1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件)(政府提出)(第一四號)
證券取引法案(政府提出、貴族院送付)(第一五號)
日本證券取引所の解散等に關する法律案(政府提出、貴族院送付)(第一六號)
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昭和二十二年三月十五日(土曜日)午後一時二十一分開議
出席委員
委員長 大谷瑩潤君
理事 大石倫治君 理事 小笹耕作君
理事 西村榮一君
杉田馨子君 稻本早苗君
白井秀吉君 最上英子君
川島金次君 澤田ひさ君
澁谷昇次君 井上徳命君
増井慶太郎君 丸山修一郎君
出席政府委員
大藏事務官 加藤八郎君
大藏事務官 今泉兼寛君
文部事務官 福田繁君
農林技官 中尾勇君
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本日の會議に付した議案
昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案(寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する件)(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=0
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001・大谷瑩潤
○大谷委員長 それではこれより會議を開きます。
まず昭和十四年法律第七十八號を改正する法律案、寺院等に無償にて、貸付しある國有財産の處分に關する件を議題といたします。これより質疑に入ります。井上徳命君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=1
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002・井上徳命
○井上(徳)委員 社寺の國有境内地、保管林の處分につきましては、先年來關係のある各宗教團體、すなわち神社、寺院等が非常な關心をもち、かつまたどういうようになるかということについて心配をいたしておつたのでありますが、ここにこの法律案が提出されまして、多少安心することができるのじやないかと思うのであります。それにつきまして疑問に思つておりますところをおよそ十項ほどお尋ねいたしたいと思うのであります。
第一に社寺がずつと以前に上地をいたしたのでありますが、その上地をしたものが境内地竝びに保管林というようになつておるのでありまして、社寺側から申しますというと、上地をしたものでありますから、それはそのまま社寺に無償讓與をしてもらいたいということが社寺のすべての熱望であつたのであります。ところがその熱望は、全部この御時勢では容れるわけにはいかないというようなことであつたのか、そういうような熱望が全部達成されておるということは考えられないのでありますが、しかしそれにしてもこういう法律案によつて社寺に對して多少ともありがたい處置に出ていただくということは、一方また感謝いたしておるような次第であります。第一上地についての證據と申しますか、由緒とか、記録とかいうようなものを提出する責任は一應社寺側にあるわけでありますが、その證據書類を添附しなければならない確たる證據がなければ、由緒、沿革等をできるだけ社寺側でくわしく調べて提出すればよいのでございましようか、第一にその點をお尋ねいたしたいと思うのであります。
それから第二番目は無償讓與の範圍は勅令で定められると思いまするが、現行の、すなわち昭和十四年の勅令第八九二號の第一條と比較いたしますと、書き現わされた文字の上で多少現在のが嚴格になつておるように思いますが、大體においては變りはないと考えてよろしいものでありましようか。
第三は、既に社寺が現行法によつて先年讓與の申請をなしておりまするが、その未決定のものがまだたくさん殘つておるように思うのであります。その未決定の分はまた改めて申請し直さなければならぬのでありましようか。その點であります。
その次には社寺境内地處分審査會というものができるようでありまするが、その審査會の委員と申しますか、會員と申しますか、そういうものの組織機構というものはどんなふうにでき上るのでありましようか。すなわち關係のある社寺側からもこの審査委員會と申しまするか、こういうものの機構の中に入らしていただくものでありましようか。また中央の審査會でも地方の審査會でも同樣であります。そういうものの機構の中に社寺のものが入らしていただけるものかどうか。その點をお尋ねいたしたいと思います。
それから次には社寺境内地の讓與または半額賣拂とならない國有境内地、たとえば社寺の本來の目的以外に使つております境内地などに借家をつくつてみたりなどしておるような場合に、現行法では、半額賣拂となつておるようでありますが、改正法律案はこの點に對して何も規定がないようなふうにみえますが、その點はどういう工合に取計らわれるのでありましようか。すなわち目的外の使用地の有償貸付を認めることについては新憲法の八十九條の規定からして多少そこに疑義が生じてまいりますので、ちよつとお尋ねいたしたいと思ひます。
それから次は社寺保管林處分審査會、この會の機構はどういう工合になつておりますものか。それからその社寺保管林中無償讓與されるものの以外は社寺の保管を解除するということでありますが、社寺の保管林を解除するということは一體どういうふうになるのでありましようか。具體的にちよつと御説明を願われれば仕合せだと思うのであります。
それから最後に社寺の保管を解除したその森林というものは一體どういう工合に賣却處分されるか、そういう御意思があるのかどうか。以上の點についてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=2
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003・加藤八郎
