六十錢マデハ低減シ得ルノデアルカ
ラシテ、何ヲ苦ンデ此關稅撤廢ヲ唱ヘルカ譯ガ分ラヌ(「ドチラガ分ラヌカ」ト呼フ者ア
リ)而シテ又農產物ト云フモノニ付テ、我輩ノ話ガ分ラヌト云フコトガアッタラ薩張リゼロ
グ(笑聲起ル「ヒヤ〓〓」「米ガ高イト三越ニ往ッテモ買手ガナイ」ト呼フ者アリ)ドノ點ヲ
叩イテモ、、我國ノ農業ハ人口ノ上カラ言ッテモ戶數ノ上カラ二言ッテモ、總テノ點カラ〓究
シテ見テモ六步ノ勢力ヲ占メテ居ルノデアリマスルシ、殊ニ最モ諸君ノ留意ヲ願ヒタイコ
トハ我國現在ノ實力ハ農村ニアルノデスカ都會ニアルノデスカ、我國ノ農民ハ世界ノソレ
ニ比シ體力ハ强健デ精神ハ剛毅柔順デ、能ク命令ニ服從スル〓ガアリマス、是ガ卽チ我
日本ノ國ノ現在ノ實力デアルノデアリマス(ヒヤノヽ)故ニ或〓マデハ農村ヲ保護セザ
レバ終ニ現在ノ實力ガ衰退スルノデアルト云フコトハ、此事ニ徵シテ明カデアルト私ハ思
ヒマス(「ヒヤ〓〓」拍手起ル)マダアル、此關稅ヲ撤廢致シマシタナラバ租稅ノ負擔力ヲ
毀損スルト云フコトニナリマス、卽チ地租ノ七千五百万圓ノ半面ニハ府縣稅ノ七千五
百万圓ガアル、故ニ一億五千万圓ノ負擔力ヲ直ニ毀損シテ來ルトコロノ道理ニナッテ參
ルコトガ分カルデアラウト思ヒマス(「ヒヤ〓〓」「贊成」ト呼フ者アリ)殊ニ此關稅ヲ撤廢スル
トセザルトハ如何ナル邊ニ大ナル影響ガアルヤ否ヤト云フコトハ、自分ガ仄ニ聞クトコロニ
依レバ、昨年以來日本ノ米價ノ下落シテ居ルノハ何ノタメデアルカ、何ノタメニ下落ヲシ
タノデアルカ、仄ニ聞クトコロニ依ルト是ハ昨年朝鮮ノ關稅ヲ撤廢シタル結果ゝ臺灣朝
鮮等ニ外米ガ這入ッテ是ガ混ゼラレテ、朝鮮米トナッテ我國ニ這入ッタ結果デアルト云フ
一ツスラモ〓究シ得テ居ルノデアリマス、而シテ此米ノ額ハ約三百三十万石程デアリマ
スルガ、是ガ一年中ニ徐々ニ這入ッテ來ルナラバ左程ニモ多大ナ影響ヲ及ボサナカッタカ
知リマセヌガ、免ニ角殆ド三箇月ホドニ三百三十万石這入ッタルタメニ、斯ノ如ク米價
ガ昨今下落シテ天下ノ農民-農村ニハ憂色ヲ以テ充タサレテ居ルノデゴザイマス(ヒ
ヤ〓〓)ソレ故ニ此關稅撤廢ト云フコトハ先刻提案者ハ反對ヲスル者ハ人氣ヲ取ルト
カ何トカ言ハレタケレドモ、ソレハ提案者ノ方ノコトデ、畢竟關稅ヲ撤廢シテ細民ヲ助ケ
テヤル、オ前達ヲ救濟シテヤル、吾ヽ國民黨ハ細民ヲ助ケル主唱者ニナッテ居ルノダト云
フ看板バカリ大キイ美麗ナ看板バカリ揚ゲテ、、而シテ細民ヲ魔イデネキニ引寄セテ絞殺
スモ同樣ダ(ヒヤ〓〓)故ニ此關稅撤廢ニハ絕對的反對ヲスルノデアル、卽チ若シ之
ヲ撤廢スレバ國家經濟ノ基礎ヲ破壞スルノデアル、國防ノ要素タル軍隊ノ實力ヲ危殆
ナラシムルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)故ニ提案者ノ考ハ皮相ノ考ノミ、淺薄
ナル思慮ノミ、今日以後ニ於テ是ガ關稅撤廢ヲ唱フル人ハ亡國論ヲ唱フルノデアル
(「ヒヤ〓〓」ト呼ヒ拍手スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=75
-
076・中村啓次郎
○中村啓次郞君 討論終局ノ動議ヲ提供致シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=76
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077・關直彦
○副議長(關直彥君) 討論終結ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=77
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078・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ガナケレバ討論ハ終結致シマシタ、仍テ採決ヲ致シマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ採決致シマス、第二讀會ヲ開クベシト云フノ諸君ハ
起立
起立者少數発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=78
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079・關直彦
○副議長(關直彥君) 少數デアリマス、第二讀會ヲ開クベカラズト決定致シマシタ、次
ハ日程第十五、質屋取締法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長高橋
直治君
第十五質屋取締法中改正法律案(岡田第一讀會ノ續(報告(電話本局)
榮君外二名提出)
〔高橋直治君登壇〕
〔「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=79
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080・高橋直治
○高橋直治君 唯今議事ニ上リマシタル質屋取締法中改正法律案ノ委員會ノ結果
ヲ御報告致シマス、委員會ヲ開キマシタルコトハ三囘ニシマシテ、本案ハ諸君モ御承知ノ
通リ、二十四議會ヨリ本院ニ可決確定致シマシテモ、政府委員ノ御同意ガ無キタメニ
何時モ貴族院ニ於テ否決不成立ニ終リマスルノデゴザイマス、故ニ今囘ノ委員會ハ議ノ
通リマセヌ、空論ヲ避ケマシテ、政府ノ同意ヲ求メルタメニ政府ト懇談協議會ヲ開イタ
次第デゴザイマスル、其懇談ノ結果第三條ノ確認ト云フ交字ヲ警察官ガ苛酷ニ取扱