○加藤政府委員 ただいまお尋ねでございました點、保管林關係は後刻農林省の方から御説明いただくことにいたしまして、前段の境内地關係の分につきましてお答え申し上げます。
第一の御質問の點は上地等の證據は社寺側が出さなければならないけれども、その場合に確たる證據が必要であるかというようは御趣旨のお尋ねと存じますが、もちろん證據と申しましても隨分古いことでございまするので、その記録等がはつきり現在殘つていない場合もあろうかと存じます。それで私たちの考えといたしましては、大體社寺等におきまして、なお昔の古文書等によりまして、たとえば朱印状、刻印状などというもので、もと社寺が保持しておつたというような實情のわかるものはもちろんそれで結構でありますし、またそういう證據がなくとも昔の古書等によりまして、沿革的なことがはつきりいたすものがございますれば、そういう間接的な傍證でも結構だと存じております。いろいろ取扱上におきまして、そういう證明のつく限り間接的なもので結構でございますから出していただいて判斷いたしたいと思います。
それから第二の點は無償讓與する場合、あるいは半額賣拂いする場合の範圍につきましてお尋ねがございましたが、この點は從前の法律の施行勅令の第一條にございまする範圍とは大體同じでございまするが、若干内容におきまして變更いたした點がございます。その點はお手もとに資料としてただいま昭和十四年法律第七十八號改正法律案參考資料といたしまして差上げたものの第一番目の昭和十四年勅令第八百九十二號改正勅令案要綱の第一條にその内容を示しておるのでございます。前の勅令と違つた點を申し上げますると、この各號のうち第一號に本殿、拜殿、社務所というようなものが新たに加わりましたのは、これはこのたびの法律改正によりまして、神社の土地につきましても同じような取扱いをいたしまする關係上こういう字句を新たに挿入いたしたのであります。それから二號、三號、四號は從前通り變りございません。第五號におきまして社寺等の尊嚴を保持するために必要な土地というふうにこのたび改めました。これは從來の勅令ですと、社寺等の風致を維持するために必要な土地というふうにございましたが、風致維持ということを表面に強く出すことは敗戰後の現在の國情に鑑みましてどうであろうか。むしろそういう意味でなしに社寺の尊嚴を保持するために必要な土地というふうに改めることが適當であろうと考えまして、かように改正いたす考えでおるのでございます。
第七號の點でございますが、從來は歴史または、古記等によつて寺院または教會と密接なる縁故のあるものと認めらるる土地となつておつたのでございますが、これを社寺等に特別の由緒のある土地と書き改めてございます。しかしこれは社寺等がただ密接な縁故があるというようなことで縁故關係を非常に廣くやりますと、適當でないものまで讓與の範圍にはいつてくるような事情もありますので社寺等に特別の由緒のある土地というふうに由緒關係を強くいたしまして、そういう土地を讓與の對象にすると、こういうふうに改めたのでございます。その他の點につきましてはほとんど從來と變りございません。
それから第三の點でございます。この前の昭和十四年の法律第七十八號の施行されましたときに申請いたしましたものは今囘改めてこれを申請するの必要があるかという點についてでございます。この前の法律施行のときに出ておりました申請の數は讓與關係におきまして三萬三千四百二十六件の申請が出ておつたのでございます。それに對しまして讓與をいたしましたものは九千六百三十八件でございまして、現在讓與の處理が濟んでいないものは二萬三千七百八十八ということになつております。なお賣拂いの申請につきましては申請を受理いたしたものは六千三百十件、そのうち賣拂濟みになつたものは三百七十八件になつておりまして、まだ賣拂未濟が五千九百二十九件と大分殘つております。これは御承知のように戰爭が始まりましてから不急の仕事だというので一應處理を中止しておりました關係で片づかなかつたのでございます。この度の法律改正によりまして再びこれを申請を出していただくように考えているのでございますが、その理由はこのたびの法律改正の内容は前囘と趣旨におきましても内容におきましても相當變つておりますので、法律といたしましても各條項の改正ではなしに、全文改正というような形式をもちまして改正いたしますし、また讓與なり半額賣拂いの條件も前と變つてまいりましたので、お手數でもやはりもう一度出していただくようにお願いしたいと考えてさようにしてございます。なおこの前に出ておりました書類の中で圖面等が再び利用できるものがございましたならば、そういうものは今囘の申請にそれを利用していくというようないろいろの點で調整はいたしたいと存じまするけれども、一應は改めて申請を出していただくようにお願いしたいと思つております。
第四の委員會の組織の點でございますが、これに社寺等の關係者の方がはいるかどうかという御質問でございましたが、境内地處分審査會の方で今豫定しておりまするのは、中央の審査會におきましては官廳側が六名、そのうち大藏次官が會長ということに豫定してございます。それから民間側が六名、こんなふうに考えてございまするが、その場合に民間の方々から代表として衆議院參議院あるいは學者の方というような者も一、二名ずつ豫定してございまするが、宗教團體關係からも學識經驗者として二名ほどお願いしようかと考えております。但しこの申請の場合の利益代表というような意味での審査委員を出すということにつきましては、適當でありませんので、そういう意味でなしに、ただ學識經驗者として宗教團體の方を御參加願うということは考えておる次第であります。なお地方の審査會は各財務局ごとに置く豫定でございまするが、その場合の構成もやはり官廳側が六名くらいと民間側が六名くらいというようなふうに考えておりまして、大體中央の審査委員會と同じような構想をもちまして、地方の委員も選定したいと考えておる次第でございます。それから第五番目の讓與も半額賣り拂いもしないところのもの、すなわち目的がえしようというようなことで、宗教活動を行うのに必要でないということになつておりまするものは、どういうふうになるかということでございまするが、これにつきましては何も法律上どうするということは規定してございませんけれども、一般の國有財産の賣り拂いの例に準じまして、その元の社寺にこれを賣るとか、あるいは有償で貸しつけるとかいうような取扱いをいたしたいと存じます。新憲法の八十九條の趣旨から見て、そういうことができるだろうかという御疑念もただいまお話がございましたが、これは社寺側に對して特別にそういうことをやる、すなはち一般的にはそういう賣り拂いなり、貸しつけということができない場合に、社寺側にだけやるということになりますると、憲法の趣旨に牴觸するかも知れないのでございまするが、一般に認めておることを社寺にも認めるということは何ら憲法に牴觸しない、こういう解釋をもつております。以上お答えを申し上げます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=3