ヒマシテ、當業者ガ苦ミマス次第デアリマス、故ニ委員會ノ請求ニ依リマシテ各地方官
ニ訓令ヲ發シテ其確認ト云フ文字ヲ地方官ニ穩カニ取扱ハセルト云フコトヲ明言サレマ
シノ、委員會ハ其明言ヲ信ジマシテ、原案ヲ削除シタ次第デゴザイマズル、第五條ノ但
書、質置主ニ於テ必要ト爲サヾルトキハ交付セザルコトヲ得ト云フ原案ニ對シテ、但シ命
令ノ定ムル所ニ依テ之ヲ交付セザルコトヲ得ト云フ修正案ガ吉原君カラ提出ニナリマシ
テ、之ニハ提案者モ滿足シ、政府モ御同意ニナリマシテ、委員會ハ滿場一致ヲ以テ修
正ヲ可決致シタ次第デゴザイマスル、本會ニ於キマシテモ滿場一致ヲ以テ可決確定アラ
ンコトヲ希望致シマス
(「贊成々々」拍手スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=80
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081・關直彦
○副議長(關直彥君) 別ニ通告モアリマセヌガ、本案ノ第二讀會ヲ開クベシト云フニ
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=81
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082・中村啓次郎
○中村啓次郞君 直チニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シ、委員長報告通リ可決確定
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=82
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083・關直彦
○副議長(關直彥君) 中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕
質屋取締法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=83
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084・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ガナケレバ直チニ一一讀會ヲ開キ、三讀會ヲ省略シ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ、次ハ日程第十六、日本勸業銀行法中改正法律案
ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長伊東要藏君
第十六日本勸業銀行法中改正法律案第一讀會ノ續委員長
(白川友一君外四名提出)報告
〔伊東要藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=84
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085・伊東要藏
○伊東要藏君 唯今議題トナリマシタル日本勸業銀行法中改正法律案ノ委員會ニ
於ケル經過結果ヲ御報告致シマス、本案ハ鐵道財團、輕便鐵道財團、及軌道財團ニ
對シマシテ日本勸業銀行ヨリ放資ノ途ヲ開クト云フノヲ目的トスル案デアリマス、委員
會ニ於キマシテハ質問應答ヲ重ネマシタル後ニ、藏內君ヨリ修正案ガ出マシテ、鐵道財
團ト竝ニ軌道財團ト云フ此九字ヲ削リマシテ、卽チ輕便鐵道財團ダケニ對シテ放資ノ
途ヲ開クト云フ修正案ガ出マシテゴザイマス之ニ對シテ滿場一致ヲ以テ可決致シマシ
タ、又政府委員モ此修正案ニ對シテ同意ヲ表セラレタノデゴザイマス、此段御報告致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=85
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086・關直彦
○副議長(關直彥君) 此案モ別ニ通告ガアリマセヌ、第二讀會ヲ開クニ差支アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=86
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087・中村啓次郎
○中村啓次郞君 直チニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略シ、委員長報告通り可決確定
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=87
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088・關直彦
○副議長(關直彥君) 中村君ノ動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕
日本勸業銀行法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=88
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089・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ハナイト認メマス、仍テ直チニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ