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004・中尾勇
○中尾政府委員 保管林に關します御質問にお答えいたします。社寺保管林の處分審査會の構成でございますが、大體ただいま考えておりますのは、農林次官を會長といたしまして、委員には關係官廳の官吏五名、それから學識經驗者、議員關係といたしまして二名、また宗教團體の宗教聯盟の方から一名はいつていただき、さらに林業團體、これは林業會ですが、この方から一名、それから學者學識の方といたしまして林學方面から一名、また宗教方面の學識者を一名、合計十一名程度にただいま考えております。
それから保管林の解除後の問題でありますが、從來御承知の通り社寺の上地林につきましては、當該社寺をして保管せしめてきたのでありますが、今囘の憲法によりましてこの保管を解除することに相なつたのであります。解除後におきましては、現在保管林中社寺が植栽いたしました造林地につきましては、一定期間中に社寺から申請があり、また森林經營上必要と認めました場合は、これは部分林として存續していくつもりであります。その他の保管林は一般の國有林と同樣に經營していく方針であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=4
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005・井上徳命
○井上(徳)委員 ただいまの御説明でほぼわかりましたが、この法律を實際に御施行なさる場合にはどうか——社寺というものが宗教的使命を果すためには健全しかも自由にそのまま發達していくことによつて社寺そのものの經營もできていくわけではありまするけれども、長い間の傳統を歴史によりまして、特別な社寺はその上地をした境内地また保管林などから生ずるいわば收入によりまして、たとえば教育事業をやり、社會事業をやつたのがたくさんあるのであります。この法律によつてそういうものが處分されるような場合になりますると、現在やつている社會事業、教育事業というものが場合によつては停頓を來すとかまたやれないというような場合にもなるだろうと懸念されるのでありまするが、どうかそういうことも一つよく政府の方で考慮に入れていただきまして、この處分をする場合に、その社寺がいかなる祉會事業をやつているか、いかなる教育事業をやつているか、いわば公益事業をやつているかというようなことを詳しく御調査下さいまして、その教育事業、社會事業または公益事業に今後注ぎ込むその境内地または保管林より生ずる收益などにつきましても、もしもできることならば、その事業を停頓させまたは休止させるというようなことのないような程度において御處分のほどを特に私はお願いいたしておく次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=5
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006・大谷瑩潤
○大谷委員長 このままで暫く休憩いたします。
午後一時四十七分休憩
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午後二時開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=6
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007・大谷瑩潤
○大谷委員長 再開いたします。大石君。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=7
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008・大石倫治
○大石(倫)委員 私は實は質問の用意がはなはだ不十分であります。提案理由の説明もつい機會を失つて聽き損いましたし、本日の委員會における政府の説明もよく承らないのであります。はなはだ申譯ない次第でありますけれども、ほかに質問はないようでありますから、時間を少し頂戴してお尋ねしてみたいと思うのであります。この社寺上地の問題は久しき間の問題でありまして、殊に今囘の法律制定にあたりましては關係寺院、神社等、非常な衝動を受けまして、いろいろ政府方面に陳情その他運動が行われたのであります。この法律の制定はわが國が敗戰の結果連合國の管理占領を受けることになりましていろいろなる方面に變革あるいは改革が行わるるというその一つに加わつておるのであつて、わが國肇國以來大和民族われわれ國民が尊崇し來つたところの神社の崇敬心にも影響し、ひいては國民思想にも影響をするような重大なる問題でありましても、はなはだ簡單に取扱われて永い永い歴史、因縁、故事、來歴が伴いまする明治時代になつて定められました國幣社、官幣社等の社格も一片の勅令をもつて廢止せられてしまつたのであります。今囘の法律は神社の上地、林現在無償貸付を受けておる山林あるいは保管をいたしておる部分林と申しますか、保管林の處置に關するのでありますが、この山林の處置によりましては、日本の宗教的尊崇の中心となつておつた寺院あるいは神社の維持を困難に陷れ、頽廢いたすおそれがあるのであります。私はこの關係寺院神社等よりの陳情運動等に關しては、政府におかれても相當考慮せられたことと存ずるのでありますが、この法律施行の結果は、現在の保管林、あるいは無償貸付の面積のどういう程度までが神社あるいは寺院に殘るお見込でありますか。一應それを伺つてみたいのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=8
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009・加藤八郎
○加藤政府委員 現在社寺等に無償で貸付けてあります國有境内地竝びに御料地の中から、結局どれだけが社寺側に讓與になり、あるいは半額賣拂になるかというような點は、申請をまちましてその内容を檢討し、審査會の決定をまちましてきまる間題でございますので、内譯的にはわからないのでありますが、現在無償で貸付けております國有地及びその御料地というものはどれだけであるかということははつきりいたしておりますから申し上げたいと存じます。現在臺帳によつて調べてみますと、神社に貸してございます面積は八千九百二萬四千四百六十九坪また寺院に無償で貸付けております面積は二千四百三十萬九千百二十二坪、こういうことでございまして、合計いたしますと一億一千三百三十三萬三千五百九十一坪、こういう面積が現在社寺等に無償貸付になつているのであります。そのうち讓與になるものは、先ほど申し上げましたように、上地とか、あるいは地租改正によりますもの、あるいは寄附によつたものというようなことで、それぞれ條件が滿たされれば讓與になり、しからざるもので宗教活動を行うに必要なものは半額賣拂になり、さらに宗教活動を行うに必要でない、結局目的外に使つているというようなものは時價で賣拂うとか、有償貸付になるということになつていくわけでありますが、區わけ的にははつきり見當がつかないという状況であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=9
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010・大石倫治
○大石(倫)委員 先年宗教法が制定せられまして、その際に社寺の山林、境内等、いろいろ政府においても處置せられたはずでありますが、その際の處置とこのたびの處置とはどういう方向の變つている點がありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=10
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011・加藤八郎
○加藤政府委員 前囘の法律とこのたびの法律の改正の點でございますが、この立法の精神が變つてまいつたと言つてよからうかと存じます。その一つは、從來の法律でございますと、宗教保護というような建前から規定されておつたのでございますが、今囘の改正法律案は、新憲法の八十九條の趣旨によりまして、國家と宗教とを分離する目的をもちまして、國の財産を宗教團體等に無償で使わせるということができなくなりましたので、そういう從來の沿革的な關係を整理するというのが、今囘の改正法律案の一つの目的でございます。そういう點からいたしまして、いろいろ讓與いたしましたり、半額賣拂いいたします場合の條件というものが自然變つてまいつたのでございます。從來の法律でございますと、現に國有財産法等によりまして、無償で貸しつけてありました境内地は、これを讓與して來たのでありますが、今囘は第一條にございますように、上地あるいは地租改正によつて國の所有に移つたものと、あるいは寄附等によりまして國の所有に移つたものということが一つの條件でありますし、それから宗教活動を行うのに必要なものでなければならないという條件が、この前の法律よりも殖えているのであります。ですから、こういう條件を充たされなければ、今囘は讓與することができなく相なつているのであります。それからこの前の法律では、無償貸付をしております國有財産で讓與をしないものは、これを全部半額賣拂いを規定したのでございますが、このたびの改正によりましては、第二條にございますように、やはり宗教活動を行うのに必要なものでなければならないというような條件が新たに加わつているのでございます。それからいろいろ申請期間なんかも、前の法律のように長くみませんで、なるべく短い期間にいたしております。これは憲法の趣旨からみまして、なるべく早くこういう財産的な特殊關係を整理するという趣旨から、期間を短くしてあるのでございます。それから賣拂いの代金等につきまして、從來は年賦延納は認めておりましたが、今囘さらにこのほかに代物辨濟を認めたのでございます。すなわち第七條の規定によりまして、十年以内の年賦延納のほかに、土地による代物辨濟を認めたのであります。これは社寺側が前よりも讓與の範圍が狹くなりまして、半額賣拂いを受ける範圍が多くなつてまいつたのでありますが、そうなりますと、自然代金の納付というようなことに困難もあろうかと考えられますので、なるべくその便宜を計らいまして、土地による代物辨濟ということも認めまして、なるべく早くこの處理をしたい、こういうことにいたしたのでございます。そのほかいろいろございますが、たとえば土地區畫整理等が、今後頻繁に行われることが豫想いたされます。戰災地におきまする特別都市計畫法による土地區畫整理等によります整理がいろいろ行われます際に、申請をした後で處分前にそういう計畫が行われた場合に、やはりその社寺が處分を受けた後にそういう都市計畫の土地區畫整理が行われた場合と同じような結果になるようにしてやりたいというようなことから、第四條等におきまして、詳しく清算金あるいは補償金等の支拂關係について規定しております。それから先ほどちよつと申し落しましたが、讓與の對象といたしまして本法では保管林を加えておるのでございます。これは政教分離のための、社寺保管林制度を廢止しなければならないということからの措置でございます。その他いろいろ細かい點において變つた點がございますけれども、大體おもなる點はさような點において改正をいたした次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=11