省略シ委員長報告通リ可決確定致シマシタ、次ハ日程第十七、競馬法案ノ第一讀
會ヲ開キマス、廣澤辨二君
第十七競馬法案(廣澤辨二君外二十名提出)第一讀會
競馬法案
競馬法
第一條本法ニ於テ競馬ト稱スルハ專ラ馬、四ノ改良ヲ目的トシ民法第三十
四條ニ依リ設立シタル社團法人ノ開催スルモノヲ謂フ
第二條社團法人ハ競馬ノ種類、競馬場ノ位置、馬場ノ設備、諸建築物ノ種
類及構造ニ付主務官廳ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第三條競馬ニ於ケル競走馬匹ノ優劣ヲ判定シ其ノ趣味ヲ增進セシムル爲
社團法人ハ主務官廳ノ許可ヲ得テ馬票ヲ發行スルコトヲ得
馬票ハ競馬場內ニ於テ發賣シ社團法人ノ會員ニ非サレハ之ヲ購買スルコ
トヲ得ス
馬票ノ種類、金額及其ノ購買ノ制限ハ主務官廳之ヲ定ム
第四條馬票發行ノ收入ハ勝馬ノ賞金、會員ノ新馬購入ノ補助金、一般產馬
事業ニ對スル奬勵金及社團法人ノ經費補充等ニ供スルモノトス
第五條競馬規則、馬票發行及取扱規程ハ社團法人ニ於テ主務官廳ノ認可
ヲ經テ之ヲ定ムルモノトス
第六條競馬ノ主催者タル社團法人ノ役員及掛員竝騎手又ハ馬丁ハ馬票ヲ
購買スルコトヲ得ス
第七條社團法人ノ會計及業務ノ施行ハ主務官廳之ヲ監督ス
第八條主務官廳ハ必要ト認メタルトキハ競馬ノ開催又ハ馬票ノ發賣ヲ制
限シ若ハ停止スルコトヲ得
第九條社團法人ノ役員ノ就職ハ主務官廳ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
主務官廳ハ社團法人ノ行爲カ法律命令ニ違反シ又ハ公益ニ害アリト認メ
タルトキハ役員ノ解職ヲ命スルコトヲ得
第十條第八條ノ命令ニ違反シタル者又ハ本法ニ據リ設立シタル社團法人
ニ非スシテ馬票ヲ發行シタル者若ハ之ヲ購買シタル者ハ千圓以下ノ罰金
又ハ科料ニ處ス
第十一條第三條若ハ第六條ニ違反シタル者ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料
/ 田舎
本條ノ罪ハ現行犯ニ非サレハ之ヲ罰セス
附則
本法施行ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
〔廣澤辨二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=89
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090・廣澤辨二
○廣澤辨二君 本案ニ付キマシテハ私ハ幾多述ベマシテ諸君ノ御〓聽ヲ煩ハシタイト
豫テ考ヘテ居ッタノデゴザイマスルガ、段々時間モ切迫シ殆ド時間ノ餘裕ガナイヤウナ場合
ニ臨ミマシタカラ、極メテ簡單ニ申上ゲヤウト思ヒマス、本案ハ馬匹ノ改良上ニ最モ必
要ナル案デコザイマシテ、歐米ノ諸國ニ於テハ盛ニ競馬ガ行ハレテ居ルト云フコトハ皆サ
ン御承知ノ次第ト思ヒマス、唯之ニ伴フトコロノ競馬ニ伴フトコロノ馬券ト云フモノガア
ルタメニ、本邦ニ於テハ兔角ノ議論ガ行ハレテ、或ハ是ハ忌ハシキ金錢授受ノ機關ニ供
スルモノデナイカト云フヤウナ誤解ヲ受ケテ居ルトコロノモノデゴザイマス其邊ハ我輩等ハ
甚ダ平素遺憾ニ感ジテ居ル次第デゴザイマスルガ、ソレニ付テ玆ニ申述ベルコトハ避ケマ
スルガ、免ニ角本案ヲ提出シタ所以ノモノハ、所謂ソレ等ノ幾多ノ非難ノアルコトヲ豫
想致シマスルガ、ソレ等ニ拘ハルノ遑ナクシテ、本案ヲ提出シタ所以ガ玆ニ抑〓二ツアルノデ
ゴザイマス、其第一ハ何デアルカト申シマスト、是ハ諸君能ク御聽ヲ願ヒタイノデゴザイマ
スルガ、我國防上ニ於キマシテ目下ノ馬產界ノ狀態ニアッテハ此我陸軍ノ軍備上ニ要
スルトコロノ軍馬ト云フモノハイザ有事ノ日トナッタナラバ大ナル不足ヲ告ゲルト云フコ
トガ、吾ミハ默視出來ナイ〓デアルノニ依ッテ、本案ヲ提出シタ譯ナノデアリマス、ソレヲ
統計ニ照シテ申上ゲレバ(「簡單々々」ト呼フ者アリ)長クナリマスルカラ其數字ハ委
員會ニ於テ申述ベヤウト思ヒマスガ、免ニ角統計上ヨリ數字ヲ以テ表ハシマスレバ約
十五万頭ト云フモノハ不足ヲ告ゲルト云フコトヲ此處ニ申上ゲテ置キマス、併シ絕對ニ
不足ヲ告ゲルトシタナラバ是ハ大變ナ問題デアルニ依テ、軍事當局者ハ是ハ如何ニ補充
スルカト云ヘバ、ソレハ牝馬ヲ以テ之ヲ補充スルト云フコトニ設計ハシテ居ルノデアリマス、
諸君、牝馬ト牡馬ハ其力量ニ於テ、其用井ノ方法ニ於テ、自カラ同一ナルコトヲ得ナ
イ牝馬ハ牡馬ニ比シテ力ノ弱イト云フコトハ分リ切フタ話デアル、然ルニ牡馬ガ〓乏シ
テ居ルガタメニ適當ナルモノガナイタメニ、イザト云フ時ニハ隨分其牝馬ヲ集メ來ッテ、
我ガ戰場ニ送ラウト云フ計畫ニナッテ居ルノデアリマス、之ヲ思ヒマスレバ如何ニ我軍事
上ニ於ケル軍馬ノ缺乏ト云フコトガ分ルデアラウト思フノデアリマス、諸君是等ノコトヲ
考ヘマシタナラバ、今日馬匹ノ狀態ト云フモノハ如何ナル手段ヲ以テモ、有ユル手段ヲ
以テ是ガ改良發達ヲ圖ラネバナラヌト云フコトノ論點ニ歸著セザルヲ得ヌト思フノデアリ
マス(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ)尙ホ一ツノコトハ是モ極メテ簡單ニ申シマスルガ、近時
社會交通機關ノ發達ニ依テ、馬匹ノ用途ト云フモノハ段々少クナッテ參ッテ居ルノデアリ
マス又一方社會ノ進步ト申シマスカ經濟界ノ膨脹ト申シマスカ、馬匹ニ關スル生產
費ト云フモノハ年々高マッテ參リマシテ、而シテ一方ニ於ケル其需用ト云フ〓ニ於キマシ