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012・大石倫治
○大石(倫)委員 ついでに山林局の方にお尋ねしたいのですが、このたびいろいろ森林管理の方法が變つて、たとえば今まで北海道長官の管理に屬しておつたところの北海道内の山林がすべて農林省に移管をする、また皇室の御料林であつたところのものを國家に移されて、農林省の管理に屬することに、既になつたのでありますか、明年度からなるのでありますか。大體この御料林と申しても、たとえば伊勢神宮の御造營に用いられておりました木曾檜材のごとき、これはたぶん御料林であつて、伊勢神宮の御所有ではないと思うのでありますが、伊勢神宮の山林と申せば、神路山のようなところが殘るのでありますか、單に今の御境内だけになるのでありましようか、そういう點も一つ伺つておきたいと思います。北海道の方には、こういう古い神社境内の關係はあまりないかもしれませんが、たとえば今まで國幣大中社、官幣大中小社であつたものを、いろいろ尊嚴を維持し、活動の必要上、相當廣面積のものがあつたと思いますが、そういうようなものが申請をまつて、審議會の議を經て處分せられるというものになる部分と、あるいは尊嚴、活動の意味においてそのまま認められておるものとありましようが、それらの點はどうなるのでありましようか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=12
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013・中尾勇
○中尾政府委員 お答えいたします。ちよつと今の御質問にお答えいたします前に、最初に御質問になりました今の保管林の問題でございます。どれくらい社寺に讓與されるかということをお答えしておりませんから、その方から申し上げます。
ただいま保管林となつております面積は、神社と寺院と合わせまして、二萬六千百二十七町歩になつておるのであります。そのうち今囘のこの法律によりまして、宗教活動に必要な箇所といたしまして讓與のできます箇所は、當該寺院の申請をまちましてきめるのでありまして、ただいま大體の見込みも立つておりません。保管林のうち社寺で造林いたしました部分につきましては先刻も申し上げたのでありますが、一定期間中に神社から申請があり森林經營上必要だと認めるときは部分林として認めることに相なつておるのでありますが、これは寺院の方の申し出がなければわかりませんが、ただいままでに社寺で植栽いたしました面積は千四百六十五町歩あります。さよう御承知をお願いいたします。ただいまお尋ねの點は、今囘の新憲法によりまして御料林が國有になることに相なつたのでありますが、これを機會にいたしまして多年懸案でありました北海道の國有林は、從來内務省所管に相なつておりまして北海道廳で經營をしておつたのでありますが、御承知の通り敗戰の結果わが國の森林面積は約半分に相なつたのであります。また材積におきましても四割減少の約六割程度に相なつております。この狹められた森林から八千萬同胞の民生を安定するための林産物の需給をはかりますためには、どうしても現在の林地におきまする生産力を最高度に發揮していかなければ、供給ができないような情勢にあるのであります。こういう關係にありますために、從來北海道の森林は内務省が所管されておりましたし、その他は農林省が所管しておつたのでありますが、このように兩方で所管しておりましては最高度の生産力を發揮することもなかなか困難でありますし、特にこんど北海道の御料林が移管になりました結果、北海道の國有林の面積は内地の國有林と比較いたしますと、面積で全國の國有林面積の四三%を北海道が占めております。蓄積から申しまして五三%を占めております。そういうふうに北海道の國有林は全國的に見まして最も重要なる役割を演じておるような關係にあるのでありまして、この際どうしても機構を統一いたしまして、統一した計畫のもとに統一した方針で施業しなければならない關係に相なりましたので、實はこの一月初旬の閣議におきまして御料林の國有林移管を企圖いたしまして、北海道の森林行政も農林省に一括することが決定になつたのであります。そうして特別會計で經理していくことに決定になりましたので、ただいまこの閣議決定の線に副いまして準備も進めており、既に特別會計も上程になつたような次第でありまして、大體この四月一日から新たな機構で發足することに相なつております。
それからあとでお話になりました神社の境内地の林のことですが、これは御料林ではなく境内林になつておるのではないかと思います。木曾なんかの御料林は全部國有に移管することになつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=13
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014・今泉兼寛
○今泉政府委員 先ほど伊勢神宮につきましてお尋ねがありましたので、その點について私からお答え申し上げておきます。伊勢神宮は御承知の通りあの裏の裏山等の面積を入れましておよそ六千町歩にわたつております。今も御説明がありました通りあそこは境内地ということになつておりますので、あそこの森林も境内林ということになつております。從つてあそこの處分の問題は、今後具體的に社寺境内地處分審査委員會にかけまして、その審査委員會の答申をまつて處置することになりますが、大體この勅令案要綱の方で差上げてございます五號の社寺等の尊嚴を保持するための必要な土地、六號の社寺等の災害を防止するために直接必要なる土地、それから七號の歴史または古紀等によつて社寺等に特別の由緒のある土地、こういつた標準で、もしこの各號に該當するというふうに判定されますれば、伊勢神宮の有として讓與せられるということになろうと思います。從つてまた九號には、前各號の土地における立木地區その他の定着物というふうに書いてございますから、境内地としてそれが神宮の有になりますれば、その上にある立木地區も當然讓與の範圍になると思いますが、具體的には審査會の答申をまつて處置したいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=14
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015・大石倫治
○大石(倫)委員 この機會に文部省の方に伺つてみたいと思います。文部省は既に勅令をもつて神社の社格を全廢されて、どの神社も國家から見て同一資格になつたというのでありまして、これは國内關係ばかりでなく、一つの國際關係の反映がここに至つたのではないかと思われるのでありますから、やむをえずとすればやむをえざるものであります。しかしながら日本の歴史を考え、われわれ大和民族の傳統を尊重し、將來敗戰日本を再建してまいりますには、國民思想の重大性は見逃すことのできないことであります。この國民思想は長い長い歴史によつて育まれ養われて、ときの歴史によつていろいろの變化はありましたけれども、とにかくわが國の歴史すなはち肇國の精神は今日に流れ來つたのであります。不幸にして軍閥、軍國主義者の誤れる方針によつてなすべからざる戰いを挑み、ついにわが國を亡國に導いたのでありますが、亡國になつたがためすべてが破壞され、すべてが變革されねばならぬということに私ははなはだ滿足しかねておるのであります。中にもわが國の神に對する一つの信仰、崇敬の國民性というものは、敗戰によつて一時にこれを消滅させることは困難である。はたせるかな敗戰後におけるわが國民の思想を見まするというと、我然として一變して、實に憂いにたえざる惡思想が國内に彌漫せんとし、否、彌漫しつつあるのであります。かくのごとき險惡なる思想の上に日本の再建というものはとうてい滿足なる再建が完成するということは考えられない。やはり日本には日本の長い歴史によつてはぐくまれ、養われ、鍛錬せられたるところの中心というものを失うてはならないのであります。すなわち日本國民というものは神社を中心としてまいつたのでありますが、その神社は明治の時代になりまして、いろいろ國幣社であるとか、官幣社であるとか、あるいは縣社、郷社、村社、あるいは無格社等、幾多の神社がありまして、それぞれの資格においてやはり國民はこれを尊崇の的としてきたのであります。從つてそこに思想の統一、思想の健全なる誘導というものができておつたのであります。これが一朝にして破壞せられまして、今日のごとく實に危い思想が國内に彌漫していくということは、日本再建のために最も深き憂いを覺えるのであります。しかるに文部省は、たとえ國際關係とはいいながら、この尊重すべき歴史、尊重すべきこの國民思想の中心力を他愛もなく一片の勅令をもつて廢せられるということは、私はいかがなものであろうかと今日疑問に思つておるのであります。しかしそういう思想が封建的であるとあれば、私は甘んじて受けます。ですが、これに對して、しかも文教の府としてはもつと自重して、もつと方法がないではなかろうか。もう一旦廢止したものを再び復活することは困難でありましよう。また私はそれを是非せねばならんとは考えておりません。たとえ國はこういう社格、階級を撤廢いたしましても、眞に國民の信仰心、眞に國民の神に對する尊敬心というものがあれば、やはりそれぞれのなにはありましよう。けれども人間にはやはり一つの標準というものを示すことによつて、また誘導をし、啓發もし、そこにまた到著せしめることができるのであります。文部省はこれらの點について、この山林あるいは境内林、あるいは財産の處置等につきまして、今後國家の保護を離れた神社、國家の援助を離れた歴史ある寺院があるいは維持困難になり、あるいは門前雀羅を張るようなことになつてまいりますることは、決して日本としては好むべきことではないと思うのであります。これらに對しまして適當なお考えがあられることと思いますが、文部省としての立場をもう少し説明をしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=15
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016・福田繁
○福田政府委員 ただいまお話の點につきましては、神社の社格の廢止は神祇院が廢止になりましたと同時に、從來の官、國幣の社格というものが廢止されたのでございます。これはいわゆる今までの神社が國教的な地位から離れたということを意味しておるのでございまして、新憲法の精神から申しましても、當然國家と宗教團體との關係は分離しなければならない状況にあるわけでございます。從つて新しい法令の建前におきましては、神社も寺院と同じような立場におきまして一宗教法人として出發いたしたのでございます。しかしながら一方この神社の社格がなくなりましたということは、別に從前の歴史的な沿革とか、そういうものをお話のように全然なくしてしまつたと言うわけにはまいらないのでございまして、神社の信仰の面におきましては、一宗教法人、宗教團體といたしまして、今後の新日本再建の上におきまして、果す非常な大きな使命をもつておるものと私どもは考えております。特にこの敗戰後の日本の再建の上におきまして、神社も寺院もともに宗教團體として大きな役割を果さなければならないと考えておる次第でございます。そういう意味におきまして、今囘のこの法律の實施に當りましても、宗教というものが國民思想に及ぼします非常な重大な影響を考慮いたしまして、特にこの法律にも書いてございますように、宗教活動に必要な範圍というものを神社、寺院の存立の基礎に考えておりまして、少くとも國家としては神社、寺院が存立し得る基礎だけは確保しよう、與へよう、こういう考え方をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=16
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017・大石倫治