テハ、別段ニ殖エルコトモナク別段ニ發逹シ得ル前途モナイノデアリマス、シテ見マスルト
此儘ニ置キマシタナラバ馬匹卽チ產馬業ト云フモノ、決シテ發達スルコトヲ得ナイハ
偖テ措イテ、寧ロ退步ノ狀態ニ向ヒツヽアルト云フコトハ現下ノ狀態デゴザイマス而シ
テ附加ヘテ申シマスレバ產馬ノ業ハ此天惠ノ薄キトスルトコロノ東北及ビ北海道ノ主
ナル事業デアリマシテ、所謂此地方ハ日本ノ驥地ト唱ヘラレテ居ル地方デアリマス、勿
論九州ニ於テモ鹿兒島及ビ宮崎其他ニ於テモ產馬業ハ盛ンニ營マレテ居ルケレドモ、此
業ハ天惠ノ薄キト云フトコロノ東北及ビ北海道ノ產業デアリマスルニ於キマシテハ益〓
此地方ノ發展ノタメ、本業ノ隆盛ヲ希望スルト云フコトハ自然ノ數ト言ハザルヲ得ナイ
ノデゴザイマス是等ノ事情ガアリマスルニ依テ、如何ナル非難ガアリ、如何ナル議論ガア
リマシテモ、吾〓ハ此國家ノ安危及將來ノ產馬業ノ前途ニ向ヒマシテハ有ユル手段如
何ナル事ヲ盡シテモ此前途ノ發達ヲ圖ラネバナラヌト云フコトヲ信ジテ居ルノデゴザイマ
ス、人或ハ競馬法トカ若クハ馬劵ト言ヒマスルト、何ダカ一種ノ意味ヲ以テ金錢ノ受授
ヲ意味スルガ如ク人ニ誤解ヲサレマスケレドモ、其關係スルトコロハ今申シマシタトコロノ
二大事由ガアルノデアリマスカラ、吾ミハ本案ノ成立ヲ何處マデモ希望スル次第テゴザイ
マス(「贊成々々」ト呼フ者アリ)他ニ申上ゲタイコトハ實ハ澤山ゴザイマスケレドモ是デ
止メテ置キマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=90
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091・中村啓次郎
○中村啓次郞君 本案ハ議長指名十八名ノ特別委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=91
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092・關直彦
○副議長(關直彥君) 中村君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=92
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093・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ハナイト認メマス、依テ議長指名十八名ノ委員ニ付
託スルコトニ決定シマシタ、次ハ第十八、運河法中改正法律案第一讀會ヲ開キマス、
齋藤珪次君
第十八運河法中改正法律案(齋藤珪次君外二名提出)第一讀會
運河法中改正法律案
運河法中左ノ通改正ス
第二十一條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第二十二條本法ノ適用ヲ受クル運河ノ用地ニシテ免許條件ニ依リ官有ニ
歸屬シタルモノハ之ヲ運河經營者ニ下付スルコトヲ得
〔拍手スル者アリ〕
〔齋藤珪次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=93
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094・齋藤珪次
○齋藤珪次君 本案ハ最モ簡單ノ案デゴザイマシテ、此現行ノ運何法ノ實施サレマシ
タ以前ニ於テ許可ヲ受ケテ居リマシタ運河ハ、其用地等ガ免許ノ條件ニ依テ官有ニ歸
シテ居ッタノデアリマス、故ニ該營業者ナルモノハ免許罐ダケヲ以テ譲渡シ、其他抵當等
モ致スト云フコトニナッテ居ッタ、所ガ本法ノ運河法ガ制定ニナリマシテ、運河財團ノ組織
ヲ許ルシ此抵當若クハ賣買讓渡等マデモ其目的物土地耕作物等ヲ出スコトガ出來
ルト斯ウ云フコトニ制定ニナリマシタガタメニ以前ニ於テ許可ヲ受ケマシタ者ハ既得權
ヲ害サレテサウシテ又新法ニ依テ財團ヲ組織スル等ノ特權ノ思與ニ浴スルコトガ出來
ナイノデゴザイマスカラ、其缺〓ヲ補フタメニ以前ニ於テ官有ニ歸シテ居ッタ運河用地ヲ、
經營者ノ希望ニ依テハ之ヲ返付スルコトガ出來ルト云フコトノ法律案デアリマス、最モ簡
單デゴザイマスカラ、ドウカ御贊成ヲ願ヒマス
(「贊成々々」ト呼フ者アリ、拍手スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=94
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095・中村啓次郎
○中村啓次郞君 本案ハ議長指名九名ノ委員ニ付託セラレムコトヲ望ミマス
〔「贊成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=95
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096・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ガナイト認メマスカラ、議長指名九名ノ委員ニ付託ス
ルコトニ決定シマシタ、其次ハ日程第十九、社寺上地下戾ニ關スル法律案ノ第一讀會
ヲ開キマス、請願委員長渡邊修君
第十九社寺上地下戾ニ關スル法律案(請願委員長提第一讀會
〓
社寺上地下戾ニ關スル法律案
第一條社寺舊境内及境外地ニシテ社寺上地處分ニ依リ現ニ國有ニ屬スル
土地林野ハ其ノ社寺ニ下戾スヘシ
第二條本法ニ依ル下戾ノ申請ハ大正四年七月三十一日迄トス