○大石(倫)委員 今の御説明では私は滿足できませんが、それ以上お尋ねすることはどうかとも思いますが、日本は神ながらの國であるという教え方をもつて、また國民もそう信じてきたのであります。從つて自分が困るとき、あるいは何かを求めんとするとき、何か自分の安心のいく方法としてまず神樣へお詣りをして、神樣へお願いする。神樣へ祈るというようなことが日本國民の共通的關係であります。從つて神社の所在というものは國内非常に多過ぎるほど多いのでありますが、今後神社の維持が國家の保護を離れて非常に困難に陷るのではないか。單純なる社格の撤廢ばかりでなしに、あるいは財的保護を離れたばかりでなしに、この信仰心、崇敬心に非常に影響があるのであります。直接には財産あるいは社格、國家保護という有形的なものがありますが、文教の府としてはやはり神に對する崇敬心の涵養、誘導等が今まで相當に盛りこまれておつたのであります。近頃文部省の行き方を見てみますると、すこぶる轉進が早い。教育の方針を變えるにしても、六・三・三制をやるということになると、何らの準備もなく何らの用意もなく一夜のうちに國策が立つてしまつて、あちらこちらに紛擾を起すような状態であります。昨日私の乘つておる自動車の運轉手が九段中學の寄合に行つた。どういうことであるか。六三制が實行せられると今度入學する一年生は別の學校に行く。二年生以上はやはり今までの學校でやられる。同じ學校のうちに校長が二人できてそれぞれ二つの學校が行われるというようなことになつてくると、これでは九段の何とか中學は優秀な生徒をもつてやつておつたのが私立よりももつと下るようになつて、これでは困るから運動を起さなければならぬというようなことで大變ごたごたしたと聞いております。要するに六三制の學校をやるとしても、學校の設備もなければまた教育資材の設備もなく、漫然として直ちに國策として行つていく。こういうような輕薄なことで、堅實なる日本國民の思想教養ができるかどうか。私は非常な疑問をもつておる。從つて神社に對しても、國民の宗教心に對しても、それは文部省の關することであつて、國家がそこまでやらなくてもよいというなら私は何も申すことはありませんが、どうも神社の社格を廢し、保護を廢止することは平氣で簡單に行うけれども、これをいかにして維持し、いかにして經營さす。いかにして國民との結びをしていくかということについて、文教的施設に至つては、はなはだ乏しいと思う。それに對して今大臣からでも聽ければよいのでありますけれども、かりにどなたからでもよいが、そういうことについて、もう少し文部省の確たる見識、確たる信念、確たる國家に對する文教の府たる貫祿を示して貰いたいと思う。具體的にこれこれという必要もありませんが、その點もう少し何とかなりませんか。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=17
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018・福田繁
○福田政府委員 ただいまのお話の氣持は十分よくわかるのであります。しかしながら新憲法におきましても、宗教團體に對しまして特別な保護とか、特典を與えてはいけないという趣旨になつておりまして、神社に對しまして特別な保護特典を政府が考えるということは、新憲法の趣旨から申しましても、できないわけでございます。從つて文部省といたしましては、そういう方面でなしに、一般の宗教界に對してできる範圍のことはいろいろいたしたい。かように考えておるわけであります。特に先ほども縷縷御説明がございましたが、宗教の情操教育とでも申しますか、そういう情操的な陶冶に關しましては、昨年の議會で決議案がございました趣旨に從いまして、十分今後尊重していく方針をとつております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=18
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019・井上徳命
○井上(徳)委員 ただいま大石委員から御質問がありました。それに關連して神社のことについてお伺いいたします。神社は既に國家の保護の手を離れまして、神社本廳というものができまして、各地にその支廳もできて、萬一社格でもきめるような場合には、神社本廳でそういうことはできるのじやないかということも考えられまするし、また神社本廳に各地の神社もほとんどすべてが宗教法人として屆出があつたかのように承つております。そうすると國家の手を離れた神社は、神社本廳によつてすべて組織づけられて、そしてその神社の本來の信仰というものは自由なる國民の宗教的信仰の立場から、維持されるものは維持され、また盛んになるものは盛んになる。そういうことになつておると思うのでありまするが、文部省の方でも國家の手を離れた神社としては、神社本廳によつてやつておる。それに對しての保護とか何とかいうことでなくても、その神社本廳の行き方に對しては御容認になつておることと思うのでありますが、そういう意味において、私は神社の將來というものは、國家の手を離れても、そうした組織が立つていつたならば、むしろ健全な、自由な宗教的信仰の下から國民精神を指導し得るようなことになるものでないかというような考えをもつておるのですが、文部御當局の御意見もちよつと承つておきたいと思う次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=19
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020・福田繁