第三條此ノ申請ニ對スル處分ニ付不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコ
トヲ得
第四條第一條ニ依リ下戾ヲ受ケタル者ハ國ノ有スル權利義務ヲ承繼ス
第五條本法ニ依リ下戾ヲ受ケタル土地林野及其ノ立木竹ハ主務大臣ノ許
可ヲ受クルニ非サレハ抵當權、質權ノ設定若ハ賣渡、讓渡等ノ處分ヲ爲ス
コトヲ得ス
附則
本法ハ大正三年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔渡邊修君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=96
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097・渡邊修
○渡邊修君 諸君時間モ段ケ移リマシタカヲ極メテ簡潔ニ要領ノミヲ報告致シマス、
社寺上地下戾ノ件ハ是マデ度々問題ニナリマシテ、請願ハ數度採擇ヲ致シマシタ而シ
テ法律案トシテモ此議會數回通過ヲ致シテ居ルノデアリマス今殷モ此請願ガ出マシ
タノデアリマスガ、請願者ハ各宗ノ管長二十名デアリマス、紹介議員ハ小川平吉君、
鵜澤總明君、箕浦勝人君、高野金重君、柏原文太郞君此四君デアリマス、是ハ
此請願ノ趣旨ハ明治三年ニ上地令ニ依リマシテ社寺ノ境內ヲ總テ國有ニシテシマッタ、
取上ゲラレタト云フコトハ如何ニモ無理デアルカラ之ヲ還付シテ貰ヒタイト云フ趣旨デア
リマス、從來ノ歷史ヲ調ベテ見マスト農商務省ノ政府委員ハ之ニ反對ヲ致シテ居ルノ
デアリマス而シテ其反對ノ理由モ一貫ヲ致シテ居リマセヌ、或時ハ政府ノ收入ガ大ニ
減ズルカラ反對デアルト三ロッテ居ル、或時ハ風致ヲ害スル、之ヲ社寺ニ下戾セバ之ヲ濫伐
スル、而シテ風致ヲ害スル眞レガアル故ニ反對スルトモ言ッテ居ルア又或時ハ是ハ公有地
デアッテ社寺ノ私有地デナイ故ニ反對スルト云フヤウナ議論デアリマシタ併シ本年ハ宗
〓ヲ監督スル所ノ文部省ノ政府委員ハ此請願ニ贊成ヲ致シテ居ルノデアリマス、段々取
調ベマスルト云フト御承知ノ通リ社寺ノ境內ナルモノハ、古ノ名僧高德ガ深山幽谷ヲ開
拓致シマシテ社寺ニスル、或ハ諸侯王侯ノ下付サレタト云フコトモアリマス、又信徒
ト云フ者ノ喜捨シタ卽チ寄附ニ依テ出來テ居ルト云フ社寺モアリマス又社寺自ラ資金
ヲ投ジマシテ之ヲ買得シタト云フ社寺モアルノデアリマス所ガ總テ斯ウ云フモノガ政府ニ
取上ゲラレテシマッテ居ル、甚シキハ有名ナル立派ナ寺ニシテサウシテ椽ノ下マデ國有ニナツ
テ居ル、寺ノ地所ト云フモノハ寸地モナイト云フヤウナ處モアルノデアリマス、故ニ是ハ此
上地處分ナルモノハ甚ダ其當ヲ得テ居ナイト云フ考デアリマシテ、又行政裁判ノ例ヲ調
ベテ見マシテモ以前ハ行政裁判所ハ寺ニ權利ガナイト云フコトヲ判決シテ居リマシタ
ガ、三十九年以後ハ行政裁判所モ變リマシテ、ヤハリ是ハ社寺ノ私有地デアルト云フコ
トノ判決ニナッテ居ルノデアリマス本問題ハ區々タル山林ノ行政ニアラズシテ、實ハ數千
年來ノ歷史、卽チ社寺ヲ創建サレタ所ノ歷史ニモ關係スルノデゴザイマス、又宗〓ノ消
長ニモ關係致シマスルトコロノ高等ノ政治問題デアルト考ヘルノデアリマスルガ故ニ、請願
委員會ニ於キマシテハ相當ノ講願ト認メマシテ、特ニ委員中カラ特別委員ヲ選ミマシテ、
サウシテ法律ノ起草ヲ致シタノデアリマス、卽チ其法律案ガ諸君ノ御手許ヘ回ッテ居ル
案デアリマス、此法律案ハ昨年本院ヲ通過致シテ居リマスル法律案ト少シモ違ヒハナイ
ノデアリマス、唯自然ノ結果ト致シマシテ、此二條ト附則ノ年月日ガ相違シテ居ルノミ
デアリマシテ、大體法律ノ趣意ハ昨年ト同一デアリマス請願委員會ニ於キマシテハ此
法律案ヲ具シテ報告スルヲ適當ト認メテ報告ヲ致シタノデアリマスガ、併シ年々同ジ問題
ヲ繰返シテ、、唯議會テ通過シテモ實行サレヌト云フコトデハ何等ノ益モナイコトデアリマス
カラ、多年ノ問題デアルガ故ニ成ベク速ニ之ヲ解決スルコトヲ委員長ニ於テモ努メロト云
フ請願委員會ノ決議デアリマシタ、故ニ私ハ紹介議員タル小川君ト共ニ農商務、文
部、兩大臣ニ會見ヲ致シマシテ、本問題ノ區々タル行政ノ山林行政ノ問題ニアラズシテ
極メテ高等政治ノ問題デアル、故ニ政治家ハ大ニ之ニ向ッテ考慮ヲ費サナケレバナラヌト
云フコトヲ陳述致シタノデアリマス、文部省ハ御承知ノ通リ大臣ハ新任デアリマシテ篤ト
協議ヲ致シテ省議ヲ決定スルト云フコトデアリマス、又農商務大臣モ宜ク協議ヲシテ成
ルベク實行スルヤウニ致シタイ斯ウ云フコトデアリマス、ドウカ諸君ハ御賛成ヲ願ヒタイ、
又政府ニ於テモ小サナ理窟ニ因ハレズシテ、大局ヨリ觀察致シマシテ本問題ヲ解決セラレ
ンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=97
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098・關直彦
○副議長(關直彥君) 本案ニ付キマシテハ別ニ通告ガアリマセヌガ、直チニ第二讀會
ヲ開イテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=98
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099・中村啓次郎
○中村啓次郞君 直チニ二讀會ヲ開イテ三讀會ヲ省略シ可決確定セラレンコトヲ希
望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=99
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100・關直彦
○副議長(關直彥君) 中村君ノ動議ニ御異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=100
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101・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ナイト認メマス、依テ直ニ二讀會ヲ開キ三讀會ヲ省略
シ原案ノ通リ可決確定スルコトニ御異議アリマセヌカ
(「贊成々々」ノ聲起ル〕
社寺上地下戾ニ關スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=101
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102・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ガナケレバ原案ニ確定致シマシタ次ハ奈古滿丸ノ所
有者救恤ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、請願委員長渡邊修君
奈古滿丸ノ所有者救恤ニ關スル法律紊(請願第一讀會
第二十委員長提出)
奈古浦丸ノ所有者救恤ニ關スル法律案
第一條明治三十七八年ノ戰役ニ際シ陸軍徵發內命ニ基キ航行中敵艦ニ撃
沈セラレタル汽船奈古浦丸ノ所有者ニ對シ救恤金ヲ下付ス
第二條前條ノ救恤金ハ四萬圓トス
〔渡邊修君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=102
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103・渡邊修
○渡邊修君 本案モ度〓請願委員會ニ出マシテ採擇ニナッテ居ル問題デアリマス、是
ハ三十七年ノ二月九日ニ卽チ日露戰爭ノ宣戰公布ノ前々日デアリマス、陸軍省ノ內
命ニ依リマシテ此奈古浦丸ガ酒田ニ碇泊シテ居ッタノガ、是カラ小樽ノ方ヘ迴ッテ宇品ヘ
行キマス途中デアリマス陸奧ノ國艫作岬沖合ニ於キマシテ三十七年二月十一日ノ午
前十時三十分項ニ露艦ニ沈沒サレタノデアリマス、如何ニモ是ハ氣ノ毒ナ事情デアル、
政府委員當局者ハ誠ニ氣ノ毒デアルケレドモ、何ニシロ公然マダ御用船ニナッテ居ラヌノデ
アル、宇品マデ來レバ初メテ御用船ノ命令ヲスルノデアルケレドモ、其宇品ヘ來ル航行ノ途
中デ擊沈サレタノデ、情ニ於テ忍ビヌガ、今日ノ法規トシテ如何トモシ難イト云フ從來ノ
答辯デアッタノデゴザイマス、外務省モ亦大ニ同情ヲ表シテ居ルケレドモ、如何トモ今日
ノ有樣デ仕樣ガナイト云フ譯デアリマスガ、每々請願委員會ニ於キマシテ事情已ムヲ得
ヌ誠ニ氣ノ毒ナモノデアルカラ、又陸軍省モ是ハ幾ド形式ニ流レテ居ルノデアル內命
ヲ傳ヘテ其途中デ擊沈サレタノデ、九日ニ命令サレテサウシテ十一日ニ撃沈サレタノデア
ルカラ、船長ナリ其船ハ日露開戰ノ公布ニナッタコトヲ知ラヌノデアルダカラ何等ノ用
意モセズニ航行中突然露艦ノタメニ擊沈ヲサレタト云フ譯デアリマスカラ、之ニ向ッテ相
當ノ救恤ヲスルト云フコトハ至當ノコトデアルト一云フコトニ相成リマシテ、是モ請願委員
會ニ於キマシテ特別ノ委員ヲ設ケマシテ段々當局トモ交涉ヲサセマシテ、審議ノ結果幾ラ
カノ救恤金ヲ交付スルト云フコトガ適當デアルト云フコトニ決定ヲ致シマシテ、卽チ此單
行ノ法律案ガ出來タ次第デアリマス此救恤金ガ四万圓デゴザイマスルガ、此四万圓ト
云フコトハ別ニ標準モ何モナイノデアリマス、本人ノ請求スル所ニ依リマスレバ船體其
他自分ノ品物ヲ積ンデ居ッタ其荷物ノ價等ヲ合算致シマシテ、十八万圓餘ヲ請求ヲ致
シテ居ルノデアリマス、併ナガラ是ハ公然ノ御用船ニナッテ居リマシタナラバ無論請求ノ
通リ國庫ヨリ下付サルヽコトデアリマセウケレドモ今申上ゲル如ク其途中ニ於テ擊沈ヲ
サレタノデ、マダ公然タル御用船ニ相成ッテ居リマセヌ、故ニ本人ノ權利デナイ、救恤ヲスル
ノデアルカラ少クテ宜カラウト云フコトデ、段々調査ヲ致シマシタガ此船ガ六万圓ノ保險
ヲ附ケテ居ッタト云フコトデアリマス、故ニ保險ダケドウダト云フコトガアリマシタケレドモ先
ヅ六万圓ノ保險料ノ三分ノ二、卽チ四万圓ヲ交付スレバ適當デアラウト云フコトニ決議
ヲ致シマシタ本案ニ付キマシテハ政府ニ於キマシテモ反對ハ致サヌ、斯ウ云フ法律案ガ
出來レバ宣シイト云ウテ同意ヲ致シタノデアリマス、ドウカ滿場此案ニ-此事情ヲ御
諒察下サレマシテ、本案ノ通過スルコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=103
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104・花井卓藏
○法學博士花井卓藏君 反對演說ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=104
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105・關直彦
○副議長(關直彥君) 花井卓藏君
〔法學博士花井卓藏君豆壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=105
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106・花井卓藏