○福田政府委員 御質問の御趣旨は、神社の統轄團體としての神社本廳のもつておる役割とでも申しますか、そういうことについての御質問であつたと思います。御承知のように、神社本廳は、神社が國家管理を離れましてから間もなくできたのでありまして、その趣旨は一應國家管理を離れました神社が、個々別々にこの過渡期におきましていろんな問題の處置が惡いという問題もありまして、とにかく一つのよりどころと申しますか、世話をする團體が必要だ、そういう意味において神社本廳ができたように伺つております。從つて現在はそういう形のもとにおいて活動いたしておるのでございますが、これは他の佛教連合會、あるいは宗教連盟とかいうようなものとは若干性質を異にしておるのでございます。從いまして今後神社本廳は宗教的な面におきまして、いろいろ神社信仰の今後の發表、その他につきまして、活動の中心になるということは考えられるわけでございます。その點におきましてはただいまのお話のような筋に行き得るのじやないか、かように考えております。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=20
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021・大石倫治
○大石(倫)委員 どうも質問の要旨が、この法律からあまり離れて皆樣に御迷惑と考えますから、大抵にしてよそうと思います。ただ大藏省、農林省、文部省が、今後たとえ國家の保護を打切つて自由自在なる信仰の發達を促す。こういう考え方であつても、私は今日ある人に猿の話をいたしました。ちよつとここでそれをつけ加えて置きます。ある猿まわしが永い間猿を飼つて藝を仕込んで、いろいろな藝をさして金をとらして、とつた金は親方が收入して、それによつて親方はぜいたくをして、猿を虐待して、ときとしては猿が働かないと叱りつけたりする。そういう虐待は見るに忍びないから、その猿を猿まわしの手から解放してやつた。こういうラヂオ放送があつた筈であります。そのとき私はふと考えた。なるほど今まで何尺かの綱によつて繋がれて、そして自由に遊ぶこともできず、活動することもできず、猿まわしによつて追い使われておつた。まことにそれは不自由なことであつた。その綱を斷ち切つて自由に猿を解放することが非常な彼の自由を尊ぶことにもなり喜ぶであろう。こういうようにラヂオで聽いた。だがそれだけなら政治がないぢやないかと私は思つております。なぜならば小さいときから人によつて養われた猿は、人によつてその生活が安泰を得て生命をつないできている。小鳥にしても籠の中におかないでこれを自由にしたらよほど鳥は喜ぶかと思える。ところがこの猿は解放されたのを喜ぶか、あるいは喜ばないかは別として、はたして彼は安全な一生を送ることができるか。自由を本當に確保することができるか。私はできないと思う。彼らは幼いときから人によつて養われ、人によつて生活をしてきている。これを放した場合にも彼らは生活の途を知らない。猿が山へ一匹ではいつて行つたら他の野猿のために虐げられ、いぢめられ、彼らは決して生活が樂にゆくものではない。こういう猿においてもどこへ行つて食を求めてどうして生活するか。彼らにはその知識もなければ準備もない。籠の鳥を放しても同樣であります。彼らは籠の中にいるよりも廣々としたところに出されれば喜んで飛び歩いてそれで生活できるかと言えば、生活の途を知らないために生命の維持ができないで、餓死してしまうような事實がたくさんある。ここに政治というものがある。猿を解放してもその生活の途を知らない不慣れなるものを、どこまで保護していつたら彼らは山に行つて野猿と樂しく自由に木の枝を飛びまわつて生活をして行けるか、そこまで保護をしてやるのが政治である。それをやらずにただおつ放したから自由である。日本人の宗教的自由を認めたからよろしいというような考え方では、ここに混亂を生じ、昏迷を生じて、日本再建が混亂に陷つておるような状態なんです。それでありますから神社がたとえ國家の保護を離れたという場合でも、自由の信仰によつて發達するかというと決して發達しない。明治神宮をごらんなさい。伊勢の大廟をごらんなさい。今まであんなに盛んであつた參詣者がほとんど祭日といえども影をひそめて、まことに申し上げかねるほどの寂寥さを感ずるのであります。明治神宮はわずか貯え數十萬圓、本年一年が維持費がないという、今までならば參拜あるいはいろいろな收入によつて少しも困らなかつた。國家の保護の額は少いのでありますけれども、一般の信仰心によつて十分なる維持ができておつた。今日はどうです、お宮が再健されても前には織るがごとき參拜者があつたけれども、今では寂寥々として參拜者がなくなつている。もう神社というものの將來はまことに心細いのでありまして、そういうことが隨所に所在しておりますから、こういう神社を統合整理するとか、合祀をするとか、合併をするとか、いろいろの方法によつて神社それ自身が立つてゆけるだけの策を國家が保護をなすに先立つて講ずるのが當然じやないかと私は思う。そういうような日本の解放のしかたではどこの方面でも皆混亂するのであります。でありまするからこの法律を施行するにあたつても、たとえば高野山のごとき何千町歩という保管林をもつておる。比叡山のごとき、相國寺のごとき、あるいは他の寺、神社にいたしましても、相當今まで保管林、無償貸しつけの山林の收入によつて、大部分の經費がまかなわれてきたというようなものが、もしもその處置を誤りますると、この歴史ある信仰の中心もぐらつくのでありまして、この法律の施行にあたりましては、大藏省、農林省、文部省、ともにほんとうに日本再建の中心が日本國民の思想であるということに重きをおかれまして、この法律がほんとうに生きて働くように御處置方を願いたいと思うのであります。これをもつて私の質問を終ります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=21
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022・大谷瑩潤
○大谷委員長 他に質疑の通告もございませんので、本法案の討論採決は次會にいたしたいと存じます。次會は明後日の午前十時から開會いたしたいと思いまするが、あらためて公報をもつて御通知を申し上げます。本日はこれにて散會いたします。
午後三時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009211715X00219470315&spkNum=22
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