○法學博士花井卓藏君 諸君、本員ハ本案ヲ以テ立法上重大ナル問題ト信ズルノ
デアリマス(「ヒヤノ」ト呼フ者アリ)其案ノ含ムトコロハ僅カニ四万圓ノ救恤事項ニ過
ギヌト雖モ斯ノ如キノ法案通過ハ確カニ憲法ノ條規ヲ無視スルモノデハナイカト思ヒマ
ス諸君、私モ委員長ト同樣ニ情ニ於テ誠ニ忍プベカラザルモノアルコトヲ諒トスル者デ
アリマス而シテ又行政作用ニ依リテ何等カノ途ヲ開イテ救恤スルコトノ至當ナルコトヲ
認ムル者デアリマス、併ナガラ本案ノ如キ法律ノ下ニ、斯ノ如キノ道ノ執リ得ラルベキモ
ノナリヤ否ヤト云フノ問題ニ至リマシタナラバ多クヲ語ルヲ要セヌト私ハ信ジテ居ルノデ
アル憲法ハ所謂立法事項ナルモノヲ法文ノ上ニ定メテ居ルノデアリマス戒嚴ノ要件
及效力、是ハ憲法ノ第十四條ニ掲ゲマシテゴザイマス、而シテ臣民タルノ要件ハ十八
條兵役ノ義務ハ二十條、納稅ノ義務ハ二十一條、居住及移轉自由ハ二十二條、
逮捕監禁審問所罰ノ事ハ二十三條、裁判ヲ受クルノ權ハ二十四條住所侵入及搜
索ノ保障ハ二十五條信書ノ祕密ハ二十六條、所有權ノコトハ二十七條言論著作
印行集會及結社ノ自由ハ二十九條衆議院議員選擧法ノ事ハ三十五條司法權
ノ行使ハ五十七條一項裁判所ノ構成ハ五十七條二項裁判官タルノ資格ハ五十
八條一項、裁判官ノ懲戒ニ關スル條規ハ五十八條三項、裁判ノ公開ハ五十九條、
特別裁判所ノ管轄ハ六十條行政裁判所ノ構成及ヒ管轄ハ六十一條租稅ノ賦
課及稅率ノ變更ハ六十一一條、會計檢査院ノ組織及職權ハ七十二條デアリマス、是ガ我
憲法ニ揭ゲラレタル立法事項デアリマス、而シテ是等ノ事項ハ立法權直接ノ行動ニ依
ルベキモノデアルト云フコトハ問題ニナラナイノデアリマスヽ抑國家重要ノ事務ニシテ、立
法權ノ行動ニ待ツトコロノモノハ其數尠ナカラヌノデアリマス、必ズシモ以上ノ列記ニ制
限セラルヽモノデハアリマセヌ、サリナガラーーサリナガラ私ハ今私ガ讀上ゲマシタ條規若
クハ之ニ均シキモノ、若クハ是ヨリ以上ノモノ、斯ノ如キモノガゴザイマシタナラバ、是ハ立
法事項ノ上ニ行動スルト云フコトハ憲法ニ列記ナシトモ私ハ敢テ咎メナイノデアリマス、
然ルニ本案ハ此列記事項ニ比シテドレ程輕重ノ差ガアルカト〓究ヲ遂ゲテ見マシタナラ
バ、殆ド輕イトモ重イトモ比較ニナラヌ程ノモノデアルト云フコトハ案其モノガ證明致シテ居
ルノデアリマス而モ法律ノ支配力ト云フコトニナリマスルト云フト、目的ハ單ニ一人デア
ル、一人ヲ目的トシタル法律デアル而シテ又一行爲ヲ目的トシタル法律デアル、又一
時的ノ法律デアル、一時的ニ一人ノ爲ニ一行爲ヲ目的トシタル、ソレガ法律トシテ、憲
法ノ所謂立法事項トシテ差支ナイモノデアリマセウカ、私ハ俄ニ諸君ノ說ニ贊成致シ兼
ネルノデアリマス、私自身ノ〓究トシテ未ダ斯ノ如キ立法事項アルコトニ接シテ居リマセ
ヌ(「ヒヤ〓」ト呼フ者アリ)成程情ノ憐ムベキ〓ハ之ヲ認ムル、私ハ之ヲ救フベキ道ハ
立法事項ニ依ルヨリハ尙ホ他ニアルコトヲ信ジテ居ルノデアル、立法事項ニ依リテ此救ヒ
ヲ得ントスルコトハ寧ロ却テ困難ナルコトデアルト思フ、其困難ニ比スレバ行政作用ニ依
リテ救ヒノ道ヲ開クノ更ニ大ナル便利ナルモノアルコトヲ信ジテ居ルノデアル維令立法事
項ニ依ルト致シマシテモ斯ノ如ク一人ヲ目的トセズ、一行爲ヲ目的トセズ、一時的ニ
限ラズシテ本案ニ揭ゲラレテアルガ如キ場合ニ適用スベキ廣キ意味ノ法律ヲ拵ヘテ、サウ
シテ其適用ヲ受ケシメテ、本案ノ如キ憐ムベキ請願人ヲ救フガ宜イノデアリマス、本案ハ
立法トシテ〓倒ノ甚シキモノデアルト思フノデアリマス第一條「明治三十七八年ノ戰
役ニ際シ陸軍徵發內命ニ基キ船行中敵艦ニ擊沈セラレタル汽船奈古浦丸ノ所有者ニ
救恤金ヲ下附ス」ト斯ウ書イテアル、之ヲ人ニ譬ヘテ見マシタナラバ、明治三十七八年
ノ戰役ニ際シ云々ノ不幸ヲ被リタル人民何某ニ對シテ、救恤金ヲ下付スト云フ法律ト
同ジモノニナル、私ハドノヤウニ考ヘテ見マシテモ之ヲ立法事項トシテ衆議院ヲ通過セ
シムルト云フコトハ體面上宜シカラザルコトト思フノデアル(「ヒヤ〓〓」ト呼フ者アリ拍
手起ル)而シテ請願委員會ノ決議デゴザイマスルカラシテ、之ヲ重ンズルノ念慮ハ私ハ有
シテ居ル有シテハ居リマスケレドモ、ツレト同時ニ請願委員會ノ立法上ノ權威ト云フモ
ノモ保クナケレバナラヌトー云フコトヲ心得テ貰ハナケレバナラヌト思フノデアリマス(拍手起
ル)私ハ案ノ內容事實ニ反對スルコトヲ欲セザルガ故ニ、寧ロ延期ノ動議ニテモ提出シテ
更ニ御〓究ヲ願ッテ之ヲ救フノ途ヲ開キタイト云フ考ヲ持ッテ居リマシタケレドモ大勢
ハ旣ニ卽決ヲ迎ヘルト云フヤウナ傾向デアルカノ如ク承リマシタカラ、今俄ニ此意見ヲ立
テヽ〓ヲ乞フノデアリマス、而シテ後ニ御意見デモゴザイマスレバ更ニ之ヲ承リマシテ論
述スル積リデアリマス、公平冷靜ノ見地ニ立チテ、立法事項ト云フモノニ本案ノ如キモ
ノハ含マルベキモノデナイト云フコトヲ、深ク諒トセラレンコトヲ望ム次第デアリマス、時ノ
迫ッテ居ル場合モ內容ニ同情ヲ表シナガラ此處ニ立ツ所以ノモノハ眞ニ立法權ニ重キヲ
置クガ故デアルノデアリマス(拍手起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=106
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107・大橋松二郎
○大橋松二郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=107
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108・關直彦
○副議長(關直彥君) 大橋松二郞君
〔大橋松二郞登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=108
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109・大橋松二郎
○大橋松二郞君 私ハ唯今議題ニナッテ居リマスルトコロノ、此奈古浦丸ノ請願ノ部
ニ於キマシテ、丁度私ハ此部ノ主査ニ當ッテ居リマシテ、此特別委員竝ニ立案ノ際ニ種々
關係ヲ致シマシタル立場ノ上ニ於テ、唯今花井君ヨリ反對ノ御意見ガアリマシタカラ、
一言私共ノ此起草ヲ致シマシタル側ノ意見ヲ申上ゲテ、サウシテ反對ノ御意見ノ御方
ノ御參考ニ供サウト思ッテ居リマステ唯今花井君ノ御議論ハ要スルニ事柄ハ同情ヲ表
スルコトデアルサリナガラツマリ一人一事項ニ就テノ法律案ノ起草デアルカラ、ツマリ反
對ヲスルトカ、要スルニ考ヘモノデアルト云フ斯ウ云フ御意見デアリマシタガ、元來之ヲ遂
ニ法律トシテ玆ニ提出致シマスルマデニナリマシタル事項ノ方ヲ先ニ述ベマシテ、サウシテ
後ニ其意見ヲ申上ゲヤウト思ヒマス、此日露戰爭當時ニ當リマシテ明治四十二年ノ
議會ニ於キマシテハ、既ニ其年ニ法律第三十八號ヲ以テ、明治三十七八年ノ戰役ノ
爲メ損害ヲ被リタル者ノ救恤ニ關スルト云フ特ニ法律ガ出來マシテ、此內容ハ「露西亞
領亞細亞、〓國、滿洲及韓國義州方面ニ在留シタル帝國臣民ニシテ明治三十七八
年戰役開始ノ際引揚ケタル爲損害ヲ被リタル者ニ對シテハ本法ニ依リ救恤金ヲ下付
ス」斯ウナッテ居リマス、其第二條ニ於テ金髙ヲ百万圓ト限ラレテ、三條四條、五條ト
云フ方ハ詰リ此下付ヲ致シマスルマデノ手續デアル、此法律ノ出來マシタル當時ニ既ニ
此奈古浦丸ノ問題ガ起ッテ居ッタノデアル、此時ノ詮議ノ要領ヲ段々調ベテ見マスルト云
フト、先以テ陸上方面ノ事ヲ一ツ片ヲ付ケテ置イテ、海上ノ方ノ出來事ハ次ニ致ス、斯
ウ云フ詮議ノ筋ニナッテ居ルラシイ、所デ是ハ陸上ノ方ハ仲間ガ多カッタガ故ニ片ガ付イタ
ガ、然ルニ海上ノ方ニ於テ損害ヲ受ケタルトコロノモノガ、奈古浦丸ノ外ニマダアルデアラウ
ト存ジマス、サリナガラ既ニ其當局ノ內命-形ノ上カラ中シマスルト、此奈古浦丸ガ航
路ニ就キマシタトキニハヤハリ日本船主同盟會東部事務所ト云フ方面カラ官報ノ電
報ヲ以テ言ウテ來テ、ソレニ依テ航行ニ就イタノデアル斯ノ如キモノハ卽チ明治四十二
年ニ出來マシタトコロノ法律ト同樣ナル(「簡單々々」ト呼フ者アリ)救恤等ノ恩典ニ與カ
ルベキモノナリト云フコトヲ第一ニ於テ信ジタノデアリマス、次ニハ此方ノ者ニ向ッテハ再
ヒ當局モ亦議會モ遂ニ之ヲ詮議ヲスルコトガ延期ヲ致シタノニ過ギナイノデアル然ルト
コロ段々其後年所ヲ經ルニ隨ヒマシテ、イロ〓〓取調ヲシテ見マスルケレドモ、最早斯ノ
如キ立場ニナッテ、サウシテ遂ニ理由ナクシテ葬ラレテ居ルトコロノモノハモウ他ニ無イノデ
アル唯今花井君ノ言ハレタ如ク有レバソレヲ共ニ入レテ、サウシテ事項ノ方ヲ先ニ定メ
テ、玆ニ適當ナル法律ヲ定メルト云フコトハソレハ勿論デアルケレドモ、此奈古浦丸ト狀
況ノ同ジモノハ無イノデアル是ハ卽チ事前デナクシテ事後デアルカラ、其事ガ明瞭ニ分ク
テ居ル當局ニ於テモ分ッテ居ル、此立場ノ上ニ於テ此法律ヲ卽チ提出スルコトニ致シ
タノデアリマス是ガ一人一事項デアルカラシテ法律トシテ成立ノ出來ナイト云フコトハ、
別段ニ明カニ見エテモ居ラヌ法律上ノ一ノ議論ニ過ギナイ(「憲法上ノ問題ダ」ト呼フ
者アリ)ツレ故ニ私共ガ此法案トシマシテ提出ヲシ諸君ノ御同意ヲ得テ是レノ成立セ
ンコトヲ希望スル次第デゴザイマス
〔「反對」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=109
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110・中村啓次郎
○中村啓次郞君 本案ハ尙愼重ノ審議ヲ要スルモノト考ヘマスルカラ、議長指名九
名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ希望致シマス
〔「贊成々々」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=110
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111・關直彦
○副議長(關直彥君) 中村君ノ動議ノ如ク議長指名九名ノ委員ニ付託スルコトニ
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=111
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112・關直彦
○副議長(關直彥君) 御異議ナイト認メマスカラ、議長指名九名ノ委員ニ付託スル
コトニ致シマス今日ハ是デ散會致シマス-チヨット御報告致シマスガ、明日モ例刻ヨ
リ開會致シマス、尙委細ハ公報ヲ以テ御報告致シマス
午後七時十一分散會
衆議院議事速記錄第二十一號正誤
頁段行誤正頁段行誤正
(十二四七四下二ガタメニガタメニ自己
十九ノ所有トシテ
四七三下二二二生眼者晴眼者四七四同九一精神一性質
十十十四八
三発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=003113242X02219140312&spkNum=112
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